JP2004536594A6 - 組換えウイルスアッセイによりウイルス受容体/共受容体の利用能およびウイルス侵入の阻害剤を評価するための組成物および方法 - Google Patents

組換えウイルスアッセイによりウイルス受容体/共受容体の利用能およびウイルス侵入の阻害剤を評価するための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、ある化合物が細胞へのウイルス侵入を阻害するかどうかを同定する方法を提供する。前記方法は、(a) ウイルスに感染した患者からウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を取得し;(b) 第1細胞中に、(i) ステップ(a)の核酸と、(ii) エンベロープタンパク質をコードする核酸を欠失しており、かつ検出可能なシグナルを生成する指示核酸を含むウイルス発現ベクターと、を同時トランスフェクトし、その結果として、第1細胞が患者から取得した核酸にコードされたエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子を産生し;(c) ステップ(b)で産生されたウイルス粒子と第2細胞とを該化合物の存在下で接触させ、ただし、第2細胞はこのウイルスが結合する細胞表面受容体を発現するものであり;(d) ウイルス粒子の感染性を判定するために、第2細胞によって生成されたシグナルの量を測定し;そして(e) ステップ(d)で測定したシグナルの量を該化合物の不在下で生成されたシグナルの量と比較し、この場合、該化合物の存在下で測定したシグナルの量が低下していれば、該化合物が第2細胞へのウイルス侵入を阻害することを示す;各ステップを含んでなる。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、ある化合物が細胞へのウイルス侵入を阻害するかどうかを同定するための方法に関する。
【0002】
本出願を通して、各種の刊行物は本文中では著者および発行年によって記載される。これらの刊行物の完全な引用は、本明細書の末尾にアルファベット順に掲載してある。本明細書に引用する全ての特許、特許出願および刊行物は、前掲または後掲にかかわらず、その全体を参考として本明細書に含めるものとする。ここに記載しかつ特許請求する発明の出願日当時に当業者に知られていた技術水準をより詳しく説明するため、これらの刊行物の開示内容をそのまま参考として本出願中に組み入れる。
【背景技術】
【0003】
ウイルス侵入は抗ウイルス治療にとって魅力的な新しい標的であり、ウイルスの付着または膜融合を阻止するように設計された約10種の薬物が現在臨床前または臨床試験において評価中である(Richman, 1998; PhRMA, 1999; Stephenson, 1999)。エンベロープを持つ動物ウイルスは、ビリオン膜中のウイルスタンパク質(エンベロープタンパク質)と細胞表面タンパク質(ウイルス受容体)間の相互作用によって、宿主細胞に付着し、侵入する。受容体の認識および結合は表面エンベロープタンパク質によって仲介される。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
したがって、本発明の目的の1つは、ウイルス侵入の阻害剤に対するウイルスの感受性を測定するための迅速で感度のよい表現型アッセイを提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、多様な起源に由来するウイルスエンベロープタンパク質を含有するウイルス粒子を産生するレトロウイルスベクター系、およびウイルス受容体を発現しかつウイルス複製を許容する細胞系の同定を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、エンベロープ遺伝子をコードする患者由来のセグメントを受容する能力がある、ウイルスエンベロープのための発現ベクターを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、HIV-1ウイルスゲノムの大部分を保有するが、エンベロープ領域の代わりにルシフェラーゼ遺伝子を保有する、生物学的に安全なベクターを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、HIV-1ゲノムの転写調節領域(U3の3’コピー)を欠失しているウイルス発現ベクターを提供することにより、組換え感染性HIV-1が形成される可能性を低減させた表現型アッセイを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、受容体/共受容体指向性(tropism)を同定および判定することができ、指向性ウイルス株に感染した患者を迅速かつ正確に同定するアッセイを提供することである。
【0010】
これらおよびその他の目的は、本発明により、ある化合物が細胞へのウイルス侵入を阻害するかどうかを同定する方法によって達成することができる。前記方法は、(a)ウイルスに感染した患者からウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を取得し;(b) 第1細胞中に、(i)ステップ(a)の核酸と、(ii)エンベロープタンパク質をコードする核酸を欠失しており、かつ検出可能なシグナルを生成する指示核酸を含むウイルス発現ベクターとを同時トランスフェクトし、その結果として、第1細胞が患者から取得した核酸にコードされたエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子を産生し;(c) ステップ(b)で産生されたウイルス粒子と第2細胞とを化合物の存在下で接触させ、ただし、第2細胞はこのウイルスが結合する細胞表面受容体を発現するものであり;(d) ウイルス粒子の感染性を判定するために、第2細胞によって生成されたシグナルの量を測定し;そして(e) ステップ(d)で測定したシグナルの量を該化合物の不在下で生成されたシグナルの量と比較し、この場合、該化合物の存在下で測定したシグナルの量が低下していれば、該化合物が第2細胞へのウイルス侵入を阻害することを示す;各ステップを含んでなる。
【0011】
図面の説明
本出願明細書はカラーで制作した図面を少なくとも1枚含んでいる。カラー図面を含む本明細書のコピーは、必要な料金を支払って申請することにより米国特許商標庁から提供されるだろう。
【0012】
図1A.エンベロープ発現ベクターおよびウイルス発現ベクターの構造。HIVエンベロープ発現ベクター(pHIVenv)を、患者の血漿サンプルから増幅されたエンベロープ配列を取り込むように改変する。符号a/bおよびc/dは、HIV-1エンベロープポリタンパク質(gp160)の5’および3’末端に位置する制限エンドヌクレアーゼを指す。HIV発現ベクター(pHIVlucΔU3)は、エンベロープポリタンパク質以外の全てのHIVタンパク質をコードする。エンベロープ遺伝子の一部を欠失させて指示遺伝子カセットを受け入れるようにした。この場合の指示遺伝子カセットは、抗ウイルス薬の存在または不在下で複製するウイルスの能力をモニタリングするために使用される「蛍ルシフェラーゼ」である。3’U3領域を部分的に欠失させて、感染細胞中での5’LTRからの転写を防止した。この系で産生されたウイルスは複製が1回に限定される。
【0013】
図1B.細胞ベースの侵入アッセイ。宿主細胞をpHIVenvおよびpHIVlucΔU3で同時トランスフェクトすることによって、薬物感受性、共受容体指向性およびウイルス中和試験を実施する。この宿主細胞は、試験ウイルスまたは患者サンプル由来のHIVエンベロープ配列で偽タイピングされたHIV粒子を産生する。トランスフェクション後(約48時間)にウイルス粒子を採取し、これらのウイルス粒子を用いて、HIV受容体(例えばCD4)および共受容体(例えばCXCR4、CCR5)を発現する標的細胞に感染させる。感染後(約72時間)、標的細胞を溶解させて、ルシフェラーゼ活性を測定する。HIVが標的宿主細胞への感染に成功してルシフェラーゼ活性を産生するためには1回の複製を完遂しなければならない。ウイルスが標的細胞に侵入することができない場合は、ルシフェラーゼ活性は減衰する。このシステムを使用して、侵入阻害剤に対する感受性、受容体および共受容体指向性、ならびにウイルス中和を評価することができる。
【0014】
図2.HIVエンベロープ発現ベクター。HIVエンベロープ配列を患者サンプルから増幅し、制限エンドヌクレアーゼ部位(5’a/bおよび3’c/d)を用いて発現ベクターに挿入する。エンベロープの転写はヒトサイトメガロウイルス(CMV)の極初期遺伝子プロモーターによって駆動する。シミアンウイルス40(SV40)ポリアデニル化シグナル配列(A+)を使用して、エンベロープRNAをポリアデニル化する。CMVプロモーターとHIVエンベロープ配列の間に位置するイントロンは、トランスフェクト細胞中でエンベロープmRNAのレベルが増加するように設計する。FLは、全長エンベロープタンパク質(gp120、gp41)を発現する。ΔCTは、gp41のC末端細胞質テイルドメインを欠失したエンベロープタンパク質(gp120、gp21)を発現する。+CTは、一定のあらかじめ確定されたgp41細胞質テイルドメインを含むエンベロープタンパク質(gp120、gp41)を発現する。gp120は、一定のあらかじめ確定されたgp41とともに患者由来のgp120タンパク質を発現する。gp41は、患者由来のgp41タンパク質とともに一定のあらかじめ確定されたgp120を発現する。
【0015】
図3A.共受容体指向性スクリーニングアッセイ。この図では、2種の細胞系を使用してアッセイを実施する。一方の細胞系はCD4およびCCR5を発現する(上部の6パネル)。他方の細胞系はCD4およびCXCR4を発現する(下部の6パネル)。pHIVenvおよびpHIVlucΔU3ベクターでトランスフェクトした細胞に由来する多数の組換えウイルスストックを細胞に感染させることによって、アッセイを実施する。示した例は、96ウェルプレートにフォーマット化された96のウイルスの分析を表す。薬物の不在下(薬物なし)、またはR5指向性(CCR阻害剤)もしくはX4指向性(CXCR4阻害剤)ウイルスのいずれかを優先的に阻害する薬物の存在下で、感染を実施する。共受容体指向性は、薬物の存在下および不在下の両方で、各細胞型において生成されたルシフェラーゼ活性の量を比較することによって評価する(アッセイ結果の解釈については、図3Bを参照のこと)。
【0016】
図3B.共受容体指向性の判定。この図では、アッセイ結果を解釈するにあたって、CD4/CCR5を発現する細胞(R5細胞)またはCD4/CXCR4を発現する細胞(X4細胞)中で感染する(ルシフェラーゼ活性を生成する)各サンプルウイルスの能力を比較する。感染を特異的に阻止する(ルシフェラーゼ活性を阻害する)CCR5またはCXCR4阻害剤の能力も評価される。X4指向性ウイルス(緑色パネル)は、X4細胞に感染するがR5細胞には感染しない。X4細胞の感染はCXCR4阻害剤によって阻止される。R5指向性ウイルス(青色パネル)は、R5細胞に感染するがX4細胞には感染しない。R5細胞の感染はCCR5阻害剤によって阻止される。二重指向性またはX4/R5混合物(黄色パネル)は、X4細胞とR5細胞に感染する。R5細胞の感染はCCR5阻害剤によって阻止され、X4細胞の感染はCXCR4阻害剤によって阻止される。生存不能ウイルス(赤色パネル)は、X4細胞またはR5細胞のいずれでも複製しない。
【0017】
図4A.侵入阻害剤に対する感受性の測定:融合阻害剤。この図では、融合阻害剤 T-20に対する感受性を実証する。CD4、CCR5およびCXCR4を発現する細胞を、T-20の不在下、および広範囲にわたるT-20濃度で感染させた(x軸、log10目盛)。T-20の存在下で感染細胞により生成されたルシフェラーゼの量を、T-20の不在下で生成されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定した。R5指向性、X4指向性および二重指向性ウイルスを試験した。薬物感受性は、ウイルス複製を50%阻害するのに必要なT-20濃度(IC50、垂直破線で示す)を決定することによって示される。より低いIC50値を持つウイルスの方が、より高いIC50値を持つウイルスよりもT-20に対して感受性である。NL4-3:十分に特性決定されたX4指向性株;JRCSF:十分に特性決定されたR5指向性株;91US005.11:NIHのAIDS Research and Reference Reagent Program (ARRRP)から入手したR5指向性分離株;92HT593.1:NIH ARRRPから入手した二重指向性(X4R5)分離株;92HT599.24:NIH ARRRPから入手したX4指向性分離株。
【0018】
図4B.侵入阻害剤に対する感受性の測定:薬物耐性突然変異。この図では、gp41エンベロープタンパク質中の特定の薬物耐性突然変異によって賦与された、融合阻害剤 T-20に対する感受性の低下を実証する。CD4、CCR5およびCXCR4を発現する細胞を、T-20の不在下、および広範囲にわたるT-20濃度で感染させた(x軸、log10目盛)。T-20の存在下で感染細胞により生成されたルシフェラーゼの量を、T-20の不在下で生成されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定した。gp41膜貫通エンベロープタンパク質中に1つまたは2つの特定の突然変異を持つ同質遺伝子(isogenic)ウイルスを試験した(図の説明中では赤で強調してある)。薬物感受性は、ウイルス複製を50%阻害するのに必要なT-20濃度(IC50、垂直破線で示す)を決定することによって示される。より低いIC50値を持つウイルスの方が、より高いIC50値を持つウイルスよりもT-20に対して感受性である。
突然変異なし(野生型配列):GIV
単一突然変異:GIV、DIM、SIV
二重突然変異:DIM、SIM、DTV
【0019】
図5A.侵入阻害剤に対する感受性の測定:CCR5阻害剤。この図では、CCR5阻害剤(merck化合物)に対する感受性を実証する。CD4およびCCR5を発現する細胞(R5細胞)を、CCR5阻害剤の不在下、および広範囲にわたるCCR5阻害剤濃度で感染させた(x軸、log10目盛)。CCR5阻害剤の存在下で感染細胞により生成されたルシフェラーゼの量を、CCR5阻害剤の不在下で生成されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定した。R5指向性、X4指向性および二重指向性ウイルスを試験した。薬物感受性は、ウイルス複製を50%阻害するのに必要なCCR5阻害剤濃度(IC50、垂直破線で示す)を決定することによって示される。より低いIC50値を持つウイルスの方が、より高いIC50値を持つウイルスよりもCCR5阻害剤に対して感受性である。X4指向性ウイルスはR5細胞に感染しなかった。NL4-3:十分に特性決定されたX4指向性株;JRCSF:十分に特性決定されたR5指向性株;92HT593.1:NIH ARRRPから入手した二重指向性(X4R5)分離株。
【0020】
図5B.侵入阻害剤に対する感受性の測定:CXCR4阻害剤。この図では、CXCR4阻害剤(AMD3100)に対する感受性を実証する。CD4およびCXCR4を発現する細胞(X4細胞)を、CXCR4阻害剤の不在下、および広範囲にわたるCXCR4阻害剤濃度で感染させた(x軸、log10目盛)。CXCR4阻害剤の存在下で感染細胞により生成されたルシフェラーゼの量を、CXCR4阻害剤の不在下で生成されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定した。R5指向性、X4指向性および二重指向性ウイルスを試験した。薬物感受性は、ウイルス複製を50%阻害するのに必要なCXCR4阻害剤濃度(IC50、垂直破線で示す)を決定することによって示される。より低いIC50値を持つウイルスの方が、より高いIC50値を持つウイルスよりもCCR5阻害剤に対して感受性である。R5指向性ウイルスはX4細胞に感染しなかった。
NL4-3:十分に特性決定されたX4指向性株;
JRCSF:十分に特性決定されたR5指向性株;
92HT593.1:NIH ARRRPから入手した二重指向性(X4R5)分離株。
【0021】
図6.侵入阻害剤に対する感受性:融合阻害剤。この図では、全長エンベロープ配列または細胞質側テイルを欠失したエンベロープ配列に対応するアンプリコンが生成されることを実証する。レーン番号はゲルの右側の各番号の隣に示した共受容体指向性に対応する。
【0022】
図7.感受性の低下:融合阻害剤。CCR5またはCXCR4のいずれかに対する抗体(Y軸上に示す)を使用するFACS(蛍光活性化細胞ソーティング)アッセイの結果を表す点図表プロットを示す。細胞系はプロットの下に示した共受容体を発現し、CD4蛍光をX軸に沿って示す。抗CXCR4抗体は、対応する共受容体CXCR-4を発現する細胞と最も強く結合する。
【0023】
図8.侵入阻害剤に対する感受性:CCR5阻害剤。共受容体アンタゴニストの投与後の阻害を示す。
図9.侵入阻害剤に対する感受性:CXCR4阻害剤。ウイルス膜と細胞膜との融合の阻害剤であるペプチドについてのマップおよびアミノ酸配列を示す。
図10.共受容体アンタゴニストによる阻害。
図11.T20耐性突然変異。
図12.侵入阻害剤耐性突然変異の同定。
図13.融合阻害剤ペプチド。
【0024】
本発明は、その特定の特徴において、添付の図面および実施例を参照して以下の詳細な説明を考慮することでさらに明らかになるであろう。以下の説明では、例えば、限定するものではないが、HIV-1およびHIV-1ウイルス侵入の阻害剤を含めて、ウイルス侵入の阻害剤の同定および評価に関係した表現型アッセイに関する本発明を実施するための手段および方法について述べる。
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、ある化合物が細胞へのウイルス侵入を阻害するかどうかを同定する方法を提供する。前記方法は、(a)ウイルスに感染した患者からウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を取得し;(b) 第1細胞中に、(i)ステップ(a)の核酸と、(ii)エンベロープタンパク質をコードする核酸を欠失しており、かつ検出可能なシグナルを生成する指示核酸を含むウイルス発現ベクターとを同時トランスフェクトし、その結果として、第1細胞が患者から取得した核酸にコードされたエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子を産生し;(c) ステップ(b)で産生されたウイルス粒子と第2細胞とを該化合物の存在下で接触させ、ただし、第2細胞はこのウイルスが結合する細胞表面受容体を発現するものであり;(d) ウイルス粒子の感染性を判定するために、第2細胞によって生成されたシグナルの量を測定し;そして(e) ステップ(d)で測定したシグナルの量を該化合物の不在下で生成されたシグナルの量と比較し、この場合、該化合物の存在下で測定したシグナルの量が低下していれば、該化合物が第2細胞へのウイルス侵入を阻害することを示す;各ステップを含んでなる。
【0026】
本発明の実施形態において、指示核酸は指示遺伝子を含む。本発明の別の実施形態では、指示遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子である。
【0027】
本発明の1実施形態において、細胞表面受容体はCD4である。本発明の1実施形態において、細胞表面受容体はケモカイン受容体である。本発明の1実施形態において、細胞表面受容体はCXCR4またはCCR5である。
【0028】
本発明の1実施形態において、患者はHIV-1ウイルス、肝炎ウイルス(HCVもしくはHBVウイルスなど)、またはその他のウイルスに感染している。
【0029】
本発明の1実施形態においては、ステップ(a)の核酸は、gp120およびgp41をコードするDNAを含む。
【0030】
本発明の1実施形態では、ウイルス発現ベクターがHIV核酸を含む。
【0031】
本発明の1実施形態では、ウイルス発現ベクターがHIV gag-pol遺伝子を含む。
【0032】
本発明の1実施形態では、ウイルス発現ベクターがvif、vpr、tat、rev、vpu、およびnefをコードするDNAを含む。
【0033】
本発明の1実施形態では、第1細胞が哺乳動物細胞である。
【0034】
本発明の1実施形態では、哺乳動物細胞がヒト細胞である。
【0035】
本発明の1実施形態では、ヒト細胞がヒト胚性腎細胞である。
【0036】
本発明の1実施形態では、ヒト胚性腎細胞が293細胞である。
【0037】
本発明の1実施形態では、第2細胞がヒトT細胞である。
【0038】
本発明の1実施形態では、第2細胞がヒトT細胞白血病細胞系である。
【0039】
本発明の1実施形態では、第2細胞が末梢血単核細胞である。
【0040】
本発明の1実施形態では、第2細胞が星状神経膠腫細胞である。
【0041】
本発明の1実施形態では、星状神経膠腫細胞がU87細胞である。
【0042】
本発明の1実施形態では、第2細胞がヒト骨肉腫細胞である。
【0043】
本発明の1実施形態では、ヒト骨肉腫細胞がHT4細胞である。
【0044】
本発明の1実施形態では、前記化合物が細胞表面受容体に結合する。
【0045】
本発明の1実施形態では、前記化合物が細胞表面受容体のリガンドである。
【0046】
本発明の1実施形態では、前記化合物が抗体を含む。
【0047】
本発明の1実施形態では、前記化合物が膜融合を阻害する。
【0048】
本発明の1実施形態では、前記化合物がペプチド、ペプチド模倣体、有機分子、または合成化合物である。
【0049】
本発明の1実施形態では、前記化合物がウイルスエンベロープタンパク質に結合する。
【0050】
本発明は、本明細書に記載するスクリーニング方法(化合物の同定方法)によって同定された化合物を担体と混合することを含む、組成物の製造方法を提供する。
【0051】
本発明の1実施形態では、担体は生理食塩水、ポリエチレングリコール、バッファー溶液、デンプン、または有機溶媒である。
【0052】
本発明は、細胞へのウイルス感染時に、そのウイルスが結合する細胞表面受容体を同定する方法を提供する。前記方法は、(a) (i)ウイルス核酸と、(ii)検出可能なシグナルを生成する指示核酸と、を含むウイルス粒子を取得し;(b) 細胞表面受容体を発現する細胞にステップ(a)のウイルス粒子を接触させ;そして(c) 細胞内で生成された検出可能なシグナルの量を測定し、この場合、シグナルの生成は該細胞によって発現される細胞表面受容体にウイルスが結合したことを示すものであり、これによって、その細胞表面受容体を、細胞への感染時にウイルスが結合するものとして同定する;各ステップを含んでなる。
【0053】
本発明はまた、抗体が細胞へのウイルス侵入を阻害するかどうかを同定する方法を提供する。前記方法は、(a)ウイルスに感染した患者からウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を取得し;(b) 第1細胞中に、(i)ステップ(a)の核酸と、(ii)エンベロープタンパク質をコードする核酸を欠失しており、かつ検出可能なシグナルを生成する指示核酸を含むウイルス発現ベクターとを同時トランスフェクトし、その結果として、第1細胞が患者から取得した核酸にコードされたエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子を産生し;(c) ステップ(b)で産生されたウイルス粒子と第2細胞とを該抗体の存在下で接触させ、ただし、第2細胞はこのウイルスが結合する細胞表面受容体を発現するものであり;(d) ウイルス粒子の感染性を判定するために、第2細胞によって生成されたシグナルの量を測定し;そして(e) ステップ(d)で測定したシグナルの量を該化合物の不在下で生成されたシグナルの量と比較し、この場合、抗体の存在下で測定したシグナルの量が低下していれば、その抗体が第2細胞へのウイルス侵入を阻害することを示す;各ステップを含んでなる。
【0054】
本発明は、細胞へのウイルス侵入を阻害する化合物に対するウイルスの感受性を判定する方法を提供する。前記方法は、(a)ウイルスに感染した患者からウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を取得し;(b) 第1細胞中に、(i)ステップ(a)の核酸と、(ii)エンベロープタンパク質をコードする核酸を欠失しており、かつ検出可能なシグナルを生成する指示核酸を含むウイルス発現ベクターとを同時トランスフェクトし、その結果として、第1細胞が患者から取得した核酸にコードされたエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子を産生し;(c) ステップ(b)で産生されたウイルス粒子と第2細胞とを該化合物の存在下で接触させ、ただし、第2細胞はこのウイルスが結合する細胞表面受容体を発現するものであり;(d) ウイルス粒子の感染性を判定するために、第2細胞によって生成されたシグナルの量を測定し;そして(e) ステップ(d)で測定したシグナルの量を該化合物の不在下で生成されたシグナルの量と比較し、この場合、該化合物の存在下で測定したシグナルの量が低下していれば、そのウイルスが該化合物に感受性であることを示す;各ステップを含んでなる。
【0055】
本発明は、細胞へのウイルス侵入を阻害する化合物に対するウイルスの耐性を判定する方法を提供する。前記方法は、(a) 請求項33に記載の方法にしたがって、ある化合物に対するウイルスの感受性を判定し、この際、ウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸は患者から第1回目に取得したものであり;(b) 請求項33に記載の方法にしたがって、該化合物に対する該ウイルスの感受性を判定し、この際、ウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸は該患者からその後の第2回目に取得したものであり;そして(c) ステップ(a)および(b)で判定した感受性を比較し、この場合、あとの2回目で感受性が低下していれば、その化合物に対するウイルスの耐性を示す;各ステップを含んでなる。
【0056】
本発明は、細胞へのウイルス侵入を阻害する化合物に対する耐性を賦与する突然変異を同定する方法を提供する。前記方法は、(a) 該化合物でウイルスを処理する前に、ウイルスの核酸配列またはアミノ酸配列を決定し;(b) 該化合物に耐性を示すウイルスを取得し;(c) ステップ(b)で取得した耐性ウイルスの核酸配列またはアミノ酸配列を決定し;そして(d) ステップ(a)および(b)の核酸配列またはアミノ酸配列をそれぞれ比較することによって、その化合物に対する耐性を賦与するウイルスの突然変異を同定する;各ステップを含んでなる。
【0057】
本発明の1実施形態において、ステップ(b)で得られるウイルスは、耐性が発生するまで化合物の存在下で増殖させたステップ(a)のウイルスである。
【0058】
本発明の1実施形態において、ステップ(b)で得られるウイルスは、その化合物による治療を受けたことがある患者から分離される。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明は、ウイルス侵入阻害剤に対するHIV-1の感受性を正確かつ再現可能に測定するための手段および方法を提供する。
【0060】
別の好ましい実施形態では、本発明はまた、HIV-1共受容体指向性を正確かつ再現可能に測定するための手段および方法を提供する。
【0061】
好ましい実施形態において、本発明は、抗体が介在するHIV-1中和を正確かつ再現可能に測定するための手段および方法を提供する。
【0062】
好ましい実施形態において、本発明は、ウイルスの付着および侵入過程における各種の確定されたまたは今のところ未確定のステップを標的とする新規薬物または新薬物を発見し、最適化し、特性決定するための手段および方法を提供する。
【0063】
好ましい実施形態において、本発明は、ウイルスの付着および侵入過程における各種の確定されたまたは今のところ未確定のステップを標的とする(予防用または治療用のいずれかの)HIV-1ワクチンを発見し、最適化し、特性決定するための手段および方法を提供する。
【0064】
好ましい実施形態において、本発明は、ウイルス侵入阻害剤に対する感受性を変更する、HIV-1エンベロープタンパク質(gp41TMおよびgp120SU)中のアミノ酸置換/突然変異を同定するための手段および方法を提供する。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明は、HIV-1エンベロープ中の特定の突然変異がウイルス侵入阻害剤に対する感受性に及ぼす影響を定量するための手段および方法を提供する。
【0066】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、ウイルス侵入阻害剤に対して変更された感受性を示すウイルスにおいて、単独または組合せで、しばしば観察されるHIV-1エンベロープのアミノ酸置換/突然変異を決定するための手段および方法を提供する。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明は、受容体または共受容体指向性を変更する、HIV-1エンベロープタンパク質(gp41TMおよびgp120SU)中のアミノ酸置換/突然変異を同定するための手段および方法を提供する。
【0068】
好ましい実施形態では、本発明は、HIV-1エンベロープタンパク質中の特定の突然変異が受容体または共受容体指向性に与える影響を定量するための手段および方法を提供する。
【0069】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、CXCR4またはCCR5共受容体指向性を示すウイルスにおいて、単独または組合せで、しばしば観察されるHIV-1エンベロープのアミノ酸置換/突然変異を同定するための手段および方法を提供する。
【0070】
好ましい実施形態では、本発明は、抗体が介在する中和を変更するHIV-1エンベロープタンパク質(gp41TMおよびgp120SU)中のアミノ酸置換/突然変異を同定するための手段および方法を提供する。
【0071】
好ましい実施形態では、本発明は、HIV-1エンベロープタンパク質中の特定の突然変異が抗体介在中和に与える影響を定量するための手段および方法を提供する。
【0072】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、抗体が介在するウイルス中和を示すウイルスにおいて、単独または組合せで、しばしば観察されるHIV-1エンベロープのアミノ酸置換/突然変異を同定するための手段および方法を提供する。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、HIV-1を中和することができる、患者サンプルウイルス中にしばしば観察される抗体を同定するための手段および方法を提供する。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、感染のためにCD4との結合を必要とするウイルスを同定するための手段および方法を提供する。
【0075】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、感染のためにCD4との結合を必要としないウイルスを同定するための手段および方法を提供する。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、CD4非依存性感染を示す患者サンプルの発生率を確認するための手段および方法を提供する。
【0077】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、感染のためにCD8との結合を必要とするウイルスを同定するための手段および方法を提供する。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明は、CD8依存性感染を示す患者ウイルスの発生率を確認するための手段および方法をも提供する。
【0079】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、感染のためにCXCR4ケモカイン受容体結合、CCR5ケモカイン受容体結合、またはCXCR4もしくはCCR5結合のいずれか(二重指向性)を必要とするウイルスを同定するための手段および方法を提供する。
【0080】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、感染のためにCXCR4ケモカイン受容体結合、CCR5ケモカイン受容体結合、またはCXCR4もしくはCCR5結合のいずれか(二重指向性)を必要とするウイルスの発生率を確認するための手段および方法を提供する。
【0081】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、(a) ウイルス侵入阻害剤に対して変更された感受性、(b) CXCR4またはCCR5共受容体指向性、および(c) 抗体が介在するウイルス中和、を示すウイルスにおいて、単独または組合せで、しばしば観察されるHIV-1エンベロープのアミノ酸置換/突然変異を同定するための手段および方法を提供する。
【0082】
好ましい実施形態では、本発明は、HIV-1の治療の指針として、ウイルス侵入阻害剤に対する感受性を使用するための手段および方法を提供する。
【0083】
好ましい実施形態では、本発明は、抗レトロウイルス薬治療が失敗した患者の治療の指針として、ウイルス侵入阻害剤に対する感受性を使用するための手段および方法を提供する。
【0084】
好ましい実施形態では、本発明は、HIV-1に新たに感染した患者の治療の指針として、ウイルス侵入阻害剤に対する感受性を使用するための手段および方法を提供する。
【0085】
好ましい実施形態では、本発明は、HIV-1の治療の指針、または抗レトロウイルス薬治療が失敗した患者の治療の指針として、HIV-1共受容体指向性を使用するための手段および方法を提供する。
【0086】
好ましい実施形態では、本発明は、HIV-1に新たに感染した患者の治療の指針として、HIV-1共受容体指向性を使用するための手段および方法を提供する。
【0087】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、ワクチン接種後の初期防御抗体応答をモニタリングするために、抗体介在HIV-1中和を測定するための手段および方法を提供する。
【0088】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、ワクチン接種後の初期治療抗体応答をモニタリングするために、抗体介在HIV-1中和を測定するための手段および方法を提供する。
【0089】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、ワクチン接種後の防御抗体応答の持続性をモニタリングするために、抗体介在HIV-1中和を経時的に測定するための手段および方法を提供する。
【0090】
好ましい実施形態では、本発明はさらに、ワクチン接種の効力および持続性を最大にするワクチン接種の初回-追加スケジュールを開発して最適化するために、抗体介在HIV-1中和を測定するための手段および方法を提供する。
【0091】
例えば、HIV-1の場合、SUタンパク質(gp120-SU)が膜貫通エンベロープタンパク質(gp41-TM)としっかり結合しており、これが複合体をウイルス膜に繋ぎ止めている。エンベロープタンパク質gp120およびgp41は、エンベロープ遺伝子の未開裂前駆体タンパク質であるgp160の開裂によって誘導される。HIV-1のその細胞受容体(CD4)および共受容体(CCR5またはCXCR4のいずれか)への結合はTMタンパク質のコンホメーションの変化を促進し、その結果、ウイルスと細胞膜の融合と、それに続くウイルスコアの細胞質内への侵入をもたらす(Retroviruses, 1997)。新規なHIV侵入阻害剤はウイルスエンベロープタンパク質(gp120/gp41)または宿主タンパク質(CD4、CCR5、CXCR4)のいずれかを標的とするが、HIV-1中の耐性関連突然変異の大多数はウイルスエンベロープ遺伝子中に存在すると予想される。例えば、ウイルスが進化する可能性のある一つの方向は、共受容体の利用をシフトすることである。侵入阻止剤は抗レトロウイルス薬の新規なクラスを構成し、現状の多剤耐性HIV-1変異体に対して広範な活性を示す可能性が高い。可能性のあるウイルス侵入阻止剤のクラスとして、融合阻害剤、受容体/共受容体アンタゴニスト、およびワクチンがある。
【0092】
それでもなお、ウイルス侵入の阻害剤は(エンベロープ遺伝子の突然変異によって)薬剤耐性ウイルスを出現させると考えられ、かくして、HIVのためのプロテアーゼ阻害剤(PRI)および逆転写酵素阻害剤(RTI)治療で観察されるものと同様に、患者の治療が複雑化する。実際、ウイルス侵入を阻止する新薬のFDA承認には耐性データの評価が要求される。侵入阻止剤に対する感受性を測定する診断アッセイの必要性が、融合阻害剤 T-20の場合に報告されている。T-20の存在下でin vitro継代培養後に、この薬物に対する感受性の低下を示すウイルスが報告されている。現時点で、ウイルス侵入を阻止する薬物に対する感受性を測定することができる好都合な表現型アッセイは利用することができない。結果として、医師は、薬物感受性の問題に取り組むのに必要なツールを持たずに、治療を患者に合わせて組み立てる困難に直面することになる。したがって、感染患者からのウイルス侵入を阻止する薬物に対する感受性を正確に測定するための信頼できるアッセイは、極めて価値があると考えられる。
【0093】
例えば、最近の世界保健機関(WHO)の概算では、世界中で3300万人を超える人が流行性AIDSの病原因子であるHIV-1に感染していることが示されている。米国では100万人近くが感染し、現在30万人が抗ウイルス治療を受けている(CDC, 1999;WHO 1999)。AIDSの撲滅は、国家機関、学術研究機関、および医薬/バイオテクノロジー産業界での前例のない総力を挙げての共通した目標である。HIV-1感染の治療のために、14の抗ウイルス薬がFDAから承認されており(Carpenterら、2000)、20を超える追加の薬物が現在臨床試験中である(PHRMA, 1999)。承認された薬物は、プロテアーゼ(PR)または逆転写酵素(RT)のいずれかの酵素活性を妨害することによって、HIV-1の複製を阻害する。PR阻害剤(PRI)は、ウイルス感染および複製に必要なウイルスタンパク質の適正な生成を阻止し、一方RT阻害剤(RTI)はウイルスがその遺伝物質を複製するのを阻止する。最適には及ばない効力ゆえに、現在のPRIおよびRTIは、ウイルスの複製を抑制するために、たいていは組み合わせて使用されている(Carpenterら、2000)。
【0094】
したがって、所望されるのは、以下を評価することができる、迅速かつ正確で安全なウイルスアッセイを提供することである:
33. ウイルス付着および侵入の阻害剤(融合、受容体および共受容体阻害剤を含む)の活性;
34. ウイルス侵入阻害薬の設計および治療を促進するための受容体/共受容体へのウイルス指向性;
35. 付着および侵入の阻害剤に対する患者ウイルスの薬物感受性の変化;ならびに
36. ウイルスエンベロープタンパク質抗原を使用するワクチン接種に応答して生成されたウイルス中和活性。
【0095】
本発明の方法は、ウイルス侵入阻害剤に応答し、かつウイルス侵入阻害剤に対する抗ウイルス薬の感受性および耐性が問題となる場合の、どのようなウイルス性疾患についても使用することができる。これらのウイルスとして限定するわけではないが、例えば他のレンチウイルス(例えばHIV-2)、他のレトロウイルス(例えばHTLV-1および2)、ヘパドナウイルス(例えばヒトB型肝炎ウイルス)、フラビウイルス(例えばヒトC型肝炎ウイルス)、ならびにヘルペスウイルス(例えばヒトサイトメガロウイルス)が含まれる。
【0096】
侵入阻止剤は抗レトロウイルス薬の新規なクラスを構成し、現在の多剤耐性HIV-1変異体に対して広範囲の活性を示す可能性が高い。可能性のあるウイルス侵入阻止剤のクラスには、融合阻害剤、受容体/共受容体アンタゴニスト、およびワクチンが含まれる。
【0097】
融合阻害剤
融合阻害剤と呼ばれる、TMのコンホメーションの変化を競合的に阻害するように設計された化合物は、HIV-1複製の強力な阻害剤である。その活性は細胞培養系およびHIV-1感染患者の両方で実証されている(Wildら、1992;Judiceら、1997;Kilbyら、1998)が、米国ではどの融合阻害剤もまだHIV-1感染の治療用に承認されていない。このクラス内の薬物、例えばt-20およびt-1249(Trimeris Inc., USA)、が進展した臨床試験の対象になっている。
【0098】
受容体/共受容体アンタゴニスト
HIV-1がその受容体と相互作用した後に作用する融合阻害剤に加えて、HIV-1がCD-4またはその2つの主要な共受容体のいずれかと相互作用するのを阻止する薬物を開発するための努力が進行中である。こうした薬剤がHIV-1感染を阻害する能力は、細胞培養系および動物モデルで証明されている。gp120、CD4、マクロファージ指向性ウイルスにより使用されるCCR5共受容体(R5)、またはT細胞指向性ウイルスにより使用されるCXCR4共受容体(X4)のいずれかを標的とするリード化合物がすでに同定されている(Allwayら、1993;Reimannら、1995;Babaら、1999;Bridgerら、1999)。
【0099】
現在米国では、どの共受容体アンタゴニストもHIV-1感染の治療用に承認されていない。このクラス内の薬物、例えばPRO 542(Progenics Inc., USA)、5a8(Tanox, USA)、TAK-779(Takeda Inc., Japan)、およびAMD-3100(Anormed Inc., Canada)、が臨床前、または初期段階臨床試験の対象になっている。したがって、指向性ウイルス株(例えばHIV-1)に感染した患者を迅速かつ正確に同定する、受容体/共受容体指向性を同定および判定することができるアッセイは、ウイルス侵入阻害剤の設計および治療を助長すると考えられる。
【0100】
ワクチン
ワクチンも、ヒトの病原性ウイルス感染との闘いの有効な戦略の1つであることが証明され、HIV-1感染を防止するためのいくつかのワクチン候補が臨床開発中である。エンベロープタンパク質gp120およびgp41がHIV-1ワクチンのための最も有望な候補であり、臨床試験中のその11種のワクチン候補の多くがエンベロープに基づいている(PhRMA, 1999)。効果的なエンベロープワクチンはウイルス感染を阻止する中和抗体の産生を誘発するらしいと、一般的に考えられている(Mascolaら、2000)。したがって、こうした中和抗体の効力の信頼性ある測定をし、ウイルスの長期培養を必要としない、感度のよいハイスループットアッセイが緊急に必要とされている。こうしたアッセイは効果的なAIDSワクチンの探索に多大な貢献を果たすはずである。後期臨床試験が数千に及ぶ多数の患者集団を包括することを考慮すると、これは特に真実である。中和抗体は標的細胞の感染を防止すべきであるから、ウイルス中和アッセイとして役立てるにはエンベロープ受容体アッセイが有益であると見られる。
【0101】
残念ながら、これらの薬物併用の大部分は、主として薬物耐性ウイルスの出現によって、限られた時間しか有効でない。RTおよびRNAポリメラーゼIIに固有の校正機能の欠損は、高レベルの誤りがちな複製をともなって、HIV-1などのウイルスを容易に突然変異させる(Coffin, 1995)。この高突然変異頻度は、有効な長期の薬物治療から逃れるHIV-1の能力をもたらし、その結果ウイルス負荷リバウンドとなる。14種全部の承認された薬物および研究中の多くの化合物について、耐性に関係する突然変異が記載されている(Schinaziら、1999)。結果として、多剤耐性HIV-1変異体は、感染患者の治療問題の増加をもたらす。長期の臨床効果を達成するため、ウイルスの複製を最大限に抑制する薬物を選択し、患者のウイルスが耐性を示す薬物を回避することが所望される(DHHs, 2000)。患者のウイルスに対して最も効果的な薬物の選択の際に、長期の結果は医師の指針となりうる薬物耐性試験に依拠することができる。耐性試験の必要性がDHHsの最近の指針で重視されるようになり(DHHs, 2000)、HIV-1感染患者を治療するときには、耐性試験を定期的に使用するように推奨されている。感受性試験も耐性ウイルスを標的とする新薬の開発の一助となり得る。最近のFDA諮問委員会(1999年11月)は、耐性試験をHIV-1のための新規抗ウイルス薬の開発で使用することを推奨した。
【0102】
抗ウイルス薬の感受性を評価するために、いくつかの戦略が適用されてきた。遺伝子型試験では、基礎となるヌクレオチド配列または遺伝子型の突然変異を分析して、これらの突然変異と薬物耐性との相関性を調べる(Rodriguez-Rosadoら、1999;Schinaziら、1999)。しかし、遺伝子型と表現型の関係は複雑で、簡単に説明されるものではなく、これらの試験の結果は定量的ではない。遺伝子型薬物感受性データの使用は専門家(Baxterら、1999)またはコンピュータアルゴリズムのいずれかによる解釈を必要とし、また必ずしも治療結果の予測となるものではない(Pikettyら、1999)。
【0103】
表現型薬物感受性アッセイは、ウイルスが薬物の存在下で複製する能力を直接測定および定量するものである。初期の表現型試験は長期のウイルス培養を必要とし、その結果時間と労力がかかり、そしてハイスループット用に簡単には自動化されなかった(Japourら、1993)。その結果、これらの初期の表現型試験は患者の管理用には実用的でないと考えられた。組換えウイルスアッセイの開発(ShiおよびMellors, 1997;Hertogsら、1998)が表現型試験を単純化し、処理量を増大させた。しかし、これらのアッセイの大きな欠点は、4〜8週間という長い所要時間である。さらに最近になって、1回の複製ラウンド中に薬物感受性を測定することができる組換えウイルスアッセイ、およびその他のアッセイが開発され(Zennouら、1998;Petropoulosら、2000)、その結果、所要時間が8〜10日間への劇的な減少となった。抗レトロウイルス治療が失敗した患者は表現型アッセイの利益を受けることができる。こうしたアッセイは患者の管理にとって魅力的なツールである。なぜならば、これらは薬物感受性の直接的で迅速な測定を提供するからである。
【0104】
本発明のアッセイは、これらのファミリー内のその他のウイルスによる感染から発生するその他のウイルス感染、ならびに別のウイルスファミリーのウイルスから発生するウイルス感染に使用することができる。その上、本発明の薬物感受性および耐性試験は、現在では利用できる治療法がないウイルス疾患を治療するための化合物をスクリーニングするのに有用である。
【0105】
本発明の薬物感受性および耐性試験で試験することができるウイルスの構造、生活環および遺伝的要素は当業者が知り得るものである。例えばレトロウイルスの生活環、ならびにレトロウイルスのレスキュー(rescue)および感染性に必要なウイルス遺伝子を理解することは、本発明の実施にとって有用である。レトロウイルスが感染した細胞は二倍体RNAゲノムを含有する膜ウイルスを放出する。エンベロープ糖タンパク質(感染の宿主域を決定するのに役立つ)が点在するウイルスは、感染する細胞の原形質膜中の細胞受容体に付着する。受容体に結合後、ウイルスは内部に入り、宿主細胞の細胞質中を通過する間に裸になる。核に向かう途中か核内のいずれかで、ウイルスコア内に所在する逆転写酵素分子が二本鎖DNAプロウイルスの合成を駆動する。これはtRNA分子のゲノムウイルスRNAへの結合によって開始される合成である。二本鎖DNAプロウイルスは次に宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、そこでウイルスタンパク質をコードするmRNAおよびビリオンゲノムRNAの両方の転写鋳型として機能することができる。これらはウイルスコア粒子中にパッケージされるだろう。感染した細胞から出る途中、コア粒子は細胞質から移動して、新たに感染した細胞の原形質膜の内側に付着し、ウイルスにコードされたエンベロープ糖タンパク質遺伝子産物を含有する膜の通路を選んで出芽する。感染、逆転写、転写、翻訳、ビリオンの組み立ておよび出芽のこのサイクルは感染が広がるとともに何度も繰り返される。
【0106】
このウイルスRNA、およびその結果としてプロウイルスDNAは、ウイルスの生活環の完結を成功させるのに絶対に必要なシス作用性エレメントをいくつかコードしている。ビリオンRNAはその3’末端にウイルスプロモーターを保有している。アクロバット複製は、ゲノムが逆転写されるように、ウイルスプロモーターをプロウイルスゲノムの5’末端に配置する。ウイルスパッケージ部位は丁度3’から5’レトロウイルスLTRに向かって存在する。レトロウイルスの生活環にはウイルスにコードされたトランス作用性因子の存在を必要とする。ウイルス-RNA-依存性DNAポリメラーゼ(pol)--逆転写酵素もウイルスコア内に含まれていて、これはゲノムRNAを組込み中間体であるプロウイルスDNAに転換することに関与しているという点で、ウイルスの生活環に必要である。ウイルスエンベロープ糖タンパク質envは、未感染細胞へのウイルスの付着およびウイルスの伝播に必要である。組み込まれた親プロウイルスの転写レベルをモジュレートするために作用できる、トランスアクチベーターと称される、転写トランス作用性因子も存在する。典型的には、複製能のある(非欠損)ウイルスはこれらのトランス作用性因子のすべてをコードしている点で、自己保有性である。その欠損性対応物は自己保有性でない。
【0107】
ヘパドナウイルスなどのDNAウイルスの場合は、その生活環および感染に必要なウイルス遺伝子を理解することが、本発明の実施にとって有用である。HBV侵入の過程は十分確定されていない。HBVの複製にはRNA中間体の鋳型が使用される。感染した細胞中で、複製の最初のステップは非対称の弛緩型DNA(rc-DNA)の共有結合閉環型DNA(cccDNA)への変換である。感染した肝細胞の核内で生じるこの過程には、DNAプラス鎖合成の完結およびDNA末端同士の連結が含まれる。第2ステップで、cccDNAが宿主RNAポリメラーゼによって転写されて、3.5 kB RNA鋳型(プレゲノム)が生成する。このプレゲノムがウイルスコア中のタンパク質と複合体化する。第3ステップには、ウイルスにコードされたPタンパク質逆転写酵素を使用するプレゲノムRNAの複写による、第1マイナスセンスDNA鎖の合成が含まれる。Pタンパク質はマイナス鎖DNAプライマーとしても作用する。最後に、Pタンパク質DNAポリメラーゼ活性およびプライマーとしてウイルスRNAのオリゴマーを使用する、第1DNA鎖の複製による、第2プラスセンスDNA鎖の合成が生じる。プレゲノムは主要な構造コアタンパク質のためのmRNAも転写する。
【0108】
設計および方法
37) 患者由来のエンベロープタンパク質をコードするセグメントを受容する能力があるウイルスエンベロープタンパク質のための発現ベクターの構築
1実施形態において、トランスフェクトされた細胞中でHIV-1エンベロープタンパク質を発現する能力があるエンベロープ発現ベクターを構築した。同様の発現ベクターについては記載がある。米国特許第5,837,464号およびPetropoulosら、2000、に記載された、両種指向性マウス白血病ウイルス(A-MLV)エンベロープタンパク質を発現させるために構築したプラスミド(pAmphoEnv)が挙げられる。pAmphoEnvベクターは、トランスフェクト細胞中でA-MLVエンベロープmRNAを産生するために、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の前初期遺伝子プロモーターおよびSV40ポリアデニル化シグナル配列を使用するものである。pAmphoEnvプラスミドは、A-MLVエンベロープ遺伝子の欠失、ならびにHIV-1などの多様な分離株に由来するウイルスエンベロープ断片の挿入を可能にできる制限酵素切断部位の導入によって、改変する。HIV-1の場合、エンベロープオープンリーディングフレームは約2,600ヌクレオチドにわたっており、エンベロープポリタンパク質gp160をコードする。gp160ポリタンパク質は細胞フリン様プロテアーゼによって切断されて、2つのサブユニットgp41およびgp120が生成する。HIV-1エンベロープ発現ベクターは、以下の段階にしたがって構築することができる。
【0109】
(a) エンベロープ発現ベクター (pAmphoEnv) からの A-MLV エンベロープ核酸配列のマルチクローニングサイトポリリンカーによる置換:
A-MLVエンベロープ核酸配列をpAmphoEnvベクターから制限酵素消化によって欠失させることができる。エンベロープ配列の挿入のためのユニークな4つの内部制限部位(a、b、c、d)を含有する二本鎖オリゴヌクレオチドポリリンカーに連結することによって、消化されたベクターを再環状化することができる。この連結反応物を使用して大腸菌(Escherichia coli)を形質転換し、そして制限マッピングおよびDNA配列決定のそれぞれによって、正しいポリリンカー配列を含有する分子クローンを同定および確認することができる。複数のユニークなクローニング部位をベクター中に導入することによって、HIV-1エンベロープ配列の挿入を容易にすることができる。ポリリンカー内の制限部位は、HIV-1エンベロープ配列中でのそれらの存在頻度の低さに基づいて選択することができる(LANL HIV-1データベース、www.lanl.gov)。このベクターはpCXと称することができる。pCXベクターの機能性は、蛍ルシフェラーゼなどのリポーター遺伝子または指示核酸をpCXマルチクローニングサイトに挿入して、トランスフェクト細胞中での指示核酸またはリポーター遺伝子活性からのシグナルを測定することによって、決定することができる。本明細書で使用する「指示核酸」とは、例えば測定し得る波長の色もしくは光などの測定または認識可能なシグナル、あるいは指示体として使用される特定のDNAまたはRNA構造物(多数の定量的増幅アッセイのいずれか1つを使用して増幅することができる)の生成を、直接または反応を介してのいずれかによってもたらす、タンパク質をコードする核酸、DNAまたはRNA構造物を意味する。
【0110】
(b) ウイルスエンベロープ配列の pCX エンベロープ発現ベクター中への挿入
PCR増幅のための突然変異誘発性プライマーを使用して、例えばHIV-1エンベロープオープンリーディングフレームの開始および停止コドンに隣接する2つのユニークな制限部位(それぞれa、bおよびc、d)を含有するウイルスエンベロープ断片を作製する。エンベロープオープンリーディングフレームのそれぞれの末端への2つのユニークな制限部位の導入は、pCXベクターのマルチクローニングサイト内に存在するいずれか1つの酵素の内部制限部位を保有しているHIV-1エンベロープ断片のクローニングの機会を向上させることができる。
【0111】
HIV-1の場合、エンベロープ遺伝子中に既知の差異を持つ2つの十分に特性決定されたHIV-1の分子クローンであるNL4-3(シンシチウム誘発性、T細胞指向性の実験室株)およびJR-CSF(非シンシチウム誘発性、マクロファージ指向性の一次分離株)を、PCR増幅のための鋳型として使用することができる。その2,600ヌクレオチド増幅産物を2つの制限酵素で消化し(各酵素は該断片の一端を切断する;例えばaおよびc、またはbおよびd)、その後連結および大腸菌(Escherichia coli)の形質転換によって、pCXベクター中に挿入することができる。適切なエンベロープ配列を含有する分子クローンは、制限マッピングによって同定し、DNA配列決定によって確認することができる。生成したプラスミドpHIVenv(NL4-3)およびpHIVenv(JR-CSF)を使用して、トランスフェクト細胞中でHIV-1エンベロープタンパク質を発現させることができる(図1A)。pHIVenvベクターなどのエンベロープ発現ベクターの機能性は、トランスフェクト細胞中でのウイルスエンベロープ合成の測定(ウエスタンブロット)、および偽型エンベロープ欠損レトロウイルスベクターに対するその能力によって、実証することができる。ヒト胚性腎293細胞系を使用して、高力価ウイルスストック株が示されている(Petropoulosら、2000)が、本発明はこれらの細胞系に限定されるものではない。患者から取得したウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸のトランスフェクションのための第1細胞として使用する、その他の好適な細胞系としては、本発明を限定するわけではないが、例えば、5.25;HOX;U87;MT2;PM1;CEM;その他が挙げられる。細胞系は最適には1以上の共受容体を発現するように遺伝子工学的に操作されるだろう。
【0112】
(c) ウイルスエンベロープ配列のクローニング効率を改善するための pCX ベクターの改変
ウイルスエンベロープ断片のクローニング効率を改善するため、pCX発現ベクターは、細菌キラー遺伝子カセット(例えば、細胞死b遺伝子の制御(control of cell death b gene)(ccdB)またはhokキラー遺伝子ファミリーのメンバー)を大腸菌lacプロモーターの制御下でマルチクローニングサイト中に挿入することによって、改変することができる(Theら、1990;BernardおよびCouturier, 1992;Bernardら、1993)。この改変されたベクターはpCXccdBと称される。ccdBキラー遺伝子の転写はJM109などのlaciqリプレッサーを発現する細菌株中で抑制される。この細菌株または同等の細菌株を使用して、lacプロモーターの制御下にあるccdBキラー遺伝子を保有するプラスミドを増やすことができる。逆にこの系では、DH5aおよびTop10などの、laciqリプレッサーを過剰発現しない細菌株は、ccdB遺伝子を発現するプラスミドを維持することができない。形質転換体はccdB活性によって死滅されうる。DH5aおよびTop10細胞はいくつかの業者から購入することができる(Life TechnologiesまたはInvitrogen)。この選択的クローニング手法を使用して、親発現ベクターをlaciq細菌株中で増殖させる。このベクターを2種の制限酵素で消化する。どちらの酵素もccdB遺伝子カセットを除去し、HIV-1の場合には、HIV-1エンベロープ配列の挿入に適合する (a、b、c、d)。ベクターとエンベロープ断片の連結後、laciqを欠失した細菌株を形質転換する。形質転換後、ウイルスエンベロープインサートでccdBキラー遺伝子が置換されているプラスミドを含有する細菌を増殖させることができる。ccdBキラー遺伝子を保持しているかまたは該遺伝子を再構成するプラスミドを含有する細菌は生存できない。この方法で、形質転換細菌の集団は、ウイルスエンベロープインサートを含有するプラスミドについて富化されるが、ccdB遺伝子を含有する親ベクターは欠失している。このプロジェクトのフェーズIでの成功のために、pCXccdBベクターの構築は必須ではないが、患者サンプルに由来するHIV-1エンベロープ配列のクローニング効率を有意に改善するものと期待される。こうして、ウイルス配列の異種性を維持する可能性を高めることができる。pCXccdBベクターの構造は制限マッピングおよびDNA配列決定によって、確認することができる。
【0113】
(d) ウイルスエンベロープ配列の pCXccdB 発現ベクター中への挿入
pCXccdBベクターの機能性は、ウイルスエンベロープ配列および不完全消化したpCXccdBベクターDNAを含有する連結反応物を供給することによって、評価することができる。細菌の形質転換後、プラスミドDNAを個々の細菌クローンから調製して、ウイルスエンベロープ断片の存在およびccdB配列の不在に関して制限消化によって分析することができる。この手法の実行可能性を、以下の合計13種の入手可能なHIV-1クローンからのエンベロープ領域を増幅することによって試験する: pCRII-9lUS005.11、pCRII-91006.10、pCRII-92US657.1、pCRII-92US711.14、pCRII-91US712.4、pCRII-92US714.1、pCRII-91HT652.11、pCRII-92BR020.4、pCRII-91HT651.1A、pCRII-92HT593.1、pCRII-92HT594.10、pCRI92HT596.4、pCRII-92HT599.24。これらは、AIDS Research Reagent Reference Program (ARRRP), Rockville、Maryland、より入手可能である。各断片をpCXccdB中に挿入して、生成したpHIVenv発現ベクターの構造を、制限マッピングおよび/またはDNA配列決定によって、確認することができる。各pHIVenvベクターの機能性は、トランスフェクト細胞中でのHIV-1エンベロープタンパク質合成の測定(ウエスタンブロット)、および偽型エンベロープ欠損レトロウイルスベクターに対するそれらの能力によって、証明することができる。
【0114】
2) エンベロープタンパク質をコードする領域の代わりに指示核酸を含む生物安全性 (Bio-safe) ウイルス発現ベクターの構築
PRおよびRTの阻害剤を評価するのに使用される米国特許第5,837,464号およびPetropoulosら、2000に記載の手段および方法と同様にして、生物安全性ウイルスベクターを構築し、ウイルス侵入の阻害剤を評価する。本発明のウイルス発現ベクターをエンベロープ発現ベクター(上記)とともに細胞中に同時トランスフェクトして、高力価ウイルスストック株を生産することができる。こうしたウイルスストック株を、抗ウイルス薬および中和抗体などのウイルス侵入阻害剤に対する感受性について、評価することができる。HIV-1の場合は、ウイルス発現ベクターを、十分に特性決定されているHIV-1の感染性分子クローンであるNL4-3から作製することができる。ウイルス遺伝子の発現を制御する5’長末端反復配列(LTR)を改変して、トランスフェクト細胞中でのウイルス遺伝子の転写がCMV前初期プロモーターによって駆動されるようにすることができる(Naviauxら, 1996)。エンベロープ遺伝子の大部分を欠失させることができるが、rev応答性エレメント(RRE) などの重要な制御エレメントおよび補助タンパク質コード領域(rev, tat)は残留させる。欠失させたエンベロープ配列の代わりに、CMVプロモーター-エンハンサー配列の制御下にある蛍ルシフェラーゼリポーター遺伝子カセットなどの指示核酸を挿入する(図1Bおよび3)。ウイルス感染は、感染細胞中でのルシフェラーゼ活性を測定することによって、モニターすることができる。ありそうもないが、トランスフェクト細胞中で、レトロウイルスベクターと例えばpHIVenv配列とのプラスミド間組換えが起こって、感染性HIV-1の生成をもたらすことが考えられる。生物安全性ベクターを作製するために、HIVゲノム中にいくつかの遺伝的改変の導入を実施することができる。例えば、重要な制御配列RREは残留させたままでの大部分のエンベロープ遺伝子の欠失、そしてまたベクターの3’LTRのU3領域中の転写エンハンサー配列の欠失を行うことができる(図2)。レトロウイルスゲノムの複製中、ウイルスゲノムの3’末端に位置するU3領域は、感染細胞中でプロウイルスの5’LTRのU3領域のための鋳型として作用する。こうしたプロウイルスは5’LTRのU3領域中の強力なプロモーターエレメントを欠失しているので、感染細胞中でレトロウイルスRNAを産生することができない。この自己不活化(SIN)ストラテジーは、HIV-1などのいくつかのレトロウイルスベクター系で使用されて成功している(Hwangら、1997;Miyoshiら、1998)。本発明のアッセイでは、感染細胞中でのウイルス遺伝子の発現を必要としない。なぜならば、ウイルス感染が、独自の別個のプロモーターによって駆動されるルシフェラーゼ活性の生成などの指示核酸によって生成される検出可能なシグナルによって測定されるからである(図1B)。エンベロープ配列および転写エンハンサー領域(U3)の欠失は、標準的分子クローニング操作法によって達成することができ、各欠失はDNA配列解析によって立証することができる。
【0115】
例えばHIV-1の場合、pHIVlucΔU3と命名された、このベクターの機能性は、293細胞の上記pHIVenvベクターとの同時トランスフェクションによって、証明することができる。トランスフェクト細胞中で両方のベクターによって産生されたウイルスタンパク質の効果的なトランス相補性(transcomplementation)は、ウイルス粒子の産生をもたらすことができる。ウイルス粒子を培養上清から回収し、ウエスタンブロット法によって分析することができる。ウイルス力価は、p24 ELISA、定量的PCRまたはTaqManアッセイのいずれかを常套的に適用することによって、定量することができる。
【0116】
本発明を実施するためには自己不活化ウイルス発現ベクターを産生することは必要でないが、アッセイの再現性および生物安全性を改善するためには望ましい。
【0117】
3) 受容体と共受容体を発現してウイルス感染を支援する好適な細胞系の同定
以前に記載されており、特定のウイルスの感染を支援することが知られている様々な哺乳動物細胞系を評価することができる。HIV-1に関する1実施形態について本明細書中で考察するように、アッセイを以下のように実施することができる:(a) pHIVenvおよびpHIVlucΔU3による第1細胞の同時トランスフェクション;(b)トランスフェクション後のウイルスの回収;(c) ウイルス侵入阻害剤の存在下および不在下の両方でこのウイルスを使用する第2細胞の感染;ならびに(d) 感染細胞中のルシフェラーゼ産生の測定。
【0118】
表1に、HIV-1感染について評価したこうした細胞系の代表的な例を、その細胞系および関連する受容体/共受容体を含めて掲載する。これらの細胞系のいくつかは一般の細胞保存機関から取得することができる。
【0119】
トランスフェクトした293細胞培養物から回収したウイルス粒子を使用して、多様な異なる細胞系に感染させることができる。HIV-1の場合、pHIVlucΔU3ベクターは上述のようにエンベロープ遺伝子およびU3プロモーター-エンハンサーの欠失を含んでいるので、このベクターによって産生されるウイルス粒子による許容細胞系の感染は1回の複製に限定される。このことには、(a) 上述のようにpHIVenvベクターによってトランスで生成されたウイルスエンベロープタンパク質により仲介されるウイルスの付着および侵入、(b) RTによる一本鎖ウイルスRNAの二本鎖DNAへの変換、ならびに(c) ウイルスDNAの宿主細胞ゲノム中への組込み(プロウイルスの形成)、が含まれる。プロウイルスの組み込み後に感染細胞中で通常起こるRNAポリメラーゼIIによるウイルス遺伝子の活発な転写は、pHIVlucΔU3ベクター内の必須のウイルスプロモーター-エンハンサー配列の欠失によって、制限されうる。しかし、この制限は感染細胞中でのルシフェラーゼ遺伝子発現を妨害することはできない。なぜならば、この遺伝子は内部CMVプロモーターを使用して、ウイルス遺伝子発現とは無関係に、駆動されるからである(図1B)。感染後に生成されたルシフェラーゼ活性の量を、ウイルス感染性の尺度として使用することができる。
【0120】
宿主細胞へのHIV-1の付着および侵入には、主要受容体(CD4)およびいくつかの共受容体の1つ(最も多くはCCR5またはCXCR4)との相互作用を必要とする。CD4、CCR5およびCXCR4の各種組合せを発現することが知られている細胞系をスクリーニングすることができる。具体的には、(a)CD4とCCR5、(b)CD4とCXCR4、ならびに(c)CD4とCCR5とCXCR4、を発現する、表1に掲載する細胞系が評価される。CD4受容体のみ、またはCCR5もしくはCXCR4共受容体のいずれかのみを発現する細胞系は、有用な対照として役立ち、かかる細胞系を使用して、CD4結合を必要としないかまたはCCR5およびCXCR4以外の共受容体を使用するHIV-1分離株を評価することができる。細胞系の適合性を判定するための重要な規準は、ルシフェラーゼ産生(104〜106相対光度単位)によって測定されるような感染性でありうる。さらに、細胞系は増殖速度、生存力、安定性およびその他の必要と認められるパラメーターに基づいて評価することができる。細胞系としては、維持が容易であり、また、例えば感染後に大量のルシフェラーゼ活性を生成する細胞系が選択され、これらの細胞系は異なるエンベロープ受容体指向性(例えばCD4/CXCR4およびCD4/CCR5)によって感染させることができる。例えばHIV複製を支援し、かつHIV-1受容体および共受容体を発現する、十分に特性決定されたその他の細胞系(例えばCEM-NKr-CCR5;公開カテゴリーa)がARRRPなどの公的保存機関から入手可能である。
【0121】
さらに、細胞へのポリブレンの添加による感染の促進などの標準的操作法を使用して、細胞系を増強することができる(Porterら、1998)。例えば、HIVの場合、本発明で使用するためのその他の可能性のある細胞系を以下によって同定することができる。すなわち、細胞にHIV-1実験室株を感染させて、組換えウイルスの感染力価を感染性HIV-1で得られた力価と比較するか、または本明細書に記載したウイルス発現プラスミドで細胞を直接トランスフェクトして、ウイルスの産生について評価する。ウイルス転写物の蓄積は定量的RT-PCRアッセイを使用して調べることができる。その他のウイルスについて好適な細胞系を同様の手法で同定することができる。
【0122】
本発明はアッセイ条件を最適化し、自動化を使用することによって患者サンプルのハイスループット検査を可能にする。サンプル調製法を最適化することによって、ウイルスゲノムおよびエンベロープRNAを効率的に捕捉することができる。RT-PCR条件を最適化すれば、HIV-1エンベロープ配列などの、患者由来のウイルスエンベロープ配列(約2,600塩基対)の増幅を低ウイルス負荷(約500コピー/ml)で可能にすることができる。
【0123】
4) アッセイの有用性の証明
本発明のアッセイの有用性は、以下で得られる結果によって証明される。すなわち、(1) 十分に特性決定された阻害剤の存在下でのウイルス侵入の用量依存的阻害を試験する;および(2) 十分に特性決定されたHIV-1中和抗体の存在下での感染の用量依存的阻害を試験する。
【0124】
本発明のウイルス侵入アッセイのための以下の適用例を評価した:
i) ウイルス付着および侵入阻害剤(融合、受容体および共受容体阻害剤を含む)によるHIV-1複製の阻害を検出する;
ii)HIV-1付着および侵入阻害剤に対する感受性の変化を測定する;そして
iii) HIV-1エンベロープタンパク質を標的とするワクチンに応答して産生された抗体の中和活性を検出する。
【0125】
好ましい1実施形態において、アッセイを以下のように実施することができる:(a) pHIVenvおよびpHIVlucΔU3ベクターによる第1細胞の同時トランスフェクション;(b)トランスフェクション後約48時間目のウイルスの回収;(c) ウイルス侵入阻害剤の存在および不在下の両方でのこのウイルスを使用する第2細胞の感染;ならびに(d) 感染後約48〜72時間のルシフェラーゼの産生の測定。96ウェルフォーマットを使用する、広範囲のウイルス侵入阻害剤濃度に対してHIV-1複製の用量依存的阻害を評価することができる。各阻害剤について、適切な濃度範囲を経験的に決定する。データを薬物濃度に対するルシフェラーゼ活性の阻害パーセント(log10)としてプロットする。コンピュータソフトウェアを使用してデータ解析を実施する。阻害曲線を使用して、特定の薬物または抗体について、50%阻害濃度(IC50)を決定する(図6)。
【0126】
十分に特性決定された多様なHIV-1分離株から誘導したエンベロープタンパク質について、上述のように構築したpHIVenvベクターを使用して評価する。エンベロープの共受容体指向性を規定するため、HIV-1の場合、CD4+CXCR4およびCD4+CCR5を発現する細胞を使用する感染を上述のように評価する。例えばスルホン化ポリアニオン(硫酸デキストランおよびヘパリン)などの非特異的薬物を含むHIV-1侵入を阻害することが知られている多様な化合物(表2)を、本発明のアッセイで使用することができる。それぞれCCR5およびCXCR4ケモカイン受容体のための天然のリガンドである、RantesおよびSDF-1などのケモカイン(Alkhatibら、1996;Bleulら、1996、参照)も、本発明での使用に好適である。さらに、T-20およびT1249(Trimeris, Inc.)、PRO542(Progenics)、5a8(Tanox)などのウイルス侵入阻害剤を使用して、本発明のアッセイの有用性を評価した。
【0127】
標的細胞内での薬物毒性を標準的生存能力または細胞毒性アッセイを使用して評価する(例えば色素排除、MTS、ATP)。
【0128】
融合阻害剤T20に対して低下した感受性を示すHIV-1突然変異体(Rimskyら、1998)およびエンベロープタンパク質(gp41-TM)内の薬物マップの存在下でこれらのウイルスの複製を可能にする遺伝的決定因子(突然変異)が記載されている。本発明のアッセイで薬物感受性の変化(すなわち耐性)を測定することができることを証明するため、(a) これらの突然変異エンベロープ遺伝子を保有するpHIVenvベクターを作製し、(b) これらのベクターおよびpHIVlucΔU3ベクターを使用して、第1細胞を同時トランスフェクトし、(c) これらの突然変異エンベロープタンパク質を保有するウイルスを回収し、そして(d) このウイルスをT20の存在下での感染性について試験する。T20に対する低下した薬物感受性は、突然変異エンベロープタンパク質を保有するウイルスのIC50を、規定した薬物耐性突然変異を欠失しているものと比較することによって、評価する。薬物耐性突然変異を持つエンベロープタンパク質を保有するウイルスは、薬物耐性突然変異を欠失しているエンベロープタンパク質を保有するウイルスよりも、高いIC50値を示すことができる。すなわち、阻害にはより高い薬物濃度を必要とする(図8に示したデータに等しい)。薬物耐性突然変異は、標準的な部位特異的突然変異誘発法を標準プロトコルにしたがって使用して、エンベロープ発現ベクター(pHIVenv)中に導入することができる(Petropoulosら、2000;Ziermannら、2000)。
【0129】
HIV-1感染を防御する有効なワクチンは、広範な交差反応性中和抗体によって特徴付けられる強力な体液性免疫応答を誘発しなければならないことが、広く受け入れられている。結果として、ワクチン接種された個体の血清は、免疫原を標的とする高力価の中和抗体の存在について常套的に評価される。最近になって、HIV-1/シミアン免疫不全ウイルス(SIV)キメラウイルスマカクモデル(SHIV)を使用して、Mascolaおよび共同研究者らは、粘膜チャレンジ後、こうした中和抗体の受動移入がウイルス負荷の低下をもたらすことを示した(Mascolaら、2000)。本発明のアッセイを使用して、HIV-1エンベロープ抗原などのエンベロープ抗原を標的とするワクチンに応答して産生される抗体のウイルス中和活性を迅速かつ確実に決定することができる。例えば、本発明のアッセイは、(a) 十分特性決定された多様なエンベロープタンパク質を発現するpHIVenvベクターを作製し、(b) これらのベクターおよびpHIVlucΔU3ベクターを使用して、第1細胞を同時トランスフェクトし、(c) ウイルスを回収して、抗体調製物またはワクチン血清の連続希釈物とともにインキュベートし、(d) これらのウイルスを第2細胞中での感染性について試験する。先に記載したように、また文献に記載されているように、データ解析およびIC50の決定を行うことができる。HIV-1の場合は、異なるHIV-1遺伝的バックグラウンド(例えばクレードA、B、C、D、E、F)、異なる細胞および共受容体への指向性(マクロファージ/CCR5、T細胞/CXCR4)、ならびに異なるエンベロープ特性(シンシチウムおよび非シンシチウム誘発性、実験室適応増殖物または一次分離株)を提示するように、ウイルスを選択することができる(表2)。約20〜100 TCID50/ウェルのウイルス投入量を使用し、必要に応じて調整することによって、アッセイの感度および再現性を最適化するように、各ウイルスから規定された力価のストック株を調製するのが有益でありうる。抗体調製物は、一次分離株を中和する能力などの機能的な、または特異的gp120もしくはgp41エピトープとの結合能力などの物理的な、これまでに開示された中和特性に基づいて、選択することができる(表2)。本発明のアッセイの性能は、科学文献に記載されている従来のウイルス中和アッセイで、これらの十分に特性決定された抗体試薬の活性に対して判定することができる。HIV-1感染者の広範な代表グループからの血清を使用して、アッセイ感度を最大にすると同時に細胞毒性を最小にすることができる血清希釈度の適切な範囲を確立することができる。細胞毒性は、標準的な生存能力または細胞毒性アッセイを使用して、評価することができる(例えば、色素排除、MTS、ATP)。
【0130】
以下の実施例は本発明をさらに例示および説明するために提供するものであって、いかなる場合にも限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例1】
【0131】
HIV-1 侵入阻害剤に対する表現型薬物感受性の測定
この実施例では、HIV-1の付着および侵入(以後、まとめて侵入という)の阻害剤に対する感受性を正確かつ再現可能に測定するための手段および方法を提供する。この実施例に基づいて、HIV-1侵入阻害剤に対する感受性を測定するための手段および方法を、限定するわけではないが以下のものなどのその他のウイルスに適用することができる:その他のレンチウイルス(例えばHIV-2)、その他のレトロウイルス(例えばHTLV-1および2)、ヘパドナウイルス(ヒトB型肝炎ウイルス)、フラビウイルス(ヒトC型肝炎ウイルス)、ならびにヘルペスウイルス(ヒトサイトメガロウイルス)。この実施例では、さらに侵入阻害剤に対する感受性の変更(増加および減少)を測定するための手段および方法を提供する。
【0132】
侵入阻害剤に対する感受性の測定は、米国特許第5,837,464号(国際公開番号 WO97/27319)(これは参照として、本明細書中に組み入れる)に記載された表現型薬物感受性および耐性試験のための手段および方法を応用して、実施することができる。
【0133】
エンベロープ発現ベクターの1例として、患者由来のHIVエンベロープ配列にコードされたエンベロープポリタンパク質(gp160)を発現させるために、1つのベクター(pHIVenv)を設計する(図1)。次にgp160を細胞プロテアーゼで切断すると、HIV-1ウイルス粒子の表面上のエンベロープタンパク質を構成する表面(gp120SU)および膜貫通(gp41TM)サブユニットが得られる。ウイルス発現ベクターの例として、ゲノムおよびサブゲノムウイルスRNAならびにエンベロープポリタンパク質以外のすべてのHIVタンパク質を発現させるように、第2ベクター(pHIVlucまたはpHIVluc U3のいずれか)を設計する(図1A-1B)。
【0134】
この適用例において、患者由来のセグメントはHIV-1エンベロープポリタンパク質(gp160)のコード領域(約2.5 kB)に相当し、次のいずれかを提示する:(a) HIV感染個体由来のウイルスから単離したウイルスRNAを使用して逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)によって増幅されたエンベロープ配列、または(b) 親分子クローン(典型的にはNL4-3)の部位特異的突然変異誘発によって導入された特定の突然変異を含んでいる、HIV-1の分子クローンから誘導されたエンベロープ配列。
【0135】
標準的操作法を使用して、ウイルスRNAの単離を実施した(例えば、RNAgents Total RNA Isolation System, Promega, Madison WI、またはRNAzol, Tel-Test, Friendswood, TX)。RT-PCRプロトコルを2段階に分けた。レトロウイルス逆転写酵素[例えばSuperscript II(Invitrogen, Life Technologies)、 Moloney MuLV逆転写酵素(Roche Molecular Systems, Inc., Branchburg, NJ)、またはニワトリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素(Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN)]を使用して、ウイルスRNAを第1鎖cDNAに複写した。次に、以下のポリメラーゼを使用して、cDNAを高コピー数へと増幅した:熱安定性DNAポリメラーゼ[例えばTaq(Roche Molecular Systems, Inc., Branchburg, NJ)、Tth(Roche Molecular Systems, Inc., Branchburg, NJ)、PrimeZyme(Thermus brockianusから単離, Biometra, Gottingen, Germany)]または「長鎖PCR(long PCR)」の実施について記載されたような熱安定性ポリメラーゼの組合せ(Barnes,W.M.,(1994) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91, 2216-2220) [例えば、Expand High Fidelity PCR System(Taq+Pwo), (Boehringer Mannheim, Indianapolis, IN)またはGeneAmp XL PCR キット(Tth+Vent), (Roche Molecular Systems, Inc., Branchburg, NJ)、Advantage-2,(Clontech)]。
【0136】
ウイルスRNAの第1鎖cDNAへの逆転写のために、オリゴ-dTを使用した。エンベロープPCRプライマー、フォワードプライマー Xho/Pinおよびリバースプライマー Mlu/Xba(表3)を使用して、患者由来のセグメントを増幅した。これらのプライマーは、gp160エンベロープポリタンパク質をコードする約2.5 kBエンベロープ遺伝子を増幅し、一方PCR増幅産物の5’末端にXho IおよびPin AI認識部位を、そしてPCR増幅産物の3’末端にMlu IおよびXba I部位を導入するように、設計される。
【0137】
患者由来のセグメント(2.5 kBのエンベロープ配列増幅産物)を、米国特許第5,837,464号(国際公開番号 WO97/27319)の記載の制限エンドヌクレアーゼ消化、DNA連結および細菌形質転換法を、わずかな変更を加えて、使用して、HIV-1エンベロープ発現ベクター中に挿入した。約2.5 kBの増幅産物を5’末端でXho IもしくはPin AIのいずれか、および3’末端でMlu IもしくはXba Iのいずれかにより消化した。得られた消化産物を、DNAリガーゼを使用して、改変したpCXASまたはpCXAT発現ベクターの5’Xho/Pin AIおよび3’Mlu I/Xba I部位中に連結した。pCXASおよびpCXATベクターの構築については、すでに記載されている(基本特許のCPT中、それは米国特許第5,837,464号(国際公開番号 WO97/27319)の実施例6であったと確信する)。改変したpCXASおよびpCXATベクターは、pCXASおよびpCXAT中に存在するXho I、Mlu IおよびXba I制限部位のほかに、Pin AI制限部位を含有している。Pin AI部位はXho IとMlu I部位の間に部位特異的突然変異誘発によって導入して、4つの部位が5’から3’に向かって以下の順序:Xho I、Pin AI、Mlu IおよびXba I、で位置するようにした。好ましい実施形態において、2.5 kB増幅産物をPin AIおよびMlu Iで消化し、改変pCXAS発現ベクターの5’Pin AI部位および3’Mlu I部位に連結した。連結反応産物を使用して、大腸菌(E.coli)を形質転換した。30〜37℃で24〜36時間のインキュベーション後、大腸菌(E.coli)培養物から発現ベクタープラスミドDNAを精製した。発現ベクター調製物が所定の患者の血清中に存在するHIV準種を適切に提示することを確認するため、多数(>100)の独立した大腸菌(E.coli)形質転換体をプールして、pHIVenvプラスミドDNAの調製に使用した。患者ウイルス由来のエンベロープタンパク質の発現を目的として、この手法で組み立てられるベクターをpHIVenvと総称する(図1および3)。
【0138】
ゲノムHIV発現ベクターpHIVlucおよびpHIVlucΔU3は、HIVゲノムRNAおよびサブゲノムmRNAを転写し、かつエンベロープポリタンパク質以外の全HIVタンパク質を発現するように、設計する(図1B)。これらのベクターでは、抗ウイルス薬の存在または不在下でのウイルスの複製能力をモニターするために使用される、機能性指示遺伝子カセット(この場合は「蛍ルシフェラーゼ」)を収容するために、エンベロープ遺伝子の一部が欠失されている。pHIVlucΔU3では、感染細胞における5’LTRからのウイルスRNAの転写を防止するために、3’U3領域の一部が欠失されている。
【0139】
HIV-1侵入阻害剤についての感受性アッセイを実施するにあたって、ヒト胚性腎細胞系293で構成されるパッケージ用宿主細胞(Cell Culture Facility, UC San Francisco, SF, CA)、ならびにCD4(HT4)+CCR5、およびCXCR4を発現するヒト骨肉種(HOS)細胞系、あるいはCD4とCCR5またはCD4とCXCR4を発現する星状神経膠腫(U-87)細胞系で構成される標的宿主細胞を使用した。
【0140】
pHIVenvおよびpHIVlucもしくはpHIVlucΔU3を使用して、薬物感受性試験を実施した。患者由来のセグメントにコードされたエンベロープタンパク質を含有する偽型化HIV粒子は、パッケージ用宿主細胞(HEK 293)を耐性試験ベクターDNAでトランスフェクトすることによって、作製した。トランスフェクション(約48時間)後ウイルス粒子を回収し、HIV受容体(すなわちCD4)および共受容体(すなわちCXCR4、CCR5)を発現する標的細胞(HT4/CCR5/CXCR4、またはU-87/CD4/CXCR4もしくはU-87/CD4/CCR5)への感染に使用する。感染(約72時間)後、標的細胞を溶解し、ルシフェラーゼ活性を測定する。標的宿主細胞への感染に成功してルシフェラーゼ活性を生成するためには、HIVは複製を1回完結しなければならない。感染細胞中で検出されるルシフェラーゼ活性の量を「感染性」の直接の尺度として使用する(図1および2)。何らかの理由(例えば適切な受容体もしくは共受容体の欠失、阻害性薬物の活性、中和抗体の結合)でウイルスが標的細胞に侵入することができない場合、ルシフェラーゼ活性は減衰する。薬物感受性は、薬物の不在下の感染性を薬物の存在下での感染性と比較することによって評価する。相対的薬物感受性は、「試験」ウイルスの感受性を、HIV-1の分子クローン(例えばNL4-3またはHXB2)由来の十分特性決定された参照ウイルス(野生型)の感受性と比較することによって、定量することができる。
【0141】
パッケージ用宿主細胞を直径10 cmの培養皿に播種し、プレーティングの1日後にpHIVenvおよびpHIVlucもしくはpHIVlucΔU3でトランスフェクトした。トランスフェクションはリン酸カルシウム共沈降操作法を使用して実行した。DNA沈降物を含有する細胞培養培地を、トランスフェクション後1〜24時間目に新鮮な培地と交換した。ウイルス粒子を含有する細胞培養培地は典型的にはトランスフェクション後2日目に回収し、0.45 mmフィルターを通過させた。感染前に、標的細胞を細胞培養培地にプレーティングした。侵入阻害剤は典型的には感染時(場合によっては感染の1日前)に標的細胞に添加した。典型的には、感染の3日後に、Steady-Glo試薬(Promega)および照度計を使用して、標的細胞をルシフェラーゼ活性についてアッセイした。
【0142】
1実施形態において、融合阻害薬(T-20、DP178とも称されている;Trimeris, Research Triangle Park, NC)に対する感受性を証明した(図6)。CD4、CCR5およびCXCR4を発現する標的細胞(HT4/CCR5/CXCR4)をT-20の不在下、および広範囲のT-20濃度範囲(x軸、log10目盛)下で感染させた。T-20存在下の感染細胞において産生されたルシフェラーゼの量をT-20不在下で産生されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定した。R5指向性(JRCSF、91US005.11)、X4指向性(NL4-3,92HT599.24)および二重指向性(92HT593.1)ウイルスを試験した。ウイルス複製を50%阻害するのに必要なT-20濃度(IC50、図6中、垂直破線として示す)の決定によって、薬物感受性を定量する。より低いIC50値を持つウイルスは、高いIC50値を持つウイルスよりもT-20に対してより感受性である。
【0143】
さらに別の実施形態において、多様な侵入阻害剤に対する感受性を測定することができる。これらの阻害剤には、限定するわけではないが、表4(抗HIV薬の表)に掲載する薬物および化合物が含まれる。
【0144】
第2の実施形態において、4-(ピペリジン-1-イル)ブタンクラスの化合物に属するCCR5阻害剤(Dorn,C.P.ら、(2001);Finke,P.E.ら、(2001);Merck, West Point, PA)に対する感受性を証明する。CD4およびCCR5を発現する標的細胞(U-87/CD4/CCR5) (R5細胞)をCCR5阻害剤の不在下、および広範囲のCCR5阻害剤濃度範囲(x軸、log10目盛)下で感染させた。CCR5阻害剤存在下の感染細胞において産生されたルシフェラーゼの量をCCR5阻害剤不在下で産生されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定した。R5指向性(JRCSF)、X4指向性(NL4-3)および二重指向性(92HT593.1)ウイルスを試験した。ウイルス複製を50%阻害するのに必要なCCR5阻害剤濃度(IC50、図8中、垂直破線として示す)の決定によって、薬物感受性を定量した。より低いIC50値を持つウイルスは、より高いIC50値を持つウイルスよりもCCR5阻害剤に対して感受性である。X4指向性ウイルスはU87/CD4/CCR5標的細胞に感染しなかった。
【0145】
第3の実施形態において、CXCR4阻害剤(AMD3100;AnorMED)に対する感受性を証明した。CD4およびCXCR4を発現する標的細胞(U-87/CD4/CXCR4)をCXCR4阻害剤の不在下、および広範囲のCXCR4阻害剤濃度範囲(x軸、log10目盛)下で感染させた。CXCR4阻害剤存在下の感染細胞において産生されたルシフェラーゼの量をCXCR4阻害剤不在下で産生されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定した。R5指向性(JRCSF)、X4指向性(NL4-3)および二重指向性(92HT593.1)ウイルスを試験した。ウイルス複製を50%阻害するのに必要なCXCR4阻害剤濃度(IC50、図9中、垂直破線として示す)の決定によって、薬物感受性を定量する。より低いIC50値を持つウイルスは、より高いIC50値を持つウイルスよりもCCR5阻害剤に対して感受性である。R5指向性ウイルスはU-87/CD4/CXCR4標的細胞に感染しなかった。
【0146】
CD4阻害剤(例えばマウスモノクローナル抗体 5A8;Tanox, Houston, TX)に対する感受性を測定することができる。CD4および共受容体の1つもしくは両方を発現する標的細胞(例えばHT4/CCR5/CXCR4、U-87/CD4/CXCR4またはU-87/CD4/CCR5)をCD4阻害薬の不在下、および広範囲のCD4阻害薬濃度範囲(x軸、log10目盛)下で感染させることができる。CD4阻害剤存在下の感染細胞において産生されたルシフェラーゼの量をCD4阻害剤不在下で産生されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定することができる。R5指向性(例えばJRCSF)、X4指向性(例えばNL4-3)および二重指向性(例えば92HT593.1)ウイルスを試験することができる。ウイルス複製を50%阻害するのに必要なCD4阻害剤濃度(IC50)の決定によって、薬物感受性を定量することができる。より低いIC50値を持つウイルスは、より高いIC50値を持つウイルスよりもCD4阻害剤に対して感受性である。
【実施例2】
【0147】
新規なウイルス侵入阻害剤の探索、最適化および特性決定
1実施形態において、ウイルス侵入アッセイを使用して、ウイルス侵入を阻害する新規化合物/化学物質を同定することができる。CD4および共受容体の1つもしくは両方を発現する標的細胞(例えばHT4/CCR5/CXCR4、U-87/CD4/CXCR4、またはU-87/CD4/CCR5)を、大量の化学物質ライブラリーのそれぞれのメンバーの存在下で感染させることができる(ハイスループットスクリーニング、HTS)。特定の化合物の存在下での感染標的細胞で産生されたルシフェラーゼの量を、その化合物不在下で産生されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ある化合物のウイルス複製を阻害する能力を決定することができる。
【0148】
別の実施形態において、ウイルス侵入アッセイを使用して、HTSで同定されたリード化合物の抗ウイルス活性を最適化することができる。化学的に修飾したリード化合物の誘導体を試験して、増強されたウイルス侵入阻害活性を持つ特定の誘導体を同定することができる。CD4および共受容体の1つもしくは両方を発現する標的細胞(例えばHT4/CCR5/CXCR4、U-87/CD4/CXCR4、またはU-87/CD4/CCR5)を、阻害剤候補の不在下、および広範囲にわたる阻害剤候補濃度(x軸、log10目盛)下で感染させることができる。候補阻害剤の存在下での感染細胞で産生されたルシフェラーゼの量を、その候補阻害剤不在下で産生されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定することができる。ウイルス複製を50%阻害するのに必要な阻害剤候補の濃度(IC50)の決定によって、薬物感受性を定量することができる。より低いIC50値を持つ誘導体化化合物は、より高いIC50値を持つ誘導体よりも強力な(より強い抗ウイルス活性を持つ)ウイルス侵入阻害剤である。
【0149】
さらに別の実施形態において、ウイルス侵入アッセイを使用して、新規ウイルス侵入阻害薬候補の作用機構、および感受性が異なると見られるある範囲のウイルスに対する抗ウイルス活性を特性決定することができる。CD4および共受容体の1つもしくは両方を発現する標的細胞(例えばHT4/CCR5/CXCR4、U-87/CD4/CXCR4、またはU-87/CD4/CCR5)を、新規侵入阻害薬候補の不在下、および広範囲にわたる侵入阻害薬候補濃度 (x軸、log10目盛)下で感染させることができる。新規侵入阻害剤の存在下での感染細胞で産生されたルシフェラーゼの量を、その新規侵入阻害剤不在下で産生されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定することができる。R5指向性(例えばJRCSF)、X4指向性(例えばNL4-3)および二重指向性(例えば92HT593.1)ウイルスを試験することができる。ウイルス複製を50%阻害するのに必要なCD4阻害剤の濃度(IC50)の決定によって、薬物感受性を定量することができる。
【0150】
この新規侵入阻害剤がCCR5またはCXCR4共受容体を阻止することによって作用するのかどうかを決定するため、またR5指向性ウイルスをU-87/CD4/CCR5細胞中で新規阻害剤に対して試験し、X4指向性ウイルスをU-87/CD4/CXCR4細胞中で新規阻害剤に対して試験する。R5ウイルス感染の阻害はCCR5共受容体拮抗作用を示し、逆にX4ウイルス感染の阻害はCXCR4共受容体拮抗作用を示す。R5およびX4ウイルス感染の阻害はCD4拮抗作用または膜融合の阻害のいずれかを示すものと考えられる。
【0151】
同一クラスの、または別のクラスの他のウイルス侵入阻害剤に対して耐性を示すウイルス、または低下した感受性を示すウイルスに対する新規阻害剤の活性を特性決定するために、この新規侵入阻害剤を使用するウイルス侵入アッセイで、選択したパネルの薬物耐性ウイルスを試験することができる。パネルには、CCR5阻害剤、CXCR4阻害剤、CD4阻害剤、および膜融合阻害剤に対して種々のレベルの感受性を持つウイルスが含まれうる。このパネルには、1種以上の侵入阻害剤に対する感受性/耐性の低下に関係した1以上の特異的突然変異があるウイルスも含まれうる。
【実施例3】
【0152】
ウイルス侵入阻害剤に対する感受性を変更するエンベロープのアミノ酸置換/突然変異の同定
この実施例では、ウイルス侵入阻害剤に対して低下した感受性/耐性を賦与するHIV-1エンベロープ内の突然変異を同定するための手段および方法を提供する。またこの実施例では、特定のエンベロープ突然変異によって賦与された侵入阻害剤に対する低下した感受性の程度を定量するための手段および方法を提供する。
【0153】
患者サンプルから誘導したエンベロープ配列または患者サンプルから誘導した個々のクローン、あるいは特定の突然変異を含むように部位特異的突然変異誘発によって遺伝子工学的に操作したエンベロープ配列を、侵入アッセイにおいて試験して、十分特性決定された参照用標準物質(例えばNL4-3、HXB2)に基づいて薬物感受性を定量する。
【0154】
1実施形態において、長期間にわたる患者サンプル(別の時点で同一の患者から採取したウイルス)に対する感受性を評価する。例えば、侵入阻害剤に対する感受性を、治療開始前、薬物治療による変化の前もしくは後、または疾病進行のウイルス学的(RNAコピー数)、免疫学的(CD4 T細胞)もしくは臨床的(日和見感染)マーカーの変化の前もしくは後に、測定する。
【0155】
患者 HIV サンプルの遺伝子型分析
患者サンプルプール、または患者プールから誘導したクローンを代表するエンベロープ配列を、広範囲に利用し得るDNA配列決定法によって分析することができる。本発明の1実施形態において、ウイルスRNAの精製、RT/PCRおよびジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーター配列決定化学ならびにキャピラリーゲル電気泳動(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用して、患者のHIVサンプルの配列を決定する。患者ウイルスプールもしくはクローンのエンベロープ配列を参照配列、その他の患者サンプル、または入手可能ならば、同一の患者から治療開始前に取得したサンプルと比較する。参照もしくは治療前配列と異なる配列について遺伝子型を試験し、侵入阻害剤に対する感受性の差異に相関させる。
【0156】
部位特異的突然変異体の侵入阻害剤に対する感受性
適合性の変化に相関する遺伝子型の変化は、確定された薬物感受性の遺伝的バックグラウンド(例えばNL4-3参照株)に対して特定の突然変異を含有するエンベロープ発現ベクター(pHIVenv)を構築することによって評価する。突然変異は単独で、および/または侵入阻害剤感受性をモジュレートすると考えられるその他の突然変異と組み合わせて、導入することができる。部位特異的突然変異誘発のための広範に利用可能な方法のいずれかを使用して、エンベロープ突然変異をpHIVenvベクター中に導入する。本発明の1実施形態において、部位特異的突然変異誘発のために、メガプライマー(mega-primer)PCR法を使用する(Sarkar,G. and Summer,S.S., 1990)。特定のエンベロープ突然変異または突然変異群を含有するpHIVenvベクターを、実施例1に記載したウイルス侵入アッセイを使用して試験する。エンベロープ突然変異を含有するウイルスの薬物感受性を、評価中の特定の突然変異をもたない遺伝学的に確定された薬物感受性ウイルスの薬物感受性と比較する。観察された侵入阻害剤感受性の変化は、pHIVenvベクターに導入した特定の突然変異に帰せられる。
【0157】
本発明の1実施形態において、gp41エンベロープタンパク質中の特定の薬物耐性突然変異によって賦与された、融合阻害剤 T-20に対する感受性の低下を証明する(図7)。CD4、CCR5およびCXCR4を発現する細胞に、T-20の不在下、および広範囲にわたるT-20濃度(x軸、log10目盛)下で感染させた。T-20の存在下での感染細胞で産生されたルシフェラーゼの量を、T-20不在下で産生されたルシフェラーゼの量と比較することによって、ウイルス複製の阻害パーセント(y軸)を決定した。gp41膜貫通エンベロープタンパク質中に1または2個の特定の突然変異を含有する同質遺伝子ウイルスを試験した(図の凡例中、赤で強調してある;Rimskyら、J.Virol. 72: 986-993)。ウイルス複製を50%阻害するのに必要なT-20の濃度(IC50、垂直破線として示す)の決定によって、薬物感受性を定量する。より低いIC50値を持つウイルスは、より高いIC50値を持つウイルスよりもT-20に感受性である。
【0158】
1実施形態において、十分特性決定されたX4指向性(NL4-3)およびR5指向性(JRCSF)ウイルスに薬物耐性突然変異を導入した。ウイルス侵入アッセイを使用して、T20感受性を測定した(図7)。試験ウイルスのIC50を、HIV-1のHXB2株のIC50で割ることによって、各ウイルスについてのT-20感受性の変化倍数(fold change: FC)を決定した。類似の突然変異ウイルスのT-20感受性が科学文献に報告されている(Rimskyら)。この実施形態では、gp41のGIVモチーフ内に1つの突然変異を持つウイルス(DIV、GIM、SIV)は野生型ウイルス(GIV)よりもT20に対する感受性が低かった(図11)。GIVモチーフ内に2つの突然変異を持つウイルス(DIM、SIM、DTV)はGIVモチーフ内に1つの突然変異を有するかまたは突然変異を持たないウイルスよりもT20に対する感受性が低かった(図11)。
【0159】
別の実施形態において、侵入阻害剤に対して低下(または増加)した感受性を賦与しうる突然変異を、感受性および耐性ウイルスのエンベロープ遺伝子を配列決定することによって、同定する。感受性および耐性ウイルスの推定アミノ酸配列を比較して、候補薬物耐性突然変異を同定する。特定の突然変異が変更された薬物感受性を賦与する能力は、薬物感受性ウイルス中にその突然変異を導入して、その突然変異ウイルスの感受性をウイルス侵入アッセイで測定することによって、確認または反証する。ここに示す実施例では、異なるT-20感受性を示すウイルスについて、HIV-1 gp41膜貫通エンベロープタンパク質の最初のヘプタド反復配列(heptad repeat)(HR-1)内のアミノ酸配列の短いストレッチをアライメントする(図11)。強調したアミノ酸が、T-20に対して低下した感受性を賦与することが知られた突然変異を表す。
【0160】
同様の表現型および遺伝子型分析を使用して、(a) CCR5またはCXCR4阻害剤への感受性を変更する/これに影響する、(b) X4、R5および二重指向性を特定する、そして(c) 中和抗体を引き出す、エンベロープアミノ酸配列を同定することができる。
【0161】
ある実施形態においては、特定のエンベロープアミノ酸配列/突然変異によって賦与される、共受容体(CCR5、CXCR4)阻害剤に対する低下した感受性を証明する。
【0162】
別の実施形態においては、特定のエンベロープアミノ酸配列/突然変異によって賦与される、受容体(CD4)阻害剤に対する低下した感受性を証明する。
【実施例4】
【0163】
HIV-1 共受容体および受容体指向性の判定
この実施例では、HIV-1共受容体指向性を判定するための手段および方法を提供する。この実施例では、HIV-1受容体指向性を判定するための手段および方法をも提供する。
【0164】
1実施形態においては、CCR5共受容体を使用するウイルスを同定する。関連する実施形態において、CXCR4共受容体を使用するウイルスを同定する。別の関連する実施形態では、CCR5およびCXCR4共受容体を使用するウイルスを同定する。別の関連する実施形態では、CCR5およびCXCR4以外の共受容体を使用するウイルスを同定する。
【0165】
別の実施形態において、CD4受容体を使用するウイルスを同定する。関連する実施形態において、CD8を使用するウイルスを同定する。別の関連する実施形態では、細胞に感染するためにCD4またはCD8を必要としないウイルスを同定する。
【0166】
この実施形態において、2種類の細胞系を使用してアッセイを実施する。細胞系の1つはCD4とCCR5を発現し(U-87/CD4/CCR5)、本明細書中ではR5細胞とも称する。もう一つの細胞系はCD4とCXCR4を発現し(U-87/CD4/CXCR4)、本明細書中ではX4細胞とも称する。個々の細胞培養物に、pHIVenvおよびpHIVlucもしくはpHIVlucDU3ベクターでトランスフェクトした細胞由来の組換えウイルスストック株を感染させることによって、ウイルス侵入アッセイを実施する。pHIVenvベクターは患者ウイルス由来の配列を含有し、HIV-1エンベロープタンパク質(gp120SU、gp41TM)を発現する。この実施形態において、96ウェルプレート中で培養したR5およびX4標的細胞を使用して、ウイルスを評価する(図3A)。典型的には、R5およびX4細胞を感染の1日前にプレーティングする。各ウイルスストック株による感染を以下の条件で実施する:薬物不在下(薬物不含)、R5指向性ウイルスを優先的に阻害する薬物(CCR阻害剤、例えばピペリジン-1-イルブタン化合物)の阻害濃度存在下、およびX4指向性ウイルスを優先的に阻害する薬物(CXCR4阻害剤、例えばAMD3100)の阻害濃度存在下。薬物の存在下および不在下両方での、各細胞型中で産生されたルシフェラーゼ活性の量を比較することによって、共受容体指向性を評価する。この実施形態において、各ウイルスがR5細胞もしくはX4細胞に、またはウイルスが二重指向性ならばX4およびR5細胞の両方に優先的に感染する(ルシフェラーゼ活性を産生する)能力を比較することによって、アッセイの結果を判断する。CCR5またはCXCR4阻害剤が感染を特異的に阻止する(ルシフェラーゼ活性を阻害する)能力も評価する(図3B)。この実施形態において、X4指向性ウイルスはX4細胞に感染するが、R5細胞には感染せず、またX4細胞の感染はCXCR4阻害剤(AMD3100)によって阻止される。この実施形態において、R5指向性ウイルスはR5細胞に感染するが、X4細胞には感染せず、またR5細胞の感染はCCR5阻害剤(ピペリジン-1-イルブタン化合物)によって阻止される。この実施形態において、二重指向性ウイルス、またはX4およびR5指向性ウイルスの混合物はX4およびR5細胞の両方に感染し、またR5細胞の感染はCCR5阻害剤によって阻止され、X4細胞の感染はCXCR4阻害剤によって阻止される。この実施形態において、非生存性ウイルスはX4またはR5細胞中のいずれにおいても複製しない(ルシフェラーゼ活性が産生されない)。
【0167】
別の実施形態では、3種類以上の細胞系を使用してアッセイを実施する。細胞系の1つはCD4とCCR5を発現し(U-87/CD4/CCR5)、本明細書中ではR5細胞とも称する。もう一つのの細胞系はCD4とCXCR4を発現し(U-87/CD4/CXCR4)、本明細書中ではX4細胞とも称する。これらに加えた細胞系はCD4とその他の候補HIV-1共受容体(限定するわけではないが、BONZO、BOBなど)を発現する。表1を参照されたい。これらの追加の細胞系はその他の候補共受容体を発現するが、CCR5またはCXCR4は発現しない。個々の細胞培養物に、pHIVenvおよびpHIVlucもしくはpHIVlucDU3ベクターでトランスフェクトした細胞由来の組換えウイルスストック株を感染させることによって、ウイルス侵入アッセイを実施する。pHIVenvベクターは患者ウイルス由来の配列を含有し、HIV-1エンベロープタンパク質(gp120SU、gp41TM)を発現する。この実施形態では、96ウェルプレート中で培養した細胞を使用して、ウイルスを評価する。各ウイルスストック株による感染を、R5細胞、X4細胞、およびCD4と候補共受容体を発現する細胞系で実施する。各細胞型中で産生されたルシフェラーゼ活性の量を比較することによって、共受容体指向性を評価する。この実施形態において、各ウイルスがR5細胞もしくはX4細胞に、または候補共受容体を発現する細胞系に優先的に感染する(ルシフェラーゼ活性を産生する)能力を比較することによって、アッセイの結果を判断する。この実施形態では、X4指向性ウイルスはX4細胞に感染するが、R5細胞には感染しない。この実施形態では、R5指向性ウイルスはR5細胞に感染するが、X4細胞には感染しない。この実施形態では、二重指向性ウイルス、またはX4およびR5指向性ウイルスの混合物はX4およびR5細胞の両方に感染する。この実施形態において、(CCR5でもCXCR4でもない)別の候補共受容体を発現する細胞系の感染は、その別の共受容体への指向性に起因する。この実施形態において、非生存性ウイルスはX4またはR5細胞中のいずれにおいても複製しない。
【0168】
別の実施形態においては、4種類の細胞系を使用してアッセイを実施する。細胞系の1つはCD4とCCR5を発現し(U-87/CD4/CCR5)、本明細書中ではR5細胞とも称する。第2の細胞系はCD4とCXCR4を発現し(U-87/CD4/CXCR4)、本明細書中ではX4細胞とも称する。第3の細胞系はCD8とCCR5を発現し(U-87/CD8/CCR5)、本明細書中ではCD8/R5細胞とも称する。第4の細胞系はCD8とCXCR4を発現し(U-87/CD8/CXCR4)、本明細書中ではCD8/X4細胞とも称する。個々の細胞培養物に、pHIVenvおよびpHIVlucもしくはpHIVlucDU3ベクターでトランスフェクトした細胞由来の組換えウイルスストック株を感染させることによって、ウイルス侵入アッセイを実施する。pHIVenvベクターは患者ウイルス由来の配列を含有し、HIV-1エンベロープタンパク質(gp120SU、gp41TM)を発現する。この実施形態において、96ウェルプレート中で培養した細胞を使用して、ウイルスを評価する。各ウイルスストック株による感染を、R5細胞、X4細胞、CD8/R5細胞およびCD8/X4細胞中で実施する。各細胞型中で産生されたルシフェラーゼ活性の量を比較することによって、共受容体指向性を評価する。この実施形態では、各ウイルスがR5細胞、X4細胞、CD8/R5細胞またはCD8/X4細胞に優先的に感染する(ルシフェラーゼ活性を産生する)能力を比較することによって、アッセイの結果を判断する。この実施形態において、CD4指向性ウイルスはX4細胞および/またはR5細胞に感染する。この実施形態において、CD8指向性ウイルスはCD8/R5細胞および/またはCD8/X4細胞に感染する。この実施形態において、二重指向性(CD4およびCD8受容体を使用する)ウイルスはX4細胞および/またはR5細胞ならびにCD8/X4および/またはCD8/R5細胞に感染する。この実施形態において、CD8は発現するがCD4は発現しない細胞系の感染は、CD8受容体への指向性に起因する。この実施形態において、非生存性ウイルスはX4またはR5細胞中のいずれにおいても複製しない。
【0169】
関連するさらに別の実施形態において、2種類の細胞系を使用してアッセイを実施する。細胞系の1つはCD4とCCR5とCXCR4を発現する(HT4/CCR5/CXCR4)。第2の細胞系はCD8とCCR5とCXCR4を発現する(HOS/CD8/CCR5/CXCR4)。個々の細胞培養物に、pHIVenvおよびpHIVlucもしくはpHIVlucDU3ベクターでトランスフェクトした細胞由来の組換えウイルスストック株を感染させることによって、ウイルス侵入アッセイを実施する。pHIVenvベクターは患者ウイルス由来の配列を含有し、HIV-1エンベロープタンパク質(gp120SU、gp41TM)を発現する。この実施形態において、96ウェルプレート中で培養した細胞を使用して、ウイルスを評価する。各ウイルスストック株による感染を、HT4/CCR5/CXCR4細胞およびHOS/CD8/CCR5/CXCR4細胞中で実施する。各細胞型中で産生されたルシフェラーゼ活性の量を比較することによって、共受容体指向性を評価する。この実施形態では、各ウイルスがHT4/CCR5/CXCR4細胞またはHOS/CD8/CCR5/CXCR4細胞に優先的に感染する(ルシフェラーゼ活性を産生する)能力を比較することによって、アッセイの結果を判断する。この実施形態において、CD4指向性ウイルスはHT4/CCR5/CXCR4細胞に感染するが、HOS/CD8/CCR5/CXCR4細胞には感染しない。この実施形態において、CD8指向性ウイルスはHOS/CD8/CCR5/CXCR4細胞には感染するが、HT4/CCR5/CXCR4細胞には感染しない。この実施形態において、二重指向性(CD4およびCD8受容体を使用する)ウイルスはHT4/CCR5/CXCR4細胞およびHOS/CD8/CCR5/CXCR4細胞の両方に感染する。この実施形態において、CD8は発現するがCD4は発現しない細胞系の感染は、CD8受容体への指向性に起因する。この実施形態において、非生存性ウイルスはX4またはR5細胞中のいずれにおいても複製しない。
【0170】
別の実施形態において、2種類の細胞系を使用してアッセイを実施する。細胞系の1つはCD4とCCR5とCXCR4を発現する(HT4/CCR5/CXCR4)。第2の細胞系はCCR5とCXCR4を発現するがCD4またはCD8を発現しない(HOS/CCR5/CXCR4)。個々の細胞培養物に、pHIVenvおよびpHIVlucもしくはpHIVlucDU3ベクターでトランスフェクトした細胞由来の組換えウイルスストック株を感染させることによって、ウイルス侵入アッセイを実施する。pHIVenvベクターは患者ウイルス由来の配列を含有し、HIV-1エンベロープタンパク質(gp120SU、gp41TM)を発現する。この実施形態において、96ウェルプレート中で培養した細胞を使用して、ウイルスを評価する。各ウイルスストック株による感染を、HT4/CCR5/CXCR4細胞およびHOS/CCR5/CXCR4細胞中で実施する。各細胞型中で産生されたルシフェラーゼ活性の量を比較することによって、CD4およびCD8非依存性感染を評価する。この実施形態において、各ウイルスがHT4/CCR5/CXCR4細胞またはHOS/CCR5/CXCR4細胞に優先的に感染する(ルシフェラーゼ活性を産生する)能力を比較することによって、アッセイの結果を判断する。この実施形態において、CD4依存性ウイルスはHT4/CCR5/CXCR4細胞に感染するが、HOS/CCR5/CXCR4細胞には感染しない。この実施形態において、CD4非依存性ウイルスはHOS/CCR5/CXCR4細胞およびHT4/CCR5/CXCR4細胞の両方に感染する。この実施形態において、CD4の発現を欠損している細胞系の感染は、CD4非依存性感染によるものと解釈される。この実施形態において、非生存性ウイルスはX4またはR5細胞中のいずれでも複製しない。
【実施例5】
【0171】
共受容体および受容体指向性を変更する HIV-1 エンベロープアミノ酸の置換/突然変異の同定
この実施例では、共受容体指向性(X4対R5対X4/R5二重)を特定するか変更するHIV-1エンベロープアミノ酸配列を同定するための手段および方法を提供する。またこの実施例では、CXCR4またはCCR5以外の共受容体の利用を特定するHIV-1エンベロープアミノ酸配列を同定するための手段および方法を提供する。この実施例はまた、受容体指向性(CD4対CD8)を特定するHIV-1エンベロープ配列を同定するための手段および方法を提供する。
【0172】
実施例4に記載したように、患者サンプルまたは患者サンプル由来の個々のクローンから誘導したエンベロープ配列、あるいは特定の突然変異を含むように部位特異的突然変異誘発によって遺伝子操作したエンベロープ配列を侵入アッセイで試験して、共受容体指向性を決定する。
【0173】
ある実施形態においては、長期間にわたる患者サンプル(異なる時点で同一の患者から回収したウイルス)の共受容体指向性を評価する。例えば、共受容体指向性を、治療開始前、薬物治療による変化の前後、または疾病進行のウイルス性マーカー(RNAコピー数)、免疫学的マーカー(CD4 T細胞)もしくは診断マーカー(日和見感染)の変化の前後に評価する。
【0174】
別の実施形態において、多数の異なる患者から採取したサンプルについて、共受容体指向性を評価する。さらに別の実施形態において、異なるウイルスおよび患者集団に相当する多数の患者から採取したサンプルについて、共受容体指向性を評価する。こうした患者集団として、限定するわけではないが、新たに感染した患者、慢性的に感染した患者、進行した疾患を有する患者、および抗レトロウイルス治療もしくは免疫治療を受けている患者が含まれる。こうしたウイルス集団として、限定するわけではないが、明確に区別される遺伝的特徴を持つウイルス(クレードA、B、C、D、E、F、G)、抗レトロウイルス薬に感受性があるウイルス、抗レトロウイルス薬への感受性/耐性が低下したウイルスが含まれる。
【0175】
患者 HIV サンプルの遺伝子型分析
患者サンプルプール、または患者プール由来のクローンに相当するエンベロープ配列を、広く利用し得るDNA配列決定法のいずれかによって、分析することができる。本発明の1実施形態において、ウイルスRNA精製、RT/PCRおよびジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーター配列決定化学ならびにキャピラリーゲル電気泳動(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用して、患者のHIVサンプルの配列を決定する。患者ウイルスプールまたはクローンのエンベロープ配列を参照配列、その他の患者サンプル、または入手可能ならば、同一の患者から治療開始前に取得したサンプルと比較する。参照配列もしくは治療前配列と異なる配列について遺伝子型を検査し、侵入阻害剤の感受性の差異に相関させる。
【0176】
遺伝的に特性決定されたウイルスの共受容体および受容体指向性
共受容体指向性に相関するエンベロープアミノ酸配列を、確定された遺伝子バックグラウンド(例えばX4指向性についてNL4-3、R5についてJRCSF)に対して特定の突然変異を含むエンベロープ発現ベクター(pHIVenv)を構築することによって、評価する。突然変異は単独で、および/または共受容体の利用性をモジュレートすると考えられるその他の突然変異群と組み合わせて、組み込むことができる。部位特異的突然変異誘発のための広く利用可能な方法のいずれかを使用して、エンベロープ突然変異をpHIVenvベクター中に導入することができる。本発明の1実施形態では、部位特異的突然変異誘発のためのメガプライマー(mega-primer)PCR法を使用する(Sarkar,G. and Summer,S.S., 1990)。実施例1に記載したウイルス侵入アッセイを使用して、特定のエンベロープ突然変異または突然変異群を含むpHIVenvベクターを試験する。エンベロープ突然変異を含むウイルスの共受容体指向性を、評価中の特定の突然変異を含まない遺伝的に確定されたウイルスの共受容体指向性と比較する。十分特性決定された参照ウイルス中にこの突然変異を導入し、実施例4に記載したウイルス侵入アッセイで突然変異ウイルスの共受容体指向性を評価することによって、特定の突然変異が共受容体指向性を変化させる能力を確認または反証する。観察された共受容体指向性の変化はpHIVenvベクター中に導入された特定の突然変異によるものと考える。
【0177】
本発明の1実施形態において、表面エンベロープタンパク質gp120のV3ループ内のアミノ酸配列を評価することによって、R5指向性の遺伝的決定基を同定する。多数のX4指向性ウイルスおよびR5指向性ウイルスのアミノ酸配列を比較することによって、評価中のアミノ酸配列を同定する。X4およびR5ウイルス間で一貫性がある差異を評価のために選択する。エンベロープタンパク質gp120のV3ループ内に特定の「R5候補」突然変異を含む、十分特性決定されたX4親クローン(例えばNL4-3、HXB2)に基づく同質遺伝子ウイルスを、部位特異的突然変異誘発によって構築し、実施例4に記載したように共受容体指向性について試験する。CD4とCCR5(例えばU-87/CD4/CCR5)またはCD4とCXCR4(例えばU-87/CD4/CXCR4)を発現する細胞に、R5(ピペリジン-1-イルブタン化合物)およびX4(AMD3100)阻害剤の不在下、ならびに阻害濃度のR5およびX4薬物の存在下で、感染させる。X4指向性ウイルスをR5指向性ウイルスに変化させるアミノ酸置換を、R5指向性の遺伝的決定基として同定する。
【0178】
本発明の関連実施形態においては、表面エンベロープタンパク質gp120のV3ループ内のアミノ酸配列を評価することによって、X4指向性の遺伝的決定基を同定する。多数のX4指向性ウイルスおよびR5指向性ウイルスのアミノ酸配列を比較することによって、評価中のアミノ酸配列を同定する。X4およびR5ウイルス間での一貫性がある差異を評価のために選択する。エンベロープタンパク質gp120のV3ループ内に特定の「X4候補」突然変異を含む、十分特性決定されたR5親クローン(例えばJRCSF)に基づく同質遺伝子ウイルスを、部位特異的突然変異誘発によって構築し、実施例4に記載したように共受容体指向性について試験する。CD4とCCR5(例えばU-87/CD4/CCR5)またはCD4とCXCR4(例えばU-87/CD4/CXCR4)を発現する細胞に、R5(ピペリジン-1-イルブタン化合物)およびX4(AMD3100)阻害剤の不在下、ならびに阻害濃度のR5およびX4薬物の存在下で、感染させる。X4指向性ウイルスをR5指向性ウイルスに変化させるアミノ酸置換を、R5指向性の遺伝的決定基として同定する。
【0179】
本発明の関連実施形態において、完全gp120表面エンベロープタンパク質内のアミノ酸配列を評価することによって、X4またはR5指向性の遺伝的決定基を同定する。
【0180】
本発明の関連実施形態において、膜貫通エンベロープタンパク質gp41内のアミノ酸配列を評価することによって、X4またはR5指向性の遺伝的決定基を同定する。
【0181】
本発明の関連実施形態において、表面エンベロープタンパク質gp120のV3ループ内のアミノ酸配列を評価することによって、CCR5およびCXCR4以外の共受容体の使用を特定する遺伝的決定基を同定する。CXCR4またはCCR5を発現しないが、その他の候補共受容体を発現する細胞で複製する能力があるウイルスのアミノ酸配列を比較することによって、評価中のアミノ酸配列を同定する。これらの非X4、非R5ウイルスとX4およびR5ウイルス間でのアミノ酸配列の一貫性がある差異を評価のために選択する。エンベロープタンパク質gp120のV3ループ内に特定の「非X4、非R5候補」突然変異を含む、十分特性決定されたX4(例えばNL4-3)またはR5親クローン(例えばJRCSF)に基づく同質遺伝子ウイルスを、部位特異的突然変異誘発によって構築し、実施例4に記載したように共受容体指向性について試験する。CD4とCCR5(例えばU-87/CD4/CCR5)、CD4とCXCR4(例えばU-87/CD4/CXCR4)およびCD4とその他の候補共受容体(U-87/CD4/X)を発現する細胞に、R5(ピペリジン-1-イルブタン化合物)およびX4(AMD3100)阻害剤の不在下、ならびに阻害濃度のR5およびX4薬物の存在下で、感染させる。非X4、非R5共受容体に対する指向性を賦与するアミノ酸置換を、その特定の共受容体に対する指向性の遺伝的決定基として同定する。
【0182】
本発明の関連実施形態において、完全gp120表面エンベロープタンパク質内のアミノ酸配列を評価することによって、その他の共受容体に対する指向性の遺伝的決定基を同定する。
【0183】
本発明の関連実施形態において、膜貫通エンベロープタンパク質gp41内のアミノ酸配列を評価することによって、その他の共受容体に対する指向性の遺伝的決定基を同定する。
【0184】
本発明の別の実施形態において、表面エンベロープタンパク質gp120のV3ループ内のアミノ酸配列を評価することによって、HIV-1のための受容体として(CD4に加えて、またはその代わりに)CD8の使用を特定する遺伝的決定基を同定する。CD4を発現しないが、CD8を発現する細胞で複製する能力があるウイルスのアミノ酸配列を比較することによって、評価中のアミノ酸配列を同定する。これらのCD4指向性ウイルスとCD8指向性ウイルス間でのアミノ酸配列の一貫性がある差異を評価のために選択する。エンベロープタンパク質gp120のV3ループ内に特定の「CD8候補」突然変異を含む、十分特性決定されたCD4指向性(例えばNL4-3、JRCSF)親クローンに基づく同質遺伝子ウイルスを、部位特異的突然変異誘発によって構築し、実施例4に記載したようにCD8受容体指向性について試験する。CD4とCCR5(例えばU-87/CD4/CCR5)、CD4とCXCR4(例えばU-87/CD4/CXCR4)、CD8とCCR5(例えばU-87/CD8/CCR5)、CD8とCXCR4(例えばU-87/CD8/CXCR4)を発現する細胞に感染させる。CD8は発現するがCD4は発現しない細胞中での複製を可能にするアミノ酸置換を、CD8指向性の遺伝的決定基として同定する。
【0185】
本発明の関連実施形態において、完全gp120表面エンベロープタンパク質内のアミノ酸配列を評価することによって、CD8指向性の遺伝的決定基を同定する。
【0186】
本発明の関連実施形態において、膜貫通エンベロープタンパク質gp41内のアミノ酸配列を評価することによって、CD8指向性の遺伝的決定基を同定する。
【実施例6】
【0187】
HIV-1 抗体中和の測定
この実施例では、本明細書中でウイルス中和とも称する、抗体が介在するHIV-1中和を評価するための手段および方法を提供する。この実施例では、HIV-1感染患者内での抗体のウイルス中和活性を評価するための手段および方法をも提供する。この実施例では、治療用ワクチンおよびワクチン候補を接種した個体または動物内での抗体のウイルス中和活性を評価するための手段および方法をも提供する。この実施例では、防御(感染予防または発病予防)用ワクチンおよびワクチン候補を接種した個体または動物内での抗体のウイルス中和活性を評価するための手段および方法をも提供する。この実施例では、特定のモノクローナルもしくはポリクローナル抗体の調製物のウイルス中和活性を評価するための手段および方法をも提供する。
【0188】
患者サンプル、または患者サンプルに由来する個々のクローンから誘導したエンベロープ配列、あるいは部位特異的突然変異誘発によって特定の突然変異を含むように遺伝子操作したエンベロープ配列を侵入アッセイで試験して、抗体介在中和を評価する。
【0189】
1実施形態において、長期間にわたる患者サンプル(異なる時点で同一の患者から回収したウイルス)について抗体介在中和を評価する。例えば、ワクチン接種前、ワクチン接種過程中、およびワクチン接種過程完了後に時間を追って、ウイルス中和を評価する。関連する実施形態において、限定するわけではないが、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、およびウシを含む動物の血清を、候補ワクチンの接種前、反復接種中、および接種過程の完了後に時間を追って、評価する。1実施形態において、ウイルス中和を、予防用ワクチンおよびワクチン候補について評価する。別の実施形態において、治療用ワクチンについて、ウイルス中和を評価する。
【0190】
別の実施形態において、ウイルス中和を、多数の異なる患者から採取したサンプルについて評価する。別の実施形態において、ウイルス中和を、異なる患者集団および異なるウイルス集団に相当する多数の患者から採取したサンプルについて評価する。「患者集団」として、限定するわけではないが、以下が含まれる:新たに感染した患者、慢性的に感染した患者、重症HIV/AIDS疾病がある患者、疾病が急速に進行している患者、疾病の進行が緩慢な患者(典型的には長期非進行患者と称される)、抗レトロウイルス治療もしくは免疫治療(例えばインターロイキン-2、またはその他のサイトカイン)中の患者、ワクチン接種した患者、およびワクチン接種してない患者。「ウイルス集団」として、限定するわけではないが、以下が含まれる:明確に区別される遺伝的特徴および地理的起源を持つウイルス(クレードA、B、C、D、E、F、G)、抗レトロウイルス薬に感受性があるウイルス、抗レトロウイルス薬への感受性/耐性が低下したウイルス、一次分離株もしくは細胞培養物中での増殖に適応させた分離株(実験用適応ウイルスと称されることが多い)、シンシチア誘発性(SI)ウイルス、非シンシチア誘発性(NSI)ウイルス、マクロファージ(M)指向性ウイルス、T細胞(T)指向性ウイルス、ならびに二重指向性(MおよびT)ウイルス。
【0191】
患者抗体の特性決定 ( 標準ウイルスパネルに対する患者抗体 )
この実施形態においては、HIV-1受容体CD4とHIV-1共受容体CCR5およびCXCR4を発現する標的細胞系(HT4/CCR5/CXCR4)を使用して、アッセイを実施する。かかる細胞系はR5およびX4指向性ウイルスの両方について抗体の中和活性を評価することができる。関連実施形態において、2種類の標的細胞系を使用してアッセイを実施する。細胞系の1つはCD4とCCR5を発現し(U-87/CD4/CCR5)、R5指向性ウイルスを試験するために使用する。もう1つの細胞系はCD4とCXCR4を発現し(U-87/CD4/CXCR4)、X4指向性ウイルスを試験するために使用する。個々の標的細胞培養物に、pHIVenvおよびpHIVlucもしくはpHIVlucDU3ベクターでトランスフェクトしたパッケージ用宿主細胞由来の組換えウイルスストック株を感染させることによって、ウイルス侵入アッセイを実施する。この実施形態において、pHIVenvベクターは特定してかつ十分に特性決定されたウイルスのエンベロープ配列を含み、HIV-1エンベロープタンパク質(gp120SU、gp41TM)を発現する。かかるウイルスは「標準ウイルスパネル」(上記ウイルス集団の記載参照)に相当する。標準パネルを構成し得るウイルスとして適当な例のいくつかを、全部ではないが、表4に掲載する。標準ウイルスパネルの1つを使用して、多くの異なる患者および/または動物(上記の患者集団の記載参照)から取得した血清の中和抗体活性を比較する。この実施形態において、96ウェルプレートで培養した標的細胞を使用して、ウイルスを評価する。典型的には、感染の1日前に、HT4/CCR5/CXCR4について1ウェルあたり5,000細胞で、またはU-87/CD4/CCR5およびU-87/CD4/CXCR4について1ウェルあたり10,000細胞で、標的細胞をプレーティングする。標的細胞の感染の前に、評価中の血清または抗体調製物とともにウイルスストック株を予備インキュベート(典型的には1時間)する。この血清または抗体調製物は希釈せずに、または希釈率を漸増させて(典型的には4〜5回連続して10倍希釈して)試験する。標的細胞のウイルスストック株での感染を抗体不在下(抗体なし)でも実施する。抗体の存在下および不在下の両方で、標的細胞中で産生されたルシフェラーゼ活性の量を比較することによって、ウイルス中和を評価する。この実施形態において、各抗体が標的細胞の感染を阻止する(ルシフェラーゼ活性を低下させるか、または消失させる)能力を比較することによって、アッセイの結果を解釈する。標的細胞感染を阻止することができる抗体の最大希釈率(最も希釈したもの)(例えば抗体不在下で産生されるルシフェラーゼ活性を50%低下させることができる最大希釈率)に注目することによって、ウイルス中和活性を定量する。
【0192】
患者 HIV-1 の特性決定 ( 標準抗体パネルに対する患者ウイルス )
この実施形態において、HIV-1受容体CD4とHIV-1共受容体CCR5およびCXCR4を発現する標的細胞系(HT4/CCR5/CXCR4)を使用して、アッセイを実施する。かかる細胞系はR5およびX4指向性ウイルスの両方について抗体の中和活性を評価することができる。関連実施形態において、2種類の標的細胞系を使用してアッセイを実施する。細胞系の1つはCD4とCCR5を発現し(U-87/CD4/CCR5)、R5指向性ウイルスを試験するために使用する。もう1つの細胞系はCD4とCXCR4を発現し(U-87/CD4/CXCR4)、X4指向性ウイルスを評価するために使用する。個々の標的細胞培養物に、pHIVenvおよびpHIVlucもしくはpHIVlucDU3ベクターでトランスフェクトしたパッケージ用宿主細胞由来の組換えウイルスストック株を感染させることによって、ウイルス侵入アッセイを実施する。この実施形態において、pHIVenvベクターは患者ウイルス由来のエンベロープ配列を含み、HIV-1エンベロープタンパク質(gp120SU、gp41TM)を発現する。この実施形態において、異なる患者集団(上記患者集団についての記載参照)、および/または異なるウイルス集団(上記ウイルス集団についての記載参照)を使用して、pHIVenvベクターを構築する。pHIVenvベクターから誘導した偽型HIVをウイルス侵入アッセイで評価して、これらがあるパネルの特定してかつ十分に特性決定された抗体調製物による中和に感受性があるかどうかを判定する。かかる抗体は「標準抗体パネル」に相当する。標準パネルを構成し得る抗体として適切な例のいくつかを、全部ではないが、表4に掲載する。この実施形態において、96ウェルプレートで培養した標的細胞を使用してウイルス中和を評価する。典型的には、感染の1日前に、HT4/CCR5/CXCR4について1ウェルあたり5,000細胞で、またはU-87/CD4/CCR5およびU-87/CD4/CXCR4について1ウェルあたり10,000細胞で、標的細胞をプレーティングする。感染の前に、標準抗体パネル中の各抗体調製物とともに各患者由来のウイルスストック株をインキュベート(典型的には1時間)する。この血清または抗体調製物は希釈せずに、または各種希釈率(典型的には4〜5回の連続10倍希釈)で試験する。標的細胞の各ウイルスストック株での感染を薬物不在下(薬物不含)でも実施する。抗体の存在下および不在下の両方で、標的細胞中で産生されたルシフェラーゼ活性の量を比較することによって、ウイルス中和を評価する。この実施形態において、各抗体が標的細胞の感染を優先的に阻止する(ルシフェラーゼ活性を低下させるか、または消失させる)能力を比較することによって、アッセイの結果を解釈する。標的細胞感染を阻止することができる抗体の最大希釈率(最も希釈したもの)(例えば抗体不在下で産生されるルシフェラーゼ活性を50%低下させることができる最大希釈率)に注目することによって、ウイルス中和活性を定量する。
【実施例7】
【0193】
中和抗体応答を誘発し、変更し、または阻止する HIV-1 エンベロープアミノ酸配列の同定
この実施例では、抗体が介在するHIV-1感染の中和(本明細書中でウイルス中和とも称する)を誘発/促進、変更または阻止するHIV-1エンベロープアミノ酸配列を同定するための手段および方法を提供する。
【0194】
実施例6に記載したように、患者サンプル、または患者サンプルに由来する個々のクローンから誘導したエンベロープ配列、あるいは部位特異的突然変異誘発によって特定の突然変異を含むように遺伝子操作したエンベロープ配列を侵入アッセイで試験して、共受容体指向性を判定する。
【0195】
1実施形態において、長期間にわたる患者サンプル(異なる時点で同一の患者から回収したウイルス)について抗体介在中和を評価する。例えば、ワクチン接種前、ワクチン接種過程中、およびワクチン接種過程完了後に時間を追って、ウイルス中和を評価する。1実施形態において、ウイルス中和を予防用ワクチンについて評価する。別の実施形態において、ウイルス中和を治療用ワクチンについて評価する。
【0196】
別の実施形態において、ウイルス中和を、多数の異なる患者から採取したサンプルについて評価する。さらに別の実施形態において、ウイルス中和を、異なるウイルスおよび患者集団に相当する多数の患者から採取したサンプルについて評価する。こうした患者集団として、限定するわけではないが、以下が含まれる:新たに感染した患者、慢性的に感染した患者、疾病が進行した患者、抗レトロウイルス治療もしくは免疫治療中の患者、ワクチン接種した患者、およびワクチン接種してない患者。かかるウイルス集団として、限定するわけではないが、以下が含まれる:明確に区別される遺伝的特徴を持つウイルス(クレードA、B、C、D、E、F、G)、抗レトロウイルス薬に感受性があるウイルス、抗レトロウイルス薬への感受性/耐性が低下したウイルス、一次分離株もしくは細胞培養物中での増殖に適応させた分離株(実験用適応ウイルスと称されることが多い)、シンシチア誘発性(SI)ウイルス、非シンシチア誘発性(NSI)ウイルス、マクロファージ(M)指向性ウイルス、T細胞(T)指向性ウイルス、ならびに二重指向性(MおよびT)ウイルス。
【0197】
患者 HIV サンプルの遺伝子型分析
患者サンプルプール、または患者プール由来のクローンに相当するエンベロープ配列を、広く利用し得るDNA配列決定法のいずれかによって、分析することができる。本発明の1実施形態において、ウイルスRNA精製、RT/PCRおよびジデオキシヌクレオチドチェーンターミネーター配列決定化学ならびにキャピラリーゲル電気泳動(Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用して、患者のHIVサンプルの配列を決定する。患者ウイルスプールまたはクローンのエンベロープ配列を参照配列、その他の患者サンプル、または入手可能ならば、同一の患者から治療開始前に取得したサンプルと比較する。参照配列もしくは治療前配列と異なる配列について遺伝子型を検査し、侵入阻害剤の感受性の差異に相関させる。
【0198】
遺伝的に特性決定されたウイルスの抗体介在中和
ウイルス中和に相関するエンベロープアミノ酸配列を、確定された遺伝子型バックグラウンド(例えばX4指向性についてNL4-3、R5指向性についてJRCSF)に対して特異的な突然変異を含むエンベロープ発現ベクター(pHIVenv)を構築することによって評価する。突然変異は単独で、および/またはウイルス中和をモジュレートすると考えられるその他の突然変異と組み合わせて、導入することができる。部位特異的突然変異誘発のための広く利用可能な方法のいずれかを使用して、エンベロープ突然変異をpHIVenvベクター中に導入することができる。本発明の1実施形態において、部位特異的突然変異誘発のために、メガプライマーPCR法を使用する(Sarkar,G. and Summer,S.S., 1990)。特定のエンベロープ突然変異または突然変異群を含むpHIVenvベクターを、実施例6に記載したウイルス侵入アッセイを使用して試験する。中和活性を比較するために、特定の抗体調製物(すなわち、十分特性決定されたモノクローナルまたはポリクローナル抗体調製物)、HIV感染患者からの血清、またはワクチン接種した個体からの血清を選択することができる。エンベロープ突然変異を含むウイルスの抗体中和を、評価中の特定の突然変異を含まない遺伝的に確定されたウイルスの抗体中和と比較する。特定の突然変異が抗体中和を賦与し、変更し、または阻止する能力を、十分特性決定された参照ウイルス中へその突然変異を導入し、実施例6に記載したウイルス侵入アッセイでその突然変異ウイルスの抗体介在中和を評価することによって、確認または反証する。観察されたウイルス中和の変化はpHIVenvベクター中に導入した特定の突然変異によるものと考える。
【0199】
本発明の1実施形態において、表面エンベロープタンパク質gp120のV3ループ内のアミノ酸配列を評価することによって、ウイルス中和の遺伝的決定基を同定する。各種の十分特性決定された抗体調製物、患者血清、またはワクチン接種した個体からの血清によって中和し得る、または中和し得ない、多数のウイルスのアミノ酸配列を比較することによって、評価中のアミノ酸配列を同定する。中和し得る、または中和し得ない、ウイルス間でのV3アミノ酸配列の一貫性がある差異を評価のために選択する。エンベロープタンパク質gp120のV3ループ内に特定の「ウイルス中和候補」突然変異を含む、十分特性決定された親クローン(例えばNL4-3、HXB2、JRCSF)に基づく同質遺伝子ウイルスを、部位特異的突然変異誘発によって構築し、実施例6に記載したように抗体介在中和について試験する。CD4とCCR5(例えばU-87/CD4/CCR5)、CD4とCXCR4(U-87/CD4/CXCR4)、またはCD4とCCR5とCXCR4(HT4/CCR5/CXCR4)を発現する細胞に、感染させる。抗体中和を誘発し、変更しまたは阻止する変化をもたらすアミノ酸の置換は、ウイルス中和に重要であると認められる。
【0200】
本発明の関連実施形態では、全gp120表面エンベロープタンパク質内のアミノ酸配列を評価することによって、ウイルス中和の遺伝的決定基を同定する。
【0201】
本発明の関連実施形態では、膜貫通エンベロープタンパク質gp41内のアミノ酸配列を評価することによって、ウイルス中和の遺伝的決定基を同定する。
【実施例8】
【0202】
治療決定の指針にするための、ウイルス侵入阻害剤に対する感受性の測定
本実施例では、HIV-1治療の指針にするために、ウイルス侵入阻害剤に対する感受性を使用するための手段および方法を提供する。本実施例ではさらに、以前にウイルス侵入阻害剤による抗レトロウイルス治療を受けたことがある患者の治療の指針にするために、ウイルス侵入阻害剤に対する感受性を使用するための手段および方法を提供する。本発明はさらに、以前にウイルス侵入阻害剤治療を受けたことがない患者の治療の指針にするために、ウイルス侵入阻害剤に対する感受性を使用するための手段および方法を提供する。
【0203】
1実施形態において、患者ウイルスのウイルス侵入阻害剤に対する感受性を使用して、1種以上のウイルス侵入阻害剤を含む抗レトロウイルス治療計画が失敗した患者の治療の指針にする。治療失敗(ウイルス学的失敗とも称される)は、部分的抑制抗ウイルス治療の結果として、ウイルスが検出可能なレベル(典型的には患者の血漿中で測定される)になるものとして一般的に定義される。方針として、限定するわけではないが、以下のものが含まれる:(a) 利用可能な薬物治療選択肢の解明、(b) より有効な治療計画の選択、(c) 治療患者においてウイルス負荷量が上昇する因果関係の解明(すなわち、低付着性、薬物耐性)、ならびに(d) 不活性薬物および潜在的毒性薬物の使用の低減。この実施形態において、耐性試験用ベクターを患者ウイルスサンプルから誘導し、ウイルス侵入表現型アッセイを使用して、各種のウイルス侵入阻害剤に対する感受性について試験する。ウイルス侵入阻害剤として、限定するわけではないが、以下のものが含まれる:融合阻害剤(例えばT-20、T-1249)、共受容体アンタゴニスト(AMD3100、AMD8664、TAK779、PRO542、およびピペリジン-1-イルブタン化合物)、ならびにCD4アンタゴニスト(MAb 5A8)。適切な治療法の決定は、ウイルス侵入アッセイ(例えば図4B参照)、ならびにその他の関連する実験室試験結果および臨床上の情報に基づくものである。
【0204】
別の実施形態では、患者ウイルスのウイルス侵入阻害剤に対する感受性を使用して、1種以上のウイルス侵入阻害剤を含む抗レトロウイルス治療計画で以前治療されたことがない患者の治療の指針にする。方針として、限定するわけではないが、以下のものが含まれる:(a) 利用可能な薬物治療選択肢の解明、(b) より有効な治療計画の選択、(c) ウイルス侵入阻害剤に対する基底感受性の解明、ならびに(d) 不活性薬物および潜在的毒性薬物の使用の低減。未治療の患者の治療について、ウイルス侵入阻害剤の基底感受性の決定は2つの理由によって重要である。第1に、侵入阻害剤に対するウイルス本来の感受性は大きく異なり得ることである(例えば図4A参照)。第2に、ウイルス侵入阻害剤の使用の増加は、疑いなく薬物耐性変異体の生成をもたらし、これが新たに感染した個体に伝播され得るからである。この実施形態において、耐性試験用ベクターを患者ウイルスサンプルから誘導し、ウイルス侵入表現型アッセイを使用して、各種のウイルス侵入阻害剤に対する感受性について試験する。ウイルス侵入阻害剤として、限定するわけではないが、以下のものが含まれる:融合阻害剤(例えばT-20、T-1249)、共受容体アンタゴニスト(AMD3100、AMD8664、TAK779、PRO542、およびピペリジン-1-イルブタン化合物)、ならびにCD4アンタゴニスト(MAb 5A8)。適切な治療法の決定は、ウイルス侵入アッセイ、ならびにその他の関連する実験室試験結果および臨床上の情報に基づくものである。
【実施例9】
【0205】
治療決定の指針にするための、 HIV-1 共受容体指向性の測定
本実施例では、HIV-1治療の指針にするために、HIV-1共受容体(CCR5、CXCR4)指向性を使用するための手段および方法を提供する。本実施例ではさらに、抗レトロウイルス薬治療が失敗した患者の治療の指針にするために、HIV-1共受容体指向性を使用するための手段および方法を提供する。本発明はさらに、新たにHIV-1に感染した患者の治療の指針にするために、HIV-1共受容体指向性を使用するための手段および方法を提供する。
【0206】
本実施例では、HIV-1治療の指針にするために、ウイルスHIV-1共受容体指向性を使用する手段および方法を提供する。本実施例ではさらに、以前にウイルス侵入阻害剤による抗レトロウイルス治療を受けたことがある患者の治療の指針にするために、HIV-1共受容体指向性を使用する手段および方法を提供する。本発明はさらに、以前にウイルス侵入阻害剤治療を受けたことがない患者の治療の指針にするために、HIV-1共受容体指向性を使用する手段および方法を提供する。
【0207】
1実施形態において、患者ウイルスの共受容体指向性を使用して、1種以上の共受容体アンタゴニストを含む抗レトロウイルス治療計画が失敗した患者の治療の指針にする。治療失敗(ウイルス学的失敗とも称される)は、部分的抑制抗ウイルス治療の結果として、ウイルスが検出可能なレベル(典型的には患者の血漿中で測定される)になるものとして一般的に定義される。方針として、限定するわけではないが、以下のものが含まれる:(a) 治療患者においてウイルス負荷量が上昇する因果関係の解明(すなわち、低付着性、薬物耐性、共受容体指向性の変化)、(b) 利用可能な薬物治療選択肢の解明、(c) より有効な治療計画の選択、ならびに(d) 不活性薬物および潜在的毒性薬物の使用の低減。CCR5アンタゴニストでの治療を受けている患者の共受容体指向性のモニタリングは、臨床上重要である。なぜならば、薬物圧の結果としてCXCR4共受容体指向性に変化することがあるからである。X4ウイルス(CXCR4共受容体指向性)はR5ウイルス(CCR5共受容体指向性)に比較して、予後がより悪い傾向がある。この実施形態において、耐性試験用ベクターを患者ウイルスサンプルから誘導し、ウイルス侵入表現型アッセイを使用して、各種の共受容体アンタゴニストに対する感受性について試験する。共受容体アンタゴニストとして、限定するわけではないが、以下のものが含まれる:AMD3100、AMD8664、TAK779、PRO542、およびピペリジン-1-イルブタン化合物。適切な治療法の決定は、ウイルス侵入アッセイ(例えば図4B参照)、ならびにその他の関連する実験室試験結果および臨床上の情報に基づくものである。
【0208】
別の実施形態において、患者ウイルスの共受容体指向性を使用して、1種以上の共受容体アンタゴニストを含む抗レトロウイルス治療計画で以前治療されたことがない患者の治療の指針にする。方針として、限定するわけではないが、以下のものが含まれる:(a) 基底共受容体指向性の解明、(b) 利用可能な薬物治療選択肢の解明、(c) より有効な治療計画の選択、ならびに(d) 不活性薬物および潜在的毒性薬物の使用の低減。基底共受容体指向性を決定することは臨床上の意義において重要である。適切な共受容体アンタゴニスト(R5対X4指向性)、またはアンタゴニスト類(二重指向性もしくは混合指向性)による治療は、より強力で持続的な応答をもたらす可能性が高い。この実施形態において、耐性試験用ベクターを患者ウイルスサンプルから誘導し、ウイルス侵入表現型アッセイを使用して、各種のウイルス侵入阻害剤に対する感受性について試験する。共受容体アンタゴニストとして、限定するわけではないが、以下のものが含まれる:AMD3100、AMD8664、TAK779、PRO542、およびピペリジン-1-イルブタン化合物。適切な治療法の決定は、ウイルス侵入アッセイ、ならびにその他の関連する実験室試験結果および臨床上の情報に基づくものである。
【0209】
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【0210】
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【表1】
Figure 2004536594
【表2】
Figure 2004536594
【表3】
Figure 2004536594
【表4】
Figure 2004536594
【0211】
Figure 2004536594
【0212】
Figure 2004536594
【0213】
【表5】
Figure 2004536594
【0214】
Figure 2004536594
【0215】
Figure 2004536594
【0216】
Figure 2004536594
【0217】
Figure 2004536594
【0218】
Figure 2004536594
【0219】
Figure 2004536594
【0220】
Figure 2004536594
【0221】
Figure 2004536594
【0222】
Figure 2004536594
【0223】
Figure 2004536594
【0224】
Figure 2004536594
【0225】
Figure 2004536594

【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1A】エンベロープ発現ベクターおよびウイルス発現ベクターの構造を示した図である。
【図1B】細胞ベースの侵入アッセイを示した図である。宿主細胞をpHIVenvおよびpHIVlucΔU3で同時トランスフェクトすることによって、薬物感受性、共受容体指向性およびウイルス中和試験を実施する。
【図2】HIVエンベロープ発現ベクターを示した図である。
【図3A】共受容体指向性スクリーニングアッセイを示した図である。
【図3B】共受容体指向性の判定を示した図である。この図では、アッセイ結果を解釈するにあたって、CD4/CCR5を発現する細胞(R5細胞)またはCD4/CXCR4を発現する細胞(X4細胞)中で感染する(ルシフェラーゼ活性を生成する)各サンプルウイルスの能力を比較する。
【図4A】侵入阻害剤に対する感受性の測定を示した図である。この図では、融合阻害剤 T-20に対する感受性を実証する。
【図4B】侵入阻害剤に対する感受性の測定を示した図である。この図では、gp41エンベロープタンパク質中の特定の薬物耐性突然変異によって賦与された、融合阻害剤 T-20に対する感受性の低下を実証する。
【図5A】侵入阻害剤に対する感受性の測定を示した図である。この図では、CCR5阻害剤に対する感受性を実証する。
【図5B】侵入阻害剤に対する感受性の測定を示した図である。この図では、CXCR4阻害剤に対する感受性を実証する。
【図6】全長エンベロープ配列または細胞質側テイルを欠失したエンベロープ配列に対応するアンプリコンが生成されることを示した図である。
【図7】CCR5またはCXCR4のいずれかに対する抗体(Y軸上に示す)を使用するFACS(蛍光活性化細胞ソーティング)アッセイの結果を表す点図表プロットを示した図である。
【図8A】侵入阻害剤に対する感受性を示した図である。共受容体アンタゴニストの投与後の阻害を示す。
【図8B】侵入阻害剤に対する感受性を示した図である。共受容体アンタゴニストの投与後の阻害を示す。
【図8C】侵入阻害剤に対する感受性を示した図である。共受容体アンタゴニストの投与後の阻害を示す。
【図9】侵入阻害剤に対する感受性を示した図である。ウイルス膜と細胞膜との融合の阻害剤であるペプチドについてのマップおよびアミノ酸配列を示す。
【図10】共受容体アンタゴニストによる阻害を示した図である。
【図11】T20耐性突然変異を示した図である。
【図12】侵入阻害剤耐性突然変異の同定を示した図である。
【図13】融合阻害剤ペプチドを示した図である。

Claims (37)

  1. ある化合物が細胞へのウイルスの侵入を阻害するかどうかを同定する方法であって、
    (a) ウイルスに感染した患者からウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を取得し;
    (b) 第1細胞中に、
    (i) ステップ(a)の核酸、および
    (ii) エンベロープタンパク質をコードする核酸を欠失しており、かつ検出可能なシグナルを生成する指示核酸を含むウイルス発現ベクター、
    を同時トランスフェクトし、その結果として、第1細胞が患者から取得した核酸にコードされたエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子を産生し;
    (c) ステップ(b)で産生されたウイルス粒子と第2細胞とを該化合物の存在下で接触させ、ただし、第2細胞は該ウイルスが結合する細胞表面受容体を発現するものであり;
    (d) ウイルス粒子の感染性を判定するために、第2細胞によって生成されたシグナルの量を測定し;そして
    (e) ステップ(d)で測定したシグナルの量を該化合物の不在下で生成されたシグナルの量と比較し、この際、該化合物の存在下で測定したシグナルの量が低下していれば、該化合物が第2細胞へのウイルス侵入を阻害することを示す;
    各ステップを含んでなる上記方法。
  2. 指示核酸が指示遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 指示遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子である、請求項2に記載の方法、。
  4. 細胞表面受容体がCD4である、請求項1に記載の方法。
  5. 細胞表面受容体がケモカイン受容体である、請求項1に記載の方法。
  6. 細胞表面受容体がCXCR4またはCCR5である、請求項1に記載の方法。
  7. 患者がHIV-1ウイルスに感染している、請求項1に記載の方法。
  8. ステップ(a)の核酸がgp120およびgp41をコードするDNAを含む、請求項1に記載の方法。
  9. ウイルス発現ベクターがHIV核酸を含む、請求項1に記載の方法。
  10. ウイルス発現ベクターがHIV gag-pol遺伝子を含む、請求項9に記載の方法。
  11. ウイルス発現ベクターがvif、vpr、tat、rev、vpu、およびnefをコードするDNAを含む、請求項9に記載の方法。
  12. 第1細胞が哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
  13. 哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項12に記載の方法。
  14. ヒト細胞がヒト胚性腎細胞である、請求項13に記載の方法。
  15. ヒト胚性腎細胞が293細胞である、請求項14に記載の方法。
  16. 第2細胞がヒトT細胞である、請求項1に記載の方法。
  17. 第2細胞がヒトT細胞白血病細胞系である、請求項1に記載の方法。
  18. 第2細胞が末梢血単核細胞である、請求項1に記載の方法。
  19. 第2細胞が星状神経膠腫細胞である、請求項1に記載の方法。
  20. 星状神経膠腫細胞がU87細胞である、請求項19に記載の方法。
  21. 第2細胞がヒト骨肉腫細胞である、請求項1に記載の方法。
  22. ヒト骨肉腫細胞がHT4細胞である、請求項2に記載の方法。
  23. 前記化合物が前記細胞表面受容体に結合する、請求項1に記載の方法。
  24. 前記化合物が前記細胞表面受容体のリガンドである、請求項1に記載の方法。
  25. 前記化合物が抗体を含む、請求項23に記載の方法。
  26. 前記化合物が膜融合を阻害する、請求項1に記載の方法。
  27. 前記化合物がペプチド、ペプチド模倣体、有機分子、または合成化合物である、請求項1に記載の方法。
  28. 前記化合物がウイルスエンベロープタンパク質に結合する、請求項1に記載の方法。
  29. 請求項1に記載の方法によって同定された化合物を担体と混合することを含む、組成物の製造方法。
  30. 担体が生理食塩水、ポリエチレングリコール、バッファー溶液、デンプン、または有機溶媒である、請求項29に記載の方法。
  31. 細胞のウイルス感染時に、該ウイルスが結合する細胞表面受容体を同定する方法であって、
    (a) (i)ウイルス核酸と、(ii)検出可能なシグナルを生成する指示核酸と、を含むウイルス粒子を取得し;
    (b) 細胞表面受容体を発現する細胞に、ステップ(a)からのウイルス粒子を接触させ;そして
    (c) 細胞内で生成された検出可能なシグナルの量を測定し、この際、シグナルの生成は、この細胞によって発現された細胞表面受容体にウイルスが結合したことを示すものであり、これによって、その細胞表面受容体を、細胞への感染時にウイルスが結合するものとして同定する;
    各ステップを含んでなる上記方法。
  32. 抗体が細胞へのウイルス侵入を阻害するかどうかを同定する方法であって、
    (a) ウイルスに感染した患者からウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を取得し;
    (b) 第1細胞中に、
    (i) ステップ(a)の核酸、および
    (ii) エンベロープタンパク質をコードする核酸を欠失しており、かつ検出可能なシグナルを生成する指示核酸を含むウイルス発現ベクター、
    を同時トランスフェクトし、その結果として、第1細胞が患者から取得した核酸にコードされたエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子を産生し;
    (c) ステップ(b)で産生されたウイルス粒子と第2細胞とを該抗体の存在下で接触させ、ただし、第2細胞は該ウイルスが結合する細胞表面受容体を発現するものであり;
    (d) ウイルス粒子の感染性を判定するために、第2細胞によって生成されたシグナルの量を測定し;そして
    (e) ステップ(d)で測定したシグナルの量を該化合物の不在下で生成されたシグナルの量と比較し、この際、該抗体の存在下で測定したシグナルの量が低下していれば、その抗体が第2細胞へのウイルス侵入を阻害することを示す;
    各ステップを含んでなる上記方法。
  33. 細胞へのウイルス侵入を阻害する化合物に対するウイルスの感受性を判定する方法であって、
    (a) ウイルスに感染した患者からウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸を取得し;
    (b) 第1細胞中に、
    (i) ステップ(a)の核酸、および
    (ii) エンベロープタンパク質をコードする核酸を欠失しており、かつ検出可能なシグナルを生成する指示核酸を含むウイルス発現ベクター、
    を同時トランスフェクトし、その結果として、第1細胞が患者から取得した核酸にコードされたエンベロープタンパク質を含むウイルス粒子を産生し;
    (c) ステップ(b)で産生されたウイルス粒子と第2細胞とを該化合物の存在下で接触させ、ただし、第2細胞は該ウイルスが結合する細胞表面受容体を発現するものであり;
    (d) ウイルス粒子の感染性を判定するために、第2細胞によって生成されたシグナルの量を測定し;そして
    (e) ステップ(d)で測定したシグナルの量を該化合物の不在下で生成されたシグナルの量と比較し、この際、該化合物の存在下で測定したシグナルの量が低下していれば、そのウイルスがその化合物に感受性であることを示す;
    各ステップを含んでなる上記方法。
  34. 細胞へのウイルス侵入を阻害する化合物に対するウイルスの耐性を判定する方法であって、
    (a) 請求項33に記載の方法にしたがって、ある化合物に対するウイルスの感受性を判定し、この際、ウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸は患者から第1回目に取得したものであり;
    (b) 請求項33に記載の方法にしたがって、該化合物に対する該ウイルスの感受性を判定し、この際、ウイルスエンベロープタンパク質をコードする核酸は該患者からその後の第2回目に取得したものであり;そして
    (c) ステップ(a)および(b)で判定した感受性を比較し、この場合、あとの2回目で感受性が低下していれば、その化合物に対するウイルスの耐性を示す;
    各ステップを含んでなる上記方法。
  35. 細胞へのウイルス侵入を阻害する化合物に対する耐性を賦与するウイルスの突然変異を同定する方法であって、
    (a) 該化合物でウイルスを処理する前に、ウイルスの核酸配列またはアミノ酸配列を決定し;
    (b) 該化合物に耐性を示すウイルスを取得し;
    (c) ステップ(b)で取得した耐性ウイルスの核酸配列またはアミノ酸配列を決定し;そして
    (d) ステップ(a)および(b)の核酸配列またはアミノ酸配列をそれぞれ比較することによって、その化合物に対する耐性を賦与するウイルスの突然変異を同定する;
    各ステップを含んでなる上記方法。
  36. ステップ(b)で取得したウイルスが、耐性が発生するまで前記化合物の存在下で増殖させたステップ(a)のウイルスである、請求項35に記載の方法。
  37. ステップ(b)で取得したウイルスが、前記化合物による治療を受けたことがある患者から単離されたものである、請求項35に記載の方法。
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