JP2005013224A - RNAiを発揮しうる最適なオリゴ二本鎖ヌクレオチド又はそのアンチセンス鎖RNAを見出すためのスクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】RNAi(RNA interference)により標的mRNAを切断しタンパク質発現を抑制するのに適した、15から27塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖ヌクレオチド又はそのアンチセンス鎖RNAを見出すために有効なスクリーニング方法の提供。
【解決手段】初期工程において、所望する長さの塩基対の数を有するセンス鎖RNAのおよそ半数の塩基が重複するセンス鎖RNAと、その相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAのプールからスクリーニングを行う。
【選択図】なし

Description

本発明は、RNAi(RNA interference)により標的mRNAを切断し、タンパク質発現を抑制するのに適した、15から27塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖ヌクレオチド及びそのアンチセンス鎖RNAを見出すために有効なスクリーニング方法に関するものである。
RNAiは、二本鎖RNA(dsRNA)を細胞に導入することにより、導入したdsRNAと相同的な配列をもつmRNAが特異的に分解され、したがって当該mRNAのコードする遺伝子産物の合成が抑制される現象である。RNAiは最初に線虫(C.elegans)において発見された現象(例えば、非特許文献1を参照)であったが、その後、ショウジョウバエ(Drosophila)、原虫(Trypanosoma)、ヒドラ、植物(A.thaliana)、およびアフリカツメガエル(Xenopus)、さらには哺乳動物細胞ではマウス胚性幹細胞(ES細胞)、卵細胞および初期胚においても観察された(例えば、特許文献1ないし2を参照)。
一方、分化した哺乳動物細胞においては、線虫などと同様のRNAiによるタンパク質発現抑制効果を得る目的で、30塩基対以上のdsRNAを導入してもRNAiの効果は観察されなかった。これは、30塩基対以上のdsRNAの侵入がウイルス感染として認識されることによりインターフェロンが誘導され、インターフェロン応答として知られる2つの経路が活性化されたためである。一つの経路は、インターフェロンがdsRNA依存的プロテインキナーゼ(PKR)を誘導し、このPKRがdsRNAと結合して活性化され、翻訳因子eIF2αをリン酸化することによって翻訳を阻害する経路である。もう一方の経路はインターフェロンが2’−5’−オリゴアデニル酸合成酵素(2−5A合成酵素)を誘導し、これがRNAase Lを活性化することでmRNAなどの1本鎖RNAを非特異的に切断する経路である。これらの経路が活性化されると、細胞内の全ての遺伝子発現が低下する。したがって、30塩基対以上のdsRNAの導入は、インターフェロン応答により細胞内の全ての遺伝子発現を低下させるため、標的遺伝子に特異的な発現抑制(ノックダウン)効果が得られなかったのである(例えば、非特許文献2を参照)。
Tuschlらの研究グループがショウジョウバエの細胞抽出液を用いたin vitro系で、加えたdsRNAが21から23塩基対のdsRNAに分解されていることを見いだし、それらの分解されたRNAが標的であるmRNAの配列認識のガイドとして働く仲介物質であることが示唆された(例えば、非特許文献3を参照)。そして、実際に化学合成した21から22塩基対の二本鎖のRNAを上記の反応系に添加することにより、標的mRNAが切断されることが確かめられた。Tuschlらのグループは、このような、RNAiによるタンパク質発現抑制活性を有する短い二本鎖のRNAを、siRNA(short interfering RNA)と名づけた(例えば、非特許文献4を参照)。またsiRNAは、それを構成するそれぞれのRNA鎖の3’末端に2から3塩基の一本鎖の状態で存在する部分、すなわち、いわゆる突出部を有するものが上記の反応系で強いタンパク質発現抑制活性をもつことが報告されている。さらにTuschlらのグループは、siRNAが上記のインターフェロン応答の問題なしに、分化した哺乳動物細胞においても配列特異的な遺伝子発現抑制活性を示すことを報告した(例えば、特許文献3および非特許文献5を参照)。したがって、siRNAを用いることで、哺乳動物においても、RNAiを利用した標的遺伝子のノックダウンによる、標的遺伝子がコードするタンパク質の発現抑制を行うことが可能となった。
RNAiを利用したタンパク質発現抑制において、標的のmRNAを切断するために必要なタンパク質として、RISC(RNA−induced silencing complex;ヌクレオチド分解酵素複合体)と呼ばれるタンパク質複合体が考えられている。RISCは二本鎖であるsiRNAの3’突出部を認識してsiRNAを複合体内に取り込み、ターゲットのmRNA配列を認識するためのガイドとしていると考えられている。すなわち、この複合体はsiRNAと同じ配列を持つmRNAを認識して結合し、RNase III様の酵素活性によってsiRNAの中央部でmRNAを切断すると考えられている。
RISCは細胞質で形成するため、RNAiを利用して標的遺伝子をノックダウンする方法においては、siRNAを細胞質に導入すればよい、すなわち、核まで移行させなくてもよい、という利点がある。また、siRNAは天然型のヌクレオチドの構成で十分な効果が得られ、修飾は必須ではない。さらに、導入するRNAの量はアンチセンス法で導入するアンチセンスDNAの量と比較して桁違いに少なくても十分な効果を有することからも、簡便で効果的な方法として着目されている。siRNAを用いたRNAiに関する総説については、以下の文献を参照されたい(例えば、非特許文献6ないし7を参照)。また、アンチセンス鎖だけでもRNAi効果の発現が認められたという報告もある(例えば、非特許文献7を参照)。
siRNAの細胞質への導入方法としては、カチオン性リポソーム又はその他のカチオン性担体などの担体をベクターとして用いる方法、およびリン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法又はマイクロインジェクション法など細胞に直接導入する方法、などが用いられている。また、siRNAを細胞内で発現するようsiRNAをコードする配列を組み込んだ発現ベクターを細胞内に導入する方法も研究されている(例えば、非特許文献8ないし9を参照)。
ところで、標的mRNAに対してRNAiを発揮しうる最適なsiRNAを見出すためには、究極的には標的mRNAの上流側から1塩基毎にずらして始まる、所望の長さのsiRNAについて、そのRNAiをスクリーニングする必要がある。そのような方法では、膨大な数のsiRNAについてスクリーニングを行なう必要があり、経済的ではない。
また、ある標的mRNAに対してRNAiを発揮しうるsiRNAの配列について一応の指針が示されているが、当該指針は一つの目安であって何ら確実なものではない(例えば、非特許文献8を参照)。
国際公開第02/44321 A2号パンフレット 特表2002−516062号公報 国際公開第01/75164 A2号パンフレット A.Fireら、"Nature"、1998年、391巻、p.806−811 K.Ui−Teiら、"FEBS Letters"、2000年、479巻、p.79−82 P.D.Zamoreら、"Cell"、2000年3月31日、101巻、1号、p.25−33 S.M.Elbashirら、"Genes & Development"、2001年1月15日、15巻、2号、p.188−200 S.M.Elbashirら、"Nature"、2001年5月24日、411巻、p.494−498 森田 隆および吉田 佳世、「タンパク質 核酸 酵素」、2002年、47巻p.1939−1945 J.Martinezら、"Cell"、2002年9月6日、110巻、5号、p.563−574 M.Miyagishiら、"Nature Biotechnology"、2002年5月、20巻、5号、p.497−500 T.R.Brummelkampら、"Science"、2002年4月19日、296巻、p.550−553
本発明は、より効率的な方法により標的mRNAに対してRNAiを発揮しうるより最適なオリゴ二本鎖ヌクレオチド又はそのアンチセンス鎖RNAを見出すためのスクリーニング方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、標的mRNAがRNAiを発揮するオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの中央付近で切断されることに着目し、所望する長さの塩基対の数を有するオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAにおいて、およそ半数の塩基が重複する形の塩基毎に始まるセンス鎖RNAと、その相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAのプールについて、まずはスクリーニングを行えば、RNAiを発揮しうるより最適なオリゴ二本鎖ヌクレオチド及びそのアンチセンス鎖RNAを効率的に選別できることを見出し、本発明を完成した。
本発明として、例えば、下記(1)(2)のものを挙げることができる。
(1)RNAiにより標的mRNAを切断し、タンパク質発現を抑制するのに適した、15から27塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖ヌクレオチドのアンチセンス鎖RNAを見出すために有効なスクリーニング方法であって、下記1)および2)の工程を含むスクリーニング方法。
1)初期工程:標的mRNAのORF内から、所望の長さの二重鎖形成部を構成する塩基対の数を2で除し、小数点以下を切り捨てた数又はその数に1を加えた数の塩基毎に始まる、当該所望の長さのセンス鎖RNAを選択し、その相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAで構成されるプールからスクリーニングを行い、オリゴ二本鎖RNAを選別する。ただし、必要に応じて、適宜、スクリーニングに用いるオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端を1ないし5塩基ずらした位置から始まるオリゴ二本鎖RNAについてスクリーニングを行う。
2)最終工程:前段階のスクリーニングにおいて選別したオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端に該当する標的mRNAの塩基を中心として上流側及び下流側ともに1ないし4塩基の範囲で1塩基毎にずらした位置から始まる、当該所望の長さのオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖と、その相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAで構成されるプールからスクリーニングを行い、最終的なオリゴ二本鎖RNAを見出し、そのアンチセンス鎖RNAを見出す。ただし、必要に応じて、適宜、スクリーニングに用いるオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端を1ないし3塩基ずらした位置から始まるオリゴ二本鎖RNAについてスクリーニングを行う。
(2)上記工程1)と2)の間に、次の中間工程を含む上記(1)のスクリーニング方法。
中間工程:前段階のスクリーニングにおいて選別したオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端に該当する標的mRNAの塩基を中心として上流側及び下流側ともに2ないし10塩基ずらした位置から始まる、当該所望の長さのオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAと、その相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAで構成されるプールからスクリーニングを行い、オリゴ二本鎖RNAを更に選別する。
なお、初期工程及び最終工程において必要に応じて、適宜、スクリーニングに用いるオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端をずらす場合とは、例えば、当該センス鎖RNAと標的mRNA以外のmRNAとの相同性が85%以上である場合を挙げることができる。
また、中間工程においても、スクリーニングに用いるオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAと標的mRNA以外のmRNAとの相同性が85%以上である場合等には、適宜、オリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端に該当する標的mRNAの塩基を中心として上流側又は下流側ともに1ないし4塩基ずらした位置から始まるオリゴ二本鎖RNAについてスクリーニングを行うことが望ましい。
本発明においては、上記(1)の初期工程と最終工程のスクリーニング方法を含んでいれば十分であるが、所望するオリゴ二本鎖ヌクレオチドの二重鎖形成部の長さによっては、初期工程と最終工程との間に、上記(2)に相当する中間工程を1ないし2追加することができる。
本明細書においてオリゴ二本鎖ヌクレオチドとは、15から27塩基対の二重鎖形成部を有する、15ないし31塩基のヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドの対であって、そのアンチセンス鎖がオリゴRNAであるオリゴヌクレオチドの対と定義される。
また、本明細書で二重鎖形成部とは、本発明のオリゴ二本鎖ヌクレオチドにおいて、当該オリゴ二本鎖ヌクレオチドを構成するヌクレオチドの対が二重鎖を形成している部分であって、標的mRNAの配列に相補的なアンチセンス鎖RNAを含む部分をいう。そして、それぞれのオリゴヌクレオチドの二重鎖形成部につづく3’側又は5’側に一本鎖がある場合には、これを突出部と呼ぶ。
本発明に係るオリゴ二本鎖ヌクレオチドは、15ないし31塩基のヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドの対であり、17ないし23塩基のヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドの対が好ましい。
なお、本発明に係るオリゴ二本鎖ヌクレオチドは、そのセンス鎖オリゴヌクレオチドの一部又は全部がデオキシリボヌクレオチドないしリボヌクレオチドであってもよく、また修飾ヌクレオチドであってもよい。
また、本発明に係るオリゴ二本鎖ヌクレオチドは、少なくとも一方のオリゴヌクレオチド鎖の3’末端又は5’末端にヌクレオチドを1ないし4塩基を突出部として有していても、有していなくてもよい。
突出部を有する場合には、突出部を構成するヌクレオチドはリボヌクレオチドであってもよく、又は、デオキシリボヌクレオチドであってもよい。特に望ましい態様は、突出部としてヌクレオチドを2塩基有するオリゴ二本鎖ヌクレオチドである。さらに望ましくは、突出部としてdTdT、UU、又は、二重鎖形成部に続いて標的mRNAと相補鎖を形成しうる配列である。
本発明は、RNAiを有する15から27塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖ヌクレオチドのアンチセンス鎖RNAを見出すために有効であるが、好ましくは18から22塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖ヌクレオチドのアンチセンス鎖RNAを、より好ましくは19塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖ヌクレオチドのアンチセンス鎖RNAを見出すために有効である。
本発明に係るオリゴ二本鎖ヌクレオチドの標的遺伝子としては、例えば、bcl−2、c−myc、bcr−ablなどの癌遺伝子、HIVウイルス遺伝子、C型肝炎ウイルス遺伝子、B型肝炎ウイルス遺伝子などに係るウイルス遺伝子、TNF−α遺伝子やFas遺伝子などに係る炎症関連遺伝子が挙げられる。
本発明は、RNAi(RNA interference)により標的mRNAを切断しタンパク質発現を抑制するのに適した、15から27塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖ヌクレオチド又はそのアンチセンス鎖RNAを見出すために有効なスクリーニング方法の提供に貢献する。
本発明に係るスクリーニング方法の詳細は実施例に示すが、標的mRNAをbcl−2mRNAとし、その標的mRNAを切断しBcl−2タンパク質の発現を抑制するのに適した、19塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖ヌクレオチドのアンチセンス鎖RNAを見出す場合について以下に述べる。
初期工程:一次スクリーニング
bcl−2 mRNAのORF(Open Reading Frame)内から、約9塩基毎に始まる19塩基のセンス鎖RNAとその相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAで構成されるプールからスクリーニングを行う。
中間工程:二次スクリーニング
一次スクリーニングで高いBcl−2タンパク質発現抑制活性の見られたオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端が、bcl−2 mRNAの配列において該当する塩基を中心に、3塩基毎にずらした19塩基のセンス鎖RNAとその相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAのスクリーニングを行う。
最終工程:三次スクリーニング
二次スクリーニングで高いBcl−2タンパク質発現抑制活性の見られたオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端が、bcl−2 mRNAの配列において該当する塩基を中心に、1塩基毎にずらした19塩基のセンス鎖RNAとその相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAのスクリーニングを行う。
選別したセンス鎖RNAとその相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAのRNAiの評価は、後述の実施例に詳細を示すが、当該オリゴ二本鎖RNAを培養系の癌細胞などにカチオン性リポソームなどを用いてトランスフェクションし、所定時間培養した後、当該癌細胞におけるBcl−2タンパク質発現量およびその低下度をウエスタンブロッティングで評価することにより行うことができる。また、上述した方法だけでなく、bcl−2 mRNA量、又は細胞増殖抑制を指標とする方法によっても評価することができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例に示される範囲に限定されるものではない。
実施例1 スクリーニングとその評価
i)オリゴ二本鎖RNAの調製
オリゴ二本鎖RNAを構成するオリゴRNAの合成は、自動核酸合成装置を用いた標準的なホスホアミダイト法による固相合成で行った。合成は、Dharmacon社(米国 コロラド州)又は日本バイオサービス(埼玉県)に合成を依頼するか、又は本発明者らが行った。
本発明者らが行った手順を簡単に述べる。自動DNA合成機(アプライド・バイオシステムズ、Expedite 8909)を用いて、標準的なホスホアミダイト法により所望の塩基配列を形成するよう、モノマーを逐次縮合した。濃水酸化アンモニウム−エタノール(3:1)混合液を用いてCPG(controlled pore glass)よりヌクレオチド鎖を開裂させ、さらに同溶液中で55℃、18時間おいて脱保護した。その後、1Mテトラブチルアンモニウムフルオライドのテトラヒドロフラン溶液を用いて室温で20時間処理し、2’位のシリル基を脱保護した。得られたオリゴリボヌクレオチドを逆相クロマトグラフィーにて精製した。さらに、80%酢酸水溶液にて室温で30分処理し、5’位のDMTr基を脱保護した後、イオン交換クロマトグラフィーにて再度精製した。脱塩後に得られたオリゴヌクレオチドは、キャピラリーゲル電気泳動により90%以上が目的の全長物質であることを確認した。
こうしてオリゴ二本鎖RNAを構成するオリゴRNAの各々を合成し、二重鎖形成部が相補的な2本のオリゴRNAを、後述するように等モルで混合することでオリゴ二本鎖RNAとして用いた。
ii)スクリーニングにおける評価方法
スクリーニングにおける評価は、オリゴ二本鎖RNAを担体と共に各種癌細胞に導入し、タンパク質の発現量をウエスタンブロッティングを用い評価することにより、およびmRNAの量をRT−PCR(Reverse transcription−polymerase chain reaction)を用い準定量することにより、又はセルカウンティングアッセイを用い細胞増殖抑制活性を評価することにより行った。
オリゴ二本鎖RNAと担体の複合体の調製
担体として2−O−(2−ジエチルアミノエチル)カルバモイル−1,3−O−ジオレオイルグリセロールと精製卵黄レシチンを含むカチオン性リポソーム(以下「リポソームA」という)を用い、オリゴ二本鎖RNAとの複合体を調製した。オリゴ二本鎖RNA 1重量部に対してリポソームA 16重量部を混合して複合体を調製した。以下に、オリゴ二本鎖RNAの終濃度10μMの複合体溶液、2mlの調製について示す。ただし、オリゴ二本鎖RNA複合体の濃度は、オリゴ二本鎖RNAが完全に二本鎖形成していると仮定したときに複合体に含まれているオリゴ二本鎖RNAのモル濃度で示している。
300μMになるように注射用水に溶解したセンス鎖およびアンチセンス鎖それぞれ66.6μlを試験管中で混合した。これに866.8μlの10%マルトースを添加し、両鎖をそれぞれ20μMの濃度で含む溶液1mlを調製した。これをオリゴ二本鎖RNA溶液とした。
16mg/mlのリポソームA分散液268μlに10%マルトース732μlを添加し、4.3mg/mlのリポソームA分散液1mlを調製した。このリポソーム分散液1mlに上記オリゴ二本鎖RNA溶液1mlを、撹拌しながら徐々に添加した。以上の操作により、オリゴ二本鎖RNAの終濃度が10μMであるオリゴ二本鎖RNA−リポソーム複合体溶液を調製した。この複合体を600Wのバス型超音波装置を用いて2分間分散処理することにより複合体の粒子を均一にした。
下記評価系における陰性対照および陽性対照
すべての評価系において、陰性対照としては、ルシフェラーゼの発現を抑制するオリゴ二本鎖RNA(GL3)をトランスフェクションしたものを用い、陽性対照としては、Bcl−2タンパク質発現抑制活性を有するB717 オリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションしたものを用いた。
ウエスタンブロッティングによるタンパク質発現抑制活性の評価
上記のオリゴ二本鎖RNA−リポソーム複合体を用いてオリゴ二本鎖RNAを細胞内にトランスフェクションさせることで、Bcl−2タンパク質の発現が抑制されるかどうかをウエスタンブロッティングを用い評価した。
6cm径のシャーレにA431細胞(上皮癌細胞)、A375細胞(メラノーマ細胞)、MDA−MB−231細胞(乳癌細胞)、又はA549(肺癌)細胞を2×105cells/dishで播種し、10%FBS(ウシ胎仔血清)を含むDMEM培地(Sigma,D6046)中、37℃、5%CO2条件下で一晩培養した。翌日、培養ディッシュから培地を吸引し、2.7mlの10%FBS含有DMEM培地(Sigma,D6046)を加えて培地交換した。そこに、10%マルトース水溶液中で混合したオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比はオリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)溶液を0.3ml添加し、終量を3mlとした。このときのオリゴ二本鎖RNAの最終濃度は3nM又は10nMである。37℃の5%CO2インキュベーター内にて72時間培養した。細胞をPBS(Phosphate buffered saline)で2回洗浄し、セルスクレーパーを用いて1.5mlチューブに移した。1000×gで2分間遠心分離し、上清を取り除いた後、20から100μlのLysis buffer(50mM Tris−HCl,pH7.5,150mM NaCl,1% NP−40)を加えて細胞を溶解した。氷上で30分間静置し、100,000×gで15分間遠心後、上清を新しいチューブに移し、電気泳動用サンプルとした。
電気泳動はポリアクリルアミドゲル(ATTO NPG−520L又はE−T520L)を用い、1レーンあたり総タンパク質の量を15μgとしたサンプルをアプライした。泳動終了後、ポリビニリデンフルオラド(PVDF)膜にゲル内のタンパク質を転写し、5%スキムミルク含有PBST(PBST−MLK;ここで、PBSTの組成は、0.1%Tween20含有PBS)中室温で1時間ブロッキングした。まず、Bcl−2タンパク質の検出を行った。ブロッキングが終了したPVDF膜をPBST−MLKで500倍に希釈したマウス抗ヒトBcl−2モノクローナル抗体(DAKO M0887)中にて、4℃で一晩振盪して一次抗体と結合させた。PVDF膜をPBSTで洗浄後、PBST−MLKで1500倍に希釈したHRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)標識抗マウスIg抗体(DAKO P0447)中にて室温で2時間振盪し、二次抗体と結合させた。PBSTで洗浄後、Western Lightning Chemiluminescence Reagent Plus (Perkin Elmer)を用いて発光させ、フィルムに露光した。
Bcl−2タンパク質の検出終了後、同じPVDF膜を蒸留水で洗浄し、Bcl−2と同様にActinタンパク質の検出を行った。一次抗体にはヤギ抗ヒトActin抗体(Santa Cruz sc−1616)を、二次抗体にはHRP標識抗ヤギIg抗体(DAKO P0449)を用いた。それぞれPBST−MLKで2500倍、3000倍に希釈して使用した。
その評価は、陰性対照および陽性対照におけるBcl−2タンパク質のバンドの濃さを基準として、目視により行った。目視の結果、陽性対照と同等である場合には「+」、陽性対照よりも薄い場合には「++」、陰性対照よりも薄いが、陽性対照よりも濃い場合には「±」とした。
RT−PCRによるmRNA発現抑制活性の評価
オリゴ二本鎖RNAのトランスフェクションによるBcl−2タンパク質発現抑制作用はmRNAの発現抑制に起因するかどうかを調べるため、bcl−2のmRNAの発現量をRT−PCRを用い準定量することにより評価した。
6cm径のシャーレにA431細胞(上皮癌細胞)を2×105cells/dishで播種し、10%FBS(ウシ胎仔血清)を含むDMEM培地(Sigma,D6046)中、37℃、5%CO2条件下で一晩培養した。翌日、培養ディッシュから培地を吸引し、2.7mlの10%FBS含有DMEM培地(Sigma,D6046)を加えて培地交換した。そこに、10%マルトース水溶液中で混合したオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比はオリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)溶液を0.3ml添加し、終量を3mlとした。このときのオリゴ二本鎖RNAの最終濃度は10nMである。CO2インキュベーター内にて24時間培養した。細胞をPBSで2回洗浄した後、0.5mlのIsogen(ニッポンジーン)を用いて細胞を溶解し、1.5mlチューブに移した。200μlのクロロホルムを加え、水層と有機層とに分離し、水層からトータルRNAを単離した。
トータルRNA2μgを鋳型に、Thermoscript RT−PCR System(Gibco BRL 11146−016)を用いて逆転写反応を行い、cDNAを作成した。この逆転写反応液中に含まれるcDNAをPCR反応の鋳型に用い、キャピラリーPCR法による検出定量システム(ライトサイクラー、ロッシュ・ダイアグノスティックス)を用いてbcl−2および構成的発現遺伝子であるGADPH(D−glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)特異的なPCR増幅を行い、mRNA量の準定量を行った。bcl−2のPCR増幅には100ngのトータルRNA由来のcDNAを、GADPHのPCR増幅には0.5ngのトータルRNA由来のcDNAをそれぞれ鋳型に用いた。
その評価は、陰性対照におけるbcl−2のmRNA量又はGADPHのmRNA量を1としたときのサンプルのmRNA量の相対的な割合として評価した。
セルカウンティングアッセイによる細胞増殖抑制活性の評価
オリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションすることによる細胞増殖抑制効果を調べるため、セルカウンティングアッセイによる細胞増殖抑制効果を測定することで評価した。
96穴プレートにA431細胞(上皮癌細胞)を5×102cells/wellで播種し、10%FBS含有DMEM培地(Sigma、D6046)中で24時間培養した。培養プレートから培地を吸引し、135μlの10%FBS含有DMEM培地を添加した。そこに、10%マルトース水溶液中で混合したオリゴ二本鎖RNA/リポソームA複合体(重量比はオリゴ二本鎖RNA:リポソームA=1:16)溶液を15μl添加し、終量を150μlとした。CO2インキュベーター内で6日間培養した。Cell Counting Kit−8溶液(DOJINDO)を15μlずつ添加し、CO2インキュベーター内で呈色反応を2時間行った。マイクロプレートリーダーを用い、450nm(参照波長は595nm)の吸光度を測定した。
その評価は、オリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションしていないA431細胞の細胞数を100%としたときの相対的な細胞数の割合を生細胞率として評価した。
iii)スクリーニング
Bcl−2タンパク質をコードするmRNAの配列として、登録されているものを比較検討したところ、GenBankアクセッション番号BC027258として登録されているbcl−2の完全長mRNAの配列がコンセンサスであることを確認した。このGenBankアクセッション番号BC027258の塩基配列(以下、bcl−2 mRNAという:配列番号163)に基づいて、後述の実施例に示す一次(初期)、二次(中間)、三次(最終)スクリーニングにより、Bcl−2タンパク質の発現を抑制する活性を有するオリゴ二本鎖RNAを探索した。
スクリーニングに用いたオリゴ二本鎖RNAは、19塩基のセンス鎖RNAおよびこれに相補的なアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として有し、それぞれの3’末端にdTdTの突出部を有するようにした。また、スクリーニングに用いたオリゴ二本鎖RNAは「Bxxx」で表し、ここで、「xxx」はオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖の5’末端の塩基のbcl−2 mRNAにおける翻訳開始点からの位置の番号を表すこととした。
初期工程:一次スクリーニング
一次スクリーニングにおけるオリゴ二本鎖RNAのプールは、bcl−2 mRNAのORF(Open Reading Frame)内から、9塩基毎に始まる19塩基のセンス鎖RNAと、その相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAで構成されるものとした。ただし、BLASTサーチの結果、用いるオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNA中に、bcl−2 mRNA以外のmRNAについての連続17塩基以上の相同配列が存在する場合には、適宜、1ないし2塩基シフトさせ、bcl−2 mRNA以外のmRNAとの相同配列が16塩基以下の配列を使用した。
一次スクリーニングの結果、B002(配列番号1および配列番号82)、B010(配列番号2および配列番号83)、B028(配列番号3および配列番号84)、B037(配列番号6および配列番号87)、B046(配列番号14および配列番号95)、B055(配列番号15および配列番号96)、B065(配列番号16および配列番号97)、B073(配列番号17および配列番号98)、B084(配列番号18および配列番号99)、B136(配列番号19および配列番号100)、B172(配列番号20および配列番号101)、B199(配列番号21および配列番号102)、B207(配列番号22および配列番号103)、B253(配列番号23および配列番号104)、B262(配列番号24および配列番号105)、B280(配列番号25および配列番号106)、B325(配列番号26および配列番号107)、B352(配列番号27および配列番号108)、B397(配列番号28および配列番号109)、B433(配列番号29および配列番号110)、B442(配列番号32および配列番号113)、B451(配列番号33および配列番号114)、B469(配列番号36および配列番号117)、B478(配列番号39および配列番号120)、B516(配列番号40および配列番号121)、B523(配列番号41および配列番号122)、B539(配列番号46および配列番号127)、B558(配列番号49および配列番号130)、B576(配列番号50および配列番号131)、B586(配列番号51および配列番号132)、B595(配列番号52および配列番号133)、B604(配列番号53および配列番号134)、B613(配列番号54および配列番号135)、B622(配列番号59および配列番号140)、B631(配列番号62および配列番号143)、B642(配列番号65および配列番号146)、B649(配列番号66および配列番号147)、B654(配列番号67および配列番号148)、B658(配列番号68および配列番号149)、B667(配列番号69および配列番号150)、B676(配列番号70および配列番号151)、B703(配列番号73および配列番号154)、B712(配列番号76および配列番号157)、B717(配列番号77および配列番号158)、およびB721(配列番号79および配列番号160)のオリゴ二本鎖RNAにBcl−2タンパク質発現を抑える活性が認められた。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性をウエスタンブロッティングにより評価した結果をこの節の最後に示した表1に示す。
一次スクリーニングでBcl−2タンパク質発現を抑える活性のあったオリゴ二本鎖RNAのうち、特に活性の高かった9つのオリゴ二本鎖RNAを以下に示す。
B037:
センス鎖
5'-GAGAUAGUGAUGAAGUACA-dTdT-3'(配列番号6)
アンチセンス鎖
5'-UGUACUUCAUCACUAUCUC-dTdT-3'(配列番号87)
B433:
センス鎖
5'-GGGAGGAUUGUGGCCUUCU-dTdT-3'(配列番号29)
アンチセンス鎖
5'-AGAAGGCCACAAUCCUCCC-dTdT-3'(配列番号110)
B469:
センス鎖
5'-AUGUGUGUGGAGAGCGUCA-dTdT-3'(配列番号36)
アンチセンス鎖
5'-UGACGCUCUCCACACACAU-dTdT-3'(配列番号117)
B539:
センス鎖
5'-ACCUGAACCGGCACCUGCA-dTdT-3'(配列番号46)
アンチセンス鎖
5'-UGCAGGUGCCGGUUCAGGU-dTdT-3'(配列番号127)
B622:
センス鎖
5'-CCUCUGUUUGAUUUCUCCU-dTdT-3'(配列番号59)
アンチセンス鎖
5'-AGGAGAAAUCAAACAGAGG-dTdT-3'(配列番号140)
B631:
センス鎖
5'-GAUUUCUCCUGGCUGUCUC-dTdT-3'(配列番号62)
アンチセンス鎖
5'-GAGACAGCCAGGAGAAAUC-dTdT-3'(配列番号143)
B703:
センス鎖
5'-UAUCUGGGCCACAAGUGAA-dTdT-3'(配列番号73)
アンチセンス鎖
5'-UUCACUUGUGGCCCAGAUA-dTdT-3'(配列番号154)
B717:
センス鎖
5'-GUGAAGUCAACAUGCCUGC-dTdT-3'(配列番号77)
アンチセンス鎖
5'-GCAGGCAUGUUGACUUCAC-dTdT-3'(配列番号158)
B721:
センス鎖
5'-AGUCAACAUGCCUGCCCCA-dTdT-3'(配列番号79)
アンチセンス鎖
5'-UGGGGCAGGCAUGUUGACU-dTdT-3'(配列番号160)
Bcl−2タンパク質発現抑制活性の高かった9つのオリゴ二本鎖RNA(B037、B433、B469、B539、B622、B631、B703、B717およびB721)についてRT−PCRによりbcl−2のmRNA量を評価した。その結果を図1に示す。その結果、一次スクリーニングで得られた9つのオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした細胞のすべてにおいて、陰性対照と比較してbcl−2のmRNA量の減少が観察された。
中間工程:二次スクリーニング
二次スクリーニングのオリゴ二本鎖RNAのプールは、一次スクリーニングで高いBcl−2タンパク質発現抑制活性の見られたB717以外の8つのオリゴ二本鎖RNA(B037、B433、B469、B539、B622、B631、B703およびB721)、および、それらのセンス鎖RNAの5’末端に該当するbcl−2 mRNAの塩基を中心としてそれぞれ上流側および下流側に3塩基および6塩基ずらした位置から始まる19塩基のセンス鎖RNAとその相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAから構成されるものとした。ただし、BLASTサーチの結果、用いるオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNA中に、bcl−2 mRNA以外のmRNAについての連続17塩基以上の相同配列が存在する場合には、適宜、1ないし2塩基シフトさせ、bcl−2 mRNA以外のmRNAとの相同配列が16塩基以下の配列を使用した。
二次スクリーニングの結果、B031(配列番号4および配列番号85)、B034(配列番号5および配列番号86)、B037(配列番号6および配列番号87)、B040(配列番号8および配列番号89)、B043(配列番号11および配列番号92)、B433(配列番号29および配列番号110)、B436(配列番号30および配列番号111)、B439(配列番号31および配列番号112)、B463(配列番号34および配列番号115)、B466(配列番号35および配列番号116)、B469(配列番号36および配列番号117)、B472(配列番号37および配列番号118)、B475(配列番号38および配列番号119)、B533(配列番号43および配列番号124)、B536(配列番号45および配列番号126)、B539(配列番号46および配列番号127)、B543(配列番号47および配列番号128)、B545(配列番号48および配列番号129)、B616(配列番号57および配列番号138)、B619(配列番号58および配列番号139)、B622(配列番号59および配列番号140)、B625(配列番号60および配列番号141)、B628(配列番号61および配列番号142)、B631(配列番号62および配列番号143)、B634(配列番号63および配列番号144)、B636(配列番号64および配列番号145)、B697(配列番号71および配列番号152)、B700(配列番号72および配列番号153)、B703(配列番号73および配列番号154)、B706(配列番号74および配列番号155)、B709(配列番号75および配列番号156)、B719(配列番号78および配列番号159)、B721(配列番号79および配列番号160)、B724(配列番号80および配列番号161)、およびB727(配列番号81および配列番号162)のオリゴ二本鎖RNAにBcl−2タンパク質発現を抑える活性が認められた。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性をウエスタンブロッティングにより評価した結果をこの節の最後に示した表1に示す。
二次スクリーニングでBcl−2タンパク質発現を抑える活性のあったオリゴ二本鎖RNAのうち、特に活性の高かった7つのオリゴ二本鎖RNAを以下に示す。
B037:
センス鎖
5'-GAGAUAGUGAUGAAGUACA-dTdT-3'(配列番号6)
アンチセンス鎖
5'-UGUACUUCAUCACUAUCUC-dTdT-3'(配列番号87)
B043:
センス鎖
5'-GUGAUGAAGUACAUCCAUU-dTdT-3'(配列番号11)
アンチセンス鎖
5'-AAUGGAUGUACUUCAUCAC-dTdT-3'(配列番号92)
B436:
センス鎖
5'-AGGAUUGUGGCCUUCUUUG-dTdT-3'(配列番号30)
アンチセンス鎖
5'-CAAAGAAGGCCACAAUCCU-dTdT-3'(配列番号111)
B469:
センス鎖
5'-AUGUGUGUGGAGAGCGUCA-dTdT-3'(配列番号36)
アンチセンス鎖
5'-UGACGCUCUCCACACACAU-dTdT-3'(配列番号117)
B533:
センス鎖
5'-CUGAGUACCUGAACCGGCA-dTdT-3'(配列番号43)
アンチセンス鎖
5'-UGCCGGUUCAGGUACUCAG-dTdT-3'(配列番号124)
B616:
センス鎖
5'-AUGCGGCCUCUGUUUGAUU-dTdT-3'(配列番号57)
アンチセンス鎖
5'-AAUCAAACAGAGGCCGCAU-dTdT-3'(配列番号138)
B631:
センス鎖
5'-GAUUUCUCCUGGCUGUCUC-dTdT-3'(配列番号62)
アンチセンス鎖
5'-GAGACAGCCAGGAGAAAUC-dTdT-3'(配列番号143)
これらのうち、B043およびB533のオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした細胞のbcl−2のmRNA量をRT−PCRにより評価した結果を図2aに示す。その結果、いずれのオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした細胞においても、陰性対照と比較してbcl−2のmRNA量の減少が観察された(図2a)。さらに、陽性対照であるB717のオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションしたときよりもbcl−2 mRNA量は減少していた(図2a)。一方、ハウスキーピング遺伝子GAPDHのmRNA量には影響が見られなかった(図2b)。また、A431細胞に、B043およびB533のそれぞれのオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした後、72時間培養した細胞中のBcl−2タンパク質の発現量を、ウエスタンブロッティングにより評価した結果を示す写真を図2cに示す。オリゴ二本鎖RNAを10nMでトランスフェクションした際には、選択されたオリゴ二本鎖RNAはBcl−2タンパク質の発現を顕著に抑制することが観察された(図2c上段)。一方、コントロールであるActinタンパク質の量には影響が見られなかった(図2c下段)。
したがって、二次スクリーニングで得られたオリゴ二本鎖RNAはいずれも、bcl−2 mRNAを特異的に分解し、およびBcl−2タンパク質の発現を特異的に抑制していることが示された。
最終工程:三次スクリーニング
三次スクリーニングのオリゴ二本鎖RNAのプールは、二次スクリーニングで高いBcl−2タンパク質発現抑制活性のみられた4つのオリゴ二本鎖RNA(B037、B043、B533、およびB616)および、そのセンス鎖RNAの5’末端に該当するbcl−2 mRNAの塩基を中心として上流側および下流側ともに3塩基の範囲で1塩基毎にずらした位置から始まる19塩基のセンス鎖RNAとその相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAから構成されるものとした。ただし、合成収率が低下するであろうと予測できるほどGC含量の高い配列はスクリーニングの対象から除いた。
三次スクリーニングの結果、B037(配列番号6および配列番号87)、B039(配列番号7および配列番号88)、B040(配列番号8および配列番号89)、B041(配列番号9および配列番号90)、B042(配列番号10および配列番号91)、B043(配列番号11および配列番号92)、B044(配列番号12および配列番号93)、B045(配列番号13および配列番号94)、B531(配列番号42および配列番号123)、B533(配列番号43および配列番号124)、B534(配列番号44および配列番号125)、B614(配列番号55および配列番号136)、B615(配列番号56および配列番号137)、および、B616(配列番号57および配列番号138)のオリゴ二本鎖RNAにBcl−2タンパク質発現を抑える活性が認められた。これらのオリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性をウエスタンブロッティングにより評価した結果を、図3、図4およびこの節の最後に示した表1に示す。
三次スクリーニングでBcl−2タンパク質発現を抑える活性のあったオリゴ二本鎖RNAのうち、特に高かった3つのオリゴ二本鎖RNAを以下に示す。
B043:
センス鎖
5'-GUGAUGAAGUACAUCCAUU-dTdT-3'(配列番号11)
アンチセンス鎖
5'-AAUGGAUGUACUUCAUCAC-dTdT-3'(配列番号92)
B533:
センス鎖
5'-CUGAGUACCUGAACCGGCA-dTdT-3'(配列番号43)
アンチセンス鎖
5'-UGCCGGUUCAGGUACUCAG-dTdT-3'(配列番号124)
B614:
センス鎖
5'-GCAUGCGGCCUCUGUUUGA-dTdT-3'(配列番号55)
アンチセンス鎖
5'-UCAAACAGAGGCCGCAUGC-dTdT-3'(配列番号136)
これらのうち、B043およびB533のオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした細胞の増殖能をセルカウンティングアッセイにより評価した結果を図5に示す。その結果、いずれのオリゴ二本鎖RNAにおいても、トランスフェクションの際の濃度が1nM程度で細胞数が減少し始め、10nMになると細胞数が20%程度に減少した。したがって、本発明のオリゴ二本鎖RNAはBcl−2タンパク質の発現を抑制した結果、細胞増殖を抑える効果を発揮することが明らかとなった。
表1に、一次から三次スクリーニングの過程で、タンパク質発現抑制活性の認められたオリゴ二本鎖RNAを一覧にして示す。
図1は、一次スクリーニングで得られたオリゴ二本鎖RNAをA431細胞内にトランスフェクションして、24時間培養した後の、その細胞におけるbcl−2 mRNA量をRT−PCRにより準定量した結果を示す。縦軸は陰性対照GL3をトランスフェクションしたときのbcl−2 mRNA量を1とした時、それぞれのオリゴ二本鎖RNAのトランスフェクション時のbcl−2 mRNA量を示す。横軸は検討を行ったオリゴ二本鎖RNAの名称を示す。 図2aおよびbは、オリゴ二本鎖RNAとしてB717、B043およびB533をA431細胞内にトランスフェクションして24時間培養した後の、その細胞におけるbcl−2 mRNA量(図2a)および構成的発現遺伝子であるGADPHのmRNA量(図2b)をRT−PCRにより準定量した結果を示す。図2cは、B717、B043およびB533を終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションして72時間培養した後の、その細胞におけるBcl−2タンパク質の発現をウエスタンブロッティングにより評価した結果を示す。 図3は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロッティングで行った結果を示す。上段は終濃度3nMで、下段は終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションして72時間培養した後の結果である。 図4は、オリゴ二本鎖RNAのBcl−2タンパク質発現抑制活性の評価をウエスタンブロッティングで行った結果を示す。上段は終濃度3nMで、下段は終濃度10nMでA431細胞内にトランスフェクションして72時間培養した後の結果である。 選択したオリゴ二本鎖RNAの細胞増殖に対する効果をセルカウンティングアッセイにより評価した結果を示す。細胞はA431細胞を用い、オリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションした後、6日間培養した後の細胞数を測定した。縦軸は、オリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションしていないA431細胞の細胞数を100%としたときの、それぞれのオリゴ二本鎖RNAをトランスフェクションしたときの細胞数の割合を示す。横軸は、トランスフェクションしたときの終濃度を示す。

Claims (7)

  1. RNAiにより標的mRNAを切断し、タンパク質発現を抑制するのに適した、15から27塩基対の二重鎖形成部を有するオリゴ二本鎖ヌクレオチド又はそのアンチセンス鎖RNAを見出すために有効なスクリーニング方法であって、下記1)および2)の工程を含むスクリーニング方法。
    1)初期工程:標的mRNAのORF内から、所望の長さの二重鎖形成部を構成する塩基対の数を2で除し、小数点以下を切り捨てた数又はその数に1を加えた数の塩基毎に始まる、当該所望の長さのセンス鎖RNAを選択し、その相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAで構成されるプールからスクリーニングを行い、オリゴ二本鎖RNAを選別する。ただし、必要に応じて、適宜、スクリーニングに用いるオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端を1ないし5塩基ずらした位置から始まるオリゴ二本鎖RNAについてスクリーニングを行う。
    2)最終工程:前段階のスクリーニングにおいて選別したオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端に該当する標的mRNAの塩基を中心として上流側及び下流側ともに1ないし4塩基の範囲で1塩基毎にずらした位置から始まる、当該所望の長さのオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖と、その相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAで構成されるプールからスクリーニングを行い、最終的なオリゴ二本鎖RNAを見出し、そのアンチセンス鎖RNAを見出す。ただし、必要に応じて、適宜、スクリーニングに用いるオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端を1ないし3塩基ずらした位置から始まるオリゴ二本鎖RNAについてスクリーニングを行う。
  2. 上記初期工程と最終工程の間に、次の中間工程を含む請求項1記載のスクリーニング方法。
    中間工程:前段階のスクリーニングにおいて選別したオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAの5’末端に該当する標的mRNAの塩基を中心として上流側及び下流側ともに2ないし10塩基ずらした位置から始まる、当該所望の長さのオリゴ二本鎖RNAのセンス鎖RNAと、その相補鎖であるアンチセンス鎖RNAを二重鎖形成部として含むオリゴ二本鎖RNAで構成されるプールからスクリーニングを行い、オリゴ二本鎖RNAを更に選別する。
  3. オリゴ二本鎖ヌクレオチドが、オリゴ二本鎖RNAである請求項1又は請求項2記載のスクリーニング方法。
  4. オリゴ二本鎖ヌクレオチドの標的遺伝子が、癌遺伝子、ウイルス遺伝子および炎症関連遺伝子である請求項1又は請求項2記載のスクリーニング方法。
  5. オリゴ二本鎖ヌクレオチドの標的遺伝子が、bcl−2、c−myc、bcr−abl、HIVウイルス遺伝子、C型肝炎ウイルス遺伝子、B型肝炎ウイルス遺伝子、TNF−α遺伝子又はFas遺伝子である請求項1又は請求項2記載のスクリーニング方法。
  6. オリゴ二本鎖RNAの標的遺伝子が、癌遺伝子、ウイルス遺伝子および炎症関連遺伝子である請求項3記載のスクリーニング方法。
  7. オリゴ二本鎖RNAの標的遺伝子が、bcl−2、c−myc、bcr−abl、HIVウイルス遺伝子、C型肝炎ウイルス遺伝子、B型肝炎ウイルス遺伝子、TNF−α遺伝子又はFas遺伝子である請求項3記載のスクリーニング方法。

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