JP2005048091A - アニリン系導電性高分子の製造方法とその導電性高分子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性とを有する導電性高分子を製造することができるアニリン系導電性高分子の製造方法と、その方法を用いて製造された導電性高分子を提供すること。
【解決手段】 長鎖アルキル基を有するN-アルキルアニリン又はその誘導体をモノマーとし、該モノマーを酸化重合させてポリ(N-アルキルアニリン)又はその誘導体を製造するアニリン系導電性高分子の製造方法であって、該モノマーを、該高分子と親和性のある極性有機溶媒と、該高分子と親和性のあるドーパントアニオンと、水素イオンと、を含む溶液中で酸化重合させることを特徴とするアニリン系導電性高分子の製造方法。
【選択図】 図2

Description

本発明は、導電性高分子に係わり、特に、有機溶媒に対する溶解度が高く成型加工性に優れ、且つ酸化に対する安定性を向上させたアニリン系導電性高分子の製造方法とその導電性高分子に関する。
ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリンといった導電性高分子は、溶融せず通常の有機溶媒に不溶であるため、成型加工性に極めて乏しい。導電性高分子の中でポリアニリンは、唯一、水中や空気中で極めて安定であり、このことから二次電池、エレクトロクロミックディスプレーなどに既に実用化されてはいるが、その多方面への実用化が進んでいない。これは、その乏しい成型加工性と共に、過酸化により分解劣化し易い酸化劣化性によるものである。
この乏しい成型加工性を向上させる従来技術として、例えば、特許文献1には、ベンゼン環にアルコキシル基を導入することにより、有機溶媒に可溶性のポリアニリン誘導体を得る技術が開示されている。然しながら、この従来技術は、有機溶媒に対する可溶性は得られても、酸化に対する安定性は得られず、酸化に対する安定性が低いと実用化の障害になるため、未だ、多方面への実用化が可能な導電性高分子を提供するに至っていない。又、特許文献2には、ドーパントアニオンとして、界面活性なドデシルベンゼンスルホン酸イオン、若しくはカンファースルホン酸イオンを用い、その親油性に基づき有機溶媒に対する溶解性を得る技術が開示されているが、そのドーパントアニオンはポリアニリンから外れ易く、機能を利用しているうちに有機溶媒に溶け難くなり、酸化に対する安定性も向上されない。
同様に、特許文献3には、アニリン、N-アルキルアニリン及びフェニレンジアミン類の群より選ばれた化合物と、アルコキシ基置換アミノベンゼンスルホン酸類とを共重合させて、有機溶媒に対する溶解性を得る技術が開示され、特許文献4には、アニリン又はベンゼン環に置換基を有するアニリンを、水、又はN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN,N-ジメチルホルムアミドの群から選ばれた有機溶媒中、アンモニウムパーオキソジスルフェート、塩化第二鉄、二酸化マンガン、及び過酸化水素の群から選ばれた酸化剤の存在下、−20〜50℃で、化学的酸化重合させてメタ型ポリアニリンを製造する技術が開示されている。
又、特許文献5には、ポリアニリンにスタビライザ(コロイド粒子を安定化して得るための修飾物質)を修飾させ、コロイド分散させ導電性のポリアニリン含有溶液を得る技術が開示され、特許文献6には、ポリアニリン又はその誘導体と、それに対して反応性を有する基を含有するセグメント並びにポリアルキレングリコール構造、ポリスチレン誘導体構造、ポリ(メタ)アクリル酸誘導体構造、ポリ(メタ)アクリロニトリル誘導体構造及びポリエーテル構造の群より選ばれた構造を有するセグメントを分子中に有する共重合体を、混合分散した導電性ポリアニリン組成物が開示されている。
これらの従来技術は、いずれも酸化に対する安定性は向上されないという問題を共通的に有し、更に又、導電性が大きく低下する問題、若しくは有機溶媒に対する可溶性が低いという問題を有し、未だ、多方面への実用化が可能な導電性高分子を提供するに至っていない。
一方、酸化に対する安定性の向上に係り、ポリアニリンの高分子鎖のアミン窒素原子及びイミン窒素原子にアルキル基を導入したポリ(N-アルキルアニリン)は、通常の有機溶媒に溶解し、且つ過酸化による分解劣化も抑制される可能性があることが指摘され、これまでポリ(N-メチルアニリン)からポリ(N-n-ブチルアニリン)までのポリ(N-アルキルアニリン)が合成され、その導電性や機能などが調べられてきた。
その結果、アルキル基の導入により、酸化に対する安定性と有機溶媒に対する溶解性に関しては、その効果が確認され、又、導入するアルキル基の長さが長いほど、酸化に対する安定性が向上し、通常の有機溶媒に対する溶解度が高くなることが確認された(例えば、非特許文献1)。然しながら、導電性に関しては、逆に、導入するアルキル基の長さが長いほど、その導電性は極端に低くなると言われてきた(例えば、非特許文献2、非特許文献3)。
なお、上記の従来技術には、アニリン系高分子の製造方法として、例えば、特許文献3には、溶媒として水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどを、酸化剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素等を、プロトン酸として硫酸、塩酸、p-トルエンスルホン酸等又はそれらの混合物を用い、好ましくは、触媒として、鉄、銅などの遷移金属を添加して化学的酸化重合する方法が示されている。又、特許文献6には、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、2-ブタノン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、クロロホルム、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等を溶媒として、1種又は2種以上のアニリン又はその誘導体の酸性若しくは塩基性溶液又は懸濁液に、酸化剤(過硫酸アンモニウム、過硫酸、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸類、過酸化水素、塩化第二鉄等)及び必要であればプロトン酸(塩酸、硫酸、硝酸、ホウ弗化水素酸、過塩素酸、アミド硫酸等の無機酸の他、各種の有機酸、ポリマー酸など)を加えた後、当該混合溶液又は懸濁液を撹拌しながら化学的酸化重合する方法が示されている。
然しながら、これらの製造方法は、アニリン系高分子の一般的な製造方法を示したものであって、導電性を有し、且つ有機溶媒に対する溶解性と酸化に対する安定性とを有するアニリン系導電性高分子の製造方法を開示したものではない。
即ち、導電性を有し、且つ通常の有機溶媒に対する溶解性と酸化に対する安定性とを有する導電性高分子は、帯電防止材料や導電体など固体電解質として、又、二次電池、エレクトロクロミックディスプレー、センサなど機能材料として、その応用面は極めて広いにもかからず、未だかかる導電性高分子は開発されていない。
なお、以下で説明する実施例等に関連し、N-アルキルアニリンの合成方法は、例えば、非特許文献4に詳細に示され、直流4端子法による導電率の測定方法は、例えば、非特許文献5に示されている。又、ポリアニリン及びポリ(N-メチルアニリン)の導電率は、ドーパントアニオンの種類によって顕著に変化することが知られており、それぞれ例えば、非特許文献6、非特許文献7に開示されている。
特開平06−239995号公報 特開平06−279584号公報 特開平06−293828号公報 特開2001−081190号公報 特開2001−288264号公報 特開2002−265781号公報 J. Chevalier, J. Bergeron, L. H. Dao, Macromolecules 25 (1992) 3325 A. Watanabe, K. Mori, A. Iwabuchi, Y. Iwasaki, Y. Nakamura, O. Ito, Macromolecules 22 (1989) 3521 A. Kitani, H. Munemura, Y. Ota, K. Takaki, S. Ito, Mol. Cryst. Liq. Cryst. 296 (1997) 349 O. Mitsunobu, in Comprehensive Organic Synthesis, ed. B. M. Trost, I. Fleming, Pergamon, Oxford Vol. 6 (1991) 65-101 L. J. van der Pauw, Philips Res. Rept., 13 (1958) 1 K. Yoshikawa, K. Yoshioka, A. Kitani, K. Sasaki, J. Electroanal. Chem., 270, 421 (1989) J. Yano, F. Takamura, K. Masaoka, S. Yamasaki, Y. Ota, A. Kitani, Synth. Met., 135-136, 417 (2003)
本発明は、導電性高分子に係わる上述した状況に鑑み、導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性とを有する導電性高分子を製造することができるアニリン系導電性高分子の製造方法と、その方法を用いて製造された導電性高分子を提供することを目的とする。
上述した目的を達成するため、請求項1の発明は、本発明のアニリン系導電性高分子の製造方法であり、長鎖アルキル基を有するN-アルキルアニリン又はその誘導体をモノマーとし、該モノマーを酸化重合させてポリ(N-アルキルアニリン)又はその誘導体を製造するアニリン系導電性高分子の製造方法であって、該モノマーを、該高分子と親和性のある極性有機溶媒と、該高分子と親和性のあるドーパントアニオンと、水素イオンと、を含む溶液中で酸化重合させることを特徴としたものである。
請求項2の発明は、本発明のアニリン系導電性高分子の製造方法の第二の形態であり、ポリアニリン又はその誘導体の高分子鎖窒素原子に長鎖アルキル基を導入してポリ(N-アルキルアニリン)又はその誘導体を製造するアニリン系導電性高分子の製造方法であって、該高分子と親和性のある極性有機溶媒と、該高分子と親和性のあるドーパントアニオンと、水素イオンと、を含む溶液中で、酸化条件下、還元型のポリアニリン又はその誘導体に長鎖アルキル基を導入することを特徴としたものである。
請求項3の発明は、前記長鎖アルキル基が、炭素数7〜11の長鎖アルキル基であることを特徴とする。
請求項4と請求項5の発明は、前記誘導体に係り、請求項4の発明は、その誘導体が、ベンゼン環の4位を除き、2位、3位、5位、又は6位の少なくともいずれか1つに、オルト・パラ配向性の官能基の置換基を有する誘導体であることを特徴とし、請求項5の発明は、そのオルト・パラ配向性の官能基が、アルキル基、ハロゲン基、アルコキシル基、水酸基、アシル基からなる群の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
請求項6と請求項7の発明は、前記アニリン系導電性高分子と親和性のある極性有機溶媒の好ましい形態に係り、請求項6の発明は、その極性有機溶媒が、アクセプター数がドナー数よりわずかに高く、その差が〜20の極性有機溶媒であることを特徴とし、請求項7の発明は、そのアクセプター数がドナー数よりわずかに高く、その差が〜20である極性有機溶媒は、プロピレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトル、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、エチルアルコールからなる群の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
請求項8と請求項9の発明は、前記アニリン系導電性高分子と親和性のあるドーパントアニオンの好ましい形態に係り、請求項8の発明は、そのドーパントアニオンが、該高分子との親和性が前記極性有機溶媒との溶媒和より高いドーパントアニオンであることを特徴とし、請求項9の発明は、そのアニリン系導電性高分子との親和性が極性有機溶媒との溶媒和より高いドーパントアニオンが、硫酸イオン、塩酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフロロ酢酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、トリフロロメタンスルホン酸イオンからなる群の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
請求項10から請求項12までの発明は、本発明のアニリン系導電性高分子である。即ち、請求項10の発明は、本発明のアニリン系導電性高分子の製造方法で製造された高分子であることを特徴とするアニリン系導電性高分子であり、請求項11の発明は、そのアニリン系導電性高分子が、実質上、水を含まない溶液中で製造された高分子であることを特徴とし、請求項12の発明は、そのアニリン系導電性高分子が、導電率1.0×10-8 S/cm以上の導電性と、通常の有機溶媒に対する溶解度がポリ(N-メチルアニリン)との比較において10倍以上である有機溶媒に対する溶解性と、0.8 mol/l 過塩素酸液中+1.2Vの定電位に60分保持で30%以上のレドックス活性を有する酸化に対する安定性と、を有する高分子であることを特徴とする。
本発明は、以下、詳細に説明するように、長鎖アルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)又はその誘導体の製造方法とその導電性高分子であって、導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性と、を有する導電性高分子を製造することができるアニリン系導電性高分子の製造方法と、その方法を用いて製造された導電性高分子を提供することができる効果がある。かかる導電性高分子は、帯電防止材料や導電体など固体電解質として、又、二次電池、エレクトロクロミックディスプレー、センサなど機能材料として、その多方面への実用化を可能にするものであり、産業上の異議は極めて大きい。
本発明者は、上述のように、その応用面が極めて広いと思われるアニリン系導電性高分子の製造方法の確立を目指し、鋭意、研究を重ねた結果、導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性とを有する導電性高分子を製造することができる方法を見出し、更には、その好適な実施の形態を見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
即ち、本発明のアニリン系導電性高分子の製造方法は、その第一の形態は、酸化重合により導電性高分子を生成し得るアニリン類の特定の部位に特定の置換基を導入したアニリン系モノマーを、特定の溶液中で酸化重合する方法であって、窒素原子に長鎖アルキル基を導入したN-アルキルアニリン又はその誘導体をモノマーとし、そのモノマーを、重合・生成する高分子と親和性のある極性有機溶媒(以下、「有機溶媒」と略称することがある。)と、その高分子と親和性のあるドーパントアニオン(以下、「アニオン」と略称することがある。)と、水素イオンと、を含む溶液中で酸化重合させることにより、導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性を有するアニリン系導電性高分子を製造することができる。
本発明の製造方法の第二の形態は、導電性高分子を生成し得るポリアニリン類の特定の部位に、特定の溶液中、特定の置換基を導入する方法であって、置換基を導入・生成する高分子と親和性のある極性有機溶媒と、その高分子と親和性のあるドーパントアニオンと、水素イオンと、を含む溶液中で、酸化条件下、還元型のポリアニリン又はその誘導体の高分子鎖窒素原子に長鎖アルキル基を導入することにより、導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性を有するアニリン系導電性高分子を製造することができる。
第一の形態は、長鎖アルキル基を有するモノマーを重合する過程でドーパントアニオンを高分子骨格内に取り込む形態であり、第二の形態は、従来法で重合し得られた高分子に長鎖アルキル基を導入する過程でドーパントアニオンを高分子骨格内に取り込む形態である。本発明は、いずれの形態でも実施可能であるが、第一の形態で得られる導電性高分子は、その高分子鎖の全ての窒素原子に確実にアルキル基が導入されているのに対し、第二の形態で得られた導電性高分子は、その高分子鎖の全ての窒素原子にアルキル基が導入されているという保証はない。又、酸化重合とドープを同時に行うことにより、十分、且つ効果的にドープすることができる。従って、比較的には、第一の形態が好ましく、以下、これを中心に説明する。
なお、第二の形態に係り、長鎖アルキル基の導入は、周知の方法、例えば、アルキル化剤を作用させることによって行うことができ、これによりポリアニリン又はその誘導体からポリ(N-アルキルアニリン)又はその誘導体を合成することができる。その際、ポリアニリン又はその誘導体を還元型とし、例えば、選択した有機溶媒とプロトン酸を含む溶液中で、酸化剤を用い酸化することにより、長鎖アルキル基を導入する過程でドーパントアニオンを高分子中に取り込むことができる。
上述のように、ポリアニリンの高分子鎖のアミン窒素原子及びイミン窒素原子にアルキル基を導入したポリ(N-アルキルアニリン)は、通常の有機溶媒に溶解し、且つ過酸化による分解劣化も抑制される可能性があることが指摘されたが、幾つかのポリ(N-アルキルアニリン)が合成され、その導電性や機能などが調べられた結果、導入するアルキル基の長さが長いほど、その導電性は極端に低くなることが実験的に示された。これは、長鎖アルキル基の立体障害及び親油性が、分子間の電子伝導を著しく阻害すると共に、アニオンが高分子骨格に取り込まれるドーピング反応も生じ難くするためと説明され、それが全てのポリ(N-アルキルアニリン)に適用されるものと信じられてきた。
本発明は、通常の有機溶媒に対する溶解性と、過酸化による分解劣化を抑制し酸化に対する安定性を得るために、従来技術と同様にして、高分子骨格に長鎖アルキル基を導入したポリ(N-アルキルアニリン)又はその誘導体を本発明のアニリン系導電性高分子とし、問題になる導電性の劣化を防ぐために、その導電性高分子に対して親和性のある極性有機溶媒と、その導電性高分子に対して親和性を有するドーパントアニオンと、水素イオンとを含む重合溶液を用い、酸化重合とドープを同時に行うことが最大の特徴である。
かかる実施の形態により、導電性高分子に親和性のある有機溶媒は、高分子が重合・生成して得られる過程において、高分子骨格内によく取り込まれ、その結果、その有機溶媒に溶解している高分子に親和性のあるアニオンも高分子骨格内によく取り込まれる、即ち、ドープされる。こうして長鎖アルキル基を有しながら、比較的高い導電性を有する導電性高分子を合成することができる。上述の通り、この長鎖アルキル基を有する導電性高分子は、通常の有機溶媒に対する溶解性が向上し、酸化に対する安定性も向上したアニリン系導電性高分子である。
以下、ポリ(N-アルキルアニリン)を例として、本発明の実施の形態を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定することなく、ポリ(N-アルキルアニリン)の誘導体の形態として実施することもできる。
先ず、本発明を見出すに至った、基本的な考えについて説明する。即ち、一般に、導電性高分子の導電性を決定するのは、高分子鎖中に存在するカチオンラジカル(ポーラロン)というホール(正電荷)であって、導電率は、この正電荷を補償するドーパントアニオンのドーピングレベルが高いほど、即ち、ドーパントアニオンが高分子に取り込まれるほど大きくなると説明され、ドーパントアニオンは、この正電荷を補償するためだけのものであると言われてきた。
一方、ポリアニリンの導電性がドーパントアニオンの種類によって影響を受けることが1990年前後に初めて指摘され、これまでにポリアニリン(非特許文献6)とポリ(N-メチルアニリン)(非特許文献7)の導電率がドーパントアニオンの種類によって顕著(約100倍)に変化することが知られているが、その理由は明らかになっていない。又、その影響は、高々100倍の変化だったので、そうした研究は殆どなされてこなかった。
かかる状況のなか、本発明者は、以下の2つの指針に基づき、長鎖アルキル基を有し、且つ高い導電率を有するポリ(N-アルキルアニリン)が得られないかどうかについて、詳細な検討を行った。
即ち、第一の指針は、ポリ(N-アルキルアニリン)は電子的供与や親油性によって互いに会合・集積し、その会合・集積がドーピングを起こり難くしていると考えられるため、その会合・集積を解いてやるような有機溶媒を用いることであり、第二の指針は、ポリ(N-アルキルアニリン)と親和性のある、特には、その親和性が使用する有機溶媒による溶媒和より高いようなドーパントアニオンを選択することである。
先ず、第一の指針に基づく有機溶媒について説明する。ポリ(N-メチルアニリン)のような短いアルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)の場合は、高分子鎖中のアミン窒素原子及びイミン窒素原子の不対電子対が、高分子鎖中に存在するカチオンサイトに電子を供与することによって会合・集積していると考えられ、このことは、凝固点降下法やGPC法によって求めた分子量の差異から、ポリ(N-メチルアニリン)について既に確認されている。このような会合・集積は、高分子鎖中のカチオンサイトを溶媒和し易い親プロトン性の有機溶媒の存在により抑制することができる。
他方、本発明の趣旨とするところの、長いアルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)では、高分子鎖中の不対電子対のカチオンサイトへの供与効果よりも、アルキル基自身の親油性によって高分子が会合・集積していると予想され、この場合には、アルキル基と親和性を有する親油性(疎プロトン性)の極性有機溶媒がその会合・集積を阻害するのに有効であると推定した。
次に、第二の指針に基づくドーパントアニオンについて説明する。第二の指針に基づくドーパントアニオンは、アニオンの親液性と溶媒和を考慮することで選択できる。ポリ(N-アルキルアニリン)は、酸化重合で得られ、そのオリゴマーやポリマー鎖にはカチオンラジカル(ポーラロン)やジカチオンなどのカチオンサイトが存在する。このカチオンサイトを有するポリ(N-アルキルアニリン)とドーパントアニオンとのイオン対の安定性は、アニオンのホフマイスター(Hofmeister)系列によって説明することができる。ホフマイスター系列はアニオンの親液性を示すもので、強酸のアニオンについてその順序は、(1)式で表され、アニオンの水和のし易さは、その逆順となる。
「数1」
SO4 2- ≪ Cl- ≒ NO3 - ≪ ClO4 - ≒ BF4 - (1)
即ち、短いアルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)の会合・集積を抑制する、高分子鎖中のカチオンサイトを溶媒和し易い親プロトン性の有機溶媒の場合には、その有機溶媒と溶媒和し難く、親液性が大きい、例えば、過塩素酸イオンやテトラフルオロホウ酸イオンが好適であり、本発明の趣旨とするところの、長いアルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)の会合・集積を阻害する、アルキル基と親和性を有する疎プロトン性の有機溶媒の場合には、その有機溶媒と溶媒和し難く、親液性が小さい、例えば、硫酸イオンが好適ということなる。
本発明は、かかる2つの指針に基づき、広範かつ詳細な実験を含み、詳細な検討を行った結果、長鎖アルキル基を有し、且つ高い導電率を有するポリ(N-アルキルアニリン)が得られることを見出したものである。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、更に具体的に説明する。先ず、本発明で用いる長鎖アルキル基としては、ベンゼン環の置換基の有無とその種類・数、使用する極性有機溶媒の種類、或いは、使用するドーパントアニオンの種類などによっても異なり、本発明を限定するものではないが、特には炭素数7〜11の長鎖アルキル基が好ましい。炭素数が少ないと、ポリ(N-アルキルアニリン)自身の親油性が低くなり、親油性の高い極性有機溶媒が高分子の会合・集積内に入り難くなる。その結果、極性有機溶媒に溶媒和されたドーパントアニオンも高分子鎖中に取り込まれ難くなり、極端な場合、殆どドープされず絶縁体になってしまい、目的とする導電性高分子が得られない。他方、炭素数が多すぎると、ポリ(N-アルキルアニリン)自身の親油性が高くなり過ぎ、極性有機溶媒が高分子の会合・集積内に入り込むのが困難になり、殆どドープされず絶縁体になって、同様に、目的とする導電性高分子が得られなくなる。
本発明は、ベンゼン環に置換基を導入したN-アルキルアニリン誘導体をモノマーとして実施することもできる。そのN-アルキルアニリン誘導体は、ベンゼン環の4位を除き、2位、3位、5位、又は6位の少なくともいずれか1つに、オルト・パラ配向性の官能基の置換基を有する誘導体として実施するのが好ましい。即ち、アニリンの場合は、4位が主流と言われているが、2位でもカップリング反応が起こる。一方、ポリ(N-アルキルアニリン)の酸化重合では、アルキル基の立体障害のために、4位でのカップリングのみが生じる(パラ・カップリング構造、1,4−置換体構造)ため、4位を除き置換基を導入したN-アルキルアニリン誘導体とする必要がある。導入する置換基としては、オルト・パラ配向性の官能基、例えば、アルキル基、ハロゲン基、アルコキシル基、水酸基、アシル基などが好ましく、メタ配向性の官能基、例えば、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン基などは、重合し難くなり不向きである。
極性有機溶媒としては、用いるモノマーの種類、使用するドーパントアニオンの種類などによっても異なり、本発明を限定するものではないが、プロピレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトル、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、エチルアルコールなどが挙げられる。なお、この極性有機溶媒を選定する際の目安として、電子受容性の指標となるアクセプター数と、電子供与性の指標となるドナー数を用い、アクセプター数がドナー数よりわずかに高く、例えば、その差が概ね20以下であることを条件として、好適な極性有機溶媒の探索を効果的に行うことができる。上記で例示した極性有機溶媒のアクセプター数とドナー数の差は、それぞれプロピレンカーボネートが3.2、ベンゾニトリルが3.6、アセトニトルが5.2、ニトロベンゼンが10.4、ジメチルスルホキシドが10.5、ホルムアミドが15.8、エタノールが17.1である。
ドーパントアニオンとしては、特には、重合する高分子との親和性が極性有機溶媒との溶媒和より高いドーパントアニオンが好ましく、用いるモノマーの種類、使用する極性有機溶媒の種類などによっても異なり、本発明を限定するものではないが、水溶液中でほぼ100%解離する強酸であれば概ね好適に使用でき、硫酸イオン、塩酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフロロ酢酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、トリフロロメタンスルホン酸イオンなどが挙げられる。特には、上述した如く、親液性が小さい、例えば、硫酸イオン、塩酸イオン、硝酸イオンなどが、本発明の実施において、好適に用いることができるドーパントアニオンである。弱酸である、チオシアン酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオンなどは不向きである。
なお、本発明は、水素イオンを含む溶液中で酸化重合する必要があり、これとドーパントアニオンを合わせ、プロトン酸、例えば、硫酸、塩酸、或いは硝酸などを添加した溶液中で酸化重合することもできる。又、例えば、少量の塩酸に多量の硫酸ナトリウムを加えても、ほぼ硫酸イオンをドープした導電性のポリ(N-アルキルアニリン)が得られる。酸化重合に際しての水素イオンの必要性については、水素イオンがアミノ基の窒素原子とイオン対を形成しないと、導電性高分子が得られず、これは、そのイオン対形成により、高分子鎖中にカチオンラジカルが効率よく発生し易くなるためと理解されている。
次に、本発明のアニリン系導電性高分子の具体的な重合条件について、本発明を限定するものではないが、ポリ(N-アルキルアニリン)を例として、その好ましい実施の形態を説明する。本発明のアニリン系導電性高分子は、従来のアニリン系高分子の製造法と同様にして、電解による電気的酸化重合、或いは、酸化剤を用いた化学的酸化重合によって製造することができる。
化学的酸化重合は、電極が不要である上、溶液全体で反応が進行するため、高速かつ大量に製造することができ、工業的生産に適する重合方法である。なお、酸化剤としては、塩化第二鉄や過硫酸アンモニウムなどが好適である。電気的酸化重合は、重合条件を精密に制御でき、且つ条件を変えての重合が容易であり、実験室的な合成に適する重合方法である。
N-アルキルアニリン(モノマー)濃度は、溶解度を上限の目安として他の限定を要するものではないが、特には0.1〜0.5 mol/l が好ましく、余り多すぎると重合溶液に溶解し難くなり、少な過ぎると重合速度が遅くなる。プロトン酸濃度は、N-アルキルアニリン濃度以上、特にはその2〜3倍とするのが好ましい。即ち、N-アルキルアニリンは、酸とアミン酸塩を形成することによって溶解するため、プロトン酸濃度をN-アルキルアニリン濃度の等倍以上とすることによって、そのモノナー全量を溶解させることができる。重合溶液は、水を含む溶液でも、水を含まない100%有機溶媒溶液でも実施可能であり、前者の場合、極性有機溶媒の添加量は、酸水溶液に対して等量程度が好ましい。なお、化学的酸化重合の場合、触媒として、鉄、銅などの遷移金属を添加して実施することもできる。
酸化電位は、0.8V〜1.2Vが好ましい。低すぎると重合が進まず、高すぎると、折角できた高分子が分解したり、溶液に水を含む場合、水が電気分解したりする問題が生じる。なお、電気的酸化重合は、電位走査法、定電位法、定電流法などいずれも可能であるが、電位走査法の場合、走査速度を余り速くし過ぎるとドーピング反応が追従しなくなるので、電位走査速度は200 mV/s 程度が上限である。定電流法の電流値は、下限はないが、余り高くし過ぎると、電流を一定にしようとして、装置が過大な電位を掛けてしまうので、5.0 mA/cm2 程度が上限である。
重合温度は、室温でも可能であり、加温等を要さず重合を行うことができ、沸騰、若しくは凍結するような条件でない限り、特に制限はない。重合雰囲気は、空気中、開放系下でもよいが、特には、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下が好ましい。撹拌の有無は、いずれでも良いが、一般的には、大規模な重合槽で行う場合は、撹拌しながら重合するのが好ましく、小規模な重合槽で行う場合、特には撹拌を要さない。重合時間は、重合方法やその装置規模などによって決められるものであって、共通的な上限、或いは下限はない。
なお、用いるモノマー、極性有機溶媒、及びドーパントアニオンの組合せを除き、上述の具体的な重合条件によって、得られるアニリン系導電性高分子の導電率、有機溶媒に対する溶解度、及び酸化に対する安定性が、余り大きな影響を受けることはない。即ち、本発明の目的とするアニリン系導電性高分子を得るためには、その用いるモノマー、極性有機溶媒、及びドーパントアニオンの組合せが、必須の要件となる。
以上のような実施の形態により、本発明の製造方法によれば、導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性とを有する導電性高分子を製造することができる。
次に、本発明のアニリン系導電性高分子について説明する。本発明のアニリン系導電性高分子は、上述の方法で製造された高分子であって、導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性とを有する導電性高分子であり、実質上、水を含まない溶液中で製造することもできる。
特には、本発明を限定するものではないが、導電率1.0×10-8 S/cm以上の導電性と、通常の有機溶媒に対する溶解度がポリ(N-メチルアニリン)との比較において10倍以上である有機溶媒に対する溶解性と、0.8 mol/l 過塩素酸液中+1.2Vの定電位に60分保持で30%以上のレドックス活性を有する酸化に対する安定性と、を有する導電性高分子として得ることができる。
かかる導電性高分子は、帯電防止材料や導電体など固体電解質として、又、二次電池、エレクトロクロミックディスプレー、センサなど機能材料として、その多方面への実用化を可能にするものである。例えば、溶解度が高い本発明のアニリン系導電性高分子を揮発性の高い有機溶媒に溶解し、その溶液を基板にスプレーやキャストし、その溶媒を除去して薄膜を作製するという、周知の薄膜作製技術により、大面積の導電性高分子薄膜を作製することができる。又、任意の形状の膜を作製することもでき、表示素子や電池の活物質などに利用可能である。更に又、導電性ペイントや薄膜センサ等にも用いることができる。
以上のような実施の形態により、本発明は、導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性とを有する導電性高分子を製造することができるアニリン系導電性高分子の製造方法と、その方法を用いて製造された導電性高分子を提供することができる。
次に、本発明について、実施例により更に具体的に説明する。以下で説明する実施例は、N-アルキルアニリンをモノマーとし、それを電気的酸化重合してポリ(N-アルキルアニリン)を製造したものであり、先ず、本実施例で使用した電解重合装置の概要について説明する。電解セルは、パイレックス(登録商標)・ガラス製の単室セル(50ml)であり、単室セルに内蔵された電解電極は、白金板電極(表面積:陽極1cm2、陰極8cm2)である。参照電極は、銀/塩化銀電極(北斗電工(株)製HX-R1)、或いは飽和カロメル電極(ビー・エー・エス(株)製11-2056番)である。印加は、関数発生器(北斗電工(株)製HB-104)を有する定電流・定電位装置(北斗電工(株)製HA-501)で行った。
印加条件は、電位走査法において、電位走査範囲が-0.2〜1.0V、電位走査速度が5、10、20、50、100、200mV/s であり、定電位法において、酸化電位が0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0V、1.2V、還元電位が0、-0.1、-0.2Vである。定電流法では、電流密度が0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、3.0、5.0mA/cm2である。
モノマーであるN-アルキルアニリンについては、市販されているN-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-n-プロピルアニリン、N-n-ブチルアニリン、N-n-ドデシルアニリンは、市販(東京化成工業社製)の特級品を使用し、市販されていないN-n-ペンチルアニリン、N-n-ヘキシルアニリン、N-n-ヘプチルアニリン、N-n-オクチルアニリン、N-n-デシルアニリンは、非特許文献4に記載された合成法によって合成・生成したものを用いた。有機溶媒は、和光純薬工業製の特級品を用い、無機試薬は、和光純薬工業、或いは片山化学製の特級品を用いた。
重合溶液の組成については、N-アルキルアニリン濃度は0.1〜0.5 mol/l であり、プロトン酸濃度は0.2〜1.5 mol/l 、極性有機溶媒添加量は、酸水溶液に対しては等量、或いは水無しの100%有機溶媒である。重合温度は、恒温槽を用い、25℃であり、重合時間は、10、20、30、60、120、180、240分である。なお、撹拌は行っていない。
次に、得られたポリ(N-アルキルアニリン)を評価・検討するために行った各種の測定について、その測定方法を纏めて説明する。導電率の測定は、生成したポリ(N-アルキルアニリン)を電極から取り出して充分に洗浄し、真空乾燥後、加圧成型器でペレットを作製し、そのペレットに4つの端子を取り付け、直流4端子法(非特許文献5)によって行った。なお、直流電圧電流電源には、上記の定電流・定電位装置(北斗電工(株)製HA-501)を用いた。
ポリ(N-アルキルアニリン)の電子状態を調べるために、ポリ(N-アルキルアニリン)を酸化インジウム-スズ電極などの透明電極上に作製し、その紫外・可視光の吸収スペクトルを、日本分光製UVIDEC-610を用い測定した。ポリ(N-アルキルアニリン)のアニオンのドーピングレベルは、生成したポリ(N-アルキルアニリン)を電極から取り出し充分に洗浄し、真空乾燥した粉末試料につき、その炭素、水素、窒素、イオウ、塩素などの元素分析を行うことにより測定した。又、有機溶媒に対する溶解度は、同様にして得られたその粉末試料につき、通常の幾つかの有機溶媒に飽和状態まで溶解させ、その後、有機溶媒を蒸発させて、その重量差よりそれらの溶解度を求めた。
以下、極性有機溶媒としては、疎プロトン性であるアセトニトリル(AN)と親プロトン性であるジメチルスルホキシド(DMSO)を、ドーパントアニオンとしては、親液性が小さい硫酸イオン(SO4 2-)と親液性が大きい過塩素酸イオン(ClO4 -)を用いた例について、その実験結果を説明する。
ANとDMSOは、電子受容性を示すアクセプター数が共に19.3と等しく、カチオンの溶媒和の指標であるドナー数が、それぞれ14.1、29.8と異なる有機溶媒であり、ANは、長鎖アルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)との親和性が大きい極性有機溶媒の代表例であり、一方、DMSOは、長鎖アルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)との親和性がより小さく、短いアルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)との親和性は、ANとの対比においてより大きい有機溶媒の例である。
親液性が小さいSO4 2-は、長いアルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)と、その高分子との親和性が高い有機溶媒(本実施例ではAN)の組合せに好適なドーパントアニオンの代表例であり、一方、親液性が大きいClO4 -は、短いアルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)と、その高分子との親和性が高い有機溶媒(本実施例では、DMSO)の組合せに適合したドーパントアニオンの例である。
先ず、図1により、比較例を説明する。図1は、有機溶媒としてDMSOを用いたDMSO+H2O系により、ドーパントアニオンとしてSO4 2- 又はClO4 - を用いて、N-アルキルアニリンを電気的酸化重合(重合溶液組成:N-アルキルアニリン濃度0.25 mol/l 、プロトン酸濃度0.5 mol/l 、溶媒DMSO+H2O(1:1))して得られたそれぞれのポリ(N-アルキルアニリン)の導電率と、それらのアルキル鎖長との関係を示した図であり、白○はSO4 2- をドーパントアニオンとし、△はClO4 - をドーパントアニオンとしたものである。黒●はDMSOが全く添加されていない、即ち、有機溶媒を含まない硫酸水溶液で重合したもので、参考例である。なお、図中、1.0×10-10 S/cmにプロットされている結果は、これが測定限界であり、1.0×10-10 S/cm以下の導電率であったことを意味する。後述する図2も同様である。
高分子鎖中のアニオンは、高分子鎖に配位を受け溶媒和されていないことが知られており、溶媒和したアニオンが溶媒と共に高分子鎖中に取り込まれたとき、アニオンは高分子鎖と溶媒との引っ張り合い状態になるが、図1に示したDMSO+H2O系の場合には、SO4 2- とClO4 - の比較として、SO4 2-の方がより強く溶媒和されている。従って、ClO4 - の方がより高分子鎖中に取り込まれ易く(ドープされ易く)、ポリ(N-メチルアニリン)からポリ(N-n-ブチルアニリン)まで導電性が発現したと思われる。なお、n-ブチル基よりアルキル基が長くなると、ポリ(N-アルキルアニリン)自身の親油性が高くなり過ぎたために、親水性の高いDMSO+H2Oが高分子鎖中に取り込まれ難くなり、その結果、アニオンもドープされ難く導電性が消失したものと推定される。
一方、SO4 2- は、より強く溶媒和されているため、高分子鎖中に溶媒和されたSO4 2-が入っても、SO4 2-が高分子鎖に引き抜かれ難く(ドープされ難く)、これにより、短いアルキル基を有するポリ(N-アルキルアニリン)で発現した導電性もより小さいレベルに留まったものと思われる。なお、図1の結果は、上述した、アルキル鎖長が長くなるほど、そのポリ(N-アルキルアニリン)の導電率は低下するという、従来報告(例えば、非特許文献2、非特許文献3)と一致している。
次に、図2により、本発明の実施例を説明する。図2は、有機溶媒としてANを用いたAN系により、ドーパントアニオンとしてSO4 2- 又はClO4 - を用いて、N-アルキルアニリンを電気的酸化重合(重合溶液組成:N-アルキルアニリン濃度0.25 mol/l 、プロトン酸濃度0.5 mol/l 、溶媒AN)して得られたそれぞれのポリ(N-アルキルアニリン)の導電率と、それらのアルキル鎖長との関係を示した図であり、○はSO4 2- をドーパントアニオンとし、△はClO4 - をドーパントアニオンとしたものである。なお、この実施例は、水を含まない有機溶媒中で重合したものであって、図1の重合条件との相違は、溶媒が異なるだけである。
図2に示したように、ポリ(N-メチルアニリン)からポリ(N-n-ヘキシルアニリン)まで、アニオンが余りドープされず導電性が発現しないのは、ポリ(N-アルキルアニリン)自身の親油性が低く、親油性の高いANがポリ(N-アルキルアニリン)に入り難く、その結果、ANに溶媒和されたアニオンも高分子鎖中に取り込まれ難いためと推定される。
一方、n-ヘプシル基やそれ以上の長いアルキル基になると、ポリ(N-アルキルアニリン)の親油性が高くなりANとの親和性が向上し、その結果、ANに溶媒和されたアニオンも高分子鎖中に取り込まれ易くなり、導電性が発現したものと推定される。その際、図2に示したAN系の場合、SO4 2- とClO4 - の比較として、ClO4 - の方がより強く溶媒和されているため、SO4 2- の方がよりドープされ易く、より大きな導電性が発現したものと考えられる。なお、図2中、n=10(炭素数11のアルキル基)よりアルキル基が長くなると、ポリ(N-アルキルアニリン)自身の親油性が高くなり過ぎ、親油性が高いANでも高分子鎖中に取り込まれ難くなり、その結果、アニオンもドープされ難くなって導電性が消失したものと推定される。
なお、炭素数11(図2中、n=10)のポリ(N-アルキルアニリン)については、実験を行っていないが、炭素数12(図2中、n=11)のポリ(N-アルキルアニリン)の導電率は、直流4端子法では測定限界以下で測定不能であったが、直流2端子法により1×10-10 S/cm程度であることが確認でき、若干の導電性があることを確認済みであり、これにより、炭素数11のポリ(N-アルキルアニリン)は、1.0×10-10 S/cmより大きい導電率を有することが推定できる。
図2は、この実施例においては、炭素数7〜11(図2中、n=6〜10)の長鎖アルキルを有するポリ(N-アルキルアニリン)の導電性が、特異的に発現することを示しており、アルキル鎖が長くなるほど、そのポリ(N-アルキルアニリン)の導電率が低下するという従来技術の結論に反し、本発明の趣旨とするところの、モノマーと有機溶媒とドーパントアニオンとの所定の組合せによって、導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性とを有する導電性高分子を製造することができることを立証したものである。
特に、SO4 2- をドープさせたケースでは、その導電率は、ポリ(N-n-ヘプチルアニリン)が1.0×10-3 S/cm、ポリ(N-n-オクチルアニリン)が3.2×10-5 S/cm、ポリ(N-n-デシルアニリン)が2.2×10-5 S/cmであり、高い導電性を示すポリ(N-アルキルアニリン)が得られている。
導電性高分子に求められる導電率は、どの分野の実用化を目指すかによって異なるが、固体電解質の実用化レベルは10-3 〜1.0×10-4 S/cmであり、本実施例のアニリン系導電性高分子は、導電性を利用する帯電防止材料や導電体などにも十分利用できる導電性を有するものである。又、通常、数100μm以下の薄膜で使用され、導電性よりも機能が重視される二次電池、エレクトロクロミックディスプレー、センサ等に使用できることはいうまでもない。
なお、これまでドーパントアニオンの種類による導電率の変化は、上述のように、ポリアニリンとポリ(N-メチルアニリン)に対して報告があるが、その他のポリ(N-アルキルアニリン)については報告が無い。更に、添加する極性有機溶媒の種類によって、得られるポリ(N-アルキルアニリン)の導電率を制御できることは全く知られていない。又、ポリ(N-メチルアニリン)からポリ(N-n-ブチルアニリン)までの合成例はあるが、それ以上の長鎖アルキル基を有するポリ(N-n-ペンチルアニリン)、ポリ(N-n-ヘキシルアニリン)、ポリ(N-n-ヘプチルアニリン)、ポリ(N-n-オクチルアニリン)、ポリ(N-n-デシルアニリン)については、それを合成したという報告が無く、これらは、本実施例において初めて合成したものである。更に又、ポリ(N-アルキルアニリン)を、実質上、水を含まない有機溶媒を重合溶液として酸化重合したという報告もなく、これも本実施例が初めてである。
次に、かかるポリ(N-アルキルアニリン)の導電性のアルキル基の長さに対する依存性が、ポリ(N-アルキルアニリン)自身の電子構造によるものか、或いは、ポリマー鎖に存在する溶媒分子などによるものかについて検討した結果を説明する。先ず、ポリ(N-アルキルアニリン)の電子状態に基づき検討した結果について説明する。表1は、図2のSO4 2-をドープさせた幾つかのポリ(N-アルキルアニリン)について、紫外・可視吸収スペクトルの測定を行った結果であり、酸化状態と還元状態における紫外・可視吸収スペクトルの最大吸収波長を示したものである。
Figure 2005048091
表1に示すように、全てのポリ(N-アルキルアニリン)について、酸化状態では700 nm以上に1つの吸収バンドが、還元状態では400 nm以下に1つの吸収バンドがみられ、前者はポーラロンに起因するものであり、後者はπ−π* 遷移に起因するものである。注目すべきは、還元状態におけるポリ(N-n-ヘプチルアニリン)やポリ(N-n-デシルアニリン)、即ち、顕著に大きい導電性を発現したポリ(N-アルキルアニリン)の最大吸収波長が、導電性を発現しなかったポリ(N-メチルアニリン)やポリ(N-n-ブチルアニリン)のそれよりも顕著に長波長側に移行していることである。この長波長側への移行は、π電子の共役鎖が長く、π電子がポリマー鎖中により非局在化されているためと推定され、これは導電性のアルキル基の長さに対する依存が、ポリ(N-アルキルアニリン)自身の電子構造変化に起因することを支持するものである。
次に、ポリ(N-アルキルアニリン)の導電性のアルキル基の長さに対する依存性について、硫酸イオンのドープ率に基づき検討した結果について説明する。表2は、図2のSO4 2-をドープさせた幾つかのポリ(N-アルキルアニリン)について、C、H、N、Sの元素分析結果に基づき求めた硫酸イオンのドープ率(高分子の単位分子当たりの硫酸イオン数)を示したものである。
Figure 2005048091
表2に示すように、高い導電率を発現するポリ(N-n-ヘプチルアニリン)、ポリ(N-n-オクチルアニリン)、ポリ(N-n-デシルアニリン)の硫酸イオンのドープ率は、その他のものより際立って高く50%以上であり、これはポリ(N-アルキルアニリン)自身の電子構造によってそれらの高い導電率が発現することを支持するものである。ポリ(N-アルキルアニリン)の導電性は、正電荷のカチオンラジカル(ポーラロン)をキャリアとするものであり、導電率はそのキャリアの移動度と数に比例するが、ドープ率が高いということは、それだけポーラロンが存在するということを意味し、導電率が高くなることを意味する。
なお、20〜30%のドープ率で硫酸アニオンがドープされているにもかかわらず、ポリ(N-メチルアニリン)からポリ(N-n-ヘキシルアニリン)までに導電性が発現しないのは、分子間ホッピング伝導がポリマー自身に存在するキャリアが少なすぎるために生じないのか、分子間に存在する溶媒分子の阻害により生じないのかは明らかではない。
次に、本実施例のポリ(N-アルキルアニリン)の有機溶媒に対する溶解性について説明する。表3は、上記で合成したポリ(N-アルキルアニリン)の代表例として、ポリ(N-n-ヘプチルアニリン)について、通常、多く用いられている有機溶媒に対する溶解度を、ポリ(N-メチルアニリン)、ポリアニリンと対比して示したものである。
Figure 2005048091
表3に示したように、このポリ(N-n-ヘプチルアニリン)は、ポリ(N-メチルアニリン)との対比として、10倍以上の溶解性を有し、ポリアニリンとの対比として、ポリアニリンは殆どの有機溶媒に溶解しないが、ポリアニリンが溶解するジメチルスルホキシドとN-メチル-2-ピロリドンに対する対比として、60倍以上の溶解性を有する。なお、(N-n-ヘプチルアニリン)の溶解性について説明したが、アルキル基の長さが長いほどその有機溶媒に対する溶解性が向上することは周知であり、具体的な説明は省略するが、このことは本実施例においても確認済みである。
次に、本実施例のポリ(N-アルキルアニリン)の酸化に対する安定性について説明する。図3は、上記で合成したポリ(N-アルキルアニリン)の代表例として、ポリ(N-n-ヘプチルアニリン)(図3中、黒○)について、酸化に対する安定性を、ポリ(N-メチルアニリン)(図3中、白○)、ポリアニリン(図3中、黒◇)と対比して示したものである。即ち、図3は、0.8 mol/l 過塩素酸液中でポリマーを+1.2Vの定電位に保持したときの、保持時間(t)とポリマーのレドックス電気量(Q)との関係を示した図であり、Q0は、定電位に保持する前のレドックス電気量で、図3の縦軸は、レドックス活性の残存率を意味する。
図3に示したように、ポリアニリンのレドックス活性は約15分で10%に低下し、ポリ(N-メチルアニリン)のレドックス活性は約38分で10%に低下するのに対し、このポリ(N-n-ヘプチルアニリン)は、60保持でも約30%のレドックス活性を有し、酸化に対する優れた安定性を有する。なお、(N-n-ヘプチルアニリン)の酸化に対する安定性について説明したが、アルキル基の長さが長いほどその安定性が向上することは周知であり、具体的な説明は省略するが、このことは本実施例においても確認済みである。
以上の実施例において、特に、素数7〜11の長鎖アルキルを有するN-アルキルアニリンをモノマーとし、そのモノマーを、極性有機溶媒としてアセトニトリルを、ドーパントアニオンとして硫酸イオンを用いた酸性溶液中で、電気的酸化重合して得られたポリ(N-アルキルアニリン)は、導電率1.0×10-8 S/cm以上の導電性と、通常の有機溶媒に対する溶解度がポリ(N-メチルアニリン)との比較において10倍以上である有機溶媒に対する溶解性と、0.8 mol/l 過塩素酸液中で+1.2Vの定電位に60分保持で30%以上のレドックス活性を有する酸化に対する安定性と、を有するアニリン系導電性高分子である。
即ち、本実施例は、導電性を有し、且つ広い範囲の有機溶媒に対する溶解性と、酸化に対する安定性とを有する導電性高分子を製造することができるアニリン系導電性高分子の製造方法と、その方法を用いて製造された導電性高分子を提供することができることを実証したものである。
以上、本発明の実施例を説明したが、特許請求の範囲で規定された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、その形態や細部に種々の変更がなされても良いことは明らかである。例えば、実施例では、ベンゼン環に置換基を有さないポリ(N-アルキルアニリン)について説明したが、その置換基を有してもよく、又、実施例で用いた極性有機溶媒やドーパントアニオンは、一例であって、何ら本発明を限定するものではない。
比較例であって、有機溶媒としてDMSOを用いたDMSO+H2O系により、ドーパントアニオンとしてSO4 2- 又はClO4 - を用いて、N-アルキルアニリンを電気的酸化重合して得られたそれぞれのポリ(N-アルキルアニリン)の導電率と、それらのアルキル鎖長との関係を示した図であり、白○はSO4 2- をドーパントアニオンとし、△はClO4 - をドーパントアニオンとしたものである。黒●はDMSOが全く添加されていない、即ち、有機溶媒を含まない硫酸水溶液で重合したもので、参考例である。 本発明の実施例であって、有機溶媒としてANを用いたAN系により、ドーパントアニオンとしてSO4 2- 又はClO4 - を用いて、N-アルキルアニリンを電気的酸化重合して得られたそれぞれのポリ(N-アルキルアニリン)の導電率と、それらのアルキル鎖長との関係を示した図であり、○はSO4 2- をドーパントアニオンとし、△はClO4 - をドーパントアニオンとしたものである。 実施例で合成したポリ(N-アルキルアニリン)の代表例として、ポリ(N-n-ヘプチルアニリン)(図3中、黒○)について、酸化に対する安定性を、ポリ(N-メチルアニリン)(図3中、白○)、ポリアニリン(図3中、黒◇)と対比して示したものであり、0.8 mol/l 過塩素酸液中でポリマーを+1.2Vの定電位に保持したときの、保持時間(t)とポリマーのレドックス電気量(Q)との関係を示した図である。

Claims (12)

  1. 長鎖アルキル基を有するN-アルキルアニリン又はその誘導体をモノマーとし、該モノマーを酸化重合させてポリ(N-アルキルアニリン)又はその誘導体を製造するアニリン系導電性高分子の製造方法であって、該モノマーを、該高分子と親和性のある極性有機溶媒と、該高分子と親和性のあるドーパントアニオンと、水素イオンと、を含む溶液中で酸化重合させることを特徴とするアニリン系導電性高分子の製造方法。
  2. ポリアニリン又はその誘導体の高分子鎖窒素原子に長鎖アルキル基を導入してポリ(N-アルキルアニリン)又はその誘導体を製造するアニリン系導電性高分子の製造方法であって、該高分子と親和性のある極性有機溶媒と、該高分子と親和性のあるドーパントアニオンと、水素イオンと、を含む溶液中で、酸化条件下、還元型のポリアニリン又はその誘導体に長鎖アルキル基を導入することを特徴とするアニリン系導電性高分子の製造方法。
  3. 前記長鎖アルキル基は、炭素数7〜11の長鎖アルキル基であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアニリン系導電性高分子の製造方法。
  4. 前記誘導体は、ベンゼン環の4位を除き、2位、3位、5位、又は6位の少なくともいずれか1つに、オルト・パラ配向性の官能基の置換基を有する誘導体であることを特徴とする請求項1又は請求項3記載のアニリン系導電性高分子の製造方法。
  5. 前記オルト・パラ配向性の官能基は、アルキル基、ハロゲン基、アルコキシル基、水酸基、アシル基からなる群の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載のアニリン系導電性高分子の製造方法。
  6. 前記アニリン系導電性高分子と親和性のある極性有機溶媒は、アクセプター数がドナー数よりわずかに高く、その差が〜20の極性有機溶媒であることを特徴とする請求項1乃至請求項5記載のアニリン系導電性高分子の製造方法。
  7. 前記アクセプター数がドナー数よりわずかに高く、その差が〜20である極性有機溶媒は、プロピレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトル、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、エチルアルコールからなる群の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載のアニリン系導電性高分子の製造方法。
  8. 前記アニリン系導電性高分子と親和性のあるドーパントアニオンは、該高分子との親和性が前記極性有機溶媒との溶媒和より高いドーパントアニオンであることを特徴とする請求項1乃至請求項7記載のアニリン系導電性高分子の製造方法。
  9. 前記アニリン系導電性高分子との親和性が極性有機溶媒との溶媒和より高いドーパントアニオンは、硫酸イオン、塩酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフロロ酢酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン、トリフロロメタンスルホン酸イオンからなる群の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項8記載のアニリン系導電性高分子の製造方法。
  10. 請求項1乃至請求項9記載の方法で製造された高分子であることを特徴とするアニリン系導電性高分子。
  11. 前記アニリン系導電性高分子は、実質上、水を含まない溶液中で製造された高分子であることを特徴とする請求項10記載のアニリン系導電性高分子。
  12. 前記アニリン系導電性高分子は、導電率1.0×10-8 S/cm以上の導電性と、通常の有機溶媒に対する溶解度がポリ(N-メチルアニリン)との比較において10倍以上である有機溶媒に対する溶解性と、0.8 mol/l 過塩素酸液中+1.2Vの定電位に60分保持で30%以上のレドックス活性を有する酸化に対する安定性と、を有する高分子であることを特徴とする請求項10又は請求項11記載のアニリン系導電性高分子。
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