JP2005000075A - 細胞観察用容器、細胞収集装置及び細胞収集方法 - Google Patents
細胞観察用容器、細胞収集装置及び細胞収集方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に効率よく収集することができる細胞観察用容器を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる細胞観察用容器は細胞を観察するために細胞4を含む培養液3を注入する細胞観察用容器であって、チップ1に設けられたバッファー11と、バッファー11から延在してバッファー11よりも浅く形成された流路12とバッファー11及び流路12に細胞を含む培養液を注入する注入口13を備えている。バッファー11と流路12を覆うようにチップ1にガラス板2を取り付けている。この細胞観察用容器を回転させて遠心力によって細胞4を移動させる。細胞4をストッパー14近傍で停止させて高密度に収集して、観察を行う。
【選択図】 図4
【解決手段】本発明にかかる細胞観察用容器は細胞を観察するために細胞4を含む培養液3を注入する細胞観察用容器であって、チップ1に設けられたバッファー11と、バッファー11から延在してバッファー11よりも浅く形成された流路12とバッファー11及び流路12に細胞を含む培養液を注入する注入口13を備えている。バッファー11と流路12を覆うようにチップ1にガラス板2を取り付けている。この細胞観察用容器を回転させて遠心力によって細胞4を移動させる。細胞4をストッパー14近傍で停止させて高密度に収集して、観察を行う。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞を観察するための細胞観察用容器及び細胞を高密度に収集する細胞収集装置、細胞収集方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、動物や植物の細胞を観察するためには細胞を含む培養液を平坦なスライドやシャーレに滴下して、顕微鏡で観察していた。またスライド上に設けた凹部に培養液を滴下して、細胞を観察するものもある(例えば、特許文献1)。あるいは走化性を有する細胞等を観測する観測チップが本件の出願人から出願されている(例えば、特許文献2)
【0003】
ところで、細胞を観察する効率を上げるためには培養液中の細胞の密度を高くした状態にすることが望ましい。しかしながら培養液中の細胞の密度を上げることができない希少な細胞がある。このような細胞をスライド上で高密度に収集する場合、ピン状の道具などを用いてスライド上の細胞を個別に収集していた。しかし、ピン状の道具などを用いた場合、1つ1つの細胞をピン状の道具で移動させて密度を上げていくため、作業の手間がかかってしまい収集効率がよくなかった。さらに、ピン状の道具で細胞に触れるため細胞が破壊されてしまうことがあった。このようにピン状の道具を用いた場合、細胞を破壊せずに効率よく細胞を収集することが困難であった。
【0004】
また、スライドの上では、カバーガラスを置いた場合であっても培養液中の水分が蒸発してしまう。その際に、培養液が動いてしまうため、収集した細胞が観察者の意図しない方向に移動してしまい、観察に支障を及ぼすことになる。
【0005】
【特許文献1】
特表2001−515211号公報(図3)
【特許文献2】
特願2002−019345号公報
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来は効率よく細胞を高密度に収集することができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、効率よく観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に収集することができる細胞観察用容器及び細胞収集方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる細胞観察用容器は、細胞(例えば、本発明の実施の形態における細胞4)を観察するために細胞を含む流体(例えば、本発明の実施の形態における培養液3)を注入する細胞観察用容器であって、ベース(例えば、本発明の実施の形態におけるチップ1又はウェハ16)に設けられた第1の凹部(例えば、本発明の実施の形態におけるバッファー11)と、前記第1の凹部から延在して前記第1の凹部よりも浅く形成された第2の凹部(例えば、本発明の実施の形態における流路12)と、前記第1の凹部及び第2の凹部を覆うように前記ベースに取り付けられたプレート(例えば、本発明の実施の形態におけるガラス板2)と、前記第1の凹部及び前記第2の凹部に前記流体を注入する注入口(例えば、本発明の実施の形態における注入口13)と、前記第2の凹部に形成され、前記細胞の移動を停止させるストッパー(例えば、本発明の実施の形態におけるストッパー14)とを備え、前記ベース又は前記プレートが透明材料からなるものである。これにより、観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に効率よく収集することができる。
【0008】
上述の細胞観察用容器の好適な実施例は前記第2の凹部が観察対象となる細胞の大きさの1/2倍以上1.5倍以下の深さを有することを特徴とするものである。これにより、細胞を壊さずに高密度に収集することができる。
【0009】
上述の細胞観察用容器の好適な実施例は前記第2の凹部の深さが1μm以上30μm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
上述の細胞観察用容器において、前記第2の凹部が前記第1の凹部から放射状に複数形成されていることが望ましい。これにより、同じ収集条件の細胞を効率よく収集することができ、比較観察を正確に行うことができる。
【0011】
本発明にかかる細胞観察用容器は上述の細胞観察用容器において、前記第2の凹部から延在して形成され、当該第2の凹部よりも深く設けられた第3の凹部をさらに備え、前記第2の凹部が曲部を有し、当該曲部を介して前記第1の凹部と前記第3の凹部が形成されているものである。これにより、薬液の濃度勾配を長時間設けることができる。
【0012】
本発明にかかる細胞収集方法は、上述のいずれかの細胞観察用容器に前記注入口から前記細胞を含む前記流体を注入するステップと、前記第1の凹部を中心側にして前期細胞観察容器を回転させるステップを有するものである。これにより、観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に効率よく収集することができる。
【0013】
本発明にかかる細胞収集装置は、細胞を観察するために細胞を含む流体を注入する細胞観察用容器と、前記観察用容器を載置するステージ(例えば、本実施の形態におけるステージ20)と、前記ステージを回転させる回転部(例えば、本実施の形態におけるモーター21)とを備えた細胞収集装置であって、前記細胞観察用容器が、ベースに設けられた第1の凹部と、前記第1の凹部から延在して前記第1の凹部よりも浅く形成された第2の凹部と、前記第1の凹部及び第2の凹部を覆うように前記ベースに取り付けられたプレートと、前記第1の凹部及び前記第2の凹部に前記流体を注入する注入口と、前記第2の凹部に形成され、前記細胞の移動を停止させるストッパーとを備えるものである。これにより、観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に効率よく収集することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態1.
本発明の実施の形態ついて以下に図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものを実質的に同様の内容を示している。
【0015】
図1(a)は細胞観察用容器の構成を示す断面図であり、図1(b)は断面図である。図2は細胞観察用容器に用いられるチップの斜視図である。1はチップ、2はガラス板、11はバッファー、12は流路、13は注入口、14はストッパーである。図2に示すようにチップ1の1つの面には段差を有する溝をパターニングしており、深い溝は培養液を蓄えるバッファー11、浅い溝は細胞が流れる流路12である。流路12はバッファー11から延在して形成されて、細胞及び培養液がバッファー11から流路12に流れ込むようになっている。この上からバッファー11及び流路12を覆うようにガラス板2をチップ1に取り付けて、図1に示すような細胞観察用容器を構成する。この細胞観察用容器を回転装置により回転して、遠心力により細胞を高密度かつ適度な分布に収集する。
【0016】
チップ1のガラス板2が設けられる面と反対側の面の一部には細胞を含む培養液を注入する注入口13が設けられている。注入口13はバッファー11まで貫通しており、この注入口13を上にしてバッファー11と流路12に細胞を含む培養液を注入する。細胞4は白血球に含まれる細胞であり、外径が数μmから十数μm程度の大きさである。チップ1において流路12のバッファー11と反対側の側壁は細胞の流れを停止させるためのストッパー14となる。チップ1はシリコンウェハから切り出されている。ガラス板2は厚さ0.1mm〜1.5mm程度の透明基板であり、このガラス板側からレンズ系を有する光学顕微鏡を用いて細胞の挙動を観察する。またはチップ1をガラスや樹脂(PMMA、PDMS)の透明性材料で構成した場合はチップ1側(ガラス板2が設けられている面と反対側の面)から観察することもできる。
【0017】
チップ1の流路12は幅が数十μm〜1mmであり、長さが数百μm〜数mm程度である。もちろんバッファー11と流路は同じ幅として図示したが異なる幅であってもよい。さらに、流路12の幅は一定でなくてもよく、ストッパー14側の幅が狭くなっていても良い。また、本実施の形態にかかるチップ1の大きさは1辺が数mm〜数cm程度であり、高さが数mm程度の直方体である。なお、チップ1は直方体に限らず、円柱等の形状をしていてもよい。注入口13の大きさは1mm〜数mmである。図においてバッファー11は流路12と同じ幅で形成しているが、収集したい細胞の数や培養液中の細胞濃度等に応じて、適当な大きさに形成することも可能である。
【0018】
この細胞観察用のチップ1に培養液を注入した状態を図3に示す。図3(a)は培養液を注入した状態の構成を示す断面図であり、図3(b)はその断面図である。注入口13を上にした状態で、培養液3のみを注入して容器内を培養液3で満たした後、細胞4を含む培養液3をバッファー11及び流路12に流し込むと最初に注入した培養液3があふれ、細胞4が容器内に注入される。あるいは細胞4を含む培養液3を最初から注入してもよい。なお、培養液3の注入前に注入口13からバッファー11及び流路12を減圧した状態としてもよい。あるいはストッパー14近傍に空気穴をあけても良い。細胞4は培養液3よりも比重が重いため、底面であるガラス板2まで沈んでいく。培養液の液面が流路よりも高くなるように注入しているため、バッファー11中の細胞4が底面に沈殿していく。よって、バッファー11の底面における培養液中の細胞の密度は流路12の底面における培養液中の細胞4の密度よりも高くなる。また、バッファー11の底面における細胞4の密度は均一である。また、流路12の底面における細胞4の密度も均一である。培養液3の注入が終わったら回転時の液漏れを防ぐため注入口13に蓋5をして密封する。蓋5にはゴム等の弾性を有するキャップが用いられ、注入口13にはめ込むことで容器の密閉を行う。あるいは、注入口13に粘着性を有するテープなどを貼り付けてもよい。なお、細胞4を注入した後、この注入口13から薬液を投入して、薬液と細胞との反応を観察することも可能である。
【0019】
次に培養液中の細胞4を高密度に収集するために、上述のチップ1を図4示すように回転装置に載置する。回転装置はステージ20とステージ20を回転するためのモーター21を備えている。このステージ20の上にバッファー11が中心側に、流路12が外側になるようにチップ1を載置する。このチップ1を回転半径が数十cmの位置で固定して、モーター21によってステージ20を数百〜数千rpmで数十秒〜十数分間回転させる。チップ1の細胞4に遠心力が加わり、細胞4がステージ21の外側に移動する。この回転速度、回転半径及び回転時間は細胞及び容器の寸法並びに収集する細胞の濃度などに基づいて設定する。
【0020】
この細胞4が移動した状態を図4に示す。遠心力によりバッファー11から流路12に細胞4が移動して、流路端部の側壁であるストッパー14で停止される。回転を続けることによって、細胞の移動が順次停止していき、ストッパー14近傍で細胞4を高密度で収集することができる。流路12の溝深さを細胞4の大きさの1/2以上とすると回転時に細胞4が流路12を障害なく通過することができる。また、流路12の溝深さを細胞4の大きさの1.5倍以下にすると細胞4が深さ方向に重ならずに1面に拡がった状態で収集され、観察時に他の細胞と重なることがなくなり、各々の細胞を別々に観察することができる。流路12の深さを観察対象となる細胞4の0.5倍以上1.5倍以下にすると、回転時における細胞の損傷を防止することができ、外乱による細胞4も移動もなくなるため観察に適している。これにより、細胞の収集効率及び観察効率を向上することができる。例えば、白血球等の細胞を観察する場合、白血球等の細胞サイズは数μm〜十数μm程度であるので、流路12を1μm以上30μm以下とすることが望ましい。もちろん、細胞のサイズによって、流路12の深さを最適化することが望ましい。そして、容器を顕微鏡などに載置して観察を行う。ここでは図4(b)の点線の領域を顕微鏡で拡大して細胞の挙動を観察している。細胞を高密度で収集することによって、白血球中にわずか割合でしか含まれない特殊な細胞であっても効率よく観察することができる。
【0021】
次に図6を用いて容器の製造工程の一例について説明する。チップ1のパターン形成には通常のフォトリソグラフィー工程を複数回用いている。30はウェハ、31、32、33はレジストである。ここではウェハ30にはSiウェハを用いている。図6はウェハ30のチップが形成される部分の構成を示す断面図である。図6(a)に示すようにSiのウェハ30上にフォトレジスト31を塗布する。これにより、図6(b)に示す構成となる。次にレジスト31を露光、現像して、バッファー11及び流路12を形成するパターンのレジストを除去する。Siウェハ30のエッチングを行うと図6(c)に示す構成となる。ここでウェハ30に凹部が形成され、この凹部の一部が流路12になる。なお、エッチングはドライエッチング、ウェットエッチングのいずれのエッチング方法をも用いることができる。さらに残存したレジスト31を剥離すると図6(d)に示す構成となる。その上からレジスト32を塗布して露光、現像を行い、バッファー11に対応するパターンのレジスト32を除去する。これにより図6(e)に示す構成となる。この上から再度エッチングを行い、バッファー11となる凹部を形成する。レジスト32を剥離すると図6(f)に示す構成となる。これにより流路12とバッファー11に対応する凹部の溝パターンが形成される。
次にウェハ30の反対面からレジスト33を塗布し、同様に露光、現像して注入口13のパターンのレジスト33を除去する。ウェハ30を貫通するまでエッチングして、注入口13を形成すると図6(g)に構成とする。レジスト33を除去して、パターン形成が完了する。ウェハ30とガラス板2を陽極接合により接合させる。陽極接合の場合、ガラス板の厚さを薄くすることができるので顕微鏡の対物レンズと細胞との距離を短くすることができ、細胞の観察倍率を向上することが可能になる。これにより図6(h)に示す構成となる。このようなパターンはウェハ30上に多数設けられており、ウェハ30をダイシングすることにより多数の細胞観察用容器を1度に製造することができる。ウェハ状態でパターンを形成することにより、細胞観察用容器の生産性を向上することができる。またリソグラフィー工程では精度よく凹部を形成することが出来るため、流路112の溝深さ等の細かなパターン形成が可能になる。なお、本発明にかかる細胞観察用容器において凹部のパターンを形成するのはチップ1に限られず、ガラス板2に凹部を形成してもよい。例えば、チップ1にバッファー用の凹部を設け、ガラス板2に流路用の凹部を形成して、このチップ1とガラス板2を貼り合わせても同様の効果を得ることが出来る。さらには凹部を形成した2枚以上のウェハを貼合わせても同様の効果を得ることができる。また上述の説明ではチップ1とガラス板2を貼り合わせて製造したが、本発明にかかる細胞観察用容器はチップ1とガラス板2を一体形成した容器に穴を設けて流路及びバッファー等を形成してと容器も含まれるものとする。
【0022】
もちろん、容器の製造方法は上述のものに限られるものではない。例えば、Siウェハの他にガラス板などをパターニングしてよい。またパターニングの順番も図示したものに限られるものではない。ウェハ30に深さの異なる凹部を設けることにより、流路12とバッファー11に対応するパターンを形成すればよい。また、注入口13の位置はガラス板2と反対側の面に限られない。流路12とバッファー11に細胞及び培養液を注入できれば良く、例えばチップ1の側壁に設けても良い。
【0023】
なお、上述の製造方法ではSiウェハをパターニングしたが、樹脂により観察用容器を形成することもできる。樹脂を用いて観察用容器を形成する場合、型(スタンパ)を用いて射出成形することにより、チップ1と同様の形状を得ることができる。あるいは、光硬化性樹脂を用いて光を照射してパターニングすることも可能である。この樹脂とガラス板を貼り合わせることによっても同様に観察用容器を製造することができる。あるいは透明の樹脂を用いてもよい。チップ1を透明な材料で形成することにより、ガラス板2側及びチップ1側のいずれの面からでも細胞の観察を行うことができる。もちろん、チップ1又はガラス板2のいずれか一方が透明であればよく、チップ1が透明材料から構成される場合はガラス板2を不透明な材料で形成しても良い。
【0024】
発明の実施の形態2.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図7を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は実施の形態1と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では図7に示すようにバッファー11から流路4が分離しており、細胞を含む培養液を分注できるようになっている。1つのバッファー11から分岐された4本の流路12が設けられており、細胞4をそれぞれ高密度で収集することができるようになっている。4本の流路12が外側になるよう回転装置に載置して容器を回転させることで、1度に4本の流路で細胞の収集が可能になり、細胞収集のスループットを向上することができる。もちろん流路の数は2本以上であればよい。
図に示す点線から先端側が浅い溝であり、分岐部分の途中までが深い溝である。この深い溝をバッファー11、浅い溝を流路12としている。さらに分岐部分には薬液投入口15が設けられている。この薬液投入口15からそれぞれの流路12に薬液を投入することができるようになっている。それぞれの流路12で薬液と細胞との反応を観察することが可能になる。また、薬液投入口15には注入口13と同様に蓋をすることができるようになっており、回転時には蓋をして培養液の液漏れを防ぐ。
【0025】
また図2に示すように4つの薬液投入口15を直線状に設けることによって、多連シリンジで一度に薬液を投入することができる。このため観察効率を向上することができる。また市販されている多連シリンジを利用することができるため、特別な器具が不要となり利便性を向上できる。さらに4本の流路12を異なる条件で観察することを可能である。例えば、それぞれの流路12を異なる温度条件に設定して細胞の状態を比較観察することも可能になる。また、それぞれの流路に異なる薬液を投入して比較観察することもできる。このように本実施の形態の構成により、収集効率及び観察効率を向上することができる。
【0026】
本発明の実施の形態3.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図8を用いて説明する。図8は本実施の形態にかかる細胞観察用容器の断面図である。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では図8に示すように円状のウェハ16の中心に培養液を注入するための注入口13が形成され、その周りに培養液を蓄える円形の溝パターンが形成されている。さらに円形のパターンからは放射状に複数本の溝パターンが延在されている。これらの溝パターンは実施の形態1と同様にSiウェハ上に形成されている。図8において放射状に伸びた溝パターンの途中で溝の深さが変わっており、点線より中心側は溝が深く、外側は溝が浅くなっている。この点線より内側の深い溝をバッファー11、点線の位置から放射状に伸びた浅い溝を流路12とする。流路12の末端の側壁は細胞の移動を停止するストッパー14として機能している。このバッファー11と流路12の上にはガラス板が取り付けられている。
【0027】
実施の形態1と同様に注入口13から細胞を含む培養液をバッファー11と流路12に注入する。そして図9に示す回転装置に回転中心と円形のウェハ16の中心が一致するようにウェハ16を載置させる。矢印の方向にウェハ16を回転させると、遠心力により細胞が外側へと移動する。なお、図9においてウェハ16のパターンは省略して図示している。遠心力が加えられた細胞はバッファー11から流路12へと移動していき、ストッパー14の位置で順次停止する。これにより、ストッパー14近傍で細胞を高密度に収集することができる。ウェハ16の中心から放射状に流路12を設けることによって、複数の流路12において細胞を均一に収集することができる。これにより、それぞれの流路12との比較観察を正確に行うことができる。このように円形の深い溝とその深い溝から放射状に伸びた浅い溝を形成することによって、バッファー11からの分流条件が平等になるため、細胞の収集条件に各流路同じにすることができる。なお、流路の本数は2本以上設ければよい。
【0028】
さらに本実施の形態では放射状に伸びた溝の途中に薬液投入口15を設け、それぞれの流路に薬液を投入できるようにしている。これによりそれぞれの流路に異なる薬液を投入することができ、それぞれの流路12異なる薬液と細胞の反応を比較観察することができる。このように円形のパターンを円形のウェハ上に形成することによって、効率よくウェハを利用することができる。このウェアには4インチのSiウェハ等をそのまま利用することができ、ダイシングする工程が必要なくなるため生産性を向上することができる。もちろん、Siウェハから溝パターンを有する円形のチップを切り出してもよく、矩形のチップに円形のパターンを形成してもよい。
【0029】
本発明の実施の形態4.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図10を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では図10に示すように矩形状のチップにU字型の溝が形成されている。そして曲部の側壁をストッパー14として、細胞を収集している。
【0030】
U字型の溝の直線部分には深い溝が形成されている。U字の湾曲部分には浅い溝が形成されている。図10の点線で溝の深さが変わっている。直線部分の一方には培養液を注入するための注入口13が設けられている。この注入口13が設けられている直線部分がバッファー11となり、反対側の直線部分がリザーバー17となる。そして、バッファー11とリザーバー17の間に設けられた溝の浅い湾曲部分が流路12となる。バッファー11とリザーバー17には同じ深さの深い溝を形成しているため、リソグラフィー工程を増やすことなくリザーバー17を形成することができ、生産性の低下を防ぐことができる。なお、リザーバー17とバッファー11を異なる深さにしてもよい。
【0031】
湾曲部分を外側、直線部分を内側にして上述の実施の形態と同様に回転装置に載置して容器を高速で回転させる。これによりバッファー11にある細胞が流路12に移動していく。このとき、流路12の湾曲部分において外側の側壁がストッパーとして機能して、細胞4の移動を停止させる。これにより、図10に示す構成となり、培養液中の細胞4を高密度に収集することができる。さらに湾曲している流路12のバッファーの反対側にリザーバー17を設けている。注入口13から薬液を投入した場合、リザーバー17の体積によって、薬液の拡散時間が長くなる。流路12の部分に薬液の濃度勾配を長時間作ることができる。これにより、薬液と細胞の反応を長時間観察することが出来る。なお、パターンはU字型に限らず、V字型、コの字型等でも曲部を有していればよい。
【0032】
図10に示す構成で走化性を有する細胞を収集する場合、走化性を有する細胞のサイズが1μm〜20μmであるとすると流路12の溝の深さは0.5μm〜30μm程度になる。注入口13から走化性因子を注入するとパターン内で走化性因子の濃度勾配ができる。走化性因子の濃度が高いリザーバー17側に走活性を有する細胞が移動する。図10の矢印の方向に細胞4が移動していく。このように薬液の度勾配を長時間保つことにより、走化性を有する細胞の挙動を観察することができるようになる。
【0033】
本発明の実施の形態5.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図11を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では溝パターンがコの字型に形成されている。実施の形態4と同様に直線部分には深い溝が形成され、屈曲部分には浅い溝が形成されている。図11の点線部分で溝の深さが変わっている。この間に延在している屈曲部分が流路12となる。直線部分の一方がバッファー11、もう一方がリザーバー17となる。バッファー11には注入口13が形成され、ここから細胞を含む培養液が注入される。リザーバー17には薬液投入口15が形成されている。これにより実施の形態4と同様に細胞を収集することができる。この薬液投入口15及び注入口13の両方から同じ薬液あるいは異なる薬液を注入することができる。さらに薬液投入口15は培養液3を注入する際には空気穴として機能するため、培養液3の注入を容易に行うことができる。
図11に示すようにコの字型のパターンが形成されている構成で走化性を有する細胞を収集する場合、
ストッパーを直線的に形成することができる。そのため、収集された細胞が直線状に配列され、走化性を有する細胞の挙動を定量的に観察することができる。
【0034】
本発明の実施の形態6.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図12を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では実施の形態3の構成に実施の形態4を組み合わせた構成をしている。すなわち、放射状に形成された溝パターンの先端部分をU字型の流路12としている。本実施の形態では実施の形態3と同様に異なる深さの溝を有するパターンが形成された円形のウェハ16を用いている。このウェハ16をガラス板2と貼合せ、ダイシングしない状態のままで観察用容器として用いている。ウェハ16と同心円状に深い溝パターンが形成されており、この部分がバッファー11となる。さらの深い溝パターンから放射状に溝パターンが形成されている。図12の点線が浅い溝パターンと深い溝パターンの境界となる。各流路12のそれぞれで均一に細胞を収集することができる。これによりそれぞれの流路12に収集された細胞を比較観察することが可能になり、細胞の収集効率、観察効率を向上することができる。
【0035】
浅い溝パターンは実施の形態4と同様に湾曲して形成されている。これにより流路12の下流側に薬液のリザーバー17を設けることができる。よって薬液の拡散時間を長くすることができ、濃度勾配を長時間設けることが可能になる。これにより、観察効率を向上することができる。
【0036】
本発明の実施の形態7.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図13を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態で実施の形態4に示す構成の観察用容器において流路12の内側の薬液流路19を設けている。薬液流路19の溝はバッファー11と同じ深さにしている。これにより、細胞収集後のリザーバー側に薬液を送る際に細胞に薬液は内側の深い部分を流れ、外側の浅い部分はほとんど流れない。そのため、観察中の細胞に対して薬液の流れに影響を与えないようにすることができる。
【0037】
本発明の実施の形態8.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図14を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では、実施の形態2と実施の形態4を組み合わせた構成となっている。すなわち、流路12を複数形成するように溝パターンを分岐しており、それぞれのパターンの先端部分が流路12となる。そして、流路12の形状がU字型になっている。これにより、細胞の収集効率を向上することができるとともに、比較観察を行うことができる。また、流路12には薬液投入口15が直線状に設けられているので多連のシリンジを用いて一度に薬液を投入することができる。
【0038】
発明の実施の形態9.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図15を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では、実施の形態3と実施の形態8を組み合わせた構成となっている。すなわち、ウェハ16上に円形の溝パターンとそこから伸びた複数の溝パターンを形成している。さらに複数の溝パターンを途中から平行にしている。点線の内側で溝の深さが変わっており、内側の深い溝をバッファー11とし、外側の浅い溝を流路12としている。そして流路12の先端部分を湾曲させて略U字型としている。これにより薬液投入口15を直線状にすることができ多連のシリンジを用いて一度に薬液を投入することができる。さらにこの構成によれば、バッファー11が円形であるため、いずれの流路12に対しても細胞を均一に分注することができる。これにより、細胞を略均一に収集することができ、正確に比較観察を行うことができる。
【0039】
その他の実施の形態.
本発明は上述した実施の形態だけに限られず、様々な変更が可能である。例えば、上述の実施の形態において示した形状以外にも深いバッファーと浅い流路12を備え、当該流路12に回転動作によって細胞の移動を停止させるストッパー14を有していればよい。実施の形態1では流路12の側壁又は流路の端部がストッパー14となっていたが、流路の途中に凸部を設けてストッパーとしてもよい。また流路の途中にメッシュ状のストッパーを設けても良い。実施の形態で示した観察用容器のサイズは1例であり、これに限るものではない。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、効率よく観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に収集することができる細胞観察用容器、細胞収集装置及び細胞収集方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる細胞観察用チップの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる細胞観察用チップに培養液を注入した状態を示す図である。
【図4】本発明にかかる細胞観察用チップを回転する回転装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる細胞観察用チップを回転して細胞を高密度に収集した状態を示す図である。
【図6】本発明にかかる細胞観察用チップの製造工程を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかる細胞観察用ウェハの構成を示す平面図である。
【図9】本発明にかかる細胞観察用ウェハを回転する回転装置の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4にかかる細胞観察用チップの構成を示す平面図である。
【図11】本発明の実施の形態5にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態6にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態7にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態8にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態9にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【符号の説明】
1 チップ、2 ガラス板、3 培養液、4 細胞、5 蓋、11 バッファー、12 流路、13 注入口、14 ストッパー、15 薬液投入口、16 ウェハ、17 リザーバー、19 薬液流路
20 ステージ、21 モーター、30 基板、31 レジスト、32 レジスト、33 レジスト
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞を観察するための細胞観察用容器及び細胞を高密度に収集する細胞収集装置、細胞収集方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、動物や植物の細胞を観察するためには細胞を含む培養液を平坦なスライドやシャーレに滴下して、顕微鏡で観察していた。またスライド上に設けた凹部に培養液を滴下して、細胞を観察するものもある(例えば、特許文献1)。あるいは走化性を有する細胞等を観測する観測チップが本件の出願人から出願されている(例えば、特許文献2)
【0003】
ところで、細胞を観察する効率を上げるためには培養液中の細胞の密度を高くした状態にすることが望ましい。しかしながら培養液中の細胞の密度を上げることができない希少な細胞がある。このような細胞をスライド上で高密度に収集する場合、ピン状の道具などを用いてスライド上の細胞を個別に収集していた。しかし、ピン状の道具などを用いた場合、1つ1つの細胞をピン状の道具で移動させて密度を上げていくため、作業の手間がかかってしまい収集効率がよくなかった。さらに、ピン状の道具で細胞に触れるため細胞が破壊されてしまうことがあった。このようにピン状の道具を用いた場合、細胞を破壊せずに効率よく細胞を収集することが困難であった。
【0004】
また、スライドの上では、カバーガラスを置いた場合であっても培養液中の水分が蒸発してしまう。その際に、培養液が動いてしまうため、収集した細胞が観察者の意図しない方向に移動してしまい、観察に支障を及ぼすことになる。
【0005】
【特許文献1】
特表2001−515211号公報(図3)
【特許文献2】
特願2002−019345号公報
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来は効率よく細胞を高密度に収集することができないという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、効率よく観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に収集することができる細胞観察用容器及び細胞収集方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる細胞観察用容器は、細胞(例えば、本発明の実施の形態における細胞4)を観察するために細胞を含む流体(例えば、本発明の実施の形態における培養液3)を注入する細胞観察用容器であって、ベース(例えば、本発明の実施の形態におけるチップ1又はウェハ16)に設けられた第1の凹部(例えば、本発明の実施の形態におけるバッファー11)と、前記第1の凹部から延在して前記第1の凹部よりも浅く形成された第2の凹部(例えば、本発明の実施の形態における流路12)と、前記第1の凹部及び第2の凹部を覆うように前記ベースに取り付けられたプレート(例えば、本発明の実施の形態におけるガラス板2)と、前記第1の凹部及び前記第2の凹部に前記流体を注入する注入口(例えば、本発明の実施の形態における注入口13)と、前記第2の凹部に形成され、前記細胞の移動を停止させるストッパー(例えば、本発明の実施の形態におけるストッパー14)とを備え、前記ベース又は前記プレートが透明材料からなるものである。これにより、観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に効率よく収集することができる。
【0008】
上述の細胞観察用容器の好適な実施例は前記第2の凹部が観察対象となる細胞の大きさの1/2倍以上1.5倍以下の深さを有することを特徴とするものである。これにより、細胞を壊さずに高密度に収集することができる。
【0009】
上述の細胞観察用容器の好適な実施例は前記第2の凹部の深さが1μm以上30μm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
上述の細胞観察用容器において、前記第2の凹部が前記第1の凹部から放射状に複数形成されていることが望ましい。これにより、同じ収集条件の細胞を効率よく収集することができ、比較観察を正確に行うことができる。
【0011】
本発明にかかる細胞観察用容器は上述の細胞観察用容器において、前記第2の凹部から延在して形成され、当該第2の凹部よりも深く設けられた第3の凹部をさらに備え、前記第2の凹部が曲部を有し、当該曲部を介して前記第1の凹部と前記第3の凹部が形成されているものである。これにより、薬液の濃度勾配を長時間設けることができる。
【0012】
本発明にかかる細胞収集方法は、上述のいずれかの細胞観察用容器に前記注入口から前記細胞を含む前記流体を注入するステップと、前記第1の凹部を中心側にして前期細胞観察容器を回転させるステップを有するものである。これにより、観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に効率よく収集することができる。
【0013】
本発明にかかる細胞収集装置は、細胞を観察するために細胞を含む流体を注入する細胞観察用容器と、前記観察用容器を載置するステージ(例えば、本実施の形態におけるステージ20)と、前記ステージを回転させる回転部(例えば、本実施の形態におけるモーター21)とを備えた細胞収集装置であって、前記細胞観察用容器が、ベースに設けられた第1の凹部と、前記第1の凹部から延在して前記第1の凹部よりも浅く形成された第2の凹部と、前記第1の凹部及び第2の凹部を覆うように前記ベースに取り付けられたプレートと、前記第1の凹部及び前記第2の凹部に前記流体を注入する注入口と、前記第2の凹部に形成され、前記細胞の移動を停止させるストッパーとを備えるものである。これにより、観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に効率よく収集することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態1.
本発明の実施の形態ついて以下に図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものを実質的に同様の内容を示している。
【0015】
図1(a)は細胞観察用容器の構成を示す断面図であり、図1(b)は断面図である。図2は細胞観察用容器に用いられるチップの斜視図である。1はチップ、2はガラス板、11はバッファー、12は流路、13は注入口、14はストッパーである。図2に示すようにチップ1の1つの面には段差を有する溝をパターニングしており、深い溝は培養液を蓄えるバッファー11、浅い溝は細胞が流れる流路12である。流路12はバッファー11から延在して形成されて、細胞及び培養液がバッファー11から流路12に流れ込むようになっている。この上からバッファー11及び流路12を覆うようにガラス板2をチップ1に取り付けて、図1に示すような細胞観察用容器を構成する。この細胞観察用容器を回転装置により回転して、遠心力により細胞を高密度かつ適度な分布に収集する。
【0016】
チップ1のガラス板2が設けられる面と反対側の面の一部には細胞を含む培養液を注入する注入口13が設けられている。注入口13はバッファー11まで貫通しており、この注入口13を上にしてバッファー11と流路12に細胞を含む培養液を注入する。細胞4は白血球に含まれる細胞であり、外径が数μmから十数μm程度の大きさである。チップ1において流路12のバッファー11と反対側の側壁は細胞の流れを停止させるためのストッパー14となる。チップ1はシリコンウェハから切り出されている。ガラス板2は厚さ0.1mm〜1.5mm程度の透明基板であり、このガラス板側からレンズ系を有する光学顕微鏡を用いて細胞の挙動を観察する。またはチップ1をガラスや樹脂(PMMA、PDMS)の透明性材料で構成した場合はチップ1側(ガラス板2が設けられている面と反対側の面)から観察することもできる。
【0017】
チップ1の流路12は幅が数十μm〜1mmであり、長さが数百μm〜数mm程度である。もちろんバッファー11と流路は同じ幅として図示したが異なる幅であってもよい。さらに、流路12の幅は一定でなくてもよく、ストッパー14側の幅が狭くなっていても良い。また、本実施の形態にかかるチップ1の大きさは1辺が数mm〜数cm程度であり、高さが数mm程度の直方体である。なお、チップ1は直方体に限らず、円柱等の形状をしていてもよい。注入口13の大きさは1mm〜数mmである。図においてバッファー11は流路12と同じ幅で形成しているが、収集したい細胞の数や培養液中の細胞濃度等に応じて、適当な大きさに形成することも可能である。
【0018】
この細胞観察用のチップ1に培養液を注入した状態を図3に示す。図3(a)は培養液を注入した状態の構成を示す断面図であり、図3(b)はその断面図である。注入口13を上にした状態で、培養液3のみを注入して容器内を培養液3で満たした後、細胞4を含む培養液3をバッファー11及び流路12に流し込むと最初に注入した培養液3があふれ、細胞4が容器内に注入される。あるいは細胞4を含む培養液3を最初から注入してもよい。なお、培養液3の注入前に注入口13からバッファー11及び流路12を減圧した状態としてもよい。あるいはストッパー14近傍に空気穴をあけても良い。細胞4は培養液3よりも比重が重いため、底面であるガラス板2まで沈んでいく。培養液の液面が流路よりも高くなるように注入しているため、バッファー11中の細胞4が底面に沈殿していく。よって、バッファー11の底面における培養液中の細胞の密度は流路12の底面における培養液中の細胞4の密度よりも高くなる。また、バッファー11の底面における細胞4の密度は均一である。また、流路12の底面における細胞4の密度も均一である。培養液3の注入が終わったら回転時の液漏れを防ぐため注入口13に蓋5をして密封する。蓋5にはゴム等の弾性を有するキャップが用いられ、注入口13にはめ込むことで容器の密閉を行う。あるいは、注入口13に粘着性を有するテープなどを貼り付けてもよい。なお、細胞4を注入した後、この注入口13から薬液を投入して、薬液と細胞との反応を観察することも可能である。
【0019】
次に培養液中の細胞4を高密度に収集するために、上述のチップ1を図4示すように回転装置に載置する。回転装置はステージ20とステージ20を回転するためのモーター21を備えている。このステージ20の上にバッファー11が中心側に、流路12が外側になるようにチップ1を載置する。このチップ1を回転半径が数十cmの位置で固定して、モーター21によってステージ20を数百〜数千rpmで数十秒〜十数分間回転させる。チップ1の細胞4に遠心力が加わり、細胞4がステージ21の外側に移動する。この回転速度、回転半径及び回転時間は細胞及び容器の寸法並びに収集する細胞の濃度などに基づいて設定する。
【0020】
この細胞4が移動した状態を図4に示す。遠心力によりバッファー11から流路12に細胞4が移動して、流路端部の側壁であるストッパー14で停止される。回転を続けることによって、細胞の移動が順次停止していき、ストッパー14近傍で細胞4を高密度で収集することができる。流路12の溝深さを細胞4の大きさの1/2以上とすると回転時に細胞4が流路12を障害なく通過することができる。また、流路12の溝深さを細胞4の大きさの1.5倍以下にすると細胞4が深さ方向に重ならずに1面に拡がった状態で収集され、観察時に他の細胞と重なることがなくなり、各々の細胞を別々に観察することができる。流路12の深さを観察対象となる細胞4の0.5倍以上1.5倍以下にすると、回転時における細胞の損傷を防止することができ、外乱による細胞4も移動もなくなるため観察に適している。これにより、細胞の収集効率及び観察効率を向上することができる。例えば、白血球等の細胞を観察する場合、白血球等の細胞サイズは数μm〜十数μm程度であるので、流路12を1μm以上30μm以下とすることが望ましい。もちろん、細胞のサイズによって、流路12の深さを最適化することが望ましい。そして、容器を顕微鏡などに載置して観察を行う。ここでは図4(b)の点線の領域を顕微鏡で拡大して細胞の挙動を観察している。細胞を高密度で収集することによって、白血球中にわずか割合でしか含まれない特殊な細胞であっても効率よく観察することができる。
【0021】
次に図6を用いて容器の製造工程の一例について説明する。チップ1のパターン形成には通常のフォトリソグラフィー工程を複数回用いている。30はウェハ、31、32、33はレジストである。ここではウェハ30にはSiウェハを用いている。図6はウェハ30のチップが形成される部分の構成を示す断面図である。図6(a)に示すようにSiのウェハ30上にフォトレジスト31を塗布する。これにより、図6(b)に示す構成となる。次にレジスト31を露光、現像して、バッファー11及び流路12を形成するパターンのレジストを除去する。Siウェハ30のエッチングを行うと図6(c)に示す構成となる。ここでウェハ30に凹部が形成され、この凹部の一部が流路12になる。なお、エッチングはドライエッチング、ウェットエッチングのいずれのエッチング方法をも用いることができる。さらに残存したレジスト31を剥離すると図6(d)に示す構成となる。その上からレジスト32を塗布して露光、現像を行い、バッファー11に対応するパターンのレジスト32を除去する。これにより図6(e)に示す構成となる。この上から再度エッチングを行い、バッファー11となる凹部を形成する。レジスト32を剥離すると図6(f)に示す構成となる。これにより流路12とバッファー11に対応する凹部の溝パターンが形成される。
次にウェハ30の反対面からレジスト33を塗布し、同様に露光、現像して注入口13のパターンのレジスト33を除去する。ウェハ30を貫通するまでエッチングして、注入口13を形成すると図6(g)に構成とする。レジスト33を除去して、パターン形成が完了する。ウェハ30とガラス板2を陽極接合により接合させる。陽極接合の場合、ガラス板の厚さを薄くすることができるので顕微鏡の対物レンズと細胞との距離を短くすることができ、細胞の観察倍率を向上することが可能になる。これにより図6(h)に示す構成となる。このようなパターンはウェハ30上に多数設けられており、ウェハ30をダイシングすることにより多数の細胞観察用容器を1度に製造することができる。ウェハ状態でパターンを形成することにより、細胞観察用容器の生産性を向上することができる。またリソグラフィー工程では精度よく凹部を形成することが出来るため、流路112の溝深さ等の細かなパターン形成が可能になる。なお、本発明にかかる細胞観察用容器において凹部のパターンを形成するのはチップ1に限られず、ガラス板2に凹部を形成してもよい。例えば、チップ1にバッファー用の凹部を設け、ガラス板2に流路用の凹部を形成して、このチップ1とガラス板2を貼り合わせても同様の効果を得ることが出来る。さらには凹部を形成した2枚以上のウェハを貼合わせても同様の効果を得ることができる。また上述の説明ではチップ1とガラス板2を貼り合わせて製造したが、本発明にかかる細胞観察用容器はチップ1とガラス板2を一体形成した容器に穴を設けて流路及びバッファー等を形成してと容器も含まれるものとする。
【0022】
もちろん、容器の製造方法は上述のものに限られるものではない。例えば、Siウェハの他にガラス板などをパターニングしてよい。またパターニングの順番も図示したものに限られるものではない。ウェハ30に深さの異なる凹部を設けることにより、流路12とバッファー11に対応するパターンを形成すればよい。また、注入口13の位置はガラス板2と反対側の面に限られない。流路12とバッファー11に細胞及び培養液を注入できれば良く、例えばチップ1の側壁に設けても良い。
【0023】
なお、上述の製造方法ではSiウェハをパターニングしたが、樹脂により観察用容器を形成することもできる。樹脂を用いて観察用容器を形成する場合、型(スタンパ)を用いて射出成形することにより、チップ1と同様の形状を得ることができる。あるいは、光硬化性樹脂を用いて光を照射してパターニングすることも可能である。この樹脂とガラス板を貼り合わせることによっても同様に観察用容器を製造することができる。あるいは透明の樹脂を用いてもよい。チップ1を透明な材料で形成することにより、ガラス板2側及びチップ1側のいずれの面からでも細胞の観察を行うことができる。もちろん、チップ1又はガラス板2のいずれか一方が透明であればよく、チップ1が透明材料から構成される場合はガラス板2を不透明な材料で形成しても良い。
【0024】
発明の実施の形態2.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図7を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は実施の形態1と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では図7に示すようにバッファー11から流路4が分離しており、細胞を含む培養液を分注できるようになっている。1つのバッファー11から分岐された4本の流路12が設けられており、細胞4をそれぞれ高密度で収集することができるようになっている。4本の流路12が外側になるよう回転装置に載置して容器を回転させることで、1度に4本の流路で細胞の収集が可能になり、細胞収集のスループットを向上することができる。もちろん流路の数は2本以上であればよい。
図に示す点線から先端側が浅い溝であり、分岐部分の途中までが深い溝である。この深い溝をバッファー11、浅い溝を流路12としている。さらに分岐部分には薬液投入口15が設けられている。この薬液投入口15からそれぞれの流路12に薬液を投入することができるようになっている。それぞれの流路12で薬液と細胞との反応を観察することが可能になる。また、薬液投入口15には注入口13と同様に蓋をすることができるようになっており、回転時には蓋をして培養液の液漏れを防ぐ。
【0025】
また図2に示すように4つの薬液投入口15を直線状に設けることによって、多連シリンジで一度に薬液を投入することができる。このため観察効率を向上することができる。また市販されている多連シリンジを利用することができるため、特別な器具が不要となり利便性を向上できる。さらに4本の流路12を異なる条件で観察することを可能である。例えば、それぞれの流路12を異なる温度条件に設定して細胞の状態を比較観察することも可能になる。また、それぞれの流路に異なる薬液を投入して比較観察することもできる。このように本実施の形態の構成により、収集効率及び観察効率を向上することができる。
【0026】
本発明の実施の形態3.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図8を用いて説明する。図8は本実施の形態にかかる細胞観察用容器の断面図である。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では図8に示すように円状のウェハ16の中心に培養液を注入するための注入口13が形成され、その周りに培養液を蓄える円形の溝パターンが形成されている。さらに円形のパターンからは放射状に複数本の溝パターンが延在されている。これらの溝パターンは実施の形態1と同様にSiウェハ上に形成されている。図8において放射状に伸びた溝パターンの途中で溝の深さが変わっており、点線より中心側は溝が深く、外側は溝が浅くなっている。この点線より内側の深い溝をバッファー11、点線の位置から放射状に伸びた浅い溝を流路12とする。流路12の末端の側壁は細胞の移動を停止するストッパー14として機能している。このバッファー11と流路12の上にはガラス板が取り付けられている。
【0027】
実施の形態1と同様に注入口13から細胞を含む培養液をバッファー11と流路12に注入する。そして図9に示す回転装置に回転中心と円形のウェハ16の中心が一致するようにウェハ16を載置させる。矢印の方向にウェハ16を回転させると、遠心力により細胞が外側へと移動する。なお、図9においてウェハ16のパターンは省略して図示している。遠心力が加えられた細胞はバッファー11から流路12へと移動していき、ストッパー14の位置で順次停止する。これにより、ストッパー14近傍で細胞を高密度に収集することができる。ウェハ16の中心から放射状に流路12を設けることによって、複数の流路12において細胞を均一に収集することができる。これにより、それぞれの流路12との比較観察を正確に行うことができる。このように円形の深い溝とその深い溝から放射状に伸びた浅い溝を形成することによって、バッファー11からの分流条件が平等になるため、細胞の収集条件に各流路同じにすることができる。なお、流路の本数は2本以上設ければよい。
【0028】
さらに本実施の形態では放射状に伸びた溝の途中に薬液投入口15を設け、それぞれの流路に薬液を投入できるようにしている。これによりそれぞれの流路に異なる薬液を投入することができ、それぞれの流路12異なる薬液と細胞の反応を比較観察することができる。このように円形のパターンを円形のウェハ上に形成することによって、効率よくウェハを利用することができる。このウェアには4インチのSiウェハ等をそのまま利用することができ、ダイシングする工程が必要なくなるため生産性を向上することができる。もちろん、Siウェハから溝パターンを有する円形のチップを切り出してもよく、矩形のチップに円形のパターンを形成してもよい。
【0029】
本発明の実施の形態4.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図10を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では図10に示すように矩形状のチップにU字型の溝が形成されている。そして曲部の側壁をストッパー14として、細胞を収集している。
【0030】
U字型の溝の直線部分には深い溝が形成されている。U字の湾曲部分には浅い溝が形成されている。図10の点線で溝の深さが変わっている。直線部分の一方には培養液を注入するための注入口13が設けられている。この注入口13が設けられている直線部分がバッファー11となり、反対側の直線部分がリザーバー17となる。そして、バッファー11とリザーバー17の間に設けられた溝の浅い湾曲部分が流路12となる。バッファー11とリザーバー17には同じ深さの深い溝を形成しているため、リソグラフィー工程を増やすことなくリザーバー17を形成することができ、生産性の低下を防ぐことができる。なお、リザーバー17とバッファー11を異なる深さにしてもよい。
【0031】
湾曲部分を外側、直線部分を内側にして上述の実施の形態と同様に回転装置に載置して容器を高速で回転させる。これによりバッファー11にある細胞が流路12に移動していく。このとき、流路12の湾曲部分において外側の側壁がストッパーとして機能して、細胞4の移動を停止させる。これにより、図10に示す構成となり、培養液中の細胞4を高密度に収集することができる。さらに湾曲している流路12のバッファーの反対側にリザーバー17を設けている。注入口13から薬液を投入した場合、リザーバー17の体積によって、薬液の拡散時間が長くなる。流路12の部分に薬液の濃度勾配を長時間作ることができる。これにより、薬液と細胞の反応を長時間観察することが出来る。なお、パターンはU字型に限らず、V字型、コの字型等でも曲部を有していればよい。
【0032】
図10に示す構成で走化性を有する細胞を収集する場合、走化性を有する細胞のサイズが1μm〜20μmであるとすると流路12の溝の深さは0.5μm〜30μm程度になる。注入口13から走化性因子を注入するとパターン内で走化性因子の濃度勾配ができる。走化性因子の濃度が高いリザーバー17側に走活性を有する細胞が移動する。図10の矢印の方向に細胞4が移動していく。このように薬液の度勾配を長時間保つことにより、走化性を有する細胞の挙動を観察することができるようになる。
【0033】
本発明の実施の形態5.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図11を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では溝パターンがコの字型に形成されている。実施の形態4と同様に直線部分には深い溝が形成され、屈曲部分には浅い溝が形成されている。図11の点線部分で溝の深さが変わっている。この間に延在している屈曲部分が流路12となる。直線部分の一方がバッファー11、もう一方がリザーバー17となる。バッファー11には注入口13が形成され、ここから細胞を含む培養液が注入される。リザーバー17には薬液投入口15が形成されている。これにより実施の形態4と同様に細胞を収集することができる。この薬液投入口15及び注入口13の両方から同じ薬液あるいは異なる薬液を注入することができる。さらに薬液投入口15は培養液3を注入する際には空気穴として機能するため、培養液3の注入を容易に行うことができる。
図11に示すようにコの字型のパターンが形成されている構成で走化性を有する細胞を収集する場合、
ストッパーを直線的に形成することができる。そのため、収集された細胞が直線状に配列され、走化性を有する細胞の挙動を定量的に観察することができる。
【0034】
本発明の実施の形態6.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図12を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では実施の形態3の構成に実施の形態4を組み合わせた構成をしている。すなわち、放射状に形成された溝パターンの先端部分をU字型の流路12としている。本実施の形態では実施の形態3と同様に異なる深さの溝を有するパターンが形成された円形のウェハ16を用いている。このウェハ16をガラス板2と貼合せ、ダイシングしない状態のままで観察用容器として用いている。ウェハ16と同心円状に深い溝パターンが形成されており、この部分がバッファー11となる。さらの深い溝パターンから放射状に溝パターンが形成されている。図12の点線が浅い溝パターンと深い溝パターンの境界となる。各流路12のそれぞれで均一に細胞を収集することができる。これによりそれぞれの流路12に収集された細胞を比較観察することが可能になり、細胞の収集効率、観察効率を向上することができる。
【0035】
浅い溝パターンは実施の形態4と同様に湾曲して形成されている。これにより流路12の下流側に薬液のリザーバー17を設けることができる。よって薬液の拡散時間を長くすることができ、濃度勾配を長時間設けることが可能になる。これにより、観察効率を向上することができる。
【0036】
本発明の実施の形態7.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図13を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態で実施の形態4に示す構成の観察用容器において流路12の内側の薬液流路19を設けている。薬液流路19の溝はバッファー11と同じ深さにしている。これにより、細胞収集後のリザーバー側に薬液を送る際に細胞に薬液は内側の深い部分を流れ、外側の浅い部分はほとんど流れない。そのため、観察中の細胞に対して薬液の流れに影響を与えないようにすることができる。
【0037】
本発明の実施の形態8.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図14を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では、実施の形態2と実施の形態4を組み合わせた構成となっている。すなわち、流路12を複数形成するように溝パターンを分岐しており、それぞれのパターンの先端部分が流路12となる。そして、流路12の形状がU字型になっている。これにより、細胞の収集効率を向上することができるとともに、比較観察を行うことができる。また、流路12には薬液投入口15が直線状に設けられているので多連のシリンジを用いて一度に薬液を投入することができる。
【0038】
発明の実施の形態9.
本実施の形態にかかる細胞観察用容器について図15を用いて説明する。本実施の形態では基本的な構成要素は上述の実施の形態と同様であるため、同様の構成、製造工程、サイズについては説明を省略する。本実施の形態では、実施の形態3と実施の形態8を組み合わせた構成となっている。すなわち、ウェハ16上に円形の溝パターンとそこから伸びた複数の溝パターンを形成している。さらに複数の溝パターンを途中から平行にしている。点線の内側で溝の深さが変わっており、内側の深い溝をバッファー11とし、外側の浅い溝を流路12としている。そして流路12の先端部分を湾曲させて略U字型としている。これにより薬液投入口15を直線状にすることができ多連のシリンジを用いて一度に薬液を投入することができる。さらにこの構成によれば、バッファー11が円形であるため、いずれの流路12に対しても細胞を均一に分注することができる。これにより、細胞を略均一に収集することができ、正確に比較観察を行うことができる。
【0039】
その他の実施の形態.
本発明は上述した実施の形態だけに限られず、様々な変更が可能である。例えば、上述の実施の形態において示した形状以外にも深いバッファーと浅い流路12を備え、当該流路12に回転動作によって細胞の移動を停止させるストッパー14を有していればよい。実施の形態1では流路12の側壁又は流路の端部がストッパー14となっていたが、流路の途中に凸部を設けてストッパーとしてもよい。また流路の途中にメッシュ状のストッパーを設けても良い。実施の形態で示した観察用容器のサイズは1例であり、これに限るものではない。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、効率よく観察対象となる細胞を高密度かつ適度な分布状態に収集することができる細胞観察用容器、細胞収集装置及び細胞収集方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる細胞観察用チップの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる細胞観察用チップに培養液を注入した状態を示す図である。
【図4】本発明にかかる細胞観察用チップを回転する回転装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる細胞観察用チップを回転して細胞を高密度に収集した状態を示す図である。
【図6】本発明にかかる細胞観察用チップの製造工程を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3にかかる細胞観察用ウェハの構成を示す平面図である。
【図9】本発明にかかる細胞観察用ウェハを回転する回転装置の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態4にかかる細胞観察用チップの構成を示す平面図である。
【図11】本発明の実施の形態5にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態6にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態7にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態8にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態9にかかる細胞観察用チップの構成を示す図である。
【符号の説明】
1 チップ、2 ガラス板、3 培養液、4 細胞、5 蓋、11 バッファー、12 流路、13 注入口、14 ストッパー、15 薬液投入口、16 ウェハ、17 リザーバー、19 薬液流路
20 ステージ、21 モーター、30 基板、31 レジスト、32 レジスト、33 レジスト
Claims (7)
- 細胞を観察するために細胞を含む流体を注入する細胞観察用容器であって、
ベースに設けられた第1の凹部と、
前記第1の凹部から延在して前記第1の凹部よりも浅く形成された第2の凹部と、
前記第1の凹部及び第2の凹部を覆うように前記ベースに取り付けられたプレートと、
前記第1の凹部及び前記第2の凹部に前記流体を注入する注入口と、
前記第2の凹部に形成され、前記細胞の移動を停止させるストッパーとを備え、
前記ベース又は前記プレートが透明材料からなる細胞観察用容器。 - 前記第2の凹部が観察対象となる細胞の大きさの1/2倍以上1.5倍以下の深さを有することを特徴とする請求項1記載の細胞観察用容器。
- 前記第2の凹部の深さが1μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1記載の細胞観察用容器。
- 前記第2の凹部が前記第1の凹部から放射状に複数形成されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の細胞観察用容器。
- 前記第2の凹部から延在して形成され、当該第2の凹部よりも深く設けられた第3の凹部をさらに備え、
前記第2の凹部が曲部を有し、当該曲部を介して前記第1の凹部と前記第3の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の細胞観察用容器。 - 請求項1乃至5いずれか記載の細胞観察用容器に前記注入口から前記細胞を含む前記流体を注入するステップと、
前記第1の凹部を中心側にして前期細胞観察容器を回転させるステップを有する細胞収集方法。 - 細胞を観察するために細胞を含む流体を注入する細胞観察用容器と、
前記細胞観察用容器を載置するステージと、
前記ステージを回転させる回転部とを備えた細胞収集装置であって、
前記細胞観察用容器が、ベースに設けられた第1の凹部と、
前記第1の凹部から延在して前記第1の凹部よりも浅く形成された第2の凹部と、
前記第1の凹部及び第2の凹部を覆うように前記ベースに取り付けられたプレートと、
前記第1の凹部及び前記第2の凹部に前記流体を注入する注入口と、
前記第2の凹部に形成され、前記細胞の移動を停止させるストッパーとを備える細胞収集装置。
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---|---|---|---|
JP2003166797A JP2005000075A (ja) | 2003-06-11 | 2003-06-11 | 細胞観察用容器、細胞収集装置及び細胞収集方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003166797A JP2005000075A (ja) | 2003-06-11 | 2003-06-11 | 細胞観察用容器、細胞収集装置及び細胞収集方法 |
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JP (1) | JP2005000075A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN112273293A (zh) * | 2020-10-25 | 2021-01-29 | 马博 | 一种具有辅助分辨结构的卵子收集设备 |
-
2003
- 2003-06-11 JP JP2003166797A patent/JP2005000075A/ja active Pending
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CN112273293A (zh) * | 2020-10-25 | 2021-01-29 | 马博 | 一种具有辅助分辨结构的卵子收集设备 |
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