JP2005010082A - 風関係特定装置、風予測装置、風予測方法、風関係特定プログラム、風予測プログラム、風関係特定プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、および風予測プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体 - Google Patents

風関係特定装置、風予測装置、風予測方法、風関係特定プログラム、風予測プログラム、風関係特定プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、および風予測プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】誤差が少ない風況予測を可能とする。
【解決手段】予測用コンピュータ32は、通年データを予め記憶するメモリ72と、対象期間中の季節に対応するように定められた観測期間における、通年データおよびスポット観測データを用いて、風の関係を特定し、かつその関係を表わす「予測表」を作成するCPU70と、スポット観測データを入力し、かつ「予測表」を、MOディスク50に記録するMO駆動装置80とを含む。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、風関係特定装置、風予測装置、風予測方法、風関係特定プログラム、風予測プログラム、風関係特定プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、および風予測プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関し、特に、風力発電設備などの建設地点の探索や発電量の予測に関する風関係特定装置、風予測装置、風予測方法、風関係特定プログラム、風予測プログラム、風関係特定プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、および風予測プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、風力発電所の建設にあたっては、その地点の風向や風速(地上高30〜40m)を1年間にわたって観測し、発電電力量の推定や採算性の検討の根拠としてきた。そのような観測は、主として観測ポールによって実施される。観測ポールによる観測方法には、風車中心の高さ(地上60mくらい)を測定できないという問題がある。さらにこの方法は、たとえばウィンドファームのような広範囲のエリアに風車を多数配置しようとする場合、多数の観測ポールの設置を必要とする。このことは、観測用地の確保や森林伐採を必要とする問題を引起す。風向や風速を測定するための方法には、3次元風況観測装置(以下、「3次元風速計」と称する。詳細は後述する)を用いる方法もある。この方法のメリットは、3次元の任意の観測点の風速や風向を高速に観測できる点と、海上や山岳部などの観測ポールを設置できない場所でも観測できる点とにある。そのようなメリットがあるので、この方法は風車羽位置の風向や風速を観測できる上に、将来開発が期待されている洋上風力開発にも適用できる。しかしこの方法には、装置コストが高いという問題がある。そのため、観測ポールによる観測結果と、周囲の地形情報に基づく計算機のシミュレーションとを併用して、風向や風速に関するデータを得る方法が多用されている。図23は、そのようなシミュレーションを併用する方法と、3次元風速計による方法との概念を表わす図である。そのようなシミュレーションのソフトとして、デンマークのRISO国立研究所が開発したWAsPや米国のAVENUが有名である。これらのソフトを用いてわが国の風況を適切に予想するため、さまざまな手法が提案されている。
【0003】
具体的には、特許文献1には、メッシュ領域ごとに発電量を計算し、その最大値を特定する方法が開示されている。特許文献2には、風向や風速に関するデータに流体計算を適用して、風に関する環境の予測値を演算するプログラムおよび方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−145614号公報
【0005】
【特許文献2】
特開2002−49298号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に開示されているような、メッシュ領域ごとに発電量を算出する方法には、日本のような複雑な地形において誤差が大きく、十分な予測精度が得られないという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示されているような、データに流体計算を適用して風向や風速に関する環境の予測値を演算する方法にも、同様の問題がある。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、誤差が少ない風予測を可能とする風関係特定装置、風予測装置、風予測方法、風関係特定プログラム、風予測プログラム、風関係特定プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、および風予測プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上の問題を解決するために、本発明の実施の形態のある局面に従うと、風関係特定装置は、対象期間における、基準点の、風の状態を表わす情報を、基準点に風が吹いた日時が特定されるように、予め記憶するための記憶手段と、参照点の、風の状態を表わす情報を、参照点に風が吹いた日時が特定されるように入力するための入力手段と、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて、風の関係を特定するための特定手段と、風の関係を表わす関係情報を作成するための作成手段と、関係情報を、記録媒体に記録するための記録手段とを含む。
【0010】
すなわち、記憶手段は、対象期間における、基準点の、風の状態を表わす情報を、基準点に風が吹いた日時が特定されるように、予め記憶する。入力手段は、参照点の、風の状態を表わす情報を、参照点に風が吹いた日時が特定されるように入力する。特定手段は、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて、風の関係を特定する。これにより、作成手段は、関係情報を作成できる。記録手段は、関係情報を、記録媒体に記録できる。その結果、関係情報を用いることで誤差が少ない風予測を可能とする風関係特定装置を提供することができる。
【0011】
また、上述の観測期間の長さは、気候の変動の周期の70%以上の長さであることが望ましい。
【0012】
すなわち、特定手段は、長さが気候の変動の周期の70%以上の期間の、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて、風の関係を特定できる。これにより、風の関係の精度はより高くなる。その結果、より誤差が少ない風予測を可能とする風関係特定装置を提供することができる。
【0013】
もしくは、上述の気候の変動の周期は、6日以上の周期であることが望ましい。
【0014】
すなわち、特定手段は、長さが6日以上の周期の70%以上の期間の、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて、風の関係を特定できる。これにより、風関係特定装置全体の汎用性が高くなる。その結果、汎用性が高く、より誤差が少ない風予測を可能とする風関係特定装置を提供することができる。
【0015】
本発明の他の局面に従うと、風予測装置は、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて特定された、風の関係を表わす情報を、予め記憶するための記憶手段と、基準点の、対象期間における、風の状態を表わす情報を入力するための入力手段と、風の関係に基づいて、対象期間のうち、観測期間とは異なる期間における、参照点の風の状態を予測するための予測手段と、予測手段が予測した、参照点の風の状態を表わす予測情報を作成するための作成手段と、予測情報を出力するための出力手段とを含む。
【0016】
すなわち、記憶手段は、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて特定された、風の関係を表わす情報を、予め記憶する。入力手段は、基準点の、対象期間における、風の状態を表わす情報を入力する。予測手段は、風の関係に基づいて、対象期間のうち、観測期間とは異なる期間における、参照点の風の状態を予測する。これにより、作成手段は、予測手段が予測した、参照点の風の状態を表わす予測情報を作成できる。出力手段は、予測情報を出力できる。その結果、誤差が少ない風予測を可能とする風予測装置を提供することができる。
【0017】
本発明の他の局面に従うと、風予測方法は、対象期間における、基準点の、風の状態を、基準点に風が吹いた日時が特定されるように測定する第1の測定ステップと、参照点の、風の状態を、参照点に風が吹いた日時が特定されるように測定する第2の測定ステップと、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態に基づいて、風の関係を特定する特定ステップと、風の関係に基づいて、対象期間のうち、観測期間とは異なる期間における、参照点の風の状態を予測する予測ステップと、予測ステップにおいて予測された、参照点の風の状態を表わす予測情報を作成する作成ステップと、予測情報を出力する出力ステップとを含む。
【0018】
すなわち、第1の測定ステップは、対象期間における、基準点の、風の状態を、基準点に風が吹いた日時が特定されるように測定する。第2の測定ステップは、参照点の、風の状態を、参照点に風が吹いた日時が特定されるように測定する。特定ステップは、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態に基づいて、風の関係を特定する。予測ステップは、風の関係に基づいて、対象期間のうち、観測期間とは異なる期間における、参照点の風の状態を予測する。これにより、作成ステップは、予測ステップにおいて予測された、参照点の風の状態を表わす予測情報を作成できる。出力ステップは、予測情報を出力できる。その結果、誤差が少ない風予測を可能とする風予測方法を提供することができる。
【0019】
本発明の他の局面に従うと、風関係特定プログラムは、対象期間における、基準点の、風の状態を表わす情報を、基準点に風が吹いた日時が特定されるように、予め記憶する記憶ステップと、参照点の、風の状態を表わす情報を、参照点に風が吹いた日時が特定されるように入力する入力ステップと、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて、風の関係を特定する特定ステップと、風の関係を表わす関係情報を作成する作成ステップと、関係情報を、記録媒体に記録する記録ステップとを含む。
【0020】
すなわち、誤差が少ない風予測を可能とする風関係特定プログラムを提供することができる。
【0021】
本発明の他の局面に従うと、風予測プログラムは、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて特定された、風の関係を表わす情報を、予め記憶する記憶ステップと、基準点の、対象期間における、風の状態を表わす情報を入力する入力ステップと、風の関係に基づいて、対象期間のうち、観測期間とは異なる期間における、参照点の風の状態を予測する予測ステップと、予測ステップにおいて予測された、参照点の風の状態を表わす予測情報を作成する作成ステップと、予測情報を出力する出力ステップとを含む。
【0022】
すなわち、誤差が少ない風予測を可能とする風予測プログラムを提供することができる。
【0023】
本発明の他の局面に従うと、記録媒体は、対象期間における、基準点の、風の状態を表わす情報を、基準点に風が吹いた日時が特定されるように、予め記憶する記憶ステップと、参照点の、風の状態を表わす情報を、参照点に風が吹いた日時が特定されるように入力する入力ステップと、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて、風の関係を特定する特定ステップと、風の関係を表わす関係情報を作成する作成ステップと、関係情報を、記録媒体に記録する記録ステップとをコンピュータに実行させるための風関係特定プログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体である。
【0024】
すなわち、誤差が少ない風予測を可能とする風関係特定プログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体を提供することができる。
【0025】
本発明の他の局面に従うと、記録媒体は、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて特定された、風の関係を表わす情報を、予め記憶する記憶ステップと、基準点の、対象期間における、風の状態を表わす情報を入力する入力ステップと、風の関係に基づいて、対象期間のうち、観測期間とは異なる期間における、参照点の風の状態を予測する予測ステップと、予測ステップにおいて予測された、参照点の風の状態を表わす予測情報を作成する作成ステップと、予測情報を出力する出力ステップとをコンピュータに実行させるための風予測プログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体である。
【0026】
すなわち、誤差が少ない風予測を可能とする風予測プログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体を提供することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0028】
図1を参照して、本実施の形態に係る風予測システム30は、観測ポール40と、3次元風速計34と、予測用コンピュータ32とを含む。観測ポール40は、風速計90および風向計92によって風速や風向を観測する装置である。観測ポール40上の風速計90および風向計92が風速や風向を測定する位置を基準点という。風向および風速に関する予測(「風予測」と称する。)の対象とする期間(本実施の形態の場合、観測ポール40により風向や風速を測定する期間)を対象期間という。3次元風速計34は、光(音波や電波であってもよいが、本実施の形態では光とする)を用いて空気密度の変化や空気中の微粒子42の流れを観測することにより、風向や風速を測定する風速計である。3次元風速計34が風向や風速を観測する位置を参照点という。1つのサイトにおいて、参照点は多数にのぼる。本実施の形態における、参照点の具体的な配置は後述する。予測用コンピュータ32は、参照点の風の状態を予測する装置である。観測ポール40および3次元風速計34と予測用コンピュータ32との情報のやり取りは記録媒体によって実施される。本実施の形態において、記録媒体は、MOディスク(Magneto−Optical Disc)とする。
【0029】
図2を参照して、予測用コンピュータ32は、コンピュータ本体60と、モニタ62と、プリンタ64と、マウス66と、キーボード68とを含む。コンピュータ本体60は、基準点と参照点との風の状態の関係(風向、風速、および風速階級を含む、風の状態同士の関係をいう。本実施の形態においては、主に風向および風速についての関係を対象とする場合について説明するが、前述の定義に含まれる関係であればよく、特に風向や風速に限定されない。以下、「風の状態の関係」を「風の関係」と称する。)を表わす関係情報をMOディスク50に記録する装置である。コンピュータ本体60は、その関係情報が表わす風の関係に基づいて、対象期間のうち、観測期間とは異なる期間における、参照点の風の状態を予測する予測情報を作成し、出力する装置でもある。観測期間とは、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた期間をいう。この具体例は後述する。観測期間の長さは特に特定されない。その長さは、観測地の気候の変動の周期をあらかじめ測定し、その70%以上となるように定めることが望ましい。本実施の形態において、観測期間の長さは、対象期間に含まれた季節それぞれにつき、日本の気候の変動の最小の周期(6日)を超える1週間とする。モニタ62は、ユーザに情報を表示する装置である。プリンタ64は、印字により、ユーザに情報を提供する装置である。マウス66は、画面上のカーソルを移動させることにより、ユーザの入力を受付ける装置である。キーボード68は、文字によりユーザの入力を受付ける装置である。
【0030】
コンピュータ本体60は、CPU(Central Processing Unit)70と、メモリ72と、ネットワークインターフェイス74と、固定ディスク76と、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)駆動装置78と、MO駆動装置80とを含む。CPU70は、演算により情報を処理する。CPU70は、予測用コンピュータ32の各部を制御する装置でもある。メモリ72は、情報を記憶する。ネットワークインターフェイス74は、予測用コンピュータ32の各装置とコンピュータ本体60との情報を中継する。固定ディスク76は、コンピュータ本体60を制御するプログラムと、各種の情報とを記憶する。CD−ROM駆動装置78は、CD52を装着することにより、情報を読込む。MO駆動装置80は、MOディスク50を装着することにより、情報を読込み、かつ記録する。
【0031】
予測用コンピュータ32は、コンピュータハードウェアと、CPU70により実行されるソフトウェアとにより実現される。一般的にこうしたソフトウェアは、MOディスク50、CD−ROM52などの記録媒体に格納されて流通し、MO駆動装置80またはCD−ROM駆動装置78などにより記録媒体から読取られて固定ディスク76に一旦格納される。さらに固定ディスク76からメモリ72に読出されて、CPU70により実行される。図2に示したコンピュータのハードウェア自体は一般的なものである。したがって、本発明の最も本質的な部分は、MOディスク50、CD−ROM52、および固定ディスク76などの記録媒体に記録されたソフトウェアである。なお、図2に示したコンピュータ自体の動作は周知であるので、ここではその詳細な説明は繰返さない。
【0032】
図3を参照し、3次元風速計34の実施形態の1つとして光波を使用した場合を説明する。3次元風速計34はレーザー発振器35と、検出器36と、ミラー37と、ビームスプリッター38と制御計測装置39とを含む。レーザー発振器35から射出されたレーザー光が大気中の微粒子42で反射することによって発生する周波数のドップラーシフトを利用するものである。射出光と反射光を検出器36で混合することで周波数のドップラー変位を求め、微粒子42の運動速度を求める。ミラー37によって観測領域の大気内を走査しながらレーザー光を射出し、観測領域内の複数の地点での微粒子42の動きを求め、制御計測装置39によりVAD法(Velocity Azimuth Display)で観測領域内の風向と風速を計算する。制御計測装置39は、計算した結果を記録媒体(本実施の形態の場合、MOディスク50)に記録する。
【0033】
図4を参照して、観測ポール40は、風速計90と、風向計92と、記録器94と、支線96と、支柱98とを含む。風速計90は、風車の回転数を信号に変換することにより、基準点の風速を観測する。風向計92は、翼の方向を信号に変換することにより、基準点の風向を観測する。図5を参照して、風速計90および風向計92の外形図を示す。図6を参照して、風速計90および風向計92が観測した、風の平均風速に対するレーレ分布の例を示す。記録器94は、風速計90および風向計92が観測した結果のデータを、MOディスク50に記録する。支線96は、支柱98を支える。支柱98は、風速計90、風向計92、および記録器94を固定する。
【0034】
なお、いうまでもなく、風予測システム30の形態は、図1〜図6に示される具体例に限定されるものではない。図1〜図6に記載されない他の機能が含まれてもよいし、図1〜図6に記載されている機能の必ずしもすべてが含まれていなくても構わない。たとえば、予測用コンピュータ32のコンピュータ本体60と制御計測装置39とは同一のハードウェアであってもよい。
【0035】
図7を参照して、風予測システム30で実行される方法は、風の予測に関し、以下のような手順を有する。
【0036】
ステップ100(以下、ステップをSと略す。)にて、観測ポール40の風速計90は基準点の風速を観測する。風向計92は、基準点の風向を観測する。記録器94は、風速計90および風向計92が観測した結果のデータを日時のデータとともに記録する。これにより、対象期間における、基準点の、風の状態を表わす情報は、基準点に風が吹いた日時が特定されるように測定される。3次元風速計34は、参照点の風向、風速および日時を観測する。3次元風速計34は、10分ほどの間に多数の参照点について風向、風速および日時を観測できる。これにより、参照点の、風の状態を表わす情報は、参照点に風が吹いた日時が特定されるように測定される。
【0037】
S102にて、3次元風速計34は、参照点の風向および風速を1週間連続して観測したか否か判断する。1週間連続して観測したと判断した場合(S102にてYES)、処理はS104へと移される。もしそうでないと(S102にてNO)、処理はS100へと移される。
【0038】
S104にて、各参照点の風向および風速が四季にわたって(四季ごとに1週間ずつ)測定されたか否か判断する。四季にわたって測定されたと判断した場合(S104にてYES)処理はS106へと移される。もしそうでないと(S104にてNO)、処理はS100へと移される。
【0039】
S106にて、観測ポール40の記録器94は、基準点の風向および風速を1年間(すなわち対象期間の間)連続して測定したか否かを判断する。1年間連続して測定したと判断した場合(S106にてYES)、処理はS108へと移される。もしそうでないと(S106にてNO)、処理はS100へと移される。
【0040】
S108にて、予測用コンピュータ32は、「予測表」を作成する。この処理は、後述するS120〜S130の処理に相当する。S110にて、予測用コンピュータ32は、「予測表」を用いて風予測の結果を出力する。この処理は、後述するS140〜S144の処理に相当する。
【0041】
図8を参照して、予測用コンピュータ32で実行されるプログラムは、「予測表」の作成に関し、以下のような制御構造を有する。
【0042】
S120にて、CPU70は、MO駆動装置80を介して、MOディスク50から、基準点の通年データすべてのファイルを予め読込む。CPU70は、メモリ72に通年データを記憶させる。「通年データ」とは、対象期間における、基準点の風の状態を表わす情報である。本実施の形態の場合、通年データは風速および風向をそれぞれ表わす2種類のデータとそれらが観測された日時を表わすデータとを含む。これにより、メモリ72は、対象期間における、基準点の、風の状態を表わす情報を、基準点に風が吹いた日時が特定されるように、予め記憶する装置となる。通年データが記憶されると、CPU70は、MO駆動装置80を介して、MOディスク50から、スポット観測データのファイルを読込む。「スポット観測データ」とは、参照点の、風の状態を表わす情報である。スポット観測データは、風速および風向をそれぞれ表わす2種類のデータと、それらが観測された日時を表わすデータと、参照点を表わすデータとを含む。これにより、MO駆動装置80は、参照点の、風の状態を表わす情報を、参照点に風が吹いた日時が特定されるように入力する装置となる。
【0043】
S122にて、CPU70は、通年データとスポット観測データとの両方が存在する期間すなわち観測期間における、同時刻の風の状態を表わす通年データとスポット観測データとを用いて(測定のアルゴリズム上、まったく同時刻のデータを得ることが不可能な場合は、スポット観測データおよびそのデータにとって最も近い時刻の通年データを用いる。本実施の形態の場合、各参照点のスポット観測データが同一の通年データを共用することとなる。)、それらのデータの「対」を作る。具体的には、CPU70は、通年データと、スポット観測データとを「対」としてメモリ72の連続するアドレスにそれぞれ記憶させる。以降、このようにして「対」とされたデータを対データと称する。後述するように、本実施の形態における具体的な観測期間は、対象期間(1年)中の、1季節あたり1週間の期間である。長さを1週間とした理由は、日本の気候の変動の最小の周期が6日と言われていることにある。各季節ごとの期間とした理由は、四季の変化の影響を避けるためである。風速に関しては、統計的処理に適した分布となる傾向がある。これにより、気候の変動の最小の周期と、四季の変化の影響を避けることができれば、母集団に対するサンプル率が5%〜6%であっても十分な予測信頼度が確保される。
【0044】
S124にて、CPU70は、対データを参照点ごとに分類する。S126にて、CPU70は、参照点ごとに分類された対データを、基準点の風速階級(本実施の形態の場合、4m/s以下と4m/s超との2種類とする。)別に細かく分類する。対データが分類されると、CPU70は、風速階級別に分類された対データを、基準点の方位別に細かく分類する。対データが分類されると、CPU70は、基準点の方位別に分類された対データを、参照点の風向別に細別する。その結果対データは参照点を基本分類、基準点の風速階級を大分類、基準点の方位を中分類、参照点の風向を小分類とするように分類される。なお、対データの数などに応じてこれらの分類を簡略化してもよいが、本実施の形態では上述の通りとする。
【0045】
S128にて、CPU70は、対データのうち、まったく同一の分類に属するデータに基づき、基準点の風速と参照点の風速とから、それらに関する一次回帰式および相関係数を求める。ただし、CPU70は、相関係数が0.5未満の場合、その左右の風向を含めたデータで同様の計算を行ない(たとえば「北」の場合は「北北西、北、北北東」のデータで1次回帰式を求め直す)、相関係数が改善されたときは、その回帰式を採用する。これにより、風速に関して、風の関係が特定される。それらが求められると、CPU70は、基準点の各方位について、参照点の風向別に、その出現確率を求める。出現確率とは、基準点に一定方向の風が吹いたとき、参照点に、特定の方向の風が吹く確率を表わす。たとえば、基準点に北の風が吹いたとき、参照点Aに北の風が吹く確率が出現確率である。これにより、風向に関して、風の関係が特定される。それらが求められると、CPU70は、同じ参照点についての出現確率、一次回帰式および相関係数を、基準点の風向・風速階級および参照点の風向別に分類する。それらのデータが分類されると、CPU70は、分類されたデータを1つのデータファイルに変換し、「予測表」とする。これにより、本実施の形態における、風の関係を表わす関係情報が作成される。本実施の形態において、「予測表」は、対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて特定された、風の関係を表わす情報である。図9を参照して、このときの「予測表」のデータの構成を示す。「予測表」は、各参照点(A点、B点、C点、〜)ごとに作成される。各参照点の「予測表」は、基準点の風速階級および風向を表わす「定点風向」ごとに分類されている。1セットのデータは、「参照風向」、「風向確率」、「風速の推定式」を含む。「参照風向」は、参照点の風向を表わす。「風向確率」は、上述した出現確率を表わす。図9に示したデータの場合、風速階級が4.0m/s以下で「定点風向」が北(N)のとき、参照点Aに北(N)向きの風が吹く確率は、80%である。「風速の推定式」は、上述した一次回帰式を表わす。これらの式の「V」は基準点の風速を表わす。
【0046】
S130にて、MO駆動装置80は、CPU70の制御により、参照点ごとの、風向および風速の「予測表」をMOディスク50に記録する。
【0047】
図10を参照して、予測用コンピュータ32で実行されるプログラムは、予測結果の出力に関し、以下のような制御構造を有する。
【0048】
S140にて、CPU70は、MOディスク50から、基準点の通年データのファイルおよび「予測表」を読込み、メモリ72に記憶させる。これにより、MO駆動装置80は、通年データおよび「予定表」を入力する装置となる。メモリ72は、「予測表」を、予め記憶することとなる。
【0049】
S142にて、CPU70は、すべての通年データを「予測表」に当てはめることで、各参照点ごとに、「予定表」が表わす風の関係に基づいて、対象期間のうち、観測期間とは異なる期間における、参照点の風の状態を予測する。参照点Aについて例示すると、その具体的な内容は、以下のとおりである。まず風向について、CPU70は、通年データの1つが表わす風向と風速階級とを検索のキーワードとして、「予測表」の「定点風向」の中から合致する風向を検索する。その合致する風向が発見されると、CPU70は、「予測表」の「参照点風向」および「風向確率」のうち、その合致する風向に対応するデータをメモリ72に複写する。図9を参照して、たとえば通年データの1つが「N」(北)の風向を表わすとすると、メモリ72に複写される「参照点風向」および「風向確率」のデータは「N」、「80%」、「NNE」、「7%」、「NE」、「2%」、「ENE」、「1%」、・・・「NNW」、および「7%」となる。すべての通年データについてそれが終了すると、CPU70は、メモリ72に複写された「参照点風向」および「風向確率」のデータを用いて、参照点の風向ごとに風向確率の平均値(本実施の形態の場合、月ごとおよび年間の平均値)を求める。この平均値が、参照点の風向の予測結果を表わす。次にCPU70は、通年データの1つが表わす風向と風速階級とを検索のキーワードとして、「予測表」の「定点風向」の中から合致する風向を再び検索する。その合致する風向が発見されると、CPU70は、参照点の風速の推定値を算出する。この推定値は、「予測表」の中から、合致した風向に対応する「風速の推定式」に、基準点の風速(キーワードとした通年データに対応する風速)を代入することで算出される。この場合、合致した風向に複数の「参照点風向」が対応すると、風速の推定値も複数となる。たとえば、ある時点の基準点の風向が「N」(北)で風速が1.0m/秒とする。その時点の参照点Aの風速の推定値は「N」の場合1.2×1.0+0.1=1.3m/秒、「NNE」の場合1.1×1.0+0.1=1.2m/秒、「NE」の場合1.1×1.0+0.1=1.2m/秒、「ENE」の場合0.9×1.0−0.1=0.8m/秒、・・・および「NNW」の場合1.1×1.0+0.1=1.2m/秒となる。CPU70は、算出した推定値をすべてメモリ72に複写する。すべての通年データについて、風速の推定値がすべて算出されると、CPU70は、参照点の風向ごとにその平均値(本実施の形態の場合、月ごとおよび年間の平均値)を求める。この値が、平均風速である。CPU70は、求めた平均風速をメモリ72に記憶させる。
【0050】
S144にて、CPU70は、S142にて予測され、メモリ72に記憶された、参照点の風の状態を表わす予測情報を作成する。本実施の形態の場合、予測情報は、月別の風況予測(ウインドローズ)として一覧化される。CPU70は、プリンタ64を用いて、各参照点ごとに予測情報(本実施の形態の場合はウインドローズ)を出力する。図11を参照して、CPU70が、プリンタ64を用いて出力した風向および風速の予測結果を示す。本実施の形態の場合、予測結果は、月別に出力される。各月の予測結果は、参照点、風向、出現率、平均風速、および相関を含む。「風向」は観測点に吹いた風の風向を表わす。「出現率」は、各参照点に吹いたそれぞれの風向について、その出現確率を示す。「平均風速」は、S142で求めた平均風速の値である。「相関」は、S128にて求めた相関係数である。
【0051】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、風予測システム30の動作について説明する。
【0052】
図12に、風予測システム30を用いた風予測の手順を概念的に示す。観測ポール40の風速計90および風向計92は、基準点の風速および風向を測定する。3次元風速計34は、参照点の風速および風向を測定する(S100)。本実施の形態において、3次元風速計34が参照点の風速などを観測する期間は、各季節ごとに1週間である。さらに3次元風速計34は、自動車に乗せるなどして容易に運搬することができる。このため、3次元風速計34は、複数の観測地(サイト)を春夏秋冬ごとに1週間ずつ回りながら風向および風速を観測できる。図13を参照して、このことを概念的に示す。図14を参照して、3次元風速計34が複数のサイトを回りながら風向および風速を観測する場合の観測期間の例を示す。本実施の形態の場合、第1サイト〜第5サイトの風向および風速を観測する。3次元風速計34は、各サイトごとに、1週間ずつ、参照点の風向や風速を観測する。1つのサイトの観測が終了すると、3次元風速計34は、次のサイトに移動し、そのサイトの参照点の風向や風速を観測する。これを繰返し、すべてのサイトについて参照点の風向や風速を観測すると、次の季節が到来するのを待ち、再びすべてのサイトについて参照点の風速および風向を観測する。これらのサイトの1つにおける春夏秋冬の合計4週間が、上述した「観測期間」の具体例である。このほか、たとえば観測ポール40が観測する対象期間が春夏秋の3季節であれば、観測期間は、その3季節分の3次元風速計34の観測期間をいう。たとえば、観測ポール40が観測する対象期間が春秋の2季節であれば、観測期間は、その2季節分の3次元風速計34の観測期間をいう。「観測期間」に含まれる個々の観測期間の間隔は必ずしも等間隔でなくてもよい。また、それらの期間の長さは同一でなくてもよい。ただしこれらによる風予測の結果への影響が許容誤差を上回らないことを条件とする。したがって、それらの期間の長さの許容範囲は、許容誤差に基づいて定められることになる。図15を参照して、各サイトにおける風速および風向の観測位置を説明する。図15(A)は、3次元風速計34が風速および風向を観測している期間中の観測位置を示す図である。図中の黒丸が観測位置を表わす。このうち、矢印に重ねて表わされたひときわ大きな丸が基準点を表わす。その他の小さな丸は参照点を表わす。参照点は、各サイトごとに3次元の格子状に配置されている。本実施の場合、基準点から参照点までの距離のうち最も離れているものは約500メートルである(この値は実用レベルで風向や風速を予測できる距離である。しかし風予測が可能な最大の距離ではない。実験により得られた、風予測が可能な距離の最大値は後述する)。図15(B)は、3次元風速計34が風速および風向を観測していない期間中の観測位置を示す図である。図中の白丸は予測用コンピュータ32による予測の対象であることを示す。
【0053】
風速や風向が観測されると、各参照点について、風況が1週間連続して測定されたか否かが判断される(S102)。風況が1週間連続して測定された後(S102にてYES)、各参照点の風況が四季にわたって測定されたか否かが判断される(S104)。各参照点の風況が四季にわたって測定された後(S104にてYES)、基準点の風況が1年間連続して測定されたか否かを判断される(S106)。基準点の風況も1年間連続して測定された後(S106にてYES)、予測用コンピュータ32のCPU70は、MO駆動装置80を介して、MOディスク50から、基準点の通年データのファイルおよびすべての参照点Aのスポット観測データのファイルを読込む(S120)。ファイルが読込まれると、CPU70は、参照点ごとに、通年データとスポット観測データとの両方が存在する期間すなわち観測期間について、基準点の風向などで分類されたデータファイル(「予測表」)を作成する。具体的には以下の通りである。CPU70は、各時刻の通年データと、その時刻のスポット観測データとを「対」としてメモリ72の連続するアドレスにそれぞれ記憶させる(S122)。データが記憶されると、CPU70は、それら対データを参照点ごとに分類する(S124)。対データが分類されると、CPU70は、対データを、参照点が基本分類、基準点の風速階級が大分類、基準点の方位が中分類、参照点の風向が小分類となるように分類する(S126)。対データが分類されると、CPU70は、対データのうち、まったく同一の分類に属するデータに基づき、基準点の風速と参照点の風速とから、それらに関する一次回帰式および相関係数を求める。それらが求められると、CPU70は、参照点の風向別に出現頻度を求める。CPU70は、その出現頻度をメモリ72に記憶させる。それらが求められると、CPU70は、同じ参照点についての出現頻度、一次回帰式および相関係数を、基準点の風向および参照点の風向別に分類する。それらのデータが分類されると、CPU70は、分類されたデータを1つのデータファイルに変換し、「予測表」とする(S128)。「予測表」が作成されると、MO駆動装置80は、CPU70の制御により、参照点ごとの、風向および風速の「予測表」をMOディスク50に記録する(S130)。「予測表」がMOディスク50に記録されると、CPU70は、MOディスク50から、基準点の通年データのファイル、および「予測表」を読込む(S140)。「予測表」などが読込まれると、CPU70は、すべての通年データを「予測表」に当てはめることで、各参照点ごとに、風向および風速を予測する。(S142)。これにより、あたかも3次元風速計34で1年間測定したように風向および風速が予測される。風向および風速が予測されると、CPU70は、プリンタ64を用いて、各参照点ごとに、風向および風速の予測結果を出力する(S144)。図16を参照して、本実施の形態における、予測結果のイメージを示す。
【0054】
一般的に、いわゆる相関法を用いて風向および風速を予測するためには、最低3ヵ月の観測期間が必要といわれている。本実施の形態における風予測システム30が風向および風速に関して予測に用いるデータの観測期間は各季節ごとに1週間(対象期間が1年の場合、合計1ヵ月弱)である。この期間は、一般にいわれている期間より大幅に短い。そこで風予測システム30の予測精度を確認するための試験を実施した。図17を参照して、その検証方法を概念的に示す。検証の手順は、以下(1)〜(5)の通りである。(1)兵庫県淡路島の1サイト内3基(間隔約500m)と京都府宮津の1サイト内1基との合計4基の観測ポール(本実施の形態における観測ポール40に相当)上で、それぞれ1年間風向および風速を観測する。観測の間隔は10分とする。(2)観測結果のうち、1基分の観測データから、各季節ごとに一定期間(ここでは3日、6日、1週間、9日、および2週間)のデータを抽出する。(3)抽出したデータ(スポット観測データ(参照点)に擬制する)と、他の観測ポールで観測した1年分のデータ(通年データ(基準点)に擬制する)との関係を特定する。(4)(3)で特定した関係に基づき、通年データから、前者の観測データを予測する。(5)予測されたデータと、前者の実際の観測データとを対比して、誤差を求める。
【0055】
図18を参照して、精度の検証結果を示す。図18(A)は、2週間分のデータを抽出した場合の予測結果と実際の結果とを比較した図である。たとえば淡路(2)の観測データを通年データとし、かつ淡路(1)の観測データをスポット観測データとした場合、淡路(1)が観測した平均風速(真の値)は5.34m/sで、その推定値は5.40m/sとなる。もちろんこの「真の値」は観測ポールによる実測値を模擬的に使用しているために得られる値である。実際の実施では得られない。予測結果と真の値との誤差は−0.49%〜+1.50%である。一方、検証に用いたスポット観測データから「予測表」を用いず単純平均して求めた平均風速は7.19m/sであり、上述した真の値とは大きく乖離していることから、本実施の形態に係る予測結果の効果が現れていると判断できる。図18(B)は、1週間分のデータを抽出した場合の予測結果と実際の結果とを比較した図である。予測結果と真の値との誤差は−0.65%〜+2.65%である。図18(C)は、3日間分のデータを抽出した場合の予測結果と実際の結果とを比較した図である。予測結果と真の値との誤差は−2.43%〜+4.42%である。図18において、風速の推定値の前に付されているマークは、風向について予測結果と実際の結果との差を示すマークである。二重丸は第1主風向(最も風が強い風向)が一致し、かつ第2主風向(2番目に風が強い風向)も一致したことを示す。一重丸は第1主風向が一致し、かつ第2主風向も1分角差(=16分の1方位≒22.5°≒0.39ラジアン)であったことを示す。三角は第1主風向が一致し、かつ第2主風向が2分角差であったこと、ならびに第1主風向が1分角差で、第2主風向が一致したことのいずれかを示す。バツ印はそれ以外の場合を示す。バツ印が重ねて描かれている場合、各方位分布に大差があったことを示す。第1主風向は、1週間分以上のデータを使用した場合すべて一致する。第2主風向は、1週間分以上のデータを使用した場合、最大でも1分角差にとどまる。3日分のデータしか使用しなかった場合、誤差が比較的大きくなる。図19は、特定の季節の観測データのみを用いた場合の予測結果と実際の結果とを比較した図である。図中の数値の前に付されているマークは、図18のマークと同じ意味のマークである。図19(A)は、4週間分のデータを抽出した場合の風速の予測結果と実際の結果とを比較した図である。図19(B)は、1週間分のデータを抽出した場合の予測結果と実際の結果とを比較した図である。4週間分のデータを用いて風向および風速を予測した場合でも、予測結果と真の値との誤差は−5.81%〜+3.89%にのぼる。観測期間が1週間の場合、風向の誤差は特に大きくなっている。これらのことから、各季節ごとに、それぞれ1週間分の以上の観測データを用いて風向および風速を予測すると、誤差が小さくなることが明白になる。その上、データの観測期間に気候の変動の周期の影響が考慮されていると、誤差はさらに小さくなる。図20を参照して、そのことを説明する。図20(A)は、観測期間が3日、6日、7日、9日、および14日の場合の、平均風速の推定値および真の値(平均風速)に対する誤差を表わす図である。これらの観測データ1年分をプロファイリングした結果、風速の変動には約9.64日ごとの周期性が見出されている。図20(A)の左側の「淡路(1)」〜「淡路(3)」は観測点、図の上側の「淡路(1)」〜「淡路(3)」は参照点である。真の値との誤差は、観測期間が9日の場合に最も少なくなる場合が多い。図20(B)は、観測期間ごとの誤差の平均値を示す図である。平均誤差は、観測期間が9日の場合に最も少なくなる。その場合の平均誤差は、観測期間が6日(気候の変動の周期の約62%)の場合の半分以下である。観測期間が7日(気候の変動の周期の約73%)および14日の場合(気候の変動の周期の約145%)の平均誤差は、観測期間が9日の場合に次いで少なくなる。これらのことは、風向および風速に関して予測する場合、観測期間を、気候の変動の周期の70%以上とすることで、短かい観測期間でも、誤差をきわめて低いレベルに抑制できることを表わす。したがって、予測用コンピュータ32は、気候の変動の周期の70%以上の長さの観測期間における通年データおよびスポット観測データを用いて、相関関係を特定してもよい。日本の場合、気候の変動の周期は、最小で6日と言われている。そのような周期で気候が変動する観測地の風向および風速を予測する場合、観測期間が本実施の形態に係る期間より短くても、わずかな誤差で風向および風速を予測できることとなる。したがって、予測用コンピュータ32は、気候の変動の周期の長さが6日以上の場合に対して、その70%以上の長さの観測期間における通年データおよびスポット観測データを用いて、相関関係を特定してもよい。
【0056】
以上のようにして、本実施の形態に係る風予測システムは、わずかな誤差で、各参照点ごとに、風予測の結果を出力できる。本実施の形態に係る風予測システムを用いれば、3次元風速計34は1台で多数の参照点を観測でき、かつ複数のサイトを回ることができる。これにより、高価な3次元風速計34の使用コストを各サイトの経費に分散させることができる。たとえば本実施の形態のように1サイトあたりの観測期間を1週間/季節とすると、最大12サイトの掛け持ちが可能になる。12サイトを掛け持ちすると、3次元風速計34の1サイトあたりの経費は12分の1となる。これにより、得られた予測結果は安価で誤差が少ないものとなる。その結果、安価で誤差が少ない予測結果を出力できる風予測システムを提供することができる。さらに、この風予測システムを用いて、複数の顧客に予測結果を提供する新たなビジネスモデルを提供できる。その上、本実施の形態に係る風予測システムは、サイト内の風向および風速に関する分布(3次元風速計で通年観測したものと同等の分布)を予測できるので、風力エネルギーの分布に基づく適正な風車の配置、または年間予想発電量の算出にも応用できる。その他、本実施の形態に係る風予測システムは、風力発電開発に限らず、一般の気象観測や環境影響度評価あるいは風雪・局地風などの地域的広がりをもった気象観測に広く適用できる。
【0057】
なお、上述したように、風予測システム30は、3次元風速計34に代えて、他の原理により風向や風速を測定する装置を用いてもよい。3次元風速計34を代替する装置は、風向や風速が観測できる装置であれば、原理や構造などは特に特定されない。そのような装置の具体例として、音波を用いることにより直上の風の風速や風向を測定する装置が考えられる。
【0058】
また、本実施の形態に係る風予測システムを用いて、上述のビジネスモデルとは別のビジネスモデルを実現できる。図21を参照して、それらの例を説明する。図21(A)は、たとえば海上など風向および風速など、観測しようとする場所に観測ポールを設置できない場合に、付近の地上に設置された観測ポール40と3次元風速計34とを用いて風向および風速を予測する場合の概念図である。図21(B)は、たとえば「淡路島内」といった、風向および風速を予測しようとする複数のサイトが近接している場合において、観測ポール40を共用することで風予測コストを削減する場合の概念図である。観測ポール40と3次元風速計34とは近傍になくてもよい。図22を参照して、遠距離間(大江山近傍〜淡路島、約100km)の観測データを用いて風速を予測した結果を示す。誤差は1.94%であり、高精度な予測結果が得られている。図21(B)は、付近の気象官署(例:測候所)が観測したデータやGPV(Grid Point Value、全球数値予測データ)を通年データの代用とする場合の概念図である。いずれの場合も3次元風速計を販売するだけでなく、複数の顧客を対象に観測機器を貸出したり、観測サービスを提供したりするビジネスである。これらを実施することにより、高価な3次元風速計の利用効率を高め、コストを削減できる。
【0059】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、誤差が少ない風予測を可能とする風関係特定装置、風予測装置、風予測方法、風関係特定プログラム、風予測プログラム、風関係特定プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、および風予測プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る風予測システムの全体構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る予測用コンピュータの制御ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る3次元風速計の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る観測ポールの全体図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る風速計および風向計の外形図である。
【図6】本発明の実施の形態における平均風速に対するレーレ分布を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る風予測の方法の手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係る「予測表」の作成処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態に係る「予測表」の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る予測結果の出力処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態に係る予測結果の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る風予測を概念的に示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る3次元風速計が複数のサイトをかけ持ちする状況を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態に係る3次元風速計の観測期間の例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態に係る観測位置を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る予測結果のイメージを示す図である。
【図17】本発明の実施の形態に係る風予測システムの精度の検証を概念的に示した図である。
【図18】本発明の実施の形態に係る風予測システムに対する精度の検証結果を示す図である。
【図19】特定の季節の観測データのみを用いて風向および風速に関して予測した場合の予測結果と実際の結果とを比較した図である。
【図20】本発明の実施の形態に係る風予測システムにおける、観測期間と予測結果との関係を表わす図である。
【図21】本発明の実施の形態に係る風予測システムの応用例を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態に係る風予測システムで、遠距離間の観測データを用いて風速を予測した結果を示す図である。
【図23】従来例のシミュレーションを併用する方法と、3次元風速計による方法との概念を表わす図である。
【符号の説明】
30 風予測システム、32 予測用コンピュータ、34 3次元風速計、35 レーザー発振器、36 検出器、37 ミラー、38 ビームスプリッター、39 制御計測装置、40 観測ポール、42 微粒子、50 MOディスク、52 CD−ROM、60 コンピュータ本体、62 モニタ、64 プリンタ、66 マウス、68 キーボード、70 CPU、72 メモリ、74 ネットワークインターフェイス、76 固定ディスク、78 CD−ROM駆動装置、80 MO駆動装置、90 風速計、92 風向計、94 記録器、96 支線、98 支柱。

Claims (9)

  1. 対象期間における、基準点の、風の状態を表わす情報を、前記基準点に風が吹いた日時が特定されるように、予め記憶するための記憶手段と、
    参照点の、風の状態を表わす情報を、前記参照点に風が吹いた日時が特定されるように入力するための入力手段と、
    前記対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて、風の関係を特定するための特定手段と、
    前記風の関係を表わす関係情報を作成するための作成手段と、
    前記関係情報を、記録媒体に記録するための記録手段とを含む、風関係特定装置。
  2. 前記観測期間の長さは、気候の変動の周期の70%以上の長さである、請求項1に記載の風関係特定装置。
  3. 前記気候の変動の周期は、6日以上の周期である、請求項2に記載の風関係特定装置。
  4. 対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて特定された、風の関係を表わす情報を、予め記憶するための記憶手段と、
    前記基準点の、前記対象期間における、風の状態を表わす情報を入力するための入力手段と、
    前記風の関係に基づいて、前記対象期間のうち、前記観測期間とは異なる期間における、前記参照点の風の状態を予測するための予測手段と、
    前記予測手段が予測した、前記参照点の風の状態を表わす予測情報を作成するための作成手段と、
    前記予測情報を出力するための出力手段とを含む、風予測装置。
  5. 対象期間における、基準点の、風の状態を、前記基準点に風が吹いた日時が特定されるように測定する第1の測定ステップと、
    参照点の、風の状態を、前記参照点に風が吹いた日時が特定されるように測定する第2の測定ステップと、
    前記対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態に基づいて、風の関係を特定する特定ステップと、
    前記風の関係に基づいて、前記対象期間のうち、前記観測期間とは異なる期間における、前記参照点の風の状態を予測する予測ステップと、
    前記予測ステップにおいて予測された、前記参照点の風の状態を表わす予測情報を作成する作成ステップと、
    前記予測情報を出力する出力ステップとを含む、風予測方法。
  6. 対象期間における、基準点の、風の状態を表わす情報を、前記基準点に風が吹いた日時が特定されるように、予め記憶する記憶ステップと、
    参照点の、風の状態を表わす情報を、前記参照点に風が吹いた日時が特定されるように入力する入力ステップと、
    前記対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて、風の関係を特定する特定ステップと、
    前記風の関係を表わす関係情報を作成する作成ステップと、
    前記関係情報を、記録媒体に記録する記録ステップとを含む、風関係特定プログラム。
  7. 対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて特定された、風の関係を表わす情報を、予め記憶する記憶ステップと、
    前記基準点の、前記対象期間における、風の状態を表わす情報を入力する入力ステップと、
    前記風の関係に基づいて、前記対象期間のうち、前記観測期間とは異なる期間における、前記参照点の風の状態を予測する予測ステップと、
    前記予測ステップにおいて予測された、前記参照点の風の状態を表わす予測情報を作成する作成ステップと、
    前記予測情報を出力する出力ステップとを含む、風予測プログラム。
  8. 対象期間における、基準点の、風の状態を表わす情報を、前記基準点に風が吹いた日時が特定されるように、予め記憶する記憶ステップと、
    参照点の、風の状態を表わす情報を、前記参照点に風が吹いた日時が特定されるように入力する入力ステップと、
    前記対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて、風の関係を特定する特定ステップと、
    前記風の関係を表わす関係情報を作成する作成ステップと、
    前記関係情報を、記録媒体に記録する記録ステップとをコンピュータに実行させるための風関係特定プログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体。
  9. 対象期間中の期間であって季節に対応するように予め定められた観測期間における、基準点および参照点の風の状態を表わす情報を用いて特定された、風の関係を表わす情報を、予め記憶する記憶ステップと、
    前記基準点の、前記対象期間における、風の状態を表わす情報を入力する入力ステップと、
    前記風の関係に基づいて、前記対象期間のうち、前記観測期間とは異なる期間における、前記参照点の風の状態を予測する予測ステップと、
    前記予測ステップにおいて予測された、前記参照点の風の状態を表わす予測情報を作成する作成ステップと、
    前記予測情報を出力する出力ステップとをコンピュータに実行させるための風予測プログラムを記録した、コンピュータ読取可能な記録媒体。
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