JP2005036926A - 水密容器用ガスケット - Google Patents

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Yuji Aso
裕司 麻生
Takamichi Kuriyama
貴道 栗山
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【解決手段】
水密容器の水密部分であるフランジの溝内に嵌め込まれるガスケットと、前記フランジ溝の断面積比率を、1対1に近づくように設定する。また、ガスケットの体積がフランジ溝の体積を上回らないように設定する。ガスケットの断面形状を略H型とする。フランジ面に接するガスケットの突起を左右2列とする。
【効果】
海水が溝に浸入することを防止できるから、海水によるフランジ溝の腐食ならびにガスケットの劣化を防止できる。特に、ゴム組織の圧壊が発生せず、圧縮永久歪の進行が緩やかになるため、ガスケットの寿命が長くなる。パッキンがフランジ溝からはみ出すのを防止できる。ガスケットを加圧したとき圧縮力が局部的に加わらないようにすることができる。上下左右に形成される凹所で圧縮変形時の逃げのスペースを得ることができる。使用時の方向性が自由である。ガスケットのシール性能がさらに向上する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、水密容器の水密部分に用いることができるガスケット(通常、静止用シールと呼ばれている)の改良に関するものである。
例えば、引込係留式のブイのように、水密容器を備えたものを海面付近など塩害が発生しやすい場所で使用すると、水密部分であるフランジの溝(ガスケット溝とも呼ばれる)部分に水分(特に、海水)が溜まり、それが原因でフランジの腐食がしばしば発生するのみならず、前記溝内に嵌め込まれているガスケットが劣化する。塩分濃度が上昇すると、フランジの腐食も加速される。
それを防止するために、従来、JIS規格であるOリングをガスケット代わりに用い、それをフランジの溝に嵌め込んでいるが、Oリングとフランジの溝との間に隙間が生じることは避けられず、そこに水分(特に、海水)が溜まってフランジ溝自体が腐食し、ガスケットであるOリングの交換だけでは修復できない損傷が発生することになる。塩分濃度が上昇すると、フランジ溝自体の腐食も加速される。特に、沿岸部や海上で使用した場合においては、海水による溝の腐食は著しく、水密容器としての性能を喪失する事態となる。
Oリングの密封原理は、溝内に嵌め込んだOリングを押しつぶすことによって発生するゴムの復元力(反発力)を利用して流体をシールすることである。この原理に基づいて密封性を増大させるために、Oリングを嵌め込む溝の幅を広くしてあるが、その結果、上述したように、Oリングとフランジの溝との間に隙間が生じるのを避けることはできない。
なお、Oリングに圧力が加わるとOリングは圧力によって変形し、作用圧力に応じた反発力を発生する。その結果、「初期反発力」+「作用圧力による反発力」となり、復元力が常に作用圧力より高くなるので、漏れを防ぐことができる。さらに圧力が高くなると、Oリングは圧力によって、溝の隙間に食い込んで行き、はみ出した部分が徐々にむしれて行くという事態を生じさせることになる。
前記Oリングのようにフランジの溝に水分が溜まらないようにするために、本出願人はそれに代わるものとして、図3(a)に示すように、リング状であって断面形状が上向きD型のガスケットを開発した。
このガスケットを用いた場合には、フランジの溝に海水が浸入するのを防止できるが、ガスケットがフランジ溝からはみ出してしまい、その部分が締め付けによりゴム組織の圧壊が起こり、短期間の内に圧力永久歪が発生して性能が失われてしまう。すなわち、ガスケットが早期に変形を起こすので、寿命が短いという欠点がある。長年の使用によって、このような欠点を有することも確認できており、これに代わるガスケットの開発が強く望まれている。
なお、断面形状上向きD型のガスケット以外に、以下に示すようなガスケットも開発されている。
特開平8−219290号公報 特開2003−166647号公報
本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、水密容器の水密部分であるフランジの溝内に嵌め込まれるガスケットと前記フランジ溝の断面積比率を、1対1に近づくように設定することにより、上記目的を達成できることを見出した。このようにすることによって、海水がフランジ溝に浸入することを防止できる。したがって、海水によるフランジ溝の腐食ならびにガスケットの劣化を防止できる。特に、ゴム組織の圧壊が発生せず、圧縮永久歪の進行が緩やかになるため、ガスケットの寿命が長くなる。両者の断面積比率が100%となるのが望ましいが、その数値より多少劣っていてもよい。ただし、95%以上であることが本発明者らの目標値である。
ガスケットの体積がフランジ溝の体積を上回らないように設定しておくことが望ましい。このようにすることにより、パッキンがフランジ溝からはみ出すのを防止できる。
ガスケットの断面形状を、略H型としておくのがよい。この略H型とは、例えば、図1(c)に示すように、ガスケットの基本形状を上下及び左右対称とし、使用時の方向性を自由にしたことを意味する形状である。ガスケットの断面形状をこのような形状にすると、ガスケットを加圧したとき圧縮力が局部的に加わらないようにすることができる。また、断面形状が略H型の場合において、上下左右に形成される凹所で圧縮変形時の逃げのスペースを得ることができる。さらに、使用時の方向性が自由であるから、上下の方向性がなく、ガスケット取付時の誤りを防止できる。
フランジ面に接するガスケットの突起を左右2列としておくとよい。この場合には、左右2列の突起とその間に形成される凹所により、ガスケットのシール性能がさらに向上することになる。
請求項1記載の発明によれば、海水が溝に浸入することを防止できるから、海水によるフランジ溝の腐食ならびにガスケットの劣化を防止できるという効果がある。特に、ゴム組織の圧壊が発生せず、圧縮永久歪の進行が緩やかになるため、ガスケットの寿命が長くなるという利点を有する。
請求項2記載の発明によれば、パッキンがフランジ溝からはみ出すのを防止できるという利点を有する。
請求項3記載の発明によれば、ガスケットを加圧したとき圧縮力が局部的に加わらないようにすることができるのみならず、上下左右に形成される凹所で圧縮変形時の逃げのスペースを得ることができるという効果がある。また、使用時の方向性が自由であるから、上下の方向性がなく、ガスケット取付時の誤りを防止できるという利点を有する。
請求項4記載の発明によれば、左右2列の突起とその間に形成される凹所により、圧縮後のガスケットのシール性能がさらに向上するという利点を有する。
本発明を実施するための形態を、図1,図3及び表1,表2に基づいて詳細に説明する。
ここにいう水密容器用のガスケット1は、図1(a)に示すような真円形のリング状であって、フランジ面に接する上下両面には、突起1a,1aが左右に2列形成されており、両突起1a,1a間には凹所1bが形成されている。また、図1(c)の左右に現れる内外両面には、高さ方向のほぼ中央付近に全周にわたって窪み1cが形成されている。このような構造をしたものであるところから、その断面形状(図1(a)におけるA−A線拡大断面形状)は略H型となっている(図1(c)参照)。
ガスケット1の基本形状は上述したような形であるが、水密容器の水密部分であるフランジの溝に嵌め込まれるこのガスケット1の断面積と、前記フランジ溝の断面積の比率を1対1に近づくように設定する。このようにすると、海水がフランジ溝に浸入することを防止できる。したがって、海水によるフランジ溝の腐食ならびにガスケットの劣化を防止できる。特に、ゴム組織の圧壊が発生せず、圧縮永久歪の進行が緩やかになるため、ガスケットの寿命が長くなる。ガスケット1とフランジ溝の断面積比率が100%となるのが望ましいが、その数値より多少劣っていてもよい。
また、ガスケット1の体積が前記フランジ溝の体積を上回らないように設定する。このようにすることにより、パッキンがフランジ溝からはみ出すのを防止できる。そして、上述したように、ガスケット1の断面形状は略H型であるから、ガスケットを加圧したとき圧縮力が局部的に加わらないようにすることができるのみならず、上下左右に形成される凹所で圧縮変形時の逃げのスペースを得ることができる。また、使用時の方向性が自由であるから、上下の方向性がなく、ガスケット取付時の誤りを防止できる。
さらに、フランジ面に接するガスケット1の突起1a,1aを左右2列とすることにより、左右2列の突起1a,1aと両突起1a,1a間に形成される凹所1bにより、圧縮後のガスケットのシール性能がさらに向上する。
このガスケット1の断面形状は上述したように「略H型」であるから、以下の説明及び表1,表2における説明では、便宜上それを単に「H型パッキン(本発明)」と略称して表わす。なお、このガスケット1を正面から見ると、図1(b)に示すような形となる。
そして、この「H型パッキン(本発明)」をフランジの溝に嵌め込んだ場合における「圧縮前の断面形状(圧縮前)」とフランジ溝内で圧縮された後の「断面形状(圧縮後)」、「塩害対策効果」、ならびに「パッキン寿命(現場では、ヘタリと称されている)」の概要を、表1に示す。なお、この表1には、本出願人が先に開発した断面形状上向きD型(図2(a)におけるB−B線拡大断面形状)のパッキン1'を「D型パッキン(従来品)」と、JIS規格であるOリングを「Oリング(JIS規格)」と略称し、それらを「H型パッキン(本発明)」の右側に並べて表わした。
Figure 2005036926
表1から分かるように、「H型パッキン(本発明)」の場合には、「D型パッキン(従来品)」の場合とは異なって、圧縮後においてもフランジ溝からパッキン(ガスケット)がはみ出ることがなく、また、フランジ溝に海水が浸入することがないという利点を有している。さらに、「D型パッキン(従来品)」に比べて、少なくとも寿命が長くなっている。
一方、この「H型パッキン」について、外観上の「製品の仕上がり状態」、基本性能としての「設計技術」、「材質」、「硬度」、「使用温度範囲」、「耐候性」、「耐油性」、「塩害対策」、「圧縮永久歪」、「つぶし率」、「充填率」、「初期水密性」、作業性としての「パッキン溝への取付」、「パッキン溝からの除去」、ならびに、「総合評価」の概要を、表2に示す。なお、この表2には、本出願人が先に開発した断面形状上向きD型(図2(a)におけるB−B線拡大断面形状)のパッキン(上で説明済)を「D型パッキン(従来品)」と略称し、本発明の「H型パッキン」の右側に並べて対比するとともに、「評価内容」をその右側に並べて合わせて対比した。

Figure 2005036926
表2から分かるように、「H型パッキン(本発明)」の外観上の「製品の仕上がり状態」は、「D型パッキン(従来品)」の場合よりも良好であり、また、パッキン溝に海水が入らないように設計されている。材質に関しては、「D型パッキン(従来品)」の場合がネオプレンゴム(CR)であるのに対し、「H型パッキン(本発明)」の場合はパーオキサイト加硫エチレンプロピレンゴム(PEP)からなっており、「圧縮永久歪の性能」が「D型パッキン(従来品)」より優れていることが分かる。
また、「H型パッキン(本発明)」の「硬度」は70°であって、その数値が大きくなるほど「圧縮永久歪の性能」が大きくなることは周知の事実である。使用温度範囲は摂氏130〜−45°であって、「H型パッキン(本発明)」の方が高温に耐えられることが分かる。2カ月後の変形を確認した結果、「圧縮永久歪」についても「H型パッキン(本発明)」の方が「D型パッキン(従来品)」の場合に比べて優れていることが分かる。また、「つぶし率」、「充填率」、作業性に関する「パッキン溝への取付」・「パッキン溝からの除去」についても、「H型パッキン(本発明)」の方が「D型パッキン(従来品)」の場合に比べていずれも優れていることが分かる。
「H型パッキン(本発明)」と「D型パッキン(従来品)」を比較した場合において、前者が後者よりも劣っている点は、唯一「耐油性」であって、機械油等に特に弱く、現場でフランジを清掃する際、あるいは、現場で油を使用したときには、油をふき取る必要がある。
この点以外の項目については、表2からも明らかなように、「H型パッキン(本発明)」と「D型パッキン(従来品)」とは同等であるか、少なくとも「H型パッキン」の方が優れており、総合的に見ると「H型パッキン」の方が高性能であると考えられる。
本発明によるガスケットは、例えば、図3において図面符号1で示すように、引込係留式のブイの水密容器であるフロート2と柱体3の鍔3aとを重ね合わせた水密部分に用いると有利なものであって、フロート2のフランジ2aの溝にガスケット1を嵌め込んだ上に柱体3の鍔3aを重ね合わせ、例えば、ネジ止めなどにより両者を固定する場合に用いると、極めて効果的なものである。
本発明の水密容器用ガスケットの一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は図1(a)のA―A線拡大断面図である。 本出願人が先に開発した断面形状上向きD型のパッキンの一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は図2(a)におけるB−B線拡大断面図である。 本発明のガスケットを用いた引込係留式のブイの一例を示す概略図である。
符号の説明
1…ガスケット、1a…突起、1b…凹所、1c…窪み、2…フロート、2a…フランジ、3…柱体、3a…鍔。

Claims (4)

  1. 水密容器の水密部分であるフランジの溝内に嵌め込まれるガスケットと前記フランジ溝の断面積比率を、1対1に近づくように設定したことを特徴とする水密容器用ガスケット。
  2. ガスケットの体積がフランジ溝の体積を上回らないように設定したことを特徴とする請求項1記載の水密容器用ガスケット。
  3. ガスケットの断面形状を略H型としたことを特徴とする請求項1又は2記載の水密容器用ガスケット。
  4. フランジ面に接するガスケットの突起を左右2列としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水密容器用ガスケット。
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