JP2005043142A - 光照射による分子挙動の観測方法、および同法に用いるクロスパイプ型マイクロ波空洞共振器 - Google Patents
光照射による分子挙動の観測方法、および同法に用いるクロスパイプ型マイクロ波空洞共振器 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】マイクロ波観測器4の導波管41の先端にクロスパイプ型のマイクロ波空洞共振器1を連結する一方、観測すべき試料Sを溶媒と混合して透光容器2内に充填し、この透光容器2を前記マイクロ波空洞共振器1の上部に開設されたホルダ孔11に差し込むとともに、
当該マイクロ波空洞共振器1の両側面に貫設された貫通孔12に向けて、レーザー光発生器3からレーザー光Lをパルス発振して、マイクロ波誘電吸収挙動を前記マイクロ波観測器4によって検出する一方、試料Sからの発光を前記分光器5に導いて、光電子増倍管6により過渡発光量を検出するという技術的手段を採用した。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機または無機材料の光化学的性質を測定する方法の改良、更に詳しくは、レーザー光の熱影響によるノイズの発生を防ぐことができ、しかも、新規なバリエーションの観測を実現することができる光照射による分子挙動の観測方法、および同法に用いるクロスパイプ型マイクロ波空洞共振器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
分子種の電子的励起状態の構造や反応については、光吸収や発光の観測を主とする分光学的手法に基いた研究が進められているが、最近では、マイクロ波の誘電損失の特性を利用して、非極性溶媒中に生じた短寿命活性種の濃度変化をその極性変化量から追跡する新しい実験法が適用され、それらの反応性の解明や、双極子モーメントの決定を主体にした研究が進められている。
【0003】
ところで、こうした研究をするために、従来、パルスレーザー光を用いて、無極性溶媒中における極性分子の誘電緩和に基づくマイクロ波エネルギー吸収の変化を時間分解測定する手法が提案されている(非特許文献1参照)。この手法では、試料にパルスレーザー光を照射し、マイクロ波誘電吸収法を利用することにより、光励起によって分子種の極性が変化する過程を高感度に検出することができる。
【0004】
また、分子にレーザー光を一定時間照射し、その後の分子の光の吸収量や生成物の双極子モーメントの変化量を誘電損失量として観測し、生成物の挙動をマイクロ波によって観測して明らかにすること(過渡吸収法)により、レーザー光照射において生成した生成物の吸光度を測定することができる。
【0005】
そして、マイクロ波装置の先端には空洞共振器が配設されており、この空洞共振器に試料を入れた容器をセットするのであるが、この従来の空洞共振器では、これに対しての光線の進入口が一箇所しかなく、レーザー光しか照射させることができなかった。
【0006】
しかも、その進入口はマイクロ波観測装置の導波管の取付側の対向面に形成されている場合が多く、レーザー光の出力が試料に対して高出力(約20mJ/cm2 以上)になると、試料を透過したレーザー光が空洞共振器の壁面に直接照射されて空洞共振器が加熱してしまい、その影響を受けて測定中にノイズが入るなどして正確な測定ができないという問題があった。
【0007】
また、レーザー光とフラッシュランプとを同時に使用できないため、経時的挙動をマイクロ波誘電吸収と過渡吸収法によって同時測定することができず、実験内容に進歩が見られなかった。
【0008】
【非特許文献1】
嶋森、外4名,「時間分解マイクロ波誘電吸収法による芳香族ケトンの励起三重項状態の検出とその双極子モーメント決定」,日本化学会誌(化学と工業化学),社団法人日本化学会,1989,No.8,
p.1379−1385
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の如き問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、レーザー光の熱影響によるノイズの発生を防ぐことができ、しかも、新規なバリエーションの観測を実現することができる光照射による分子挙動の観測方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明は、光照射による分子挙動を観測するために適した合理的な形状を呈するクロスパイプ型マイクロ波空洞共振器を提供することを技術的課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0012】
即ち、本発明は、レーザー光などを試料分子に照射して、その分子の挙動を観測するにあたり、
マイクロ波観測器4の導波管41の先端にクロスパイプ型のマイクロ波空洞共振器1を連結する一方、観測すべき試料Sを溶媒と混合して透光容器2内に充填し、この透光容器2を前記マイクロ波空洞共振器1の上部に開設されたホルダ孔11に差し込むとともに、
当該マイクロ波空洞共振器1において、前記導波管41の取付対向側の対面貫通孔13に光ファイバーを接続し、その末端に分光器5を配設し、当該マイクロ波空洞共振器1の両側面に貫設された貫通孔12に向けて、レーザー光発生器3からレーザー光Lをパルス発振して、前記差し込んだ透光容器2内の試料Sに照射し、このレーザー光を吸収した試料Sから前記導波管41に導かれたマイクロ波誘電吸収挙動を前記マイクロ波観測器4によって検出する一方、試料Sからの発光を前記分光器5に導いて、光電子増倍管6により過渡発光量を検出し、
これらの機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8に送信するという技術的手段を採用することによって上記課題を満足する光照射による分子挙動の観測方法を実現した点に特徴がある。
【0013】
また、本発明は、レーザー光などを試料分子に照射して、その分子の挙動を観測するにあたり、
マイクロ波観測器4の導波管41の先端にクロスパイプ型のマイクロ波空洞共振器1を連結する一方、観測すべき試料Sを溶媒と混合して透光容器2内に充填し、この透光容器2を前記マイクロ波空洞共振器1の上部に開設されたホルダ孔11に差し込むとともに、
当該マイクロ波空洞共振器1の両側面に貫設された一方の貫通孔12にフラッシュランプ7を配設し、かつ、このフラッシュランプ7と対向する貫通孔12には光ファイバーを接続し、その末端に分光器5を配設し、当該マイクロ波空洞共振器1において、前記導波管41の取付対向側に貫設された対面貫通孔13に向けて、レーザー光発生器3からレーザー光Lをパルス発振して、前記差し込んだ透光容器2内の試料Sに照射し、このレーザー光を吸収した試料Sから前記導波管41に導かれたマイクロ波誘電吸収挙動を前記マイクロ波観測器4によって検出する一方、前記レーザー光Lのパルス発振に同期させてフラッシュランプ7を発光させ、このフラッシュ発光を前記分光器5に導いて光電子増倍管6により過渡吸収量を検出し、
これらの機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8に送信するという技術的手段を採用した。
【0014】
また、本発明は、レーザー光などを試料分子に照射して、その分子の挙動を観測するにあたり、
マイクロ波観測器4の導波管41の先端にクロスパイプ型のマイクロ波空洞共振器1を連結する一方、観測すべき試料Sを溶媒と混合して透光容器2内に充填し、この透光容器2を前記マイクロ波空洞共振器1の上部に開設されたホルダ孔11に差し込むとともに、
当該マイクロ波空洞共振器1の両側面に貫設された一方の貫通孔12にフラッシュランプ7を配設し、かつ、このフラッシュランプ7と対向する貫通孔12には光ファイバーを接続し、その末端に分光器5を配設し、当該マイクロ波空洞共振器1において、前記導波管41の取付対向側に貫設された対面貫通孔13に向けて、レーザー光発生器3からレーザー光Lをパルス発振して、前記差し込んだ透光容器2内の試料Sに照射し、このレーザー光を吸収した試料Sから前記導波管41に導かれたマイクロ波誘電吸収挙動を前記マイクロ波観測器4によって検出する一方、フラッシュランプ7を停止せしめ、試料Sからの発光を前記分光器5に導いて、光電子増倍管6により過渡発光量を検出し、
これらの機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8に送信するという技術的手段を採用した。
【0015】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、分光器5に入射した光を撮影手段9によって撮影/記録し、この機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8に送信するという技術的手段を採用した。
【0016】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ガラス質材料で作製した透光容器2を使用するという技術的手段を採用した。
【0017】
また、本発明は、レーザー光などを試料分子に照射して、その分子の挙動を観測するために用いるクロスパイプ型のマイクロ波空洞共振器であって、
本体上部にはホルダ孔11が開設されており、このホルダ孔11には観測すべき試料Sを溶媒と混合して充填するための透光容器2が差し込み可能であって、かつ、この差し込んだ透光容器2内の試料Sに対し、レーザー光発生器3からレーザー光Lを発射して前記容器内の試料Sに照射することができ、かつ、マイクロ波空洞共振器本体1の両側面には当該レーザー光Lが貫通して外部に放出可能な貫通孔12が形成されており、
マイクロ波観測器4の導波管41の先端に連結可能であって、かつ、この取付対向側には対面貫通孔13を備えるという技術的手段を採用することによって上記課題を満足するクロスパイプ型マイクロ波空洞共振器を実現した点に特徴がある。
【0018】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、マイクロ波空洞共振器1におけるマイクロ波観測器4の導波管41の取付側の内部にアイリス板を配設し、空洞共振器の結合度を調節できるようにするという技術的手段を採用した。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を具体的に図示した図面に基いて更に詳細に説明すると次のとおりである。
【0020】
「第1実施形態」
まず、本発明の第1実施形態を図1から図4に基いて説明する。図中、符号1で指示するものはマイクロ波空洞共振器であり、このマイクロ波空洞共振器1の本体上部にはホルダ孔11が開設されており、このホルダ孔11には観測すべき試料Sを溶媒と混合して充填するための透光容器2が差し込み可能であって、かつ、マイクロ波空洞共振器本体1の両側面には当該レーザー光Lが貫通して外部に放出可能な貫通孔12が形成されており、更に、
マイクロ波観測器4の導波管41の先端に連結可能であって、かつ、この取付対向側には対面貫通孔13を備えている(図1参照)。
【0021】
また、符号2で指示するものは試料S(本実施形態では、例えば、芳香族カルボニルや芳香族アミンなどの有機材料)を充填するための透光容器であり、この透光容器2はガラス質材料で作製したものを使用する。なお、本実施形態に使用する透光容器2は石英製であり、光路が2mmの長方形状である(図2参照)。
【0022】
本実施形態では、前記試料Sと混合する溶媒には無極性であるベンゼンを用いた。試料溶液の濃度は、エキシマレーザーを励起光とする場合、308 nmの吸光度が1、YAGレーザーの場合、355 nmの吸光度が0.5となるように調製した。
なお、全ての試料溶液はArガスバブリングにより脱酸素したものを用いる。
【0023】
しかして、本実施形態における観測方法を図4に示す観測装置の模式配置図に基いて以下に説明する。本実施形態では、レーザー発生器3から発振するレーザー光Lの出力を低出力(約20mJ/cm2 以下)にして、フラッシュランプ7を併用して過渡発光および過渡吸収を観測する。
【0024】
まず、準備として、マイクロ波観測器4の導波管41の先端にクロスパイプ型のマイクロ波空洞共振器1を連結する一方、観測すべき試料Sを溶媒と混合して透光容器2内に充填し、この透光容器2を前記マイクロ波空洞共振器1の上部に開設されたホルダ孔11に差し込む(図3参照)。この際、マイクロ波空洞共振器1におけるマイクロ波観測器4の導波管41の取付側の内部にアイリス板を配設することができ、このアイリス板を絞り調節することにより、空洞共振器の結合度を調節できる。
【0025】
そして、当該マイクロ波空洞共振器1の両側面に貫設された一方の貫通孔12にフラッシュランプ7を配設し、かつ、このフラッシュランプ7と対向する貫通孔12には光ファイバーを接続し、その末端に分光器5を配設する。
【0026】
当該マイクロ波空洞共振器1において、前記導波管41の取付対向側に貫設された対面貫通孔13に向けて、レーザー光発生器3からレーザー光Lをパルス発振して、前記差し込んだ透光容器2内の試料Sに照射する。
【0027】
本実施形態では、マイクロ波の回路はXバンドのものを使用しており、励起光源はXeClエキシマレーザー(Lambda Pysik社製)308 nmのパルス光(25ns、約3mJ)もしくは、Nd:YAGレーザー(スペクトラ・フィジックス株式会社製) 355nmのパルス光(5ns、約3mJ)をマイクロ波空洞共振器1内の透光容器2内の試料Sに照射する。
【0028】
そして、前記導波管41に導かれたマイクロ波誘電吸収挙動を前記マイクロ波観測器4によって検出し、オシロスコープA(Sony Tektronix社製)にデータ送信し記憶させる。
【0029】
また、前記レーザー光Lのパルス発振に同期させてフラッシュランプ7を発光させ、このフラッシュ発光を前記分光器5(Jobin Yvon社製)に導いて、光電子増倍管6により過渡吸収量を検出する。また、試料Sからの発光を前記分光器5に導いて、光電子増倍管6により過渡発光量を検出する。
【0030】
本実施形態では、レーザー照射後、容器内の誘電損失変化量に比例する信号をマイクロ波回路で、励起光から直角方向に位置するXeフラッシュランプ7からのモニター光を用いて、過渡吸収信号をiCCDカメラ9(ORIEL 社製)もしくは光電子増倍器6(浜松フォトニクス社製)により同時に観測することができる。
また、マイクロ波観測器4(マイクロ電子株式会社製)は、TE102 モードで共振し、電場を阻害しない位置に励起光、モニター光を入れる孔を開けている。
【0031】
そして、これらの機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8(COMPAQ社製)に送信することによって、光照射による分子挙動を観測することができるのである。
【0032】
〔実験具体例〕
図5から図7に、308 nmのエキシマレーザー光を励起光としたときの観測結果を示す。なお、試料物質はベンジル(アルドリッチ社製:98%)を再結晶精製したものを使用し、溶媒であるベンゼンは紫外線吸収スペクトル用純溶媒を用
い、吸光度1に調製した。また、試料溶媒はArガスバブリングにより脱酸素したものを用いる。図5はレーザー照射1μs後にiCCDカメラによって得た吸収スペクトルのグラフであり、スペクトルは約480 nmに極大を示している。この極大は励起三重項状態ベンジルの吸収極大に対応する。
【0033】
また、図6は、480nmにおける光学密度の時間依存の結果である。レーザー照射直後、光学密度は時間と共に一次に減衰しており、この寿命は約5.3μsである。
【0034】
次に、図7は、マイクロ波誘電吸収法により測定した結果である。ここで、図6および図7は同時刻に測定したグラフ結果である。図7の信号はレーザー照射後に振幅が急に変化し、時間と共に照射前の振幅に戻っている。この振幅Vは次式で表わされる。
【0035】
【数1】
【0036】
したがって、本測定において、基底状態に比べ励起種の双極子モーメントの値が増大した場合、振幅Vは正の値を示すように設定されている。これらのことから、本測定においてもベンジルの励起三重項状態はその基底状態に比べ、双極子モーメントが減少していることがわかる。
【0037】
また、図7の信号振幅のグラフを上下逆転させて、図6の振幅を規格化して重ね合わせてみたところ、高い一致が得られた。このことは、両測定法が異なる視点から同じ事象を観測していることの証明となるべきものであり、今後の研究において、励起種、イオン、ラジカルなどの中間活性種の挙動を観測する上で、有効な手法となり得ると云える。
【0038】
「第2実施形態」
次に、本発明の第2実施形態を図8に示す観測装置の模式配置図に基いて以下に説明する。本実施形態では、レーザー発生器3から発振するレーザー光Lの出力を高出力(約20mJ/cm2 以上)にして、過渡発光およびマイクロ波誘電吸収を観測する。
【0039】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、マイクロ波観測器4の導波管41の先端にクロスパイプ型のマイクロ波空洞共振器1を連結する一方、観測すべき試料Sを溶媒と混合して透光容器2内に充填し、この透光容器2を前記マイクロ波空洞共振器1の上部に開設されたホルダ孔11に差し込むとともに、当該マイクロ波空洞共振器1において、前記導波管41の取付対向側の対面貫通孔13に分光器5を配設する。
【0040】
本実施形態では、当該マイクロ波空洞共振器1の両側面に貫設された貫通孔12に向けて、レーザー光発生器3からレーザー光Lをパルス発振して、前記差し込んだ透光容器2内の試料Sに照射し、このレーザー光を吸収した試料Sから前記導波管41に導かれたマイクロ波誘電吸収挙動を前記マイクロ波観測器4によって検出する一方、試料Sからの発光を前記分光器5に導いて、光電子増倍管6により過渡発光量を検出する。
【0041】
そして、これらの機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8に送信する。なお、分光器5に入射した光を撮影手段9(iCCDカメラ)によって撮影/記録し、この機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8に送信することもできる。
【0042】
本発明は概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、マイクロ波空洞共振器1の貫通孔12の位置は、レーザー光が貫通できる形状であって、必要に応じて、複数の観測機器を同時に配置できれば良い。また、透光容器2の使用材料は石英に限らず、マイクロ波に影響を与えないプラスチックなどを採用することもできる。
【0043】
また、本実施形態において測定する試料Sは、有機材料に限らず、蓄光材料
(例えば、ユーロビウムやデスプロシウム、ストロンチウム等の化合物)や半導体材料(例えば、酸化チタン)などの無機材料を用いて性質を測定することもでき、何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【0044】
【発明の効果】
以上、実施形態をもって説明したとおり、本発明においては、マイクロ波空洞共振器の形状をクロスパイプ型に作製したことにより、複数の光線を入射することができ、全く新しい手法によって分子挙動を観測することができる。しかも、高出力のレーザー光を照射する際でも、空洞共振器の壁面に直接照射されるのを防ぐことができ、生じる熱によるノイズを取り除くことができる。
【0045】
従って、光照射によって生じる生成物を観測する分子の挙動実験において、両測定法が異なる視点から同じ事象を観測していることを証明となるべきものであり、今後の研究において、励起種、イオン、ラジカルなどの中間活性種の挙動を観測する上で、有効な手法となり得ると云える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のクロスパイプ型マイクロ波空洞共振器を表わす斜視図である。
【図2】本発明の透光容器を表わす斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態の観測方法における工程の一部を表わす説明側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における観測装置の模式配置図である。
【図5】本発明の第1実施形態の観測方法における実験具体例の観測結果を表わすグラフ図である。
【図6】本発明の第1実施形態の観測方法における実験具体例の観測結果を表わすグラフ図である。
【図7】本発明の第1実施形態の観測方法における実験具体例の観測結果を表わすグラフ図である。
【図8】本発明の第2実施形態における観測装置の模式配置図である。
【符号の説明】
1 マイクロ波空洞共振器
11 ホルダ孔
12 貫通孔
13 対面貫通孔
2 透光容器
3 レーザー光発生器
4 マイクロ波観測器
41 導波管
5 分光器
6 光電子増倍管
7 フラッシュランプ
8 コンピュータ演算手段
9 撮影手段
A オシロスコープ
S 試料
Claims (7)
- レーザー光などを試料分子に照射して、その分子の挙動を観測するにあたり、
マイクロ波観測器4の導波管41の先端にクロスパイプ型のマイクロ波空洞共振器1を連結する一方、観測すべき試料Sを溶媒と混合して透光容器2内に充填し、この透光容器2を前記マイクロ波空洞共振器1の上部に開設されたホルダ孔11に差し込むとともに、
当該マイクロ波空洞共振器1において、前記導波管41の取付対向側の対面貫通孔13に光ファイバーを接続し、その末端に分光器5を配設し、当該マイクロ波空洞共振器1の両側面に貫設された貫通孔12に向けて、レーザー光発生器3からレーザー光Lをパルス発振して、前記差し込んだ透光容器2内の試料Sに照射し、このレーザー光を吸収した試料Sから前記導波管41に導かれたマイクロ波誘電吸収挙動を前記マイクロ波観測器4によって検出する一方、試料Sからの発光を前記分光器5に導いて、光電子増倍管6により過渡発光量を検出し、
これらの機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8に送信することを特徴とする光照射による分子挙動の観測方法。 - レーザー光などを試料分子に照射して、その分子の挙動を観測するにあたり、
マイクロ波観測器4の導波管41の先端にクロスパイプ型のマイクロ波空洞共振器1を連結する一方、観測すべき試料Sを溶媒と混合して透光容器2内に充填し、この透光容器2を前記マイクロ波空洞共振器1の上部に開設されたホルダ孔11に差し込むとともに、
当該マイクロ波空洞共振器1の両側面に貫設された一方の貫通孔12にフラッシュランプ7を配設し、かつ、このフラッシュランプ7と対向する貫通孔12には光ファイバーを接続し、その末端に分光器5を配設し、当該マイクロ波空洞共振器1において、前記導波管41の取付対向側に貫設された対面貫通孔13に向けて、レーザー光発生器3からレーザー光Lをパルス発振して、前記差し込んだ透光容器2内の試料Sに照射し、このレーザー光を吸収した試料Sから前記導波管41に導かれたマイクロ波誘電吸収挙動を前記マイクロ波観測器4によって検出する一方、前記レーザー光Lのパルス発振に同期させてフラッシュランプ7を発光させ、このフラッシュ発光を前記分光器5に導いて光電子増倍管6により過渡吸収量を検出し、
これらの機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8に送信することを特徴とする光照射による分子挙動の観測方法。 - レーザー光などを試料分子に照射して、その分子の挙動を観測するにあたり、
マイクロ波観測器4の導波管41の先端にクロスパイプ型のマイクロ波空洞共振器1を連結する一方、観測すべき試料Sを溶媒と混合して透光容器2内に充填し、この透光容器2を前記マイクロ波空洞共振器1の上部に開設されたホルダ孔11に差し込むとともに、
当該マイクロ波空洞共振器1の両側面に貫設された一方の貫通孔12にフラッシュランプ7を配設し、かつ、このフラッシュランプ7と対向する貫通孔12には光ファイバーを接続し、その末端に分光器5を配設し、当該マイクロ波空洞共振器1において、前記導波管41の取付対向側に貫設された対面貫通孔13に向けて、レーザー光発生器3からレーザー光Lをパルス発振して、前記差し込んだ透光容器2内の試料Sに照射し、このレーザー光を吸収した試料Sから前記導波管41に導かれたマイクロ波誘電吸収挙動を前記マイクロ波観測器4によって検出する一方、フラッシュランプ7を停止せしめ、試料Sからの発光を前記分光器5に導いて、光電子増倍管6により過渡発光量を検出し、
これらの機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8に送信することを特徴とする光照射による分子挙動の観測方法。 - 分光器5に入射した光を撮影手段9によって撮影/記録し、この機器から得たデータ信号をコンピュータ演算手段8に送信することを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の光照射による分子挙動の観測方法。
- ガラス質材料で作製した透光容器2を使用することを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の光照射による分子挙動の観測方法。
- レーザー光などを試料分子に照射して、その分子の挙動を観測するために用いるクロスパイプ型マイクロ波空洞共振器であって、
本体上部にはホルダ孔11が開設されており、このホルダ孔11には観測すべき試料Sを溶媒と混合して充填するための透光容器2が差し込み可能であって、かつ、この差し込んだ透光容器2内の試料Sに対し、レーザー光発生器3からレーザー光Lを発射して前記容器内の試料Sに照射することができ、かつ、マイクロ波空洞共振器本体1の両側面には当該レーザー光Lが貫通して外部に放出可能な貫通孔12が形成されており、
マイクロ波観測器4の導波管41の先端に連結可能であって、かつ、この取付対向側には対面貫通孔13を備えたことを特徴とする光照射による分子挙動の観測に用いるクロスパイプ型マイクロ波空洞共振器。 - マイクロ波空洞共振器1におけるマイクロ波観測器4の導波管41の取付側の内部にアイリス板が配設されており、空洞共振器の結合度を調節できることを特徴とする請求項6記載の光照射による分子挙動の観測に用いるクロスパイプ型マイクロ波空洞共振器。
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- 2003-07-25 JP JP2003201538A patent/JP4401700B2/ja not_active Expired - Fee Related
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