JP2005017136A - 光学系評価装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】有限要素の配列により画像を表示するシステムの光学系単体の結像性能を評価することができる光学系評価装置を得ることを目的とする。
【解決手段】有限要素を光源とする画像を形成して、その画像を位置検出型光検出器22に投射すると、その位置検出型光検出器22が当該画像を受光して撮像し、データ解析装置2が位置検出型光検出器22により撮像された画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能であるボケ分布を評価する。
【選択図】 図1
【解決手段】有限要素を光源とする画像を形成して、その画像を位置検出型光検出器22に投射すると、その位置検出型光検出器22が当該画像を受光して撮像し、データ解析装置2が位置検出型光検出器22により撮像された画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能であるボケ分布を評価する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光学系単体の結像性能を評価する光学系評価装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の光学系評価装置は、光源から出力される信号光を液晶に投射して評価用パターンを形成すると、像走査手段が被験レンズを通して、その評価用パターンを受光し、信号処理手段が評価用パターンの位置的光強度分布をフーリエ変換することにより、その空間周波数特性であるMTFを求める(例えば、特許文献1参照)。
ただし、従来の光学系評価装置は、評価用パターンとなるピンホール(点像)やスリット(線像)を液晶の上に形成するが、液晶の画素寸法がボケ量より小さいピンホール等点光源を起源とするものであり、液晶の画素寸法が投射光学系のボケ量より大きい有限要素を光源とするものではない。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−140046号公報(段落番号[0023]から[0029]、図5)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の光学系評価装置は以上のように構成されているので、被験レンズ単体の光学性能を評価することができるが、有限要素の配列により画像を表示するシステム(例えば、プロジェクター)の光学系単体の結像性能を評価することができないなどの課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、有限要素の配列により画像を表示するシステムの光学系単体の結像性能を評価することができる光学系評価装置を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る光学系評価装置は、画像撮像手段により撮像された画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を評価するようにしたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による光学系評価装置を示す構成図であり、図2はこの発明の実施の形態1による光学系評価装置を示す外観図である。この光学系評価装置は大きく分けて画像取得装置1とデータ解析装置2から構成されている。
図において、光学定盤11は画像表示システム12や測定ステージ21を安定に固定する土台である。画像表示システム12の光源13は光信号を照明光学系14に供給し、照明光学系14は光源13から供給された光信号を効率良く投射光学系16に導くとともに、その光信号の強度分布や波長依存性を制御する機能を備えている。
【0008】
画像発生装置15は投射光学系16の有限要素部17を制御して、任意の評価画像と背景画像を作成させる機能を備えている。投射光学系16は有限要素部17と光学レンズ部18から構成されている。この実施の形態1では、投射光学系16が有限要素部17と光学レンズ部18から構成されているが、平面鏡、凸凹面鏡、自由曲面などから構成されていてもよい。
有限要素部17は画像発生装置15の指示の下、照明光学系14により導かれた光信号を2次元空間光変調して画像を形成し、光学レンズ部18は有限要素部17により形成された画像(2次元空間光変調された被検パターン)を位置検出型光検出器22に投射する。なお、画像表示システム12及び画像発生装置15から画像投射手段が構成されている。
【0009】
輝度調整部19は投射光学系16から位置検出型光検出器22の画像受光面に投射される画像の輝度を調整する機能を備えている。なお、輝度調整部19は輝度調整手段を構成している。
ステージ制御装置20は測定ステージ21を制御して、任意の軸方向に任意の量だけ測定ステージ21を移動させることにより、位置検出型光検出器22の画像受光面の位置を制御し、また、その測定ステージ21の位置を示す位置情報や移動状況を示すステータス情報を収集する。測定ステージ21はステージ制御装置20の指示の下、任意の軸方向に任意の量だけ移動する。なお、ステージ制御装置20及び測定ステージ21から位置制御手段が構成されている。
位置検出型光検出器22は測定ステージ21により固定され、光検出器制御装置23の指示の下、投射光学系16により投射された画像を受光し、その画像を撮像する。光検出器制御装置23は位置検出型光検出器22の露光条件や撮像枚数を制御して、位置検出型光検出器22により撮像された画像を取得する。なお、位置検出型光検出器22及び光検出器制御装置23から画像撮像手段が構成されている。
【0010】
データ解析装置2のノイズ低減部24は光検出器制御装置23が評価画像と背景画像を取得すると、その評価画像から背景画像を減算して、その評価画像に重畳されているノイズを低減する。統計処理部25はノイズ低減部24によりノイズが低減された評価画像に対する統計的な処理を実施して、統計的な揺らぎ構造などを取り除くなど機能を備えている。ボケ分布算出部26は統計処理部25により統計処理をされた評価画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出する。画像評価部27はボケ分布算出部26により算出されたボケ分布を入力し、光学系単体の結像性能を定量的に評価する。なお、ノイズ低減部24、統計処理部25、ボケ分布算出部26及び画像評価部27から評価手段が構成されている。
【0011】
可動投射スクリーン28は評価画像を位置検出型光検出器22の画像受光面に投射する際、人間が目視によって評価画像を確認できるようにするため位置検出型光検出器22の画像受光面の前面への可動を受け付け、その評価画像を表示する。小型スクリーン29は人間が目視によって投射画素を確認できるようにするため位置検出型光検出器22の画像受光面に合わせて、位置検出型光検出器22の周りを囲うように取り付けられている。
図3はこの発明の実施の形態1による光学系評価装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0012】
次に動作について説明する。
まず、画像表示システム12の光源13が光信号を照明光学系14に供給すると、照明光学系14がその光信号の強度分布や波長依存性を適宜制御して、その光信号を投射光学系16に照射する(ステップST1)。
画像発生装置15は、照明光学系14が光信号の照射を開始すると、投射光学系16の有限要素部17を制御して、任意の評価画像又は背景画像を作成させるため、作成対象の画像を指定する(ステップST2)。
【0013】
有限要素部17は、画像発生装置15が任意の評価画像の作成を指示すると、照明光学系14により導かれた光信号を2次元空間光変調して任意の評価画像を形成する。一方、画像発生装置15が背景画像の作成を指示すると、照明光学系14により導かれた光信号を2次元空間光変調して背景画像を形成する(ステップST3)。
光学レンズ部18は、有限要素部17が評価画像又は背景画像を形成すると、その評価画像又は背景画像(2次元空間光変調された被検パターン)を位置検出型光検出器22に投射する(ステップST4)。
【0014】
ここで、図4は有限要素部17の構成例であり、この構成例では画像発生装置15がライトバルブの画素4−5を表示、ライトバルブの画素4−1〜4−4,4−6を非表示に指定している。
なお、画像発生装置15は、評価画像の作成を指示する場合、最小単位であるライトバルブの1画素だけを表示に指定し、背景画像の作成を指示する場合、全画素を非表示に指定する。
【0015】
位置検出型光検出器22は、投射光学系16によって画像が画像受光面に投射されると、その画像を光電変換して光検出器制御装置23のモニタに出力する。これにより、ステージ制御装置20は、光検出器制御装置23のモニタを監視して、投射光学系16により投射された画像が画像受光面内にあるか否かを判定する(ステップST5)。そして、投射光学系16により投射された画像が画像受光面内にない場合には、その画像を画像受光面内に入れるために、測定ステージ21を任意の軸方向に任意の量だけ移動させる(ステップST6)。
【0016】
なお、測定ステージ21は、リミッターや原点位置などにメカニカルスイッチが取り付けられている。メカニカルスイッチは、測定ステージ21が所定の位置に到達すると、その旨を示すステータス情報をステージ制御装置20に出力するものである。
したがって、ステージ制御装置20は、ステータス情報を参照することにより、測定ステージ21の移動状況を把握することができるため、例えば、測定ステージ21の操作ミス等を検知することができる。また、ステージ制御装置20はステータス情報に応じて、測定ステージ21を自動的に減速させたり、緊急停止させたりすることができる。
測定ステージ21は、ボケの像高依存性(X,Y方向)だけでなく、像面方向(Z方向)のボケや倍率を評価できるようにするため、直交座標系のX,Y,Z方向に可動可能である。
【0017】
また、輝度調整部19は、光検出器制御装置23のモニタを監視して、投射光学系16により投射された画像の輝度(被検パターンの強度)が位置検出型光検出器22の測定範囲内にあるか否かを判定する(ステップST7)。
そして、投射光学系16により投射された画像の輝度が測定範囲内にない場合、その画像の輝度を測定範囲内に入れるため、その画像の輝度を調整する(ステップST8)。
即ち、画像の輝度が測定範囲を大きく超える場合、例えば、投射光学系16から位置検出型光検出器22に至る光路上に減光フィルターを配置することにより、その画像の輝度を弱くする。一方、画像の輝度が測定範囲を下回る場合、例えば、光を遮蔽するメカニカルシャッターを配置して、位置検出型光検出器22の露光時間を長くするなどにより、物理的に画像の輝度を調整する。
【0018】
光検出器制御装置23は、投射光学系16により投射された画像が画像受光面内にあり、かつ、投射光学系16により投射された画像の輝度が位置検出型光検出器22の測定範囲内にある場合、位置検出型光検出器22により撮像された画像を取得する(ステップST9)。
なお、位置検出型光検出器22は、結像レンズ、カバーガラス、マイクロレンズアレーなど光学的要素が極力取り除かれており、投射光学系16により投射された画像を画像受光面で直接受光し、その画像受光面内の光量分布の取得を試みるので、その光量分布である評価画像を光電変換するだけで純粋に定量評価を行うことが可能である。
【0019】
光検出器制御装置23は、位置検出型光検出器22により撮像された画像を取得すると、その画像をヘッダ情報付き画像ファイルに記録し(ステップST10)、そのヘッダ情報付き画像ファイルをデータ解析装置2に出力する。
この際、光検出器制御装置23は、その画像の最大値や最小値などの基本的な統計値と、画像発生装置15により指定された画像の種類と、ステージ制御装置20により設定された測定ステージ21の座標の情報と、光検出器制御装置23により指定された測定日時や露光時間などの撮像条件等の情報とをヘッダ情報として、ヘッダ情報付き画像ファイルに付加する。
【0020】
図5はヘッダ情報のリスト例を示す説明図である。
これにより、データ解析装置2は、ヘッダ情報付き画像ファイルから撮像条件等の情報を簡単に取り出すことができるようになる。なお、データ解析装置2は、様々な演算をする毎に演算日時、演算内容、演算結果などの情報をヘッダ情報付き画像ファイルに追記する(撮像条件等の情報はそのまま残される)。これにより、ヘッダ情報付き画像ファイルから演算結果や演算履歴を辿ることができるため、ヒューマンエラーやその他の失敗を少なくすることができる。
【0021】
データ解析装置2は、光検出器制御装置23からヘッダ情報付き画像ファイルを受けると、評価画像と背景画像の双方を取得したか否かを判断し(ステップST11)、双方の画像を取得していない場合には、不足している画像の送信要求を画像取得装置1に出力する。これにより、ステップST2からステップST10の処理が再度繰り返される。
なお、画像取得装置1の画像発生装置15、ステージ制御装置20及び光検出器制御装置23は、各々独立に制御することが可能であるが、ステージ制御装置20による測定座標、光検出器制御装置23による露光時間、画像発生装置15による評価画像・背景画像を前もって組み合わせて指定する指定手段を設けるようにすれば、上記の画像取得を自動的に行うことが可能である。
【0022】
データ解析装置2のノイズ低減部24は、位置検出型光検出器22により撮像された画像には注目すべき信号以外に様々なノイズが含まれているので、ヘッダ情報付き画像ファイルから評価画像と背景画像を読み込むと、その評価画像から背景画像を減算して(ステップST12)、その評価画像に重畳されているノイズを低減する。
【0023】
位置検出型光検出器22として、例えば、CCDカメラを利用する場合、位置検出型光検出器22には、検出器固有のノイズN1、室内や画像表示システム12からの背景光、宇宙線起源などの光電変換に関連するノイズN2、画像発生装置15が作る画像信号にのるノイズN3などが重畳される。
ここで、背景画像には、検出器固有のノイズN1+位置検出型光検出器22の光電変換に関連するノイズN2+画像発生装置15が作る画像信号にのるノイズN3が含まれており、評価画像には、画像発生装置15が指定した評価画像の信号Sと、検出器固有のノイズN1’+位置検出型光検出器22の光電変換に関連するノイズN2’+画像発生装置15が作る画像信号にのるノイズN3’が含まれている。
この評価画像から背景画像を減算することにより、測定すべき信号Sである評価画像の信号Sを取り出すことができる。ただし、ノイズN1とN1’、N2とN2’、N3とN3’は必ずしも全く同じではないため引き残りも存在する。
【0024】
なお、室内や画像表示システム12からの背景光のノイズN2のように、時間で変動するノイズの場合、評価画像と背景画像を時間的に連続して撮像すると、ノイズN2とN2’がきわめて等しくなるため、結果として引き残りを小さくすることができる。
また、画像発生装置15が作る画像信号にのるノイズN3は、デジタル信号を使うことにより、低減することが可能である。
また、位置検出型光検出器22の固有のノイズN1は暗電流、バイアス(零点のオフセット)などから構成されるが、画像取得毎に異なる値を取るノイズ(バイアス)がある場合には、同じ取得画像内の異なる領域N1nの光電変換出力をノイズ源とし、評価領域N1sの光電変換出力から領域N1nの光電変換出力を減算することにより、減算の精度を上げてもよい。
また、バイアスが画像に対して分布を持っている場合、同じ取得画像内の異なる数点の出力値を参照し、それらに対する回帰曲面を作成し、元画像から減算することで、減算の精度を上げてもよい。例えば、傾き等の低次のうねりを差し引くことができる。
【0025】
画像発生装置15が評価画像をライトバルブの1画素に指定すると、理想的な光学系の場合、位置検出型光検出器22により撮像される評価画像は図6に示すような輝度分布6−1になる。
しかしながら、実際には、位置検出型光検出器22により撮像される評価画像は、画像表示システム12によるボケのため、図7に示すように広がった輝度分布7−1になり、ノイズ成分7−2を有することになる。
一方、画像発生装置15が背景画像を全画素非表示に指定すると、位置検出型光検出器22により撮像される背景画像は、図8に示すようなノイズ成分8−2になる。
この評価画像から背景画像を減算すると、図9に示すように、ノイズ成分が減算された輝度分布9−1が得られる。以下、これを背景画像減算後評価画像と称する。
【0026】
なお、上記の各種ノイズ成分N1,N2,N3が信号Sに比べて無視できるほど十分小さい場合、評価画像のノイズ成分を減算しなくても、データの質としては背景画像減算後評価画像と同等であることから、上記の背景画像の減算をせず、評価画像をそのまま背景画像減算後評価画像と見なしてもよい。
【0027】
データ解析装置2の統計処理部25は、ノイズ低減部24から背景画像減算後評価画像を受けると、詳細は実施の形態2で説明するが、その背景画像減算後評価画像から統計的な揺らぎ構造などを取り除くため、その背景画像減算後評価画像に対する統計処理を実施する。
データ解析装置2のボケ分布算出部26は、統計処理部25により統計処理が実施された背景画像減算後評価画像を受けると、詳細は実施の形態2で説明するが、その背景画像減算後評価画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出する。
データ解析装置2の画像評価部27は、ボケ分布算出部26から光学系単体の結像性能を表すボケ分布を受けると、詳細は実施の形態2で説明するが、光学系単体の結像性能を定量的に評価する(ステップST13)。
【0028】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、有限要素を光源とする画像を形成して、その画像を位置検出型光検出器22に投射すると、その位置検出型光検出器22が当該画像を受光して撮像し、データ解析装置2が位置検出型光検出器22により撮像された画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を評価するように構成したので、有限要素の配列により画像を表示するシステムの光学系単体の結像性能を評価することができる効果を奏する。
【0029】
この実施の形態1によれば、測定ステージ21を制御して、位置検出型光検出器22の画像受光面の位置を制御するように構成したので、画像表示システム12の取付位置を変更することなく、投射光学系16により投射された画像を画像受光面内に入れることができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、投射光学系16から位置検出型光検出器22の画像受光面に投射される画像の輝度を調整する輝度調整部19を設けるように構成したので、光源13を取り替えることなく、投射光学系16により投射された画像の輝度を位置検出型光検出器22の測定範囲内に入れることができる効果を奏する。
【0030】
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22により撮像された評価画像から背景画像を減算するように構成したので、その評価画像に重畳されているノイズを低減することができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、評価画像と背景画像を時間的に連続して形成するように構成したので、時間で変動するノイズを低減することができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22により撮像された画像内にある評価領域から他の領域を減算するように構成したので、画像取得毎に異なる値を取るノイズであっても、精度よくノイズを低減することができる効果を奏する。
【0031】
この実施の形態1によれば、画像の撮像結果をデータ解析装置2に出力する際、その画像の撮像条件を含むヘッダ情報を当該撮像結果に付加して出力するように構成したので、画像を評価する際に撮像条件等を参照することができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、光学系単体の光学性能評価に関する演算を実施する毎に、その演算結果をヘッダ情報に追記するように構成したので、ヒューマンエラーやその他の失敗を少なくすることができる効果を奏する。
【0032】
この実施の形態1によれば、投射光学系16が形成する画像と、位置検出型光検出器22が画像を撮像する際の露光時間と、ステージ制御装置20が制御する画像受光面の位置とを指定する指定手段を設けるように構成したので、評価画像や背景画像を自動的に取得することができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22の画像受光面の位置を制御する際、直交座標系でX,Y,Z方向への画像受光面の移動を受け付けるように構成したので、光学系単体の光学性能の像高依存性(X,Y方向)だけでなく、像面方向(Z方向)の光学性能(例えば非点収差)を評価することができる効果を奏する。
【0033】
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22の画像受光面の位置を制御する際、位置検出型光検出器22の画像受光面の移動状況を監視し、その移動状況に応じて画像受光面を移動させるように構成したので、例えば、測定ステージ21の操作ミス等が発生したとき、測定ステージ21を自動的に減速させたり、緊急停止させたりすることができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22の画像受光面の位置を制御する際、背景画像減算後評価画像の基準位置が当該画像受光面の中心と一致するように当該画像受光面を移動させるように構成したので、正確に光学系単体の光学性能を評価することができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22の画像受光面にスクリーンを取り付けるように構成したので、人間が目視によって評価画像や投射画素を確認することができる効果を奏する。
【0034】
実施の形態2.
図10はこの発明の実施の形態2による光学系評価装置の統計処理部25の処理内容を示すフローチャートであり、図11はこの発明の実施の形態2による光学系評価装置のボケ分布算出部26の処理内容を示すフローチャートであり、図12はこの発明の実施の形態2による光学系評価装置の画像評価部27の処理内容を示すフローチャートである。
以下、データ解析装置2の処理内容を具体的に説明する。
データ解析装置2は、大きく分けて、下記の4種類の処理を実施する。
(a)データの加算に伴う誤差の低減を目的とする統計処理(図10)
(b)揺らぎ構造を取り除く画像統計処理(図10)
(c)有限要素の影響を分離する画像復元処理(図11)
(d)定量評価値を算出する統計及び信号処理(図12)
【0035】
データ解析装置2の統計処理部25は、光学系評価装置が持つ固有の癖に起因する誤差(例えば、光源13の時間変動など)を低減する必要性が高い場合、ノイズ低減部24から受ける背景画像減算後評価画像をそれぞれ複数枚積算する(ステップST21〜ST23)。即ち、背景画像減算後評価画像のフレーム積算を実施することにより、上記固有の癖を時間で平均化して、これに起因する誤差を低減する。
なお、背景画像減算後評価画像の積算枚数Nが大きくなると、平均誤差が標準偏差の1/√Nに従って小さくなるため、統計的にも誤差を低減することが可能である。
【0036】
一方、露光時間を増やすことにより、光子の統計を稼ぐこともできるが、過度の露光では位置検出型光検出器22の測定範囲を越えるため、線型性が保たれなくなる。そこで、短い露光時間の取得画像を複数枚積算することにより、長時間露光の取得画像と同等の光子統計を得ることも可能となる。
ただし、上記のフレーム積算は、背景画像減算後評価画像の統計が十分良く、光学系評価装置に由来する誤差(光源13の時間変動など)が十分小さい場合等、データの質に応じて必ずしも行う必要はない。
【0037】
ここで、ノイズ低減部24から出力された背景画像減算後評価画像13−1は、図13に示すように、光子統計を起源とする小さいがたついた揺らぎ構造13−2を有する。
データ解析装置2の統計処理部25は、このような揺らぎ構造13−2を減少する必要性が高い場合、“binning”や“smoothing”などの画像統計処理を実施して、注目すべき構造より小さい揺らぎ等を取り除くようにする(ステップST24〜ST28)。
【0038】
“binning”は、基準となる画素の輝度と、その周りの画素の輝度を加算する処理であり、“binning”を実施すると、図13の揺らぎ構造13−2は、図14の14−2のように減少する。
“smoothing”は、基準となる画素の輝度を、その周りの画素に所定の関数(例えば、Gauss関数)に従って分配する処理であり、“smoothing”を実施すると、その関数を特徴付ける特徴的な長さ(例えば、標準偏差σ)より小さな構造を取り除くことができる。
なお、背景画像減算後評価画像13−1に対する“binning”と“smoothing”を実施すると、背景画像減算後評価画像は図9の9−1のようになる。
【0039】
これにより、光子統計揺らぎが起源と思われる注目構造より小さい揺らぎ構造が消えて滑らかになる。なお、“smoothing”は背景画像減算後評価画像と関数(例えば、Gauss関数)のたたみこみ積分になるため、一度、2次元フーリエ変換を実施して、各々を周波数空間で乗算した後、逆フーリエ変換を実施して計算時間を短縮してもよい。
上記の“binning”や“smoothing”は、背景画像減算後評価画像の統計や、注目したい大きさに依存するので、図10の処理は必ずしも行う必要はない。
【0040】
次に、ボケ分布算出部26は、統計処理部25により統計処理が実施された背景画像減算後評価画像を受けると、その背景画像減算後評価画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出する。具体的には下記の通りである。
図15は背景画像減算後評価画像15−1と、有限要素15−4と、光学系のボケ分布15−3との関係を模式的に示す説明図である。
投射レンズなどからなる光学系が理想的(無収差)な場合、有限要素15−4は光学系により完全に射影変換される。
しかしながら、光学系は様々な収差で表現されるボケを持つため、PSF(Point Spread Funcition)で表される広がりを有する。
したがって、実際には有限要素は、光学系の収差の影響を受けて、ボケて撮像される。これは数学的に、有限要素15−4と光学系のボケ分布15−3とのたたみこみ積分(convolution)で表される。
そこで、背景画像減算後評価画像15−1から有限要素15−4の影響を除去し、光学系の結像性能、即ち、PSFを復元するには、この「たたみこみ積分」の逆(deconvolution)を行えばよい。
【0041】
このような観測された現象(ここでは評価画像)から、その現象を成立させている原因(ここでは光学系のボケ)を推定するアプローチを逆問題といい、この考え方は天体画像の復元、超解像などで利用されつつある。しかしながら、逆問題は、多数の解がある場合、発散する場合、解を持っていない場合など、解の一意性、解の安定性、解の存在は保証されていない。そのため、このdeconvolution演算は、発散など不適な解を含む可能性があり、得られたPSFが正しい解とは限らない。
【0042】
そこで、この実施の形態2では、有限要素15−4と2次元のPSF15−3(初期段階では、適当に設定したPSF)をたたみこみ積分して、中間画像15−2を作成する。
そして、中間画像15−2と背景画像減算後評価画像15−1のカイ2乗検定を行うことにより、PSF15−3の確からしさを統計的に検証する。
統計的な確からしさが不十分な場合、中間画像15−2と背景画像減算後評価画像15−1の差分をうち消すため、その差分をPSF15−3に加算し、加算後のPSF15−3と有限要素15−4たたみこみ積分して、再度、中間画像15−2を作成する。
そして、中間画像15−2と背景画像減算後評価画像15−1のカイ2乗検定を行うことにより、PSF15−3の確からしさを統計的に検証する。
統計的な有意さが十分になるまで上記演算を繰り返し、最終的に統計的に確からしい2次元のPSFを求める。
【0043】
これらの一連の計算アルゴリズムとして、例えば、Lucy 1974,Astron.J.vol79,p749に基づく画像復元演算方法がある。また、特にCCDカメラのような位置検出型光検出器のノイズを含む画像データに上記演算方法を拡張した計算アルゴリズムがSnyder 1993,JOSA.vol10,p5に開示されている。これら画像復元演算方法はLucy−Richardson法(以後、LR法と記する)として知られている。
この画像復元演算の計算アルゴリズムとしては、LR法以外にも最大エントロピー法、フーリエ反復法など、フーリエ変換を利用した繰り返し演算等があり、任意のアルゴリズムを利用してよい。
【0044】
ボケ分布算出部26は、統計処理部25により光子統計揺らぎが低減された背景画像減算後評価画像と有限要素を入力する(ステップST31)。
ボケ分布算出部26は、LR法に代表される画像復元演算方法を使用して、背景画像減算後評価画像から有限要素の影響を除去して光学系の結像性能を表すPSFを求める(ステップST32)。
ボケ分布算出部26は、画像データがポアソン統計に従うとして、そのPSFの統計的な確からしさをカイ2乗で表現する(ステップST33)。カイ2乗は下記のように定義することができる。
【数1】
ziはi番目のデータの値(実測値)、σiはi番目のデータの分散(実測値)、検証するモデル関数z(x)のxiにおける値(計算値)で表される。
【0045】
これは計算値が実測値とばらつきの範囲で、どの程度一致しているかを定量的に表す指標であり、自由度で規格化した場合、目安として1に近づくほど良く、一致していることを意味する。
ボケ分布算出部26は、上記のカイ2乗計算を行うと、演算回数を記録する(ステップST34)。この確からしさを示すカイ2乗が指定値に到達した場合(ステップST35)、ステップST32で演算したPSFを出力して、一連の処理を終了する(ステップST37)。
この確からしさを示すカイ2乗が指定値に到達しない場合、上記演算回数が指定回数に到達したか判断し、その演算回数が指定回数に到達しない場合(ステップST32からST35までの処理を繰り返し実施する(ステップST36)。
上記演算回数が指定回数に到達した場合(ステップST36)、ステップST32で演算したPSFを出力して、一連の処理を終了する(ステップST37)。
【0046】
ここで、図16は上記処理に伴うPSFの演算結果と統計的な有意さの関係を説明する説明図である。
図16の16−2〜16−4はPSF15−3と有限要素15−4のconvolutionで表される中間画像の例であり、それぞれ演算回数が5回、10回、30回の場合である。演算回数が多くなるにしたがって中間画像16−2〜16−4が背景画像減算後評価画像16−5に似ていくことがわかる。
これを定量的に評価するために、背景画像減算後評価画像16−5と上記演算で求めた中間画像16−2〜16−4をカイ2乗で評価する。評価結果が16−1であり、縦軸に自由度で規格化したカイ2乗、横軸に演算回数をとっている。
繰り返し演算回数が多くなるにしたがって、確からしさの指標のカイ2乗が1に漸近し、確からしくなっていくことが読みとれる。
【0047】
LR法によって背景画像減算後評価画像から算出された2次元PSFは、光源13、照明光学系14及び画像発生装置15によって指定される被験画像の波長λに対するエネルギースペクトルと、光学レンズ部18による位置検出型光検出器22への入射角(θ,ψ)で決まる関数である(図2を参照)。
したがって、PSFの輝度分布はb(x,y;λ,θ,ψ)と表すことができるので、これを定量的に評価する。その前に、必要な場合には統計処理部25で2次元PSFを入力として“binning”や“smoothing”など、上記の一連の操作(ステップST21〜ST28)を実施し、得られた2次元PSFから演算時に混入した偽信号や光子統計揺らぎを取り除いてもよい。
【0048】
次に、画像評価部27は、ボケ分布算出部26により求められた2次元PSFを入力し(ステップST41)、そのPSFの輝度分布b(x,y;λ,θ,ψ)から2次元鳥瞰図(図17の17−2を参照)と、3次元図(図17の17−1を参照)とを作成する(ステップST42,ST43)。
このようにして2次元鳥瞰図と3次元図を作成すると、その2次元鳥瞰図と3次元図から特徴的な長さ(例えば、スポット径など)を正確に計測することが可能となる。
【0049】
2次元PSFは、例えば、3次元図17−1にあるように、ピークが二山に分離している場合もある。その場合、輝度分布b(x,y;λ,θ,ψ)の重心を基準位置(中心)と考えるか、最も明るい位置を基準位置にすべきか判断に困ることがある。
そこで、画像評価部27は、2次元PSFの最大値と最小値を計算するとともに(ステップST44)、2次元PSFの統計重心を計算し(ステップST45)、これらから2次元PSFの基準位置を決定する(ステップST46)。
【0050】
基準位置を最大値で定義する場合、2次元PSFをそのまま利用すると、統計揺らぎや偽信号などの影響を受けやすい。したがって、上述した“binning”や“smoothing”を実施した後に2次元PSFの最大値を求める。
これにより、輝度分布b(x,y;λ,θ,ψ)から統計揺らぎや偽信号を極力排除した基準位置を定めることができる。
また、基準位置を統計重心で定義する場合、上下左右非対称性の影響を受けやすい。そのため、最大値と統計重心の双方から基準位置を定めてもよい。即ち、最大値を求めて当たりを付け、そこを基準に任意の領域で統計重心を求めることにより、輝度分布b(x,y;λ,θ,ψ)から統計揺らぎや偽信号を極力排除し、かつ、上下左右非対称性の影響を極力排除した基準位置を定めることが可能になる。
また、各々の基準位置の定義は、評価すべき2次元PSF毎に適宜使い分けてもよい。
【0051】
次に、画像評価部27は、注目すべき方向の強度分布を統計的な精度をあげて計算するため、2次元PSFを注目すべき方向に射影して、その注目すべき方向の強度分布を計算する(ステップST47)。例えば、1次元へのX軸射影、Y軸射影(直交座標系)、r方向射影、φ方向射影(XY平面内の極座標系)などを実施して、射影によるデータの積分を行うことで、注目すべき方向の強度分布を統計的な精度をあげて計算する。
図17は2次元PSFと各射影による強度分布の関係を示しており、3次元図17−1において基準位置を中心にr方向射影(φ方向に積算)したものが1次元PSF17−3である。
これら強度分布計算の結果から1次元射影の特徴的な長さをより正確に計測することが可能となる。
【0052】
上記のようにフレーム積算を行うことにより、上記の構成でも統計的な質の向上を図ることができる。しかしながら、フレーム積算数に比例して測定に時間がかかる。例えば、10倍の統計を得ようとした場合、100倍の測定時間が必要となる。測定時間の短縮が求められる場合、上記の射影によるデータの積分を行うことにより、測定時間を増やすことなく、統計精度を上げることができる。
【0053】
次に、例えば、スポット径のような長さを特徴付ける量を設定する。
よく使われるものに、輝度分布の半値幅FWHM、ピーク輝度に対して1/expの幅などがある。これらは、例えば、その輝度分布がGauss関数等で表される場合等は、物理的な意味(標準偏差σ)があるが、光学系の結像性能であるPSFは、一般にはこのような特定の関数で表せない。
さらに、全情報を使う方が統計的に有利なことからEEF(Encircled Energy Function)を導入する。2次元を1次元に次元を落とし、2次元の位置情報を犠牲にすることにより、統計精度を上げることができる。
【0054】
そこで、画像評価部27は、2次元PSFからEEFを計算する(ステップST48)。EEFは下記のように表される。
【数2】
EEFとPSFは積分と微分の関係にあり、dS=r dr dφ,S(r)は半径をrとする円と計算することにより、r方向のEEFg(r;λ,θ,ψ)を求めることができる。また、積分領域を円ではなく直線状に取って、特定の方向、例えば、X方向、Y方向のみ計算することにより、X方向、Y方向のEEFg(x;λ,θ,ψ)、g(y;λ,θ,ψ)を求めてもよい。
図17の17−4は基準位置を中心としたr軸方向に対するEEFであり、図17のPSF17−3と積分の関係にある。
これら強度分布計算の結果からEEFの特徴的な長さ(例えば、全光量の半分が入る径など)をより正確に計測することが可能となる。
【0055】
以上、光学系の性能は、レンズなどを用いるため回転対称な場合が多いが、人間の目は水平・垂直方向で感度が異なり、また、テレビなどの映像信号は水平・垂直方向で解像度が異なる。このため、上記のPSF計算、EEF計算等の演算は、r,φ軸方向(極座標系)だけでなく、X,Y軸方向(直交座標系)も計算が可能である。
上記の光学系のボケを求める演算では、ライトバルブ1画素のみの投射画像でよく、特殊なテストパターンを必要としない。このため、従来のように、図18の解像力チャートを用いた測定のように、測定毎に異なるテストパターンを評価位置毎に用意する必要がない。
【0056】
次に、画像評価部27は、2次元PSFをフーリエ変換して規格化することでMTFを計算する(ステップST49)。例えば、図17の17−5は1次元PSF17−3をフーリエ変換して1次元MTFを求めたものである。図中の□は実測値であり、一連の画像復元演算から計算したMTFと良く一致していることがわかる。
以上から、「点光源ではない」有限要素を起源とする背景画像減算後評価画像から、LR法に代表される画像復元演算方法を用いて有限要素の影響が取り除かれた光学系のボケの指標である2次元PSFf(x,y)を演算し、さらに、その2次元PSFのフーリエ変換から任意の空間周波数(u,v)における2次元MTF(u,v)を求めることが可能となる。
このようにして計算したMTFは、光学系の設計MTF値と直接、定量的に比較することが可能となる。
【0057】
有限要素部17は、DMD、液晶、LCOS等の各種の固定画素を有するライトバルブに適応できる。また、有限要素部17をPDP、EL、LCD等の直視型ディスプレイの固定画素として、位置検出型光検出器22で接写してもよい。
【0058】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、背景画像減算後評価画像をフレーム積算するように構成したので、光学系評価装置が持つ固有の癖に起因する誤差を低減することができる効果を奏する。
この実施の形態2によれば、背景画像減算後評価画像に対する画像統計処理を実施して、注目構造より小さい揺らぎ構造を取り除くように構成したので、光子統計揺らぎが起源と思われる注目構造より小さい揺らぎ構造が消えて滑らかになる効果を奏する。
【0059】
この実施の形態2によれば、背景画像減算後評価画像から有限要素の影響を除去するように構成したので、光学系単体のボケ分布であるPSFを復元することができる効果を奏する。
この実施の形態2によれば、光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出すると、そのボケ分布であるPSFの確からしさを定量化するように構成したので、確からしさが指定値に到達するまで、繰り返し演算することができる効果を奏する。
【0060】
この実施の形態2によれば、光学系単体の結像性能を表すボケ分布の更新回数を記録し、その更新回数が指定値に到達するまで、繰り返し光学系単体のボケ分布を更新するように構成したので、光学系単体のボケ分布を正確に求めることができる効果を奏する。
この実施の形態2によれば、PSFに対する画像統計処理を実施して、注目構造より小さい揺らぎ構造を取り除くように構成したので、画像復元演算時に混入した偽信号や統計揺らぎが起源と思われる注目構造より小さい揺らぎ構造が消えて滑らかになる効果を奏する。
【0061】
この実施の形態2によれば、2次元PSFの最大値を求め、その最大値を基準にして任意の領域の統計重心を求め、その統計重心を考慮して2次元PSFの基準位置を定めるように構成したので、精度よく基準位置を定めることができる効果を奏する。
この実施の形態2によれば、2次元PSFを注目方向に射影して、その注目方向の強度分布を求めるように構成したので、注目方向の特徴的な長さを正確に計測することができる効果を奏する。
この実施の形態2によれば、背景画像減算後評価画像からMTFを求めるように構成したので、MTFに関する規格の満足度を評価することができる効果を奏する。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、画像撮像手段により撮像された画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を評価するように構成したので、有限要素の配列により画像を表示するシステムの光学系単体の結像性能を評価することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による光学系評価装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による光学系評価装置を示す外観図である。
【図3】この発明の実施の形態1による光学系評価装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】有限要素部の構成例を示す説明図である。
【図5】ヘッダ情報のリスト例を示す説明図である。
【図6】理想的な評価画像の輝度分布を示す説明図である。
【図7】実際の評価画像の輝度分布を示す説明図である。
【図8】背景画像の輝度分布を示す説明図である。
【図9】背景画像減算後評価画像の輝度分布を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態2による光学系評価装置の統計処理部の処理内容を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態2による光学系評価装置のボケ分布算出部の処理内容を示すフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態2による光学系評価装置の画像評価部の処理内容を示すフローチャートである。
【図13】小さいがたついた揺らぎ構造を有する背景画像減算後評価画像を示す説明図である。
【図14】揺らぎ構造減少後の背景画像減算後評価画像を示す説明図である。
【図15】背景画像減算後評価画像と有限要素と光学系のボケ分布との関係を模式的に示す説明図である。
【図16】PSFの演算結果と統計的な有意さの関係を説明する説明図である。
【図17】2次元PSFと各射影による強度分布の関係を示す説明図である。
【図18】解像力チャートを示す説明図である。
【符号の説明】
1 画像取得装置、2 データ解析装置、11 光学定盤、12 画像表示システム(画像投射手段)、13 光源、14 照明光学系、15 画像発生装置(画像投射手段)、16 投射光学系、17 有限要素部、18 光学レンズ部、19 輝度調整部(輝度調整手段)、20 ステージ制御装置(位置制御手段)、21 測定ステージ(位置制御手段)、22 位置検出型光検出器(画像撮像手段)、23 光検出器制御装置(画像撮像手段)、24 ノイズ低減部(評価手段)、25 統計処理部(評価手段)、26 ボケ分布算出部(評価手段)、27 画像評価部(評価手段)、28 可動投射スクリーン、29 小型スクリーン。
【発明の属する技術分野】
この発明は、光学系単体の結像性能を評価する光学系評価装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の光学系評価装置は、光源から出力される信号光を液晶に投射して評価用パターンを形成すると、像走査手段が被験レンズを通して、その評価用パターンを受光し、信号処理手段が評価用パターンの位置的光強度分布をフーリエ変換することにより、その空間周波数特性であるMTFを求める(例えば、特許文献1参照)。
ただし、従来の光学系評価装置は、評価用パターンとなるピンホール(点像)やスリット(線像)を液晶の上に形成するが、液晶の画素寸法がボケ量より小さいピンホール等点光源を起源とするものであり、液晶の画素寸法が投射光学系のボケ量より大きい有限要素を光源とするものではない。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−140046号公報(段落番号[0023]から[0029]、図5)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の光学系評価装置は以上のように構成されているので、被験レンズ単体の光学性能を評価することができるが、有限要素の配列により画像を表示するシステム(例えば、プロジェクター)の光学系単体の結像性能を評価することができないなどの課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、有限要素の配列により画像を表示するシステムの光学系単体の結像性能を評価することができる光学系評価装置を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る光学系評価装置は、画像撮像手段により撮像された画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を評価するようにしたものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による光学系評価装置を示す構成図であり、図2はこの発明の実施の形態1による光学系評価装置を示す外観図である。この光学系評価装置は大きく分けて画像取得装置1とデータ解析装置2から構成されている。
図において、光学定盤11は画像表示システム12や測定ステージ21を安定に固定する土台である。画像表示システム12の光源13は光信号を照明光学系14に供給し、照明光学系14は光源13から供給された光信号を効率良く投射光学系16に導くとともに、その光信号の強度分布や波長依存性を制御する機能を備えている。
【0008】
画像発生装置15は投射光学系16の有限要素部17を制御して、任意の評価画像と背景画像を作成させる機能を備えている。投射光学系16は有限要素部17と光学レンズ部18から構成されている。この実施の形態1では、投射光学系16が有限要素部17と光学レンズ部18から構成されているが、平面鏡、凸凹面鏡、自由曲面などから構成されていてもよい。
有限要素部17は画像発生装置15の指示の下、照明光学系14により導かれた光信号を2次元空間光変調して画像を形成し、光学レンズ部18は有限要素部17により形成された画像(2次元空間光変調された被検パターン)を位置検出型光検出器22に投射する。なお、画像表示システム12及び画像発生装置15から画像投射手段が構成されている。
【0009】
輝度調整部19は投射光学系16から位置検出型光検出器22の画像受光面に投射される画像の輝度を調整する機能を備えている。なお、輝度調整部19は輝度調整手段を構成している。
ステージ制御装置20は測定ステージ21を制御して、任意の軸方向に任意の量だけ測定ステージ21を移動させることにより、位置検出型光検出器22の画像受光面の位置を制御し、また、その測定ステージ21の位置を示す位置情報や移動状況を示すステータス情報を収集する。測定ステージ21はステージ制御装置20の指示の下、任意の軸方向に任意の量だけ移動する。なお、ステージ制御装置20及び測定ステージ21から位置制御手段が構成されている。
位置検出型光検出器22は測定ステージ21により固定され、光検出器制御装置23の指示の下、投射光学系16により投射された画像を受光し、その画像を撮像する。光検出器制御装置23は位置検出型光検出器22の露光条件や撮像枚数を制御して、位置検出型光検出器22により撮像された画像を取得する。なお、位置検出型光検出器22及び光検出器制御装置23から画像撮像手段が構成されている。
【0010】
データ解析装置2のノイズ低減部24は光検出器制御装置23が評価画像と背景画像を取得すると、その評価画像から背景画像を減算して、その評価画像に重畳されているノイズを低減する。統計処理部25はノイズ低減部24によりノイズが低減された評価画像に対する統計的な処理を実施して、統計的な揺らぎ構造などを取り除くなど機能を備えている。ボケ分布算出部26は統計処理部25により統計処理をされた評価画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出する。画像評価部27はボケ分布算出部26により算出されたボケ分布を入力し、光学系単体の結像性能を定量的に評価する。なお、ノイズ低減部24、統計処理部25、ボケ分布算出部26及び画像評価部27から評価手段が構成されている。
【0011】
可動投射スクリーン28は評価画像を位置検出型光検出器22の画像受光面に投射する際、人間が目視によって評価画像を確認できるようにするため位置検出型光検出器22の画像受光面の前面への可動を受け付け、その評価画像を表示する。小型スクリーン29は人間が目視によって投射画素を確認できるようにするため位置検出型光検出器22の画像受光面に合わせて、位置検出型光検出器22の周りを囲うように取り付けられている。
図3はこの発明の実施の形態1による光学系評価装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0012】
次に動作について説明する。
まず、画像表示システム12の光源13が光信号を照明光学系14に供給すると、照明光学系14がその光信号の強度分布や波長依存性を適宜制御して、その光信号を投射光学系16に照射する(ステップST1)。
画像発生装置15は、照明光学系14が光信号の照射を開始すると、投射光学系16の有限要素部17を制御して、任意の評価画像又は背景画像を作成させるため、作成対象の画像を指定する(ステップST2)。
【0013】
有限要素部17は、画像発生装置15が任意の評価画像の作成を指示すると、照明光学系14により導かれた光信号を2次元空間光変調して任意の評価画像を形成する。一方、画像発生装置15が背景画像の作成を指示すると、照明光学系14により導かれた光信号を2次元空間光変調して背景画像を形成する(ステップST3)。
光学レンズ部18は、有限要素部17が評価画像又は背景画像を形成すると、その評価画像又は背景画像(2次元空間光変調された被検パターン)を位置検出型光検出器22に投射する(ステップST4)。
【0014】
ここで、図4は有限要素部17の構成例であり、この構成例では画像発生装置15がライトバルブの画素4−5を表示、ライトバルブの画素4−1〜4−4,4−6を非表示に指定している。
なお、画像発生装置15は、評価画像の作成を指示する場合、最小単位であるライトバルブの1画素だけを表示に指定し、背景画像の作成を指示する場合、全画素を非表示に指定する。
【0015】
位置検出型光検出器22は、投射光学系16によって画像が画像受光面に投射されると、その画像を光電変換して光検出器制御装置23のモニタに出力する。これにより、ステージ制御装置20は、光検出器制御装置23のモニタを監視して、投射光学系16により投射された画像が画像受光面内にあるか否かを判定する(ステップST5)。そして、投射光学系16により投射された画像が画像受光面内にない場合には、その画像を画像受光面内に入れるために、測定ステージ21を任意の軸方向に任意の量だけ移動させる(ステップST6)。
【0016】
なお、測定ステージ21は、リミッターや原点位置などにメカニカルスイッチが取り付けられている。メカニカルスイッチは、測定ステージ21が所定の位置に到達すると、その旨を示すステータス情報をステージ制御装置20に出力するものである。
したがって、ステージ制御装置20は、ステータス情報を参照することにより、測定ステージ21の移動状況を把握することができるため、例えば、測定ステージ21の操作ミス等を検知することができる。また、ステージ制御装置20はステータス情報に応じて、測定ステージ21を自動的に減速させたり、緊急停止させたりすることができる。
測定ステージ21は、ボケの像高依存性(X,Y方向)だけでなく、像面方向(Z方向)のボケや倍率を評価できるようにするため、直交座標系のX,Y,Z方向に可動可能である。
【0017】
また、輝度調整部19は、光検出器制御装置23のモニタを監視して、投射光学系16により投射された画像の輝度(被検パターンの強度)が位置検出型光検出器22の測定範囲内にあるか否かを判定する(ステップST7)。
そして、投射光学系16により投射された画像の輝度が測定範囲内にない場合、その画像の輝度を測定範囲内に入れるため、その画像の輝度を調整する(ステップST8)。
即ち、画像の輝度が測定範囲を大きく超える場合、例えば、投射光学系16から位置検出型光検出器22に至る光路上に減光フィルターを配置することにより、その画像の輝度を弱くする。一方、画像の輝度が測定範囲を下回る場合、例えば、光を遮蔽するメカニカルシャッターを配置して、位置検出型光検出器22の露光時間を長くするなどにより、物理的に画像の輝度を調整する。
【0018】
光検出器制御装置23は、投射光学系16により投射された画像が画像受光面内にあり、かつ、投射光学系16により投射された画像の輝度が位置検出型光検出器22の測定範囲内にある場合、位置検出型光検出器22により撮像された画像を取得する(ステップST9)。
なお、位置検出型光検出器22は、結像レンズ、カバーガラス、マイクロレンズアレーなど光学的要素が極力取り除かれており、投射光学系16により投射された画像を画像受光面で直接受光し、その画像受光面内の光量分布の取得を試みるので、その光量分布である評価画像を光電変換するだけで純粋に定量評価を行うことが可能である。
【0019】
光検出器制御装置23は、位置検出型光検出器22により撮像された画像を取得すると、その画像をヘッダ情報付き画像ファイルに記録し(ステップST10)、そのヘッダ情報付き画像ファイルをデータ解析装置2に出力する。
この際、光検出器制御装置23は、その画像の最大値や最小値などの基本的な統計値と、画像発生装置15により指定された画像の種類と、ステージ制御装置20により設定された測定ステージ21の座標の情報と、光検出器制御装置23により指定された測定日時や露光時間などの撮像条件等の情報とをヘッダ情報として、ヘッダ情報付き画像ファイルに付加する。
【0020】
図5はヘッダ情報のリスト例を示す説明図である。
これにより、データ解析装置2は、ヘッダ情報付き画像ファイルから撮像条件等の情報を簡単に取り出すことができるようになる。なお、データ解析装置2は、様々な演算をする毎に演算日時、演算内容、演算結果などの情報をヘッダ情報付き画像ファイルに追記する(撮像条件等の情報はそのまま残される)。これにより、ヘッダ情報付き画像ファイルから演算結果や演算履歴を辿ることができるため、ヒューマンエラーやその他の失敗を少なくすることができる。
【0021】
データ解析装置2は、光検出器制御装置23からヘッダ情報付き画像ファイルを受けると、評価画像と背景画像の双方を取得したか否かを判断し(ステップST11)、双方の画像を取得していない場合には、不足している画像の送信要求を画像取得装置1に出力する。これにより、ステップST2からステップST10の処理が再度繰り返される。
なお、画像取得装置1の画像発生装置15、ステージ制御装置20及び光検出器制御装置23は、各々独立に制御することが可能であるが、ステージ制御装置20による測定座標、光検出器制御装置23による露光時間、画像発生装置15による評価画像・背景画像を前もって組み合わせて指定する指定手段を設けるようにすれば、上記の画像取得を自動的に行うことが可能である。
【0022】
データ解析装置2のノイズ低減部24は、位置検出型光検出器22により撮像された画像には注目すべき信号以外に様々なノイズが含まれているので、ヘッダ情報付き画像ファイルから評価画像と背景画像を読み込むと、その評価画像から背景画像を減算して(ステップST12)、その評価画像に重畳されているノイズを低減する。
【0023】
位置検出型光検出器22として、例えば、CCDカメラを利用する場合、位置検出型光検出器22には、検出器固有のノイズN1、室内や画像表示システム12からの背景光、宇宙線起源などの光電変換に関連するノイズN2、画像発生装置15が作る画像信号にのるノイズN3などが重畳される。
ここで、背景画像には、検出器固有のノイズN1+位置検出型光検出器22の光電変換に関連するノイズN2+画像発生装置15が作る画像信号にのるノイズN3が含まれており、評価画像には、画像発生装置15が指定した評価画像の信号Sと、検出器固有のノイズN1’+位置検出型光検出器22の光電変換に関連するノイズN2’+画像発生装置15が作る画像信号にのるノイズN3’が含まれている。
この評価画像から背景画像を減算することにより、測定すべき信号Sである評価画像の信号Sを取り出すことができる。ただし、ノイズN1とN1’、N2とN2’、N3とN3’は必ずしも全く同じではないため引き残りも存在する。
【0024】
なお、室内や画像表示システム12からの背景光のノイズN2のように、時間で変動するノイズの場合、評価画像と背景画像を時間的に連続して撮像すると、ノイズN2とN2’がきわめて等しくなるため、結果として引き残りを小さくすることができる。
また、画像発生装置15が作る画像信号にのるノイズN3は、デジタル信号を使うことにより、低減することが可能である。
また、位置検出型光検出器22の固有のノイズN1は暗電流、バイアス(零点のオフセット)などから構成されるが、画像取得毎に異なる値を取るノイズ(バイアス)がある場合には、同じ取得画像内の異なる領域N1nの光電変換出力をノイズ源とし、評価領域N1sの光電変換出力から領域N1nの光電変換出力を減算することにより、減算の精度を上げてもよい。
また、バイアスが画像に対して分布を持っている場合、同じ取得画像内の異なる数点の出力値を参照し、それらに対する回帰曲面を作成し、元画像から減算することで、減算の精度を上げてもよい。例えば、傾き等の低次のうねりを差し引くことができる。
【0025】
画像発生装置15が評価画像をライトバルブの1画素に指定すると、理想的な光学系の場合、位置検出型光検出器22により撮像される評価画像は図6に示すような輝度分布6−1になる。
しかしながら、実際には、位置検出型光検出器22により撮像される評価画像は、画像表示システム12によるボケのため、図7に示すように広がった輝度分布7−1になり、ノイズ成分7−2を有することになる。
一方、画像発生装置15が背景画像を全画素非表示に指定すると、位置検出型光検出器22により撮像される背景画像は、図8に示すようなノイズ成分8−2になる。
この評価画像から背景画像を減算すると、図9に示すように、ノイズ成分が減算された輝度分布9−1が得られる。以下、これを背景画像減算後評価画像と称する。
【0026】
なお、上記の各種ノイズ成分N1,N2,N3が信号Sに比べて無視できるほど十分小さい場合、評価画像のノイズ成分を減算しなくても、データの質としては背景画像減算後評価画像と同等であることから、上記の背景画像の減算をせず、評価画像をそのまま背景画像減算後評価画像と見なしてもよい。
【0027】
データ解析装置2の統計処理部25は、ノイズ低減部24から背景画像減算後評価画像を受けると、詳細は実施の形態2で説明するが、その背景画像減算後評価画像から統計的な揺らぎ構造などを取り除くため、その背景画像減算後評価画像に対する統計処理を実施する。
データ解析装置2のボケ分布算出部26は、統計処理部25により統計処理が実施された背景画像減算後評価画像を受けると、詳細は実施の形態2で説明するが、その背景画像減算後評価画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出する。
データ解析装置2の画像評価部27は、ボケ分布算出部26から光学系単体の結像性能を表すボケ分布を受けると、詳細は実施の形態2で説明するが、光学系単体の結像性能を定量的に評価する(ステップST13)。
【0028】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、有限要素を光源とする画像を形成して、その画像を位置検出型光検出器22に投射すると、その位置検出型光検出器22が当該画像を受光して撮像し、データ解析装置2が位置検出型光検出器22により撮像された画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を評価するように構成したので、有限要素の配列により画像を表示するシステムの光学系単体の結像性能を評価することができる効果を奏する。
【0029】
この実施の形態1によれば、測定ステージ21を制御して、位置検出型光検出器22の画像受光面の位置を制御するように構成したので、画像表示システム12の取付位置を変更することなく、投射光学系16により投射された画像を画像受光面内に入れることができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、投射光学系16から位置検出型光検出器22の画像受光面に投射される画像の輝度を調整する輝度調整部19を設けるように構成したので、光源13を取り替えることなく、投射光学系16により投射された画像の輝度を位置検出型光検出器22の測定範囲内に入れることができる効果を奏する。
【0030】
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22により撮像された評価画像から背景画像を減算するように構成したので、その評価画像に重畳されているノイズを低減することができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、評価画像と背景画像を時間的に連続して形成するように構成したので、時間で変動するノイズを低減することができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22により撮像された画像内にある評価領域から他の領域を減算するように構成したので、画像取得毎に異なる値を取るノイズであっても、精度よくノイズを低減することができる効果を奏する。
【0031】
この実施の形態1によれば、画像の撮像結果をデータ解析装置2に出力する際、その画像の撮像条件を含むヘッダ情報を当該撮像結果に付加して出力するように構成したので、画像を評価する際に撮像条件等を参照することができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、光学系単体の光学性能評価に関する演算を実施する毎に、その演算結果をヘッダ情報に追記するように構成したので、ヒューマンエラーやその他の失敗を少なくすることができる効果を奏する。
【0032】
この実施の形態1によれば、投射光学系16が形成する画像と、位置検出型光検出器22が画像を撮像する際の露光時間と、ステージ制御装置20が制御する画像受光面の位置とを指定する指定手段を設けるように構成したので、評価画像や背景画像を自動的に取得することができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22の画像受光面の位置を制御する際、直交座標系でX,Y,Z方向への画像受光面の移動を受け付けるように構成したので、光学系単体の光学性能の像高依存性(X,Y方向)だけでなく、像面方向(Z方向)の光学性能(例えば非点収差)を評価することができる効果を奏する。
【0033】
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22の画像受光面の位置を制御する際、位置検出型光検出器22の画像受光面の移動状況を監視し、その移動状況に応じて画像受光面を移動させるように構成したので、例えば、測定ステージ21の操作ミス等が発生したとき、測定ステージ21を自動的に減速させたり、緊急停止させたりすることができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22の画像受光面の位置を制御する際、背景画像減算後評価画像の基準位置が当該画像受光面の中心と一致するように当該画像受光面を移動させるように構成したので、正確に光学系単体の光学性能を評価することができる効果を奏する。
この実施の形態1によれば、位置検出型光検出器22の画像受光面にスクリーンを取り付けるように構成したので、人間が目視によって評価画像や投射画素を確認することができる効果を奏する。
【0034】
実施の形態2.
図10はこの発明の実施の形態2による光学系評価装置の統計処理部25の処理内容を示すフローチャートであり、図11はこの発明の実施の形態2による光学系評価装置のボケ分布算出部26の処理内容を示すフローチャートであり、図12はこの発明の実施の形態2による光学系評価装置の画像評価部27の処理内容を示すフローチャートである。
以下、データ解析装置2の処理内容を具体的に説明する。
データ解析装置2は、大きく分けて、下記の4種類の処理を実施する。
(a)データの加算に伴う誤差の低減を目的とする統計処理(図10)
(b)揺らぎ構造を取り除く画像統計処理(図10)
(c)有限要素の影響を分離する画像復元処理(図11)
(d)定量評価値を算出する統計及び信号処理(図12)
【0035】
データ解析装置2の統計処理部25は、光学系評価装置が持つ固有の癖に起因する誤差(例えば、光源13の時間変動など)を低減する必要性が高い場合、ノイズ低減部24から受ける背景画像減算後評価画像をそれぞれ複数枚積算する(ステップST21〜ST23)。即ち、背景画像減算後評価画像のフレーム積算を実施することにより、上記固有の癖を時間で平均化して、これに起因する誤差を低減する。
なお、背景画像減算後評価画像の積算枚数Nが大きくなると、平均誤差が標準偏差の1/√Nに従って小さくなるため、統計的にも誤差を低減することが可能である。
【0036】
一方、露光時間を増やすことにより、光子の統計を稼ぐこともできるが、過度の露光では位置検出型光検出器22の測定範囲を越えるため、線型性が保たれなくなる。そこで、短い露光時間の取得画像を複数枚積算することにより、長時間露光の取得画像と同等の光子統計を得ることも可能となる。
ただし、上記のフレーム積算は、背景画像減算後評価画像の統計が十分良く、光学系評価装置に由来する誤差(光源13の時間変動など)が十分小さい場合等、データの質に応じて必ずしも行う必要はない。
【0037】
ここで、ノイズ低減部24から出力された背景画像減算後評価画像13−1は、図13に示すように、光子統計を起源とする小さいがたついた揺らぎ構造13−2を有する。
データ解析装置2の統計処理部25は、このような揺らぎ構造13−2を減少する必要性が高い場合、“binning”や“smoothing”などの画像統計処理を実施して、注目すべき構造より小さい揺らぎ等を取り除くようにする(ステップST24〜ST28)。
【0038】
“binning”は、基準となる画素の輝度と、その周りの画素の輝度を加算する処理であり、“binning”を実施すると、図13の揺らぎ構造13−2は、図14の14−2のように減少する。
“smoothing”は、基準となる画素の輝度を、その周りの画素に所定の関数(例えば、Gauss関数)に従って分配する処理であり、“smoothing”を実施すると、その関数を特徴付ける特徴的な長さ(例えば、標準偏差σ)より小さな構造を取り除くことができる。
なお、背景画像減算後評価画像13−1に対する“binning”と“smoothing”を実施すると、背景画像減算後評価画像は図9の9−1のようになる。
【0039】
これにより、光子統計揺らぎが起源と思われる注目構造より小さい揺らぎ構造が消えて滑らかになる。なお、“smoothing”は背景画像減算後評価画像と関数(例えば、Gauss関数)のたたみこみ積分になるため、一度、2次元フーリエ変換を実施して、各々を周波数空間で乗算した後、逆フーリエ変換を実施して計算時間を短縮してもよい。
上記の“binning”や“smoothing”は、背景画像減算後評価画像の統計や、注目したい大きさに依存するので、図10の処理は必ずしも行う必要はない。
【0040】
次に、ボケ分布算出部26は、統計処理部25により統計処理が実施された背景画像減算後評価画像を受けると、その背景画像減算後評価画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出する。具体的には下記の通りである。
図15は背景画像減算後評価画像15−1と、有限要素15−4と、光学系のボケ分布15−3との関係を模式的に示す説明図である。
投射レンズなどからなる光学系が理想的(無収差)な場合、有限要素15−4は光学系により完全に射影変換される。
しかしながら、光学系は様々な収差で表現されるボケを持つため、PSF(Point Spread Funcition)で表される広がりを有する。
したがって、実際には有限要素は、光学系の収差の影響を受けて、ボケて撮像される。これは数学的に、有限要素15−4と光学系のボケ分布15−3とのたたみこみ積分(convolution)で表される。
そこで、背景画像減算後評価画像15−1から有限要素15−4の影響を除去し、光学系の結像性能、即ち、PSFを復元するには、この「たたみこみ積分」の逆(deconvolution)を行えばよい。
【0041】
このような観測された現象(ここでは評価画像)から、その現象を成立させている原因(ここでは光学系のボケ)を推定するアプローチを逆問題といい、この考え方は天体画像の復元、超解像などで利用されつつある。しかしながら、逆問題は、多数の解がある場合、発散する場合、解を持っていない場合など、解の一意性、解の安定性、解の存在は保証されていない。そのため、このdeconvolution演算は、発散など不適な解を含む可能性があり、得られたPSFが正しい解とは限らない。
【0042】
そこで、この実施の形態2では、有限要素15−4と2次元のPSF15−3(初期段階では、適当に設定したPSF)をたたみこみ積分して、中間画像15−2を作成する。
そして、中間画像15−2と背景画像減算後評価画像15−1のカイ2乗検定を行うことにより、PSF15−3の確からしさを統計的に検証する。
統計的な確からしさが不十分な場合、中間画像15−2と背景画像減算後評価画像15−1の差分をうち消すため、その差分をPSF15−3に加算し、加算後のPSF15−3と有限要素15−4たたみこみ積分して、再度、中間画像15−2を作成する。
そして、中間画像15−2と背景画像減算後評価画像15−1のカイ2乗検定を行うことにより、PSF15−3の確からしさを統計的に検証する。
統計的な有意さが十分になるまで上記演算を繰り返し、最終的に統計的に確からしい2次元のPSFを求める。
【0043】
これらの一連の計算アルゴリズムとして、例えば、Lucy 1974,Astron.J.vol79,p749に基づく画像復元演算方法がある。また、特にCCDカメラのような位置検出型光検出器のノイズを含む画像データに上記演算方法を拡張した計算アルゴリズムがSnyder 1993,JOSA.vol10,p5に開示されている。これら画像復元演算方法はLucy−Richardson法(以後、LR法と記する)として知られている。
この画像復元演算の計算アルゴリズムとしては、LR法以外にも最大エントロピー法、フーリエ反復法など、フーリエ変換を利用した繰り返し演算等があり、任意のアルゴリズムを利用してよい。
【0044】
ボケ分布算出部26は、統計処理部25により光子統計揺らぎが低減された背景画像減算後評価画像と有限要素を入力する(ステップST31)。
ボケ分布算出部26は、LR法に代表される画像復元演算方法を使用して、背景画像減算後評価画像から有限要素の影響を除去して光学系の結像性能を表すPSFを求める(ステップST32)。
ボケ分布算出部26は、画像データがポアソン統計に従うとして、そのPSFの統計的な確からしさをカイ2乗で表現する(ステップST33)。カイ2乗は下記のように定義することができる。
【数1】
ziはi番目のデータの値(実測値)、σiはi番目のデータの分散(実測値)、検証するモデル関数z(x)のxiにおける値(計算値)で表される。
【0045】
これは計算値が実測値とばらつきの範囲で、どの程度一致しているかを定量的に表す指標であり、自由度で規格化した場合、目安として1に近づくほど良く、一致していることを意味する。
ボケ分布算出部26は、上記のカイ2乗計算を行うと、演算回数を記録する(ステップST34)。この確からしさを示すカイ2乗が指定値に到達した場合(ステップST35)、ステップST32で演算したPSFを出力して、一連の処理を終了する(ステップST37)。
この確からしさを示すカイ2乗が指定値に到達しない場合、上記演算回数が指定回数に到達したか判断し、その演算回数が指定回数に到達しない場合(ステップST32からST35までの処理を繰り返し実施する(ステップST36)。
上記演算回数が指定回数に到達した場合(ステップST36)、ステップST32で演算したPSFを出力して、一連の処理を終了する(ステップST37)。
【0046】
ここで、図16は上記処理に伴うPSFの演算結果と統計的な有意さの関係を説明する説明図である。
図16の16−2〜16−4はPSF15−3と有限要素15−4のconvolutionで表される中間画像の例であり、それぞれ演算回数が5回、10回、30回の場合である。演算回数が多くなるにしたがって中間画像16−2〜16−4が背景画像減算後評価画像16−5に似ていくことがわかる。
これを定量的に評価するために、背景画像減算後評価画像16−5と上記演算で求めた中間画像16−2〜16−4をカイ2乗で評価する。評価結果が16−1であり、縦軸に自由度で規格化したカイ2乗、横軸に演算回数をとっている。
繰り返し演算回数が多くなるにしたがって、確からしさの指標のカイ2乗が1に漸近し、確からしくなっていくことが読みとれる。
【0047】
LR法によって背景画像減算後評価画像から算出された2次元PSFは、光源13、照明光学系14及び画像発生装置15によって指定される被験画像の波長λに対するエネルギースペクトルと、光学レンズ部18による位置検出型光検出器22への入射角(θ,ψ)で決まる関数である(図2を参照)。
したがって、PSFの輝度分布はb(x,y;λ,θ,ψ)と表すことができるので、これを定量的に評価する。その前に、必要な場合には統計処理部25で2次元PSFを入力として“binning”や“smoothing”など、上記の一連の操作(ステップST21〜ST28)を実施し、得られた2次元PSFから演算時に混入した偽信号や光子統計揺らぎを取り除いてもよい。
【0048】
次に、画像評価部27は、ボケ分布算出部26により求められた2次元PSFを入力し(ステップST41)、そのPSFの輝度分布b(x,y;λ,θ,ψ)から2次元鳥瞰図(図17の17−2を参照)と、3次元図(図17の17−1を参照)とを作成する(ステップST42,ST43)。
このようにして2次元鳥瞰図と3次元図を作成すると、その2次元鳥瞰図と3次元図から特徴的な長さ(例えば、スポット径など)を正確に計測することが可能となる。
【0049】
2次元PSFは、例えば、3次元図17−1にあるように、ピークが二山に分離している場合もある。その場合、輝度分布b(x,y;λ,θ,ψ)の重心を基準位置(中心)と考えるか、最も明るい位置を基準位置にすべきか判断に困ることがある。
そこで、画像評価部27は、2次元PSFの最大値と最小値を計算するとともに(ステップST44)、2次元PSFの統計重心を計算し(ステップST45)、これらから2次元PSFの基準位置を決定する(ステップST46)。
【0050】
基準位置を最大値で定義する場合、2次元PSFをそのまま利用すると、統計揺らぎや偽信号などの影響を受けやすい。したがって、上述した“binning”や“smoothing”を実施した後に2次元PSFの最大値を求める。
これにより、輝度分布b(x,y;λ,θ,ψ)から統計揺らぎや偽信号を極力排除した基準位置を定めることができる。
また、基準位置を統計重心で定義する場合、上下左右非対称性の影響を受けやすい。そのため、最大値と統計重心の双方から基準位置を定めてもよい。即ち、最大値を求めて当たりを付け、そこを基準に任意の領域で統計重心を求めることにより、輝度分布b(x,y;λ,θ,ψ)から統計揺らぎや偽信号を極力排除し、かつ、上下左右非対称性の影響を極力排除した基準位置を定めることが可能になる。
また、各々の基準位置の定義は、評価すべき2次元PSF毎に適宜使い分けてもよい。
【0051】
次に、画像評価部27は、注目すべき方向の強度分布を統計的な精度をあげて計算するため、2次元PSFを注目すべき方向に射影して、その注目すべき方向の強度分布を計算する(ステップST47)。例えば、1次元へのX軸射影、Y軸射影(直交座標系)、r方向射影、φ方向射影(XY平面内の極座標系)などを実施して、射影によるデータの積分を行うことで、注目すべき方向の強度分布を統計的な精度をあげて計算する。
図17は2次元PSFと各射影による強度分布の関係を示しており、3次元図17−1において基準位置を中心にr方向射影(φ方向に積算)したものが1次元PSF17−3である。
これら強度分布計算の結果から1次元射影の特徴的な長さをより正確に計測することが可能となる。
【0052】
上記のようにフレーム積算を行うことにより、上記の構成でも統計的な質の向上を図ることができる。しかしながら、フレーム積算数に比例して測定に時間がかかる。例えば、10倍の統計を得ようとした場合、100倍の測定時間が必要となる。測定時間の短縮が求められる場合、上記の射影によるデータの積分を行うことにより、測定時間を増やすことなく、統計精度を上げることができる。
【0053】
次に、例えば、スポット径のような長さを特徴付ける量を設定する。
よく使われるものに、輝度分布の半値幅FWHM、ピーク輝度に対して1/expの幅などがある。これらは、例えば、その輝度分布がGauss関数等で表される場合等は、物理的な意味(標準偏差σ)があるが、光学系の結像性能であるPSFは、一般にはこのような特定の関数で表せない。
さらに、全情報を使う方が統計的に有利なことからEEF(Encircled Energy Function)を導入する。2次元を1次元に次元を落とし、2次元の位置情報を犠牲にすることにより、統計精度を上げることができる。
【0054】
そこで、画像評価部27は、2次元PSFからEEFを計算する(ステップST48)。EEFは下記のように表される。
【数2】
EEFとPSFは積分と微分の関係にあり、dS=r dr dφ,S(r)は半径をrとする円と計算することにより、r方向のEEFg(r;λ,θ,ψ)を求めることができる。また、積分領域を円ではなく直線状に取って、特定の方向、例えば、X方向、Y方向のみ計算することにより、X方向、Y方向のEEFg(x;λ,θ,ψ)、g(y;λ,θ,ψ)を求めてもよい。
図17の17−4は基準位置を中心としたr軸方向に対するEEFであり、図17のPSF17−3と積分の関係にある。
これら強度分布計算の結果からEEFの特徴的な長さ(例えば、全光量の半分が入る径など)をより正確に計測することが可能となる。
【0055】
以上、光学系の性能は、レンズなどを用いるため回転対称な場合が多いが、人間の目は水平・垂直方向で感度が異なり、また、テレビなどの映像信号は水平・垂直方向で解像度が異なる。このため、上記のPSF計算、EEF計算等の演算は、r,φ軸方向(極座標系)だけでなく、X,Y軸方向(直交座標系)も計算が可能である。
上記の光学系のボケを求める演算では、ライトバルブ1画素のみの投射画像でよく、特殊なテストパターンを必要としない。このため、従来のように、図18の解像力チャートを用いた測定のように、測定毎に異なるテストパターンを評価位置毎に用意する必要がない。
【0056】
次に、画像評価部27は、2次元PSFをフーリエ変換して規格化することでMTFを計算する(ステップST49)。例えば、図17の17−5は1次元PSF17−3をフーリエ変換して1次元MTFを求めたものである。図中の□は実測値であり、一連の画像復元演算から計算したMTFと良く一致していることがわかる。
以上から、「点光源ではない」有限要素を起源とする背景画像減算後評価画像から、LR法に代表される画像復元演算方法を用いて有限要素の影響が取り除かれた光学系のボケの指標である2次元PSFf(x,y)を演算し、さらに、その2次元PSFのフーリエ変換から任意の空間周波数(u,v)における2次元MTF(u,v)を求めることが可能となる。
このようにして計算したMTFは、光学系の設計MTF値と直接、定量的に比較することが可能となる。
【0057】
有限要素部17は、DMD、液晶、LCOS等の各種の固定画素を有するライトバルブに適応できる。また、有限要素部17をPDP、EL、LCD等の直視型ディスプレイの固定画素として、位置検出型光検出器22で接写してもよい。
【0058】
以上で明らかなように、この実施の形態2によれば、背景画像減算後評価画像をフレーム積算するように構成したので、光学系評価装置が持つ固有の癖に起因する誤差を低減することができる効果を奏する。
この実施の形態2によれば、背景画像減算後評価画像に対する画像統計処理を実施して、注目構造より小さい揺らぎ構造を取り除くように構成したので、光子統計揺らぎが起源と思われる注目構造より小さい揺らぎ構造が消えて滑らかになる効果を奏する。
【0059】
この実施の形態2によれば、背景画像減算後評価画像から有限要素の影響を除去するように構成したので、光学系単体のボケ分布であるPSFを復元することができる効果を奏する。
この実施の形態2によれば、光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出すると、そのボケ分布であるPSFの確からしさを定量化するように構成したので、確からしさが指定値に到達するまで、繰り返し演算することができる効果を奏する。
【0060】
この実施の形態2によれば、光学系単体の結像性能を表すボケ分布の更新回数を記録し、その更新回数が指定値に到達するまで、繰り返し光学系単体のボケ分布を更新するように構成したので、光学系単体のボケ分布を正確に求めることができる効果を奏する。
この実施の形態2によれば、PSFに対する画像統計処理を実施して、注目構造より小さい揺らぎ構造を取り除くように構成したので、画像復元演算時に混入した偽信号や統計揺らぎが起源と思われる注目構造より小さい揺らぎ構造が消えて滑らかになる効果を奏する。
【0061】
この実施の形態2によれば、2次元PSFの最大値を求め、その最大値を基準にして任意の領域の統計重心を求め、その統計重心を考慮して2次元PSFの基準位置を定めるように構成したので、精度よく基準位置を定めることができる効果を奏する。
この実施の形態2によれば、2次元PSFを注目方向に射影して、その注目方向の強度分布を求めるように構成したので、注目方向の特徴的な長さを正確に計測することができる効果を奏する。
この実施の形態2によれば、背景画像減算後評価画像からMTFを求めるように構成したので、MTFに関する規格の満足度を評価することができる効果を奏する。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、画像撮像手段により撮像された画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を評価するように構成したので、有限要素の配列により画像を表示するシステムの光学系単体の結像性能を評価することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による光学系評価装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による光学系評価装置を示す外観図である。
【図3】この発明の実施の形態1による光学系評価装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図4】有限要素部の構成例を示す説明図である。
【図5】ヘッダ情報のリスト例を示す説明図である。
【図6】理想的な評価画像の輝度分布を示す説明図である。
【図7】実際の評価画像の輝度分布を示す説明図である。
【図8】背景画像の輝度分布を示す説明図である。
【図9】背景画像減算後評価画像の輝度分布を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態2による光学系評価装置の統計処理部の処理内容を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態2による光学系評価装置のボケ分布算出部の処理内容を示すフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態2による光学系評価装置の画像評価部の処理内容を示すフローチャートである。
【図13】小さいがたついた揺らぎ構造を有する背景画像減算後評価画像を示す説明図である。
【図14】揺らぎ構造減少後の背景画像減算後評価画像を示す説明図である。
【図15】背景画像減算後評価画像と有限要素と光学系のボケ分布との関係を模式的に示す説明図である。
【図16】PSFの演算結果と統計的な有意さの関係を説明する説明図である。
【図17】2次元PSFと各射影による強度分布の関係を示す説明図である。
【図18】解像力チャートを示す説明図である。
【符号の説明】
1 画像取得装置、2 データ解析装置、11 光学定盤、12 画像表示システム(画像投射手段)、13 光源、14 照明光学系、15 画像発生装置(画像投射手段)、16 投射光学系、17 有限要素部、18 光学レンズ部、19 輝度調整部(輝度調整手段)、20 ステージ制御装置(位置制御手段)、21 測定ステージ(位置制御手段)、22 位置検出型光検出器(画像撮像手段)、23 光検出器制御装置(画像撮像手段)、24 ノイズ低減部(評価手段)、25 統計処理部(評価手段)、26 ボケ分布算出部(評価手段)、27 画像評価部(評価手段)、28 可動投射スクリーン、29 小型スクリーン。
Claims (22)
- 有限要素を光源とする画像を形成し、その画像を投射する画像投射手段と、上記画像投射手段により投射された画像を受光し、その画像を撮像する画像撮像手段と、上記画像撮像手段により撮像された画像から有限要素の影響を除去し、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を評価する評価手段とを備えた光学系評価装置。
- 評価手段は、画像投射手段が評価画像と背景画像を形成して、その評価画像と背景画像の投射を行う場合、画像撮像手段により撮像された評価画像から背景画像を減算し、その減算後の画像から有限要素の影響を除去することを特徴とする請求項1記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、減算後の画像をフレーム積算し、フレーム積算後の画像から有限要素の影響を除去することを特徴とする請求項2記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、減算後の画像に対する画像統計処理を実施して、減算後の画像から注目構造より小さい揺らぎ構造を取り除くことを特徴とする請求項2記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、影響除去後の画像から光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出することを特徴とする請求項1記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出すると、そのボケ分布の確からしさを定量化することを特徴とする請求項5記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、光学系単体の結像性能を表すボケ分布を算出すると、そのボケ分布の確からしさを定量化し、その確からしさが指定値に到達するまで、繰り返し光学系単体のボケ分布を更新することを特徴とする請求項5記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、光学系単体の結像性能を表すボケ分布の更新回数を記録し、その更新回数が指定値に到達するまで、繰り返し光学系単体のボケ分布を更新することを特徴とする請求項5記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、光学系単体の結像性能を表すボケ分布の最大値を基準にして任意の領域の統計重心を求め、その統計重心を考慮してボケ分布の基準位置を定めることを特徴とする請求項5記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、光学系単体の結像性能を表すボケ分布を注目方向に射影して、その注目方向の強度分布を求めることを特徴とする請求項5記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、光学系単体の結像性能を表すボケ分布からMTFを求めることを特徴とする請求項5記載の光学系評価装置。
- 画像撮像手段の画像受光面の位置を制御する位置制御手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の光学系評価装置。
- 画像投射手段から画像撮像手段の画像受光面に投射される画像の輝度を調整する輝度調整手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の光学系評価装置。
- 画像投射手段は、評価画像と背景画像を時間的に連続して形成することを特徴とする請求項2記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、光学系単体の結像性能を評価する際、画像撮像手段により撮像された画像内にある評価領域から他の領域を減算することを特徴とする請求項1記載の光学系評価装置。
- 画像撮像手段は、画像の撮像条件を含むヘッダ情報を画像の撮像結果に付加して評価手段に出力することを特徴とする請求項1記載の光学系評価装置。
- 評価手段は、光学系単体の結像性能を評価する毎に、その評価結果をヘッダ情報に追記することを特徴とする請求項16記載の光学系評価装置。
- 画像投射手段が形成する画像と、画像撮像手段が画像を撮像する際の露光時間と、位置制御手段が制御する画像受光面の位置とを指定する指定手段を設けたことを特徴とする請求項12記載の光学系評価装置。
- 位置制御手段は、画像撮像手段の画像受光面の位置を制御する際、直交座標系でX,Y,Z方向への当該画像受光面の移動を受け付けることを特徴とする請求項12記載の光学系評価装置。
- 位置制御手段は、画像撮像手段の画像受光面の位置を制御する際、上記画像撮像手段の画像受光面の移動状況を監視し、その移動状況に応じて当該画像受光面を移動させることを特徴とする請求項19記載の光学系評価装置。
- 位置制御手段は、画像撮像手段の画像受光面の位置を制御する際、評価画像の基準位置が当該画像受光面の中心と一致するように当該画像受光面を移動させることを特徴とする請求項19記載の光学系評価装置。
- 画像撮像手段の画像受光面にスクリーンを取り付けたことを特徴とする請求項1記載の光学系評価装置。
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