JP2004536109A - Uea1ミメティック医薬製剤および医薬製剤用リガンド - Google Patents

Uea1ミメティック医薬製剤および医薬製剤用リガンド Download PDF

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Abstract

UEA1ミメティック、それらを含む医薬製剤、ならびに治療および診断用ターゲティング物質としてのそれらの使用。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤、とりわけ、経腸投与に適した医薬製剤、特に経口剤形に関する。本発明は、特に、身体の上皮層、特に胃腸管(GIT)の内腔表層を覆う小腸上皮細胞を介した薬物またはワクチンなどの医薬活性成分の取り込みを改善するように医薬製剤を適合させることに関する。本発明の1つの態様は、上皮層を介した医薬活性成分の輸送を促進するために医薬製剤に組み込み得る新規化合物を含めた化合物種の同定、調製および使用に関する。そのような化合物には、特定の天然化合物のミメティックとして他の目的に有用な新規化合物が含まれる。
【0002】
さらに、本発明は、特に、組織の状態または症状を確立する助けとするために、ヒトまたは動物由来の身体の特定組織細胞型を例えば染色または標識して画像化することを含む病状の診断および予後診断に有用な組成物および方法に関する。特に、一態様において、本明細書に開示されている組成物は、胃腸管(GIT)細胞の研究または評価に用いられる。これは、関連細胞に、炎症、新生組織形成、形成異常、または、他の異常な、恐らく悪性の細胞形質転換があることが疑われるかまたは既知である症状の評価であり得る。特に対象となる疾患としては、結腸ガン、潰瘍性大腸炎およびクローン病がある。
【0003】
別の態様において、本明細書に開示されている組成物および方法は、悪性であれ非悪性であれ、ヒトまたは動物組織の血管の体内状態の評価に適用できる。
【背景技術】
【0004】
本発明のドラッグ/ワクチンデリバリー態様の背景
身体に投与される医薬活性成分の効果が投与経路に大きく依存することは周知である。理想的には活性成分を罹患部位に局所的に集中させたいと思うのは当然であるが、これを直接達成する実践的な方法はほとんどない。多くの薬物に関して、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)が最も効果的であるが、これは周知の制限および不利点を有する。そのような制限および不利点には、体内における局所的高濃度の薬剤物質による副作用の危険性、注射部位における感染の危険性、および一般に患者の応諾を低下させがちな幾分の不快さまたは不便さが挙げられる。患者の応諾は、薬物を日常的に自己投与しなければならない場合には特に重要である。
【0005】
他の経路は、経上皮性関門、例えば、口腔内、経鼻、経膣、経腸および腸内薬物輸送を利用する。これらのうち、経腸投与、特に経口投与は、特に便利であり、患者にも好まれる。しかし、経腸ドラッグデリバリーは、活性成分が系に入る経路が極めて間接的であるために問題があることが周知である。経口投与された薬物が治療効果を発揮するには、血液循環系に入るか免疫系と相互作用するために、胃の酸性環境を生き抜き、次いで、上皮性関門、すなわち、腸内膜を横断しなければならない。
【0006】
医薬活性成分をコーティングし、さらに/または賦形剤中にカプセル化して、GITの目標領域に到達するまで、胃を通過させて生き残らせるための多くの実践的な提案が公開されている。現在のところ特に興味を引く1つの製剤タイプは、生浸食性(bioerodible)または生分解性高分子賦形剤から形成された所謂ミクロ粒子およびナノ粒子である。これらの粒子は、活性物質をGITに沿って移行させるときに活性物質を保持、保護することができ、次いで、腸壁を介して吸収可能であり、その後、血流中で分解し、活性成分を放出してその治療効果を及ぼす。
【0007】
しかし、そうは言っても、これらの製剤を用いた場合の生体内利用率は実際のところ非経口経路の場合よりはるかに低く、かつ患者によってかなり異なる。これは、一般に、場合により生浸食性/生分解性カプセル化形態の活性物質を、粘膜層および高選択性上皮細胞を有する腸壁を通過させることが難しいためであると考えられる。
【0008】
この点に関する特定の難問は、ホルモンや酵素などの生物学的またはバイオテクノロジー産物の医薬利用に関連して生じる。これらは、一般に、高分子、例えば、タンパク質、ペプチド、遺伝子、DNA片、DNAワクチン、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどである。高分子は、分子サイズが大きいために、上皮を横断することが難しい。高分子は、GIT内では、酸や酵素の作用のために安定性が低い。したがって、経口経路を介したその生体内利用率は極めて低く、そのような薬物が稀少かつ高価であることを考えると二重に問題である。現在のところ、不利点も付随する非経口投与のみが利用可能である。他の経路を介したこれらの高分子薬物およびワクチンの生体内利用率を高めることが極めて望ましいであろう。
【0009】
どの経上皮機構を機能させるにしても、それが活性物質を持続的に存在させ、かつ/またはある種の生化学的刺激が活性物質の細胞取り込みを促進させるように、薬物活性粒子に腸壁に対する正の親和性を与える方法に関して種々の提案が発表されている。
【0010】
これに関してある研究が行われ、特定の糖残基に対して特異的親和性を有する天然タンパク質物質である種々のレクチンがモデル小腸上皮細胞型細胞系に特異的に結合するであろうと指摘され、証明された。これは、この小腸上皮細胞表面がオリゴ糖部分を有しているためである。したがって、特に、非毒性植物レクチンが既にヒト食物中に存在していることを考慮に入れて、経口ドラッグデリバリー用担体としてレクチンを利用することが提案された。以下の刊行物を参照されたい。エフ ガバーら(F.Gavor et al)、Journal of Controllable Release 第55巻、131〜142ページ(1998年);エヌ フォスターら(N.Foster et al)、Vaccine 16、第5巻、536〜541ページ(1998年);シー エム レアら(C.M.Lehr et al)、Pharms Res.第12巻、547〜553ページ(1992年)、および関連テーマに関する他の記事。
【0011】
これらの興味深い結果にもかかわらず、GITにおける原薬の「細胞接着性」(bioadhesion)を促進するためにレクチンを利用することは、そのような大きなタンパク質分子が腸内の酵素作用下にも製剤の調製プロセス中にも分解したり活性を失ったりしがちであるために、依然として問題である。この大きなサイズと、潜在的な免疫原性および細胞毒性とが相俟って、薬物やワクチンをヒトGITに、またヒトGITを横断してデリバリーするターゲティング物質としてのレクチン自体の利用が制限される。
【0012】
本発明者らは、上皮細胞親和性、したがって、経腸投与医薬製剤の部分、成分またはコーティングとして有用になる「細胞接着」能力を示す代替物質を同定、テスト、調製することを目的として、極めて広範囲な研究を実施した。
【0013】
本発明の診断および予後診断態様の背景
腸粘膜における表面糖残基の変性および/または発現増加は、悪性形質転換、異形成変化および広範性(extensive)大腸炎に関連していることが指摘されている。例えば、潰瘍性大腸炎やクローン病患者由来の組織は、ウレクス・エウロパエウス(Ulex europaeus)I(UEA1)標識部位の異常分布を示した〔ヨシオカら(Yoshioka et al)、1989年〕。これらの症状では、ヒト腸杯細胞ムチン上のレクチン結合部位の発現が特異的に変化したので、これは、上記疾患における腫瘍危険性を評価するための別のアプローチを提供し得る(ヨシオカら、1989年)。大腸ガンではUEA1やドリコス・ビフロラス(Dolichos biflorus)凝集素のパターンも、正常な粘膜および腺腫に比べて変化した〔イワカワら(Iwakawa et al)、1996年〕。
【0014】
UEA1は、フコース残基に結合すること、特に、上皮細胞に結合することが知られているハリエニシダ(ウレクス・エウロパエウス)由来の約60kDaのレクチンタンパク質である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らはUEA1の特性を調べ、多かれ少なかれ(場合によっては高度に)UEA1の特異的上皮細胞結合活性を共有するが、分子構造がより単純であるために、高安定性、低コスト、標識の容易さ、または多価形態での使用可能性を有し得るという意味で、UEA1を模倣する他の分子を同定、合成しようと大量の研究を行った。以後、「UEA1ミメティック」と称されるこれらの他の分子は、任意の多様な有機分子構造を有し得る。これらの分子は、ペプチド、ペプチドミメティックおよび/または小有機分子であってよい。多様な(限定されない)そのような分子や、そのような分子の同定法および製造法は後で説明する。
【0016】
本発明者らは、ヒト腸組織切片との結合におけるUEA1およびその模擬体の有効性を確認した。上述した種々の病状間関係を考慮して、本発明者らは、上皮細胞に特異的に結合する位置確認(localization)物質としてUEA1またはUEA1ミメティックを用い、画像化手段により、GIT細胞の状態を評価する方法および組成物である本発明の第1態様を提示する。
【0017】
本発明の第2態様は、UEA1が、種々のヒト組織の血管内皮細胞に、組織の血液型または分泌状態に関係なく特異的に結合するという事実に関連する。種々の悪性組織および非悪性組織研究で、血管のUEA1染色が評価されている。例えば、膀胱、前立腺および睾丸の悪性および非悪性組織のほとんどの血管は容易に特定された〔フジメら(Fujime et al)、1984年〕。UEA1は、正常な脳でも新血管形成がある腫瘍組織でも、等しい強度、感度、および信頼性をもって血管の内皮細胞を視覚化した〔ウエーバーら(Weber et al)、1985年〕。UEA1およびFVIII/RAG抗体によって、大、中、小血管が等しく良好に示されたが、毛細血管および内皮細胞の新芽はUEA1によってより均一かつ濃く染色された。また、UEA1は、良性血管病変の内皮細胞の特異的かつ高感度マーカーでもあった〔ミエッティネンら(Miettinen et al)、1983年〕。さらに、UEA1は、内皮性肉腫の多くの腫瘍細胞も染色した。メラノーマ、退形成性ガン、および他のタイプの肉腫はネガティブであった。
【0018】
UEA1は、正常組織の血管も腫瘍組織の血管も等しい強度で染色するので、明らかな腫瘍血管特異的ターゲティング物質ではない。しかし、本発明者らは、UEA1染色が種々の正常および病的事象に関連した血管分布研究において潜在的用途を有することに気付いている。血管侵襲は腫瘍状態を評価する際に病理学者が用いる最も重要な診断および予後診断パラメータなので、UEA1やUEA1を模倣するそのミメティック、例えば、ペプチド、ペプチドミメティックおよび/または小有機分子はリンパ管障害の診断の確立に有用である。
【0019】
したがって、本明細書に開示されているようなUEA1およびそのミメティック、ならびに上記第1態様のような画像化用に適合させ得る対応組成物の血管障害の観察による病気の診断/予後診断における使用は本発明のさらなる態様である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
1つの一般態様において、本発明は、医薬物質と細胞接着性リガンドとを含む医薬製剤であり、細胞接着性リガンドは有機環状(C、N、Oおよび/またはS)部分を有し、有機環状部分はポリヒドロキシまたはポリアルコキシ置換部分(それぞれ、少なくとも2個のヒドロキシまたは2個のアルコキシ基)を含む。ポリヒドロキシ置換有機環状部分が好ましい。ポリアルコキシ置換有機環状部分に関しては、好ましくはC−Cアルコキシ、より好ましくはC−Cアルコキシであり、ここで、例えば、Cアルコキシはエトキシである。
【0021】
リガンドは、医薬物質を含有する担体物質に共有または非共有結合させ得る。リガンドは担体表面に結合させるのが好ましい。
特に重要な実施形態において、担体物質は、ナノ粒子、ミクロ粒子、およびリポソームのうちから選択される。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態において、有機環状部分の骨格は、5〜7個の原子からなる骨格環を含む。(本発明の目的のために、ベンゼンは、単一環中に6個の炭素原子の骨格を有し、ナフタレンは、10個の炭素原子の骨格を有するとともに、それぞれ6個の炭素原子からなる2つの骨格環を有し、これら2つの環は2個の炭素原子を共有している)。5〜7個の原子からなる骨格環は、不飽和(すなわち、芳香族)であってよい。いくつかの特に好ましい実施形態において、骨格環の原子はすべて炭素原子である。
【0023】
有機環状部分の好ましい骨格は、フェニル、ナフチル、シクロヘキシル、ベンジル、ベンゾイル、ピリジンおよびジヒドロベンゾピランのうちから選択されるラジカルの骨格と同一のものである。そのような骨格は、2個以上のヒドロキシラジカルで置換されているのが特に好ましく、2〜4個のヒドロキシラジカルで置換されているのが最も好ましい。非常に好ましい有機環状部分は、ガロイルラジカルまたはトリメトキシフェニルラジカルである。
【0024】
非常に好ましい一連の実施形態において、有機環状部分は、足場(scaffold)部分に共有結合している。1つのそのような実施形態において、細胞接着性リガンドは、足場部分を介して結合した2つ以上の有機環状部分を含む。好ましい構造体のなかには、足場に沿って2つの有機環状部分間の環から環までの最短長が1〜20原子のものがある。(例を示すと、下記の化合物2の場合、ナフチルラジカルとクロロフェニルラジカルとの間の環から環までの最短長は6であり、ナフチルラジカルとビフェニルラジカルとの間では5である)。
【0025】
好ましい足場部分群は、アミノ酸、グアニジン、ヒダントイン、チオヒダントイン、チオ尿素、カテキン、アシルアミン、二環性アミン、三環性アミン、および糖類のうちから選択される部分を含む。アミノ酸1個を含む足場が非常に好ましく、少なくとも1個のアミノ酸(好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個、最も好ましくは2〜6個のアミノ酸)からなるペプチドを含むものも同様に好ましい。トリヒドロキシベンゾイルまたはトリメトキシベンジル部分が(直接またはリンカーを介して)1個のアミノ酸に、またはアミド官能基を介して複数のアミノ酸に結合しているのも非常に好ましい。足場の構築には、リシンが非常に好ましいアミノ酸である。
【0026】
Xは、それぞれ、直接または10原子を超えないリンカー部分骨格を介して線状骨格に結合している2〜10個の有機環状部分を含むのが好ましい。
別の好ましい足場部分はアシルアミンである。好ましいアシルアミンは、構造X−NH−(C=O)−Yのものであり、式中、Xは、CおよびNのうちから選択される少なくとも2個(好ましくは2〜20個)の原子を有する線状骨格を含む。より好ましくは、Xは、それぞれ、直接または10原子を超えないリンカー部分骨格を介して線状骨格に結合している2〜10個の有機環状部分を含む。
【0027】
Yは、ポリヒドロキシまたはポリメトキシ有機環状部分を含むのが好ましい。そのような有機環状部分は、直接または10原子を超えないリンカー部分骨格によってアシルアミンの(C=O)基に結合しているのが特に好ましい。一連の好ましい実施形態において、Y部分は、3,4,5−トリヒドロキシフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニル、4−ビフェニルメチル、および4−エチル−4−ビフェニルメチルのうちから選択される。1つの非常に好ましい実施形態において、−(C=O)−Yはガロイル基である。
【0028】
一連の好ましい実施形態において、少なくとも1個のアミノ酸のR基(例えば、シクロヘキシルアラニンのシクロヘキシルメチル部分)は、アシルアミンのX部分に結合しており、このアミノ酸は、D−ノルロイシン、L−ノルロイシン、D−チロシン、L−チロシン、D−シクロヘキシルアラニン、L−シクロヘキシルアラニン、D−アルギニン、およびL−アルギニンのうちから選択される。有機環状部分はアシルアミンのX部分に結合していてよく、この有機環状部分は、例えば、D−ナフチルメチル、L−ナフチルメチル、およびL−p−クロロベンジルのうちから選択され得る。
【0029】
特定の細胞接着性リガンドの例に関して、細胞接着性リガンドは、以下の表1〜表6、表7A、表7Bおよび表8に示されている化合物のうちから選択される化合物を含む。〔上記は、例えば、表1、表2および表3の個々の欄のR1、R2、R3化合物が、化学図表中の(これらの表の直前に記載の−NH−CH2−CHR1−N(−)−CH2−CHR2−NH−CO−R3に相当する)いくぶん小さいR1、R2、およびR3部分の生成に用いられる化合物であったことを考慮に入れている〕。その結果、表1のR1としてのナフチルアラニンに相当するNap−alaの記載は、化学図表中の対応するR1ラジカルがナフチルメチル−であることを示しており、表1のR3としての3,4,5−トリメトキシ安息香酸の記載は、化学図表中の対応するR3ラジカルが、3,4,5−トリメトキシフェニルであることを示している。類似の状況が他の表の場合にも存在することが分るであろう。
【0030】
表4に関して、リガンドは、少なくとも30、より好ましくは、少なくとも20という、250.0(μg/ml)での1段階アッセイの平均阻害%(Single Tier Assay Avg % inhibition)を有する化合物を含むのが好ましい。
【0031】
表6に関して、リガンドは、250未満、好ましくは100未満、最も好ましくは30未満の1段階アッセイIC50(50μg/ml)を有する化合物を含むのが好ましい。
表7(A)に関して、細胞接着性リガンドは、350uM以下、好ましくは200uM未満、より好ましくは100uM未満の第2段階IC50値(uM)を有する表7(A)に示されている2コピー構造を含むのが好ましい。
【0032】
表7(B)に関して、細胞接着性リガンドは、250uM以下、より好ましくは200uM未満、さらに好ましくは50uM未満、最も好ましくは3uM未満の第2段階IC50値(uM)を有するものとして示されている4コピー構造化合物を含むのが好ましい。
【0033】
表8に関して、細胞接着性リガンドは、第2段階アッセイにおいて、150未満、好ましくは15未満のIC50(uM)を有する化合物を含むのが好ましい。
表1、表2、表3、表4、表5、表6、表7、表7(A)、表7(B)および表8に記載されているテスト化合物は、それら自体が本発明の態様である。
【0034】
別の一般態様において、本発明は、腸上皮細胞を有する生物(好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒト)に医薬製剤を投与する方法であり、この方法は、請求項1に記載の医薬製剤を投与するステップを含む。一連の重要な実施形態において、細胞接着性リガンドは、医薬物質を含有する担体(好ましくはその表面)に共有結合または非共有結合している。
【0035】
本発明者らは、上皮細胞親和性を示し、したがって、経腸投与医薬製剤の部分、成分またはコーティングとして有用になる「細胞接着」能力を示す代替物質を同定、テスト、調製するために、極めて広範囲にわたる研究を実施した。
【0036】
本発明者らは、フコース残基に結合すること、特に上皮細胞に結合することが知られているハリエニシダ(ウレクス・エウロパエウス)由来の約60kDaのレクチンタンパク質であるレクチンUEA1を用いたコンペティティブアッセイで、ペプチド有機分子と非ペプチド有機分子とを含めた多くのコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングした。
【0037】
本発明者らは、2個以上、好ましくは3個以上のヒドロキシまたはヒドロキシ置換基を有する環状有機基が腸管上皮細胞を含めた上皮細胞に関して結合活性部分であり得ることを見出した。そのような結合活性部分、特に、有機骨格または「足場」上に2つ以上の結合活性部分を有する有機化合物は、医薬製剤の細胞接着性リガンドとして用いられ得る。
【0038】
環式基は炭素環または複素環であってよい。環式基は、芳香族環系、非芳香族環系、縮合芳香族環系または部分縮合芳香族環系であってよい。
ポリヒドロキシ置換芳香族基、例えば、フェニルや関連アリール環系、例えばナフチルのジオール、トリオール、テトロールなど、または、シクロヘキセニルなどの脂環式基も好ましい。フェニルまたは関連する環は、ベンジルもしくはベンゾイル基、または関連環系の同等物のような分子骨格または足場に結合していることがある。
【0039】
この環上の複数のヒドロキシ基は隣接していてよい。
特に、本発明者らは、トリヒドロキシベンジルまたはベンゾイルとして足場に結合し得るトリヒドロキシフェニル基を用いて良好な結果を得た。
【0040】
本発明者らが発見した最も好ましい結合活性部分は、例えば、アミドまたは他のアシル結合を介して足場に結合して、ガロイル(3,4,5−ヒドロキシベンゾイル)基を構成し得る、3,4,5−ヒドロキシフェニル基をベースとしている。
【0041】
ヒドロキシ基は、−OH形態をとるのが好ましいが、チオール類似体や、マスク形態、例えば、アルコキシル化形態も有用なことがある。
上述のように、本発明者らは、有機分子足場または骨格上に2つ以上、好ましくは3つ以上の上記結合活性部分を与えると良好な結果が得られることを見出した。この足場には多様な選択肢が存在する。足場は、有害な物質に分解しないであろうという意味で生体適合性であるのが好ましいことは勿論であり、一般に、炭素、窒素、酸素、硫黄および水素以外は含んでいないことが好ましい。足場は、線状、分枝、環状またはこれらの任意の組合わせであってよい。
【0042】
足場は、官能基を介して結合した炭化水素物質からなるのが好ましい。適当な官能基は、アミノ、アミド、アシル、エーテル、エステル、カルボン酸および尿素結合から選択されるのが好ましいが、それらには限定されない。
【0043】
生体受容性が確立されていることを考えると、アミノ酸単位および/またはその類似体もしくは誘導体をベースとするか、それらを含む分子足場が好ましい。足場は、1つ以上、好ましくは複数の上記結合活性部分で置換されたアミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド(好ましくは2〜10個、より好ましくは1〜6個のアミノ酸)であるか、それらを含み得る。足場には、天然または合成アミノ酸を用い得る。
【0044】
非ペプチド足場も可能である。当業者には、すでに、有効性が確立されているペプチドミメティック分子および分子骨格は既知であり、これらの足場には、上記官能基や結合を用いた種々のタイプの分子のうち、複素環を含む分子、グアニジン、ヒダントイン、チオヒダントイン、チオ尿素、カテキン、アシルアミン、糖類などが含まれる。
【0045】
足場が、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチドまたはそれらの類似体を含んでいる場合、少なくとも1つの結合活性部分が足場のC末端に結合している。
足場は、結合活性基が、場合により、炭化水素鎖などの分枝スペーサー鎖を介してそこから枝分れする線状または環状骨格を提供し得る。
【0046】
結合活性部分と足場とは、アミノ、アミド、アシル、エーテル、アルキレン、アルケニレンまたは他の適当な官能基、またはこれらの任意の組合わせを介して結合していてよい。
【0047】
本明細書に提案されている多くの結合活性化合物(リガンド)は新規であると考えられるが、一般に糖基質上の複数のガロイル置換基を特徴とする既存の化合物やその類似体、例えば、タンニン酸および他のタンニンを用いることも可能である。これらの既知物質の場合、これは、新たに提案された使用法および製剤である。
【0048】
リガンド化合物を全体として(1つ以上の結合活性部分+任意の足場)またはその多量体として考えて、その分子は、腸管内で十分安定であるように、従来の生化学的方法に基いて設計される。先に説明したようなレクチン類と比較すると、このリガンドの分子量は低くてよく、これを適当な化学組成と組合わせると、安定性が得られ、免疫原性および細胞毒性の可能性が低下するだけでなく、合成リガンドの製造および処理を容易にすることができる。好ましい分子量は、5000未満、好ましくは2000または1500未満であるが、但し、その多量体は除外しない。
【0049】
しかしながら、本提案は、本明細書に有効性が開示されている結合活性部分を他のタイプの分子に用いる可能性も含むことに留意されたい。例えば、これらの結合活性部分は、生分解性ポリマーなどの医薬製剤に用いられている高分子賦形剤上の置換基またはグラフト体として用いられ得る。リガンド分子は、全体として、医薬製剤上または医薬製剤中に共有または非共有結合し得る。同様に、リガンド分子は、全体として、薬物または抗原もしくはアジュバントに共有または非共有結合し得る。
【0050】
これらの結合活性部分およびリガンド化合物を利用する新規な医薬製剤は本発明の1つの態様である。経腸、例えば経口製剤におけるドラッグデリバリーを促進するための結合活性部分およびリガンド化合物の使用は別の態様である。
【0051】
本明細書で提案されているリガンド化合物は、大部分は新規であり、したがって、それら自体でUEA1模擬体として、本明細書で権利請求されている本発明の一態様である。
対応方法、すなわち、新規結合化合物の合成を含む方法や、新規であるなしにかかわらずリガンド化合物をブレンド、結合、コーティングまたは他の手段により製剤に組み込むことを含む医薬製剤の製法を含めた方法は、本明細書で権利請求されている本発明の態様である。
【0052】
本発明の特定の実施形態において、上述の細胞接着性リガンドの1種は、医薬物質を含む担体物質に共有または非共有結合している。例えば、担体物質は、ナノ粒子、ミクロ粒子およびリポソームのうちから選択される。担体物質は、本明細書の他の項でより詳細に説明されているように、10nmから500μmの範囲内の最大寸法を有するのが好ましい。本発明の特定の実施形態において、医薬物質は薬物または治療薬である。他の特定の実施形態において、医薬物質は病原体抗原である。
【0053】
本発明のいくつかの態様は、医薬物質のデリバリーを目標とする細胞接着性リガンドの使用を含む。
本発明は、一態様において、腸上皮細胞を有する生物に医薬物質を投与する方法であり、この方法は、腸上皮細胞を、担体物質に共有または非共有結合している上述の細胞接着性リガンドの1種に接触させるステップを含む。好ましい実施形態において、生物は哺乳動物である。哺乳動物はヒトであるのが最も好ましい。
【0054】
本発明の方法の特定の実施形態において、担体物質は、ナノ粒子、ミクロ粒子およびリポソームのうちから選択される。担体物質は、10nmから500μmの範囲の主要寸法を有するのが好ましい。好ましい実施形態において、担体物質は、薬物を装填しているか、薬物をカプセル封入している。リガンド−担体物質のデリバリーに好ましい投与経路は経口経路である。他の実現可能な経路は、経腸、皮下、筋肉内および静脈内経路である。
【0055】
本明細書に用いられている限りにおいて、用語「担体物質」は、医薬物質を運ぶことができる粒子または液滴と定義される。ミクロ粒子は、主要寸法が、1〜5μm、最も好ましくは1〜3μmの範囲の粒子と定義される。ナノ粒子は、主要寸法が、1μ未満、好ましくは1〜500nmの範囲、最も好ましくは10〜500nmの範囲の粒子と定義される。
【0056】
本明細書に用いられている限りにおいて、主要寸法は、球状粒子の場合にはその直径であり、棒状体粒子の場合にはその長さである。他の粒子の場合、主要寸法はその粒子が有し得る最長寸法である。
【0057】
医薬物質を装填するか医薬物質をカプセル封入するナノ粒子およびミクロ粒子は、腸上皮細胞組織を標的とする本発明のリガンドなどの細胞接着性リガンドでコーティングされ得る。そのコーティングは、共有または非共有結合により形成され得る。共有結合は、吸着または任意の他のコーティング法により達成することができる。いずれの場合にも、完成した粒子または後で粒子の一部を構成する粒子成分に対して結合が行なわれ得る。
【0058】
生分解性粒子が好ましい。
あるいは、医薬物質を直接細胞接着性リガンドに結合させてもよい。
「医薬物質」は、治療薬または診断薬である。治療薬は、既存の病気を治療するため、または将来発生する可能性のある病気を予防するために投与されるものである。診断薬は、診断処置の一部として投与される任意の物質である。
【0059】
治療薬の例は、薬物、遺伝子、遺伝子デリバリーベクター、および抗原/ワクチンである。
薬物には、例えば、鎮痛薬、抗偏頭痛薬、抗凝固薬、制吐薬、心・血管作動薬、降圧薬、麻薬拮抗薬、キレート剤、抗狭心症薬、化学療法薬、鎮静薬、抗腫瘍薬、プロスタグランジンおよび抗利尿薬、アンチセンスオリゴヌクレオチド、遺伝子修正ハイブリッドオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉(RNAIi)オリゴヌクレオチド、RNAサイレンシング(siRNA)オリゴヌクレオチド、アプタマーオリゴヌクレオチドおよび三重らせん形成オリゴヌクレオチド、DNAワクチン、アジュバント、組換えウイルスが含まれる。
【0060】
遺伝子デリバリーベクターの例は、DNA分子、ウイルスベクター〔例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、およびシンドビスウイルス(sindbus virus)〕、ならびにカチオン脂質コートDNAおよびDNAデンドリマーである。
【0061】
薬物としては、慣用的な小分子薬、タンパク質、オリゴペプチド、ペプチド、および糖タンパク質が挙げられる。
薬物の例は、インスリン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子調節タンパク質、心房性ナトリウム利尿タンパク質、コロニー刺激因子、ベタセロン、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン(例えば、α、β、またはγインターフェロン)、ソマトロピン、ソマトトロピン、ソマトスタチン、インスリン様成長因子(ソマトメジン)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、組織プラスミノーゲンアクチベータ(TPA)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、オキシトシン、エストラジオール、成長ホルモン、酢酸ロイプロリド、第VIII因子およびインターロイキン(例えば、インターロイキン−2)である。さらに、代表的な薬物には、鎮痛薬(例えば、フェンタニル、スフェンタニル、ブトルファノール、ブプレノルフィン、レボルファノール、モルフィン、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、オキシモルフォン、メタドン、リドカイン、ブピバカイン、ジクロフェナック、ナプロキセンおよびパベリン)、抗偏頭痛薬(例えば、スマトリプタンおよび麦角アルカロイド)、抗凝固薬(例えば、ヘパリンおよびヒルジン)、制吐薬(例えば、スコポラミン、オンダンセトロン、ドンペリドンおよびメトクロプラミド)、心・血管作動薬、降圧薬、および血管拡張薬〔例えば、ジルチアゼム(diltizem)、クロニジン、ニフェジピン、ベラパミル、イソソルビト−5−モノニトレート、有機硝酸薬および心疾患の治療に用いられている物質〕、鎮静薬(例えば、ベンゾジアゼピンおよびフェノチアジン(phenothiozines))、麻薬拮抗薬(例えば、ナルトレキソンおおびナロキソン)、キレート剤(例えば、デフェロキサミン)、抗利尿薬(例えば、デスモプレシンおよびバソプレシン)、抗狭心症薬(例えば、ニトログリセリン)、抗腫瘍薬(例えば、5−フルオロウラシルおよびブレオマイシン)、プロスタグランジン、ならびに化学療法薬(例えば、ビンクリスチン)がある。
【0062】
治療薬である抗原の例は、腫瘍抗原、病原体抗原およびアレルゲン抗原である。ワクチン製剤は、少なくとも1種の抗原を含んでいるであろう。「病原体抗原」は、病原体に特異的な抗原、例えば、ウイルス、細菌、寄生虫または菌類由来の抗原である。
【0063】
重要な病原体の例としては、コレラ菌(vibrio choleras)、腸管毒素原性大腸菌(E.Coli)、ロタウイルス(rotavirus)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、赤痢菌種(Shigella species)、チフス菌(Salmonella typhi)、パラインフルエンザ・ウイルス(parainfluenza virus)、インフルエンザ・ウイルス、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ウサギウイルス(rabbit virus)およびEBウイルス(Epstein−Barr virus)がある。
【0064】
一般的なウイルスには以下の科が含まれる:ピコルナウイルス科(picoronaviridae);カリシウイルス科(caliciviridae);トガウイルス科(togaviridae);フラビウイルス科(flaviviridae);コロナウイルス科(coronaviridae);ラブドウイルス科(rhabodviridae);フィロウイルス科(filoviridae);パラミクソウイルス科(paramyxoviridae);オルトミクソウイルス科(orthomyxoviridae);ブンヤウイルス科(bunyaviridae);アレナウイルス科(arenaviridae);レオウイルス科(reoviridae);レトロウイルス科(retroviridae);ヘパドナウイルス科(hepadnaviridae);パルボウイルス科(parvoviridae);パポーバウイルス科(papovaviridae);アデノウイルス科(adenoviridae);ヘルペスウイルス科(herpesviridae)および梅毒ウイルス科(poxyviridae)。
【0065】
一般的な細菌には以下のものが含まれるが、それらには限定されない:緑膿菌(P.aeruginosa);大腸菌(E.coli);クレブシエラ属(Klebsiella sp.);セラチア属(Serratia sp.);シュードモナス属(Pseudomanas sp.);セパシア菌(P.cepacia);アシネトバクター属(Acinetobacter sp.);表皮ブドウ球菌(S.epidermis);エシェリキア・フェカーリス(E.faecalis);肺炎球菌(S.pneumonias);黄色ブドウ球菌(S.aureus);フェモフィルス属(Haemofilus sp.);ナイセリア属(Neisseria sp.);髄膜炎菌(Neisseria meningitidis);バクテロイデス属(Bacteroides sp.);シトロバクター属(Citrobacter sp.);ブランハメラ属(Branhamella sp.);サルモネラ属(Salmonelia sp.);シゲラ属(Shigella sp.);リステリア属(Lesteria sp.);動物パスツレラ症病原菌(Pasteurella multocida);ストレプトバシラス属(Streptobacillus sp.);A群溶血性レンサ球菌(S.pyogenes);プロテウス属(Proteus sp.);クロストリジウム属(Clostridium sp.);エリシペロトリックス属(Erysipelothrix sp.);スピリルム属(Spirillum sp.);スピロヘータ属(Fusospirocheta sp.);梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum);ボレリア属(Borrelia sp.);放線菌(Actinomycetes);マイコプラズマ属(Mycoplasma sp.);クラミジア属(Chlamydia sp.);リケッチア属(Rickettsia sp.);スピロヘータ属(Spirchaeta sp.);レジオネラ属(Legionella sp.);マイコバクテリア属(Mycobacteria sp.);ウレアプラズマ属(Ureaplasma sp.);ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.);トリコモナス属(Trichomoras sp.);およびプロテウス・ミラビリス(P.mirabilis)。
【0066】
寄生虫には以下のものが含まれるが、それらには限定されない:熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum);三日熱マラリア原虫(P.vivax);卵形マラリア原虫(P.oval);四日熱マラリア原虫(P.malaria);ゴンディ・トキソプラズマ(Toxoplasma gondii);メキシコ・リーシュマニア(Leishmania mexicana);熱帯リーシュマニア(L.tropica)、大リーシュマニア(L.major);エチオピア・リーシュマニア(L.aethiopica);ドノバン・リーシュマニア(L.donovani);クルーズ・トリパノソーマ(Trypanosoma cruzi);ブルース・トリパノソーマ(T.brucei);マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni);ビルハルツ住血吸虫(S.haematobium);日本住血吸虫(S.japonium);旋毛虫(Trichinella spiralis);バンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti);マレー糸状虫(Brugia malayli);赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica);ぎょう虫(Enterobus vermiculoarus);有鉤条虫(Taenia solium)、無鉤条虫(T.saginata)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginitis)、腸トリコモナス(T.hominis)、口腔トリコモナス(T.tenax);ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia);クリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum);ニューモシスティス・カリニ(Pneumocytis carinii)、ウシバベジア(Babesia bovis)、バベジア・ジバージェンス(B.divergens)、畑ネズミバベジア(B.microti)、イソスポラベリ(Isospore belli)、ひとイソスポラ(I.hominis);二核アメーバ(Dientamoeba fragiles);回旋糸状虫(Onchocerca volvulus);回虫(Ascaris lumbricoides);アメリカ鉤虫(Necator americanis);ズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale);糞線虫(Strongyloides stercoralis);カピラリア・フィリピネンシス(Capillaria philippinensis);アンギオストロンギルス・カントネンシス(Angiostrongylys cantonensis);小形条虫(Hymenolepis nan);広節裂頭条虫(Diphyllobothrium latum);単包条虫(Echinococcus granulosus)、多包条虫(E.multilocularis);ウェステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani);パラゴニムス・カリエンシス(P.caliensis);クロノルキス・シネンシス(Chlonorchis sinensis);ねこ肝吸虫(Opisthorchis felineas);タイ肝吸虫(O.viverini)、肝蛭(Fasciola hepatica)、疥癬虫(Sarcoptes scabiei)、ヒトシラミ(Pediculus humanus);毛ジラミ(Phthirus pubis);および南米産ウマバエ(Dermatobia hominis)。
【0067】
一般菌類には以下のものが含まれるが、それらには限定されない:クリプトコックス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans);ブラストミセス・デルマティティジス(Blastomyces dematitidis);アジェロミセス・デルマティティジス(Ajellomyces dermatitidis);ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasfrai capsulatum);コクシジオイデス・イミティス(Coccidiodes immitis);カンジダ・アルビカンス(C.albicans)、カンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)、カンジダ・パロプシロシス(C.paropsilosis)、カンジダ・ギリエルモンディ(C.guiliermondii)およびカンジダ・クルセイ(C.krusei)を含めたカンジダ属の細菌(Candida species);アスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)、アスペルギルス・フラーブス(A.flavus)およびアスペルギルス・ニガー(A.niger)を含めたアスペルギルス属の細菌(Aspergillus species);リゾープス属の細菌(Rhizopus species);リゾムコール属の細菌(Rhizomucor species);クニングハメラ属の細菌(Cunnighammella species);アポフィソミセス・サクセネア(A.saksenaea)、アポフィソミセス・ムコール(A.mucor)およびアポフィソミセス・アブシディア(A.absidia)を含めたアポフィソミセス属の細菌(Apophysomyces species);スポロスリックス・シェンキー(Sporothrix schenckii);パラコクシジオイデス・ブラジリエンジス(Paracoccidioides brasiliensis);シュードアレシェリア・ボイジイ(Pseudallescheria boydii);トルロプシス・グラブラタ(Torulopsis glabrata);ならびにデルマトフィルス属の細菌(Dermatophyres species)。
【0068】
アレルゲンである抗原は、ハプテン、または、花粉、ほこり、かび、胞子、ふけ、昆虫および食品由来の抗原であり得る。特定の例としては、トキシコデンドロン属のウルシオールおよびセスキテルペノイドラクトンがある。
【0069】
アジュバントの例としては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ハンタータイターマックス、ゲルブアジュバント、リビアジュバント、モンタニドISAアジュバント、アルミニウム塩アジュバントおよびニトロセルロース吸着タンパク質がある。
【0070】
別の一般態様において、本発明者らは、UEA1およびその模擬体のヒト腸組織切片との結合における有効性を確認した。種々の病状間の上述の関係を考えて、本発明者らは、上皮細胞に特異的に結合する局在性物質(localisation agent)としてUEA1またはUEA1ミメティックを用い、画像化によりGIT細胞の状態を評価する方法および組成物である本発明の第1態様を提示する。関連病状としては、任意の上述の病状、例えば、結腸ガン、潰瘍性大腸炎およびクローン病が挙げられる。UEA1またはUEA1ミメティック局在性物質は、多様な方法のいずれかで診断/予後診断画像化用に有効利用され得、これらの物質は、本来、慣用のものであり得る。例えば、UEA1およびUEA1ミメティックは、その抗体または他の特異的結合物質、および抗体または他の特異的結合物質と反応させて特徴的な画像/色を生成するための1種または複数種の造影剤(例えば、染色検査キット)と共にイムノアッセイ法で用いられ得る。
【0071】
これに代わって、UEA1またはUEA1ミメティックは、直接標識されるか、例えばビオチニル化されるなど何らかの他の手段を介して標識され得るので、検査細胞上に結合したその存在は、アビジンまたは他の適切な画像化物質と反応させるか、使用標識のタイプを検査することにより検証することができる。他の可能性としては、NMR画像化および放射線標識がある。
【0072】
本発明にための組成物は、任意の必要な相補的結合物質および画像化メディアを含む診断/予後診断画像化キットの一部として、標識し得るUEA1またはUEA1ミメティックを含み得る。
【0073】
血管障害の観察による症状の診断/予後診断における本明細書に開示されているUEA1およびそのミメティックならびに上記第1態様におけるような画像化に適合され得る組成物の使用は、本発明のさらなる態様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
本明細書に開示されている特定の結合活性部分、それらを有するリガンド化合物の同定に至る本発明者らの実験研究、それらの活性の検証、および本発明を具体化するリガンド化合物の種々の例について以下に詳細に説明する。
【0075】
上皮細胞の表面受容体に結合し得る低分子量リガンドの探索は、ペプチド分子と非ペプチド(有機)分子を共に含む種々のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることから始めた。これらのライブラリーは、オリゴペプチド混合物群がオリゴペプチド鎖の単一所定位置に1つの所定残基を含むポジショナルスキャニングフォーマットで合成した〔ピニラら(Pinilla et al)、米国特許第5,556,762号、ピニラら、BioTechniques、第13巻、第6項、1992年〕。
【0076】
合成コンビナトリアルライブラリーから得た化合物および混合物の上皮細胞結合能力を競合アッセイで測定した。これらのアッセイは、コンビナトリアルライブラリーの化合物および混合物によるビオチニル化UEA1と上皮細胞系Caco−2(結腸ガン細胞−2)膜調製物との結合阻害を測定するように設定した。この細胞系は慣用の上皮細胞モデルである。1種または複数種の化合物がUEA1の結合を阻害することができれば、それは、この化学物質自体が上皮細胞表面上のフコース残基に結合していること、したがって、潜在的リガンドであることを意味するであろう。
【0077】
このケースでは、2種の競合阻害アッセイ、すなわち、1段階アッセイと2段階アッセイを用いた。これらのアッセイは、1段階アッセイでは、混合物/化合物およびビオチニル化UEA1をCaco−2細胞膜調製物と一緒にインキュベートしたのに対し、2段階アッセイでは、ビオチニル化UEA1の不在下で混合物/化合物と細胞調製物のみを一緒にインキュベートし、次のステップでビオチニル化UEA1を添加したという点で互いに異なっていた。2段階アッセイで追加ステップを加えたのは、ビオチニル化UEA1とCaco−2細胞膜との結合を阻害する化合物は、それ自体がCaco−2細胞の表面受容体に結合し、ビオチニル化UEA1には結合しないことによって阻害を行うことを裏付けるためであった。各アッセイを詳細に説明する。
【0078】
Caco−2細胞膜(P100)画分および細胞質(S100)画分の調製
1. 密集Caco−2細胞単層(75cmフラスコ中で37℃および5%CO下に最大1週間まで成長させたもの)をダルベッコのPBS(DPBS)で2回洗浄した。
2. 細胞単層を10mM EDTA−DPBSで5〜10分間37℃で処理し、1000rpmで5分間遠心して細胞を回収した。
3. 細胞をDPBSで3回洗浄した。
4. 細胞ペレットを3容量の氷冷HED緩衝液〔20mM HEPES(pH7.67)、1mM EGTA、0.5mM ジチオトレイトール、1mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)〕に再懸濁し、細胞を氷上で3分間膨潤させた。
5. 細胞を30秒間ホモジナイズした。
6. ホモジネートを、硬質壁管中、40,000rpmで、45分間、4℃下に遠心した。
7. 上清(S100)を除去し、ペレット(P100)をHEDG緩衝液〔20mM HEPES(pH7.67)、1mM EGTA、0.5mM ジチオトレイトール、100mM NaCl、10%グリセロール、1mM PMSF〕に再懸濁し、3容量の緩衝液を加え、ペレットを再懸濁し、1000rpmで2分間遠心した。上清を除去し、氷上に貯蔵した。第1上清に第2上清を添加してこの手順を繰り返した。
8. 例えば、Bio−Radタンパク質アッセイを用いて、タンパク質濃度を測定した。
9. すべての画分を使用するまで−80℃下に貯蔵した。
【0079】
1段階アッセイ:
1. Caco−2細胞の膜調製物を96ウエルマイクロタイタープレート上で室温下に2時間半インキュベートするか、4℃下に一晩インキュベートしてプレートを膜調製物でコーティングした。各ウエルに、(0.05Mの炭酸緩衝液、pH9.6中)10μg/mlの膜調製物100μlを加えた。
2. プレートをはじいて、軽くたたいて、乾燥させ、ウシ血清アルブミン(BSA)/DPBS(200μl/ウエル)で室温下に1〜4時間ブロックした後、水中で3回洗浄した。
3. ウエルに、50μl/ウエル(1.5%BSA/DPBS中)のコンビナトリアルライブラリー由来混合物/化合物を加えた。Caco−2細胞膜調製物を未結合UEA1と共にインキュベートしたコントロールウエルも調製した。0.04μg/mlから出発して160μg/mlまでのこのコントロール化合物の1〜4倍希釈系列を調製した(1.5%BSA/DPBS中50μg/ウエル)。
4. 各ウエルに1μg/ml(1.5%BSA/DPBS中50μl)の最終濃度のビオチニル化UEA1を加え、プレートを4℃下で一晩インキュベートした。
5. 一晩インキュベートした後、プレートを十分に(3〜6回)洗浄した。プレートをはじいて、軽くたたいて乾燥させ、市販の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合したストレプトアビジン〔カルビオケム社(CalBiochem)〕でビオチニル化UEA1を検出した。この試薬は、各ウエルに100μlの試薬を加えると最終濃度になるように、1.5%BSA−DPBS中で調製した1:5000希釈度で各ウエルに加えた。プレートを室温下に1時間インキュベートした。
6. 次いで、プレートを3〜6回洗浄し、各ウエルにHRP基質OPD(オルトフェニルジアミン)を添加して、ビオチン−ストレプトアビジン結合を検出した。各ウエルに、1.6mg/mlの最終濃度のこの基質100μl/ウエルを添加した。ウエルに添加する前、プレート当たり50μlの3%Hを添加して、この基質を活性化させ、暗所で反応を展開させた。
7. 約5〜10分後または十分な発色が得られた後、各ウエルに50μlの4N HSOを加えて反応を停止させた。慣用の96ウエルプレート読取り分光光度計を用いて各ウエルのOD490(490nmにおける吸光度)を測定した。
【0080】
2段階アッセイ:
1. 1段階アッセイで説明したものと同じ方法で、96ウエルプレートをCaco−2細胞膜調製物でコーティングした。
2. プレートをはじいて、軽くたたいて乾燥させ、室温下に1.5%BSA−DPBS(200μl/ウエル)で1〜4時間ブロックした後、水で3回洗浄した。
3. 次いで、個々のウエルに、コンビナトリアルライブラリー由来混合物/化合物を加えた(1.5%BSA−DPBS中100μl/ウエル)。0.04μg/mlから出発して160μg/mlまでの1〜4倍希釈で調製した各種濃度の精製UEA1を含有するコントロールウエルも調製した。各ウエルに、これらの最終濃度で100μlを添加した。
4. 次いで、プレートを一晩インキュベートしたが、このステップで、競合物(ビオチニル化UEA1)自体の不在下で、混合物および化合物はCaco−2細胞膜と相互作用するであろう。
5. 一晩インキュベートした後、プレートを水で3〜6回十分に洗浄した。6. 各ウエルに、100μg/ウエルの1.5%BSA−DPBS中1μg/mlの最終濃度のビオチニル化UEA1を加え、プレートを室温下に2時間インキュベートした。
7. プレートを3〜6回洗浄した後、市販のHRP標識ストレプトアビジンを用いてビオチンを検出したが、この試薬は、各ウエルに100μl加えると最終濃度になるように、1.5%BSA−DPBS中で調製した1:5000希釈で各ウエルに添加した。プレートを室温下に1時間インキュベートした。
8. 3〜6回洗浄した後、各ウエルに、100μl/ウエルのHによって活性化されたOPD(最終濃度 1.6mg/ml)を添加し、暗所で反応を展開させた。
9. 約10〜15分後または十分な発色が得られた後、50μlの4N HSOを加えて反応を停止させた。
10. 分光光度計を用いて、各プレートの490nmにおける吸光度を測定した。
【0081】
結果:
結果は、阻害活性率またはIC50(UEA1の50%阻害が記録された化合物濃度)として示されている。未結合(unconjugated)のUEA1コントロール(1:4希釈:160μg/ml〜0.04μg/ml)の490nmの吸収を用いて標準曲線を作成した。未結合UEA1の最高濃度は160μg/mlであった。このレベルのタンパク質を含有するウエルは色の変化をほとんど示さなかったが、前以てインキュベートした高レベルのUEA1はCaco−2膜調製物上の大部分のUEA1結合部位に結合し、その結果、(後で添加した)ビオチニル化UEA1が結合する部位は残っておらず、したがってビオチニル化UEA1は検出されなかった。
【0082】
0.04μg/mlの未結合UEA1を含有するウエルは低濃度のUEA1としては490nmにおいて高い吸光度を示したが、これは、ほとんどのUEA1受容体が非結合状態で残され、それによって、ビオチニル化UEA1がCaco−2細胞膜上のこれらの受容体に結合し、その結果、これらのウエルの490nmにおける高吸光度が生じたことを意味していた。160μg/mlでの吸光度は100%阻害とみなし、スケールの他端(0.01μg/ml)での吸光度は0%阻害とみなした。各化合物または化合物混合物の阻害率を同様な結合曲線から予測した。各化合物の系列希釈液を用いて、活性化合物のIC50値を測定した。
【0083】
コンビナトリアルケミストリーを用いて、ライブラリーと称される多種多様な大量のペプチドおよび非ペプチド(有機)化合物を1段階および2段階アッセイでテストした。各ライブラリーは共通の足場すなわち骨格を含んでいる。各ライブラリーの化合物は、多岐にわたる分枝および線状側鎖および基を足場骨格上に異なる配列で配置して合成される。異なるライブラリーにおいて、同一元素は、別タイプの足場上に同じようにまたは違うように配置され得る〔マイヤーら(Meyer et al)に付与された米国特許第5859190号、ホーテン(Houghten)に付与された米国特許第4631211号、ピニラ(Pinilla)に付与された米国特許第5556762号参照〕。例として、コンビナトリアルケミストリーで用いた有機骨格のいくつかを以下に列挙する。本発明の活性化合物を同定するためにスクリーニングしたライブラリーは、以下に明示されている骨格構造には限定されなかった。
【0084】
【化1】
Figure 2004536109
テストした多様なライブラリーのうち、それぞれ、チオヒダントイン、N−6−アシルアミノビサイクリックグアニジン、N−アシルアミンおよびポリフェニル尿素をベースとするライブラリーは、高阻害活性を示した。調査を縮小するために、これらの活性混合物の個々の化合物の分子量を計算し、それぞれの阻害活性をテストした。その結果、ほとんどのライブラリーの個々の精製化合物が阻害活性を示すことが明らかになった。これらの化合物には、N−アシルアミンをベースとするライブラリー由来化合物が含まれていた。そのようなアシルアミンの構造は、例えば、式Aで表される。
【0085】
【化2】
Figure 2004536109
アシルアミンは固相樹脂上で合成した。この場合、R1基およびR2基は、入ってくる各アミノ酸のN末端をBOC(N−t−ブトキシカルボニル)でブロックしてその反応への関与を回避することを含む慣用のtBOCケミストリーを用いて結合させたアミノ酸から得た。N末端は、アミノ酸が一旦結合したらブロック解除される。アシルアミン合成の場合、先ず、アミノ酸のアミド結合をメチル化し、次いで、アミンに還元した。成長する鎖のN末端をカルボン酸でアシル化してR3を付加した。この分子の左側に見られるアミンは、入ってくるアミノ酸のカルボキシ末端と反応する外に伸びるアミノ基を有する固相mBHA樹脂から得た。フッ化水素と一緒にインキュベートしている間にこのアミンが固相担体から分離すると、このアミノ基が放出されて、アシルアミンのアミノ末端が形成される。
【0086】
このスキームを以下に示す。
【0087】
【化3】
Figure 2004536109
【0088】
表1、表2、および表3は、3種のN−アシルアミンベースライブラリーに属する化合物の阻害活性を示している。
【表1】
Figure 2004536109
【0089】
【表2】
Figure 2004536109
【0090】
【表3】
Figure 2004536109
これらのライブラリーの化合物は、同じN−アシルアミン足場を有するが、各足場上の側基の配置が異なる。例えば、ライブラリー TPI 1066(表1)は、芳香族官能基を有する化合物を含んでおり、ライブラリー TPI 1012(表2)は、N−アシルアミンベース足場上に芳香族官能基と非芳香族官能基が配置されている化合物を含んでおり、ライブラリー MSI 22(表3)の化合物は、N−アシルアミン足場は芳香族基と芳香族基に結合しているアミノ酸とを有するという意味で最初の2種のライブラリーの組合わせである。結果は、50μg/mlまたは250μg/mlのこれらの化合物による平均阻害率として示されている。MSI由来化合物は2倍希釈でテストしたことに留意されたい。テストしたいくつかのTPI 1066由来合成化合物の構造を以下に示す。
【0091】
【化4】
Figure 2004536109
本発明者らは、これらのアシルアミンライブラリーから、R3位にヒドロキシ置換基またはヒドロキシを備えた置換基を有する環式基を含む化合物がビオチニル化UEA1結合の最も有効な阻害物質であることを見出した(表2)。ライブラリー TPI 1012の場合、R1位、R2位およびR3位に以下の基を有する化合物が最大活性を示した。
【0092】
【化5】
Figure 2004536109
これらの結果を考慮して、ガロイル基などのポリヒドロキシアリール基および一部の他の環式基の複数のコピー(複製)が化合物の阻害活性を増大させるかどうかを見極めるために、各種カルボン酸を用いてさらなるライブラリーを合成した。これらの化合物は、カルボン酸がα位とε位のアミン基に結合しているリシン足場上で合成した。それぞれカルボン酸を有する2種の異なる構造体、すなわち、式(C)で表される「2コピー」構造体と、式(B)で表される「4コピー」構造体を調製した。
【0093】
【化6】
Figure 2004536109
これらの2コピー構造体および4コピー構造体の合成には各種カルボン酸を用いた。このライブラリーのリシン足場に結合している酸の構造を以下に示す。
【0094】
【化7】
Figure 2004536109
参考例として、リシン足場上に4コピーの没食子酸を有する化合物を合成するための反応スキームをこれから説明する。そのような化合物の典型的な合成法は固相有機化学法を含む。この反応スキームは図1に示されている。
1. 「ティーバッグ」と称されるポリプロピレン製メッシュパケット内に、100mg量のmBHA(メチルベンズヒドリルアミン、8.8mmol/g相当)誘導体化ポリスチレン樹脂を入れた。この性質のメッシュは、既に、ホーテン アール エイ(Houghten,R.A.)、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、第82巻、5131ページ、1985年に開示されている。この樹脂の官能基であるメチルベンズヒドリルアミンは、この合成法の第1ステップのための結合部位である。この樹脂が入ったメッシュパケットをポリエチレン製のビンに入れた。樹脂を5mlの塩化メチレンで3回洗浄し、5mlの5%ジイソプロピルエチルアミン/塩化メチレン溶液で3回中和した。次いで、Fmoc−D−リシン(Boc)−OH(6当量)を、DMF(ジメチルホルムアミド)中のHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、6当量)およびDIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド、6当量)の存在下で2時間結合させ(図1のステップ1)、化合物A(図1)を得た。すべての試薬は、完全なアシル化を確実にするために6倍過剰で用いた。この混合物を樹脂と一緒に2時間振盪した。次いで、過剰な試薬をDMFおよび塩化メチレンで洗浄除去した。
2. t−BOC保護基を5mlの55%トリフルオロ酢酸/塩化メチレン溶液で30分かけて除去した(図1のステップ2)。次いで、樹脂を、塩化メチレン、イソプロパノール、再び塩化メチレンで洗浄した。
3. 次いで、Fmoc基を5mlのDMF中20%ピペリジン溶液で30分かけて除去した(図1のステップ3)。過剰な塩基をDMFで3回洗浄して除去した。
4. 上述のように結合手順を繰返し(図1のステップ4)、Fmoc−D−リシン(Boc)−OHをαアミノ位とεアミノ位に結合させて、化号物B(図1)を得た。
5. 再び、t−Boc基とFmoc基を除去した(ステップ5およびステップ6)。
6. 次いで、メッシュパケットと樹脂を、DMFに溶かした没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、6当量)、HOBt(6当量)およびDIPCDI(6当量)の溶液に浸漬した。
7. 反応混合物を一晩振盪した(ステップ7)。すべての結合をカイザー試験でテストして反応の完全性を検証した。
8. 没食子酸を結合させた後、没食子酸がフェノール性であるために形成されたエステルを除去する処理が必要であった。これらのエステルは、樹脂から最終的に開裂する際に加水分解されたが、合成後の精製プロセスを困難にする好ましくない副産物として残留した。ティーバッグを、15mlの10%メタノール/90%ジオキサンに溶かした2mlのヒドラジンの溶液で処理し、一晩振盪した(ステップ8)。最後にティーバッグをジオキサンで3回洗浄した。
9. 捕捉剤としての5%アニソールを含むフッ化水素酸により化合物を樹脂から開裂させた(ステップ9)。この反応を0℃で90分間にわたって維持し、次いで、窒素流で過剰なHFを除去した。95%酢酸/5%水で抽出し、凍結乾燥させた後、所望生成物C(図1)を得た。
【0095】
これらの化合物(ライブラリー N78)のビオチニル化UEA1結合阻害活性を表4に示す。
【0096】
【表4】
Figure 2004536109
表4で分るように、ポリヒドロキシフェニル構造体は、ビオチニル化UEA1のCaco−2細胞膜との結合阻害活性が個々のモノヒドロキシフェニル化合物より有意に高かった。その場合、これらの基が配置される足場の存在または性質がこれらの化合物の阻害活性に貢献するかどうかという問題があった。これを調べるために、先ず、1個以上のヒドロキシ基が付いた芳香族基を有する一群(ライブラリー MSI 26)の市販化合物、例えば、没食子酸と、他の関連化合物とを阻害アッセイでテストした。この実験でテストした化合物(表5)の構造を以下に示す。
【0097】
【化8】
Figure 2004536109
【0098】
【化9】
Figure 2004536109
【0099】
【表5】
Figure 2004536109
表5で分るように、種々のポリヒドロキシフェニル含有化合物の(感知できる程度ではあるが)かなり低い阻害活性は、UEA1受容体との結合には、分子足場がより望ましいことを示唆していた。さらに、多数のポリヒドロキシフェニル基を有する化合物の方が高い阻害活性を示した。これらの結果から、足場上に多数の活性側基を有することによって効果が最適化されることが示された。
【0100】
そのために、以下に示されているような、各種ポリヒドロキシアリール基、例えばガロイルや他の環式基を異なる足場に結合させた。
【0101】
【化10】
Figure 2004536109
このライブラリーでは、好ましくは最大4個または4個以上のヒドロキシル部分を含む以下に示されているような分枝および線状骨格を合成した。得られた化合物(ライブラリー MSI 27)を1段階アッセイおよび2段階アッセイでテストし、その結果を表6に示す。
【0102】
【化11】
Figure 2004536109
【0103】
【化12】
Figure 2004536109
これらの線状化合物および分枝化合物のビオチニル化UEA1結合阻害活性の分析結果は、これらの化合物の活性が没食子酸基数の増加に伴って増大することを示している(活性化合物の構造は以下に示されている)。
【0104】
リシン足場上に側基として他のカルボン酸が結合している化合物は活性ではなかった(表6)。
【0105】
【表6】
Figure 2004536109
【0106】
【表7】
Figure 2004536109
【0107】
【表8】
Figure 2004536109
第2のMSI27化合物ライブラリー群(MSI 40と称される)を合成し、新規な群からの化合物のビオチニル化UEA1結合阻害活性を、それらと化学的に同一のMSI27からの対応物と比較した。表7(A)および表7(B)に示されているように、両群からの化学的に同一の化合物は同様な挙動を示した。さらに、活性結合部分として没食子酸を有するこれらのライブラリー由来化合物を、リシンの線状または分枝足場上に他のカルボン酸が側基として結合している化合物と比較した。表7(A)および表7(B)で分るように、側基として没食子酸を有する化合物は低いIC50値を示したが、これは、これらの化合物のUEA1受容体結合阻害活性がカルボン酸の一般的特徴というよりむしろ特定の没食子酸構造に関連することを示唆していた。
【0108】
【表9】
Figure 2004536109
【0109】
【表10】
Figure 2004536109
【0110】
【化13】
Figure 2004536109
【0111】
【化14】
Figure 2004536109
これらのデータから、2個以上のポリヒドロキシアリール基を有することが良好な阻害に貢献することは明らかである。したがって、以下に例を示すそのような最大8個または勿論それ以上であってよいガロイルポリヒドロキシ側基がリシンおよび他の足場に結合している各種化合物を合成した。これらの化合物の阻害活性を表8に示す。
【0112】
【表11】
Figure 2004536109
【0113】
【表12】
Figure 2004536109
【0114】
【表13】
Figure 2004536109
【0115】
【表14】
Figure 2004536109
【0116】
【表15】
Figure 2004536109
【0117】
【表16】
Figure 2004536109
【0118】
【表17】
Figure 2004536109
【0119】
【表18】
Figure 2004536109
【0120】
【表19】
Figure 2004536109
【0121】
【表20】
Figure 2004536109
【0122】
【表21】
Figure 2004536109
【0123】
【表22】
Figure 2004536109
【0124】
【表23】
Figure 2004536109
【0125】
【表24】
Figure 2004536109
【0126】
【表25】
Figure 2004536109
【0127】
【表26】
Figure 2004536109
【0128】
【表27】
Figure 2004536109
【0129】
医薬製剤
本発明が関連する医薬製剤の種類に関しては、一般的に言えば、身体の上皮細胞に適用される任意の種類の製剤であってよいが、より具体的に言えば、一般的には腸溶製剤、最も好ましくは経口製剤であろうということが上記説明から分るであろう。これらの医薬製剤は、典型的には、カプセル剤、錠剤、散剤などの固体、マイクロエマルションおよび他のタイプのものなどの乳濁液、ならびに懸濁液からなるか、それらを含む。好ましい実施形態としては、例えば、溶媒蒸発法により、医薬活性成分を生分解性ポリマー本体またはコーティング中にカプセル封入した制御放出経口製剤がある。この種のコーティングは当業では公知であり、例えば、ポリラクチドポリマーコーティングが、本発明者らの国際出願第WO−A−00/12124号や他の文献に記載されている。使用され得る生分解性ポリマーのタイプに特に制限はない。
カプセル封入された医薬活性物質は、小粒子、特に、ミクロ粒子まはたナノ粒子形態であるのが好ましい。例えば、カプセル封入医薬活性物質は、粒子の少なくとも50%が5μmより小さいか、より好ましくは粒子の少なくとも50%が600nmより小さい粒状製剤であってよい。生分解性ポリマー中にカプセル封入された薬物活性物質を含むこのタイプのミクロ粒子組成物およびナノ粒子組成物は、それら自体、当業者には公知である。例えば、国際出願第WO−A−00/12124号および同第WO−A−96/31202号を参照されたい。
【0130】
本発明のリガンド化合物は、当該化合物に適した物理・化学的技術を用いる任意の適切な方法で、薬物製剤に結合させるか、薬物製剤上にコーティングされるか、薬物製剤とブレンドされ得る。これらは、典型的には、受動的吸着、1段階合成時の直接結合(例えば、標準カラム上または溶液中でのリガンド−ペプチド薬剤合成)、(例えば、カルボジイミドなどの標準法を用いたリガンドのアミノ基とカルボン酸修飾薬剤またはデリバリーシステムとの)共有結合、および(例えば、ビオチニル化リガンドとストプレおよびアビジン修飾薬物またはデリバリーシステムを用いた)ビオチン−ストレプトアビジン相互作用からなるが、それらには限定されない。
これも公知の方法であるが、粒状製剤には、粒子が無傷で腸内に通過できるように胃液から粒状製剤を保護する「腸溶コーティング」を施し得る。
【0131】
レクチンミメティックの結合親和性を特性決定するための全細胞結合アッセイの開発
UEA1の種々のレクチンミメティックの結合親和性を特性決定するための全細胞結合アッセイを開発した。このアッセイは、溶液中の全細胞を用いて活性を高める官能基を同定する目的でこれらのUEA1ミメティックの構造活性解析を可能にするために開発された。
【0132】
方法:
ストレプトアビジンEITCプローブを用いたビオチニル化UEA1とUEA1のビオチニル化レクチンミメティックの結合に関して、Caco−2細胞をフローサイトメトリーで解析した。1.0μg/ml程度の低濃度ではビオチニル化UEA1の明らかな結合(陽性)が見られたのに対し、UEA1のレクチンミメティックの結合は、最大65μMまでの濃度でも陰性であった。信号を増幅するために、FITC−アビジンDサンドイッチプロトコルを用いた。この方法では、ビオチニル化化合物を細胞に結合させた後、一連のFITC−アビジンD/抗アビジンD/FITC−アビジンD染色を実施すると、蛍光信号が数倍に増大した。
【0133】
結果:
上述のサンドイッチプロトコルによって、0.02μg/mlというビオチニル化UEA1サンプル測定能力からも明らかなように、蛍光信号が増大した。ストレプトアビジン−FITCプローブを用いた場合、以前は、下限が1.0μg/mlであった。死細胞はFITC−アビジンDに非特異的に結合することが知られているので、死細胞用蛍光染料である核酸染色用7−アクチノマイシンD(7−AAD)を用いて死細胞を解析から除去した。UEA1のビオチニル化レクチンミメティックの結合は50μm濃度および10μm濃度で証明された。
【0134】
テストしたCaco−2細胞集団のおおよそ15%は、FL1(FITC)陽性であり、バックグラウンド蛍光を除去した後では両濃度でFL3(7−AAD)陰性であった。ストレプトアビジンFITC染色ではこれらの濃度の化合物を検出できなかった。
【0135】
結論:
全細胞結合アッセイは、UEA1の小分子レクチンミメティックの結合親和性を特性決定するために開発された。これによって、溶液中の全細胞を用いて活性を高める官能基を同定するためのこれらのミメティックの構造活性解析が可能になるであろう。このアッセイは、今後のイン・ビボ研究用のUEA1小細胞模擬体の選択に役立つと考えられ、本発明において独立した新規の態様である。
【0136】
没食子酸UEA1ミメティック化合物のイン・ビボ・モデル粒子系デリバリー仲介能力の評価:
マウスモデルで、没食子酸側鎖を有する化合物のUEA1模擬能力をイン・ビボで評価した。ここでは、これらの化合物でコートした粒子のM細胞による結合および取り込みを評価した。
【0137】
方法:
通常の方法を用い、室温下で、ビオチニル化リガンドMSI 35−2(4コピーの没食子酸;リシン足場)(図5参照)、UEA1コントロール〔ベクターラボラトリーズ社(Vector Laboratories)〕およびビオシチンコントロール〔モレキュラープローブス社(Molecular Probes)〕を蛍光Estaporストレプトアビジンポリスチレン粒子(FITC標識;直径0.289μm)に吸着させた。
【0138】
1つ以上のパイエル板を含むマウス腸ループにポリスチレン粒子懸濁液(典型的には、1ml当たり5.0×1010粒子を含む500μl)を接種し、30分間インキュベートした。パイエル板を摘出してメタノール中で固定し、その後の共焦点顕微鏡検査による解析用にM細胞をUEA1−ローダミンで対比染色した。アルゴン/クリプトン混合ガスレーザーを備えたRioRad MRC 600走査型共焦点レーザー顕微鏡で染色組織を調べた。観察した総面積当たりの粒子数を測定し、定量記録した。典型的な手順および全プロトコルの詳細については、フォスター エヌ(Foster,N.)、クラーク エム エイ(Clark,M.A.)、ジェプソン エム エイ(Jepson,M.A.)およびハースト ビー エイチ(Hirst,B.H.)、Ulex europaeus 1 lectin targets microsphere to mouse Peyer’s patch M−cells イン・ビボ.Vaccine、第16巻(5)、536〜541ページ、1998年を参照されたい。
【0139】
結果:
MSI 35−2UEA1およびコントロールでコートした粒子の結合および取り込みに関する散布図(対数目盛)は図2〜図4に示されている。
【0140】
図2:MSI 35−2没食子酸ミメティックでコートした粒子の表面結合および取り込み。
図3:UEA1でコートした粒子の表面結合および取り込み。
【0141】
図4:ビオシチンミメティックでコートした粒子の表面結合および取り込み。
散布図上の各点は1画像を表す。
結論:
ビオチニル化リガンド MSI 35−2(4コピーの没食子酸;リシン足場)でコートした蛍光ストレプトアビジンポリスレチン粒子は、マウス腸ループモデルにおいて、イン・ビボでUEA1コートコントロール粒子に匹敵するかそれを超えるM細胞への結合および取り込みを示した。M細胞への結合および取り込みはビオシチンコートコントロール粒子を用いて観察したものより有意に高かった。
【0142】
モデル粒子系を用いて、標的化経口ドラッグデリバリーアプリケーションにおけるこれらのレクチンミメティック利用の可能性が実証された。マウス腸ループモデルにおけるこのミメティックのM細胞特異性は、抗原提示細胞へのワクチンデリバリーとの関連で特に重要である。
【0143】
ヒト組織切片のUEA1染色:
病状の診断/予後診断指標としてのUEA1の利用をヒト組織で検証した。
方法:
1. 免疫組織化学手順:
0.25μg/mlのUEA1、1:10,000希釈のヤギ抗UEA1およびVector ABC−AP Kit(AK5002)を用いたヒト組織切片のVector Red 基質キット(SK−5100)顕微鏡解析により、リガンド結合部位に明るい紫紅色の沈積物がはっきり示された。ヤギ抗UEA1抗体の適用および検出用染色の前に一次リガンドの不在下に実施したネガティブコントロールでは、極くわずかなバックグラウンドが示された。ポジティブコントロール抗体(すなわち、CD31;組織抗原が保存され、免疫組織化学解析用にアクセス可能であったことを裏付けるためのもの)で染色された組織により、組織の完全性が確認された。
【0144】
【表28】
Figure 2004536109
結果:
図6、図7は、染色細胞サンプルの画像を示している。正常な組織では、回腸の粘膜上皮細胞も結腸の粘膜上皮細胞も、UEA1による、吸収杯細胞、M細胞、および陰窩小腸上皮細胞の中程度の陽性細胞質標識を示した。この染色反応は、回腸より結腸の方がわずかに顕著であり、細胞質空胞内の、特に粘膜細胞の微繊毛内腔表層に沿った部分で最も強く現われた。染色物質は繊毛間および表層粘膜細胞の内側を覆う粘液中に分泌された。細胞膜および/またはグリコカリックスは染色されたが、細胞間接合部はリガンド結合部位の染色でははっきり示されなかった。両サンプル中の杯細胞では、微細な埃様から点状の細胞質小胞の染色が示され、ほぼすべての杯細胞で、大きな細胞質粘液胞内の球状タンパク塊が強度に染色されていた。粘液を含む杯細胞の一部が染まらなかったので、この染色は、リガンドが、粘液全般ではなく、先端面の粘液または先端−粘液インターフェースの特定の成分に結合することを示唆していた。いくつかのマクロファージは貪食残骸のように見えるものに関して陽性であった。
【0145】
正常および病的回腸および結腸ならびに結腸ガンの支質全体では、内皮細胞すべてに中程度から強度の染色があり、神経軸索を取り囲むシュワン細胞に低度から中程度の染色があった。マイスネル神経叢や筋層間神経叢およびそれらの軸索は一様に陽性であった。
【0146】
結腸ガンサンプルにおける染色強度は正常結腸のものと同様であった。しかし、そのパターンはいくぶん異なっていた。結腸ガン切片では、細胞質染色のフォーカスは、正常結腸のものより小さめで、より均一なサイズおよび細胞質分布を有する傾向があった。正常組織では、杯細胞で反応性が示されたのに対し、ガン組織杯細胞ではあまり認められず、強度には染まらなかった。結腸ガン切片において、染色反応性は正常サンプルのものと同様であったが、評価した腫瘍性組織と同じサンプル中で隣接する正常結腸組織のものより著しく高かった。
【0147】
リガンドを用いた炎症性腸疾患の免疫組織学的評価は、それぞれクローン病と潰瘍性大腸炎の2症例の染色からなるものであった。UEA1受容体の発現は、クローン病ではすべての小腸粘膜上皮細胞型で有意に増大するようであり、潰瘍性大腸炎ではすべての結腸粘膜上皮細胞で有意に減少するようであった。
【0148】
結論:
この正常細胞と罹患細胞との間に見られるUEA1染色強度および/または染色パターン化の違いは、本発明の技術における診断または予後診断の基礎となっている。
【0149】
UEA1および没食子酸UEA1ミメティック化合物によるヒト組織切片のさらなる染色:
没食子酸UEA1ミメティックもヒト組織の病状の診断/予後診断指標として用いるのに適当であるかどうかを判断するための第1ステップとして、UEA1とこのミメティックとによる正常ヒト組織の染色を比較した。
【0150】
方法:
UEA1とビオチニル化リガンド MSI 35−2(4コピーの没食子酸;リシン足場)(図5参照)を上述のものと類似の染色プロトコルに用いた。一次リガンドの不在下で実施したネガティブコントロールでは、わずかなバックグラウンドが見られた。
【0151】
結果:
表9は、UEA1とUEA1ミメティックに関する正常ヒト組織染色プロファイルの要約である。
【0152】
【表29】
Figure 2004536109
結論:
UEA1ミメティックを用いて大腸切片上で観察した染色プロファイルは、(上述のような)UEA1を用いて得られたものと同等であった。これは、ヒトCaco−2細胞膜画分、すなわち、結腸上皮細胞に特異的な特徴を示す細胞を用いて実施したUEA1ミメティックの選択手順と関連している。予想通り、UEA1ミメティックは小腸切片の染色も示した。興味深いことには、UEA1ミメティックを用いると、胃腸または他の臓器の組織は染色されなかった。これは、すべての組織型を染色したUEA1とは好対照であり、臨床用にUEA1よりミメティックを選択する際の好材料であり得る。
【0153】
没食子酸UEA1ミメティックの内皮細胞への結合および取り込みの評価:
没食子酸UEA1ミメティックを、(a)(血管新生のモニターによる)病状の診断/予後診断および(b)医薬製剤の治療的デリバリーにおけるその適用を評価するために、内皮細胞透過性アッセイで既知細胞透過性ペプチドと比較した。
【0154】
方法:
1. 24ウエルプレート上で、円形カバースリップ上にECV−304細胞をカバースリップ当たり2×10細胞の濃度で接種し、密集増殖させた。
2. 血清含有培地を無血清培地(ペニシリンストレプトマイシン添加OptiMEM)に置き換えた。
3. 培地500μl中10μMの最終濃度になるように、細胞を取り囲む培地にリガンドの水性ストック溶液を直接加えた。
4. 1つのサンプルプレートを37℃下、5%COで強化された空気中で、また他方のプレートは4℃下、空気中で、それぞれ1時間インキュベートした。
5. 次いで、カバースリップをPBSで5分間ずつ3回洗浄した。
6. 細胞を固定し、−20℃で10分間500μlのメタノール中で細胞膜透過させた。
7. さらに、PBSで5分間ずつ3回洗浄した。
8. 細胞を500μlのPBS中5%牛乳溶液〔マーベル社(Marvel)〕中で1時間室温でインキュベートして非特異的結合部位をブロックした。
9. ペプチドを、500μlの15nM ストレプトアビジン−FITCで1時間室温で染色した。
10. 細胞をPBSで5分間ずつ3回洗浄した。
11. 次いで、ウエルからカバースリップを取り出し、水にさっと漬けた後、Dapi蛍光染色するためにガラススライド上にVectashield封入剤をマウントした。
【0155】
結果:
UEA1ミメティックと既知細胞透過性ペプチドおよび関連コントロールとの比較に関しては図8を参照されたい。UEA1ミメティックは、核の強度の染色と、細胞質全体の広範な染色を示した。
【0156】
結論:
内皮細胞によるUEA1ミメティックの取り込みは、このミメティックが内皮細胞/血管のマーカーとして、したがって、病状の診断または予後診断マーカーとして用いるのに適していることを示している。
【0157】
さらに、この取り込みプロファイルは、ドキソルビシンなどの治療薬の細胞へのデリバリーを仲介することが知られているSynB1ペプチドのものと関連していた。さらに、(SynBiの場合と同様に)脂質膜との直接相互作用が関与するメカニズムを介した医薬製剤デリバリーにおけるUEA1ミメティックのさらなる用途も研究されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】4コピーの没食子酸を有する化合物の合成を示す図。
【図2】MSI 35−2没食子酸ミメティックでコートした粒子の表面結合および取り込みを示す図。
【図3】UEA1でコートした粒子の表面結合および取り込みを示す図。
【図4】ビオシチンミメティックでコートした粒子の表面結合および取り込みを示す図。
【図5】MSI 35:ビオチニル化2コピーおよび4コピー構造を示す図。
【図6】染色されたヒト組織サンプルを示す図。
【図7】染色されたヒト組織サンプルを示す図。
【図8】内皮細胞透過性アッセイを示す図。

Claims (38)

  1. 医薬物質と細胞接着性リガンドとを含んでなる医薬製剤であって、前記細胞接着性リガンドは有機環状部分を含んでなり、前記有機環状部分はポリヒドロキシ置換部分およびポリアルコキシ置換部分のいずれかを含んでなる医薬製剤。
  2. 細胞接着性リガンドが医薬物質を含んでなる担体物質に共有結合および非共有結合のいずれかで結合している、請求項1に記載の医薬製剤。
  3. 担体物質が、ナノ粒子、ミクロ粒子、およびリポソームのうちから選択される、請求項2に記載の医薬製剤。
  4. 有機環状部分の骨格が5〜7個の原子からなる骨格環を含んでなる、請求項1に記載の医薬製剤。
  5. 5〜7個の原子からなる環状骨格が不飽和である、請求項4に記載の医薬製剤。
  6. 環状骨格の原子がすべて炭素原子である、請求項4に記載の医薬製剤。
  7. 有機環状部分の骨格が、フェニル、ナフチル、シクロヘキシル、ベンジル、ベンゾイル、ピリジン、およびジヒドロベンゾピランのうちから選択されるラジカルの骨格と同一である、請求項4に記載の医薬製剤。
  8. 有機環状部分は、フェニル、ナフチル、シクロヘキシル、ベンジル、ベンゾイル、ピリジン、およびジヒドロベンゾピランのうちから選択されるラジカルの2個以上のヒドロキシル基が置換されているものである、請求項4に記載の医薬製剤。
  9. 選択されたラジカルの各環状骨格の2〜4個のヒドロキシルが置換されている、請求項8に記載の医薬製剤。
  10. 選択されたラジカルがガロイルラジカルである、請求項8に記載の医薬製剤。
  11. 有機環状部分が足場部分に共有結合している、請求項1に記載の医薬製剤。
  12. 細胞接着性リガンドが、足場部分によって連結されている2つ以上の有機環状部分を含んでなる、請求項11に記載の医薬製剤。
  13. 2つの有機環状部分間で足場に沿った環から環までの最短長が1〜20原子である、請求項12に記載の医薬製剤。
  14. 足場部分が、アミノ酸、グアニジン、ヒダントイン、チオヒダントイン、チオ尿素、カテキン、アシルアミン、二環性アミン、三環性アミン、および糖類のうちから選択される部分を含んでなる、請求項11に記載の医薬製剤。
  15. 足場部分がアミノ酸を含んでなる、請求項13に記載の医薬製剤。
  16. トリヒドロキシフェニルまたはトリメトキシフェニル部分がアミノ酸に結合している、請求項15に記載の医薬製剤。
  17. アミノ酸がリシンである、請求項15に記載の医薬製剤。
  18. 足場部分が少なくとも2個のアミノ酸を含むペプチドを含んでなる、請求項15に記載の医薬製剤。
  19. 足場部分が少なくとも2個のアミノ酸の双方に結合している、請求項15に記載の医薬製剤。
  20. 少なくとも2個のアミノ酸が共にリシンである、請求項18に記載の医薬製剤。
  21. 選択された足場部分がアシルアミンである、請求項14に記載の医薬製剤。
  22. アシルアミンが、X−NH−(C=O)−Yの構造を有し、前記式中、XはCおよびNのうちから選択される少なくとも2個の原子を含む線状骨格を有し、Yは有機環状部分を含む、請求項21に記載の医薬製剤。
  23. 有機環状部分が、アシルアミンの(C=O)基に対して、直接または10原子を超えないリンカー部分骨格を介して結合している、請求項20に記載の医薬製剤。
  24. 少なくとも1個のアミノ酸のR基がアシルアミンのX部分に結合しており、前記アミノ酸は、D−ノルロイシン、L−ノルロイシン、D−チロシン、L−チロシン、D−シクロヘキシルアラニン、D−シクロヘキシルアラニン、D−アルギニン、およびL−アルギニンのうちから選択される、請求項22に記載の医薬製剤。
  25. 有機環状部分がアシルアミンのX部分に結合しており、前記有機環状部分は、D−ナフチルメチル、L−ナフチルメチル、およびL−p−クロロベンジルのうちから選択される、請求項22に記載の医薬製剤。
  26. Y部分が、3,4,5−トリヒドロキシフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニル、4−ビフェニルメチル、および4−エチル−4−ビフェニルメチルのうちから選択される、請求項22に記載の医薬製剤。
  27. −(C=O)−Yがガロイル基である、請求項22に記載の医薬製剤。
  28. Xが、線状骨格に対して直接または10原子を超えないリンカー部分骨格を介してそれぞれ結合している2〜10個の有機環状部分を含んでなる、請求項22に記載の医薬製剤。
  29. 細胞接着性リガンドが、表1、表2、表3、表4、表5、表6、表7A、表7B、および表8に記載されている化合物のうちから選択される化合物を含んでなる、請求項1に記載の医薬製剤。
  30. 表1、表2、表3、表4、表5、表6、表7A、表7B、および表8に列挙されている化合物のうちから選択される化合物。
  31. 腸上皮細胞を有する生物(好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒト)に医薬製剤を投与する方法であって、請求項1に記載の医薬製剤を投与することを含んでなる方法。
  32. 細胞接着性リガンドが、医薬物質を含有する担体(好ましくはその表面)に共有結合または非共有結合している、請求項31に記載の方法。
  33. ヒトまたは動物の組織上で実施される診断または予後診断法であって、UEA1またはUEA1ミメティックを組織の細胞に付与するステップと、得られた結合UEA1またはUEA1ミメティックパターンを画像化するステップと、そのパターンを評価するステップとを含んでなる方法。
  34. 細胞が胃腸管の上皮細胞である、請求項33に記載の方法。
  35. 画像化するステップが染色による、請求項33に記載の方法。
  36. UEA1またはUEA1ミメティック調製物およびそれらの調製物に適合する画像化システムを含んでなる診断キット。
  37. 胃腸管の炎症または腫瘍状態の診断または評価に用いるための請求項4に記載の診断キット。
  38. UEA1ミメティックが有機環状部分を含んでなる細胞接着性リガンドであり、前記有機環状部分がポリヒドロキシ−またはポリメトキシ置換部分を含んでなる、請求項1に記載の方法。
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