通常、容器の金属製キャップは、天板部とその外周から垂下するスカート裾部とにより構成されている。そして、容器の口部にキャップ粗形材が被せられ、その後にキャップ粗形材のスカート裾部の外側からネジ成形ロールにより押圧され、容器口部のネジ山(雄ネジ部)と適合したネジ溝を有するキャップが形成される。容器口部に被せたキャップ粗形材の天板部の成形およびネジ成形ならびに裾締め成形を行う加工をロールオンキャッピングと称しており、そのキャッピング装置の一例が、特許文献1や特許文献2に記載されている。これらの特許文献に記載されたキャッピング装置は、容器の口部に被せたネジ無しキャップの外面にネジ部を成形しつつ、キャップのスカート裾部を内側に絞り込んでキャッピングを行うように構成されている。すなわち、キャップの外側からネジ成形ロールを押圧させて、キャップの雌ネジ部(ネジ溝)の成形を行い、一方、裾締めロールを容器の口部の環状凸部の下側に押圧させて、裾締めを行う。
このようなネジ成形ロールおよび裾締めロールの移動は、円錐カム(コーンカムとも呼ぶ)を昇降させ、制御された半径方向の力を作用させるネジ成形ロール開閉機構および裾締めロール開閉機構により行われ、ネジ成形ロールが容器の口部に予め設けられている雄ネジ部に沿うようにキャップ外面を転動し、その結果、所定の雌ネジ部がキャップに成形される。一方、裾締めロールは、容器口部に予め形成されている環状凸部の下面に沿うように回り、その結果、キャップに所定の裾締め部が絞り成形されるようになっている。
従来から知られている前述した構造の成形ヘッドは、キャップのネジ成形を行う2個もしくは2個以上のネジ成形ロールと、キャップのスカート裾部を内側に絞り込んで裾締め成形を行う2個もしくは2個以上の裾締めロールとを備えている。そして、これらのロールの半径方向への移動を、前述の通り、円錐カムの昇降により行うように構成されている。
この種の装置で対象とするキャップは、アルミ合金製やスチール製の薄板を素材とする加工性の良好なものが用いられる。そのため、ネジ成形ロールおよび裾締めロールをキャップ粗形材に押圧する押圧力は、捩りスプリングなどの弾性部材によって発生させている。それに伴って、ネジ成形ロール開閉機構および裾締めロール開閉機構は、ネジ成形ロールおよび裾締めロールをキャップの外周面まで案内し、また後退させるように構成されている。言い換えれば、ネジ成形ロール開閉機構および裾締めロール開閉機構は、コーンカムの軸方向の移動によって、ネジ成形ロールおよび裾締めロールを中心側へ移動させ、ネジ成形ロールおよび裾締めロールがキャップに同時に当接した後には、それぞれの捩りスプリングの弾性力により各ロールがキャップ外面を押圧してネジ成形と裾締め成形とが同時に行われる構成となっている。
このようなキャッピング方法においては、ネジ成形ロールと裾締めロールとがキャップに対して同時に当接して成形が始められるが、実質的に裾締め成形がネジ成形よりも先に完了するために、キャップの周面に引っ張り応力が生じている状態すなわち張りつめた状態でネジ成形が行われる。そのため、ネジ成形後、ネジ成形ロールの転動に伴いメタルフローが生じて、初めに成形されたキャップのネジ部でのネジ深さ(ネジ溝の深さ)が浅くなってしまい、ネジ成形ロールがキャップから離れるとスプリングバックにより容器の口部のネジ山からキャップのネジ溝が離れて両者が密着せず、その結果、容器とキャップとを密封するパッキンの密着性能が低下するなど密封性が損なわれるという問題がある。
これに対して、ネジ成形ロールおよび裾締めロールを一旦キャップから離し、その後に再びキャップのネジ溝および裾締め部を押圧して容器口部のネジ山に密着させることが、例えば特許文献3によって提案されている。
しかしながら、この特許文献3による成形方法では、ネジ成形の終端部分を成形している時点で、既に裾締め成形が終わっているために、ネジ部の終端部分近くに設けられているブリッジ部に過度の引張り荷重が作用して、そのブリッジ部が破断するなどの問題があった。これに対して、ネジ深さを浅くさせたり、ブリッジ部を破断させたりすることがないようにするため、ネジ成形と裾締め成形を別々に行うようにすることが、例えば特許文献4に開示されている。
一方、薄板金属から作られる金属製のボトル型缶のキャッピングを行う場合、剛性のあるガラスびんに対するキャッピングの場合と同様の強い押圧力で、ネジ成形ロールを容器の口部に被せたキャップに押圧させると、キャップまたは容器の口部がその荷重により変形して、開栓不良や漏れが生じやすくなるため、金属製のボトル型缶のキャッピングを行う場合には強い押圧力が掛けられず、ネジ深さを深くできないという問題がある。このような問題に対処するために、キャップの周面に対するネジ溝を成形した後、裾締めロールによってキャップ裾部の成形を複数段階に分けて行うことが、例えば特許文献5に開示されている。
特開平1−99967号公報
特開昭47−41979号公報
特開昭58−203888号公報
特開平1−226585号公報
特開2001−301887号公報
しかしながら、この特許文献4に記載された発明のネジ成形方法は、ガラスびん等のように容器の口部に剛性があるものを対象とする方法であり、例えばネジ成形ロールを用いたネジ成形方法や裾締めロールを用いた裾締め成形のように水平方向からキャップを押圧して成形するロール成形方法では、剛性が高いガラスびんなどに比較して容器の口部の変形が起こり易い薄板金属からなる金属製のボトル型缶などを対象とする場合には、ネジ成形と裾締め成形とを別々に行ったとしても、所望通りのネジ成形寸法が得られにくいという問題がある。
つまり、ガラスびんの容器の口部のネジ山が流し込み方式で成形されるのに比べて、ボトル型缶の容器の口部のネジ山は、ロール成形法により成形されるため、自由な成形を行うことができず、深さの浅いなだらかなネジ山の形状にしかならない。因みに、図8の(A)に示すボトル型缶と、図8の(B)に示すガラスびんとの口部形状を比較すると、呼び径28〜38mmの場合、ガラスびんのネジ深さHが1.0〜1.2mmであるのに対して、ボトル型缶のネジ深さhは0.65〜0.7mmと浅い規格寸法となっている。したがって、図8の(A)に示す形状から明らかなように、大きな押圧荷重がかけられない金属製のボトル型缶などの場合には、その成形したネジ深さでの容器の口部のネジ山が、スプリングバックを起こし易い形状になっている。
一方、上記特許文献5に記載された発明のように、ネジ成形と裾締め成形とを別々に行った上で、スプリングバックしたネジ深さを深くするように複数段階に分けて、キャップを成形すれば、ネジ成形と裾締め成形とが各々独立して行われるので、ネジ深さを所定寸法に仕上げることが一応は可能と思われる。しかしながら、このように各々独立して成形が行われた場合には、ブリッジ部およびその近傍部分にルーズメタル(余剰金属)が残ったままその各成形が行われるため、キャップを開栓する際に、そのルーズメタルが影響して、ブリッジ部が全部切れるまでの開栓角度が大きくなってしまい、必要以上にキャップを廻さなければならず、最悪の場合には、キャップを握り直して開栓しなければならないなどの問題が生じる。
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、ネジ成形寸法の安定性を向上させることにより、密封性や開栓性を向上させることのできるロールオンキャッピング方法および装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、天板部の周辺部から軸線方向に延びた円筒部を備えたキャップ粗形材を容器の口部に被せ、その円筒部の周面にネジ成形を施し、かつ前記円筒部の開口端であるスカート裾部を内周側に絞る裾締め成形を施すロールオンキャッピング方法において、前記容器の口部に被せた前記キャップ粗形材の天板部に所定の成形加工を施すとともに、前記スカート裾部を自由にした状態で前記円筒部の周面にネジ成形を施し、その後そのネジ成形された部分の仕上げ成形と前記スカート裾部の裾締め成形とを同時に行うことを特徴とする方法である。
また、請求項2の発明は、天板部の周辺部から軸線方向に延びた円筒部を備えたキャップ粗形材を容器の口部に被せ、その円筒部の周面にネジ成形を施し、かつ前記円筒部の開口端であるスカート裾部を内周側に絞る裾締め成形を施すロールオンキャッピング方法において、前記容器の口部に被せた前記キャップ粗形材の天板部に所定の成形加工を施すとともに、前記円筒部の周面に第一のネジ成形を施す第1工程と、前記第一のネジ成形の後に前記スカート裾部に第一の裾締め成形を施す第2工程と、前記第一のネジ成形によるネジ成形部に第二のネジ成形を施すと同時に、前記第一の裾締め成形による裾締め成形部に第二の裾締め成形を施す第3工程とを備えていることを特徴とする方法である。
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2のロールオンキャッピング方法において、前記容器の口部に被せたキャップ粗形材の天板部を前記口部に向けて押さえ付けたままの状態で、前記各ネジ成形および裾締め成形を行うことを特徴とする方法である。
一方、請求項4の発明は、口部にネジ山が形成されている容器を載せて固定軸を中心に水平方向に回転することにより前記容器を搬送する成形テーブルと、この成形テーブルの上方に昇降可能に配置され、前記口部に被せられる金属製キャップ粗形材の円筒部の周面に前記ネジ山に沿ったネジ溝を成形するネジ成形ロール、および前記金属製キャップ粗形材のスカート裾部を裾締め成形する裾締めロールを有する成形ヘッドと、前記成形テーブルと一体的に連結されて前記固定軸を中心に水平方向へ回動する複数のフレームターレットと、前記固定軸の上部に固定され、かつ前記成形テーブルに対して円周方向で相対距離の異なるカム溝が形成されている作動カムと、その作動カムのカム溝に係合するとともに、前記フレームターレットに保持されることにより前記成形テーブルと同期して回転して前記成形ヘッドを昇降移動させるカムフォロアーとを備えているキャッピング装置において、前記作動カムにより昇降移動する第一スリーブの下端に設けられた第一円錐カムによって前記ネジ成形ロールをキャップの周面に押圧させてネジ成形するネジ成形ロール開閉機構と、前記第一スリーブと同一軸線上に設けられ、かつ前記作動カムにより前記第一スリーブに対して独立して昇降移動される第二スリーブの下端に設けられた第二円錐カムによって前記裾締めロールを前記スカート裾部に押圧させて前記スカート裾部を裾締め成形する裾締めロール開閉機構とを備えていることを特徴とする装置である。
また、請求項5の発明は、請求項4の発明における前記カム溝が、前記成形テーブルと同期して前記カムフォロアーが回転することにより前記成形ヘッドを昇降移動させる第一カム溝と、前記第一カム溝の1回の実効範囲に対して少なくとも2回の実効範囲を有しかつ前記ネジ成形ロール開閉機構を作動させる第二カム溝と、前記第一カム溝の1回の実効範囲に対して少なくとも2回の実効範囲を有しかつ前記裾締めロール開閉機構を動作させる第三カム溝との3条のカム溝であることを特徴とする装置である。
そして、請求項6の発明は、請求項5の発明における前記第二カム溝と第三カム溝とが、それぞれのカム溝の実効範囲における後半の部分が、円周方向において同位相となるように配置されていることを特徴とする装置である。
請求項1の発明によれば、1回目のネジ成形部をスカート裾部がフリーな状態で成形でき、その後、そのネジ成形部の仕上げ成形と裾締め成形とが同時に行われるので、ネジ成形寸法の安定化を図ることができる。しかも、ピルファープルーフキャップの場合に、1回目のネジ成形のときには、スカート裾部の成形を行わないのでピルファープルーフ用のブリッジ部に過度の引張力が作用せず、ネジ成形中にブリッジ部が破断する問題を解決することができる。また、ネジ成形部の仕上げ成形の際に、同時に裾締め成形を行うので、ブリッジ部の破断を起こさない程度に、ブリッジ部およびその近傍部分のルーズメタル(余剰金属)を取り除き、張りを持たすことが可能となり、キャップを廻していく時、ブリッジ部が完全に切れ終わるまでの開栓角度を大きくさせたりするのを防ぎ、開栓性を向上させることができる。
さらに、1回目のネジ成形部を仕上げ成形することにより、スプリングバックにより浅くなった1回目のネジ溝の深さを深くすることができ、ネジ深さが浅くなることによる、開栓時の空廻り現象や充填品のウォーマー時にキャップが浮き上がって密封性が損なわれるというような品質上のトラブルを防止することができる。
さらにまた、ネジ成形ロールによって少なくとも2回押圧するので、1回あたりのネジ成形荷重を軽減することができ、薄板金属から構成される容器の口部の変形を防ぎ、しかもネジ仕上げ成形とスカート裾締め成形とを同時に行うことにより、ネジ成形ロールの押圧方向とは異なる方向から裾締めロールを押圧することになり、容器の口部およびキャップが変形するのを防ぎ、その結果、開栓性を向上させることができる。
また、請求項2の発明によれば、第1の工程で第1のネジ成形および第2の工程の第1の裾締め成形をそれぞれフリーな状態で形成できるので、互いに引っ張り合うことがなくなり、第1の裾締め成形部を再成形することにより裾締め部のスプリングバックを防ぎ、それによって開栓時、キャップスカート裾が広がり、容器口部からブリッジ部が破断されずにキャップから外れてしまう、いわゆる“すっぽ抜け”現象を回避することができる。
さらに、請求項3の発明によれば、キャップの天板部を押圧したままの状態で、しかも第1工程で用いられたネジ成形ロールと同じネジ成形ロールを、第3工程で再度用いることで、キャップの天板部押さえ用のプレッシャーブロックに対してネジ成形ロールをスタートさせる時の高さ位置と仕上げ成形する時の高さ位置のズレを防ぐことができるので、ネジ成形の際に、高すぎてネジの長さが短くなったり、反対に低すぎてネジ切り始めの位置が低くなったり、さらには、ネジ終端部分に跳ね上がり傷を生じさせたりする等のトラブルを回避することができ、かつ、各成形部の仕上がり状態も良好となる。
そして、請求項4の発明によれば、ネジ成形ロールを移動させるネジ成形ロール開閉機構と、裾締めロールを移動させる裾締めロール開閉機構とが、同一の成形ヘッドの同一軸線上をそれぞれ独立して昇降可能な第一の円錐カム、第二の円錐カムにより作動するため、特別な作動流体を使わずに、簡単な機構で確実にネジ成形と裾締め成形とを任意のタイミングで実施することができる。
また、請求項5の発明によれば、キャップの天板部を押圧したままの状態で、作動カムが一周する間に、各カム溝に従って、ネジ成形および裾締め成形を独立して実施することができる。
さらに、請求項6の発明によれば、加工領域の後半部でネジ成形と裾締め成形とを同時に行うことにより、工程の短縮化を図ることができ、それに伴い装置の小型化、高速化に有利(作動カムの長さを最小限に抑えることが可能)となる。
つぎに本発明の具体例を参照して説明する。本発明は、容器の一例としてボトル型缶1のキャッピングに適用することができ、図2の(A)にそのキャップ2の構造およびキャップ粗形材3の構造を部分断面図として示してある。先ず、キャップ粗形材3は、アルミニウムあるいはアルミ合金などの金属製のピルファープルーフキャップであって、天板部4とその周辺部から軸線方向に延びた円筒部(スカート部)5とを備えた有底円筒状の部材である。その天板部4の内面に合成樹脂製のシール材6が貼着されている。また、円筒部5の開口端側の端部には、円周方向に断続するスリット7が形成され、各スリット7の間のつなぎ部分がブリッジ部8となっている。したがってそのスリット7より先端側(図での下側)の部分が、ピルファープルーフバンドとなるスカート裾部9とされている。
一方、ボトル型缶1は、図2の(B)に示すように、アルミ合金板や鋼板などの金属薄板を絞り・しごき成形して構成されたものであって、その口部10の開口端は、密封性および剛性を確保するために外巻きカール部11に構成され、その下側に続く部分に雄ネジ部(ネジ山)12が形成されている。その雄ネジ部12の下側に、全周に連続した凸部13が形成されている。
本発明では、上記のキャップ粗形材3がボトル型缶1の口部10に被せられ、その状態で天板部4にその上側から荷重を掛けて所定の形状に成形加工される。その天板部4の成形加工と同時、もしくは天板部4の成形加工に続けて、円筒部5にその外周面側から荷重を掛けて、前記雄ネジ部12に沿わせた変形を生じさせる雌ネジ部5aを成形するネジ成形と、スカート裾部9を口部10における凸部13に向けて絞り成形する裾締め成形とが行われる。
このようなキャッピングは、ボトル型缶1の搬送過程で1台の装置の中で連続的に行われ、そのための装置の概要を示すと図3のとおりである。図3に示す装置は、ボトル型缶1を固定軸14の周囲に旋回させて搬送している過程でキャッピングを行うように構成されており、その固定軸14を中心にして回転する成形テーブル15が設けられており、その成形テーブル15の上面周辺部に、ボトル型缶1を起立状態で保持する保持部が一定間隔毎に設けられている。なお、各保持部には、ボディーガイド16とネックガイド17とが設けられ、これらのガイド16,17によってボトル型缶1を保持するようになっている。
成形テーブル15の上方には、各保持部に対応して、成形ヘッド18が上下動可能に配置されている。この成形ヘッド18は、上述した天板部4の成形加工と、ネジ成形加工と、裾締め成形加工とを実質的に行うためのものであって、その下端中央部に、天板部4の成形加工を行うためのプレッシャーブロック19が取り付けられている。また、プレッシャーブロック19の内側には、天板部4を押圧するプレッシャーパッド70およびプッシュピン71が弾性保持されて設けられている。一方、ネジ成形加工を行うための複数のネジ成形ロール20が、半径方向に前後動(開閉)するように設けられている。さらに、裾締め成形加工を行うための複数の裾締めロール21が、半径方向に前後動(開閉)するように設けられている。これらのロール20,21を半径方向にタイミングを取って前後動させるカム機構を主体とするネジ成形ロール開閉機構22および裾締めロール開閉機構23が設けられている。
上述した本発明に係る装置およびその装置を使用した本発明の方法を、更に詳細に説明する。前述した成形テーブル15の上方には、成形テーブル15と一体となって固定軸14を中心にして回転するフレームターレット24が設けられている。図4に示す例では、このフレームターレット24は、上下方向に一定の間隔を空けて配置された複数枚の円板部によって構成されており、このフレームターレット24の外周部で前記成形テーブル15に保持されているボトル型缶1の鉛直上方に相当する位置に、スピンドルユニット25が保持されている。
このスピンドルユニット25は、ボトル型缶1に対して上下動させられ、かつ回転駆動される中空軸26と、その中空軸26の外周側に配置されていて下端部にコーンカム27を有すると共に中空軸26に対して上下方向に相対移動させられるスリーブ28と、そのスリーブ28の外周側に配置されていて下端部にコーンカム29を有すると共にスリーブ28に対して上下方向に相対移動させられるスリーブ30とを備えている。前述した成形ヘッド18が、前記中空軸26と共に回転しかつ上下動するように上記のスピンドルユニット25の下端部に取り付けられている。前記プレッシャーブロック19は、前記中空軸26の内側に配置され、上下方向に移動するプレッシャーロッド72の下端部に取り付けられている。プッシュピン71はプレッシャーロッド72の下端部の中心で上下動可能に組み込まれている。
この成形ヘッド18は、従来知られている構造と同様に、前記キャップ2のネジ成形加工を行う二個もしくは三個のネジ成形ロール20と、キャップ2の下端部に設けられているピルファープルーフバンドとなるスカート裾部9の成形加工(裾締め成形加工)を行う二個もしくは三個の裾締めロール(ロックロール)21とを備えている。これらのロール20,21は交互に配列されて成形ヘッド18の半径方向に前後動するように保持されており、その前後動作を上記のコーンカム27,29によって行うように構成されている。
すなわち、図4および図5に示すように、ネジ成形ロール軸31と裾締めロール軸32とが、成形ヘッド18にそれぞれの軸線を上下方向に向けて回転自在に保持されている。そのネジ成形ロール軸31の上下両端部にアーム部33,34が半径方向に突出した状態でそれぞれ取り付けられており、上側のアーム部33の先端部に、前記コーンカム27に接触するカムフォロアー35が取り付けられている。また、下側のアーム部34の先端部に前記ネジ成形ロール20がその軸線を上下方向に向けかつ回転自在に弾性保持されている。そして、ネジ成形ロール軸31と成形ヘッド18の所定の固定部との間には、前記カムフォロアー35がコーンカム27に接近し、また前記ネジ成形ロール20がキャップ2に接近する方向にネジ成形ロール軸31に捩り力を与える捩りコイルばね36が設けられている。
これと同様に、裾締めロール軸32の上下両端部にアーム部37,38が半径方向に突出した状態でそれぞれ取り付けられており、上側のアーム部37の先端部に、前記コーンカム29に接触するカムフォロアー39が取り付けられている。また、下側のアーム部38の先端部に前記裾締めロール21がその軸線を上下方向に向けかつ回転自在に保持されている。そして、裾締めロール軸32と成形ヘッド18の所定の固定部との間には、前記カムフォロアー39がコーンカム29に接近し、また前記裾締めロール21がキャップ2に接近する方向に裾締めロール軸32に捩り力を与える捩りコイルばね40が設けられている。したがって前記各コーンカム27,29の外径が上下方向に変化していることにより、これらのコーンカム27,29が上下動することに伴って、それぞれに接触しているカムフォロアー35,39が半径方向に前後動し、これにより各ネジ成形ロール軸31あるいは裾締めロール軸32がその中心軸線を中心に回転することにより、ネジ成形ロール20や裾締めロール21が半径方向に前後動するようになっている。
ここで、上記のスピンドルユニット25やコーンカム27,29を上下動させるカム機構について説明すると、図4に示すように、前述したフレームターレット24における下側の円板部と中間の円板部との間には、固定軸14から半径方向で外側に伸びた枠体41が設けられている。その枠体41の外周面の上下三箇所に、円周方向に沿って三条のカム溝42,43,44が形成されている。
図4での上側のカム溝42に係合させられているカムフォロアー45が前記中空軸26を回転自在に保持している筒状部材46に連結されている。また、図4での中間部のカム溝43に係合させられているカムフォロアー47が前記コーンカム27と一体のスリーブ28に連結されている。さらに、図4での下側のカム溝44に係合させられているカムフォロアー48が、前記コーンカム29と一体のスリーブ30に連結されている。したがってスピンドルユニット25が固定軸14を中心にして旋回することにより、各カムフォロアー45,47,48がカム溝42,43,44に沿って走行する。その結果、カムフォロアー45がカム溝42の形状に従って上下動することにより、スピンドルユニット25および成形ヘッド18が上下動し、またカムフォロアー47がカム溝43の形状に従って上下動することにより、コーンカム27が上下動し、さらにカムフォロアー48がカム溝44の形状に従って上下動することにより、コーンカム29が上下動するように構成されている。なお、これらのカム機構による動作は後述する。
つぎにスピンドルユニット25を介して前記成形ヘッド18を回転させるための機構について説明する。ここで説明している例は、装置全体の構成を簡素化するために、単一の動力源で全ての動作を行わせるように構成されており、フレームターレット24を成形テーブル15と共に回転させることに伴って前記中空軸26およびこれに取り付けた成形ヘッド18を回転させるようになっている。具体的には、図6に示すように、前記固定軸14の上部で前記フレームターレット24を構成している上側の円板部より僅か下側の部分に太陽歯車49が固定されている。その太陽歯車49に噛み合っている遊星歯車50が、フレームターレット24における上側の円板部によって回転自在に保持されている。
この遊星歯車50に隣接する位置には、上側の円板部を貫通した第1の回転軸51が設けられており、その回転軸51の下端部には、遊星歯車50に噛み合っている中間歯車53が取り付けられ、かつ回転軸51の上端部には、駆動タイミングプーリ54が取り付けられている。さらに、フレームターレット24における上側の円板部の外周部分で各スピンドルユニット25に接近した位置には、上側の円板部を貫通して中間の円板部に下端部を回転自在に保持された二本の第2の回転軸55が設けられている。各第2の回転軸55の上端部には、前記駆動タイミングプーリ54と対をなす従動タイミングプーリ56が取り付けられている。また、各第2の回転軸55の中間部には、従動歯車57が取り付けられている。そして、前記中空軸26の外周部に設けられた細長歯車58にその従動歯車57が噛み合っている。
そして、図6に示すように、一つの駆動タイミングプーリ54と、互いに隣接する二つの従動タイミングプーリ56,56とにタイミングベルト59が巻き掛けられており、駆動タイミングプーリ54の歯車変更により、成形ヘッド18のスピン数を簡単に変更できるように構成されている。さらに、そのタイミングベルト59の弛み側の部分を、タイミングベルト59の走行経路の中心側に押圧するベルトテンショナー60が設けられ、タイミングベルト59の余長を取るようになっている。
上記の構成では、一つの遊星歯車50およびその遊星歯車50からトルクが伝達される駆動タイミングプーリ54に対して二つの従動タイミングプーリ56およびスピンドルユニット25を対応させているので、遊星歯車50およびその遊星歯車50からトルクが伝達される駆動タイミングプーリ54の数はスピンドルユニット25や成形ヘッド18の数の半分でよく、そのため、装置の全体としての構成を簡素化することができる。
つぎに上述した本発明に係るキャッピング装置の作用すなわち本発明の方法を説明する。図1は、成形加工の開始前の状態から終了するまでの一連の状態を展開図として示してあり、また図7Aから図7Fはその一連の状態のうちの特徴的な状態を示している。先ず、ボトル型缶1は図示しない所定のインフィードターレットなどによって成形テーブル15の保持部に供給され、前述したボディーガイド16およびネックガイド17によって直立状態に保持される。この状態では、成形ヘッド18が上方に引き上げられており、またキャップ粗形材3がボトル型缶1の口部10に被せられている。さらに、各ロール20,21は半径方向で外側に退避している(開いている)。
この状態から成形テーブル15およびスピンドルユニット25が固定軸14を中心にして所定角度回転すると、各カム溝42,43,44が揃って下側に傾斜して変位しているので、スピンドルユニット25の全体がボトル型缶1に向けて下降する。そして、プレッシャーブロック19が前記口部10に予め被せられているキャップ粗形材3の天板部4に下向きの荷重が加えられつつ、そのコーナー部などが所定の形状に絞り成形される。この状態を図1にS1工程として示し、またその詳細を図7Aに示してある。
これに続く回転位置(位相)では、上下二本のカム溝42,44の形状に変化がなく、これに対して中間のカム溝43が下側に傾斜して変位している。そのため、このカム溝43に係合しているカムフォロアー47およびそれと一体のスリーブ28のみが下側に移動する。このスリーブ28の下端部にコーンカム27が設けられ、そのコーンカム27は上側の外径が小さくなる実質上円錐形状となっているので、このコーンカム27の外周面に弾性力で接触しているカムフォロアー35がスピンドルユニット25の半径方向で内側に変位する。すなわち、ネジ成形ロール軸31が捩りコイルばね36の捩り力により回転するので、その下端部にアーム部34を介して保持されているネジ成形ロール20がキャップ粗形材3の外周面に向けて半径方向で内側に移動し、キャップ粗形材3の円筒部5の周面に接触して加圧する。
ネジ成形ロール軸31には、前述した捩りコイルばね36の弾性力が作用し、また成形ヘッド18の全体が回転させられているので、キャップ粗形材3の円筒部5は、前記口部10の雄ネジ部12に沿う形状にネジ成形ロール20によって変形させられ、かつネジ成形ロール20が雄ネジ部12に沿って螺旋状に移動させられる。その結果、キャップ粗形材3の円筒部10に雄ネジ部12に即した形状の雌ネジ部5aが成形される。この場合、スカート裾部9は自由状態になっているので、ネジ成形に対する抵抗力が少なく、また材料流動も円滑になるので、所期どおりのネジ成形が行われる。この状態を図1にS2工程として示し、また図7Bにその詳細を示してある。
このS2工程に続く回転位置(位相)では、前記中間部のカム溝43が上方側に傾斜して元の軸線方向の位置に戻っている。したがってネジ成形ロール20が元の位置すなわちキャップ粗形材3から半径方向で外側に離隔した位置に復帰する。ここでカム溝43、これに係合しているカムフォロアー47、スリーブ28、コーンカム27ならびにこれに接触しているカムフォロアー35から、ネジ成形ロール開閉機構が構成されている。
つぎに裾締め成形が行われる。これは、図1のS3工程であり、また図7Cの状態である。すなわち、上記のS2工程に続く部分では、三条のカム溝のうちの下側のカム溝44が下側に傾斜して変位しており、そのため、このカム溝44に係合しているカムフォロアー48およびそれと一体のスリーブ30のみが下側に移動する。このスリーブ30の下端部にコーンカム29が設けられ、そのコーンカム29は上側の外径が小さくなる実質上円錐形状となっているので、このコーンカム29の外周面に弾性力で接触しているカムフォロアー39がスピンドルユニット25の半径方向で内側に変位する。すなわち、裾締めロール軸32が捩りコイルばね40の捩り力により回転するので、その下端部にアーム部38を介して保持されている裾締めロール21がキャップ粗形材3のスカート裾部9の外周面に向けて半径方向に移動し、そのスカート裾部9の周面に接触して加圧する。裾締めロール軸32には、前述した捩りコイルばね40の弾性力が作用し、また成形ヘッド18の全体が回転させられているので、スカート裾部9は口部10に形成されている凸部13を包み込むように絞り成形される。
この裾締め成形加工に続く回転位置(位相)では、図1に示すように、下側のカム溝44が上側に傾斜して元の軸線方向の位置に戻っているため、カムフォロアー48およびスリーブ30ならびにコーンカム39が上側に移動し、その結果、裾締めロール21が元の位置すなわちキャップ粗形材3から半径方向で外側に離隔した位置に復帰する。これを図1にS4工程として示し、その詳細を図7Dに示してある。ここで、カム溝44、これに係合しているカムフォロアー48、スリーブ30、コーンカム29ならびにこれに接触しているカムフォロアー39から裾締めロール開閉機構が構成されている。
上記のように第1回目のネジ成形および裾締め成形が独立に行われた後、再度のネジ成形および裾締め成形が同時に行われる。すなわち、中間のカム溝43と下側のカム溝44とが、共に同じ寸法だけ下側に変位している。そのため、上記のS4工程に続く工程では、これらのカム溝43,44に係合しているカムフォロアー47,48およびこれらそれぞれ一体のスリーブ28,30ならびに各コーンカム27,29が、同時に下側に移動する。その結果、ネジ成形ロール20が、前述した第1回目のネジ成形が施された円筒部5すなわちネジ成形部に接触して第2回目のネジ成形が行われる。これと同時に、裾締めロール21が、第1回目の裾締め成形が施されたスカート裾部9すなわち裾締め成形部に接触して第2回目の裾締め成形が行われる。これを図1にS5工程として示し、またその詳細を図7Eに示してある。
このネジ部の仕上げ成形と裾締め部の再成形とが同時に行われるので、ネジ形成寸法が安定する。また、スカート裾部9に形成されているブリッジ部8の破断を防止もしくは回避することができる。さらに、ブリッジ部およびその近傍部分のルーズメタル(余剰金属もしくは余肉)を取り除くことができるので、開栓時のルーズメタルによる開栓角度の増大を防止し、開栓性を向上させることができる。そしてまた、先の裾締め成形やスプリングバックで浅くなったネジ成形部を仕上げ成形することにより、ネジ溝を深くして密閉性を向上させることができ、しかも一回当たりのネジ成形の押圧荷重を一回でネジ成形を完了させる場合に比して低下させることができる。
上記のS5工程に続く回転位置(位相)では、中間部および下側のカム溝43,44が上側に傾斜して元の軸線方向の位置に戻っているため、ネジ成形ロール20および裾締めロール21のそれぞれが半径方向で外側に開き、キャップ2から離隔する。これは、前述したS1工程と同様の状態であり、これを図1にS6工程として示し、またその詳細を図7Fとして示してある。
そして、これに続く部分では、各カム溝42,43,44が成形加工開始前の状態に戻るので、スピンドルユニット25がボトル型缶1の上方に引き上げられ、プレッシャーブロック19がキャップ2の天板部4から離れ、成形加工が終了する。したがって上記の装置では、中間部のカム溝43と下側のカム溝44、すなわちネジ成形のためのカム溝43と裾締め成形のためのカム溝44との加工領域における後半の部分でそれぞれの実効範囲(成形加工に直接寄与もしくは作用する範囲)が同位相となっており、そのために、再度(もしくは仕上げ)のネジ成形と裾締め成形とが同時に行われる。なお、上述した各カム溝42,43,44の形状の変化位置A,B,…,Rを図1に展開図で示してある。
また、上記の装置では、ネジ成形および裾締め成形のそれぞれを、開始から終了まで、天板部4をプレッシャーブロック19で押さえ付けたままの状態で行う。したがって前記プレッシャーブロック19に対してネジ成形ロール20をスタートさせる時の高さ位置と仕上げ成形する時の高さ位置のズレを防ぐことができ、そのため、ネジ成形の際に高すぎてネジの長さが短くなったり、反対に低すぎてネジ切り始めの位置が低くなったり、さらにはネジ終端部分にいわゆる跳ね上がり傷を生じさせたりするなどのトラブルを回避することができ、各成形部の仕上がり状態を良好なものとすることができる。
なお、上記の図に示す例では、1台の装置で全ての成形加工を行うように構成したが、本発明は上記の具体例に限定されないのであって、上述した複数の工程を2台以上の装置に分けて実行することとしてもよい。その場合、カム溝を三条とする必要はない。
さらに、上記の例では、一回目のネジ成形の後および一回目の裾締め成形の後のそれぞれで、各ロール20,21をキャップ2から半径方向に開かせることとしたが、一回目の裾締め成形の後に裾締めロール21を開くことなく、ネジ成形ロール20をキャップに接触させて再度のネジ成形加工を実行することとしてもよい。さらにまた、本発明では、口部の径が比較的大きい38mm以上の広口容器の口部にキャッピングする場合、その裾締め成形部のスプリングバックが少ないので、上述した第1回目の裾締め成形工程(第2工程)を省略して、第1工程(第1回目のネジ成形工程)の後に、第3工程(仕上げネジ成形加工と同時の裾締め成形加工の工程)を続けて行うようにしてもよい。そして、本発明で対象とする容器は、前述したボトル型缶以外にガラスびんや合成樹脂製容器などの適宜の容器であってもよい。
したがって、本発明のロールオンキャッピング方法によれば、再度のネジ成形時などの仕上げのネジ成形と同時に裾締め成形を行うので、口部が変形し易い金属製ボトル型缶の場合であっても、ネジ成形寸法の安定化を図り、密封性を維持することができ、しかも、容器の口部の変形を防止してキャップの密封性を維持することができ、またネジ仕上げ成形と裾締め成形を同時に行うことにより、ブリッジ部およびその近傍部分のルーズメタルを延ばし開栓性を向上させることが可能となる。
また、本発明のキャッピング装置によれば、ネジ成形ロール開閉機構と裾締めロール開閉機構とを作動させる成形ヘッドにおいて同一軸線上に独立して設けられた各円錐カムを、特別な作動手段を必要としない簡単な構成で別々に昇降動作させることができるため、装置の小型化や高速化への対応が有利になるとともに、作動カム上を1周する間に、複数回のネジ成形を異なる成形条件で実施することができるので、多品種のキャップへの対応が可能となる。
1…ボトル型缶、 2…キャップ、 3…キャップ粗形材、 4…天板部、 5…円筒部(スカート部)、 9…スカート裾部、 10…口部、 12…雄ネジ部(ネジ山)、 14…固定軸、 15…成形テーブル、 18…成形ヘッド、 19…プレッシャーブロック、 20…ネジ成形ロール、 21…裾締めロール、 22…ネジ成形ロール開閉機構、 23…裾締めロール開閉機構、 24…フレームターレット、 25…スピンドルユニット、 26…中空軸、 27…コーンカム、 28…スリーブ、 29…コーンカム、 30…スリーブ、 31…ネジ成形ロール軸、 32…裾締めロール軸、 33…アーム部、 34…アーム部、 35…カムフォロアー、 36…捩りコイルばね、 37…アーム部、 38…アーム部、 39…カムフォロアー、 40…捩りコイルばね、 41…枠体、 42,43,44…カム溝、 45…カムフォロアー、 46…筒状部材、 47…カムフォロアー、 48…カムフォロアー。