JP2005053850A - Ast阻害剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ヒト気道トリプシン様酵素(以下、「気道特異的トリプシン様酵素」または「AST(Airway Specific Trypsin−like Protease)」という)阻害剤に関する。
近年、ヒトの慢性気道炎症患者の喀痰中からASTが精製され(特許文献1、非特許文献1)、そのアミノ酸配列およびcDNA配列が明らかになっている(特許文献2、特許文献3、特許文献4、非特許文献2)。
この酵素のもつ活性についてはin vitroでいくつか検討がなされている。ASTは、粘液繊毛運動に対する関与をはじめ、ヒト気管支上皮細胞株からのIL−8、GM−CSFなどのサイトカインの産生増強作用を有することから(非特許文献3)、気道炎症の病態への関与の可能性が考えられている。さらに、ASTは、フィブリノーゲンの分解活性(非特許文献4)、およびプラスミノーゲンアクティベーター(プロウロキナーゼ)活性化作用などの酵素活性を有していることから(非特許文献5)、気道粘膜面におけるフィブリン形成を介して抗炎症的に作用したり、慢性気道疾患(慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫、びまん性汎細気管支炎、気管支拡張症を含む)、気管支喘息、副鼻腔気管支症候群、肺線維症、気道過敏症、肺高血圧症)ではその病態に深く関与している可能性が想定され、さらに癌の増殖もしくは転移などにも関与している可能性が考えられている。
一方で、下記に示されている一般式(1)の化合物は公知の化合物であり、特許文献5に、活性化血液凝固第X因子阻害作用および血液凝固抑制作用を持ち、血栓または塞栓によって引き起こされる疾病の予防剤および/または治療剤としての用途に関して記載されている。しかしながら、この一般式(1)の化合物がASTを阻害することは今まで全く知られていない。
特開平7−067640号公報
特許第3205226号公報
米国特許第5804410号明細書
欧州特許第699763号明細書
国際公開第99/26918号パンフレット
安岡劭ら、「American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology」、(米国)、1997年、p300−308
山岡一良ら、「J.Biol.Chem.」,1998年、(米国)、19巻、273号、p11895−11901
寺尾紀子ら、「1998年度日本呼吸器学会予講集」、(日本)、1998年、p299
吉永純子ら、「Journal of Medical Investigation」、(日本)、1998年、45巻、p77−86
吉永純子ら、「1998年度病態と治療におけるプロテアーゼとインヒビター研究会予講集」、(日本)、1998年、p47
本発明の目的は、慢性気道疾患の予防剤及び/または治療剤としての臨床応用可能なAST阻害剤を提供することにある。
本発明者らは、上記のような課題のもとに、ASTを阻害する化合物を見いだすべく、鋭意研究を重ねた結果、次の一般式(1)の化合物に意外にもAST阻害剤活性があることを発見し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、一般式(1):
Lは、直接結合、またはC1〜4アルキレン基を表し、
R2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、C1〜8アルコキシ基、カルボキシル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、カルバモイル基(カルバモイル基を構成する窒素原子は、モノ−若しくはジ−C1〜8アルキル基で置換されていてもよく、またはアミノ酸の窒素原子でもよい。)、C1〜8アルキルカルボニル基、C1〜8アルキルスルフェニル基、C1〜8アルキルスルフィニル基、C1〜8アルキルスルホニル基、モノ−若くはジ−C1〜8アルキルアミノ基、モノ−若くはジ−C1〜8アルキルアミノスルホニル基、スルホ基、ホスホノ基、ビス(ヒドロキシカルボニル)メチル基、ビス(アルコキシカルボニル)メチル基、または5−テトラゾリル基を表し、
R3は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、C1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシ基、カルボキシル基、またはC1〜8アルコキシカルボニル基を表し、
Xは、式:
−O−,−S−,−SO−,−SO2−,−NH−CO−NH−,−N(R4)−,−CO−N(R5)−,−N(R5)−CO−,−N(R5)−SO2−,−SO2−N(R5)−,
(式中、R4は、水素原子、C1〜10アルキル基、C1〜10アルキルカルボニル基、C1〜10アルキルスルホニル基、C3〜8シクロアルキル基、またはアリール基を表し、
R5は、水素原子、C1〜10アルキル基、C3〜8シクロアルキル基、アリール基(上記、R4及びR5のアルキル基は、アリール基、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1〜8アルコキシ基、カルボキシル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、カルバモイル基、または5−テトラゾリル基によって置換されていてもよい。)を表す。)
を表し、
Yは、C4〜8シクロアルキル基(該C4〜8シクロアルキル基を構成するメチレン基は、カルボニル基により置き換えられていてもよく、或いは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、C1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシ基、カルバモイル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノアルキル基、モノ−若しくはジ−アルキルアミノ基、またはモノ−若しくはジ−アルキルアミノアルキル基によって置換されていてもよい)、下記式I−1、またはI−2:
R6は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、C1〜8アルキル基、またはC1〜8アルコキシ基を表し、
Wは、C−H、または、窒素原子(ただし、5員環のときは、Wは窒素原子ではない。)を表し、
Zは、水素原子、C1〜10アルキル基(そのアルキル基は、水酸基(ただし、ZがC1アルキル基の場合を除く。)、アミノ基、C1〜8アルコキシ基(ただし、ZがC1アルキル基の場合を除く。)、カルボキシル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基で置換されていてもよい。)、C1〜8アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アミジノ基、または、下記式I−3
である5〜8員環基を表し、
mは、1〜3の整数を表し、
nは、0〜3の整数(ただし、nが0〜1のときWは窒素原子ではない。)を表す。]
で表されるビフェニルアミジン誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物(以下「ビフェニルアミジン誘導体等」ということがある。)を含有するAST阻害剤である。
さらに本発明は、上記ビフェニルアミジン誘導体等またはそのプロドラッグを投与し、ASTを阻害することによる慢性気道疾患又は癌の予防剤及び/または治療剤である。
本発明により、慢性気道疾患の予防剤及び/または治療剤として臨床応用可能なAST阻害剤が提供される。
上記式(1)において、「C1〜8アルキル基」としては、炭素数1ないし8個を有する直鎖、または分枝状の炭素鎖を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、イソヘプチル基、オクチル基、またはイソオクチル基等を表わし、中でも炭素数1ないし4個のものが好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
「C1〜8アルコキシ基」とは、炭素数1ないし8個を有するアルコキシ基を意味し、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基等であり、中でも炭素数1ないし4個のものが好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
「C1〜4アルキレン」とは、炭素数1ないし4個を有する直鎖状のアルキレンを意味し、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンである。
「C1〜8アルコキシカルボニル基」とは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基等を意味し、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基であり、さらに好ましくはメトキシカルボニル基である。
「アリールオキシカルボニル基」とは、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、4−メチルフェノキシカルボニル基、3−クロロフェノキシカルボニル基、または4−メトキシフェノキシカルボニル基等を意味し、好ましくはフェノキシカルボニル基である。
「アラルコキシカルボニル基」とは、ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3−トリフルオロメチルベンジルオキシカルボニル基等を意味し、好ましくはベンジルオキシカルボニル基である。
「アミノ酸」とは、天然、及び、非天然の市販のアミノ酸を意味し、好ましくはグリシン、アラニン、β−アラニンであり、さらに好ましくはグリシンである。
「C1〜8アルキルカルボニル基」としては、炭素数1ないし8個を有する直鎖または分枝状の炭素鎖を持つカルボニル基を表わし、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基等を意味し、好ましくは炭素数1ないし4個のものであり、さらに好ましくはアセチル基、プロピオニル基である。
「C1〜8アルキルスルフェニル基」とは、炭素数1ないし8個を有するアルキルスルフェニル基を意味し、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等を表し、好ましくはメチルチオ基である。
「C1〜8アルキルスルフィニル基」とは、炭素数1ないし8個を有するアルキルスルフィニル基を意味し、具体的には、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、ヘキシルスルフィニル基、オクチルスルフィニル基等を表し、好ましくはメチルスルフィニル基である。
「C1〜8アルキルスルホニル基」とは、炭素数1ないし8個を有するアルキルスルホニル基を意味し、具体的にはメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、オクチルスルホニル基等であり、好ましくはメチルスルホニル基である。
「モノ−若しくはジ−C1〜8アルキルアミノ基」とは、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジエチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基等を意味し、好ましくはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基であり、さらに好ましくはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基である。
「モノ−若しくはジ−C1〜8アルキルアミノスルホニル基」とは、具体的にはメチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、エチルアミノスルホニル基、プロピルアミノスルホニル基、ジエチルアミノスルホニル基、イソプロピルアミノスルホニル基、ジイソプロピルアミノスルホニル基、ジブチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、イソブチルアミノスルホニル基、sec−ブチルアミノスルホニル基、tert−ブチルアミノスルホニル基、ペンチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、ヘプチルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基等を意味し、好ましくはメチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、エチルアミノスルホニル基、ジエチルアミノスルホニル基、プロピルアミノスルホニル基であり、さらに好ましくはメチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基である。
「ビス(アルコキシカルボニル)メチル基」とは、具体的にはビス(メトキシカルボニル)メチル基、ビス(エトキシカルボニル)メチル基等を表し、好ましくはビス(メトキシカルボニル)メチル基である。
「C1〜10アルキル基」としては、炭素数1ないし10個を有する直鎖、または分枝状の炭素鎖を意味し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、又は1−メチルノニル基等を表わし、中でも炭素数1ないし4個のものが好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
「C1〜10アルキルカルボニル基」としては、炭素数1ないし10個を有する直鎖又は分枝状の炭素鎖を持つカルボニル基を表わし、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニオル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基等を意味し、好ましくは炭素数1ないし4個のものであり、さらに好ましくは、アセチル基、プロピオニル基である。
「C1〜10アルキルスルホニル基」とは、炭素数1ないし10個を有するアルキルスルホニル基を意味し、具体的にはメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、ネオペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基、ノニルスルホニル基、デシルスルホニル基等を表し、中でも、炭素数1ないし4個のものが好ましく、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が特に好ましい。
「C3〜8シクロアルキル基」とは、炭素数3ないし8個を有するシクロアルキル基を意味し、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基であり、好ましくはシクロプロピル基である。
「アリール基」としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基等の炭化水素環アリール基、ピリジル基、フリル基等のヘテロアリールを意味し、好ましくはフェニル基である。
「C4〜8シクロアルキル基」とは、炭素数4ないし8個を有するシクロアルキル基を意味し、具体的には、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基であり、好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
「アミノアルキル基」とは、アミノ基を有する炭素数1ないし8個の直鎖状アルキル基を意味し、具体的には、8−アミノオクチル基、6−アミノヘキシル基、4−アミノブチル基、2−アミノエチル基、アミノメチル基であり、好ましくは2−アミノエチル基、アミノメチル基である。
「モノ−若しくはジ−アルキルアミノ基」とは、具体的にはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジエチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、 sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基等であり、好ましくはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基であり、さらに好ましくはエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、イソプロピルアミノ基である。
「モノ−若しくはジ−アルキルアミノアルキル基」とは、具体的にはメチルアミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、エチルアミノエチル基、メチルアミノプロピル基、ジメチルアミノプロピル基、エチルアミノプロピル基、ジエチルアミノプロピル基、メチルアミノブチル基、ジメチルアミノブチル基等を意味し、好ましくは、メチルアミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、エチルアミノエチル基である。
Zとして窒素原子に結合する「C1〜10アルキル基」としては、炭素数1ないし10個を有する直鎖または分枝状の炭素鎖を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、又は、1−メチルノニル基等を表わし、中でも炭素数1ないし4個のものが好ましく、イソプロピル基、プロピル基が特に好ましい。
「アリールカルボニル基」としては、ベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基等を意味し、好ましくはベンゾイル基である。
「アラルキルカルボニル基」とは、具体的には、ベンジルカルボニル基、フェネチルカルボニル基、フェニルプロピルカルボニル基、1−ナフチルメチルカルボニル基、2−ナフチルメチルカルボニル基等が挙げられ、好ましくはベンジルカルボニル基である。
「アラルキル基」とは、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基等が挙げられ、好ましくはベンジル基である。
また、本発明の式(2)の化合物の置換基に対する上記の定義において、
「C1〜4アルコキシカルボニル基」とは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、 sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基を意味し、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基であり、さらに好ましくはメトキシカルボニル基である。
「C1〜4アルコキシカルボニル基」とは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、 sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基を意味し、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基であり、さらに好ましくはメトキシカルボニル基である。
「C1〜4アルキル基」としては、炭素数1ないし4個を有する直鎖、または分枝状の炭素鎖を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基であり、メチル基、エチル基が好ましい。
「C1〜4アルキルカルボニル基」としては、炭素数1ないし4個を有する直鎖または分枝状の炭素鎖を持つカルボニル基を表わし、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等を意味し、好ましくはアセチル基、プロピオニル基である。
「C5〜6シクロアルキル基」とは、炭素数5ないし6個を有するシクロアルキル基を意味し、シクロペンチル基、シクロヘキシル基であり、好ましくはシクロヘキシル基である。
「C1〜4アルコキシ基」とは、炭素数1ないし4個を有するアルコキシ基を意味し、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基であり、中でもメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
本発明化合物(1)は、酸付加塩を形成する場合がある。また、置換基の種類によっては、塩基との塩を形成する場合もある。このような塩は、医薬的に許容できる塩であれば特に限定されないが、具体的には塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩類;メタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等の有機スルホン酸塩;並びに酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩等の有機カルボン酸塩類が酸付加塩として含まれ、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の無機塩基との塩や、メチルアミン塩、エチルアミン塩、リジン塩、オルニチン塩等の有機塩基との塩が、塩基との塩として挙げられる。
また、本発明の化合物は、適当な有機溶媒および/または水と配位して溶媒和物を形成してもよく、例えば水和物等が挙げられる。
式(1)で表される化合物として好ましい化合物を表1に示す。
このうち好ましくは、表1に示した化合物のうち化合物番号14、78、87、98、103、116、117、119、120、152、170、251、252、259、260、265、266、278、279、280、296、313、314、332、333、350、386、404、421であり、特に好ましくは、14、78、87、116、252、259、260、266、278、279、280であり、その適用によるAST阻害剤である。
一般式(1)で示される本発明のAST阻害剤に係わる化合物の製造は、前述の国際公開特許WO9926918号公報記載の方法により実施することができる。本発明においては、原料化合物または反応中間体が、反応に影響しうる水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの置換基を有する場合、かかる官能基を適宜保護してエーテル化の反応を行い、しかる後に該保護基を脱離せしめることが望ましい。保護基としては、それぞれの置換基に対して通常用いられる保護基であって、保護、脱保護の工程で他の部分に悪影響を及ぼさない置換基であればとくに制限はなく、たとえば水酸基の保護基としては、トリアルキルシリル基、C1〜4アルコキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、アシル基、C1〜4アルコキシカルボニル基などが挙げられ、アミノ基の保護基としては、C1〜4アルコキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アシル基などが挙げられ、カルボキシル基の保護基としては、C1〜4アルキル基などが挙げられる。脱保護反応はそれぞれの保護基に対して通常行われる方法に従って行うことができる。
一般式(1)で表される本発明化合物化合物は、例えば下記式で示される方法により製造される。
すなわち、式(1−a)で表される化合物に対してE−(CH2)n−Y1で表される化合物を作用させ適当な縮合反応によりニトリル体(1−b)を得ることができる。
このうち、Xとして酸素原子を持つニトリル体(1−b)は、例えば一般的な塩基性条件下におけるエーテル化反応により得ることができる。すなわち、式(1−a)で表されるビフェニルアルキルブロミド体(ここではX1はハロゲン原子を表す。)に対し、塩基存在下、E−(CH2)n−Y1(ここではEはOHを表す。)で表されるアルコール類を混合することにより本発明化合物の前駆体であるニトリル体を製造する。反応はテトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの脂肪族エーテル類、ベンゼン、トルエンなどの非プロトン性炭化水素類、DMF、HMPAなどの非プロトン性極性溶媒、またはそれらの混合溶媒などを用いて行われ、塩基としては、酸化バリウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物、水素化ナトリウムなどの金属水素化物などが用いられる。反応は通常、0〜100℃で3〜72時間攪拌して進行する。好ましくはTHFやエーテルなどの無水脂肪族エーテル類中、水素化ナトリウムを用いて、20〜80℃にて8〜36時間行われる。
Xとして窒素原子を持つニトリル体(1−b)は、例えば一般的な塩基性条件下におけるアミノ基のアルキル化反応の条件を用いて得ることができる。すなわち、式(1−a)で表されるビフェニルアルキルブロミド体(ここではX1はハロゲン原子を表す。)に対し、塩基として作用する炭酸カリウムなどの無機塩や3級アミン類などのアミン類存在下、E−(CH2)n−Y1(ここではEはNH2を表す。)で表されるアミン類を混合することにより本発明化合物の前駆体であるニトリル体を製造する。得られた2級アミン体に対して同様の反応条件下、R4−E(ここではEはハロゲン原子を表す。)で表されるアルキル化剤を反応させることによって、本発明化合物である3級アミン体を製造することができる。反応は通常、適当な溶媒中、アルキル化剤とアミンを任意の比で混合し、冷却ないし室温ないし加熱下、1〜96時間攪拌して行われる。反応は通常、塩基としては炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩やトリエチルアミン、ピリジンなどの有機3級アミン類を用い、溶媒としてはメタノール、エタノールなどのアルコール類、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、あるいはTHF、ジオキサン、アセトニトリル、DMF、DMSOなどの反応に影響しない溶媒類、もしくはそれらの混合溶媒が用いられ、アルキル化剤とアミン体の比を1:10〜10:1にして行われる。好ましくはアルキル化剤とアミン体の比を1:5〜1:1にして、室温ないし加熱下、2〜24時間行われる。
以上のようにして得られたニトリル体(1−b)に対して、通常、周知のアミジノ化の反応条件、すなわち、酸性条件下でR8−OHで表されるアルコール類を作用させ、引き続きアンモニアを作用させることによりビフェニルアミジン誘導体(1)を得ることができる。例えば、ニトリル体(1−b)とアルコール類からイミダート体(1−c)を得る反応は、ニトリル体を塩化水素、臭化水素などのハロゲン化水素を含有するC1〜4のアルコール類(R8−OH)に溶解して撹拌することにより進行する。反応は通常、−20〜30℃にて12〜96時間行われる。好ましくは塩化水素のメタノールもしくはエタノール溶液中、−10〜30℃で24〜72時間行われる。得られたイミダート体(1−c)とアンモニアの反応は、イミダート体をアンモニアまたはヒドロキシルアミン、ヒドラジン、カルバミン酸エステルなどのアミン類を含むメタノール、エタノールなどのC1〜4のアルコール類、またはジエチルエーテルなどの脂肪族エーテル類、またはジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、もしくはそれらの混合溶媒中で撹拌することにより進行し、ビフェニルアミジン誘導体(1)が生成する。反応は通常、−10〜+50℃の温度で1〜48時間行われる。好ましくはメタノールまたはエタノール中、0〜30℃にて2〜12時間行われる。
式(1)で表される本発明化合物化合物のうち、置換基Yが式(5)で表される構造の置換基Zを有するビフェニルアミジン誘導体は、更に上記で得られたビフェニルアミジン誘導体(1)について周知のイミドイル化反応によって得ることができる。例えば、イミドイル化反応は、YがY1であるビフェニルアミジン誘導体(1)と当量もしくは過剰のイミダート類(R7−C(=NH)OR9)を、水、あるいはメタノール、エタノールなどのC1〜4のアルコール類、あるいはジエチルエーテルなどの脂肪族エーテル類、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒、もしくはこれらの混合溶媒中、塩基存在下で混合、撹拌することにより進行する。反応は通常、室温にて1〜24時間行う。用いる塩基としては、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
なお、式(1)で示される化合物はその他公知のエーテル化、アミジノ化、加水分解、アルキルイミドイル化、アミド化、エステル化など、当業者が通常採用しうる工程を任意に組み合わせることにより製造することができる。
以上のようにして製造されるビフェニルアミジン誘導体(1)は周知の方法、たとえば、抽出、沈殿、分画クロマトグラフィー、分別結晶化、再結晶等により、単離、精製することができる。また、本発明化合物の薬学的に許容される塩は、通常の造塩反応を施すことにより製造できる。
一般式(1)で表されるビフェニルアミジン誘導体等を含有する、AST阻害剤の活性は以下のような方法で測定することができる。すなわち、組換えASTを2ng/mL、Tween20を0.01%含有する50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.6)0.05mLに対し、被検化合物含有DMSO溶液を2μL、および合成基質Boc−Phe−Ser−Arg−MCA(MCA:メチルクマリンアミド)を30μM含有する50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.6)0.05mLを加え、24℃で6分間インキュベートする。経時的に生成したAMC量を蛍光測定により測定し(蛍光460nm、励起光380nm)、化合物の酵素活性阻害能を測定する。この手法により、被検化合物濃度を変えて、IC50(50%の阻害活性を示すモル濃度)を阻害活性値として求めることができる。
一般式(I)で表されるビフェニルアミジン誘導体等のIC50値は、0.1〜100μMであり、好ましくは1〜10μMである。
このことから一般式(1)で表されるビフェニルアミジン誘導体等は、AST阻害活性を有するAST阻害剤として用いることができるものであり、更に、慢性気道疾患もしくは癌の予防剤及び/または治療剤として臨床応用可能である。
投与方法としては、経口投与、非経口投与等がある。投与量は、患者の症状、年齢、体重、疾患の症状の程度により適宜、増減することができる。例えば、経口投与の場合、成人一人当たり1〜3000mg/日、好ましくは10〜500mg/日が適当である。投与剤形としては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等を挙げることができる。これらは通常の賦形剤、滑沢剤、結合剤等の添加剤と共に、公知の製剤技術により製造することができる。また、非経口投与の場合は、成人一人当たり、0.01〜300mg/日、好ましくは0.1mg〜50mg/日を気道内投与、皮下投与、静脈内投与、点滴静脈内投与、座薬等による直腸内投与等により適用することができる。
AST阻害剤の効果としては、PCT国際出願JP01/07349に開示されているように、ASTが関係している病態に絡む疾患の予防剤及び/または治療剤としての利用が期待される。すなわち、ASTのもつ分泌細胞に対する分泌促進あるいは粘液産生亢進作用、凝固・線溶系における作用、気道リモデリングへの作用、気道炎症への作用、線維芽細胞・上皮細胞・せん毛細胞・平滑筋細胞・杯細胞の増殖および障害に対する作用、癌の増殖や転移に関する作用、粘液繊毛運動に対する作用、抗ウイルス感染作用等の生理作用を抑制もしくは修飾し、病態における改善および治療に用いることが期待できる。
さらにAST阻害剤は、ASTがPAR(プロテアーゼ活性化受容体)を活性化することから、PARのもつ分泌細胞に対する分泌促進作用(粘液腺細胞、漿液腺細胞、杯細胞の粘液産生亢進作用、神経細胞・神経内分泌細胞への分泌亢進作用、気道上皮細胞におけるクロライドイオン分泌促進作用など)、上皮細胞あるいは内皮細胞を介した血管、気道、腸管などの弛緩作用や、平滑筋に対する収縮作用、線維芽細胞や上皮細胞などの炎症性サイトカイン産生誘導および増強作用、線維芽細胞・上皮細胞(繊毛細胞、杯細胞、基底細胞)・平滑筋細胞・分泌腺細胞などの細胞増殖および障害に対する作用、神経細胞に対する過敏性の増強作用等の生理作用を抑制もしくは修飾し、病態における改善および治療に用いることが期待できる。
また、AST阻害剤は、ASTがEGFR経路を活性化することから、EGFR活性化による作用として、分泌細胞(粘液腺細胞、漿液腺細胞、杯細胞、扁平上皮細胞、癌細胞など)に対する分泌物産生亢進作用やサイトカイン産生亢進作用、線維芽細胞や内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞などEGFR経路を有する様々な細胞に対する炎症性サイトカイン産生誘導および増強作用、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、せん毛細胞、杯細胞、基底細胞、扁平上皮細胞、癌細胞、平滑筋細胞、分泌腺細胞などEGFR経路を有する様々な細胞に対する細胞増殖作用等の生理作用を抑制もしくは修飾し、病態における改善および治療に用いることが期待できる。
ところで、慢性気道疾患において、持続的な炎症とともに問題とされている病態として粘液分泌の過剰亢進による病態の悪化が挙げられる(Jeffery,P.K.et al.,Am.J.Respir.Crit.Dare.Med.,150:S6−13,1994 )。上記疾患に属するDPB(びまん性汎細気管支炎)に対するエリスロマイシンのようなマクロライド系の薬剤の効果が日本において知られているが(Nagai,H.et al.,Respiration,58(3−4):145−149)、抗生物質であるため、欧米などでは好んで使用されているわけではない。
さらに粘液の過剰産生亢進や分泌細胞の増生に関して、主たる原因となるターゲット分子に関しては種々の説があるものの(Christian,P.et al.,J.Clin.Invest.,85:682−689,1990 )、それらに基づいて創製された薬剤の中に有効な治療剤はいまだ存在していない。よって、COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)に代表される慢性気道疾患において、粘液の過剰な分泌産生亢進を抑制する有効な薬剤が世界的に望まれている。
一方、ASTを阻害する化合物がASTによって惹起される粘液糖蛋白質の産生亢進を抑制できること、またASTによって惹起されるMuc5ACの遺伝子発現亢進を抑制できること、さらにASTによって惹起される細胞膜表面上のproEGFおよびproHB−EGFの切断が抑制されること等がPCT国際出願JP01/07349で明らかとなっており、AST阻害剤が粘液の過剰な分泌産生亢進を抑制する可能性を示している。
従って、AST阻害剤は、ASTの直接的、間接的な作用から、慢性気道疾患および癌の新しい予防剤及び/または治療剤となり得るものである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
[参考例]
ASTの調製
特許第3205226号公報、US5804410号明細書、EP699763号明細書およびYamaoka K.et al.,J.Biol.Chem.,273(19):11895−11901,1998に開示されているcDNA配列に基づいて組換えバキュロウイルスベクターを調製し、昆虫細胞に感染させることにより組換えASTを産生させ、その細胞画分より組換えASTを精製した。すなわち、昆虫細胞(Tn−5細胞)を単層で5×106 個/mLの密度まで生育させ、培地を除去した後、細胞あたりMOI(Multiplicity of Infection)=0.2−0.5になるように組換えAST発現バキュロウイルスを含む無血清培地を加えて感染させ、3日間培養し、ASTを発現させた。発現した蛋白質の確認は、SDS−PAGEおよび抗ASTペプチド抗体を用いたウエスタンブロット法(Anal.Biochem.,112,195−203,1981)によって行った。
ASTの調製
特許第3205226号公報、US5804410号明細書、EP699763号明細書およびYamaoka K.et al.,J.Biol.Chem.,273(19):11895−11901,1998に開示されているcDNA配列に基づいて組換えバキュロウイルスベクターを調製し、昆虫細胞に感染させることにより組換えASTを産生させ、その細胞画分より組換えASTを精製した。すなわち、昆虫細胞(Tn−5細胞)を単層で5×106 個/mLの密度まで生育させ、培地を除去した後、細胞あたりMOI(Multiplicity of Infection)=0.2−0.5になるように組換えAST発現バキュロウイルスを含む無血清培地を加えて感染させ、3日間培養し、ASTを発現させた。発現した蛋白質の確認は、SDS−PAGEおよび抗ASTペプチド抗体を用いたウエスタンブロット法(Anal.Biochem.,112,195−203,1981)によって行った。
遠心分離(約500×g)で上清と細胞を分離した。450mLに相当する細胞をM−PER(Mammalian Protein Extraction Reagent、PIERCE社製)100mLに懸濁し、室温で30分インキュベートした。さらに超音波破砕を15分間氷上で行い、可溶化した。得られた可溶化物を10000rpm、4℃で30分間遠心し、上清を回収した。回収した上清を1リットルの50mM 酢酸ナトリウム(pH4)/0.01% PEG6000にて室温で2時間撹拌しながら透析したのち、4℃、10000rpmで30分間遠心して上清を回収した。
次にこの試料にBSAを添加し(終濃度100μg/mL)、2リットルの50mM Tris−HCl(pH8)/0.5M NaCl/0.01% PEG6000にて2回透析した後、4℃で10000rpm、30分間遠心して上清を回収した。回収した上清をベンザミジンセファロース6B(10mLベッドボリューム)にのせ、100mLの50mM Tris−HCl(pH8)/0.5M NaCl/0.01% PEG6000にてカラムを洗浄した。さらに80mLの10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)にてカラムを洗浄したのち、10mM HCl(pH2)にて結合蛋白を溶出した。溶出後、各フラクションについて吸光度(280nm)を測定し、メインピークを集めた。そしてSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行って分子量約30kDの蛋白質を検出、確認し、これを精製組換えAST標品として凍結保存した。
[実施例]
AST阻害活性評価
上記参考例で取得した、組換えASTを2ng/mL、Tween20を0.01%含有する50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.6)0.05mLに対し、ビフェニルアミジン誘導体含有DMSO溶液を2μL、および合成基質Boc−Phe−Ser−Arg−MCA(MCA:メチルクマリンアミド)を30μM含有する50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.6)0.05mLを加え、24℃で6分間インキュベートした。経時的に生成したAMC量を蛍光測定により測定し(蛍光460nm、励起光380nm)、化合物の酵素活性阻害能を評価した。
AST阻害活性評価
上記参考例で取得した、組換えASTを2ng/mL、Tween20を0.01%含有する50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.6)0.05mLに対し、ビフェニルアミジン誘導体含有DMSO溶液を2μL、および合成基質Boc−Phe−Ser−Arg−MCA(MCA:メチルクマリンアミド)を30μM含有する50mM Tris−HCl緩衝液(pH8.6)0.05mLを加え、24℃で6分間インキュベートした。経時的に生成したAMC量を蛍光測定により測定し(蛍光460nm、励起光380nm)、化合物の酵素活性阻害能を評価した。
この評価法において、下記の化合物はIC50(50%の阻害活性を示すモル濃度)が10μM以下であった。
化合物番号 14、78、87、116、252、259、260、266、278、279、280
化合物番号 14、78、87、116、252、259、260、266、278、279、280
Claims (8)
- 下記式(1)
Lは、直接結合またはC1〜4アルキレン基を表し、
R2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、C1〜8アルコキシ基、カルボキシル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、カルバモイル基(カルバモイル基を構成する窒素原子は、モノ−若しくはジ−C1〜8アルキル基で置換されていてもよく、またはアミノ酸の窒素原子でもよい。)、C1〜8アルキルカルボニル基、C1〜8アルキルスルフェニル基、C1〜8アルキルスルフィニル基、C1〜8アルキルスルホニル基、モノ−若しくはジ−C1〜8アルキルアミノ基、モノ−若しくはジ−C1〜8アルキルアミノスルホニル基、スルホ基、ホスホノ基、ビス(ヒドロキシカルボニル)メチル基、ビス(アルコキシカルボニル)メチル基、または5−テトラゾリル基を表し、
R3は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、C1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシ基、カルボキシル基、またはC1〜8アルコキシカルボニル基を表し、
Xは、式:
−O−,−S−,−SO−,−SO2−,−NH−CO−NH−,−N(R4)−,−CO−N(R5)−,−N(R5)−CO−,−N(R5)−SO2−,または−SO2−N(R5)−
(式中、R4は、水素原子、C1〜10アルキル基、C1〜10アルキルカルボニル基、C1〜10アルキルスルホニル基、C3〜8シクロアルキル基、またはアリール基を表し、
R5は、水素原子、C1〜10アルキル基、C3〜8シクロアルキル基、アリール基(該R4及びR5のアルキル基は、アリール基、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1〜8アルコキシ基、カルボキシル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、カルバモイル基、または5−テトラゾリル基によって置換されていてもよい。)を表す。)
を表し、
Yは、C4〜8シクロアルキル基(該C4〜8シクロアルキル基を構成するメチレン基は、カルボニル基により置き換えられていてもよく、或いは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、C1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシ基、カルバモイル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノアルキル基、モノ−若しくはジ−アルキルアミノ基、またはモノ−若しくはジ−アルキルアミノアルキル基によって置換されていてもよい。)、下記式I−1、または、I−2:
R6は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、C1〜8アルキル基、またはC1〜8アルコキシ基を表し、
Wは、C−Hまたは窒素原子(ただし、5員環のときは、Wは窒素原子ではない。)を表し、
Zは、水素原子、C1〜10アルキル基(該アルキル基は、水酸基(ただし、ZがC1のアルキル基の場合を除く。)、アミノ基、C1〜8アルコキシ基(ただし、ZがC1のアルキル基の場合を除く。)、カルボキシル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、またはアラルコキシカルボニル基で置換されていてもよい。)、C1〜8アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アミジノ基、または、下記式I−3
である5〜8員環基を表し、
mは、1〜3の整数を表し、
nは、0〜3の整数(ただし、nが0〜1のときWは窒素原子ではない。)を表す。]
で表されるビフェニルアミジン誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含有するAST阻害剤。 - 前記式(1)において、R1は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、水酸基、アミノ基、C1〜4アルキル基、または、C1〜4アルコキシ基を表し、
Lは、直接結合、またはC1〜4アルキレン基を表し、
R2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、C1〜8アルコキシ基、カルボキシル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、カルバモイル基(カルバモイル基を構成する窒素原子は、モノ−若しくはジ−C1〜8アルキル基で置換されていてもよく、またはアミノ酸の窒素原子でもよい。)、C1〜8アルキルカルボニル基、C1〜8アルキルスルフェニル基、C1〜8アルキルスルフィニル基、C1〜8アルキルスルホニル基、モノ−若くはジ−C1〜8アルキルアミノ基、モノ−若くはジ−C1〜8アルキルアミノスルホニル基、スルホ基、ホスホノ基、ビス(ヒドロキシカルボニル)メチル基、ビス(アルコキシカルボニル)メチル基、または5−テトラゾリル基を表し、
R3は、水素原子を表し、
Xは、式:
−O−,−S−,−N(R4)−,−CO−N(R5)−,−N(R5)−CO−,−N(R5)−SO2−,または−SO2−N(R5)−
(式中、
R4は、水素原子、C1〜10アルキル基、C1〜10アルキルカルボニル基、またはC1〜10アルキルスルホニル基を表し、
R5は、水素原子、またはC1〜10アルキル基(該R4及びR5のアルキル基は、アリール基、水酸基、アミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、C1〜8アルコキシ基、カルボキシル基、 C1〜8アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、カルバモイル基、または5−テトラゾリル基によって置換されていてもよい)を表す。)
を表し、
Yは、C4〜8シクロアルキル基(該C4〜8シクロアルキル基を構成するメチレン基は、カルボニル基により置き換えられていてもよく、或いは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、C1〜8アルキル基、C1〜8アルコキシ基、カルバモイル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノアルキル基、モノ−若しくはジ−アルキルアミノ基、またモノ−若しくはジ−アルキルアミノアルキル基によって置換されていてもよい。)、
下記式II−1
R6は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基、アミノ基、C1〜4アルキル基、またはC1〜4アルコキシ基を表し、
Wは、C−H、または、窒素原子(ただし、5員環のときは、Wは窒素原子ではない。)を表し、
Zは、水素原子、C1〜10アルキル基(該アルキル基は、水酸基(ただし、ZがC1アルキル基の場合を除く。)、アミノ基、C1〜8アルコキシ基(ただし、ZがC1アルキル基の場合を除く。)、カルボキシル基、C1〜8アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基で置換されていてもよい。)、C1〜8アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アミジノ基、または、下記式II−2
mは、1〜3の整数を表し、
nは、0〜3の整数(ただし、nが0〜1のときWは窒素原子ではない。)を表す。
である請求項1記載のビフェニルアミジン誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含有するAST阻害剤。 - 下記式(2)
Lは、結合、または、C1〜4アルキレンを表し、
R2は、水素原子、カルボキシル基、C1〜4アルコキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、カルバモイル基(カルバモイル基を構成する窒素原子は、モノ−若しくはジ−C1〜4アルキル基で置換されていてもよく、またはアミノ酸の窒素原子でもよい。)、またはC1〜4アルキルカルボニル基を表し、
Xは、−O−,−N(R4)−,または−NH−CO−,
(ここで、R4は、水素原子、C1〜10アルキル基、C1〜10アルキルカルボニル基、またはC1〜10アルキルスルホニル基(該アルキル基は、水酸基、アミノ基、フッ素原子、カルボキシル基、またはC1〜8アルコキシカルボニル基によって置換されていてもよい。)である。)
を表し、
Yは、C5〜6シクロアルキル基(C5〜6シクロアルキル基を構成するメチレン基は、カルバモイル基、C1〜4アルコキシ基、または、カルボキシル基によって置換されていてもよい。)、または、下記式III−1
Zは、水素原子、C1〜4アルキル基(該アルキル基は、水酸基(ただし、ZがC1アルキル基の場合を除く。)、アミノ基、カルボキシル基、またはC1〜4アルコキシカルボニル基で置換されていてもよい)、C1〜4アルキルカルボニル基、アミジノ基、または下記式III−2
nは、0〜2の整数(ただし、nが0〜1のときWは窒素原子ではない。)を表す。]
で表される請求項1または2に記載のビフェニルアミジン誘導体、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を含有するAST阻害剤。 - 前記式(2)において、Xは、−O−または−N(R4)−(ここで、R4は、水素原子、C1〜10アルキル基、C1〜10アルキルカルボニル基、またはC1〜10アルキルスルホニル基(該アルキル基は、水酸基、アミノ基、フッ素原子、カルボキシル基、またはC1〜8アルコキシカルボニル基によって置換されていてもよい。)である基を表す。)である請求項3記載のビフェニルアミジン誘導体、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を含有するAST阻害剤。
- 生体内で、請求項1〜5のいずれか一項に記載のビフェニルアミジン誘導体、その薬学的に許容される塩、またはその溶媒和物を生成するプロドラッグ体を含有するAST阻害剤。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のAST阻害剤を含有する慢性気道疾患の予防剤及び/または治療剤。
- 請求項1〜6のいずれか一項にに記載のAST阻害剤を含有する癌の予防剤及び/または治療剤。
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JP (1) | JP2005053850A (ja) |
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2003
- 2003-08-06 JP JP2003287472A patent/JP2005053850A/ja active Pending
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