【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、発電機出力の短絡により風車の回転を減速することができる風力発電機とその設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
風力発電は、風力エネルギーを発電機により電気エネルギーに変換することにより発電を行うもので、一般的に風車と交流発電機とから構成される。
【0003】
この風力発電システムは、数kW程度の比較的小型のものから、数百kWを超える大型のものまであり、通常、秒速2m程度から15m程度の風速において発電を行うように設計されている。
【0004】
この上限を超える風速においては、風力発電システムが極端な過出力状態となり、過回転により風車や交流発電機が損傷などを招くため、強風時にはこれを防止する保護機構が施されているのが一般的である。
【0005】
この保護装置としては、風車のブレードがフェザリング機構を有して回転数を落とす方法があるが、風車に機械機構を内蔵する必要があり、小型の風車には不適である。また、かかる保護装置として、制動ディスクなどを用いて機械的に減速する方法、あるいは発電機の短絡電流による電磁ブレーキを利用して減速する方法が知られている。
【0006】
例えば、機械的に減速する方法として、特開2002−303255号公報には油圧式のディスクブレーキを用いる方法が提案されている。また、発電機出力の短絡による電磁ブレーキを利用した減速方法としては、例えば、特開2000−199473号公報及び特開2002−339856号公報などが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者の機械的に減速する方法では、風力発電システムの構造が複雑になり、システム保守の問題がある。また、制御回転速度の設定を自由に行うことができないという問題があった。
【0008】
また、後者の電磁ブレーキを利用して減速する方法では、巻線仕様によっては十分な制動トルクが得られないという問題があり、特に、開2002−339856号公報では回路が複雑になるなどの問題があった。
【0009】
この発明は、風力発電機の構造及び電子回路の構造を複雑化することなく、発電機出力の短絡により風車の回転を減速することができる風力発電機とその設計方法の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、電磁ブレーキを利用して減速する方法について種々検討した結果、風車が高速回転(例えば1000rpm以上)している時に、出力端子を短絡させると、発電機消費エネルギーよりも風車の出力が大となって、発電機が減速しない場合があるということを知見した。
【0011】
そこで、発電機出力を低下させることなく、すなわち発電電圧V、電流Iを変化させることなく、出力端子短絡時に発電機消費エネルギーを増加させる方法を検討した。発明者らは、出力端子短絡時に発電機消費エネルギー(I2R)を増加させるためにはインピーダンスを変えないで、抵抗Rを増加させる、インピーダンス配分を変えωL/Rを低下させる、つまりωLを低下させることが必要であると考え、その具体的手段を鋭意研究した。
【0012】
発明者らは、風車の回転数を同じとした場合、電圧周波数fを下げるには、発電出力を重視した発電機よりも極数を減らすこと、インダクタンスLを下げ、Rを増加させるには、コイルの巻線方法を分布巻にすることが最適な手段であることを知見し、それらの構成を採用することよって、風車の回転を安定して減速できることを確認し、この発明を完成した。
【0013】
すなわち、この発明は、風車による発電機の過回転を発電機の短絡電流による電磁ブレーキを利用して減速可能にした電気回路を有し、発電機の発電電圧と電流を変化させることなく短絡した電気回路のインピーダンスの配分を変化させて、誘導リアクタンス(ωL)を減じ実効成分である抵抗Rを増加させる手段を有し、風車の出力よりも短絡時の発電機消費エネルギーを大きくすることを特徴とする風力発電機とその設計方法である。
【0014】
また、この発明は、上記構成の風力発電機において、誘導リアクタンス(ωL)を減じ抵抗Rを増加させる手段として、発電機に少極数で分布巻コイルを有する構成を採用する風力発電機である。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1に示すこの発明による風力発電機は、8極24スロットであり、コイルは、3相Y結線、分布巻(直列)されている。図2に示す従来の風力発電機は、16極18スロットであり、コイルは、3相Y結線、集中巻(2コイル並列/相)されている。
【0016】
図1に示すこの発明による風力発電機と、図2に示す従来の風力発電機とは、発電機の外径、長さ、発電電圧を同じとした場合、この発明による風力発電機の方が、極数を減少させている分、電圧周波数fが低下する。また、コイル巻線を分布巻にしているので、インダクタンスLを下げ、Rを増加させることができる。従って、発電機消費エネルギー(I2R)が増加する。
【0017】
すなわち、図3により説明すると、発電電圧V、電流Iは変えない、言い換えれば、インピーダンスZ(=R2+(ωL)2)1/2)は変化させずに、かつ、発電機の外径、長さを同じとした場合、図2に示す従来の発電機は、図3Aに示す如き消費エネルギーであるといえる。この場合、発電機消費エネルギーは小さく、発電機消費エネルギーよりも風車の出力が大となり、発電機を減速することができない。
【0018】
一方、図1に示すこの発明による発電機は、上記インピーダンスZの配分を変化させ、ωL/R(ωL=2πfL)を小さくするとともに、実効成分であるRを大きくする。これは図3Bに示す如く、I=I’、R’>R、ωL’<ωLで、すなわち、極数を減少させることによりω(=2πf)を小さくし、コイル巻線を分布巻にすることにより、インダクタンスLを下げ、Rを大きくする。
【0019】
これによって、電流Iを変化させることなく、短絡時の発電機消費エネルギーを増加させることができ、風車の出力よりも発電機消費エネルギーを大とすることができ、発電機を安定して減速することが可能になる。
【0020】
この発明の発電機は、コイルを分布巻することが特徴である。コイル線径、ターン数は、発電機の形状、出力などによって適宜選定すればよい。また、発電機の構造としては、図1に示すインナーロータ型でもよいし、アウターロータ型でも構わない。使用する磁石は、高性能なR−Fe−B系永久磁石を用いることが好ましい。
【0021】
以上を要するに、この発明による風力発電機の設計方法は、風車による発電機の過回転を発電機の短絡電流による電磁ブレーキを利用して減速するに際し、当該発電機の発電電圧と電流を変化させることなく、短絡した電気回路のインピーダンスZの配分を変化させて、誘導リアクタンス(ωL=2πfL)を減じ実効成分である抵抗Rを増加させる手段を用いることにより、風車の出力よりも短絡時の発電機消費エネルギー(I2R)を大きくすることができる。
【0022】
【実施例】
実施例1
図1に示すこの発明による風力発電機を製作した。発電機の構成、諸特性は以下のとおりである。
発電機は、外径150mm、長さ35mm、構造は8極24スロット、巻線は3相Y結線、分布巻(直列)である。コイル線径は0.9mmであり、14ターン/コイル×2並列とした。電気特性は、発電電圧53.7V/krpm、直流抵抗0.76Ω、インダクタンス0.0027Hであった。
【0023】
図4にこの発明による風力発電機の発電機特性を示す。図中、白丸印は規格値、黒丸印は測定値を示す。また、表1に、発電電圧(V)及びR(Ω)、ωL(Ω)、ωL/Rのそれぞれの値と短絡時の消費エネルギー(W)を示す。
【0024】
比較例1
図2に示す従来の風力発電機を作製した。発電機の構成、諸特性は以下のとおりである。
発電機は、外径150mm、長さ27mm、構造は16極18スロット、巻線は3相Y結線、集中巻(2コイル並列/相)である。コイル線径は1.0mmであり、48ターン/コイルとした。電気特性は、発電電圧54.0V/krpm、直流抵抗0.33Ω、インダクタンス0.0023Hであった。
【0025】
表1に、発電電圧(V)及びR(Ω)、ωL(Ω)、ωL/Rのそれぞれの値と短絡時の消費エネルギー(W)を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1から明らかなように、この発明による風力発電機は、従来の風力発電機に比べ、発電電圧(V)はほぼ同じでありながら、Rが大きく、ωL、ωL/Rが小さく、短絡時の消費エネルギーが大きく向上していることが分かる。
【0028】
風車の出力は、実施例と比較例ともに1000rpmで419Wであるため、比較例の消費エネルギー(252W)では、回転出力を下回り、減速することができないが、この発明によれば、消費エネルギーは1332Wとなり、安定した減速が可能となることが分かる。
【0029】
【発明の効果】
この発明によれば、風力発電機及び電子回路の構造を複雑化することなく、風車による発電機の過回転を発電機の短絡電流による電磁ブレーキを利用して減速する際、短絡時の消費エネルギーを風車の出力より大きくすることができ、確実に風車の回転を減速することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による風力発電機の構成例を示す断面説明図であり、発電機構造は、8極24スロットであり、コイルは、3相Y結線、分布巻(直列)されている。
【図2】従来の風力発電機の構成例を示す断面説明図あり、発電機構造は、16極18スロットであり、コイルは、3相Y結線、集中巻(2コイル並列/相)されている。
【図3】A,Bは発電機消費エネルギーの増加方法を示す説明図である。
【図4】発電特性(回転数と発電量との関係)を示すグラフである。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a wind power generator capable of decelerating the rotation of a windmill by a short circuit of a generator output and a design method thereof.
[0002]
[Prior art]
Wind power generation generates power by converting wind energy into electrical energy by a generator, and generally includes a windmill and an AC generator.
[0003]
This wind power generation system ranges from a relatively small one of about several kW to a large one over several hundred kW, and is usually designed to generate power at a wind speed of about 2 m to 15 m per second.
[0004]
At wind speeds exceeding this upper limit, the wind power generation system becomes extremely overpowered, and overwinding causes damage to the windmill and AC generator, so it is common to have a protection mechanism to prevent this during strong winds. Is.
[0005]
As this protection device, there is a method in which the blade of the windmill has a feathering mechanism to reduce the rotation speed, but it is necessary to incorporate a mechanical mechanism in the windmill, which is not suitable for a small windmill. As such a protective device, a method of mechanically decelerating using a brake disk or the like, or a method of decelerating using an electromagnetic brake due to a short-circuit current of a generator is known.
[0006]
For example, as a method of mechanically decelerating, Japanese Patent Laid-Open No. 2002-303255 proposes a method using a hydraulic disc brake. Moreover, as a deceleration method using an electromagnetic brake due to a short circuit of a generator output, for example, JP 2000-199473 A and JP 2002-339856 A have been proposed.
[0007]
[Problems to be solved by the invention]
However, in the former method of mechanically decelerating, the structure of the wind power generation system becomes complicated and there is a problem of system maintenance. Further, there is a problem that the control rotation speed cannot be set freely.
[0008]
In addition, the latter method using the electromagnetic brake has a problem that a sufficient braking torque cannot be obtained depending on the winding specifications, and in particular, the problem is that the circuit is complicated in Japanese Patent Laid-Open No. 2002-339856. was there.
[0009]
An object of the present invention is to provide a wind power generator capable of decelerating the rotation of a windmill by a short circuit of a generator output without complicating the structure of a wind power generator and the structure of an electronic circuit, and a design method thereof.
[0010]
[Means for Solving the Problems]
As a result of various investigations on the method of decelerating using an electromagnetic brake, the inventors have determined that when the output terminal is short-circuited when the windmill is rotating at a high speed (for example, 1000 rpm or more), the output of the windmill is greater than the energy consumption of the generator. I found out that the generator might not slow down.
[0011]
Therefore, a method for increasing the generator energy consumption when the output terminal is short-circuited without reducing the generator output, that is, without changing the generated voltage V and the current I was studied. The inventors do not change the impedance to increase the generator energy consumption (I 2 R) when the output terminal is short-circuited, but increase the resistance R, change the impedance distribution, and decrease ωL / R, that is, reduce ωL. We thought that it was necessary to reduce it, and intensively studied the specific means.
[0012]
The inventors of the present invention have the same number of rotations of the windmill, in order to reduce the voltage frequency f, to reduce the number of poles compared to the generator that emphasizes the power generation output, to reduce the inductance L, and to increase R, The present inventors have found that it is an optimum means to use a coil winding method as distributed winding, and by adopting these configurations, it has been confirmed that the rotation of the windmill can be stably decelerated, and the present invention has been completed.
[0013]
In other words, the present invention has an electric circuit that can decelerate over-rotation of a generator by a windmill using an electromagnetic brake due to a short-circuit current of the generator, and short-circuited without changing the power generation voltage and current of the generator. It has means for changing the impedance distribution of the electric circuit to reduce the inductive reactance (ωL) and increase the resistance R, which is an effective component, and to increase the generator energy consumption at the time of short circuit than the output of the windmill. And the design method.
[0014]
Further, the present invention is a wind power generator adopting a structure in which the generator has a small number of poles and distributed winding coils as means for reducing the inductive reactance (ωL) and increasing the resistance R in the wind power generator having the above configuration. .
[0015]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
The wind power generator according to the present invention shown in FIG. 1 has 8 poles and 24 slots, and the coils are three-phase Y-connected and distributedly wound (in series). The conventional wind power generator shown in FIG. 2 has 16 poles and 18 slots, and the coils are three-phase Y-connected and concentrated winding (two coils in parallel / phase).
[0016]
When the wind turbine generator according to the present invention shown in FIG. 1 and the conventional wind turbine generator shown in FIG. 2 have the same outer diameter, length, and power generation voltage, the wind turbine generator according to the present invention is more suitable. As the number of poles is reduced, the voltage frequency f is lowered. Further, since the coil winding is distributed, the inductance L can be reduced and R can be increased. Therefore, the generator energy consumption (I 2 R) increases.
[0017]
That is, referring to FIG. 3, the generated voltage V and the current I are not changed, in other words, the impedance Z (= R 2 + (ωL) 2 ) 1/2 ) is not changed and the outer diameter of the generator is changed. When the lengths are the same, it can be said that the conventional generator shown in FIG. 2 consumes energy as shown in FIG. 3A. In this case, the generator consumption energy is small, the output of the windmill is larger than the generator consumption energy, and the generator cannot be decelerated.
[0018]
On the other hand, the generator according to the present invention shown in FIG. 1 changes the distribution of the impedance Z, reduces ωL / R (ωL = 2πfL) and increases the effective component R. As shown in FIG. 3B, I = I ′, R ′> R, ωL ′ <ωL, that is, by reducing the number of poles, ω (= 2πf) is reduced, and the coil winding is distributed. As a result, the inductance L is lowered and R is increased.
[0019]
As a result, the generator consumption energy at the time of the short circuit can be increased without changing the current I, the generator consumption energy can be made larger than the output of the windmill, and the generator can be decelerated stably. It becomes possible.
[0020]
The generator of the present invention is characterized in that coils are distributedly wound. What is necessary is just to select a coil wire diameter and the number of turns suitably according to the shape, output, etc. of a generator. Further, the generator structure may be the inner rotor type shown in FIG. 1 or the outer rotor type. The magnet used is preferably a high-performance R—Fe—B permanent magnet.
[0021]
In short, the wind turbine generator design method according to the present invention changes the generated voltage and current of the generator when decelerating over-rotation of the generator by the windmill using an electromagnetic brake due to a short-circuit current of the generator. Without altering the distribution of the impedance Z of the short-circuited electric circuit to reduce the inductive reactance (ωL = 2πfL) and increase the effective component resistance R, the power generation at the time of the short circuit rather than the output of the windmill The machine energy consumption (I 2 R) can be increased.
[0022]
【Example】
Example 1
A wind power generator according to the present invention shown in FIG. 1 was produced. The configuration and characteristics of the generator are as follows.
The generator has an outer diameter of 150 mm, a length of 35 mm, a structure of 8 poles and 24 slots, a winding of three-phase Y connection, and distributed winding (in series). The coil wire diameter was 0.9 mm, and 14 turns / coil × 2 in parallel. The electrical characteristics were a generated voltage of 53.7 V / krpm, a DC resistance of 0.76Ω, and an inductance of 0.0027H.
[0023]
FIG. 4 shows the generator characteristics of the wind power generator according to the present invention. In the figure, white circles indicate standard values and black circles indicate measured values. Table 1 shows the values of the generated voltage (V) and R (Ω), ωL (Ω), and ωL / R and the energy consumption (W) at the time of short circuit.
[0024]
Comparative Example 1
A conventional wind power generator shown in FIG. 2 was produced. The configuration and characteristics of the generator are as follows.
The generator has an outer diameter of 150 mm, a length of 27 mm, a structure of 16 poles and 18 slots, a winding of three-phase Y connection, and concentrated winding (two coils in parallel / phase). The coil wire diameter was 1.0 mm and was 48 turns / coil. The electrical characteristics were a generated voltage of 54.0 V / krpm, a DC resistance of 0.33Ω, and an inductance of 0.0023H.
[0025]
Table 1 shows the values of power generation voltage (V), R (Ω), ωL (Ω), and ωL / R and energy consumption (W) at the time of short circuit.
[0026]
[Table 1]
[0027]
As is apparent from Table 1, the wind power generator according to the present invention has substantially the same power generation voltage (V) as that of the conventional wind power generator, but has a large R, small ωL, ωL / R, and a short circuit. It can be seen that the energy consumption is greatly improved.
[0028]
Since the output of the windmill is 419 W at 1000 rpm in both the example and the comparative example, the energy consumption of the comparative example (252 W) is below the rotational output and cannot be decelerated. However, according to the present invention, the energy consumption is 1332 W. It can be seen that stable deceleration is possible.
[0029]
【The invention's effect】
According to the present invention, energy consumption at the time of a short circuit can be reduced when the over-rotation of the generator by a wind turbine is decelerated using an electromagnetic brake due to a short-circuit current of the generator without complicating the structure of the wind power generator and the electronic circuit. Can be made larger than the output of the windmill, and the rotation of the windmill can be surely decelerated.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a cross-sectional explanatory view showing a configuration example of a wind power generator according to the present invention, in which a generator structure has 8 poles and 24 slots, and a coil is three-phase Y-connected and distributed winding (in series).
FIG. 2 is a cross-sectional explanatory view showing a configuration example of a conventional wind power generator, the generator structure is 16 poles and 18 slots, and the coils are three-phase Y-connected and concentrated winding (two coils in parallel / phase) Yes.
FIGS. 3A and 3B are explanatory diagrams showing a method of increasing generator energy consumption. FIGS.
FIG. 4 is a graph showing power generation characteristics (relationship between rotation speed and power generation amount).