JP2005011888A - エルビウム添加光ファイバ、光ファイバレーザ - Google Patents

エルビウム添加光ファイバ、光ファイバレーザ Download PDF

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Takeshi Seki
武 瀬木
Tetsuya Sakai
哲弥 酒井
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Abstract

【課題】本発明は、比較的短い長さで高いレーザ出力が得られるエルビウム添加光ファイバ及び光ファイバレーザを提供する。
【解決手段】本発明のエルビウム添加ガラスファイバは、コアの直径が20μm以上のマルチモードファイバであり、かつエルビウムの全添加量が原子数で9.0×1016個以上である構成とする。また、本発明は、エルビウム添加ガラスファイバを利得媒質とした2.8μm帯の光ファイバレーザであって、前記エルビウム添加ガラスファイバが、コア半径が10μm以上のマルチモードファイバであり、かつエルビウムの全添加量が原子数で9.0×1016個以上である構成とする。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エルビウム添加ガラスファイバを利得媒質とした光ファイバレーザに関し、特に2.8μm帯のレーザ光を高出力で発振する光ファイバレーザに関する。
【0002】
【従来の技術】
医療用途を中心として、発振波長が、水の吸収帯域である2.9μm帯域のレーザが利用されている。この2.9μm帯域のレーザとしては、現在、Er添加YAG等の固体レーザが歯科治療用として実用化されている。歯科治療で用いられる既存のEr添加YAG等の固体レーザの場合、光エネルギーが300mJ/pulse程度、繰り返し数10Hz程度の条件で、平均出力が約3W程度の2.9μm帯域のレーザ光が利用されている。
この2.9μ帯域のレーザとして、エルビウム添加ガラスファイバ(以下、EDFと言う場合がある。)を利得媒質とした光ファイバレーザが提案されている。この光ファイバレーザとしては、コアの周囲に2重クラッドが設けられた構造(ダブルクラッド構造とも言う。)のシングルモードファイバを用いて、1.7Wの光出力が得られた結果が報告されている(非特許文献1参照。)。
光ファイバレーザでは、レーザ光の出力を高めるためには、利得媒体となる光ファイバを長くする必要があり、非特許文献1では、利得媒体の光ファイバの長さが約10mであり、共振器長が従来の固体レーザの10倍程度となる。
このように、光ファイバが長くなると、共振器長が長くなってしまうため、レーザ光のパルス形状は、ピークパワーが小さく、かつ時間半値幅が広いものとなってしまい、医療用途等に利用できる光学特性を有する2.9μm帯域のレーザ光が得られない。
また、治療時間の短縮化のために、2.9μm帯域のレーザには更なる高出力化が必要とされており、現在提案されているEDFでは、実用化できる十分な光出力と光学特性を有する2.9μm帯域のレーザ光が得られていないのが現状である。
【0003】
【非特許文献1】
スチュアート D.ジャクソン(Stuart D. Jackson)等,オプティックス・レターズ(Optics Letters),オプティカル・ソサイエティ・オブ・アメリカ(Optical Society of America),1999年,24−16巻,p.1133−1135
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものである。すなわち比較的短い長さで高いレーザ出力が得られるエルビウム添加光ファイバ及び光ファイバレーザを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、コア直径が20μm以上のマルチモードファイバであり、かつエルビウムの全添加量が、原子数で9.0×1016個以上であることを特徴とするエルビウム添加ガラスファイバである。
請求項2に係る発明は、エルビウム添加ガラスファイバを利得媒質とした2.8μm帯の光ファイバレーザであって、前記エルビウム添加ガラスファイバは、コア直径が20μm以上のマルチモードファイバであり、かつエルビウムの全添加量が原子数で9.0×1016個以上であることを特徴とする光ファイバレーザである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
図1は、本実施形態の光ファイバレーザの一例を示す概略図である。この光ファイバレーザ1は、励起光源2と、利得媒質のエルビウム添加ガラスファイバ(以下、EDFとも言う。)3を有する。
励起光源2は、980nm帯のレーザ光4が出射できる半導体レーザモジュール21から構成される。この半導体レーザモジュール21のレーザ出射口21aと対向するように、集光レンズ5aが設置されており、半導体レーザモジュール21から出射された励起用レーザ光4を集光して出射できるようになっている。
【0007】
EDF3は、エルビウム(以下、Erと言う。)添加フッ化物ガラス、又はEr及びプラセオジム(以下、Prと言う。)添加フッ化物ガラスから構成され、ダブルクラッド構造を有するマルチモードファイバである。前記ダブルクラッド構造とは、コアの周囲に2重クラッドが設けられたものであり、励起用レーザ光4がコアを取り囲む第1クラッドを伝搬し、発振レーザ光がコアを伝搬できるようになっている。
前記EDF3の一例として、フッ化物ガラスのZrFを主成分としたZBLANファイバ(ZrF−BaF−LaF−AlF−NaF)にErを添加したもの、又はEr及びPrを添加したもの等が挙げられる。
【0008】
EDF中のErの全添加量は9.0×1016以上であり、またコア直径はマルチモード伝送を可能とするため、20μm以上である。
ここで、Erの全添加量とは、実際に使用されるファイバの全体積中に存在するErの原子数を言う。
このErの全添加量については、EDF3から2.8μm帯の発振レーザ光6を出射した結果と共に詳細に後述する。
【0009】
前記EDF3は、その一方の端面(以下、入射端面とも言う。)31が集光レンズ5aに対向するように配置されている。また、EDF3の入射端面31にはリアミラー71が蒸着されている。
EDF3の他方の端面(以下、出射端面とも言う。)32は、無反射処理が施され、無反射終端として機能するようになっている。このEDF3の出射端面32側にアウトプットカプラ72が設けられている。アウトプットカプラ72は、フレネル反射を利用して反射鏡として機能するものや、多層膜ミラーからなるもの等が挙げられる。
前記リアミラー71とアウトプットカプラ72は反射鏡であり、EDF3を介して対向配置しており、共振器7として機能するようになっている。
【0010】
EDF3の出射端面32とアウトプットカプラー72との間には、光チョッパー8と集光レンズ5bが設けられている。
光チョッパー8は、EDF3から出射された発振レーザ光6をパルス光とする光スイッチとして機能する。なお、光チョッパーの代わりに、音響光学素子(AO素子)等を用いても構わない。
また、集光レンズ5bは、EDF3から出射された発振レーザ光6をコリメート光(平行光)とするように機能する。
【0011】
また、アウトプットカプラー72の出力側には、無機酸化物等から構成された長波域フィルタ(long wave pass filter)9が設けられ、EDF3から出射された発振レーザ光6のうち、例えば2.56μm以上の長波域の光のみが透過されて出力されるようになっている。
【0012】
励起光源2から980nm帯の励起用レーザ光4を出射すると、この励起用レーザ光4は集光レンズ5aにて集光され、EDF3の入射端面31に結合される。そして、EDF3は入射した励起用レーザ光4によって励起され、2.8μm帯のレーザ光6が出射端面32から出射される。このレーザ光6は、光チョッパー8にてパルス光となり、また集光レンズ5bにて平行光となって長周期フィルター9を通り、光ファイバレーザ1から出力される。
【0013】
次に、EDF3のErの全添加量と2.8μm帯の発振レーザ光6の光出力との関係について以下に説明する。
EDF3では、Erイオンが励起光によって活性化され反転分布を形成することにより2.8μm帯のレーザ光6の発振を可能にしている。このためEDF3から出射される2.8μm帯の発振レーザ光6の光出力は、前記Erの全添加量によって決定される。
目的とする光エネルギーの2.8μm帯の発振レーザ光6を出射するために必要となるErの全添加量は、以下のようにして算出される。
【0014】
一例として、歯科治療に必要な2.8μm帯のレーザ光6の場合を以下に示す。歯科治療に必要な2.8μm帯のレーザ光6の最低エネルギーは5.2J/cmであると報告されている(Applied Optics,1997,36−22巻,5641−5646参照。)。歯科治療で照射する2.8μm帯のレーザ光6の最小ビーム径は、一般に約200μmであるため、1パルス当たりに必要な光エネルギーは、以下の式(1)で算出される。
(1パルス当たりに必要な光エネルギー)=5.2×π×0.02=6.4mJ (1)
【0015】
Erイオン1個から2.8μmの光子1個(光エネルギーは7.1×10−20J/個)が放出されるとすると、前記式(1)で表された光エネルギーを得るために必要なErの全添加量(個)は、以下の式(2)で表される。
(必要なErの全添加量(個))=6.4×10−3/(7.1×10−20)=9.0×1016(個) (2)
【0016】
次に、EDF3中のErの全添加量は、Er濃度,EDF3のコア体積等により以下の式(3)によって表される。
(Erの全添加量(mol))=(EDFをなす物質1cm当たりのモル数)×(Er濃度)×(EDFのコア体積) (3)
【0017】
EDF3の一例としてEr添加ZBLANファイバを挙げると、EDFをなす物質1cm当たりのモル数は、0.0296(mol/cm)である。また、Er濃度をM(ppm/mol)、コア半径をa(μm)、EDFの長さをl(m)とし、Erの全添加量を個数で表すと、以下の式(4)となる。
(Erの全添加量(個))=0.0296×(M×10−6)×(πal×10−6)×(6.02×1023)=5.6alM×1010 (4)
【0018】
式(4)で表されるErの全添加量が、前記式(2)の値となるとき、以下の式(5)が得られる。ここで、Er添加ZBLANファイバでは、通常、Er濃度Mは10000(ppm/mol)であるため、M=10000とした。また、小数点以下は切り捨てて計算した。
l=160 (5)
【0019】
図2は、前記式(5)を満たすEDF3の長さ(l)とコア半径(a)との関係を示す図である。
例えば、コアの直径が18μm、長さが2mのとき、前記式(5)を満たすことが分かる。このため、理論上では、コアの直径を18μm以上とすることによって、EDF3の長さが2mであっても、1パルス当たりの光エネルギーが6.4mJ以上であり、前記した歯科治療に必要な最低エネルギー5.2J/cmを有する2.8μm帯のレーザ光6を得ることができることになる。
【0020】
図3は、種々のEDF3を用いた2.8μm帯のレーザ1において、1パルス当たりの光エネルギーが6.4mJの2.8μm帯のレーザ光6が得られたEDF3の長さ(l)とコア半径(a)との関係を示す。図3中、実線は測定値を用いて得られた近似曲線である。
ここで、図3では、EDF3として、Er濃度Mが10000(ppm/mol)のEr添加ZBLANファイバを用いた。また、励起光源2からの980nm帯の励起用レーザ光4の波長、光出力は一定とした。
コア半径(a)が同一のとき、光エネルギーが6.4mJの2.8μm帯のレーザ光6が得られるEDF3の長さ(l)は、図2に示された算出値に比べて、図3の測定結果の方が長い。これは、励起光4の2.8μm帯のレーザ光6への変換効率が100%よりも小さいためである。
【0021】
図3に示された結果より、コアの直径が20μm以上のとき、EDF3の長さが6mと従来よりも短い長さで、1パルス当たりの光エネルギーが6.4mJ以上であり、歯科治療に必要な最低エネルギー5.2J/cmの2.8μm帯のレーザ光6が出射できる。
コアの直径を20μm以上と大きくすることによって、単位長さあたりのErの添加量を多くすることができ、短い長さで、高強度の2.8μm帯の発振レーザ光6が得られる。
以上のように、EDF3が従来よりも短い長さであるため、共振器長が短く、これによりピークパワーが大きく、かつ時間半値幅が狭いスペクトル形状の2.8μm帯のレーザ光6が得られる。
このため、本実施形態の2.8μm帯の光ファイバレーザ1は、例えば歯科治療などの医療用途などに実用化できる。
【0022】
なお、本発明の技術範囲は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、励起光源2として、出射口に口出し用ファイバが設けられ、この口出し用ファイバから励起光2が出射されるものを用い、口出し用ファイバとEDF3とを突合せ接合(Butt Jointとも言う。)した構成でもよい。
【0023】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の光ファイバレーザは、コアの直径が20μm以上のマルチモードファイバであって、エルビウムの全添加量が原子数で9.0×1016個以上のエルビウム添加ガラスファイバを用いることによって、従来よりも短いエルビウム添加ガラスファイバであっても、高出力の2.8μm帯のレーザ光6が出射できる。
また、エルビウム添加ガラスファイバが従来よりも短い長さであるため、共振器長が短く、これによりピークパワーが大きく、かつ時間半値幅が狭いスペクトル形状の2.8μm帯のレーザ光が得られる。
このため、例えば歯科治療などの医療用途などに、2.8μm帯の光ファイバレーザを実用化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の光ファイバレーザの一例を示す概略図である。
【図2】光エネルギーが6.4mJの2.8μm帯の発振レーザ光を出射できるEDFの長さとコア半径との関係の算出結果を示す図である。
【図3】光エネルギーが6.4mJの2.8μm帯のレーザ光が得られたEDFの長さとコア半径との関係を示す図である。
【符号の説明】
1‥‥光ファイバレーザ、3‥‥エルビウム添加ガラスファイバ

Claims (2)

  1. コア直径が20μm以上のマルチモードファイバであり、かつエルビウムの全添加量が原子数で9.0×1016個以上であることを特徴とするエルビウム添加ガラスファイバ。
  2. エルビウム添加ガラスファイバを利得媒質とした2.8μm帯の光ファイバレーザであって、
    前記エルビウム添加ガラスファイバは、コア直径が20μm以上のマルチモードファイバであり、かつエルビウムの全添加量が原子数で9.0×1016個以上であることを特徴とする光ファイバレーザ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014033098A (ja) * 2012-08-03 2014-02-20 Fujikura Ltd ファイバレーザ装置

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