JP2005003440A - 樹脂素材の分析方法及び樹脂素材の分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】特定の成分(難燃剤や難燃助剤)を含む樹脂素材を、例えば塗装剥離や真空引き等の前処理を行うことなく迅速に識別可能とする。
【解決手段】樹脂素材に放射線を照射したときに当該樹脂素材により回折される放射線を測定し、回折パターンを得る。この回折パターンを、予め用意した分析対象の成分、例えば難燃剤や難燃助剤の回折パターンと比較することにより、樹脂素材中に当該成分が含まれるか否かを判定する。仮に樹脂素材の表面に塗装が施されている場合であっても、塗装を剥離することなく樹脂素材の選別が可能である。
【選択図】 図4
【解決手段】樹脂素材に放射線を照射したときに当該樹脂素材により回折される放射線を測定し、回折パターンを得る。この回折パターンを、予め用意した分析対象の成分、例えば難燃剤や難燃助剤の回折パターンと比較することにより、樹脂素材中に当該成分が含まれるか否かを判定する。仮に樹脂素材の表面に塗装が施されている場合であっても、塗装を剥離することなく樹脂素材の選別が可能である。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂素材中に分析対象の成分(例えば難燃剤や難燃助剤等)が含まれるか否かを判定するための樹脂素材の分析方法及び樹脂素材の分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境問題に対する意識の向上や、いわゆる家電リサイクル法の施行等により、廃棄物のリサイクルに対する関心が高まりつつある。例えば家電製品としてテレビを例に挙げると、ブラウン管のリサイクルについては従来から活発に研究がなされており、既に実用化されている。しかしながら、さらなるリサイクル率の向上を目的として、ブラウン管だけでなく、ブラウン管を格納する筐体材料についても有効なリサイクル技術を開発することが要求されている。
【0003】
テレビ等の家電製品の筐体材料としては、樹脂材料が用いられることが一般的である。筐体に用いられる樹脂の種類は極めて多く、また、使用目的に応じて、樹脂中には様々な添加剤が配合されている。このため、樹脂からなる筐体をリサイクルするには、先ず、樹脂の母材ごとに筐体を識別・分別する必要がある。樹脂の母材の識別については、これまでに多くの方法や技術が開発され、識別のための専用の装置も市販されていることから、迅速且つ簡易な分析技術が確立されている。測定原理としては、例えば樹脂の比重、導電性、赤外線の反射等の利用を例示できる。
【0004】
ところで、樹脂からなる筐体をリサイクルするにあたっては、上記のような方法による母材の分別の次に、その筐体が例えばいわゆる特定臭素系難燃剤等のリサイクル過程で特別な処理を必要としたり、分別が必要な成分を含有するか否かを判定し、当該成分を含有する筐体を分別処理する工程が必要となる。
【0005】
しかしながら、樹脂中の成分を分析する技術としては、前処理の必要がある、破壊検査である等、上述した母材の分析に比べて迅速さや簡易さの面で極めて劣るものである。もちろん、通常の化学分析を行えば、例えば数ppmといった高い検出感度にて、樹脂中の添加剤の成分を正確に特定可能であるが、分析には通常数日を要し、またコストも高いため、使用済み製品をリサイクルするための分析法には不適当である。
【0006】
また、商品を製造する場合には、意図しない成分が商品に混入し、使用されることを防止する目的で、材料や部品等の受け入れ検査を実施することがある。受け入れ検査においては、通常、ロットの中から抜き取られた材料及び部品について、上述したような特定の成分等の有無を検査する。この受け入れ検査は、上述したリサイクル過程での分別に比べて時間的に余裕があるものの、やはり全ての検査対象について化学分析を行うことは現実的ではない。
【0007】
そこで、樹脂中の成分を迅速且つ簡易に分析する技術について、様々な提案がなされている。例えば、近赤外線反射法によって樹脂中に含まれる物質を分析する方法が実用化されている。しかしながら、この方法では、樹脂成形品が塗装されている場合には表面の塗料を分析することになってしまい、樹脂成形品の分析が不可能である。また、樹脂成形品に塗装が施されていない場合や、塗装を剥離した場合であっても、樹脂成形品自体が黒色等の暗い色に着色されている場合は、光吸収によって反射光強度が著しく低下してしまうため、樹脂成形品の分析はほとんど不可能となるという問題がある。また、黒色の樹脂成形品の分析を可能とする技術として、近赤外線の代わりに中赤外線を用いる方法が提案されているが、この技術でさえも塗装の影響を避けられず、塗装を剥離する必要があり、迅速な測定は困難である。
【0008】
また、樹脂の分析方法として、熱分解ガス−赤外分光法による樹脂の識別装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この装置は、一端に開口部を有する小室を有し、前記開口部に当接する樹脂検体を熱分解する熱分解手段と、樹脂検体から発生する分解ガスを前記小室内に導入し赤外線分光手段に搬送する搬送手段と、前記赤外線分光手段で得られたスペクトルを予め作成されている樹脂のスペクトルと比較照合する手段とを備えることにより、廃棄された家電製品から回収された樹脂の分別が簡便容易に実現されるのみならず、難燃樹脂中に含まれる有害物の特定も可能とされている。しかしながら、この技術は破壊的な検査であるため、迅速な測定は困難である。
【0009】
また、特許文献1においては、樹脂成形品に例えばX線を照射し、発生する蛍光X線を分光し、難燃樹脂を識別する方法も提案されている。この方法によれば、樹脂検体に放射線を照射し、樹脂検体から発生する特性X線を分光し、臭素、塩素、リン、アンチモン、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ケイ素などの難燃剤に係わる元素を検出することによって難燃樹脂を識別する。これにより、廃棄された家電製品から回収された樹脂の分別が簡便容易に実現されるのみならず、難燃樹脂中に含まれる有害物の特定も可能であるとされている。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−292350号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の測定原理は、蛍光X線分析に基づくものである。このため、蛍光X線では、樹脂中に含まれる元素の情報は得られるものの、具体的な成分を特定することができないという問題がある。すなわち、特許文献1記載の方法により、蛍光X線によって臭素の特性X線が測定された場合、樹脂中に含まれるのが臭素系難燃剤であろうことまでは限定可能であるが、その臭素系難燃剤がデカブロモジフェニルエーテルなのか、テトラブロモビスエノールAなのか、他の臭素系難燃剤であるのかを特定するまでには至らない。
【0012】
また、特許文献1によると、マグネシウム、アルミニウム等の難燃剤に係わる元素を分析することによって難燃樹脂を識別するとあるが、通常、蛍光X線の測定範囲はある程度の重い元素に限られ、これら軽元素の測定はたいへん困難であると考えられる。その理由として、大気下の測定では、大気によるX線吸収のため軽元素の分析は非常に難しいと言われていることが挙げられる。本発明者らの計算によると、それら元素の特性X線のエネルギー付近である1KeVのX線は、1cm3の大気(組成を窒素80%、酸素20%とする。)で、99%が吸収されてしまい、1%だけが透過できるに過ぎないと見積もられた。
【0013】
そこで、測定環境を真空にすれば、大気の影響が除外され、軽元素の分析も可能になるものと考えられるが、測定工程に真空引きという余計な工程が加わってしまう。これでは、リサイクル処理で要求されるスループットを満足し難しい。加えて、樹脂に塗装が施されていると、そのX線吸収によって軽元素の蛍光X線強度が著しく低下し、アルミニウムやマグネシウム等の元素の分析はほぼ不可能となる。したがって、塗装の剥離というさらなる余分な工程が必要となる。塗装剥離や真空引きが許容されるのは、受け入れ検査などの時間的に余裕がある場合に限られるが、やはり、測定時間の長時間化は避けることが好ましい。以上のように、特許文献1記載の方法では、元素の特定しかできないこと、軽元素の測定には塗装剥離や真空引き等の前処理が必要であり測定が長時間化すること等の不都合があり、新たな分析方法の開発が望まれている。
【0014】
そこで本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、樹脂成形品等の樹脂素材中に含まれる成分を正確に特定できるとともに、例えば塗装剥離や真空引き等の前処理を必要とすることなく迅速に分析することができる樹脂素材の分析方法、及びこの分析方法に用いられる樹脂素材の分析装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討した結果、樹脂素材中に含まれる難燃剤等の成分の多くが、樹脂中で結晶構造、すなわち周期構造をとること、また、これら成分が周期構造をとることを利用して、X線回折測定によって樹脂素材中の成分の分析が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明に係る樹脂素材の分析方法は、樹脂素材に放射線を照射し、当該樹脂素材によって回折される放射線を測定し、樹脂素材に含まれる成分を分析することを特徴とする。
【0017】
以上のような樹脂素材の分析方法においては、樹脂素材について放射線回折測定(例えばX線回折測定)を行うことによって、単なる元素分析にとどまらず、樹脂素材中に特定の成分(例えば難燃剤や難燃助剤)が含まれるか否かについて確実に識別される。
【0018】
また、本発明に係る樹脂素材の分析方法によれば、仮に樹脂素材の表面に塗装が施されている場合であっても、塗装を剥離することなく樹脂素材の成分が分析される。
【0019】
さらに、本発明に係る樹脂素材の分析方法によれば、マグネシウム、アルミニウム等の比較的軽い元素について大気中で測定する場合であっても充分な信号強度を得られ、真空引き等の工程が不要である。
【0020】
一方、本発明に係る樹脂素材の分析装置は、放射線を発生する放射線発生部と、樹脂素材により回折された放射線を検出する複数の検出器とを備え、上記複数の検出器が配列されることで、回折放射線の角度分布が一括測定可能とされていることを特徴とする。
【0021】
以上のような樹脂成分の分析装置においては、複数の角度における回折線を同時に測定可能とするように、複数の検出器が配置されているので、検出器を回転走査するといった複雑且つ長時間を要する過程を省略できる。このため、測定時間が大幅に短縮される。
【0022】
また、本発明に係る樹脂素材の分析装置は、放射線を発生する放射線発生部と、放射線のエネルギー情報を取得可能な検出器とを備え、蛍光放射線と回折放射線とを同時に測定可能であることを特徴とする。
【0023】
以上のような樹脂素材の分析装置においては、検出器として放射線のエネルギー情報を取得可能な検出器を備えているので、回折強度の測定と蛍光強度の測定が同時に行われる。したがって、蛍光分析によって特定の元素を含む樹脂素材を選別し、選別された樹脂素材について回折現象を利用した測定を行うようにすれば、分析工程全体に要する時間が大幅に短縮される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の樹脂素材の分析方法及び樹脂素材の分析装置について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
本発明を適用した樹脂素材の分析方法は、放射線回折測定を利用するものであり、樹脂素材、例えば樹脂成形品に放射線を照射したときに樹脂成形品から出射される回折線を測定することによって、当該樹脂成形品中に分析対象の成分が含有されているか否かを分析する。
【0026】
ここで、樹脂成形品に照射する放射線の具体例としては、X線、γ線、電子線等が挙げられる。中でも、理化学分析において回折測定に用いる放射線として多用されており、また、分子や原子の作る周期構造の間隔と波長領域とが対応することから、X線を利用することが好ましい。もちろん、分析対象の成分が作る周期構造の間隔によっては、X線以外の放射線を用いることがよい場合もあり、このような場合には適当な波長領域の放射線を適宜選択すればよい。
【0027】
また、分析される樹脂成形品としては、回収した使用済み電気製品から発生したもの等を利用できる。具体的には、テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機等が挙げられ、後述するような特定の難燃剤が配合されることから、テレビの筐体について分析することが好ましい。
【0028】
本発明の分析方法で分析対象となる成分としては、樹脂成形品中で周期構造を作る成分であれば、ほぼ全て識別できるため、いかなるものであってもよい。この理由として、放射線回折測定は、物質の作る周期構造の特有性(違い)によってその物質を識別する分析法であるためである。例えば、ハロゲン系難燃剤、軽金属酸化物、リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種の難燃剤等は、樹脂中でそれぞれ独自の周期構造をとることが確認されており、本発明により特定可能である。ハロゲン系難燃剤としては、具体的には、化1に示すデカブロモジフェニルエーテル等のポリブロモジフェニルエーテル(化2)、化3に示すテトラブロモビフェノールA、化4に示すエチレンビスペンタブロモビフェニル、化5に示すポリブロモジフェニル、化6に示すヘキサブロモシクロドデカン、化7に示す臭素化エポキシポリマー/オリゴマー、化8に示す臭素化トリアジン、化9に示すエチレンビステトラブロモフタルイミド、化10に示すペンタブロモベンジルアクリレート、化11に示すTBAカーボネートオリゴマー、化12に示すTBA−(2,3−ジブロモビルエーテル、化13に示すテトラブロモビスフェノールS等の臭素系難燃剤が挙げられる。これらのうち、化1に示すデカブロモジフェニルエーテル等のポリブロモジフェニルエーテル(化2)、及び化5に示すポリブロモジフェニルは、特定臭素系難燃剤として指定されている。また、軽金属水酸化物としては、具体的には水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等を例示できる。また、本発明により、無機フィラーとして用いられることの多いタルク等の無機系の添加物も概ね識別可能である。また、臭素系難燃剤の難燃助剤として用いられる三酸化アンチモン等の酸化アンチモン等も、独自の周期構造をとるため、本発明の分析方法により識別可能である。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
例えば放射線としてX線を用いる場合、X線回折測定の方式としては、方角度分散型方式とエネルギー分散型方式との2つに大別できる。方角度分散方式は、所定の範囲の検出角度を走査し、所定の波長のX線の検出強度の角度分布を測定する方式である。エネルギー分散型方式は、所定の範囲のエネルギー分布を有するX線を用い、試料へ照射するX線の入射角度と検出角度とを固定して、検出されるX線のエネルギー分布(エネルギースペクトル)を測定する方式である。理化学分析の粉末X線回折法では、前者の方式がとられるのがほとんどであるが、本発明ではどちらの方式を採用してもよいし、回折現象を測定可能であれば、これら以外の方式でも構わない。
【0043】
以下では、方角度分散方式によるX線回折測定を採用し、樹脂成形品として例えば納入された材料又は部品を用い、これらを製品に採用するか否か判定するための受け入れ検査を想定して説明する。また、この受け入れ検査においては、難燃剤としてデカブロモジフェニルエーテルが含有されている樹脂成形品(材料又は部品)を不採用と判定するものとする。すなわち、以下では、樹脂成形品中にデカブロモジフェニルエーテルが含有されているか否かを判定することになる。
【0044】
先ず、分析対象の成分であるデカブロモジフェニルエーテルが含まれる樹脂サンプルを用意し、この樹脂サンプルについてX線回折測定を行い、回折パターンを得る。そして、得られるX線回折パターンから、デカブロモジフェニルエーテルがどの角度に回折ピークを与えるかを予め調べておく。
【0045】
次に、納入された樹脂成形品についてX線回折パターンを測定する。なお、X線回折パターンの測定方法及び測定装置については、詳細を後述する。
【0046】
そして、得られた樹脂成形品のX線回折パターンと、予め用意しておいたデカブロモジフェニルエーテルの回折パターンとを比較し、一致するピークが存在するか否かを判断する。これによって、樹脂成形品中にデカブロモジフェニルエーテルが含まれるか否かを判定することができる。得られたX線回折パターンと標準の回折パターンとの比較、及びデカブロモジフェニルエーテルが含有されるか否かの判定は、受け入れ検査を担当する測定者による判断や、判定ソフトウェアの使用等によって行うことができる。
【0047】
分析対象のデカブロモジフェニルエーテル以外に、周期構造を有する成分が樹脂成形品中に高濃度に添加され、且つ当該成分の与えるX線回折パターンとデカブロモジフェニルエーテルのX線回折パターンとが重なって測定されると、樹脂成形品中にデカブロモジフェニルエーテルが含まれているか否かの判定が困難になることがある。このような場合も、デカブロモジフェニルエーテルが含まれているか否かの判定は、測定者の判断によるか、又は適切に組み上げた判断ソフトウェアによって自動的に判断すればよい。その判定ソフトウェアは、理化学分析において未知試料中に含まれる成分をJCPDSカードのデータベースで自動検索するアルゴリズムにしたがって作成することができる。
【0048】
仮に、X線回折測定で検出される成分の種類がある程度の数に限られる場合には、以下のようにすることで、樹脂成形品中に目的の物質が含まれるか否かを非常に容易且つ迅速に判定することができる。具体的には、先ず、樹脂成形品から検出されると予想される成分全てについて、予めX線回折測定を行い、回折パターンを得る。それら回折パターンを比較し、分析対象の成分に特有の1つ又は複数の回折角度のピークが存在するか否かに注目する。もし、分析対象の成分にだけに特有な角度の回折ピークが存在するならば、樹脂成形品の回折パターンにおいて、当該角度にピークが検出されるか否かを確認するだけで、樹脂成形品中に分析対象の成分が含まれるか否かを識別することができる。このように、その回折角付近の回折線の強度を測定するだけで目的の物質が含まれるか否かを判定でき、その回折角以外の範囲の測定を省略できるため、測定時間が数秒程度といった短時間で済み、迅速な識別が可能である。また、目的とする物質に特有なピークが2つの角度に存在する場合であっても、その2つの角度で同時に検出されれば、目的の物質が含まれるかどうか識別できる。2つに限定して注目することによっても、通常の測定に比べて判定が容易であり、且つ測定時間の大幅な短縮が可能である。なお、目的とする物質に特有なピークが3つ以上であっても、ピークが1つ又は2つの場合と同様にすることができる。
【0049】
以上のように、本発明によれば、樹脂成形品において難燃剤等の成分が結晶として存在していることに着目し、樹脂成形品中の成分を放射線回折測定によって分析するので、元素分析のみが行える蛍光X線分析とは異なり、樹脂成形品が含む具体的な成分を特定することができる。放射線回折のパターンは、物質が作る周期構造に固有のものであり、たいていの場合、その周期構造は、その物質に固有のものである。また、樹脂に添加されている成分は、全くの未知物質であることはほとんどなく、何らかの既知物質であると考えられる。したがって、予め、分析対象の成分の回折パターンを測定しておき、樹脂試料で測定される回折パターンと比較することで、樹脂試料中に含まれる成分を容易且つ迅速に特定することができる。
【0050】
また、検出される可能性のある物質群のなかで、目的の物質に特有の回折角が存在する場合には、樹脂成形品について、この特有の回折角だけを測定することによって、目的の成分を極めて迅速に識別することができる。この場合、特有の回折角以外の測定が不要となるため、回折パターンの測定を数秒程度と極めて短時間にすることができる。
【0051】
また、放射線回折測定では、樹脂成形品の表面から数mm程度の情報を回折線として測定可能であるため、通常0.1mm程度の厚みの塗装の影響をほとんど受けることなく、樹脂成形品中の成分を特定することができる。特に、樹脂に照射する放射線として、例えば8.04KeVのX線等の物質透過力が比較的あるものを選択することによって、塗装の影響を最小限にとどめて樹脂の添加剤を識別することができる。試料としての樹脂成形品に照射された例えばX線は、樹脂によって吸収、散乱、回折等の相互作用を受けながら樹脂成形品内へ数mm以上進入する。回折X線も、やはり樹脂によって吸収、散乱、回折(二次的な回折)の影響を受けながら、樹脂試料からから出てくる。それらを総合すると、一次的な回折X線として、樹脂試料の表面からサブmmから数mm程度の深さ部分の情報が測定されることになる。このため、樹脂成形品に塗装が施されていても、通常の塗装の厚みは0.1mm程度であることから、ほとんど塗装の影響無しに樹脂母材中の成分を分析することができる。したがって、塗装剥離のような前処理が全く不要でそのぶんだけ迅速な測定が可能となる。
【0052】
また、樹脂成形品中のマグネシウム、アルミニウム等の比較的軽い元素を含む成分について測定する場合であっても、大気中で充分な信号強度を確保できる。特に、樹脂に照射する放射線として、例えば8.04KeV等の比較的物質透過力が高いX線を選択すれば、大気による減弱は無視できるため、大気中で測定を行ったとしても、より高い信号強度を確保できる。したがって、アルミニウムやマグネシウムといった軽元素から構成される成分も、分析することができる。なお、アルミニウムやマグネシウム等の軽元素から構成される成分を分析する場合、回折強度が弱いことが懸念されたが、後述の実施例で示すように、難燃剤としての例えば水酸化マグネシウムでは、マグネシウム及び酸素等の元素が作る周期構造によって、回折X線の強度が充分に確保され、当該物質を識別可能な検出感度が得られることを確認している。以上のように、本発明によれば、マグネシウムやアルミニウム等の軽元素から構成される成分を測定する場合であっても、大気中で充分な信号強度を確保できるため、真空引き等の工程が不要であり、樹脂成形品中の成分を迅速に測定できる。
【0053】
また、従来の分析方法では、樹脂成形品自体が着色されている場合、樹脂成形品の分析が不可能となることがあるが、本発明によれば、着色剤の影響を受けることなく、含まれる成分ついて正確に分析を行うことができる。この理由について以下に説明する。
【0054】
着色剤が顔料等の結晶構造を有する成分である場合、着色剤からも回折X線が生じるので、これを測定することで着色剤の成分を分析、識別することも原理的には可能であるとともに、このような着色剤に由来する余分な回折ピークが検出されることによって、目的の成分の識別を困難にするおそれもある。しかしながら、たいていの着色剤の添加量は、通常0.1%以下であり、他の例えば難燃剤のように数10%添加されている成分に比べて極めて少量である。このため、着色剤の回折強度も非常に低くなり、難燃剤等の識別にはほとんど影響を与えない。また、着色剤が染料であって、樹脂中に分子分散している場合は、回折線を発生させることがない。以上のことから、本発明によれば、樹脂が着色されていても、その影響をほとんど受けることなく、目的の成分の識別を行うことができると言える。
【0055】
なお、通常のリサイクル処理のための分別においては、顔料の種類の分別までは要求されない。着色剤の分別が要求されるとしても、成分の特定までは要求されず、色ごとの分別(例えば、黒系、白系、赤系、青系等)にとどまる。これらの色は視覚で容易に判別可能であり、また、自動化するとしても測色計や分光測定等の現行装置で極めて簡単に識別できる。
【0056】
なお、樹脂成形品を構成する樹脂が結晶性の樹脂である場合、周期構造をとる。また非結晶性の樹脂であっても、ポリスチレン単位でベンゼン環が並んでいるポリスチレン等は、周期構造となる。また、高分子鎖が並ぶことによって、その並びが周期構造となることもある。通常、高分子が作る周期構造は、前述の難燃剤のような成分の周期構造と比較して、その間隔が大きく、また、単結晶のようなはっきりとした周期構造でなく、ゆるい周期構造をとる。このため、通常、樹脂自体の与える回折角度は小さめであり、回折ピークはシャープでなくブロードなものになる。したがって、分析対象の成分の回折パターンが、樹脂自体の回折パターンによって邪魔されることはほとんどない。
【0057】
ところで、本発明では、上述のようにX線回折測定を単独で行うこと以外に、以下に説明するように、放射線回折測定と蛍光X線分析とを組み合わせることもできる。以下では、例えばX線回折測定と蛍光X線分析とを組み合わせる方法によって、多数の樹脂のうち、デカブロモジフェニルエーテルが含有されている樹脂だけを選別する場合を例に挙げて説明する。
【0058】
この方法では、先ず、樹脂成形品について蛍光X線分析を行い、臭素系難燃剤が含有されているかどうかを調べる。樹脂に10%程度の臭素系難燃剤が添加されている場合、蛍光X線分析によって、1秒程度で臭素元素を検出できる。このように、X線回折測定に先立って蛍光X線分析を行うことにより、難燃剤が含有されていない樹脂や、例えばリン酸エステル系等の臭素系以外の難燃剤が添加されている樹脂を、容易に工程から除外することができる。
【0059】
次に、臭素系難燃剤が含有されていると判定された樹脂についてのみ、X線回折測定を行い、デカブロモジフェニルエーテルが含有されているかどうかを調べる。X線回折測定については、詳細を後述する。
【0060】
以上のように、極めて迅速な測定が可能な蛍光X線分析によって試料をある程度スクリーニングし、分析対象の成分を構成する少なくとも1種の元素(例えば臭素)を含む樹脂についてのみX線回折測定を行うことによって、工程全体としてのスループットを向上させることができる。特にこの方法は、検査すべき樹脂成形品の数が極めて多く、且つ、特定の成分(例えばデカブロモジフェニルエーテル)を含む樹脂成形品を工程から選別・除外しなければならないような、リサイクル処理工程において極めて有用である。
【0061】
蛍光X線を測定するためには、市販されている理化学分析用の通常の蛍光X線分析装置を用いることができる。蛍光X線測定での検出器の方式は、エネルギー分散型と波長分散型との2つがあり、どちらの方式でも用いることができるが、より一般的な方式であるエネルギー分散型の装置で充分である。
【0062】
次に、方角度分散方式によって試料のX線回折パターンを測定するための測定装置、及びこの測定装置によるX線回折測定について説明する。
【0063】
X線回折の測定を行う装置としては、例えば図1に示すような、通常の理化学分析用のX線回折装置を使用することができる。この装置は、主に、X線を発生するX線発生部1と、樹脂成形品等の試料Sを取り付ける試料取付部2と、試料から発生した回折線を検出するX線検出部3と、試料とX線検出部3とを連動させる回転機構(図示せず)と、これら各部を制御しデータ記録や解析を行う電子計算機部(図示せず)とから構成される。
【0064】
X線発生部1は、数10kVの高電圧を発生する電圧発生部(図示せず。)と、電圧発生部からの高電圧によりX線を発生するX線管球4と、目的のX線のみを透過させるスリット部5とからなる。X線管球4は、内部に陰極としてのフィラメント4aと、陽極としてのターゲット4bを備える。試料によっては使用するX線の波長を選ぶ必要があり、X線管球4のターゲット4bを銅、クロム、鉄、コバルト、モリブデン、場合によってはロジウム、パラジウム、タングステン等から選択する。中でも、特性X線のエネルギーが8.04KeV、波長が1.54Åであり、本発明で目的とする難燃剤等が作る周期構造の間隔とほぼ同じで、適当な回折角度を生じること等の理由から、X線管球4のターゲット4bとして銅を用いることが好ましい。すなわち、ブラッグ条件の下記式(1)において、例えば、通常n=1の回折だけを考えればよく、周期構造の間隔dと波長λとが同じであると、sinθが0.5となり、回折角θが30°となるからである。
【0065】
2*d*sinθ=n*λ ...式(1)
d:周期構造の間隔(Å)
θ:回折角度(°)
n:自然数
λ:波長(Å)
【0066】
仮に、その周期構造のオーダーが1桁大きい場合は、1.54Åの波長のX線を使うと、sinθが小さくなり、場合によってはθが0°近くになってしまう。回折角度が小さいX線を測定するのは困難である。理由として、試料に照射するX線が、X線検出部3に直接入りやすいからである。またたとえ、そのような干渉を抑制できたとしても、例えば5°前後に回折ピークが集中してしまうので、その回折角度パターンを測定するには角度分解の高い精度が要求されることになり、測定が困難となる。逆に、周期構造の間隔が短い物質を、それに対して長い波長のX線で測定しようとすると、回折角度が90°近くとなり、やはり回折X線の測定が困難となる。理由として、X線管球4とX線検出部3とが位置的に干渉するために測定が不可能となることや、ピークの集中化を招いて角度分解能の点でも不利であること等が挙げられる。このように、使用するX線の波長は、測定しようとする物質が作る周期構造の間隔に合わせて、適当な回折角になるように選ぶことが望ましい。
【0067】
X線発生部1には、スリット部5が設けられている。スリット部5は、試料及びX線検出部3の回転角度の方向において、1°のX線出力角に設定されることが多い。X線管球4の焦点から試料までの距離が300mmとすると、試料面では幅2.6mmとなる。回転軸の方向でのX線の広がりは、試料面上において、2cm程度とすることが多い。すなわち、照射するX線ビームは試料面の中心において、幅2.6mm、高さ2cmとなる。もちろん、回折角度が小さい場合、すなわち、照射するX線と試料面とが平行に近い場合は、X線が照射される試料面のサイズは大きなものとなる。なお、必要に応じて、X線が回転面外へ発散することを防止するためのコリメーターである、ソーラースリットを設けてもよい。通常、X線管球4が位置的に固定されるが、X線管球(照射X線)5と試料面とX線検出部(回折X線)3との角度的な位置関係(後述)を成立させられれば、X線管球4を可動としてもよい。
【0068】
また、このようにしてX線を発生させると、ターゲット4bの特性X線のほかに、制動X線と呼ばれる管電圧の大きさまでブロードなエネルギー分布のX線も発生してしまう。制動X線において特性X線以外のエネルギー(波長)のものは不要であるばかりか、測定に邪魔となる。よって、ターゲット4bの特性X線をなるべく選択的に通過させ、それ以外を吸収除去するフィルターを設けてもよい。また、分光結晶を用いて、回折に用いるX線を単色化してもよい。
【0069】
試料取付部2には、回転機構としてゴニオメーター6が備えられており、X線光源に対して0°〜90°程度の範囲で、試料が向くように調節される。ここで0°は、試料へ照射するX線と試料面とが平行であることを意味し、90°は、試料へ照射するX線に対して試料面が垂直であることを意味する。通常のX線回折測定装置において、試料取付部2における試料取り付けホルダーは、測定試料の対象として2cm角程度の板を想定して作られている。このため、本発明に使用する際には、識別しようとする樹脂成形品を試料取り付けホルダーに一致する形状に予め加工しておかねばならない。したがって、X線回折測定装置の試料の取り付け部2は、目的とする樹脂成形品をそのまま取り付けられるように適当に改造することが望ましい。例えば、数10cmの大きな試料を取り付けられるようにしておくのがよい。取り付け方法としては、自在アームによるクランプ等、公知の機構を用いることができる。
【0070】
X線検出部3は、スリット部7と、例えば8.04KeV(1.54Å)のX線を分光する分光部8と、回折X線を検出するための例えばシンチレーションカウンター係数管等の検出器9とから成る。分光部8には、適切な物質の単結晶が用いられており、やはり回折現象を利用し、目的とするX線を分光し単色化するようになっている。
【0071】
検出器9は、シンチレーションカウンター係数管以外のものでもよい。例えば、検出器9として、X線によって発光するシンチレーターとその光を検出するフォトダイオードとによる検出器を用いてもよい。シンチレーターとしては、例えば、CuS:Al、S等の無機物を例示できる。方角度分散型方式のX線回折装置における検出器9では、エネルギー分解能は必要でなく、X線強度を高感度に検出できればよい。この検出部10は、試料部を回転中心とした図示しないアーム上に設けられており、前記の試料の回転に応じて、検出部10も回転するようになされている。ここで、照射されるX線と試料面とが作る角度と、試料面と試料から出てくる回折X線との角度とを、同一にする必要がある。よって、検出器9の回転角度は、試料面の回転角度の2倍になっている。通常、この2倍の角度で回折パターンをチャートに表す。試料から検出器9までの距離は、例えば300mmとすることができる。なお、X線検出部3においても、必要に応じてソーラースリットを設けてもよい。
【0072】
試料取付部2に取り付けられる試料としての樹脂成形品は、塗装されている場合であっても、測定条件を適切に選べば塗料を剥離する必要は無いが、数cm角の平面の測定部位が必要である。試料面は、鏡面である必要はないため、少々のわん曲面や、粗面であってもかまわないが、概ね平面であることが望ましい。試料全体の大きさは、用いる装置の試料取付部2の大きさに合わせる必要がある。市販されているX線回折測定装置を用いるのであれば、機械加工等によって試料を予め2cm角ほどの板状にしておくことが望ましい。
【0073】
次に、上述したような図1に示すX線回折測定装置を用いて、樹脂成形品のX線回折パターンを測定する方法について説明する。樹脂成形品についてのX線回折パターンの測定は、通常の理化学分析で行われるX線回折パターンの測定と同様に行うことができる。
【0074】
先ず、試料としての樹脂成形品を、装置の試料取付部2に取り付ける。次に、X線発生部1のX線管球4から試料に向けて矢印Aに示すようにX線を照射する。このとき、試料とX線検出部3とを適切な相互角度の関係で回転させながら、矢印Bに示す回折X線の各角度におけるX線強度を検出器9で検出し、計測する。
【0075】
このとき、管電圧は、用いるターゲット4bの特性X線の強度が最大となるように選択する。例えばターゲット4bが銅である場合、例えば30kV〜40kVとする。ターゲット4bの材質に応じた最適な管電圧が知られており、おおよその目安としては、特性X線のエネルギーの数倍に管電圧を設定する。
【0076】
なお、管電流が大きいほど照射するX線強度が大きくなり、X線の量子雑音と呼ばれるノイズを低減することができるので、一般的にはSNの点で有利である。また、管電流が大きいほど検出器が有する絶対的なノイズに比べてX線の強度が大きくなるので、やはりSNの点で有利である。その他、SNを決める要因として、コヒーレントな回折のX線強度と、インコヒーレントすなわちランダムな散乱反射のX線強度とを考える必要がある。通常のX線回折装置では、余分な散乱X線が検出器になるべく入射しないように設計されているが、回折X線及び散乱X線のどちらもX線の量子雑音の影響を受けるので、やはり照射するX線強度を大きくすることが好ましい。なお、管電流を大きくすると、X線発生の焦点がより大きくなり、角度分解能の低下をもたらすので、過度の管電流には注意が必要である。管電流としては、具体的には10mA〜40mAを例示できる。
【0077】
測定角度は必要に応じて選べばよいが、最初は、測定角度をなるべく広い範囲として測定することが望ましい。具体的には、測定角度2θで10°〜60°を例示できる。必要に応じて、測定角度2θを5°〜90°、また、それ以上の範囲にすることもできる。測定は、一般的に、小さい角度から開始される。時間あたりの角度の増加量(走査速度)は、小さい方が角度の分解能の点、及び測定のSNの点で有利となる。具体的には、1°/分、10°/分、100°/分等を例示できる。しかしながら、走査速度が1°/分である場合、10°〜60°の角度範囲を測定しようとすると、測定時間として50分要することになる。樹脂のリサイクル処理の場合、この測定時間は長すぎるため、予め測定すべき角度範囲をよく検討しておき、実際の工程においては、樹脂中の成分を識別可能な程度に、角度範囲をなるべく小さく限定して測定することが望ましい。例えば、測定角度20°〜40°の範囲を、100°/分で測定するのならば、測定時間は12秒となり、測定時間を大幅に短縮できることがわかる。
【0078】
ところで、上述したような、図1に示す通常のX線回折測定装置によるX線回折測定では、回折パターンを測定するために検出部を回転走査しなければならないため、測定時間が長時間に及ぶという問題がある。
【0079】
そこで本発明では、図2に示すように、試料を中心とした円弧上に、検出器9をアレイ状に配置した構成のX線回折測定装置を用いることが好ましい。検出器9は、試料Sからの所定の角度範囲の回折線を同時に測定可能とされる。なお、図2においては、X線検出部3として、ポイントとなるアレイ状の検出器9のみを図示し、他の部材の図示を省略している。また、図2においては、検出器9を7つ配置した場合を例に挙げたが、検出器9の数は任意に変更できる。
【0080】
また、図2に示すX線回折測定装置においては、図1に示すX線回折測定装置と同様に、必要に応じて、スリットや分光結晶等を設けることが好ましい。その配置は通常のX線回折測定装置と同様にすることができる。ここで、分光結晶を極力小さく設けても、それに対応する検出器9の角度間隔が大きくなるおそれがある。そこで、分光結晶の面を回転面に対して略平行となるように配置し、分光されたX線を回転面外へ反射させるようにすることが好ましい。また、隣り合う分光結晶を、互いに回転面の上下に向けることで、検出器9の位置的な干渉を緩和することができる。このとき、分光結晶の代わりに、回折に使用するX線の波長をできるだけ通過させ得るようなX線フィルターを用いてもよい。このようなX線フィルターは、分光結晶に比べて、測定されるX線回折パターンの品質を低下させるものの、本発明のX線回折測定は、樹脂成形品中に目的の成分が存在するか否かを識別するために実施されるものであり、理化学分析で全くの未知試料を同定する場合のような高精度が要求されないため、特に問題なく使用することができる。
【0081】
以上のように、図2に示すX線回折測定装置は、ある角度範囲の測定を同時に行うことができるように複数の検出器9がアレイ状に配置されているので、これら複数の検出器9によって検出しうる角度範囲だけで、樹脂中の成分を特定できる場合には、測定に要する時間を飛躍的に短縮することができる。また、複数の検出器9によって検出しうる角度範囲よりさらに広範囲な測定が必要な場合でも、複数の検出器9によって検出しうる角度範囲をブロック測定する方法や、X線検出部3を高速に連続回転させることにより複数の検出器9間の補完をしながら測定を行うことで、測定に要する時間を大幅に短縮することができる。この場合、アレイ状に配置された複数の検出器9のうち、円弧の両端に位置する検出器9においては、照射X線と試料面との角度と、試料面と検出器との角度との2倍の関係から少々ずれてしまう。このため、この両端の検出器9によって得られる回折パターンは、通常の理化学分析用のX線回折装置で測定される回折パターンとはその強度等が異なるものになる。しかしながら、本発明におけるX線回折測定は、樹脂成形品中に目的の成分が存在するか否かを識別するために実施されるので、理化学分析で全くの未知試料を同定する場合のような高精度が要求されない。したがって、本発明においては、図2に示すX線回折測定装置を利用することができる。
【0082】
ところで、本発明においては、上述したように、X線回折測定と蛍光X線分析とを組み合わせて分析することもできる。以下では、X線回折測定と蛍光X線分析とを同時に実施するための装置について、図3を参照しながら説明する。
【0083】
図3に示す装置は、X線回折測定装置をベースとしているが、検出器9として、エネルギー情報も得られる検出器を用いる点に特徴がある。検出器9は、例えば蛍光X線測定装置に用いられるような波長分散型X線検出器(WDX)、エネルギー分散型X線検出器(EDX)等を用いることができる。特に、検出器9としてEDXが好適である。この場合、X線検出部3の分光結晶は不要となる。試料取付部2は、通常のX線回折装置と同様の構成とすることができる。図3に示す装置においては、X線発生部1を固定とし、X線検出部3を可動としているが、X線検出部3を固定とし、X線発生部1を可動としてもよい。
【0084】
また、図3に示す装置においては、X線発生部1に、分光結晶又は特定のエネルギーのX線を選択的に透過させるフィルター10を配置する。
【0085】
そして、この装置においては、X線発生部1から試料へX線を照射するとともにX線検出部3を移動させることによって、各角度におけるX線エネルギースペクトルを測定することができる。X線回折現象に使用するX線が銅の特性X線である場合、X線エネルギースペクトルの銅の特性エネルギーのX線強度に注目し、その角度分布(回折パターン)を見ることで、X線回折の情報を得ることができる。X線エネルギースペクトル中、銅の特性エネルギー以外においては、試料に含まれる元素に対応した蛍光X線が検出されることになる。蛍光X線の強度に比べ回折X線の強度が小さいとき、回折X線を感度良く検出するためには、例えば8.04KeVのX線だけを選択的に試料へ入射させることが好ましい。このため、図3に示すように、分光結晶又は特定のエネルギーのX線を選択的に透過させるフィルター10をX線発生部1に配置することが好ましい。これにより、試料からの蛍光X線を減少させてEDX検出器での係数率を高めることができる。もちろん、蛍光X線測定に注目する場合は、基本的には分光結晶やX線フィルターは不要である。
【0086】
なお、この装置を用いて2θで例えば90°だけ測定する場合の配置は、通常の蛍光X線測定装置の配置と同様であるので、蛍光X線の測定だけ実施することもできる。すなわち、必ずしも蛍光X線測定とX線回折測定とを同時に行う必要は無い。
【0087】
また、図3に示す装置においては、管電圧の設定に配慮すべきである。すなわち、蛍光X線を測定するため、多くの元素を励起できるように、管電圧を高めに設定し、制動X線も多く発生させるようにする。必要に応じて、X線管球4のターゲットの材質を、銅ではなく、より高原子番号のパラジウム等に変更すればよい。
【0088】
また、図3に示す装置で測定される蛍光X線スペクトルには、回折X線由来のピークも出現するが、回折X線由来のものは、測定する角度に応じてピークのエネルギーがシフトするので区別可能である。
【0089】
ところで、上述の説明では、X線回折の測定方式として方角度分散方式について主に例に挙げたが、ある範囲のエネルギー分布を有するX線を用い、試料へ照射するX線の入射角度と検出角度とを固定して、検出されるX線のエネルギー分布(エネルギースペクトル)を測定する、いわゆるエネルギー分散型式で回折パターンを測定しても良い。以下では、エネルギー分散型方式による回折現象の測定について説明する。
【0090】
X線の波長λとエネルギーEとには下記式(2)の関係がある。
E=h*c/λ ...式(2)
h:プランク定数
c:光の速度
【0091】
これを、上述した式(1)に、n=1として代入すると、下記式(3)が得られる。
E=h*c/(2*d*sinθ) ...式(3)
【0092】
すなわち、θを固定とすると、試料に含有される物質の周期構造の間隔と回折されるX線のエネルギーとは、反比例の関係にある。
【0093】
所定のエネルギー分布を有するX線、望ましくはエネルギー分布が均一である白色X線を、試料に対して所定の入射角度で照射し、できれば入射角度と同じ検出角度のX線エネルギースペクトルを測定する。得られたX線エネルギースペクトルには、試料による回折X線由来のスペクトルが含まれている。ここで、X線エネルギースペクトルには、試料による蛍光X線も含まれていることに注意する。蛍光X線が観測されるエネルギー範囲と、回折X線によって観測されるX線エネルギー範囲とは、できれば重ならないようにすることが好ましい。例えば、試料に含有される物質の周期構造の間隔が4.4Å〜2.3Åであり、試料面の法線方向に対してX線の入射角度と検出角度とがともに70°である場合、4.0KeV〜8.0KeVの範囲で回折X線が検出される。このようにして、X線回折由来のX線エネルギースペクトルの測定によって、物質特有のX線エネルギースペクトルから樹脂に含有される物質を識別可能である。
【0094】
この方式に用いる装置としては、通常のエネルギー分散型回折装置を用いることができる。検出器としてはEDX又はWDXのいずれも使用できる。また、上述した図3に示す装置を用いることもできる。この装置は、角度調整が可能であり、蛍光X線が観測されるエネルギー範囲と回折X線によって観測されるX線エネルギー範囲との重なりをできるだけ少なく調整することができるため好適である。なお、測定の角度を少しだけ走査し、ピークのエネルギーがシフトしなければそれは蛍光X線であると区別できる。上述したように、回折X線は、角度の違いに応じてピークのエネルギーがシフトするのである。このエネルギー分散方式は、角度走査が不要であり、これによって測定時間を短縮することができる。もちろん、測定時間は測定系全体の感度に支配されるので、照射するX線強度と検出器の強度との兼ね合いとなる。
【0095】
【実施例】
次に、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
【0096】
〈実施例1〉
測定装置としては、理学電機社製のX線ディフラクトメーター(型番RAD3B)を用いた。X線管球のターゲットは銅であり、よってX線は8.04KeVであり、1.54Åである。測定条件としては、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度1°/分、スリットDS1°、RS1°、SS0.3mmとした。このような条件では、測定誤差(Si粉末の測定結果と文献JCPDSカードとの差)は、d値換算で0.1%未満である。
【0097】
先ず、試薬のデカブロモジフェニルエーテル(DBDPE)(東京化成社製)を皿詰めして測定試料を作製し、X線回折パターンを測定した。結果を図4に示す。
【0098】
次に、樹脂として旭化成社製VS29について測定を行うために、試料を作製した。VS29は、ハイインパクトポリスチロールにデカブロモジフェニルエーテルが約10%添加された難燃用途の樹脂ペレットである。また、VS29には、難燃助剤として三酸化アンチモンも添加されている。このペレットを220℃のホットプレス機で直径約5cm、厚さ約1mmの板状に成形し、試料とした。この試料について、X線回折パターンを測定した。結果を図4に示す。なお、図4中、VS29の回折パターンを、縦軸方向へ強度2000だけシフトさせて表す。
【0099】
図4から、VS29においては、試薬のデカブロモジフェニルエーテルより多くのパターンが測定されたことがわかる。試薬のデカブロモジフェニルエーテルと同じ角度においてVS29にピークがあることから、樹脂中のデカブロモジフェニルエーテルを検出できたと判断した。また、データベース(JCPDS)検索により、デカブロモジフェニルエーテル以外のピークは、三酸化アンチモンであると同定された。また、別途測定したハイインパクトポリスチロールの回折パターンとの比較から、20°付近のブロードなピークは、ハイインパクトポリスチロールに由来するものとわかった。樹脂のような高分子の場合、ふつう低角にブロードなピークとして現れるが、このブロードなピークだけでは樹脂の識別は困難であった。
【0100】
以上のように、VS29についてX線回折パターンを調べることによって、デカブロモジフェニルエーテル及び三酸化アンチモンが含まれることを識別できた。
【0101】
〈実施例2〉
実施例2では、難燃樹脂として旭化成社製VS712について測定を行った。VS712はいわゆる非特定臭素系難燃剤であるエチレンビスペンタブロモビフェニル(DBDPE)及び難燃助剤の三酸化アンチモンが添加された難燃用途の樹脂ペレットである。これについて、実施例1と同様にしてX線回折パターンを測定した。結果を図5に示す。また、実施例1において測定したVS29のX線回折パターンも、あわせて図5に示す。なお、図5中、VS29の回折パターンを、縦軸方向へ強度2000だけシフトさせて表している。
【0102】
図5から、VS29及びVS712のどちらにおいても、三酸化アンチモンの回折ピークが検出された。VS712では、例えば25.5°付近のピーク及び29.5°付近のピークが特徴的であり、これらは、エチレンビスペンタブロモビフェニルに由来する回折ピークであると考えられる。一方、VS29ではデカブロモジフェニルエーテルに由来する22°〜27°付近に存在する3つの回折ピークが特徴的である。以上のような特徴から、両樹脂に含まれる難燃剤の種類を識別できることがわかった。
【0103】
〈実施例3〉
先ず、市販のポリ乳酸に水酸化マグネシウムが30%となるように配合して、180℃で熱混練してペレットを調製した。このペレットを175℃でホットプレスすることにより、板状の試料を得た。この試料について、実施例1と同様の装置を用いてX線回折パターンを測定した。結果を図6下段に示す。JCPDS検索によって、全てのピークは水酸化マグネシウムのピークと一致することがわかった。回折強度の大きな2つのピークを、図中2つの矢印で示した。
【0104】
また、市販のポリ乳酸に水酸化アルミニウムが25%となるように配合されたペレットを同様に調製し、板状の試料を得た。この試料について、実施例1と同様に回折パターンを測定した。結果を図6中段に示す。JCPDS検索によって、全てのピークは水酸化アルミニウムのピークと一致することがわかった。回折強度の大きな2つのピークを、図中2つの矢印で示した。なお、図6中、水酸化アルミニウム含有樹脂のパターンを、強度5000だけシフトさせて表している。
【0105】
また、市販のポリ乳酸に水酸化アルミニウムが25%、タルクが15%となるように配合されたペレットを同様に調製し、板状の試料を得た。この試料について、実施例1と同様の装置を用いてX線回折パターンを測定した。結果を図6上段に示す。回折パターンから、水酸化アルミニウムのピークと、タルクのピークとをそれぞれ観察することができた。なお、図6中、水酸化アルミニウム及びタルク含有樹脂のパターンを、強度15000だけシフトさせて表している。
【0106】
以上の実施例3から、樹脂中の水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムといった化合物も、X線回折測定によって充分識別できることが判明した。また、タルク等の無機フィラーも、X線回折測定によって識別できることが判明した。
【0107】
〈比較例1〉
実施例1で作製したVS29の試料、及び実施例2で作製したVS712の試料について、蛍光X線分析を行い、スペクトルを測定した。蛍光X線測定装置としては、アワーズテック社製のOURESTEX 150 RoHSを使用した。管球のターゲットとして、タングステンを用いた。また、測定条件を、管電圧48kV、管電流0.25mA、測定時間10秒(有効測定時間約7秒)とした。結果を図7に示す。
【0108】
図7に示すように、VS29及びVS712のいずれにおいても、臭素及びアンチモンのピークが観察されていることから、これら試料が臭素系難燃剤を含有していることがうかがえる。しかしながら、図7から具体的な成分を特定することは不可能であった。
【0109】
〈比較例2〉
実施例3で作製した3種類の試料について、蛍光X線分析を行い、スペクトルを測定した。蛍光X線測定装置としては、島津製作所社製のEDX700を使用した。また、測定条件を、管電圧15kV、管電流0.6mA、測定時間100秒(有効測定時間約74秒)とし、試料室を大気下とした。結果を図8に示す。
【0110】
図8下段に示すように、水酸化マグネシウムを含む試料からは、マグネシウムのピークを検出することができなかった。また、図8中段に示すように、水酸化アルミニウムを含有する試料からは、アルミニウムのごく小さいピークが検出された。蛍光X線分析による水酸化マグネシウム含有試料のスペクトルと、水酸化アルミニウム含有試料のスペクトルとを比較すると、樹脂中の添加剤が異なることはわかるが、水酸化マグネシウムの有無を識別することができなかったことから、蛍光X線分析は樹脂中の成分の分析としては不充分なものであるといえる。また、蛍光X線分析では、例えば試料表面に酸化アルミニウムを含む塗装が施されている場合にもアルミニウムのピークが検出されると考えられるので、アルミニウムのピークが観察されたからといって試料中に水酸化アルミニウムが含まれるとは判断できないと考えられる。
【0111】
また、図8上段に示すように、水酸化アルミニウム及びタルクを含む試料からは、アルミニウムのごく小さいピークとシリコンのごく小さいピークとが検出された。しかしながら、アルミニウムと同様に、シリコンについても、ガラスの無機フィラーからもシリコンのピークが検出されると考えられるので、シリコンのピークが検出されたからといって、試料中にタルクが含まれるとは判断できないと考えられる。
【0112】
以上の実験結果から、従来の蛍光X線分析は、樹脂中の成分を特定する手法としては不適当であり、本発明のX線回折測定を行うことによって、樹脂中の成分を確実に分析できるといえる。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る樹脂素材の分析方法によれば、回折現象を利用することによって、特定の成分(難燃剤や難燃助剤)を含む樹脂素材を正確に識別することができる。このとき、塗装の剥離等の前処理や真空引き等の工程が不要であり、樹脂素材中の成分を迅速に分析することができる。
【0114】
また、本発明に係る樹脂素材の分析装置は、複数の角度における回折線を同時に測定可能とするように、複数の検出器が配置されているので、検出器を回転走査するといった複雑且つ長時間を要する過程を省略でき、測定時間を大幅に短縮することができる。
【0115】
さらに、本発明に係る樹脂成分の分析装置は、検出器としてエネルギー情報を得られる検出器を備え、回折強度の測定と蛍光強度の測定とを同時に行うことができるようにしているので、蛍光分析によって特定の元素を含む樹脂素材を選別し、選別された樹脂素材について回折現象を利用した測定を行うことで、分析工程全体に要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】通常の理化学分析用のX線回折装置を示す模式図である。
【図2】本発明を適用した分析装置の一例であり、検出器を複数備えるX線回折測定装置を示す模式図である。
【図3】本発明を適用した分析装置の他の例であり、エネルギー情報も得られる検出器を備えるX線回折測定装置を示す模式図である。
【図4】上段は、デカブロモジフェニルエーテル及び三酸化アンチモンを含む樹脂についてのX線回折パターンであり、下段は、デカブロモジフェニルエーテル単独でのX線回折パターンである。
【図5】上段は、デカブロモジフェニルエーテル及び三酸化アンチモンを含む樹脂についてのX線回折パターンであり、下段は、エチレンビスペンタブロモビフェニル及び三酸化アンチモンを含む樹脂についてのX線回折パターンである。
【図6】上段は、水酸化アルミニウム及びタルクを含む樹脂についてのX線回折パターンであり、中段は、水酸化アルミニウムを含む樹脂についてのX線回折パターンであり、下段は、水酸化マグネシウムを含む樹脂についてのX線回折パターンである。
【図7】上段は、実施例1で作製したVS29の試料についての蛍光X線スペクトルであり、下段は、実施例2で作製したVS712の試料についての蛍光X線スペクトルである。
【図8】上段は、水酸化アルミニウム及びタルクを含む樹脂についての蛍光X線スペクトルであり、中段は、水酸化アルミニウムを含む樹脂についての蛍光X線スペクトルであり、下段は、水酸化マグネシウムを含む樹脂についての蛍光X線スペクトルである。
【符号の説明】
1 X線発生部、2 試料取付部、3 X線検出部、4 X線管球、5 スリット部、6 ゴニオメーター、7 スリット、8 分光部、9 検出器、10 フィルター
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂素材中に分析対象の成分(例えば難燃剤や難燃助剤等)が含まれるか否かを判定するための樹脂素材の分析方法及び樹脂素材の分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境問題に対する意識の向上や、いわゆる家電リサイクル法の施行等により、廃棄物のリサイクルに対する関心が高まりつつある。例えば家電製品としてテレビを例に挙げると、ブラウン管のリサイクルについては従来から活発に研究がなされており、既に実用化されている。しかしながら、さらなるリサイクル率の向上を目的として、ブラウン管だけでなく、ブラウン管を格納する筐体材料についても有効なリサイクル技術を開発することが要求されている。
【0003】
テレビ等の家電製品の筐体材料としては、樹脂材料が用いられることが一般的である。筐体に用いられる樹脂の種類は極めて多く、また、使用目的に応じて、樹脂中には様々な添加剤が配合されている。このため、樹脂からなる筐体をリサイクルするには、先ず、樹脂の母材ごとに筐体を識別・分別する必要がある。樹脂の母材の識別については、これまでに多くの方法や技術が開発され、識別のための専用の装置も市販されていることから、迅速且つ簡易な分析技術が確立されている。測定原理としては、例えば樹脂の比重、導電性、赤外線の反射等の利用を例示できる。
【0004】
ところで、樹脂からなる筐体をリサイクルするにあたっては、上記のような方法による母材の分別の次に、その筐体が例えばいわゆる特定臭素系難燃剤等のリサイクル過程で特別な処理を必要としたり、分別が必要な成分を含有するか否かを判定し、当該成分を含有する筐体を分別処理する工程が必要となる。
【0005】
しかしながら、樹脂中の成分を分析する技術としては、前処理の必要がある、破壊検査である等、上述した母材の分析に比べて迅速さや簡易さの面で極めて劣るものである。もちろん、通常の化学分析を行えば、例えば数ppmといった高い検出感度にて、樹脂中の添加剤の成分を正確に特定可能であるが、分析には通常数日を要し、またコストも高いため、使用済み製品をリサイクルするための分析法には不適当である。
【0006】
また、商品を製造する場合には、意図しない成分が商品に混入し、使用されることを防止する目的で、材料や部品等の受け入れ検査を実施することがある。受け入れ検査においては、通常、ロットの中から抜き取られた材料及び部品について、上述したような特定の成分等の有無を検査する。この受け入れ検査は、上述したリサイクル過程での分別に比べて時間的に余裕があるものの、やはり全ての検査対象について化学分析を行うことは現実的ではない。
【0007】
そこで、樹脂中の成分を迅速且つ簡易に分析する技術について、様々な提案がなされている。例えば、近赤外線反射法によって樹脂中に含まれる物質を分析する方法が実用化されている。しかしながら、この方法では、樹脂成形品が塗装されている場合には表面の塗料を分析することになってしまい、樹脂成形品の分析が不可能である。また、樹脂成形品に塗装が施されていない場合や、塗装を剥離した場合であっても、樹脂成形品自体が黒色等の暗い色に着色されている場合は、光吸収によって反射光強度が著しく低下してしまうため、樹脂成形品の分析はほとんど不可能となるという問題がある。また、黒色の樹脂成形品の分析を可能とする技術として、近赤外線の代わりに中赤外線を用いる方法が提案されているが、この技術でさえも塗装の影響を避けられず、塗装を剥離する必要があり、迅速な測定は困難である。
【0008】
また、樹脂の分析方法として、熱分解ガス−赤外分光法による樹脂の識別装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この装置は、一端に開口部を有する小室を有し、前記開口部に当接する樹脂検体を熱分解する熱分解手段と、樹脂検体から発生する分解ガスを前記小室内に導入し赤外線分光手段に搬送する搬送手段と、前記赤外線分光手段で得られたスペクトルを予め作成されている樹脂のスペクトルと比較照合する手段とを備えることにより、廃棄された家電製品から回収された樹脂の分別が簡便容易に実現されるのみならず、難燃樹脂中に含まれる有害物の特定も可能とされている。しかしながら、この技術は破壊的な検査であるため、迅速な測定は困難である。
【0009】
また、特許文献1においては、樹脂成形品に例えばX線を照射し、発生する蛍光X線を分光し、難燃樹脂を識別する方法も提案されている。この方法によれば、樹脂検体に放射線を照射し、樹脂検体から発生する特性X線を分光し、臭素、塩素、リン、アンチモン、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ケイ素などの難燃剤に係わる元素を検出することによって難燃樹脂を識別する。これにより、廃棄された家電製品から回収された樹脂の分別が簡便容易に実現されるのみならず、難燃樹脂中に含まれる有害物の特定も可能であるとされている。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−292350号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1の測定原理は、蛍光X線分析に基づくものである。このため、蛍光X線では、樹脂中に含まれる元素の情報は得られるものの、具体的な成分を特定することができないという問題がある。すなわち、特許文献1記載の方法により、蛍光X線によって臭素の特性X線が測定された場合、樹脂中に含まれるのが臭素系難燃剤であろうことまでは限定可能であるが、その臭素系難燃剤がデカブロモジフェニルエーテルなのか、テトラブロモビスエノールAなのか、他の臭素系難燃剤であるのかを特定するまでには至らない。
【0012】
また、特許文献1によると、マグネシウム、アルミニウム等の難燃剤に係わる元素を分析することによって難燃樹脂を識別するとあるが、通常、蛍光X線の測定範囲はある程度の重い元素に限られ、これら軽元素の測定はたいへん困難であると考えられる。その理由として、大気下の測定では、大気によるX線吸収のため軽元素の分析は非常に難しいと言われていることが挙げられる。本発明者らの計算によると、それら元素の特性X線のエネルギー付近である1KeVのX線は、1cm3の大気(組成を窒素80%、酸素20%とする。)で、99%が吸収されてしまい、1%だけが透過できるに過ぎないと見積もられた。
【0013】
そこで、測定環境を真空にすれば、大気の影響が除外され、軽元素の分析も可能になるものと考えられるが、測定工程に真空引きという余計な工程が加わってしまう。これでは、リサイクル処理で要求されるスループットを満足し難しい。加えて、樹脂に塗装が施されていると、そのX線吸収によって軽元素の蛍光X線強度が著しく低下し、アルミニウムやマグネシウム等の元素の分析はほぼ不可能となる。したがって、塗装の剥離というさらなる余分な工程が必要となる。塗装剥離や真空引きが許容されるのは、受け入れ検査などの時間的に余裕がある場合に限られるが、やはり、測定時間の長時間化は避けることが好ましい。以上のように、特許文献1記載の方法では、元素の特定しかできないこと、軽元素の測定には塗装剥離や真空引き等の前処理が必要であり測定が長時間化すること等の不都合があり、新たな分析方法の開発が望まれている。
【0014】
そこで本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、樹脂成形品等の樹脂素材中に含まれる成分を正確に特定できるとともに、例えば塗装剥離や真空引き等の前処理を必要とすることなく迅速に分析することができる樹脂素材の分析方法、及びこの分析方法に用いられる樹脂素材の分析装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討した結果、樹脂素材中に含まれる難燃剤等の成分の多くが、樹脂中で結晶構造、すなわち周期構造をとること、また、これら成分が周期構造をとることを利用して、X線回折測定によって樹脂素材中の成分の分析が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明に係る樹脂素材の分析方法は、樹脂素材に放射線を照射し、当該樹脂素材によって回折される放射線を測定し、樹脂素材に含まれる成分を分析することを特徴とする。
【0017】
以上のような樹脂素材の分析方法においては、樹脂素材について放射線回折測定(例えばX線回折測定)を行うことによって、単なる元素分析にとどまらず、樹脂素材中に特定の成分(例えば難燃剤や難燃助剤)が含まれるか否かについて確実に識別される。
【0018】
また、本発明に係る樹脂素材の分析方法によれば、仮に樹脂素材の表面に塗装が施されている場合であっても、塗装を剥離することなく樹脂素材の成分が分析される。
【0019】
さらに、本発明に係る樹脂素材の分析方法によれば、マグネシウム、アルミニウム等の比較的軽い元素について大気中で測定する場合であっても充分な信号強度を得られ、真空引き等の工程が不要である。
【0020】
一方、本発明に係る樹脂素材の分析装置は、放射線を発生する放射線発生部と、樹脂素材により回折された放射線を検出する複数の検出器とを備え、上記複数の検出器が配列されることで、回折放射線の角度分布が一括測定可能とされていることを特徴とする。
【0021】
以上のような樹脂成分の分析装置においては、複数の角度における回折線を同時に測定可能とするように、複数の検出器が配置されているので、検出器を回転走査するといった複雑且つ長時間を要する過程を省略できる。このため、測定時間が大幅に短縮される。
【0022】
また、本発明に係る樹脂素材の分析装置は、放射線を発生する放射線発生部と、放射線のエネルギー情報を取得可能な検出器とを備え、蛍光放射線と回折放射線とを同時に測定可能であることを特徴とする。
【0023】
以上のような樹脂素材の分析装置においては、検出器として放射線のエネルギー情報を取得可能な検出器を備えているので、回折強度の測定と蛍光強度の測定が同時に行われる。したがって、蛍光分析によって特定の元素を含む樹脂素材を選別し、選別された樹脂素材について回折現象を利用した測定を行うようにすれば、分析工程全体に要する時間が大幅に短縮される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の樹脂素材の分析方法及び樹脂素材の分析装置について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
本発明を適用した樹脂素材の分析方法は、放射線回折測定を利用するものであり、樹脂素材、例えば樹脂成形品に放射線を照射したときに樹脂成形品から出射される回折線を測定することによって、当該樹脂成形品中に分析対象の成分が含有されているか否かを分析する。
【0026】
ここで、樹脂成形品に照射する放射線の具体例としては、X線、γ線、電子線等が挙げられる。中でも、理化学分析において回折測定に用いる放射線として多用されており、また、分子や原子の作る周期構造の間隔と波長領域とが対応することから、X線を利用することが好ましい。もちろん、分析対象の成分が作る周期構造の間隔によっては、X線以外の放射線を用いることがよい場合もあり、このような場合には適当な波長領域の放射線を適宜選択すればよい。
【0027】
また、分析される樹脂成形品としては、回収した使用済み電気製品から発生したもの等を利用できる。具体的には、テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機等が挙げられ、後述するような特定の難燃剤が配合されることから、テレビの筐体について分析することが好ましい。
【0028】
本発明の分析方法で分析対象となる成分としては、樹脂成形品中で周期構造を作る成分であれば、ほぼ全て識別できるため、いかなるものであってもよい。この理由として、放射線回折測定は、物質の作る周期構造の特有性(違い)によってその物質を識別する分析法であるためである。例えば、ハロゲン系難燃剤、軽金属酸化物、リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種の難燃剤等は、樹脂中でそれぞれ独自の周期構造をとることが確認されており、本発明により特定可能である。ハロゲン系難燃剤としては、具体的には、化1に示すデカブロモジフェニルエーテル等のポリブロモジフェニルエーテル(化2)、化3に示すテトラブロモビフェノールA、化4に示すエチレンビスペンタブロモビフェニル、化5に示すポリブロモジフェニル、化6に示すヘキサブロモシクロドデカン、化7に示す臭素化エポキシポリマー/オリゴマー、化8に示す臭素化トリアジン、化9に示すエチレンビステトラブロモフタルイミド、化10に示すペンタブロモベンジルアクリレート、化11に示すTBAカーボネートオリゴマー、化12に示すTBA−(2,3−ジブロモビルエーテル、化13に示すテトラブロモビスフェノールS等の臭素系難燃剤が挙げられる。これらのうち、化1に示すデカブロモジフェニルエーテル等のポリブロモジフェニルエーテル(化2)、及び化5に示すポリブロモジフェニルは、特定臭素系難燃剤として指定されている。また、軽金属水酸化物としては、具体的には水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等を例示できる。また、本発明により、無機フィラーとして用いられることの多いタルク等の無機系の添加物も概ね識別可能である。また、臭素系難燃剤の難燃助剤として用いられる三酸化アンチモン等の酸化アンチモン等も、独自の周期構造をとるため、本発明の分析方法により識別可能である。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
例えば放射線としてX線を用いる場合、X線回折測定の方式としては、方角度分散型方式とエネルギー分散型方式との2つに大別できる。方角度分散方式は、所定の範囲の検出角度を走査し、所定の波長のX線の検出強度の角度分布を測定する方式である。エネルギー分散型方式は、所定の範囲のエネルギー分布を有するX線を用い、試料へ照射するX線の入射角度と検出角度とを固定して、検出されるX線のエネルギー分布(エネルギースペクトル)を測定する方式である。理化学分析の粉末X線回折法では、前者の方式がとられるのがほとんどであるが、本発明ではどちらの方式を採用してもよいし、回折現象を測定可能であれば、これら以外の方式でも構わない。
【0043】
以下では、方角度分散方式によるX線回折測定を採用し、樹脂成形品として例えば納入された材料又は部品を用い、これらを製品に採用するか否か判定するための受け入れ検査を想定して説明する。また、この受け入れ検査においては、難燃剤としてデカブロモジフェニルエーテルが含有されている樹脂成形品(材料又は部品)を不採用と判定するものとする。すなわち、以下では、樹脂成形品中にデカブロモジフェニルエーテルが含有されているか否かを判定することになる。
【0044】
先ず、分析対象の成分であるデカブロモジフェニルエーテルが含まれる樹脂サンプルを用意し、この樹脂サンプルについてX線回折測定を行い、回折パターンを得る。そして、得られるX線回折パターンから、デカブロモジフェニルエーテルがどの角度に回折ピークを与えるかを予め調べておく。
【0045】
次に、納入された樹脂成形品についてX線回折パターンを測定する。なお、X線回折パターンの測定方法及び測定装置については、詳細を後述する。
【0046】
そして、得られた樹脂成形品のX線回折パターンと、予め用意しておいたデカブロモジフェニルエーテルの回折パターンとを比較し、一致するピークが存在するか否かを判断する。これによって、樹脂成形品中にデカブロモジフェニルエーテルが含まれるか否かを判定することができる。得られたX線回折パターンと標準の回折パターンとの比較、及びデカブロモジフェニルエーテルが含有されるか否かの判定は、受け入れ検査を担当する測定者による判断や、判定ソフトウェアの使用等によって行うことができる。
【0047】
分析対象のデカブロモジフェニルエーテル以外に、周期構造を有する成分が樹脂成形品中に高濃度に添加され、且つ当該成分の与えるX線回折パターンとデカブロモジフェニルエーテルのX線回折パターンとが重なって測定されると、樹脂成形品中にデカブロモジフェニルエーテルが含まれているか否かの判定が困難になることがある。このような場合も、デカブロモジフェニルエーテルが含まれているか否かの判定は、測定者の判断によるか、又は適切に組み上げた判断ソフトウェアによって自動的に判断すればよい。その判定ソフトウェアは、理化学分析において未知試料中に含まれる成分をJCPDSカードのデータベースで自動検索するアルゴリズムにしたがって作成することができる。
【0048】
仮に、X線回折測定で検出される成分の種類がある程度の数に限られる場合には、以下のようにすることで、樹脂成形品中に目的の物質が含まれるか否かを非常に容易且つ迅速に判定することができる。具体的には、先ず、樹脂成形品から検出されると予想される成分全てについて、予めX線回折測定を行い、回折パターンを得る。それら回折パターンを比較し、分析対象の成分に特有の1つ又は複数の回折角度のピークが存在するか否かに注目する。もし、分析対象の成分にだけに特有な角度の回折ピークが存在するならば、樹脂成形品の回折パターンにおいて、当該角度にピークが検出されるか否かを確認するだけで、樹脂成形品中に分析対象の成分が含まれるか否かを識別することができる。このように、その回折角付近の回折線の強度を測定するだけで目的の物質が含まれるか否かを判定でき、その回折角以外の範囲の測定を省略できるため、測定時間が数秒程度といった短時間で済み、迅速な識別が可能である。また、目的とする物質に特有なピークが2つの角度に存在する場合であっても、その2つの角度で同時に検出されれば、目的の物質が含まれるかどうか識別できる。2つに限定して注目することによっても、通常の測定に比べて判定が容易であり、且つ測定時間の大幅な短縮が可能である。なお、目的とする物質に特有なピークが3つ以上であっても、ピークが1つ又は2つの場合と同様にすることができる。
【0049】
以上のように、本発明によれば、樹脂成形品において難燃剤等の成分が結晶として存在していることに着目し、樹脂成形品中の成分を放射線回折測定によって分析するので、元素分析のみが行える蛍光X線分析とは異なり、樹脂成形品が含む具体的な成分を特定することができる。放射線回折のパターンは、物質が作る周期構造に固有のものであり、たいていの場合、その周期構造は、その物質に固有のものである。また、樹脂に添加されている成分は、全くの未知物質であることはほとんどなく、何らかの既知物質であると考えられる。したがって、予め、分析対象の成分の回折パターンを測定しておき、樹脂試料で測定される回折パターンと比較することで、樹脂試料中に含まれる成分を容易且つ迅速に特定することができる。
【0050】
また、検出される可能性のある物質群のなかで、目的の物質に特有の回折角が存在する場合には、樹脂成形品について、この特有の回折角だけを測定することによって、目的の成分を極めて迅速に識別することができる。この場合、特有の回折角以外の測定が不要となるため、回折パターンの測定を数秒程度と極めて短時間にすることができる。
【0051】
また、放射線回折測定では、樹脂成形品の表面から数mm程度の情報を回折線として測定可能であるため、通常0.1mm程度の厚みの塗装の影響をほとんど受けることなく、樹脂成形品中の成分を特定することができる。特に、樹脂に照射する放射線として、例えば8.04KeVのX線等の物質透過力が比較的あるものを選択することによって、塗装の影響を最小限にとどめて樹脂の添加剤を識別することができる。試料としての樹脂成形品に照射された例えばX線は、樹脂によって吸収、散乱、回折等の相互作用を受けながら樹脂成形品内へ数mm以上進入する。回折X線も、やはり樹脂によって吸収、散乱、回折(二次的な回折)の影響を受けながら、樹脂試料からから出てくる。それらを総合すると、一次的な回折X線として、樹脂試料の表面からサブmmから数mm程度の深さ部分の情報が測定されることになる。このため、樹脂成形品に塗装が施されていても、通常の塗装の厚みは0.1mm程度であることから、ほとんど塗装の影響無しに樹脂母材中の成分を分析することができる。したがって、塗装剥離のような前処理が全く不要でそのぶんだけ迅速な測定が可能となる。
【0052】
また、樹脂成形品中のマグネシウム、アルミニウム等の比較的軽い元素を含む成分について測定する場合であっても、大気中で充分な信号強度を確保できる。特に、樹脂に照射する放射線として、例えば8.04KeV等の比較的物質透過力が高いX線を選択すれば、大気による減弱は無視できるため、大気中で測定を行ったとしても、より高い信号強度を確保できる。したがって、アルミニウムやマグネシウムといった軽元素から構成される成分も、分析することができる。なお、アルミニウムやマグネシウム等の軽元素から構成される成分を分析する場合、回折強度が弱いことが懸念されたが、後述の実施例で示すように、難燃剤としての例えば水酸化マグネシウムでは、マグネシウム及び酸素等の元素が作る周期構造によって、回折X線の強度が充分に確保され、当該物質を識別可能な検出感度が得られることを確認している。以上のように、本発明によれば、マグネシウムやアルミニウム等の軽元素から構成される成分を測定する場合であっても、大気中で充分な信号強度を確保できるため、真空引き等の工程が不要であり、樹脂成形品中の成分を迅速に測定できる。
【0053】
また、従来の分析方法では、樹脂成形品自体が着色されている場合、樹脂成形品の分析が不可能となることがあるが、本発明によれば、着色剤の影響を受けることなく、含まれる成分ついて正確に分析を行うことができる。この理由について以下に説明する。
【0054】
着色剤が顔料等の結晶構造を有する成分である場合、着色剤からも回折X線が生じるので、これを測定することで着色剤の成分を分析、識別することも原理的には可能であるとともに、このような着色剤に由来する余分な回折ピークが検出されることによって、目的の成分の識別を困難にするおそれもある。しかしながら、たいていの着色剤の添加量は、通常0.1%以下であり、他の例えば難燃剤のように数10%添加されている成分に比べて極めて少量である。このため、着色剤の回折強度も非常に低くなり、難燃剤等の識別にはほとんど影響を与えない。また、着色剤が染料であって、樹脂中に分子分散している場合は、回折線を発生させることがない。以上のことから、本発明によれば、樹脂が着色されていても、その影響をほとんど受けることなく、目的の成分の識別を行うことができると言える。
【0055】
なお、通常のリサイクル処理のための分別においては、顔料の種類の分別までは要求されない。着色剤の分別が要求されるとしても、成分の特定までは要求されず、色ごとの分別(例えば、黒系、白系、赤系、青系等)にとどまる。これらの色は視覚で容易に判別可能であり、また、自動化するとしても測色計や分光測定等の現行装置で極めて簡単に識別できる。
【0056】
なお、樹脂成形品を構成する樹脂が結晶性の樹脂である場合、周期構造をとる。また非結晶性の樹脂であっても、ポリスチレン単位でベンゼン環が並んでいるポリスチレン等は、周期構造となる。また、高分子鎖が並ぶことによって、その並びが周期構造となることもある。通常、高分子が作る周期構造は、前述の難燃剤のような成分の周期構造と比較して、その間隔が大きく、また、単結晶のようなはっきりとした周期構造でなく、ゆるい周期構造をとる。このため、通常、樹脂自体の与える回折角度は小さめであり、回折ピークはシャープでなくブロードなものになる。したがって、分析対象の成分の回折パターンが、樹脂自体の回折パターンによって邪魔されることはほとんどない。
【0057】
ところで、本発明では、上述のようにX線回折測定を単独で行うこと以外に、以下に説明するように、放射線回折測定と蛍光X線分析とを組み合わせることもできる。以下では、例えばX線回折測定と蛍光X線分析とを組み合わせる方法によって、多数の樹脂のうち、デカブロモジフェニルエーテルが含有されている樹脂だけを選別する場合を例に挙げて説明する。
【0058】
この方法では、先ず、樹脂成形品について蛍光X線分析を行い、臭素系難燃剤が含有されているかどうかを調べる。樹脂に10%程度の臭素系難燃剤が添加されている場合、蛍光X線分析によって、1秒程度で臭素元素を検出できる。このように、X線回折測定に先立って蛍光X線分析を行うことにより、難燃剤が含有されていない樹脂や、例えばリン酸エステル系等の臭素系以外の難燃剤が添加されている樹脂を、容易に工程から除外することができる。
【0059】
次に、臭素系難燃剤が含有されていると判定された樹脂についてのみ、X線回折測定を行い、デカブロモジフェニルエーテルが含有されているかどうかを調べる。X線回折測定については、詳細を後述する。
【0060】
以上のように、極めて迅速な測定が可能な蛍光X線分析によって試料をある程度スクリーニングし、分析対象の成分を構成する少なくとも1種の元素(例えば臭素)を含む樹脂についてのみX線回折測定を行うことによって、工程全体としてのスループットを向上させることができる。特にこの方法は、検査すべき樹脂成形品の数が極めて多く、且つ、特定の成分(例えばデカブロモジフェニルエーテル)を含む樹脂成形品を工程から選別・除外しなければならないような、リサイクル処理工程において極めて有用である。
【0061】
蛍光X線を測定するためには、市販されている理化学分析用の通常の蛍光X線分析装置を用いることができる。蛍光X線測定での検出器の方式は、エネルギー分散型と波長分散型との2つがあり、どちらの方式でも用いることができるが、より一般的な方式であるエネルギー分散型の装置で充分である。
【0062】
次に、方角度分散方式によって試料のX線回折パターンを測定するための測定装置、及びこの測定装置によるX線回折測定について説明する。
【0063】
X線回折の測定を行う装置としては、例えば図1に示すような、通常の理化学分析用のX線回折装置を使用することができる。この装置は、主に、X線を発生するX線発生部1と、樹脂成形品等の試料Sを取り付ける試料取付部2と、試料から発生した回折線を検出するX線検出部3と、試料とX線検出部3とを連動させる回転機構(図示せず)と、これら各部を制御しデータ記録や解析を行う電子計算機部(図示せず)とから構成される。
【0064】
X線発生部1は、数10kVの高電圧を発生する電圧発生部(図示せず。)と、電圧発生部からの高電圧によりX線を発生するX線管球4と、目的のX線のみを透過させるスリット部5とからなる。X線管球4は、内部に陰極としてのフィラメント4aと、陽極としてのターゲット4bを備える。試料によっては使用するX線の波長を選ぶ必要があり、X線管球4のターゲット4bを銅、クロム、鉄、コバルト、モリブデン、場合によってはロジウム、パラジウム、タングステン等から選択する。中でも、特性X線のエネルギーが8.04KeV、波長が1.54Åであり、本発明で目的とする難燃剤等が作る周期構造の間隔とほぼ同じで、適当な回折角度を生じること等の理由から、X線管球4のターゲット4bとして銅を用いることが好ましい。すなわち、ブラッグ条件の下記式(1)において、例えば、通常n=1の回折だけを考えればよく、周期構造の間隔dと波長λとが同じであると、sinθが0.5となり、回折角θが30°となるからである。
【0065】
2*d*sinθ=n*λ ...式(1)
d:周期構造の間隔(Å)
θ:回折角度(°)
n:自然数
λ:波長(Å)
【0066】
仮に、その周期構造のオーダーが1桁大きい場合は、1.54Åの波長のX線を使うと、sinθが小さくなり、場合によってはθが0°近くになってしまう。回折角度が小さいX線を測定するのは困難である。理由として、試料に照射するX線が、X線検出部3に直接入りやすいからである。またたとえ、そのような干渉を抑制できたとしても、例えば5°前後に回折ピークが集中してしまうので、その回折角度パターンを測定するには角度分解の高い精度が要求されることになり、測定が困難となる。逆に、周期構造の間隔が短い物質を、それに対して長い波長のX線で測定しようとすると、回折角度が90°近くとなり、やはり回折X線の測定が困難となる。理由として、X線管球4とX線検出部3とが位置的に干渉するために測定が不可能となることや、ピークの集中化を招いて角度分解能の点でも不利であること等が挙げられる。このように、使用するX線の波長は、測定しようとする物質が作る周期構造の間隔に合わせて、適当な回折角になるように選ぶことが望ましい。
【0067】
X線発生部1には、スリット部5が設けられている。スリット部5は、試料及びX線検出部3の回転角度の方向において、1°のX線出力角に設定されることが多い。X線管球4の焦点から試料までの距離が300mmとすると、試料面では幅2.6mmとなる。回転軸の方向でのX線の広がりは、試料面上において、2cm程度とすることが多い。すなわち、照射するX線ビームは試料面の中心において、幅2.6mm、高さ2cmとなる。もちろん、回折角度が小さい場合、すなわち、照射するX線と試料面とが平行に近い場合は、X線が照射される試料面のサイズは大きなものとなる。なお、必要に応じて、X線が回転面外へ発散することを防止するためのコリメーターである、ソーラースリットを設けてもよい。通常、X線管球4が位置的に固定されるが、X線管球(照射X線)5と試料面とX線検出部(回折X線)3との角度的な位置関係(後述)を成立させられれば、X線管球4を可動としてもよい。
【0068】
また、このようにしてX線を発生させると、ターゲット4bの特性X線のほかに、制動X線と呼ばれる管電圧の大きさまでブロードなエネルギー分布のX線も発生してしまう。制動X線において特性X線以外のエネルギー(波長)のものは不要であるばかりか、測定に邪魔となる。よって、ターゲット4bの特性X線をなるべく選択的に通過させ、それ以外を吸収除去するフィルターを設けてもよい。また、分光結晶を用いて、回折に用いるX線を単色化してもよい。
【0069】
試料取付部2には、回転機構としてゴニオメーター6が備えられており、X線光源に対して0°〜90°程度の範囲で、試料が向くように調節される。ここで0°は、試料へ照射するX線と試料面とが平行であることを意味し、90°は、試料へ照射するX線に対して試料面が垂直であることを意味する。通常のX線回折測定装置において、試料取付部2における試料取り付けホルダーは、測定試料の対象として2cm角程度の板を想定して作られている。このため、本発明に使用する際には、識別しようとする樹脂成形品を試料取り付けホルダーに一致する形状に予め加工しておかねばならない。したがって、X線回折測定装置の試料の取り付け部2は、目的とする樹脂成形品をそのまま取り付けられるように適当に改造することが望ましい。例えば、数10cmの大きな試料を取り付けられるようにしておくのがよい。取り付け方法としては、自在アームによるクランプ等、公知の機構を用いることができる。
【0070】
X線検出部3は、スリット部7と、例えば8.04KeV(1.54Å)のX線を分光する分光部8と、回折X線を検出するための例えばシンチレーションカウンター係数管等の検出器9とから成る。分光部8には、適切な物質の単結晶が用いられており、やはり回折現象を利用し、目的とするX線を分光し単色化するようになっている。
【0071】
検出器9は、シンチレーションカウンター係数管以外のものでもよい。例えば、検出器9として、X線によって発光するシンチレーターとその光を検出するフォトダイオードとによる検出器を用いてもよい。シンチレーターとしては、例えば、CuS:Al、S等の無機物を例示できる。方角度分散型方式のX線回折装置における検出器9では、エネルギー分解能は必要でなく、X線強度を高感度に検出できればよい。この検出部10は、試料部を回転中心とした図示しないアーム上に設けられており、前記の試料の回転に応じて、検出部10も回転するようになされている。ここで、照射されるX線と試料面とが作る角度と、試料面と試料から出てくる回折X線との角度とを、同一にする必要がある。よって、検出器9の回転角度は、試料面の回転角度の2倍になっている。通常、この2倍の角度で回折パターンをチャートに表す。試料から検出器9までの距離は、例えば300mmとすることができる。なお、X線検出部3においても、必要に応じてソーラースリットを設けてもよい。
【0072】
試料取付部2に取り付けられる試料としての樹脂成形品は、塗装されている場合であっても、測定条件を適切に選べば塗料を剥離する必要は無いが、数cm角の平面の測定部位が必要である。試料面は、鏡面である必要はないため、少々のわん曲面や、粗面であってもかまわないが、概ね平面であることが望ましい。試料全体の大きさは、用いる装置の試料取付部2の大きさに合わせる必要がある。市販されているX線回折測定装置を用いるのであれば、機械加工等によって試料を予め2cm角ほどの板状にしておくことが望ましい。
【0073】
次に、上述したような図1に示すX線回折測定装置を用いて、樹脂成形品のX線回折パターンを測定する方法について説明する。樹脂成形品についてのX線回折パターンの測定は、通常の理化学分析で行われるX線回折パターンの測定と同様に行うことができる。
【0074】
先ず、試料としての樹脂成形品を、装置の試料取付部2に取り付ける。次に、X線発生部1のX線管球4から試料に向けて矢印Aに示すようにX線を照射する。このとき、試料とX線検出部3とを適切な相互角度の関係で回転させながら、矢印Bに示す回折X線の各角度におけるX線強度を検出器9で検出し、計測する。
【0075】
このとき、管電圧は、用いるターゲット4bの特性X線の強度が最大となるように選択する。例えばターゲット4bが銅である場合、例えば30kV〜40kVとする。ターゲット4bの材質に応じた最適な管電圧が知られており、おおよその目安としては、特性X線のエネルギーの数倍に管電圧を設定する。
【0076】
なお、管電流が大きいほど照射するX線強度が大きくなり、X線の量子雑音と呼ばれるノイズを低減することができるので、一般的にはSNの点で有利である。また、管電流が大きいほど検出器が有する絶対的なノイズに比べてX線の強度が大きくなるので、やはりSNの点で有利である。その他、SNを決める要因として、コヒーレントな回折のX線強度と、インコヒーレントすなわちランダムな散乱反射のX線強度とを考える必要がある。通常のX線回折装置では、余分な散乱X線が検出器になるべく入射しないように設計されているが、回折X線及び散乱X線のどちらもX線の量子雑音の影響を受けるので、やはり照射するX線強度を大きくすることが好ましい。なお、管電流を大きくすると、X線発生の焦点がより大きくなり、角度分解能の低下をもたらすので、過度の管電流には注意が必要である。管電流としては、具体的には10mA〜40mAを例示できる。
【0077】
測定角度は必要に応じて選べばよいが、最初は、測定角度をなるべく広い範囲として測定することが望ましい。具体的には、測定角度2θで10°〜60°を例示できる。必要に応じて、測定角度2θを5°〜90°、また、それ以上の範囲にすることもできる。測定は、一般的に、小さい角度から開始される。時間あたりの角度の増加量(走査速度)は、小さい方が角度の分解能の点、及び測定のSNの点で有利となる。具体的には、1°/分、10°/分、100°/分等を例示できる。しかしながら、走査速度が1°/分である場合、10°〜60°の角度範囲を測定しようとすると、測定時間として50分要することになる。樹脂のリサイクル処理の場合、この測定時間は長すぎるため、予め測定すべき角度範囲をよく検討しておき、実際の工程においては、樹脂中の成分を識別可能な程度に、角度範囲をなるべく小さく限定して測定することが望ましい。例えば、測定角度20°〜40°の範囲を、100°/分で測定するのならば、測定時間は12秒となり、測定時間を大幅に短縮できることがわかる。
【0078】
ところで、上述したような、図1に示す通常のX線回折測定装置によるX線回折測定では、回折パターンを測定するために検出部を回転走査しなければならないため、測定時間が長時間に及ぶという問題がある。
【0079】
そこで本発明では、図2に示すように、試料を中心とした円弧上に、検出器9をアレイ状に配置した構成のX線回折測定装置を用いることが好ましい。検出器9は、試料Sからの所定の角度範囲の回折線を同時に測定可能とされる。なお、図2においては、X線検出部3として、ポイントとなるアレイ状の検出器9のみを図示し、他の部材の図示を省略している。また、図2においては、検出器9を7つ配置した場合を例に挙げたが、検出器9の数は任意に変更できる。
【0080】
また、図2に示すX線回折測定装置においては、図1に示すX線回折測定装置と同様に、必要に応じて、スリットや分光結晶等を設けることが好ましい。その配置は通常のX線回折測定装置と同様にすることができる。ここで、分光結晶を極力小さく設けても、それに対応する検出器9の角度間隔が大きくなるおそれがある。そこで、分光結晶の面を回転面に対して略平行となるように配置し、分光されたX線を回転面外へ反射させるようにすることが好ましい。また、隣り合う分光結晶を、互いに回転面の上下に向けることで、検出器9の位置的な干渉を緩和することができる。このとき、分光結晶の代わりに、回折に使用するX線の波長をできるだけ通過させ得るようなX線フィルターを用いてもよい。このようなX線フィルターは、分光結晶に比べて、測定されるX線回折パターンの品質を低下させるものの、本発明のX線回折測定は、樹脂成形品中に目的の成分が存在するか否かを識別するために実施されるものであり、理化学分析で全くの未知試料を同定する場合のような高精度が要求されないため、特に問題なく使用することができる。
【0081】
以上のように、図2に示すX線回折測定装置は、ある角度範囲の測定を同時に行うことができるように複数の検出器9がアレイ状に配置されているので、これら複数の検出器9によって検出しうる角度範囲だけで、樹脂中の成分を特定できる場合には、測定に要する時間を飛躍的に短縮することができる。また、複数の検出器9によって検出しうる角度範囲よりさらに広範囲な測定が必要な場合でも、複数の検出器9によって検出しうる角度範囲をブロック測定する方法や、X線検出部3を高速に連続回転させることにより複数の検出器9間の補完をしながら測定を行うことで、測定に要する時間を大幅に短縮することができる。この場合、アレイ状に配置された複数の検出器9のうち、円弧の両端に位置する検出器9においては、照射X線と試料面との角度と、試料面と検出器との角度との2倍の関係から少々ずれてしまう。このため、この両端の検出器9によって得られる回折パターンは、通常の理化学分析用のX線回折装置で測定される回折パターンとはその強度等が異なるものになる。しかしながら、本発明におけるX線回折測定は、樹脂成形品中に目的の成分が存在するか否かを識別するために実施されるので、理化学分析で全くの未知試料を同定する場合のような高精度が要求されない。したがって、本発明においては、図2に示すX線回折測定装置を利用することができる。
【0082】
ところで、本発明においては、上述したように、X線回折測定と蛍光X線分析とを組み合わせて分析することもできる。以下では、X線回折測定と蛍光X線分析とを同時に実施するための装置について、図3を参照しながら説明する。
【0083】
図3に示す装置は、X線回折測定装置をベースとしているが、検出器9として、エネルギー情報も得られる検出器を用いる点に特徴がある。検出器9は、例えば蛍光X線測定装置に用いられるような波長分散型X線検出器(WDX)、エネルギー分散型X線検出器(EDX)等を用いることができる。特に、検出器9としてEDXが好適である。この場合、X線検出部3の分光結晶は不要となる。試料取付部2は、通常のX線回折装置と同様の構成とすることができる。図3に示す装置においては、X線発生部1を固定とし、X線検出部3を可動としているが、X線検出部3を固定とし、X線発生部1を可動としてもよい。
【0084】
また、図3に示す装置においては、X線発生部1に、分光結晶又は特定のエネルギーのX線を選択的に透過させるフィルター10を配置する。
【0085】
そして、この装置においては、X線発生部1から試料へX線を照射するとともにX線検出部3を移動させることによって、各角度におけるX線エネルギースペクトルを測定することができる。X線回折現象に使用するX線が銅の特性X線である場合、X線エネルギースペクトルの銅の特性エネルギーのX線強度に注目し、その角度分布(回折パターン)を見ることで、X線回折の情報を得ることができる。X線エネルギースペクトル中、銅の特性エネルギー以外においては、試料に含まれる元素に対応した蛍光X線が検出されることになる。蛍光X線の強度に比べ回折X線の強度が小さいとき、回折X線を感度良く検出するためには、例えば8.04KeVのX線だけを選択的に試料へ入射させることが好ましい。このため、図3に示すように、分光結晶又は特定のエネルギーのX線を選択的に透過させるフィルター10をX線発生部1に配置することが好ましい。これにより、試料からの蛍光X線を減少させてEDX検出器での係数率を高めることができる。もちろん、蛍光X線測定に注目する場合は、基本的には分光結晶やX線フィルターは不要である。
【0086】
なお、この装置を用いて2θで例えば90°だけ測定する場合の配置は、通常の蛍光X線測定装置の配置と同様であるので、蛍光X線の測定だけ実施することもできる。すなわち、必ずしも蛍光X線測定とX線回折測定とを同時に行う必要は無い。
【0087】
また、図3に示す装置においては、管電圧の設定に配慮すべきである。すなわち、蛍光X線を測定するため、多くの元素を励起できるように、管電圧を高めに設定し、制動X線も多く発生させるようにする。必要に応じて、X線管球4のターゲットの材質を、銅ではなく、より高原子番号のパラジウム等に変更すればよい。
【0088】
また、図3に示す装置で測定される蛍光X線スペクトルには、回折X線由来のピークも出現するが、回折X線由来のものは、測定する角度に応じてピークのエネルギーがシフトするので区別可能である。
【0089】
ところで、上述の説明では、X線回折の測定方式として方角度分散方式について主に例に挙げたが、ある範囲のエネルギー分布を有するX線を用い、試料へ照射するX線の入射角度と検出角度とを固定して、検出されるX線のエネルギー分布(エネルギースペクトル)を測定する、いわゆるエネルギー分散型式で回折パターンを測定しても良い。以下では、エネルギー分散型方式による回折現象の測定について説明する。
【0090】
X線の波長λとエネルギーEとには下記式(2)の関係がある。
E=h*c/λ ...式(2)
h:プランク定数
c:光の速度
【0091】
これを、上述した式(1)に、n=1として代入すると、下記式(3)が得られる。
E=h*c/(2*d*sinθ) ...式(3)
【0092】
すなわち、θを固定とすると、試料に含有される物質の周期構造の間隔と回折されるX線のエネルギーとは、反比例の関係にある。
【0093】
所定のエネルギー分布を有するX線、望ましくはエネルギー分布が均一である白色X線を、試料に対して所定の入射角度で照射し、できれば入射角度と同じ検出角度のX線エネルギースペクトルを測定する。得られたX線エネルギースペクトルには、試料による回折X線由来のスペクトルが含まれている。ここで、X線エネルギースペクトルには、試料による蛍光X線も含まれていることに注意する。蛍光X線が観測されるエネルギー範囲と、回折X線によって観測されるX線エネルギー範囲とは、できれば重ならないようにすることが好ましい。例えば、試料に含有される物質の周期構造の間隔が4.4Å〜2.3Åであり、試料面の法線方向に対してX線の入射角度と検出角度とがともに70°である場合、4.0KeV〜8.0KeVの範囲で回折X線が検出される。このようにして、X線回折由来のX線エネルギースペクトルの測定によって、物質特有のX線エネルギースペクトルから樹脂に含有される物質を識別可能である。
【0094】
この方式に用いる装置としては、通常のエネルギー分散型回折装置を用いることができる。検出器としてはEDX又はWDXのいずれも使用できる。また、上述した図3に示す装置を用いることもできる。この装置は、角度調整が可能であり、蛍光X線が観測されるエネルギー範囲と回折X線によって観測されるX線エネルギー範囲との重なりをできるだけ少なく調整することができるため好適である。なお、測定の角度を少しだけ走査し、ピークのエネルギーがシフトしなければそれは蛍光X線であると区別できる。上述したように、回折X線は、角度の違いに応じてピークのエネルギーがシフトするのである。このエネルギー分散方式は、角度走査が不要であり、これによって測定時間を短縮することができる。もちろん、測定時間は測定系全体の感度に支配されるので、照射するX線強度と検出器の強度との兼ね合いとなる。
【0095】
【実施例】
次に、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
【0096】
〈実施例1〉
測定装置としては、理学電機社製のX線ディフラクトメーター(型番RAD3B)を用いた。X線管球のターゲットは銅であり、よってX線は8.04KeVであり、1.54Åである。測定条件としては、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度1°/分、スリットDS1°、RS1°、SS0.3mmとした。このような条件では、測定誤差(Si粉末の測定結果と文献JCPDSカードとの差)は、d値換算で0.1%未満である。
【0097】
先ず、試薬のデカブロモジフェニルエーテル(DBDPE)(東京化成社製)を皿詰めして測定試料を作製し、X線回折パターンを測定した。結果を図4に示す。
【0098】
次に、樹脂として旭化成社製VS29について測定を行うために、試料を作製した。VS29は、ハイインパクトポリスチロールにデカブロモジフェニルエーテルが約10%添加された難燃用途の樹脂ペレットである。また、VS29には、難燃助剤として三酸化アンチモンも添加されている。このペレットを220℃のホットプレス機で直径約5cm、厚さ約1mmの板状に成形し、試料とした。この試料について、X線回折パターンを測定した。結果を図4に示す。なお、図4中、VS29の回折パターンを、縦軸方向へ強度2000だけシフトさせて表す。
【0099】
図4から、VS29においては、試薬のデカブロモジフェニルエーテルより多くのパターンが測定されたことがわかる。試薬のデカブロモジフェニルエーテルと同じ角度においてVS29にピークがあることから、樹脂中のデカブロモジフェニルエーテルを検出できたと判断した。また、データベース(JCPDS)検索により、デカブロモジフェニルエーテル以外のピークは、三酸化アンチモンであると同定された。また、別途測定したハイインパクトポリスチロールの回折パターンとの比較から、20°付近のブロードなピークは、ハイインパクトポリスチロールに由来するものとわかった。樹脂のような高分子の場合、ふつう低角にブロードなピークとして現れるが、このブロードなピークだけでは樹脂の識別は困難であった。
【0100】
以上のように、VS29についてX線回折パターンを調べることによって、デカブロモジフェニルエーテル及び三酸化アンチモンが含まれることを識別できた。
【0101】
〈実施例2〉
実施例2では、難燃樹脂として旭化成社製VS712について測定を行った。VS712はいわゆる非特定臭素系難燃剤であるエチレンビスペンタブロモビフェニル(DBDPE)及び難燃助剤の三酸化アンチモンが添加された難燃用途の樹脂ペレットである。これについて、実施例1と同様にしてX線回折パターンを測定した。結果を図5に示す。また、実施例1において測定したVS29のX線回折パターンも、あわせて図5に示す。なお、図5中、VS29の回折パターンを、縦軸方向へ強度2000だけシフトさせて表している。
【0102】
図5から、VS29及びVS712のどちらにおいても、三酸化アンチモンの回折ピークが検出された。VS712では、例えば25.5°付近のピーク及び29.5°付近のピークが特徴的であり、これらは、エチレンビスペンタブロモビフェニルに由来する回折ピークであると考えられる。一方、VS29ではデカブロモジフェニルエーテルに由来する22°〜27°付近に存在する3つの回折ピークが特徴的である。以上のような特徴から、両樹脂に含まれる難燃剤の種類を識別できることがわかった。
【0103】
〈実施例3〉
先ず、市販のポリ乳酸に水酸化マグネシウムが30%となるように配合して、180℃で熱混練してペレットを調製した。このペレットを175℃でホットプレスすることにより、板状の試料を得た。この試料について、実施例1と同様の装置を用いてX線回折パターンを測定した。結果を図6下段に示す。JCPDS検索によって、全てのピークは水酸化マグネシウムのピークと一致することがわかった。回折強度の大きな2つのピークを、図中2つの矢印で示した。
【0104】
また、市販のポリ乳酸に水酸化アルミニウムが25%となるように配合されたペレットを同様に調製し、板状の試料を得た。この試料について、実施例1と同様に回折パターンを測定した。結果を図6中段に示す。JCPDS検索によって、全てのピークは水酸化アルミニウムのピークと一致することがわかった。回折強度の大きな2つのピークを、図中2つの矢印で示した。なお、図6中、水酸化アルミニウム含有樹脂のパターンを、強度5000だけシフトさせて表している。
【0105】
また、市販のポリ乳酸に水酸化アルミニウムが25%、タルクが15%となるように配合されたペレットを同様に調製し、板状の試料を得た。この試料について、実施例1と同様の装置を用いてX線回折パターンを測定した。結果を図6上段に示す。回折パターンから、水酸化アルミニウムのピークと、タルクのピークとをそれぞれ観察することができた。なお、図6中、水酸化アルミニウム及びタルク含有樹脂のパターンを、強度15000だけシフトさせて表している。
【0106】
以上の実施例3から、樹脂中の水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムといった化合物も、X線回折測定によって充分識別できることが判明した。また、タルク等の無機フィラーも、X線回折測定によって識別できることが判明した。
【0107】
〈比較例1〉
実施例1で作製したVS29の試料、及び実施例2で作製したVS712の試料について、蛍光X線分析を行い、スペクトルを測定した。蛍光X線測定装置としては、アワーズテック社製のOURESTEX 150 RoHSを使用した。管球のターゲットとして、タングステンを用いた。また、測定条件を、管電圧48kV、管電流0.25mA、測定時間10秒(有効測定時間約7秒)とした。結果を図7に示す。
【0108】
図7に示すように、VS29及びVS712のいずれにおいても、臭素及びアンチモンのピークが観察されていることから、これら試料が臭素系難燃剤を含有していることがうかがえる。しかしながら、図7から具体的な成分を特定することは不可能であった。
【0109】
〈比較例2〉
実施例3で作製した3種類の試料について、蛍光X線分析を行い、スペクトルを測定した。蛍光X線測定装置としては、島津製作所社製のEDX700を使用した。また、測定条件を、管電圧15kV、管電流0.6mA、測定時間100秒(有効測定時間約74秒)とし、試料室を大気下とした。結果を図8に示す。
【0110】
図8下段に示すように、水酸化マグネシウムを含む試料からは、マグネシウムのピークを検出することができなかった。また、図8中段に示すように、水酸化アルミニウムを含有する試料からは、アルミニウムのごく小さいピークが検出された。蛍光X線分析による水酸化マグネシウム含有試料のスペクトルと、水酸化アルミニウム含有試料のスペクトルとを比較すると、樹脂中の添加剤が異なることはわかるが、水酸化マグネシウムの有無を識別することができなかったことから、蛍光X線分析は樹脂中の成分の分析としては不充分なものであるといえる。また、蛍光X線分析では、例えば試料表面に酸化アルミニウムを含む塗装が施されている場合にもアルミニウムのピークが検出されると考えられるので、アルミニウムのピークが観察されたからといって試料中に水酸化アルミニウムが含まれるとは判断できないと考えられる。
【0111】
また、図8上段に示すように、水酸化アルミニウム及びタルクを含む試料からは、アルミニウムのごく小さいピークとシリコンのごく小さいピークとが検出された。しかしながら、アルミニウムと同様に、シリコンについても、ガラスの無機フィラーからもシリコンのピークが検出されると考えられるので、シリコンのピークが検出されたからといって、試料中にタルクが含まれるとは判断できないと考えられる。
【0112】
以上の実験結果から、従来の蛍光X線分析は、樹脂中の成分を特定する手法としては不適当であり、本発明のX線回折測定を行うことによって、樹脂中の成分を確実に分析できるといえる。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る樹脂素材の分析方法によれば、回折現象を利用することによって、特定の成分(難燃剤や難燃助剤)を含む樹脂素材を正確に識別することができる。このとき、塗装の剥離等の前処理や真空引き等の工程が不要であり、樹脂素材中の成分を迅速に分析することができる。
【0114】
また、本発明に係る樹脂素材の分析装置は、複数の角度における回折線を同時に測定可能とするように、複数の検出器が配置されているので、検出器を回転走査するといった複雑且つ長時間を要する過程を省略でき、測定時間を大幅に短縮することができる。
【0115】
さらに、本発明に係る樹脂成分の分析装置は、検出器としてエネルギー情報を得られる検出器を備え、回折強度の測定と蛍光強度の測定とを同時に行うことができるようにしているので、蛍光分析によって特定の元素を含む樹脂素材を選別し、選別された樹脂素材について回折現象を利用した測定を行うことで、分析工程全体に要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】通常の理化学分析用のX線回折装置を示す模式図である。
【図2】本発明を適用した分析装置の一例であり、検出器を複数備えるX線回折測定装置を示す模式図である。
【図3】本発明を適用した分析装置の他の例であり、エネルギー情報も得られる検出器を備えるX線回折測定装置を示す模式図である。
【図4】上段は、デカブロモジフェニルエーテル及び三酸化アンチモンを含む樹脂についてのX線回折パターンであり、下段は、デカブロモジフェニルエーテル単独でのX線回折パターンである。
【図5】上段は、デカブロモジフェニルエーテル及び三酸化アンチモンを含む樹脂についてのX線回折パターンであり、下段は、エチレンビスペンタブロモビフェニル及び三酸化アンチモンを含む樹脂についてのX線回折パターンである。
【図6】上段は、水酸化アルミニウム及びタルクを含む樹脂についてのX線回折パターンであり、中段は、水酸化アルミニウムを含む樹脂についてのX線回折パターンであり、下段は、水酸化マグネシウムを含む樹脂についてのX線回折パターンである。
【図7】上段は、実施例1で作製したVS29の試料についての蛍光X線スペクトルであり、下段は、実施例2で作製したVS712の試料についての蛍光X線スペクトルである。
【図8】上段は、水酸化アルミニウム及びタルクを含む樹脂についての蛍光X線スペクトルであり、中段は、水酸化アルミニウムを含む樹脂についての蛍光X線スペクトルであり、下段は、水酸化マグネシウムを含む樹脂についての蛍光X線スペクトルである。
【符号の説明】
1 X線発生部、2 試料取付部、3 X線検出部、4 X線管球、5 スリット部、6 ゴニオメーター、7 スリット、8 分光部、9 検出器、10 フィルター
Claims (21)
- 樹脂素材に放射線を照射し、当該樹脂素材によって回折される放射線を測定し、樹脂素材に含まれる成分を分析することを特徴とする樹脂素材の分析方法。
- 樹脂素材に放射線を照射し、当該樹脂素材によって回折される放射線を測定し、回折パターンを得る工程と、
上記回折パターンを、予め用意した分析対象の成分の回折パターンと比較することにより、上記樹脂素材中に上記成分が含まれるか否かを判定する工程とを有することを特徴とする請求項1記載の樹脂素材の分析方法。 - 上記放射線は、X線であることを特徴とする請求項1記載の樹脂素材の分析方法。
- 上記成分は、難燃剤及び/又は難燃助剤であることを特徴とする請求項1記載の樹脂素材の分析方法。
- 上記難燃剤及び/又は難燃助剤は、ハロゲン系難燃剤、軽金属水酸化物、リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、酸化アンチモンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4記載の樹脂素材の分析方法。
- 上記ハロゲン系難燃剤は、臭素系難燃剤であることを特徴とする請求項5記載の樹脂素材の分析方法。
- 上記臭素系難燃剤は、ポリブロモジフェニルエーテルであることを特徴とする請求項6記載の樹脂素材の分析方法。
- 測定対象となる樹脂素材が樹脂成形品であることを特徴とする請求項1記載の樹脂素材の分析方法。
- 上記樹脂成形品は、回収した使用済み電気製品から発生したものであることを特徴とする請求項8記載の樹脂素材の分析方法。
- 上記樹脂成形品は、テレビの筐体であることを特徴とする請求項9記載の樹脂素材の分析方法。
- 上記樹脂素材は、納入された材料又は部品であり、
製品に採用するか否か判定するための受け入れ検査において実施されることを特徴とする請求項1記載の樹脂素材の分析方法。 - 樹脂素材が塗装されており、塗装されたままの状態で上記測定を行うことを特徴とする請求項1記載の樹脂素材の分析方法。
- 上記樹脂素材に対して予め蛍光X線分析を行うことを特徴とする請求項1記載の樹脂素材の分析方法。
- 前記蛍光X線分析により樹脂素材に含まれる元素を特定し、前記回折される放射線を測定することで樹脂素材に含まれる成分を特定することを特徴とする請求項13記載の樹脂素材の分析方法。
- 上記元素が臭素であり、前記成分が臭素系難燃剤であることを特徴とする請求項14記載の樹脂素材の分析方法。
- 放射線を発生する放射線発生部と、樹脂素材により回折された放射線を検出する複数の検出器とを備え、
上記複数の検出器が配列されることで、回折放射線の角度分布が一括測定可能とされていることを特徴とする樹脂素材の分析装置。 - 上記放射線発生部は、X線高圧電源装置とX線管球とからなるX線発生部であることを特徴とする請求項16記載の樹脂素材の分析装置。
- 試料取り付け部と、樹脂素材により回折されたX線の角度分布を測定するための回転機構部と、各構成部を制御し測定データを解析する電子計算機部を備えることを特徴とする請求項17記載の樹脂素材の分析装置。
- 放射線を発生する放射線発生部と、放射線エネルギー情報を取得可能な検出器とを備え、
蛍光放射線と回折放射線とを同時に測定可能であることを特徴とする樹脂素材の分析装置。 - 上記放射線発生部は、X線高圧電源装置とX線管球とからなるX線発生部であることを特徴とする請求項19記載の樹脂素材の分析装置。
- 試料取り付け部と、樹脂素材により回折されたX線の角度分布を測定するための回転機構部と、各構成部を制御し測定データを解析する電子計算機部を備えることを特徴とする請求項20記載の樹脂素材の分析装置。
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JP2003165186A JP2005003440A (ja) | 2003-06-10 | 2003-06-10 | 樹脂素材の分析方法及び樹脂素材の分析装置 |
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