JP2005049508A - マイクロレンズの製造方法およびマイクロレンズ、光学装置、光伝送装置、レーザプリンタ用ヘッド、レーザプリンタ - Google Patents
マイクロレンズの製造方法およびマイクロレンズ、光学装置、光伝送装置、レーザプリンタ用ヘッド、レーザプリンタ Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】基体3上に、液滴吐出ヘッド34からレンズ材料7である複数個の液滴を吐出してマイクロレンズ8aを形成するマイクロレンズの製造方法であって、基体3上に吐出されたレンズ材料7の量に応じて液滴吐出ヘッド34から吐出する液滴の体積を制御することを特徴とする。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロレンズの製造方法およびマイクロレンズ、光学装置、光伝送装置、レーザプリンタ用ヘッド、レーザプリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、マイクロレンズと呼ばれる微小レンズを多数有した光学装置が提供されている。このような光学装置としては、例えばレーザを備えた発光装置や、光ファイバの光インタコネクション、さらには入射光を集めるための集光レンズを有した固体撮像素子などがある。
【0003】
ところで、このような光学装置を構成するマイクロレンズは、従来では金型を用いた成形法や、フォトリソグラフィー法によって成形されていた。
また、近年ではプリンタなどに用いられている液滴吐出法を用い、微細パターンであるマイクロレンズを形成するといった提案もなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−142608号公報 (第2−3頁、第1図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、液滴吐出法を用いた従来のマイクロレンズの製造方法においては、同じ量の複数個の液滴を吐出して1つのマイクロレンズを形成していた。ところが、形成するマイクロレンズが大きくなると、液滴が着弾する衝撃でマイクロレンズの形状が崩れてしまうという問題があった。
【0006】
また、吐出する液滴の量を小さくすると、液滴が着弾する衝撃を小さくすることができ、より大きなマイクロレンズを形成できた。しかしながら、液滴の量を小さくするとマイクロレンズを形成するのに必要な吐出回数が増加し、マイクロレンズを形成するのにかかる時間が増加してしまい、効率が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、大きな所望形状のマイクロレンズを効率良く製造することができるマイクロレンズの製造方法およびマイクロレンズ、光学装置、光伝送装置、レーザプリンタ用ヘッド、レーザプリンタを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のマイクロレンズの製造方法は、基体上に、液滴吐出ヘッドからレンズ材料である複数個の液滴を吐出してマイクロレンズを形成するマイクロレンズの製造方法であって、基体上に吐出されたレンズ材料の量に応じて液滴吐出ヘッドから吐出する液滴の体積を制御することを特徴とする。
【0009】
すなわち、本発明のマイクロレンズの製造方法は、基体上に吐出されたレンズ材料の量に応じて、吐出される液滴の体積が制御されている。そのため、液滴が上記レンズ材料に着弾する時の衝撃を制御することができる。これにより、上記レンズ材料の形状が崩れるのを防ぎつつ従来と比較してより多くのレンズ材料を基体上に載せることができる。つまり、大きな所望形状のマイクロレンズを製造することができる。
また、液滴吐出ヘッドから吐出されるレンズ材料の体積を、上記レンズ材料の形状が崩れない程度に大きくすることができる。そのため、マイクロレンズが完成するまでに液滴を吐出する回数を減らすことができ、マイクロレンズを製造するのに要する時間を短縮することができる。
【0010】
上記の構成を実現するために、液滴吐出ヘッドから吐出する液滴の体積を、基体上に吐出されたレンズ材料の量の増加に応じて減少させるように制御することが望ましい。
この構成によれば、基体上に吐出されたレンズ材料の量が増えると、吐出される液滴の体積が減少する。すると、液滴が上記レンズ材料に着弾する時の衝撃が小さくなり、上記レンズ材料の形状が崩れ難くなり液滴の体積が変化しない従来と比較してより多くのレンズ材料を基体上に載せることができる。
また、逆にマイクロレンズの形成初期(基体上に吐出されたレンズ材料の量が少ない)において、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴の体積は、同じサイズのマイクロレンズを従来の方法で形成した時の液滴の体積よりも大きくすることができる。そのため、マイクロレンズが完成するまでに液滴を吐出する回数を減らすことができる。
なお、液滴の体積または質量の減少のさせ方は、段階的に減少させることができる。
【0011】
上記の構成を実現するために、液滴吐出ヘッドを駆動制御して、吐出する液滴の体積または質量を制御することが望ましい。
この構成によれば、液滴吐出ヘッドを駆動制御することで吐出する液滴の体積を制御しているので、確実に液滴の体積を制御することができる。
なお、液滴の量を変化させる場合、その液滴の量が体積で10%以上減少するように制御することができる。液滴の体積を10%以上減少させることにより、上記レンズ材料の形状がより崩れ難くなり大きなマイクロレンズを製造することができるためである。
【0012】
上記の構成を実現するために、より具体的には、液滴吐出ヘッドの駆動制御が液滴吐出ヘッドを駆動する駆動波形を制御することにより行われてもよい。
この構成によれば、駆動波形を制御することで液滴の体積を制御するため、より確実に液滴の体積を制御することができる。
【0013】
上記の構成を実現するために、より具体的には、液滴吐出ヘッドの駆動制御が液滴吐出ヘッドを駆動する駆動電圧を制御することにより行われてもよい。
この構成によれば、駆動電圧を制御することで液滴の体積を制御するため、より確実に液滴の体積を制御することができる。
【0014】
本発明のマイクロレンズは、上記本発明のマイクロレンズの製造方法で製造されたことを特徴とする。
このマイクロレンズによれば、基体上に配置されたレンズ材料の量に応じて液滴吐出ヘッドから吐出される液滴の体積を減少させて製造しているため、大きなマイクロレンズとすることができる。
【0015】
本発明の光学装置は、面発光レーザと、上記本発明のマイクロレンズの製造方法で得られたマイクロレンズとを備え、マイクロレンズを面発光レーザの出射側に配設したことを特徴とする。
この光学装置によれば、前述したように、より生産効率がよく、より大きな形状に形成されたマイクロレンズを上記面発光レーザの出射側に配設しているので、このマイクロレンズによって発光レーザからの出射光の平行光化等を良好に行うことが可能になり、したがって良好な発光特性(光学特性)を有するものとなる。
【0016】
本発明の光伝送装置は、上記本発明の光学装置と、受光素子と、光学装置からの出射光を前記受光素子に伝送する光伝送手段とを備えたことを特徴とする。
この光伝送装置によれば、前述したように、良好な発光特性(光学特性)を有する光学装置を備えているので、伝送特性が良好な光伝送装置となる。
【0017】
本発明のレーザプリンタ用ヘッドは、上記本発明の光学装置を備えたことを特徴とする。
このレーザプリンタ用ヘッドによれば、前述したように、良好な発光特性(光学特性)を有する光学装置を備えているので、描画特性が良好なレーザプリンタ用ヘッドとなる。
【0018】
本発明のレーザプリンタは、上記本発明のレーザプリンタ用ヘッドを備えたことを特徴とする。
このレーザプリンタによれば、前述したように、描画特性が良好なレーザプリンタ用ヘッドを備えているので、このレーザプリンタ自体が描画特性に優れたものとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1から図7を参照して説明する。
まず、本発明のマイクロレンズの製造方法について説明する。本発明のマイクロレンズの製造方法は、基体の上面を撥液処理する工程と、前記撥液処理した基体の上面上に液滴吐出法によってレンズ材料を複数ドット(液滴)吐出し、前記基体上にマイクロレンズを形成する工程と、を備えている。
【0020】
ここで、本発明において「基体」とは、土台部材を形成できる面を有するものをいい、具体的にはガラス基板や半導体基板、さらにはこれらに各種の機能性薄膜や機能性要素を形成したものをいう。また、土台部材を形成できる面については、平面であっても曲面であってもよく、さらに基体自体の形状についても特に限定されることなく種々の形状のものが採用可能である。
【0021】
図1(a)〜(e)は本発明のマイクロレンズの製造工程図である。
本発明では、図1(a)に示すように例えばGaAs基板1を用い、このGaAs基板1に多数の面発光レーザ2を形成したものを基体3として用意する。そして、この基体3の上面側、すなわち前記面発光レーザ2の出射側となる面上に、土台部材の形成材料を設け、土台部材材料層4を形成する。なお、面発光レーザ2には、その出射口の周辺にポリイミド樹脂等からなる絶縁層(図示せず)が形成されている。ここで、土台部材の形成材料としては、透光性を有する材料、すなわち、前記面発光レーザ2からの発光光の波長域においてほとんど吸収を起こさず、したがって実質的にこの発光光を透過させる材料とするのが好ましく、例えばポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、あるいはフッ素系樹脂等が好適に用いられるが、特にポリイミド系樹脂がより好適に用いられる。
【0022】
本実施形態では、土台部材の形成材料としてポリイミド系樹脂を用いるものとする。そして、このポリイミド系樹脂の前駆体を基体3上に塗布し、その後約150℃で加熱処理することにより、図1(a)に示したような土台部材材料層4とする。なお、この土台部材材料層4については、この段階では十分に硬化を進ませず、その形状を保持できる程度の硬さにしておく。
【0023】
このようにしてポリイミド系樹脂からなる土台部材材料層4を形成したら、図1(b)に示すようにこの土台部材材料層4上にレジスト層5を形成する。そして、所定のパターンを形成したマスク6をレジスト層5を用いて露光し、さらに現像することにより、図1(c)に示すようにレジストパターン5aを形成する。
【0024】
次いで、レジストパターン5aをマスクとして、例えばアルカリ系溶液を用いたウエットエッチングによって土台部材材料層4をパターニングする。これにより、図1(d)に示すように基体3上に土台部材パターン4aが形成される。ここで、形成する土台部材パターン4aについては、その上面形状を円形あるいは楕円形、もしくは多角形に形成するのが、これの上にマイクロレンズを形成するうえで好ましく、本実施形態では上面形状を円形にしている。また、このような円形の上面の中心位置が、基体3に形成した前記面発光レーザ2の出射口(図示せず)の直上に位置するように形成する。
その後、図1(e)に示すようにレジストパターン5aを除去し、さらに約350℃で熱処理を行うことにより、土台部材パターン4aを十分に硬化させて土台部材4bとする。
【0025】
次いで、この土台部材4bの上面を撥液処理する。この撥液処理としては、例えば、基板の表面に自己組織化膜を形成する方法、プラズマ処理法等を採用できる。
自己組織膜形成法では、導電膜配線を形成すべき基板の表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜を形成する。
基板表面を処理するための有機分子膜は、基板に結合可能な官能基と、その反対側に親液基あるいは撥液基といった基板の表面性を改質する(表面エネルギーを制御する)官能基と、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖とを備えており、基板に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜を形成する。
【0026】
ここで、自己組織化膜とは、基板の下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。すなわち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性や親液性を付与することができる。
【0027】
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成され、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
自己組織化膜を形成する化合物としては、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下「FAS」という)を例示できる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、FASを用いることにより、基板との密着性と良好な撥液性とを得ることができる。
【0028】
FASは、一般的に構造式RnSiX(4−n)で表される。ここでnは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子などの加水分解基である。またRはフルオロアルキル基であり、(CF3)(CF2)x(CH2)yの(ここでxは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでもよく、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、基板(ガラス、シリコン)の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合で基板と結合する。一方、Rは表面に(CF2)等のフルオロ基を有するため、基板の下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
【0029】
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物と基板とを同一の密閉容器中に入れておき、室温で2〜3日程度の間放置することにより基板上に形成される。また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。これらは気相からの形成法であるが、液相からも自己組織化膜を形成できる。例えば、原料化合物を含む溶液中に基板を浸積し、洗浄、乾燥することで基板上に自己組織化膜が形成される。
なお、自己組織化膜を形成する前に、基板表面に紫外光を照射したり、溶媒により洗浄したりして、基板表面の前処理を施すことが望ましい。
【0030】
一方、プラズマ法としては、例えば大気雰囲気中にてテトラフルオロメタンを処理ガスとするプラズマ処理法(CF4プラズマ処理法)が好適に採用される。このCF4プラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000kW、テトラフルオロメタン(CF4)のガス流量が50〜100ml/min、プラズマ放電電極に対する基体3の搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタン(CF4)に限定されることなく、他のフルオロカーボン系のガスを用いることもできる。このような撥液化処理を行うことにより、土台部材4bの上面にはこれを構成する樹脂中にフッ素基が導入され、これによって高い撥液性が付与される。
【0031】
ここで、このような撥液処理については、特に、土台部材4bの形成材料で形成された平面に対して後述するレンズ材料を配した際、該レンズ材料の接触角が20°以上となるような撥液性を発揮するように、行うのが好ましい。
すなわち、図6に示すように土台部材4bの形成材料(本例ではポリイミド系樹脂)で土台部材材料層4を形成し、その表面を平面とする。そして、この表面に対して前述した撥液処理を施す。次いで、この表面上にレンズ材料7を液滴吐出法によって配する。
【0032】
すると、レンズ材料7は土台部材材料層4の表面に対する濡れ性に応じた形状の液滴となる。このとき、土台部材材料層4の表面張力をγS、レンズ材料7の表面張力をγL、土台部材材料層4とレンズ材料7との間の界面張力をγSL、土台部材材料層4に対するレンズ材料7の接触角をθとすると、γS、γL、γSL、θの間には以下の式が成立する。
γS=γSL+γL・cosθ
後述するようにマイクロレンズとなるレンズ材料7は、その曲率が、前記の式によって決定される接触角θにより制限を受ける。すなわち、レンズ材料7を硬化させた後に得られるレンズの曲率は、最終的なマイクロレンズの形状を決定する要素の一つである。したがって、本発明においては、得られるマイクロレンズの形状がより球状に近くなるよう、撥液処理によって土台部材材料層4とレンズ材料7との間の界面張力をγSLを大きくすることで、前記接触角θを大きく、すなわち20°以上とするのが好ましいのである。
このように、図6に示した接触角θが20°以上となるような条件による撥液処理を、前記土台部材4bの上面に施すことにより、後述するようにこの土台部材4bの上面に吐出配置されるレンズ材料7の、土台部材4b上面に対する接触角θ’が確実に大きくなる。したがって、土台部材上面に載るレンズ材料の量をより多くすることができ、これによりその形状を吐出量(吐出ドット量)で制御することが容易になる。
【0033】
このようにして土台部材4bの上面に撥液処理を施したら、この土台部材4b上に液滴吐出法によってレンズ材料7を複数ドット吐出する。ここで、液滴吐出法としては、ディスペンサ法やインクジェット法などが採用可能である。ディスペンサ法は、液滴を吐出する方法として一般的な方法であり、比較的広い領域に液滴を吐出するのに有効な方法である。インクジェット法は、液滴吐出ヘッドを用いて液滴を吐出する方法であり、液滴を吐出する位置についてμmオーダーの単位で制御することができ、また、吐出する液滴の量もピコリットルオーダーの単位で制御できるため、特に微細なレンズ(マイクロレンズ)の製造に適している。
【0034】
図2(a)、(b)は液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
そこで、本実施形態では、液滴吐出法としてインクジェット法を用いることにする。このインクジェット法は、液滴吐出ヘッド34として、例えば図2(a)に示すようにステンレス製のノズルプレート12と振動板13とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)14を介して接合したものを用いる。ノズルプレート12と振動板13との間には、仕切部材14によって複数のキャビティ15…とリザーバ16とが形成されており、これらキャビティ15…とリザーバ16とは流路17を介して連通している。
【0035】
各キャビティ15とリザーバ16の内部とは吐出するための液状体(レンズ材料)で満たされるようになっており、これらの間の流路17はリザーバ16からキャビティ15に液状体を供給する供給口として機能するようになっている。また、ノズルプレート12には、キャビティ15から液状体を噴射するための孔状のノズル18が縦横に整列した状態で複数形成されている。一方、振動板13には、リザーバ16内に開口する孔19が形成されており、この孔19には液状体タンク(図示せず)がチューブ(図示せず)を介して接続されるようになっている。
【0036】
また、振動板13のキャビティ15に向く面と反対の側の面上には、図2(b)に示すように圧電素子(ピエゾ素子)20が接合されている。この圧電素子20は、一対の電極21、21間に挟持され、通電により外側に突出するようにして撓曲するよう構成されたもので、本発明における吐出手段として機能するものである。
【0037】
このような構成のもとに圧電素子20が接合された振動板13は、圧電素子20と一体になって同時に外側へ撓曲し、これによりキャビティ15の容積を増大させる。すると、キャビティ15内とリザーバ16内とが連通しており、リザーバ16内に液状体が充填されている場合には、キャビティ15内に増大した容積分に相当する液状体が、リザーバ16から流路17を介して流入する。
そして、このような状態から圧電素子20への通電を解除すると、圧電素子20と振動板13はともに元の形状に戻る。よって、キャビティ15も元の容積に戻ることから、キャビティ15内部の液状体の圧力が上昇し、ノズル18から液状体の液滴22が吐出される。
【0038】
なお、液滴吐出ヘッドの吐出手段としては、前記の圧電素子(ピエゾ素子)20を用いた電気機械変換体以外でもよく、例えば、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた方式や、帯電制御型、加圧振動型といった連続方式、静電吸引方式、さらにはレーザなどの電磁波を照射して発熱させ、この発熱による作用で液状体を吐出させる方式を採用することもできる。
【0039】
また、吐出するレンズ材料7、すなわちマイクロレンズとなるレンズ材料7としては、光透過性樹脂が用いられる。具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリシクロヘキシルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリカーボネートなどのアリル系樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性または熱硬化性の樹脂が挙げられ、これらのうちの一種が用いられ、あるいは複数種が混合されて用いられる。
【0040】
また、レンズ材料7として用いる光透過性樹脂の表面張力としては、0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法によりインクを吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、インクのノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなる。また、表面張力が0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記光透過性樹脂の分散液には、基板との接触角を大きく低下させず、屈折率などの光学的特性に影響を与えない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、インクの基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0041】
さらに、レンズ材料7として用いる光透過性樹脂の粘度としては1mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いてインクを液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部がインクの流出により汚染されやすい。また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ヘッドもしくは液滴吐出装置にインク加熱機構を設けることで吐出が可能となるが、常温においてはノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。200mPa・s以上の場合、加熱しても液滴を吐出できる程度に粘度を落とすことが難しい。
【0042】
また、本発明においては、前記光透過性樹脂として、特に非溶剤系のものが好適に用いられる。この非溶剤系の光透過性樹脂は、有機溶剤を用いて光透過性樹脂を溶解し、液状体とすることなく、例えばこの光透過性樹脂をそのモノマーで希釈することによって液状化し、液滴吐出ヘッド34からの吐出を可能にしたものである。また、この非溶剤系の光透過性樹脂では、ビイミダゾール系化合物などの光重合開始剤を配合することにより、放射線照射硬化型のものとして使用できるようにしている。すなわち、このような光重合開始剤を配合することにより、前記光透過性樹脂に放射線照射硬化性を付与することができるのである。ここで、放射線とは可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の総称であり、特に紫外線が一般的に用いられる。
なお、上記光透過性樹脂としては非溶剤系のものに限られることなく、溶剤系の上記光透過性樹脂も用いることができる。
【0043】
図3(a)、(b)は本発明のマイクロレンズの製造工程図である。
このようなレンズ材料7を、前記構成からなる液滴吐出ヘッド34によって図3(a)に示すように土台部材4b上に複数ドット、土台部材4b上にマイクロレンズ前駆体8を形成する。このとき土台部材4bは液滴吐出ヘッド34の下を往復運動(スキャン)しており、土台部材4bが液滴吐出ヘッド34の下を通過するたびに液滴吐出ヘッド34からレンズ材料7が1ドット吐出される。
なお、液滴吐出ヘッド34のノズル18のピッチと土台部材4bのピッチとが合致していれば、ノズル18と土台部材4bとの位置関係が一致する範囲内で複数マイクロレンズを同時に形成してもよい。
【0044】
ここで、インクジェット法によってレンズ材料7を吐出していることにより、レンズ材料7を土台部材4b上のほぼ中心部に精度良く配することができる。また、前述したように土台部材4bの上面を撥液処理していることにより、吐出されたレンズ材料7の液滴は土台部材4bの上面上で濡れ広がりにくくなっており、したがって土台部材4b上に配されたレンズ材料7は、土台部材4bからこぼれ落ちることなく、土台部材4b上に安定した状態で保持されるようになっている。
【0045】
次に、全て同じドット量(10pl)で吐出した時に、20ドット(合計200pl)で土台部材4b上からレンズ材料7が溢れる場合について、本実施の形態の吐出方法を適応して説明する。
土台部材4b上にレンズ材料7を吐出し始めた段階では、液滴吐出ヘッド34に後述する体積10plの液滴を吐出させる駆動波形を持つ駆動電圧がかけられ、体積が10plのレンズ材料7が吐出される。体積10plのレンズ材料7を10ドット吐出すると、次に液滴吐出ヘッド34に後述する体積4plの液滴を吐出させる駆動電圧がかけられ、体積が4plのレンズ材料7が35ドット吐出される。このとき土台部材4b上には合計240plのレンズ材料7が略球状形状をなして配置されている。
なお、吐出されるレンズ材料7のドット量は上述した10plから4plに減少させるパターンに限られることなく、さまざまな減少パターンに適応することができる。特にドット量の体積を10%以上減少させるパターンは、土台部材4b上に配置されたレンズ材料4bの形状を崩し難いため、マイクロレンズの形成に用いて好適である。
【0046】
図4(a)、(b)は、液滴吐出ヘッド34の駆動波形を示した図である。
液滴吐出ヘッド34から10plのレンズ材料7が吐出される時には、圧電素子20に図4(a)に示す駆動波形が印加される。
圧電素子20には、最初の3.5μsで16.1Vの電圧が印加され、圧電素子20は外側に突出するように撓曲し、キャビティ15の容積が増大する。その後3.0μsの間その状態を保持し、次の3.5μsの間に圧電素子20が内側に突出するよう逆向きの23Vの電圧が印加される。これによりキャビティ15の容積は急激に減少し、レンズ材料7がノズル18から吐出される。その状態が3.5μsの間保持された後、3.5μsの間に6.9Vの電圧が印加され、最初の状態に戻される。
【0047】
また、液滴吐出ヘッド34から4plのレンズ材料7が吐出される時には、圧電素子20に図4(b)に示す駆動波形が印加される。
圧電素子20には、最初の6.0μsで18.4Vの電圧が印加され、圧延素子20は外側に突出するように撓曲し、キャビティ15の容積が増大する。その後1.5μsの間その状態を保持し、次の1.5μsの間に圧電素子20が内側に突出するよう逆向きの9.2Vの電圧が印加され、その状態を3.0μsの間保持する。そして、3.5μsの間に圧電素子20が内側に突出するよう逆向きの13.8Vの電圧が印加される。これによりキャビティ15の容積は急激に減少し、レンズ材料7がノズル18から吐出される。その状態が3.5μsの間保持された後、3.5μsの間に4.6Vの電圧が印加され、最初の状態に戻される。
【0048】
なお、液滴吐出ヘッド34に印加駆動波形の形状、電圧の大きさは、上述した範囲に限定されることなく、さまざまな範囲に適応して使用することができるものである。
また、液滴吐出ヘッド34から吐出されるレンズ材料7の体積は、上述した印加電圧の波形を制御する方法だけでなく、印加する電圧の大きさを制御する方法でも制御することができる。
【0049】
このようにして所望の大きさののマイクロレンズ前駆体8を形成したら、図3(b)に示すようにこれらマイクロレンズ前駆体8を硬化させ、マイクロレンズ8aを形成する。マイクロレンズ前駆体8の硬化処理としては、前述したようにレンズ材料7として有機溶剤が加えられておらず、放射線照射硬化性が付与されたものを用いることから、特に紫外線(波長λ=365nm)の照射による処理方法が好適に用いられる。
【0050】
また、このような紫外線照射による硬化処理の後、例えば100℃で1時間程度の熱処理を行うのが好ましい。このような熱処理を行うことにより、紫外線照射による硬化処理の段階で硬化むらが生じてしまっても、この硬化むらを減少させて全体としてほぼ均一な硬化度にすることができる。
このようにしてマイクロレンズ8aを形成したら、必要に応じて基体3を切断し、個片化しあるいはアレイ状に形成することなどにより、所望の形態に作製する。
なお、このようにして製造されたマイクロレンズ8aと、基体3に予め形成した前記面発光レーザ2とから、本発明の一実施形態となる光学装置が得られる。
【0051】
上記の構成によれば、土台部材4b上に吐出されたレンズ材料7の量に応じて液滴吐出ヘッド34から吐出する液滴の体積または質量を減少させている。そのため、例えば土台部材4b上のレンズ材料7の量が増えると、吐出される液滴の体積または質量が減少する。すると、液滴が上記レンズ材料7に着弾する時の衝撃が小さくなり、上記レンズ材料7の形状が崩れ難くなり液滴の体積または質量が変化しない従来と比較してより多くのレンズ材料7を土台部材4b上に載せることができる。つまり、大きなマイクロレンズを製造することができる。
【0052】
図5(a)〜(c)は本発明のマイクロレンズを示す図である。
すなわち、マイクロレンズ8aの大きさを大きくすることができ、図5(a)〜(c)に示したように、マイクロレンズ8aの大きさが大きくなると、上面側のレンズに相当する曲面の焦点位置が基体3に形成した面発光レーザ2の出射面に近づく。上記焦点位置が上記出射面に近づくとマイクロレンズ8aの上面側から出射される光をより平行な光とすることができる。
また、逆に面発光レーザ2などの発光源からの光が放射性を有することなく、直進性を有する場合、マイクロレンズ8aを透過させることでこの透過光に放射性を持たせることができる。
【0053】
また、逆にマイクロレンズの形成初期において、液滴吐出ヘッド34から吐出される液滴の体積または質量は、同じサイズのマイクロレンズを従来の方法で形成した時の液滴の体積または質量よりも大きくすることができる。そのため、マイクロレンズが完成するまでに液滴を吐出する回数を減らすことができ、マイクロレンズを製造するのに要する時間を短縮することができる。
【0054】
また、このようにして製造されたマイクロレンズ8aと基体3に形成した前記面発光レーザ2とからなる光学装置にあっては、前述したように大きさや形状が良好に制御されたマイクロレンズ8aを前記面発光レーザ2の出射側に配設しているので、このマイクロレンズ8aによって面発光レーザ2からの出射光の平行光化を良好に行うことができ、したがって良好な発光特性(光学特性)を有するものとなる。
【0055】
なお、前記実施形態では、基体3上に土台部材材料層4を形成してこの土台部材材料層4から土台部材4bを形成するようにしたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば基体3の表層部が透光性材料によって形成されている場合などでは、この表層部に土台部材を直接形成するようにしてもよい。
また、土台部材4bの形成方法についても、前述したフォトリソグラフィー法に限定されることなく、他の形成方法、例えば選択成長法や転写法等を採用することができる。
また、土台部材4bの上面形状についても、形成するマイクロレンズに要求される特性に応じて、三角形や四角形など種々の形状にすることが可能であり、さらに土台部材4b自体の形状についても、テーパ型や逆テーパ型など種々の形状にすることが可能である。
また、前記実施形態では、マイクロレンズ8aが、土台部材4b上に形成された状態のままでレンズとして用いられ、機能するようにしたが、本発明はこれに限定されることなく、土台部材4bから適宜な方法で切離しあるいは剥離し、マイクロレンズ8aを単独の光学部品として用いるようにしてもよい。その場合、製造に用いる土台部材4bについては、当然ながら透光性を有する必要はない。
【0056】
また、本発明においては、前記の面発光レーザ2とマイクロレンズ8aとからなる光学装置に加えて、この光学装置からの出射光を伝送する光ファイバや光導波路等からなる光伝送手段と、この光伝送手段で伝送された光を受光する受光素子とを備えることにより、光伝送装置として機能させることができる。
このような光伝送装置にあっては、前述したように良好な発光特性(光学特性)を有する光学装置を備えているので、この光伝送装置も良好な伝送特性を有するものとなる。
【0057】
図7は本発明のレーザプリンタ用ヘッドの概略構成図である。
また、本発明のレーザプリンタ用ヘッドは、前記光学装置を備えてなるものである。すなわち、このレーザプリンタ用ヘッドに用いられた光学装置は、図7に示すように多数の面発光レーザ2を直線的に配してなる面発光レーザアレイ2aと、この面発光レーザアレイ2aを構成する個々の面発光レーザ2に対して配設されたマイクロレンズ8aと、を備えてなるものである。なお、面発光レーザ2に対してはTFT等の駆動素子(図示せず)が設けられており、また、このレーザプリンタ用ヘッドには温度補償回路(図示せず)が設けられている。
さらに、このような構成のレーザプリンタ用ヘッドを備えることにより、本発明のレーザプリンタが構成される。
【0058】
このようなレーザプリンタ用ヘッドにあっては、前述したように良好な発光特性(光学特性)を有する光学装置を備えているので、描画特性が良好なレーザプリンタ用ヘッドとなる。
また、このレーザプリンタ用ヘッドを備えたレーザプリンタにあっても、前述したように描画特性が良好なレーザプリンタ用ヘッドを備えているので、このレーザプリンタ自体が描画特性に優れたものとなる。
【0059】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明のマイクロレンズは、前記した用途以外にも種々の光学装置に適用可能であり、例えば固体撮像装置(CCD)の受光面や光ファイバの光結合部などに設けられる光学部品としても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)は本発明のマイクロレンズの製造工程図である。
【図2】(a)、(b)は液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
【図3】(a)、(b)は本発明のマイクロレンズの製造工程図である。
【図4】(a)、(b)は本発明の液滴吐出ヘッドの駆動波形を示す図である。
【図5】(a)〜(c)は本発明のマイクロレンズを示す図である。
【図6】撥液処理によるレンズ材料の接触角を説明するための図である。
【図7】本発明のレーザプリンタ用ヘッドの概略構成図である。
【符号の説明】
2・・・面発光レーザ、 3・・・基体、 7・・・レンズ材料、 8a・・・マイクロレンズ、 34・・・液滴吐出ヘッド
Claims (10)
- 基体上に、液滴吐出ヘッドからレンズ材料である複数個の液滴を吐出してマイクロレンズを形成するマイクロレンズの製造方法であって、
前記基体上に吐出された前記レンズ材料の量に応じて前記液滴吐出ヘッドから吐出する液滴の体積を制御することを特徴とするマイクロレンズの製造方法。 - 前記液滴吐出ヘッドから吐出する液滴の体積を、前記基体上に吐出された前記レンズ材料の量の増加に応じて減少させるように制御することを特徴とする請求項1記載のマイクロレンズの製造方法。
- 前記液滴吐出ヘッドを駆動制御して、吐出する液滴の体積を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロレンズの製造方法。
- 前記液滴吐出ヘッドの駆動制御が、該液滴吐出ヘッドを駆動する駆動波形を制御することにより行われることを特徴とする請求項3記載のマイクロレンズの製造方法。
- 前記液滴吐出ヘッドの駆動制御が、該液滴吐出ヘッドを駆動する駆動電圧を制御することにより行われることを特徴とする請求項3記載のマイクロレンズの製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載のマイクロレンズの製造方法で製造されたことを特徴とするマイクロレンズ。
- 面発光レーザと、請求項1から5のいずれかに記載のマイクロレンズの製造方法で得られたマイクロレンズとを備え、前記マイクロレンズを前記面発光レーザの出射側に配設したことを特徴とする光学装置。
- 請求項7記載の光学装置と、受光素子と、前記光学装置からの出射光を前記受光素子に伝送する光伝送手段とを備えたことを特徴とする光伝送装置。
- 請求項7記載の光学装置を備えたことを特徴とするレーザプリンタ用ヘッド。
- 請求項9記載のレーザプリンタ用ヘッドを備えたことを特徴とするレーザプリンタ。
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