JP2005070147A - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、高感度でかつ膜の透明性に優れた熱現像感光材料を提供することである。
【解決手段】支持体の一方面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有し、有機溶媒を用いて塗布された熱現像感光材料であって、造核剤を含有し、特性曲線の平均階調が1.8以上4.3以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体の一方面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、銀イオンのための還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有し、有機溶媒を用いて塗布された熱現像感光材料であって、造核剤を含有し、特性曲線の平均階調が1.8以上4.3以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像感光材料に関し、特に鮮明で画質の優れた熱現像感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野や印刷製版分野において環境保全、省スペースの観点から写真現像処理のドライ化が強く望まれている。これらの分野では、デジタル化が進展し、画像情報をコンピューターに取り込み、保存、そして必要な場合には加工し、通信によって必要な場所で、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより感光材料に出力し、現像して画像をその場で作成するシステムが急速に広がってきている。感光材料としては、高い照度のレーザー露光で記録することができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することがが必要とされている。このようなデジタル・イメージング記録材料としては、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像のように診断能力を決定する画質(鮮鋭度、粒状性、階調、色調)の点、記録スピード(感度)の点で、不満足であり、従来の湿式現像の医療用銀塩フィルムを代替できるレベルに到達していない。
【0003】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書およびD.H.クロスタベール(Klosterboer) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第9章、第279頁、1998年)に記載されている。特に、熱現像感光材料は、一般に、感光性ハロゲン化銀、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した画像形成層を有している。
【0004】
熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。その結果、露光領域に黒色の銀画像が形成される。熱現像感光材料は、米国特許2910377号、特公昭43−4924号をはじめとする多くの文献に開示されている。
【0005】
上記のような熱現像感光材料においては、バインダーとして熱現像温度より低い領域にガラス転移点を有するポリマーが用いられる。
有機溶媒を塗布溶剤に用いて作製される熱現像感光材料においては、バインダーとしてポリビニルブチラールを用いることが知られている。
【0006】
一方、レーザー光としては、ガスレーザー(Ar+,He−Ne,He−Cd)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが一般に用いられている。半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いられている。発光波長域も青領域から赤外領域まで幅広い波長領域のレーザーが用いられている。中でも、赤外半導体レーザーは、安価で安定した発光が得られることから特にコンパクトで操作性が良く、手軽に設置場所を選ばないレーザー画像出力システムの設計に適している。熱現像感光材料としてはそのために赤外感光性が要求される。赤外感度を高めるための努力が種々なされてきた。しかしながら、赤外分光増感は一般には不安定で感光材料の保存中に分解して感度が低下する問題を有しており、高感度化とともにその保存安定性の改良が求められてきた。
【0007】
また、近年、青色半導体レーザーが開発され、高精細の画像記録が可能になり、記録密度の増加、および長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大し、それに対応した熱現像感光材料が求められた。
【0008】
一方、上述の熱現像感光材料を撮影用感光材料に応用する試みが提案されている。ここで言う撮影用感光材料とは、レーザー光などで走査露光により画像情報を書き込むものではなく、画像を面露光により記録するものである。従来、湿式現像感光材料分野では、一般に用いられ、医療用途では直接あるいは間接X線フィルム、マンモグラフフィルムなど、印刷用各種製版フィルム、工業用記録フィルム、あるいは一般カメラによる撮影用フィルムなどが知られている。例えば、青色の蛍光増感紙を利用した両面塗布型X線用熱現像感光材料、ヨウ臭化銀の平板粒子を用いた熱現像感光材料(例えば、特許文献1参照。)、あるいは(100)主平面を有する塩化銀含有率の高い平板粒子を支持体の両面に塗設した医療用感光材料も特許文献に開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、両面塗布熱現像感光材料は、その他の特許文献にも開示されている。しかしながら、これらの公知例では、0.1μm以下の微粒子ハロゲン化銀を用いるとヘイズの悪化を伴わないが低感度であり、撮影用には実用に耐えないものであり、一方、0.5μm以上のハロゲン化銀粒子を用いた場合は残存するハロゲン化銀によるヘイズの悪化、およびプリントアウトの悪化による画像品質の劣化が激しく、実用に耐えるものではなかった。
【0009】
ハロゲン化銀粒子として、ヨウ化銀の平板粒子を用いた感光材料は湿式現像分野では知られているが、熱現像感光材料ではその応用は例がない。その理由は上述のように低感度であり、有効な増感手段がなく、また熱現像ではさらに技術的バリアーが高くなることが原因であった。
【0010】
このような撮影用感光材料に用いるためには、熱現像感光材料として更に高い感度が要求され、また得られる画像のヘイズなどの画質も更に一段と高いレベルを供給される。
【0011】
【特許文献1】
特開昭59−142539号公報
【特許文献2】
特開平10−282606号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記従来における諸問題を解決し、クリアで高画質の熱現像感光材料を提供することにある。特に、有機溶媒塗布型熱現像感光材料におけるこれらの改良に関するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者の上記課題は、下記の手段により達成されることを見い出した。
【0014】
<1> 支持体の一方面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有し、有機溶媒を用いて塗布された熱現像感光材料であって、1)造核剤を含有し、2)特性曲線の平均階調が1.8以上4.3以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
<2> 単位面積当たりの前記非感光性有機銀塩と該前記感光性ハロゲン化銀を含む総塗布銀量を前記感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が5×10−14g/個数以上であることを特徴とする<1>に記載の熱現像感光材料。
<3> 前記画像形成層の容積を前記感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が0.5μm3/個数以上であることを特徴とする<1>または<2>に記載の熱現像感光材料。
<4> 前記感光性ハロゲン化銀の単位面積当たりの粒子個数が4×1013個/m2以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかにに記載の熱現像感光材料。
<5> 熱現像後、最高濃度部における単位面積当たりの現像銀粒子数を前記感光性ハロゲン化銀の単位面積当たりの粒子個数で除した値1.0より大であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかにに記載の熱現像感光材料。
<6> 塗布銀量が2.0g/m2以下で最高濃度2.5以上であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<7> 前記感光性ハロゲン化銀の塩化銀含有率が70モル%未満であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<8> 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<9> 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が80モル%以上であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<10> 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする<1>〜<9>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<11> 前記感光性ハロゲン化銀の粒子個数の10%以上がアスペクト比2以上の平板状粒子であることを特徴とする<1>〜<10>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<12> 前記感光性ハロゲン化銀の粒子個数の10%以上がヨウ化銀含有率が40モル%以上の平板状粒子であることを特徴とする<11>に記載の熱現像感光材料。
<13> 前記平板状粒子がアスペクト比5.0以上であることを特徴とする<11>または<12>に記載の熱現像感光材料。
<14> 前記平板状粒子の平均球相当直径が0.3μm以上5.0μm以下であることを特徴とする<11>〜<13>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<15> 前記平板状粒子の平均投影面積相当直径が0.4μm以上8.0μm以下であることを特徴とする<6>〜<8>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<16> 前記平板状粒子が平均厚みが0.3μm以下であることを特徴とする<11>〜<15>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<17> 前記造核剤がヒドラジン誘導体化合物、ビニル化合物、および4級オニウム化合物よりなる群より選ばれる化合物であることを特徴とする<1>〜<16>のいずれかに記載の記載の熱現像感光材料。
<18> 前記造核剤が下記一般式(V)で表されるヒドラジン誘導体化合物であることを特徴とする<17>に記載の記載の熱現像感光材料。
【0015】
【化3】
【0016】
一般式〔V〕において、式中、A0はそれぞれ置換基を有してもよい脂肪族基、芳香族基、複素環基または−G0−D0基を、B0はブロッキング基を表し、A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基、スルホニル基またはオキザリル基を表す。G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表し、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表す。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。
<19> 前記造核剤が下記一般式(VI)でビニル化合物であることを特徴とする<17>に記載の記載の熱現像感光材料。
【0017】
【化4】
【0018】
一般式(VI)において、Xは電子求引性基を表し、Wは水素原子、または炭素原子に置換し得る基を表す。Rは炭素原子に置換し得る基を表す。
【0019】
<20> 前記一般式(VI)で、Wがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、チオオキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基より選ばれる基であることを特徴とする<19>に記載の記載の熱現像感光材料。
<21> 前記一般式(VI)で、Rがハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、アミノ基、アルキルアミノ基、環状アミノ基、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環基、ウレイド基、スルホンアミド基より選ばれる基であることを特徴とする<19>に記載の記載の熱現像感光材料。
<22> ヨウ化銀錯形成剤を含有することを特徴とする<1>〜<21>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<23> 現像促進剤を含有することを特徴とする<1>〜<22>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<24> 前記熱現像感光材料であって、前記バインダーとして、ポリビニルブチラールを画像形成層のバインダー全組成分に対して50重量%以上含む特徴とする<1>〜<23>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<25> 前記非感光性有機銀塩のベヘン酸銀含有率が、40モル%以上70モル%以下であることを特徴とする<1>〜<24>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<26> 残留溶剤量が、メチルエチルケトン量で0.1mg/m2以上150mg/m2以下であることを特徴とする<1>〜<25>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<27> 前記画像形成層を前記支持体の両面に有することを特徴とする<1>〜<26>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
【0020】
熱現像感光材料の現像機構は、ハロゲン化銀を中心とした勢力範囲内で起こることが知られている(前述のD.H.クロスタベール参照。)。本発明者の解析によれば、有機溶剤を塗布溶媒に用いた熱現像感光材料の場合、特に、この勢力範囲は狭くハロゲン化銀の極近傍に限られることが判明した。このため、ハロゲン化銀の密度を下げることは極めて困難であった。本発明者は、造核剤を用いて伝染現像を作用させることでこの問題を解決し得ることを見いだして、本発明に至った。即ち、感光性ハロゲン化銀の密度を下げることが出来、クリアで高画質の熱現像感光材料の提供を可能にした。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、写真特性曲線とは、露光エネルギーである露光量の常用対数(log E)を横軸にとり、光学濃度、すなわち散乱光写真濃度(D)を横軸にとって両者の関係を表したD−log E曲線のことをいう。本発明における平均階調とは、特性曲線上のかぶり濃度+光学濃度0.25の点とかぶり濃度+光学濃度2.0を結ぶ直線の傾き(この直線と横軸のなす角をθとするときのtan θ)のことである。
【0022】
本発明における平均階調は、1.8以上4.3である。好ましくは、2.0以上4.0以下である。
【0023】
本発明では、塗布銀量が2.0g/m2以下であって、熱現像後の光学濃度が2.5以上であることがが好ましい。より好ましくは、塗布銀量が1.8g/m2以下であって、熱現像後の光学濃度が2.7以上である。
【0024】
1.熱現像感光材料
本発明の熱現像感光材料は、支持体の少なくとも一方面上に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有している。また、好ましくは画像形成層の上に表面保護層、あるいはその反対面にバック層やバック保護層などを有してもよい。
これらの各層の構成、およびその好ましい成分について詳しく説明する。
【0025】
1−1.感光性ハロゲン化銀
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀、ヨウ化銀を用いることができる。好ましくは、臭化銀、ヨウ臭化銀およびヨウ化銀である。より好ましくは、ヨウ化銀含有率が40モル%を超えるヨウ臭化銀またはヨウ化銀である。さらに好ましくはヨウ化銀含有率は80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
残りのハロゲン種は特に制限はなく、塩化銀、臭化銀などのハロゲン化銀、またはチオシアン酸銀や燐酸銀などの有機銀塩から選ぶことができるが、塩化銀含有率は70モル%未満であることが好ましい。
【0026】
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。コア部のヨウ化銀含有率が高いコア高ヨウ化銀構造、またはシェル部のヨウ化銀含有率が高いシェル高ヨウ化銀構造も好ましく用いることができる。また、粒子の表面にエピタキシャル部分とした塩化銀や臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0027】
本発明の高ヨウ化銀含有率のハロゲン化銀は、任意のβ相およびγ相含有率を取ることができる。β相とは六方晶系のウルツアイト構造を有する高ヨウ化銀構造を指し、γ相とは立方晶系のジンクブレンド構造を有する高ヨウ化銀構造を指す。ここでいうγ相含有率とは、C.R.Berry(ベリー)により提案された手法を用いて決定されるものである。この手法は、粉末X線回折法でのヨウ化銀β相(100)、(101)、(002)とγ相(111)によるピーク比を元にして決定するもので、詳細については例えば、Physical Review, Volume 161, No.3, p.848−851(1967)を参考にすることができる。
【0028】
2)粒子サイズ
本発明においては、好ましいハロゲン化銀の平均球相当直径は0.3μm以上5.0μm以下であり、さらに0.35μm以上3.0μm以下であることが好ましい。ここでいう平均球相当直径とは、ハロゲン化銀1粒子の体積と同じ体積の球の直径を意味する。測定方法としては、電子顕微鏡により観察した個々の投影面積と厚みから粒子体積を求め、その体積と同じ体積の球に換算することにより求めることができる。
【0029】
3)塗布量
本発明においては、単位面積当たりの非感光性有機銀塩と感光性ハロゲン化銀を含む総塗布銀量を感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が5×10−14g/個数以上であることが好ましい。より好ましくは、8×10−14g/個数以上であり、さらに好ましくは1×10−12g/個数以上である。即ち、総塗布銀量に対して、感光性ハロゲン化銀粒子数を極めて少なく用いることが本発明の好ましい態様である。
上記値の上限値は、用いられる伝染現像性還元剤の種類とその添加量、非感光性有機銀塩の特性、あるいは感光性ハロゲン化銀の粒子サイズや形状などの要因で大きく異なるが、5×10−9g/個数以下、好ましくは5×10−10g/個数以下である。
【0030】
従来、感光性ハロゲン化銀の粒子数を減らすと感度低下および画像の黒化濃度の低下を引き起こすため、感光性ハロゲン化銀の粒子数を減らすことは不可能であった。しかしながら、本発明の熱現像感光材料の構成では、単位面積当たりの非感光性有機銀塩と感光性ハロゲン化銀を含む総塗布銀量を感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が5×10−14以上となるように感光性ハロゲン化銀の粒子数を減らすことが可能となったのである。
【0031】
前記画像形成層にける前記感光性ハロゲン化銀粒子の平均占有容積は、前記画像形成層の容積を前記感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値で表して0.5μm3/個数以上であることが好ましい。より好ましくは1.0μm3/個数以上である。
前記感光性ハロゲン化銀の単位面積当たりの粒子個数(両面に画像形成層を有する場合はその合計)は、4×1013個/m2以下であることが好ましく、より好ましくは1×1013個/m2以下である。
また、本発明では、熱現像後、最高濃度部における単位面積当たりの現像銀粒子数を前記感光性ハロゲン化銀の単位面積当たりの粒子個数で除した値は、1.0より大であることが好ましい。より好ましくは10より大である。
【0032】
4)粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627号、特願2000−42336号記載の方法も好ましい。
【0033】
例えば、有機銀塩の一部の銀を有機または無機のハロゲン化物でハロゲン化する、いわゆるハライデーション法も好ましく用いられる。ここで用いる有機ハロゲン化物としては有機銀塩と反応し、ハロゲン化銀を生成する化合物であればいかなるものでもよいが、N−ハロゲノイミド(N−ブロモスクシンイミドなど)、ハロゲン化4級窒素化合物(臭化テトラブチルアンモニウムなど)、ハロゲン化4級窒素塩とハロゲン分子の会合体(過臭化臭化ピリジニウム)などが挙げられる。無機ハロゲン化合物としては有機銀塩と反応しハロゲン化銀を生成する化合物で有ればいかなるものでもよいが、ハロゲン化アルカリ金属またはアンモニウム(塩化ナトリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、臭化アンモニウムなど)、ハロゲン化アルカリ土類金属(臭化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、ハロゲン化遷移金属(塩化第2鉄、臭化第2銅など)、ハロゲン配位子を有する金属錯体(臭化イリジウム酸ナトリウム、塩化ロジウム酸アンモニウムなど)、ハロゲン分子(臭素、塩素、ヨウ素)などがある。また、所望の有機無機ハロゲン化物を併用しても良い。ハライデーションする際のハロゲン化物の添加量としては有機銀塩1モル当たりハロゲン原子として1ミリモル〜500ミリモルが好ましく、10ミリモル〜250ミリモルがさらに好ましい。
【0034】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0035】
ヨウ化銀の平板粒子の形成方法に関しては、前述の特開昭59−119350号、同59‐119344号に記載の方法が好ましく用いられる。
【0036】
5)粒子形状
本発明におけるハロゲン化銀粒子の形状としては立方体粒子、八面体粒子、14面体粒子、12面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができる。好ましくは、12面体粒子、14面体粒子、および平板状粒子である。ここで言う12面体とは、(001)、{1(−1)0}、{101}面と有する粒子であり、14面体粒子とは、(001)、{100}、{101}面を有する粒子である。ここで、{100}、{101}面は、それぞれ(100)、(101)面と等価な面指数を持つ結晶面群を表す。
ヨウ化銀の12面体、14面体、8面体に関しては、特願2002‐081020号、同2002‐87955号、同2002‐91756号を参考にして調製することができる。
本発明においては、平板状粒子のハロゲン化銀の場合、その投影面積相当直径は、好ましくは0.4μm以上8.0μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3.0μm以下である。ここでいう投影面積相当直径とは、ハロゲン化銀粒子の投影面積と同じ面積の円の直径を意味する。測定方法としては、電子顕微鏡により観察した個々の投影面積から粒子の面積を求め、その面積と同じ面積の円に換算することにより求めることが出来る。
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀の粒子厚みは、0.3μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以下であり、さらに好ましくは0.15μ以下である。アスペクト比は、好ましくは2以上100以下、より好ましくは5以上50以下である。
【0037】
本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は複雑な形態を取り得るが、好ましい形態は例えば、R.L.JENKINS etal. J of Phot. Sci. Vol.28 (1980)のp164−Fig1に示されているような接合粒子が挙げられる。同Fig.1に示されているような平板上粒子も好ましく用いられる。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0038】
6)重金属
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9モルから1×10−3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
【0039】
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)6]4−、[Fe(CN)6]3−、[Ru(CN)6]4−、[Os(CN)6]4−、[Co(CN)6]3−、[Rh(CN)6]3−、[Ir (CN)6]3−、[Cr(CN)6]3−、[Re(CN)6]3−などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
【0040】
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
【0041】
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
【0042】
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10−5モル以上1×10−2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10−4モル以上1×10−3モル以下である。
【0043】
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
【0044】
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0045】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)6]4−)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0046】
7)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量は、500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0047】
8)化学増感
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、未化学増感でもよいが、カルコゲン増感法、金増感法、還元増感法の少なくとも1つの方法で化学増感されるのが好ましい。カルコゲン増感法としては、硫黄増感法、セレン増感法およびテルル増感法が挙げられる。
【0048】
硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を用い、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いる事が出来る。
具体的には、チオ硫酸塩(例えばハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、NーエチルーN´ー(4ーメチルー2ーチアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例えば、チオアセトアミド)、ローダニン類(例えば、ジエチルローダニン、5ーベンジリデン−N−エチルローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例えば、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4ーオキソーオキサゾリジンー2ーチオン類、ジスルフィド類またはポリスルフィド類(例えば、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、レンチオニン(1,2,3,5,6−ペンタチエパン))、ポリチオン酸塩、元素状硫黄などの公知の硫黄化合物および活性ゼラチンなども用いることができる。特にチオ硫酸塩、チオ尿素類とローダニン類が好ましい。
【0049】
セレン増感においては、不安定セレン化合物を用い、特公昭43ー13489号、同44ー15748号、特開平4ー25832号、同4ー109340号、同4ー271341号、同5ー40324号、同5ー11385号、特願平4ー202415号、同4ー330495号、同4ー333030号、同5ー4203号、同5ー4204号、同5ー106977号、同5ー236538号、同5ー241642号、同5ー286916号などに記載されているセレン化合物を用いる事が出来る。
【0050】
具体的には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例えば、N,Nージメチルセレノ尿素、トリフルオルメチルカルボニルートリメチルセレノ尿素、アセチルートリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例えば、セレノアミド,N,Nージエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニルートリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例えば、トリーp−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類、ジアシルセレニド類などを用いればよい。またさらに、特公昭46ー4553号、同52ー34492号などに記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン酸塩、セレナゾール類、セレニド類なども用いる事が出来る。特に、フォスフィンセレニド類、セレノ尿素類とセレノシアン酸塩が好ましい。
【0051】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4ー224595号、同4ー271341号、同4ー333043号、同5ー303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いる事が出来る。
【0052】
具体的には、フォスフィンテルリド類(例えば、ブチルージイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシージフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニルーN−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニルーNーメチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニルーNーベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N´ージメチルエチレンテルロ尿素、N,N´ージフェニルエチレンテルロ尿素)テルロアミド類、テルロエステル類などを用いれば良い。特に、ジアシル(ジ)テルリド類とフォスフィンテルリド類が好ましく、特に特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0053】
特に本発明のカルコゲン増感においてはセレン増感とテルル増感が好ましく、特にテルル増感が好ましい。
【0054】
金増感においては、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金増感剤を用いることができる。具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレニドなどでありこれらにくわえて、米国特許第2642361号、同5049484号、同5049485号、同5169751号、同5252455号、ベルギー特許第691857などに記載の金化合物も用いることが出来る。またP.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金以外の、白金、パラジュウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いる事も出来る。
【0055】
金増感は単独で用いることもできるが、前記のカルコゲン増感と組み合わせて用いることが好ましい。具体的には金硫黄増感、金セレン増感、金テルル増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金セレンテルル増感、金硫黄セレンテルル増感である。
【0056】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
【0057】
本発明で用いられるカルコゲン増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10−8〜10−1モル、好ましくは10−7〜10−2モル程度を用いる。
同様に、本発明で用いられる金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モル〜10−2モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−3モルである。この乳剤を化学増感する環境条件としてはいかなる条件でも選択可能ではあるが、pAgとしては8以下、好ましくは7.0以下より6.5以下、とくに6.0以下、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上の条件であり、pHとしては3〜10、好ましくは4〜9、温度としては20〜95℃、好ましくは25〜80℃程度である。
【0058】
本発明においてカルコゲン増感や金増感に加えて、さらに還元増感も併用することができる。とくにカルコゲン増感と併用するのが好ましい。
還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボランが好ましく、その他に塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でもよい。また、乳剤のpHを8以上またはpAgを4以下に保持して熟成することにより還元増感することも好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
還元増感剤の添加量としては、同様に種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モル〜10−1モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−2モルである。
【0059】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルフォン酸化合物を添加してもよい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、金増感、カルコゲン増感、の少なくとも1つの方法で化学増感されていることが高感度の熱現像感光材料を設計する点から好ましい。
【0060】
9)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
本発明における熱現像感光材料は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有することが好ましい。該化合物は、単独、あるいは前記の種々の化学増感剤と併用して用いられ、ハロゲン化銀の感度増加をもたらすことができる。
【0061】
本発明の熱現像感光材料に含有される1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物とは以下のタイプ1またはタイプ2で表される化合物である。
【0062】
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
【0063】
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具体例:28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0064】
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(1)(特開2003−114487号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(2)(特開2003−114487号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(3)(特開2003−114488号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(4)(特開2003−114488号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(5)(特開2003−114488号に記載の一般式(3)と同義)、一般式(6)(特開2003−75950号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(7)(特開2003−75950号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(8)(特願2003−25886号に記載の一般式(1)と同義)、または化学反応式(1)(特願2003−33446号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物のうち一般式(9)(特願2003−33446号に記載の一般式(3)と同義)で表される化合物が挙げられる。またこれらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0065】
【化5】
【0066】
一般式(1)及び(2)中、RED1、RED2は還元性基を表す。R1は炭素原子(C)とRED1とともに5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、もしくはヘキサヒドロ体に相当する環状構造を形成しうる非金属原子団を表す。R2、 R3、 R4は水素原子または置換基を表す。 Lv1、 Lv2は脱離基を表す。EDは電子供与性基を表す。
【0067】
【化6】
【0068】
一般式(3)、(4)及び(5)中、 Z1は窒素原子とベンゼン環の2つの炭素原子とともに6員環を形成しうる原子団を表す。R5、R6、R7、R9、R10、R11、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は水素原子または置換基を表す。R20は水素原子または置換基を表すが、R20がアリール基以外の基を表すとき、R16、R17は互いに結合して芳香族環または芳香族ヘテロ環を形成する。R8、R12はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m1は0〜3の整数を表し、 m2は0〜4の整数を表す。 Lv3 、Lv4 、Lv5は脱離基を表す。
【0069】
【化7】
【0070】
一般式(6)および(7)中、RED3、RED4は還元性基を表す。R21〜R30は水素原子または置換基を表す。Z2は−CR111R112−、−NR113−、または−O−を表す。 R111、R112はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。 R113は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
【0071】
【化8】
【0072】
一般式(8)中、RED5は還元性基でありアリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基を表す。 R31は水素原子または置換基を表す。 Xはアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。Lv6は脱離基でありカルボキシ基もしくはその塩または水素原子を表す。
【0073】
【化9】
【0074】
一般式(9)で表される化合物は脱炭酸を伴う2電子酸化が起こった後に、さらに酸化される事で化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、 R33は水素原子または置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員または6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。一般式(9)中、 R32、 R33、Z3は化学反応式(1)中のものと同義である。Z5はC−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。
【0075】
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(10)(特開2003−140287号に記載の一般式(1)と同義)、化学反応式(1)(特願2003−33446号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物であって一般式(11)(特願2003−33446号に記載の一般式(2)と同義)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0076】
【化10】
【0077】
一般式(10)中、RED6は1電子酸化される還元性基をあらわす。YはRED6が1電子酸化されて生成する1電子酸化体と反応して、新たな結合を形成しうる炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環部位を含む反応性基を表す。QはRED6とYを連結する連結基を表す。
【0078】
【化11】
【0079】
一般式(11)で表される化合物は酸化される事で化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、 R33は水素原子または置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員または6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。 Z5はC−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。一般式(11)中、 R32、 R33、Z3、Z4は化学反応式(1)中のものと同義である。
【0080】
タイプ1、2の化合物のうち好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、または「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。ハロゲン化銀への吸着性基とは特開2003−156823号明細書の16頁右1行目〜17頁右12行目に記載の基が代表的なものである。分光増感色素の部分構造とは同明細書の17頁右34行目〜18頁左6行目に記載の構造である。
【0081】
タイプ1、2の化合物として、より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を少なくとも1つ有する化合物」である。さらに好ましくは「同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物」である。吸着性基が単一分子内に2個以上存在する場合には、それらの吸着性基は同一であっても異なっても良い。
【0082】
吸着性基として好ましくは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、およびベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、および5−メルカプトテトラゾール基である。
【0083】
吸着性基として、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する場合もまた特に好ましい。ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素ヘテロ環基など)の好ましい例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が挙げられる。
【0084】
また窒素またはリンの4級塩構造も吸着性基として好ましく用いられる。窒素の4級塩構造としては具体的にはアンモニオ基(トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリール(またはヘテロアリール)アンモニオ基、アルキルジアリール(またはヘテロアリール)アンモニオ基など)または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。リンの4級塩構造としては、ホスホニオ基(トリアルキルホスホニオ基、ジアルキルアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基、アルキルジアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基、トリアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基など)が挙げられる。より好ましくは窒素の4級塩構造が用いられ、さらに好ましくは4級化された窒素原子を含む5員環あるいは6員環の含窒素芳香族ヘテロ環基が用いられる。特に好ましくはピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基が用いられる。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよい。
【0085】
4級塩の対アニオンの例としては、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、BF4 −、PF6 −、Ph4B−等が挙げられる。分子内にカルボキシレート基等に負電荷を有する基が存在する場合には、それとともに分子内塩を形成していても良い。分子内にない対アニオンとしては、塩素イオン、ブロモイオンまたはメタンスルホネートイオンが特に好ましい。
【0086】
吸着性基として窒素またはリンの4級塩構造有するタイプ1、2で表される化合物の好ましい構造は一般式(X)で表される。
【0087】
【化12】
【0088】
一般式(X)においてP、Rはそれぞれ独立して増感色素の部分構造ではない窒素またはリンの4級塩構造を表す。Q1、Q2はそれぞれ独立して連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NRN−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、またはこれらの基の組み合わせからなる基を表す。ここにRNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。 Sはタイプ(1)または(2)で表される化合物から原子を一つ取り除いた残基である。iとjは1以上の整数であり、i+jが2〜6になる範囲から選ばれるものである。好ましくはiが1〜3、jが1〜2の場合であり、より好ましくはiが1または2、jが1の場合であり、特に好ましくはiが1、jが1の場合である。一般式(X)で表される化合物はその総炭素数が10〜100の範囲のものが好ましい。より好ましくは10〜70、さらに好ましくは11〜60であり、特に好ましくは12〜50である。
【0089】
以下にタイプ1、タイプ2で表される化合物の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
【化13】
【0091】
【化14】
【0092】
【化15】
【0093】
【化16】
【0094】
【化17】
【0095】
本発明のタイプ1およびタイプ2の化合物は乳剤調製時、感材製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することも出来る。添加位置として好ましくは、粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時、塗布前である。
【0096】
本発明のタイプ1およびタイプ2の化合物は水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高くまたは低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高くまたは低くして溶解し、これを添加しても良い。
【0097】
本発明のタイプ1およびタイプ2の化合物は乳剤層中に使用するのが好ましいが、乳剤層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。本発明の化合物の添加時期は増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10−9〜5×10−2モル、更に好ましくは1×10−8〜2×10−3モルの割合でハロゲン化銀乳剤層に含有する。
【0098】
10)吸着基と還元基を有する化合物
本発明においては、分子内にハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物を含有させることが好ましい。本吸着性レドックス化合物は下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0099】
式(I) A−(W)n−B
[式(I)中、Aはハロゲン化銀に吸着可能な基(以後、吸着基と呼ぶ)を表し、Wは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Bは還元基を表す。]
【0100】
式(I)中、Aで表される吸着基とはハロゲン化銀に直接吸着する基、またはハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(またはその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、ジスルフィド基、カチオン性基、またはエチニル基等が挙げられる。
【0101】
吸着基としてメルカプト基(またはその塩)とは、メルカプト基(またはその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(またはその塩)の置換したヘテロ環基またはアリール基またはアルキル基を表す。ここにヘテロ環基とは、少なくとも5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていても良い。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0102】
吸着基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていても良い。
吸着基としてチオン基とは、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
【0103】
吸着基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、または配位結合で銀イオンに配位し得る、”−S−”基または”−Se−”基または”−Te−”基または”=N−”基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルルアゾール基、ベンゾテルルアゾール基などが挙げられる。
【0104】
吸着基としてスルフィド基またはジスルフィド基とは、”−S−”または”−S−S−”の部分構造を有する基すべてが挙げられる。
【0105】
吸着基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。吸着基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、該水素原子は置換されていてもよい。
上記の吸着基は任意の置換基を有していてもよい。
【0106】
さらに吸着基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書p4〜p7に記載されているものが挙げられる。
【0107】
式(I)中、Aで表される吸着基として好ましいものは、メルカプト置換ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、2−メルカプト−5−アミノチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズイミダゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えばベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)であり、さらに好ましい吸着基は2−メルカプトベンズイミダゾール基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基である。
【0108】
式(I)中、Wは2価の連結基を表す。該連結基は写真性に悪影響を与えないものであればどのようなものでも構わない。例えば炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から構成される2価の連結基が利用できる。具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等)、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン基、ナフチレン基等)、−CO−、−SO2−、−O−、−S−、−NR1−、これらの連結基の組み合わせ等があげられる。ここでR1は水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、アリール基を表わす。
Wで表される連結基は任意の置換基を有していてもよい。
【0109】
式(I)中、Bで表される還元基とは銀イオンを還元可能な基を表し、例えばホルミル基、アミノ基、アセチレン基やプロパルギル基などの3重結合基、メルカプト基、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類(レダクトン誘導体を含む)、アニリン類、フェノール類(クロマン−6−オール類、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−オール類、アミノフェノール類、スルホンアミドフェノール類、およびハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ベンゼントリオール類、ビスフェノール類のようなポリフェノール類を含む)、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類等から水素原子を1つ除去した残基が挙げられる。もちろん、これらは任意の置換基を有していても良い。
【0110】
式(I)中、Bで表される還元基はその酸化電位を、藤嶋昭著「電気化学測定法」(150−208頁、技報堂出版)や日本化学会編著「実験化学講座」第4版(9巻282−344頁、丸善)に記載の測定法を用いて測定することができる。例えば回転ディスクボルタンメトリーの技法で、具体的には試料をメタノール:pH6.5 ブリトン−ロビンソン緩衝液(Britton−Robinson buffer)=10%:90%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、グラッシーカーボン製の回転ディスク電極(RDE)を作用電極に用い、白金線を対極に用い、飽和カロメル電極を参照電極に用いて、25℃、1000回転/分、20mV/秒のスイープ速度で測定できる。得られたボルタモグラムから半波電位(E1/2)を求めることができる。
【0111】
本発明のBで表される還元基は上記測定法で測定した場合、その酸化電位が約−0.3V〜約1.0Vの範囲にあることが好ましい。より好ましくは約−0.1V〜約0.8Vの範囲であり、特に好ましくは約0〜約0.7Vの範囲である。
【0112】
式(I)中、Bで表される還元基は好ましくはヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類、フェノール類、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類から水素原子を1つ除去した残基である。
【0113】
本発明の式(I)の化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマー鎖が組み込まれているものでもよい。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0114】
本発明の式(I)の化合物はビス体、トリス体であっても良い。本発明の式(I)の化合物の分子量は好ましくは100〜10000の間であり、より好ましくは120〜1000の間であり、特に好ましくは150〜500の間である。
【0115】
以下に本発明の式(I)の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0116】
【化18】
【0117】
さらに欧州特許1308776A2号明細書P73〜P87に記載の具体的化合物1〜30、1’’−1〜1’’−77も本発明の吸着基と還元性基を有する化合物の好ましい例として挙げられる。
【0118】
本発明の化合物は公知の方法にならって容易に合成することが出来る。本発明の式(I)の化合物は、一種類の化合物を単独で用いてもよいが、同時に2種以上の化合物を用いることも好ましい。2種類以上の化合物を用いる場合、それらは同一層に添加しても、別層に添加してもよく、またそれぞれ添加方法が異なっていてもよい。
【0119】
本発明の式(I)の化合物は、ハロゲン化銀乳剤層に添加されることが好ましく、乳剤調製時に添加することがより好ましい。乳剤調製時に添加する場合、その工程中のいかなる場合に添加することも可能であり、その例を挙げると、ハロゲン化銀の粒子形成工程、脱塩工程の開始前、脱塩工程、化学熟成の開始前、化学熟成の工程、完成乳剤調製前の工程などを挙げることができる。またこれらの工程中の複数回にわけて添加することもできる。また乳剤層に使用するのが好ましいが、乳剤層とともに隣接する保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。
好ましい添加量は、上述した添加法や添加する化合物種に大きく依存するが、一般には感光性ハロゲン化銀1モル当たり、1×10−6〜1モル、好ましくは1×10−5〜5×10−1モルさらに好ましくは1×10−4〜1×10−1モルである。
【0120】
本発明の式(I)の化合物は、水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することができる。この際、酸または塩基によってpHを適当に調整してもよく、また界面活性剤を共存させてもよい。さらに乳化分散物として高沸点有機溶媒に溶解させて添加することもできる。また、固体分散物として添加することもできる。
【0121】
11)増感色素
本発明に適用できる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。本発明の熱現像感光材料は特に600nm以上900nm以下、または300nm以上500nm以下に分光感度ピークを持つように分光増感されていることが好ましい。増感色素及び添加法については、特開平11−65021号の段落番号0103〜0109、特開平10−186572号一般式(II)で表される化合物、特開平11−119374号の一般式(I) で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236号、同第3,871,887号実施例5に記載の色素、特開平2−96131号、特開昭59−48753号に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行、特願2000−86865号、特願2000−102560号、特願2000−205399号等に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。
【0122】
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀1モル当たり10−6〜1モルが好ましく、さらに好ましくは10−4〜10−1モルである。
【0123】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる。
【0124】
12)ハロゲン化銀の併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0125】
13)ハロゲン化銀と有機銀塩の混合
有機銀塩は、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて、有機酸の少なくとも一部を有機酸のアルカリ金属ソープにした後、水溶性銀塩(例えば硝酸銀)を加えることによって作成されるが、感光性ハロゲン化銀はそのどの段階でも添加することができる。主な混合段階としては、A)有機酸に予めハロゲン化銀を加えておき、アルカリ金属塩を加え、次に水溶性銀塩を添加する、B)有機酸のアルカリ金属ソープを作成後にハロゲン化銀を混合し、その後、水溶性銀塩を添加する、C)有機酸のアルカリ金属ソープを作成し、その一部を銀塩化してからハロゲン化銀を加え、その後に残りの銀塩化を行う、D)有機銀塩を作成した後に、ハロゲン化銀を混合する4工程がある。好ましいのは、B)、またはC)である。
【0126】
B)とC)においては、予め調製された感光性ハロゲン化銀を有機銀塩の調製の過程で混合し、ハロゲン化銀を含む有機銀塩の分散物を調製することが重要である。すなわち感光性ハロゲン化銀は非感光性有機銀塩の存在しないところで形成された後、有機銀塩の調整過程で混合される。有機銀塩に対してハロゲン化剤を添加することによってハロゲン化銀を形成する方法では十分な感度が達成できない場合があるからである。
D)としてハロゲン化銀と有機銀塩を混合する方法としては、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があげられる。いずれの方法でも本発明の効果を好ましく得ることができる。
【0127】
ハロゲン化銀を含む有機銀塩は微粒子に分散して用いることが好ましい。微粒子に分散する手段として、高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、あるいは高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
【0128】
本発明の感光性ハロゲン化銀の粒子は、非感光性有機銀塩の存在しないところで形成され、化学増感されることが特に好ましい。有機銀塩に対してハロゲン化剤を添加することによってハロゲン化銀を形成する方法では十分な感度が達成できない場合があるからである。
ハロゲン化銀と有機銀塩を混合する方法としては、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があげられる。いずれの方法でも本発明の効果を好ましく得ることができる。
【0129】
14)ハロゲン化銀の塗布液への混合
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳”液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0130】
1−2.造核剤
本発明に用いられる造核剤について説明する。
本発明に係る造核剤とは、初期現像の結果、現像生成物との反応で新たに現像を誘発し得る化合物を生成し得る化合物をいう。従来、印刷製版用途に適した超硬調感光材料に造核剤を用いることは知られていた。超硬調感光材料は、平均階調が10以上であり、一般撮影用感光材料としては不適であり、特に高い診断能が要求される医療用途には不適であった。また、超硬調感光材料は、粒状が荒く、鮮鋭度に欠けるため、医療診断用途には全く適性がなかった。本発明に係る造核剤は、従来の超硬調感光材料における造核剤とは効果において全く異なる。本発明に係る造核剤は、階調を硬くするものではない。本発明に係る造核剤は、非感光性有機銀塩に対して感光性ハロゲン化銀粒子数を極めて少なくしても十分に現像を起こさせることができる化合物である。その機構は、明確ではないが、本発明に係る造核剤を用いて熱現像を行うと、最大濃度部で感光性ハロゲン化銀粒子数よりも現像銀粒子数が多いことが明らかになり、本発明に係る造核剤は、ハロゲン化銀粒子が存在しない箇所に新たな現像点(現像核)を形成する作用を有していると推定される。
【0131】
造核剤としては、下記一般式〔H〕で表されるヒドラジン誘導体化合物、下記一般式(G)で表せるビニル化合物、下記一般式(P)で表される4級オニウム化合物、式(A)、式(B)、一般式(C)で表される環状オレフィン化合物等が好ましい例として挙げられる。
【0132】
【化19】
【0133】
【化20】
【0134】
【化21】
【0135】
一般式〔H〕において、式中、A0はそれぞれ置換基を有してもよい脂肪族基、芳香族基、複素環基または−G0−D0基を、B0はブロッキング基を表し、A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基、スルホニル基またはオキザリル基を表す。ここで、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表し、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。好ましいD0としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0136】
一般式〔H〕において、A0で表される脂肪族基は、好ましくは炭素数1〜30のものであり、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基が挙げられ、これらは更に適当な置換基(例えば、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホキシ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アシルアミノ基、ウレイド基等)で置換されていてもよい。
【0137】
一般式〔H〕において、A0で表される芳香族基は、単環または縮合環のアリール基が好ましく、例えばベンゼン環またはナフタレン環が挙げられ、A0で表される複素環基としては、単環または縮合環で窒素、硫黄、酸素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む複素環が好ましく、例えばピロリジン環、イミダゾール環、テトラヒドロフラン環、モルホリン環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チオフェン環、フラン環が挙げられる。A0の芳香族基、複素環基及び−G0−D0基は置換基を有していてもよい。A0として、特に好ましいものはアリール基及び−G0−D0基である。
【0138】
また、一般式〔H〕において、A0は耐拡散基またはハロゲン化銀吸着基を、少なくとも一つ含むことが好ましい。耐拡散基としては、カプラー等の不動性写真用添加剤にて常用されるバラスト基が好ましく、バラスト基としては、写真的に不活性であるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基等が挙げられ、置換基部分の炭素数の合計は8以上であることが好ましい。
【0139】
一般式〔H〕において、ハロゲン化銀吸着促進基としては、チオ尿素、チオウレタン基、メルカプト基、チオエーテル基、チオン基、複素環基、チオアミド複素環基、メルカプト複素環基或いは特開昭64−90439号に記載の吸着基等が挙げられる。
【0140】
一般式〔H〕において、B0はブロッキング基を表し、好ましくは−G0−D0基であり、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表す。好ましいG0としては−CO−基、−COCO−基が挙げられ、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、好ましいD0としては水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基(アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基等)、またはオキザリル基(エトキザリル基等)を表す。
【0141】
一般式〔H〕で表される化合物の具体例としては、特開平2002−131864号の化学式番号12〜化学式番号18のH−1〜H−35の化合物、化学式番号20〜化学式番号26のH−1−1〜H−4−5の化合物が上げられるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
これら本発明の一般式(H−1)〜(H−4)で表される化合物は、公知の方法により容易に合成することができる。例えば、米国特許第5,464,738号、同5,496,695号を参考にして合成することができる。
【0143】
その他に好ましく用いることのできるヒドラジン誘導体は、米国特許第5,545,505号カラム11〜20に記載の化合物H−1〜H−29、米国特許第5,464,738号カラム9〜11に記載の化合物1〜12である。これらのヒドラジン誘導体は公知の方法で合成することができる。
【0144】
一般式(G)について説明する。一般式(G)において、XとRはシスの形で表示してあるが、XとRがトランスの形も一般式(G)に含まれる。この事は具体的化合物の構造表示においても同様である。
【0145】
一般式(G)において、Xは電子求引性基を表し、Wは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、チオオキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基を表す。
【0146】
Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、銀塩等)、アミノ基、アルキルアミノ基、環状アミノ基(例えば、ピロリジノ基)、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環基(5〜6員の含窒素ヘテロ環、例えばベンツトリアゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等)、ウレイド基、スルホンアミド基を表す。XとW、XとRは、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。XとWが形成する環としては、例えばピラゾロン、ピラゾリジノン、シクロペンタンジオン、β−ケトラクトン、β−ケトラクタム等が挙げられる。
【0147】
一般式(G)について更に説明すると、Xの表す電子求引性基とは、置換基定数σpが正の値をとりうる置換基のことである。具体的には、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル等)、置換アルケニル基(シアノビニル等)、置換・未置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル、シアノアセチレニル等)、置換アリール基(シアノフェニル等)、置換・未置換のヘテロ環基(ピリジル、トリアジニル、ベンゾオキサゾリル等)、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ホルミル等)、チオアセチル基(チオアセチル、チオホルミル等)、オキサリル基(メチルオキサリル等)、オキシオキサリル基(エトキサリル等)、チオオキサリル基(エチルチオオキサリル等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル等)、カルボキシル基、チオカルボニル基(エチルチオカルボニル等)、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル等)、チオスルホニル基(エチルチオスルホニル等)、スルファモイル基、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル等)、チオスルフィニル基(メチルチオスルフィニル等)、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基(N−アセチルイミノ等)、N−スルホニルイミノ基(N−メタンスルホニルイミノ等)、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上の置換基が特に好ましい。
【0148】
Wとして表されるアルキル基としては、メチル、エチル、トリフルオロメチル等が、アルケニル基としてはビニル、ハロゲン置換ビニル、シアノビニル等が、アルキニル基としてはアセチレニル、シアノアセチレニル等が、アリール基としてはニトロフェニル、シアノフェニル、ペンタフルオロフェニル等が、ヘテロ環基としてはピリジル、ピリミジル、トリアジニル、スクシンイミド、テトラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾオキサゾリル等が挙げられる。Wとしてはσp値が正の電子求引性基が好ましく、更にはその値が0.30以上のものが好ましい。
【0149】
上記Rの置換基の内、好ましくはヒドロキシル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、更に好ましくはヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、特に好ましくはヒドロキシル基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩が挙げられる。
【0150】
また上記X及びWの置換基の内、置換基中にチオエーテル結合を有するものが好ましい。
【0151】
一般式(G)で表される化合物の具体例としては、特開平2002−131864号の化学式番号27〜化学式番号50の1−1〜92−7が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
一般式(P)において、Qは窒素原子または燐原子を表し、R1、R2、R3及びR4は、各々水素原子または置換基を表し、X−はアニオンを表す。尚、R1〜R4は互いに連結して環を形成してもよい。
【0153】
R1〜R4で表される置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(アリル基、ブテニル基等)、アルキニル基(プロパルギル基、ブチニル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、スルホラニル基等)、アミノ基等が挙げられる。
【0154】
R1〜R4が互いに連結して形成しうる環としては、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、キヌクリジン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
【0155】
R1〜R4で表される基はヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル基、アリール基等の置換基を有してもよい。R1、R2、R3及びR4としては、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0156】
X−が表すアニオンとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等の無機及び有機のアニオンが挙げられる。
【0157】
一般式(P)の構造として、特開平2002−131864号の段落番号0153〜段落番号0163に記載されている構造がさらに好ましい。
【0158】
一般式(P)の具体的な化合物は、特開平2002−131864号の化学式番号53〜化学式番号62のP−1〜P−52、T−1〜T−18が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
上記4級オニウム化合物は公知の方法を参照して合成でき、例えば上記テトラゾリウム化合物はChemical Reviews vol.55 p.335〜483に記載の方法を参考にできる。
【0160】
次に式(A)および(B)で表される化合物について詳しく説明する。式(A)においてZ1は、−Y1−C(=CH−X1)−C(=O)−と共に5員〜7員の環構造を形成しうる非金属原子団を表す。Z1は好ましくは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、および水素原子から選ばれる原子団で、これらの中から選ばれる数個の原子が、互いに単結合ないしは2重結合によって連結されて、−Y1−C(=CH−X1)−C(=O)−と共に5員〜7員の環構造を形成する。Z1は置換基を有していてもよく、またZ1自体が、芳香族もしくは非芳香族の炭素環、或いは芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環の一部であってもよく、この場合、Z1が−Y1−C(=CH−X1)−C(=O)−と共に形成する5員〜7員の環構造は、縮環構造を形成することになる。
【0161】
式(B)においてZ2は、−Y2−C(=CH−X2)−C(Y3)=N−と共に5員〜7員の環構造を形成しうる非金属原子団を表す。Z2は好ましくは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、および水素原子から選ばれる原子団で、これらの中から選ばれる数個の原子が、互いに単結合ないしは2重結合によって連結されて、−Y2−C(=CH−X2)−C(Y3)=N−と共に5員〜7員の環構造を形成する。Z2は置換基を有していてもよく、またZ2自体が、芳香族もしくは非芳香族の炭素環、或いは芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環の一部であってもよく、この場合、Z2が−Y2−C(=CH−X2)−C(Y3)=N−と共に形成する5員〜7員の環構造は、縮環構造を形成することになる。
【0162】
Z1およびZ2が置換基を有する場合、その置換基の例としては、以下に挙げたものの中から選ばれる。即ち、代表的な置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、N−置換の含窒素ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基、スタニル基等が挙げられる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0163】
次にY3について説明する。式(B)においてY3は水素原子または置換基を表すが、Y3が置換基を表すとき、その置換基としては、具体的に以下の基が挙げられる。即ち、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、(アルキル、アリール、もしくはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、もしくはヘテロ環)チオ基等である。これら置換基は任意の置換基で置換されていてもよく、具体的にはZ1またはZ2が有していてもよい置換基の例が挙げられる。
【0164】
式(A)および式(B)において、X1およびX2は、各々ヒドロキシ基(もしくはその塩)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、セチルオキシ基、t−ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、p−t−ペンチルフェノキシ基、p−t−オクチルフェノキシ基等)、ヘテロ環オキシ基(例えばベンゾトリアゾリル−5−オキシ基、ピリジニル−3−オキシ基等)、メルカプト基(もしくはその塩)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、ドデシルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−ドデシルフェニルチオ基等)、ヘテロ環チオ基(例えば1−フェニルテトラゾイル−5−チオ基、2−メチル−1−フェニルトリアゾリル−5−チオ基、メルカプトチアジアゾリルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えばメチルアミノ基、プロピルアミノ基、オクチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(例えばアニリノ基、ナフチルアミノ基、o−メトキシアニリノ基等)、ヘテロ環アミノ基(例えばピリジルアミノ基、ベンゾトリアゾール−5−イルアミノ基等)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド基、オクタノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ドデシルスルホンアミド基等)、またはヘテロ環基を表す。
【0165】
ここでヘテロ環基とは、芳香族または非芳香族の、飽和もしくは不飽和の、単環もしくは縮合環の、置換もしくは無置換のヘテロ環基で、例えば、N−メチルヒダントイル基、N−フェニルヒダントイル基、スクシンイミド基、フタルイミド基、N,N’−ジメチルウラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、インダゾリル基、モルホリノ基、4,4−ジメチル−2,5−ジオキソ−オキサゾリル基等が挙げられる。
【0166】
またここで塩とはアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム)もしくはアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム)の塩、銀塩、あるいはまた4級アンモニウム塩(テトラエチルアンモニウム塩、ジメチルセチルベンジルアンモニウム塩等)、4級ホスホニウム塩等を表す。式(A)および式(B)において、Y1およびY2は−C(=O)−または−SO2−を表す。
【0167】
式(A)および式(B)で表される化合物の好ましい範囲については、特開平11−231459号の段落番号0027〜段落番号0043に記載されている。式(A)および式(B)の具体的化合物例は、特開平11−231459号の表1〜表8の1〜110の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0168】
次に本発明の一般式(C)で表される化合物について詳しく説明する。一般式(C)において、X1は酸素原子、硫黄原子、窒素原子を表す。 X1が窒素原子の場合にはX1とZ1の結合は単結合でも2重結合であってもよく、単結合の場合には窒素原子は水素原子あるいは任意の置換基を有していてもよい。この置換基としては例えばアルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基等が挙げられる。 Y1は−C(=O)−、−C(=S)−、−SO−、−SO2−、−C(=NR3)−、−(R4)C=N−で表される基を表す。Z1はX1,Y1を含む5〜7員環を形成しうる非金属原子団を表す。 その環を形成する原子団は2〜4個の金属原子以外の原子からなる原子団で、これらの原子は単結合あるいは2重結合で結合されていてもよく、これらは水素原子あるいは任意の置換基(例えばアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アミノ基、アルケニル基)を有していてもよい。Z1がX1、Y1を含む5〜7員環を形成するとき、その環は飽和または不飽和のヘテロ環であり、単環であっても縮合環を有していてもよい。この場合の縮合環は、Y1がC(=NR3)、(R4)C=Nで表される基であるとき、R3またはR4がZ1の有する置換基と結合して形成されるものであってもよい。
【0169】
一般式(C)においてR1, R2, R3, R4は、それぞれ水素原子または置換基を表す。ただしR1とR2が互いに結合して環状構造を形成することはない。
【0170】
R1,R2が1価の置換基を表す時、1価の置換基としては、以下の基が挙げられる。
【0171】
例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環(ヘテロ環)基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、水酸基(ヒドロキシ基)またはその塩、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、N−置換の含窒素ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基またはその塩、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスホリル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基、スタニル基等が挙げられる。これら置換基は、これら1価の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0172】
次にR3、R4 が置換基を表す時、置換基としてはハロゲン原子を除いてR1、R2が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。 R3、R4 はさらにZ1と連結して縮合した環を形成していてもよい。
【0173】
次に一般式(C)で表される化合物のうち、好ましいものについて説明する。一般式(C)においてZ1は好ましくはX1、Y1とともに5〜7員環を形成し、2〜4個の炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子から選ばれる原子からなる原子団であり、Z1がX1、Y1とともに形成するヘテロ環は好ましくは総炭素数3〜40の、より好ましくは3〜25の、最も好ましくは3〜20のヘテロ環であり、Z1は好ましくは少なくとも1つの炭素原子を含む。
【0174】
一般式(C)においてY1として好ましくは−C(=O)−,−C(=S)−,−SO2−,−(R4)C=N−であり、特に好ましくは−C(=O)−,−C(=S)−,−SO2−であり、最も好ましくは−C(=O)−である。
【0175】
一般式(C)においてR1、R2が1価の置換基を表す場合には、 R1、R2で表される1価の置換基として好ましくは、総炭素数0〜25の以下の基、すなわちアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、ウレイド基、イミド基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基あるいはその塩、メルカプト基あるいはその塩、または電子求引性の置換基である。ここに電子求引性の置換基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことであり、具体的には、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホンアミド基、イミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)、飽和もしくは不飽和のヘテロ環基、アルケニル基、アルキニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、スルホニルオキシ基、またはこれら電子求引性基で置換されたアリール基等が挙げられる。これらの基は任意の置換基を有していてもよい。
【0176】
一般式(C)においてR1、R2が1価の置換基を表す場合には、さらに好ましくはアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、ウレイド基、イミド基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基あるいはその塩、メルカプト基あるいはその塩等である。一般式(C)においてR1、R2は特に好ましくは、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基あるいはその塩、メルカプト基あるいはその塩等である。一般式(C)において最も好ましくはR1とR2のどちらか一方が水素原子で他方がアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基あるいはその塩、メルカプト基あるいはその塩である。
【0177】
一般式(C)においてR3が置換基を表す場合には、好ましくは総炭素数1〜25のアルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホスルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基等が挙げられる。特に好ましくはアルキル基、アリール基である。
【0178】
一般式(C)においてR4が置換基を表す場合には、好ましくは総炭素数1〜25のアルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホスルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基等が用いられる。特に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基等が挙げられる。Y1がC(R4)=Nを表すとき、X1、Y1の置換した炭素原子と結合するのはY1中の炭素原子である。
【0179】
一般式(C)の具体的な化合物は、特開平11−133546号記載の化学式番号6〜化学式番号18のA−1〜A−230で表されるが、これらの化合物に限定されない。
【0180】
上記造核剤の添加方法は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルセバケートあるいはトリ(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムやオレオイル−N−メチルタウリン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等の界面活性剤を添加して機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。このとき、油滴の粘度や屈折率の調整の目的でαメチルスチレンオリゴマーやポリ(t−ブチルアクリルアミド)等のポリマーを添加することも好ましい。
【0181】
また、固体微粒子分散法としては、造核剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
特に好ましいのは、造核剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0182】
上記造核剤の中で、現像時間が20秒以下という迅速現像で処理される感光材料では、一般式(H)、(P)で表される化合物を使うことが好ましく、特に好ましくは一般式(H)で表される化合物が好ましい。
低カブリが求められる感光材料では一般式(G)、(A)、(B)、(C)で表される化合物を使うことが好ましく、特に好ましくは、一般式(A),(B)で表される化合物である。また、種々の環境条件(温度、湿度)で使われた場合に環境条件に対する写真性能の変化が少ない感光材料には一般式(C)で表される化合物を使うことが好ましい。
上記造核剤の中で好ましい具体的化合物を下記に挙げるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0183】
【化22】
【0184】
【化23】
【0185】
本発明の造核剤は、画像形成層または画像形成層に隣接する層に添加できるが、画像形成層に添加するのが好ましい。造核剤の添加量は有機銀塩1モルに対し10−5〜1モル、好ましくは10−4〜5×10−1モルの範囲である。造核剤は1種類のみを添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0186】
本発明の熱現像感光材料においては、感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層は2層以上あってもよく、2層以上ある場合は、造核剤をいずれの画像形成層に含んでも良い。好ましくは、造核剤を含む画像形成層と造核剤を含まない画像形成層の少なくとも2層の画像形成層を有することが好ましい。
【0187】
1−3.非感光性有機銀塩
本発明に用いる非感光性有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は還元できる銀イオンを供給い得る任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号等に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。有機銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを含む。本発明においては、これら有機銀塩の中でも、ベヘン酸銀含有率30モル%以上90モル%以下の有機酸銀を用いることが好ましい。特にベヘン酸銀含有率は40モル%以上70モル%以下であることが好ましい。残りの有機銀塩としては、長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩、好ましくは炭素数10〜30、特に15〜28の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。
【0188】
有機銀塩の形状としては特に制限はなく、立方体、直方体、棒状、針状、平板状、りん片状でよいが、中でも立方体、直方体、棒状、針状のものが比較的好ましい。立方体、直方体、棒状、針状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短い方からa,b,cとする(a≦b≦c)。立方体粒子とは、0.9≦a/c≦1.0の範囲にある粒子をいう。直方体粒子とは、0.2≦a/c<0.9かつ0.2≦b/c<1.0の範囲の粒子をいう。棒状粒子とは、0.1≦a/c<0.2かつ0.1≦b/c<0.3の範囲にある粒子をいう。針状粒子とは、a/c<0.1かつb/c<0.1の粒子をいう。本発明でより好ましい有機銀塩の形状は、針状若しくは棒状の粒子で、針状粒子が最も好ましい。
【0189】
有機銀塩の粒子サイズが小さいほうが好ましい。これは、ハロゲン化銀写真感光材料分野で銀塩結晶粒子のサイズとその被覆力の間にある反比例の関係はよく知られており、この関係は本発明における熱現像感光材料においても成立し、熱現像感光材料の画像形成部である有機銀塩粒子が大きいと被覆力が小さく、画像濃度が低くなることを意味するためである。有機銀塩の粒子サイズとして具体的には、短軸0.01μm以上0.20μm以下、長軸0.10μm以上5.0μm以下であることが好ましく、短軸0.01μm以上0.15μm以下、長軸0.10μm以上4.0μm以下であることがより好ましい。有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。
【0190】
有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積荷重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積荷重平均直径で割った値の100分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては市販のレーザー光散乱型粒子サイズ測定装置を用いることができる。
【0191】
有機銀塩は、水溶媒で粒子形成され、その後、乾燥、MEK等の溶媒への分散をする事により調製される。乾燥は気流式フラッシュジェットドライヤーにおいて酸素分圧15vol%以下で行うことが好ましく、15vol%以下0.01vol%以上で行うことがより好ましく、10vol%以下0.01vol%以上で行うことがさらに好ましい。
【0192】
有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀塗布量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。
【0193】
1−4.還元剤
本発明の熱現像感光材料は、有機銀塩のための還元剤を含む。該還元剤は、銀イオンを金属銀に還元できる任意の物質(好ましくは有機物)でよい。該還元剤の例は、特開平11―65021号、段落番号0043〜0045や、欧州特許0803764号、p.7、34行〜p.18、12行に記載されている。
【0194】
本発明に用いられる好ましい還元剤は、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤、あるいはビスフェノール系還元剤である。特に次の一般式(R)で表される化合物が好ましい。
【0195】
一般式(R)
【化24】
【0196】
一般式(R)においては、R11およびR11’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1およびX1’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
【0197】
各置換基について詳細に説明する。
1)R11およびR11’
R11およびR11’は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等があげられる。
【0198】
2)R12およびR12’、X1およびX1’
R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
X1およびX1’は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
【0199】
3)L
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。
R13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。
【0200】
アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
【0201】
4)好ましい置換基
R11およびR11’として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11およびR11’としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0202】
R12およびR12’として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
【0203】
X1およびX1’は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0204】
Lは好ましくは−CHR13−基である。
【0205】
R13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。
【0206】
R13が水素原子である場合、R12およびR12’は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
【0207】
R13が炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基である場合、R12およびR12’はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
【0208】
R11、R11’およびR12、R12’とがいずれもメチル基である場合、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合、R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0209】
上記還元剤は、R11、R11’およびR12およびR12’、およびR13の組合せにより、種々の熱現像性能が異なる。2種以上の還元剤を種々の混合比率で併用することによってこれらの熱現像性能を調整することができるので、目的によっては還元剤を2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0210】
以下に本発明の一般式(R)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0211】
【化25】
【0212】
【化26】
【0213】
本発明において還元剤の添加量は0.01g/m2〜5.0g/m2であることが好ましく、0.1g/m2〜3.0g/m2であることがより好ましく、画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5モル%〜50モル%含まれることが好ましく、10モル%〜40モル%で含まれることがさらに好ましい。
【0214】
本発明の還元剤は、有機銀塩、および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層、およびその隣接層に添加することができるが、画像形成層に含有させることがより好ましい。
【0215】
本発明の還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
【0216】
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0217】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。好ましくは、サンドミルを使った分散方法である。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることができる。
【0218】
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜1μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0219】
1−5.ヨウ化銀錯形成剤
本発明において、感光性ハロゲン化銀に由来する紫外可視域の分光吸収強度を熱現像処理により実質的に低下させることのできる化合物を用いることが好ましく、特にヨウ化銀錯形成剤が好ましく用いられる。
該ヨウ化銀錯形成剤は、化合物中の窒素原子又は硫黄原子の少なくとも一つが配位原子(電子供与体:ルイス塩基)として銀イオンに電子供与するルイス酸塩基反応に寄与することが可能である。錯体の安定性は、逐次安定度定数又は全安定度定数で定義されるが、銀イオン、ヨウ化物イオン、及び該銀錯形成剤の3者の組合せに依存する。一般的な指針として、分子内キレート環形成によるキレート効果や、配位子の酸塩基解離定数の増大などの手段によって、大きな安定度定数を得ることが可能である。
【0220】
感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルは、透過法あるいは反射法により測定することができる。熱現像感光材料に添加された他の化合物に由来する吸収が感光性ハロゲン化銀の吸収と重なる場合には、差スペクトルあるいは溶媒による他の化合物の除去などの手段を単独で用いるか組み合わせることにより、感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルを観察できる。
【0221】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤としては、少なくとも一つの窒素原子を含有する5〜7員の複素環化合物が好ましい。置換基としてメルカプト基、スルフィド基、チオン基を有さない化合物であるとき、該含窒素5−7員複素環は飽和であっても不飽和であってもよく、その他の置換基を有していてもよい。また、複素環上の置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
好ましい5−7員複素環化合物の例としては、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、インドリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾイミダゾール、1H−イミダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、ナフチリジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドリン、イソインドリンなどを挙げることができる。更に好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、インドリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾイミダゾール、1H−イミダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、1,8−ナフチリジン、1,10−フェナントロリン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。特に好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、フタラジン、トリアジン、1,8−ナフチリジン又は1,10−フェナントロリンなどを挙げることができる。
【0222】
これらの環は置換基を有していてもよく、該置換基としては写真性に対して悪影響を及ぼさないものであれば、どのような置換基でも良い。好ましい例として、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基又はその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基若しくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシ若しくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,又はヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシ若しくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキル若しくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキル又はアリール)スルホニル基、(アルキル又はアリール)スルフィニル基、スルホ基又はその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基又はその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。なおここで活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また塩とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンや、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンを意味する。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
これら複素環には他の環が更に縮合していても良い。また、置換基がアニオン基(例えば、−CO2 −、−SO3 −、−S−など)の場合、含窒素複素環は陽イオン(例えば、ピリジニウム、1,2,4−トリアゾリウムなど)となって分子内塩を形成していても良い。
【0223】
複素環化合物がピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、フタラジン、トリアジン、ナフチリジン又はフェナントロリン誘導体であるとき、該化合物の酸解離平衡における含窒素複素環部分の共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中25℃での酸解離定数(pKa)は3ないし8であることが更に好ましい。より好ましくは、pKaが4ないし7である。
このような複素環化合物としては、ピリジン、ピリダジン又はフタラジン誘導体であることが好ましく、ピリジン又はフタラジン誘導体であることが特に好ましい。
【0224】
これらの複素環化合物が置換基としてメルカプト基、スルフィド基、チオン基を有する場合、ピリジン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール、チアジアゾール又はオキサジアゾール誘導体であることが好ましく、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール誘導体であることが特に好ましい。
【0225】
例えば、該ヨウ化銀錯形成剤として、下記一般式(1)若しくは一般式(2)で表される化合物を利用することができる。
【0226】
【化27】
【0227】
一般式(1)において、R11及びR12は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、R21及びR22は水素原子又は置換基を表す。ただし、R11とR12とがともに水素原子であること、R21とR22とがともに水素原子であることはない。ここでいう置換基としては前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。
【0228】
また、下記一般式(3)で表される化合物も好ましく利用できる。
【0229】
一般式(3)
【化28】
【0230】
一般式(3)において、R31−R35は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R31−R35で表される置換基としては前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。一般式(3)で表される化合物が置換基を有する場合、好ましい置換位置は、R32−R34である。R31−R35は互いに結合して、飽和又は不飽和の環を形成していてもよい。好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、(アルコキシ若しくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基等である。
【0231】
一般式(3)で表される化合物は、ピリジン環部分の共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることが好ましく、4ないし7であることが特に好ましい。
【0232】
さらに一般式(4)で表される化合物も好ましい。
【0233】
一般式(4)
【化29】
【0234】
一般式(4)において、R41−R44は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R41−R44は互いに結合して、飽和又は不飽和の環を形成していてもよい。R41−R44で表される置換基としては前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。好ましい基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基並びにベンゾ縮環によるフタラジン環の形成が挙げられる。一般式(4)で表される化合物の窒素原子の隣接炭素にヒドロキシル基が置換した場合には、ピリダジノンとの間に平衡が存在する。
【0235】
一般式(4)で表される化合物は、下記一般式(5)で表されるフタラジン環を形成していることが更に好ましく、このフタラジン環は更に、少なくとも一つの置換基を有していていることが特に好ましい。一般式(5)におけるR51−R56の例としては、前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。更に好ましい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。
【0236】
【化30】
【0237】
また、下記一般式(6)で表される化合物も好ましい形態である。
【0238】
【化31】
【0239】
一般式(6)において、R61−R63は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R62で表される置換基の例としては、前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。
【0240】
好ましく用いられる化合物として下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0241】
【化32】
【0242】
一般式(7)において、R71−R72は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Lは2価の連結基を表す。nは0又は1を表す。R71−R72で表される置換基としては、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基並びにこれらを含有する複合置換基などが例として挙げられる。Lで表される2価の連結基は、好ましくは1ないし6原子分、さらに好ましくは1ないし3原子分の長さの連結基であり、更に置換基を有していてもよい。
【0243】
好ましく用いられる化合物のさらに一つは一般式(8)で表される化合物である。
【0244】
【化33】
【0245】
一般式(8)において、R81−R84は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R81−R84で表される置換基としては、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基などが例として挙げられる。
【0246】
上記ヨウ化銀錯形成剤の中で更に好ましいものは、一般式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)で表される化合物であり、一般式(3)、(5)で表される化合物が特に好ましい。
【0247】
以下に、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0248】
【化34】
【0249】
【化35】
【0250】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、従来知られている色調剤の機能を果たす場合は、色調剤と共通の化合物であることもできる。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、色調剤とともに併用して用いることができる。また、2種以上のヨウ化銀錯形成剤を併用しても良い。
【0251】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、固体状態で膜中に存在させるなど、感光性ハロゲン化銀とは分離した状態で膜中に存在せしめることが好ましい。隣接層に添加することも好ましい。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、熱現像温度に加熱された時に融解するように化合物の融点を適切な範囲に調整することが好ましい。
【0252】
本発明において、熱現像後の感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルの吸収強度が熱現像前と比較して80%以下となることが好ましく、40%以下となることが更に好ましく、10%以下となることが特に好ましい。
【0253】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0254】
また、固体微粒子分散法としては、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作製する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm以上1000ppm以下の範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は固体分散物として使用することが好ましい。
【0255】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、感光性ハロゲン化銀に対して、1モル%以上5000モル%以下の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%以上1000モル%以下の範囲で、更に好ましくは50モル%以上300モル%以下の範囲である。
【0256】
1−6.フタル酸、およびその誘導体
本発明においてはヨウ化銀錯形成剤とともに、フタル酸、およびその誘導体より選ばれる化合物を含有するのが好ましい。本発明に用いられるフタル酸、およびその誘導体としては、下記の一般式(PH)で表される化合物が好ましい。
【0257】
【化36】
【0258】
式中、Tはハロゲン原子(フッ素、臭素、ヨウド)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基を表し、kは0〜4の整数を表す。kが2以上の時、複数のkは互いに同一であっても異なっても良い。kは0〜2が好ましく、0,1がより好ましい。
【0259】
一般式(PH)の化合物は、酸のままで用いても良いし、あるいは塗布液への添加の容易性、pHの調整の点から適当な塩にして用いても良い。塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩などを用いることができる。好ましいのは、アルカリ金属塩(Li,Na,Kなど)、アンモニウム塩である。
【0260】
以下に、本発明に用いられるフタル酸、およびその誘導体の具体例を挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0261】
【化37】
【0262】
本発明においては、フタル酸、およびその誘導体は塗布される銀1モル当たり、1.0×10−4モル〜1モル、好ましくは1.0×10−3モル〜0.5モル、より好ましくは2.0×10−3モル〜0.2モルである。
【0263】
1−7.現像促進剤
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤を添加することができる。添加する場合に好ましい現像促進剤は、特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号明細書や特開平11−15116号明細書等に記載の一般式(I)、特開2002−156727号の一般式(D)や特願2001−074278号明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物である。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられ、有機溶媒に溶解して添加するのが好ましい。
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−156727号明細書に記載の一般式(D)で表されるヒドラジン系の化合物および特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物がより好ましい。
【0264】
本発明の特に好ましい現像促進剤は下記一般式(A−1)および(A−2)で表される化合物である。
一般式(A−1)
Q1−NHNH−Q2
(式中、Q1は炭素原子で−NHNH−Q2と結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Q2はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。)
【0265】
一般式(A−1)において、Q1で表される芳香族基またはヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
【0266】
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、およびアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、およびアシルオキシ基を挙げることができる。
【0267】
Q2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチルカルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、N−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
【0268】
Q2で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Q2で表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0269】
Q2で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Q2で表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
【0270】
Q2で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、N−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0271】
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Q1としては5〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、およびこれらの環がベンゼン環もしくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
【0272】
一般式(A−2)
【0273】
【化38】
【0274】
一般式(A−2)においてR1はアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基を表す。R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、炭酸エステル基を表す。R3、R4はそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。R3とR4は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
R1は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンソイルアミノ基、メチルウレイド基、4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。
R2は好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
R3は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。R4は水素原子、アルキル基、アシルアミノ基が好ましく、アルキル基またはアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はR1と同様である。R4がアシルアミノ基である場合R4はR3と連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
【0275】
一般式(A−2)においてR3とR4が互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、R1はカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。R2はアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0276】
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0277】
【化39】
【0278】
1−8.水素結合性化合物
本発明では、還元剤の芳香族性の水酸基(−OH)、あるいはアミノ基を有する場合はアミノ基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
【0279】
水素結合を形成しうる基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
【0280】
本発明で、特に好ましい水素結合性化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
【0281】
一般式(D)
【化40】
【0282】
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0283】
R21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
【0284】
R21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などがあげられる。
【0285】
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
【0286】
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0287】
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0288】
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0289】
R21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
【0290】
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0291】
【化41】
【0292】
【化42】
【0293】
水素結合性化合物の具体例は上述の他に特願2000−192191号、同2000−194811号に記載のものがあげられる。
【0294】
本発明の水素結合性化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができる。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基を有する化合物と水素結合による錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(A)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
【0295】
このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明の水素結合性化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
【0296】
本発明の水素結合性化合物は還元剤に対して、1モル%〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは30モル%〜100モル%の範囲である。
【0297】
1−9.バインダー
本発明に用いられるバインダーは、天然または合成樹脂、例えば、ゼラチン、ポリピニノレブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、セルロースアセテート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ブチルエチルセルロース、メタクリレートコポリマー、無水マレイン酸エステルコポリマー、ポリスチレン及びブタジエン−スチレンコポリマーなどから任意のもの使用することができる。特に、画像形成層では、バインダーとしてポリビニルブチラールを含むことが好ましく、具体的にはバインダーとしてポリビニルブチラールを画像形成層のバインダー全組成分に対して50質量%以上使用することである。当然ながら、コポリマー及びターポリマーも含まれる。ポリビニルブチラールの好ましい総量は画像形成層のバインダー全組成分に対して50質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上100質量%以下である。バインダーのTgは40〜90℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは50〜80℃である。ここでTgとはガラス転移温度である。
【0298】
バインダー総量は、例えば、画像形成層の成分をその層中に保持するのに十分な量で使用される。すなわち、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で使用される。効果的な範囲は、当業者が適切に決定することができる。少なくとも有機銀塩を保持する場合の目安として、バインダーと有機銀塩との割合は質量比で15:1〜1:3、特に8:1〜1:2の範囲が好ましい。
【0299】
1−10.かぶり防止剤
1)有機ポリハロゲン化合物
本発明はカブリ防止剤として下記一般式(H)で表される化合物を含有するのが好ましい。
【0300】
一般式(H) Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
【0301】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1およびZ2はハロゲン原子を表し、Xは水素原子または電子求引性基を表す。
【0302】
Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216 等を参考にすることができる。
【0303】
このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロメチル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値:0.23))、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、ホスホリル基等があげられる。
σp値としては好ましくは0.2〜2.0の範囲で、より好ましくは0.4から1.0の範囲である。
【0304】
電子求引性基として好ましいのは、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基、カルボキシル基、アルキルまたはアリールカルボニル基、およびアリールスルホニル基であり、特に好ましくはカルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基であり、カルバモイル基が最も好ましい。
【0305】
Xは、好ましくは電子求引性基であり、より好ましくはハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。
ハロゲン原子の中でも、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
【0306】
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−または−SO2 −を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2 −であり、特に好ましくは−SO2 −である。nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0307】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0308】
【化43】
【0309】
【化44】
【0310】
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モル当たり、10−4モル〜0.8モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10−3モル〜0.1モルの範囲で、さらに好ましくは5×10−3モル〜0.05モルの範囲で使用することが好ましい。
特に、本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀を用いた場合、十分なかぶり防止効果を得るためにはこの一般式(H)の化合物の添加量は重要であり、5×10−3モル〜0.03モルの範囲で使用することが最も好ましい。
【0311】
本発明において、一般式(H)で表される化合物を感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられる。
【0312】
一般式(H)で表される化合物の融点は200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは170℃以下がよい。
【0313】
本発明に用いられるその他の有機ポリハロゲン化物として、特開平11−65021号の段落番号0111〜0112に記載の特許に開示されているものが挙げられる。特に特願平11−87297号の式(P)で表される有機ハロゲン化合物、特開平10−339934号の一般式(II)で表される有機ポリハロゲン化合物、特願平11−205330号に記載の有機ポリハロゲン化合物が好ましい。
【0314】
2)その他のかぶり防止剤
その他のカブリ防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0315】
本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体特開平10−62899号の段落番号0070、欧州特許0803764A1号の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9−281637号、同9−329864号記載の化合物が挙げられる。
【0316】
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。
【0317】
アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。
【0318】
本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10−6モル以上2モル以下が好ましく、1×10−3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0319】
1−11.その他の添加剤
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行、特願平11−273670号等に記載されている。中でもメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0320】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許0803764A1号のp.21,23行〜48行、特開2000−356317号や特願2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロー1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)の組み合わせ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフタラジン、6−クロロフタラジン、5.7−ジメトキシフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジン)が好ましく、特に、ヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀との組み合わせにおいては、フタラジン類とフタル酸類の組み合わせが好ましい。
【0321】
好ましいフタラジン類の添加量としては、有機銀塩1モル当たり0.01モル〜0.3モルであり、さらに好ましくは0.02〜0.2モル、特に好ましくは0.02〜0.1モルである。この添加量は、本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀乳剤で課題である現像促進にとって重要な要因であり、適正な添加量の選択によって十分な現像性と低いかぶりの両立が可能となる。
【0322】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の感光性層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
【0323】
4)染料、顔料
本発明の感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。
【0324】
5)造核促進剤
本発明の造核剤とともに造核促進剤を用いることが出来る。造核促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
【0325】
造核促進剤としては、五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0326】
1−12.塗布液の調製
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0327】
2.層構成、その他の構成成分
【0328】
本発明の熱現像感光材料は、支持体の片面にのみ画像形成層を有する「片面型」であっても、両面に画像形成層を有する両面型であっても良い。
(両面型熱現像感光材料)
本発明の熱現像感光材料は、X線増感スクリーンを用いてX線画像を記録する画像形成方法に好ましく用いることができる。
該画像形成方法は、X線増感スクリーンの主発光ピーク波長と同一の波長を有し、かつ半値幅が15±5nmである単色光で露光し、熱現像処理した後、露光面とは逆側の画像形成層を除去して得られる画像の濃度が最低濃度に0.5を加えた濃度となるのに必要な露光量が、0.005ルクス・秒以上0.07ルクス・秒以下である熱現像感光材料を用いることが好ましい。
これらの熱現像感光材料を用いて画像形成する工程は以下の工程よりなる。
(a)該熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、
(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、
(c)該被検体にエネルギーレベルが25kVp〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、
(d)該熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、
(e)取り出した該熱現像感光材料を90℃〜180℃の範囲の温度で加熱する工程。
【0329】
本発明における組立体において使用する熱現像感光材料は、X線によって階段露光し、熱現像して得られる画像が、光学濃度(D)及び露光量(logE)の座標軸単位長の等しい直交座標上の特性曲線において、最小濃度(Dmin )+濃度0.1の点と最小濃度(Dmin )+濃度0.5の点とで作る平均ガンマ(γ)が0.5〜0.9であり、そして最小濃度(Dmin )+濃度1.2の点と最小濃度(Dmin )+濃度1.6の点とで作る平均ガンマ(γ)が3.2〜4.0である特性曲線を有するように調製されていることが好ましい。本発明のX線撮影系において、このような特性曲線を有する熱現像感光材料を用いると、脚部が非常に延びていて、かつ中濃度部ではガンマの高いといった優れた写真特性のX線画像が得られる。この写真特性により、X線透過量の少ない縦隔部、心陰影等の低濃度域の描写性が良好になり、かつX線透過量の多い肺野部の画像においても視覚し易い濃度となり、またコントラストも良好になるとの利点がある。
【0330】
上記のような好ましい特性曲線を有する熱現像感光材料は、たとえば、両側の画像形成層のそれぞれを、互いに異なった感度を持つ二層以上のハロゲン化銀画像形成層から構成するような方法で容易に製造することができる。特に、上層には高感度の乳剤を用い、下層には低感度で硬調な写真特性を有する乳剤を用いて、画像形成層を形成することが好ましい。このような二層からなる画像形成層を用いる場合における各層間のハロゲン化銀乳剤の感度差は1.5倍以上20倍以下、好ましくは2倍以上15倍以下である。なお、それぞれの層の形成に用いられる乳剤の量の比率は、用いられる乳剤の感度差およびカバリングパワーにより異なる。一般には、感度差が大きい程、高感度側の乳剤の使用比率を下げる。たとえば、感度差が2倍であるときの好ましい各乳剤の使用比率は、カバリングパワーがほぼ等しい場合には、銀量換算で、高感度乳剤対低感度乳剤として1:20以上1:50以下の範囲の値となるように調整される。
【0331】
本発明の熱現像感光材料の製造に利用される乳剤増感法や各種添加剤、構成材料等に関しては特に制限はなく、たとえば、特開平2−68539号公報、特開平2−103037号公報、および特開平2−115837号公報に記載の各種の技術を利用することができる。
【0332】
クロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平2−68539号公報、第13頁左下欄1行目から同第14頁左下欄9行 目に記載の染料もしくは染料と媒染剤を用いることができる。
【0333】
次に、本発明の蛍光増感紙(放射線増感スクリーン)について説明する。放射線増感スクリーンは、基本構造として、支持体と、その片面に形成された蛍光体層とからなる。蛍光体層は、蛍光体が結合剤(バインダ)中に分散されてなる層である。なお、この蛍光体層の支持体とは反対側の表面(支持体に面していない側の表面)には一般に、透明な保護膜が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0334】
本発明において、好ましい蛍光体としては、以下に示すものが挙げられる。
タングステン酸塩系蛍光体(CaWO4、MgWO4、CaWO4:Pb等)、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体〔Y2O2S:Tb、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、(Y,Gd)2O2S:Tb、(Y,Gd)O2S:Tb,Tm等〕、テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体(YPO4:Tb、GdPO4:Tb、LaPO4:Tb等)、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tb、LaOBr:Tb,Tm、LaOCl:Tb、LaOCl:Tb,Tm、LaOBr:Tb、GdOBr:Tb、GdOCl:Tb等)、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tm、LaOCl:Tm等)、硫酸バリウム系蛍光体〔BaSO4:Pb、BaSO4:Eu2+、(Ba,Sr)SO4:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属燐酸塩系蛍光体〔(Ba2PO4)2:Eu2+、(Ba2PO4)2:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体〔BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、BaFCl:Eu2+,Tb、BaFBr:Eu2+,Tb、BaF2・BaCl・KCl:Eu2+、(Ba,Mg)F2・BaCl・KCl:Eu2+等〕、沃化物系蛍光体(CsI:Na、CsI:Tl、NaI、KI:Tl等)、硫化物系蛍光体〔ZnS:Ag(Zn,Cd)S:Ag、(Zn,Cd)S:Cu、(Zn,Cd)S:Cu,Al等〕、燐酸ハフニウム系蛍光体(HfP2O7:Cu等)、但し本発明に用いられる蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線の照射によって可視又は近紫外領域の発光を示す蛍光体であれば使用できる。
【0335】
本発明で用いる蛍光増感紙は、傾斜粒径構造で蛍光体を充填することが好ましい。特に表面保護層側に大粒径の蛍光体粒子を塗布し、支持体側に小粒径の蛍光体粒子を塗布することが好ましく、小粒径のものは0.5μm〜2.0μmで、大粒径のものは10μm〜30μmの範囲が好ましい。
【0336】
(片面型熱現像感光材料)
本発明における片面型熱現像感光材料は、特に乳房撮影用X線感光材料として用いるのが好ましい。
本目的に用いられる片面型熱現像感光材料は、得られる画像のコントラストを適切な範囲に設計することがが重要である。
【0337】
本発明における熱現像感光材料の特性曲線を求める方法について説明する。乳房撮影においては、通常低圧X線を発するMoターゲット管で露光するが、実質的にGd2 O2 S:Tbからなる蛍光体を用いた増感スクリーンを用いる場合に限り、タングステン・ターゲット管から生じたX線を線源にして距離法によりX線露光量を変化させる方法で特性曲線を求めても実質的に変わらない。
【0338】
具体的に本発明の測定には、三相の電力供給で50KVpで運転されるタングステン・ターゲット管から生じたX線を、厚み3mmのアルミニウム板を透過させたものを用いた。市販のUM−Fineスクリーンと測定する感材を密着させ、富士写真フィルム(株)社製ECMAカセッテに装填した。X線管球から順番に、カセッテ天板、フィルム、スクリーンとなるように配置してX線照射を行った。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.15の幅でステップ露光した。
【0339】
露光後のフィルムは、定められた条件で熱現像される。その後濃度を測定し、照射線露光量の対数を横軸にし、縦軸に光学濃度をとり特性曲線を得る。コントラストは、カブリ+0.25とカブリ+2.0の濃度点を結ぶ直線の傾き(横軸とのなす角をθとして、tan θ)から求められる。
【0340】
次に、感光材料の感度の測定法について説明する。光源としては、用いられるX線増感スクリーンの主発光ピーク波長と同一の波長の単色光が用いられる。このような必要な単色光を得る方法としては干渉フィルターを組合せたフィルター系を用いる方法が利用できる。この方法によれば、干渉フィルターの組合せにも依存するが、通常、必要な露光量を持ち、かつ半値幅が15±5nmの単色光を容易に得ることができる。
【0341】
予め更正された照度計にて正しく照度が測定されているこの単色光を光源として、ニュートラルフィルターのステップウェッジを通して1秒間、1m離れた感光材料を露光する。熱現像処理後、濃度を測定し、カブリ+濃度0.5が得られる露光量を求めることで感光材料の感度がもとまり、ルクス秒で現すことができる。
【0342】
本発明における乳房撮影用熱現像感光材料の感度は、0.01ルクス・秒〜0.07ルクス・秒であることが好ましい。本発明における乳房撮影用熱現像感光材料のコントラストは、3.0〜5.0であることが好ましい。
【0343】
以下に本発明で用いられる乳房撮影用増感スクリーンに関して、詳しく説明する。本発明の目的である乳房撮影用写真組体のX線増感スクリーンは、胸部診断用などと比べて高解像度を必要とされる。よって一般に市販されている乳房撮影用のX線増感スクリーンはその蛍光体層を着色することによってその解像度を上げている。しかしながらこのような着色はX線入射面に対し奥の蛍光体により吸収されたX線による発光光を有効に取り出すことができない。本発明のX線増感スクリーンは実質的に蛍光体層を着色することなく、さらに十分にX線を吸収できるだけの蛍光体を塗布したうえで、必要な高鮮鋭度を得るスクリーンを提供することが必要である。
【0344】
このようなスクリーンの目標を達成するためにはその蛍光体の粒子サイズが一定サイズ以下であることが好ましい。蛍光体のサイズの測定法方はコールターカウンター法、電子顕微鏡による観察などにより測定することができる。その蛍光体サイズの球相当直径平均は1μm以上5μm以下であることが好ましい。より好ましくは1μm以上4μm以下である。従来のような蛍光体層を染色する乳房撮影用スクリーンにおいてはこれは重要ではないが、本発明においては重要である。
【0345】
またこのようなスクリーンにおいて鮮鋭度を上げるためには蛍光体層のバインダーと蛍光体の重量比において、よりバインダーが少ない方が好ましい。バインダー/蛍光体の重量比は1/50以上1/20以下であることが好ましく、さらには1/50以上1/25以下であることが好ましい。
【0346】
バインダーとしては特開平6−75097号公報の第4頁右欄45行目から同5頁左欄10行目に記載の公知の物を使用することが出来るが、軟化温度または融点が30℃〜150℃の熱可塑性エストラマーを単独、あるいは他のバインダーポリマーと共に用いることが好ましい。特に本発明のように鮮鋭度をあげるためにバインダーの少ないスクリーンでは、そのスクリーンの耐久性は悪化するので、これに耐えうるバインダーを選択することは重要である。この解決策としては、十分に柔軟性のあるバインダーを選択することが好ましい。また蛍光体層内に可塑剤等を添加することも好ましく用いられる。熱可塑性エラストマーの例としては、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル、天然ゴム、フッ素ゴム、ポリイソプレン、塩素化ポリエチレン、スチレンーブタジエンゴム、シリコンゴムなどを挙げることができる。これらのうち、特にポリウレタンが好ましい。また蛍光体層の下塗りのバインダーの選択も重要である。アクリル系バインダーが好ましく用いられる。
【0347】
またスクリーンは耐傷性・耐汚染性の許す範囲で、その表面保護層が薄いことも好ましい。その表面保護層の厚みは2μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0348】
表面保護層の素材はPET(特に延伸タイプ)、PEN、ナイロン等のフィルムを張り合わせることが出来る。またフッ素系樹脂を溶剤に溶かして塗布することによって表面保護膜を形成することも汚れ防止の観点から好ましく用いられる。好ましいフッ素樹脂の態様については、特開平6−75097号公報の第6頁左欄4行目から同右欄43行目に詳しい。またこの様に溶剤塗布型で表面保護層を形成できる樹脂としては、フッ素樹脂の他にポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0349】
また蛍光体の充填率が十分に高いことも、高感度でかつ高鮮鋭度のスクリーンを得るためには重要である。具体的には蛍光体の体積充填率が60%以上80%以下であることが好ましい。さらに好ましくは65%以上80%以下である。ここで本発明のような微粒子の蛍光体で体積充填率を高く保つためには特開平6−75097号公報の第4頁右欄29行目から同第6頁左欄1行目に記載の蛍光体層を圧縮処理する工程が好ましく用いられる。
【0350】
また、本発明に使用される蛍光体は実質的にGd2 O2 S:Tbであることが好ましい。ここで、実質的にとは、蛍光体の主成分がGd2 O2 S:Tbであるという意味であり、その性能を向上させるための数%程度の添加物や、表面を修飾するためのシリカ等は好ましく用いることができる。またGdに代わりに数十%程度以内の割合でY、La、Luを混用することも可能である。
【0351】
一般に蛍光体はその密度が重いことがX線を有効に吸収するため好ましい。乳房撮影用に用いられる線源において好ましいX線吸収能をしめすこの様な蛍光体としては、Gd2 O2 S:Tbの他に、YTaO4 及びそれに発光中心として各種付活剤を加えたもの、CaWO4 、BaFBr:Eu等が挙げられる。
【0352】
(紫外蛍光スクリーンとの組合せ)
本発明の熱現像感光材料を用いた画像形成方法としては、好ましくは400nm以下に主ピークを持つ蛍光体との組み合わせで画像形成する方法を用いることができる。さらに好ましくは380nm以下に主ピークを持つ蛍光体と組み合わせて画像形成する方法が良い。両面感材、片面感材のいずれでも組立て体として用いることができる。400nm以下に主発光ピークであるスクリーンは特開平6−11804号、WO93/01521号に記載のスクリーンなどが使われるがこれに限られるものではない。紫外線のクロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平8−76307号公報に記載の技術を用いることができる。紫外線吸収染料としては、特願2000−320809号に記載の染料は特に好ましい。
【0353】
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0354】
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)または(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)または(d)の層として感光材料に設けられる。
【0355】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特願2000−171936号に記載されている。
【0356】
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。
【0357】
PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。
【0358】
保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3g/m2〜4.0g/m2が好ましく、0.3g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
【0359】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3g/m2〜5.0g/m2が好ましく、0.3g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
【0360】
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を感光性層に対して露光光源から遠い側に設けることができる。アンチハレーション層については特開平11−65021号段落番号0123〜0124、特開平11−223898号、同9−230531号、同10−36695号、同10−104779号、同11−231457号、同11−352625号、同11−352626号等に記載されている。
【0361】
アンチハレーション層には、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有する。露光波長が赤外域にある場合には赤外線吸収染料を用いればよく、その場合には可視域に吸収を有しない染料が好ましい。
【0362】
可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11−231457号等に記載されている。
【0363】
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用する。光学濃度は、0.2〜2であることが好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001g/m2〜1g/m2程度である。
【0364】
なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
【0365】
このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626号に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0366】
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11−65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
【0367】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458号、同63−104046号、同63−103235号、同63−208846号、同63−306436号、同63−314535号、特開平01−61745号、特願平11−276751号などに記載されている。このような着色剤は、通常、0.1mg/m2〜1g/m2の範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
【0368】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を表面保護層、およびバック層に添加することが好ましい。マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。
マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1mg/m2〜400mg/m2、より好ましくは5mg/m2〜300mg/m2である。
【0369】
また、画像形成層面のマット度は、画像部に小さな白抜けが生じ、光漏れが発生するいわゆる星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0370】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0371】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0372】
5)ポリマーラテックス
本発明の表面保護層やバック層にポリマーラテックスを添加することができる。
このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%) /ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。
【0373】
ポリマーラテックスは、表面保護層、あるいはバック層の全バインダー(水溶性ポリマーおよびラテックスポリマーを含む)の10質量%〜90質量%用いるのが好ましく、特に20質量%〜80質量%が好ましい。
【0374】
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。
【0375】
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11−87297号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0376】
7)硬膜剤
本発明の画像形成層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James著”THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION”(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0377】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0378】
具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳”液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0379】
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132に記載されている。
本発明ではフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の好ましい具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載されている化合物が挙げられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明においては、特願2000−206560号記載のフッ素系界面活性剤の使用が特に好ましい。
【0380】
9)帯電防止剤
また、本発明では、公知の種々の金属酸化物あるいは導電性ポリマーなどを含む帯電防止層を有しても良い。帯電防止層は前述の下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねても良く、また別途設けてもよい。帯電防止層については、特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載の技術を適用することができる。
【0381】
10)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0382】
紫外発光スクリーンと組合せて用いられる熱現感光材料の支持体としては、PENを好ましく用いることができる。ただしこれに限定されるものではない。PENとしてはポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。本発明にいうポリエチレン−2,6−ナフタレートとは、その繰返し構造単位が実質的にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位から構成されるものであればよく、共重合されないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのみならず繰返し構造単位の数の10%以下、好ましくは5%以下が他の成分で変性されたような共重合体、及び他のポリマーとの混合物、組成物を含むものである。
【0383】
ポリエチレン−2,6−ナフタレートはナフタリン−2,6−ジカルボン酸、またはその機能的誘導体、およびエチレングリコールまたはその機能的誘導体とを触媒の存在下で適当な反応条件の下に結合せしめることによって合成されるが、本発明にいうポリエチレン−2,6−ナフタレートには、このポリエチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に適当な1種又は2種以上の第三成分(変性剤)を添加し共重合または混合ポリエステルとしたものであってもよい。適当な第三成分としては、2価のエステル形成官能基を有する化合物、例えばシュウ酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、コハク酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等のジカルボン酸、またはその低級アルキルエステル、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸、またはその低級アルキルエステル、あるいはプロピレングリコール、トリメチレングリコールの如き2価アルコール類等の化合物があげられる。ポリエチレン−2,6−ナフタレートまたはその変性重合体は、例えば安息香酸、ベンゾイル安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの1官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基を封鎖したものであってもよく、あるいは、例えば極く少量のグリセリン、ペンタエリスリトールの如き3官能、4官能エステル形成化合物で実質的に線状の共重合体が得られる範囲内で変性されたものでもよい。」
【0384】
医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。
具体的な支持体の例は、特開平11−65021同号段落番号0134に記載されている。
【0385】
支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。
【0386】
11)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。特開平11−65021号段落番号0133の記載の溶剤を添加しても良い。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
【0387】
12)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを 含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著”LIQUID FILM COATING”(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはエクストルージョンコーティングが用いられる。
【0388】
13)包装材料
本発明の熱現像感光材料は、使用される前の保存時に写真性能の変質を防ぐため、あるいはロール状態の製品形態の場合にはカールしたり巻き癖が付くのを防ぐために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で密閉包装するのが好ましい。酸素透過率は、25℃で50ml/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1.0ml/atm/m2・day以下である。水分透過率は、10g/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1g/atm/m2・day以下である。酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば特開平8−254793号、特開2000−206653号に記載されているものを利用することができる。
【0389】
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特願2000−187298号、同2000−10229号、同2000−47345号、同2000−206642号、同2000−98530号、同2000−98531号、同2000−112059号、同2000−112060号、同2000−112104号、同2000−112064号、同2000−171936号も挙げられる。
【0390】
15)カラー画像形成
多色カラー熱現像感光材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
多色カラー熱現像感光材料の場合、各画像形成層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
【0391】
3.画像形成方法
3−1.露光
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明のようにヨウ化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤は、従来はその感度が低くて問題であった。しかし、レーザー光のような高照度で書き込むことで低感度の問題も解消され、しかもより少ないエネルギーで画像記録できることがわかった。このような強い光で短時間に書き込むことによって目標の感度を達成することができる。
【0392】
特に最高濃度(Dmax)を出すような露光量を与える場合、感光材料表面の好ましい光量は0.1W/mm2〜100W/mm2である。より好ましくは0.5W/mm2〜50W/mm2であり、最も好ましくは1W/mm2〜50W/mm2である。
【0393】
本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+,He−Ne,He−Cd)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。好ましく用いられるレーザーは、熱現像感光材料の分光増感色素などの光吸収ピーク波長に対応して決まるが、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr+,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーである。 近年、特に、SHG(Second Hermonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。レーザー光のピーク波長は、青色の300nm〜500nm、好ましくは400nm〜500nm、赤〜近赤外の600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。
【0394】
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0395】
3−2.熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80℃〜250℃であり、さらに好ましくは100℃〜140℃である。
現像時間としては1秒〜60秒が好ましく、5秒〜30秒がさらに好ましく、5秒〜20秒が特に好ましい。
【0396】
熱現像の方式としてはプレートヒーター方式が好ましい。プレートヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1℃〜10℃程度温度を下げることが好ましい。
【0397】
このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を押さえることもできる。
【0398】
3−3.システム
露光部および熱現像部を備えた医療用レーザーイメージャーとして富士メディカルドライイメージャー−FM−DPLやDRYPIX7000を挙げることができる。該システムは、Fuji Medical Review No.8,page39〜55に記載されており、それらの技術を利用することができる。また、DICOM規格に適合したネットワークシステムとして富士メディカル(株)が提案した「AD network」の中のレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0399】
4.本発明の用途
本発明の熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0400】
【実施例】
【0401】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0402】
実施例1
1.PET支持体の作成、および下塗り
1−1.製膜
【0403】
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥した。青色染料(1,4−ビス(2,6−ジエチルアニリノアントラキンノン))で青色着色し、その後T型ダイから押し出して急冷し、未延伸フィルムを作成した。
【0404】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0405】
1−2.表面コロナ処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0406】
2.画像形成層、中間層、表面保護層
2−1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
<ハロゲン化銀乳剤Aの調製(0.04μmのAgI粒子)>
蒸留水1420mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、42℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量218mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。
【0407】
さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/l濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
【0408】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1、2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Bをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10−4モル加えて91分間熟成した。
N、N’−ジヒドロキシ−N”、N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1、3、4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作製した。
【0409】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数18%の純ヨウ化銀粒子であった。また(001)、{100}、{101}面を有する14面体粒子であり、X線粉末回折分析を用いて測定するとそのγ相の比率は30%であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0410】
<ハロゲン化銀乳剤B,C,の調製(0.08、0.16μmAgI粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Aと同様にして、ただし、反応温度、硝酸銀水溶液とヨウ化カリウム水溶液の添加速度を調節することにより、0.080、0.16μmの同様な14面体粒子の乳剤を得た。それぞれハロゲン化銀乳剤B、Cとする。
【0411】
<ハロゲン化銀乳剤Dの調製(0.42μm平板状AgIホスト粒子)>
蒸留水1421mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5モル/L硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.5g、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノ−ル溶液160mlを添加した溶液を、ステンレス製反応壷中で撹拌しながら75℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え218mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム36.6gを蒸留水にて366mlに希釈した溶液Bを、溶液Aは一定流量で16分かけて全量添加し、溶液BはpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を0.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて508.2mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム63.9gを蒸留水にて639mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で80分かけて全量添加し、溶液DはpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
【0412】
ハロゲン化銀乳剤Dは、純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径0.93μm、平均投影面積直径の変動係数17.7%、平均厚み0.057μm、平均アスペクト比16.3の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.42μmであった。X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の30%以上がγ相で存在していた。
【0413】
<ハロゲン化銀乳剤Eの調製(0.42μmエピタキシャル粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Dで調製した平板状粒子AgI乳剤1モルを反応容器に入れた。pAgは38℃で測定して10.2であった。次いで、ダブルジェット添加により、0.5モル/リットルのKBr溶液及び0.5モル/リットルのAgNO3溶液を10ml/分で20分間にわたって添加し、実質的に10モル%臭化銀をAgIホスト乳剤上にエピタキシャル状に沈殿させた。操作中、pAgは10.2に維持した。
さらに、0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調製し、撹拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
【0414】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、40分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10−5モル加えて91分間熟成した。その後、N,N’−ジヒドロキシ−N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モルおよび1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを水溶液で銀1モルに対して8.5×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤Eを作成した。
【0415】
<ハロゲン化銀乳剤Fの調製(0.71μm平板状AgIホスト粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Dと同様にして2,2’−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノ−ル溶液の添加量、粒子形成時の温度、溶液Aの添加時間を適宜変更してハロゲン化銀乳剤Fを調整した。ハロゲン化銀乳剤Fは純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径1.384μm、平均投影面積直径の変動係数19.7%、平均厚み0.125μm、平均アスペクト比11.1の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.71μmであった。X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の15%以上がγ相で存在していた。
【0416】
<ハロゲン化銀乳剤Gの調製(0.71μmエピタキシャル粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Fを用いたこと以外は、ハロゲン化銀乳剤Eとまったく同様にして、臭化銀エピタキシャル10モル%を含有するハロゲン化銀乳剤Gを調整した。
【0417】
<ハロゲン化銀乳剤Hの調製(0.30μm平板状AgIホスト粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Dと同様にして2,2’−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノ−ル溶液の添加量、粒子形成時の温度、溶液Aの添加時間を適宜変更してハロゲン化銀乳剤Hを調整した。ハロゲン化銀乳剤Hは純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径0.565μm、平均投影面積直径の変動係数18.5%、平均厚み0.056μm、平均アスペクト比10.0の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.30μmであった。X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の90%以上がγ相で存在していた。
【0418】
<ハロゲン化銀乳剤Iの調製(0.30μmエピタキシャル粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Hを用いたこと以外は、ハロゲン化銀乳剤Eとまったく同様にして、臭化銀エピタキシャル10モル%を含有するハロゲン化銀乳剤Iを調整した。
【0419】
<混合乳剤A,B,C,E,G,Iの調製>
ハロゲン化銀乳剤A,B,C,E,G,Iの各乳剤をそれぞれ溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10−3モル添加した。
【0420】
2)粉末有機銀塩調製
4720mlの純水にベヘン酸0.3776モル、アラキジン酸0.2266モル、ステアリン酸0.1510モルを添加し80℃で溶解した後、1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して有機酸ナトリウム溶液を得た。上記の有機酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、上記混合乳剤を添加した(非感光性有機銀塩モル数を感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が表1に示した値になるように添加)。次に、これらの混合物をIKA JAPAN社製ホモジナイザー(ULTRA−TURRAXT−25)により13200rpm(機械振動周波数として21.1KHz)にて5分間撹拌した。次に、1mol/lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し、有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、40℃にて重量減がなくなるまで酸素分圧10容量%の温風で循環乾燥機にて乾燥を行い、感光性ハロゲン化銀を含む粉末有機銀塩を得た。
【0421】
3)感光性ハロゲン化銀を含む有機銀塩の分散物の調製
ポリビニルブチラール粉末(Monsant社 Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン(MEK)1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバーDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら上記の粉末有機銀塩500gを徐々に添加して十分に混合しスラリー状とした。
【0422】
上記スラリーをエスエムテー社製GM−2型圧力式ホモジナイザーで、2パス分散することにより感光性乳剤分散液を調製した。この際、1パス時の処理圧は280kg/cm2であり、2パス時の処理圧は560kg/cm2とした。
【0423】
4)画像形成層塗布液の調製
上記の感光性ハロゲン化銀を含む有機銀塩の有機溶剤への再分散物507gを13℃で15分間撹拌し、10質量%のピリジニウムブロマイド過臭化物(PHP)メタノール溶液3.9ml、さらに1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物化合物1と2と3をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10−3モルになる量を添加した。また吸着基と還元基を有する化合物1と2をそれぞれハロゲン化銀1モルあたり8×10−3モルになる量を添加した。
【0424】
2時間撹拌後、72質量%の臭化カルシウムのメタノール溶液5.2mlを添加した。撹拌を30分続けた後、ButvarB−79を117g添加した。さらに30分攪拌した後、還元剤として1,1−ビス(2−ヒドロキシー3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパンを27.3g、造核剤(造核剤の種類と添加量を表1に示す)を添加し、さらに15分間撹拌を続けた。その後、増感色素−1をハロゲン化銀1モル当たり1×10−3モル加え、15分間撹拌した。続いて、1.39gのDesmodur N3300(モーベイ社、脂肪族イソシアネート)を12.3gもMEKに溶解した液を添加し、さらに15分間撹拌し、その後、21℃で15分間加熱した。
【0425】
この分散液100gに2−トリブロモメチルスルホニルピリジンを塗布銀量1モル当たり0.03モル、水素結合性化合物―1を還元剤と等モル、現像促進剤―1を塗布銀量1モル当たり5.0×10−3モルを加え、2.2gの4−クロロベンゾフェノンー2−カルボン酸、0.47gの2−クロロ安息香酸および0.47gの5−メチルー2−メルカプトベンズイミダゾールを添加し、21℃で1時間撹拌した。次いで、沃化銀錯形成剤として0.523gの6−イソプロピルフタラジン、、0.123gのテトラクロロフタル酸および2gの染料−1を添加し、画像形成層塗布液を完成させた。
【0426】
5)表面保護層塗布液の調製
MEK865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB171−15)96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社、パラロイドA−21)4.5g、1,3−ジ(ビニルスルフォニル)−2−プロパノール1.5g、ベンゾトリアゾール1.0g、フッ素系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)1.0gを添加し溶解した後、13、6重量%のセルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB171−15)と9重量%の炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)をMEKにディゾルバー型ホモジナイザーにて8000rpmで30分間分散したもの30gを添加して撹拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0427】
3−2.熱現像感光材料の作成
画像形成層塗布液と表面保護層塗布液を押し出しコーターで、同時重層塗布を行った。この塗布を支持体の両面に施すことにより熱現像感光材料を作成した。画像形成層の塗布銀量は片面あたり、脂肪酸銀の銀量として0.68g/m2、ハロゲン化銀の銀量として0.146g/m2であった。表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになるようにして行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥した。
【0428】
以下、実施例で用いた化合物を示す。
【0429】
【化45】
【0430】
【化46】
【0431】
【化47】
【0432】
【化48】
【0433】
【化49】
【0434】
4.評価
4−1.準備
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50%RHの環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した。
(包装材料)
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3質量%を含むポリエチレン50μm:
酸素透過率:0.02ml/atm・m2・25℃・day;
水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
【0435】
3−2.評価条件
1)膜のヘイズ度の測定
ヘイズ度とは感光材料に入射した光線が拡散する度合いを表し、拡散透過光量と全透過光量の比率を百分率で示す。ヘイズの測定は、NIPPON DENSHOKU(株)製のヘイズ測定装置MODEL1001DPを用いた。
各未露光試料について、熱現像処理前と熱現像後の膜のヘイズ度を測定した。
熱現像条件:富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lの熱現像部を改造し、両面から加熱できるようにした熱現像機を製作した。また、熱現像部の搬送ローラーをヒートドラムに変更することによりフィルムシートの搬送が可能になるように改造した。4枚のパネルヒーターを112℃−118℃−120℃−120℃に設定し、ヒートドラムの温度は120℃に設定した。搬送速度を調整して熱現像時間が合計24秒になるように設定した。
【0436】
2)電子顕微鏡による膜中のハロゲン化銀粒子数、および現像銀粒子数の観察各試料の熱現像前と熱現像後の最大濃度部の膜の超薄切片を透過型電子顕微鏡で撮影した。
撮影条件:試料をダイアモンドナイフで切削することにより、約厚み0.1μmの切片を作成した。
ハロゲン化銀粒子数および現像銀粒子数は、それぞれ熱現像前と熱現像後の最大濃度部の膜の切片の厚みと切片の長さから計算される単位面積中に存在する粒子数を数えることにより得られる。
【0437】
3)ハロゲン化銀粒子による画像形成層の占有容積の算出
熱現像前の膜の切片の厚みと切片の面積から計算される画像形成層の単位体積中に存在するハロゲン化銀粒子数を数えることにより、ハロゲン化銀粒子による画像形成層の占有容積を算出した。
【0438】
4)写真性能の評価
富士フイルム(株)社製のXレイレギュラースクリーンHI−SCREENB3(蛍光体としてCaWO4を使用。発光ピーク波長425nm)を2枚使用して、その間に試料を挟み、像形成用組立体を作成した。この組立体に、0.05秒のX線露光を与え、X線センシトメトリーを行った。使用したX線装置は、東芝(株)製の商品名DRX−3724HDであり、タングステンターゲットを用いた。三相にパルス生器で80kVpの電圧をかけ、人体とほぼ等価な吸収を持つ水7cmのフィルタを通したX線を光源とした。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.15の幅でステップ露光を行なった。露光後に、下記の熱現像処理条件で熱現像処理した。得られた画像の評価を濃度計により行った。
【0439】
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPLの熱現像部を改造し、両面から加熱できるようにした熱現像機を製作した。また、熱現像部の搬送ローラーをヒートドラムに変更することによりフィルムシートの搬送が可能になるように改造した。4枚のパネルヒーターを112℃−118℃−120℃−120℃に設定し、ヒートドラムの温度は120℃に設定した。搬送速度は合計24秒になるように設定した。
【0440】
かぶり:未露光部の濃度で表した。
感度:試料No.5の感材を100とした相対値であらわした。
Dmax:露光量を増やして得られる最高濃度である。
平均階調:特性曲線上で、かぶり濃度+光学濃度0.25の点とかぶり濃度+光学濃度2.0を結ぶ直線の傾き(この直線と横軸のなす角をθとするときのtanθ)である。
粒状性:目視で粒状性を○、△、×で評価した。
【0441】
3−3.評価結果
得られた結果を表1に示した。
表1の結果より、本発明の感光材料は、高感度であり、高濃度で、診断に適した諧調を有し、粒状性に優れていることがわかる。
【0442】
【表1】
【0443】
実施例2
実施例1の試料No.5において、造核剤の種類と添加量を表2に示すように変更して、その他は同様にして、試料21〜30を作成した。
実施例1と同様にして評価した結果を表2に示した。
その結果、本発明の感光材料は、高感度であり、高濃度で、診断に適した諧調を有し、粒状性に優れていることがわかる。
【0444】
【表2】
【0445】
実施例3
1.材料の準備
1)臭化銀の平板状乳剤Jの調製
(粒子形成)
KBr0.8g、および平均分子量20000の酸化処理ゼラチン3.2gを含む水溶液1178mlを35℃に保ち、撹拌した。硝酸銀1.6g、KBr1.16g、平均分子量20000の酸化処理ゼラチン1.1gのそれぞれの水溶液をトリプルジェット法で45秒間に渡り添加した。硝酸銀の濃度は0.3モル/Lであった。その後、20分かけて76℃に昇温し、平均分子量100000のコハク化ゲラチン26gを添加した。硝酸銀209g水溶液とKBr水溶液をpAg8.0に保ちながらコントロールダブルジェット法で流量加速しながら75分間に渡って添加した。平均分子量100000のゼラチンを加えた後、常法に従って脱塩した。その後、平均分子量100000のゼラチンを加えて分散し、40℃でpH5.8、pAg8.0に調整した。得られた乳剤は、乳剤1kg当たり、銀を1モル、ゼラチンを40g含有する。
【0446】
(化学増感)
以上のように調製したそれぞれの乳剤を攪拌しながら56℃に保った状態で化学増感を施した。まず、下記のチオスルホン酸化合物−1をハロゲン化銀1モル当たり10−4モル添加し、次に0.03μmのAgI粒子を全銀量に対して0.15モル%添加した。3分後に二酸化チオ尿素を1×10−6モル/Agモル添加し、22分間そのまま保持して還元増感を施した。次に、4−ヒドロキシ−6−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンをハロゲン化銀1モル当たり3×10−4モル相当を添加し、下記増感色素−1、2をそれぞれハロゲン化銀1モル当たり1×10−4モル相当を添加し、さらに塩化カルシウムを添加した。
【0447】
引き続き、チオ硫酸ナトリウムをハロゲン化銀1モル当たり6×10−6モル相当とセレン化合物―1をハロゲン化銀1モル当たり4×10−6モル相当を加えた後、塩化金酸をハロゲン化銀1モル当たり2×10−3モル相当添加した。さらに核酸(山陽国策パルプ社製、商品名RNA−F)をハロゲン化銀1モル当たり67mg相当を添加した。40分後に水溶性メルカプト化合物―1をハロゲン化銀1モル当たり1×10−4モル相当添加し、35℃に冷却した。こうして、乳剤Jの化学増感を終了した。
【0448】
(得られた粒子の形状)
上記の得られた臭化銀平板粒子は、電子顕微鏡観察から、平均投影面積相当直径1.117μm、平均球相当直径0.472μm、平均厚み0.056μm、平均アスペクト比19.9。平均投影面積相当直径の粒子間変動係数23%であった。
【0449】
2)臭化銀の平板状乳剤K,L,Mの調製
臭化銀の平板状乳剤Jと同様にして、ただし添加速度と反応温度を変更することにより、平板状乳剤K,L,Mを作成した。得られたハロゲン化銀粒子の形状については表3にまとめた。
【0450】
【表3】
【0451】
3)クロスオーバーカット層
(塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製)
塩基プレカーサー化合物1を2.5kg、および界面活性剤(商品名:デモールN、花王(株)製) 300g 、ジフェニルスルホン 800g、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩1.0gおよび蒸留水を加えて総量を 8.0kgに合わせて混合し、混合液を横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散した。分散方法は、混合液を平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填したUVM−2にダイアフラムポンプで送液し、内圧50hPa以上の状態で、所望の平均粒径が得られるまで分散した。
分散物は、分光吸収測定を行って該分散物の分光吸収における450nmにおける吸光度と650nmにおける吸光度の比(D450/D650)が3.0まで分散した。得られた分散物は、塩基プレカーサーの濃度で25重量%となるように蒸留水で希釈し、ごみ取りのためにろ過(平均細孔径:3μmのポリプロピレン製フィルター)を行って実用に供した。
【0452】
(オルソ熱消色染料固体微粒子分散液の調製)
特開平11−231457号記載のオルソ熱消色染料−1(λmax=566nm)を6.0kgおよびp−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.0kg、花王(株)製界面活性剤デモールSNB0.6kg、および消泡剤(商品名:サーフィノール104E、日信化学(株)製)0.15kg を蒸留水 と混合して、総液量を60kgとした。混合液を横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)を用いて、0.5mmのジルコニアビーズで分散した。
分散物は、分光吸収測定を行って該分散物の分光吸収における650nmにおける吸光度と750nmにおける吸光度の比(D650/D750)が5.0以上であるところまで分散した。得られた分散物は、シアニン染料の濃度で6質量%となるように蒸留水で希釈し、ごみ取りのためにフィルターろ過(平均細孔径:1μm)を行って実用に供した。
【0453】
(クロスオーバーカット層塗布液の調製)
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)17g、ポリアクリルアミド9.6g、塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、オルソ染料固体微粒子分散液(染料固形分3質量%)を56g、、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム2.2g、および水844mlを混合して、クロスオーバーカット層塗布液を調製した。
【0454】
2.塗布試料の作成
実施例1と同様にして、ただし画像形成層と支持体との間にクロスオーバーカット層を設け、ハロゲン化銀乳剤と造核剤の種類を表4に示すように変更して、その他は同様にして、試料31〜38を作成した。
【0455】
クロスオーバーカット層はオルソ熱消色染料の固形分塗布量が0.04g/m2になるように塗布した。他の層の塗布量は実施例1と同様にした。
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0456】
【化50】
【0457】
【化51】
【0458】
3.性能評価
蛍光スクリーンとして、富士フイルム(株)社製のXレイオルソスクリーンHG−M(蛍光体としてテルビウム付活ガドリニウムオキシスルフィド蛍光体を使用。発光ピーク波長545nm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、X線露光、熱現像を行った。
【0459】
クロスオーバーの測定は、現像処理を熱現像処理にしたこと以外は特開平11−142723号の実施例1と同様にして測定した。その結果、クロスオーバーは7%であった。
【0460】
実施例1と同様にして評価した結果を表4に示した。
その結果、本発明の感光材料は、高感度であり、高濃度で、診断に適した諧調を有し、粒状性に優れていることがわかる。しかしヨウ化銀を使用した実施例1の感光材料に対して、実施例3の臭化銀平板粒子では、熱現像後のヘイズが高いままとなっている。
【0461】
【表4】
【0462】
実施例4
1.試料の作成
実施例1と同様にして、ただし片面のみに画像形成層を有し、画像形成層の反対面側にはバック層を設けた片面感光材料を調製した。
画像形成層は上層と下層の2層塗布とし、塗布銀量(脂肪酸銀ハロゲン化銀の合計)をそれぞれ0.8g/m2になるようにした。使用したハロゲン化銀乳剤は、上層にハロゲン化銀乳剤I、下層に乳剤Eを使用し、それぞれ増感色素1と2によりオルソ分光増感を最適に行った。
【0463】
<バック層の構成>
1)ハレーション防止層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン40g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)20g、ベンゾイソチアゾリノン0.1g、水490mlを加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液2.3ml、実施例3のオルソ熱消色染料固体微粒子分散液40g、実施例3の塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)を90g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液12ml、、SBRラテックス10質量%液180g、を混合した。塗布直前にN,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液 80mlを混合し、ハレーション防止層塗布液とした。
【0464】
2)バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン40g、ベンゾイソチアゾリノン35mg、水840mlを加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液5.8ml、流動パラフィンの10質量%乳化物を5g、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンの10%乳化物を5g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5質量%水溶液10ml、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液20ml、フッ素系界面活性剤(F−1)2質量%溶液を2.4ml、フッ素系界面活性剤(F−2)2質量%溶液を2.4ml、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液32gを混合した。塗布直前に N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液 25mlを混合しバック面保護層塗布液とした。
【0465】
3)バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、アンチハレーション層塗布液をゼラチン塗布量が0.52g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作成した。
【0466】
2.性能評価
こうして得られたオルソ増感片面感光材料を下記のように評価した。
蛍光スクリーンとして、富士写真フィルム(株)社製の乳房撮影用蛍光スクリーンUM MANMO FINE(蛍光体としてテルビウム付活ガドリニウムオキシスルフィド蛍光体を使用。発光ピーク波長545nm)を用いた。試料の画像形成層面とスクリーンの保護層を密着させ、富士写真フィルム(株)社製ECMAカセッテに装填した。X線管球から順番に、カセッテ天板、フィルム、スクリーンとなるように配置してX線照射を行った。
【0467】
X線源としては、市販のマンモ撮影用装置である東芝(株)製、DRX−B1356ECを用いた。三相電源で26kVpで動作させたMoターゲット管に1mmのBeと、0.03mmのMo及び2cmのアクリルフィルターを透過したX線を用いた。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.15の幅でステップ露光を1秒間の露光で行なった。
露光後に、実施例1と同様に熱現像処理を行った。
【0468】
一方、同じ条件で露光した富士写真フイルム(株)社製のマンモ感材UM−MAHCを富士写真フイルム(株)社製の自動現像処理機CEPROS−M2、処理液CE−D1で90秒処理した画像を作成した。
両者の写真性能を比較した結果、同等の良好な写真性であった。
【0469】
実施例5
実施例1と同様にして両面感光材料を作成した。
ただし、支持体はPEN(ポリエチレンナフタレート)に変更した。
市販のポリエチレン−2,6−ナフタレートを300℃にて溶融後、T型ダイから押し出し140℃で3.3倍の縦延伸を行い、続いて3.3倍の横延伸を行い、さらに250℃で6秒間熱固定し175μmのフィルムを得た。支持体にコロナ放電を行った。コロナ放電処理はピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、30cm幅支持体を20m/分で処理する。このとき、電流・電圧の読み取り値より被処理物は、0.375KV・A・分/m2の処理がなされた。処理時の放電周波数は9.6KHz、電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは、1.6mmであった。下塗りは、実施例1の支持体と同様の手法で行なった。
【0470】
こうして得られた両面塗布熱現像感光材料を以下の様に評価した。
蛍光スクリーンとして、Du Pont社製のウルトラビジョンファーストディテール(UV)を使用して、本発明の試料の両側に密着させ、0.05秒のX線露光を与え、X線センシトメトリーを行った。露光量の調整は、X線管球とカセッテとの距離を変化させることにより行った。
露光後に、実施例1と同様に熱現像処理した。
その結果、実施例1同様に優れた画像が得られた。
【0471】
実施例6
6−1.試料の作製
1)画像形成層塗布液の調製
実施例1に示したハロゲン化銀乳剤Eを実施例1の表1の試料No5.と同様の比率で含有する有機銀塩の分散物を調製し、それぞれ500gに、窒素気流下で撹拌しながら、MEKを100g加え、24℃に保温した。下記のかぶり防止剤1の10質量%メタノール溶液を2.5ml添加して15分間撹拌した。下記の色素吸着助剤と酢酸カリウムの1:5質量混合比で色素吸着助剤が20質量%である溶液を1.8ml加え、15分撹拌した。次に、増感色素―1をハロゲン化銀1モル当たり1.0×10−3モル、4−クロロー2−ベンゾイル安息香酸、および強色増感剤の5−メチルー2−メルカプトベンズイミダゾールの混合溶液(混合比率=質量で25:2、合計3.0質量%メタノール溶液)を7ml、2−トリブロモメチルスルホニルキノリンを塗布銀量1モル当たり0.03モル、および造核剤SH−5を塗布量として0.040g/m2になる量を加え、1時間撹拌した後、温度を13℃まで下げさらに30分撹拌をした。13℃に保ったまま、ポリビニルブチラールを48g添加して充分に溶解させてから下記の添加物を加えた。これらの操作は全て窒素気流下で行った。
【0472】
【0473】
【化52】
【0474】
【化53】
【0475】
2)塗布
画像形成層:実施例1における支持体と同じ支持体の両面に、上記の画像形成層塗布液を塗布銀量が実施例1と同様の量になるように塗布した。
表面保護層:下記の塗布液を湿潤塗布厚みが100μmになるように塗布した。
【0476】
【0477】
4−2.評価
実施例1と同様に露光、熱現像し、得られた画像の性能を測定した。
その結果、実施例1同様に優れた画像が得られた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱現像感光材料に関し、特に鮮明で画質の優れた熱現像感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野や印刷製版分野において環境保全、省スペースの観点から写真現像処理のドライ化が強く望まれている。これらの分野では、デジタル化が進展し、画像情報をコンピューターに取り込み、保存、そして必要な場合には加工し、通信によって必要な場所で、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより感光材料に出力し、現像して画像をその場で作成するシステムが急速に広がってきている。感光材料としては、高い照度のレーザー露光で記録することができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することがが必要とされている。このようなデジタル・イメージング記録材料としては、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像のように診断能力を決定する画質(鮮鋭度、粒状性、階調、色調)の点、記録スピード(感度)の点で、不満足であり、従来の湿式現像の医療用銀塩フィルムを代替できるレベルに到達していない。
【0003】
一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが、例えば、米国特許3152904号、同3457075号の各明細書およびD.H.クロスタベール(Klosterboer) による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp) 編集、第9章、第279頁、1998年)に記載されている。特に、熱現像感光材料は、一般に、感光性ハロゲン化銀、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した画像形成層を有している。
【0004】
熱現像感光材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。その結果、露光領域に黒色の銀画像が形成される。熱現像感光材料は、米国特許2910377号、特公昭43−4924号をはじめとする多くの文献に開示されている。
【0005】
上記のような熱現像感光材料においては、バインダーとして熱現像温度より低い領域にガラス転移点を有するポリマーが用いられる。
有機溶媒を塗布溶剤に用いて作製される熱現像感光材料においては、バインダーとしてポリビニルブチラールを用いることが知られている。
【0006】
一方、レーザー光としては、ガスレーザー(Ar+,He−Ne,He−Cd)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが一般に用いられている。半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いられている。発光波長域も青領域から赤外領域まで幅広い波長領域のレーザーが用いられている。中でも、赤外半導体レーザーは、安価で安定した発光が得られることから特にコンパクトで操作性が良く、手軽に設置場所を選ばないレーザー画像出力システムの設計に適している。熱現像感光材料としてはそのために赤外感光性が要求される。赤外感度を高めるための努力が種々なされてきた。しかしながら、赤外分光増感は一般には不安定で感光材料の保存中に分解して感度が低下する問題を有しており、高感度化とともにその保存安定性の改良が求められてきた。
【0007】
また、近年、青色半導体レーザーが開発され、高精細の画像記録が可能になり、記録密度の増加、および長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大し、それに対応した熱現像感光材料が求められた。
【0008】
一方、上述の熱現像感光材料を撮影用感光材料に応用する試みが提案されている。ここで言う撮影用感光材料とは、レーザー光などで走査露光により画像情報を書き込むものではなく、画像を面露光により記録するものである。従来、湿式現像感光材料分野では、一般に用いられ、医療用途では直接あるいは間接X線フィルム、マンモグラフフィルムなど、印刷用各種製版フィルム、工業用記録フィルム、あるいは一般カメラによる撮影用フィルムなどが知られている。例えば、青色の蛍光増感紙を利用した両面塗布型X線用熱現像感光材料、ヨウ臭化銀の平板粒子を用いた熱現像感光材料(例えば、特許文献1参照。)、あるいは(100)主平面を有する塩化銀含有率の高い平板粒子を支持体の両面に塗設した医療用感光材料も特許文献に開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、両面塗布熱現像感光材料は、その他の特許文献にも開示されている。しかしながら、これらの公知例では、0.1μm以下の微粒子ハロゲン化銀を用いるとヘイズの悪化を伴わないが低感度であり、撮影用には実用に耐えないものであり、一方、0.5μm以上のハロゲン化銀粒子を用いた場合は残存するハロゲン化銀によるヘイズの悪化、およびプリントアウトの悪化による画像品質の劣化が激しく、実用に耐えるものではなかった。
【0009】
ハロゲン化銀粒子として、ヨウ化銀の平板粒子を用いた感光材料は湿式現像分野では知られているが、熱現像感光材料ではその応用は例がない。その理由は上述のように低感度であり、有効な増感手段がなく、また熱現像ではさらに技術的バリアーが高くなることが原因であった。
【0010】
このような撮影用感光材料に用いるためには、熱現像感光材料として更に高い感度が要求され、また得られる画像のヘイズなどの画質も更に一段と高いレベルを供給される。
【0011】
【特許文献1】
特開昭59−142539号公報
【特許文献2】
特開平10−282606号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記従来における諸問題を解決し、クリアで高画質の熱現像感光材料を提供することにある。特に、有機溶媒塗布型熱現像感光材料におけるこれらの改良に関するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者の上記課題は、下記の手段により達成されることを見い出した。
【0014】
<1> 支持体の一方面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有し、有機溶媒を用いて塗布された熱現像感光材料であって、1)造核剤を含有し、2)特性曲線の平均階調が1.8以上4.3以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
<2> 単位面積当たりの前記非感光性有機銀塩と該前記感光性ハロゲン化銀を含む総塗布銀量を前記感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が5×10−14g/個数以上であることを特徴とする<1>に記載の熱現像感光材料。
<3> 前記画像形成層の容積を前記感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が0.5μm3/個数以上であることを特徴とする<1>または<2>に記載の熱現像感光材料。
<4> 前記感光性ハロゲン化銀の単位面積当たりの粒子個数が4×1013個/m2以下であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかにに記載の熱現像感光材料。
<5> 熱現像後、最高濃度部における単位面積当たりの現像銀粒子数を前記感光性ハロゲン化銀の単位面積当たりの粒子個数で除した値1.0より大であることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかにに記載の熱現像感光材料。
<6> 塗布銀量が2.0g/m2以下で最高濃度2.5以上であることを特徴とする<1>〜<5>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<7> 前記感光性ハロゲン化銀の塩化銀含有率が70モル%未満であることを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<8> 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<9> 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が80モル%以上であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<10> 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする<1>〜<9>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<11> 前記感光性ハロゲン化銀の粒子個数の10%以上がアスペクト比2以上の平板状粒子であることを特徴とする<1>〜<10>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<12> 前記感光性ハロゲン化銀の粒子個数の10%以上がヨウ化銀含有率が40モル%以上の平板状粒子であることを特徴とする<11>に記載の熱現像感光材料。
<13> 前記平板状粒子がアスペクト比5.0以上であることを特徴とする<11>または<12>に記載の熱現像感光材料。
<14> 前記平板状粒子の平均球相当直径が0.3μm以上5.0μm以下であることを特徴とする<11>〜<13>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<15> 前記平板状粒子の平均投影面積相当直径が0.4μm以上8.0μm以下であることを特徴とする<6>〜<8>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<16> 前記平板状粒子が平均厚みが0.3μm以下であることを特徴とする<11>〜<15>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<17> 前記造核剤がヒドラジン誘導体化合物、ビニル化合物、および4級オニウム化合物よりなる群より選ばれる化合物であることを特徴とする<1>〜<16>のいずれかに記載の記載の熱現像感光材料。
<18> 前記造核剤が下記一般式(V)で表されるヒドラジン誘導体化合物であることを特徴とする<17>に記載の記載の熱現像感光材料。
【0015】
【化3】
【0016】
一般式〔V〕において、式中、A0はそれぞれ置換基を有してもよい脂肪族基、芳香族基、複素環基または−G0−D0基を、B0はブロッキング基を表し、A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基、スルホニル基またはオキザリル基を表す。G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表し、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表す。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。
<19> 前記造核剤が下記一般式(VI)でビニル化合物であることを特徴とする<17>に記載の記載の熱現像感光材料。
【0017】
【化4】
【0018】
一般式(VI)において、Xは電子求引性基を表し、Wは水素原子、または炭素原子に置換し得る基を表す。Rは炭素原子に置換し得る基を表す。
【0019】
<20> 前記一般式(VI)で、Wがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、チオオキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基より選ばれる基であることを特徴とする<19>に記載の記載の熱現像感光材料。
<21> 前記一般式(VI)で、Rがハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、アミノ基、アルキルアミノ基、環状アミノ基、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環基、ウレイド基、スルホンアミド基より選ばれる基であることを特徴とする<19>に記載の記載の熱現像感光材料。
<22> ヨウ化銀錯形成剤を含有することを特徴とする<1>〜<21>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<23> 現像促進剤を含有することを特徴とする<1>〜<22>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<24> 前記熱現像感光材料であって、前記バインダーとして、ポリビニルブチラールを画像形成層のバインダー全組成分に対して50重量%以上含む特徴とする<1>〜<23>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<25> 前記非感光性有機銀塩のベヘン酸銀含有率が、40モル%以上70モル%以下であることを特徴とする<1>〜<24>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<26> 残留溶剤量が、メチルエチルケトン量で0.1mg/m2以上150mg/m2以下であることを特徴とする<1>〜<25>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
<27> 前記画像形成層を前記支持体の両面に有することを特徴とする<1>〜<26>のいずれかに記載の熱現像感光材料。
【0020】
熱現像感光材料の現像機構は、ハロゲン化銀を中心とした勢力範囲内で起こることが知られている(前述のD.H.クロスタベール参照。)。本発明者の解析によれば、有機溶剤を塗布溶媒に用いた熱現像感光材料の場合、特に、この勢力範囲は狭くハロゲン化銀の極近傍に限られることが判明した。このため、ハロゲン化銀の密度を下げることは極めて困難であった。本発明者は、造核剤を用いて伝染現像を作用させることでこの問題を解決し得ることを見いだして、本発明に至った。即ち、感光性ハロゲン化銀の密度を下げることが出来、クリアで高画質の熱現像感光材料の提供を可能にした。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において、写真特性曲線とは、露光エネルギーである露光量の常用対数(log E)を横軸にとり、光学濃度、すなわち散乱光写真濃度(D)を横軸にとって両者の関係を表したD−log E曲線のことをいう。本発明における平均階調とは、特性曲線上のかぶり濃度+光学濃度0.25の点とかぶり濃度+光学濃度2.0を結ぶ直線の傾き(この直線と横軸のなす角をθとするときのtan θ)のことである。
【0022】
本発明における平均階調は、1.8以上4.3である。好ましくは、2.0以上4.0以下である。
【0023】
本発明では、塗布銀量が2.0g/m2以下であって、熱現像後の光学濃度が2.5以上であることがが好ましい。より好ましくは、塗布銀量が1.8g/m2以下であって、熱現像後の光学濃度が2.7以上である。
【0024】
1.熱現像感光材料
本発明の熱現像感光材料は、支持体の少なくとも一方面上に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有している。また、好ましくは画像形成層の上に表面保護層、あるいはその反対面にバック層やバック保護層などを有してもよい。
これらの各層の構成、およびその好ましい成分について詳しく説明する。
【0025】
1−1.感光性ハロゲン化銀
1)ハロゲン組成
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、ハロゲン組成として特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀、ヨウ化銀を用いることができる。好ましくは、臭化銀、ヨウ臭化銀およびヨウ化銀である。より好ましくは、ヨウ化銀含有率が40モル%を超えるヨウ臭化銀またはヨウ化銀である。さらに好ましくはヨウ化銀含有率は80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
残りのハロゲン種は特に制限はなく、塩化銀、臭化銀などのハロゲン化銀、またはチオシアン酸銀や燐酸銀などの有機銀塩から選ぶことができるが、塩化銀含有率は70モル%未満であることが好ましい。
【0026】
粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子も好ましく用いることができる。構造として好ましいものは2〜5重構造であり、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。コア部のヨウ化銀含有率が高いコア高ヨウ化銀構造、またはシェル部のヨウ化銀含有率が高いシェル高ヨウ化銀構造も好ましく用いることができる。また、粒子の表面にエピタキシャル部分とした塩化銀や臭化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0027】
本発明の高ヨウ化銀含有率のハロゲン化銀は、任意のβ相およびγ相含有率を取ることができる。β相とは六方晶系のウルツアイト構造を有する高ヨウ化銀構造を指し、γ相とは立方晶系のジンクブレンド構造を有する高ヨウ化銀構造を指す。ここでいうγ相含有率とは、C.R.Berry(ベリー)により提案された手法を用いて決定されるものである。この手法は、粉末X線回折法でのヨウ化銀β相(100)、(101)、(002)とγ相(111)によるピーク比を元にして決定するもので、詳細については例えば、Physical Review, Volume 161, No.3, p.848−851(1967)を参考にすることができる。
【0028】
2)粒子サイズ
本発明においては、好ましいハロゲン化銀の平均球相当直径は0.3μm以上5.0μm以下であり、さらに0.35μm以上3.0μm以下であることが好ましい。ここでいう平均球相当直径とは、ハロゲン化銀1粒子の体積と同じ体積の球の直径を意味する。測定方法としては、電子顕微鏡により観察した個々の投影面積と厚みから粒子体積を求め、その体積と同じ体積の球に換算することにより求めることができる。
【0029】
3)塗布量
本発明においては、単位面積当たりの非感光性有機銀塩と感光性ハロゲン化銀を含む総塗布銀量を感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が5×10−14g/個数以上であることが好ましい。より好ましくは、8×10−14g/個数以上であり、さらに好ましくは1×10−12g/個数以上である。即ち、総塗布銀量に対して、感光性ハロゲン化銀粒子数を極めて少なく用いることが本発明の好ましい態様である。
上記値の上限値は、用いられる伝染現像性還元剤の種類とその添加量、非感光性有機銀塩の特性、あるいは感光性ハロゲン化銀の粒子サイズや形状などの要因で大きく異なるが、5×10−9g/個数以下、好ましくは5×10−10g/個数以下である。
【0030】
従来、感光性ハロゲン化銀の粒子数を減らすと感度低下および画像の黒化濃度の低下を引き起こすため、感光性ハロゲン化銀の粒子数を減らすことは不可能であった。しかしながら、本発明の熱現像感光材料の構成では、単位面積当たりの非感光性有機銀塩と感光性ハロゲン化銀を含む総塗布銀量を感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が5×10−14以上となるように感光性ハロゲン化銀の粒子数を減らすことが可能となったのである。
【0031】
前記画像形成層にける前記感光性ハロゲン化銀粒子の平均占有容積は、前記画像形成層の容積を前記感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値で表して0.5μm3/個数以上であることが好ましい。より好ましくは1.0μm3/個数以上である。
前記感光性ハロゲン化銀の単位面積当たりの粒子個数(両面に画像形成層を有する場合はその合計)は、4×1013個/m2以下であることが好ましく、より好ましくは1×1013個/m2以下である。
また、本発明では、熱現像後、最高濃度部における単位面積当たりの現像銀粒子数を前記感光性ハロゲン化銀の単位面積当たりの粒子個数で除した値は、1.0より大であることが好ましい。より好ましくは10より大である。
【0032】
4)粒子形成方法
感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、および米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができるが、具体的にはゼラチンあるいは他のポリマー溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製し、その後で有機銀塩と混合する方法を用いる。また、特開平11−119374号公報の段落番号0217〜0224に記載されている方法、特開平11−352627号、特願2000−42336号記載の方法も好ましい。
【0033】
例えば、有機銀塩の一部の銀を有機または無機のハロゲン化物でハロゲン化する、いわゆるハライデーション法も好ましく用いられる。ここで用いる有機ハロゲン化物としては有機銀塩と反応し、ハロゲン化銀を生成する化合物であればいかなるものでもよいが、N−ハロゲノイミド(N−ブロモスクシンイミドなど)、ハロゲン化4級窒素化合物(臭化テトラブチルアンモニウムなど)、ハロゲン化4級窒素塩とハロゲン分子の会合体(過臭化臭化ピリジニウム)などが挙げられる。無機ハロゲン化合物としては有機銀塩と反応しハロゲン化銀を生成する化合物で有ればいかなるものでもよいが、ハロゲン化アルカリ金属またはアンモニウム(塩化ナトリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、臭化アンモニウムなど)、ハロゲン化アルカリ土類金属(臭化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、ハロゲン化遷移金属(塩化第2鉄、臭化第2銅など)、ハロゲン配位子を有する金属錯体(臭化イリジウム酸ナトリウム、塩化ロジウム酸アンモニウムなど)、ハロゲン分子(臭素、塩素、ヨウ素)などがある。また、所望の有機無機ハロゲン化物を併用しても良い。ハライデーションする際のハロゲン化物の添加量としては有機銀塩1モル当たりハロゲン原子として1ミリモル〜500ミリモルが好ましく、10ミリモル〜250ミリモルがさらに好ましい。
【0034】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが、本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0035】
ヨウ化銀の平板粒子の形成方法に関しては、前述の特開昭59−119350号、同59‐119344号に記載の方法が好ましく用いられる。
【0036】
5)粒子形状
本発明におけるハロゲン化銀粒子の形状としては立方体粒子、八面体粒子、14面体粒子、12面体粒子、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができる。好ましくは、12面体粒子、14面体粒子、および平板状粒子である。ここで言う12面体とは、(001)、{1(−1)0}、{101}面と有する粒子であり、14面体粒子とは、(001)、{100}、{101}面を有する粒子である。ここで、{100}、{101}面は、それぞれ(100)、(101)面と等価な面指数を持つ結晶面群を表す。
ヨウ化銀の12面体、14面体、8面体に関しては、特願2002‐081020号、同2002‐87955号、同2002‐91756号を参考にして調製することができる。
本発明においては、平板状粒子のハロゲン化銀の場合、その投影面積相当直径は、好ましくは0.4μm以上8.0μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3.0μm以下である。ここでいう投影面積相当直径とは、ハロゲン化銀粒子の投影面積と同じ面積の円の直径を意味する。測定方法としては、電子顕微鏡により観察した個々の投影面積から粒子の面積を求め、その面積と同じ面積の円に換算することにより求めることが出来る。
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀の粒子厚みは、0.3μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以下であり、さらに好ましくは0.15μ以下である。アスペクト比は、好ましくは2以上100以下、より好ましくは5以上50以下である。
【0037】
本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀は複雑な形態を取り得るが、好ましい形態は例えば、R.L.JENKINS etal. J of Phot. Sci. Vol.28 (1980)のp164−Fig1に示されているような接合粒子が挙げられる。同Fig.1に示されているような平板上粒子も好ましく用いられる。ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い[100]面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数[100]面の比率は増感色素の吸着における[111]面と[100]面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、165(1985年)に記載の方法により求めることができる。
【0038】
6)重金属
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、周期律表(第1〜18族までを示す)の第8族〜第10族の金属または金属錯体を含有することができる。周期律表の第8族〜第10族の金属または金属錯体の中心金属として好ましくは、ロジウム、ルテニウム、イリジウムである。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属及び異種金属の錯体を2種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1×10−9モルから1×10−3モルの範囲が好ましい。これらの重金属や金属錯体及びそれらの添加法については特開平7−225449号、特開平11−65021号段落番号0018〜0024、特開平11−119374号段落番号0227〜0240に記載されている。
【0039】
本発明においては、六シアノ金属錯体を粒子最表面に存在させたハロゲン化銀粒子が好ましい。六シアノ金属錯体としては、[Fe(CN)6]4−、[Fe(CN)6]3−、[Ru(CN)6]4−、[Os(CN)6]4−、[Co(CN)6]3−、[Rh(CN)6]3−、[Ir (CN)6]3−、[Cr(CN)6]3−、[Re(CN)6]3−などが挙げられる。本発明においては六シアノFe錯体が好ましい。
【0040】
六シアノ金属錯体は、水溶液中でイオンの形で存在するので対陽イオンは重要ではないが、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンおよびリチウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムイオン)を用いることが好ましい。
【0041】
六シアノ金属錯体は、水の他に水と混和しうる適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類等)との混合溶媒やゼラチンと混和して添加することができる。
【0042】
六シアノ金属錯体の添加量は、銀1モル当たり1×10−5モル以上1×10−2モル以下が好ましく、より好ましくは1×10−4モル以上1×10−3モル以下である。
【0043】
六シアノ金属錯体をハロゲン化銀粒子最表面に存在させるには、六シアノ金属錯体を、粒子形成に使用する硝酸銀水溶液を添加終了した後、硫黄増感、セレン増感およびテルル増感のカルコゲン増感や金増感等の貴金属増感を行う化学増感工程の前までの仕込工程終了前、水洗工程中、分散工程中、または化学増感工程前に直接添加する。ハロゲン化銀微粒子を成長させないためには、粒子形成後速やかに六シアノ金属錯体を添加することが好ましく、仕込工程終了前に添加することが好ましい。
【0044】
尚、六シアノ金属錯体の添加は、粒子形成をするために添加する硝酸銀の総量の96質量%を添加した後から開始してもよく、98質量%添加した後から開始するのがより好ましく、99質量%添加した後が特に好ましい。
これら六シアノ金属錯体を粒子形成の完了する直前の硝酸銀水溶液を添加した後に添加すると、ハロゲン化銀粒子最表面に吸着することができ、そのほとんどが粒子表面の銀イオンと難溶性の塩を形成する。この六シアノ鉄(II)の銀塩は、AgIよりも難溶性の塩であるため、微粒子による再溶解を防ぐことができ、粒子サイズが小さいハロゲン化銀微粒子を製造することが可能となった。
【0045】
さらに本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に含有することのできる金属原子(例えば[Fe(CN)6]4−)、ハロゲン化銀乳剤の脱塩法や化学増感法については特開平11−84574号段落番号0046〜0050、特開平11−65021号段落番号0025〜0031、特開平11−119374号段落番号0242〜0250に記載されている。
【0046】
7)ゼラチン
本発明に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤に含有されるゼラチンとしては、種々のゼラチンが使用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤の有機銀塩含有塗布液中での分散状態を良好に維持するために、分子量は、500〜60,000の低分子量ゼラチンを使用することが好ましい。これらの低分子量ゼラチンは粒子形成時あるいは脱塩処理後の分散時に使用してもよいが、脱塩処理後の分散時に使用することが好ましい。
【0047】
8)化学増感
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、未化学増感でもよいが、カルコゲン増感法、金増感法、還元増感法の少なくとも1つの方法で化学増感されるのが好ましい。カルコゲン増感法としては、硫黄増感法、セレン増感法およびテルル増感法が挙げられる。
【0048】
硫黄増感においては、不安定硫黄化合物を用い、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号などに記載されている不安定硫黄化合物を用いる事が出来る。
具体的には、チオ硫酸塩(例えばハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、NーエチルーN´ー(4ーメチルー2ーチアゾリル)チオ尿素、カルボキシメチルトリメチルチオ尿素)、チオアミド類(例えば、チオアセトアミド)、ローダニン類(例えば、ジエチルローダニン、5ーベンジリデン−N−エチルローダニン)、フォスフィンスルフィド類(例えば、トリメチルフォスフィンスルフィド)、チオヒダントイン類、4ーオキソーオキサゾリジンー2ーチオン類、ジスルフィド類またはポリスルフィド類(例えば、ジモルフォリンジスルフィド、シスチン、レンチオニン(1,2,3,5,6−ペンタチエパン))、ポリチオン酸塩、元素状硫黄などの公知の硫黄化合物および活性ゼラチンなども用いることができる。特にチオ硫酸塩、チオ尿素類とローダニン類が好ましい。
【0049】
セレン増感においては、不安定セレン化合物を用い、特公昭43ー13489号、同44ー15748号、特開平4ー25832号、同4ー109340号、同4ー271341号、同5ー40324号、同5ー11385号、特願平4ー202415号、同4ー330495号、同4ー333030号、同5ー4203号、同5ー4204号、同5ー106977号、同5ー236538号、同5ー241642号、同5ー286916号などに記載されているセレン化合物を用いる事が出来る。
【0050】
具体的には、コロイド状金属セレン、セレノ尿素類(例えば、N,Nージメチルセレノ尿素、トリフルオルメチルカルボニルートリメチルセレノ尿素、アセチルートリメチルセレノ尿素)、セレノアミド類(例えば、セレノアミド,N,Nージエチルフェニルセレノアミド)、フォスフィンセレニド類(例えば、トリフェニルフォスフィンセレニド、ペンタフルオロフェニルートリフェニルフォスフィンセレニド)、セレノフォスフェート類(例えば、トリーp−トリルセレノフォスフェート、トリ−n−ブチルセレノフォスフェート)、セレノケトン類(例えば、セレノベンゾフェノン)、イソセレノシアネート類、セレノカルボン酸類、セレノエステル類、ジアシルセレニド類などを用いればよい。またさらに、特公昭46ー4553号、同52ー34492号などに記載の非不安定セレン化合物、例えば亜セレン酸、セレノシアン酸塩、セレナゾール類、セレニド類なども用いる事が出来る。特に、フォスフィンセレニド類、セレノ尿素類とセレノシアン酸塩が好ましい。
【0051】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4ー224595号、同4ー271341号、同4ー333043号、同5ー303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208186号、同6−208184号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いる事が出来る。
【0052】
具体的には、フォスフィンテルリド類(例えば、ブチルージイソプロピルフォスフィンテルリド、トリブチルフォスフィンテルリド、トリブトキシフォスフィンテルリド、エトキシージフェニルフォスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニルーN−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニルーNーメチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニルーNーベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N´ージメチルエチレンテルロ尿素、N,N´ージフェニルエチレンテルロ尿素)テルロアミド類、テルロエステル類などを用いれば良い。特に、ジアシル(ジ)テルリド類とフォスフィンテルリド類が好ましく、特に特開平11−65021号段落番号0030に記載の文献に記載の化合物、特開平5−313284号中の一般式(II),(III),(IV)で示される化合物がより好ましい。
【0053】
特に本発明のカルコゲン増感においてはセレン増感とテルル増感が好ましく、特にテルル増感が好ましい。
【0054】
金増感においては、P.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金増感剤を用いることができる。具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレニドなどでありこれらにくわえて、米国特許第2642361号、同5049484号、同5049485号、同5169751号、同5252455号、ベルギー特許第691857などに記載の金化合物も用いることが出来る。またP.Grafkides著、Chimie et Physique Photographique(Paul Momtel社刊、1987年、第5版)、Research Disclosure誌307巻307105号に記載されている金以外の、白金、パラジュウム、イリジュウムなどの貴金属塩を用いる事も出来る。
【0055】
金増感は単独で用いることもできるが、前記のカルコゲン増感と組み合わせて用いることが好ましい。具体的には金硫黄増感、金セレン増感、金テルル増感、金硫黄セレン増感、金硫黄テルル増感、金セレンテルル増感、金硫黄セレンテルル増感である。
【0056】
本発明においては、化学増感は粒子形成後で塗布前であればいかなる時期でも可能であり、脱塩後、(1)分光増感前、(2)分光増感と同時、(3)分光増感後、(4)塗布直前等があり得る。
【0057】
本発明で用いられるカルコゲン増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、ハロゲン化銀1モル当たり10−8〜10−1モル、好ましくは10−7〜10−2モル程度を用いる。
同様に、本発明で用いられる金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モル〜10−2モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−3モルである。この乳剤を化学増感する環境条件としてはいかなる条件でも選択可能ではあるが、pAgとしては8以下、好ましくは7.0以下より6.5以下、とくに6.0以下、およびpAgが1.5以上、好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上の条件であり、pHとしては3〜10、好ましくは4〜9、温度としては20〜95℃、好ましくは25〜80℃程度である。
【0058】
本発明においてカルコゲン増感や金増感に加えて、さらに還元増感も併用することができる。とくにカルコゲン増感と併用するのが好ましい。
還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボランが好ましく、その他に塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることが好ましい。還元増感剤の添加は、結晶成長から塗布直前の調製工程までの感光乳剤製造工程のどの過程でもよい。また、乳剤のpHを8以上またはpAgを4以下に保持して熟成することにより還元増感することも好ましく、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することも好ましい。
還元増感剤の添加量としては、同様に種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり10−7モル〜10−1モル、より好ましくは10−6モル〜5×10−2モルである。
【0059】
本発明で用いるハロゲン化銀乳剤には、欧州特許公開第293,917号公報に示される方法により、チオスルフォン酸化合物を添加してもよい。
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は、金増感、カルコゲン増感、の少なくとも1つの方法で化学増感されていることが高感度の熱現像感光材料を設計する点から好ましい。
【0060】
9)1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物
本発明における熱現像感光材料は、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有することが好ましい。該化合物は、単独、あるいは前記の種々の化学増感剤と併用して用いられ、ハロゲン化銀の感度増加をもたらすことができる。
【0061】
本発明の熱現像感光材料に含有される1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物とは以下のタイプ1またはタイプ2で表される化合物である。
【0062】
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
【0063】
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具体例:28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0064】
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(1)(特開2003−114487号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(2)(特開2003−114487号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(3)(特開2003−114488号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(4)(特開2003−114488号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(5)(特開2003−114488号に記載の一般式(3)と同義)、一般式(6)(特開2003−75950号に記載の一般式(1)と同義)、一般式(7)(特開2003−75950号に記載の一般式(2)と同義)、一般式(8)(特願2003−25886号に記載の一般式(1)と同義)、または化学反応式(1)(特願2003−33446号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物のうち一般式(9)(特願2003−33446号に記載の一般式(3)と同義)で表される化合物が挙げられる。またこれらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0065】
【化5】
【0066】
一般式(1)及び(2)中、RED1、RED2は還元性基を表す。R1は炭素原子(C)とRED1とともに5員もしくは6員の芳香族環(芳香族ヘテロ環を含む)のテトラヒドロ体、もしくはヘキサヒドロ体に相当する環状構造を形成しうる非金属原子団を表す。R2、 R3、 R4は水素原子または置換基を表す。 Lv1、 Lv2は脱離基を表す。EDは電子供与性基を表す。
【0067】
【化6】
【0068】
一般式(3)、(4)及び(5)中、 Z1は窒素原子とベンゼン環の2つの炭素原子とともに6員環を形成しうる原子団を表す。R5、R6、R7、R9、R10、R11、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19は水素原子または置換基を表す。R20は水素原子または置換基を表すが、R20がアリール基以外の基を表すとき、R16、R17は互いに結合して芳香族環または芳香族ヘテロ環を形成する。R8、R12はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、m1は0〜3の整数を表し、 m2は0〜4の整数を表す。 Lv3 、Lv4 、Lv5は脱離基を表す。
【0069】
【化7】
【0070】
一般式(6)および(7)中、RED3、RED4は還元性基を表す。R21〜R30は水素原子または置換基を表す。Z2は−CR111R112−、−NR113−、または−O−を表す。 R111、R112はそれぞれ独立して水素原子または置換基を表す。 R113は水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
【0071】
【化8】
【0072】
一般式(8)中、RED5は還元性基でありアリールアミノ基またはヘテロ環アミノ基を表す。 R31は水素原子または置換基を表す。 Xはアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、またはヘテロ環アミノ基を表す。Lv6は脱離基でありカルボキシ基もしくはその塩または水素原子を表す。
【0073】
【化9】
【0074】
一般式(9)で表される化合物は脱炭酸を伴う2電子酸化が起こった後に、さらに酸化される事で化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、 R33は水素原子または置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員または6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。一般式(9)中、 R32、 R33、Z3は化学反応式(1)中のものと同義である。Z5はC−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。
【0075】
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、一般式(10)(特開2003−140287号に記載の一般式(1)と同義)、化学反応式(1)(特願2003−33446号に記載の化学反応式(1)と同義)で表される反応を起こしうる化合物であって一般式(11)(特願2003−33446号に記載の一般式(2)と同義)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0076】
【化10】
【0077】
一般式(10)中、RED6は1電子酸化される還元性基をあらわす。YはRED6が1電子酸化されて生成する1電子酸化体と反応して、新たな結合を形成しうる炭素−炭素2重結合部位、炭素−炭素3重結合部位、芳香族基部位、またはベンゾ縮環の非芳香族ヘテロ環部位を含む反応性基を表す。QはRED6とYを連結する連結基を表す。
【0078】
【化11】
【0079】
一般式(11)で表される化合物は酸化される事で化学反応式(1)で表される結合形成反応を起こす化合物である。化学反応式(1)中、R32、 R33は水素原子または置換基を表す。Z3はC=Cとともに5員または6員のヘテロ環を形成する基を表す。Z4はC=Cとともに5員または6員のアリール基またはヘテロ環基を形成する基を表す。 Z5はC−Cとともに5員または6員の環状脂肪族炭化水素基またはヘテロ環基を形成する基を表す。Mはラジカル、ラジカルカチオン、またはカチオンを表す。一般式(11)中、 R32、 R33、Z3、Z4は化学反応式(1)中のものと同義である。
【0080】
タイプ1、2の化合物のうち好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、または「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。ハロゲン化銀への吸着性基とは特開2003−156823号明細書の16頁右1行目〜17頁右12行目に記載の基が代表的なものである。分光増感色素の部分構造とは同明細書の17頁右34行目〜18頁左6行目に記載の構造である。
【0081】
タイプ1、2の化合物として、より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を少なくとも1つ有する化合物」である。さらに好ましくは「同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物」である。吸着性基が単一分子内に2個以上存在する場合には、それらの吸着性基は同一であっても異なっても良い。
【0082】
吸着性基として好ましくは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、およびベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、および5−メルカプトテトラゾール基である。
【0083】
吸着性基として、分子内に2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する場合もまた特に好ましい。ここにメルカプト基(−SH)は、互変異性化できる場合にはチオン基となっていてもよい。2つ以上のメルカプト基を部分構造として有する吸着性基(ジメルカプト置換含窒素ヘテロ環基など)の好ましい例としては、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基が挙げられる。
【0084】
また窒素またはリンの4級塩構造も吸着性基として好ましく用いられる。窒素の4級塩構造としては具体的にはアンモニオ基(トリアルキルアンモニオ基、ジアルキルアリール(またはヘテロアリール)アンモニオ基、アルキルジアリール(またはヘテロアリール)アンモニオ基など)または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。リンの4級塩構造としては、ホスホニオ基(トリアルキルホスホニオ基、ジアルキルアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基、アルキルジアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基、トリアリール(またはヘテロアリール)ホスホニオ基など)が挙げられる。より好ましくは窒素の4級塩構造が用いられ、さらに好ましくは4級化された窒素原子を含む5員環あるいは6員環の含窒素芳香族ヘテロ環基が用いられる。特に好ましくはピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基が用いられる。これら4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基は任意の置換基を有していてもよい。
【0085】
4級塩の対アニオンの例としては、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、BF4 −、PF6 −、Ph4B−等が挙げられる。分子内にカルボキシレート基等に負電荷を有する基が存在する場合には、それとともに分子内塩を形成していても良い。分子内にない対アニオンとしては、塩素イオン、ブロモイオンまたはメタンスルホネートイオンが特に好ましい。
【0086】
吸着性基として窒素またはリンの4級塩構造有するタイプ1、2で表される化合物の好ましい構造は一般式(X)で表される。
【0087】
【化12】
【0088】
一般式(X)においてP、Rはそれぞれ独立して増感色素の部分構造ではない窒素またはリンの4級塩構造を表す。Q1、Q2はそれぞれ独立して連結基を表し、具体的には単結合、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、−O−、−S−、−NRN−、−C(=O)−、−SO2−、−SO−、−P(=O)−の各基の単独、またはこれらの基の組み合わせからなる基を表す。ここにRNは水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。 Sはタイプ(1)または(2)で表される化合物から原子を一つ取り除いた残基である。iとjは1以上の整数であり、i+jが2〜6になる範囲から選ばれるものである。好ましくはiが1〜3、jが1〜2の場合であり、より好ましくはiが1または2、jが1の場合であり、特に好ましくはiが1、jが1の場合である。一般式(X)で表される化合物はその総炭素数が10〜100の範囲のものが好ましい。より好ましくは10〜70、さらに好ましくは11〜60であり、特に好ましくは12〜50である。
【0089】
以下にタイプ1、タイプ2で表される化合物の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
【化13】
【0091】
【化14】
【0092】
【化15】
【0093】
【化16】
【0094】
【化17】
【0095】
本発明のタイプ1およびタイプ2の化合物は乳剤調製時、感材製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することも出来る。添加位置として好ましくは、粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時、塗布前である。
【0096】
本発明のタイプ1およびタイプ2の化合物は水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高くまたは低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高くまたは低くして溶解し、これを添加しても良い。
【0097】
本発明のタイプ1およびタイプ2の化合物は乳剤層中に使用するのが好ましいが、乳剤層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。本発明の化合物の添加時期は増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10−9〜5×10−2モル、更に好ましくは1×10−8〜2×10−3モルの割合でハロゲン化銀乳剤層に含有する。
【0098】
10)吸着基と還元基を有する化合物
本発明においては、分子内にハロゲン化銀への吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物を含有させることが好ましい。本吸着性レドックス化合物は下記式(I)で表される化合物であることが好ましい。
【0099】
式(I) A−(W)n−B
[式(I)中、Aはハロゲン化銀に吸着可能な基(以後、吸着基と呼ぶ)を表し、Wは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Bは還元基を表す。]
【0100】
式(I)中、Aで表される吸着基とはハロゲン化銀に直接吸着する基、またはハロゲン化銀への吸着を促進する基であり、具体的には、メルカプト基(またはその塩)、チオン基(−C(=S)−)、窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基、スルフィド基、ジスルフィド基、カチオン性基、またはエチニル基等が挙げられる。
【0101】
吸着基としてメルカプト基(またはその塩)とは、メルカプト基(またはその塩)そのものを意味すると同時に、より好ましくは、少なくとも1つのメルカプト基(またはその塩)の置換したヘテロ環基またはアリール基またはアルキル基を表す。ここにヘテロ環基とは、少なくとも5員〜7員の、単環もしくは縮合環の、芳香族または非芳香族のヘテロ環基、例えばイミダゾール環基、チアゾール環基、オキサゾール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、トリアゾール環基、チアジアゾール環基、オキサジアゾール環基、テトラゾール環基、プリン環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリミジン環基、トリアジン環基等が挙げられる。また4級化された窒素原子を含むヘテロ環基でもよく、この場合、置換したメルカプト基が解離してメソイオンとなっていても良い。メルカプト基が塩を形成するとき、対イオンとしてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などのカチオン(Li+、Na+、K+、Mg2+、Ag+、Zn2+等)、アンモニウムイオン、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。
【0102】
吸着基としてのメルカプト基はさらにまた、互変異性化してチオン基となっていても良い。
吸着基としてチオン基とは、鎖状もしくは環状のチオアミド基、チオウレイド基、チオウレタン基、またはジチオカルバミン酸エステル基も含まれる。
【0103】
吸着基として窒素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれる少なくとも1つの原子を含むヘテロ環基とは、イミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基、または配位結合で銀イオンに配位し得る、”−S−”基または”−Se−”基または”−Te−”基または”=N−”基をヘテロ環の部分構造として有するヘテロ環基で、前者の例としてはベンゾトリアゾール基、トリアゾール基、インダゾール基、ピラゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、イミダゾール基、プリン基などが、後者の例としてはチオフェン基、チアゾール基、オキサゾール基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、チアジアゾール基、オキサジアゾール基、トリアジン基、セレノアゾール基、ベンゾセレノアゾール基、テルルアゾール基、ベンゾテルルアゾール基などが挙げられる。
【0104】
吸着基としてスルフィド基またはジスルフィド基とは、”−S−”または”−S−S−”の部分構造を有する基すべてが挙げられる。
【0105】
吸着基としてカチオン性基とは、4級化された窒素原子を含む基を意味し、具体的にはアンモニオ基または4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基を含む基である。4級化された窒素原子を含む含窒素ヘテロ環基とは、例えばピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などが挙げられる。吸着基としてエチニル基とは、−C≡CH基を意味し、該水素原子は置換されていてもよい。
上記の吸着基は任意の置換基を有していてもよい。
【0106】
さらに吸着基の具体例としては、さらに特開平11−95355号の明細書p4〜p7に記載されているものが挙げられる。
【0107】
式(I)中、Aで表される吸着基として好ましいものは、メルカプト置換ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、2−メルカプト−5−アミノチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズイミダゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基、2,4−ジメルカプトピリミジン基、2,4−ジメルカプトトリアジン基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基、2,5−ジメルカプト−1,3−チアゾール基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えばベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)であり、さらに好ましい吸着基は2−メルカプトベンズイミダゾール基、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール基である。
【0108】
式(I)中、Wは2価の連結基を表す。該連結基は写真性に悪影響を与えないものであればどのようなものでも構わない。例えば炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から構成される2価の連結基が利用できる。具体的には炭素数1〜20のアルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等)、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数2〜20のアルキニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基(例えばフェニレン基、ナフチレン基等)、−CO−、−SO2−、−O−、−S−、−NR1−、これらの連結基の組み合わせ等があげられる。ここでR1は水素原子、アルキル基、ヘテロ環基、アリール基を表わす。
Wで表される連結基は任意の置換基を有していてもよい。
【0109】
式(I)中、Bで表される還元基とは銀イオンを還元可能な基を表し、例えばホルミル基、アミノ基、アセチレン基やプロパルギル基などの3重結合基、メルカプト基、ヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシウレタン類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類(レダクトン誘導体を含む)、アニリン類、フェノール類(クロマン−6−オール類、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−オール類、アミノフェノール類、スルホンアミドフェノール類、およびハイドロキノン類、カテコール類、レゾルシノール類、ベンゼントリオール類、ビスフェノール類のようなポリフェノール類を含む)、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類等から水素原子を1つ除去した残基が挙げられる。もちろん、これらは任意の置換基を有していても良い。
【0110】
式(I)中、Bで表される還元基はその酸化電位を、藤嶋昭著「電気化学測定法」(150−208頁、技報堂出版)や日本化学会編著「実験化学講座」第4版(9巻282−344頁、丸善)に記載の測定法を用いて測定することができる。例えば回転ディスクボルタンメトリーの技法で、具体的には試料をメタノール:pH6.5 ブリトン−ロビンソン緩衝液(Britton−Robinson buffer)=10%:90%(容量%)の溶液に溶解し、10分間窒素ガスを通気した後、グラッシーカーボン製の回転ディスク電極(RDE)を作用電極に用い、白金線を対極に用い、飽和カロメル電極を参照電極に用いて、25℃、1000回転/分、20mV/秒のスイープ速度で測定できる。得られたボルタモグラムから半波電位(E1/2)を求めることができる。
【0111】
本発明のBで表される還元基は上記測定法で測定した場合、その酸化電位が約−0.3V〜約1.0Vの範囲にあることが好ましい。より好ましくは約−0.1V〜約0.8Vの範囲であり、特に好ましくは約0〜約0.7Vの範囲である。
【0112】
式(I)中、Bで表される還元基は好ましくはヒドロキシルアミン類、ヒドロキサム酸類、ヒドロキシウレア類、ヒドロキシセミカルバジド類、レダクトン類、フェノール類、アシルヒドラジン類、カルバモイルヒドラジン類、3−ピラゾリドン類から水素原子を1つ除去した残基である。
【0113】
本発明の式(I)の化合物は、その中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基またはポリマー鎖が組み込まれているものでもよい。またポリマーとしては、例えば特開平1−100530号に記載のものが挙げられる。
【0114】
本発明の式(I)の化合物はビス体、トリス体であっても良い。本発明の式(I)の化合物の分子量は好ましくは100〜10000の間であり、より好ましくは120〜1000の間であり、特に好ましくは150〜500の間である。
【0115】
以下に本発明の式(I)の化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0116】
【化18】
【0117】
さらに欧州特許1308776A2号明細書P73〜P87に記載の具体的化合物1〜30、1’’−1〜1’’−77も本発明の吸着基と還元性基を有する化合物の好ましい例として挙げられる。
【0118】
本発明の化合物は公知の方法にならって容易に合成することが出来る。本発明の式(I)の化合物は、一種類の化合物を単独で用いてもよいが、同時に2種以上の化合物を用いることも好ましい。2種類以上の化合物を用いる場合、それらは同一層に添加しても、別層に添加してもよく、またそれぞれ添加方法が異なっていてもよい。
【0119】
本発明の式(I)の化合物は、ハロゲン化銀乳剤層に添加されることが好ましく、乳剤調製時に添加することがより好ましい。乳剤調製時に添加する場合、その工程中のいかなる場合に添加することも可能であり、その例を挙げると、ハロゲン化銀の粒子形成工程、脱塩工程の開始前、脱塩工程、化学熟成の開始前、化学熟成の工程、完成乳剤調製前の工程などを挙げることができる。またこれらの工程中の複数回にわけて添加することもできる。また乳剤層に使用するのが好ましいが、乳剤層とともに隣接する保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。
好ましい添加量は、上述した添加法や添加する化合物種に大きく依存するが、一般には感光性ハロゲン化銀1モル当たり、1×10−6〜1モル、好ましくは1×10−5〜5×10−1モルさらに好ましくは1×10−4〜1×10−1モルである。
【0120】
本発明の式(I)の化合物は、水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することができる。この際、酸または塩基によってpHを適当に調整してもよく、また界面活性剤を共存させてもよい。さらに乳化分散物として高沸点有機溶媒に溶解させて添加することもできる。また、固体分散物として添加することもできる。
【0121】
11)増感色素
本発明に適用できる増感色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、所望の波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感できるもので、露光光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。本発明の熱現像感光材料は特に600nm以上900nm以下、または300nm以上500nm以下に分光感度ピークを持つように分光増感されていることが好ましい。増感色素及び添加法については、特開平11−65021号の段落番号0103〜0109、特開平10−186572号一般式(II)で表される化合物、特開平11−119374号の一般式(I) で表される色素及び段落番号0106、米国特許第5,510,236号、同第3,871,887号実施例5に記載の色素、特開平2−96131号、特開昭59−48753号に開示されている色素、欧州特許公開第0803764A1号の第19ページ第38行〜第20ページ第35行、特願2000−86865号、特願2000−102560号、特願2000−205399号等に記載されている。これらの増感色素は単独で用いてもよく、2種以上組合せて用いてもよい。
【0122】
本発明における増感色素の添加量は、感度やカブリの性能に合わせて所望の量にすることができるが、感光性層のハロゲン化銀1モル当たり10−6〜1モルが好ましく、さらに好ましくは10−4〜10−1モルである。
【0123】
本発明は分光増感効率を向上させるため、強色増感剤を用いることができる。本発明に用いる強色増感剤としては、欧州特許公開第587,338号、米国特許第3,877,943号、同第4,873,184号、特開平5−341432号、同11−109547号、同10−111543号等に記載の化合物が挙げられる。
【0124】
12)ハロゲン化銀の併用
本発明に用いられる熱現像感光材料中の感光性ハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの)併用してもよい。感度の異なる感光性ハロゲン化銀を複数種用いることで階調を調節することができる。これらに関する技術としては特開昭57−119341号、同53−106125号、同47−3929号、同48−55730号、同46−5187号、同50−73627号、同57−150841号などが挙げられる。感度差としてはそれぞれの乳剤で0.2logE以上の差を持たせることが好ましい。
【0125】
13)ハロゲン化銀と有機銀塩の混合
有機銀塩は、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて、有機酸の少なくとも一部を有機酸のアルカリ金属ソープにした後、水溶性銀塩(例えば硝酸銀)を加えることによって作成されるが、感光性ハロゲン化銀はそのどの段階でも添加することができる。主な混合段階としては、A)有機酸に予めハロゲン化銀を加えておき、アルカリ金属塩を加え、次に水溶性銀塩を添加する、B)有機酸のアルカリ金属ソープを作成後にハロゲン化銀を混合し、その後、水溶性銀塩を添加する、C)有機酸のアルカリ金属ソープを作成し、その一部を銀塩化してからハロゲン化銀を加え、その後に残りの銀塩化を行う、D)有機銀塩を作成した後に、ハロゲン化銀を混合する4工程がある。好ましいのは、B)、またはC)である。
【0126】
B)とC)においては、予め調製された感光性ハロゲン化銀を有機銀塩の調製の過程で混合し、ハロゲン化銀を含む有機銀塩の分散物を調製することが重要である。すなわち感光性ハロゲン化銀は非感光性有機銀塩の存在しないところで形成された後、有機銀塩の調整過程で混合される。有機銀塩に対してハロゲン化剤を添加することによってハロゲン化銀を形成する方法では十分な感度が達成できない場合があるからである。
D)としてハロゲン化銀と有機銀塩を混合する方法としては、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があげられる。いずれの方法でも本発明の効果を好ましく得ることができる。
【0127】
ハロゲン化銀を含む有機銀塩は微粒子に分散して用いることが好ましい。微粒子に分散する手段として、高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、あるいは高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
【0128】
本発明の感光性ハロゲン化銀の粒子は、非感光性有機銀塩の存在しないところで形成され、化学増感されることが特に好ましい。有機銀塩に対してハロゲン化剤を添加することによってハロゲン化銀を形成する方法では十分な感度が達成できない場合があるからである。
ハロゲン化銀と有機銀塩を混合する方法としては、別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を高速撹拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があげられる。いずれの方法でも本発明の効果を好ましく得ることができる。
【0129】
14)ハロゲン化銀の塗布液への混合
本発明のハロゲン化銀の画像形成層塗布液中への好ましい添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳”液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0130】
1−2.造核剤
本発明に用いられる造核剤について説明する。
本発明に係る造核剤とは、初期現像の結果、現像生成物との反応で新たに現像を誘発し得る化合物を生成し得る化合物をいう。従来、印刷製版用途に適した超硬調感光材料に造核剤を用いることは知られていた。超硬調感光材料は、平均階調が10以上であり、一般撮影用感光材料としては不適であり、特に高い診断能が要求される医療用途には不適であった。また、超硬調感光材料は、粒状が荒く、鮮鋭度に欠けるため、医療診断用途には全く適性がなかった。本発明に係る造核剤は、従来の超硬調感光材料における造核剤とは効果において全く異なる。本発明に係る造核剤は、階調を硬くするものではない。本発明に係る造核剤は、非感光性有機銀塩に対して感光性ハロゲン化銀粒子数を極めて少なくしても十分に現像を起こさせることができる化合物である。その機構は、明確ではないが、本発明に係る造核剤を用いて熱現像を行うと、最大濃度部で感光性ハロゲン化銀粒子数よりも現像銀粒子数が多いことが明らかになり、本発明に係る造核剤は、ハロゲン化銀粒子が存在しない箇所に新たな現像点(現像核)を形成する作用を有していると推定される。
【0131】
造核剤としては、下記一般式〔H〕で表されるヒドラジン誘導体化合物、下記一般式(G)で表せるビニル化合物、下記一般式(P)で表される4級オニウム化合物、式(A)、式(B)、一般式(C)で表される環状オレフィン化合物等が好ましい例として挙げられる。
【0132】
【化19】
【0133】
【化20】
【0134】
【化21】
【0135】
一般式〔H〕において、式中、A0はそれぞれ置換基を有してもよい脂肪族基、芳香族基、複素環基または−G0−D0基を、B0はブロッキング基を表し、A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基、スルホニル基またはオキザリル基を表す。ここで、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表し、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。好ましいD0としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。
【0136】
一般式〔H〕において、A0で表される脂肪族基は、好ましくは炭素数1〜30のものであり、特に炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、t−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基が挙げられ、これらは更に適当な置換基(例えば、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホキシ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アシルアミノ基、ウレイド基等)で置換されていてもよい。
【0137】
一般式〔H〕において、A0で表される芳香族基は、単環または縮合環のアリール基が好ましく、例えばベンゼン環またはナフタレン環が挙げられ、A0で表される複素環基としては、単環または縮合環で窒素、硫黄、酸素原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含む複素環が好ましく、例えばピロリジン環、イミダゾール環、テトラヒドロフラン環、モルホリン環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チオフェン環、フラン環が挙げられる。A0の芳香族基、複素環基及び−G0−D0基は置換基を有していてもよい。A0として、特に好ましいものはアリール基及び−G0−D0基である。
【0138】
また、一般式〔H〕において、A0は耐拡散基またはハロゲン化銀吸着基を、少なくとも一つ含むことが好ましい。耐拡散基としては、カプラー等の不動性写真用添加剤にて常用されるバラスト基が好ましく、バラスト基としては、写真的に不活性であるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基等が挙げられ、置換基部分の炭素数の合計は8以上であることが好ましい。
【0139】
一般式〔H〕において、ハロゲン化銀吸着促進基としては、チオ尿素、チオウレタン基、メルカプト基、チオエーテル基、チオン基、複素環基、チオアミド複素環基、メルカプト複素環基或いは特開昭64−90439号に記載の吸着基等が挙げられる。
【0140】
一般式〔H〕において、B0はブロッキング基を表し、好ましくは−G0−D0基であり、G0は−CO−基、−COCO−基、−CS−基、−C(=NG1D1)−基、−SO−基、−SO2−基または−P(O)(G1D1)−基を表す。好ましいG0としては−CO−基、−COCO−基が挙げられ、G1は単なる結合手、−O−基、−S−基または−N(D1)−基を表し、D1は脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表し、分子内に複数のD1が存在する場合、それらは同じであっても異なってもよい。D0は水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、好ましいD0としては水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。A1、A2はともに水素原子、または一方が水素原子で他方はアシル基(アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、トルエンスルホニル基等)、またはオキザリル基(エトキザリル基等)を表す。
【0141】
一般式〔H〕で表される化合物の具体例としては、特開平2002−131864号の化学式番号12〜化学式番号18のH−1〜H−35の化合物、化学式番号20〜化学式番号26のH−1−1〜H−4−5の化合物が上げられるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
これら本発明の一般式(H−1)〜(H−4)で表される化合物は、公知の方法により容易に合成することができる。例えば、米国特許第5,464,738号、同5,496,695号を参考にして合成することができる。
【0143】
その他に好ましく用いることのできるヒドラジン誘導体は、米国特許第5,545,505号カラム11〜20に記載の化合物H−1〜H−29、米国特許第5,464,738号カラム9〜11に記載の化合物1〜12である。これらのヒドラジン誘導体は公知の方法で合成することができる。
【0144】
一般式(G)について説明する。一般式(G)において、XとRはシスの形で表示してあるが、XとRがトランスの形も一般式(G)に含まれる。この事は具体的化合物の構造表示においても同様である。
【0145】
一般式(G)において、Xは電子求引性基を表し、Wは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、チオオキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基を表す。
【0146】
Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、銀塩等)、アミノ基、アルキルアミノ基、環状アミノ基(例えば、ピロリジノ基)、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環基(5〜6員の含窒素ヘテロ環、例えばベンツトリアゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等)、ウレイド基、スルホンアミド基を表す。XとW、XとRは、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。XとWが形成する環としては、例えばピラゾロン、ピラゾリジノン、シクロペンタンジオン、β−ケトラクトン、β−ケトラクタム等が挙げられる。
【0147】
一般式(G)について更に説明すると、Xの表す電子求引性基とは、置換基定数σpが正の値をとりうる置換基のことである。具体的には、置換アルキル基(ハロゲン置換アルキル等)、置換アルケニル基(シアノビニル等)、置換・未置換のアルキニル基(トリフルオロメチルアセチレニル、シアノアセチレニル等)、置換アリール基(シアノフェニル等)、置換・未置換のヘテロ環基(ピリジル、トリアジニル、ベンゾオキサゾリル等)、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基(アセチル、トリフルオロアセチル、ホルミル等)、チオアセチル基(チオアセチル、チオホルミル等)、オキサリル基(メチルオキサリル等)、オキシオキサリル基(エトキサリル等)、チオオキサリル基(エチルチオオキサリル等)、オキサモイル基(メチルオキサモイル等)、オキシカルボニル基(エトキシカルボニル等)、カルボキシル基、チオカルボニル基(エチルチオカルボニル等)、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基(エトキシスルホニル等)、チオスルホニル基(エチルチオスルホニル等)、スルファモイル基、オキシスルフィニル基(メトキシスルフィニル等)、チオスルフィニル基(メチルチオスルフィニル等)、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基(N−アセチルイミノ等)、N−スルホニルイミノ基(N−メタンスルホニルイミノ等)、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基が挙げられるが、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、インモニウム基等が環を形成したヘテロ環状のものも含まれる。σp値として0.30以上の置換基が特に好ましい。
【0148】
Wとして表されるアルキル基としては、メチル、エチル、トリフルオロメチル等が、アルケニル基としてはビニル、ハロゲン置換ビニル、シアノビニル等が、アルキニル基としてはアセチレニル、シアノアセチレニル等が、アリール基としてはニトロフェニル、シアノフェニル、ペンタフルオロフェニル等が、ヘテロ環基としてはピリジル、ピリミジル、トリアジニル、スクシンイミド、テトラゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、ベンゾオキサゾリル等が挙げられる。Wとしてはσp値が正の電子求引性基が好ましく、更にはその値が0.30以上のものが好ましい。
【0149】
上記Rの置換基の内、好ましくはヒドロキシル基、メルカプト基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、更に好ましくはヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、ヘテロ環基が挙げられ、特に好ましくはヒドロキシル基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩が挙げられる。
【0150】
また上記X及びWの置換基の内、置換基中にチオエーテル結合を有するものが好ましい。
【0151】
一般式(G)で表される化合物の具体例としては、特開平2002−131864号の化学式番号27〜化学式番号50の1−1〜92−7が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
一般式(P)において、Qは窒素原子または燐原子を表し、R1、R2、R3及びR4は、各々水素原子または置換基を表し、X−はアニオンを表す。尚、R1〜R4は互いに連結して環を形成してもよい。
【0153】
R1〜R4で表される置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(アリル基、ブテニル基等)、アルキニル基(プロパルギル基、ブチニル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、複素環基(ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、スルホラニル基等)、アミノ基等が挙げられる。
【0154】
R1〜R4が互いに連結して形成しうる環としては、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、キヌクリジン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
【0155】
R1〜R4で表される基はヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルキル基、アリール基等の置換基を有してもよい。R1、R2、R3及びR4としては、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0156】
X−が表すアニオンとしては、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等の無機及び有機のアニオンが挙げられる。
【0157】
一般式(P)の構造として、特開平2002−131864号の段落番号0153〜段落番号0163に記載されている構造がさらに好ましい。
【0158】
一般式(P)の具体的な化合物は、特開平2002−131864号の化学式番号53〜化学式番号62のP−1〜P−52、T−1〜T−18が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
上記4級オニウム化合物は公知の方法を参照して合成でき、例えば上記テトラゾリウム化合物はChemical Reviews vol.55 p.335〜483に記載の方法を参考にできる。
【0160】
次に式(A)および(B)で表される化合物について詳しく説明する。式(A)においてZ1は、−Y1−C(=CH−X1)−C(=O)−と共に5員〜7員の環構造を形成しうる非金属原子団を表す。Z1は好ましくは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、および水素原子から選ばれる原子団で、これらの中から選ばれる数個の原子が、互いに単結合ないしは2重結合によって連結されて、−Y1−C(=CH−X1)−C(=O)−と共に5員〜7員の環構造を形成する。Z1は置換基を有していてもよく、またZ1自体が、芳香族もしくは非芳香族の炭素環、或いは芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環の一部であってもよく、この場合、Z1が−Y1−C(=CH−X1)−C(=O)−と共に形成する5員〜7員の環構造は、縮環構造を形成することになる。
【0161】
式(B)においてZ2は、−Y2−C(=CH−X2)−C(Y3)=N−と共に5員〜7員の環構造を形成しうる非金属原子団を表す。Z2は好ましくは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、および水素原子から選ばれる原子団で、これらの中から選ばれる数個の原子が、互いに単結合ないしは2重結合によって連結されて、−Y2−C(=CH−X2)−C(Y3)=N−と共に5員〜7員の環構造を形成する。Z2は置換基を有していてもよく、またZ2自体が、芳香族もしくは非芳香族の炭素環、或いは芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環の一部であってもよく、この場合、Z2が−Y2−C(=CH−X2)−C(Y3)=N−と共に形成する5員〜7員の環構造は、縮環構造を形成することになる。
【0162】
Z1およびZ2が置換基を有する場合、その置換基の例としては、以下に挙げたものの中から選ばれる。即ち、代表的な置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、N−置換の含窒素ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基、スタニル基等が挙げられる。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
【0163】
次にY3について説明する。式(B)においてY3は水素原子または置換基を表すが、Y3が置換基を表すとき、その置換基としては、具体的に以下の基が挙げられる。即ち、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、(アルキル、アリール、もしくはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、(アルキル、アリール、もしくはヘテロ環)チオ基等である。これら置換基は任意の置換基で置換されていてもよく、具体的にはZ1またはZ2が有していてもよい置換基の例が挙げられる。
【0164】
式(A)および式(B)において、X1およびX2は、各々ヒドロキシ基(もしくはその塩)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、セチルオキシ基、t−ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、p−t−ペンチルフェノキシ基、p−t−オクチルフェノキシ基等)、ヘテロ環オキシ基(例えばベンゾトリアゾリル−5−オキシ基、ピリジニル−3−オキシ基等)、メルカプト基(もしくはその塩)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、ドデシルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−ドデシルフェニルチオ基等)、ヘテロ環チオ基(例えば1−フェニルテトラゾイル−5−チオ基、2−メチル−1−フェニルトリアゾリル−5−チオ基、メルカプトチアジアゾリルチオ基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(例えばメチルアミノ基、プロピルアミノ基、オクチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、アリールアミノ基(例えばアニリノ基、ナフチルアミノ基、o−メトキシアニリノ基等)、ヘテロ環アミノ基(例えばピリジルアミノ基、ベンゾトリアゾール−5−イルアミノ基等)、アシルアミノ基(例えばアセトアミド基、オクタノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、スルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ドデシルスルホンアミド基等)、またはヘテロ環基を表す。
【0165】
ここでヘテロ環基とは、芳香族または非芳香族の、飽和もしくは不飽和の、単環もしくは縮合環の、置換もしくは無置換のヘテロ環基で、例えば、N−メチルヒダントイル基、N−フェニルヒダントイル基、スクシンイミド基、フタルイミド基、N,N’−ジメチルウラゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、インダゾリル基、モルホリノ基、4,4−ジメチル−2,5−ジオキソ−オキサゾリル基等が挙げられる。
【0166】
またここで塩とはアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム)もしくはアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム)の塩、銀塩、あるいはまた4級アンモニウム塩(テトラエチルアンモニウム塩、ジメチルセチルベンジルアンモニウム塩等)、4級ホスホニウム塩等を表す。式(A)および式(B)において、Y1およびY2は−C(=O)−または−SO2−を表す。
【0167】
式(A)および式(B)で表される化合物の好ましい範囲については、特開平11−231459号の段落番号0027〜段落番号0043に記載されている。式(A)および式(B)の具体的化合物例は、特開平11−231459号の表1〜表8の1〜110の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0168】
次に本発明の一般式(C)で表される化合物について詳しく説明する。一般式(C)において、X1は酸素原子、硫黄原子、窒素原子を表す。 X1が窒素原子の場合にはX1とZ1の結合は単結合でも2重結合であってもよく、単結合の場合には窒素原子は水素原子あるいは任意の置換基を有していてもよい。この置換基としては例えばアルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)スルホニル基等が挙げられる。 Y1は−C(=O)−、−C(=S)−、−SO−、−SO2−、−C(=NR3)−、−(R4)C=N−で表される基を表す。Z1はX1,Y1を含む5〜7員環を形成しうる非金属原子団を表す。 その環を形成する原子団は2〜4個の金属原子以外の原子からなる原子団で、これらの原子は単結合あるいは2重結合で結合されていてもよく、これらは水素原子あるいは任意の置換基(例えばアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アミノ基、アルケニル基)を有していてもよい。Z1がX1、Y1を含む5〜7員環を形成するとき、その環は飽和または不飽和のヘテロ環であり、単環であっても縮合環を有していてもよい。この場合の縮合環は、Y1がC(=NR3)、(R4)C=Nで表される基であるとき、R3またはR4がZ1の有する置換基と結合して形成されるものであってもよい。
【0169】
一般式(C)においてR1, R2, R3, R4は、それぞれ水素原子または置換基を表す。ただしR1とR2が互いに結合して環状構造を形成することはない。
【0170】
R1,R2が1価の置換基を表す時、1価の置換基としては、以下の基が挙げられる。
【0171】
例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環(ヘテロ環)基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基またはその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、水酸基(ヒドロキシ基)またはその塩、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)アミノ基、N−置換の含窒素ヘテロ環基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基またはその塩、(アルキル,アリール,またはヘテロ環)チオ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスホリル基、リン酸アミドもしくはリン酸エステル構造を含む基、シリル基、スタニル基等が挙げられる。これら置換基は、これら1価の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0172】
次にR3、R4 が置換基を表す時、置換基としてはハロゲン原子を除いてR1、R2が有していてもよい置換基と同じものが挙げられる。 R3、R4 はさらにZ1と連結して縮合した環を形成していてもよい。
【0173】
次に一般式(C)で表される化合物のうち、好ましいものについて説明する。一般式(C)においてZ1は好ましくはX1、Y1とともに5〜7員環を形成し、2〜4個の炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子から選ばれる原子からなる原子団であり、Z1がX1、Y1とともに形成するヘテロ環は好ましくは総炭素数3〜40の、より好ましくは3〜25の、最も好ましくは3〜20のヘテロ環であり、Z1は好ましくは少なくとも1つの炭素原子を含む。
【0174】
一般式(C)においてY1として好ましくは−C(=O)−,−C(=S)−,−SO2−,−(R4)C=N−であり、特に好ましくは−C(=O)−,−C(=S)−,−SO2−であり、最も好ましくは−C(=O)−である。
【0175】
一般式(C)においてR1、R2が1価の置換基を表す場合には、 R1、R2で表される1価の置換基として好ましくは、総炭素数0〜25の以下の基、すなわちアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、ウレイド基、イミド基、アシルアミノ基、ヒドロキシ基あるいはその塩、メルカプト基あるいはその塩、または電子求引性の置換基である。ここに電子求引性の置換基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取りうる置換基のことであり、具体的には、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホンアミド基、イミノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アシル基、ホルミル基、ホスホリル基、カルボキシ基(またはその塩)、スルホ基(またはその塩)、飽和もしくは不飽和のヘテロ環基、アルケニル基、アルキニル基、アシルオキシ基、アシルチオ基、スルホニルオキシ基、またはこれら電子求引性基で置換されたアリール基等が挙げられる。これらの基は任意の置換基を有していてもよい。
【0176】
一般式(C)においてR1、R2が1価の置換基を表す場合には、さらに好ましくはアルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、ウレイド基、イミド基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基あるいはその塩、メルカプト基あるいはその塩等である。一般式(C)においてR1、R2は特に好ましくは、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基あるいはその塩、メルカプト基あるいはその塩等である。一般式(C)において最も好ましくはR1とR2のどちらか一方が水素原子で他方がアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環基、ヒドロキシ基あるいはその塩、メルカプト基あるいはその塩である。
【0177】
一般式(C)においてR3が置換基を表す場合には、好ましくは総炭素数1〜25のアルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホスルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アミノ基等が挙げられる。特に好ましくはアルキル基、アリール基である。
【0178】
一般式(C)においてR4が置換基を表す場合には、好ましくは総炭素数1〜25のアルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホスルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基等が用いられる。特に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基等が挙げられる。Y1がC(R4)=Nを表すとき、X1、Y1の置換した炭素原子と結合するのはY1中の炭素原子である。
【0179】
一般式(C)の具体的な化合物は、特開平11−133546号記載の化学式番号6〜化学式番号18のA−1〜A−230で表されるが、これらの化合物に限定されない。
【0180】
上記造核剤の添加方法は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルセバケートあるいはトリ(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムやオレオイル−N−メチルタウリン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム等の界面活性剤を添加して機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。このとき、油滴の粘度や屈折率の調整の目的でαメチルスチレンオリゴマーやポリ(t−ブチルアクリルアミド)等のポリマーを添加することも好ましい。
【0181】
また、固体微粒子分散法としては、造核剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm〜1000ppmの範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
特に好ましいのは、造核剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜2μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0182】
上記造核剤の中で、現像時間が20秒以下という迅速現像で処理される感光材料では、一般式(H)、(P)で表される化合物を使うことが好ましく、特に好ましくは一般式(H)で表される化合物が好ましい。
低カブリが求められる感光材料では一般式(G)、(A)、(B)、(C)で表される化合物を使うことが好ましく、特に好ましくは、一般式(A),(B)で表される化合物である。また、種々の環境条件(温度、湿度)で使われた場合に環境条件に対する写真性能の変化が少ない感光材料には一般式(C)で表される化合物を使うことが好ましい。
上記造核剤の中で好ましい具体的化合物を下記に挙げるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0183】
【化22】
【0184】
【化23】
【0185】
本発明の造核剤は、画像形成層または画像形成層に隣接する層に添加できるが、画像形成層に添加するのが好ましい。造核剤の添加量は有機銀塩1モルに対し10−5〜1モル、好ましくは10−4〜5×10−1モルの範囲である。造核剤は1種類のみを添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0186】
本発明の熱現像感光材料においては、感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層は2層以上あってもよく、2層以上ある場合は、造核剤をいずれの画像形成層に含んでも良い。好ましくは、造核剤を含む画像形成層と造核剤を含まない画像形成層の少なくとも2層の画像形成層を有することが好ましい。
【0187】
1−3.非感光性有機銀塩
本発明に用いる非感光性有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された感光性ハロゲン化銀及び還元剤の存在下で、80℃或いはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は還元できる銀イオンを供給い得る任意の有機物質であってよい。このような非感光性の有機銀塩については、特開平10−62899号の段落番号0048〜0049、欧州特許公開第0803764A1号の第18ページ第24行〜第19ページ第37行、欧州特許公開第0962812A1号、特開平11−349591号、特開2000−7683号、同2000−72711号等に記載されている。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。有機銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを含む。本発明においては、これら有機銀塩の中でも、ベヘン酸銀含有率30モル%以上90モル%以下の有機酸銀を用いることが好ましい。特にベヘン酸銀含有率は40モル%以上70モル%以下であることが好ましい。残りの有機銀塩としては、長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩、好ましくは炭素数10〜30、特に15〜28の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が好ましい。
【0188】
有機銀塩の形状としては特に制限はなく、立方体、直方体、棒状、針状、平板状、りん片状でよいが、中でも立方体、直方体、棒状、針状のものが比較的好ましい。立方体、直方体、棒状、針状の有機銀塩とは、次のようにして定義する。有機酸銀塩を電子顕微鏡で観察し、有機銀塩粒子の形状を直方体と近似し、この直方体の辺を一番短い方からa,b,cとする(a≦b≦c)。立方体粒子とは、0.9≦a/c≦1.0の範囲にある粒子をいう。直方体粒子とは、0.2≦a/c<0.9かつ0.2≦b/c<1.0の範囲の粒子をいう。棒状粒子とは、0.1≦a/c<0.2かつ0.1≦b/c<0.3の範囲にある粒子をいう。針状粒子とは、a/c<0.1かつb/c<0.1の粒子をいう。本発明でより好ましい有機銀塩の形状は、針状若しくは棒状の粒子で、針状粒子が最も好ましい。
【0189】
有機銀塩の粒子サイズが小さいほうが好ましい。これは、ハロゲン化銀写真感光材料分野で銀塩結晶粒子のサイズとその被覆力の間にある反比例の関係はよく知られており、この関係は本発明における熱現像感光材料においても成立し、熱現像感光材料の画像形成部である有機銀塩粒子が大きいと被覆力が小さく、画像濃度が低くなることを意味するためである。有機銀塩の粒子サイズとして具体的には、短軸0.01μm以上0.20μm以下、長軸0.10μm以上5.0μm以下であることが好ましく、短軸0.01μm以上0.15μm以下、長軸0.10μm以上4.0μm以下であることがより好ましい。有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の100分率が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。
【0190】
有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積荷重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積荷重平均直径で割った値の100分率(変動係数)が好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては市販のレーザー光散乱型粒子サイズ測定装置を用いることができる。
【0191】
有機銀塩は、水溶媒で粒子形成され、その後、乾燥、MEK等の溶媒への分散をする事により調製される。乾燥は気流式フラッシュジェットドライヤーにおいて酸素分圧15vol%以下で行うことが好ましく、15vol%以下0.01vol%以上で行うことがより好ましく、10vol%以下0.01vol%以上で行うことがさらに好ましい。
【0192】
有機銀塩は所望の量で使用できるが、銀塗布量として0.1〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1〜3g/m2である。
【0193】
1−4.還元剤
本発明の熱現像感光材料は、有機銀塩のための還元剤を含む。該還元剤は、銀イオンを金属銀に還元できる任意の物質(好ましくは有機物)でよい。該還元剤の例は、特開平11―65021号、段落番号0043〜0045や、欧州特許0803764号、p.7、34行〜p.18、12行に記載されている。
【0194】
本発明に用いられる好ましい還元剤は、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤、あるいはビスフェノール系還元剤である。特に次の一般式(R)で表される化合物が好ましい。
【0195】
一般式(R)
【化24】
【0196】
一般式(R)においては、R11およびR11’は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1およびX1’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
【0197】
各置換基について詳細に説明する。
1)R11およびR11’
R11およびR11’は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ハロゲン原子等があげられる。
【0198】
2)R12およびR12’、X1およびX1’
R12およびR12’は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
X1およびX1’は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
【0199】
3)L
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。
R13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。
【0200】
アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
【0201】
4)好ましい置換基
R11およびR11’として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11およびR11’としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0202】
R12およびR12’として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
【0203】
X1およびX1’は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0204】
Lは好ましくは−CHR13−基である。
【0205】
R13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。
【0206】
R13が水素原子である場合、R12およびR12’は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
【0207】
R13が炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基である場合、R12およびR12’はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
【0208】
R11、R11’およびR12、R12’とがいずれもメチル基である場合、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合、R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0209】
上記還元剤は、R11、R11’およびR12およびR12’、およびR13の組合せにより、種々の熱現像性能が異なる。2種以上の還元剤を種々の混合比率で併用することによってこれらの熱現像性能を調整することができるので、目的によっては還元剤を2種類以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0210】
以下に本発明の一般式(R)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0211】
【化25】
【0212】
【化26】
【0213】
本発明において還元剤の添加量は0.01g/m2〜5.0g/m2であることが好ましく、0.1g/m2〜3.0g/m2であることがより好ましく、画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5モル%〜50モル%含まれることが好ましく、10モル%〜40モル%で含まれることがさらに好ましい。
【0214】
本発明の還元剤は、有機銀塩、および感光性ハロゲン化銀を含む画像形成層、およびその隣接層に添加することができるが、画像形成層に含有させることがより好ましい。
【0215】
本発明の還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
【0216】
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0217】
また、固体微粒子分散法としては、還元剤を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作成する方法が挙げられる。好ましくは、サンドミルを使った分散方法である。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることができる。
【0218】
特に好ましいのは、還元剤の固体粒子分散法であり、平均粒子サイズ0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μm、より好ましくは0.1μm〜1μmの微粒子して添加するのが好ましい。本願においては他の固体分散物もこの範囲の粒子サイズに分散して用いるのが好ましい。
【0219】
1−5.ヨウ化銀錯形成剤
本発明において、感光性ハロゲン化銀に由来する紫外可視域の分光吸収強度を熱現像処理により実質的に低下させることのできる化合物を用いることが好ましく、特にヨウ化銀錯形成剤が好ましく用いられる。
該ヨウ化銀錯形成剤は、化合物中の窒素原子又は硫黄原子の少なくとも一つが配位原子(電子供与体:ルイス塩基)として銀イオンに電子供与するルイス酸塩基反応に寄与することが可能である。錯体の安定性は、逐次安定度定数又は全安定度定数で定義されるが、銀イオン、ヨウ化物イオン、及び該銀錯形成剤の3者の組合せに依存する。一般的な指針として、分子内キレート環形成によるキレート効果や、配位子の酸塩基解離定数の増大などの手段によって、大きな安定度定数を得ることが可能である。
【0220】
感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルは、透過法あるいは反射法により測定することができる。熱現像感光材料に添加された他の化合物に由来する吸収が感光性ハロゲン化銀の吸収と重なる場合には、差スペクトルあるいは溶媒による他の化合物の除去などの手段を単独で用いるか組み合わせることにより、感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルを観察できる。
【0221】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤としては、少なくとも一つの窒素原子を含有する5〜7員の複素環化合物が好ましい。置換基としてメルカプト基、スルフィド基、チオン基を有さない化合物であるとき、該含窒素5−7員複素環は飽和であっても不飽和であってもよく、その他の置換基を有していてもよい。また、複素環上の置換基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
好ましい5−7員複素環化合物の例としては、ピロール、ピリジン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、インドリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾイミダゾール、1H−イミダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、ナフチリジン、プリン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、インドリン、イソインドリンなどを挙げることができる。更に好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、イソインドール、インドリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾイミダゾール、1H−イミダゾール、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、1,8−ナフチリジン、1,10−フェナントロリン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジンなどを挙げることができる。特に好ましくはピリジン、イミダゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、フタラジン、トリアジン、1,8−ナフチリジン又は1,10−フェナントロリンなどを挙げることができる。
【0222】
これらの環は置換基を有していてもよく、該置換基としては写真性に対して悪影響を及ぼさないものであれば、どのような置換基でも良い。好ましい例として、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基又はその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基若しくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシ若しくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル,アリール,又はヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシ若しくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキル若しくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキル又はアリール)スルホニル基、(アルキル又はアリール)スルフィニル基、スルホ基又はその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基又はその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。なおここで活性メチン基とは2つの電子求引性基で置換されたメチン基を意味し、ここに電子求引性基とはアシル基、アルコシキカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)を意味する。ここで2つの電子求引性基は互いに結合して環状構造をとっていてもよい。また塩とは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの陽イオンや、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンなどの有機の陽イオンを意味する。これら置換基は、これら置換基でさらに置換されていてもよい。
これら複素環には他の環が更に縮合していても良い。また、置換基がアニオン基(例えば、−CO2 −、−SO3 −、−S−など)の場合、含窒素複素環は陽イオン(例えば、ピリジニウム、1,2,4−トリアゾリウムなど)となって分子内塩を形成していても良い。
【0223】
複素環化合物がピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、フタラジン、トリアジン、ナフチリジン又はフェナントロリン誘導体であるとき、該化合物の酸解離平衡における含窒素複素環部分の共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中25℃での酸解離定数(pKa)は3ないし8であることが更に好ましい。より好ましくは、pKaが4ないし7である。
このような複素環化合物としては、ピリジン、ピリダジン又はフタラジン誘導体であることが好ましく、ピリジン又はフタラジン誘導体であることが特に好ましい。
【0224】
これらの複素環化合物が置換基としてメルカプト基、スルフィド基、チオン基を有する場合、ピリジン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール、チアジアゾール又はオキサジアゾール誘導体であることが好ましく、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアゾール誘導体であることが特に好ましい。
【0225】
例えば、該ヨウ化銀錯形成剤として、下記一般式(1)若しくは一般式(2)で表される化合物を利用することができる。
【0226】
【化27】
【0227】
一般式(1)において、R11及びR12は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、R21及びR22は水素原子又は置換基を表す。ただし、R11とR12とがともに水素原子であること、R21とR22とがともに水素原子であることはない。ここでいう置換基としては前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。
【0228】
また、下記一般式(3)で表される化合物も好ましく利用できる。
【0229】
一般式(3)
【化28】
【0230】
一般式(3)において、R31−R35は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R31−R35で表される置換基としては前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。一般式(3)で表される化合物が置換基を有する場合、好ましい置換位置は、R32−R34である。R31−R35は互いに結合して、飽和又は不飽和の環を形成していてもよい。好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、(アルコキシ若しくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基等である。
【0231】
一般式(3)で表される化合物は、ピリジン環部分の共役酸のテトラヒドロフラン/水(3/2)混合溶液中での25℃での酸解離定数(pKa)が3ないし8であることが好ましく、4ないし7であることが特に好ましい。
【0232】
さらに一般式(4)で表される化合物も好ましい。
【0233】
一般式(4)
【化29】
【0234】
一般式(4)において、R41−R44は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R41−R44は互いに結合して、飽和又は不飽和の環を形成していてもよい。R41−R44で表される置換基としては前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。好ましい基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基並びにベンゾ縮環によるフタラジン環の形成が挙げられる。一般式(4)で表される化合物の窒素原子の隣接炭素にヒドロキシル基が置換した場合には、ピリダジノンとの間に平衡が存在する。
【0235】
一般式(4)で表される化合物は、下記一般式(5)で表されるフタラジン環を形成していることが更に好ましく、このフタラジン環は更に、少なくとも一つの置換基を有していていることが特に好ましい。一般式(5)におけるR51−R56の例としては、前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。更に好ましい置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。
【0236】
【化30】
【0237】
また、下記一般式(6)で表される化合物も好ましい形態である。
【0238】
【化31】
【0239】
一般式(6)において、R61−R63は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R62で表される置換基の例としては、前述の含窒素5−7員複素環型のヨウ化銀錯形成剤の置換基として説明したものが挙げられる。
【0240】
好ましく用いられる化合物として下記一般式(7)で表される化合物が挙げられる。
【0241】
【化32】
【0242】
一般式(7)において、R71−R72は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。Lは2価の連結基を表す。nは0又は1を表す。R71−R72で表される置換基としては、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基並びにこれらを含有する複合置換基などが例として挙げられる。Lで表される2価の連結基は、好ましくは1ないし6原子分、さらに好ましくは1ないし3原子分の長さの連結基であり、更に置換基を有していてもよい。
【0243】
好ましく用いられる化合物のさらに一つは一般式(8)で表される化合物である。
【0244】
【化33】
【0245】
一般式(8)において、R81−R84は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R81−R84で表される置換基としては、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基などが例として挙げられる。
【0246】
上記ヨウ化銀錯形成剤の中で更に好ましいものは、一般式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)で表される化合物であり、一般式(3)、(5)で表される化合物が特に好ましい。
【0247】
以下に、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0248】
【化34】
【0249】
【化35】
【0250】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、従来知られている色調剤の機能を果たす場合は、色調剤と共通の化合物であることもできる。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、色調剤とともに併用して用いることができる。また、2種以上のヨウ化銀錯形成剤を併用しても良い。
【0251】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、固体状態で膜中に存在させるなど、感光性ハロゲン化銀とは分離した状態で膜中に存在せしめることが好ましい。隣接層に添加することも好ましい。本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、熱現像温度に加熱された時に融解するように化合物の融点を適切な範囲に調整することが好ましい。
【0252】
本発明において、熱現像後の感光性ハロゲン化銀の紫外可視吸収スペクトルの吸収強度が熱現像前と比較して80%以下となることが好ましく、40%以下となることが更に好ましく、10%以下となることが特に好ましい。
【0253】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0254】
また、固体微粒子分散法としては、本発明におけるヨウ化銀錯形成剤の粉末を水等の適当な溶媒中にボールミル、コロイドミル、振動ボールミル、サンドミル、ジェットミル、ローラーミルあるいは超音波によって分散し、固体分散物を作製する方法が挙げられる。尚、その際に保護コロイド(例えば、ポリビニルアルコール)、界面活性剤(例えばトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム(3つのイソプロピル基の置換位置が異なるものの混合物)などのアニオン性界面活性剤)を用いてもよい。上記ミル類では分散媒体としてジルコニア等のビーズが使われるのが普通であり、これらのビーズから溶出するZr等が分散物中に混入することがある。分散条件にもよるが通常は1ppm以上1000ppm以下の範囲である。感材中のZrの含有量が銀1g当たり0.5mg以下であれば実用上差し支えない。
水分散物には防腐剤(例えばベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩)を含有させることが好ましい。
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は固体分散物として使用することが好ましい。
【0255】
本発明におけるヨウ化銀錯形成剤は、感光性ハロゲン化銀に対して、1モル%以上5000モル%以下の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%以上1000モル%以下の範囲で、更に好ましくは50モル%以上300モル%以下の範囲である。
【0256】
1−6.フタル酸、およびその誘導体
本発明においてはヨウ化銀錯形成剤とともに、フタル酸、およびその誘導体より選ばれる化合物を含有するのが好ましい。本発明に用いられるフタル酸、およびその誘導体としては、下記の一般式(PH)で表される化合物が好ましい。
【0257】
【化36】
【0258】
式中、Tはハロゲン原子(フッ素、臭素、ヨウド)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基を表し、kは0〜4の整数を表す。kが2以上の時、複数のkは互いに同一であっても異なっても良い。kは0〜2が好ましく、0,1がより好ましい。
【0259】
一般式(PH)の化合物は、酸のままで用いても良いし、あるいは塗布液への添加の容易性、pHの調整の点から適当な塩にして用いても良い。塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩などを用いることができる。好ましいのは、アルカリ金属塩(Li,Na,Kなど)、アンモニウム塩である。
【0260】
以下に、本発明に用いられるフタル酸、およびその誘導体の具体例を挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0261】
【化37】
【0262】
本発明においては、フタル酸、およびその誘導体は塗布される銀1モル当たり、1.0×10−4モル〜1モル、好ましくは1.0×10−3モル〜0.5モル、より好ましくは2.0×10−3モル〜0.2モルである。
【0263】
1−7.現像促進剤
本発明の熱現像感光材料では、現像促進剤を添加することができる。添加する場合に好ましい現像促進剤は、特開2000−267222号明細書や特開2000−330234号明細書等に記載の一般式(A)で表されるスルホンアミドフェノール系の化合物、特開平2001−92075記載の一般式(II)で表されるヒンダードフェノール系の化合物、特開平10−62895号明細書や特開平11−15116号明細書等に記載の一般式(I)、特開2002−156727号の一般式(D)や特願2001−074278号明細書に記載の一般式(1)で表されるヒドラジン系の化合物、特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物である。これらの現像促進剤は還元剤に対して0.1〜20モル%の範囲で使用され、好ましくは0.5〜10モル%の範囲で、より好ましくは1〜5モル%の範囲である。感材への導入方法は還元剤同様の方法があげられ、有機溶媒に溶解して添加するのが好ましい。
本発明においては上記現像促進剤の中でも、特開2002−156727号明細書に記載の一般式(D)で表されるヒドラジン系の化合物および特開2001−264929号明細書に記載されている一般式(2)で表されるフェノール系またはナフトール系の化合物がより好ましい。
【0264】
本発明の特に好ましい現像促進剤は下記一般式(A−1)および(A−2)で表される化合物である。
一般式(A−1)
Q1−NHNH−Q2
(式中、Q1は炭素原子で−NHNH−Q2と結合する芳香族基、またはヘテロ環基を表し、Q2はカルバモイル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホニル基、またはスルファモイル基を表す。)
【0265】
一般式(A−1)において、Q1で表される芳香族基またはヘテロ環基としては5〜7員の不飽和環が好ましい。好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,2,5−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、1,2,5−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、チオフェン環などが好ましく、さらにこれらの環が互いに縮合した縮合環も好ましい。
【0266】
これらの環は置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルバモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、およびアシル基を挙げることができる。これらの置換基が置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、カルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、およびアシルオキシ基を挙げることができる。
【0267】
Q2で表されるカルバモイル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のカルバモイル基であり、例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−sec−ブチルカルバモイル、N−オクチルカルバモイル、N−シクロヘキシルカルバモイル、N−tert−ブチルカルバモイル、N−ドデシルカルバモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)カルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−{3−(2,4−tert−ペンチルフェノキシ)プロピル}カルバモイル、N−(2−ヘキシルデシル)カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−(4−ドデシルオキシフェニル)カルバモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)カルバモイル、N−ナフチルカルバモイル、N−3−ピリジルカルバモイル、N−ベンジルカルバモイルが挙げられる。
【0268】
Q2で表されるアシル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアシル基であり、例えば、ホルミル、アセチル、2−メチルプロパノイル、シクロヘキシルカルボニル、オクタノイル、2−ヘキシルデカノイル、ドデカノイル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、4−ドデシルオキシベンゾイル、2−ヒドロキシメチルベンゾイルが挙げられる。Q2で表されるアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜50、より好ましくは炭素数6〜40のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0269】
Q2で表されるアリールオキシカルボニル基は、好ましくは炭素数7〜50、より好ましくは炭素数7〜40のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、4−オクチルオキシフェノキシカルボニル、2−ヒドロキシメチルフェノキシカルボニル、4−ドデシルオキシフェノキシカルボニルが挙げられる。Q2で表されるスルホニル基は、好ましくは炭素数1〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、ブチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−ヘキサデシルスルホニル、3−ドデシルオキシプロピルスルホニル、2−オクチルオキシ−5−tert−オクチルフェニルスルホニル、4−ドデシルオキシフェニルスルホニルが挙げられる。
【0270】
Q2で表されるスルファモイル基は、好ましくは炭素数0〜50、より好ましくは炭素数6〜40のスルファモイル基で、例えば、無置換スルファモイル、N−エチルスルファモイル基、N−(2−エチルヘキシル)スルファモイル、N−デシルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N−{3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピル}スルファモイル、N−(2−クロロ−5−ドデシルオキシカルボニルフェニル)スルファモイル、N−(2−テトラデシルオキシフェニル)スルファモイルが挙げられる。Q2で表される基は、さらに、置換可能な位置に前記のQ1で表される5〜7員の不飽和環の置換基の例として挙げた基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それ等の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0271】
次に、式(A−1)で表される化合物の好ましい範囲について述べる。Q1としては5〜6員の不飽和環が好ましく、ベンゼン環、ピリミジン環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、1,3,4−チアジアゾール環、1,2,4−チアジアゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環、1,2,4−オキサジアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、およびこれらの環がベンゼン環もしくは不飽和ヘテロ環と縮合した環が更に好ましい。また、Q2はカルバモイル基が好ましく、特に窒素原子上に水素原子を有するカルバモイル基が好ましい。
【0272】
一般式(A−2)
【0273】
【化38】
【0274】
一般式(A−2)においてR1はアルキル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基を表す。R2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、炭酸エステル基を表す。R3、R4はそれぞれ一般式(A−1)の置換基例で挙げたベンゼン環に置換可能な基を表す。R3とR4は互いに連結して縮合環を形成してもよい。
R1は好ましくは炭素数1〜20のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基など)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、ベンソイルアミノ基、メチルウレイド基、4−シアノフェニルウレイド基など)、カルバモイル基(n−ブチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−クロロフェニルカルバモイル基、2,4−ジクロロフェニルカルバモイル基など)でアシルアミノ基(ウレイド基、ウレタン基を含む)がより好ましい。
R2は好ましくはハロゲン原子(より好ましくは塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフトキシ基など)である。
R3は好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基であり、ハロゲン原子がもっとも好ましい。R4は水素原子、アルキル基、アシルアミノ基が好ましく、アルキル基またはアシルアミノ基がより好ましい。これらの好ましい置換基の例はR1と同様である。R4がアシルアミノ基である場合R4はR3と連結してカルボスチリル環を形成することも好ましい。
【0275】
一般式(A−2)においてR3とR4が互いに連結して縮合環を形成する場合、縮合環としてはナフタレン環が特に好ましい。ナフタレン環には一般式(A−1)で挙げた置換基例と同じ置換基が結合していてもよい。一般式(A−2)がナフトール系の化合物であるとき、R1はカルバモイル基であることが好ましい。その中でもベンゾイル基であることが特に好ましい。R2はアルコキシ基、アリールオキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることが特に好ましい。
【0276】
以下、本発明の現像促進剤の好ましい具体例を挙げる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0277】
【化39】
【0278】
1−8.水素結合性化合物
本発明では、還元剤の芳香族性の水酸基(−OH)、あるいはアミノ基を有する場合はアミノ基と水素結合を形成することが可能な基を有する非還元性の化合物を併用することが好ましい。
【0279】
水素結合を形成しうる基としては、ホスホリル基、スルホキシド基、スルホニル基、カルボニル基、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレイド基、3級アミノ基、含窒素芳香族基などが挙げられる。その中でも好ましいのはホスホリル基、スルホキシド基、アミド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレタン基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)、ウレイド基(但し、>N−H基を持たず、>N−Ra(RaはH以外の置換基)のようにブロックされている。)を有する化合物である。
【0280】
本発明で、特に好ましい水素結合性化合物は下記一般式(D)で表される化合物である。
【0281】
一般式(D)
【化40】
【0282】
一般式(D)においてR21ないしR23は各々独立にアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基またはヘテロ環基を表し、これらの基は無置換であっても置換基を有していてもよい。
【0283】
R21ないしR23が置換基を有する場合の置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、ホスホリル基などがあげられ、置換基として好ましいのはアルキル基またはアリール基でたとえばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−オクチル基、フェニル基、4−アルコキシフェニル基、4−アシルオキシフェニル基などがあげられる。
【0284】
R21ないしR23のアルキル基としては具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、2−フェノキシプロピル基などがあげられる。
【0285】
アリール基としてはフェニル基、クレジル基、キシリル基、ナフチル基、4−t−ブチルフェニル基、4−t−オクチルフェニル基、4−アニシジル基、3,5−ジクロロフェニル基などが挙げられる。
【0286】
アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−メチルシクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0287】
アリールオキシ基としてはフェノキシ基、クレジルオキシ基、イソプロピルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、ナフトキシ基、ビフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0288】
アミノ基としてはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−メチル−N−ヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
【0289】
R21ないしR23としてはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。本発明の効果の点ではR21ないしR23のうち少なくとも一つ以上がアルキル基またはアリール基であることが好ましく、二つ以上がアルキル基またはアリール基であることがより好ましい。また、安価に入手する事ができるという点ではR21ないしR23が同一の基である場合が好ましい。
【0290】
以下に本発明における一般式(D)の化合物をはじめとする水素結合性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0291】
【化41】
【0292】
【化42】
【0293】
水素結合性化合物の具体例は上述の他に特願2000−192191号、同2000−194811号に記載のものがあげられる。
【0294】
本発明の水素結合性化合物は、還元剤と同様に溶液形態、乳化分散形態、固体分散微粒子分散物形態で塗布液に含有せしめ、感光材料中で使用することができる。本発明の化合物は、溶液状態でフェノール性水酸基を有する化合物と水素結合による錯体を形成しており、還元剤と本発明の一般式(A)の化合物との組み合わせによっては錯体として結晶状態で単離することができる。
【0295】
このようにして単離した結晶粉体を固体分散微粒子分散物として使用することは安定した性能を得る上で特に好ましい。また、還元剤と本発明の水素結合性化合物を粉体で混合し、適当な分散剤を使って、サンドグラインダーミル等で分散時に錯形成させる方法も好ましく用いることができる。
【0296】
本発明の水素結合性化合物は還元剤に対して、1モル%〜200モル%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10モル%〜150モル%の範囲で、さらに好ましくは30モル%〜100モル%の範囲である。
【0297】
1−9.バインダー
本発明に用いられるバインダーは、天然または合成樹脂、例えば、ゼラチン、ポリピニノレブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、セルロースアセテート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ブチルエチルセルロース、メタクリレートコポリマー、無水マレイン酸エステルコポリマー、ポリスチレン及びブタジエン−スチレンコポリマーなどから任意のもの使用することができる。特に、画像形成層では、バインダーとしてポリビニルブチラールを含むことが好ましく、具体的にはバインダーとしてポリビニルブチラールを画像形成層のバインダー全組成分に対して50質量%以上使用することである。当然ながら、コポリマー及びターポリマーも含まれる。ポリビニルブチラールの好ましい総量は画像形成層のバインダー全組成分に対して50質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上100質量%以下である。バインダーのTgは40〜90℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは50〜80℃である。ここでTgとはガラス転移温度である。
【0298】
バインダー総量は、例えば、画像形成層の成分をその層中に保持するのに十分な量で使用される。すなわち、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で使用される。効果的な範囲は、当業者が適切に決定することができる。少なくとも有機銀塩を保持する場合の目安として、バインダーと有機銀塩との割合は質量比で15:1〜1:3、特に8:1〜1:2の範囲が好ましい。
【0299】
1−10.かぶり防止剤
1)有機ポリハロゲン化合物
本発明はカブリ防止剤として下記一般式(H)で表される化合物を含有するのが好ましい。
【0300】
一般式(H) Q−(Y)n−C(Z1)(Z2)X
【0301】
一般式(H)において、Qはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、Yは2価の連結基を表し、nは0または1を表し、Z1およびZ2はハロゲン原子を表し、Xは水素原子または電子求引性基を表す。
【0302】
Qは好ましくはハメットの置換基定数σpが正の値をとる電子求引性基で置換されたフェニル基を表す。ハメットの置換基定数に関しては、Journal of Medicinal Chemistry,1973,Vol.16,No.11,1207−1216 等を参考にすることができる。
【0303】
このような電子求引性基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子(σp値:0.06)、塩素原子(σp値:0.23)、臭素原子(σp値:0.23)、ヨウ素原子(σp値:0.18))、トリハロメチル基(トリブロモメチル(σp値:0.29)、トリクロロメチル(σp値:0.33)、トリフルオロメチル(σp値:0.54))、シアノ基(σp値:0.66)、ニトロ基(σp値:0.78)、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基(例えば、メタンスルホニル(σp値:0.72))、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基(例えば、アセチル(σp値:0.50)、ベンゾイル(σp値:0.43))、アルキニル基(例えば、C≡CH(σp値:0.23))、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル(σp値:0.45)、フェノキシカルボニル(σp値:0.44))、カルバモイル基(σp値:0.36)、スルファモイル基(σp値:0.57)、スルホキシド基、ヘテロ環基、ホスホリル基等があげられる。
σp値としては好ましくは0.2〜2.0の範囲で、より好ましくは0.4から1.0の範囲である。
【0304】
電子求引性基として好ましいのは、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基、カルボキシル基、アルキルまたはアリールカルボニル基、およびアリールスルホニル基であり、特に好ましくはカルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルホスホリル基であり、カルバモイル基が最も好ましい。
【0305】
Xは、好ましくは電子求引性基であり、より好ましくはハロゲン原子、脂肪族・アリールもしくは複素環スルホニル基、脂肪族・アリールもしくは複素環アシル基、脂肪族・アリールもしくは複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基であり、特に好ましくはハロゲン原子である。
ハロゲン原子の中でも、好ましくは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、更に好ましくは塩素原子、臭素原子であり、特に好ましくは臭素原子である。
【0306】
Yは好ましくは−C(=O)−、−SO−または−SO2 −を表し、より好ましくは−C(=O)−、−SO2 −であり、特に好ましくは−SO2 −である。nは、0または1を表し、好ましくは1である。
【0307】
以下に本発明の一般式(H)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0308】
【化43】
【0309】
【化44】
【0310】
本発明の一般式(H)で表される化合物は画像形成層の非感光性銀塩1モル当たり、10−4モル〜0.8モルの範囲で使用することが好ましく、より好ましくは10−3モル〜0.1モルの範囲で、さらに好ましくは5×10−3モル〜0.05モルの範囲で使用することが好ましい。
特に、本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀を用いた場合、十分なかぶり防止効果を得るためにはこの一般式(H)の化合物の添加量は重要であり、5×10−3モル〜0.03モルの範囲で使用することが最も好ましい。
【0311】
本発明において、一般式(H)で表される化合物を感光材料に含有せしめる方法としては、前記還元剤の含有方法に記載の方法が挙げられる。
【0312】
一般式(H)で表される化合物の融点は200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは170℃以下がよい。
【0313】
本発明に用いられるその他の有機ポリハロゲン化物として、特開平11−65021号の段落番号0111〜0112に記載の特許に開示されているものが挙げられる。特に特願平11−87297号の式(P)で表される有機ハロゲン化合物、特開平10−339934号の一般式(II)で表される有機ポリハロゲン化合物、特願平11−205330号に記載の有機ポリハロゲン化合物が好ましい。
【0314】
2)その他のかぶり防止剤
その他のカブリ防止剤としては特開平11−65021号段落番号0113の水銀(II)塩、同号段落番号0114の安息香酸類、特開2000−206642号のサリチル酸誘導体、特開2000−221634号の式(S)で表されるホルマリンスカベンジャー化合物、特開平11−352624号の請求項9に係るトリアジン化合物、特開平6−11791号の一般式(III)で表される化合物、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン等が挙げられる。
【0315】
本発明に用いることのできるカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体特開平10−62899号の段落番号0070、欧州特許0803764A1号の第20頁第57行〜第21頁第7行に記載の特許のもの、特開平9−281637号、同9−329864号記載の化合物が挙げられる。
【0316】
本発明における熱現像感光材料はカブリ防止を目的としてアゾリウム塩を含有しても良い。アゾリウム塩としては、特開昭59−193447号記載の一般式(XI)で表される化合物、特公昭55−12581号記載の化合物、特開昭60−153039号記載の一般式(II)で表される化合物が挙げられる。アゾリウム塩は感光材料のいかなる部位に添加しても良いが、添加層としては感光性層を有する面の層に添加することが好ましく、有機銀塩含有層に添加することがさらに好ましい。
【0317】
アゾリウム塩の添加時期としては塗布液調製のいかなる工程で行っても良く、有機銀塩含有層に添加する場合は有機銀塩調製時から塗布液調製時のいかなる工程でも良いが有機銀塩調製後から塗布直前が好ましい。アゾリウム塩の添加法としては粉末、溶液、微粒子分散物などいかなる方法で行っても良い。また、増感色素、還元剤、色調剤など他の添加物と混合した溶液として添加しても良い。
【0318】
本発明においてアゾリウム塩の添加量としてはいかなる量でも良いが、銀1モル当たり1×10−6モル以上2モル以下が好ましく、1×10−3モル以上0.5モル以下がさらに好ましい。
【0319】
1−11.その他の添加剤
1)メルカプト、ジスルフィド、およびチオン類
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができ、特開平10−62899号の段落番号0067〜0069、特開平10−186572号の一般式(I)で表される化合物及びその具体例として段落番号0033〜0052、欧州特許公開第0803764A1号の第20ページ第36〜56行、特願平11−273670号等に記載されている。中でもメルカプト置換複素芳香族化合物が好ましい。
【0320】
2)色調剤
本発明の熱現像感光材料では色調剤の添加が好ましく、色調剤については、特開平10−62899号の段落番号0054〜0055、欧州特許0803764A1号のp.21,23行〜48行、特開2000−356317号や特願2000−187298号に記載されており、特に、フタラジノン類(フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメトキシフタラジノンおよび2,3−ジヒドロー1,4−フタラジンジオン);フタラジノン類とフタル酸類(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸、フタル酸二アンモニウム、フタル酸ナトリウム、フタル酸カリウムおよびテトラクロロ無水フタル酸)の組み合わせ;フタラジン類(フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩;例えば4−(1−ナフチル)フタラジン、6−イソプロピルフタラジン、6−t−ブチルフタラジン、6−クロロフタラジン、5.7−ジメトキシフタラジン、および2,3−ジヒドロフタラジン)が好ましく、特に、ヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀との組み合わせにおいては、フタラジン類とフタル酸類の組み合わせが好ましい。
【0321】
好ましいフタラジン類の添加量としては、有機銀塩1モル当たり0.01モル〜0.3モルであり、さらに好ましくは0.02〜0.2モル、特に好ましくは0.02〜0.1モルである。この添加量は、本発明のヨウ化銀含有率の高い組成のハロゲン化銀乳剤で課題である現像促進にとって重要な要因であり、適正な添加量の選択によって十分な現像性と低いかぶりの両立が可能となる。
【0322】
3)可塑剤、潤滑剤
本発明の感光性層に用いることのできる可塑剤および潤滑剤については特開平11−65021号段落番号0117に記載されている。滑り剤については特開平11−84573号段落番号0061〜0064や特願平11−106881号段落番号0049〜0062記載されている。
【0323】
4)染料、顔料
本発明の感光性層には色調改良、レーザー露光時の干渉縞発生防止、イラジエーション防止の観点から各種染料や顔料(例えばC.I.Pigment Blue 60、C.I.Pigment Blue 64、C.I.Pigment Blue 15:6)を用いることができる。これらについてはWO98/36322号、特開平10−268465号、同11−338098号等に詳細に記載されている。
【0324】
5)造核促進剤
本発明の造核剤とともに造核促進剤を用いることが出来る。造核促進剤については特開平11−65021号公報段落番号0102、特開平11−223898号公報段落番号0194〜0195に記載されている。
【0325】
造核促進剤としては、五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩を用いることが好ましい。五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、メタリン酸(塩)、ピロリン酸(塩)、オルトリン酸(塩)、三リン酸(塩)、四リン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)などを挙げることができる。特に好ましく用いられる五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩としては、オルトリン酸(塩)、ヘキサメタリン酸(塩)を挙げることができる。具体的な塩としてはオルトリン酸ナトリウム、オルトリン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸アンモニウムなどが挙げられる。
五酸化二リンが水和してできる酸またはその塩の使用量(感光材料1m2あたりの塗布量)は感度やカブリなどの性能に合わせて所望の量でよいが、0.1〜500mg/m2が好ましく、0.5〜100mg/m2がより好ましい。
【0326】
1−12.塗布液の調製
本発明の画像形成層塗布液の調製温度は30℃以上65℃以下がよく、さらに好ましい温度は35℃以上60℃未満、より好ましい温度は35℃以上55℃以下である。また、ポリマーラテックス添加直後の画像形成層塗布液の温度が30℃以上65℃以下で維持されることが好ましい。
【0327】
2.層構成、その他の構成成分
【0328】
本発明の熱現像感光材料は、支持体の片面にのみ画像形成層を有する「片面型」であっても、両面に画像形成層を有する両面型であっても良い。
(両面型熱現像感光材料)
本発明の熱現像感光材料は、X線増感スクリーンを用いてX線画像を記録する画像形成方法に好ましく用いることができる。
該画像形成方法は、X線増感スクリーンの主発光ピーク波長と同一の波長を有し、かつ半値幅が15±5nmである単色光で露光し、熱現像処理した後、露光面とは逆側の画像形成層を除去して得られる画像の濃度が最低濃度に0.5を加えた濃度となるのに必要な露光量が、0.005ルクス・秒以上0.07ルクス・秒以下である熱現像感光材料を用いることが好ましい。
これらの熱現像感光材料を用いて画像形成する工程は以下の工程よりなる。
(a)該熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、
(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、
(c)該被検体にエネルギーレベルが25kVp〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、
(d)該熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、
(e)取り出した該熱現像感光材料を90℃〜180℃の範囲の温度で加熱する工程。
【0329】
本発明における組立体において使用する熱現像感光材料は、X線によって階段露光し、熱現像して得られる画像が、光学濃度(D)及び露光量(logE)の座標軸単位長の等しい直交座標上の特性曲線において、最小濃度(Dmin )+濃度0.1の点と最小濃度(Dmin )+濃度0.5の点とで作る平均ガンマ(γ)が0.5〜0.9であり、そして最小濃度(Dmin )+濃度1.2の点と最小濃度(Dmin )+濃度1.6の点とで作る平均ガンマ(γ)が3.2〜4.0である特性曲線を有するように調製されていることが好ましい。本発明のX線撮影系において、このような特性曲線を有する熱現像感光材料を用いると、脚部が非常に延びていて、かつ中濃度部ではガンマの高いといった優れた写真特性のX線画像が得られる。この写真特性により、X線透過量の少ない縦隔部、心陰影等の低濃度域の描写性が良好になり、かつX線透過量の多い肺野部の画像においても視覚し易い濃度となり、またコントラストも良好になるとの利点がある。
【0330】
上記のような好ましい特性曲線を有する熱現像感光材料は、たとえば、両側の画像形成層のそれぞれを、互いに異なった感度を持つ二層以上のハロゲン化銀画像形成層から構成するような方法で容易に製造することができる。特に、上層には高感度の乳剤を用い、下層には低感度で硬調な写真特性を有する乳剤を用いて、画像形成層を形成することが好ましい。このような二層からなる画像形成層を用いる場合における各層間のハロゲン化銀乳剤の感度差は1.5倍以上20倍以下、好ましくは2倍以上15倍以下である。なお、それぞれの層の形成に用いられる乳剤の量の比率は、用いられる乳剤の感度差およびカバリングパワーにより異なる。一般には、感度差が大きい程、高感度側の乳剤の使用比率を下げる。たとえば、感度差が2倍であるときの好ましい各乳剤の使用比率は、カバリングパワーがほぼ等しい場合には、銀量換算で、高感度乳剤対低感度乳剤として1:20以上1:50以下の範囲の値となるように調整される。
【0331】
本発明の熱現像感光材料の製造に利用される乳剤増感法や各種添加剤、構成材料等に関しては特に制限はなく、たとえば、特開平2−68539号公報、特開平2−103037号公報、および特開平2−115837号公報に記載の各種の技術を利用することができる。
【0332】
クロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平2−68539号公報、第13頁左下欄1行目から同第14頁左下欄9行 目に記載の染料もしくは染料と媒染剤を用いることができる。
【0333】
次に、本発明の蛍光増感紙(放射線増感スクリーン)について説明する。放射線増感スクリーンは、基本構造として、支持体と、その片面に形成された蛍光体層とからなる。蛍光体層は、蛍光体が結合剤(バインダ)中に分散されてなる層である。なお、この蛍光体層の支持体とは反対側の表面(支持体に面していない側の表面)には一般に、透明な保護膜が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0334】
本発明において、好ましい蛍光体としては、以下に示すものが挙げられる。
タングステン酸塩系蛍光体(CaWO4、MgWO4、CaWO4:Pb等)、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体〔Y2O2S:Tb、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、(Y,Gd)2O2S:Tb、(Y,Gd)O2S:Tb,Tm等〕、テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体(YPO4:Tb、GdPO4:Tb、LaPO4:Tb等)、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tb、LaOBr:Tb,Tm、LaOCl:Tb、LaOCl:Tb,Tm、LaOBr:Tb、GdOBr:Tb、GdOCl:Tb等)、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tm、LaOCl:Tm等)、硫酸バリウム系蛍光体〔BaSO4:Pb、BaSO4:Eu2+、(Ba,Sr)SO4:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属燐酸塩系蛍光体〔(Ba2PO4)2:Eu2+、(Ba2PO4)2:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体〔BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、BaFCl:Eu2+,Tb、BaFBr:Eu2+,Tb、BaF2・BaCl・KCl:Eu2+、(Ba,Mg)F2・BaCl・KCl:Eu2+等〕、沃化物系蛍光体(CsI:Na、CsI:Tl、NaI、KI:Tl等)、硫化物系蛍光体〔ZnS:Ag(Zn,Cd)S:Ag、(Zn,Cd)S:Cu、(Zn,Cd)S:Cu,Al等〕、燐酸ハフニウム系蛍光体(HfP2O7:Cu等)、但し本発明に用いられる蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線の照射によって可視又は近紫外領域の発光を示す蛍光体であれば使用できる。
【0335】
本発明で用いる蛍光増感紙は、傾斜粒径構造で蛍光体を充填することが好ましい。特に表面保護層側に大粒径の蛍光体粒子を塗布し、支持体側に小粒径の蛍光体粒子を塗布することが好ましく、小粒径のものは0.5μm〜2.0μmで、大粒径のものは10μm〜30μmの範囲が好ましい。
【0336】
(片面型熱現像感光材料)
本発明における片面型熱現像感光材料は、特に乳房撮影用X線感光材料として用いるのが好ましい。
本目的に用いられる片面型熱現像感光材料は、得られる画像のコントラストを適切な範囲に設計することがが重要である。
【0337】
本発明における熱現像感光材料の特性曲線を求める方法について説明する。乳房撮影においては、通常低圧X線を発するMoターゲット管で露光するが、実質的にGd2 O2 S:Tbからなる蛍光体を用いた増感スクリーンを用いる場合に限り、タングステン・ターゲット管から生じたX線を線源にして距離法によりX線露光量を変化させる方法で特性曲線を求めても実質的に変わらない。
【0338】
具体的に本発明の測定には、三相の電力供給で50KVpで運転されるタングステン・ターゲット管から生じたX線を、厚み3mmのアルミニウム板を透過させたものを用いた。市販のUM−Fineスクリーンと測定する感材を密着させ、富士写真フィルム(株)社製ECMAカセッテに装填した。X線管球から順番に、カセッテ天板、フィルム、スクリーンとなるように配置してX線照射を行った。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.15の幅でステップ露光した。
【0339】
露光後のフィルムは、定められた条件で熱現像される。その後濃度を測定し、照射線露光量の対数を横軸にし、縦軸に光学濃度をとり特性曲線を得る。コントラストは、カブリ+0.25とカブリ+2.0の濃度点を結ぶ直線の傾き(横軸とのなす角をθとして、tan θ)から求められる。
【0340】
次に、感光材料の感度の測定法について説明する。光源としては、用いられるX線増感スクリーンの主発光ピーク波長と同一の波長の単色光が用いられる。このような必要な単色光を得る方法としては干渉フィルターを組合せたフィルター系を用いる方法が利用できる。この方法によれば、干渉フィルターの組合せにも依存するが、通常、必要な露光量を持ち、かつ半値幅が15±5nmの単色光を容易に得ることができる。
【0341】
予め更正された照度計にて正しく照度が測定されているこの単色光を光源として、ニュートラルフィルターのステップウェッジを通して1秒間、1m離れた感光材料を露光する。熱現像処理後、濃度を測定し、カブリ+濃度0.5が得られる露光量を求めることで感光材料の感度がもとまり、ルクス秒で現すことができる。
【0342】
本発明における乳房撮影用熱現像感光材料の感度は、0.01ルクス・秒〜0.07ルクス・秒であることが好ましい。本発明における乳房撮影用熱現像感光材料のコントラストは、3.0〜5.0であることが好ましい。
【0343】
以下に本発明で用いられる乳房撮影用増感スクリーンに関して、詳しく説明する。本発明の目的である乳房撮影用写真組体のX線増感スクリーンは、胸部診断用などと比べて高解像度を必要とされる。よって一般に市販されている乳房撮影用のX線増感スクリーンはその蛍光体層を着色することによってその解像度を上げている。しかしながらこのような着色はX線入射面に対し奥の蛍光体により吸収されたX線による発光光を有効に取り出すことができない。本発明のX線増感スクリーンは実質的に蛍光体層を着色することなく、さらに十分にX線を吸収できるだけの蛍光体を塗布したうえで、必要な高鮮鋭度を得るスクリーンを提供することが必要である。
【0344】
このようなスクリーンの目標を達成するためにはその蛍光体の粒子サイズが一定サイズ以下であることが好ましい。蛍光体のサイズの測定法方はコールターカウンター法、電子顕微鏡による観察などにより測定することができる。その蛍光体サイズの球相当直径平均は1μm以上5μm以下であることが好ましい。より好ましくは1μm以上4μm以下である。従来のような蛍光体層を染色する乳房撮影用スクリーンにおいてはこれは重要ではないが、本発明においては重要である。
【0345】
またこのようなスクリーンにおいて鮮鋭度を上げるためには蛍光体層のバインダーと蛍光体の重量比において、よりバインダーが少ない方が好ましい。バインダー/蛍光体の重量比は1/50以上1/20以下であることが好ましく、さらには1/50以上1/25以下であることが好ましい。
【0346】
バインダーとしては特開平6−75097号公報の第4頁右欄45行目から同5頁左欄10行目に記載の公知の物を使用することが出来るが、軟化温度または融点が30℃〜150℃の熱可塑性エストラマーを単独、あるいは他のバインダーポリマーと共に用いることが好ましい。特に本発明のように鮮鋭度をあげるためにバインダーの少ないスクリーンでは、そのスクリーンの耐久性は悪化するので、これに耐えうるバインダーを選択することは重要である。この解決策としては、十分に柔軟性のあるバインダーを選択することが好ましい。また蛍光体層内に可塑剤等を添加することも好ましく用いられる。熱可塑性エラストマーの例としては、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル、天然ゴム、フッ素ゴム、ポリイソプレン、塩素化ポリエチレン、スチレンーブタジエンゴム、シリコンゴムなどを挙げることができる。これらのうち、特にポリウレタンが好ましい。また蛍光体層の下塗りのバインダーの選択も重要である。アクリル系バインダーが好ましく用いられる。
【0347】
またスクリーンは耐傷性・耐汚染性の許す範囲で、その表面保護層が薄いことも好ましい。その表面保護層の厚みは2μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0348】
表面保護層の素材はPET(特に延伸タイプ)、PEN、ナイロン等のフィルムを張り合わせることが出来る。またフッ素系樹脂を溶剤に溶かして塗布することによって表面保護膜を形成することも汚れ防止の観点から好ましく用いられる。好ましいフッ素樹脂の態様については、特開平6−75097号公報の第6頁左欄4行目から同右欄43行目に詳しい。またこの様に溶剤塗布型で表面保護層を形成できる樹脂としては、フッ素樹脂の他にポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、セルロース誘導体、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0349】
また蛍光体の充填率が十分に高いことも、高感度でかつ高鮮鋭度のスクリーンを得るためには重要である。具体的には蛍光体の体積充填率が60%以上80%以下であることが好ましい。さらに好ましくは65%以上80%以下である。ここで本発明のような微粒子の蛍光体で体積充填率を高く保つためには特開平6−75097号公報の第4頁右欄29行目から同第6頁左欄1行目に記載の蛍光体層を圧縮処理する工程が好ましく用いられる。
【0350】
また、本発明に使用される蛍光体は実質的にGd2 O2 S:Tbであることが好ましい。ここで、実質的にとは、蛍光体の主成分がGd2 O2 S:Tbであるという意味であり、その性能を向上させるための数%程度の添加物や、表面を修飾するためのシリカ等は好ましく用いることができる。またGdに代わりに数十%程度以内の割合でY、La、Luを混用することも可能である。
【0351】
一般に蛍光体はその密度が重いことがX線を有効に吸収するため好ましい。乳房撮影用に用いられる線源において好ましいX線吸収能をしめすこの様な蛍光体としては、Gd2 O2 S:Tbの他に、YTaO4 及びそれに発光中心として各種付活剤を加えたもの、CaWO4 、BaFBr:Eu等が挙げられる。
【0352】
(紫外蛍光スクリーンとの組合せ)
本発明の熱現像感光材料を用いた画像形成方法としては、好ましくは400nm以下に主ピークを持つ蛍光体との組み合わせで画像形成する方法を用いることができる。さらに好ましくは380nm以下に主ピークを持つ蛍光体と組み合わせて画像形成する方法が良い。両面感材、片面感材のいずれでも組立て体として用いることができる。400nm以下に主発光ピークであるスクリーンは特開平6−11804号、WO93/01521号に記載のスクリーンなどが使われるがこれに限られるものではない。紫外線のクロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平8−76307号公報に記載の技術を用いることができる。紫外線吸収染料としては、特願2000−320809号に記載の染料は特に好ましい。
【0353】
本発明の熱現像感光材料は、画像形成層に加えて非感光性層を有することができる。非感光性層は、その配置から(a)画像形成層の上(支持体よりも遠い側)に設けられる表面保護層、(b)複数の画像形成層の間や画像形成層と保護層の間に設けられる中間層、(c)画像形成層と支持体との間に設けられる下塗り層、(d)画像形成層の反対側に設けられるバック層に分類できる。
【0354】
また、光学フィルターとして作用する層を設けることができるが、(a)または(b)の層として設けられる。アンチハレーション層は、(c)または(d)の層として感光材料に設けられる。
【0355】
1)表面保護層
本発明における熱現像感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層は単層でもよいし、複数層であってもよい。表面保護層については、特開平11−65021号段落番号0119〜0120、特願2000−171936号に記載されている。
【0356】
本発明の表面保護層のバインダーとしてはゼラチンが好ましいがポリビニルアルコール(PVA)を用いる若しくは併用することも好ましい。ゼラチンとしてはイナートゼラチン(例えば新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば新田ゼラチン801)など使用することができる。
【0357】
PVAとしては、特開2000−171936号の段落番号0009〜0020に記載のものがあげられ、完全けん化物のPVA−105、部分けん化物のPVA−205,PVA−335、変性ポリビニルアルコールのMP−203(以上、クラレ(株)製の商品名)などが好ましく挙げられる。
【0358】
保護層(1層当たり)のポリビニルアルコール塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3g/m2〜4.0g/m2が好ましく、0.3g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
【0359】
表面保護層(1層当たり)の全バインダー(水溶性ポリマー及びラテックスポリマーを含む)塗布量(支持体1m2当たり)としては0.3g/m2〜5.0g/m2が好ましく、0.3g/m2〜2.0g/m2がより好ましい。
【0360】
2)アンチハレーション層
本発明の熱現像感光材料においては、アンチハレーション層を感光性層に対して露光光源から遠い側に設けることができる。アンチハレーション層については特開平11−65021号段落番号0123〜0124、特開平11−223898号、同9−230531号、同10−36695号、同10−104779号、同11−231457号、同11−352625号、同11−352626号等に記載されている。
【0361】
アンチハレーション層には、露光波長に吸収を有するアンチハレーション染料を含有する。露光波長が赤外域にある場合には赤外線吸収染料を用いればよく、その場合には可視域に吸収を有しない染料が好ましい。
【0362】
可視域に吸収を有する染料を用いてハレーション防止を行う場合には、画像形成後には染料の色が実質的に残らないようにすることが好ましく、熱現像の熱により消色する手段を用いることが好ましく、特に非感光性層に熱消色染料と塩基プレカーサーとを添加してアンチハレーション層として機能させることが好ましい。これらの技術については特開平11−231457号等に記載されている。
【0363】
消色染料の添加量は、染料の用途により決定する。一般には、目的とする波長で測定したときの光学濃度(吸光度)が0.1を越える量で使用する。光学濃度は、0.2〜2であることが好ましい。このような光学濃度を得るための染料の使用量は、一般に0.001g/m2〜1g/m2程度である。
【0364】
なお、このように染料を消色すると、熱現像後の光学濃度を0.1以下に低下させることができる。二種類以上の消色染料を、熱消色型記録材料や熱現像感光材料において併用してもよい。同様に、二種類以上の塩基プレカーサーを併用してもよい。
【0365】
このような消色染料と塩基プレカーサーを用いる熱消色においては、特開平11−352626号に記載のような塩基プレカーサーと混合すると融点を3℃以上降下させる物質(例えば、ジフェニルスルホン、4−クロロフェニル(フェニル)スルホン)を併用することが熱消色性等の点で好ましい。
【0366】
3)バック層
本発明に適用することのできるバック層については特開平11−65021号段落番号0128〜0130に記載されている。
【0367】
本発明においては、銀色調、画像の経時変化を改良する目的で300〜450nmに吸収極大を有する着色剤を添加することができる。このような着色剤は、特開昭62−210458号、同63−104046号、同63−103235号、同63−208846号、同63−306436号、同63−314535号、特開平01−61745号、特願平11−276751号などに記載されている。このような着色剤は、通常、0.1mg/m2〜1g/m2の範囲で添加され、添加する層としては感光性層の反対側に設けられるバック層が好ましい。
【0368】
4)マット剤
本発明において、搬送性改良のためにマット剤を表面保護層、およびバック層に添加することが好ましい。マット剤については、特開平11−65021号段落番号0126〜0127に記載されている。
マット剤は感光材料1m2当たりの塗布量で示した場合、好ましくは1mg/m2〜400mg/m2、より好ましくは5mg/m2〜300mg/m2である。
【0369】
また、画像形成層面のマット度は、画像部に小さな白抜けが生じ、光漏れが発生するいわゆる星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が30秒以上2000秒以下が好ましく、特に40秒以上1500秒以下が好ましい。ベック平滑度は、日本工業規格(JIS)P8119「紙および板紙のベック試験器による平滑度試験方法」およびTAPPI標準法T479により容易に求めることができる。
【0370】
本発明においてバック層のマット度としてはベック平滑度が1200秒以下10秒以上が好ましく、800秒以下20秒以上が好ましく、さらに好ましくは500秒以下40秒以上である。
【0371】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0372】
5)ポリマーラテックス
本発明の表面保護層やバック層にポリマーラテックスを添加することができる。
このようなポリマーラテックスについては「合成樹脂エマルジョン(奥田平、稲垣寛編集、高分子刊行会発行(1978))」、「合成ラテックスの応用(杉村孝明、片岡靖男、鈴木聡一、笠原啓司編集、高分子刊行会発行(1993))」、「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」などにも記載され、具体的にはメチルメタクリレート(33.5質量%)/エチルアクリレート(50質量%)/メタクリル酸(16.5質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(47.5質量%)/ブタジエン(47.5質量%)/イタコン酸(5質量%)コポリマーのラテックス、エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(58.9質量%)/2−エチルヘキシルアクリレート(25.4質量%)/スチレン(8.6質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.1質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックス、メチルメタクリレート(64.0質量%)/スチレン(9.0質量%) /ブチルアクリレート(20.0質量%)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5.0質量%)/アクリル酸(2.0質量%)コポリマーのラテックスなどが挙げられる。
【0373】
ポリマーラテックスは、表面保護層、あるいはバック層の全バインダー(水溶性ポリマーおよびラテックスポリマーを含む)の10質量%〜90質量%用いるのが好ましく、特に20質量%〜80質量%が好ましい。
【0374】
6)膜面pH
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理前の膜面pHが7.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは6.6以下である。その下限には特に制限はないが、3程度である。最も好ましいpH範囲は4〜6.2の範囲である。
【0375】
膜面pHの調節はフタル酸誘導体などの有機酸や硫酸などの不揮発性の酸、アンモニアなどの揮発性の塩基を用いることが、膜面pHを低減させるという観点から好ましい。特にアンモニアは揮発しやすく、塗布する工程や熱現像される前に除去できることから低膜面pHを達成する上で好ましい。
また、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウム等の不揮発性の塩基とアンモニアを併用することも好ましく用いられる。なお、膜面pHの測定方法は、特願平11−87297号明細書の段落番号0123に記載されている。
【0376】
7)硬膜剤
本発明の画像形成層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としてはT.H.James著”THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS FOURTH EDITION”(Macmillan Publishing Co., Inc.刊、1977年刊)77頁から87頁に記載の各方法があり、クロムみょうばん、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩、N,N−エチレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)、N,N−プロピレンビス(ビニルスルフォンアセトアミド)の他、同書78頁など記載の多価金属イオン、米国特許4,281,060号、特開平6−208193号などのポリイソシアネート類、米国特許4,791,042号などのエポキシ化合物類、特開昭62−89048号などのビニルスルホン系化合物類が好ましく用いられる。
【0377】
硬膜剤は溶液として添加され、この溶液の保護層塗布液中への添加時期は、塗布する180分前から直前、好ましくは60分前から10秒前であるが、混合方法及び混合条件については本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0378】
具体的な混合方法としては添加流量とコーターへの送液量から計算した平均滞留時間を所望の時間となるようにしたタンクでの混合する方法やN.Harnby、M.F.Edwards、A.W.Nienow著、高橋幸司訳”液体混合技術”(日刊工業新聞社刊、1989年)の第8章等に記載されているスタチックミキサーなどを使用する方法がある。
【0379】
8)界面活性剤
本発明に適用できる界面活性剤については特開平11−65021号段落番号0132に記載されている。
本発明ではフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。フッ素系界面活性剤の好ましい具体例は特開平10−197985号、特開2000−19680号、特開2000−214554号等に記載されている化合物が挙げられる。また、特開平9−281636号記載の高分子フッ素系界面活性剤も好ましく用いられる。本発明においては、特願2000−206560号記載のフッ素系界面活性剤の使用が特に好ましい。
【0380】
9)帯電防止剤
また、本発明では、公知の種々の金属酸化物あるいは導電性ポリマーなどを含む帯電防止層を有しても良い。帯電防止層は前述の下塗り層、バック層表面保護層などと兼ねても良く、また別途設けてもよい。帯電防止層については、特開平11−65021号段落番号0135、特開昭56−143430号、同56−143431号、同58−62646号、同56−120519号、特開平11−84573号の段落番号0040〜0051、米国特許第5,575,957号、特開平11−223898号の段落番号0078〜0084に記載の技術を適用することができる。
【0381】
10)支持体
透明支持体は二軸延伸時にフィルム中に残存する内部歪みを緩和させ、熱現像処理中に発生する熱収縮歪みをなくすために、130〜185℃の温度範囲で熱処理を施したポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0382】
紫外発光スクリーンと組合せて用いられる熱現感光材料の支持体としては、PENを好ましく用いることができる。ただしこれに限定されるものではない。PENとしてはポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。本発明にいうポリエチレン−2,6−ナフタレートとは、その繰返し構造単位が実質的にエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位から構成されるものであればよく、共重合されないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのみならず繰返し構造単位の数の10%以下、好ましくは5%以下が他の成分で変性されたような共重合体、及び他のポリマーとの混合物、組成物を含むものである。
【0383】
ポリエチレン−2,6−ナフタレートはナフタリン−2,6−ジカルボン酸、またはその機能的誘導体、およびエチレングリコールまたはその機能的誘導体とを触媒の存在下で適当な反応条件の下に結合せしめることによって合成されるが、本発明にいうポリエチレン−2,6−ナフタレートには、このポリエチレン−2,6−ナフタレートの重合完結前に適当な1種又は2種以上の第三成分(変性剤)を添加し共重合または混合ポリエステルとしたものであってもよい。適当な第三成分としては、2価のエステル形成官能基を有する化合物、例えばシュウ酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、コハク酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等のジカルボン酸、またはその低級アルキルエステル、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸、またはその低級アルキルエステル、あるいはプロピレングリコール、トリメチレングリコールの如き2価アルコール類等の化合物があげられる。ポリエチレン−2,6−ナフタレートまたはその変性重合体は、例えば安息香酸、ベンゾイル安息香酸、ベンジルオキシ安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの1官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基を封鎖したものであってもよく、あるいは、例えば極く少量のグリセリン、ペンタエリスリトールの如き3官能、4官能エステル形成化合物で実質的に線状の共重合体が得られる範囲内で変性されたものでもよい。」
【0384】
医療用の熱現像感光材料の場合、透明支持体は青色染料(例えば、特開平8−240877号実施例記載の染料−1)で着色されていてもよいし、無着色でもよい。
具体的な支持体の例は、特開平11−65021同号段落番号0134に記載されている。
【0385】
支持体には、特開平11−84574号の水溶性ポリエステル、同10−186565号のスチレンブタジエン共重合体、特開2000−39684号や特願平11−106881号段落番号0063〜0080の塩化ビニリデン共重合体などの下塗り技術を適用することが好ましい。
【0386】
11)その他の添加剤
熱現像感光材料には、さらに、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤あるいは被覆助剤を添加してもよい。特開平11−65021号段落番号0133の記載の溶剤を添加しても良い。各種の添加剤は、感光性層あるいは非感光性層のいずれかに添加する。それらについてWO98/36322号、EP803764A1号、特開平10−186567号、同10−18568号等を参考にすることができる。
【0387】
12)塗布方式
本発明における熱現像感光材料はいかなる方法で塗布されても良い。具体的には、エクストルージョンコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、または米国特許第2,681,294号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを 含む種々のコーティング操作が用いられ、Stephen F. Kistler、Petert M. Schweizer著”LIQUID FILM COATING”(CHAPMAN & HALL社刊、1997年)399頁から536頁記載のエクストルージョンコーティング、またはスライドコーティング好ましく用いられ、特に好ましくはエクストルージョンコーティングが用いられる。
【0388】
13)包装材料
本発明の熱現像感光材料は、使用される前の保存時に写真性能の変質を防ぐため、あるいはロール状態の製品形態の場合にはカールしたり巻き癖が付くのを防ぐために、酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料で密閉包装するのが好ましい。酸素透過率は、25℃で50ml/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1.0ml/atm/m2・day以下である。水分透過率は、10g/atm/m2・day以下であることが好ましく、より好ましくは5g/atm/m2・day以下であり、さらに好ましくは1g/atm/m2・day以下である。酸素透過率および/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば特開平8−254793号、特開2000−206653号に記載されているものを利用することができる。
【0389】
14)その他の利用できる技術
本発明の熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、EP803764A1号、EP883022A1号、WO98/36322号、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特願2000−187298号、同2000−10229号、同2000−47345号、同2000−206642号、同2000−98530号、同2000−98531号、同2000−112059号、同2000−112060号、同2000−112104号、同2000−112064号、同2000−171936号も挙げられる。
【0390】
15)カラー画像形成
多色カラー熱現像感光材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
多色カラー熱現像感光材料の場合、各画像形成層は、一般に、米国特許第4,460,681号に記載されているように、各感光性層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
【0391】
3.画像形成方法
3−1.露光
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明のようにヨウ化銀含有率の高いハロゲン化銀乳剤は、従来はその感度が低くて問題であった。しかし、レーザー光のような高照度で書き込むことで低感度の問題も解消され、しかもより少ないエネルギーで画像記録できることがわかった。このような強い光で短時間に書き込むことによって目標の感度を達成することができる。
【0392】
特に最高濃度(Dmax)を出すような露光量を与える場合、感光材料表面の好ましい光量は0.1W/mm2〜100W/mm2である。より好ましくは0.5W/mm2〜50W/mm2であり、最も好ましくは1W/mm2〜50W/mm2である。
【0393】
本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー(Ar+,He−Ne,He−Cd)、YAGレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。好ましく用いられるレーザーは、熱現像感光材料の分光増感色素などの光吸収ピーク波長に対応して決まるが、赤〜赤外発光のHe−Neレーザー、赤色半導体レーザー、あるいは青〜緑発光のAr+,He−Ne,He−Cdレーザー、青色半導体レーザーである。 近年、特に、SHG(Second Hermonic Generator)素子と半導体レーザーを一体化したモジュールや青色半導体レーザーが開発されてきて、短波長領域のレーザー出力装置がクローズアップされてきた。青色半導体レーザーは、高精細の画像記録が可能であること、記録密度の増大、かつ長寿命で安定した出力が得られることから、今後需要が拡大していくことが期待されている。レーザー光のピーク波長は、青色の300nm〜500nm、好ましくは400nm〜500nm、赤〜近赤外の600nm〜900nm、好ましくは620nm〜850nmである。
【0394】
レーザー光は、高周波重畳などの方法によって縦マルチに発振していることも好ましく用いられる。
【0395】
3−2.熱現像
本発明の熱現像感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した熱現像感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80℃〜250℃であり、さらに好ましくは100℃〜140℃である。
現像時間としては1秒〜60秒が好ましく、5秒〜30秒がさらに好ましく、5秒〜20秒が特に好ましい。
【0396】
熱現像の方式としてはプレートヒーター方式が好ましい。プレートヒーター方式による熱現像方式とは特開平11−133572号に記載の方法が好ましく、潜像を形成した熱現像感光材料を熱現像部にて加熱手段に接触させることにより可視像を得る熱現像装置であって、前記加熱手段がプレートヒータからなり、かつ前記プレートヒータの一方の面に沿って複数個の押えローラが対向配設され、前記押えローラと前記プレートヒータとの間に前記熱現像感光材料を通過させて熱現像を行うことを特徴とする熱現像装置である。プレートヒータを2〜6段に分けて先端部については1℃〜10℃程度温度を下げることが好ましい。
【0397】
このような方法は特開昭54−30032号にも記載されており、熱現像感光材料に含有している水分や有機溶媒を系外に除外させることができ、また、急激に熱現像感光材料が加熱されることでの熱現像感光材料の支持体形状の変化を押さえることもできる。
【0398】
3−3.システム
露光部および熱現像部を備えた医療用レーザーイメージャーとして富士メディカルドライイメージャー−FM−DPLやDRYPIX7000を挙げることができる。該システムは、Fuji Medical Review No.8,page39〜55に記載されており、それらの技術を利用することができる。また、DICOM規格に適合したネットワークシステムとして富士メディカル(株)が提案した「AD network」の中のレーザーイメージャー用の熱現像感光材料としても適用することができる。
【0399】
4.本発明の用途
本発明の熱現像感光材料は、銀画像による黒白画像を形成し、医療診断用の熱現像感光材料、工業写真用熱現像感光材料、印刷用熱現像感光材料、COM用の熱現像感光材料として使用されることが好ましい。
【0400】
【実施例】
【0401】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0402】
実施例1
1.PET支持体の作成、および下塗り
1−1.製膜
【0403】
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥した。青色染料(1,4−ビス(2,6−ジエチルアニリノアントラキンノン))で青色着色し、その後T型ダイから押し出して急冷し、未延伸フィルムを作成した。
【0404】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cm2で巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0405】
1−2.表面コロナ処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/m2の処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0406】
2.画像形成層、中間層、表面保護層
2−1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
<ハロゲン化銀乳剤Aの調製(0.04μmのAgI粒子)>
蒸留水1420mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、42℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え195.6mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム21.8gを蒸留水にて容量218mlに希釈した溶液Bを一定流量で9分間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。
【0407】
さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム60gを蒸留水にて容量600mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で120分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/l濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
【0408】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1、2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Bをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10−4モル加えて91分間熟成した。
N、N’−ジヒドロキシ−N”、N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル及び1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1、3、4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作製した。
【0409】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.040μm、球相当径の変動係数18%の純ヨウ化銀粒子であった。また(001)、{100}、{101}面を有する14面体粒子であり、X線粉末回折分析を用いて測定するとそのγ相の比率は30%であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。
【0410】
<ハロゲン化銀乳剤B,C,の調製(0.08、0.16μmAgI粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Aと同様にして、ただし、反応温度、硝酸銀水溶液とヨウ化カリウム水溶液の添加速度を調節することにより、0.080、0.16μmの同様な14面体粒子の乳剤を得た。それぞれハロゲン化銀乳剤B、Cとする。
【0411】
<ハロゲン化銀乳剤Dの調製(0.42μm平板状AgIホスト粒子)>
蒸留水1421mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5モル/L硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.5g、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノ−ル溶液160mlを添加した溶液を、ステンレス製反応壷中で撹拌しながら75℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え218mlに希釈した溶液Aとヨウ化カリウム36.6gを蒸留水にて366mlに希釈した溶液Bを、溶液Aは一定流量で16分かけて全量添加し、溶液BはpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を0.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて508.2mlに希釈した溶液Cとヨウ化カリウム63.9gを蒸留水にて639mlに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で80分かけて全量添加し、溶液DはpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液Cおよび溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のハロゲン化銀分散物を作成した。
【0412】
ハロゲン化銀乳剤Dは、純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径0.93μm、平均投影面積直径の変動係数17.7%、平均厚み0.057μm、平均アスペクト比16.3の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.42μmであった。X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の30%以上がγ相で存在していた。
【0413】
<ハロゲン化銀乳剤Eの調製(0.42μmエピタキシャル粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Dで調製した平板状粒子AgI乳剤1モルを反応容器に入れた。pAgは38℃で測定して10.2であった。次いで、ダブルジェット添加により、0.5モル/リットルのKBr溶液及び0.5モル/リットルのAgNO3溶液を10ml/分で20分間にわたって添加し、実質的に10モル%臭化銀をAgIホスト乳剤上にエピタキシャル状に沈殿させた。操作中、pAgは10.2に維持した。
さらに、0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調製し、撹拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
【0414】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5ml加え、40分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10−5モル加えて91分間熟成した。その後、N,N’−ジヒドロキシ−N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mlを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モルおよび1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを水溶液で銀1モルに対して8.5×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤Eを作成した。
【0415】
<ハロゲン化銀乳剤Fの調製(0.71μm平板状AgIホスト粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Dと同様にして2,2’−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノ−ル溶液の添加量、粒子形成時の温度、溶液Aの添加時間を適宜変更してハロゲン化銀乳剤Fを調整した。ハロゲン化銀乳剤Fは純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径1.384μm、平均投影面積直径の変動係数19.7%、平均厚み0.125μm、平均アスペクト比11.1の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.71μmであった。X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の15%以上がγ相で存在していた。
【0416】
<ハロゲン化銀乳剤Gの調製(0.71μmエピタキシャル粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Fを用いたこと以外は、ハロゲン化銀乳剤Eとまったく同様にして、臭化銀エピタキシャル10モル%を含有するハロゲン化銀乳剤Gを調整した。
【0417】
<ハロゲン化銀乳剤Hの調製(0.30μm平板状AgIホスト粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Dと同様にして2,2’−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノ−ル溶液の添加量、粒子形成時の温度、溶液Aの添加時間を適宜変更してハロゲン化銀乳剤Hを調整した。ハロゲン化銀乳剤Hは純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径0.565μm、平均投影面積直径の変動係数18.5%、平均厚み0.056μm、平均アスペクト比10.0の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.30μmであった。X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の90%以上がγ相で存在していた。
【0418】
<ハロゲン化銀乳剤Iの調製(0.30μmエピタキシャル粒子)>
ハロゲン化銀乳剤Hを用いたこと以外は、ハロゲン化銀乳剤Eとまったく同様にして、臭化銀エピタキシャル10モル%を含有するハロゲン化銀乳剤Iを調整した。
【0419】
<混合乳剤A,B,C,E,G,Iの調製>
ハロゲン化銀乳剤A,B,C,E,G,Iの各乳剤をそれぞれ溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10−3モル添加した。
【0420】
2)粉末有機銀塩調製
4720mlの純水にベヘン酸0.3776モル、アラキジン酸0.2266モル、ステアリン酸0.1510モルを添加し80℃で溶解した後、1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して有機酸ナトリウム溶液を得た。上記の有機酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、上記混合乳剤を添加した(非感光性有機銀塩モル数を感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が表1に示した値になるように添加)。次に、これらの混合物をIKA JAPAN社製ホモジナイザー(ULTRA−TURRAXT−25)により13200rpm(機械振動周波数として21.1KHz)にて5分間撹拌した。次に、1mol/lの硝酸銀溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し、有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施した後、40℃にて重量減がなくなるまで酸素分圧10容量%の温風で循環乾燥機にて乾燥を行い、感光性ハロゲン化銀を含む粉末有機銀塩を得た。
【0421】
3)感光性ハロゲン化銀を含む有機銀塩の分散物の調製
ポリビニルブチラール粉末(Monsant社 Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン(MEK)1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバーDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら上記の粉末有機銀塩500gを徐々に添加して十分に混合しスラリー状とした。
【0422】
上記スラリーをエスエムテー社製GM−2型圧力式ホモジナイザーで、2パス分散することにより感光性乳剤分散液を調製した。この際、1パス時の処理圧は280kg/cm2であり、2パス時の処理圧は560kg/cm2とした。
【0423】
4)画像形成層塗布液の調製
上記の感光性ハロゲン化銀を含む有機銀塩の有機溶剤への再分散物507gを13℃で15分間撹拌し、10質量%のピリジニウムブロマイド過臭化物(PHP)メタノール溶液3.9ml、さらに1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物化合物1と2と3をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10−3モルになる量を添加した。また吸着基と還元基を有する化合物1と2をそれぞれハロゲン化銀1モルあたり8×10−3モルになる量を添加した。
【0424】
2時間撹拌後、72質量%の臭化カルシウムのメタノール溶液5.2mlを添加した。撹拌を30分続けた後、ButvarB−79を117g添加した。さらに30分攪拌した後、還元剤として1,1−ビス(2−ヒドロキシー3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパンを27.3g、造核剤(造核剤の種類と添加量を表1に示す)を添加し、さらに15分間撹拌を続けた。その後、増感色素−1をハロゲン化銀1モル当たり1×10−3モル加え、15分間撹拌した。続いて、1.39gのDesmodur N3300(モーベイ社、脂肪族イソシアネート)を12.3gもMEKに溶解した液を添加し、さらに15分間撹拌し、その後、21℃で15分間加熱した。
【0425】
この分散液100gに2−トリブロモメチルスルホニルピリジンを塗布銀量1モル当たり0.03モル、水素結合性化合物―1を還元剤と等モル、現像促進剤―1を塗布銀量1モル当たり5.0×10−3モルを加え、2.2gの4−クロロベンゾフェノンー2−カルボン酸、0.47gの2−クロロ安息香酸および0.47gの5−メチルー2−メルカプトベンズイミダゾールを添加し、21℃で1時間撹拌した。次いで、沃化銀錯形成剤として0.523gの6−イソプロピルフタラジン、、0.123gのテトラクロロフタル酸および2gの染料−1を添加し、画像形成層塗布液を完成させた。
【0426】
5)表面保護層塗布液の調製
MEK865gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB171−15)96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社、パラロイドA−21)4.5g、1,3−ジ(ビニルスルフォニル)−2−プロパノール1.5g、ベンゾトリアゾール1.0g、フッ素系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)1.0gを添加し溶解した後、13、6重量%のセルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB171−15)と9重量%の炭酸カルシウム(Speciality Minerals社、Super−Pflex200)をMEKにディゾルバー型ホモジナイザーにて8000rpmで30分間分散したもの30gを添加して撹拌し、表面保護層塗布液を調製した。
【0427】
3−2.熱現像感光材料の作成
画像形成層塗布液と表面保護層塗布液を押し出しコーターで、同時重層塗布を行った。この塗布を支持体の両面に施すことにより熱現像感光材料を作成した。画像形成層の塗布銀量は片面あたり、脂肪酸銀の銀量として0.68g/m2、ハロゲン化銀の銀量として0.146g/m2であった。表面保護層は乾燥膜厚で2.5μmになるようにして行った。その後、乾燥温度75℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて、10分間乾燥した。
【0428】
以下、実施例で用いた化合物を示す。
【0429】
【化45】
【0430】
【化46】
【0431】
【化47】
【0432】
【化48】
【0433】
【化49】
【0434】
4.評価
4−1.準備
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50%RHの環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した。
(包装材料)
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3質量%を含むポリエチレン50μm:
酸素透過率:0.02ml/atm・m2・25℃・day;
水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day。
【0435】
3−2.評価条件
1)膜のヘイズ度の測定
ヘイズ度とは感光材料に入射した光線が拡散する度合いを表し、拡散透過光量と全透過光量の比率を百分率で示す。ヘイズの測定は、NIPPON DENSHOKU(株)製のヘイズ測定装置MODEL1001DPを用いた。
各未露光試料について、熱現像処理前と熱現像後の膜のヘイズ度を測定した。
熱現像条件:富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DP Lの熱現像部を改造し、両面から加熱できるようにした熱現像機を製作した。また、熱現像部の搬送ローラーをヒートドラムに変更することによりフィルムシートの搬送が可能になるように改造した。4枚のパネルヒーターを112℃−118℃−120℃−120℃に設定し、ヒートドラムの温度は120℃に設定した。搬送速度を調整して熱現像時間が合計24秒になるように設定した。
【0436】
2)電子顕微鏡による膜中のハロゲン化銀粒子数、および現像銀粒子数の観察各試料の熱現像前と熱現像後の最大濃度部の膜の超薄切片を透過型電子顕微鏡で撮影した。
撮影条件:試料をダイアモンドナイフで切削することにより、約厚み0.1μmの切片を作成した。
ハロゲン化銀粒子数および現像銀粒子数は、それぞれ熱現像前と熱現像後の最大濃度部の膜の切片の厚みと切片の長さから計算される単位面積中に存在する粒子数を数えることにより得られる。
【0437】
3)ハロゲン化銀粒子による画像形成層の占有容積の算出
熱現像前の膜の切片の厚みと切片の面積から計算される画像形成層の単位体積中に存在するハロゲン化銀粒子数を数えることにより、ハロゲン化銀粒子による画像形成層の占有容積を算出した。
【0438】
4)写真性能の評価
富士フイルム(株)社製のXレイレギュラースクリーンHI−SCREENB3(蛍光体としてCaWO4を使用。発光ピーク波長425nm)を2枚使用して、その間に試料を挟み、像形成用組立体を作成した。この組立体に、0.05秒のX線露光を与え、X線センシトメトリーを行った。使用したX線装置は、東芝(株)製の商品名DRX−3724HDであり、タングステンターゲットを用いた。三相にパルス生器で80kVpの電圧をかけ、人体とほぼ等価な吸収を持つ水7cmのフィルタを通したX線を光源とした。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.15の幅でステップ露光を行なった。露光後に、下記の熱現像処理条件で熱現像処理した。得られた画像の評価を濃度計により行った。
【0439】
富士メディカルドライレーザーイメージャーFM−DPLの熱現像部を改造し、両面から加熱できるようにした熱現像機を製作した。また、熱現像部の搬送ローラーをヒートドラムに変更することによりフィルムシートの搬送が可能になるように改造した。4枚のパネルヒーターを112℃−118℃−120℃−120℃に設定し、ヒートドラムの温度は120℃に設定した。搬送速度は合計24秒になるように設定した。
【0440】
かぶり:未露光部の濃度で表した。
感度:試料No.5の感材を100とした相対値であらわした。
Dmax:露光量を増やして得られる最高濃度である。
平均階調:特性曲線上で、かぶり濃度+光学濃度0.25の点とかぶり濃度+光学濃度2.0を結ぶ直線の傾き(この直線と横軸のなす角をθとするときのtanθ)である。
粒状性:目視で粒状性を○、△、×で評価した。
【0441】
3−3.評価結果
得られた結果を表1に示した。
表1の結果より、本発明の感光材料は、高感度であり、高濃度で、診断に適した諧調を有し、粒状性に優れていることがわかる。
【0442】
【表1】
【0443】
実施例2
実施例1の試料No.5において、造核剤の種類と添加量を表2に示すように変更して、その他は同様にして、試料21〜30を作成した。
実施例1と同様にして評価した結果を表2に示した。
その結果、本発明の感光材料は、高感度であり、高濃度で、診断に適した諧調を有し、粒状性に優れていることがわかる。
【0444】
【表2】
【0445】
実施例3
1.材料の準備
1)臭化銀の平板状乳剤Jの調製
(粒子形成)
KBr0.8g、および平均分子量20000の酸化処理ゼラチン3.2gを含む水溶液1178mlを35℃に保ち、撹拌した。硝酸銀1.6g、KBr1.16g、平均分子量20000の酸化処理ゼラチン1.1gのそれぞれの水溶液をトリプルジェット法で45秒間に渡り添加した。硝酸銀の濃度は0.3モル/Lであった。その後、20分かけて76℃に昇温し、平均分子量100000のコハク化ゲラチン26gを添加した。硝酸銀209g水溶液とKBr水溶液をpAg8.0に保ちながらコントロールダブルジェット法で流量加速しながら75分間に渡って添加した。平均分子量100000のゼラチンを加えた後、常法に従って脱塩した。その後、平均分子量100000のゼラチンを加えて分散し、40℃でpH5.8、pAg8.0に調整した。得られた乳剤は、乳剤1kg当たり、銀を1モル、ゼラチンを40g含有する。
【0446】
(化学増感)
以上のように調製したそれぞれの乳剤を攪拌しながら56℃に保った状態で化学増感を施した。まず、下記のチオスルホン酸化合物−1をハロゲン化銀1モル当たり10−4モル添加し、次に0.03μmのAgI粒子を全銀量に対して0.15モル%添加した。3分後に二酸化チオ尿素を1×10−6モル/Agモル添加し、22分間そのまま保持して還元増感を施した。次に、4−ヒドロキシ−6−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンをハロゲン化銀1モル当たり3×10−4モル相当を添加し、下記増感色素−1、2をそれぞれハロゲン化銀1モル当たり1×10−4モル相当を添加し、さらに塩化カルシウムを添加した。
【0447】
引き続き、チオ硫酸ナトリウムをハロゲン化銀1モル当たり6×10−6モル相当とセレン化合物―1をハロゲン化銀1モル当たり4×10−6モル相当を加えた後、塩化金酸をハロゲン化銀1モル当たり2×10−3モル相当添加した。さらに核酸(山陽国策パルプ社製、商品名RNA−F)をハロゲン化銀1モル当たり67mg相当を添加した。40分後に水溶性メルカプト化合物―1をハロゲン化銀1モル当たり1×10−4モル相当添加し、35℃に冷却した。こうして、乳剤Jの化学増感を終了した。
【0448】
(得られた粒子の形状)
上記の得られた臭化銀平板粒子は、電子顕微鏡観察から、平均投影面積相当直径1.117μm、平均球相当直径0.472μm、平均厚み0.056μm、平均アスペクト比19.9。平均投影面積相当直径の粒子間変動係数23%であった。
【0449】
2)臭化銀の平板状乳剤K,L,Mの調製
臭化銀の平板状乳剤Jと同様にして、ただし添加速度と反応温度を変更することにより、平板状乳剤K,L,Mを作成した。得られたハロゲン化銀粒子の形状については表3にまとめた。
【0450】
【表3】
【0451】
3)クロスオーバーカット層
(塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製)
塩基プレカーサー化合物1を2.5kg、および界面活性剤(商品名:デモールN、花王(株)製) 300g 、ジフェニルスルホン 800g、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩1.0gおよび蒸留水を加えて総量を 8.0kgに合わせて混合し、混合液を横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散した。分散方法は、混合液を平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填したUVM−2にダイアフラムポンプで送液し、内圧50hPa以上の状態で、所望の平均粒径が得られるまで分散した。
分散物は、分光吸収測定を行って該分散物の分光吸収における450nmにおける吸光度と650nmにおける吸光度の比(D450/D650)が3.0まで分散した。得られた分散物は、塩基プレカーサーの濃度で25重量%となるように蒸留水で希釈し、ごみ取りのためにろ過(平均細孔径:3μmのポリプロピレン製フィルター)を行って実用に供した。
【0452】
(オルソ熱消色染料固体微粒子分散液の調製)
特開平11−231457号記載のオルソ熱消色染料−1(λmax=566nm)を6.0kgおよびp−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.0kg、花王(株)製界面活性剤デモールSNB0.6kg、および消泡剤(商品名:サーフィノール104E、日信化学(株)製)0.15kg を蒸留水 と混合して、総液量を60kgとした。混合液を横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)を用いて、0.5mmのジルコニアビーズで分散した。
分散物は、分光吸収測定を行って該分散物の分光吸収における650nmにおける吸光度と750nmにおける吸光度の比(D650/D750)が5.0以上であるところまで分散した。得られた分散物は、シアニン染料の濃度で6質量%となるように蒸留水で希釈し、ごみ取りのためにフィルターろ過(平均細孔径:1μm)を行って実用に供した。
【0453】
(クロスオーバーカット層塗布液の調製)
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)17g、ポリアクリルアミド9.6g、塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)70g、オルソ染料固体微粒子分散液(染料固形分3質量%)を56g、、ベンゾイソチアゾリノン0.03g、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム2.2g、および水844mlを混合して、クロスオーバーカット層塗布液を調製した。
【0454】
2.塗布試料の作成
実施例1と同様にして、ただし画像形成層と支持体との間にクロスオーバーカット層を設け、ハロゲン化銀乳剤と造核剤の種類を表4に示すように変更して、その他は同様にして、試料31〜38を作成した。
【0455】
クロスオーバーカット層はオルソ熱消色染料の固形分塗布量が0.04g/m2になるように塗布した。他の層の塗布量は実施例1と同様にした。
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0456】
【化50】
【0457】
【化51】
【0458】
3.性能評価
蛍光スクリーンとして、富士フイルム(株)社製のXレイオルソスクリーンHG−M(蛍光体としてテルビウム付活ガドリニウムオキシスルフィド蛍光体を使用。発光ピーク波長545nm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、X線露光、熱現像を行った。
【0459】
クロスオーバーの測定は、現像処理を熱現像処理にしたこと以外は特開平11−142723号の実施例1と同様にして測定した。その結果、クロスオーバーは7%であった。
【0460】
実施例1と同様にして評価した結果を表4に示した。
その結果、本発明の感光材料は、高感度であり、高濃度で、診断に適した諧調を有し、粒状性に優れていることがわかる。しかしヨウ化銀を使用した実施例1の感光材料に対して、実施例3の臭化銀平板粒子では、熱現像後のヘイズが高いままとなっている。
【0461】
【表4】
【0462】
実施例4
1.試料の作成
実施例1と同様にして、ただし片面のみに画像形成層を有し、画像形成層の反対面側にはバック層を設けた片面感光材料を調製した。
画像形成層は上層と下層の2層塗布とし、塗布銀量(脂肪酸銀ハロゲン化銀の合計)をそれぞれ0.8g/m2になるようにした。使用したハロゲン化銀乳剤は、上層にハロゲン化銀乳剤I、下層に乳剤Eを使用し、それぞれ増感色素1と2によりオルソ分光増感を最適に行った。
【0463】
<バック層の構成>
1)ハレーション防止層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン40g、単分散ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒子サイズ8μm、粒径標準偏差0.4)20g、ベンゾイソチアゾリノン0.1g、水490mlを加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液2.3ml、実施例3のオルソ熱消色染料固体微粒子分散液40g、実施例3の塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)を90g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液12ml、、SBRラテックス10質量%液180g、を混合した。塗布直前にN,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液 80mlを混合し、ハレーション防止層塗布液とした。
【0464】
2)バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、ゼラチン40g、ベンゾイソチアゾリノン35mg、水840mlを加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液5.8ml、流動パラフィンの10質量%乳化物を5g、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンの10%乳化物を5g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5質量%水溶液10ml、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液20ml、フッ素系界面活性剤(F−1)2質量%溶液を2.4ml、フッ素系界面活性剤(F−2)2質量%溶液を2.4ml、メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(共重合重量比57/8/28/5/2)ラテックス19質量%液32gを混合した。塗布直前に N,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液 25mlを混合しバック面保護層塗布液とした。
【0465】
3)バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、アンチハレーション層塗布液をゼラチン塗布量が0.52g/m2となるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.7g/m2となるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作成した。
【0466】
2.性能評価
こうして得られたオルソ増感片面感光材料を下記のように評価した。
蛍光スクリーンとして、富士写真フィルム(株)社製の乳房撮影用蛍光スクリーンUM MANMO FINE(蛍光体としてテルビウム付活ガドリニウムオキシスルフィド蛍光体を使用。発光ピーク波長545nm)を用いた。試料の画像形成層面とスクリーンの保護層を密着させ、富士写真フィルム(株)社製ECMAカセッテに装填した。X線管球から順番に、カセッテ天板、フィルム、スクリーンとなるように配置してX線照射を行った。
【0467】
X線源としては、市販のマンモ撮影用装置である東芝(株)製、DRX−B1356ECを用いた。三相電源で26kVpで動作させたMoターゲット管に1mmのBeと、0.03mmのMo及び2cmのアクリルフィルターを透過したX線を用いた。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.15の幅でステップ露光を1秒間の露光で行なった。
露光後に、実施例1と同様に熱現像処理を行った。
【0468】
一方、同じ条件で露光した富士写真フイルム(株)社製のマンモ感材UM−MAHCを富士写真フイルム(株)社製の自動現像処理機CEPROS−M2、処理液CE−D1で90秒処理した画像を作成した。
両者の写真性能を比較した結果、同等の良好な写真性であった。
【0469】
実施例5
実施例1と同様にして両面感光材料を作成した。
ただし、支持体はPEN(ポリエチレンナフタレート)に変更した。
市販のポリエチレン−2,6−ナフタレートを300℃にて溶融後、T型ダイから押し出し140℃で3.3倍の縦延伸を行い、続いて3.3倍の横延伸を行い、さらに250℃で6秒間熱固定し175μmのフィルムを得た。支持体にコロナ放電を行った。コロナ放電処理はピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、30cm幅支持体を20m/分で処理する。このとき、電流・電圧の読み取り値より被処理物は、0.375KV・A・分/m2の処理がなされた。処理時の放電周波数は9.6KHz、電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは、1.6mmであった。下塗りは、実施例1の支持体と同様の手法で行なった。
【0470】
こうして得られた両面塗布熱現像感光材料を以下の様に評価した。
蛍光スクリーンとして、Du Pont社製のウルトラビジョンファーストディテール(UV)を使用して、本発明の試料の両側に密着させ、0.05秒のX線露光を与え、X線センシトメトリーを行った。露光量の調整は、X線管球とカセッテとの距離を変化させることにより行った。
露光後に、実施例1と同様に熱現像処理した。
その結果、実施例1同様に優れた画像が得られた。
【0471】
実施例6
6−1.試料の作製
1)画像形成層塗布液の調製
実施例1に示したハロゲン化銀乳剤Eを実施例1の表1の試料No5.と同様の比率で含有する有機銀塩の分散物を調製し、それぞれ500gに、窒素気流下で撹拌しながら、MEKを100g加え、24℃に保温した。下記のかぶり防止剤1の10質量%メタノール溶液を2.5ml添加して15分間撹拌した。下記の色素吸着助剤と酢酸カリウムの1:5質量混合比で色素吸着助剤が20質量%である溶液を1.8ml加え、15分撹拌した。次に、増感色素―1をハロゲン化銀1モル当たり1.0×10−3モル、4−クロロー2−ベンゾイル安息香酸、および強色増感剤の5−メチルー2−メルカプトベンズイミダゾールの混合溶液(混合比率=質量で25:2、合計3.0質量%メタノール溶液)を7ml、2−トリブロモメチルスルホニルキノリンを塗布銀量1モル当たり0.03モル、および造核剤SH−5を塗布量として0.040g/m2になる量を加え、1時間撹拌した後、温度を13℃まで下げさらに30分撹拌をした。13℃に保ったまま、ポリビニルブチラールを48g添加して充分に溶解させてから下記の添加物を加えた。これらの操作は全て窒素気流下で行った。
【0472】
【0473】
【化52】
【0474】
【化53】
【0475】
2)塗布
画像形成層:実施例1における支持体と同じ支持体の両面に、上記の画像形成層塗布液を塗布銀量が実施例1と同様の量になるように塗布した。
表面保護層:下記の塗布液を湿潤塗布厚みが100μmになるように塗布した。
【0476】
【0477】
4−2.評価
実施例1と同様に露光、熱現像し、得られた画像の性能を測定した。
その結果、実施例1同様に優れた画像が得られた。
Claims (27)
- 支持体の一方面上に、少なくとも、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤、及びバインダーを含有する画像形成層を有し、有機溶媒を用いて塗布された熱現像感光材料であって、1)造核剤を含有し、2)特性曲線の平均階調が1.8以上4.3以下であることを特徴とする熱現像感光材料。
- 単位面積当たりの前記非感光性有機銀塩と該前記感光性ハロゲン化銀を含む総塗布銀量を前記感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が5×10−14g/個数以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱現像感光材料。
- 前記画像形成層の容積を前記感光性ハロゲン化銀粒子数で除した値が0.5μm3/個数以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀の単位面積当たりの粒子個数が4×1013個/m2以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 熱現像後、最高濃度部における単位面積当たりの現像銀粒子数を前記感光性ハロゲン化銀の単位面積当たりの粒子個数で除した値1.0より大であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 塗布銀量が2.0g/m2以下で最高濃度2.5以上であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀の塩化銀含有率が70モル%未満であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が40モル%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が80モル%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀のヨウ化銀含有率が90モル%以上であることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀の粒子個数の10%以上がアスペクト比2以上の平板状粒子であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記感光性ハロゲン化銀の粒子個数の10%以上がヨウ化銀含有率が40モル%以上の平板状粒子であることを特徴とする請求項11に記載の熱現像感光材料。
- 前記平板状粒子がアスペクト比5.0以上であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の熱現像感光材料。
- 前記平板状粒子の平均球相当直径が0.3μm以上5.0μm以下であることを特徴とする請求項11〜請求項13のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記平板状粒子の平均投影面積相当直径が0.4μm以上8.0μm以下であることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記平板状粒子が平均厚みが0.3μm以下であることを特徴とする請求項11〜請求項15のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記造核剤がヒドラジン誘導体化合物、ビニル化合物、および4級オニウム化合物よりなる群より選ばれる化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項16のいずれかに記載の記載の熱現像感光材料。
- 前記造核剤が下記一般式(V)で表されるヒドラジン誘導体化合物であることを特徴とする請求項17に記載の記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(VI)で、Wがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アシル基、チオアシル基、オキサリル基、オキシオキサリル基、チオオキサリル基、オキサモイル基、オキシカルボニル基、チオカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルファモイル基、オキシスルフィニル基、チオスルフィニル基、スルフィナモイル基、ホスホリル基、ニトロ基、イミノ基、N−カルボニルイミノ基、N−スルホニルイミノ基、ジシアノエチレン基、アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、ピリリウム基、インモニウム基より選ばれる基であることを特徴とする請求項19に記載の記載の熱現像感光材料。
- 前記一般式(VI)で、Rがハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノカルボニルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルケニルチオ基、アシルチオ基、アルコキシカルボニルチオ基、アミノカルボニルチオ基、ヒドロキシル基またはメルカプト基の有機または無機の塩、アミノ基、アルキルアミノ基、環状アミノ基、アシルアミノ基、オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環基、ウレイド基、スルホンアミド基より選ばれる基であることを特徴とする請求項19に記載の記載の熱現像感光材料。
- ヨウ化銀錯形成剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項21のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 現像促進剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項22のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記熱現像感光材料であって、前記バインダーとして、ポリビニルブチラールを画像形成層のバインダー全組成分に対して50重量%以上含む特徴とする請求項1〜請求項23のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記非感光性有機銀塩のベヘン酸銀含有率が、40モル%以上70モル%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項24のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 残留溶剤量が、メチルエチルケトン量で0.1mg/m2以上150mg/m2以下であることを特徴とする請求項1〜請求項25のいずれかに記載の熱現像感光材料。
- 前記画像形成層を前記支持体の両面に有することを特徴とする請求項1〜請求項26のいずれかに記載の熱現像感光材料。
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