本発明の骨子は、受信側において、通信用単位フレームにおける各単位スロットにより受信した信号の品質に基づいて、上記各単位スロットにおける送信電力を指示する情報を含めた信号を送信し、送信側において、上記情報に応じて上記各単位スロットにおける送信電力を個別に設定するようにしたことである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施の形態においては、本発明に係る送信電力制御装置を備えた第1通信装置と第2通信装置とが無線通信を行う場合を例にとり説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る送信電力制御装置を備えた第1通信装置における受信部の構成を示すブロック図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る送信電力制御装置を備えた第2通信装置における送信部の構成を示すブロック図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る送信電力制御装置を備えた第1通信装置と第2通信装置との間で行われる通信におけるタイムスロットの様子を示す模式図である。
本実施の形態においては、非対称トラヒックの一例として、図3に示すように、各フレーム(各通信用単位フレーム)において、第1通信装置から第2通信装置への送信用として1つのタイムスロット(単位スロット)が用いられ、第2通信装置から第1通信装置への送信用として3つのタイムスロットが用いられる場合について、説明する。
まず、実施の形態1に係る送信電力制御装置を備えた第1通信装置における受信部の構成について説明する。図1において、第2通信装置が送信した信号は、図示しないアンテナを介して第1通信装置により受信された後、第1通信装置において、周波数変換等の所定の処理がなされて受信信号として復調部101に送られる。
復調部101は、受信信号に対して復調処理を行い、復調信号を分離部102に出力する。分離部102は、復調信号を受信TPCコマンドと受信データとに分離する。なお、この受信TPCコマンドは、後述するように、第2通信装置が、受信信号の品質に基づいて設定したものである。
また、復調部101は、受信時におけるタイムスロットに応じて、復調信号を品質測定部103〜品質測定部105に出力する。すなわち、復調部101は、例えば、図3に示すタイムスロット302、タイムスロット303およびタイムスロット304における復調信号を、それぞれ、品質測定部103、品質測定部104および品質測定部105に出力する。
品質測定部103〜品質測定部105は、復調部101からの復調信号の品質を測定する。品質の測定基準としては、復調信号のSIR(希望波対干渉波電力比)等を用いることができる。
TPC生成部106〜TPC生成部108は、それぞれ品質測定部103〜品質測定部105による品質測定結果に応じて、送信TPCコマンドを設定する。すなわち、TPC生成部106〜TPC生成部108は、第2通信装置の送信用の各タイムスロットにおける送信電力の上げ下げを指示するための送信TPCコマンド1〜送信TPCコマンド3を設定する。具体的には、TPC生成部106〜TPC生成部108は、例えば、フレーム#1においては、第2通信装置のタイムスロット306〜タイムスロット308における送信電力に対しての上げ下げを指示するための送信TPCコマンド1〜送信TPCコマンド3を設定する。
なお、品質測定部およびTPC生成部は、ともに第2通信装置から第1通信装置への送信用タイムスロットの数に対応させて設けられる。
フレーム組立部109は、送信TPCコマンド1〜送信TPCコマンド3および送信データを用いて送信フレームを組み立てる。このフレーム組立部109により組み立てられる送信フレームの一例を図4に示す。図4は、本発明の実施の形態1に係る送信電力制御装置を備えた第1通信装置が用いる送信フレームの構成の一例を示す模式図である。
図4に示すように、送信フレームは、主にDATA部401とPL部402とTPC部403から構成される。DATA部401には、送信データが挿入され、TPC部403には、送信TPCコマンド1〜送信TPCコマンド3が挿入される。本実施の形態においては、送信TPCコマンドが3つ用いられるので、TPC部は3ビット構成となる。なお、この送信フレームは一例であり、その他の送信フレームを用いることが可能であることは言うまでもない。
変調部110は、フレーム組立部109により組み立てられたフレームから構成される信号に対して、所定の変調および周波数変換等の処理を行う。上記処理後の信号は、送信信号として図示しないアンテナを介して第2通信装置に対して送信される。
次に、実施の形態1に係る送信電力制御装置を備えた第2通信装置における送信部の構成について説明する。図2において、第1通信装置が送信した信号は、図示しないアンテナを介して第2通信装置により受信された後、第2通信装置において、周波数変換等の所定の処理がなされて受信信号として復調部201に送られる。
復調部201は、受信信号に対して復調処理を行い、復調信号をフレーム分解部202に出力する。フレーム分解部202は、復調信号をTPC部とDATA部とに分解し、TPC部に含まれた受信TPCコマンド1〜受信TPCコマンド3をそれぞれ送信電力制御部203〜送信電力制御部205に出力する。なお、受信TPCコマンド1〜受信TPCコマンドの内容は、第1通信装置が図4に示した送信フレームにおけるTPC部403を用いて送信した、送信TPCコマンド1〜送信TPCコマンド3の内容に相当する。
フレーム組立部206は、送信データおよび送信TPCコマンドを用いて送信フレームを組み立てる。送信TPCコマンドは、復調部201による復調信号の品質に基づいて設定されるものである。また、このフレーム組立部206により組み立てられる送信フレームとしては、図4に示した送信フレームを用いることができる。ただし、TPC部については、送信TPCコマンドを1つ用いるだけであるので、1ビット構成とすることができる。なお、この送信フレームは一例であり、その他の送信フレームを用いることが可能なことは言うまでもない。
さらに、フレーム分解部202は、受信TPCコマンド1〜受信TPCコマンド3を、それぞれ送信電力制御部203〜送信電力制御部205に対してフレーム毎に出力する。
変調部207は、フレーム組立部206により組み立てられたフレームから構成される信号に対して、所定の変調および周波数変換等の処理を行う。さらに、変調部207は、送信時におけるタイムスロットに応じて、上記処理後の信号を送信電力制御部203〜送信電力制御部205に出力する。すなわち、変調部207は、例えば、図3に示すタイムスロット302、タイムスロット303およびタイムスロット304における上記処理後の信号を、それぞれ、送信電力制御部203〜送信電力制御部205に出力する。
送信電力制御部203〜送信電力制御部205は、送信時における所定のタイムスロット(図3におけるフレーム#1では、それぞれタイムスロット302〜タイムスロット304)において、変調部207からの上記処理後の信号をそれぞれ受信TPCコマンド1〜受信TPCコマンド3を用いて送信する。具体的には、送信電力制御部203〜送信電力制御部205は、変調部207からの信号の送信電力をそれぞれ受信TPCコマンド1〜受信TPCコマンド3の内容に基づいて設定した後、上記信号を設定した電力となるように増幅して図示しないアンテナを介して第1通信装置に対して送信する。
なお、送信電力制御部は、第2通信装置から第1通信装置への送信用タイムスロット数に対応させて設けられる。
次いで、上記構成の第1通信装置および第2通信装置による送信電力制御の動作について、図3に示したタイムスロットに従いつつ、図1および図2を再度参照して説明する。
まず、フレーム#1では、タイムスロット302〜タイムスロット304において第2通信装置により送信された信号は、第1通信装置において、復調部101により復調された後、それぞれ品質測定部103〜品質測定部105により品質が測定される。すなわち、第2通信装置の送信用の各タイムスロット毎に、通信品質が測定される。
さらに、品質測定部103〜品質測定部105による測定結果に基づいて、それぞれTPC生成部106〜TPC生成部108により、送信TPCコマンド1〜送信TPCコマンド3が設定される。
上記のように設定された送信TPCコマンド1〜送信TPCコマンド3および送信データは、フレーム組立部109においてフレームに挿入されることにより、送信フレームが組み立てられる。この送信フレームは、変調部110により、所定の変調および周波数変換等がなされる。
次に、フレーム#2では、タイムスロット305において、第1通信装置から第2通信装置に対して、上記所定の変調および周波数変換等がなされた信号が送信される。
一方、第2通信装置においては、第1通信装置が送信した信号が受信され、また、受信信号は、復調部201により復調された後、フレーム分解部202により受信データと受信TPCコマンド1〜受信TPCコマンド3とに分解される。
また、フレーム組立部206では、送信データと送信TPCコマンドを用いて、送信フレームが組み立てられる。この送信フレームは、変調部207により、所定の変調および周波数変換等がなされる。
さらに、送信電力制御部203〜送信電力制御部205では、変調部207からの信号に対する送信電力が、それぞれ、受信TPCコマンド1〜受信TPCコマンド3に基づいて設定される。
タイムスロット306〜タイムスロット308では、上記のように設定された送信電力となるように、変調部207からの信号が増幅されて第1通信装置に対して送信される。すなわち、第2通信装置によりタイムスロット306〜タイムスロット308において送信される信号の送信電力は、それぞれ、第1通信装置によりタイムスロット302〜タイムスロット304において受信された信号の品質に応じて、タイムスロット306〜タイムスロット308における第1通信装置の受信品質が良好となるようにそれぞれ設定されたものである。
このように、本実施の形態によれば、第1通信装置は、フレームでの各タイムスロットにおいて第2通信装置より受信した信号の品質に応じて、上記各タイムスロット毎に対するTPCコマンドを設定し、設定したTPCコマンドを含めた信号を第2通信装置に対して送信する一方、第2通信装置は、上記TPCコマンドに応じて各タイムスロットにおける送信電力を制御するので、通信品質がタイムスロット毎に異なる状況においても、この通信品質に応じた高精度な送信電力制御を行うことができる。これにより、非対称トラヒック時においても受信品質の劣化を防止することが可能な送信電力装置を提供することができる。
なお、本実施の形態においては、非対称トラヒックの一例として、各フレームにおいて、第1通信装置から第2通信装置への送信用として1つのタイムスロットが用いられ、第2通信装置から第1通信装置への送信用として3つのタイムスロットが用いられる場合について説明したが、本発明は、これに限定されず、第1通信装置から第2通信装置への送信用のタイムスロットの数、および、第2通信装置から第1通信装置への送信用のタイムスロットの数、ならびに、各送信用タイムスロットの順番が適宜変更された場合にも適用可能なものである。この場合には、例えば、図1に示す品質測定部およびTPC生成部および図2に示す送信電力制御部を設ける数を適宜変更すればよい。
また、本実施の形態において、第1通信装置については、送信電力制御装置における受信部のみについて説明し、第2通信装置については、送信電力制御装置における送信部のみについて説明したが、第1通信装置および第2通信装置は、ともに送信電力制御装置における受信部および送信部を搭載することが可能である。よって、第2通信装置も、上述した第1通信装置と同様に、第1通信装置が送信した信号の受信品質に基づいて、第1通信装置の送信電力を制御することができる。
さらに、本実施の形態においては、第1通信装置と第2通信装置とが無線通信を行う場合について説明したが、本発明は、これに限定されず、例えば、本実施の形態に係る送信電力制御装置を備えた基地局装置と移動局装置とが無線通信を行う場合にも適用可能なものである。
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1において、第1通信装置における各送信フレームのTPC部を1ビット構成とした形態である。
上述した実施の形態1においては、第2通信装置から第1通信装置への送信用として3つのタイムスロットが用いられているので、第1通信装置における各送信フレームにおけるTPC部には3つの送信TPCコマンド(3ビット)が含められていた。
ところが、第2通信装置から第1通信装置への送信用タイムスロットが増加した場合においては、増加数に応じて、第1通信装置における各送信フレームにおけるTPC部のビット数を増加させる必要があるため、第1通信装置における送信フレームの利用効率が低下する可能性がある。
そこで、本実施の形態においては、第1通信装置は、各フレームにおける送信用タイムスロットにおいて、第2通信装置の複数の送信用タイムスロットのうち、いずれか1つのタイムスロットにおける送信電力を制御するためのTPCコマンドを送信することにより、各送信フレームにおけるTPC部を1ビット構成とする。以下、本実施の形態に係る送信電力制御装置について、図5〜図7を用いて説明する。なお、非対称トラヒックの状態は、上述した実施の形態1と同様であるものとする。
図5は、本発明の実施の形態2に係る送信電力制御装置を備えた第1通信装置と第2通信装置との間で行われる送信電力制御方法の概念を示す模式図である。図6は、本発明の実施の形態2に係る送信電力制御装置を備えた第1通信装置における受信部の構成を示すブロック図である。図7は、実施の形態2に係る送信電力制御装置を備えた第2通信装置における送信部の構成を示すブロック図である。
まず、第1通信装置と第2通信装置との間で行われる送信電力制御方法について、概念的に説明する。図5に示すように、第1通信装置は、フレーム#2での送信用タイムスロット504においては、フレーム#1でのタイムスロット501で受信した信号の品質に基づいて設定したTPCコマンドを送信する。この後、第1通信装置は、フレーム#3での送信用タイムスロット508においては、フレーム#2でのタイムスロット506で受信した信号の品質に基づいて設定したTPCコマンドを送信し、さらに、フレーム#4での送信用タイムスロット512においては、フレーム#3でのタイムスロット511で受信した信号の品質に基づいて設定したTPCコマンドを送信する。以後、第1通信装置は、上述した一連の動作を繰り返す。
すなわち、第1通信装置は、各フレームにおいて、第2通信装置の複数の送信用タイムスロット(1)〜(3)のうちいずれか1つを、あらかじめ定められた順序に従って選択し、選択したタイムスロットにおける第2通信装置の送信電力を制御するためのTPCコマンドを、送信用タイムスロットで送信する。
次いで、上記のような送信電力制御を実現するための第1通信装置および第2通信装置の構成について、図6および図7を参照して説明する。まず、第1通信装置の構成について、図6を参照して説明する。なお、図6における実施の形態1(図1)と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
切換部601は、入力する信号として、復調部101が出力する受信用タイムスロット毎の復調信号のうちのいずれかを、あらかじめ設定された順序に従って各フレーム毎に選択し、選択した復調信号を品質測定部602に出力する。すなわち、切換部601は、図5を参照するに、フレーム#1においては、タイムスロット501(タイムスロット(1))での復調信号を選択し、フレーム#2およびフレーム#3においては、それぞれタイムスロット506(タイムスロット(2))およびタイムスロット511(タイムスロット(3))での復調信号を選択する。
品質測定部602は、切換部601を介して送られた復調信号の品質を測定する。TPC生成部603は、品質測定部602による品質測定結果に応じて、送信TPCコマンドを設定する。
フレーム組立部604は、送信TPCコマンドおよび送信データを用いて送信フレームを組み立てる。このフレーム組立部109により組み立てられる送信フレームとしては、実施の形態1におけるフレーム組立部109によるもの(図3参照)と同様である。ただし、本実施の形態においては、TPC生成部603から送信TPCコマンドが1つ送られるのみであるので、TPC部403は1ビット構成となる。
次に、第2通信装置の構成について、図7を参照して説明する。なお、図7における実施の形態1(図2)と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
フレーム分解部701は、復調信号をTPC部とDATA部とに分解し、TPC部に含まれた受信TPCコマンドを切換部702に出力する。なお、受信TPCコマンドの内容は、第1通信装置が図4に示した送信フレームにおけるTPC部403を用いて送信した、送信TPCコマンドの内容に相当する。
切換部702は、各フレーム毎に、フレーム分解部701からの受信TPCコマンドの出力先として、あらかじめ設定された順序に従って、送信電力制御部703〜送信電力制御部705のいずれかを選択する。すなわち、例えば、切換部702は、出力先として、フレーム#2(図5参照)ではタイムスロット(1)に対応する送信電力制御部703を選択し、フレーム#3およびフレーム#4では、それぞれタイムスロット(2)に対応する送信電力制御部704およびタイムスロット(3)に対応する送信電力制御部705を選択する。
送信電力制御部703〜送信電力制御部705は、送信時における所定のタイムスロットにおいて、変調部207からの信号の送信電力を切換部702からの受信TPCコマンドの内容に基づいて設定した後、上記信号を設定した電力となるように増幅して図示しないアンテナを介して第1通信装置に対して送信する。なお、上記所定のタイムスロットとは、例えば、図5を参照するに、フレーム#2では、送信電力制御部703〜送信電力制御部705には、それぞれタイムスロット505〜タイムスロット507が相当する。
さらに、送信電力制御部703〜送信電力制御部705は、切換部702により出力先として選択されない場合には、前回出力先として選択されたときに入力された受信TPCコマンドの内容に基づく送信電力を用いる。
このように、本実施の形態によれば、第1通信装置は、各フレームにおける送信用タイムスロットにおいて、第2通信装置の複数の送信用タイムスロットのうち、いずれか1つのタイムスロットにおける送信電力を制御するためのTPCコマンドを、あらかじめ設定された順序に従って選択して送信することにより、各送信フレームにおけるTPC部を1ビット構成とすることができる。さらに、第1通信装置は、各受信用タイムスロットにおいて受信した信号の品質に応じて、第2通信装置の各送信用タイムスロットにおける送信電力を個別に制御することもできるので、通信品質がタイムスロット毎に異なる状況においても、この通信品質に応じた高精度な送信電力を、送信フレームの利用効率を低下させることなく実行することができる。
なお、本実施の形態においては、第2通信装置の各送信用タイムスロットにおける送信電力を制御する順序として、上記のように行う例を示したが、本発明は、この順序を様々な条件に応じて適宜変更させた場合にも適用可能なものである。
(実施の形態3)
実施の形態3は、通信品質の変動が高速である場合に対応させるために、実施の形態1と実施の形態とを組み合わせた形態である。上述した実施の形態2においては、第1通信装置は、各フレームにおける送信用タイムスロットにおいて、第2通信装置の複数の送信用タイムスロットのうち、いずれか1つのタイムスロットにおける送信電力を制御するためのTPCコマンドを送信することにより、各送信フレームにおけるTPC部を1ビット構成とすることができた。
ところが、第1通信装置の送信用フレームにおけるTPC部を1ビット構成としているために、第2通信装置に対して、1フレームにつき1つの送信用タイムスロットにおける送信電力のみを制御することになる。すなわち、第2通信装置におけるすべての送信用タイムスロットでの送信電力を制御するためには、1フレームにおける送信用タイムスロットの総数に対応するだけのフレームが必要となる。
このため、通信品質の変動速度が高速である場合には、第2通信装置に対する送信電力制御は不正確なものとなり、第1通信装置の受信品質が劣化する可能性がある。特に、第2通信装置の各フレームにおける送信用タイムスロット数が多い場合には、第1通信装置の受信品質が劣化する可能性がさらに高くなる。
そこで、本実施の形態においては、上述した実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせるようにした。以下、本実施の形態に係る送信電力制御装置について、図8〜図10を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態3に係る送信電力制御装置を備えた第1通信装置と第2通信装置とにより行われる送信電力制御方法の概念を示す模式図である。図9は、本発明の実施の形態3に係る送信電力制御装置を備えた第1通信装置における受信部の構成を示すブロック図である。図10は、実施の形態3に係る送信電力制御装置を備えた第2通信装置における送信部の構成を示すブロック図である。
本実施の形態においては、非対称トラヒックの一例として、図8に示すように、各フレームにおいて、第1通信装置から第2通信装置への送信用として1つのタイムスロットが用いられ、第2通信装置から第1通信装置への送信用として4つのタイムスロットが用いられる場合について、説明する。
まず、第1通信装置と第2通信装置との間で行われる送信電力制御方法について、概念的に説明する。図8に示すように、第1通信装置は、フレーム#2での送信用タイムスロット805においては、フレーム#1でのタイムスロット801およびタイムスロット802で受信した信号の品質に基づいて設定した各TPCコマンドを送信する。この後、第1通信装置は、フレーム#3での送信用タイムスロット810においては、フレーム#2でのタイムスロット808およびタイムスロット809で受信した信号の品質に基づいて設定した各TPCコマンドを送信する。以後、第1通信装置は、上述した一連の動作を繰り返す。
すなわち、第1通信装置は、各フレームにおいて、第2通信装置の複数の送信用タイムスロット(1)〜(3)のうちいずれか2つを、あらかじめ定められた順序に従って選択し、選択したタイムスロットにおける第2通信装置の送信電力を制御するためのTPCコマンドを一度に、送信用タイムスロットで送信する。図8に示した例では、あらかじめ定められた順序に従って、送信用タイムスロット(1)〜(3)のうちいずれか2つを選択しているが、送信用タイムスロットが4つ以上である場合には、各フレームにおいて選択する送信用タイムスロットの数は、適宜変更されることは言うまでもない。
次いで、上記のような送信電力制御を実現するための第1通信装置および第2通信装置の構成について、図9および図10を参照して説明する。まず、第1通信装置の構成について、図9を参照して説明する。なお、図9における実施の形態2(図6)と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
復調部901が実施の形態2における復調部101と相違する点は、受信時におけるタイムスロットに応じて、復調信号を切換部902および切換部903に出力することである。すなわち、復調部901は、例えば、図8に示すタイムスロット801およびタイムスロット803における復調信号を切換部902に出力し、タイムスロット802およびタイムスロット804における復調信号を切換部903に出力する。
切換部902は、入力する信号として、復調部901が出力する受信用タイムスロット毎の復調信号のうちのいずれかを、あらかじめ設定された順序に従って各フレーム毎に選択し、選択した復調信号を品質測定部602に出力する。すなわち、切換部902は、図8を参照するに、フレーム#1においては、タイムスロット801(タイムスロット(1))での復調信号を選択し、フレーム#2においては、タイムスロット808(タイムスロット(3))での復調信号を選択する。
切換部903の基本的な構成は、切換部902と同様である。すなわち、切換部903は、図8を参照するに、フレーム#1においては、タイムスロット802(タイムスロット(2))での復調信号を選択し、フレーム#2においては、タイムスロット809(タイムスロット(4))での復調信号を選択する。
フレーム組立部904が実施の形態2におけるフレーム組立部604と相違する点は、送信フレームにTPCコマンドを2つ含めるために、図3に示した送信フレームにおけるTPC部403を2ビット構成に変更した送信フレームを用いることである。すなわち、フレーム組立部904は、送信データおよび2つの送信TPCコマンドを用いて送信フレームを組み立てる。
次いで、第2通信装置の構成について、図10を参照して説明する。なお、図10における実施の形態2(図7)と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
フレーム分解部1001の実施の形態2におけるフレーム分解部701と相違する点は、復調信号におけるTPC部に含まれた受信TPCコマンド1および受信TPCコマンド2をそれぞれ切換部1002および切換部1003に出力することである。
切換部1002は、各フレーム毎に、フレーム分解部1001からの受信TPCコマンド1の出力先として、あらかじめ設定された順序に従って、送信電力制御部1006または送信電力制御部1007のいずれかを選択する。すなわち、切換部1002は、図8を参照するに、出力先として、フレーム#2では送信電力制御部1006を選択し、フレーム#3では送信電力制御部1007を選択する。
切換部1003の基本的な構成は、切換部1002と同様である。すなわち、切換部1003は、図8を参照するに、出力先として、フレーム#2では送信電力制御部1004を選択し、フレーム#3では送信電力制御部1005を選択する。
送信電力制御部1004〜送信電力制御部1007のそれぞれの基本的な構成は、実施の形態2における各送信電力制御部と同様である。送信電力制御部が設けられる数は、図8に示す各フレームにおける第2通信装置の送信用タイムスロットの総数に相当することはいうまでもない。
ここで、上記のような構成を有する第1通信装置および第2通信装置による送信電力制御の効果について、上述した実施の形態1および実施の形態2と比較して説明する。
図5に示した非対称トラヒック時において、実施の形態1によれば、第1通信装置は、第2通信装置の各送信用タイムスロットにおける送信電力を個別にかつフレーム毎に行うことができる、すなわち、制御周期を短くすることができるが、送信フレームにおけるTPC部の構成が大きく(4ビット)なる。次に、実施の形態2によれば、第1通信装置は、送信フレームにおけるTPC部の構成を小さくできるが、例えばTPC部を1ビット構成とした場合には、第2通信装置の全送信用タイムスロットにおける送信電力を個別に制御するためには、4フレームが必要となるので、制御周期が長くなる。
一方、実施の形態3によれば、第1通信装置は、例えば、TPC部を2ビット構成とすることにより、第2通信装置の全送信用タイムスロットにおける送信電力を個別に制御するために、2フレームのみが必要となるだけである。すなわち、制御周期を短くすることができる。
このように、本実施の形態によれば、実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせることにより、第1通信装置は、第2通信装置の各送信用タイムスロットにおける送信電力を個別に制御するときの制御周期を短くすることができる。これにより、通信品質の変動速度が高速である場合においても、第2通信装置に対する送信電力制御を高精度に行うことができるため、第1通信装置の受信品質が劣化する可能性を抑えることができる。
なお、本実施の形態において、第2通信装置の各送信用タイムスロットにおける送信電力に対する制御順序、TPC部のビット数、および、非対称トラヒックの状態については一例であり、本発明は、これらを適宜変更した場合にも適用可能である。
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態1において、第2通信装置の特定の送信用タイムスロットにおける送信電力のみを制御できるようにする形態である。無線通信においては、特定のタイムスロットにおける送信電力のみを集中的に制御する必要性が生ずる場合がある。この場合について、図11を参照して説明する。
図11は、移動局装置と基地局装置との通信に対して別の基地局装置が干渉を及ぼす様子を示す模式図である。図11においては、移動局装置(MS)1101と基地局装置(BTS1)1102との間で無線通信が行われている様子が示され、また、基地局装置1102のセル1104および基地局装置(BTS2)1103のセル1105のそれぞれの範囲が示されている。ここで、基地局装置1102は、移動局装置1101との無線通信にタイムスロット#1〜タイムスロット#3を使用しており、基地局装置1103は、その他の移動局装置との無線通信にタイムスロット#3を使用し、タイムスロット#1およびタイムスロット#2を使用していないものとする。
移動局装置(MS)は、P1からP2に移動した後の状態においては、タイムスロット#1およびタイムスロット#2では、基地局装置1103からの干渉をほとんど受けないので、基地局装置1102からの信号を良好に受信することができる。ところが、タイムスロット#3では、基地局装置1103が他の移動局装置に対して信号を送信しているので、移動局装置1101は、この基地局装置1103が送信した信号による干渉を受けるため、基地局装置1102からの信号に対する受信状況が悪化する可能性がある。
さらに、移動局装置1101は、P2からP3に移動した後の状態においては、基地局装置1103からの干渉をほとんど受けなくなるので、タイムスロット#1およびタイムスロット#2だけでなく、タイムスロット#3でも基地局装置1102からの信号に対する受信状況が良好となる。
このように、無線通信においては、特定のタイムスロット(上記例ではタイムスロット#3)において通信状況の変動が高速になることがある。よって、このような場合には、特定のタイムスロットにおける送信電力を集中的に制御する必要がある。
そこで、本実施の形態においては、各タイムスロットにおける通信状況に応じて、特定のタイムスロットにおける送信電力を集中的に制御する。以下、本実施の形態に係る送信電力制御装置について、図12および図13を参照して説明する。なお、本実施の形態においては、非対称トラヒックの状態等の様々な条件(図3参照)が、実施の形態1と同様である場合について説明する。
図12は、本発明の実施の形態4に係る送信電力制御装置を備えた第1通信装置における受信部の構成を示すブロック図である。図13は、本発明の実施の形態4に係る送信電力制御装置を備えた第2通信装置における送信部の構成を示すブロック図である。
まず、第1通信装置の構成について、図12を参照して説明する。なお、図12における実施の形態1(図1)と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
TPC生成部1201は、品質測定部103〜品質測定部105からの受信品質測定結果に基づいて、第2通信装置における各送信タイムスロットのうち、制御対象とすべきタイムスロットを選択する。すなわち、TPC生成部1201は、品質測定部103〜品質測定部105からの受信品質のうち、品質の良すぎるものまたは悪いもの等を検索し、該当するタイムスロットを制御対象とする。例えば、フレーム#2において、品質測定部104からの受信品質測定結果が悪い場合には、タイムスロット(2)を制御対象とする(図3参照)。
さらに、TPCコマンド生成部1201は、制御対象としたタイムスロットにおける受信品質に応じて送信TPCコマンドを設定し、この送信TPCコマンドに該当するタイムスロット番号をフレーム組立部1202に出力する。上記例においては、タイムスロット番号は「2」とされる。
フレーム組立部1202の実施の形態1におけるフレーム組立部109と相違する点は、送信データ、送信TPCコマンドおよびタイムスロット番号を用いて送信フレームを組み立てることである。この送信フレームとしては、例えば、実施の形態1と同様に、図4に示した送信フレームを用いることができる。タイムスロット番号については、例えば、2ビット構成としたTPC部403のうちの1ビットを用いて送信するようにしてもよい。
次いで、第2通信装置の構成について、図13を参照して説明する。なお、図13における実施の形態1(図2)と同様の構成については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
フレーム分解部1301は、復調信号をTPC部とDATA部とに分解し、TPC部に含まれた受信TPCコマンドとタイムスロット番号を切換部1302に出力する。
切換部1302は、タイムスロット番号に応じて、受信TPCコマンドの出力先を選択する。すなわち、例えば、上記例においては、タイムスロット番号が「2」とされているので、切換部1302は、受信TPCコマンドの出力先として送信電力制御部204を選択する。これにより、受信TPCコマンドは、送信電力制御部204に出力されるので、送信電力制御部204は、変調部207からの信号の送信電力を受信TPCコマンドの内容に基づいて設定した後、上記信号を設定した電力となるように増幅して図示しないアンテナを介して第1通信装置に対して送信する。
このように、本実施の形態によれば、第2通信装置の特定の送信用タイムスロットにおける送信電力のみを集中的に制御できるので、特定のタイムスロットにおける通信状況の変動が高速になった場合においても、第1通信装置の状況を良好に維持することができる。
なお、本実施の形態においては、集中的に送信電力を制御する対象となるタイムスロットを1つとした場合について説明したが、本発明は、これに限定されず、上記対象となるタイムスロットを2つ以上とした場合にも適用可能なものである。この場合には、第1通信装置は、第2通信装置に対して2つ以上の送信TPCコマンドおよび対象となるタイムスロット番号を送信すればよい。なお、2つ以上の送信TPCコマンドおよび対象となるタイムスロット番号の送信方法としては、上述した実施の形態1〜実施の形態3を適用することができる。
また、図11に示した通信状況において、本実施の形態に係る送信電力制御装置をそれぞれ移動局装置1101および基地局装置1102に搭載することにより、前述の問題点は解消される。すなわち、移動局装置1101がP2に位置したときには、タイムスロット#3における基地局装置1102の送信電力を集中的に制御することにより、移動局装置1101のタイムスロット#3における受信状況は、良好な状態に維持される。
本発明に係る送信電力制御装置は、ディジタル無線通信システムにおける通信端末装置や基地局装置に搭載可能なものである。