JP2005063155A - 心臓循環器系モデル及び心臓負担評価装置 - Google Patents

心臓循環器系モデル及び心臓負担評価装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 人体の動作に対する心拍数及び血圧を高精度に演算でき心臓負担評価を客観的且つ簡易に行える心臓循環器系モデルを提供する。
【解決手段】 動作の運動タイプが等張性収縮運動、等尺性収縮運動、心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動の各場合に、各運動タイプに応じた心拍数算出モデルを用いて、運動タイプに対応した運動強度指標と人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報に基づき、心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段24と、安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を時系列に沿って算出する1回拍出量算出手段26と、心拍数算出手段24が算出した心拍数、1回拍出量算出手段26が算出した1回拍出量、及び、血管抵抗に基づいて血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段29を備える。
【選択図】 図4

Description

本発明は、人体の動作に対する心臓負担評価をコンピュータ処理によって行う心臓負担評価装置、及び、その中で用いられる心臓循環器系モデルに関する。
かかる心臓負担評価装置として、コンピュータのソフトウェア処理によって、人の作業動作を簡易な操作及び形式で記述した入力データに基づいて、人間の形態等の特性を模擬(シミュレート)したコンピュータ上の仮想人間であるコンピュータマネキンにその作業動作を模擬させるべく、その作業動作を複数の行為に分解して、各行為の動作を所定の合成アルゴリズムによって合成して、つまり、コンピュータマネキンの行動を生成し、コンピュータ画面上の仮想空間内に可視化するための行動生成システムにおいて、コンピュータマネキンの模擬動作に対する心臓負担評価を行うものがある。
従来のコンピュータマネキンの行動生成システムでは、所定の空間配置や動作の対象となる対象物に対してコンピュータマネキンの取る目標姿勢を予めマウス等のコンピュータの入力装置を用いてコンピュータ画面上で作成しておき、各目標姿勢間の動作を、例えばインバースキネマティクス等の動作合成アルゴリズムで生成し、別途入力した動作時間でコンピュータマネキンをコンピュータ画面上の仮想空間内で動作させるべく可視化(アニメーション)を行うという手順が取られていた。(特許文献1を参照)
更に、マウス等で目標姿勢を作成する代わりに、動作の対象物の名称、位置座標、操作の種類等を指定して、その対象物に対する動作をコマンド入力することで、その対象物に対する動作が、所定の合成アルゴリズムで自動的に生成されるようにした行動生成システムも開発されている。(例えば、非特許文献1参照)。
特開2002−245484号公報 石井、「アフォーダンス概念に基づく人体モーション合成システムの開発」、ヒューマンインターフェース学会研究報告集、Vol.2、No.3、第73頁〜第78頁
しかしながら、上記従来の行動生成システムでは、コンピュータマネキンをコンピュータ画面上の仮想空間内で動作させる可視化は実現されているが、かかる動作に対する生理的負担(血圧変動・心拍変動等)の評価まで行えるものはなかった。従って、行動生成システムを用いてコンピュータマネキンに特定作業動作を行わせたとしても、可視化された画面からは、コンピュータマネキンの模擬する例えば急激な心臓の上下移動や激しい運動を伴う作業動作に対する危険性の評価や予測ができず、工場や住宅等の空間設計時の行動シミュレーションにおいて人体の生理的負担を考慮した総合的な評価に行動生成システムを使用するのに問題があった。
また、人体の動作は、動作に使用する筋肉の使用状態の違いにより、血液循環作用に与える影響も異なるため、かかる血液循環作用に与える影響の異なる行動タイプ別に、人体の動作に対する心拍数及び血圧を高精度に演算できる心臓負担評価装置及び心臓循環器系モデルは存在しておらず、生理的負担を高精度に反映させた行動生成システムの実用化が困難であった。
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記問題点を解消すべく、人体の動作に対する心拍数及び血圧を高精度に演算でき心臓負担評価を客観的且つ簡易に行える心臓負担評価装置及び心臓循環器系モデルを提供する点にある。
この目的を達成するための本発明に係る心臓循環器系モデルの第一の特徴構成は、予め設定された複数種の人体の動作における血圧及び心拍数を時系列に沿ってコンピュータ処理によって算出する心臓循環器系モデルであって、必要酸素摂取量を時系列に沿って算出する必要酸素摂取量算出手段と、酸素摂取量を時系列に沿って算出する酸素摂取量算出手段と、心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段と、血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段と、1回拍出量を時系列に沿って算出する1回拍出量算出手段と、前記動作の運動タイプと運動強度指標、及び、前記人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付ける入力部とを有し、前記必要酸素摂取量算出手段が、前記運動強度指標の1つである代謝当量を示すMET値から必要酸素摂取量を算出し、前記酸素摂取量算出手段が、前記心拍数算出手段が算出した心拍数と前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量から心拍出量を算出して、前記心拍出量に基づき酸素摂取量を算出し、前記心拍数算出手段が、前記運動タイプが等張性収縮運動の場合に、所定時間単位前に算出した心拍数と、前記必要酸素摂取量算出手段が算出した必要酸素摂取量と前記酸素摂取量算出手段が算出した酸素摂取量との差分とに基づいて心拍数を算出し、前記運動タイプが等尺性収縮運動の場合に、前記個人特性情報の1つである安静時心拍数に対する時間の経過とともに変化する心拍数変化率を、前記運動強度指標の1つである最大筋収縮率に基づき算出して、前記安静時心拍数と前記心拍数変化率から心拍数を算出し、前記運動タイプが心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動の場合に、所定時間単位前に算出した心拍数と、前記血圧算出手段が算出した血圧と前記個人特性情報の1つである安静時血圧の差分に基づき心拍数を算出し、前記血圧算出手段が、前記心拍数算出手段が算出した心拍数、前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量、及び、血管抵抗に基づいて血圧を算出し、前記1回拍出量算出手段が、安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を算出する点にある。
同第二の特徴構成は、予め設定された複数種の人体の動作における血圧及び心拍数を時系列に沿ってコンピュータ処理によって算出する心臓循環器系モデルであって、心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段と、血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段と、1回拍出量を時系列に沿って算出する1回拍出量算出手段と、前記動作の運動タイプと運動強度指標、及び、前記人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付ける入力部とを有し、前記心拍数算出手段が、前記運動タイプが等尺性収縮運動の場合に、前記個人特性情報の1つである安静時心拍数に対する時間の経過とともに変化する心拍数変化率を、前記運動強度指標の1つである最大筋収縮率に基づき算出して、前記安静時心拍数と前記心拍数変化率から心拍数を算出し、前記血圧算出手段が、前記心拍数算出手段が算出した心拍数、前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量、及び、血管抵抗に基づいて血圧を算出し、前記1回拍出量算出手段が、安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を算出する点にある。
同第三の特徴構成は、上記第一または第二の特徴構成に加えて、前記心拍数算出手段が、前記運動タイプが等尺性収縮運動の場合で、且つ、最大筋収縮率が直前の動作より増加する場合に、前記心拍数変化率として、前記最大筋収縮率に基づき算出される心拍数増加率係数と前記等尺性収縮運動の動作開始からの経過時間とともに単調増加する時間関数の積で表されるものを用いて、前記安静時心拍数と、前記安静時心拍数に前記心拍数変化率を乗じた心拍数増加量の和として心拍数を算出する点にある。
同第四の特徴構成は、上記何れかの特徴構成に加えて、前記心拍数算出手段が、前記運動タイプが等尺性収縮運動から等尺性収縮運動へ変化する場合で、且つ、最大筋収縮率が直前の動作より減少する場合に、前記心拍数変化率として、前記最大筋収縮率に基づき算出される心拍数増加率係数の前記直前の動作との差分と前記等尺性収縮運動の動作開始からの経過時間とともに単調減少する時間関数の積で表されるものを用いて、前記安静時心拍数と前記直前の動作における前記心拍数増加率係数とから算出される前記直前の動作における安定心拍数と、前記安静時心拍数に前記心拍数変化率を乗じた心拍数減少量の和として心拍数を算出する点にある。
同第五の特徴構成は、上記第三または第四の特徴構成に加えて、前記心拍数増加率係数が、前記最大筋収縮率が所定値以下では0で、前記所定値以上では、前記最大筋収縮率の増加とともに単調増加する関数で表される点にある。
同第六の特徴構成は、上記第五の特徴構成に加えて、前記心拍数増加率係数が、前記運動タイプが等尺性収縮運動の動作が下半身動作と上半身動作で、異なる関数によって表される点にある。
同第七の特徴構成は、上記何れかの特徴構成に加えて、前記1回拍出量算出手段が、前記運動タイプが等尺性収縮運動の動作の開始により前記最大筋収縮率が増加した場合に、前記安静時1回拍出量と、前記安静時1回拍出量に時間の経過とともに増大する時間増加型1回拍出量増加率を乗じた時間増加型1回拍出量増加量の和として1回拍出量を算出し、前記運動タイプが等尺性収縮運動の動作の開始により前記最大筋収縮率が減少した場合に、前記安静時1回拍出量と、前記安静時1回拍出量に時間の経過とともに減少する時間減少型1回拍出量増加率を乗じた時間減少型1回拍出量増加量の和として1回拍出量を算出する点にある。
同第八の特徴構成は、上記何れかの特徴構成に加えて、前記血圧算出手段が、前記運動タイプが等尺性収縮運動の動作が安静時より開始した場合に、前記血管抵抗として、前記個人特性情報の1つである安静時血管抵抗を用いる点にある。
同第九の特徴構成は、予め設定された複数種の人体の動作における血圧及び心拍数を時系列に沿ってコンピュータ処理によって算出する心臓循環器系モデルであって、心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段と、血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段と、1回拍出量を時系列に沿って算出する1回拍出量算出手段と、前記動作の運動タイプと運動強度指標、及び、前記人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付ける入力部とを有し、前記心拍数算出手段が、前記運動タイプが心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動の場合に、所定時間単位前に算出した心拍数と、前記血圧算出手段が算出した血圧と前記個人特性情報の1つである安静時血圧の差分に基づき心拍数を算出し、前記血圧算出手段が、前記心拍数算出手段が算出した心拍数、前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量、及び、血管抵抗に基づいて血圧を算出し、前記1回拍出量算出手段が、安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を算出する点である。
同第十の特徴構成は、上記第一または第九の特徴構成に加えて、前記1回拍出量算出手段が、前記運動タイプが前記上下移動運動の場合に、動脈圧と動脈血液量と動脈血流量を時系列に沿って算出する動脈モデルと、静脈圧と静脈血液量と静脈血流量を時系列に沿って算出する静脈モデルと、肺循環血圧と肺循環血液量と肺循環血流量を時系列に沿って算出する肺循環モデルとを用いて前記肺循環血圧を算出し、前記肺循環血圧と前記安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を算出する点である。
同第十一の特徴構成は、上記第一、第九または第十の特徴構成に加えて、前記血圧算出手段が、前記運動タイプが前記上下移動運動の動作が他の運動タイプの動作後に開始した場合に、前記血管抵抗として、前記他の運動タイプの動作時に算出された前記上下移動運動の動作開始直前の血管抵抗を用いる点である。
同第十二の特徴構成は、予め設定された複数種の人体の動作における血圧及び心拍数を時系列に沿ってコンピュータ処理によって算出する心臓循環器系モデルであって、必要酸素摂取量を時系列に沿って算出する必要酸素摂取量算出手段と、酸素摂取量を時系列に沿って算出する酸素摂取量算出手段と、心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段と、血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段と、1回拍出量を時系列に沿って算出する1回拍出量算出手段と、前記動作の運動タイプと運動強度指標、及び、前記人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付ける入力部とを有し、前記必要酸素摂取量算出手段が、前記運動強度指標の1つである代謝当量を示すMET値から必要酸素摂取量を算出し、前記酸素摂取量算出手段が、前記心拍数算出手段が算出した心拍数と前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量から心拍出量を算出して、前記心拍出量に基づき酸素摂取量を算出し、前記心拍数算出手段が、前記運動タイプが等張性収縮運動の場合に、所定時間単位前に算出した心拍数と、前記必要酸素摂取量算出手段が算出した必要酸素摂取量と前記酸素摂取量算出手段が算出した酸素摂取量との差分とに基づいて心拍数を算出し、前記血圧算出手段が、前記心拍数算出手段が算出した心拍数、前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量、及び、血管抵抗に基づいて血圧を算出し、前記1回拍出量算出手段が、安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を算出する点である。
本発明に係る心臓負担評価装置の第一の特徴構成は、人体の動作に対する心臓負担評価をコンピュータ処理によって行う心臓負担評価装置であって、前記人体の動作を複数種の行為コマンドを時系列で組み合わせてコンピュータマネキンの対象物に対する一連の動作によって定義して、前記行為コマンドで特定される前記コンピュータマネキンの前記動作をコンピュータ仮想空間上で可視化する行動生成システムに対して、前記行為コマンドで特定される各動作の動作時間情報を算出する動作時間算出手段と、前記行為コマンドで特定される各動作の運動強度指標を導出する運動強度特定手段と、前記行為コマンドで特定される各動作に対して、血液循環作用に与える影響が相異なる複数の運動タイプの内の少なくとも一つを割り当てる運動タイプ特定手段と、前記動作時間算出手段で算出された前記動作時間情報と、前記運動強度特定手段で特定された前記運動強度指標と、前記運動タイプ特定手段で特定された前記運動タイプと前記人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付け、前記行為コマンドで特定される動作に伴う血圧及び心拍数を時系列に沿って算出可能な心臓循環器系モデルを備えており、前記心臓循環器系モデルが、上記第一乃至第十二の何れかの特徴構成を備えた心臓循環器系モデルである点である。
本発明に係る心臓負担評価装置の第二の特徴構成は、上記第一の特徴構成に加えて、前記複数の運動タイプが、等尺性収縮運動、等張性収縮運動、及び、心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動の少なくとも3タイプを備えてなる点である。
本発明に係る心臓負担評価プログラムの特徴構成は、人体の動作に対する心臓負担評価を所定のコンピュータ上で実行するための心臓負担評価プログラムであって、上記第一乃至第十二の何れかの特徴構成を備えた心臓循環器系モデルにおける前記各手段及び前記各モデルの機能を前記コンピュータ上で実現するためのプログラムステップを含む点にある。
以下に、上記特徴構成の作用並びに効果を説明する。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第一の特徴構成によれば、運動タイプが等張性収縮運動の場合、等尺性収縮運動の場合、上下移動運動の場合の各動作についての心拍数及び血圧を精度良く算出することができる。つまり、運動タイプ別に心拍数モデルを個別化することで、運動タイプの違いが血液循環作用に与える影響の差異を明確に評価し、複数の運動タイプを含む一連の動作における心拍数及び血圧を時系列に沿って高精度に模擬できる。また、運動タイプ別に心拍数モデルを個別化して高精度に心拍数を算出できることで、各運動タイプで共通の血圧モデルを使用する血圧算出手段により、血圧も運動タイプ別に高精度に模擬できる。
つまり、本特徴構成の心臓循環器系モデルによれば、等張性収縮運動時において、運動強度指標である代謝当量を示すMET値の時系列データに基づいて必要酸素摂取量算出手段が必要酸素摂取量を時系列に沿って算出することによりMET値の時間的変化に追従して変化する必要酸素摂取量が求まり、1回拍出量算出手段が算出した1回の心拍に伴う血液拍出量である1回拍出量と所定時間単位前の心拍数算出手段が算出した心拍数に基づいて、酸素摂取量算出手段が酸素摂取量を時系列に沿って算出することにより、1回拍出量と心拍数の時間的変化に追従して変化する酸素摂取量が求まり、これら必要酸素摂取量と酸素摂取量の差分に基づいて心拍数を算出することにより当該差分を小さくする方向に働く人体の神経応答系及び血圧と心拍数間のフィードバックループ系を適切にモデル化して運動強度指標MET値及び血圧の時間的変化に追従して変化する心拍数を精度良く模擬できる。また、等尺性収縮運動時においては、等尺性収縮運動開始からの経過時間とともに増大し、且つ、最大筋収縮率に依存して変化する心拍数変化率で安静時心拍数から増大する心拍数モデルを想定することで、等尺性収縮運動時に血管が緊張状態の筋肉により圧迫され心拍数変動に影響することを評価でき、心拍数算出手段が等尺性収縮運動時における心拍変動を精度良く模擬できる。更に、心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動時においては、上下移動時に血管がバッファータンクとして機能する点に着目して、血圧算出手段が算出した血圧と安静時血圧の差分に応じて心拍数変化が生じる心拍数モデルを想定することで、心拍数算出手段が上下移動運動時における心拍変動を精度良く模擬できる。尚、所定時間単位とは、例えば、心臓循環器系モデルがコンピュータ処理により心拍数や血圧等の値を時系列に沿って演算する時間刻み等であり、10μ秒毎に心拍数や血圧等の値を出力する場合は、当該10μ秒を所定時間単位となる。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第二の特徴構成によれば、運動タイプが等尺性収縮運動の場合の各動作について、上記第一の特徴構成の場合と同様に、心拍数及び血圧を精度良く算出することができる。つまり、等尺性収縮運動以外の運動タイプについては、上記第一の特徴構成と異なる他の心拍数モデルを採用する別の心臓循環器系モデルと組み合わせて使用することが可能である。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第三または第四の特徴構成によれば、第一または第二の特徴構成の心臓循環器系モデルにおける心拍数算出手段の運動タイプが等尺性収縮運動の場合の心拍数モデルを簡単な関数モデルで構成することができる。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第五の特徴構成によれば、第一または第二の特徴構成の心臓循環器系モデルにおける心拍数算出手段の運動タイプが等尺性収縮運動の場合の心拍数モデルとして、最大筋収縮率が所定値以下の運動強度の低い低負荷動作時は、心拍数が略安静時に近い実験結果を精度良く模擬できる。この結果、最大筋収縮率の大小に拘わらず高精度に運動タイプが等尺性収縮運動の場合の心拍数を算出できる。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第六の特徴構成によれば、第一または第二の特徴構成の心臓循環器系モデルにおける心拍数算出手段の運動タイプが等尺性収縮運動の場合の心拍数モデルとして、下半身動作と上半身動作で異なる心拍数変化が生じる実験結果を精度良く模擬できる。この結果、等尺性収縮運動が下半身か上半身かに拘わらず高精度に運動タイプが等尺性収縮運動の場合の心拍数を算出できる。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第七の特徴構成によれば、第一または第二の特徴構成の心臓循環器系モデルにおける1回拍出量算出手段が、運動タイプが等尺性収縮運動の場合の動作が連続して、最大筋収縮率が変化した場合に、その変化に応じて1回拍出量が変化することを精度良く模擬でき、その結果として血圧の変化を精度良く模擬できる。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第八の特徴構成によれば、第一または第二の特徴構成の心臓循環器系モデルにおける心拍数算出手段の心拍数モデルに、最大筋収縮率に依存する心拍数変化率を既に採用しているため、血圧算出手段が血圧算出に用いる血管抵抗として安静時血管抵抗を用いることで、安静時からの血圧及び心拍数変動を精度良く模擬できる。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第九の特徴構成によれば、運動タイプが上下移動運動の場合の各動作について、上記第一の特徴構成の場合と同様に、心拍数及び血圧を精度良く算出することができる。つまり、上下移動運動以外の運動タイプについては、上記第一の特徴構成と異なる他の心拍数モデルを採用する別の心臓循環器系モデルと組み合わせて使用することが可能である。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第十の特徴構成によれば、運動タイプが上下移動運動の場合の1回拍出量を精度良く算出でき、その1回拍出量を用いて血圧が算出でき、更に、その血圧に基づき、心拍数が算出されるので、精度良く心拍数及び血圧を模擬できる。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第十一の特徴構成によれば、運動タイプが上下移動運動の以外の動作から上下移動運動に移行した場合に、上下移動運動の動作開始前後で同じ血管抵抗を用いることで、血圧が不連続に変化するのを回避でき、その血圧を用いて算出される心拍数も連続性を維持でき、結果として精度良く心拍数及び血圧を模擬できる。
本発明に係る心臓循環器系モデルの第十二の特徴構成によれば、運動タイプが等張性収縮運動の場合の各動作について、上記第一の特徴構成の場合と同様に、心拍数及び血圧を精度良く算出することができる。つまり、等張性収縮運動以外の運動タイプについては、上記第一の特徴構成と異なる他の心拍数モデルを採用する別の心臓循環器系モデルと組み合わせて使用することが可能である。
本発明に係る心臓負担評価装置の第一の特徴構成によれば、動作時間算出手段によってコンピュータマネキンの一連の動作を定義する行為コマンドの時系列データの各行為コマンドに対応した各動作の動作時間情報(動作時間や動作速度)が、人手で入力せずとも一定の算出基準に則って客観的且つ自動的に算出され、運動強度特定手段によって各行為コマンドで対応した各動作の運動強度指標が導出され、これら動作時間情報と運動強度指標が心臓循環器系モデルの入力データとして受け付けられることから、心臓循環器系モデルは運動強度指標の時系列データ、つまり、運動強度指標の時間的変化を得ることができ、当該運動強度指標の時間的変化に基づいて血圧及び心拍数を時系列に沿って算出することができる。
ここで、運動タイプ毎の各動作の運動強度指標は、運動タイプが等張性収縮運動の場合は、RMR(Relative Metabolic Rate、エネルギ代謝率)やMETS(Metabolic Equivalent、代謝当量)等の運動強度を表す指標で表され、RMRやMETSは運動に伴う酸素摂取量の変化によって表すことができる。また、運動強度指標は、運動タイプが等尺性収縮運動の場合は、最大筋収縮率を用いて表され、運動タイプが上下移動運動の場合は、上下移動の加速度または遷移時間等で表される。
つまり、本特徴構成の心臓負担評価装置は、時系列で組み合わされる各行為コマンドに対して動作時間情報と運動強度指標を求めれば運動強度指標の時系列データが得られるので、これらを上記特徴構成を備えた心臓循環器系モデルに入力することで、行動生成システムに対してコンピュータマネキンの種々の運動タイプからなる一連の動作に伴う心臓負担評価が精度良く実行できる構成としたものである。以上の結果、コンピュータマネキンを用いた空間設計時の行動シミュレーションにおいて、寸法適合性や関節トルク評価等に加えて、高齢者の負担評価等に重要な血圧・心拍の変動も予測可能となる。これにより、例えば立ち眩み等の危険予知が可能となり、人間と空間の適合性評価の精度が向上する。
また、行為コマンドで特定される各動作に対して、血液循環作用に与える影響が異なる運動タイプの別を考慮したことにより精度の高い心臓負担評価が実行できる。また、運動タイプの別を考慮する場合に、運動タイプ別に心臓循環器系モデルを準備する必要が無い。従って、運動タイプの異なる行為コマンドの組み合わせで規定される一連の動作に対して、かかる運動タイプの違いを反映した高精度の心臓負担評価が実行できる。
更に、人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付けるので、血液循環作用に影響を与える個人特性情報を考慮したより精度の高い心臓負担評価が実行できる。また、個人特性情報を考慮する場合に、例えば、年齢や性別等の個人属性毎に異なる心臓循環器系モデルを準備する必要が無く、例えば、幅広い年齢層の人間の行動シミュレーションに応用できる。
本発明に係る心臓負担評価装置の第二の特徴構成によれば、心臓循環器系モデルの実行する処理において、等尺性収縮運動と等張性収縮運動の血液循環作用への影響の違いを考慮することができ、更に、等張性収縮運動を含む動作であっても、一部に心臓位置の急激な上下移動を伴う場合は、等尺性収縮運動と等張性収縮運動とは異なるメカニズムで血液循環作用に影響を与えることを考慮することができ、運動タイプの異なる行為コマンドの組み合わせで規定される一連の動作に対して、かかる運動タイプの違いを反映した高精度の心臓負担評価が実行できる。
本発明に係る心臓負担評価プログラムの特徴構成によれば、その心臓負担評価プログラムを所定のコンピュータにインストールすることで、上記第一乃至第十二の特徴構成の心臓循環器系モデルを当該コンピュータ上で実現することができる。
更に、本特徴構成の心臓負担評価プログラムが所定のコンピュータが読み取り可能な状態で特定の記録媒体に記録されている場合、当該コンピュータにそのプログラムを当該記録媒体を介してインストール可能であり、上記第一乃至第十二の特徴構成の心臓循環器系モデルを当該コンピュータ上で実現することができる。
本発明に係る心臓負担評価装置(以下、適宜「本発明装置」という。)、及び、本発明装置で用いる心臓循環器系モデルの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
本発明装置1は、コンピュータ処理によって、人の作業動作を簡易な操作及び形式で記述した入力データに基づいて、コンピュータマネキンにその作業動作を模擬させるべく、コンピュータマネキンの対象物に対する動作を複数種の行為コマンドを時系列で組み合わせて定義して、前記行為コマンドで特定される前記コンピュータマネキンの動作を所定の合成アルゴリズムによって合成して、つまり、コンピュータマネキンの行動を生成し、コンピュータ画面上の仮想空間内に可視化するための行動生成システム10において、各行為コマンドで特定される動作に対して血圧及び心拍数の時間的変化を算出することにより当該動作の心臓負担を評価する心臓負担評価装置である。
本発明装置1は、図1に示すように、動作時間算出手段2、運動強度特定手段3、運動タイプ特定手段4、個人特性入力手段5、及び、心臓循環器系モデル6を備えて構成される。より具体的には、本発明装置1は、行動生成システム10を構成するコンピュータ、或いは、別のコンピュータ上で、当該コンピュータのコンピュータシステムのハードウェア資源を利用しながら心臓負担評価プログラムを実行することにより、動作時間算出手段2、運動強度特定手段3、運動タイプ特定手段4、及び、心臓循環器系モデル6を実現する。尚、本発明に係る心臓負担評価プログラムは、少なくとも心臓循環器系モデル6を実現するプログラムステップを備えて構成される。
また、心臓負担評価プログラムは、CD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体やインターネット等のデータ伝送媒体を介して、本発明装置1をハードウェア的に構成するコンピュータがアクセス可能な記録装置内にインストールされて実用に供される。具体的には、インストールされた当該プログラムが当該記憶装置からコンピュータが実行可能な主記憶上へ読み込まれて実行される。
本発明装置1の中核をなす心臓循環器系モデル6を説明する前に、行為コマンドについて簡単に説明し、心臓循環器系モデル6に入力される行為コマンドで特定される動作の運動強度指標と運動タイプ、及び、個人特性情報を生成する運動強度特定手段3、運動タイプ特定手段4、及び、個人特性入力手段5について説明する。
行為コマンドの種類及び機能は、対象となる行動生成システム10により異なるが、本実施形態では、「Reach」、「握る」、「移動」、「離す」、「姿勢」、「見る」、「引く」、「置く」、「点火」という九つの行為コマンドを用いて一連の作業を記述する。
「Reach」コマンドは、コンピュータマネキンの所定人体部位を対象物に向けて移動させる行為で、本実施形態では所定人体部位である「手」を対象物に届くように伸ばす等の移動させる行為を実行する。また、「Reach」コマンドは、コンピュータマネキンの特性と対象物の特性との間の関係によって行為の詳細動作が変化する条件判断付きコマンドであり、条件によって、把持物に触れる等のタッチ動作の他に、歩行動作、体を捻る・しゃがむ等の姿勢変更を伴う場合がある。「握る」コマンドは、「Reach」コマンドで対象物に届いた手で対象物を把持する行為を実行する。「移動」コマンドは、「握る」コマンドで把持した対象物を移動する行為を実行する。「離す」コマンドは、「握る」コマンドによってコンピュータマネキンの手が把持した対象物を解放する行為を実行する。「姿勢」コマンドは、コンピュータマネキンの姿勢を変更する行為を実行する。具体的には、登録されている姿勢に変更することにより実行する。「見る」コマンドは、コンピュータマネキンの正面方向と見る対象物との位置関係に応じてコンピュータマネキンの頭部を回転させながら対象物に視線を合わせる行為を実行する。「引く」コマンドは、「握る」コマンドによってコンピュータマネキンの手が把持した対象物を体に引き寄せる行為を実行する。「置く」コマンドは、「握る」コマンドによってコンピュータマネキンの手が把持した対象物を指定された位置まで移動させて置く行為を実行する。また、「置く」コマンドは、「Reach」コマンドと同様に、コンピュータマネキンの特性と指定位置との間の関係によって行為の詳細動作が変化する条件判断付きコマンドであり、条件によって、置く動作の他に、歩行動作、姿勢変更を伴う場合がある。「点火」コマンドは、家事作業を模擬する場合に特有のコマンドで、コンロを点火する行為を実行する。「点火」コマンドは、コンピュータマネキンの特性と対象物(点火スイッチ)の位置との間の関係によって行為の詳細動作が変化する条件判断付きコマンドであり、条件によって姿勢変更を伴う場合がある。
次に、運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4の構成について説明する。運動強度特定手段3は、行動生成システム10が出力する行為コマンドの時系列データ及び変位情報を入力し、その行為コマンドの時系列データで特定される動作の運動強度指標を導出する。また、運動タイプ特定手段4は、行動生成システム10が出力する行為コマンドの時系列データを入力し、その行為コマンドの時系列データから各行為コマンドで特定される動作に対して、等尺性収縮運動(Isometric Exercize)、等張性収縮運動(Isotonic Exercize)、及び、心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動(Rapid Change)の3タイプからなる運動タイプの少なくとも一つを割り当てる。運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4は夫々、行為コマンドから運動強度指標への第1変換テーブル、行為コマンドから運動タイプへの第2変換テーブルを備えて構成される。具体的には、心臓負担評価プログラムの運動強度特定ステップと運動タイプ特定ステップを、各変換テーブルを用いて夫々前記コンピュータ上で実行することにより実現される。
尚、本実施形態では、行為コマンドで特定される動作の運動タイプによって使用される運動強度指標が異なる。等尺性収縮運動では、運動強度指標として最大筋収縮率(%MVC)を用いて運動強度を表し、等張性収縮運動では、運動強度指標としてMETS(Metabolic Equivalent、代謝当量)を用いて運動強度を表し、上下移動運動では、運動強度指標としてMETS及び動作の加速度または動作時間を用いて運動強度を表す。METSは作業時酸素代謝量を安静時酸素代謝量で除した値であり、1METは安静時代謝量を表しており、酸素摂取量にして3.5ml/kg/分に相当する。尚、上下移動運動の運動強度指標として動作時間を用いる場合は、動作時間算出手段2によって動作時間が与えられる。
以下、上記行為コマンドから運動強度指標(MET値、%MVC)への変換、及び、行為コマンドから運動タイプへ変換の手順について、図2、図3を参照しながら行為コマンド別に説明する。
「Reach」コマンドの場合は、条件判断付きコマンドであり、タッチ動作、歩行動作、姿勢変更に対して夫々、図2の変換テーブルに従って、運動タイプが割り当てられ、その運動タイプに応じた運動強度指標の種別とその値が与えられる。タッチ動作には、運動タイプとして等張性収縮運動が夫々割り当てられ運動強度指標として1.3METが与えられる。歩行動作が存在する場合は、運動タイプとして等張性収縮運動が割り当てられ、運動強度指標として3METが与えられる。また、姿勢変更にしゃがむ動作が含まれている場合は、運動タイプとして上下移動運動が割り当てられ、運動強度指標として1METが与えられる。尚、「Reach」コマンドが歩行動作等を伴うか否かは、後述の動作時間算出手段2のPTS適用部13でのMOD値導出時の条件判断結果を利用してもよく、また、独自に同様の判断を変位情報に基づいて行ってもよい。
「握る」、「移動」、「離す」及び「見る」コマンドの場合、図2の変換テーブルに基づいて、運動タイプとして等張性収縮運動が割り当てられ、運動強度指標として、「移動」コマンドには1.5MET、その他のコマンドには1METが夫々与えられる。
「姿勢」コマンドの場合、後述のPTS適用部13でのMOD値導出時と同様に、腰の高さが50cm以上変化するか否かの判定を行い、図2の変換テーブルに基づいて、当該変化を伴う場合は、運動タイプとして上下移動運動が割り当てられ、当該変化を伴わない場合は、等張性収縮運動が割り当てられる。運動強度指標として、何れの場合にも1METが与えられる。尚、「姿勢」コマンドが当該変化を伴うか否かは、後述のPTS適用部13でのMOD値導出時の条件判断結果を利用してもよく、また、独自に同様の判断を変位情報に基づいて行ってもよい。
「引く」コマンドの場合、運動タイプとして等尺性収縮運動が割り当てられ、運動強度指標として最大筋収縮率(%MVC)を用いる。%MVC値は、「引く」コマンド動作の対象物の重さを、図3に示す最大筋力で除した値のパーセント表示で与えられる。図3中の年齢性別は、個人特性入力手段5からの個人特性情報が用いられる。また、対象物の重さは、行動生成システム10の物データベース45(図17参照)から取得できるが、対象物のアタッチ状態から片手、両手の何れで対象物を把持しているかを判定して、両手の場合には対象物の重さを半分に変更する。
「置く」コマンドの場合は、条件判断付きコマンドであり、置く動作、歩行動作、姿勢変更に対して夫々、図2の変換テーブルに従って、運動タイプが割り当てられ、その運動タイプに応じた運動強度指標の種別とその値が与えられる。置く動作の場合、運動タイプとして等尺性収縮運動が割り当てられ、運動強度指標として最大筋収縮率(%MVC)を用いる。%MVC値は、「置く動作の対象物の重さを、図3に示す最大筋力で除した値のパーセント表示で与えられる。尚、%MVC値の導出方法は、「引く」コマンドの場合と同様である。歩行動作が存在する場合は、運動タイプとして等張性収縮運動が割り当てられ、運動強度指標として3METが与えられる。また、姿勢変更にしゃがむ動作が含まれている場合は、運動タイプとして上下移動運動が割り当てられ、運動強度指標として1METが与えられる。尚、「置く」コマンドが歩行動作等を伴うか否かは、後述の動作時間算出手段2のPTS適用部13でのMOD値導出時の条件判断結果を利用してもよく、また、独自に同様の判断を変位情報に基づいて行ってもよい。
「点火」コマンドの場合は、基本的に指先または手先だけの動作であるので、運動タイプとして等尺性収縮運動が割り当てられ、運動強度指標として最大筋収縮率(%MVC)を用いる。また、「点火」コマンドは、条件判断付きコマンドであり、点火状態(コンロの火炎)の確認の為に体を捻りながら点火動作をする場合があるので、当該捻りが有る場合には、%MVC値として30%、当該捻りが無い場合には、%MVC値として5%が与えられる。
ところで、上述の運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4において、行動生成システム10から変位情報を入力し、動作時間算出手段2からは一部の判断結果を入力する構成としているが、実際のコンピュータのプログラム処理においては、行動生成システム10から変位情報の入力を受けずに、変位情報に基づく必要な判断は、全て動作時間算出手段2で行われる同様の判断結果を利用するのが好ましい。
次に、個人特性入力手段5について簡単に説明する。個人特性入力手段5は、
心臓循環器系モデル6の入力データの一部として、コンピュータマネキンで生成する動作の模擬対象となる人間の個人特性の入力手段で、人手によるキーボード等の入力支援装置からのマニュアル入力を受け付け、或いは、個人特性情報を格納したデータベースから特定個人の情報を検索して、心臓循環器系モデル6に当該入力データを提供する手段であり、既知の技術を用いて構成される。尚、本実施形態では、個人特性情報として、年齢、性別、体重、安静時収縮期血圧、安静時拡張期血圧、及び、安静時心拍数を入力する。
次に、心臓循環器系モデル6の構成及び動作について説明する。心臓循環器系モデル6は、行為コマンドによって相互に対応づけられた動作時間情報と運動強度指標と運動タイプ、及び、個人特性入力手段5から入力された個人特性情報を入力データとして受け付け、行為コマンドの時系列データによって規定されるコンピュータマネキンの動作に伴う血圧及び心拍数を時系列に沿って算出可能に構成され、具体的には、図4に示すように、入力部20、必要酸素摂取量算出部21、化学受容器部22、神経応答部23、心拍数算出部24、心拍出量算出部25、1回拍出量算出部26、血管抵抗算出部27、酸素摂取量算出部28、血圧算出部29を備えて構成されている。
入力部20は、動作時間算出手段2、運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4によって算出または導出された、行為コマンドの時系列データにおける各行為コマンドの動作時間情報と運動強度指標と運動タイプが行為コマンド毎に時系列に相互に関連付けられて、また、個人特性入力手段5によって入力された個人特性情報が、夫々入力されると、各部に必要なデータを提供する。ここで、各行為コマンドの動作時間情報と運動強度指標と運動タイプが行為コマンド毎に時系列に相互に関連付けられて入力されるので、行為コマンド毎の運動強度指標と運動タイプが、夫々の経過時間が動作時間情報の動作時間で与えられる時系列データとして認識される。
必要酸素摂取量算出部21は、入力部20に入力された運動強度指標(MET値)により算出されるMETLEVに基づいて、運動タイプが等張性収縮運動の各行為コマンドで規定される動作に必要な1分間当りの必要酸素摂取量(ml/分)を算出する。具体的には、必要酸素摂取量は(3.5×METLEV×体重)で与えられる。ここで、体重(kg)は予め設定された標準体重を使用するか、或いは、個人特性情報の一つとして入力部20に入力されたものを使用する。また、METLEVは、MET値6以下の定常状態においてはMET値と等しくなるが、MET値が変化した場合、あるいはMET値が6以上の場合は、METINTとMETVO2の和で算出される。
ここで、METINTは、運動強度指標(MET値)が変化しても実際の人間の酸素代謝量はステップ関数状には変化せず、時間経過とともに増加していく様子を表す関数で、運動強度指標(MET値)が増加した場合、及び、運動強度指標(MET値)が減少した場合の夫々において、下記の数1で表される算出式により算出される。数1の算出式及び数1で用いられる係数や定数は、被験者実験により導出している。
Figure 2005063155
ここで、MET’INTは所定時間単位前に算出したMETINT値、METbは変化前のMETINT値、METaは変化後のMET入力値、tはMET値が変化した後の経過時間(秒)である。
次に、METVO2について説明する。METVO2とは、VO2drift及び運動後過剰酸素消費量EPOC(Excess Postexercise Oxygen Consumption)の様子を表す関数で、VO2driftとは、運動強度指標(MET値)が6以上のとき、酸素摂取量が(MET値×3.5×体重)により算出される値に到達した後も徐々に増加していく現象のことであり、METVO2は、所定時間単位当り0.0000375(ml/分/kg)増加する。EPOCとは、運動強度指標(MET値)が減少する際に、人体が過剰に酸素を消費する現象のことであり、METINTが運動強度指標(MET値)と等しくなった後に、当該VO2driftの影響で増加したMETVO2は、0になるまで所定時間単位当り0.0000375(ml/分/kg)減少する。尚、0.0000375(ml/分/kg)は、被験者実験により導出した値である。
化学受容器部22は、化学刺激を受容して応答する人体の感覚器官(化学受容器)を模擬したもので、運動タイプが等張性収縮運動の各行為コマンドで規定される動作において用いる。ここでは、必要酸素摂取量算出部21が算出した必要酸素摂取量から、所定時間単位前に酸素摂取量算出部28が算出した酸素摂取量を差し引いたものを化学刺激として算出する。以下、所定時間単位として、心臓循環器系モデル6内部の演算処理で使用する単位時間(例えば、10μ秒)を用いる。
神経応答部23は、運動タイプが等張性収縮運動と上下移動運動の各行為コマンドで規定される動作において用いる。神経応答部23は、等張性収縮運動の場合、化学受容器部22の化学刺激に対する応答部分を模擬したもので、化学受容器部22が出力する酸素摂取量差VO2ERR(ml/分)に応じて一定値を乗じた値を心拍数補正量(回/分)として出力する。ここでは、被験者実験より、心拍数は酸素摂取量過不足差を修正するために、図5に示すように、心拍数補正に応じて変化すると仮定している。
また、上下移動運動の場合、神経応答部23は、血圧算出部29が算出する血圧から平均血圧MBPを逐次算出する。そして、心拍数補正量(回/分)を下記の数2により算出する。尚、平均血圧MBPは、1心拍期間の最大血圧と最小血圧の平均値として求められる。また、数2中、MBP0は上下移動運動開始直前のMBP、MBPoldは1心拍前のMBP、Δtは上記所定時間単位(例えば、10μ秒)を夫々表している。
Figure 2005063155
心拍数算出部24は、運動タイプが等張性収縮運動と上下移動運動の各行為コマンドで規定される動作に対しては、心拍数算出部24が出力した所定時間単位前の心拍数に、神経応答部23が出力する各心拍数補正量を足した値を新たな心拍数として出力する。尚、心拍数の単位は「回/分」である。
心拍数算出部24は、運動タイプが等尺性収縮運動の各行為コマンドで規定される動作に対しては、最大筋収縮率%MVCが、当該等尺性収縮運動の開始前の動作の最大筋収縮率%MVCより増加する場合は、心拍数を安静時心拍数と心拍数増加量の和として、下記の数3により算出する。また、最大筋収縮率%MVCが、当該等尺性収縮運動の開始前の動作の最大筋収縮率%MVCより減少する場合は、開始直前動作の安定心拍数と心拍数減少量の和として、下記の数4により算出する。安静時心拍数は、入力部20に入力された個人特性情報の1つである。
Figure 2005063155
Figure 2005063155
数3、数4中、HRは心拍数、HRrは安静時心拍数であり、tは等尺性収縮運動の開始からの経過時間で、τは回復時間であり、本実施形態では、回復時間は10秒に設定している。尚、回復時間τが%MVCによって緩やかに変化するように設定してもよい。IRHRは心拍数増加率係数で、入力部20に入力された運動強度指標の%MVCの関数として、下記の数5と数6で与えられる。数5は等尺性収縮運動が上半身の場合、数6は下半身の場合を夫々示している。尚、数5及び数6中、MRは図2の表中の筋肉割合(%)を示している。また、数4のIRHR0は開始前の動作における心拍数増加率係数である。
数3において、右辺の第2項が心拍数増加量に相当し、IRHR(1−exp(−t/τ))は心拍数変化率(%MVCが増加する場合は心拍数増加率となる。)を表しており、時間の経過とともに、0から(HRr×IRHR)まで単調増加する。
数4の右辺第3項が心拍数減少量に相当し、%MVCが大きいとIRHR0も大きいので、IRHR0>IRHRであり、同第3項は時間の経過とともに単調減少する。尚、心拍数減少量を安静時心拍数で除した部分が心拍数変化率(%MVCが減少する場合は心拍数減少率となる。)を表している。また、数4の右辺第1項と第2項の和(定数部)は、開始直前動作の安定心拍数(t=無限大)に相当する。尚、等尺性収縮運動以外の動作は、%MVCが0であるので、数4が適用されるのは直前動作も等尺性収縮運動の場合だけである。
Figure 2005063155
Figure 2005063155
心拍出量算出部25は、心拍数算出部24が算出した心拍数HR(回/分)と1回拍出量算出部26が算出した心拍1回当りの血液の拍出量である1回拍出量SV(ml/回)を乗じて1分間当りの心拍出量(ml/分)を算出する。算出した心拍出量は、血管抵抗算出部27と血圧変動算出部28で使用される。
1回拍出量算出部26は、入力部20に入力された運動強度指標(MET値、%MVC)と運動タイプと個人特性情報の年齢及び安静時心拍数に基づいて、心拍1回当りの血液の拍出量である1回拍出量を算出する。運動タイプが等張性収縮運動の場合は、数7に示す算出式のSV1〜SV3により与えられる。
Figure 2005063155
ここで、SVrは安静時の1回拍出量、HRrは安静時心拍数、VO2MAXは単位体重あたりの最大酸素摂取量(mml/分/kg)、SV1、SV2及びSV3は運動タイプが等張性収縮運動の場合の1回拍出量で、SV1はMETLEVが4未満の時の1回拍出量、SV2はMETLEVが4以上10未満の時の1回拍出量、SV3はMETLEVが10以上の時の1回拍出量である。S1は0.33、S2は0.167の定数である。
ここで、最大酸素摂取量VO2MAXとは、人間が体内に取り込むことのできる酸素量の最大値であり、性別・年齢によって異なるため、入力部により入力された個人特性情報に基づき、該当する最大酸素摂取量係数を図6により判定し、h1からh5の内の少なくとも2つを用いて、下記の数8で与えられる単位体重当りの最大酸素摂取量VO2MAX(mml/分/kg)を求める。これに体重を乗じて最大酸素摂取量を算出する。ここで、体重(kg)は予め設定された標準体重を使用するか、或いは、個人特性情報の一つとして入力部20に入力されたものを使用する。
Figure 2005063155
運動タイプが等尺性収縮運動の場合の1回拍出量は、数9に示す算出式のSV4、SV5により与えられる。ここで、tは等尺性収縮運動の開始からの経過時間で、τは回復時間であり、心拍数を算出する数3と数4と同じである。尚、SV4は、最大筋収縮率%MVCが、当該等尺性収縮運動の開始前の動作の最大筋収縮率%MVCより増加する場合の1回拍出量で、SV5は、最大筋収縮率%MVCが、当該等尺性収縮運動の開始前の動作の最大筋収縮率%MVCより減少する場合の1回拍出量である。尚、数9のSVrは安静時の1回拍出量で、数7の第1式で与えられるものを使用する。
Figure 2005063155
また、運動タイプが上下移動運動の場合の1回拍出量計算は、動脈圧(Pa)と動脈血液量比(Va)と動脈血流量(Qa)を時系列に沿って算出する動脈モデルと、静脈圧(Pv)と静脈血液量比(Vv)と静脈血流量(Qv)を時系列に沿って算出する静脈モデルと、肺循環血圧(Pp)と肺循環血液量比(Vp)と肺循環血流量(Qp)を時系列に沿って算出する肺循環モデルとを用いて、下記の数10(式(1)〜式(11))に示すように、肺循環血圧(Pp)を算出し、肺循環血圧(Pp)と安静時1回拍出量(SVr)に基づいて1回拍出量(SV6)を算出する。この動脈モデル、静脈モデル、肺循環モデルは、心臓左心室−動脈−静脈−心臓右心室−肺循環−心臓左心室という血液循環において、例えば、立ち上がり動作が生じた場合に、肺循環血圧(Pp)、1回拍出量(SV6)、心拍出量、血圧が減少し、酸素摂取量、心拍数が増加し、血圧が回復するという現象を模擬するものである。運動タイプが上下移動運動の場合は、当該血液循環モデルで、1回拍出量(SV6)が算出され、その結果が、血圧の算出に反映され、その血圧が、心拍数に反映されるというフィードバック経路を有している。
Figure 2005063155
数10において、式(1)、(4)、(7)が動脈モデルを、式(2)、(5)、(8)、(10)が静脈モデルを、式(3)、(6)、(9)が肺循環モデルを夫々表している。数10の演算は、式(1)〜式(11)の順番で実行されるが、演算結果に影響が表れない範囲で、演算順序の変更は可能である。Cv,Cp,Cqa,Cqvは、各式におけるパラメータで、Cv=0.625、Cp=2、Cqa=0.00019に設定している。また、各血液量比Va,Vv,Vpは全血液量に対する百分率で表され、初期値として、夫々20%、64%、9%を用いる。Va’,Vv’,Vp’は所定時間単位前に算出された計算時点での各血液量比Va,Vv,Vpである。MBP、MBP0は、数2で使用したものと同じく、平均血圧、上下移動運動開始直前の平均血圧を表している。SVrは安静時の1回拍出量で、数7の第1式で与えられるものを使用する。HRは心拍数で、心拍数算出部24からの出力を使用し、HRrは個人特性情報として入力された安静時心拍数で入力部20からの出力を使用する。tは上下移動運動開始からの経過時間である。
尚、運動タイプが上下移動運動の場合は、運動強度指標として加速度が用いられるが、この加速度の違いは、数10の式(10)のパラメータCqVの設定に表れる。つまり、加速度が大きいほど、パラメータ値を小さく設定する。
血管抵抗算出部27は、入力部20に入力された運動タイプと個人特性情報に基づいて、血管抵抗(mmHg・分/ml)を算出する。運動タイプが等張性収縮運動の場合は、血管抵抗Rは、下記の数11で与えられる。
Figure 2005063155
ここで、Zは大動脈のインピーダンス、Rは抹消血管抵抗、Eは補正係数で初期値は1、血液密度は0.000792(kg/m)、Amaxは大動脈断面積で男性は5.62(cm)、女性は4.12(cm)、Lは大動脈長で80cm、Kは大動脈のコンプライアンス(cm/mmHg×10)で初期値は1で与えられる。このときAmaxは性別により異なるが、個人差は小さい。また大動脈長Lも個人差は小さい。一方、抹消血管抵抗R及び大動脈コンプライアンスKは個人差が大きく、そのため入力部20により入力された収縮期血圧値及び拡張期血圧値と、血圧算出部29により算出される収縮期血圧値及び拡張期血圧値が異なる場合がある。このときこれらの誤差を修正し、個人特性をさらに詳細に反映したい場合は、入力部20に入力された安静時拡張期血圧値と所定時間単位前の血圧算出部29により算出された拡張期血圧値の差分DIAERRにより、図7で与えられる変化量を足した値を新たな補正係数Eとしてもよい。更に、安静時における所定時間単位前の血圧算出部29により算出された拡張期血圧値から収縮期血圧値を差し引いた値から、入力部20に入力された安静時拡張期血圧値から安静時収縮期血圧値を差し引いた値との差分、つまり、血圧変動誤差PLSERRにより図8で与えられる変化量を足した値を新たな大動脈コンプライアンスKとしてもよい。
運動タイプが等尺性収縮運動の場合は、血管抵抗Rは安静時と同じであるので、数11において、心拍出量を安静時1回拍出量SVrと安静時心拍数HRrの積で与えられる安静時心拍出量に置き換えて算出した安静時血管抵抗Rrを用いる。但し、等尺性収縮運動の動作の前の動作が、等張性収縮運動の場合で血管抵抗が減少していた場合は、いきなり安静時血管抵抗Rrに戻さずに、下記の数12により、血管抵抗Rを漸近的に安静時血管抵抗Rrに近づけて行く。ここで、R0は等尺性収縮運動の動作開始前の血管抵抗値で、tは等尺性収縮運動の動作開始後の経過時間である。
Figure 2005063155
また、運動タイプが上下移動運動の場合の血管抵抗は、それ以前の動作で算出された血管抵抗値を使用する。
酸素摂取量算出部28は、心拍出量算出部25が算出した心拍出量(ml/分)に基づいて酸素摂取量(ml/分)を算出する。具体的には、酸素摂取量は、下記の数13で与えられる。VO2MAXは単位体重あたりの最大酸素摂取量(mml/分/kg)で、1回拍出量算出部26で使用するものを流用する。
Figure 2005063155
血圧算出部29は、Windkessel理論を用いて、心拍数算出部24により算出される心拍数、1回拍出量算出部26により算出される1回拍出量、及び、血管抵抗算出部27により算出される血管抵抗に基づいて血圧値を算出する。具体的には数14により与えられる。
尚、Windkessel理論とは、ピストンと、ピストンにつながれた細い筒と、ピストンと筒の間の空気層及びを貯水槽からなる装置においてピストンから水を押し出した際の様子を数式で表した理論である。具体的には、ピストンから水が押し出されると、水の一部は先端から噴出するが、細い筒の抵抗のために、残りは空気槽の方に貯まり、空気を圧縮する。拍出が終わって、ピストンが水を押し出す前の状態に戻っている間にも、空気槽の圧縮された空気の力で、筒の先端からの水の噴出は続く。その結果、ポンプからの断続的な拍出は、筒先からの連続的な噴流となる。この様子を心臓循環器に当てはめて血圧から血流量を算出する理論である。具体的には、ピストンが心室、細い筒が血管、空気層が血管の弾性、貯水槽が心房及び静脈に相当する。血圧算出部29は、当該Windkessel理論を圧力(血圧)について解いたもので、血流量を時系列的に与えて、そのときの血圧を算出している。
Figure 2005063155
ここで、tは計算開始からの経過時間で、METLEV、METINT、E、K及びVO2ERRの内の何れか1つでも変化した際に0にリセットされる。このとき同時にIも0にリセットされる。Qは血流量(ml)、tは心臓の駆動時間で0.3(秒)、tは心臓が駆動を開始してからの経過時間で、tと同期しており(60/心拍数)(秒)を経過するたびに0にリセットされる。p_0は、t及びIが0にリセットされる所定時間単位前の血圧(mmHg)の値で、初期値は90である。Ampは血流量関数Qの振幅で、sin(πt/t)をt=0からtで積分した値である。尚、tが0.3秒であることは被験者実験より導出した。
心臓循環器系モデル6は、上記した各部20〜29の演算処理を前記コンピュータ上で実行する各プログラムステップにより構成され、具体的には、当該各プログラムステップを前記入力データに基づいて前記時間単位毎に循環的に実行することにより、血圧及び心拍数を時系列に沿って算出することができる。
次に、動作時間算出手段2について説明する。動作時間算出手段2は、行動生成システム10から出力される行為コマンドの時系列データから各行為コマンドで特定される動作に要する動作時間や動作速度等の動作時間情報を時系列に沿って算出する。動作時間算出手段2は、図9に示すように、入力部11、デフォルト値設定部12、PTS適用部13、動作時間情報導出部14、及び、動作時間情報変更部15を備えて構成される。更に、PTS適用部13はMOD値導出部16を備え、MOD値導出部16は移動動作判定部17と歩数計算部18を備える。より具体的には、動作時間算出手段2は、本発明装置1を構成するコンピュータ上で、当該コンピュータのコンピュータシステムのハードウェア資源を利用しながら心臓負担評価プログラムの動作時間算出手段2に係る動作時間算出ステップを実行することにより、入力部11、デフォルト値設定部12、PTS適用部13、動作時間情報導出部14、及び、動作時間情報変更部15を実現する。
入力部11は、所定の作業を記述した行為コマンドの時系列データと、その時系列データで特定される動作における動作時間情報と無関係に決定されるコンピュータマネキンの所定人体部位の変位情報を、行動生成システム10から入力する。具体的には、入力部11は、図10に示す心臓負担評価プログラムの動作時間算出ステップに含まれる第1入力ステップと第2入力ステップを夫々前記コンピュータ上で実行することにより実現される。ここで、第1入力ステップは行動生成システム10から行為コマンドの時系列データを入力し、前記コンピュータシステムの記憶装置に格納する処理を実行し、第2入力ステップは、行動生成システム10から、その時系列データで特定される動作における動作時間情報と無関係に決定されるコンピュータマネキンの所定人体部位の変位情報を入力し、前記コンピュータシステムの記憶装置に格納する処理を実行する。
尚、所定人体部位とは、頭、首、肩、背中、腰、重心位置、手足の各関節等の各部位である。また、それらの変位情報とは、高さ、移動距離、回転角等の情報であり、変位には、基準位置や基準姿勢からの変位と、特定動作の前後での変位が有り得る。
デフォルト値設定部12は、図10に示す動作時間算出ステップに含まれるデフォルト値設定ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。デフォルト値設定ステップにおいて、第1入力ステップで入力部11に入力した行為コマンドの時系列データの動作時間情報に、所定のデフォルト値が設定される。尚、デフォルト値設定部12は、行動生成システム10側の一機能として設けても構わない。また、行動生成システム10がデフォルト値設定機能を予め具備している場合は、動作時間算出ステップ2側に別途同機能を設ける必要はない。かかる場合は、デフォルト値設定ステップは、心臓負担評価プログラムの実行前に処理されても構わない。
行動生成システム10側では、動作時間情報にデフォルト値が設定されると、そのデ・BR>Tォルト状態の時系列データに基づいて所定の合成アルゴリズムによってコンピュータマネキンの動作を合成し、その合成された動作からコンピュータマネキンの所定人体部位の変位情報を抽出し、第2入力ステップにおいて、抽出された変位情報が入力部11に入力する。
本実施形態では、行動生成システム10側に本発明装置1に必要な変位情報を抽出する機能が一般的な機能として具備されている場合を想定しているが、行動生成システム10側に当該変位情報抽出機能がない場合は、行動生成システム10の外部に、例えば、動作時間算出手段2内に設けても構わない。
PTS適用部13は、図10に示す動作時間算出ステップに含まれるPTS適用ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。PTS適用ステップにおいて、入力部11に入力された時系列データと変位情報に基づいて、時系列データ中の各行為コマンドにPTS法で規定された要素動作を割り付ける。本実施形態では、PTS法としてMODAPTS法を用いる。要素動作を割り付けるにあたり、行為コマンド毎に特定されるMODAPTS法で規定される要素動作の種別を決定し、その各要素動作の所要時間値に相当するMOD値を決定する。
ここで、PTSとは、Predetermined Time Standardの略称であり、人間の行う一連の作業をPTS法で規定される要素動作の組み合わせで構成し、予めPTS法で定められた時間標準の値を用いて各要素動作の時間値を定め、これを集計することによって一連の作業に要する時間を客観的に求める手法の総称である。PTS法としては、要素動作の種類や個数、各要素動作の時間値の時間決定因子や時間標準の違いによって、種々のものが提案されており、代表的なものとして、MODAPTS法、MTM−II法、MSD法、MTA法、BMT法、MTM法、WF法等がある。
また、MODAPTS法とは、Modular Arrangement of Predetermined Time Standardsを基礎として開発されたPTS法で、オーストラリアのPTS協会が、アメリカの工業会で発達した作業動作時間測定法であるMTM(Methods Time Measurement)を改良して作り上げた極めて簡便な評価法である。
尚、MODAPTS法で規定された要素動作は、指、手、腕の移動動作と、移動動作の終わりになされる指、手、腕の終局動作と、移動動作と終局動作の何れにも含まれない補助動作の三つに分類される。移動動作はMxで表され、xMODの移動動作を行う。xはMOD値で要素動作の所要時間値を表し、MODは人間の動作の最小単位を意味しており、1MODは0.129秒の動作時間に相当する。尚、Mは「Move」の略称である。また、終局動作は、対象物に手を伸ばした後、それを掴む動作Gxと、対象物を移動させた後、それを目的の場所に置く動作Pxの2種類があり、xはMOD値である。Gは「Get」の略称、Pは「Put」の略称である。Gx、PxはxMODの終局動作を行うが、Gxの場合、掴みの難易度に応じてG0、G1またはG3となり、Pxの場合、置く際の難易度に応じてP0、P2またはP5となる。
補助動作は、L1、E2、R2、D3、F3、A4、C4、W5、B17、S30の10種類がある。尚、各数字はMOD値であり、各補助動作を行うときの所要時間値に相当する。L1は移動動作に対する重量補正で、重量物を移動する場合に、片手の実際にかかる重量が2〜6kgまでの場合にはL1で置く動作Pxの補正を行う。つまり、所要時間値として1MODが加算される。また、重量が6kgを超える場合は、4kg毎に1MODを加算する。Lは「Load Factor」の略称である。E2は視線移動と焦点合わせ動作である。Eは「Eye Use」の略称である。R2は物の掴み直し動作である。Rは「Regrasp」の略称である。D3は瞬間的判断とそれに伴う指の動作である。Dは「Decide and React」の略称である。F3は足首の動作で、踵を床につけたままでの1回のペダル操作である。Fは「Foot Action」の略称である。A4は指や手での加圧操作である。Aは「Apply Pressure」の略称である。C4は手または腕の1回転のクランク動作である。Cは「Crank」の略称である。W5は1歩当りの歩行動作である。Wは「Walk」の略称である。B17は立ち姿勢から体を屈めて元の姿勢に戻る、或いは、屈んだ姿勢から立ち上がって元の姿勢に戻る動作。Bは「Bend and Arise」の略称である。S30は立ち姿勢から椅子に座って再び立つ、或いは、椅子に座った姿勢から立ち上がって再び座る動作である。Sは「Stand Arise」の略称である。
このように、MODAPTS法が極めて簡易なPTS法であり、要素動作及びその時間値の規定数が他のPTS法に比べて少なく、且つ、時間決定基準が簡単であるので、行為コマンドや変位情報から各要素動作の所要時間値を決定するルールが簡単化でき、また、必要な変位情報も簡単化できるため、PTS適用部13や入力部11の構成を簡単化できる。
次に、PTS適用部13の具体的な動作、つまりPTS適用ステップについて説明する。PTS適用部13は、入力部11に入力された時系列データの各行為コマンドに対して、各別にMODAPTS法の要素動作を割り付ける。行為コマンド毎に割り付けられる要素動作の候補は予め決まっていて、その選択とMOD値を行為コマンドの詳細データとその行為コマンドに対応する動作に係る変位情報から求める。MOD値はMOD値導出部16が決めるが、MOD値そのものを決める場合と、予めMOD値の決まった要素動作を何回繰り返すかの繰り返し回数を決める場合がある。1回の要素動作の所要時間値を求めるか、一連の同じ要素動作の所要時間値を求めるかの違いである。以下、行為コマンド別に説明する。
「Reach」コマンドの場合は、条件判断付きコマンドであり、タッチ動作、歩行動作、姿勢変更に対して夫々要素コマンドを割り付ける。把持物を持ち替える等の準備動作については、当該準備動作が存在する場合に、移動動作のMxを割り付け、MOD値導出部16の移動動作判定部17がそのときの手首、肘、肩、胴または腰の関節動作或いは回転動作の変位情報からMOD値xを特定する。具体的には、表1に示す判定表に基づいて決定する。
Figure 2005063155
表1の見かたは、表中の「0」がその人体部位の関節動作または回転動作が無い場合、「1」が有る場合を意味し、「2」は肩関節の回転角度が別途定義する第1の閾値以上となる関節動作が有る場合、「3」は肩関節の回転角度が別途定義する第2の閾値以上となる関節動作が有る場合を意味する。「−」はその人体部位の回転動作の有無を考慮しないことを意味する。これより、例えば、手首、肘、肩、胴または腰の何れも変位しない場合は、要素動作がM1となりMOD値xは1となる。また、肩と胴または腰は変位しないが肘が曲がる場合は、要素動作がM3となりMOD値xは3となる。
「Reach」コマンドに歩行動作が存在する場合には、補助動作のW5を割り付け、そのW5動作を歩数回繰り返すようにする。MOD値導出部16の歩数計算部18は、補助動作のW5が割り付けられると、コンピュータマネキンのその歩行動作における重心の移動距離と歩幅を変位情報から求め、或いは、変位情報として入力された重心の移動距離と歩幅を用いて、重心の移動距離を歩幅で除して歩数を算出する。
「Reach」コマンドは、最終的に対象物に手が届くまでの動作であり、何らかの姿勢変更を伴う。姿勢変更の種類には、コンピュータマネキンと対象物との相対的な位置関係によって、手首、肘、肩の関節動作以外にしゃがむ動作や体の捻り動作を含む場合があり、しゃがむ動作を伴う場合には、補助動作のB17を割り当てる。尚、B17動作は1往復の動作であるので、この場合は繰り返し回数として0.5を割り当てる。最終的に手を対象物に触れるまでの動作には、
移動動作のMxを割り当てて、MOD値導出部16の移動動作判定部17がそのときの手首、肘、肩の関節動作或いは回転動作の変位情報からMOD値xを特定する。具体的には、手首、肘、肩の関節動作と体の捻り動作を考慮して、表1の判定表に基づいて判定する。
「握る」コマンドの場合、PTS適用部13は終局動作のG1を割り当てる。
この場合、MOD値は1で固定である。
「移動」コマンドの場合、PTS適用部13は移動動作のMxを割り当てて、
MOD値導出部16の移動動作判定部17がそのときの手首、肘、肩、胴または腰の関節動作或いは回転動作の変位情報からMOD値xを特定する。具体的には、「Reach」コマンドの準備動作や姿勢変更と同様に、表1の判定表に基づいて判定する。
「離す」コマンドの場合、PTS適用部13は移動動作のM1を割り当てる。
「離す」コマンドは「握る」コマンドによってコンピュータマネキンの手が把持した対象物を解放する行為であるので、手首関節の回転動作を伴うとして、MOD値として1を一意的に割り当てている。
「姿勢」コマンドの場合、PTS適用部13は補助動作のB17と移動動作のMxの少なくとも何れか一方を割り当てる。具体的には、腰のZ座標(高さ)が50cm以上変化する姿勢変更の場合に、B17が割り当てられる。但し、B17動作は1往復の動作であるので、この場合は繰り返し回数として0.5を一意的に割り当てる。その他の姿勢変更の場合には、移動動作のMxが割り当てられ、MOD値導出部16の移動動作判定部17がそのときの手首、肘、肩、胴または腰の関節動作或いは回転動作の変位情報から表1の判定表に基づいてMOD値xを特定する。
「見る」コマンドの場合、PTS適用部13は補助動作のE2を割り当てて、
その繰り返し回数をMOD値導出部16が算出する。具体的には、MOD値導出部16は変位情報として入力された頭部の回転角度を30度で除して、繰り返し回数を求める。つまり、頭部の回転角度が30度当り1回のE2動作を割り当てる。
「引く」コマンドの場合、PTS適用部13は移動動作のMxを割り当てて、
MOD値導出部16の移動動作判定部17がそのときの手首、肘、肩、胴または腰の関節動作或いは回転動作の変位情報から表1の判定表に基づいてMOD値xを特定する。
「置く」コマンドの場合、「Reach」コマンドと同様に、条件判断付きコマンドであり、置く動作、歩行動作、姿勢変更に対して夫々要素コマンドを割り付ける。具体的な処理方法も実質的に「Reach」コマンドと同様である。相違点としては、姿勢変更の最後に終局動作のP0を追加する点であるが、これはMOD値が0であるので、所要時間値の計算には影響を与えない。
「点火」コマンドの場合、点火状態(コンロの火炎)の確認の為に体を捻りながら点火動作をする場合があるので、PTS適用部13は、当該捻りが有る場合には、M7とP0を割り当て、当該捻りが無い場合にはP0を割り当てる。また、当該捻りの有無は入力部11に入力された胴または腰部の変位情報である回転の有無により判定する。
尚、MOD値導出部16の移動動作判定部17における判定基準(表1の判定表)、歩数計算部18における計算式、及び、MOD値導出部16の他の計算式等は、本発明装置1を構成するコンピュータシステムの記憶装置に格納されている。
動作時間情報導出部14は、図10に示す動作時間算出ステップに含まれる動作時間情報導出ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。動作時間情報導出ステップにおいて、PTS適用部13が時系列データの各行為コマンドに割り付けた要素動作の各MOD値を合計して、各行為コマンドの動作時間を算出する。ここで、同じ要素動作が複数回繰り返されている場合や、半分だけの場合は、その要素動作のMOD値にそれらの繰り返し回数を乗じて合計を求める。尚、行為コマンドが条件判断付きコマンドの場合には、歩行動作、姿勢変更の夫々の有無に応じて各別に要素動作の各MOD値を合計して動作時間を算出する。また、動作時間に代えて動作速度を設定する行為コマンドの場合は、MOD値及びMOD値の決定に使用したコンピュータマネキンの重心移動距離等の変位情報から動作速度を算出する。例えば、「Reach」コマンドの歩行動作において、歩行速度を入力するように設定されている場合が相当する。
動作時間情報変更部15は、図10に示す動作時間算出ステップに含まれる動作時間情報変更ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。動作時間情報変更ステップにおいて、入力部11に入力された時系列データの各行為コマンドに対して動作時間や動作速度等の動作時間情報を、デフォルト値設定部12が設定したデフォルト値から、動作時間情報導出部14が算出した動作時間情報に変更して、行動生成システム10及び心臓循環器系モデル6に出力する。この結果、行動生成システム10は、人手によって当該動作時間情報を入力することなく、動作時間算出手段2によって算出された動作時間情報によって行為コマンドの時系列データを処理して、コンピュータマネキンの行動を生成し、コンピュータ画面上の仮想空間内にその行動を可視化することができる。更に、心臓循環器系モデル6は後述する要領で、行動生成システム10で生成されるコンピュータマネキンの行動に対する血圧及び心拍数の時間的変化を算出することにより当該行動の心臓負担評価を行うことができる。
次に、本発明装置1を用いた血圧及び心拍変動のシミュレーション結果を説明する。心臓循環器系モデル6の精度確認のために、3つの運動タイプの基本動作について実験データと比較を行った。等尺性収縮運動の比較結果を図11及び図12に、等張性収縮運動の比較結果を図13及び図14に、上下移動運動の比較結果を図15及び図16に示す。
図11は、等尺性収縮運動を100秒時点で開始した(安静時から%MVCが40%に上昇した)場合の血圧変動のシミュレーション結果と実験結果を、図12はそのときの心拍変動を夫々示している。
図13は歩行動作を290秒時点で開始した(MET値が1.5から3.3に変化した)場合の血圧変動のシミュレーション結果と実験結果を、図14はそのときの心拍変動を夫々示している。
図15は立ち上がり動作を290秒時点で開始した場合の血圧変動のシミュレーション結果と実験結果を、図16はそのときの心拍変動を夫々示している。尚、人体特性情報として、年齢37歳、性別女性、安静時収縮期血圧100(mmHg)、安静時拡張期血圧100(mmHg)、安静時心拍数70(回/分)を夫々想定した。
このように血圧及び心拍ともに実測値とシミュレーション結果がよく一致している。これは入力部に入力された安静時血圧値と、血管抵抗算出部により算出された血圧値をもとに血管抵抗算出部で血管抵抗値を個人に適合するように補正したためである。また、Windkesselモデルを適用したことにより血圧が連続波形データとして得られるので拡張期血圧と収縮期血圧を各々算出することも可能となった。更に、心拍数、1回拍出量、血管抵抗等の算出を運動タイプ別に適切にモデル化したことにより、実測値とシミュレーション結果の一致が図られている。
次に、本発明装置1の理解を容易にする為に、本実施形態で想定される行動生成システム10について説明する。図17に示すように、行動生成システム10は、作業記述部41、行為選択部42、一つまたは複数の行為ファイル43、人データベース44、物データベース45、動作決定ルール46、姿勢データベース47、及び、可視化部48の各部で構成されている。
尚、行動生成システム10は、従来の技術の項で説明した既存のコンピュータマネキンの行動生成システム(コンピュータマネキンの取る目標姿勢を予めマウス等のコンピュータの入力装置を用いてコンピュータ画面上で作成しておき、各目標姿勢間の動作を、例えばインバースキネマティクス等の動作合成アルゴリズムで生成し、別途入力した動作時間でコンピュータマネキンをコンピュータ画面上の仮想空間内で動作させるべく可視化(アニメーション)を行う)をベースに、作業動作入力の簡易化、それを実現するための行為コマンド、特に条件判断付き行為コマンドの導入を図り、行為コマンドの実行に必要な人データベース44、物データベース45、動作決定ルール46等を新たに構成しているものを想定する。但し、行動生成システム10として、条件判断付き行為コマンドを使用しないシステムであっても構わない。
作業記述部41は、コンピュータマネキンにさせる作業動作を入力する入力手段である。機能としては、作業記述用のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)をコンピュータ画面上に提供し、オペレータのマウス操作やキー入力操作等により「ヒューマン」、「場所」、「目標物」、「目的」が順に指定されると、一連の作業動作を自動的に定義して、コンピュータマネキンの対象物に対する動作の概略を規定した入力データを生成する。
ここで、「ヒューマン」はコンピュータマネキンの名称を指定するもので、具体的には、フィギュアファイル名を指定する。コンピュータマネキンの「目的」は、コンピュータマネキンにさせる作業動作の種別を規定するものであり、「目標物」は、指定された目的で特定される動作の直接の対象物である。また、「場所」は、指定された目的で特定される動作を、指定された目標物に対して行う「場所」であり、当該目的動作に付随する一連の動作に含まれる行為において、直接の対象物となる場合がある。例えば、「場所」が「冷蔵庫の上段」であり、「目的」が「取り出す」である場合に、「取り出す」という目的動作に付随する後述する各種行為の対象物が「冷蔵庫の上扉」であることが、「場所」によって定義づけられる。従って、コンピュータマネキンの動作の対象となる対象物として、「目標物」と「場所」が指定される。
尚、指定された「ヒューマン」、「場所」の特性を人データベース44、物データベース45から参照し、図18に示すように、指定されたヒューマンが持っている物、及び、指定された場所にある物を「目標物」の候補として自動的にリストアップするように構成され、「目標物」の指定の簡易化が図られている。更に、図18に示すように、「目的」の指定も、指定された目標物の特性の一つとして設定されているアフォード動作を物データベース45から参照し、その目標物に適した「目的」動作を自動的にリストアップするように構成され、「目的」の指定の簡易化が図られている。ここで、アフォードとはJ.ギブソンが提唱した認知科学や人工知能分野で注目されているアフォーダンス理論(知覚理論)における概念で、物体がその物体に作用する主体に対して行為を引き出すことを意味している。
行為選択部42は、作業記述部41で生成された入力データの「目的」で特定される動作を、9種類の「行為」の中から選択された複数の「行為」を組み合わせて定義する。ここで、9種類の「行為」は、「Reach」、「握る」、「移動」、「離す」、「姿勢」、「見る」、「引く」、「置く」、「点火」という九つの行為コマンドを用いて選択される。各行為コマンドの概略は既に説明した通りである。
ここで、各行為コマンドの動作主体たるコンピュータマネキンは、入力データの「ヒューマン」で指定されたコンピュータマネキンであり、入力データの「目標物」で直接的に指定された対象物或いは入力データの「場所」で間接的に指定された対象物が、各行為コマンドで特定される行為の対象物となる。つまり、各行為コマンドにおいて、「ヒューマン」で指定されたコンピュータマネキンの所定人体部位がその対象物に対して所定の動作を実行することになる。
行為選択部42は、作業記述部41で生成された入力データで特定される動作を、上述した9つの行為コマンドを用いて定義し、行為ファイル43として行動生成システム10に付属する所定の記憶装置内に保存する。行為ファイル43を構成するデータ項目として、入力データで特定される目的動作、場所、目標物の他、時系列に並べられた各行為コマンドについて、実行順序を示す番号、行為コマンド名、各行為の動作対象となる対象物(一般には場所または目標物の何れか)、動作時間を夫々一組にして入力される。但し、「Reach」コマンド、「置く」コマンドの動作時間は、タッチ動作または置く動作、歩行動作、姿勢変更に分割して指定する。また、動作時間に代えて動作速度を指定するようにしても構わない。これらの動作時間や動作速度等の動作時間情報は、動作時間算出手段2の動作時間情報変更部15によって変更された動作時間情報が行為選択部42に入力される。尚、行為ファイル43として最終的に保存される前の段階では、動作時間算出手段2に対して変位情報を提供するために、動作時間情報として、動作時間算出手段2のデフォルト値設定部12によって設定されたデフォルト値が入力される。
このように生成された行為ファイル43を順次前記記憶装置内に蓄積することで、登録済みの行為ファイル43に合致する入力データが作業記述部41で生成された場合に、行為選択部42は当該行為ファイル43を読み出して、その行為ファイル中の各行為コマンドを逐次実行すれば良く、シミュレーション時間の低減が図られる。
人データベース44は、行為選択部42の処理において必要なコンピュータマネキンの特性に関するデータを定義する。人データベース44を構成するデータ項目は、例えば、名称、各人体部位の寸法(身長、手足の長さ等)、各人体部位の位置(重心等)筋力レベル、利き腕(利き手)等である。名称は入力データのヒューマンで指定されたコンピュータマネキンの名称に対応し、フィギュアファイル名を指定する。筋力レベルは、コンピュータマネキンの腕の筋力レベルを規定するもので、本実施形態の場合は、例えば弱い、普通、強いの三段階で規定し、夫々に数字の1,2,3が割り当てられている。利き腕は、コンピュータマネキンの利き腕が左右何れであるかを指定するもので、本実施形態の場合は、右に0、左に1を割り当てている。
物データベース45は、行為選択部42の処理において必要な対象物(目標物、場所)の特性に関するデータを定義する。物データベース45を構成するデータ項目は、例えば、名称、位置、置く可能性、質量、軌道規則、持ち方、移動可能性、握り方、状況等である。
名称は目標物や場所で指定される対象物のフィギュアファイル名を指定する。
位置は、対象物のどの面が下面かを指定する接地面、接触点(握り点)、立ち位置等の位置関係を指定する。置く可能性は、その対象物がどこかに置かれる可能性の有無を指定する。軌道規則はその対象物が移動する時の軌道規則の有無を指定する。持ち方はその対象物が左右何れの手で持つべきかを指定する。例えば、
どちらの手でも構わない場合は0、利き手に限定される場合は1、逆手に限定される場合は2、両手に限定される場合は3のように四通りに区分する。更に、右手或いは左手に限定する場合を加えても構わない。移動可能性はその対象物が移動可能か否かを指定する。握り方はその対象物の握り方を定義するもので、その対象物を把持するときの手の形を表すデータを姿勢データベース47から検索可能な握り方名を指定する。状況は対象物の状態を表すもので対象物に応じて設定される。例えば、対象物がコップの場合では液体の有無、また、対象物が冷蔵庫の場合では扉の開閉状態等が設定できる。
更に、物データベース45は、オプションとして対象物がアフォードする動作を設定できる。例えば、缶の場合に「取り出す」等を指定すると、作業記述部41で「目標物」に缶が指定されると、「目的」の候補として「取り出す」がリストアップされる。また、上記以外にもアフォード動作を設定することで、動作の記述の簡易化が図れる。
姿勢データベース47は、行為選択部42の処理において利用される、握り方名と手の形との関連、及び、姿勢名と姿勢ファイルとの関連を定義する。
可視化部48は行為選択部42で定義された一連の動作のアニメーションを作成する。つまり、作業記述部41で指定されたコンピュータマネキンの動作を、
行為選択部42で定義された行為コマンドの時系列の組み合わせに従って、或いは、登録された行為ファイル43に記述されている行為コマンドの時系列の組み合わせに従って、具体的な動作を所定の合成アルゴリズムによって合成してコンピュータ画面上の仮想空間内に表示させる。具体的な動作の合成処理は既存の行動生成システムの機能を使用するので、詳細な説明は割愛する。
可視化部48は、アニメーションを作成する前に各行為の所要時間を指定するように構成されており、指定された行為所要時間に基づいてアニメーションを作成する。
行動生成システム10は、ハードウェアとしては、高解像度モニタを備えた3次元コンピュータグラフィックス描画機能の有するコンピュータシステム上で動作する。人データベース44、物データベース45、動作決定ルール46、姿勢データベース47は、行動生成システム10に付属する所定の記憶装置に格納されている。ソフトウェアとしては、ベースに一般的なOS(オペレーティングシステム)とベースとなる行動生成システム及び動作合成アルゴリズムが存在し、
作業記述部41、行為選択部42、可視化部48が上記コンピュータ上でソフトウェア処理によって実現される。具体的には、上記で説明した各部42,8の処理を、人データベース44、物データベース45、動作決定ルール46、姿勢データベース47等を必要に応じて読み書きしながら実行する本発明に係るコンピュータマネキン用の行動生成用プログラムの各処理に対応するプログラムステップが、上記コンピュータによって適時実行されることで、作業記述部41、行為選択部42、可視化部48が構成される。
以下に別実施形態を説明する。
〈1〉上記実施形態では、運動タイプ特定手段4は、各行為コマンド、条件判断付きコマンドの場合は各要素コマンドに対して一つの運動タイプを割り当てていたが、人体を上肢下肢に分けて、または、上肢を更に左右に分けて、変位情報に基づいて部位毎に運動タイプを割り当てるようにして精度の向上を図るようにするのも好ましい。この場合、心臓循環器系モデル6の1回拍出量算出部26、血管抵抗算出部27、血圧変動算出部28、血圧算出部29が夫々の出力値を計算する場合に、分割した人体部位毎に異なる運動タイプで算出した結果を加重平均する等の処理を行うようにするのも好ましい。更に、運動タイプとして、上記3タイプに限定されるものではない。
〈2〉心臓循環器系モデル6は、必ずしも上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、心臓循環器系モデル6の内の特定の運動タイプに特化した心臓循環器系モデルとしても構わない。更に、心臓循環器系モデル6の算出式中の関数、及び、そのパラメータ、係数、定数等は、本実施形態の組み合わせに限定されるものではなく、適宜変更しても構わない。
〈3〉上記実施形態では、運動強度特定手段3は図2及び図3に基づいて、MET値や%MVC値を割り当てる場合を示したが、図2中の各MET値及び%MVC値は、適宜変更可能である。更に、上記実施形態では、運動タイプが等張性収縮運動の場合の運動強度指標としてMETSを用いたが、RMR等の他の運動強度指標を用いても構わない。この場合、使用する心臓循環器系モデル6は入力データとしてRMR等を受け付けるモデルに変更する必要がある。
〈4〉上記各実施形態では、PTS法としてMODAPTS法を用いたが、MTM法等の他のPTS法を用いても構わない。この場合、要素動作は使用するPTS法に規定された使用することになり、所要時間値の算出手法もそのPTS法に準拠して行うことになり、PTS適用部13のMOD値導出部16の具体的な構成は、当該PTS法の算出基準に合わせて変更する。
〈5〉上記各実施形態では、動作時間算出手段2の動作時間算出の対象となる行為コマンドは、行動生成システム10の行為コマンドを想定したが、コンピュータマネキンの一連の作業を記述可能なコマンドであれば、上記実施形態で例示した行為コマンドに限定されるものではない。
〈6〉MOD値導出部16におけるMOD値導出のための判定基準、つまり、変位情報とMOD値の関係は、上記各実施形態のものに限定されるものではない。例えば、MOD値として、MODAPTS法で規定された整数値に限らず、小数点以下の値を含むようにしても構わない。
本発明に係る心臓負担評価装置の一実施形態を示すブロック構成図 行為コマンドから運動強度指標への第1変換テーブル、行為コマンドから運動タイプへの第2変換テーブルを一括表示する一覧図 個人特性情報の年齢・性別と最大筋力の対応関係を示す図 本発明に係る心臓循環器系モデルの一実施形態を示すブロック構成図 心臓循環器系モデルの一部を構成する心拍数補正量判定表 心臓循環器系モデルの一部を構成する最大酸素摂取量係数判定表 心臓循環器系モデルの一部を構成する補正係数Eの変化量判定表 心臓循環器系モデルの一部を構成する大動脈コンプライアンスKの変化量判定表 動作時間算出手段の一実施形態を示すブロック構成図 心臓負担評価プログラムの動作時間情報算出ステップの処理手順を示す流れ図 等尺性収縮運動時の心臓循環器系モデルによるシミュレーション結果と実験結果を示す血圧波形図 等尺性収縮運動時の心臓循環器系モデルによるシミュレーション結果と実験結果を示す心拍波形図 等張性収縮運動時の心臓循環器系モデルによるシミュレーション結果と実験結果を示す血圧波形図 等張性収縮運動時の心臓循環器系モデルによるシミュレーション結果と実験結果を示す心拍波形図 上下移動運動時の心臓循環器系モデルによるシミュレーション結果と実験結果を示す血圧波形図 上下移動運動時の心臓循環器系モデルによるシミュレーション結果と実験結果を示す心拍波形図 行動生成システムの一実施形態を示すブロック構成図 作業記述用の入力データの入力項目を説明する説明図
符号の説明
1: 本発明に係る心臓負担評価装置
2: 動作時間算出手段
3: 運動強度特定手段
4: 運動タイプ特定手段
5: 個人特性入力手段
6: 心臓循環器系モデル
10: 行動生成システム
11、20: 入力部
12: デフォルト値設定部
13: PTS適用部
14: 動作時間情報導出部
15: 動作時間情報変更部
16: MOD値導出部
17: 移動動作判定部
18: 歩数計算部
21: 必要酸素摂取量算出部(必要酸素摂取量算出手段)
22: 化学受容器部
23: 神経応答部
24: 心拍数算出部(心拍数算出手段)
25: 心拍出量算出部
26: 1回拍出量算出部(1回拍出量算出手段)
27: 血管抵抗算出部
28: 酸素摂取量算出部(酸素摂取量算出手段)
29: 血圧算出部(血圧算出手段)
41: 作業記述部
42: 行為選択部
43: 行為ファイル
44: 人データベース
45: 物データベース
46: 動作決定ルール
47: 姿勢データベース
48: 可視化部

Claims (15)

  1. 予め設定された複数種の人体の動作における血圧及び心拍数を時系列に沿ってコンピュータ処理によって算出する心臓循環器系モデルであって、
    必要酸素摂取量を時系列に沿って算出する必要酸素摂取量算出手段と、酸素摂取量を時系列に沿って算出する酸素摂取量算出手段と、心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段と、血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段と、1回拍出量を時系列に沿って算出する1回拍出量算出手段と、前記動作の運動タイプと運動強度指標、及び、前記人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付ける入力部とを有し、
    前記必要酸素摂取量算出手段は、前記運動強度指標の1つである代謝当量を示すMET値から必要酸素摂取量を算出し、
    前記酸素摂取量算出手段は、前記心拍数算出手段が算出した心拍数と前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量から心拍出量を算出して、前記心拍出量に基づき酸素摂取量を算出し、
    前記心拍数算出手段は、前記運動タイプが等張性収縮運動の場合に、所定時間単位前に算出した心拍数と、前記必要酸素摂取量算出手段が算出した必要酸素摂取量と前記酸素摂取量算出手段が算出した酸素摂取量との差分とに基づいて心拍数を算出し、前記運動タイプが等尺性収縮運動の場合に、前記個人特性情報の1つである安静時心拍数に対する時間の経過とともに変化する心拍数変化率を、前記運動強度指標の1つである最大筋収縮率に基づき算出して、前記安静時心拍数と前記心拍数変化率から心拍数を算出し、前記運動タイプが心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動の場合に、所定時間単位前に算出した心拍数と、前記血圧算出手段が算出した血圧と前記個人特性情報の1つである安静時血圧の差分に基づき心拍数を算出し、
    前記血圧算出手段は、前記心拍数算出手段が算出した心拍数、前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量、及び、血管抵抗に基づいて血圧を算出し、
    前記1回拍出量算出手段は、安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を算出することを特徴とする心臓循環器系モデル。
  2. 予め設定された複数種の人体の動作における血圧及び心拍数を時系列に沿ってコンピュータ処理によって算出する心臓循環器系モデルであって、
    心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段と、血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段と、1回拍出量を時系列に沿って算出する1回拍出量算出手段と、前記動作の運動タイプと運動強度指標、及び、前記人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付ける入力部とを有し、
    前記心拍数算出手段は、前記運動タイプが等尺性収縮運動の場合に、前記個人特性情報の1つである安静時心拍数に対する時間の経過とともに変化する心拍数変化率を、前記運動強度指標の1つである最大筋収縮率に基づき算出して、前記安静時心拍数と前記心拍数変化率から心拍数を算出し、
    前記血圧算出手段は、前記心拍数算出手段が算出した心拍数、前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量、及び、血管抵抗に基づいて血圧を算出し、
    前記1回拍出量算出手段は、安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を算出することを特徴とする心臓循環器系モデル。
  3. 前記心拍数算出手段は、前記運動タイプが等尺性収縮運動の場合で、且つ、最大筋収縮率が直前の動作より増加する場合に、前記心拍数変化率として、前記最大筋収縮率に基づき算出される心拍数増加率係数と前記等尺性収縮運動の動作開始からの経過時間とともに単調増加する時間関数の積で表されるものを用いて、前記安静時心拍数と、前記安静時心拍数に前記心拍数変化率を乗じた心拍数増加量の和として心拍数を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の心臓循環器系モデル。
  4. 前記心拍数算出手段は、前記運動タイプが等尺性収縮運動から等尺性収縮運動へ変化する場合で、且つ、最大筋収縮率が直前の動作より減少する場合に、前記心拍数変化率として、前記最大筋収縮率に基づき算出される心拍数増加率係数の前記直前の動作との差分と前記等尺性収縮運動の動作開始からの経過時間とともに単調減少する時間関数の積で表されるものを用いて、前記安静時心拍数と前記直前の動作における前記心拍数増加率係数とから算出される前記直前の動作における安定心拍数と、前記安静時心拍数に前記心拍数変化率を乗じた心拍数減少量の和として心拍数を算出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の心臓循環器系モデル。
  5. 前記心拍数増加率係数は、前記最大筋収縮率が所定値以下では0で、前記所定値以上では、前記最大筋収縮率の増加とともに単調増加する関数で表されることを特徴とする請求項3または4に記載の心臓循環器系モデル。
  6. 前記心拍数増加率係数は、前記運動タイプが等尺性収縮運動の動作が下半身動作と上半身動作で、異なる関数によって表されることを特徴とする請求項5に記載の心臓循環器系モデル。
  7. 前記1回拍出量算出手段は、前記運動タイプが等尺性収縮運動の動作の開始により前記最大筋収縮率が増加した場合に、前記安静時1回拍出量と、前記安静時1回拍出量に時間の経過とともに増大する時間増加型1回拍出量増加率を乗じた時間増加型1回拍出量増加量の和として1回拍出量を算出し、前記運動タイプが等尺性収縮運動の動作の開始により前記最大筋収縮率が減少した場合に、前記安静時1回拍出量と、前記安静時1回拍出量に時間の経過とともに減少する時間減少型1回拍出量増加率を乗じた時間減少型1回拍出量増加量の和として1回拍出量を算出することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の心臓循環器系モデル。
  8. 前記血圧算出手段は、前記運動タイプが等尺性収縮運動の動作が安静時より開始した場合に、前記血管抵抗として、前記個人特性情報の1つである安静時血管抵抗を用いることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の心臓循環器系モデル。
  9. 予め設定された複数種の人体の動作における血圧及び心拍数を時系列に沿ってコンピュータ処理によって算出する心臓循環器系モデルであって、
    心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段と、血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段と、1回拍出量を時系列に沿って算出する1回拍出量算出手段と、前記動作の運動タイプと運動強度指標、及び、前記人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付ける入力部とを有し、
    前記心拍数算出手段は、前記運動タイプが心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動の場合に、所定時間単位前に算出した心拍数と、前記血圧算出手段が算出した血圧と前記個人特性情報の1つである安静時血圧の差分に基づき心拍数を算出し、
    前記血圧算出手段は、前記心拍数算出手段が算出した心拍数、前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量、及び、血管抵抗に基づいて血圧を算出し、
    前記1回拍出量算出手段は、安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を算出することを特徴とする心臓循環器系モデル。
  10. 前記1回拍出量算出手段は、前記運動タイプが前記上下移動運動の場合に、動脈圧と動脈血液量と動脈血流量を時系列に沿って算出する動脈モデルと、静脈圧と静脈血液量と静脈血流量を時系列に沿って算出する静脈モデルと、肺循環血圧と肺循環血液量と肺循環血流量を時系列に沿って算出する肺循環モデルとを用いて前記肺循環血圧を算出し、前記肺循環血圧と前記安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を算出することを特徴とする請求項1または9に記載の心臓循環器系モデル。
  11. 前記血圧算出手段は、前記運動タイプが前記上下移動運動の動作が他の運動タイプの動作後に開始した場合に、前記血管抵抗として、前記他の運動タイプの動作時に算出された前記上下移動運動の動作開始直前の血管抵抗を用いることを特徴とする請求項1、9及び10の何れか1項に記載の心臓循環器系モデル。
  12. 予め設定された複数種の人体の動作における血圧及び心拍数を時系列に沿ってコンピュータ処理によって算出する心臓循環器系モデルであって、
    必要酸素摂取量を時系列に沿って算出する必要酸素摂取量算出手段と、酸素摂取量を時系列に沿って算出する酸素摂取量算出手段と、心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段と、血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段と、1回拍出量を時系列に沿って算出する1回拍出量算出手段と、前記動作の運動タイプと運動強度指標、及び、前記人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付ける入力部とを有し、
    前記必要酸素摂取量算出手段は、前記運動強度指標の1つである代謝当量を示すMET値から必要酸素摂取量を算出し、
    前記酸素摂取量算出手段は、前記心拍数算出手段が算出した心拍数と前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量から心拍出量を算出して、前記心拍出量に基づき酸素摂取量を算出し、
    前記心拍数算出手段は、前記運動タイプが等張性収縮運動の場合に、所定時間単位前に算出した心拍数と、前記必要酸素摂取量算出手段が算出した必要酸素摂取量と前記酸素摂取量算出手段が算出した酸素摂取量との差分とに基づいて心拍数を算出し、
    前記血圧算出手段は、前記心拍数算出手段が算出した心拍数、前記1回拍出量算出手段が算出した1回拍出量、及び、血管抵抗に基づいて血圧を算出し、
    前記1回拍出量算出手段は、安静時1回拍出量に基づいて1回拍出量を算出することを特徴とする心臓循環器系モデル。
  13. 人体の動作に対する心臓負担評価をコンピュータ処理によって行う心臓負担評価装置であって、
    前記人体の動作を複数種の行為コマンドを時系列で組み合わせてコンピュータマネキンの対象物に対する一連の動作によって定義して、前記行為コマンドで特定される前記コンピュータマネキンの前記動作をコンピュータ仮想空間上で可視化する行動生成システムに対して、前記行為コマンドで特定される各動作の動作時間情報を算出する動作時間算出手段と、
    前記行為コマンドで特定される各動作の運動強度指標を導出する運動強度特定手段と、
    前記行為コマンドで特定される各動作に対して、血液循環作用に与える影響が相異なる複数の運動タイプの内の少なくとも一つを割り当てる運動タイプ特定手段と、
    前記動作時間算出手段で算出された前記動作時間情報と、前記運動強度特定手段で特定された前記運動強度指標と、前記運動タイプ特定手段で特定された前記運動タイプと前記人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を入力データとして受け付け、前記行為コマンドで特定される動作に伴う血圧及び心拍数を時系列に沿って算出可能な心臓循環器系モデルを備えており、
    前記心臓循環器系モデルが、請求項1〜12の何れか1項に記載の心臓循環器系モデルであることを特徴とする心臓負担評価装置。
  14. 前記複数の運動タイプが、等尺性収縮運動、等張性収縮運動、及び、心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動の少なくとも3タイプを備えてなることを特徴とする請求項13に記載の心臓負担評価装置。
  15. 人体の動作に対する心臓負担評価を所定のコンピュータ上で実行するための心臓負担評価プログラムであって、
    請求項1〜12の何れか1項に記載の前記心臓循環器系モデルにおける前記各手段及び前記各モデルの機能を前記コンピュータ上で実現するためのプログラムステップを含む心臓負担評価プログラム。
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