JP2005034004A - 人工魚礁 - Google Patents
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Abstract
【課題】広く魚類等の餌となる海洋生物等の水棲生物の生息・増殖を効果的に行うことができ、しかも大量に調達することができる資材を用いて簡単な構成で、低コストで製造でき、また海洋等の環境保全や森林保全等の自然環境の保全、地域経済の振興にも貢献し得る人工魚礁の提供を課題とする。
【解決手段】人工魚礁は、筒状体1を多数個、相互に整列させ或いはランダムに集積して構成する。筒状体1として、所定長さに裁断し筒抜きをした竹を用いる。また竹は不完全炭化処理したものを用い、不完全炭化処理は20%以下の炭化率とする。複数個の筒状体1を網目状のケース2に収容して魚礁構成ユニット3とし、この魚礁構成ユニット3を1乃至複数個用いて人工魚礁とする。またコンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジング4に魚礁構成ユニット3を複数個配置して人工魚礁とする。
【選択図】 図5
【解決手段】人工魚礁は、筒状体1を多数個、相互に整列させ或いはランダムに集積して構成する。筒状体1として、所定長さに裁断し筒抜きをした竹を用いる。また竹は不完全炭化処理したものを用い、不完全炭化処理は20%以下の炭化率とする。複数個の筒状体1を網目状のケース2に収容して魚礁構成ユニット3とし、この魚礁構成ユニット3を1乃至複数個用いて人工魚礁とする。またコンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジング4に魚礁構成ユニット3を複数個配置して人工魚礁とする。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は人工魚礁に関し、より詳しくは、広く水棲生物、水産生物の保全・増殖の促進を図る人工魚礁に関する。
【0002】
【従来の技術】
わが国で多年にわたって実施されている人工魚礁は、その集魚機能により漁獲効率を改善して、わが国民にとって重要な動物蛋白を経済的に供給する一助となるなど、大きな効用を発現している。しかしながら通常の人工魚礁では、魚類等の水産生物を集めて捕獲する機能を優先するため、これら水産資源の保全・増殖機能に問題があった。
そこで人工魚礁の水産生物増殖機能を高める方法として、餌料となる水棲生物の生息・増殖を高めたり、幼稚魚段階の水産生物の逃避場・潜み場を提供する目的で、次のような人工魚礁が提供されている。
(1).人工魚礁として自然石や瓦を詰めたもの。
(2).人工魚礁として人工海藻を取り付けたもの。
(3).人工魚礁として牡蠣殻等の貝殻を詰めたもの。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)の人工魚礁では、期待される効果に比べて重量が過大となり、それゆえ人工魚礁の設計においてハウジング等の強度を大きくする必要がある等、コスト上の問題がある。またわが国では経済的に利用できる自然石の資源が近年枯渇してきている問題がある。更に表面に露出した石切場が少なくなった結果、表面の樹木を伐採して表土を剥いで石を採出しなければならなくなってきており、これら樹木の伐採は森林を減らすことになり、地球温暖化の点でも好ましくない。また表土の流出による河川や海洋の汚染につながったり、山崩れの発生等、防災上の問題もある。
また上記(2)の人工魚礁では、水中設置当初においては、所与の浮力で立ち並び、餌料生物の生息・増殖空間として機能していたものが、経年により付着生物の重み等によって浮力が減じて水底に倒れ伏す場合が多く、餌料生物の生息・増殖空間としての機能を著しく減じたり、海底の浄化機能を著しく損なう等の問題があった。
また上記(3)の人工魚礁では、一種の産業廃棄物である養殖牡蠣の貝殻を再利用する点で優れているが、貝殻に付着する肉質残滓の除去・洗浄による水質汚染問題や、その付加工程に伴うコスト増、創生空間に比較して大重量となり充填容器を強構造としなければならずコスト高になり易いこと、及び牡蠣殻発生地が地域に偏在すること等の問題がある。
またホタテの貝殻等も同様に利用できなくはないが、牡蠣殻ほどには強度がなく、また扁平であるため殻相互間の空間形成は難しい問題と、牡蠣殻の場合と同様に発生地が偏在する問題がある。
更に牡蠣殻等の貝殻では相互間に空隙は生じるものの、その空隙だけではなく、それ自体が小空間であり、筒状体のように各種小生物の生息空間になることができない問題がある。
【0004】
そこで本発明は上記従来の人工魚礁の欠点を解消し、単なる集魚機能だけではなく、広く魚類等の餌となる海洋生物等の水棲生物の生息・増殖を効果的に行うことができ、しかも大量に調達することができる資材を用いて簡単な構成で、低コストで製造でき、また海洋等の環境保全や森林保全等の自然環境の保全、地域経済の振興にも貢献し得る人工魚礁の提供を課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の人工魚礁は、筒状体を多数個、相互に整列させ或いはランダムに集積してなることを第1の特徴としている。
また本発明の人工魚礁は、上記第1の特徴に加えて、筒状体として、所定長さに裁断し、筒抜きをした竹を用いることを第2の特徴としている。
また本発明の人工魚礁は、上記第2の特徴に加えて、竹は不完全炭化処理したものを用いることを第3の特徴としている。
また本発明の人工魚礁は、上記第3の特徴に加えて、竹の不完全炭化処理は20%以下の炭化率としたことを第4の特徴としている。
また本発明の人工魚礁は、上記第1〜第4の何れかの特徴に加えて、複数個の筒状体を網目状のケースに収容して魚礁構成ユニットとし、この魚礁構成ユニットを1乃至複数個用いてなることを第5の特徴としている。
また本発明の人工魚礁は、上記第5の特徴に加えて、コンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジングに魚礁構成ユニットを複数個配置してなることを第6の特徴としている。
【0006】
上記第1の特徴によれば、多数個の筒状体が整列され或いはランダムに集積された人工魚礁においては、その集積された多数の筒状体の各筒穴が、餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の格好の場所となり、また幼稚魚段階の水産生物の格好の逃避場、潜み場となる。同様に集積された多数の筒状体の間に構成される隙間が餌料となる水棲生物、幼稚魚段階の水産生物の格好の生息場、増殖場となり、また逃避場、潜み場となる。
また筒状体として筒穴を貫通させることで、筒穴への水流の流出入が容易に行われ、溶存酸素の供給がスムーズに行われる。
また筒状体の場合は、その内外における表面積が大きく、海洋生物等の付着にも適している。
筒状体の構成材料としては、素焼き陶器等の陶磁器の他、金属、経年することで徐々に自然物質に分解する分解性プラスチック等のプラスチック、木材、その他の材料を用いることができる。
また筒状体の寸法は、長さとしては数cm〜1m、好ましくは10cm〜数十cmのもの、筒穴の直径としては1cm〜数十cm、好ましくは数cm〜十数cmのものとし、肉厚は厚くないものがよい。
筒状体は人工魚礁のケースや枠体内に、一方向に整列させて集積し、積み上げ方向に交互に2方向に整列させて集積し、或いは縦横に整列させて集積することができる。また筒状体は人工魚礁のケースや枠体内にランダムに集積することもできる。
【0007】
また上記第2の特徴によれば、上記第1の特徴による作用効果に加えて、筒状体として竹を用い、これを所定長さに裁断して、筒抜きをして使用する。
竹は筒状体を構成するのに非常に便利な素材である。節の部分を除いて最初から筒状になっており、節の部分だけを繰り抜けば済む。
また竹の筒穴は、その穴径があまり大きくなく、餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の場所として、或いは幼稚魚段階の水産生物の逃避場、潜み場として、格好の寸法を呈している。
また竹は適当な長さに裁断する際の裁断が容易で、筒状体形成の製造コストが低廉で、且つ筒状体としたときに強度が強く、輸送やその他の取り扱いの際の破損による歩留まり低下も少ない。しかも日本及びアジア等の海外の各地に多数自生しており、資材調達のコストが非常に安くつく。また放置竹林をなくして、その旺盛な繁殖によって阻害される森林の保護にもつながる。また産業の少ない田舎における産業創生と雇用にもつながる。
また竹は、最終的には水中において腐食、磨耗、水中生物による食損により破壊、消失して自然回帰する。よって環境破壊を起こす恐れがない。
前記竹は、例えば真竹(苦竹)を用いることができるが、はちく(淡竹)、もうそうちく(孟宗竹)等、他の種類の竹であってもよい。
筒状体としての竹は、裁断してその長さを10〜数十cm、好ましくは10〜30cmにして用いる。また筒状体としての竹は、その筒穴径が1〜10cm、好ましくは2〜8cmのものを用いる。
【0008】
また上記第3の特徴によれば、上記第2の特徴による作用効果に加えて、竹を人工魚礁の筒状体として用いる場合、竹は不完全炭化処理したものを用いるのがよい。このことは本願発明者が約1年をかけて海中実験を行った結果の結論である。
前記実験によれば、筒状体が竹である場合に、それが炭化処理を全く行わない竹を用いるか、炭化処理を行うが不完全炭化状態の竹を用いるかによって、餌料となる水棲生物或いは幼稚魚段階の水産生物の住処としての前記生物の種類数や総数に及ぼす効果には顕著な相違はないが、耐久性に大きな相違が生じる。即ち、生竹は水中に置かれると腐食速度が速く、また海洋ではフナクイムシ等による食害による損壊が大きく、1年程度でその機能を失っていく。一方、前記不完全炭化処理したものは、耐腐食性、耐食害性がよく、1年を超えてその機能を継続して発揮させることができる。
【0009】
また上記第4の特徴によれば、上記第3の特徴による作用効果に加えて、竹の不完全炭化処理は20%以下の炭化率とすることで、人工魚礁を構成する筒状体の海洋等の水中における腐食、食害等に対する耐久性を最も良好にすることができる。これによって、長期にわたって餌料となる水棲生物或いは幼稚魚段階の水産生物の住処としての機能を発揮する。
ここで本発明において炭化率とは、竹の炭化の程度を、元の重量からの重量の減量%をいうものとする。即ち、炭化処理を完全炭化状態になる前に停止した(不完全炭化処理をした)ときに、竹の重量が元の重量から20%減じた状態となったとすると、その竹の炭化率は20%であるとする。尚、この算出に基づく炭化率では、炭化率が50%以上のものは略完全炭化の状態であるとすることができる。
前記20%以下の不完全炭化処理は、より好ましくは5%を含む数%から10%までの炭化率とする。
【0010】
また上記第5の特徴によれば、上記第1〜第4の何れかの特徴による作用効果に加えて、筒状体はその複数個が網目状のケースに入れられて魚礁を構成するユニットとされ、この魚礁構成ユニットを1乃至複数個用いて人工魚礁が構成される。
前記魚礁構成ユニットは、それ自身が餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の場所として或いは幼稚魚段階の水産生物の逃避場、潜み場としての機能を果たすことができるものであり、人工魚礁としての機能を備えている。よって魚礁構成ユニットは1個であっても人工魚礁となり得る。しかし、通常は魚礁構成ユニットを複数個用いて、より規模の大きい人工魚礁を構成してもよい。
魚礁構成ユニットを構成することで、筒状体の取り扱いを魚礁構成ユニット単位で行うことができるので、取り扱いが非常に便利になる。
網目状のケースは、鉄筋等の金属性の網目ケースを用いることができるが、木材その他加の材料を用いた網目ケースとすることができる。網目ケースは、その中に収容される筒状体が抜け落ちない程度の開口を多数設けたものを指すものとする。
【0011】
また上記第6の特徴によれば、上記第5の特徴による作用効果に加えて、人工魚礁はコンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジングを用いて、これに魚礁構成ユニットを複数個配置して構成される。内部に魚礁構成ユニットを複数個配置したハウジングを水中に沈めることで、取り扱いよくそれらの作業を行うことができると共に、水中に置かれた人工魚礁が水流等によって容易に流されたりすることなく、所定の場所に保持される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下の図面を参照しながら、本発明の実施形態を更に説明する。
図1は本発明の人工魚礁の実施形態に用いられる筒状体の斜視図、図2は本発明の人工魚礁の実施形態に用いられる網目状ケースの斜視図、図3は本発明の人工魚礁の実施形態に用いられるハウジングの斜視図、図4は網目状ケースに筒状体が収容されてなる魚礁構成ユニットの例を示す斜視図、図5は魚礁構成ユニットをハウジングに配置した例を示す斜視図である。
【0013】
先ず図1を参照して、筒状体1は真竹を用いる。真竹は、例えば年齢3〜4年、外径が3〜5cmのものを適度に乾燥させ、長さ15cm程度に裁断して用いる。外径が3〜5cmの竹は、竹の肉厚が3mm程度であるので、内径は2.4〜4.4cm程度となる。
竹の種類は特に限定されないが、筒状体1の長さとしての竹の裁断長さは10〜30cmとし、内径が2cm以上のものを用いる。裁断後、必要に応じて節抜きをする。
裁断され、節抜きがなされた竹は不完全炭化させる。不完全炭化の竹は、単純には炭焼き作業において、炭化が不完全なものを作ることによって得ることができる。
前記不完全炭化の竹は、具体的には炭化率が5%の竹を用いて筒状体1とすることができる。
本発明において炭化率が5%とは、炭焼き作業において、重量が初期重量から5%減量された状態のものをいうものとする。即ち、重量の減量%ということになる。従って重量の減量%からいえば完全炭化のものでも、数値としては炭化率100%にはならず、炭化率が50%でほぼ完全に炭化した状態となる。
筒状体1としての不完全炭化処理する竹は、その炭化率が20%以下で不完全炭化処理されたものが好ましい。炭化率が20%以下の状態にある竹は、その性質として弾力性を保持している。竹の炭化率は、より好ましくは5%を含む数%〜10%までの炭化率とする。
【0014】
図2を参照して、本実施形態では網目状のケース2を用いる。該ケース2は鉄筋等の金属により網目状に形成されている。図示しないが、該ケース2に筒状体1としての竹を装入するための開閉蓋等の開放手段が設けられる。
前記ケース2に対して、筒状体1が複数本、整列して装入される。整列装入は筒状体1を全て同方向に揃えて装入してもよいし、複数段の段毎に方向を90度変更して装入してもよい。また同一段において装入方向を変更するようにしてもよい。また筒状体1はケース2に対してランダムな方向に装入してもよい。
前記ケース2の網目は筒状体1が抜け落ちない程度において大きいほうが、水棲生物の出入り上において好ましい。勿論、前記網目は必ずしも鉄筋等の線がクロス状態に網目を形成している必要はない。
【0015】
上記において、複数個の筒状体1が網目状のケースに収容したものが魚礁構成ユニット3で、その例を図4に示す。
魚礁構成ユニット3は、それ単独においても魚礁としての機能を果たすことができるので、極端には1個の魚礁構成ユニット3においても人工魚礁を構成する。また魚礁構成ユニット3を複数個、整列して或いはランダムにして集積することで、人工魚礁を構成することになる。
【0016】
人工魚礁はハウジング4を用いて構成することができる。ハウジング4は図3に示すようなコンクリート製の枠組みで構成することができる他、金属等の剛性材による剛性の枠組みとして構成することができる。このハウジング4の役割は、海中等に置かれたときに波等によって人工魚礁が容易に流されないようにすると共に、ハウジング4内に魚礁構成ユニット3或いはその他の資材を立体的に配置できるようにする機能を果たす。また魚礁構成ユニット3或いはその他の資材をハウジング4内に収容することで、人工魚礁を一体物として取り扱うことができ、取り扱いが容易となる。
ハウジング4には、その周囲に十分な窓4aを設けて、開放的な構成とする。勿論、この窓4aには格子のような抜け落ち予防手段を設けることができる。ハウジング4の形状は六方体形状、直方体形状、その他の多角形形状等、その形状が限定されるものではない。
ハウジング4に対する魚礁構成ユニット3の配置の構造は自由である。ハウジング4の枠組みに対して魚礁構成ユニット3をボルトナット等の固定手段を用いて立体的に取り付けることもできるし、ハウジング4内に魚礁構成ユニット3を積み重ねるようにして集積、配置することも可能である。このようにして、筒状体1が多数個、ハウジング4に集積される。
【0017】
ハウジング4内に筒状体1が多数集積されてなる人工魚礁は、海洋等に投入され、餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の場所として或いは幼稚魚段階の水産生物の逃避場、潜み場としての機能を果たす。
【0018】
【実施例】
竹齢3〜4年、外形3〜5cm、長さ15cmに切り揃えた真竹について、それぞれ50%炭化率(略完全炭化)としたもの、20%炭化率としたもの、5%炭化率としたもの、0%炭化率としたもの、その他に割竹として5%炭化率としたものの5区分に分け、各区分について数十本ずつを一まとめにして同地区の海底に沈め、平成14年3月23日から平成15年3月25日までの1年間、1ヶ月毎に水棲生物の付き具合、及び各区分毎の竹の状態を観察した。
各区分における生物の年間総付着量(1ヶ月毎の付着量の合計)、1年後の竹の損傷具合を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
上記1年間の実験において、竹筒のものは割竹のものに比べて、一般的に生物の付着量が多くなる傾向にあることがわかる。
また竹筒のものでは、1年間の総付着量として50%炭化率のものが他をリードした状態となっているが、続いて0%、5%、20%の順となって多少の順位がついている。
その一方、同じ竹筒でも炭化率0%のもの(乾燥しただけの生竹)は、フナクイムシによる食害がどんどん進み、1年経過前の平成15年2月25日の観察時には全体がぼろぼろになって崩壊状態となっており、このため陸揚げして実験を終了した。即ち炭化率0%のものは、1年経過前において魚礁要素としては、それ以上の継続的機能の発揮が困難となった。
また炭化率50%のもの(完全炭化に近いもの)は、1年間での生物付着総量は良好ではあるが、これも1年経過時の時点での観察において、元の筒状の原形を留めない状態にまで崩壊が進み、1年経過以降における生物の付着効果の継続性が期待できない状態となっていた。
また炭化率20%の不完全炭化のものは、1年間での生物付着総量が前記炭化率50%のものに比べて低い傾向にあるが、竹筒の状態は、上記炭化率50%のものと比べて崩壊が進んでいないことから、1年経過以降も暫くは引き続き生物の付着効果の継続性が期待できる状態であった。
また炭化率5%の不完全炭化のものは、見た目にもかなり炭化の程度が浅い状態のものであるが、1年間での生物付着総量において、これも炭化率50%のものに比べて低い傾向にある。その一方、竹筒の状態は1年経過においても略原型を留め、1年経過以降もかなりの期間引き続いて生物の付着効果が期待できることがわかった。
また炭化率5%の割竹を用いたものは、1年経過後の状態は炭化率5%の竹筒のものと同様に、ほぼ原型を留めているが、1年間での生物付着総量が他の竹筒のものと比べても低い傾向にある。また割竹では、筒状体に比べて筒内を生息空間とする小形魚(幼稚魚を含む)を収容できないことがわかった。
【0021】
以上の実験の結果、1年以上にわたって良好な生物付着効果を得ることができるのは、完全炭化した竹筒及び炭化処理を行わない竹筒ではなく、不完全炭化処理した竹筒であることが判明した。特に炭化処理はしているが、その炭化の程度が浅いものが、耐久性がよく、長期の生物付着効果があることがわかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明は以上の構成、作用よりなり、請求項1に記載の人工魚礁によれば、筒状体を多数個、相互に整列させ或いはランダムに集積してなるので、
その集積された多数の筒状体の各筒穴が、餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の格好の場所となり、また幼稚魚段階の水産生物の格好の逃避場、潜み場となることができる。また同様に、集積された多数の筒状体の間に構成される隙間が餌料となる水棲生物、幼稚魚段階の水産生物の格好の生息場、増殖場となり、また逃避場、潜み場となることができる。
また筒状体として筒穴が貫通することで、筒穴への水流の流出入が容易に行われ、溶存酸素の供給をスムーズに行うことができる。この結果、新鮮な海水と溶存酸素及び食用プランクトンの供給が期待でき、餌料生物の良好な生息、増殖場所となることができる。
また筒状体の場合は、その内外における表面積が大きく、海洋生物等の生物の付着にも適している。
また請求項2に記載の人工魚礁によれば、上記請求項1に記載の構成による効果に加えて、筒状体として、所定長さに裁断し、筒抜きをした竹を用いるので、
筒状体を簡単に得て人工魚礁の構成材として用いることができる。竹は節の部分を除いて最初から筒状になっており、節の部分だけを繰り抜けば済むので、筒状体を構成するのに非常に便利な素材である。
また竹の筒穴はその穴径があまり大きくなく、餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の場所として、或いは幼稚魚段階の水産生物の逃避場、潜み場として、格好の寸法を呈している。
また竹は適当な長さに裁断する際の裁断が容易で、筒状体形成の製造コストが低廉で、且つ筒状体としたときに強度が強く、輸送やその他の取り扱いの際の破損による歩留まり低下も少ない。しかも日本及びアジア等の海外の各地に多数自生しており、資材調達のコストが非常に安くつく。また放置竹林をなくして、その旺盛な繁殖によって阻害される森林の保護にもつながる。また産業の少ない田舎における産業創生と雇用にもつながる。
また竹は最終的には、水中において腐食、磨耗、水中生物による食損により破壊、消失して自然回帰する。よって環境破壊を起こす恐れがない。
また請求項3に記載の人工魚礁によれば、上記請求項2に記載の構成による効果に加えて、竹は不完全炭化処理したものを用いるので、
炭化処理を全く行わない竹及び炭化処理を完全に行った竹に比べて、耐腐食性、耐食害性がよく、1年を超えてその機能を良好に継続して発揮させることができる。
また請求項4に記載の人工魚礁によれば、上記請求項3に記載の構成による効果に加えて、竹の不完全炭化処理は20%以下の炭化率としたので、
人工魚礁を構成する筒状体の海洋等の水中における腐食、食害等に対する耐久性を最も良好にすることができる。これによって、長期にわたって餌料となる水棲生物或いは幼稚魚段階の水産生物の住処としての機能を発揮することができる。
また請求項5に記載の人工魚礁によれば、上記請求項1〜4の何れかに記載の構成による効果に加えて、複数個の筒状体を網目状のケースに収容して魚礁構成ユニットとし、この魚礁構成ユニットを1乃至複数個用いてなるので、
魚礁構成ユニットを構成することにより、筒状体の取り扱いを魚礁構成ユニット単位で行うことができ、取り扱いが非常に便利になる。
また魚礁構成ユニットは、それ自身においても餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の場所として或いは幼稚魚段階の水産生物の逃避場、潜み場としての機能を果たすことができ、人工魚礁としての機能を備えている。よって魚礁構成ユニットを、1個から多数個に至るまで自由に用いて、種々の規模の人工魚礁を構成することができる。
また請求項6に記載の人工魚礁によれば、上記請求項5に記載の構成による効果に加えて、コンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジングに魚礁構成ユニットを複数個配置してなるので、
コンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジングを用いて、魚礁構成ユニットの複数個を容易に立体的等に配置して人工魚礁を形成することができる。また堅牢な人工魚礁を得ることができる。
また内部に魚礁構成ユニットを複数個配置したハウジングを水中に沈めることで、人工魚礁の水中への設置作業や移動作業を取り扱いよく行うことができると共に、水中に置かれた人工魚礁をその場所に保持し、水流等によって流されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の人工魚礁の実施形態に用いられる筒状体の斜視図である。
【図2】本発明の人工魚礁の実施形態に用いられる網目状ケースの斜視図である。
【図3】本発明の人工魚礁の実施形態に用いられるハウジングの斜視図である。
【図4】網目状ケースに筒状体が収容されてなる魚礁構成ユニットの例を示す斜視図である。
【図5】魚礁構成ユニットをハウジングに配置した例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 筒状体
2 ケース
3 魚礁構成ユニット
4 ハウジング
4a 窓
【発明の属する技術分野】
本発明は人工魚礁に関し、より詳しくは、広く水棲生物、水産生物の保全・増殖の促進を図る人工魚礁に関する。
【0002】
【従来の技術】
わが国で多年にわたって実施されている人工魚礁は、その集魚機能により漁獲効率を改善して、わが国民にとって重要な動物蛋白を経済的に供給する一助となるなど、大きな効用を発現している。しかしながら通常の人工魚礁では、魚類等の水産生物を集めて捕獲する機能を優先するため、これら水産資源の保全・増殖機能に問題があった。
そこで人工魚礁の水産生物増殖機能を高める方法として、餌料となる水棲生物の生息・増殖を高めたり、幼稚魚段階の水産生物の逃避場・潜み場を提供する目的で、次のような人工魚礁が提供されている。
(1).人工魚礁として自然石や瓦を詰めたもの。
(2).人工魚礁として人工海藻を取り付けたもの。
(3).人工魚礁として牡蠣殻等の貝殻を詰めたもの。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)の人工魚礁では、期待される効果に比べて重量が過大となり、それゆえ人工魚礁の設計においてハウジング等の強度を大きくする必要がある等、コスト上の問題がある。またわが国では経済的に利用できる自然石の資源が近年枯渇してきている問題がある。更に表面に露出した石切場が少なくなった結果、表面の樹木を伐採して表土を剥いで石を採出しなければならなくなってきており、これら樹木の伐採は森林を減らすことになり、地球温暖化の点でも好ましくない。また表土の流出による河川や海洋の汚染につながったり、山崩れの発生等、防災上の問題もある。
また上記(2)の人工魚礁では、水中設置当初においては、所与の浮力で立ち並び、餌料生物の生息・増殖空間として機能していたものが、経年により付着生物の重み等によって浮力が減じて水底に倒れ伏す場合が多く、餌料生物の生息・増殖空間としての機能を著しく減じたり、海底の浄化機能を著しく損なう等の問題があった。
また上記(3)の人工魚礁では、一種の産業廃棄物である養殖牡蠣の貝殻を再利用する点で優れているが、貝殻に付着する肉質残滓の除去・洗浄による水質汚染問題や、その付加工程に伴うコスト増、創生空間に比較して大重量となり充填容器を強構造としなければならずコスト高になり易いこと、及び牡蠣殻発生地が地域に偏在すること等の問題がある。
またホタテの貝殻等も同様に利用できなくはないが、牡蠣殻ほどには強度がなく、また扁平であるため殻相互間の空間形成は難しい問題と、牡蠣殻の場合と同様に発生地が偏在する問題がある。
更に牡蠣殻等の貝殻では相互間に空隙は生じるものの、その空隙だけではなく、それ自体が小空間であり、筒状体のように各種小生物の生息空間になることができない問題がある。
【0004】
そこで本発明は上記従来の人工魚礁の欠点を解消し、単なる集魚機能だけではなく、広く魚類等の餌となる海洋生物等の水棲生物の生息・増殖を効果的に行うことができ、しかも大量に調達することができる資材を用いて簡単な構成で、低コストで製造でき、また海洋等の環境保全や森林保全等の自然環境の保全、地域経済の振興にも貢献し得る人工魚礁の提供を課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の人工魚礁は、筒状体を多数個、相互に整列させ或いはランダムに集積してなることを第1の特徴としている。
また本発明の人工魚礁は、上記第1の特徴に加えて、筒状体として、所定長さに裁断し、筒抜きをした竹を用いることを第2の特徴としている。
また本発明の人工魚礁は、上記第2の特徴に加えて、竹は不完全炭化処理したものを用いることを第3の特徴としている。
また本発明の人工魚礁は、上記第3の特徴に加えて、竹の不完全炭化処理は20%以下の炭化率としたことを第4の特徴としている。
また本発明の人工魚礁は、上記第1〜第4の何れかの特徴に加えて、複数個の筒状体を網目状のケースに収容して魚礁構成ユニットとし、この魚礁構成ユニットを1乃至複数個用いてなることを第5の特徴としている。
また本発明の人工魚礁は、上記第5の特徴に加えて、コンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジングに魚礁構成ユニットを複数個配置してなることを第6の特徴としている。
【0006】
上記第1の特徴によれば、多数個の筒状体が整列され或いはランダムに集積された人工魚礁においては、その集積された多数の筒状体の各筒穴が、餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の格好の場所となり、また幼稚魚段階の水産生物の格好の逃避場、潜み場となる。同様に集積された多数の筒状体の間に構成される隙間が餌料となる水棲生物、幼稚魚段階の水産生物の格好の生息場、増殖場となり、また逃避場、潜み場となる。
また筒状体として筒穴を貫通させることで、筒穴への水流の流出入が容易に行われ、溶存酸素の供給がスムーズに行われる。
また筒状体の場合は、その内外における表面積が大きく、海洋生物等の付着にも適している。
筒状体の構成材料としては、素焼き陶器等の陶磁器の他、金属、経年することで徐々に自然物質に分解する分解性プラスチック等のプラスチック、木材、その他の材料を用いることができる。
また筒状体の寸法は、長さとしては数cm〜1m、好ましくは10cm〜数十cmのもの、筒穴の直径としては1cm〜数十cm、好ましくは数cm〜十数cmのものとし、肉厚は厚くないものがよい。
筒状体は人工魚礁のケースや枠体内に、一方向に整列させて集積し、積み上げ方向に交互に2方向に整列させて集積し、或いは縦横に整列させて集積することができる。また筒状体は人工魚礁のケースや枠体内にランダムに集積することもできる。
【0007】
また上記第2の特徴によれば、上記第1の特徴による作用効果に加えて、筒状体として竹を用い、これを所定長さに裁断して、筒抜きをして使用する。
竹は筒状体を構成するのに非常に便利な素材である。節の部分を除いて最初から筒状になっており、節の部分だけを繰り抜けば済む。
また竹の筒穴は、その穴径があまり大きくなく、餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の場所として、或いは幼稚魚段階の水産生物の逃避場、潜み場として、格好の寸法を呈している。
また竹は適当な長さに裁断する際の裁断が容易で、筒状体形成の製造コストが低廉で、且つ筒状体としたときに強度が強く、輸送やその他の取り扱いの際の破損による歩留まり低下も少ない。しかも日本及びアジア等の海外の各地に多数自生しており、資材調達のコストが非常に安くつく。また放置竹林をなくして、その旺盛な繁殖によって阻害される森林の保護にもつながる。また産業の少ない田舎における産業創生と雇用にもつながる。
また竹は、最終的には水中において腐食、磨耗、水中生物による食損により破壊、消失して自然回帰する。よって環境破壊を起こす恐れがない。
前記竹は、例えば真竹(苦竹)を用いることができるが、はちく(淡竹)、もうそうちく(孟宗竹)等、他の種類の竹であってもよい。
筒状体としての竹は、裁断してその長さを10〜数十cm、好ましくは10〜30cmにして用いる。また筒状体としての竹は、その筒穴径が1〜10cm、好ましくは2〜8cmのものを用いる。
【0008】
また上記第3の特徴によれば、上記第2の特徴による作用効果に加えて、竹を人工魚礁の筒状体として用いる場合、竹は不完全炭化処理したものを用いるのがよい。このことは本願発明者が約1年をかけて海中実験を行った結果の結論である。
前記実験によれば、筒状体が竹である場合に、それが炭化処理を全く行わない竹を用いるか、炭化処理を行うが不完全炭化状態の竹を用いるかによって、餌料となる水棲生物或いは幼稚魚段階の水産生物の住処としての前記生物の種類数や総数に及ぼす効果には顕著な相違はないが、耐久性に大きな相違が生じる。即ち、生竹は水中に置かれると腐食速度が速く、また海洋ではフナクイムシ等による食害による損壊が大きく、1年程度でその機能を失っていく。一方、前記不完全炭化処理したものは、耐腐食性、耐食害性がよく、1年を超えてその機能を継続して発揮させることができる。
【0009】
また上記第4の特徴によれば、上記第3の特徴による作用効果に加えて、竹の不完全炭化処理は20%以下の炭化率とすることで、人工魚礁を構成する筒状体の海洋等の水中における腐食、食害等に対する耐久性を最も良好にすることができる。これによって、長期にわたって餌料となる水棲生物或いは幼稚魚段階の水産生物の住処としての機能を発揮する。
ここで本発明において炭化率とは、竹の炭化の程度を、元の重量からの重量の減量%をいうものとする。即ち、炭化処理を完全炭化状態になる前に停止した(不完全炭化処理をした)ときに、竹の重量が元の重量から20%減じた状態となったとすると、その竹の炭化率は20%であるとする。尚、この算出に基づく炭化率では、炭化率が50%以上のものは略完全炭化の状態であるとすることができる。
前記20%以下の不完全炭化処理は、より好ましくは5%を含む数%から10%までの炭化率とする。
【0010】
また上記第5の特徴によれば、上記第1〜第4の何れかの特徴による作用効果に加えて、筒状体はその複数個が網目状のケースに入れられて魚礁を構成するユニットとされ、この魚礁構成ユニットを1乃至複数個用いて人工魚礁が構成される。
前記魚礁構成ユニットは、それ自身が餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の場所として或いは幼稚魚段階の水産生物の逃避場、潜み場としての機能を果たすことができるものであり、人工魚礁としての機能を備えている。よって魚礁構成ユニットは1個であっても人工魚礁となり得る。しかし、通常は魚礁構成ユニットを複数個用いて、より規模の大きい人工魚礁を構成してもよい。
魚礁構成ユニットを構成することで、筒状体の取り扱いを魚礁構成ユニット単位で行うことができるので、取り扱いが非常に便利になる。
網目状のケースは、鉄筋等の金属性の網目ケースを用いることができるが、木材その他加の材料を用いた網目ケースとすることができる。網目ケースは、その中に収容される筒状体が抜け落ちない程度の開口を多数設けたものを指すものとする。
【0011】
また上記第6の特徴によれば、上記第5の特徴による作用効果に加えて、人工魚礁はコンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジングを用いて、これに魚礁構成ユニットを複数個配置して構成される。内部に魚礁構成ユニットを複数個配置したハウジングを水中に沈めることで、取り扱いよくそれらの作業を行うことができると共に、水中に置かれた人工魚礁が水流等によって容易に流されたりすることなく、所定の場所に保持される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下の図面を参照しながら、本発明の実施形態を更に説明する。
図1は本発明の人工魚礁の実施形態に用いられる筒状体の斜視図、図2は本発明の人工魚礁の実施形態に用いられる網目状ケースの斜視図、図3は本発明の人工魚礁の実施形態に用いられるハウジングの斜視図、図4は網目状ケースに筒状体が収容されてなる魚礁構成ユニットの例を示す斜視図、図5は魚礁構成ユニットをハウジングに配置した例を示す斜視図である。
【0013】
先ず図1を参照して、筒状体1は真竹を用いる。真竹は、例えば年齢3〜4年、外径が3〜5cmのものを適度に乾燥させ、長さ15cm程度に裁断して用いる。外径が3〜5cmの竹は、竹の肉厚が3mm程度であるので、内径は2.4〜4.4cm程度となる。
竹の種類は特に限定されないが、筒状体1の長さとしての竹の裁断長さは10〜30cmとし、内径が2cm以上のものを用いる。裁断後、必要に応じて節抜きをする。
裁断され、節抜きがなされた竹は不完全炭化させる。不完全炭化の竹は、単純には炭焼き作業において、炭化が不完全なものを作ることによって得ることができる。
前記不完全炭化の竹は、具体的には炭化率が5%の竹を用いて筒状体1とすることができる。
本発明において炭化率が5%とは、炭焼き作業において、重量が初期重量から5%減量された状態のものをいうものとする。即ち、重量の減量%ということになる。従って重量の減量%からいえば完全炭化のものでも、数値としては炭化率100%にはならず、炭化率が50%でほぼ完全に炭化した状態となる。
筒状体1としての不完全炭化処理する竹は、その炭化率が20%以下で不完全炭化処理されたものが好ましい。炭化率が20%以下の状態にある竹は、その性質として弾力性を保持している。竹の炭化率は、より好ましくは5%を含む数%〜10%までの炭化率とする。
【0014】
図2を参照して、本実施形態では網目状のケース2を用いる。該ケース2は鉄筋等の金属により網目状に形成されている。図示しないが、該ケース2に筒状体1としての竹を装入するための開閉蓋等の開放手段が設けられる。
前記ケース2に対して、筒状体1が複数本、整列して装入される。整列装入は筒状体1を全て同方向に揃えて装入してもよいし、複数段の段毎に方向を90度変更して装入してもよい。また同一段において装入方向を変更するようにしてもよい。また筒状体1はケース2に対してランダムな方向に装入してもよい。
前記ケース2の網目は筒状体1が抜け落ちない程度において大きいほうが、水棲生物の出入り上において好ましい。勿論、前記網目は必ずしも鉄筋等の線がクロス状態に網目を形成している必要はない。
【0015】
上記において、複数個の筒状体1が網目状のケースに収容したものが魚礁構成ユニット3で、その例を図4に示す。
魚礁構成ユニット3は、それ単独においても魚礁としての機能を果たすことができるので、極端には1個の魚礁構成ユニット3においても人工魚礁を構成する。また魚礁構成ユニット3を複数個、整列して或いはランダムにして集積することで、人工魚礁を構成することになる。
【0016】
人工魚礁はハウジング4を用いて構成することができる。ハウジング4は図3に示すようなコンクリート製の枠組みで構成することができる他、金属等の剛性材による剛性の枠組みとして構成することができる。このハウジング4の役割は、海中等に置かれたときに波等によって人工魚礁が容易に流されないようにすると共に、ハウジング4内に魚礁構成ユニット3或いはその他の資材を立体的に配置できるようにする機能を果たす。また魚礁構成ユニット3或いはその他の資材をハウジング4内に収容することで、人工魚礁を一体物として取り扱うことができ、取り扱いが容易となる。
ハウジング4には、その周囲に十分な窓4aを設けて、開放的な構成とする。勿論、この窓4aには格子のような抜け落ち予防手段を設けることができる。ハウジング4の形状は六方体形状、直方体形状、その他の多角形形状等、その形状が限定されるものではない。
ハウジング4に対する魚礁構成ユニット3の配置の構造は自由である。ハウジング4の枠組みに対して魚礁構成ユニット3をボルトナット等の固定手段を用いて立体的に取り付けることもできるし、ハウジング4内に魚礁構成ユニット3を積み重ねるようにして集積、配置することも可能である。このようにして、筒状体1が多数個、ハウジング4に集積される。
【0017】
ハウジング4内に筒状体1が多数集積されてなる人工魚礁は、海洋等に投入され、餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の場所として或いは幼稚魚段階の水産生物の逃避場、潜み場としての機能を果たす。
【0018】
【実施例】
竹齢3〜4年、外形3〜5cm、長さ15cmに切り揃えた真竹について、それぞれ50%炭化率(略完全炭化)としたもの、20%炭化率としたもの、5%炭化率としたもの、0%炭化率としたもの、その他に割竹として5%炭化率としたものの5区分に分け、各区分について数十本ずつを一まとめにして同地区の海底に沈め、平成14年3月23日から平成15年3月25日までの1年間、1ヶ月毎に水棲生物の付き具合、及び各区分毎の竹の状態を観察した。
各区分における生物の年間総付着量(1ヶ月毎の付着量の合計)、1年後の竹の損傷具合を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
上記1年間の実験において、竹筒のものは割竹のものに比べて、一般的に生物の付着量が多くなる傾向にあることがわかる。
また竹筒のものでは、1年間の総付着量として50%炭化率のものが他をリードした状態となっているが、続いて0%、5%、20%の順となって多少の順位がついている。
その一方、同じ竹筒でも炭化率0%のもの(乾燥しただけの生竹)は、フナクイムシによる食害がどんどん進み、1年経過前の平成15年2月25日の観察時には全体がぼろぼろになって崩壊状態となっており、このため陸揚げして実験を終了した。即ち炭化率0%のものは、1年経過前において魚礁要素としては、それ以上の継続的機能の発揮が困難となった。
また炭化率50%のもの(完全炭化に近いもの)は、1年間での生物付着総量は良好ではあるが、これも1年経過時の時点での観察において、元の筒状の原形を留めない状態にまで崩壊が進み、1年経過以降における生物の付着効果の継続性が期待できない状態となっていた。
また炭化率20%の不完全炭化のものは、1年間での生物付着総量が前記炭化率50%のものに比べて低い傾向にあるが、竹筒の状態は、上記炭化率50%のものと比べて崩壊が進んでいないことから、1年経過以降も暫くは引き続き生物の付着効果の継続性が期待できる状態であった。
また炭化率5%の不完全炭化のものは、見た目にもかなり炭化の程度が浅い状態のものであるが、1年間での生物付着総量において、これも炭化率50%のものに比べて低い傾向にある。その一方、竹筒の状態は1年経過においても略原型を留め、1年経過以降もかなりの期間引き続いて生物の付着効果が期待できることがわかった。
また炭化率5%の割竹を用いたものは、1年経過後の状態は炭化率5%の竹筒のものと同様に、ほぼ原型を留めているが、1年間での生物付着総量が他の竹筒のものと比べても低い傾向にある。また割竹では、筒状体に比べて筒内を生息空間とする小形魚(幼稚魚を含む)を収容できないことがわかった。
【0021】
以上の実験の結果、1年以上にわたって良好な生物付着効果を得ることができるのは、完全炭化した竹筒及び炭化処理を行わない竹筒ではなく、不完全炭化処理した竹筒であることが判明した。特に炭化処理はしているが、その炭化の程度が浅いものが、耐久性がよく、長期の生物付着効果があることがわかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明は以上の構成、作用よりなり、請求項1に記載の人工魚礁によれば、筒状体を多数個、相互に整列させ或いはランダムに集積してなるので、
その集積された多数の筒状体の各筒穴が、餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の格好の場所となり、また幼稚魚段階の水産生物の格好の逃避場、潜み場となることができる。また同様に、集積された多数の筒状体の間に構成される隙間が餌料となる水棲生物、幼稚魚段階の水産生物の格好の生息場、増殖場となり、また逃避場、潜み場となることができる。
また筒状体として筒穴が貫通することで、筒穴への水流の流出入が容易に行われ、溶存酸素の供給をスムーズに行うことができる。この結果、新鮮な海水と溶存酸素及び食用プランクトンの供給が期待でき、餌料生物の良好な生息、増殖場所となることができる。
また筒状体の場合は、その内外における表面積が大きく、海洋生物等の生物の付着にも適している。
また請求項2に記載の人工魚礁によれば、上記請求項1に記載の構成による効果に加えて、筒状体として、所定長さに裁断し、筒抜きをした竹を用いるので、
筒状体を簡単に得て人工魚礁の構成材として用いることができる。竹は節の部分を除いて最初から筒状になっており、節の部分だけを繰り抜けば済むので、筒状体を構成するのに非常に便利な素材である。
また竹の筒穴はその穴径があまり大きくなく、餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の場所として、或いは幼稚魚段階の水産生物の逃避場、潜み場として、格好の寸法を呈している。
また竹は適当な長さに裁断する際の裁断が容易で、筒状体形成の製造コストが低廉で、且つ筒状体としたときに強度が強く、輸送やその他の取り扱いの際の破損による歩留まり低下も少ない。しかも日本及びアジア等の海外の各地に多数自生しており、資材調達のコストが非常に安くつく。また放置竹林をなくして、その旺盛な繁殖によって阻害される森林の保護にもつながる。また産業の少ない田舎における産業創生と雇用にもつながる。
また竹は最終的には、水中において腐食、磨耗、水中生物による食損により破壊、消失して自然回帰する。よって環境破壊を起こす恐れがない。
また請求項3に記載の人工魚礁によれば、上記請求項2に記載の構成による効果に加えて、竹は不完全炭化処理したものを用いるので、
炭化処理を全く行わない竹及び炭化処理を完全に行った竹に比べて、耐腐食性、耐食害性がよく、1年を超えてその機能を良好に継続して発揮させることができる。
また請求項4に記載の人工魚礁によれば、上記請求項3に記載の構成による効果に加えて、竹の不完全炭化処理は20%以下の炭化率としたので、
人工魚礁を構成する筒状体の海洋等の水中における腐食、食害等に対する耐久性を最も良好にすることができる。これによって、長期にわたって餌料となる水棲生物或いは幼稚魚段階の水産生物の住処としての機能を発揮することができる。
また請求項5に記載の人工魚礁によれば、上記請求項1〜4の何れかに記載の構成による効果に加えて、複数個の筒状体を網目状のケースに収容して魚礁構成ユニットとし、この魚礁構成ユニットを1乃至複数個用いてなるので、
魚礁構成ユニットを構成することにより、筒状体の取り扱いを魚礁構成ユニット単位で行うことができ、取り扱いが非常に便利になる。
また魚礁構成ユニットは、それ自身においても餌料となる水棲生物の生息、産卵などの増殖の場所として或いは幼稚魚段階の水産生物の逃避場、潜み場としての機能を果たすことができ、人工魚礁としての機能を備えている。よって魚礁構成ユニットを、1個から多数個に至るまで自由に用いて、種々の規模の人工魚礁を構成することができる。
また請求項6に記載の人工魚礁によれば、上記請求項5に記載の構成による効果に加えて、コンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジングに魚礁構成ユニットを複数個配置してなるので、
コンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジングを用いて、魚礁構成ユニットの複数個を容易に立体的等に配置して人工魚礁を形成することができる。また堅牢な人工魚礁を得ることができる。
また内部に魚礁構成ユニットを複数個配置したハウジングを水中に沈めることで、人工魚礁の水中への設置作業や移動作業を取り扱いよく行うことができると共に、水中に置かれた人工魚礁をその場所に保持し、水流等によって流されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の人工魚礁の実施形態に用いられる筒状体の斜視図である。
【図2】本発明の人工魚礁の実施形態に用いられる網目状ケースの斜視図である。
【図3】本発明の人工魚礁の実施形態に用いられるハウジングの斜視図である。
【図4】網目状ケースに筒状体が収容されてなる魚礁構成ユニットの例を示す斜視図である。
【図5】魚礁構成ユニットをハウジングに配置した例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 筒状体
2 ケース
3 魚礁構成ユニット
4 ハウジング
4a 窓
Claims (6)
- 筒状体を多数個、相互に整列させ或いはランダムに集積してなることを特徴とする人工魚礁。
- 筒状体として、所定長さに裁断し、筒抜きをした竹を用いることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁。
- 竹は不完全炭化処理したものを用いることを特徴とする請求項2に記載の人工魚礁。
- 竹の不完全炭化処理は20%以下の炭化率としたことを特徴とする請求項3に記載の人工魚礁。
- 複数個の筒状体を網目状のケースに収容して魚礁構成ユニットとし、この魚礁構成ユニットを1乃至複数個用いてなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の人工魚礁。
- コンクリート若しくは剛性の枠組みを有するハウジングに魚礁構成ユニットを複数個配置してなることを特徴とする請求項5に記載の人工魚礁。
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JP2007282604A (ja) * | 2006-04-20 | 2007-11-01 | Nippon Gyojo System Kk | 魚礁用ユニット及びこれを用いた魚礁 |
JP2012217390A (ja) * | 2011-04-08 | 2012-11-12 | Kyodo Kumiai Marine Techno Yamaguchi | 稚魚保護育成礁 |
US8635973B1 (en) | 2012-10-19 | 2014-01-28 | Lee C. Shepard, III | Artificial mangrove assembly |
-
2003
- 2003-07-15 JP JP2003196981A patent/JP2005034004A/ja active Pending
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