JP2005021973A - 無鉛ハンダ接合用フラックス及びソルダーペースト - Google Patents

無鉛ハンダ接合用フラックス及びソルダーペースト Download PDF

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Abstract

【課題】 無鉛ハンダ接合用フラックス及びソルダーペーストを提供する。
【解決手段】 無鉛ハンダ接合用フラックスは、カロチノイド化合物を含有する。ソルダーペーストは、この無鉛ハンダ接合用フラックスと、錫−亜鉛合金ハンダ粉末とを含有する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電気、電子又は機械部品の接合を鉛を含有しないハンダにより形成するための無鉛ハンダ接合用フラックス及びソルダーペーストに関する。詳細には、回路基板等の電気、電子部品の接合を錫−亜鉛合金ハンダによって形成可能な無鉛ハンダ接合用フラックス及びソルダーペーストに関する。
ハンダ付けは、融点が比較的低い金属を用いて物体同士を接合する技術であり、古くから用いられている。現代の産業において、ハンダ付けは電子機器の接合、組み立てに幅広く用いられている。実装基板においては、半導体、マイクロプロセッサー、メモリー、抵抗などの電子部品を基板に実装するための接合等に用いられている。ハンダ付けの長所は、部品を基板に固定するだけでなく、ハンダを構成する金属の導電性により電気的接続が形成されることにある。
一般的に用いられるハンダは、錫と鉛とによる共晶ハンダで、その理論共晶点が183℃であり、多くの熱硬化性樹脂がガス化する温度よりも低いため、錫−鉛共晶ハンダは、基板等の接合に用いられ、プリント基板などを熱により損傷しなくて済むという特徴を有している。
このような特徴を備えた錫−鉛共晶ハンダは、電子機器の製造における部品の接合、組み立てに不可欠なものであり、厚膜形成、導体回路形成及び半導体実装のような微細なハンダ付け処理においては、ハンダ粉末とフラックスとを混合したペースト状のソルダーペーストとしてスクリーン印刷方式等に従って用いられている。
最近のパソコンや携帯端末のパーソナル機器等の電子機器の急激な普及により、電子部品の実装技術におけるハンダ需要が益々増大している。電子機器の普及は、人々の生活を豊にする反面、使用されなくなった電子機器が多量に廃棄され、これらの廃棄物による環境問題が大きな議論となっている。このために、廃棄物のリサイクルや有害物質を使用しない製造方法の確立が望まれている。電子機器の製造においても、有害物質を用いない製造技術の開発が急務となっている。
錫−鉛共晶ハンダは、母材に対する濡れ性が他の金属混合物よりも優れた特性を有している。しかし、このハンダに含まれる鉛は、廃棄された電子機器を埋め立て処分した場合、長年に渡って酸性雨などに晒されることにより鉛イオンが土壌中へ溶出して人間を含む生物に及ぼす毒性が強く懸念される。これを解決するために、鉛の固定化技術も検討されているが、実用領域に達していない。そのため、有害な鉛イオンを排出しないようなハンダ接合及び電子機器の実装技術の確立が求められ、鉛を含まないハンダ(無鉛ハンダ)を用いた接合技術の実用化が必要とされている。このため、鉛を他の金属に代えたハンダや別の金属の組み合わせによるハンダの使用が検討されている(例えば、下記の特許文献1、2等)。
特許2805595号公報 特開平10−58190号公報
ところが、無鉛ハンダにおいては、汎用化を阻害する課題が多い。具体的には、無鉛ハンダとして提案されている錫−銀合金のハンダは、銀自身が貴金属であり高価なため、汎用製品として多量の使用は困難である。更に、排出する銀イオンの毒性から一部の国(州)では銀の使用が規制されている。また、大部分の無鉛ハンダは合金としての融点が高いため、ハンダ付け温度を上昇せざるをえず、熱硬化性基板の耐熱温度との関係から、具体的な実装技術に大きな困難さをもたらしている。つまり、母材との濡れ性が著しく劣り満足な接合性を発揮しなかったり、溶融温度が高いために接合する電子部品等を損傷し易いなどの問題を解消する必要がある。
また、スクリーン印刷を用いて行うソルダーペーストについても、鉛フリーのものが強く望まれており、近年、技術改良が進められて、無鉛ハンダ、例えば、錫−銀−ビスマスなどでソルダーペーストが実用領域に達したと言われているが、錫−鉛共晶ハンダと同レベルの融点を持つ錫−亜鉛共晶ハンダでは汎用化は難しいと言われている。
本発明は、上述した廃棄物中の鉛による環境問題を解決し、電子機器の実装時の作業性と接合性能の両立を実現可能な鉛フリーのハンダ付け技術を確立することを目的とする。
又、本発明は、従来の錫−鉛合金ハンダのソルダーペーストの代替物として、錫−亜鉛合金ハンダによるハンダ接合用フラックス及び実用に適した錫−亜鉛合金ハンダのソルダーペーストを汎用可能なレベルで提供することを目的とする。
本願発明者は、錫−亜鉛合金ハンダのソルダーペーストを調製するために混合するフラックス、又は、錫−亜鉛合金ハンダで接合する際に予め塗布使用するフラックスにカロチノイド化合物を添加することにより、リフロー時及びフロー時に特殊な作業環境を要したり、熱硬化性基板を損なうような温度での加熱が必要となるという問題を解消できることを見出した。
本発明の一態様によれば、無鉛ハンダ接合用フラックスは、カロチノイド化合物を含有することを要旨とする。
又、本発明の一態様によれば、ソルダーペーストは、上記の無鉛ハンダ接合用フラックスと、錫−亜鉛合金ハンダ粉末とを含有することを要旨とする。
本発明によれば、カロチノイド化合物の配合により、保存性が良く、錫−亜鉛ハンダによる接合を良好に形成することができるソルダーペーストが提供される。又、錫−亜鉛ハンダによる接合を形成する際に用いることによりハンダを活性化して良好な濡れ性を発現させるフラックスが提供される。従って、製造業で広く用いられる接合材料の鉛フリー化を促進することができ、産業上及び環境対策上極めて有用である。
ハンダ接合に用いるソルダーペーストにおけるフラックスの役割は、化学的には、ハンダ粉末表面及びハンダ付けする部材表面の自然酸化膜の除去及び清浄化並びにリフロー工程中の再酸化防止があり、機械的には、接合形成までの間ハンダ付けする部材同士を支持し仮固定する役割がある。従って、基本的には、金属酸化物を溶解、分解又は還元して金属表面を清浄化する成分(活性剤)とバインダー成分(粘結剤)とがソルダーペースト用フラックスの必須成分となる。但し、フロー型のハンダ付けに用いるフラックスの場合はバインダー成分は必須ではない。このようなフラックスは、化学作用及び機械的作用を効率よく発現させるべく必要に応じて種々の物質を配合して構成される。
一般的には、フラックスを構成する主成分は、ハンダ粉末及びハンダ付けする部材表面を被覆する樹脂で、例えば、アビエチン酸を主成分とするロジン系樹脂(松脂)や、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が用いられる。ロジン系樹脂は、フラックスの機械的作用(バインダー成分としての作用)だけでなく化学的な作用(活性剤としての作用)も担う。このような樹脂成分に加えて、清浄力等の化学的作用を補いハンダの接合性を向上させるための活性剤、活性剤の作用を補助する補助活性剤、ペーストとしての印刷性などを保持するためのチキソ剤、これらを溶解、混合させるための溶剤等を必要に応じて適宜取捨選択して配合することによりフラックスが調製される。
錫−鉛合金ハンダ用のフラックスを錫−亜鉛合金ハンダに適用してソルダーペーストを調製すると、経時後に著しい増粘が起こり硬化し易い。これを防ぐためには、酸性度の高い物質の添加量を減少させることが有効であるが、これによって清浄力の低下によるハンダの濡れの不足をも生じる。このように、ハンダ組成が異なると、それに合わせてフラックスの配合を適正化する必要があり、特に、酸化性の強い亜鉛を含有するハンダの場合には配合のバランスを調整するのが極めて難しい。
そこで、本発明は、カロチノイド化合物を配合したフラックスを提案するもので、これを用いて錫−亜鉛ハンダのソルダーペーストを調製すると、活性酸素種や有機又は無機過酸化物などによるフラックスの劣化及びハンダの濡れの低下を抑制することができるので、長期間安定にペースト状態が維持され、良好なハンダ接合を形成することができる。
また、フラックスを母材(ハンダ付けする部材)に予め塗布してハンダで接合を行う(フロー)方法では、カロチノイド化合物を配合したフラックスを用いると、錫−亜鉛ハンダの欠点である母材に対する濡れ性を改善し、フラックス及びハンダ表面の酸化を防止することにより確実なハンダ付けが可能になる。
上記の有効性は、錫−亜鉛ハンダ以外の無鉛合金ハンダについても当然発揮される。
無鉛ハンダでは、概して高い温度(例えば錫−銀−銅ハンダでは約240℃以上)で接合する必要があるが、本発明によれば、錫−鉛共晶ハンダに極めて近い融点を有する錫−亜鉛ハンダを用いた接合が簡易になる。これにより、電子機器から有害な鉛の排除を促進することができるので、電子部品のリサイクルが安全になり、電子部品が廃棄された場合であっても土壌中に有害な鉛イオンを排出することがなくなる。更に、電子部品実装上の作業環境も改善され、産業上及び環境対策上極めて有用である。
(本発明に使用されるカロチノイド化合物)
カロチノイド化合物は、動植物に含まれる黄色〜赤色の色素で、共役二重結合を含む脂肪族又は脂環式のポリエン化合物であり、抗酸化物質である。カロチノイド化合物には以下の化合物がある。
β−カロチンは、人参などに含まれるビタミンAの前駆体であり、体内でビタミンAに変化する。ビタミンA自体は抗酸化機能は比較的小さいが、前駆体のβ−カロチンは抗酸化機能が大きい。β−カロチンには、α−カロチン、γ−カロチン、δ−カリチンなどの異性体があり、β−カロチン同様に使用できる。
リコピン(リコペン)は、トマト、スイカ、南瓜に含まれる抗酸化物質である。
アスタキサンチンは、鮭、海老、蟹、鯛などに含まれる抗酸化物質である。
フコキサンチンは、海藻中に含まれる抗酸化物質である。
ルティンは、ほうれん草、とうもろこしに含まれる抗酸化物質である。
カプサンチンは、唐辛子に含まれる抗酸化物質である。
これらのカロチノイド化合物は、活性酸素との結合力が強く、ビタミンE(α−トコフェロール)、ビタミンC(L−アスコルビン酸)と同様の強い抗酸化作用を有する。特に、活性酸素のスカベンジャーとしての強い作用を有しており、カテキン類よりも優れている。
カロチノイド化合物の抗酸化性は、アミノ酸やビタミン類と併用することにより相乗的に増大し、本発明のフラックスにおいてはこれらをカロチノイド化合物と併用することができる。アミノ酸の例としてはL−メチオニンなどが挙げられ、ビタミン類としてはビタミンC、ビタミンEなどが挙げられる。ビタミンD、ビタミンKなどもこれらに準じた作用を有している。
(カロチノイド化合物の作用)
活性な金属種は、ソルダーペースト中において触媒として作用してフラックス中の有機成分の重合反応を引き起こし、フラックスの粘度を増大させる性質がある。しかし、カロチノイド化合物、及び、これと併用されるアミノ酸並びにビタミン類は、金属に対して配位的に作用する機能を有し、その抗酸化性によりハンダ粉末表面の酸化を抑制し、ハンダの金属酸化物から溶出する金属種の活性を低下させて、金属種によるフラックス成分の重合反応の進行を抑制することができる。従って、非加熱状態でのソルダーペーストの安定性が向上する。この作用には、カロチノイド化合物の共役二重結合が関与すると考えられる。
又、金属種の酸化は温度上昇によって急激に進行し易くなり、しかも、加熱状態においては、大気中の活性酸素種によるハンダの直接酸化反応、及び、活性酸素種によるフラックス中の有機又は無機成分の酸化により生成する過酸化物によるハンダの間接的酸化反応が引き起こされるが、カロチノイド化合物は、その抗酸化作用により、上記のような直接酸化及び間接的酸化を抑制することができる。従って、ハンダ表面は、カロチノイド化合物が分解するまで保護され、加熱による酸化促進が防止される。
本発明に係るソルダーペーストをハンダの溶融温度まで加熱すると、フラックスが気化・分解し、カロチノイド化合物は分解する。活性剤成分の機能は、抗酸化成分を含む他のフラックス成分より耐熱的に作用し、フラックスの活性剤がハンダ粉末表面の金属と反応して金属表面の浄化が進行して活性化され、ハンダの本来の濡れ性が発揮されて良好なハンダ付けが行われる。併用することができるアミノ酸及びビタミン類も同様な経過に従って、ハンダ付けの進行に貢献する。
錫−亜鉛合金ハンダにおいては、亜鉛が活性な金属種であり、亜鉛は、錫−亜鉛の系においてハンダ表面に濃度の高い薄層を形成する性質がある。つまり、亜鉛は、酸化され易いだけでなく最も酸化を被る表面に集中する性質があるので、亜鉛の酸化及びフラックス成分への作用を抑制し得ることは極めて重要であり、亜鉛含有ハンダによる接合形成にとってカロチノイド化合物の作用は非常に有効である。
(フラックス及びソルダーペースト)
本発明に係るフラックスは、フラックス主材にカロチノイド化合物を配合することにより得られ、フラックス主材には、一般に用いられているフラックス又はその含有成分(前述した活性剤、補助活性剤等)を適宜取捨選択して使用できる。例えば、重合松脂(ロジン)、有機酸、有機アミン化合物、グリセリン、エチレングリコール、各種アルコール、水などをフラックス主材の成分として使用することができる。
又、本発明のソルダーペーストは、ハンダ粉末を調製し、別途調製された上記フラックス、つまり、カロチノイド化合物を含有するフラックスと混合することにより調製される。ハンダ粉末は、溶融したハンダ合金を粒状化して調製され、例えば、錫−亜鉛ハンダ粉末は、溶融した錫−亜鉛合金を調製して粒状化する。上記ソルダーペーストをハンダ付けする部材に塗布してリフロー(加熱)することにより、フラックスが反応、気化又は分解し、溶融したハンダによって接合が形成される。カロチノイド化合物の作用を考慮したソルダーペーストの製造プロセスの有効な一態様として、ハンダ粉末表面にカロチノイド化合物を接触させて馴染ませた後にフラックス主材又はカロチノイド含有フラックスと混合するという形態がある。
本発明のカロチノイド化合物を配合したフラックスは、ソルダーペーストを調製することなく、ハンダ付けする接合する部材表面にそのまま塗布して部材表面を活性化させるために用いてもよい。フラックスを塗布した部材上にボール形ハンダや粒状ハンダ、ハンダペレット等を載せてフロー接合することも可能である。また、線ハンダ、ボール形ハンダ、ハンダペレット等のハンダ材表面にフラックスを塗布してハンダ付けに用いてもよい。この場合、接合する部材を保持するためのペースト様の物性は必須でなく、バインダー(粘結剤)機能を有する成分を用いる必要がないが、金属表面にフラックスを保持するためにはペースト状であることが好ましい。更に、本発明のフラックスは、ハンダ材の保護剤として用いることもできる。
(フラックスの配合)
フラックスの主成分として、アビエチン酸を主成分とするロジン系樹脂(松脂)や熱可塑性合成樹脂をバインダー成分として用いることができ、ロジン系樹脂の具体例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン及びこれらから得られる変性ロジン、ロジンエステル等がある。熱可塑性合成樹脂としては、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂などが挙げられる。ロジン系樹脂は、活性剤としても機能する。フラックス中の樹脂の含有量はおよそ10〜60質量%が好ましい。
金属酸化物の溶解、分解又は還元により金属表面を清浄化しハンダの接合性を向上させるための活性剤として、ロジン系樹脂以外に、アミン類のハロゲン化水素酸塩等を用いることができる。フラックス中の活性剤の含有量はおよそ0〜10質量%が好ましい。
活性剤の作用を補助する補助活性剤のフラックス中の含有量はおよそ0.1〜20質量%が好ましい。
ソルダーペーストの印刷性を保持するためのチキソ剤として、ステアリン酸アミド等を用いることができる。フラックス中のチキソ剤の含有量はおよそ0.1〜10質量%が好ましい。
上記成分を溶解、混合させるための溶剤として、グリセイン、イソプロパノール、ブタノール等を用いることができる。フラックス中の溶剤の含有量はおよそ5〜60質量%が好ましい。
ハンダに光沢を付与するためには有機酸が添加される。例えば、クエン酸、乳酸、アジピン酸、ステアリン酸などがある。このような有機酸の使用量はフラックスの0.5〜30質量%程度が好ましい。
フラックスのpHを調整してダレを防止するためや良好な丸形のハンダ接合を形成するためには有機アミン化合物が添加される。一般的に良く用いられるものとしては、例えば、モノエタノールアミン、ステアリルアミン、ジフェニルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、アニリン並びにこれらの塩が使用される。このような有機アミン化合物の使用量は上記有機酸や活性剤等の含有量にも依るが、概してフラックスの0.5〜30質量%程度が好ましい。
上記成分を適宜取捨選択して配合されるフラックス主材にカロチノイド化合物が添加されたものが本発明のフラックスである。
カロチノイド化合物は、フラックス中に1ppm〜5mass%程度、好ましくは3ppm〜2mass%程度となるように添加する。アミノ酸又はビタミン類を併用する場合、アミノ酸の添加量は100ppm〜5mass%程度、ビタミン類の添加量は100ppm〜10mass%程度が好ましい。アミノ酸及びビタミン類の両方を用いてもよい。これらの添加物は、常法に従って、フラックスを調製する際に他の配合成分と共に添加して混合する。
(ソルダーペーストの調製及び利用)
上記フラックスを、粒径4〜100μm程度、好ましくは10〜50μm程度の粒状に調製したペースト用ハンダ粉末と混合することにより、性能の優れたソルダーペーストが調製される。ハンダ粉末とフラックスとは通常9:1前後の割合(質量比)で混合される。ハンダ付けすると金属上に塗布されたソルダーペーストはリフローにより容積が1/2程度に減少する。ハンダ付けする部材へソルダーペーストを塗布する量は、150〜200μm程度の厚みとなる量が好ましい。
無鉛ハンダには、錫−銀−銅三元系合金、錫−銅合金系、錫−ビスマス合金系、錫−亜鉛合金系などがあり、いずれも使用できるが、これらの中でも、融点が錫−鉛共晶合金に近い錫−亜鉛合金系は、実装上、特に好ましい。本発明において、錫−亜鉛合金系ハンダには、銀、銅、ビスマス、ニッケル、アルミニウム、マグシウム、インジウムなどを微量含ませることができる。
本発明のカロチノイド化合物を添加したフラックスは、錫−亜鉛合金系ハンダのソルダーペーストを製造するのに特に適している。錫−亜鉛共晶組成の合金粒子に限らず、共晶組成以外の合金粒子でもよく、錫及び亜鉛それぞれの単体粉末の混合物であってもよい。特に、錫及び亜鉛の単体粉末を共晶組成で混合したものは特有な利点を有する。即ち、リフロー操作において加熱温度が共晶温度に到達した時、共晶組成のハンダ粉末粒子は外側全面で溶融し始めるのに比べて、錫及び亜鉛の単体粒子は錫粒子と亜鉛粒子の接触界面から溶融し始め、空気酸化を受け易い液体がハンダ粉末の塊の内部に生じ、ハンダの酸化による濡れ性の低下を抑制できる。更に、亜鉛が酸化を受け易いことを考慮すると、亜鉛が錫によって被覆され、ハンダ粉末全体の組成が共晶組成になるようなハンダ粉末が好ましい形態となる。このような複層構造のハンダ粉末は、金属塊の圧延及び圧搾切断工程を経て簡易に製造することが可能となる。
ハンダの酸化によって溶融温度が高くなり濡れ性も著しく低下するので、使用するハンダ粉末は、酸素及び酸化物の含有量が少ないものが望ましい。使用するハンダ粉末に含有する酸素または酸化物が多いと、ハンダ粉末の表面はフラックスによって活性化されて溶融しても、内部は酸化物により溶融温度が高くなるため溶融せず、リフロー温度を高めなければならない。この結果、液層表面での空気酸化もより進行しやすくなり、強いフラックスを用いても十分な濡れ性が得られなくなる。錫及び亜鉛以外の不可避の金属不純物が0.1mass%以下で、含有酸素濃度が1,000ppm以下、好ましくは100ppm以下となるように精製した錫−亜鉛ハンダは濡れ性が良く、フラックスとして活性の高い物質を必要としない。
上述に従って調製したソルダーペーストをハンダ付けする金属部材上にスクリーン印刷方式の技術を用いて塗布した後に、接合する金属部材を対向させて接触し、リフローを行う。リフロー工程において、100〜170℃程度の温度に加熱することにより、上述のフラックスがハンダ粉末の表面を活性化し、ハンダ粉末と金属部材表面とが接触する。続いてハンダが溶融するリフロー温度に加熱することによりハンダ粉末が溶融する。この後、冷却することにより金属部材はハンダによって接合される。リフロー温度に加熱する時間は200℃以下で30秒以下、240℃では10秒以下であることが好ましく、必要以上に加熱を続けることはハンダの酸化が進行し易い。
リフロー工程は、非酸化性雰囲気で行うのが望ましいが、大気雰囲気中で行うことも可能である。非酸化性雰囲気でのリフローでは、ハンダ粉末の酸化防止により溶融状態での錫−亜鉛合金の切れあるいは低粘性が維持され、高密度実装基板の接合のような緻密な結合の形成にも対応が容易である。
本発明のソルダーペーストは、銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム、SUSステンレス鋼などの単種の金属部材だけでなく、合金材及び複合金属材の部材の接合についても適用可能である。また、精細なハンダ接合にも十分対応でき、狭い間隙を有する細線状の金属部材では線幅及び線間隙が0.3mm程度の部材のハンダ接合に対応できる。従って、基板の実装や各種電気電子部品の接合のためのハンダ接合に使用することができる。電気電子部品の例としては、半導体、パーソナルコンピューターなどにに内蔵されるハードディスク、液晶パネルの電気回路、ICカード、パーソナルコンピューターやプリンターの接続に用いられるケーブルコネクター、通信用ケーブルに用いられる光コネクター、自動車のラジエーター等が挙げられる。
基板の実装形態には、片面表面実装、両面表面実装、両面表面実装リード付き部品搭載、片面表面実装リード付き部品搭載、リードスルー実装などが挙げられるが、いずれにおいても本発明の接合材を使用することができる。また、実装部品としては、受動部品としてのセラミックコンデンサ、インダクタ、ジャンパ、トランジスタ、ダイオード、アルミ電解コンデンサ、タンタル半固定抵抗、トリマー、コイル等が挙げられる。能動部品としては、IC、SI等が代表例である。パッケージ形状としては、SOIC,SOP,QIP,QFP,PLCC、LCC、SOJ、MSP,PC−BGA,CSP、PLC,MCM,OE−MCM及び複数チップを重ねる高密度チップ等が挙げられる。
接合する部材の材質に応じて、部材に予めプリコートを施してもよく、プリコートの組成やプリコート方法を適宜選択することができる。
リフロー工程において、還元性雰囲気を用いると更に効果的である。還元性雰囲気としては、窒素等の不活性ガスに還元性を有するガス状物質を適宜含有させた雰囲気が挙げられる。還元性を有するガス状物質には、水素や、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール蒸気、燐酸、酢酸等の酸蒸気等が挙げられる。
本発明のソルダーペーストは、現状の電気・電子組み立て品製造工程において用いられているソルダーペースト用の装置及び設備を使用してハンダ付けを行うことができるので、汎用性が高く、錫−亜鉛合金ハンダによる部品の鉛フリー接合を推進する上で極めて有用である。又、組成がシンプルな錫−亜鉛二元合金ハンダを用いることにより接合不良部品及び使用済み部品の回収、リサイクルにおける取扱いが簡易になるので、金属の回収・再利用にも有利である。
以下、実施例により本発明の詳細を説明する。
(試験A) 金属錫91.2質量部及び金属亜鉛8.8質量部を減圧下で加熱溶融して、組成が錫91.1mass%以上、亜鉛8.8mass%、その他微量元素総量0.1mass%未満で含有酸素10ppmの錫−亜鉛ハンダを調製した。このハンダを窒素雰囲気中で粒状化し、粒径分布が20〜40μmのハンダ粉末を得た。他方、重合ロジン(松脂)54質量部、溶剤としてヘキシレングリコール35質量部、硬化ヒマシ油(チキソ剤)5質量部、クエン酸4質量部、エチルアミン塩酸塩1質量部からなるフラックス主材を準備した。このフラックス主材をフラックスとして、フラックス11質量部に前述のハンダ粉末89質量部を添加し、窒素雰囲気中で攪拌混合してソルダーペーストを調製した。
(試験B) 試験Aで調製したフラックス主材にβ−カロチンを添加してβ−カロチン含有量が0.2mass%のフラックスを調製し、このフラックスと試験Aで調製した錫−亜鉛ハンダ粉末とを用いて試験Aと同じ質量比で窒素雰囲気中て攪拌混合してソルダーペーストを調製した。
(試験C) 試験Aで調製したフラックス主材にβ−カロチン及びビタミンEを添加してβ−カロチン含有量が0.2mass%、ビタミンE含有量が1.0mass%のフラックスを調製し、このフラックスと試験Aで調製した錫−亜鉛ハンダ粉末とを用いて試験Aと同じ質量比で窒素雰囲気中で攪拌混合してソルダーペーストを調製した。
(試験D) 試験Aで調製したフラックス主材にリコピンを添加してリコピン含有量が0.15mass%のフラックスを調製し、このフラックスと試験Aで調製した錫−亜鉛ハンダ粉末とを用いて試験Aと同じ質量比で窒素雰囲気中で攪拌混合してソルダーペーストを調製した。
(試験E) 試験Aで調製したフラックス主材にルティンを添加してルティン含有量が0.2mass%のフラックスを調製し、このフラックスと試験Aで調製した錫−亜鉛ハンダ粉末とを用いて試験Aと同じ質量比で窒素雰囲気中で攪拌混合してソルダーペーストを調製した。
(試験F) 試験Aで調製したフラックス主材にアスタキサンチンを添加してアスタキサンチン含有量が0.15mass%のフラックスを調製し、このフラックスと試験Aで調製した錫−亜鉛ハンダ粉末とを用いて試験Aと同じ質量比で窒素雰囲気中で攪拌混合してソルダーペーストを調製した。
(ソルダーペーストの評価) 試験A〜Fのソルダーペーストの各々について、粘度及びJIS Z 3197に準じたハンダ付けにおける拡がり率を測定した。残りのソルダーペーストは0〜10℃に設定した冷蔵庫中で1ヶ月保存した後に、同様に粘度及びハンダ付けにおける拡がり率を測定した。これらの測定値から、濡れ保持性の目安として拡がり変化率を、保存性の目安として粘度変化率を求めた。拡がり変化率(%)は、[100×(保存後の拡がり率−初期拡がり率)/初期拡がり率]により、粘度変化率(%)は、[100×(保存後の粘度−初期粘度)/初期粘度]により算出し、各々、数値が1%未満をA、1%以上5%未満をB、5%以上をCとして評価した。この結果を表1に示す。
(表1)
カロチノイドの添加効果
添加物 初期拡がり率 初期粘度 濡れ保存性 保存性
(%) (Pa・s)
試験A なし 61 440 C C
試験B β−カロチン 79 240 B A
試験C β−カロチン 83 205 B A
α−トコフェロール
試験D リコピン 78 250 B A
試験E ルティン 77 242 B A
試験F アスタキサンチン 78 239 B A
(試験a) 金属錫91.1質量部及び金属亜鉛8.8質量部を減圧下で加熱して、組成が錫91.1mass%、亜鉛8.8mass%、その他微量元素総量が0.1mass%未満で含酸素濃度が10ppm以下の錫−亜鉛ハンダを調製した。他方、尿素5mass%、ジエタノールアミン10mass%、トリエタノールアミン20mass%、水65mass%からなるフラックス主材を調製した。
(試験b) 試験aで調製したフラックス主材にβ−カロチンを添加してβ−カロチン含有量が0.5mass%のフラックスを調製した。
(試験c) 試験aで調製したフラックス主材にβ−カロチン及びビタミンCを添加してβ−カロチン含有量が0.5mass%、ビタミンC含有量が1.0mass%のフラックスを調製した。
(試験d) 試験aで調製したフラックス主材にカプサチンを添加してカプサンチン含有量が0.5mass%のフラックスを調製した。
(試験e) 試験aで調製したフラックス主材にフコキサンチンを添加してフコキサンチン含有量が0.5mass%のフラックスを調製した。
(フラックスの評価I) 銅製母板の上に試験a〜e各々のフラックス主材及びフラックスと試験aで調製した錫−亜鉛ハンダ片とを載せて、JIS法に従って、大気雰囲気の炉の中で220℃に加熱した後に濡れの目安となる拡がり率を測定した。この結果、拡がり率は試験cのフラックスを使用した場合が最も大きく(拡がり率=78%)、次いで試験b(75%)、試験d(73%)、試験e(72%)の順となり、カロチノイド化合物を添加しない試験aは最も小さい値(55%)を示した。この結果は、カロチノイド化合物であるβ−カロチン、カプサンチン又はフコキサンチンを添加したフラックスがいずれも錫−亜鉛ハンダの母材への濡れを改良する効果を示している。
(フラックスの評価II) 銅製母板の上に試験a〜e各々のフラックス主材及びフラックスを銅製母材に予め塗布し、大気雰囲気中で220℃に加熱しながら試験aで調製した錫−亜鉛ハンダ片を接触させてハンダ付けした後に、錘を取り付けて温度80℃でクリープテストを行って、ハンダ付け部分が破壊するまでの時間(破壊時間)を測定した。試験aにおける破壊時間を1とすると、各試験における破壊時間は、試験b(3.0)、試験c(2.7)、試験d(2.9)、試験e(2.7)であった。この結果は、カロチノイド化合物を添加したフラックスを用いた場合に錫−亜鉛ハンダの母材に対する十分な接合強度を示しており、ハンダの接合不良の発生を抑制することを示している。

Claims (7)

  1. カロチノイド化合物を含有することを特徴とする無鉛ハンダ接合用フラックス。
  2. 金属酸化物を溶解、分解又は還元する活性剤を含有し、前記カロチノイド化合物は、β−カロチン、ルティン、リコピン、カプサチン、フコキサンチン及びアスタキサンチンからなる群より選ばれる化合物である請求項1記載の無鉛ハンダ接合用フラックス。
  3. 更に、メチオニン、ビタミンC及びビタミンEからなる群より選ばれる化合物を含有し、前記無鉛ハンダ接合は錫−亜鉛合金ハンダによる接合である請求項1又は2記載のハンダ接合用フラックス。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の無鉛ハンダ接合用フラックスと、錫−亜鉛合金ハンダ粉末とを含有することを特徴とするソルダーペースト。
  5. 前記錫−亜鉛合金ハンダ粉末は、錫−亜鉛共晶合金ハンダ粉末である請求項4に記載のソルダーペースト。
  6. 前記錫−亜鉛合金ハンダ粉末は、ビスマス、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム及びインジウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属を含有する請求項4記載のソルダーペースト。
  7. 前記無鉛ハンダ接合用フラックスは、バインダー成分、補助活性剤、チキソ剤及び溶剤を含有する請求項4〜6のいずれかに記載のソルダーペースト。
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