JP2005036388A - 岩石強度及びビット摩耗状態のリアルタイム評価方法 - Google Patents

岩石強度及びビット摩耗状態のリアルタイム評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、岩石強度の評価を、1組のデータから求めることができるようにし、現場に適用することが容易な岩石強度及びビット摩耗状態の評価方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による岩石強度のリアルタイム評価方法は、ローラコーンビットを用いて坑井を掘削する際の坑底の岩石強度評価方法において、掘削現場において計測されるデータに基づき、次の式により求められる岩石の掘削強度Ds′から坑底の岩石強度をリアルタイムで評価することを特徴とする。
【数2】
Figure 2005036388

ただし、Tはトルク[kN・m]、dはビット直径[m]、Fはビット荷重[kN]、uは掘進率[m/min]、Nはビット回転数[rpm]、である。
【選択図】 図 16

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ローラコーンビットを用いて坑井を掘削する際の坑底の岩石強度及びビットの刃先摩耗状態を評価する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
坑井の掘削中に坑底における岩石強度やビットの刃先摩耗状態をリアルタイムで知ることは、坑井の掘削を的確に制御する上で極めて重要なことである。的確に制御された坑井掘削は、掘削の能率向上や坑内のトラブル防止を図れるため、掘削コストの低減にも寄与するものである。
そこで、坑底の岩石強度やビットの刃先摩耗状態の評価方法を開発するため、本発明者らは刃先摩耗状態の異なるミルドツースビット(T0,T4,T7)及びインサートローラコーンビット(T0,T2,T4)を用いて各種岩石に対して掘削実験を実施した。実験から得られたデータを基にu/N−F/d及びu/N−8T/dプロットを作成してビット荷重の第1次作用線とトルクの第1次作用線を求め、これらのデータに基づいて岩石強度や刃先摩耗状態を評価する方法を提案した(非特許文献1及び非特許文献2参照)。ここで、uは掘進率、Nはビット回転数、Fはビット荷重、dはビット直径、Tはトルクである。
【0003】
【非特許文献1】
社団法人資源・素材学会「資源と素材」1996、9、VOL.112、P623−630
【非特許文献2】
社団法人資源・素材学会「資源と素材」1996、10、VOL.112、P688−694
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の両評価方法はu/N、F/d、8T/dから構成される1組のデータを複数個(5〜10程度)計測してビット荷重及びトルクの第1次作用線を求める必要があるため簡潔な評価方法とは言えず、掘削現場への適用が必ずしも容易なものではなかった。
【0005】
以上のような背景から、現場への適用ができるだけ容易な岩石強度と刃先摩耗状態の評価方法を開発することを目的に、上記実験から得られたミルドツースビットのデータを再解析するとともに、これらツースビットと直径やタイプの異なる種々のローラコーンビット(T0)による岩石の掘削実験から得られたデータについても同様の解析を行った結果、刃先摩耗状態の影響の小さい岩石強度を表す簡便な新しいパラメータを見いだすことができた。
【0006】
本発明は、現場に適用することが容易な岩石強度及びビット摩耗状態の評価方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の岩石強度のリアルタイム評価方法は、ローラコーンビットを用いて坑井を掘削する際の坑底の岩石強度評価方法において、掘削現場において計測されるデータに基づき、次の式により求められる岩石の掘削強度Ds′から坑底の岩石強度をリアルタイムで評価することを特徴とする。
【数2】
Figure 2005036388
ただし、Tはトルク[kN・m]、dはビット直径[m]、Fはビット荷重[kN]、uは掘進率[m/min]、Nはビット回転数[rpm]、である。
また、本発明のビット摩耗状態のリアルタイム評価方法は、ローラコーンビットを用いて坑井を掘削する際のビットの刃先摩耗状態評価方法において、掘削される岩石が中硬〜硬岩の場合、掘削現場において計測されるデータに基づき、次の式により求められる無次元有効トルクTedからビットの刃先摩耗状態をリアルタイムで評価することを特徴とする。
【数8】
Figure 2005036388
ただし、aはビット荷重の第1次作用線の傾き[m/kN]、aはトルクの第1次作用線の傾き[m/kN]、aFTはビット荷重・トルクの第1次作用線の傾き、Teは有効トルク[kN・m]、dはビット直径[m]、Feは有効荷重[kN]、である。
また、本発明のビット摩耗状態のリアルタイム評価方法は、ローラコーンビットを用いて坑井を掘削する際のビットの刃先摩耗状態評価方法において、掘削される岩石が軟岩の場合、掘削現場において計測されるデータに基づき、単位ビット径当たりのしきい荷重Fc/d[kN/m]からビットの刃先摩耗状態をリアルタイムで評価することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態を実験に基づき説明する。
〔実験用機材及び方法〕
図1に、本発明において解析を行うデータを得るために用いたローラコーンビットを示す。図の前列右側の3つは、直径が3−7/8in.(98.43mm)のミルドツースビットであり、右側から順に刃先高さが7/8摩耗(T7)、4/8摩耗(T4)、新品(T0)のものである。また、前列左端は、直径が7−7/8in.のコニカルインサートビットである。後列は、右側から順に、5−5/8in.のツースビット、5in.のインサートビット、5−7/8in.のインサートビット、7−7/8in.のチゼルインサートビットであり、刃先はすべて新品(T0)である。
【表1】
Figure 2005036388
表1は、各ビットによる掘削実験に用いた岩石の機械的性質である。なお、三城目安山岩などの岩石については複数個の岩石ブロック(50×50×80cm)を実験に用いたため、記号を付けて区別してある。また、表には各ビットのIADCコードも記載した。
掘削実験方法は、以下のとおりである。
直径が3−7/8in.の各ビットを用いた掘削実験は、大谷凝灰岩、来待砂岩、三城目安山岩(A)及び新小松安山岩に対して行った。実験の際は、ビット回転数を50rpm一定とし、ビット荷重をいろいろ変えた。また、岩石の掘削特性に及ぼすビット回転数の影響を調べるため、大谷凝灰岩を除く各岩石に対しては、ビット回転数が100rpmについても50rpmの場合と同様の実験を行った。実験に用いた掘削流体は清水で、流量は0.11m/min一定とした。各ビットの主な実験条件(ビット荷重、回転数、掘削流体流量)を表2にまとめて示す。
【表2】
Figure 2005036388
【0009】
〔岩石強度の評価方法〕
前記した非特許文献1及び非特許文献2では、刃先摩耗状態の影響の小さい岩石強度を表すパラメータとして、岩石の掘削強度Ds(MPa)を提案した。すなわち、
【数1】
Figure 2005036388
ここで、aはビット荷重の第1次作用線の傾き、aはトルクの第1次作用線の傾き、Teは有効トルク、dはビット直径、Feは有効荷重、uは掘進率、Nはビット回転数、8Te/dは単位ビット断面積当たり・ビット1回転当たりの回転方向の有効エネルギー、Fe/dは単位ビット径当たりの有効荷重である。
岩石の掘削強度Dsより簡便な岩石強度を表すパラメータを検討するため、先ず、(1)式中の有効トルクTeと有効荷重FeをそれぞれトルクTとビット荷重Fに置き換えて、3−7/8in.ミルドツースビット(T0,T4、T7)のすべての実験データを整理した。この際、ビットの張付きなどの影響を受けたデータは除外した。その結果、下式で与えられる岩石の掘削強度Ds′(MPa)は、刃先摩耗状態の影響の小さい岩石強度を表すパラメータであることがわかった。
【数2】
Figure 2005036388
ただし、一般に第2次作用線に属するデータを含めるとDs′のばらつきが大きくなることが明らかとなった。そこで、本発明では実用的に重要な第1次作用線に属するデータのみを取り扱うことにした。
【0010】
T0、T4、T7ビットにより大谷凝灰岩、来待砂岩、三城目安山岩(A)及び新小松安山岩をビット回転数が50rpmで掘削したときの単位ビット径当たり・ビット1回転当たりの掘削方向のエネルギー(1000Fu/Nd)と、単位ビット断面積当たり・ビット1回転当たりの回転方向のエネルギーの2乗(8T/dとの関係を図2に示す。上記のように、本図にプロットされたデータはすべて第1次作用線に属するものである。図から明らかなように、いずれの岩石においても両者の関係に及ぼす刃先摩耗状態の影響は小さい。図中に示した直線は、それぞれの岩石についてT0、T4、T7ビットのデータを用いて原点を通る最小2乗法で近似したものである。・図には各岩石の直線の傾き、すなわちDs′の値を記載してある。Ds′の値は、各岩石の一軸圧縮強度の増加に従って増加する傾向を示す。
【0011】
前記のように、非特許文献1及び非特許文献2で提案した岩石の掘削強度Ds はu/N−F/d及びu/N−8T/dプロットにおいてビット荷重とトルクの第1次作用線の傾きa、a あるいはFe/d(=(F−Fc)/d)及び8Te/d(=8(T−Tc)/d)を求める必要があるため、簡便な評価方法とは言えない(FcとTcはそれぞれしきい荷重としきいトルクである)。
一方、本発明における岩石の掘削強度Ds′は、第1次作用線に属するu/N、F/d、8T/dからなる1組のデータによって求まるので簡便な推定方法である。後述のように、本発明ではF/dが約100〜300kN/m以上のデータを使用することによって第1次作用線に属するものを選ぶことができる。
【0012】
T0、T4、T7ビットにより来待砂岩、三城目安山岩(A)及び新小松安山岩をビット回転数100rpmで掘削したときの1000Fu/Ndと(8T/dとの関係を図3に示す。図2の場合と同様に、図中の直線は原点を通る最小2乗法により求めた(以後に示す1000Fu/Ndと(8T/dとの関係における直線は、すべて原点を通る最小2乗法により求めた)。三城目安山岩(A)の場合はデータのばらつきが大きいものの、来待砂岩や新小松安山岩では図2の場合と同様に良い相関を示す。
【0013】
図4は、5−5/8in.ツースビットを用いて三城目安山岩(B)を、また、5in.及び5−5/8in.インサートビットを用いて沢入花崗岩(A)を掘削したときの1000Fu/Ndと(8T/dとの関係である。黒三角印で示した三城目安山岩(B)のデータは、ベアリング内の摩擦抵抗の増加の影響を受けたものであるため直線近似から除外した。
【0014】
直径が7−7/8in.のインサートビット(コニカル及びチゼル)により三城目安山岩、沢入花崗岩、稲井泥岩及び本小松安山岩を掘削したときの1000Fu/Ndと(8T/dとの関係を、それぞれ図5と図6に示す。図4〜6より、ビットのタイプや直径が異なっても第1次作用線に属する1000Fu/Ndと(8T/dとの間には良い比例関係が成立していることがわかる。
【0015】
以上の結果より、岩石の掘削強度Ds′は刃先摩耗状態の影響の小さい岩石強度を表すパラメータであるとともに、1000Fu/Ndと(8T/dとの間には良い比例関係が成り立つことが明らかとなった。
【0016】
〔岩石の掘削強度Ds′の特徴〕
ローラコーンビットを用いて岩石を掘削したときの“岩石強度”を表すパラメータとして従来から用いられてきたものに、“岩石の貫入強度”と“比エネルギー”がある。岩石の貫入強度Is′(MPa)と比エネルギーSe′(MPa)は、それぞれ次式で与えられる。
【数3】
Figure 2005036388
【数4】
Figure 2005036388
なお、前記した非特許文献1及び非特許文献2において提案した有効回転エネルギーから計算した比エネルギーSe(MPa)と岩石の貫入強度Is(MPa)は、それぞれ次式で与えられる。
【数5】
Figure 2005036388
【数6】
Figure 2005036388
(2)〜(4)式から、Ds’、Is’及びSe’の関係は次式で与えられる。
【数7】
Figure 2005036388
【0017】
岩石の掘削強度を表す新しいパラメータDs′の特徴を明らかにするため、第1次作用線に属するDs′、Is′、Se′について、ビットごとに平均値とデータのばらつきの程度を調べた(表3参照)。
【表3】
Figure 2005036388
ばらつきの程度は、最小値/平均値、最大値/平均値から求めた。表3中、ばらつきの最も小さいパラメータはイタリック体で示してある。表3からわかるように、3−7/8in.ツースビット(T0,T4,T7)の50rpmの場合、Is′、Ds′、Se′の順にばらつきが小さくなっている。
また、Ds′はIs′やSe′に比べて刃先摩耗状態の影響が小さいこともわかる。100rpmの場合も50rpmと同様な傾向を示した。一方、表3の7−7/8in.インサートビット(チゼル)からわかるように、5−5/8in.ツースビット、5in.及び5−5/8in.インサートビット、7−7/8in.インサートビット(コニカル、チゼル)のいずれにおいても、Ds′のばらつきが最も小さかった。
以上から、少なくとも本実験結果の範囲内では、岩石の掘削強度Ds′は岩石の貫入強度Is′及び比エネルギーSe′に比べて刃先摩耗状態の影響が最も小さく、また、一部を除いてデータのばらつきも最も小さいことが明らかとなった。
【0018】
〔刃先摩耗状態の評価方法〕
(1)無次元有効トルクTedによる方法
前記した非特許文献2において、刃先摩耗状態の推定方法として無次元有効トルクTedを提案した。すなわち、
【数8】
Figure 2005036388
刃先摩耗状態の異なる3−7/8in.ツースビット及び4in.インサートビットとも、一般にTedに及ぼす岩石強度の影響は小さく、また、刃先摩耗の進展につれてTedが減少することが明らかとなった。
図7−1、7−2、7−3は、それぞれビット回転数が50rpmのときのT0、T4、T7ビットのF/dと8T/dとの関係である。各図の比較から、三城目安山岩(A)と新小松安山岩の場合、いずれのビットにおいてもaFTはほぼ同じ値であり、また、刃先摩耗の進展につれてaFTが減少することがわかる。しかし、T0やT4ビットで大谷凝灰岩や来待砂岩を掘削したときはaFTの変化は小さい。T7ビットの場合、来待砂岩、三城目安山岩(A)及び新小松安山岩のaFTはほとんど変わらず、大谷凝灰岩のaFTが他の岩石に比べてやや大きい。ビット回転数が100rpmの場合も同様の傾向が得られた。大谷凝灰岩や来待砂岩のような軟岩を掘削する際は、特にT0やT4ビットの刃先摩耗状態をaFTで評価することは困難であることがわかる。このような軟岩の掘削における刃先摩耗状態の評価方法については後述する。
【0019】
図8は、5−5/8in.ツースビット(三城目安山岩(B))、5in.及び5−5/8in.インサートビット(沢入花崗岩(A))のF/dと8T/dとの関係である。三城目安山岩(B)の黒三角印のデータを除いてビット荷重・トルクの第1次作用線は良い直線相関を示すことが明らかである。
【0020】
7−7/8in.インサートビット(コニカル、チゼル)のF/dと8T/dとの関係をそれぞれ図9と図10に示す。コニカルビットの場合は、本小松安山岩(A)及び三城目安山岩(C)のaFTと、沢入花崗岩(B)及び稲井泥岩(A)のaFTに多少の差がある。しかし、チゼルビットの場合はいずれの岩石においてもaFTの値はほぼ同じである。また、コニカル及びチゼルビットとも、ビット荷重・トルクの第1次作用線の傾きaFTは他のビットと同様に非常に良い直線関係を示す。前記のように、図7〜10から、ビット荷重の第1次作用線及びトルクの第1次作用線に対応するビット荷重・トルクの第1次作用線に属するデータを選ぶには、F/dが約100〜300kN/m以上のもので良いことがわかる。
【0021】
以上のように、一部のデータを除いてaFTに及ぼす岩石強度の影響は小さいことと、第1次作用線の範囲内ではF/dと8F/dとの間には非常に良い直線関係が成立していることがわかった。そこで、以下にaFT、すなわち無次元有効トルクTedを用いて刃先摩耗状態を評価する方法について具体例を用いて説明する。
【0022】
図11に、ビット回転数が50rpmで3−7/8in.ツースビット(T0,T4,T7)を用いて三城目安山岩(A)と新小松安山岩を掘削したときの無次元有効トルクTedと刃先高さの減少割合TWとの関係を示す。図中の直線はすべてのデータを近似して求めた。図から、刃先摩耗の進展につれてTedは傾きが−0.281の直線で減少していることがわかる。
【0023】
図12は、チゼルビット(T0)について、すべての岩石のビット荷重・トルクの第1次作用線の傾きaFT(Ted)が、刃先摩耗の進展に従って傾き−0.281の直線で減少すると仮定して求めたものである。当然のことながら、チゼルビットの摩耗が進展したときのaFT(Ted)の変化状況は、実際には図に示したように減少するかどうかは不明である。各種ローラコーンビットの刃先摩耗状態の評価には、現場や室内データを蓄積して刃先摩耗状態とTedの変化状況との関係を把握する必要がある。
【0024】
次に、現場においてaFT(Ted)を求める具体的な方法を説明する。前記の図6において、チゼルビットで三城目安山岩(D)を掘削しており、あるときの1000Fu/Ndと(8T/dがχ、yで、ビット荷重が変化して両者がχ、yに変わったと仮定する。このとき、同じ岩石を掘削していれば、原点(0,0)、(χ1,、)、(χ2,)はほぼ同一の直線上にプロットされるので、掘削している岩石強度が変化したかどうかがわかる。岩石強度が変化していない場合、前記のチゼルビットの三城目安山岩(D)の8T/d −F/dプロット(図10)上で、座標(χ′)、(χ′)がわかる。すなわち、両座標から直線の傾きaFT は(y′)/(χχ′)で求まり、本例の場合はaFT=0.520となる。この値は、第1次作用線に属するデータすべてを用いた近似直線の傾きaFT(0.520)と同じ値である。現場においては、多くのDs′やaFT(Ted)の値が求まると予想される。また、ビット交換の際は刃先摩耗状態も把握できる。これらの情報や掘屑の分析結果などを蓄積することによって、正確な刃先摩耗状態の評価が可能になる。
前記のように、非特許文献1及び非特許文献2によれば、大谷凝灰岩や来待砂岩のような軟岩では刃先摩耗状態の進展に伴うビット荷重やトルクの第1次作用線の傾きa、aの変化は小さいものの、三城目安山岩、新小松安山岩及び沢入花崗岩のような中硬〜硬岩ではa及びaが減少し、軟岩と中硬〜硬岩では傾向の相違が認められた。したがって、軟岩を除く岩石では、Tedによって刃先摩耗状態を評価できる。
【0025】
(2)単位ビット径当たりのしきい荷重Fc/dによる方法
前述のように、大谷凝灰岩や来待砂岩のような軟岩の場合、T0、T4、T7ビットのaFT(Ted)の変化が小さいことがわかった。そこで、本方法ではu/N−F/dプロットの第1次作用線から求まる単位ビット径当たりのしきい荷重Fc/dを用いて刃先摩耗状態を評価する。
【0026】
図13に、T0、T4、T7ビットにより大谷凝灰岩を50rpmで掘削したときのF/dとu/Nとの関係を示す。図中、黒丸、黒四角印で示したデータは第2次作用線に、また、他のデータは第1次作用線に属するデータである。図中の実線は第1次作用線に属するデータを直線近似して求めた。破線(T4、T7ビット)は、直線の傾きがT0ビット(a=2.98x10−5)と同じで、矢印で示したデータポイントを通る直線である。図から明らかなように、T4、T7ビットの破線と実線のFc/dには大差がなく、大谷凝灰岩では刃先が摩耗したビットのビット荷重の第1次作用線の傾きaは、新品ビットのaと同じとして差し支えないことがわかる。すなわち、大谷凝灰岩のような軟質な岩石では、例えば新品ビットのaを予め知ることによって、摩耗したビットの1組のデータ(F/d,u/N)がわかれば、刃先摩耗状態を推定できることがわかる。来待砂岩砂岩の50rpm、100rpmのデータも、大谷凝灰岩の場合と同様な傾向を示した。
なお、〔0024〕に記述した方法と同様に、例えばT0ビットのビット荷重の第1次作用線の傾き(a)は、図13に示した2組のデータ((a′,b′)と(a′,b′))から簡単に求めることもできる。これら2組のデータは、図2に示したデータ(a,b)と(a,b)にそれぞれ対応している。
【0027】
Fc/dの場合と同様に、単位ビット断面積当たり・ビット1回転当たりの回転方向のしきいエネルギー8Tc/dと刃先摩耗状態との関係を調べてみた。大谷凝灰岩の場合は、刃先摩耗状態の進展に伴う8Tc/dの増加割合がFc/dに比べて小さく、また、選択するデータポイントによって8Tc/dのばらつきが大きく、8Tc/dを用いた刃先摩耗状態の評価は困難であることがわかった。来待砂岩の場合も大谷凝灰岩の場合と同様に、刃先摩耗状態の進展に伴う8Tc/dの増加割合が小さいものの、刃先摩耗状態がT0あるいはT4からT7へ変化したときは、8Tc/dが増加することが明らかとなった(図14)。
【0028】
図15に、大谷凝灰岩と来待砂岩のTWとFc/dとの関係を示す。図中のエラーバーは矢印で示したデータポイント(図13)が変わったときのFc/dの変化状況を示す。いずれのFc/dも図13と同様な方法で求めた。無次元有効トルクTedの場合と同様に、現場あるいは室内において軟岩を種々のビットで掘削したときのFc/dと刃先摩耗状態の関係を把握することにより、正確な刃先摩耗状態の評価が可能になる。また、軟質岩の場合にはFc/dのみならずTedや8Tc/dも含めた総合的な評価を行い、種々の情報を蓄積していくことも正確な刃先摩耗状態の評価に重要である。
【0029】
〔考察〕
上記したように、本発明では、現場に適用することができるだけ容易な評価方法を開発するため、非特許文献1において報告した刃先摩耗状態の異なる直径が3−7/8in.のミルドツースビット(T0,T4,T7)のデータの再解析を行い、刃先摩耗状態の影響の小さい簡便な岩石強度の評価方法として(2)式で表される岩石の掘削強度Ds′を案出した。Ds′の適用範囲は、データのばらつきの小さい第1次作用線である。Ds′はu/N、F/d、8T/dから構成される1組のデータから求まるため、現場において容易に適用できる岩石強度の評価方法と言える。
また、刃先摩耗状態の評価方法として、中硬〜硬岩では無次元有効トルクTed、軟岩ではFc/dを案出した。岩石の掘削強度Ds′が1組のデータ(u/N、F/d、8T/d)から求まることが明らかとなったため、本発明で提案したTedは2組のデータから求めることができ、非特許文献1及び非特許文献2で報告したTedと比べて簡便な評価方法となった。また、軟岩を掘削したとき、u/N−F/dプロットにおいてビット荷重の第1次作用線の傾きは、刃先摩耗状態にかかわらず同じ値で近似できることがわかった。このため、刃先摩耗状態が一定のときのビット荷重の第1次作用線の傾きを求めておけば、1組のデータ(u/N、F/d)でFc/dを計算でき、Fc/dからビットの刃先摩耗状態を評価できる。ただし、刃先摩耗状態とTedやFc/dとの関係はビット種類や岩石強度の影響を受けるため、刃先摩耗状態の推定には現場や室内において両者の関係を表すデータを十分に蓄積する必要がある。
本発明では上記ツースビット以外に、タイプや直径の異なる数種類の新品のツースビットやインサートビットの実験結果について同様の解析を行った結果、岩石の掘削強度Ds′や無次元有効トルクTedの妥当性が確認された。
【0030】
〔評価システム〕
図16は、本発明の岩石強度及びビット摩耗状態のリアルタイム評価を行うための評価システムを示す概略図である。
掘削リグを用いた掘削現場において、ビット荷重F、トルクT、掘進率u及びビット回転数Nを計測し、これら計測データと既知のデータであるビット直径dのデータをコンピュータに入力する。
岩石強度の評価は、本発明の岩石強度の評価方法、すなわち、データポイント1点のT、d、F、u、Nを上記の(2)式に入力することにより岩石強度Ds′が演算され、評価結果がコンピュータ画面に表示される。
一方、刃先摩耗状態を評価するには、軟岩を除く中硬〜硬岩の場合、岩石強度が同じ(同一岩石)Ds′の値2点に対応するF/d−8T/dプロット中の2点の値から、無次元有効トルクTedが演算され、評価結果がコンピュータ画面に表示される。無次元有効トルクTedが減少すると刃先摩耗が進展していると判断する。。また、軟岩の場合、刃先摩耗状態が一定のときのビット荷重の第1次作用線の傾きを求めておき(既知)、この傾きとu/N−F/dプロット中の1点の値から単位ビット径当たりのしきい荷重Fc/dが演算され、ビットの刃先摩耗状態が評価される。単位ビット径当たりのしきい荷重Fc/dが大きくなると、刃先摩耗が進展していると判断する。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)岩石強度の評価が、1組のデータから求めることができるため、現場において容易に適用できる岩石強度の評価方法を提供できる。
(2)刃先摩耗状態の評価が、中硬〜硬岩においては2組のデータから、また、軟岩においては1組のデータから求めることができるため、従来のものと比べて簡便な刃先摩耗状態の評価方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】解析を行うデータを得るために用いたローラコーンビットを示す図である。
【図2】T0、T4、T7ビットにより大谷凝灰岩、来待砂岩、三城目安山岩(A)及び新小松安山岩をビット回転数が50rpmで掘削したときの単位ビット径当たり・ビット1回転当たりの掘削方向のエネルギー(1000Fu/Nd)と、単位ビット断面積当たり・ビット1回転当たりの回転方向のエネルギーの2乗(8T/dとの関係を示す図である。
【図3】T0、T4、T7ビットにより来待砂岩、三城目安山岩(A)及び新小松安山岩をビット回転数100rpmで掘削したときの1000Fu/Ndと(8T/dとの関係を示す図である。
【図4】5−5/8in.ツースビットを用いて三城目安山岩(B)を、また、5in.及び5−5/8in.インサートビットを用いて沢入花崗岩(A)を掘削したときの1000Fu/Ndと(8T/dとの関係を示す図である。
【図5】直径が7−7/8in.のコニカルインサートビットにより三城目安山岩、沢入花崗岩、稲井泥岩及び本小松安山岩を掘削したときの1000Fu/Ndと(8T/dとの関係を示す図である。
【図6】直径が7−7/8in.のチゼルインサートビットにより三城目安山岩、沢入花崗岩、稲井泥岩及び本小松安山岩を掘削したときの1000Fu/Ndと(8T/dとの関係を示す図である。
【図7−1】ビット回転数が50rpmのときのT0ビットのF/dと8T/dとの関係を示す図である。
【図7−2】ビット回転数が50rpmのときのT4ビットのF/dと8T/dとの関係を示す図である。
【図7−3】ビット回転数が50rpmのときのT7ビットのF/dと8T/dとの関係を示す図である。
【図8】5−5/8in.ツースビット(三城目安山岩(B))、5in.及び5−5/8in.インサートビット(沢入花崗岩(A))のF/dと8T/dとの関係を示す図である。
【図9】7−7/8in.コニカルインサートビットのF/dと8T/dとの関係を示す図である。
【図10】7−7/8in.チゼルインサートビットのF/dと8T/dとの関係を示す図である。
【図11】ビット回転数が50rpmで3−7/8in.ツースビット(T0,T4,T7)を用いて三城目安山岩(A)と新小松安山岩を掘削したときの無次元有効トルクTedと刃先高さの減少割合TWとの関係を示す図である。
【図12】7−7/8in.チゼルインサートビット(T0)について、すべての岩石のビット荷重・トルクの第1次作用線の傾きaFT(Ted)が、刃先摩耗の進展に従って傾き−0.281の直線で減少すると仮定して求めたときの無次元有効トルクTedと刃先高さの減少割合TWとの関係を示す図である。
【図13】T0、T4、T7ビットにより大谷凝灰岩を50rpmで掘削したときのF/dとu/Nとの関係を示す図である。
【図14】ビット回転数が50rpmで3−7/8in.ツースビット(T0,T4,T7)を用いて来待砂岩を掘削したときのu/Nと8T/dとの関係を示す図である。
【図15】大谷凝灰岩と来待砂岩のTWとFc/dとの関係を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態における岩石強度及びビット摩耗状態のリアルタイム評価を行うための評価システムを示す概略図である。

Claims (3)

  1. ローラコーンビットを用いて坑井を掘削する際の坑底の岩石強度評価方法において、掘削現場において計測されるデータに基づき、次の式により求められる岩石の掘削強度Ds′から坑底の岩石強度をリアルタイムで評価することを特徴とする岩石強度のリアルタイム評価方法。
    Figure 2005036388
    ただし、Tはトルク[kN・m]、dはビット直径[m]、Fはビット荷重[kN]、uは掘進率[m/min]、Nはビット回転数[rpm]、である。
  2. ローラコーンビットを用いて坑井を掘削する際のビットの刃先摩耗状態評価方法において、掘削される岩石が中硬〜硬岩の場合、掘削現場において計測されるデータに基づき、次の式により求められる無次元有効トルクTedからビットの刃先摩耗状態をリアルタイムで評価することを特徴とするビット摩耗状態のリアルタイム評価方法。
    Figure 2005036388
    ただし、aはビット荷重の第1次作用線の傾き[m/kN]、aはトルクの第1次作用線の傾き[m/kN]、aFTはビット荷重・トルクの第1次作用線の傾き、Teは有効トルク[kN・m]、dはビット直径[m]、Feは有効荷重[kN]、である。
  3. ローラコーンビットを用いて坑井を掘削する際のビットの刃先摩耗状態評価方法において、掘削される岩石が軟岩の場合、掘削現場において計測されるデータに基づき、単位ビット径当たりのしきい荷重Fc/d[kN/m]からビットの刃先摩耗状態をリアルタイムで評価することを特徴とするビット摩耗状態のリアルタイム評価方法。
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