JP4325296B2 - 信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体 - Google Patents

信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体に関し、特に、現実世界の信号により近似した画像等を得ることができるようにする信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
実世界(現実世界)における事象をセンサで検出し、センサが出力するサンプリングデータを処理する技術が広く利用されている。例えば、実世界をイメージセンサで撮像し、画像データであるサンプリングデータを処理する画像処理技術が広く利用されている。
【0003】
また、第1の次元を有する現実世界の信号である第1の信号をセンサによって検出することにより得た、第1の次元に比較し次元が少ない第2の次元を有し、第1の信号に対する歪を含む第2の信号を取得し、第2の信号に基づく信号処理を行うことにより、第2の信号に比して歪の軽減された第3の信号を生成するようにしているものもある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−250119号公報。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来においては、現実世界の信号の定常性を考慮した信号処理が行われていなかったため、現実世界の信号により近似した画像等を得ることが困難であることがあった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、現実世界の信号により近似した画像等を得ることができるようにするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の信号処理装置は、現実世界の光信号は、物からの光信号の強度の分布における当該物の長さ方向の任意の位置において、当該長さ方向に直交する方向の位置の変化に対応するレベルの変化としての断面形状が同じであるという現実世界の光信号の定常性を有し、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定手段と、画像データの空間方向のうちの所定の1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した現実世界の光信号に対応する実世界関数が、動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、所定の1次元方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、実世界関数を推定する実世界推定手段とを備える信号処理装置である。
【0008】
本発明の信号処理方法は、現実世界の光信号は、物からの光信号の強度の分布における当該物の長さ方向の任意の位置において、当該長さ方向に直交する方向の位置の変化に対応するレベルの変化としての断面形状が同じであるという現実世界の光信号の定常性を有し、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、画像データの空間方向のうちの所定の1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した現実世界の光信号に対応する実世界関数が、動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、所定の1次元方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、実世界関数を推定する実世界推定ステップとを備える信号処理方法である。
【0009】
本発明プログラムは、現実世界の光信号は、物からの光信号の強度の分布における当該物の長さ方向の任意の位置において、当該長さ方向に直交する方向の位置の変化に対応するレベルの変化としての断面形状が同じであるという現実世界の光信号の定常性を有し、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、画像データの空間方向のうちの所定の1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した現実世界の光信号に対応する実世界関数が、動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、所定の1次元方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、実世界関数を推定する実世界推定ステップとを備える信号処理をコンピュータに行わせるためのプログラムである。
【0010】
本発明の記録媒体は、現実世界の光信号は、物からの光信号の強度の分布における当該物の長さ方向の任意の位置において、当該長さ方向に直交する方向の位置の変化に対応するレベルの変化としての断面形状が同じであるという現実世界の光信号の定常性を有し、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、画像データの空間方向のうちの所定の1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した現実世界の光信号に対応する実世界関数が、動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、所定の1次元方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、実世界関数を推定する実世界推定ステップとを備える信号処理をコンピュータに行わせるためのプログラムが記録されている記録媒体である
【0011】
本発明の信号処理装置および信号処理方法、並びにプログラムおよび記録媒体においては、現実世界の光信号は、物からの光信号の強度の分布における当該物の長さ方向の任意の位置において、当該長さ方向に直交する方向の位置の変化に対応するレベルの変化としての断面形状が同じであるという現実世界の光信号の定常性を有することを前提として、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内のオブジェクトの動きベクトルが設定され、画像データの空間方向のうちの所定の1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した現実世界の光信号に対応する実世界関数が、動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、所定の1次元方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、実世界関数が推定される。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の原理を表している。同図で示されるように、空間、時間、および質量の次元を有する実世界1の事象(現象)は、センサ2により取得され、データ化される。実世界1の事象とは、光(画像)、音声、圧力、温度、質量、濃度、明るさ/暗さ、またはにおいなどをいう。実世界1の事象は、時空間方向に分布している。例えば、実世界1の画像は、実世界1の光の強度の時空間方向の分布である。
【0018】
センサ2に注目すると、空間、時間、および質量の次元を有する実世界1の事象のうち、センサ2が取得可能な、実世界1の事象が、センサ2により、データ3に変換される。センサ2によって、実世界1の事象を示す情報が取得されるとも言える。
【0019】
すなわち、センサ2は、実世界1の事象を示す情報を、データ3に変換する。空間、時間、および質量の次元を有する実世界1の事象(現象)を示す情報である信号がセンサ2により取得され、データ化されるとも言える。
【0020】
以下、実世界1における、画像、音声、圧力、温度、質量、濃度、明るさ/暗さ、またはにおいなどの事象の分布を、実世界1の事象を示す情報である信号とも称する。また、実世界1の事象を示す情報である信号を、単に、実世界1の信号とも称する。本明細書において、信号は、現象および事象を含み、送信側に意思がないものも含むものとする。
【0021】
センサ2から出力されるデータ3(検出信号)は、実世界1の事象を示す情報を、実世界1に比較して、より低い次元の時空間に射影して得られた情報である。例えば、動画像の画像データであるデータ3は、実世界1の3次元の空間方向および時間方向の画像が、2次元の空間方向、および時間方向からなる時空間に射影されて得られた情報である。また、例えば、データ3がデジタルデータであるとき、データ3は、サンプリングの単位に応じて、丸められている。データ3がアナログデータであるとき、データ3において、ダイナミックレンジに応じて、情報が圧縮されているか、またはリミッタなどにより、情報の一部が削除されている。
【0022】
このように、所定の次元を有する実世界1の事象を示す情報である信号をデータ3(検出信号)に射影することにより、実世界1の事象を示す情報の一部が欠落する。すなわち、センサ2が出力するデータ3において、実世界1の事象を示す情報の一部が欠落している。
【0023】
しかしながら、射影により実世界1の事象を示す情報の一部が欠落しているものの、データ3は、実世界1の事象(現象)を示す情報である信号を推定するための有意情報を含んでいる。
【0024】
本発明においては、実世界1の情報である信号を推定するための有意情報として、実世界1またはデータ3に含まれる定常性を有する情報を利用する。定常性は、新たに定義する概念である。
【0025】
ここで、実世界1に注目すると、実世界1の事象は、所定の次元の方向に一定の特徴を含む。例えば、実世界1の物体(有体物)において、空間方向または時間方向に、形状、模様、若しくは色彩などが連続するか、または形状、模様、若しくは色彩などのパターンが繰り返す。
【0026】
従って、実世界1の事象を示す情報には、所定の次元の方向に一定の特徴が含まれることになる。
【0027】
より具体的な例を挙げれば、糸、紐、またはロープなどの線状の物体は、長さ方向の任意の位置において、断面形状が同じであるという長さ方向、すなわち空間方向に一定の特徴を有する。長さ方向の任意の位置において、断面形状が同じであるという空間方向に一定の特徴は、線状の物体が長いという特徴から生じる。
【0028】
従って、線状の物体の画像は、長さ方向の任意の位置において、断面形状が同じであるという長さ方向、すなわち空間方向に一定の特徴を有している。
【0029】
また、空間方向に広がりを有する有体物である、単色の物体は、部位にかかわらず、同一の色を有するという空間方向に一定の特徴を有していると言える。
【0030】
同様に、空間方向に広がりを有する有体物である、単色の物体の画像は、部位にかかわらず、同一の色を有するという空間方向に一定の特徴を有している。
【0031】
このように、実世界1(現実世界)の事象は、所定の次元の方向に一定の特徴を有しているので、実世界1の信号は、所定の次元の方向に一定の特徴を有する。
【0032】
本明細書において、このような所定の次元の方向に一定の特徴を定常性と称する。実世界1(現実世界)の信号の定常性とは、実世界1(現実世界)の事象を示す信号が有している、所定の次元の方向に一定の特徴をいう。
【0033】
実世界1(現実世界)には、このような定常性が無数に存在する。
【0034】
次に、データ3に注目すると、データ3は、センサ2により、所定の次元を有する実世界1の事象を示す情報である信号が射影されたものであるので、実世界の信号の定常性に対応する定常性を含んでいる。データ3は、実世界の信号の定常性が射影された定常性を含んでいるとも言える。
【0035】
しかしながら、上述したように、センサ2が出力するデータ3において、実世界1の情報の一部が欠落しているので、データ3から、実世界1(現実世界)の信号に含まれる定常性の一部が欠落し得る。
【0036】
換言すれば、データ3は、データの定常性として、実世界1(現実世界)の信号の定常性の中の、少なくとも一部の定常性を含む。データの定常性とは、データ3が有している、所定の次元の方向に一定の特徴である。
【0037】
本発明においては、実世界1の事象を示す情報である信号を推定するための有意情報として、実世界1の信号の定常性、またはデータ3が有する、データの定常性が利用される。
【0038】
例えば、信号処理装置4においては、データの定常性を利用して、データ3を信号処理することで、欠落した、実世界1の事象を示す情報が生成される。
【0039】
なお、信号処理装置4においては、実世界1の事象を示す情報である信号の次元の、長さ(空間)、時間、および質量のうち、空間方向または時間方向の定常性が利用される。
【0040】
図1において、センサ2は、例えば、デジタルスチルカメラ、またはビデオカメラなどで構成され、実世界1の画像を撮像し、得られたデータ3である画像データを信号処理装置4に出力する。センサ2は、例えば、サーモグラフィ装置、または光弾性を利用した圧力センサなどとすることができる。
【0041】
信号処理装置4は、例えば、パーソナルコンピュータなどで構成され、データ3を対象とした信号処理を行う。
【0042】
信号処理装置4は、例えば、図2で示されるように構成される。CPU(Central Processing Unit)21は、ROM(Read Only Memory)22、または記憶部28に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)23には、CPU21が実行するプログラムやデータなどが適宜記憶される。これらのCPU21、ROM22、およびRAM23は、バス24により相互に接続されている。
【0043】
CPU21にはまた、バス24を介して入出力インタフェース25が接続されている。入出力インタフェース25には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部26、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部27が接続されている。CPU21は、入力部26から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU21は、処理の結果得られた画像や音声等を出力部27に出力する。
【0044】
入出力インタフェース25に接続されている記憶部28は、例えばハードディスクなどで構成され、CPU21が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。通信部29は、インターネット、その他のネットワークを介して外部の装置と通信する。この例の場合、通信部29はセンサ2の出力するデータ3を取り込む取得部として働く。
【0045】
また、通信部29を介してプログラムを取得し、記憶部28に記憶してもよい。
【0046】
入出力インタフェース25に接続されているドライブ30は、磁気ディスク51、光ディスク52、光磁気ディスク53、或いは半導体メモリ54などが装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータなどを取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記憶部28に転送され、記憶される。
【0047】
図3は、信号処理装置4を示すブロック図である。
【0048】
なお、信号処理装置4の各機能をハードウェアで実現するか、ソフトウェアで実現するかは問わない。つまり、本明細書の各ブロック図は、ハードウェアのブロック図と考えても、ソフトウェアによる機能ブロック図と考えても良い。
【0049】
図3に構成を示す信号処理装置4においては、データ3の一例である画像データが入力され、入力された画像データ(入力画像)からデータの定常性が検出される。次に、検出されたデータの定常性から、センサ2により取得された実世界1の信号が推定される。そして、推定された実世界1の信号を基に、画像が生成され、生成された画像(出力画像)が出力される。すなわち、図3は、画像処理装置である信号処理装置4の構成を示す図である。
【0050】
信号処理装置4に入力された入力画像(データ3の一例である画像データ)は、データ定常性検出部101および実世界推定部102に供給される。
【0051】
データ定常性検出部101は、入力画像からデータの定常性を検出して、検出した定常性を示すデータ定常性情報を実世界推定部102および画像生成部103に供給する。データ定常性情報は、例えば、入力画像における、データの定常性を有する画素の領域の位置、データの定常性を有する画素の領域の方向(時間方向および空間方向の角度または傾き)、またはデータの定常性を有する画素の領域の長さなどを含む。データ定常性検出部101の構成の詳細は、後述する。
【0052】
実世界推定部102は、入力画像、およびデータ定常性検出部101から供給されたデータ定常性情報を基に、実世界1の信号を推定する。すなわち、実世界推定部102は、入力画像が取得されたときセンサ2に入射された、実世界の信号である画像を推定する。実世界推定部102は、実世界1の信号の推定の結果を示す実世界推定情報を画像生成部103に供給する。実世界推定部102の構成の詳細は、後述する。
【0053】
画像生成部103は、実世界推定部102から供給された、推定された実世界1の信号を示す実世界推定情報を基に、実世界1の信号により近似した信号を生成して、生成した信号を出力する。または、画像生成部103は、データ定常性検出部101から供給されたデータ定常性情報、および実世界推定部102から供給された、推定された実世界1の信号を示す実世界推定情報を基に、実世界1の信号により近似した信号を生成して、生成した信号を出力する。
【0054】
すなわち、画像生成部103は、実世界推定情報を基に、実世界1の画像により近似した画像を生成して、生成した画像を出力画像として出力する。または、画像生成部103は、データ定常性情報および実世界推定情報を基に、実世界1の画像により近似した画像を生成して、生成した画像を出力画像として出力する。
【0055】
例えば、画像生成部103は、実世界推定情報を基に、推定された実世界1の画像を所望の空間方向または時間方向の範囲で積分することにより、入力画像に比較して、空間方向または時間方向により高解像度の画像を生成して、生成した画像を出力画像として出力する。例えば、画像生成部103は、外挿補間により、画像を生成して、生成した画像を出力画像として出力する。
【0056】
画像生成部103の構成の詳細は、後述する。
【0057】
次に、図4を参照して、本発明の原理を説明する。
【0058】
例えば、画像である、実世界1の信号は、センサ2の一例であるCCD(Charge Coupled Device)の受光面に結像される。センサ2の一例であるCCDは、積分特性を有しているので、CCDから出力されるデータ3には、実世界1の画像との差が生じることになる。センサ2の積分特性の詳細については、後述する。
【0059】
信号処理装置4による信号処理においては、CCDにより取得された実世界1の画像と、CCDにより撮像され、出力されたデータ3との関係が明確に考慮される。すなわち、データ3と、センサ2で取得された実世界の情報である信号との関係が明確に考慮される。
【0060】
より具体的には、図4で示されるように、信号処理装置4は、モデル161を用いて、実世界1を近似(記述)する。モデル161は、例えば、N個の変数で表現される。より正確には、モデル161は、実世界1の信号を近似(記述)する。
【0061】
モデル161を予測するために、信号処理装置4は、データ3から、M個のデータ162を抽出する。データ3から、M個のデータ162を抽出するとき、信号処理装置4は、例えば、データ3に含まれるデータの定常性を利用する。換言すれば、信号処理装置4は、データ3に含まれるデータの定常性を基に、モデル161を予測するためのデータ162を抽出する。この場合、結果的に、モデル161は、データの定常性に拘束されることになる。
【0062】
すなわち、モデル161は、センサ2で取得されたとき、データ3においてデータの定常性を生じさせる、定常性(所定の次元の方向に一定の特徴)を有する実世界1の事象(を示す情報(信号))を近似する。
【0063】
ここで、データ162の数Mが、モデルの変数の数N以上であれば、M個のデータ162から、N個の変数で表現されるモデル161を予測することができる。
【0064】
このように、実世界1(の信号)を近似(記述)するモデル161を予測することにより、信号処理装置4は、実世界1の情報である信号を考慮することができる。
【0065】
次に、センサ2の積分効果について説明する。
【0066】
画像を撮像するセンサ2である、CCDまたはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサなどのイメージセンサは、現実世界を撮像するとき、現実世界の情報である信号を2次元のデータに投影する。イメージセンサの各画素は、いわゆる受光面(受光領域)として、それぞれ所定の面積を有する。所定の面積を有する受光面に入射した光は、画素毎に、空間方向および時間方向に積分され、各画素に対して1つの画素値に変換される。
【0067】
図5乃至図8を参照して、画像の空間的時間的な積分について説明する。
【0068】
イメージセンサは、現実世界の対象物(オブジェクト)を撮像し、撮像の結果得られた画像データを1フレーム単位で出力する。すなわち、イメージセンサは、実世界1の対象物で反射された光である、実世界1の信号を取得し、データ3を出力する。
【0069】
例えば、イメージセンサは、1秒間に30フレームからなる画像データを出力する。この場合、イメージセンサの露光時間は、1/30秒とすることができる。露光時間は、イメージセンサが入射された光の電荷への変換を開始してから、入射された光の電荷への変換を終了するまでの期間である。以下、露光時間をシャッタ時間とも称する。
【0070】
図5は、イメージセンサ上の画素の配置の例を説明する図である。図5中において、A乃至Iは、個々の画素を示す。画素は、画像データにより表示される画像に対応する平面上に配置されている。1つの画素に対応する1つの検出素子は、イメージセンサ上に配置されている。イメージセンサが実世界1の画像を撮像するとき、1つの検出素子は、画像データを構成する1つの画素に対応する1つの画素値を出力する。例えば、検出素子の空間方向Xの位置(X座標)は、画像データにより表示される画像上の横方向の位置に対応し、検出素子の空間方向Yの位置(Y座標)は、画像データにより表示される画像上の縦方向の位置に対応する。
【0071】
実世界1の光の強度の分布は、3次元の空間方向および時間方向に広がりを有するが、イメージセンサは、2次元の空間方向および時間方向で、実世界1の光を取得し、2次元の空間方向および時間方向の光の強度の分布を表現するデータ3を生成する。
【0072】
図6で示されるように、例えば、CCDである検出素子は、シャッタ時間に対応する期間、受光面(受光領域)(検出領域)に入力された光を電荷に変換して、変換された電荷を蓄積する。光は、3次元の空間上の位置、および時刻により、強度が決定される実世界1の情報(信号)である。実世界1の光の強度の分布は、3次元の空間上の位置x,y、およびz、並びに時刻tを変数とする関数F(x,y,z,t)で表すことができる。
【0073】
CCDである検出素子に蓄積される電荷の量は、2次元の空間上の広がりを有する受光面の全体に入射された光の強さと、光が入射されている時間にほぼ比例する。検出素子は、シャッタ時間に対応する期間において、受光面の全体に入射された光から変換された電荷を、既に蓄積されている電荷に加えていく。すなわち、検出素子は、シャッタ時間に対応する期間、2次元の空間上の広がりを有する受光面の全体に入射される光を積分して、積分された光に対応する量の電荷を蓄積する。検出素子は、空間(受光面)および時間(シャッタ時間)に対して、積分効果があるとも言える。
【0074】
検出素子に蓄積された電荷は、図示せぬ回路により、電圧値に変換され、電圧値はさらにデジタルデータなどの画素値に変換されて、データ3として出力される。従って、イメージセンサから出力される個々の画素値は、実世界1の情報(信号)の時間的空間的に広がりを有するある部分を、シャッタ時間の時間方向および検出素子の受光面の空間方向について積分した結果である、1次元の空間に射影した値を有する。
【0075】
すなわち、1つの画素の画素値は、F(x,y,t)の積分で表される。F(x,y,t)は、検出素子の受光面における、光の強度の分布を表す関数である。例えば、画素値Pは、式(1)で表される。
【0076】
【数1】
Figure 0004325296
・・・(1)
【0077】
式(1)において、x1は、検出素子の受光面の左側の境界の空間座標(X座標)である。x2は、検出素子の受光面の右側の境界の空間座標(X座標)である。式(1)において、y1は、検出素子の受光面の上側の境界の空間座標(Y座標)である。y2は、検出素子の受光面の下側の境界の空間座標(Y座標)である。また、t1は、入射された光の電荷への変換を開始した時刻である。t2は、入射された光の電荷への変換を終了した時刻である。
【0078】
なお、実際には、イメージセンサから出力される画像データの画素値は、例えばフレーム全体として、そのゲインが補正されている。
【0079】
画像データの各画素値は、イメージセンサの各検出素子の受光面に入射した光の積分値であり、イメージセンサに入射された光のうち、検出素子の受光面よりも微小な実世界1の光の波形は、積分値としての画素値に隠されてしまう。
【0080】
以下、本明細書において、所定の次元を基準として表現される信号の波形を単に波形とも称する。
【0081】
このように、実世界1の画像(光信号)は、画素を単位として、空間方向および時間方向に積分されてしまうので、画像データにおいては、実世界1の画像の定常性の一部が欠落し、実世界1の画像の定常性の他の一部が画像データに含まれることになる。または、画像データには、実世界1の画像の定常性から変化してしまった定常性が含まれることがある。
【0082】
積分効果を有するイメージセンサにより撮像された画像の、空間方向の積分効果についてさらに説明する。
【0083】
図7は、画素D乃至画素Fに対応する検出素子に入射される光と、画素値との関係を説明する図である。図7のF(x)は、空間上(検出素子上)の空間方向Xの座標xを変数とする、実世界1の光の強度の分布を表す関数の例である。言い換えれば、F(x)は、空間方向Yおよび時間方向に一定である場合の、実世界1の光の強度の分布を表す関数の例である。図7において、Lは、画素D乃至画素Fに対応する検出素子の受光面の空間方向Xの長さを示す。
【0084】
1つの画素の画素値は、F(x)の積分で表される。例えば、画素Eの画素値Pは、式(2)で表される。
【0085】
【数2】
Figure 0004325296
・・・(2)
【0086】
式(2)において、x1は、画素Eに対応する検出素子の受光面の左側の境界の空間方向Xの空間座標である。x2は、画素Eに対応する検出素子の受光面の右側の境界の空間方向Xの空間座標である。
【0087】
同様に、積分効果を有するイメージセンサにより撮像された画像の、時間方向の積分効果についてさらに説明する。
【0088】
図8は、時間の経過と、1つの画素に対応する検出素子に入射される光と、画素値との関係を説明する図である。図8のF(t)は、時刻tを変数とする、実世界1の光の強度の分布を表す関数である。言い換えれば、F(t)は、空間方向Yおよび空間方向Xに一定である場合の、実世界1の光の強度の分布を表す関数の例である。tsは、シャッタ時間を示す。
【0089】
フレーム#n-1は、フレーム#nに対して時間的に前のフレームであり、フレーム#n+1は、フレーム#nに対して時間的に後のフレームである。すなわち、フレーム#n-1、フレーム#n、およびフレーム#n+1は、フレーム#n-1、フレーム#n、およびフレーム#n+1の順で表示される。
【0090】
なお、図8で示される例において、シャッタ時間tsとフレーム間隔とが同一である。
【0091】
1つの画素の画素値は、F(t)の積分で表される。例えば、フレーム#nの画素の画素値Pは、式(3)で表される。
【0092】
【数3】
Figure 0004325296
・・・(3)
【0093】
式(3)において、t1は、入射された光の電荷への変換を開始した時刻である。t2は、入射された光の電荷への変換を終了した時刻である。
【0094】
以下、センサ2による空間方向の積分効果を単に空間積分効果と称し、センサ2による時間方向の積分効果を単に時間積分効果と称する。また、空間積分効果または時間積分効果を単に積分効果とも称する。
【0095】
次に、積分効果を有するイメージセンサにより取得されたデータ3に含まれるデータの定常性の例について説明する。
【0096】
図9は、実世界1の線状の物(例えば、細線)の画像、すなわち光の強度の分布の例を示す図である。図9において、図中の上方向の位置は、光の強度(レベル)を示し、図中の右上方向の位置は、画像の空間方向の一方向である空間方向Xの位置を示し、図中の右方向の位置は、画像の空間方向の他の方向である空間方向Yの位置を示す。
【0097】
実世界1の線状の物の画像には、所定の定常性が含まれる。すなわち、図9で示される画像は、長さ方向の任意の位置において、断面形状(長さ方向に直交する方向の位置の変化に対するレベルの変化)が同じであるという定常性を有する。
【0098】
図10は、図9で示される画像に対応する、実際の撮像により得られた画像データの画素値の例を示す図である。
【0099】
即ち、図10は、イメージセンサの画素の並び(画素の縦または横の並び)とずれた方向に延びる、各画素の受光面の長さLよりも短い径の線状の物の画像を、イメージセンサで撮像して得られた画像データの模式図である。図10で示される画像データが取得されたときにイメージセンサに入射された画像は、図9の実世界1の線状の物の画像である。
【0100】
図10において、図中の上方向の位置は、画素値を示し、図中の右上方向の位置は、画像の空間方向の一方向である空間方向Xの位置を示し、図中の右方向の位置は、画像の空間方向の他の方向である空間方向Yの位置を示す。図10における画素値を示す方向は、図9におけるレベルの方向に対応し、図10における空間方向X、および空間方向Yは、図9における方向と同じである。
【0101】
各画素の受光面の長さLよりも短い径の線状の物の画像を、イメージセンサで撮像した場合、撮像の結果得られる画像データにおいて、線状の物は、模式的に、例えば、斜めにずれて並ぶ、複数の所定の長さの円弧形状(かまぼこ型)で表される。各円弧形状は、ほぼ同じ形状である。1つの円弧形状は、縦に1列の画素の上、または横に1列の画素の上に形成される。例えば、図10における1つの円弧形状は、縦に1列の画素の上に形成される。
【0102】
このように、例えば、イメージセンサで撮像されて取得された画像データにおいては、実世界1の線状の物の画像が有していた、長さ方向の任意の位置において、空間方向Yにおける断面形状が同じであるという定常性が失われている。また、実世界1の線状の物の画像が有していた定常性は、縦に1列の画素の上、または横に1列の画素の上に形成された、同じ形状である円弧形状が一定の間隔で並ぶという定常性に変化していると言える。
【0103】
図11は、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像、すなわち光の強度の分布の例を示す図である。図11において、図中の上方向の位置は、光の強度(レベル)を示し、図中の右上方向の位置は、画像の空間方向の一方向である空間方向Xの位置を示し、図中の右方向の位置は、画像の空間方向の他の方向である空間方向Yの位置を示す。
【0104】
背景とは異なる色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像には、所定の定常性が含まれる。すなわち、図11で示される画像は、縁の長さ方向の任意の位置において、断面形状(縁に直交する方向の位置の変化に対するレベルの変化)が同じであるという定常性を有する。
【0105】
図12は、図11で示される画像に対応する、実際の撮像により得られた画像データの画素値の例を示す図である。図12で示されるように、画像データは、画素を単位とした画素値からなるので、階段状になる。
【0106】
図13は、図12に示す画像データの模式図である。
【0107】
図13で示される模式図は、イメージセンサの画素の並び(画素の縦または横の並び)とずれた方向に縁が延びる、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像を、イメージセンサで撮像して得られた画像データの模式図である。図13で示される画像データが取得されたときにイメージセンサに入射された画像は、図11で示される、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像である。
【0108】
図13において、図中の上方向の位置は、画素値を示し、図中の右上方向の位置は、画像の空間方向の一方向である空間方向Xの位置を示し、図中の右方向の位置は、画像の空間方向の他の方向である空間方向Yの位置を示す。図13における画素値を示す方向は、図11におけるレベルの方向に対応し、図13における空間方向X、および空間方向Yは、図11における方向と同じである。
【0109】
背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像を、イメージセンサで撮像した場合、撮像の結果得られる画像データにおいて、直線状の縁は、模式的に、例えば、斜めにずれて並ぶ、複数の所定の長さのつめ(pawl)形状で表される。各つめ形状は、ほぼ同じ形状である。1つのつめ形状は、縦に1列の画素の上、または横に1列の画素の上に形成される。例えば、図13において、1つのつめ形状は、縦に1列の画素の上に形成される。
【0110】
このように、例えば、イメージセンサで撮像されて取得された画像データにおいては、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像が有していた、縁の長さ方向の任意の位置において、断面形状が同じであるという定常性が失われている。また、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像が有していた定常性は、縦に1列の画素の上、または横に1列の画素の上に形成された、同じ形状であるつめ形状が一定の間隔で並ぶという定常性に変化していると言える。
【0111】
データ定常性検出部101は、このような、例えば、入力画像であるデータ3が有するデータの定常性を検出する。例えば、データ定常性検出部101は、所定の次元の方向に一定の特徴を有する領域を検出することにより、データの定常性を検出する。例えば、データ定常性検出部101は、図10で示される、同じ円弧形状が一定の間隔で並ぶ領域を検出する。また、例えば、データ定常性検出部101は、図13で示される、同じつめ形状が一定の間隔で並ぶ領域を検出する。
【0112】
また、データ定常性検出部101は、同様の形状の並び方を示す、空間方向の角度(傾き)を検出することにより、データの定常性を検出する。
【0113】
また、例えば、データ定常性検出部101は、空間方向および時間方向の同様の形状の並び方を示す、空間方向および時間方向の角度(動き)を検出することにより、データの定常性を検出する。
【0114】
さらに、例えば、データ定常性検出部101は、所定の次元の方向に一定の特徴を有する領域の長さを検出することにより、データの定常性を検出する。
【0115】
以下、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像がセンサ2により射影されたデータ3の部分を2値エッジとも称する。
【0116】
ここで、従来の信号処理においては、データ3から、例えば、所望の高解像度データが生成される。
【0117】
これに対して、信号処理装置4による信号処理においては、データ3から、実世界1が推定され、推定の結果に基づいて、高解像度データが生成される。すなわち、実世界1が、データ3から推定され、高解像度データが、データ3を考慮して、推定された実世界1か生成される。
【0118】
実世界1から高解像度データを生成するためには、実世界1とデータ3との関係を考慮する必要がある。例えば、実世界1が、CCDであるセンサ2により、データ3に射影されるとどうなるかが考慮される。
【0119】
CCDであるセンサ2は、上述したように、積分特性を有する。すなわち、データ3の1つの単位(例えば、画素値)は、実世界1の信号をセンサ2の検出素子(例えば、CCD)の検出領域(例えば、受光面)で積分することにより算出することができる。
【0120】
これを高解像度データについて当てはめると、仮想的な高解像度のセンサが実世界1の信号をデータ3に射影する処理を、推定された実世界1に適用することにより、高解像度データを得ることができる。
【0121】
換言すれば、データ3から実世界1の信号を推定できれば、実世界1の信号を、仮想的な高解像度のセンサの検出素子の検出領域毎に(時空間方向に)積分することにより、高解像度データに含まれる1つの値を得ることができる。
【0122】
例えば、センサ2の検出素子の検出領域の大きさに比較して、実世界1の信号の変化が、より小さいとき、データ3は、実世界1の信号の小さい変化を表すことができない。そこで、データ3から推定された実世界1の信号を、実世界1の信号の変化に比較して、より小さい領域毎に(時空間方向に)積分することにより、実世界1の信号の小さい変化を示す高解像度データを得ることができる。
【0123】
すなわち、仮想的な高解像度のセンサの各検出素子について、推定された実世界1の信号を検出領域で積分することにより、高解像度データを得ることができる。
【0124】
信号処理装置4において、画像生成部103は、例えば、仮想的な高解像度のセンサの各検出素子の時空間方向の領域で、推定された実世界1の信号を積分することにより、高解像度データを生成する。
【0125】
次に、データ3から、実世界1を推定するために、信号処理装置4においては、データ3と実世界1との関係、定常性、およびデータ3における空間的または時間的な混合(空間混合または時間混合)が利用される。
【0126】
ここで、混合とは、データ3において、実世界1における2つの物体に対する信号が混合されて1つの値となることをいう。
【0127】
空間混合とは、センサ2の空間積分効果による、2つの物体に対する信号の空間方向の混合をいう。時間混合については、後述する。
【0128】
実世界1そのものは、無限の数の事象からなり、従って、実世界1そのものを、例えば、数式で表現するためには、無限の数の変数が必要になる。データ3から、実世界1の全ての事象を予測することはできない。
【0129】
同様に、データ3から、実世界1の信号の全てを予測することはできない。
【0130】
そこで、信号処理装置4においては、実世界1の信号のうち、定常性を有し、関数f(x,y,z,t)で表すことができる部分に注目し、関数f(x,y,z,t)で表すことができる、定常性を有する実世界1の信号の部分が、N個の変数で表現されるモデル161で近似される。そして、図14で示されるように、モデル161が、データ3の中の、M個のデータ162から予測される。
【0131】
M個のデータ162からモデル161の予測を可能にするには、第1に、モデル161を、定常性に基づいて、N個の変数で表し、第2に、センサ2の積分特性に基づいて、N個の変数で表現されるモデル161とM個のデータ162との関係を示す、N個の変数を使用した式を立てることが必要である。モデル161が、定常性に基づいて、N個の変数で表されているので、N個の変数で表現されるモデル161とM個のデータ162との関係を示す、N個の変数を使用した式は、定常性を有する実世界1の信号の部分と、データの定常性を有するデータ3の部分との関係を記述しているとも言える。
【0132】
換言すれば、N個の変数で表現されるモデル161で近似される、定常性を有する実世界1の信号の部分は、データ3において、データの定常性を生じさせる。
【0133】
データ定常性検出部101は、定常性を有する実世界1の信号の部分によって、データの定常性が生じたデータ3の部分、およびデータの定常性が生じた部分の特徴を検出する。
【0134】
例えば、図15で示されるように、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像において、図15中Aで示す、注目する位置における縁は、傾きを有している。図15のBの矢印は、縁の傾きを示す。所定の縁の傾きは、基準となる軸に対する角度または基準となる位置に対する方向で表すことができる。例えば、所定の縁の傾きは、空間方向Xの座標軸と、縁との角度で表すことができる。例えば、所定の縁の傾きは、空間方向Xの長さおよび空間方向Yの長さで示される方向で表すことができる。
【0135】
背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像が、センサ2で取得されて、データ3が出力されたとき、データ3において、実世界1の画像における、縁の注目する位置(A)に対する、図15中A’で示す位置に、縁に対応するつめ形状が並び、実世界1の画像の縁の傾きに対応する、図15中B’で示す傾きの方向に、縁に対応するつめ形状が並ぶ。
【0136】
N個の変数で表現されるモデル161は、このような、データ3において、データの定常性を生じさせる、実世界の1の信号の部分を近似する。
【0137】
N個の変数で表現されるモデル161とM個のデータ162との関係を示す、N個の変数を使用した式を立てるとき、データ3において、データの定常性が生じている部分の値を利用する。
【0138】
この場合において、図16で示される、データ3において、データの定常性が生じ、混合領域に属する値に注目して、実世界1の信号を積分した値が、センサ2の検出素子が出力する値に等しいとして、式が立てられる。例えば、データの定常性が生じている、データ3における複数の値について、複数の式を立てることができる。
【0139】
図16において、Aは、縁の注目する位置を示し、A’は、実世界1の画像における、縁の注目する位置(A)に対する、画素(の位置)を示す。
【0140】
ここで、混合領域とは、データ3において、実世界1における2つの物体に対する信号が混合されて1つの値となっているデータの領域をいう。例えば、背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像に対するデータ3において、直線状の縁を有する物に対する画像、および背景に対する画像が積分されている画素値は、混合領域に属する。
【0141】
図17は、式を立てる場合における、実世界1における2つの物体に対する信号および混合領域に属する値を説明する図である。
【0142】
図17中の左側は、センサ2の1つの検出素子の検出領域で取得される、空間方向Xおよび空間方向Yに所定の広がりを有する、実世界1における2つの物体に対する実世界1の信号を示す。図17中の右側は、図17中の左側に示す実世界1の信号がセンサ2の1つの検出素子によって射影された、データ3の1つの画素の画素値Pを示す。すなわち、センサ2の1つの検出素子によって取得された、空間方向Xおよび空間方向Yに所定の広がりを有する、実世界1における2つの物体に対する実世界1の信号が射影された、データ3の1つの画素の画素値Pを示す。
【0143】
図17のLは、実世界1における1つの物体に対する、図17の白い部分の実世界1の信号のレベルを示す。図17のRは、実世界1における他の1つの物体に対する、図17の斜線で表される部分の実世界1の信号のレベルを示す。
【0144】
ここで、混合比αは、センサ2の1つの検出素子の、空間方向Xおよび空間方向Yに所定の広がりを有する検出領域に入射された、2つの物体に対する信号(の面積)の割合を示す。例えば、混合比αは、センサ2の1つの検出素子の検出領域の面積に対する、空間方向Xおよび空間方向Yに所定の広がりを有する、センサ2の1つの検出素子の検出領域に入射された、レベルLの信号の面積の割合を示す。
【0145】
この場合において、レベルL、レベルR、および画素値Pの関係は、式(4)で表すことができる。
【0146】
【数4】
Figure 0004325296
・・・(4)
【0147】
なお、レベルRは、注目している画素の右側に位置している、データ3の画素の画素値とすることができる場合があり、レベルLは、注目している画素の左側に位置している、データ3の画素値とすることができる場合がある。
【0148】
また、混合比αおよび混合領域は、空間方向と同様に、時間方向を考慮することができる。例えば、センサ2に対して撮像の対象となる実世界1の物体が移動しているとき、時間方向に、センサ2の1つの検出素子の検出領域に入射される、2つの物体に対する信号の割合は変化する。センサ2の1つの検出素子の検出領域に入射された、時間方向に割合が変化する、2つの物体に対する信号は、センサ2の検出素子によって、データ3の1つの値に射影される。
【0149】
センサ2の時間積分効果による、2つの物体に対する信号の時間方向の混合を時間混合と称する。
【0150】
データ定常性検出部101は、例えば、実世界1における2つの物体に対する実世界1の信号が射影された、データ3における画素の領域を検出する。データ定常性検出部101は、例えば、実世界1の画像の縁の傾きに対応する、データ3における傾きを検出する。
【0151】
そして、実世界推定部102は、例えば、データ定常性検出部101で検出された、所定の混合比αを有する画素の領域、および領域の傾きを基に、N個の変数で表現されるモデル161とM個のデータ162との関係を示す、N個の変数を使用した式を立てて、立てた式を解くことにより、実世界1の信号を推定する。
【0152】
さらに、具体的な実世界1の推定について説明する。
【0153】
関数F(x,y,z,t)で表される実世界の信号のうち、空間方向Zの断面(センサ2の位置)における関数F(x,y,t)で表される実世界の信号を、空間方向Xにおける位置x、空間方向Yにおける位置y、および時刻tで決まる近似関数f(x,y,t)で近似することを考える。
【0154】
ここで、センサ2の検出領域は、空間方向Xおよび空間方向Yに広がりを有する。換言すれば、近似関数f(x,y,t)は、センサ2で取得される、空間方向および時間方向に広がりを有する実世界1の信号を近似する関数である。
【0155】
センサ2による実世界1の信号の射影によって、データ3の値P(x,y,t)が得られるものとする。データ3の値P(x,y,t)は、例えば、イメージセンサであるセンサ2が出力する、画素値である。
【0156】
ここで、センサ2による射影を定式化できる場合、近似関数f(x,y,t)を射影して得られた値を射影関数S(x,y,t)と表すことができる。
【0157】
射影関数S(x,y,t)を求める上で、以下に示す問題がある。
【0158】
第1に、一般的に、実世界1の信号を表す関数F(x,y,z,t)は、無限の次数の関数となりうる。
【0159】
第2に、たとえ、実世界の信号を関数として記述できたとしても、センサ2の射影を介した、射影関数S(x,y,t)を定めることは、一般的にはできない。すなわち、センサ2による射影の動作、言い換えればセンサ2の入力信号と出力信号との関係を知らないので、射影関数S(x,y,t)を定めることはできない。
【0160】
第1の問題点に対して、実世界1の信号を近似する関数f(x,y,t)を記述可能な関数(例えば、有限次数の関数)である関数fi(x,y,t)および変数wiの積和で表現することを考える。
【0161】
また、第2の問題点に対して、センサ2による射影を定式化することで、関数fi(x,y,t)の記述から、関数Si(x,y,t)を記述することができる。
【0162】
すなわち、実世界1の信号を近似する関数f(x,y,t)を関数fi(x,y,t)および変数wiの積和で表現すると、式(5)が得られる。
【0163】
【数5】
Figure 0004325296
・・・(5)
【0164】
例えば、式(6)で示されるように、センサ2の射影を定式化することにより、式(5)から、データ3と実世界の信号の関係を式(7)のように定式化することができる。
【0165】
【数6】
Figure 0004325296
・・・(6)
【0166】
【数7】
Figure 0004325296
・・・(7)
式(7)において、jは、データのインデックスである。
【0167】
式(7)のN個の変数wi(i=1乃至N)が共通であるM個のデータ群(j=1乃至M)が存在すれば、式(8)を満たすので、データ3から実世界のモデル161を求めることができる。
【0168】
【数8】
Figure 0004325296
・・・(8)
【0169】
Nは、実世界1を近似するモデル161を表現する変数の数である。Mは、データ3に含まれるデータ162の数である。
【0170】
実世界1の信号を近似する関数f(x,y,t)を式(5)で表すことにより、wiとして変数の部分を独立させることができる。このとき、iは、そのまま変数の数を示すことになる。また、fiで示される関数の形を独立させることができ、fiとして所望の関数を利用することができるようになる。
【0171】
従って、関数fiの形に依存せず、変数wiの数Nを定義でき、変数wiの数Nとデータの数Mとの関係で変数wiを求めることができる。
【0172】
すなわち、以下の3つを用いることで、データ3から実世界1を推定することができるようになる。
【0173】
第1に、N個の変数を定める、すなわち、式(5)を定める。これは、定常性を用いて実世界1を記述することにより可能になる。例えば、断面が多項式で表され、同じ断面形状が一定方向に続く、というモデル161で実世界1の信号を記述することができる。
【0174】
第2に、例えば、センサ2による射影を定式化して、式(7)を記述する。例えば、実世界の信号の積分を行った結果がデータ3であると定式化する。
【0175】
第3に、M個のデータ162を集めて、式(8)を満足させる。例えば、データ定常性検出部101で検出された、データの定常性を有する領域から、データ162が集められる。例えば、定常性の一例である、一定の断面が続く領域のデータ162が集められる。
【0176】
このように、式(5)によって、データ3と実世界1との関係を記述し、M個のデータ162を集めることで、式(8)を満たすことにより、実世界1を推定することができる。
【0177】
より具体的には、N=Mのとき、変数の数Nと式の数Mが等しいので、連立方程式を立てることにより、変数wiを求めることができる。
【0178】
また、N<Mのとき、様々な解法を適用できる。例えば、最小自乗法により、変数wiを求めることができる。
【0179】
ここで、最小自乗法による解法について、詳細に記載する。
【0180】
まず、式(7)に従って、実世界1からデータ3を予測する式(9)を示す。
【0181】
【数9】
Figure 0004325296
・・・(9)
【0182】
式(9)において、P'j(xj,yj,tj)は、予測値である。
【0183】
予測値P'と実測値Pとの差分自乗和Eは、式(10)で表される。
【0184】
【数10】
Figure 0004325296
・・・(10)
【0185】
差分自乗和Eが最小になるように、変数wiが求められる。従って、各変数wkによる式(10)の偏微分値は0とされる。すなわち、式(11)が成り立つ。
【0186】
【数11】
Figure 0004325296
・・・(11)
【0187】
式(11)から式(12)が導かれる。
【0188】
【数12】
Figure 0004325296
・・・(12)
【0189】
式(12)がK=1乃至Nで成り立つとき、最小自乗法による解が得られる。このときの正規方程式は、式(13)で示される。
【0190】
【数13】
Figure 0004325296
・・・(13)
【0191】
ただし、式(13)において、Si(xj,yj,tj)は、Si(j)と記述した。
【0192】
【数14】
Figure 0004325296
・・・(14)
【0193】
【数15】
Figure 0004325296
・・・(15)
【0194】
【数16】
Figure 0004325296
・・・(16)
【0195】
式(14)乃至式(16)から、式(13)は、SMATWMAT=PMATと表すことができる。
【0196】
式(13)において、Siは、実世界1の射影を表す。式(13)において、Pjは、データ3を表す。式(13)において、wiは、実世界1の信号の特徴を記述し、求めようとする変数である。
【0197】
従って、式(13)にデータ3を入力し、行列解法などによりWMATを求めることで、実世界1を推定することが可能になる。すなわち、式(17)を演算することにより、実世界1を推定することができるようになる。
【0198】
【数17】
Figure 0004325296
・・・(17)
【0199】
なお、SMATが正則でない場合、SMATの転置行列を利用して、WMATを求めることができる。
【0200】
実世界推定部102は、例えば、式(13)にデータ3を入力し、行列解法などによりWMATを求めることで、実世界1を推定する。
【0201】
ここで、さらにより具体的な例を説明する。例えば、実世界1の信号の断面形状、すなわち位置の変化に対するレベルの変化を、多項式で記述する。実世界1の信号の断面形状が一定で、実世界1の信号の断面が等速で移動すると仮定する。そして、センサ2による実世界1の信号からデータ3への射影を、実世界1の信号の時空間方向の3次元で積分で定式化する。
【0202】
実世界1の信号の断面形状が、等速で移動するとの仮定から、式(18)および式(19)が得られる。
【0203】
【数18】
Figure 0004325296
・・・(18)
【0204】
【数19】
Figure 0004325296
・・・(19)
【0205】
ここで、vxおよびvyは、一定である。
【0206】
実世界1の信号の断面形状は、式(18)および式(19)を用いることで、式(20)と表される。
【0207】
【数20】
Figure 0004325296
・・・(20)
【0208】
センサ2による実世界1の信号からデータ3への射影を、実世界1の信号の時空間方向の3次元で積分で定式化すれば、式(21)が得られる。
【0209】
【数21】
Figure 0004325296
・・・(21)
【0210】
式(21)において、S(x,y,t)は、空間方向Xについて、位置xsから位置xeまで、空間方向Yについて、位置ysから位置yeまで、時間方向tについて、時刻tsから時刻teまでの領域、すなわち時空間の直方体で表される領域の積分値を示す。
【0211】
式(21)を定めることができる所望の関数f(x',y')を用いて、式(13)を解けば、実世界1の信号を推定することができる。
【0212】
以下では、関数f(x',y')の一例として、式(22)に示す関数を用いることとする。
【0213】
【数22】
Figure 0004325296
・・・(22)
【0214】
すなわち、実世界1の信号が、式(18)、式(19)、および式(22)で表される定常性を含むと仮定している。これは、図18で示されるように、一定の形状の断面が、時空間方向に移動していることを示す。
【0215】
式(21)に、式(22)を代入することにより、式(23)が得られる。
【0216】
【数23】
Figure 0004325296
・・・(23)
【0217】
ただし、
Volume=(xe-xs)(ye-ys)(te-ts)
S0(x,y,t)=Volume/2×(xe+xs+vx(te+ts))
S1(x,y,t)=Volume/2×(ye+ys+vy(te+ts))
S2(x,y,t)=1
である。
【0218】
図19は、データ3から抽出される、M個のデータ162の例を示す図である。例えば、27個の画素値が、データ162として抽出され、抽出された画素値が、Pj(x,y,t)とされる。この場合、jは、0乃至26である。
【0219】
図19に示す例において、nである時刻tの注目する位置に対応する画素の画素値がP13(x,y,t)であり、データの定常性を有する画素の画素値の並ぶ方向(例えば、データ定常性検出部101で検出された、同じ形状であるつめ形状が並ぶ方向)が、P4(x,y,t)、P13(x,y,t)、およびP22(x,y,t)を結ぶ方向であるとき、nである時刻tにおける、画素値P9(x,y,t)乃至P17(x,y,t)、nより時間的に前である、n-1である時刻tにおける、画素値P0(x,y,t)乃至P8(x,y,t)、およびnより時間的に後である、n+1である時刻tにおける、画素値P18(x,y,t)乃至P26(x,y,t)が抽出される。
【0220】
ここで、センサ2であるイメージセンサから出力された、データ3である画素値が取得された領域は、時間方向および2次元の空間方向に広がりを有する。そこで、例えば、画素に対応する直方体(画素値が取得された領域)の重心を、画素の時空間方向の位置として使用することができる。
【0221】
27個の画素値P0(x,y,t)乃至P26(x,y,t)、および式(23)から、式(13)を生成し、Wを求めることで、実世界1を推定することが可能になる。
【0222】
このように、実世界推定部102は、例えば、27個の画素値P0(x,y,t)乃至P26(x,y,t)、および式(23)から、式(13)を生成し、Wを求めることで、実世界1の信号を推定する。
【0223】
なお、関数fi(x,y,t)として、ガウス関数、またはシグモイド関数などを利用することができる。
【0224】
図20乃至図23を参照して、推定された実世界1の信号から、データ3に対応する、より高解像度の高解像度データを生成する処理の例について説明する。
【0225】
図20で示されるように、データ3は、時間方向および2次元の空間方向に実世界1の信号が積分された値を有する。例えば、センサ2であるイメージセンサから出力された、データ3である画素値は、検出素子に入射された光である、実世界1の信号が、時間方向に、検出時間であるシャッタ時間で積分され、空間方向に、検出素子の受光領域で積分された値を有する。
【0226】
これに対して、図21で示されるように、空間方向により解像度の高い高解像度データは、推定された実世界1の信号を、時間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出時間と同じ時間で積分するとともに、空間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出素子の受光領域に比較して、より狭い領域で積分することにより、生成される。
【0227】
なお、空間方向により解像度の高い高解像度データを生成する場合において、推定された実世界1の信号が積分される領域は、データ3を出力したセンサ2の検出素子の受光領域と全く無関係に設定することができる。例えば、高解像度データに、データ3に対して、空間方向に整数倍の解像度を持たせることは勿論、5/3倍など、データ3に対して、空間方向に有理数倍の解像度を持たせることができる。
【0228】
また、図22で示されるように、時間方向により解像度の高い高解像度データは、推定された実世界1の信号を、空間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出素子の受光領域と同じ領域で積分するとともに、時間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出時間に比較して、より短い時間で積分することにより、生成される。
【0229】
なお、時間方向により解像度の高い高解像度データを生成する場合において、推定された実世界1の信号が積分される時間は、データ3を出力したセンサ2の検出素子のシャッタ時間と全く無関係に設定することができる。例えば、高解像度データに、データ3に対して、時間方向に整数倍の解像度を持たせることは勿論、7/4倍など、データ3に対して、時間方向に有理数倍の解像度を持たせることができる。
【0230】
動きボケを除去した高解像度データは、推定された実世界1の信号を、時間方向に積分しないで、空間方向にのみ積分することにより、生成される。
【0231】
さらに、図23で示されるように、時間方向および空間方向により解像度の高い高解像度データは、推定された実世界1の信号を、空間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出素子の受光領域に比較して、より狭い領域で積分するとともに、時間方向に、データ3を出力したセンサ2の検出時間に比較して、より短い時間で積分することにより、生成される。
【0232】
この場合において、推定された実世界1の信号が積分される領域および時間は、データ3を出力したセンサ2の検出素子の受光領域およびシャッタ時間と全く無関係に設定することができる。
【0233】
このように、画像生成部103は、例えば、推定された実世界1の信号を所望の時空間の領域で積分することにより、時間方向、または空間方向に、より高解像度のデータを生成する。
【0234】
以上のように、実世界1の信号を推定することにより、実世界1の信号に対してより正確で、時間方向、または空間方向に、より高解像度のデータを生成することができる。
【0235】
図24乃至図28は、信号処理装置4の信号処理を用いた入力画像の例と、処理の結果の例を示している。
【0236】
図24は、入力画像の元の画像(実世界1の光信号に相当)を示す図である。図25は、入力画像の例を示す図である。図25で示される入力画像は、図24で示される画像の2×2の画素からなるブロックに属する画素の画素値の平均値を、1つの画素の画素値として生成された画像である。すなわち、入力画像は、図24で示される画像に、センサの積分特性を模した、空間方向の積分を適用することにより得られた画像である。
【0237】
図24で示される元の画像において、上下方向から、ほぼ5度時計方向に傾いた細線の画像が含まれている。同様に、図25で示される入力画像において、上下方向から、ほぼ5度時計方向に傾いた細線の画像が含まれている。
【0238】
図26は、図25で示される入力画像に、従来のクラス分類適応処理を適用して得られた画像を示す図である。ここで、クラス分類適応処理は、クラス分類処理と適応処理とからなり、クラス分類処理によって、データを、その性質に基づいてクラス分けし、各クラスごとに適応処理を施すものである。適応処理では、例えば、低画質または標準画質の画像が、所定のタップ係数を用いてマッピング(写像)されることにより、高画質の画像に変換される。
【0239】
即ち、適応処理では、第1のデータが、所定のタップ係数を用いてマッピング(写像)されることにより、第2のデータに変換される。
【0240】
いま、このタップ係数を用いてのマッピング方法として、例えば、線形1次結合モデルを採用するとともに、第1のデータとして、高解像度のHD(High Definition)画像をローパスフィルタでフィルタリングすること等により得られる低解像度または標準解像度のSD(Standard Definition)画像を採用し、第2のデータとして、そのSD画像を得るのに用いたHD画像を採用することとして、適応処理について説明する。
【0241】
上述の条件下において、HD画像を構成する画素であるHD画素yは、例えば、SD画像を構成する画素であるSD画素から、HD画素を予測するための予測タップとして抽出される複数のSD画素と、タップ係数とを用いて、次の線形1次式(線形結合)によって求めることができる。
【0242】
【数24】
Figure 0004325296
・・・(24)
【0243】
但し、式(24)において、xnは、HD画素yについての予測タップを構成する、n番目のSD画素(の画素値)を表し、wnは、n番目のSD画素と乗算されるn番目のタップ係数を表す。なお、式(24)では、予測タップが、N個のSD画素x1,x2,・・・,xNで構成されるものとしてある。
【0244】
ここで、HD画素の画素値yは、式(24)に示した線形1次式ではなく、2次以上の高次の式によって求めるようにすることも可能である。
【0245】
いま、HD画像において、k番目のHD画素(の画素値)の真値をykと表すとともに、式(24)によって得られるその真値ykの予測値をyk’と表すと、その予測誤差ekは、例えば、次式で表される。
【0246】
【数25】
Figure 0004325296
・・・(25)
【0247】
式(25)の予測値yk’は、式(24)にしたがって求められるため、式(25)のyk’を、式(24)にしたがって置き換えると、次式が得られる。
【0248】
【数26】
Figure 0004325296
・・・(26)
【0249】
但し、式(26)において、xn,kは、k番目のHD画素についての予測タップを構成するn番目のSD画素を表す。
【0250】
式(26)の予測誤差ekを0とするタップ係数wnが、HD画素を予測するのに最適なものとなるが、すべてのHD画素について、そのようなタップ係数wnを求めることは、一般には困難である。
【0251】
そこで、タップ係数wnが最適なものであることを表す規範として、例えば、最小自乗法を採用することとすると、最適なタップ係数wnは、統計的な誤差としての、例えば、次式で表される自乗誤差の総和Eを最小にすることで求めることができる。
【0252】
【数27】
Figure 0004325296
・・・(27)
【0253】
但し、式(27)において、Kは、HD画素ykと、そのHD画素ykについての予測タップを構成するSD画素x1,k,x2,k,・・・,xN,kとのセットのサンプル数を表す。
【0254】
式(27)の自乗誤差の総和Eを最小(極小)にするタップ係数wnは、その総和Eをタップ係数wnで偏微分したものを0とするものであり、従って、次式を満たす必要がある。
【0255】
【数28】
Figure 0004325296
・・・(28)
【0256】
そこで、上述の式(26)をタップ係数wnで偏微分すると、次式が得られる。
【0257】
【数29】
Figure 0004325296
・・・(29)
【0258】
式(28)と(29)から、次式が得られる。
【0259】
【数30】
Figure 0004325296
・・・(30)
【0260】
式(30)のekに、式(26)を代入することにより、式(30)は、式(31)に示す正規方程式で表すことができる。
【0261】
【数31】
Figure 0004325296
・・・(31)
【0262】
式(31)の正規方程式は、HD画素ykとSD画素xn,kのセットを、ある程度の数だけ用意することでたてることができ、式(31)を解くことで、最適なタップ係数wnを求めることができる。なお、式(31)を解くにあたっては、例えば、掃き出し法(Gauss-Jordanの消去法)などを採用することが可能である。
【0263】
以上のように、多数のHD画素y1,y2,・・・,yKを、タップ係数の学習の教師となる教師データとするとともに、各HD画素ykについての予測タップを構成するSD画素x1,k,x2,k,・・・,xN,kを、タップ係数の学習の生徒となる生徒データとして、式(31)を解くことにより、最適なタップ係数wnを求める学習を行っておき、さらに、そのタップ係数wnを用い、式(24)により、SD画素を、HD画素にマッピング(変換)するのが適応処理である。
【0264】
ここで、HD画素ykについての予測タップを構成するSD画素x1,k,x2,k,・・・,xN,kとしては、そのHD画素ykに対応するSD画像上の位置から空間的または時間的に近い位置にあるSD画素を採用することができる。
【0265】
また、クラス分類適応処理では、タップ係数wnの学習と、そのタップ係数wnを用いたマッピングとは、クラスごとに行われる。クラス分類適応処理では、注目しているHD画素ykを対象にクラス分類処理が行われ、そのクラス分類処理により得られるクラスごとに、タップ係数wnの学習と、そのタップ係数wnを用いたマッピングが行われる。
【0266】
HD画素ykを対象としたクラス分類処理としては、例えば、そのHD画素ykのクラス分類に用いるクラスタップとしての複数のSD画素を、SD画像から抽出し、その複数のSD画素で構成されるクラスタップを用いてMビットADRC(Adaptive Dynamic Range Coding)処理を施す方法がある。
【0267】
MビットADRC処理においては、クラスタップを構成するSD画素の最大値MAXと最小値MINが検出され、DR=MAX-MINを、局所的なダイナミックレンジとし、このダイナミックレンジDRに基づいて、クラスタップを構成するSD画素がKビットに再量子化される。即ち、クラスタップを構成する各SD画素から、最小値MINが減算され、その減算値がDR/2Kで除算(量子化)される。従って、クラスタップが、例えば、1ビットADRC処理される場合には、そのクラスタップを構成する各SD画素は1ビットとされることになる。そして、この場合、以上のようにして得られる、クラスタップを構成する各SD画素についての1ビットの画素値を、所定の順番で並べたビット列が、ADRCコードとして出力され、このADRCコードが、クラスを表すクラスコードとされる。
【0268】
なお、クラス分類適応処理は、SD画素には含まれていないが、HD画素に含まれる成分が再現される点で、例えば、単なる補間処理等とは異なる。即ち、クラス分類適応処理では、式(24)だけを見る限りは、いわゆる補間フィルタを用いての補間処理と同一であるが、その補間フィルタのタップ係数に相当するタップ係数wnが、教師データとしてのHD画素と生徒データとしてのSD画素とを用いての学習により求められるため、HD画素に含まれる成分を再現することができる。
【0269】
ここで、タップ係数wnの学習では、教師データyと生徒データxとの組み合わせとして、どのようなものを採用するかによって、各種の変換を行うタップ係数wnを求めることができる。
【0270】
即ち、例えば、上述のように、教師データyとして、高解像度のHD画像を採用するとともに、生徒データxとして、そのHD画像の解像度を低下させたSD画像を採用した場合には、画像の解像度を向上させるマッピングを行うタップ係数wnを得ることができる。また、例えば、教師データyとして、HD画像を採用するとともに、生徒データxとして、そのHD画像の画素数を少なくしたSD画像を採用した場合には、画像を構成する画素数を増加させるマッピングを行うタップ係数wnを得ることができる。
【0271】
図26は、図25の入力画像に対して、上述のようなクラス分類適応処理によるマッピングを施すことにより得られる画像である。図26では、細線の画像が、図24の元の画像とは異なるものになっていることがわかる。
【0272】
図27は、データ定常性検出部101による、図25の例で示される入力画像から細線の領域を検出した結果を示す図である。図27において、白い領域は、細線の領域、すなわち、図10で示される円弧形状が並んでいる領域を示す。
【0273】
図28は、図25で示される画像を入力画像として、信号処理装置4で信号処理を行うことにより得られる出力画像の例を示す図である。図28で示されるように、信号処理装置4によれば、図24で示される元の画像の細線の画像により近い画像を得ることができる。
【0274】
図29は、信号処理装置4による、信号処理を説明するフローチャートである。
【0275】
ステップS101において、データ定常性検出部101は、定常性の検出の処理を実行する。データ定常性検出部101は、データ3である入力画像に含まれているデータの定常性を検出して、検出したデータの定常性を示すデータ定常性情報を実世界推定部102および画像生成部103に供給する。
【0276】
データ定常性検出部101は、現実世界の信号の定常性に対応するデータの定常性を検出する。ステップS101の処理において、データ定常性検出部101により検出されるデータの定常性は、データ3に含まれる、実世界1の画像の定常性の一部であるか、または、実世界1の信号の定常性から変化してしまった定常性である。
【0277】
例えば、データ定常性検出部101は、所定の次元の方向に一定の特徴を有する領域を検出することにより、データの定常性を検出する。また、例えば、データ定常性検出部101は、同様の形状の並び方を示す、空間方向の角度(傾き)を検出することにより、データの定常性を検出する。
【0278】
ステップS101における、定常性の検出の処理の詳細は、後述する。
【0279】
なお、データ定常性情報は、データ3の特徴を示す特徴量として利用することができる。
【0280】
ステップS102において、実世界推定部102は、実世界の推定の処理を実行する。すなわち、実世界推定部102は、入力画像、およびデータ定常性検出部101から供給されたデータ定常性情報を基に、実世界1の信号を推定する。例えば、ステップS102の処理において、実世界推定部102は、実世界1を近似(記述)するモデル161を予測することにより、実世界1の信号を推定する。実世界推定部102は、推定された実世界1の信号を示す実世界推定情報を画像生成部103に供給する。
【0281】
例えば、実世界推定部102は、線状の物の幅を予測することにより、実世界1の信号を推定する。また、例えば、実世界推定部102は、線状の物の色を示すレベルを予測することにより、実世界1の信号を推定する。
【0282】
ステップS102における、実世界の推定の処理の詳細は、後述する。
【0283】
なお、実世界推定情報は、データ3の特徴を示す特徴量として利用することができる。
【0284】
ステップS103において、画像生成部103は、画像の生成の処理を実行して、処理は終了する。すなわち、画像生成部103は、実世界推定情報を基に、画像を生成して、生成した画像を出力する。または、画像生成部103は、データ定常性情報および実世界推定情報を基に、画像を生成して、生成した画像を出力する。
【0285】
例えば、ステップS103の処理において、画像生成部103は、実世界推定情報を基に、推定された現実世界の光を空間方向に積分することにより、入力画像に比較して、空間方向により高解像度の画像を生成して、生成した画像を出力する。例えば、画像生成部103は、実世界推定情報を基に、推定された現実世界の光を時空間方向に積分することにより、入力画像に比較して、時間方向および空間方向により高解像度の画像を生成して、生成した画像を出力する。ステップS103における、画像の生成の処理の詳細は、後述する。
【0286】
このように、信号処理装置4は、データ3からデータの定常性を検出し、検出したデータの定常性を基に、実世界1を推定する。そして、信号処理装置4は、推定された実世界1を基に、より実世界1に近似した信号を生成する。
【0287】
以上のように、現実世界の信号を推定して処理を実行するようにした場合には、正確で、精度の高い処理結果を得ることができるようになる。
【0288】
また、第1の次元を有する現実世界の信号である第1の信号が射影され、現実世界の信号の定常性の一部が欠落した第1の次元よりも少ない第2の次元の第2の信号の、欠落した現実世界の信号の定常性に対応するデータの定常性を検出し、検出されたデータの定常性に基づいて、欠落した現実世界の信号の定常性を推定することにより第1の信号を推定するようにした場合には、現実世界の事象に対して、より正確で、より精度の高い処理結果を得ることができるようになる。
【0289】
次に、データ定常性検出部101の構成の詳細について説明する。
【0290】
図30は、データ定常性検出部101の構成を示すブロック図である。
【0291】
図30に構成を示すデータ定常性検出部101は、細線である対象物を撮像したとき、対象物の有する断面形状が同じであるという定常性から生じた、データ3に含まれるデータの定常性を検出する。すなわち、図30に構成を示すデータ定常性検出部101は、細線である実世界1の画像の有する、長さ方向の任意の位置において、長さ方向に直交する方向の位置の変化に対する光のレベルの変化が同じであるという定常性から生じた、データ3に含まれるデータの定常性を検出する。
【0292】
より具体的には、図30に構成を示すデータ定常性検出部101は、細線の画像を空間積分効果を有するセンサ2で撮像して得られたデータ3に含まれる、斜めにずれて隣接して並ぶ、複数の所定の長さの円弧形状(かまぼこ型)が配置される領域を検出する。
【0293】
データ定常性検出部101は、データ3である入力画像から、データの定常性を有する細線の画像が射影された画像データの部分(以下、定常成分とも称する)以外の画像データの部分(以下、非定常成分と称する)を抽出し、抽出された非定常成分と入力画像とから、実世界1の細線の画像が射影された画素を検出し、入力画像における、実世界1の細線の画像が射影された画素からなる領域を検出する。
【0294】
非定常成分抽出部201は、入力画像から非定常成分を抽出して、入力画像と共に、抽出された非定常成分を示す非定常成分情報を頂点検出部202および単調増減検出部203に供給する。
【0295】
例えば、図31で示されるように、ほぼ一定の光のレベルの背景の前に細線がある実世界1の画像がデータ3に射影されたとき、図32で示されるように、非定常成分抽出部201は、データ3である入力画像における背景を平面で近似することにより、背景である非定常成分を抽出する。図32において、実線は、データ3の画素値を示し、点線は、背景を近似する平面で示される近似値を示す。図32において、Aは、細線の画像が射影された画素の画素値を示し、PLは、背景を近似する平面を示す。
【0296】
このように、データの定常性を有する画像データの部分における、複数の画素の画素値は、非定常成分に対して不連続となる。
【0297】
非定常成分抽出部201は、実世界1の光信号である画像が射影され、実世界1の画像の定常性の一部が欠落した、データ3である画像データの複数の画素の画素値の不連続部を検出する。
【0298】
非定常成分抽出部201における非定常成分の抽出の処理の詳細は、後述する。
【0299】
頂点検出部202および単調増減検出部203は、非定常成分抽出部201から供給された非定常成分情報を基に、入力画像から非定常成分を除去する。例えば、頂点検出部202および単調増減検出部203は、入力画像の各画素のうち、背景の画像のみが射影された画素の画素値を0に設定することにより、入力画像から非定常成分を除去する。また、例えば、頂点検出部202および単調増減検出部203は、入力画像の各画素の画素値から、平面PLで近似される値を引き算することにより、入力画像から非定常成分を除去する。
【0300】
入力画像から背景を除去することができるので、頂点検出部202乃至連続性検出部204は、細線が射影された画像データの部分のみを処理の対象とすることができ、頂点検出部202乃至連続性検出部204における処理がより容易になる。
【0301】
なお、非定常成分抽出部201は、入力画像から非定常成分を除去した画像データを頂点検出部202および単調増減検出部203に供給するようにしてもよい。
【0302】
以下に説明する処理の例において、入力画像から非定常成分が除去された画像データ、すなわち、定常成分を含む画素のみからなる画像データが対象となる。
【0303】
ここで、頂点検出部202乃至連続性検出部204が検出しようとする、細線の画像が射影された画像データについて説明する。
【0304】
図31で示される細線の画像が射影された画像データの空間方向Yの断面形状(空間方向の位置の変化に対する画素値の変化)は、光学LPFがないとした場合、センサ2であるイメージセンサの空間積分効果から、図33に示す台形、または図34に示す三角形となることが考えられる。しかしながら、通常のイメージセンサは、光学LPFを備え、イメージセンサは、光学LPFを通過した画像を取得し、取得した画像をデータ3に射影するので、現実には、細線の画像データの空間方向Yの断面形状は、図35に示すようなガウス分布に類似した形状となる。
【0305】
頂点検出部202乃至連続性検出部204は、細線の画像が射影された画素であって、同じ断面形状(空間方向の位置の変化に対する画素値の変化)が画面の上下方向に一定の間隔で並ぶものからなる領域を検出して、さらに、実世界1の細線の長さ方向に対応した、領域の繋がりを検出することにより、データの定常性を有する領域である、細線の画像が射影された画素からなる領域を検出する。すなわち、頂点検出部202乃至連続性検出部204は、入力画像における、縦に1列の画素の上に、円弧形状(かまぼこ型)が形成される領域を検出し、検出された領域が横方向に隣接して並んでいるか否かを判定して、実世界1の信号である細線の画像の長さ方向に対応した、円弧形状が形成される領域の繋がりを検出する。
【0306】
また、頂点検出部202乃至連続性検出部204は、細線の画像が射影された画素であって、同じ断面形状が画面の左右方向に一定の間隔で並ぶものからなる領域を検出して、さらに、実世界1の細線の長さ方向に対応した、検出された領域の繋がりを検出することにより、データの定常性を有する領域である、細線の画像が射影された画素からなる領域を検出する。すなわち、頂点検出部202乃至連続性検出部204は、入力画像における、横に1列の画素の上に、円弧形状が形成される領域を検出し、検出された領域が縦方向に隣接して並んでいるか否かを判定して、実世界1の信号である細線の画像の長さ方向に対応した、円弧形状が形成される領域の繋がりを検出する。
【0307】
まず、細線の画像が射影された画素であって、画面の上下方向に同じ円弧形状が一定の間隔で並ぶものからなる領域を検出する処理を説明する。
【0308】
頂点検出部202は、周囲の画素に比較して、より大きい画素値を有する画素、すなわち頂点を検出し、頂点の位置を示す頂点情報を単調増減検出部203に供給する。画面の上下方向に1列に並ぶ画素を対象とした場合、頂点検出部202は、画面の上側に位置する画素の画素値、および画面の下側に位置する画素の画素値に比較して、より大きい画素値を有する画素を頂点として検出する。頂点検出部202は、1つの画像、例えば、1つのフレームの画像から、1または複数の頂点を検出する。
【0309】
1つの画面には、フレームまたはフィールドが含まれる。以下の説明において、同様である。
【0310】
例えば、頂点検出部202は、1フレームの画像からまだ注目画素とされていない画素の中から注目画素を選択し、注目画素の画素値と、注目画素の上側の画素の画素値とを比較し、注目画素の画素値と、注目画素の下側の画素の画素値とを比較して、上側の画素の画素値より大きい画素値を有し、下側の画素の画素値より大きい画素値を有する注目画素を検出して、検出された注目画素を頂点とする。頂点検出部202は、検出された頂点を示す頂点情報を単調増減検出部203に供給する。
【0311】
頂点検出部202が、頂点を検出しない場合もある。例えば、1つの画像の画素の画素値が全て同じ値であるとき、または、1若しくは2の方向に対して画素値が減少しているとき、頂点は検出されない。この場合、細線の画像は、画像データに射影されていない。
【0312】
単調増減検出部203は、頂点検出部202から供給された、頂点の位置を示す頂点情報を基に、頂点検出部202で検出された頂点に対して上下方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補を検出し、頂点情報と共に、検出した領域を示す領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0313】
より具体的には、単調増減検出部203は、頂点の画素値を基準として、単調減少している画素値を有する画素からなる領域を、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補として検出する。単調減少とは、頂点からの距離がより長い画素の画素値が、頂点からの距離が短い画素の画素値に比較して、より小さいことをいう。
【0314】
また、単調増減検出部203は、頂点の画素値を基準として、単調増加している画素値を有する画素からなる領域を、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補として検出する。単調増加とは、頂点からの距離がより長い画素の画素値が、頂点からの距離が短い画素の画素値に比較して、より大きいことをいう。
【0315】
以下、単調増加している画素値を有する画素からなる領域についての処理は、単調減少している画素値を有する画素からなる領域についての処理と同様なので、その説明は省略する。細線の画像が射影された画素であって、画面の横方向に同じ円弧形状が一定の間隔で並ぶものからなる領域を検出する処理における、単調増加している画素値を有する画素からなる領域についての処理も、単調減少している画素値を有する画素からなる領域についての処理と同様なので、その説明は省略する。
【0316】
例えば、単調増減検出部203は、頂点に対して縦に1列に各画素について、各画素の画素値と、上側の画素の画素値との差分、および下側の画素の画素値との差分を求める。そして、単調増減検出部203は、差分の符号が変化する画素を検出することにより、画素値が単調減少している領域を検出する。
【0317】
さらに、単調増減検出部203は、画素値が単調減少している領域から、頂点の画素値の符号を基準として、頂点の画素値の符号と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補として検出する。
【0318】
例えば、単調増減検出部203は、各画素の画素値の符号と、上側の画素の画素値の符号および下側の画素の画素値の符号とを比較し、画素値の符号が変化する画素を検出することにより、画素値が単調減少している領域から、頂点と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を検出する。
【0319】
このように、単調増減検出部203は、上下方向に並び、頂点に対して画素値が単調減少し、頂点と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を検出する。
【0320】
図36は、空間方向Yの位置に対する画素値から、細線の画像が射影された画素の領域を検出する、頂点の検出および単調増減領域の検出の処理を説明する図である。
【0321】
図36乃至図38において、Pは、頂点を示す。図30で構成が示されるデータ定常性検出部101の説明において、Pは、頂点を示す。
【0322】
頂点検出部202は、各画素の画素値と、これに空間方向Yに隣接する画素の画素値とを比較して、空間方向Yに隣接する2つの画素の画素値より大きい画素値を有する画素を検出することにより、頂点Pを検出する。
【0323】
頂点Pと、頂点Pの空間方向Yの両側の画素とからなる領域は、頂点Pの画素値に対して、空間方向Yの両側の画素の画素値が単調に減少する単調減少領域である。図36において、Aで示す矢印、およびBで示す矢印は、頂点Pの両側に存在する単調減少領域を示す。
【0324】
単調増減検出部203は、各画素の画素値と、その画素に空間方向Yに隣接する画素の画素値との差分を求めて、差分の符号が変化する画素を検出する。単調増減検出部203は、検出された、差分の符号が変化する画素と、その手前側(頂点P側)の画素との境界を、細線の画像が射影された画素からなる細線領域の境界とする。
【0325】
図36において、差分の符号が変化する画素と、その手前側(頂点P側)の画素との境界である細線領域の境界はCで示される。
【0326】
さらに、単調増減検出部203は、単調減少領域において、各画素の画素値の符号と、その画素に空間方向Yに隣接する画素の画素値の符号とを比較し、画素値の符号が変化する画素を検出する。単調増減検出部203は、検出された、差分の符号が変化する画素と、その手前側(頂点P側)の画素との境界を細線領域の境界とする。
【0327】
図36において、差分の符号が変化する画素と、その手前側(頂点P側)の画素との境界である細線領域の境界はDで示される。
【0328】
図36で示されるように、細線の画像が射影された画素からなる細線領域Fは、細線領域の境界Cと、細線領域の境界Dとに挟まれる領域とされる。
【0329】
単調増減検出部203は、このような単調増減領域からなる細線領域Fの中から、予め定めた閾値より長い細線領域F、すなわち、閾値より多い数の画素を含む細線領域Fを求める。例えば、閾値が3であるとき、単調増減検出部203は、4つ以上の画素を含む細線領域Fを検出する。
【0330】
さらに、このように検出された細線領域Fの中から、単調増減検出部203は、頂点Pの画素値、および頂点Pの右側の画素の画素値、および頂点Pの左側の画素の画素値を、それぞれ閾値と比較し、頂点Pの画素値が閾値を超え、頂点Pの右側の画素の画素値が閾値以下であり、頂点Pの左側の画素の画素値が閾値以下である頂点Pが属する細線領域Fを検出し、検出された細線領域Fを細線の画像の成分を含む画素からなる領域の候補とする。
【0331】
言い換えれば、頂点Pの画素値が閾値以下であるか、頂点Pの右側の画素の画素値が閾値を超えるか、または頂点Pの左側の画素の画素値が閾値を超える頂点Pが属する細線領域Fは、細線の画像の成分を含まないと判定され、細線の画像の成分を含む画素からなる領域の候補から除去される。
【0332】
すなわち、図37で示されるように、単調増減検出部203は、頂点Pの画素値を閾値と比較すると共に、頂点Pに対して、空間方向X(点線AA'で示す方向)に隣接する画素の画素値を、閾値と比較し、頂点Pの画素値が閾値を超え、空間方向Xに隣接する画素の画素値が閾値以下である、頂点Pが属する細線領域Fを検出する。
【0333】
図38は、図37の点線AA'で示す空間方向Xに並ぶ画素の画素値を表す図である。頂点Pの画素値が閾値ThSを超え、頂点Pの空間方向Xに隣接する画素の画素値が、閾値ThS以下である、頂点Pが属する細線領域Fは、細線の成分を含む。
【0334】
なお、単調増減検出部203は、背景の画素値を基準として、頂点Pの画素値と背景の画素値との差分を閾値と比較すると共に、頂点Pに対して、空間方向Xに隣接する画素の画素値と背景の画素値との差分を、閾値と比較し、頂点Pの画素値と背景の画素値との差分が閾値を超え、空間方向Xに隣接する画素の画素値と背景の画素値との差分が閾値以下である、頂点Pが属する細線領域Fを検出するようにしてもよい。
【0335】
単調増減検出部203は、頂点Pを基準として、画素値が単調減少し、画素値の符号が頂点Pと同じである画素からなる領域であって、その頂点Pが閾値を超え、頂点Pの右側の画素の画素値が閾値以下であり、頂点Pの左側の画素の画素値が閾値以下であるものを示す単調増減領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0336】
画面の上下方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を検出する場合において、単調増減領域情報により示される領域に属する画素は、上下方向に並び、細線の画像が射影された画素を含む。すなわち、単調増減領域情報により示される領域は、画面の上下方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を含む。
【0337】
このように、頂点検出部202および単調増減検出部203は、細線の画像が射影された画素において、空間方向Yの画素値の変化が、ガウス分布に類似するという性質を利用して、細線の画像が射影された画素からなる定常領域を検出する。
【0338】
連続性検出部204は、単調増減検出部203から供給された単調増減領域情報で示される、上下方向に並ぶ画素からなる領域のうち、横方向に隣接している画素を含む領域、すなわち、相似した画素値の変化を有し、縦方向に重複している領域を、連続している領域として検出し、頂点情報、および検出された連続している領域を示すデータ定常性情報を出力する。データ定常性情報は、単調増減領域情報、および領域の繋がりを示す情報などを含んでいる。
【0339】
細線が射影された画素において、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶので、検出された連続している領域は、細線が射影された画素を含んでいる。
【0340】
検出された連続している領域が、細線が射影された、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶ画素を含むので、検出された連続している領域を定常領域とし、連続性検出部204は、検出された連続している領域を示すデータ定常性情報を出力する。
【0341】
すなわち、連続性検出部204は、長さ方向に連続するという、実世界1の細線の画像の定常性から生じた、細線を撮像して得られたデータ3における、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶ定常性を利用して、頂点検出部202および単調増減検出部203において検出された領域の候補をさらに絞り込む。
【0342】
図39は、単調増減領域の連続性を検出の処理を説明する図である。
【0343】
図39に示すように、連続性検出部204は、画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる細線領域Fについて、横方向に隣接する画素を含んでいるとき、2つの単調増減領域の間に連続性があるとし、横方向に隣接する画素を含んでいないとき、2つの細線領域Fの間に連続性がないとする。例えば、画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる細線領域F-1は、画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる細線領域F0の画素と横方向に隣接する画素を含んでいるとき、細線領域F0と連続しているとされる。画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる細線領域F0は、画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる細線領域F1の画素と横方向に隣接する画素を含んでいるとき、細線領域F1と連続しているとされる。
【0344】
このように、頂点検出部202乃至連続性検出部204により、画面の上下方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域が検出される。
【0345】
頂点検出部202乃至連続性検出部204は、上述したように、画面の上下方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を検出し、さらに、画面の左右方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を検出する。
【0346】
なお、処理の順序は、特に限定されるものではなく、並列に実行するようにしても良いことは当然である。
【0347】
すなわち、頂点検出部202は、画面の左右方向に1列に並ぶ画素を対象として、画面の左側に位置する画素の画素値、および画面の右側に位置する画素の画素値に比較して、より大きい画素値を有する画素を頂点として検出し、検出した頂点の位置を示す頂点情報を単調増減検出部203に供給する。頂点検出部202は、1つの画像、例えば、1フレームの画像から、1または複数の頂点を検出する。
【0348】
例えば、頂点検出部202は、1フレームの画像からまだ注目画素とされていない画素の中から注目画素を選択し、注目画素の画素値と、注目画素の左側の画素の画素値とを比較し、注目画素の画素値と、注目画素の右側の画素の画素値とを比較して、左側の画素の画素値より大きい画素値を有し、右側の画素の画素値より大きい画素値を有する注目画素を検出して、検出された注目画素を頂点とする。頂点検出部202は、検出された頂点を示す頂点情報を単調増減検出部203に供給する。
【0349】
頂点検出部202が、頂点を検出しない場合もある。
【0350】
単調増減検出部203は、頂点検出部202で検出された頂点に対して左右方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補を検出検出し、頂点情報と共に、検出した領域を示す単調増減領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0351】
より具体的には、単調増減検出部203は、頂点の画素値を基準として、単調減少している画素値を有する画素からなる領域を、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補として検出する。
【0352】
例えば、単調増減検出部203は、頂点に対して横に1列の各画素について、各画素の画素値と、左側の画素の画素値との差分、および右側の画素の画素値との差分を求める。そして、単調増減検出部203は、差分の符号が変化する画素を検出することにより、画素値が単調減少している領域を検出する。
【0353】
さらに、単調増減検出部203は、画素値が単調減少している領域から、頂点の画素値の符号を基準として、頂点の画素値の符号と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を、細線の画像が射影された画素からなる領域の候補として検出する。
【0354】
例えば、単調増減検出部203は、各画素の画素値の符号と、左側の画素の画素値の符号または右側の画素の画素値の符号とを比較し、画素値の符号が変化する画素を検出することにより、画素値が単調減少している領域から、頂点と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を検出する。
【0355】
このように、単調増減検出部203は、左右方向に並び、頂点に対して画素値が単調減少し、頂点と同じ符号の画素値を有する画素からなる領域を検出する。
【0356】
単調増減検出部203は、このような単調増減領域からなる細線領域の中から、予め定めた閾値より長い細線領域、すなわち、閾値より多い数の画素を含む細線領域を求める。
【0357】
さらに、このように検出された細線領域の中から、単調増減検出部203は、頂点の画素値、および頂点の上側の画素の画素値、および頂点の下側の画素の画素値を、それぞれ閾値と比較し、頂点の画素値が閾値を超え、頂点の上側の画素の画素値が閾値以下であり、頂点の下側の画素の画素値が閾値以下である頂点が属する細線領域を検出し、検出された細線領域を細線の画像の成分を含む画素からなる領域の候補とする。
【0358】
言い換えれば、頂点の画素値が閾値以下であるか、頂点の上側の画素の画素値が閾値を超えるか、または頂点の下側の画素の画素値が閾値を超える頂点が属する細線領域は、細線の画像の成分を含まないと判定され、細線の画像の成分を含む画素からなる領域の候補から除去される。
【0359】
なお、単調増減検出部203は、背景の画素値を基準として、頂点の画素値と背景の画素値との差分を閾値と比較すると共に、頂点に対して、上下方向に隣接する画素の画素値と背景の画素値との差分を、閾値と比較し、頂点の画素値と背景の画素値との差分が閾値を超え、上下方向に隣接する画素の画素値と背景の画素値との差分が閾値以下である、検出された細線領域を細線の画像の成分を含む画素からなる領域の候補とするようにしてもよい。
【0360】
単調増減検出部203は、頂点を基準として、画素値が単調減少し、画素値の符号が頂点と同じである画素からなる領域であって、その頂点が閾値を超え、頂点の右側の画素の画素値が閾値以下であり、頂点の左側の画素の画素値が閾値以下であるものを示す単調増減領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0361】
画面の左右方向に1列に並ぶ画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を検出する場合において、単調増減領域情報により示される領域に属する画素は、左右方向に並び、細線の画像が射影された画素を含む。すなわち、単調増減領域情報により示される領域は、画面の左右方向に並ぶ1列の画素であって、細線の画像が射影されたものからなる領域を含む。
【0362】
連続性検出部204は、単調増減検出部203から供給された単調増減領域情報で示される、左右方向に並ぶ画素からなる領域のうち、縦方向に隣接している画素を含む領域、すなわち、相似した画素値の変化を有し、横方向に重複している領域を、連続している領域として検出し、頂点情報、および検出された連続している領域を示すデータ定常性情報を出力する。データ定常性情報は、領域の繋がりを示す情報を含んでいる。
【0363】
細線が射影された画素において、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶので、検出された連続している領域は、細線が射影された画素を含んでいる。
【0364】
検出された連続している領域が、細線が射影された、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶ画素を含むので、検出された連続している領域を定常領域とし、連続性検出部204は、検出された連続している領域を示すデータ定常性情報を出力する。
【0365】
すなわち、連続性検出部204は、長さ方向に連続するという、実世界1の細線の画像の定常性から生じた、細線を撮像して得られたデータ3における、円弧形状が隣接するように一定の間隔で並ぶ定常性を利用して、頂点検出部202および単調増減検出部203において検出された領域の候補をさらに絞り込む。
【0366】
このように、データ定常性検出部101は、入力画像であるデータ3に含まれている定常性を検出することができる。すなわち、データ定常性検出部101は、細線である実世界1の画像がデータ3に射影されることにより生じた、データ3に含まれるデータの定常性を検出することができる。データ定常性検出部101は、データ3から、細線である実世界1の画像が射影された画素からなる領域を検出する。
【0367】
図40は、定常性検出部101における、細線の画像が射影された、定常性を有する領域の検出の他の処理の例を示す図である。
【0368】
定常性検出部101は、図40に示すように、各画素について、隣接する画素との画素値の差分の絶対値を計算する。計算された差分の絶対値は、画素に対応させて、配置される。例えば、図40に示すように、画素値がそれぞれP0、P1、P2である画素が並んでいるとき、定常性検出部101は、差分d0=P0-P1および差分d1=P1-P2を計算する。さらに、定常性検出部101は、差分d0および差分d1の絶対値を算出する。
【0369】
画素値P0、P1、およびP2に含まれている非定常性成分が同一であるとき、差分d0および差分d1には、細線の成分に対応した値のみが設定されることになる。
【0370】
従って、定常性検出部101は、画素に対応させて配置されている差分の絶対値のうち、隣り合う差分の値が同一であるとき、その2つの差分の絶対値に対応する画素(2つの差分の絶対値に挟まれた画素)に細線の成分が含まれていると判定する。
【0371】
定常性検出部101においては、このような、簡便な方法で細線を検出することもできる。
【0372】
図41は、定常性検出の処理を説明するフローチャートである。
【0373】
ステップS201において、非定常成分抽出部201は、入力画像から、細線が射影された部分以外の部分である非定常成分を抽出する。非定常成分抽出部201は、入力画像と共に、抽出された非定常成分を示す非定常成分情報を頂点検出部202および単調増減検出部203に供給する。非定常成分の抽出の処理の詳細は、後述する。
【0374】
ステップS202において、頂点検出部202は、非定常成分抽出部201から供給された非定常成分情報を基に、入力画像から非定常成分を除去し、入力画像に定常成分を含む画素のみを残す。さらに、ステップS202において、頂点検出部202は、頂点を検出する。
【0375】
すなわち、頂点検出部202は、画面の縦方向を基準として、処理を実行する場合、定常成分を含む画素について、各画素の画素値と、上側および下側の画素の画素値とを比較して、上側の画素の画素値および下側の画素の画素値より大きい画素値を有する画素を検出することにより、頂点を検出する。また、ステップS202において、頂点検出部202は、画面の横方向を基準として、処理を実行する場合、定常成分を含む画素について、各画素の画素値と、右側および左側の画素の画素値とを比較して、右側の画素の画素値および左側の画素の画素値より大きい画素値を有する画素を検出することにより、頂点を検出する。
【0376】
頂点検出部202は、検出した頂点を示す頂点情報を単調増減検出部203に供給する。
【0377】
ステップS203において、単調増減検出部203は、非定常成分抽出部201から供給された非定常成分情報を基に、入力画像から非定常成分を除去し、入力画像に定常成分を含む画素のみを残す。さらに、ステップS203において、単調増減検出部203は、頂点検出部202から供給された、頂点の位置を示す頂点情報を基に、頂点に対する単調増減を検出することにより、データの定常性を有する画素からなる領域を検出する。
【0378】
単調増減検出部203は、画面の縦方向を基準として、処理を実行する場合、頂点の画素値、および頂点に対して縦に1列に並ぶ画素の画素値を基に、縦に並ぶ1列の画素であって、1つの細線の画像が射影された画素からなる単調増減を検出することにより、データの定常性を有する画素からなる領域を検出する。すなわち、ステップS203において、単調増減検出部203は、画面の縦方向を基準として、処理を実行する場合、頂点および頂点に対して縦に1列に並ぶ画素について、各画素の画素値と、上側または下側の画素の画素値との差分を求めて、差分の符号が変化する画素を検出する。また、単調増減検出部203は、頂点および頂点に対して縦に1列に並ぶ画素について、各画素の画素値の符号と、その画素の上側または下側の画素の画素値の符号とを比較し、画素値の符号が変化する画素を検出する。さらに、単調増減検出部203は、頂点の画素値、並びに頂点の右側および左側の画素の画素値を、閾値と比較し、頂点の画素値が閾値を超え、右側および左側の画素の画素値が閾値以下である画素からなる領域を検出する。
【0379】
単調増減検出部203は、このように検出された領域を単調増減領域として、単調増減領域を示す単調増減領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0380】
また、単調増減検出部203は、画面の横方向を基準として、処理を実行する場合、頂点の画素値、および頂点に対して横に1列に並ぶ画素の画素値を基に、横に並ぶ1列の画素であって、1つの細線の画像が射影された画素からなる単調増減を検出することにより、データの定常性を有する画素からなる領域を検出する。すなわち、ステップS203において、単調増減検出部203は、画面の横方向を基準として、処理を実行する場合、頂点および頂点に対して横に1列に並ぶ画素について、各画素の画素値と、左側または右側の画素の画素値との差分を求めて、差分の符号が変化する画素を検出する。また、単調増減検出部203は、頂点および頂点に対して横に1列に並ぶ画素について、各画素の画素値の符号と、その画素の左側または右側の画素の画素値の符号とを比較し、画素値の符号が変化する画素を検出する。さらに、単調増減検出部203は、頂点の画素値、並びに頂点の上側および下側の画素の画素値を、閾値と比較し、頂点の画素値が閾値を超え、上側および下側の画素の画素値が閾値以下である画素からなる領域を検出する。
【0381】
単調増減検出部203は、このように検出された領域を単調増減領域として、単調増減領域を示す単調増減領域情報を連続性検出部204に供給する。
【0382】
ステップS204において、単調増減検出部203は、全画素の処理が終了したか否かを判定する。例えば、非定常成分抽出部201は、入力画像の1つの画面(例えば、フレームまたはフィールドなど)の全画素について、頂点を検出し、単調増減領域を検出したか否かを判定する。
【0383】
ステップS204において、全画素の処理が終了していない、すなわち、頂点の検出および単調増減領域の検出の処理の対象とされていない画素がまだあると判定された場合、ステップS202に戻り、頂点の検出および単調増減領域の検出の処理の対象とされていない画素から処理の対象となる画素を選択して、頂点の検出および単調増減領域の検出の処理を繰り返す。
【0384】
ステップS204において、全画素の処理が終了した、すなわち、全ての画素を対象として頂点および単調増減領域が検出されたと判定された場合、ステップS205に進み、連続性検出部204は、単調増減領域情報を基に、検出された領域の連続性を検出する。例えば、連続性検出部204は、単調増減領域情報で示される、画面の縦方向に1列に並ぶ画素からなる単調増減領域について、横方向に隣接する画素を含んでいるとき、2つの単調増減領域の間に連続性があるとし、横方向に隣接する画素を含んでいないとき、2つの単調増減領域の間に連続性がないとする。例えば、連続性検出部204は、単調増減領域情報で示される、画面の横方向に1列に並ぶ画素からなる単調増減領域について、縦方向に隣接する画素を含んでいるとき、2つの単調増減領域の間に連続性があるとし、縦方向に隣接する画素を含んでいないとき、2つの単調増減領域の間に連続性がないとする。
【0385】
連続性検出部204は、検出された連続している領域をデータの定常性を有する定常領域とし、頂点の位置および定常領域を示すデータ定常性情報を出力する。データ定常性情報は、領域の繋がりを示す情報を含んでいる。連続性検出部204から出力されるデータ定常性情報は、実世界1の細線の画像が射影された画素からなる、定常領域である細線領域を示す。
【0386】
ステップS206において、定常性方向検出部205は、全画素の処理が終了したか否かを判定する。すなわち、定常性方向検出部205は、入力画像の所定のフレームの全画素について、領域の連続性を検出したか否かを判定する。
【0387】
ステップS206において、全画素の処理が終了していない、すなわち、領域の連続性の検出の処理の対象とされていない画素がまだあると判定された場合、ステップS205に戻り、領域の連続性の検出の処理の対象とされていない画素から処理の対象となる画素を選択して、領域の連続性の検出の処理を繰り返す。
【0388】
ステップS206において、全画素の処理が終了した、すなわち、全ての画素を対象として領域の連続性が検出されたと判定された場合、処理は終了する。
【0389】
このように、入力画像であるデータ3に含まれている定常性が検出される。すなわち、細線である実世界1の画像がデータ3に射影されることにより生じた、データ3に含まれるデータの定常性が検出され、データ3から、細線である実世界1の画像が射影された画素からなる、データの定常性を有する領域が検出される。
【0390】
なお、図30で構成が示されるデータ定常性検出部101は、データ3のフレームから検出されたデータの定常性を有する領域を基に、時間方向のデータの定常性を検出することができる。
【0391】
例えば、図42に示すように、連続性検出部204は、フレーム#nにおいて、検出されたデータの定常性を有する領域、フレーム#n-1において、検出されたデータの定常性を有する領域、およびフレーム#n+1において、検出されたデータの定常性を有する領域を基に、領域の端部を結ぶことにより、時間方向のデータの定常性を検出する。
【0392】
フレーム#n-1は、フレーム#nに対して時間的に前のフレームであり、フレーム#n+1は、フレーム#nに対して時間的に後のフレームである。すなわち、フレーム#n-1、フレーム#n、およびフレーム#n+1は、フレーム#n-1、フレーム#n、およびフレーム#n+1の順で表示される。
【0393】
より具体的には、図42において、Gは、フレーム#nにおいて、検出されたデータの定常性を有する領域、フレーム#n-1において、検出されたデータの定常性を有する領域、およびフレーム#n+1において、検出されたデータの定常性を有する領域のそれぞれの一端を結ぶことにより得られた動きベクトルを示し、G’は、検出されたデータの定常性を有する領域のそれぞれの他の一端を結ぶことにより得られた動きベクトルを示す。動きベクトルGおよび動きベクトルG’は、時間方向のデータの定常性の一例である。
【0394】
さらに、図30で構成が示されるデータ定常性検出部101は、データの定常性を有する領域の長さを示す情報を、データ定常性情報として出力することができる。
【0395】
図43は、データの定常性を有しない画像データの部分である非定常成分を平面で近似して、非定常成分を抽出する、非定常成分抽出部201の構成を示すブロック図である。
【0396】
図43に構成を示す非定常成分抽出部201は、入力画像から所定の数の画素でなるブロックを抽出し、ブロックと平面で示される値との誤差が所定の閾値未満になるように、ブロックを平面で近似して、非定常成分を抽出する。
【0397】
入力画像は、ブロック抽出部221に供給されるとともに、そのまま出力される。
【0398】
ブロック抽出部221は、入力画像から、所定の数の画素からなるブロックを抽出する。例えば、ブロック抽出部221は、7×7の画素からなるブロックを抽出し、平面近似部222に供給する。例えば、ブロック抽出部221は、抽出されるブロックの中心となる画素をラスタスキャン順に移動させ、順次、入力画像からブロックを抽出する。
【0399】
平面近似部222は、ブロックに含まれる画素の画素値を所定の平面で近似する。例えば、平面近似部222は、式(32)で表される平面でブロックに含まれる画素の画素値を近似する。
【0400】
【数32】
Figure 0004325296
・・・(32)
【0401】
式(32)において、xは、画素の画面上の一方の方向(空間方向X)の位置を示し、yは、画素の画面上の他の一方の方向(空間方向Y)の位置を示す。zは、平面で示される近似値を示す。aは、平面の空間方向Xの傾きを示し、bは、平面の空間方向Yの傾きを示す。式(32)において、cは、平面のオフセット(切片)を示す。
【0402】
例えば、平面近似部222は、回帰の処理により、傾きa、傾きb、およびオフセットcを求めることにより、式(32)で表される平面で、ブロックに含まれる画素の画素値を近似する。平面近似部222は、棄却を伴う回帰の処理により、傾きa、傾きb、およびオフセットcを求めることにより、式(32)で表される平面で、ブロックに含まれる画素の画素値を近似する。
【0403】
例えば、平面近似部222は、最小自乗法により、ブロックの画素の画素値に対して、誤差が最小となる式(32)で表される平面を求めることにより、平面でブロックに含まれる画素の画素値を近似する。
【0404】
なお、平面近似部222は、式(32)で表される平面でブロックを近似すると説明したが、式(32)で表される平面に限らず、より高い自由度をもった関数、例えば、n次の多項式で表される面でブロックを近似するようにしてもよい。
【0405】
繰り返し判定部223は、ブロックの画素値を近似した平面で示される近似値と、ブロックの対応する画素の画素値との誤差を計算する。式(33)は、ブロックの画素値を近似した平面で示される近似値と、ブロックの対応する画素の画素値ziとの差分である誤差eiを示す式である。
【0406】
【数33】
Figure 0004325296
・・・(33)
【0407】
式(33)において、zハット(zに^を付した文字をzハットと記述する。以下、本明細書において、同様に記載する。)は、ブロックの画素値を近似した平面で示される近似値を示し、aハットは、ブロックの画素値を近似した平面の空間方向Xの傾きを示し、bハットは、ブロックの画素値を近似した平面の空間方向Yの傾きを示す。式(33)において、cハットは、ブロックの画素値を近似した平面のオフセット(切片)を示す。
【0408】
繰り返し判定部223は、式(33)で示される、近似値とブロックの対応する画素の画素値との誤差eiが、最も大きい画素を棄却する。このようにすることで、細線が射影された画素、すなわち定常性を有する画素が棄却されることになる。繰り返し判定部223は、棄却した画素を示す棄却情報を平面近似部222に供給する。
【0409】
さらに、繰り返し判定部223は、標準誤差を算出して、標準誤差が、予め定めた近似終了判定用の閾値以上であり、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されていないとき、繰り返し判定部223は、平面近似部222に、ブロックに含まれる画素のうち、棄却された画素を除いた画素を対象として、平面による近似の処理を繰り返させる。
【0410】
定常性を有する画素が棄却されるので、棄却された画素を除いた画素を対象として平面で近似をすることにより、平面は、非定常成分を近似することになる。
【0411】
繰り返し判定部223は、標準誤差が、近似終了判定用の閾値未満であるとき、または、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されたとき、平面による近似を終了する。
【0412】
5×5の画素からなるブロックについて、標準誤差esは、例えば、式(34)で算出される。
【0413】
【数34】
Figure 0004325296
・・・(34)
ここで、nは、画素の数である。
【0414】
なお、繰り返し判定部223は、標準誤差に限らず、ブロックに含まれる全ての画素についての誤差の2乗の和を算出して、以下の処理を実行するようにしてもよい。
【0415】
ここで、ラスタスキャン方向に1画素ずつずれたブロックを平面で近似するとき、図44に示すように、図中黒丸で示す、定常性を有する画素、すなわち細線の成分を含む画素は、複数回棄却されることになる。
【0416】
繰り返し判定部223は、平面による近似を終了したとき、ブロックの画素値を近似した平面を示す情報(式(32)の平面の傾きおよび切片)を、非定常成分情報として出力する。
【0417】
なお、繰り返し判定部223は、画素毎の棄却された回数と予め定めた閾値とを比較して、棄却された回数が閾値以上である画素を定常成分を含む画素であるとして、定常成分を含む画素を示す情報を定常成分情報として出力するようにしてもよい。この場合、頂点検出部202乃至定常性方向検出部205は、定常成分情報で示される、定常成分を含む画素を対象として、それぞれの処理を実行する。
【0418】
棄却された回数、ブロックの画素の画素値を近似する平面の空間方向Xの傾き、ブロックの画素の画素値を近似する平面の空間方向Yの傾き、ブロックの画素の画素値を近似する平面で示される近似値、および誤差eiは、入力画像の特徴量としても利用することができる。
【0419】
図45は、ステップS201に対応する、図43に構成を示す非定常成分抽出部201による、非定常成分の抽出の処理を説明するフローチャートである。
【0420】
ステップS221において、ブロック抽出部221は、入力画素から、所定の数の画素からなるブロックを抽出し、抽出したブロックを平面近似部222に供給する。例えば、ブロック抽出部221は、入力画素から、まだ、選択されていない画素のうち、1つの画素を選択し、選択された画素を中心とする7×7の画素からなるブロックを抽出する。例えば、ブロック抽出部221は、ラスタスキャン順に画素を選択することができる。
【0421】
ステップS222において、平面近似部222は、抽出されたブロックを平面で近似する。平面近似部222は、例えば、回帰の処理により、抽出されたブロックの画素の画素値を、平面で近似する。例えば、平面近似部222は、回帰の処理により、抽出されたブロックの画素のうち、棄却された画素を除いた画素の画素値を、平面で近似する。ステップS223において、繰り返し判定部223は、繰り返し判定を実行する。例えば、ブロックの画素の画素値と近似した平面の近似値とから標準誤差を算出し、棄却された画素の数をカウントすることにより、繰り返し判定を実行する。
【0422】
ステップS224において、繰り返し判定部223は、標準誤差が閾値以上であるか否かを判定し、標準誤差が閾値以上であると判定された場合、ステップS225に進む。
【0423】
なお、ステップS224において、繰り返し判定部223は、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されたか否か、および標準誤差が閾値以上であるか否かを判定し、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されておらず、標準誤差が閾値以上であると判定された場合、ステップS225に進むようにしてもよい。
【0424】
ステップS225において、繰り返し判定部223は、ブロックの画素毎に、画素の画素値と近似した平面の近似値との誤差を算出し、誤差が最も大きい画素を棄却し、平面近似部222に通知する。手続きは、ステップS222に戻り、棄却された画素を除いた、ブロックの画素を対象として、平面による近似の処理および繰り返し判定の処理が繰り返される。
【0425】
ステップS225において、ラスタスキャン方向に1画素ずつずれたブロックがステップS221の処理で抽出される場合、図44に示すように、細線の成分を含む画素(図中の黒丸で示す)は、複数回棄却されることになる。
【0426】
ステップS224において、標準誤差が閾値以上でないと判定された場合、ブロックが平面で近似されたので、ステップS226に進む。
【0427】
なお、ステップS224において、繰り返し判定部223は、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されたか否か、および標準誤差が閾値以上であるか否かを判定し、ブロックの画素のうち、半分以上の画素が棄却されたか、または標準誤差が閾値以上でないと判定された場合、ステップS225に進むようにしてもよい。
【0428】
ステップS226において、繰り返し判定部223は、ブロックの画素の画素値を近似する平面の傾きおよび切片を、非定常成分情報として出力する。
【0429】
ステップS227において、ブロック抽出部221は、入力画像の1つの画面の全画素について処理を終了したか否かを判定し、まだ処理の対象となってない画素があると判定された場合、ステップS221に戻り、まだ処理の対象となっていない画素からブロックを抽出して、上述した処理を繰り返す。
【0430】
ステップS227において、入力画像の1つの画面の全画素について、処理を終了したと判定された場合、処理は終了する。
【0431】
このように、図43に構成を示す非定常成分抽出部201は、入力画像から非定常成分を抽出することができる。非定常成分抽出部201が入力画像の非定常成分を抽出するので、頂点検出部202および単調増減検出部203は、入力画像と、非定常成分抽出部201で抽出された非定常成分との差分を求めることにより、定常成分を含む差分を対象として処理を実行することができる。
【0432】
なお、平面による近似の処理において算出される、棄却した場合の標準誤差、棄却しない場合の標準誤差、画素の棄却された回数、平面の空間方向Xの傾き(式(32)におけるaハット)、平面の空間方向Yの傾き(式(32)におけるbハット)、平面で置き換えたときのレベル(式(32)におけるcハット)、および入力画像の画素値と平面で示される近似値との差分は、特徴量として利用することができる。
【0433】
図46は、ステップS201に対応する非定常成分の抽出の処理に代わる、図43に構成を示す非定常成分抽出部201による、定常成分の抽出の処理を説明するフローチャートである。ステップS241乃至ステップS245の処理は、ステップS221乃至ステップS225の処理と同様なので、その説明は省略する。
【0434】
ステップS246において、繰り返し判定部223は、平面で示される近似値と入力画像の画素値との差分を、入力画像の定常成分として出力する。すなわち、繰り返し判定部223は、平面による近似値と、真値である画素値との差分を出力する。
【0435】
なお、繰り返し判定部223は、平面で示される近似値と入力画像の画素値との差分が、所定の閾値以上である画素の画素値を、入力画像の定常成分として出力するようにしてもよい。
【0436】
ステップS247の処理は、ステップS227の処理と同様なので、その説明は省略する。
【0437】
平面が非定常成分を近似しているので、非定常成分抽出部201は、入力画像の各画素の画素値から、画素値を近似する平面で示される近似値を引き算することにより、入力画像から非定常成分を除去することができる。この場合、頂点検出部202乃至連続性検出部204は、入力画像の定常成分、すなわち細線の画像が射影された値のみを処理の対象とすることができ、頂点検出部202乃至連続性検出部204における処理がより容易になる。
【0438】
図47は、ステップS201に対応する非定常成分の抽出の処理に代わる、図43に構成を示す非定常成分抽出部201による、定常成分の抽出の他の処理を説明するフローチャートである。ステップS261乃至ステップS265の処理は、ステップS221乃至ステップS225の処理と同様なので、その説明は省略する。
【0439】
ステップS266において、繰り返し判定部223は、画素毎の、棄却の回数を記憶し、ステップS262に戻り、処理を繰り返す。
【0440】
ステップS264において、標準誤差が閾値以上でないと判定された場合、ブロックが平面で近似されたので、ステップS267に進み、繰り返し判定部223は、入力画像の1つの画面の全画素について処理を終了したか否かを判定し、まだ処理の対象となってない画素があると判定された場合、ステップS261に戻り、まだ処理の対象となっていない画素についてブロックを抽出して、上述した処理を繰り返す。
【0441】
ステップS267において、入力画像の1つの画面の全画素について、処理を終了したと判定された場合、ステップS268に進み、繰り返し判定部223は、まだ選択されていない画素から1つの画素を選択し、選択された画素について、棄却の回数が、閾値以上であるか否かを判定する。例えば、繰り返し判定部223は、ステップS268において、選択された画素について、棄却の回数が、予め記憶している閾値以上であるか否かを判定する。
【0442】
ステップS268において、選択された画素について、棄却の回数が、閾値以上であると判定された場合、選択された画素が定常成分を含むので、ステップS269に進み、繰り返し判定部223は、選択された画素の画素値(入力画像における画素値)を入力画像の定常成分として出力し、ステップS270に進む。
【0443】
ステップS268において、選択された画素について、棄却の回数が、閾値以上でないと判定された場合、選択された画素が定常成分を含まないので、ステップS269の処理をスキップして、手続きは、ステップS270に進む。すなわち、棄却の回数が、閾値以上でないと判定された画素は、画素値が出力されない。
【0444】
なお、棄却の回数が、閾値以上でないと判定された画素について、繰り返し判定部223は、0を設定した画素値を出力するようにしてもよい。
【0445】
ステップS270において、繰り返し判定部223は、入力画像の1つの画面の全画素について、棄却の回数が閾値以上であるか否かの判定の処理を終了したか否かを判定し、全画素について処理を終了していないと判定された場合、まだ処理の対象となってない画素があるので、ステップS268に戻り、まだ処理の対象となっていない画素から1つの画素を選択して、上述した処理を繰り返す。
【0446】
ステップS270において、入力画像の1つの画面の全画素について処理を終了したと判定された場合、処理は終了する。
【0447】
このように、非定常成分抽出部201は、定常成分情報として、入力画像の画素のうち、定常成分を含む画素の画素値を出力することができる。すなわち、非定常成分抽出部201は、入力画像の画素のうち、細線の画像の成分を含む画素の画素値を出力することができる。
【0448】
図48は、ステップS201に対応する非定常成分の抽出の処理に代わる、図43に構成を示す非定常成分抽出部201による、定常成分の抽出のさらに他の処理を説明するフローチャートである。ステップS281乃至ステップS288の処理は、ステップS261乃至ステップS268の処理と同様なので、その説明は省略する。
【0449】
ステップS289において、繰り返し判定部223は、平面で示される近似値と、選択された画素の画素値との差分を入力画像の定常成分として出力する。すなわち、繰り返し判定部223は、入力画像から非定常成分を除去した画像を定常性情報として出力する。
【0450】
ステップS290の処理は、ステップS270の処理と同様なので、その説明は省略する。
【0451】
このように、非定常成分抽出部201は、入力画像から非定常成分を除去した画像を定常性情報として出力することができる。
【0452】
以上のように、現実世界の光信号が射影され、現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した、第1の画像データの複数の画素の画素値の不連続部を検出し、検出された不連続部からデータの定常性を検出し、検出されたデータの定常性を基に、現実世界の光信号の定常性を推定することにより光信号を推定し、推定された光信号を第2の画像データに変換するようにした場合、現実世界の事象に対して、より正確で、より精度の高い処理結果を得ることができるようになる。
【0453】
図49は、データ定常性検出部101の他の構成を示すブロック図である。
【0454】
図49に構成を示すデータ定常性検出部101においては、注目している画素である注目画素について、入力画像の空間方向に対する画素値の変化、すなわち入力画像の空間方向のアクティビティが検出され、検出されたアクティビティに応じて、注目画素および基準軸を基準とした角度毎に、垂直方向に1列または水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組が、複数抽出され、抽出された画素の組の相関が検出され、相関に基づいて、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度が検出される。
【0455】
データの定常性の角度とは、基準軸と、データ3が有している、一定の特徴が繰り返し現れる所定の次元の方向とがなす角度をいう。一定の特徴が繰り返し現れるとは、例えば、データ3における位置の変化に対する値の変化、すなわち断面形状が同じである場合などをいう。
【0456】
基準軸は、例えば、空間方向Xを示す軸(画面の水平方向)、または空間方向Yを示す軸(画面の垂直方向)などとすることができる。
【0457】
入力画像は、アクティビティ検出部401およびデータ選択部402に供給される。
【0458】
アクティビティ検出部401は、入力画像の空間方向に対する画素値の変化、すなわち空間方向のアクティビティを検出して、検出した結果を示すアクティビティ情報をデータ選択部402および定常方向導出部404に供給する。
【0459】
例えば、アクティビティ検出部401は、画面の水平方向に対する画素値の変化、および画面の垂直方向に対する画素値の変化を検出し、検出された水平方向に対する画素値の変化および垂直方向に対する画素値の変化を比較することにより、垂直方向に対する画素値の変化に比較して、水平方向に対する画素値の変化が大きいか、または水平方向に対する画素値の変化に比較して、垂直方向に対する画素値の変化が大きいかを検出する。
【0460】
アクティビティ検出部401は、検出の結果である、垂直方向に対する画素値の変化に比較して、水平方向に対する画素値の変化が大きいことを示すか、または水平方向に対する画素値の変化に比較して、垂直方向に対する画素値の変化が大きいことを示すアクティビティ情報をデータ選択部402および定常方向導出部404に供給する。
【0461】
垂直方向に対する画素値の変化に比較して、水平方向に対する画素値の変化が大きい場合、例えば、図50で示されるように、垂直方向に1列の画素に円弧形状(かまぼこ型)またはつめ形状が形成され、円弧形状またはつめ形状が垂直により近い方向に繰り返して形成されている。すなわち、垂直方向に対する画素値の変化に比較して、水平方向に対する画素値の変化が大きい場合、基準軸を空間方向Xを示す軸とすると、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度は、45度乃至90度のいずれかの値である。
【0462】
水平方向に対する画素値の変化に比較して、垂直方向に対する画素値の変化が大きい場合、例えば、水平方向に1列の画素に円弧形状またはつめ形状が形成され、円弧形状またはつめ形状が水平方向により近い方向に繰り返して形成されている。すなわち、水平方向に対する画素値の変化に比較して、垂直方向に対する画素値の変化が大きい場合、基準軸を空間方向Xを示す軸とすると、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度は、0度乃至45度のいずれかの値である。
【0463】
例えば、アクティビティ検出部401は、図51で示される、注目画素を中心とした3×3の9つの画素からなるブロックを入力画像から抽出する。アクティビティ検出部401は、縦に隣接する画素についての画素値の差分の和、および横に隣接する画素についての画素値の差分の和を算出する。横に隣接する画素についての画素値の差分の和hdiffは、式(35)で求められる。
【0464】
【数35】
Figure 0004325296
・・・(35)
【0465】
同様に、縦に隣接する画素についての画素値の差分の和vdiffは、式(36)で求められる。
【0466】
【数36】
Figure 0004325296
・・・(36)
【0467】
式(35)および式(36)において、Pは、画素値を示し、iは、画素の横方向の位置を示し、jは、画素の縦方向の位置を示す。
【0468】
アクティビティ検出部401は、算出された横に隣接する画素についての画素値の差分の和hdiffおよび縦に隣接する画素についての画素値の差分の和vdiffを比較して、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度の範囲を判定するようにしてもよい。すなわち、この場合、アクティビティ検出部401は、空間方向の位置に対する画素値の変化で示される形状が水平方向に繰り返して形成されているか、垂直方向に繰り返して形成されているかを判定する。
【0469】
例えば、横に1列の画素上に形成された円弧についての横方向の画素値の変化は、縦方向の画素値の変化に比較して大きく、横に1列の画素上に形成された円弧についての縦方向の画素値の変化は、横方向の画素値の変化に比較して大きく、データの定常性の方向、すなわち、データ3である入力画像が有している、一定の特徴の所定の次元の方向の変化は、データの定常性に直交する方向の変化に比較して小さいと言える。言い換えれば、データの定常性の方向の差分に比較して、データの定常性の方向に直交する方向(以下、非定常方向とも称する)の差分は大きい。
【0470】
例えば、図52に示すように、アクティビティ検出部401は、算出された横に隣接する画素についての画素値の差分の和hdiffおよび縦に隣接する画素についての画素値の差分の和vdiffを比較して、横に隣接する画素についての画素値の差分の和hdiffが大きい場合、基準軸を基準としたデータの定常性の角度が、45度乃至135度のいずれかの値であると判定し、縦に隣接する画素についての画素値の差分の和vdiffが大きい場合、基準軸を基準としたデータの定常性の角度が、0度乃至45度のいずれかの値、または135度乃至180度のいずれかの値であると判定する。
【0471】
例えば、アクティビティ検出部401は、判定の結果を示すアクティビティ情報をデータ選択部402および定常方向導出部404に供給する。
【0472】
なお、アクティビティ検出部401は、5×5の25の画素からなるブロック、または7×7の49の画素からなるブロックなど、任意の大きさのブロックを抽出して、アクティビティを検出することができる。
【0473】
データ選択部402は、入力画像の画素から注目画素を順に選択し、アクティビティ検出部401から供給されたアクティビティ情報を基に、注目画素および基準軸を基準とした角度毎に、垂直方向に1列または水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0474】
例えば、アクティビティ情報が垂直方向に対する画素値の変化に比較して、水平方向に対する画素値の変化が大きいことを示しているとき、データの定常性の角度が、45度乃至135度のいずれかの値なので、データ選択部402は、注目画素および基準軸を基準とした45度乃至135度の範囲の所定の角度毎に、垂直方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0475】
アクティビティ情報が水平方向に対する画素値の変化に比較して、垂直方向に対する画素値の変化が大きいことを示しているとき、データの定常性の角度が、0度乃至45度または135度乃至180度のいずれかの値なので、データ選択部402は、注目画素および基準軸を基準とした0度乃至45度または135度乃至180度の範囲の所定の角度毎に、水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0476】
また、例えば、データの定常性の角度が45度乃至135度のいずれかの値であることを、アクティビティ情報が示しているとき、データ選択部402は、注目画素および基準軸を基準とした45度乃至135度の範囲の所定の角度毎に、垂直方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0477】
データの定常性の角度が0度乃至45度または135度乃至180度のいずれかの値であることを、アクティビティ情報が示しているとき、データ選択部402は、注目画素および基準軸を基準とした0度乃至45度または135度乃至180度の範囲の所定の角度毎に、水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0478】
データ選択部402は、抽出した画素からなる複数の組を誤差推定部403に供給する。
【0479】
誤差推定部403は、抽出した画素からなる複数の組について、角度毎に、画素の組の相関を検出する。
【0480】
例えば、誤差推定部403は、1つの角度に対応する、垂直方向に1列の所定の数の画素からなる画素の複数の組について、画素の組における対応する位置の画素の画素値の相関を検出する。誤差推定部403は、1つの角度に対応する、水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の複数の組について、組における対応する位置の画素の画素値の相関を検出する。
【0481】
誤差推定部403は、検出した相関を示す相関情報を定常方向導出部404に供給する。誤差推定部403は、相関を示す値として、データ選択部402から供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、他の組における対応する位置の画素の画素値の差分の絶対値の和を算出し、差分の絶対値の和を相関情報として定常方向導出部404に供給する。
【0482】
定常方向導出部404は、誤差推定部403から供給された相関情報に基いて、欠落した実世界1の光信号の定常性に対応する、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出し、角度を示すデータ定常性情報を出力する。例えば、定常方向導出部404は、誤差推定部403から供給された相関情報に基いて、データの定常性の角度として、最も相関の強い画素の組に対する角度を検出し、検出された最も相関の強い画素の組に対する角度を示すデータ定常性情報を出力する。
【0483】
以下の説明において、適宜、0度乃至90度の範囲(いわゆる第1象限)のデータの定常性の角度を検出するものとして説明する。
【0484】
図53は、図49に示すデータ定常性検出部101のより詳細な構成を示すブロック図である。
【0485】
データ選択部402は、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lを含む。誤差推定部403は、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lを含む。定常方向導出部404は、最小誤差角度選択部413を含む。
【0486】
まず、アクティビティ情報で示される、データの定常性の角度が45度乃至135度のいずれかの値であるときの画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lの処理を説明する。
【0487】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、空間方向Xを示す軸を基準軸として、注目画素を通る、それぞれ異なる所定の角度の直線を設定する。画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列に属する画素であって、注目画素の上側の所定の数の画素、および注目画素の下側の所定の数の画素、並びに注目画素を画素の組として選択する。
【0488】
例えば、図54で示されるように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列に属する画素から、注目画素を中心として9つの画素を画素の組として選択する。
【0489】
図54において、マス目状の1つの四角(1つのマス目)は、1つの画素を示す。図54において、中央に示す丸は、注目画素を示す。
【0490】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側の縦に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。図54において、注目画素の左下側の丸は、選択された画素の例を示す。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側の縦に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の上側の所定の数の画素、および選択された画素の下側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0491】
例えば、図54で示されるように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側の縦に1列の画素の列に属する画素から、直線に最も近い位置の画素を中心として9つの画素を画素の組として選択する。
【0492】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。図54において、最も左側の丸は、選択された画素の例を示す。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の上側の所定の数の画素、および選択された画素の下側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0493】
例えば、図54で示されるように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、左側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素から、直線に最も近い位置の画素を中心として9つの画素を画素の組として選択する。
【0494】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側の縦に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。図54において、注目画素の右上側の丸は、選択された画素の例を示す。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側の縦に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の上側の所定の数の画素、および選択された画素の下側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0495】
例えば、図54で示されるように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側の縦に1列の画素の列に属する画素から、直線に最も近い位置の画素を中心として9つの画素を画素の組として選択する。
【0496】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。図54において、最も右側の丸は、このように選択された画素の例を示す。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の上側の所定の数の画素、および選択された画素の下側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0497】
例えば、図54で示されるように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する縦に1列の画素の列の、右側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素から、直線に最も近い位置の画素を中心として9つの画素を画素の組として選択する。
【0498】
このように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、それぞれ、画素の組を5つ選択する。
【0499】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、互いに異なる角度(に設定された直線)についての、画素の組を選択する。例えば、画素選択部411−1は、45度についての、画素の組を選択し、画素選択部411−2は、47.5度についての、画素の組を選択し、画素選択部411−3は、50度についての、画素の組を選択する。画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、52.5度から135度までの、2.5度毎の角度についての、画素の組を選択する。
【0500】
なお、画素の組の数は、例えば、3つ、または7つなど、任意の数とすることができる。また、1つの組として選択された画素の数は、例えば、5つ、または13など、任意の数とすることができる。
【0501】
なお、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、縦方向に所定の範囲の画素から、画素の組を選択するようにすることができる。例えば、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、縦方向に121個の画素(注目画素に対して、上方向に60画素、下方向に60画素)から、画素の組を選択する。この場合、データ定常性検出部101は、空間方向Xを示す軸に対して、88.09度まで、データの定常性の角度を検出することができる。
【0502】
画素選択部411−1は、選択した画素の組を推定誤差算出部412−1に供給し、画素選択部411−2は、選択した画素の組を推定誤差算出部412−2に供給する。同様に、画素選択部411−3乃至画素選択部411−Lのそれぞれは、選択した画素の組を推定誤差算出部412−3乃至推定誤差算出部412−Lのそれぞれに供給する。
【0503】
推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、複数の組における対応する位置の画素の画素値の相関を検出する。例えば、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、相関を示す値として、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、他の組における対応する位置の画素の画素値の差分の絶対値の和を算出する。
【0504】
より具体的には、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、注目画素の左側の縦に1列の画素の列に属する画素からなる組の画素の画素値とを基に、最も上の画素の画素値の差分を算出し、上から2番目の画素の画素値の差分を算出するように、上の画素から順に画素値の差分の絶対値を算出して、さらに、算出された差分の絶対値の和を算出する。推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、注目画素の左に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素からなる組の画素の画素値とを基に、上の画素から順に画素値の差分の絶対値を算出して、算出された差分の絶対値の和を算出する。
【0505】
そして、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、注目画素の右側の縦に1列の画素の列に属する画素からなる組の画素の画素値とを基に、最も上の画素の画素値の差分を算出し、上から2番目の画素の画素値の差分を算出するように、上の画素から順に画素値の差分の絶対値を算出して、さらに、算出された差分の絶対値の和を算出する。推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、注目画素を含む組の画素の画素値と、注目画素の右に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素からなる組の画素の画素値とを基に、上の画素から順に画素値の差分の絶対値を算出して、算出された差分の絶対値の和を算出する。
【0506】
推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、このように算出された画素値の差分の絶対値の和を全て加算して、画素値の差分の絶対値の総和を算出する。
【0507】
推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、検出された相関を示す情報を、最小誤差角度選択部413に供給する。例えば、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、算出された画素値の差分の絶対値の総和を最小誤差角度選択部413に供給する。
【0508】
なお、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素値の差分の絶対値の和に限らず、画素値の差分の自乗の和、または画素値を基にした相関係数など他の値を相関値として算出するようにすることができる。
【0509】
最小誤差角度選択部413は、互いに異なる角度についての、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lにおいて検出された相関に基いて、欠落した実世界1の光信号である画像の定常性に対応する、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出する。すなわち、最小誤差角度選択部413は、互いに異なる角度についての、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lにおいて検出された相関に基いて、最も強い相関を選択し、選択された相関が検出された角度を、基準軸を基準としたデータの定常性の角度とすることにより、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出する。
【0510】
例えば、最小誤差角度選択部413は、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lから供給された、画素値の差分の絶対値の総和のうち、最小の総和を選択する。最小誤差角度選択部413は、選択された総和が算出された画素の組について、注目画素に対して、左側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、直線に最も近い位置の画素の位置、および、注目画素に対して、右側に2つめの縦に1列の画素の列に属する画素であって、直線に最も近い位置の画素の位置を参照する。
【0511】
図54で示されるように、最小誤差角度選択部413は、注目画素の位置に対する、参照する画素の位置の縦方向の距離Sを求める。最小誤差角度選択部413は、図55で示すように、式(37)から、欠落した実世界1の光信号の定常性に対応する、画像データである入力画像における、基準軸である空間方向Xを示す軸を基準としたデータの定常性の角度θを検出する。
【0512】
【数37】
Figure 0004325296
・・・(37)
【0513】
次に、アクティビティ情報で示される、データの定常性の角度が0度乃至45度および135度乃至180度のいずれかの値であるときの画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lの処理を説明する。
【0514】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、空間方向Xを示す軸を基準軸として、注目画素を通る、所定の角度の直線を設定し、注目画素が属する横に1列の画素の列に属する画素であって、注目画素の上側の所定の数の画素、および注目画素の下側の所定の数の画素、並びに注目画素を画素の組として選択する。
【0515】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、上側の横に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、上側の横に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の左側の所定の数の画素、および選択された画素の右側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0516】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、上側に2つめの横に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、上側に2つめの横に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の左側の所定の数の画素、および選択された画素の右側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0517】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、下側の横に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、下側の横に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の左側の所定の数の画素、および選択された画素の右側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0518】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、下側に2つめの横に1列の画素の列に属する画素であって、それぞれに設定された直線に最も近い位置の画素を選択する。そして、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、注目画素が属する横に1列の画素の列の、下側に2つめの横に1列の画素の列に属する画素であって、選択された画素の左側の所定の数の画素、および選択された画素の右側の所定の数の画素、並びに選択された画素を画素の組として選択する。
【0519】
このように、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、それぞれ、画素の組を5つ選択する。
【0520】
画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、互いに異なる角度についての、画素の組を選択する。例えば、画素選択部411−1は、0度についての、画素の組を選択し、画素選択部411−2は、2.5度についての、画素の組を選択し、画素選択部411−3は、5度についての、画素の組を選択する。画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lは、7.5度から45度および135度から180度までの、2.5度毎の角度についての、画素の組を選択する。
【0521】
画素選択部411−1は、選択した画素の組を推定誤差算出部412−1に供給し、画素選択部411−2は、選択した画素の組を推定誤差算出部412−2に供給する。同様に、画素選択部411−3乃至画素選択部411−Lのそれぞれは、選択した画素の組を推定誤差算出部412−3乃至推定誤差算出部412−Lのそれぞれに供給する。
【0522】
推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、画素選択部411−1乃至画素選択部411−Lのいずれかから供給された、複数の組における対応する位置の画素の画素値の相関を検出する。推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lは、検出された相関を示す情報を、最小誤差角度選択部413に供給する。
【0523】
最小誤差角度選択部413は、推定誤差算出部412−1乃至推定誤差算出部412−Lにおいて検出された相関に基いて、欠落した実世界1の光信号である画像の定常性に対応する、入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出する。
【0524】
次に、図56のフローチャートを参照して、ステップS101の処理に対応する、図49で構成が示されるデータ定常性検出部101による、データの定常性の検出の処理を説明する。
【0525】
ステップS401において、アクティビティ検出部401およびデータ選択部402は、入力画像から、注目している画素である注目画素を選択する。アクティビティ検出部401およびデータ選択部402は、同一の注目画素を選択する。例えば、アクティビティ検出部401およびデータ選択部402は、入力画像から、ラスタスキャン順に、注目画素を選択する。
【0526】
ステップS402において、アクティビティ検出部401は、注目画素に対するアクティビティを検出する。例えば、アクティビティ検出部401は、注目画素を中心とした所定の数の画素からなるブロックの縦方向に並ぶ画素の画素値の差分および横方向に並ぶ画素の画素値の差分を基に、アクティビティを検出する。
【0527】
アクティビティ検出部401は、注目画素に対する空間方向のアクティビティを検出して、検出した結果を示すアクティビティ情報をデータ選択部402および定常方向導出部404に供給する。
【0528】
ステップS403において、データ選択部402は、注目画素を含む画素の列から、注目画素を中心とした所定の数の画素を、画素の組として選択する。例えば、データ選択部402は、注目画素が属する縦または横に1列の画素の列に属する画素であって、注目画素の上側または左側の所定の数の画素、および注目画素の下側または右側の所定の数の画素、並びに注目画素を画素の組として選択する。
【0529】
ステップS404において、データ選択部402は、ステップS402の処理で検出されたアクティビティを基にした、所定の範囲の角度毎に、所定の数の画素の列から、それぞれ所定の数の画素を、画素の組として選択する。例えば、データ選択部402は、所定の範囲の角度を有し、空間方向Xを示す軸を基準軸として、注目画素を通る直線を設定し、注目画素に対して、横方向または縦方向に1列または2列離れた画素であって、直線に最も近い画素を選択し、選択された画素の上側または左側の所定の数の画素、および選択された画素の下側または右側の所定の数の画素、並びに線に最も近い選択された画素を画素の組として選択する。データ選択部402は、角度毎に、画素の組を選択する。
【0530】
データ選択部402は、選択した画素の組を誤差推定部403に供給する。
【0531】
ステップS405において、誤差推定部403は、注目画素を中心とした画素の組と、角度毎に選択した画素の組との相関を計算する。例えば、誤差推定部403は、角度毎に、注目画素を含む組の画素の画素値と、他の組における対応する位置の画素の画素値の差分の絶対値の和を算出する。
【0532】
角度毎に選択された、画素の組の相互の相関を基に、データの定常性の角度を検出するようにしてもよい。
【0533】
誤差推定部403は、算出された相関を示す情報を、定常方向導出部404に供給する。
【0534】
ステップS406において、定常方向導出部404は、ステップS405の処理で算出された相関を基に、相関が最も強い画素の組の位置から、欠落した実世界1の光信号の定常性に対応する、画像データである入力画像における、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出する。例えば、定常方向導出部404は、画素値の差分の絶対値の総和のうち、最小の総和を選択し、選択された総和が算出された画素の組の位置から、データの定常性の角度θを検出する。
【0535】
定常方向導出部404は、検出したデータの定常性の角度を示すデータ定常性情報を出力する。
【0536】
ステップS407において、データ選択部402は、全ての画素の処理を終了したか否かを判定し、全ての画素の処理を終了していないと判定された場合、ステップS401に戻り、まだ注目画素として選択されていない画素から注目画素を選択して、上述した処理を繰り返す。
【0537】
ステップS407において、全ての画素の処理を終了したと判定された場合、処理は終了する。
【0538】
このように、データ定常性検出部101は、欠落した実世界1の光信号の定常性に対応する、画像データにおける、基準軸を基準としたデータの定常性の角度を検出することができる。
【0539】
なお、図49で構成が示されるデータ検出部101は、注目しているフレームである注目フレームの、注目している画素である注目画素について、入力画像の空間方向のアクティビティを検出し、検出されたアクティビティに応じて、注目画素および空間方向の基準軸を基準とした角度、並びに動きベクトル毎に、注目フレームおよび注目フレームの時間的に前または後ろのフレームのそれぞれから、垂直方向に1列または水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出し、抽出された画素の組の相関を検出し、相関に基づいて、入力画像における、時間方向および空間方向のデータの定常性の角度を検出するようにしてもよい。
【0540】
例えば、図57に示すように、データ選択部402は、検出されたアクティビティに応じて、注目画素および空間方向の基準軸を基準とした角度、並びに動きベクトル毎に、注目フレームであるフレーム#n、フレーム#n-1、およびフレーム#n+1のそれぞれから、垂直方向に1列または水平方向に1列の所定の数の画素からなる画素の組を、複数抽出する。
【0541】
フレーム#n-1は、フレーム#nに対して時間的に前のフレームであり、フレーム#n+1は、フレーム#nに対して時間的に後のフレームである。すなわち、フレーム#n-1、フレーム#n、およびフレーム#n+1は、フレーム#n-1、フレーム#n、およびフレーム#n+1の順で表示される。
【0542】
誤差推定部403は、抽出した画素からなる複数の組について、1つの角度および1つの動きベクトル毎に、画素の組の相関を検出する。定常方向導出部404は、画素の組の相関に基づいて、欠落した実世界1の光信号の定常性に対応する、入力画像における、時間方向および空間方向のデータの定常性の角度を検出し、角度を示すデータ定常性情報を出力する。
【0543】
次に、図58乃至図88を参照して、実世界推定部102(図3)の実施の形態の他の例について説明する。
【0544】
図58は、この例の実施の形態の原理を説明する図である。
【0545】
図58で示されるように、センサ2に入射される画像である、実世界1の信号(光の強度の分布)は、所定の関数Fで表される。なお、以下、この例の実施の形態の説明においては、画像である、実世界1の信号を、特に光信号と称し、関数Fを、特に光信号関数Fと称する。
【0546】
この例の実施の形態においては、光信号関数Fで表される実世界1の光信号が所定の定常性を有する場合、実世界推定部102が、センサ2からの入力画像(定常性に対応するデータの定常性を含む画像データ)と、データ定常性検出部101からのデータ定常性情報(入力画像のデータの定常性に対応するデータ定常性情報)を使用して、光信号関数Fを所定の関数fで近似することによって、光信号関数Fを推定する。なお、以下、この例の実施の形態の説明においては、関数fを、特に近似関数fと称する。
【0547】
換言すると、この例の実施の形態においては、実世界推定部102が、近似関数fで表されるモデル161(図4)を用いて、光信号関数Fで表される画像(実世界1の光信号)を近似(記述)する。従って、以下、この例の実施の形態を、関数近似手法と称する。
【0548】
ここで、関数近似手法の具体的な説明に入る前に、本願出願人が関数近似手法を発明するに至った背景について説明する。
【0549】
図59は、センサ2がCCDとされる場合の積分効果を説明する図である。
【0550】
図59で示されるように、センサ2の平面上には、複数の検出素子2−1が配置されている。
【0551】
図59の例では、検出素子2−1の所定の1辺に平行な方向が、空間方向の1方向であるX方向とされており、X方向に垂直な方向が、空間方向の他方向であるY方向とされている。そして、X−Y平面に垂直な方向が、時間方向であるt方向とされている。
【0552】
また、図59の例では、センサ2の各検出素子2−1のそれぞれの空間的な形状は、1辺の長さが1の正方形とされている。そして、センサ2のシャッタ時間(露光時間)が1とされている。
【0553】
さらに、図59の例では、センサ2の所定の1つの検出素子2−1の中心が、空間方向(X方向とY方向)の原点(X方向の位置x=0、およびY方向の位置y=0)とされており、また、露光時間の中間時刻が、時間方向(t方向)の原点(t方向の位置t=0)とされている。
【0554】
この場合、空間方向の原点(x=0,y=0)にその中心が存在する検出素子2−1は、X方向に-0.5乃至0.5の範囲、Y方向に-0.5乃至0.5の範囲、およびt方向に-0.5乃至0.5の範囲で光信号関数F(x,y,t)を積分し、その積分値を画素値Pとして出力することになる。
【0555】
即ち、空間方向の原点にその中心が存在する検出素子2−1から出力される画素値Pは、次の式(38)で表される。
【0556】
【数38】
Figure 0004325296
・・・(38)
【0557】
その他の検出素子2−1も同様に、対象とする検出素子2−1の中心を空間方向の原点とすることで、式(38)で示される画素値Pを出力することになる。
【0558】
図60は、センサ2の積分効果の具体的な例を説明する図である。
【0559】
図60において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図59)を表している。
【0560】
実世界1の光信号のうちの1部分(以下、このような部分を、領域と称する)2301は、所定の定常性を有する領域の1例を表している。
【0561】
なお、実際には、領域2301は連続した光信号の1部分(連続した領域)である。これに対して、図60においては、領域2301は、20個の小領域(正方形の領域)に区分されているように示されている。これは、領域2301の大きさが、X方向に対して4個分、かつY方向に対して5個分のセンサ2の検出素子(画素)が並んだ大きさに相当することを表すためである。即ち、領域2301内の20個の小領域(仮想領域)のそれぞれは1つの画素に相当する。
【0562】
また、領域2301のうちの図中白い部分は細線に対応する光信号を表している。従って、領域2301は、細線が続く方向に定常性を有していることになる。そこで、以下、領域2301を、細線含有実世界領域2301と称する。
【0563】
この場合、細線含有実世界領域2301(実世界1の光信号の1部分)がセンサ2により検出されると、センサ2からは、積分効果により、入力画像(画素値)の領域2302(以下、細線含有データ領域2302と称する)が出力される。
【0564】
なお、細線含有データ領域2302の各画素のそれぞれは、図中、画像として示されているが、実際には、所定の1つの値を表すデータである。即ち、細線含有実世界領域2301は、センサ2の積分効果により、所定の1つの画素値をそれぞれ有する20個の画素(X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素)に区分された細線含有データ領域2302に変化してしまう(歪んでしまう)。
【0565】
図61は、センサ2の積分効果の具体的な他の例(図60とは異なる例)を説明する図である。
【0566】
図61において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図59)を表している。
【0567】
実世界1の光信号の1部分(領域)2303は、所定の定常性を有する領域の他の例(図60の細線含有実世界領域2301とは異なる例)を表している。
【0568】
なお、領域2303は、細線含有実世界領域2301と同じ大きさを有する領域である。即ち、細線含有実世界領域2301と同様に、領域2303も、実際には連続した実世界1の光信号の1部分(連続した領域)であるが、図61においては、センサ2の1画素に相当する20個の小領域(正方形の領域)に区分されているように示されている。
【0569】
また、領域2303は、所定の第1の光の強度(値)を有する第1の部分と、所定の第2の光の強度(値)を有する第2の部分のエッジを含んでいる。従って、領域2303は、エッジが続く方向に定常性を有していることになる。そこで、以下、領域2303を、2値エッジ含有実世界領域2303と称する。
【0570】
この場合、2値エッジ含有実世界領域2303(実世界1の光信号の1部分)がセンサ2により検出されると、センサ2からは、積分効果により、入力画像(画素値)の領域2304(以下、2値エッジ含有データ領域2304と称する)が出力される。
【0571】
なお、2値エッジ含有データ領域2304の各画素値のそれぞれは、細線含有データ領域2302と同様に、図中、画像として表現されているが、実際には、所定の値を表すデータである。即ち、2値エッジ含有実世界領域2303は、センサ2の積分効果により、所定の1つの画素値をそれぞれ有する20個の画素(X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素)に区分された2値エッジ含有データ領域2304に変化してしまう(歪んでしまう)。
【0572】
従来の画像処理装置は、このような細線含有データ領域2302や2値エッジ含有データ領域2304等、センサ2から出力された画像データを原点(基準)とするとともに、画像データを処理の対象として、それ以降の画像処理を行っていた。即ち、センサ2から出力された画像データは、積分効果により実世界1の光信号とは異なるもの(歪んだもの)となっているにも関わらず、従来の画像処理装置は、その実世界1の光信号とは異なるデータを正として画像処理を行っていた。
【0573】
その結果、従来の画像処理装置では、センサ2から出力された段階で、実世界のディテールがつぶれてしまった波形(画像データ)を基準として、その波形から、元のディテールを復元することは非常に困難であるという課題があった。
【0574】
そこで、関数近似手法においては、この課題を解決するために、上述したように(図58で示されるように)、実世界推定部102が、細線含有データ領域2302や2値エッジ含有データ領域2304のようなセンサ2から出力された画像データ(入力画像)から、光信号関数F(実世界1の光信号)を近似関数fで近似することによって、光信号関数Fを推定する。
【0575】
これにより、実世界推定部102より後段において(いまの場合、図3の画像生成部103)、積分効果が考慮された画像データ、即ち、近似関数fにより表現可能な画像データを原点として、その処理を実行することが可能になる。
【0576】
以下、図面を参照して、このような関数近似手法のうちの3つの具体的な手法(第1乃至第3の関数近似手法)のそれぞれについて個別に説明していく。
【0577】
はじめに、図62乃至図76を参照して、第1の関数近似手法について説明する。
【0578】
図62は、上述した図60で示される細線含有実世界領域2301を再度表した図である。
【0579】
図62において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図59)を表している。
【0580】
第1の関数近似手法は、例えば、図62で示されるような細線含有実世界領域2301に対応する光信号関数F(x,y,t)をX方向(図中矢印2311の方向)に射影した1次元の波形(以下、このような波形を、X断面波形F(x)と称する)を、例えば、n次(nは、任意の整数)の多項式などの近似関数f(x)で近似する手法である。従って、以下、第1の関数近似手法を、特に、1次元近似手法と称する。
【0581】
なお、1次元近似手法において、近似の対象となるX断面波形F(x)は、勿論、図62の細線含有実世界領域2301に対応するものに限定されない。即ち、後述するように、1次元近似手法においては、定常性を有する実世界1の光信号に対応するX断面波形F(x)であれば、いずれのものでも近似することが可能である。
【0582】
また、光信号関数F(x,y,t)の射影の方向はX方向に限定されず、Y方向またはt方向でもよい。即ち、1次元近似手法においては、光信号関数F(x,y,t)をY方向に射影した関数F(y)を、所定の近似関数f(y)で近似することも可能であるし、光信号関数F(x,y,t)をt方向に射影した関数F(t)を、所定の近似関数f(t)で近似することも可能である。
【0583】
より詳細には、1次元近似手法は、例えば、X断面波形F(x)を、次の式(39)で示されるような、n次の多項式などの近似関数f(x)で近似する手法である。
【0584】
【数39】
Figure 0004325296
・・・(39)
【0585】
即ち、1次元近似手法においては、実世界推定部102が、式(39)のxiの係数(特徴量)wiを演算することで、X断面波形F(x)を推定する。
【0586】
この特徴量wiの演算方法は、特に限定されず、例えば、次の第1乃至第3の方法が使用可能である。
【0587】
即ち、第1の方法は、従来から利用されている方法である。
【0588】
これに対して、第2の方法は、本願出願人が新たに発明した方法であって、第1の方法に対して、さらに、空間方向の定常性を考慮した方法である。
【0589】
しかしながら、後述するように、第1の方法と第2の方法においては、センサ2の積分効果が考慮されていない。従って、第1の方法または第2の方法により演算された特徴量wiを上述した式(39)に代入して得られる近似関数f(x)は、入力画像の近似関数ではあるが、厳密には、X断面波形F(x)の近似関数とは言えない。
【0590】
そこで、本願出願人は、第2の方法に対して、センサ2の積分効果をさらに考慮して特徴量wiを演算する第3の方法を発明した。この第3の方法により演算された特徴量wiを、上述した式(39)に代入して得られる近似関数f(x)は、センサ2の積分効果を考慮している点で、X断面波形F(x)の近似関数であると言える。
【0591】
このように、厳密には、第1の方法と第2の方法は、1次元近似手法とは言えず、第3の方法のみが1次元近似手法であると言える。
【0592】
換言すると、図63で示されるように、第2の方法は、1次元近似手法とは異なる。即ち、図63は、第2の方法に対応する実施の形態の原理を説明する図である。
【0593】
図63で示されるように、第2の方法に対応する実施の形態においては、光信号関数Fで表される実世界1の光信号が所定の定常性を有する場合、実世界推定部102が、センサ2からの入力画像(定常性に対応するデータの定常性を含む画像データ)と、データ定常性検出部101からのデータ定常性情報(入力画像のデータの定常性に対応するデータ定常性情報)を使用して、X断面波形F(x)を近似するのではなく、センサ2からの入力画像を所定の近似関数f2(x)で近似する。
【0594】
このように、第2の方法は、センサ2の積分効果を考慮せず、入力画像の近似に留まっている点で、第3の方法と同一レベルの手法であるとは言い難い。しかしながら、第2の方法は、空間方向の定常性を考慮している点で、従来の第1の方法よりも優れた手法である。
【0595】
以下、第1の方法、第2の方法、および第3の方法のそれぞれの詳細について、その順番で個別に説明していく。
【0596】
なお、以下、第1の方法、第2の方法、および第3の方法により生成される近似関数f(x)のそれぞれを、他の方法のものと区別する場合、特に、近似関数f1(x)、近似関数f2(x)、および近似関数f3(x)とそれぞれ称する。
【0597】
はじめに、第1の方法の詳細について説明する。
【0598】
第1の方法においては、上述した式(39)で示される近似関数f1(x)が、図64の細線含有実世界領域2301内で成り立つとして、次の予測方程式(40)を定義する。
【0599】
【数40】
Figure 0004325296
・・・(40)
【0600】
式(40)において、xは、注目画素からのX方向に対する相対的な画素位置を表している。yは、注目画素からのY方向に対する相対的な画素位置を表している。eは、誤差を表している。具体的には、例えば、いま、図64で示されるように、注目画素が、細線含有データ領域2302(細線含有実世界領域2301(図62)がセンサ2により検出されて、出力されたデータ)のうちの、図中、左からX方向に2画素目であって、下からY方向に3画素目の画素であるとする。また、注目画素の中心を原点(0,0)とし、センサ2のX方向とY方向(図59)のそれぞれに平行なx軸とy軸を軸とする座標系(以下、注目画素座標系と称する)が設定されているとする。この場合、注目画素座標系の座標値(x,y)が、相対画素位置を表すことになる。
【0601】
また、式(40)において、P(x,y)は、相対画素位置(x,y)における画素値を表している。具体的には、いまの場合、細線含有データ領域2302内のP(x,y)は、図65で示されるようになる。
【0602】
図65は、この画素値P(x,y)をグラフ化したものを表している。
【0603】
図65において、各グラフのそれぞれの縦軸は、画素値を表しており、横軸は、注目画素からのX方向の相対位置xを表している。また、図中、上から1番目のグラフの点線は入力画素値P(x,-2)を、上から2番目のグラフの3点鎖線は入力画素値P(x,-1)を、上から3番目のグラフの実線は入力画素値P(x,0)を、上から4番目のグラフの1点鎖線は入力画素値P(x,1)を、上から5番目(下から1番目)のグラフの2点鎖線は入力画素値P(x,2)を、それぞれ表している。
【0604】
上述した式(40)に対して、図65で示される20個の入力画素値P(x,-2),P(x,-1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)(ただし、xは、−1乃至2のうちのいずれかの整数値)のそれぞれを代入すると、次の式(41)で示される20個の方程式が生成される。なお、ek(kは、1乃至20のうちのいずれかの整数値)のそれぞれは、誤差を表している。
【0605】
【数41】
Figure 0004325296
・・・(41)
【0606】
式(41)は、20個の方程式より構成されているので、近似関数f1(x)の特徴量wiの個数が20個より少ない場合、即ち、近似関数f1(x)が19次より少ない次数の多項式である場合、例えば、最小自乗法を用いて特徴量wiの算出が可能である。なお、最小自乗法の具体的な解法は後述する。
【0607】
例えば、いま、近似関数f1(x)の次数が5次とされた場合、式(41)を利用して最小自乗法により演算された近似関数f1(x)(演算された特徴量wiにより生成される近似関数f1(x))は、図66で示される曲線のようになる。
【0608】
なお、図66において、縦軸は画素値を表しており、横軸は注目画素からの相対位置xを表している。
【0609】
即ち、図64の細線含有データ領域2302を構成する20個の画素値P(x,y)のそれぞれ(図65で示される入力画素値P(x,-2),P(x,-1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれ)を、例えば、x軸に沿ってそのまま足しこむ(Y方向の相対位置yを一定とみなして、図65で示される5つのグラフを重ねる)と、図66で示されるような、x軸に平行な複数の線(点線、3点鎖線、実線、1点鎖線、および2点鎖線)が分布する。
【0610】
ただし、図66においては、点線は入力画素値P(x,-2)を、3点鎖線は入力画素値P(x,-1)を、実線は入力画素値P(x,0)を、1点鎖線は入力画素値P(x,1)を、2点鎖線は入力画素値P(x,2)を、それぞれ表している。また、同一の画素値の場合、実際には2本以上の線が重なることになるが、図66においては、各線の区別がつくように、各線のそれぞれが重ならないように描画されている。
【0611】
そして、このように分布した20個の入力画素値P(x,-2),P(x,-1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれと、値f1(x)の誤差が最小となるような回帰曲線(最小自乗法により演算された特徴量wiを上述した式(38)に代入して得られる近似関数f1(x))が、図66で示される曲線(近似関数f1(x))となる。
【0612】
このように、近似関数f1(x)は、Y方向の画素値(注目画素からのX方向の相対位置xが同一の画素値)P(x,-2),P(x,-1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)の平均値を、X方向に結んだ曲線を単に表しているに過ぎない。即ち、光信号が有する空間方向の定常性を考慮することなく、近似関数f1(x)が生成されている。
【0613】
例えば、いまの場合、近似の対象は、細線含有実世界領域2301(図62)とされている。この細線含有実世界領域2301は、図67で示されるように、傾きGFで表される空間方向の定常性を有している。なお、図67において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図59)を表している。
【0614】
従って、データ定常性検出部101(図58)は、空間方向の定常性の傾きGFに対応するデータ定常性情報として、図67で示されるような角度θ(傾きGFに対応する傾きGfで表されるデータの定常性の方向と、X方向のなす角度θ)を出力することができる。
【0615】
しかしながら、第1の方法においては、データ定常性検出部101より出力されるデータ定常性情報は一切用いられていない。
【0616】
換言すると、図67で示されるように、細線含有実世界領域2301の空間方向の定常性の方向は略角度θ方向である。しかしながら、第1の方法は、細線含有実世界領域2301の空間方向の定常性の方向はY方向であると仮定して(即ち、角度θが90度であると仮定して)、近似関数f1(x)の特徴量wiを演算する方法である。
【0617】
このため、近似関数f1(x)は、その波形が鈍り、元の画素値よりディテールが減少する関数となってしまう。換言すると、図示はしないが、第1の方法により生成される近似関数f1(x)は、実際のX断面波形F(x)とは大きく異なる波形となってしまう。
【0618】
そこで、本願出願人は、第1の方法に対して、空間方向の定常性をさらに考慮して(角度θを利用して)特徴量wiを演算する第2の方法を発明した。
【0619】
即ち、第2の方法は、細線含有実世界領域2301の定常性の方向は略角度θ方向であるとして、近似関数f2(x) の特徴量wiを演算する方法である。
【0620】
具体的には、例えば、空間方向の定常性に対応するデータの定常性を表す傾きGfは、次の式(42)で表される。
【0621】
【数42】
Figure 0004325296
・・・(42)
【0622】
なお、式(42)において、dxは、図67で示されるようなX方向の微小移動量を表しており、dyは、図67で示されるようなdxに対するY方向の微小移動量を表している。
【0623】
この場合、シフト量Cx(y)を、次の式(43)のように定義すると、第2の方法においては、第1の方法で利用した式(40)に相当する式は、次の式(44)のようになる。
【0624】
【数43】
Figure 0004325296
・・・(43)
【0625】
【数44】
Figure 0004325296
・・・(44)
【0626】
即ち、第1の方法で利用した式(40)は、画素の中心の位置(x、y)のうちのX方向の位置xが、同一の位置に位置する画素の画素値P(x,y)はいずれも同じ値であることを表している。換言すると、式(40)は、同じ画素値の画素がY方向に続いている(Y方向に定常性がある)ことを表している。
【0627】
これに対して、第2の方法で利用する式(44)は、画素の中心の位置が(x,y)である画素の画素値P(x,y)は、注目画素(その中心の位置が原点(0,0)である画素)からX方向にxだけ離れた場所に位置する画素の画素値(≒f2(x))とは一致せず、その画素からさらにX方向にシフト量Cx(y)だけ離れた場所に位置する画素(注目画素からX方向にx+Cx(y)だけ離れた場所に位置する画素)の画素値(≒f2(x+Cx(y)))と同じ値であることを表している。換言すると、式(44)は、同じ画素値の画素が、シフト量Cx(y)に対応する角度θ方向に続いている(略角度θ方向に定常性がある)ことを表している。
【0628】
このように、シフト量Cx(y)が、空間方向の定常性(いまの場合、図67の傾きGFで表される定常性(厳密には、傾きGfで表されるデータの定常性))を考慮した補正量であり、シフト量Cx(y)により式(40)を補正したものが式(44)となる。
【0629】
この場合、図64で示される細線含有データ領域2302の20個の画素値P(x,y)(ただし、xは、−1乃至2のうちのいずれかの整数値。yは、−2乃至2のうちのいずれかの整数値)のそれぞれを、上述した式(44)に代入すると次の式(45)で示される20個の方程式が生成される。
【0630】
【数45】
Figure 0004325296
・・・(45)
【0631】
式(45)は、上述した式(41)と同様に、20個の方程式より構成されている。従って、第1の方法と同様に第2の方法においても、近似関数f2(x)の特徴量wiの個数が20個より少ない場合、即ち、近似関数f2(x)が19次より少ない次数の多項式である場合、例えば、最小自乗法を用いて特徴量wiの算出が可能である。なお、最小自乗法の具体的な解法は後述する。
【0632】
例えば、第1の方法と同様に近似関数f2(x)の次数が5次とされた場合、第2の方法においては、次のようにして特徴量wiが演算される。
【0633】
即ち、図68は、式(45)の左辺で示される画素値P(x,y)をグラフ化したものを表している。図68で示される5つのグラフのそれぞれは、基本的に図65で示されるものと同一である。
【0634】
図68で示されるように、最大の画素値(細線に対応する画素値)は、傾きGfで表されるデータの定常性の方向に続いている。
【0635】
そこで、第2の方法においては、図68で示される入力画素値P(x,-2),P(x,-1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれを、例えば、x軸に沿って足しこむ場合、第1の方法のようにそのまま足しこむ(yを一定とみなして、図68で示される状態のまま5つのグラフを重ねる)のではなく、図69で示される状態に変化させてから足しこむ。
【0636】
即ち、図69は、図68で示される入力画素値P(x,-2),P(x,-1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれを、上述した式(43)で示されるシフト量Cx(y)だけシフトさせた状態を表している。換言すると、図69は、図68で示される5つのグラフを、データの定常性の実際の方向を表す傾きGFを、あたかも傾きGF’とするように(図中、点線の直線を実線の直線とするように)移動させた状態を表している。
【0637】
図69の状態で、入力画素値P(x,-2),P(x,-1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれを、例えば、x軸に沿って足しこむと(図69で示される状態で5つのグラフを重ねると)、図70で示されるような、x軸に平行な複数の線(点線、3点鎖線、実線、1点鎖線、および2点鎖線)が分布する。
【0638】
なお、図70において、縦軸は画素値を表しており、横軸は注目画素からの相対位置xを表している。また、点線は入力画素値P(x,-2)を、3点鎖線は入力画素値P(x,-1)を、実線は入力画素値P(x,0)を、1点鎖線は入力画素値P(x,1)を、2点鎖線は入力画素値P(x,2)を、それぞれ表している。さらに、同一の画素値の場合、実際には2本以上の線が重なることになるが、図70においては、各線の区別がつくように、各線のそれぞれが重ならないように描画されている。
【0639】
そして、このように分布した20個の入力画素値P(x,y)のそれぞれ(ただし、xは、−1乃至2のうちのいずれかの整数値。yは、−2乃至2のうちのいずれかの整数値)と、値f2(x+Cx(y))の誤差が最小となるような回帰曲線(最小自乗法により演算された特徴量wiを上述した式(38)に代入して得られる近似関数f2(x))は、図70の実線で示される曲線f2(x)となる。
【0640】
このように、第2の方法により生成された近似関数f2(x)は、データ定常性検出部101(図58)より出力される角度θ方向(即ち、ほぼ空間方向の定常性の方向)の入力画素値P(x,y)の平均値をX方向に結んだ曲線を表すことになる。
【0641】
これに対して、上述したように、第1の方法により生成された近似関数f1(x)は、Y方向(即ち、空間方向の定常性とは異なる方向)の入力画素値P(x,y)の平均値を、X方向に結んだ曲線を単に表しているに過ぎない。
【0642】
従って、図70で示されるように、第2の方法により生成された近似関数f2(x)は、第1の方法により生成された近似関数f1(x)よりも、その波形の鈍り度合いが減少し、かつ、元の画素値に対するディテールの減り具合も減少する関数となる。換言すると、図示はしないが、第2の方法により生成される近似関数f2(x)は、第1の方法により生成される近似関数f1(x)よりも実際のX断面波形F(x)により近い波形となる。
【0643】
しかしながら、上述したように、近似関数f2(x)は、空間方向の定常性が考慮されたものではあるが、入力画像(入力画素値)を原点(基準)として生成されたものに他ならない。即ち、上述した図63で示されるように、近似関数f2(x)は、X断面波形F(x)とは異なる入力画像を近似したに過ぎず、X断面波形F(x)を近似したとは言い難い。換言すると、第2の方法は、上述した式(44)が成立するとして特徴量wiを演算する方法であり、上述した式(38)の関係は考慮していない(センサ2の積分効果を考慮していない)。
【0644】
そこで、本願出願人は、第2の方法に対して、センサ2の積分効果をさらに考慮することで近似関数f3(x)の特徴量wiを演算する第3の方法を発明した。
【0645】
即ち、第3の方法は、空間混合または時間混合の概念を導入した方法である。なお、空間混合と時間混合の両方を考慮すると、説明が複雑になるため、ここでは、空間混合と時間混合のうちの、例えば空間混合を考慮し、時間混合を無視するものとする。
【0646】
そこで、第3の方法の説明の前に、図71を参照して、空間混合について説明する。
【0647】
図71において、実世界1の光信号の1部分2321(以下、領域2321と称する)は、センサ2の1つの検出素子(画素)と同じ面積を有する領域を表している。
【0648】
領域2321がセンサ2に検出されると、センサ2からは、領域2321が時空間方向(X方向,Y方向,およびt方向)に積分された値(1つの画素値)2322が出力される。なお、画素値2322は、図中、画像として表現されているが、実際には、所定の値を表すデータである。
【0649】
実世界1の領域2321は、前景(例えば、上述した細線)に対応する光信号(図中白い領域)と、背景に対応する光信号(図中黒い領域)に明確に区分される。
【0650】
これに対して、画素値2322は、前景に対応する実世界1の光信号と、背景に対応する実世界1の光信号が積分された値である。換言すると、画素値2322は、前景に対応する光のレベルと背景に対応する光のレベルが空間的に混合されたレベルに対応する値である。
【0651】
このように、実世界1の光信号のうちの1画素(センサ2の検出素子)に対応する部分が、同一レベルの光信号が空間的に一様に分布する部分ではなく、前景と背景のように異なるレベルの光信号のそれぞれが分布する部分である場合、その領域は、センサ2により検出されると、センサ2の積分効果により、異なる光のレベルがあたかも空間的に混合されて(空間方向に積分されて)1つの画素値となってしまう。このように、センサ2の画素において、前景に対する画像(実世界1の光信号)と、背景に対する画像(実世界1の光信号)が空間的に積分されて、いわば混合されてしまうことが、空間混合であり、そのような画素からなる領域を、ここでは、空間混合領域と称する。
【0652】
従って、第3の方法においては、実世界推定部102(図58)が、実世界1の元の領域2321(実世界1の光信号のうちの、センサ2の1画素に対応する部分2321)を表すX断面波形F(x)を、例えば、図72で示されるような、1次の多項式などの近似関数f3(x)で近似することによって、X断面波形F(x)を推定する。
【0653】
即ち、図72は、空間混合領域である画素値2322(図71)に対応する近似関数f3(x)、即ち、実世界1の領域2331内の実線(図71)に対応するX断面波形F(x)を近似する近似関数f3(x)の例を表している。図72において、図中水平方向の軸は、画素値2322に対応する画素の左下端xsから右下端xeまでの辺(図71)に平行な軸を表しており、x軸とされている。図中垂直方向の軸は、画素値を表す軸とされている。
【0654】
図72において、近似関数f3(x)をxsからxeの範囲(画素幅)で積分したものが、センサ2から出力される画素値P(x,y)とほぼ一致する(誤差eだけ存在する)として、次の式(46)を定義する。
【0655】
【数46】
Figure 0004325296
・・・(46)
【0656】
いまの場合、図67で示される細線含有データ領域2302の20個の画素値P(x,y)(ただし、xは、−1乃至2のうちのいずれかの整数値。yは、−2乃至2のうちのいずれかの整数値)から、近似関数f3(x)の特徴量wiが算出されるので、式(46)の画素値Pは、画素値P(x,y)となる。
【0657】
また、第2の方法と同様に、空間方向の定常性も考慮する必要があるので、式(46)の積分範囲の開始位置xsと終了位置xeのそれぞれは、シフト量Cx(y)にも依存することになる。即ち、式(46)の積分範囲の開始位置xsと終了位置xeのそれぞれは、次の式(47)のように表される。
【0658】
【数47】
Figure 0004325296
・・・(47)
【0659】
この場合、図67で示される細線含有データ領域2302の各画素値それぞれ、即ち、図68で示される入力画素値P(x,-2),P(x,-1),P(x,0),P(x,1),P(x,2)のそれぞれ(ただし、xは、−1乃至2のうちのいずれかの整数値)を、上述した式(46)(積分範囲は、上述した式(47))に代入すると次の式(48)で示される20個の方程式が生成される。
【0660】
【数48】
Figure 0004325296
・・・(48)
【0661】
式(48)は、上述した式(45)と同様に、20個の方程式より構成されている。従って、第2の方法と同様に第3の方法においても、近似関数f3(x)の特徴量wiの個数が20個より少ない場合、即ち、近似関数f3(x)が19次より少ない次数の多項式である場合、例えば、最小自乗法を用いて特徴量wiの算出が可能である。なお、最小自乗法の具体的な解法は後述する。
【0662】
例えば、近似関数f3(x)の次数が5次とされた場合、式(48)を利用して最小自乗法により演算された近似関数f3(x)(演算された特徴量wiにより生成される近似関数f3(x))は、図73の実線で示される曲線のようになる。
【0663】
なお、図73において、縦軸は画素値を表しており、横軸は注目画素からの相対位置xを表している。
【0664】
図73で示されるように、第3の方法により生成された近似関数f3(x)(図中、実線で示される曲線)は、第2の方法により生成された近似関数f2(x)(図中、点線で示される曲線)と比較すると、x=0における画素値が大きくなり、また、曲線の傾斜の度合いも急な波形となる。これは、入力画素よりディテイルが増加して、入力画素の解像度とは無関係となっているためである。即ち、近似関数f3(x)は、X断面波形F(x)を近似していると言える。従って、図示はしないが、近似関数f3(x)は、近似関数f2(x)よりもX断面波形F(x)に近い波形となる。
【0665】
図74は、このような1次近似手法を利用する実世界推定部102の構成例を表している。
【0666】
図74において、実世界推定部102は、例えば、特徴量wiを上述した第3の方法(最小自乗法)により演算し、演算した特徴量wiを利用して上述した式(39)の近似関数f(x)を生成することで、X断面波形F(x)を推定する。
【0667】
図74で示されるように、実世界推定部102には、条件設定部2331、入力画像記憶部2332、入力画素値取得部2333、積分成分演算部2334、正規方程式生成部2335、および近似関数生成部2336が設けられている。
【0668】
条件設定部2331は、注目画素に対応するX断面波形F(x)を推定するために使用する画素の範囲(以下、タップ範囲と称する)や、近似関数f(x)の次数nを設定する。
【0669】
入力画像記憶部2332は、センサ2からの入力画像(画素値)を一次的に格納する。
【0670】
入力画素値取得部2333は、入力画像記憶部2332に記憶された入力画像のうちの、条件設定部231により設定されたタップ範囲に対応する入力画像の領域を取得し、それを入力画素値テーブルとして正規方程式生成部2335に供給する。即ち、入力画素値テーブルは、入力画像の領域に含まれる各画素のそれぞれの画素値が記述されたテーブルである。なお、入力画素値テーブルの具体例については後述する。
【0671】
ところで、ここでは、実世界推定部102は、上述した式(46)と式(47)を利用して最小自乗法により近似関数f(x)の特徴量wiを演算するが、上述した式(46)は、次の式(49)のように表現することができる。
【0672】
【数49】
Figure 0004325296
・・・(49)
【0673】
式(49)において、Si(xs,xe)は、i次項の積分成分を表している。即ち、積分成分Si(xs,xe)は、次の式(50)で示される。
【0674】
【数50】
Figure 0004325296
・・・(50)
【0675】
積分成分演算部2334は、この積分成分Si(xs、xe)を演算する。
【0676】
具体的には、式(50)で示される積分成分Si(xs,xe)(ただし、値xsと値xeは、上述した式(46)で示される値)は、相対画素位置(x,y)、シフト量Cx(y)、および、i次項のiが既知であれば演算可能である。また、これらのうちの、相対画素位置(x,y)は注目画素とタップ範囲により、シフト量Cx(y)は角度θにより(上述した式(41)と式(43)により)、iの範囲は次数nにより、それぞれ決定される。
【0677】
従って、積分成分演算部2334は、条件設定部2331により設定されたタップ範囲および次数、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度θに基づいて積分成分Si(xs,xe)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして正規方程式生成部2335に供給する。
【0678】
正規方程式生成部2335は、入力画素値取得部2333より供給された入力画素値テーブルと、積分成分演算部2334より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(46)、即ち、式(49)の右辺の特徴量wiを最小自乗法で求める場合の正規方程式を生成し、それを正規方程式テーブルとして近似関数生成部2336に供給する。なお、正規方程式の具体例については後述する。
【0679】
近似関数生成部2336は、正規方程式生成部2335より供給された正規方程式テーブルに含まれる正規方程式を行列解法で解くことにより、上述した式(49)の特徴量wi(即ち、1次元多項式である近似関数f(x)の係数wi)のそれぞれを演算し、画像生成部103に出力する。
【0680】
次に、図75のフローチャートを参照して、1次元近似手法を利用する実世界推定部102(図74)の実世界の推定処理(図29のステップS102の処理)について説明する。
【0681】
例えば、いま、センサ2から出力された1フレームの入力画像であって、上述した図60の細線含有データ領域2302を含む入力画像が、既に入力画像記憶部2332に記憶されているとする。また、データ定常性検出部101が、ステップS101(図29)の定常性の検出の処理において、細線含有データ領域2302に対してその処理を施して、データ定常性情報として角度θを既に出力しているとする。
【0682】
この場合、図75のステップS2301において、条件設定部2331は、条件(タップ範囲と次数)を設定する。
【0683】
例えば、いま、図76で示されるタップ範囲2351が設定されるとともに、次数として5次が設定されたとする。
【0684】
即ち、図76は、タップ範囲の1例を説明する図である。図76において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図59)を表している。また、タップ範囲2351は、X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素(図中、20個の正方形)からなる画素群を表している。
【0685】
さらに、図76で示されるように、注目画素が、タップ範囲2351のうちの、図中、左から2画素目であって、下から3画素目の画素に設定されるとする。また、各画素のそれぞれに対して、注目画素からの相対画素位置(x,y)(注目画素の中心(0,0)を原点とする注目画素座標系の座標値)に応じて、図76で示されるような番号l(lは、0乃至19のうちのいずれかの整数値)が付されるとする。
【0686】
図75に戻り、ステップS2302において、条件設定部2331は、注目画素を設定する。
【0687】
ステップS2303において、入力画素値取得部2333は、条件設定部2331により設定された条件(タップ範囲)に基づいて入力画素値を取得し、入力画素値テーブルを生成する。即ち、いまの場合、入力画素値取得部2333は、細線含有データ領域2302(図64)を取得し、入力画素値テーブルとして、20個の入力画素値P(l)からなるテーブルを生成する。
【0688】
なお、いまの場合、入力画素値P(l)と、上述した入力画素値P(x,y)の関係は、次の式(51)で示される関係とされる。ただし、式(51)において、左辺が入力画素値P(l)を表し、右辺が入力画素値P(x,y)を表している。
【0689】
【数51】
Figure 0004325296
・・・(51)
【0690】
ステップS2304において、積分成分演算部2334は、条件設定部2331により設定された条件(タップ範囲および次数)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度θ)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【0691】
いまの場合、上述したように、入力画素値は、P(x,y)でなくP(l)といった、画素の番号lの値として取得されるので、積分成分演算部2334は、上述した式(50)の積分成分Si(xs,xe)を、次の式(52)の左辺で示される積分成分Si(l)といったlの関数として演算する。
【0692】
【数52】
Figure 0004325296
・・・(52)
【0693】
具体的には、いまの場合、次の式(53)で示される積分成分Si(l)が演算される。
【0694】
【数53】
Figure 0004325296
・・・(53)
【0695】
なお、式(53)において、左辺が積分成分Si(l)を表し、右辺が積分成分Si(xs,xe)を表している。即ち、いまの場合、iは0乃至5であるので、20個のS0(l),20個のS1(l),20個のS2(l),20個のS3(l),20個のS4(l),20個のS5(l)の総計120個のSi(l)が演算されることになる。
【0696】
より具体的には、はじめに、積分成分演算部2334は、データ定常性検出部101より供給された角度θを使用して、シフト量Cx(-2),Cx(-1),Cx(1),Cx(2)のそれぞれを演算する。次に、積分成分演算部2334は、演算したシフト量Cx(-2),Cx(-1),Cx(1),Cx(2)を使用して式(52)の右辺に示される20個の積分成分Si(xs,xe)のそれぞれを、i=0乃至5のそれぞれについて演算する。即ち、120個の積分成分Si(xs,xe)が演算される。なお、この積分成分Si(xs,xe)の演算においては、上述した式(50)が使用される。そして、積分成分演算部2334は、式(53)に従って、演算した120個の積分成分Si(xs,xe)のそれぞれを、対応する積分成分Si(l)に変換し、変換した120個の積分成分Si(l)を含む積分成分テーブルを生成する。
【0697】
なお、ステップS2303の処理とステップS2304の処理の順序は、図75の例に限定されず、ステップS2304の処理が先に実行されてもよいし、ステップS2303の処理とステップS2304の処理が同時に実行されてもよい。
【0698】
次に、ステップS2305において、正規方程式生成部2335は、ステップS2303の処理で入力画素値取得部2333により生成された入力画素値テーブルと、ステップS2304の処理で積分成分演算部2334により生成された積分成分テーブルに基づいて、正規方程式テーブルを生成する。
【0699】
具体的には、いまの場合、最小自乗法により、上述した式(49)に対応する次の式(54)の特徴量wiを演算する。それに対応する正規方程式は、次の式(55)のように表される。
【0700】
【数54】
Figure 0004325296
・・・(54)
【0701】
【数55】
Figure 0004325296
・・・(55)
【0702】
なお、式(55)において、Lは、タップ範囲の画素の番号lのうちの最大値を表している。nは、多項式である近似関数f(x)の次数を表している。具体的には、いまの場合、n=5となり、L=19となる。
【0703】
式(55)で示される正規方程式の各行列のそれぞれを、次の式(56)乃至(58)のように定義すると、正規方程式は、次の式(59)のように表される。
【0704】
【数56】
Figure 0004325296
・・・(56)
【0705】
【数57】
Figure 0004325296
・・・(57)
【0706】
【数58】
Figure 0004325296
・・・(58)
【0707】
【数59】
Figure 0004325296
・・・(59)
【0708】
式(57)で示されるように、行列WMATの各成分は、求めたい特徴量wiである。従って、式(59)において、左辺の行列SMATと右辺の行列PMATが決定されれば、行列解法によって行列WMAT(即ち、特徴量wi)の算出が可能である。
【0709】
具体的には、式(56)で示されるように、行列SMATの各成分は、上述した積分成分Si(l)が既知であれば演算可能である。積分成分Si(l)は、積分成分演算部2334より供給された積分成分テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2335は、積分成分テーブルを利用して行列SMATの各成分を演算することができる。
【0710】
また、式(58)で示されるように、行列PMATの各成分は、積分成分Si(l)と入力画素値P(l)が既知であれば演算可能である。積分成分Si(l)は、行列SMATの各成分に含まれるものと同一のものであり、また、入力画素値P(l)は、入力画素値取得部2333より供給された入力画素値テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2335は、積分成分テーブルと入力画素値テーブルを利用して行列PMATの各成分を演算することができる。
【0711】
このようにして、正規方程式生成部2335は、行列SMATと行列PMATの各成分を演算し、その演算結果(行列SMATと行列PMATの各成分)を正規方程式テーブルとして近似関数生成部2336に出力する。
【0712】
正規方程式生成部2335より正規方程式テーブルが出力されると、ステップS2306において、近似関数生成部2336は、正規方程式テーブルに基づいて、上述した式(59)の行列WMATの各成分である特徴量wi(即ち、1次元多項式である近似関数f(x)の係数wi)を演算する。
【0713】
具体的には、上述した式(59)の正規方程式は、次の式(60)のように変形できる。
【0714】
【数60】
Figure 0004325296
・・・(60)
【0715】
式(60)において、左辺の行列WMATの各成分が、求めたい特徴量wiである。また、行列SMATと行列PMATのそれぞれの各成分は、正規方程式生成部2335より供給された正規方程式テーブルに含まれている。従って、近似関数生成部2336は、正規方程式テーブルを利用して、式(60)の右辺の行列演算を行うことで行列WMATを演算し、その演算結果(特徴量wi)を画像生成部103に出力する。
【0716】
ステップS2307において、近似関数生成部2336は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【0717】
ステップS2307において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS2302に戻り、それ以降の処理が繰り返される。即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS2302乃至S2307の処理が繰り返される。
【0718】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS2307において、全画素の処理が終了されたと判定されると)、実世界1の推定処理は終了となる。
【0719】
なお、以上のようにして演算された係数(特徴量)wiにより生成される近似関数f(x)の波形は、上述した図73の近似関数f3(x)のような波形となる。
【0720】
このように、1次元近似手法においては、1次元のX断面波形F(x)と同一形状の波形が定常性の方向に連なっていると仮定して、例えば、1次元の多項式などの近似関数f(x)の特徴量が演算される。従って、1次元近似手法においては、他の関数近似手法に比較して、少ない演算処理量で近似関数f(x)の特徴量の算出が可能となる。
【0721】
次に、図77乃至図83を参照して、第2の関数近似手法について説明する。
【0722】
即ち、第2の関数近似手法とは、例えば、図77で示されるような、傾きGFで表される空間方向の定常性を有する実世界1の光信号を、X−Y平面上(空間方向の1方向であるX方向と、X方向に垂直なY方向に水平な平面上)の波形F(x,y)とみなし、2次元の多項式などの近似関数f(x,y)で波形F(x,y)を近似することによって、その波形F(x,y)を推定する手法である。従って、以下、第2の関数近似手法を、2次元近似手法と称する。
【0723】
なお、図77において、図中、水平方向は、空間方向の1方向であるX方向を、右上方向は、空間方向の他方向であるY方向を、垂直方向は、光のレベルを、それぞれ表している。GFは、空間方向の定常性の傾きを表している。
【0724】
また、2次元近似手法の説明においても、センサ2は、図78で示されるような、複数の検出素子2−1がその平面上に配置されて構成されるCCDとされる。
【0725】
図78の例では、検出素子2−1の所定の1辺に平行な方向が、空間方向の1方向であるX方向とされており、X方向に垂直な方向が、空間方向の他方向であるY方向とされている。そして、X−Y平面に垂直な方向が、時間方向であるt方向とされている。
【0726】
また、図78の例では、センサ2の各検出素子2−1のそれぞれの空間的な形状は、1辺の長さが1の正方形とされている。そして、センサ2のシャッタ時間(露光時間)が1とされている。
【0727】
さらに、図78の例では、センサ2の所定の1つの検出素子2−1の中心が、空間方向(X方向とY方向)の原点(X方向の位置x=0、およびY方向の位置y=0)とされており、また、露光時間の中間時刻が、時間方向(t方向)の原点(t方向の位置t=0)とされている。
【0728】
この場合、空間方向の原点(x=0,y=0)にその中心が存在する検出素子2−1は、X方向に-0.5乃至0.5の範囲、Y方向に-0.5乃至0.5の範囲、およびt方向に-0.5乃至0.5の範囲で光信号関数F(x,y,t)を積分し、その積分値を画素値Pとして出力することになる。
【0729】
即ち、空間方向の原点にその中心が存在する検出素子2−1から出力される画素値Pは、次の式(61)で表される。
【0730】
【数61】
Figure 0004325296
・・・(61)
【0731】
その他の検出素子2−1も同様に、対象とする検出素子2−1の中心を空間方向の原点とすることで、式(61)で示される画素値Pを出力することになる。
【0732】
ところで、上述したように、2次元近似手法は、実世界1の光信号を、例えば、図77で示されるような波形F(x,y)として扱い、その2次元の波形F(x,y)を、2次元の多項式などの近似関数f(x,y)に近似する手法である。
【0733】
そこで、はじめに、このような近似関数f(x,y)を2次元の多項式で表現する手法について説明する。
【0734】
上述したように、実世界1の光信号は、3次元の空間上の位置x,y、およびz、並びに時刻tを変数とする光信号関数F(x,y,t)で表される。この光信号関数F(x,y,t)を、Y方向の任意の位置yにおいて、X方向に射影した1次元の波形を、ここでは、X断面波形F(x)と称している。
【0735】
このX断面波形F(x)に注目すると、実世界1の信号が、空間方向の所定の方向に定常性を有している場合、X断面波形F(x)と同一形状の波形がその定常性の方向に連なっていると考えることができる。例えば、図77の例では、X断面波形F(x)と同一形状の波形が、傾きGFの方向に連なっている。換言すると、X断面波形F(x)と同一形状の波形が傾きGFの方向に連なって、波形F(x,y)が形成されているとも言える。
【0736】
従って、波形F(x,y)を近似する近似関数f(x,y)の波形は、X断面波形F(x)を近似する近似関数f(x)と同一形状の波形が連なって形成されると考えることで、近似関数f(x,y)を2次元の多項式で表現することが可能になる。
【0737】
さらに詳細に、近似関数f(x,y)の表現方法について説明する。
【0738】
例えば、いま、上述した図77で示されるような、実世界1の光信号、即ち、傾きGFで表される空間方向の定常性を有する光信号が、センサ2(図78)により検出されて入力画像(画素値)として出力されたとする。
【0739】
さらに、図79で示されるように、データ定常性検出部101(図3)が、この入力画像のうちの、X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素(図中、点線で表される20個の正方形)から構成される入力画像の領域2401に対してその処理を実行し、データ定常性情報の1つとして角度θ(傾きGFに対応する傾きGfで表されるデータの定常性の方向と、X方向とのなす角度θ)を出力したとする。
【0740】
なお、入力画像の領域2401において、図中水平方向は、空間方向の1方向であるX方向を表しており、図中垂直方向は、空間方向の他方向であるY方向を表している。
【0741】
また、図79中、左から2画素目であって、下から3画素目の画素が注目画素とされ、その注目画素の中心を原点(0,0)とするように(x,y)座標系が設定されている。そして、原点(0,0)を通る角度θの直線(データの定常性の方向を表す傾きGfの直線)に対するX方向の相対的な距離(以下、断面方向距離と称する)がx’と記述されている。
【0742】
さらに、図79中、右側のグラフは、X断面波形F(x’)が近似された関数であって、n次(nは、任意の整数)の多項式である近似関数f(x’)を表している。右側のグラフの軸のうち、図中水平方向の軸は、断面方向距離を表しており、図中垂直方向の軸は、画素値を表している。
【0743】
この場合、図79で示される近似関数f(x’)は、n次の多項式であるので、次の式(62)のように表される。
【0744】
【数62】
Figure 0004325296
・・・(62)
【0745】
また、角度θが決定されていることから、原点(0,0)を通る角度θの直線は一意に決まり、Y方向の任意の位置yにおける、直線のX方向の位置xlが、次の式(63)のように表される。ただし、式(63)において、sはcotθ(=1/tanθ)を表している。
【0746】
【数63】
Figure 0004325296
・・・(63)
【0747】
即ち、図79で示されるように、傾きGfで表されるデータの定常性に対応する直線上の点は、座標値(xl,y)で表される。
【0748】
式(63)より、断面方向距離x’は、次の式(64)のように表される。
【0749】
【数64】
Figure 0004325296
・・・(64)
【0750】
従って、入力画像の領域2401内の任意の位置(x,y)における近似関数f(x,y)は、式(62)と式(64)より、次の式(65)のように示される。
【0751】
【数65】
Figure 0004325296
・・・(65)
【0752】
なお、式(65)において、wiは、近似関数f(x,y)の係数を表している。なお、近似関数f(x,y)を含む近似関数fの係数wiを、近似関数fの特徴量と位置づけることもできる。従って、以下、近似関数fの係数wiを、近似関数fの特徴量wiとも称する。
【0753】
このようにして、角度θが既知であれば、2次元波形の近似関数f(x,y)を、式(65)の多項式として表現することができる。
【0754】
従って、実世界推定部102は、式(65)の特徴量wiを演算することができれば、図77で示されるような波形F(x,y)を推定することができる。
【0755】
そこで、以下、式(65)の特徴量wiを演算する手法について説明する。
【0756】
即ち、式(65)で表される近似関数f(x,y)を、画素(センサ2の検出素子2−1(図78))に対応する積分範囲(空間方向の積分範囲)で積分すれば、その積分値が、画素の画素値の推定値となる。このことを、式で表現したものが、次の式(66)である。なお、2次元近似手法においては、時間方向tは一定値とみなされるので、式(66)は、空間方向(X方向とY方法)の位置x,yを変数とする方程式とされている。
【0757】
【数66】
Figure 0004325296
・・・(66)
【0758】
式(66)において、P(x,y)は、センサ2からの入力画像のうちの、その中心位置が位置(x,y)(注目画素からの相対位置(x,y))に存在する画素の画素値を表している。また、eは、誤差を表している。
【0759】
このように、2次元近似手法においては、入力画素値P(x,y)と、2次元の多項式などの近似関数f(x,y)の関係を、式(66)で表現することが可能であるので、実世界推定部102は、式(66)を利用して、特徴量wiを、例えば、最小自乗法等により演算することで(演算した特徴量wiを式(64)に代入して近似関数f(x,y)を生成することで)、2次元の関数F(x,y)(傾きGF(図77)で表される空間方向の定常性を有する実世界1の光信号を、空間方向に着目して表した波形F(x,y))を推定することが可能となる。
【0760】
図80は、このような2次元近似手法を利用する実世界推定部102の構成例を表している。
【0761】
図80で示されるように、実世界推定部102には、条件設定部2421、入力画像記憶部2422、入力画素値取得部2423、積分成分演算部2424、正規方程式生成部2425、および近似関数生成部2426が設けられている。
【0762】
条件設定部2421は、注目画素に対応する関数F(x,y)を推定するために使用する画素の範囲(タップ範囲)や、近似関数f(x,y)の次数nを設定する。
【0763】
入力画像記憶部2422は、センサ2からの入力画像(画素値)を一次格納する。
【0764】
入力画素値取得部2423は、入力画像記憶部2422に記憶された入力画像のうちの、条件設定部2421により設定されたタップ範囲に対応する入力画像の領域を取得し、それを入力画素値テーブルとして正規方程式生成部2425に供給する。即ち、入力画素値テーブルは、入力画像の領域に含まれる各画素のそれぞれの画素値が記述されたテーブルである。なお、入力画素値テーブルの具体例については後述する。
【0765】
ところで、上述したように、2次元近似手法を利用する実世界推定部102は、上述した式(66)を最小自乗法で解くことにより、上述した式(65)で示される近似関数f(x,y)の特徴量wiを演算する。
【0766】
式(66)は、次の式(67)乃至式(69)を用いることで得られる次の式(70)を使用することで、次の式(71)のように表現することができる。
【0767】
【数67】
Figure 0004325296
・・・(67)
【0768】
【数68】
Figure 0004325296
・・・(68)
【0769】
【数69】
Figure 0004325296
・・・(69)
【0770】
【数70】
Figure 0004325296
・・・(70)
【0771】
【数71】
Figure 0004325296
・・・(71)
【0772】
式(71)において、Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5)は、i次項の積分成分を表している。即ち、積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5)は、次の式(72)で示される通りである。
【0773】
【数72】
Figure 0004325296
・・・(72)
【0774】
積分成分演算部2424は、この積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5)を演算する。
【0775】
具体的には、式(72)で示される積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5)は、相対画素位置(x,y)、上述した式(65)における変数s、および、i次項のiが既知であれば、演算可能である。これらのうちの、相対画素位置(x,y)は注目画素とタップ範囲により、変数sはcotθであるので角度θにより、iの範囲は次数nにより、それぞれ決定される。
【0776】
従って、積分成分演算部2424は、条件設定部2421により設定されたタップ範囲および次数、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度θに基づいて積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして正規方程式生成部2425に供給する。
【0777】
正規方程式生成部2425は、入力画素値取得部2423より供給された入力画素値テーブルと、積分成分演算部2424より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(66)、即ち、式(71)を最小自乗法で求める場合の正規方程式を生成し、それを正規方程式テーブルとして近似関数生成部2426に出力する。なお、正規方程式の具体例については後述する。
【0778】
近似関数生成部2426は、正規方程式生成部2425より供給された正規方程式テーブルに含まれる正規方程式を行列解法で解くことにより、上述した式(66)の特徴量wi(即ち、2次元多項式である近似関数f(x,y)の係数wi)のそれぞれを演算し、画像生成部103に出力する。
【0779】
次に、図81のフローチャートを参照して、2次元近似手法が適用される実世界の推定処理(図29のステップS102の処理)について説明する。
【0780】
例えば、いま、傾きGFで表される空間方向の定常性を有する実世界1の光信号が、センサ2(図78)により検出されて、1フレームに対応する入力画像として、入力画像記憶部2422に既に記憶されているとする。また、データ定常性検出部101が、ステップS101(図29)の定常性の検出の処理において、入力画像のうちの、上述した図79で示される領域2401に対して処理を施して、データ定常性情報として角度θを既に出力しているとする。
【0781】
この場合、ステップS2401において、条件設定部2421は、条件(タップ範囲と次数)を設定する。
【0782】
例えば、いま、図82で示されるタップ範囲2441が設定されるとともに、次数として5次が設定されたとする。
【0783】
即ち、図82は、タップ範囲の1例を説明する図である。図82において、X方向とY方向は、センサ2のX方向とY方向(図78)を表している。また、タップ範囲2441は、X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素(図中、20個の正方形)からなる画素群を表している。
【0784】
さらに、図82に示されるように、注目画素が、タップ範囲2441のうちの、図中、左から2画素目であって、下から3画素目の画素に設定されるとする。また、各画素のそれぞれに対して、注目画素からの相対画素位置(x,y)(注目画素の中心(0,0)を原点とする注目画素座標系の座標値)に応じて、図82で示されるような番号l(lは、0乃至19のうちのいずれかの整数値)が付されるとする。
【0785】
図81に戻り、ステップS2402において、条件設定部2421は、注目画素を設定する。
【0786】
ステップS2403において、入力画素値取得部2423は、条件設定部2421により設定された条件(タップ範囲)に基づいて入力画素値を取得し、入力画素値テーブルを生成する。即ち、いまの場合、入力画素値取得部2423は、入力画像の領域2401(図79)を取得し、入力画素値テーブルとして、20個の入力画素値P(l)からなるテーブルを生成する。
【0787】
なお、いまの場合、入力画素値P(l)と、上述した入力画素値P(x,y)の関係は、次の式(73)で示される関係とされる。ただし、式(73)において、左辺が入力画素値P(l)を表し、右辺が入力画素値P(x,y)を表している。
【0788】
【数73】
Figure 0004325296
・・・(73)
【0789】
ステップS2404において、積分成分演算部2424は、条件設定部2421により設定された条件(タップ範囲および次数)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度θ)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【0790】
いまの場合、上述したように、入力画素値は、P(x,y)でなくP(l)といった、画素の番号lの値として取得されるので、積分成分演算部2424は、上述した式(72)の積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5)を、次の式(74)の左辺で示される積分成分Si(l)といったlの関数として演算する。
【0791】
【数74】
Figure 0004325296
・・・(74)
【0792】
具体的には、いまの場合、次の式(75)で示される積分成分Si(l)が演算される。
【0793】
【数75】
Figure 0004325296
・・・(75)
【0794】
なお、式(75)において、左辺が積分成分Si(l)を表し、右辺が積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5)を表している。即ち、いまの場合、iは0乃至5であるので、20個のS0(l),20個のS1(l),20個のS2(l),20個のS3(l),20個のS4(l),20個のS5(l)の総計120個のSi(l)が演算されることになる。
【0795】
より具体的には、はじめに、積分成分演算部2424は、データ定常性検出部101より供給された角度θに対するcotθを演算し、それを変数sとする。次に、積分成分演算部2424は、演算した変数sを使用して式(74)の右辺で示される20個の積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5) のそれぞれを、i=0乃至5のそれぞれについて演算する。即ち、120個の積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5) が演算されることになる。なお、この積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5) の演算においては、上述した式(72)が使用される。そして、積分成分演算部2424は、式(75)に従って、演算した120個の積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5)のそれぞれを、対応するSi(l)のそれぞれに変換し、変換した120個のSi(l)を含む積分成分テーブルを生成する。
【0796】
なお、ステップS2403の処理とステップS2404の処理の順序は、図81の例に限定されず、ステップS2404の処理が先に実行されてもよいし、ステップS2403の処理とステップS2404の処理が同時に実行されてもよい。
【0797】
次に、ステップS2405において、正規方程式生成部2425は、ステップS2403の処理で入力画素値取得部2423により生成された入力画素値テーブルと、ステップS2404の処理で積分成分演算部2424により生成された積分成分テーブルに基づいて、正規方程式テーブルを生成する。
【0798】
具体的には、いまの場合、上述した式(71)を利用して最小自乗法により特徴量wiが演算される(ただし、式(70)において、積分成分Si(x-0.5,x+0.5,y-0.5,y+0.5)は、式(74)により変換されるSi(l)が使用される)ので、それに対応する正規方程式は、次の式(76)のように表される。
【0799】
【数76】
Figure 0004325296
・・・(76)
【0800】
なお、式(76)において、Lは、タップ範囲の画素の番号lのうちの最大値を表している。nは、多項式である近似関数f(x)の次数を表している。具体的には、いまの場合、n=5となり、L=19となる。
【0801】
式(76)で示される正規方程式の各行列のそれぞれを、次の式(77)乃至(79)のように定義すると、正規方程式は、次の式(80)のように表現される。
【0802】
【数77】
Figure 0004325296
・・・(77)
【0803】
【数78】
Figure 0004325296
・・・(78)
【0804】
【数79】
Figure 0004325296
・・・(79)
【0805】
【数80】
Figure 0004325296
・・・(80)
【0806】
式(78)で示されるように、行列WMATの各成分は、求めたい特徴量wiである。従って、式(80)において、左辺の行列SMATと右辺の行列PMATが決定されれば、行列解法によって行列WMATの演算が可能になる。
【0807】
具体的には、式(77)で示されるように、行列SMATの各成分は、上述した積分成分Si(l)で演算可能である。即ち、積分成分Si(l)は、積分成分演算部2424より供給された積分成分テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2425は、積分成分テーブルを利用して行列SMATの各成分を演算することができる。
【0808】
また、式(79)で示されるように、行列PMATの各成分は、積分成分Si(l)と入力画素値P(l)で演算可能である。即ち、積分成分Si(l)は、行列SMATの各成分に含まれるものと同一のものであり、また、入力画素値P(l)は、入力画素値取得部2423より供給された入力画素値テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2425は、積分成分テーブルと入力画素値テーブルを利用して行列PMATの各成分を演算することができる。
【0809】
このようにして、正規方程式生成部2425は、行列SMATと行列PMATの各成分を演算し、その演算結果(行列SMATと行列PMATの各成分)を正規方程式テーブルとして近似関数生成部2426に出力する。
【0810】
正規方程式生成部2425より正規方程式テーブルが出力されると、ステップS2406において、近似関数生成部2426は、正規方程式テーブルに基づいて、上述した式(80)の行列WMATの各成分である特徴量wi(即ち、2次元多項式である近似関数f(x,y)の係数wi)を演算する。
【0811】
具体的には、上述した式(80)の正規方程式は、次の式(81)のように変形できる。
【0812】
【数81】
Figure 0004325296
・・・(81)
【0813】
式(81)において、左辺の行列WMATの各成分が、求めたい特徴量wiである。また、行列SMATと行列PMATのそれぞれの各成分は、正規方程式生成部2425より供給された正規方程式テーブルに含まれている。従って、近似関数生成部2426は、正規方程式テーブルを利用して、式(81)の右辺の行列演算を行うことで行列WMATを演算し、その演算結果(特徴量wi)を画像生成部103に出力する。
【0814】
ステップS2407において、近似関数生成部2426は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【0815】
ステップS2407において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS2402に戻り、それ以降の処理が繰り返される。即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS2402乃至S2407の処理が繰り返される。
【0816】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS2407において、全画素の処理が終了されたと判定されると)、実世界1の推定処理は終了となる。
【0817】
以上、2次元近似手法の説明として、空間方向(X方向とY方向)に対する近似関数f(x,y)の係数(特徴量)wiを演算する例を用いたが、2次元近似手法は、時空間方向(X方向とt方向、または、Y方向とt方向)に対しても適用可能である。
【0818】
即ち、上述した例は、実世界1の光信号が、例えば、傾きGF(図77)で表される空間方向の定常性を有する場合の例であったので、上述した式(66)で示されるような、空間方向(X方向とY方向)の二次元積分が含まれる式が利用された。しかしながら、二次元積分の考え方は、空間方向だけによるものではなく、時空間方向(X方向とt方向、または、Y方向とt方向)に対して適用することも可能である。
【0819】
換言すると、2次元近似手法においては、推定したい光信号関数F(x,y,t)が、空間方向の定常性のみならず、時空間方向(ただし、X方向とt方向、または、Y方向とt方向)の定常性を有している場合であっても、2次元の近似関数fにより近似することが可能である。
【0820】
具体的には、例えば、X方向に水平に等速で動いている物体がある場合、その物体の動きの方向は、図83で示されるようなX-t平面においては、傾きVFのように表される。換言すると、傾きVFは、X-t平面における時空間方向の定常性の方向を表しているとも言える。従って、データ定常性検出部101は、上述した角度θ(X-Y平面における、傾きGFで表される空間方向の定常性に対応するデータ定常性情報)と同様に、X-t平面における時空間方向の定常性を表す傾きVFに対応するデータ定常性情報として、図83で示されるような動きθ(厳密には、図示はしないが、傾きVFに対応する傾きVfで表されるデータの定常性の方向と、空間方向のX方向とのなす角度である動きθ)を出力することが可能である。
【0821】
従って、2次元近似手法を利用する実世界推定部102は、動きθを上述した角度θの代わりとして使用すれば、上述した方法と同様な方法で、近似関数f(x,t)の係数(特徴量)wiを演算することが可能になる。ただし、この場合、使用される式は、上述した式(66)ではなく、次の式(82)である。
【0822】
【数82】
Figure 0004325296
・・・(82)
【0823】
なお、式(82)において、sはcotθ(ただし、θは動きである)である。
【0824】
また、空間方向Xの変わりに、空間方向Yに注目した近似関数f(y,t)も、上述した近似関数f(x,t)と全く同様に取り扱うことが可能である。
【0825】
このように、2次元近似手法は、1次元ではなく2次元の積分効果を考慮しているので、1次元近似手法に比較して、より正確に実世界1の光信号を推定することが可能になる。
【0826】
次に、図84乃至図88を参照して、第3の関数近似手法について説明する。
【0827】
即ち、第3の関数近似手法とは、例えば、時空間方向のうちの所定の方向の定常性を有する実世界1の光信号が、光信号関数F(x,y,t)で表されることに注目して、近似関数f(x,y,t)で光信号関数F(x,y,t)を近似することによって、光信号関数F(x,y,t)を推定する手法である。従って、以下、第3の関数近似手法を、3次元近似手法と称する。
【0828】
また、3次元近似手法の説明においても、センサ2は、図84で示されるような、複数の検出素子2−1がその平面上に配置されて構成されるCCDとされる。
【0829】
図84の例では、検出素子2−1の所定の1辺に平行な方向が、空間方向の1方向であるX方向とされており、X方向に垂直な方向が、空間方向の他方向であるY方向とされている。そして、X−Y平面に垂直な方向が、時間方向であるt方向とされている。
【0830】
また、図84の例では、センサ2の各検出素子2−1のそれぞれの空間的な形状は、1辺の長さが1の正方形とされている。そして、センサ2のシャッタ時間(露光時間)が1とされている。
【0831】
さらに、図84の例では、センサ2の所定の1つの検出素子2−1の中心が、空間方向(X方向とY方向)の原点(X方向の位置x=0、およびY方向の位置y=0)とされており、また、露光時間の中間時刻が、時間方向(t方向)の原点(t方向の位置t=0)とされている。
【0832】
この場合、空間方向の原点(x=0,y=0)にその中心が存在する検出素子2−1は、X方向に-0.5乃至0.5の範囲、Y方向に-0.5乃至0.5の範囲、およびt方向に-0.5乃至0.5の範囲で光信号関数F(x,y,t)を積分し、その積分値を画素値Pとして出力することになる。
【0833】
即ち、空間方向の原点にその中心が存在する検出素子2−1から出力される画素値Pは、次の式(83)で表される。
【0834】
【数83】
Figure 0004325296
・・・(83)
【0835】
その他の検出素子2−1も同様に、対象とする検出素子2−1の中心を空間方向の原点とすることで、式(83)で示される画素値Pを出力することになる。
【0836】
ところで、上述したように、3次元近似手法においては、光信号関数F(x,y,t)は、3次元の近似関数f(x,y,t)に近似される。
【0837】
具体的には、例えば、近似関数f(x,y,t)を、N個の変数(特徴量)を有する関数とし、式(83)に対応する入力画素値P(x,y,t)と近似関数f(x,y,t)の関係式を定義する。これにより、Nより大きいM個の入力画素値P(x,y,t)が取得されていれば、定義された関係式からN個の変数(特徴量)の算出が可能である。即ち、実世界推定部102は、M個の入力画素値P(x,y,t)を取得してN個の変数(特徴量)を演算することで、光信号関数F(x,y,t)を推定することが可能である。
【0838】
この場合、実世界推定部102は、センサ2からの入力画像(入力画素値)に含まれるデータの定常性を縛りとして(即ち、データ定常性検出部101より出力される入力画像に対するデータ定常性情報を利用して)、入力画像全体のうちの、M個の入力画像P(x,y,t)を抽出(取得)する。結果的に、近似関数f(x,y,t)は、データの定常性に拘束されることになる。
【0839】
例えば、図85で示されるように、入力画像に対応する光信号関数F(x,y,t)が、傾きGFで表される空間方向の定常性を有している場合、データ定常性検出部101は、入力画像に対するデータ定常性情報として、角度θ(傾きGFに対応する傾きGf(図示せず)で表されるデータの定常性の方向と、X方向のなす角度θ)を出力することになる。
【0840】
この場合、光信号関数F(x,y,t)をX方向に射影した1次元の波形(ここでは、このような波形を、X断面波形と称している)は、Y方向のいずれの位置で射影した場合であっても同一の形状であるとする。
【0841】
即ち、同一形状のX断面波形が、定常性の方向(X方向に対して角度θ方向)に連なっている2次元の(空間方向の)波形が存在するとし、そのような2次元波形が時間方向tに連なった3次元波形を、近似関数f(x,y,t)で近似する。
【0842】
換言すると、注目画素の中心からY方向に位置yだけずれたX断面波形は、注目画素の中心を通るX断面波形がX方向に所定の量(角度θに応じて変化する量)だけ移動した(シフトした)波形となる。なお、以下、このような量を、シフト量と称する。
【0843】
このシフト量は、次のようにして算出が可能である。
【0844】
即ち、傾きVf(例えば、図85の傾きVFに対応する、データの定常性の方向を表す傾きVf)と角度θは、次の式(84)のように表される。
【0845】
【数84】
Figure 0004325296
・・・(84)
【0846】
なお、式(84)において、dxは、X方向の微小移動量を表しており、dyは、dxに対するY方向の微小移動量を表している。
【0847】
従って、X方向に対するシフト量をCx(y)と記述すると、次の式(85)のように表される。
【0848】
【数85】
Figure 0004325296
・・・(85)
【0849】
このようにして、シフト量Cx(y)を定義すると、式(83)に対応する入力画素値P(x,y,t)と近似関数f(x,y,t)の関係式は、次の式(86)のように表される。
【0850】
【数86】
Figure 0004325296
・・・(86)
【0851】
式(86)において、eは、誤差を表している。tsは、t方向の積分開始位置を表しており、teは、t方向の積分終了位置を表している。同様に、ysは、Y方向の積分開始位置を表しており、yeは、Y方向の積分終了位置を表している。また、xsは、X方向の積分開始位置を表しており、xeは、X方向の積分終了位置を表している。ただし、具体的な各積分範囲のそれぞれは、次の式(87)で示される通りになる。
【0852】
【数87】
Figure 0004325296
・・・(87)
【0853】
式(87)で示されるように、注目画素から空間方向に(x,y)だけ離れて位置する画素に対するX方向の積分範囲を、シフト量Cx(y)だけ移動させることで、同一形状のX断面波形が、定常性の方向(X方向に対して角度θ方向)に連なっていることを表すことが可能になる。
【0854】
このように、3次元近似手法においては、画素値P(x,y,t)と、3次元の近似関数f(x,y,t)の関係を式(86)(積分範囲は、式(87))で表すことができるので、式(86)と式(87)を利用して、近似関数f(x,y,t)のN個の特徴量を、例えば、最小自乗法等により演算することで、光信号関数F(x,y,t)(例えば、図85で示されるような傾きVF表される空間方向の定常性を有する光信号)の推定が可能となる。
【0855】
なお、光信号関数F(x,y,t)で表される光信号が、例えば、図85で示されるような傾きVFで表される空間方向の定常性を有している場合、次のようにして光信号関数F(x,y,t)を近似してもよい。
【0856】
即ち、光信号関数F(x,y,t)をY方向に射影した1次元の波形(以下、このような波形を、Y断面波形と称する)は、X方向のいずれの位置で射影した場合であっても同一の形状であるとする。
【0857】
換言すると、同一形状のY断面波形が、定常性の方向(X方向に対して角度θ方向)に連なっている2次元の(空間方向の)波形が存在するとし、そのような2次元波形が時間方向tに連なった3次元波形を、近似関数f(x,y,t)で近似する。
【0858】
従って、注目画素の中心からX方向にxだけずれたY断面波形は、注目画素の中心を通るY断面波形がY方向に所定のシフト量(角度θに応じて変化するシフト量)だけ移動した波形となる。
【0859】
このシフト量は、次のようにして算出が可能である。
【0860】
即ち、傾きGFが、上述した式(84)のように表されるので、Y方向に対するシフト量をCy(x)と記述すると、次の式(88)のように表される。
【0861】
【数88】
Figure 0004325296
・・・(88)
【0862】
このようにして、シフト量Cy(x)を定義すると、式(83)に対応する入力画素値P(x,y,t)と近似関数f(x,y,t)の関係式は、シフト量Cx(y)を定義したときと同様に、上述した式(86)で表される。
【0863】
ただし、今度は、具体的な各積分範囲のそれぞれは、次の式(89)で示される通りになる。
【0864】
【数89】
Figure 0004325296
・・・(89)
【0865】
式(89)(および上述した式(86))で示されるように、注目画素から(x,y)だけ離れて位置する画素に対するY方向の積分範囲を、シフト量Cy(x)だけ移動させることで、同一形状のY断面波形が、定常性の方向(X方向に対して角度θ方向)に連なっていることを表すことが可能になる。
【0866】
このように、3次元近似手法においては、上述した式(86)の右辺の積分範囲を式(87)のみならず式(89)とすることもできるので、積分範囲として式(89)が採用された式(86)を利用して、近似関数f(x,y,t)のn個の特徴量を、例えば、最小自乗法等により演算することで、光信号関数F(x,y,t)(傾きGFで表される空間方向の定常性を有する実世界1の光信号)の推定が可能となる。
【0867】
このように、積分範囲を表す式(87)と式(89)は、定常性の方向にあわせて周辺画素をX方向にシフトさせるか(式(87)の場合)、或いはY方向にシフトさせるか(式(89)の場合)の違いがあるだけであり、本質的には同じことを表している。
【0868】
しかしながら、定常性の方向(傾きGF)に応じて、光信号関数F(x,y,t)を、X断面波形の集まりと捉えるか、Y断面波形の集まりと捉えるかが異なる。即ち、定常性の方向がY方向に近い場合、光信号関数F(x,y,t)を、X断面波形の集まりと捉えた方が好適である。これに対して、定常性の方向がX方向に近い場合、光信号関数F(x,y,t)を、Y断面波形の集まりと捉えた方が好適である。
【0869】
従って、実世界推定部102は、積分範囲として式(87)と式(89)の両方を用意しておき、定常性の方向に応じて、適宜式(86)の右辺の積分範囲として、式(87)と式(89)のうちのいずれか一方を選択するとよい。
【0870】
以上、光信号関数F(x,y,t)が空間方向(X方向とY方向)の定常性(例えば、図85の傾きGFで表される空間方向の定常性)を有する場合についての3次元近似手法について説明したが、3次元近似手法は、図86で示されるように、光信号関数F(x,y,t)が時空間方向(X方向、Y方向、およびt方向)の定常性(傾きVFで表される定常性)を有する場合についても適用可能である。
【0871】
即ち、図86において、フレーム番号#N-1のフレームに対応する光信号関数がF(x,y,#N-1)とされ、フレーム番号#Nのフレームに対応する光信号関数がF(x,y,#N)とされ、かつ、フレーム番号#N+1のフレームに対応する光信号関数がF(x,y,#N+1)とされている。
【0872】
なお、図86において、図中、水平方向は、空間方向の1方向であるX方向とされており、右斜め上方向は、空間方向の他方向であるY方向とされており、かつ、垂直方向は、時間方向であるt方向とされている。
【0873】
また、フレーム#N-1は、フレーム#Nに対して時間的に前のフレームであり、フレーム#N+1は、フレーム#Nに対して時間的に後のフレームである。即ち、フレーム#N-1、フレーム#N、およびフレーム#N+1は、フレーム#N-1、フレーム#N、およびフレーム#N+1の順で表示される。
【0874】
図86の例では、傾きVFで示される方向(図中左下手前から右上奥の方向)に沿った断面の光のレベルがほぼ一定とされている。従って、図86の例では、光信号関数F(x,y,t)は、傾きVFで表される時空間方向の定常性を有していると言える。
【0875】
この場合、時空間方向の定常性を表す関数C(x,y,t)を定義し、かつ、定義された関数C(x,y,t)を利用して、上述した式(86)の積分範囲を定義すれば、上述した式(87)や式(89)と同様に、近似関数f(x,y,t)のN個の特徴量の算出が可能になる。
【0876】
関数C(x,y,t)は、定常性の方向を表す関数であれば特に限定されない。ただし、以下においては、直線的な定常性であるとして、それに対応する関数C(x,y,t)として、上述した空間方向の定常性を表す関数であるシフト量Cx(y)(式(85))やシフト量Cy(x)(式(87))に相当する、Cx(t)とCy(t)を次のように定義するとする。
【0877】
即ち、上述した空間方向のデータの定常性を表す傾きGfに対応する、時空間方向のデータの定常性の傾きをVfとすると、この傾きVfをX方向の傾き(以下、Vfxと記述する)とY方向の傾き(以下、Vfyと記述する)に分割すると、傾きVfxは次の式(90)で、傾きVfyは次の式(91)で、それぞれ表される。
【0878】
【数90】
Figure 0004325296
・・・(90)
【0879】
【数91】
Figure 0004325296
・・・(91)
【0880】
この場合、関数Cx(t)は、式(90)で示される傾きVfxを利用して、次の式(92)のように表される。
【0881】
【数92】
Figure 0004325296
・・・(92)
【0882】
同様に、関数Cy(t)は、式(91)で示される傾きVfyを利用して、次の式(93)のように表される。
【0883】
【数93】
Figure 0004325296
・・・(93)
【0884】
このようにして、時空間方向の定常性2511を表す関数Cx(t)と関数Cy(t)を定義すると、式(86)の積分範囲は、次の式(94)のように表される。
【0885】
【数94】
Figure 0004325296
・・・(94)
【0886】
このように、3次元近似手法においては、画素値P(x,y,t)と、3次元の近似関数f(x,y,t)の関係を式(86)で表すことができるので、その式(86)の右辺の積分範囲として式(94)を利用して、近似関数f(x,y,t)のn+1個の特徴量を、例えば、最小自乗法等により演算することで、光信号関数F(x,y,t)(時空間方向の所定の方向に定常性を有する実世界1の光信号)を推定することが可能となる。
【0887】
図87は、このような3次元近似手法を利用する実世界推定部102の構成例を表している。
【0888】
なお、3次元近似手法を利用する実世界推定部102が演算する近似関数f(x,y,t)(実際には、その特徴量(係数)を演算する)は、特に限定されないが、以下の説明においては、n(n=N-1)次の多項式とされる。
【0889】
図87で示されるように、実世界推定部102には、条件設定部2521、入力画像記憶部2522、入力画素値取得部2523、積分成分演算部2524、正規方程式生成部2525、および近似関数生成部2526が設けられている。
【0890】
条件設定部2521は、注目画素に対応する光信号関数F(x,y,t)を推定するために使用する画素の範囲(タップ範囲)や、近似関数f(x,y,t)の次数nを設定する。
【0891】
入力画像記憶部2522は、センサ2からの入力画像(画素値)を一次格納する。
【0892】
入力画素値取得部2523は、入力画像記憶部2522に記憶された入力画像のうちの、条件設定部2521により設定されたタップ範囲に対応する入力画像の領域を取得し、それを入力画素値テーブルとして正規方程式生成部2525に供給する。即ち、入力画素値テーブルは、入力画像の領域に含まれる各画素のそれぞれの画素値が記述されたテーブルである。
【0893】
ところで、上述したように、3次元近似手法を利用する実世界推定部102は、上述した式(86)(ただし積分範囲は、式(87)、式(90)、または式(94))を利用して最小自乗法により近似関数f(x,y,t)のN個の特徴量(いまの場合、各次の係数)を演算する。
【0894】
式(86)の右辺は、その積分を演算することで、次の式(95)のように表現することができる。
【0895】
【数95】
Figure 0004325296
・・・(95)
【0896】
式(95)において、wiは、i次項の係数(特徴量)を表しており、また、Si(xs,xe,ys,ye,ts,te)は、i次項の積分成分を表している。ただし、xsはX方向の積分範囲の開始位置を、xeはX方向の積分範囲の終了位置を、ysはY方向の積分範囲の開始位置を、yeはY方向の積分範囲の終了位置を、tsはt方向の積分範囲の開始位置を、teはt方向の積分範囲の終了位置を、それぞれ表している。
【0897】
積分成分演算部2524は、この積分成分Si(xs,xe,ys,ye,ts,te)を演算する。
【0898】
即ち、積分成分演算部2524は、条件設定部2521により設定されたタップ範囲および次数、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度若しくは動き(積分範囲として、上述した式(87)若しくは式(90)が利用される場合には角度であり、上述した式(94)が利用される場合には動きである)に基づいて積分成分Si(xs,xe,ys,ye,ts,te)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして正規方程式生成部2525に供給する。
【0899】
正規方程式生成部2525は、入力画素値取得部2523より供給された入力画素値テーブルと、積分成分演算部2524より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(95)を最小自乗法で求める場合の正規方程式を生成し、それを正規方程式テーブルとして近似関数生成部2526に出力する。正規方程式の例については、後述する。
【0900】
近似関数生成部2526は、正規方程式生成部2525より供給された正規方程式テーブルに含まれる正規方程式を行列解法で解くことにより、特徴量wi(いまの場合、多項式である近似関数f(x,y,t)の係数wi)のそれぞれを演算し、画像生成部103に出力する。
【0901】
次に、図88のフローチャートを参照して、3次元近似手法が適用される実世界の推定処理(図29のステップS102の処理)について説明する。
【0902】
はじめに、ステップS2501において、条件設定部2521は、条件(タップ範囲と次数)を設定する。
【0903】
例えば、いま、L個の画素からなるタップ範囲が設定されたとする。また、各画素のそれぞれに対して、所定の番号l(lは、0乃至L−1のうちのいずれかの整数値)が付されるとする。
【0904】
次に、ステップS2502において、条件設定部2521は、注目画素を設定する。
【0905】
ステップS2503において、入力画素値取得部2523は、条件設定部2521により設定された条件(タップ範囲)に基づいて入力画素値を取得し、入力画素値テーブルを生成する。いまの場合、L個の入力画素値P(x,y,t)からなるテーブルが生成されることになる。ここで、L個の入力画素値P(x,y,t)のそれぞれを、その画素の番号lの関数としてP(l)と記述することにする。即ち、入力画素値テーブルは、L個のP(l)が含まれるテーブルとなる。
【0906】
ステップS2504において、積分成分演算部2524は、条件設定部2521により設定された条件(タップ範囲および次数)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度若しくは動き)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【0907】
ただし、いまの場合、上述したように、入力画素値は、P(x,y,t)でなくP(l)といった、画素の番号lの値として取得されるので、積分成分演算部2524は、上述した式(95)の積分成分Si(xs,xe,ys,ye,ts,te)を、積分成分Si(l)といったlの関数として演算することになる。即ち、積分成分テーブルは、L×i個のSi(l)が含まれるテーブルとなる。
【0908】
なお、ステップS2503の処理とステップS2504の処理の順序は、図88の例に限定されず、ステップS2504の処理が先に実行されてもよいし、ステップS2503の処理とステップS2504の処理が同時に実行されてもよい。
【0909】
次に、ステップS2505において、正規方程式生成部2525は、ステップS2503の処理で入力画素値取得部2523により生成された入力画素値テーブルと、ステップS2504の処理で積分成分演算部2524により生成された積分成分テーブルに基づいて、正規方程式テーブルを生成する。
【0910】
具体的には、いまの場合、最小自乗法により、上述した式(95)に対応する次の式(96)の特徴量wiを演算する。で、それに対応する正規方程式は、次の式(97)のように表される。
【0911】
【数96】
Figure 0004325296
・・・(96)
【0912】
【数97】
Figure 0004325296
・・・(97)
【0913】
式(97)で示される正規方程式の各行列のそれぞれを、次の式(98)乃至(100)のように定義すると、正規方程式は、次の式(101)のように表される。
【0914】
【数98】
Figure 0004325296
・・・(98)
【0915】
【数99】
Figure 0004325296
・・・(99)
【0916】
【数100】
Figure 0004325296
・・・(100)
【0917】
【数101】
Figure 0004325296
・・・(101)
【0918】
式(99)で示されるように、行列WMATの各成分は、求めたい特徴量wiである。従って、式(101)において、左辺の行列SMATと右辺の行列PMATが決定されれば、行列解法によって行列WMAT(即ち、特徴量wi)の算出が可能である。
【0919】
具体的には、式(98)で示されるように、行列SMATの各成分は、上述した積分成分Si(l)が既知であれば演算可能である。積分成分Si(l)は、積分成分演算部2524より供給された積分成分テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2525は、積分成分テーブルを利用して行列SMATの各成分を演算することができる。
【0920】
また、式(100)で示されるように、行列PMATの各成分は、積分成分Si(l)と入力画素値P(l)が既知であれば演算可能である。積分成分Si(l)は、行列SMATの各成分に含まれるものと同一のものであり、また、入力画素値P(l)は、入力画素値取得部2523より供給された入力画素値テーブルに含まれているので、正規方程式生成部2525は、積分成分テーブルと入力画素値テーブルを利用して行列PMATの各成分を演算することができる。
【0921】
このようにして、正規方程式生成部2525は、行列SMATと行列PMATの各成分を演算し、その演算結果(行列SMATと行列PMATの各成分)を正規方程式テーブルとして近似関数生成部2526に出力する。
【0922】
正規方程式生成部252より正規方程式テーブルが出力されると、ステップS2506において、近似関数生成部2526は、正規方程式テーブルに基づいて、上述した式(101)の行列WMATの各成分である特徴量wi(即ち、近似関数f(x,y,t)の係数wi)を演算する。
【0923】
具体的には、上述した式(101)の正規方程式は、次の式(102)のように変形できる。
【0924】
【数102】
Figure 0004325296
・・・(102)
【0925】
式(102)において、左辺の行列WMATの各成分が、求めたい特徴量wiである。また、行列SMATと行列PMATのそれぞれの各成分は、正規方程式生成部2525より供給された正規方程式テーブルに含まれている。従って、近似関数生成部2526は、正規方程式テーブルを利用して、式(102)の右辺の行列演算を行うことで行列WMATを演算し、その演算結果(特徴量wi)を画像生成部103に出力する。
【0926】
ステップS2507において、近似関数生成部2526は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【0927】
ステップS2507において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS2502に戻り、それ以降の処理が繰り返される。即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS2502乃至S2507の処理が繰り返される。
【0928】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS2507において、全画素の処理が終了されたと判定されると)、実世界1の推定処理は終了となる。
【0929】
以上、説明したように、3次元近似手法は、1次元や2次元ではなく、時空間方向の3次元の積分効果を考慮しているので、1次元近似手法や2次元近似手法に比較して、より正確に実世界1の光信号を推定することが可能になる。
【0930】
次に、図89乃至図110を参照して、画像生成部103(図3)の実施の形態の1例について説明する。
【0931】
図89は、この例の実施の形態の原理を説明する図である。
【0932】
図89で示されるように、この例の実施の形態においては、実世界推定部102が、関数近似手法を利用することが前提とされている。即ち、センサ2に入射される画像である、実世界1の信号(光の強度の分布)が、所定の関数Fで表されるとして、実世界推定部102が、センサ2から出力された入力画像(画素値P)と、データ定常性検出部101から出力されたデータ定常性情報を使用して、関数Fを所定の関数fで近似することによって、関数Fを推定することが前提とされている。
【0933】
なお、以下、この例の実施の形態の説明においても、画像である、実世界1の信号を、特に光信号と称し、関数Fを、特に光信号関数Fと称する。また、関数fを、特に近似関数fと称する。
【0934】
そこで、この例の実施の形態においては、このような前提に基づいて、画像生成部103が、データ定常性検出部101から出力されたデータ定常性情報と、実世界推定部102から出力された実世界推定情報(図89の例では、近似関数fの特徴量、または特徴量が特定された近似関数f)を使用して、近似関数fを所定の時空間範囲で積分し、その積分値を出力画素値M(出力画像)として出力する。なお、この例の実施の形態においては、入力画像の画素と出力画像の画素を区別するために、入力画素値をPと記述し、出力画素値をMと記述する。
【0935】
換言すると、光信号関数Fが1度積分されて入力画素値Pとなり、その入力画素値Pから光信号関数Fが推測され(近似関数fで近似され)、推測された光信号関数F(即ち、近似関数f)が再度積分されて、出力画素値Mが生成される。従って、以下、画像生成部103が実行する近似関数fの積分を、再積分と称する。また、この例の実施の形態を、再積分手法と称する。
【0936】
なお、後述するように、再積分手法において、出力画素値Mが生成される場合の近似関数fの積分範囲は、入力画素値Pが生成される場合の光信号関数Fの積分範囲(即ち、空間方向においては、センサ2の検出素子の縦幅と横幅であり、時間方向においては、センサ2の露光時間である)に限定されず、任意の積分範囲とすることが可能である。
【0937】
例えば、出力画素値Mが生成される場合、近似関数fの積分範囲のうちの空間方向の積分範囲を可変することで、その積分範囲に応じて出力画像の画素ピッチを可変することが可能になる。即ち、空間解像度の創造が可能になる。
【0938】
同様に、例えば、出力画素値Mが生成される場合、近似関数fの積分範囲のうちの時間方向の積分範囲を可変することで、時間解像度の創造が可能になる。
【0939】
以下、図面を参照して、このような再積分手法のうちの3つの具体的な手法についてそれぞれ個別に説明していく。
【0940】
即ち、3つの具体的な手法とは、関数近似手法の3つの具体的な手法(実世界推定部102の実施の形態の上述した3つの具体的な例)のそれぞれに対応する再積分手法である。
【0941】
具体的には、1つ目の手法は、上述した1次元近似手法(関数近似手法の1手法)に対応する再積分手法である。従って、1つ目の手法では1次元の再積分を行うことになるので、以下、このような再積分手法を、1次元再積分手法と称する。
【0942】
2つ目の手法は、上述した2次元近似手法(関数近似手法の1手法)に対応する再積分手法である。従って、2つ目の手法では2次元の再積分を行うことになるので、以下、このような再積分手法を、2次元再積分手法と称する。
【0943】
3つ目の手法は、上述した3次元近似手法(関数近似手法の1手法)に対応する再積分手法である。従って、3つ目の手法では3次元の再積分を行うことになるので、以下、このような再積分手法を、3次元再積分手法と称する。
【0944】
以下、1次元再積分手法、2次元再積分手法、および3次元再積分手法のそれぞれの詳細について、その順番で説明していく。
【0945】
はじめに、1次元再積分手法について説明する。
【0946】
1次元再積分手法においては、1次元近似手法により近似関数f(x)が既に生成されていることが前提とされる。
【0947】
即ち、3次元の空間上の位置x,y、およびz、並びに時刻tを変数とする光信号関数F(x,y,t)を、空間方向であるX方向、Y方向、およびZ方向、並びに時間方向であるt方向のうちの所定の1方向(例えば、X方向)に射影した1次元の波形(再積分手法の説明においても、このような波形のうちのX方向に射影した波形を、X断面波形F(x)と称することにする)が、n次(nは、任意の整数)の多項式などの近似関数f(x)で近似されていることが前提とされる。
【0948】
この場合、1次元再積分手法においては、出力画素値Mは、次の式(103)のように演算される。
【0949】
【数103】
Figure 0004325296
・・・(103)
【0950】
なお、式(103)において、xsは、積分開始位置を表しており、xeは、積分終了位置を表している。また、Geは、所定のゲインを表している。
【0951】
具体的には、例えば、いま、実世界推測部102が、図90で示されるような画素3101(センサ2の所定の1つの検出素子に対応する画素3101)を注目画素として、図90で示されるような近似関数f(x)(X断面波形F(x)の近似関数f(x))を既に生成しているとする。
【0952】
なお、図90の例では、画素3101の画素値(入力画素値)がPとされ、かつ、画素3101の形状が、1辺の長さが1の正方形とされている。また、空間方向のうちの、画素3101の1辺に平行な方向(図中水平方向)がX方向とされ、X方向に垂直な方向(図中垂直方向)がY方向とされている。
【0953】
また、図90の下側に、画素3101の中心が原点とされる空間方向(X方向とY方向)の座標系(以下、注目画素座標系と称する)と、その座標系における画素3101が示されている。
【0954】
さらに、図90の上方に、y=0(yは、図中下側で示される注目画素座標系のY方向の座標値)における近似関数f(x)をグラフ化したものが示されている。このグラフにおいて、図中水平方向に平行な軸は、図中下側で示される注目画素座標系のX方向のx軸と同一の軸であり(原点も同一であり)、また、図中垂直方向に平行な軸は、画素値を表す軸とされている。
【0955】
この場合、近似関数f(x)と画素3101の画素値Pの間には、次の式(104)の関係が成立する。
【0956】
【数104】
Figure 0004325296
・・・(104)
【0957】
また、図90で示されるように、画素3101は、傾きGfで表される空間方向のデータの定常性を有しているとする。そして、データ定常性検出部101(図89)が、傾きGfで表されるデータの定常性に対応するデータ定常性情報として、図90で示されるような角度θを既に出力しているとする。
【0958】
この場合、例えば、1次元再積分方法においては、図91で示されるように、X方向に−0.5乃至0.5の範囲、かつY方向に−0.5乃至0.5の範囲(図90の画素3101が位置する範囲)に、4個の画素3111乃至画素3114を新たに創造することが可能である。
【0959】
なお、図91の下側に、図90のものと同一の注目画素座標系と、その注目画素座標系における画素3111乃至画素3114が示されている。また、図91の上側に、図90のものと同一のグラフ(y=0における近似関数f(x)をグラフ化したもの)が示されている。
【0960】
具体的には、図91で示されるように、1次元再積分方法においては、次の式(105)により画素3111の画素値M(1)の算出が、次の式(106)により画素3112の画素値M(2)の算出が、次の式(107)により画素3113の画素値M(3)の算出が、次の式(108)により画素3114の画素値M(4)の算出が、それぞれ可能である。
【0961】
【数105】
Figure 0004325296
・・・(105)
【0962】
【数106】
Figure 0004325296
・・・(106)
【0963】
【数107】
Figure 0004325296
・・・(107)
【0964】
【数108】
Figure 0004325296
・・・(108)
【0965】
なお、式(105)のxs1、式(106)のxs2、式(107)のxs3、および式(108)のxs4のそれぞれは、対応する式の積分開始位置を表している。また、式(105)のxe1、式(106)のxe2、式(107)のxe3、および式(108)のxe4のそれぞれは、対応する式の積分終了位置を表している。
【0966】
式(105)乃至式(108)のそれぞれの右辺の積分範囲は、画素3111乃至画素3114のそれぞれの画素幅(X方向の長さ)となる。即ち、xe1-xs1,xe2-xs2,xe3-xs3,xe4-xs4のそれぞれは、0.5となる。
【0967】
ただし、いまの場合、y=0における近似関数f(x)と同一形状の1次元の波形が、Y方向ではなく、傾きGfで表されるデータの定常性の方向(即ち、角度θ方向)に連なっていると考えられる(実際には、y=0におけるX断面波形F(x)と同一形状の波形が定常性の方向に連なっている)。即ち、図91の注目画素座標系における原点(0,0)(図90の画素3101の中心)における画素値f(0)を画素値f1とした場合、画素値f1が続く方向は、Y方向ではなく、傾きGfで表されるデータの定常性の方向(角度θ方向)である。
【0968】
換言すると、Y方向の所定の位置y(ただし、yは0以外の数値)における近似関数f(x)の波形を考えた場合、画素値f1となる位置は、位置(0,y)ではなく、位置(0,y)からX方向に所定の量(ここでも、このような量をシフト量と称することにする。また、シフト量は、Y方向の位置yに依存する量であるので、このシフト量をCx(y)と記述することにする)だけ移動した位置(Cx(y),y)である。
【0969】
従って、上述した式(105)乃至式(108)のそれぞれの右辺の積分範囲として、求めたい画素値M(l)(ただし、lは、1乃至4のうちのいずれかの整数値)の中心が存在するY方向の位置yを考慮した範囲、即ち、シフト量Cx(y)を考慮した積分範囲の設定が必要である。
【0970】
具体的には、例えば、画素3111と画素3112の中心が存在するY方向の位置yは、y=0ではなく、y=0.25である。
【0971】
従って、y=0.25における近似関数f(x)の波形は、y=0における近似関数f(x)の波形をX方向にシフト量Cx(0.25)だけ移動させた波形に相当する。
【0972】
換言すると、上述した式(105)において、画素3111に対する画素値M(1)は、y=0における近似関数f(x)を所定の積分範囲(開始位置xs1から終了位置xe1まで)で積分したものであるとすると、その積分範囲は、開始位置xs1=-0.5から終了位置xe1=0までの範囲(画素3111がX方向に占める範囲そのもの)ではなく、図91で示される範囲、即ち、開始位置xs1=-0.5+Cx(0.25)から終了位置xe1=0+Cx(0.25)(シフト量Cx(0.25)だけ画素3111を仮に移動させた場合における、画素3111がX方向に占める範囲)となる。
【0973】
同様に、上述した式(106)において、画素3112に対する画素値M(2)は、y=0における近似関数f(x)を所定の積分範囲(開始位置xs2から終了位置xe2まで)で積分したものであるとすると、その積分範囲は、開始位置xs2=0から終了位置xe2=0.5までの範囲(画素3112のX方向に占める範囲そのもの)ではなく、図91で示される範囲、即ち、開始位置xs2=0+Cx(0.25)から終了位置xe1=0.5+Cx(0.25)(シフト量Cx(0.25)だけ画素3112を仮に移動させた場合における、画素3112のX方向に占める範囲)となる。
【0974】
また、例えば、画素3113と画素3114の中心が存在するY方向の位置yは、y=0ではなく、y=-0.25である。
【0975】
従って、y=-0.25における近似関数f(x)の波形は、y=0における近似関数f(x)の波形をX方向にシフト量Cx(-0.25)だけ移動させた波形に相当する。
【0976】
換言すると、上述した式(107)において、画素3113に対する画素値M(3)は、y=0における近似関数f(x)を所定の積分範囲(開始位置xs3から終了位置xe3まで)で積分したものであるとすると、その積分範囲は、開始位置xs3=-0.5から終了位置xe3=0までの範囲(画素3113のX方向に占める範囲そのもの)ではなく、図91で示される範囲、即ち、開始位置xs3=-0.5+Cx(-0.25)から終了位置xe3=0+Cx(-0.25)(シフト量Cx(-0.25)だけ画素3113を仮に移動させた場合における、画素3113のX方向に占める範囲)となる。
【0977】
同様に、上述した式(108)において、画素3114に対する画素値M(4)は、y=0における近似関数f(x)を所定の積分範囲(開始位置xs4から終了位置xe4まで)で積分したものであるとすると、その積分範囲は、開始位置xs4=0から終了位置xe4=0.5までの範囲(画素3114のX方向の占める範囲そのもの)ではなく、図91で示される範囲、即ち、開始位置xs4=0+Cx(-0.25)から終了位置xe1=0.5+Cx(-0.25)(シフト量Cx(-0.25)だけ画素3114を仮に移動させた場合における、画素3114のX方向に占める範囲)となる。
【0978】
従って、画像生成部102(図89)は、上述した式(105)乃至式(108)のそれぞれに、上述した積分範囲のうちの対応するものを代入してそれぞれ演算し、それらの演算結果を出力画素値M(1)乃至M(4)のそれぞれとして出力することになる。
【0979】
このように、画像生成部102は、1次元再積分手法を利用することで、センサ2(図89)からの出力画素3101(図90)における画素として、出力画素3101よりも空間解像度の高い4つの画素、即ち、画素3111乃至画素3114(図91)を創造することができる。さらに、図示はしないが、上述したように、画像生成部102は、画素3111乃至画素3114のみならず、積分範囲を適宜変えることで、出力画素3101に対して任意の倍率の空間解像度の画素を劣化することなく創造することができる。
【0980】
図92は、このような1次元再積分手法を利用する画像生成部103の構成例を表している。
【0981】
図92で示されるように、この例の画像生成部103には、条件設定部3121、特徴量記憶部3122、積分成分演算部3123、および出力画素値演算部3124が設けられている。
【0982】
条件設定部3121は、実世界推定部102より供給された実世界推定情報(図92の例では、近似関数f(x)の特徴量)に基づいて近似関数f(x)の次数nを設定する。
【0983】
条件設定部3121はまた、近似関数f(x)を再積分する場合(出力画素値を演算する場合)の積分範囲を設定する。なお、条件設定部3121が設定する積分範囲は、画素の幅である必要は無い。例えば、近似関数f(x)は空間方向(X方向)に積分されるので、センサ2(図89)からの入力画像の各画素の空間的な大きさに対する、出力画素(画像生成部103がこれから演算する画素)の相対的な大きさ(空間解像度の倍率)がわかれば、具体的な積分範囲の決定が可能である。従って、条件設定部3121は、積分範囲として、例えば、空間解像度倍率を設定することもできる。
【0984】
特徴量記憶部3122は、実世界推定部102より順次供給されてくる近似関数f(x)の特徴量を一次的に記憶する。そして、特徴量記憶部3122は、近似関数f(x)の特徴量の全てを記憶すると、近似関数f(x)の特徴量を全て含む特徴量テーブルを生成し、出力画素値演算部3124に供給する。
【0985】
ところで、上述したように、画像生成部103は、上述した式(103)を利用して出力画素値Mを演算するが、上述した式(103)の右辺に含まれる近似関数f(x)は、具体的には、次の式(109)のように表される。
【0986】
【数109】
Figure 0004325296
・・・(109)
【0987】
なお、式(109)において、wiは、実世界推定部102より供給される近似関数f(x)の特徴量を表している。
【0988】
従って、上述した式(103)の右辺の近似関数f(x)に、式(109)の近似関数f(x)を代入して、式(103)の右辺を展開(演算)すると、出力画素値Mは、次の式(110)のように表される。
【0989】
【数110】
Figure 0004325296
・・・(110)
【0990】
式(110)において、Ki(xs,xe)は、i次項の積分成分を表している。即ち、積分成分Ki(xs,xe)は、次の式(111)で示される通りである。
【0991】
【数111】
Figure 0004325296
・・・(111)
【0992】
積分成分演算部3123は、この積分成分Ki(xs,xe)を演算する。
【0993】
具体的には、式(111)で示されるように、積分成分Ki(xs,xe)は、積分範囲の開始位置xs、および終了位置xe、ゲインGe、並びにi次項のiが既知であれば演算可能である。
【0994】
これらのうちの、ゲインGeは、条件設定部3121により設定された空間解像度倍率(積分範囲)により決定される。
【0995】
iの範囲は、条件設定部3121により設定された次数nにより決定される。
【0996】
また、積分範囲の開始位置xs、および終了位置xeのそれぞれは、これから生成する出力画素の中心画素位置(x,y)および画素幅、並びにデータの定常性の方向を表すシフト量Cx(y)により決定される。なお、(x,y)は、実世界推定部102が近似関数f(x)を生成したときの注目画素の中心位置からの相対位置を表している。
【0997】
さらに、これから生成する出力画素の中心画素位置(x,y)および画素幅のそれぞれは、条件設定部3121により設定された空間解像度倍率(積分範囲)により決定される。
【0998】
また、シフト量Cx(y)と、データ定常性検出部101より供給された角度θは、次の式(112)と式(113)のような関係が成り立つので、シフト量Cx(y)は角度θにより決定される。
【0999】
【数112】
Figure 0004325296
・・・(112)
【1000】
【数113】
Figure 0004325296
・・・(113)
【1001】
なお、式(112)において、Gfは、データの定常性の方向を表す傾きを表しており、θは、データ定常性検出部101(図89)より出力されるデータ定常性情報の1つである角度(空間方向の1方向であるX方向と、傾きGfで表されるデータの定常性の方向とのなす角度)を表している。また、dxは、X方向の微小移動量を表しており、dyは、dxに対するY方向(X方向と垂直な空間方向)の微小移動量を表している。
【1002】
従って、積分成分演算部3123は、条件設定部3121により設定された次数および空間解像度倍率(積分範囲)、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度θに基づいて積分成分Ki(xs,xe)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして出力画素値演算部3124に供給する。
【1003】
出力画素値演算部3124は、特徴量記憶部3122より供給された特徴量テーブルと、積分成分演算部3123より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(110)の右辺を演算し、その演算結果を出力画素値Mとして外部に出力する。
【1004】
次に、図93のフローチャートを参照して、1次元再積分手法を利用する画像生成部103(図92)の画像の生成の処理(図29のステップS103の処理)について説明する。
【1005】
例えば、いま、上述した図29のステップS102の処理で、実世界推測部102が、上述した図90で示されるような画素3101を注目画素として、図90で示されるような近似関数f(x)を既に生成しているとする。
【1006】
また、上述した図29のステップS101の処理で、データ定常性検出部101が、データ定常性情報として、図90で示されるような角度θを既に出力しているとする。
【1007】
この場合、図93のステップS3101において、条件設定部3121は、条件(次数と積分範囲)を設定する。
【1008】
例えば、いま、次数として5が設定されるとともに、積分範囲として空間4倍密(画素のピッチ幅が上下左右ともに1/2倍となる空間解像度倍率)が設定されたとする。
【1009】
即ち、この場合、図91で示されるように、X方向に−0.5乃至0.5の範囲、かつY方向に−0.5乃至0.5の範囲(図90の画素3101の範囲)に、4個の画素3111乃至画素3114を新たに創造することが設定されたことになる。
【1010】
ステップS3102において、特徴量記憶部3122は、実世界推定部102より供給された近似関数f(x)の特徴量を取得し、特徴量テーブルを生成する。いまの場合、5次の多項式である近似関数f(x)の係数w0乃至w5が実世界推定部102より供給されるので、特徴量テーブルとして、(w0,w1,w2,w3,w4,w5)が生成される。
【1011】
ステップS3103において、積分成分演算部3123は、条件設定部3121により設定された条件(次数および積分範囲)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度θ)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【1012】
具体的には、例えば、これから生成する画素3111乃至画素3114のそれぞれに対して、番号(このような番号を、以下、モード番号と称する)1乃至4のそれぞれが付されているとすると、積分成分演算部3123は、上述した式(111)の積分成分Ki(xs,xe)を、次の式(114)の左辺で示される積分成分Ki(l)といったl(ただし、lはモード番号を表している)の関数として演算する。
【1013】
【数114】
Figure 0004325296
・・・(114)
【1014】
具体的には、いまの場合、次の式(115)で示される積分成分Ki(l)が演算される。
【1015】
【数115】
Figure 0004325296
・・・(115)
【1016】
なお、式(115)において、左辺が積分成分Ki(l)を表し、右辺が積分成分Ki(xs,xe)を表している。即ち、いまの場合、lは、1乃至4のうちのいずれかであり、かつ、iは0乃至5のうちのいずれかであるので、6個のKi(1),6個のKi(2),6個のKi(3),6個のKi(4)の総計24個のKi(l)が演算されることになる。
【1017】
より具体的には、はじめに、積分成分演算部3123は、データ定常性検出部101より供給された角度θを使用して、上述した式(112)と式(113)よりシフト量Cx(-0.25)、およびCx(0.25)のそれぞれを演算する。
【1018】
次に、積分成分演算部3123は、演算したシフト量Cx(-0.25)、およびCx(0.25)を使用して、式(115)の4つの式の各右辺の積分成分Ki(xs,xe)のそれぞれを、i=0乃至5についてそれぞれ演算する。なお、この積分成分Ki(xs,xe)の演算においては、上述した式(111)が使用される。
【1019】
そして、積分成分演算部3123は、式(115)に従って、演算した24個の積分成分Ki(xs,xe)のそれぞれを、対応する積分成分Ki(l)に変換し、変換した24個の積分成分Ki(l)(即ち、6個のKi(1)、6個のKi(2)、6個のKi(3)、および6個のKi(4))を含む積分成分テーブルを生成する。
【1020】
なお、ステップS3102の処理とステップS3103の処理の順序は、図93の例に限定されず、ステップS3103の処理が先に実行されてもよいし、ステップS3102の処理とステップS3103の処理が同時に実行されてもよい。
【1021】
次に、ステップS3104において、出力画素値演算部3124は、ステップS3102の処理で特徴量記憶部3122により生成された特徴量テーブルと、ステップS3103の処理で積分成分演算部3123により生成された積分成分テーブルに基づいて出力画素値M(1)乃至M(4)のそれぞれを演算する。
【1022】
具体的には、いまの場合、出力画素値演算部3124は、上述した式(110)に対応する、次の式(116)乃至式(119)の右辺を演算することで、画素3111(モード番号1の画素)の画素値M(1)、画素3112(モード番号2の画素)の画素値M(2)、画素3113(モード番号3の画素)の画素値M(3)、および画素3114(モード番号4の画素)の画素値M(4)のそれぞれを演算する。
【1023】
【数116】
Figure 0004325296
・・・(116)
【1024】
【数117】
Figure 0004325296
・・・(117)
【1025】
【数118】
Figure 0004325296
・・・(118)
【1026】
【数119】
Figure 0004325296
・・・(119)
【1027】
ステップS3105において、出力画素値演算部3124は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【1028】
ステップS3105において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS3102に戻り、それ以降の処理が繰り返される。即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS3102乃至S3104の処理が繰り返される。
【1029】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS3105において、全画素の処理が終了されたと判定すると)、出力画素値演算部3124は、ステップS3106において、画像を出力する。その後、画像の生成の処理は終了となる。
【1030】
次に、図94乃至図101を参照して、所定の入力画像に対して、1次元再積分手法を適用して得られた出力画像と、他の手法(従来のクラス分類適応処理)を適用して得られた出力画像の違いについて説明する。
【1031】
図94は、入力画像の元の画像を示す図であり、図95は、図94の元の画像に対応する画像データを示している。図95において、図中垂直方向の軸は、画素値を示し、図中右下方向の軸は、画像の空間方向の一方向であるX方向を示し、図中右上方向の軸は、画像の空間方向の他の方向であるY方向を示す。なお、後述する図97、図99、および図101の軸のそれぞれは、図95の軸と対応している。
【1032】
図96は、入力画像の例を示す図である。図96で示される入力画像は、図94で示される画像の2×2の画素からなるブロックに属する画素の画素値の平均値を、1つの画素の画素値として生成された画像である。即ち、入力画像は、図94で示される画像に、センサの積分特性を模した、空間方向の積分を適用することにより得られた画像である。また、図97は、図96の入力画像に対応する画像データを示している。
【1033】
図94で示される元の画像において、上下方向から、ほぼ5度時計方向に傾いた細線の画像が含まれている。同様に、図96で示される入力画像において、上下方向から、ほぼ5度時計方向に傾いた細線の画像が含まれている。
【1034】
図98は、図96で示される入力画像に、従来のクラス分類適応処理を適用して得られた画像(以下、図98で示される画像を、従来の画像と称する)を示す図である。また、図99は、従来の画像に対応する画像データを示している。
【1035】
なお、クラス分類適応処理は、上述したように、クラス分類処理と適応処理とからなり、クラス分類処理によって、データを、その性質に基づいてクラス分けし、各クラスごとに適応処理を施すものである。適応処理では、例えば、低画質または標準画質の画像が、所定のタップ係数を用いてマッピング(写像)されることにより、高画質の画像に変換される。
【1036】
図100は、図96で示される入力画像に、1次元再積分手法を適用して得られた画像(以下、図100で示される画像を、再積分画像と称する)を示す図である。また、図101は、再積分画像に対応する画像データを示している。
【1037】
図98の従来の画像と、図100の再積分画像を比較するに、従来の画像においては、細線の画像が、図94の元の画像とは異なるものになっているのに対して、再積分画像においては、細線の画像が、図94の元の画像とほぼ同じものになっていることがわかる。
【1038】
この違いは、従来のクラス分類適応処理は、あくまでも図96の入力画像を基準(原点)として処理を行う手法であるのに対して、1次元再積分手法は、細線の定常性を考慮して、図94の元の画像を推定し(元の画像に対応する近似関数f(x)を生成し)、推定した元の画像を基準(原点)として処理を行う(再積分して画素値を演算する)手法であるからである。
【1039】
このように、1次元再積分手法においては、1次元近似手法により生成された1次元の多項式などの近似関数f(x)(実世界のX断面波形F(x)の近似関数f(x))を基準(原点)として、近似関数f(x)を任意の範囲に積分することで出力画像(画素値)が生成される。
【1040】
従って、1次元再積分手法においては、従来の他の手法に比較して、元の画像(センサ2に入射される前の実世界1の光信号)により近い画像の出力が可能になる。
【1041】
また、1次元再積分手法においては、上述したように、積分範囲は任意なので、積分範囲を可変することにより、入力画像の解像度とは異なる解像度(時間解像度、または空間解像度)を創造することも可能になる。即ち、入力画像の解像度に対して、整数値だけではなく任意の倍率の解像度の画像を生成することが可能になる。
【1042】
さらに、1次元再積分手法においては、他の再積分手法に比較して、より少ない演算処理量で出力画像(画素値)の算出が可能となる。
【1043】
次に、図102乃至図108を参照して、2次元再積分手法について説明する。
【1044】
2次元再積分手法においては、2次元近似手法により近似関数f(x,y)が既に生成されていることが前提とされる。
【1045】
即ち、例えば、図102で示されるような、傾きGFで表される空間方向の定常性を有する実世界1(図89)の光信号を表す画像関数F(x,y,t)を、空間方向(X方向とY方向)に射影した波形、即ち、X−Y平面上の波形F(x,y)が、n次(nは、任意の整数)の多項式などの近似関数f(x,y)に近似されていることが前提とされる。
【1046】
図102において、図中、水平方向は、空間方向の1方向であるX方向を、右上方向は、空間方向の他方向であるY方向を、垂直方向は、光のレベルを、それぞれ表している。GFは、空間方向の定常性の傾きを表している。
【1047】
なお、図102の例では、定常性の方向は、空間方向(X方向とY方向)とされているため、近似の対象とされる光信号の射影関数は、関数F(x,y)とされているが、後述するように、定常性の方向に応じて、関数F(x,t)や関数F(y,t)が近似の対象とされてもよい。
【1048】
図102の例の場合、2次元再積分手法においては、出力画素値Mは、次の式(120)のように演算される。
【1049】
【数120】
Figure 0004325296
・・・(120)
【1050】
なお、式(120)において、ysは、Y方向の積分開始位置を表しており、yeは、Y方向の積分終了位置を表している。同様に、xsは、X方向の積分開始位置を表しており、xeは、X方向の積分終了位置を表している。また、Geは、所定のゲインを表している。
【1051】
式(120)において、積分範囲は任意に設定可能であるので、2次元再積分手法においては、この積分範囲を適宜変えることで、元の画素(センサ2(図89)からの入力画像の画素)に対して任意の倍率の空間解像度の画素を劣化することなく創造することが可能になる。
【1052】
図103は、2次元再積分手法を利用する画像生成部103の構成例を表している。
【1053】
図103で示されるように、この例の画像生成部103には、条件設定部3201、特徴量記憶部3202、積分成分演算部3203、および出力画素値演算部3204が設けられている。
【1054】
条件設定部3201は、実世界推定部102より供給された実世界推定情報(図103の例では、近似関数f(x,y)の特徴量)に基づいて近似関数f(x,y)の次数nを設定する。
【1055】
条件設定部3201はまた、近似関数f(x,y)を再積分する場合(出力画素値を演算する場合)の積分範囲を設定する。なお、条件設定部3201が設定する積分範囲は、画素の縦幅や横幅である必要は無い。例えば、近似関数f(x,y)は空間方向(X方向とY方向)に積分されるので、センサ2からの入力画像の各画素の空間的な大きさに対する、出力画素(画像生成部103がこれから生成する画素)の相対的な大きさ(空間解像度の倍率)がわかれば、具体的な積分範囲の決定が可能である。従って、条件設定部3201は、積分範囲として、例えば、空間解像度倍率を設定することもできる。
【1056】
特徴量記憶部3202は、実世界推定部102より順次供給されてくる近似関数f(x,y)の特徴量を一次的に記憶する。そして、特徴量記憶部3202は、近似関数f(x,y)の特徴量の全てを記憶すると、近似関数f(x,y)の特徴量を全て含む特徴量テーブルを生成し、出力画素値演算部3204に供給する。
【1057】
ここで、近似関数f(x,y)の詳細について説明する。
【1058】
例えば、いま、上述した図102で示されるような傾きGFで表される空間方向の定常性を有する実世界1(図89)の光信号(波形F(x,y)で表される光信号)が、センサ2(図89)により検出されて入力画像(画素値)として出力されたとする。
【1059】
さらに、例えば、図104で示されるように、データ定常性検出部101(図3)が、この入力画像のうちの、X方向に4画素分、かつY方向に5画素分の総計20個の画素(図中、点線で表される20個の正方形)から構成される入力画像の領域3221に対してその処理を実行し、データ定常性情報の1つとして角度θ(傾きGFに対応する傾きGfで表されるデータの定常性の方向と、X方向とのなす角度θ)を出力したとする。
【1060】
なお、実世界推定部102から見ると、データ定常性検出部101は、注目画素における角度θを単に出力すればよいので、データ定常性検出部101の処理範囲は、上述した入力画像の領域3221に限定されない。
【1061】
また、入力画像の領域3221において、図中水平方向は、空間方向の1方向であるX方向を表しており、図中垂直方向は、空間方向の他方向であるY方向を表している。
【1062】
さらに、図104中、左から2画素目であって、下から3画素目の画素が注目画素とされ、その注目画素の中心を原点(0,0)とするように(x,y)座標系が設定されている。そして、原点(0,0)を通る角度θの直線(データの定常性の方向を表す傾きGfの直線)に対するX方向の相対的な距離(以下、断面方向距離と称する)がx’とされている。
【1063】
さらに、図104中、右側のグラフは、3次元の空間上の位置x,y、およびz、並びに時刻tを変数とする画像関数F(x,y,t)を、Y方向の任意の位置yにおいて、X方向に射影した1次元の波形(以下、このような波形を、X断面波形F(x’)と称する)が近似された関数であって、n次(nは、任意の整数)の多項式などの近似関数f(x’)を表している。右側のグラフの軸のうち、図中水平方向の軸は、断面方向距離を表しており、図中垂直方向の軸は、画素値を表している。
【1064】
この場合、図104で示される近似関数f(x’)は、n次の多項式であるので、次の式(121)のように表される。
【1065】
【数121】
Figure 0004325296
・・・(121)
【1066】
また、角度θが決定されていることから、原点(0,0)を通る角度θの直線は一意に決まり、Y方向の任意の位置yにおける、直線のX方向の位置xlが、次の式(122)のように表される。ただし、式(122)において、sはcotθを表している。
【1067】
【数122】
Figure 0004325296
・・・(122)
【1068】
即ち、図104で示されるように、傾きGfで表されるデータの定常性に対応する直線上の点は、座標値(xl,y)で表される。
【1069】
式(122)より、断面方向距離x’は、次の式(123)のように表される。
【1070】
【数123】
Figure 0004325296
・・・(123)
【1071】
従って、入力画像の領域3221内の任意の位置(x,y)における近似関数f(x,y)は、式(121)と式(123)より、次の式(124)のように示される。
【1072】
【数124】
Figure 0004325296
・・・(124)
【1073】
なお、式(124)において、wiは、近似関数f(x,y)の特徴量を表している。
【1074】
図103に戻り、式(124)に含まれる特徴量wiが、実世界推定部102より供給され、特徴量記憶部3202に記憶される。特徴量記憶部3202は、式(124)で表される特徴量wiの全てを記憶すると、特徴量wiを全て含む特徴量テーブルを生成し、出力画素値演算部3204に供給する。
【1075】
また、上述した式(120)の右辺の近似関数f(x,y)に、式(124)の近似関数f(x,y)を代入して、式(120)の右辺を展開(演算)すると、出力画素値Mは、次の式(125)のように表される。
【1076】
【数125】
Figure 0004325296
・・・(125)
【1077】
式(125)において、Ki(xs,xe,ys,ye)は、i次項の積分成分を表している。即ち、積分成分Ki(xs,xe,ys,ye)は、次の式(126)で示される通りである。
【1078】
【数126】
Figure 0004325296
・・・(126)
【1079】
積分成分演算部3203は、この積分成分Ki(xs,xe,ys,ye)を演算する。
【1080】
具体的には、式(125)と式(126)で示されるように、積分成分Ki(xs,xe,ys,ye)は、積分範囲のX方向の開始位置xs、およびX方向の終了位置xe、積分範囲のY方向の開始位置ys、およびY方向の終了位置ye、変数s、ゲインGe、並びにi次項のiが既知であれば演算可能である。
【1081】
これらのうちの、ゲインGeは、条件設定部3201により設定された空間解像度倍率(積分範囲)により決定される。
【1082】
iの範囲は、条件設定部3201により設定された次数nにより決定される。
【1083】
変数sは、上述したように、cotθであるので、データ定常性検出部101より出力される角度θにより決定される。
【1084】
また、積分範囲のX方向の開始位置xs、およびX方向の終了位置xe、並びに、積分範囲のY方向の開始位置ys、およびY方向の終了位置yeのそれぞれは、これから生成する出力画素の中心画素位置(x,y)および画素幅により決定される。なお、(x,y)は、実世界推定部102が近似関数f(x)を生成したときの注目画素の中心位置からの相対位置を表している。
【1085】
さらに、これから生成する出力画素の中心画素位置(x,y)および画素幅のそれぞれは、条件設定部3201により設定された空間解像度倍率(積分範囲)により決定される。
【1086】
従って、積分成分演算部3203は、条件設定部3201により設定された次数および空間解像度倍率(積分範囲)、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度θに基づいて積分成分Ki(xs,xe,ys,ye)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして出力画素値演算部3204に供給する。
【1087】
出力画素値演算部3204は、特徴量記憶部3202より供給された特徴量テーブルと、積分成分演算部3203より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(125)の右辺を演算し、その演算結果を出力画素値Mとして外部に出力する。
【1088】
次に、図105のフローチャートを参照して、2次元再積分手法を利用する画像生成部103(図104)の画像の生成の処理(図29のステップS103の処理)について説明する。
【1089】
例えば、いま、図102で示される関数F(x,y)で表される光信号がセンサ2に入射されて入力画像となり、上述した図29のステップS102の処理で、実世界推測部102が、その入力画像のうちの、図106で示されるような1つの画素3231を注目画素として、関数F(x,y)を近似する近似関数f(x,y)を既に生成しているとする。
【1090】
なお、図106において、画素3231の画素値(入力画素値)がPとされ、かつ、画素3231の形状が、1辺の長さが1の正方形とされている。また、空間方向のうちの、画素3231の1辺に平行な方向がX方向とされ、X方向に垂直な方向がY方向とされている。さらに、画素3231の中心が原点とされる空間方向(X方向とY方向)の座標系(以下、注目画素座標系と称する)が設定されている。
【1091】
また、図106において、上述した図29のステップS101の処理で、データ定常性検出部101が、画素3231を注目画素として、傾きGfで表されるデータの定常性に対応するデータ定常性情報として、角度θを既に出力しているとする。
【1092】
図105に戻り、この場合、ステップS3201において、条件設定部3201は、条件(次数と積分範囲)を設定する。
【1093】
例えば、いま、次数として5が設定されるとともに、積分範囲として空間4倍密(画素のピッチ幅が上下左右ともに1/2倍となる空間解像度倍率)が設定されたとする。
【1094】
即ち、この場合、図107で示されるように、X方向に−0.5乃至0.5の範囲、かつY方向に−0.5乃至0.5の範囲(図106の画素3231の範囲)に、4個の画素3241乃至画素3244を新たに創造することが設定されたことになる。なお、図107においても、図106のものと同一の注目画素座標系が示されている。
【1095】
また、図107において、M(1)は、これから生成される画素3241の画素値を、M(2)は、これから生成される画素3242の画素値を、M(3)は、これから生成される画素3243の画素値を、M(4)は、これから生成される画素3241の画素値を、それぞれ表している。
【1096】
図105に戻り、ステップS3202において、特徴量記憶部3202は、実世界推定部102より供給された近似関数f(x,y)の特徴量を取得し、特徴量テーブルを生成する。いまの場合、5次の多項式である近似関数f(x)の係数w0乃至w5が実世界推定部102より供給されるので、特徴量テーブルとして、(w0,w1,w2,w3,w4,w5)が生成される。
【1097】
ステップS3203において、積分成分演算部3203は、条件設定部3201により設定された条件(次数および積分範囲)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度θ)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【1098】
具体的には、例えば、これから生成される画素3241乃至画素3244のそれぞれに対して、番号(このような番号を、以下、モード番号と称する)1乃至4のそれぞれが付されているとすると、積分成分演算部3203は、上述した式(125)の積分成分Ki(xs,xe,ys,ye)を、次の式(127)の左辺で示される積分成分Ki(l)といったl(ただし、lはモード番号を表している)の関数として演算する。
【1099】
【数127】
Figure 0004325296
・・(127)
【1100】
具体的には、いまの場合、次の式(128)で示される積分成分Ki(l)が演算される。
【1101】
【数128】
Figure 0004325296
・・・(128)
【1102】
なお、式(128)において、左辺が積分成分Ki(l)を表し、右辺が積分成分Ki(xs,xe,ys,ye)を表している。即ち、いまの場合、lは、1乃至4のうちのいずれかであり、かつ、iは0乃至5のうちのいずれかであるので、6個のKi(1),6個のKi(2),6個のKi(3),6個のKi(4)の総計24個のKi(l)が演算されることになる。
【1103】
より具体的には、はじめに、積分成分演算部3203は、データ定常性検出部101より供給された角度θを使用して、上述した式(122)の変数s(s=cotθ)を演算する。
【1104】
次に、積分成分演算部3203は、演算した変数sを使用して、式(128)の4つの式の各右辺の積分成分Ki(xs,xe,ys,ye)のそれぞれを、i=0乃至5についてそれぞれ演算する。なお、この積分成分Ki(xs,xe,ys,ye)の演算においては、上述した式(125)が使用される。
【1105】
そして、積分成分演算部3203は、式(128)に従って、演算した24個の積分成分Ki(xs,xe,ys,ye)のそれぞれを、対応する積分成分Ki(l)に変換し、変換した24個の積分成分Ki(l)(即ち、6個のKi(1)、6個のKi(2)、6個のKi(3)、および6個のKi(4))を含む積分成分テーブルを生成する。
【1106】
なお、ステップS3202の処理とステップS3203の処理の順序は、図105の例に限定されず、ステップS3203の処理が先に実行されてもよいし、ステップS3202の処理とステップS3203の処理が同時に実行されてもよい。
【1107】
次に、ステップS3204において、出力画素値演算部3204は、ステップS3202の処理で特徴量記憶部3202により生成された特徴量テーブルと、ステップS3203の処理で積分成分演算部3203により生成された積分成分テーブルに基づいて出力画素値M(1)乃至M(4)のそれぞれを演算する。
【1108】
具体的には、いまの場合、出力画素値演算部3204は、上述した式(125)に対応する、次の式(129)乃至式(132)の右辺のそれぞれを演算することで、図107で示される、画素3241(モード番号1の画素)の画素値M(1)、画素3242(モード番号2の画素)の画素値M(2)、画素3243(モード番号3の画素)の画素値M(3)、および画素3244(モード番号4の画素)の画素値M(4)のそれぞれを演算する。
【1109】
【数129】
Figure 0004325296
・・・(129)
【1110】
【数130】
Figure 0004325296
・・・(130)
【1111】
【数131】
Figure 0004325296
・・・(131)
【1112】
【数132】
Figure 0004325296
・・・(132)
【1113】
ただし、いまの場合、式(129)乃至式(132)のnは全て5となる。
【1114】
ステップS3205において、出力画素値演算部3204は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【1115】
ステップS3205において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS3202に戻り、それ以降の処理が繰り返される。即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS3202乃至S3204の処理が繰り返される。
【1116】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS3205において、全画素の処理が終了されたと判定すると)、出力画素値演算部3204は、ステップS3206において、画像を出力する。その後、画像の生成の処理は終了となる。
【1117】
このように、2次元再積分手法を利用することで、センサ2(図89)からの入力画像の画素3231(図106)における画素として、入力画素3231よりも空間解像度の高い4つの画素、即ち、画素3241乃至画素3244(図107)を創造することができる。さらに、図示はしないが、上述したように、画像生成部103は、画素3241乃至画素3244のみならず、積分範囲を適宜変えることで、入力画素3231に対して任意の倍率の空間解像度の画素を劣化することなく創造することができる。
【1118】
以上、2次元再積分手法の説明として、空間方向(X方向とY方向)に対する近似関数f(x,y)を2次元積分する例を用いたが、2次元再積分手法は、時空間方向(X方向とt方向、または、Y方向とt方向)に対しても適用可能である。
【1119】
即ち、上述した例は、実世界1(図89)の光信号が、例えば、図102で示されるような傾きGFで表される空間方向の定常性を有する場合の例であったので、上述した式(120)で示されるような、空間方向(X方向とY方向)の二次元積分が含まれる式が利用された。しかしながら、二次元積分の考え方は、空間方向だけによるものではなく、時空間方向(X方向とt方向、または、Y方向とt方向)に対して適用することも可能である。
【1120】
換言すると、2次元再積分手法の前提となる2次元近似手法においては、光信号を表す画像関数F(x,y,t)が、空間方向の定常性のみならず、時空間方向(ただし、X方向とt方向、または、Y方向とt方向)の定常性を有している場合であっても、2次元の近似関数fにより近似することが可能である。
【1121】
具体的には、例えば、X方向に水平に等速で動いている物体がある場合、その物体の動きの方向は、図108で示されるようなX-t平面においては、傾きVFのように表される。換言すると、傾きVFは、X-t平面における時空間方向の定常性の方向を表しているとも言える。従って、データ定常性検出部101(図89)は、上述した角度θ(X-Y平面における、空間方向の定常性を表す傾きGFに対応するデータ定常性情報)と同様に、X-t平面における時空間方向の定常性を表す傾きVFに対応するデータ定常性情報として、図108で示されるような動きθ(厳密には、図示はしないが、傾きVFに対応する傾きVfで表されるデータの定常性の方向と、空間方向のX方向とのなす角度である動きθ)を出力することが可能である。
【1122】
また、2次元近似手法を利用する実世界推定部102(図89)は、動きθを上述した角度θの代わりとして使用すれば、上述した方法と同様な方法で、近似関数f(x,t)の係数(特徴量)wiを演算することが可能になる。ただし、この場合、使用される式は、上述した式(124)ではなく、次の式(133)である。
【1123】
【数133】
Figure 0004325296
・・・(133)
【1124】
なお、式(133)において、sはcotθ(ただし、θは動きである)である。
【1125】
従って、2次元再積分手法を利用する画像生成部103(図89)は、次の式(134)の右辺に、上述した式(133)のf(x,t)を代入して、演算することで、画素値Mを算出することが可能になる。
【1126】
【数134】
Figure 0004325296
・・・(134)
【1127】
なお、式(134)において、tsは、t方向の積分開始位置を表しており、teは、t方向の積分終了位置を表している。同様に、xsは、X方向の積分開始位置を表しており、xeは、X方向の積分終了位置を表している。Geは、所定のゲインを表している。
【1128】
また、空間方向Xの変わりに、空間方向Yに注目した近似関数f(y,t)も、上述した近似関数f(x,t)と全く同様に取り扱うことが可能である。
【1129】
ところで、式(133)において、t方向を一定とみなし、即ち、t方向の積分を無視して積分することで、時間方向には積分されないデータ、即ち、動きボケのないデータを得ることが可能になる。換言すると、この手法は、2次元の近似関数fのうちの所定の1次元を一定として再積分する点で、2次元再積分手法の1つとみなしてもよいし、実際には、X方向の1次元の再積分をすることになるという点で、1次元再積分手法の1つとみなしてもよい。
【1130】
また、式(134)において、積分範囲は任意に設定可能であるので、2次元再積分手法においては、この積分範囲を適宜変えることで、元の画素(センサ2(図89)からの入力画像の画素)に対して任意の倍率の解像度の画素を劣化することなく創造することが可能になる。
【1131】
即ち、2次元再積分手法においては、時間方向tの積分範囲を適宜変えることで、時間解像度の創造が可能になる。また、空間方向X(または、空間方向Y)の積分範囲を適宜変えることで、空間解像度の創造が可能になる。さらに、時間方向tと空間方向Xの積分範囲のそれぞれを適宜変えることで、時間解像度と空間解像度の両方の創造が可能になる。
【1132】
なお、上述したように、時間解像度と空間解像度のうちのいずれか一方の創造は、1次元再積分手法でも可能であるが、両方の解像度の創造は、1次元再積分手法では原理上不可能であり、2次元以上の再積分を行うことではじめて可能になる。即ち、2次元再積分手法と後述する3次元再積分手法ではじめて、両方の解像度の創造が可能になる。
【1133】
また、2次元再積分手法は、1次元ではなく2次元の積分効果を考慮しているので、より実世界1(図89)の光信号に近い画像を生成することも可能になる。
【1134】
次に、図109と図110を参照して、3次元再積分手法について説明する。
【1135】
3次元再積分手法においては、3次元近似手法により近似関数f(x,y,t)が既に生成されていることが前提とされる。
【1136】
この場合、3次元再積分手法においては、出力画素値Mは、次の式(135)のように演算される。
【1137】
【数135】
Figure 0004325296
・・・(135)
【1138】
なお、式(135)において、tsは、t方向の積分開始位置を表しており、teは、t方向の積分終了位置を表している。同様に、ysは、Y方向の積分開始位置を表しており、yeは、Y方向の積分終了位置を表している。また、xsは、X方向の積分開始位置を表しており、xeは、X方向の積分終了位置を表している。さらに、Geは、所定のゲインを表している。
【1139】
式(135)において、積分範囲は任意に設定可能であるので、3次元再積分手法においては、この積分範囲を適宜変えることで、元の画素(センサ2(図89)からの入力画像の画素)に対して任意の倍率の時空間解像度の画素を劣化することなく創造することが可能になる。即ち、空間方向の積分範囲を小さくすれば、画素ピッチを自由に細かくできる。逆に、空間方向の積分範囲を大きくすれば、画素ピッチを自由に大きくすることができる。また、時間方向の積分範囲を小さくすれば、実世界波形に基づいて時間解像度を創造できる。
【1140】
図109は、3次元再積分手法を利用する画像生成部103の構成例を表している。
【1141】
図109で示されるように、この例の画像生成部103には、条件設定部3301、特徴量記憶部3302、積分成分演算部3303、および出力画素値演算部3304が設けられている。
【1142】
条件設定部3301は、実世界推定部102より供給された実世界推定情報(図109の例では、近似関数f(x,y,t)の特徴量)に基づいて近似関数f(x,y,t)の次数nを設定する。
【1143】
条件設定部3301はまた、近似関数f(x,y,t)を再積分する場合(出力画素値を演算する場合)の積分範囲を設定する。なお、条件設定部3301が設定する積分範囲は、画素の幅(縦幅と横幅)やシャッタ時間そのものである必要は無い。例えば、センサ2(図89)からの入力画像の各画素の空間的な大きさに対する、出力画素(画像生成部103がこれから生成する画素)の相対的な大きさ(空間解像度の倍率)がわかれば、具体的な空間方向の積分範囲の決定が可能である。同様に、センサ2(図89)のシャッタ時間に対する出力画素値の相対的な時間(時間解像度の倍率)がわかれば、具体的な時間方向の積分範囲の決定が可能である。従って、条件設定部3301は、積分範囲として、例えば、空間解像度倍率や時間解像度倍率を設定することもできる。
【1144】
特徴量記憶部3302は、実世界推定部102より順次供給されてくる近似関数f(x,y,t)の特徴量を一次的に記憶する。そして、特徴量記憶部3302は、近似関数f(x,y,t)の特徴量の全てを記憶すると、近似関数f(x,y,t)の特徴量を全て含む特徴量テーブルを生成し、出力画素値演算部3304に供給する。
【1145】
ところで、上述した式(135)の右辺の近似関数f(x,y)の右辺を展開(演算)すると、出力画素値Mは、次の式(136)のように表される。
【1146】
【数136】
Figure 0004325296
・・・(136)
【1147】
式(136)において、Ki(xs,xe,ys,ye,ts,te)は、i次項の積分成分を表している。ただし、xsはX方向の積分範囲の開始位置を、xeはX方向の積分範囲の終了位置を、ysはY方向の積分範囲の開始位置を、yeはY方向の積分範囲の終了位置を、tsはt方向の積分範囲の開始位置を、teはt方向の積分範囲の終了位置を、それぞれ表している。
【1148】
積分成分演算部3303は、この積分成分Ki(xs,xe,ys,ye,ts,te)を演算する。
【1149】
具体的には、積分成分演算部3303は、条件設定部3301により設定された次数、および積分範囲(空間解像度倍率や時間解像度倍率)、並びにデータ定常性検出部101より出力されたデータ定常性情報のうちの角度θまたは動きθに基づいて積分成分Ki(xs,xe,ys,ye,ts,te)を演算し、その演算結果を積分成分テーブルとして出力画素値演算部3304に供給する。
【1150】
出力画素値演算部3304は、特徴量記憶部3302より供給された特徴量テーブルと、積分成分演算部3303より供給された積分成分テーブルを利用して、上述した式(136)の右辺を演算し、その演算結果を出力画素値Mとして外部に出力する。
【1151】
次に、図110のフローチャートを参照して、3次元再積分手法を利用する画像生成部103(図109)の画像の生成の処理(図29のステップS103の処理)について説明する。
【1152】
例えば、いま、上述した図29のステップS102の処理で、実世界推測部102(図89)が、入力画像のうちの、所定の画素を注目画素として、実世界1(図89)の光信号を近似する近似関数f(x,y,t)を既に生成しているとする。
【1153】
また、上述した図29のステップS101の処理で、データ定常性検出部101(図89)が、実世界推定部102と同じ画素を注目画素として、データ定常性情報として、角度θまたは動きθを既に出力しているとする。
【1154】
この場合、図110のステップS3301において、条件設定部3301は、条件(次数と積分範囲)を設定する。
【1155】
ステップS3302において、特徴量記憶部3302は、実世界推定部102より供給された近似関数f(x,y,t)の特徴量wiを取得し、特徴量テーブルを生成する。
【1156】
ステップS3303において、積分成分演算部3303は、条件設定部3301により設定された条件(次数および積分範囲)、並びにデータ定常性検出部101より供給されたデータ定常性情報(角度θまたは動きθ)に基づいて積分成分を演算し、積分成分テーブルを生成する。
【1157】
なお、ステップS3302の処理とステップS3303の処理の順序は、図110の例に限定されず、ステップS3303の処理が先に実行されてもよいし、ステップS3302の処理とステップS3303の処理が同時に実行されてもよい。
【1158】
次に、ステップS3304において、出力画素値演算部3304は、ステップS3302の処理で特徴量記憶部3302により生成された特徴量テーブルと、ステップS3303の処理で積分成分演算部3303により生成された積分成分テーブルに基づいて各出力画素値のそれぞれを演算する。
【1159】
ステップS3305において、出力画素値演算部3304は、全画素の処理を終了したか否かを判定する。
【1160】
ステップS3305において、全画素の処理がまだ終了されていないと判定された場合、処理はステップS3302に戻り、それ以降の処理が繰り返される。即ち、まだ注目画素とされない画素が、順次注目画素とされて、ステップS3302乃至S3304の処理が繰り返される。
【1161】
そして、全画素の処理が終了すると(ステップS3305において、全画素の処理が終了されたと判定すると)、出力画素値演算部3304は、ステップS3306において、画像を出力する。その後、画像の生成の処理は終了となる。
【1162】
このように、上述した式(135)において、その積分範囲は任意に設定可能であるので、3次元再積分手法においては、この積分範囲を適宜変えることで、元の画素(センサ2(図89)からの入力画像の画素)に対して任意の倍率の解像度の画素を劣化することなく創造することが可能になる。
【1163】
即ち、3次元再積分手法においては、時間方向の積分範囲を適宜変えることで、時間解像度の創造が可能になる。また、空間方向の積分範囲を適宜変えることで、空間解像度の創造が可能になる。さらに、時間方向と空間方向の積分範囲のそれぞれを適宜変えることで、時間解像度と空間解像度の両方の創造が可能になる。
【1164】
具体的には、3次元再積分手法においては、2次元や1次元に落とすときの近似がないので精度の高い処理が可能になる。また、斜め方向の動きも2次元に縮退することなく処理することが可能になる。さらに、2次元に縮退していないので各次元の加工が可能になる。例えば、2次元再積分手法において、空間方向(X方向とY方向)に縮退している場合には時間方向であるt方向の加工ができなくなってしまう。これに対して、3次元再積分手法においては、時空間方向のいずれの加工も可能になる。
【1165】
なお、上述したように、時間解像度と空間解像度のうちのいずれか一方の創造は、1次元再積分手法でも可能であるが、両方の解像度の創造は、1次元再積分手法では原理上不可能であり、2次元以上の再積分を行うことではじめて可能になる。即ち、上述した2次元再積分手法と3次元再積分手法ではじめて、両方の解像度の創造が可能になる。
【1166】
また、3次元再積分手法は、1次元や2次元ではなく3次元の積分効果を考慮しているので、より実世界1(図89)の光信号に近い画像を生成することも可能になる。
【1167】
次に、図3の信号処理装置4においては、データ定常性検出部101においてデータの定常性が検出され、実世界推定部102において、その定常性に基づき、実世界1の信号の波形の推定、即ち、例えば、X断面波形F(x)を近似する近似関数が求められる。
【1168】
このように、信号処理装置4では、定常性に基づいて、実世界1の信号の波形の推定が行われるため、データ定常性検出部101で検出される定常性が誤っていたり、あるいは、その検出精度が悪い場合には、実世界1の信号の波形の推定精度も悪くなる。
【1169】
また、信号処理装置4では、ここでは、例えば、画像である、実世界1の信号が有する定常性に基づいて信号処理を行うため、実世界1の信号のうちの定常性が存在する部分に対しては、他の信号処理装置の信号処理に比べて、精度のよい信号処理を実行することができ、その結果、より実世界1の信号に対応する画像に近い画像を出力することが可能になる。
【1170】
しかしながら、信号処理装置4は、定常性に基づいて信号処理を実行する以上、実世界1の信号のうちの明確な定常性が存在しない部分に対しては、定常性が存在する部分に対する処理と同等の精度で、信号処理を実行することができず、その結果、実世界1の信号に対応する画像に対して誤差を含む画像を出力することになる。
【1171】
従って、信号処理装置4において実世界1の信号に対応する画像より近い画像を得るためには、信号処理装置4による信号処理の対象とする処理領域や、信号処理装置4で用いる定常性の精度などが問題となる。
【1172】
そこで、図111は、図1の信号処理装置4の他の一実施の形態の構成例を示している。
【1173】
図111では、信号処理装置4は、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、およびユーザI/F(Interface)10006から構成されている。
【1174】
図111に構成を示す信号処理装置4には、データ3の一例である画像データ(入力画像)が、センサ2(図1)から入力され、その入力画像は、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、および画像表示部10005に供給される。
【1175】
処理領域設定部10001は、入力画像について、処理領域を設定し、その処理領域を特定する処理領域情報を、定常性設定部10002、実世界推定部10003、および画像生成部10004に供給する。
【1176】
定常性設定部10002は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域の画像データにおいて欠落した実世界1の信号の定常性を設定し、その定常性を表す定常性情報を、実世界推定部10003および画像生成部10004に供給する。
【1177】
実世界推定部10003は、モデル生成部10011、方程式生成部10012、および実世界波形推定部10013から構成され、処理領域内の画像データから、対応する実世界1の信号の定常性に応じて、その実世界1の信号を推定する。
【1178】
即ち、モデル生成部10011は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素と、その処理領域の画像データに対応する実世界1の信号の定常性に応じて、処理領域内の各画素の画素値と実世界1の信号との関係をモデル化したモデルとしての関数を生成し、方程式生成部10012に供給する。
【1179】
方程式生成部10012は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。さらに、方程式生成部10012は、その処理領域を構成する各画素の画素値を、モデル生成部10011から供給されるモデルとしての関数に代入し、これにより、方程式を生成して、実世界波形推定部10013に供給する。
【1180】
実世界波形推定部10013は、方程式生成部10012から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定する。即ち、実世界波形推定部10013は、方程式生成部10012から供給される方程式を解くことにより、実世界1の信号を近似する近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部10004に供給する。ここで、実世界1の信号を近似する近似関数には、引数の値にかかわらず、関数値が一定の関数も含まれる。
【1181】
画像生成部10004は、実世界推定部10003で推定された実世界1の信号の波形を表す近似関数と、定常性設定部10002から供給される定常性情報とに基づいて、実世界1の信号により近似した信号を生成する。即ち、画像生成部10004は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域について、実世界推定部10003(の実世界波形推定部10013)から供給される近似関数と、定常性設定部10002から供給される定常性情報とに基づき、実世界1の信号に対応する画像により近似した画像データを生成する。
【1182】
さらに、画像生成部10004は、入力画像と、近似関数に基づいて生成した画像データ(以下、適宜、近似画像ともいう)とを合成し、入力画像の処理領域の部分を、近似画像に置き換えた画像を生成し、その画像を、出力画像として画像表示部10005に供給する。
【1183】
画像表示部10005は、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)で構成され、入力画像や、画像生成部10004から供給される出力画像を表示する。
【1184】
なお、画像表示部10005は、1または複数のCRTやLCDで構成することが可能である。画像表示部10005を1つのCRTやLCDで構成する場合には、その1つのCRTやLCDの画面を複数の画面に分割し、ある画面に入力画像を表示するとともに、他の画面に出力画像を表示するようにすることができる。さらに、画像表示部10005を複数のCRTやLCDで構成する場合には、ある1つのCRTやLCDに入力画像を表示するとともに、他のCRTやLCDに出力画像を表示するようにすることができる。
【1185】
また、画像表示部10005は、ユーザI/F10006の出力に応じて、各種の表示を行う。即ち、画像表示部10005は、例えば、カーソルを表示し、ユーザがカーソルを移動するようにユーザI/F10006を操作した場合、その操作に応じて、カーソルを移動させる。また、画像表示部10005は、例えば、ユーザが所定の範囲を選択するようにユーザI/F10006を操作した場合、その操作に応じて、画面上の選択された範囲を囲む枠を表示する。
【1186】
ユーザI/F10006は、ユーザによって操作され、そのユーザの操作に応じて、例えば、処理領域、定常性、または現実世界の信号のうちの少なくとも1つに関連する情報を、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003に供給する。
【1187】
即ち、ユーザは、画像表示部10005に表示された入力画像や出力画像を見て、その入力画像や出力画像に対する入力を与えるように、ユーザI/F10006を操作する。ユーザI/F10006は、ユーザの操作に応じて、処理領域、定常性、または現実世界の信号に関連する情報を、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003の処理を補助する補助情報として、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003に供給する。
【1188】
処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003は、ユーザI/F10006から補助情報が供給された場合、その補助情報に基づき、処理領域の設定、定常性の設定、または実世界1の信号の推定を、それぞれ行う。
【1189】
但し、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003では、補助情報を用いずに、即ち、ユーザによって、ユーザI/F10006が操作されなくても、処理領域の設定、定常性の設定、または実世界1の信号の推定を、それぞれ行うことが可能である。
【1190】
具体的には、処理領域設定部10001では、図30乃至図48で説明したように、図3のデータ定常性検出部101における場合と同様にして、入力画像から、定常領域を検出し、例えば、その定常領域を囲む矩形(長方形)の領域を、処理領域として設定することができる。
【1191】
また、定常性設定部10002では、図49乃至図57で説明したように、図3のデータ定常性検出部101における場合と同様にして、入力画像から、データの定常性を検出し、そのデータの定常性に基づき、対応する実世界1の信号の定常性を設定すること、即ち、例えば、データの定常性を、そのまま実世界1の信号の定常性として設定することができる。
【1192】
さらに、実世界推定部10003では、図58乃至図88で説明したように、図3の実世界推定部102における場合と同様にして、処理領域設定部10001で設定された処理領域の画像データから、定常性設定部10002で設定された定常性に応じて、実世界1の信号を推定することができる。なお、図3では、実世界推定部102において、実世界1の信号の推定に、データの定常性を用いたが、実世界1の信号の推定には、データの定常性に代えて、対応する実世界1の信号の定常性を用いることができる。
【1193】
次に、図112のフローチャートを参照して、図111の信号処理装置4の処理について説明する。
【1194】
まず最初に、ステップS10001において、信号処理装置4は、前処理を行い、ステップS10002に進む。即ち、信号処理装置4は、センサ2(図1)からデータ3として供給される、例えば1フレームまたは1フィールドの入力画像を、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、および画像表示部10005に供給する。さらに、信号処理部4は、画像表示部10005に、入力画像を表示させる。
【1195】
ステップS10002では、ユーザI/F10006は、ユーザがユーザI/F10006を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定する。ステップS10002において、ユーザ入力がなかったと判定された場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS10003乃至S10005をスキップして、ステップS10006に進む。
【1196】
また、ステップS10002において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部10005に表示された入力画像を見て、ユーザI/F10006を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS10003に進み、ユーザI/F10006は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1197】
ステップS10003において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1198】
また、ステップS10003において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS10004に進み、ユーザI/F10006は、ユーザ入力が補助情報であるかどうかを判定する。ステップS10004において、ユーザ入力が補助情報でないと判定された場合、ステップS10005をスキップして、ステップS10006に進む。
【1199】
また、ステップS10004において、ユーザ入力が補助情報であると判定された場合、ステップS10005に進み、ユーザI/F10006は、その補助情報を、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10006に供給し、ステップS10006に進む。
【1200】
ステップS10006では、処理領域設定部10001は、入力画像について、処理領域を設定し、その処理領域を特定する処理領域情報を、定常性設定部10002、実世界推定部10003、および画像生成部10004に供給し、ステップS10007に進む。ここで、処理領域設定部10001は、直前に行われたステップS10005においてユーザI/F10006から補助情報が供給された場合は、その補助情報を用いて、処理領域の設定を行う。
【1201】
ステップS10007では、定常性設定部10002は、処理領域設定部10001から供給された処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。さらに、定常性設定部10002は、その処理領域の画像データにおいて欠落した実世界1の信号の定常性を設定し、その定常性を表す定常性情報を、実世界推定部10003に供給して、ステップS10008に進む。ここで、定常性設定部10002は、直前に行われたステップS10005においてユーザI/F10006から補助情報が供給された場合は、その補助情報を用いて、定常性の設定を行う。
【1202】
ステップS10008では、実世界推定部10003は、入力画像における処理領域内の画像データについて、対応する実世界1の信号の定常性に応じて、その実世界1の信号を推定する。
【1203】
即ち、実世界推定部10003では、モデル生成部10011が、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識するとともに、定常性設定部10002から供給される定常性情報から、処理領域の画像データに対応する実世界1の信号の定常性を認識する。さらに、モデル生成部10011は、入力画像における処理領域を構成する画素と、その処理領域の画像データに対応する実世界1の信号の定常性に応じて、処理領域内の各画素の画素値と実世界1の信号との関係をモデル化したモデルとしての関数を生成し、方程式生成部10012に供給する。
【1204】
方程式生成部10012は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域を構成する入力画像の各画素の画素値を、モデル生成部10011から供給されるモデルとしての関数に代入し、これにより、実世界1の信号を近似する近似関数を求める方程式を生成して、実世界波形推定部10013に供給する。
【1205】
実世界波形推定部10013は、方程式生成部10012から供給される方程式を演算することにより、実世界1の信号の波形を推定する。即ち、実世界波形推定部10013は、方程式生成部10012から供給される方程式を解くことにより、実世界1の信号をモデル化したモデルとしての近似関数を求め、その近似関数を、実世界1の信号の波形の推定結果として、画像生成部10004に供給する。
【1206】
なお、実世界推定部10003においては、モデル生成部10011および方程式生成部10012は、直前に行われたステップS10005においてユーザI/F10006から補助情報が供給された場合は、その補助情報を用いて、処理を行う。
【1207】
ステップS10008の処理後は、ステップS10009に進み、画像生成部10004は、実世界推定部10003(の実世界波形推定部10013)から供給された、実世界1の信号の波形を近似する近似関数に基づいて、実世界1の信号により近似した信号を生成する。即ち、画像生成部10004は、処理領域設定部10001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域について、実世界推定部10003から供給された近似関数に基づき、実世界1の信号に対応する画像により近似した画像データである近似画像を生成する。さらに、画像生成部10004は、入力画像の処理領域の部分を近似画像に置き換えた画像を、出力画像として生成し、画像表示部10005に供給して、ステップS10009からS10010に進む。
【1208】
ステップS10010では、画像表示部10005は、画像生成部10004から供給された出力画像を、ステップS10001で表示された入力画像に代えて、またはその入力画像とともに表示し、ステップS10011に進む。
【1209】
ステップS10011では、ユーザI/F10006は、ステップS10002における場合と同様に、ユーザがユーザI/F10006を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定し、ユーザ入力がなかったと判定した場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS10011に戻り、何らかのユーザ入力があるまで待つ。
【1210】
また、ステップS10011において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部10005に表示された入力画像や出力画像を見て、ユーザI/F10006を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS10012に進み、ユーザI/F10006は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1211】
ステップS10012において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1212】
また、ステップS10012において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS10013に進み、ユーザI/F10006は、ユーザ入力が補助情報であるかどうかを判定する。ステップS10013において、ユーザ入力が補助情報でないと判定された場合、ステップS10011に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【1213】
また、ステップS10013において、ユーザ入力が補助情報であると判定された場合、ステップS10005に戻り、上述したように、ユーザI/F10006は、その補助情報を、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10006に供給する。そして、ステップS10005からS10006に進み、以下、同様の処理が繰り返される。
【1214】
以上のように、図111の信号処理装置4によれば、ユーザの操作に応じて、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003の処理を補助する補助情報を、ユーザI/F10006から処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003に供給し、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003において、ユーザI/F10006からの補助情報に基づき、処理領域の設定、定常性の設定、または実世界1の信号の推定を行うので、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、または実世界推定部10003の処理精度を向上させ、例えば、ユーザの好みにあった、高画質の出力画像を得ることが可能となる。
【1215】
次に、図111に示した信号処理装置4の各種の応用例について説明する。
【1216】
図113は、図111に示した信号処理装置4の応用例の一実施の形態の構成例を示している。
【1217】
図113において、処理領域設定部17001、定常性設定部17002、実世界推定部17003、画像生成部17004、画像表示部17005、ユーザI/F17006は、図111の処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、ユーザI/F10006にそれぞれ対応しており、基本的には、処理領域設定部10001、定常性設定部10002、実世界推定部10003、画像生成部10004、画像表示部10005、ユーザI/F10006それぞれと同様の処理を行う。さらに、図113において、実世界推定部17003は、モデル生成部17011、方程式生成部17012、実世界波形推定部17013で構成されている。モデル生成部17011、方程式生成部17012、実世界波形推定部17013は、図111のモデル生成部10011、方程式生成部10012、実世界波形推定部10013にそれぞれ対応しており、基本的には、モデル生成部10011、方程式生成部10012、実世界波形推定部10013それぞれと同様の処理を行う。
【1218】
但し、図113においては、実世界推定部17003は、近似関数fとして、スプライン関数を用いるようになっている。
【1219】
ここで、図113は、図1に示した信号処理装置4の構成例の1つを示すが、図1においては、例えば、イメージセンサとしてのセンサ2において、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に実世界1の光信号が射影され、即ち、3次元の実世界1が、2次元のイメージセンサとしてのセンサ2に射影され、その射影によって、実世界1の光信号の定常性の一部が欠落した画像データが、センサ2から信号処理装置4に対して、データ3として供給される。
【1220】
センサ2から信号処理装置4に対して供給されるデータ3としての画像データにおいては、実世界1の光信号の定常性の一部が欠落し、何らかの歪みが存在する。信号処理装置4では、その歪みを有する画像データに対する信号処理が行われる。
【1221】
図114は、歪みを有する画像データに対して行われる信号処理の種類(カテゴリ)を示している。
【1222】
歪みを有する画像データに対して行われる信号処理の種類としては、大きく分けて、「歪みの検出」、「歪みの除去」、「有意情報の抽出」、および「歪みを考慮した信号処理」がある。
【1223】
「歪みの検出」に含まれる処理としては、例えば、画像データから、歪みを有する領域を特定する領域特定(抽出)処理などがある。「歪みの除去」に含まれる処理としては、例えば、画像データから前景と背景とを、両者が混じわっていない状態に分離する前景背景分離処理や、歪みとしての動きボケを除去する動きボケの除去処理などがある。「有意情報の抽出」に含まれる処理としては、例えば、画像データから有意情報としての動きベクトルを抽出する処理や、図25で説明した混合比を推定する処理などがある。「歪みを考慮した信号処理」に含まれる処理としては、例えば、上述したクラス分類適応処理や、フレーム間にフレームを挿入し、フレームレートを2倍にするフレーム2倍速処理などがある。
【1224】
図113の信号処理装置4では、図114に示した「歪みの検出」、「歪みの除去」、「有意情報の抽出」、「歪みを考慮した信号処理」のうちの、例えば、「歪みの除去」に分類される信号処理を行う。なお、ここでは、図113の信号処理装置4は、「歪みの除去」に分類される信号処理のうちの、例えば動きボケを除去する処理などを行うものとする。
【1225】
図113の信号処理装置4においては、ユーザがユーザI/F17006を操作することにより補助情報を入力することができる。そして、処理領域設定部17001、定常性設定部17002、および実世界推定部17003は、ユーザがユーザI/F17006を操作することにより補助情報の入力があった場合には、その補助情報に基づいて処理を行うことができる。さらに、補助情報の入力がない場合には(さらには、補助情報の入力があった場合であっても)、処理領域設定部17001、定常性設定部17002、および実世界推定部17003は、補助情報なしで処理を行うことができる。
【1226】
そこで、まず、処理領域設定部17001、定常性設定部17002、および実世界推定部17003が、補助情報なしで処理を行う場合の、図113の信号処理装置4の処理について説明する。
【1227】
即ち、図115は、処理領域設定部17001、定常性設定部17002、および実世界推定部17003が、補助情報なしで処理を行う場合の、図113の信号処理装置4の処理を説明するフローチャートである。
【1228】
図113の信号処理装置4では、定常性に基づいて、実世界が推定され、これにより、センサ2の時間積分効果による、物体の信号の時間方向の混合(時間混合)によって生じる動きボケを除去する処理などが行われる。
【1229】
即ち、実世界1において、自動車などのオブジェクトが移動している画像を、イメージセンサであるセンサ2で撮像した場合に得られる入力画像においては、オブジェクトが時間経過とともに移動するため、センサ2の時間積分効果によって、そのオブジェクトの光信号と、そのオブジェクト以外の部分の光信号とが混合(時間混合)し、これにより、オブジェクトの境界部分などにおいて、いわゆる動きボケが生じる。図113の信号処理装置4では、このような時間混合によって生じた動きボケを入力画像から除去した高画質の出力画像が生成され、結果として、入力画像から動きボケを除去した出力画像が得られる。
【1230】
図113の信号処理装置4は、まず最初に、ステップS17001において、前処理を行い、ステップS17002に進む。即ち、信号処理装置4は、センサ2(図1)からデータ3として供給される、例えば1フレームまたは1フィールドの入力画像を、処理領域設定部17001、定常性設定部17002、実世界推定部17003、画像生成部17004、および画像表示部17005に供給する。さらに、信号処理部4は、画像表示部17005に、入力画像を表示させる。
【1231】
なお、ここでは、自動車などのオブジェクトが水平方向に一定速度で移動しているシーンを、センサ2で撮像することにより得られる、時間混合による動きボケが生じた画像が、入力画像として、信号処理装置4に入力されるものとする。
【1232】
ステップS17002では、処理領域設定部17001は、処理領域を設定し、その処理領域を表す処理領域情報を、定常性設定部17002、実世界推定部17003、および画像生成部17004に供給し、ステップS17003に進む。
【1233】
なお、ここでは、ステップS17002において、例えば、入力画像において、オブジェクトが水平方向に移動することによって動きボケが生じている部分を囲む矩形領域が、処理領域として設定されるものとする。
【1234】
ステップS17003では、定常性設定部17002は、処理領域設定部17001から供給された処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。さらに、定常性設定部17002は、その処理領域の画像データにおいて欠落した実世界1の信号の定常性を設定し、その定常性を表す定常性情報を、実世界推定部17003に供給して、ステップS17004に進む。
【1235】
なお、ここでは、入力画像に対応する実世界1の画像は、ある形状のオブジェクトが水平方向に一定速度で移動しているという定常性を有しており、ステップS17003においては、処理領域におけるオブジェクトの水平方向の動き量が、定常性情報として得られるものとする。
【1236】
ステップS17004では、実世界推定部17003は、入力画像における処理領域内の画像データについて、対応する実世界1の信号の定常性に応じて、その実世界1の信号を推定する。
【1237】
即ち、実世界推定部17003では、モデル生成部17011が、処理領域設定部17001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識するとともに、定常性設定部17002から供給される定常性情報から、処理領域の画像データに対応する実世界1の信号の定常性(ここでは、動き量)を認識する。さらに、モデル生成部17011は、入力画像における処理領域を構成する画素と、その処理領域の画像データに対応する実世界1の信号の定常性に応じて、処理領域内の各画素の画素値と実世界1の信号との関係をモデル化した関係モデルとしての関数を生成し、方程式生成部17012に供給する。
【1238】
方程式生成部17012は、処理領域設定部17001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素について、モデル生成部17011から供給される関係モデルとしての関数に、入力画像の必要な画素の画素値を代入し、これにより、実世界1の信号を近似する近似関数を求める方程式を生成して、実世界波形推定部17013に供給する。
【1239】
なお、ここでは、近似関数として、例えば、スプライン関数が用いられる。
【1240】
実世界波形推定部17013は、方程式生成部17012から供給される方程式を解くことにより、実世界1の信号の波形を推定、即ち、実世界1の信号をモデル化した近似モデルとしての近似関数を求め、画像生成部17004に供給する。
【1241】
ステップS17004の処理後は、ステップS17005に進み、画像生成部17004は、実世界推定部17003(の実世界波形推定部17013)から供給された近似関数に基づいて、実世界1の信号により近似した信号を生成する。即ち、画像生成部17004は、処理領域設定部17001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域について、実世界推定部17003から供給された近似関数に基づき、実世界1の信号に対応する画像により近似した画像データである近似画像を生成する。さらに、画像生成部17004は、入力画像の処理領域の部分を、近似画像に置き換えた画像を、出力画像として生成し、画像表示部17005に供給して、ステップS17005からS17006に進む。
【1242】
ステップS17006では、画像表示部17005は、画像生成部17004から供給された出力画像を、ステップS17001で表示された入力画像に代えて、またはその入力画像とともに表示し、処理を終了する。
【1243】
次に、図116および図117を参照して、図1のセンサ2がイメージセンサである場合の空間的時間的な積分効果について説明する。
【1244】
イメージセンサは、現実世界の対象物(オブジェクト)を撮像し、撮像の結果として得られる画像データを1フレーム(またはフィールド)単位で出力する。すなわち、イメージセンサには、実世界1の対象物で反射された光である、実世界1の光信号が射影されるが、イメージセンサは、その射影結果を、データ3として出力する。
【1245】
例えば、イメージセンサは、1秒間に30フレームからなる画像データを出力する。この場合、イメージセンサの露光時間(シャッタ時間)は、理論的には、1/30秒以下の時間となる。
【1246】
図116は、イメージセンサ上の画素の配置の例を説明する図である。図116中において、A乃至Iは、個々の画素を示す。画素は、画像データにより表示される画像に対応する平面上に配置されている。1つの画素に対応する1つの検出素子は、イメージセンサ上に配置されている。イメージセンサが実世界1の画像(光信号)を撮像するとき、1つの検出素子は、画像データを構成する1つの画素に対応する1つの画素値を出力する。例えば、検出素子の空間方向Xの位置(X座標)は、画像データにより表示される画像上の横方向の位置に対応し、検出素子の空間方向Yの位置(Y座標)は、画像データにより表示される画像上の縦方向の位置に対応する。
【1247】
実世界1の光の強度の分布は、3次元の空間方向および時間方向に広がりを有するが、イメージセンサは、2次元の空間方向および時間方向で、実世界1の光信号を取得し、2次元の空間方向および時間方向の光の強度の分布を表現するデータ3を生成する。
【1248】
図117で示されるように、例えば、CCDである検出素子は、シャッタ時間tsに対応する期間、受光面(受光領域)(検出領域)に入力された光を電荷に変換して、変換された電荷を蓄積する。光は、3次元の空間上の位置、および時刻により、強度が決定される実世界1の情報(信号)である。実世界1の光の強度の分布は、3次元の空間上の位置x,y、およびz、並びに時刻tを変数とする関数F(x,y,z,t)で表すことができる。
【1249】
CCDである検出素子に蓄積される電荷の量は、2次元の空間上の広がりを有する受光面の全体に入射された光の強さと、光が入射されている時間にほぼ比例する。検出素子は、シャッタ時間に対応する期間において、受光面の全体に入射された光から変換された電荷を、既に蓄積されている電荷に加えていく。すなわち、検出素子は、シャッタ時間tsに対応する期間、2次元の空間上の広がりを有する受光面の全体に入射される光を積分して、積分された光に対応する量の電荷を蓄積する。従って、検出素子(画素)は、空間(受光面)および時間(シャッタ時間)に対して、積分効果がある。
【1250】
以上のように、検出素子は、蓄積した電荷に対応する画素値を、データ3として出力する。従って、イメージセンサから出力される個々の画素値は、実世界1の光信号の時間的空間的に広がりを有するある部分を、シャッタ時間の時間方向および検出素子の受光面の空間方向について積分した結果である。
【1251】
以上のような画素値からなる画像データ、即ち、イメージセンサが出力するデータ3としての画像データは、例えば、その特性により、背景領域、前景領域、混合領域の3つに分類することができる。
【1252】
即ち、例えば、いま、図118に示すように、イメージセンサによって、ある背景オブジェクトと、その背景オブジェクトよりもイメージセンサに近い位置にある前景オブジェクトとを撮像するケースを考える。なお、ここでは、イメージセンサから近いオブジェクトを前景オブジェクトと定義し、イメージセンサから遠いオブジェクトを背景オブジェクトと定義している。
【1253】
前景オブジェクトと背景オブジェクトのうちのいずれかが動いている場合、イメージセンサに射影される実世界1の光信号は、時間的に変化する。なお、図118では、背景オブジェクトは静止しており、前景オブジェクトは水平方向(左から右方向)に一定速度で移動している。
【1254】
イメージセンサに射影される実世界1の光信号が、時間的に変化する場合、上述したイメージセンサの積分効果(時間的な積分効果)により歪みが生じる。即ち、図118では、背景オブジェクトが静止し、前景オブジェクトが動いているので、イメージセンサの受光面の領域において、露光時間(例えば、1/30秒や1/60秒など)の中で、前景オブジェクトまたは背景オブジェクトのうちの一方に対応する光信号が射影された状態から、他方に対応する光信号が射影された状態となる領域が生じる。つまり、前景オブジェクトまたは背景オブジェクトのうちの一方に対応する光信号と、他方に対応する光信号とが混ざり合って積分されるイメージセンサの領域(画素)がある。このような領域を、混合領域と定義する。また、イメージセンサの領域のうちの、前景オブジェクトが射影された領域から混合領域を除いた部分を、前景領域と定義するとともに、イメージセンサのうちの背景オブジェクトが射影された領域から混合領域を除いた部分を、背景領域と定義する。
【1255】
図119は、前景領域、背景領域、および混合領域を示している。
【1256】
図119において、上側の図は、水平方向をイメージセンサの水平方向(x方向)とするとともに、垂直方向をイメージセンサの垂直方向(y方向)として、イメージセンサにおいて得られる画像データを示しており、下側の図は、水平方向をイメージセンサの水平方向(x方向)とするとともに、垂直方向を時間方向(t方向)として、イメージセンサにチャージ(蓄積)される電荷を示している。
【1257】
イメージセンサにおいて、上述したような、静止している背景オブジェクトと、水平方向に移動している前景オブジェクトに対応する実世界1の光信号が受光されると、有限の時間である露光時間において、イメージセンサの受光面の一部の領域は、前景オブジェクトに対応する光信号だけが射影された状態となり、他の一部の領域は、背景オブジェクトに対応する光信号だけが射影された状態となり、残りの領域は、前景オブジェクトまたは背景オブジェクトのうちの一方に対応する光信号が射影された状態から、他方に対応する光信号が射影された状態となる。
【1258】
いま、イメージセンサにおいて、前景オブジェクトに対応する光信号だけによってチャージされる電荷を、前景成分と呼ぶとともに、背景オブジェクトに対応する光信号だけによってチャージされる電荷を、背景成分と呼ぶこととすると、イメージセンサから得られる画像データにおいては、画素値が前景成分または背景成分のうちのいずれか一方だけを有する領域と、その両方の成分を有する領域とが生じる。
【1259】
前景領域は、画素値が前景成分だけを有する領域であり、背景領域は、画素値が背景成分だけを有する領域である。そして、混合領域は、画素値が前景成分と背景成分の両方を有する領域である。前景領域と混合領域は、動いている前景オブジェクトに対応する実世界1の光信号が射影された領域であり、そこには、上述したイメージセンサの積分効果により、歪が生じる。いまの場合、この歪みは、動きボケとして現れる。
【1260】
次に、図120は、上述のようなイメージセンサの積分効果によって、画像データに生じる歪みとしての動きボケを除去する場合の、図113の信号処理装置4と等価な装置の構成例を示している。
【1261】
即ち、図120は、イメージセンサの積分効果によって動きボケが生じている画像データである入力画像から前景成分と背景成分とを分離し、その前景成分を処理することによって動きボケのない前景オブジェクトの画像を生成することにより、結果として、入力画像から動きボケを除去した画像を得る信号処理を行う場合の、図113の信号処理装置4の機能的構成例を示している。
【1262】
図120において、信号処理装置4は、領域特定部17031、動きボケ調整量出力部17032、前景背景分離部17033、処理単位決定部17034、動きボケ調整部17035、および画像表示部17036から構成されている。領域特定部17031は図113の処理領域設定部17001に、動きボケ調整量出力部17032は図113の定常性設定部17002に、前景背景分離部17033、処理単位決定部17034、および動きボケ調整部17035は、図113の実世界推定部17003および画像生成部17004に、画像表示部17036は図113の画像表示部17005に、それぞれ対応する。
【1263】
図120の信号処理装置4では、動きボケを有する入力画像が、領域特定部17031と前景背景分離部17033に供給される。
【1264】
領域特定部17031は、そこに供給される入力画像について、図119で説明した前景領域、背景領域、混合領域を特定し、その前景領域、背景領域、混合領域を特定する情報を、処理領域情報として、前景背景分離部17033および処理単位決定部17034に供給する。
【1265】
動きボケ調整量出力部17032は、入力画像における前景オブジェクトの動きを表す動きベクトルを、定常性情報として、動きボケ調整部17035に供給する。なお、ここでは、前景オブジェクトは、上述したように、水平方向(例えば、左から右方向)に一定速度で移動しているものとし、動きボケ調整量出力部17032は、イメージセンサの露光時間あたりの動き量を、定常性情報として、動きボケ調整部17035に供給するものとする。
【1266】
前景背景分離部17033は、領域特定部17031から供給される処理領域情報に基づいて、そこに供給される入力画像から前景成分と背景成分とを分離し、前景成分を、動きボケ調整部17035に供給する。
【1267】
処理単位決定部17034は、領域特定部17031から供給される処理領域情報によって特定される前景領域と混合領域から、動きボケ調整部17035において動きボケを除去する処理を施す単位となる処理単位を決定し、その処理単位を表す処理単位情報を、動きボケ調整部17035に供給する。
【1268】
動きボケ調整部17035は、動きボケ調整量出力部17032から供給される動き量と、前景背景分離部17033から供給される前景成分とを用い、処理単位決定部17034から供給される処理単位情報が表す処理単位ごとに、後述する処理を施すことにより、動きボケのない前景オブジェクトの画像を生成し、画像表示部17036に供給する。画像表示部17036は、動きボケ調整部17035から供給される画像を表示する。
【1269】
次に、図17009のフローチャートを参照して、図17008の信号処理装置4による処理(動きボケ除去処理)について説明する。
【1270】
動きボケを有する入力画像が、領域特定部17031と前景背景分離部17033に供給されると、ステップS17021において、領域特定部17031は、そこに供給される入力画像の前景領域、背景領域、混合領域を特定し、その前景領域、背景領域、混合領域を特定する情報を、処理領域情報として、前景背景分離部17033および処理単位決定部17034に供給する。さらに、ステップS17021では、動きボケ調整量出力部17032は、入力画像における前景オブジェクトの水平方向の動きの大きさを表す動き量を設定(検出)し、定常性情報として、動きボケ調整部17035に供給する。
【1271】
そして、ステップS17021からS17022に進み、前景背景分離部17033は、領域特定部17031から供給される処理領域情報に基づいて、そこに供給される入力画像から前景成分と背景成分とを分離する。即ち、前景背景分離部17033は、処理領域情報に基づいて、図122に示すように、入力画像の前景領域、背景領域、および混合領域を認識する。
【1272】
ここで、図122は、図119と同様に、入力画像における前景領域、背景領域、および混合領域を示している。即ち、図122において、右側の図は、図119の上側の図と同様に、水平方向をイメージセンサの水平方向(x方向)とするとともに、垂直方向をイメージセンサの垂直方向(y方向)として、イメージセンサにおいて得られる入力画像としての画像データを示しており、左側の図は、図119の下側の図と同様に、水平方向をイメージセンサの水平方向(x方向)とするとともに、垂直方向を時間方向(t方向)として、イメージセンサにチャージ(蓄積)される電荷を示している。後述する図123においても同様である。
【1273】
ステップS17022において、前景背景分離部17033は、入力画像の前景領域、背景領域、および混合領域を認識すると、入力画像から、前景領域、背景領域、および混合領域を分離し、さらに、図123に示すように、前景領域および混合領域から、前景成分のみを分離して、動きボケ調整部17035に供給する。
【1274】
即ち、前景背景分離部17033は、混合領域から、前景成分を分離し、その前景成分と、前景領域における前景成分とを、動きボケ調整部17035に供給する。
【1275】
なお、ここでは、ステップS17021における入力画像の前景領域、背景領域、混合領域の特定、およびステップS17022における入力画像からの前景成分のみの分離は、任意の方法によって行うことができるものとする。
【1276】
その後、ステップS17022からS17023に進み、処理単位決定部17034は、領域特定部17031から供給される処理領域情報によって特定される前景領域と混合領域から、処理単位を決定し、その処理単位を表す処理単位情報を、動きボケ調整部17035に供給する。
【1277】
即ち、処理単位決定部17034は、入力画像における前景領域と混合領域の全体の領域において、例えば、前景オブジェクトの動き方向(ここでは水平方向)に並ぶ1ラインの画素(列)のうち、まだ処理単位としていない任意の1ラインの画素を、処理単位として決定する。従って、ここでは、入力画像における前景領域と混合領域の全体の領域における、水平方向の任意の1ラインが処理単位とされる。
【1278】
そして、処理単位決定部17034は、その処理単位を表す処理単位情報を、動きボケ調整部17035に供給し、ステップS17023からS17024に進む。
【1279】
ステップS17024では、動きボケ調整部17035は、動きボケ調整量出力部17032から供給される動き量と、前景背景分離部17033から供給される前景成分とを用い、処理単位決定部17034から供給される処理単位情報が表す処理単位を対象に処理を行うことにより、その処理単位について、動きボケのない前景オブジェクトの画像を生成して、ステップS17025に進む。
【1280】
ステップS17025では、処理単位決定部17034は、入力画像における前景領域と混合領域の全体の領域における水平方向のラインすべてを、処理単位としたかどうかを判定する。ステップS17025では、入力画像における前景領域と混合領域の全体の領域における水平方向のラインすべてを、まだ、処理単位としていないと判定された場合、ステップS17023に戻り、処理単位決定部17034は、入力画像における前景領域と混合領域の全体の領域における水平方向のラインのうちの、まだ処理単位としていない任意の1ラインを、処理単位として決定し、以下、同様の処理を繰り返す。
【1281】
一方、ステップS17025において、入力画像における前景領域と混合領域の全体の領域における水平方向のラインすべてを、処理単位としたと判定された場合、即ち、動きボケ調整部17035において、入力画像における前景領域と混合領域の全体の領域における水平方向のすべてラインについて処理が行われ、これにより、動きボケのない前景オブジェクトの画像が生成された場合、動きボケ調整部17035は、その動きボケのない前景オブジェクトの画像を、画像表示部17036に供給して表示させ、処理を終了する。
【1282】
次に、図120の動きボケ調整部17035の処理について説明する。
【1283】
動きボケ調整部17035は、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素からなるイメージセンサに実世界1の光信号が射影され、実世界1の光信号の定常性の一部が欠落した入力画像の時空間方向のうちの少なくとも1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した実世界1の光信号に対応する光信号関数(実世界関数)Fを少なくとも1次元方向に積分することにより取得された画素値であるとして、光信号関数Fを推定し、その光信号関数F(の推定結果)を少なくとも1次元方向に所定単位で積分することにより、動きボケのない画像を生成する。
【1284】
即ち、動きボケ調整部17035は、移動している前景オブジェクトによって動きボケが生じている入力画像の空間方向のうちの所定の1次元方向としての、例えばx方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した実世界1の光信号に対応する光信号関数Fが、前景オブジェクトの動きを表す動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動する物理モデルを、x方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、光信号関数Fを推定し、その光信号関数Fの推定結果である、光信号関数Fを近似する近似モデルとしてのスプライン関数を、x方向および時間方向に、所定の単位で積分することにより、入力画像内の前景オブジェクトの動きボケを除去した画素値でなる画像を生成する。
【1285】
そこで、まず、動きボケ調整部17035における光信号関数Fの推定方法について説明する。
【1286】
動きボケ調整部17035は、ここでは、例えば、上述したように、水平方向(x方向)に並ぶ画素を処理単位として処理を行う。
【1287】
いま、処理単位を、x方向に並ぶN+1画素とし、その処理単位に射影される実世界1の光信号に対応する光信号関数Fの、ある時刻における、ある垂直方向の位置の波形(X断面波形)F(x)を、図124に示すような連続波形である、例えば、3次のスプライン関数で近似することとする。
【1288】
ここで、図124は、水平方向を処理単位の幅方向(入力画像のx方向)とするとともに、垂直方向をレベルとして、処理単位に射影される実世界1の光信号に対応する光信号関数F(x)を近似する近似関数としての3次のスプライン関数(の値)を表している。
【1289】
いま、図124に示すように、処理単位の左端の画素のx方向の中心位置の座標をx=0とするとともに、1画素のx方向の長さを1とする。また、x方向に並ぶN+1画素からなる処理単位の、左からk番目の画素#k−1(k=1,2,・・・,N+1)のx方向の中心位置から、その右隣の画素#kのx方向の中心位置までに射影される実世界1の光信号に対応する光信号関数Fを近似する近似関数である3次のスプライン関数を、Ck(x)と表す。さらに、そのスプライン関数Ck(x)が、画素#k−1のx方向の中心位置でとる値をyk-1と表す。なお、スプライン関数Ck(x)におけるサフィックスkは、k=1,2,・・・,Nである。
【1290】
この場合、スプライン関数Ck(x)は、式(137)で表される。
【1291】
【数137】
Figure 0004325296
・・・(137)
【1292】
但し、式(137)において、Mkとykは、次式で表される。
【1293】
【数138】
Figure 0004325296
・・・(138)
【1294】
式(137)のスプライン関数Ck(x)は、N+1個の変数y0,y1,・・・,yNで定義される。従って、式(137)のスプライン関数Ck(x)は、N+1個の変数y0乃至yNを求めることで得ることができる。
【1295】
そこで、N+1個の変数y0乃至yNを求めるために、図125に示す物理モデルを考える。
【1296】
即ち、図125は、スプライン関数Ck(x)で近似される光信号関数F(x)で表される光信号が、イメージセンサの露光時間の間に、動き量vだけ連続的に水平方向(x方向)に移動(位相シフト)しながら、処理単位の画素に射影され、その画素に電荷がチャージされること、つまり、x方向および時間方向に積分されることによって画像が得られるという物理モデルを表している。
【1297】
ここで、図125の左側の図は、図124における場合と同様の、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)を示している。また、図125の右側の図は、横方向をイメージセンサの水平方向(処理単位の画素が並ぶx方向)とし、手前方向を露光時間とするとともに、縦方向をレベルとして、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)のレベルを示している。
【1298】
図125に示した物理モデルによれば、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が、イメージセンサの露光時間の間に、動き量vだけ連続的に水平方向(x方向)に移動(位相シフト)することによって得られる軌跡としての曲面(モデル)を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、処理単位の画素#kのx方向の長さだけ積分することにより、その画素#kの画素値Ykが得られる。
【1299】
図125の物理モデルでは、露光時間の間に、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が連続的に移動するので、この物理モデルによって画素値Ykが得られる画素#kでは、イメージセンサの時間積分効果による、物体の信号の時間方向の混合(時間混合)が生じる。さらに、画素#kでは、イメージセンサの空間積分効果による、物体の信号の空間方向の混合(空間混合)も生じる。従って、図125の物理モデルでは、時間混合および空間混合の両方が考慮されている。
【1300】
動きボケ調整部17035は、処理単位の画素#kの画素値Ykを用い、図125の物理モデルに基づき、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)(を規定する変数yk)を、光信号関数F(x)の推定値として求める。
【1301】
なお、ここでは、イメージセンサにおいて露光が開始されるときの、処理単位以外に射影される光信号関数F(x)の値は、例えば一定値であるとする。
【1302】
即ち、上述したように、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が、画素#kのx方向の中心位置でとる値はykで表される。また、いまの場合、処理単位の左端の画素のx方向の中心位置の座標はx=0であり、画素のx方向の長さは1である。従って、x=kの位置のスプライン関数Ck(x)の値は、ykで表される。ここでは、x<0の範囲では、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数の値は、y0(=C1(0))で一定であり、また、x>Nの範囲では、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数の値は、yN(=CN(N))で一定であるとする。
【1303】
ここで、上述のように、イメージセンサにおいて露光が開始されるときの、処理単位以外の領域(厳密には、x<0とx>Nの領域)に射影される光信号関数F(x)の値は一定値であるとする仮定を、フラット仮定という。なお、フラット仮定は必須ではない。即ち、イメージセンサにおいて露光が開始されるときの、処理単位以外に射影される光信号関数F(x)の値は、一定値とする他、例えば、スプライン関数で近似すること等が可能である。
【1304】
また、以下においては、説明を簡単にするため、露光時間を1とする。
【1305】
次に、処理単位の画素#kの画素値Ykを用い、図125の物理モデルに基づき、光信号関数F(x)を推定する方法、即ち、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)を求める方法について説明する。
【1306】
まず、処理単位のあるx方向の範囲を、始点をαとするとともに、終点をβとして、範囲(α,β)と表す。
【1307】
光信号関数F(x)が移動せずに静止している場合、範囲(α,β)に、スプライン関数Ck(x)により近似される光信号関数F(x)に対応する光信号が射影されることにより、その範囲(α,β)の領域において露光時間にチャージされる電荷によって得られる画素値zは、スプライン関数Ck(x)を、範囲(α,β)で積分した積分値として、次式で表すことができる。但し、ここでは、露光時間を1とする。
【1308】
【数139】
Figure 0004325296
・・・(139)
【1309】
但し、行列Aを、式(140)に示すように定義すると、式(139)におけるMkは、式(141)で表される。
【1310】
【数140】
Figure 0004325296
・・・(140)
【1311】
【数141】
Figure 0004325296
・・・(141)
【1312】
次に、図125に示したように、光信号関数F(x)が、露光時間においてx方向(ここでは、例えば、左から右方向)に、v画素分だけ等速で移動する場合、処理単位の画素#kにおいて露光時間にチャージされる電荷となる光信号関数F(x)の範囲は、図126に斜線で示すように表すことができる。
【1313】
即ち、図126は、横方向を処理単位の画素が並ぶx方向とし、手前方向を露光時間とするとともに、縦方向をレベルとして、光信号関数F(x)のレベルを示している。
【1314】
いま、説明を簡単にするために、図126において、処理単位の各画素#kのx方向の中心位置(x=k)における、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)の値ykだけに注目する。
【1315】
光信号関数F(x)は、1である露光時間の間に、左から右方向に、v画素分(以下、適宜、動き量vという)だけ等速で移動する。従って、画素#kに対しては、図126に示すように、露光の開始時には、値ykの光信号が射影され、その後、光信号関数F(x)が左から右に移動することにより、左隣の画素#k−1に射影されていた値yk-1の光信号が射影される。さらに時間の経過に伴い、光信号関数F(x)が左から右に移動することにより、画素#kに対して、さらに左の画素#k−2に射影されていた値yk-2の光信号が射影され、以下、同様にして、時間の経過に伴う光信号関数F(x)の移動によって、より左の画素に射影されていた光信号が、画素#kに射影される。
【1316】
図126において、点線は、値ykの光信号が、露光時間の間に、動き量vだけ等速で移動するときの軌跡を表している。また、図126において、斜線を付してある平行四辺形は、露光時間の間に、画素#kに射影される光信号の範囲、即ち、画素#kにおいて、露光時間の間に行われる光信号のx方向と時間方向の積分の範囲(積分範囲)を表している。
【1317】
画素#kの画素値Ykは、その画素#kの左端(x=k−0.5)から、その右端(x=k+0.5)までの範囲に、露光時間の間に射影された光信号によってチャージされる電荷に対応する値となる。図126において斜線を付してある積分範囲の横方向の範囲は、画素#kの左端(x=k−0.5)から、その右端(x=k+0.5)までの範囲を表し、積分範囲の斜め方向(手前方向)の範囲は、露光時間を表す。
【1318】
光信号が移動する場合、画素#kにおいては、空間混合とともに、時間混合が生じる。即ち、光信号が時間の経過に伴って移動するため、画素#kでは、積分すべき光信号のx方向の範囲が、時刻ごとに変化する。図126において、値yk'の光信号は、その移動軌跡を表す点線が、斜線を付してある画素#kについての積分範囲に位置しているときに、その画素#kにおける積分の対象となる。
【1319】
図127は、水平方向をx方向とするとともに、垂直方向を露光時間として、画素#kについての積分範囲を示している。即ち、図127は、図126に斜線を付して示した積分範囲を、x方向と露出時間の方向とで規定される平面に垂直な方向から見たものである。
【1320】
ここで、後述する図128乃至図130、および図132乃至図134においても、図127と同様に、水平方向をx方向とするとともに、垂直方向を露光時間として、画素#kについての積分範囲を示してある。
【1321】
画素#kの画素値Ykは、図127に示す積分範囲において、光信号を近似するスプライン関数Ck'(x)を積分することにより得られるが、その画素値Ykの成分(以下、適宜、画素値成分という)は、図127に示すS1,S2,S3,p,S4,p(p=1,2,・・・)の4種類に分けることができる。
【1322】
そこで、画素値Ykの4種類の画素値成分S1,S2,S3,p,S4,pそれぞれの算出方法について説明する。
【1323】
図128は、画素値Ykの画素値成分S1を算出するための積分範囲を示している。なお、図128は、図127に示した積分範囲から、その一部を取り出したものである。
【1324】
画素値成分S1は、露光開始時に、画素#kのx方向の中心位置から、その右隣の画素#k+1のx方向の中心位置までに射影される光信号を近似するスプライン関数Ck+1(x)を積分することにより求めることができる。
【1325】
スプライン関数Ck+1(x)は、図128に示すように、その左側の端点が、露光開始時に、画素#kのx方向の中心位置(x=k)に位置し、1である露光時間の間に、動き量vだけ左から右方向に移動する。また、スプライン関数Ck+1(x)は、その左側の端点が、0.5だけ、左から右に移動すると、画素#kについての積分範囲に含まれなくなる。スプライン関数Ck+1(x)は、1である露光時間の間に動き量vだけ移動するから、0.5だけ移動するのに要する時間は、1/(2v)(=0.5/v)である。
【1326】
従って、スプライン関数Ck+1(x)が、画素#kについての積分範囲に含まれる時間tの範囲は、次式に示すように、0から1/(2v)までの範囲である。但し、露光の開始時刻を0とする。
【1327】
【数142】
Figure 0004325296
・・・(142)
【1328】
また、スプライン関数Ck+1(x)は、露光開始時刻において、x=kから、x=k+0.5までの範囲が、画素#kについての積分範囲に含まれる。
【1329】
そして、スプライン関数Ck+1(x)は、1である露光時間の間に、動き量vだけ左から右方向に移動するから、露光開始時刻を0とすると、露光開始後のある時刻tにおいては、スプライン関数Ck+1(x)は、図128に示すように、vtだけ左から右方向に移動する。従って、時刻tにおいて、画素#kについての積分範囲に含まれるスプライン関数Ck+1(x)の範囲は、x=kから、x=k+0.5−vtまでとなる。即ち、スプライン関数Ck+1(x)が、画素#kについての積分範囲に含まれるx方向の範囲の始点(左側の点)をαとするとともに、終点(右側の点)をβと表すこととすると、始点αと終点βは、次式で表される。
【1330】
【数143】
Figure 0004325296
・・・(143)
【1331】
画素値Ykの画素値成分S1は、式(142)で表される時間の範囲と、式(143)で表されるx方向の範囲とで、スプライン関数Ck+1(x)を積分することにより、次式にしたがって求めることができる。
【1332】
【数144】
Figure 0004325296
・・・(144)
【1333】
次に、図129は、画素値Ykの画素値成分S2を算出するための積分範囲を示している。なお、図129は、図127に示した積分範囲から、その一部を取り出したものである。
【1334】
画素値成分S2は、露光開始時に、画素#kのx方向の中心位置から、その左隣の画素#k−1のx方向の中心位置までに射影される光信号を近似するスプライン関数Ck(x)を、その右端が画素#kについての積分範囲内に存在する時間内において積分することにより求めることができる。
【1335】
スプライン関数Ck(x)は、図129に示すように、その右側の端点が、露光開始時に、画素#kのx方向の中心位置(x=k)に位置し、1である露光時間の間に、動き量vだけ左から右方向に移動する。また、スプライン関数Ck(x)の右端の端点は、0.5だけ、左から右に移動すると、画素#kについての積分範囲に含まれなくなる。スプライン関数Ck+1(x)は、1である露光時間の間に動き量vだけ移動するから、0.5だけ移動するのに要する時間は、1/(2v)(=0.5/v)である。
【1336】
従って、スプライン関数Ck(x)の右端の端点が、画素#kについての積分範囲に含まれる時間tの範囲は、次式に示すように、0から1/(2v)までの範囲である。
【1337】
【数145】
Figure 0004325296
・・・(145)
【1338】
また、スプライン関数Ck(x)は、露光開始時刻において、x=k−0.5から、x=kまでの範囲が、画素#kについての積分範囲に含まれる。
【1339】
そして、スプライン関数Ck(x)は、1である露光時間の間に、動き量vだけ左から右方向に移動するから、露光開始時刻を0とすると、露光開始後のある時刻tにおいては、スプライン関数Ck(x)は、図129に示すように、vtだけ左から右方向に移動する。従って、時刻tにおいて、画素#kについての積分範囲に含まれるスプライン関数Ck(x)の範囲は、x=k−0.5−vtから、x=kまでとなる。即ち、スプライン関数Ck(x)が、式(145)で示される時間内のある時刻tにおいて画素#kについての積分範囲に含まれるx方向の範囲の始点(左側の点)をαとするとともに、終点(右側の点)をβと表すこととすると、始点αと終点βは、次式で表される。
【1340】
【数146】
Figure 0004325296
・・・(146)
【1341】
画素値Ykの画素値成分S2は、式(145)で表される時間の範囲と、式(146)で表されるx方向の範囲とで、スプライン関数Ck(x)を積分することにより、次式にしたがって求めることができる。
【1342】
【数147】
Figure 0004325296
・・・(147)
【1343】
次に、図130は、画素値Ykの画素値成分S3,pを算出するための積分範囲を示している。なお、図130は、図127に示した積分範囲から、その一部を取り出したものである。
【1344】
ここで、図131を参照して、画素値Ykの画素値成分S3,pを算出するための積分の対象となる、スプライン関数Ck+1(x)以外のスプライン関数Ck'(x)について説明する。
【1345】
なお、図131は、図126と同様に、横方向を処理単位の画素が並ぶx方向とし、手前方向を露光時間とするとともに、縦方向をレベルとして、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数のレベルを示している。
【1346】
スプライン関数は、露光開始後、左から右方向に移動していく。そして、露光時間の間の移動によって、図131において斜線を付して示す画素#kについての積分範囲内に入ることがあるスプライン関数が、画素値Ykの画素値成分S3,pを算出するための積分の対象となる、スプライン関数Ck+1(x)以外のスプライン関数Ck'(x)ということになる。
【1347】
上述のように、スプライン関数は、露光開始後、左から右方向に移動していくから、その移動によって、左端が、画素#kについての積分範囲内に入ることがある、スプライン関数Ck+1(x)以外のスプライン関数Ck'(x)は、露光開始時に、プライン関数Ck+1(x)の左側にあるスプライン関数Ck-p+1(x)に限られる。なお、変数pは1以上の整数である。
【1348】
ここで、スプライン関数Ck-p+1(x)は、図131に示すように、露光開始時において、x=k−pからx=k−p+1までの範囲に存在する。
【1349】
スプライン関数Ck-p+1(x)は、露光時間の間に、x方向(左から右方向)に、動き量vだけ移動するから、露光開始時にx=k−pの位置にあるスプライン関数Ck-p+1(x)の左端は、露光時間の経過直後には、x=k−p+vの位置に移動する。
【1350】
従って、露光時間の間に、スプライン関数Ck-p+1(x)の左端が画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に入り、その右端の位置(x=k+0.5)以降に移動するスプライン関数Ck-p+1(x)は、変数pが、次式を満たすものとなる。
【1351】
【数148】
Figure 0004325296
・・・(148)
【1352】
式(148)を、pについて整理すると、次式が得られる。
【1353】
【数149】
Figure 0004325296
・・・(149)
【1354】
式(149)から、露光時間の間に、スプライン関数Ck-p+1(x)の左端が画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に入り、その右端の位置(x=k+0.5)以降に移動するスプライン関数Ck-p+1(x)は、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)となる。なお、[v−0.5]は、v−0.5以下の最大の整数を表す。
【1355】
そこで、まず、画素値Ykの画素値成分S3,pを求めるための積分の対象となるスプライン関数のうちの、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の積分について説明する。
【1356】
上述したように、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)は、露光時間の間に、その左端が画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に入り、その右端の位置(x=k+0.5)以降に移動する。従って、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)は、画素#kについての積分範囲において、画素#kのx方向の幅、即ち、ここでは1だけ移動する。動き量vで、1だけ移動するのに要する時間は、1/vであるから、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の左端の端点が、画素#kについての積分範囲に含まれる時間tの範囲は、図130に示すように、0から1/vまでの範囲であり、次式で表すことができる。
【1357】
【数150】
Figure 0004325296
・・・(150)
【1358】
なお、ここでは、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)が、動き量vで移動し、その左端の端点が、画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に到達する時刻tを0とする。
【1359】
時刻tが0であるとき、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)は、そのx=k−pから、x=k−p+1の範囲が、画素#kについての積分範囲に存在する。そして、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)は、その左端の端点が、画素#kについての積分範囲の右端(x=k+0.5)に到達するまでのある時刻tにおいて、時刻tが0であるときの位置からvtだけ左から右方向に移動する。従って、0である時刻から、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の左端の端点が、画素#kについての積分範囲の右端(x=k+0.5)に到達するまでのある時刻tにおいて、画素#kについての積分範囲に存在するp=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)は、x=k−pから、x=−vt+k−p+1までの範囲となる。
【1360】
即ち、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の左端の端点が、画素#kについての積分範囲に存在する間のある時刻tにおいて、そのスプライン関数Ck-p+1(x)が画素#kについての積分範囲に含まれるx方向の範囲の始点(左側の点)をαとするとともに、終点(右側の点)をβと表すこととすると、始点αと終点βは、次式で表される。
【1361】
【数151】
Figure 0004325296
・・・(151)
【1362】
画素値Ykの画素値成分S3,pのうち、p=1,2,・・・,[v−0.5]のものは、式(150)で表される時間の範囲と、式(151)で表されるx方向の範囲とで、スプライン関数Ck-p+1(x)を積分することにより、次式にしたがって求めることができる。
【1363】
【数152】
Figure 0004325296
・・・(152)
【1364】
次に、図132は、画素値Ykの画素値成分S3,pを算出するための積分範囲を示している。なお、図132は、図127に示した積分範囲から、その一部を取り出したものである。
【1365】
上述のように、いまの場合、スプライン関数は、露光開始後、左から右方向に移動していくから、その移動によって、画素#kについての積分範囲内に入ることがある、スプライン関数Ck+1(x)以外のスプライン関数Ck'(x)は、露光開始時に、プライン関数Ck+1(x)の左側にあるスプライン関数Ck-p+1(x)に限られる。なお、変数pは1以上の整数である。
【1366】
ここで、スプライン関数Ck-p+1(x)は、図131に示したように、露光開始時において、x=k−pからx=k−p+1までの範囲に存在する。
【1367】
スプライン関数Ck-p+1(x)は、露光時間の間に、x方向(左から右方向)に、動き量vだけ移動するから、露光開始時にx=k−pの位置にあるスプライン関数Ck-p+1(x)の左端は、露光時間の経過直後には、x=k−p+vの位置に移動する。
【1368】
従って、露光時間の間に、スプライン関数Ck-p+1(x)の左端が画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に入るが、その積分範囲からぬけない、つまり、画素#kについての積分範囲の右端の位置(x=k+0.5)までは移動しないスプライン関数Ck-p+1(x)は、変数pが、次式を満たすものとなる。
【1369】
【数153】
Figure 0004325296
・・・(153)
【1370】
式(153)を、pについて整理すると、次式が得られる。
【1371】
【数154】
Figure 0004325296
・・・(154)
【1372】
変数pは整数値なので、式(154)を満たす変数pは、次式で表すことができる。
【1373】
【数155】
Figure 0004325296
・・・(155)
【1374】
なお、式(155)において、[v+0.5]は、v+0.5以下の最大の整数を表す。
【1375】
式(155)から、露光時間の間に、スプライン関数Ck-p+1(x)の左端が画素#kについての積分範囲に入り、その積分範囲からぬけないスプライン関数Ck-p+1(x)は、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)となる。
【1376】
そこで、画素値Ykの画素値成分S3,pを求めるための積分の対象となるスプライン関数のうちの、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の積分について説明する。
【1377】
上述したように、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)は、露光時間の間に、その左端が、画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に入る。そして、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の左端が、画素#kについての積分範囲内のある位置に移動した時点で、露光が終了する。
【1378】
いま、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)が、動き量vで移動し、その左端の端点が、画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に到達する時刻tを0とする。この場合、露光終了時までに、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の左端の端点が、画素#kについての積分範囲に含まれる時間tの範囲は、図132に示すようになる。
【1379】
即ち、露光終了時までに、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の左端の端点が、画素#kについての積分範囲に含まれる時間tの範囲は、画素値成分S1を算出するためにのスプライン関数Ck+1(x)を積分する時間1/(2v)と、画素値成分S3,pを算出するためのp=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)を積分する時間1/vの総和とを、露出時間である1から減算した時間となる。
【1380】
p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の数は、p=[v+0.5]のとき、p−1で表されるから、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)を積分する時間1/vの総和は、(p−1)/vである。
【1381】
従って、スプライン関数Ck+1(x)を積分する時間1/(2v)と、画素値成分S3,pを算出するためのp=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)を積分する時間1/vの総和(p−1)/vとを、露出時間である1から減算した時間は、1−(p−1/2)/v(=1−1/(2v)−(p−1)/v)となる。
【1382】
以上から、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の左端の端点が、画素#kについての積分範囲に含まれる時間tの範囲は、次式に示すように、0から1−(p−1/2)/vまでの範囲である。
【1383】
【数156】
Figure 0004325296
・・・(156)
【1384】
また、時刻tが0であるとき、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)は、そのx=k−pから、x=k−p+1の範囲が、画素#kについての積分範囲に存在する。そして、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)は、露光が終了するまでのある時刻tにおいて、時刻tが0であるときの位置からvtだけ左から右方向に移動する。従って、0である時刻から、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の左端の端点が、露光が終了するまでのある時刻tにおいて、画素#kについての積分範囲に存在するp=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)は、x=k−pから、x=−vt+k−p+1までの範囲となる。
【1385】
即ち、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p+1(x)の左端の端点が、画素#kについての積分範囲に存在する間のある時刻tにおいて、そのスプライン関数Ck-p+1(x)が画素#kについての積分範囲に含まれるx方向の範囲の始点(左側の点)をαとするとともに、終点(右側の点)をβと表すこととすると、始点αと終点βは、次式で表される。
【1386】
【数157】
Figure 0004325296
・・・(157)
【1387】
画素値Ykの画素値成分S3,pのうち、p=[v+0.5]のものは、式(156)で表される時間の範囲と、式(157)で表されるx方向の範囲とで、スプライン関数Ck-p+1(x)を積分することにより、次式にしたがって求めることができる。
【1388】
【数158】
Figure 0004325296
・・・(158)
【1389】
次に、図133は、画素値Ykの画素値成分S4,pを算出するための積分範囲を示している。なお、図133は、図127に示した積分範囲から、その一部を取り出したものである。
【1390】
ここで、画素値Ykの画素値成分S4,pを算出するための積分の対象となる、スプライン関数Ck+1(x)以外のスプライン関数Ck'(x)は、露光開始時に、右端が、画素#kについての積分範囲の左端よりも左にあるスプライン関数Ck-p(x)に限られる。
【1391】
ここで、スプライン関数Ck-p(x)は、露光開始時において、x=k−p−1からx=k−pまでの範囲に存在する。
【1392】
スプライン関数Ck-p(x)は、露光時間の間に、x方向(左から右方向)に、動き量vだけ移動するから、露光開始時にx=k−pの位置にあるスプライン関数Ck-p(x)の右端は、露光時間の経過直後には、x=k−p+vの位置に移動する。
【1393】
従って、露光時間の間に、スプライン関数Ck-p(x)の右端が画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に入り、その右端の位置(x=k+0.5)以降に移動するスプライン関数Ck-p(x)は、変数pが、上述の式(148)と同様の式k−p+v≧k+0.5、即ち、式(v−0.5)≧pを満たすものとなる。
【1394】
以上から、露光時間の間に、スプライン関数Ck-p(x)の右端が画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に入り、その右端の位置(x=k+0.5)以降に移動するスプライン関数Ck-p+1(x)は、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)となる。なお、[v−0.5]は、v−0.5以下の最大の整数を表す。
【1395】
そこで、まず、画素値Ykの画素値成分S4,pを求めるための積分の対象となるスプライン関数のうちの、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の積分について説明する。
【1396】
上述したように、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)は、露光時間の間に、その右端が画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に入り、その右端の位置(x=k+0.5)以降に移動する。従って、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)は、画素#kについての積分範囲において、画素#kのx方向の幅、即ち、ここでは1だけ移動する。動き量vで、1だけ移動するのに要する時間は、1/vであるから、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の右端の端点が、画素#kについての積分範囲に含まれる時間tの範囲は、図133に示すように、0から1/vまでの範囲であり、次式で表すことができる。
【1397】
【数159】
Figure 0004325296
・・・(159)
【1398】
なお、ここでは、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)が、動き量vで移動し、その右端の端点が、画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に到達する時刻tを0とする。
【1399】
p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の右端の端点は、時刻t=0において、画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に到達し、その後、時間tだけ経過すると、vtだけ左から右方向に移動する。そして、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の右端の端点が、画素#kについての積分範囲の右端(x=k+0.5)に到達した場合、そのx=k−p−1から、x=k−pの範囲が、画素#kについての積分範囲に存在する。
【1400】
従って、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の右端の端点が、画素#kについての積分範囲の右端(x=k+0.5)に到達するまでのある時刻tにおいて、画素#kについての積分範囲に存在するp=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)は、x=k−p−vtから、x=k−pまでの範囲となる。
【1401】
即ち、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の右端の端点が、画素#kについての積分範囲に存在する間のある時刻tにおいて、そのスプライン関数Ck-p(x)が画素#kについての積分範囲に含まれるx方向の範囲の始点(左側の点)をαとするとともに、終点(右側の点)をβと表すこととすると、始点αと終点βは、次式で表される。
【1402】
【数160】
Figure 0004325296
・・・(160)
【1403】
画素値Ykの画素値成分S4,pのうち、p=1,2,・・・,[v−0.5]のものは、式(159)で表される時間の範囲と、式(160)で表されるx方向の範囲とで、スプライン関数Ck-p(x)を積分することにより、次式にしたがって求めることができる。
【1404】
【数161】
Figure 0004325296
・・・(161)
【1405】
次に、図134は、画素値Ykの画素値成分S4,pを算出するための積分範囲を示している。なお、図134は、図127に示した積分範囲と同様の図である。
【1406】
上述のように、いまの場合、スプライン関数は、露光開始後、左から右方向に移動していくから、その移動によって、右端が、画素#kについての積分範囲内に入ることがある、スプライン関数Ck+1(x)以外のスプライン関数Ck'(x)は、露光開始時に、プライン関数Ck(x)の左側にあるスプライン関数Ck-p(x)に限られる。なお、変数pは1以上の整数である。
【1407】
ここで、スプライン関数Ck-p(x)は、露光開始時において、x=k−p−1からx=k−pまでの範囲に存在する。
【1408】
スプライン関数Ck-p(x)は、露光時間の間に、x方向(左から右方向)に、動き量vだけ移動するから、露光開始時にx=k−pの位置にあるスプライン関数Ck-p(x)の右端は、露光時間の経過直後には、x=k−p+vの位置に移動する。
【1409】
従って、露光時間の間に、スプライン関数Ck-p(x)の右端が画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に入るが、その積分範囲からぬけない、つまり、画素#kについての積分範囲の右端の位置(x=k+0.5)までは移動しないスプライン関数Ck-p(x)は、変数pが、上述の式(153)と同様の式k−0.5<k−p+v<k+0.5、即ち、p=[v+0.5]を満たすものとなる。なお、[v+0.5]は、v+0.5以下の最大の整数を表す。
【1410】
つまり、露光時間の間に、スプライン関数Ck-p(x)の右端が画素#kについての積分範囲に入り、その積分範囲からぬけないスプライン関数Ck-p(x)は、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)となる。
【1411】
そこで、画素値Ykの画素値成分S4,pを求めるための積分の対象となるスプライン関数のうちの、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の積分について説明する。
【1412】
上述したように、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)は、露光時間の間に、その右端が、画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に入る。そして、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の右端が、画素#kについての積分範囲内のある位置に移動した時点で、露光が終了する。
【1413】
いま、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)が、動き量vで移動し、その左端の端点が、画素#kについての積分範囲の左端(x=k−0.5)に到達する時刻tを0とする。この場合、露光終了時までに、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の左端の端点が、画素#kについての積分範囲に含まれる時間tの範囲は、図134に示すようになる。
【1414】
即ち、図132で説明した場合と同様に、露光終了時までに、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の右端の端点が、画素#kについての積分範囲に含まれる時間tの範囲は、画素値成分S1を算出するためにのスプライン関数Ck+1(x)を積分する時間1/(2v)と、画素値成分S4,pを算出するためのp=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)を積分する時間1/vの総和とを、露出時間である1から減算した時間となる。
【1415】
p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の数は、p=[v+0.5]のとき、p−1で表されるから、p=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)を積分する時間1/vの総和は、(p−1)/vである。
【1416】
従って、スプライン関数Ck+1(x)を積分する時間1/(2v)と、画素値成分S4,pを算出するためのp=1,2,・・・,[v−0.5]のスプライン関数Ck-p(x)を積分する時間1/vの総和(p−1)/vとを、露出時間である1から減算した時間は、1−(p−1/2)/v(=1−1/(2v)−(p−1)/v)となる。
【1417】
以上から、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の右端の端点が、画素#kについての積分範囲に含まれる時間tの範囲は、次式に示すように、0から1−(p−1/2)/vまでの範囲である。
【1418】
【数162】
Figure 0004325296
・・・(162)
【1419】
また、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)は、露光時間内に、左から右方向に移動することにより、時刻tがt=0において、その右端が、画素#kについての積分範囲の左端に到達し、その後、時間tが経過すると、時刻tが0であるときの位置からvtだけ左から右方向に移動する。
【1420】
従って、x=k−p−1から、x=k−pまでのp=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の範囲の中で、時刻tにおいて画素#kについての積分範囲に存在する範囲は、x=k−p−vtから、x=k−pまでの範囲となる。
【1421】
即ち、p=[v+0.5]のスプライン関数Ck-p(x)の右端の端点が、画素#kについての積分範囲に存在する間のある時刻tにおいて、そのスプライン関数Ck-p(x)が画素#kについての積分範囲に含まれるx方向の範囲の始点(左側の点)をαとするとともに、終点(右側の点)をβと表すこととすると、始点αと終点βは、次式で表される。
【1422】
【数163】
Figure 0004325296
・・・(163)
【1423】
画素値Ykの画素値成分S4,pのうち、p=[v+0.5]のものは、式(162)で表される時間の範囲と、式(163)で表されるx方向の範囲とで、スプライン関数Ck-p(x)を積分することにより、次式にしたがって求めることができる。
【1424】
【数164】
Figure 0004325296
・・・(164)
【1425】
イメージセンサから得られる画素#kの画素値Ykは、式(144)の画素値成分S1、式(147)の画素値成分S2、式(152)および式(158)の画素値成分S3,p、並びに式(161)および式(164)の和であるから、次式により求めることができる。
【1426】
【数165】
Figure 0004325296
・・・(165)
【1427】
画素値Ykのサフィックスkは、0乃至Nの範囲のN+1個の整数値をとるから、式(165)によれば、N+1個の方程式をたてることができる。そして、求めるべき未知変数y0乃至yNも、N+1個であるから、式(165)から得られるN+1個の方程式を連立1次方程式として解くことにより、N+1個の未知変数y0乃至yN、ひいては、その変数y0乃至yNで定義されるスプライン関数C0(x)乃至CN(x)を求めることができる。
【1428】
即ち、式(165)よれば、式(144)、式(147)、式(152)、式(158)、式(161)、および式(164)を代入することにより、以下の式(166)乃至式(170)で表されるN+1個の方程式を得ることができる。
【1429】
【数166】
Figure 0004325296
・・・(166)
【1430】
【数167】
Figure 0004325296
・・・(167)
【1431】
但し、式(167)において、kは、1乃至P−1の範囲の整数である。また、Pは、v+0.5以下の最大の整数([v+0.5])である。
【1432】
【数168】
Figure 0004325296
・・・(168)
【1433】
但し、式(168)において、kは、Pである。
【1434】
【数169】
Figure 0004325296
・・・(169)
【1435】
但し、式(169)において、kは、P+1乃至N−1の範囲の整数である。
【1436】
【数170】
Figure 0004325296
・・・(170)
【1437】
但し、式(170)において、kは、Nである。
【1438】
式(166)乃至式(170)のN+1個の方程式を連立1次方程式として解くことにより、N+1個の未知変数y0乃至yN、ひいては、その変数y0乃至yNで定義されるスプライン関数C0(x)乃至CN(x)、即ち、処理単位に射影される実世界1の光信号に対応する光信号関数F(x)を近似するスプライン関数C0(x)乃至CN(x)を求めることができる。
【1439】
ところで、図125に示した物理モデルによれば、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が、イメージセンサの露光時間の間に、動き量vだけ連続的に水平方向(x方向)に移動することによって得られる軌跡としての曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、処理単位の画素#kのx方向の長さだけ積分することにより、その画素#kの画素値Ykが得られる。
【1440】
そして、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が、動き量vだけ連続的に水平方向(x方向)に移動するために、画素#kにおいて露光時間の間に積分されるスプライン関数Ck(x)のx方向の範囲が変化し、このように、画素#kにおいて露光時間の各時刻で積分されるスプライン関数Ck(x)のx方向の範囲が変化するために、画素#kにおける積分の結果得られる画素値Ykは、動きボケを有するものとなる。
【1441】
従って、画素#kの画素値Ykから、動きボケをなくすためには、画素#kにおいて露光時間の間に積分されるスプライン関数Ck(x)のx方向の範囲が変化しないようにすれば良い。
【1442】
即ち、画素#kについて、動きボケのない画素値をXkと表すこととすると、この動きボケのない画素値Xkは、例えば、図135に示すように、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が、露光時間の間、露光開始時刻における位置からx方向に移動しないとして得られる曲面(モデル)を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、処理単位の画素#kのx方向の長さだけ積分(再積分)することにより求めることができる。
【1443】
いま、露光時間を1とすれば、上述の積分は、スプライン関数Ck(x)を、画素#kのx方向の長さだけ積分することに等しい。従って、画素#kについて、動きボケのない画素値Xkは、上述の式(139)の積分範囲(α,β)を、画素#kのx方向の始端から終端(左端から右端)とすることにより求めることができる。即ち、動きボケのない画素値Xkは、次式により求めることができる。
【1444】
【数171】
Figure 0004325296
・・・(171)
【1445】
【数172】
Figure 0004325296
・・・(172)
【1446】
【数173】
Figure 0004325296
・・・(173)
【1447】
なお、式(172)において、kは、1乃至N−1の範囲の整数値である。また、動きボケのない画素値Xkを求めるのに、kが、0,1乃至N−1,Nである場合の3つの場合に分けるのは、上述のフラット仮定に起因する。即ち、処理単位の左端の画素#0と右端の画素#Nそれぞれにおいては、フラット仮定が影響し、このため、処理単位のその他の画素#1乃至#N−1における場合とは異なる式によって、画素値X0とXNが求められる。
【1448】
以上のように、光信号関数F(x)を推定し、その推定結果としての光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)を、時間変化がないとして積分することにより、実世界1に近い画素値Xk、即ち、ここでは、動きボケのない画素値Xkを得ることができる。
【1449】
ところで、式(171)乃至式(173)では、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)を、処理単位の画素#kのx方向の幅に亘って積分して、画素値Xkを求めるようにしたが、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)を、より細かい幅に亘って積分することにより、つまり、上述の式(139)の積分範囲(α,β)を画素#kのx方向の幅より細かい範囲とすることにより、より解像度の高い画素値を求めることができる。
【1450】
即ち、例えば、いま、画素#kについて、その画素#kをx方向に2分割した、仮想的な画素(仮想画素)を考え、その画素#kをx方向に2分割して得られる左側と右側の画素を、それぞれ仮想画素#k,leftと#k,rightと表す。さらに、仮想画素#k,leftと#k,rightの動きボケのない画素値を、それぞれ、Xk,leftとXk,rightと表す。
【1451】
動きボケのない画素値Xk,leftとXk,rightは、例えば、図136に示すように、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面(モデル)を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、処理単位の画素#kを分割した仮想画素#k,leftと#k,rightそれぞれのx方向の幅単位で積分(再積分)することにより求めることができる。
【1452】
従って、画素値Xk,leftとXk,rightは、次式によって求めることができる。
【1453】
【数174】
Figure 0004325296
・・・(174)
【1454】
【数175】
Figure 0004325296
・・・(175)
【1455】
【数176】
Figure 0004325296
・・・(176)
【1456】
【数177】
Figure 0004325296
・・・(177)
【1457】
【数178】
Figure 0004325296
・・・(178)
【1458】
【数179】
Figure 0004325296
・・・(179)
【1459】
式(174)乃至式(179)により求められる画素値Xk,leftとXk,rightによれば、横方向の画素数が元の画素数の2倍の画像(横方向2倍密の画像)を得ることができるので、動きボケが除去され、さらに高解像度の画像を得ることができる。
【1460】
ここで、上述の場合には、画素#kを2分割するようにしたが、画素#kの分割数は2分割に限定されるものではない。また、ここでは、画素#kを分割することにより、元の画像(入力画像)よりも高解像度の画像を得るようにしたが、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を積分する積分範囲を調整することにより、所望の解像度の画像を得ることができる。即ち、露出時間を1とすれば、式(139)の積分範囲(α,β)を所望の値とすることにより、所望の解像度の画像を得ることができる。
【1461】
そして、画素#kを分割することによって得られる仮想画素の画素値を求め、高解像度の画像を得る場合には、その画像を構成する仮想画素の境界は、元の画素#kの境界の制約を受けることになるが、式(139)の積分範囲(α、β)を直接調整することにより所望の解像度の画像を得る場合には、そのような制約を受けずに済む。
【1462】
なお、ここでは、x方向と時間t方向の積分効果による混合(空間混合と時間混合)を考慮し、スプライン関数によって近似する実世界1の光信号を推定しているので、この推定手法は、上述の2次元近似手法(および2次元再積分手法)に属する。従って、実世界1の光信号をスプライン関数により近似して、実世界1の光信号を推定する方法は、2次元近似手法で説明したように、x方向とt方向の他、y方向とt方向、またはx方向とy方向の、時空間方向の任意の2次元の方向の積分効果による混合を考慮して行うことが可能である。例えば、ある斜め方向に続いているという定常性を有する細線が入力画像に表示されている場合に、x方向とy方向の積分効果による混合を考慮して処理を行うときには、細線が、y方向に1画素進んだときにx方向に進む画素数を、その細線の方向θを表す定常性情報として、式(166)乃至式(170)を、その動き量vに代えて方向θを用いて演算することにより、実世界1を近似するスプライン関数を求めることが可能である。
【1463】
さらに、実世界1の光信号をスプライン関数により近似して、実世界1の光信号を推定する方法は、2次元近似手法の他、上述した1次元近似手法(および1次元再積分手法)や、3次元近似手法(および3次元再積分手法)にも適用可能である。即ち、x方向、y方向、またはt方向のみの積分効果による混合を考慮し、実世界1の光信号をスプライン関数により近似して、実世界1の光信号を推定し、高画質の画像を生成することができる。また、x方向、y方向、およびt方向のすべての方向の積分効果による混合を考慮し、実世界1の光信号をスプライン関数により近似して、実世界1の光信号を推定し、高画質の画像を生成することができる。
【1464】
次に、図137は、上述したように、スプライン関数によって実世界1の光信号(光信号関数F(x))を近似することにより、動きボケがなく、さらには、必要に応じて解像度の高い画像を生成する図120の動きボケ調整部17035の構成例を示している。
【1465】
図137において、動きボケ調整部17035は、物理モデル適用部17051、物理モデル値取得部17052、および再混合部17053から構成されている。そして、図137では、図120の動きボケ調整量出力部17032から供給される定常性情報としての動き量v、前景背景分離部17033から供給される前景成分、および処理単位決定部17034から供給される処理単位情報が、物理モデル適用部17051に供給されるようになっている。
【1466】
物理モデル適用部17051は、モデル化部17061、方程式作成部17062、および連立方程式取得部17063から構成されている。
【1467】
モデル化部17061には、図120の動きボケ調整量出力部17032から供給される定常性情報としての動き量vと、処理単位決定部17034から供給される処理単位情報とが供給される。
【1468】
モデル化部17061は、処理単位決定部17034から供給される処理単位情報に基づいて、処理単位を構成する画素数(例えば、図125の物理モデルでは、N+1画素)を認識する。さらに、モデル化部17061は、処理単位を構成する画素数と、動き量vとから、例えば、式(166)乃至式(170)におけるP(=[v+0.5])などの図125の物理モデルの情報を求め、さらに、その処理単位を構成する画素数と動き量vを、物理モデルの情報に含めて、方程式作成部17062に供給する。また、モデル化部17061は、その処理単位の入力画像における位置を認識し、その位置を表す情報を、方程式作成部17062を介して、連立方程式取得部17063に供給する。
【1469】
方程式作成部17062は、モデル化部17061から供給される物理モデルの情報から、式(166)乃至式(170)に示した方程式を作成し、連立方程式取得部17063に供給する。なお、方程式作成部17062で作成される式(166)乃至式(170)の方程式は、その変数vに、図120の動きボケ調整量出力部17032からモデル化部17061に供給された定常性情報としての動き量vの具体的な値が代入されたものである。
【1470】
連立方程式取得部17063は、モデル化部17061から方程式作成部17062を介して供給される処理単位の入力画像における位置を表す情報から、処理単位の入力画像における位置を認識し、その位置に基づいて、図120の前景背景分離部17033から供給される前景成分から、処理単位の画素の画素値を取得する。さらに、連立方程式取得部17063は、方程式作成部17062から供給される式(166)乃至式(170)の方程式に対して、処理単位の画素の画素値を代入し、これにより、N+1個の連立方程式を取得して、物理モデル値取得部17052に供給する。
【1471】
物理モデル値取得部17052は、連立方程式演算部17064から構成され、連立方程式取得部17063から供給される連立方程式は、連立方程式演算部17064に供給される。連立方程式演算部17064は、連立方程式取得部17063から供給される連立方程式を演算し(解き)、これにより、実世界1の信号を近似する式(137)および式(138)のスプライン関数を定義するN+1個の変数ykを求め、再混合部17053に供給する。
【1472】
再混合部17053は、連立方程式演算部17064から供給される変数ykによって定義されるスプライン関数が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、例えば、処理単位の画素#kのx方向の幅などの所定の単位で積分(再積分)することにより、動きボケのない画素値を求めて出力する。
【1473】
なお、再混合部17053が、x方向の積分を、例えば、処理単位の画素#kのx方向の幅単位で行う場合には、式(171)乃至式(173)で表される画素値が求められ、その画素値の画像は、入力画像と同一の数の画素で構成される。また、再混合部17053が、x方向の積分を、例えば、処理単位の画素#kのx方向の幅の1/2単位で行う場合には、式(174)乃至式(179)で表される画素値が求められ、その画素値の画像は、水平方向の画素が入力画像の水平方向の画素の2倍の数の画素で構成される。
【1474】
次に、図138のフローチャートを参照して、図137の動きボケ調整部17035の処理について説明する。
【1475】
まず最初に、ステップS17051において、モデル化部17061は、図120の動きボケ調整量出力部17032から供給される定常性情報としての動き量vと、処理単位決定部17034から供給される処理単位情報を取得し、ステップS17052に進む。ステップS17052では、モデル化部17061は、ステップS17051で取得された処理単位情報が表す処理単位に射影された実世界1の光信号を、図125に示した物理モデルにモデル化する。
【1476】
即ち、モデル化部17061は、処理単位決定部17034から供給される処理単位情報に基づいて、処理単位を構成する画素数を認識する。さらに、モデル化部17061は、処理単位を構成する画素数と、ステップS17051で取得された動き量vとから、図125の物理モデルの情報を求め、その物理モデルの情報を、方程式作成部17062に供給して、ステップS17052からS17053に進む。
【1477】
ステップS17053では、方程式作成部17062は、モデル化部17061から供給される物理モデルの情報から、式(166)乃至式(170)に示した方程式を作成し、連立方程式取得部17063に供給して、ステップS17054に進む。
【1478】
なお、ステップS17052およびS17053の処理は、図120の処理単位決定部17034において決定される処理単位すべてについて行われる。
【1479】
ステップS17054では、連立方程式取得部17063は、図120の処理単位決定部17034において得られた処理単位のうちの、まだ注目処理単位としていない処理単位を、注目処理単位として選択し、その注目処理単位の画素の画素値Ykを、図120の前景背景分離部17033から供給される前景成分から取得して、ステップS17055に進む。ステップS17055では、連立方程式取得部17063は、方程式作成部17062から供給される注目処理単位についての式(166)乃至式(170)の方程式に対して、注目処理単位の画素の画素値Ykを代入し、これにより、注目処理単位の画素の数に等しい数の連立方程式を取得して、物理モデル値取得部17052に供給する。
【1480】
そして、ステップS17055からS17056に進み、連立方程式取得部17063は、図120の処理単位決定部17034において得られた処理単位すべてを、注目処理単位としたかどうかを判定し、まだしていないと判定した場合、ステップS17054に戻る。この場合、ステップS17054では、連立方程式取得部17063は、図120の処理単位決定部17034において得られた処理単位のうちの、まだ注目処理単位としていない処理単位を、注目処理単位として新たに選択し、以下、同様の処理を繰り返す。
【1481】
また、ステップS17056において、図120の処理単位決定部17034において得られた処理単位すべてを、注目処理単位としたと判定された場合、即ち、図120の処理単位決定部17034において得られた処理単位すべてについて、連立方程式が得られた場合、ステップS17057に進み、連立方程式演算部17064は、連立方程式取得部17063から供給される連立方程式を演算し(解き)、これにより、実世界1の信号を近似する式(137)および式(138)のスプライン関数を求め、再混合部17053に供給して、ステップS17058に進む。
【1482】
ステップS17058では、再混合部17053は、連立方程式演算部17064から供給されるスプライン関数を用いて再混合(再積分)を行う。即ち、再混合部17053は、連立方程式演算部17064から供給される、処理単位ごとに得られたスプライン関数それぞれについて、そのスプライン関数が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、例えば、処理単位の画素#kのx方向の幅などの所定の単位で積分(再積分)することにより、処理単位ごとに、動きボケのない画素値を求め、ステップS17058からS17059に進む。ステップS17059では、再混合部17053は、処理単位ごとに得られた動きボケのない画素値からなる画像、即ち、動きボケのない前景オブジェクトの画像を出力して処理を終了する。
【1483】
以上のように、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に実世界1の光信号が射影され、実世界1の光信号の定常性の一部が欠落した入力画像内の前景オブジェクトの動き量を設定し、入力画像の空間方向のうちのx方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した実世界1の光信号に対応する光信号関数(実世界関数)F(x)が、前景オブジェクトの動き量に対応して時間方向に位相シフトしながら移動することを表す物理モデルを、x方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、光信号関数F(x)を推定するようにしたので、その推定結果として、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数を求めることができる。
【1484】
さらに、その光信号関数F(x)を近似するスプライン関数を、x方向および時間方向に、所定の単位で積分(再積分)することにより、入力画像内の前景オブジェクトの動きボケを除去した画素値でなる画像を生成するようにしたので、入力画像から動きボケを除去した画像を得ることができる。
【1485】
即ち、一般に、通常のテレビジョン放送や映画などの撮影では、ある程度の動きボケを許しており、また、カメラのシャッタ時間などを調整して、動きボケを視覚効果として利用することもある。しかしながら、カメラによる撮像によって得られた画像に、動きボケが生じている場合、その動きボケを含む画像から動きボケを除去することは基本的に困難であり、得られた画像に、必要以上の動きボケが生じてしまっている場合には、その動きボケが生じている画像は、撮影ミスとして処分される。
【1486】
また、動きボケを除去する従来の方法として、その動き方向と動き量に最適なウィナーフィルタを用いて処理する方法がある。しかしながら、ウィナーフィルタを用いる処理は、理想状態では(理想的な画像に対しては)効果を発揮するものの、量子化され、さらには、ノイズを有するような現実の画像に対しては破綻を生じることがある。
【1487】
これに対して、上述したように、光信号関数F(x)を推定し、その推定結果としての、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数を積分する場合には、量子化され、さらには、ノイズを有するような現実の画像からであっても、動きボケを除去した鮮明な画像を得ることが可能である。
【1488】
なお、光信号関数F(x)を推定し、その推定結果としての、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数を積分することにより動きボケを除去する手法は、動きボケの原因となっている前景オブジェクトなどの動き量が、画素の大きさより小さい場合であっても、動きボケを精度良く除去することができる。
【1489】
また、光信号関数F(x)を推定し、その推定結果としての、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数を積分する場合には、動きボケを除去することができるとともに、スプライン関数を積分するときの積分範囲の設定によって、得られる画像の画素数を増加させることができる。即ち、画像の画素数は、例えば、クラス分類適応処理や線形補間処理などによって増加させることができるが、例えば、ウィナーフィルタを用いて処理することにより動きボケを除去した画像に対して、クラス分類適応処理や線形補間処理を施すと、ウィナーフィルタによる処理によって生じた破綻が強調されることがある。これに対して、光信号関数F(x)を推定し、その推定結果としての、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数を積分する場合には、クラス分類適応処理や線形補間処理などを行わなくても、動きボケの除去と、得られる画像の画素数の増加とを、同時に行うことができる。ここで、画像の画素数の増加により、画像の解像度を向上させ、あるいは画像を拡大することができる。また、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数を積分するときの積分範囲の設定によっては、得られる画像の画素の数、即ち、空間方向の解像度を向上させる他、時間方向の解像度を向上させることも可能である。
【1490】
なお、光信号関数F(x)の推定にあたっては、滑らかに変化する関数(個々では、スプライン関数)により実世界1の光信号を近似し、その滑らかに変化する関数が連続的に移動するという、図125に示した物理モデルを採用する他、画素の幅単位で一定値をとる階段状の関数により実世界1の光信号を近似し、その階段状の関数が、画素の幅単位で離散的に移動するという物理モデルを採用することも可能である。この場合、画素に射影される実世界1の光信号を近似する階段状の関数の値は画素内で一定であるから、空間混合は生じないが、階段状の関数が、画素の幅単位で離散的に移動するから、その移動前と移動後では、画素に、階段状の関数の異なる値が射影されるので、時間混合は生じる。従って、画素の幅単位で一定値をとる階段状の関数により実世界1の光信号を近似し、その階段状の関数が、画素の幅単位で離散的に移動するという物理モデルは、空間混合は考慮せず、時間混合だけを考慮したモデルということができる。
【1491】
階段状の関数を用いた物理モデルは、滑らかに変化する関数を用いた物理モデルと同様に、時間混合を考慮しているので、階段状の関数を用いた物理モデルを採用した場合であっても、動きボケを除去することができる。但し、滑らかに変化する関数を用いた物理モデルは、時間混合のみならず、空間混合も考慮しているので、滑らかに変化する関数を用いた物理モデルを採用した場合の方が、階段状の関数を用いた物理モデルを採用した場合よりも、精度の高い処理を行うことができる。
【1492】
次に、例えば、イメージセンサの1つの画素などの小領域に射影される実世界1の光信号に注目した場合、そのような小領域における光信号の変化は、一般に小さい。そこで、実世界1の光信号の推定にあたり、画素における光信号の変化(暴れ)が小さいという拘束条件を導入することにより、より精度良く実世界1の光信号を推定することが可能となる。
【1493】
いま、例えば、上述したように、実世界1の光信号を3次のスプライン関数で近似し、画素における光信号の変化が小さいという拘束条件を導入することとする。ここで、画素における光信号の変化が小さいということは、画素より細かい解像度に相当する部分の画素値の変化が小さいということである。また、画素における光信号の変化が小さいということは、その画素内のある位置における画素値の変化量を画素内傾斜ということとすると、画素内傾斜が小さいということでもある。
【1494】
画素における光信号の変化が小さいという拘束条件は、例えば、その画素における光信号の最大値と最小値との差を所定の閾値以下(未満)とする式で記述することができる。
【1495】
ここで、このような拘束条件を記述する式を、以下、適宜、拘束条件式という。
【1496】
画素における光信号の最大値と最小値との差を所定の閾値以下とする拘束条件式を記述するには、1画素における光信号の最大値と最小値が必要である。しかしながら、上述したような3次のスプライン関数によれば、1画素における実世界1の光信号は、3次の式で表される曲線に相当する曲線で近似されるため、そのような曲線の、画素における最大値と最小値を用いて、拘束条件式を記述するのは困難である。
【1497】
そこで、ここでは、例えば、図139に示すように、1画素の領域を3等分して得られる3つの小領域における画素値が等しいとする拘束条件式を、画素内の光信号の変化が小さいという拘束条件を記述する拘束条件式として採用することとする。
【1498】
ここで、1画素を、3以外の数の小領域に分割し、その小領域それぞれの画素値が等しいとする拘束条件式を採用することも可能である。但し、実世界1の光信号を近似するスプライン関数として、3次のスプライン関数を用いる場合には、1画素は、3以上の小領域に分割する必要がある。
【1499】
図139は、水平方向をx方向とするとともに、垂直方向を実世界1の光信号のレベル方向として、その光信号を近似する3次のスプライン関数を示している。
【1500】
いま、ある画素のx方向を3等分して得られる3つの小領域に、スプライン関数によって近似される実世界1の光信号が射影されることにより得られる画素値を、図139に示すように、その左側の小領域の画素値から順に、SL,SC,SRと表す。なお、画素値SL,SC,SRは、スプライン関数によって近似される実世界1の光信号の曲線を、1画素のx方向を3等分する範囲それぞれにおいて積分することにより得られる積分値、即ち、スプライン関数によって近似される実世界1の光信号の曲線、x軸、および1画素のx方向を3等分するレベル方向と平行な直線に囲まれる面積に等しい。
【1501】
1画素の領域を3等分して得られる3つの小領域における画素値SL,SC,SRが等しいとする拘束条件式は、次式で表すことができる。
【1502】
【数180】
Figure 0004325296
・・・(180)
【1503】
なお、1画素の領域を3等分して得られる3つの小領域における画素値が等しいということは、画素における光信号の変化が小さいということに等価である。
【1504】
式(180)の拘束条件式は、次の2式の拘束条件式に分けることができる。
【1505】
【数181】
Figure 0004325296
・・・(181)
【1506】
【数182】
Figure 0004325296
・・・(182)
【1507】
画素値SL,SC,SRは、上述したように、スプライン関数によって近似される実世界1の光信号の曲線を、1画素のx方向を3等分する範囲それぞれにおいて積分することにより得られる積分値であるから、式(139)の積分範囲(α,β)を、1画素のx方向を3等分する範囲とすることにより、次式にしたがって求めることができる。
【1508】
【数183】
Figure 0004325296
・・・(183)
【1509】
【数184】
Figure 0004325296
・・・(184)
【1510】
【数185】
Figure 0004325296
・・・(185)
【1511】
但し、式(183)乃至式(185)におけるMkは、上述した(140)および式(141)で表される。
【1512】
式(181)の拘束条件式によれば、画素値SLとSCに、式(183)と式(184)をそれぞれ代入することで、次式に示すN−1個の拘束条件式を得ることができる。
【1513】
【数186】
Figure 0004325296
・・・(186)
【1514】
また、式(182)の拘束条件式によれば、画素値SCとSRに、式(184)と式(185)をそれぞれ代入することで、次式に示すN−1個の拘束条件式を得ることができる。
【1515】
【数187】
Figure 0004325296
・・・(187)
【1516】
従って、拘束条件の導入により、式(186)と式(187)の合計で、2(N−1)個の拘束条件式を得ることができる。
【1517】
図140は、拘束条件式を用いた実世界の推定方法を説明するための図である。
【1518】
図125に示した物理モデルによれば、式(166)乃至式(170)に示したN+1個の方程式を得る(生成する)ことができる。ここで、上述の場合には、フラット仮定を導入したが、式(166)乃至式(170)に示したN+1個の方程式のうちの、3つの式(166)乃至式(168)は、フラット仮定が影響する式であり、他の2つの式(169)および式(170)は、フラット仮定が影響しない式である。
【1519】
さらに、拘束条件の導入により、式(186)と式(187)で表される2(N−1)個の拘束条件式を得ることができる。
【1520】
従って、拘束条件を導入したことによって、式(166)乃至式(170)、並びに式(186)および式(187)の合計で3N−1(=N+1+2(N−1))個の方程式を得ることができる。
【1521】
即ち、図125に示した物理モデルにおいて、実世界1の光信号を近似するスプライン関数を定義する変数ykは、N+1であるのに対して、その変数ykの数より多い3N−1の方程式を得ることができる。
【1522】
未知変数ykの数より多い3N−1の方程式は、連立方程式として解くことができない。そこで、ここでは、3N−1の方程式それぞれにおいて生じる誤差の自乗和を最小にする変数ykを求めること、即ち、フラット仮定が影響する式(166)乃至式(168)、フラット仮定が影響しない式(169)および式(170)、並びに式(186)および式(187)の拘束条件式からなる3N−1の方程式を、図140に示すように、最小自乗法によって解くこととする。
【1523】
まず、式(166)乃至式(170)のN+1個の方程式における誤差の自乗和を考える。
【1524】
いま、(166)乃至式(170)のN+1個の方程式を、次式に示すように、行列と列ベクトルとを用いて表すこととする。
【1525】
【数188】
Figure 0004325296
・・・(188)
【1526】
式(188)において、右辺と左辺の誤差ekは、式(189)で表される。
【1527】
【数189】
Figure 0004325296
・・・(189)
【1528】
ここで、上述したように、式(166)乃至式(170)に示したN+1個の方程式のうちの、3つの式(166)乃至式(168)は、フラット仮定が影響する式であり、他の2つの式(169)および式(170)は、フラット仮定が影響しない式である。
【1529】
そこで、式(166)乃至式(170)のN+1個の方程式における誤差の自乗和を、フラット仮定が影響する式(166)乃至式(168)における誤差の自乗和E1と、フラット仮定が影響しない式(169)および式(170)における誤差の自乗和E2とに分けて考えることとする。
【1530】
誤差の自乗和E1とE2は、式(189)で表される誤差ekの自乗和として、次のように表される。
【1531】
【数190】
Figure 0004325296
・・・(190)
【1532】
【数191】
Figure 0004325296
・・・(191)
【1533】
但し、式(190)および式(191)において、Pは、動き量vを用いて、式P=[v+0.5]で表される値、即ち、v+0.5以下の最大の整数値である。
【1534】
次に、式(186)のN−1個の拘束条件式における誤差の自乗和を考える。
【1535】
いま、式(186)のN−1個の拘束条件式を、次式に示すように、行列と列ベクトルとを用いて表すこととする。
【1536】
【数192】
Figure 0004325296
・・・(192)
【1537】
式(192)において、右辺と左辺の誤差ekは、式(193)で表される。
【1538】
【数193】
Figure 0004325296
・・・(193)
【1539】
従って、式(193)の誤差ekの自乗和を、E3と表すこととすると、その誤差ekの自乗和E3は、次のように表される。
【1540】
【数194】
Figure 0004325296
・・・(194)
【1541】
次に、式(187)のN−1個の拘束条件式における誤差の自乗和を考える。
【1542】
いま、式(187)のN−1個の拘束条件式を、次式に示すように、行列と列ベクトルとを用いて表すこととする。
【1543】
【数195】
Figure 0004325296
・・・(195)
【1544】
式(195)において、右辺と左辺の誤差ekは、式(196)で表される。
【1545】
【数196】
Figure 0004325296
・・・(196)
【1546】
従って、式(196)の誤差ekの自乗和を、E4と表すこととすると、その誤差ekの自乗和E4は、次のように表される。
【1547】
【数197】
Figure 0004325296
・・・(197)
【1548】
3N−1個の式(166)乃至式(170)、並びに式(186)および式(187)の方程式の左辺と右辺の誤差の自乗和を、Eと表すこととすると、その誤差の自乗和Eは、式(190)の自乗和E1、式(191)の自乗和E2、式(194)の自乗和E3、および式(197)の自乗和E4の和であるから、次式を計算することにより求めることができる。
【1549】
【数198】
Figure 0004325296
・・・(198)
【1550】
式(198)で表される誤差の自乗和Eを最小にする変数ykを求めることにより、その変数ykによって定義されるスプライン関数は、図125に示した物理モデルにおける実世界1の光信号をより精度良く近似し、かつ、画素における変化が小さいものとなる。
【1551】
ここで、式(198)で表される誤差の自乗和Eは、大きく、フラット仮定が影響する式における誤差の自乗和E1、フラット仮定が影響しない式における誤差の自乗和E2、および拘束条件式における誤差の自乗和E3+E4の3種類の誤差に分けることができる。
【1552】
そこで、ここでは、上述の3種類の誤差のうちの、例えば、フラット仮定が影響しない式における誤差の自乗和E2に対する重みを基準として(1として)、図140に示すように、フラット仮定が影響する式における誤差の自乗和E1に対する重みをW1とするとともに、拘束条件式における誤差の自乗和E3+E4に対する重みをW2として、3N−1個の式(166)乃至式(170)、並びに式(186)および式(187)の左辺と右辺の誤差の自乗和Eを、式(198)に代えて、式(199)で表すこととする。
【1553】
【数199】
Figure 0004325296
・・・(199)
【1554】
式(199)における重みW1とW2により、フラット仮定が影響する式で生じる誤差、フラット仮定が影響しない式で生じる誤差、および拘束条件式で生じる誤差のバランスを調整することが可能となる。
【1555】
重みW1は、実世界1の光信号を近似するスプライン関数を求めるのにあたって、フラット仮定を重視する程度を表す。例えば、重みW1を1とした場合には、フラット仮定が影響する式とフラット仮定が影響しない式とを同等に扱って、実世界1の光信号を近似するスプライン関数が求められることになる。また、例えば、重みW1を0とした場合には、フラット仮定による誤差を考慮せずに、実世界1の光信号を近似するスプライン関数が求められることになる。
【1556】
重みW2は、実世界1の光信号を近似するスプライン関数を求めるのにあたって、拘束条件を重視する程度を表す。重みW2として大きな値を採用するほど、実世界1の光信号を近似するスプライン関数として、変化の小さいものが求められることになる。なお、重みW1としては、例えば、0以上の値を採用することが可能である。フラット仮定が、実世界1の光信号を精度良く近似している場合には、重みW1を1以上の値とすることにより、実世界1の光信号を精度良く近似するスプライン関数を求めることが可能となる。また、重みW2としては、例えば、10-5乃至0.1程度の値を採用することが可能である。
【1557】
ここで、式(199)によれば、フラット仮定が影響する式で生じる誤差に対する重みW1と、拘束条件式で生じる誤差に対する重みW2とを調整することによって、相対的に、フラット仮定が影響しない式で生じる誤差に対する重みを調整することができる。但し、式(199)では、重みW1とW2の他に、フラット仮定が影響しない式で生じる誤差に対する重みを設け、その重みを、直接調整するようにすることも可能である。
【1558】
式(199)で表される誤差の自乗和Eを最小にする変数ykは、次式に示すように、誤差の自乗和Eを、変数ykで偏微分した値を0にする変数ykである。
【1559】
【数200】
Figure 0004325296
・・・(200)
【1560】
式(200)に、式(190)の自乗和E1、式(191)の自乗和E2、式(194)の自乗和E3、および式(197)の自乗和E4を代入して計算すると、式(200)の正規方程式が得られる。
【1561】
【数201】
Figure 0004325296
・・・(201)
【1562】
式(201)の正規方程式は、N+1次元1次連立方程式であり、この式(201)を解くことによって、変数ykで定義される式(137)のスプライン関数Ck(x)を求めることができる。
【1563】
なお、式(201)の正規方程式を、行列と列ベクトルとを用いて表すと、式(202)に示すようになる。
【1564】
【数202】
Figure 0004325296
・・・(202)
【1565】
実世界1の光信号を近似するスプライン関数Ck(x)を求めた後は、拘束条件式を導入しない場合と同様にして再積分を行うことにより、動きボケが除去された任意の解像度の画像を得ることができる。
【1566】
即ち、露出時間を1とすれば、式(139)の積分範囲(α,β)を所望の値とすることにより、動きボケが除去された所望の解像度の画像を得ることができる。
【1567】
具体的には、例えば、元の画像と同一解像度の画像は、上述の式(171)乃至式(173)を計算することにより求めることができる。また、例えば、水平方向の解像度が元の画像の2倍の画像は、上述の式(174)乃至式(179)を計算することにより求めることができる。
【1568】
ここで、フラット仮定は、処理単位の領域外における実世界1の光信号が一定値であるという拘束条件を与えていると考えることができる。この場合、重みW2は、そのような拘束条件を記述する拘束条件式に対する重みであるということができる。
【1569】
次に、図141は、上述したように、スプライン関数によって実世界1の光信号(光信号関数F(x))を近似することにより、動きボケがなく、さらには、必要に応じて解像度の高い画像を生成する図120の動きボケ調整部17035の他の構成例を示している。なお、図中、fig12025における場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は適宜省略する。
【1570】
図141の動きボケ調整部17035においては、入力画像について、図125に示した物理モデルに基づいて得られる式(166)乃至式(170)に示したN+1個の方程式の他に、拘束条件を記述する式(186)および式(187)に示した2(N−1)個の拘束条件式を用いて、実世界1の光信号を近似するスプライン関数が求められ、動きボケのない所望の解像度の画像が生成される。
【1571】
即ち、図141において、動きボケ調整部17035は、物理モデル適用部17081、画素内拘束式作成部17082、物理モデル値取得部17083、および再混合部17053から構成されている。そして、図141では、図120の動きボケ調整量出力部17032から供給される定常性情報としての動き量v、および処理単位決定部17034から供給される処理単位情報が、物理モデル適用部17081に供給されるようになっている。また、図120の前景背景分離部17033から供給される前景成分が、物理モデル値取得部17083に供給されるようになっている。
【1572】
物理モデル適用部17081は、モデル化部17091と方程式作成部17092から構成されている。
【1573】
モデル化部17091には、図120の動きボケ調整量出力部17032から供給される定常性情報としての動き量vと、処理単位決定部17034から供給される処理単位情報とが供給される。
【1574】
モデル化部17091は、図137のモデル化部17061と同様に、処理単位決定部17034から供給される処理単位情報に基づいて、処理単位を構成する画素数(例えば、図125の物理モデルでは、N+1画素)を認識する。さらに、モデル化部17091は、図137のモデル化部17061と同様に、処理単位を構成する画素数と、動き量vとから、図125の物理モデルの情報を求め、その物理モデルの情報を、画素内拘束式作成部17082と方程式作成部17092に供給する。
【1575】
方程式作成部17092は、モデル化部17091から供給される物理モデルの情報から、式(166)乃至式(170)に示した方程式を作成し、物理モデル値取得部17083に供給する。なお、方程式作成部17092で作成される式(166)乃至式(170)の方程式は、その変数vに、図120の動きボケ調整量出力部17032からモデル化部17091に供給された定常性情報としての動き量vの具体的な値が代入されたものである。
【1576】
画素内拘束式作成部17082は、モデル化部17091から供給される情報から処理単位を構成する画素数N+1を認識し、式(186)および式(187)に示した拘束条件式を作成して、物理モデル値取得部17083に供給する。
【1577】
物理モデル値取得部17083は、最小自乗法適用部17093で構成され、方程式作成部17092から供給される式(166)乃至式(170)の方程式と、画素内拘束式作成部17082から供給される式(186)および式(187)に示した拘束条件式に対して、最小自乗法を適用して解くことにより、式(137)のスプライン関数(を定義する変数yk)を求める。
【1578】
即ち、最小自乗法適用部17093は、図120の前景背景分離部17033から供給される前景成分から、処理単位の画素の画素値を取得し、その画素値を、方程式作成部17092から供給される式(166)乃至式(170)の方程式と、画素内拘束式作成部17082から供給される式(186)および式(187)に示した拘束条件式とから得られる式(201)(または式(202))の正規方程式に代入して解くことにより、式(137)のスプライン関数(を定義する変数yk)を求め、再混合部17053に供給する。
【1579】
なお、最小自乗法適用部17093において、式(201)の正規方程式を解くにあたっては、重みW1およびW2が必要であるが、この重みW1およびW2は、例えば、最小自乗法適用部17093において、あらかじめ固定の値が設定されているものとする。
【1580】
次に、図142のフローチャートを参照して、図141の動きボケ調整部17035の処理について説明する。
【1581】
まず最初に、ステップS17081において、モデル化部17091は、図120の動きボケ調整量出力部17032から供給される定常性情報としての動き量vと、処理単位決定部17034から供給される処理単位情報を取得し、ステップS17082に進む。ステップS17082では、モデル化部17091は、ステップS17081で取得された処理単位情報が表す処理単位に射影された実世界1の光信号を、図125に示した物理モデルにモデル化する。
【1582】
即ち、モデル化部17091は、処理単位決定部17034から供給される処理単位情報に基づいて、処理単位を構成する画素数を認識する。さらに、モデル化部17091は、処理単位を構成する画素数と、ステップS17081で取得された動き量vとから、図125の物理モデルの情報を求め、その物理モデルの情報を、画素内拘束式作成部17082と方程式作成部17092に供給して、ステップS17082からS17083に進む。
【1583】
ステップS17083では、方程式作成部17092は、モデル化部17091から供給される物理モデルの情報から、式(166)乃至式(170)に示した方程式を作成し、物理モデル値取得部17083に供給して、ステップS17084に進む。
【1584】
ステップS17084では、画素内拘束式作成部17082は、式(186)および式(187)に示した拘束条件式を作成し、物理モデル値取得部17083に供給して、ステップS17085に進む。
【1585】
なお、ステップS17082乃至S17084の処理は、図120の処理単位決定部17034において決定される処理単位すべてについて行われる。
【1586】
ステップS17085では、物理モデル値取得部17083の最小自乗法適用部17093は、図120の処理単位決定部17034において得られた処理単位のうちの、まだ注目処理単位としていない処理単位を、注目処理単位として選択し、その注目処理単位の画素の画素値Ykを、図120の前景背景分離部17033から供給される前景成分から取得して、ステップS17086に進む。
【1587】
ステップS17086では、最小自乗法適用部17093は、方程式作成部17092から供給される注目処理単位についての式(166)乃至式(170)の方程式と、画素内拘束式作成部17082から供給される式(186)および式(187)に示した拘束条件式に対して、注目処理単位の画素の画素値Ykを代入し、さらに重みW1とW2を用いて、式(201)の正規方程式をたてることにより取得して、ステップS17087に進む。
【1588】
ステップS17087では、最小自乗法適用部17093は、図120の処理単位決定部17034において得られた処理単位すべてを、注目処理単位としたかどうかを判定し、まだしていないと判定した場合、ステップS17085に戻る。この場合、ステップS17085では、最小自乗法適用部17093は、図120の処理単位決定部17034において得られた処理単位のうちの、まだ注目処理単位としていない処理単位を、注目処理単位として新たに選択し、以下、同様の処理を繰り返す。
【1589】
また、ステップS17087において、図120の処理単位決定部17034において得られた処理単位すべてを、注目処理単位としたと判定された場合、即ち、図120の処理単位決定部17034において得られた処理単位すべてについて、正規方程式が得られた場合、ステップS17088に進み、最小自乗法適用部17093は、処理単位すべてにおいて得られた正規方程式を解くことにより、各処理単位について、式(137)のスプライン関数(を定義する変数yk)を求め、即ち、実世界1の信号を近似する式(137)および式(138)のスプライン関数を求め、再混合部17053に供給して、ステップS17089に進む。
【1590】
ステップS17089では、再混合部17053は、最小自乗法適用部17093から供給されるスプライン関数を用いて再混合(再積分)を行う。即ち、再混合部17053は、最小自乗法適用部17093から供給される、処理単位ごとに得られたスプライン関数それぞれについて、そのスプライン関数が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、例えば、処理単位の画素#kのx方向の幅などの所定の単位で積分(再積分)することにより、処理単位ごとに、動きボケのない画素値を求め、ステップS17089からS17090に進む。ステップS17090では、再混合部17053は、処理単位ごとに得られた動きボケのない画素値からなる画像、即ち、動きボケのない前景オブジェクトの画像を出力して処理を終了する。
【1591】
以上のように、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に実世界1の光信号が射影され、実世界1の光信号の定常性の一部が欠落した入力画像内の前景オブジェクトの動き量を設定し、入力画像の空間方向のうちのx方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した実世界1の光信号に対応する光信号関数(実世界関数)F(x)が、前景オブジェクトの動き量に対応して時間方向に位相シフトしながら移動することを表す物理モデルを、x方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとし、さらに、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数によって表される画素内の画素値の変化が小さいとする拘束条件を与える拘束条件式を採用して、光信号関数F(x)を推定するようにしたので、その推定結果として、光信号関数F(x)をより精度良く近似するスプライン関数を求めることができる。
【1592】
さらに、その光信号関数F(x)を近似するスプライン関数を、x方向および時間方向に、所定の単位で積分(再積分)することにより、入力画像内の前景オブジェクトの動きボケを除去した画素値でなる画像を生成するようにしたので、入力画像から動きボケが除去された、所望の解像度の画像を得ることができる。
【1593】
なお、画素値の変化が小さいとする拘束条件は、空間方向(上述の場合にはx方向)に適用する他、時間方向に適用することが可能である。
【1594】
次に、図113の信号処理装置4における実世界推定部17003において実世界を推定する処理と、画像生成部17004において実世界の推定結果を用いて画像を生成する処理とを、両方合わせて、実処理ということとする。
【1595】
図143は、実処理を行う実処理部17100の構成例を示している。
【1596】
実処理部17100には、実処理の対象となる入力画像と、その実処理(実世界を推定する処理と、実世界の推定結果を用いて画像を生成する処理)に必要なパラメータとが供給される。そして、実処理部17100は、実世界推定部17003と画像生成部17004から構成され、実世界推定部17003では、実世界を推定する処理が、入力画像と実処理に必要なパラメータを用いて行われ、画像生成部17004では、実世界の推定結果を用いて、例えば、入力画像から動きボケを除去した画像や、入力画像よりも高解像度の画像、あるいは、入力画像から動きボケを除去し、かつ入力画像よりも高解像度の画像などが生成される。
【1597】
ここで、実処理部17100に供給される、実処理に必要なパラメータとしては、図113の処理領域設定部17001が出力する処理領域情報や、定常性設定部17002が出力する定常性情報、さらには、式(199)で導入した重みW1およびW2になどがある。
【1598】
図144は、動きボケを有する入力画像から動きボケを除去した画像を得る処理、または動きボケが除去され、かつ入力画像よりも高解像度の画像を得る処理を行う場合の、図143の実処理部17100の構成例を示している。なお、図中、図137の動きボケ調整部17035における場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【1599】
図144の実処理部17100には、入力画像が供給されるとともに、図113の処理領域設定部17001から処理領域情報が、実処理に必要なパラメータとして供給され、定常性設定部17002から定常性情報が、実処理に必要なパラメータとして供給される。ここで、図144では、入力画像における、処理領域情報が表す処理領域に表示されたオブジェクトが、例えば、水平方向に一定速度で移動しており、これにより、処理領域において動きボケが生じているものとする。さらに、図144では、定常性情報として、例えば、処理領域に表示されたオブジェクトの動き量vを採用することとする。なお、入力画像としては、上述したような細線が斜め方向に表示された画像を採用することが可能である。この場合、処理領域情報は、入力画像における細線を含む領域(処理領域)を表す情報であり、定常性情報は、細線の方向(角度)を表す情報である必要がある。
【1600】
図144において、入力画像は、前処理部17101に供給される。また、実処理に必要なパラメータのうちの処理領域情報は、物理モデル適用部17051のモデル化部17061と、前処理部17101に供給される。さらに、実処理に必要なパラメータのうちの定常性情報は、物理モデル適用部17051のモデル化部17061に供給される。
【1601】
前処理部17101は、処理領域情報から処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素の画素値を、入力画像から抽出して、物理モデル適用部17051の連立方程式取得部17063に供給する。
【1602】
次に、図145のフローチャートを参照して、図144の実処理部17100の処理について説明する。
【1603】
まず最初に、ステップS17101において、モデル化部17061は、図113の処理領域設定部17001から供給される処理領域情報と、定常性設定部17002から供給される定常性情報としての動き量vとを、実処理に必要なパラメータとして取得するとともに、前処理部17101が、図113の処理領域設定部17001から供給される処理領域情報を、実処理に必要なパラメータとして取得し、ステップS17102に進む。ステップS17102では、前処理部17101が、処理領域情報から処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素の画素値を、入力画像から抽出して、物理モデル適用部17051の連立方程式取得部17063に供給する。
【1604】
そして、ステップS17102からS17103に進み、モデル化部17061は、ステップS17101で取得された処理領域情報が表す処理領域に射影された実世界1の光信号を、図125に示した物理モデルにモデル化する。
【1605】
即ち、モデル化部17061は、処理領域設定部17001から供給される処理領域情報に基づいて、処理領域の各水平ラインを構成する画素数を認識する。ここで、処理領域の各水平ラインは、図137の動きボケ調整部17035で説明した処理単位に相当する。さらに、モデル化部17061は、処理領域の各水平ラインを構成する画素数と、ステップS17101で取得された動き量vとから、図125の物理モデルの情報を求め、その物理モデルの情報を、方程式作成部17062に供給して、ステップS17103からS17104に進む。
【1606】
ステップS17104では、方程式作成部17062は、モデル化部17061から供給される物理モデルの情報から、式(166)乃至式(170)に示した方程式を作成し、連立方程式取得部17063に供給して、ステップS17105に進む。
【1607】
なお、ステップS17103およびS17104の処理は、処理領域情報が表す処理領域のすべての水平ラインについて行われる。
【1608】
ステップS17105では、連立方程式取得部17063は、処理領域情報が表す処理領域の水平ラインのうちの、まだ注目水平ラインとしていない水平ラインを、注目水平ラインとして選択し、その注目水平ラインの画素の画素値Ykを、前処理部17101から供給される処理領域の画素値から取得して、ステップS17106に進む。ステップS17106では、連立方程式取得部17063は、方程式作成部17062から供給される注目水平ラインについての式(166)乃至式(170)の方程式に対して、注目水平ラインの画素の画素値Ykを代入し、これにより、注目水平ラインの画素の数に等しい数の連立方程式を取得して、物理モデル値取得部17052に供給する。
【1609】
そして、ステップS17106からS17107に進み、物理モデル値取得部17052の連立方程式演算部17064は、連立方程式取得部17063から供給される、注目水平ラインについての連立方程式を演算し(解き)、これにより、注目水平ラインに射影された実世界1の信号を近似する式(137)および式(138)のスプライン関数を求め、再混合部17053に供給して、ステップS17108に進む。
【1610】
ステップS17108では、再混合部17053は、連立方程式演算部17064から供給されるスプライン関数を用いて再混合(再積分)を行う。即ち、再混合部17053は、連立方程式演算部17064から供給される注目水平ラインについてのスプライン関数について、そのスプライン関数が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、例えば、処理領域の画素#kのx方向の幅などの所定の単位で積分(再積分)することにより、注目水平ラインについて、動きボケのない画素値を求め、ステップS17108からS17109に進む。
【1611】
ステップS17109では、連立方程式取得部17063は、処理領域情報が表す処理領域のすべての水平ラインを、注目水平ラインとしたかどうかを判定し、まだしていないと判定した場合、ステップS17105に戻る。この場合、ステップS17105では、連立方程式取得部17063は、処理領域の水平ラインのうちの、まだ注目水平ラインとしていない処理領域を、注目水平ラインとして新たに選択し、以下、同様の処理を繰り返す。
【1612】
また、ステップS17109において、処理領域の水平ラインのすべてを、注目水平ラインとしたと判定された場合、即ち、処理領域の水平ラインのすべてについて、動きボケのない画素値が得られた場合、ステップS17110に進み、再混合部17053は、処理領域のすべての水平ラインについて得られた動きボケのない画素値、即ち、動きボケのない処理領域の画像を出力して処理を終了する。
【1613】
以上のように、図144の実処理部17100では、図137の動きボケ調整部17035における場合と同様にして、動きボケが除去され、さらには、必要に応じて高解像度にされた画像が得られる。
【1614】
次に、図146は、動きボケを有する入力画像から動きボケを除去した画像を得る処理、または動きボケが除去され、かつ入力画像よりも高解像度の画像を得る処理を行う場合の、図143の実処理部17100の他の構成例を示している。なお、図中、図141の動きボケ調整部17035、または図144の実処理部17100における場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。
【1615】
図146の実処理部17100には、入力画像が供給されるとともに、図113の処理領域設定部17001から処理領域情報が供給され、定常性設定部17002から定常性情報が供給される。ここで、図146では、上述の図144における場合と同様に、入力画像における、処理領域情報が表す処理領域に表示されたオブジェクトが、例えば、水平方向に一定速度で移動しており、これにより、処理領域において動きボケが生じているものとする。さらに、図146では、定常性情報として、例えば、処理領域に表示されたオブジェクトの動き量vを採用することとする。
【1616】
図146において、入力画像は、前処理部17101に供給される。また、実処理に必要なパラメータのうちの処理領域情報は、物理モデル適用部17081のモデル化部17091と、前処理部17101に供給される。さらに、実処理に必要なパラメータのうちの定常性情報は、物理モデル適用部17081のモデル化部17091に供給される。
【1617】
また、図146では、実処理に必要なパラメータとして、処理領域情報と定常性情報の他に、式(201)における重みW1とW2が、物理モデル値取得部17083の最小自乗法適用部17093に供給されるようになっている。なお、図146において、実処理に必要なパラメータとしての重みW1とW2としては、例えば、あらかじめ固定の値を設定しておくことが可能である。また、重みW1とW2は、例えば、ユーザがユーザI/F17006を操作することにより、補助情報として入力することもできる。さらに、重みW1とW2としては、例えば、処理領域の画像の特徴量に応じた可変の値を採用することも可能である。
【1618】
次に、図147のフローチャートを参照して、図146の実処理部17100の処理について説明する。
【1619】
まず最初に、ステップS17131において、モデル化部17091は、図113の処理領域設定部17001から供給される処理領域情報、定常性設定部17002から供給される定常性情報としての動き量vを、実処理に必要パラメータとして取得する。さらに、ステップS17131では、物理モデル値取得部17083の最小自乗法適用部17093が、例えば、ユーザI/F17006などから供給される補助情報としての重みW1とW2を、実処理に必要パラメータとして取得し、ステップS17132に進む。ステップS17132では、前処理部17101が、処理領域情報から処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素の画素値を、入力画像から抽出して、物理モデル値取得部17083の最小自乗法適用部17093に供給する。
【1620】
そして、ステップS17132からS17133に進み、モデル化部17091は、ステップS17131で取得された処理領域情報が表す処理領域の水平ラインに射影された実世界1の光信号を、図125に示した物理モデルにモデル化する。
【1621】
即ち、モデル化部17091は、処理領域設定部17001から供給される処理領域情報に基づいて、処理領域の各水平ラインを構成する画素数を認識する。さらに、モデル化部17091は、処理領域の各水平ラインを構成する画素数と、ステップS17131で取得された動き量vとから、図125の物理モデルの情報を求め、その物理モデルの情報を、画素内拘束式作成部17082と方程式作成部17092に供給して、ステップS17133からS17134に進む。
【1622】
ステップS17134では、方程式作成部17092は、モデル化部17091から供給される物理モデルの情報から、式(166)乃至式(170)に示した方程式を作成し、物理モデル値取得部17083に供給して、ステップS17135に進む。
【1623】
ステップS17135では、画素内拘束式作成部17082は、式(186)および式(187)に示した拘束条件式を作成し、物理モデル値取得部17083に供給して、ステップS17136に進む。
【1624】
なお、ステップS17133乃至S17135の処理は、処理領域の水平ラインすべてについて行われる。
【1625】
ステップS17136では、物理モデル値取得部17083の最小自乗法適用部17093は、処理領域の水平ラインのうちの、まだ注目水平ラインとしていない水平ラインを、注目水平ラインとして選択し、その注目水平ラインの画素の画素値Ykを、前処理部17101から供給される処理領域の画素値から取得して、ステップS17137に進む。
【1626】
ステップS17137では、最小自乗法適用部17093は、方程式作成部17092から供給される注目水平ラインについての式(166)乃至式(170)の方程式と、画素内拘束式作成部17082から供給される式(186)および式(187)に示した拘束条件式に対して、注目水平ラインの画素の画素値Ykを代入し、さらに、重みW1とW2を用いて、式(201)の正規方程式をたてることにより式(201)の正規方程式を取得して、ステップS17138に進む。
【1627】
ステップS17138では、最小自乗法適用部17093は、注目水平ラインについて得られた正規方程式を解くことにより、その注目水平ラインについて、式(137)のスプライン関数(を定義する変数yk)を求め、即ち、実世界1の信号を近似する式(137)および式(138)のスプライン関数を求め、再混合部17053に供給して、ステップS17139に進む。
【1628】
ステップS17139では、再混合部17053は、最小自乗法適用部17093から供給されるスプライン関数を用いて再混合(再積分)を行う。即ち、再混合部17053は、最小自乗法適用部17093から供給される、注目水平ラインについて得られたスプライン関数それぞれについて、そのスプライン関数が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、例えば、処理領域の画素#kのx方向の幅などの所定の単位で積分(再積分)することにより、注目水平ラインについて動きボケのない画素値を求め、ステップS17139からS17140に進む。
【1629】
ステップS17140では、最小自乗法適用部17093は、処理領域の水平ラインすべてを、注目水平ラインとしたかどうかを判定し、まだしていないと判定した場合、ステップS17136に戻る。この場合、ステップS17136では、最小自乗法適用部17093は、処理領域のうちの、まだ注目水平ラインとしていない水平ラインを、注目水平ラインとして新たに選択し、以下、同様の処理を繰り返す。
【1630】
また、ステップS17140において、処理領域の水平ラインすべてを、注目水平ラインとしたと判定された場合、即ち、処理領域の水平ラインすべてについて、動きボケのない画素値が得られた場合、ステップS17141に進み、再混合部17053は、処理領域のすべての水平ラインについて得られた動きボケのない画素値、即ち、動きボケのない処理領域の画像を出力して処理を終了する。
【1631】
以上のように、図146の実処理部17100では、図141の動きボケ調整部17035における場合と同様にして、動きボケが除去され、さらには、必要に応じて高解像度にされた画像が得られる。
【1632】
次に、図144および図146の実処理部17100では、入力画像に動きボケが生じていることを前提として、入力画像から動きボケを除去した画像、または、入力画像から動きボケを除去し、かつ入力画像の解像度以上の解像度の画像を生成するようにしたが、実処理部17100では、動きボケのない入力画像から、高解像度の画像を生成することも可能である。なお、高解像度の画像を生成することは、見方を変えれば、拡大された画像を生成するともいうことができる。
【1633】
動きボケのない入力画像から、高解像度の画像を生成する場合には、図125に示した物理モデルにおいて、動き量vが0の物理モデルを考えれば良い。
【1634】
即ち、図148は、図125に示した物理モデルの動き量vを0としたものを示している。
【1635】
従って、図148は、スプライン関数Ck(x)で近似される光信号関数F(x)で表される光信号が、イメージセンサの露光時間の間に静止したままで、処理単位の画素に射影され、その画素に電荷がチャージされることによって画像が得られるという物理モデルを表している。
【1636】
ここで、図148の左側の図は、図124における場合と同様の、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)を示している。また、図148の右側の図は、横方向をイメージセンサの水平方向(処理単位の画素が並ぶx方向)とし、手前方向を露光時間とするとともに、縦方向をレベルとして、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)のレベルを示している。
【1637】
図148に示した物理モデルによれば、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が、イメージセンサの露光時間の方向に移動することによって得られる軌跡としての曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、処理単位の画素#kのx方向の長さだけ積分することにより、その画素#kの画素値Ykが得られる。
【1638】
なお、図148の物理モデルでは、露光時間の間に、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が空間方向には移動しないので、この物理モデルによって画素値Ykが得られる画素#kでは、イメージセンサの空間積分効果による、物体の信号の空間方向の混合(空間混合)は生じるが、イメージセンサの時間積分効果による、物体の信号の時間方向の混合(時間混合)は生じない。
【1639】
図148の物理モデルによれば、画素#kの画素値Ykは、図135で説明した場合と同様に、露光時間を1とすれば、上述の式(139)の積分範囲(α,β)を、画素#kのx方向の始端から終端(左端から右端)とすることにより求めることができる。即ち、図148の物理モデルにおいて、画素値Ykは、次式により求めることができる。
【1640】
【数203】
Figure 0004325296
・・・(203)
【1641】
【数204】
Figure 0004325296
・・・(204)
【1642】
【数205】
Figure 0004325296
・・・(205)
【1643】
ここで、図148の物理モデルにおいても、フラット仮定を採用することとする。画素値Ykを求めるのに、kが、0,1乃至N−1,Nである場合の3つの場合に分かれているのは、図135で説明した場合と同様に、フラット仮定に起因する。なお、フラット仮定は必須ではない。
【1644】
式(203)乃至式(205)は、合計でN+1式だけたてることができ、スプライン関数Ck(x)を定義する、未知数である変数ykもN+1個だけ存在する。従って、式(203)乃至式(205)に、イメージセンサから得られる画素値Ykを代入し、N+1個の連立方程式、即ち、N+1元連立1次方程式をたて、そのN+1元連立1次方程式を解くことにより、光信号関数F(x)を推定すること、即ち、ここでは、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)を求めることができる。
【1645】
光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)を求めた後は、そのスプライン関数Ck(x)を、x方向の所定の範囲に亘って積分することにより、任意の解像度の画素の画素値を求めることができる。即ち、露光時間を1とすれば、上述の式(139)の積分範囲(α,β)を、所望の範囲とすることにより、任意の解像度の画素の画素値を求めることができる。
【1646】
具体的には、例えば、いま、画素#kについて、その画素#kをx方向に2分割した、仮想的な画素(仮想画素)を考え、その画素#kをx方向に2分割して得られる左側と右側の画素を、それぞれ仮想画素#k,leftと#k,rightと表す。さらに、仮想画素#k,leftと#k,rightの画素値を、それぞれ、Xk,leftとXk,rightと表す。
【1647】
画素値Xk,leftとXk,rightは、図136と同様に図149に示すように、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、処理単位の画素#kを分割した仮想画素#k,leftと#k,rightそれぞれのx方向の幅単位で積分(再積分)することにより求めることができる。
【1648】
この場合、画素値Xk,leftとXk,rightは、次式によって求めることができる。
【1649】
【数206】
Figure 0004325296
・・・(206)
【1650】
【数207】
Figure 0004325296
・・・(207)
【1651】
【数208】
Figure 0004325296
・・・(208)
【1652】
【数209】
Figure 0004325296
・・・(209)
【1653】
【数210】
Figure 0004325296
・・・(210)
【1654】
【数211】
Figure 0004325296
・・・(211)
【1655】
式(206)乃至式(211)により求められる画素値Xk,leftとXk,rightによれば、横方向の画素数が元の画素数の2倍の高解像度の画像(横方向2倍密の画像)を得ることができる。
【1656】
ここで、上述の場合には、画素#kを2分割するようにしたが、画素#kの分割数は2分割に限定されるものではない。また、ここでは、画素#kを分割することにより、元の画像(入力画像)よりも高解像度の画像を得るようにしたが、光信号関数F(x)を近似するスプライン関数Ck(x)が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を積分するx方向の積分範囲を調整することにより、所望の解像度の画像を得ることができる。即ち、露出時間を1とすれば、式(139)の積分範囲(α,β)を所望の値とすることにより、所望の解像度の画像を得ることができる。
【1657】
なお、上述の場合には、実世界1の光信号が時間経路に伴って変化しないから、時間方向の積分効果は、考慮する必要がない。即ち、ここでは、x方向の積分効果による混合(空間混合)だけを考慮し、スプライン関数によって近似する実世界1の光信号を推定しているに等しいので、この推定手法は、上述の1次元近似手法(および1次元再積分手法)に属する。
【1658】
また、上述の場合には、x方向の積分効果による混合(空間混合)を考慮し、横方向の解像度を高くした画像を生成するようにしたが、その横方向の解像度を高くした画像に対して、y方向の積分効果による混合(空間混合)を考慮した図148の物理モデルを採用することにより、横方向と縦方向の両方の解像度を高くした画像を生成することができる。その他、例えば、入力画像に対して、x方向とy方向の2次元の方向の積分効果による混合(空間混合)を考慮した図148の物理モデルを採用することによっても、横方向と縦方向の両方の解像度を高くした画像を生成することができる。
【1659】
図143の実処理部17100では、以上のようにして、動きボケのない入力画像から、高解像度の画像を生成すること、即ち、いわば画像の解像度(空間方向の解像度)を創造することが可能である。
【1660】
図150は、以上のようにして、動きボケのない入力画像から高解像度の画像を生成する実処理部17100の構成例を示している。
【1661】
図150の実処理部17100には、入力画像が供給されるとともに、図113の処理領域設定部17001から処理領域情報が、実処理に必要なパラメータとして供給され、定常性設定部17002から定常性情報が、実処理に必要なパラメータとして供給される。ここで、図150では、入力画像における、処理領域情報が表す処理領域に表示されたオブジェクトは静止しているものとする。さらに、図150では、定常性情報として、例えば、処理領域に表示されたオブジェクトが静止していることを表す情報、即ち、例えば、そのオブジェクトの動き量vが0であることを採用することとする。
【1662】
実処理部17100では、入力画像は、前処理部17200に供給される。また、実処理に必要なパラメータのうちの処理領域情報は、物理モデル適用部17201のモデル化部17211と、前処理部17200に供給される。さらに、実処理に必要なパラメータのうちの定常性情報は、物理モデル適用部17201のモデル化部17211に供給される。
【1663】
前処理部17200は、処理領域情報から処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素の画素値を、入力画像から抽出して、物理モデル適用部17201の連立方程式取得部17213に供給する。
【1664】
物理モデル適用部17201は、モデル化部17211、方程式作成部17212、および連立方程式取得部17213から構成されている。
【1665】
モデル化部17211は、処理領域設定部17001から供給される処理領域情報に基づいて、処理領域の各水平ラインを構成する画素数(例えば、図148の物理モデルでは、N+1画素)を認識する。さらに、モデル化部17211は、定常性情報としての動き量vが0であることを表す情報から、図148の物理モデルを適用することを決定し、処理領域の各水平ラインを構成する画素数を、図148の物理モデルの情報として、方程式作成部17212に供給する。また、モデル化部17211は、処理領域の入力画像における位置を認識し、その位置を表す情報を、方程式作成部17212を介して、連立方程式取得部17213に供給する。
【1666】
方程式作成部17212は、モデル化部17211から供給される物理モデルの情報から、式(203)乃至式(205)に示した方程式を作成し、連立方程式取得部17213に供給する。
【1667】
連立方程式取得部17213は、モデル化部17211から方程式作成部17212を介して供給される処理領域の入力画像における位置を表す情報から、処理領域の入力画像における位置を認識し、その位置に基づいて、前処理部17200から供給される処理領域の画素値から、その処理領域の水平ラインごとの画素の画素値を取得する。さらに、連立方程式取得部17213は、方程式作成部17212から供給される式(203)乃至式(205)の方程式に対して、処理領域の各水平ラインの画素の画素値を代入し、これにより、水平ラインごとに、N+1個の連立方程式を取得して、物理モデル値取得部17202に供給する。
【1668】
物理モデル値取得部17202は、連立方程式演算部17214から構成され、連立方程式取得部17213から供給される連立方程式は、連立方程式演算部17214に供給される。連立方程式演算部17214は、連立方程式取得部17213から供給される連立方程式を演算し(解き)、これにより、実世界1の信号を近似する式(137)および式(138)のスプライン関数を定義するN+1個の変数ykを求め、再混合部17203に供給する。
【1669】
再混合部17203は、連立方程式演算部17214から供給される変数ykによって定義されるスプライン関数が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、例えば、処理領域の画素#kのx方向の1/2の幅などの所定の単位で積分(再積分)することにより、高解像度の画素の画素値を求めて出力する。
【1670】
なお、再混合部17203が、x方向の積分を、例えば、処理領域の画素#kのx方向の1/2の幅単位で行う場合には、式(206)乃至式(211)で表される画素値が求められ、その画素値の画像は、水平方向の画素が入力画像の水平方向の画素の2倍の数の画素で構成される。
【1671】
次に、図151のフローチャートを参照して、図150の実処理部17100の処理について説明する。
【1672】
まず最初に、ステップS17201において、モデル化部17211は、図113の処理領域設定部17001から供給される処理領域情報と、定常性設定部17002から供給される定常性情報としての動き量vが0であることを表す情報とを、実処理に必要なパラメータとして取得するとともに、前処理部17200が、図113の処理領域設定部17001から供給される処理領域情報を、実処理に必要なパラメータとして取得し、ステップS17202に進む。ステップS17202では、前処理部17200が、処理領域情報から処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素の画素値を、入力画像から抽出して、物理モデル適用部17201の連立方程式取得部17213に供給する。
【1673】
そして、ステップS17202からS17203に進み、モデル化部17211は、ステップS17201で取得された処理領域情報が表す処理領域に射影された実世界1の光信号を、図148に示した物理モデルにモデル化する。
【1674】
即ち、モデル化部17211は、処理領域設定部17001から供給される処理領域情報に基づいて、処理領域の各水平ラインを構成する画素数を認識する。さらに、モデル化部17211は、定常性情報としての動き量vが0であることを表す情報から、図148の物理モデルを適用することを決定し、処理領域の各水平ラインを構成する画素数を、図148の物理モデルの情報として、方程式作成部17212に供給して、ステップS17203からS17204に進む。
【1675】
ステップS17204では、方程式作成部17212は、モデル化部17211から供給される物理モデルの情報から、式(203)乃至式(205)に示した方程式を作成し、連立方程式取得部17213に供給して、ステップS17205に進む。
【1676】
なお、ステップS17203およびS17204の処理は、処理領域情報が表す処理領域のすべての水平ラインについて行われる。
【1677】
ステップS17205では、連立方程式取得部17213は、処理領域情報が表す処理領域の水平ラインのうちの、まだ注目水平ラインとしていない水平ラインを、注目水平ラインとして選択し、その注目水平ラインの画素の画素値Ykを、前処理部17200から供給される処理領域の画素値から取得して、ステップS17206に進む。ステップS17206では、連立方程式取得部17213は、方程式作成部17212から供給される注目水平ラインについての式(203)乃至式(205)の方程式に対して、注目水平ラインの画素の画素値Ykを代入し、これにより、注目水平ラインの画素の数に等しい数の連立方程式を取得して、物理モデル値取得部17202に供給する。
【1678】
そして、ステップS17206からS17207に進み、物理モデル値取得部17202の連立方程式演算部17214は、連立方程式取得部17213から供給される、注目水平ラインについての連立方程式を演算し(解き)、これにより、注目水平ラインに射影された実世界1の信号を近似する式(137)および式(138)のスプライン関数を求め、再混合部17203に供給して、ステップS17208に進む。
【1679】
ステップS17208では、再混合部17203は、連立方程式演算部17214から供給されるスプライン関数を用いて再混合(再積分)を行う。即ち、再混合部17203は、連立方程式演算部17214から供給される注目水平ラインについてのスプライン関数について、そのスプライン関数が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、例えば、処理領域の画素#kのx方向の1/2の幅などの所定の単位で積分(再積分)することにより、注目水平ラインについて、高解像度の画素値を求め、ステップS17208からS17209に進む。
【1680】
ステップS17209では、連立方程式取得部17213は、処理領域情報が表す処理領域のすべての水平ラインを、注目水平ラインとしたかどうかを判定し、まだしていないと判定した場合、ステップS17205に戻る。この場合、ステップS17205では、連立方程式取得部17213は、処理領域の水平ラインのうちの、まだ注目水平ラインとしていない処理領域を、注目水平ラインとして新たに選択し、以下、同様の処理を繰り返す。
【1681】
また、ステップS17209において、処理領域の水平ラインのすべてを、注目水平ラインとしたと判定された場合、即ち、処理領域の水平ラインのすべてについて、動きボケのない画素値が得られた場合、ステップS17210に進み、再混合部17203は、処理領域のすべての水平ラインについて得られた高解像度の画素値、即ち、高解像度の処理領域の画像を出力して処理を終了する。
【1682】
以上のように、図150の実処理部17100では、動きボケのない画像から、高解像度の画像が得られる。
【1683】
なお、実世界1の推定、即ち、実世界1の信号を近似する式(137)および式(138)のスプライン関数を求めるにあたっては、式(203)乃至式(205)の方程式を、連立方程式として解く他、式(203)乃至式(205)の方程式と、図139および図140で説明した拘束条件式とを用いて、最小自乗法を利用することも可能である。
【1684】
以上のように、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に実世界1の光信号が射影され、実世界1の光信号の定常性の一部が欠落した画像データの時空間方向のうちのx方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した実世界1の光信号に対応する光信号関数(実世界関数)F(x)をx方向に積分することにより取得された画素値であるとして、光信号関数F(x)を推定し、その推定結果としてのスプライン関数をx方向に所定単位で積分することにより、画像を生成するようにしたので、動きのない画像について、高解像度の画像を得ることができる。
【1685】
次に、図113の処理領域設定部17001、定常性設定部17002、または実世界推定部17003が、補助情報を用いて処理を行う場合の、図113の信号処理装置4の処理について説明する。
【1686】
即ち、図152は、処理領域設定部17001、定常性設定部17002、または実世界推定部17003が、補助情報を用いて処理を行う場合の、図113の信号処理装置4の処理を説明するフローチャートである。
【1687】
図113の信号処理装置4では、定常性に基づいて、実世界が推定され、これにより、センサ2の時間積分効果による、物体の信号の時間方向の混合(時間混合)によって生じる動きボケを除去する処理などが行われる。
【1688】
即ち、実世界1において、自動車などのオブジェクトが移動している画像を、イメージセンサであるセンサ2で撮像した場合に得られる入力画像においては、オブジェクトが時間経過とともに移動するため、センサ2の時間積分効果によって、そのオブジェクトの光信号と、そのオブジェクト以外の部分の光信号とが混合(時間混合)し、これにより、オブジェクトの境界部分などにおいて、いわゆる動きボケが生じる。図113の信号処理装置4では、このような時間混合によって生じた動きボケを入力画像から除去した高画質の出力画像が生成され、結果として、入力画像から動きボケを除去した出力画像が得られる。
【1689】
図113の信号処理装置4は、まず最初に、ステップS17301において、前処理を行い、ステップS17302に進む。即ち、信号処理装置4は、イメージセンサであるセンサ2(図1)からデータ3として供給される、例えば1フレームまたは1フィールドの入力画像を、処理領域設定部17001、定常性設定部17002、実世界推定部17003、画像生成部17004、および画像表示部17005に供給する。さらに、信号処理部4は、画像表示部17005に、入力画像を表示させる。
【1690】
なお、ここでは、例えば、自動車などのオブジェクトが水平方向に一定速度で移動しているシーンを、センサ2で撮像することにより得られる、時間混合による動きボケが生じた画像が、入力画像として、信号処理装置4に入力されるものとする。
【1691】
ステップS17302では、ユーザI/F17006は、ユーザがユーザI/F17006を操作することにより、何らかのユーザ入力があったかどうかを判定する。ステップS17302において、ユーザ入力がなかったと判定された場合、即ち、ユーザが何らの操作も行わなかった場合、ステップS17302に戻る。
【1692】
また、ステップS17302において、ユーザ入力があったと判定された場合、即ち、ユーザが、画像表示部10005に表示された入力画像を見て、ユーザI/F17006を操作し、これにより、何らかの指示または情報を表すユーザ入力があった場合、ステップS17303に進み、ユーザI/F17006は、そのユーザ入力が、信号処理装置4の処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。
【1693】
ステップS17303において、ユーザ入力が終了指示であると判定された場合、信号処理装置4は処理を終了する。
【1694】
また、ステップS17303において、ユーザ入力が終了指示でないと判定された場合、ステップS17304に進み、ユーザI/F17006は、ユーザ入力が補助情報であるかどうかを判定する。ステップS17304において、ユーザ入力が補助情報でないと判定された場合、ステップS17302に戻る。
【1695】
また、ステップS17304において、ユーザ入力が補助情報であると判定された場合、ステップS17305に進み、ユーザI/F17006は、その補助情報を、処理領域設定部17001、定常性設定部17002、または実世界推定部17006に供給し、ステップS17306に進む。
【1696】
ステップS17306では、処理領域設定部17001は、入力画像について、処理領域を設定し、その処理領域を特定する処理領域情報を、定常性設定部17002、実世界推定部17003、および画像生成部17004に供給し、ステップS17307に進む。ここで、処理領域設定部17001は、直前に行われたステップS17305においてユーザI/F17006から補助情報が供給された場合は、その補助情報を用いて、処理領域の設定を行う。
【1697】
ステップS17307では、定常性設定部17002は、処理領域設定部17001から供給された処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識する。さらに、定常性設定部17002は、その処理領域の画像データにおいて欠落した実世界1の信号の定常性を設定し、その定常性を表す定常性情報を、実世界推定部17003に供給して、ステップS17308に進む。ここで、定常性設定部17002は、直前に行われたステップS17305においてユーザI/F17006から補助情報が供給された場合は、その補助情報を用いて、定常性の設定を行う。
【1698】
ステップS17308では、実世界推定部17003は、入力画像における処理領域内の画像データについて、対応する実世界1の信号の定常性に応じて、その実世界1の信号を推定する。
【1699】
即ち、実世界推定部17003では、モデル生成部17011が、処理領域設定部17001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識するとともに、定常性設定部17002から供給される、定常性情報から、処理領域の画像データに対応する実世界1の信号の定常性(ここでは、例えば、処理領域に表示されたオブジェクトの動き量)を認識する。さらに、モデル生成部17011は、入力画像における処理領域を構成する画素と、その処理領域の画像データに対応する実世界1の信号の定常性に応じて、処理領域内の各画素の画素値と実世界1の信号との関係をモデル化した関係モデルとしての関数を生成し、方程式生成部17012に供給する。
【1700】
方程式生成部17012は、処理領域設定部17001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素について、モデル生成部17011から供給される関係モデルとしての関数に、入力画像の必要な画素の画素値を代入し、これにより、実世界1の信号を近似する近似関数を求める方程式を生成して、実世界波形推定部17013に供給する。
【1701】
なお、ここでは、上述したように、近似関数として、スプライン関数が用いられる。
【1702】
実世界波形推定部17013は、方程式生成部17012から供給される方程式を解くことにより、実世界1の信号の波形を推定、即ち、実世界1の信号をモデル化した近似モデルとしての近似関数を求め、画像生成部17004に供給する。
【1703】
なお、実世界推定部17003においては、モデル生成部17011および方程式生成部17012は、直前に行われたステップS17305においてユーザI/F17006から補助情報が供給された場合は、その補助情報を用いて、処理を行う。
【1704】
ステップS17308の処理後は、ステップS17309に進み、画像生成部17004は、実世界推定部17003(の実世界波形推定部17013)から供給された近似関数に基づいて、実世界1の信号により近似した信号を生成する。即ち、画像生成部17004は、処理領域設定部17001から供給される処理領域情報から、入力画像における処理領域を認識し、その処理領域について、実世界推定部17003から供給された近似関数に基づき、実世界1の信号に対応する画像により近似した画像データである近似画像を生成する。さらに、画像生成部17004は、入力画像の処理領域の部分を、近似画像に置き換えた画像を、出力画像として生成し、画像表示部17005に供給して、ステップS17309からS17310に進む。
【1705】
ステップS17310では、画像表示部17005は、画像生成部17004から供給された出力画像を、ステップS17301で表示された入力画像に代えて、またはその入力画像とともに表示して、ステップS17302に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【1706】
以上のように、処理領域設定部17001、定常性設定部17002、および実世界推定部17003が、ユーザがユーザI/F17006を操作することにより入力される補助情報を用いて処理を行う場合には、より高画質の画像を得ることが可能となる。
【1707】
即ち、画像表示部17005において、例えば、動いているオブジェクトが映っている入力画像または出力画像が表示された場合、その画像を見たユーザは、その画像において、動きボケが生じている領域を、例えば、実際に見たことがある実物(実世界1)のオブジェクトの記憶などにより判断することができる。そこで、図153に示すように、画像表示部17005に表示された画像において動きボケが生じてる領域を、ユーザI/F17006を操作することによりユーザにポインティング等してもらい、そのポインティングされた位置を表す情報などを、補助情報として、処理領域設定部17001に供給することにより、処理領域設定部17001では、その補助情報に基づき、動きボケが生じている部分を容易に特定することができる。さらに、処理領域設定部17001では、動きボケが生じている部分を確実に含む処理領域を設定することができ、後段のブロックにおいて、そのような処理領域を対象に処理を行うことで、入力画像に生じている動きボケを精度良く除去することが可能となる。
【1708】
また、ユーザには、ユーザI/F17006を操作することにより、画像に表示されたオブジェクトの動き量に関係する情報を入力してもらうことができる。この場合、ユーザに、オブジェクトの動き量を、直接入力してもらうことが可能であるが、一般には、ユーザが、オブジェクトの動き量を、直接入力することは困難である。そこで、例えば、ユーザI/F17006をジョイスティックやマウスなどで構成し、そのジョイスティックを操作することで、ユーザに、動き量、さらには必要に応じて動きの方向を入力してもらうことができる。この場合、ユーザI/F17006は、ジョイスティックの操作量と操作方向を、補助情報として、定常性設定部17002に供給し、定常性設定部17002は、ジョイスティックの操作量と操作方向に基づき、オブジェクトの動きベクトルを設定する。即ち、定常性設定部17002は、ジョイスティックの操作量に基づき、オブジェクトの動き量を設定するとともに、ジョイスティックの操作方向に基づき、オブジェクトの動きの方向を設定する。そして、定常性設定部17002の後段のブロックは、定常性設定部17002において設定された動きベクトルを表す定常性情報に基づいて処理を行う。
【1709】
この場合、ユーザによるジョイスティックの操作によって、最初から、オブジェクトの動きベクトルを、正確に入力するのは困難である。しかしながら、ユーザによるジョイスティックの操作に基づいて、例えば、オブジェクトの動きベクトルを、1画素単位などで変化させ、画像表示部17005において、その動きベクトルについて得られた出力画像をリアルタイムで表示することを繰り返すことにより、ユーザは、ジョイスティックの操作に応じて画像表示部17005に表示される出力画像の画質の変化を認識することができる。従って、ユーザは、図153に示すように、画像表示部17005に表示された出力画像を見ながら、ジョイスティックを操作することにより、画質の良い出力画像、即ち、ここでは、入力画像から動きボケが除去された画像を得ることができる。
【1710】
なお、入力画像から動きボケが除去された画像が得られたときに、定常性設定部17002で設定された動きベクトルは、オブジェクトの動きを精度良く表すものとなる。
【1711】
次に、図154は、イメージセンサであるセンサ2の積分効果によって、画像データに生じる歪みとしての、例えば動きボケの除去を、ユーザ入力に基づいて行う場合の、図113の信号処理装置4と等価な装置の構成例を示している。
【1712】
入力画像取得部17301は、入力画像を取得して、動きボケ除去処理部17303と出力画像合成部17304に供給する。なお、ここでは、入力画像は、上述したように、自動車などのオブジェクトが水平方向に一定速度で移動しているシーンを、イメージセンサで撮像することにより得られる、時間混合による動きボケが生じた画像であるとする。
【1713】
ユーザ入力情報取得部17302は、ユーザがユーザI/F17006を操作することによりユーザI/F17006から供給されるユーザ入力情報(ユーザ入力)を取得し、必要に応じて、補助情報として、動きボケ除去処理部17303と出力画像合成部17304に供給する。
【1714】
ここで、ユーザ入力情報としては、例えば、処理領域を表す情報、入力画像におけるオブジェクトの動き量vを表す情報、処理の終了を指示する終了指示、さらには、上述の式(199)で導入した重みW1およびW2を表す情報などがある。
【1715】
動きボケ除去処理部17303は、入力画像取得部17301から供給される入力画像と、ユーザ入力情報取得部17302から供給される補助情報とを用いて、画像に生じている動きボケを除去する動きボケ除去処理を行い、その動きボケ除去処理の結果を、出力画像合成部17304に供給する。
【1716】
出力画像合成部17304は、入力画像取得部17301から供給される入力画像と、動きボケ除去処理部17303から供給される動きボケ除去処理の結果としての近似画像とを、ユーザ入力情報取得部17302から供給される補助情報に基づいて合成し、その結果得られる出力画像を、出力部17305に供給する。
【1717】
ここで、以上の入力画像取得部17301、ユーザ入力情報取得部17302、動きボケ除去処理部17303、および出力画像合成部17304で構成される部分が、図113の処理領域設定部17001、定常性設定部17002、実世界推定部17003、および画像生成部17004で構成される部分に対応する。
【1718】
出力部17305は、出力画像合成部17304から供給される画像を表示する。
【1719】
ここで、出力部17305で構成される部分は、図113の画像表示部17005で構成される部分に対応する。
【1720】
次に、図155のフローチャートを参照して、図154の装置の処理について説明する。
【1721】
まず最初に、ステップS17331において、入力画像取得部17301は、入力画像を取得し、動きボケ除去処理部17303と出力画像合成部17304に供給して、ステップS17332に進む。
【1722】
ステップS17332では、ユーザ入力情報取得部17302は、ユーザがユーザI/F17006を操作することによりユーザI/F17006からユーザ入力情報が供給されたかどうかを判定し、供給されていないと判定した場合、ステップS17332に戻る。
【1723】
そして、ステップS17332において、ユーザI/F17006からユーザ入力情報が供給されたと判定された場合、ステップS17334に進み、ユーザ入力情報取得部17302は、ユーザI/F17006から供給されるユーザ入力情報を取得して、ステップS17333に進む。
【1724】
ステップS17333では、ユーザ入力情報取得部17302は、ユーザ入力情報が、処理の終了を指示する終了指示であるかどうかを判定する。ステップS17333において、ユーザ入力情報が、処理の終了を指示する終了指示でないと判定された場合、即ち、ユーザ入力情報が、例えば、処理領域を表す情報、入力画像におけるオブジェクトの動き量vを表す情報、式(199)における重みW1およびW2を表す情報などの、動きボケ除去処理部17303による動きボケ除去処理を補助する補助情報である場合、ステップS17334に進み、ユーザ入力情報取得部17302は、そのユーザ入力情報を、補助情報として、動きボケ除去処理部17303、さらには、必要に応じて出力画像合成部17304に供給して、ステップS17335に進む。
【1725】
ステップS17335では、動きボケ除去処理部17303は、入力画像取得部17301から供給される入力画像と、ユーザ入力情報取得部17302から供給される補助情報とを用いて、画像に生じている動きボケを除去する動きボケ除去処理を行い、その動きボケ除去処理の結果を、出力画像合成部17304に供給して、ステップS17336に進む。
【1726】
ステップS17336では、出力画像合成部17304は、入力画像取得部17301から供給される入力画像の、ユーザ入力情報取得部17302から供給される補助情報としての処理領域を表す情報によって特定される処理領域の画像を、動きボケ除去処理部17303から供給される動きボケ除去処理の結果としての近似画像に置き換えることにより、入力画像と近似画像とを合成し、その結果得られる出力画像を、出力部17305に供給して、ステップS17337に進む。
【1727】
ステップS17337では、出力部17305が、出力画像合成部17304から供給される出力画像を表示して、ステップS17332に戻り、以下、上述した、ステップS17332乃至S17337の処理が繰り返される。
【1728】
そして、ステップS17333において、ユーザ入力情報が、処理の終了を指示する終了指示であると判定された場合、即ち、例えば、ステップS17332乃至S17337の処理が繰り返されることにより、ユーザが満足する画質の出力画像(ここでは、動きボケが十分に除去された画像)が出力部17305に表示され、ユーザが処理を終了するように、ユーザI/F17006を操作した場合、ステップS17338に進み、出力部17305は、そのとき表示している出力画像を記憶して、処理を終了する。
【1729】
次に、図156は、図154の動きボケ除去処理部17303の構成例を示している。なお、図中、図144の実処理部17100における場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。即ち、図156の動きボケ除去処理部17303は、図144の実処理部17100と同様に構成されている。
【1730】
従って、図156の動きボケ除去処理部17303においては、入力画像について、図125に示した物理モデルに基づいて得られる式(166)乃至式(170)に示したN+1個の方程式を用いて、実世界1の光信号を近似するスプライン関数が求められ、動きボケのない所望の解像度の画像(近似画像)が生成される。
【1731】
但し、図144の実処理部17100では、処理領域情報と、動き量vを表す定常性情報とが、実処理に必要なパラメータとして供給されるようになっていたが、図156の動きボケ除去処理部17303においては、処理領域情報と、動き量vを表す定常性情報とが、ユーザがユーザI/F17006を操作することにより、ユーザ入力情報取得部17302を介して、補助情報として供給されるようになっている。
【1732】
次に、図157のフローチャートを参照して、図156の動きボケ除去処理部17303の処理について説明する。
【1733】
まず最初に、ステップS17351において、モデル化部17061は、図154のユーザ入力情報取得部17032から補助情報として供給される処理領域情報と、定常性情報としての動き量vとを取得するとともに、前処理部17101が、図154のユーザ入力情報取得部17032から補助情報として供給される処理領域情報を取得し、ステップS17352に進む。ステップS17352では、前処理部17101が、処理領域情報から処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素の画素値を、入力画像から抽出して、物理モデル適用部17051の連立方程式取得部17063に供給する。
【1734】
そして、ステップS17352からS17353に進み、モデル化部17061は、ステップS17351で取得された処理領域情報が表す処理領域に射影された実世界1の光信号を、図125に示した物理モデルにモデル化する。
【1735】
即ち、モデル化部17061は、ユーザ入力情報取得部17032から供給される処理領域情報に基づいて、処理領域の各水平ラインを構成する画素数を認識する。さらに、モデル化部17061は、処理領域の各水平ラインを構成する画素数と、ステップS17351で取得された動き量vとから、図125の物理モデルの情報を求め、その物理モデルの情報を、方程式作成部17062に供給して、ステップS17353からS17354に進む。
【1736】
ステップS17354では、方程式作成部17062は、モデル化部17061から供給される物理モデルの情報から、式(166)乃至式(170)に示した方程式を作成し、連立方程式取得部17063に供給して、ステップS17355に進む。
【1737】
なお、ステップS17353およびS17354の処理は、処理領域情報が表す処理領域のすべての水平ラインについて行われる。
【1738】
ステップS17355では、連立方程式取得部17063は、処理領域情報が表す処理領域の水平ラインのうちの、まだ注目水平ラインとしていない水平ラインを、注目水平ラインとして選択し、その注目水平ラインの画素の画素値Ykを、前処理部17101から供給される処理領域の画素値から取得して、ステップS17356に進む。ステップS17356では、連立方程式取得部17063は、方程式作成部17062から供給される注目水平ラインについての式(166)乃至式(170)の方程式に対して、注目水平ラインの画素の画素値Ykを代入し、これにより、注目水平ラインの画素の数に等しい数の連立方程式を取得して、物理モデル値取得部17052に供給する。
【1739】
そして、ステップS17356からS17357に進み、物理モデル値取得部17052の連立方程式演算部17064は、連立方程式取得部17063から供給される、注目水平ラインについての連立方程式を演算し(解き)、これにより、注目水平ラインに射影された実世界1の信号を近似する式(137)および式(138)のスプライン関数を求め、再混合部17053に供給して、ステップS17358に進む。
【1740】
ステップS17358では、再混合部17053は、連立方程式演算部17064から供給されるスプライン関数を用いて再混合(再積分)を行う。即ち、再混合部17053は、連立方程式演算部17064から供給される注目水平ラインについてのスプライン関数について、そのスプライン関数が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、例えば、処理領域の画素#kのx方向の幅やその1/2の幅などの所定の単位で積分(再積分)することにより、注目水平ラインについて、動きボケのない画素値を求め、ステップS17358からS17359に進む。なお、ステップS17358における積分の単位(積分範囲)を調整することにより、上述したように、その積分によって得られる画像の解像度を変化させることができる。この積分の単位は、あらかじめ設定しておくこともできるし、ユーザがユーザI/F17006を操作することにより入力することもできる。
【1741】
ここで、ステップS17358において、x方向の積分を、例えば、画素#kのx方向の幅単位で行う場合は、式(171)乃至式(173)にしたがって、動きボケのない画素値Xkが求められることになる。また、ステップS17358において、x方向の積分を、例えば、画素#kのx方向の幅の1/2単位で行う場合は、式(174)乃至式(179)にしたがって、動きボケのない画素値Xkが求められることになる。
【1742】
ステップS17359では、連立方程式取得部17063は、処理領域情報が表す処理領域のすべての水平ラインを、注目水平ラインとしたかどうかを判定し、まだしていないと判定した場合、ステップS17355に戻る。この場合、ステップS17355では、連立方程式取得部17063は、処理領域の水平ラインのうちの、まだ注目水平ラインとしていない処理領域を、注目水平ラインとして新たに選択し、以下、同様の処理を繰り返す。
【1743】
また、ステップS17359において、処理領域の水平ラインのすべてを、注目水平ラインとしたと判定された場合、即ち、処理領域の水平ラインのすべてについて、動きボケのない画素値が得られた場合、ステップS17360に進み、再混合部17053は、処理領域のすべての水平ラインについて得られた動きボケのない画素値、即ち、動きボケのない処理領域の画像を出力して処理を終了する。
【1744】
以上のように、図156の動きボケ除去処理部17303においても、図144の実処理部17100における場合と同様にして、動きボケが除去され、さらには、必要に応じて解像度が向上した画像が得られる。
【1745】
次に、図158は、図154の動きボケ除去処理部17303の他の構成例を示している。なお、図中、図146の実処理部17100における場合と対応する部分については、同一の符号を付してあり、以下では、その説明は、適宜省略する。即ち、図158の動きボケ除去処理部17303は、図146の実処理部17100と同様に構成されている。
【1746】
従って、図158の動きボケ除去処理部17303においては、入力画像について、図125に示した物理モデルに基づいて得られる式(166)乃至式(170)に示したN+1個の方程式の他に、拘束条件を記述する式(186)および式(187)に示した2(N−1)個の拘束条件式を用いて、実世界1の光信号を近似するスプライン関数が求められ、動きボケのない所望の解像度の画像(近似画像)が生成される。
【1747】
但し、図146の実処理部17100では、処理領域情報、動き量vを表す定常性情報、式(199)で導入した式(201)における重みW1とW2が、ユーザがユーザI/F17006を操作することにより、ユーザ入力情報取得部17032を介して、補助情報として供給されるようになっている。
【1748】
次に、図159のフローチャートを参照して、図158の動きボケ除去処理部17303の処理について説明する。
【1749】
まず最初に、ステップS17381において、モデル化部17091は、図154のユーザ入力情報取得部17302から補助情報として供給される処理領域情報と、定常性情報としての動き量vを取得するとともに、前処理部17101が、図154のユーザ入力情報取得部17302から補助情報として供給される処理領域情報を取得する。さらに、ステップS17381では、物理モデル値取得部17083の最小自乗法適用部17093が、図154のユーザ入力情報取得部17302から補助情報として供給される重みW1とW2を取得し、ステップS17382に進む。ステップS17382では、前処理部17101が、処理領域情報から処理領域を認識し、その処理領域を構成する画素の画素値を、入力画像から抽出して、物理モデル値取得部17083の最小自乗法適用部17093に供給する。
【1750】
そして、ステップS17382からS17383に進み、モデル化部17091は、ステップS17381で取得された処理領域情報が表す処理領域の水平ラインに射影された実世界1の光信号を、図125に示した物理モデルにモデル化する。
【1751】
即ち、モデル化部17091は、ユーザ入力情報取得部17302から供給される処理領域情報に基づいて、処理領域の各水平ラインを構成する画素数を認識する。さらに、モデル化部17091は、処理領域の各水平ラインを構成する画素数と、ステップS17381で取得された動き量vとから、図125の物理モデルの情報を求め、その物理モデルの情報を、画素内拘束式作成部17082と方程式作成部17092に供給して、ステップS17383からS17384に進む。
【1752】
ステップS17384では、方程式作成部17092は、モデル化部17091から供給される物理モデルの情報から、式(166)乃至式(170)に示した方程式を作成し、物理モデル値取得部17083に供給して、ステップS17385に進む。
【1753】
ステップS17385では、画素内拘束式作成部17082は、式(186)および式(187)に示した拘束条件式を作成し、物理モデル値取得部17083に供給して、ステップS17386に進む。
【1754】
なお、ステップS17383乃至S17385の処理は、処理領域の水平ラインすべてについて行われる。
【1755】
ステップS17386では、物理モデル値取得部17083の最小自乗法適用部17093は、処理領域の水平ラインのうちの、まだ注目水平ラインとしていない水平ラインを、注目水平ラインとして選択し、その注目水平ラインの画素の画素値Ykを、前処理部17101から供給される処理領域の画素値から取得して、ステップS17387に進む。
【1756】
ステップS17387では、最小自乗法適用部17093は、方程式作成部17092から供給される注目水平ラインについての式(166)乃至式(170)の方程式と、画素内拘束式作成部17082から供給される式(186)および式(187)に示した拘束条件式に対して、注目水平ラインの画素の画素値Ykを代入し、さらに、重みW1とW2を用いて、式(201)の正規方程式をたて、これにより、式(201)の正規方程式を取得し、ステップS17388に進む。
【1757】
ステップS17388では、最小自乗法適用部17093は、注目水平ラインについて得られた正規方程式を解くことにより、その注目水平ラインについて、式(137)のスプライン関数(を定義する変数yk)を求め、即ち、実世界1の信号を近似する式(137)および式(138)のスプライン関数を求め、再混合部17053に供給して、ステップS17389に進む。
【1758】
ステップS17389では、再混合部17053は、最小自乗法適用部17093から供給されるスプライン関数を用いて再混合(再積分)を行う。即ち、再混合部17053は、最小自乗法適用部17093から供給される、注目水平ラインについて得られたスプライン関数それぞれについて、そのスプライン関数が、露光時間の間、露光開始時刻における位置から移動しないとして得られる曲面を、時間方向に、露光時間の間だけ積分するとともに、x方向に、例えば、処理領域の画素#kのx方向の幅やその1/2などの所定の単位で積分(再積分)することにより、注目水平ラインについて動きボケのない画素値を求め、ステップS17389からS17390に進む。なお、ステップS17389における積分の単位(積分範囲)を調整することにより、上述したように、その積分によって得られる画像の解像度を変化させることができる。この積分の単位は、あらかじめ設定しておくこともできるし、ユーザがユーザI/F17006を操作することにより入力することもできる。
【1759】
ここで、ステップS17389において、x方向の積分を、例えば、画素#kのx方向の幅単位で行う場合は、式(171)乃至式(173)にしたがって、動きボケのない画素値Xkが求められることになる。また、ステップS17389において、x方向の積分を、例えば、画素#kのx方向の幅の1/2単位で行う場合は、式(174)乃至式(179)にしたがって、動きボケのない画素値Xkが求められることになる。
【1760】
ステップS17390では、最小自乗法適用部17093は、処理領域の水平ラインすべてを、注目水平ラインとしたかどうかを判定し、まだしていないと判定した場合、ステップS17386に戻る。この場合、ステップS17386では、最小自乗法適用部17093は、処理領域のうちの、まだ注目水平ラインとしていない水平ラインを、注目水平ラインとして新たに選択し、以下、同様の処理を繰り返す。
【1761】
また、ステップS17390において、処理領域の水平ラインすべてを、注目水平ラインとしたと判定された場合、即ち、処理領域の水平ラインすべてについて、動きボケのない画素値が得られた場合、ステップS17391に進み、再混合部17053は、処理領域のすべての水平ラインについて得られた動きボケのない画素値、即ち、動きボケのない処理領域の画像を出力して処理を終了する。
【1762】
以上のように、図158の動きボケ除去処理部17303でも、図146の実処理部17100における場合と同様にして、動きボケが除去され、さらには、必要に応じて解像度を向上した画像が得られる。
【1763】
以上のように、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に実世界1の光信号が射影され、実世界の光信号1の定常性の一部が欠落した画像データ内の処理領域を設定するとともにし、画像データにおいて欠落した現実世界の光信号の定常性である画像データ内のオブジェクトの動き量を設定し、処理領域内の画像データの空間方向のうちのx方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した実世界1の光信号に対応する光信号関数(実世界関数)F(x)が、動き量に対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、x方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、光信号関数F(x)を推定する場合において、ユーザからの入力に応じて、処理領域や、動き量、重みW1,W2などが設定される。従って、ユーザが、光信号関数F(x)の推定結果から生成される画像を見ながら、処理領域や、動き量、重みW1,W2などを調整することにより、光信号関数F(x)を精度良く推定することが可能となり、その結果、最終的には、高画質の画像を得ることができる。
【1764】
なお、上述の場合には、入力画像に、動いているオブジェクトが表示されているときに、そのオブジェクトが、水平方向(左から右方向)に、一定の速さで移動しているとして、即ち、オブジェクトの動きの方向を水平方向に固定して、その動きの大きさである動き量を、定常性情報として用いることとしたが、定常性情報としては、動きの大きさの他、方向の情報も有する動きベクトルを用いることが可能である。この場合、動きベクトルによってオブジェクトの動き(定常性)が表される入力画像については、図125の物理モデルは、例えば、動きベクトルにより示される動きの方向をx方向とすることにより適用することが可能である。
【1765】
また、上述の場合には、入力画像として静止画を採用することとしたが、入力画像としては、その他、例えば、動画を採用することも可能である。この場合、信号処理装置4では、動画の、例えば、フレームまたはフィールド単位で処理が行われる。
【1766】
さらに、処理領域としては、矩形以外の任意の形状を採用することが可能である。
【1767】
次に、図113の定常性設定部17002においては、定常性情報としての動きは、ユーザの操作に基づいて設定する他、入力画像から動きを検出して設定することもできる。
【1768】
そこで、定常性設定部17002における動きの検出方法について説明する。
【1769】
入力画像におけるあるオブジェクトが動いている場合の、そのオブジェクトの動きとしての、例えば動きベクトルを検出する方法としては、いわゆるブロックマッチング法が知られている。
【1770】
しかしながら、ブロックマッチング法では、注目しているフレームと、その前または後のフレームとのマッチングを行うため、注目している1フレームだけから動きを検出することは困難である。
【1771】
そこで、定常性設定部17002では、1フレームの入力画像だけから、動きの検出を行うことができるようになっている。
【1772】
即ち、図160は、定常性設定部17002の構成例を示している。
【1773】
図160で構成が示される定常性設定部17002においては、入力画像の中の処理領域におけるオブジェクトの動き方向が検出され、動き方向が水平方向になるように入力画像が補正される。そして、動き方向に隣接する画素の画素値の差分値である、入力画像のオブジェクトの動き方向に一次微分した特徴量が検出される。
【1774】
さらに、注目している画素の特徴量と動き方向に所定の距離の対応画素の特徴量との相関が検出され、検出された相関が最大である対応画素と注目画素との距離に応じてオブジェクトの動き量が検出される。
【1775】
すなわち、図160で構成が示される定常性設定部17002は、動き方向検出部11201、動き方向修正部11202、特徴量検出部11203、および動き量検出部11204を含む。
【1776】
さらに、動き方向検出部11201は、アクティビティ演算部11211およびアクティビティ評価部11212を含む。動き方向修正部11202は、アフィン変換部11213を含む。
【1777】
特徴量検出部11203は、差分演算部11214、差分評価部11215、中間画像作成部11216、中間画像作成部11217、フレームメモリ11218、符号反転部11219、およびフレームメモリ11220を含む。
【1778】
さらに、動き量検出部11204は、相関検出部11221および相関評価部11222を含む。
【1779】
図160で構成が示される定常性設定部17002において、入力画像は、動き方向検出部11201および動き方向修正部11202に供給される。さらに、処理領域設定部17001が出力する処理領域情報も、動き方向検出部11201および動き方向修正部11202に供給される。
【1780】
動き方向検出部11201は、入力画像と処理領域情報を取得して、取得した入力画像から処理領域における動き方向を検出する。
【1781】
動いている対象物を撮像したとき、対象物の画像には動きボケが生じる。これは、対象物の画像を撮像するセンサ2としてのカメラまたはビデオカメラのイメージセンサの働きによるものである。
【1782】
すなわち、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサなどのイメージセンサは、露光時間(シャッタ時間)において、画素毎に入射された光を連続的に電荷に変換し、さらに電荷を1つの画像値に変換する。撮像の対象物が静止しているとき、露光している期間において、対象物の同じ部位の画像(光)が1つの画素値に変換される。このように撮像された画像には、動きボケは含まれていない。
【1783】
これに対して、対象物が動いているとき、露光している期間において、1つの画素に入射される対象物の部位の画像が変化し、対象物の異なる部位の画像が1つの画素値に変換されてしまう。逆に言えば、対象物の1つの部位の画像が複数の画素値に射影される。これが動きボケである。
【1784】
動きボケは、対象物の動き方向に生じる。
【1785】
動きボケが生じている部分(動きボケを含む領域)の動き方向に並んでいる画素の画素値のそれぞれに注目すると、動き方向に並んでいる画素の画素値には、対象物のほぼ同じ範囲の部位の画像が射影されている。従って、動きボケが生じている部分の、動き方向に並んでいる画素の画素値の変化は、より少なくなっていると言える。
【1786】
動き方向検出部11201は、このような入力画像の処理領域における画素の画素値の変化、すなわちアクティビティを基に、動き方向を検出する。
【1787】
より具体的には、動き方向検出部11201のアクティビティ演算部11211は、予め定めた方向毎に、各方向に並んでいる画素の画素値の変化(アクティビティ)を演算する。例えば、アクティビティ演算部11211は、予め定めた方向毎に、各方向に対応して位置する画素の画素値の差分をアクティビティとして演算する。アクティビティ演算部11211は、演算した画素値の変化を示す情報をアクティビティ評価部11212に供給する。
【1788】
アクティビティ評価部11212は、アクティビティ演算部11211から供給された、予め定めた方向毎の画素の画素値の変化の中の、最小の画素値の変化を選択し、選択した画素値の変化に対応する方向を動き方向とする。
【1789】
動き方向検出部11201は、このように検出した動き方向を示す動き方向情報を動き方向修正部11202に供給する。
【1790】
動き方向修正部11202には、処理領域情報も供給される。動き方向修正部11202は、動き方向検出部11201から供給された動き方向情報を基に、動き方向が画像の水平方向となるように入力画像における処理領域の中の画像データを変換する。
【1791】
例えば、動き方向修正部11202のアフィン変換部11213は、動き方向検出部11201から供給された動き方向情報を基に、動き方向情報で示される動き方向が画像の水平方向となるように入力画像における処理領域の中の画像データをアフィン変換する。
【1792】
動き方向修正部11202は、動き方向が画像の水平方向となるように変換された入力画像における処理領域の中の画像データを特徴量検出部11203に供給する。
【1793】
特徴量検出部11203は、動き方向修正部11202から供給された画像の特徴量を検出する。
【1794】
すなわち、特徴量検出部11203の差分演算部11214は、入力画像の処理領域の画素から1つの画素を選択することにより、注目している注目画素とする。そして、特徴量検出部11203の差分演算部11214は、注目画素の画素値から、注目画素の右隣の画素の画素値を引き算することにより差分値を求める。
【1795】
差分演算部11214は、入力画像の処理領域の画素を順に注目画素として、差分値を求める。すなわち、差分演算部11214は、入力画像の処理領域の全ての画素に対して、差分値を求める。差分演算部11214は、差分値に対応する注目画素の位置を示す情報(差分値の画面上の位置を示す位置情報)と共に、このように演算された差分値を差分評価部11215に供給する。
【1796】
差分評価部11215は、差分値が0以上であるか否かを判定し、0以上である差分値を、差分値の画面上に位置を示す位置情報と共に、中間画像作成部11216に供給し、0未満である差分値を、差分値の画面上の位置を示す位置情報と共に、中間画像作成部11217に供給する。
【1797】
中間画像作成部11216は、差分値の画面上に位置を示す位置情報と共に、差分評価部11215から供給された0以上である差分値を基に、差分値からなる中間画像を作成する。すなわち、中間画像作成部11216は、位置情報で示される画面上の位置の画素に、差分評価部11215から差分値が供給された0以上である差分値を設定し、差分評価部11215から差分値が供給されなかった位置の画素に0を設定して、中間画像を作成する。中間画像作成部11216は、このように作成した中間画像(以下、非反転中間画像と称する。)をフレームメモリ11218に供給する。
【1798】
中間画像作成部11217は、差分値の画面上に位置を示す位置情報と共に、差分評価部11215から供給された0未満(負の値)である差分値を基に、差分値からなる中間画像を作成する。すなわち、中間画像作成部11217は、位置情報で示される画面上の位置の画素に、差分評価部11215から差分値が供給された0未満である差分値を設定し、差分評価部11215から差分値が供給されなかった位置の画素に0を設定して、中間画像を作成する。中間画像作成部11216は、このように作成した中間画像を符号反転部11219に供給する。
【1799】
符号反転部11219は、中間画像作成部11217から供給された中間画像の画素に設定されている、0未満である差分値の符号を反転する。中間画像の画素に設定されている0である値の符号は、反転されない。すなわち、符号反転部11219は、中間画像作成部11217から供給された中間画像の画素に設定されている、0未満である差分値を選択し、選択した0未満である差分値を、差分値と同じ絶対値の0を超える値に変換する。例えば、−15である差分値は、符号が反転され、15に変換される。符号反転部11219は、このように符号が反転された中間画像(以下、反転中間画像と称する。)をフレームメモリ11220に供給する。
【1800】
フレームメモリ11218は、0以上である差分値と0とからなる非反転中間画像を、特徴量として動き量検出部11204に供給する。フレームメモリ11220は、符号が反転され0を超える値とされた差分値と0とからなる反転中間画像を、特徴量として動き量検出部11204に供給する。
【1801】
動き量検出部11204は、特徴量検出部11203から供給された特徴量を基に、動きを検出する。すなわち、動き量検出部11204は、入力画像の処理領域における対象物の画像(オブジェクト)の画素の中の少なくとも注目画素の特徴と、注目画素に対して動き方向に沿って配される対応画素の特徴との相関を検出し、検出された相関に応じて、入力画像の処理領域における対象物の画像(オブジェクト)の動き量を検出する。
【1802】
動き量検出部11204の相関検出部11221は、特徴量検出部11203のフレームメモリ11218から供給された、特徴量としての、非反転中間画像と、特徴量検出部11203のフレームメモリ11220から供給された、特徴量としての、反転中間画像との相関を検出する。相関検出部11221は、検出された相関を相関評価部11222に供給する。
【1803】
より詳細に説明すれば、例えば、動き量検出部11204の相関検出部11221は、特徴量検出部11203のフレームメモリ11218から供給された、0以上である差分値と0とからなる非反転中間画像に対して、特徴量検出部11203のフレームメモリ11220から供給された、符号が反転され0を超える値とされた差分値と0とからなる反転中間画像を、画素を単位として、画面の水平方向に移動させる(ずらす(シフトさせる))。すなわち、相関検出部11221は、反転中間画像を構成する画素の画面上の位置を水平方向に移動させる。
【1804】
反転中間画像(の画素)を、画面上の水平方向に移動させることによって、非反転中間画像の画素と、反転中間画像の画素との画面上の位置の関係が変化する。例えば、移動前に、非反転中間画像の注目画素に対応する画面上の位置にある、反転中間画像の対応画素は、移動後において、移動量だけ、非反転中間画像の注目画素に対応する位置から離れることになる。より具体的には、反転中間画像を右に20画素移動したとき、反転中間画像の対応画素は、非反転中間画像の注目画素に対応する位置から右に20画素離れる。逆に言えば、移動後に、非反転中間画像の注目画素に対応する画面上の位置にある、反転中間画像の対応画素は、移動前において、注目画素に対応する位置から移動量だけ離れている。
【1805】
相関検出部11221は、非反転中間画像と、移動された反転中間画像との、対応する位置の画素の画素値の差分を演算し、差分の絶対値の和を相関値とする。
【1806】
例えば、相関検出部11221は、非反転中間画像に対して、反転中間画像を、画面の左方向に70画素乃至画面の右方向に70画素の範囲で、1画素ずつ画面の水平方向に移動させ(ずらして)、移動させた位置毎(移動量毎)に、非反転中間画像および移動された反転中間画像について、画面上の同じ位置となる画素の画素値の差分を演算し、差分の絶対値の和を相関値とする。
【1807】
例えば、非反転中間画像に対して反転中間画像を、画面の左方向に移動するとき、移動量を負(マイナス)で表す。非反転中間画像に対して反転中間画像を、画面の右方向に移動するとき、移動量を正(プラス)で表す。相関検出部11221は、−70画素乃至+70画素の移動量毎に、非反転中間画像および移動された反転中間画像について、画面上の同じ位置となる画素の画素値の差分を演算し、差分の絶対値の和を相関値とする。
【1808】
相関検出部11221は、移動量に対応する相関値を相関評価部11222に供給する。すなわち、相関検出部11221は、移動量と相関値との組を相関評価部11222に供給する。
【1809】
相関評価部11222は、相関に応じて、入力画像の処理領域における対象物の画像の動き量を検出する。具体的には、相関評価部11222は、相関検出部11221から供給された相関のうち、最大の(最も強い)相関に対応する移動量を動き量とする。
【1810】
例えば、相関評価部11222は、相関検出部11221から供給された相関値である、差分の絶対値の和の内、最小の値を選択し、選択された最小の値に対応する移動量を動き量に設定する。
【1811】
相関評価部11222は、検出された動き量を出力する。
【1812】
図161乃至図163は、図160の定常性設定部17002による動き検出の原理を説明する図である。
【1813】
いま、撮像の対象物である、白い前景オブジェクトが、他の撮像の対象物である、黒い背景オブジェクトの前(手前)に配置され、左側から右側に移動しており、CCDまたはCMOSセンサなどのイメージセンサを有するカメラが、所定の露光時間(シャッタ時間)で、背景オブジェクトと共に、前景オブジェクトを撮像するものとする。
【1814】
この場合にカメラが出力する画像の1フレームに注目すると、背景オブジェクトは、黒いので、例えば、カメラは、背景オブジェクトの画像に対して0である画素値を出力する。前景オブジェクトは、白いので、例えば、カメラは、前景オブジェクトの画像に対して255である画素値を出力する。なお、ここでは、カメラが、0乃至28−1の範囲の画素値を出力するものであるとする。
【1815】
図161上側の図は、カメラのシャッタが開いた瞬間(露光を開始した瞬間)における位置に、前景オブジェクトが静止しているとき、カメラが出力する画像の画素値を示す図である。
【1816】
図161下側の図は、カメラのシャッタが閉じる瞬間(露光を終了する瞬間)における位置に、前景オブジェクトが静止しているとき、カメラが出力する画像の画素値を示す図である。
【1817】
図161で示されるように、前景オブジェクトの画像の動き量は、カメラのシャッタが開いた瞬間から、カメラのシャッタが閉じる瞬間までに、前景オブジェクトの画像が移動した距離である。
【1818】
図162は、背景オブジェクトの前を移動する前景オブジェクトをカメラで撮像したときに、カメラから出力される画像の画素値を示す図である。カメラのイメージセンサは、露光時間(シャッタ時間)において、画素毎に対象物の画像(光)を連続的に電荷に変換し、さらに電荷を1つの画像値に変換するので、前景オブジェクト11251の画像は、複数の画素の画素値に射影される。図161で示される画像の画素値の最大値に比較して、図162で示される画像の画素値の最大値は小さくなる。
【1819】
図162で示される画素値のスロープの幅は、背景オブジェクトの画像の幅に対応する。
【1820】
図162で示される画像の個々の画素について、右隣の画素との差分値を計算し、差分値を画素に設定すると、図163に示される、差分値からなる画像が得られる。
【1821】
すなわち、図162で示される画像の画素から1つの画素が選択され、注目している注目画素とされる。そして、注目画素の画素値から、注目画素の右隣の画素の画素値が引き算されることにより差分値が求められる。差分値は、注目画素に対応する位置の画素に設定される。図162で示される画像の画素が順に注目画素とされ、図163で示される差分値からなる画像が求められる。
【1822】
図161上側の図で示される、カメラのシャッタが開いた瞬間における、前景オブジェクトの位置に対して1画素左側に、符号が負(マイナス)である差分値が現れ、図161下側の図で示される、カメラのシャッタが閉じる瞬間における、前景オブジェクトの位置に対して1画素左側に、符号が正(プラス)である差分値が現れる。
【1823】
従って、図163で示される、符号が負(マイナス)である差分値の符号を反転した値と、符号が正(プラス)である差分値とのマッチングをとると、例えば、マッチングしたときの、符号が正(プラス)である差分値を基準とした、符号が負(マイナス)である差分値の符号を反転した値の移動量は、動き量と同じである。
【1824】
例えば、符号が正(プラス)である差分値を基準として、符号が負(マイナス)である差分値の符号を反転した値が水平方向に移動され、その移動量毎に、負である差分値を反転した値と正である差分値との相関が検出され、最大の(最も強い)相関が検出される。最大の相関が検出されたときの移動量は、動き量と同じである。
【1825】
より具体的には、例えば、符号が正(プラス)である差分値を基準として、符号が負(マイナス)である差分値の符号を反転した値が水平方向に移動され、その移動量毎に、負である差分値を反転した値と正である差分値との相関として、画素毎に、反転した値から正の差分値が引き算される。そして、引き算した結果の内の最小の値、すなわち最大の相関が検出される。検出された最大の相関に対応する移動量は、動き量と同じである。
【1826】
以上のように、画像の1フレームから、露光時間(シャッタ時間)において、対象物の画像が移動した量である動き量を検出することができる。
【1827】
すなわち、特徴量検出部11203の差分演算部11214は、入力画像の処理領域における画素から1つの画素を選択して、注目画素とし、注目画素の画素値から、注目画素の右隣の画素の画素値を引き算することにより、例えば、図163で示される差分値を演算する。差分評価部11215は、差分の符号を基に、正の差分値と負の差分値とに分類する。
【1828】
中間画像作成部11216は、分類された正の差分値から、その正の差分値からなる非反転中間画像を作成する。中間画像作成部11217は、分類された負の差分値から、その負の差分値からなる中間画像を作成する。符号反転部11219は、負の差分値からなる中間画像の負の画素値の符号を反転することにより、反転中間画像を作成する。
【1829】
動き量検出部11204は、相関が最も強い非反転中間画像と反転中間画像との移動量を求めて、求められた移動量を動き量とする。
【1830】
特徴量検出部11203が、動いている対象物の画像(オブジェクト)を検出し、動いている対象物の画像の特徴量を検出したとき、動き量検出部11204は、特徴量を基に相関を検出し、検出された相関に応じて、入力画像内の対象物の画像(オブジェクト)の動き量を検出する。
【1831】
また、特徴量検出部11203が、動いている対象物の画像に属する画素から注目している画素である注目画素を選択し、注目画素の特徴量を検出したとき、動き量検出部11204は、注目画素の特徴量と、注目画素に対して動き方向に沿って配される対応画素の特徴量との相関を検出し、検出された相関に応じて、入力画像の処理領域における対象物の画像の動き量を検出する。
【1832】
図164は、図160の定常性設定部17002による動き量の検出の処理を説明するフローチャートである。
【1833】
ステップS11201において、動き方向検出部11201および動き方向修正部11202は、入力画像と処理領域情報を取得し、ステップS11202に進む。
【1834】
ステップS11202において、動き方向検出部112011のアクティビティ演算部11211は、ステップS11201の処理により取得された入力画像における処理領域の画素について、アクティビティを演算し、ステップS11203に進む。
【1835】
例えば、アクティビティ演算部11211は、入力画像における処理領域の画素のうち、注目している画素である注目画素を選択する。アクティビティ演算部11211は、注目画素の周辺の所定の数の周辺画素を抽出する。例えば、アクティビティ演算部11211は、注目画素を中心とした、縦×横が5×5の画素からなる周辺画素を抽出する。
【1836】
そして、アクティビティ演算部11211は、抽出した周辺画素から、予め定めた画像上の方向に対応するアクティビティを検出する。
【1837】
以下の説明において、横方向の画素の1列の並びを行と称し、縦方向の画素の1列の並びを列と称する。
【1838】
アクティビティ演算部11211は、例えば、5×5の周辺画素について、画面上の上下方向(垂直)に隣接する画素の画素値の差分を算出して、算出された差分の絶対値の総和を差分の数で割り、その結果をアクティビティとすることにより、画面の水平方向を基準として、90度の角度(画面の垂直方向)に対する、アクティビティを検出する。
【1839】
例えば、20組の、画面上の上下方向に隣接する2つの画素について、画素値の差分が算出され、算出された差分の絶対値の和が20で割り算され、その結果(商)が、90度の角度に対するアクティビティに設定される。
【1840】
アクティビティ演算部11211は、例えば、5×5の周辺画素について、最も下の行の画素であって、最も左側の画素乃至左から4番目の画素のそれぞれの画素値と、それぞれの画素に対して、4画素上側であって、1画素右側の画素の画素値との差分を算出して、算出された差分の絶対値の総和を差分の数で割り、その結果をアクティビティとすることにより、画面の水平方向を基準として、76度の角度(tan-1(4/1))に対する、アクティビティを検出する。
【1841】
そして、例えば、4組の、右上方向であって、上下方向に4画素、および左右方向に1画素離れた位置にある2つの画素について、画素値の差分が算出され、算出された差分の絶対値の和が4で割り算され、その結果(商)が、76度の角度に対するアクティビティに設定される。
【1842】
アクティビティ演算部11211は、同様の処理で、画面の水平方向を基準として、90度乃至180度の範囲の角度に対するアクティビティを検出する。90度乃至180度の範囲の角度に対するアクティビティを検出する場合、左上方向に位置する画素の画素値の差分を基に、アクティビティが算出される。
【1843】
このように検出されたアクティビティは、注目画素に対するアクティビティとされる。
【1844】
なお、検出されたアクティビティを、周辺画素に対するアクティビティとするようにしてもよい。
【1845】
また、周辺画素は、縦×横が5×5の画素からなると説明したが、5×5の画素に限らず、所望の範囲の画素とすることができる。周辺画素の数が多い場合、角度の分解能が向上する。
【1846】
アクティビティ演算部11211は、複数の方向に対応するアクティビティを示す情報をアクティビティ評価部11212に供給する。
【1847】
図164に戻り、ステップS11203において、アクティビティ評価部11212は、ステップS11202の処理において算出された、所定の方向に対応するアクティビティを基に、最小のアクティビティを選択し、選択された方向を動き方向とすることにより、動き方向を求めて、ステップS11204に進む。
【1848】
ステップS11204において、動き方向修正部11202は、ステップS11203の処理において求められた動き方向を基に、動き方向が画像の水平方向となるように入力画像の処理領域における画像データを変換し、ステップS11205に進む。例えば、ステップS11204において、動き方向修正部11202のアフィン変換部11213は、ステップS11203の処理において求められた動き方向を基に、動き方向が画像の水平方向となるように入力画像の処理領域における画像データをアフィン変換する。より具体的には、例えば、アフィン変換部11213は、画面の水平方向を基準として、動き方向が18度の角度であるとき、入力画像の処理領域における画像データを時計方向に18度回動するようにアフィン変換する。
【1849】
ステップS11205において、特徴量検出部11203の差分演算部11214は、ステップS11204の処理において、動き方向が画面の水平方向となるように変換された入力画像の処理領域における各画素について、水平方向に隣接する画素との画素値の差分値を演算し、ステップS11206に進む。
【1850】
例えば、ステップS11205において、差分演算部11214は、入力画像の処理領域における画素から1つの画素を選択することにより、注目している注目画素とする。そして、差分演算部11214は、注目画素の画素値から、注目画素の右隣の画素の画素値を引き算することにより差分値を求める。
【1851】
ステップS11206において、特徴量検出部11203の差分評価部11215は、差分値の符号を基に、差分値を振り分け、ステップS11207に進む。すなわち、差分評価部11215は、0以上である差分値を中間画像作成部11216に供給し、0未満である差分値を中間画像作成部11217に供給する。この場合において、差分評価部11215は、差分値の画面上に位置を示す位置情報と共に、差分値を中間画像作成部11216または中間画像作成部11217に供給する。
【1852】
ステップS11207において、特徴量検出部11203の中間画像作成部11216は、ステップS11206の処理で振り分けられた、0以上である差分値(正の差分値)を基に、正の差分値からなる中間画像を生成し、ステップS11208に進む。すなわち、ステップS11207において、中間画像作成部11216は、位置情報で示される画面上の位置の画素に正の差分値を設定し、差分値が供給されなかった位置の画素に0を設定することにより、中間画像を作成する。
【1853】
このように、ステップS11207の処理において、非反転中間画像が生成される。
【1854】
ステップS11208において、特徴量検出部11203の中間画像作成部11217は、ステップS11206の処理で振り分けられた、0未満である差分値(負の差分値)を基に、負の差分値からなる中間画像を生成し、ステップS11209に進む。すなわち、ステップS11208において、中間画像作成部11217は、位置情報で示される画面上の位置の画素に負の差分値を設定し、差分値が供給されなかった位置の画素に0を設定することにより、中間画像を作成する。
【1855】
ステップS11209において、特徴量検出部11203の符号反転部11219は、ステップS11208の処理で生成された負の差分値からなる中間画像の負の差分値の符号を反転する。すなわち、ステップS11209において、負の中間画像の画素に設定されている、負の差分値が、同じ絶対値の正の値に変換される。
【1856】
このように、ステップS11209において、反転中間画像が生成され、その後、ステップS11210に進む。
【1857】
ステップS11210において、動き量検出部11204は、相関の検出の処理を実行する。ステップS11210の処理の詳細は、図165のフローチャートを参照して、後述する。
【1858】
ステップS11211において、相関評価部11222は、ステップS11210の処理で検出された相関のうち、最も強い相関を選択し、ステップS11212に進む。例えば、ステップS11211において、画素値の差分の絶対値の和である相関値のうち、最小の相関値が選択される。
【1859】
ステップS11212において、相関評価部11222は、ステップS11211の処理で選択された、最も強い相関に対応する移動量を動き量に設定して、ステップS11213に進む。例えば、ステップS11212において、画素値の差分の絶対値の和である相関値のうち、選択された最小の相関値に対応して、後述するステップS11223の処理により記憶されている、反転中間画像の移動量が動き量に設定される。
【1860】
ステップS11213において、動き量検出部11204は、ステップS11210の処理において検出した動き量を出力して、処理は終了する。
【1861】
図165は、ステップS11210の処理に対応する、相関の検出の処理を説明するフローチャートである。
【1862】
ステップS11221において、動き量検出部11204の相関検出部11221は、ステップS11209の処理で生成された、反転中間画像の画素の位置を、画素を単位として水平方向に移動し、ステップS11222に進む。
【1863】
ステップS11222において、相関検出部11221は、非反転中間画像と、ステップS11221の処理において、画素の位置が移動された反転中間画像との相関を検出し、ステップS11223に進む。例えば、ステップS11222において、非反転中間画像の画素の画素値と、画面上で対応する位置の、反転中間画像の画素の画素値との差分が算出され、算出された差分の絶対値の和が相関値として検出される。相関検出部11221は、ステップS11221の処理における反転中間画像の画素の移動量と共に、検出された相関を示す相関情報を相関評価部11222に供給する。
【1864】
ステップS11223において、相関評価部11222は、ステップS11221の処理における反転中間画像の画素の移動量と共に、ステップS11222の処理において検出された相関を記憶し、ステップS11224に進む。例えば、相関評価部11222は、ステップS11221の処理における反転中間画像の画素の移動量と共に、画素値の差分の絶対値の和である相関値を記憶する。
【1865】
ステップS11224において、相関検出部11221は、全ての移動量に対する相関を検出したか否かを判定し、まだ相関を検出していない移動量があると判定された場合、ステップS11221に戻り、次の移動量に対する相関を検出する処理を繰り返す。
【1866】
例えば、ステップS11224において、相関検出部11221は、画面の左方向に70画素乃至画面の右方向に70画素の範囲で、反転中間画像の画素を移動したときの相関を全て検出したか否かを判定する。
【1867】
ステップS11224において、全ての移動量に対する相関を検出したと判定された場合、処理は終了する(リターンする)。
【1868】
このように、相関検出部11221は、相関を検出することができる。
【1869】
以上のように、図160に構成を示す定常性設定部17002は、画像の1つのフレームから、動き量を検出することができる。
【1870】
なお、ここでは、処理領域を対象として動きを検出するようにしたか、全画面を処理対象とすることで、例えば、手振れにより発生した全画面の動きを検出することができる。
【1871】
また、入力画像に同じ模様の繰り返しパターンが多く含まれていても、処理の対象となる入力画像の処理領域の動き量および動き方向が一定であれば、正確に動き量を検出することができる。
【1872】
なお、上述の場合には、画像の1つのフレームから動き量を検出すると説明したが、1つのフィールドから動き量を検出するようにしてもよいことは勿論である。
【1873】
また、選択した注目画素の周辺についてのみ、動き量を検出するようにしてもよい。
【1874】
【発明の効果】
以上の如く、本発明によれば、現実世界の信号により近似した画像等を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を示す図である。
【図2】信号処理装置4のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【図3】図1の信号処理装置4の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図4】信号処理装置4の信号処理の原理をより具体的に説明する図である。
【図5】イメージセンサ上の画素の配置の例を説明する図である。
【図6】 CCDである検出素子の動作を説明する図である。
【図7】画素D乃至画素Fに対応する検出素子に入射される光と、画素値との関係を説明する図である。
【図8】時間の経過と、1つの画素に対応する検出素子に入射される光と、画素値との関係を説明する図である。
【図9】実世界1の線状の物の画像の例を示す図である。
【図10】実際の撮像により得られた画像データの画素値の例を示す図である。
【図11】背景とは異なる色であって、単色の、直線状の縁を有する物の実世界1の画像の例を示す図である。
【図12】実際の撮像により得られた画像データの画素値の例を示す図である。
【図13】画像データの模式図である。
【図14】M個のデータ162によるモデル161の推定を説明する図である。
【図15】実世界1の信号とデータ3との関係を説明する図である。
【図16】式を立てるときに注目するデータ3の例を示す図である。
【図17】式を立てる場合における、実世界1における2つの物体に対する信号および混合領域に属する値を説明する図である。
【図18】式(18)、式(19)、および式(22)で表される定常性を説明する図である。
【図19】データ3から抽出される、M個のデータ162の例を示す図である。
【図20】データ3における、時間方向および2次元の空間方向の実世界1の信号の積分を説明する図である。
【図21】空間方向により解像度の高い高解像度データを生成するときの、積分の領域を説明する図である。
【図22】時間方向により解像度の高い高解像度データを生成するときの、積分の領域を説明する図である。
【図23】時間空間方向により解像度の高い高解像度データを生成するときの、積分の領域を説明する図である。
【図24】入力画像の元の画像を示す図である。
【図25】入力画像の例を示す図である。
【図26】従来のクラス分類適応処理を適用して得られた画像を示す図である。
【図27】細線の領域を検出した結果を示す図である。
【図28】信号処理装置4から出力された出力画像の例を示す図である。
【図29】信号処理装置4による、信号の処理を説明するフローチャートである。
【図30】データ定常性検出部101の構成を示すブロック図である。
【図31】背景の前に細線がある実世界1の画像を示す図である。
【図32】平面による背景の近似を説明する図である。
【図33】細線の画像が射影された画像データの断面形状を示す図である。
【図34】細線の画像が射影された画像データの断面形状を示す図である。
【図35】細線の画像が射影された画像データの断面形状を示す図である。
【図36】頂点の検出および単調増減領域の検出の処理を説明する図である。
【図37】頂点の画素値が閾値を超え、隣接する画素の画素値が閾値以下である細線領域を検出する処理を説明する図である。
【図38】図37の点線AA'で示す方向に並ぶ画素の画素値を表す図である。
【図39】単調増減領域の連続性の検出の処理を説明する図である。
【図40】細線の画像が射影された領域の検出の他の処理の例を示す図である。
【図41】定常性検出の処理を説明するフローチャートである。
【図42】時間方向のデータの定常性を検出の処理を説明する図である。
【図43】非定常成分抽出部201の構成を示すブロック図である。
【図44】棄却される回数を説明する図である。
【図45】非定常成分の抽出の処理を説明するフローチャートである。
【図46】定常成分の抽出の処理を説明するフローチャートである。
【図47】定常成分の抽出の他の処理を説明するフローチャートである。
【図48】定常成分の抽出のさらに他の処理を説明するフローチャートである。
【図49】データ定常性検出部101の他の構成を示すブロック図である。
【図50】データの定常性を有する入力画像におけるアクティビティを説明する図である。
【図51】アクティビティを検出するためのブロックを説明する図である。
【図52】アクティビティに対するデータの定常性の角度を説明する図である。
【図53】データ定常性検出部101のより詳細な構成を示すブロック図である。
【図54】画素の組を説明する図である。
【図55】画素の組の位置とデータの定常性の角度との関係を説明する図である。
【図56】データの定常性の検出の処理を説明するフローチャートである。
【図57】時間方向および空間方向のデータの定常性の角度を検出するとき、抽出される画素の組を示す図である。
【図58】図3の実世界推定部の実施の形態の1例である、関数近似手法の原理を説明する図である。
【図59】センサがCCDとされる場合の積分効果を説明する図である。
【図60】図59のセンサの積分効果の具体的な例を説明する図である。
【図61】図59のセンサの積分効果の具体的な他の例を説明する図である。
【図62】図60で示される細線含有実世界領域を表した図である。
【図63】図3の実世界推定部の実施の形態の1例の原理を、図58の例と対比させて説明する図である。
【図64】図60で示される細線含有データ領域を表した図である。
【図65】図64の細線含有データ領域に含まれる各画素値のそれぞれをグラフ化した図である。
【図66】図65の細線含有データ領域に含まれる各画素値を近似した近似関数をグラフ化した図である。
【図67】図60で示される細線含有実世界領域が有する空間方向の定常性を説明する図である。
【図68】図64の細線含有データ領域に含まれる各画素値のそれぞれをグラフ化した図である。
【図69】図68で示される入力画素値のそれぞれを、所定のシフト量だけシフトさせた状態を説明する図である。
【図70】空間方向の定常性を考慮して、図65の細線含有データ領域に含まれる各画素値を近似した近似関数をグラフ化した図である。
【図71】空間混合領域を説明する図である。
【図72】空間混合領域における、実世界の信号を近似した近似関数を説明する図である。
【図73】センサの積分特性と空間方向の定常性の両方を考慮して、図65の細線含有データ領域に対応する実世界の信号を近似した近似関数をグラフ化した図である。
【図74】図58で示される原理を有する関数近似手法のうちの、1次多項式近似手法を利用する実世界推定部の構成例を説明するブロック図である。
【図75】図74の構成の実世界推定部が実行する実世界の推定処理を説明するフローチャートである。
【図76】タップ範囲を説明する図である。
【図77】空間方向の定常性を有する実世界の信号を説明する図である。
【図78】センサがCCDとされる場合の積分効果を説明する図である。
【図79】断面方向距離を説明する図である。
【図80】図58で示される原理を有する関数近似手法のうちの、2次多項式近似手法を利用する実世界推定部の構成例を説明するブロック図である。
【図81】図80の構成の実世界推定部が実行する実世界の推定処理を説明するフローチャートである。
【図82】タップ範囲を説明する図である。
【図83】時空間方向の定常性の方向を説明する図である。
【図84】センサがCCDとされる場合の積分効果を説明する図である。
【図85】空間方向の定常性を有する実世界の信号を説明する図である。
【図86】時空間方向の定常性を有する実世界の信号を説明する図である。
【図87】図58で示される原理を有する関数近似手法のうちの、3次元近似手法を利用する実世界推定部の構成例を説明するブロック図である。
【図88】図87の構成の実世界推定部が実行する実世界の推定処理を説明するフローチャートである。
【図89】図3の画像生成部の実施の形態の1例である、再積分手法の原理を説明する図である。
【図90】入力画素と、その入力画素に対応する、実世界の信号を近似する近似関数の例を説明する図である。
【図91】図90で示される近似関数から、図90で示される1つの入力画素における、高解像度の4つの画素を創造する例を説明する図である。
【図92】図89で示される原理を有する再積分手法のうちの、1次元再積分手法を利用する画像生成部の構成例を説明するブロック図である。
【図93】図92の構成の画像生成部が実行する画像の生成処理を説明するフローチャートである。
【図94】入力画像の元の画像の例を表す図である。
【図95】図94の画像に対応する画像データの例を表す図である。
【図96】入力画像の例を表す図である。
【図97】図96の画像に対応する画像データの例を表す図である。
【図98】入力画像に対して従来のクラス分類適応処理を施して得られる画像の例を表す図である。
【図99】図98の画像に対応する画像データの例を表す図である。
【図100】入力画像に対して1次元再積分手法の処理を施して得られる画像の例を表す図である。
【図101】図100の画像に対応する画像データの例を表す図である。
【図102】空間方向の定常性を有する実世界の信号を説明する図である。
【図103】図89で示される原理を有する再積分手法のうちの、2次元再積分手法を利用する画像生成部の構成例を説明するブロック図である。
【図104】断面方向距離を説明する図である。
【図105】図103の構成の画像生成部が実行する画像の生成処理を説明するフローチャートである。
【図106】入力画素の1例を説明する図である。
【図107】2次元再積分手法により、図106で示される1つの入力画素における、高解像度の4つの画素を創造する例を説明する図である。
【図108】時空間方向の定常性の方向を説明する図である。
【図109】図89で示される原理を有する再積分手法のうちの、3次元再積分手法を利用する画像生成部の構成例を説明するブロック図である。
【図110】図109の構成の画像生成部が実行する画像の生成処理を説明するフローチャートである。
【図111】図1の信号処理装置4の他の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図112】図111の信号処理装置4の処理を説明するフローチャートである。
【図113】図111の信号処理装置4の応用例の他の一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図114】信号処理の種類を説明する図である。
【図115】図113の信号処理装置4の処理を説明するフローチャートである。
【図116】イメージセンサの積分効果を説明するための図である。
【図117】イメージセンサの積分効果を説明するための図である。
【図118】静止している背景オブジェクトと、その手前を移動する前景オブジェクトとの撮像の様子を示す図である。
【図119】前景領域、背景領域、および混合領域を説明する図である。
【図120】動きボケを除去する図113の信号処理装置4と等価な装置の構成例を示すブロック図である。
【図121】図120の装置の処理を説明するフローチャートである。
【図122】前景領域、背景領域、および混合領域を示す図である。
【図123】前景成分と背景成分とを示す図である。
【図124】3次元のスプライン関数を示す図である。
【図125】光信号関数F(x)をスプライン関数Ck(x)で近似するための物理モデルを示す図である。
【図126】図125の物理モデルにおいて得られる画素値を説明するための図である。
【図127】画素における積分範囲を示す図である。
【図128】画素値成分S1を算出するための積分範囲を示す図である。
【図129】画素値成分S2を算出するための積分範囲を示す図である。
【図130】画素値成分S3,pを算出するための積分範囲を示す図である。
【図131】画素値成分S3,pを算出するための積分の対象となるスプライン関数を説明するための図である。
【図132】画素値成分S3,pを算出するための積分範囲を示す図である。
【図133】画素値成分S4,pを算出するための積分範囲を示す図である。
【図134】画素値成分S4,pを算出するための積分範囲を示す図である。
【図135】動きボケを除去した画素値を求める積分方法を説明するための図である。
【図136】動きボケが除去された高解像度の画素値を求める積分方法を説明するための図である。
【図137】図120の動きボケ調整部17035の構成例を示すブロック図である。
【図138】図137の動きボケ調整部17035の処理を説明するフローチャートである。
【図139】拘束条件を説明するための図である。
【図140】拘束条件式を用いた実世界の推定の推定方法を説明するための図である。
【図141】図120の動きボケ調整部17035の他の構成例を示すブロック図である。
【図142】図141の動きボケ調整部17035の処理を説明するフローチャートである。
【図143】実処理を行う実処理部17100を示すブロック図である。
【図144】図143の実処理部17100の構成例を示すブロック図である。
【図145】図144の実処理部17100の処理を説明するフローチャートである。
【図146】図143の実処理部17100の他の構成例を示すブロック図である。
【図147】図146の実処理部17100の処理を説明するフローチャートである。
【図148】図125の物理モデルの動き量vを0とした物理モデルを示す図である。
【図149】高解像度の画素値を求める積分方法を説明するための図である。
【図150】図143の実処理部17100のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【図151】図150の実処理部17100の処理を説明するフローチャートである。
【図152】図113の信号処理装置4の処理を説明するフローチャートである。
【図153】ユーザによるユーザI/F17006の操作を説明するための図である。
【図154】図113の信号処理装置4と等価な装置の構成例を示すブロック図である。
【図155】図154の装置の処理を説明するフローチャートである。
【図156】図154の動きボケ除去処理部17303の構成例を示すブロック図である。
【図157】図156の動きボケ除去処理部17303の処理を説明するフローチャートである。
【図158】図154の動きボケ除去処理部17303の他の構成例を示すブロック図である。
【図159】図158の動きボケ除去処理部17303の処理を説明するフローチャートである。
【図160】定常性設定部17002の構成例を示すブロック図である。
【図161】動き量を説明する図である。
【図162】背景オブジェクトの前を移動する前景オブジェクトをカメラで撮像したときに、カメラから出力される画像の画素値を示す図である。
【図163】図162で示される画像の画素の画素値の差分値を示す図である。
【図164】動き量の検出の処理を説明するフローチャートである。
【図165】相関の検出の処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
4 信号処理装置, 21 CPU, 22 ROM, 23 RAM, 28 記憶部, 51 磁気ディスク, 52 光ディスク, 53 光磁気ディスク, 54 半導体メモリ, 101 データ定常性検出部, 102 実世界推定部, 103 画像生成部, 17001 処理領域設定部, 17002 定常性設定部, 17003 実世界推定部, 17004 画像生成部, 17005 画像表示部, 17006 ユーザI/F, 17011 モデル生成部, 17012 方程式生成部, 17013 実世界波形推定部, 17031 領域特定部, 17032 動きボケ調整量出力部, 17033 前景背景分離部, 17034 処理単位決定部, 17035 動きボケ調整部, 17036 画像表示部, 17051 物理モデル適用部, 17052 物理モデル値取得部, 17053 再混合部, 17061 モデル化部, 17062 方程式作成部, 17063 連立方程式取得部, 17064 連立方程式演算部, 17081物理モデル適用部, 17082 画素内拘束式作成部, 17083 物理モデル値取得部, 17091 モデル化部, 17092 方程式作成部, 17093 最小自乗法適用部, 17100 実処理部, 17101 前処理部, 17200 前処理部, 17201 物理モデル適用部, 17202 物理モデル値取得部, 17203 再混合部, 17211 モデル化部, 17212 方程式作成部, 17213 連立方程式取得部, 17214連立方程式演算部, 17301 入力画像取得部, 17302 ユーザ入力情報取得部, 17303 動きボケ除去処理部, 17304 出力画像合成部, 17305 出力部

Claims (7)

  1. 現実世界の光信号は、物からの光信号の強度の分布における当該物の長さ方向の任意の位置において、当該長さ方向に直交する方向の位置の変化に対応するレベルの変化としての断面形状が同じであるという現実世界の光信号の定常性を有し、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、前記現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定手段と、
    前記画像データの空間方向のうちの所定の1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した前記現実世界の光信号に対応する実世界関数が、前記動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、前記所定の1次元方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、前記実世界関数を推定する実世界推定手段と
    を備える号処理装置。
  2. 前記実世界推定手段は、
    前記画像データの空間方向のうちの前記所定の1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した前記現実世界の光信号に対応する実世界関数が、前記動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、前記所定の1次元方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、前記画像データ内の各画素の画素値と前記実世界関数との関係をモデル化した関係モデルを生成するモデル生成手段と、
    前記モデル生成手段により生成された関係モデルに対して前記画像データ内の各画素の画素値を代入して方程式を生成する方程式生成手段と、
    前記方程式生成手段により生成された方程式を演算することにより、前記現実世界の光信号に対応する前記実世界関数を推定する実世界波形推定手段と
    を有する
    求項1に記載の信号処理装置。
  3. 前記モデル生成手段は、前記画像データの領域の外側における前記実世界関数のレベルが一定値であるとして、前記関係モデルを生成する
    求項2に記載の信号処理装置。
  4. 前記実世界関数の推定結果である、前記実世界関数を近似する近似モデルを、前記所定の1次元方向および時間方向に、所定の単位で積分することにより、前記画像データ内のオブジェクトの動きボケを除去した画素値でなる画像を生成する画像生成手段をさらに備える
    求項2に記載の信号処理装置。
  5. 現実世界の光信号は、物からの光信号の強度の分布における当該物の長さ方向の任意の位置において、当該長さ方向に直交する方向の位置の変化に対応するレベルの変化としての断面形状が同じであるという現実世界の光信号の定常性を有し、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、前記現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、
    前記画像データの空間方向のうちの所定の1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した前記現実世界の光信号に対応する実世界関数が、前記動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、前記所定の1次元方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、前記実世界関数を推定する実世界推定ステップと
    を備える号処理方法。
  6. コンピュータに所定の信号処理を行わせるプログラムにおいて、
    現実世界の光信号は、物からの光信号の強度の分布における当該物の長さ方向の任意の位置において、当該長さ方向に直交する方向の位置の変化に対応するレベルの変化としての断面形状が同じであるという現実世界の光信号の定常性を有し、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、前記現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、
    前記画像データの空間方向のうちの所定の1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した前記現実世界の光信号に対応する実世界関数が、前記動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、前記所定の1次元方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、前記実世界関数を推定する実世界推定ステップと
    を備える信号処理をコンピュータに行わせるためのプログラム。
  7. コンピュータに所定の信号処理を行わせるプログラムが記録されている記録媒体において、
    現実世界の光信号は、物からの光信号の強度の分布における当該物の長さ方向の任意の位置において、当該長さ方向に直交する方向の位置の変化に対応するレベルの変化としての断面形状が同じであるという現実世界の光信号の定常性を有し、それぞれ時空間積分効果を有する複数の画素に現実世界の光信号が射影され、前記現実世界の光信号の定常性の一部が欠落した画像データ内のオブジェクトの動きベクトルを設定する動きベクトル設定ステップと、
    前記画像データの空間方向のうちの所定の1次元方向の位置に対応する各画素の画素値は、スプライン関数で近似した前記現実世界の光信号に対応する実世界関数が、前記動きベクトルに対応して時間方向に位相シフトしながら移動するモデルを、前記所定の1次元方向および時間方向に積分することにより取得された画素値であるとして、前記実世界関数を推定する実世界推定ステップと
    を備える信号処理をコンピュータに行わせるためのプログラムが記録されている
    録媒体。
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