JP2005005095A - 高分子電解質型燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池のセパレータから溶出する成分とその量を制御することにより、長期的に信頼性を維持する燃料電池を提供する。
【解決手段】高分子電解質膜と、その両面に配置した一対の電極と、電極の一方に燃料ガスを供給し、他方に酸化剤ガスを供給するガス流路を有する一対の導電性セパレータとを具備する燃料電池において、前記導電性セパレータ1g当たりから水中に溶出する成分及び量を、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下に制御する。
【選択図】 なし
【解決手段】高分子電解質膜と、その両面に配置した一対の電極と、電極の一方に燃料ガスを供給し、他方に酸化剤ガスを供給するガス流路を有する一対の導電性セパレータとを具備する燃料電池において、前記導電性セパレータ1g当たりから水中に溶出する成分及び量を、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下に制御する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポータブル電源、電気自動車用電源、家庭内コージェネレーションシステム等に使用する高分子電解質を用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子電解質を用いた燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを、電気化学的に反応させることで、電力と熱とを同時に発生させるものである。この燃料電池は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜とその両面に配置された一対の電極からなる。電極は、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層、およびその外面に形成された、通気性と電子導電性を併せ持つガス拡散層から構成される。ガス拡散層は、例えばカーボンペーパーで形成される。
【0003】
供給される燃料ガスや酸化剤ガスが外部にリークしたり、二種類の燃料ガスが互いに混合したりしないように、電極の周囲には高分子電解質膜を挟んでガスシール材やガスケットが配置される。このガスシール材やガスケットは、電極及び高分子電解質膜と一体化してあらかじめ組み立てられる。これをMEA(電極電解質膜接合体)と呼ぶ。MEAの外側には、これを機械的に固定するとともに、隣接したMEAを互いに電気的に直列に接続するための導電性のセパレータが配置される。セパレータのMEAと接触する部分には、電極面に反応ガスを供給し、生成ガスや余剰ガスを運び去るためのガス流路が形成されている。ガス流路はセパレータと別に設けることもできるが、セパレータの表面に溝を設けてガス流路とする方式が一般的である。これらのMEAとセパレータを交互に重ねていき、10〜200セル積層し、その積層体を集電板および絶縁板を介して端板で挟み、これらを締結ボルトで両端から固定するのが一般的な積層電池の構造である。
【0004】
このような高分子電解質型燃料電池において、セパレータは導電性が高く、かつ燃料ガスに対して高いガス気密性を持ち、さらに水素と酸素との酸化還元反応に対して高い耐食性、すなわち耐酸性を持つ必要がある。このような理由から従来のセパレータは、グラッシーカーボン板の表面に切削加工でガス流路を形成する方法により製造されている。また、別のセパレータの製造方法として、天然黒鉛や人造黒鉛等の導電性炭素材料に、ポリエチレンやポリビニルアルコール等の熱可塑性樹脂、またはフェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダーとして添加したものを、樹脂が黒鉛化しない温度で、加熱圧縮成形、トランスファー成形または射出成形しているものもある(例えば、特許文献1または2参照。)。
【0005】
ところが、グラッシーカーボン板を切削加工してセパレータを作製する方法では、グラッシーカーボン板の材料コストそのものが高いうえに、切削するためのコストを引き下げることも難しく、実用化が困難である。
【0006】
一方、バインダーとして熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を添加した導電性炭素材料を成形してセパレータを作製する方法では、樹脂の種類や添加量を最適化することにより、燃料電池のセパレータとして必要な導電性や物理的強度を付与することが可能である。また、加圧圧縮成形、トランスファー成形または射出成形といった成形方法は、切削加工に比べて生産速度が速く、熱硬化製樹脂を使用する場合には、硬化剤や硬化促進剤の添加により硬化時間の短縮が可能であるなど、量産性の面でも優れている。
【0007】
しかしながら、導電性炭素材料と樹脂からなるセパレータは、高温の水蒸気に長時間曝されることで、導電性炭素材料中の不純物成分や樹脂成分に含まれる官能基や未反応基が遊離あるいは分解されたものが溶出することが知られている。
【0008】
例えば、通常の天然黒鉛、人造黒鉛、ケッチェンブラック等の導電性炭素材料は、不純物として30ppm程度の硫化物を含んでおり、硫酸イオン、亜硫酸イオンとなって溶出する可能性がある。また、バインダーとして使用可能な熱硬化型樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂は、その製造過程で未反応部分にクロロ基を持つため、硬化後の樹脂より塩化物イオンが溶出する。臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂からは臭化物イオンが溶出する。また、量産性を高めるために必要な硬化剤や硬化促進剤には一般的にアミン系の化合物が用いられており、硬化後の樹脂より、アンモニアあるいはアンモニウムイオンが溶出する。また、フッ素系の熱可塑性樹脂ではフッ化物イオンの溶出が起こる。また、ノボラック型のフェノール樹脂においても、燃料電池の運転時に遊離フェノール、ホルマリン、アルコール、未反応の樹脂への添加物などの有機物や、アンモニウムイオンなどのイオンの溶出が起こる(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
セパレータから溶出するイオンあるいは有機物は、以下に示すように燃料電池の特性低下を引き起こすという問題を有する。
【0010】
第一に、特許文献3に記載の燃料電池において、冷却水や生成水の導電性が上昇することによる電池性能の低下が指摘されている。
【0011】
第二に、塩化物イオン等のハロゲンイオンのように、白金と錯体を形成するイオン種や、アンモニアや硫化物等の白金表面への吸着性の高いイオン種は、燃料電池電極の触媒層にある白金の有効反応面積を減少させる。
【0012】
セパレータから溶出するイオン種が白金電極に与える影響を確認するために、本発明者らは、図7に示す装置を用いて、酸化還元反応の試験を行った。
【0013】
図7は、酸化還元反応の試験を行うための装置概略図である。
反応槽60中の電解液として1Nの硫酸水溶液500mLを用い、作用極として1cm2に面積規制したφ1mmの白金線62および対極として5cm×10cmの白金メッシュ61を用い、参照極63にはRHE(可逆水素電極)を用いた。
【0014】
酸素還元反応を試験するときには酸素ガスを、水素酸化反応を試験するときには水素ガスを、作用極近傍にバブリングすることにより供給した。そして、目的とする反応ガスを30分間以上バブリングし、作用極の電位が安定した点を自然電位とした。電位が安定した後、ポテンショスタット64により作用極の電位を自然電位から酸化反応では+100mV、還元反応では−300mVの電位になるように制御し、3時間後の電流値を測定した。
【0015】
次いで、セパレータから溶出する可能性があるイオン種を含む溶液を反応槽60に添加し、3時間後の電流値を測定した。そして電解液を1Nの硫酸水溶液と交換し、さらに3時間後の電流値を測定した。この試験で添加した溶液は、硫化水素、亜硫酸、フッ化水素、塩化水素、臭化水素または硫酸アンモニウムを含んでおり、それぞれのイオン濃度を、電解液中で100ppm、500ppm、1000ppm、5000ppmと変化させた。
【0016】
図8は、塩化物イオンを5000ppm添加した実験における酸素還元電流の変化を、初期電流値を100%としたときの経過時間の推移で表している。図より、実験開始から500秒後に塩化物イオンを添加すると、電流値の値は、−0.2mA/cm2の初期値(表中の黒ひし形)から、−0.12mA/cm2へと40%も値(表中の黒三角)が減少した。次いで、実験開始から2000秒後に電解液を交換しても電流値(表中の黒丸)は元の値に戻らなかった。
【0017】
このことから、塩化物イオンは酸素還元電位において白金表面に吸着し、酸素還元反応が起こる活性サイトを塞いでしまうこと、つまり、塩化物イオンが白金表面の有効反応面積を減少させることが分かった。
【0018】
次に、酸素還元電流値と電解液中での不純物濃度との関係を、不純物を含まない電解液における酸素還元電流値を100%として図9に示す。図9より、亜硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオンおよびアンモニウムイオンを不純物として電解液に添加すると、添加量の増加に伴い電流値が減少することがわかる。また、フッ化物イオンを電解液に添加しても、電流値が変化しないことがわかる。
【0019】
また、水素酸化電流値と電解液中での不純物濃度との関係を、不純物を含まない電解液における水素酸化電流値を100%として図10に示す。ここでも、酸素還元反応と同様に、亜硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオンおよびアンモニウムイオンを不純物として電解液に添加すると、添加量の増加に伴い電流値が減少することがわかる。また、フッ化物イオンを電解液に添加しても、電流値が変化しないことがわかる。
【0020】
以上より、セパレータから溶出するイオン種の中で亜硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオンおよびアンモニウムイオンは、アノードおよびカソードの何れの電極反応においても、白金表面の有効反応面積を減少させることがわかる。
【0021】
第三に、有機物は触媒層の細孔、高分子電解質膜の表面または高分子電解質の官能基に吸着し、触媒層中における反応ガスや生成水の移動度を低下させる。
このような電池特性の低下を防ぐ手段として、特許文献3では、90℃の熱水中で500時間洗浄後、その熱水の電気伝導度が50μS/cm以下となるようなセパレータを燃料電池に用いることが提案されている。
【0022】
しかしながら、セパレータの洗浄液の電気伝導度を規定しても、非電解質である有機物の溶出量を評価することはできない。また、電気伝導度が50μS/cmの水には数ppmのイオン種が存在するが、上述したように、溶解するイオン種によって、電池特性が受ける影響は異なる。電池特性に影響を与えないイオン種のみが溶解している場合には、洗浄液の電気伝導度が50μS/cm以上であったとしても電池特性は低下しない。逆に、電気伝導度が50μS/cm以下であっても、電池特性を大きく低下させるイオン種が洗浄液に溶解している場合がある。
【0023】
したがって、燃料電池の長期的な信頼性を得るためには、セパレータの洗浄液の電気伝導度を制御するだけでは不充分であり、セパレータから溶出する成分毎に溶出量を制御する必要がある。
【0024】
【特許文献1】
特開昭60−246568号公報
【特許文献2】
特開平9−505002号公報
【特許文献3】
特開2002−8676号公報
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記を鑑みたものであり、長期的に信頼性を維持する燃料電池を提供するために、燃料電池のセパレータから溶出する成分とその量を制御する。また、溶出成分を低減させるために、セパレータもしくはその原料の洗浄処理を行う。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の両面に配置した一対の電極と、前記電極の一方に燃料ガスを供給し、他方に酸化剤ガスを供給するガス流路を有する一対の導電性セパレータとを具備した高分子電解質型燃料電池に関し、前記導電性セパレータを80〜100℃の水中に浸漬させた状態で50時間保持した場合に、前記導電性セパレータ1g当たりから前記水中に溶出する成分及び量が、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることを特徴とする。
【0027】
前記導電性セパレータは、以下に示す(a)〜(f)のいずれかの洗浄処理を行ったものであることが好ましい。
(a)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中に、導電性セパレータを10時間以上浸漬させる。
(b)二酸化炭素を含むガスをバブリングし、かつ80℃以上に保持した水中に、導電性セパレータを10時間以上浸漬させる。
(c)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中に、導電性セパレータを浸漬させ、1時間以上超音波洗浄を行う。
(d)ガス温度80℃以上かつ相対湿度100%のガスに、前記導電性セパレータを10時間以上暴露させる。
(e)導電性セパレータをアノードとして、水素雰囲気下の水中あるいはpHが−0.3以上の酸性溶液中で、自然電位に対して+0.05〜+0.2Vの電位をアノードにかけて0.5時間以上電気分解を行う。
(f)導電性セパレータをカソードとして、水中あるいはpHが−0.3以上の酸性溶液中で、自然電位に対して−0.1V以下の電位をカソードにかけて0.5時間以上電気分解を行う。
なお、自然電位とは、アノードおよびカソードのどちらにも電位を印加しない安定状態において、カソードまたはアノードが可逆水素電極に対して有する電位差をいう。
【0028】
本発明の高分子電解質型燃料電池において、前記導電性セパレータは、導電性炭素材料およびバインダー樹脂からなることが好ましい。
【0029】
前記導電性炭素材料を、80〜100℃の水中に浸漬させた状態で50時間保持した場合、前記導電性炭素材料1g当たりから水中に溶出する成分及び量は、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることが好ましい。
【0030】
前記導電性炭素材料は、以下に示す(g)〜(k)のいずれかの洗浄処理を行ったものであることが好ましい。
(g)不活性ガス雰囲気下または10−1Pa以下の高真空雰囲気下で、導電性炭素材料を500℃以上の温度で焼成処理を行う。
(h)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中に、導電性炭素材料を10時間以上浸漬させる。
(i)二酸化炭素を含むガスをバブリングし、かつ80℃以上に保持した水中に、導電性炭素材料を10時間以上浸漬させる。
(j)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中で、導電性炭素材料を1時間以上超音波洗浄する。
(k)ガス温度80℃以上かつ相対湿度100%のガスに、導電性炭素材料を10時間以上暴露させる。
【0031】
また、前記樹脂を、80〜100℃の水中に浸漬させた状態で50時間保持した場合、前記樹脂1g当たりから水中に溶出する成分及び量は、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることが好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料電池は、導電性セパレータから溶出して燃料電池の特性低下を引き起こす不純物物質の種類と量を制御し、不純物物質がセパレータ中に含まれている場合には、これらを一定レベルまで除去する点に特徴を有する。
【0033】
セパレータから溶出する不純物物質には、亜硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、アンモニウムイオンおよびTOCがある。ここで、TOC(total organic carbon)とは、水中に存在する有機物中の炭素の量を表し、有機体炭素ともいう。以下、TOCを単に有機物ともいう。
【0034】
不純物物質は、長期間の燃料電池の運転において、微量ずつ溶出・蓄積して、電池特性劣化を進行させる。しかし、所定の除去処理を行った導電性セパレータにはイオンおよび有機物が存在しないため、その導電性セパレータを用いた燃料電池は、高い電池特性を維持することができる。
【0035】
導電性セパレータは、導電性炭素材料とバインダー樹脂からなることが好ましい。
前記導電性炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛、メソフェーズカーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、グラッシーカーボンなどを挙げることができるが、特に限定はない。さらに、導電助剤としてカーボンナノチューブなどの繊維状カーボンフィラーや、例えば、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、鉛、スズ、チタン、亜鉛、タングステン、コバルト、モリブデンなどやそれらの合金などの金属フィラーを添加してもよい。
【0036】
前記樹脂としては、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリオキサメチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、フッ素樹脂、ポリフェニルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテンなどを用いることができる。
【0037】
また、熱硬化性樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂などのアミノ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、レゾール型、ノボラック型などのフェノール樹脂、およびポリイミド樹脂が好ましく、それらを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。エポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ希釈剤としてスチレンオキシド、ブチルグリシジルエーテルなどのアルコールのグリシジルエーテル、カルボン酸のグリシジルエステルなど、さらにグリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン類を適宜添加してもよい。
【0038】
硬化剤、硬化触媒としては、アミン、ポリアミン、アミンアダクト、アミン塩、ポリアミド、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、尿素化合物、メラミン誘導体、ルイス酸塩、ケチミン、酸ヒドラジド、酸無水物、ポリチオール、スルフィド誘導体、フェノール樹脂、アミノ樹脂などを用いてもよい。
【0039】
また、強度・靱性などの物性調整を目的として、例えば、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリニトリルブタジエンなどのゴム類、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、セルロース類、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などを適宜配合してもよい。また、安全性向上のための難燃材としてデカブロモジフェニルエーテル、ブロモビスフェノールS、TBBA誘導体、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、アリルオキシブロモベンゼン、ジブロモフェノール、ジブロモクレゾール、トリブロモフェノール、モノエポキシ、ブロモフェノキシエタノールなどを適宜配合してもよい。
【0040】
セパレータから溶出するイオン種あるいは有機物が、電極あるいは高分子電解質の性能を劣化させることで電池特性を低下させることについては既述したが、次に実際の燃料電池の性能と溶出成分の量との関係を明らかにし、各成分について許容できる溶出量を定め、管理する必要がある。
【0041】
本発明においては、前記導電性セパレータより切り出した試験片を、80〜100℃の水中に、空気に触れる部分が無いように完全に浸漬させた状態で50時間保持した場合、前記導電性セパレータ1g当たりから水中に溶出する成分及び量は、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることを要する。いずれの成分が上記範囲を外れても、燃料電池の特性が低下してしまう。いずれかの成分が上記範囲を外れる場合、例えば燃料電池を10000時間運転すると、電圧低下等の劣化が生じる。
【0042】
ここで、現在想定されている燃料電池の運転温度は60〜90℃と高温である。セパレータに使用されるバインダー樹脂の耐熱温度は約150〜400℃と種類により異なり、また樹脂中の可溶成分である遊離した有機物などについても、一定温度に達しないと溶出しない場合がある。以上を鑑み、セパレータより切り出した試験片の溶出試験を行うための水の温度は、燃料電池の運転温度上限付近である80〜100℃が適当と言える。
【0043】
また、溶出試験開始後、試験片の形状に依存して、しばらくの間は溶出量にバラツキが生じるが、50時間経過後では、サンプルの表面積や形状に関係なく、溶出成分の溶出量は同レベルに収束すると考えられる。したがって、溶出試験の時間は50時間以上が適当である。また、量産性を考慮した場合、試験時間は最短であることが望ましいことから、試験時間は50時間が最適である。
【0044】
溶出試験後の水中における溶出成分の定量方法については、イオンクロマトグラフィー、原子吸光分析、誘導結合プラズマ質量分析または誘導結合プラズマ発光分析などによるイオン成分の定量方法、TOC計測装置などによるTOC成分の定量方法を用いることができる。ただし、これらに限られず、水中に溶出する微量元素の濃度を分析できれば、どのような方法を用いてもよい。
【0045】
なお、前記成分及び量は、TOCで100μg以下、アンモニウムイオンで1μg以下、塩化物イオンで1μg以下、臭化物イオンで5μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることがより好ましい。
【0046】
次に、このようなイオン種および有機物の溶出量が少ないセパレータを作成する方法について説明する。
まず、導電性炭素材料と樹脂を混合してセパレータを成形した後、洗浄によりイオン種および有機物を抽出する方法がある。イオンのような電荷をもった化学種は、水のように比較的双極子モーメントが大きく、電子供与性や電子受容性が大きい溶媒分子との親和性が高く、溶媒和イオンを生成しやすいことから、洗浄に用いる溶媒としては、水が最も適している。洗浄に用いる水は、セパレータからのイオン抽出速度を速くし、セパレータの二次汚染を防止する点から、電気伝導度が1μS/cm以下であることが好ましく、望ましくは0.1μS/cm以下の超純水を用いることで、より高い洗浄効果が期待できる。
【0047】
セパレータからのもう一つの溶出物質である有機物については、有機物が酢酸などの有機酸類を除いて、一般的には双極子モーメントが小さな中性分子であるため、抽出には一般的に有機溶媒が適当である。しかしながら、ほとんどの有機溶媒はセパレータの構成材量である樹脂を溶解する性質を持つため、セパレータの洗浄液としては適切でない場合がある。したがって、有機物の抽出においても、イオン種の場合と同様に、水あるいは水溶液を洗浄液として使用することが考えられる。燃料電池の運転時に溶出する有機物である遊離フェノールやアルコール類やホルマリンなどは、水に対する溶解度が高いため、洗浄液として水あるいは水溶液を用いても、必要な洗浄効果を得ることができる。
【0048】
セパレータに対する洗浄液の量は多いほど良いが、セパレータが完全に没した状態となるに足るだけの量が最低限必要である。
【0049】
セパレータにアミン系の樹脂が用いられている場合のようにアンモニアが溶出するときには、既述の水に酸を加えて酸性溶液とすることで、中和反応によりアンモニウムイオンの抽出速度を高くし、洗浄効果を高めることができる。
【0050】
ここで使用する酸は、燃料電池の性能を低下させるイオン成分を含まないことが条件であり、硫酸または炭酸がこの条件に該当する。硫酸については、濃度が濃すぎると塩化物イオンや臭化物イオンといったハロゲンイオンや有機物の溶解度を低下させたり、セパレータの耐性や、洗浄作業における安全性を低下させたりすることから、洗浄液のpHは−0.3以上とすることが好ましい。より好ましくはpHが0〜4の範囲である。
【0051】
炭酸については、燃料電池の燃料極に供給されるガスでもあり、燃料電池の特性を低下させるイオン種が残存する可能性も低いため、洗浄に用いる酸としては望ましい。しかし、80℃といった溶出を促進させる高温雰囲気での二酸化炭素の溶解度は非常に低く、炭酸濃度が10−4mol/Lの桁となるため、中和に必要な当量を得ることができない。そこで、セパレータを浸漬させた洗浄液へ二酸化炭素を含むガスをバブリングすることにより、必要な炭酸イオンを供給させることが可能となる。
【0052】
洗浄時の液温は、80℃未満では、効率的に溶出成分を基準値以下にすることが困難である。液温を80℃以上とすることで、燃料電池運転時に溶出する成分を効果的に抽出することが可能となる。より好ましくは、90℃以上である。
【0053】
また、セパレータの浸漬時間は、10時間未満では溶出成分を基準値以下にすることが困難であることから、10時間以上であることが好ましい。より好ましくは、20時間以上である。
【0054】
超音波洗浄機を用いると、セパレータ中の遊離成分に衝撃を与え、溶出を促進させることが可能である。洗浄時間は、1時間以上であることが好ましく、セパレータを水中に浸漬させる場合よりも洗浄時間を短縮させることができる。より好ましい洗浄時間は、2時間以上である。
【0055】
相対湿度100%のガスにセパレータを暴露させて洗浄する方法もある。この場合、セパレータを水中に浸漬させたときと同様の洗浄効果が得られる。この方法では、セパレータ表面に結露した水が洗浄効果を示す。水蒸気を用いることから、100℃以上の雰囲気温度における洗浄処理が可能である。また、その他の利点として、セパレータの材料である導電性炭素の細孔内部にまで水蒸気が浸透して、イオンや有機物を抽出させることもできる。
【0056】
相対湿度100%のガスにセパレータを暴露させる場合、洗浄時の雰囲気温度は、セパレータに含まれる樹脂が耐えられる限界温度付近まで高温とすることが、洗浄効果を高める上で望ましい。また、水中にセパレータを浸漬させる場合と同様の理由で、雰囲気温度は最低でも80℃以上とすることが望ましい。洗浄時間については、ガス温度が高温の場合には短縮できる場合もあるが、80℃程度の場合には、水中へ浸漬させる場合と同様に、10時間以上が必要となる。
【0057】
水中へセパレータを浸漬する場合と同様に、酸性物質を含むガスを洗浄に用いることで、アンモニウムイオンの抽出を促進させる効果が得られる。ここで用いる酸性物質としては、セパレータに使用されている樹脂を浸食せず、亜硫酸、塩化水素などのように燃料電池の特性を低下させないものが好適である。例えば燃料電池の燃料ガスに含まれる二酸化炭素などが適している。
【0058】
また、洗浄ガス中の酸性物質濃度は、アンモニアの抽出速度を高めるためには高い方が望ましく、例えば1×10−3mol/L以上が望ましい。また、ここで使用する洗浄ガスは、密閉した空間内で停滞した状態でも、流速を持った状態でも、どちらの状態でも問題はない。
【0059】
セパレータを電極として、電解液中で、電気分解を行う洗浄方法もある。
水素ガスの酸化反応では、電極となるセパレータ表面にバブリングなどにより水素を供給しながら、電極電位を自然電位から正の方向に制御する。そのとき、電極表面では、式(1)の反応が起こり、水素イオンが生成する。
【0060】
H2(g) → 2H+ + 2e− (1)
【0061】
式(1)の反応で生成した水素イオンは、セパレータ中のアンモニウムイオンの抽出を促進する。しかしながら、自然電位に対して0.2Vを超える電位を電極に印加すると、式(2)の反応により、セパレータを構成する炭素が酸化される可能性があるため、電極電位は自然電位に対して0.2V以下とする必要がある。ただし、電極電位を自然電位に対して0.05V未満とすると、反応速度が遅くなり、電流が流れにくくなるため、電極電位は0.05V以上、より好ましくは、0.1V以上とすることが望ましい。
【0062】
また、電気分解を行う時間が0.5時間未満では、セパレータ中の可溶なイオン種や遊離しやすい有機物を十分に除去することができないので、0.5時間以上、より好ましくは1時間以上の電気分解を行うことが好ましい。
【0063】
C + 2H2O → CO2 + 4H+ + 4e− (2)
【0064】
このとき、電解液には、セパレータを二次汚染する虞のないものを使用しなければならない。二次汚染の虞を排除する観点からは、純水を用いることが望ましいが、純水は絶縁体であるため、電流を流すのに大量の電力を必要とする。そこで、支持電解質として硫酸を添加することで、電解液の電気伝導性を向上させてもよい。ただし、硫酸濃度が濃すぎると、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲンイオンや有機物の溶解度を低下させることから、洗浄液のpHは−0.3以上、さらには0〜4とすることが好ましい。
【0065】
一方、水素ガスを発生させる反応では、電極電位を自然電位から負の方向に制御する。電解液が中性の場合には式(3)の反応が進行し、酸性の場合には式(4)の反応が進行する。そして、水酸化物イオンや水素ガスが発生する。
【0066】
2H2O + 2e → H2(g)+2OH− (3)
2H+ + 2e → H2(g) (4)
【0067】
式(3)で発生した水酸化物イオンは、セパレータ中に含まれる樹脂の官能基末端にある分離しやすいハロゲンイオンと置換して、ハロゲンイオンの溶出を促進させる。また、式(5)の反応により、ホルムアルデヒドなどの有機物を分解・溶出させる。
【0068】
2RCHO + OH− → RCH2OH + RCOO− (5)
【0069】
また、セパレータ表面から水素ガスを発生させることで、その衝撃により、遊離した有機物などの溶出を促進させる効果もある。
式(3)および式(4)の反応は、電極であるセパレータの電位を自然電位から負にすることで進行する。ただし、洗浄効果を発揮するために必要なガス発生量を得るためには、セパレータの電位を自然電位に対して−0.1V以下、さらには−0.2V以下とすることが好ましい。
【0070】
以上のように、電気分解を行う方法によれば、セパレータ表面の反応で発生する水素イオン、水酸化物イオンまたは水素ガスを、セパレータ中の可溶なイオン種や遊離しやすい有機物と反応させた上で除去することができる。従って、セパレータの洗浄に有効である。
【0071】
セパレータの材料として、既述のイオン種や有機物の溶出が少ない導電性炭素材料や樹脂を用いる場合、洗浄を行わずに、既述のイオン種および有機物の溶出量が少ないセパレータを作製することができる。
【0072】
セパレータに高い導電性を付与するためには、セパレータ中における導電性炭素材料の割合を大きくする必要があり、その割合は50〜95%に達する場合もある。このことから、セパレータから溶出する成分の量を既述の基準値以下とするためには、導電性炭素材料から溶出する成分についても、同様の基準値以下とすることが望まれる。
【0073】
すなわち、導電性炭素材料1g当たりから水中に溶出する成分及び量は、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることが好ましい。
【0074】
このような高純度の導電性炭素材料として、例えば窒素、Ar等の不活性ガス雰囲気下、酸素を遮断した環境下、高真空下等で、500℃以上の高温で、加熱処理して灰分を揮散させた黒鉛粉末などの炭素粉末が挙げられる。
【0075】
また、通常の導電性炭素材料を、水、酸性溶液または加湿炭酸ガス等を用いて、前述したセパレータと同様に洗浄処理を行うことによっても、高純度の導電性炭素材料を得ることができる。
【0076】
次に、樹脂については、セパレータ中の樹脂の割合を高めると、セパレータの機械的強度が向上するが、導電性が低下してしまう。そのため、セパレータ中の樹脂の割合は、一般に50%以下である。また、樹脂1g当たりから溶出する成分の溶出量の上限値についても、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下となることが好ましい。
【0077】
このような樹脂材料としては、例えば液晶ポリマー、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂などで、純度の高い等級のものがあげられる。これらの材料は、比較的高価であり、また、生産性を高める添加物を入れることが困難なものもあるが、溶出物の少ない高品質のセパレータを作製することができる。
【0078】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
《実施例1〜26、比較例1〜45》
(i)電極電解質膜接合体(MEA)の作製法
本実施例で使用するMEAの作製方法について図1を用いて説明する。図1は、MEAの構成を示す縦断面図である。
アセチレンブラック粉末に、平均粒径約30Åの白金粒子を25重量%担持したものを電極の触媒粉末とした。この触媒粉末をイソプロピルアルコールに分散させた液に、パーフルオロカーボンスルホン酸の粉末をエチルアルコールに分散させた液を混合し、触媒ペーストを得た。
【0080】
電極の支持体になるカーボンペーパーを撥水処理した。ここでは外寸8cm×10cm、厚み360μmのカ−ボン不織布(TGP−H−120、東レ(株)製)からなる拡散層11を、フッ素樹脂含有の水性ディスパージョン(ネオフロンND1、ダイキン工業(株)製)に含浸した後、これを乾燥し、400℃で30分間加熱することで、撥水性を与えた。
【0081】
拡散層11の一方の面に、触媒ペーストをスクリーン印刷法を用いて塗布することで触媒層12を形成した。このとき、触媒層12の一部は、拡散層11の空隙に埋め込まれた。
このようにして触媒層12と拡散層11とからなる電極13を得た。電極13に含まれる白金量は0.5mg/cm2、パーフルオロカーボンスルホン酸の量は1.2mg/cm2となるよう調整した。
【0082】
次に、外寸が10cm×20cmのプロトン伝導性高分子電解質膜14の裏表両面に、一対の電極13を、触媒層12が高分子電解質膜14に接するようにホットプレスで接合し、これを電極電解質膜接合体(MEA)15とした。ここでは、プロトン伝導性高分子電解質膜14として、パーフルオロカーボンスルホン酸を50μmの厚みに薄膜化したものを用いた。
【0083】
(ii)セパレータの成形
次に、表1に記載の導電性炭素材料と樹脂、および必要に応じ硬化剤等を用い、目的の組成比となるように秤量後、ニーダーで混合し、押出成形することにより、φ3mm×5mmのペレットを作成した。これをセパレータ成形用の金型を用いて、下記の[成形条件]と[圧縮条件]で圧縮成型を行い、導電性セパレータを作成した。
【0084】
【表1】
【0085】
[成型条件]
シリンダ温度 :90℃
射出圧力 :180MPa
射出時間 :10sec
金型温度 :180℃
硬化時間 :60sec
【0086】
[圧縮条件]
成型圧力 :190MPa
成形温度 :180℃
成形時間 :300sec
【0087】
以上の方法で作成したセパレータの外観を図2〜4に示す。図2は導電性セパレータをカソード側から見た正面概略図であり、図3はその背面図で、アノード側から見た正面概略図である。
セパレータ20の大きさは10cm×20cm、厚さは4mmであり、一方の端部に、酸化剤ガスの供給側マニホルド孔23a、燃料ガスの供給側マニホルド孔24aおよび冷却水の供給側マニホルド孔25aを有し、他方の端部に、酸化剤ガスの排出側マニホルド孔23b、燃料ガスの排出側マニホルド孔24bおよび冷却水の排出側マニホルド孔25bを有する。
【0088】
図2において、セパレータ20の表面には、マニホルド孔23aから23bに連なる溝26が形成され、この溝内には中央を仕切るリブ27と複数の平行するガス流路29を形成するためのリブ群28が設けてある。ガス流路29は、幅2mm、深さ1.5mmの凹部を有し、リブ群28は、セパレータ20と同じ高さで、幅1mmの凸部を有する。
【0089】
一方、図3のセパレータ20の表面には、燃料ガスの供給側マニホルド孔24aから排出側マニホルド孔24bに連なる溝30が形成され、この溝内には中央を仕切るリブ31と複数の平行するガス流路33を形成するためのリブ群32が設けてある。
【0090】
図4は、導電性セパレータの冷却水流路を有する面側の正面概略図である。このセパレータ41は、セパレータ20と同様に、一方の端部に、酸化剤ガスの供給側マニホルド孔43a、燃料ガスの供給側マニホルド孔44aおよび冷却水の供給側マニホルド孔45aを有し、他方の端部に、酸化剤ガスの排出側マニホルド孔43b、燃料ガスの排出側マニホルド孔44bおよび冷却水の排出側マニホルド孔45bを有する。これらのマニホルド孔は、図2および3に示したセパレータ20と同じ位置に形成し、同じ大きさを有する。
セパレータ41の一方の表面には、マニホルド孔45aから45bに連なる、深さ1.5mmの冷却水の流路46が形成され、この流路には複数の円形のリブ47が設けてある。円形リブ47は、セパレータ41と同じ高さである。
【0091】
セパレータ41は、その一対を、冷却水流路46を有する面を対向させて接合し、両者間に冷却水を流す冷却部を構成する。そして、一方のセパレータ41の裏面には酸化剤ガスの流路を有し、他方のセパレータ41の裏面には燃料ガスの流路を有する。冷却水はマニホルド孔45aから流入し、円形リブ47により分流するため、冷却水流路46の全面を流れてマニホルド孔45bへと到達する。
【0092】
(iii)樹脂および導電性炭素材料の溶出試験
次に、表1に記載の樹脂および導電性炭素材料の溶出試験を行った。本溶出試験では、測定する試料の重量を1gとした。
樹脂の場合は、樹脂のみをセパレータの成形条件と同様の条件で塊状に成形した後、目標重量となるように短冊型に切り出した。
導電性炭素材料の場合は、粉末の状態で1gを秤量し、これを試料とした。
【0093】
イオン交換水を蒸留して作成した電気伝導度0.6〜0.8μS/cmの純水を、あらかじめ90℃に加熱した後、50gを秤量して、耐熱ガラス製の密封容器内に所定の測定試料とともに密封した。次いで、密封容器を95℃に制御されたウォーターバス中で加熱した。加熱後50時間が経過した時点で、ウォーターバス中より密封容器を取り出し、30分間静置した。その後、イオンクロマトグラフィーおよびTOC測定装置を用いて、上澄み液中のイオン成分およびTOCの定量を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(iv)セパレータの洗浄
それぞれの材料で作製したセパレータは、表2〜6に記載の洗浄条件により洗浄した。なお、セパレータを収容する洗浄容器は、幅15cm、奥行き5cm、深さ30cmとし、セパレータが完全に没するように、容器内に洗浄液を注ぎ入れた。セパレータの洗浄中、洗浄液の温度は、容器外部からヒーターで加熱することにより、所定温度に所定時間保持した。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
洗浄液は、表に「純水」と表示されている場合には、電気伝導度が1μS/cmの純水を使用し、「硫酸」と表示されている場合には、上記純水に市販の特級濃硫酸を加えて濃度を2mol/Lおよび1mol/Lに調整した希硫酸を用いた。
【0101】
ガスバブリングは、表に「あり」と表示されている場合には、純水による洗浄の間、液化二酸化炭素ボンベから供給される二酸化炭素ガスを洗浄液中にバブリングした。
【0102】
洗浄液のpHは、純水を用いた場合には、表に「7」と、希硫酸(2mol/L)を用いた場合には、表に「−0.6」と、希硫酸(1mol/L)を用いた場合には、表に「−0.3」と、炭酸ガスをバブリングした場合には、表に「4」と表示した。
【0103】
液温は、洗浄時の液温を60℃、80℃、100℃のいずれかに調整し、また、洗浄時間は、5時間、10時間、15時間のいずれかとした。
【0104】
(v)セパレータの溶出試験
次に、成形したセパレータの溶出試験を行った。本溶出試験では、測定する試料の重量を1gとした。試料には、成形後のセパレータを目標重量1gとなるように短冊型に切り出したものを用いた。
【0105】
イオン交換水を蒸留して作成した電気伝導度0.6〜0.8μS/cmの純水を、あらかじめ90℃に加熱した後、50gを秤量して、耐熱ガラス製の密封容器内に所定の測定試料とともに密封した。次いで、密封容器を95℃に制御されたウォーターバス中で加熱した。加熱後50時間が経過した時点で、ウォーターバス中より密封容器を取り出し、30分間静置した。その後、イオンクロマトグラフィーおよびTOC測定装置を用いて、上澄み液中のイオン成分およびTOCの定量を行った。また、上澄み液の電気伝導度を測定した。以上の溶出試験の結果を表7〜9に示す。
【0106】
【表7】
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
なお、後述の比較例82のセパレータから、同一重量のサンプルを10個切り出し、その中の5個のサンプルをそれぞれ平均粒径が95μm、98μm、105μm、113μmおよび120μmとなるように粉砕処理した。10個のサンプル(5個の切り出しサンプルと5個の粉砕サンプル)を、90℃に保持した電気伝導度が1μS/cm以下の純水中に浸漬させて、可溶成分を抽出し、その濃度を5時間毎に定量した。試験時間と、溶出する塩化物イオン濃度との関係を図6に示す。
【0110】
図6より、試験開始後、しばらくの間は溶出量にバラツキがあるものの、50時間経過後では、サンプルの表面積(平均粒径)や形状に関係なく、測定値のバラツキが小さくなり、いずれのサンプルにおいても溶出量が同レベルになることが確認できた。
【0111】
(vi)高分子電解質型燃料電池の作製
まず、図1で作製したMEAのプロトン伝導性高分子電解質膜に、冷却水と燃料ガス及び酸化剤ガス流通用のマニホールド孔を形成した。その構成を図5に示す。図5はMEAの正面概略図である。MEA50は、高分子電解質膜51とこれを挟む電極52からなり、高分子電解質膜51には、一方の端部に、酸化剤ガスの供給側マニホルド孔53a、燃料ガスの供給側マニホルド孔54aおよび冷却水の供給側マニホルド孔55aを有し、他方の端部に、酸化剤ガスの排出側マニホルド孔53b、燃料ガスの排出側マニホルド孔54bおよび冷却水の排出側マニホルド孔55bを有する。これらのマニホルド孔は、図2〜4に示したセパレータ20、41と同じ位置に形成し、同じ大きさを有する。
【0112】
次いで、高分子電解質膜51の表面に、図3の所定のアノード側セパレータ20を、また裏面に図2の所定のカソード側セパレータ20を重ね合わせ、これを単電池とした。この単電池を2セル積層後、図4の冷却水流路46を形成した所定のセパレータ41で、この単電池を挟み込み、このパターンを繰り返して100セル積層させた電池スタックを作製した。そして、電池スタックの両端部を、ステンレス製の集電板と電気絶縁材料からなる絶縁板を介して端板で挟み、これらを締結ロッドで両端から固定した。この時の締結圧はセパレータの単位面積当たり10kgf/cm2とした。
【0113】
(vii)連続発電試験
作製した高分子電解質型燃料電池を85℃に保持し、一方の電極側に83℃の露点となるよう加湿・加温した水素ガスを、もう一方の電極側に78℃の露点となるように加湿・加温した空気を供給した。その結果、電流を外部に出力しない無負荷時には、約96Vの電池開放電圧を得た。
【0114】
この電池を用いて、燃料利用率85%、酸素利用率50%、電流密度0.7A/cm2の条件で連続発電試験を行い、発電開始24時間経過後の平均電圧(V1)と10000時間経過後の平均電圧(V2)とを計測し、V1とV2の電圧の差(V3)を求めた。結果を表7〜9に示す。
【0115】
《比較例46》
イオン等の溶出成分が存在しない比較例のセパレータを作製した。このセパレータは、10cm×20cm、厚さ4mmのグラッシーカーボン板に、切削加工によりガス流路を形成することにより作製した。
次に、このセパレータの溶出試験ならびにこれを用いて上記と同様の条件で作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表9に示す。
【0116】
[結果]
まず、不純物を含まないセパレータの一例として作成した、比較例46のグラッシーカーボン板を材料としたセパレータでは、イオンおよびTOCの溶出量が測定限界以下であった。このセパレータを用いた燃料電池では、平均電圧が10000時間の運転後には、7.0V低下した(V3=7.0V)。したがって、セパレータから溶出する物質以外の要因に基づく電池特性の低下は、約7.0Vであることがわかった。
【0117】
実施例1では、高純度黒鉛とフッ素樹脂とをセパレータの材料として用いることで、フッ化物イオン以外のイオン種および有機物の溶出量が低いセパレータを作製することができた。このセパレータを用いた時の連続発電試験における電圧変化は6.9Vであり、比較例46(7.0V)と同等であった。このことから、溶出試験で約50μg程度のフッ化物イオンが溶出するセパレータでは、電池特性の低下を引き起こさないことが明らかとなった。
【0118】
比較例1〜5では、表4に示す材料を用いてセパレータを作製し、かつ、セパレータの洗浄を全く行わなかったことから、TOC、NH4 +、Cl−、Br−およびSO3 2−のいずれかの溶出量が高かった。その結果、電圧変化(V3)は14.3〜22.3Vと、比較例46に比べて2〜3倍高い値となった。このことから、これらのセパレータから溶出するイオンや有機物は、それぞれ独立して電池特性を低下させることが確認された。なお、実施例7〜26および比較例6〜45のセパレータは、比較例1〜5のセパレータに対して所定の洗浄を行ったものである。
【0119】
実施例1、2、7、12、17および22ならびに比較例1、6、11、16、21、26、31、36および41のTOCの溶出量を比較した。その結果、TOCの溶出量が300μgを超えると、電池特性の低下が比較例46に比べて大きくなることが分かった。
【0120】
実施例1、3、8、13、18、23および比較例2、7、12、17、22、27、32、37、42のNH4 +の溶出量を比較した。その結果、NH4 +の溶出量が50μgを超えると、電池特性の低下が比較例46に比べて大きくなることが分かった。
【0121】
実施例1、4、9、14、19、24および比較例3、8、13、18、23、28、33、38、43のCl−の溶出量を比較した。その結果、Cl−の溶出量が50μgを超えると、電池特性の低下が比較例46に比べて大きくなることが分かった。
【0122】
実施例1、5、10、15、20、25および比較例4、9、14、19、24、29、34、39、44のBr−の溶出量を比較した。その結果、Br−の溶出量が20μgを超えると、電池特性の低下が比較例46に比べて大きくなることが分かった。
【0123】
また、実施例1、6、11、16、21、26および比較例5、10、15、20、25、30、35、40、45のSO3 2−の溶出量を比較した。その結果、SO3 2−の溶出量が10μgを超えると、電池特性の低下が比較例46に比べて大きくなることが分かった。
【0124】
以上の結果から、それぞれのイオン及び有機物の溶出成分について、溶出量の許容量となる基準値が明らかとなった。また、溶出液の電気伝導度と電池電圧の差(V3)に着目すると、TOCが存在しても電気伝導度と電池電圧の差には関係なかった。このように、電気伝導度と電池電圧の差(V3)は、電池特性との相関性が低いことから、溶出液の電気伝導度は、セパレータの適否を判断するための因子としては不十分であることが明らかとなった。
【0125】
洗浄条件に関しては、実施例2〜26および比較例6〜45の結果から、液温を80℃以上、洗浄時間を10時間以上とすると、各溶出成分を前述した基準値以下にすることができることが確認された。
【0126】
また、純水中に硫酸あるいは炭酸を供給してpHを低くした場合、アンモニウムイオンを除去する洗浄効果が高まることが確認された。それ以外の溶出成分については、溶出量の変化は見られなかった。しかしながら、比較例21〜25において、pH=−0.6の洗浄液では、洗浄前後でのセパレータの重量変化が1%以上となり、セパレータの材料に化学的な劣化が引き起こされたため、溶出試験を行うことができなかった。以上の結果から、洗浄液のpHは−0.3〜7.0の間であれば良いことが確認された。
【0127】
《実施例27〜32、比較例47〜51》
次に、表10および11に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。そして、表10および11に記載の条件でセパレータを洗浄した。ただし、ここでは、超音波洗浄機を用いてセパレータを洗浄した。
【0128】
【表10】
【0129】
【表11】
【0130】
超音波洗浄機には、東京超音波技研(株)製の酸対応超音波洗浄機(PUC−0715)を用いた。この洗浄機は、フッ酸、王水、塩酸、硫酸などの強酸に対する耐性を有する。また、洗浄機の振動板は、耐食性に優れ、かつ、添加剤をまったく含まない純粋なPVDF樹脂からなる等の特徴を有することから、本発明で使用する洗浄機として適当である。
【0131】
洗浄においては、洗浄機にセパレータを入れ、セパレータが完全に没するように洗浄液を注ぎ入れた後、超音波洗浄機のスイッチを入れて所定時間保持した。洗浄液が純水の場合、前述した溶出試験と同様のものを使用した。また、洗浄液が硫酸の場合、上記純水に市販の特級濃硫酸を加えて濃度を1mol/Lに調整した希硫酸を用いた。洗浄時の液温は、不純物の溶出を防ぐために石英管に入れたヒーターを洗浄液中に投入することで、60℃、80℃および95℃のいずれかに制御した。また、洗浄時間は、0.5時間、1時間および2時間のいずれかとした。
【0132】
次に、洗浄後のセパレータの溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後のセパレータを用いて上記と同様の条件で作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表12に示す。
【0133】
【表12】
【0134】
[結果]
比較例47より、天然黒鉛とノボラック型フェノール樹脂とを組み合わせて作製したセパレータの溶出試験は、全ての溶出成分で基準値を上回った。さらに、このセパレータを用いて組み立てた燃料電池の連続発電試験では、電圧の降下速度が著しく、転極する単セルが発生したため、10000時間に達する前に試験を中止した。同様に、比較例49、51でも電圧の降下速度が著しく、試験を中止した。
【0135】
実施例27〜29および比較例48および49の結果より、洗浄時の液温は80℃以上、洗浄時間は1時間以上であれば、各溶出成分を基準値以下にすることができた。また、洗浄時間については、セパレータを洗浄液に浸漬させているだけの状態に比べ、超音波による振動を与えることで、10倍も短くすることができた。
【0136】
また、実施例30〜32および比較例50および51の結果より、洗浄液を硫酸としても電池特性の低下を引き起こさないことが確認された。
【0137】
《実施例33〜35、比較例52〜55》
次に、表13および14に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。そして、表13および14に記載の条件でセパレータを洗浄した。ただし、ここでは、セパレータを加湿ガスに暴露することにより洗浄した。
【0138】
【表13】
【0139】
【表14】
【0140】
洗浄においては、上部および下部の二箇所にバルブをつけた幅15cm、奥行き5cm、深さ30cmの耐圧容器中に、10mlの純水とセパレータとを入れて密閉後、80℃または120℃に保持した恒温層中で5時間、10時間および15時間のいずれかの時間保持した。
【0141】
ここでは、洗浄ガスとして、空気または二酸化炭素を用いた。容器中のガスを空気から二酸化炭素に入れ替える際には、セパレータを入れた容器中に純水を充満させた後、上部バルブより二酸化炭素を入れつつ、下部バルブから純水を排水することにより、容器中のガスを二酸化炭素に置換した。
【0142】
次に、洗浄後のセパレータの溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後のセパレータを用いて上記と同様の条件で作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表15に示す。
【0143】
【表15】
【0144】
[結果]
実施例33〜35により、セパレータを適切な温度の加湿ガス中に暴露し、適切な時間保持することで、各溶出成分を基準値以下にできることが確認された。また、実施例33および35ならびに比較例52および54の結果より、80℃以上のガス温度と10時間以上の洗浄時間が必要であることがわかった。また、実施例34ならびに比較例53および55の結果より、洗浄に用いるガスは二酸化炭素などの酸性ガスでも問題なく使用できることが確認された。
【0145】
《実施例36〜47、比較例56〜69》
次に、表16および17に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。そして、表16および17に記載の条件でセパレータを洗浄した。ただし、ここでは、セパレータを電極として電解液中で電気分解を行うことにより、セパレータを洗浄した。
【0146】
【表16】
【0147】
【表17】
【0148】
ここでは、以下に説明する反応槽中にセパレータを浸漬し、電気分解を行った。
洗浄するセパレータを作用極とし、塩化白金酸中で通電する方法により白金黒化した10cm×20cmの大きさの白金メッシュを対極として用いた。また、試験管中で水素バブリングした0.5Mの硫酸水溶液中にφ1mmの白金線を浸漬させた電極を参照極とした。これらの電極のうち、作用極と対極は、幅30cm、奥行き5cm、深さ30cmの容器中に入れ、それらの電極が完全に没するように、純水あるいは純水に硫酸を加えた希硫酸を電解液として注入した。このとき、作用極と対極との間隔は5mmで並行となるように固定した。また、参照極については、塩橋を介して作用極表面近傍の電位との差を測定できるようにした。電気分解時には、バブリングにより、空気または水素を電解液中に送り込んだ。
【0149】
このように構成された反応槽中において、ポテンショスタットにより作用極の電位を制御しながら電気分解を行った。電気分解時の作用極の自然電位に対する電位は−0.5V、−0.1V、−0.05V、0.01V、0.2Vおよび0.5Vのいずれかとし、電気分解の時間は0.1時間、0.5時間および1時間のいずれかとした。
【0150】
次に、洗浄後のセパレータの溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後のセパレータを用いて上記と同様の条件で作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表18に示す。
【0151】
【表18】
【0152】
[結果]
実施例36〜47により、セパレータを適切な電位で適切な時間電気分解することにより、各溶出成分を基準値以下にできることが確認された。
【0153】
実施例36〜38および比較例56〜58の結果より、作用極の電位を0.05〜0.2Vの間とし、かつ、電解時間を0.5時間以上としたときに、必要な洗浄効果が得られることが確認された。一方、比較例59では、電気分解開始時より激しいガス発生が起こり、電解液が黒く濁る現象が観察された。また、この条件におけるセパレータの洗浄前後の重量変化は約5%に達しており、溶出試験を行うことができなかった。同様に、比較例66でも、溶出試験を行うことができなかった。
【0154】
実施例39〜40および比較例60〜62の結果より、作用極の電位を−0.1V以下とし、かつ、電解時間を0.5時間以上としたときに、目的とする洗浄効果が得られることが確認された。
【0155】
また、実施例42〜47および比較例63〜69より、電解液を硫酸に代えても同様の条件で目的とする洗浄効果が得られることが確認された。
【0156】
《実施例48〜54、比較例70〜77》
次に、表19および20に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。ただし、ここでは、表19および20に記載の条件で、セパレータを成形する前段階で、導電性炭素材料を焼成もしくは洗浄処理した。
【0157】
【表19】
【0158】
【表20】
【0159】
焼成処理においては、導電性炭素材料として使用する天然黒鉛を電気炉に入れ、Ar雰囲気で450℃、500℃および550℃のいずれかの温度で1時間の焼成処理を行った後、電気炉による加熱を停止し、室温になるまで放置した。このとき、昇温および降温に関しては特に制御を行わなかった。
【0160】
洗浄処理においては、耐酸・耐熱容器中に入れた洗浄液中に、天然黒鉛を入れ、容器外部よりヒーターで加熱しながら、洗浄液の温度を所定温度に所定時間保持した。洗浄液が純水の場合、前述した溶出試験と同様のものを使用した。洗浄液が硫酸の場合、上記純水に市販の特級濃硫酸を加えて濃度を2mol/Lまたは1mol/Lに調整した希硫酸を用いた。
【0161】
また、二酸化炭素を含むガスをバブリングした純水による洗浄では、液化二酸化炭素ボンベから二酸化炭素ガスを供給した。洗浄液pHは、純水のみの場合と、純水に硫酸または炭酸を供給した場合においては、pHを7、−0.3および4のいずれかに調整した。洗浄時の液温は60℃、80℃および100℃のいずれかとし、洗浄時間については5時間、10時間および15時間のいずれかとした。
【0162】
次に、洗浄後の導電性炭素材料の溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後の導電性炭素材料を用いて、上記と同様の条件でセパレータを成形し、それらのセパレータについても溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、それらのセパレータを用いて作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表21に示す。
【0163】
【表21】
【0164】
[結果]
導電性炭素材料およびセパレータの溶出試験の結果を比較すると、実施例48〜54および比較例70〜77の全ての場合において、セパレータ成形後の各成分の溶出量の方が値が低くなることがわかった。このことから、導電性炭素材料の溶出試験における基準値は、セパレータの溶出試験における基準値と同等であれば良いことが確認された。
【0165】
導電性炭素材料の焼成処理については、実施例48および49ならびに比較例70の結果より、500℃以上の焼成温度で処理することにより、導電性炭素材料中の不純物を目的の水準まで除去できることが確認された。
【0166】
洗浄液へ導電性炭素材料を浸漬させる洗浄処理において、実施例50〜52および比較例71〜73の結果より、洗浄液温度を80℃以上、洗浄時間を10時間以上とすると、各溶出成分を前述した基準値以下にすることができることが確認された。
【0167】
また、実施例53および54ならびに比較例74〜77の結果より、純水中に硫酸あるいは炭酸を供給してpHを低くした場合、アンモニウムイオン以外の溶出成分に関しては純水の場合と同等の抽出効果であったが、アンモニウムイオンについては抽出効果が高まることが確認された。
【0168】
《実施例55〜60、比較例78〜81》
次に、表22および23に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。ただし、ここでは、表22および23に記載の条件で、セパレータを成形する前段階で、超音波洗浄機を用いて導電性炭素材料の洗浄処理を行った。
【0169】
【表22】
【0170】
【表23】
【0171】
超音波洗浄機には、既述の実施例と同様の理由により、東京超音波技研(株)製の酸対応超音波洗浄機(PUC−0715)を用いた。
【0172】
洗浄においては、洗浄機に天然黒鉛を入れ、天然黒鉛が完全に没するように洗浄液を注ぎ入れた後、超音波洗浄機のスイッチを入れて所定時間保持した。洗浄液が純水の場合、前述した溶出試験と同様のものを使用した。また、洗浄液が硫酸の場合、上記純水に市販の特級濃硫酸を加えて濃度を1mol/Lに調整した希硫酸を用いた。洗浄時の液温は、不純物の溶出を防ぐために石英管に入れたヒーターを洗浄液中に投入することで、60℃、80℃および100℃のいずれかに制御した。また、洗浄時間は、0.5時間、1時間および2時間のいずれかとした。
【0173】
次に、洗浄後の導電性炭素材料の溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後の導電性炭素材料を用いて、上記と同様の条件でセパレータを成形し、それらのセパレータについても溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、それらのセパレータを用いて作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表24に示す。
【0174】
【表24】
【0175】
[評価]
実施例55〜57ならびに比較例78および79の結果から、洗浄時の液温が80℃以上、洗浄時間が1時間以上であれば、各溶出成分を基準値以下にできることが確認できた。また、洗浄時間については、導電性炭素材料を洗浄液に浸漬させているだけの状態に比べ、超音波による振動を与えることで、10倍も短くすることができた。
【0176】
《実施例61〜63、比較例82〜85》
次に、表25および26に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。ただし、ここでは、表25および26に記載の条件で、セパレータを成形する前段階で、導電性炭素材料を加湿ガスに暴露することにより、導電性炭素材料の洗浄処理を行った。
【0177】
【表25】
【0178】
【表26】
【0179】
洗浄においては、上部および下部の二箇所にバルブをつけた幅15cm、奥行き5cm、深さ30cmの耐圧容器中に、10mlの純水と100gの導電性炭素材料とを入れて密閉後、80℃または120℃に保持した恒温層中で5時間、10時間および15時間のいずれかの時間保持した。
【0180】
ここでは、洗浄ガスとして、空気または二酸化炭素を用いた。容器中のガスを空気から二酸化炭素に入れ替える際には、導電性炭素材料を入れた容器中に純水を充満させた後、上部バルブより二酸化炭素を入れつつ、下部バルブから濾紙を介して、純水を排水することにより、容器中のガスを二酸化炭素に置換した。
【0181】
次に、洗浄後の導電性炭素材料の溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後の導電性炭素材料を用いて、上記と同様の条件でセパレータを成形し、それらのセパレータについても溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、それらのセパレータを用いて作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。その結果を表27に示す。
【0182】
【表27】
【0183】
[結果]
実施例61〜63より、導電性炭素材料を適切な温度の加湿ガス中で適当な時間保持することで、各溶出成分を基準値以下にできることが確認された。
また、実施例61および63ならびに比較例82および84の結果から、本発明の洗浄方法では、80℃以上のガス温度と10時間以上の洗浄時間が必要であることがわかった。また、実施例62ならびに比較例83および85から、洗浄に用いるガスが二酸化炭素などの酸性ガスでも問題がないことが確認された。
【0184】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料電池のセパレータから溶出するTOC、アンモニウムイオン、塩化物イオン、臭化物イオン、および亜硫酸イオンの量を所定の基準値以下に制御することにより、燃料電池の長期連続運転における特性劣化を抑制することが可能である。
【0185】
また、セパレータの構成材料である導電性炭素材料や樹脂として、既述の成分の溶出量が基準値以下である材料を用いる、構成材料を洗浄処理する、もしくははセパレータを成形後に洗浄処理をすることにより、上記特性を有するセパレータを作製することが可能となる。従って、安価で、加工性と成形性に優れた樹脂を材料に用いてセパレータを製造することが可能となり、燃料電池のセパレータの生産性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかるMEAの構成を示す縦断面図である。
【図2】導電性セパレータをカソード側から見た正面概略図である。
【図3】導電性セパレータをアノード側から見た正面概略図である。
【図4】導電性セパレータを冷却水流路側から見た正面概略図である。
【図5】MEAの正面概略図である。
【図6】溶出試験における溶出時間と溶出成分(塩化物イオン)濃度との関係を示す図である。
【図7】酸化還元反応の試験を行うための装置概略図である。
【図8】塩化物イオンが酸素還元電流に与える影響を示す図である。
【図9】種々のイオンが酸素還元電流に与える影響を示す図である。
【図10】種々のイオンが水素酸化電流に与える影響を示す図である。
【符号の説明】
11 拡散層
12 触媒層
13、52 電極
14、51 高分子電解質膜
15 MEA
20、41 セパレータ
23a、43a、53a 酸化剤ガスの供給側マニホルド孔
24a、44a、54a 燃料ガスの供給側マニホルド孔
25a、45a、55a 冷却水の供給側マニホルド孔
23b、43b、53b 酸化剤ガスの排出側マニホルド孔
24b、44b、54b 燃料ガスの排出側マニホルド孔
25b、45b、55b 冷却水の排出側マニホルド孔
26、30 溝
27、31 中央を仕切るリブ
28、32 リブ群
29、33 ガス流路
46 冷却水流路
47 円形のリブ
50 MEA
61 白金メッシュ
62 白金線
63 参照極
64 ポテンショスタット
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポータブル電源、電気自動車用電源、家庭内コージェネレーションシステム等に使用する高分子電解質を用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子電解質を用いた燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと、空気など酸素を含有する酸化剤ガスとを、電気化学的に反応させることで、電力と熱とを同時に発生させるものである。この燃料電池は、水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜とその両面に配置された一対の電極からなる。電極は、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を主成分とする触媒層、およびその外面に形成された、通気性と電子導電性を併せ持つガス拡散層から構成される。ガス拡散層は、例えばカーボンペーパーで形成される。
【0003】
供給される燃料ガスや酸化剤ガスが外部にリークしたり、二種類の燃料ガスが互いに混合したりしないように、電極の周囲には高分子電解質膜を挟んでガスシール材やガスケットが配置される。このガスシール材やガスケットは、電極及び高分子電解質膜と一体化してあらかじめ組み立てられる。これをMEA(電極電解質膜接合体)と呼ぶ。MEAの外側には、これを機械的に固定するとともに、隣接したMEAを互いに電気的に直列に接続するための導電性のセパレータが配置される。セパレータのMEAと接触する部分には、電極面に反応ガスを供給し、生成ガスや余剰ガスを運び去るためのガス流路が形成されている。ガス流路はセパレータと別に設けることもできるが、セパレータの表面に溝を設けてガス流路とする方式が一般的である。これらのMEAとセパレータを交互に重ねていき、10〜200セル積層し、その積層体を集電板および絶縁板を介して端板で挟み、これらを締結ボルトで両端から固定するのが一般的な積層電池の構造である。
【0004】
このような高分子電解質型燃料電池において、セパレータは導電性が高く、かつ燃料ガスに対して高いガス気密性を持ち、さらに水素と酸素との酸化還元反応に対して高い耐食性、すなわち耐酸性を持つ必要がある。このような理由から従来のセパレータは、グラッシーカーボン板の表面に切削加工でガス流路を形成する方法により製造されている。また、別のセパレータの製造方法として、天然黒鉛や人造黒鉛等の導電性炭素材料に、ポリエチレンやポリビニルアルコール等の熱可塑性樹脂、またはフェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をバインダーとして添加したものを、樹脂が黒鉛化しない温度で、加熱圧縮成形、トランスファー成形または射出成形しているものもある(例えば、特許文献1または2参照。)。
【0005】
ところが、グラッシーカーボン板を切削加工してセパレータを作製する方法では、グラッシーカーボン板の材料コストそのものが高いうえに、切削するためのコストを引き下げることも難しく、実用化が困難である。
【0006】
一方、バインダーとして熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を添加した導電性炭素材料を成形してセパレータを作製する方法では、樹脂の種類や添加量を最適化することにより、燃料電池のセパレータとして必要な導電性や物理的強度を付与することが可能である。また、加圧圧縮成形、トランスファー成形または射出成形といった成形方法は、切削加工に比べて生産速度が速く、熱硬化製樹脂を使用する場合には、硬化剤や硬化促進剤の添加により硬化時間の短縮が可能であるなど、量産性の面でも優れている。
【0007】
しかしながら、導電性炭素材料と樹脂からなるセパレータは、高温の水蒸気に長時間曝されることで、導電性炭素材料中の不純物成分や樹脂成分に含まれる官能基や未反応基が遊離あるいは分解されたものが溶出することが知られている。
【0008】
例えば、通常の天然黒鉛、人造黒鉛、ケッチェンブラック等の導電性炭素材料は、不純物として30ppm程度の硫化物を含んでおり、硫酸イオン、亜硫酸イオンとなって溶出する可能性がある。また、バインダーとして使用可能な熱硬化型樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂は、その製造過程で未反応部分にクロロ基を持つため、硬化後の樹脂より塩化物イオンが溶出する。臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂からは臭化物イオンが溶出する。また、量産性を高めるために必要な硬化剤や硬化促進剤には一般的にアミン系の化合物が用いられており、硬化後の樹脂より、アンモニアあるいはアンモニウムイオンが溶出する。また、フッ素系の熱可塑性樹脂ではフッ化物イオンの溶出が起こる。また、ノボラック型のフェノール樹脂においても、燃料電池の運転時に遊離フェノール、ホルマリン、アルコール、未反応の樹脂への添加物などの有機物や、アンモニウムイオンなどのイオンの溶出が起こる(例えば、特許文献3参照。)。
【0009】
セパレータから溶出するイオンあるいは有機物は、以下に示すように燃料電池の特性低下を引き起こすという問題を有する。
【0010】
第一に、特許文献3に記載の燃料電池において、冷却水や生成水の導電性が上昇することによる電池性能の低下が指摘されている。
【0011】
第二に、塩化物イオン等のハロゲンイオンのように、白金と錯体を形成するイオン種や、アンモニアや硫化物等の白金表面への吸着性の高いイオン種は、燃料電池電極の触媒層にある白金の有効反応面積を減少させる。
【0012】
セパレータから溶出するイオン種が白金電極に与える影響を確認するために、本発明者らは、図7に示す装置を用いて、酸化還元反応の試験を行った。
【0013】
図7は、酸化還元反応の試験を行うための装置概略図である。
反応槽60中の電解液として1Nの硫酸水溶液500mLを用い、作用極として1cm2に面積規制したφ1mmの白金線62および対極として5cm×10cmの白金メッシュ61を用い、参照極63にはRHE(可逆水素電極)を用いた。
【0014】
酸素還元反応を試験するときには酸素ガスを、水素酸化反応を試験するときには水素ガスを、作用極近傍にバブリングすることにより供給した。そして、目的とする反応ガスを30分間以上バブリングし、作用極の電位が安定した点を自然電位とした。電位が安定した後、ポテンショスタット64により作用極の電位を自然電位から酸化反応では+100mV、還元反応では−300mVの電位になるように制御し、3時間後の電流値を測定した。
【0015】
次いで、セパレータから溶出する可能性があるイオン種を含む溶液を反応槽60に添加し、3時間後の電流値を測定した。そして電解液を1Nの硫酸水溶液と交換し、さらに3時間後の電流値を測定した。この試験で添加した溶液は、硫化水素、亜硫酸、フッ化水素、塩化水素、臭化水素または硫酸アンモニウムを含んでおり、それぞれのイオン濃度を、電解液中で100ppm、500ppm、1000ppm、5000ppmと変化させた。
【0016】
図8は、塩化物イオンを5000ppm添加した実験における酸素還元電流の変化を、初期電流値を100%としたときの経過時間の推移で表している。図より、実験開始から500秒後に塩化物イオンを添加すると、電流値の値は、−0.2mA/cm2の初期値(表中の黒ひし形)から、−0.12mA/cm2へと40%も値(表中の黒三角)が減少した。次いで、実験開始から2000秒後に電解液を交換しても電流値(表中の黒丸)は元の値に戻らなかった。
【0017】
このことから、塩化物イオンは酸素還元電位において白金表面に吸着し、酸素還元反応が起こる活性サイトを塞いでしまうこと、つまり、塩化物イオンが白金表面の有効反応面積を減少させることが分かった。
【0018】
次に、酸素還元電流値と電解液中での不純物濃度との関係を、不純物を含まない電解液における酸素還元電流値を100%として図9に示す。図9より、亜硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオンおよびアンモニウムイオンを不純物として電解液に添加すると、添加量の増加に伴い電流値が減少することがわかる。また、フッ化物イオンを電解液に添加しても、電流値が変化しないことがわかる。
【0019】
また、水素酸化電流値と電解液中での不純物濃度との関係を、不純物を含まない電解液における水素酸化電流値を100%として図10に示す。ここでも、酸素還元反応と同様に、亜硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオンおよびアンモニウムイオンを不純物として電解液に添加すると、添加量の増加に伴い電流値が減少することがわかる。また、フッ化物イオンを電解液に添加しても、電流値が変化しないことがわかる。
【0020】
以上より、セパレータから溶出するイオン種の中で亜硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオンおよびアンモニウムイオンは、アノードおよびカソードの何れの電極反応においても、白金表面の有効反応面積を減少させることがわかる。
【0021】
第三に、有機物は触媒層の細孔、高分子電解質膜の表面または高分子電解質の官能基に吸着し、触媒層中における反応ガスや生成水の移動度を低下させる。
このような電池特性の低下を防ぐ手段として、特許文献3では、90℃の熱水中で500時間洗浄後、その熱水の電気伝導度が50μS/cm以下となるようなセパレータを燃料電池に用いることが提案されている。
【0022】
しかしながら、セパレータの洗浄液の電気伝導度を規定しても、非電解質である有機物の溶出量を評価することはできない。また、電気伝導度が50μS/cmの水には数ppmのイオン種が存在するが、上述したように、溶解するイオン種によって、電池特性が受ける影響は異なる。電池特性に影響を与えないイオン種のみが溶解している場合には、洗浄液の電気伝導度が50μS/cm以上であったとしても電池特性は低下しない。逆に、電気伝導度が50μS/cm以下であっても、電池特性を大きく低下させるイオン種が洗浄液に溶解している場合がある。
【0023】
したがって、燃料電池の長期的な信頼性を得るためには、セパレータの洗浄液の電気伝導度を制御するだけでは不充分であり、セパレータから溶出する成分毎に溶出量を制御する必要がある。
【0024】
【特許文献1】
特開昭60−246568号公報
【特許文献2】
特開平9−505002号公報
【特許文献3】
特開2002−8676号公報
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記を鑑みたものであり、長期的に信頼性を維持する燃料電池を提供するために、燃料電池のセパレータから溶出する成分とその量を制御する。また、溶出成分を低減させるために、セパレータもしくはその原料の洗浄処理を行う。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の両面に配置した一対の電極と、前記電極の一方に燃料ガスを供給し、他方に酸化剤ガスを供給するガス流路を有する一対の導電性セパレータとを具備した高分子電解質型燃料電池に関し、前記導電性セパレータを80〜100℃の水中に浸漬させた状態で50時間保持した場合に、前記導電性セパレータ1g当たりから前記水中に溶出する成分及び量が、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることを特徴とする。
【0027】
前記導電性セパレータは、以下に示す(a)〜(f)のいずれかの洗浄処理を行ったものであることが好ましい。
(a)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中に、導電性セパレータを10時間以上浸漬させる。
(b)二酸化炭素を含むガスをバブリングし、かつ80℃以上に保持した水中に、導電性セパレータを10時間以上浸漬させる。
(c)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中に、導電性セパレータを浸漬させ、1時間以上超音波洗浄を行う。
(d)ガス温度80℃以上かつ相対湿度100%のガスに、前記導電性セパレータを10時間以上暴露させる。
(e)導電性セパレータをアノードとして、水素雰囲気下の水中あるいはpHが−0.3以上の酸性溶液中で、自然電位に対して+0.05〜+0.2Vの電位をアノードにかけて0.5時間以上電気分解を行う。
(f)導電性セパレータをカソードとして、水中あるいはpHが−0.3以上の酸性溶液中で、自然電位に対して−0.1V以下の電位をカソードにかけて0.5時間以上電気分解を行う。
なお、自然電位とは、アノードおよびカソードのどちらにも電位を印加しない安定状態において、カソードまたはアノードが可逆水素電極に対して有する電位差をいう。
【0028】
本発明の高分子電解質型燃料電池において、前記導電性セパレータは、導電性炭素材料およびバインダー樹脂からなることが好ましい。
【0029】
前記導電性炭素材料を、80〜100℃の水中に浸漬させた状態で50時間保持した場合、前記導電性炭素材料1g当たりから水中に溶出する成分及び量は、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることが好ましい。
【0030】
前記導電性炭素材料は、以下に示す(g)〜(k)のいずれかの洗浄処理を行ったものであることが好ましい。
(g)不活性ガス雰囲気下または10−1Pa以下の高真空雰囲気下で、導電性炭素材料を500℃以上の温度で焼成処理を行う。
(h)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中に、導電性炭素材料を10時間以上浸漬させる。
(i)二酸化炭素を含むガスをバブリングし、かつ80℃以上に保持した水中に、導電性炭素材料を10時間以上浸漬させる。
(j)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中で、導電性炭素材料を1時間以上超音波洗浄する。
(k)ガス温度80℃以上かつ相対湿度100%のガスに、導電性炭素材料を10時間以上暴露させる。
【0031】
また、前記樹脂を、80〜100℃の水中に浸漬させた状態で50時間保持した場合、前記樹脂1g当たりから水中に溶出する成分及び量は、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることが好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料電池は、導電性セパレータから溶出して燃料電池の特性低下を引き起こす不純物物質の種類と量を制御し、不純物物質がセパレータ中に含まれている場合には、これらを一定レベルまで除去する点に特徴を有する。
【0033】
セパレータから溶出する不純物物質には、亜硫酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、アンモニウムイオンおよびTOCがある。ここで、TOC(total organic carbon)とは、水中に存在する有機物中の炭素の量を表し、有機体炭素ともいう。以下、TOCを単に有機物ともいう。
【0034】
不純物物質は、長期間の燃料電池の運転において、微量ずつ溶出・蓄積して、電池特性劣化を進行させる。しかし、所定の除去処理を行った導電性セパレータにはイオンおよび有機物が存在しないため、その導電性セパレータを用いた燃料電池は、高い電池特性を維持することができる。
【0035】
導電性セパレータは、導電性炭素材料とバインダー樹脂からなることが好ましい。
前記導電性炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛、メソフェーズカーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、グラッシーカーボンなどを挙げることができるが、特に限定はない。さらに、導電助剤としてカーボンナノチューブなどの繊維状カーボンフィラーや、例えば、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、鉛、スズ、チタン、亜鉛、タングステン、コバルト、モリブデンなどやそれらの合金などの金属フィラーを添加してもよい。
【0036】
前記樹脂としては、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリオキサメチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、フッ素樹脂、ポリフェニルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルペンテンなどを用いることができる。
【0037】
また、熱硬化性樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂などのアミノ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、レゾール型、ノボラック型などのフェノール樹脂、およびポリイミド樹脂が好ましく、それらを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。エポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ希釈剤としてスチレンオキシド、ブチルグリシジルエーテルなどのアルコールのグリシジルエーテル、カルボン酸のグリシジルエステルなど、さらにグリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン類を適宜添加してもよい。
【0038】
硬化剤、硬化触媒としては、アミン、ポリアミン、アミンアダクト、アミン塩、ポリアミド、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、尿素化合物、メラミン誘導体、ルイス酸塩、ケチミン、酸ヒドラジド、酸無水物、ポリチオール、スルフィド誘導体、フェノール樹脂、アミノ樹脂などを用いてもよい。
【0039】
また、強度・靱性などの物性調整を目的として、例えば、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリニトリルブタジエンなどのゴム類、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、セルロース類、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などを適宜配合してもよい。また、安全性向上のための難燃材としてデカブロモジフェニルエーテル、ブロモビスフェノールS、TBBA誘導体、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、アリルオキシブロモベンゼン、ジブロモフェノール、ジブロモクレゾール、トリブロモフェノール、モノエポキシ、ブロモフェノキシエタノールなどを適宜配合してもよい。
【0040】
セパレータから溶出するイオン種あるいは有機物が、電極あるいは高分子電解質の性能を劣化させることで電池特性を低下させることについては既述したが、次に実際の燃料電池の性能と溶出成分の量との関係を明らかにし、各成分について許容できる溶出量を定め、管理する必要がある。
【0041】
本発明においては、前記導電性セパレータより切り出した試験片を、80〜100℃の水中に、空気に触れる部分が無いように完全に浸漬させた状態で50時間保持した場合、前記導電性セパレータ1g当たりから水中に溶出する成分及び量は、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることを要する。いずれの成分が上記範囲を外れても、燃料電池の特性が低下してしまう。いずれかの成分が上記範囲を外れる場合、例えば燃料電池を10000時間運転すると、電圧低下等の劣化が生じる。
【0042】
ここで、現在想定されている燃料電池の運転温度は60〜90℃と高温である。セパレータに使用されるバインダー樹脂の耐熱温度は約150〜400℃と種類により異なり、また樹脂中の可溶成分である遊離した有機物などについても、一定温度に達しないと溶出しない場合がある。以上を鑑み、セパレータより切り出した試験片の溶出試験を行うための水の温度は、燃料電池の運転温度上限付近である80〜100℃が適当と言える。
【0043】
また、溶出試験開始後、試験片の形状に依存して、しばらくの間は溶出量にバラツキが生じるが、50時間経過後では、サンプルの表面積や形状に関係なく、溶出成分の溶出量は同レベルに収束すると考えられる。したがって、溶出試験の時間は50時間以上が適当である。また、量産性を考慮した場合、試験時間は最短であることが望ましいことから、試験時間は50時間が最適である。
【0044】
溶出試験後の水中における溶出成分の定量方法については、イオンクロマトグラフィー、原子吸光分析、誘導結合プラズマ質量分析または誘導結合プラズマ発光分析などによるイオン成分の定量方法、TOC計測装置などによるTOC成分の定量方法を用いることができる。ただし、これらに限られず、水中に溶出する微量元素の濃度を分析できれば、どのような方法を用いてもよい。
【0045】
なお、前記成分及び量は、TOCで100μg以下、アンモニウムイオンで1μg以下、塩化物イオンで1μg以下、臭化物イオンで5μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることがより好ましい。
【0046】
次に、このようなイオン種および有機物の溶出量が少ないセパレータを作成する方法について説明する。
まず、導電性炭素材料と樹脂を混合してセパレータを成形した後、洗浄によりイオン種および有機物を抽出する方法がある。イオンのような電荷をもった化学種は、水のように比較的双極子モーメントが大きく、電子供与性や電子受容性が大きい溶媒分子との親和性が高く、溶媒和イオンを生成しやすいことから、洗浄に用いる溶媒としては、水が最も適している。洗浄に用いる水は、セパレータからのイオン抽出速度を速くし、セパレータの二次汚染を防止する点から、電気伝導度が1μS/cm以下であることが好ましく、望ましくは0.1μS/cm以下の超純水を用いることで、より高い洗浄効果が期待できる。
【0047】
セパレータからのもう一つの溶出物質である有機物については、有機物が酢酸などの有機酸類を除いて、一般的には双極子モーメントが小さな中性分子であるため、抽出には一般的に有機溶媒が適当である。しかしながら、ほとんどの有機溶媒はセパレータの構成材量である樹脂を溶解する性質を持つため、セパレータの洗浄液としては適切でない場合がある。したがって、有機物の抽出においても、イオン種の場合と同様に、水あるいは水溶液を洗浄液として使用することが考えられる。燃料電池の運転時に溶出する有機物である遊離フェノールやアルコール類やホルマリンなどは、水に対する溶解度が高いため、洗浄液として水あるいは水溶液を用いても、必要な洗浄効果を得ることができる。
【0048】
セパレータに対する洗浄液の量は多いほど良いが、セパレータが完全に没した状態となるに足るだけの量が最低限必要である。
【0049】
セパレータにアミン系の樹脂が用いられている場合のようにアンモニアが溶出するときには、既述の水に酸を加えて酸性溶液とすることで、中和反応によりアンモニウムイオンの抽出速度を高くし、洗浄効果を高めることができる。
【0050】
ここで使用する酸は、燃料電池の性能を低下させるイオン成分を含まないことが条件であり、硫酸または炭酸がこの条件に該当する。硫酸については、濃度が濃すぎると塩化物イオンや臭化物イオンといったハロゲンイオンや有機物の溶解度を低下させたり、セパレータの耐性や、洗浄作業における安全性を低下させたりすることから、洗浄液のpHは−0.3以上とすることが好ましい。より好ましくはpHが0〜4の範囲である。
【0051】
炭酸については、燃料電池の燃料極に供給されるガスでもあり、燃料電池の特性を低下させるイオン種が残存する可能性も低いため、洗浄に用いる酸としては望ましい。しかし、80℃といった溶出を促進させる高温雰囲気での二酸化炭素の溶解度は非常に低く、炭酸濃度が10−4mol/Lの桁となるため、中和に必要な当量を得ることができない。そこで、セパレータを浸漬させた洗浄液へ二酸化炭素を含むガスをバブリングすることにより、必要な炭酸イオンを供給させることが可能となる。
【0052】
洗浄時の液温は、80℃未満では、効率的に溶出成分を基準値以下にすることが困難である。液温を80℃以上とすることで、燃料電池運転時に溶出する成分を効果的に抽出することが可能となる。より好ましくは、90℃以上である。
【0053】
また、セパレータの浸漬時間は、10時間未満では溶出成分を基準値以下にすることが困難であることから、10時間以上であることが好ましい。より好ましくは、20時間以上である。
【0054】
超音波洗浄機を用いると、セパレータ中の遊離成分に衝撃を与え、溶出を促進させることが可能である。洗浄時間は、1時間以上であることが好ましく、セパレータを水中に浸漬させる場合よりも洗浄時間を短縮させることができる。より好ましい洗浄時間は、2時間以上である。
【0055】
相対湿度100%のガスにセパレータを暴露させて洗浄する方法もある。この場合、セパレータを水中に浸漬させたときと同様の洗浄効果が得られる。この方法では、セパレータ表面に結露した水が洗浄効果を示す。水蒸気を用いることから、100℃以上の雰囲気温度における洗浄処理が可能である。また、その他の利点として、セパレータの材料である導電性炭素の細孔内部にまで水蒸気が浸透して、イオンや有機物を抽出させることもできる。
【0056】
相対湿度100%のガスにセパレータを暴露させる場合、洗浄時の雰囲気温度は、セパレータに含まれる樹脂が耐えられる限界温度付近まで高温とすることが、洗浄効果を高める上で望ましい。また、水中にセパレータを浸漬させる場合と同様の理由で、雰囲気温度は最低でも80℃以上とすることが望ましい。洗浄時間については、ガス温度が高温の場合には短縮できる場合もあるが、80℃程度の場合には、水中へ浸漬させる場合と同様に、10時間以上が必要となる。
【0057】
水中へセパレータを浸漬する場合と同様に、酸性物質を含むガスを洗浄に用いることで、アンモニウムイオンの抽出を促進させる効果が得られる。ここで用いる酸性物質としては、セパレータに使用されている樹脂を浸食せず、亜硫酸、塩化水素などのように燃料電池の特性を低下させないものが好適である。例えば燃料電池の燃料ガスに含まれる二酸化炭素などが適している。
【0058】
また、洗浄ガス中の酸性物質濃度は、アンモニアの抽出速度を高めるためには高い方が望ましく、例えば1×10−3mol/L以上が望ましい。また、ここで使用する洗浄ガスは、密閉した空間内で停滞した状態でも、流速を持った状態でも、どちらの状態でも問題はない。
【0059】
セパレータを電極として、電解液中で、電気分解を行う洗浄方法もある。
水素ガスの酸化反応では、電極となるセパレータ表面にバブリングなどにより水素を供給しながら、電極電位を自然電位から正の方向に制御する。そのとき、電極表面では、式(1)の反応が起こり、水素イオンが生成する。
【0060】
H2(g) → 2H+ + 2e− (1)
【0061】
式(1)の反応で生成した水素イオンは、セパレータ中のアンモニウムイオンの抽出を促進する。しかしながら、自然電位に対して0.2Vを超える電位を電極に印加すると、式(2)の反応により、セパレータを構成する炭素が酸化される可能性があるため、電極電位は自然電位に対して0.2V以下とする必要がある。ただし、電極電位を自然電位に対して0.05V未満とすると、反応速度が遅くなり、電流が流れにくくなるため、電極電位は0.05V以上、より好ましくは、0.1V以上とすることが望ましい。
【0062】
また、電気分解を行う時間が0.5時間未満では、セパレータ中の可溶なイオン種や遊離しやすい有機物を十分に除去することができないので、0.5時間以上、より好ましくは1時間以上の電気分解を行うことが好ましい。
【0063】
C + 2H2O → CO2 + 4H+ + 4e− (2)
【0064】
このとき、電解液には、セパレータを二次汚染する虞のないものを使用しなければならない。二次汚染の虞を排除する観点からは、純水を用いることが望ましいが、純水は絶縁体であるため、電流を流すのに大量の電力を必要とする。そこで、支持電解質として硫酸を添加することで、電解液の電気伝導性を向上させてもよい。ただし、硫酸濃度が濃すぎると、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲンイオンや有機物の溶解度を低下させることから、洗浄液のpHは−0.3以上、さらには0〜4とすることが好ましい。
【0065】
一方、水素ガスを発生させる反応では、電極電位を自然電位から負の方向に制御する。電解液が中性の場合には式(3)の反応が進行し、酸性の場合には式(4)の反応が進行する。そして、水酸化物イオンや水素ガスが発生する。
【0066】
2H2O + 2e → H2(g)+2OH− (3)
2H+ + 2e → H2(g) (4)
【0067】
式(3)で発生した水酸化物イオンは、セパレータ中に含まれる樹脂の官能基末端にある分離しやすいハロゲンイオンと置換して、ハロゲンイオンの溶出を促進させる。また、式(5)の反応により、ホルムアルデヒドなどの有機物を分解・溶出させる。
【0068】
2RCHO + OH− → RCH2OH + RCOO− (5)
【0069】
また、セパレータ表面から水素ガスを発生させることで、その衝撃により、遊離した有機物などの溶出を促進させる効果もある。
式(3)および式(4)の反応は、電極であるセパレータの電位を自然電位から負にすることで進行する。ただし、洗浄効果を発揮するために必要なガス発生量を得るためには、セパレータの電位を自然電位に対して−0.1V以下、さらには−0.2V以下とすることが好ましい。
【0070】
以上のように、電気分解を行う方法によれば、セパレータ表面の反応で発生する水素イオン、水酸化物イオンまたは水素ガスを、セパレータ中の可溶なイオン種や遊離しやすい有機物と反応させた上で除去することができる。従って、セパレータの洗浄に有効である。
【0071】
セパレータの材料として、既述のイオン種や有機物の溶出が少ない導電性炭素材料や樹脂を用いる場合、洗浄を行わずに、既述のイオン種および有機物の溶出量が少ないセパレータを作製することができる。
【0072】
セパレータに高い導電性を付与するためには、セパレータ中における導電性炭素材料の割合を大きくする必要があり、その割合は50〜95%に達する場合もある。このことから、セパレータから溶出する成分の量を既述の基準値以下とするためには、導電性炭素材料から溶出する成分についても、同様の基準値以下とすることが望まれる。
【0073】
すなわち、導電性炭素材料1g当たりから水中に溶出する成分及び量は、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることが好ましい。
【0074】
このような高純度の導電性炭素材料として、例えば窒素、Ar等の不活性ガス雰囲気下、酸素を遮断した環境下、高真空下等で、500℃以上の高温で、加熱処理して灰分を揮散させた黒鉛粉末などの炭素粉末が挙げられる。
【0075】
また、通常の導電性炭素材料を、水、酸性溶液または加湿炭酸ガス等を用いて、前述したセパレータと同様に洗浄処理を行うことによっても、高純度の導電性炭素材料を得ることができる。
【0076】
次に、樹脂については、セパレータ中の樹脂の割合を高めると、セパレータの機械的強度が向上するが、導電性が低下してしまう。そのため、セパレータ中の樹脂の割合は、一般に50%以下である。また、樹脂1g当たりから溶出する成分の溶出量の上限値についても、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下となることが好ましい。
【0077】
このような樹脂材料としては、例えば液晶ポリマー、不飽和ポリエステル、フッ素樹脂などで、純度の高い等級のものがあげられる。これらの材料は、比較的高価であり、また、生産性を高める添加物を入れることが困難なものもあるが、溶出物の少ない高品質のセパレータを作製することができる。
【0078】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0079】
《実施例1〜26、比較例1〜45》
(i)電極電解質膜接合体(MEA)の作製法
本実施例で使用するMEAの作製方法について図1を用いて説明する。図1は、MEAの構成を示す縦断面図である。
アセチレンブラック粉末に、平均粒径約30Åの白金粒子を25重量%担持したものを電極の触媒粉末とした。この触媒粉末をイソプロピルアルコールに分散させた液に、パーフルオロカーボンスルホン酸の粉末をエチルアルコールに分散させた液を混合し、触媒ペーストを得た。
【0080】
電極の支持体になるカーボンペーパーを撥水処理した。ここでは外寸8cm×10cm、厚み360μmのカ−ボン不織布(TGP−H−120、東レ(株)製)からなる拡散層11を、フッ素樹脂含有の水性ディスパージョン(ネオフロンND1、ダイキン工業(株)製)に含浸した後、これを乾燥し、400℃で30分間加熱することで、撥水性を与えた。
【0081】
拡散層11の一方の面に、触媒ペーストをスクリーン印刷法を用いて塗布することで触媒層12を形成した。このとき、触媒層12の一部は、拡散層11の空隙に埋め込まれた。
このようにして触媒層12と拡散層11とからなる電極13を得た。電極13に含まれる白金量は0.5mg/cm2、パーフルオロカーボンスルホン酸の量は1.2mg/cm2となるよう調整した。
【0082】
次に、外寸が10cm×20cmのプロトン伝導性高分子電解質膜14の裏表両面に、一対の電極13を、触媒層12が高分子電解質膜14に接するようにホットプレスで接合し、これを電極電解質膜接合体(MEA)15とした。ここでは、プロトン伝導性高分子電解質膜14として、パーフルオロカーボンスルホン酸を50μmの厚みに薄膜化したものを用いた。
【0083】
(ii)セパレータの成形
次に、表1に記載の導電性炭素材料と樹脂、および必要に応じ硬化剤等を用い、目的の組成比となるように秤量後、ニーダーで混合し、押出成形することにより、φ3mm×5mmのペレットを作成した。これをセパレータ成形用の金型を用いて、下記の[成形条件]と[圧縮条件]で圧縮成型を行い、導電性セパレータを作成した。
【0084】
【表1】
【0085】
[成型条件]
シリンダ温度 :90℃
射出圧力 :180MPa
射出時間 :10sec
金型温度 :180℃
硬化時間 :60sec
【0086】
[圧縮条件]
成型圧力 :190MPa
成形温度 :180℃
成形時間 :300sec
【0087】
以上の方法で作成したセパレータの外観を図2〜4に示す。図2は導電性セパレータをカソード側から見た正面概略図であり、図3はその背面図で、アノード側から見た正面概略図である。
セパレータ20の大きさは10cm×20cm、厚さは4mmであり、一方の端部に、酸化剤ガスの供給側マニホルド孔23a、燃料ガスの供給側マニホルド孔24aおよび冷却水の供給側マニホルド孔25aを有し、他方の端部に、酸化剤ガスの排出側マニホルド孔23b、燃料ガスの排出側マニホルド孔24bおよび冷却水の排出側マニホルド孔25bを有する。
【0088】
図2において、セパレータ20の表面には、マニホルド孔23aから23bに連なる溝26が形成され、この溝内には中央を仕切るリブ27と複数の平行するガス流路29を形成するためのリブ群28が設けてある。ガス流路29は、幅2mm、深さ1.5mmの凹部を有し、リブ群28は、セパレータ20と同じ高さで、幅1mmの凸部を有する。
【0089】
一方、図3のセパレータ20の表面には、燃料ガスの供給側マニホルド孔24aから排出側マニホルド孔24bに連なる溝30が形成され、この溝内には中央を仕切るリブ31と複数の平行するガス流路33を形成するためのリブ群32が設けてある。
【0090】
図4は、導電性セパレータの冷却水流路を有する面側の正面概略図である。このセパレータ41は、セパレータ20と同様に、一方の端部に、酸化剤ガスの供給側マニホルド孔43a、燃料ガスの供給側マニホルド孔44aおよび冷却水の供給側マニホルド孔45aを有し、他方の端部に、酸化剤ガスの排出側マニホルド孔43b、燃料ガスの排出側マニホルド孔44bおよび冷却水の排出側マニホルド孔45bを有する。これらのマニホルド孔は、図2および3に示したセパレータ20と同じ位置に形成し、同じ大きさを有する。
セパレータ41の一方の表面には、マニホルド孔45aから45bに連なる、深さ1.5mmの冷却水の流路46が形成され、この流路には複数の円形のリブ47が設けてある。円形リブ47は、セパレータ41と同じ高さである。
【0091】
セパレータ41は、その一対を、冷却水流路46を有する面を対向させて接合し、両者間に冷却水を流す冷却部を構成する。そして、一方のセパレータ41の裏面には酸化剤ガスの流路を有し、他方のセパレータ41の裏面には燃料ガスの流路を有する。冷却水はマニホルド孔45aから流入し、円形リブ47により分流するため、冷却水流路46の全面を流れてマニホルド孔45bへと到達する。
【0092】
(iii)樹脂および導電性炭素材料の溶出試験
次に、表1に記載の樹脂および導電性炭素材料の溶出試験を行った。本溶出試験では、測定する試料の重量を1gとした。
樹脂の場合は、樹脂のみをセパレータの成形条件と同様の条件で塊状に成形した後、目標重量となるように短冊型に切り出した。
導電性炭素材料の場合は、粉末の状態で1gを秤量し、これを試料とした。
【0093】
イオン交換水を蒸留して作成した電気伝導度0.6〜0.8μS/cmの純水を、あらかじめ90℃に加熱した後、50gを秤量して、耐熱ガラス製の密封容器内に所定の測定試料とともに密封した。次いで、密封容器を95℃に制御されたウォーターバス中で加熱した。加熱後50時間が経過した時点で、ウォーターバス中より密封容器を取り出し、30分間静置した。その後、イオンクロマトグラフィーおよびTOC測定装置を用いて、上澄み液中のイオン成分およびTOCの定量を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(iv)セパレータの洗浄
それぞれの材料で作製したセパレータは、表2〜6に記載の洗浄条件により洗浄した。なお、セパレータを収容する洗浄容器は、幅15cm、奥行き5cm、深さ30cmとし、セパレータが完全に没するように、容器内に洗浄液を注ぎ入れた。セパレータの洗浄中、洗浄液の温度は、容器外部からヒーターで加熱することにより、所定温度に所定時間保持した。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
洗浄液は、表に「純水」と表示されている場合には、電気伝導度が1μS/cmの純水を使用し、「硫酸」と表示されている場合には、上記純水に市販の特級濃硫酸を加えて濃度を2mol/Lおよび1mol/Lに調整した希硫酸を用いた。
【0101】
ガスバブリングは、表に「あり」と表示されている場合には、純水による洗浄の間、液化二酸化炭素ボンベから供給される二酸化炭素ガスを洗浄液中にバブリングした。
【0102】
洗浄液のpHは、純水を用いた場合には、表に「7」と、希硫酸(2mol/L)を用いた場合には、表に「−0.6」と、希硫酸(1mol/L)を用いた場合には、表に「−0.3」と、炭酸ガスをバブリングした場合には、表に「4」と表示した。
【0103】
液温は、洗浄時の液温を60℃、80℃、100℃のいずれかに調整し、また、洗浄時間は、5時間、10時間、15時間のいずれかとした。
【0104】
(v)セパレータの溶出試験
次に、成形したセパレータの溶出試験を行った。本溶出試験では、測定する試料の重量を1gとした。試料には、成形後のセパレータを目標重量1gとなるように短冊型に切り出したものを用いた。
【0105】
イオン交換水を蒸留して作成した電気伝導度0.6〜0.8μS/cmの純水を、あらかじめ90℃に加熱した後、50gを秤量して、耐熱ガラス製の密封容器内に所定の測定試料とともに密封した。次いで、密封容器を95℃に制御されたウォーターバス中で加熱した。加熱後50時間が経過した時点で、ウォーターバス中より密封容器を取り出し、30分間静置した。その後、イオンクロマトグラフィーおよびTOC測定装置を用いて、上澄み液中のイオン成分およびTOCの定量を行った。また、上澄み液の電気伝導度を測定した。以上の溶出試験の結果を表7〜9に示す。
【0106】
【表7】
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
なお、後述の比較例82のセパレータから、同一重量のサンプルを10個切り出し、その中の5個のサンプルをそれぞれ平均粒径が95μm、98μm、105μm、113μmおよび120μmとなるように粉砕処理した。10個のサンプル(5個の切り出しサンプルと5個の粉砕サンプル)を、90℃に保持した電気伝導度が1μS/cm以下の純水中に浸漬させて、可溶成分を抽出し、その濃度を5時間毎に定量した。試験時間と、溶出する塩化物イオン濃度との関係を図6に示す。
【0110】
図6より、試験開始後、しばらくの間は溶出量にバラツキがあるものの、50時間経過後では、サンプルの表面積(平均粒径)や形状に関係なく、測定値のバラツキが小さくなり、いずれのサンプルにおいても溶出量が同レベルになることが確認できた。
【0111】
(vi)高分子電解質型燃料電池の作製
まず、図1で作製したMEAのプロトン伝導性高分子電解質膜に、冷却水と燃料ガス及び酸化剤ガス流通用のマニホールド孔を形成した。その構成を図5に示す。図5はMEAの正面概略図である。MEA50は、高分子電解質膜51とこれを挟む電極52からなり、高分子電解質膜51には、一方の端部に、酸化剤ガスの供給側マニホルド孔53a、燃料ガスの供給側マニホルド孔54aおよび冷却水の供給側マニホルド孔55aを有し、他方の端部に、酸化剤ガスの排出側マニホルド孔53b、燃料ガスの排出側マニホルド孔54bおよび冷却水の排出側マニホルド孔55bを有する。これらのマニホルド孔は、図2〜4に示したセパレータ20、41と同じ位置に形成し、同じ大きさを有する。
【0112】
次いで、高分子電解質膜51の表面に、図3の所定のアノード側セパレータ20を、また裏面に図2の所定のカソード側セパレータ20を重ね合わせ、これを単電池とした。この単電池を2セル積層後、図4の冷却水流路46を形成した所定のセパレータ41で、この単電池を挟み込み、このパターンを繰り返して100セル積層させた電池スタックを作製した。そして、電池スタックの両端部を、ステンレス製の集電板と電気絶縁材料からなる絶縁板を介して端板で挟み、これらを締結ロッドで両端から固定した。この時の締結圧はセパレータの単位面積当たり10kgf/cm2とした。
【0113】
(vii)連続発電試験
作製した高分子電解質型燃料電池を85℃に保持し、一方の電極側に83℃の露点となるよう加湿・加温した水素ガスを、もう一方の電極側に78℃の露点となるように加湿・加温した空気を供給した。その結果、電流を外部に出力しない無負荷時には、約96Vの電池開放電圧を得た。
【0114】
この電池を用いて、燃料利用率85%、酸素利用率50%、電流密度0.7A/cm2の条件で連続発電試験を行い、発電開始24時間経過後の平均電圧(V1)と10000時間経過後の平均電圧(V2)とを計測し、V1とV2の電圧の差(V3)を求めた。結果を表7〜9に示す。
【0115】
《比較例46》
イオン等の溶出成分が存在しない比較例のセパレータを作製した。このセパレータは、10cm×20cm、厚さ4mmのグラッシーカーボン板に、切削加工によりガス流路を形成することにより作製した。
次に、このセパレータの溶出試験ならびにこれを用いて上記と同様の条件で作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表9に示す。
【0116】
[結果]
まず、不純物を含まないセパレータの一例として作成した、比較例46のグラッシーカーボン板を材料としたセパレータでは、イオンおよびTOCの溶出量が測定限界以下であった。このセパレータを用いた燃料電池では、平均電圧が10000時間の運転後には、7.0V低下した(V3=7.0V)。したがって、セパレータから溶出する物質以外の要因に基づく電池特性の低下は、約7.0Vであることがわかった。
【0117】
実施例1では、高純度黒鉛とフッ素樹脂とをセパレータの材料として用いることで、フッ化物イオン以外のイオン種および有機物の溶出量が低いセパレータを作製することができた。このセパレータを用いた時の連続発電試験における電圧変化は6.9Vであり、比較例46(7.0V)と同等であった。このことから、溶出試験で約50μg程度のフッ化物イオンが溶出するセパレータでは、電池特性の低下を引き起こさないことが明らかとなった。
【0118】
比較例1〜5では、表4に示す材料を用いてセパレータを作製し、かつ、セパレータの洗浄を全く行わなかったことから、TOC、NH4 +、Cl−、Br−およびSO3 2−のいずれかの溶出量が高かった。その結果、電圧変化(V3)は14.3〜22.3Vと、比較例46に比べて2〜3倍高い値となった。このことから、これらのセパレータから溶出するイオンや有機物は、それぞれ独立して電池特性を低下させることが確認された。なお、実施例7〜26および比較例6〜45のセパレータは、比較例1〜5のセパレータに対して所定の洗浄を行ったものである。
【0119】
実施例1、2、7、12、17および22ならびに比較例1、6、11、16、21、26、31、36および41のTOCの溶出量を比較した。その結果、TOCの溶出量が300μgを超えると、電池特性の低下が比較例46に比べて大きくなることが分かった。
【0120】
実施例1、3、8、13、18、23および比較例2、7、12、17、22、27、32、37、42のNH4 +の溶出量を比較した。その結果、NH4 +の溶出量が50μgを超えると、電池特性の低下が比較例46に比べて大きくなることが分かった。
【0121】
実施例1、4、9、14、19、24および比較例3、8、13、18、23、28、33、38、43のCl−の溶出量を比較した。その結果、Cl−の溶出量が50μgを超えると、電池特性の低下が比較例46に比べて大きくなることが分かった。
【0122】
実施例1、5、10、15、20、25および比較例4、9、14、19、24、29、34、39、44のBr−の溶出量を比較した。その結果、Br−の溶出量が20μgを超えると、電池特性の低下が比較例46に比べて大きくなることが分かった。
【0123】
また、実施例1、6、11、16、21、26および比較例5、10、15、20、25、30、35、40、45のSO3 2−の溶出量を比較した。その結果、SO3 2−の溶出量が10μgを超えると、電池特性の低下が比較例46に比べて大きくなることが分かった。
【0124】
以上の結果から、それぞれのイオン及び有機物の溶出成分について、溶出量の許容量となる基準値が明らかとなった。また、溶出液の電気伝導度と電池電圧の差(V3)に着目すると、TOCが存在しても電気伝導度と電池電圧の差には関係なかった。このように、電気伝導度と電池電圧の差(V3)は、電池特性との相関性が低いことから、溶出液の電気伝導度は、セパレータの適否を判断するための因子としては不十分であることが明らかとなった。
【0125】
洗浄条件に関しては、実施例2〜26および比較例6〜45の結果から、液温を80℃以上、洗浄時間を10時間以上とすると、各溶出成分を前述した基準値以下にすることができることが確認された。
【0126】
また、純水中に硫酸あるいは炭酸を供給してpHを低くした場合、アンモニウムイオンを除去する洗浄効果が高まることが確認された。それ以外の溶出成分については、溶出量の変化は見られなかった。しかしながら、比較例21〜25において、pH=−0.6の洗浄液では、洗浄前後でのセパレータの重量変化が1%以上となり、セパレータの材料に化学的な劣化が引き起こされたため、溶出試験を行うことができなかった。以上の結果から、洗浄液のpHは−0.3〜7.0の間であれば良いことが確認された。
【0127】
《実施例27〜32、比較例47〜51》
次に、表10および11に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。そして、表10および11に記載の条件でセパレータを洗浄した。ただし、ここでは、超音波洗浄機を用いてセパレータを洗浄した。
【0128】
【表10】
【0129】
【表11】
【0130】
超音波洗浄機には、東京超音波技研(株)製の酸対応超音波洗浄機(PUC−0715)を用いた。この洗浄機は、フッ酸、王水、塩酸、硫酸などの強酸に対する耐性を有する。また、洗浄機の振動板は、耐食性に優れ、かつ、添加剤をまったく含まない純粋なPVDF樹脂からなる等の特徴を有することから、本発明で使用する洗浄機として適当である。
【0131】
洗浄においては、洗浄機にセパレータを入れ、セパレータが完全に没するように洗浄液を注ぎ入れた後、超音波洗浄機のスイッチを入れて所定時間保持した。洗浄液が純水の場合、前述した溶出試験と同様のものを使用した。また、洗浄液が硫酸の場合、上記純水に市販の特級濃硫酸を加えて濃度を1mol/Lに調整した希硫酸を用いた。洗浄時の液温は、不純物の溶出を防ぐために石英管に入れたヒーターを洗浄液中に投入することで、60℃、80℃および95℃のいずれかに制御した。また、洗浄時間は、0.5時間、1時間および2時間のいずれかとした。
【0132】
次に、洗浄後のセパレータの溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後のセパレータを用いて上記と同様の条件で作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表12に示す。
【0133】
【表12】
【0134】
[結果]
比較例47より、天然黒鉛とノボラック型フェノール樹脂とを組み合わせて作製したセパレータの溶出試験は、全ての溶出成分で基準値を上回った。さらに、このセパレータを用いて組み立てた燃料電池の連続発電試験では、電圧の降下速度が著しく、転極する単セルが発生したため、10000時間に達する前に試験を中止した。同様に、比較例49、51でも電圧の降下速度が著しく、試験を中止した。
【0135】
実施例27〜29および比較例48および49の結果より、洗浄時の液温は80℃以上、洗浄時間は1時間以上であれば、各溶出成分を基準値以下にすることができた。また、洗浄時間については、セパレータを洗浄液に浸漬させているだけの状態に比べ、超音波による振動を与えることで、10倍も短くすることができた。
【0136】
また、実施例30〜32および比較例50および51の結果より、洗浄液を硫酸としても電池特性の低下を引き起こさないことが確認された。
【0137】
《実施例33〜35、比較例52〜55》
次に、表13および14に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。そして、表13および14に記載の条件でセパレータを洗浄した。ただし、ここでは、セパレータを加湿ガスに暴露することにより洗浄した。
【0138】
【表13】
【0139】
【表14】
【0140】
洗浄においては、上部および下部の二箇所にバルブをつけた幅15cm、奥行き5cm、深さ30cmの耐圧容器中に、10mlの純水とセパレータとを入れて密閉後、80℃または120℃に保持した恒温層中で5時間、10時間および15時間のいずれかの時間保持した。
【0141】
ここでは、洗浄ガスとして、空気または二酸化炭素を用いた。容器中のガスを空気から二酸化炭素に入れ替える際には、セパレータを入れた容器中に純水を充満させた後、上部バルブより二酸化炭素を入れつつ、下部バルブから純水を排水することにより、容器中のガスを二酸化炭素に置換した。
【0142】
次に、洗浄後のセパレータの溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後のセパレータを用いて上記と同様の条件で作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表15に示す。
【0143】
【表15】
【0144】
[結果]
実施例33〜35により、セパレータを適切な温度の加湿ガス中に暴露し、適切な時間保持することで、各溶出成分を基準値以下にできることが確認された。また、実施例33および35ならびに比較例52および54の結果より、80℃以上のガス温度と10時間以上の洗浄時間が必要であることがわかった。また、実施例34ならびに比較例53および55の結果より、洗浄に用いるガスは二酸化炭素などの酸性ガスでも問題なく使用できることが確認された。
【0145】
《実施例36〜47、比較例56〜69》
次に、表16および17に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。そして、表16および17に記載の条件でセパレータを洗浄した。ただし、ここでは、セパレータを電極として電解液中で電気分解を行うことにより、セパレータを洗浄した。
【0146】
【表16】
【0147】
【表17】
【0148】
ここでは、以下に説明する反応槽中にセパレータを浸漬し、電気分解を行った。
洗浄するセパレータを作用極とし、塩化白金酸中で通電する方法により白金黒化した10cm×20cmの大きさの白金メッシュを対極として用いた。また、試験管中で水素バブリングした0.5Mの硫酸水溶液中にφ1mmの白金線を浸漬させた電極を参照極とした。これらの電極のうち、作用極と対極は、幅30cm、奥行き5cm、深さ30cmの容器中に入れ、それらの電極が完全に没するように、純水あるいは純水に硫酸を加えた希硫酸を電解液として注入した。このとき、作用極と対極との間隔は5mmで並行となるように固定した。また、参照極については、塩橋を介して作用極表面近傍の電位との差を測定できるようにした。電気分解時には、バブリングにより、空気または水素を電解液中に送り込んだ。
【0149】
このように構成された反応槽中において、ポテンショスタットにより作用極の電位を制御しながら電気分解を行った。電気分解時の作用極の自然電位に対する電位は−0.5V、−0.1V、−0.05V、0.01V、0.2Vおよび0.5Vのいずれかとし、電気分解の時間は0.1時間、0.5時間および1時間のいずれかとした。
【0150】
次に、洗浄後のセパレータの溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後のセパレータを用いて上記と同様の条件で作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表18に示す。
【0151】
【表18】
【0152】
[結果]
実施例36〜47により、セパレータを適切な電位で適切な時間電気分解することにより、各溶出成分を基準値以下にできることが確認された。
【0153】
実施例36〜38および比較例56〜58の結果より、作用極の電位を0.05〜0.2Vの間とし、かつ、電解時間を0.5時間以上としたときに、必要な洗浄効果が得られることが確認された。一方、比較例59では、電気分解開始時より激しいガス発生が起こり、電解液が黒く濁る現象が観察された。また、この条件におけるセパレータの洗浄前後の重量変化は約5%に達しており、溶出試験を行うことができなかった。同様に、比較例66でも、溶出試験を行うことができなかった。
【0154】
実施例39〜40および比較例60〜62の結果より、作用極の電位を−0.1V以下とし、かつ、電解時間を0.5時間以上としたときに、目的とする洗浄効果が得られることが確認された。
【0155】
また、実施例42〜47および比較例63〜69より、電解液を硫酸に代えても同様の条件で目的とする洗浄効果が得られることが確認された。
【0156】
《実施例48〜54、比較例70〜77》
次に、表19および20に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。ただし、ここでは、表19および20に記載の条件で、セパレータを成形する前段階で、導電性炭素材料を焼成もしくは洗浄処理した。
【0157】
【表19】
【0158】
【表20】
【0159】
焼成処理においては、導電性炭素材料として使用する天然黒鉛を電気炉に入れ、Ar雰囲気で450℃、500℃および550℃のいずれかの温度で1時間の焼成処理を行った後、電気炉による加熱を停止し、室温になるまで放置した。このとき、昇温および降温に関しては特に制御を行わなかった。
【0160】
洗浄処理においては、耐酸・耐熱容器中に入れた洗浄液中に、天然黒鉛を入れ、容器外部よりヒーターで加熱しながら、洗浄液の温度を所定温度に所定時間保持した。洗浄液が純水の場合、前述した溶出試験と同様のものを使用した。洗浄液が硫酸の場合、上記純水に市販の特級濃硫酸を加えて濃度を2mol/Lまたは1mol/Lに調整した希硫酸を用いた。
【0161】
また、二酸化炭素を含むガスをバブリングした純水による洗浄では、液化二酸化炭素ボンベから二酸化炭素ガスを供給した。洗浄液pHは、純水のみの場合と、純水に硫酸または炭酸を供給した場合においては、pHを7、−0.3および4のいずれかに調整した。洗浄時の液温は60℃、80℃および100℃のいずれかとし、洗浄時間については5時間、10時間および15時間のいずれかとした。
【0162】
次に、洗浄後の導電性炭素材料の溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後の導電性炭素材料を用いて、上記と同様の条件でセパレータを成形し、それらのセパレータについても溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、それらのセパレータを用いて作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表21に示す。
【0163】
【表21】
【0164】
[結果]
導電性炭素材料およびセパレータの溶出試験の結果を比較すると、実施例48〜54および比較例70〜77の全ての場合において、セパレータ成形後の各成分の溶出量の方が値が低くなることがわかった。このことから、導電性炭素材料の溶出試験における基準値は、セパレータの溶出試験における基準値と同等であれば良いことが確認された。
【0165】
導電性炭素材料の焼成処理については、実施例48および49ならびに比較例70の結果より、500℃以上の焼成温度で処理することにより、導電性炭素材料中の不純物を目的の水準まで除去できることが確認された。
【0166】
洗浄液へ導電性炭素材料を浸漬させる洗浄処理において、実施例50〜52および比較例71〜73の結果より、洗浄液温度を80℃以上、洗浄時間を10時間以上とすると、各溶出成分を前述した基準値以下にすることができることが確認された。
【0167】
また、実施例53および54ならびに比較例74〜77の結果より、純水中に硫酸あるいは炭酸を供給してpHを低くした場合、アンモニウムイオン以外の溶出成分に関しては純水の場合と同等の抽出効果であったが、アンモニウムイオンについては抽出効果が高まることが確認された。
【0168】
《実施例55〜60、比較例78〜81》
次に、表22および23に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。ただし、ここでは、表22および23に記載の条件で、セパレータを成形する前段階で、超音波洗浄機を用いて導電性炭素材料の洗浄処理を行った。
【0169】
【表22】
【0170】
【表23】
【0171】
超音波洗浄機には、既述の実施例と同様の理由により、東京超音波技研(株)製の酸対応超音波洗浄機(PUC−0715)を用いた。
【0172】
洗浄においては、洗浄機に天然黒鉛を入れ、天然黒鉛が完全に没するように洗浄液を注ぎ入れた後、超音波洗浄機のスイッチを入れて所定時間保持した。洗浄液が純水の場合、前述した溶出試験と同様のものを使用した。また、洗浄液が硫酸の場合、上記純水に市販の特級濃硫酸を加えて濃度を1mol/Lに調整した希硫酸を用いた。洗浄時の液温は、不純物の溶出を防ぐために石英管に入れたヒーターを洗浄液中に投入することで、60℃、80℃および100℃のいずれかに制御した。また、洗浄時間は、0.5時間、1時間および2時間のいずれかとした。
【0173】
次に、洗浄後の導電性炭素材料の溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後の導電性炭素材料を用いて、上記と同様の条件でセパレータを成形し、それらのセパレータについても溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、それらのセパレータを用いて作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。結果を表24に示す。
【0174】
【表24】
【0175】
[評価]
実施例55〜57ならびに比較例78および79の結果から、洗浄時の液温が80℃以上、洗浄時間が1時間以上であれば、各溶出成分を基準値以下にできることが確認できた。また、洗浄時間については、導電性炭素材料を洗浄液に浸漬させているだけの状態に比べ、超音波による振動を与えることで、10倍も短くすることができた。
【0176】
《実施例61〜63、比較例82〜85》
次に、表25および26に記載の導電性炭素材料と樹脂とを用い、既述の実施例と同様の条件で導電性セパレータを作成した。ただし、ここでは、表25および26に記載の条件で、セパレータを成形する前段階で、導電性炭素材料を加湿ガスに暴露することにより、導電性炭素材料の洗浄処理を行った。
【0177】
【表25】
【0178】
【表26】
【0179】
洗浄においては、上部および下部の二箇所にバルブをつけた幅15cm、奥行き5cm、深さ30cmの耐圧容器中に、10mlの純水と100gの導電性炭素材料とを入れて密閉後、80℃または120℃に保持した恒温層中で5時間、10時間および15時間のいずれかの時間保持した。
【0180】
ここでは、洗浄ガスとして、空気または二酸化炭素を用いた。容器中のガスを空気から二酸化炭素に入れ替える際には、導電性炭素材料を入れた容器中に純水を充満させた後、上部バルブより二酸化炭素を入れつつ、下部バルブから濾紙を介して、純水を排水することにより、容器中のガスを二酸化炭素に置換した。
【0181】
次に、洗浄後の導電性炭素材料の溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、洗浄後の導電性炭素材料を用いて、上記と同様の条件でセパレータを成形し、それらのセパレータについても溶出試験と溶出液の電気伝導度の測定を行った。また、それらのセパレータを用いて作製した燃料電池の連続発電試験を、上記と同様に行った。その結果を表27に示す。
【0182】
【表27】
【0183】
[結果]
実施例61〜63より、導電性炭素材料を適切な温度の加湿ガス中で適当な時間保持することで、各溶出成分を基準値以下にできることが確認された。
また、実施例61および63ならびに比較例82および84の結果から、本発明の洗浄方法では、80℃以上のガス温度と10時間以上の洗浄時間が必要であることがわかった。また、実施例62ならびに比較例83および85から、洗浄に用いるガスが二酸化炭素などの酸性ガスでも問題がないことが確認された。
【0184】
【発明の効果】
本発明によれば、燃料電池のセパレータから溶出するTOC、アンモニウムイオン、塩化物イオン、臭化物イオン、および亜硫酸イオンの量を所定の基準値以下に制御することにより、燃料電池の長期連続運転における特性劣化を抑制することが可能である。
【0185】
また、セパレータの構成材料である導電性炭素材料や樹脂として、既述の成分の溶出量が基準値以下である材料を用いる、構成材料を洗浄処理する、もしくははセパレータを成形後に洗浄処理をすることにより、上記特性を有するセパレータを作製することが可能となる。従って、安価で、加工性と成形性に優れた樹脂を材料に用いてセパレータを製造することが可能となり、燃料電池のセパレータの生産性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかるMEAの構成を示す縦断面図である。
【図2】導電性セパレータをカソード側から見た正面概略図である。
【図3】導電性セパレータをアノード側から見た正面概略図である。
【図4】導電性セパレータを冷却水流路側から見た正面概略図である。
【図5】MEAの正面概略図である。
【図6】溶出試験における溶出時間と溶出成分(塩化物イオン)濃度との関係を示す図である。
【図7】酸化還元反応の試験を行うための装置概略図である。
【図8】塩化物イオンが酸素還元電流に与える影響を示す図である。
【図9】種々のイオンが酸素還元電流に与える影響を示す図である。
【図10】種々のイオンが水素酸化電流に与える影響を示す図である。
【符号の説明】
11 拡散層
12 触媒層
13、52 電極
14、51 高分子電解質膜
15 MEA
20、41 セパレータ
23a、43a、53a 酸化剤ガスの供給側マニホルド孔
24a、44a、54a 燃料ガスの供給側マニホルド孔
25a、45a、55a 冷却水の供給側マニホルド孔
23b、43b、53b 酸化剤ガスの排出側マニホルド孔
24b、44b、54b 燃料ガスの排出側マニホルド孔
25b、45b、55b 冷却水の排出側マニホルド孔
26、30 溝
27、31 中央を仕切るリブ
28、32 リブ群
29、33 ガス流路
46 冷却水流路
47 円形のリブ
50 MEA
61 白金メッシュ
62 白金線
63 参照極
64 ポテンショスタット
Claims (7)
- 水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の両面に配置した一対の電極と、前記電極の一方に燃料ガスを供給し、他方に酸化剤ガスを供給するガス流路を有する一対の導電性セパレータとを具備した高分子電解質型燃料電池において、
前記導電性セパレータは、80〜100℃の水中に浸漬させた状態で50時間保持した場合に、前記導電性セパレータ1g当たりから前記水中に溶出する成分及び量が、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることを特徴とする高分子電解質型燃料電池。 - (1)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中に10時間以上浸漬させる処理、
(2)二酸化炭素を含むガスをバブリングし、かつ80℃以上に保持した水中に10時間以上浸漬させる処理、
(3)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中で1時間以上超音波洗浄する処理、または
(4)ガス温度80℃以上かつ相対湿度100%のガスに10時間以上暴露させる処理、を行った導電性セパレータを用いたことを特徴とする請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。 - 前記導電性セパレータは、それをアノードとして電気分解を行う処理が行われており、前記処理においては、水素雰囲気下の水中またはpHが−0.3以上の酸性溶液中で、自然電位に対して+0.05〜+0.2Vの電位を前記アノードにかけて0.5時間以上の電気分解が行われている請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記導電性セパレータは、それをカソードとして電気分解を行う処理が行われており、前記処理においては、水またはpHが−0.3以上の酸性溶液中で、自然電位に対して−0.1V以下の電位を前記カソードにかけて0.5時間以上の電気分解が行われている請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
- 前記導電性セパレータは、導電性炭素材料およびバインダー樹脂からなり、前記導電性炭素材料は、80〜100℃の水中に浸漬させた状態で50時間保持した場合に、前記導電性炭素材料1g当たりから前記水中に溶出する成分及び量が、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることを特徴とする請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
- (1)不活性ガス雰囲気下または10−1Pa以下の高真空雰囲気下で、500℃以上の温度で焼成する処理、
(2)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中に10時間以上浸漬させる処理、
(3)二酸化炭素を含むガスをバブリングし、かつ80℃以上に保持した水中に10時間以上浸漬させる処理、
(4)80℃以上に保持した水またはpHが−0.3以上の水溶液中で1時間以上超音波洗浄する処理、または
(5)ガス温度80℃以上かつ相対湿度100%のガスに10時間以上暴露させる処理、を行った導電性炭素材料を用いたことを特徴とする請求項5記載の高分子電解質型燃料電池。 - 前記導電性セパレータは、導電性炭素材料およびバインダー樹脂からなり、前記樹脂は、80〜100℃の水中に浸漬させた状態で50時間保持した場合に、前記樹脂1g当たりから前記水中に溶出する成分及び量が、TOCで300μg以下、アンモニウムイオンで50μg以下、塩化物イオンで50μg以下、臭化物イオンで20μg以下、亜硫酸イオンで10μg以下であることを特徴とする請求項1記載の高分子電解質型燃料電池。
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