JP2005013055A - う蝕細菌の検出方法及び該方法に使用されるプライマーセット - Google Patents

う蝕細菌の検出方法及び該方法に使用されるプライマーセット Download PDF

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Abstract

【課題】う触細菌であるS.mutans及びS.sobrinusの各々を簡便且つ迅速に、しかも高い精度で検出したい。
【解決手段】被験者の口腔からの採取物からDNA試料を調製する工程、該DNA試料を鎖置換型DNA合成酵素の存在下で、特定な塩基配列を有するプライマーからなるプライマーセットと一定温度で一定時間反応させることにより、標的DNAを増幅させる工程、及び得られた増幅産物を検出する工程により、口腔内のStreptococcus.mutansを検出する。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、う蝕細菌の検出方法、該方法に使用されるプライマーセット及び該プライマーセットを含むう触細菌の検出のためのキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
う触の原因となる細菌として、Streptococcus mutans (S.mutans)及びStreptococcus sobrinus (S.sobrinus)が知られている。う蝕の初期の段階において、患者の口腔内のこれらの細菌を検出し、う触リスクの判定を行うことにより、う蝕の予防計画の立案及び患者への指導に役立てることが考えられている。また、う蝕の治療のための情報として利用することも考えられている。
現在のところ、これらの細菌の検出は主に培養法により行われている。
また、PCR法による検出も開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、培養法は、培養に数日かかるという欠点がある。
また、PCR法は、高価な機材を必要とし、しかも判定までに数時間を要するため、臨床の現場で使用するための方法としては現実的でない。また、公衆において同様のう触リスク判定を行ったり、疫学調査等を行う際、安価で滅菌などの操作の必要のないつまようじ等にて口腔内の試料を採取することが望まれているが、このように採取した試料ではPCR反応がうまくいかない。
【0004】
本発明者らは、近年開発されたLoop−mediated Isothermal Amplification法(Tsugunori Notomi et al. Loop−mediated Isothermal Amplification of DNA, Nucleic Acids Research 28, e63 (2000); Yasuyoshi Mori et al., Detection of Loop−mediated Isothermal Amplification Reaction by Turbidity Derived from Magnesium Pyrophosphate Formation, Biochemical and Biophysical ResearchCommunications 289, 150−154 (2001); K. Nagamine et al., Accelerated reaction by loop−mediated isothermal amplification using loop primers, Molecular and Cellular Probes (2002) 16, 223−229)を応用し、S.mutans及びS.sobrinusのDNAの特定部位を増幅することにより、S.mutans及びS.sobrinusの各々を簡便且つ迅速に検出する方法を見出した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明は、被験者の口腔からの採取物からDNA試料を調製する工程、該DNA試料を鎖置換型DNA合成酵素の存在下で、各々配列表の配列番号1,2,3,4及び5記載の配列を有するプライマーからなるプライマーセットと一定温度で一定時間反応させることにより、標的DNAを増幅させる工程、及び得られた増幅産物を検出する工程を含む口腔内のStreptococcus.mutansの検出方法に関する。
【0006】
(2)また、本発明は、被験者の口腔からの採取物からDNA試料を調製する工程、該DNA試料を鎖置換型DNA合成酵素の存在下で、各々配列表の配列番号6,7,8、9、10及び11記載の配列を有するプライマーからなるプライマーセットと一定の反応温度で一定時間反応させることにより、標的DNAを増幅させる工程、及び得られた増幅産物を検出する工程を含む口腔内のStreptococcus.sobrinusの検出方法に関する。
【0007】
(3)さらに、本発明は、上記(1)または(2)の方法において、前記DNA試料を調製する工程を、口腔からの採取物を溶菌液で処理した後、80℃〜沸騰温度で1〜30分間加熱した後、遠心分離し、その上清を採取することにより行うことを特徴とする方法に関する。
(4)さらに、本発明は、上記(1)〜(3)の方法において、前記標的DNAを増幅する工程において反応温度が65℃の単一温度であることを特徴とする方法に関する。
【0008】
(5)さらに、本発明は、各々配列表の配列番号1〜5に記載の配列を有するプライマーからなるStreptococcus.mutansの検出のためのプライマーセットに関する。
(6)さらに、本発明は、各々配列表の配列番号6〜11に記載の配列を有するプライマーからなるStreptococcus.sobrinusの検出のためのプライマーセットに関する。
(7)さらに、本発明は、(5)のプライマーセットを含むStreptococcus.mutansの検出のためのキットに関する。
(8)さらに、本発明は、(6)のプライマーセットを含むStreptococcus.sobrinusの検出のためのキットに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の方法は、Loop−mediated Isothermal Amplification法(LAMP法)を利用して、S.mutans及びS.sobrinusを検出する方法に関するものである。
LAMP法は、図1に示すように、標的のDNA配列に対して3’末端側からF3c、F2c、F1cの三つの領域を定め、5’末端側からB1,B2,B3の三つの領域を定め、これらに対してFIP、F3、BIP及びB3の4種類のプライマーを設計し、所望によりさらにLoopPrimerB及び/またはLoopPrimerFを設計し、これらを用いてDNAの増幅を行い、増幅産物を検出する方法である。FIPプライマーはF2c領域と相補的なF2領域を3’末端側に有し、F1c領域と同じ配列を5’末端側に有する。F3プライマーは、標的遺伝子のF3c領域と相補的なF3領域を有する。BIPプライマーは、標的遺伝子のB2c領域と相補的な領域を3’末端側に有し、B1cと同じ配列を5’末端側に有する。B3プライマーはB3c領域と相補的な配列を有する。LoopPrimerBは、B1領域とB2領域の間の配列に相補的な配列を有し、LoopPrimerFは、F1領域とF2領域の間の配列に相補的な配列を有する。
【0010】
これらのプライマーにより、鎖置換型DNA合成酵素及びdNTPの存在下、60〜65℃の温度で反応させると、同一鎖上に相補的な配列が繰り返す構造を有する増幅産物ができる。この方法は、PCR法に比べ、一定温度で反応させればよい、短時間で増幅可能である等の点で優れている。
本発明の方法において、被験者の口腔からの採取物は、例えば、唾液、歯垢等である。
【0011】
唾液は、パラフィン等を噛ませた後に採取したものでよい。
歯垢は例えば探針または爪楊枝を用いて採取したものである。
DNA試料の調製は、例えば被験者の口腔からの採取物に、10〜100μlの溶菌液を添加し、混和した後、80℃〜沸騰温度、好ましくは沸騰温度で1〜30分間、好ましくは5〜15分間加熱し、遠心分離した上清を採取することにより行うことができる。
【0012】
本発明の方法において、S.mutansの検出の場合は、標的DNA、即ちS.mutansのグルコシルトランスフェラーゼ遺伝子(gtfB,GenBank accession number M1736,配列表の配列番号12に記載)の配列の一部(塩基番号2255−2325)を増幅する。S.sobrinusの検出の場合は、標的DNA、即ちS.sobrinusのグルコシルトランスフェラーゼ遺伝子(gtfI,GenBank accession number D90213,配列表の配列番号13に記載)の配列の一部(塩基番号2311−2382)を増幅する。
【0013】
S.mutansの検出のためのプライマーセット(プライマーセットA)は、下記のプライマーからなり、常法により合成することができる。
SmuF3:5’−AGCAGCCCATAAGAACCAAG−3’(配列表の配列番号1)
SmuB3:5’−AACATCTTGATCAGCGCAGC−3’(配列表の配列番号2)
SmuFIP:5’−CAGCCGCTTCTTGATCGGAATGATCCGACCTTTACTCTTGACCAC−3’(配列表の配列番号3)
SmuBIP:5’−CAGAGGGGAATTGATCTTCACAGCGCCCAGACACCTAAATAGCCAG−3’(配列表の配列番号4)
SmuLB:5’−AGGCTATGCCAACCCTCAA−3’(配列表の配列番号5)
S.sobrinusの検出のためのプライマーセット(プライマーセットB)は、下記のプライマーからなり、常法により合成することができる。
SsobF3:5’−AGACGGTGTTGCAACCTATG−3’(配列表の配列番号6)
SsobB3:5’−GCAGCATCTTGATGGAGTGA−3’(配列表の配列番号7)
SsobFIP:5’−CCCCCTTGAGATCGTCGTTCAACAAGGCTGGTCTGGTTAAGC−3’(配列表の配列番号8)
SsobBIP:5’−TCAAGTCTGGGTACCAGTGGGATCGGTACTTGCTGTATCGCT−3’(配列表の配列番号9)
SsobLF:5’−TAGAGGTAACCATTTTCATCTGTGC−3’(配列表の配列番号10)
SsobLB:5’−AGCAGATGACCAAGATATTCGTGTA−3’(配列表の配列番号11)
本発明の方法において、「検出」の語は、定量的検出及び定性的検出の両方を意味する。
【0014】
増幅のためのプライマーとの反応は、例えば上記DNA試料1〜2μl、プライマー(S.mutansの検出のためには配列番号1〜5の配列を有するプライマー、S.sobrinusの検出のためには配列番号6〜11の配列を有するプライマー、好ましくはF3,B3については0.1〜0.5μM、FIP,BIPについては1.0〜2.0μM、FLP,BLPについては0.5〜1.0μM)、dNTP各1〜2μM、鎖置換型DNAポリメラーゼ5〜32Uを反応緩衝液中に最終容量が25μlとなるように混合し、好ましくは65℃で、好ましくは10〜40分間、より好ましくは15〜30分間保温することにより行われる。
【0015】
増幅されたDNAの検出は、例えば、DNAの増幅の副産物として生じるピロリン酸マグネシウムによる白濁の程度を測定することにより行うことができる。なお、白濁の程度または有無の判定は目視により行うこともできる。また、増幅産物の検出は、電気泳動により行うこともできる。さらに、増幅を蛍光インターカレーターの存在下で行い、蛍光強度を測定することにより行うこともできる。
【0016】
判定はう触細菌の数が、10個未満であるか、または10個以上であるかで行う。10個以上である場合には口腔内がう蝕になりやすい環境にあると判定される。この場合、患者にう触になりやすいことを認識してもらい、患者口腔内清掃意識の向上をねらったり、う触予防処置を施すことにより、う蝕を予防することができる。また、将来的には検出された細菌を特異的に抑制する予防処置も考えられている。
【0017】
本発明の方法は、さらに、上記う蝕細菌の検出結果に基づき、被験者の口腔内のう蝕の状態を判定する工程を含むこともできる。
本発明は、上記プライマーセットAまたはBを含むキットに関する。本発明のキットは、さらに鎖置換型DNAポリメラーゼ、緩衝液、dNTP等を含んでいてもよい。
本発明のキットは、例えば、口腔内のう触細菌による汚染状況の判定、う触リスクの診断、さらに予防処置法の選択の判断基準のためのものである。
【0018】
【実施例】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明はこれに限定されることはない。
実施例1 爪楊枝にて採取した歯垢中のS.mutans菌の検出
爪楊枝によりヒトの歯垢を採取し、これを200μlの溶菌液(10mMのTris−HCl緩衝液、1mMのEDTA、1%のTritonX−100,pH8)に入れ、激しく混和し、10分間煮沸した後、遠心分離し、その上清を試料とした。
【0019】
前述のプライマー、SmuF3(配列番号1)、SmuB3(配列番号2)、SmuFIP(配列番号3)、SmuBIP(配列番号4)、SmuLB(配列番号5)は、北海道システムサイエンス社のカスタムオリゴDNAサービスにより合成したものを使用した(プライマーセットA)。
上記で調製した試料溶液2μl、プライマーSmuF30.2μM、プライマーSmuB3 0.2μM、プライマーSmuFIP1.6μM、プライマーSmuBIP1.6μM及びプライマーSmuLP0.8μM、BstDNAポリメラーゼ(New England Biolabs)8Unit及び20mM TrisHCl(pH8.8)(和光純薬)、10mM KCl(和光純薬)、8mMのMgSO(和光純薬)、10mM(NHSO(和光純薬)0.1%Tween 20(和光純薬)含有するThermopol緩衝液)、0.8Mのベタイン(Aldrich Chemical)、2mMのMgSO(Nakalai Tesque)、各1.4mMのdATP、dTTP、dGTP及びdCTPを透明マイクロチューブ(ABgene製)に入れて混合し、65℃で30分間インキュベートすることにより、S.mutansのgtfB遺伝子内の標的配列(配列表の配列番号12の2255〜2325の配列)を増幅した。
【0020】
増幅後のマイクロチューブ内の溶液を目視したところ、白濁しており、DNAが増幅された。即ち、試料中にS.mutansが存在することが確認された。
試験例 1
本発明の検出方法の感度を調べるために、各濃度のS.mutansの試料溶液及びS.sobrinusの試料溶液を調製し、本発明の方法及び従来のPCR法により検出した。
【0021】
(1)S.mutansのDNA溶液の調製
S. mutans Xc株(九州大学大学院歯学研究院口腔保健推進学講座より供与)の染色体DNAは、Jagusztyn−Krynickaら(1982)によって報告されている方法に基づいて調製した。S. mutansは、THブロスを用いて37℃で培養し、対数増殖期(550 nmでの吸光度が約0.5)にある菌液10 mlに20%グリシンを2.5 ml加えてさらに37℃で60分間培養した。菌体を遠沈によって回収し、TE緩衝液[1 mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む10 mMトリス塩酸塩、pH 8.0]で遠沈洗浄後、菌体を20%グルコースを含むTE緩衝液250μlに浮遊させた。その菌体浮遊液に1 mg/mlのムタノリシンK−1(Yokogawaら、1974;Hamadaら、1978)を25 μl加えて65℃で20分間反応させた。ついで、10 mg/mlのリゾチーム(和光純薬、大阪)を100μl加えて42℃で40分間反応させた後、0.5 M EDTAを100μlと10 mg/mlのリボヌクレアーゼ(和光純薬)を2μl加えて37℃で30分間保温した。さらに、20 mg/mlのプロテイナーゼK(Sigma, St. Louis, Mo., USA)を5μl加えて37℃で60分間反応させた後、10%SDS溶液を100μl加えて37℃で30分間保温した。こうしてS. mutansを溶菌させた液に、剪断力がかからないように穏やかにフェノール・クロロホルム処理を水層がほぼ透明になるまで行い、最終的に単離した水層に等容量のイソプロパノールと1/10容量の3 M酢酸ナトリウム溶液(pH 5.2)を加えて穏やかに混和した。この処理で不溶化したDNAをガラス棒で巻き取り、1.0 mlの70%冷エタノールで洗浄した後、室温で自然乾燥し、最後に100 μlのTE緩衝液に溶解して染色体DNAを得た。
【0022】
(2)S.sobrinusのDNA溶液の調製
S. mutansの代わりに、S. sobrinus OMZ176株(九州大学大学院歯学研究院口腔保健推進学講座より供与)を用いること以外は、上記S. mutansのDNA溶液の調製方法と同じ方法にてS.sobrinusのDNA 溶液を調製した。
【0023】
(3)本発明の方法による増幅
試料として、爪楊枝抽出物の代わりに上記で調製したS.mutansのDNA溶液またはS.sobrinusのDNA溶液を用いること以外は、実施例1と同じ方法により、増幅を行った。なお、S.mutansの検出のためには、前述のプライマーセットAを実施例1に示した量で用い、S.sobrinusの検出のためには、前述のプライマー、SsobF3(配列番号6)、SsobB3(配列番号7)、SsobFIP(配列番号8)、SsobBIP(配列番号9)、SsobLF(配列番号10)、SsobLB(配列番号11)からなるプライマーセットBを試料溶液2μlに対してプライマーSsobF3 0.2μM、プライマーSsobB3 0.2μM、プライマーSsobFIP 1.6μM、プライマーSsobBIP 1.6μM及びプライマーSsobLF 0.8μM 及びSsobBF 0.8μMの量で用いた。
【0024】
(4)PCRによる増幅
10mMTris−HCl緩衝液(pH8.3)、1.5mMのMgCl、50mMのKCl、各200μMのdATP、dTTP、dGTP及びdCTP、1μMの下記のプライマー(GTFB−F,−R)、1UのExTaqDNAポリメラーゼ(宝酒造(株))及び2μlの上記のS.mutansのDNA溶液またはS.sobrinusのDNA溶液からなるPCR反応液を用い、95℃で30秒間59℃で30秒間、72℃で1分間を30サイクルのPCRをでPCRを行うことにより、S.mutansのgtfB遺伝子の一部を増幅した。
プライマーとしてGTFB−F,GTFB−Rの代わりに下記のGTFI−F,GTFI−Rを用いてS.sobrinusのgtfI遺伝子の一部を増幅した。
GTFB−F:5’−ACTACACTTCGGGTGGCTTGG(配列番号14)
GTFB−R:5’−CAGTATAAGCGCCAGTTTCATC(配列番号15)
GTFI−F:5’−GATAACTACCTGACAGCTGATC(配列番号16)
GTFI−R:5’−AAGCTGCCTTAAGGTAATCACT(配列番号17)
【0025】
(5)検出
増幅産物を2%アガロース電気泳動にかけ(約20分間)、比較した。結果を図2(S.mutans)及び図3(S.sobrinus)に示す。
図より、S.mutansのDNAを本発明の方法で増幅した場合、PCRで増幅した場合に比べて検出感度が約10倍となることがわかる。
また、S.sobrinusのDNAを本発明の方法で増幅した場合、PCRで増幅した場合に比べて検出感度が約100倍となることがわかる。
【0026】
試験例2
試料として、S.mutans染色体DNAを1ml中に10,10,10個相当分含む溶液を用い、増幅のための反応時間を10分間、15分間、20分間、25分間、30分間または35分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、S.mutansのgtfB遺伝子を増幅し、白濁の有無を目視により判定した。結果を下記の表に示す。表中、+は白濁が観察されたことを示し、−は白濁が観察されなかったことを示す。
【0027】
Figure 2005013055
【0028】
上表より、試料中のS.mutansのDNA濃度と白濁が観察される反応時間との間に相関関係があることがわかる。従って、試料溶液中のS.mutansのおおよその量を白濁が生じる反応時間により知ることができる。また、唾液1ml中、S.mutansが10以上である場合、う触発生の可能性が高いため、この試験例の測定条件においては、反応時間を15分とすることにより、増幅産物の白濁の有無を目視することにより、高度にう触の生じやすい状態であるか否かを判定することができる。
【0029】
試験例3
試料として、爪楊枝により採取した歯垢試料の代わりに、S.mutans Xc、S.mutans MT8148、S.mutans LM7、S.mutans MT6219、S.sobrinus OMZ176、S.sobrinus PMZ65、S.sobrinus MT8245、S.salivarius HHT、S.salivarius HT9R、S.sangius ATCC10556、S.gordonii Challis、E.coli DH5a、A. actinomycetemcomitans Y4及びP.glugivalis W83(上記菌株は全て九州大学大学院歯学研究院口腔保険推進学講座より供与された)を用い、上記実施例1の方法により、上記プライマーセットAを用いた増幅(結果を図4に示す)及び上記プライマーセットBを用いた増幅(結果を図5に示す)を行った。
図より明らかなように、プライマーセットAを用いるとS.mutansのDNAが特異的に増幅され、プライマーセットBを用いるとS.sobrinusのDNAが特異的に増幅される。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、う触細菌であるS.mutans及びS.sobrinusの各々が簡便且つ迅速に、しかも高い精度で検出することができる。しかも増幅反応を一定温度で行うことができるため、高価な機器を必要とすることもない。これにより、臨床においてこれらのう触細菌による口腔内の汚染状況を検査することが可能となり、歯科治療において予防及び治療に役立てることが可能になる。また、PCRにて増幅の難しい爪楊枝で採取した試料においても本発明による方法では増幅が可能であり、公衆におけるう触細菌の調査や予防意識の向上にも役立てることができる。
【0031】
【配列表】
Figure 2005013055
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【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に用いるLAMP法を説明する模式図である。
【図2】本発明の方法及びPCR法による増幅産物の電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図3】本発明の方法及びPCR法による増幅産物の電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図4】本発明の方法による増幅産物の電気泳動分析の結果を示す写真である。
【図5】本発明の方法による増幅産物の電気泳動分析の結果を示す写真である。

Claims (8)

  1. 被験者の口腔からの採取物からDNA試料を調製する工程、該DNA試料を鎖置換型DNA合成酵素の存在下で、各々配列表の配列番号1,2,3,4及び5記載の配列を有するプライマーからなるプライマーセットと一定温度で一定時間反応させることにより、標的DNAを増幅させる工程、及び得られた増幅産物を検出する工程を含む口腔内のStreptococcus.mutansの検出方法。
  2. 被験者の口腔からの採取物からDNA試料を調製する工程、該DNA試料を鎖置換型DNA合成酵素の存在下で、各々配列表の配列番号6,7,8、9、10及び11記載の配列を有するプライマーからなるプライマーセットと一定の反応温度で一定時間反応させることにより、標的DNAを増幅させる工程、及び得られた増幅産物を検出する工程を含む口腔内のStreptococcus.sobrinusの検出方法。
  3. 前記DNA試料を調製する工程を、口腔からの採取物を溶菌液で処理した後、80℃〜沸騰温度で1〜30分間加熱した後、遠心分離し、その上清を採取することにより行うことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. 前記標的DNAを増幅する工程において反応温度が65℃の単一温度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 各々配列表の配列番号1〜5に記載の配列を有するプライマーからなるStreptococcus.mutansの検出のためのプライマーセット。
  6. 各々配列表の配列番号6〜11に記載の配列を有するプライマーからなるStreptococcus.sobrinusの検出のためのプライマーセット。
  7. 請求項5のプライマーセットを含むStreptococcus.mutansの検出のためのキット。
  8. 請求項6のプライマーセットを含むStreptococcus.sobrinusの検出のためのキット。
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