JP2005056925A - プラズマ処理装置および処理室内壁面安定化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プラズマエッチング処理装置において、処理室内のデポ膜を除去するとともに壁面材料の腐食を抑えることできる、処理室壁面安定化方法を提供する。
【解決手段】被処理物が設置された処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を処理するプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化方法であって、エッチング処理(ステップS1)に続くクリーニング処理(ステップS2)の後に、処理室内壁を保護する内壁保護ガスであるO2ガスまたはFガスを導入してプラズマ処理する処理室内壁面安定化処理(ステップS3)を施して、処理室壁面を安定化させ、エッチング処理時に処理室壁面を構成する材が処理室に放出されないようにする。
【選択図】 図3
【解決手段】被処理物が設置された処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を処理するプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化方法であって、エッチング処理(ステップS1)に続くクリーニング処理(ステップS2)の後に、処理室内壁を保護する内壁保護ガスであるO2ガスまたはFガスを導入してプラズマ処理する処理室内壁面安定化処理(ステップS3)を施して、処理室壁面を安定化させ、エッチング処理時に処理室壁面を構成する材が処理室に放出されないようにする。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマエッチング装置・プラズマCVD装置などの、プラズマを利用して例えば珪素(Si)からなる被処理物にエッチング等の処理を行うプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造工程において、塵埃が基板に付着すると、目的のデバイスのパターン欠陥を引き起こし、製造工程における歩留まりを低下させる。
【0003】
これに対して、各種ガスを装置内に導入し、導入したガスのプラズマの反応を利用して基板のエッチングを行うドライエッチングプロセスでは、エッチングにともなって発生する生成物が装置内壁に堆積膜(以下にデポ膜と記す)となって付着して発塵源となる。そこで、これらのデポ膜を定期的に除去する必要が生じる。このようなデポ膜の除去方法として、プラズマクリーニングが知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、エッチング室の状態を一定に保つために、プラズマクリーニングを行なった後に、デポ膜が付着した壁面をプラズマによって浅く削る処理方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−319586号公報
【特許文献2】
特開平7−335626号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、プラズマエッチングの処理には塩素(Cl2)や臭化水素(HBr)などを含む腐食性の高いガスが使用されるようになってきた。エッチング装置の処理室内の構成材料には、これらのガスに対して耐腐食性の高い材料として、アルマイトやアルミナセラミックスの溶射膜などの酸化物被膜(Al2O3)が施された材料が使われるのが一般的である。逆にプラズマクリーングでデポ膜を完全に除去すると、例え安定な構造の酸化物被膜とはいえ、腐食性の高いガスによって表層が腐食し異物が発生しやすい状態になる。また前記した酸化物被膜はポーラスな構造であるために、被膜母材までガスが到達して腐食されると言う問題が発生するようになった。
【0006】
前記従来技術では、デポ膜を取り去る、もしくはデポ除去後の壁面表層も取り去ることが特徴であり、壁面材料表層、もしくは母材の腐食、と言う問題に関しては考慮されていなかった。
【0007】
本発明の目的は、これらの問題を解決することにあり、処理室内のデポ膜を除去とともに壁面材料の腐食を抑えることできる、プラズマ処理装置およびその処理室壁面安定化方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、プラズマクリーニング処理からエッチング処理に移行するまでの間に、好ましくはプラズマクリーニング処理の直後に、酸素(O2)、もしくはフッ素系(F系:例えば、SF6,CF4,C2F6(CxFy))ガスのプラズマを用いて処理室内材料と結合した腐食性ガス分子を置換する、壁面安定化処理ステップを設けることにより達成される。
【0009】
また、上記目的は、連続処理工程の中において何枚処理毎にプラズマクリーニング処理を実施するか、またどの程度時間の安定化処理を行うかを任意に選択、設定することにより達成される。
【0010】
さらに、上記目的は、処理室内のモニタ手段によって壁面の腐食を検出し、この検出信号を受けて安定化処理ステップを実行することにより達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図により説明する。図1は、本発明の製造方法を実施するに用いるドライエッチング装置を示す図で、電子サイクロトロン共鳴(ECR)を利用した装置の例である。図1において、電子サイクロトロン共鳴(ECR)を利用したドライエッチング装置は、エッチング処理室101と、基板を載置する基板ステージ103と、処理室内を所定の圧力に真空排気するための真空排気口105とを有して構成される。さらに、このドライエッチング装置は、アンテナ108に高周波電力を供給するUHF帯電磁波電源106と、整合器107と、エッチング処理室101の上部に配置されたアンテナ108と、エッチング処理室101の外部に配置された磁場形成用のコイル109とを有しており、処理室の内壁は直接プラズマに接する壁面102となっている。基板ステージ103上には、Si基板104が配置されるとともに、高周波電源111から高周波電力が供給される。エッチング処理室101内には、プラズマ110が形成される。
【0012】
エッチング処理に際しては、まず真空排気によって、所定の圧力に調整する。次に、UHF帯電磁波電源106から整合器107、アンテナ108を介してUHF帯の電磁波がエッチング処理室101に導入される。導入された電磁波はソレノイドコイル109により形成される磁場との共鳴により、処理室のガスをプラズマ化し、このプラズマ110を利用してエッチング処理が行なわれる。基板が載置される基板ステージ103には、加工形状を制御する目的で、高周波電源111によって、RFバイアスが印加され、プラズマ中のイオンを引き込むことにより異方性エッチングが行なわれる。
【0013】
次に、このエッチング装置にてSiウエハの表面加工を行なう場合の処理の流れを図2を用いて説明する。例えば、半導体素子のゲート電極の加工では、Cl2、HBrなどの腐食性の高いガス、あるいはこれらの混合ガスのプラズマを用いて多結晶Siのエッチングを行なう(ステップS1)。さらに、これに加えて、Siとの反応性はFが最も高いのでエッチング速度が大きくなるため、近年ではFを含むガス、例えばCF4などが多く使われる傾向にある。このエッチング処理は、任意の枚数N枚について行う。
【0014】
このエッチング処理の後に、Siの反応生成物が処置室101の内壁に堆積してデポ膜となり、Siを含む異物となるのを防止する目的で、SF6などSiとの反応性が強いガスのプラズマを用いたプラズマクリーニングが行なわれる(ステップS2)。この後ステップS1に戻って、エッチング処理を実行する。
【0015】
プラズマクリーニングは、以前はロットとロットの間に行なわれるのが普通であったが、加工精度が厳しくなっていることから処理室内の雰囲気を常に一定に保つ必要が生じ、現今では任意の枚数N枚毎、例えば5枚毎に行なわれたり、1枚毎に実施されるようなケースが増えている。
【0016】
以上述べたように、プラズマクリーニングに加えて、エッチング処理中にもSiとの反応性が高いFを多用するようになったために、図2に示した一連の処理フローの中で処理室壁面上にデポ物が存在する場合が少なくなって行く傾向が強くなっている。
【0017】
一方、エッチング装置の処理室内の構成材料には、これらのガスに対して耐腐食性を持つ材料として、酸化物被膜が施された材料が使われるのが一般的である。FeやCrなどのいわゆる重金属は、Si基板上に微量付着するとSi半導体中に拡散して半導体の動作に支障をきたすので、アルマイトやアルミナセラミックス溶射膜など、アルミニウム系の酸化膜被膜が使用されることが特に多い。被膜母材としては、作業のしやすさの点で重量の軽いもの、比重が小さいものが望ましい。そのため、アルミニウム合金が用いられるのが一般的である。先に述べた、アルミニウム系の被膜以外であっても母材にはアルミニウム合金が多く用いられる。
【0018】
前述したように、一連の処理の中で処理室壁面上にデポ物が存在する場合が少ないと、例え安定な構造の酸化物被膜とはいえ、腐食性の高いガスによって表層が腐食し異物が発生しやすい状態になりやすい。また、酸化物被膜はポーラスな構造であり、かつプラズマからの入熱によって温度が上昇するために熱膨張によってクラックが生じやすい環境にある。すなわち、クラックや被膜中の小穴を通して被膜母材までガスが到達して腐食されると言う問題が発生するようになった。
【0019】
図4のアルマイト被膜の断面の模式図を用いて、アルミニウム母材の表面にアルマイト被膜を設けた場合の処理室内壁面における腐食の発生について説明する。処理室内壁面を構成するアルミニウム母材の表面には、アルマイト層が形成される。このアルマイト層には、前述のように表面から母材方向に延びるクラックが存在しており、熱履歴によってクラックが成長する傾向がある(図4(A))。さらに、アルマイト層は、プラズマクリーニング処理時にCl2やHBrによって腐食され、クラックがアルミニウム母材に達する。すると、アルミニウム母材がクラックを経由したCl2やHBrによって腐食されてAlCl3、AlBrとなって処理室中に放出される(図4(B))。このAlCl3、AlBr等の反応成生物の発生は、処理室内壁の寿命と言う意味でも、エッチング処理結果への影響と言う意味でも問題は大きい。
【0020】
同様に、図5の溶射被膜の断面の模式図を用いて、アルミニウム母材の表面に溶射被膜を設けた場合の処理室内壁面における腐食の発生について説明する。処理室内壁面を構成するアルミニウム母材の表面には、アルミナセラミックス溶射被膜が形成される(図5(A))。このアルミナセラミックス溶射被膜は、アルミニウム母材の表面に、アルミナ粒子を原料として溶射している。したがって、ある程度の時間、腐食性の強いプラズマにさらされたり熱履歴を受けると、粒子間を通して表面から母材方向に延びるパスが顕在化する(図5(B))。このように、溶射被膜層を有する処理室内壁面は、プラズマクリーニング処理時に、Cl2やHBrがパスを経由してアルミニウム母材の表面に達し、アルミニウム母材がCl2やHBrによって腐食されてAlCl3、AlBrとなって処理室中に放出されるケースが生じる(図5(B))。このAlCl3、AlBr等の反応成生物の発生は、図4の場合と同様に、処理室内壁の寿命と言う意味でも、エッチング処理結果への影響と言う意味でも問題は大きい。
【0021】
本実施形態では、一連の処理フローの中で、クリーニング工程からエッチング工程に移行する間に、処理室内壁面材料と結合した腐食性ガス分子を置換する、壁面安定化処理ステップを設ける。本実施例での処理フローを図3に示した。安定化処理としては、Cl2、HBrなどに対する腐食性耐性を持つ化合物に成りうるガスのプラズマ放電を行なう。例えば、アルミ系材料に対しては、O2もしくはF系ガスがあげられる。
【0022】
例えば、半導体素子のゲート電極の加工では、Cl2、HBrなどの腐食性の高いガス、あるいはこれらの混合ガスのプラズマを用いて多結晶Siのエッチングを行なう(ステップS1)。このエッチング処理は、任意の枚数N枚について行う。
【0023】
このエッチング処理の後に、Siの反応生成物が処置室101の内壁に堆積してデポ膜となり、Siを含む異物となるのを防止する目的で、SF6などSiとの反応性が強いガスのプラズマを用いたプラズマクリーニングが行なわれる(ステップS2)。
【0024】
この後、O2ガスまたはF系ガスからなる壁面安定化ガスを用いてプラズマ処理を行なう壁面安定化処理を実行する(ステップS3)。この後、ステップS1に戻って、エッチング処理を行なう。
【0025】
図6に、アルミニウム母材に達するクラックの底面のアルミニウム母材の表面に壁面安定化処理を行ない、酸化層を形成した処理室内壁面の概略断面図を示した。図に示すように、クラック底面に耐食性のある酸化層、もしくはフッ化層を形成することによって、アルミニウム母材の耐食性を保つことが可能となる。このような、O2またはF系ガスなどの壁面安定化処理用ガスのプラズマによって表面に形成された酸化層またはフッ化層は非常に薄く、nmオーダーと考えられるが、クリーニング処理によって酸化層またはフッ化層が抜ける前に、再び安定化処理を実施すれば、アルミ腐食の発生を長期間に渡って防ぐことが可能となる。
【0026】
〔実験1〕
本願の発明者らの実験によれば、通常の耐食アルミニウムを処理室内壁面に用いた場合でも、効果があることがわかっている。図7に実験結果を示す。実験は、処理室内壁面材料をA5051耐食アルミニウムとし、SiO2ウエハのエッチングを行なった。SiO2ウエハを使用したのは、Siの反応生成物のデポ膜の影響を無くすためである。この実験において、条件1は、30秒のCl2ガスによるエッチングを繰返し実施した。エッチングは、Cl2ガス流量200sccm、圧力1Pa、ソースパワー400W、RFバイアス40Wで行なった。条件2は、エッチングの前にO2ガスプラズマ放電を20秒行ない、O2放電→エッチングを繰返し実施した。O2ガス放電は、O2ガス流量300sccm、圧力1Pa、ソースパワー800W、RFバイアス0Wで行なった。
【0027】
処理室にプラズマ発光分光器を取り付けて、Alの発光波長396nmをモニタしながら、上記実験を実施したところ、O2放電を行なわない条件1では、図7(A)に示すように、2枚目処理の途中でAlの発光が顕著に観測された、すなわち処理室内壁面が腐食されのAlを含む反応生成物が発生しているのに対して、条件2では10枚以上処理をしてもAlの発光は認められなかった、すなわちAlを含む反応生成物の発生がなかった。このように、アルミニウム母材の表面に常に酸化膜層を形成させることによる、明らかな壁面材料の保護が認められた。
【0028】
〔実験2〕
図8を用いて、アルマイト処理を施した壁面材料での壁面安定化処理の効果を説明する。この例は、1年以上使用した壁材料であり、とことどころアルマイトが削れて母材が露出したものを実験に用いた。実験は、Cl2ガスを用いて、Siのエッチングを行なった。この実験の条件1では、クリーニングの後、60秒のSiのエッチングを繰返し、条件2では、エッチングの前にO2ガスプラズマを用いて壁面安定化処理を20秒行なった。やはり、処理室にプラズマ発光分光器を取り付けて、Alの発光波長396nmをモニタしながら、上記実験を実施したところ、条件1では、1枚目の処理においてすでにAlの発光が観測されたのに対して、条件2では、処理の初期に微量のAl発光が認められたが12枚目以降は25枚処理をしてもAlの発光は認められなかった。すなわち、本発明の壁面安定化処理によって、アルミニウム母材の露出面が酸化物層によって保護されたことを理解できる。
【0029】
このように、壁面安定化ステップを、クリーニング処理とエッチング処理の間に設けて、壁面安定化ガスのプラズマによって常に酸化層またはフッ化層をアルミニウム母材の表面に形成する壁面安定化処理を実施すことにより、アルミ腐食の発生、すなわち壁面材料の削れを防止することが可能となる。
【0030】
上記の実施形態は、プラズマクリーニングステップ毎に壁面安定化ステップを実施する事例を例に説明してきたが、必ずしもプラズマクリーニングステップ毎に安定化ステップを実施する必要は無く、安定化ステップは任意のタイミングで実施してよい。
【0031】
すなわち、現今のエッチング処理装置においては、同一の処理室において、常に同じデバイス構造の製品だけが処理されるわけではなく、膜厚、膜質、マスク面積などが異なる種々の製品処理が行なわれるのが普通である。つまり、製品ごとにエッチング条件、すなわちガス圧力、ガス流量、投入電力などが異なることから、そのエッチング条件ごとに、装置壁面に対する影響の度合いが異なる。最も安全な装置運用は、全ての製品に対してクリーニングステップ後に安定化処理ステップを実施することである。しかし、装置壁面に対して腐食の影響が小さい条件に対しても、クリーニングステップ後に安定化処理ステップを実施しては、実際の製品処理に使用される時間、実稼働時間を圧迫することになる。そこで、製品ごとに安定化処理の間隔を決めておき、例えば製品Aは非常に腐食性の強い条件を使用するので、プラズマクリーニング毎に壁面安定化処理ステップを実施し、製品Bは製品Aよりは影響が小さいので4ロット処理に1回の間隔で、製品Cはさらに影響が小さいので8ロット処理に1回の間隔で、壁面安定化処理を実施することで、装置実稼働時間の低下を最小限に抑えて、壁面の腐食を長期間に渡って防ぐことが可能となる。
【0032】
上述した事例は、安定化処理をする間隔について述べたが、製品ごとに安定化処理の時間を変えても、すなわち装置壁面に対して腐食の影響が小さいは短時間で安定化処理を行い、腐食が厳しい条件では長時間の安定化処理ステップを実施しても同様の効果が得られる。さらに、安定化処理の時間と間隔、両方を変えても良い。
【0033】
次に、本発明の別の実施形態を、図9を用いて説明する。本実施形態では、壁材料のプラズマ中への放出を検知するモニタ手段を設け、モニタ手段で処理室内部材の削れを検知して、壁面安定化処理を実行する点に特徴がある。
【0034】
モニタ手段としては、まず第一の実施形態で記したように、プラズマからの発光を検出する分光器が挙げられる。発光分光器はモノクロメータのような単一波長の光を取り出す検出器でもよいが、波長分解された発光スペクトルを出力する分光器のように多数の信号を出力する検出器であるのが最適である。また、モニタ手段として、処理室内のガスを質量数の値ごとにモニタできる質量分析器を用いても良い。さらに、モニタ手段として、プラズマ生成手段に電力を加える経路に設置された電流検出器または電圧検出器、あるいはまた、電流電圧位相差検出器または電力の進行波検出器または反射波検出器またはインピーダンスモニタなどを用いても、壁材料のプラズマ中への放出を検知することが可能である。すなわち、壁の状態は非常に敏感にプラズマのインピーダンスに影響を及ぼすので、プラズマ生成のための電力経路にモニタ手段を設置する、これらのモニタ手段は、非常に感度が高く、壁のわずかな削れでも検知することが可能である。
【0035】
以上に挙げたモニタ手段は、一定間隔の時間あるいは設定されたいくつかのサンプリング時間ごとに信号を出力する。
【0036】
ここでは第一の実施形態と同様に、プラズマ発光分光器を使用した事例を用いて説明する。
【0037】
〔実験3〕
図9を用いて、アルマイト処理を施した壁面材料を用いたエッチング装置に本発明にかかる壁面安定化処理を付加した結果を説明する。この実験は、壁面材料102を1年以上使用し交換寸前の状態にあったエッチング装置に本発明を適用した。実験はCl2ガスを用いて、実験1と同様の条件にて、Siベアウエハのエッチングを行なった。Siのデポ膜を除去するために、1枚毎にダミーウエハ無しでSF6プラズマを用いたプラズマクリーニングを10秒行なっている。処理室にプラズマ発光分光器を取り付けて、Alの発光波長396nmをモニタしながら、エッチングを行ないエッチング中の発光波長396nmの平均値を出力させた。なお、サンプリング間隔は1秒間に1回とした。
【0038】
まず、壁面安定化ステップを用いない条件1にて連続処理を行い、あらかじめ設定した上限値を超えたところで壁面安定化ステップを行なう条件2にて処理を実施した。連続処理開始後10枚目まで波長396nmの発光強度は、10〜20(スケール任意)の間で安定して推移することが確認できたので、発光強度の上限を30に設定した(図中201)。波長396nmの発光強度は、45枚処理した辺りから徐々に増加し始め56枚目で上限値を超えたので(図中202)、壁面安定化ステップをプラズマクリーニング後に実施する条件2に切り替えたところ、波長396nmの発光強度は連続処理開始時のレベルに低下することが確認できた。このように、モニタからのAl放出検知信号を用いて、安定化ステップを自動実行することにより、稼働率の低下を抑えつつ効果的な壁面腐食防止を行なうことが可能となる。本実施形態では、発光強度の平均値をモニタデータとしたが、エッチング中に測定される最大値で判断しても良い。
【0039】
本実施形態のように、モニタ手段にてAl放出を検知する手法は、装置管理にも有効性である。モニタ値が、あらかじめ設定したしきい値を超えた場合に、直ちにその旨出力すれば、オペレータへ装置状態を知らせる手段にもなる。出力形態は、ブザーなどのアラームでも良いし、操作パネルへの表示、もしくは装置オペレータのパーソナルコンピューターへの表示などでもよい。
【0040】
如何に壁面安定化ステップを実施していても、エッチング処理を多数回繰り返すことによって、アルマイト膜や溶射膜などの表面被膜が薄くなる、もしくは一部削れてなくなると、母材は腐食を受けやすく、頻繁にアラームが発せられることになる。このような場合、何回連続して閾値を超えたかで、あるいは警告の積算回数で警告のレベルわけをするのも有効である。例えば、一回閾値から外れて次には戻った場合には軽度の警告として着工は続けるが、3回連続して閾値を外れた場合には着工禁止としてメンテナンスを実施する、あるいは閾値が外れた積算回数がある設定値を超えたらメンテナンスを実施するなどの応用ができる。これにより装置内の清掃などメンテナンスを行えば、加工しているウエハへの汚染や異物の付着などの不良原因を未然に防止する事が可能となる
【0041】
本発明によれば、壁面材料の表面状態を安定化することができるために、壁面の削れを防止することできる。したがって、壁面が削れたために生ずる部品交換頻度を少なくすることができるので、ランニングコストの低減になる。さらに、壁面削れに起因する異物の発生やプラズマの安定性の低下が防止できるので、素子作成の歩留まりを向上させることができる。
【0042】
以上の実施形態では処理室内壁面材料として表面にアルマイト層またはアルミセラミック膜を形成したアルミニウム母材を用い、壁面保護ガスとしてO2ガスまたはF系ガスを用いた例を説明したが、処理室内壁面材料としてはステンレス鋼を用いることが得きる。この場合には、鉄(Fe)とF系ガスは耐蝕性の強いフッ化鉄(FeF2)を作り、結合が強く蒸発しずらいフッ化不導体被膜をステンレス鋼の表面に形成するので、本発明の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を説明するためのプラズマ処理装置を示す全体構成図。
【図2】従来実施されていたウエハ処理フロー。
【図3】本発明の実施形態を説明するためのウエハ処理フロー。
【図4】本発明の実施形態を説明するための装置壁面材料の概略断面図。
【図5】本発明の実施形態を説明するための装置壁面材料の概略断面図。
【図6】本発明の実施形態を説明するための装置壁面材料の概略断面図。
【図7】本発明の効果を説明するための処理結果例。
【図8】本発明の効果を説明するための処理結果例。
【図9】本発明の効果を説明するための処理結果例。
【符号の説明】
101:エッチング処理室、102:プラズマに接する壁面材料、103:基板ステージ、104:基板、105:真空排気口 、106:UHF帯電磁波電源、107:整合器、108:アンテナ、 109:コイル、110:プラズマ、111:高周波電源、201:信号閾値、202:安定化ステップ開始点。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマエッチング装置・プラズマCVD装置などの、プラズマを利用して例えば珪素(Si)からなる被処理物にエッチング等の処理を行うプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造工程において、塵埃が基板に付着すると、目的のデバイスのパターン欠陥を引き起こし、製造工程における歩留まりを低下させる。
【0003】
これに対して、各種ガスを装置内に導入し、導入したガスのプラズマの反応を利用して基板のエッチングを行うドライエッチングプロセスでは、エッチングにともなって発生する生成物が装置内壁に堆積膜(以下にデポ膜と記す)となって付着して発塵源となる。そこで、これらのデポ膜を定期的に除去する必要が生じる。このようなデポ膜の除去方法として、プラズマクリーニングが知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、エッチング室の状態を一定に保つために、プラズマクリーニングを行なった後に、デポ膜が付着した壁面をプラズマによって浅く削る処理方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−319586号公報
【特許文献2】
特開平7−335626号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、プラズマエッチングの処理には塩素(Cl2)や臭化水素(HBr)などを含む腐食性の高いガスが使用されるようになってきた。エッチング装置の処理室内の構成材料には、これらのガスに対して耐腐食性の高い材料として、アルマイトやアルミナセラミックスの溶射膜などの酸化物被膜(Al2O3)が施された材料が使われるのが一般的である。逆にプラズマクリーングでデポ膜を完全に除去すると、例え安定な構造の酸化物被膜とはいえ、腐食性の高いガスによって表層が腐食し異物が発生しやすい状態になる。また前記した酸化物被膜はポーラスな構造であるために、被膜母材までガスが到達して腐食されると言う問題が発生するようになった。
【0006】
前記従来技術では、デポ膜を取り去る、もしくはデポ除去後の壁面表層も取り去ることが特徴であり、壁面材料表層、もしくは母材の腐食、と言う問題に関しては考慮されていなかった。
【0007】
本発明の目的は、これらの問題を解決することにあり、処理室内のデポ膜を除去とともに壁面材料の腐食を抑えることできる、プラズマ処理装置およびその処理室壁面安定化方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、プラズマクリーニング処理からエッチング処理に移行するまでの間に、好ましくはプラズマクリーニング処理の直後に、酸素(O2)、もしくはフッ素系(F系:例えば、SF6,CF4,C2F6(CxFy))ガスのプラズマを用いて処理室内材料と結合した腐食性ガス分子を置換する、壁面安定化処理ステップを設けることにより達成される。
【0009】
また、上記目的は、連続処理工程の中において何枚処理毎にプラズマクリーニング処理を実施するか、またどの程度時間の安定化処理を行うかを任意に選択、設定することにより達成される。
【0010】
さらに、上記目的は、処理室内のモニタ手段によって壁面の腐食を検出し、この検出信号を受けて安定化処理ステップを実行することにより達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図により説明する。図1は、本発明の製造方法を実施するに用いるドライエッチング装置を示す図で、電子サイクロトロン共鳴(ECR)を利用した装置の例である。図1において、電子サイクロトロン共鳴(ECR)を利用したドライエッチング装置は、エッチング処理室101と、基板を載置する基板ステージ103と、処理室内を所定の圧力に真空排気するための真空排気口105とを有して構成される。さらに、このドライエッチング装置は、アンテナ108に高周波電力を供給するUHF帯電磁波電源106と、整合器107と、エッチング処理室101の上部に配置されたアンテナ108と、エッチング処理室101の外部に配置された磁場形成用のコイル109とを有しており、処理室の内壁は直接プラズマに接する壁面102となっている。基板ステージ103上には、Si基板104が配置されるとともに、高周波電源111から高周波電力が供給される。エッチング処理室101内には、プラズマ110が形成される。
【0012】
エッチング処理に際しては、まず真空排気によって、所定の圧力に調整する。次に、UHF帯電磁波電源106から整合器107、アンテナ108を介してUHF帯の電磁波がエッチング処理室101に導入される。導入された電磁波はソレノイドコイル109により形成される磁場との共鳴により、処理室のガスをプラズマ化し、このプラズマ110を利用してエッチング処理が行なわれる。基板が載置される基板ステージ103には、加工形状を制御する目的で、高周波電源111によって、RFバイアスが印加され、プラズマ中のイオンを引き込むことにより異方性エッチングが行なわれる。
【0013】
次に、このエッチング装置にてSiウエハの表面加工を行なう場合の処理の流れを図2を用いて説明する。例えば、半導体素子のゲート電極の加工では、Cl2、HBrなどの腐食性の高いガス、あるいはこれらの混合ガスのプラズマを用いて多結晶Siのエッチングを行なう(ステップS1)。さらに、これに加えて、Siとの反応性はFが最も高いのでエッチング速度が大きくなるため、近年ではFを含むガス、例えばCF4などが多く使われる傾向にある。このエッチング処理は、任意の枚数N枚について行う。
【0014】
このエッチング処理の後に、Siの反応生成物が処置室101の内壁に堆積してデポ膜となり、Siを含む異物となるのを防止する目的で、SF6などSiとの反応性が強いガスのプラズマを用いたプラズマクリーニングが行なわれる(ステップS2)。この後ステップS1に戻って、エッチング処理を実行する。
【0015】
プラズマクリーニングは、以前はロットとロットの間に行なわれるのが普通であったが、加工精度が厳しくなっていることから処理室内の雰囲気を常に一定に保つ必要が生じ、現今では任意の枚数N枚毎、例えば5枚毎に行なわれたり、1枚毎に実施されるようなケースが増えている。
【0016】
以上述べたように、プラズマクリーニングに加えて、エッチング処理中にもSiとの反応性が高いFを多用するようになったために、図2に示した一連の処理フローの中で処理室壁面上にデポ物が存在する場合が少なくなって行く傾向が強くなっている。
【0017】
一方、エッチング装置の処理室内の構成材料には、これらのガスに対して耐腐食性を持つ材料として、酸化物被膜が施された材料が使われるのが一般的である。FeやCrなどのいわゆる重金属は、Si基板上に微量付着するとSi半導体中に拡散して半導体の動作に支障をきたすので、アルマイトやアルミナセラミックス溶射膜など、アルミニウム系の酸化膜被膜が使用されることが特に多い。被膜母材としては、作業のしやすさの点で重量の軽いもの、比重が小さいものが望ましい。そのため、アルミニウム合金が用いられるのが一般的である。先に述べた、アルミニウム系の被膜以外であっても母材にはアルミニウム合金が多く用いられる。
【0018】
前述したように、一連の処理の中で処理室壁面上にデポ物が存在する場合が少ないと、例え安定な構造の酸化物被膜とはいえ、腐食性の高いガスによって表層が腐食し異物が発生しやすい状態になりやすい。また、酸化物被膜はポーラスな構造であり、かつプラズマからの入熱によって温度が上昇するために熱膨張によってクラックが生じやすい環境にある。すなわち、クラックや被膜中の小穴を通して被膜母材までガスが到達して腐食されると言う問題が発生するようになった。
【0019】
図4のアルマイト被膜の断面の模式図を用いて、アルミニウム母材の表面にアルマイト被膜を設けた場合の処理室内壁面における腐食の発生について説明する。処理室内壁面を構成するアルミニウム母材の表面には、アルマイト層が形成される。このアルマイト層には、前述のように表面から母材方向に延びるクラックが存在しており、熱履歴によってクラックが成長する傾向がある(図4(A))。さらに、アルマイト層は、プラズマクリーニング処理時にCl2やHBrによって腐食され、クラックがアルミニウム母材に達する。すると、アルミニウム母材がクラックを経由したCl2やHBrによって腐食されてAlCl3、AlBrとなって処理室中に放出される(図4(B))。このAlCl3、AlBr等の反応成生物の発生は、処理室内壁の寿命と言う意味でも、エッチング処理結果への影響と言う意味でも問題は大きい。
【0020】
同様に、図5の溶射被膜の断面の模式図を用いて、アルミニウム母材の表面に溶射被膜を設けた場合の処理室内壁面における腐食の発生について説明する。処理室内壁面を構成するアルミニウム母材の表面には、アルミナセラミックス溶射被膜が形成される(図5(A))。このアルミナセラミックス溶射被膜は、アルミニウム母材の表面に、アルミナ粒子を原料として溶射している。したがって、ある程度の時間、腐食性の強いプラズマにさらされたり熱履歴を受けると、粒子間を通して表面から母材方向に延びるパスが顕在化する(図5(B))。このように、溶射被膜層を有する処理室内壁面は、プラズマクリーニング処理時に、Cl2やHBrがパスを経由してアルミニウム母材の表面に達し、アルミニウム母材がCl2やHBrによって腐食されてAlCl3、AlBrとなって処理室中に放出されるケースが生じる(図5(B))。このAlCl3、AlBr等の反応成生物の発生は、図4の場合と同様に、処理室内壁の寿命と言う意味でも、エッチング処理結果への影響と言う意味でも問題は大きい。
【0021】
本実施形態では、一連の処理フローの中で、クリーニング工程からエッチング工程に移行する間に、処理室内壁面材料と結合した腐食性ガス分子を置換する、壁面安定化処理ステップを設ける。本実施例での処理フローを図3に示した。安定化処理としては、Cl2、HBrなどに対する腐食性耐性を持つ化合物に成りうるガスのプラズマ放電を行なう。例えば、アルミ系材料に対しては、O2もしくはF系ガスがあげられる。
【0022】
例えば、半導体素子のゲート電極の加工では、Cl2、HBrなどの腐食性の高いガス、あるいはこれらの混合ガスのプラズマを用いて多結晶Siのエッチングを行なう(ステップS1)。このエッチング処理は、任意の枚数N枚について行う。
【0023】
このエッチング処理の後に、Siの反応生成物が処置室101の内壁に堆積してデポ膜となり、Siを含む異物となるのを防止する目的で、SF6などSiとの反応性が強いガスのプラズマを用いたプラズマクリーニングが行なわれる(ステップS2)。
【0024】
この後、O2ガスまたはF系ガスからなる壁面安定化ガスを用いてプラズマ処理を行なう壁面安定化処理を実行する(ステップS3)。この後、ステップS1に戻って、エッチング処理を行なう。
【0025】
図6に、アルミニウム母材に達するクラックの底面のアルミニウム母材の表面に壁面安定化処理を行ない、酸化層を形成した処理室内壁面の概略断面図を示した。図に示すように、クラック底面に耐食性のある酸化層、もしくはフッ化層を形成することによって、アルミニウム母材の耐食性を保つことが可能となる。このような、O2またはF系ガスなどの壁面安定化処理用ガスのプラズマによって表面に形成された酸化層またはフッ化層は非常に薄く、nmオーダーと考えられるが、クリーニング処理によって酸化層またはフッ化層が抜ける前に、再び安定化処理を実施すれば、アルミ腐食の発生を長期間に渡って防ぐことが可能となる。
【0026】
〔実験1〕
本願の発明者らの実験によれば、通常の耐食アルミニウムを処理室内壁面に用いた場合でも、効果があることがわかっている。図7に実験結果を示す。実験は、処理室内壁面材料をA5051耐食アルミニウムとし、SiO2ウエハのエッチングを行なった。SiO2ウエハを使用したのは、Siの反応生成物のデポ膜の影響を無くすためである。この実験において、条件1は、30秒のCl2ガスによるエッチングを繰返し実施した。エッチングは、Cl2ガス流量200sccm、圧力1Pa、ソースパワー400W、RFバイアス40Wで行なった。条件2は、エッチングの前にO2ガスプラズマ放電を20秒行ない、O2放電→エッチングを繰返し実施した。O2ガス放電は、O2ガス流量300sccm、圧力1Pa、ソースパワー800W、RFバイアス0Wで行なった。
【0027】
処理室にプラズマ発光分光器を取り付けて、Alの発光波長396nmをモニタしながら、上記実験を実施したところ、O2放電を行なわない条件1では、図7(A)に示すように、2枚目処理の途中でAlの発光が顕著に観測された、すなわち処理室内壁面が腐食されのAlを含む反応生成物が発生しているのに対して、条件2では10枚以上処理をしてもAlの発光は認められなかった、すなわちAlを含む反応生成物の発生がなかった。このように、アルミニウム母材の表面に常に酸化膜層を形成させることによる、明らかな壁面材料の保護が認められた。
【0028】
〔実験2〕
図8を用いて、アルマイト処理を施した壁面材料での壁面安定化処理の効果を説明する。この例は、1年以上使用した壁材料であり、とことどころアルマイトが削れて母材が露出したものを実験に用いた。実験は、Cl2ガスを用いて、Siのエッチングを行なった。この実験の条件1では、クリーニングの後、60秒のSiのエッチングを繰返し、条件2では、エッチングの前にO2ガスプラズマを用いて壁面安定化処理を20秒行なった。やはり、処理室にプラズマ発光分光器を取り付けて、Alの発光波長396nmをモニタしながら、上記実験を実施したところ、条件1では、1枚目の処理においてすでにAlの発光が観測されたのに対して、条件2では、処理の初期に微量のAl発光が認められたが12枚目以降は25枚処理をしてもAlの発光は認められなかった。すなわち、本発明の壁面安定化処理によって、アルミニウム母材の露出面が酸化物層によって保護されたことを理解できる。
【0029】
このように、壁面安定化ステップを、クリーニング処理とエッチング処理の間に設けて、壁面安定化ガスのプラズマによって常に酸化層またはフッ化層をアルミニウム母材の表面に形成する壁面安定化処理を実施すことにより、アルミ腐食の発生、すなわち壁面材料の削れを防止することが可能となる。
【0030】
上記の実施形態は、プラズマクリーニングステップ毎に壁面安定化ステップを実施する事例を例に説明してきたが、必ずしもプラズマクリーニングステップ毎に安定化ステップを実施する必要は無く、安定化ステップは任意のタイミングで実施してよい。
【0031】
すなわち、現今のエッチング処理装置においては、同一の処理室において、常に同じデバイス構造の製品だけが処理されるわけではなく、膜厚、膜質、マスク面積などが異なる種々の製品処理が行なわれるのが普通である。つまり、製品ごとにエッチング条件、すなわちガス圧力、ガス流量、投入電力などが異なることから、そのエッチング条件ごとに、装置壁面に対する影響の度合いが異なる。最も安全な装置運用は、全ての製品に対してクリーニングステップ後に安定化処理ステップを実施することである。しかし、装置壁面に対して腐食の影響が小さい条件に対しても、クリーニングステップ後に安定化処理ステップを実施しては、実際の製品処理に使用される時間、実稼働時間を圧迫することになる。そこで、製品ごとに安定化処理の間隔を決めておき、例えば製品Aは非常に腐食性の強い条件を使用するので、プラズマクリーニング毎に壁面安定化処理ステップを実施し、製品Bは製品Aよりは影響が小さいので4ロット処理に1回の間隔で、製品Cはさらに影響が小さいので8ロット処理に1回の間隔で、壁面安定化処理を実施することで、装置実稼働時間の低下を最小限に抑えて、壁面の腐食を長期間に渡って防ぐことが可能となる。
【0032】
上述した事例は、安定化処理をする間隔について述べたが、製品ごとに安定化処理の時間を変えても、すなわち装置壁面に対して腐食の影響が小さいは短時間で安定化処理を行い、腐食が厳しい条件では長時間の安定化処理ステップを実施しても同様の効果が得られる。さらに、安定化処理の時間と間隔、両方を変えても良い。
【0033】
次に、本発明の別の実施形態を、図9を用いて説明する。本実施形態では、壁材料のプラズマ中への放出を検知するモニタ手段を設け、モニタ手段で処理室内部材の削れを検知して、壁面安定化処理を実行する点に特徴がある。
【0034】
モニタ手段としては、まず第一の実施形態で記したように、プラズマからの発光を検出する分光器が挙げられる。発光分光器はモノクロメータのような単一波長の光を取り出す検出器でもよいが、波長分解された発光スペクトルを出力する分光器のように多数の信号を出力する検出器であるのが最適である。また、モニタ手段として、処理室内のガスを質量数の値ごとにモニタできる質量分析器を用いても良い。さらに、モニタ手段として、プラズマ生成手段に電力を加える経路に設置された電流検出器または電圧検出器、あるいはまた、電流電圧位相差検出器または電力の進行波検出器または反射波検出器またはインピーダンスモニタなどを用いても、壁材料のプラズマ中への放出を検知することが可能である。すなわち、壁の状態は非常に敏感にプラズマのインピーダンスに影響を及ぼすので、プラズマ生成のための電力経路にモニタ手段を設置する、これらのモニタ手段は、非常に感度が高く、壁のわずかな削れでも検知することが可能である。
【0035】
以上に挙げたモニタ手段は、一定間隔の時間あるいは設定されたいくつかのサンプリング時間ごとに信号を出力する。
【0036】
ここでは第一の実施形態と同様に、プラズマ発光分光器を使用した事例を用いて説明する。
【0037】
〔実験3〕
図9を用いて、アルマイト処理を施した壁面材料を用いたエッチング装置に本発明にかかる壁面安定化処理を付加した結果を説明する。この実験は、壁面材料102を1年以上使用し交換寸前の状態にあったエッチング装置に本発明を適用した。実験はCl2ガスを用いて、実験1と同様の条件にて、Siベアウエハのエッチングを行なった。Siのデポ膜を除去するために、1枚毎にダミーウエハ無しでSF6プラズマを用いたプラズマクリーニングを10秒行なっている。処理室にプラズマ発光分光器を取り付けて、Alの発光波長396nmをモニタしながら、エッチングを行ないエッチング中の発光波長396nmの平均値を出力させた。なお、サンプリング間隔は1秒間に1回とした。
【0038】
まず、壁面安定化ステップを用いない条件1にて連続処理を行い、あらかじめ設定した上限値を超えたところで壁面安定化ステップを行なう条件2にて処理を実施した。連続処理開始後10枚目まで波長396nmの発光強度は、10〜20(スケール任意)の間で安定して推移することが確認できたので、発光強度の上限を30に設定した(図中201)。波長396nmの発光強度は、45枚処理した辺りから徐々に増加し始め56枚目で上限値を超えたので(図中202)、壁面安定化ステップをプラズマクリーニング後に実施する条件2に切り替えたところ、波長396nmの発光強度は連続処理開始時のレベルに低下することが確認できた。このように、モニタからのAl放出検知信号を用いて、安定化ステップを自動実行することにより、稼働率の低下を抑えつつ効果的な壁面腐食防止を行なうことが可能となる。本実施形態では、発光強度の平均値をモニタデータとしたが、エッチング中に測定される最大値で判断しても良い。
【0039】
本実施形態のように、モニタ手段にてAl放出を検知する手法は、装置管理にも有効性である。モニタ値が、あらかじめ設定したしきい値を超えた場合に、直ちにその旨出力すれば、オペレータへ装置状態を知らせる手段にもなる。出力形態は、ブザーなどのアラームでも良いし、操作パネルへの表示、もしくは装置オペレータのパーソナルコンピューターへの表示などでもよい。
【0040】
如何に壁面安定化ステップを実施していても、エッチング処理を多数回繰り返すことによって、アルマイト膜や溶射膜などの表面被膜が薄くなる、もしくは一部削れてなくなると、母材は腐食を受けやすく、頻繁にアラームが発せられることになる。このような場合、何回連続して閾値を超えたかで、あるいは警告の積算回数で警告のレベルわけをするのも有効である。例えば、一回閾値から外れて次には戻った場合には軽度の警告として着工は続けるが、3回連続して閾値を外れた場合には着工禁止としてメンテナンスを実施する、あるいは閾値が外れた積算回数がある設定値を超えたらメンテナンスを実施するなどの応用ができる。これにより装置内の清掃などメンテナンスを行えば、加工しているウエハへの汚染や異物の付着などの不良原因を未然に防止する事が可能となる
【0041】
本発明によれば、壁面材料の表面状態を安定化することができるために、壁面の削れを防止することできる。したがって、壁面が削れたために生ずる部品交換頻度を少なくすることができるので、ランニングコストの低減になる。さらに、壁面削れに起因する異物の発生やプラズマの安定性の低下が防止できるので、素子作成の歩留まりを向上させることができる。
【0042】
以上の実施形態では処理室内壁面材料として表面にアルマイト層またはアルミセラミック膜を形成したアルミニウム母材を用い、壁面保護ガスとしてO2ガスまたはF系ガスを用いた例を説明したが、処理室内壁面材料としてはステンレス鋼を用いることが得きる。この場合には、鉄(Fe)とF系ガスは耐蝕性の強いフッ化鉄(FeF2)を作り、結合が強く蒸発しずらいフッ化不導体被膜をステンレス鋼の表面に形成するので、本発明の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を説明するためのプラズマ処理装置を示す全体構成図。
【図2】従来実施されていたウエハ処理フロー。
【図3】本発明の実施形態を説明するためのウエハ処理フロー。
【図4】本発明の実施形態を説明するための装置壁面材料の概略断面図。
【図5】本発明の実施形態を説明するための装置壁面材料の概略断面図。
【図6】本発明の実施形態を説明するための装置壁面材料の概略断面図。
【図7】本発明の効果を説明するための処理結果例。
【図8】本発明の効果を説明するための処理結果例。
【図9】本発明の効果を説明するための処理結果例。
【符号の説明】
101:エッチング処理室、102:プラズマに接する壁面材料、103:基板ステージ、104:基板、105:真空排気口 、106:UHF帯電磁波電源、107:整合器、108:アンテナ、 109:コイル、110:プラズマ、111:高周波電源、201:信号閾値、202:安定化ステップ開始点。
Claims (9)
- 処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を真空処理するプラズマ処理装置において、
プラズマ生成手段と、
処理室内壁を構成する材料を含む反応物の存在を検出するモニタ手段と、
前記処理室内壁を構成する材料を含む反応物の存在が所定量以上となったことを報知するアラーム手段を具備した
ことを特徴とするプラズマ処理装置。 - 請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記モニタ手段が、プラズマ処理室内に配置したプラズマ発光分光器、または質量分析器である
ことを特徴とするプラズマ処理装置。 - 請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記モニタ手段が、プラズマ生成手段に電力を加える経路に設置された電流検出器または電圧検出器もしくは電流電圧位相検出器、または電力の進行波検出器または反射波検出器、もしくは、インピーダンスモニタ手段である
ことを特徴とするプラズマ処理装置。 - 被処理物が設置された処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を真空処理するプラズマ処理装置であって、
エッチング処理のステップと、プラズマクリーニングのステップと、処理室内壁を保護する処理室内壁面安定化処理を施すステップとを有する
ことを特徴とするプラズマ処理装置。 - 被処理物が設置された処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を真空処理するプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化方法であって、
エッチング処理に続くクリーニング処理の後に、処理室内壁を保護する内壁保護ガスを導入してプラズマ処理する処理室内壁面安定化処理を施す
ことを特徴とするプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化処理方法。 - 請求項5に記載のプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化処理方法において、
処理室内壁面がアルミニウム母材の表面にアルマイト層またはアルミナセラミックの溶射層が設けられており、
内壁保護ガスが酸素(O2)ガスまたはフッ素系(F系)ガスである
ことを特徴とするプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化処理方法。 - 請求項5に記載のプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化処理方法において、
処理室内壁面がステンレス鋼であり、
内壁保護ガスがF系ガスである
ことを特徴とするプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化処理方法。 - 請求項6または請求項7に記載のプラズマ処理装置の処理室内壁安定化方法において、
連続エッチング処理工程の中で何枚処理毎にプラズマクリーニング処理を実施するか、またどの程度時間の壁面安定化処理を行うかを任意に選択、設定する
ことを特徴とするプラズマ処理装置の処理室内壁安定化方法。 - 請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置の処理室内壁安定化方法において、
処理室内のモニタ手段によって壁面の腐食を検出し、この検出信号を受けて安定化処理ステップを実行する
ことを特徴とするプラズマ処理装置の処理室内壁安定化方法。
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