JP2005028276A - 膜形成方法、デバイス製造方法、電気光学装置、並びに電子機器 - Google Patents

膜形成方法、デバイス製造方法、電気光学装置、並びに電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】微細なパターン形成や材料使用量の低減化に対応可能であり、基板上の所望の位置に膜を安定して形成することができる膜形成方法を提供する。
【解決手段】第1液滴11を基板20上に配置する工程と、第1液滴を乾燥して、縁の膜厚が中央部の膜厚に比べて厚い形状を有する乾燥膜12を形成する工程と、第1液滴の乾燥膜12の縁部に囲まれた領域に第2液滴13を配置し、第2液滴の乾燥膜14を形成する工程とを有する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜形成方法、デバイス製造方法、電気光学装置、並びに電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディスプレイや表示光源などとして用いられる電気光学装置や、半導体装置などの電子装置は、その製造過程において、基板上に材料を配置し、その基板上に膜を形成する工程を含む。材料の配置技術や膜形成技術は、品質や機能と密接に係わり、上記各装置の性能の向上を図る上で重要である。
【0003】
基板上に材料を配置する技術としては、吐出ヘッドに設けられたノズルを介して液体材料を液滴として吐出する方法がある。この液滴吐出法は、スピンコート法などの技術に比べて、液体材料の消費に無駄が少なく、基板上に配置する液体材料の量や位置の制御を行いやすいという利点がある。
【0004】
ところで、液体材料を液滴にして基板上に配置する技術において、基板上にバンクを形成し、そのバンクに囲われた領域に液滴を配置する技術がある(例えば、特許文献1参照)。この技術では、バンクが仕切りとなって液滴の配置領域が規定されることから、液滴(液体材料)の基板上での濡れ広がりが防止される。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−271753号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、デバイスを構成する回路の高密度化が進み、パターンの微細化が要求されている。また、デバイスの低コスト化が求められている。
【0007】
上述したバンク形成技術では、印刷法によるパターニング、あるいはリソグラフィによるパターニングによりバンクを形成する。しかしながら、印刷法では、パターンの微細化に対応するのが難しい。また、リソグラフィ法では、パターニングに伴ってバンクの形成材料の一部が除去されることから、材料の使用量に無駄が多い。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、微細なパターン形成や材料使用量の低減化に対応可能であり、基板上の所望の位置に膜を安定して形成することができる膜形成方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、品質の向上が可能なデバイス製造方法、電気光学装置、並びに電子機器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の膜形成方法は、第1液滴を基板上に配置する工程と、該第1液滴を乾燥して、縁の膜厚が中央部の膜厚に比べて厚い形状を有する乾燥膜を形成する工程と、前記第1液滴の乾燥膜の縁部に囲まれた領域に第2液滴を配置し、該第2液滴の乾燥膜を形成する工程とを有することを特徴としている。
この膜形成方法によれば、第1液滴の乾燥膜の縁部に囲まれた領域に第2液滴が配置され、このとき、第1液滴の乾燥膜の縁部が仕切りとなることで、第2液滴が所望の位置に確実に配置されかつ、第2液滴の濡れ広がりが防止される。また、この膜形成方法では、第1液滴の乾燥膜の一部分(縁部)が仕切りとして用いられることから、微細なパターンの形成にも好ましく用いられる。しかも、仕切りの形成に際して、第1液滴の材料の除去を必要としないことから、材料使用量の低減化が図られる。
【0010】
上記の形成方法において、前記第1液滴の乾燥膜の形状は、前記第1液滴に対する乾燥条件によって制御することができる。
例えば、前記第1液滴の中央部に比べて縁における固形分濃度が早く飽和濃度に達するように、前記第1液滴に対する乾燥条件を定めるのが好ましい。ここで、液滴は縁において乾燥の進行が速く、液滴内で縁に向かう液体の流れが生じやすい。液滴の中央部に比べて縁における固形分濃度が早く飽和濃度に達すると、その縁において固形分が局所的に析出する。すると、その析出した固形分によって液滴の縁がピン止めされたような状態となり、それ以降の乾燥に伴う液滴の収縮が抑制される。液滴の収縮が抑制されると、液滴内で、液滴の縁で蒸発により失った分の液体を中央部から補う流れ、すなわち中央部から縁に向かう液体の流れが形成され、その流れによって液滴の縁に固形分が多く運ばれる。その結果、例えば、第1液滴の乾燥膜の縁の膜厚が中央部に比べて厚くなる。すなわち、第1液滴に対する乾燥条件を定めることにより、前記仕切りとして好適な縁部を有する乾燥膜を形成することができる。
【0011】
また、上記の膜形成方法において、前記第1液滴に対する乾燥条件は、前記第1液滴の固形分濃度と、前記第1液滴の乾燥速度とを含むことにより、乾燥膜の形状を好ましく制御することができる。
この場合、前記乾燥速度を定める手段は、例えば、前記基板が搭載されるステージの移動速度、該基板上に配置される前記液滴同士の間隔、該液滴の配列または配置のタイミング、及び前記液体材料に対する該基板表面の接触角のうち少なくとも1つを制御するとよい。
【0012】
また、上記の膜形成方法において、前記基板上の前記第1液滴が配置される領域の周辺領域を、前記第1液滴に対して撥液性に加工する工程を有してもよい。なお、撥液性とは、第1液滴に対して非親和性をしめす特性をいう。この場合、撥液性の周辺領域によって第1液滴の配置領域が規定され、第1液滴の配置精度の向上が図られる。
【0013】
この場合において、例えば、前記周辺領域を、自己組織化単分子膜を用いて撥液性に加工するとよい。ここで、自己組織化単分子膜(SAMs:Self−Assembled Monolayers)は、固体表面へ分子を固定する方法であって高配向・高密度な分子層が形成可能な方法である自己組織化(SA:Self−Assembly)法によって作製される膜である。自己組織化法は、オングストロームオーダで分子の環境及び幾何学的配置を操作できる。また、自己組織化単分子膜は、有機分子の固定化技術の有力な一手段となり作製法の簡便さと分子と基板間に存在する化学結合のために膜の熱的安定性も高く、オングストロームオーダの分子素子作製のための重要技術である。また、自己組織化単分子膜は、基本的に自己集合プロセスであり、自発的に微細パターンを形成することができる。つまり、自己組織化単分子膜は、超微小電子回路で用いられるような、すなわち既存のリソグラフィー法が使えないような、緻密で高度なパターン形成を簡便に形成することができる。したがって、上記の膜形成方法において、自己組織化膜を用いて第1液滴の配置領域を規定することにより、第1液滴の配置精度を向上させることができ、その結果、第2液滴の乾燥膜を所望の位置に確実に形成することが可能となる。
【0014】
また、上記の膜形成方法において、前記第1液滴は、前記基板上に単数配置されてもよく、または前記基板上に複数が合体して配置されてもよい。第1液滴が単数配置される場合、第1液滴の乾燥膜が例えば略円形に形成されることにより、第2液滴が配置される領域として略円形の領域が規定される。また、第1液滴が複数合体配置される場合、その合体した第1液滴の乾燥膜が例えば略長円形に形成されることにより、第2液滴が配置される領域として略長円状の領域が規定される。すなわち、第1の液滴として、複数の液滴を合体させることで、第2液滴が配置される領域を様々な形状に変化させることができる。その結果、第2液滴の乾燥膜について様々な形状のものが形成可能となる。
【0015】
また、上記の膜形成方法において、前記第1液滴の乾燥膜と前記第2液滴の乾燥膜とを含む多層膜は、例えば、配線、カラーフィルタ、フォトレジスト、マイクロレンズアレイ、エレクトロルミネセンス材料、導電性高分子材料、生体物質、のうちのいずれか一の形成に用いられる。
【0016】
また、本発明は、基板に膜パターンが形成されてなるデバイスの製造方法であって、上記の膜形成方法により、前記基板上に前記膜パターンを形成することを特徴とする。
このデバイス製造方法によれば、基板上の所望の位置に膜が安定して形成されることから、デバイスの品質の向上が図られる。
【0017】
また、本発明の電気光学装置は、上記のデバイス製造方法を用いて製造されたデバイスを備えることを特徴とする。
デバイスとしては、例えば、半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子などを例示できる。
また、電気光学装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置などを例示できる。
また、本発明の電子機器は、上記の電気光学装置を備えることを特徴とする。
これらの発明によれば、品質の向上が図られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る膜形成方法の一例を示す図である。
本例の膜形成方法は、基板20上に第1液滴11を配置し、第1液滴11の乾燥膜(第1膜12)を形成し、その後、その第1膜12の上に、第2液滴13を配置し、第2液滴13の乾燥膜(第2膜14)を形成するものであり、撥液化工程、第1膜形成工程、及び第2膜形成工程等を有する。なお、第1液滴11及び第2液滴13に使用する液体材料は、同じ場合もあり、互いに異なる場合もある。また、ここでは、説明の簡略化のために、基板上の1箇所に液滴の乾燥膜を形成した場合について説明するが、本発明はこれに限らず、例えば、基板上に複数の箇所に液滴の乾燥膜を形成してもよい。
【0019】
(撥液化工程)
まず、図1(a)に示すように、第1液滴11に使用される液体材料に対して撥液性(非親和性)の領域(撥液領域15)を、所定のパターン形状で基板20上に形成する。基板20としては、ガラス基板、シリコン基板、石英基板、セラミックス基板、金属基板、プラスチック基板、プラスチックフィルム基板など各種のものを用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含まれる。また、上記プラスチックとしては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトンなどが用いられる。
【0020】
撥液領域の形成方法としては、例えば、基板の表面に自己組織化膜を形成する方法、プラズマ処理法(プラズマ重合法)、共析メッキ法、金チオールで撥液化する手法等が挙げられる。例えば、基板の表面全体を撥液性に加工した後に、膜を形成すべき領域の撥液性を緩和して親液性を付与することで(親液化処理)、基板上に所定のパターン形状の撥液領域を形成することができる。あるいは、所定のパターン形状が施されたマスクを使用して基板表面の撥液化を行うことにより、基板上に所定のパターン形状の撥液領域を形成してもよい。本例では、基板上に、撥液性の自己組織化単分子膜(SAMs)からなる撥液領域(撥液パターン)を形成する。なお、自己組織化単分子膜の形成方法については後述する。
【0021】
(第1膜形成工程)
次に、図1(b)に示すように、撥液領域15に区画された領域に液体材料を液滴(第1液滴11)にして配置する。液体材料の配置方法としては、本例では、吐出ヘッド21から液体材料を液滴状に吐出する液滴吐出法、いわゆるインクジェット法を用いる。液滴吐出法では、例えば、吐出ヘッド21と基板20とを相対的に移動させながら、吐出ヘッド21から吐出した液滴11を基板20上に着弾させる。なお、液体吐出方式としては、圧電体素子としてのピエゾ素子を用いてインクを吐出させるピエゾ方式、液体材料を加熱し発生した泡(バブル)により液体材料を吐出させる方式等、公知の種々の技術を適用できる。このうち、ピエゾ方式は、液体材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないという利点を有する。液滴吐出用の装置(膜形成装置)については後述する。
【0022】
本例では、第1液滴11を基板20上に配置する際、撥液領域15によって第1液滴11の配置領域が規定されていることから、第1液滴11は、所望の位置に確実に配置される。すなわち、吐出ヘッド21から吐出された第1液滴11の一部が基板20上で撥液領域15に乗ったとしても、その第1液滴11は撥液領域15にはじかれ、撥液領域15に囲われた比較的親和性の高い領域に位置決めされる。
【0023】
次に、図1(c)に示すように、基板20上に配置された第1液滴11を乾燥させ、その乾燥膜(第1膜12)を形成する。本例では、第1液滴11に対する乾燥条件を制御することにより、第1膜12の形状を制御する。具体的には、第1膜12を、中央部に比べて縁部の膜厚が厚い形状、すなわち縁が盛り上がった形状にする。
【0024】
ここで、図2は、代表的な液滴の乾燥過程を模式的に示す図である。
液滴の乾燥過程では、液体材料の固形分濃度と、液滴の乾燥速度とのうちの少なくとも一方をパラメータとすることにより、液滴の乾燥膜を、様々な形状に制御することができる。具体的には、例えば、液滴の乾燥膜を、図2(a)に示すように、中央部に比べて縁の膜厚が厚い形状としたり、あるいは、図2(b)に示すように、着弾後の液滴に比べて収縮した形状としたりすることができる。
【0025】
図2(a)に示す乾燥過程は、液滴の中央部に比べて縁における固形分濃度が早く飽和濃度に達するように、上記パラメータ(液体材料の固形分濃度、液滴の乾燥速度)を定めたものである。一般に、基板上に配置された液滴は縁(エッジ)において乾燥の進行が速い。液滴の乾燥過程において、液滴の縁における固形分濃度が飽和濃度に達すると、その縁において固形分が局所的に析出する。すると、その析出した固形分によって液滴の縁がピン止めされたような状態となり、それ以降の乾燥に伴う液滴の収縮(外径の収縮)が抑制される。以後、この現象、すなわち、縁で析出した固形分によって乾燥に伴う液滴の収縮が抑制される現象を「ピニング」と呼ぶ。
【0026】
一方、図2(b)に示す乾燥過程は、液滴の全体の固形分濃度が略同時に飽和濃度に達するように、上記パラメータ(液体材料の固形分濃度、液滴の乾燥速度)を定めたものである。この場合、液滴の縁での局所的な固形分の析出が生じにくいことから、上述したピニングが起こらず、乾燥過程において、蒸発に伴って液滴が収縮する。すなわち、乾燥の進行とともに、液滴の外径が小さくなる。以後、この現象、すなわち、乾燥時にピニングすることなく液滴が収縮する現象を「ディピニング」と呼ぶ。なお、図2(a)及び(b)に矢印で示す液滴内の液体の流れは、一例であり、実際とは異なる場合がある。
【0027】
ここで、上記パラメータのうち、液滴の乾燥速度は、基板が搭載されるステージの移動速度、基板上に配置される液滴同士の間隔(液滴間距離)、複数の液滴の配列や配置のタイミング、及び液体材料に対する基板表面の接触角などに応じて変化する。
【0028】
例えば、ステージが移動すると、液滴近傍の気相の蒸気濃度が低下するなどにより、液滴の乾燥が促進される。ステージの移動速度が大きいほど、大気に対する液滴の相対的な移動速度が大きくなり、液滴の乾燥速度が大きくなる。
【0029】
図3は、基板上に複数(ここでは2滴)の液滴を配置した例を示す図である。
図3に示すように、液滴の乾燥時、液相から気相に出て行く蒸気は、液滴を中心に3次元に拡散する。「蒸気拡散層」とは、液滴から蒸発した分子が拡散による移動のために、液滴近傍の気相中に濃度勾配を形成している領域をいう。ここでは、液滴表面近傍の気相中に形成され、他の液滴に影響を与える濃度を有する蒸気層のことを広義の蒸気拡散層として含むものとする。また、液滴間距離は隣り合う両液滴同士の中心間隔とする。なお、蒸気拡散層の厚さは、液体材料の物性や固形分濃度、環境温度などに応じて変化する。
【0030】
基板上に複数の液滴が配置されるとき、液滴が他の液滴の蒸気拡散層内に存在したり、あるいは隣り合う両液滴の蒸気拡散層が互いに一部重なると、液滴表面の蒸気濃度の変化等によって、液滴の蒸発速度が変化する。具体的には、液滴間距離が短く、蒸気拡散層の重なる距離が長いほど、液滴の蒸発速度(乾燥速度)が小さくなり、乾燥時間が長くなる。一方、蒸気拡散層が重ならない場合は、液滴間距離が変化しても、液滴の蒸発速度及び乾燥時間はほとんど変化しない。したがって、蒸気拡散層の影響を受ける範囲内で、液滴間距離を変化させることにより、液滴の乾燥速度を変化させることができる。
【0031】
また、基板上に複数の液滴を配置する場合、上述した液滴間距離だけでなく、液滴を配置するタイミング、数、及び配列等によっても液滴の乾燥時間が変化する。例えば、基板上に先に液滴が配置されてから次の液滴を配置するまでの期間に応じて、次の液滴の配置時における先の液滴の乾燥(蒸発)状態が変化する。そのため、その変化に応じて、それらの液滴間での蒸気拡散層の影響の大きさ、並びに液滴の乾燥速度が変化する。すなわち、上記期間が長いほど、複数の液滴間での蒸気拡散層の影響が小さくなり、液滴の乾燥速度が大きくなる。
【0032】
また、図4(a)及び(b)に示すように、蒸気拡散層が重なる範囲内で、1つの液滴Aに並べて配置される液滴Bの数が多いほど、蒸気拡散層の影響が大きく現れ、液滴Aの乾燥速度が小さくなる。また、蒸気拡散層が重なる範囲内で、1つの液滴Aの一方の側に1つの液滴Bが配置される場合(図4(a))、液滴Aでは、液滴Bが配置された側の乾燥速度が部分的に小さくなる。この場合、乾燥速度に部分的な偏りが生じるために、液滴Aの乾燥膜の形状は異方的になる。これに対して、1つの液滴Aの全周にわたって複数の液滴Bが配置される場合(図4(b))、上述した乾燥速度の部分的な偏りが生じにくく、液滴Aの乾燥膜の形状は等方的となる。
【0033】
図5(a)及び(b)は、液体材料に対する基板表面の接触角(静的接触角)が互いに異なる場合の液滴の様子を示している(接触角θa<θb)。
同量の液滴を基板上に配置するとき、接触角が小さいほど液滴の外径は大きい。液滴の外径が大きいと、乾燥速度が大きくなる傾向にあることから、液体材料に対する基板表面の接触角が小さいほど、乾燥速度が大きくなる。接触角は、例えば、基板表面を親液化処理することにより小さくなり、基板表面を撥液化処理することにより大きくなる。
【0034】
以上のことから、基板が搭載されるステージの移動速度、基板上に配置される液滴同士の間隔(液滴間距離)、複数の液滴の配列や配置のタイミング、及び液体材料に対する基板表面の接触角などを制御することにより、液滴の乾燥速度を変化させることができる。なお、液滴の乾燥速度を変化させる方法としては、上記の他に、温度や、湿度、気圧などの環境因子を制御したり、加熱手段や送風手段を用いたりしてもよい。これらの制御手法は、必要に応じて、組み合わせて用いることができる。
【0035】
図6は、一定の乾燥条件下での、液滴からの液体(溶媒、分散媒など)の蒸発量の時間積分を示す図である。
図6に示すように、乾燥の初期段階には、時間あたりの蒸発量が多い(図6に示すA部)。これは、基板上に液滴が配置された直後の乾燥初期においては、液滴の周囲の蒸気濃度が低く、液滴の乾燥速度(蒸発速度)が大きいからである。その後、液滴の周囲(液体分子の平均自由工程距離分)が飽和濃度に達すると、液滴の乾燥速度は、蒸気の拡散速度に律速された定常状態となり(図6に示すB部)、乾燥初期に比べて遅くなる。
【0036】
前述したように、基板上に配置された液滴は縁(エッジ)において乾燥の進行が速い。そのため、乾燥の初期段階(図6に示すA部)には、液滴の縁で液体が急速に蒸発し、固形分濃度が上昇する傾向にある。このとき、液滴の縁における固形分濃度が飽和濃度に達すると、上述したピニングが生じる。
【0037】
図7〜図9はそれぞれ、ピニングを経て形成された乾燥膜(ピニング薄膜)の形状を示しており、上段が平面図、下段が断面図である。
前述したように、ピニングは、縁で析出した固形分によって乾燥に伴う液滴の収縮が抑制された現象である。ピニングが起きると、先の図2(a)に示したように、液滴内で、液滴の縁で蒸発により失った分の液体を中央部から補う流れ、すなわち中央部から縁に向かう液体の流れが形成される。この液体の流れは、上記パラメータに応じて変化する。図7〜図9に示す乾燥膜は、乾燥過程における上記パラメータが互いに異なる。
【0038】
図7に示す乾燥膜は、乾燥時における液滴内で中央部から縁への液体の流れが強く形成されるように上記パラメータを定めることにより、形成されたものである。先の図2(a)に示すように、ピニングが起きた後、液滴内で、中央部から縁に向かう液体の流れが強く形成されると、この液体の流れに伴い、液滴の縁に固形分が多く運ばれる。液滴の縁では、固形分の析出に伴う粘度上昇等により、液体の流れが滞留しやすく、固形分の高濃度状態が維持される。すなわち、中央部から縁に向かう液体の流れに比べて、縁から中央部に向かう液体の流れが弱くなる。その結果、液滴の縁において固形分が多く析出し、乾燥膜の縁の部分の膜厚が厚くなる。
【0039】
この場合、上記パラメータのうち、液体材料の固形分濃度が低いほど、また、乾燥速度が大きいほど、中央部から縁に向かう液体の流れが強くなる。したがって、液体材料の固形分濃度を低下させたり、乾燥速度を大きくしたりすることにより、乾燥膜の中央部に対する縁の膜厚比を大きくすることができる。つまり、縁の厚い乾燥膜が形成される。また、固形分が微粒子の場合、その粒径が小さいほど、液体の流れに乗せて固形分を縁に運びやすいために、乾燥膜の中央部の膜厚が薄くなりやすい。乾燥膜の中央部に対する縁の膜厚比が大きくなることで、例えば、図7に示すように、リング状の乾燥膜(環状の乾燥膜)が形成される。
【0040】
図8に示す乾燥膜は、液滴内での中央部から縁への液体の流れが弱くなるように上記パラメータを定めたものである。上記パラメータのうち、液体材料の固形分濃度が高いほど、また、乾燥速度が小さいほど、中央部から縁に向かう液体の流れが弱くなり、液滴の縁に固形分が運ばれにくくなる。また、固形分が微粒子の場合、その粒径が大きいほど、固形分を液滴の中央部から縁まで運びにくくなることから、乾燥膜の中央部の膜厚が薄くなりにくい。その結果、図8に示すように、中央部と縁とが同程度の膜厚の、略平坦な断面形状を有する乾燥膜が形成される。
【0041】
図9に示す乾燥膜は、図8よりもさらに、液滴内での中央部から縁への液体の流れが弱くなるように上記パラメータを定めたものである。図9に示す乾燥膜は、例えば、図7及び図8に示す乾燥膜に比べて、液体材料の固形分濃度が高く、乾燥速度が小さく、固形分が微粒子の場合、その粒径が大きい。この場合、液滴の中央部から縁への固形分の運搬が行われにくく、図9に示すように、乾燥膜の縁に比べて中央部の膜厚が厚くなる。
【0042】
このように、ピニングが生じる条件下において、上記パラメータ(液体材料の固形分濃度、液滴の乾燥速度)、あるいは固形分が微粒子の場合、その粒径を変化させることにより、液滴の乾燥膜を様々な形状に制御することができる。
【0043】
また、先の図7に示すリング状の乾燥膜については、上記パラメータ、及び固形分が微粒子の場合、その粒径を変化させることにより、縁の盛り上がり部分の幅等を制御することが可能である。具体的には、低濃度で液滴径が小さいほど、中央から縁に向かう液体の流れの影響を受けやすくなることから、乾燥膜の縁の盛り上がり部分が他の部分に比べて高くなり、かつその幅が広くなる。
【0044】
図10は、ピニングを経て形成された乾燥膜に関し、特に、リング状の膜について、液体材料の固形分濃度及び固形分が微粒子の場合、その粒径を変化させた場合の膜形状の変化の様子を示している。
ここで、微粒子の粒径:(a)<(b)、であり、液体材料の固形分濃度:(a)<(b)、である。
(a)の乾燥膜の外径をW、縁の厚さをh、縁の盛り上がり部分の幅をLとし、(b)の乾燥膜の外径をW、縁の厚さをh、縁の盛り上がり部分の幅をL、とするとき、W<W、h<h、L>L、であった。
【0045】
なお、ピニングによる乾燥中の液滴上に、別の液滴を重ねて配置することによっても乾燥膜の縁部の盛り上がり形状を制御することもできる。この場合、乾燥中の液滴の液体分が増すことで、中央から縁への液体の流れが維持され、固形分が縁にさらに運ばれる。そのため、縁への固形分の移動が促進され、縁の膜厚がさらに厚くなりやすい。また、基板に配置された液滴を加熱することや、液体材料として低沸点溶媒を用いることにより、膜形状の変化がより顕著になる。
【0046】
図1(c)に戻り、本例では、第1液滴11に対する乾燥条件を制御することにより、中央部に比べて縁部の膜厚が厚い形状、すなわち縁が盛り上がった形状(リング状、環状)の、第1膜12を形成する。また、第1膜12の縁部の形状について、その盛り上がり部分の幅やその高さ(膜厚)についても、第1液滴11に対する乾燥条件の制御により、所望の状態に形成する。
【0047】
(第2膜形成工程)
次に、図1(d)に示すように、基板20上に形成された第1膜12の上に、液体材料を液滴(第2液滴13)にして配置する。本例では、第2液滴13の配置方法として、第1液滴11と同様に、液滴吐出法を用いる。すなわち、吐出ヘッド21から液体材料を液滴状に吐出し、その液滴(第2液滴13)を第1膜12上に配置する。
【0048】
具体的には、第1膜12の縁部に囲まれた領域に第2液滴13を配置する。このとき、第1膜12の縁部が仕切り部材として作用し、第2液滴13が所望の位置に確実に配置されかつ、濡れ広がり(基板表面への流出)が防止される。すなわち、図11に示すように、第2液滴13の着弾位置が第1膜12の中心から多少ずれたとしても、第2液滴13が第1膜12の縁部にぶつかって、その縁部の内側に案内される。また、図12に示すように、第1膜12に比べて第2液滴13の直径が大きい場合、第2液滴13の一部が第1膜12の縁部の上に乗るものの、毛管現象などにより第2液滴13は第1膜12の縁部に区画された内側の領域に入り込む。
【0049】
なお、第2液滴13の配置に先立って、第1膜12の表面(特に、縁部の表面)を、第2液滴13に対して撥液性に加工してもよい。あるいは第1膜12の形成材料として第2液滴13に対して撥液性を有する物質を含む材料を用いてもよい。第1膜12の表面が第2液滴13に対して非親和性であることにより、第1膜12の縁部の内側への第2液滴13の配置がより確実に行われる。
【0050】
そして、図1(e)に示すように、第1膜12上に配置された第2液滴13を乾燥させ、その乾燥膜(第2膜14)を形成する。第2液滴13に対する乾燥条件は、第2膜14について、所望の形状あるいは物性が得られるように制御される。これらにより、第1膜12上に重ねて第2膜14が形成される。すなわち、基板20上に、第1膜12及び第2膜14を含む多層膜が形成される。なお、本例では、2層膜を形成したが、さらに液滴を重ねて配置し、3層以上の膜を形成してもよい。
【0051】
このように、本例の膜形成方法では、第1膜12の縁部に囲まれた領域に第2液滴13が配置され、このとき、第1膜12の縁部が仕切りとなることで、第2液滴13が所望の位置に確実に配置されかつ、第2液滴13の濡れ広がりが防止される。また、本例では、第1膜12の一部分(縁部)だけを仕切りとして用いることから、その縁部の幅や、その内部の領域の微細化が容易であり、微細な膜の形成に好ましく用いられる。しかも、仕切りとしての縁部の形成に際して、第1膜12の形成材料の除去を必要としないことから、材料使用量の低減化が図られる。
【0052】
また、本例の膜形成方法では、撥液領域15によって第1液滴11の配置領域が規定されることから、第1液滴11が基板20上の所望の位置に高い精度で確実に配置される。第1液滴11が高い精度で位置決めされる結果、第2液滴13の乾燥膜(第2膜14)を所望の位置に確実に形成することが可能となる。したがって、この膜形成方法を用いてデバイスを製造することにより、基板上の所望の位置に安定して膜が形成され、デバイスの品質の向上が図られる。
【0053】
ここで、自己組織化単分子膜の形成方法について説明する。
自己組織化単分子膜の形成方法としては、例えば、次のように行う。まず、基板の表面に金などを真空蒸着等させる。その後、基板を洗浄する。その後、チオール類の数μ〜数十μmol/lエタノール溶液に、所定時間侵漬し、自己組織化単分子膜を作成する。その後、エタノール、純水の順に金表面を洗浄する。必要であれば、金表面を窒素雰囲気化で乾燥させる。以上で自己組織化単分子膜が形成される。自己組織化単分子膜は、緻密で高度なパターン形成を簡便に形成することができる。
【0054】
自己組織化単分子膜は、例えば、シランカップリング剤(有機ケイ素化合物)又はチオール化合物を用いて形成することができる。
ここでチオール化合物とは、メルカプト基(−SH)を持つ有機化合物(R−SH)の総称をいう。シランカップリング剤とは、R SiX4−nで表される化合物である。特に、R又はRがC2n+12mであるようなフッ素原子を有する化合物は、他材料との親和性が小さく撥液性が高いので撥液領域を形成する材料として好適である。
【0055】
所定パターンの自己組織化単分子膜を形成する方法としては、例えば、基板に所望形状のマスク層を形成した後、基板に自己組織化単分子膜を成膜し、その後、マスク層を除去する方法がある。マスク層としては、例えば、レジスト(感光材)が好ましく用いられる。
【0056】
あるいは、基板に自己組織化単分子膜を成膜した後、電子線、イオンビーム及び光のうちの少なくとも1つを用いて、自己組織化単分子膜における所望部分を除去、あるいは所望部分表面の性質(表面エネルギー)を変更することにより、自己組織化単分子膜のパターニングを行ってもよい。電子線、イオンビーム及び光(例えば、波長250nm以下)は、極めて微小なスポットにでき、簡易にかつ高精度に位置制御することができるので、極めて微細なパターニングを実施することができる。
【0057】
あるいは、所望のスタンプ(型)を作成し、そのスタンプ上に自己組織化単分子膜を成膜した後、自己組織化単分子膜を基板に転写することにより、自己組織化単分子膜のパターニングを行ってもよい。自己組織化単分子膜の基板への転写は例えばマイクロコンタクトプリンティングにより行ったり、又はレーザなどをスタンプ上の自己組織化単分子膜に照射することでアブレーションさせることにより行ったりするとよい。この方法では、例えば1つのスタンプを繰り返し使用して同一パターンの自己組織化単分子膜を複数形成することができる。
【0058】
図13(a)、(b)は、基板上に形成される第1液滴の乾燥膜(第1膜12)の平面形状の例を示す図である。
図13(a)は、1滴の液滴から乾燥膜を形成したものであり、縁部の内側に略円形の領域が形成されている。この領域に第2液滴を配置することにより、平面形状が略円形の第2膜を形成することができる。平面形状が略円形の第2膜は、例えば、マイクロレンズアレイなどに適用可能である。
【0059】
図13(b)は、基板上で複数の液滴を合体させ、それを乾燥させて乾燥膜を形成したものであり、縁部の内側に略長円状の領域が形成されている。この領域に第2液滴を配置することにより、平面形状が略長円形の第2膜を形成することができる。平面形状が略長円形の膜は、例えば、画素を構成する膜などに適用可能である。なお、基板上で複数の液滴を合体させ、その乾燥膜(第1膜)を形成することで、第2液滴が配置される領域を様々な形状に変化させることができる。このとき、基板上に所定のパターン形状の撥液領域が形成されていることで、その撥液領域に応じて複数の液滴を合体させ、任意の形状の第1膜を形成することができる。なお、本発明において、第1液滴を所望の位置に確実に配置できる場合は、第1液滴の配置領域を規定するための撥液領域を特に形成しなくてもよい。
【0060】
図14(a)、(b)は、本例の膜形成方法により形成される多層膜(2層膜)の断面形状の例を示す図である。
図14(a)に示す多層膜は、第1膜の縁部に比べて第2膜の上面の高さが低いのに対して、図14(b)に示す多層膜は、第1膜の縁部に比べて第2膜の上面の高さが高い。第1膜の縁部の高さやその幅は、第2膜の膜厚や形成材料の物性、あるいは使用目的などに応じて適宜定められる。なお、第1膜の縁部を高くすることで、第2膜の厚膜化を容易に図ることができる。
【0061】
本例の膜形成方法により形成される多層膜は、様々な分野に応用可能である。例えば、配線、カラーフィルタ、フォトレジスト、マイクロレンズアレイ、エレクトロルミネセンス材料、導電性高分子材料、生体物質、などが挙げられる。上記多層膜をカラーフィルタに適用する場合、第2層の形成材料として、例えば、カラーフィルタ用の顔料インクが用いられる。また、上記多層膜をマイクロレンズに適用する場合、第2層の形成材料として、例えば、UV硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂などが用いられる。
【0062】
図15は、本発明の膜形成方法に好適に用いられる膜形成装置の構成例を示している。
図15において、膜形成装置10は、ベース112と、ベース112上に設けられ、基板20を支持する基板ステージ22と、ベース112と基板ステージ22との間に介在し、基板ステージ22を移動可能に支持する第1移動装置(移動装置)114と、基板ステージ22に支持されている基板20に対して処理液体を吐出可能な液体吐出ヘッド21と、液体吐出ヘッド21を移動可能に支持する第2移動装置116と、液体吐出ヘッド21の液滴の吐出動作を制御する制御装置23とを備えている。更に、膜形成装置10は、ベース112上に設けられている重量測定装置としての電子天秤(不図示)と、キャッピングユニット25と、クリーニングユニット24とを有している。また、第1移動装置114及び第2移動装置116を含む膜形成装置10の動作は、制御装置23によって制御される。
【0063】
第1移動装置114はベース112の上に設置されており、Y方向に沿って位置決めされている。第2移動装置116は、支柱16A,16Aを用いてベース112に対して立てて取り付けられており、ベース112の後部12Aにおいて取り付けられている。第2移動装置116のX方向(第2の方向)は、第1移動装置114のY方向(第1の方向)と直交する方向である。ここで、Y方向はベース112の前部12Bと後部12A方向に沿った方向である。これに対してX方向はベース112の左右方向に沿った方向であり、各々水平である。また、Z方向はX方向及びY方向に垂直な方向である。
【0064】
第1移動装置114は、例えばリニアモータによって構成され、ガイドレール140,140と、このガイドレール140に沿って移動可能に設けられているスライダー142とを備えている。このリニアモータ形式の第1移動装置114のスライダー142は、ガイドレール140に沿ってY方向に移動して位置決め可能である。
【0065】
また、スライダー142はZ軸回り(θZ)用のモータ144を備えている。このモータ144は、例えばダイレクトドライブモータであり、モータ144のロータは基板ステージ22に固定されている。これにより、モータ144に通電することでロータと基板ステージ22とは、θZ方向に沿って回転して基板ステージ22をインデックス(回転割り出し)することができる。すなわち、第1移動装置114は、基板ステージ22をY方向(第1の方向)及びθZ方向に移動可能である。
【0066】
基板ステージ22は基板20を保持し、所定の位置に位置決めするものである。また、基板ステージ22は不図示の吸着保持装置を有しており、吸着保持装置が作動することにより、基板ステージ22の穴46Aを通して基板20を基板ステージ22の上に吸着して保持する。
【0067】
第2移動装置116はリニアモータによって構成され、支柱16A,16Aに固定されたコラム16Bと、このコラム16Bに支持されているガイドレール62Aと、ガイドレール62Aに沿ってX方向に移動可能に支持されているスライダー160とを備えている。スライダー160はガイドレール62Aに沿ってX方向に移動して位置決め可能であり、液体吐出ヘッド21はスライダー160に取り付けられている。
【0068】
液体吐出ヘッド21は、揺動位置決め装置としてのモータ62,64,67,68を有している。モータ62を作動すれば、液体吐出ヘッド21は、Z軸に沿って上下動して位置決め可能である。このZ軸はX軸とY軸に対して各々直交する方向(上下方向)である。モータ64を作動すると、液体吐出ヘッド21は、Y軸回りのβ方向に沿って揺動して位置決め可能である。モータ67を作動すると、液体吐出ヘッド21は、X軸回りのγ方向に揺動して位置決め可能である。モータ68を作動すると、液体吐出ヘッド21は、Z軸回りのα方向に揺動して位置決め可能である。すなわち、第2移動装置116は、液体吐出ヘッド21をX方向(第1の方向)及びZ方向に移動可能に支持するとともに、この液体吐出ヘッド21をθX方向、θY方向、θZ方向に移動可能に支持する。
【0069】
このように、図15の液体吐出ヘッド21は、スライダー160において、Z軸方向に直線移動して位置決め可能で、α、β、γに沿って揺動して位置決め可能であり、液体吐出ヘッド21の液滴吐出面11Pは、基板ステージ22側の基板20に対して正確に位置あるいは姿勢をコントロールすることができる。なお、液体吐出ヘッド21の液滴吐出面11Pには液滴を吐出する複数のノズルが設けられている。
【0070】
液体吐出ヘッド21は、いわゆる液体吐出方式(液滴吐出方式)により、液体材料(レジスト)をノズルから吐出するものである。液体吐出方式としては、圧電体素子としてのピエゾ素子を用いてインクを吐出させるピエゾ方式、液体材料を加熱し発生した泡(バブル)により液体材料を吐出させる方式等、公知の種々の技術を適用できる。このうち、ピエゾ方式は、液体材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないという利点を有する。なお、本例では、上記ピエゾ方式を用いる。
【0071】
図16は、ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図である。図16において、液体材料を収容する液室31に隣接してピエゾ素子32が設置されている。液室31には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系34を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子32は駆動回路33に接続されており、この駆動回路33を介してピエゾ素子32に電圧が印加される。ピエゾ素子32を変形させることにより、液室31が変形し、ノズル30から液体材料が吐出される。このとき、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子32の歪み量が制御され、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子32の歪み速度が制御される。すなわち、液体吐出ヘッド21では、ピエゾ素子32への印加電圧の制御により、ノズル30からの液体材料の吐出の制御が行われる。
【0072】
図15に戻り、電子天秤(不図示)は、液体吐出ヘッド21のノズルから吐出された液滴の一滴の重量を測定して管理するために、例えば、液体吐出ヘッド21のノズルから、5000滴分の液滴を受ける。電子天秤は、この5000滴の液滴の重量を5000の数字で割ることにより、一滴の液滴の重量を正確に測定することができる。この液滴の測定量に基づいて、液体吐出ヘッド21から吐出する液滴の量を最適にコントロールすることができる。
【0073】
クリーニングユニット24は、液体吐出ヘッド21のノズル等のクリーニングをデバイス製造工程中や待機時に定期的にあるいは随時に行うことができる。キャッピングユニット25は、液体吐出ヘッド21の液滴吐出面11Pが乾燥しないようにするために、デバイスを製造しない待機時にこの液滴吐出面11Pにキャップをかぶせるものである。
【0074】
液体吐出ヘッド21が第2移動装置116によりX方向に移動することで、液体吐出ヘッド21を電子天秤、クリーニングユニット24あるいはキャッピングユニット25の上部に選択的に位置決めさせることができる。つまり、デバイス製造作業の途中であっても、液体吐出ヘッド21をたとえば電子天秤側に移動すれば、液滴の重量を測定できる。また液体吐出ヘッド21をクリーニングユニット24上に移動すれば、液体吐出ヘッド21のクリーニングを行うことができる。液体吐出ヘッド21をキャッピングユニット25の上に移動すれば、液体吐出ヘッド21の液滴吐出面11Pにキャップを取り付けて乾燥を防止する。
【0075】
つまり、これら電子天秤、クリーニングユニット24、およびキャッピングユニット25は、ベース112上の後端側で、液体吐出ヘッド21の移動経路直下に、基板ステージ22と離間して配置されている。基板ステージ22に対する基板20の給材作業及び排材作業はベース112の前端側で行われるため、これら電子天秤、クリーニングユニット24あるいはキャッピングユニット25により作業に支障を来すことはない。
【0076】
図15に示すように、基板ステージ22のうち、基板20を支持する以外の部分には、液体吐出ヘッド21が液滴を捨打ち或いは試し打ち(予備吐出)するための予備吐出エリア(予備吐出領域)152が、クリーニングユニット24と分離して設けられている。この予備吐出エリア152は、図15に示すように、基板ステージ22の後端部側においてX方向に沿って設けられている。この予備吐出エリア152は、基板ステージ22に固着され、上方に開口する断面凹字状の受け部材と、受け部材の凹部に交換自在に設置されて、吐出された液滴を吸収する吸収材とから構成されている。
【0077】
なお、上記膜形成装置では、液体吐出ヘッドから吐出された液滴が基板上に配置されると、基板ステージの移動などによって液滴の乾燥速度を制御する。液滴の乾燥方法はこれに限定されず、例えば、ランプアニールなどの乾燥手段を用いて液滴の乾燥を行ってもよい。
【0078】
図17は、本発明の膜形成方法を用いて製造されたカラーフィルタを搭載した液晶表示装置の構成を例示する斜視図である。
本実施形態に係る液晶表示装置400は、液晶駆動用IC(図示略)、配線類(図示略)、光源470、支持体(図示略)などの付帯要素が装着されている。
液晶表示装置400の構成を簡単に説明する。液晶表示装置400は、互いに対向するように配置された、カラーフィルタ460、及びガラス基板414と、これらの間に挟持された図示略の液晶層と、カラーフィルタ460の上面側(観察者側)に付設された偏光板416と、ガラス基板414の下面側に付設された図示略の偏光板とを主体として構成されている。カラーフィルタ460は透明なガラスからなる基板461を具備し、観察者側に設けられた基板であり、ガラス基板414はその反対側に設けられる透明な基板である。
【0079】
基板461の下側には、黒色感光性樹脂膜からなる隔壁462と、着色部463、及びオーバーコート層464が順次形成され、さらにオーバーコート層464の下側に駆動用の電極418が形成されている。なお、実際の液晶装置においては、電極418を覆って液晶層側と、ガラス基板414側の後述する電極432上に、配向膜が設けられるが、図示、及び説明を省略する。
カラーフィルタ460の液晶層側に形成された液晶駆動用の電極418は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料を、オーバーコート層464の全面に形成させたものである。
【0080】
ガラス基板414上には、絶縁層425が形成され、この絶縁層425の上には、スイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)と、画素電極432とが形成されている。
ガラス基板414上に形成された絶縁層425上には、マトリクス状に走査線451と、信号線452とが形成され、走査線451と信号線452とに囲まれた領域毎に画素電極432が設けられている。各画素電極432のコーナー部分と走査線451と信号線452との間部分にはTFTが組み込まれており、走査線451と信号線452に対する信号の印加によってTFTはオン、又はオフの状態となって画素電極432への通電が制御される。
【0081】
図18は、上記液晶表示装置を用いた電子機器の一例たる携帯電話機の構成を例示する斜視図である。同図において、携帯電話機92は複数の操作ボタン921のほか、受話口922、送話口923とともに、上述した液晶表示装置400を備えるものである。
【0082】
なお、液滴吐出装置の用途は、電気光学装置に用いられるカラーフィルタのパターニングに限定されず、次のような様々な膜パターンの形成に用いることができる。例えば、有機EL(エレクトロルミネセンス)表示パネルに含まれる有機EL層や、正孔注入層などの薄膜形成に用いることができる。有機EL層を形成する場合には、例えばポリチオフェン系の導電性高分子などの有機EL材料を含む液滴を、基板上に形成された隔壁により仕切られる領域に向けて吐出し、液滴をその領域に配置する。このように配置された液体材料が乾燥することにより、有機EL層が形成される。
【0083】
また、その他の液滴吐出装置の用途としては、プラズマディスプレイに含まれる透明電極の補助配線や、IC(integrated circuit)カードなどに含まれるアンテナなどのデバイスの形成などがある。具体的には、テトラデカンなどの有機溶液に、銀微粒子などの導電性微粒子を混合した溶液を液滴吐出装置を用いてパターニングした後、有機溶液が乾燥すると、金属薄膜層が形成される。
【0084】
上記以外にも、液滴吐出装置は、例えば、立体造形に用いられる熱硬化樹脂や、紫外線硬化樹脂などの他、マイクロレンズアレイ材料、また、DNA(deoxyribonucleic acid)やたんぱく質といった生体物質などの様々な材料の配置にも用いることが可能である。
【0085】
また、電子機器としては、携帯電話機の他にも、コンピュータや、プロジェクタ、デジタルカメラ、ムービーカメラ、PDA(Personal Digital Assistant)、車載機器、複写機、オーディオ機器などが挙げられる。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る膜形成方法の一例を示す図。
【図2】本発明の膜形成方法における代表的な液滴の乾燥過程を模式的に示す図。
【図3】基板上に複数の液滴を配置した例を示す図。
【図4】複数の液滴の配列例を示す図。
【図5】液体材料に対する基板表面の接触角(静的接触角)が互いに異なる場合の液滴の様子を示す図。
【図6】一定の乾燥条件下での、液滴からの液体(溶媒、分散媒など)の蒸発量の時間積分を示す図。
【図7】ピニング薄膜の形状を示しており、上段が平面図、下段が断面図。
【図8】ピニング薄膜の他の形状を示しており、上段が平面図、下段が断面図。
【図9】ピニング薄膜の別の形状を示しており、上段が平面図、下段が断面図。
【図10】ピニングを経て形成された乾燥膜に関し、特に、リング状の膜について、液体材料の固形分濃度及び液滴径を変化させた場合の膜形状の変化の様子を示す図。
【図11】第1膜上に第2液滴が配置される様子を示す図。
【図12】第1膜上に第2液滴が配置される様子を示す図。
【図13】第1膜の平面形状の例を示す図。
【図14】多層膜(2層膜)の断面形状の例を示す図。
【図15】本発明の膜形成方法に好適に用いられる膜形成装置の構成例を示す図。
【図16】ピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための図。
【図17】本発明の膜形成方法を用いて製造されたカラーフィルタを搭載した液晶表示装置の構成を例示する斜視図。
【図18】液晶表示装置を用いた電子機器の一例たる携帯電話機の構成を例示する斜視図。
【符号の説明】
10…膜形成装置、11…第1液滴、12…第1膜(第1液滴の乾燥膜)、13…第2液滴、14…第2膜(第2液滴の乾燥膜)、15…撥液領域(周辺領域)、20…基板、21…吐出ヘッド、22…基板ステージ。

Claims (12)

  1. 第1液滴を基板上に配置する工程と、
    該第1液滴を乾燥して、縁の膜厚が中央部の膜厚に比べて厚い形状を有する乾燥膜を形成する工程と、
    前記第1液滴の乾燥膜の縁部に囲まれた領域に第2液滴を配置し、該第2液滴の乾燥膜を形成する工程とを有することを特徴とする膜形成方法。
  2. 前記第1液滴に対する乾燥条件によって、前記第1液滴の乾燥膜の形状を制御することを特徴とする請求項1に記載の膜形成方法。
  3. 前記第1液滴の中央部に比べて縁における固形分濃度が早く飽和濃度に達するように、前記第1液滴に対する乾燥条件を定めることを特徴とする請求項2に記載の膜形成方法。
  4. 前記第1液滴に対する乾燥条件は、前記第1液滴の固形分濃度と、前記第1液滴の乾燥速度とを含むことを特徴とする請求項3に記載の膜形成方法。
  5. 前記乾燥速度を定める手段は、前記基板が搭載されるステージの移動速度、該基板上に配置される前記液滴同士の間隔、該液滴の配列または配置のタイミング、及び前記液体材料に対する該基板表面の接触角のうち少なくとも1つを制御することを特徴とする請求項4に記載の膜形成方法。
  6. 前記基板上の前記第1液滴が配置される領域の周辺領域を、前記第1液滴に対して撥液性に加工する工程を有することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれかに記載の膜形成方法。
  7. 前記周辺領域を、自己組織化単分子膜を用いて撥液性に加工することを特徴とする請求項6に記載の膜形成方法。
  8. 前記第1液滴は、前記基板上に単数配置されるか、または前記基板上に複数が合体して配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれかに記載の膜形成方法。
  9. 前記第1液滴の乾燥膜と前記第2液滴の乾燥膜とを含む多層膜は、配線、カラーフィルタ、フォトレジスト、マイクロレンズアレイ、エレクトロルミネセンス材料、導電性高分子材料、生体物質、のうちのいずれか一の形成に用いられることを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか一項に記載の膜形成方法。
  10. 基板に膜パターンが形成されてなるデバイスの製造方法であって、
    請求項1から請求項8のうちのいずれかに記載の膜形成方法により、前記基板上に前記膜パターンを形成することを特徴とするデバイス製造方法。
  11. 請求項10に記載のデバイス製造方法を用いて製造されたデバイスを備えることを特徴とする電気光学装置。
  12. 請求項11に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。
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