JP2005061167A - 道路用電波吸収遮音壁 - Google Patents

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Abstract

【課題】
従来使用されている防音壁と略同じ程度の厚さで、充分な遮音効果及び電波吸収効果が得られ、廉価に設置できる道路用電波吸収遮音壁の提供。
【解決手段】
一定間隔を置いて立て向きに立設した支柱3と、該支柱間に掛け渡され、両端が前記支柱に固定された壁体ユニット4とを備え、壁体ユニット4は電波を反射する金属材料をもって成形された前面側が開放の箱状をしたケーシング10を有し、その中に吸音性及び電波吸収性を持たせた吸収体40を収容し、ケーシングの前面開放部を、電波透過性を有する材料をもって形成された多孔版26をもって閉鎖し、かつケーシング前面側周縁部及び前記支柱前面の金属材料露出部を、電波吸収性を有する電波吸収シート36で被覆する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車の走行による道路騒音を吸収させるとともに、有料道路の料金所における自動料金収受システム(Electronic Toll Collection System、略称ETC)や無線通信を利用した走行支援道路システム(Advanced Cruise−Assist Highway System)等の設置個所において、不要の電波、主として反射電波によってこれらのシステムに支障を及ぼさないように電波を吸収させる道路用電波吸収遮音壁に関する。
従来、道路の中央分離帯や路側部には、自動車の走行時に発生する騒音を吸収する防音壁が設置されている。この防音壁は、一定間隔を開けて立設したH型鋼間に長方形状の遮音パネルを上下に積み上げた状態で掛け渡した構造が一般的であり、遮音パネルとしては、コンクリート板そのもの、内部に吸音材を充填し、表面をパンチング版やルーバー状に多数の窓穴をあけた穴明板で覆った構造の物が一般的である。
一方、近年のETCや無線通信を利用した走行支援道路システムでは、自動車と道路側のアンテナ間で電波による情報の交換を行い、ETCではゲートの開閉、料金の算定等の操作を行わせ、また走行支援システムではブレーキの自動操作やハンドル操作を自動的に行わせるものであるが、電波による情報交換に際し、不要な電波による誤動作を防止するため、電波吸収パネルを使用した不要電波吸収装置が開発されている(例えば特許文献1)。
特開2001−217645号公報
上述した従来の技術では、電波吸収機能を有する部材と騒音を吸収する防音壁とは別々に設置されており、従来の電波吸収パネルでは、高架道路等における遮音効果が充分でなかった。また、従来防音壁使用されている防音壁に電波吸収作用を持たせようとすると、防音壁全体の設計を変更しなければならないものであった。
本発明はこのような従来の問題に鑑み、従来使用されている防音壁と略同じ程度の厚さで、充分な遮音効果及び電波吸収効果が得られ、またパネル取り付け構造やパネルを構成しているケーシングの形状等を従来の設計を極力変更することなく、廉価に設置できる道路用電波吸収遮音壁の提供を目的としてなされたものである。
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、一定間隔を置いて立て向きに立設した支柱と、該支柱間に掛け渡され、両端が前記支柱に固定された壁体ユニットとを備え、前記壁体ユニット内に吸音性及び電波吸収性を持たせた吸収体を収容してなる道路用電波吸収遮音壁において、前記壁体ユニットは、電波を反射する金属材料をもって成形され、方形状をした立て向きの背板部と、その周囲に前面側に向けて突出させた上下板部及び左右板部とをもって構成される前面側が開放された箱状のケーシングを有し、該ケーシング内に誘電損失材料を含有させた合成樹脂製発泡材からなる吸収体を収容し、前記ケーシングの前面開放部を、電波透過性を有する材料をもって形成された多孔版をもって閉鎖し、かつ前記ケーシング前面側周縁部及び前記支柱前面の金属材料露出部を、電波吸収性を有する電波吸収シートをもって被覆したことにある。
請求項2に記載の発明の特徴は、前記請求項1の構成に加え、前記吸収体の周囲を囲む配置のリング状をした吸音材支持金具に該吸収体を支持させ、該吸収体支持金具を前記ケーシングの前面開放部より内部に向けて挿入し、該吸収体支持金具の周囲に備えたフランジを前記ケーシングの前面周縁部に固定することにより前記吸収体をケーシングの背面板から所定の間隔を隔てた位置に位置決めさせたことにある。
請求項3に記載の発明の特徴は前記請求項1又は2に記載の構成に加え、吸収体は、誘電損失材料を含有したメラミン系樹脂発泡体をもって構成され、400Hzに対して70%以上、1000Hzに対して80%以上の吸音特性を有するものであることにある。
請求項4に記載の発明の特徴は前記請求項1,2又は3に記載の構成に加え、前記吸収体は、0.1g/L〜20g/Lの範囲の誘電損失材料を含有することにある。
上述した請求項1の構成のように、壁体ユニットは、電波を反射する金属材料をもって成形され、方形状をした立て向きの背板部と、その周囲に前面側に向けて突出させた上下板部及び左右板部とをもって構成される前面側が開放された箱状のケーシングを有し、該ケーシング内に誘電損失材料を含有させた合成樹脂製発泡材からなる吸収体を収容し、前記ケーシングの前面開放部を、電波透過性を有する材料をもって形成された多孔版をもって閉鎖し、かつ前記ケーシング前面側周縁部及び前記支柱前面の金属材料露出部を、電波吸収性を有する電波吸収シートをもって被覆することにより、吸音性と電波吸収性とが同一の壁体ユニットによって達成され、従来の遮音壁と同様に壁体ユニットを支柱間に掛け渡してセットすることにより、ETCや電波による走行支援システム等の電波による情報交換に際し、反射電波による障害をなくすることができる。
また、請求項2のように、吸収体の周囲を囲む配置のリング状をした吸音材支持金具に該吸収体を支持させ、該吸収体支持金具を前記ケーシングの前面開放部より内部に向けて挿入し、該吸収体支持金具の周囲に備えたフランジを前記ケーシングの前面周縁部に固定することにより前記吸収体をケーシングの背面板から所定の間隔を隔てた位置に位置決めさせることにより、ケーシングの背板部から一定間隔を隔てて吸収体を位置決めすることが簡単な構造で容易にできることとなり、電波吸収効果及び吸音効果とをより効果的に発揮させる構造とすることができる。
更に、請求項3のように、誘電損失材料を含有したメラミン系樹脂発泡体をもって構成され、400Hzに対して70%以上、1000Hzに対して80%以上の吸音特性を有するものとすることにより、従来の吸音パネルと比べ、その厚さを大きくすることなく、必要とされる吸音効果が得られ、且つ効果的な電波吸収がなされる。
更に、請求項4のように、吸収体は、0.1g/L〜20g/Lの範囲の誘電損失材料を含有させることにより、効果的な電波吸収がなされる。
次に本発明の実施の形態を図面に示した実施例に基づいて説明する。図において、符号1は自動車が走行する道路面であり、2は路側に立設した本発明に係る電波吸収遮音壁である。この遮音壁2は、図1、図2に示すように路側帯に沿って一定間隔毎に立設した支柱3,3……と、この支柱間に掛け渡した壁体ユニット4,4……とから構成されている。各壁体ユニット4,4……は横長の長方形状をしており、複数枚を互いに隣り合う支柱3,3間に上下に並べて設置している。
壁体ユニット4は、図3、図4に示すように、長方形状をした電波反射材料、一例として鋼板からなるケーシング10を有している。このケーシング10は、長方形状をした背板部11とその周縁前面側に一体に突出させた上下板部12a,12b及び左右板部13a,13bとにより前面が開放された浅底箱状をなしている。このケーシング10の左右の両端、即ち左右板部13a,13bの外面側にはそれぞれ方形箱状をした対支柱固定部材14a,14bが一体に突設されている。
上下板部12a,12bは互いに平行で、背板部11側が低くなるように傾斜している。上板部12aの前端下側及び下板部12b前端下側に向けてそれぞれフランジ15a,15bが突設されている。
ケーシング10内には、その開口部から背板部側に向けて吸収体支持金具20が挿入されている。この吸収体支持金具20は、ケーシング10の開口部内に嵌合される方形状をなし、前後が開放された額縁状の金具本体21を有し、該金具本体21の上下面にフランジ状の固定金具22a,22bが一体に突設されている。この固定金具22a,22bをケーシング10のフランジ15a,15bにネジ止めすることにより金具本体21をケーシング10に固定している。
金具本体21内には2個の吸収体40,40が収容されている。各吸収体40,40は金具本体21の前後の開口縁部に形成した内向きのフランジ21a,21bと金具本体21内を2分割する配置に設置した断面H型の中間金具23とで位置決めされている。中間金具23は前後縁部のフランジ23a,23b間に吸収体40,40を挟み後縁部のフランジ23bをケーシング10の背板部11の中央部分を前面側に膨出させて形成した凸条部11aにネジ止めされている。尚、吸収体40,40の組み込みは、吸収体支持金具20をケーシング10内に挿入する前に、金具本体21の後部開口より中間金具23を組み付けた状態で挿入し、然る後、後縁のフランジ21bを折り曲げ形成することにより行う。
吸収体支持金具20の前縁側のフランジ21a及び中間金具23の前面側フランジ23aの前面にはこれを覆うように電波吸収シート25が貼り付けられている。
吸収体支持金具20の前面側開放部は電波透過性を有する合成樹脂材からなる多孔版26によって閉鎖されている。この多孔版26、一例としてポリカーボネート製の板材に、開口率が約60パーセントとなるように全面に円形の貫通孔が多数形成されたパンチング版を使用している。そして周縁部及び中央部を金具本体21及び中間金具23の各フランジ21a,22aにネジ止めすることにより固定している。
このように構成される壁体ユニット4は一例として、吸収体40の厚さを70mm以上とし、吸収体40と背板部11との間隔を25mm以上となるように形成されている。
壁体ユニット4の支柱3に対する固定は、図1、図2に示すように支柱3の前後面のフランジ3a,3bの間に各壁体ユニット4の両端の対支柱固定部材14a,14bを挿入し、これと後面側フランジ3bとの間に鋼製板材をV字型に折り曲げた弾性楔30を打ち込むことによって固定している。
また、上下の壁体ユニット4,4間は、図1に示すように、上下板部12a,12bを互いに重ね合わせて積み上げ、その重ね合わせ部分の前面側の固定金具22bに細長板材からなるユニット間前面被覆用の横板材31がネジ止され、その前面に電波吸収シート32が貼り付けられ、これによって壁体ユニット4,4間の金属材料前面側を覆っている。
最下部の壁体ユニット4の下縁においても前述と同様に固定金具22bの前面側に横板材31がネジ止めされ、その表面に電波吸収シート32が貼り付けられている。
最上部の壁体ユニット4上には図1に示すように傘板33が被せられ、その前面側に電波吸収シート32が貼り付けられている。
各支柱3の前面にはカラー34を介して柱前覆い板35がネジ止めされている。この柱前覆い板35は、両縁が前述した壁体ユニット4の吸収体支持金具20の両端前面側を覆うように張り出され、表面全体に電波吸収シート36が貼り付けられている。
吸収体40は、板状のものブロックを組み合わせて板状にしたものを使用する。吸収体40を複層にするには、1つのメラミン系樹脂発泡体に誘電損失材料の含有量に分布を持たせてもよく、又は、誘電損失材料の含有量が異なる複数ブロックのメラミン系樹脂発泡体を重ね合わせてもよい。
図に示す実施例では、吸収体40を誘電損失材料41の含有量の異なるメラミン系樹脂発泡体の板状をしたブロックを複数枚重ね合わせて板状体にしている。吸収すべき電波や音波が入射する側を表面層42とし、反対側を背面層43とし、背面層43の誘電損失材料の含有量を大きくし、表面層42の含有量を小さくする。背面層42と表面層43の間に中間層44を設ける場合、中間層44は誘電損失材料の含有量を背面層42と表面層43の間の含有量とする。表面層42は、誘電損失材料を含有させずに、含有量をゼロにしてもよい。この場合の表面層42は、吸音特性の改善のみに寄与する。
メラミン系樹脂発泡体に誘電損失材料を含有させる方法として、例えば、先ず、カーボン粒子等の誘電損失材料を分散させた水溶液にバインダを加えた液体を槽に満たす。この液体にメラミン系樹脂発泡体を浸し誘電損失材料を内部に含浸させる。メラミン系樹脂発泡体は、セル径が非常に細かいので、毛細管現象で誘電損失材料を容易に内部まで吸い込むことができる。反面、乾燥工程において、毛細管現象で誘電損失材料はメラミン系樹脂発泡体の表面に引き寄せられ、表面付近で含有量が高くなり、内部では含有量が薄くなる。そこで、バインダとして増粘効果のあるものを使用するか、又は、ネオプレンゴムのような一般的なバインダを使用する場合、増粘剤を添加すると良い。
誘電損失材料の含有量は、0.1g/L〜20g/Lの範囲にする。誘電損失材料の含有量がこの範囲を下回る時は、材料の複素比誘電率が低くなり過ぎて、十分な電波吸収効果が発揮できない。また、上回る時は、逆に吸収体表面における電磁波の反射が起こり、吸収特性が低下する。含有量の範囲は、更に好ましくは、2g/L〜12g/Lにするとよい。
含浸方法は、含浸機を使用し、含浸と圧縮開放を繰り返し行う。これらのメラミン系樹脂発泡体を組み合わせて板状とする。板状を3層とする複層型の場合、背面層の含有量を大きくし、中間層をその半分程度に小さくし、表面層を更に小さく或いは0とすると、特性が優れた吸音電波吸収体となる。
次に、メラミン系樹脂発泡体を含浸機から取り出し、過剰の液体を自然落下させたり、ローラ、プレス等を用いて均一に絞り、乾燥させる。必要に応じて、樹脂発泡体の加工に用いられる切断加工機やカッターナイフ、鋸等で切断加工する。複層型の吸音電波吸収体の場合、切断加工に先立ち各層を接着剤或いは両面テープで貼り合わせておくと良い。
メラミン系樹脂発泡体は、メラミンホルムアルデヒド縮合物及び発泡剤を主成分とする樹脂組成物を発泡させて得られるものである。メラミン系樹脂発泡体の製造において用いられる成分は、メラミンホルムアルデヒド樹脂或いはその発泡体を製造する際に使用されるものとして知られている各種の成分を用いることができる。
尚、メラミン系樹脂発泡体の製造方法は、例えば特開昭55−142628号公報や特開昭56−152848号公報に記載されており、また木発明ではイソシアネートで変性されたメラミン系樹脂発泡体を用いることもでき、このような発泡体の製造方法は、特開平7−157590号公報に記載されている。
誘電損失材料は、導電性を有するもので、メラミン系樹脂発泡体に含有させた際、吸収体の複素比誘電率が適当であり、吸収体表面での入力インピーダンスの値を自由空間の特性インピーダンスに近いものにできるものが望ましい。このような誘電損失材料として、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
吸音電波吸収特性
図1に示す実施例において、厚さ70mm上記メラミン系樹脂発泡体に0.1〜20g/Lの範囲の誘電損失材料を含有させた吸収体を使用し、吸収体40とケーシングの背板部11との間に25mmの間隔を設けた場合の吸音特性は、400Hzに対して70%以上、1000Hzに対して80%以上、の各条件が満足された。
また、電波吸収特性は、5.8GHzでの角度特性が円偏波(右旋)の入射波に対して吸収体に対する入射角が0度以上40度以下の範囲内においては反射減衰量10dB以上、入射角が40度以上80度以下の範囲内において反射減衰量15dB以上、更に入射角50度以上80度以下の範囲においては反射減衰量20dB以上、の各条件が満足された。
本発明に係る道路用電波吸収遮音壁を、その一部を省略して示す縦断面図である。
同上の横断面図である。
図1に示す遮音壁に使用している壁体ユニットの正面図である。
同縦断面図である。
符号の説明
1 道路面
2 電波吸収遮音壁
3 支柱
3a,3b フランジ
4 壁体ユニット
10 ケーシング
11 背板部
11a 凸条部
12a 上板部
12b 下板部
13a 左板部
13b 右板部
14a,14b 対支柱固定部材
15a,15b フランジ
20 吸収体支持金具
21 金具本体
21a,21b フランジ
22a,22b 固定金具
23 中間金具
23a,23b フランジ
25 電波吸収シート
26 多孔版
30 弾性楔
31 横板材
32 電波吸収シート
33 傘板
34 カラー
35 柱前覆い板
36 電波吸収シート
40 吸収体
41 誘電損失材料
42 表面層
43 背面層
44 中間層

Claims (4)

  1. 一定間隔を置いて立て向きに立設した支柱と、該支柱間に掛け渡され、両端が前記支柱に固定された壁体ユニットとを備え、前記壁体ユニット内に吸音性及び電波吸収性を持たせた吸収体を収容してなる道路用電波吸収遮音壁において、
    前記壁体ユニットは、電波を反射する金属材料をもって成形され、方形状をした立て向きの背板部と、その周囲に前面側に向けて突出させた上下板部及び左右板部とをもって構成される前面側が開放された箱状のケーシングを有し、該ケーシング内に誘電損失材料を含有させた合成樹脂製発泡材からなる吸収体を収容し、前記ケーシングの前面開放部を、電波透過性を有する材料をもって形成された多孔版をもって閉鎖し、かつ前記ケーシング前面側周縁部及び前記支柱前面の金属材料露出部を、電波吸収性を有する電波吸収シートをもって被覆したことを特徴としてなる道路用電波吸収遮音壁。
  2. 前記吸収体の周囲を囲む配置のリング状をした吸音材支持金具に該吸収体を支持させ、該吸収体支持金具を前記ケーシングの前面開放部より内部に向けて挿入し、該吸収体支持金具の周囲に備えたフランジを前記ケーシングの前面周縁部に固定することにより前記吸収体をケーシングの背面板から所定の間隔を隔てた位置に位置決めさせてなる請求項1に記載の道路用電波吸収遮音壁。
  3. 吸収体は、誘電損失材料を含有したメラミン系樹脂発泡体をもって構成され、400Hzに対して70%以上、1000Hzに対して80%以上の吸音特性を有する請求項1又は2に記載の道路用電波吸収遮音壁。
  4. 前記吸収体は、0.1g/L〜20g/Lの範囲の誘電損失材料を含有する請求項1,2又は3に記載の道路用電波吸収遮音壁。
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