JP2005041252A - 車両用空調装置 - Google Patents

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秀哲 立野井
Katsuhiro Fujita
勝博 藤田
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和喜 丹羽
Kazuyuki Isaka
和幸 井坂
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Abstract

【課題】誤りなく冷媒量不足を検出する車両用空調装置を提供する。
【解決手段】凝縮器7における放熱量を推定する車速センサ31と、車速センサ31の推定結果に基づいて、冷媒量不足の判断基準となる高圧基準値Pを算出する高圧基準値算出手段41と、高圧基準値算出手段41の出力結果と、吐出圧力センサ21の出力結果とを比較し、冷媒量不足を判断する冷媒量不足判断手段45とを備えていることを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷媒量不足を検知する手段を有した車両用空調装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
乗用車等の車両の空調に用いられる車両用空調装置では、冷凍サイクルを構成する各機器あるいは冷媒配管の不具合により、冷媒が漏出する場合がある。冷媒が漏出すると冷凍サイクルに必要な冷媒量が不足し、この状態のまま運転を続けると、冷媒によって圧縮機に持ち込まれる潤滑剤が不十分となり、これにより圧縮機の寿命が低下してしまうという問題がある。
したがって、冷媒量不足を検出して、圧縮機を停止する制御が必要となる。このような冷媒量不足を検出する手段については、従来より種々報告されている。
【0003】
このような圧縮機として、例えば特開平6−19404号公報(特許文献1)に示されるものがある。
上記特許文献1には、圧縮機の吸入圧力によって冷媒量不足を判断する技術が示されている。つまり、冷媒量不足となる吸入圧力を予めマップとして得ておき、これと運転中の吸入圧力とを比較することによって冷媒量不足を判断している。このマップは、圧縮機の吸入圧力が外気温度や圧縮機の回転数によって変動することを考慮して、外気温度および圧縮機の回転数によって補正されたものとなっている。
【0004】
また、特開2001−12830号公報(特許文献2)には、ホットガスバイパスによる暖房モード時における冷媒漏れを検出する技術が開示されている。
つまり、圧縮機の吐出側に設けられた圧力センサによって高圧圧力を検出し、この高圧圧力が冷媒不足領域に入るか否かによって冷媒不足を判断している。冷媒不足領域は、外気温と高圧圧力に基づいて決定されており、予めマップ化されてマイクロコンピュータのROMに記憶されている。また、圧縮機の回転数、蒸発器へ流れ込む風量、高圧冷媒および低圧冷媒の過熱度によって、マップを補正することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−194014号公報(段落[0022]〜[0026]及び図2)
【特許文献2】
特開2001−12830号公報(段落[0034]〜[0062]、ならびに図1及び図2)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記両特許文献に記載された冷媒量不足を検知する方法は、冷媒量不足の判定基準となる閾値圧力について外気温度や圧縮機の回転数を考慮して補正しているが、実際には他の影響によっても冷媒圧力は変動する。
つまり、同じ圧縮機の回転数で同じ外気温度であっても、車両の速度が異なれば冷媒圧力は変動する。例えば、車両速度が上昇してもギアがシフトアップするので、エンジンから動力を得ている圧縮機の回転数はほぼ一定に保たれる。このように、圧縮機の回転数および外気温度が同じであっても、車両速度が異なるという状況が生じる。この場合、車両速度が大きいほど凝縮器に多くの風量が流入して放熱量が増大するので、圧縮機吐出側の高圧冷媒の圧力は減少する。
したがって、上記両特許文献に記載された従来技術では、冷媒不足を誤検知してしまうという問題があった。
【0007】
確かに、上記特許文献2には、蒸発器の風量を考慮した補正を行うことが記載されている。しかしながら、車両用空調機の蒸発器は、室内近傍に配置されているので、車両速度の違いによる風量の大小にはあまり影響がない。したがって、特許文献2記載の従来技術であっても、車両速度の違いによる高圧冷媒圧力の変動を補正することができない。
もっとも、特許文献2に記載された技術は、ホットガスバイパスを用いた暖房運転時を対象としており、凝縮器に冷媒を積極的に流さない場合のものである。ゆえに、車両速度が凝縮器に与える影響についてはそもそも考慮されていない。
【0008】
以上の従来技術の問題点に鑑み、本発明は、誤りなく冷媒量不足を検出する車両用空調装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
本発明の車両用空調装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機により圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、該凝縮器を通過した冷媒を減圧する減圧手段と、該減圧手段を通過した冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する吐出圧力センサと、を備えた車両用空調装置において、前記凝縮器における放熱量を推定する放熱量推定手段と、前記放熱量推定手段の推定結果に基づいて、冷媒量不足の判断基準となる閾値圧力を算出する閾値圧力算出手段と、該閾値圧力算出手段の出力結果と、前記吐出圧力センサの出力結果とを比較し、冷媒量不足を判断する冷媒量不足判断手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
冷媒量不足の指標としては、適正な冷媒量との差異が大きいことから、圧縮機から吐出された冷媒の圧力が適している。発明者らは、この吐出圧力の変動に大きく寄与するものとして、凝縮器における放熱量に着目した。すなわち、凝縮器における放熱量が大きい場合には吐出圧力は低下し、凝縮器における放熱量が小さい場合には吐出圧力は上昇する。この放熱量に応じた吐出圧力の変化を加味して、冷媒量不足の判断の閾値となる閾値圧力を算出する。これにより、冷媒量不足の誤検知を回避することができる。
凝縮器における放熱量は、放熱量推定手段によって推定する。放熱量は、その大小が推定できればよく、厳密に放熱量を見積もる必要はない。つまり、放熱量に関連する温度、圧力、風速等の情報が放熱量推定に用いられる。
閾値圧力算出手段は、例えば、外気温度に対する閾値圧力をマッピングした閾値圧力特性マップを備えており、このマップを参照することによって閾値圧力を算出する。
【0011】
また、前記放熱量推定手段は、外気温を検出する外気温センサと、前記凝縮器を通過する風量を推定する風量推定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
外気温度に応じて凝縮器の放熱量は変化する。つまり、外気温が高い場合には凝縮器における放熱量は減少し、外気温が低い場合には凝縮器における放熱量は増加する。この外気温度による放熱量の変動を加味する手段として外気温センサを備えている。
また、凝縮器を通過する風量に応じて凝縮器の放熱量は変化する。つまり、風量が少ない場合には放熱量は減少し、風量が多い場合には放熱量が増加する。この風量による放熱量の変動を加味する手段として、風量を推定する風量推定手段を備えている。
風量推定手段としては、風速センサ、凝縮器に設けられたファンの回転数検出センサ、車両の速度を検出する車速センサが挙げられる。もちろん、これらのセンサを組み合わせてもよい。
【0013】
また、風量推定手段は、車両の速度を検出する車速センサとされていることを特徴とする。
車速センサは、一般の車両であれば備えている。したがって、簡易でかつ効果的な風量推定手段としては、車速センサが好適である。
【0014】
また、前記放熱量推定手段は、前記凝縮器に液体が付着したか否かを判別する液体付着判別手段を備えていることを特徴とする。
凝縮器に液体(例えば雨滴)が付着した場合、この付着液体は蒸発する際に蒸発潜熱を凝縮器から奪う。したがって、この蒸発潜熱分だけ凝縮器の放熱量が増大することになる。この液体の付着・蒸発による放熱量の変動を加味する手段として、液体付着判別センサを備えている。
【0015】
また、前記液体付着判別手段は、日射センサとされていることを特徴とする。
日射センサによる日射量が小さい場合には雨天と判断し、凝縮器に雨滴(液体)が付着したものと判断する。
ただし、日射センサから得られる日射量では、雨天と曇天との区別がつかない場合がある。しかし、曇天であれば、晴天時に比べて、輻射熱による温度上昇が小さいので凝縮器周りの流体温度は低くなる。したがって、凝縮器の放熱量が大きいものと判断しても差し支えない。
なお、雨天と曇天とを区別するために、車両のフロントガラスに設けられたワイパーの駆動の有無を検出するワイパー動作検出手段を設けても良い。
【0016】
また、前記蒸発器における吸熱量を推定する吸熱量推定手段を備えていることを特徴とする。
圧縮機から吐出された冷媒の吐出圧力の変動に寄与するものとして、蒸発器における吸熱量がある。すなわち、蒸発器における吸熱量が大きい場合には、それだけ冷媒が蒸発するので吐出圧力は増加し、逆に、蒸発器における吸熱量が小さい場合には吐出圧力は減少する。したがって、吸熱量が大きい場合は閾値圧力を高く設定し、吸熱量が小さい場合は閾値圧力を低く設定する。吸熱量推定手段によって吸熱量を推定することにより、適切な閾値圧力を設定する。
吸熱量推定手段としては、蒸発器に流入する流体温度を検出する温度センサが挙げられる。温度センサによる検出温度が高い場合、蒸発器における吸熱量が大きいので、閾値圧力を高く設定する。
【0017】
また、前記吸熱量推定手段は、蒸発器に流入する流体が車両外の外気とされる外気モードか車両内の内気とされる内気モードかを検出する内外気モード検出手段とされていることを特徴とする。
外気を蒸発器に導入する場合、外気は循環内気よりも高温であるのが通常であるため、内気に比べて交換熱量は大きいと考えられる。したがって、外気モードでは蒸発器における吸熱量が多いので、閾値圧力が高く設定される。これに対して、内気モードでは、吸熱量が少ないので、閾値圧力が低く設定される。このように、内外気モード検出手段によって内気モードまたは外気モードを検出することにより、適切な閾値圧力を設定する。
特に、内外気モード検出手段は、一般の車両に設けられているので、簡便に吸熱量を推定することができる。
【0018】
本発明の車両用空調装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機により圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、該凝縮器を通過した冷媒を減圧する減圧手段と、該減圧手段を通過した冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する吐出圧力センサと、を備えた車両用空調装置において、前記蒸発器における吸熱量を推定する吸熱量推定手段と、前記吸熱量推定手段の推定結果に基づいて、冷媒量不足の判断基準となる閾値圧力を算出する閾値圧力算出手段と、該閾値圧力算出手段の出力結果と、前記吐出圧力センサの出力結果とを比較し、冷媒量不足を判断する冷媒量不足判断手段と、を備えていることを特徴とする。
つまり、放熱量推定手段との組み合わせでなく、吸熱量推定手段を単独で備えていても良い。吸熱量推定手段によって吸熱量を推定することにより、吐出圧力の変動に応じた適切な閾値圧力を設定することができ、誤りなく冷媒量不足を検知することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる車両用空調装置の一実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、車両用空調装置の構成を模式的に示したブロック図である。
車両用空調装置1は、車両に設置されたエンジン3と、このエンジン3から動力を得て駆動する圧縮機5と、この圧縮機5によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器7と、この凝縮器7において液化した液冷媒を膨張させる膨張弁(膨張手段)9と、この膨張弁9によって低温低圧となった液冷媒を蒸発させる蒸発器11と、を主として備えている。
【0020】
エンジン3の回転動力は、エンジン側プーリ13と圧縮機側プーリ15との間に巻回されたベルト17を介して、圧縮機5に伝達されるようになっている。
圧縮機5の駆動軸端部に設けられた圧縮機側プーリ15と圧縮機5との間には、電磁クラッチ19が設けられている。この電磁クラッチ19により、圧縮機側プーリ15と圧縮機5の駆動軸との連結・非連結が行われるようになっている。電磁クラッチ19に対して、制御部23からの連結・非連結の指令が信号線19aを介して送られるようになっている。
【0021】
圧縮機5において圧縮されて吐出された冷媒の高圧圧力(吐出圧力)Phは、吐出圧力センサ21によって検出される。この検出出力は、信号線21aを介して制御部23へと送られる。
【0022】
凝縮器7は、圧縮機5から吐出された高温高圧の冷媒の熱を外気に対して放熱し、冷媒を凝縮液化するものである。この凝縮器7は、車両のフロントグリル近傍に配置されており(図示せず)、走行時に外気を導入しやすいようになっている。外気の流れからみて凝縮器7の上流側には、外気温度を検出する外気温度センサ25が設けられている。この外気温度センサ25の検出出力は、信号線25aを介して制御部23に送られる。
凝縮器7から流出した冷媒は、レシーバ27にて一時貯留される。このレシーバ27で冷媒中の気泡が取り除かれ、気液が分離される。
【0023】
蒸発器11は、膨張弁9にて膨張して低温低圧となった液冷媒と導入空気との間で熱交換させることによって、冷媒を蒸発させるものである。
導入空気としては、車室内の空気である内気、あるいは車両外の空気である外気が用いられる。内気を循環させる内気モードおよび外気を導入する外気モードは、内外気切替ダンパ28によって切り替えられるようになっている。内気モードまたは外気モードを検出する内外気検出センサ(内外気検出手段)が内外気切替ダンパ28に設けられており、その出力信号は、信号線28aを介して制御部23に送られる。
導入空気からみて蒸発器11の下流側には、フロストサーモ29が配置されている。このフロストサーモ29により、蒸発器11における着霜を回避するようになっている。フロストサーモ29の検出出力は、信号線29aを介して制御部23へと送られる。
【0024】
制御部23は、電源35から電力を供給されて動作するようになっており、上述した吐出圧力センサ21、外気温度センサ25、内外気切替ダンパ28およびフロストサーモ29からの信号に加えて、車速センサ(放熱量推定手段,風量推定手段)31、日射センサ(液体付着判別手段)33、及び空調操作部37からの信号も入力されるようになっている。
【0025】
車速センサ31は、車両の速度を検出するものであり、一般の車両に標準的に取り付けられているものである。この車速センサ31の出力信号は、信号線31aを介して制御部23に送られる。
日射センサ33は、日射量を測定するセンサであり、車両のフロントガラス近傍に配置される(図示せず)。この日射センサ33の出力信号は、信号線33aを介して制御部23に送られる。
空調操作部37は、車室内に設けられており、この操作部から温度設定や風量設定が行われる。
【0026】
図2には、制御部23の詳細を示したブロック図が示されている。
制御部23は、高圧基準値算出手段(閾値圧力算出手段)41と、冷媒量不足判断手段45とを備えている。
高圧基準値算出手段41には、外気温度センサ25から外気温度T0、車速センサ31から車速Sv、日射センサ33から日射量Qs、および内外気切替ダンパ28から内気モードまたは外気モードのいずれかのモードが入力される。
高圧基準値算出手段41は、車速センサ31からの車速Svに応じて、低速、中速および高速のいずれかを判断する。本実施形態では、低速は0〜20km/h、中速は21〜60km/h、高速は61km/hとしている。
高圧基準値算出手段41は、日射センサ33の日射量Qsに基づいて、晴天か雨天(晴天以外)かを判断する。
【0027】
高圧基準値算出手段41は、高圧基準値特性マップ(閾値圧力特性マップ)43を備えており、各センサ25,31,33,28から得た情報に基づいて、高圧基準値特性マップ43を参照する。高圧基準値特性マップ43は、車両に備えたマイクロコンピュータのメモリに格納されている。このマップ43は、外気温度に対する高圧基準値を、車速、内外気、天候をパラメータとして表したものである(後述)。この高圧基準値特性マップ43を参照して、高圧基準値算出手段41が冷媒量不足の判断基準となる高圧基準値Pを算出する。
【0028】
冷媒量不足判断手段45には、高圧基準値算出手段41において得られた高圧基準値Pと、吐出圧力センサ21で得られた高圧圧力Phとが入力される。高圧圧力Phが高圧基準値P以下の場合は冷媒量不足と判断し、高圧圧力Phが高圧基準値Pよりも大きい場合は冷媒が正常と判断する。
【0029】
図3には、高圧基準値特性マップ43の具体例が示されている。
このマップ43は、横軸が外気温度(℃)、縦軸が高圧基準値P(MPa−abs)となっている。
このマップ43は、車速(低速、中速、高速)、天候、内気または外気をパラメータとしている。
車速が上昇するほど、高圧基準値Pが減少するようになっている。これは、車速が上昇するほど、凝縮器7に流入する風量が多くなり放熱量が増大し、凝縮器7での冷媒の凝縮量が増加して高圧圧力Phが低下するからである。このように凝縮器7における放熱量と高圧圧力Phの関係を補正するように、マップ43は、放熱量の増減に応じて高圧基準値Pを変化させるようにしている。
【0030】
雨天の場合、凝縮器7に雨滴が付着する。この雨滴が蒸発する際に持ち去る蒸発潜熱によって、凝縮器7の放熱量は増大する。これを補正するように、マップ43は、日射センサ33からの情報に基づいて雨天と判断した場合、高圧基準値Pを晴天の場合に比べて低下させるようにしている。
なお、本実施形態においては日射センサ33によって晴天または雨天を判断しているが、日射量が少ない場合であっても雨天とは限らず曇天の場合もありうる。しかし、曇天であっても日射量が少ないため凝縮器7回りの流体温度は低いものと考えられる。したがって、晴天の場合に比べて放熱量が多いと判断しても差し支えない。
【0031】
外気モードの場合、冷房運転では、既に冷やされた内気を循環させる内気モードよりも高い温度の流体が蒸発器11に持ち込まれる。高い温度の流体が蒸発器11に流入するほど、蒸発器11における吸熱量が増加し多くの冷媒が蒸発するので、高圧圧力Phは上昇する。この蒸発器11における吸熱量を考慮した補正をするために、マップ43は、外気モードの場合の高圧基準値Pを内気モードに比べて増加させるようにしている。
なお、本実施形態における高圧基準値特性マップ43は、概略単調に増加する線図で構成している。これは、なるべく折曲部を少なくした線図により簡易な制御式を与えることによって、演算装置およびメモリの負担を軽減するためである。
【0032】
図4〜図6には、それぞれ、低速、中速、高速における高圧基準値特性マップが示されている。
各図において、横軸は外気温度(℃)、縦軸は高圧基準値P(MPa−abs)となっている。
これらの図からわかるように、晴天と晴天以外(雨天、曇天)とでは、高圧基準値Pが異なるように設定されている。すなわち、凝縮器11での放熱量が多い晴天以外では、晴天よりも高圧基準値Pを低く設定している。
また、各図の(a)と(b)を比較すればわかるように、内気モード(a)と外気モード(b)とでは高圧基準値Pが異なるように設定されている。すなわち、図3を用いて説明したように、外気モードでは蒸発器11に流入する流体温度が高く吸熱量が多いので、内気モードよりも高圧基準値Pを高く設定している。
【0033】
以上説明した本実施形態にかかる車両用空調機は、以下のように冷房運転を行う(図1参照)。
ガス冷媒は、圧縮機5により圧縮され、高温高圧のガス冷媒となる。この高温高圧のガス冷媒は、冷媒配管39aを通り凝縮器7へと導かれ、凝縮機7において外気と熱交換する。すなわち、高温高圧のガス冷媒は、外気に対して放熱することにより凝縮し、液冷媒となる。この液冷媒は、レシーバ27にて気泡が取り除かれ気液が分離された後に、冷媒配管39bを通り膨張弁9へと導かれる。
液冷媒は、膨張弁9によって膨張させられ、低温低圧の液冷媒となる。この低温低圧の液冷媒は、冷媒配管39cを通り蒸発器11へと導かれる。冷媒は蒸発器11において導入空気と熱交換する。すなわち、低温低圧の液冷媒は、導入空気から吸熱し、蒸発してガス冷媒となる。
蒸発したガス冷媒は、冷媒配管39dを通り再び圧縮機5に流入し、前述のように圧縮される。
【0034】
このような冷凍サイクルを行う車両用空調装置1は、冷媒配管39や各機器5,7,9,11から冷媒が漏出して冷媒量不足となった場合、この冷媒量不足を次のように検出する。
図7には、冷媒量不足を検知するフローチャートが示されている。
まず、電磁クラッチ19がONにされてエンジン3の回転動力が圧縮機5に伝達されると(S1)、タイマーカウントが行なわれる(S2)。
そして、電磁クラッチ19がOFFになっているかを判断し(S3)、電磁クラッチがOFFになっていない(ONのままの)場合には、所定時間が経過しているか否かを判断する(S4)。所定時間経過していない場合には、タイマーカウントS2に戻り、タイマーをインクリメントする。このような遅延処理を行うことによって、圧縮機3から吐出した冷媒の高圧圧力Phが上昇して定常値になるのを待つ。
電磁クラッチ19がOFFになっている場合(S3)は、タイマーがリセットされ(S5)、電磁クラッチがONになる(S1)まで処理が停止する。
【0035】
遅延処理(S4)が行われた後に、外気温度T0、車速Sv、内外気切替および日射量Qsの出力信号を制御部23が読み込む(S6)。
これらの出力信号に基づいて、冷媒量不足と判断される高圧基準値Pが制御部23の高圧基準値算出手段41において計算される(S7)。すなわち、高圧基準値算出手段41は、高圧基準値特性マップ43を参照して、高圧基準値Pが計算される(図2参照)。
具体的には、高圧基準値特性マップ43には、外気温度T0に対する高圧基準値Pがマッピングされている。さらに、低速/中速/高速の別に加えて、内気モード/外気モードの別、および晴天/晴天以外(雨天)の別に、線図が決定されている。高圧基準値算出手段41は、これらのうちで車両の環境条件に最も適した線図を選択し、高圧基準値Pを算出する。
【0036】
吐出圧力センサ21によって検出された高圧圧力Phを、制御部23の冷媒量不足判断手段41(図2)が読み込む(S8)。
そして、高圧基準値Pと高圧圧力Phとを比較し(S9)、高圧圧力Phが高圧基準値P以下の場合、冷媒量が不足していると判断して、電磁クラッチをOFFにする(S10)。これにより、圧縮機5の運転を停止し、圧縮機5の保護を行なう。
そして、冷媒量が不足していることの通知を行う(S11)。
一方、高圧圧力Phが高圧基準値Pよりも高い場合には、冷媒量が正常であるとして、再びタイマーカウントを行う(S2)。
【0037】
本実施形態に係る車両用空調装置によれば、以下のような作用効果を奏する。
冷媒量不足の基準となる高圧圧力Phの変動に影響を与える凝縮器7の放熱量に着目し、車速Svによって高圧基準値Pに補正を加えることとした。つまり、凝縮器における放熱量が大きい場合に高圧圧力Phが低下するので高圧基準値Pを低く設定し、凝縮器における放熱量が小さい場合には高圧圧力Phが上昇するので、高圧基準値Pを高く設定する。このように、凝縮器7の放熱量に応じた高圧圧力Phの変化を加味して、冷媒量不足の判断の閾値となる高圧基準値Phを決定する。したがって、回転数が一定であっても車速が異なるときに高圧圧力Pが変動した場合であっても、誤りなく冷媒量不足を検出することができる。
なお、凝縮器7の放熱量を推定する手段として、本実施形態において採用した車速センサ31に代えて、風速センサ、凝縮器7に設けられたコンデンサファンの回転数検出センサを採用してもよい。
ただし、車速センサ31は、一般の車両であれば備えているので好適である。
【0038】
また、本実施形態は、日射センサ33を設けて、凝縮器7の放熱量をさらに詳細に推定することとした。つまり、日射センサ33によって雨天を判断することにより、雨滴の付着・蒸発による凝縮器7の放熱量の増大を見込み、高圧基準値Pの補正を加えることとした。
ただし、日射センサ33によって得られる日射量からは、雨天と曇天との区別がつかない場合がある。しかし、曇天であれば、晴天時に比べて、輻射熱による温度上昇が小さいので凝縮器7周りの流体温度は低くなる。したがって、凝縮器の放熱量が大きいものと判断しても差し支えない。
なお、雨天と曇天とを区別するために、車両のフロントガラスに設けられたワイパーの駆動の有無を検出するワイパー動作検出手段を設けても良い。
【0039】
また、本実施形態では、内外気切替ダンパ28による内気モード及び外気モードを判別することにより、蒸発器11の吸熱量に応じた補正を高圧基準値Pに加えることとした。
すなわち、冷房運転を行う環境では、内気モードよりも外気モードの方が蒸発器11への流入空気温度が高い。したがって、外気モードの場合には蒸発器11における吸熱量は大きく、高圧圧力Phが増加するので、高圧基準値Pを高く設定して補正を加える。内気モードの場合は、逆に、蒸発器11における吸熱量が小さく、高圧圧力Pは減少するので、高圧基準値Pを低く設定して補正を加える。
このように、内気モードまたは外気モードを判別することによって蒸発器11の吸熱量を推定することにより、適切な高圧基準値Pを設定することができるので、誤りなく冷媒量不足を検出することができる。
なお、蒸発器11における吸熱量を推定する手段として、蒸発器11に流入する空気温度を検出する温度センサを設けてもよい。温度センサによる検出温度が高い場合には、蒸発器11における吸熱量が大きいので、高圧基準値Pを高く設定して補正する。
ただし、内外気モードは、通常の車両であれば標準的な信号として検出することができるので好適である。
【0040】
なお、本実施形態では、高圧基準値特性マップ43として、線形に単調増加する線図を採用した。
これに代えて、図8に示すような線図を採用してもよい。
つまり、例えば20℃以下といった低い外気温度では高圧基準値Pを一定とするのである。
外気温度が低い場合、冷媒量が不足していると、蒸発器11での吸熱量が減り冷房性能が低下するので、いくら蒸発器11に流入する空気温度が低いとはいってもフロストサーモ29が作動しない。この場合、圧縮機5は連続運転となり、圧縮機保護の観点から望ましくない。そこで、高圧基準値Pを高め(一定)に設定し、安全な制御を行なうこととする。
一方、外気温度が低い場合であっても、冷媒量が十分であれば、フロストサーモ29が作動し、圧縮機5が断続的なON−OFF運転を行なうようになる。このようにフロストサーモ29が作動しているときは電磁クラッチ19が断続的にOFFになるので、電磁クラッチがOFFであれば冷媒量不足の判断を行なわない遅延制御を採用した場合(図7のS1〜S5参照)、冷媒量不足の検知は行なわれない。このように冷媒量不足の検知が行なわれないので、冷媒量不足の誤検知はそもそも生じ得ないことになる。したがって、外気温度が低いときに高圧基準値Pを高め(一定)に設定することは許容される。
なお、冷媒量不足の検知が行なわれなくても、フロストサーモにより圧縮機の運転は断続的に行なわれるので、正味の圧縮機運転時間は短く、問題はない。
【0041】
【発明の効果】
本発明の車両用空調装置は、以下の効果を奏する。
吐出圧力の変動に影響を与える凝縮器の放熱量を推定することによって、冷媒量不足を判断する閾値圧力を決定することとしたので、冷媒量不足の誤検知を回避することができる。
【0042】
また、凝縮器を通過する風量の情報を得る風量推定手段を採用したので、風量による凝縮器の放熱量の変動を詳細に評価することができる。
【0043】
車速センサによって風量情報を取得することとしたので、簡易に凝縮器の放熱量を推定することができる。
【0044】
液体付着判別手段を採用することとしたので、凝縮器の放熱量に影響を与える付着液体の蒸発を検出することができる。したがって、凝縮器の放熱量の変動を詳細に評価することができる。
【0045】
日射センサを設けることとしたので、雨天あるいは晴天を簡易的に判断することができる。これにより、凝縮器に雨滴が付着したか否かを判断することができ、凝縮器の放熱量を詳細に評価することができる。
【0046】
吸熱量推定手段を設けることとしたので、吐出圧力の変動を詳細に評価することができる。すなわち、蒸発器における吸熱量が大きい場合には吐出圧力が増加するので、閾値圧力を高く設定して補正する。蒸発器における吸熱量が小さい場合には吐出圧力が減少するので、閾値圧力を低く設定して補正する。したがって、吸熱量の増減に応じた適切な閾値圧力を設定することができ、冷媒量不足を誤りなく検知することができる。
【0047】
一般の車両に標準的に備えられている内外気モード検出手段によって、蒸発器に流入する流体温度を判別することとしたので、簡便に吸熱量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両用空調装置の概略構成を示したブロック図である。
【図2】図1の制御部の詳細を示したブロック図である。
【図3】外気温度に対する高圧基準値をマッピングした図である。
【図4】低速時の外気温度に対する高圧基準値をマッピングした図であり、(a)は内気モード、(b)は外気モードを示す。
【図5】中速時の外気温度に対する高圧基準値をマッピングした図であり、(a)は内気モード、(b)は外気モードを示す。
【図6】高速時の外気温度に対する高圧基準値をマッピングした図であり、(a)は内気モード、(b)は外気モードを示す。
【図7】本発明の実施形態による、冷媒量不足を判断するフローチャートである。
【図8】高圧基準値特性マップの変形例を示した図である。
【符号の説明】
1 車両用空調装置
5 圧縮機
7 凝縮器
9 膨張弁
11 蒸発器
21 吐出圧力センサ
25 外気温度センサ
28 内外気切替ダンパ
31 車速センサ
33 日射センサ
41 高圧基準値算出手段
45 冷媒量不足判断手段

Claims (8)

  1. 冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機により圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、該凝縮器を通過した冷媒を減圧する減圧手段と、該減圧手段を通過した冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する吐出圧力センサと、を備えた車両用空調装置において、
    前記凝縮器における放熱量を推定する放熱量推定手段と、
    前記放熱量推定手段の推定結果に基づいて、冷媒量不足の判断基準となる閾値圧力を算出する閾値圧力算出手段と、
    該閾値圧力算出手段の出力結果と、前記吐出圧力センサの出力結果とを比較し、冷媒量不足を判断する冷媒量不足判断手段と、
    を備えていることを特徴とする車両用空調装置。
  2. 前記放熱量推定手段は、外気温を検出する外気温センサと、前記凝縮器を通過する風量を推定する風量推定手段と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
  3. 前記風量推定手段は、車両の速度を検出する車速センサとされていることを特徴とする請求項2記載の車両用空調装置。
  4. 前記放熱量推定手段は、前記凝縮器に液体が付着したか否かを判別する液体付着判別手段を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用空調装置。
  5. 前記液体付着判別手段は、日射センサとされていることを特徴とする請求項4記載の車両用空調装置。
  6. 前記蒸発器における吸熱量を推定する吸熱量推定手段を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用空調装置。
  7. 前記吸熱量推定手段は、蒸発器に流入する流体が車両外の外気とされる外気モードか車両内の内気とされる内気モードかを検出する内外気モード検出手段とされていることを特徴とする請求項6記載の車両用空調装置。
  8. 冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機により圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、該凝縮器を通過した冷媒を減圧する減圧手段と、該減圧手段を通過した冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記圧縮機から吐出された冷媒の圧力を検出する吐出圧力センサと、を備えた車両用空調装置において、
    前記蒸発器における吸熱量を推定する吸熱量推定手段と、
    前記吸熱量推定手段の推定結果に基づいて、冷媒量不足の判断基準となる閾値圧力を算出する閾値圧力算出手段と、
    該閾値圧力算出手段の出力結果と、前記吐出圧力センサの出力結果とを比較し、冷媒量不足を判断する冷媒量不足判断手段と、
    を備えていることを特徴とする車両用空調装置。
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