JP2005029871A - マグネシウム合金板材およびその製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 安価で耐食性に富む鋳造用マグネシウム合金から塑性加工性に富むマグネシウム合金板材を得る。
【解決手段】 マグネシウム合金からなる長尺形状の薄板材であって、前記マグネシウム合金は、アルミニウムの含有率が8.5〜9.5重量%であり、亜鉛の含有率が0.5〜1.5重量%であり、不可避な不純物成分を除く残部がマグネシウムからなり、前記マグネシウム合金の平均結晶粒径が5μm以下である、マグネシウム合金板材。
【選択図】図6

Description

本発明は、主に塑性加工に用いられるマグネシウム合金板材およびその製造法に関する。
マグネシウム合金は、実用化されている構造材料用金属のうち、最も軽量であり、比強度(耐力または引張強度の比重に対する比)が大きいという特性を有する。そのため、同じ強度の部品を設計すると、他の材料を用いる場合よりも軽量になることから、自動車、航空・宇宙機器、携帯家電製品、その他の機械類の部品等に広く利用されている。
従来、マグネシウム合金からなる部品の多くは、完全に溶融した合金を金型内に高速で流し込み、高圧で型内に凝固させるダイカスト法により製造されている。近年は、半溶融状態の合金にせん断力を付与するとともに金型内に射出するチクソモールディング法も実用化され、家電製品や携帯機器用部品の製造法として採用されつつある。
鋳造用マグネシウム合金のうち、最もよく用いられる合金の一つであるAZ91合金(ASTM規格)は、アルミニウムの含有量が8.5〜9.5重量%(亜鉛の含有率は0.5〜1.5重量%)と比較的多く、耐食性や鋳造性に優れている。さらに、展伸用マグネシウムと比べて原材料の価格が非常に安く、ダイカスト用アルミニウム合金、難燃性プラスチック材料、強化プラスチック材料等とあまり変わらない価格で入手できる。
さらに、鋳造法の特長として、成形形状の自由度が高い点が挙げられる。鋳造法は、溶融した金属を型内に流し込むため、表面の鋳造欠陥を厳しく問うことのない部品であれば、かなり複雑な形状のものでも、塑性加工に比べて比較的簡単に成形できる。そこで、近年では、マグネシウム合金からなる部品が、ノートパソコンや携帯電話の部品として多量に使用されている。
これらの部品の製造工程においては、鋳造時に、湯道や湯口などで形成される不要部分、製造時の不良品、切削または研削作業で発生する切粉などが多量に排出される。マグネシウム合金は、他の金属と比較して、比熱や潜熱が小さいため、再溶解するエネルギーが少なくて済み、リサイクルに適した材料と言える。これらのリサイクル材は、より安価な鋳造用マグネシウム合金として再生されるため、展伸用マグネシウム合金と鋳造用マグネシウム合金の価格差は広がっている。
しかしながら、ダイカスト法やチクソモールディング法を行うための生産設備は高価である。また、湯口、湯道、湯溜りといった不要部分が大量に発生することから、材料歩留まりが悪いという問題がある。また、溶融金属を金型内で凝固させ、成形品を金型外へ取り出すまでの冷却時間が長くかかり、生産タクトは射出重量100g程度のものでも20秒ぐらいまで縮めるのが限界である。
また、鋳造法では、成形時に気泡が合金内に混入して内部に巣が発生したり、溶融合金の合流点である湯境において成形品表面に亀裂が生じたりするなどの欠陥が生じやすい。外装部品などに用いる合金部品の場合、これらの欠陥が外観品質を損ない、製品歩留まりが低くなるという問題を抱えている。また、鋳造材は、圧延、押出、鍛造のように内部組織を改変するような大きな力が加えられることなく製造されるものであり、内部欠陥も多いため、一般に引張強度や降伏応力などの機械的特性が展伸材に比べて劣る。
さらに、鋳造法では、金型内のキャビティに溶融金属が流し込まれるが、金属の凝固時間が成形品の板厚の2乗に比例するため、薄肉な成形品の場合、数ミリ秒という短時間で充填を完了しなければならない。そのため、0.5mm以下の薄肉成形品を得ることは非常に難しい。特に、板厚に対する流動長の比が150を超えるような鋳造では、安定して成形品を得ることができない。例えば板厚0.5mmの成形品の場合、流動長は75mm程度が限界である。
一方、これら鋳造法に替わるマグネシウム合金部品の製造法として、展伸用板材に温間または熱間で塑性加工を施す方法がある(特許文献1参照)。平板形状のマグネシウム合金素材を立体形状に成形する場合、主に、プレス機による曲げ、絞り、鍛造などの塑性加工が行われる。しかし、マグネシウム合金は、アルミニウム合金や鉄系合金に比べ、常温における延性が極めて乏しい。そのため、曲げ、せん断力、引張を加えると比較的簡単に破断してしまう。従って、マグネシウム合金を用いる場合、塑性加工品の量産は困難である。
金属の延性を示す物性値である「伸び」の数値を比較した場合、アルミニウム合金では35%以上を示すものもあるが、マグネシウム合金では、代表的な展伸材であるAZ31合金(ASTM規格)でさえ、11〜20%である。鋳造材であるAZ91合金(ASTM規格)では、わずか3%の伸びしかない。400℃まで温度を上げた場合、その伸びはAZ31合金では200%以上となるが、AZ91合金では、50%程度である。このように、市販されている鋳造用マグネシウム合金を、塑性加工品の原料として用いることは困難である。
一方、展伸用マグネシウム合金(AZ31合金やAZ21合金)は、アルミニウムの含有量が少ないため、AZ91合金に比べると、耐食性がかなり乏しい。マグネシウム合金を用いた外装部品では、しばしば製品表面に金属感を持たせるために、ヘアライン加工、サーキュラ加工などの切削もしくは研削加工が施されるが、展伸用マグネシウム合金の成形品では、その表面に塗装面のような耐食性を持たせることが困難である。また、展伸用マグネシウム合金は、ビレットが非常に高価であり、単位重量当たりの市場価格は鋳造用マグネシウム合金の10倍以上にもなる。
展伸用マグネシウム合金のビレットが高価な理由は、その需要量が鋳造用マグネシムに比べ非常に少ないこと、ビレットの圧延工程では、その内部欠陥を修復できないため、内部に空洞を持たない高品質が求められること、マグネシウムが酸化燃焼しやすく、ビレットの鋳造に特殊な設備が必要であること、マグネシウムが密度の低い金属であるため、不純物成分を取り除くための浮遊または沈殿による分離が容易でないことなどが考えられる。
以上のような理由から、安価で耐食性に富む鋳造用マグネシウム合金を塑性加工品の原料として用いることが望まれるが、既述のように、鋳造用マグネシウム合金の伸びは、展伸材に比べてかなり低いため、通常は塑性加工に適用できるものではない。耐力や伸びなどの機械的性質を、展伸用マグネシウムと同等にすることが必要である。そこで、超塑性を発現するマグネシウム合金が注目されている。
超塑性とは、ある温度域で、ある歪速度域で歪を与えられた材料が、通常の数倍から数十倍にも及ぶ非常に大きな伸びを示す現象である。マグネシウム合金においてはアルミニウムと亜鉛を含むAZ系、亜鉛とジルコニアを含むZK系などの合金で、超塑性現象の発現が確認されている。また、超塑性を発現させるための合金組織の微細化工程として、加熱しながら合金に歪みを与える動的再結晶が検討されている(非特許文献2〜7参照)。微細な結晶組織を持つ素材の方が大きな伸びを示す傾向にある(非特許文献7参照)。図7に、マグネシウム合金の平均結晶粒径と、高温低歪速度での引張における最大破断伸びとの関係を示す。
なお、AZ31などの展伸用マグネシウム合金からの板材の製造法は、鉄系板材やアルミニウム板材と同様であり、ビレットまたはスラブの圧延を繰り返して、徐々に板厚を薄くしていくとともに、表面の仕上げがなされていく方法である。鋳造用マグネシウム合金からの板材の製造法も、従来の展伸材からの製造法と同様であることが必要とされる。
しかしながら、鋳造用マグネシウム合金を圧延する場合、400℃の高温においても伸びが小さいため、大きな圧下率で加工すると、亀裂が発生してしまう。これを防ぐには、圧下率を5%以下にし、圧延回数を非常に多くするとともに、圧延と圧延との合間に数回の熱処理工程を入れなければならない。従って、通常の展伸用マグネシウム合金の圧延に比べて非常に手間がかかる上、途中の熱処理の影響を受けるため、得られる板材の結晶粒径は比較的大きくなる。
市販されている板材の結晶粒径は、細かいものでも7〜10μm程度であり、通常は20μm程度のものが多い。平均結晶粒径20μmの素材に超塑性を発現させる歪速度は、300℃であれば10-5-1以下であり、450℃では10-4-1以下である。従って、いずれも加工時間がかかりすぎてしまい、実用上は使えない。10-2-1程度の高歪速度域において超塑性現象を発現させるには、平均結晶粒径を5μm以下に小さくする必要がある。
特開2002−126806号公報(0011、図1) Materials Transactions, JIM,Vol.36(1995),pp1249-1254 軽金属,Vol.42(1992),pp345-351 Materials Science and Engineering,A134(1991),pp1201-1203 粉体および粉末冶金,Vol.43(1996),pp1350-1353 Materials Transactions,Vol.43(2002),pp78-80 Materials Transactions,Vol.42(2001),pp1182-1189 Metallurgy Material Transaction A,32,pp923-929(Fig.3)
上記を鑑み、本発明は、高歪速度域において超塑性現象を発現させることのできる微細組織を有する長尺形状のマグネシウム合金板材を、安価で耐食性に富む鋳造用マグネシウム合金から得ることを目的とする。
本発明は、マグネシウム合金からなる長尺形状の薄板材であって、前記マグネシウム合金は、アルミニウムの含有率が8.5〜9.5重量%であり、亜鉛の含有率が0.5〜1.5重量%であり、不可避な不純物成分を除く残部がマグネシウムからなり、前記マグネシウム合金の平均結晶粒径が5μm以下であるマグネシウム合金板材に関する。マグネシウム合金の平均結晶粒径は、小さい方が好ましい。また、マグネシウム合金板材の板厚は0.4mm以上2mm以下であり、板厚に対する板幅の比は20以上であることが好ましい。
本発明のマグネシウム合金板材は、平均結晶粒径5μm以下という微細組織からなることから、特定の温度域、例えば280℃以上で、超塑性現象を発現させることができ、塑性加工性に富んでいる。超塑性現象を発現させるには、上記温度域で、歪速度10-2-1以下で、マグネシウム合金板材に歪みを印加することが好ましい。
本発明のマグネシウム合金板材を温度300℃で、歪速度10-3-1の条件で塑性加工するとき、合金の流動応力は、例えば20MPa以下となる。
本発明のマグネシウム合金板材は、ボスおよび/またはリブを形成する鍛造加工用に好適である。
本発明のマグネシウム合金板材は、前記ボスおよび/またはリブの高さが2mm以上である鍛造加工用に特に好適である。
本発明のマグネシウム合金板材によれば、前記ボスおよび/またはリブの高さの、鍛造加工後の板厚に対する比が、5以上である鍛造加工が可能である。
本発明は、また、上記のような微細組織からなる長尺形状の薄板材の製造法に関し、具体的には、アルミニウムの含有率が8.5〜9.5重量%であり、亜鉛の含有率が0.5〜1.5重量%であり、不可避な不純物成分を除く残部がマグネシウムからなるマグネシウム合金鋳造材を溶体化処理する工程、前記溶体化処理された合金を、温度230〜270℃で、アスペクト比20以上の押出口から、押出比40以上および歪速度0.1s-1以上となるように押出加工することにより、平均結晶粒径が5μm以下で、板厚に対する板幅の比が20以上である長尺形状の薄板材を得る工程、からなるマグネシウム合金板材の製造法に関する。
ここで、溶体化処理とは、鋳造材の組織に特有の、結晶粒界における析出物を結晶粒内に溶かし込む処理をいう。このような処理は、マグネシウム合金鋳造材を、380〜435℃で、10〜48時間加熱することにより行うことができる。
上記製造法では、例えば板厚が0.4mm以上2mm以下であり、板厚に対する板幅の比が20以上のマグネシウム合金板材を得ることが好ましい。なお、板幅とは、長尺形状の板材の短手方向における長さをいい、板厚に対する板幅の比は、押出加工で用いる押出ダイの押出口の開口形状に依存する。板厚に対する板幅の比は、押出口のアスペクト比に相当する。
本発明によれば、高歪速度域において超塑性現象を発現させることのできる微細組織を有するマグネシウム合金板材を、安価で耐食性に富む鋳造用マグネシウム合金から得ることができる。
まず、超塑性を発現する金属組織について説明する。一般に、塑性変形において、応力と歪速度との間には、式(1):
σ=K(dε/dt)m
の関係が成立する。
ここで、dε/dtはひずみ速度、Kは材料定数、σは流動応力、mは歪速度感受性指数(0≦m≦1)である。通常の塑性変形の場合、mはせいぜい0.1〜0.2であるが、超塑性変形ではmが約0.5となり、流動応力σに対する歪速度の影響度合いが高くなる。アルミニウムと亜鉛を含有するAZ系マグネシウム合金(ASTM規格)に関しても、通常の塑性変形の場合と、超塑性変形の場合とで、材料定数Kと歪速度感受性指数mとが実験的に求められている。
ここで、式(1)を、塑性変形および超塑性変形の各々の場合に係数Kおよびmを分けて表現すると、通常の塑性変形は、式(2):
dε/dt=A・(b/d)0・(σ/G)5・D
で表され、超塑性変形は、式(3):
dε/dt=A’・(b/d)2・(σ/G)2・D’
で表される。
ここで、dは合金組織の平均結晶粒径、bはバーガース・ベクトルの大きさ(定数)、Gは剛性率、AおよびA’は定数、DおよびD’は振動数項である。実験的に求められた結果によれば、通常の塑性変形では、平均結晶粒径dの依存性は見られないが、超塑性変形では、流動応力σは、平均結晶粒径dに比例して小さくなる。また、超塑性変形では、通常の塑性変形に比べ、流動応力σの歪速度(dε/dt)による影響も大きい。
図1に、平均結晶粒径が5μmのマグネシウム合金の300℃における式(2)および式(3)で表される歪速度と流動応力との関係を示す。マグネシウム合金の変形は、両関係式のうち、応力の低い方のメカニズムに従うと考えられる。したがって、300℃においては、両直線の交点に対応する約10-2-1の歪速度よりも低い歪速度域で、流動応力の歪速度依存性が大きくなり、超塑性が発現すると考えられる。
後述する製造法で得られた、合金組織の平均結晶粒径が5μmであり、板幅30mm、板厚み1.4mmである長尺形状のAZ91合金板の引張試験を、温度300℃で各種の歪速度で行ったときの応力値を図2にプロットで示す。図2において、実線は、図1から予測される歪速度と応力との関係を表している。図2では、プロットと実線とがよく一致しており、式(2)および式(3)によってAZ系マグネシウム合金の変形特性を予測できることが理解できる。また、この引張試験から、合金組織の平均結晶粒径が5μmのAZ91合金の流動応力の歪速度に対する依存性が、300℃では、10-2-1以下の歪速度域において高くなり、実際に超塑性を発現することも確認された。このような領域では、引張試験において、合金は200%を超える良好な伸びを示す。
上記より、平均結晶粒径が5μmのマグネシウム合金は、温度300℃で、10-2-1以下の歪速度で超塑性を発現することが確認されたが、これより高温域になれば、さらに高い歪速度でも超塑性を発現させることが可能である。また、平均結晶粒径が5μmよりも小さい場合には、温度域をより低くしたり(例えば280℃)、歪速度をより高くしたりすることが可能である。なお、このような超塑性を発現する材料においては、例えば300℃で歪速度10-3-1で塑性加工するときの流動応力が、20MPa以下となる。
従って、本発明のマグネシウム合金板材は、ボスおよび/またはリブを形成する鍛造加工用に好適であり、ボスおよび/またはリブの高さの、鍛造加工後の板厚に対する比が5以上となるような鍛造加工も可能となる。
次に、超塑性を発現させるための合金組織の微細化工程の一例について説明する。ここでは、加熱しながら鋳造用マグネシウム合金に歪みを与えた時に発現する動的再結晶について説明する。動的再結晶によれば、合金組織の結晶粒径を変化させ、微細化することができる。ただし、加熱しながら鋳造用マグネシウム合金に歪みを与える前に、マグネシウム合金を溶体化処理する。溶体化処理では、マグネシウム合金鋳造材を、380〜435℃で、10〜48時間加熱する。加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎると、結晶粒の粗大化を招く可能性がある上に、エネルギーロスが大きくなる。逆に、加熱温度が低すぎたり、加熱時間が短すぎると、粒界析出物が残留したままの非常に脆い組織が残ってしまう。
溶体化処理された合金を、例えば押出加工することにより、動的再結晶を効率良く行うことができる。これまでにAZ91合金の押出加工による動的再結晶により、表1に示すような平均結晶粒径を有する合金材料が報告されている。ただし、これらの文献では、いずれも押出加工によって棒状材料が成形されており、長尺形状の板材の成形は行われていない。
文献1:Materials Transactions,JIM,Vol.36(1995),pp1249-1254
文献2:軽金属,Vol.42(1992),pp345-351
文献3:Materials Science and Engineering,A134(1991),pp1201-1203
文献4:粉体および粉末冶金,Vol.43(1996),pp1350-1353
文献5:Materials Transactions,Vol.43(2002),pp78-80
文献6:Materials Transactions,Vol.42(2001),pp1182-1189
表1において、元材径とは、押出加工を行う前の素材ビレットの直径であり、押出径とは、押出加工に用いる押出ダイの開口径である。
表1のデータおよび各文献の記載等から式:
Z=(dε/dt)exp(Q/RT)
で表されるZener-Hollomon因子Z(式中、Qは活性化エネルギー(kJ/mol)、Rは気体定数(8.31J/K・mol)、Tは絶対温度(K))を求め、再結晶後の結晶粒径とZ因子との関係をプロットしたものを図3に示す。
図3から、Z因子の値が1012-1以上となる温度と歪速度を与える加工によって、5μm以下の平均結晶粒径を有する再結晶組織が得られることが示唆される。Z因子は、歪速度に対しては比例するが、温度に対してはその逆数に指数的に影響されるため、特に組織微細化のための加工温度が重要となる。
押出加工は230〜270℃で行うことが好ましい。加工温度が230℃未満では、押出抵抗が大きくなりすぎて、非常に大きな荷重が必要な上、押出板表面に欠陥が生じやすくなり、270℃を超えると、Z因子を10-2-1以上に設定することが困難になる。
ビレットから薄板を押し出す場合、薄板の板幅(押出ダイの幅)に対し、ビレット直径(長手方向に垂直な断面の直径)は1.5倍以上であることが望ましい。ビレット直径が板幅に対して小さいと、板の両側に与えられる歪と板中央に与えられる歪とに大きな差異が生じ、組織の不均一化を招く。押し出す板幅の1.5倍の直径を有するビレットを用いた場合、板幅/板厚比が20のアスペクトをもつ板に押し出すときの押出比は、自ずと35以上となる。また、押出比は40以上とすることが好ましい。押出加工の際の材料の歪速度は0.1s-1以上が好適である。ここで、押出比は、(押出前ビレットの長手方向に垂直な断面積)÷(押出ダイの開口面積)で表すことができる。
押し出された板材の形状は、板厚は0.4mm以上2mm以下であることが好ましい。板厚が0.4mm未満では、材料の流れ抵抗が非常に大きくなり、押出荷重が安定しなかったり、結晶粒径にバラツキが生じたりする。また、板厚が2mmを超えると、得ようとする板厚にもよるが、直径の大きなビレットを押出加工できる大きな押出機が必要となる。また、板厚に対する板幅の比は、携帯電話部品等の小型部品を考慮した場合、20以上であればよいが、ノートパソコン部品等の中型部品を考慮した場合、400程度まで得られることが好ましい。この比が小さいと、合金に十分な歪みを与えることができず、動的再結晶での結晶微細化が十分に進行しない。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
本実施例では、元材(素材)として、安価で耐食性に富む市販の鋳造材(AZ91合金)から、直径47mm、長さ70mmの丸棒を切り出した。この丸棒を高温炉で430℃の状態で48時間熱処理するによって、鋳造材の溶体化処理を行った。次に、溶体化処理後の丸棒を押出加工することにより、加熱するとともに合金に歪を与えた。押出加工には、図4に示すような最大荷重200トンの押出機を用いた。ここでは、等速押出加工を行った。
図4に、使用した押出機の断面図を示し、図5にその正面図を示す。この押出機は、円筒状のコンテナ2、素材を所定形状に押出すための押出ダイ6、キャビティの角部にデッドゾーンが形成されるのを防止する補助リング5、コンテナ2の周囲に配設された電気ヒータ4、コンテナ2に埋設された熱電対3、ヒータ4を覆う断熱セラミックス9、および押出機の最外部カバー8からなる。コンテナ2は、ヒータ4によって加熱され、熱電対3によって所定の温度に制御される。押出ダイ6の開口形状は、図5に示すスリット10と対応している。
溶体化処理された素材丸棒1は、コンテナ2のキャビティに装填した後、均熱化のために約30分間所定温度で保持した。その後、図示されない油圧装置に連動したステム7で、素材丸棒1を押出した。
本実施例では、図3で求められた、Z因子の値が1012-1以上となる温度と歪速度を与える押出条件として、押出温度250℃、押出比44および押出速度0.2mm/sを採用した。また、押し出された板材の板幅は30mm、板厚は1.4mmとした。こうして得られた板材の平均結晶粒径は3μmであった。図6にその断面組織写真を示す。また、実施例1で得られた板材のZ値と平均結晶粒径との関係を図3にプロットで示す。
より大きなZ値を満たす条件として、押出温度をより低温にし、より大きな押出比でより薄い板材を押出すことも考えられるが、丸棒を薄板形状に押し出す場合、押し出された板材の断面のアスペクト比(板幅/板厚)が大きいと、材料の流れ抵抗が非常に大きくなり、さらに押出荷重が安定しなかったり、押し出された板材の断面内において結晶粒径にバラツキが生じたりするなどの問題が発生してしまう。本実施例においては、押出温度を200℃まで低温下した場合、押出機の能力の限界から、押出荷重が不安定になり、得られた板材の組織の不均一化を招いた。
また、図3に示される関係を確認するため、比較例として、加工温度を350℃に上げて押出加工を行い、得られる平均結晶粒径について調べた。このときのZ値は約1010-1であった。その結果、押出温度が350℃の場合には、平均結晶粒径は22μmとなった。また、比較例で得られた板材のZ値と平均結晶粒径との関係を図3にプロットで示す。
次に、実施例1で作製された材板の流動応力の歪速度依存性を調べた。その結果、図2にプロットで示したように、300℃では、10-2-1以下の歪速度域において歪速度依存性が高くなり、超塑性が発現することが確認された。このことから、実施例1の板材が、塑性加工性に富むことが確認された。
実施例1で作製された材板を、18mmφに打ち抜き、15トンの荷重で280℃で鍛造加工することにより、高さ10mmの円柱状のボス(φ3mm)を板材の片面に形成させた。得られた鍛造加工材の表面に欠陥はなく、ボスの形状も設計通りであった。
本発明のマグネシウム合金板材は、低荷重で高さ2mm以上のボスおよび/またはリブを形成する鍛造加工用に特に好適である。
マグネシウム合金の流動応力と歪速度との関係図である。 超塑性の発現を示す本発明のマグネシウム合金板材の引張試験結果を示す図である。 本発明のマグネシウム合金板材を得るための条件を導くための図である。 本発明のマグネシウム合金板材を製造するための押出機の一例の断面概念図である。 本発明のマグネシウム合金板材を製造するための押出機の一例の正面図である。 本発明のマグネシウム合金板材の一例の金属組織写真である。 マグネシウム合金における結晶粒径と伸びとの関係図である。
符号の説明
1 素材丸棒
2 コンテナ
3 熱電対
4 電気ヒータ
5 補助リング
6 押出ダイ
7 ステム
8 押出機カバー
9 断熱セラミックス
10 スリット

Claims (7)

  1. マグネシウム合金からなる長尺形状の薄板材であって、
    前記マグネシウム合金は、アルミニウムの含有率が8.5〜9.5重量%であり、亜鉛の含有率が0.5〜1.5重量%であり、不可避な不純物成分を除く残部がマグネシウムからなり、前記マグネシウム合金の平均結晶粒径が5μm以下である、マグネシウム合金板材。
  2. 板厚が0.4mm以上2mm以下であり、板厚に対する板幅の比が20以上である請求項1記載のマグネシウム合金板材。
  3. 温度280℃以上で、歪速度10-2-1以下の条件で歪みを印加したときに超塑性を発現する、ボスおよび/またはリブを形成する鍛造加工用の請求項1記載のマグネシウム合金板材。
  4. 前記ボスおよび/またはリブの高さが2mm以上である請求項3記載のマグネシウム合金板材。
  5. 前記ボスおよび/またはリブの高さの、鍛造加工後の板厚に対する比が、5以上である請求項3記載のマグネシウム合金板材。
  6. 温度300℃で、歪速度10-3-1の条件で塑性加工を施したときに、合金の流動応力が20MPa以下である請求項3記載のマグネシウム合金板材。
  7. アルミニウムの含有率が8.5〜9.5重量%であり、亜鉛の含有率が0.5〜1.5重量%であり、不可避な不純物成分を除く残部がマグネシウムからなるマグネシウム合金鋳造材を溶体化処理する工程、
    前記溶体化処理された合金を、温度230〜270℃で、アスペクト比20以上の押出口から、押出比40以上および歪速度0.1s-1以上となるように押出加工することにより、平均結晶粒径が5μm以下で、板厚に対する板幅の比が20以上である長尺形状の薄板材を得る工程、を有するマグネシウム合金板材の製造法。
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