JP2005014124A - 高品位歯車製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】湿式砥石研削法の中で、回転バレルまたはジャイロ方式を用い、歯車の表面粗さパラメータ、形状潤滑パラメータ、表面形状パラメータ等の表面強度に関係する加工パラメータを目的に応じ選定し、且つ歯車加工処理条件と歯車とバレル槽との相対位置関係を設定して処理を施す。
【選択図】図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は多機能性を有する高品位歯車の製造法に関し、浸炭歯車等の表面硬化歯車の面圧強度、摩耗特性、耐摩耗性および効率および曲げ疲労強度等の表面強度特性を向上ならしめる、歯車の表面付加加工に類する製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
表面硬化処理した歯車、例えば表面硬度HV700程度に浸炭焼き入れする場合の歯車の主生産プロセスは次の工程順である。
1.歯切り 、2.浸炭焼き入れ 、3.研削 、4. ショットピーニング
焼き入れ後の研削は熱ひずみ除去と精度向上、ショットピーニングは歯元曲げ疲労強度のさらなる向上を主狙いとして施される。このプロセス中、研削、ショットピーニングの工程は品質目標に応じ一方または双方とも処理されない場合もある。このような各プロセス後の表面性状は浸炭焼き入れ後では、硬くて荒れた切削目、削後では表面粗さは改善されるものの依然、硬い尖った研削目、ショットピーニング後はショットピーニング球との衝突で生じた凹部とともに歯切り、研削による荒い切削目または小さいが尖った研削目の残存とショットピーニングによる荒れたり傷ついた表面性状を呈している。従って、浸炭焼き入れ後、研削後、ショットピーニング後のいずれの場合も硬化歯車の本来持っている耐摩耗性、面圧強度が十分発揮できず、且つ摩擦係数の増加を招き,結果として効率の向上を図ることができなかった。ショットピーニング後または機械加工後単独で0.2mm以下の金属微粒子を用いたショットピーニング法が表面残留応力付与と表面処理を兼ねて一部用いられているが、硬い尖った研削目が依然残っていたり、微粒子ショットピーニング処理が不十分のため1500〜2000MPa以上の高面圧強度には十分対応できていない。
又歯車伝動装置のコンパクト化要求や歯車性能向上にて、歯車の負荷が大きくなる場合、歯車の歯元曲げ疲労強度は上記ショットピーニングが施されて対応可能であるが、表面強度特性への対策がなされていないため、歯車としてのバランスとれた強度設計対応ができていない。従って、表面性状改良方法が表面硬化歯車の表面強度特性向上に対する課題である。
【0003】
そこで表面硬化歯車材では、この改善法として,ラッピングや潤滑剤の焼付けによるリューブライト処理、PVD、CVD等の被覆処理が行われてきた。これらの方法は初期なじみ性や初期潤滑性としては効果が見られる場合があったが、面圧強度向上、低摩擦係数や低摩耗特性の維持および効率特性の維持が困難であった。つまりこれらの機能の長期維持が困難であった。
【0004】
又、精密研削を実施して表面粗さが改善された場合も、依然硬い小さい尖り部は残り、初期摩擦係数は下がるものの高面圧強度、耐磨耗性維持が困難であった。焼き入れ後ショットピーニング、焼き入れ後研削し、その後ショットピーニングを施した場合、も残存する硬い尖り部と表面性状劣化のため、ショットピーニング処理前に対し、表面強度特性が低下していた。
【0005】
【特許文献】
【特許文献1】特開平6−246548号公報
【特許文献2】特開平11−48036号公報
【0006】
即ち、特許文献1においては、表面硬化処理材へのバレル処理の適用が述べられているものの、前処理段階での研削工程の場合が含まれていない。この工程は近年、精度向上、表面粗さ改善による高強度化や低騒音化のため、自動車用トランスミッションやデフ用歯車へ多く用いられてきている。従って、研削工程を含めての製造法および効果説明が大切である。また、用いられている砥石径も粗加工工程で5〜12mm径を用いているが、一般にモジュールm=3〜5で用いられている自動車用トランスミッション歯車では摺動面の歯底部近傍までは至らず、次工程で砥石径の小さいものを用いて2〜4時間の長時間処理を施しても均一に且つ表面粗さを小さく保って歯面全体を研削できない難点がある。また、バレル処理での処理条件が材料と砥石径及び処理時間のみの表示では、高面圧で摺動する歯面の潤滑状態、表面性状が直接表面強度に影響するので、この手法の原因系とその特有効果に関する、科学的説明が不十分である。
本発明では、上記問題点の中で、前加工工程については研削工程も含んで取り扱い、且つ一般に球状でない砥石形状とサイズ及びサイズ数比についても付記し、歯面摺動部全体が均一に加工できるよう配慮している。また、歯面強度に関し、表面性状や物理的パラメータを用いて結果にいたる原因について科学的に説明を加えている。
さらに本発明では、単に面圧強度のみならず、磨耗、摩擦等の歯面強度と効率及びショットピーニング時のその最適な処理条件と歯面強度に関するバレル処理を含めて記述している。
【0007】
特許文献2においては、ショットピーニグとバレル工程の前工程として研削のみという一工程のみのケースを対象としているが、本発明ではショットピーニングなしと研削工程なしの一般の場合も含めて記述している。また潤滑パラメータとしてのD値に関し、20〜30以下で可としているが面圧が1500〜2000MPa以上の高面圧では表面硬化材でも表面損傷が生じる。本発明ではこの難点を確認改めD値にさらに制限を設けた。また砥石径についても危険断面部の曲率半径以下を選ぶこととしているが、この寸法では危険断面位置が歯底に近い場合やフランク角が大きい場合、砥石が歯面摺動部全体に当らない時が生じる。
本発明ではこの点を回避すべく、歯底部まで砥石が到達する一般形状での寸法表示としている。
また上記特許では面圧強度にたいするD値での要因説明のみであるが、局所面圧や磨耗に影響する詳細な原因系での説明がなされていない。本特許では特許文献1にて述べたようにその点に関し、説明を加えた。またショットピーニングの場合についても表面形状パラメータを用いて説明を加え、且つ面圧強度のみならず磨耗、摩擦等の表面強度や効率の歯車の実用上重要な表面強度特性についても取り扱っている。さらに加工処理条件について、上記特許では砥石径のみに制限を示しているのみであるが、実用上はこの条件のみでは処理できない。本特許ではこの加工処理条件とともに平歯車のみならずベベル歯車やハイポイド歯車等複雑歯車も処理可能として、その加工設置条件も取り扱っている。
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は、浸炭焼き入れ等の表面硬化処理およびその後の研削またはショットピーニング処理した平歯車やベベル歯車やハイポイド歯車等の複雑歯車に対して、精密機械加工技術を用いず、湿式砥石研削法を用いて、適切な表面形状と表面性状に仕上げることにより、従来技術で達成できなかった面圧強度、摩擦係数特性、耐摩耗性および伝達効率の表面強度特性を同時に向上させ、さらショットピーニング加工時においても、曲げ疲労強度とともに、上記表面強度特性を同時に向上させることを課題とする。さらに上記特性向上状態において歯車精度維持が可能であることを課題とする。
【0009】
【課題を達成するための手段】
以上の技術課題を解決する本発明は「表面硬化処理を施した歯車の表面性状を改良向上するにおいて、該歯車の表面性状パラメータに基く湿式砥石研削を施して歯車仕上げすることを特徴とする高品位歯車製造法」 が特徴である。
なお、本発明の前記構成における「歯車の表面性状パラメータ」とは、「歯車摺動時相対運動する歯車双方の表面粗さの和と最小油膜厚さとの比である形状・潤滑パラメータD、および表面粗さ尖り部の尖り度に関係する尖り部の近似曲率半径をあらわしている表面粗さ形状パラメータρ、およびショットピーニング時に表面に生じる凹部の近似曲率半径をあらわしている表面形状パラメータR、とそのショットピーニング条件に関連する面積カバレージCとアークハイト値」を意味している。
加工処理条件は一般性を持たせた砥石径と歯底幅より小の径を用い、その小径のサイズの相対数に制限を持たせて効果的に歯車摺動面の歯底部まで均一に研削できることとした。また加工時の槽と歯車回転速度に制限を加え、且つ槽と歯車の相対位置と歯車の設置方向を設定し効果的にかつ均一加工できる研削方式である。つまり、仕上げ表面性状や表面粗さ状態を特有づける加工パラメータを適切に選び、且つ 加工時、砥石形状と寸法及びその割合、歯車と槽との相対位置関係、速度等の研削条件を設定して製造することを特徴とする。
【0010】
【作用】
上述の各表面性状パラメータは歯車の表面強度につながる表面特性を示している。形状・潤滑パラメータDは歯車摺動時の潤滑状態と表面粗さの相互関係を示しており、荷重、潤滑油、速度が一定の潤滑状態の時、Dの値が小さくなる、つまり表面粗さ改善と滑らかな面形成にて表面粗さが摺動面間の油膜厚さより小さくなってくると弾性潤滑油膜が形成されやすくなり、結果的に金属接触は無くなる方向へ作用し面圧強度は向上する。また、Dが小さくなると金属接触による摩擦抵抗が少なくなり磨耗低下と摩擦係数が小さくなり、結果的に摩擦損失が小さくなり効率も上昇する。表面粗さ形状パラメータρはその値が大きくなると表面粗さの尖り部先端の曲率半径が大きくなり滑らかになることを意味し、その尖り部先端の受ける局所面圧は曲率半径が小さい場合より低くなり摩擦係数低下と面圧強度向上をもたらす。かつ個々の尖り部の摺動方向断面積が増え、磨耗に対する摺動方向へのせん断抵抗が大きくなることから磨耗が小さくなる。
バレル前のショットピーニング時の表面形状パラメータRは、歯車潤滑摺動時、湿式砥石研削によるランダム方向へ入り乱れた研削目谷部による細部への油道形成とこのショットピーニングによる凹形成部つまり油溜まり部形成との効果にて、ショットピーニングなしの時よりさらに途切れない潤滑油供給を可能にするとともに、ショットピーニング時に表面損傷を発生せず、表面の加工硬化による硬さ上昇をもたらし、且つ歯元曲げ疲労強度を向上させる残留応力を適切に付与する条件となる。この条件を維持することによりショットピーニング時も当該処理時の面圧強度含めた摩擦、磨耗等の表面強度向上および歯元曲げ疲労強度向上が可能となる。
【0011】
【本発明の実施の形態】
本発明に関わる製造方法は、浸炭焼き入れ等にて表面硬化処理した表面硬度HV700程度以上の歯車に、またはその後機械研削処理やショットピーニング処理を施した歯車に対して、当該歯車の使用時を考慮して形状潤滑パラメータD、表面粗さ形状パラメータρおよび表面形状パラメータRを選定し、歯車の形状を考慮に入れた研削条件にて湿式砥石研削を行う。このことにより、高面圧、低摩擦係数、低摩耗性および高効率で且つ高い歯元曲げ疲労強度を維持し、また摺動面が均一に研削処理され、且つ精度維持が可能な高品位歯車が得られる。以下上記多機能性を有する高品位歯車を得るための湿式砥石研削法と各加工処理パラメータ条件について説明する。
加工処理条件では砥石径を歯底幅との関係とその数の割合を考慮することにより、歯底に近い歯面摺胴部まで均一に研削可能となる。また加工処理速度を歯車と槽に設定し、混合体の乱流発生を抑えて均一に歯面研削が可能なる。また歯車と槽との相対位置や向きを設定し、場合により歯車よ歯車郡に上下動を加えることにより、砥石遠心力と回転力を有効に用いて研削能を上げ且つ 平歯車のみならヘリカル歯車、ベベル歯車、ハイポイド歯車等の立体歯車も加工時に砥石が歯溝部まで容易に侵入し、均一な歯面加工が可能となる。
【0012】
(1)湿式砥石研削法
当該湿式研削処理は一般にはバレル処理と呼ばれ、回転するバレル(槽)1の中へ不定形焼成セラミックス砥石(メデイア)6と槽とは同方向または逆方向へ回転および静止可能な工作物または工作物群5および水またはコンパウンドおよび防腐剤の溶液とを常時に入れ、槽回転にて得られた遠心力と回転力をもつ砥石と回転する工作物との相互衝突する際に、工作物表面の粗さ凸部を除去し、滑らかな仕上げ面を得る方法である。歯車等工作物が大きい場合や表面粗さが荒れている場合は、研削能をあげるため、回転バレル等の小径槽よりもジャイロ方式を用いたバレル処理用の大径槽を用いる。図11はジャイロ方式による当該歯車研削法の概要である。
【0013】
(2)加工処理パラメータ
面圧強度向上の点からは表面粗さを荒らさないことがまず必要であり、且つ潤滑性を損なわないことが必要である。その基準は使用時の表面粗さと潤滑性を考慮した形状・潤滑パラメータD値にて評価される。
D=ΣRimax/hmin (1)
ここで Rimax:相対して摺動する(すべり、ころがり)を伴う歯車最大表面粗さの和
hmin:負荷時の最小油膜厚さ
Dが小さいほど面圧強度上有利である。例えばD=1は油膜厚さhmin=1μmの場合、摺動する双方の歯車の粗さの和は1μmであることを示している。この値は一般的には機械にて精密加工仕上げする必要があることを意味している。
【0014】
従来表面硬化歯車の面圧強度維持はD値に関しD<20〜30といわれていたが、実際には(1)式で分かるように、1500〜2000MPa以上の高面圧負荷で油膜を保持したい場合、D=5以上では一般的に表面粗さが大きいため、摩耗やピッチング等の表面損傷が生じる場合が多い。従って次の条件が面圧強度上必要である。
D<5 (2)
【0015】
また表面粗さ形状に関し、表面硬化歯車の表面は切削や研削による表面切削目や研削目の硬くて尖った先端部が残存しているため、摺動時、特に高面圧負荷時、駆動又は被動歯車の表面を傷つけることとなり面圧強度や摩耗、摩擦、効率の点で不利となる。従って、歯車の表面強度上、表面粗さの尖った先端部の局所高面圧発生を抑え、且つ せん断力による磨耗発生を抑えるため、尖った先端部に丸みをつける工夫が必要である。図1に示す表面粗さ尖り部の丸み度合いに関係する表面粗さ形状パラメータρを大きくすることが、上記歯車表面強度上重要である。
このρは表面粗さ尖り部の近似曲率半径である。
一般に研削時ρは20〜50μm程度であるが、切削時にはさらに小さい場合が多い。ショットピーニング処理時には最大表面粗さRmaxが1.5〜3.0μm以上の際、表面尖り部が圧壊や吹き飛ばし効果にて部分的に丸みを帯びたりする場合もあるが、効果は小さくρ=60〜100μmである。当該バレル処理にて尖り部に丸みを持たせ、面圧強度とともに摩擦摩耗機能向上のためには(2)式と次式で示される表面粗さ形状パラメータρとする。
ρ≧120μm (3)
【0016】
歯車の伝達効率はE=(出力トルク/入力トルク)×100=((入力トルク−摩耗等による損失トルク)/入力トルク)×100にて示される。従って一般加工時[1]と当該加工時[2]との伝達効率の差ΔEは次式となる。
ΔE=((出力トルク[2]−出力トルク[1])/入力トルク)×100 (4)
ここで 出力トルク[2]:一般加工時の出力トルク 出力トルク[1]:当該処理時の出力トルク
この伝達効率向上には形状・潤滑パラメータが関わり、(3)式とともに次式を満足する必要がある。
D≦3 (5)
【0017】
切削や研削後にショットピーニングを付与し、その後当該湿式研削処理を行う場合、図2に示されるように、ショットピーニングにて生じた表面凹部の近似曲率半径に関係する表面形状パラメータRを検討する必要がある。この処理対応にて、歯元曲げ疲労強度向上と面圧強度向上を同時に向上させることが可能である。
ショットピーニング時表面強度に関し(2)〜(3)式とともに、次式形状パラメータRと面積カバレージCを維持する必要がある。
R≧60μm (6)
C≧80% (7)
この場合のショットピーニング条件の目安はアークハイト0.3〜0.5mmA、ショットピーニング球径0.4〜0.6mm、ショットピーニング球硬さHV600で示される。この際の表面強度特性向上効果は凹部の湯溜まり部と湿式研削によるランダム方向の研削目による潤滑性維持効果のためである。
以上の表面強度特性に関し加工パラメータを纏めると
面圧強度向上及び摩擦磨耗特性向上では
形状・潤滑パラメータDに於いて D<5
表面粗さ形状パラメータρに於いて ρ>120μm
伝達効率向上に対しては上記条件のρでDは D≦3
さらにショットピーニングの場合は上記各特性に対し次の条件が加わる。
表面形状パラメータRに於いて R≧60μm
と面積カバレージCに於いて C≧80%
アークハイト値 0.3〜0.5mmA
【0018】
(3)湿式砥石研削条件
上記(2)(3)(5)式を得るためおよび歯車精度維持および歯車摺動面を均一に仕上げるためには、次に示す研削加工条件を維持する必要がある。
【0019】
歯車を効率よく研削し、表面粗さ尖り部に丸みを持たせるために用いる砥石には、焼成したアルミナ系を主成分とした比重2以上のセラミックスを用いる。その形状は不定形や定形またはこれら混在のものを用いて良いが、歯車摺動面全体を均一に研削するには、その砥石外形寸法が歯車歯元危険断面部の曲率半径の2倍より小さいのみだと摺動面の歯底部近傍まで達しない場合があるので、その砥石の外形寸法は、下式を満足する必要がある。
d<b (8)
ここで d:不定形または定形砥石全体を包む包絡球の最長直径 b:歯車歯溝幅
またこの砥石径より大きいものと小さいものの数量比は1以上が好ましい。これは外形の大きいものが多いと相対的に砥石遠心力が大きくなり、大径砥石との衝突にて得られる小径砥石の回転力が大きくなる。結果として歯底近傍にある小径の研削能力が高まり、歯底近傍の研削が助長される。
【0020】
砥石の研削能を発揮するためには、まず歯車の回転とバレル槽の回転条件とのバランスをとる必要がある。砥石の遠心力にて歯車と衝突し、且つ砥石と水及び溶剤の乱流が発生せず歯車の歯溝部まで砥石が進入して歯車摺動部を均一に研削する条件として歯車自転速度V1、バレル槽回転速度V2は
V1=10〜30rpm (9)
V2<90rpm (10)
歯車の表及び裏の両面を研削するには,バレル槽または歯車を同時にまたは一方のみ再度逆回転させる。
【0021】
バレル槽へ歯車を複数個同軸上に重ねた歯車郡を一度に研削する場合、この歯車群の上下層位置間での砥石重量による研削能の違いを避けるため、歯車群を同軸上に沿い歯幅以上、上下動させる。このことにより、歯車の上下位置に関係なくむらなく仕上げることができる。
上下動の速度は(9)式以下とする。
【0022】
図3に歯車面を均一に研削加工するための概要を示す。
歯車の摺動部を均一に精度良く仕上げるためには、歯車の歯筋方向8とバレル槽3の回転中心方向1を平行に保つことをベースとする、つまり遠心力により得られた砥石6の最大研削能が槽3に近い側壁近傍で発生するので、歯車摺動部はその箇所を通過させ、且つ歯筋方向8、または歯先部の歯筋方向に沿う稜線方向とバレル槽側壁7垂直断面稜線方向を平行に保つ。つまり歯車歯筋方向とバレル槽の回転中心方向1とを平行に維持することにより、均一な遠心力を利用した砥石研削能を生かし、歯車摺動面を均一に仕上げることができる。
【0023】
(2)〜(7)式の加工パラメータを考慮し、(8)〜(10)式及びバレル槽と歯車の位置関係等を保持して湿式研削加工処理した歯車の実施例を以下に示す。
浸炭焼入れ後ショットピーニングし、30分から1時間当該処理した摩耗量とD値との関係を図4に示す。D値が5以下では摩耗がほとんど生じていない。
【0024】
2200〜2300MPaの高面圧負荷時での摩耗係数の経時変化を浸炭歯車研削材をベースとして、研削ショットピーニング後に当該処理した場合を図5に比較して示す。研削のみの場合(面圧2200MPa,D=16.7)、摩擦係数は大きく変化し、且つ最終的にはピッチングが発生している。ショットピーニング処理後当該処理の場合(面圧2300MPa、D=3.3)は1千万回負荷後、摩擦係数は初期値を維持し、且つピッチングを生じていない。また、研削後と比較して摩耗係数は約3割小さくなっている。
【0025】
面圧2150〜2160MPaでのD値とそのときの表面粗さ尖り部丸み半径を表す表面粗さパラメータρとの関係を図6に示す。ρが大きくなるとDは小さくなる傾向を示し、特にρが120μm以上で200μm近くの大きさになるとD値が5以下となる傾向を示している。
【0026】
浸炭焼き入れされたハイポイドギヤの浸炭焼き入れ後と、当該処理時の伝達効率の上昇割合ΔEとD値との関係を図7に示す。Dが3以下ではΔEは顕著に上昇している。
【0027】
面圧強度の比較例を浸炭焼入れ研削時と浸炭焼入れ研削ショットピーニング及びその後当該処理した場合を図8に示す。D<5の当該処理にて面圧強度は2割以上向上している。
【0028】
モジュールm=2の歯車の浸炭焼き入れ研削ショットピーニング後と、その後当該処理の場合の歯車精度比較を図9に示す。歯筋方向は当該処理後(破線)変化が見られず、歯筋方向で歯先部で約1μm減少している。この値は設計時考慮しておけば、十分許容できる値である。
またピッチ誤差も加工前後で変化がなくJIS一級はそのまま精度が保持される。図10にm=4の浸炭焼入れ歯車の表面粗さの例を研削及び研削ショットピーニングの場合と比較して示す。当該処理にて表面粗さ尖り部に丸みを帯びている。
【0029】
【本発明の効果】
本発明に係わる製造は、平、ヘリカル、ウオーム、ベベル、ハイポイド、サイクロイド歯形、立体歯車、ノビコフ歯車およびCVT用歯車摺動部材を含め、すべての表面硬化歯車に適用可能である。またその他同様に表面硬化熱処理した摺動部材、高面圧部品であるカム、ピン、シリンダー、ピストン、金型、バネ、ベアリング等の機械要素部品への適用も可能である。
【0030】
浸炭焼入れの他に浸炭窒化焼入れ、高周波焼入れ、CVDやPVD被覆材等の表面硬化歯車へ当該処理をすることにより、面圧強度向上、摩擦、摩耗特性向上、効率向上と表面特性効果が顕著に表れるとともに、ショットピーニング処理時も同様な処理にて同傾向の効果が生じ、この際歯車曲げ疲労強度と、上記の高機能特性との高度にバランスした高品位歯車が達成される。この処理は表面硬化しない歯車や機械要素部品へも適用拡張が同様に可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面粗さ形状パラメータ
【図2】表面形状パラメータ
【図3】歯車加工設定条件概要
【図4】D値と摩耗量の関係
【図5】摩擦係数の推移
【図6】D値と表面粗さ形状パラメータ
【図7】伝達効率上昇ΔE(m=3)
【図8】面圧強度比較
【図9】歯車精度(m=2)
【図10】表面粗さ(m=4)
【図11】湿式砥石研削法概要
Claims (2)
- 表面硬化処理を施した歯車の表面性状を改良向上するにおいて、該歯車の表面性状パラメータに基く湿式砥石研削を施して歯車仕上げすることを特徴とする高品位歯車製造法。
- セラミックス粉末を焼成した砥石と溶剤および水等を回転可能な槽へ入れ、その回転槽の中へ自転する歯車工作物を挿入し、所定の砥石条件、研削条件および工作物と槽との相対設置条件を保持することにより歯車精度を保ち、かつ歯車摺動面を均一に研削ならしめる湿式砥石研削を用いた請求項1の高品位歯車製造法。
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-
2003
- 2003-06-24 JP JP2003179405A patent/JP2005014124A/ja active Pending
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