JP2005016780A - 生分解性樹脂を用いた打揚げ花火用玉皮、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】土中や水中(海水も含む)の微生物によって完全分解または部分分解される生分解性樹脂を主成分とする玉皮を用いる。これに木粉やもみ殻等の天然有機材或いは非相溶性の異なる種類の生分解性樹脂を混合することにより、マトリックス強度より弱い界面を有する不均一構造にして爆発時の圧力により細片化する玉皮を得る。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、打揚げ後に玉皮が細片化して落下するため安全で、地面や水中(海水も含む)に落下した後は速やかに分解し、回収や焼却する必要のない打揚げ花火用玉皮、及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
割物、あるいはポカ物と呼ばれる打揚げ花火は、割薬や雷薬、花火効果演出用の星などの火薬類を玉皮で包含した構造が一般的である。
この玉皮は、伝統的に古新聞などの古紙を幾重にも張合わせて半球状に形成した内皮の内側に、それぞれ各種火薬類を配列し、内皮同士を球形に組み合わせ、次いで内皮の外周にクラフト紙などからなる外皮を厚く貼付けて一体化することで完成する。
新聞紙を幾重にも積層しつつ貼付けし、半球状に造形する内皮は生産効率が悪く、造形にも熟練を要することから、最近では内皮として厚手硬質の紙をプレス成形により半球状としたものに代替されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のように、従来の花火玉皮は、紙を重ね貼りしたり、重ねた紙をプレスで成形したりしたものを用いているため、引き裂きに強く、割薬の爆発時に細片化されずに、複数の大きな(数cm程度)破片となって飛散ったり、割薬量が少ないと、合わせ目から割れて飛ぶ場合が多々見られた。これらの大きな破片のうち未燃焼の玉皮は、大きさに応じた重量を有するため、地上に落下した際の衝撃度も大きく、人や建物、車等にあたって害を及ぼすことがあった。
また、破片の大小にかかわらず、散乱した破片を翌日回収して廃棄する手間及び費用が必要であった。
そこで、本発明者らは、打揚げ後に玉皮が細片化し、そのため安全で、地面や水中(海水も含む)に落下した後は速やかに生分解して消失し、そのため回収や焼却の必要がない打揚げ花火用玉皮を提案することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、生分解性を有する樹脂をマトリクスとし、該樹脂と非相溶性の生分解性樹脂を1種類以上混合することにより、マトリクス強度より弱い網目状の界面を有する不均一構造にすることを特徴とする打揚げ花火用玉皮に関するものである。
【0005】
また、本発明は、生分解性を有する樹脂をマトリクスとし、該樹脂と相溶性のない(溶解しない)木粉やもみ殻粉等の天然有機材粉末を1種以上混合することにより、マトリクス強度より弱い網目状の界面を有する不均一構造にすることを特徴とする打揚げ花火用玉皮をも提案する。
【0006】
さらに、本発明は、生分解性を有する樹脂をマトリクスとし、該樹脂と非相溶性の生分解性樹脂を1種以上及び/又は相溶性のない天然有機材粉末を1種以上混合して玉皮を成形することを特徴とする打揚げ花火用玉皮の製造方法をも提案する。
【0007】
【作用】
前記構成を有する本発明の打揚げ花火用玉皮は、土中や水中(海水も含む)の微生物によって完全分解又は部分分解される生分解性樹脂をマトリクス(主構成成分)とし、これに非相溶性の生分解性樹脂或いは溶解しない木粉やもみ殻等の天然有機材を混合して成形することにより、マトリクス強度より弱い網目状の界面を有する不均一構造にするので、爆発時の圧力により網目状の界面で破砕して数mm程度に細片化する。
従来の打揚げ花火用玉皮では前述のように数cm程度の大きな破片として落下するため、落下衝撃度も大きかったが、本発明の打揚げ花火用玉皮では上述のように数mm程度の細片として落下するので、落下衝撃度も小さく安全である。
しかも、地上に落下した後は、土中や水中(海水も含む)の微生物によって分解されるため、速やかに分解し、回収や焼却する手間も省くことができる。
また、本発明の打揚げ花火用玉皮の製造方法は、射出成形や圧縮成形、シート成形等の一般的なプラスチック用生産手段により成形可能であることから量産性に優れ、非常に効率よく花火を製造することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の打揚げ花火用玉皮は、爆発時に残った破片が地上に落下しても危険がない数mm程度の大きさ、好ましくは5mm以下に細片化され、しかも、回収や焼却する必要がない点に特徴がある。
このため、本発明では、玉皮の素材として土中や水中(海水も含む)の微生物によって分解される生分解性樹脂や木粉やもみ殻粉等の天然有機材を用いる。そして、玉皮(内皮)を形成するマトリクス(主構成成分)として選定した生分解性樹脂と、これと非相溶性の生分解性樹脂、或いは溶解しない天然有機素材を従構成成分とする組み合わせを選定し、玉皮成形用原材料とする。
【0009】
本発明に使用される生分解性樹脂とは、マトリクスとしての生分解性樹脂と、それに非相溶性の生分解性樹脂があるが、土中や水中に一般に存在する微生物の働きにより分解される性質を有する公知のプラスチックであり、ポリビニルアルコール類、脂肪族ポリエステル類、ポリカプロラクトン類、多糖類、修飾でんぷん類などが知られている。これら生分解性樹脂には、環境を損なうことのない炭酸カルシウムやタルク(含水珪酸マグネシウムMg3Si4O10(OH)2)などの無機系充填材や炭素材料を混合することも可能である。
【0010】
マトリクスとしての生分解性樹脂とそれに非相溶性の生分解性樹脂の組み合わせとして、一例として水溶性の生分解性樹脂と非水溶性の生分解性樹脂の組み合わせを例示することができる。これらはお互いに交じり合わないため、混合した場合、量的に多い成分の中に少ない成分が島状に散らばる、いわゆる海島構造を呈する不均一構造となる。そして、互いに相溶性しない生分解性樹脂の組み合わせであるため、海と島の境界面(界面)には分子間力であるファンデルワールス力しか働かず、強固な共有結合で結ばれているそれぞれの成分相と比較して非常に弱い結合状態となる。
【0011】
また、マトリクスとしての生分解性樹脂に対して相溶性のない(溶解しない)天然有機材粉末として、木材やもみ殻などの天然有機材を石臼や各種ミルにより粉砕した木粉、もみ殻粉を例示することができる。材料となる天然有機材の種類は特に限定することはなく、植物、農作物など破片として地上に落下しても環境を損なうことのないものであれば如何なるものでもよい。これら天然有機材粉末の粒径は成形性を考慮すると1mm以下が好適である。
【0012】
マトリクス(主構成成分)と従構成成分の割合は、従構成成分として天然有機材粉末を用いた場合は従構成成分を1〜60重量%とする。なぜなら、1重量%以下であると破壊に有効な界面の創成が充分でなく、また60重量%を越えると、成形材料の円滑な製造が困難になり、好ましくない。従構成成分として非相溶性の生分解性樹脂を用いた場合は従構成成分を1〜50重量%とする。なぜなら、1重量%以下であると破壊に有効な界面の創成が充分でなく、また50重量%を越えると、従構成成分ではなく主構成成分となるからである。
【0013】
次に、この原材料を溶融混練した後、玉皮(内皮)として成形する。溶融混練時に、マトリクス(主構成成分)と従構成成分とは非相溶性であるため、いわゆる海島構造と呼ばれる不均一な内部構造を形成する。構成成分間の界面の密着強度はマトリクス強度より弱いため、打揚げして爆発した時に、この界面から破壊し、細片化する。
溶融混練して成形する方法は特に限定することはなく、一般的な手法を用いることができる。例えばスクリュー型押出機やニーダー、バンバリミキサー、或いはヘンシェルミキサー中で加熱し、溶融混練した後、造粒したペレットを、射出成形、圧縮成形、シート成形などにより成形する方法を適用することができる。
勿論マトリクス(主構成成分)と従構成成分をドライブレンドした後、直接、射出成形や圧縮成形などにより玉皮(内皮)を形成するようにしても良い。
【0014】
さらに、本発明の好ましい形状構成を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例である玉皮(内皮)の形態を示す斜視図である。玉皮1は、前述のようにマトリクス(主構成成分)と従構成成分とが非相溶性である素材構成を有し、マトリクス強度より弱い網目状の界面を有する不均一構造を有するものであって、半球形状部分を2個有する複数個取りの金型を用いて射出成形により形成される。
この玉皮1の直径は、雷粒や小花用の小割用殻や号玉等の割物の殻など、その目的及び内部に詰める星及び割薬の量に応じた規格に従って複数種定められる。
また、その肉厚は、使用するマトリックスと混合する従構成成分によって得られる破片状態の特性を利用し、割物、ポカ物として要求される玉皮の破裂状態や星及び割薬の種類と量によって要求される玉皮の破裂状態から決定される。
この玉皮1は、二つ合わせの半球体により構成されるが、何れか一方の半球体の底部中心に導火線用の孔2を開けておく。この場合、導火線用孔2は後からキリ孔加工によっても容易に形成しても良いし、成形時に一体的に導火線用孔2を形成しても良い。
また、図2(a)に示すように各半球体の合わせ面の縁部を凹凸状に形成しても良いし、図2(b)に示すように縁部をネジ状に形成しても良く、この場合には各半球体を二つ合わせた後の位置決めが確実となる他、テープ止め工程も省略できる。
さらに、打揚げ爆発時の玉皮1の細片化を促進するために、図3に示すように玉皮1の表面に小さい溝3を設けるようにしても良いし、内面或いは両面に設けても良い。さらに、連続する溝3ではなく、窪みを所定間隔で形成しても良い。これらの溝3或いは窪みを形成するためには、成型用の金型の内面に突条或いは突起を形成しておけば良く、或いは成形後に彫刻刀などを用いて刻設するようにしても良い。
このような構成を有する玉皮1(内皮)を使用した打揚げ花火は、従来の新聞紙積層内皮や硬質紙プレス成形内皮を用いた玉皮に比べて、製作工数が飛躍的に短縮し、量産性に優れ、縁部形状の成形、溝や窪みの形成等も容易に実施することができる。
【0015】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
〔実施例1:玉皮A〕
でんぷん系の生分解性樹脂である日本コーンスターチ社製「コーンポール」に100メッシュ以下(0.152mm以下)に粉砕したブナ材を50重量%混合し、加圧型ニーダーで加熱混練した。次に、得られた混練物を粉砕器で2〜3mm角のペレットに粉砕し、射出成形により図1に示す半球形の3号玉サイズの玉皮用半球体を成形した。これを二つ合わせて玉皮Aとする。
【0017】
〔実施例2:玉皮B〕
前記実施例1と同様に、でんぷん系の生分解性樹脂である日本コーンスターチ社製「コーンポール」(日本コーンスターチ社製,非水溶性)に、水溶性の生分解性樹脂である日本合成化学社製「エコマティ」を50重量%混合した以外は、前記実施例1と全く同様に射出成形により図1に示す同サイズの玉皮用半球体を成形した。これを二つ合わせて玉皮Bとする。
【0018】
〔実施例3:皮C〕
前記実施例1と同様に、でんぷん系の生分解性樹脂である日本コーンスターチ社製「コーンポール」に115メッシュ以下(0.125mm以下)に粉砕した籾殻粉を25重量%、無機系充填材としてタルク20重量%、炭素材料としてカーボンブラック3重量%を混合した以外は、前記実施例1と全く同様に射出成形により図1に示す同サイズの玉皮用半球体を成形した。これを二つ合わせて玉皮Cとする。
【0019】
〔比較例1:玉皮D〕
比較として、でんぷん系の生分解性樹脂である日本コーンスターチ社製「コーンポール」のみを用いた以外は、前記実施例1と全く同様に射出成形により図1に示す同サイズの玉皮用半球体を成形した。これを二つ合わせて玉皮Dも作製した。
【0020】
〔比較例2:玉皮E〕
比較として、従来の紙製玉皮にて同サイズの玉皮用半球体を成形した。これを二つ合わせて玉皮Eも作製した。
【0021】
《爆発試験》
本発明の実施例である玉皮A,B,Cと比較例である玉皮D,Eを用い、通常の方法でそれぞれ同様に割薬、雷薬、花火効果演出用の星などの火薬類を装填し、打揚げ花火玉を作製し、これらの打揚げ花火玉をそれぞれドラム缶に入れ、地上で爆発させた。
ドラム缶から回収した玉皮の破片の一部を図4〜図8に示した。図中の方眼は1辺5mmである。
【0022】
《結果》
図4、図5、及び図6より明らかなように、本発明の実施例である玉皮A、玉皮B、玉皮Cは、それぞれ爆発の圧力で細片化され、破片は何れも5mm以下に破砕された。
これに対して、図7より明らかなように、生分解性樹脂単独で作った玉皮Dは、割れずにそのままの形状が残った。また、従来の紙製玉皮である玉皮Eは、図8より明らかなように、割れてはいるが、その破片は数cmと大きく、地上に落ちた場合、人や建物、車等にあたって害を及ぼしたり、散乱した屑を翌日回収したりする労力が必要となる。
また、これらを通常の方法で空中に打揚げた結果、本発明の実施例である玉皮A,B,Cを用いて作製した打揚げ花火玉は、従来の紙製玉皮である玉皮Eを用いて作製した打揚げ花火玉と遜色ない大きさ、色の花火であった。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の打揚げ花火用玉皮は、爆発時に細片化することから安全であり、地上に落下した後は、土中や水中(海水も含む)の微生物によって分解されるため、回収や焼却する手間も省くことができる。
また、本発明の打揚げ花火用玉皮の製造方法は、射出成形や圧縮成形、シート成形等の一般的なプラスチック用生産手段により成形可能であって、その貼り合わせ縁部、表面、内面等に各種の形状を付与することも容易であることから量産性に優れ、非常に効率よく打揚げ花火玉を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の打揚げ花火用玉皮の一実施例を示す斜視図である。
【図2】(a)玉皮の貼り合わせ面の縁部を凹凸状に形成した態様を示す斜視図、(b)貼り合わせ面の縁部をネジ状に形成した態様を示す斜視図である。
【図3】玉皮の表面に微細な溝を形成した態様を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例1にて作製した玉皮Aを用いて作製した打揚げ花火を爆発させた後に回収した細片の拡大写真である。
【図5】本発明の実施例2にて作製した玉皮Bを用いて作製した打揚げ花火を爆発させた後に回収した細片の拡大写真である。
【図6】本発明の実施例3にて作製した玉皮Cを用いて作製した打揚げ花火を爆発させた後に回収した細片の拡大写真である。
【図7】比較例1にて作製した玉皮Dを用いて作製した打揚げ花火を爆発させた後に回収した細片の拡大写真である。
【図8】比較例2にて作製した玉皮Eを用いて作製した打揚げ花火を爆発させた後に回収した細片の拡大写真である。
Claims (5)
- 生分解性を有する樹脂をマトリクスとし、該樹脂と非相溶性の生分解性樹脂を1種類以上混合することにより、マトリクス強度より弱い網目状の界面を有する不均一構造にすることを特徴とする打揚げ花火用玉皮。
- 生分解性を有する樹脂をマトリクスとし、該樹脂と相溶性のない天然有機材粉末を1種以上混合することにより、マトリクス強度より弱い網目状の界面を有する不均一構造にすることを特徴とする打揚げ花火用玉皮。
- 無機系充填材及び/又は炭素材料を混合して成る請求項1又は2に記載の打揚げ花火用玉皮。
- 玉皮の表面及び/又は内面に窪み又は溝を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の打揚げ花火用玉皮。
- 生分解性を有する樹脂をマトリクスとし、該樹脂と非相溶性の生分解性樹脂を1種以上及び/又は相溶性のない天然有機材粉末を1種以上混合して玉皮を成形することを特徴とする打揚げ花火用玉皮の製造方法。
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