JP2005030915A - レーザイオン化質量分析方法および装置 - Google Patents

レーザイオン化質量分析方法および装置 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のIR−MALDIの欠点を改善し、可変波長赤外レーザの長所を生かしたレーザイオン化質量分析装置を提供する。
【解決手段】パルスレーザ光の照射により、試料からイオンを引き出して、分析部に導き、そのイオンの質量を求める方法であって、前記レーザ光は、第1のレーザ光と第2のレーザ光を、第1のレーザ光を吸収するマトリックス剤と第2のレーザ光を吸収するマトリックス剤とを含む試料の同一箇所に同時に照射するものである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料の所定の位置に、同時に照射可能な紫外レーザ装置および赤外レーザ装置を備えたレーザイオン化質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ライフサイエンス研究の領域では、遺伝子の全塩基配列解析(ゲノミクス)の先にあるテーマとして、プロテオミクスやメタボロミクスの名称で概念化された発現系や代謝系の大規模解析が隆盛を迎えつつある。解析の対象となる分子種は極めて多種多様であり、分析手段として、質量分析法が欠かせない存在になっている。
【0003】
その基盤となる技術は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI、Matrix Assisted Laser Desorption Ionization)に代表されるソフトイオン化法である(非特許文献1)。MALDIでは、試料分子を拡散させたマトリックス化合物に、パルスレーザを照射して、マトリックス分子とともに試料分子を気化、イオン化させる。
【0004】
マトリックスは、(1)レーザのもたらす過剰なエネルギーを吸収、緩和する緩衝材、(2)プロトン授受により試料分子に電荷を与える、化学イオン化の反応試薬、(3)試料分子同士を引き離し、凝集力を弱める保持材、の役割を担っており、それら全てが、生体高分子をイオン化するための要件である。
【0005】
この他に、吸収波長特性、乾燥時の結晶状態、適用可能な溶媒、純度などの性質が重視され、レーザの波長や試料の種類に応じて、様々な化合物が利用されている。
【0006】
MALDIのイオン化機構では、まず、レーザ光がマトリックス分子に吸収されて、電子励起状態が形成される。このとき、マトリックスは、エネルギー緩衝材として作用する。
【0007】
電子状態が振動励起状態に緩和する過程で、照射部分のマトリックス結晶表面は急速加熱され、気化が起こる。マトリックス中に拡散して、分子間相互作用を弱められた試料分子も、熱分解することなく、同時に気化する。
【0008】
また、電子励起状態の緩和は、ピコ秒のスケールで進行するので、レーザ照射時の温度上昇速度は、レーザのパルス幅に依存する。MALDIに適した急速加熱条件を充たすパルス幅は、一般に0.1ナノ〜数百ナノ秒程度と考えられる。
【0009】
気化によって、高圧の非平衡混合相が形成される。この後に続く過程は、マトリックスや試料の性質、イオン源の構成などにより多少異なるが、一般的には、照射部分の内部応力上昇にともない、混合相の噴出(plume)が発生し、この中で、プロトン授受などの化学イオン化反応、再結合反応、クラスター分解、衝突緩和、拡散などが、同時に進行すると考えられている。
【0010】
【非特許文献1】
K. Tanaka, H. Waki, Y. Ido, S. Akita, Y. Yoshida, and T. Yoshida:
Rapid Commun. Mass Spectrom., Vol. 2, p.151 (1988)。
【0011】
【非特許文献2】
Mark W. Little, Jae−Kuk Kim, and Kermit K. Murray: Fundamental
Studies of Infrared Matrix−Assisted Laser Desorption Ionization,
Proceedings of the 50th ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics, Orlando, Florida, June 2−6, 2002 (ページなし)。
【0012】
【非特許文献3】
内藤康秀、粟津邦男:自由電子レーザーを用いたレーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析、雑誌「レーザー研究」、社団法人レーザー学会編、第31巻、第1号、2003年1月15日発行、16〜20頁。
【0013】
【非特許文献4】
内藤康秀、石井克典、鈴木幸子、粟津邦男:赤外自由電子レーザーとUVレーザーの同時照射によるMALDI−TOFMSの開発、第51回質量分析総合討論会講演要旨集、2003年5月14日発行、150〜151頁。
【0014】
【非特許文献5】
Yasuhide Naito and Kunio Awazu: Simultaneous exposure of nitrogen
laser and infrared free electron laser for matrix assisted laser
desorption ionization, Proceedings of the 51st ASMS Conference on
Mass Spectrometry and Allied Topics, Montreal, Canada, June 8−12, 2003, P. 254。
【0015】
【非特許文献6】
Mark W. Little, Jae−Kuk Kim, and Kermit K. Murray: Fundamental
Two−laser IR/UV MALDI, Proceedings of the 51st ASMS Conference on
Mass Spectrometry and Allied Topics, Montreal, Canada, June 8−12,
2003, P. 258。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
赤外光源を用いたMALDI(IR−MALDI)は、MALDI開発の当初より試みられている。IR−MALDIは、分子振動によって吸収される波長帯を用いることから、紫外光源を用いたMALDI(UV−MALDI)よりも、ソフトなイオン化法として期待される。すなわち、振動状態を直接励起することにより、エネルギー過剰を抑えた急速加熱を目指している。
【0017】
しかし、これまでの研究で、IR−MALDI質量分析の感度は、UV−MALDI質量分析の感度よりも劣ることが分かっている。UVとIRの吸光度の違いから、UV−MALDIでは、レーザ光がマトリックス結晶の表面付近で吸収されて、深部まで届かないのに対し、IR−MALDIでは、マトリックス結晶の深部までレーザ光が到達し、より大きな体積が一度に気化するため、試料の消耗が激しく、信号積算を繰り返して感度を改善することが困難なためである。
【0018】
IR−MALDIの光源として、可変波長赤外レーザを用いる場合、その波長可変性は極めて魅力的である。可変波長赤外レーザは、マイクロバンチ化された高速電子線が、真空中で規則的に蛇行する際のコヒーレント放射光を利用したレーザで、発振波長を連続的かつ任意に選択できるうえ、生体分子に数多く見られる中赤外域の固有吸収波長に対応するレーザ光源として希少である。
【0019】
可変波長赤外レーザは、4〜20μmを出力するが、この波長域では、基質による赤外吸収特性の差異が著しく、レーザ波長に依存した選択的イオン化の可能性が強く示唆される。例えば、蛋白質では、5.7μmと6.1μmにアミド結合の伸縮運動による吸収があり、IR−MALDIに利用することで、蛋白質の高感度検出や構造解析への展望が開ける。
【0020】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、従来のIR−MALDIの欠点を改善し、可変波長赤外レーザの長所を生かしたレーザイオン化質量分析装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明のレーザイオン化質量分析装置は、
パルスレーザ光の照射により、試料からイオンを引き出して、分析部に導き、そのイオンの質量を求める方法であって、
前記レーザ光は、第1のレーザ光と第2のレーザ光を、第1のレーザ光を吸収するマトリックス剤と第2のレーザ光を吸収するマトリックス剤とを含む試料の同一箇所に同時に照射するものであることを特徴としている。
【0022】
また、前記第1のレーザは、紫外レーザであることを特徴としている。
【0023】
また、前記第2のレーザは、赤外レーザであることを特徴としている。
【0024】
また、前記赤外レーザは、5〜9μmの波長を有することを特徴としている。
【0025】
また、前記マトリックスは、変性剤であることを特徴としている。
【0026】
また、前記分析部は、飛行時間型分光部であることを特徴としている。
【0027】
また、前記第1のレーザ光は、第2のレーザ光照射時に発生するトリガー信号により、ほぼ同時に照射開始されることを特徴としている。
【0028】
また、前記第1のレーザ光および第2のレーザ光に加えて、さらに別のレーザ光を照射することを特徴としている。
【0029】
また、イオン源と、
該イオン源の中に置かれた試料台と、
該試料台上に載せられた試料の同一箇所に同時に照射可能な、第1のレーザ装置および第2のレーザ装置と、
パルスレーザ光の照射により、第1のレーザ光を吸収するマトリックス剤と第2のレーザ光を吸収するマトリックス剤とを含む試料から引き出されたイオンを質量分離する分析部と、
該分析部で質量分離されたイオンを検出する検出部と
を備えたことを特徴としている。
【0030】
また、前記第1のレーザは、紫外レーザであることを特徴としている。
【0031】
また、前記第2のレーザは、赤外レーザであることを特徴としている。
【0032】
また、前記赤外レーザは、5〜9μmの波長を有することを特徴としている。
【0033】
また、前記マトリックスは、変性剤であることを特徴としている。
【0034】
また、前記分析部は、飛行時間型分光部であることを特徴としている。
【0035】
また、前記第1のレーザ光は、第2のレーザ光照射時に発生するトリガー信号により、ほぼ同時に照射開始されることを特徴としている。
【0036】
また、前記第1のレーザおよび第2のレーザに加えて、さらに別のレーザを備えていることを特徴としている。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明にかかるMALDI法の原理を示したものである。図中1は、図示しないイオン源の内部に置かれた試料台である。周囲は真空である。試料台1の上には、マトリックスと分析物とを混合し試料混合物2が載せられている。試料台1上に載せられた試料混合物2の所定の位置に、紫外レーザ装置からの紫外レーザ光(UV)と、可変波長赤外レーザ装置からの赤外レーザ光(IR)を、同時に照射する。
【0038】
このとき、UV、IRともに、単体では、MALDIにおける急速加熱条件に満たない強度に調整し、それぞれが電子励起と振動励起の役割を担うようにさせる。MALDIの初段階である急速加熱を、緻密に制御することが狙いである。これにより、過剰エネルギーを極限に抑えたイオン生成条件を達成するとともに、可変波長赤外レーザの波長制御により、選択的振動励起を行ない、基質選択的なイオン化を実現する。
【0039】
この原理に基づくと、UVレーザが作用するマトリックス結晶表面の領域のみ気化し、試料の急激な消耗を免れる。また、気相における化学イオン化に寄与する電子励起した分子種や電離種も大量に発生し、イオン化効率の向上が見込まれる。さらに、急速加熱条件下で過剰エネルギーを充分に制御できれば、UV−MALDIやIR−MALDIをも凌ぐ「超ソフトイオン化法」として、従来は質量分析の測定対象になり得なかった、高分子蛋白質や蛋白質複合体などの検出を可能にする。
【0040】
図2は、本発明に用いられたレーザパルスを模式的に表わしたものである。本発明で使用した可変波長赤外レーザのレーザ光は、マイクロ秒オーダーの時間幅を持つパルス(マクロパルス)の繰り返しであり、一つのマクロパルスは、更にピコ秒オーダーのパルス(ミクロパルス)が等間隔に連なるパルストレインで構成される。
【0041】
具体的には、平均パワーが典型値で20mW、マクロパルス幅15μs、マクロパルス周期50ms、ミクロパルス幅5ps、ミクロパルス周期45ns、ミクロパルスあたりのエネルギーは10μJ程度である。
【0042】
一方、UVレーザ側のパルス幅は、急速加熱条件を充たす0.1ns〜数百ns程度である。UVレーザ光は、可変波長赤外レーザ照射時に発生するトリガー信号により、ほぼ同時に照射開始される。
【0043】
図3に、本発明にかかるレーザイオン化質量分析装置の一実施例を示す。質量分析部には、飛行時間型分光部(TOFMS)を採用した。TOFMSは、R. M. Jordan社製のガス分析用リニア・リフレクトロンモード飛行時間型質量分析計を改造したもので、飛行管3の長さは、約1m、加速電圧は、最大5kVである。イオン源4から飛行管3にかけて、内部は、全体が真空引きされている。
【0044】
試料台1は、真空引きされたイオン源4の中に挿入された、ステンレス製のプローブ(8mmφ)5の先端に固定され、イオンの飛行軸に対して直交方向に、イオン源4に挿入されている。可変波長赤外レーザ装置からのIRレーザビームは、ZnSeレンズ6により集光し、ZnSe真空窓7を通して、プローブ5の正面から入射させた。また、紫外レーザ装置(UV)としては、Nレーザ(LSI社製、VSL−337ND)8を採用し、UVレーザビームは、石英レンズ9により集光し、石英真空窓10を通して、プローブ5の前方斜め45゜方向から入射させた。
【0045】
可変波長赤外レーザとUVの同期を得るために、可変波長赤外レーザビームを光路の途中で分割し、MCT検出器(Vugo社製、R005)11で可変波長赤外レーザパルスを電気パルスに変換して、これをNレーザのトリガーソースとした。
【0046】
イオンの引き出しは、プローブから約5mmの間隔に配置されたグリッド12に、直流電源13から所定の電位を与えることにより行なった。プローブ5は、浮遊電位または高電圧(〜4kV)を印加して使用する。イオンは、引き出し用のグリッド12と、図示しないアース電位の円筒電極との間の領域で加速され、さらに、図示しない、イオン収束用のアインツェルレンズ電極とリフレクトロンモード用の偏向電極対(これらは、本実験では、常にアース電位)を通過した後、アース電位の飛行管3に導入される。
【0047】
飛行管3の終端には、図示しないイオンミラー電極群と、リニアモード用のMCP検出器14が配置されており、飛行管3の入口付近にも、図示しないリフレクトロンモード用のMCP検出器が配置されている。本実験では、イオンミラー電極をゼロ電位として、リニアモードでの検出を試みた。MCP検出器13および各電極に印加する高電圧は、いずれも、図示しないR. M. Jordan社製、AREF電源により供給した。
【0048】
MCP出力信号は、プリアンプ(サンシン電機製、PA−2A)15、および、ファーストタイミングアンプ(サンシン電機製、N−2320)16で増幅し、図示しないファーストディスクリミネータ(サンシン電機製、N−2440)で波形整形した後、ディジタルオシロスコープ(Tektronix製、TDS684B)17で観察、記録した。
【0049】
照射実験系の評価を行なうため、マトリックス化合物である2,5−dihydroxybenzoic acid(DHB)のみを試料に用いて、可変波長赤外レーザ/UV同時照射実験を行なった。試料台のターゲット面に、DHB溶液(メタノール/水(1:1)、10mg/ml)2μlを滴下し、室温常圧下で自然乾燥させた。焦点がターゲット面上になるようにレンズを配置し、可変波長赤外レーザビーム、UVレーザビームともに数百ミクロン程度のスポット径に収束させた。
【0050】
CCDカメラによる観察および感熱フィルムにより、可変波長赤外レーザとUVのスポットがほぼ一致するように光軸を調整した。このときのおおよそのエネルギー密度は、可変波長赤外レーザ(マイクロパルス)が10J/m、UVが10J/mと計算され、それぞれ、単体でも急速加熱条件を充たしていると考えられた。事実、それぞれ単体で照射したときにも、TOFMSスペクトルが観察された。
【0051】
図4に、TOFMSスペクトルの一例を示す。それぞれ、可変波長赤外レーザ/UV同時照射時の結果から、UVのみ照射時の結果を差し引いた、差スペクトルとして表示している。このうち、(a)は、可変波長赤外レーザ波長を5.5μmにした場合、(b)は、可変波長赤外レーザ波長を6.0μmにした場合、(c)は、可変波長赤外レーザ波長を6.5μmにした場合、(d)は、可変波長赤外レーザ波長を7.0μmにした場合である。
【0052】
プラス側に現れているピークは、同時照射によるイオン化効率の向上、マイナス側に現れているピークは、同時照射によるイオン化効率の低下を示している。波長6.0μmの可変波長赤外レーザをUVと同時に照射した場合に、最大の向上効果が観測された。波長6.0μmは、DHBの振動吸収に一致する。可変波長赤外レーザ波長に依存して、可変波長赤外レーザ/UV同時照射時のTOFMSスペクトルが変化することが確認された。
【0053】
図5に、TOFMSスペクトルの別の例を示す。この図は、8Mの尿素、50mMのトリス、0.1mMのメルカプトエタノールから成る混合物に、ケラチンを混合させた試料を、マトリックス剤のSinapinic acidと混和させて、UV−MALDI(図の上段)、UVレーザとIRレーザを同時照射したMALDI(図の中段)、および、UVレーザとIRレーザをブランク試料に同時照射したMALDI(図の下段)という、異なる3つの方法で測定した、TOFMSスペクトルである。実験に用いたIRレーザ(可変波長赤外レーザ)の波長は、5〜9μm、最も好ましい波長は、5.8μmである。5.8μmは、尿素の吸収波長帯に当たっている。
【0054】
図から明らかなように、UVレーザとIRレーザを同時照射したMALDIで測定されたTOFMSスペクトル(図の中段)においてのみ、ケラチン由来の高質量イオンが検出されている。このことから、UVレーザとIRレーザを同時照射することは、高質量蛋白質を直接イオン化する上で、極めて有力な手法となることが期待される。
【0055】
また、本実験で用いた8Mの尿素を、マトリックス剤の一種と考えれば、本実験結果は、紫外レーザ光を吸収するマトリックス剤であるSinapinic acidと混和させて、赤外レーザ光を吸収するマトリックス剤である尿素を存在させたことにより、初めて実現された成果であると言える。
【0056】
すなわち、2種類のレーザ光を同時に照射するレーザイオン化質量分析方法において、照射されるレーザ光の波長に対応させて、異なる吸収波長帯を有する複数種類のマトリックス剤を混和させておくことは、イオン化効率を高めるのに、極めて有効な方法になると考えられる。
【0057】
また、本実験で用いた8Mの尿素は、ケラチンの変性剤としても、作用している。すなわち、尿素をマトリックスに混和することにより、初めて、ケラチンをマトリックス中に溶解させることが可能になった。このように、変性剤自身を、紫外レーザ光、または、赤外レーザ光を吸収するマトリックスの一種として、採用するようにしたことも、本発明の特徴の一つである。
【0058】
尚、本発明には、さまざまな変形例が可能である。例えば、UVレーザ光と可変波長赤外レーザビームに加えて、さらに第3のレーザ光を同時に照射するようにしても良い。レーザ光の数に上限はない。
【0059】
また、UVレーザ光と可変波長赤外レーザビームを同時に照射するのではなく、一方を他方よりも遅らせて、照射するようにしても良い。
【0060】
また、IRレーザは、可変波長赤外レーザに限定されない。
【0061】
【発明の効果】
本発明は、パルスレーザ光の照射により、試料からイオンを引き出して、分析部に導き、そのイオンの質量を求める方法であって、前記レーザ光は、第1のレーザ光と第2のレーザ光を、第1のレーザ光を吸収するマトリックス剤と第2のレーザ光を吸収するマトリックス剤とを含む試料の同一箇所に同時に照射するものであるので、従来のIR−MALDIの欠点を改善し、可変波長赤外レーザの長所を生かしたレーザイオン化質量分析装置を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるレーザイオン化質量分析装置の原理を示す図である。
【図2】本発明で用いられた可変波長赤外レーザパルスの模式図である。
【図3】本発明にかかるレーザイオン化質量分析装置の一実施例を示す図である。
【図4】本発明にかかるレーザイオン化質量分析装置による測定例を示す図である。
【図5】本発明にかかるレーザイオン化質量分析装置による別の測定例を示す図である。
【符号の説明】
1・・・試料台、2・・・試料混合物、3・・・飛行管、4・・・イオン源、5・・・プローブ、6・・・ZnSeレンズ、7・・・ZnSe真空窓、8・・・Nレーザ、9・・・石英レンズ、10・・・石英真空窓、11・・・MCT検出器、12・・・グリッド、13・・・直流電源、14・・・MCP検出器、15・・・プリアンプ、16・・・ファーストタイミングアンプ、17・・・ディジタルオシロスコープ。

Claims (16)

  1. パルスレーザ光の照射により、試料からイオンを引き出して、分析部に導き、そのイオンの質量を求める方法であって、
    前記レーザ光は、第1のレーザ光と第2のレーザ光を、第1のレーザ光を吸収するマトリックス剤と第2のレーザ光を吸収するマトリックス剤とを含む試料の同一箇所に同時に照射するものであることを特徴とするレーザイオン化質量分析方法。
  2. 前記第1のレーザは、紫外レーザであることを特徴とする請求項1記載のレーザイオン化質量分析方法。
  3. 前記第2のレーザは、赤外レーザであることを特徴とする請求項1または2記載のレーザイオン化質量分析方法。
  4. 前記赤外レーザは、5〜9μmの波長を有することを特徴とする請求項3記載のレーザイオン化質量分析方法。
  5. 前記マトリックスは、変性剤であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のレーザイオン化質量分析方法。
  6. 前記分析部は、飛行時間型分光部であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のレーザイオン化質量分析方法。
  7. 前記第1のレーザ光は、第2のレーザ光照射時に発生するトリガー信号により、ほぼ同時に照射開始されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のレーザイオン化質量分析方法。
  8. 前記第1のレーザ光および第2のレーザ光に加えて、さらに別のレーザ光を照射することを特徴とする請求項1または7記載のレーザイオン化質量分析方法。
  9. イオン源と、
    該イオン源の中に置かれた試料台と、
    該試料台上に載せられた試料の同一箇所に同時に照射可能な、第1のレーザ装置および第2のレーザ装置と、
    パルスレーザ光の照射により、第1のレーザ光を吸収するマトリックス剤と第2のレーザ光を吸収するマトリックス剤とを含む試料から引き出されたイオンを質量分離する分析部と、
    該分析部で質量分離されたイオンを検出する検出部と
    を備えたレーザイオン化質量分析装置。
  10. 前記第1のレーザは、紫外レーザであることを特徴とする請求項9記載のレーザイオン化質量分析装置。
  11. 前記第2のレーザは、赤外レーザであることを特徴とする請求項9または10記載のレーザイオン化質量分析装置。
  12. 前記赤外レーザは、5〜9μmの波長を有することを特徴とする請求項11記載のレーザイオン化質量分析装置。
  13. 前記マトリックスは、変性剤であることを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1項に記載のレーザイオン化質量分析装置。
  14. 前記分析部は、飛行時間型分光部であることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1項に記載のレーザイオン化質量分析装置。
  15. 前記第1のレーザ光は、第2のレーザ光照射時に発生するトリガー信号により、ほぼ同時に照射開始されることを特徴とする請求項9ないし14のいずれか1項に記載のレーザイオン化質量分析装置。
  16. 前記第1のレーザおよび第2のレーザに加えて、さらに別のレーザを備えていることを特徴とする請求項9または15記載のレーザイオン化質量分析装置。
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