JP2005001910A - 焼却灰のセメント原料化方法 - Google Patents

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吉和 福原
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Abstract

【課題】この発明は、塩素濃度の高い焼却灰のセメント製造プロセスへの持ち込みを防止することができる焼却灰のセメント原料化方法を提供することを課題とする。
【解決手段】廃棄物焼却施設Aから排出された焼却灰が収納施設B内に収納されると、スプリンクラー11により散水して焼却灰を水洗処理し、この水洗処理を長期間にわたって行う。水洗処理が施された焼却灰のうち、収納施設B内の塩水の水道(みずみち)の上部に位置している焼却灰は90%以上の脱塩率をもって高効率に塩素成分が除去されているため、焼却灰の上面から全体の90%に相当する深さ、好ましくは75%に相当する深さ、より好ましくは60%に相当する深さまでに位置する焼却灰をセメント原料として使用する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、焼却灰のセメント原料化方法に係り、特に廃棄物焼却炉などの焼却施設から排出される焼却灰から塩素成分を効率的に除去してセメント製造用の原料の一部として再資源化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、可燃性の家庭ごみ廃棄物及び産業廃棄物は、ストーカ式焼却炉または流動床式焼却炉において焼却され、焼却灰として廃棄物最終処分場に埋立て処分される。ここで、焼却灰は焼却主灰及び飛灰(ばいじん)の両者或いはどちらか一方を示す。焼却灰のうち集塵機などで捕集される飛灰は、高い塩素濃度を有すると共に、金属類及びダイオキシン類で過度に汚染されており、平成3年の廃棄物処理法の改正により特別管理一般廃棄物に指定されている。一方、焼却灰のうち焼却残渣として排出される焼却主灰(炉底灰、炉下灰)では、その塩素濃度、重金属類濃度及びダイオキシン類濃度が飛灰と比較するとはるかに低い。なお、廃棄物最終処分場の安全性を確保するため、最終処分される焼却灰中の重金属類の濃度やダイオキシン類の含有量が法律で定められる所定値を超過するものについては、遮断型最終処分場へ埋立て処分するか、溶融、セメント固化及びダイオキシン類の分解処理を行なった後、管理型最終処分場へ埋立て処分することが義務づけられている。
【0003】
ところで、廃棄物焼却施設より発生する焼却灰は、セメント原料として必要なCaO、SiO、Al及びFeなどを含んでいるため、セメント製造用の原料として十分に再資源化することができる。加えて、セメント製造の際の焼成工程で原料は1400℃以上の高温にさらされるため、焼却灰中のダイオキシン類の完全な分解が可能であるほか、重金属類はセメントクリンカ鉱物中に取り込まれて固定化することができる。
【0004】
この理由により、近年焼却灰を原料の一部に用いたセメント製造技術が確立され、単一のセメント焼成キルンにおいて年間4万tの焼却主灰と1万tの飛灰がセメントに再資源化されている。ここで、廃棄物焼却施設より排出される焼却主灰及び飛灰の塩素濃度は一般にそれぞれ1%及び15%程度である。上述の技術によれば、焼却主灰は磁力選別による鉄分除去及びふるいによる異物除去のみを施されてセメント原料とされる。一方、飛灰にはNaClが高濃度で含まれており、セメント製造プロセスへの過度な塩素の持ち込みはキルンの安定操業及びセメントの品質に悪影響を及ぼすため、水洗処理により塩素成分を除去した後にセメント原料化される。
【0005】
特許文献1には、都市ごみなどの可燃性廃棄物の焼却灰をセメント原料として再資源化する方法が開示されている。この方法は、表面に覆土を被せた状態で都市ごみの焼却灰を管理型処分場の土中に埋設し、その後、雨水にさらす以外に、スプリンクラー、散水車またはその他の散水設備によって強制散水することにより焼却灰中に含まれる水溶性の塩類を水で洗い流し、セメント原料としての再資源化を図るものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−322381号公報
【0007】
上述の特許文献1のように焼却灰中に含まれる塩素を水洗処理しようとする場合、通常、塩素を含んだ水が漏れ出して周囲の環境へ悪影響を及ぼさないように、水洗処理を行うための焼却灰の収納施設の側面及び底面は、鋼板やコンクリートなどの不透水材料から形成されている。収納施設の上部より散水された水は、収納施設の底部に設けられた排水口から排水され、その後、水処理施設へ送られる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように散水された水は、表層から順次焼却灰中の水溶性の塩類を溶解しながら深部へと浸透すると共に底面に到達すると底面上を排水口に向かって移動するため、収納容器の底面付近にいわゆる塩水の水道(みずみち)が形成される。そのため、底面付近の焼却灰の粒子にはNaClなどの塩類が結晶として析出し付着しやすくなる。
【0009】
また、焼却灰中には、セメントクリンカの主要構成鉱物のひとつであるカルシウムアルミネート(3CaO・Al)、Ca化合物及びCl化合物などが存在しており、焼却灰が水と接触するとCa化合物のCa及びCl化合物のClがイオンとして溶け出すと共に、この水溶液と焼却灰中のカルシウムアルミネートが一定時間接触すると難水溶性のフリーデル氏塩が形成される。ここで、焼却灰は収納施設の底面付近に位置するものほど高濃度の塩水との接触頻度が増すため、フリーデル氏塩などの難水溶性の塩類が形成されやすく、その結果、底面付近に位置する焼却灰の粒子にこのような塩類が付着することで塩素が残留しやすくなる。
【0010】
すなわち、収納施設内の底面付近に位置する焼却灰には塩素が多く付着しており、この部分の焼却灰をセメント原料としてセメント製造プロセスへ持ち込むと、キルンの安定操業及びセメントの品質に悪影響を及ぼすことがある。
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、塩素濃度の高い焼却灰のセメント製造プロセスへの持ち込みを防止することができる焼却灰のセメント原料化方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る第1の焼却灰のセメント原料化方法は、焼却施設より排出された焼却灰を収納施設内に収納すると共にこの収納施設の上部から散水して下部から排水することにより焼却灰を水洗処理する焼却灰のセメント原料化方法において、水洗処理された焼却灰の上面から全体の90%の深さまでをセメントの原料として使用する方法である。
【0012】
また、この発明に係る第2の焼却灰のセメント原料化方法は、焼却施設より排出された焼却灰を収納施設内に収納すると共にこの収納施設の上部から散水して下部から排水することにより焼却灰を水洗処理する焼却灰のセメント原料化方法において、焼却灰を収納施設内に収納する前に、空隙率が10%以上で55%未満である透水層を焼却灰が収納施設内に収納されたときの全体の10%以上の厚みを有するように予め収納施設の底面上に形成し、収納施設内の透水層の上に焼却灰を収納して水洗処理し、水洗処理を施された焼却灰をセメント原料として使用する方法である。
【0013】
また、この発明に係る第3の焼却灰のセメント原料化方法は、焼却施設より排出された焼却灰を収納施設内に収納すると共にこの収納施設の上部から散水して下部から排水することにより焼却灰を水洗処理する焼却灰のセメント原料化方法において、焼却灰を収納施設内に収納する前に、吸水率が5%以上の人工軽量骨材からなる透水層を焼却灰が収納施設内に収納されたときの全体の10%以上の厚みを有するように予め収納施設の底面上に形成し、収納施設内の透水層の上に焼却灰を収納して水洗処理し、水洗処理を施された焼却灰をセメント原料として使用する方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1を参照して、この発明の実施の形態に係る焼却灰のセメント原料化方法を説明する。ここで、焼却灰は焼却主灰及び飛灰(ばいじん)の両者或いはどちらか一方を示す。廃棄物焼却施設Aは、廃棄物焼却炉1、その内部に水が貯留された水没ピット2、水没ピット2の内側から外側まで延在するコンベア3、コンベア3にそれぞれ対向するように設けられた振動ふるい4と磁力選別機5、及びコンベア3で搬送された焼却主灰を一時貯蔵する灰出しバンカー6を有している。また、この廃棄物焼却施設Aとは別に水洗処理を行うための収納施設Bが配置されており、廃棄物焼却施設Aから排出された焼却主灰がダンプトラック7などにより収納施設Bへ搬送されるようになっている。
なお、図示されていないが、廃棄物焼却施設Aには、廃棄物焼却炉1で発生する排ガスを冷却する排ガス冷却塔及びこの排ガスの中から飛灰を回収するための集塵機が備えられている。
【0015】
収納施設Bの屋根8、側面9及び底面10は、鋼板やコンクリートなどの不透水性の材料からそれぞれ形成されている。収納施設Bの内部にはスプリンクラー11が設置されており、このスプリンクラー11は収納した焼却灰の表面全体に均一な散水ができるように収納施設B内の高い位置に設けられている。また、収納施設Bの底部には、焼却灰からの浸出水を収納施設Bの外部へと排出するための図示されない排水口が形成されている。一方、収納施設Bの外部に水タンク12が配置されており、水タンク12内に貯留された水がスプリンクラー11に供給されるようになっている。また、収納施設Bの外部には、収納施設Bの排水口から排出された水を浄化するための水処理施設13が設置されている。
【0016】
次に、この実施の形態に係る焼却灰のセメント原料化方法の動作について説明する。ここでは都市ごみの焼却主灰及び飛灰を例にとって説明する。一般に都市ごみは自治体が管理運営する廃棄物焼却施設Aにおいて焼却される。
焼却灰のうち焼却主灰は、廃棄物焼却炉1の底部に残留するものであり、焼却炉1より排出された後直ちに消火と発塵の防止を目的として水没ピット2内に投入される。水没ピット2から回収された焼却主灰は、コンベア3により振動ふるい4及び磁力選別機5へ搬送されて粗大な異物及び金属片などの不燃物が除去された後、湿潤した状態のまま灰出しバンカー6で一時貯蔵され、ダンプトラック7などで収納施設Bへ輸送されてこの施設B内に収納される。
【0017】
一方、焼却灰のうち飛灰は微細な不燃物の無機質粒子であり、廃棄物焼却炉1で発生する排ガスに随伴し、排ガス処理工程において図示しない集塵機において捕集される。この飛灰は、NaCl、KClなどの水溶性の塩類のほかダイオキシン類などの有害物を含むため、周辺環境へ飛散しないように密閉型の車両などの輸送手段により収納施設Bへ輸送されてこの施設B内に収納される。
なお、焼却主灰は上述のように水没処理されることが多いので、発塵を防止するのに十分なほど含水しており、焼却主灰及び飛灰を収納施設B内へ収納する際に、これら焼却主灰と飛灰とを同時または交互に収納すれば、飛灰の発塵を抑制することができる。
【0018】
このように焼却灰が収納されると、収納施設Bのスプリンクラー11に水タンク12から水が供給されて散水が開始され、これにより焼却灰が水洗されて焼却灰中の水溶性の塩類及び重金属類などが除去される。洗浄のために用いられる水は、例えば水タンク12から貯留された工業水のほか、天然の降水、河川水及び湖沼水など、意図的に塩素成分が添加されていない水を用いることができる。また、収納施設B内へ収納される焼却主灰は含水しているため、収納施設Bが焼却主灰及び飛灰で満杯となるまで待ってから散水を開始すると焼却主灰から浸出した高濃度の塩水と焼却灰とが長時間接触し、難水溶性のフリーデル氏塩などが形成されて脱塩率が低下する虞がある。従って、収納施設Bが満杯になることを待たずに焼却主灰及び飛灰の収納の都度、直ちにスプリンクラー11から散水して水洗処理を施すことが望ましい。
また、収納施設Bが焼却灰で満杯となったときには、焼却灰が周辺環境へ飛散することを防止するため、その表面を覆土することが望ましい。このとき覆土として、天然の土壌、細粒の砂、石灰石砕砂や、セメント原料化を考慮してシリカ、アルミナ及びカルシアを主成分として含む粒状物、粉状物を用いることができる。
【0019】
散水時の水の挙動は以下のようなものである。収納施設B内の焼却灰に対して散水された水は焼却灰中に含まれる可溶性の塩類、例えばNaCl及びKClなどを溶解しながら次第に塩濃度を高めつつ表層から深部に向かって移動すると共に、施設Bの底面10に到達すると、底面10に沿って水道(みずみち)を形成しながら排水口に向かって移動し、排水口より施設Bの外部へ排出される。なお、排水口から排出された水は水処理施設13に送られ、この水処理施設13において重金属類や微細粒子などに対して適切な処理がなされる。また、必要に応じて塩類の回収を行うことができる。
このような水洗処理が長期間にわたって行われる。
【0020】
ここで、水洗処理を施した後の収納施設B内の焼却灰の塩素濃度の深さ方向の分布を測定し脱塩率を定量的に把握した結果、塩水の流路である水道(みずみち)よりも上部に位置する焼却灰であれば高効率な脱塩が達せられていることがわかった。そこで、散水洗浄された焼却灰のうち、焼却灰の上面から全体の90%に相当する深さ、までに位置する焼却灰の脱塩率を測定したところ90%以上もの高い比率で塩素成分が除去されていることがわかった。従って、このように収納施設B内の塩水の水道(みずみち)の上部に位置し、高効率で塩素の除去された焼却灰の全量、例えば焼却灰の上面から全体の90%に相当する深さ、好ましくは75%に相当する深さ、より好ましくは60%に相当する深さまでに位置する焼却灰をセメント原料として再資源化する。
なお、全体の90%に相当する深さよりも深い部分に位置する焼却灰の塩素濃度は著しく高いので、セメント原料として利用しないものとする。
【0021】
また、焼却灰を収納施設Bに収納するのに先立って、図2に示されるように、収納施設Bの底面10上に空隙率が10%以上55%未満、好ましくは20%以上50%未満、より好ましくは25%以上45%未満であるような透水層21を予め形成し、この透水層21の上に焼却灰を収納して水洗処理を施すこともできる。なお、透水層21の空隙率は10%未満であると透水層21としての効果が期待できず、また空隙率が55%以上となると透水層21の空隙に焼却灰が入り込んでしまうため好ましくない。
透水層21を形成する厚みとしては、焼却灰が収納施設B内に収納されたときの全体の10%に相当する厚み、好ましくは25%に相当する厚み、より好ましくは40%に相当する厚みを有するように形成されることが望ましい。すなわち、焼却灰を収納したときに焼却灰の上面から底面10までの厚みの90%に相当する深さ以深、好ましくは75%に相当する深さ以深、より好ましくは60%に相当する深さ以深に透水層21が形成されていることが効果的である。
【0022】
さらに、この透水層21を形成する材料として上述のように空隙率が10%以上55%未満の材料を使用する代わりに、吸水率が5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上の火山軽石などの天然の軽量骨材及び人為的に作製された人工軽量骨材などを用いることもできる。
【0023】
このように透水層21を形成した後に焼却灰を収納して散水洗浄を行うと、透水層21の中に水道(みずみち)が形成されて、焼却灰は収納施設B内の塩水の水道(みずみち)に位置しない部分に収納されるため、セメント製造工程のトラブルの原因となる塩素が高効率に除去され、これによりその全量をセメント原料として再資源化することができる。
【0024】
以上のように、収納施設B内の塩水の水道(みずみち)の上部に位置して高効率で塩素の除去された焼却灰をセメント製造の原料とし、水道(みずみち)の近傍に位置する塩類を多く含んだ焼却灰をセメント原料として使用しないため、これにより塩素濃度の高い焼却灰のセメント製造プロセスへの持ち込みを防止することができ、セメント製造プロセスへの塩素の持ち込み量を大幅に低減させることができる。
【0025】
次に、具体的な実施例により本発明についてさらに詳しく説明する。
実施例1
まず、中規模都市の自治体の都市ごみ焼却処理施設(ストーカ方式)において、焼却炉より排出された焼却主灰を水没ピットより採取するとともに、同施設の集塵機より飛灰を採取した。焼却主灰には粗大な異物が含まれていたため、振動ふるい及び磁力選別機を用いて粗大な異物及び鉄屑などをあらかじめ除去した。これら焼却主灰及び飛灰を、乾燥重量比で4:1の割合で混合し、散水した水が周囲の土壌に拡散しないように5m四方の底面と高さ5mの側面を鋼板で覆った箱型の収納施設内に、全体の層の厚さが4mとなるまで収納した。ここで、散水洗浄前の焼却主灰及び飛灰の混合物の塩素濃度は約2.4%であった。焼却主灰及び飛灰の層の上部には、これら焼却主灰及び飛灰が周辺の環境へ飛散することを防止するため、天然の土壌を覆土した。
収納施設の下部には散水した水の排水口を設け、排水口から排出された水を水処理施設へ送水できるようにポンプと配管を設置した。また、収納施設の上部には、自然降雨の影響を受けないように屋根を配置した。
【0026】
収納施設内へ収納した焼却主灰及び飛灰への散水は、覆土の収納が完了した直後より1週間は1日あたり3.6mを、これより以降は散水開始より1ヶ月経過時までは1日あたり0.8mの割合で工業水を散水した。
1ヶ月の水洗処理の後、洗浄処理した焼却主灰及び飛灰を掘削し、異なる深さから塩素濃度測定用の試料を採取し、測定結果を表1に整理した。
【0027】
【表1】
Figure 2005001910
【0028】
表1に示されるように、収納施設に収納した焼却主灰及び飛灰の混合物中の塩素濃度は、上面に近い部位のものほど低く、底面に向かうほど高くなっていることが確認された。その濃度勾配は、深さ2.4mまでは緩やかであったが、2.4m以深では次第に濃度勾配が大きくなり、3.6m付近で急激に塩素濃度が増加した。
【0029】
塩素濃度が著しく増加する直前、すなわち表面から3.6m(収納物の全体の厚みの約90%に相当する深さ)までの焼却主灰及び飛灰を掘削し、均一に混合した後にロータリー式の粘土ドライヤーにより乾燥させ、続いて平均粒径40μm程度まで粉砕した。水洗処理後の焼却主灰及び飛灰の混合物の塩素濃度は約2200ppmであった。これに、石灰石粉末、粘土、ケイ石及びベンガラなどを適量混合し、エアーブレンディングタンクへ供給し均一に混合した。
【0030】
さらに、セメントの試験焼成にはレンガ内径1500mm、全長28mのロータリーキルンを使用し、1.5t/hrの割合で調合原料をロータリーキルンへ供給し、最高温度1430℃でセメントクリンカを焼成した。この試験焼成の結果、得られたクリンカのHM、SM及びIMはそれぞれ2.17、2.50及び1.90、また、クリンカ鉱物組成はエーライトが61%、ビーライトが16%となり、通常のポルトランドセメントクリンカと同一の組成のものを得ることができた。
なお、上記のHM、SM及びIMはそれぞれ次の成分比(重量パーセント)を示している。
HM=CaO/(SiO+Al+Fe
SM=SiO/(Al+Fe
IM=Al/Fe
【0031】
実施例2
実施例1に示した収納施設において、実施例1と同一の焼却主灰及び飛灰とからなる混合物を収納するのに先立ち、焼却主灰及び飛灰を収納施設内に収納したときの全体の10%の厚みを有すると共に空隙率が35%のケイ砂からなる透水層を予め収納施設の底面上に形成し、その後、透水層の上に焼却主灰及び飛灰を収納した。それ以外は、実施例1と同一の手順に従ってセメントを製造した。このようにしても、実施例1のように、得られたセメントクリンカの化学組成、鉱物組成及び物理性状は通常のポルトランドセメントクリンカと同一であった。
【0032】
実施例3
実施例1に示した収納施設において、実施例1と同一の焼却主灰及び飛灰とからなる混合物を収納するに先立って、焼却主灰及び飛灰を収納施設内に収納したときの全体の10%の厚みを有すると共に吸水率が8%の市販の人工軽量骨材からなる透水層を予め収納施設の底面上に形成し、その後、透水層の上に焼却主灰及び飛灰を収納した。それ以外は、実施例1と同一の手順に従ってセメントを製造した。このようにしても、実施例1のように、得られたセメントクリンカの化学組成、鉱物組成及び物理性状は通常のポルトランドセメントクリンカと同一であった。
【0033】
なお、この発明の焼却主灰及び飛灰は都市ごみ由来のものに限られず、産業廃棄物など可燃性の廃棄物の焼却処理に由来するものも含める。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、焼却施設より排出された焼却灰を収納施設内に収納すると共にこの収納施設の上部から散水して下部から排水することにより焼却灰を水洗処理する焼却灰のセメント原料化方法において、水洗処理された焼却灰の上面から全体の90%の深さまでをセメントの原料として使用するようにしたので、水洗処理により塩素成分が十分に洗い流された部分のみを使用でき、これにより塩素濃度の高い焼却灰のセメント製造プロセスへの持ち込みを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る焼却灰のセメント原料化方法の流れを示すフロー図である。
【図2】この発明の実施の形態に係る別の焼却灰のセメント原料化方法の流れを示すフロー図である。
【符号の説明】
1 廃棄物焼却炉、2 水没ピット、3 コンベア、4 振動ふるい、5 磁力選別機、6 灰出しバンカー、7 ダンプトラック、8 屋根、9 側面、10 底面、11 スプリンクラー、12 水タンク、13 水処理施設、21 透水層、A 廃棄物焼却施設、B 収納施設。

Claims (3)

  1. 焼却施設より排出された焼却灰を収納施設内に収納すると共にこの収納施設の上部から散水して下部から排水することにより焼却灰を水洗処理する焼却灰のセメント原料化方法において、
    水洗処理された焼却灰の上面から全体の90%の深さまでをセメントの原料として使用することを特徴とする焼却灰のセメント原料化方法。
  2. 焼却施設より排出された焼却灰を収納施設内に収納すると共にこの収納施設の上部から散水して下部から排水することにより焼却灰を水洗処理する焼却灰のセメント原料化方法において、
    焼却灰を収納施設内に収納する前に、空隙率が10%以上で55%未満である透水層を焼却灰が収納施設内に収納されたときの全体の10%以上の厚みを有するように予め収納施設の底面上に形成し、
    収納施設内の前記透水層の上に焼却灰を収納して水洗処理し、
    前記水洗処理を施された焼却灰をセメント原料として使用することを特徴とする焼却灰のセメント原料化方法。
  3. 焼却施設より排出された焼却灰を収納施設内に収納すると共にこの収納施設の上部から散水して下部から排水することにより焼却灰を水洗処理する焼却灰のセメント原料化方法において、
    焼却灰を収納施設内に収納する前に、吸水率が5%以上の人工軽量骨材からなる透水層を焼却灰が収納施設内に収納されたときの全体の10%以上の厚みを有するように予め収納施設の底面上に形成し、
    収納施設内の前記透水層の上に焼却灰を収納して水洗処理し、
    前記水洗処理を施された焼却灰をセメント原料として使用することを特徴とする焼却灰のセメント原料化方法。
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