JP2005007622A - 機能性被膜が形成された被覆物及び機能性被覆剤並びに機能性被覆剤の製造方法 - Google Patents

機能性被膜が形成された被覆物及び機能性被覆剤並びに機能性被覆剤の製造方法 Download PDF

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Shoji Kuroyama
昭治 黒山
Hiroshi Inagaki
博 稲垣
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Abstract

【課題】長期耐食性、延性を、潤滑性、耐衝撃性等の良好な機械的特性を有し、かつ、摺動に対する耐損傷性を付与することができる機能性被膜が形成された被覆物及び機能性被覆剤を提供する。
【解決手段】合成樹脂を樹脂マトリックスとし、合成樹脂マトリックス中にカーボンナノチューブを含む機能性被膜が金属材料等の材料表面の少なくとも一部分に形成されている。カーボンナノチューブは、合成樹脂100重量部に対して2.3〜40重量部を含み、機能性被膜のヌープ硬さは40Hk以上であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種材料表面に機能性被膜が形成された被覆物及び機能性被覆剤並びに機能性被覆剤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械部品や締結部材である炭素鋼等の材料表面に摩擦や湿気等による劣化を防ぐ耐食性を付与する方法としては、材料表面への無機系塗料の塗布及び亜鉛等の金属メッキが一般的によく知られている。しかし、これらの方法は、特に化学薬品に対する耐食性に乏しい等の問題がある。
【0003】
これを解決する手段として長期耐食性に優れるフッ素樹脂を被覆する方法がよく用いられている。特に締め付けトルクも低いことからボルトナット等の締結部材においてもよく利用されている。しかし、フッ素樹脂を被覆する方法では、被膜が軟らかく、例えば締結部材に適用した場合には、金属材料等の表面に施した被覆の損傷を招きやすいという問題がある。
【0004】
最近、単層カーボンナノチューブを分散させたポリメチルメタクリレート等の塗料が開示されている(特許文献1参照)。この公報には、機械的特性等に優れる単層カーボンナノチューブを、有機高分子を含む溶液中に分散させて塗料にすることが提案されているが、材料表面に塗布した場合の特性及び性能については何ら開示されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−11344号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来技術においては、長期耐食性、潤滑性、耐衝撃性等の良好な機械的特性、摺動に対する耐損傷性の全ての要求を満たす機械部品や締結部材等へ適用される被覆物は、開発されてない状況にある。また、これらの用途として実用化される被覆物は、形成されている被膜が薄く、かつ、せん断に対して被膜の破壊が起こらない程度の延性を有することが必要とされる。
【0007】
そこで本発明は、かかる背景に鑑み上記課題を解決し、長期耐食性、延性、潤滑性及び耐衝撃性等の良好な機械的特性を有し、かつ、摺動に対する耐損傷性を有する機能性被膜が形成された被覆物及び機能性被覆剤並びに機能性被覆剤の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の機能性被膜が形成された被覆物は、合成樹脂マトリックス中にカーボンナノチューブを含む機能性被膜が金属材料、プラスチックス材料、セラミック材料、各種複合材料等の材料表面の少なくとも一部分に形成されている。
【0009】
具体的には、本発明の機能性被膜が形成された被覆物は、合成樹脂を樹脂マトリックスとし、合成樹脂100重量部に対して2.3〜40重量部のカーボンナノチューブを含み、機能性被膜のヌープ硬さは40Hk以上である機能性被膜が材料表面の少なくとも一部分に形成された被覆物にすることを特徴とする。
【0010】
これによって、機能性被膜が形成された被覆物は、長期耐食性、延性、潤滑性及び耐衝撃性等の良好な機械的特性を有し、かつ、摺動に対する耐損傷性を有しており上記目的が達成される。カーボンナノチューブの量が合成樹脂100重量部に対して2.3重量部未満であると、カーボンナノチューブの効果はあまり認められず、特に、潤滑性、耐衝撃性等の良好な機械的特性、耐損傷性特性が発揮されない。また、その量が40重量部を超えると均質な被膜が得られにくくなる。機能性被膜は、そのヌープ硬さが40Hk以上であることによって、実用上十分な耐損傷性を提供することができ、その機能性被膜が形成された被覆物は、摺動に対する耐損傷性を有する。例えば亜鉛粉末の無機系塗料によって形成された被膜のヌープ硬さは30Hk程度であるが、本発明の機能性被膜はヌープ硬さ40Hk以上である。
【0011】
なお、ここでいうヌープ硬さは、JIS規格Z2251に記載の「ヌープ硬さ試験方法」に従って得られる値をいう。
【0012】
また、本発明の機能性被膜が形成された被覆物は、合成樹脂を樹脂マトリックスとし、合成樹脂100重量部に対して2.3〜40重量部のカーボンナノチューブを含み、機能性被膜のトルク係数値が0.15以下である機能性被膜が材料表面の少なくとも一部分に形成された被覆物にすることを特徴とする。
【0013】
これによって、機能性被膜が形成された被覆物は、長期耐食性、延性、潤滑性及び耐衝撃性等の良好な機械的特性を有し、かつ、摺動に対する耐損傷性を有しており上記目的が達成される。前述のように、カーボンナノチューブの量が合成樹脂100重量部に対して2.3重量部未満であると、カーボンナノチューブの効果はあまり認められず特に、潤滑性、耐衝撃性等の良好な機械的特性、耐損傷性特性が発揮されない。また、その量が40重量部を超えると薄膜が得られにくくなる。機能性被膜は、そのトルク係数値が0.15以下であることによって、実用上十分な耐損傷性を提供することができ、その機能性被膜が形成された被覆物は、摺動に対する耐損傷性を有する。すなわち、トルク係数値は摩擦係数に相当する物性を示す指標であり、この値が0.15以下であることによって摺動時の摩擦が低減され摺動によって生じる損傷を十分に低減することができる。本発明の被覆物は、実用上十分な摺動に対する耐損傷性の他、長期耐食性、延性、潤滑性、耐衝撃性等の良好な機械的特性を有する。
【0014】
なお、ここでいうトルク係数値は、JIS規格B1186に記載の「セットのトルク係数値」に従って得られる値をいう。
【0015】
上記構成の被覆物にあっては、被膜の厚さは5〜50μmとすることができる。
【0016】
このように被膜を薄膜にすることによって、当該被膜を有する被覆物は、機械部品として使用する金属材料にあっては、寸法公差内に収めることを容易にすることができる。
【0017】
また、上記構成の被覆物にあっては、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブである実質的にカーボン元素のみから構成されるカーボンナノチューブの他に、有機官能基、金属等が付加されたカーボンナノチューブの誘導体とすることができる。また、これらのカーボンナノチューブを2種以上の混合物とすることもできる。
【0018】
なお、ここでカーボンナノチューブは、外径がサブナノメートルから50nm程度の炭素六角網面から構成される針状物質をいう。また、単層カーボンナノチューブは炭素六角網面が1枚丸まってできたものを、多層カーボンナノチューブは多層の炭素六角網面が同軸円筒状に積み重なったものをいう。
【0019】
また、上記構成の被覆物にあっては、合成樹脂は特に限定されず、あらゆる合成樹脂に対して適用可能であり、例えば用途に応じて合成樹脂を選定することができる。例えば、熱硬化性樹脂の適用は、高い被膜の硬度が得られやすく好ましい。
【0020】
また、上記構成の被覆物にあっては、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、水系フッ素樹脂又はウレタン樹脂のうちいずれかであることが好ましい。
【0021】
また、本発明の機能性被膜が形成された被覆物にあっては、顔料を含むことができる。
【0022】
顔料として防錆顔料を使用することが好ましい。防錆顔料の添加によって、より長期耐食性が付与される。
【0023】
また、本発明の機能性被膜が形成された被覆物にあっては、潤滑剤を含むことができる。潤滑剤を添加することによって、被膜と相手物質との摩擦係数を制御することができ、摺動によって生じる摩耗をより一層顕著に低減することができる。
【0024】
前記潤滑剤は、フッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン、ダイヤモンドナノ粉末の少なくともいずれか1つを含むことが好ましい。
【0025】
本発明の機能性被覆剤は、カーボンナノチューブが分散された合成樹脂溶液からなる機能性被覆剤であって、合成樹脂溶液の固形成分100重量部に対して、2.3〜40重量部のカーボンナノチューブと10〜300重量部の極性溶媒を含むことを特徴としている。
【0026】
これによって、合成樹脂中にカーボンナノチューブが好適に分散された被膜を提供することができ、この被膜が形成された被覆物は、長期耐食性、延性、潤滑性及び耐衝撃性等の良好な機械的特性を有し、かつ、摺動に対する耐損傷性を有しており上記目的が達成される。更に、薄膜状の被膜を形成することも可能としている。また、カーボンナノチューブの量が合成樹脂溶液の固形成分100重量部に対して2.3重量部未満であると、カーボンナノチューブの効果はあまり認められない。また、40重量部を超えてカーボンナノチューブを有すると、機能性被覆剤の粘性が高くなり均一に薄膜状にするのに手間がかかることになる。
【0027】
なお、合成樹脂溶液は、合成樹脂の態様によっては、極性溶媒以外の無機及び/又は有機溶剤等を含むこともあるのは言うまでもない。また、合成樹脂溶液の固形成分とは、合成樹脂を硬化して被膜にした際に残存する樹脂成分をいう。
【0028】
上記構成の機能性被覆剤においては、極性溶媒は、純水、アルコール類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はこれら2種以上の混合物のうちいずれかであることが好ましい。
【0029】
また、上記構成の機能性被覆剤においては、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブの誘導体、多層カーボンナノチューブの誘導体又はこれら2種以上の混合物のうちいずれかを使用することができる。
【0030】
また、上記構成の機能性被覆剤においては、合成樹脂は特に限定されず、あらゆる合成樹脂が使用可能であり、例えば用途に応じて合成樹脂を選定することができる。また、合成樹脂は、液体状の樹脂の他、粉末等固体の樹脂であってもよい。例えば、熱硬化性樹脂の使用は、被膜の硬度をより高められるので好ましい。
【0031】
また、上記構成の機能性被覆剤においては、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、水系フッ素樹脂又はウレタン樹脂のうちいずれかであることが好ましい。
【0032】
また、上記構成の機能性被覆剤においては、顔料が含まれていることが好ましい。
【0033】
また、上記構成の機能性被覆剤においては、潤滑剤が含まれていることが好ましい。
【0034】
更に、潤滑剤は、フッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン、ダイヤモンドナノ粉末の少なくともいずれか1つを含むことが好ましい。
【0035】
本発明の機能性被覆剤の製造方法は、カーボンナノチューブが分散された合成樹脂溶液からなる機能性被覆剤を製造する方法であって、合成樹脂溶液の固形成分100重量部に対して、2.3〜40重量部のカーボンナノチューブと10〜300重量部の極性溶媒とを用いて、カーボンナノチューブを極性溶媒に分散させた後、カーボンナノチューブが分散された極性溶媒と合成樹脂とを混合する工程を含むことを特徴としている。
【0036】
これによって、合成樹脂溶液中にカーボンナノチューブを均一に分散させることができる。すなわち、あらかじめカーボンナノチューブ表面を極性溶媒で取り囲み、その後カーボンナノチューブが分散された極性溶媒と合成樹脂とを混合することが、カーボンナノチューブを均一に分散させるために非常に有効である。また、極性溶媒の量は、前記10〜300重量部であることが好ましく、また30〜150重量部であることがより好ましい。しかし、被膜の形成方法によっては、この量に限らず被膜の形成方法に合せた機能性被覆剤の適正な粘度が得られる量にしてもよい。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0038】
本実施形態に係る機能性被膜が形成された被覆物は、合成樹脂を樹脂マトリックスとし、合成樹脂マトリックス中に合成樹脂100重量部に対して2.3〜40重量部のカーボンナノチューブを含む機能性被膜が金属材料等の材料表面の少なくとも一部分に形成されている。
【0039】
当該機能性被膜のヌープ硬さは、40Hk以上にする。これによって、実用上十分な耐損傷性を提供することができ、その機能性被膜が形成された被覆物は、摺動に対する耐損傷性を有する。
【0040】
また、当該機能性被膜のトルク係数値は、0.15以下にする。これによって、摺動時の摩擦が低減され摺動によって生じる損傷を十分に低減した機能性被膜が形成された被覆物となる。
【0041】
上記の機能性被膜が形成された被覆物を得る方法として、カーボンナノチューブが分散された合成樹脂溶液からなる機能性被覆剤を材料表面に塗布する方法が上げられる。
【0042】
本実施形態において、機能性被覆剤は、合成樹脂溶液の固形成分100重量部に対して2.3〜40重量部のカーボンナノチューブが極性溶媒を含む合成樹脂の溶液に分散している。なお、合成樹脂の態様によっては、合成樹脂溶液に極性溶媒以外の無機及び/又は有機溶剤等を含むこともあるのは言うまでもない。
【0043】
カーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの誘導体を使用することもできる。これらのカーボンナノチューブ混合物であってもよい。
【0044】
これらのカーボンナノチューブは、化学蒸着法、アーク放電法、抵抗加熱法等によって製造されたものをそのまま使用してもよく、純度を高めたものを使用してもよい。更に、例えば超音波を用いて切断する方法又は酸溶液による処理による方法によってカーボンナノチューブを切断して、平均アスペクト比を小さくしてもよい。カーボンナノチューブの平均アスペクト比が小さい程、カーボンナノチューブの合成樹脂溶液における分散性は容易になると考えられる。
【0045】
使用する合成樹脂は、特に限定されないが、例えばフッ素樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂や、これらの共重合体、変性体、及び2種以上の混合体等を使用できる。好ましくは、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、水系フッ素樹脂又はウレタン樹脂のうちの少なくとも1種である。また、熱硬化性樹脂は被膜の硬度をより高められるので好ましい。
【0046】
使用する極性溶媒には、純水、アルコール類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等を上げることができる。極性溶媒は、これらに限定されるものではなく、使用するカーボンナノチューブ、使用する合成樹脂との溶解性、被膜の形成性等を考慮して決めればよい。
【0047】
使用する極性溶媒の量は、合成樹脂溶液の固形成分100重量部に対して10〜300重量部である。より好ましくは、30〜150重量部である。
【0048】
本実施形態の機能性被覆剤の製造は、以下の手順で行う。
【0049】
まず、適当な容器に所定の量の極性溶媒を投入し、その中にカーボンナノチューブを所定の量の投入する。このカーボンナノチューブの投入の方法は特に限定されるものではなく、一度に多量のカーボンナノチューブを投入しない等の工夫をすればよい。このとき、極性溶媒中に分散剤を適量添加することによって極性溶媒中へのカーボンナノチューブの分散をより確実に行うことができる。分散剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性の界面活性剤を使用することができ、使用する合成樹脂溶液に合せて選択すればよい。分散剤の添加量は、少量でよく例えば合成樹脂溶液に対して1〜2w/v%程度(合成樹脂溶液100mlに対して1〜2g)でよい。
【0050】
次に、カーボンナノチューブを極性溶媒中に均一に分散させる。分散の方法は、機械的に撹拌して行う方法、超音波を利用して行う方法を上げることができる。機械的に分散する方法として、例えば市販のホモジナイザーを用いて溶液を撹拌羽又は撹拌棒を回転させて行う。回転数は投入したカーボンナノチューブの量や全体の処理量を考慮して決めればよいが、概ね5000〜15000rpmである。また、市販の超音波発生器を用いて分散させることができる。また、この二つの方法を併用してもよい。
【0051】
次に、カーボンナノチューブが分散した極性溶媒と合成樹脂を混合する。
【0052】
このときの混合も、機械的に撹拌して行う方法、超音波を利用して行う方法を上げることができる。機械的に分散する方法として、例えば市販のホモジナイザイザーを用いて溶液を撹拌羽又は撹拌棒を回転させて行う。回転数は投入したカーボンナノチューブの量や全体の処理量を考慮して決めればよいが、概ね2000〜5000rpmである。また、市販の超音波発生器を用いて分散させることができる。また、この2つの方法を併用してもよい。
【0053】
また、必要に応じて顔料を添加してもよい。
【0054】
顔料は、防錆顔料であり、天然顔料、合成有機顔料及び合成無機顔料のいずれをも使用することができるが、複合酸化物、酸化クロム、有機顔料等が挙げられる。顔料の添加量は、合成樹脂100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、より好ましくは、5〜20重量部である。顔料の粒径は、合成樹脂溶液に対する分散性及び凝集性等を考慮して決めればよいが、できるだけ微細であることが望ましい。例えば、平均粒径が4〜6μmであり、粒径が主として0.5〜10μmの分布範囲にあるものが好ましい。
【0055】
また、必要に応じて潤滑剤を添加してもよい。
【0056】
潤滑剤としてはフッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン、ダイヤモンドナノ粉末等が上げられる。潤滑剤の添加量は、被覆物の使用環境によっても異なるが合成樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部程度でよい。潤滑剤の平均粒径は、最大でも4〜6μm以下であることが望ましい。潤滑剤の平均粒径は、好ましくは0.01〜4μm程度である。
【0057】
最後に、このカーボンナノチューブが分散した合成樹脂に市販の超音波発生器を用いるなどして超音波を与えると、分散の際に発生した泡を除去することができる。
【0058】
本機能性被覆剤を使用して、金属材料、プラスチックス材料、セラミック材料、各種複合材料等の材料表面の少なくとも一部分に被膜が形成されてなる被覆物とする。被覆物の被膜の厚さは、5μm程度の薄膜にすることができる。被膜の厚さは5〜50μmとすることによって、例えば、機械部品として使用する金属材料にあっては、寸法公差内に収めることを容易にすることができる。また、必要に応じて例えば、1mm以上の厚膜にしてもよい。
【0059】
被膜を形成させて被覆物にするには、浸漬処理、スプレー処理、はけ塗り等の方法を適用することができる。被覆後、樹脂を硬化させるために乾燥や熱処理を施して、均質性の高い被膜が形成される。
【0060】
【実施例1】
液状のレゾールタイプのフェノール樹脂(合成樹脂)の固形成分100重量部に対して2.4、4.7、11、20、30、40及び50重量部の単層カーボンナノチューブが分散した7種類の機能性被覆剤を作製した。
【0061】
単層カーボンナノチューブは、市販のもの(CNI社製)を使用し、直径約1nmであり長さが100nmから数十μmの範囲で分布を有する。
【0062】
機能性被覆剤の作製には、まず、ステンレス製の容器に所定の量の極性溶媒(NMP)を入れ、分散剤としてアニオン性の界面活性剤をNMP100ml当たり1〜2gの割合で添加した。このとき、NMPは合成樹脂の量と同じ重量部を使用した。
【0063】
この溶液に所定の量のカーボンナノチューブを少しずつ加え、手でステンレス製の撹拌棒を用いて2〜3分間撹拌した。
【0064】
次に、カーボンナノチューブが加えられた極性溶媒をステンレス製の容器のまま市販の超音波発生装置(周波数100kHz)を用いて約30分間超音波を与えてプレミキシングを行った。このとき周波数は100kHzに近いほど分散しやすいことが確認された。
【0065】
次に、市販のホモジナイザー撹拌装置を用いて、カーボンナノチューブが加えられた極性溶媒をステンレス製の4枚羽の撹拌羽を回転させてカーボンナノチューブを極性溶媒中に均一に分散させた。この撹拌羽の回転数は5000〜15000rpmの間であり、カーボンナノチューブの量が多い程回転数を高くした。このときの撹拌の時間は約15分間であった。
【0066】
次に、カーボンナノチューブが分散した極性溶媒に所定の量の合成樹脂を加えた。そして、カーボンナノチューブが分散した極性溶媒と合成樹脂についても、上記の超音波発生装置を使用して最大100kHzの周波数の超音波を与えてプレミキシングを行った。カーボンナノチューブを合成樹脂とも均一に分散させるために、上記のホモジナイザー撹拌装置及び撹拌羽を使用してこのカーボンナノチューブを含む混合溶液を撹拌した。このとき、極性溶媒が入った合成樹脂中のこの撹拌羽の回転数は2000〜5000rpmの間であり、カーボンナノチューブの量が多い程回転数を高くした。撹拌の時間は約15分間であった。
【0067】
ここで得られた混合溶液(機能性被覆剤)を、再び上記の超音波発生装置を使用して最大100kHzの周波数の超音波を与えて撹拌した。この撹拌操作によって機能性被覆剤中に存在していた気泡をほぼ取り除くことができた。
【0068】
作製した機能性被覆剤は、透明のガラス瓶に移した。目視によって作製した機能性被覆剤の様子を観察し、カーボンナノチューブが樹脂溶液中に均一に分散されているのが確認された。
【0069】
次に、エチルアルコールを使用して脱脂したSPCC冷間圧延鋼板(長さ150mm、幅70mm、厚み0.8mm)、並びにM20でネジ部の長さが100mmのボルト及びM20で高さ16mmの六角ナットの全面に機能性被覆剤をスプレー塗装法によって被覆して、被膜を形成させた。被覆は、圧送式エアースプレーガン(イワタ製 WIDER−61型:口径1.3mm)を用い、エアー圧力0.29〜0.34MPa、被覆剤の吐出量95〜200ml/minの条件で行った。その被覆後、乾燥器にて乾燥し樹脂が十分硬化する温度(200℃前後)で熱処理を行って被膜が形成された被覆物とした。
【0070】
なおこのとき、カーボンナノチューブの量が50重量部のものは、粘性が高くなりすぎており、均一に被覆することが困難であったので被覆物の作製を行わなかった。
【0071】
被膜の厚さは、40〜50μmに調整した。被膜の厚さは、電磁式膜厚計(ケット科学製 LZ−330型)を用いてJIS規格K5600−1−7に従って測定した。また、被覆物の断面を走査型顕微鏡で観察して基材のSPCC冷間圧延鋼板と被膜との界面に顕著なボイド等がないことを確認した。
【0072】
被膜の基材(長さ150mm、幅70mm、厚み0.8mm)に対する密着性は、JIS規格K5600−5−6に従って試験を行った。その結果、被膜は基材に対して良好に密着しているのが確認された。
【0073】
基材であるSPCC冷間圧延鋼板の表面に形成された40〜50μmの被膜について、以下の被膜特性試験を行った。
【0074】
被膜の硬度は、鉛筆引っかき硬さ及びヌープ硬さを測定して評価した。鉛筆引っかき硬さは、JIS規格K5600−5−4に従って測定を行った。鉛筆引っかき硬さは、被膜にきず跡を生じなかった硬さ(鉛筆硬度)測定した。また、ヌープ硬さは、(JIS規格Z2251)に従って測定を行った。
【0075】
折り曲げ性は、JIS規格K5600−5−4に従って評価した。このとき、定められた条件下において折り曲げた後の折り曲げた部分の被膜表面を40倍の顕微鏡で観察して割れ又ははく離の有無を確認して判断している。
【0076】
耐衝撃性は、JIS規格K5600−5−3のデュポン式に従って測定を行った。先端の曲率半径の異なる1000gの重りを50cmの高さから被膜に落下させた後、40倍の顕微鏡で観察して割れ又ははく離の有無を確認して判断している。
【0077】
ボルト・ナットによる嵌合試験は、M20でネジ部の長さが100mmのボルト及びM20で高さ16mmのナットを使用して、ネジ部(ボルトとナットのセット)のトルク係数値(摩擦抵抗)と被膜の破壊の評価を行った。ボルトとナットには、軸力20トンを与えた。ネジ部のトルク係数値は、JIS規格B1186に従って求めた。使用した試験片は、各5本を使用した。ボルトとナットの被膜が損傷を受けて欠落した部分の割合を求めた。
【0078】
表1は、本実施例1、実施例2及び比較例1〜4について各機能性被覆剤からなる各被膜の特性試験結果を示している。
【0079】
表1において、実施例1について、カーボンナノチューブの量が、フェノール樹脂100重量部に対して2.4〜40重量部と異なる6種類の各被膜の特性試験結果を示している。
【0080】
硬度のうち鉛筆引っかき硬さは、被膜にきず跡を生じなかった硬さ(鉛筆硬度)を示している。カーボンナノチュ−ブの量が最も少ない2.4重量部の場合は、6Hであり、カーボンナノチューブ量の増加に従って、鉛筆硬度が高くなり被膜の硬度が高くなったことを示している。鉛筆硬度は、測定できる最高硬度が9Hである。一方、ヌープ硬さは、カーボンナノチューブ量の増加に従って、カーボンナノチュ−ブの量が2.4重量部の場合でも45Hkを示した。
【0081】
カーボンナノチューブ量が、11重量部ではヌープ硬さ150Hkを、そして40重量部では165Hkを示している。亜鉛メッキのヌープ硬度は約150Hkであるので、フェノール樹脂100重量部に対して11〜40重量部のカーボンナノチューブが分散された被膜は、亜鉛メッキに匹敵する硬度を有することが示された。
【0082】
折り曲げ性は、表1に示す直径を有する心棒を挟んで折り曲げるものであり、心棒の直径が小さい程、被膜は高い延性を有すると評価できる。心棒の直径の値は、カーボンナノチューブ量の増加に従って6mmから2mmと小さくなり、カーボンナノチューブの量を増やすことにより延性が高くなることを示している。
【0083】
耐衝撃性は、重りの曲率半径はカーボンナノチューブ量が最も少ない2.4重量部の場合が6mmであり、その他の場合は3mmであった。
【0084】
ボルト・ナットによる嵌合試験は、トルク係数値が小さいほど摩擦係数が小さく、潤滑性がよく、また延性も高いことを示している。被膜破壊状態は、被膜の機械的強度に対応する指標である。カーボンナノチューブ量が増えた場合、むしろトルク係数値が下がり、被膜の破壊も認められなかった。カーボンナノチューブの量が2.4重量部の場合であっても、トルク係数値は十分小さく、かつ、被膜の破壊も約5%以下と少ない。
【0085】
【表1】
Figure 2005007622
【0086】
【実施例2】
合成樹脂として、ポリアミドイミド樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリアミドイミド樹脂の固形成分に対して2.3、4.6、11、19、30、40及び50重量部のカーボンナノチューブが分散した7種類の機能性被覆剤を作製した。また、実施例1と同様の基材に実施例1と同様にして、被膜が形成された被覆物を作製した。なおこのとき、カーボンナノチューブの量が50重量部のものは、粘性が高くなりすぎており、均一に被覆することが困難であったので被覆物の作製を行わなかった。
【0087】
実施例2においても被膜の厚さは、40〜50μmに調整した。被覆の厚さも、実施例1と同様に測定した。実施例2においても、被覆物の断面を走査型顕微鏡で観察して基材のSPCC冷間圧延鋼板と被膜との界面に顕著なボイド等がないことを確認した。
【0088】
また、被膜の基材(長さ150mm、幅70mm、厚み0.8mm)に対する密着性も、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、実施例2においても被膜は基材に対して良好に密着しているのが確認された。
【0089】
実施例1と同様にして、基材であるSPCC冷間圧延鋼板の表面に形成された40〜50μmの被膜について、同様の被膜特性試験を行った。
【0090】
表1に示す実施例2の各被膜の特性試験において、以下のような結果を示した。
【0091】
鉛筆引っかき硬さは、被膜にきず跡を生じなかった硬さ(鉛筆硬度)を示している。カーボンナノチュ−ブの量が最も少ない2.3重量部の場合は、6Hであり、カーボンナノチューブ量の増加に従って、鉛筆硬度が高くなり被膜の硬度が高くなったことを示している。一方、ヌープ硬さは、カーボンナノチューブ量の増加に従って、カーボンナノチュ−ブの量が2.3重量部の場合でも40Hkを、11〜40重量部ではヌープ硬さ100Hkを示した。
【0092】
折り曲げ性は、心棒の直径の値は、カーボンナノチューブ量の増加に従って6mmから2mmと小さくなり、カーボンナノチューブの量を増やすことにより延性が高くなることを示している。
【0093】
耐衝撃性は、重りの曲率半径はカーボンナノチューブ量が最も少ない2.3重量部の場合が6mmであり、その他の場合は3mmであった。
【0094】
ボルト・ナットによる嵌合試験は、トルク係数値が小さいほど摩擦係数が小さく、潤滑性がよく、また延性も高いことを示している。被膜破壊状態は、被膜の機械的強度に対応する指標である。カーボンナノチューブ量が増えた場合、むしろトルク係数値が下がり、被膜の破壊も認められなかった。カーボンナノチューブの量が2.3重量部の場合であっても、トルク係数値は十分小さく、かつ、被膜の破壊も約5%以下と少ない。
【0095】
【比較例1】
カーボンナノチューブの代わりにカーボンブラック(ケッチェンブラックEC製、粒径0.04μm)、を使用した以外は、実施例1と同様にして、2.4、4.7、11、20、30、40重量部の6種類のカーボンブラックが分散した機能性被覆剤を作製し、それぞれ被覆物を作製した。
【0096】
比較例1においても被膜の厚さは、40〜50μmに調整した。被覆の厚さも、実施例1と同様に測定した。比較例1においても、被覆物の断面を走査型顕微鏡で観察して基材のSPCC冷間圧延鋼板と被膜との界面に顕著なボイド等がないことを確認した。
【0097】
また、被膜の基材(長さ150mm、幅70mm、厚み0.8mm)に対する密着性も、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、比較例1においても被膜は基材に対して良好に密着しているのが確認された。
【0098】
実施例1と同様にして、基材であるSPCC冷間圧延鋼板の表面に形成された40〜50μmの被膜について、同様の被膜特性試験を行った。
【0099】
表1に、比較例1について、カーボンブラックの量が、フェノール樹脂100重量部に対して2.4〜40重量部と異なる6種類の被膜の特性試験結果を示している。
【0100】
表1において、カーボンブラック量を増やした場合であっても、硬度、折り曲げ性及び耐衝撃性の値はあまり変化を示さず、これらの特性の向上はほとんど認められなかった。ボルト・ナットのよる嵌合試験においては、カーボンブラック量が最も少ない2.4重量部の場合においてトルク係数が0.15とかなり小さな値であっても約10%の被膜破壊が認められ、カーボンブラック量を増やすとトルク係数が更に下がる傾向を示したが、被膜破壊が認められなくなるには至らなかった。
【0101】
【比較例2】
カーボンナノチューブの代わりに比較例1において使用したカーボンブラックを使用した以外は、実施例2と同様にして2.3、4.6、11、20、30、40重量部の6種類のカーボンブラックが分散した機能性被覆剤を作製し、それぞれ被覆物を作製した。
【0102】
比較例2においても被膜の厚さは、40〜50μmに調整した。被覆の厚さも、実施例1と同様に測定した。比較例2においても、被覆物の断面を走査型顕微鏡で観察して基材のSPCC冷間圧延鋼板と被膜との界面に顕著なボイド等がないことを確認した。
【0103】
また、被膜の基材(長さ150mm、幅70mm、厚み0.8mm)に対する密着性も、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、比較例2においても被膜は基材に対して良好に密着しているのが確認された。
【0104】
実施例1と同様にして、基材であるSPCC冷間圧延鋼板の表面に形成された40〜50μmの被膜について、同様の被膜特性試験を行った。
【0105】
表1に、比較例2について、カーボンブラックの量が、ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して2.3〜40重量部と異なる6種類の各被膜の特性試験結果を示している。
【0106】
表1において、カーボンブラック量を増やした場合であっても、硬度、折り曲げ性及び耐衝撃性の値はあまり変化を示さず、これらの特性の向上はほとんど認められなかった。ボルト・ナットのよる嵌合試験においては、カーボンブラック量が最も少ない2.3重量部の場合においてトルク係数が0.15とかなり小さな値であっても約10%の被膜破壊が認められ、カーボンブラック量を更に増やすとトルク係数が更に下がる傾向を示したが、被膜破壊が認められなくなるには至らなかった。
【0107】
【比較例3】
カーボンナノチューブを全く使用せず実質的に実施例1において使用したフェノール樹脂と極性溶媒(NMP)のみからなる機能性被覆剤を作製した。同じ重量のフェノール樹脂と極性溶媒をステンレス製の容器に入れて、均一に混合するまで、撹拌して機能性被覆剤とした。この被覆剤を用いて、実施例1に示した方法に従って被覆物とした。
【0108】
比較例3においても被膜の厚さは、40〜50μmに調整した。被覆の厚さも、実施例1と同様に測定した。比較例3においても、被覆物の断面を走査型顕微鏡で観察して基材のSPCC冷間圧延鋼板と被膜との界面に顕著なボイド等がないことを確認した。
【0109】
また、被膜の基材(長さ150mm、幅70mm、厚み0.8mm)に対する密着性も、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、比較例3においても被膜は基材に対して良好に密着しているのが確認された。
【0110】
実施例1と同様にして、基材であるSPCC冷間圧延鋼板の表面に形成された40〜50μmの被膜について、同様の被膜特性試験を行った。
【0111】
表1に、比較例3における機能性被覆剤からなる各被膜の特性試験結果を示している。
【0112】
表1の比較例3に示すように、フェノール樹脂のみの被膜の場合は、鉛筆引っかき硬さは6H、ヌープ硬は18Hk、折り曲げ性を示す心棒の直径は6mm、耐衝撃性を示す重りの曲率半径は9mm、ボルト・ナットによる嵌合試験でのトルク係数は0.18であり約10%の被膜破壊が認められた。
【0113】
【比較例4】
カーボンナノチューブを全く使用せず実質的に実施例2において使用したポリアミドイミド樹脂と極性溶媒(NMP)のみからなる機能性被覆剤を比較例3の場合と同様な手順で作製し、被覆物を作製した。
【0114】
比較例4においても被膜の厚さは、40〜50μmに調整した。被覆の厚さも、実施例1と同様に測定した。比較例4においても、被覆物の断面を走査型顕微鏡で観察して基材のSPCC冷間圧延鋼板と被膜との界面に顕著なボイド等がないことを確認した。
【0115】
また、被膜の基材(長さ150mm、幅70mm、厚み0.8mm)に対する密着性も、実施例1と同様にして試験を行った。その結果、比較例4においても被膜は基材に対して良好に密着しているのが確認された。
【0116】
実施例1の場合と同様にして、基材であるSPCC冷間圧延鋼板の表面に形成された40〜50μmの被膜について、同様の被膜特性試験を行った。
【0117】
表1に、比較例4における機能性被覆剤からなる被膜の特性試験結果を示している。
【0118】
表1の比較例4に示すように、ポリアミドイミド樹脂のみの被膜の場合は、鉛筆引っかき硬さは6H、ヌープ硬は15Hk、折り曲げ性を示す心棒の直径は6mm、耐衝撃性を示す重りの曲率半径は9mm、ボルト・ナットによる嵌合試験でのトルク係数は0.17であり約15%の被膜破壊が認められた。
【0119】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の機能性被膜が形成された被覆物は、長期耐食性、延性、潤滑性及び耐衝撃性等の良好な機械的特性を有し、かつ、摺動に対する耐損傷性を有する。従って、特に摺動に対する耐損傷性の問題が解決され、当該被覆物は、ボルト、ナット、座金、締結フランジ、ブレーキシュー、ジャッキ部品、半導体製造装置の摺動部品等の機械部品に好適である。また、合成樹脂の種類を選択することによって、用途又は使用環境に応じた耐食性を付与することができる。
【0120】
本発明の機能性被覆剤は、カーボンナノチューブが均一に分散された薄膜の被膜を付与することができる。そのため機械部品として使用する材料に被覆した被覆物にあっては、好適な特性を示し寸法公差内に収めることを容易にすることができる。

Claims (18)

  1. 機能性被膜が材料表面の少なくとも一部分に形成された被覆物であって、
    前記機能性被膜は合成樹脂を樹脂マトリックスとし、前記合成樹脂100重量部に対して2.3〜40重量部のカーボンナノチューブを含み、
    前記機能性被膜のヌープ硬さは40Hk以上であることを特徴とする機能性被膜が形成された被覆物。
  2. 機能性被膜が材料表面の少なくとも一部分に形成された被覆物であって、
    前記機能性被膜は合成樹脂を樹脂マトリックスとし、前記合成樹脂100重量部に対して2.3〜40重量部のカーボンナノチューブを含み、
    前記機能性被膜のトルク係数値が0.15以下であることを特徴とする機能性被膜が形成された被覆物。
  3. 前記機能性被膜の厚さは、5〜50μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の機能性被膜が形成された被覆物。
  4. 前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、前記単層カーボンナノチューブの誘導体、前記多層カーボンナノチューブの誘導体又はこれら2種以上の混合物のうちいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の機能性被膜が形成された被覆物。
  5. 前記合成樹脂は、熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の機能性被膜が形成された被覆物。
  6. 前記合成樹脂は、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、水系フッ素樹脂又はウレタン樹脂のうちいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の機能性被膜が形成された被覆物。
  7. 顔料が含まれていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の機能性被膜が形成された被覆物。
  8. 潤滑剤が含まれていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の機能性被膜が形成された被覆物。
  9. 前記潤滑剤は、フッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン、ダイヤモンドナノ粉末のうち少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項8に記載の機能性被膜が形成された被覆物。
  10. カーボンナノチューブが分散された合成樹脂溶液からなる機能性被覆剤であって、
    前記合成樹脂溶液の固形成分100重量部に対して、2.3〜40重量部の前記カーボンナノチューブと10〜300重量部の極性溶媒とを含むことを特徴とする機能性被覆剤。
  11. 前記極性溶媒は、純水、アルコール類、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はこれら2種以上の混合物のうちいずれかであることを特徴とする請求項10に記載の機能性被覆剤。
  12. 前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、前記単層カーボンナノチューブの誘導体、前記多層カーボンナノチューブの誘導体又はこれら2種以上の混合物のうちいずれかであることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の機能性被覆剤。
  13. 前記合成樹脂は、熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれかに記載の機能性被覆剤。
  14. 前記合成樹脂は、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、水系フッ素樹脂又はウレタン樹脂のうちいずれかであることを特徴とする請求項10乃至請求項12のいずれかに記載の機能性被覆剤。
  15. 顔料が含まれていることを特徴とする請求項10乃至請求項14のいずれかに記載の機能性被覆剤。
  16. 潤滑剤が含まれていることを特徴とする請求項10乃至請求項15のいずれかに記載の機能性被覆剤。
  17. 前記潤滑剤は、フッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン、ダイヤモンドナノ粉末のうち少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項16に記載の機能性被覆剤。
  18. カーボンナノチューブが分散された合成樹脂溶液からなる機能性被覆剤を製造する方法であって、
    前記合成樹脂溶液の固形成分100重量部に対して、2.3〜40重量部の前記カーボンナノチューブと10〜300重量部の極性溶媒とを用いて、
    前記カーボンナノチューブを前記極性溶媒に分散させた後、
    前記カーボンナノチューブが分散された極性溶媒と合成樹脂とを混合する工程を含むことを特徴とする機能性被覆剤の製造方法。
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