JP2005057821A - 配電系統の解析支援装置及び解析支援方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ファイル11から電力系統の系統データ111、系統の各負荷又は発電量、送り出し電圧の変動の確率分布を定義するデータ112、113を取込み、確率的潮流計算を行い、各ノードの電圧の確率分布又は各線路の電流の確率分布を求める。電圧又は電流の平均値と、最大最小値又は予定確率での帯域を、日変化データとして表示装置10の表示画面101に表示する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電力系統、特に配電系統の電圧や電流などの潮流状態を表示する配電系統の解析支援装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術には、(a)需要家の契約電力量から各負荷の最大負荷電力を推定し、そのときの潮流計算結果から系統の電圧などが規定範囲に入っているかどうかユーザに示すシステムや、(b)系統の負荷電力を確率密度関数として表し、電圧の大きさ、位相などの平均、分散を求める確率的潮流計算手法がある。(a)の技術については、例えば、非特許文献1や、非特許文献2に開示されているように、6.6[kV]配電系統や200/100[V]低圧配電系統の解析を可能とする手法が示されている。また、配電系統の解析を支援するマンマシンインターフェイスを備える解析装置は、特許文献1や非特許文献3に開示された技術が知られている。特許文献1には、追加連係できる負荷容量や増強すべき系統設備を把握するために、制約条件を満足する負荷量と発電量の最大値(限界値)を表示する技術が開示されている。一方、非特許文献3には、配電系統の電圧と電流を計算して、各ノードにおける電圧と電流のピークとボトムの日変化を画面表示することが記載されている。
【0003】
また、(b)の技術については、非特許文献4に負荷変化を確率的に扱う潮流計算の考え方が開示されている。
【0004】
【非特許文献1】
興梠他「分散型電源を含む配電線潮流計算プログラムの開発」電力中央研究所報告T97001、1997年(全体)
【非特許文献2】
石川「分散電源導入時の配電線電圧計測手法の開発」OHM、2000年11月号(全体)
【特許文献1】
特開2003−47151号公報(全体、表示画面は図8など)
【非特許文献3】
和田他「低圧配電系統解析システムの開発」電気学会電力技術・電力系統技術合同研究会資料PE−02−87、2002年(全体、特に図14)
【非特許文献4】
植田他「信頼度を維持した確率的潮流計算最適化問題の一解法」、電気学会論文誌B、103巻5号、58−B46、昭和58年(全体)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述従来技術(a)では、負荷最大値(ピークとボトム)の推定値に基づいて潮流計算を行っている。しかし、実際には各需要家の負荷が一斉に最大となることは起こり難いため、計算結果が実際に即しておらず、設備新設・増強等にあたっての配電設備の適正度合いの評価の支援として不十分であった。
【0006】
また、前述従来技術(b)は、計算手法に主眼がおかれ、配電業務をどう支援するかについては開示されていない。また、実効値による潮流計算のため、配電系統の三相四線式系統などの不平衡の計算が扱えない問題点もある。
【0007】
本発明の目的は、配電系統において、設備新設・増強等にあたっての配電設備の適正度合いの評価を判り易く支援できる解析支援装置及び解析支援方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴とするところは、電力系統の系統データと、系統に連系した分散型電源の発電量,負荷又は送り出し電圧の変動の確率分布を定義するデータを取込み、ノード電圧又は線路電流の確率分布を求め、この確率分布に基くノード電圧又は線路電流の平均値を表示することである。
【0009】
本発明の他の特徴とするところは、前記確率分布に基くノード電圧又は線路電流の最大値と最小値を表示することである。
【0010】
また、本発明の他の特徴とするところは、前記確率分布に基き、ノード電圧又は線路電流が予定の確率で分布する帯域を表示することである。
【0011】
本発明の望ましい一実施形態においては、各ノードの電圧又は各線路の電流の平均値,最大値と最小値,又は帯域についての、日変化を画面に表示する。
【0012】
これにより、ノードの電圧又は線路の電流が、どの程度の確率で規定範囲に収まるか否かを示す配電系統の解析支援装置又は方法を提供し、実際に起こり得る確率を考慮して、ユーザによる配電系統の評価を判り易く支援することができる。
【0013】
本発明のその他の目的及び特徴は、以下の実施形態の説明で明らかにする。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態による電力系統の解析支援装置の概略構成図である。図において、表示装置10と第1のデータファイル11、第2のデータファイル12、及びCPU131、RAM132、入力手段133が、バスライン14に接続されたコンピュータにより、解析支援装置を構成している。入力手段133は、キーボードやマウス等からなる。このコンピュータのCPU131により、計算プログラムを実行して、表示すべき画像データの指示、系統データ、制約データ、系統接続可能容量計算結果データの検索等を行う。RAM132は、表示用の画像データ、系統データ、日負荷変化データ、送り出し電圧データ、標準偏差σの倍数データ、電圧・電流・σ等の計算結果データを、一旦格納するメモリである。CPU131によって必要な画像データを生成し、RAM132に格納し、ここから読み出して表示装置10の表示画面101に表示する。
【0015】
配電系統の解析支援装置内のデータファイル(メモリ)には、大きく分けて2つのファイルが格納されている。第1のデータファイル11には、系統データ111、日負荷変化データ112、送り出し電圧データ113、σ倍数データ114等の入力データが記憶されている。第2のデータファイル12には、CPU131で計算された計算結果データである電圧計算結果データ121、電流計算結果122、標準偏差σ計算結果123等の出力データが格納されている。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態による電力系統の解析支援装置の表示画面の一例図である。表示画面101には、配電系統の単線結線図を示す系統図画面21と、計算結果表示ウインドウ(接続可能容量表示画面)22が表示される。系統図画面(単線結線図)21には配電系統の構成を表し、柱上変圧器211や引き込み分岐点(電柱)212等を示すノードN0〜N6と、線路213等が表示される。
【0017】
計算結果表示ウインドウ22には、負荷(電力消費負荷と発電負荷)の連系を行うノード名又は線路名を表示するノード名表示部221と、計算結果表示画面222がある。計算結果表示画面222には、ノード電圧又は線路電流が、その平均値,最大値と最小値,あるいは予定の確率に基く帯域等によって表示される。
【0018】
なお、単線結線図21に表示される線路(ブランチ)213等は、後述するような3相4線式の配電回路をシンプルに示すものであり、線路、負荷、接続情報等を、図1の第1データファイル11の系統データ111に保有している。また、引き込み分岐点212等は、通常、電柱に設置されている。
【0019】
図3は、1日の負荷変化の一例を示すグラフである。この図を使って配電系統の負荷変化の様子を説明する。横軸に1日、24時間分の時刻を表し、縦軸には正規化された負荷量表わしている。ここでは、30分平均の負荷量のピークを1.0と置いて正規化している。1分平均負荷のピークとボトム変動曲線311,312は、変動幅が大きく、以下、5分平均曲線321,322、10分平均変動曲線331,332、15分平均変動曲線341,342の順に変動幅は小さくなっている。そして、30分間の負荷の平均値35は、変動幅は比較的狭く、図示するように、20時頃にピークとなっている。配電系統の負荷は、このように1日の各時刻で異なった値となり、ある範囲で変動しており、短い時間単位で大きく変動することが判る。このような負荷変動を確率分布モデルで近似することによって、負荷のばらつきを潮流計算で扱うことが可能となる。
【0020】
以下、配電系統の確率的潮流計算手法について説明する。図3のような負荷の日変化を考える場合、各時間帯において負荷の平均値と標準偏差が与えられると、負荷、電圧、又は電流がどのような値を取り得るかといった系統状態の確率的な評価を行うことが可能となる。例えば、図3で説明したように、負荷の平均値を30分平均値と考えると、各時間帯の1分平均値の最大値、最小値の分布を標準偏差(σ)として与えることで、確率的な潮流計算結果を後述の計算式に従って得ることが可能である。日負荷変化モデルは実際には実測値などから求める必要があるが、標準的なデータは一般的に示されており、そのような標準データを用いても良い。また、標準偏差σについても実測値から求めるか、又はパラメータとして計算結果を評価してもよい。後述の配電系統の確率潮流計算手法では、電柱、バンクの負荷カーブや電圧・電流の確率分布を検討することができる。また、電柱やバンクでの実測による確率分布と比較することで、確率的な関係評価が可能となる。
【0021】
図4は、本発明の一実施形態で利用する正規分布曲線である。負荷変化のモデルや計算した結果である電圧・電流の変化を、図示する正規分布曲線41に従うと仮定する。また、電圧の最大値や最小値の評価値は、平均値±nσの値を用いて評価する。nはσの倍数データであり、通常2〜3の範囲の値である。これは、図1の第1のデータファイル11内のσ倍数(n)114を読み出す。n=2の場合、図4に符号42で示すように、95%程度がこの範囲内に入る。また、n=3の場合には、99%程度が確率的にその範囲内に入ることが明らかである。平均値±nσの値を、負荷又は電圧・電流値の最大・最小値と見なし、これらが系統の制約内にあるか否かの評価を行うことができる。
【0022】
以下、正規分布モデルを対象に潮流計算を行うために、まず正規分布の基本的な性質から説明する。正規分布の確率密度関数f(x)は、平均μ、分散σ2のパラメータの関数として(式1)で表される。
【0023】
【数1】
【0024】
確率変数Xが(式1)の密度関数f(x)を持つとき、Xはパラメータ(μ、σ2)の正規分布に従うと言い、X〜N(μ、σ2)と標記する。
【0025】
正規分布の主な性質として以下が挙げられる。
【0026】
(1)線形変換:正規分布に従う確率変数Xを線形変換したYも正規分布に従う。すなわち、X〜N(μ、σ2)であるとき、Y=aX+b〜N(aμ+b、a2σ2)となる。
【0027】
(2)再生性:互いに独立な確率変数X1、X2があり、それぞれX1〜N(μ1、σ1 2)、X2〜N(μ2、σ2 2)であるとき、X=X1+X2もまた正規分布に従い、X〜(μ1+μ2、σ1 2+σ2 2)となる。
【0028】
これらの性質を考慮して、確率的な潮流分布を計算することを考える。
【0029】
図5は、配電系統の確率的潮流計算の概要を説明するための配電系統例を示す図である。配電系統の例として、配電変電所51、線路521,522、ノード531,532、負荷541,542で構成された系統を示している。ここで、負荷541の負荷電流i1は、確率分布モデル551のように平均μ1、標準偏差σ1の確率密度関数で与えられる。負荷542の負荷電流i2も同様に与えられる。その値を下に、各線路521,522の電流の確率密度関数は確率分布の再生性から計算することができる。各線路の電流の確率密度関数(と力率)と、各線路のインピーダンスZ1、Z2から、確率分布の線形変換によって各ノードの電圧の確率分布を計算することが可能となる。例えば、ノード2(532)の電圧V2の場合は、確率分布56に基く。負荷が定電流特性である場合は、このように各ノードの電圧を計算することが可能となる。一方、負荷が定電力特性や定インピーダンス特性の場合は、電圧に応じて負荷電流の大きさが変わり、問題が複雑となり、簡単には計算できない。このため、負荷は定電流特性に置き換えて扱う。
【0030】
図6は、本発明の一実施形態に用いる確率的潮流計算アルゴリズムを説明するための系統図である。この低圧配電系統を例として、配電系統の確率的潮流計算の方法を詳細に説明する。この例は、V結線三相四線式系統を示しているが、中性線(N相)につながる負荷をゼロと置けば、三相三線式系統の計算も可能である。また、C相に繋がる負荷をゼロと置けば、単相系統の計算も同様に可能となる。電圧源611,612は、単相用柱上変圧器の低圧側に現れる電圧に等しく、また、電圧源613は、三相用柱上変圧器の低圧側に現れる電圧に等しく設定する。系統にはブランチ内の線路のインピーダンス621と、ノード内の単相負荷又は発電機63、三相負荷又は発電機64が含まれる。ブランチ内の線路はA相、B相、C相の各相線路およびN相の中性線路4本を一組として構成される。
【0031】
本手法では、負荷(又は発電量)のみが確率分布として与えられるとする。系統条件と、負荷の確率分布(平均値、標準偏差σ)が与えられると、これらを下に各線路電流、ノード電圧の確率分布(平均値、標準偏差)を求めていく。
【0032】
まず、平均値の計算方法について示す。各線路電流、ノード電圧の平均値は、負荷の平均値から近似的に計算し、標準偏差は計算に用いない。厳密には、負荷電流は系統電圧によって変わるため、負荷電流の確率分布は系統電圧の確率分布に依存することになり、従って負荷電流の平均値も系統電圧の確率分布に依存することになる。しかし、負荷特性が実際には明確でないことや、確率分布同士の除算、乗算は計算負荷も大きく、モンテカルロシミュレーションなどを用いる必要があるため、本手法では前述の近似手法を用いることとした。これより、平均値の計算は、従来の潮流計算と同一の計算で可能となる。従って、従来の潮流計算の負荷(又は発電量)の代わりに負荷平均値(又は発電量平均値)を用いればよい。潮流計算アルゴリズムを以下に示す。
【0033】
(a)有効・無効電力P、Q平均値と電圧・電流平均値の関係(負荷・発電機の電圧特性を含む)を(式2)および(式3)に示す。
【0034】
【数2】
【0035】
【数3】
【0036】
ここで、i=anx,bnx,abx,bcx,cax、x=1,2,…n(nはノード数)である。PL0i,QL0iは定格電圧時の負荷有効,無効電力平均値、V0iは定格電圧、αpi,αqiは負荷PL,QLの電圧特性指数(定インピーダンス特性:α=2.0、定電流特性:α=1.0、定電力特性:α=0.0)を示す。
【0037】
(b)電圧の関係を(式4)に示す。各ノードの線間の電圧(負荷の電圧)と、各線路両端電圧(これは線路電流と線路インピーダンスの積となる)と、電圧源611,612,613の電圧である送り出し電圧の関係を示している。
【0038】
【数4】
【0039】
(c)電流の関係を(式5)に示す。各負荷の電流と各線路の電流の関係を示している。
【0040】
【数5】
【0041】
ここで、kはノードiに接続されるブランチ番号を示す。
【0042】
これらの関係式はすべてのノード、ブランチに対しても同様に成立する。すべてのノード、ブランチに対して関係式を導き、以下の手順で計算を進める。
【0043】
(1)線路電流初期値を設定する。(例えば各ブランチの線路電流=0を初期値とする)
(2)(式4)より線間電圧を計算する。系統末端まで電圧を求める。
【0044】
(3)計算した線間電圧から、(式2),(式3)を用いて各負荷の電流を計算する。
【0045】
(4)系統の末端から順に(式5)を計算し、各線路の電流を求める。
【0046】
(5)求めた電流を初期値とし、(2)〜(4)を収束するまで繰り返す。
【0047】
このように計算することで、各線路の電流および各接点の電圧を求めることが可能となり、平均値の計算が可能となる。収束判定は、系統の電圧源に隣接する線路に流れる電流(ルートの電流)が収束したかどうかによって判定する。
【0048】
次に、標準偏差の計算方法について示す。標準偏差の計算は、各線路電流、ノード電圧の平均値の収束した計算結果を使って計算する。すなわち、平均値の潮流計算結果計算後に計算すればよい。以下、計算アルゴリズムを示す。
【0049】
(a)負荷電流標準偏差の扱い:
これまでの潮流計算では、負荷(発電量)電流は入力データとして与えられるP,Q(又はPと力率)に対して電圧特性を考慮して計算していた。確率分布を考える場合、負荷のP,Q、ノード電圧共に確率密度関数で表されるため、これらを正確に扱うと潮流計算処理が非常に複雑となり、モンテカルロシミュレーションなどが必要となり、実用的でない。そこで、本手法では、負荷の確率分布を負荷電流の確率分布と置き換えることで近似することとする。従って、負荷(又は発電量)の標準偏差σを与える場合、負荷電流の標準偏差として設定することに留意する必要がある。また、負荷のP、Qの標準偏差は同一とする(異なる標準偏差は扱えない)。これらの仮定は、元々の負荷(又は発電量)の確率分布を標準偏差で近似していることや、実際の各解析対象とする負荷変化が各々異なるものを画一的に確率分布で近似していることを考慮すると、十分許容できるものと考える。
【0050】
各負荷又は発電量を持つノードiの標準偏差は(式6)で表される。
【0051】
【数6】
【0052】
ここで、i=anx,bnx,abx,bcx,cax、x=1,2,…n(nはノード数)、σLi,σGiは負荷,発電量の標準偏差を表す。
【0053】
(b)線路電流標準偏差の計算:
前述のように求めた負荷電流標準偏差から、線路電流の標準偏差を求める。計算式を(式7)に示す。すなわち、送り出し変圧器側の線路電流の標準偏差は末端側および各ノードの線間負荷電流の標準偏差のピタゴラス和として計算される。
【0054】
【数7】
【0055】
ここで、kはノードiに接続されるブランチ番号を示す。
【0056】
(c)電圧標準偏差の計算:
前述のように求めた負荷電流および線路電流の標準偏差から、各電圧の標準偏差を求める。計算式を(式8)に示す。送り出し(柱上トランス)の電圧の標準偏差は、初期値として与える必要がある。
【0057】
【数8】
【0058】
これらの関係式はすべてのノード、ブランチに対しても同様に成立する。すべてのノード、ブランチに対して関係式を導き、以下のステップで計算を進める。
【0059】
(1)負荷および発電量標準偏差、送り出し電圧標準偏差、線路インピーダンスを読み込む。
【0060】
(2)(式6)より負荷+発電量を合算した標準偏差を計算する。
【0061】
(3)系統の末端から順に(式7)を計算し、各線路電流の標準偏差を求める。
【0062】
(4)系統の送り出し側から順に(式8)を計算し、各線間電圧の標準偏差を計算する。
【0063】
(式7),(式8)は標準偏差を求める式となっているが、上記手順を分散σ2のまま計算を進め、最後に標準偏差σを求めてもよい。
【0064】
次に、評価指標となる、電圧,電流の上下限値の求め方を述べる。潮流計算によって求めた負荷電流,線路電流,ノード電圧の平均値と標準偏差から、各値の上限値,下限値を計算する。電圧上下限は、電圧平均値±nσ、電流上下限は電流平均値±nσで計算すればよい。ここで、nは前述した図1のσの倍数データ114であり、通常2〜3の範囲の値である。
【0065】
次に、前述の確率的潮流計算手法の解析支援装置への組み込みについて説明する。解析支援装置は1日24時間のデータを扱うが、確率潮流計算は各時間断面毎のデータを対象に計算を行う。従って、1日のデータを30分おきの48断面のデータの組とした場合、確率潮流計算は各断面毎に48回計算されることになる。
【0066】
計算に用いるデータベースとして、下記を用意する必要がある。まず、入力データを格納する入力データファイル200には、次のデータが保存される。
【0067】
(a)系統データ111:各線路のインピーダンス(R、X)の値が定義される。
【0068】
(b)日負荷変化データ112:各時間毎の平均値と標準偏差σが定義される。
【0069】
図7は、本発明の一実施形態に用いる入力データの例を示すグラフである。図に示すように、負荷の有効電力P、標準偏差σの1日分のデータと、この日の力率データ(24時間一定)などが含まれる。
【0070】
(c)送り出し電圧データ:電圧源611,612,613の電圧平均値と標準偏差σが、各時刻毎に定義される。
【0071】
(d)σ倍数(n):電圧,電流の上下限を平均値±σ×nと評価するための、倍数nが定義される。
【0072】
また、計算結果を格納するための出力用の第2のデータファイル12には、次のデータなどが保存される。
【0073】
(a)電圧計算結果121:各時間毎の各ノードの電圧平均値、電圧上下限値又は予定の帯域。
【0074】
図8は、本発明の一実施形態に用いる画面出力データの例を示すグラフである。図に示すように、電圧平均値81と、最大値82,最小値83の組の1日分のデータが保存される。この例では、電圧の上限値84は、107[V]に設定され、下限値85は、95[V]に設定されている。最大値82,最小値83の代りに、予定の確率に基く設定幅の帯域として記憶し、表示することもできる。
【0075】
(b)電流計算結果122:各時間毎の各線路の電流平均値、電流上下限値又は予定の帯域。上記(b)の電圧の場合に準じて記憶し、表示する。
【0076】
(c)σ計算結果123:電圧、電流のσの計算結果。
【0077】
このように装置を構成することで、ユーザに配電系統の確率的潮流計算結果を示すことが可能となり、ユーザは各線路の電圧や電流が上下限値又は予定の帯域を逸脱しているかどうかを一目で判定することが可能となる。具体的には、図8に示す電圧の例のように、ユーザは電圧最大値82の曲線が上限値84である107[V]を超えていれば、検討対象としている配電系統では電圧逸脱する可能性があることが判る。同様に,電圧最小値83についても,下限値85の95[V]を下回っている部分があれば,電圧逸脱の可能性があることが判る。また,電圧最大値82,電圧最小値83の何れも、電圧上下限値84,85である107〜95[V]の範囲に入っていた場合でも,上下限までの余裕を見ることで、対象とする配電系統の設備余裕を把握することが可能となる。ここでは,電圧の計算結果の記録と表示例について説明したが,電流についても同様に記録及び表示すれば、ユーザは判り易くその評価が可能である。
【0078】
以上説明したように,本発明の実施形態によれば、ユーザに配電系統の確率的潮流計算結果を示すことで,電圧や電流が上下限値を逸脱しているか,制約範囲内にあるかどうかを判り易く提示することができる。これにより,配電設備の適正度合いを評価したり,設備新設・増強を行う場合に,ユーザによる評価や意志決定を支援することができる。
【0079】
また、入出力データを1日24時間の日変化データとして扱うことで、負荷の日変化に対して、潮流計算結果であるノード電圧や線路電流の日変化を考慮した計算結果をユーザに示すことができる。
【0080】
また、計算結果のノード電圧や線路電流の標準偏差を下にして、電圧・電流の確率的な上限値、下限値を示すことができ、ユーザの確率を考慮した評価を支援することができる。
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、配電系統において、設備新設・増強等にあたっての配電設備の適正度合いの評価を判り易く支援できる解析支援装置及び解析支援方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による電力系統の解析支援装置の概略構成図。
【図2】本発明の一実施形態による電力系統の解析支援装置の表示画面の一例図。
【図3】本発明で扱う1日の負荷変化データの実際の一例を示すグラフ。
【図4】本発明の一実施形態で利用する正規分布曲線図。
【図5】本発明の一実施形態で用いる確率的潮流計算のアルゴリズムを説明するための一例配電系統図。
【図6】本発明の一実施形態に用いる確率的潮流計算アルゴリズムを説明するための系統図。
【図7】本発明の一実施形態に用いる記録し表示する入力データの例を示すグラフ。
【図8】本発明の一実施形態に用いる記録し表示する出力データの例を示すグラフ。
【符号の説明】
10…表示装置、101…画面(表示面)、11…第1の(入力)データファイル、111…系統データ、112…日負荷変化データ、113…送り出し電圧データ、114…σ倍数データ、12…第2の(出力)データファイル、121…電圧計算結果データ、122…電流計算結果、123…標準偏差σ計算結果、133…入力手段、131…CPU、132…RAM、14…バスライン、22…計算結果表示ウインドウ(確率潮流計算結果表示)、221…ノード名表示部、222…計算結果表示画面、21…配電系統の単線結線図(系統図画面)、211…柱上変圧器、212…引き込み分岐点(電柱)、213…線路(ブランチ)。
Claims (11)
- 電力系統の系統データと、系統に連系した分散型電源の発電量,負荷又は送り出し電圧の変動の確率分布を定義するデータが格納されているデータファイルと、前記系統データと前記確率分布を定義するデータを取込み、ノード電圧又は線路電流の確率分布を求めるコンピュータと、このコンピュータで求めたノード電圧又は線路電流の確率分布に基く平均値を表示する表示装置を備えたことを特徴とする電力系統の解析支援装置。
- 電力系統の系統データと、系統に連系した分散型電源の発電量,負荷又は送り出し電圧の変動の確率分布を定義するデータを格納したデータファイルと、前記系統データと前記確率分布を定義するデータを取込み、ノード電圧又は線路電流の確率分布を求めるコンピュータと、このコンピュータで求めたノード電圧又は線路電流の確率分布に基く最大値と最小値を表示する表示装置を備えたことを特徴とする電力系統の解析支援装置。
- 電力系統の系統データと、系統に連系した分散型電源の発電量,負荷又は送り出し電圧の変動の確率分布を定義するデータを格納したデータファイルと、前記系統データと前記確率分布を定義するデータを取込み、ノード電圧又は線路電流の確率分布を求めるコンピュータと、このコンピュータで求めたノード電圧又は線路電流を、予定の確率で分布する帯域として表示する表示装置を備えたことを特徴とする電力系統の解析支援装置。
- 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記電圧又は電流の標準偏差を表示する表示装置を備えたことを特徴とする電力系統の解析支援装置。
- 電力系統の系統データと、系統に連系した分散型電源の発電量,負荷又は送り出し電圧の変動の確率分布を定義するデータが格納されているデータファイルと、前記系統データと前記確率分布を定義するデータを取込み、ノード電圧又は線路電流の確率分布を求めるコンピュータと、このコンピュータで求めたノード電圧又は線路電流の確率分布に基く特定時刻における平均値,最大最小値,及び/又は予定の確率で分布する帯域を表示する表示装置を備えたことを特徴とする電力系統の解析支援装置。
- 請求項1〜4のいずれかにおいて、前記表示装置は、表示データをその日変化として表示することを特徴とする電力系統の解析支援装置。
- 請求項2又は3において、ノード電圧又は線路電流の最大値と最小値又は帯域の上端と下端は、それぞれ確率的潮流計算結果の平均値に標準偏差の定数倍を加えた値と減じた値であることを特徴とする電力系統の解析支援装置。
- 電力系統の系統データと、系統に連系した分散型電源の発電量,負荷又は送り出し電圧の平均値と標準偏差の日変化を定義する確率分布データを格納したデータファイルと、前記系統データと確率分布データを取込み、確率的潮流計算を各日変化断面毎に行い、各ノードの電圧又は各線路の電流の平均値と標準偏差の日変化を求めるコンピュータと、このコンピュータで求めた、各ノードの電圧又は各線路の電流の平均値,最大値及び最小値の日変化を表示する表示装置を備えたことを特徴とする電力系統の解析支援装置。
- データベースから、電力系統の系統データと、系統に連系した分散型電源の発電量,負荷又は送り出し電圧の変動の確率分布を定義するデータを取込むステップと、これらの取込みデータに基きノード電圧又は線路電流の確率分布を求めるステップと、求めたノード電圧又は線路電流の確率分布に基く平均値及び/又は予定の確率で分布する帯域を、表示装置に表示するステップを備えたことを特徴とする電力系統の解析支援方法。
- データベースから、電力系統の系統データと、系統に連系した分散型電源の発電量,負荷又は送り出し電圧の変動の標準偏差及び線路インピーダンスを取込むステップと、これらの取込みデータに基きノード電圧及び線路電流の標準偏差を複数回繰り返し計算するステップを備えたことを特徴とする電力系統の解析支援方法。
- 下記(1)〜(4)の手順で計算を進める電力系統の解析支援方法。
(1)負荷および発電量標準偏差、送り出し電圧標準偏差、線路インピーダンスを読み込むステップ、
(2)発電量と負荷を合算した標準偏差を計算するステップ、
(3)系統の末端から順に、負荷電流標準偏差から、各線路電流の標準偏差を求めるステップ、及び
(4)系統の送り出し側から順に、負荷電流および線路電流の標準偏差から、各線間電圧の標準偏差を求めるステップ。
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