JP2005018534A - 信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体 - Google Patents

信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】現実世界の信号により近似した画像等を得る。
【解決手段】動き量vで水平方向に動いているオブジェクトが撮像され、オブジェクトがボケた画像が信号処理装置に入力される。定常性設定部11012は、オブジェクトの動き量vを定常性情報として実世界推定部11013に供給する。実世界推定部11013では、入力画像の画素値とボケがない画像の画素値との関係を、動き量vに応じてモデル化したモデル方程式と、ボケがない画像の画素間を拘束する拘束条件の式とが生成される。また、実世界推定部11013は、各画素のアクティビティを検出し、そのアクティビティに応じた重みをモデル方程式および拘束条件の式の一部に設定し、重み付けされたモデル方程式および拘束条件の式で構成される正規方程式を演算することにより、ボケがない画像を推定し、画像生成部11014に供給する。
【選択図】 図140

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体に関し、特に、現実世界の信号により近似した画像等を得ることができるようにする信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
実世界(現実世界)における事象をセンサで検出し、センサが出力するサンプリングデータを処理する技術が広く利用されている。例えば、実世界をイメージセンサで撮像し、画像データであるサンプリングデータを処理する画像処理技術が広く利用されている。
【0003】
また、第1の次元を有する現実世界の信号である第1の信号をセンサによって検出することにより得た、第1の次元に比較し次元が少ない第2の次元を有し、第1の信号に対する歪を含む第2の信号を取得し、第2の信号に基づく信号処理を行うことにより、第2の信号に比して歪の軽減された第3の信号を生成するようにしているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−250119号公報。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来においては、現実世界の信号の定常性を考慮した信号処理が行われていなかったため、現実世界の信号により近似した画像等を得ることが困難であることがあった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、現実世界の信号により近似した画像等を得ることができるようにするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の信号処理装置は、それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定する処理領域設定手段と、画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定手段と、処理領域内の各画素の画素値は、オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、処理領域内の各画素の画素値と、動きボケが生じていない各画素の画素値との関係をモデル化するモデル生成手段と、モデル生成手段により生成されたモデルに対して、処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式と、動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式とにより正規方程式を生成する正規方程式生成手段と、処理領域内の各画素に対応するアクティビティを検出するアクティビティ検出手段と、アクティビティ検出手段による検出結果に応じて、第1及び第2の方程式の一部に対する重みを変更する重み変更手段と、正規方程式生成手段により生成され、重み変更手段により重みが変更された正規方程式を演算することにより動きボケが生じていない各画素の画素値を推定する実世界推定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
重み変更手段には、画像データの処理領域内の注目画素に対応する、アクティビティが所定の閾値以上であるとき、注目画素に対応する、第1及び第2の方程式の一部に対する重みを0に変更させるようにすることができる。
【0009】
本発明の信号処理方法は、それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定する処理領域設定ステップと、画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、処理領域内の各画素の画素値は、オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、処理領域内の各画素の画素値と、動きボケが生じていない各画素の画素値との関係をモデル化するモデル生成ステップと、モデル生成ステップの処理により生成されたモデルに対して、処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式と、動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式とにより正規方程式を生成する正規方程式生成ステップと、処理領域内の各画素に対応するアクティビティを検出するアクティビティ検出ステップと、アクティビティ検出ステップの処理による検出結果に応じて、第1及び第2の方程式の一部に対する重みを変更する重み変更ステップと、正規方程式生成ステップにより生成され、重み変更ステップにより重みが変更された正規方程式を演算することにより動きボケが生じていない各画素の画素値を推定する実世界推定ステップとを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の記録媒体のプログラムは、それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定する処理領域設定ステップと、画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、処理領域内の各画素の画素値は、オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、処理領域内の各画素の画素値と、動きボケが生じていない各画素の画素値との関係をモデル化するモデル生成ステップと、モデル生成ステップの処理により生成されたモデルに対して、処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式と、動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式とにより正規方程式を生成する正規方程式生成ステップと、処理領域内の各画素に対応するアクティビティを検出するアクティビティ検出ステップと、アクティビティ検出ステップの処理による検出結果に応じて、第1及び第2の方程式の一部に対する重みを変更する重み変更ステップと、正規方程式生成ステップにより生成され、重み変更ステップにより重みが変更された正規方程式を演算することにより動きボケが生じていない各画素の画素値を推定する実世界推定ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のプログラムは、それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定する処理領域設定ステップと、画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、処理領域内の各画素の画素値は、オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、処理領域内の各画素の画素値と、動きボケが生じていない各画素の画素値との関係をモデル化するモデル生成ステップと、モデル生成ステップの処理により生成されたモデルに対して、処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式と、動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式とにより正規方程式を生成する正規方程式生成ステップと、処理領域内の各画素に対応するアクティビティを検出するアクティビティ検出ステップと、アクティビティ検出ステップの処理による検出結果に応じて、第1及び第2の方程式の一部に対する重みを変更する重み変更ステップと、正規方程式生成ステップにより生成され、重み変更ステップにより重みが変更された正規方程式を演算することにより動きボケが生じていない各画素の画素値を推定する実世界推定ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域が設定され、画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する画像データ内のオブジェクトの動きベクトルが設定され、処理領域内の各画素の画素値は、オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、処理領域内の各画素の画素値と、動きボケが生じていない各画素の画素値との関係がモデル化され、そのモデルに対して、処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式と、動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式とにより正規方程式が生成され、処理領域内の各画素に対応するアクティビティが検出され、その検出結果に応じて、第1及び第2の方程式の一部に対する重みが変更され、正規方程式生成手段により生成され、重み変更手段により重みが変更された正規方程式を演算することにより動きボケが生じていない各画素の画素値が推定される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、請求項に記載の構成要件と、発明の実施の形態における具体例との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、請求項に記載されている発明をサポートする具体例が、発明の実施の形態に記載されていることを確認するためのものである。従って、発明の実施の形態中には記載されているが、構成要件に対応するものとして、ここには記載されていない具体例があったとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、具体例が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その具体例が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0014】
さらに、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明が、請求項に全て記載されていることを意味するものではない。換言すれば、この記載は、発明の実施の形態に記載されている具体例に対応する発明であって、この出願の請求項には記載されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により追加される発明の存在を否定するものではない。
【0015】
請求項1に記載の信号処理装置は、それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定する処理領域設定手段(例えば、図113の処理領域設定部15011)と、前記画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する前記画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定手段(例えば、図113の定常性設定部15012)と、前記処理領域内の各画素の画素値は、前記オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が前記動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、前記処理領域内の各画素の画素値と、前記動きボケが生じていない各画素の画素値との関係をモデル化するモデル生成手段(例えば、図113のモデル生成部15021)と、前記モデル生成手段により生成されたモデルに対して、前記処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式(例えば、式(141)で表されるモデル方程式)と、前記動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式(例えば、式(145)で表される拘束条件式)とにより、正規方程式を生成する正規方程式生成手段(例えば、図113の方程式生成部15022)と、前記正規方程式生成手段により生成された前記正規方程式を演算することにより、前記動きボケが生じていない各画素の画素値を推定する実世界推定手段(例えば、図113の実世界波形推定部15023)とを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の信号処理方法、請求項4に記載のプログラム、請求項5に記載の記録媒体は、それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定する処理領域設定ステップ(例えば、図114のステップS15006)と、前記画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する前記画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップ(例えば、図114のステップS15007)と、前記処理領域内の各画素の画素値は、前記オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が前記動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、前記処理領域内の各画素の画素値と、前記動きボケが生じていない各画素の画素値との関係をモデル化するモデル生成ステップ(例えば、図130のステップS15033)と、前記モデル生成ステップの処理により生成されたモデルに対して、前記処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式と、前記動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式とにより、正規方程式を生成する正規方程式生成ステップ(例えば、図130のステップS15036)と、前記正規方程式生成ステップの処理により生成された前記正規方程式を演算することにより、前記動きボケが生じていない各画素の画素値を推定する実世界推定ステップ(例えば、図130のステップS15039)とを含むことを特徴とする。
【0017】
図1は、本発明の原理を表している。同図で示されるように、空間、時間、および質量の次元を有する実世界1の事象(現象)は、センサ2により取得され、データ化される。実世界1の事象とは、光(画像)、音声、圧力、温度、質量、濃度、明るさ/暗さ、またはにおいなどをいう。実世界1の事象は、時空間方向に分布している。例えば、実世界1の画像は、実世界1の光の強度の時空間方向の分布である。
【0018】
センサ2に注目すると、空間、時間、および質量の次元を有する実世界1の事象のうち、センサ2が取得可能な、実世界1の事象が、センサ2により、データ3に変換される。センサ2によって、実世界1の事象を示す情報が取得されるとも言える。
【0019】
すなわち、センサ2は、実世界1の事象を示す情報を、データ3に変換する。
空間、時間、および質量の次元を有する実世界1の事象(現象)を示す情報である信号がセンサ2により取得され、データ化されるとも言える。
【0020】
以下、実世界1における、画像、音声、圧力、温度、質量、濃度、明るさ/暗さ、またはにおいなどの事象の分布を、実世界1の事象を示す情報である信号とも称する。また、実世界1の事象を示す情報である信号を、単に、実世界1の信号とも称する。本明細書において、信号は、現象および事象を含み、送信側に意思がないものも含むものとする。
【0021】
センサ2から出力されるデータ3(検出信号)は、実世界1の事象を示す情報を、実世界1に比較して、より低い次元の時空間に射影して得られた情報である。例えば、動画像の画像データであるデータ3は、実世界1の3次元の空間方向および時間方向の画像が、2次元の空間方向、および時間方向からなる時空間に射影されて得られた情報である。また、例えば、データ3がデジタルデータであるとき、データ3は、サンプリングの単位に応じて、丸められている。データ3がアナログデータであるとき、データ3において、ダイナミックレンジに応じて、情報が圧縮されているか、またはリミッタなどにより、情報の一部が削除されている。
【0022】
このように、所定の次元を有する実世界1の事象を示す情報である信号をデータ3(検出信号)に射影することにより、実世界1の事象を示す情報の一部が欠落する。すなわち、センサ2が出力するデータ3において、実世界1の事象を示す情報の一部が欠落している。
【0023】
しかしながら、射影により実世界1の事象を示す情報の一部が欠落しているものの、データ3は、実世界1の事象(現象)を示す情報である信号を推定するための有意情報を含んでいる。
【0024】
本発明においては、実世界1の情報である信号を推定するための有意情報として、実世界1またはデータ3に含まれる定常性を有する情報を利用する。定常性は、新たに定義する概念である。
【0025】
ここで、実世界1に注目すると、実世界1の事象は、所定の次元の方向に一定の特徴を含む。例えば、実世界1の物体(有体物)において、空間方向または時間方向に、形状、模様、若しくは色彩などが連続するか、または形状、模様、若しくは色彩などのパターンが繰り返す。
【0026】
従って、実世界1の事象を示す情報には、所定の次元の方向に一定の特徴が含まれることになる。
【0027】
より具体的な例を挙げれば、糸、紐、またはロープなどの線状の物体は、長さ方向の任意の位置において、断面形状が同じであるという長さ方向、すなわち空間方向に一定の特徴を有する。長さ方向の任意の位置において、断面形状が同じであるという空間方向に一定の特徴は、線状の物体が長いという特徴から生じる。
【0028】
従って、線状の物体の画像は、長さ方向の任意の位置において、断面形状が同じであるという長さ方向、すなわち空間方向に一定の特徴を有している。
【0029】
また、空間方向に広がりを有する有体物である、単色の物体は、部位にかかわらず、同一の色を有するという空間方向に一定の特徴を有していると言える。
【0030】
同様に、空間方向に広がりを有する有体物である、単色の物体の画像は、部位にかかわらず、同一の色を有するという空間方向に一定の特徴を有している。
【0031】
このように、実世界1(現実世界)の事象は、所定の次元の方向に一定の特徴を有しているので、実世界1の信号は、所定の次元の方向に一定の特徴を有する。
【0032】
本明細書において、このような所定の次元の方向に一定の特徴を定常性と称する。実世界1(現実世界)の信号の定常性とは、実世界1(現実世界)の事象を示す信号が有している、所定の次元の方向に一定の特徴をいう。
【0033】
実世界1(現実世界)には、このような定常性が無数に存在する。
【0034】
次に、データ3に注目すると、データ3は、センサ2により、所定の次元を有する実世界1の事象を示す情報である信号が射影されたものであるので、実世界の信号の定常性に対応する定常性を含んでいる。データ3は、実世界の信号の定常性が射影された定常性を含んでいるとも言える。
【0035】
しかしながら、上述したように、センサ2が出力するデータ3において、実世界1の情報の一部が欠落しているので、データ3から、実世界1(現実世界)の信号に含まれる定常性の一部が欠落し得る。
【0036】
換言すれば、データ3は、データの定常性として、実世界1(現実世界)の信号の定常性の中の、少なくとも一部の定常性を含む。データの定常性とは、データ3が有している、所定の次元の方向に一定の特徴である。
【0037】
本発明においては、実世界1の事象を示す情報である信号を推定するための有意情報として、実世界1の信号の定常性、またはデータ3が有する、データの定常性が利用される。
【0038】
例えば、信号処理装置4においては、データの定常性を利用して、データ3を信号処理することで、欠落した、実世界1の事象を示す情報が生成される。
【0039】
なお、信号処理装置4においては、実世界1の事象を示す情報である信号の次元の、長さ(空間)、時間、および質量のうち、空間方向または時間方向の定常性が利用される。
【0040】
図1において、センサ2は、例えば、デジタルスチルカメラ、またはビデオカメラなどで構成され、実世界1の画像を撮像し、得られたデータ3である画像データを信号処理装置4に出力する。センサ2は、例えば、サーモグラフィ装置、または光弾性を利用した圧力センサなどとすることができる。
【0041】
信号処理装置4は、例えば、パーソナルコンピュータなどで構成され、データ3を対象とした信号処理を行う。
【0042】
信号処理装置4は、例えば、図2で示されるように構成される。CPU(Central Processing Unit)21は、ROM(Read Only Memory)22、または記憶部28に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)23には、CPU21が実行するプログラムやデータなどが適宜記憶される。これらのCPU21、ROM22、およびRAM23は、バス24により相互に接続されている。
【0043】
CPU21にはまた、バス24を介して入出力インタフェース25が接続されている。入出力インタフェース25には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部26、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部27が接続されている。CPU21は、入力部26から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU21は、処理の結果得られた画像や音声等を出力部27に出力する。
【0044】
入出力インタフェース25に接続されている記憶部28は、例えばハードディスクなどで構成され、CPU21が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。通信部29は、インターネット、その他のネットワークを介して外部の装置と通信する。この例の場合、通信部29はセンサ2の出力するデータ3を取り込む取得部として働く。
【0045】
また、通信部29を介してプログラムを取得し、記憶部28に記憶してもよい。
【0046】
入出力インタフェース25に接続されているドライブ30は、磁気ディスク51、光ディスク52、光磁気ディスク53、或いは半導体メモリ54などが装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータなどを取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記憶部28に転送され、記憶される。
【0047】
図3は、信号処理装置4を示すブロック図である。
【0048】
なお、信号処理装置4の各機能をハードウェアで実現するか、ソフトウェアで実現するかは問わない。つまり、本明細書の各ブロック図は、ハードウェアのブロック図と考えても、ソフトウェアによる機能ブロック図と考えても良い。
【0049】
図3に構成を示す信号処理装置4においては、データ3の一例である画像データが入力され、入力された画像データ(入力画像)からデータの定常性が検出される。次に、検出されたデータの定常性から、センサ2により取得された実世界1の信号が推定される。そして、推定された実世界1の信号を基に、画像が生成され、生成された画像(出力画像)が出力される。すなわち、図3は、画像処理装置である信号処理装置4の構成を示す図である。
【0050】
信号処理装置4に入力された入力画像(データ3の一例である画像データ)は、データ定常性検出部101および実世界推定部102に供給される。
【0051】
データ定常性検出部101は、入力画像からデータの定常性を検出して、検出した定常性を示すデータ定常性情報を実世界推定部102および画像生成部103に供給する。データ定常性情報は、例えば、入力画像における、データの定常性を有する画素の領域の位置、データの定常性を有する画素の領域の方向(時間方向および空間方向の角度または傾き)、またはデータの定常性を有する画素の領域の長さなどを含む。データ定常性検出部101の構成の詳細は、後述する。
【0052】
実世界推定部102は、入力画像、およびデータ定常性検出部101から供給されたデータ定常性情報を基に、実世界1の信号を推定する。すなわち、実世界推定部102は、入力画像が取得されたときセンサ2に入射された、実世界の信号である画像を推定する。実世界推定部102は、実世界1の信号の推定の結果を示す実世界推定情報を画像生成部103に供給する。実世界推定部102の構成の詳細は、後述する。
【0053】
画像生成部103は、実世界推定部102から供給された、推定された実世界1の信号を示す実世界推定情報を基に、実世界1の信号により近似した信号を生成して、生成した信号を出力する。または、画像生成部103は、データ定常性検出部101から供給されたデータ定常性情報、および実世界推定部102から供給された、推定された実世界1の信号を示す実世界推定情報を基に、実世界1の信号により近似した信号を生成して、生成した信号を出力する。
【0054】
すなわち、画像生成部103は、実世界推定情報を基に、実世界1の画像により近似した画像を生成して、生成した画像を出力画像として出力する。または、画像生成部103は、データ定常性情報および実世界推定情報を基に、実世界1の画像により近似した画像を生成して、生成した画像を出力画像として出力する。
【0055】
例えば、画像生成部103は、実世界推定情報を基に、推定された実世界1の画像を所望の空間方向または時間方向の範囲で積分することにより、入力画像に比較して、空間方向または時間方向により高解像度の画像を生成して、生成した画像を出力画像として出力する。例えば、画像生成部103は、外挿補間により、画像を生成して、生成した画像を出力画像として出力する。
【0056】
画像生成部103の構成の詳細は、後述する。
【0057】
次に、図4を参照して、本発明の原理を説明する。
【0058】
例えば、画像である、実世界1の信号は、センサ2の一例であるCCD(Charge Coupled Device)の受光面に結像される。センサ2の一例であるCCDは、積分特性を有しているので、CCDから出力されるデータ3には、実世界1の画像との差が生じることになる。センサ2の積分特性の詳細については、後述する。
【0059】
信号処理装置4による信号処理においては、CCDにより取得された実世界1の画像と、CCDにより撮像され、出力されたデータ3との関係が明確に考慮される。すなわち、データ3と、センサ2で取得された実世界の情報である信号との関係が明確に考慮される。
【0060】
より具体的には、図4で示されるように、信号処理装置4は、モデル161を用いて、実世界1を近似(記述)する。モデル161は、例えば、N個の変数で表現される。より正確には、モデル161は、実世界1の信号を近似(記述)する。
【0061】
モデル161を予測するために、信号処理装置4は、データ3から、M個のデータ162を抽出する。データ3から、M個のデータ162を抽出するとき、信号処理装置4は、例えば、データ3に含まれるデータの定常性を利用する。換言すれば、信号処理装置4は、データ3に含まれるデータの定常性を基に、モデル161を予測するためのデータ162を抽出する。この場合、結果的に、モデル161は、データの定常性に拘束されることになる。
【0062】
すなわち、モデル161は、センサ2で取得されたとき、データ3においてデータの定常性を生じさせる、定常性(所定の次元の方向に一定の特徴)を有する実世界1の事象(を示す情報(信号))を近似する。
【0063】
ここで、データ162の数Mが、モデルの変数の数N以上であれば、M個のデータ162から、N個の変数で表現されるモデル161を予測することができる。
【0064】
このように、実世界1(の信号)を近似(記述)するモデル161を予測することにより、信号処理装置4は、実世界1の情報である信号を考慮することができる。
【0065】
次に、センサ2の積分効果について説明する。
【0066】
画像を撮像するセンサ2である、CCDまたはCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)センサなどのイメージセンサは、現実世界を撮像するとき、現実世界の情報である信号を2次元のデータに投影する。イメージセンサの各画素は、いわゆる受光面(受光領域)として、それぞれ所定の面積を有する。所定の面積を有する受光面に入射した光は、画素毎に、空間方向および時間方向に積分され、各画素に対して1つの画素値に変換される。
【0067】
図5乃至図8を参照して、画像の空間的時間的な積分について説明する。
【0068】
イメージセンサは、現実世界の対象物(オブジェクト)を撮像し、撮像の結果得られた画像データを1フレーム単位で出力する。すなわち、イメージセンサは、実世界1の対象物で反射された光である、実世界1の信号を取得し、データ3を出力する。
【0069】
例えば、イメージセンサは、1秒間に30フレームからなる画像データを出力する。この場合、イメージセンサの露光時間は、1/30秒とすることができる。露光時間は、イメージセンサが入射された光の電荷への変換を開始してから、入射された光の電荷への変換を終了するまでの期間である。以下、露光時間をシャッタ時間とも称する。
【0070】
図5は、イメージセンサ上の画素の配置の例を説明する図である。図5中において、A乃至Iは、個々の画素を示す。画素は、画像データにより表示される画像に対応する平面上に配置されている。1つの画素に対応する1つの検出素子は、イメージセンサ上に配置されている。イメージセンサが実世界1の画像を撮像するとき、1つの検出素子は、画像データを構成する1つの画素に対応する1つの画素値を出力する。例えば、検出素子の空間方向Xの位置(X座標)は、画像データにより表示される画像上の横方向の位置に対応し、検出素子の空間方向Yの位置(Y座標)は、画像データにより表示される画像上の縦方向の位置に対応する。
【0071】
実世界1の光の強度の分布は、3次元の空間方向および時間方向に広がりを有するが、イメージセンサは、2次元の空間方向および時間方向で、実世界1の光を取得し、2次元の空間方向および時間方向の光の強度の分布を表現するデータ3を生成する。
【0072】
図6で示されるように、例えば、CCDである検出素子は、シャッタ時間に対応する期間、受光面(受光領域)(検出領域)に入力された光を電荷に変換して、変換された電荷を蓄積する。光は、3次元の空間上の位置、および時刻により、強度が決定される実世界1の情報(信号)である。実世界1の光の強度の分布は、3次元の空間上の位置x,y、およびz、並びに時刻tを変数とする関数F(x,y,z,t)で表すことができる。
【0073】
CCDである検出素子に蓄積される電荷の量は、2次元の空間上の広がりを有する受光面の全体に入射された光の強さと、光が入射されている時間にほぼ比例する。検出素子は、シャッタ時間に対応する期間において、受光面の全体に入射された光から変換された電荷を、既に蓄積されている電荷に加えていく。すなわち、検出素子は、シャッタ時間に対応する期間、2次元の空間上の広がりを有する受光面の全体に入射される光を積分して、積分された光に対応する量の電荷を蓄積する。検出素子は、空間(受光面)および時間(シャッタ時間)に対して、積分効果があるとも言える。
【0074】
検出素子に蓄積された電荷は、図示せぬ回路により、電圧値に変換され、電圧値はさらにデジタルデータなどの画素値に変換されて、データ3として出力される。従って、イメージセンサから出力される個々の画素値は、実世界1の情報(信号)の時間的空間的に広がりを有するある部分を、シャッタ時間の時間方向および検出素子の受光面の空間方向について積分した結果である、1次元の空間に射影した値を有する。
【0075】
すなわち、1つの画素の画素値は、F(x,y,t)の積分で表される。F(x,y,t)は、検出素子の受光面における、光の強度の分布を表す関数である。例えば、画素値Pは、式(1)で表される。
【0076】
【数1】
Figure 2005018534
・・・(1)
【0077】
式(1)において、xは、検出素子の受光面の左側の境界の空間座標(X座標)である。xは、検出素子の受光面の右側の境界の空間座標(X座標)である。
式(1)において、yは、検出素子の受光面の上側の境界の空間座標(Y座標)である。yは、検出素子の受光面の下側の境界の空間座標(Y座標)である。また、tは、入射された光の電荷への変換を開始した時刻である。tは、入射された光の電荷への変換を終了した時刻である。
【0078】
なお、実際には、イメージセンサから出力される画像データの画素値は、例えばフレーム全体として、そのゲインが補正されている。
【0079】
画像データの各画素値は、イメージセンサの各検出素子の受光面に入射した光の積分値であり、イメージセンサに入射された光のうち、検出素子の受光面よりも微小な実世界1の光の波形は、積分値としての画素値に隠されてしまう。
【0080】
以下、本明細書において、所定の次元を基準として表現される信号の波形を単に波形とも称する。
【0081】
このように、実世界1の画像(光信号)は、画素を単位として、空間方向および時間方向に積分されてしまうので、画像データにおいては、実世界1の画像の定常性の一部が欠落し、実世界1の画像の定常性の他の一部が画像データに含まれることになる。または、画像データには、実世界1の画像の定常性から変化してしまった定常性が含まれることがある。
【0082】
積分効果を有するイメージセンサにより撮像された画像の、空間方向の積分効果についてさらに説明する。
【0083】
図7は、画素D乃至画素Fに対応する検出素子に入射される光と、画素値との関係を説明する図である。図7のF(x)は、空間上(検出素子上)の空間方向Xの座標xを変数とする、実世界1の光の強度の分布を表す関数の例である。言い換えれば、F(x)は、空間方向Yおよび時間方向に一定である場合の、実世界1の光の強度の分布を表す関数の例である。図7において、Lは、画素D乃至画素Fに対応する検出素子の受光面の空間方向Xの長さを示す。
【0084】
1つの画素の画素値は、F(x)の積分で表される。例えば、画素Eの画素値Pは、式(2)で表される。
【0085】
【数2】
Figure 2005018534
・・・(2)
【0086】
式(2)において、xは、画素Eに対応する検出素子の受光面の左側の境界の空間方向Xの空間座標である。xは、画素Eに対応する検出素子の受光面の右側の境界の空間方向Xの空間座標である。
【0087】
同様に、積分効果を有するイメージセンサにより撮像された画像の、時間方向の積分効果についてさらに説明する。
【0088】
図8は、時間の経過と、1つの画素に対応する検出素子に入射される光と、画素値との関係を説明する図である。図8のF(t)は、時刻tを変数とする、実世界1の光の強度の分布を表す関数である。言い換えれば、F(t)は、空間方向Yおよび空間方向Xに一定である場合の、実世界1の光の強度の分布を表す関数の例である。tは、シャッタ時間を示す。
【0089】
フレーム#n−1は、フレーム#nに対して時間的に前のフレームであり、フレーム#n+1は、フレーム#nに対して時間的に後のフレームである。すなわち、フレーム#n−1、フレーム#n、およびフレーム#n+1は、フレーム#n−1、フレーム#n、およびフレーム#n+1の順で表示される。
【0090】
なお、図8で示される例において、シャッタ時間tとフレーム間隔とが同一である。
【0091】
1つの画素の画素値は、F(t)の積分で表される。例えば、フレーム#nの画素の画素値Pは、式(3)で表される。
【0092】
【数3】
Figure 2005018534
・・・(3)
【0093】
式(3)において、tは、入射された光の電荷への変換を開始した時刻である。tは、入射された光の電荷への変換を終了した時刻である。
【0094】
以下、センサ2による空間方向の積分効果を単に空間積分効果と称し、センサ2による時間方向の積分効果を単に時間積分効果と称する。また、空間積分効果または時間積分効果を単に積分効果とも称する。
【0095】
次に、積分効果を有するイメージセンサにより取得されたデータ3に含まれるデータの定常性の例について説明する。
【0096】
図9は、実世界1の線状の物(例えば、細線)の画像、すなわち光の強度の分布の例を示す図である。図9において、図中の上側の位置は、光の強度(レベル)を示し、図中の右上側の位置は、画像の空間方向の一方向である空間方向Xの位置を示し、図中の右側の位置は、画像の空間方向の他の方向である空間方向Yの位置を示す。
【0097】
実世界1の線状の物の画像には、所定の定常性が含まれる。すなわち、図9で示される画像は、長さ方向の任意の位置において、断面形状(長さ方向に直交する方向の位置の変化に対するレベルの変化)が同じであるという定常性を有する。
【0098】
図10は、図9で示される画像に対応する、実際の撮像により得られた画像データの画素値の例を示す図である。
【0099】
即ち、図10は、イメージセンサの画素の並び(画素の縦または横の並び)とずれた方向に延びる、各画素の受光面の長さLよりも短い径の線状の物の画像を、イメージセンサで撮像して得られた画像データの模式図である。図10で示される画像データが取得されたときにイメージセンサに入射された画像は、図9の実世界1の線状の物の画像である。
【0100】
図10において、図中の上側の位置は、画素値を示し、図中の右上側の位置は、画像の空間方向の一方向である空間方向Xの位置を示し、図中の右側の位置は、画像の空間方向の他の方向である空間方向Yの位置を示す。図10における画素値を示す方向は、図9におけるレベルの方向に対応し、図10における空間方向X、および空間方向Yは、図9における方向と同じである。
【0101】
各画素の受光面の長さLよりも短い径の線状の物の画像を、イメージセンサで撮像した場合、撮像の結果得られる画像データにおいて、線状の物は、模式的に、例えば、斜めにずれて並ぶ、複数の所定の長さの円弧形状(かまぼこ型)で表される。各円弧形状は、ほぼ同じ形状である。1つの円弧形状は、縦に1列の画素の上、または横に1列の画素の上に形成される。例えば、図10における1つの円弧形状は、縦に1列の画素の上に形成される。
【0102】
このように、例えば、イメージセンサで撮像されて取得された画像データにおいては、実世界1の線状の物の画像が有していた、長さ方向の任意の位置において、空間方向Yにおける断面形状が同じであるという定常性が失われている。また、実世界1の線状の物の画像が有していた定常性は、縦に1列の画素の上、または横に1列の画素の上に形成された、同じ形状である円弧形状が一定の間隔で並ぶという定常性に変化していると言える。
【0103】
図11は、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像、すなわち光の強度の分布の例を示す図である。図11において、図中の上側の位置は、光の強度(レベル)を示し、図中の右上側の位置は、画像の空間方向の一方向である空間方向Xの位置を示し、図中の右側の位置は、画像の空間方向の他の方向である空間方向Yの位置を示す。
【0104】
背景とは異なる色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像には、所定の定常性が含まれる。すなわち、図11で示される画像は、縁の長さ方向の任意の位置において、断面形状(縁に直交する方向の位置の変化に対するレベルの変化)が同じであるという定常性を有する。
【0105】
図12は、図11で示される画像に対応する、実際の撮像により得られた画像データの画素値の例を示す図である。図12で示されるように、画像データは、画素を単位とした画素値からなるので、階段状になる。
【0106】
図13は、図12に示す画像データの模式図である。
【0107】
図13で示される模式図は、イメージセンサの画素の並び(画素の縦または横の並び)とずれた方向に縁が延びる、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像を、イメージセンサで撮像して得られた画像データの模式図である。図13で示される画像データが取得されたときにイメージセンサに入射された画像は、図11で示される、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像である。
【0108】
図13において、図中の上側の位置は、画素値を示し、図中の右上側の位置は、画像の空間方向の一方向である空間方向Xの位置を示し、図中の右側の位置は、画像の空間方向の他の方向である空間方向Yの位置を示す。図13における画素値を示す方向は、図11におけるレベルの方向に対応し、図13における空間方向X、および空間方向Yは、図11における方向と同じである。
【0109】
背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像を、イメージセンサで撮像した場合、撮像の結果得られる画像データにおいて、直線状の縁は、模式的に、例えば、斜めにずれて並ぶ、複数の所定の長さのつめ(pawl)形状で表される。各つめ形状は、ほぼ同じ形状である。1つのつめ形状は、縦に1列の画素の上、または横に1列の画素の上に形成される。例えば、図13において、1つのつめ形状は、縦に1列の画素の上に形成される。
【0110】
このように、例えば、イメージセンサで撮像されて取得された画像データにおいては、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像が有していた、縁の長さ方向の任意の位置において、断面形状が同じであるという定常性が失われている。また、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像が有していた定常性は、縦に1列の画素の上、または横に1列の画素の上に形成された、同じ形状であるつめ形状が一定の間隔で並ぶという定常性に変化していると言える。
【0111】
データ定常性検出部101は、このような、例えば、入力画像であるデータ3が有するデータの定常性を検出する。例えば、データ定常性検出部101は、所定の次元の方向に一定の特徴を有する領域を検出することにより、データの定常性を検出する。例えば、データ定常性検出部101は、図10で示される、同じ円弧形状が一定の間隔で並ぶ領域を検出する。また、例えば、データ定常性検出部101は、図13で示される、同じつめ形状が一定の間隔で並ぶ領域を検出する。
【0112】
また、データ定常性検出部101は、同様の形状の並び方を示す、空間方向の角度(傾き)を検出することにより、データの定常性を検出する。
【0113】
また、例えば、データ定常性検出部101は、空間方向および時間方向の同様の形状の並び方を示す、空間方向および時間方向の角度(動き)を検出することにより、データの定常性を検出する。
【0114】
さらに、例えば、データ定常性検出部101は、所定の次元の方向に一定の特徴を有する領域の長さを検出することにより、データの定常性を検出する。
【0115】
以下、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像がセンサ2により射影されたデータ3の部分を2値エッジとも称する。
【0116】
ここで、従来の信号処理においては、データ3から、例えば、所望の高解像度データが生成される。
【0117】
これに対して、信号処理装置4による信号処理においては、データ3から、実世界1が推定され、推定の結果に基づいて、高解像度データが生成される。すなわち、実世界1が、データ3から推定され、高解像度データが、データ3を考慮して、推定された実世界1から高解像度データが生成される。
【0118】
実世界1から高解像度データを生成するためには、実世界1とデータ3との関係を考慮する必要がある。例えば、実世界1が、CCDであるセンサ2により、データ3に射影されるとどうなるかが考慮される。
【0119】
CCDであるセンサ2は、上述したように、積分特性を有する。すなわち、データ3の1つの単位(例えば、画素値)は、実世界1の信号をセンサ2の検出素子(例えば、CCD)の検出領域(例えば、受光面)で積分することにより算出することができる。
【0120】
これを高解像度データについて当てはめると、仮想的な高解像度のセンサが実世界1の信号をデータ3に射影する処理を、推定された実世界1に適用することにより、高解像度データを得ることができる。
【0121】
換言すれば、データ3から実世界1の信号を推定できれば、実世界1の信号を、仮想的な高解像度のセンサの検出素子の検出領域毎に(時空間方向に)積分することにより、高解像度データに含まれる1つの値を得ることができる。
【0122】
例えば、センサ2の検出素子の検出領域の大きさに比較して、実世界1の信号の変化が、より小さいとき、データ3は、実世界1の信号の小さい変化を表すことができない。そこで、データ3から推定された実世界1の信号を、実世界1の信号の変化に比較して、より小さい領域毎に(時空間方向に)積分することにより、実世界1の信号の小さい変化を示す高解像度データを得ることができる。
【0123】
すなわち、仮想的な高解像度のセンサの各検出素子について、推定された実世界1の信号を検出領域で積分することにより、高解像度データを得ることができる。
【0124】
信号処理装置4において、画像生成部103は、例えば、仮想的な高解像度のセンサの各検出素子の時空間方向の領域で、推定された実世界1の信号を積分することにより、高解像度データを生成する。
【0125】
次に、データ3から、実世界1を推定するために、信号処理装置4においては、データ3と実世界1との関係、定常性、およびデータ3における空間的または時間的な混合(空間混合または時間混合)が利用される。
【0126】
ここで、混合とは、データ3において、実世界1における2つの物体に対する信号が混合されて1つの値となることをいう。
【0127】
空間混合とは、センサ2の空間積分効果による、2つの物体に対する信号の空間方向の混合をいう。時間混合については、後述する。
【0128】
実世界1そのものは、無限の数の事象からなり、従って、実世界1そのものを、例えば、数式で表現するためには、無限の数の変数が必要になる。データ3から、実世界1の全ての事象を予測することはできない。
【0129】
同様に、データ3から、実世界1の信号の全てを予測することはできない。
【0130】
そこで、信号処理装置4においては、実世界1の信号のうち、定常性を有し、関数f(x,y,z,t)で表すことができる部分に注目し、関数f(x,y,z,t)で表すことができる、定常性を有する実世界1の信号の部分が、N個の変数で表現されるモデル161で近似される。そして、図14で示されるように、モデル161が、データ3の中の、M個のデータ162から予測される。
【0131】
M個のデータ162からモデル161の予測を可能にするには、第1に、モデル161を、定常性に基づいて、N個の変数で表し、第2に、センサ2の積分特性に基づいて、N個の変数で表現されるモデル161とM個のデータ162との関係を示す、N個の変数を使用した式を立てることが必要である。モデル161が、定常性に基づいて、N個の変数で表されているので、N個の変数で表現されるモデル161とM個のデータ162との関係を示す、N個の変数を使用した式は、定常性を有する実世界1の信号の部分と、データの定常性を有するデータ3の部分との関係を記述しているとも言える。
【0132】
換言すれば、N個の変数で表現されるモデル161で近似される、定常性を有する実世界1の信号の部分は、データ3において、データの定常性を生じさせる。
【0133】
データ定常性検出部101は、定常性を有する実世界1の信号の部分によって、データの定常性が生じたデータ3の部分、およびデータの定常性が生じた部分の特徴を検出する。
【0134】
例えば、図15で示されるように、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像において、図15中Aで示す、注目する位置における縁は、傾きを有している。図15のBの矢印は、縁の傾きを示す。所定の縁の傾きは、基準となる軸に対する角度または基準となる位置に対する方向で表すことができる。例えば、所定の縁の傾きは、空間方向Xの座標軸と、縁との角度で表すことができる。例えば、所定の縁の傾きは、空間方向Xの長さおよび空間方向Yの長さで示される方向で表すことができる。
【0135】
背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像が、センサ2で取得されて、データ3が出力されたとき、データ3において、実世界1の画像における、縁の注目する位置(A)に対する、図15中A’で示す位置に、縁に対応するつめ形状が並び、実世界1の画像の縁の傾きに対応する、図15中B’で示す傾きの方向に、縁に対応するつめ形状が並ぶ。
【0136】
N個の変数で表現されるモデル161は、このような、データ3において、データの定常性を生じさせる、実世界の1の信号の部分を近似する。
【0137】
N個の変数で表現されるモデル161とM個のデータ162との関係を示す、N個の変数を使用した式を立てるとき、データ3において、データの定常性が生じている部分の値を利用する。
【0138】
この場合において、図16で示される、データ3において、データの定常性が生じ、混合領域に属する値に注目して、実世界1の信号を積分した値が、センサ2の検出素子が出力する値に等しいとして、式が立てられる。例えば、データの定常性が生じている、データ3における複数の値について、複数の式を立てることができる。
【0139】
図16において、Aは、縁の注目する位置を示し、A’は、実世界1の画像における、縁の注目する位置(A)に対する、画素(の位置)を示す。
【0140】
ここで、混合領域とは、データ3において、実世界1における2つの物体に対する信号が混合されて1つの値となっているデータの領域をいう。例えば、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像に対するデータ3において、直線状の縁を有する物に対する画像、および背景に対する画像が積分されている画素値は、混合領域に属する。
【0141】
図17は、式を立てる場合における、実世界1における2つの物体に対する信号および混合領域に属する値を説明する図である。
【0142】
図17中の左側は、センサ2の1つの検出素子の検出領域で取得される、空間方向Xおよび空間方向Yに所定の広がりを有する、実世界1における2つの物体に対する実世界1の信号を示す。図17中の右側は、図17中の左側に示す実世界1の信号がセンサ2の1つの検出素子によって射影された、データ3の1つの画素の画素値Pを示す。すなわち、センサ2の1つの検出素子によって取得された、空間方向Xおよび空間方向Yに所定の広がりを有する、実世界1における2つの物体に対する実世界1の信号が射影された、データ3の1つの画素の画素値Pを示す。
【0143】
図17のLは、実世界1における1つの物体に対する、図17の白い部分の実世界1の信号のレベルを示す。図17のRは、実世界1における他の1つの物体に対する、図17の斜線で表される部分の実世界1の信号のレベルを示す。
【0144】
ここで、混合比αは、センサ2の1つの検出素子の、空間方向Xおよび空間方向Yに所定の広がりを有する検出領域に入射された、2つの物体に対する信号(の面積)の割合を示す。例えば、混合比αは、センサ2の1つの検出素子の検出領域の面積に対する、空間方向Xおよび空間方向Yに所定の広がりを有する、センサ2の1つの検出素子の検出領域に入射された、レベルLの信号の面積の割合を示す。
【0145】
この場合において、レベルL、レベルR、および画素値Pの関係は、式(4)で表すことができる。
【0146】
【数4】
Figure 2005018534
・・・(4)
【0147】
なお、レベルRは、注目している画素の右側に位置している、データ3の画素の画素値とすることができる場合があり、レベルLは、注目している画素の左側に位置している、データ3の画素値とすることができる場合がある。
【0148】
また、混合比αおよび混合領域は、空間方向と同様に、時間方向を考慮することができる。例えば、センサ2に対して撮像の対象となる実世界1の物体が移動しているとき、時間方向に、センサ2の1つの検出素子の検出領域に入射される、2つの物体に対する信号の割合は変化する。センサ2の1つの検出素子の検出領域に入射された、時間方向に割合が変化する、2つの物体に対する信号は、センサ2の検出素子によって、データ3の1つの値に射影される。
【0149】
センサ2の時間積分効果による、2つの物体に対する信号の時間方向の混合を時間混合と称する。
【0150】
データ定常性検出部101は、例えば、実世界1における2つの物体に対する実世界1の信号が射影された、データ3における画素の領域を検出する。データ定常性検出部101は、例えば、実世界1の画像の縁の傾きに対応する、データ3における傾きを検出する。
【0151】
そして、実世界推定部102は、例えば、データ定常性検出部101で検出された、所定の混合比αを有する画素の領域、および領域の傾きを基に、N個の変数で表現されるモデル161とM個のデータ162との関係を示す、N個の変数を使用した式を立てて、立てた式を解くことにより、実世界1の信号を推定する。
【0152】
さらに、具体的な実世界1の推定について説明する。
【0153】
関数F(x,y,z,t)で表される実世界の信号のうち、空間方向Zの断面(センサ2の位置)における関数F(x,y,t)で表される実世界の信号を、空間方向Xにおける位置x、空間方向Yにおける位置y、および時刻tで決まる近似関数f(x,y,t)で近似することを考える。
【0154】
ここで、センサ2の検出領域は、空間方向Xおよび空間方向Yに広がりを有する。換言すれば、近似関数f(x,y,t)は、センサ2で取得される、空間方向および時間方向に広がりを有する実世界1の信号を近似する関数である。
【0155】
センサ2による実世界1の信号の射影によって、データ3の値P(x,y,t)が得られるものとする。データ3の値P(x,y,t)は、例えば、イメージセンサであるセンサ2が出力する、画素値である。
【0156】
ここで、センサ2による射影を定式化できる場合、近似関数f(x,y,t)を射影して得られた値を射影関数S(x,y,t)と表すことができる。
【0157】
射影関数S(x,y,t)を求める上で、以下に示す問題がある。
【0158】
第1に、一般的に、実世界1の信号を表す関数F(x,y,z,t)は、無限の次数の関数となりうる。
【0159】
第2に、たとえ、実世界の信号を関数として記述できたとしても、センサ2の射影を介した、射影関数S(x,y,t)を定めることは、一般的にはできない。すなわち、センサ2による射影の動作、言い換えればセンサ2の入力信号と出力信号との関係を知らないので、射影関数S(x,y,t)を定めることはできない。
【0160】
第1の問題点に対して、実世界1の信号を近似する関数f(x,y,t)を記述可能な関数(例えば、有限次数の関数)である関数f(x,y,t)および変数wの積和で表現することを考える。
【0161】
また、第2の問題点に対して、センサ2による射影を定式化することで、関数f(x,y,t)の記述から、関数S(x,y,t)を記述することができる。
【0162】
すなわち、実世界1の信号を近似する関数f(x,y,t)を関数f(x,y,t)および変数wの積和で表現すると、式(5)が得られる。
【0163】
【数5】
Figure 2005018534
・・・(5)
【0164】
例えば、式(6)で示されるように、センサ2の射影を定式化することにより、式(5)から、データ3と実世界の信号の関係を式(7)のように定式化することができる。
【0165】
【数6】
Figure 2005018534
・・・(6)
【0166】
【数7】
Figure 2005018534
・・・(7)
式(7)において、jは、データのインデックスである。
【0167】
式(7)のN個の変数w(i=1乃至N)が共通であるM個のデータ群(j=1乃至M)が存在すれば、式(8)を満たすので、データ3から実世界のモデル161を求めることができる。
【0168】
【数8】
Figure 2005018534
・・・(8)
【0169】
Nは、実世界1を近似するモデル161を表現する変数の数である。Mは、データ3に含まれるデータ162の数である。
【0170】
実世界1の信号を近似する関数f(x,y,t)を式(5)で表すことにより、wとして変数の部分を独立させることができる。このとき、iは、そのまま変数の数を示すことになる。また、fで示される関数の形を独立させることができ、fとして所望の関数を利用することができるようになる。
【0171】
従って、関数fの形に依存せず、変数wの数Nを定義でき、変数wの数Nとデータの数Mとの関係で変数wを求めることができる。
【0172】
すなわち、以下の3つを用いることで、データ3から実世界1を推定することができるようになる。
【0173】
第1に、N個の変数を定める、すなわち、式(5)を定める。これは、定常性を用いて実世界1を記述することにより可能になる。例えば、断面が多項式で表され、同じ断面形状が一定方向に続く、というモデル161で実世界1の信号を記述することができる。
【0174】
第2に、例えば、センサ2による射影を定式化して、式(7)を記述する。例えば、実世界2の信号の積分を行った結果がデータ3であると定式化する。
【0175】
第3に、M個のデータ162を集めて、式(8)を満足させる。例えば、データ定常性検出部101で検出された、データの定常性を有する領域から、データ162が集められる。例えば、定常性の一例である、一定の断面が続く領域のデータ162が集められる。
【0176】
このように、式(5)によって、データ3と実世界1との関係を記述し、M個のデータ162を集めることで、式(8)を満たすことにより、実世界1を推定することができる。
【0177】
より具体的には、N=Mのとき、変数の数Nと式の数Mが等しいので、連立方程式を立てることにより、変数wを求めることができる。
【0178】
また、N<Mのとき、様々な解法を適用できる。例えば、最小自乗法により、変数wを求めることができる。
【0179】
ここで、最小自乗法による解法について、詳細に記載する。
【0180】
まず、式(7)に従って、実世界1からデータ3を予測する式(9)を示す。
【0181】
【数9】
Figure 2005018534
・・・(9)
【0182】
式(9)において、P’(x,yj,)は、予測値である。
【0183】
予測値P’と実測値Pとの差分自乗和Eは、式(10)で表される。
【0184】
【数10】
Figure 2005018534
・・・(10)
【0185】
差分自乗和Eが最小になるように、変数wが求められる。従って、各変数wによる式(10)の偏微分値は0とされる。すなわち、式(11)が成り立つ。
【0186】
【数11】
Figure 2005018534
・・・(11)
【0187】
式(11)から式(12)が導かれる。
【0188】
【数12】
Figure 2005018534
・・・(12)
【0189】
式(12)がK=1乃至Nで成り立つとき、最小自乗法による解が得られる。このときの正規方程式は、式(13)で示される。
【0190】
【数13】
Figure 2005018534
・・・(13)
【0191】
ただし、式(13)において、S(x,y,t)は、S(j)と記述した。
【0192】
【数14】
Figure 2005018534
・・・(14)
【0193】
【数15】
Figure 2005018534
・・・(15)
【0194】
【数16】
Figure 2005018534
・・・(16)
【0195】
式(14)乃至式(16)から、式(13)は、SMATMAT=PMATと表すことができる。
【0196】
式(13)において、Sは、実世界1の射影を表す。式(13)において、Pは、データ3を表す。式(13)において、wは、実世界1の信号の特徴を記述し、求めようとする変数である。
【0197】
従って、式(13)にデータ3を入力し、行列解法などによりWMATを求めることで、実世界1を推定することが可能になる。すなわち、式(17)を演算することにより、実世界1を推定することができるようになる。
【0198】
【数17】
Figure 2005018534
・・・(17)
【0199】
なお、SMATが正則でない場合、SMATの転置行列を利用して、WMATを求めることができる。
【0200】
実世界推定部102は、例えば、式(13)にデータ3を入力し、行列解法などによりWMATを求めることで、実世界1を推定する。
【0201】
ここで、さらにより具体的な例を説明する。例えば、実世界1の信号の断面形状、すなわち位置の変化に対するレベルの変化を、多項式で記述する。実世界1の信号の断面形状が一定で、実世界1の信号の断面が等速で移動すると仮定する。そして、センサ2による実世界1の信号からデータ3への射影を、実世界1の信号の時空間方向の3次元で積分で定式化する。
【0202】
実世界1の信号の断面形状が、等速で移動するとの仮定から、式(18)および式(19)が得られる。
【0203】
【数18】
Figure 2005018534
・・・(18)
【0204】
【数19】
Figure 2005018534
・・・(19)
【0205】
ここで、vおよびvは、一定である。
【0206】
実世界1の信号の断面形状は、式(18)および式(19)を用いることで、式(20)と表される。
【0207】
【数20】
Figure 2005018534
・・・(20)
【0208】
センサ2による実世界1の信号からデータ3への射影を、実世界1の信号の時空間方向の3次元で積分で定式化すれば、式(21)が得られる。
【0209】
【数21】
Figure 2005018534
・・・(21)
【0210】
式(21)において、S(x,y,t)は、空間方向Xについて、位置xから位置xまで、空間方向Yについて、位置yから位置yまで、時間方向tについて、時刻tから時刻tまでの領域、すなわち時空間の直方体で表される領域の積分値を示す。
【0211】
式(21)を定めることができる所望の関数f(x’,y’)を用いて、式(13)を解けば、実世界1の信号を推定することができる。
【0212】
以下では、関数f(x’,y’)の一例として、式(22)に示す関数を用いることとする。
【0213】
【数22】
Figure 2005018534
・・・(22)
【0214】
すなわち、実世界1の信号が、式(18)、式(19)、および式(22)で表される定常性を含むと仮定している。これは、図18で示されるように、一定の形状の断面が、時空間方向に移動していることを示す。
【0215】
式(21)に、式(22)を代入することにより、式(23)が得られる。
【0216】
【数23】
Figure 2005018534
・・・(23)
【0217】
ただし、
Volume=(x−x)(y−ys)(t−t
(x,y,t)=Volume/2×(x+x+v(t+t))
(x,y,t)=Volume/2×(y+y+v(t+t))
(x,y,t)=1
である。
【0218】
図19は、データ3から抽出される、M個のデータ162の例を示す図である。例えば、27個の画素値が、データ162として抽出され、抽出された画素値が、P(x,y,t)とされる。この場合、jは、0乃至26である。
【0219】
図19に示す例において、nである時刻tの注目する位置に対応する画素の画素値がP13(x,y,t)であり、データの定常性を有する画素の画素値の並ぶ方向(例えば、データ定常性検出部101で検出された、同じ形状であるつめ形状が並ぶ方向)が、P(x,y,t)、P13(x,y,t)、およびP22(x,y,t)を結ぶ方向であるとき、nである時刻tにおける、画素値P(x,y,t)乃至P17(x,y,t)、nより時間的に前である、n−1である時刻tにおける、画素値P(x,y,t)乃至P(x,y,t)、およびnより時間的に後である、n+1である時刻tにおける、画素値P18(x,y,t)乃至P26(x,y,t)が抽出される。
【0220】
ここで、センサ2であるイメージセンサから出力された、データ3である画素値が取得された領域は、時間方向および2次元の空間方向に広がりを有する。そこで、例えば、画素に対応する直方体(画素値が取得された領域)の重心を、画素の時空間方向の位置として使用することができる。
【0221】
27個の画素値P(x,y,t)乃至P26(x,y,t)、および式(23)から、式(13)を生成し、Wを求めることで、実世界1を推定することが可能になる。
【0222】
このように、実世界推定部102は、例えば、27個の画素値P(x,y,t)乃至P26(x,y,t)、および式(23)から、式(13)を生成し、Wを求めることで、実世界1の信号を推定する。
【0223】
なお、関数f(x,y,t)として、ガウス関数、またはシグモイド関数などを利用することができる。
【0224】
図20乃至図23を参照して、推定された実世界1の信号から、データ3に対応する、より高解像度の高解像度データを生成する処理の例について説明する。
【0225】
図20で示されるように、データ3は、時間方向および2次元の空間方向に実世界1の信号が積分された値を有する。例えば、センサ2であるイメージセンサから出力された、データ3である画素値は、検出素子に入射された光である、実世界1の信号が、時間方向に、検出時間であるシャッタ時間で積分され、空間方向に、検出素子の受光領域で積分された値を有する。
【0226】
これに対して、図21で示されるように、空間方向により解像度の高い高解像度データは、推定された実世界1の信号を、時間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出時間と同じ時間で積分するとともに、空間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出素子の受光領域に比較して、より狭い領域で積分することにより、生成される。
【0227】
なお、空間方向により解像度の高い高解像度データを生成する場合において、推定された実世界1の信号が積分される領域は、データ3を出力したセンサ2の検出素子の受光領域と全く無関係に設定することができる。例えば、高解像度データに、データ3に対して、空間方向に整数倍の解像度を持たせることは勿論、5/3倍など、データ3に対して、空間方向に有理数倍の解像度を持たせることができる。
【0228】
また、図22で示されるように、時間方向により解像度の高い高解像度データは、推定された実世界1の信号を、空間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出素子の受光領域と同じ領域で積分するとともに、時間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出時間に比較して、より短い時間で積分することにより、生成される。
【0229】
なお、時間方向により解像度の高い高解像度データを生成する場合において、推定された実世界1の信号が積分される時間は、データ3を出力したセンサ2の検出素子のシャッタ時間と全く無関係に設定することができる。例えば、高解像度データに、データ3に対して、時間方向に整数倍の解像度を持たせることは勿論、7/4倍など、データ3に対して、時間方向に有理数倍の解像度を持たせることができる。
【0230】
動きボケを除去した高解像度データは、推定された実世界1の信号を、時間方向に積分しないで、空間方向にのみ積分することにより、生成される。
【0231】
さらに、図23で示されるように、時間方向および空間方向により解像度の高い高解像度データは、推定された実世界1の信号を、空間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出素子の受光領域に比較して、より狭い領域で積分するとともに、時間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出時間に比較して、より短い時間で積分することにより、生成される。
【0232】
この場合において、推定された実世界1の信号が積分される領域および時間は、データ3を出力したセンサ2の検出素子の受光領域およびシャッタ時間と全く無関係に設定することができる。
【0233】
このように、画像生成部103は、例えば、推定された実世界1の信号を所望の時空間の領域で積分することにより、時間方向、または空間方向に、より高解像度のデータを生成する。
【0234】
以上のように、実世界1の信号を推定することにより、実世界1の信号に対してより正確で、時間方向、または空間方向に、より高解像度のデータを生成することができる。
【0235】
図24乃至図28は、信号処理装置4の信号処理を用いた入力画像の例と、処理の結果の例を示している。
【0236】
図24は、入力画像の元の画像(実世界1の光信号に相当)を示す図である。
図25は、入力画像の例を示す図である。図25で示される入力画像は、図24で示される画像の2×2の画素からなるブロックに属する画素の画素値の平均値を、1つの画素の画素値として生成された画像である。すなわち、入力画像は、図24で示される画像に、センサの積分特性を模した、空間方向の積分を適用することにより得られた画像である。
【0237】
図24で示される元の画像において、上下方向から、ほぼ5度時計方向に傾いた細線の画像が含まれている。同様に、図25で示される入力画像において、上下方向から、ほぼ5度時計方向に傾いた細線の画像が含まれている。
【0238】
図26は、図25で示される入力画像に、従来のクラス分類適応処理を適用して得られた画像を示す図である。ここで、クラス分類適応処理は、クラス分類処理と適応処理とからなり、クラス分類処理によって、データを、その性質に基づいてクラス分けし、各クラスごとに適応処理を施すものである。適応処理では、例えば、低画質または標準画質の画像が、所定のタップ係数を用いてマッピング(写像)されることにより、高画質の画像に変換される。
【0239】
即ち、適応処理では、第1のデータが、所定のタップ係数を用いてマッピング(写像)されることにより、第2のデータに変換される。
【0240】
いま、このタップ係数を用いてのマッピング方法として、例えば、線形1次結合モデルを採用するとともに、第1のデータとして、高解像度のHD(High Definition)画像をローパスフィルタでフィルタリングすること等により得られる低解像度または標準解像度のSD(Standard Definition)画像を採用し、第2のデータとして、そのSD画像を得るのに用いたHD画像を採用することとして、適応処理について説明する。
【0241】
上述の条件下において、HD画像を構成する画素であるHD画素yは、例えば、SD画像を構成する画素であるSD画素から、HD画素を予測するための予測タップとして抽出される複数のSD画素と、タップ係数とを用いて、次の線形1次式(線形結合)によって求めることができる。
【0242】
【数24】
Figure 2005018534
・・・(24)
【0243】
但し、式(24)において、xは、HD画素yについての予測タップを構成する、n番目のSD画素(の画素値)を表し、wは、n番目のSD画素と乗算されるn番目のタップ係数を表す。なお、式(24)では、予測タップが、N個のSD画素x,x,・・・,xで構成されるものとしてある。
【0244】
ここで、HD画素の画素値yは、式(24)に示した線形1次式ではなく、2次以上の高次の式によって求めるようにすることも可能である。
【0245】
いま、HD画像において、k番目のHD画素(の画素値)の真値をyと表すとともに、式(24)によって得られるその真値yの予測値をy’と表すと、その予測誤差eは、例えば、次式で表される。
【0246】
【数25】
Figure 2005018534
・・・(25)
【0247】
式(25)の予測値y’は、式(24)にしたがって求められるため、式(25)のy’を、式(24)にしたがって置き換えると、次式が得られる。
【0248】
【数26】
Figure 2005018534
・・・(26)
【0249】
但し、式(26)において、xn,kは、k番目のHD画素についての予測タップを構成するn番目のSD画素を表す。
【0250】
式(26)の予測誤差eを0とするタップ係数wが、HD画素を予測するのに最適なものとなるが、すべてのHD画素について、そのようなタップ係数wを求めることは、一般には困難である。
【0251】
そこで、タップ係数wが最適なものであることを表す規範として、例えば、最小自乗法を採用することとすると、最適なタップ係数wは、統計的な誤差としての、例えば、次式で表される自乗誤差の総和Eを最小にすることで求めることができる。
【0252】
【数27】
Figure 2005018534
・・・(27)
【0253】
但し、式(27)において、Kは、HD画素yと、そのHD画素yについての予測タップを構成するSD画素x1,k,x2,k,・・・,xN,kとのセットのサンプル数を表す。
【0254】
式(27)の自乗誤差の総和Eを最小(極小)にするタップ係数wは、その総和Eをタップ係数wで偏微分したものを0とするものであり、従って、次式を満たす必要がある。
【0255】
【数28】
Figure 2005018534
・・・(28)
【0256】
そこで、上述の式(26)をタップ係数wで偏微分すると、次式が得られる。
【0257】
【数29】
Figure 2005018534
・・・(29)
【0258】
式(28)と(29)から、次式が得られる。
【0259】
【数30】
Figure 2005018534
・・・(30)
【0260】
式(30)のeに、式(26)を代入することにより、式(30)は、式(31)に示す正規方程式で表すことができる。
【0261】
【数31】
Figure 2005018534
・・・(31)
【0262】
式(31)の正規方程式は、HD画素yとSD画素xn,kのセットを、ある程度の数だけ用意することでたてることができ、式(31)を解くことで、最適なタップ係数wを求めることができる。なお、式(31)を解くにあたっては、例えば、掃き出し法(Gauss−Jordanの消去法)などを採用することが可能である。
【0263】
以上のように、多数のHD画素y,y,・・・,yを、タップ係数の学習の教師となる教師データとするとともに、各HD画素yについての予測タップを構成するSD画素x1,k,x2,k,・・・,xN,kを、タップ係数の学習の生徒となる生徒データとして、式(31)を解くことにより、最適なタップ係数wを求める学習を行っておき、さらに、そのタップ係数wを用い、式(24)により、SD画素を、HD画素にマッピング(変換)するのが適応処理である。
【0264】
ここで、HD画素yについての予測タップを構成するSD画素x1,k,x2,k,・・・,xN,kとしては、そのHD画素yに対応するSD画像上の位置から空間的または時間的に近い位置にあるSD画素を採用することができる。
【0265】
また、クラス分類適応処理では、タップ係数wの学習と、そのタップ係数wを用いたマッピングとは、クラスごとに行われる。クラス分類適応処理では、注目しているHD画素yを対象にクラス分類処理が行われ、そのクラス分類処理により得られるクラスごとに、タップ係数wの学習と、そのタップ係数wを用いたマッピングが行われる。
【0266】
HD画素yを対象としたクラス分類処理としては、例えば、そのHD画素yのクラス分類に用いるクラスタップとしての複数のSD画素を、SD画像から抽出し、その複数のSD画素で構成されるクラスタップを用いてMビットADRC(Adaptive Dynamic Range Coding)処理を施す方法がある。
【0267】
MビットADRC処理においては、クラスタップを構成するSD画素の最大値MAXと最小値MINが検出され、DR=MAX−MINを、局所的なダイナミックレンジとし、このダイナミックレンジDRに基づいて、クラスタップを構成するSD画素がKビットに再量子化される。即ち、クラスタップを構成する各SD画素から、最小値MINが減算され、その減算値がDR/2で除算(量子化)される。従って、クラスタップが、例えば、1ビットADRC処理される場合には、そのクラスタップを構成する各SD画素は1ビットとされることになる。そして、この場合、以上のようにして得られる、クラスタップを構成する各SD画素についての1ビットの画素値を、所定の順番で並べたビット列が、ADRCコードとして出力され、このADRCコードが、クラスを表すクラスコードとされる。
【0268】
なお、クラス分類適応処理は、SD画素には含まれていないが、HD画素に含まれる成分が再現される点で、例えば、単なる補間処理等とは異なる。即ち、クラス分類適応処理では、式(24)だけを見る限りは、いわゆる補間フィルタを用いての補間処理と同一であるが、その補間フィルタのタップ係数に相当するタップ係数wが、教師データとしてのHD画素と生徒データとしてのSD画素とを用いての学習により求められるため、HD画素に含まれる成分を再現することができる。
【0269】
ここで、タップ係数wの学習では、教師データyと生徒データxとの組み合わせとして、どのようなものを採用するかによって、各種の変換を行うタップ係数wを求めることができる。
【0270】
即ち、例えば、上述のように、教師データyとして、高解像度のHD画像を採用するとともに、生徒データxとして、そのHD画像の解像度を低下させたSD画像を採用した場合には、画像の解像度を向上させるマッピングを行うタップ係数wを得ることができる。また、例えば、教師データyとして、HD画像を採用するとともに、生徒データxとして、そのHD画像の画素数を少なくしたSD画像を採用した場合には、画像を構成する画素数を増加させるマッピングを行うタップ係数wを得ることができる。
【0271】
図26は、図25の入力画像に対して、上述のようなクラス分類適応処理によるマッピングを施すことにより得られる画像である。図26では、細線の画像が、図24の元の画像とは異なるものになっていることがわかる。
【0272】
図27は、データ定常性検出部101による、図25の例で示される入力画像から細線の領域を検出した結果を示す図である。図27において、白い領域は、細線の領域、すなわち、図10で示される円弧形状が並んでいる領域を示す。
【0273】
図28は、図25で示される画像を入力画像として、信号処理装置4で信号処理を行うことにより得られる出力画像の例を示す図である。図28で示されるように、信号処理装置4によれば、図24で示される元の画像の細線の画像により近い画像を得ることができる。
【0274】
図29は、信号処理装置4による、信号処理を説明するフローチャートである。
【0275】
ステップS101において、データ定常性検出部101は、定常性の検出の処理を実行する。データ定常性検出部101は、データ3である入力画像に含まれているデータの定常性を検出して、検出したデータの定常性を示すデータ定常性情報を実世界推定部102および画像生成部103に供給する。
【0276】
データ定常性検出部101は、現実世界の信号の定常性に対応するデータの定常性を検出する。ステップS101の処理において、データ定常性検出部101により検出されるデータの定常性は、データ3に含まれる、実世界1の画像の定常性の一部であるか、または、実世界1の信号の定常性から変化してしまった定常性である。
【0277】
例えば、データ定常性検出部101は、所定の次元の方向に一定の特徴を有する領域を検出することにより、データの定常性を検出する。また、例えば、データ定常性検出部101は、同様の形状の並び方を示す、空間方向の角度(傾き)を検出することにより、データの定常性を検出する。
【0278】
ステップS101における、定常性の検出の処理の詳細は、後述する。
【0279】
なお、データ定常性情報は、データ3の特徴を示す特徴量として利用することができる。
【0280】
ステップS102において、実世界推定部102は、実世界の推定の処理を実行する。すなわち、実世界推定部102は、入力画像、およびデータ定常性検出部101から供給されたデータ定常性情報を基に、実世界1の信号を推定する。例えば、ステップS102の処理において、実世界推定部102は、実世界1を近似(記述)するモデル161を予測することにより、実世界1の信号を推定する。実世界推定部102は、推定された実世界1の信号を示す実世界推定情報を画像生成部103に供給する。
【0281】
例えば、実世界推定部102は、線状の物の幅を予測することにより、実世界1の信号を推定する。また、例えば、実世界推定部102は、線状の物の色を示すレベルを予測することにより、実世界1の信号を推定する。
【0282】
ステップS102における、実世界の推定の処理の詳細は、後述する。
【0283】
なお、実世界推定情報は、データ3の特徴を示す特徴量として利用することができる。
【0284】
ステップS103において、画像生成部103は、画像の生成の処理を実行して、処理は終了する。すなわち、画像生成部103は、実世界推定情報を基に、画像を生成して、生成した画像を出力する。または、画像生成部103は、データ定常性情報および実世界推定情報を基に、画像を生成して、生成した画像を出力する。
【0285】
例えば、ステップS103の処理において、画像生成部103は、実世界推定情報を基に、推定された現実世界の光を空間方向に積分することにより、入力画像に比較して、空間方向により高解像度の画像を生成して、生成した画像を出力する。例えば、画像生成部103は、実世界推定情報を基に、推定された現実世界の光を時空間方向に積分することにより、入力画像に比較して、時間方向および空間方向により高解像度の画像を生成して、生成した画像を出力する。ステップS103における、画像の生成の処理の詳細は、後述する。
【0286】
このように、信号処理装置4は、データ3からデータの定常性を検出し、検出したデータの定常性を基に、実世界1を推定する。そして、信号処理装置4は、推定された実世界1を基に、より実世界1に近似した信号を生成する。
【0287】
以上のように、現実世界の信号を推定して処理を実行するようにした場合には、正確で、精度の高い処理結果を得ることができるようになる。
【0288】
また、第1の次元を有する現実世界の信号である第1の信号が射影され、現実世界の信号の定常性の一部が欠落した第1の次元よりも少ない第2の次元の第2の信号の、欠落した現実世界の信号の定常性に対応するデータの定常性を検出し、検出されたデータの定常性に基づいて、欠落した現実世界の信号の定常性を推定することにより第1の信号を推定するようにした場合には、現実世界の事象に対して、より正確で、より精度の高い処理結果を得ることができるようになる。
【0289】
次に、データ定常性検出部101の構成の詳細について説明する。
【0290】
図30は、データ定常性検出部101の構成を示すブロック図である。
【0291】
図30に構成を示すデータ定常性検出部101は、細線である対象物を撮像したとき、対象物の有する断面形状が同じであるという定常性から生じた、データ3に含まれるデータの定常性を検出する。すなわち、図30に構成を示すデータ定常性検出部101は、細線である実世界1の画像の有する、長さ方向の任意の位置において、長さ方向に直交する方向の位置の変化に対する光のレベルの変化が同じであるという定常性から生じた、データ3に含まれるデータの定常性を検出する。
【0292】
より具体的には、図30に構成を示すデータ定常性検出部101は、細線の画像を空間積分効果を有するセンサ2で撮像して得られたデータ3に含まれる、斜めにずれて隣接して並ぶ、複数の所定の長さの円弧形状(かまぼこ型)が配置される領域を検出する。
【0293】
データ定常性検出部101は、データ3である入力画像から、データの定常性を有する細線の画像が射影された画像データの部分(以下、定常成分とも称する)以外の画像データの部分(以下、非定常成分と称する)を抽出し、抽出された非定常成分と入力画像とから、実世界1の細線の画像が射影された画素を検出し、入力画像における、実世界1の細線の画像が射影された画素からなる領域を検出する。
【0294】
非定常成分抽出部201は、入力画像から非定常成分を抽出して、入力画像と共に、抽出された非定常成分を示す非定常成分情報を頂点検出部202および単調増減検出部203に供給する。
【0295】
例えば、図31で示されるように、ほぼ一定の光のレベルの背景の前に細線がある実世界1の画像がデータ3に射影されたとき、図32で示されるように、非定常成分抽出部201は、データ3である入力画像における背景を平面で近似することにより、背景である非定常成分を抽出する。図32において、実線は、データ3の画素値を示し、点線は、背景を近似する平面で示される近似値を示す。図32において、Aは、細線の画像が射影された画素の画素値を示し、PLは、背景を近似する平面を示す。
【0296】
このように、データの定常性を有する画像データの部分における、複数の画素の画素値は、非定常成分に対して不連続となる。
【0297】
非定常成分抽出部201は、実世界1の光信号である画像が射影され、実世界1の画像の定常性の一部が欠落した、データ3である画像データの複数の画素の画素値の不連続部を検出する。
【0298】
非定常成分抽出部201における非定常成分の抽出の処理の詳細は、後述する。
【0299】
頂点検出部202および単調増減検出部203は、非定常成分抽出部201から供給された非定常成分情報を基に、入力画像から非定常成分を除去する。例えば、頂点検出部202および単調増減検出部203は、入力画像の各画素のうち、背景の画像のみが射影された画素の画素値を0に設定することにより、入力画像から非定常成分を除去する。また、例えば、頂点検出部202および単調増減検出部203は、入力画像の各画素の画素値から、平面PLで近似される値を引き算することにより、入力画像から非定常成分を除去する。
【0300】
入力画像から背景を除去することができるので、頂点検出部202乃至連続性検出部204は、細線が射影された画像データの部分のみを処理の対象とすることができ、頂点検出部202乃至連続性検出部204における処理がより容易になる。
【0301】
なお、非定常成分抽出部201は、入力画像から非定常成分を除去した画像データを頂点検出部202および単調増減検出部203に供給するようにしてもよい。
【0302】
以下に説明する処理の例において、入力画像から非定常成分が除去された画像データ、すなわち、定常成分を含む画素のみからなる画像データが対象となる。
【0303】
ここで、頂点検出部202乃至連続性検出部204が検出しようとする、細線の画像が射影された画像データについて説明する。
【0304】
図31で示される細線の画像が射影された画像データの空間方向Yの断面形状(空間方向の位置の変化に対する画素値の変化)は、光学LPFがないとした場合、センサ2であるイメージセンサの空間積分効果から、図33に示す台形、または図34に示す三角形となることが考えられる。しかしながら、通常のイメージセンサは、光学LPFを備え、イメージセンサは、光学LPFを通過した画像を取得し、取得した画像をデータ3に射影するので、現実には、細線の画像データの空間方向Yの断面形状は、図35に示すようなガウス分布に類似した形状となる。
【0305】
頂点検出部202乃至連続性検出部204は、細線の画像が射影された画素であって、同じ断面形状(空間方向の位置の変化に対する画素値の変化)が画面の上下方向に一定の間隔で並ぶものからなる領域を検出して、さらに、実世界1の細線の長さ方向に対応した、領域の繋がりを検出することにより、データの定常性を有する領域である、細線の画像が射影された画素からなる領域を検出する。
すなわち、頂点検出部202乃至連続性検出部204は、入力画像における、縦に1列の画素の上に、円弧形状(かまぼこ型)が形成される領域を検出し、検出された領域が横方向に隣接して並んでいるか否かを判定して、実世界1の信号である細線の画像の長さ方向に対応した、円弧形状が形成される領域の繋がりを検出する。
【0306】
また、頂点検出部202乃至連続性検出部204は、細線の画像が射影された画素であって、同じ断面形状が画面の左右方向に一定の間隔で並ぶものからなる領域を検出して、さらに、実世界1の細線の長さ方向に対応した、検出された領域の繋がりを検出することにより、データの定常性を有する領域である、細線の画像が射影された画素からなる領域を検出する。すなわち、頂点検出部202乃至連続性検出部204は、入力画像における、横に1列の画素の上に、円弧形状が形成される領域を検出し、検出された領域が縦方向に隣接して並んでいるか否かを判定して、実世界1の信号である細線の画像の長さ方向に対応した、円弧形状が形成される領域の繋がりを検出する。
【0307】
まず、細線の画像が射影された画素であって、画面の上下方向に同じ円弧形状が一定の間隔で並ぶものからなる領域を検出する処理を説明する。
【0308】
頂点検出部202は、周囲の画素に比較して、より大きい画素値を有する画素、すなわち頂点を検出し、頂点の位置を示す頂点情報を単調増減検出部203に供給する。画面の上下方向に1列に並ぶ画素を対象とした場合、頂点検出部202は、画面の上側に位置する画素の画素値、および画面の下側に位置する画素の画素値に比較して、より大きい画素値を有する画素を頂点として検出する。頂点検出部202は、1つの画像、例えば、1つのフレームの画像から、1または複数の頂点を検出する。
【0309】
1つの画面には、フレームまたはフィールドが含まれる。以下の説明において、同様である。
【0310】
例えば、頂点検出部202は、1フレームの画像からまだ注目画素とされていない画素の中から注目画素を選択し、注目画素の画素値と、注目画素の上側の画素の画素値とを比較し、注目画素の画素値と、注目画素の下側の画素の画素値とを比較して、上側の画素の画素値より大きい画素値を有し、下側の画素の画素値より大きい画素値を有する注目画素を検出して、検出された注目画素を頂点とする。頂点検出部202は、検出された頂点を示す頂点情報を単調増減検出部203に供給する。
【0311】
頂点検出部202が、頂点を検出しない場合もある。例えば、1つの画像の画素の画素値が全て同じ値であるとき、または、1若しくは2の方向に対して画素値が減少しているとき、頂点は検出されない。この場合、細線の画像は、画像データに射影されていない。
【0312】
単調増減検出部203は、頂点検出部202から供給された、頂点の位置を示す頂点情報を基に、頂点検出部202で検出された頂点に対して上下方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補を検出し、頂点情報と共に、検出した領域を示す領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0313】
より具体的には、単調増減検出部203は、頂点の画素値を基準として、単調減少している画素値を有する画素からなる領域を、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補として検出する。単調減少とは、頂点からの距離がより長い画素の画素値が、頂点からの距離が短い画素の画素値に比較して、より小さいことをいう。
【0314】
また、単調増減検出部203は、頂点の画素値を基準として、単調増加している画素値を有する画素からなる領域を、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補として検出する。単調増加とは、頂点からの距離がより長い画素の画素値が、頂点からの距離が短い画素の画素値に比較して、より大きいことをいう。
【0315】
以下、単調増加している画素値を有する画素からなる領域についての処理は、単調減少している画素値を有する画素からなる領域についての処理と同様なので、その説明は省略する。細線の画像が射影された画素であって、画面の横方向に同じ円弧形状が一定の間隔で並ぶものからなる領域を検出する処理における、単調増加している画素値を有する画素からなる領域についての処理も、単調減少している画素値を有する画素からなる領域についての処理と同様なので、その説明は省略する。
【0316】
例えば、単調増減検出部203は、頂点に対して縦に1列に各画素について、各画素の画素値と、上側の画素の画素値との差分、および下側の画素の画素値との差分を求める。そして、単調増減検出部203は、差分の符号が変化する画素を検出することにより、画素値が単調減少している領域を検出する。
【0317】
さらに、単調増減検出部203は、画素値が単調減少している領域から、頂点の画素値の符号を基準として、頂点の画素値の符号と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補として検出する。
【0318】
例えば、単調増減検出部203は、各画素の画素値の符号と、上側の画素の画素値の符号および下側の画素の画素値の符号とを比較し、画素値の符号が変化する画素を検出することにより、画素値が単調減少している領域から、頂点と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を検出する。
【0319】
このように、単調増減検出部203は、上下方向に並び、頂点に対して画素値が単調減少し、頂点と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を検出する。
【0320】
図36は、空間方向Yの位置に対する画素値から、細線の画像が射影された画素の領域を検出する、頂点の検出および単調増減領域の検出の処理を説明する図である。
【0321】
図36乃至図38において、Pは、頂点を示す。図30で構成が示されるデータ定常性検出部101の説明において、Pは、頂点を示す。
【0322】
頂点検出部202は、各画素の画素値と、これに空間方向Yに隣接する画素の画素値とを比較して、空間方向Yに隣接する2つの画素の画素値より大きい画素値を有する画素を検出することにより、頂点Pを検出する。
【0323】
頂点Pと、頂点Pの空間方向Yの両側の画素とからなる領域は、頂点Pの画素値に対して、空間方向Yの両側の画素の画素値が単調に減少する単調減少領域である。図36において、Aで示す矢印、およびBで示す矢印は、頂点Pの両側に存在する単調減少領域を示す。
【0324】
単調増減検出部203は、各画素の画素値と、その画素に空間方向Yに隣接する画素の画素値との差分を求めて、差分の符号が変化する画素を検出する。単調増減検出部203は、検出された、差分の符号が変化する画素と、その手前側(頂点P側)の画素との境界を、細線の画像が射影された画素からなる細線領域の境界とする。
【0325】
図36において、差分の符号が変化する画素と、その手前側(頂点P側)の画素との境界である細線領域の境界はCで示される。
【0326】
さらに、単調増減検出部203は、単調減少領域において、各画素の画素値の符号と、その画素に空間方向Yに隣接する画素の画素値の符号とを比較し、画素値の符号が変化する画素を検出する。単調増減検出部203は、検出された、差分の符号が変化する画素と、その手前側(頂点P側)の画素との境界を細線領域の境界とする。
【0327】
図36において、差分の符号が変化する画素と、その手前側(頂点P側)の画素との境界である細線領域の境界はDで示される。
【0328】
図36で示されるように、細線の画像が射影された画素からなる細線領域Fは、細線領域の境界Cと、細線領域の境界Dとに挟まれる領域とされる。
【0329】
単調増減検出部203は、このような単調増減領域からなる細線領域Fの中から、予め定めた閾値より長い細線領域F、すなわち、閾値より多い数の画素を含む細線領域Fを求める。例えば、閾値が3であるとき、単調増減検出部203は、4つ以上の画素を含む細線領域Fを検出する。
【0330】
さらに、このように検出された細線領域Fの中から、単調増減検出部203は、頂点Pの画素値、および頂点Pの右側の画素の画素値、および頂点Pの左側の画素の画素値を、それぞれ閾値と比較し、頂点Pの画素値が閾値を超え、頂点Pの右側の画素の画素値が閾値以下であり、頂点Pの左側の画素の画素値が閾値以下である頂点Pが属する細線領域Fを検出し、検出された細線領域Fを細線の画像の成分を含む画素からなる領域の候補とする。
【0331】
言い換えれば、頂点Pの画素値が閾値以下であるか、頂点Pの右側の画素の画素値が閾値を超えるか、または頂点Pの左側の画素の画素値が閾値を超える頂点Pが属する細線領域Fは、細線の画像の成分を含まないと判定され、細線の画像の成分を含む画素からなる領域の候補から除去される。
【0332】
すなわち、図37で示されるように、単調増減検出部203は、頂点Pの画素値を閾値と比較すると共に、頂点Pに対して、空間方向X(点線AA’で示す方向)に隣接する画素の画素値を、閾値と比較し、頂点Pの画素値が閾値を超え、空間方向Xに隣接する画素の画素値が閾値以下である、頂点Pが属する細線領域Fを検出する。
【0333】
図38は、図37の点線AA’で示す空間方向Xに並ぶ画素の画素値を表す図である。頂点Pの画素値が閾値Thを超え、頂点Pの空間方向Xに隣接する画素の画素値が、閾値Th以下である、頂点Pが属する細線領域Fは、細線の成分を含む。
【0334】
なお、単調増減検出部203は、背景の画素値を基準として、頂点Pの画素値と背景の画素値との差分を閾値と比較すると共に、頂点Pに対して、空間方向Xに隣接する画素の画素値と背景の画素値との差分を、閾値と比較し、頂点Pの画素値と背景の画素値との差分が閾値を超え、空間方向Xに隣接する画素の画素値と背景の画素値との差分が閾値以下である、頂点Pが属する細線領域Fを検出するようにしてもよい。
【0335】
単調増減検出部203は、頂点Pを基準として、画素値が単調減少し、画素値の符号が頂点Pと同じである画素からなる領域であって、その頂点Pが閾値を超え、頂点Pの右側の画素の画素値が閾値以下であり、頂点Pの左側の画素の画素値が閾値以下であるものを示す単調増減領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0336】
画面の上下方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を検出する場合において、単調増減領域情報により示される領域に属する画素は、上下方向に並び、細線の画像が射影された画素を含む。すなわち、単調増減領域情報により示される領域は、画面の上下方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を含む。
【0337】
このように、頂点検出部202および単調増減検出部203は、細線の画像が射影された画素において、空間方向Yの画素値の変化が、ガウス分布に類似するという性質を利用して、細線の画像が射影された画素からなる定常領域を検出する。
【0338】
連続性検出部204は、単調増減検出部203から供給された単調増減領域情報で示される、上下方向に並ぶ画素からなる領域のうち、横方向に隣接している画素を含む領域、すなわち、相似した画素値の変化を有し、縦方向に重複している領域を、連続している領域として検出し、頂点情報、および検出された連続している領域を示すデータ定常性情報を出力する。データ定常性情報は、単調増減領域情報、および領域の繋がりを示す情報などを含んでいる。
【0339】
細線が射影された画素において、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶので、検出された連続している領域は、細線が射影された画素を含んでいる。
【0340】
検出された連続している領域が、細線が射影された、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶ画素を含むので、検出された連続している領域を定常領域とし、連続性検出部204は、検出された連続している領域を示すデータ定常性情報を出力する。
【0341】
すなわち、連続性検出部204は、長さ方向に連続するという、実世界1の細線の画像の定常性から生じた、細線を撮像して得られたデータ3における、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶ定常性を利用して、頂点検出部202および単調増減検出部203において検出された領域の候補をさらに絞り込む。
【0342】
図39は、単調増減領域の連続性を検出の処理を説明する図である。
【0343】
図39に示すように、連続性検出部204は、画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる細線領域Fについて、横方向に隣接する画素を含んでいるとき、2つの単調増減領域の間に連続性があるとし、横方向に隣接する画素を含んでいないとき、2つの細線領域Fの間に連続性がないとする。例えば、画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる細線領域F−1は、画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる細線領域Fの画素と横方向に隣接する画素を含んでいるとき、細線領域Fと連続しているとされる。画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる細線領域Fは、画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる細線領域Fの画素と横方向に隣接する画素を含んでいるとき、細線領域Fと連続しているとされる。
【0344】
このように、頂点検出部202乃至連続性検出部204により、画面の上下方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域が検出される。
【0345】
頂点検出部202乃至連続性検出部204は、上述したように、画面の上下方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を検出し、さらに、画面の左右方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を検出する。
【0346】
なお、処理の順序は、特に限定されるものではなく、並列に実行するようにしても良いことは当然である。
【0347】
すなわち、頂点検出部202は、画面の左右方向に1列に並ぶ画素を対象として、画面の左側に位置する画素の画素値、および画面の右側に位置する画素の画素値に比較して、より大きい画素値を有する画素を頂点として検出し、検出した頂点の位置を示す頂点情報を単調増減検出部203に供給する。頂点検出部202は、1つの画像、例えば、1フレームの画像から、1または複数の頂点を検出する。
【0348】
例えば、頂点検出部202は、1フレームの画像からまだ注目画素とされていない画素の中から注目画素を選択し、注目画素の画素値と、注目画素の左側の画素の画素値とを比較し、注目画素の画素値と、注目画素の右側の画素の画素値とを比較して、左側の画素の画素値より大きい画素値を有し、右側の画素の画素値より大きい画素値を有する注目画素を検出して、検出された注目画素を頂点とする。頂点検出部202は、検出された頂点を示す頂点情報を単調増減検出部203に供給する。
【0349】
頂点検出部202が、頂点を検出しない場合もある。
【0350】
単調増減検出部203は、頂点検出部202で検出された頂点に対して左右方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補を検出検出し、頂点情報と共に、検出した領域を示す単調増減領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0351】
より具体的には、単調増減検出部203は、頂点の画素値を基準として、単調減少している画素値を有する画素からなる領域を、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補として検出する。
【0352】
例えば、単調増減検出部203は、頂点に対して横に1列の各画素について、各画素の画素値と、左側の画素の画素値との差分、および右側の画素の画素値との差分を求める。そして、単調増減検出部203は、差分の符号が変化する画素を検出することにより、画素値が単調減少している領域を検出する。
【0353】
さらに、単調増減検出部203は、画素値が単調減少している領域から、頂点の画素値の符号を基準として、頂点の画素値の符号と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補として検出する。
【0354】
例えば、単調増減検出部203は、各画素の画素値の符号と、左側の画素の画素値の符号または右側の画素の画素値の符号とを比較し、画素値の符号が変化する画素を検出することにより、画素値が単調減少している領域から、頂点と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を検出する。
【0355】
このように、単調増減検出部203は、左右方向に並び、頂点に対して画素値が単調減少し、頂点と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を検出する。
【0356】
単調増減検出部203は、このような単調増減領域からなる細線領域の中から、予め定めた閾値より長い細線領域、すなわち、閾値より多い数の画素を含む細線領域を求める。
【0357】
さらに、このように検出された細線領域の中から、単調増減検出部203は、頂点の画素値、および頂点の上側の画素の画素値、および頂点の下側の画素の画素値を、それぞれ閾値と比較し、頂点の画素値が閾値を超え、頂点の上側の画素の画素値が閾値以下であり、頂点の下側の画素の画素値が閾値以下である頂点が属する細線領域を検出し、検出された細線領域を細線の画像の成分を含む画素からなる領域の候補とする。
【0358】
言い換えれば、頂点の画素値が閾値以下であるか、頂点の上側の画素の画素値が閾値を超えるか、または頂点の下側の画素の画素値が閾値を超える頂点が属する細線領域は、細線の画像の成分を含まないと判定され、細線の画像の成分を含む画素からなる領域の候補から除去される。
【0359】
なお、単調増減検出部203は、背景の画素値を基準として、頂点の画素値と背景の画素値との差分を閾値と比較すると共に、頂点に対して、上下方向に隣接する画素の画素値と背景の画素値との差分を、閾値と比較し、頂点の画素値と背景の画素値との差分が閾値を超え、上下方向に隣接する画素の画素値と背景の画素値との差分が閾値以下である、検出された細線領域を細線の画像の成分を含む画素からなる領域の候補とするようにしてもよい。
【0360】
単調増減検出部203は、頂点を基準として、画素値が単調減少し、画素値の符号が頂点と同じである画素からなる領域であって、その頂点が閾値を超え、頂点の右側の画素の画素値が閾値以下であり、頂点の左側の画素の画素値が閾値以下であるものを示す単調増減領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0361】
画面の左右方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を検出する場合において、単調増減領域情報により示される領域に属する画素は、左右方向に並び、細線の画像が射影された画素を含む。すなわち、単調増減領域情報により示される領域は、画面の左右方向に並ぶ1列の画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を含む。
【0362】
連続性検出部204は、単調増減検出部203から供給された単調増減領域情報で示される、左右方向に並ぶ画素からなる領域のうち、縦方向に隣接している画素を含む領域、すなわち、相似した画素値の変化を有し、横方向に重複している領域を、連続している領域として検出し、頂点情報、および検出された連続している領域を示すデータ定常性情報を出力する。データ定常性情報は、領域の繋がりを示す情報を含んでいる。
【0363】
細線が射影された画素において、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶので、検出された連続している領域は、細線が射影された画素を含んでいる。
【0364】
検出された連続している領域が、細線が射影された、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶ画素を含むので、検出された連続している領域を定常領域とし、連続性検出部204は、検出された連続している領域を示すデータ定常性情報を出力する。
【0365】
すなわち、連続性検出部204は、長さ方向に連続するという、実世界1の細線の画像の定常性から生じた、細線を撮像して得られたデータ3における、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶ定常性を利用して、頂点検出部202および単調増減検出部203において検出された領域の候補をさらに絞り込む。
【0366】
このように、データ定常性検出部101は、入力画像であるデータ3に含まれている定常性を検出することができる。すなわち、データ定常性検出部101は、細線である実世界1の画像がデータ3に射影されることにより生じた、データ3に含まれるデータの定常性を検出することができる。データ定常性検出部101は、データ3から、細線である実世界1の画像が射影された画素からなる領域を検出する。
【0367】
図40は、定常性検出部101における、細線の画像が射影された、定常性を有する領域の検出の他の処理の例を示す図である。
【0368】
定常性検出部101は、図40に示すように、各画素について、隣接する画素との画素値の差分の絶対値を計算する。計算された差分の絶対値は、画素に対応させて、配置される。例えば、図40に示すように、画素値がそれぞれP0、P1、P2である画素が並んでいるとき、定常性検出部101は、差分d0=P0−P1および差分d1=P1−P2を計算する。さらに、定常性検出部101は、差分d0および差分d1の絶対値を算出する。
【0369】
画素値P0、P1、およびP2に含まれている非定常性成分が同一であるとき、差分d0および差分d1には、細線の成分に対応した値のみが設定されることになる。
【0370】
従って、定常性検出部101は、画素に対応させて配置されている差分の絶対値のうち、隣り合う差分の値が同一であるとき、その2つの差分の絶対値に対応する画素(2つの差分の絶対値に挟まれた画素)に細線の成分が含まれていると判定する。
【0371】
定常性検出部101においては、このような、簡便な方法で細線を検出することもできる。
【0372】
図41は、定常性検出の処理を説明するフローチャートである。
【0373】
ステップS201において、非定常成分抽出部201は、入力画像から、細線が射影された部分以外の部分である非定常成分を抽出する。非定常成分抽出部201は、入力画像と共に、抽出された非定常成分を示す非定常成分情報を頂点検出部202および単調増減検出部203に供給する。非定常成分の抽出の処理の詳細は、後述する。
【0374】
ステップS202において、頂点検出部202は、非定常成分抽出部201から供給された非定常成分情報を基に、入力画像から非定常成分を除去し、入力画像に定常成分を含む画素のみを残す。さらに、ステップS202において、頂点検出部202は、頂点を検出する。
【0375】
すなわち、頂点検出部202は、画面の縦方向を基準として、処理を実行する場合、定常成分を含む画素について、各画素の画素値と、上側および下側の画素の画素値とを比較して、上側の画素の画素値および下側の画素の画素値より大きい画素値を有する画素を検出することにより、頂点を検出する。また、ステップS202において、頂点検出部202は、画面の横方向を基準として、処理を実行する場合、定常成分を含む画素について、各画素の画素値と、右側および左側の画素の画素値とを比較して、右側の画素の画素値および左側の画素の画素値より大きい画素値を有する画素を検出することにより、頂点を検出する。
【0376】
頂点検出部202は、検出した頂点を示す頂点情報を単調増減検出部203に供給する。
【0377】
ステップS203において、単調増減検出部203は、非定常成分抽出部201から供給された非定常成分情報を基に、入力画像から非定常成分を除去し、入力画像に定常成分を含む画素のみを残す。さらに、ステップS203において、単調増減検出部203は、頂点検出部202から供給された、頂点の位置を示す頂点情報を基に、頂点に対する単調増減を検出することにより、データの定常性を有する画素からなる領域を検出する。
【0378】
単調増減検出部203は、画面の縦方向を基準として、処理を実行する場合、頂点の画素値、および頂点に対して縦に1列に並ぶ画素の画素値を基に、縦に並ぶ1列の画素であって、1つの細線の画像が射影された画素からなる単調増減を検出することにより、データの定常性を有する画素からなる領域を検出する。すなわち、ステップS203において、単調増減検出部203は、画面の縦方向を基準として、処理を実行する場合、頂点および頂点に対して縦に1列に並ぶ画素について、各画素の画素値と、上側または下側の画素の画素値との差分を求めて、差分の符号が変化する画素を検出する。また、単調増減検出部203は、頂点および頂点に対して縦に1列に並ぶ画素について、各画素の画素値の符号と、その画素の上側または下側の画素の画素値の符号とを比較し、画素値の符号が変化する画素を検出する。さらに、単調増減検出部203は、頂点の画素値、並びに頂点の右側および左側の画素の画素値を、閾値と比較し、頂点の画素値が閾値を超え、右側および左側の画素の画素値が閾値以下である画素からなる領域を検出する。
【0379】
単調増減検出部203は、このように検出された領域を単調増減領域として、単調増減領域を示す単調増減領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0380】
また、単調増減検出部203は、画面の横方向を基準として、処理を実行する場合、頂点の画素値、および頂点に対して横に1列に並ぶ画素の画素値を基に、横に並ぶ1列の画素であって、1つの細線の画像が射影された画素からなる単調増減を検出することにより、データの定常性を有する画素からなる領域を検出する。すなわち、ステップS203において、単調増減検出部203は、画面の横方向を基準として、処理を実行する場合、頂点および頂点に対して横に1列に並ぶ画素について、各画素の画素値と、左側または右側の画素の画素値との差分を求めて、差分の符号が変化する画素を検出する。また、単調増減検出部203は、頂点および頂点に対して横に1列に並ぶ画素について、各画素の画素値の符号と、その画素の左側または右側の画素の画素値の符号とを比較し、画素値の符号が変化する画素を検出する。さらに、単調増減検出部203は、頂点の画素値、並びに頂点の上側および下側の画素の画素値を、閾値と比較し、頂点の画素値が閾値を超え、上側および下側の画素の画素値が閾値以下である画素からなる領域を検出する。
【0381】
単調増減検出部203は、このように検出された領域を単調増減領域として、単調増減領域を示す単調増減領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0382】
ステップS204において、単調増減検出部203は、全画素の処理が終了したか否かを判定する。例えば、非定常成分抽出部201は、入力画像の1つの画面(例えば、フレームまたはフィールドなど)の全画素について、頂点を検出し、単調増減領域を検出したか否かを判定する。
【0383】
ステップS204において、全画素の処理が終了していない、すなわち、頂点の検出および単調増減領域の検出の処理の対象とされていない画素がまだあると判定された場合、ステップS202に戻り、頂点の検出および単調増減領域の検出の処理の対象とされていない画素から処理の対象となる画素を選択して、頂点の検出および単調増減領域の検出の処理を繰り返す。
【0384】
ステップS204において、全画素の処理が終了した、すなわち、全ての画素を対象として頂点および単調増減領域が検出されたと判定された場合、ステップS205に進み、連続性検出部204は、単調増減領域情報を基に、検出された領域の連続性を検出する。例えば、連続性検出部204は、単調増減領域情報で示される、画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる単調増減領域について、横方向に隣接する画素を含んでいるとき、2つの単調増減領域の間に連続性があるとし、横方向に隣接する画素を含んでいないとき、2つの単調増減領域の間に連続性がないとする。例えば、連続性検出部204は、単調増減領域情報で示される、画面の横方向に1列に並ぶ画素からなる単調増減領域について、縦方向に隣接する画素を含んでいるとき、2つの単調増減領域の間に連続性があるとし、縦方向に隣接する画素を含んでいないとき、2つの単調増減領域の間に連続性がないとする。
【0385】
連続性検出部204は、検出された連続している領域をデータの定常性を有する定常領域とし、頂点の位置および定常領域を示すデータ定常性情報を出力する。データ定常性情報は、領域の繋がりを示す情報を含んでいる。連続性検出部204から出力されるデータ定常性情報は、実世界1の細線の画像が射影された画素からなる、定常領域である細線領域を示す。
【0386】
ステップS206において、定常性方向検出部205は、全画素の処理が終了したか否かを判定する。すなわち、定常性方向検出部205は、入力画像の所定のフレームの全画素について、領域の連続性を検出したか否かを判定する。
【0387】
ステップS206において、全画素の処理が終了していない、すなわち、領域の連続性の検出の処理の対象とされていない画素がまだあると判定された場合、ステップS205に戻り、領域の連続性の検出の処理の対象とされていない画素から処理の対象となる画素を選択して、領域の連続性の検出の処理を繰り返す。
【0388】
ステップS206において、全画素の処理が終了した、すなわち、全ての画素を対象として領域の連続性が検出されたと判定された場合、処理は終了する。
【0389】
このように、入力画像であるデータ3に含まれている定常性が検出される。すなわち、細線である実世界1の画像がデータ3に射影されることにより生じた、データ3に含まれるデータの定常性が検出され、データ3から、細線である実世界1の画像が射影された画素からなる、データの定常性を有する領域が検出される。
【0390】
なお、図30で構成が示されるデータ定常性検出部101は、データ3のフレームから検出されたデータの定常性を有する領域を基に、時間方向のデータの定常性を検出することができる。
【0391】
例えば、図42に示すように、連続性検出部204は、フレーム#nにおいて、検出されたデータの定常性を有する領域、フレーム#n−1において、検出されたデータの定常性を有する領域、およびフレーム#n+1において、検出されたデータの定常性を有する領域を基に、領域の端部を結ぶことにより、時間方向のデータの定常性を検出する。
【0392】
フレーム#n−1は、フレーム#nに対して時間的に前のフレームであり、フレーム#n+1は、フレーム#nに対して時間的に後のフレームである。すなわち、フレーム#n−1、フレーム#n、およびフレーム#n+1は、フレーム#n−1、フレーム#n、およびフレーム#n+1の順で表示される。
【0393】
より具体的には、図42において、Gは、フレーム#nにおいて、検出されたデータの定常性を有する領域、フレーム#n−1において、検出されたデータの定常性を有する領域、およびフレーム#n+1において、検出されたデータの定常性を有する領域のそれぞれの一端を結ぶことにより得られた動きベクトルを示し、G’は、検出されたデータの定常性を有する領域のそれぞれの他の一端を結ぶことにより得られた動きベクトルを示す。動きベクトルGおよび動きベクトルG’は、時間方向のデータの定常性の一例である。
【0394】
さらに、図30で構成が示されるデータ定常性検出部101は、データの定常性を有する領域の長さを示す情報を、データ定常性情報として出力することができる。
【0395】
図43は、データの定常性を有しない画像データの部分である非定常成分を平面で近似して、非定常成分を抽出する、非定常成分抽出部201の構成を示すブロック図である。
【0396】
図43に構成を示す非定常成分抽出部201は、入力画像から所定の数の画素でなるブロックを抽出し、ブロックと平面で示される値との誤差が所定の閾値未満になるように、ブロックを平面で近似して、非定常成分を抽出する。
【0397】
入力画像は、ブロック抽出部221に供給されるとともに、そのまま出力される。
【0398】
ブロック抽出部221は、入力画像から、所定の数の画素からなるブロックを抽出する。例えば、ブロック抽出部221は、7×7の画素からなるブロックを抽出し、平面近似部222に供給する。例えば、ブロック抽出部221は、抽出されるブロックの中心となる画素をラスタスキャン順に移動させ、順次、入力画像からブロックを抽出する。
【0399】
平面近似部222は、ブロックに含まれる画素の画素値を所定の平面で近似する。例えば、平面近似部222は、式(32)で表される平面でブロックに含まれる画素の画素値を近似する。
【0400】
【数32】
Figure 2005018534
・・・(32)
【0401】
式(32)において、xは、画素の画面上の一方の方向(空間方向X)の位置を示し、yは、画素の画面上の他の一方の方向(空間方向Y)の位置を示す。zは、平面で示される近似値を示す。aは、平面の空間方向Xの傾きを示し、bは、平面の空間方向Yの傾きを示す。式(32)において、cは、平面のオフセット(切片)を示す。
【0402】
例えば、平面近似部222は、回帰の処理により、傾きa、傾きb、およびオフセットcを求めることにより、式(32)で表される平面で、ブロックに含まれる画素の画素値を近似する。平面近似部222は、棄却を伴う回帰の処理により、傾きa、傾きb、およびオフセットcを求めることにより、式(32)で表される平面で、ブロックに含まれる画素の画素値を近似する。
【0403】
例えば、平面近似部222は、最小自乗法により、ブロックの画素の画素値に対して、誤差が最小となる式(32)で表される平面を求めることにより、平面でブロックに含まれる画素の画素値を近似する。
【0404】
なお、平面近似部222は、式(32)で表される平面でブロックを近似すると説明したが、式(32)で表される平面に限らず、より高い自由度をもった関数、例えば、n次の多項式で表される面でブロックを近似するようにしてもよい。
【0405】
繰り返し判定部223は、ブロックの画素値を近似した平面で示される近似値と、ブロックの対応する画素の画素値との誤差を計算する。式(33)は、ブロックの画素値を近似した平面で示される近似値と、ブロックの対応する画素の画素値zとの差分である誤差eを示す式である。
【0406】
【数33】
Figure 2005018534
・・・(33)
【0407】
式(33)において、zハット(zに^を付した文字をzハットと記述する。以下、本明細書において、同様に記載する。)は、ブロックの画素値を近似した平面で示される近似値を示し、aハットは、ブロックの画素値を近似した平面の空間方向Xの傾きを示し、bハットは、ブロックの画素値を近似した平面の空間方向Yの傾きを示す。式(33)において、cハットは、ブロックの画素値を近似した平面のオフセット(切片)を示す。
【0408】
繰り返し判定部223は、式(33)で示される、近似値とブロックの対応する画素の画素値との誤差eが、最も大きい画素を棄却する。このようにすることで、細線が射影された画素、すなわち定常性を有する画素が棄却されることになる。繰り返し判定部223は、棄却した画素を示す棄却情報を平面近似部222に供給する。
【0409】
さらに、繰り返し判定部223は、標準誤差を算出して、標準誤差が、予め定めた近似終了判定用の閾値以上であり、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されていないとき、繰り返し判定部223は、平面近似部222に、ブロックに含まれる画素のうち、棄却された画素を除いた画素を対象として、平面による近似の処理を繰り返させる。
【0410】
定常性を有する画素が棄却されるので、棄却された画素を除いた画素を対象として平面で近似をすることにより、平面は、非定常成分を近似することになる。
【0411】
繰り返し判定部223は、標準誤差が、近似終了判定用の閾値未満であるとき、または、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されたとき、平面による近似を終了する。
【0412】
5×5の画素からなるブロックについて、標準誤差eは、例えば、式(34)で算出される。
【0413】
【数34】
Figure 2005018534
・・・(34)
ここで、nは、画素の数である。
【0414】
なお、繰り返し判定部223は、標準誤差に限らず、ブロックに含まれる全ての画素についての誤差の2乗の和を算出して、以下の処理を実行するようにしてもよい。
【0415】
ここで、ラスタスキャン方向に1画素ずつずれたブロックを平面で近似するとき、図44に示すように、図中黒丸で示す、定常性を有する画素、すなわち細線の成分を含む画素は、複数回棄却されることになる。
【0416】
繰り返し判定部223は、平面による近似を終了したとき、ブロックの画素値を近似した平面を示す情報(式(32)の平面の傾きおよび切片)を、非定常成分情報として出力する。
【0417】
なお、繰り返し判定部223は、画素毎の棄却された回数と予め定めた閾値とを比較して、棄却された回数が閾値以上である画素を定常成分を含む画素であるとして、定常成分を含む画素を示す情報を定常成分情報として出力するようにしてもよい。この場合、頂点検出部202乃至定常性方向検出部205は、定常成分情報で示される、定常成分を含む画素を対象として、それぞれの処理を実行する。
【0418】
棄却された回数、ブロックの画素の画素値を近似する平面の空間方向Xの傾き、ブロックの画素の画素値を近似する平面の空間方向Yの傾き、ブロックの画素の画素値を近似する平面で示される近似値、および誤差eは、入力画像の特徴量としても利用することができる。
【0419】
図45は、ステップS201に対応する、図43に構成を示す非定常成分抽出部201による、非定常成分の抽出の処理を説明するフローチャートである。
【0420】
ステップS221において、ブロック抽出部221は、入力画素から、所定の数の画素からなるブロックを抽出し、抽出したブロックを平面近似部222に供給する。例えば、ブロック抽出部221は、入力画素から、まだ、選択されていない画素のうち、1つの画素を選択し、選択された画素を中心とする7×7の画素からなるブロックを抽出する。例えば、ブロック抽出部221は、ラスタスキャン順に画素を選択することができる。
【0421】
ステップS222において、平面近似部222は、抽出されたブロックを平面で近似する。平面近似部222は、例えば、回帰の処理により、抽出されたブロックの画素の画素値を、平面で近似する。例えば、平面近似部222は、回帰の処理により、抽出されたブロックの画素のうち、棄却された画素を除いた画素の画素値を、平面で近似する。ステップS223において、繰り返し判定部223は、繰り返し判定を実行する。例えば、ブロックの画素の画素値と近似した平面の近似値とから標準誤差を算出し、棄却された画素の数をカウントすることにより、繰り返し判定を実行する。
【0422】
ステップS224において、繰り返し判定部223は、標準誤差が閾値以上であるか否かを判定し、標準誤差が閾値以上であると判定された場合、ステップS225に進む。
【0423】
なお、ステップS224において、繰り返し判定部223は、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されたか否か、および標準誤差が閾値以上であるか否かを判定し、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されておらず、標準誤差が閾値以上であると判定された場合、ステップS225に進むようにしてもよい。
【0424】
ステップS225において、繰り返し判定部223は、ブロックの画素毎に、画素の画素値と近似した平面の近似値との誤差を算出し、誤差が最も大きい画素を棄却し、平面近似部222に通知する。手続きは、ステップS222に戻り、棄却された画素を除いた、ブロックの画素を対象として、平面による近似の処理および繰り返し判定の処理が繰り返される。
【0425】
ステップS225において、ラスタスキャン方向に1画素ずつずれたブロックがステップS221の処理で抽出される場合、図44に示すように、細線の成分を含む画素(図中の黒丸で示す)は、複数回棄却されることになる。
【0426】
ステップS224において、標準誤差が閾値以上でないと判定された場合、ブロックが平面で近似されたので、ステップS226に進む。
【0427】
なお、ステップS224において、繰り返し判定部223は、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されたか否か、および標準誤差が閾値以上であるか否かを判定し、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されたか、または標準誤差が閾値以上でないと判定された場合、ステップS225に進むようにしてもよい。
【0428】
ステップS226において、繰り返し判定部223は、ブロックの画素の画素値を近似する平面の傾きおよび切片を、非定常成分情報として出力する。
【0429】
ステップS227において、ブロック抽出部221は、入力画像の1つの画面の全画素について処理を終了したか否かを判定し、まだ処理の対象となってない画素があると判定された場合、ステップS221に戻り、まだ処理の対象となっていない画素からブロックを抽出して、上述した処理を繰り返す。
【0430】
ステップS227において、入力画像の1つの画面の全画素について、処理を終了したと判定された場合、処理は終了する。
【0431】
このように、図43に構成を示す非定常成分抽出部201は、入力画像から非定常成分を抽出することができる。非定常成分抽出部201が入力画像の非定常成分を抽出するので、頂点検出部202および単調増減検出部203は、入力画像と、非定常成分抽出部201で抽出された非定常成分との差分を求めることにより、定常成分を含む差分を対象として処理を実行することができる。
【0432】
なお、平面による近似の処理において算出される、棄却した場合の標準誤差、棄却しない場合の標準誤差、画素の棄却された回数、平面の空間方向Xの傾き(式(32)におけるaハット)、平面の空間方向Yの傾き(式(32)におけるbハット)、平面で置き換えたときのレベル(式(32)におけるcハット)、および入力画像の画素値と平面で示される近似値との差分は、特徴量として利用することができる。
【0433】
図46は、ステップS201に対応する非定常成分の抽出の処理に代わる、図43に構成を示す非定常成分抽出部201による、定常成分の抽出の処理を説明するフローチャートである。ステップS241乃至ステップS245の処理は、ステップS221乃至ステップS225の処理と同様なので、その説明は省略する。
【0434】
ステップS246において、繰り返し判定部223は、平面で示される近似値と入力画像の画素値との差分を、入力画像の定常成分として出力する。すなわち、繰り返し判定部223は、平面による近似値と、真値である画素値との差分を出力する。
【0435】
なお、繰り返し判定部223は、平面で示される近似値と入力画像の画素値との差分が、所定の閾値以上である画素の画素値を、入力画像の定常成分として出力するようにしてもよい。
【0436】
ステップS247の処理は、ステップS227の処理と同様なので、その説明は省略する。
【0437】
平面が非定常成分を近似しているので、非定常成分抽出部201は、入力画像の各画素の画素値から、画素値を近似する平面で示される近似値を引き算することにより、入力画像から非定常成分を除去することができる。この場合、頂点検出部202乃至連続性検出部204は、入力画像の定常成分、すなわち細線の画像が射影された値のみを処理の対象とすることができ、頂点検出部202乃至連続性検出部204における処理がより容易になる。
【0438】
図47は、ステップS201に対応する非定常成分の抽出の処理に代わる、図43に構成を示す非定常成分抽出部201による、定常成分の抽出の他の処理を説明するフローチャートである。ステップS261乃至ステップS265の処理は、ステップS221乃至ステップS225の処理と同様なので、その説明は省略する。
【0439】
ステップS266において、繰り返し判定部223は、画素毎の、棄却の回数を記憶し、ステップS262に戻り、処理を繰り返す。
【0440】
ステップS264において、標準誤差が閾値以上でないと判定された場合、ブロックが平面で近似されたので、ステップS267に進み、繰り返し判定部223は、入力画像の1つの画面の全画素について処理を終了したか否かを判定し、まだ処理の対象となってない画素があると判定された場合、ステップS261に戻り、まだ処理の対象となっていない画素についてブロックを抽出して、上述した処理を繰り返す。
【0441】
ステップS267において、入力画像の1つの画面の全画素について、処理を終了したと判定された場合、ステップS268に進み、繰り返し判定部223は、まだ選択されていない画素から1つの画素を選択し、選択された画素について、棄却の回数が、閾値以上であるか否かを判定する。例えば、繰り返し判定部223は、ステップS268において、選択された画素について、棄却の回数が、予め記憶している閾値以上であるか否かを判定する。
【0442】
ステップS268において、選択された画素について、棄却の回数が、閾値以上であると判定された場合、選択された画素が定常成分を含むので、ステップS269に進み、繰り返し判定部223は、選択された画素の画素値(入力画像における画素値)を入力画像の定常成分として出力し、ステップS270に進む。
【0443】
ステップS268において、選択された画素について、棄却の回数が、閾値以上でないと判定された場合、選択された画素が定常成分を含まないので、ステップS269の処理をスキップして、手続きは、ステップS270に進む。すなわち、棄却の回数が、閾値以上でないと判定された画素は、画素値が出力されない。
【0444】
なお、棄却の回数が、閾値以上でないと判定された画素について、繰り返し判定部223は、0を設定した画素値を出力するようにしてもよい。
【0445】
ステップS270において、繰り返し判定部223は、入力画像の1つの画面の全画素について、棄却の回数が閾値以上であるか否かの判定の処理を終了したか否かを判定し、全画素について処理を終了していないと判定された場合、まだ処理の対象となってない画素があるので、ステップS268に戻り、まだ処理の対象となっていない画素から1つの画素を選択して、上述した処理を繰り返す。
【0446】
ステップS270において、入力画像の1つの画面の全画素について処理を終了したと判定された場合、処理は終了する。
【0447】
このように、非定常成分抽出部201は、定常成分情報として、入力画像の画素のうち、定常成分を含む画素の画素値を出力することができる。すなわち、非定常成分抽出部201は、入力画像の画素のうち、細線の画像の成分を含む画素の画素値を出力することができる。
【0448】
図48は、ステップS201に対応する非定常成分の抽出の処理に代わる、図43に構成を示す非定常成分抽出部201による、定常成分の抽出のさらに他の処理を説明するフローチャートである。ステップS281乃至ステップS288の処理は、ステップS261乃至ステップS268の処理と同様なので、その説明は省略する。
【0449】
ステップS289において、繰り返し判定部223は、平面で示される近似値と、選択された画素の画素値との差分を入力画像の定常成分として出力する。すなわち、繰り返し判定部223は、入力画像から非定常成分を除去した画像を定常性情報として出力する。
【0450】
ステップS290の処理は、ステップS270の処理と同様なので、その説明は省略する。
【0451】
このように、非定常成分抽出部201は、入力画像から非定常成分を除去した画像を定常性情報として出力することができる。
【0452】
以上のように、現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した、第1の画像データの複数の画素の画素値の不連続部を検出し、検出された不連続部からデータの定常性を検出し、検出されたデータの定常性を基に、現実世界の光信号の定常性を推定することにより光信号を推定し、推定された光信号を第2の画像データに変換するようにした場合、現実世界の事象に対して、より正確で、より精度の高い処理結果を得ることができるようになる。
【0453】
図49は、データ定常性検出部101の他の構成を示すブロック図である。
【0454】
図49に構成を示すデータ定常性検出部101においては、注目している画素である注目画素について、入力画像の空間方向に対する画素値の変化、すなわち入力画像の空間方向のアクティビティが検出され、検出されたアクティビティに応じて、注目画素および基準軸を基準とした角度毎に、垂直方向に1列または水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組が、複数抽出され、抽出された画素の組の相関が検出され、相関に基づいて、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度が検出される。
【0455】
データの定常性の角度とは、基準軸と、データ3が有している、一定の特徴が繰り返し現れる所定の次元の方向とがなす角度をいう。一定の特徴が繰り返し現れるとは、例えば、データ3における位置の変化に対する値の変化、すなわち断面形状が同じである場合などをいう。
【0456】
基準軸は、例えば、空間方向Xを示す軸(画面の水平方向)、または空間方向Yを示す軸(画面の垂直方向)などとすることができる。
【0457】
入力画像は、アクティビティ検出部401およびデータ選択部402に供給される。
【0458】
アクティビティ検出部401は、入力画像の空間方向に対する画素値の変化、すなわち空間方向のアクティビティを検出して、検出した結果を示すアクティビティ情報をデータ選択部402および定常方向導出部404に供給する。
【0459】
例えば、アクティビティ検出部401は、画面の水平方向に対する画素値の変化、および画面の垂直方向に対する画素値の変化を検出し、検出された水平方向に対する画素値の変化および垂直方向に対する画素値の変化を比較することにより、垂直方向に対する画素値の変化に比較して、水平方向に対する画素値の変化が大きいか、または水平方向に対する画素値の変化に比較して、垂直方向に対する画素値の変化が大きいかを検出する。
【0460】
アクティビティ検出部401は、検出の結果である、垂直方向に対する画素値の変化に比較して、水平方向に対する画素値の変化が大きいことを示すか、または水平方向に対する画素値の変化に比較して、垂直方向に対する画素値の変化が大きいことを示すアクティビティ情報をデータ選択部402および定常方向導出部404に供給する。
【0461】
垂直方向に対する画素値の変化に比較して、水平方向に対する画素値の変化が大きい場合、例えば、図50で示されるように、垂直方向に1列の画素に円弧形状(かまぼこ型)またはつめ形状が形成され、円弧形状またはつめ形状が垂直により近い方向に繰り返して形成されている。すなわち、垂直方向に対する画素値の変化に比較して、水平方向に対する画素値の変化が大きい場合、基準軸を空間方向Xを示す軸とすると、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度は、45度乃至90度のいずれかの値である。
【0462】
水平方向に対する画素値の変化に比較して、垂直方向に対する画素値の変化が大きい場合、例えば、水平方向に1列の画素に円弧形状またはつめ形状が形成され、円弧形状またはつめ形状が水平方向により近い方向に繰り返して形成されている。すなわち、水平方向に対する画素値の変化に比較して、垂直方向に対する画素値の変化が大きい場合、基準軸を空間方向Xを示す軸とすると、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度は、0度乃至45度のいずれかの値である。
【0463】
例えば、アクティビティ検出部401は、図51で示される、注目画素を中心とした3×3の9つの画素からなるブロックを入力画像から抽出する。アクティビティ検出部401は、縦に隣接する画素についての画素値の差分の和、および横に隣接する画素についての画素値の差分の和を算出する。横に隣接する画素についての画素値の差分の和hdiffは、式(35)で求められる。
【0464】
【数35】
Figure 2005018534
・・・(35)
【0465】
同様に、縦に隣接する画素についての画素値の差分の和vdiffは、式(36)で求められる。
【0466】
【数36】
Figure 2005018534
・・・(36)
【0467】
式(35)および式(36)において、Pは、画素値を示し、iは、画素の横方向の位置を示し、jは、画素の縦方向の位置を示す。
【0468】
アクティビティ検出部401は、算出された横に隣接する画素についての画素値の差分の和hdiffおよび縦に隣接する画素についての画素値の差分の和vdiffを比較して、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度の範囲を判定するようにしてもよい。すなわち、この場合、アクティビティ検出部401は、空間方向の位置に対する画素値の変化で示される形状が水平方向に繰り返して形成されているか、垂直方向に繰り返して形成されているかを判定する。
【0469】
例えば、横に1列の画素上に形成された円弧についての横方向の画素値の変化は、縦方向の画素値の変化に比較して大きく、横に1列の画素上に形成された円弧についての縦方向の画素値の変化は、横方向の画素値の変化に比較して大きく、データの定常性の方向、すなわち、データ3である入力画像が有している、一定の特徴の所定の次元の方向の変化は、データの定常性に直交する方向の変化に比較して小さいと言える。言い換えれば、データの定常性の方向の差分に比較して、データの定常性の方向に直交する方向(以下、非定常方向とも称する)の差分は大きい。
【0470】
例えば、図52に示すように、アクティビティ検出部401は、算出された横に隣接する画素についての画素値の差分の和hdiffおよび縦に隣接する画素についての画素値の差分の和vdiffを比較して、横に隣接する画素についての画素値の差分の和hdiffが大きい場合、基準軸を基準としたデータの定常性の角度が、45度乃至135度のいずれかの値であると判定し、縦に隣接する画素についての画素値の差分の和vdiffが大きい場合、基準軸を基準としたデータの定常性の角度が、0度乃至45度のいずれかの値、または135度乃至180度のいずれかの値であると判定する。
【0471】
例えば、アクティビティ検出部401は、判定の結果を示すアクティビティ情報をデータ選択部402および定常方向導出部404に供給する。
【0472】
なお、アクティビティ検出部401は、5×5の25の画素からなるブロック、または7×7の49の画素からなるブロックなど、任意の大きさのブロックを抽出して、アクティビティを検出することができる。
【0473】
データ選択部402は、入力画像の画素から注目画素を順に選択し、アクティビティ検出部401から供給されたアクティビティ情報を基に、注目画素および基準軸を基準とした角度毎に、垂直方向に1列または水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0474】
例えば、アクティビティ情報が垂直方向に対する画素値の変化に比較して、水平方向に対する画素値の変化が大きいことを示しているとき、データの定常性の角度が、45度乃至135度のいずれかの値なので、データ選択部402は、注目画素および基準軸を基準とした45度乃至135度の範囲の所定の角度毎に、垂直方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0475】
アクティビティ情報が水平方向に対する画素値の変化に比較して、垂直方向に対する画素値の変化が大きいことを示しているとき、データの定常性の角度が、0度乃至45度または135度乃至180度のいずれかの値なので、データ選択部402は、注目画素および基準軸を基準とした0度乃至45度または135度乃至180度の範囲の所定の角度毎に、水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0476】
また、例えば、データの定常性の角度が45度乃至135度のいずれかの値であることを、アクティビティ情報が示しているとき、データ選択部402は、注目画素および基準軸を基準とした45度乃至135度の範囲の所定の角度毎に、垂直方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0477】
データの定常性の角度が0度乃至45度または135度乃至180度のいずれかの値であることを、アクティビティ情報が示しているとき、データ選択部402は、注目画素および基準軸を基準とした0度乃至45度または135度乃至180度の範囲の所定の角度毎に、水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0478】
データ選択部402は、抽出した画素からなる複数の組を誤差推定部403に供給する。
【0479】
誤差推定部403は、抽出した画素からなる複数の組について、角度毎に、画素の組の相関を検出する。
【0480】
例えば、誤差推定部403は、1つの角度に対応する、垂直方向に1列の所定の数の画素からなる画素の複数の組について、画素の組における対応する位置の画素の画素値の相関を検出する。誤差推定部403は、1つの角度に対応する、水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の複数の組について、組における対応する位置の画素の画素値の相関を検出する。
【0481】
誤差推定部403は、検出した相関を示す相関情報を定常方向導出部404に供給する。誤差推定部403は、相関を示す値として、データ選択部402から供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、他の組における対応する位置の画素の画素値の差分の絶対値の和を算出し、差分の絶対値の和を相関情報として定常方向導出部404に供給する。
【0482】
定常方向導出部404は、誤差推定部403から供給された相関情報に基いて、欠落した実世界1の光信号の定常性に対応する、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出し、角度を示すデータ定常性情報を出力する。例えば、定常方向導出部404は、誤差推定部403から供給された相関情報に基いて、データの定常性の角度として、最も相関の強い画素の組に対する角度を検出し、検出された最も相関の強い画素の組に対する角度を示すデータ定常性情報を出力する。
【0483】
以下の説明において、適宜、0度乃至90度の範囲(いわゆる第1象限)のデータの定常性の角度を検出するものとして説明する。
【0484】
図53は、図49に示すデータ定常性検出部101のより詳細な構成を示すブロック図である。
【0485】
データ選択部402は、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lを含む。誤差推定部403は、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lを含む。定常方向導出部404は、最小誤差角度選択部413を含む。
【0486】
まず、アクティビティ情報で示される、データの定常性の角度が45度乃至135度のいずれかの値であるときの画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lの処理を説明する。
【0487】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、空間方向Xを示す軸を基準軸として、注目画素を通る、それぞれ異なる所定の角度の直線を設定する。画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列に属する画素であって、注目画素の上側の所定の数の画素、および注目画素の下側の所定の数の画素、並びに注目画素を画素の組として選択する。
【0488】
例えば、図54で示されるように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列に属する画素から、注目画素を中心として9つの画素を画素の組として選択する。
【0489】
図54において、マス目状の1つの四角(1つのマス目)は、1つの画素を示す。図54において、中央に示す丸は、注目画素を示す。
【0490】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側の縦に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。図54において、注目画素の左下側の丸は、選択された画素の例を示す。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側の縦に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の上側の所定の数の画素、および選択された画素の下側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0491】
例えば、図54で示されるように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側の縦に1列の画素の列に属する画素から、直線に最も近い位置の画素を中心として9つの画素を画素の組として選択する。
【0492】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。図54において、最も左側の丸は、選択された画素の例を示す。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の上側の所定の数の画素、および選択された画素の下側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0493】
例えば、図54で示されるように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素から、直線に最も近い位置の画素を中心として9つの画素を画素の組として選択する。
【0494】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側の縦に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。図54において、注目画素の右上側の丸は、選択された画素の例を示す。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側の縦に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の上側の所定の数の画素、および選択された画素の下側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0495】
例えば、図54で示されるように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側の縦に1列の画素の列に属する画素から、直線に最も近い位置の画素を中心として9つの画素を画素の組として選択する。
【0496】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。図54において、最も右側の丸は、このように選択された画素の例を示す。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の上側の所定の数の画素、および選択された画素の下側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0497】
例えば、図54で示されるように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素から、直線に最も近い位置の画素を中心として9つの画素を画素の組として選択する。
【0498】
このように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、それぞれ、画素の組を5つ選択する。
【0499】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、互いに異なる角度(に設定された直線)についての、画素の組を選択する。例えば、画素選択部411−1は、45度についての、画素の組を選択し、画素選択部411−2は、47.5度についての、画素の組を選択し、画素選択部411−3は、50度についての、画素の組を選択する。画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、52.5度から135度までの、2.5度毎の角度についての、画素の組を選択する。
【0500】
なお、画素の組の数は、例えば、3つ、または7つなど、任意の数とすることができる。また、1つの組として選択された画素の数は、例えば、5つ、または13など、任意の数とすることができる。
【0501】
なお、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、縦方向に所定の範囲の画素から、画素の組を選択するようにすることができる。例えば、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、縦方向に121個の画素(注目画素に対して、上方向に60画素、下方向に60画素)から、画素の組を選択する。
この場合、データ定常性検出部101は、空間方向Xを示す軸に対して、88.09度まで、データの定常性の角度を検出することができる。
【0502】
画素選択部411−1は、選択した画素の組を推定誤差算出部412−1に供給し、画素選択部411−2は、選択した画素の組を推定誤差算出部412−2に供給する。同様に、画素選択部411−3乃至画素選択部411−Lのそれぞれは、選択した画素の組を推定誤差算出部412−3乃至推定誤差算出部412−Lのそれぞれに供給する。
【0503】
推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、複数の組における対応する位置の画素の画素値の相関を検出する。例えば、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、相関を示す値として、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、他の組における対応する位置の画素の画素値の差分の絶対値の和を算出する。
【0504】
より具体的には、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、注目画素の左側の縦に1列の画素の列に属する画素からなる組の画素の画素値とを基に、最も上の画素の画素値の差分を算出し、上から2番目の画素の画素値の差分を算出するように、上の画素から順に画素値の差分の絶対値を算出して、さらに、算出された差分の絶対値の和を算出する。推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、注目画素の左に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素からなる組の画素の画素値とを基に、上の画素から順に画素値の差分の絶対値を算出して、算出された差分の絶対値の和を算出する。
【0505】
そして、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、注目画素の右側の縦に1列の画素の列に属する画素からなる組の画素の画素値とを基に、最も上の画素の画素値の差分を算出し、上から2番目の画素の画素値の差分を算出するように、上の画素から順に画素値の差分の絶対値を算出して、さらに、算出された差分の絶対値の和を算出する。推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、注目画素の右に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素からなる組の画素の画素値とを基に、上の画素から順に画素値の差分の絶対値を算出して、算出された差分の絶対値の和を算出する。
【0506】
推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、このように算出された画素値の差分の絶対値の和を全て加算して、画素値の差分の絶対値の総和を算出する。
【0507】
推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、検出された相関を示す情報を、最小誤差角度選択部413に供給する。例えば、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、算出された画素値の差分の絶対値の総和を最小誤差角度選択部413に供給する。
【0508】
なお、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素値の差分の絶対値の和に限らず、画素値の差分の自乗の和、または画素値を基にした相関係数など他の値を相関値として算出するようにすることができる。
【0509】
最小誤差角度選択部413は、互いに異なる角度についての、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lにおいて検出された相関に基いて、欠落した実世界1の光信号である画像の定常性に対応する、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出する。すなわち、最小誤差角度選択部413は、互いに異なる角度についての、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lにおいて検出された相関に基いて、最も強い相関を選択し、選択された相関が検出された角度を、基準軸を基準としたデータの定常性の角度とすることにより、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出する。
【0510】
例えば、最小誤差角度選択部413は、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lから供給された、画素値の差分の絶対値の総和のうち、最小の総和を選択する。最小誤差角度選択部413は、選択された総和が算出された画素の組について、注目画素に対して、左側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、直線に最も近い位置の画素の位置、および、注目画素に対して、右側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、直線に最も近い位置の画素の位置を参照する。
【0511】
図54で示されるように、最小誤差角度選択部413は、注目画素の位置に対する、参照する画素の位置の縦方向の距離Sを求める。最小誤差角度選択部413は、図55で示すように、式(37)から、欠落した実世界1の光信号の定常性に対応する、画像データである入力画像における、基準軸である空間方向Xを示す軸を基準としたデータの定常性の角度θを検出する。
【0512】
【数37】
Figure 2005018534
・・・(37)
【0513】
次に、アクティビティ情報で示される、データの定常性の角度が0度乃至45度および135度乃至180度のいずれかの値であるときの画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lの処理を説明する。
【0514】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、空間方向Xを示す軸を基準軸として、注目画素を通る、所定の角度の直線を設定し、注目画素が属する横に1列の画素の列に属する画素であって、注目画素の上側の所定の数の画素、および注目画素の下側の所定の数の画素、並びに注目画素を画素の組として選択する。
【0515】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、上側の横に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、上側の横に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の左側の所定の数の画素、および選択された画素の右側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0516】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、上側に2つめの横に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、上側に2つめの横に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の左側の所定の数の画素、および選択された画素の右側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0517】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、下側の横に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、下側の横に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の左側の所定の数の画素、および選択された画素の右側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0518】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、下側に2つめの横に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、下側に2つめの横に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の左側の所定の数の画素、および選択された画素の右側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0519】
このように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、それぞれ、画素の組を5つ選択する。
【0520】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、互いに異なる角度についての、画素の組を選択する。例えば、画素選択部411−1は、0度についての、画素の組を選択し、画素選択部411−2は、2.5度についての、画素の組を選択し、画素選択部411−3は、5度についての、画素の組を選択する。画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、7.5度から45度および135度から180度までの、2.5度毎の角度についての、画素の組を選択する。
【0521】
画素選択部411−1は、選択した画素の組を推定誤差算出部412−1に供給し、画素選択部411−2は、選択した画素の組を推定誤差算出部412−2に供給する。同様に、画素選択部411−3乃至画素選択部411−Lのそれぞれは、選択した画素の組を推定誤差算出部412−3乃至推定誤差算出部412−Lのそれぞれに供給する。
【0522】
推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、複数の組における対応する位置の画素の画素値の相関を検出する。推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、検出された相関を示す情報を、最小誤差角度選択部413に供給する。
【0523】
最小誤差角度選択部413は、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lにおいて検出された相関に基いて、欠落した実世界1の光信号である画像の定常性に対応する、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出する。
【0524】
次に、図56のフローチャートを参照して、ステップS101の処理に対応する、図49で構成が示されるデータ定常性検出部101による、データの定常性の検出の処理を説明する。
【0525】
ステップS401において、アクティビティ検出部401およびデータ選択部402は、入力画像から、注目している画素である注目画素を選択する。アクティビティ検出部401およびデータ選択部402は、同一の注目画素を選択する。例えば、アクティビティ検出部401およびデータ選択部402は、入力画像から、ラスタスキャン順に、注目画素を選択する。
【0526】
ステップS402において、アクティビティ検出部401は、注目画素に対するアクティビティを検出する。例えば、アクティビティ検出部401は、注目画素を中心とした所定の数の画素からなるブロックの縦方向に並ぶ画素の画素値の差分および横方向に並ぶ画素の画素値の差分を基に、アクティビティを検出する。
【0527】
アクティビティ検出部401は、注目画素に対する空間方向のアクティビティを検出して、検出した結果を示すアクティビティ情報をデータ選択部402および定常方向導出部404に供給する。
【0528】
ステップS403において、データ選択部402は、注目画素を含む画素の列から、注目画素を中心とした所定の数の画素を、画素の組として選択する。例えば、データ選択部402は、注目画素が属する縦または横に1列の画素の列に属する画素であって、注目画素の上側または左側の所定の数の画素、および注目画素の下側または右側の所定の数の画素、並びに注目画素を画素の組として選択する。
【0529】
ステップS404において、データ選択部402は、ステップS402の処理で検出されたアクティビティを基にした、所定の範囲の角度毎に、所定の数の画素の列から、それぞれ所定の数の画素を、画素の組として選択する。例えば、データ選択部402は、所定の範囲の角度を有し、空間方向Xを示す軸を基準軸として、注目画素を通る直線を設定し、注目画素に対して、横方向または縦方向に1列または2列離れた画素であって、直線に最も近い画素を選択し、選択された画素の上側または左側の所定の数の画素、および選択された画素の下側または右側の所定の数の画素、並びに線に最も近い選択された画素を画素の組として選択する。データ選択部402は、角度毎に、画素の組を選択する。
【0530】
データ選択部402は、選択した画素の組を誤差推定部403に供給する。
【0531】
ステップS405において、誤差推定部403は、注目画素を中心とした画素の組と、角度毎に選択した画素の組との相関を計算する。例えば、誤差推定部403は、角度毎に、注目画素を含む組の画素の画素値と、他の組における対応する位置の画素の画素値の差分の絶対値の和を算出する。
【0532】
角度毎に選択された、画素の組の相互の相関を基に、データの定常性の角度を検出するようにしてもよい。
【0533】
誤差推定部403は、算出された相関を示す情報を、定常方向導出部404に供給する。
【0534】
ステップS406において、定常方向導出部404は、ステップS405の処理で算出された相関を基に、相関が最も強い画素の組の位置から、欠落した実世界1の光信号の定常性に対応する、画像データである入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出する。例えば、定常方向導出部404は、画素値の差分の絶対値の総和のうち、最小の総和を選択し、選択された総和が算出された画素の組の位置から、データの定常性の角度θを検出する。
【0535】
定常方向導出部404は、検出したデータの定常性の角度を示すデータ定常性情報を出力する。
【0536】
ステップS407において、データ選択部402は、全ての画素の処理を終了したか否かを判定し、全ての画素の処理を終了していないと判定された場合、ステップS401に戻り、まだ注目画素として選択されていない画素から注目画素を選択して、上述した処理を繰り返す。
【0537】
ステップS407において、全ての画素の処理を終了したと判定された場合、処理は終了する。
【0538】
このように、データ定常性検出部101は、欠落した実世界1の光信号の定常性に対応する、画像データにおける、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出することができる。
【0539】
なお、図49で構成が示されるデータ検出部101は、注目しているフレームである注目フレームの、注目している画素である注目画素について、入力画像の空間方向のアクティビティを検出し、検出されたアクティビティに応じて、注目画素および空間方向の基準軸を基準とした角度、並びに動きベクトル毎に、注目フレームおよび注目フレームの時間的に前または後ろのフレームのそれぞれから、垂直方向に1列または水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出し、抽出された画素の組の相関を検出し、相関に基づいて、入力画像における、時間方向および空間方向のデータの定常性の角度を検出するようにしてもよい。
【0540】
例えば、図57に示すように、データ選択部402は、検出されたアクティビティに応じて、注目画素および空間方向の基準軸を基準とした角度、並びに動きベクトル毎に、注目フレームであるフレーム#n、フレーム#n−1、およびフレーム#n+1のそれぞれから、垂直方向に1列または水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0541】
フレーム#n−1は、フレーム#nに対して時間的に前のフレームであり、フレーム#n+1は、フレーム#nに対して時間的に後のフレームである。すなわち、フレーム#n−1、フレーム#n、およびフレーム#n+1は、フレーム#n−1、フレーム#n、およびフレーム#n+1の順で表示される。
【0542】
誤差推定部403は、抽出した画素からなる複数の組について、1つの角度および1つの動きベクトル毎に、画素の組の相関を検出する。定常方向導出部404は、画素の組の相関に基づいて、欠落した実世界1の光信号の定常性に対応する、入力画像における、時間方向および空間方向のデータの定常性の角度を検出し、角度を示すデータ定常性情報を出力する。
【0543】
次に、図58乃至図88を参照して、実世界推定部102(図3)の実施の形態の他の例について説明する。
【0544】
図58は、この例の実施の形態の原理を説明する図である。
【0545】
図58で示されるように、センサ2に入射される画像である、実世界1の信号(光の強度の分布)は、所定の関数Fで表される。なお、以下、この例の実施の形態の説明においては、画像である、実世界1の信号を、特に光信号と称し、関数Fを、特に光信号関数Fと称する。
【0546】
この例の実施の形態においては、光信号関数Fで表される実世界1の光信号が所定の定常性を有する場合、実世界推定部102が、センサ2からの入力画像(定常性に対応するデータの定常性を含む画像データ)と、データ定常性検出部101からのデータ定常性情報(入力画像のデータの定常性に対応するデータ定常性情報)を使用して、光信号関数Fを所定の関数fで近似することによって、光信号関数Fを推定する。なお、以下、この例の実施の形態の説明においては、関数fを、特に近似関数fと称する。
【0547】
換言すると、この例の実施の形態においては、実世界推定部102が、近似関数fで表されるモデル161(図4)を用いて、光信号関数Fで表される画像(実世界1の光信号)を近似(記述)する。従って、以下、この例の実施の形態を、関数近似手法と称する。
【0548】
ここで、関数近似手法の具体的な説明に入る前に、本願出願人が関数近似手法を発明するに至った背景について説明する。
【0549】
図59は、センサ2がCCDとされる場合の積分効果を説明する図である。
【0550】
図59で示されるように、センサ2の平面上には、複数の検出素子2−1が配置されている。
【0551】
図59の例では、検出素子2−1の所定の1辺に平行な方向が、空間方向の1方向であるX方向とされており、X方向に垂直な方向が、空間方向の他方向であるY方向とされている。そして、X−Y平面に垂直な方向が、時間方向であるt方向とされている。
【0552】
また、図59の例では、センサ2の各検出素子2−1のそれぞれの空間的な形状は、1辺の長さが1の正方形とされている。そして、センサ2のシャッタ時間(露光時間)が1とされている。
【0553】
さらに、図59の例では、センサ2の所定の1つの検出素子2−1の中心が、空間方向(X方向とY方向)の原点(X方向の位置x=0、およびY方向の位置y=0)とされており、また、露光時間の中間時刻が、時間方向(t方向)の原点(t方向の位置t=0)とされている。
【0554】
この場合、空間方向の原点(x=0,y=0)にその中心が存在する検出素子2−1は、X方向に−0.5乃至0.5の範囲、Y方向に−0.5乃至0.5の範囲、およびt方向に−0.5乃至0.5の範囲で光信号関数F(x,y,t)を積分し、その積分値を画素値Pとして出力することになる。
【0555】
即ち、空間方向の原点にその中心が存在する検出素子2−1から出力される画素値Pは、次の式(38)で表される。
【0556】
【数38】
Figure 2005018534
・・・(38)
【0557】
その他の検出素子2−1も同様に、対象とする検出素子2−1の中心を空間方向の原点とすることで、式(38)で示される画素値Pを出力することになる。
【0558】
図60は、センサ2の積分効果の具体的な例を説明する図である。
【0559】
図60において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図59)を表している。
【0560】
実世界1の光信号のうちの1部分(以下、このような部分を、領域と称する)2301は、所定の定常性を有する領域の1例を表している。
【0561】
なお、実際には、領域2301は連続した光信号の1部分(連続した領域)である。これに対して、図60においては、領域2301は、20個の小領域(正方形の領域)に区分されているように示されている。これは、領域2301の大きさが、X方向に対して4個分、かつY方向に対して5個分のセンサ2の検出素子(画素)が並んだ大きさに相当することを表すためである。即ち、領域2301内の20個の小領域(仮想領域)のそれぞれは1つの画素に相当する。
【0562】
また、領域2301のうちの図中白い部分は細線に対応する光信号を表している。従って、領域2301は、細線が続く方向に定常性を有していることになる。そこで、以下、領域2301を、細線含有実世界領域2301と称する。
【0563】
この場合、細線含有実世界領域2301(実世界1の光信号の1部分)がセンサ2により検出されると、センサ2からは、積分効果により、入力画像(画素値)の領域2302(以下、細線含有データ領域2302と称する)が出力される。
【0564】
なお、細線含有データ領域2302の各画素のそれぞれは、図中、画像として示されているが、実際には、所定の1つの値を表すデータである。即ち、細線含有実世界領域2301は、センサ2の積分効果により、所定の1つの画素値をそれぞれ有する20個の画素(X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素)に区分された細線含有データ領域2302に変化してしまう(歪んでしまう)。
【0565】
図61は、センサ2の積分効果の具体的な他の例(図60とは異なる例)を説明する図である。
【0566】
図61において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図59)を表している。
【0567】
実世界1の光信号の1部分(領域)2303は、所定の定常性を有する領域の他の例(図60の細線含有実世界領域2301とは異なる例)を表している。
【0568】
なお、領域2303は、細線含有実世界領域2301と同じ大きさを有する領域である。即ち、細線含有実世界領域2301と同様に、領域2303も、実際には連続した実世界1の光信号の1部分(連続した領域)であるが、図61においては、センサ2の1画素に相当する20個の小領域(正方形の領域)に区分されているように示されている。
【0569】
また、領域2303は、所定の第1の光の強度(値)を有する第1の部分と、所定の第2の光の強度(値)を有する第2の部分のエッジを含んでいる。従って、領域2303は、エッジが続く方向に定常性を有していることになる。そこで、以下、領域2303を、2値エッジ含有実世界領域2303と称する。
【0570】
この場合、2値エッジ含有実世界領域2303(実世界1の光信号の1部分)がセンサ2により検出されると、センサ2からは、積分効果により、入力画像(画素値)の領域2304(以下、2値エッジ含有データ領域2304と称する)が出力される。
【0571】
なお、2値エッジ含有データ領域2304の各画素値のそれぞれは、細線含有データ領域2302と同様に、図中、画像として表現されているが、実際には、所定の値を表すデータである。即ち、2値エッジ含有実世界領域2303は、センサ2の積分効果により、所定の1つの画素値をそれぞれ有する20個の画素(X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素)に区分された2値エッジ含有データ領域2304に変化してしまう(歪んでしまう)。
【0572】
従来の画像処理装置は、このような細線含有データ領域2302や2値エッジ含有データ領域2304等、センサ2から出力された画像データを原点(基準)とするとともに、画像データを処理の対象として、それ以降の画像処理を行っていた。即ち、センサ2から出力された画像データは、積分効果により実世界1の光信号とは異なるもの(歪んだもの)となっているにも関わらず、従来の画像処理装置は、その実世界1の光信号とは異なるデータを正として画像処理を行っていた。
【0573】
その結果、従来の画像処理装置では、センサ2から出力された段階で、実世界のディテールがつぶれてしまった波形(画像データ)を基準として、その波形から、元のディテールを復元することは非常に困難であるという課題があった。
【0574】
そこで、関数近似手法においては、この課題を解決するために、上述したように(図58で示されるように)、実世界推定部102が、細線含有データ領域2302や2値エッジ含有データ領域2304のようなセンサ2から出力された画像データ(入力画像)から、光信号関数F(実世界1の光信号)を近似関数fで近似することによって、光信号関数Fを推定する。
【0575】
これにより、実世界推定部102より後段において(いまの場合、図3の画像生成部103)、積分効果が考慮された画像データ、即ち、近似関数fにより表現可能な画像データを原点として、その処理を実行することが可能になる。
【0576】
以下、図面を参照して、このような関数近似手法のうちの3つの具体的な手法(第1乃至第3の関数近似手法)のそれぞれについて個別に説明していく。
【0577】
はじめに、図62乃至図76を参照して、第1の関数近似手法について説明する。
【0578】
図62は、上述した図60で示される細線含有実世界領域2301を再度表した図である。
【0579】
図62において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図59)を表している。
【0580】
第1の関数近似手法は、例えば、図62で示されるような細線含有実世界領域2301に対応する光信号関数F(x,y,t)をX方向(図中矢印2311の方向)に射影した1次元の波形(以下、このような波形を、X断面波形F(x)と称する)を、例えば、n次(nは、任意の整数)の多項式などの近似関数f(x)で近似する手法である。従って、以下、第1の関数近似手法を、特に、1次元近似手法と称する。
【0581】
なお、1次元近似手法において、近似の対象となるX断面波形F(x)は、勿論、図62の細線含有実世界領域2301に対応するものに限定されない。即ち、後述するように、1次元近似手法においては、定常性を有する実世界1の光信号に対応するX断面波形F(x)であれば、いずれのものでも近似することが可能である。
【0582】
また、光信号関数F(x,y,t)の射影の方向はX方向に限定されず、Y方向またはt方向でもよい。即ち、1次元近似手法においては、光信号関数F(x,y,t)をY方向に射影した関数F(y)を、所定の近似関数f(y)で近似することも可能であるし、光信号関数F(x,y,t)をt方向に射影した関数F(t)を、所定の近似関数f(t)で近似することも可能である。
【0583】
より詳細には、1次元近似手法は、例えば、X断面波形F(x)を、次の式(39)で示されるような、n次の多項式などの近似関数f(x)で近似する手法である。
【0584】
【数39】
Figure 2005018534
・・・(39)
【0585】
即ち、1次元近似手法においては、実世界推定部102が、式(39)のxの係数(特徴量)wを演算することで、X断面波形F(x)を推定する。
【0586】
この特徴量wの演算方法は、特に限定されず、例えば、次の第1乃至第3の方法が使用可能である。
【0587】
即ち、第1の方法は、従来から利用されている方法である。
【0588】
これに対して、第2の方法は、本願出願人が新たに発明した方法であって、第1の方法に対して、さらに、空間方向の定常性を考慮した方法である。
【0589】
しかしながら、後述するように、第1の方法と第2の方法においては、センサ2の積分効果が考慮されていない。従って、第1の方法または第2の方法により演算された特徴量wを上述した式(39)に代入して得られる近似関数f(x)は、入力画像の近似関数ではあるが、厳密には、X断面波形F(x)の近似関数とは言えない。
【0590】
そこで、本願出願人は、第2の方法に対して、センサ2の積分効果をさらに考慮して特徴量wを演算する第3の方法を発明した。この第3の方法により演算された特徴量wを、上述した式(39)に代入して得られる近似関数f(x)は、センサ2の積分効果を考慮している点で、X断面波形F(x)の近似関数であると言える。
【0591】
このように、厳密には、第1の方法と第2の方法は、1次元近似手法とは言えず、第3の方法のみが1次元近似手法であると言える。
【0592】
換言すると、図63で示されるように、第2の方法は、1次元近似手法とは異なる。即ち、図63は、第2の方法に対応する実施の形態の原理を説明する図である。
【0593】
図63で示されるように、第2の方法に対応する実施の形態においては、光信号関数Fで表される実世界1の光信号が所定の定常性を有する場合、実世界推定部102が、センサ2からの入力画像(定常性に対応するデータの定常性を含む画像データ)と、データ定常性検出部101からのデータ定常性情報(入力画像のデータの定常性に対応するデータ定常性情報)を使用して、X断面波形F(x)を近似するのではなく、センサ2からの入力画像を所定の近似関数f(x)で近似する。
【0594】
このように、第2の方法は、センサ2の積分効果を考慮せず、入力画像の近似に留まっている点で、第3の方法と同一レベルの手法であるとは言い難い。しかしながら、第2の方法は、空間方向の定常性を考慮している点で、従来の第1の方法よりも優れた手法である。
【0595】
以下、第1の方法、第2の方法、および第3の方法のそれぞれの詳細について、その順番で個別に説明していく。
【0596】
なお、以下、第1の方法、第2の方法、および第3の方法により生成される近似関数f(x)のそれぞれを、他の方法のものと区別する場合、特に、近似関数f(x)、近似関数f(x)、および近似関数f(x)とそれぞれ称する。
【0597】
はじめに、第1の方法の詳細について説明する。
【0598】
第1の方法においては、上述した式(39)で示される近似関数f(x)が、図64の細線含有実世界領域2301内で成り立つとして、次の予測方程式(40)を定義する。
【0599】
【数40】
Figure 2005018534
・・・(40)
【0600】
式(40)において、xは、注目画素からのX方向に対する相対的な画素位置を表している。yは、注目画素からのY方向に対する相対的な画素位置を表している。eは、誤差を表している。具体的には、例えば、いま、図64で示されるように、注目画素が、細線含有データ領域2302(細線含有実世界領域2301(図62)がセンサ2により検出されて、出力されたデータ)のうちの、図中、左からX方向に2画素目であって、下からY方向に3画素目の画素であるとする。また、注目画素の中心を原点(0,0)とし、センサ2のX方向とY方向(図59)のそれぞれに平行なx軸とy軸を軸とする座標系(以下、注目画素座標系と称する)が設定されているとする。この場合、注目画素座標系の座標値(x,y)が、相対画素位置を表すことになる。
【0601】
また、式(40)において、P(x,y)は、相対画素位置(x,y)における画素値を表している。具体的には、いまの場合、細線含有データ領域2302内のP(x,y)は、図65で示されるようになる。
【0602】
図65は、この画素値P(x,y)をグラフ化したものを表している。
【0603】
図65において、各グラフのそれぞれの縦軸は、画素値を表しており、横軸は、注目画素からのX方向の相対位置xを表している。また、図中、上から1番目のグラフの点線は入力画素値P(x,−2)を、上から2番目のグラフの3点鎖線は入力画素値P(x,−1)を、上から3番目のグラフの実線は入力画素値P(x,0)を、上から4番目のグラフの1点鎖線は入力画素値P(x,1)を、上から5番目(下から1番目)のグラフの2点鎖線は入力画素値P(x,2)を、それぞれ表している。
【0604】
上述した式(40)に対して、図65で示される20個の入力画素値P(x,−2),P(x,−1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)(ただし、xは、−1乃至2のうちのいずれかの整数値)のそれぞれを代入すると、次の式(41)で示される20個の方程式が生成される。なお、e(kは、1乃至20のうちのいずれかの整数値)のそれぞれは、誤差を表している。
【0605】
【数41】
Figure 2005018534
・・・(41)
【0606】
式(41)は、20個の方程式より構成されているので、近似関数f(x)の特徴量wの個数が20個より少ない場合、即ち、近似関数f(x)が19次より少ない次数の多項式である場合、例えば、最小自乗法を用いて特徴量wの算出が可能である。なお、最小自乗法の具体的な解法は後述する。
【0607】
例えば、いま、近似関数f(x)の次数が5次とされた場合、式(41)を利用して最小自乗法により演算された近似関数f(x)(演算された特徴量wにより生成される近似関数f(x))は、図66で示される曲線のようになる。
【0608】
なお、図66において、縦軸は画素値を表しており、横軸は注目画素からの相対位置xを表している。
【0609】
即ち、図64の細線含有データ領域2302を構成する20個の画素値P(x,y)のそれぞれ(図65で示される入力画素値P(x,−2),P(x,−1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれ)を、例えば、x軸に沿ってそのまま足しこむ(Y方向の相対位置yを一定とみなして、図65で示される5つのグラフを重ねる)と、図66で示されるような、x軸に平行な複数の線(点線、3点鎖線、実線、1点鎖線、および2点鎖線)が分布する。
【0610】
ただし、図66においては、点線は入力画素値P(x,−2)を、3点鎖線は入力画素値P(x,−1)を、実線は入力画素値P(x,0)を、1点鎖線は入力画素値P(x,1)を、2点鎖線は入力画素値P(x,2)を、それぞれ表している。また、同一の画素値の場合、実際には2本以上の線が重なることになるが、図66においては、各線の区別がつくように、各線のそれぞれが重ならないように描画されている。
【0611】
そして、このように分布した20個の入力画素値P(x,−2),P(x,−1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれと、値f(x)の誤差が最小となるような回帰曲線(最小自乗法により演算された特徴量wを上述した式(38)に代入して得られる近似関数f(x))が、図66で示される曲線(近似関数f(x))となる。
【0612】
このように、近似関数f(x)は、Y方向の画素値(注目画素からのX方向の相対位置xが同一の画素値)P(x,−2),P(x,−1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)の平均値を、X方向に結んだ曲線を単に表しているに過ぎない。即ち、光信号が有する空間方向の定常性を考慮することなく、近似関数f(x)が生成されている。
【0613】
例えば、いまの場合、近似の対象は、細線含有実世界領域2301(図62)とされている。この細線含有実世界領域2301は、図67で示されるように、傾きGで表される空間方向の定常性を有している。なお、図67において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図59)を表している。
【0614】
従って、データ定常性検出部101(図58)は、空間方向の定常性の傾きGに対応するデータ定常性情報として、図67で示されるような角度θ(傾きGに対応する傾きGで表されるデータの定常性の方向と、X方向のなす角度θ)を出力することができる。
【0615】
しかしながら、第1の方法においては、データ定常性検出部101より出力されるデータ定常性情報は一切用いられていない。
【0616】
換言すると、図67で示されるように、細線含有実世界領域2301の空間方向の定常性の方向は略角度θ方向である。しかしながら、第1の方法は、細線含有実世界領域2301の空間方向の定常性の方向はY方向であると仮定して(即ち、角度θが90度であると仮定して)、近似関数f(x)の特徴量wを演算する方法である。
【0617】
このため、近似関数f(x)は、その波形が鈍り、元の画素値よりディテールが減少する関数となってしまう。換言すると、図示はしないが、第1の方法により生成される近似関数f(x)は、実際のX断面波形F(x)とは大きく異なる波形となってしまう。
【0618】
そこで、本願出願人は、第1の方法に対して、空間方向の定常性をさらに考慮して(角度θを利用して)特徴量wを演算する第2の方法を発明した。
【0619】
即ち、第2の方法は、細線含有実世界領域2301の定常性の方向は略角度θ方向であるとして、近似関数f(x) の特徴量wを演算する方法である。
【0620】
具体的には、例えば、空間方向の定常性に対応するデータの定常性を表す傾きGは、次の式(42)で表される。
【0621】
【数42】
Figure 2005018534
・・・(42)
【0622】
なお、式(42)において、dxは、図67で示されるようなX方向の微小移動量を表しており、dyは、図67で示されるようなdxに対するY方向の微小移動量を表している。
【0623】
この場合、シフト量C(y)を、次の式(43)のように定義すると、第2の方法においては、第1の方法で利用した式(40)に相当する式は、次の式(44)のようになる。
【0624】
【数43】
Figure 2005018534
・・・(43)
【0625】
【数44】
Figure 2005018534
・・・(44)
【0626】
即ち、第1の方法で利用した式(40)は、画素の中心の位置(x、y)のうちのX方向の位置xが、同一の位置に位置する画素の画素値P(x,y)はいずれも同じ値であることを表している。換言すると、式(40)は、同じ画素値の画素がY方向に続いている(Y方向に定常性がある)ことを表している。
【0627】
これに対して、第2の方法で利用する式(44)は、画素の中心の位置が(x,y)である画素の画素値P(x,y)は、注目画素(その中心の位置が原点(0,0)である画素)からX方向にxだけ離れた場所に位置する画素の画素値(≒f(x))とは一致せず、その画素からさらにX方向にシフト量C(y)だけ離れた場所に位置する画素(注目画素からX方向にx+C(y)だけ離れた場所に位置する画素)の画素値(≒f(x+C(y)))と同じ値であることを表している。換言すると、式(44)は、同じ画素値の画素が、シフト量C(y)に対応する角度θ方向に続いている(略角度θ方向に定常性がある)ことを表している。
【0628】
このように、シフト量C(y)が、空間方向の定常性(いまの場合、図67の傾きGで表される定常性(厳密には、傾きGで表されるデータの定常性))を考慮した補正量であり、シフト量C(y)により式(40)を補正したものが式(44)となる。
【0629】
この場合、図64で示される細線含有データ領域2302の20個の画素値P(x,y)(ただし、xは、−1乃至2のうちのいずれかの整数値。yは、−2乃至2のうちのいずれかの整数値)のそれぞれを、上述した式(44)に代入すると次の式(45)で示される20個の方程式が生成される。
【0630】
【数45】
Figure 2005018534
・・・(45)
【0631】
式(45)は、上述した式(41)と同様に、20個の方程式より構成されている。従って、第1の方法と同様に第2の方法においても、近似関数f(x)の特徴量wの個数が20個より少ない場合、即ち、近似関数f(x)が19次より少ない次数の多項式である場合、例えば、最小自乗法を用いて特徴量wの算出が可能である。なお、最小自乗法の具体的な解法は後述する。
【0632】
例えば、第1の方法と同様に近似関数f(x)の次数が5次とされた場合、第2の方法においては、次のようにして特徴量wが演算される。
【0633】
即ち、図68は、式(45)の左辺で示される画素値P(x,y)をグラフ化したものを表している。図68で示される5つのグラフのそれぞれは、基本的に図65で示されるものと同一である。
【0634】
図68で示されるように、最大の画素値(細線に対応する画素値)は、傾きGで表されるデータの定常性の方向に続いている。
【0635】
そこで、第2の方法においては、図68で示される入力画素値P(x,−2),P(x,−1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれを、例えば、x軸に沿って足しこむ場合、第1の方法のようにそのまま足しこむ(yを一定とみなして、図68で示される状態のまま5つのグラフを重ねる)のではなく、図69で示される状態に変化させてから足しこむ。
【0636】
即ち、図69は、図68で示される入力画素値P(x,−2),P(x,−1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれを、上述した式(43)で示されるシフト量C(y)だけシフトさせた状態を表している。換言すると、図69は、図68で示される5つのグラフを、データの定常性の実際の方向を表す傾きGを、あたかも傾きG’とするように(図中、点線の直線を実線の直線とするように)移動させた状態を表している。
【0637】
図69の状態で、入力画素値P(x,−2),P(x,−1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれを、例えば、x軸に沿って足しこむと(図69で示される状態で5つのグラフを重ねると)、図70で示されるような、x軸に平行な複数の線(点線、3点鎖線、実線、1点鎖線、および2点鎖線)が分布する。
【0638】
なお、図70において、縦軸は画素値を表しており、横軸は注目画素からの相対位置xを表している。また、点線は入力画素値P(x,−2)を、3点鎖線は入力画素値P(x,−1)を、実線は入力画素値P(x,0)を、1点鎖線は入力画素値P(x,1)を、2点鎖線は入力画素値P(x,2)を、それぞれ表している。さらに、同一の画素値の場合、実際には2本以上の線が重なることになるが、図70においては、各線の区別がつくように、各線のそれぞれが重ならないように描画されている。
【0639】
そして、このように分布した20個の入力画素値P(x,y)のそれぞれ(ただし、xは、−1乃至2のうちのいずれかの整数値。yは、−2乃至2のうちのいずれかの整数値)と、値f(x+C(y))の誤差が最小となるような回帰曲線(最小自乗法により演算された特徴量wを上述した式(38)に代入して得られる近似関数f(x))は、図70の実線で示される曲線f(x)となる。
【0640】
このように、第2の方法により生成された近似関数f(x)は、データ定常性検出部101(図58)より出力される角度θ方向(即ち、ほぼ空間方向の定常性の方向)の入力画素値P(x,y)の平均値をX方向に結んだ曲線を表すことになる。
【0641】
これに対して、上述したように、第1の方法により生成された近似関数f(x)は、Y方向(即ち、空間方向の定常性とは異なる方向)の入力画素値P(x,y)の平均値を、X方向に結んだ曲線を単に表しているに過ぎない。
【0642】
従って、図70で示されるように、第2の方法により生成された近似関数f(x)は、第1の方法により生成された近似関数f(x)よりも、その波形の鈍り度合いが減少し、かつ、元の画素値に対するディテールの減り具合も減少する関数となる。換言すると、図示はしないが、第2の方法により生成される近似関数f(x)は、第1の方法により生成される近似関数f(x)よりも実際のX断面波形F(x)により近い波形となる。
【0643】
しかしながら、上述したように、近似関数f(x)は、空間方向の定常性が考慮されたものではあるが、入力画像(入力画素値)を原点(基準)として生成されたものに他ならない。即ち、上述した図63で示されるように、近似関数f(x)は、X断面波形F(x)とは異なる入力画像を近似したに過ぎず、X断面波形F(x)を近似したとは言い難い。換言すると、第2の方法は、上述した式(44)が成立するとして特徴量wを演算する方法であり、上述した式(38)の関係は考慮していない(センサ2の積分効果を考慮していない)。
【0644】
そこで、本願出願人は、第2の方法に対して、センサ2の積分効果をさらに考慮することで近似関数f(x)の特徴量wを演算する第3の方法を発明した。
【0645】
即ち、第3の方法は、空間混合または時間混合の概念を導入した方法である。なお、空間混合と時間混合の両方を考慮すると、説明が複雑になるため、ここでは、空間混合と時間混合のうちの、例えば空間混合を考慮し、時間混合を無視するものとする。
【0646】
そこで、第3の方法の説明の前に、図71を参照して、空間混合について説明する。
【0647】
図71において、実世界1の光信号の1部分2321(以下、領域2321と称する)は、センサ2の1つの検出素子(画素)と同じ面積を有する領域を表している。
【0648】
領域2321がセンサ2に検出されると、センサ2からは、領域2321が時空間方向(X方向,Y方向,およびt方向)に積分された値(1つの画素値)2322が出力される。なお、画素値2322は、図中、画像として表現されているが、実際には、所定の値を表すデータである。
【0649】
実世界1の領域2321は、前景(例えば、上述した細線)に対応する光信号(図中白い領域)と、背景に対応する光信号(図中黒い領域)に明確に区分される。
【0650】
これに対して、画素値2322は、前景に対応する実世界1の光信号と、背景に対応する実世界1の光信号が積分された値である。換言すると、画素値2322は、前景に対応する光のレベルと背景に対応する光のレベルが空間的に混合されたレベルに対応する値である。
【0651】
このように、実世界1の光信号のうちの1画素(センサ2の検出素子)に対応する部分が、同一レベルの光信号が空間的に一様に分布する部分ではなく、前景と背景のように異なるレベルの光信号のそれぞれが分布する部分である場合、その領域は、センサ2により検出されると、センサ2の積分効果により、異なる光のレベルがあたかも空間的に混合されて(空間方向に積分されて)1つの画素値となってしまう。このように、センサ2の画素において、前景に対する画像(実世界1の光信号)と、背景に対する画像(実世界1の光信号)が空間的に積分されて、いわば混合されてしまうことが、空間混合であり、そのような画素からなる領域を、ここでは、空間混合領域と称する。
【0652】
従って、第3の方法においては、実世界推定部102(図58)が、実世界1の元の領域2321(実世界1の光信号のうちの、センサ2の1画素に対応する部分2321)を表すX断面波形F(x)を、例えば、図72で示されるような、1次の多項式などの近似関数f(x)で近似することによって、X断面波形F(x)を推定する。
【0653】
即ち、図72は、空間混合領域である画素値2322(図71)に対応する近似関数f(x)、即ち、実世界1の領域2331内の実線(図71)に対応するX断面波形F(x)を近似する近似関数f(x)の例を表している。図72において、図中水平方向の軸は、画素値2322に対応する画素の左下端xから右下端xまでの辺(図71)に平行な軸を表しており、x軸とされている。図中垂直方向の軸は、画素値を表す軸とされている。
【0654】
図72において、近似関数f(x)をxからxの範囲(画素幅)で積分したものが、センサ2から出力される画素値P(x,y)とほぼ一致する(誤差eだけ存在する)として、次の式(46)を定義する。
【0655】
【数46】
Figure 2005018534
・・・(46)
【0656】
いまの場合、図67で示される細線含有データ領域2302の20個の画素値P(x,y)(ただし、xは、−1乃至2のうちのいずれかの整数値。yは、−2乃至2のうちのいずれかの整数値)から、近似関数f(x)の特徴量wが算出されるので、式(46)の画素値Pは、画素値P(x,y)となる。
【0657】
また、第2の方法と同様に、空間方向の定常性も考慮する必要があるので、式(46)の積分範囲の開始位置xと終了位置xのそれぞれは、シフト量C(y)にも依存することになる。即ち、式(46)の積分範囲の開始位置xと終了位置xのそれぞれは、次の式(47)のように表される。
【0658】
【数47】
Figure 2005018534
・・・(47)
【0659】
この場合、図67で示される細線含有データ領域2302の各画素値それぞれ、即ち、図68で示される入力画素値P(x,−2),P(x,−1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれ(ただし、xは、−1乃至2のうちのいずれかの整数値)を、上述した式(46)(積分範囲は、上述した式(47))に代入すると次の式(48)で示される20個の方程式が生成される。
【0660】
【数48】
Figure 2005018534
・・・(48)
【0661】
式(48)は、上述した式(45)と同様に、20個の方程式より構成されている。従って、第2の方法と同様に第3の方法においても、近似関数f(x)の特徴量wの個数が20個より少ない場合、即ち、近似関数f(x)が19次より少ない次数の多項式である場合、例えば、最小自乗法を用いて特徴量wの算出が可能である。なお、最小自乗法の具体的な解法は後述する。
【0662】
例えば、近似関数f(x)の次数が5次とされた場合、式(48)を利用して最小自乗法により演算された近似関数f(x)(演算された特徴量wにより生成される近似関数f(x))は、図73の実線で示される曲線のようになる。
【0663】
なお、図73において、縦軸は画素値を表しており、横軸は注目画素からの相対位置xを表している。
【0664】
図73で示されるように、第3の方法により生成された近似関数f(x)(図中、実線で示される曲線)は、第2の方法により生成された近似関数f(x)(図中、点線で示される曲線)と比較すると、x=0における画素値が大きくなり、また、曲線の傾斜の度合いも急な波形となる。これは、入力画素よりディテイルが増加して、入力画素の解像度とは無関係となっているためである。即ち、近似関数f(x)は、X断面波形F(x)を近似していると言える。従って、図示はしないが、近似関数f(x)は、近似関数f(x)よりもX断面波形F(x)に近い波形となる。
【0665】
図74は、このような1次近似手法を利用する実世界推定部102の構成例を表している。
【0666】
図74において、実世界推定部102は、例えば、特徴量wを上述した第3の方法(最小自乗法)により演算し、演算した特徴量wを利用して上述した式(39)の近似関数f(x)を生成することで、X断面波形F(x)を推定する。
【0667】
図74で示されるように、実世界推定部102には、条件設定部2331、入力画像記憶部2332、入力画素値取得部2333、積分成分演算部2334、正規方程式生成部2335、および近似関数生成部2336が設けられている。
【0668】
条件設定部2331は、注目画素に対応するX断面波形F(x)を推定するために使用する画素の範囲(以下、タップ範囲と称する)や、近似関数f(x)の次数nを設定する。
【0669】
入力画像記憶部2332は、センサ2からの入力画像(画素値)を一次的に格納する。
【0670】
入力画素値取得部2333は、入力画像記憶部2332に記憶された入力画像のうちの、条件設定部2231により設定されたタップ範囲に対応する入力画像の領域を取得し、それを入力画素値テーブルとして正規方程式生成部2335に供給する。即ち、入力画素値テーブルは、入力画像の領域に含まれる各画素のそれぞれの画素値が記述されたテーブルである。なお、入力画素値テーブルの具体例については後述する。
【0671】
ところで、ここでは、実世界推定部102は、上述した式(46)と式(47)を利用して最小自乗法により近似関数f(x)の特徴量wを演算するが、上述した式(46)は、次の式(49)のように表現することができる。
【0672】
【数49】
Figure 2005018534
・・・(49)
【0673】
式(49)において、S(x,x)は、i次項の積分成分を表している。即ち、積分成分S(x,x)は、次の式(50)で示される。
【0674】
【数50】
Figure 2005018534
・・・(50)
【0675】
積分成分演算部2334は、この積分成分S(x、x)を演算する。
【0676】
具体的には、式(50)で示される積分成分S(x,x)(ただし、値xと値xは、上述した式(46)で示される値)は、相対画素位置(x,y)、シフト量C(y)、および、i次項のiが既知であれば演算可能である。また、これらのうちの、相対画素位置(x,y)は注目画素とタップ範囲により、シフト量C(y)は角度θにより(上述した式(41)と式(43)により)、iの範囲は次数nにより、それぞれ決定される。
【0677】
従って、積分成分演算部2334は、条件設定部2331により設定されたタップ範囲および次数、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度θに基づいて積分成分S(x,x)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして正規方程式生成部2335に供給する。
【0678】
正規方程式生成部2335は、入力画素値取得部2333より供給された入力画素値テーブルと、積分成分演算部2334より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(46)、即ち、式(49)の右辺の特徴量wを最小自乗法で求める場合の正規方程式を生成し、それを正規方程式テーブルとして近似関数生成部2336に供給する。なお、正規方程式の具体例については後述する。
【0679】
近似関数生成部2336は、正規方程式生成部2335より供給された正規方程式テーブルに含まれる正規方程式を行列解法で解くことにより、上述した式(49)の特徴量w(即ち、1次元多項式である近似関数f(x)の係数w)のそれぞれを演算し、画像生成部103に出力する。
【0680】
次に、図75のフローチャートを参照して、1次元近似手法を利用する実世界推定部102(図74)の実世界の推定処理(図29のステップS102の処理)について説明する。
【0681】
例えば、いま、センサ2から出力された1フレームの入力画像であって、上述した図60の細線含有データ領域2302を含む入力画像が、既に入力画像記憶部2332に記憶されているとする。また、データ定常性検出部101が、ステップS101(図29)の定常性の検出の処理において、細線含有データ領域2302に対してその処理を施して、データ定常性情報として角度θを既に出力しているとする。
【0682】
この場合、図75のステップS2301において、条件設定部2331は、条件(タップ範囲と次数)を設定する。
【0683】
例えば、いま、図76で示されるタップ範囲2351が設定されるとともに、次数として5次が設定されたとする。
【0684】
即ち、図76は、タップ範囲の1例を説明する図である。図76において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図59)を表している。また、タップ範囲2351は、X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素(図中、20個の正方形)からなる画素群を表している。
【0685】
さらに、図76で示されるように、注目画素が、タップ範囲2351のうちの、図中、左から2画素目であって、下から3画素目の画素に設定されるとする。
また、各画素のそれぞれに対して、注目画素からの相対画素位置(x,y)(注目画素の中心(0,0)を原点とする注目画素座標系の座標値)に応じて、図76で示されるような番号l(lは、0乃至19のうちのいずれかの整数値)が付されるとする。
【0686】
図75に戻り、ステップS2302において、条件設定部2331は、注目画素を設定する。
【0687】
ステップS2303において、入力画素値取得部2333は、条件設定部2331により設定された条件(タップ範囲)に基づいて入力画素値を取得し、入力画素値テーブルを生成する。即ち、いまの場合、入力画素値取得部2333は、細線含有データ領域2302(図64)を取得し、入力画素値テーブルとして、20個の入力画素値P(l)からなるテーブルを生成する。
【0688】
なお、いまの場合、入力画素値P(l)と、上述した入力画素値P(x,y)の関係は、次の式(51)で示される関係とされる。ただし、式(51)において、左辺が入力画素値P(l)を表し、右辺が入力画素値P(x,y)を表している。
【0689】
【数51】
Figure 2005018534
・・・(51)
【0690】
ステップS2304において、積分成分演算部2334は、条件設定部2331により設定された条件(タップ範囲および次数)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度θ)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【0691】
いまの場合、上述したように、入力画素値は、P(x,y)でなくP(l)といった、画素の番号lの値として取得されるので、積分成分演算部2334は、上述した式(50)の積分成分S(x,x)を、次の式(52)の左辺で示される積分成分S(l)といったlの関数として演算する。
【0692】
【数52】
Figure 2005018534
・・・(52)
【0693】
具体的には、いまの場合、次の式(53)で示される積分成分S(l)が演算される。
【0694】
【数53】
Figure 2005018534
・・・(53)
【0695】
なお、式(53)において、左辺が積分成分S(l)を表し、右辺が積分成分S(x,x)を表している。即ち、いまの場合、iは0乃至5であるので、20個のS(l),20個のS(l),20個のS(l),20個のS(l),20個のS(l),20個のS(l)の総計120個のS(l)が演算されることになる。
【0696】
より具体的には、はじめに、積分成分演算部2334は、データ定常性検出部101より供給された角度θを使用して、シフト量C(−2),C(−1),C(1),C(2)のそれぞれを演算する。次に、積分成分演算部2334は、演算したシフト量C(−2),C(−1),C(1),C(2)を使用して式(52)の右辺に示される20個の積分成分S(x,x)のそれぞれを、i=0乃至5のそれぞれについて演算する。即ち、120個の積分成分S(x,x)が演算される。なお、この積分成分S(x,x)の演算においては、上述した式(50)が使用される。そして、積分成分演算部2334は、式(53)に従って、演算した120個の積分成分S(x,x)のそれぞれを、対応する積分成分S(l)に変換し、変換した120個の積分成分S(l)を含む積分成分テーブルを生成する。
【0697】
なお、ステップS2303の処理とステップS2304の処理の順序は、図75の例に限定されず、ステップS2304の処理が先に実行されてもよいし、ステップS2303の処理とステップS2304の処理が同時に実行されてもよい。
【0698】
次に、ステップS2305において、正規方程式生成部2335は、ステップS2303の処理で入力画素値取得部2333により生成された入力画素値テーブルと、ステップS2304の処理で積分成分演算部2334により生成された積分成分テーブルに基づいて、正規方程式テーブルを生成する。
【0699】
具体的には、いまの場合、最小自乗法により、上述した式(49)に対応する次の式(54)の特徴量wを演算する。それに対応する正規方程式は、次の式(55)のように表される。
【0700】
【数54】
Figure 2005018534
・・・(54)
【0701】
【数55】
Figure 2005018534
・・・(55)
【0702】
なお、式(55)において、Lは、タップ範囲の画素の番号lのうちの最大値を表している。nは、多項式である近似関数f(x)の次数を表している。具体的には、いまの場合、n=5となり、L=19となる。
【0703】
式(55)で示される正規方程式の各行列のそれぞれを、次の式(56)乃至(58)のように定義すると、正規方程式は、次の式(59)のように表される。
【0704】
【数56】
Figure 2005018534
・・・(56)
【0705】
【数57】
Figure 2005018534
・・・(57)
【0706】
【数58】
Figure 2005018534
・・・(58)
【0707】
【数59】
Figure 2005018534
・・・(59)
【0708】
式(57)で示されるように、行列WMATの各成分は、求めたい特徴量wである。従って、式(59)において、左辺の行列SMATと右辺の行列PMATが決定されれば、行列解法によって行列WMAT(即ち、特徴量w)の算出が可能である。
【0709】
具体的には、式(56)で示されるように、行列SMATの各成分は、上述した積分成分S(l)が既知であれば演算可能である。積分成分S(l)は、積分成分演算部2334より供給された積分成分テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2335は、積分成分テーブルを利用して行列SMATの各成分を演算することができる。
【0710】
また、式(58)で示されるように、行列PMATの各成分は、積分成分S(l)と入力画素値P(l)が既知であれば演算可能である。積分成分S(l)は、行列SMATの各成分に含まれるものと同一のものであり、また、入力画素値P(l)は、入力画素値取得部2333より供給された入力画素値テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2335は、積分成分テーブルと入力画素値テーブルを利用して行列PMATの各成分を演算することができる。
【0711】
このようにして、正規方程式生成部2335は、行列SMATと行列PMATの各成分を演算し、その演算結果(行列SMATと行列PMATの各成分)を正規方程式テーブルとして近似関数生成部2336に出力する。
【0712】
正規方程式生成部2335より正規方程式テーブルが出力されると、ステップS2306において、近似関数生成部2336は、正規方程式テーブルに基づいて、上述した式(59)の行列WMATの各成分である特徴量w(即ち、1次元多項式である近似関数f(x)の係数w)を演算する。
【0713】
具体的には、上述した式(59)の正規方程式は、次の式(60)のように変形できる。
【0714】
【数60】
Figure 2005018534
・・・(60)
【0715】
式(60)において、左辺の行列WMATの各成分が、求めたい特徴量wである。また、行列SMATと行列PMATのそれぞれの各成分は、正規方程式生成部2335より供給された正規方程式テーブルに含まれている。従って、近似関数生成部2336は、正規方程式テーブルを利用して、式(60)の右辺の行列演算を行うことで行列WMATを演算し、その演算結果(特徴量w)を画像生成部103に出力する。
【0716】
ステップS2307において、近似関数生成部2336は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【0717】
ステップS2307において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS2302に戻り、それ以降の処理が繰り返される。即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS2302乃至S2307の処理が繰り返される。
【0718】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS2307において、全画素の処理が終了されたと判定されると)、実世界1の推定処理は終了となる。
【0719】
なお、以上のようにして演算された係数(特徴量)wにより生成される近似関数f(x)の波形は、上述した図73の近似関数f(x)のような波形となる。
【0720】
このように、1次元近似手法においては、1次元のX断面波形F(x)と同一形状の波形が定常性の方向に連なっていると仮定して、例えば、1次元の多項式などの近似関数f(x)の特徴量が演算される。従って、1次元近似手法においては、他の関数近似手法に比較して、少ない演算処理量で近似関数f(x)の特徴量の算出が可能となる。
【0721】
次に、図77乃至図83を参照して、第2の関数近似手法について説明する。
【0722】
即ち、第2の関数近似手法とは、例えば、図77で示されるような、傾きGで表される空間方向の定常性を有する実世界1の光信号を、X−Y平面上(空間方向の1方向であるX方向と、X方向に垂直なY方向に水平な平面上)の波形F(x,y)とみなし、2次元の多項式などの近似関数f(x,y)で波形F(x,y)を近似することによって、その波形F(x,y)を推定する手法である。従って、以下、第2の関数近似手法を、2次元近似手法と称する。
【0723】
なお、図77において、図中、水平方向は、空間方向の1方向であるX方向を、右上方向は、空間方向の他方向であるY方向を、垂直方向は、光のレベルを、それぞれ表している。Gは、空間方向の定常性の傾きを表している。
【0724】
また、2次元近似手法の説明においても、センサ2は、図78で示されるような、複数の検出素子2−1がその平面上に配置されて構成されるCCDとされる。
【0725】
図78の例では、検出素子2−1の所定の1辺に平行な方向が、空間方向の1方向であるX方向とされており、X方向に垂直な方向が、空間方向の他方向であるY方向とされている。そして、X−Y平面に垂直な方向が、時間方向であるt方向とされている。
【0726】
また、図78の例では、センサ2の各検出素子2−1のそれぞれの空間的な形状は、1辺の長さが1の正方形とされている。そして、センサ2のシャッタ時間(露光時間)が1とされている。
【0727】
さらに、図78の例では、センサ2の所定の1つの検出素子2−1の中心が、空間方向(X方向とY方向)の原点(X方向の位置x=0、およびY方向の位置y=0)とされており、また、露光時間の中間時刻が、時間方向(t方向)の原点(t方向の位置t=0)とされている。
【0728】
この場合、空間方向の原点(x=0,y=0)にその中心が存在する検出素子2−1は、X方向に−0.5乃至0.5の範囲、Y方向に−0.5乃至0.5の範囲、およびt方向に−0.5乃至0.5の範囲で光信号関数F(x,y,t)を積分し、その積分値を画素値Pとして出力することになる。
【0729】
即ち、空間方向の原点にその中心が存在する検出素子2−1から出力される画素値Pは、次の式(61)で表される。
【0730】
【数61】
Figure 2005018534
・・・(61)
【0731】
その他の検出素子2−1も同様に、対象とする検出素子2−1の中心を空間方向の原点とすることで、式(61)で示される画素値Pを出力することになる。
【0732】
ところで、上述したように、2次元近似手法は、実世界1の光信号を、例えば、図77で示されるような波形F(x,y)として扱い、その2次元の波形F(x,y)を、2次元の多項式などの近似関数f(x,y)に近似する手法である。
【0733】
そこで、はじめに、このような近似関数f(x,y)を2次元の多項式で表現する手法について説明する。
【0734】
上述したように、実世界1の光信号は、3次元の空間上の位置x,y、およびz、並びに時刻tを変数とする光信号関数F(x,y,t)で表される。この光信号関数F(x,y,t)を、Y方向の任意の位置yにおいて、X方向に射影した1次元の波形を、ここでは、X断面波形F(x)と称している。
【0735】
このX断面波形F(x)に注目すると、実世界1の信号が、空間方向の所定の方向に定常性を有している場合、X断面波形F(x)と同一形状の波形がその定常性の方向に連なっていると考えることができる。例えば、図77の例では、X断面波形F(x)と同一形状の波形が、傾きGの方向に連なっている。換言すると、X断面波形F(x)と同一形状の波形が傾きGの方向に連なって、波形F(x,y)が形成されているとも言える。
【0736】
従って、波形F(x,y)を近似する近似関数f(x,y)の波形は、X断面波形F(x)を近似する近似関数f(x)と同一形状の波形が連なって形成されると考えることで、近似関数f(x,y)を2次元の多項式で表現することが可能になる。
【0737】
さらに詳細に、近似関数f(x,y)の表現方法について説明する。
【0738】
例えば、いま、上述した図77で示されるような、実世界1の光信号、即ち、傾きGで表される空間方向の定常性を有する光信号が、センサ2(図78)により検出されて入力画像(画素値)として出力されたとする。
【0739】
さらに、図79で示されるように、データ定常性検出部101(図3)が、この入力画像のうちの、X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素(図中、点線で表される20個の正方形)から構成される入力画像の領域2401に対してその処理を実行し、データ定常性情報の1つとして角度θ(傾きGに対応する傾きGで表されるデータの定常性の方向と、X方向とのなす角度θ)を出力したとする。
【0740】
なお、入力画像の領域2401において、図中水平方向は、空間方向の1方向であるX方向を表しており、図中垂直方向は、空間方向の他方向であるY方向を表している。
【0741】
また、図79中、左から2画素目であって、下から3画素目の画素が注目画素とされ、その注目画素の中心を原点(0,0)とするように(x,y)座標系が設定されている。そして、原点(0,0)を通る角度θの直線(データの定常性の方向を表す傾きGの直線)に対するX方向の相対的な距離(以下、断面方向距離と称する)がx’と記述されている。
【0742】
さらに、図79中、右側のグラフは、X断面波形F(x’)が近似された関数であって、n次(nは、任意の整数)の多項式である近似関数f(x’)を表している。右側のグラフの軸のうち、図中水平方向の軸は、断面方向距離を表しており、図中垂直方向の軸は、画素値を表している。
【0743】
この場合、図79で示される近似関数f(x’)は、n次の多項式であるので、次の式(62)のように表される。
【0744】
【数62】
Figure 2005018534
・・・(62)
【0745】
また、角度θが決定されていることから、原点(0,0)を通る角度θの直線は一意に決まり、Y方向の任意の位置yにおける、直線のX方向の位置xが、次の式(63)のように表される。ただし、式(63)において、sはcotθ(=1/tanθ)を表している。
【0746】
【数63】
Figure 2005018534
・・・(63)
【0747】
即ち、図79で示されるように、傾きGで表されるデータの定常性に対応する直線上の点は、座標値(x,y)で表される。
【0748】
式(63)より、断面方向距離x’は、次の式(64)のように表される。
【0749】
【数64】
Figure 2005018534
・・・(64)
【0750】
従って、入力画像の領域2401内の任意の位置(x,y)における近似関数f(x,y)は、式(62)と式(64)より、次の式(65)のように示される。
【0751】
【数65】
Figure 2005018534
・・・(65)
【0752】
なお、式(65)において、wは、近似関数f(x,y)の係数を表している。なお、近似関数f(x,y)を含む近似関数fの係数wを、近似関数fの特徴量と位置づけることもできる。従って、以下、近似関数fの係数wを、近似関数fの特徴量wとも称する。
【0753】
このようにして、角度θが既知であれば、2次元波形の近似関数f(x,y)を、式(65)の多項式として表現することができる。
【0754】
従って、実世界推定部102は、式(65)の特徴量wを演算することができれば、図77で示されるような波形F(x,y)を推定することができる。
【0755】
そこで、以下、式(65)の特徴量wを演算する手法について説明する。
【0756】
即ち、式(65)で表される近似関数f(x,y)を、画素(センサ2の検出素子2−1(図78))に対応する積分範囲(空間方向の積分範囲)で積分すれば、その積分値が、画素の画素値の推定値となる。このことを、式で表現したものが、次の式(66)である。なお、2次元近似手法においては、時間方向tは一定値とみなされるので、式(66)は、空間方向(X方向とY方法)の位置x,yを変数とする方程式とされている。
【0757】
【数66】
Figure 2005018534
・・・(66)
【0758】
式(66)において、P(x,y)は、センサ2からの入力画像のうちの、その中心位置が位置(x,y)(注目画素からの相対位置(x,y))に存在する画素の画素値を表している。また、eは、誤差を表している。
【0759】
このように、2次元近似手法においては、入力画素値P(x,y)と、2次元の多項式などの近似関数f(x,y)の関係を、式(66)で表現することが可能であるので、実世界推定部102は、式(66)を利用して、特徴量wを、例えば、最小自乗法等により演算することで(演算した特徴量wを式(64)に代入して近似関数f(x,y)を生成することで)、2次元の関数F(x,y)(傾きG(図77)で表される空間方向の定常性を有する実世界1の光信号を、空間方向に着目して表した波形F(x,y))を推定することが可能となる。
【0760】
図80は、このような2次元近似手法を利用する実世界推定部102の構成例を表している。
【0761】
図80で示されるように、実世界推定部102には、条件設定部2421、入力画像記憶部2422、入力画素値取得部2423、積分成分演算部2424、正規方程式生成部2425、および近似関数生成部2426が設けられている。
【0762】
条件設定部2421は、注目画素に対応する関数F(x,y)を推定するために使用する画素の範囲(タップ範囲)や、近似関数f(x,y)の次数nを設定する。
【0763】
入力画像記憶部2422は、センサ2からの入力画像(画素値)を一次格納する。
【0764】
入力画素値取得部2423は、入力画像記憶部2422に記憶された入力画像のうちの、条件設定部2421により設定されたタップ範囲に対応する入力画像の領域を取得し、それを入力画素値テーブルとして正規方程式生成部2425に供給する。即ち、入力画素値テーブルは、入力画像の領域に含まれる各画素のそれぞれの画素値が記述されたテーブルである。なお、入力画素値テーブルの具体例については後述する。
【0765】
ところで、上述したように、2次元近似手法を利用する実世界推定部102は、上述した式(66)を最小自乗法で解くことにより、上述した式(65)で示される近似関数f(x,y)の特徴量wを演算する。
【0766】
式(66)は、次の式(67)乃至式(69)を用いることで得られる次の式(70)を使用することで、次の式(71)のように表現することができる。
【0767】
【数67】
Figure 2005018534
・・・(67)
【0768】
【数68】
Figure 2005018534
・・・(68)
【0769】
【数69】
Figure 2005018534
・・・(69)
【0770】
【数70】
Figure 2005018534
・・・(70)
【0771】
【数71】
Figure 2005018534
・・・(71)
【0772】
式(71)において、S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5)は、i次項の積分成分を表している。即ち、積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5)は、次の式(72)で示される通りである。
【0773】
【数72】
Figure 2005018534
・・・(72)
【0774】
積分成分演算部2424は、この積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5)を演算する。
【0775】
具体的には、式(72)で示される積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5)は、相対画素位置(x,y)、上述した式(65)における変数s、および、i次項のiが既知であれば、演算可能である。これらのうちの、相対画素位置(x,y)は注目画素とタップ範囲により、変数sはcotθであるので角度θにより、iの範囲は次数nにより、それぞれ決定される。
【0776】
従って、積分成分演算部2424は、条件設定部2421により設定されたタップ範囲および次数、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度θに基づいて積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして正規方程式生成部2425に供給する。
【0777】
正規方程式生成部2425は、入力画素値取得部2423より供給された入力画素値テーブルと、積分成分演算部2424より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(66)、即ち、式(71)を最小自乗法で求める場合の正規方程式を生成し、それを正規方程式テーブルとして近似関数生成部2426に出力する。なお、正規方程式の具体例については後述する。
【0778】
近似関数生成部2426は、正規方程式生成部2425より供給された正規方程式テーブルに含まれる正規方程式を行列解法で解くことにより、上述した式(66)の特徴量w(即ち、2次元多項式である近似関数f(x,y)の係数w)のそれぞれを演算し、画像生成部103に出力する。
【0779】
次に、図81のフローチャートを参照して、2次元近似手法が適用される実世界の推定処理(図29のステップS102の処理)について説明する。
【0780】
例えば、いま、傾きGで表される空間方向の定常性を有する実世界1の光信号が、センサ2(図78)により検出されて、1フレームに対応する入力画像として、入力画像記憶部2422に既に記憶されているとする。また、データ定常性検出部101が、ステップS101(図29)の定常性の検出の処理において、入力画像のうちの、上述した図79で示される領域2401に対して処理を施して、データ定常性情報として角度θを既に出力しているとする。
【0781】
この場合、ステップS2401において、条件設定部2421は、条件(タップ範囲と次数)を設定する。
【0782】
例えば、いま、図82で示されるタップ範囲2441が設定されるとともに、次数として5次が設定されたとする。
【0783】
即ち、図82は、タップ範囲の1例を説明する図である。図82において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図78)を表している。また、タップ範囲2441は、X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素(図中、20個の正方形)からなる画素群を表している。
【0784】
さらに、図82に示されるように、注目画素が、タップ範囲2441のうちの、図中、左から2画素目であって、下から3画素目の画素に設定されるとする。
また、各画素のそれぞれに対して、注目画素からの相対画素位置(x,y)(注目画素の中心(0,0)を原点とする注目画素座標系の座標値)に応じて、図82で示されるような番号l(lは、0乃至19のうちのいずれかの整数値)が付されるとする。
【0785】
図81に戻り、ステップS2402において、条件設定部2421は、注目画素を設定する。
【0786】
ステップS2403において、入力画素値取得部2423は、条件設定部2421により設定された条件(タップ範囲)に基づいて入力画素値を取得し、入力画素値テーブルを生成する。即ち、いまの場合、入力画素値取得部2423は、入力画像の領域2401(図79)を取得し、入力画素値テーブルとして、20個の入力画素値P(l)からなるテーブルを生成する。
【0787】
なお、いまの場合、入力画素値P(l)と、上述した入力画素値P(x,y)の関係は、次の式(73)で示される関係とされる。ただし、式(73)において、左辺が入力画素値P(l)を表し、右辺が入力画素値P(x,y)を表している。
【0788】
【数73】
Figure 2005018534
・・・(73)
【0789】
ステップS2404において、積分成分演算部2424は、条件設定部2421により設定された条件(タップ範囲および次数)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度θ)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【0790】
いまの場合、上述したように、入力画素値は、P(x,y)でなくP(l)といった、画素の番号lの値として取得されるので、積分成分演算部2424は、上述した式(72)の積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5)を、次の式(74)の左辺で示される積分成分S(l)といったlの関数として演算する。
【0791】
【数74】
Figure 2005018534
・・・(74)
【0792】
具体的には、いまの場合、次の式(75)で示される積分成分S(l)が演算される。
【0793】
【数75】
Figure 2005018534
・・・(75)
【0794】
なお、式(75)において、左辺が積分成分S(l)を表し、右辺が積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5)を表している。即ち、いまの場合、iは0乃至5であるので、20個のS(l),20個のS(l),20個のS(l),20個のS(l),20個のS(l),20個のS(l)の総計120個のS(l)が演算されることになる。
【0795】
より具体的には、はじめに、積分成分演算部2424は、データ定常性検出部101より供給された角度θに対するcotθを演算し、それを変数sとする。次に、積分成分演算部2424は、演算した変数sを使用して式(74)の右辺で示される20個の積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5) のそれぞれを、i=0乃至5のそれぞれについて演算する。即ち、120個の積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5) が演算されることになる。なお、この積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5) の演算においては、上述した式(72)が使用される。そして、積分成分演算部2424は、式(75)に従って、演算した120個の積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5)のそれぞれを、対応するS(l)のそれぞれに変換し、変換した120個のS(l)を含む積分成分テーブルを生成する。
【0796】
なお、ステップS2403の処理とステップS2404の処理の順序は、図81の例に限定されず、ステップS2404の処理が先に実行されてもよいし、ステップS2403の処理とステップS2404の処理が同時に実行されてもよい。
【0797】
次に、ステップS2405において、正規方程式生成部2425は、ステップS2403の処理で入力画素値取得部2423により生成された入力画素値テーブルと、ステップS2404の処理で積分成分演算部2424により生成された積分成分テーブルに基づいて、正規方程式テーブルを生成する。
【0798】
具体的には、いまの場合、上述した式(71)を利用して最小自乗法により特徴量wが演算される(ただし、式(70)において、積分成分S(x−0.5,x+0.5,y−0.5,y+0.5)は、式(74)により変換されるSi(l)が使用される)ので、それに対応する正規方程式は、次の式(76)のように表される。
【0799】
【数76】
Figure 2005018534
・・・(76)
【0800】
なお、式(76)において、Lは、タップ範囲の画素の番号lのうちの最大値を表している。nは、多項式である近似関数f(x)の次数を表している。具体的には、いまの場合、n=5となり、L=19となる。
【0801】
式(76)で示される正規方程式の各行列のそれぞれを、次の式(77)乃至(79)のように定義すると、正規方程式は、次の式(80)のように表現される。
【0802】
【数77】
Figure 2005018534
・・・(77)
【0803】
【数78】
Figure 2005018534
・・・(78)
【0804】
【数79】
Figure 2005018534
・・・(79)
【0805】
【数80】
Figure 2005018534
・・・(80)
【0806】
式(78)で示されるように、行列WMATの各成分は、求めたい特徴量wである。従って、式(80)において、左辺の行列SMATと右辺の行列PMATが決定されれば、行列解法によって行列WMATの演算が可能になる。
【0807】
具体的には、式(77)で示されるように、行列SMATの各成分は、上述した積分成分S(l)で演算可能である。即ち、積分成分S(l)は、積分成分演算部2424より供給された積分成分テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2425は、積分成分テーブルを利用して行列SMATの各成分を演算することができる。
【0808】
また、式(79)で示されるように、行列PMATの各成分は、積分成分S(l)と入力画素値P(l)で演算可能である。即ち、積分成分S(l)は、行列SMATの各成分に含まれるものと同一のものであり、また、入力画素値P(l)は、入力画素値取得部2423より供給された入力画素値テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2425は、積分成分テーブルと入力画素値テーブルを利用して行列PMATの各成分を演算することができる。
【0809】
このようにして、正規方程式生成部2425は、行列SMATと行列PMATの各成分を演算し、その演算結果(行列SMATと行列PMATの各成分)を正規方程式テーブルとして近似関数生成部2426に出力する。
【0810】
正規方程式生成部2425より正規方程式テーブルが出力されると、ステップS2406において、近似関数生成部2426は、正規方程式テーブルに基づいて、上述した式(80)の行列WMATの各成分である特徴量w(即ち、2次元多項式である近似関数f(x,y)の係数w)を演算する。
【0811】
具体的には、上述した式(80)の正規方程式は、次の式(81)のように変形できる。
【0812】
【数81】
Figure 2005018534
・・・(81)
【0813】
式(81)において、左辺の行列WMATの各成分が、求めたい特徴量wである。また、行列SMATと行列PMATのそれぞれの各成分は、正規方程式生成部2425より供給された正規方程式テーブルに含まれている。従って、近似関数生成部2426は、正規方程式テーブルを利用して、式(81)の右辺の行列演算を行うことで行列WMATを演算し、その演算結果(特徴量w)を画像生成部103に出力する。
【0814】
ステップS2407において、近似関数生成部2426は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【0815】
ステップS2407において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS2402に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS2402乃至S2407の処理が繰り返される。
【0816】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS2407において、全画素の処理が終了されたと判定されると)、実世界1の推定処理は終了となる。
【0817】
以上、2次元近似手法の説明として、空間方向(X方向とY方向)に対する近似関数f(x,y)の係数(特徴量)wを演算する例を用いたが、2次元近似手法は、時空間方向(X方向とt方向、または、Y方向とt方向)に対しても適用可能である。
【0818】
即ち、上述した例は、実世界1の光信号が、例えば、傾きG(図77)で表される空間方向の定常性を有する場合の例であったので、上述した式(66)で示されるような、空間方向(X方向とY方向)の二次元積分が含まれる式が利用された。しかしながら、二次元積分の考え方は、空間方向だけによるものではなく、時空間方向(X方向とt方向、または、Y方向とt方向)に対して適用することも可能である。
【0819】
換言すると、2次元近似手法においては、推定したい光信号関数F(x,y,t)が、空間方向の定常性のみならず、時空間方向(ただし、X方向とt方向、または、Y方向とt方向)の定常性を有している場合であっても、2次元の近似関数fにより近似することが可能である。
【0820】
具体的には、例えば、X方向に水平に等速で動いている物体がある場合、その物体の動きの方向は、図83で示されるようなX−t平面においては、傾きVのように表される。換言すると、傾きVは、X−t平面における時空間方向の定常性の方向を表しているとも言える。従って、データ定常性検出部101は、上述した角度θ(X−Y平面における、傾きGで表される空間方向の定常性に対応するデータ定常性情報)と同様に、X−t平面における時空間方向の定常性を表す傾きVに対応するデータ定常性情報として、図83で示されるような動きθ(厳密には、図示はしないが、傾きVに対応する傾きVで表されるデータの定常性の方向と、空間方向のX方向とのなす角度である動きθ)を出力することが可能である。
【0821】
従って、2次元近似手法を利用する実世界推定部102は、動きθを上述した角度θの代わりとして使用すれば、上述した方法と同様な方法で、近似関数f(x,t)の係数(特徴量)wを演算することが可能になる。ただし、この場合、使用される式は、上述した式(66)ではなく、次の式(82)である。
【0822】
【数82】
Figure 2005018534
・・・(82)
【0823】
なお、式(82)において、sはcotθ(ただし、θは動きである)である。
【0824】
また、空間方向Xの変わりに、空間方向Yに注目した近似関数f(y,t)も、上述した近似関数f(x,t)と全く同様に取り扱うことが可能である。
【0825】
このように、2次元近似手法は、1次元ではなく2次元の積分効果を考慮しているので、1次元近似手法に比較して、より正確に実世界1の光信号を推定することが可能になる。
【0826】
次に、図84乃至図88を参照して、第3の関数近似手法について説明する。
【0827】
即ち、第3の関数近似手法とは、例えば、時空間方向のうちの所定の方向の定常性を有する実世界1の光信号が、光信号関数F(x,y,t)で表されることに注目して、近似関数f(x,y,t)で光信号関数F(x,y,t)を近似することによって、光信号関数F(x,y,t)を推定する手法である。従って、以下、第3の関数近似手法を、3次元近似手法と称する。
【0828】
また、3次元近似手法の説明においても、センサ2は、図84で示されるような、複数の検出素子2−1がその平面上に配置されて構成されるCCDとされる。
【0829】
図84の例では、検出素子2−1の所定の1辺に平行な方向が、空間方向の1方向であるX方向とされており、X方向に垂直な方向が、空間方向の他方向であるY方向とされている。そして、X−Y平面に垂直な方向が、時間方向であるt方向とされている。
【0830】
また、図84の例では、センサ2の各検出素子2−1のそれぞれの空間的な形状は、1辺の長さが1の正方形とされている。そして、センサ2のシャッタ時間(露光時間)が1とされている。
【0831】
さらに、図84の例では、センサ2の所定の1つの検出素子2−1の中心が、空間方向(X方向とY方向)の原点(X方向の位置x=0、およびY方向の位置y=0)とされており、また、露光時間の中間時刻が、時間方向(t方向)の原点(t方向の位置t=0)とされている。
【0832】
この場合、空間方向の原点(x=0,y=0)にその中心が存在する検出素子2−1は、X方向に−0.5乃至0.5の範囲、Y方向に−0.5乃至0.5の範囲、およびt方向に−0.5乃至0.5の範囲で光信号関数F(x,y,t)を積分し、その積分値を画素値Pとして出力することになる。
【0833】
即ち、空間方向の原点にその中心が存在する検出素子2−1から出力される画素値Pは、次の式(83)で表される。
【0834】
【数83】
Figure 2005018534
・・・(83)
【0835】
その他の検出素子2−1も同様に、対象とする検出素子2−1の中心を空間方向の原点とすることで、式(83)で示される画素値Pを出力することになる。
【0836】
ところで、上述したように、3次元近似手法においては、光信号関数F(x,y,t)は、3次元の近似関数f(x,y,t)に近似される。
【0837】
具体的には、例えば、近似関数f(x,y,t)を、N個の変数(特徴量)を有する関数とし、式(83)に対応する入力画素値P(x,y,t)と近似関数f(x,y,t)の関係式を定義する。これにより、Nより大きいM個の入力画素値P(x,y,t)が取得されていれば、定義された関係式からN個の変数(特徴量)の算出が可能である。即ち、実世界推定部102は、M個の入力画素値P(x,y,t)を取得してN個の変数(特徴量)を演算することで、光信号関数F(x,y,t)を推定することが可能である。
【0838】
この場合、実世界推定部102は、センサ2からの入力画像(入力画素値)に含まれるデータの定常性を縛りとして(即ち、データ定常性検出部101より出力される入力画像に対するデータ定常性情報を利用して)、入力画像全体のうちの、M個の入力画像P(x,y,t)を抽出(取得)する。結果的に、近似関数f(x,y,t)は、データの定常性に拘束されることになる。
【0839】
例えば、図85で示されるように、入力画像に対応する光信号関数F(x,y,t)が、傾きGで表される空間方向の定常性を有している場合、データ定常性検出部101は、入力画像に対するデータ定常性情報として、角度θ(傾きGに対応する傾きG(図示せず)で表されるデータの定常性の方向と、X方向のなす角度θ)を出力することになる。
【0840】
この場合、光信号関数F(x,y,t)をX方向に射影した1次元の波形(ここでは、このような波形を、X断面波形と称している)は、Y方向のいずれの位置で射影した場合であっても同一の形状であるとする。
【0841】
即ち、同一形状のX断面波形が、定常性の方向(X方向に対して角度θ方向)に連なっている2次元の(空間方向の)波形が存在するとし、そのような2次元波形が時間方向tに連なった3次元波形を、近似関数f(x,y,t)で近似する。
【0842】
換言すると、注目画素の中心からY方向に位置yだけずれたX断面波形は、注目画素の中心を通るX断面波形がX方向に所定の量(角度θに応じて変化する量)だけ移動した(シフトした)波形となる。なお、以下、このような量を、シフト量と称する。
【0843】
このシフト量は、次のようにして算出が可能である。
【0844】
即ち、傾きV(例えば、図85の傾きVに対応する、データの定常性の方向を表す傾きV)と角度θは、次の式(84)のように表される。
【0845】
【数84】
Figure 2005018534
・・・(84)
【0846】
なお、式(84)において、dxは、X方向の微小移動量を表しており、dyは、dxに対するY方向の微小移動量を表している。
【0847】
従って、X方向に対するシフト量をC(y)と記述すると、次の式(85)のように表される。
【0848】
【数85】
Figure 2005018534
・・・(85)
【0849】
このようにして、シフト量C(y)を定義すると、式(83)に対応する入力画素値P(x,y,t)と近似関数f(x,y,t)の関係式は、次の式(86)のように表される。
【0850】
【数86】
Figure 2005018534
・・・(86)
【0851】
式(86)において、eは、誤差を表している。tは、t方向の積分開始位置を表しており、tは、t方向の積分終了位置を表している。同様に、yは、Y方向の積分開始位置を表しており、yは、Y方向の積分終了位置を表している。また、xは、X方向の積分開始位置を表しており、xは、X方向の積分終了位置を表している。ただし、具体的な各積分範囲のそれぞれは、次の式(87)で示される通りになる。
【0852】
【数87】
Figure 2005018534
・・・(87)
【0853】
式(87)で示されるように、注目画素から空間方向に(x,y)だけ離れて位置する画素に対するX方向の積分範囲を、シフト量C(y)だけ移動させることで、同一形状のX断面波形が、定常性の方向(X方向に対して角度θ方向)に連なっていることを表すことが可能になる。
【0854】
このように、3次元近似手法においては、画素値P(x,y,t)と、3次元の近似関数f(x,y,t)の関係を式(86)(積分範囲は、式(87))で表すことができるので、式(86)と式(87)を利用して、近似関数f(x,y,t)のN個の特徴量を、例えば、最小自乗法等により演算することで、光信号関数F(x,y,t)(例えば、図85で示されるような傾きV表される空間方向の定常性を有する光信号)の推定が可能となる。
【0855】
なお、光信号関数F(x,y,t)で表される光信号が、例えば、図85で示されるような傾きVで表される空間方向の定常性を有している場合、次のようにして光信号関数F(x,y,t)を近似してもよい。
【0856】
即ち、光信号関数F(x,y,t)をY方向に射影した1次元の波形(以下、このような波形を、Y断面波形と称する)は、X方向のいずれの位置で射影した場合であっても同一の形状であるとする。
【0857】
換言すると、同一形状のY断面波形が、定常性の方向(X方向に対して角度θ方向)に連なっている2次元の(空間方向の)波形が存在するとし、そのような2次元波形が時間方向tに連なった3次元波形を、近似関数f(x,y,t)で近似する。
【0858】
従って、注目画素の中心からX方向にxだけずれたY断面波形は、注目画素の中心を通るY断面波形がY方向に所定のシフト量(角度θに応じて変化するシフト量)だけ移動した波形となる。
【0859】
このシフト量は、次のようにして算出が可能である。
【0860】
即ち、傾きGが、上述した式(84)のように表されるので、Y方向に対するシフト量をC(x)と記述すると、次の式(88)のように表される。
【0861】
【数88】
Figure 2005018534
・・・(88)
【0862】
このようにして、シフト量C(x)を定義すると、式(83)に対応する入力画素値P(x,y,t)と近似関数f(x,y,t)の関係式は、シフト量C(y)を定義したときと同様に、上述した式(86)で表される。
【0863】
ただし、今度は、具体的な各積分範囲のそれぞれは、次の式(89)で示される通りになる。
【0864】
【数89】
Figure 2005018534
・・・(89)
【0865】
式(89)(および上述した式(86))で示されるように、注目画素から(x,y)だけ離れて位置する画素に対するY方向の積分範囲を、シフト量C(x)だけ移動させることで、同一形状のY断面波形が、定常性の方向(X方向に対して角度θ方向)に連なっていることを表すことが可能になる。
【0866】
このように、3次元近似手法においては、上述した式(86)の右辺の積分範囲を式(87)のみならず式(89)とすることもできるので、積分範囲として式(89)が採用された式(86)を利用して、近似関数f(x,y,t)のn個の特徴量を、例えば、最小自乗法等により演算することで、光信号関数F(x,y,t)(傾きGで表される空間方向の定常性を有する実世界1の光信号)の推定が可能となる。
【0867】
このように、積分範囲を表す式(87)と式(89)は、定常性の方向にあわせて周辺画素をX方向にシフトさせるか(式(87)の場合)、或いはY方向にシフトさせるか(式(89)の場合)の違いがあるだけであり、本質的には同じことを表している。
【0868】
しかしながら、定常性の方向(傾きG)に応じて、光信号関数F(x,y,t)を、X断面波形の集まりと捉えるか、Y断面波形の集まりと捉えるかが異なる。即ち、定常性の方向がY方向に近い場合、光信号関数F(x,y,t)を、X断面波形の集まりと捉えた方が好適である。これに対して、定常性の方向がX方向に近い場合、光信号関数F(x,y,t)を、Y断面波形の集まりと捉えた方が好適である。
【0869】
従って、実世界推定部102は、積分範囲として式(87)と式(89)の両方を用意しておき、定常性の方向に応じて、適宜式(86)の右辺の積分範囲として、式(87)と式(89)のうちのいずれか一方を選択するとよい。
【0870】
以上、光信号関数F(x,y,t)が空間方向(X方向とY方向)の定常性(例えば、図85の傾きGで表される空間方向の定常性)を有する場合についての3次元近似手法について説明したが、3次元近似手法は、図86で示されるように、光信号関数F(x,y,t)が時空間方向(X方向、Y方向、およびt方向)の定常性(傾きVで表される定常性)を有する場合についても適用可能である。
【0871】
即ち、図86において、フレーム番号#N−1のフレームに対応する光信号関数がF(x,y,#N−1)とされ、フレーム番号#Nのフレームに対応する光信号関数がF(x,y,#N)とされ、かつ、フレーム番号#N+1のフレームに対応する光信号関数がF(x,y,#N+1)とされている。
【0872】
なお、図86において、図中、水平方向は、空間方向の1方向であるX方向とされており、右斜め上方向は、空間方向の他方向であるY方向とされており、かつ、垂直方向は、時間方向であるt方向とされている。
【0873】
また、フレーム#N−1は、フレーム#Nに対して時間的に前のフレームであり、フレーム#N+1は、フレーム#Nに対して時間的に後のフレームである。即ち、フレーム#N−1、フレーム#N、およびフレーム#N+1は、フレーム#N−1、フレーム#N、およびフレーム#N+1の順で表示される。
【0874】
図86の例では、傾きVで示される方向(図中左下手前から右上奥の方向)に沿った断面の光のレベルがほぼ一定とされている。従って、図86の例では、光信号関数F(x,y,t)は、傾きVで表される時空間方向の定常性を有していると言える。
【0875】
この場合、時空間方向の定常性を表す関数C(x,y,t)を定義し、かつ、定義された関数C(x,y,t)を利用して、上述した式(86)の積分範囲を定義すれば、上述した式(87)や式(89)と同様に、近似関数f(x,y,t)のN個の特徴量の算出が可能になる。
【0876】
関数C(x,y,t)は、定常性の方向を表す関数であれば特に限定されない。ただし、以下においては、直線的な定常性であるとして、それに対応する関数C(x,y,t)として、上述した空間方向の定常性を表す関数であるシフト量C(y)(式(85))やシフト量C(x)(式(87))に相当する、C(t)とC(t)を次のように定義するとする。
【0877】
即ち、上述した空間方向のデータの定常性を表す傾きGに対応する、時空間方向のデータの定常性の傾きをVとすると、この傾きVをX方向の傾き(以下、Vfxと記述する)とY方向の傾き(以下、Vfyと記述する)に分割すると、傾きVfxは次の式(90)で、傾きVfyは次の式(91)で、それぞれ表される。
【0878】
【数90】
Figure 2005018534
・・・(90)
【0879】
【数91】
Figure 2005018534
・・・(91)
【0880】
この場合、関数C(t)は、式(90)で示される傾きVfxを利用して、次の式(92)のように表される。
【0881】
【数92】
Figure 2005018534
・・・(92)
【0882】
同様に、関数C(t)は、式(91)で示される傾きVfyを利用して、次の式(93)のように表される。
【0883】
【数93】
Figure 2005018534
・・・(93)
【0884】
このようにして、時空間方向の定常性2511を表す関数C(t)と関数C(t)を定義すると、式(86)の積分範囲は、次の式(94)のように表される。
【0885】
【数94】
Figure 2005018534
・・・(94)
【0886】
このように、3次元近似手法においては、画素値P(x,y,t)と、3次元の近似関数f(x,y,t)の関係を式(86)で表すことができるので、その式(86)の右辺の積分範囲として式(94)を利用して、近似関数f(x,y,t)のn+1個の特徴量を、例えば、最小自乗法等により演算することで、光信号関数F(x,y,t)(時空間方向の所定の方向に定常性を有する実世界1の光信号)を推定することが可能となる。
【0887】
図87は、このような3次元近似手法を利用する実世界推定部102の構成例を表している。
【0888】
なお、3次元近似手法を利用する実世界推定部102が演算する近似関数f(x,y,t)(実際には、その特徴量(係数)を演算する)は、特に限定されないが、以下の説明においては、n(n=N−1)次の多項式とされる。
【0889】
図87で示されるように、実世界推定部102には、条件設定部2521、入力画像記憶部2522、入力画素値取得部2523、積分成分演算部2524、正規方程式生成部2525、および近似関数生成部2526が設けられている。
【0890】
条件設定部2521は、注目画素に対応する光信号関数F(x,y,t)を推定するために使用する画素の範囲(タップ範囲)や、近似関数f(x,y,t)の次数nを設定する。
【0891】
入力画像記憶部2522は、センサ2からの入力画像(画素値)を一次格納する。
【0892】
入力画素値取得部2523は、入力画像記憶部2522に記憶された入力画像のうちの、条件設定部2521により設定されたタップ範囲に対応する入力画像の領域を取得し、それを入力画素値テーブルとして正規方程式生成部2525に供給する。即ち、入力画素値テーブルは、入力画像の領域に含まれる各画素のそれぞれの画素値が記述されたテーブルである。
【0893】
ところで、上述したように、3次元近似手法を利用する実世界推定部102は、上述した式(86)(ただし積分範囲は、式(87)、式(90)、または式(94))を利用して最小自乗法により近似関数f(x,y,t)のN個の特徴量(いまの場合、各次の係数)を演算する。
【0894】
式(86)の右辺は、その積分を演算することで、次の式(95)のように表現することができる。
【0895】
【数95】
Figure 2005018534
・・・(95)
【0896】
式(95)において、wは、i次項の係数(特徴量)を表しており、また、S(x,x,y,y,t,t)は、i次項の積分成分を表している。ただし、xはX方向の積分範囲の開始位置を、xはX方向の積分範囲の終了位置を、yはY方向の積分範囲の開始位置を、yはY方向の積分範囲の終了位置を、tはt方向の積分範囲の開始位置を、tはt方向の積分範囲の終了位置を、それぞれ表している。
【0897】
積分成分演算部2524は、この積分成分S(x,x,y,y,t,t)を演算する。
【0898】
即ち、積分成分演算部2524は、条件設定部2521により設定されたタップ範囲および次数、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度若しくは動き(積分範囲として、上述した式(87)若しくは式(90)が利用される場合には角度であり、上述した式(94)が利用される場合には動きである)に基づいて積分成分S(x,x,y,y,t,t)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして正規方程式生成部2525に供給する。
【0899】
正規方程式生成部2525は、入力画素値取得部2523より供給された入力画素値テーブルと、積分成分演算部2524より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(95)を最小自乗法で求める場合の正規方程式を生成し、それを正規方程式テーブルとして近似関数生成部2526に出力する。正規方程式の例については、後述する。
【0900】
近似関数生成部2526は、正規方程式生成部2525より供給された正規方程式テーブルに含まれる正規方程式を行列解法で解くことにより、特徴量w(いまの場合、多項式である近似関数f(x,y,t)の係数w)のそれぞれを演算し、画像生成部103に出力する。
【0901】
次に、図88のフローチャートを参照して、3次元近似手法が適用される実世界の推定処理(図29のステップS102の処理)について説明する。
【0902】
はじめに、ステップS2501において、条件設定部2521は、条件(タップ範囲と次数)を設定する。
【0903】
例えば、いま、L個の画素からなるタップ範囲が設定されたとする。また、各画素のそれぞれに対して、所定の番号l(lは、0乃至L−1のうちのいずれかの整数値)が付されるとする。
【0904】
次に、ステップS2502において、条件設定部2521は、注目画素を設定する。
【0905】
ステップS2503において、入力画素値取得部2523は、条件設定部2521により設定された条件(タップ範囲)に基づいて入力画素値を取得し、入力画素値テーブルを生成する。いまの場合、L個の入力画素値P(x,y,t)からなるテーブルが生成されることになる。ここで、L個の入力画素値P(x,y,t)のそれぞれを、その画素の番号lの関数としてP(l)と記述することにする。即ち、入力画素値テーブルは、L個のP(l)が含まれるテーブルとなる。
【0906】
ステップS2504において、積分成分演算部2524は、条件設定部2521により設定された条件(タップ範囲および次数)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度若しくは動き)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【0907】
ただし、いまの場合、上述したように、入力画素値は、P(x,y,t)でなくP(l)といった、画素の番号lの値として取得されるので、積分成分演算部2524は、上述した式(95)の積分成分S(x,x,y,y,t,t)を、積分成分S(l)といったlの関数として演算することになる。即ち、積分成分テーブルは、L×i個のS(l)が含まれるテーブルとなる。
【0908】
なお、ステップS2503の処理とステップS2504の処理の順序は、図88の例に限定されず、ステップS2504の処理が先に実行されてもよいし、ステップS2503の処理とステップS2504の処理が同時に実行されてもよい。
【0909】
次に、ステップS2505において、正規方程式生成部2525は、ステップS2503の処理で入力画素値取得部2523により生成された入力画素値テーブルと、ステップS2504の処理で積分成分演算部2524により生成された積分成分テーブルに基づいて、正規方程式テーブルを生成する。
【0910】
具体的には、いまの場合、最小自乗法により、上述した式(95)に対応する次の式(96)の特徴量wを演算する。で、それに対応する正規方程式は、次の式(97)のように表される。
【0911】
【数96】
Figure 2005018534
・・・(96)
【0912】
【数97】
Figure 2005018534
・・・(97)
【0913】
式(97)で示される正規方程式の各行列のそれぞれを、次の式(98)乃至(100)のように定義すると、正規方程式は、次の式(101)のように表される。
【0914】
【数98】
Figure 2005018534
・・・(98)
【0915】
【数99】
Figure 2005018534
・・・(99)
【0916】
【数100】
Figure 2005018534
・・・(100)
【0917】
【数101】
Figure 2005018534
・・・(101)
【0918】
式(99)で示されるように、行列WMATの各成分は、求めたい特徴量wである。従って、式(101)において、左辺の行列SMATと右辺の行列PMATが決定されれば、行列解法によって行列WMAT(即ち、特徴量w)の算出が可能である。
【0919】
具体的には、式(98)で示されるように、行列SMATの各成分は、上述した積分成分S(l)が既知であれば演算可能である。積分成分S(l)は、積分成分演算部2524より供給された積分成分テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2525は、積分成分テーブルを利用して行列SMATの各成分を演算することができる。
【0920】
また、式(100)で示されるように、行列PMATの各成分は、積分成分S(l)と入力画素値P(l)が既知であれば演算可能である。積分成分S(l)は、行列SMATの各成分に含まれるものと同一のものであり、また、入力画素値P(l)は、入力画素値取得部2523より供給された入力画素値テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2525は、積分成分テーブルと入力画素値テーブルを利用して行列PMATの各成分を演算することができる。
【0921】
このようにして、正規方程式生成部2525は、行列SMATと行列PMATの各成分を演算し、その演算結果(行列SMATと行列PMATの各成分)を正規方程式テーブルとして近似関数生成部2526に出力する。
【0922】
正規方程式生成部2526より正規方程式テーブルが出力されると、ステップS2506において、近似関数生成部2526は、正規方程式テーブルに基づいて、上述した式(101)の行列WMATの各成分である特徴量w(即ち、近似関数f(x,y,t)の係数w)を演算する。
【0923】
具体的には、上述した式(101)の正規方程式は、次の式(102)のように変形できる。
【0924】
【数102】
Figure 2005018534
・・・(102)
【0925】
式(102)において、左辺の行列WMATの各成分が、求めたい特徴量wである。また、行列SMATと行列PMATのそれぞれの各成分は、正規方程式生成部2525より供給された正規方程式テーブルに含まれている。従って、近似関数生成部2526は、正規方程式テーブルを利用して、式(102)の右辺の行列演算を行うことで行列WMATを演算し、その演算結果(特徴量w)を画像生成部103に出力する。
【0926】
ステップS2507において、近似関数生成部2526は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【0927】
ステップS2507において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS2502に戻り、それ以降の処理が繰り返される。即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS2502乃至S2507の処理が繰り返される。
【0928】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS2507において、全画素の処理が終了されたと判定されると)、実世界1の推定処理は終了となる。
【0929】
以上、説明したように、3次元近似手法は、1次元や2次元ではなく、時空間方向の3次元の積分効果を考慮しているので、1次元近似手法や2次元近似手法に比較して、より正確に実世界1の光信号を推定することが可能になる。
【0930】
次に、図89乃至図110を参照して、画像生成部103(図3)の実施の形態の1例について説明する。
【0931】
図89は、この例の実施の形態の原理を説明する図である。
【0932】
図89で示されるように、この例の実施の形態においては、実世界推定部102が、関数近似手法を利用することが前提とされている。即ち、センサ2に入射される画像である、実世界1の信号(光の強度の分布)が、所定の関数Fで表されるとして、実世界推定部102が、センサ2から出力された入力画像(画素値P)と、データ定常性検出部101から出力されたデータ定常性情報を使用して、関数Fを所定の関数fで近似することによって、関数Fを推定することが前提とされている。
【0933】
なお、以下、この例の実施の形態の説明においても、画像である、実世界1の信号を、特に光信号と称し、関数Fを、特に光信号関数Fと称する。また、関数fを、特に近似関数fと称する。
【0934】
そこで、この例の実施の形態においては、このような前提に基づいて、画像生成部103が、データ定常性検出部101から出力されたデータ定常性情報と、実世界推定部102から出力された実世界推定情報(図89の例では、近似関数fの特徴量、または特徴量が特定された近似関数f)を使用して、近似関数fを所定の時空間範囲で積分し、その積分値を出力画素値M(出力画像)として出力する。なお、この例の実施の形態においては、入力画像の画素と出力画像の画素を区別するために、入力画素値をPと記述し、出力画素値をMと記述する。
【0935】
換言すると、光信号関数Fが1度積分されて入力画素値Pとなり、その入力画素値Pから光信号関数Fが推測され(近似関数fで近似され)、推測された光信号関数F(即ち、近似関数f)が再度積分されて、出力画素値Mが生成される。
従って、以下、画像生成部103が実行する近似関数fの積分を、再積分と称する。また、この例の実施の形態を、再積分手法と称する。
【0936】
なお、後述するように、再積分手法において、出力画素値Mが生成される場合の近似関数fの積分範囲は、入力画素値Pが生成される場合の光信号関数Fの積分範囲(即ち、空間方向においては、センサ2の検出素子の縦幅と横幅であり、時間方向においては、センサ2の露光時間である)に限定されず、任意の積分範囲とすることが可能である。
【0937】
例えば、出力画素値Mが生成される場合、近似関数fの積分範囲のうちの空間方向の積分範囲を可変することで、その積分範囲に応じて出力画像の画素ピッチを可変することが可能になる。即ち、空間解像度の創造が可能になる。
【0938】
同様に、例えば、出力画素値Mが生成される場合、近似関数fの積分範囲のうちの時間方向の積分範囲を可変することで、時間解像度の創造が可能になる。
【0939】
以下、図面を参照して、このような再積分手法のうちの3つの具体的な手法についてそれぞれ個別に説明していく。
【0940】
即ち、3つの具体的な手法とは、関数近似手法の3つの具体的な手法(実世界推定部102の実施の形態の上述した3つの具体的な例)のそれぞれに対応する再積分手法である。
【0941】
具体的には、1つ目の手法は、上述した1次元近似手法(関数近似手法の1手法)に対応する再積分手法である。従って、1つ目の手法では1次元の再積分を行うことになるので、以下、このような再積分手法を、1次元再積分手法と称する。
【0942】
2つ目の手法は、上述した2次元近似手法(関数近似手法の1手法)に対応する再積分手法である。従って、2つ目の手法では2次元の再積分を行うことになるので、以下、このような再積分手法を、2次元再積分手法と称する。
【0943】
3つ目の手法は、上述した3次元近似手法(関数近似手法の1手法)に対応する再積分手法である。従って、3つ目の手法では3次元の再積分を行うことになるので、以下、このような再積分手法を、3次元再積分手法と称する。
【0944】
以下、1次元再積分手法、2次元再積分手法、および3次元再積分手法のそれぞれの詳細について、その順番で説明していく。
【0945】
はじめに、1次元再積分手法について説明する。
【0946】
1次元再積分手法においては、1次元近似手法により近似関数f(x)が既に生成されていることが前提とされる。
【0947】
即ち、3次元の空間上の位置x,y、およびz、並びに時刻tを変数とする光信号関数F(x,y,t)を、空間方向であるX方向、Y方向、およびZ方向、並びに時間方向であるt方向のうちの所定の1方向(例えば、X方向)に射影した1次元の波形(再積分手法の説明においても、このような波形のうちのX方向に射影した波形を、X断面波形F(x)と称することにする)が、n次(nは、任意の整数)の多項式などの近似関数f(x)で近似されていることが前提とされる。
【0948】
この場合、1次元再積分手法においては、出力画素値Mは、次の式(103)のように演算される。
【0949】
【数103】
Figure 2005018534
・・・(103)
【0950】
なお、式(103)において、xは、積分開始位置を表しており、xは、積分終了位置を表している。また、Gは、所定のゲインを表している。
【0951】
具体的には、例えば、いま、実世界推測部102が、図90で示されるような画素3101(センサ2の所定の1つの検出素子に対応する画素3101)を注目画素として、図90で示されるような近似関数f(x)(X断面波形F(x)の近似関数f(x))を既に生成しているとする。
【0952】
なお、図90の例では、画素3101の画素値(入力画素値)がPとされ、かつ、画素3101の形状が、1辺の長さが1の正方形とされている。また、空間方向のうちの、画素3101の1辺に平行な方向(図中水平方向)がX方向とされ、X方向に垂直な方向(図中垂直方向)がY方向とされている。
【0953】
また、図90の下側に、画素3101の中心が原点とされる空間方向(X方向とY方向)の座標系(以下、注目画素座標系と称する)と、その座標系における画素3101が示されている。
【0954】
さらに、図90の上方に、y=0(yは、図中下側で示される注目画素座標系のY方向の座標値)における近似関数f(x)をグラフ化したものが示されている。このグラフにおいて、図中水平方向に平行な軸は、図中下側で示される注目画素座標系のX方向のx軸と同一の軸であり(原点も同一であり)、また、図中垂直方向に平行な軸は、画素値を表す軸とされている。
【0955】
この場合、近似関数f(x)と画素3101の画素値Pの間には、次の式(104)の関係が成立する。
【0956】
【数104】
Figure 2005018534
・・・(104)
【0957】
また、図90で示されるように、画素3101は、傾きGで表される空間方向のデータの定常性を有しているとする。そして、データ定常性検出部101(図89)が、傾きGで表されるデータの定常性に対応するデータ定常性情報として、図90で示されるような角度θを既に出力しているとする。
【0958】
この場合、例えば、1次元再積分方法においては、図91で示されるように、X方向に−0.5乃至0.5の範囲、かつY方向に−0.5乃至0.5の範囲(図90の画素3101が位置する範囲)に、4個の画素3111乃至画素3114を新たに創造することが可能である。
【0959】
なお、図91の下側に、図90のものと同一の注目画素座標系と、その注目画素座標系における画素3111乃至画素3114が示されている。また、図91の上側に、図90のものと同一のグラフ(y=0における近似関数f(x)をグラフ化したもの)が示されている。
【0960】
具体的には、図91で示されるように、1次元再積分方法においては、次の式(105)により画素3111の画素値M(1)の算出が、次の式(106)により画素3112の画素値M(2)の算出が、次の式(107)により画素3113の画素値M(3)の算出が、次の式(108)により画素3114の画素値M(4)の算出が、それぞれ可能である。
【0961】
【数105】
Figure 2005018534
・・・(105)
【0962】
【数106】
Figure 2005018534
・・・(106)
【0963】
【数107】
Figure 2005018534
・・・(107)
【0964】
【数108】
Figure 2005018534
・・・(108)
【0965】
なお、式(105)のxs1、式(106)のxs2、式(107)のxs3、および式(108)のxs4のそれぞれは、対応する式の積分開始位置を表している。また、式(105)のxe1、式(106)のxe2、式(107)のxe3、および式(108)のxe4のそれぞれは、対応する式の積分終了位置を表している。
【0966】
式(105)乃至式(108)のそれぞれの右辺の積分範囲は、画素3111乃至画素3114のそれぞれの画素幅(X方向の長さ)となる。即ち、xe1−xs1,xe2−xs2,xe3−xs3,xe4−xs4のそれぞれは、0.5となる。
【0967】
ただし、いまの場合、y=0における近似関数f(x)と同一形状の1次元の波形が、Y方向ではなく、傾きGで表されるデータの定常性の方向(即ち、角度θ方向)に連なっていると考えられる(実際には、y=0におけるX断面波形F(x)と同一形状の波形が定常性の方向に連なっている)。即ち、図91の注目画素座標系における原点(0,0)(図90の画素3101の中心)における画素値f(0)を画素値f1とした場合、画素値f1が続く方向は、Y方向ではなく、傾きGで表されるデータの定常性の方向(角度θ方向)である。
【0968】
換言すると、Y方向の所定の位置y(ただし、yは0以外の数値)における近似関数f(x)の波形を考えた場合、画素値f1となる位置は、位置(0,y)ではなく、位置(0,y)からX方向に所定の量(ここでも、このような量をシフト量と称することにする。また、シフト量は、Y方向の位置yに依存する量であるので、このシフト量をC(y)と記述することにする)だけ移動した位置(C(y),y)である。
【0969】
従って、上述した式(105)乃至式(108)のそれぞれの右辺の積分範囲として、求めたい画素値M(l)(ただし、lは、1乃至4のうちのいずれかの整数値)の中心が存在するY方向の位置yを考慮した範囲、即ち、シフト量C(y)を考慮した積分範囲の設定が必要である。
【0970】
具体的には、例えば、画素3111と画素3112の中心が存在するY方向の位置yは、y=0ではなく、y=0.25である。
【0971】
従って、y=0.25における近似関数f(x)の波形は、y=0における近似関数f(x)の波形をX方向にシフト量C(0.25)だけ移動させた波形に相当する。
【0972】
換言すると、上述した式(105)において、画素3111に対する画素値M(1)は、y=0における近似関数f(x)を所定の積分範囲(開始位置xs1から終了位置xe1まで)で積分したものであるとすると、その積分範囲は、開始位置xs1=−0.5から終了位置xe1=0までの範囲(画素3111がX方向に占める範囲そのもの)ではなく、図91で示される範囲、即ち、開始位置xs1=−0.5+C(0.25)から終了位置xe1=0+C(0.25)(シフト量C(0.25)だけ画素3111を仮に移動させた場合における、画素3111がX方向に占める範囲)となる。
【0973】
同様に、上述した式(106)において、画素3112に対する画素値M(2)は、y=0における近似関数f(x)を所定の積分範囲(開始位置xs2から終了位置xe2まで)で積分したものであるとすると、その積分範囲は、開始位置xs2=0から終了位置xe2=0.5までの範囲(画素3112のX方向に占める範囲そのもの)ではなく、図91で示される範囲、即ち、開始位置xs2=0+C(0.25)から終了位置xe1=0.5+C(0.25)(シフト量C(0.25)だけ画素3112を仮に移動させた場合における、画素3112のX方向に占める範囲)となる。
【0974】
また、例えば、画素3113と画素3114の中心が存在するY方向の位置yは、y=0ではなく、y=−0.25である。
【0975】
従って、y=−0.25における近似関数f(x)の波形は、y=0における近似関数f(x)の波形をX方向にシフト量C(−0.25)だけ移動させた波形に相当する。
【0976】
換言すると、上述した式(107)において、画素3113に対する画素値M(3)は、y=0における近似関数f(x)を所定の積分範囲(開始位置xs3から終了位置xe3まで)で積分したものであるとすると、その積分範囲は、開始位置xs3=−0.5から終了位置xe3=0までの範囲(画素3113のX方向に占める範囲そのもの)ではなく、図91で示される範囲、即ち、開始位置xs3=−0.5+C(−0.25)から終了位置xe3=0+C(−0.25)(シフト量C(−0.25)だけ画素3113を仮に移動させた場合における、画素3113のX方向に占める範囲)となる。
【0977】
同様に、上述した式(108)において、画素3114に対する画素値M(4)は、y=0における近似関数f(x)を所定の積分範囲(開始位置xs4から終了位置xe4まで)で積分したものであるとすると、その積分範囲は、開始位置xs4=0から終了位置xe4=0.5までの範囲(画素3114のX方向の占める範囲そのもの)ではなく、図91で示される範囲、即ち、開始位置xs4=0+C(−0.25)から終了位置xe1=0.5+C(−0.25)(シフト量C(−0.25)だけ画素3114を仮に移動させた場合における、画素3114のX方向に占める範囲)となる。
【0978】
従って、画像生成部102(図89)は、上述した式(105)乃至式(108)のそれぞれに、上述した積分範囲のうちの対応するものを代入してそれぞれ演算し、それらの演算結果を出力画素値M(1)乃至M(4)のそれぞれとして出力することになる。
【0979】
このように、画像生成部102は、1次元再積分手法を利用することで、センサ2(図89)からの出力画素3101(図90)における画素として、出力画素3101よりも空間解像度の高い4つの画素、即ち、画素3111乃至画素3114(図91)を創造することができる。さらに、図示はしないが、上述したように、画像生成部102は、画素3111乃至画素3114のみならず、積分範囲を適宜変えることで、出力画素3101に対して任意の倍率の空間解像度の画素を劣化することなく創造することができる。
【0980】
図92は、このような1次元再積分手法を利用する画像生成部103の構成例を表している。
【0981】
図92で示されるように、この例の画像生成部103には、条件設定部3121、特徴量記憶部3122、積分成分演算部3123、および出力画素値演算部3124が設けられている。
【0982】
条件設定部3121は、実世界推定部102より供給された実世界推定情報(図92の例では、近似関数f(x)の特徴量)に基づいて近似関数f(x)の次数nを設定する。
【0983】
条件設定部3121はまた、近似関数f(x)を再積分する場合(出力画素値を演算する場合)の積分範囲を設定する。なお、条件設定部3121が設定する積分範囲は、画素の幅である必要は無い。例えば、近似関数f(x)は空間方向(X方向)に積分されるので、センサ2(図89)からの入力画像の各画素の空間的な大きさに対する、出力画素(画像生成部103がこれから演算する画素)の相対的な大きさ(空間解像度の倍率)がわかれば、具体的な積分範囲の決定が可能である。従って、条件設定部3121は、積分範囲として、例えば、空間解像度倍率を設定することもできる。
【0984】
特徴量記憶部3122は、実世界推定部102より順次供給されてくる近似関数f(x)の特徴量を一次的に記憶する。そして、特徴量記憶部3122は、近似関数f(x)の特徴量の全てを記憶すると、近似関数f(x)の特徴量を全て含む特徴量テーブルを生成し、出力画素値演算部3124に供給する。
【0985】
ところで、上述したように、画像生成部103は、上述した式(103)を利用して出力画素値Mを演算するが、上述した式(103)の右辺に含まれる近似関数f(x)は、具体的には、次の式(109)のように表される。
【0986】
【数109】
Figure 2005018534
・・・(109)
【0987】
なお、式(109)において、wは、実世界推定部102より供給される近似関数f(x)の特徴量を表している。
【0988】
従って、上述した式(103)の右辺の近似関数f(x)に、式(109)の近似関数f(x)を代入して、式(103)の右辺を展開(演算)すると、出力画素値Mは、次の式(110)のように表される。
【0989】
【数110】
Figure 2005018534
・・・(110)
【0990】
式(110)において、K(x,x)は、i次項の積分成分を表している。即ち、積分成分K(x,x)は、次の式(111)で示される通りである。
【0991】
【数111】
Figure 2005018534
・・・(111)
【0992】
積分成分演算部3123は、この積分成分K(x,x)を演算する。
【0993】
具体的には、式(111)で示されるように、積分成分K(x,x)は、積分範囲の開始位置x、および終了位置x、ゲインG、並びにi次項のiが既知であれば演算可能である。
【0994】
これらのうちの、ゲインGは、条件設定部3121により設定された空間解像度倍率(積分範囲)により決定される。
【0995】
iの範囲は、条件設定部3121により設定された次数nにより決定される。
【0996】
また、積分範囲の開始位置x、および終了位置xのそれぞれは、これから生成する出力画素の中心画素位置(x,y)および画素幅、並びにデータの定常性の方向を表すシフト量C(y)により決定される。なお、(x,y)は、実世界推定部102が近似関数f(x)を生成したときの注目画素の中心位置からの相対位置を表している。
【0997】
さらに、これから生成する出力画素の中心画素位置(x,y)および画素幅のそれぞれは、条件設定部3121により設定された空間解像度倍率(積分範囲)により決定される。
【0998】
また、シフト量C(y)と、データ定常性検出部101より供給された角度θは、次の式(112)と式(113)のような関係が成り立つので、シフト量C(y)は角度θにより決定される。
【0999】
【数112】
Figure 2005018534
・・・(112)
【1000】
【数113】
Figure 2005018534
・・・(113)
【1001】
なお、式(112)において、Gは、データの定常性の方向を表す傾きを表しており、θは、データ定常性検出部101(図89)より出力されるデータ定常性情報の1つである角度(空間方向の1方向であるX方向と、傾きGで表されるデータの定常性の方向とのなす角度)を表している。また、dxは、X方向の微小移動量を表しており、dyは、dxに対するY方向(X方向と垂直な空間方向)の微小移動量を表している。
【1002】
従って、積分成分演算部3123は、条件設定部3121により設定された次数および空間解像度倍率(積分範囲)、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度θに基づいて積分成分K(x,x)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして出力画素値演算部3124に供給する。
【1003】
出力画素値演算部3124は、特徴量記憶部3122より供給された特徴量テーブルと、積分成分演算部3123より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(110)の右辺を演算し、その演算結果を出力画素値Mとして外部に出力する。
【1004】
次に、図93のフローチャートを参照して、1次元再積分手法を利用する画像生成部103(図92)の画像の生成の処理(図29のステップS103の処理)について説明する。
【1005】
例えば、いま、上述した図29のステップS102の処理で、実世界推測部102が、上述した図90で示されるような画素3101を注目画素として、図90で示されるような近似関数f(x)を既に生成しているとする。
【1006】
また、上述した図29のステップS101の処理で、データ定常性検出部101が、データ定常性情報として、図90で示されるような角度θを既に出力しているとする。
【1007】
この場合、図93のステップS3101において、条件設定部3121は、条件(次数と積分範囲)を設定する。
【1008】
例えば、いま、次数として5が設定されるとともに、積分範囲として空間4倍密(画素のピッチ幅が上下左右ともに1/2倍となる空間解像度倍率)が設定されたとする。
【1009】
即ち、この場合、図91で示されるように、X方向に−0.5乃至0.5の範囲、かつY方向に−0.5乃至0.5の範囲(図90の画素3101の範囲)に、4個の画素3111乃至画素3114を新たに創造することが設定されたことになる。
【1010】
ステップS3102において、特徴量記憶部3122は、実世界推定部102より供給された近似関数f(x)の特徴量を取得し、特徴量テーブルを生成する。いまの場合、5次の多項式である近似関数f(x)の係数w乃至wが実世界推定部102より供給されるので、特徴量テーブルとして、(w,w,w,w,w,w)が生成される。
【1011】
ステップS3103において、積分成分演算部3123は、条件設定部3121により設定された条件(次数および積分範囲)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度θ)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【1012】
具体的には、例えば、これから生成する画素3111乃至画素3114のそれぞれに対して、番号(このような番号を、以下、モード番号と称する)1乃至4のそれぞれが付されているとすると、積分成分演算部3123は、上述した式(111)の積分成分K(x,x)を、次の式(114)の左辺で示される積分成分K(l)といったl(ただし、lはモード番号を表している)の関数として演算する。
【1013】
【数114】
Figure 2005018534
・・・(114)
【1014】
具体的には、いまの場合、次の式(115)で示される積分成分K(l)が演算される。
【1015】
【数115】
Figure 2005018534
・・・(115)
【1016】
なお、式(115)において、左辺が積分成分K(l)を表し、右辺が積分成分K(x,x)を表している。即ち、いまの場合、lは、1乃至4のうちのいずれかであり、かつ、iは0乃至5のうちのいずれかであるので、6個のK(1),6個のK(2),6個のK(3),6個のK(4)の総計24個のK(l)が演算されることになる。
【1017】
より具体的には、はじめに、積分成分演算部3123は、データ定常性検出部101より供給された角度θを使用して、上述した式(112)と式(113)よりシフト量C(−0.25)、およびC(0.25)のそれぞれを演算する。
【1018】
次に、積分成分演算部3123は、演算したシフト量C(−0.25)、およびC(0.25)を使用して、式(115)の4つの式の各右辺の積分成分K(x,x)のそれぞれを、i=0乃至5についてそれぞれ演算する。なお、この積分成分K(x,x)の演算においては、上述した式(111)が使用される。
【1019】
そして、積分成分演算部3123は、式(115)に従って、演算した24個の積分成分K(x,x)のそれぞれを、対応する積分成分K(l)に変換し、変換した24個の積分成分K(l)(即ち、6個のK(1)、6個のK(2)、6個のK(3)、および6個のK(4))を含む積分成分テーブルを生成する。
【1020】
なお、ステップS3102の処理とステップS3103の処理の順序は、図93の例に限定されず、ステップS3103の処理が先に実行されてもよいし、ステップS3102の処理とステップS3103の処理が同時に実行されてもよい。
【1021】
次に、ステップS3104において、出力画素値演算部3124は、ステップS3102の処理で特徴量記憶部3122により生成された特徴量テーブルと、ステップS3103の処理で積分成分演算部3123により生成された積分成分テーブルに基づいて出力画素値M(1)乃至M(4)のそれぞれを演算する。
【1022】
具体的には、いまの場合、出力画素値演算部3124は、上述した式(110)に対応する、次の式(116)乃至式(119)の右辺を演算することで、画素3111(モード番号1の画素)の画素値M(1)、画素3112(モード番号2の画素)の画素値M(2)、画素3113(モード番号3の画素)の画素値M(3)、および画素3114(モード番号4の画素)の画素値M(4)のそれぞれを演算する。
【1023】
【数116】
Figure 2005018534
・・・(116)
【1024】
【数117】
Figure 2005018534
・・・(117)
【1025】
【数118】
Figure 2005018534
・・・(118)
【1026】
【数119】
Figure 2005018534
・・・(119)
【1027】
ステップS3105において、出力画素値演算部3124は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【1028】
ステップS3105において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS3102に戻り、それ以降の処理が繰り返される。即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS3102乃至S3104の処理が繰り返される。
【1029】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS3105において、全画素の処理が終了されたと判定すると)、出力画素値演算部3124は、ステップS3106において、画像を出力する。その後、画像の生成の処理は終了となる。
【1030】
次に、図94乃至図101を参照して、所定の入力画像に対して、1次元再積分手法を適用して得られた出力画像と、他の手法(従来のクラス分類適応処理)を適用して得られた出力画像の違いについて説明する。
【1031】
図94は、入力画像の元の画像を示す図であり、図95は、図94の元の画像に対応する画像データを示している。図95において、図中垂直方向の軸は、画素値を示し、図中右下方向の軸は、画像の空間方向の一方向であるX方向を示し、図中右上方向の軸は、画像の空間方向の他の方向であるY方向を示す。なお、後述する図97、図99、および図101の軸のそれぞれは、図95の軸と対応している。
【1032】
図96は、入力画像の例を示す図である。図96で示される入力画像は、図94で示される画像の2×2の画素からなるブロックに属する画素の画素値の平均値を、1つの画素の画素値として生成された画像である。即ち、入力画像は、図94で示される画像に、センサの積分特性を模した、空間方向の積分を適用することにより得られた画像である。また、図97は、図96の入力画像に対応する画像データを示している。
【1033】
図94で示される元の画像において、上下方向から、ほぼ5度時計方向に傾いた細線の画像が含まれている。同様に、図96で示される入力画像において、上下方向から、ほぼ5度時計方向に傾いた細線の画像が含まれている。
【1034】
図98は、図96で示される入力画像に、従来のクラス分類適応処理を適用して得られた画像(以下、図98で示される画像を、従来の画像と称する)を示す図である。また、図99は、従来の画像に対応する画像データを示している。
【1035】
なお、クラス分類適応処理は、上述したように、クラス分類処理と適応処理とからなり、クラス分類処理によって、データを、その性質に基づいてクラス分けし、各クラスごとに適応処理を施すものである。適応処理では、例えば、低画質または標準画質の画像が、所定のタップ係数を用いてマッピング(写像)されることにより、高画質の画像に変換される。
【1036】
図100は、図96で示される入力画像に、1次元再積分手法を適用して得られた画像(以下、図100で示される画像を、再積分画像と称する)を示す図である。また、図101は、再積分画像に対応する画像データを示している。
【1037】
図98の従来の画像と、図100の再積分画像を比較するに、従来の画像においては、細線の画像が、図94の元の画像とは異なるものになっているのに対して、再積分画像においては、細線の画像が、図94の元の画像とほぼ同じものになっていることがわかる。
【1038】
この違いは、従来のクラス分類適応処理は、あくまでも図96の入力画像を基準(原点)として処理を行う手法であるのに対して、1次元再積分手法は、細線の定常性を考慮して、図94の元の画像を推定し(元の画像に対応する近似関数f(x)を生成し)、推定した元の画像を基準(原点)として処理を行う(再積分して画素値を演算する)手法であるからである。
【1039】
このように、1次元再積分手法においては、1次元近似手法により生成された1次元の多項式などの近似関数f(x)(実世界のX断面波形F(x)の近似関数f(x))を基準(原点)として、近似関数f(x)を任意の範囲に積分することで出力画像(画素値)が生成される。
【1040】
従って、1次元再積分手法においては、従来の他の手法に比較して、元の画像(センサ2に入射される前の実世界1の光信号)により近い画像の出力が可能になる。
【1041】
また、1次元再積分手法においては、上述したように、積分範囲は任意なので、積分範囲を可変することにより、入力画像の解像度とは異なる解像度(時間解像度、または空間解像度)を創造することも可能になる。即ち、入力画像の解像度に対して、整数値だけではなく任意の倍率の解像度の画像を生成することが可能になる。
【1042】
さらに、1次元再積分手法においては、他の再積分手法に比較して、より少ない演算処理量で出力画像(画素値)の算出が可能となる。
【1043】
次に、図102乃至図108を参照して、2次元再積分手法について説明する。
【1044】
2次元再積分手法においては、2次元近似手法により近似関数f(x,y)が既に生成されていることが前提とされる。
【1045】
即ち、例えば、図102で示されるような、傾きGで表される空間方向の定常性を有する実世界1(図89)の光信号を表す画像関数F(x,y,t)を、空間方向(X方向とY方向)に射影した波形、即ち、X−Y平面上の波形F(x,y)が、n次(nは、任意の整数)の多項式などの近似関数f(x,y)に近似されていることが前提とされる。
【1046】
図102において、図中、水平方向は、空間方向の1方向であるX方向を、右上方向は、空間方向の他方向であるY方向を、垂直方向は、光のレベルを、それぞれ表している。Gは、空間方向の定常性の傾きを表している。
【1047】
なお、図102の例では、定常性の方向は、空間方向(X方向とY方向)とされているため、近似の対象とされる光信号の射影関数は、関数F(x,y)とされているが、後述するように、定常性の方向に応じて、関数F(x,t)や関数F(y,t)が近似の対象とされてもよい。
【1048】
図102の例の場合、2次元再積分手法においては、出力画素値Mは、次の式(120)のように演算される。
【1049】
【数120】
Figure 2005018534
・・・(120)
【1050】
なお、式(120)において、yは、Y方向の積分開始位置を表しており、yは、Y方向の積分終了位置を表している。同様に、xは、X方向の積分開始位置を表しており、xは、X方向の積分終了位置を表している。また、Gは、所定のゲインを表している。
【1051】
式(120)において、積分範囲は任意に設定可能であるので、2次元再積分手法においては、この積分範囲を適宜変えることで、元の画素(センサ2(図89)からの入力画像の画素)に対して任意の倍率の空間解像度の画素を劣化することなく創造することが可能になる。
【1052】
図103は、2次元再積分手法を利用する画像生成部103の構成例を表している。
【1053】
図103で示されるように、この例の画像生成部103には、条件設定部3201、特徴量記憶部3202、積分成分演算部3203、および出力画素値演算部3204が設けられている。
【1054】
条件設定部3201は、実世界推定部102より供給された実世界推定情報(図103の例では、近似関数f(x,y)の特徴量)に基づいて近似関数f(x,y)の次数nを設定する。
【1055】
条件設定部3201はまた、近似関数f(x,y)を再積分する場合(出力画素値を演算する場合)の積分範囲を設定する。なお、条件設定部3201が設定する積分範囲は、画素の縦幅や横幅である必要は無い。例えば、近似関数f(x,y)は空間方向(X方向とY方向)に積分されるので、センサ2からの入力画像の各画素の空間的な大きさに対する、出力画素(画像生成部103がこれから生成する画素)の相対的な大きさ(空間解像度の倍率)がわかれば、具体的な積分範囲の決定が可能である。従って、条件設定部3201は、積分範囲として、例えば、空間解像度倍率を設定することもできる。
【1056】
特徴量記憶部3202は、実世界推定部102より順次供給されてくる近似関数f(x,y)の特徴量を一次的に記憶する。そして、特徴量記憶部3202は、近似関数f(x,y)の特徴量の全てを記憶すると、近似関数f(x,y)の特徴量を全て含む特徴量テーブルを生成し、出力画素値演算部3204に供給する。
【1057】
ここで、近似関数f(x,y)の詳細について説明する。
【1058】
例えば、いま、上述した図102で示されるような傾きGで表される空間方向の定常性を有する実世界1(図89)の光信号(波形F(x,y)で表される光信号)が、センサ2(図89)により検出されて入力画像(画素値)として出力されたとする。
【1059】
さらに、例えば、図104で示されるように、データ定常性検出部101(図3)が、この入力画像のうちの、X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素(図中、点線で表される20個の正方形)から構成される入力画像の領域3221に対してその処理を実行し、データ定常性情報の1つとして角度θ(傾きGに対応する傾きGで表されるデータの定常性の方向と、X方向とのなす角度θ)を出力したとする。
【1060】
なお、実世界推定部102から見ると、データ定常性検出部101は、注目画素における角度θを単に出力すればよいので、データ定常性検出部101の処理範囲は、上述した入力画像の領域3221に限定されない。
【1061】
また、入力画像の領域3221において、図中水平方向は、空間方向の1方向であるX方向を表しており、図中垂直方向は、空間方向の他方向であるY方向を表している。
【1062】
さらに、図104中、左から2画素目であって、下から3画素目の画素が注目画素とされ、その注目画素の中心を原点(0,0)とするように(x,y)座標系が設定されている。そして、原点(0,0)を通る角度θの直線(データの定常性の方向を表す傾きGの直線)に対するX方向の相対的な距離(以下、断面方向距離と称する)がx’とされている。
【1063】
さらに、図104中、右側のグラフは、3次元の空間上の位置x,y、およびz、並びに時刻tを変数とする画像関数F(x,y,t)を、Y方向の任意の位置yにおいて、X方向に射影した1次元の波形(以下、このような波形を、X断面波形F(x’)と称する)が近似された関数であって、n次(nは、任意の整数)の多項式などの近似関数f(x’)を表している。右側のグラフの軸のうち、図中水平方向の軸は、断面方向距離を表しており、図中垂直方向の軸は、画素値を表している。
【1064】
この場合、図104で示される近似関数f(x’)は、n次の多項式であるので、次の式(121)のように表される。
【1065】
【数121】
Figure 2005018534
・・・(121)
【1066】
また、角度θが決定されていることから、原点(0,0)を通る角度θの直線は一意に決まり、Y方向の任意の位置yにおける、直線のX方向の位置xが、次の式(122)のように表される。ただし、式(122)において、sはcotθを表している。
【1067】
【数122】
Figure 2005018534
・・・(122)
【1068】
即ち、図104で示されるように、傾きGで表されるデータの定常性に対応する直線上の点は、座標値(x,y)で表される。
【1069】
式(122)より、断面方向距離x’は、次の式(123)のように表される。
【1070】
【数123】
Figure 2005018534
・・・(123)
【1071】
従って、入力画像の領域3221内の任意の位置(x,y)における近似関数f(x,y)は、式(121)と式(123)より、次の式(124)のように示される。
【1072】
【数124】
Figure 2005018534
・・・(124)
【1073】
なお、式(124)において、wは、近似関数f(x,y)の特徴量を表している。
【1074】
図103に戻り、式(124)に含まれる特徴量wが、実世界推定部102より供給され、特徴量記憶部3202に記憶される。特徴量記憶部3202は、式(124)で表される特徴量wの全てを記憶すると、特徴量wを全て含む特徴量テーブルを生成し、出力画素値演算部3204に供給する。
【1075】
また、上述した式(120)の右辺の近似関数f(x,y)に、式(124)の近似関数f(x,y)を代入して、式(120)の右辺を展開(演算)すると、出力画素値Mは、次の式(125)のように表される。
【1076】
【数125】
Figure 2005018534
・・・(125)
【1077】
式(125)において、K(x,x,y,y)は、i次項の積分成分を表している。即ち、積分成分K(x,x,y,y)は、次の式(126)で示される通りである。
【1078】
【数126】
Figure 2005018534
・・・(126)
【1079】
積分成分演算部3203は、この積分成分K(x,x,y,y)を演算する。
【1080】
具体的には、式(125)と式(126)で示されるように、積分成分K(x,x,y,y)は、積分範囲のX方向の開始位置x、およびX方向の終了位置x、積分範囲のY方向の開始位置y、およびY方向の終了位置y、変数s、ゲインG、並びにi次項のiが既知であれば演算可能である。
【1081】
これらのうちの、ゲインGは、条件設定部3201により設定された空間解像度倍率(積分範囲)により決定される。
【1082】
iの範囲は、条件設定部3201により設定された次数nにより決定される。
【1083】
変数sは、上述したように、cotθであるので、データ定常性検出部101より出力される角度θにより決定される。
【1084】
また、積分範囲のX方向の開始位置x、およびX方向の終了位置x、並びに、積分範囲のY方向の開始位置y、およびY方向の終了位置yのそれぞれは、これから生成する出力画素の中心画素位置(x,y)および画素幅により決定される。なお、(x,y)は、実世界推定部102が近似関数f(x)を生成したときの注目画素の中心位置からの相対位置を表している。
【1085】
さらに、これから生成する出力画素の中心画素位置(x,y)および画素幅のそれぞれは、条件設定部3201により設定された空間解像度倍率(積分範囲)により決定される。
【1086】
従って、積分成分演算部3203は、条件設定部3201により設定された次数および空間解像度倍率(積分範囲)、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度θに基づいて積分成分K(x,x,y,y)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして出力画素値演算部3204に供給する。
【1087】
出力画素値演算部3204は、特徴量記憶部3202より供給された特徴量テーブルと、積分成分演算部3203より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(125)の右辺を演算し、その演算結果を出力画素値Mとして外部に出力する。
【1088】
次に、図105のフローチャートを参照して、2次元再積分手法を利用する画像生成部103(図104)の画像の生成の処理(図29のステップS103の処理)について説明する。
【1089】
例えば、いま、図102で示される関数F(x,y)で表される光信号がセンサ2に入射されて入力画像となり、上述した図29のステップS102の処理で、実世界推測部102が、その入力画像のうちの、図106で示されるような1つの画素3231を注目画素として、関数F(x,y)を近似する近似関数f(x,y)を既に生成しているとする。
【1090】
なお、図106において、画素3231の画素値(入力画素値)がPとされ、かつ、画素3231の形状が、1辺の長さが1の正方形とされている。また、空間方向のうちの、画素3231の1辺に平行な方向がX方向とされ、X方向に垂直な方向がY方向とされている。さらに、画素3231の中心が原点とされる空間方向(X方向とY方向)の座標系(以下、注目画素座標系と称する)が設定されている。
【1091】
また、図106において、上述した図29のステップS101の処理で、データ定常性検出部101が、画素3231を注目画素として、傾きGで表されるデータの定常性に対応するデータ定常性情報として、角度θを既に出力しているとする。
【1092】
図105に戻り、この場合、ステップS3201において、条件設定部3201は、条件(次数と積分範囲)を設定する。
【1093】
例えば、いま、次数として5が設定されるとともに、積分範囲として空間4倍密(画素のピッチ幅が上下左右ともに1/2倍となる空間解像度倍率)が設定されたとする。
【1094】
即ち、この場合、図107で示されるように、X方向に−0.5乃至0.5の範囲、かつY方向に−0.5乃至0.5の範囲(図106の画素3231の範囲)に、4個の画素3241乃至画素3244を新たに創造することが設定されたことになる。なお、図107においても、図106のものと同一の注目画素座標系が示されている。
【1095】
また、図107において、M(1)は、これから生成される画素3241の画素値を、M(2)は、これから生成される画素3242の画素値を、M(3)は、これから生成される画素3243の画素値を、M(4)は、これから生成される画素3241の画素値を、それぞれ表している。
【1096】
図105に戻り、ステップS3202において、特徴量記憶部3202は、実世界推定部102より供給された近似関数f(x,y)の特徴量を取得し、特徴量テーブルを生成する。いまの場合、5次の多項式である近似関数f(x)の係数w乃至wが実世界推定部102より供給されるので、特徴量テーブルとして、(w,w,w,w,w,w)が生成される。
【1097】
ステップS3203において、積分成分演算部3203は、条件設定部3201により設定された条件(次数および積分範囲)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度θ)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【1098】
具体的には、例えば、これから生成される画素3241乃至画素3244のそれぞれに対して、番号(このような番号を、以下、モード番号と称する)1乃至4のそれぞれが付されているとすると、積分成分演算部3203は、上述した式(125)の積分成分K(x,x,y,y)を、次の式(127)の左辺で示される積分成分K(l)といったl(ただし、lはモード番号を表している)の関数として演算する。
【1099】
【数127】
Figure 2005018534
・・(127)
【1100】
具体的には、いまの場合、次の式(128)で示される積分成分K(l)が演算される。
【1101】
【数128】
Figure 2005018534
・・・(128)
【1102】
なお、式(128)において、左辺が積分成分K(l)を表し、右辺が積分成分K(x,x,y,y)を表している。即ち、いまの場合、lは、1乃至4のうちのいずれかであり、かつ、iは0乃至5のうちのいずれかであるので、6個のK(1),6個のK(2),6個のK(3),6個のK(4)の総計24個のK(l)が演算されることになる。
【1103】
より具体的には、はじめに、積分成分演算部3203は、データ定常性検出部101より供給された角度θを使用して、上述した式(122)の変数s(s=cotθ)を演算する。
【1104】
次に、積分成分演算部3203は、演算した変数sを使用して、式(128)の4つの式の各右辺の積分成分K(x,x,y,y)のそれぞれを、i=0乃至5についてそれぞれ演算する。なお、この積分成分K(x,x,y,y)の演算においては、上述した式(125)が使用される。
【1105】
そして、積分成分演算部3203は、式(128)に従って、演算した24個の積分成分K(x,x,y,y)のそれぞれを、対応する積分成分K(l)に変換し、変換した24個の積分成分K(l)(即ち、6個のK(1)、6個のK(2)、6個のK(3)、および6個のK(4))を含む積分成分テーブルを生成する。
【1106】
なお、ステップS3202の処理とステップS3203の処理の順序は、図105の例に限定されず、ステップS3203の処理が先に実行されてもよいし、ステップS3202の処理とステップS3203の処理が同時に実行されてもよい。
【1107】
次に、ステップS3204において、出力画素値演算部3204は、ステップS3202の処理で特徴量記憶部3202により生成された特徴量テーブルと、ステップS3203の処理で積分成分演算部3203により生成された積分成分テーブルに基づいて出力画素値M(1)乃至M(4)のそれぞれを演算する。
【1108】
具体的には、いまの場合、出力画素値演算部3204は、上述した式(125)に対応する、次の式(129)乃至式(132)の右辺のそれぞれを演算することで、図107で示される、画素3241(モード番号1の画素)の画素値M(1)、画素3242(モード番号2の画素)の画素値M(2)、画素3243(モード番号3の画素)の画素値M(3)、および画素3244(モード番号4の画素)の画素値M(4)のそれぞれを演算する。
【1109】
【数129】
Figure 2005018534
・・・(129)
【1110】
【数130】
Figure 2005018534
・・・(130)
【1111】
【数131】
Figure 2005018534
・・・(131)
【1112】
【数132】
Figure 2005018534
・・・(132)
【1113】
ただし、いまの場合、式(129)乃至式(132)のnは全て5となる。
【1114】
ステップS3205において、出力画素値演算部3204は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【1115】
ステップS3205において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS3202に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS3202乃至S3204の処理が繰り返される。
【1116】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS3205において、全画素の処理が終了されたと判定すると)、出力画素値演算部3204は、ステップS3206において、画像を出力する。その後、画像の生成の処理は終了となる。
【1117】
このように、2次元再積分手法を利用することで、センサ2(図89)からの入力画像の画素3231(図106)における画素として、入力画素3231よりも空間解像度の高い4つの画素、即ち、画素3241乃至画素3244(図107)を創造することができる。さらに、図示はしないが、上述したように、画像生成部103は、画素3241乃至画素3244のみならず、積分範囲を適宜変えることで、入力画素3231に対して任意の倍率の空間解像度の画素を劣化することなく創造することができる。
【1118】
以上、2次元再積分手法の説明として、空間方向(X方向とY方向)に対する近似関数f(x,y)を2次元積分する例を用いたが、2次元再積分手法は、時空間方向(X方向とt方向、または、Y方向とt方向)に対しても適用可能である。
【1119】
即ち、上述した例は、実世界1(図89)の光信号が、例えば、図102で示されるような傾きGで表される空間方向の定常性を有する場合の例であったので、上述した式(120)で示されるような、空間方向(X方向とY方向)の二次元積分が含まれる式が利用された。しかしながら、二次元積分の考え方は、空間方向だけによるものではなく、時空間方向(X方向とt方向、または、Y方向とt方向)に対して適用することも可能である。
【1120】
換言すると、2次元再積分手法の前提となる2次元近似手法においては、光信号を表す画像関数F(x,y,t)が、空間方向の定常性のみならず、時空間方向(ただし、X方向とt方向、または、Y方向とt方向)の定常性を有している場合であっても、2次元の近似関数fにより近似することが可能である。
【1121】
具体的には、例えば、X方向に水平に等速で動いている物体がある場合、その物体の動きの方向は、図108で示されるようなX−t平面においては、傾きVのように表される。換言すると、傾きVは、X−t平面における時空間方向の定常性の方向を表しているとも言える。従って、データ定常性検出部101(図89)は、上述した角度θ(X−Y平面における、空間方向の定常性を表す傾きGに対応するデータ定常性情報)と同様に、X−t平面における時空間方向の定常性を表す傾きVに対応するデータ定常性情報として、図108で示されるような動きθ(厳密には、図示はしないが、傾きVに対応する傾きVで表されるデータの定常性の方向と、空間方向のX方向とのなす角度である動きθ)を出力することが可能である。
【1122】
また、2次元近似手法を利用する実世界推定部102(図89)は、動きθを上述した角度θの代わりとして使用すれば、上述した方法と同様な方法で、近似関数f(x,t)の係数(特徴量)wを演算することが可能になる。ただし、この場合、使用される式は、上述した式(124)ではなく、次の式(133)である。
【1123】
【数133】
Figure 2005018534
・・・(133)
【1124】
なお、式(133)において、sはcotθ(ただし、θは動きである)である。
【1125】
従って、2次元再積分手法を利用する画像生成部103(図89)は、次の式(134)の右辺に、上述した式(133)のf(x,t)を代入して、演算することで、画素値Mを算出することが可能になる。
【1126】
【数134】
Figure 2005018534
・・・(134)
【1127】
なお、式(134)において、tは、t方向の積分開始位置を表しており、tは、t方向の積分終了位置を表している。同様に、xは、X方向の積分開始位置を表しており、xは、X方向の積分終了位置を表している。Gは、所定のゲインを表している。
【1128】
また、空間方向Xの変わりに、空間方向Yに注目した近似関数f(y,t)も、上述した近似関数f(x,t)と全く同様に取り扱うことが可能である。
【1129】
ところで、式(133)において、t方向を一定とみなし、即ち、t方向の積分を無視して積分することで、時間方向には積分されないデータ、即ち、動きボケのないデータを得ることが可能になる。換言すると、この手法は、2次元の近似関数fのうちの所定の1次元を一定として再積分する点で、2次元再積分手法の1つとみなしてもよいし、実際には、X方向の1次元の再積分をすることになるという点で、1次元再積分手法の1つとみなしてもよい。
【1130】
また、式(134)において、積分範囲は任意に設定可能であるので、2次元再積分手法においては、この積分範囲を適宜変えることで、元の画素(センサ2(図89)からの入力画像の画素)に対して任意の倍率の解像度の画素を劣化することなく創造することが可能になる。
【1131】
即ち、2次元再積分手法においては、時間方向tの積分範囲を適宜変えることで、時間解像度の創造が可能になる。また、空間方向X(または、空間方向Y)の積分範囲を適宜変えることで、空間解像度の創造が可能になる。さらに、時間方向tと空間方向Xの積分範囲のそれぞれを適宜変えることで、時間解像度と空間解像度の両方の創造が可能になる。
【1132】
なお、上述したように、時間解像度と空間解像度のうちのいずれか一方の創造は、1次元再積分手法でも可能であるが、両方の解像度の創造は、1次元再積分手法では原理上不可能であり、2次元以上の再積分を行うことではじめて可能になる。即ち、2次元再積分手法と後述する3次元再積分手法ではじめて、両方の解像度の創造が可能になる。
【1133】
また、2次元再積分手法は、1次元ではなく2次元の積分効果を考慮しているので、より実世界1(図89)の光信号に近い画像を生成することも可能になる。
【1134】
次に、図109と図110を参照して、3次元再積分手法について説明する。
【1135】
3次元再積分手法においては、3次元近似手法により近似関数f(x,y,t)が既に生成されていることが前提とされる。
【1136】
この場合、3次元再積分手法においては、出力画素値Mは、次の式(135)のように演算される。
【1137】
【数135】
Figure 2005018534
・・・(135)
【1138】
なお、式(135)において、tは、t方向の積分開始位置を表しており、tは、t方向の積分終了位置を表している。同様に、yは、Y方向の積分開始位置を表しており、yは、Y方向の積分終了位置を表している。また、xは、X方向の積分開始位置を表しており、xは、X方向の積分終了位置を表している。さらに、Gは、所定のゲインを表している。
【1139】
式(135)において、積分範囲は任意に設定可能であるので、3次元再積分手法においては、この積分範囲を適宜変えることで、元の画素(センサ2(図89)からの入力画像の画素)に対して任意の倍率の時空間解像度の画素を劣化することなく創造することが可能になる。即ち、空間方向の積分範囲を小さくすれば、画素ピッチを自由に細かくできる。逆に、空間方向の積分範囲を大きくすれば、画素ピッチを自由に大きくすることができる。また、時間方向の積分範囲を小さくすれば、実世界波形に基づいて時間解像度を創造できる。
【1140】
図109は、3次元再積分手法を利用する画像生成部103の構成例を表している。
【1141】
図109で示されるように、この例の画像生成部103には、条件設定部3301、特徴量記憶部3302、積分成分演算部3303、および出力画素値演算部3304が設けられている。
【1142】
条件設定部3301は、実世界推定部102より供給された実世界推定情報(図109の例では、近似関数f(x,y,t)の特徴量)に基づいて近似関数f(x,y,t)の次数nを設定する。
【1143】
条件設定部3301はまた、近似関数f(x,y,t)を再積分する場合(出力画素値を演算する場合)の積分範囲を設定する。なお、条件設定部3301が設定する積分範囲は、画素の幅(縦幅と横幅)やシャッタ時間そのものである必要は無い。例えば、センサ2(図89)からの入力画像の各画素の空間的な大きさに対する、出力画素(画像生成部103がこれから生成する画素)の相対的な大きさ(空間解像度の倍率)がわかれば、具体的な空間方向の積分範囲の決定が可能である。同様に、センサ2(図89)のシャッタ時間に対する出力画素値の相対的な時間(時間解像度の倍率)がわかれば、具体的な時間方向の積分範囲の決定が可能である。従って、条件設定部3301は、積分範囲として、例えば、空間解像度倍率や時間解像度倍率を設定することもできる。
【1144】
特徴量記憶部3302は、実世界推定部102より順次供給されてくる近似関数f(x,y,t)の特徴量を一次的に記憶する。そして、特徴量記憶部3302は、近似関数f(x,y,t)の特徴量の全てを記憶すると、近似関数f(x,y,t)の特徴量を全て含む特徴量テーブルを生成し、出力画素値演算部3304に供給する。
【1145】
ところで、上述した式(135)の右辺の近似関数f(x,y)の右辺を展開(演算)すると、出力画素値Mは、次の式(136)のように表される。
【1146】
【数136】
Figure 2005018534
・・・(136)
【1147】
式(136)において、K(x,x,y,y,t,t)は、i次項の積分成分を表している。ただし、xはX方向の積分範囲の開始位置を、xはX方向の積分範囲の終了位置を、yはY方向の積分範囲の開始位置を、yはY方向の積分範囲の終了位置を、tはt方向の積分範囲の開始位置を、tはt方向の積分範囲の終了位置を、それぞれ表している。
【1148】
積分成分演算部3303は、この積分成分K(x,x,y,y,t,t)を演算する。
【1149】
具体的には、積分成分演算部3303は、条件設定部3301により設定された次数、および積分範囲(空間解像度倍率や時間解像度倍率)、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度θまたは動きθに基づいて積分成分K(x,x,y,y,t,t)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして出力画素値演算部3304に供給する。
【1150】
出力画素値演算部3304は、特徴量記憶部3302より供給された特徴量テーブルと、積分成分演算部3303より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(136)の右辺を演算し、その演算結果を出力画素値Mとして外部に出力する。
【1151】
次に、図110のフローチャートを参照して、3次元再積分手法を利用する画像生成部103(図109)の画像の生成の処理(図29のステップS103の処理)について説明する。
【1152】
例えば、いま、上述した図29のステップS102の処理で、実世界推測部102(図89)が、入力画像のうちの、所定の画素を注目画素として、実世界1(図89)の光信号を近似する近似関数f(x,y,t)を既に生成しているとする。
【1153】
また、上述した図29のステップS101の処理で、データ定常性検出部101(図89)が、実世界推定部102と同じ画素を注目画素として、データ定常性情報として、角度θまたは動きθを既に出力しているとする。
【1154】
この場合、図110のステップS3301において、条件設定部3301は、条件(次数と積分範囲)を設定する。
【1155】
ステップS3302において、特徴量記憶部3302は、実世界推定部102より供給された近似関数f(x,y,t)の特徴量wを取得し、特徴量テーブルを生成する。
【1156】
ステップS3303において、積分成分演算部3303は、条件設定部3301により設定された条件(次数および積分範囲)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度θまたは動きθ)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【1157】
なお、ステップS3302の処理とステップS3303の処理の順序は、図110の例に限定されず、ステップS3303の処理が先に実行されてもよいし、ステップS3302の処理とステップS3303の処理が同時に実行されてもよい。
【1158】
次に、ステップS3304において、出力画素値演算部3304は、ステップS3302の処理で特徴量記憶部3302により生成された特徴量テーブルと、ステップS3303の処理で積分成分演算部3303により生成された積分成分テーブルに基づいて各出力画素値のそれぞれを演算する。
【1159】
ステップS3305において、出力画素値演算部3304は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【1160】
ステップS3305において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS3302に戻り、それ以降の処理が繰り返される。即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS3302乃至S3304の処理が繰り返される。
【1161】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS3305において、全画素の処理が終了されたと判定すると)、出力画素値演算部3304は、ステップS3306において、画像を出力する。その後、画像の生成の処理は終了となる。
【1162】
このように、上述した式(135)において、その積分範囲は任意に設定可能であるので、3次元再積分手法においては、この積分範囲を適宜変えることで、元の画素(センサ2(図89)からの入力画像の画素)に対して任意の倍率の解像度の画素を劣化することなく創造することが可能になる。
【1163】
即ち、3次元再積分手法においては、時間方向の積分範囲を適宜変えることで、時間解像度の創造が可能になる。また、空間方向の積分範囲を適宜変えることで、空間解像度の創造が可能になる。さらに、時間方向と空間方向の積分範囲のそれぞれを適宜変えることで、時間解像度と空間解像度の両方の創造が可能になる。
【1164】
具体的には、3次元再積分手法においては、2次元や1次元に落とすときの近似がないので精度の高い処理が可能になる。また、斜め方向の動きも2次元に縮退することなく処理することが可能になる。さらに、2次元に縮退していないので各次元の加工が可能になる。例えば、2次元再積分手法において、空間方向(X方向とY方向)に縮退している場合には時間方向であるt方向の加工ができなくなってしまう。これに対して、3次元再積分手法においては、時空間方向のいずれの加工も可能になる。
【1165】
なお、上述したように、時間解像度と空間解像度のうちのいずれか一方の創造は、1次元再積分手法でも可能であるが、両方の解像度の創造は、1次元再積分手法では原理上不可能であり、2次元以上の再積分を行うことではじめて可能になる。即ち、上述した2次元再積分手法と3次元再積分手法ではじめて、両方の解像度の創造が可能になる。
【1166】
また、3次元再積分手法は、1次元や2次元ではなく3次元の積分効果を考慮しているので、より実世界1(図89)の光信号に近い画像を生成することも可能になる。
【1167】
次に、図3の信号処理装置4においては、データ定常性検出部101においてデータの定常性が検出され、実世界推定部102において、その定常性に基づき、実世界1の信号の波形の推定、即ち、例えば、X断面波形F(x)を近似する近似関数が求められる。
【1168】
このように、信号処理装置4では、定常性に基づいて、実世界1の信号の波形の推定が行われるため、データ定常性検出部101で検出される定常性が誤っていたり、あるいは、その検出精度が悪い場合には、実世界1の信号の波形の推定精度も悪くなる。
【1169】
また、信号処理装置4では、ここでは、例えば、画像である、実世界1の信号が有する定常性に基づいて信号処理を行うため、実世界1の信号のうちの定常性が存在する部分に対しては、他の信号処理装置の信号処理に比べて、精度のよい信号処理を実行することができ、その結果、より実世界1の信号に対応する画像に近い画像を出力することが可能になる。
【1170】
しかしながら、信号処理装置4は、定常性に基づいて信号処理を実行する以上、実世界1の信号のうちの明確な定常性が存在しない部分に対しては、定常性が存在する部分に対する処理と同等の精度で、信号処理を実行することができず、その結果、実世界1の信号に対応する画像に対して誤差を含む画像を出力することになる。
【1171】
従って、信号処理装置4において実世界1の信号に対応する画像より近い画像を得るためには、信号処理装置4による信号処理の対象とする処理領域や、信号処理装置4で用いる定常性の精度などが問題となる。
【1172】
そこで、図111は、図1の信号処理装置4の他の一実施の形態の構成例を示している。
【1173】
図111では、信号処理装置4は、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、およびユーザI/F(Interface)10006から構成されている。
【1174】
図111に構成を示す信号処理装置4には、データ3の一例である画像データ(入力画像)が、センサ2(図1)から入力され、その入力画像は、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、および画像表示部10005に供給される。
【1175】
処理領域設定部10001は、入力画像について、処理領域を設定し、その処理領域を特定する処理領域情報を、定常性設定部10002、実世界推定部10003、および画像生成部10004に供給する。
【1176】
定常性設定部10002は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域の画像データにおいて欠落した実世界1の信号の定常性を設定し、その定常性を表す定常性情報を、実世界推定部10003および画像生成部10004に供給する。
【1177】
実世界推定部10003は、モデル生成部10011、方程式生成部10012、および実世界波形推定部10013から構成され、処理領域内の画像データから、対応する実世界1の信号の定常性に応じて、その実世界1の信号を推定する。
【1178】
即ち、モデル生成部10011は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素と、その処理領域の画像データに対応する実世界1の信号の定常性に応じて、処理領域内の各画素の画素値と実世界1の信号との関係をモデル化したモデルとしての関数を生成し、方程式生成部10012に供給する。
【1179】
方程式生成部10012は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。さらに、方程式生成部10012は、その処理領域を構成する各画素の画素値を、モデル生成部10011から供給されるモデルとしての関数に代入し、これにより、方程式を生成して、実世界波形推定部10013に供給する。
【1180】
実世界波形推定部10013は、方程式生成部10012から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定する。即ち、実世界波形推定部10013は、方程式生成部10012から供給される方程式を解くことにより、実世界1の信号を近似する近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部10004に供給する。ここで、実世界1の信号を近似する近似関数には、引数の値にかかわらず、関数値が一定の関数も含まれる。
【1181】
画像生成部10004は、実世界推定部10003で推定された実世界1の信号の波形を表す近似関数と、定常性設定部10002から供給される定常性情報とに基づいて、実世界1の信号により近似した信号を生成する。即ち、画像生成部10004は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域について、実世界推定部10003(の実世界波形推定部10013)から供給される近似関数と、定常性設定部10002から供給される定常性情報とに基づき、実世界1の信号に対応する画像により近似した画像データを生成する。
【1182】
さらに、画像生成部10004は、入力画像と、近似関数に基づいて生成した画像データ(以下、適宜、近似画像ともいう)とを合成し、入力画像の処理領域の部分を、近似画像に置き換えた画像を生成し、その画像を、出力画像として画像表示部10005に供給する。
【1183】
画像表示部10005は、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)で構成され、入力画像や、画像生成部10004から供給される出力画像を表示する。
【1184】
なお、画像表示部10005は、1または複数のCRTやLCDで構成することが可能である。画像表示部10005を1つのCRTやLCDで構成する場合には、その1つのCRTやLCDの画面を複数の画面に分割し、ある画面に入力画像を表示するとともに、他の画面に出力画像を表示するようにすることができる。さらに、画像表示部10005を複数のCRTやLCDで構成する場合には、ある1つのCRTやLCDに入力画像を表示するとともに、他のCRTやLCDに出力画像を表示するようにすることができる。
【1185】
また、画像表示部10005は、ユーザI/F10006の出力に応じて、各種の表示を行う。即ち、画像表示部10005は、例えば、カーソルを表示し、ユーザがカーソルを移動するようにユーザI/F10006を操作した場合、その操作に応じて、カーソルを移動させる。また、画像表示部10005は、例えば、ユーザが所定の範囲を選択するようにユーザI/F10006を操作した場合、その操作に応じて、画面上の選択された範囲を囲む枠を表示する。
【1186】
ユーザI/F10006は、ユーザによって操作され、そのユーザの操作に応じて、例えば、処理領域、定常性、または現実世界の信号のうちの少なくとも1つに関連する情報を、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003に供給する。
【1187】
即ち、ユーザは、画像表示部10005に表示された入力画像や出力画像を見て、その入力画像や出力画像に対する入力を与えるように、ユーザI/F10006を操作する。ユーザI/F10006は、ユーザの操作に応じて、処理領域、定常性、または現実世界の信号に関連する情報を、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003の処理を補助する補助情報として、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003に供給する。
【1188】
処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003は、ユーザI/F10006から補助情報が供給された場合、その補助情報に基づき、処理領域の設定、定常性の設定、または実世界1の信号の推定を、それぞれ行う。
【1189】
但し、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003では、補助情報を用いずに、即ち、ユーザによって、ユーザI/F10006が操作されなくても、処理領域の設定、定常性の設定、または実世界1の信号の推定を、それぞれ行うことが可能である。
【1190】
具体的には、処理領域設定部10001では、図30乃至図48で説明したように、図3のデータ定常性検出部101における場合と同様にして、入力画像から、定常領域を検出し、例えば、その定常領域を囲む矩形(長方形)の領域を、処理領域として設定することができる。
【1191】
また、定常性設定部10002では、図49乃至図57で説明したように、図3のデータ定常性検出部101における場合と同様にして、入力画像から、データの定常性を検出し、そのデータの定常性に基づき、対応する実世界1の信号の定常性を設定すること、即ち、例えば、データの定常性を、そのまま実世界1の信号の定常性として設定することができる。
【1192】
さらに、実世界推定部10003では、図58乃至図88で説明したように、図3の実世界推定部102における場合と同様にして、処理領域設定部10001で設定された処理領域の画像データから、定常性設定部10002で設定された定常性に応じて、実世界1の信号を推定することができる。なお、図3では、実世界推定部102において、実世界1の信号の推定に、データの定常性を用いたが、実世界1の信号の推定には、データの定常性に代えて、対応する実世界1の信号の定常性を用いることができる。
【1193】
次に、図112のフローチャートを参照して、図111の信号処理装置4の処理について説明する。
【1194】
まず最初に、ステップS10001において、信号処理装置4は、前処理を行い、ステップS10002に進む。即ち、信号処理装置4は、センサ2(図1)からデータ3として供給される、例えば1フレームまたは1フィールドの入力画像を、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、および画像表示部10005に供給する。さらに、信号処理部4は、画像表示部10005に、入力画像を表示させる。
【1195】
ステップS10002では、ユーザI/F10006は、ユーザがユーザI/F10006を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定する。ステップS10002において、ユーザ入力がなかったと判定された場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS10003乃至S10005をスキップして、ステップS10006に進む。
【1196】
また、ステップS10002において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部10005に表示された入力画像を見て、ユーザI/F10006を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS10003に進み、ユーザI/F10006は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1197】
ステップS10003において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1198】
また、ステップS10003において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS10004に進み、ユーザI/F10006は、ユーザ入力が補助情報であるかどうかを判定する。ステップS10004において、ユーザ入力が補助情報でないと判定された場合、ステップS10005をスキップして、ステップS10006に進む。
【1199】
また、ステップS10004において、ユーザ入力が補助情報であると判定された場合、ステップS10005に進み、ユーザI/F10006は、その補助情報を、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10006に供給し、ステップS10006に進む。
【1200】
ステップS10006では、処理領域設定部10001は、入力画像について、処理領域を設定し、その処理領域を特定する処理領域情報を、定常性設定部10002、実世界推定部10003、および画像生成部10004に供給し、ステップS10007に進む。ここで、処理領域設定部10001は、直前に行われたステップS10005においてユーザI/F10006から補助情報が供給された場合は、その補助情報を用いて、処理領域の設定を行う。
【1201】
ステップS10007では、定常性設定部10002は、処理領域設定部10001から供給された処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。さらに、定常性設定部10002は、その処理領域の画像データにおいて欠落した実世界1の信号の定常性を設定し、その定常性を表す定常性情報を、実世界推定部10003に供給して、ステップS10008に進む。ここで、定常性設定部10002は、直前に行われたステップS10005においてユーザI/F10006から補助情報が供給された場合は、その補助情報を用いて、定常性の設定を行う。
【1202】
ステップS10008では、実世界推定部10003は、入力画像における処理領域内の画像データについて、対応する実世界1の信号の定常性に応じて、その実世界1の信号を推定する。
【1203】
即ち、実世界推定部10003では、モデル生成部10011が、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識するとともに、定常性設定部10002から供給される定常性情報から、処理領域の画像データに対応する実世界1の信号の定常性を認識する。さらに、モデル生成部10011は、入力画像における処理領域を構成する画素と、その処理領域の画像データに対応する実世界1の信号の定常性に応じて、処理領域内の各画素の画素値と実世界1の信号との関係をモデル化したモデルとしての関数を生成し、方程式生成部10012に供給する。
【1204】
方程式生成部10012は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域を構成する入力画像の各画素の画素値を、モデル生成部10011から供給されるモデルとしての関数に代入し、これにより、実世界1の信号を近似する近似関数を求める方程式を生成して、実世界波形推定部10013に供給する。
【1205】
実世界波形推定部10013は、方程式生成部10012から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定する。即ち、実世界波形推定部10013は、方程式生成部10012から供給される方程式を解くことにより、実世界1の信号をモデル化したモデルとしての近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部10004に供給する。
【1206】
なお、実世界推定部10003においては、モデル生成部10011および方程式生成部10012は、直前に行われたステップS10005においてユーザI/F10006から補助情報が供給された場合は、その補助情報を用いて、処理を行う。
【1207】
ステップS10008の処理後は、ステップS10009に進み、画像生成部10004は、実世界推定部10003(の実世界波形推定部10013)から供給された、実世界1の信号の波形を近似する近似関数に基づいて、実世界1の信号により近似した信号を生成する。即ち、画像生成部10004は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域について、実世界推定部10003から供給された近似関数に基づき、実世界1の信号に対応する画像により近似した画像データである近似画像を生成する。さらに、画像生成部10004は、入力画像の処理領域の部分を近似画像に置き換えた画像を、出力画像として生成し、画像表示部10005に供給して、ステップS10009からS10010に進む。
【1208】
ステップS10010では、画像表示部10005は、画像生成部10004から供給された出力画像を、ステップS10001で表示された入力画像に代えて、またはその入力画像とともに表示し、ステップS10011に進む。
【1209】
ステップS10011では、ユーザI/F10006は、ステップS10002における場合と同様に、ユーザがユーザI/F10006を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定し、ユーザ入力がなかったと判定した場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS10011に戻り、何らかのユーザ入力があるまで待つ。
【1210】
また、ステップS10011において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部10005に表示された入力画像や出力画像を見て、ユーザI/F10006を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS10012に進み、ユーザI/F10006は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1211】
ステップS10012において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1212】
また、ステップS10012において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS10013に進み、ユーザI/F10006は、ユーザ入力が補助情報であるかどうかを判定する。ステップS10013において、ユーザ入力が補助情報でないと判定された場合、ステップS10011に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【1213】
また、ステップS10013において、ユーザ入力が補助情報であると判定された場合、ステップS10005に戻り、上述したように、ユーザI/F10006は、その補助情報を、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10006に供給する。そして、ステップS10005からS10006に進み、以下、同様の処理が繰り返される。
【1214】
以上のように、図111の信号処理装置4によれば、ユーザの操作に応じて、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003の処理を補助する補助情報を、ユーザI/F10006から処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003に供給し、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003において、ユーザI/F10006からの補助情報に基づき、処理領域の設定、定常性の設定、または実世界1の信号の推定を行うので、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003の処理精度を向上させ、例えば、ユーザの好みにあった、高画質の出力画像を得ることが可能となる。
【1215】
次に、図111に示した信号処理装置4の各種の応用例について説明する。
【1216】
図113は、図111に示した信号処理装置4の応用例の一実施の形態の構成例を示している。
【1217】
図113の信号処理装置4には、センサ2からデータ3として、例えば、1フレームまたは1フィールドの画像が入力される。なお、ここでは、入力画像に画像の水平方向(横方向)にシャッタ時間(露光時間)あたりv画素の一定速度で移動している所定の形状を有する物体(オブジェクト)が表示されているものとする。即ち、入力画像は、物体が水平方向にv画素の動き量で動いているために、センサ2の時間積分効果によって、そのオブジェクトの光信号と、そのオブジェクト以外の部分の光信号とが混合(時間混合)し、これにより、オブジェクトの境界部分などにおいて、ボケた画像となっている。図113の信号処理装置4では、このような時間混合によって生じた動きボケを入力画像から除去した高画質の出力画像が生成される。
【1218】
図113において、処理領域設定部15011、定常性設定部15012、実世界推定部15013、画像生成部15014、画像表示部15015、ユーザI/F15016は、図111の処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、ユーザI/F10006にそれぞれ対応しており、基本的には、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、ユーザI/F10006それぞれと同様の処理を行う。さらに、図113において、実世界推定部15013は、モデル生成部15021、方程式生成部15022、実世界波形推定部15023で構成されている。モデル生成部15021、方程式生成部15022、実世界波形推定部15023は、図111のモデル生成部10011、方程式生成部10012、実世界波形推定部10013にそれぞれ対応しており、基本的には、モデル生成部10011、方程式生成部10012、実世界波形推定部10013それぞれと同様の処理を行う。
【1219】
但し、図113においては、ユーザがユーザI/F15016を操作することにより、ユーザI/F15016が出力する補助情報が、方程式生成部15022に供給されるようになっている。
【1220】
即ち、図113では、ユーザは、ユーザI/F15016を操作することにより、方程式生成部15022において、入力画像に対応する実世界1の画像である、動きボケがない画像の各画素間の関係を拘束する拘束条件を設定することができるようになっており、ユーザI/F15016は、ユーザが拘束条件を設定する操作を行うと、その操作によって設定された拘束条件を表す拘束条件情報を、方程式生成部15022に供給する。
【1221】
具体的には、例えば、画像表示部15015に表示された、物体がボケて映っている画像を見たユーザが、本来の画像、即ち、入力画像に対応する実世界1の画像である、動きボケがない画像を推測する。そして、例えば、ユーザは、ボケが発生している所定の領域をエッジ部分と推測し、エッジ部分の隣り合う画素間の画素値(レベル)の差は大きい、などの各画素間の画素値の関係(拘束条件)を推測する。さらに、ユーザは、その推測した各画素間の画素値の関係に適合する条件を、ユーザI/F15016を操作することにより、方程式生成部15022に設定することができる。
【1222】
また、図113においては、処理領域設定部15011から実世界推定部15013に供給される処理領域情報は、実世界推定部15013のうちのモデル生成部15021と方程式生成部15022に供給されるようになっている。モデル生成部15021と方程式生成部15022は、処理領域設定部15011から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。
【1223】
定常性設定部15012は、入力画像において、物体(オブジェクト)が、画像の水平方向にシャッタ時間あたりv画素の一定速度で移動しているという定常性の情報として、動き量(動きベクトル)vを設定し、その動き量vを定常性情報として、実世界推定部15013のモデル生成部15021に供給する。
【1224】
モデル生成部15021は、処理領域設定部15011から供給される処理領域情報から認識される処理領域について、定常性設定部15012から供給される定常性情報としての動き量vを考慮した、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値と、実世界1の信号との関係をモデル化したモデル(以下、適宜、関係モデルと称する)としての方程式(以下、適宜、モデル方程式と称する)を生成し、その生成したモデル方程式を方程式生成部15022に供給する。
【1225】
方程式生成部15022は、ユーザI/F15016から供給される拘束条件情報に基づいて、拘束条件の方程式(以下、適宜、拘束条件式と称する)を生成し、その拘束条件式と、モデル生成部15021から方程式生成部15022に供給されるモデル方程式に、処理領域を構成する入力画像の各画素の画素値を代入し、これにより、実世界1の信号をモデル化したモデル(以下、適宜、近似モデルと称する)としての近似関数を求める方程式を生成して、実世界波形推定部15023に供給する。
【1226】
実世界波形推定部15023は、方程式生成部15022から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定する。即ち、実世界波形推定部15023は、近似モデルとしての近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部15014に供給する。ここで、実世界1の信号を近似する近似関数には、引数の値にかかわらず、関数値が一定の関数も含まれる。
【1227】
画像生成部15014は、処理領域設定部15011から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域を認識する。また、画像生成部15014は、実世界波形推定部15023から供給された近似関数から、実世界1の信号により近似した信号、即ち、動きボケがない画像を生成し、入力画像の処理領域の画像を、動きボケがない画像に置き換えて出力画像として生成し、画像表示部15015に供給する。
【1228】
次に、図114のフローチャートを参照して、図113の信号処理装置4の処理について説明する。
【1229】
最初に、ステップS15001において、信号処理装置4は、前処理を行い、ステップS15002に進む。即ち、信号処理装置4は、センサ2(図1)からデータ3として供給される、例えば1フレームまたは1フィールドの入力画像を、処理領域設定部15011、定常性設定部15012、実世界推定部15013、画像生成部15014、および画像表示部15015に供給する。さらに、信号処理装置4は、画像表示部15015に、入力画像を表示させる。
【1230】
ステップS15002では、ユーザI/F15016は、ユーザがユーザI/F15016を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定する。ステップS15002において、ユーザ入力がなかったと判定された場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS15003乃至S15005をスキップして、ステップS15006に進む。
【1231】
一方、ステップS15002において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部15015に表示された入力画像を見て、ユーザI/F15016を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS15003に進み、ユーザI/F15016は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1232】
ステップS15003において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1233】
また、ステップS15003において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS15004に進み、ユーザI/F15016は、ユーザ入力が拘束条件情報であるかどうかを判定する。ステップS15004において、ユーザ入力が拘束条件情報でないと判定された場合、ステップS15005をスキップして、ステップS15006に進む。
【1234】
また、ステップS15004において、ユーザ入力が拘束条件情報であると判定された場合、ステップS15005に進み、ユーザI/F15016は、その拘束条件情報を、方程式生成部15022に供給し、ステップS15006に進む。
【1235】
ステップS15006では、処理領域設定部15011は、入力画像について、処理領域を設定し、その処理領域を特定する処理領域情報を、定常性設定部15012、実世界推定部15013のモデル生成部15021および方程式生成部15022、並びに画像生成部15014に供給し、ステップS15007に進む。ここで、ステップS15006における処理領域の設定は、ユーザがユーザI/F15016を操作することにより処理領域指示情報を入力し、その処理領域指示情報に基づいて行うことも可能であるし、ユーザからの処理領域指示情報なしで行うことも可能である。
【1236】
ステップS15007では、定常性設定部15012は、処理領域設定部15011から供給された処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。さらに、定常性設定部15012は、その処理領域の画像データにおいて定常性の一部が欠落した実世界1の信号の定常性を設定し、その定常性を表す定常性情報を、実世界推定部15013のモデル生成部15021に供給して、ステップS15008に進む。ここで、定常性設定部15012は、シャッタ時間(露光時間)あたりv画素の一定速度で水平方向に移動していることを表す動き量vを定常性情報として設定し、実世界推定部15013のモデル生成部15021に供給するものとする。なお、ここでは、定常性設定部15012は、入力画像において、オブジェクトが水平方向に移動していることを前提として、その動きの大きさだけを表す動き量を定常性情報として設定するようにしたが、その他、オブジェクトの動きの大きさと方向を表す動きベクトルを、定常性情報として設定することも可能である。ステップS15007における定常性の設定は、ユーザがユーザI/F15016を操作することにより定常性指示情報を入力し、その定常性指示情報に基づいて行うことも可能であるし、ユーザからの定常性指示情報なしで行うことも可能である。
【1237】
ステップS15008では、実世界推定部15013は、実世界推定処理を行う。即ち、実世界推定部15013では、モデル生成部15021が、ステップS15007において定常性設定部15012から供給された動き量vと、ステップS15006において処理領域設定部15011から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値と、実世界1の信号との関係をモデル化したモデル(関係モデル)としての方程式(モデル方程式)を生成し、その生成したモデル方程式を方程式生成部15022に供給する。
【1238】
方程式生成部15022は、ステップS15005においてユーザI/F15016から供給される拘束条件情報に基づいて、拘束条件式を生成し、さらに、その拘束条件式とモデル生成部15021から方程式生成部15022に供給されるモデル方程式とから、実世界1の信号をモデル化したモデル(近似モデル)としての近似関数を求める方程式を生成し、その方程式に入力画像の各画素の画素値を代入して、実世界波形推定部15023に供給する。
【1239】
実世界波形推定部15023は、方程式生成部15022から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定、即ち、実世界1の信号をモデル化したモデルとしての近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部15014に供給する。
【1240】
なお、ステップS15008の実世界推定処理の詳細については、図130を参照して後述する。
【1241】
ステップS15008の処理後は、ステップS15009に進み、画像生成部15014は、実世界波形推定部15023から供給された近似関数から、実世界1の信号により近似した信号、即ち、動きボケがない画像を生成し、処理領域設定部15011から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域の部分を、生成した動きボケがない画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15015に供給して、ステップS15010に進む。
【1242】
ステップS15010では、画像表示部15015は、画像生成部15014から供給された出力画像を、ステップS15001で表示された入力画像に代えて、またはその入力画像とともに表示し、ステップS15011に進む。
【1243】
ステップS15011では、ユーザI/F15016は、ステップS15002における場合と同様に、ユーザがユーザI/F15016を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定し、ユーザ入力がなかったと判定した場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS15011に戻り、何らかのユーザ入力があるまで待つ。
【1244】
また、ステップS15011において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部15015に表示された入力画像や出力画像を見て、ユーザI/F15016を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS15012に進み、ユーザI/F15016は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1245】
ステップS15012において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1246】
一方、ステップS15012において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS15013に進み、ユーザI/F15016は、ユーザ入力が拘束条件情報であるかどうかを判定する。ステップS15013において、ユーザ入力が拘束条件情報でないと判定された場合、ステップS15011に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【1247】
また、ステップS15013において、ユーザ入力が拘束条件情報であると判定された場合、ステップS15005に戻り、上述したように、ユーザI/F15016は、その拘束条件情報を、方程式生成部15022に供給する。そして、ステップS15005からS15006に進み、以下、同様の処理が繰り返される。なお、信号処理装置4が、ステップS15005乃至S15013の処理を繰り返す場合において、上述のステップS15006およびS15007の処理は、1回目のS15006およびS15007の処理で設定されるものと同一であり、1回目の処理と同じ処理を繰り返しても良いし、スキップするようにしても良い。
【1248】
以上のように、図113の信号処理装置4では、実世界1の信号をモデル化したモデルとしての近似関数を求めることにより、動きボケがない、高画質の出力画像を生成することができる。
【1249】
また、ユーザは、ユーザI/F15016を操作することにより、本来の動きボケがないときの画像における、各画素間の関係を拘束する拘束条件を設定することができ、新たな拘束条件が入力された場合には、再度、動きボケがない画像を求めることができるので、ユーザの好みにあった、高画質の出力画像を、容易に得ることができる。
【1250】
なお、図113の信号処理装置4では、実世界1の光信号を近似する近似関数を求めることにより、動きボケのない出力画像を生成するが、この出力画像は、入力画像から動きボケが除去されたものであるとみることができる。従って、図113の信号処理装置4では、動きボケ除去の処理が行われるということができる。
【1251】
以下において、図113の信号処理装置4による、動きボケ除去の処理の詳細について説明する。初めに、動きボケ発生のメカニズムをモデル化(定式化)することにより、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値と、実世界1の信号との関係をモデル化した関係モデルを生成する。実世界1の光信号は、動きボケを有していないので、関係モデルは、動きボケ画像の各画素の画素値と、動きボケのない画像の各画素の画素値との関係をモデル化したものである。
【1252】
図115は、実世界1の光信号を説明する図である。
【1253】
実世界1の光信号を、図115に示されるような、X−Y平面上(空間方向の1方向であるX方向と、X方向に垂直なY方向からなる平面上)の波形F(x,y)とみなすこととする。図113の信号処理装置4に入力される信号は、上述したように、水平方向にv画素の動き量で動いているので、空間方向Xと同じ方向に、シャッタ時間あたりv画素の動き量で動いている波形F(x,y)と等価である。以下では、波形F(x,y)を光信号関数F(x,y)と称する。
【1254】
図113の信号処理装置4の実世界推定部15013は、センサ2からの入力画像に基づいて、実世界1の光信号関数F(x,y)を近似する近似関数f(x,y)を求めることにより、実世界1の光信号関数F(x,y)を推定する。
【1255】
センサ2の出力である、入力画像は、積分効果を有する、センサの検出素子(画素)により、上述の実世界1の光信号(光信号関数F(x,y))が画素値として射影された複数の画素で構成される画像データである。
【1256】
そこで、図116を参照して、センサ2がCCDとされる場合の積分効果について説明する。
【1257】
図116で示されるように、センサ2の平面上には、複数の検出素子(画素)15031が配置されている。
【1258】
図116の例では、検出素子15031の所定の1辺に平行な方向が、空間方向の1方向であるX方向とされており、X方向に垂直な方向が、空間方向の他方向であるY方向とされている。そして、X−Y平面に垂直な方向が、時間方向であるt方向とされている。
【1259】
また、図116の例では、センサ2の各検出素子15031(センサ2が出力する画像データの画素に対応する)のそれぞれの空間的な形状は、1辺の長さが1の正方形とされている。そして、センサ2のシャッタ時間(露光時間)が1とされている。
【1260】
さらに、図116の例では、センサ2の所定の1つの検出素子15031の中心が、空間方向(X方向とY方向)の原点(X方向の位置x=0、およびY方向の位置y=0)とされており、また、露光時間の中間時刻が、時間方向(t方向)の原点(t方向の位置t=0)とされている。
【1261】
この場合、空間方向の原点(x=0,y=0)にその中心が存在する検出素子15031は、X方向に−0.5乃至0.5の範囲、Y方向に−0.5乃至0.5の範囲、およびt方向に−0.5乃至0.5の範囲で光信号関数F(x,y,t)を積分し、その積分値を画素値Pとして出力することになる。
【1262】
即ち、空間方向の原点にその中心が存在する検出素子15031から出力される画素値Pは、次の式(137)で表される。
【1263】
【数137】
Figure 2005018534
・・・(137)
【1264】
その他の検出素子15031も同様に、対象とする検出素子15031の中心を空間方向の原点とすることで、式(137)で示される画素値Pを出力することになる。
【1265】
以上のように、センサ2からの入力画像は、それぞれ1つの検出素子(画素)15031が、センサ2の積分効果により、一定の画素値とされるデータの集まりである。また、センサ2の積分効果は、実世界1の光信号の空間方向(X−Y方向)の積分(空間混合)と、時間方向(t方向)の積分(時間混合)とで構成されている。
【1266】
従って、入力画像に物体の動きボケが発生している場合においても、厳密に言えば、入力画像の各画素の画素値は、空間積分効果と時間積分効果の両方が生じた(空間混合と時間混合がされた)値であるが、物体の水平方向の移動による動きボケでは、時間積分効果の影響が大であるので、この実施の形態では、より簡単に動きボケの発生をモデル化するために、物体がシャッタ時間あたりv画素の移動をすることによる時間積分効果のみ生じるものとして、近似関数f(x,y)をモデル化するものとする。
【1267】
即ち、実世界1を近似する近似関数f(x,y)は、図117に示すように、空間積分効果がない、換言すれば、センサの各画素内では一定の値を有する関数であり、動きボケが発生している入力画像の各画素の画素値は、図117の近似関数f(x,y)が、動き量vの一定速度で水平方向に移動することにより、時間積分された値であるとする。
【1268】
図118は、信号処理装置4に入力される入力画像と、処理領域設定部15011で設定される処理領域の関係を表す図である。
【1269】
センサ2(図1)から信号処理装置4に入力される画像15041(入力画像)は、空間方向のX方向と空間方向のY方向に所定の画素数を有する画像である。
【1270】
画像15041の1部分または全部である領域15042が、処理領域設定部15011により処理領域として設定される。画像15041内の領域15042を示す情報が、処理領域情報として、処理領域設定部15011から定常性設定部15012、実世界推定部15013、および画像生成部15014に供給されるようになっている。以下において、領域15042を処理領域15042と称する。
【1271】
図119は、処理領域15042を表す図である。
【1272】
処理領域15042は、例えば、図119に示すように、処理領域幅l=10画素、ライン数k=4を有する領域であるとする。即ち、図119では、処理領域15042は、10×4=40画素で構成されている。
【1273】
図120は、処理領域15042内の、yの値が所定の値y(y=y)の1ラインについて、所定の瞬時のタイミングにおける、図117の近似関数f(x,y)を表した図である。即ち、図120は、所定の瞬時のタイミングにおける近似関数f(x,y)を示す図である。この近似関数f(x,y)は、時間方向tおよび空間方向Yが、ある固定の値であるときの空間方向Xの位置と画素のレベルとの関係を示した近似関数f(x,y)であり、単に近似関数f(x)と称する。
【1274】
図120の近似関数f(x)は、次の式(138)のように表すことができる。
【1275】
【数138】
Figure 2005018534
・・・(138)
【1276】
式(138)は、瞬時のタイミングにおける近似関数f(x)であり、実際には、近似関数f(x)は、動き量vを有しているので、図120の1/v時間後には、図121に示される状態になる。図121の近似関数f(x)は、次の式(139)で表される。
【1277】
【数139】
Figure 2005018534
・・・(139)
【1278】
さらに、図121の1/v時間後には、図122に示されるようになり、このときの近似関数f(x)は、次の式(140)で表される。
【1279】
【数140】
Figure 2005018534
・・・(140)
【1280】
ここで、図120乃至図122に示した近似関数f(x)の動きより、物体の動き量vを、図123に示すような簡略化した形態で考えることにする。即ち、物体は、1/v時間おきに、瞬時にx方向に1つ隣の画素の中心へ移動し、1/v時間はそこに留まる。従って、1/v時間の間は、物体が動いていないときと同様の値の画素値が、センサの画素に蓄積される。そして、次の1/v時間は、x方向に1だけ進んだ画素に対して、物体が動いていないときと同様の画素値が、蓄積される。
【1281】
つまり、物体(実世界1の光信号)が動き量vで移動している場合、1つの画素には、物体が動き量vで移動していないときと同じ画素値の1/v倍の画素値が、1/v時間ごとに順次、蓄積されていくと考えることができる。
【1282】
なお、上述のように、物体が1/v時間おきに瞬時にx方向に1画素分だけ移動するという考え方を採用しても、図123において直線で示すように、いわゆるマクロ的には、物体は、単位時間あたりv画素の動き量でx方向に等速で移動していると見ることができる。
【1283】
動き量vを有する物体の、センサの検出素子による蓄積(時間積分)について、図124乃至図126を参照して、さらに説明する。
【1284】
図124は、図120に示した、所定の瞬時のタイミングにおける、y=yの近似関数f(x)を、X−t平面で表した図である。
【1285】
図124において、それぞれの画素15031のX方向の幅は、図116で説明したように1であり、t方向の高さは、シャッタ時間(=1)である。そして、それぞれの画素15031の面積(X方向の幅×t方向の高さ)が、それぞれの画素15031に蓄積される(電荷の総量で表される)画素値Q乃至Qとなっている。この画素値Q乃至Qは、動きボケがない画像の画素値である。
【1286】
一方、図125は、図124の画素値Q乃至Qに対応するように、物体が動き量vで動いているときに、時間積分されて蓄積される画素値を、それぞれP乃至Pとして表した図である。即ち、処理領域15042内のy=yの1ラインについての、入力画像の画素値P乃至PのX−t平面の図である。
【1287】
例えば、v=4(画素)として、上述の図120乃至図123で説明した、物体の動きに基づいて、図125の画素値P乃至Pを、図124の画素値Q乃至Qを用いて表すと、図126のようになる。
【1288】
即ち、シャッタ時間のうち、最初の1/v時間は、動きボケのない画素値Q(h=0乃至9)の1/vに相当する画素値(に対応する電荷)が、x=hのそれぞれの画素に蓄積される。そして、次の1/v時間には、X方向の移動方向側(図中、右側の画素)に1画素ずれて、同様の画素値Q(h=0乃至8)の1/vに相当する画素値が、x=hのそれぞれの画素に蓄積される。以下、同様に、1/v時間ごとに、1画素ずつX方向の移動方向側にずれながら、画素値Q(h=0乃至9)の1/vに相当する画素値が蓄積されていく。なお、以下において、添え字の変数hについて特に断りがない限り、変数hは、h=0乃至9の整数を表すものとする。
【1289】
即ち、X=0を中心とする画素(以下において、X=0の画素と称する)では、画素値Qの1/vの画素値(Q/v)が蓄積される。X=0の画素の右隣のX=1を中心とする画素(以下において、X=1の画素と称する)では、画素値Qの1/vの画素値(Q/v)と画素値Qの1/vの画素値(Q/v)が蓄積される。X=1の画素の右隣のX=2を中心とする画素(以下において、X=2の画素と称する)では、画素値Qの1/vの画素値(Q/v)、画素値Qの1/vの画素値(Q/v)、および画素値Qの1/vの画素値(Q/v)が蓄積される。以下、同様に画素値Qの1/vの画素値が、それぞれの画素に1/v時間ごとにずれて、蓄積されていく。
【1290】
図125と図126に示される関係を式で表すと、次の式(141)が得られる。
【1291】
【数141】
Figure 2005018534
・・・(141)
【1292】
ここで、x=0,1,および2の画素には、蓄積される画素値が空白(未知)の領域が存在する。そのため、P,P,およびPのそれぞれは、シャッタ時間内の全てにおいて蓄積される画素値が得られていないので、式をたてることができない。
【1293】
式(141)は、動きボケ画像の各画素の画素値を、動きボケが生じていない画像の各画素の画素値が、動き量vで移動しながら蓄積(積分)された値であるとして、動きボケ発生のメカニズムをモデル化した連立方程式である。式(141)において、物体が動き量vで動いているときの画素値Pは、信号処理装置4に入力される入力画像の既知の画素値であり、物体の動きがないときの画素値Qが、求めるべき動きボケがない画素値を表している。
【1294】
以上から、物体が動き量vで動いているときの画素値Pは、物体の動きがないときの画素値Qを1/v時間ずつ混合した(時間混合した)画素値であるといえる。以下においては、物体が動き量vで動いているときの画素値Pを混合画素値P、物体の動きがないときの画素値Qを、単に画素値Qと称する。
【1295】
実世界1の信号をモデル化した近似モデルとしての近似関数f(x)は、上述の例では、式(139)で示されるように、Qの値で構成されるので、式(141)は、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値と、実世界1の信号との関係をモデル化した関係モデルとしてのモデル方程式である。そして、動きボケがない画素値Qを求めることは、実世界推定部15013が実世界1の信号をモデル化した近似関数f(x)を求めることに等しい。
【1296】
上述の連立方程式(141)は、処理領域15042の処理領域幅lと動き量vが設定されることにより、たてることができる。しかしながら、連立方程式(141)は、変数の数が画素値Qの10個に対して、式の数が7個しかない。従って、式(141)だけでは画素値Qを求めることは困難である。
【1297】
そこで、少なくとも式の数と変数の数を同じようにするための2つの方法を説明する。
【1298】
第1の方法は、処理領域の端部を「平坦である」と仮定する方法である。即ち、図127に示すように、画素値の空白(未知)領域15051に対して、蓄積される画素値は、最初の1/v時間の端部である、画素値Qの1/vの画素値(Q/v)と同じであると仮定する方法である。
【1299】
この場合、新たに次の式(142)を得ることができる。
【1300】
【数142】
Figure 2005018534
・・・(142)
【1301】
式(141)と式(142)とにより、式の数が10個、変数の数が10個となり、画素値Qを求めることができる。
【1302】
図114のフローチャートを参照して説明した処理において、ユーザによる拘束条件の指定(設定)がない場合、即ち、ユーザI/F15016から方程式生成部15022に拘束条件情報が供給されない場合などでは、例えば、第1の方法などが採用される。しかしながら、第1の方法では、処理領域の端部が「平坦である」と仮定するため、第1の方法で求められる画素値Qから構成される画像には、ノイズが生じることがあり得る。
【1303】
そこで、ユーザI/F15016から方程式生成部15022に拘束条件情報が供給された場合には、第1の方法と異なる第2の方法を適用することができる。第2の方法は、動きボケがない画像における、隣接する各画素の画素値の関係を仮定する(拘束する)式(以下、拘束条件式と称する)を立てることにより、式(141)と合せて変数の数以上の式の数を得るという方法である。
【1304】
一般に、画像は、空間的な相関関係を有している場合が多いため、隣り合う画素値が大きく異なるという場合は少ないと考えることができる。そこで、例えば、動きボケが生じていない各画素間の画素値Qの差分が0(以下、適宜、「隣接画素差分=0」と称する)という条件(以下、拘束条件と称する)を仮定することができる。この拘束条件は、次の式(143)で表すことができる。
【1305】
【数143】
Figure 2005018534
・・・(143)
【1306】
また、例えば、「なだらかに画素値が変化している」という条件を仮定することができる。この拘束条件は、例えば、次の式(144)で表すことができる。
【1307】
【数144】
Figure 2005018534
・・・(144)
【1308】
ユーザは、画像表示部15015に表示された、物体がボケて映っている画像を見て、本来の画像、即ち、入力画像に対応する実世界1の画像である、動きボケがない画像を推測し、その推測した状態を表す各画素間の関係式(拘束条件)をユーザI/F15016を操作することにより、方程式生成部15022に設定することができる。
【1309】
図113の信号処理装置4においては、式(143)の拘束条件がユーザにより設定された(ユーザI/F15016から式(143)を指示する拘束条件情報が供給された)とする。その場合、図124で示されるラインについては、次の式(145)で表される拘束条件式が得られる。
【1310】
【数145】
Figure 2005018534
・・・(145)
【1311】
式(145)は、式の数が9個であり、式(141)と合せると、式の数は16個となり、変数Qの数は10個なので、例えば、最小自乗法を用いることにより、それぞれの式において発生する誤差の二乗和が最小となる変数Qを算出することができる。すなわち、動きボケを除去した(動きボケがない)画素値Qの推定が可能となる。
【1312】
具体的には、式(141)のそれぞれの式で発生する誤差をemi(i=3乃至9)、式(145)のそれぞれの式で発生する誤差をebj(j=0乃至8)とすると、式(141)と式(145)は、それぞれ式(146)および式(147)で表すことができる。
【1313】
【数146】
Figure 2005018534
・・・(146)
【数147】
Figure 2005018534
・・・(147)
【1314】
式(146)および式(147)から次の式(148)が成立する。
【1315】
【数148】
Figure 2005018534
・・・(148)
【1316】
なお、以下において、変数i,jについて特に断りがない限り、iは、i=3乃至9,jは、j=0乃至8の整数をそれぞれ表すものとする。
【1317】
式(148)を、行列A、列ベクトルx,y,eを用いて、式(149)に置き換える。
【1318】
【数149】
Figure 2005018534
・・・(149)
【1319】
この場合、式(146)の誤差emiと式(147)の誤差ebjの二乗誤差の総和Eは、次式で表すことができる。
【1320】
【数150】
Figure 2005018534
・・・(150)
【1321】
二乗誤差の総和Eを最小にするQを求めるためには、式(150)の二乗誤差の総和Eを、Qをコンポーネントとする列ベクトルxで偏微分した値が0となればよいことから、次式が導かれる。
【1322】
【数151】
Figure 2005018534
・・・(151)
【1323】
式(151)から、求める列ベクトルx(画素値Qをコンポーネントとする列ベクトルx)は、式(152)で表すことができる。
【1324】
【数152】
Figure 2005018534
・・・(152)
【1325】
なお、式(152)において、上付きのTは転置を表し、上付きの−1は、逆行列を表す。
【1326】
式(152)に混合画素値Pをコンポーネントとする列ベクトルyを代入して演算することにより、動きボケを除去した(動きボケがない)画素値Qを推定することができる。
【1327】
図128は、処理領域15042を再度、表した図である。
【1328】
式(152)により求めることができる列ベクトルx(=画素値Q)は、図128で示される処理領域15042のy=yの1ラインについての列ベクトルx(=画素値Q)なので、処理領域15042の全ての画素について、動きボケがない画素値を推定するためには、式(152)の演算をライン数と同じk(=4)回繰り返す必要がある。
【1329】
即ち、上述の説明における、y=yのラインのように、動きボケがない画素値Qを求める処理を行う1ラインを、注目ラインと呼ぶことにすると、実世界推定部15013は、それぞれのライン全てを、順次、注目ラインとして設定し、注目ラインの近似関数f(x)である、画素値Q乃至Qを推定する処理を行うことにより、入力画像の処理領域15042について、動きボケがない画像を推定する。
【1330】
図129は、図113の実世界推定部15013の内部の構成例である。
【1331】
実世界推定部15013は、モデル生成部15021、方程式生成部15022、および実世界波形推定部15023で構成されている。さらに、方程式生成部15022は、拘束条件設定部15061と正規方程式生成部15062とで構成されている。
【1332】
モデル生成部15021には、定常性設定部15012から定常性情報としての動き量vが供給される。この例での動き量vは、入力画像のうちの処理領域設定部15011で設定された処理領域において、物体がシャッタ時間あたりv画素だけ水平方向に移動していることを表しており、例えば、上述の例と同様にv=4とする。また、動き量vは、ライン毎に異なる値でもよく、動き量vがライン毎に異なる場合には、ライン数に等しいk個の動き量vが、定常性情報として、定常性設定部15012からモデル生成部15021に供給される。
【1333】
また、モデル生成部15021には、処理領域設定部15011から入力画像のなかの処理領域を特定する処理領域情報も供給される。処理領域として矩形の形状の領域を採用する場合には、処理領域情報は、例えば、入力画像の所定の位置(画素)を原点とする絶対座標系に対する、矩形の処理領域の対角の座標値や、処理領域の中心座標と処理領域の幅(水平方向)と高さ(垂直方向)などで表すことができる。
【1334】
モデル生成部15021は、処理領域設定部15011から供給された処理領域情報から、例えば、図119に示したような、処理領域幅lとライン数kを取得する。この例では、処理領域15042は、矩形とされ、例えば、l=10,k=4とするものとする。この場合、各ラインの処理領域幅(画素数)は、同じとされているが、処理領域15042は、各ラインで異なる処理領域幅となるようにすることもできる。処理領域幅lがライン毎に異なる場合には、モデル生成部15021は、ライン数と同じ個数(k個)の処理領域幅lを取得する。
【1335】
そして、モデル生成部15021は、定常性設定部15012から供給された動き量vと、処理領域情報から取得した処理領域幅lとライン数kに基づいて、上述の式(141)で示した混合画素値Pの方程式(モデル方程式)を生成し、正規方程式生成部15062に供給する。
【1336】
拘束条件設定部15061には、ユーザが、ユーザI/F15016を操作することにより指定した拘束条件情報がユーザI/F15016から供給される。例えば、ユーザは、拘束条件設定部15061の内部に予め設定されている、上述した式(143)や式(144)などの、動きボケのない画像の各画素の画素値Qの関係を拘束する拘束条件の中から、所望の拘束条件を選択(指定)する操作をユーザI/F15016により行い、ユーザI/F15016が、その選択された拘束条件を示す情報を拘束条件情報として、拘束条件設定部15061に供給する。
【1337】
拘束条件設定部15061は、自身の内部に有する拘束条件式のなかから、ユーザI/F15016から供給された拘束条件情報に対応する拘束条件式を選択する。さらに、拘束条件設定部15061は、処理領域設定部15011から方程式生成部15022に供給される入力画像の処理領域情報に基づいて処理領域幅lを取得し、拘束条件式を処理領域幅lに対応する数だけ生成する。例えば、拘束条件情報として、「隣接画素差分=0」という条件である式(143)が採用される場合には、拘束条件設定部15061は、処理領域設定部15011から供給された処理領域情報に基づいて処理領域幅lを取得することにより、上述した式(145)で示した拘束条件式を生成し、正規方程式生成部15062に供給する。なお、図119で示した処理領域15042の例では、処理領域15042が矩形であり、各ラインの処理領域幅lは同じとされているが、ライン毎に処理領域幅lが異なる場合には、拘束条件の式の数もライン毎に異なることとなる。
【1338】
正規方程式生成部15062には、モデル生成部15021からライン数と同じk個の混合画素値Pの方程式(式(141))と、拘束条件設定部15061からユーザがユーザI/F15016を操作することにより選択した拘束条件に対応する拘束条件の方程式(式(145))とが供給される。
【1339】
初めに、正規方程式生成部15062は、図128に示されるように、処理領域15042のなかから、所定の1つのラインを注目ラインとして選択する。そして、正規方程式生成部15062は、選択した注目ラインに対応する、モデル生成部15021から供給された式(141)で示される混合画素値Pの方程式と、拘束条件設定部15061から供給された式(145)で示される拘束条件の方程式とから、式(148)(式(149))で示される正規方程式を生成する。
【1340】
さらに、正規方程式生成部15062は、式(152)の右辺の列ベクトルyの係数である、行列(AA)−1を演算し、センサ2(図1)から供給された入力画像に基づいて取得した混合画素値Pを、列ベクトルyに代入する。行列(AA)−1が演算され、さらに混合画素値Pが代入された式(152)が、正規方程式生成部15062から実世界波形推定部15023に供給される。
【1341】
正規方程式生成部15062は、選択している注目ラインに対して、上述した、正規方程式の生成、行列(AA)−1の演算、および、混合画素値Pの代入等の処理を終了すると、まだ選択されていないラインを次の注目ラインとして選択し、その選択された次の注目ラインに対して同様の処理を行う。
【1342】
実世界波形推定部15023は、正規方程式生成部15062から供給された式(152)を演算することにより、列ベクトルx、即ち、動きボケがない画素値Q(近似関数)を求め、画像生成部15014(図113)に供給する。
【1343】
画像生成部15014は、処理領域設定部15011から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域15042の部分を、実世界波形推定部15023から供給された、動きボケがない画素値Qの画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15015に供給する。
【1344】
次に、図130のフローチャートを参照して、図114のステップS15008における実世界推定部15013の実世界推定処理について詳述する。
【1345】
初めに、ステップS15031では、モデル生成部15021は、処理領域設定部15011から供給される処理領域情報に基づいて、処理領域幅lとライン数kを取得して、ステップS15032に進む。
【1346】
ステップS15032では、モデル生成部15021は、処理領域15042のライン数に等しいk個の動き量vを、定常性設定部15012から取得して、ステップS15033に進む。
【1347】
ステップS15033では、モデル生成部15021は、ライン毎に混合画素値Pの方程式を生成して、ステップS15034に進む。即ち、モデル生成部15021は、k個のモデル方程式(式(141))を生成する。
【1348】
ステップS15034では、拘束条件設定部15061は、自身の内部に有する拘束条件式のなかから、ユーザI/F15016から供給された拘束条件情報に対応する拘束条件式を選択する。また、拘束条件設定部15061は、処理領域設定部15011から方程式生成部15022に供給される、入力画像の処理領域情報から、処理領域幅lを取得し、処理領域幅lに対応する方程式の数で構成される、ユーザI/F15016からの拘束条件情報に対応する拘束条件の方程式(式(145))を生成し、ステップS15035に進む。
【1349】
ステップS15035では、正規方程式生成部15062は、処理領域15042のなかから、所定の1つのラインを注目ラインとして選択して、ステップS15036に進む。
【1350】
ステップS15036では、正規方程式生成部15062は、モデル生成部15021から供給された式(141)で示される混合画素値Pの方程式(モデル方程式)と、拘束条件設定部15061から供給された式(145)で示される拘束条件の方程式(拘束条件式)とから、式(148)(式(149))で示される正規方程式を生成して、ステップS15037に進む。
【1351】
ステップS15037では、正規方程式生成部15062は、式(152)の右辺の列ベクトルyの係数である、行列(AA)−1を演算し、ステップS15038に進む。
【1352】
ステップS15038では、正規方程式生成部15062は、センサ2(図1)から供給された入力画像に基づいて取得した混合画素値Pを、列ベクトルyに代入して、ステップS15039に進む。
【1353】
ステップS15039では、実世界波形推定部15023は、正規方程式を演算する。即ち、実世界波形推定部15023は、正規方程式生成部15062から供給された、式(152)を演算することにより、動きボケがない画素値Qを求めて、ステップS15040に進む。
【1354】
ステップS15040では、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われたか否かが判定される。処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われていないと判定された場合、処理はステップS15035に戻り、ステップS15035乃至S15040の処理が繰り返される。即ち、まだ選択されていない処理領域15042のうちの1ラインが注目ラインとして選択され、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われる。
【1355】
一方、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われたと判定された場合、実世界推定処理を終了してリターンする。
【1356】
以上のように、処理領域15042の注目ラインとした1ラインに対して、正規方程式(式(148))を生成し、動きボケがない画素値Qを求める処理を、処理領域15042のライン数であるk回繰り返すことにより、処理領域15042の全域に亘る動きボケがない画素値Qを求めることができる。
【1357】
ここで、処理領域15042の各ラインの動き量vと処理領域幅lが、それぞれ同じ場合には、式(148)の行列Aは、各ラインで同じものとなる。従って、式(152)の行列(AA)−1も各ラインで同じものとなり、ライン毎に行列(AA)−1を演算する処理を省略することができる。
【1358】
そこで、図131のフローチャートを参照して、処理領域15042の各ラインの動き量vと処理領域幅lが、それぞれ同じ場合の、図114のステップS15008における実世界推定部15013の実世界推定処理について説明する。なお、図131において、図130のフローチャートと同様の部分については、その説明を適宜省略する。
【1359】
図131においては、図130のステップS15035に対応するステップS15057の処理が、ステップS15054とS15055の間ではなくて、ステップS15056とS15058の間に配置されている。さらに、ステップS15060で、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われていないと判定された場合、ステップS15057に戻る処理とされている。
【1360】
即ち、処理領域15042の各ラインの動き量vと処理領域幅lが、それぞれ同じ場合、ステップS15055で生成される正規方程式は、各ラインで同じものとなるため、最初の注目ラインに対して、ステップS15056で、行列(AA)−1を演算した後、その後の注目ラインに対しては、行列(AA)−1の演算(ステップS15056の処理)を行う必要がない。従って、注目ラインの選択(ステップS15057)、混合画素値Pの代入(ステップS15058の処理)、正規方程式の演算(ステップS15059の処理)を、順次、まだ選択されていない処理領域15042のラインに対して実行するだけでよい。
【1361】
以上のように、図113に示される実施の形態においては、動きボケが発生している画素値を、動きボケのない画素値でモデル化した混合画素値Pの方程式(モデル方程式)と、動きボケのない画素値の隣接する画素間の関係を用いた拘束条件式とから、正規方程式を生成し、その正規方程式を演算することにより、動きボケがない画素値(近似関数)を求めるので、画質の良い画像を生成することができる。
【1362】
図132乃至図134は、図113の信号処理装置4による処理結果を説明する図である。
【1363】
図132は、図113の信号処理装置4に入力される入力画像を示している。図132の入力画像においては、「TAL」の文字が左から右方向に等速で移動しており、水平方向に動きボケが発生している。
【1364】
図133は、図132の入力画像から、上述した第1の方法、即ち、モデル方程式に、処理領域の端部を「平坦である」と仮定した式を付加して正規方程式を生成し、その正規方程式を演算することにより生成された画像である。図132と、図133とを比較して明らかなように、図133の画像では、図132の入力画像に生じている動きボケが低減され、「TAL」の文字が比較的はっきりと表示されている。
【1365】
一方、図134は、図132の入力画像から、上述した第2の方法、即ち、モデル方程式に、隣接する画素値の関係を拘束する条件式を付加して正規方程式を生成し、その正規方程式を演算することにより生成された画像である。図134の画像においても、図132の入力画像に生じている動きボケが低減され、「TAL」の文字がはっきりと表示されている。
【1366】
なお、図132乃至図134の実施の形態では、第2の方法による図134の画像は、第1の方法による図133の画像よりもノイズが少ない、動きボケのない画像になっている。
【1367】
上述の例では、ユーザI/F15016から拘束条件設定部15061に供給される拘束条件情報は、拘束条件設定部15061の内部に予め設定されている、いくつかの拘束条件のなかから、ユーザがどの拘束条件を選択(指定)したかを表す情報としたが、ユーザがユーザI/F15016を操作することにより、拘束条件式を直接入力するようにしてもよい。
【1368】
図113に示した信号処理装置4の実施の形態においては、式(150)で表される二乗誤差の総和Eの全体が最小となるような、即ち、混合画素値Pの方程式で発生する誤差と、拘束条件の方程式で発生する誤差との全体が最小となるような、動きボケのない画像が生成される。これに対して、例えば、式(146)の混合画素値Pの方程式で発生する誤差emiと、式(147)の拘束条件の方程式で発生する誤差ebjのうち、どちらか一方の誤差の方をできるだけ小さくする、というように、モデル方程式と拘束条件式のバランス(重み)を調整して、動きボケのない画像を生成するようにすることもできる。
【1369】
図135は、そのような、混合画素値Pの方程式(モデル方程式)と、拘束条件の方程式(拘束条件式)との重みを調整して、動きボケのない画像を生成する信号処理装置4の実施の形態の構成例を示している。
【1370】
即ち、図135は、図111に示した信号処理装置4の応用例のその他の一実施の形態の構成例を示している。
【1371】
図135の信号処理装置4には、センサ2からデータ3として、例えば、1フレームまたは1フィールドの画像が入力される。なお、ここでは、入力画像に画像の水平方向(横方向)にシャッタ時間(露光時間)あたりv画素の一定速度で移動している所定の形状を有する物体(オブジェクト)が表示されているものとする。即ち、入力画像は、物体が水平方向にv画素の動き量で動いているために、センサ2の時間積分効果によって、そのオブジェクトの光信号と、そのオブジェクト以外の部分の光信号とが混合(時間混合)し、これにより、オブジェクトの境界部分などにおいて、ボケた画像となっている。図135の信号処理装置4では、このような時間混合によって生じた動きボケを入力画像から除去した高画質の出力画像が生成される。
【1372】
図135において、処理領域設定部15081、定常性設定部15082、実世界推定部15083、画像生成部15084、画像表示部15085、ユーザI/F15086は、図111の処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、ユーザI/F10006にそれぞれ対応しており、基本的には、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、ユーザI/F10006それぞれと同様の処理を行う。さらに、図135において、実世界推定部15083は、モデル生成部15091、方程式生成部15092、実世界波形推定部15093で構成されている。モデル生成部15091、方程式生成部15092、実世界波形推定部15093は、図111のモデル生成部10011、方程式生成部10012、実世界波形推定部10013にそれぞれ対応しており、基本的には、モデル生成部10011、方程式生成部10012、実世界波形推定部10013それぞれと同様の処理を行う。
【1373】
但し、図135においては、ユーザがユーザI/F15086を操作することにより、ユーザI/F15086が出力する補助情報が、方程式生成部15092に供給されるようになっている。
【1374】
即ち、図135では、ユーザは、ユーザI/F15086を操作することにより、方程式生成部15092において、入力画像に対応する実世界1の画像である、動きボケがない画像の各画素間の関係を拘束する拘束条件を設定することができるようになっており、ユーザI/F15086は、ユーザが拘束条件を設定する操作を行うと、その操作によって設定された拘束条件を表す拘束条件情報を、方程式生成部15092に供給する。
【1375】
具体的には、例えば、画像表示部15085に表示された、物体がボケて映っている画像を見たユーザが、本来の画像、即ち、入力画像に対応する実世界1の画像である、動きボケがない画像を推測する。そして、例えば、ユーザは、ボケが発生している所定の領域をエッジ部分と推測し、エッジ部分の隣り合う画素間の画素値(レベル)の差は大きい、などの各画素間の画素値の関係(拘束条件)を推測する。さらに、ユーザは、その推測した各画素間の画素値の関係に適合する条件を、ユーザI/F15086を操作することにより、方程式生成部15092に設定することができる。
【1376】
また、図135においては、処理領域設定部15081から実世界推定部15083に供給される処理領域情報は、実世界推定部15083のうちのモデル生成部15091と方程式生成部15092に供給されるようになっている。モデル生成部15091と方程式生成部15092は、処理領域設定部15081から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。
【1377】
定常性設定部15082は、入力画像において、物体(オブジェクト)が、画像の水平方向にシャッタ時間あたりv画素の一定速度で移動しているという定常性の情報として、動き量(動きベクトル)vを設定し、その動き量vを定常性情報として実世界推定部15083のモデル生成部15091に供給する。
【1378】
モデル生成部15091は、処理領域設定部15081から供給される処理領域情報から認識される処理領域について、定常性設定部15082から供給された定常性情報としての動き量vを考慮した、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値と、実世界1の信号との関係をモデル化したモデル(以下、適宜、関係モデルと称する)としての方程式(以下、モデル方程式と称する)を生成し、その生成したモデル方程式を方程式生成部15092に供給する。
【1379】
方程式生成部15092は、ユーザI/F15086から供給される拘束条件情報に基づいて、拘束条件の方程式(以下、拘束条件式と称する)を生成する。また、方程式生成部15092は、その拘束条件式に、モデル生成部15091から供給されるモデル方程式とのバランスを調整する重みを設定し、重み付けされた拘束条件式とモデル方程式とからなる方程式に、処理領域を構成する入力画像の各画素の画素値を代入し、これにより、実世界1の信号をモデル化したモデル(以下、適宜、近似モデルと称する)としての近似関数を求める方程式を生成して、実世界波形推定部15093に供給する。
【1380】
実世界波形推定部15093は、方程式生成部15092から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定する。即ち、実世界波形推定部15093は、近似モデルとしての近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部15084に供給する。ここで、実世界1の信号を近似する近似関数には、引数の値にかかわらず、関数値が一定の関数も含まれる。
【1381】
画像生成部15084は、処理領域設定部15081から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域を認識する。また、画像生成部15084は、実世界波形推定部15093から供給された近似関数から、実世界1の信号により近似した信号、即ち、動きボケがない画像を生成し、入力画像の処理領域の画像を動きボケがない画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15085に供給する。
【1382】
次に、図136のフローチャートを参照して、図135の信号処理装置4の処理について説明する。
【1383】
最初に、ステップS15081において、信号処理装置4は、前処理を行い、ステップS15082に進む。即ち、信号処理装置4は、センサ2(図1)からデータ3として供給される、例えば1フレームまたは1フィールドの入力画像を、処理領域設定部15081、定常性設定部15082、実世界推定部15083、画像生成部15084、および画像表示部15085に供給する。さらに、信号処理装置4は、画像表示部15085に、入力画像を表示させる。
【1384】
ステップS15082では、ユーザI/F15086は、ユーザがユーザI/F15086を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定する。ステップS15082において、ユーザ入力がなかったと判定された場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS15083乃至S15085をスキップして、ステップS15086に進む。
【1385】
一方、ステップS15082において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部15085に表示された入力画像を見て、ユーザI/F15086を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS15083に進み、ユーザI/F15086は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1386】
ステップS15083において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1387】
一方、ステップS15083において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS15084に進み、ユーザI/F15086は、ユーザ入力が拘束条件情報であるかどうかを判定する。ステップS15084において、ユーザ入力が拘束条件情報でないと判定された場合、ステップS15085をスキップして、ステップS15086に進む。
【1388】
また、ステップS15084において、ユーザ入力が拘束条件情報であると判定された場合、ステップS15085に進み、ユーザI/F15086は、その拘束条件情報を、方程式生成部15092に供給し、ステップS15086に進む。
【1389】
ステップS15086では、処理領域設定部15081は、入力画像について、処理領域を設定し、その処理領域を特定する処理領域情報を、定常性設定部15082、実世界推定部15083のモデル生成部15091および方程式生成部15092、並びに画像生成部15084に供給し、ステップS15087に進む。ここで、ステップS15086における処理領域の設定は、ユーザがユーザI/F15086を操作することにより処理領域指示情報を入力し、その処理領域指示情報に基づいて行うことも可能であるし、ユーザからの処理領域指示情報なしで行うことも可能である。
【1390】
ステップS15087では、定常性設定部15082は、処理領域設定部15081から供給された処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。さらに、定常性設定部15082は、その処理領域の画像データにおいて定常性の一部が欠落した実世界1の信号の定常性を設定し、その定常性を表す定常性情報を、実世界推定部15083のモデル生成部15091に供給して、ステップS15088に進む。ここで、定常性設定部15082は、シャッタ時間(露光時間)あたりv画素の一定速度で水平方向に移動していることを表す動き量vを定常性情報として設定し、実世界推定部15083のモデル生成部15091に供給するものとする。なお、ここでは、定常性設定部15082は、入力画像において、オブジェクトが水平方向に移動していることを前提として、その動きの大きさだけを表す動き量を定常性情報として設定するようにしたが、その他、オブジェクトの動きの大きさと方向を表す動きベクトルを、定常性情報として設定することも可能である。ステップS15087における定常性の設定は、ユーザがユーザI/F15086を操作することにより定常性指示情報を入力し、その定常性指示情報に基づいて行うことも可能であるし、ユーザからの定常性指示情報なしで行うことも可能である。
【1391】
ステップS15088では、実世界推定部15083は、実世界推定処理を行う。即ち、実世界推定部15083では、モデル生成部15091が、ステップS15087において定常性設定部15082から供給された動き量vと、ステップS15086において処理領域設定部15081から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値と、実世界1の信号との関係をモデル化したモデル(関係モデル)としての方程式(モデル方程式)を生成し、その生成したモデル方程式を方程式生成部15092に供給する。
【1392】
方程式生成部15092は、ステップS15085においてユーザI/F15086から供給される拘束条件情報に基づいて拘束条件式を生成し、生成した拘束条件式に、モデル方程式とのバランスを調整する重みを設定する。そして、方程式生成部15092は、重み付けされた拘束条件式と、モデル生成部15091から方程式生成部15092に供給されるモデル方程式とから、実世界1の信号をモデル化したモデル(近似モデル)としての近似関数を求める方程式を生成し、その方程式に入力画像の各画素の画素値を代入して、実世界波形推定部15093に供給する。ここで、ユーザが拘束条件情報を指定(設定)しなかった場合、即ち、ステップS15082またはS15084でNOと判定された場合、方程式生成部15092は、例えば、図113の実施の形態において説明した、モデル方程式と処理領域の端部を「平坦である」と仮定した式とから成る連立方程式を解く方法などの、所定の処理が行われる。
【1393】
なお、重みは、拘束条件式だけに設定する他、モデル方程式だけ、または拘束条件式とモデル方程式の両方に設定することが可能である。
【1394】
実世界波形推定部15093は、方程式生成部15092から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定、即ち、実世界1の信号をモデル化したモデルとしての近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部15084に供給する。
【1395】
なお、ステップS15088の実世界推定処理の詳細については、図138を参照して後述する。
【1396】
ステップS15088の処理後は、ステップS15089に進み、画像生成部15084は、実世界波形推定部15093から供給された近似関数から、実世界1の信号により近似した信号、即ち、動きボケがない画像を生成し、処理領域設定部15081から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域の部分を、生成した動きボケがない画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15085に供給して、ステップS15090に進む。
【1397】
ステップS15090では、画像表示部15085は、画像生成部15084から供給された出力画像を、ステップS15081で表示された入力画像に代えて、またはその入力画像とともに表示し、ステップS15091に進む。
【1398】
ステップS15091では、ユーザI/F15086は、ステップS15082における場合と同様に、ユーザがユーザI/F15086を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定し、ユーザ入力がなかったと判定した場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS15091に戻り、何らかのユーザ入力があるまで待つ。
【1399】
また、ステップS15091において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部15085に表示された入力画像や出力画像を見て、ユーザI/F15086を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS15092に進み、ユーザI/F15086は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1400】
ステップS15092において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1401】
一方、ステップS15092において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS15093に進み、ユーザI/F15086は、ユーザ入力が拘束条件情報であるかどうかを判定する。ステップS15093において、ユーザ入力が拘束条件情報でないと判定された場合、ステップS15091に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【1402】
また、ステップS15093において、ユーザ入力が拘束条件情報であると判定された場合、ステップS15085に戻り、上述したように、ユーザI/F15086は、その拘束条件情報を、方程式生成部15092に供給する。そして、ステップS15085からS15086に進み、以下、同様の処理が繰り返される。なお、信号処理装置4が、ステップS15085乃至S15093の処理を繰り返す場合において、上述のステップS15086およびS15087の処理は、1回目のS15086およびS15087の処理で設定されるものと同一であり、1回目の処理と同じ処理を繰り返しても良いし、スキップするようにしても良い。
【1403】
以上のように、図135の信号処理装置4では、実世界1の信号をモデル化したモデルとしての近似関数を求めることにより、動きボケがない、高画質の出力画像を生成することができる。
【1404】
また、ユーザは、ユーザI/F15086を操作することにより、本来の動きボケがないときの画像における、各画素間の関係を拘束する拘束条件を設定することができ、新たな拘束条件が入力された場合には、再度、動きボケがない画像を求めることができるので、ユーザの好みにあった、高画質の出力画像を、容易に得ることができる。
【1405】
なお、図135の信号処理装置4では、実世界1の光信号を近似する近似関数を求めることにより、動きボケのない出力画像を生成するが、この出力画像は、入力画像から動きボケが除去されたものであるとみることができる。従って、図135の信号処理装置4では、動きボケ除去の処理が行われるということができる。
【1406】
次に、図137を参照して、図135の実世界推定部15083の内部の構成について説明する。なお、図135の実施の形態においても、入力画像に映っている物体の動きボケ発生のメカニズムを、一例である図125と図126に示される、上述した式(141)の関係として、モデル化するものとする。
【1407】
即ち、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値を、動きボケが生じていない画像の各画素の画素値(に対応する電荷)が、動き量vで移動しながら蓄積(積分)された値であるとして、動きボケ発生のメカニズムをモデル化するものとする。
【1408】
実世界推定部15083は、モデル生成部15091、方程式生成部15092、および実世界波形推定部15093で構成されている。さらに、方程式生成部15092は、拘束条件設定部15101、重み変更部15102、および正規方程式生成部15103とで構成されている。
【1409】
モデル生成部15091には、定常性設定部15082から定常性情報としての動き量vが供給される。この例での動き量vは、入力画像のうちの処理領域設定部15081で設定された処理領域において、物体がシャッタ時間あたりv画素の一定速度で水平方向に移動している定常性を表しており、例えば、上述の例と同様にv=4とする。また、動き量vは、ライン毎に異なる値でもよく、動き量vがライン毎に異なる場合には、ライン数に等しいk個の動き量vが、定常性情報として、定常性設定部15082からモデル生成部15091に供給される。
【1410】
また、モデル生成部15091には、処理領域設定部15081から入力画像のなかの処理領域を特定する処理領域情報も供給される。処理領域として矩形の形状の領域を採用する場合には、処理領域情報は、例えば、入力画像の所定の位置(画素)を原点とする絶対座標系に対する、矩形の処理領域の対角の座標値や、処理領域の中心座標と処理領域の幅(水平方向)と高さ(垂直方向)などで表すことができる。
【1411】
モデル生成部15091は、処理領域設定部15081から供給された処理領域情報から、例えば、図119に示したような、処理領域幅lとライン数kを取得する。この例では、処理領域15042は、矩形とされ、例えば、l=10,k=4とするものとする。この場合、各ラインの処理領域幅(画素数)は、同じとされているが、処理領域15042は、各ラインで異なる処理領域幅となるようにすることもできる。処理領域幅lがライン毎に異なる場合には、モデル生成部15091は、ライン数と同じ個数(k個)の処理領域幅lを取得する
【1412】
そして、モデル生成部15091は、定常性設定部15082から供給された動き量vと、処理領域情報から取得した処理領域幅lとライン数kに基づいて、上述の式(141)で示した混合画素値Pの方程式(モデル方程式)を生成し、正規方程式生成部15103に供給する。
【1413】
拘束条件設定部15101には、ユーザが、ユーザI/F15086を操作することにより指定した拘束条件情報がユーザI/F15086から供給される。例えば、ユーザは、拘束条件設定部15101の内部に予め設定されている、上述した式(143)や式(144)などの、動きボケのない画像の各画素の画素値Qの関係を拘束する拘束条件の中から、所望の拘束条件を選択(指定)する操作をユーザI/F15086により行い、ユーザI/F15086が、その選択された拘束条件を示す情報を拘束条件情報として、拘束条件設定部15101に供給する。
【1414】
拘束条件設定部15101は、自身の内部に有する拘束条件式のなかから、ユーザI/F15086から供給された拘束条件情報に対応する拘束条件式を選択する。さらに、拘束条件設定部15101は、処理領域設定部15081から方程式生成部15092に供給される入力画像の処理領域情報に基づいて処理領域幅lを取得し、拘束条件式を処理領域幅lに対応する数だけ生成する。例えば、拘束条件情報として、「隣接画素差分=0」という条件である式(143)が採用される場合には、拘束条件設定部15101は、処理領域設定部15081から供給された処理領域情報に基づいて処理領域幅lを取得することにより、上述した式(145)で示した拘束条件式を生成し、正規方程式生成部15103に供給する。なお、図119で示した処理領域15042の例では、処理領域15042が矩形であり、各ラインの処理領域幅lは同じとされているが、ライン毎に処理領域幅lが異なる場合には、拘束条件の式の数もライン毎に異なることとなる。
【1415】
重み変更部15102には、モデル方程式に対する重みWと、拘束条件式に対する重みWが予め設定されている。なお、この実施の形態では、拘束条件式に係る重み係数Wを、式(153)により設定し、拘束条件式に係る重みのみを利用して、モデル方程式と拘束条件式とのバランスを調整する。
【1416】
【数153】
Figure 2005018534
・・・(153)
【1417】
重み変更部15102は、正規方程式生成部15103に重み係数Wを供給することにより、正規方程式生成部15103で生成される正規方程式における、モデル方程式と拘束条件式との重みを変更する。
【1418】
正規方程式生成部15103には、モデル生成部15091からライン数と同じk個の混合画素値Pの方程式(式(141))と、拘束条件設定部15101からユーザがユーザI/F15086を操作することにより選択した拘束条件に対応する拘束条件の方程式(式(145))とが供給される。
【1419】
正規方程式生成部15103では、拘束条件設定部15101から供給された拘束条件式(145)に誤差ebjを考慮した式(147)について、重み変更部15102により重み係数Wが設定される(1:1であったモデル方程式と拘束条件に対する重みWが変更される)。
【1420】
即ち、式(147)は、その両辺に重みWを乗じた次の式(154)に変更される。ここで、重み係数Wは、例えば、0.1などの所定の値とされる。この場合、モデル方程式の誤差emiの方を、拘束条件式の誤差ebjよりも、より小さくする画素値Qが求められることになる。
【1421】
【数154】
Figure 2005018534
・・・(154)
【1422】
正規方程式生成部15103は、図128に示されるように、処理領域15042のなかから、所定の1つのラインを注目ラインとして選択する。そして、正規方程式生成部15103は、選択した注目ラインに対応する、モデル生成部15091から供給された式(141)で示される混合画素値Pの方程式(モデル方程式)と、拘束条件設定部15101から供給された式(145)に重み係数Wが付加された式(154)で示される拘束条件の方程式とから、次の式(155)で示される正規方程式を生成する。
【1423】
【数155】
Figure 2005018534
・・・(155)
【1424】
なお、emiは、式(141)のそれぞれの式で発生する誤差であり、ebjは、式(154)のそれぞれの式で発生する誤差である。
【1425】
ここで、式(155)を行列A’、列ベクトルx,y,e’を用いて、式(156)に置き換える。
【1426】
【数156】
Figure 2005018534
・・・(156)
【1427】
この場合、式(146)の誤差emiと式(154)の誤差ebjの二乗誤差の総和E’は、次式で表すことができる。
【1428】
【数157】
Figure 2005018534
・・・(157)
【1429】
二乗誤差の総和E’を最小とするQを求めるためには、列ベクトルx(画素値Qをコンポーネントとする列ベクトルx)は、上述の式(150)および(151)と同様の式から、式(158)で表すことができる。
【1430】
【数158】
Figure 2005018534
・・・(158)
【1431】
なお、式(158)において、上付きのTは転置を表し、上付きの−1は、逆行列を表す。
【1432】
式(157)において、重み係数Wが小さいときには、多少ノイズを許容しても式(141)をより満たすような鮮鋭な画像を求めることができ、一方、重み係数Wが大きいときには、式(141)の成立よりも式(145)を満たすような、平坦でノイズの少ない画像を求めることができる。即ち、重み係数Wの値を調整することにより、「鮮鋭感」と「ノイズ感」のバランスを調整することができる。
【1433】
正規方程式生成部15103は、式(158)の右辺の列ベクトルyの係数である、行列(A’A’)−1A’を演算し、センサ2(図1)から供給された入力画像に基づいて取得した混合画素値Pを、列ベクトルyに代入する。行列(A’A’)−1A’が演算され、混合画素値Pが代入された式(158)が、正規方程式生成部15103から実世界波形推定部15093に供給される。
【1434】
正規方程式生成部15103は、選択している注目ラインに対して、上述した、正規方程式の生成、行列(A’A’)−1A’の演算、および、混合画素値Pの代入等の処理を終了すると、まだ選択されていないラインを次の注目ラインとして選択し、その選択された次の注目ラインに対して同様の処理を行う。
【1435】
実世界波形推定部15093は、正規方程式生成部15103から供給された式(158)を演算することにより、列ベクトルx、即ち、動きボケのない画素値Qを求め、画像生成部15084(図135)に供給する。
【1436】
画像生成部15084は、処理領域設定部15081から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域15042の部分を、実世界波形推定部15093から供給された、動きボケがない画素値Qの画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15085に供給する。
【1437】
次に、図138のフローチャートを参照して、図136のステップS15088における実世界推定部15083の実世界推定処理について詳述する。
【1438】
初めに、ステップS15101では、モデル生成部15091は、処理領域設定部15081から供給される処理領域情報に基づいて、処理領域幅lとライン数kを取得して、ステップS15102に進む。
【1439】
ステップS15102では、モデル生成部15091は、処理領域15042のライン数に等しいk個の動き量vを、定常性設定部15082から取得して、ステップS15103に進む。
【1440】
ステップS15103では、モデル生成部15091は、ライン毎に混合画素値Pの方程式を生成して、ステップS15104に進む。即ち、モデル生成部15091は、k個のモデル方程式(式(141))を生成する。
【1441】
ステップS15104では、拘束条件設定部15101は、自身の内部に有する拘束条件式のなかから、ユーザI/F15086から供給された拘束条件情報に対応する拘束条件式を選択する。また、拘束条件設定部15101は、処理領域設定部15081から方程式生成部15092に供給される、入力画像の処理領域情報から、処理領域幅lを取得し、処理領域幅lに対応する方程式の数で構成される、ユーザI/F15086からの拘束条件情報に対応する拘束条件の方程式(式(145))を生成し、ステップS15105に進む。
【1442】
ステップS15105では、重み変更部15102は、自身の内部に予め設定されている、式(153)で表される重み係数Wを正規方程式生成部15103に供給し、拘束条件式に対する重みを変更して、ステップS15106に進む。即ち、重み変更部15102は、正規方程式生成部15103において、上述の式(154)を生成させる。
【1443】
ステップS15106では、正規方程式生成部15103は、処理領域15042のなかから、所定の1つのラインを注目ラインとして選択して、ステップS15107に進む。
【1444】
ステップS15107では、正規方程式生成部15103は、モデル生成部15091から供給された式(141)で示される混合画素値Pの方程式にそれぞれの式の誤差emiを考慮した式(146)と、拘束条件設定部15101から供給された式(145)にそれぞれの式の誤差ebjを考慮した式(147)に、ステップS15105で重み変更部15102により重みが変更された拘束条件の方程式(154)とから、式(155)(式(156))で示される正規方程式を生成して、ステップS15108に進む。
【1445】
ステップS15108では、正規方程式生成部15103は、式(158)の右辺の列ベクトルyの係数である、行列(A’A’)−1A’を演算し、ステップS15109に進む。
【1446】
ステップS15109では、正規方程式生成部15103は、センサ2(図1)から供給された入力画像に基づいて取得した混合画素値Pを、列ベクトルyに代入して、ステップS15110に進む。
【1447】
ステップS15110では、実世界波形推定部15093は、正規方程式を演算する。即ち、実世界波形推定部15093は、正規方程式生成部15103から供給された、式(158)を演算することにより、動きボケがない画素値Qを求めて、ステップS15111に進む。
【1448】
ステップS15111では、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われたか否かが判定される。処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われていないと判定された場合、処理はステップS15106に戻り、ステップS15106乃至S15111の処理が繰り返される。即ち、まだ選択されていない処理領域15042のうちの1ラインが注目ラインとして選択され、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われる。
【1449】
一方、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われたと判定された場合、実世界推定処理を終了してリターンする。
【1450】
以上のように、処理領域15042の注目ラインとした1ラインに対して、正規方程式(式(155))を生成し、動きボケがない画素値Qを求める処理を、処理領域の15042のライン数であるk回繰り返すことにより、処理領域15042の全域に亘る動きボケがない画素値Qを求めることができる。
【1451】
ここで、処理領域15042の各ラインの動き量vと処理領域幅lが、それぞれ同じ場合には、式(155)の行列Aは、各ラインで同じものとなる。従って、式(158)の行列(A’A’)−1A’も各ラインで同じものとなり、ライン毎に行列(A’A’)−1A’を演算する処理を省略することができる。
【1452】
そこで、図139のフローチャートを参照して、処理領域15042の各ラインの動き量vと処理領域幅lが、それぞれ同じ場合の、図136のステップS15088における実世界推定部15083の実世界推定処理について説明する。なお、図139において、図138のフローチャートと同様の部分については、その説明を適宜省略する。
【1453】
図139においては、図138のステップS15106に対応するステップS15138の処理が、ステップS15135とS15136の間ではなくて、ステップS15137とS15139の間に配置されている。さらに、ステップS15141で、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われていないと判定された場合、ステップS15138に戻る処理とされている。
【1454】
即ち、処理領域15042の各ラインの動き量vと処理領域幅lが、それぞれ同じ場合、ステップS15136で生成される正規方程式は、各ラインで同じものとなるため、最初の注目ラインに対して、ステップS15137で、行列(A’A’)−1A’を演算した後、その後の注目ラインに対しては、行列(A’A’)−1A’の演算(ステップS15137の処理)を行う必要がない。従って、注目ラインの選択(ステップS15138)、混合画素値Pの代入(ステップS15139の処理)、正規方程式の演算(ステップS15140の処理)を、順次、まだ選択されていない処理領域15042のラインに対して実行するだけでよい。
【1455】
以上のように、図135に示される実施の形態においては、動きボケが発生している画素値を動きボケのない画素値でモデル化した混合画素値Pの方程式(モデル方程式)と、動きボケのない画素値の隣接する画素間の関係を用いた拘束条件式とから、正規方程式を生成し、その正規方程式を演算することにより、動きボケがない画素値(近似関数)を求めるので、画質の良い画像を生成することができる。
【1456】
また、混合画素値Pの方程式と、拘束条件の方程式とのバランス(重み)を調整することができるので、「鮮鋭感」と「ノイズ感」のバランスを考慮したユーザの好みの画質の、動きボケのない画像を生成することができる。
【1457】
上述の例では、ユーザI/F15086から拘束条件設定部15101に供給される拘束条件情報は、拘束条件設定部15101の内部に予め設定されている、いくつかの拘束条件のなかから、ユーザがどの拘束条件を選択(指定)したかを表す情報としたが、ユーザがユーザI/F15086を操作することにより、拘束条件式を直接入力するようにしてもよい。
【1458】
図135の信号処理装置4の実施の形態においては、混合画素値Pの方程式と、拘束条件の方程式との重み(バランス)を調整する、拘束条件の方程式に係る重み係数Wが、予め設定された所定の値(上述の場合には、0.1)とされていた。
【1459】
しかしながら、拘束条件の方程式に係る重み係数Wを、所定の値(一定値)とすることは、拘束条件が成立していない個所(画素間の関係)に対しても、拘束条件が成立している個所と同様に、拘束条件を適用することになり、処理画像を劣化させてしまうことがあり得る。
【1460】
そこで、次に、信号処理装置4が、拘束条件の方程式等に係る重みを、入力画像のアクティビティ(特徴量)に対応して決定するようにすることができるようにした実施の形態について説明する。
【1461】
図140は、図111に示した信号処理装置4の応用例のその他の一実施の形態の構成例を示している。
【1462】
図140の信号処理装置4には、センサ2からデータ3として、例えば、1フレームまたは1フィールドの画像が入力される。なお、ここでは、入力画像に画像の水平方向(横方向)にシャッタ時間(露光時間)あたりv画素の一定速度で移動している所定の形状を有する物体(オブジェクト)が表示されているものとする。即ち、入力画像は、物体が水平方向にv画素の動き量で動いているために、センサ2の時間積分効果によって、そのオブジェクトの光信号と、そのオブジェクト以外の部分の光信号とが混合(時間混合)し、これにより、オブジェクトの境界部分などにおいて、ボケた画像となっている。図140の信号処理装置4では、このような時間混合によって生じた動きボケを入力画像から除去した高画質の出力画像が生成される。
【1463】
図140において、処理領域設定部15111、定常性設定部15112、実世界推定部15113、画像生成部15114、画像表示部15115、ユーザI/F15116は、図111の処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、ユーザI/F10006にそれぞれ対応しており、基本的には、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、ユーザI/F10006それぞれと同様の処理を行う。さらに、図140において、実世界推定部15113は、モデル生成部15121、方程式生成部15122、実世界波形推定部15123で構成されている。モデル生成部15121、方程式生成部15122、実世界波形推定部15123は、図111のモデル生成部10011、方程式生成部10012、実世界波形推定部10013にそれぞれ対応しており、基本的には、モデル生成部10011、方程式生成部10012、実世界波形推定部10013それぞれと同様の処理を行う。
【1464】
但し、図140においては、ユーザがユーザI/F15116を操作することにより、ユーザI/F15116が出力する補助情報が、方程式生成部15122に供給されるようになっている。
【1465】
即ち、図140では、ユーザは、ユーザI/F15116を操作することにより、方程式生成部15122において、入力画像に対応する実世界1の画像である、動きボケがない画像の各画素間の関係を拘束する拘束条件を設定することができるようになっており、ユーザI/F15116は、ユーザが拘束条件を設定する操作を行うと、その操作によって設定された拘束条件を表す拘束条件情報を、方程式生成部15122に供給する。
【1466】
具体的には、例えば、画像表示部15115に表示された、物体がボケて映っている画像を見たユーザが、本来の画像、即ち、入力画像に対応する実世界1の画像である、動きボケがない画像を推測する。そして、例えば、ユーザは、ボケが発生している所定の領域をエッジ部分と推測し、エッジ部分の隣り合う画素間の画素値(レベル)の差は大きい、などの各画素間の画素値の関係(拘束条件)を推測する。さらに、ユーザは、その推測した各画素間の画素値の関係に適合する条件を、ユーザI/F15116を操作することにより、方程式生成部15122に設定することができる。
【1467】
また、図140においては、処理領域設定部15111から実世界推定部15113に供給される処理領域情報は、実世界推定部15113のうちのモデル生成部15121と方程式生成部15122に供給されるようになっている。モデル生成部15121と方程式生成部15122は、処理領域設定部15111から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。
【1468】
定常性設定部15112は、入力画像において、物体(オブジェクト)が、画像の水平方向にシャッタ時間あたりv画素の一定速度で移動しているという定常性の情報として、動き量(動きベクトル)vを設定し、その動き量vを定常性情報として実世界推定部15113のモデル生成部15121に供給する。
【1469】
モデル生成部15121は、処理領域設定部15111から供給される処理領域情報から認識される処理領域について、定常性設定部15112から供給された定常性情報としての動き量vを考慮した、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値と、実世界1の信号との関係をモデル化したモデル(以下、適宜、関係モデルと称する)としての方程式(以下、モデル方程式と称する)を生成し、その生成したモデル方程式を方程式生成部15122に供給する。
【1470】
方程式生成部15122は、ユーザI/F15116から供給される拘束条件情報に基づいて、拘束条件の方程式(以下、拘束条件式と称する)を生成する。また、方程式生成部15122は、その拘束条件式と、モデル生成部15121から供給されるモデル方程式とに、入力画像のアクティビティから決定される重みを設定し、重み付けされた拘束条件式とモデル方程式とから成る方程式に、処理領域を構成する入力画像の各画素の画素値を代入し、これにより、実世界1の信号をモデル化したモデル(以下、適宜、近似モデルと称する)としての近似関数を求める方程式を生成して、実世界波形推定部15123に供給する。
【1471】
実世界波形推定部15123は、方程式生成部15122から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定する。即ち、実世界波形推定部15123は、近似モデルとしての近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部15114に供給する。ここで、実世界1の信号を近似する近似関数には、引数の値にかかわらず、関数値が一定の関数も含まれる。
【1472】
画像生成部15114は、処理領域設定部15111から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域を認識する。また、画像生成部15114は、実世界波形推定部15123から供給された近似関数から、実世界1の信号により近似した信号、即ち、動きボケがない画像を生成し、入力画像の処理領域の画像を動きボケがない画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15115に供給する。
【1473】
次に、図141のフローチャートを参照して、図140の信号処理装置4の処理について説明する。
【1474】
最初に、ステップS15161において、信号処理装置4は、前処理を行い、ステップS15162に進む。即ち、信号処理装置4は、センサ2(図1)からデータ3として供給される、例えば1フレームまたは1フィールドの入力画像を、処理領域設定部15111、定常性設定部15112、実世界推定部15113、画像生成部15114、および画像表示部15115に供給する。さらに、信号処理装置4は、画像表示部15115に、入力画像を表示させる。
【1475】
ステップS15162では、ユーザI/F15116は、ユーザがユーザI/F15116を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定する。ステップS15162において、ユーザ入力がなかったと判定された場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS15163乃至S15165をスキップして、ステップS15166に進む。
【1476】
一方、ステップS15162において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部15115に表示された入力画像を見て、ユーザI/F15116を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS15163に進み、ユーザI/F15116は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1477】
ステップS15163において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1478】
一方、ステップS15163において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS15164に進み、ユーザI/F15116は、ユーザ入力が拘束条件情報であるかどうかを判定する。ステップS15164において、ユーザ入力が拘束条件情報でないと判定された場合、ステップS15165をスキップして、ステップS15166に進む。
【1479】
また、ステップS15164において、ユーザ入力が拘束条件情報であると判定された場合、ステップS15165に進み、ユーザI/F15116は、その拘束条件情報を、方程式生成部15122に供給し、ステップS15166に進む。
【1480】
ステップS15166では、処理領域設定部15111は、入力画像について、処理領域を設定し、その処理領域を特定する処理領域情報を、定常性設定部15112、実世界推定部15113のモデル生成部15121および方程式生成部15122、並びに画像生成部15114に供給し、ステップS15167に進む。ここで、ステップS15166における処理領域の設定は、ユーザがユーザI/F15116を操作することにより処理領域指示情報を入力し、その処理領域指示情報に基づいて行うことも可能であるし、ユーザからの処理領域指示情報なしで行うことも可能である。
【1481】
ステップS15167では、定常性設定部15112は、処理領域設定部15111から供給された処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。さらに、定常性設定部15112は、その処理領域の画像データにおいて定常性の一部が欠落した実世界1の信号の定常性を設定し、その定常性を表す定常性情報を、実世界推定部15113のモデル生成部15121に供給して、ステップS15168に進む。ここで、定常性設定部15112は、シャッタ時間(露光時間)あたりv画素の一定速度で水平方向に移動していることを表す動き量vを定常性情報として設定し、実世界推定部15113のモデル生成部15121に供給するものとする。なお、ここでは、定常性設定部15112は、入力画像において、オブジェクトが水平方向に移動していることを前提として、その動きの大きさだけを表す動き量を定常性情報として設定するようにしたが、その他、オブジェクトの動きの大きさと方向を表す動きベクトルを、定常性情報として設定することも可能である。ステップS15167における定常性の設定は、ユーザがユーザI/F15116を操作することにより定常性指示情報を入力し、その定常性指示情報に基づいて行うことも可能であるし、ユーザからの定常性指示情報なしで行うことも可能である。
【1482】
ステップS15168では、実世界推定部15113は、実世界推定処理を行う。即ち、実世界推定部15113では、モデル生成部15121が、ステップS15167において定常性設定部15112から供給された動き量vと、ステップS15166において処理領域設定部15111から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値と、実世界1の信号との関係をモデル化したモデル(関係モデル)としての方程式(モデル方程式)を生成し、その生成したモデル方程式を方程式生成部15122に供給する。
【1483】
方程式生成部15122は、ステップS15165においてユーザI/F15116から供給される拘束条件情報に基づいて、拘束条件式を生成し、生成された拘束条件式と、モデル生成部15121から方程式生成部15122に供給されるモデル方程式とに、入力画像のアクティビティから決定される重みを設定する。そして、方程式生成部15122は、重み付けされた拘束条件式とモデル方程式とから成る方程式に、処理領域を構成する入力画像の各画素の画素値を代入し、これにより、実世界1の信号をモデル化したモデル(近似モデル)としての近似関数を求める方程式を生成して、実世界波形推定部15123に供給する。ここで、ユーザが拘束条件情報を指定(設定)しなかった場合、即ち、ステップS15162またはS15164でNOと判定された場合、方程式生成部15122は、例えば、図113の実施の形態において説明した、モデル方程式と処理領域の端部を「平坦である」と仮定した式とから成る連立方程式を解く方法などの、所定の処理が行われる。
【1484】
実世界波形推定部15123は、方程式生成部15122から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定、即ち、実世界1の信号をモデル化したモデルとしての近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部15114に供給する。
【1485】
なお、ステップS15168の実世界推定処理の詳細については、図143を参照して後述する。
【1486】
ステップS15168の処理後は、ステップS15169に進み、画像生成部15114は、実世界波形推定部15123から供給された近似関数から、実世界1の信号により近似した信号、即ち、動きボケがない画像を生成し、処理領域設定部15111から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域の部分を、生成した動きボケがない画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15115に供給して、ステップS15170に進む。
【1487】
ステップS15170では、画像表示部15115は、画像生成部15114から供給された出力画像を、ステップS15161で表示された入力画像に代えて、またはその入力画像とともに表示し、ステップS15171に進む。
【1488】
ステップS15171では、ユーザI/F15116は、ステップS15162における場合と同様に、ユーザがユーザI/F15116を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定し、ユーザ入力がなかったと判定した場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS15171に戻り、何らかのユーザ入力があるまで待つ。
【1489】
また、ステップS15171において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部15115に表示された入力画像や出力画像を見て、ユーザI/F15116を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS15172に進み、ユーザI/F15116は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1490】
ステップS15172において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1491】
一方、ステップS15172において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS15173に進み、ユーザI/F15116は、ユーザ入力が拘束条件情報であるかどうかを判定する。ステップS15173において、ユーザ入力が拘束条件情報でないと判定された場合、ステップS15171に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【1492】
また、ステップS15173において、ユーザ入力が拘束条件情報であると判定された場合、ステップS15165に戻り、上述したように、ユーザI/F15116は、その拘束条件情報を、方程式生成部15122に供給する。そして、ステップS15165からS15166に進み、以下、同様の処理が繰り返される。なお、信号処理装置4が、ステップS15165乃至S15173の処理を繰り返す場合において、上述のステップS15166およびS15167の処理は、1回目のS15166およびS15167の処理で設定されるものと同一であり、1回目の処理と同じ処理を繰り返しても良いし、スキップするようにしても良い。
【1493】
以上のように、図140の信号処理装置4では、実世界1の信号をモデル化したモデルとしての近似関数を求めることにより、動きボケがない、高画質の出力画像を生成することができる。
【1494】
また、ユーザは、ユーザI/F15116を操作することにより、本来の動きボケがないときの画像における、各画素間の関係を拘束する拘束条件を設定することができ、新たな拘束条件が入力された場合には、再度、動きボケがない画像を求めることができるので、ユーザの好みにあった、高画質の出力画像を、容易に得ることができる。
【1495】
なお、図140の信号処理装置4では、実世界1の光信号を近似する近似関数を求めることにより、動きボケのない出力画像を生成するが、この出力画像は、入力画像から動きボケが除去されたものであるとみることができる。従って、図140の信号処理装置4では、動きボケ除去の処理が行われるということができる。
【1496】
次に、図142を参照して、図140の実世界推定部15113の内部の構成について説明する。なお、図140の実施の形態においても、入力画像に映っている物体の動きボケ発生のメカニズムを、一例である図125と図126に示される、上述した式(141)の関係として、モデル化するものとする。
【1497】
即ち、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値を、動きボケが生じていない画像の各画素の画素値(に対応する電荷)が、動き量vで移動しながら蓄積(積分)された値であるとして、動きボケ発生のメカニズムをモデル化するものとする。
【1498】
実世界推定部15113は、モデル生成部15121、方程式生成部15122、および実世界波形推定部15123で構成されている。さらに、方程式生成部15122は、拘束条件設定部15131、アクティビティ検出部15132、重み変更部15133、および正規方程式生成部15134で構成されている。
【1499】
モデル生成部15121には、定常性設定部15112から定常性情報としての動き量vが供給される。この例での動き量vは、入力画像のうちの処理領域設定部15111で設定された処理領域において、物体がシャッタ時間あたりv画素の一定速度で水平方向に移動している定常性を表しており、例えば、上述の例と同様にv=4とする。また、動き量vは、ライン毎に異なる値でもよく、動き量vがライン毎に異なる場合には、ライン数に等しいk個の動き量vが、定常性情報として、定常性設定部15112からモデル生成部15121に供給される。
【1500】
また、モデル生成部15121には、処理領域設定部15111から入力画像のなかの処理領域を特定する処理領域情報も供給される。処理領域として矩形の形状の領域を採用する場合には、処理領域情報は、例えば、入力画像の所定の位置(画素)を原点とする絶対座標系に対する、矩形の処理領域の対角の座標値や、処理領域の中心座標と処理領域の幅(水平方向)と高さ(垂直方向)などで表すことができる。
【1501】
モデル生成部15121は、処理領域設定部15111から供給された処理領域情報から、例えば、図119に示したような、処理領域幅lとライン数kを取得する。この例では、処理領域15042は、矩形とされ、例えば、l=10,k=4とするものとする。この場合、各ラインの処理領域幅(画素数)は、同じとされているが、処理領域15042は、各ラインで異なる処理領域幅となるようにすることもできる。処理領域幅lがライン毎に異なる場合には、モデル生成部15121は、ライン数と同じ個数(k個)の処理領域幅lを取得する
【1502】
そして、モデル生成部15121は、定常性設定部15112から供給された動き量vと、処理領域情報から取得した処理領域幅lとライン数kに基づいて、上述の式(141)で示した混合画素値P(i=3乃至9)の方程式(モデル方程式)を生成し、正規方程式生成部15134に供給する。
【1503】
拘束条件設定部15131には、ユーザが、ユーザI/F15116を操作することにより指定した拘束条件情報がユーザI/F15116から供給される。例えば、ユーザは、拘束条件設定部15131の内部に予め設定されている、上述した式(143)や式(144)などの、動きボケのない画像の各画素の画素値Qの関係を拘束する拘束条件の中から、所望の拘束条件を選択(指定)する操作をユーザI/F15116により行い、ユーザI/F15116が、その選択された拘束条件を示す情報を拘束条件情報として、拘束条件設定部15131に供給する。
【1504】
拘束条件設定部15131は、自身の内部に有する拘束条件式のなかから、ユーザI/F15116から供給された拘束条件情報に対応する拘束条件式を選択する。さらに、拘束条件設定部15131は、処理領域設定部15111から方程式生成部15122に供給される入力画像の処理領域情報に基づいて処理領域幅lを取得し、拘束条件式を処理領域幅lに対応する数だけ生成する。例えば、拘束条件情報として、「隣接画素差分=0」という条件である式(143)が採用される場合には、拘束条件設定部15131は、処理領域設定部15111から供給された処理領域情報に基づいて処理領域幅lを取得することにより、上述した式(145)で示した拘束条件式を生成し、正規方程式生成部15134に供給する。なお、図119で示した処理領域15042の例では、処理領域15042が矩形であり、各ラインの処理領域幅lは同じとされているが、ライン毎に処理領域幅lが異なる場合には、拘束条件の式の数もライン毎に異なることとなる。
【1505】
アクティビティ検出部15132では、重み変更部15133が、各混合画素値Pの方程式(モデル方程式)に対する重みWmi、および、各拘束条件式に対する重みWbjを決定するための情報となる、入力画像の処理領域内の各画素(注目画素)のアクティビティ(特徴量)が検出される。
【1506】
即ち、アクティビティ検出部15132は、例えば、入力画像の処理領域内の各画素を注目画素Pとして、例えば、その注目画素Pとその右隣の画素Pj+1との隣接画素差分(P−Pj+1)の値などを、注目画素Pのアクティビティとして検出し、重み変更部15133に供給する。
【1507】
重み変更部15133は、各混合画素値Pの方程式(モデル方程式)に対する重みWmi(以下、単に重みWmiと称する)と、各拘束条件式に対する重みWbj(以下、単に重みWbjと称する)を有している。
【1508】
重み変更部15133は、重みWmiと重みWbjとを、正規方程式生成部15134に供給することにより、正規方程式生成部15134で生成される、モデル生成部15121から供給される混合画素値Pの方程式(モデル方程式)と、拘束条件設定部15131から供給される拘束条件式とから成る方程式の、それぞれの式の重みを変更(設定)する。
【1509】
実世界推定部15113で得られる画素値Qで構成される画像の劣化は、拘束条件が不適切な個所で発生することが多いと考えられるので、重みWmiよりも重みWbjを適切に調整する方がより効果的である。そこで、この実施の形態では、重みWmiは所定の値(一定値)とし、重みWbjを、アクティビティ検出部15132より供給されるアクティビティに基づいて変更することとする。なお、重みWmiについても、以下で説明する同様の方法や、その他の方法により求められるアクティビティにより変更するようにしてもよい。
【1510】
拘束条件式として、例えば、上述の式(143)で表される「隣接画素差分=0」を採用した場合、式(143)で表される拘束条件式が成立しない個所(画素)は、動きボケのない画像における、物体(オブジェクト)のエッジ部分に対応する画素である。ここで、式(143)で表される拘束条件式は、空間方向Xの方向に隣合う画素間の差分を考えているので、拘束条件式が成立しないオブジェクトのエッジ部分とは、オブジェクトのエッジの方向(境界線)が、水平方向(空間方向Xと平行な方向)ではない方向のエッジである。
【1511】
動きボケの発生していない画像のエッジ部分は、動きボケの発生している画像においても、エッジになっている。換言すれば、動きボケの発生している画像においても、動きボケの発生していない画像でエッジ部分であった画素は、その画素の近傍で、エッジの特徴が残って表れている。従って、動きボケの発生している画像(入力画像)の隣接画素差分(P−Pj+1)の値に応じて、重みWbjを決定するようにすることができる。
【1512】
即ち、入力画像の隣接画素差分(P−Pj+1)の値が大きい個所は、動きボケの発生していない画像において、エッジである可能性が高い。そこで、隣接画素どうしの差分が小さいという、上述の式(143)の拘束条件式の重みWbjを小さくする(拘束条件を緩くする)ようにする。アクティビティを表す隣接画素差分(P−Pj+1)に応じて重みWbjを小さくする方法として、例えば、以下に説明する2つの方法がある。
【1513】
第1の方法は、入力画像の隣接画素差分(P−Pj+1)の値の逆比を、重みWbjとして採用する方法である。式で表すと、次のように書くことができる。
【1514】
【数159】
Figure 2005018534
・・・(159)
【1515】
第2の方法は、入力画像の隣接画素差分(P−Pj+1)の値に応じて、拘束条件式の重みWbjを0または1のうちのいずれかにし、等価的に、拘束条件式を入れるか入れないかを決定する方法である。式で表すと、次のように書くことができる。
【1516】
【数160】
Figure 2005018534
・・・(160)
【1517】
ここで、式(160)において、閾値Thは、拘束条件式を入れるか入れないかを判断する基準となる値であり、重み変更部15133に予め設定しておくことができる。重みWbjが0と設定された拘束条件式は、実質的に拘束条件式から削除されることになる。
【1518】
正規方程式生成部15134には、モデル生成部15121からライン数と同じk個の混合画素値Pの方程式(式(141))が供給される。また、正規方程式生成部15134には、拘束条件設定部15132からユーザがユーザI/F15116を操作することにより選択した拘束条件に対応する拘束条件の方程式(式(145))が供給される。
【1519】
正規方程式生成部15134では、重み変更部15133により、拘束条件設定部15132から供給された拘束条件式(145)に誤差ebjを考慮した式(147)について、重みWbjが設定される(1:1であったモデル方程式と拘束条件に対する重みWbjが変更される)。
【1520】
即ち、式(147)は、その両辺に重みWbjを乗じた次の式(161)に変更される。
【1521】
【数161】
Figure 2005018534
・・・(161)
【1522】
また、正規方程式生成部15134では、重み変更部15133により、モデル生成部15121から供給された混合画素値Pの方程式(モデル方程式)(141)に誤差emiを考慮した式(146)について、重みWmiが設定される。
【1523】
即ち、式(146)は、その両辺に重みWmiを乗じた次の式(162)に変更される。
【1524】
【数162】
Figure 2005018534
・・・(162)
【1525】
なお、上述したように、ここでは、式(162)における重みWmiは、一定値である。
【1526】
正規方程式生成部15134は、図128に示されるように、処理領域15042のなかから、所定の1つのラインを注目ラインとして選択する。そして、正規方程式生成部15134は、選択した注目ラインに対応する、式(161)と式(162)とから、次の式(163)で示される正規方程式を生成する。
【1527】
【数163】
Figure 2005018534
・・・(163)
【1528】
ここで、式(163)を行列A”、列ベクトルx,y,e”を用いて、式(164)に置き換える。
【1529】
【数164】
Figure 2005018534
・・・(164)
【1530】
この場合、式(161)の誤差ebjと式(162)の誤差emiの二乗誤差の総和E”は、次式で表すことができる。
【1531】
【数165】
Figure 2005018534
・・・(165)
【1532】
二乗誤差の総和E”を最小とするQを求めるためには、列ベクトルx(画素値Qをコンポーネントとする列ベクトルx)は、上述の式(150)および(151)と同様の式から、式(166)で表すことができる。
【1533】
【数166】
Figure 2005018534
・・・(166)
【1534】
なお、式(166)において、上付きのTは転置を表し、上付きの−1は、逆行列を表す。
【1535】
従って、正規方程式生成部15134は、式(166)の右辺の列ベクトルyの係数である、行列(A”A”)−1A”を演算し、センサ2(図1)から供給された入力画像に基づいて取得した混合画素値Pを、列ベクトルyに代入する。行列(A”A”)−1A”が演算され、混合画素値Pが代入された式(166)が、正規方程式生成部15134から実世界波形推定部15123に供給される。
【1536】
以上のような、処理領域15042の所定の1ラインを注目ラインとして行った処理が終了すると、正規方程式生成部15134は、まだ選択されていないラインを次の注目ラインとして選択し、その選択された次の注目ラインに対して同様の処理を行う。
【1537】
実世界波形推定部15123は、正規方程式生成部15134から供給された式(166)を演算することにより、列ベクトルx、即ち、動きボケのない画素値Qを求め、画像生成部15114(図140)に供給する。
【1538】
画像生成部15114は、処理領域設定部15111から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域15042の部分を、実世界波形推定部15123から供給された、動きボケがない画素値Qの画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15115に供給する。
【1539】
次に、図143のフローチャートを参照して、図141のステップS15168における実世界推定部15113の実世界推定処理について詳述する。
【1540】
初めに、ステップS15191では、モデル生成部15121は、処理領域設定部15111から供給される処理領域情報に基づいて、処理領域幅lとライン数kを取得して、ステップS15192に進む。
【1541】
ステップS15192では、モデル生成部15121は、処理領域15042のライン数に等しいk個の動き量vを、定常性設定部15112から取得して、ステップS15193に進む。
【1542】
ステップS15193では、モデル生成部15121は、ライン毎に混合画素値Pの方程式を生成して、ステップS15194に進む。即ち、モデル生成部15121は、k個のモデル方程式(式(141))を生成する。
【1543】
ステップS15194では、拘束条件設定部15131は、自身の内部に有する拘束条件式のなかから、ユーザI/F15116から供給された拘束条件情報に対応する拘束条件式を選択する。また、拘束条件設定部15131は、処理領域設定部15111から方程式生成部15122に供給される、入力画像の処理領域情報から、処理領域幅lを取得し、処理領域幅lに対応する方程式の数で構成される、ユーザI/F15116からの拘束条件情報に対応する拘束条件の方程式(式(145))を生成し、ステップS15195に進む。
【1544】
ステップS15195では、アクティビティ検出部15132は、重み変更部15133が、重みWbjを決定するための情報となる、入力画像の処理領域内の各画素のアクティビティ(特徴量)を検出し、重み変更部15133に供給して、ステップS15196に進む。
【1545】
ステップS15196では、重み変更部15133は、アクティビティ検出部15132から供給された、入力画像の処理領域内の各画素のアクティビティを用いて、例えば、上述の第1または第2の方法などで求められる重みWbjを算出する。また、重み変更部15133は、算出した重みWbjと予め一定値として与えられている重みWmiとを、正規方程式生成部15134の混合画素値Pの方程式(モデル方程式)と、拘束条件の方程式(拘束条件式)のそれぞれの式の重みとして設定して、ステップS15197に進む。
【1546】
ステップS15197では、正規方程式生成部15134は、処理領域15042のなかから、所定の1つのラインを注目ラインとして選択して、ステップS15198に進む。
【1547】
ステップS15198では、正規方程式生成部15134は、モデル生成部15121から供給された式(141)で示される混合画素値Pの方程式に、それぞれの式の誤差emiを考慮した式(146)に対して、ステップS15196で重み変更部15133により重みWmiが変更された式(162)と、拘束条件設定部15131から供給された拘束条件式(145)に、それぞれの式の誤差ebjを考慮した式(147)に対して、ステップS15196で重み変更部15133により重みWbjが変更された拘束条件の方程式(161)とから、式(163)(式(164))で示される正規方程式を生成して、ステップS15199に進む。
【1548】
ステップS15199では、正規方程式生成部15134は、式(166)の右辺の列ベクトルyの係数である、行列(A”A”)−1A”を演算し、ステップS15200に進む。
【1549】
ステップS15200では、正規方程式生成部15134は、センサ2(図1)から供給された入力画像に基づいて取得した混合画素値Pを、列ベクトルyに代入して、ステップS15201に進む。
【1550】
ステップS15201では、実世界波形推定部15123は、正規方程式を演算する。即ち、実世界波形推定部15123は、正規方程式生成部15134から供給された、式(166)を演算することにより、動きボケがない画素値Qを求めて、ステップS15202に進む。
【1551】
ステップS15202では、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われたか否かが判定される。処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われていないと判定された場合、処理はステップS15197に戻り、ステップS15197乃至S15202の処理が繰り返される。即ち、まだ選択されていない処理領域15042のうちの1ラインが注目ラインとして選択され、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われる。
【1552】
一方、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われたと判定された場合、実世界推定処理を終了してリターンする。
【1553】
以上のように、処理領域15042の注目ラインとした1ラインに対して、正規方程式(式(163))を生成し、動きボケがない画素値Qを求める処理を、処理領域の15042のライン数であるk回繰り返すことにより、処理領域15042の全域に亘る動きボケがない画素値Qを求めることができる。
【1554】
以上のように、図140に示される実施の形態においては、動きボケの発生している画素値を動きボケのない画素値でモデル化した混合画素値Pの方程式と、動きボケのない画素値の隣接する画素間の関係を用いた拘束条件式とから、正規方程式を生成し、その正規方程式を演算することにより、動きボケがない画素値を求めるので、画質の良い画像を生成することができる。
【1555】
また、拘束条件の方程式のそれぞれの重みを、入力画像のアクティビティに基づいて変更するので、入力画像の特徴量に応じた、画質の良い画像を生成することができる。
【1556】
図144乃至図146は、図140の信号処理装置4の処理結果を説明する図である。
【1557】
図144は、図140の信号処理装置4に入力される入力画像を示している。図144の入力画像においては、「TAL」の文字が左から右方向に等速で移動しており、水平方向に動きボケが発生している。
【1558】
図145は、図144の入力画像を、図135の信号処理装置4が処理した出力画像を示している。即ち、拘束条件式に対する重みWbjが、全ての拘束条件式について、同じ重みとして処理された場合の、図144の入力画像に対する出力画像である。図144と、図145とを比較して明らかなように、図145の画像では、図144の入力画像に生じている動きボケが低減され、「TAL」の文字が比較的はっきりと表示されている。
【1559】
一方、図146は、図144の入力画像を、上述した実施の形態である、図140の信号処理装置4が、上述の第2の方法を利用して処理した出力画像を示している。即ち、拘束条件式に対する重みWbjが、入力画像のアクティビティに応じて、0または1とされたときの、図144の入力画像に対する出力画像である。図146の画像においても、図144の入力画像に生じている動きボケが低減され、「TAL」の文字がはっきりと表示されている。
【1560】
なお、図144乃至図146の実施の形態では、図146の処理画像の方が、図145の処理画像よりもエッジ部分が鮮明になった画像になっている。
【1561】
なお、上述の例では、ユーザI/F15116から拘束条件設定部15131に供給される拘束条件情報は、拘束条件設定部15131の内部に予め設定されている、いくつかの拘束条件のなかから、ユーザがどの拘束条件を選択(指定)したかを表す情報としたが、ユーザがユーザI/F15116を操作することにより、拘束条件式を直接入力するようにしてもよい。
【1562】
また、重み変更部15133において上述の第2の方法を採用した場合、拘束条件式を入れるか入れないかを判断する基準となる値である閾値Thを、その内部に予め設定しておくようにしたが、ユーザが画像表示部15115に表示される処理画像を見ながら、ユーザI/F15116を操作することにより、閾値Thを適宜調整できるようにすることもできる。
【1563】
図147は、図111に示した信号処理装置4の応用例のその他の一実施の形態の構成例を示している。
【1564】
図147の信号処理装置4には、センサ2からデータ3として、例えば、1フレームまたは1フィールドの画像が入力される。なお、ここでは、入力画像に画像の水平方向(横方向)にシャッタ時間(露光時間)あたりv画素の一定速度で移動している所定の形状を有する物体(オブジェクト)が表示されているものとする。即ち、入力画像は、物体が水平方向にv画素の動き量で動いているために、センサ2の時間積分効果によって、そのオブジェクトの光信号と、そのオブジェクト以外の部分の光信号とが混合(時間混合)し、これにより、オブジェクトの境界部分などにおいて、ボケた画像となっている。図147の信号処理装置4では、このような時間混合によって生じた動きボケを入力画像から除去した高画質の出力画像が生成される。
【1565】
図147において、処理領域設定部15151、定常性設定部15152、実世界推定部15153、画像生成部15154、画像表示部15155、ユーザI/F15156は、図111の処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、ユーザI/F10006にそれぞれ対応しており、基本的には、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、ユーザI/F10006それぞれと同様の処理を行う。さらに、図147において、実世界推定部15153は、モデル生成部15161、方程式生成部15162、実世界波形推定部15163で構成されている。モデル生成部15161、方程式生成部15162、実世界波形推定部15163は、図111のモデル生成部10011、方程式生成部10012、実世界波形推定部10013にそれぞれ対応しており、基本的には、モデル生成部10011、方程式生成部10012、実世界波形推定部10013それぞれと同様の処理を行う。
【1566】
但し、図147においては、ユーザがユーザI/F15156を操作することにより、ユーザI/F15156が出力する補助情報が、方程式生成部15162に供給されるようになっている。
【1567】
即ち、図147では、ユーザは、ユーザI/F15156を操作することにより、方程式生成部15162において、入力画像に対応する実世界1の画像である、動きボケがない画像の各画素間の関係を拘束する拘束条件と、その拘束条件に対する重みとを設定することができるようになっており、ユーザI/F15156は、ユーザが拘束条件を設定する操作や重みを設定する操作を行うと、その操作によって設定された拘束条件を表す拘束条件情報や拘束条件に対する重みを、方程式生成部15162に供給する。
【1568】
具体的には、例えば、画像表示部15155に表示された、物体がボケて映っている画像を見たユーザが、本来の画像、即ち、入力画像に対応する実世界1の画像である、動きボケがない画像を推測する。そして、例えば、ユーザは、ボケが発生している所定の領域をエッジ部分と推測し、エッジ部分の隣り合う画素間の画素値(レベル)の差は大きい、などの各画素間の画素値の関係(拘束条件)を推測する。さらに、ユーザは、その推測した各画素間の画素値の関係に適合する条件を、ユーザI/F15156を操作することにより、方程式生成部15162に設定することができる。
【1569】
また、図147においては、処理領域設定部15151から実世界推定部15153に供給される処理領域情報は、実世界推定部15153のうちのモデル生成部15161と方程式生成部15162に供給されるようになっている。モデル生成部15161と方程式生成部15162は、処理領域設定部15151から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。
【1570】
定常性設定部15152は、入力画像において、物体(オブジェクト)が、画像の水平方向にシャッタ時間あたりv画素の一定速度で移動しているという定常性の情報として、動き量(動きベクトル)vを設定し、その動き量vを定常性情報として実世界推定部15153のモデル生成部15161に供給する。
【1571】
モデル生成部15161は、処理領域設定部15151から供給される処理領域情報から認識される処理領域について、定常性設定部15152から供給された定常性情報としての動き量vを考慮した、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値と、実世界1の信号との関係をモデル化したモデル(以下、適宜、関係モデルと称する)としての方程式(以下、モデル方程式と称する)を生成し、その生成したモデル方程式を方程式生成部15162に供給する。
【1572】
方程式生成部15162は、ユーザI/F15156から供給される拘束条件情報に基づいて、拘束条件の方程式(以下、拘束条件式と称する)を生成する。また、方程式生成部15162は、その拘束条件式と、モデル生成部15161から方程式生成部15162に供給されるモデル方程式とに、ユーザI/F15156から供給される重みを設定し、重み付けされた拘束条件式とモデル方程式とから成る方程式に、処理領域を構成する入力画像の各画素の画素値を代入し、これにより、実世界1の信号をモデル化したモデル(以下、適宜、近似モデルと称する)としての近似関数を求める方程式を生成して、実世界波形推定部15163に供給する。
【1573】
実世界波形推定部15163は、方程式生成部15162から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定する。即ち、実世界波形推定部15163は、近似モデルとしての近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部15154に供給する。ここで、実世界1の信号を近似する近似関数には、引数の値にかかわらず、関数値が一定の関数も含まれる。
【1574】
画像生成部15154は、処理領域設定部15151から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域を認識する。また、画像生成部15154は、実世界波形推定部15163から供給された近似関数から、実世界1の信号により近似した信号、即ち、動きボケがない画像を生成し、入力画像の処理領域の画像を動きボケがない画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15155に供給する。
【1575】
次に、図148のフローチャートを参照して、図147の信号処理装置4の処理について説明する。
【1576】
最初に、ステップS15211において、信号処理装置4は、前処理を行い、ステップS15212に進む。即ち、信号処理装置4は、センサ2(図1)からデータ3として供給される、例えば1フレームまたは1フィールドの入力画像を、処理領域設定部15151、定常性設定部15152、実世界推定部15153、画像生成部15154、および画像表示部15155に供給する。さらに、信号処理装置4は、画像表示部15155に、入力画像を表示させる。
【1577】
ステップS15212では、ユーザI/F15156は、ユーザがユーザI/F15156を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定する。ステップS15212において、ユーザ入力がなかったと判定された場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS15213乃至S15215をスキップして、ステップS15216に進む。
【1578】
一方、ステップS15212において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部15155に表示された入力画像を見て、ユーザI/F15156を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS15213に進み、ユーザI/F15156は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1579】
ステップS15213において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1580】
一方、ステップS15213において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS15214に進み、ユーザI/F15156は、ユーザ入力が拘束条件情報または重みであるかどうかを判定する。ステップS15214において、ユーザ入力が拘束条件情報および重みのいずれでもないと判定された場合、ステップS15215をスキップして、ステップS15216に進む。
【1581】
また、ステップS15214において、ユーザ入力が拘束条件情報または重みであると判定された場合、ステップS15215に進み、ユーザI/F15156は、その拘束条件情報または重みを、方程式生成部15162に供給し、ステップS15216に進む。ユーザI/F15156では、拘束条件情報と重みの両方を入力することが可能であり、ユーザが拘束条件情報と重みの両方を入力した場合には、ユーザI/F15156は、入力された拘束条件情報と重みの両方を方程式生成部15162に供給する。
【1582】
ステップS15216では、処理領域設定部15151は、入力画像について、処理領域を設定し、その処理領域を特定する処理領域情報を、定常性設定部15152、実世界推定部15153のモデル生成部15161および方程式生成部15162、並びに画像生成部15154に供給し、ステップS15217に進む。ここで、ステップS15216における処理領域の設定は、ユーザがユーザI/F15156を操作することにより処理領域指示情報を入力し、その処理領域指示情報に基づいて行うことも可能であるし、ユーザからの処理領域指示情報なしで行うことも可能である。
【1583】
ステップS15217では、定常性設定部15152は、処理領域設定部15151から供給された処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。さらに、定常性設定部15152は、その処理領域の画像データにおいて定常性の一部が欠落した実世界1の信号の定常性を設定し、その定常性を表す定常性情報を、実世界推定部15153のモデル生成部15161に供給して、ステップS15218に進む。ここで、定常性設定部15152は、シャッタ時間(露光時間)あたりv画素の一定速度で水平方向に移動していることを表す動き量vを定常性情報として設定し、実世界推定部15153のモデル生成部15161に供給するものとする。なお、ここでは、定常性設定部15152は、入力画像において、オブジェクトが水平方向に移動していることを前提として、その動きの大きさだけを表す動き量を定常性情報として設定するようにしたが、その他、オブジェクトの動きの大きさと方向を表す動きベクトルを、定常性情報として設定することも可能である。ステップS15217における定常性の設定は、ユーザがユーザI/F15156を操作することにより定常性指示情報を入力し、その定常性指示情報に基づいて行うことも可能であるし、ユーザからの定常性指示情報なしで行うことも可能である。
【1584】
ステップS15218では、実世界推定部15153は、実世界推定処理を行う。即ち、実世界推定部15153では、モデル生成部15161が、ステップS15217において定常性設定部15152から供給された動き量vと、ステップS15216において処理領域設定部15151から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値と、実世界1の信号との関係をモデル化したモデル(関係モデル)としての方程式(モデル方程式)を生成し、その生成したモデル方程式を方程式生成部15162に供給する。
【1585】
方程式生成部15162は、ステップS15215においてユーザI/F15156から供給される拘束条件情報に基づいて、拘束条件式を生成し、生成された拘束条件式と、モデル生成部15161から方程式生成部15162に供給されるモデル方程式とに、ユーザI/F15156から供給される重みを設定する。そして、方程式生成部15162は、重み付けされた拘束条件式とモデル方程式とから成る方程式に、処理領域を構成する入力画像の各画素の画素値を代入し、これにより、実世界1の信号をモデル化したモデル(近似モデル)としての近似関数求める方程式を生成して、実世界波形推定部15163に供給する。ここで、ユーザが拘束条件情報を指定(設定)しなかった場合、即ち、ステップS15212またはS15214でNOと判定された場合、方程式生成部15162は、例えば、図113の実施の形態において説明した、モデル方程式と処理領域の端部を「平坦である」と仮定した式とから成る連立方程式を解く方法などの、所定の処理が行われる。
【1586】
なお、重みは、拘束条件式とモデル方程式の両方に設定する他、拘束条件式だけ、またはモデル方程式だけに設定するすることが可能である。
【1587】
実世界波形推定部15163は、方程式生成部15162から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定、即ち、実世界1の信号をモデル化したモデルとしての近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部15154に供給する。
【1588】
なお、ステップS15218の実世界推定処理の詳細については、図150を参照して後述する。
【1589】
ステップS15218の処理後は、ステップS15219に進み、画像生成部15154は、実世界波形推定部15163から供給された近似関数から、実世界1の信号により近似した信号、即ち、動きボケがない画像を生成し、処理領域設定部15151から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域の部分を、生成した動きボケがない画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15155に供給して、ステップS15220に進む。
【1590】
ステップS15220では、画像表示部15155は、画像生成部15154から供給された出力画像を、ステップS15211で表示された入力画像に代えて、またはその入力画像とともに表示し、ステップS15221に進む。
【1591】
ステップS15221では、ユーザI/F15156は、ステップS15212における場合と同様に、ユーザがユーザI/F15156を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定し、ユーザ入力がなかったと判定した場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS15221に戻り、何らかのユーザ入力があるまで待つ。
【1592】
また、ステップS15221において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部15155に表示された入力画像や出力画像を見て、ユーザI/F15156を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS15222に進み、ユーザI/F15156は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1593】
ステップS15222において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1594】
一方、ステップS15222において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS15223に進み、ユーザI/F15156は、ユーザ入力が拘束条件情報または重みであるかどうかを判定する。ステップS15223において、ユーザ入力が拘束条件情報および重みのいずれでもないと判定された場合、ステップS15221に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【1595】
また、ステップS15223において、ユーザ入力が拘束条件情報または重みであると判定された場合、ステップS15215に戻り、上述したように、ユーザI/F15156は、その拘束条件情報または重みを、方程式生成部15162に供給する。そして、ステップS15215からS15216に進み、以下、同様の処理が繰り返される。なお、信号処理装置4が、ステップS15215乃至S15223の処理を繰り返す場合において、上述のステップS15216およびS15217の処理は、1回目のS15216およびS15217の処理で設定されるものと同一であり、1回目の処理と同じ処理を繰り返しても良いし、スキップするようにしても良い。
【1596】
以上のように、図147の信号処理装置4では、実世界1の信号をモデル化したモデルとしての近似関数を求めることにより、動きボケがない、高画質の出力画像を生成することができる。
【1597】
また、ユーザは、ユーザI/F15156を操作することにより、本来の動きボケがないときの画像における、各画素間の関係を拘束する拘束条件を設定することができ、新たな拘束条件が入力された場合には、再度、動きボケがない画像を求めることができるので、ユーザの好みにあった、高画質の出力画像を、容易に得ることができる。
【1598】
なお、図147の信号処理装置4では、実世界1の光信号を近似する近似関数を求めることにより、動きボケのない出力画像を生成するが、この出力画像は、入力画像から動きボケが除去されたものであるとみることができる。従って、図147の信号処理装置4では、動きボケ除去の処理が行われるということができる。
【1599】
次に、図149を参照して、図147の実世界推定部15153の内部の構成について説明する。なお、図147の実施の形態においても、入力画像に映っている物体の動きボケ発生のメカニズムを、一例である図125と図126に示される、上述した式(141)の関係として、モデル化するものとする。
【1600】
即ち、入力画像としての動きボケ画像の各画素の画素値を、動きボケが生じていない画像の各画素の画素値(に対応する電荷)が、動き量vで移動しながら蓄積(積分)された値であるとして、動きボケ発生のメカニズムをモデル化するものとする。
【1601】
実世界推定部15153は、モデル生成部15161、方程式生成部15162、および実世界波形推定部15163で構成されている。さらに、方程式生成部15162は、拘束条件設定部15171、重み変更部15172、および正規方程式生成部15173で構成されている。
【1602】
モデル生成部15161には、定常性設定部15152から定常性情報としての動き量vが供給される。この例での動き量vは、入力画像のうちの処理領域設定部15151で設定された処理領域において、物体がシャッタ時間あたりv画素の一定速度で水平方向に移動している定常性を表しており、例えば、上述の例と同様にv=4とする。また、動き量vは、ライン毎に異なる値でもよく、動き量vがライン毎に異なる場合には、ライン数に等しいk個の動き量vが、定常性情報として、定常性設定部15152からモデル生成部15161に供給される。
【1603】
また、モデル生成部15161には、処理領域設定部15151から入力画像のなかの処理領域を特定する処理領域情報も供給される。処理領域として矩形の形状の領域を採用する場合には、処理領域情報は、例えば、入力画像の所定の位置(画素)を原点とする絶対座標系に対する、矩形の処理領域の対角の座標値や、処理領域の中心座標と処理領域の幅(水平方向)と高さ(垂直方向)などで表すことができる。
【1604】
モデル生成部15161は、処理領域設定部15151から供給された処理領域情報から、例えば、図119に示したような、処理領域幅lとライン数kを取得する。この例では、処理領域15042は、矩形とされ、例えば、l=10,k=4とするものとする。この場合、各ラインの処理領域幅(画素数)は、同じとされているが、処理領域15042は、各ラインで異なる処理領域幅となるようにすることもできる。処理領域幅lがライン毎に異なる場合には、モデル生成部15021は、ライン数と同じ個数(k個)の処理領域幅lを取得する
【1605】
そして、モデル生成部15161は、定常性設定部15152から供給された動き量vと、処理領域情報から取得した処理領域幅lとライン数kに基づいて、上述の式(141)で示した混合画素値Pの方程式(モデル方程式)を生成し、正規方程式生成部15173に供給する。
【1606】
拘束条件設定部15171には、ユーザが、ユーザI/F15156を操作することにより指定した拘束条件情報がユーザI/F15156から供給される。例えば、ユーザは、拘束条件設定部15171の内部に予め設定されている、上述した式(143)や式(144)などの、動きボケのない画像の各画素の画素値Qの関係を拘束する拘束条件の中から、所望の拘束条件を選択(指定)する操作をユーザI/F15156により行い、ユーザI/F15156が、その選択された拘束条件を示す情報を拘束条件情報として、拘束条件設定部15171に供給する。
【1607】
拘束条件設定部15171は、自身の内部に有する拘束条件式のなかから、ユーザI/F15156から供給された拘束条件情報に対応する拘束条件式を選択する。さらに、拘束条件設定部15171は、処理領域設定部15151から方程式生成部15162に供給される入力画像の処理領域情報に基づいて処理領域幅lを取得し、拘束条件式を処理領域幅lに対応する数だけ生成する。例えば、拘束条件情報として、「隣接画素差分=0」という条件である式(143)が採用される場合には、拘束条件設定部15171は、処理領域設定部15151から供給された処理領域情報に基づいて処理領域幅lを取得することにより、上述した式(145)で示した拘束条件式を生成し、正規方程式生成部15173に供給する。なお、図119で示した処理領域15042の例では、処理領域15042が矩形であり、各ラインの処理領域幅lは同じとされているが、ライン毎に処理領域幅lが異なる場合には、拘束条件の式の数もライン毎に異なることとなる。
【1608】
重み変更部15172は、各混合画素値Pの方程式(モデル方程式)に対する重みWmi(以下、単に重みWmiと称する)と、各拘束条件式に対する重みWbj(以下、単に重みWbjと称する)を有している。重みWmiと重みWbjのそれぞれの値は、ユーザがユーザI/F15156を操作することにより、ユーザI/F15156から供給されて、デフォルトの値(例えば1)から変更される。即ち、ユーザはユーザI/F15156を操作することにより、重みWmiと重みWbjのそれぞれの値を決定(設定)することができる。重み変更部15172は、ユーザにより設定された重みWmiと重みWbjのそれぞれを正規方程式生成部15173に供給し、正規方程式生成部15173のモデル方程式と拘束条件式のそれぞれ対応する式の重みを設定(変更)する。
【1609】
具体的には、正規方程式生成部15173では、重み変更部15172により、拘束条件設定部15171から供給された拘束条件式(145)に誤差ebjを考慮した式(147)について、重みWbjが設定される。即ち、式(147)は、その両辺に重みWbjを乗じた式(161)に変更される。
【1610】
また、正規方程式生成部15173では、重み変更部15172により、モデル生成部15161から供給された混合画素値Pの方程式(モデル方程式)(141)に、誤差emiを考慮した式(146)に対して、重みWmiが設定される。即ち、式(146)は、その両辺に重みWmiを乗じた上述の式(162)に変更される。
【1611】
正規方程式生成部15173は、図128に示されるように、処理領域15042のなかから、所定の1つのラインを注目ラインとして選択する。そして、正規方程式生成部15173は、選択した注目ラインに対応する、式(161)と式(162)とから、上述の式(163)で示される正規方程式を生成する。
【1612】
ここで、式(163)を行列A”、列ベクトルx,y,e”を用いて、式(164)に置き換える。この場合、式(161)の誤差ebjと式(162)の誤差emiの二乗誤差の総和E”は、式(165)と表すことができ、二乗誤差の総和E”を最小とするQを求めるためには、列ベクトルx(画素値Qをコンポーネントとする列ベクトルx)は、上述の式(150)および(151)と同様の式から、式(166)で表すことができる。
【1613】
従って、正規方程式生成部15173は、式(166)の右辺の列ベクトルyの係数である、行列(A”A”)−1A”を演算し、センサ2(図1)から供給された入力画像に基づいて取得した混合画素値Pを、列ベクトルyに代入する。行列(A”A”)−1A”が演算され、混合画素値Pが代入された式(166)が、正規方程式生成部15173から実世界波形推定部15163に供給される。
【1614】
以上のような、処理領域15042の所定の1ラインを注目ラインとして行った処理が終了すると、正規方程式生成部15173は、まだ選択されていないラインを次の注目ラインとして選択し、その選択された次の注目ラインに対して同様の処理を行う。
【1615】
実世界波形推定部15163は、正規方程式生成部15173から供給された式(166)を演算することにより、列ベクトルx、即ち、動きボケのない画素値Qを求め、画像生成部15154(図147)に供給する。
【1616】
画像生成部15154は、処理領域設定部15151から供給された処理領域情報に基づいて、入力画像の処理領域15042の部分を、実世界波形推定部15163から供給された、動きボケがない画素値Qの画像に置き換えて、出力画像として生成し、画像表示部15155に供給する。
【1617】
次に、図150のフローチャートを参照して、図148のステップS15218における実世界推定部15153の実世界推定処理について詳述する。
【1618】
初めに、ステップS15251では、モデル生成部15161は、処理領域設定部15151から供給される処理領域情報に基づいて、処理領域幅lとライン数kを取得して、ステップS15252に進む。
【1619】
ステップS15252では、モデル生成部15161は、処理領域15042のライン数に等しいk個の動き量vを、定常性設定部15152から取得して、ステップS15253に進む。
【1620】
ステップS15253では、モデル生成部15161は、ライン毎に混合画素値Pの方程式を生成して、ステップS15254に進む。即ち、モデル生成部15161は、k個のモデル方程式(式(141))を生成する。
【1621】
ステップS15254では、拘束条件設定部15171は、自身の内部に有する拘束条件式のなかから、ユーザI/F15156から供給された拘束条件情報に対応する拘束条件式を選択する。また、拘束条件設定部15171は、処理領域設定部15151から方程式生成部15162に供給される、入力画像の処理領域情報から、処理領域幅lを取得し、処理領域幅lに対応する方程式の数で構成される、ユーザI/F15156からの拘束条件情報に対応する拘束条件の方程式(式(145))を生成し、ステップS15255に進む。
【1622】
ステップS15255では、重み変更部15172は、ユーザI/F15156から供給された重みWbjと重みWmiとを正規方程式生成部15173に供給することにより、モデル生成部15161から供給される混合画素値Pの方程式(モデル方程式)と、拘束条件設定部15171から供給される拘束条件式のそれぞれの式の重みとして設定して、ステップS15256に進む。
【1623】
ステップS15256では、正規方程式生成部15173は、処理領域15042のなかから、所定の1つのラインを注目ラインとして選択して、ステップS15257に進む。
【1624】
ステップS15257では、正規方程式生成部15173は、モデル生成部15161から供給された式(141)で示される混合画素値Pの方程式にそれぞれの式の誤差emiを考慮した式(146)に対して、ステップS15255で重み変更部15172により重みWmiが変更された式(162)と、拘束条件設定部15171から供給された式(145)に、ステップS15255で重み変更部15172により重みWbjが変更された拘束条件の方程式(161)とから、式(163)(式(164))で示される正規方程式を生成して、ステップS15258に進む。
【1625】
ステップS15258では、正規方程式生成部15173は、式(166)の右辺の列ベクトルyの係数である、行列(A”A”)−1A”を演算し、ステップS15259に進む。
【1626】
ステップS15259では、正規方程式生成部15173は、センサ2(図1)から供給された入力画像に基づいて取得した混合画素値Pを、列ベクトルyに代入して、ステップS15260に進む。
【1627】
ステップS15260では、実世界波形推定部15163は、正規方程式を演算する。即ち、実世界波形推定部15163は、正規方程式生成部15173から供給された、式(166)を演算することにより、動きボケがない画素値Qを求めて、ステップS15261に進む。
【1628】
ステップS15261では、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われたか否かが判定される。処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われていないと判定された場合、処理はステップS15256に戻り、ステップS15256乃至S15261の処理が繰り返される。即ち、まだ選択されていない処理領域15042のうちの1ラインが注目ラインとして選択され、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われる。
【1629】
一方、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われたと判定された場合、実世界推定処理を終了してリターンする。
【1630】
以上のように、処理領域15042の注目ラインとした1ラインに対して、正規方程式(式(163))を生成し、動きボケがない画素値Qを求める処理を、処理領域の15042のライン数であるk回繰り返すことにより、処理領域15042の全域に亘る動きボケがない画素値Qを求めることができる。
【1631】
ここで、処理領域15042の各ラインの動き量vと処理領域幅lが、それぞれ同じであり、かつ、ユーザI/F15156から重み変更部15172に供給される重みWbjと重みWmiが処理領域15042の各ラインで同じように設定(供給)された場合には、式(163)の行列Aは、各ラインで同じものとなる。従って、式(166)の行列(A”A”)−1A”も各ラインで同じものとなり、ライン毎に行列(A”A”)−1A”を演算する処理を省略することができる。
【1632】
そこで、図151のフローチャートを参照して、処理領域15042の各ラインの動き量vと処理領域幅lが、それぞれ同じで、かつ、ユーザI/F15156から重み変更部15172に供給される重みWbjと重みWmiが、処理領域15042の各ラインで同じように設定(供給)された場合の、図148のステップS15218における実世界推定部15153の実世界推定処理について説明する。なお、図151において、図150のフローチャートと同様の部分については、その説明を適宜省略する。
【1633】
図151においては、図150のステップS15256に対応するステップS15288の処理が、ステップS15285とS15286の間ではなくて、ステップS15287とS15289の間に配置されている。さらに、ステップS15291で、処理領域15042の全てのラインに対して、動きボケがない画素値Qを求める処理が行われていないと判定された場合、ステップS15288に戻る処理とされている。
【1634】
即ち、処理領域15042の各ラインの動き量vと処理領域幅lが、それぞれ同じで、かつ、ユーザI/F15156から重み変更部15172に供給される重みWbjと重みWmiが処理領域15042の各ラインで同じように設定(供給)された場合、ステップS15286で生成される正規方程式は、各ラインで同じものとなるため、最初の注目ラインに対して、ステップS15287で、行列(A”A”)−1A”を演算した後、その後の注目ラインに対しては、行列(A”A”)−1A”の演算(ステップS15287の処理)を行う必要がない。従って、注目ラインの選択(ステップS15288)、混合画素値Pの代入(ステップS15289の処理)、正規方程式の演算(ステップS15290の処理)を、順次、まだ選択されていない処理領域15042のラインに対して実行するだけでよい。
【1635】
以上のように、図147に示される実施の形態においては、動きボケの発生している画素値を動きボケのない画素値でモデル化した混合画素値Pの方程式と、動きボケのない画素値の隣接する画素間の関係を用いた拘束条件式とから、正規方程式を生成し、その正規方程式を演算することにより、動きボケがない画素値を求めるので、画質の良い画像を生成することができる。
【1636】
また、混合画素値Pの方程式と拘束条件の方程式のそれぞれの重みを、ユーザがユーザI/F15156を操作することにより、信号処理装置4に供給し、所望の値にすることができるので、ユーザの好みに合った、画質の良い画像を生成することができる。
【1637】
なお、上述の例では、ユーザI/F15156から拘束条件設定部15171に供給される拘束条件情報として、拘束条件設定部15171の内部に予め設定されている、いくつかの拘束条件のなかから、ユーザがどの拘束条件を選択(指定)したかを表す情報を採用することとしたが、ユーザがユーザI/F15156を操作することにより、拘束条件式を直接入力するようにしてもよい。
【1638】
また、上述した実施の形態の他に、拘束条件設定部15171では、所定の拘束条件が決定されていて(固定されていて)、ユーザがユーザI/F15156を操作して、拘束条件を選択したり、拘束条件式を直接入力する必要がないような、実施の形態を採用することもできる。
【1639】
なお、図113の定常性設定部15012(他の定常性設定部においても同様)においては、定常性情報としての動きは、ユーザの操作に基づいて設定する他、入力画像から動きを検出して設定することもできる。
【1640】
そこで、図113の定常性設定部15012における動きの検出方法について説明する。
【1641】
入力画像におけるあるオブジェクトが動いている場合の、そのオブジェクトの動きとしての、例えば動きベクトルを検出する方法としては、いわゆるブロックマッチング法が知られている。
【1642】
しかしながら、ブロックマッチング法では、注目しているフレームと、その前または後のフレームとのマッチングを行うため、注目している1フレームだけから動きを検出することは困難である。
【1643】
そこで、定常性設定部15012では、1フレームの入力画像だけから、動きの検出を行うことができるようになっている。
【1644】
図152は、図113の定常性設定部15012の構成例を示している。
【1645】
図152で構成が示される定常性設定部15012においては、入力画像の中の処理領域におけるオブジェクトの動き方向が検出され、動き方向が水平方向になるように入力画像が補正される。そして、動き方向に隣接する画素の画素値の差分値である、入力画像のオブジェクトの動き方向に一次微分した特徴量が検出される。
【1646】
さらに、注目している画素の特徴量と動き方向に所定の距離の対応画素の特徴量との相関が検出され、検出された相関が最大である対応画素と注目画素との距離に応じてオブジェクトの動き量が検出される。
【1647】
すなわち、図152で構成が示される定常性設定部15012は、動き方向検出部11201、動き方向修正部11202、特徴量検出部11203、および動き量検出部11204を含む。
【1648】
さらに、動き方向検出部11201は、アクティビティ演算部11211およびアクティビティ評価部11212を含む。動き方向修正部11202は、アフィン変換部11213を含む。
【1649】
特徴量検出部11203は、差分演算部11214、差分評価部11215、中間画像作成部11216、中間画像作成部11217、フレームメモリ11218、符号反転部11219、およびフレームメモリ11220を含む。
【1650】
さらに、動き量検出部11204は、相関検出部11221および相関評価部11222を含む。
【1651】
図152で構成が示される定常性設定部15012において、入力画像は、動き方向検出部11201および動き方向修正部11202に供給される。さらに、図113の処理領域設定部15011が出力する処理領域情報も、動き方向検出部11201および動き方向修正部11202に供給される。
【1652】
動き方向検出部11201は、入力画像と処理領域情報を取得して、取得した入力画像から処理領域における動き方向を検出する。
【1653】
動いている対象物を撮像したとき、対象物の画像には動きボケが生じる。これは、対象物の画像を撮像するセンサ2としてのカメラまたはビデオカメラのイメージセンサの働きによるものである。
【1654】
すなわち、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)センサなどのイメージセンサは、露光時間(シャッタ時間)において、画素毎に入射された光を連続的に電荷に変換し、さらに電荷を1つの画像値に変換する。撮像の対象物が静止しているとき、露光している期間において、対象物の同じ部位の画像(光)が1つの画素値に変換される。このように撮像された画像には、動きボケは含まれていない。
【1655】
これに対して、対象物が動いているとき、露光している期間において、1つの画素に入射される対象物の部位の画像が変化し、対象物の異なる部位の画像が1つの画素値に変換されてしまう。逆に言えば、対象物の1つの部位の画像が複数の画素値に射影される。これが動きボケである。
【1656】
動きボケは、対象物の動き方向に生じる。
【1657】
動きボケが生じている部分(動きボケを含む領域)の動き方向に並んでいる画素の画素値のそれぞれに注目すると、動き方向に並んでいる画素の画素値には、対象物のほぼ同じ範囲の部位の画像が射影されている。従って、動きボケが生じている部分の、動き方向に並んでいる画素の画素値の変化は、より少なくなっていると言える。
【1658】
動き方向検出部11201は、このような入力画像の処理領域における画素の画素値の変化、すなわちアクティビティを基に、動き方向を検出する。
【1659】
より具体的には、動き方向検出部11201のアクティビティ演算部11211は、予め定めた方向毎に、各方向に並んでいる画素の画素値の変化(アクティビティ)を演算する。例えば、アクティビティ演算部11211は、予め定めた方向毎に、各方向に対応して位置する画素の画素値の差分をアクティビティとして演算する。アクティビティ演算部11211は、演算した画素値の変化を示す情報をアクティビティ評価部11212に供給する。
【1660】
アクティビティ評価部11212は、アクティビティ演算部11211から供給された、予め定めた方向毎の画素の画素値の変化の中の、最小の画素値の変化を選択し、選択した画素値の変化に対応する方向を動き方向とする。
【1661】
動き方向検出部11201は、このように検出した動き方向を示す動き方向情報を動き方向修正部11202に供給する。
【1662】
動き方向修正部11202には、処理領域情報も供給される。動き方向修正部11202は、動き方向検出部11201から供給された動き方向情報を基に、動き方向が画像の水平方向となるように入力画像における処理領域の中の画像データを変換する。
【1663】
例えば、動き方向修正部11202のアフィン変換部11213は、動き方向検出部11201から供給された動き方向情報を基に、動き方向情報で示される動き方向が画像の水平方向となるように入力画像における処理領域の中の画像データをアフィン変換する。
【1664】
動き方向修正部11202は、動き方向が画像の水平方向となるように変換された入力画像における処理領域の中の画像データを特徴量検出部11203に供給する。
【1665】
なお、ここでは、入力画像において、オブジェクトが水平方向(左から右方向)に移動していることを仮定しているので、定常性設定部15012は、動き方向検出部11201と動き方向修正部11202を設けずに構成することが可能である。
【1666】
特徴量検出部11203は、動き方向修正部11202から供給された画像の特徴量を検出する。
【1667】
すなわち、特徴量検出部11203の差分演算部11214は、入力画像の処理領域の画素から1つの画素を選択することにより、注目している注目画素とする。そして、特徴量検出部11203の差分演算部11214は、注目画素の画素値から、注目画素の右隣の画素の画素値を引き算することにより差分値を求める。
【1668】
差分演算部11214は、入力画像の処理領域の画素を順に注目画素として、差分値を求める。すなわち、差分演算部11214は、入力画像の処理領域の全ての画素に対して、差分値を求める。差分演算部11214は、差分値に対応する注目画素の位置を示す情報(差分値の画面上の位置を示す位置情報)と共に、このように演算された差分値を差分評価部11215に供給する。
【1669】
差分評価部11215は、差分値が0以上であるか否かを判定し、0以上である差分値を、差分値の画面上に位置を示す位置情報と共に、中間画像作成部11216に供給し、0未満である差分値を、差分値の画面上の位置を示す位置情報と共に、中間画像作成部11217に供給する。
【1670】
中間画像作成部11216は、差分値の画面上に位置を示す位置情報と共に、差分評価部11215から供給された0以上である差分値を基に、差分値からなる中間画像を作成する。すなわち、中間画像作成部11216は、位置情報で示される画面上の位置の画素に、差分評価部11215から差分値が供給された0以上である差分値を設定し、差分評価部11215から差分値が供給されなかった位置の画素に0を設定して、中間画像を作成する。中間画像作成部11216は、このように作成した中間画像(以下、非反転中間画像と称する。)をフレームメモリ11218に供給する。
【1671】
中間画像作成部11217は、差分値の画面上に位置を示す位置情報と共に、差分評価部11215から供給された0未満(負の値)である差分値を基に、差分値からなる中間画像を作成する。すなわち、中間画像作成部11217は、位置情報で示される画面上の位置の画素に、差分評価部11215から差分値が供給された0未満である差分値を設定し、差分評価部11215から差分値が供給されなかった位置の画素に0を設定して、中間画像を作成する。中間画像作成部11216は、このように作成した中間画像を符号反転部11219に供給する。
【1672】
符号反転部11219は、中間画像作成部11217から供給された中間画像の画素に設定されている、0未満である差分値の符号を反転する。中間画像の画素に設定されている0である値の符号は、反転されない。すなわち、符号反転部11219は、中間画像作成部11217から供給された中間画像の画素に設定されている、0未満である差分値を選択し、選択した0未満である差分値を、差分値と同じ絶対値の0を超える値に変換する。例えば、−15である差分値は、符号が反転され、15に変換される。符号反転部11219は、このように符号が反転された中間画像(以下、反転中間画像と称する。)をフレームメモリ11220に供給する。
【1673】
フレームメモリ11218は、0以上である差分値と0とからなる非反転中間画像を、特徴量として動き量検出部11204に供給する。フレームメモリ11220は、符号が反転され0を超える値とされた差分値と0とからなる反転中間画像を、特徴量として動き量検出部11204に供給する。
【1674】
動き量検出部11204は、特徴量検出部11203から供給された特徴量を基に、動きを検出する。すなわち、動き量検出部11204は、入力画像の処理領域における対象物の画像(オブジェクト)の画素の中の少なくとも注目画素の特徴と、注目画素に対して動き方向に沿って配される対応画素の特徴との相関を検出し、検出された相関に応じて、入力画像の処理領域における対象物の画像(オブジェクト)の動き量を検出する。
【1675】
動き量検出部11204の相関検出部11221は、特徴量検出部11203のフレームメモリ11218から供給された、特徴量としての、非反転中間画像と、特徴量検出部11203のフレームメモリ11220から供給された、特徴量としての、反転中間画像との相関を検出する。相関検出部11221は、検出された相関を相関評価部11222に供給する。
【1676】
より詳細に説明すれば、例えば、動き量検出部11204の相関検出部11221は、特徴量検出部11203のフレームメモリ11218から供給された、0以上である差分値と0とからなる非反転中間画像に対して、特徴量検出部11203のフレームメモリ11220から供給された、符号が反転され0を超える値とされた差分値と0とからなる反転中間画像を、画素を単位として、画面の水平方向に移動させる(ずらす(シフトさせる))。すなわち、相関検出部11221は、反転中間画像を構成する画素の画面上の位置を水平方向に移動させる。
【1677】
反転中間画像(の画素)を、画面上の水平方向に移動させることによって、非反転中間画像の画素と、反転中間画像の画素との画面上の位置の関係が変化する。例えば、移動前に、非反転中間画像の注目画素に対応する画面上の位置にある、反転中間画像の対応画素は、移動後において、移動量だけ、非反転中間画像の注目画素に対応する位置から離れることになる。より具体的には、反転中間画像を右に20画素移動したとき、反転中間画像の対応画素は、非反転中間画像の注目画素に対応する位置から右に20画素離れる。逆に言えば、移動後に、非反転中間画像の注目画素に対応する画面上の位置にある、反転中間画像の対応画素は、移動前において、注目画素に対応する位置から移動量だけ離れている。
【1678】
相関検出部11221は、非反転中間画像と、移動された反転中間画像との、対応する位置の画素の画素値の差分を演算し、差分の絶対値の和を相関値とする。
【1679】
例えば、相関検出部11221は、非反転中間画像に対して、反転中間画像を、画面の左方向に70画素乃至画面の右方向に70画素の範囲で、1画素ずつ画面の水平方向に移動させ(ずらして)、移動させた位置毎(移動量毎)に、非反転中間画像および移動された反転中間画像について、画面上の同じ位置となる画素の画素値の差分を演算し、差分の絶対値の和を相関値とする。
【1680】
例えば、非反転中間画像に対して反転中間画像を、画面の左方向に移動するとき、移動量を負(マイナス)で表す。非反転中間画像に対して反転中間画像を、画面の右方向に移動するとき、移動量を正(プラス)で表す。相関検出部11221は、−70画素乃至+70画素の移動量毎に、非反転中間画像および移動された反転中間画像について、画面上の同じ位置となる画素の画素値の差分を演算し、差分の絶対値の和を相関値とする。
【1681】
相関検出部11221は、移動量に対応する相関値を相関評価部11222に供給する。
すなわち、相関検出部11221は、移動量と相関値との組を相関評価部11222に供給する。
【1682】
相関評価部11222は、相関に応じて、入力画像の処理領域における対象物の画像の動き量を検出する。具体的には、相関評価部11222は、相関検出部11221から供給された相関のうち、最大の(最も強い)相関に対応する移動量を動き量とする。
【1683】
例えば、相関評価部11222は、相関検出部11221から供給された相関値である、差分の絶対値の和の内、最小の値を選択し、選択された最小の値に対応する移動量を動き量に設定する。
【1684】
相関評価部11222は、検出された動き量を出力する。
【1685】
図153乃至図155は、図152の定常性設定部15012による動き検出の原理を説明する図である。
【1686】
いま、撮像の対象物である、白い前景オブジェクトが、他の撮像の対象物である、黒い背景オブジェクトの前(手前)に配置され、左側から右側に移動しており、CCDまたはCMOSセンサなどのイメージセンサを有するカメラが、所定の露光時間(シャッタ時間)で、背景オブジェクトと共に、前景オブジェクトを撮像するものとする。
【1687】
この場合にカメラが出力する画像の1フレームに注目すると、背景オブジェクトは、黒いので、例えば、カメラは、背景オブジェクトの画像に対して0である画素値を出力する。前景オブジェクトは、白いので、例えば、カメラは、前景オブジェクトの画像に対して255である画素値を出力する。なお、ここでは、カメラが、0乃至2−1の範囲の画素値を出力するものであるとする。
【1688】
図153上側の図は、カメラのシャッタが開いた瞬間(露光を開始した瞬間)における位置に、前景オブジェクトが静止しているとき、カメラが出力する画像の画素値を示す図である。
【1689】
図153下側の図は、カメラのシャッタが閉じる瞬間(露光を終了する瞬間)における位置に、前景オブジェクトが静止しているとき、カメラが出力する画像の画素値を示す図である。
【1690】
図153で示されるように、前景オブジェクトの画像の動き量は、カメラのシャッタが開いた瞬間から、カメラのシャッタが閉じる瞬間までに、前景オブジェクトの画像が移動した距離である。
【1691】
図154は、背景オブジェクトの前を移動する前景オブジェクトをカメラで撮像したときに、カメラから出力される画像の画素値を示す図である。カメラのイメージセンサは、露光時間(シャッタ時間)において、画素毎に対象物の画像(光)を連続的に電荷に変換し、さらに電荷を1つの画像値に変換するので、前景オブジェクト11251の画像は、複数の画素の画素値に射影される。図153で示される画像の画素値の最大値に比較して、図154で示される画像の画素値の最大値は小さくなる。
【1692】
図154で示される画素値のスロープの幅は、背景オブジェクトの画像の幅に対応する。
【1693】
図154で示される画像の個々の画素について、右隣の画素との差分値を計算し、差分値を画素に設定すると、図155に示される、差分値からなる画像が得られる。
【1694】
すなわち、図154で示される画像の画素から1つの画素が選択され、注目している注目画素とされる。そして、注目画素の画素値から、注目画素の右隣の画素の画素値が引き算されることにより差分値が求められる。差分値は、注目画素に対応する位置の画素に設定される。図154で示される画像の画素が順に注目画素とされ、図155で示される差分値からなる画像が求められる。
【1695】
図153上側の図で示される、カメラのシャッタが開いた瞬間における、前景オブジェクトの位置に対して1画素左側に、符号が負(マイナス)である差分値が現れ、図153下側の図で示される、カメラのシャッタが閉じる瞬間における、前景オブジェクトの位置に対して1画素左側に、符号が正(プラス)である差分値が現れる。
【1696】
従って、図155で示される、符号が負(マイナス)である差分値の符号を反転した値と、符号が正(プラス)である差分値とのマッチングをとると、例えば、マッチングしたときの、符号が正(プラス)である差分値を基準とした、符号が負(マイナス)である差分値の符号を反転した値の移動量は、動き量と同じである。
【1697】
例えば、符号が正(プラス)である差分値を基準として、符号が負(マイナス)である差分値の符号を反転した値が水平方向に移動され、その移動量毎に、負である差分値を反転した値と正である差分値との相関が検出され、最大の(最も強い)相関が検出される。最大の相関が検出されたときの移動量は、動き量と同じである。
【1698】
より具体的には、例えば、符号が正(プラス)である差分値を基準として、符号が負(マイナス)である差分値の符号を反転した値が水平方向に移動され、その移動量毎に、負である差分値を反転した値と正である差分値との相関として、画素毎に、反転した値から正の差分値が引き算される。そして、引き算した結果の内の最小の値、すなわち最大の相関が検出される。検出された最大の相関に対応する移動量は、動き量と同じである。
【1699】
以上のように、画像の1フレームから、露光時間(シャッタ時間)において、対象物の画像が移動した量である動き量を検出することができる。
【1700】
すなわち、特徴量検出部11203の差分演算部11214は、入力画像の処理領域における画素から1つの画素を選択して、注目画素とし、注目画素の画素値から、注目画素の右隣の画素の画素値を引き算することにより、例えば、図155で示される差分値を演算する。差分評価部11215は、差分の符号を基に、正の差分値と負の差分値とに分類する。
【1701】
中間画像作成部11216は、分類された正の差分値から、その正の差分値からなる非反転中間画像を作成する。中間画像作成部11217は、分類された負の差分値から、その負の差分値からなる中間画像を作成する。符号反転部11219は、負の差分値からなる中間画像の負の画素値の符号を反転することにより、反転中間画像を作成する。
【1702】
動き量検出部11204は、相関が最も強い非反転中間画像と反転中間画像との移動量を求めて、求められた移動量を動き量とする。
【1703】
特徴量検出部11203が、動いている対象物の画像(オブジェクト)を検出し、動いている対象物の画像の特徴量を検出したとき、動き量検出部11204は、特徴量を基に相関を検出し、検出された相関に応じて、入力画像内の対象物の画像(オブジェクト)の動き量を検出する。
【1704】
また、特徴量検出部11203が、動いている対象物の画像に属する画素から注目している画素である注目画素を選択し、注目画素の特徴量を検出したとき、動き量検出部11204は、注目画素の特徴量と、注目画素に対して動き方向に沿って配される対応画素の特徴量との相関を検出し、検出された相関に応じて、入力画像の処理領域における対象物の画像の動き量を検出する。
【1705】
図156は、図152の定常性設定部15012による動き量の検出の処理を説明するフローチャートである。
【1706】
ステップS11201において、動き方向検出部11201および動き方向修正部11202は、入力画像と処理領域情報を取得し、ステップS11202に進む。
【1707】
ステップS11202において、動き方向検出部112011のアクティビティ演算部11211は、ステップS11201の処理により取得された入力画像における処理領域の画素について、アクティビティを演算し、ステップS11203に進む。
【1708】
例えば、アクティビティ演算部11211は、入力画像における処理領域の画素のうち、注目している画素である注目画素を選択する。アクティビティ演算部11211は、注目画素の周辺の所定の数の周辺画素を抽出する。例えば、アクティビティ演算部11211は、注目画素を中心とした、縦×横が5×5の画素からなる周辺画素を抽出する。
【1709】
そして、アクティビティ演算部11211は、抽出した周辺画素から、予め定めた画像上の方向に対応するアクティビティを検出する。
【1710】
以下の説明において、横方向の画素の1列の並びを行と称し、縦方向の画素の1列の並びを列と称する。
【1711】
アクティビティ演算部11211は、例えば、5×5の周辺画素について、画面上の上下方向(垂直)に隣接する画素の画素値の差分を算出して、算出された差分の絶対値の総和を差分の数で割り、その結果をアクティビティとすることにより、画面の水平方向を基準として、90度の角度(画面の垂直方向)に対する、アクティビティを検出する。
【1712】
例えば、20組の、画面上の上下方向に隣接する2つの画素について、画素値の差分が算出され、算出された差分の絶対値の和が20で割り算され、その結果(商)が、90度の角度に対するアクティビティに設定される。
【1713】
アクティビティ演算部11211は、例えば、5×5の周辺画素について、最も下の行の画素であって、最も左側の画素乃至左から4番目の画素のそれぞれの画素値と、それぞれの画素に対して、4画素上側であって、1画素右側の画素の画素値との差分を算出して、算出された差分の絶対値の総和を差分の数で割り、その結果をアクティビティとすることにより、画面の水平方向を基準として、76度の角度(tan−1(4/1))に対する、アクティビティを検出する。
【1714】
そして、例えば、4組の、右上方向であって、上下方向に4画素、および左右方向に1画素離れた位置にある2つの画素について、画素値の差分が算出され、算出された差分の絶対値の和が4で割り算され、その結果(商)が、76度の角度に対するアクティビティに設定される。
【1715】
アクティビティ演算部11211は、同様の処理で、画面の水平方向を基準として、90度乃至180度の範囲の角度に対するアクティビティを検出する。90度乃至180度の範囲の角度に対するアクティビティを検出する場合、左上方向に位置する画素の画素値の差分を基に、アクティビティが算出される。
【1716】
このように検出されたアクティビティは、注目画素に対するアクティビティとされる。
【1717】
なお、検出されたアクティビティを、周辺画素に対するアクティビティとするようにしてもよい。
【1718】
また、周辺画素は、縦×横が5×5の画素からなると説明したが、5×5の画素に限らず、所望の範囲の画素とすることができる。周辺画素の数が多い場合、角度の分解能が向上する。
【1719】
アクティビティ演算部11211は、複数の方向に対応するアクティビティを示す情報をアクティビティ評価部11212に供給する。
【1720】
図156に戻り、ステップS11203において、アクティビティ評価部11212は、ステップS11202の処理において算出された、所定の方向に対応するアクティビティを基に、最小のアクティビティを選択し、選択された方向を動き方向とすることにより、動き方向を求めて、ステップS11204に進む。
【1721】
ステップS11204において、動き方向修正部11202は、ステップS11203の処理において求められた動き方向を基に、動き方向が画像の水平方向となるように入力画像の処理領域における画像データを変換し、ステップS11205に進む。例えば、ステップS11204において、動き方向修正部11202のアフィン変換部11213は、ステップS11203の処理において求められた動き方向を基に、動き方向が画像の水平方向となるように入力画像の処理領域における画像データをアフィン変換する。
より具体的には、例えば、アフィン変換部11213は、画面の水平方向を基準として、動き方向が18度の角度であるとき、入力画像の処理領域における画像データを時計方向に18度回動するようにアフィン変換する。
【1722】
ステップS11205において、特徴量検出部11203の差分演算部11214は、ステップS11204の処理において、動き方向が画面の水平方向となるように変換された入力画像の処理領域における各画素について、水平方向に隣接する画素との画素値の差分値を演算し、ステップS11206に進む。
【1723】
例えば、ステップS11205において、差分演算部11214は、入力画像の処理領域における画素から1つの画素を選択することにより、注目している注目画素とする。そして、差分演算部11214は、注目画素の画素値から、注目画素の右隣の画素の画素値を引き算することにより差分値を求める。
【1724】
ステップS11206において、特徴量検出部11203の差分評価部11215は、差分値の符号を基に、差分値を振り分け、ステップS11207に進む。すなわち、差分評価部11215は、0以上である差分値を中間画像作成部11216に供給し、0未満である差分値を中間画像作成部11217に供給する。この場合において、差分評価部11215は、差分値の画面上に位置を示す位置情報と共に、差分値を中間画像作成部11216または中間画像作成部11217に供給する。
【1725】
ステップS11207において、特徴量検出部11203の中間画像作成部11216は、ステップS11206の処理で振り分けられた、0以上である差分値(正の差分値)を基に、正の差分値からなる中間画像を生成し、ステップS11208に進む。すなわち、ステップS11207において、中間画像作成部11216は、位置情報で示される画面上の位置の画素に正の差分値を設定し、差分値が供給されなかった位置の画素に0を設定することにより、中間画像を作成する。
【1726】
このように、ステップS11207の処理において、非反転中間画像が生成される。
【1727】
ステップS11208において、特徴量検出部11203の中間画像作成部11217は、ステップS11206の処理で振り分けられた、0未満である差分値(負の差分値)を基に、負の差分値からなる中間画像を生成し、ステップS11209に進む。すなわち、ステップS11208において、中間画像作成部11217は、位置情報で示される画面上の位置の画素に負の差分値を設定し、差分値が供給されなかった位置の画素に0を設定することにより、中間画像を作成する。
【1728】
ステップS11209において、特徴量検出部11203の符号反転部11219は、ステップS11208の処理で生成された負の差分値からなる中間画像の負の差分値の符号を反転する。すなわち、ステップS11209において、負の中間画像の画素に設定されている、負の差分値が、同じ絶対値の正の値に変換される。
【1729】
このように、ステップS11209において、反転中間画像が生成され、その後、ステップS11210に進む。
【1730】
ステップS11210において、動き量検出部11204は、相関の検出の処理を実行する。ステップS11210の処理の詳細は、図157のフローチャートを参照して、後述する。
【1731】
ステップS11211において、相関評価部11222は、ステップS11210の処理で検出された相関のうち、最も強い相関を選択し、ステップS11212に進む。例えば、ステップS11211において、画素値の差分の絶対値の和である相関値のうち、最小の相関値が選択される。
【1732】
ステップS11212において、相関評価部11222は、ステップS11211の処理で選択された、最も強い相関に対応する移動量を動き量に設定して、ステップS11213に進む。例えば、ステップS11212において、画素値の差分の絶対値の和である相関値のうち、選択された最小の相関値に対応して、後述するステップS11223の処理により記憶されている、反転中間画像の移動量が動き量に設定される。
【1733】
ステップS11213において、動き量検出部11204は、ステップS11210の処理において検出した動き量を出力して、処理は終了する。
【1734】
図157は、ステップS11210の処理に対応する、相関の検出の処理を説明するフローチャートである。
【1735】
ステップS11221において、動き量検出部11204の相関検出部11221は、ステップS11209の処理で生成された、反転中間画像の画素の位置を、画素を単位として水平方向に移動し、ステップS11222に進む。
【1736】
ステップS11222において、相関検出部11221は、非反転中間画像と、ステップS11221の処理において、画素の位置が移動された反転中間画像との相関を検出し、ステップS11223に進む。例えば、ステップS11222において、非反転中間画像の画素の画素値と、画面上で対応する位置の、反転中間画像の画素の画素値との差分が算出され、算出された差分の絶対値の和が相関値として検出される。相関検出部11221は、ステップS11221の処理における反転中間画像の画素の移動量と共に、検出された相関を示す相関情報を相関評価部11222に供給する。
【1737】
ステップS11223において、相関評価部11222は、ステップS11221の処理における反転中間画像の画素の移動量と共に、ステップS11222の処理において検出された相関を記憶し、ステップS11224に進む。例えば、相関評価部11222は、ステップS11221の処理における反転中間画像の画素の移動量と共に、画素値の差分の絶対値の和である相関値を記憶する。
【1738】
ステップS11224において、相関検出部11221は、全ての移動量に対する相関を検出したか否かを判定し、まだ相関を検出していない移動量があると判定された場合、ステップS11221に戻り、次の移動量に対する相関を検出する処理を繰り返す。
【1739】
例えば、ステップS11224において、相関検出部11221は、画面の左方向に70画素乃至画面の右方向に70画素の範囲で、反転中間画像の画素を移動したときの相関を全て検出したか否かを判定する。
【1740】
ステップS11224において、全ての移動量に対する相関を検出したと判定された場合、処理は終了する(リターンする)。
【1741】
このように、相関検出部11221は、相関を検出することができる。
【1742】
以上のように、図152に構成を示す定常性設定部15012は、画像の1つのフレームから、動き量を検出することができる。
【1743】
なお、ここでは、処理領域を対象として動きを検出するようにしたが、全画面を処理対象とすることで、例えば、手振れにより発生した全画面の動きを検出することができる。
【1744】
また、入力画像に同じ模様の繰り返しパターンが多く含まれていても、処理の対象となる入力画像の処理領域の動き量および動き方向が一定であれば、正確に動き量を検出することができる。
【1745】
なお、上述の場合には、画像の1つのフレームから動き量を検出すると説明したが、1つのフィールドから動き量を検出するようにしてもよいことは勿論である。
【1746】
また、選択した注目画素の周辺についてのみ、動き量を検出するようにしてもよい。
【1747】
【発明の効果】
以上のごとく本発明によれば、現実世界の信号により近似した画像等を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を示す図である。
【図2】信号処理装置4のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【図3】図1の信号処理装置4の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図4】信号処理装置4の信号処理の原理をより具体的に説明する図である。
【図5】イメージセンサ上の画素の配置の例を説明する図である。
【図6】CCDである検出素子の動作を説明する図である。
【図7】画素D乃至画素Fに対応する検出素子に入射される光と、画素値との関係を説明する図である。
【図8】時間の経過と、1つの画素に対応する検出素子に入射される光と、画素値との関係を説明する図である。
【図9】実世界1の線状の物の画像の例を示す図である。
【図10】実際の撮像により得られた画像データの画素値の例を示す図である。
【図11】背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像の例を示す図である。
【図12】実際の撮像により得られた画像データの画素値の例を示す図である。
【図13】画像データの模式図である。
【図14】M個のデータ162によるモデル161の推定を説明する図である。
【図15】実世界1の信号とデータ3との関係を説明する図である。
【図16】式を立てるときに注目するデータ3の例を示す図である。
【図17】式を立てる場合における、実世界1における2つの物体に対する信号および混合領域に属する値を説明する図である。
【図18】式(18)、式(19)、および式(22)で表される定常性を説明する図である。
【図19】データ3から抽出される、M個のデータ162の例を示す図である。
【図20】データ3における、時間方向および2次元の空間方向の実世界1の信号の積分を説明する図である。
【図21】空間方向により解像度の高い高解像度データを生成するときの、積分の領域を説明する図である。
【図22】時間方向により解像度の高い高解像度データを生成するときの、積分の領域を説明する図である。
【図23】時間空間方向により解像度の高い高解像度データを生成するときの、積分の領域を説明する図である。
【図24】入力画像の元の画像を示す図である。
【図25】入力画像の例を示す図である。
【図26】従来のクラス分類適応処理を適用して得られた画像を示す図である。
【図27】細線の領域を検出した結果を示す図である。
【図28】信号処理装置4から出力された出力画像の例を示す図である。
【図29】信号処理装置4による、信号の処理を説明するフローチャートである。
【図30】データ定常性検出部101の構成を示すブロック図である。
【図31】背景の前に細線がある実世界1の画像を示す図である。
【図32】平面による背景の近似を説明する図である。
【図33】細線の画像が射影された画像データの断面形状を示す図である。
【図34】細線の画像が射影された画像データの断面形状を示す図である。
【図35】細線の画像が射影された画像データの断面形状を示す図である。
【図36】頂点の検出および単調増減領域の検出の処理を説明する図である。
【図37】頂点の画素値が閾値を超え、隣接する画素の画素値が閾値以下である細線領域を検出する処理を説明する図である。
【図38】図37の点線AA’で示す方向に並ぶ画素の画素値を表す図である。
【図39】単調増減領域の連続性の検出の処理を説明する図である。
【図40】細線の画像が射影された領域の検出の他の処理の例を示す図である。
【図41】定常性検出の処理を説明するフローチャートである。
【図42】時間方向のデータの定常性を検出の処理を説明する図である。
【図43】非定常成分抽出部201の構成を示すブロック図である。
【図44】棄却される回数を説明する図である。
【図45】非定常成分の抽出の処理を説明するフローチャートである。
【図46】定常成分の抽出の処理を説明するフローチャートである。
【図47】定常成分の抽出の他の処理を説明するフローチャートである。
【図48】定常成分の抽出のさらに他の処理を説明するフローチャートである。
【図49】データ定常性検出部101の他の構成を示すブロック図である。
【図50】データの定常性を有する入力画像におけるアクティビティを説明する図である。
【図51】アクティビティを検出するためのブロックを説明する図である。
【図52】アクティビティに対するデータの定常性の角度を説明する図である。
【図53】データ定常性検出部101のより詳細な構成を示すブロック図である。
【図54】画素の組を説明する図である。
【図55】画素の組の位置とデータの定常性の角度との関係を説明する図である。
【図56】データの定常性の検出の処理を説明するフローチャートである。
【図57】時間方向および空間方向のデータの定常性の角度を検出するとき、抽出される画素の組を示す図である。
【図58】図3の実世界推定部の実施の形態の1例である、関数近似手法の原理を説明する図である。
【図59】センサがCCDとされる場合の積分効果を説明する図である。
【図60】図59のセンサの積分効果の具体的な例を説明する図である。
【図61】図59のセンサの積分効果の具体的な他の例を説明する図である。
【図62】図60で示される細線含有実世界領域を表した図である。
【図63】図3の実世界推定部の実施の形態の1例の原理を、図58の例と対比させて説明する図である。
【図64】図60で示される細線含有データ領域を表した図である。
【図65】図64の細線含有データ領域に含まれる各画素値のそれぞれをグラフ化した図である。
【図66】図65の細線含有データ領域に含まれる各画素値を近似した近似関数をグラフ化した図である。
【図67】図60で示される細線含有実世界領域が有する空間方向の定常性を説明する図である。
【図68】図64の細線含有データ領域に含まれる各画素値のそれぞれをグラフ化した図である。
【図69】図68で示される入力画素値のそれぞれを、所定のシフト量だけシフトさせた状態を説明する図である。
【図70】空間方向の定常性を考慮して、図65の細線含有データ領域に含まれる各画素値を近似した近似関数をグラフ化した図である。
【図71】空間混合領域を説明する図である。
【図72】空間混合領域における、実世界の信号を近似した近似関数を説明する図である。
【図73】センサの積分特性と空間方向の定常性の両方を考慮して、図65の細線含有データ領域に対応する実世界の信号を近似した近似関数をグラフ化した図である。
【図74】図58で示される原理を有する関数近似手法のうちの、1次多項式近似手法を利用する実世界推定部の構成例を説明するブロック図である。
【図75】図74の構成の実世界推定部が実行する実世界の推定処理を説明するフローチャートである。
【図76】タップ範囲を説明する図である。
【図77】空間方向の定常性を有する実世界の信号を説明する図である。
【図78】センサがCCDとされる場合の積分効果を説明する図である。
【図79】断面方向距離を説明する図である。
【図80】図58で示される原理を有する関数近似手法のうちの、2次多項式近似手法を利用する実世界推定部の構成例を説明するブロック図である。
【図81】図80の構成の実世界推定部が実行する実世界の推定処理を説明するフローチャートである。
【図82】タップ範囲を説明する図である。
【図83】時空間方向の定常性の方向を説明する図である。
【図84】センサがCCDとされる場合の積分効果を説明する図である。
【図85】空間方向の定常性を有する実世界の信号を説明する図である。
【図86】時空間方向の定常性を有する実世界の信号を説明する図である。
【図87】図58で示される原理を有する関数近似手法のうちの、3次元近似手法を利用する実世界推定部の構成例を説明するブロック図である。
【図88】図87の構成の実世界推定部が実行する実世界の推定処理を説明するフローチャートである。
【図89】図3の画像生成部の実施の形態の1例である、再積分手法の原理を説明する図である。
【図90】入力画素と、その入力画素に対応する、実世界の信号を近似する近似関数の例を説明する図である。
【図91】図90で示される近似関数から、図90で示される1つの入力画素における、高解像度の4つの画素を創造する例を説明する図である。
【図92】図89で示される原理を有する再積分手法のうちの、1次元再積分手法を利用する画像生成部の構成例を説明するブロック図である。
【図93】図92の構成の画像生成部が実行する画像の生成処理を説明するフローチャートである。
【図94】入力画像の元の画像の例を表す図である。
【図95】図94の画像に対応する画像データの例を表す図である。
【図96】入力画像の例を表す図である。
【図97】図96の画像に対応する画像データの例を表す図である。
【図98】入力画像に対して従来のクラス分類適応処理を施して得られる画像の例を表す図である。
【図99】図98の画像に対応する画像データの例を表す図である。
【図100】入力画像に対して1次元再積分手法の処理を施して得られる画像の例を表す図である。
【図101】図100の画像に対応する画像データの例を表す図である。
【図102】空間方向の定常性を有する実世界の信号を説明する図である。
【図103】図89で示される原理を有する再積分手法のうちの、2次元再積分手法を利用する画像生成部の構成例を説明するブロック図である。
【図104】断面方向距離を説明する図である。
【図105】図103の構成の画像生成部が実行する画像の生成処理を説明するフローチャートである。
【図106】入力画素の1例を説明する図である。
【図107】2次元再積分手法により、図106で示される1つの入力画素における、高解像度の4つの画素を創造する例を説明する図である。
【図108】時空間方向の定常性の方向を説明する図である。
【図109】図89で示される原理を有する再積分手法のうちの、3次元再積分手法を利用する画像生成部の構成例を説明するブロック図である。
【図110】図109の構成の画像生成部が実行する画像の生成処理を説明するフローチャートである。
【図111】図1の信号処理装置4の他の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図112】図111の信号処理装置4の処理を説明するフローチャートである。
【図113】図111の信号処理装置4の応用例の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図114】図113の信号処理装置4の処理を説明するフローチャートである。
【図115】実世界1の光信号を説明する図である。
【図116】センサ2がCCDとされる場合の積分効果について説明する図である。
【図117】実世界1の近似関数f(x,y)を表した図である。
【図118】図113の信号処理装置4に入力される入力画像と、処理領域について説明する図である。
【図119】図113の信号処理装置4で設定される処理領域の例について説明する図である。
【図120】図120の近似関数f(x,y)のうちの、yの値が所定の値y(y=y)のX断面の近似関数f(x)を示す図である。
【図121】図120の近似関数f(x)の1/v時間後を示す図である。
【図122】図121の近似関数f(x)の1/v時間後を示す図である。
【図123】入力画像に撮像される物体が、シャッタ時間あたりv画素で動くときの動き方を説明する図である。
【図124】図120に示した、所定の瞬時のタイミングにおける、y=yの近似関数f(x)を、X−t平面で表した図である。
【図125】図124の画素値Q乃至Qに対応するように、動きボケが生じている画素値P乃至Pを、X−t平面で表した図である。
【図126】入力画像の画素値P乃至Pを図124の画素値Q乃至Qで表した図である。
【図127】図126の空白領域に対して、処理領域の端部を「平坦である」と仮定して解く方法を説明する図である。
【図128】図119の処理領域における、注目ラインを説明する図である。
【図129】図113の実世界推定部15013の構成例を示すブロック図である。
【図130】図114のステップS15008の実世界推定処理を説明するフローチャートである。
【図131】図114のステップS15008の実世界推定処理を説明するフローチャートである。
【図132】図113の信号処理装置4に入力される入力画像を示す図である。
【図133】図113の信号処理装置4が、図132の入力画像を、処理領域の端部を「平坦である」と仮定した式を付加する、第1の方法により処理し、出力した画像を示す図である。
【図134】図113の信号処理装置4が、図132の入力画像を、隣接する画素値の関係を拘束する条件式を付加する、第2の方法により処理し、出力した画像を示す図である。
【図135】図111の信号処理装置4の応用例の他の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図136】図135の信号処理装置4の処理を説明するフローチャートである。
【図137】図135の実世界推定部15083の構成例を示すブロック図である。
【図138】図136のステップS15088の実世界推定処理を説明するフローチャートである。
【図139】図136のステップS15088の実世界推定処理を説明するフローチャートである。
【図140】図111の信号処理装置4の応用例の他の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図141】図140の信号処理装置4の処理を説明するフローチャートである。
【図142】図140の実世界推定部15113の構成例を示すブロック図である。
【図143】図141のステップS15168の実世界推定処理を説明するフローチャートである。
【図144】図140の信号処理装置4に入力される入力画像を示す図である。
【図145】図144の入力画像を、図135の信号処理装置4が、拘束条件式に対する重みWbjを、全ての拘束条件式について、同じ重みとして処理した出力画像の例を示す図である。
【図146】図144の入力画像を、図140の信号処理装置4が、拘束条件式に対する重みWbjを、入力画像のアクティビティに応じて、0または1として処理した出力画像の例を示す図である。
【図147】図111の信号処理装置4の応用例の他の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図148】図147の信号処理装置4の処理を説明するフローチャートである。
【図149】図147の実世界推定部15153の構成例を示すブロック図である。
【図150】図148のステップS15218の実世界推定処理を説明するフローチャートである。
【図151】図148のステップS15218の実世界推定処理を説明するフローチャートである。
【図152】図113の定常性設定部15012の構成例を示すブロック図である。
【図153】動き量を説明する図である。
【図154】背景オブジェクトの前を移動する前景オブジェクトをカメラで撮像したときに、カメラから出力される画像の画素値を示す図である。
【図155】図154で示される画像の画素の画素値の差分値を示す図である。
【図156】動き量の検出の処理を説明するフローチャートである。
【図157】相関の検出の処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
4 信号処理装置, 21 CPU, 22 ROM, 23 RAM, 28 記憶部, 51 磁気ディスク, 52 光ディスク, 53 光磁気ディスク, 54 半導体メモリ, 101 データ定常性検出部, 102 実世界推定部, 103 画像生成部, 15011 処理領域設定部, 15012 定常性設定部, 15013 実世界推定部, 15014 画像生成部, 15015 画像表示部, 15016 ユーザI/F, 15021 モデル生成部, 15022 方程式生成部, 15023 実世界波形推定部, 15061 拘束条件設定部, 15062 正規方程式生成部, 15081 処理領域設定部, 15082 定常性設定部, 15083 実世界推定部, 15084 画像生成部, 15085 画像表示部, 15086 ユーザI/F, 15091 モデル生成部, 15092 方程式生成部, 15093 実世界波形推定部, 15101 拘束条件設定部, 15102 重み変更部, 15103 正規方程式生成部, 15111 処理領域設定部, 15112 定常性設定部, 15113 実世界推定部, 15114 画像生成部, 15115 画像表示部, 15116 ユーザI/F, 15121 モデル生成部, 15122 方程式生成部, 15123 実世界波形推定部, 15131 拘束条件設定部, 15132 アクティビティ検出部, 15133 重み変更部, 15134 正規方程式生成部, 15151 処理領域設定部, 15152 定常性設定部, 15153 実世界推定部, 15154 画像生成部, 15155 画像表示部, 15156 ユーザI/F, 15161 モデル生成部, 15162 方程式生成部, 15163 実世界波形推定部, 15171 拘束条件設定部, 15172 重み変更部, 15173 正規方程式生成部

Claims (5)

  1. それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定する処理領域設定手段と、
    前記画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する前記画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定手段と、
    前記処理領域内の各画素の画素値は、前記オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が前記動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、前記処理領域内の各画素の画素値と、前記動きボケが生じていない各画素の画素値との関係をモデル化するモデル生成手段と、
    前記モデル生成手段により生成されたモデルに対して、前記処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式と、前記動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式とにより正規方程式を生成する正規方程式生成手段と、
    前記処理領域内の各画素に対応するアクティビティを検出するアクティビティ検出手段と、
    前記アクティビティ検出手段による検出結果に応じて、前記第1及び第2の方程式の一部に対する重みを変更する重み変更手段と、
    前記正規方程式生成手段により生成され、前記重み変更手段により重みが変更された前記正規方程式を演算することにより前記動きボケが生じていない各画素の画素値を推定する実世界推定手段とを備えることを特徴とする信号処理装置。
  2. 前記重み変更手段は、前記画像データの前記処理領域内の注目画素に対応する、前記アクティビティが所定の閾値以上であるとき、前記注目画素に対応する、前記第1及び第2の方程式の一部に対する重みを0に変更することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
  3. それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定する処理領域設定ステップと、
    前記画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する前記画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、
    前記処理領域内の各画素の画素値は、前記オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が前記動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、前記処理領域内の各画素の画素値と、前記動きボケが生じていない各画素の画素値との関係をモデル化するモデル生成ステップと、
    前記モデル生成ステップの処理により生成されたモデルに対して、前記処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式と、前記動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式とにより正規方程式を生成する正規方程式生成ステップと、
    前記処理領域内の各画素に対応するアクティビティを検出するアクティビティ検出ステップと、
    前記アクティビティ検出ステップの処理による検出結果に応じて、前記第1及び第2の方程式の一部に対する重みを変更する重み変更ステップと、
    前記正規方程式生成ステップにより生成され、前記重み変更ステップにより重みが変更された前記正規方程式を演算することにより前記動きボケが生じていない各画素の画素値を推定する実世界推定ステップとを含むことを特徴とする信号処理方法。
  4. コンピュータに所定の信号処理を行わせるプログラムにおいて、
    それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定する処理領域設定ステップと、
    前記画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する前記画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、
    前記処理領域内の各画素の画素値は、前記オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が前記動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、前記処理領域内の各画素の画素値と、前記動きボケが生じていない各画素の画素値との関係をモデル化するモデル生成ステップと、
    前記モデル生成ステップの処理により生成されたモデルに対して、前記処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式と、前記動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式とにより正規方程式を生成する正規方程式生成ステップと、
    前記処理領域内の各画素に対応するアクティビティを検出するアクティビティ検出ステップと、
    前記アクティビティ検出ステップの処理による検出結果に応じて、前記第1及び第2の方程式の一部に対する重みを変更する重み変更ステップと、
    前記正規方程式生成ステップにより生成され、前記重み変更ステップにより重みが変更された前記正規方程式を演算することにより前記動きボケが生じていない各画素の画素値を推定する実世界推定ステップとを含むことを特徴とするプログラム。
  5. コンピュータに所定の信号処理を行わせるプログラムが記録されている記録媒体において、
    それぞれ時間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定する処理領域設定ステップと、
    前記画像データにおいて定常性の一部が欠落した現実世界の光信号の定常性に対応する前記画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、
    前記処理領域内の各画素の画素値は、前記オブジェクトに対応する動きボケが生じていない各画素の画素値が前記動きベクトルに対応して移動しながら積分された値であるとして、前記処理領域内の各画素の画素値と、前記動きボケが生じていない各画素の画素値との関係をモデル化するモデル生成ステップと、
    前記モデル生成ステップの処理により生成されたモデルに対して、前記処理領域内の各画素の画素値を代入した第1の方程式と、前記動きボケが生じていない各画素間の関係を拘束する第2の方程式とにより正規方程式を生成する正規方程式生成ステップと、
    前記処理領域内の各画素に対応するアクティビティを検出するアクティビティ検出ステップと、
    前記アクティビティ検出ステップの処理による検出結果に応じて、前記第1及び第2の方程式の一部に対する重みを変更する重み変更ステップと、
    前記正規方程式生成ステップにより生成され、前記重み変更ステップにより重みが変更された前記正規方程式を演算することにより前記動きボケが生じていない各画素の画素値を推定する実世界推定ステップとを含むプログラムが記録されていることを特徴とする記録媒体。
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