JP2005032881A - 電機器システム、電機器モジュールの冷却装置およびその冷却装置用多孔質放熱体 - Google Patents

電機器システム、電機器モジュールの冷却装置およびその冷却装置用多孔質放熱体 Download PDF

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Abstract

【課題】小型で高い冷却性を確保できる電機器システムを提供する。
【解決手段】本発明の電機器システムは、発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュール(10)と、外部に連通した多数の気孔をもち、気孔中に冷媒を通過させることにより電機器モジュールから受熱した熱を冷媒へ放熱する多孔質放熱体(121)を有する冷却装置(20)と、を備えた電機器システム(100)であって、前記多孔質放熱体は、気孔率の低い低気孔率部と気孔率の高い高気孔率部とを少なくとも有し、低気孔率部は受熱側に設けられ、前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする。これにより、多孔質放熱体全体が有効活用されて多孔質放熱体から冷媒への放熱性が高まる。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発熱源となる電子部品等を搭載した電機器モジュールの熱を積極的に放熱させる冷却装置を備えた電機器システムと、その冷却装置と、その冷却装置に使用される多孔質放熱体とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発熱源となる電子部品や電気部品を搭載した電機器モジュールは種々あるが、その一例として、スイッチング回路等を備えたインバータ装置(半導体モジュール)がある。そこで使用されるパワーMOSFETやIGBT等の半導体チップは、大電流を制御するため非常に大きな発熱を伴う。例えば、電気自動車等に使用されるインバータ装置の場合、数十〜数百A程度の大電流が上記半導体チップによって制御されるため、半導体チップは相当大きな発熱を伴い、高温となる。このような半導体チップは、保証温度以上に過熱されると誤作動を生じ得るため、安定した動作を確保するには、その冷却(放熱)が不可欠である。
【0003】
このようは半導体チップを搭載した半導体モジュールの効率的な冷却方法や冷却装置は従来から種々提案されており、例えば、下記特許文献1、2に関連する開示がなされている。
【0004】
特許文献1では、電子部品等の発熱を熱伝導部材で受熱して、それを放熱部材で放熱させるものである。この放熱部材は、ウレタン等の発泡材に金属メッキを施したものからなり、空気との接触面積を増大させて電子部品等の放熱性を高めている。
【0005】
特許文献2では、電子部品等を搭載する緻密質セラミック層と冷媒(ガスまたは水)を通過させる多孔質セラミック層とを積層したセラミック放熱基板を使用している。冷媒を使用することで、電子部品等の放熱性を高めている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−101005号公報
【特許文献2】
特開平4−83368号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献のいずれのものでも、半導体モジュール等の発熱量が大きい場合には、その冷却性を十分に確保することはできない。
例えば、上記特許文献1の放熱部材を使用した場合、熱は主に薄い金属メッキ層しか流れず、その受熱側から放熱側へ至る十分な熱伝導経路は確保されていない。このため、その放熱部材の全体が有効に活用されず、その放熱部材によって、小型化を図りつつ多量の熱を放熱させることは困難である。また、特許文献1の場合は、自然空冷させているだけであるため、冷却性能も低い。
【0008】
上記特許文献2の場合、多孔質セラミック層に冷媒を流して強制冷却しているため冷却性能の向上が望める。しかし、その多孔質セラミック層は、単にほぼ均一な多孔質とされているに過ぎず、特許文献1の場合と同様、受熱から放熱に至る熱伝導経路を考慮した形態とはなっていない。このため、例えば、多孔質セラミック層の内、緻密質セラミック層に近接した部分でのみ、実質的な冷却がなされるといった事態も考えられる。これでは、多孔質セラミック層全体が有効活用されず、電子部品等の放熱性をさらに高めることはできない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、多孔質放熱体に冷媒を通過させて電機器モジュールを強制冷却する場合に、その多孔質放熱体でより効率的に冷却させることを可能とする冷却装置を備えた電機器システムを提供することを目的とする。また、その冷却装置および多孔質放熱体を併せて提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、電機器モジュールの冷却装置に使用する多孔質放熱体中の気孔分布を再検討することにより、多孔質放熱体を全体的に有効活用して電機器モジュールの冷却効率を高め得ることを思い付き、本発明の電機器システムを開発するに至ったものである。
【0011】
(電機器システム)
(1)すなわち、本発明の電機器システムは、発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールと、外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより該電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体を有する冷却装置と、を備えた電機器システムであって、
前記多孔質放熱体は、気孔率の低い低気孔率部と気孔率の高い高気孔率部とを少なくとも有し、該低気孔率部は受熱側に設けられ、前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする。
【0012】
本発明の電機器システムによれば、冷却装置の多孔質放熱体を全体的に有効活用して、従来以上に優れた放熱性が得られ、電機器モジュールをより一層効率的に冷却することが可能となる。この理由は次のように考えられる。
【0013】
電子部品等で生じた熱は電機器モジュールから冷却装置へ伝わり、冷却装置の多孔質放熱体は受熱した熱を冷媒へ放熱する。このとき、当然ながら、多孔質放熱体の受熱側が高温で、放熱側が低温といった温度勾配を生じ得る。ここで、多孔質放熱体が全体的に均質で、冷媒の温度が多孔質放熱体の各部でほぼ一定だとすると、冷媒との温度差の大きい受熱側での放熱量が相当大きくなる。逆に、受熱側から離れた部分(放熱側)での放熱量は相当小さくなる。その結果、多孔質放熱体からの放熱量は、上記温度勾配の影響を受けて、多孔質放熱体の部分によって大きく異なることとなる。言換えれば、多孔質放熱体は、受熱側の部分でしか実質的な放熱がされていないこととなり、その全体が有効活用されていない状態となる。特に、冷却装置ひいては多孔質放熱体の小型化等が強く要請される状況下では、このような多孔質放熱体の放熱特性は好ましくない。そこで、多孔質放熱体の受熱側以外の部分からも効率的な放熱がなされて、全体としての放熱量が増加する方が好ましい。
【0014】
本発明では、前述したように、受熱側での気孔率を小さくしている。逆にいえば、気孔以外の骨格部分の体積率を大きくしている。骨格部分の体積率が大きいため、その分、熱の輸送経路(以下、「熱流路」という。)が確保され、多孔質放熱体へ入ってきた熱の多くが、受熱側以外の部分へも熱伝導によって輸送され易くなる。そして、受熱側以外の部分には、気孔率が比較的高い高気孔率部が設けられている。この部分は、低気孔率部とは逆に、骨格部分の体積率が小さく冷媒との接触面積も大きいため、低気孔率部から輸送されてきた熱は、他へのさらなる熱伝導よりも、冷媒との熱伝達を主に行うようになる。つまり、冷媒へ十分な放熱がなされるようになる。
【0015】
こうして、本発明の多孔質放熱体の場合、その全体が有効活用されて、放熱量の格段な増加が見込まれる。また、多孔質放熱体への受熱量が急増したような場合でも、受熱側から他の部分への熱流路が確保されているために、受熱側付近に熱溜りができることもなく、電機器モジュールの安定した冷却性が確保される。
【0016】
(2)また、本発明は、発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールと、外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより該電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体を有する冷却装置と、を備えた電機器システムであって、
前記多孔質放熱体は、平均孔径の小さい小孔径部と平均孔径の大きい大孔径部とを少なくとも有し、該小孔径部は、受熱側に設けられ、前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器システムとしても良い。
【0017】
この場合も、上記電機器システムと同様に、冷却装置の多孔質放熱体を全体的に有効活用して、従来以上に優れた放熱性を得ることができ、電機器モジュールをより一層効率的に冷却することが可能となる。その理由も、前述したものと同様に考えられる。
【0018】
(電機器モジュールの冷却装置)
本発明は、上記電機器システムとしてのみならず、電機器モジュールの冷却装置としても把握できる。
(1)すなわち、本発明は、発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールを冷却する冷却装置であって、
前記冷却装置は、外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより前記電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体を備え、該多孔質放熱体は、気孔率の低い低気孔率部と気孔率の高い高気孔率部とを少なくとも有し、該低気孔率部は、受熱側に設けられ、前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器モジュールの冷却装置であっても良い。
【0019】
(2)さらに、本発明は、発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールを冷却する冷却装置であって、
前記冷却装置は、外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより前記電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体を備え、該多孔質放熱体は、平均孔径の小さい小孔径部と平均孔径の大きい大孔径部とを少なくとも有し、該小孔径部は、受熱側に設けられ、前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器モジュールの冷却装置であっても良い。
【0020】
(電機器モジュールの冷却装置用多孔質放熱体)
本発明は、上記電機器システムや電機器モジュールの冷却装置としてのみならず、電機器モジュールの冷却装置用多孔質放熱体としても把握できる。
(1)すなわち、本発明は、発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールを冷却する冷却装置に使用され、外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより該電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体であって、
前記多孔質放熱体は、気孔率の低い低気孔率部と気孔率の高い高気孔率部とを少なくとも有し、該低気孔率部は受熱側に設けられ、前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器モジュールの冷却装置用多孔質放熱体であっても良い。
【0021】
(2)さらに、本発明は、発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールを冷却する冷却装置に使用され、外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより該電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体であって、
該多孔質放熱体は、平均孔径の小さい小孔径部と平均孔径の大きい大孔径部とを少なくとも有し、該小孔径部は受熱側に設けられ、前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器モジュールの冷却装置用多孔質放熱体であっても良い。
【0022】
ところで、上述した低気孔率部と高気孔率部との気孔率の相違や小孔径部と大孔径部との平均孔径の相違は相対的なものであって、使用される冷媒の種類や冷媒に印加される圧力、要求される放熱量、多孔質放熱体のサイズ等によって適宜決定されるものである。本発明の多孔質放熱体は、低気孔率部および高気孔率部、または小孔径部および大孔径部を有する2層構造であっても良いし、それらが3層以上ある多層構造であっても良い。
【0023】
また、多孔質放熱体が、低気孔率部から高気孔率部にかけて気孔率が傾斜的に変化する傾斜気孔率放熱体であったり、小孔径部から大孔径部にかけて平均孔径が傾斜的に変化する傾斜孔径放熱体であると、熱の輸送や放熱がよりスムーズとなり、さらなる放熱性の向上が期待できる。但し、本明細書でいう傾斜は必ずしも、滑らかな連続して傾斜である必要はない。つまり、気孔率や平均孔径が段階的に変化するような傾斜であっても良い。
【0024】
ちなみに、本発明では、低気孔率部や小孔径部等でも、冷媒と熱交換を行って放熱性を確保するのが好ましいため、多孔質放熱体中にある気孔の最小孔径を冷媒が通過し得る程度のものとした。さもないと、低気孔率部や小孔径部等に内包された空気等が断熱部分となって、逆に、多孔質放熱体の放熱性を大きく低下させる要因となるからである。但し、最小孔径が必ずしも低気孔率部や小孔径部にあるとは限らないことを断っておく。
【0025】
また、多孔質放熱体には受熱側が複数あっても良い。この場合、その内の少なくとも一つの受熱側に低気孔率部が設けられていれば良い。もっとも、全受熱側に低気孔率部を設けるとより好ましい。例えば、多孔質放熱体が両側から受熱する場合、その両側に低気孔率部を設けて、中央部を高気孔率部にしたりすると良い。
【0026】
多孔質放熱体の受熱側は、必ずしも電機器モジュールの直下や直上に設けられている必要はなく、電機器モジュールと多孔質放熱体との位置関係は問わない。電機器システムの設計上、熱伝導部材等を介して迂回した熱伝導経路を形成する場合もある。その場合、その熱伝導部材等に接続される方が受熱側となるだけのことである。
【0027】
本発明でいう多孔質放熱体は、熱伝導性や冷媒との間の熱伝達性に優れた材質であると好適である。具体例として金属材料があり、特に、多孔質放熱体は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属多孔質体であると好適である。Al合金等からなる金属多孔質体は、熱伝導性に優れ、しかも軽量であり、多くの場合、耐蝕性にも優れるので非常に好ましい。
【0028】
本発明の多孔質放熱体は、例えば、金属粉末やセラミック粉末を成形、焼結(焼成)等させた焼結体等でも良いし、気泡を含む発泡体等でも良い。このような発泡体は、例えば、金属溶湯を調製する溶湯調製工程中または該金属溶湯を凝固させる凝固工程中に発泡させて気泡を含んだ状態で凝固させた金属発泡体であっても良い。なお、その際の発泡方法は種々あり、例えば、溶湯中へ発泡剤を混入したり、ガスを混入しても良い。
【0029】
多孔質放熱体の気孔率や平均孔径は、成形体密度や発泡率等の変更によって調整できる。多孔質放熱体の位置によって、その気孔率や平均孔径を変更するには、成形体密度や発泡率等を部分的に変化させて多孔質放熱体を製造すれば良い。より簡易な方法として、気孔率や平均孔径の異なる多孔質体を積層して本発明の多孔質放熱体としても良い。
【0030】
本発明の冷却装置は、別途製造された多孔質放熱体を、それを囲繞する筐体に配設したり、熱伝導部材等に接合したものでも良い。多孔質放熱体と、筐体や熱伝導部材等とを、ダイキャストや鋳込み等によって一体的に製造したものでも良い。
【0031】
本発明の多孔質放熱体を通過させる冷媒には、空気、ガス、油、水等、種々考えられるが、電機器モジュールの発熱量、使用環境、冷媒の圧送装置等に応じて適宜選択すれば良い。中でも、冷媒が水(冷却水)の場合、冷却効率が高くて好ましい。特に、本発明の電機器システムを自動車等に搭載する場合、エンジンやモータの冷却に冷却水が使用されることが多いため、冷媒の共通化を図れて好ましい。
【0032】
電機器モジュールに組込まれる電子部品や電気部品は、特に限定されない。例えば、インバータ装置の場合なら、スイッチング回路を形成するパワーMOSFETやIGBT等の半導体チップがある。このほか、変圧用のトランス等の電気部品であっても良い。
【0033】
これらの電子部品や電気部品は、通常、配線基板に搭載されており、その配線基板を通して電機器モジュールから冷却装置へ放熱される。その配線基板には、メタルベース基板やSiCやAl等からなるセラミック基板等がある。このとき、電子部品や電気部品から各基板への熱伝導性を確保するために、両者間にヒートスプレッタが配設されることもある。また、電子部品や電気部品を搭載した配線基板は、冷却装置に直接搭載されることもあるが、通常は、熱伝導部材等を介して、冷却装置の受熱面に配設されることが多い。この熱伝導部材は、電機器モジュールの筐体自体で兼ねても良いし、両者間を密着させるためにゲル状の熱伝導剤を使用しても良い。
【0034】
【発明の実施の形態】
実施形態を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態であるインバータシステム100を図1に示す。インバータシステム100は、電気自動車やハイブリット車の三相誘導電動機(三相モータ)の駆動制御用のインバータ装置10と、このインバータ装置10を水冷する冷却装置20とからなる。
【0035】
インバータ装置10は、その詳細を図示していないが、スイッチング回路を構成するパワーMOSFETやIGBT等の電子部品およびコイルやコンデンサー等の電気部品と、それらの部品を搭載する熱伝導性絶縁基板と、その熱伝導性絶縁基板を内底面に密着固定させてその全体を囲繞するアルミニウム合金製のケースとを備える。前記電子部品等で生じた発熱は、熱伝導性絶縁基板を通じてケースへと放熱される。このケースはヒートシンクの役割をも果す。
【0036】
冷却装置20は、アルミニウム合金製の金属発泡体121と、この金属発泡体121に接して配設された熱伝導板125を備え、熱伝導板125と一体となって形成されたハウジング126とからなる。このハウジング126は、熱伝導板125と共に冷媒である冷却水の通路を構成している。
【0037】
車両に設けられたウォータポンプから圧送されてきた冷却水は、ハウジング126内の金属発泡体121を通過して受熱し、同じく車両に設けられたラジエターに送られて冷却されて、前記ウォータポンプに戻る。
【0038】
ここで、金属発泡体121は、アルミニウム合金の溶湯中に発泡剤を混入させて溶製した多孔質体である。その際、凝固工程中での冷却速度を制御することで、受熱側であるインバータ装置10側(図上側)の気孔径が小さく、ハウジング126側(図下側)の気孔径が大きくなるようにして、平均孔径を傾斜的に変化させてある。従って、本実施形態の金属発泡体121は傾斜孔径放熱体となっている。
【0039】
さらにこの金属発泡体121は、単に平均孔径が傾斜的に変化しているのみならず、気孔率も傾斜的に変化している。つまり、受熱側であるインバータ装置10側(図上側)の気孔率が低く、ハウジング126側(図下側)の気孔率が高い傾斜気孔率放熱体となっている。
【0040】
なお、小孔径部(低気孔率部)の平均孔径は、冷却水が通過できるような平均孔径となっている。但し、このような平均孔径は、冷却水の圧力とも関連して適宜決定されるものであり、必ずしも一律に特定されるものではない。また、いうまでもないが、上記金属発泡体121を含めて本発明でいう多孔質体は、各気孔がクローズしているものではない。つまり、各気孔が外部に連通し、連続的にオープンな気孔であり、冷却水等の冷媒が外部から内部へ流入し、その内部から外部へ流出できるものとなっている。
【0041】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態であるインバータシステム200を図2に示す。第1実施形態と同様の部材には同じ符号を付して示し、その詳細な説明は省略する。
インバータシステム200は、上記第1実施形態の金属発泡体121を第1金属発泡体221および第2金属発泡体222に変更したものである。
【0042】
第1金属発泡体221および第2金属発泡体222も、金属発泡体121と同様に、アルミニウム合金の溶湯中に発泡剤を混入させて溶製した多孔質体からなる。但し、第1金属発泡体221および第2金属発泡体222は、それぞれを単体で観ると、金属発泡体121と異なり、気孔分布が傾斜しておらず、ほぼ均一な気孔分布となっている。具体的に言えば、第1金属発泡体221は、第2金属発泡体222よりも相対的に、平均孔径が小さく気孔率も低くしてある。ここで、第1金属発泡体221が受熱側である。従って、第1金属発泡体221は、本発明でいう小孔径部および低気孔率部を構成し、第2金属発泡体222は、本発明でいう大孔径部および高気孔率部を構成する。
【0043】
本実施形態では、金属発泡体を2つ積層して本発明でいう多孔質放熱体を形成したが、金属発泡体を3つ以上積層して多孔質放熱体を形成しても良い。その際、少なくとも、低気孔率部または小孔径部と、高気孔率部または大孔径部とを構成する金属発泡体があれば足るが、3つ以上の金属発泡体の平均孔径や気孔率をそれぞれ段階的に変化させるとより好ましい。なお、平均孔径や気孔率を変化させることは、Al合金溶湯に混入させる発泡剤の量や冷却速度等の調整により、容易に行うことができる。
【0044】
本実施形態のように、平均孔径や気孔率の異なる金属発泡体を複数積層する場合でも、各金属発泡体の平均孔径は、冷却水の圧力に応じて冷却水が通過できる孔径となっている。言換えるなら、積層される金属発泡体の内、最小孔径が冷却水の圧力に応じて冷却水が通過できる孔径に設定されていれば良い。
【0045】
なお、複数の金属発泡体を積層して多孔質放熱体を形成するときでも、第1実施形態のように、平均孔径や気孔率が連続的に傾斜した状態とすることは可能である。積層される金属発泡体のそれぞれの平均孔径等を連続的に変化させたものとすれば良いからである。このような方法は、大型の多孔質放熱体を形成する場合は別として、小型の多孔質放熱体を形成する場合には、高コストとなり好ましくない。そこで、上記本実施形態のように、平均孔径や気孔率を段階的に変化させて、全体としてそれらが傾斜した状態とすることで、各金属発泡体の製造、ひいては多孔質放熱体の製造が容易となり、その低コスト化も図れる。
【0046】
上記実施形態では、熱伝導板125やハウジング126と、多孔質放熱体である金属発泡体121または第1金属発泡体221および第2金属発泡体222とを別体としたが、それらはダイキャスト等によって一体的に製造されたものでも良い。
【0047】
また、上記実施形態では、金属発泡体で多孔質放熱体を構成したが、それに限らない。例えば、多孔質放熱体は、多孔質焼結体であっても、金属繊維等を編んだものであっても良いし、さらには、セラミックス繊維や金属繊維等からなるプリフォームに合金溶湯を適度に含浸させたものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
10 インバータ装置(電機器モジュール)
20 冷却装置
100 インバータシステム(電機器システム)
121 金属発泡体(多孔質放熱体)

Claims (11)

  1. 発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールと、
    外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより該電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体を有する冷却装置と、を備えた電機器システムであって、
    前記多孔質放熱体は、気孔率の低い低気孔率部と気孔率の高い高気孔率部とを少なくとも有し、
    該低気孔率部は受熱側に設けられ、
    前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器システム。
  2. 前記多孔質放熱体は、前記低気孔率部から前記高気孔率部にかけて前記気孔率が傾斜的に変化している傾斜気孔率放熱体である請求項1に記載の電機器システム。
  3. 発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールと、
    外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより該電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体を有する冷却装置と、を備えた電機器システムであって、
    前記多孔質放熱体は、平均孔径の小さい小孔径部と平均孔径の大きい大孔径部とを少なくとも有し、
    該小孔径部は受熱側に設けられ、
    前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器システム。
  4. 前記多孔質放熱体は、前記小孔径部から前記大孔径部にかけて前記平均孔径が傾斜的に変化している傾斜孔径放熱体である請求項3に記載の電機器システム。
  5. 前記多孔質放熱体は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属多孔質体である請求項1〜4のいずれかに記載の電機器システム。
  6. 前記多孔質放熱体は、金属溶湯を調製する溶湯調製工程中または該金属溶湯を凝固させる凝固工程中に発泡させて気泡を含んだ状態で凝固させた金属発泡体である請求項1〜5のいずれかに記載の電機器システム。
  7. 前記冷媒は、冷却水である請求項1または3に記載の電機器システム。
  8. 発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールを冷却する冷却装置であって、
    前記冷却装置は、外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより前記電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体を備え、
    該多孔質放熱体は、気孔率の低い低気孔率部と気孔率の高い高気孔率部とを少なくとも有し、
    該低気孔率部は受熱側に設けられ、
    前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器モジュールの冷却装置。
  9. 発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールを冷却する冷却装置であって、
    前記冷却装置は、外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより前記電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体を備え、
    該多孔質放熱体は、平均孔径の小さい小孔径部と平均孔径の大きい大孔径部とを少なくとも有し、
    該小孔径部は受熱側に設けられ、
    前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器モジュールの冷却装置。
  10. 発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールを冷却する冷却装置に使用され、外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより該電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体であって、
    前記多孔質放熱体は、気孔率の低い低気孔率部と気孔率の高い高気孔率部とを少なくとも有し、
    該低気孔率部は受熱側に設けられ、
    前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器モジュールの冷却装置用多孔質放熱体。
  11. 発熱源となる電子部品または電気部品を有する電機器モジュールを冷却する冷却装置に使用され、外部に連通した多数の気孔をもち、該気孔中に冷媒を通過させることにより該電機器モジュールから受熱した熱を該冷媒へ放熱する多孔質放熱体であって、
    該多孔質放熱体は、平均孔径の小さい小孔径部と平均孔径の大きい大孔径部とを少なくとも有し、
    該小孔径部は受熱側に設けられ、
    前記多孔質放熱体中の最小孔径は前記冷媒の通過が可能な孔径であることを特徴とする電機器モジュールの冷却装置用多孔質放熱体。
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