JP2004535751A - Clasp−2膜貫通タンパク質 - Google Patents
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Abstract
本発明は、カドヘリン様非対称タンパク質−2(「CLASP−2」)と呼ばれる細胞表面分子に関する。特に、これは、CLASP−2ポリヌクレオチド、ポリペプチド、融合タンパク質、および抗体に関する。本発明はまた、CLASP−2機能を妨害することによって免疫応答を調節する方法にも関する。
Description
【0001】
0.関連出願の相互参照
本出願は、その開示が参照として本明細書に組み入れられる、2000年2月14日に出願された米国仮特許出願第60/182,296号、2000年1月14日に出願された第60/176,195号、1999年12月13日に出願された第60/170,453号、1999年10月29日に出願された第60/162,498号、1999年10月21日に出願された第60/160,860号、1999年5月14日に出願された第60/134,118号、1999年5月14日に出願された第60/134,117号、1999年5月14日に出願された第60/134,114号、および1999年4月14日に出願された第60/129,171号の恩典を主張するものである。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、免疫系の細胞において発現された分子に関する。特に、本発明は、特定の古典的なカドヘリン特徴を含む膜貫通タンパク質に関する。
【0003】
2.発明の背景
抗原に対する免疫応答の産生は、特定の抗原に対して協調して作用する多くの明確な免疫細胞タイプによって行われる。ヘルパーT細胞(TH)は、2つのタイプの抗原特異的免疫応答、すなわち、細胞性免疫応答と液性免疫応答を協調させるために中心的な役割を果たしている。T細胞による抗原認識は、T細胞と抗原提示細胞(APC)とのあいだに、「免疫学的シナプス」と呼ばれる(ダスティン(Dustin)ら、1998、Cell 94:667〜677)特殊な結合の形成を必要とする。免疫シナプスは、まだわかっていないメカニズムによって接触領域からの特異的タンパク質の集合および排除を組織化し、これは、MHC分子(抗原)に結合したペプチドのT細胞抗原受容体(TCR)認識によって開始されると考えられている(モンク(Monk)ら、1998、Nature 395:82)。しかし、抗原に対するTCRの親和性が低いことと共にリガンドの数が限られていることから、TCR:抗原相互作用のみでは、免疫シナプスの形成を促進するために十分ではない可能性がある(マツイ(Matsui)ら、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:12861〜12866)。
【0004】
CD4、ICAM−1、LFA−1、CD28、CD2のような共刺激分子は、細胞・細胞接触を安定化させると提唱されている(ダスティン(Dustin)ら、1999、Science 283:649)。しかし、これらの分子は、活性化後シナプスに集合するため、T細胞抗原認識の初期相の際の高い特異性と結合活性を説明することができない。最近の研究は、T細胞表面の先端部分が、専門化してシナプス形成の初期相を媒介することを証明した(ネグレスク(Negulescu)ら、1996、Immunity 4:421〜430)。そのような専門化は、TCRの関与を増強するための細胞表面接着タンパク質(エクトドメイン)と、構造/機能的極性を維持するためにシグナルを伝達して細胞骨格を結合するための細胞質部分(エンドドメイン)とを含む予め形成された構造でなければならない。
【0005】
予め形成されたシナプスのエクトドメインまたは「免疫の出入口」は、最近発見されて、CLASP−1によって一部形成される(1999年10月1日に出願された米国特許出願第09/411,328号;PCT/US第99/22996号)。カドヘリンモチーフの他に、CLASP−1はまた、CRK−SH3結合ドメイン、チロシンリン酸化部位、および多重らせん(coiled coil)ドメインを含み、細胞骨格との直接相互作用およびCRKのようなアダプター分子による調節を示唆する。CLASP−1転写物は、リンパ様臓器および神経組織に存在し、タンパク質は、T:B細胞相互作用において重要であることがわかっている領域である、脾臓の辺縁領域のMOMA−1亜領域におけるTおよびBリンパ球およびマクロファージによって発現される。個々のTおよびB細胞のCLASP−1染色は、活性化前構造極性を示し、B細胞では「球状」または「キャップ」構造として構築され、およびT細胞では「環状」、「球状」、または「キャップ」構造として構築される。これらの構造の位置は、微小管形成中心(「MTOC」)に隣接する。CLASP−1抗体染色によって、CLASP−1が、分化が完全に約束されるT−B細胞結合物の境界面に存在することが示されている。CLASP−1の細胞外ドメインに対する抗体も同様に、T−B細胞結合体形成およびT細胞活性化を遮断する。
【0006】
3.発明の概要
本発明は、カドヘリン様非対称タンパク質(複数)(「CLASP(s)」)と呼ばれる新しい多遺伝子ファミリーメンバーである細胞表面分子に関する。特に、これは、CLASP−2のコード配列を含むポリヌクレオチド、CLASP−2コード配列の相補体と選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドを含む発現ベクター、そのようなポリヌクレオチド、CLASP−2ポリペプチド、CLASP−2融合タンパク質、治療的組成物、CLASP−2ドメイン変異体、CLASP−2ポリペプチドに対する抗体を含む遺伝子操作宿主細胞、CLASP−2の発現を検出する方法、およびCLASP−2機能を妨害することによって免疫応答を阻害する方法に関する。本発明には、自己免疫疾患および過敏症の治療、移植拒絶反応の予防、および免疫不全状態における免疫応答性の増強を含むが、これらに限定しない、幅広い用途が含まれる。
【0007】
一つの局面において、本発明は、以下である、単離されたCLASP−2ポリヌクレオチドを提供する:(a)配列番号:1、3、5または9の配列を有するポリヌクレオチド;(b)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズして、配列番号:2、4、6もしくは10の配列を有するポリペプチド、または配列番号:2、4、6、もしくは10の配列を有するポリペプチドの対立遺伝子変種もしくは相同体をコードするポリヌクレオチド;(c)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズして、配列番号:2、4、6、もしくは10のポリペプチドの少なくとも25個の連続する残基を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(d)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズして、配列番号:1、3、5もしくは9と同一または正確に相補的な少なくとも12個の連続する塩基を有するポリヌクレオチド。関連する局面において、本発明は、ポリヌクレオチドがPSD95、DLG1、またはneDLG 2のPDZドメインに結合するポリペプチドをコードする、CLASP−2ポリヌクレオチドを提供する。もう一つの関連する局面において、本発明は、ポリヌクレオチドが、PSD95、DLG1、またはneDLGとの結合に関して少なくとも104 M−1の結合親和性を有するポリペプチドをコードする、CLASP−2ポリヌクレオチドを提供する。
【0008】
一つの局面において、本発明は、配列番号:2、4、6もしくは10の完全長の配列を有するポリペプチドをコードするCLASP−2ポリヌクレオチド、またはATCC寄託番号PTA−1562およびPTA−1563のcDNAコード配列を提供する。
【0009】
もう一つの局面において、本発明はさらに、配列間の最高程度のマッチが得られるように配列が配置されるFASTAを用いて計算した場合に、配列番号:1、3、5もしくは9と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離されたCLASP−2ポリヌクレオチドを提供する。
【0010】
本発明はさらに、配列番号:2、4、6もしくは10と少なくとも90%の配列同一性を有し、および配列番号:2、4、6、もしくは10と免疫学的に交叉反応性であるか、または本来のCLASP−2と生物機能を共有するヌクレオチド配列を含む単離ポリペプチドを提供する。
【0011】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターのようなベクターを提供する。他の態様において、本発明は、本発明のベクターを含む宿主細胞または宿主細胞の子孫を提供する。特定の態様において、宿主細胞は真核細胞である。他の態様において、発現ベクターは、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が宿主細胞においてポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列と機能的に結合している、CLASP−2ポリヌクレオチドを含む。特定の態様において、本発明は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が宿主細胞、または細胞の子孫においてポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列と機能的に結合している、CLASP−2ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。
【0012】
もう一つの局面において、本発明は、アンチセンスポリヌクレオチドであるCLASP−2ポリヌクレオチドをさらに提供する。好ましい態様において、アンチセンスポリヌクレオチドは、長さが約200塩基未満である。他の態様において、本発明は、オリゴヌクレオチドがCLASP−2の発現を阻害する、配列番号:1、3、5または9を含むメッセンジャーRNAと相補的であって、CLASP−2をコードするアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0013】
もう一つの局面において、本発明は、配列番号:2、4、6または10に示すようにCLASP−2タンパク質をコードする単離DNAを提供する。特定の態様において、CLASP−2ポリヌクレオチドはRNAである。
【0014】
本発明は、以下の段階を含むポリペプチドを産生する方法を提供する:(a)ポリペプチドが発現される条件下でCLASP−2ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養する段階;および(b)培養宿主細胞またはその培養培地からポリペプチドを回収する段階。
【0015】
本発明はさらに、CLASP−2ポリヌクレオチドによってコードされる単離CLASP−2ポリペプチドを提供する。幾つかの態様において、CLASP−2ポリペプチドは、配列番号:2、4、6、もしくは10のアミノ酸配列またはその断片を有する。いくつかの態様において、単離CLASP−2ポリペプチドは、細胞膜に会合している。他の態様において、単離CLASP−2ポリペプチドは可溶性である。他の態様において、可溶性CLASP−2ポリペプチドは、異種ポリペプチドと融合される。
【0016】
本発明はさらに、配列番号:2、4、6、または10に示される配列を有する単離CLASP−2タンパク質を提供する。いくつかの態様において、本発明は、配列番号:1に示す配列を含むCLASP−2タンパク質および配列番号:2と少なくとも95%同一であって、細胞骨格タンパク質を特異的に結合するその変種を提供する。特定の態様において、細胞骨格タンパク質はスペクトリンである。
【0017】
本発明はさらに、配列番号:2、4、6、もしくは10に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体またはその結合断片を提供する。いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。他の態様において、本発明は、抗体を分泌することができるハイブリドーマを提供する。
【0018】
本発明はさらに、以下の段階を含むCLASP−2ポリペプチドに結合する化合物または物質を同定する方法を提供する:i) CLASP−2ポリペプチドに対する化合物の結合を可能にして複合体を形成させる条件下で、CLASP−2ポリペプチドを化合物または物質に接触させる段階、およびii) 複合体の有無を検出する段階。
【0019】
本発明はさらに、以下の段階を含む、試料中においてCLASP−2ポリペプチドを検出する方法を提供する:(a)試料をCLASP−2抗体または結合断片に接触させる段階、および(b)抗体とCLASP−2ポリペプチドとのあいだに複合体が形成されたか否かを決定する段階。
【0020】
本発明はさらに、以下の段階を含む、試料中においてCLASP−2ポリペプチドを検出する方法を提供する:(a)CLASP−2ポリヌクレオチド、または少なくとも12ヌクレオチドの配列を含み、CLASP−2ポリヌクレオチドの連続する配列と相補的であるポリヌクレオチドに試料を接触させる段階;および(b)ハイブリダイゼーション複合体が形成された否かを決定する段階。
【0021】
本発明はさらに、以下の段階を含む、試料中においてCLASP−2ヌクレオチドを検出する方法を提供する:(a)少なくとも12ヌクレオチドの配列を含み、CLASP−2ポリヌクレオチドの連続する配列と相補的であるポリヌクレオチドを増幅プロセスにおいて用いる段階;および(b)特異的増幅産物が形成された否かを決定する段階。
【0022】
本発明はさらに、CLASP−2ポリヌクレオチド、CLASP−2ポリペプチド、またはCLASP−2抗体および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物をさらに提供する。
【0023】
一つの局面において、本発明は、以下の段階を含む、細胞において免疫応答を阻害する方法を提供する:(a)細胞におけるCLASP−2遺伝子の発現を妨害する段階;(b)CLASP−2タンパク質のCLASP−2と細胞外タンパク質との細胞・細胞相互作用の媒介能を妨害する(例えば、異型および/または同型相互作用を妨害する)段階;(c)CLASP−2タンパク質のもう一つのタンパク質との結合能を妨害する段階。いくつかのそのような方法において、細胞はT細胞またはB細胞である。幾つかのそのような方法は、配列番号:2、4、6もしくは10のアミノ酸配列またはその断片を含むポリペプチドの有効量を細胞に接触させる段階を含む。
【0024】
もう一つの局面において、本発明は、配列番号:2、4、6または10の配列を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体の治療的有効量を、被験者に投与する段階を含む、被験者において免疫応答を阻害する方法を提供する。
【0025】
もう一つの局面において、本発明は、CLASP−2薬学的組成物の治療的有効量をそれを必要とする被験者に投与する段階を含む、CLASP−2媒介疾患を予防または治療する方法を提供する。幾つかのそのような方法において、CLASP−2媒介疾患は自己免疫疾患である。
【0026】
本発明はさらに、CLASP−2薬学的組成物の治療的有効量を被験者に投与する段階からなる、TH1細胞の活性の増加によって引き起こされるまたは悪化する、被験者における自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
【0027】
5.発明の詳細な説明
5.0 定義
明記している場合を除き、「患者」または「被験者」という用語は、互換的に用いられ、ウサギ、ラットおよびマウスのような実験動物ならびに他の動物と共に、ヒト患者およびヒト以外の霊長類のような哺乳類を意味する。
【0028】
本明細書において用いられる「生体試料」という用語は、hCLASP−2またはhCLASP−2タンパク質をコードする核酸を含む生体組織、体液、または細胞の試料である。そのような試料には、ヒトから単離された組織が含まれるがこれらに限定しない。生体試料はまた、組織学目的のために採取した凍結切片のような組織切片が含まれる。生体試料は典型的に、真核生物から得られ、好ましくは、真菌、植物、昆虫、原虫、鳥類、魚類、爬虫類のような真核生物、好ましくは、ラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモット、またはウサギのような哺乳類、および最も好ましくは、チンパンジーまたはヒトのような霊長類から得る。
【0029】
「治療する」という用語には、疾患の症状の発現、合併症、もしくは生化学指標を予防もしくは遅らせる、症状を軽減する、または疾患、病態、もしくは障害(例えば、自己免疫疾患)のさらなる進行を停止もしくは阻害するために、本発明の化合物もしくは物質を投与することが含まれる。治療は予防的であってもよく(疾患の発症を予防もしくは遅らせるため、またはその臨床もしくは臨床下症状の発現を予防するため)、または疾患の発症後の症状の治療的抑制もしくは緩和であってもよい。
【0030】
本明細書において用いられる「リンパ球」という用語は、当技術分野における通常の意味を有し、血液、リンパ、およびリンパ様組織に認められる単核球、非貪食白血球の如何なるものも、すなわちBおよびTリンパ球を意味する。
【0031】
「単離」または「精製」という用語は、その本来の状態において認められる場合にそれが通常伴う成分を実質的に含まない材料を意味する(例えば、組み換え的に産生される、またはそれが天然に会合する他の細胞成分を除いて精製される)。純度および均一性は典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学技術を用いて決定される。「精製した」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生じることを意味する。特にこの用語は、核酸またはタンパク質が少なくとも85%純粋であり、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0032】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に用いられ、合成、天然に存在する、および天然に存在しない、参考核酸と類似の結合特性を有し、そして参考ヌクレオチドと類似のように代謝される、既知のヌクレオチド類似体または改変骨格残基もしくは結合を含むDNA、RNA、および核酸ポリマーを意味する。そのような類似体の例には、ホスホロチオネート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNAs)が含まれるが、これらに限定しない。
【0033】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを意味するために本明細書において互換的に用いられる。アミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、または対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学模倣体を含んでもよい。
【0034】
本明細書において用いられるように、「核酸プローブ」という用語は、相補的配列の標的核酸に特異的に結合することができる(例えば、相補的塩基対形成によって)核酸として定義される。本明細書において用いられるように、プローブは、天然の塩基(すなわち、A、G、C、またはT)または改変塩基(7−デアザグアノシン、イノシン等)を含んでもよい。さらに、プローブにおける塩基は、ハイブリダイゼーションを妨害しない限り(例えば、プローブはペプチド核酸であってもよい)、ホスホジエステル結合以外の結合によって結合してもよい。プローブは、同位体、発色団、発光団、色原体によって直接標識することができ、またはそれに対してストレプトアビジン複合体が後に結合するビオチンを用いる場合のように間接的に標識してもよい。
【0035】
例えば、細胞、または核酸、タンパク質、もしくはベクターに関して用いられる「組換え型」という用語は、細胞、核酸、タンパク質、もしくはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入によって、または本来の核酸もしくはタンパク質の変化によって改変されていることを意味し、または細胞の場合には、そのように改変された細胞の子孫も意味する。このように、例えば、組換え細胞は、細胞の本来の型(非組換え型)には認められない遺伝子を発現する、またはそうでなければ異常発現される、過小発現される、または全く発現されない本来の遺伝子を発現する。
【0036】
核酸の一部に関連して用いる場合の「異種」という用語は、核酸が、互いに天然において同じ関係で認められない2つまたはそれ以上の小配列を含むことを意味する。例えば、核酸は典型的に組み換えによって産生され、新しい機能的核酸を作製するために配置された無関係な遺伝子から2つまたはそれ以上の配列、例えば1つの起源からプロモーターおよびもう一つの起源からコード領域を有する。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が、天然では互いに同じ関係で認められない2つまたはそれ以上の小配列を含むことを示す(例えば、融合タンパク質)。
【0037】
「配列同一性」という用語は、アミノ酸またはヌクレオチド配列のあいだの類似性の測定を意味し、下記に示す方法のように、当技術分野で既知の方法を用いて測定することができる。
【0038】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の意味において、「同一」、またはパーセント「同一性」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの一つを用いて、または手動での配置および肉眼での検分によって測定して、比較ウィンドウまたは指定された領域に対して最大の対応が得られるように比較および配置した場合に、同じである2つもしくはそれ以上の配列もしくは小配列、または特定の領域(例えば、配列番号:1を参照のこと)に対して同じである(すなわち60%同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一性)アミノ酸残基またはヌクレオチドの特定の割合を有する2つもしくはそれ以上の配列もしくは小配列を意味する。
【0039】
2つの核酸またはポリペプチドに関して「実質的に同一」という句は、以下の配列比較アルゴリズムの一つを用いて、または肉眼での検分によって測定して、最大の対応が得られるように比較および配置した場合に、少なくとも60%、しばしば少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、または少なくとも95%のヌクレオチドもしくはアミノ酸残基同一性を有する2つもしくはそれ以上の配列もしくは小配列を意味する。好ましくは、実質的な同一性は、長さが少なくとも約50塩基または残基の領域に対して、より好ましくは少なくとも約100塩基または残基の領域に対して存在し、および最も好ましくは配列は少なくとも約150塩基または残基に対して実質的に同一である。最も好ましい態様において、配列は、コード領域の長さ全体に対して実質的に同一である。
【0040】
配列の比較に関して、典型的に、1つの配列が参考配列としての役割を果たし、これに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験および参考配列をコンピューターに入力して、必要であれば小配列の整合性を指定して、そして配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルト(省略時解釈)プログラムパラメータを用いることができ、または別のパラメータを指定することができる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参考配列と比較して試験配列に関するパーセント配列同一性を計算する。核酸およびタンパク質のCLASP−2核酸およびタンパク質との配列比較の場合には、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムおよび下記のデフォルトパラメータを用いる。
【0041】
本明細書において用いられる「比較ウィンドウ」という用語は、その中で2つの配列を最適に配置した後に、配列が同じ数の連続する位置の参考配列と比較される、20〜600、通常約50〜約200、より通常約100〜約150個からなる群より選択される連続する位置の数のいずれか1つのセグメントを意味することを含む。比較のために配列を配置する方法は当技術分野で周知である。比較するための配列の最適な配置は、例えば、スミス&ウォーターマン(Smith & Waterman、1981、Adv. Appl. Math. 2:482)の局所相同性アルゴリズム、ニードルマン&ビュンシュ(Needleman & Wunsch、1970、J. Mol. Biol. 48:443)の相同性配置アルゴリズム、ペアソン&リップマン(Peason & Lipman、1988、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実施(FASTDB(インテリジェネティクス社)、BLAST(国立生物医学情報センター)、ウィスコンシンジェネティクスソフトウェアパッケージ(ジェネティクスコンピューターグループ、575 サイエンスドライブ、マディソン、ウィスコンシン州)におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または手動での配置および肉眼での検分(例えば、アウスユベール(Ausubel)ら、1987(1999増刊)「分子生物学の現行プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、グリーンパブリッシングアソシエーツ&ウィレーインターサイエンス、ニューヨーク)によって行うことができる。
【0042】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適しているアルゴリズムの好ましい例は、FASTAアルゴリズムであり、これはペアソン&リップマン(Pearson, W.R. &Lipman, D.J.、1988、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444)に記載されている。同様にペアソン(W.R. Pearson、1996、Methods in Enzymol. 266:227〜258)も参照のこと。パーセント同一性を計算するためにDNA配列のFASTA配置において用いられる好ましいパラメータを最適化する、BL50マトリクス15;−5、k−タプル=2;結合ペナルティ=40;最適化=28;ギャップペナルティ−12、ギャップ長ペナルティ=−2、および幅=16。
【0043】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適しているアルゴリズムのもう一つの好ましい例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これはアルツシュルら(Altschul、1977、Nuc. Acids. Res. 25:3389〜3402)およびアルツシュルら(Altschul、1990、J. Mol. Biol. 215:403〜410)にそれぞれ記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0は、本明細書に記載のパラメータを用いて本発明の核酸およびタンパク質のパーセント配列同一性を決定するために用いられる。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、国立生物医学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公式に入手できる。このアルゴリズムは、調べる配列において長さWの短いワードを同定することによって、高いスコア配列対(HSPs)をまず同定することを含み、これはデータベース配列において同じ長さのワードと配置すると、マッチするか、または幾つかの陽性値閾値スコアを満たす。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(アルツシュルら(Altschul)ら、上記)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPsを発見する検索を開始するためのシードとして作用する。ワードヒットは、累積配置スコアを増加することができる限り、それぞれの配列に沿って両方向に拡大する。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関してパラメータM(マッチ残基の対に関する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基のペナルティスコア;常に<0)を用いて計算する。アミノ酸配列に関しては、採点マトリクスを用いて累積スコアを計算する。各方向でのワードヒットの拡大は、累積配置スコアがその最大達成値から量X低下した場合;1つもしくはそれ以上の陰性スコア残基配置の蓄積により、累積スコアがゼロもしくはゼロ以下になった場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合、に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、配置の感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関して)は、デフォルトとしてワード長(W)11、予想(E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、および予測(E)10を用い、そしてBLOSUM62採点マトリクス(ヘニコフ&ヘニコフ(Henikoff & Henikoff)、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915)は、配置(B)50、予測(E)10、M=5、N=4、および双方の鎖の比較を用いる。
【0044】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(例えば、カーリン&アルツシュル(Karlin & Altschul)、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873〜5787を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供された類似性の一つの測定は、最小総和確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸を参考核酸と比較した場合の最小総和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満であれば、核酸は、参考配列と類似であると見なされる。
【0045】
有用なアルゴリズムのもう一つの例は、PILEUPである。PILEUPは、関係とパーセント配列同一性を示すために、進行性の対の配置を用いて関連配列の群から多数の配列配置を作製する。これは同様に、配置を作製するために用いられる集合関係を示す樹状図またはデンドグラム(dendogram)をプロットする。PILEUPは、フェン&ドリトル(Feng & Doolittle、1987、J. Mol. Evol. 35:351〜360)の進行性配置方法を単純にしたものを用いる。用いる方法は、ヒギンス&シャープ(Higgins & Sharp、1989、CABIOS 5:151〜153)に記載の方法と類似である。プログラムは、300配列までを配置することができ、各最大長は5,000ヌクレオチドまたはアミノ酸である。多数の配置技法は、2つの最も類似の配列を対にして配置することによって開始し、2つの配置された配列の集団を形成する。次に、この集団を次に近縁の配列または配置した配列の集合体と配置する。2つの集合体の配列は、2つの個々の配列を対にした配置を単純に拡大することによって配置する。最終的な配置は、一連の進行性の対にした配置によって得られる。プログラムは、配列比較領域に関して、特定の配列、そのアミノ酸またはヌクレオチド整合性を指定することによって、およびプログラムパラメータを指定することによって、実行する。PILEUPを用いて、参考配列を他の試験配列と比較して、以下のパラメータを用いてパーセント配列同一性関係を決定する:デフォルトギャップ荷重(3.00)、デフォルトギャップ長荷重(0.10)、および荷重末端ギャップ。PILEUPは、GCG配列分析ソフトウェアパッケージ、例えばバージョン7.0(デベリュー(Devereaux)ら、1984、Nuc. Acids. Res. 12:387〜395)から得ることができる。
【0046】
多数のDNAおよびアミノ酸配列配置に適しているもう一つの好ましいアルゴリズムの例は、CLUSTALWプログラムである(トンプソン(Thompson, J.D.)ら、1994、Nucl. Acids. Res. 22:4673〜4680)。CLUSTALWは、配列の群間の多数の対の比較を実行し、それらを相同性に基づく多数の配置に組み立てる。ギャップ開口およびギャップ伸長ペナルティはそれぞれ、10および0.05であった。アミノ酸を配置する場合、BLOSUMアルゴリズムをタンパク質荷重マトリクスとして用いることができる(ヘニコフ&ヘニコフ(Henikoff & Henikoff)、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915)。
【0047】
「標識」は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般的に用いられる)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテン、およびそれに対する抗血清またはモノクローナル抗体が利用できるタンパク質が含まれる(例えば、配列番号:1のポリペプチドは、例えばペプチドに放射標識を組み入れることによって検出可能となりうる、またはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために用いることができる)。
【0048】
本発明において用いられる「ソーティング」という用語は、例えば、蛍光活性化セルソーターを用いて行うことができる細胞の物理的ソーティングと共に、細胞表面マーカーの発現に基づく細胞分析、例えばソーティングを行わないFACS分析の両者を意味する。
【0049】
「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」という句は、ある分子が、その配列が複合混合物(例えば、総細胞またはライブラリDNAまたはRNA)中に存在する場合に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特定のヌクレオチド配列に限って結合、二本鎖形成、またはハイブリダイズすることを意味する。
【0050】
抗体に対して「特異的(または選択的に)結合する」という句は、タンパク質および他の生体物質の異種集団におけるタンパク質の存在を決定する結合反応を意味する。このように、指定されたイムノアッセイ条件下では、特定の抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍で特定のタンパク質に対して結合し、試料中に存在する他のタンパク質に対して有意な量で実質的に結合しない。
【0051】
ペプチドに関して「特異的に結合する」または「特異的に結合する」という句は、標的分子に対して排他的または主に、中間的または高い結合親和性を有するペプチドを意味する。「特異的に結合する」という句は、タンパク質および他の生体物質の異種集団の存在下で標的タンパク質の存在を決定する結合反応を意味する。このように、指定されたアッセイ条件下では、特定の結合部分が特定の標的タンパク質に選択的に結合して、試験試料中に存在する他の成分に対して有意な量で結合しない。そのような条件での標的タンパク質に対する特異的結合は、特定の標的抗原に対するその特異性のために選択される結合部分を必要とする可能性がある。多様なアッセイフォーマットを用いて、特定のタンパク質と特異的に反応するリガンドを選択してもよい。例えば、固相ELISAイムノアッセイ法、免疫沈降、バイアコア、およびウェスタンブロットを用いて、PDZドメイン含有タンパク質と特異的に反応するペプチドを同定する。典型的に、特異的または選択反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的にはバックグラウンドの10倍以上である。一価ペプチドとPDZ含有タンパク質との特異的結合は、結合親和性が少なくとも104 M−1であること、好ましくは105または106 M−1であることを意味する。
【0052】
「同型相互作用」という句は、同じタンパク質のもう一つの分子に対する所定のタンパク質の結合を意味する(例えば、hCLASP−2に対するhCLASP−2の結合)。「異型相互作用」という句は、異なるタンパク質または他の分子に対する所定のタンパク質の結合を意味する(例えば、PDZドメイン含有タンパク質に対するhCLASP−2の結合、またはDNAに対する転写因子の結合)。
【0053】
「免疫細胞応答」という句は、免疫細胞の移動、標的細胞の殺細胞、貪食、抗体産生、免疫応答の他の可溶性イフェクター等が起こる、免疫細胞に生化学変化を生じる、外界または内部刺激(例えば、抗原、サイトカイン、ケモカイン、および他の細胞)に対する免疫系細胞の反応を意味する。
【0054】
「Bリンパ球反応」および「Bリンパ球活性」という用語は、Bリンパ球によって行われる免疫応答の成分を意味するために互換的に用いられる(すなわち、Bリンパ球の増殖および成熟、細胞表面免疫グロブリンに対する抗原の結合、抗原のインターアナライゼーション、およびMHC分子によるTリンパ球への抗原提示、および抗体の合成と分泌)。
【0055】
「Tリンパ球反応」および「Tリンパ球活性」という用語は、Tリンパ球に依存的な免疫応答の成分を意味するために互換的に用いられる(すなわち、Tリンパ球の増殖および/またはヘルパーT細胞、細胞障害性キラーT細胞、または抑制性Tリンパ球への分化、抗体産生を引き起こすまたは予防するBリンパ球へのヘルパーTリンパ球によるシグナルの提供、細胞障害性Tリンパ球による特異的標的細胞の殺細胞、および他の免疫細胞の機能を調節するサイトカインのような可溶性因子の放出)。
【0056】
「免疫応答」という用語は、それによって、侵入する病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、癌様細胞、または自己免疫もしくは病理的炎症の場合には、正常なヒト細胞もしくは組織の選択的障害、破壊、またはヒト体内からの消失が起こる、リンパ球、抗原提示細胞、貪食細胞、顆粒球、および上記の細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子の協調作用を意味する。
【0057】
免疫応答の成分は、当業者に周知である様々な方法によってインビトロで検出してもよい。例えば、(1)細胞障害性Tリンパ球を放射活性標識標的細胞と共にインキュベートして、これらの放射活性の放出によってこれらの標的細胞の溶解を検出する、(2)ヘルパーTリンパ球は、抗原および抗原提示細胞と共にインキュベートして、サイトカインの合成および分泌を標準的な方法によって測定する(ウィンドハーゲン(Windhagen, A.)ら、1995、Immunity 2(4):373〜80)、(3)抗原提示細胞は全タンパク質抗原と共にインキュベートして、MHC上の抗原提示をTリンパ球活性化アッセイ法または生物物理的方法のいずれかによって検出することができる(ハーディング(Harding)ら、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:4230〜4)、(4)肥満細胞をFc−ε受容体と交叉反応する試薬と共にインキュベートして、ヒスタミン放出を酵素イムノアッセイ法によって測定することができる(シラガニアン(Siraganian)ら、1983、TIPS 4:432〜437)。
【0058】
同様に、モデル生物(例えば、マウス)またはヒト患者のいずれかにおける免疫応答の産物は、当業者に周知の様々な方法によっても検出することができる。例えば、(1)ワクチン接種に反応した抗体産生は、臨床検査において現在用いられる標準的な方法、例えばELISAによって容易に検出することができる;(2)擦過部位上の遊走細胞を捕獲するために、皮膚の表面を剥離して、滅菌容器に入れることによって検出することができる(ピータース(Peters)ら、1988、Blood 72:1310〜5);(3)マイトゲンに対する反応またはリンパ球混合反応における末梢血単核球の増殖を3H−チミジンを用いて測定することができる;(4)PBMCsにおける顆粒球、マクロファージ、および他の貪食細胞の貪食能は、PBMCsを標識した粒子と共にウェルに加えることによって測定することができる(ピータース(Peters)ら、1988);および(5)CD4およびCD8のようなCD分子に対する抗体によってPBMCsを標識して、これらのマーカーを発現するPBMCsの分画を測定することができる。
【0059】
本明細書において用いられるように、「シグナル伝達経路」、または「シグナル伝達事象」という句は、少なくとも一つの生化学反応、しかしより一般的には、細胞と刺激化合物または物質との相互作用の結果である、一連の生化学反応を意味する。このように、刺激化合物と細胞との相互作用は、「シグナル」を生じ、これがシグナル伝達経路によって伝達されて、最終的に細胞反応、例えば、上記のような免疫応答が起こる。
【0060】
シグナル伝達経路は、細胞のある部分からのシグナルを細胞の他の部分に伝達するために何らかの役割を果たす多様なシグナル伝達分子の生化学的関係を意味する。本発明のシグナル伝達分子には、例えば、CLASP−2の細胞外および細胞内ドメインが含まれる。本明細書において用いられるように、「細胞表面受容体」という句は、シグナルを受領することができ、細胞の細胞質膜を通過してシグナルを伝達することができる分子および分子の複合体を含む。本発明の「細胞表面受容体」の例は、T細胞受容体(TCR)である。本明細書において用いられるように、「細胞内シグナル伝達分子」という句には、細胞の細胞質を通っての細胞の細胞質膜から、および場合によっては細胞の核へのシグナルの伝達を含む分子または分子の複合体が含まれる。本発明において、CLASP−2は、「細胞内シグナル伝達分子」と呼ぶことができるが、「シグナル伝達分子」と呼ぶことも可能である。
【0061】
細胞におけるシグナル伝達経路は、細胞の内部または外部の刺激物質と細胞の相互作用によって開始することができる。外部(すなわち、細胞外)刺激物質(例えば、抗原提示細胞上のMHC抗原複合体)が、細胞表面受容体(例えば、T細胞受容体)と相互作用すれば、シグナル伝達経路は、シグナルを、細胞膜を通過させて、細胞の細胞質の中を通過させて、場合によっては核へ伝達することができる。内部(例えば細胞内)刺激物質が細胞内シグナル伝達分子と相互作用すれば、シグナル伝達経路によって、シグナルが細胞の細胞質の中を通過し、そして場合によっては細胞の核への伝達が起こりうる。
【0062】
シグナル伝達は、例えば、分子のリン酸化;非共有結合アロステリック相互作用;分子の複合体形成;分子のコンフォメーション変化;カルシウム放出;イノシトールリン酸産生;タンパク質分解的切断;環状ヌクレオチド産生、およびジアシルグリセリド産生によって起こりうる。典型的に、シグナル伝達は、シグナル伝達分子をリン酸化することによって起こる。本発明に従って、CLASP−2シグナル伝達経路は、一般的にCLASP−2タンパク質が、関与する受容体、PKC基質、Gタンパク質、およびその他の分子を含む経路を調節する経路を意味する。
【0063】
5.1 緒言
本発明は、細胞骨格と免疫の出入口のシグナル伝達装置を構築するために適当な特性を示すエンドドメインを含む、CLASPファミリーの新しいメンバーである新規膜貫通タンパク質CLASP−2に関する。
【0064】
CLASP−2は、免疫系の細胞、例えば、T細胞およびB細胞と共に免疫以外の細胞において機能する。CLASP−2タンパク質は、多様な細胞プロセス、特に免疫機能に関係するプロセス、T細胞およびB細胞相互作用の調節、T細胞活性化、およびシグナル伝達、細胞骨格相互作用、および膜構築を含む「免疫シナプス」の構築、確立および維持において機能する(ダスティン(Dustin)ら、1999、Science 283:680〜682;ポール(Paul)ら、1994、Cell 76:241〜251;ダスティン(Dustin)ら、1996、J. Immunol. 157:2014;ダスティン(Dustin)ら、1998、Cell 94:667)。
【0065】
特定のメカニズムに拘束される、またはいずれにせよ制限されるつもりはないが、CLASP−2タンパク質は、抗原提示の際に細胞・細胞接触の結合部位または出入り口を作製する「免疫の出入口」と呼ばれるリンパ球オルガネラの成分であると考えられている。CLASP−2の細胞質ドメインは、T細胞の先端で小片を構築すると考えられている。カルボキシ末端コード配列は、PDZドメインタンパク質および細胞骨格タンパク質(例えば、スペクトリンまたはアンキリン)との相互作用を媒介して、CLASP−2を微小管ネットワークに接続して上記の微小管構築中心(「MOTC」)の真上で分極構造で受容体を保持する。このように、T細胞がAPCとして作用するB細胞と連動すると、CLASP−2分子がもう一つの分子と連動して二つの細胞を結合させて、免疫シナプスを構築する。
【0066】
CLASP−2タンパク質の発現の調節、CLASP−2タンパク質相互作用の他のタンパク質による妨害または増強は、多くの有益な生理作用、例えば抗原に反応したシグナル伝達の変化、抗原に対するTおよびB細胞応答の変化、およびT細胞活性化の調節を有する。一つの局面において、CLASP−2細胞外ドメインを標的として(例えば、抗CLASP−2抗体、可溶性CLASP−2断片等を用いて)T細胞活性化を調節する(およびこのように、免疫応答を調節する)。CLASP−2機能を破壊することによって治療することができる障害には、多発性硬化症、若年性糖尿病、リウマチ性関節炎、天疱瘡、類天疱瘡、後天性表皮水疱症、狼瘡、子宮内膜症、毒血症、または妊娠性高血圧症、そう痒性丘疹状蕁麻疹、および妊娠性溶血斑(PUPPP)、妊娠性疱疹、疱疹状膿か疹、妊娠痒み、胎盤関連障害、およびRh不適合が含まれるが、これらに限定しない。
【0067】
もう一つの局面において、本発明は、CLASP−2発現およびCLASP−2発現細胞を検出する方法および試薬を提供する。異常な発現パターンまたは発現レベルは、免疫および他の障害を診断する。例えば、血液中または他の臓器におけるリンパ球の過剰産生または枯渇を特徴とする疾患は、生体試料(例えば、末梢血)中のCLASP−2ポリペプチドまたはmRNAのレベル、例えばCLASP−2発現細胞の数またはパーセントをモニターすることによって検出してもよい。T細胞の過剰産生を特徴とする疾患には、例えば、白血病(ALLおよびCLLの両者)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、菌状息肉腫およびセザリー症候群)、EBV、CMV、トキソプラズマ症、梅毒、腸チフス、ブルセラ症、結核、インフルエンザ、肝炎、血清病、および甲状腺薬中毒症が含まれる。T細胞の枯渇に関連した疾患には、例えば、HIVおよび骨髄異形成が含まれる。B細胞の過剰産生に関連した疾患には、例えば白血病(ALLとCLLの両者)、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、骨髄腫、EBV、CMV、トキソプラズマ症、梅毒、腸チフス、ブルセラ症、結核、インフルエンザ、肝炎、血清病および甲状腺薬中毒症が含まれる。B細胞枯渇に関連した疾患には、例えば、骨髄異形成が含まれる。
【0068】
5.2 CLASP−2 cDNA およびポリペプチドの構造
CLASP−2タンパク質は、もう一つのエキソンを使用することによって生じた(すなわち、スプライシング変種の産生)多数の型を特徴とするI型膜貫通糖タンパク質である。天然に存在する一つの型において、CLASP−2は、図1に示す構造を有する。しかし、下記に詳細に考察するように、CLASP−2遺伝子は、mRNAのもう一つのスプライシングによって多様な遺伝子産物をコードする。図2は、ヒトCLASP−2ポリペプチドのヌクレオチド配列および概念的翻訳を示す。
特に言及していなければ、「ヒトCLASP−2(hCLASP−2)」という句は、本明細書において、hCLASP−2A、hCLASP−2B、hCLASP−2C、およびhCLASP−2Eを意味する。「hCLASP−2D」cDNAはまた、KIAA1058としても知られ、これはキクノら(Kikuno、DNA Res. 6、197〜205)によって未知機能のタンパク質をコードする脳からのcDNAとして記述された。
【0069】
CLASP−2ポリペプチドは典型的に、約120残基のリーダー配列を含み、その後にカドヘリンタンパク質分解切断シグナルRXXR、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。本発明は、配列番号:1の配列を有するポリヌクレオチドまたはその断片を提供し、および配列番号:2の配列を有するポリペプチドまたはその断片を提供する。さらに、本発明は、hCLASP−2ゲノム配列を含むポリヌクレオチド、他の種からのCLASP−2相同体、hCLASP−2の天然に存在する対立遺伝子、および本明細書に記載のhCLASP−2変種を含むポリヌクレオチド、ならびにCLASP−2ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体およびその他の試薬を用いる方法を提供する。
【0070】
5.2.1 CLASP−2 ポリペプチドドメイン
図1に示すように、天然に存在する1つのCLASP−2 cDNAは、幾つかの構造的および機能的ドメインと明確な配列モチーフを特徴とするポリペプチドをコードする。実践者に手引きを提供するために、構造的特徴を下に記述する。しかし、本発明は、これらのドメインまたはモチーフの全てまたは如何なる特定のものも含むポリペプチドに限定されないと理解すべきである。例えば、本発明のCLASP−2融合タンパク質は、CLASP−2の細胞外ドメインのみを含む。同様に、配列番号:2のCLASP−2Aポリペプチドは、CLASP−2BおよびCLASP−2Cポリペプチドに認められるITAMモチーフ(下記に考察)を有しない。
【0071】
CLASP−2ポリペプチド(およびmRNAの対応する領域)の構造的(および機能的)に異なるドメインは、部分的に、CLASP−2遺伝子産物の活性または発現に影響を及ぼすために(例えば、免疫応答を調節するために)それらが個々にターゲティングされる、または改変される(例えば、欠失または変異)ことから、重要であると認識される。例えば、CLASP−2タンパク質の細胞外ドメインは、CLASP−2発現細胞(例えば、T細胞)と、CLASP−2が結合するタンパク質(すなわちCLASP−2リガンド)を示す第二の細胞(例えば、B細胞)との相互作用を遮断するためにターゲティングすることができる(例えば、抗CLASPモノクローナル抗体を用いて)。同様に、細胞内ドメイン(例えば、ITAM、またはDOCK、下記参照)は、細胞外リガンド結合を妨害することなく、シグナル伝達を妨害するようにターゲティングすることができる。
【0072】
一般的に、CLASP−2発現またはCLASP−2ポリペプチド機能を阻害すれば、例えば、免疫シナプスの形成に影響を及ぼすことによってT細胞活性化の閾値を変化させることを含む、免疫機能の調節が起こるであろう。免疫機能の調節は、当技術分野で既知で、本明細書に記載の多くのアッセイ法によってスクリーニングおよび定量することができる(第5.14章も参照のこと)。
【0073】
5.2.1.1. シグナルペプチド
図1に示すヒトCLASP−2配列は、翻訳開始部位の可能性がある部位2個をコードする。第一の予想されるメチオニンは、ヌクレオチド278位(ATG)に現れる。第二のメチオニンは、ヌクレオチド476位に現れる。いずれも、翻訳を開始するために許容されるコンセンサス配列を有する(A/GxxATGG;コザック(Kozak, M.)、1996、Mamm. Genome 7(8):563〜74)。第二のメチオニンで始まるポリペプチドはまた、シグナル配列予想プログラムであるシグナルPによってタンパク質を分泌経路に配置することができるシグナルペプチドをコードすると予想される(ニールセン(Nielsen, H.)ら、1997、Protein Eng. 10(1):1〜6)。第一のメチオニンで始まるポリペプチドは、シグナル配列を含まないと予想される;しかし。シグナル予測のコンセンサスは、既知のシグナル配列に関して80〜90%正確であるに過ぎない。翻訳開始部位の第三の可能性は、図1に記載したcDNAが不完全であり、もう一つのメチオニンがインフレームで、図1に示す配列の上流にコードされるという点である。
【0074】
5.2.1.2. 細胞外ドメイン
CLASP−2細胞外ドメインは、1つのカドヘリンEC様モチーフを特徴とする(ピゴット&パワー(Pigott, R. & Power, C.)、1993、「接着分子ファクトブック(factbook)」、アカデミック出版、6頁;ジャクソン&ラッセル(Jackson, R.M. & Russell, R. B.)、2000、J. Mol. Biol. 296:325〜34)。幾つかの非常に保存されたシステインと共に様々なグリコシル化シグナルが、細胞外ドメインに認められる。その細胞外ドメインを通じて、CLASP−2は、同型および/または異型的にリガンドと相互作用して、TCR、MHCクラスI、MHCクラスII、CD3複合体ならびにCD4、CD3、ICAM−1、LFA−1およびその他のアクセサリ分子のような分子と結合して免疫シナプスを確立する可能性がある。多くのカドヘリンは、細胞質膜に局在する前に除去されるアミノ酸約50〜150個のプロドメインを含む。この切断は、RKQRのコンセンサス配列でフリン(ポスタウスら(Posthaus, H.)、1998、FEBS Lett. 438:306〜10)によって行われると想定される。フリンは、特定のカドヘリンの成熟に少なくとも部分的に関与しているプロテアーゼである。CLASP−2は、ヌクレオチド945〜957位に配列RNQR配列を有する。相同性によって、この領域は、hCLASP−2Aの予想タンパク質開始部位の中のアミノ酸約120個である。この領域は、プロドメインである可能性があり、CLASP−2の機能、またはCLASP−2機能の局面のためには、切断する必要がある可能性がある。
【0075】
細胞外ドメインに対して作製された抗体を、CLASP−2を発現する細胞に加えることができる。これらの抗体は、CLASP−2と可能性があるリガンドとの相互作用を阻害するか、またはこれらの相互作用を安定化させることができる。例えば、本明細書に記載および記述した当技術分野で既知の如何なるイムノアッセイ法も用いて、このアプローチによって生じる免疫機能の調節を評価してもよい。
【0076】
同様に、CLASP−2の細胞外ドメインの一部は、可溶性タンパク質として発現することができる。この可溶性タンパク質は、CLASP−2を発現する細胞に加えることができる。これらのタンパク質は、可能性があるリガンドと相互作用して、内因性CLASP−2とのその結合を競合的に阻害する可能性がある。これは、本明細書に記載のイムノアッセイ法によってCLASP−2機能を調節しうる。組換えタンパク質は、CLASP−2相互作用を正または負に妨害しうる。
【0077】
5.2.1.3. 膜貫通ドメイン
CLASP−2予想アミノ酸配列は、膜貫通ヘリックスを予測するPHDhtm分析ソフトウェアを用いて分析した(ロスト(Rost, B)ら、1996、Prot. Science 7:1704〜1718)。PPHDhtm分析ソフトウェアを用いて、膜貫通ドメインは、アミノ末端近傍に位置する他の3つの可能性がある膜貫通ドメインと共に、ヌクレオチド2861〜2917位(図1を参照)に存在することが決定された。
【0078】
5.2.1.4. 細胞内ドメイン
CLASP−2細胞内ドメインは、幾つかのタイプのタンパク質ドメインに対応するモチーフを含む。特異的CLASP−2(すなわち、特異的ファミリーメンバーまたはスプライシング変種)に応じて、ドメインの全てまたはごく一部が存在しうる。アミノ末端からカルボキシ末端方向に記載すると、ドメインは:(1)ITAM(チャン(Chan)ら、1994、Annal. Review of Immunology 12:555〜592)、(2)新たに発見されたDOCK/CLASP−2モチーフ、(3)多重らせんモチーフ、および(4)C末端PDZ結合モチーフ(PBM)(PDZリガンドまたは「PL」とも呼ばれる)を含む。
【0079】
5.2.1.5. ITAM
免疫受容体チロシン骨格活性化モチーフ(ITAMモチーフ;ARAM、または抗原認識活性化モチーフとしても知られる)は、TおよびB細胞の抗原受容体、ならびに他の白血球上のFc受容体の中に含まれるモチーフであり、これらの細胞における適切な活性化およびシグナル伝達にとって必要である。それらは、コンセンサス配列YXXL/I−X7/8−YXXL/Iを特徴とし(グルクザ(Grucza)ら、1999、Biochemistry 38:5024〜5033)、通常、アミノ酸6〜8個離れている(ワトソン(Watson)ら、1998、Immunol. Today 19:260〜264;イサコフ(Isakov)、J. Leukoc. Biol. 61:6〜16)。ITAMは、白血球のシグナル伝達に関与するLynのようなsrcファミリーのチロシンキナーゼによるチロシンリン酸化能によって、細胞内調節モチーフとして用いられる。リン酸化されると、ITAMはSH2含有タンパク質の高親和性結合部位として作用する。ZAP−70、Syk、Lyn、Shc、PI3キナーゼ、およびGrb2を含むシグナル伝達成分は、SH2ドメインを含み、ITAMsに結合することが示されている(クレメンツ(Clements)ら、1999、Annu. Rev. Immunol. 17:89〜108)。これによって、ITAM含有モチーフは白血球における細胞内シグナル調節の中心的役割を有する。白血球のシグナル伝達におけるITAMモチーフは、他のシグナル伝達成分が結合して、伝達を媒介するために適切に配置された場合の一次的な足場として作用することによってシグナル伝達(例えば、チロシンキナーゼシグナル伝達)を促進しうる。ITAMモチーフはしばしば、タンパク質において複数現れるが、1セットのYXXL/Iのみでも、弱いがPTK経路のシグナルを伝達できることが知られている。
【0080】
CLASP−2タンパク質は典型的に、アミノ酸3または13個離れてITAM YXXL/Iモチーフ(Xは如何なるアミノ酸でもよい)を有する。様々な態様において、本発明のCLASP−2ポリペプチドは、表1に示すモチーフの1つまたはそれ以上を特徴とする。
【0081】
【表1】
【0082】
CLASPsタンパク質に多数のITAMモチーフが存在することは、それらが多数のシグナル伝達成分(例えば、ZAP−70/Syk、Shc、PI3キナーゼおよびGrb2)に関係する可能性があることを示している。一般的に、CLASPタンパク質におけるITAMモチーフは、保存的アミノ酸置換(すなわち、イソロイシンまたはロイシンの代わりにバリン)を有する幾つかのモチーフを有する基準ITAMモチーフと同一にマッチする。他のITAMsに関して先に記述したように、CLASPsを有するITAMはZAP−70、Syk、Shc、PI3キナーゼおよびGrb2を含むSH2含有タンパク質に結合することができる。CLASPsは、細胞外ドメインを有するため、CLASPsタンパク質は、その細胞外ドメインの関係を通じてシグナル伝達カスケードを独立して開始することができる。そうでなければ、CLASPsは、抗原受容体シグナル伝達複合体(例えば、CD3/TCR、BCR、FcRとの複合体)と協調して、チロシンキナーゼシグナル伝達を促進する可能性がある。
【0083】
ITAMsは、SH2ドメインに関して異なる結合特異性および親和性を証明した(クレメンツ(Clements)ら、1999、Ann. Rev. Immunol. 17:89〜108)。例えば、Shc、PI3キナーゼ、およびGrb2は二およびモノリン酸化ITAMsに対して異なる親和性で結合する。このように、CLASPsにおけるITAMsは、そのリン酸化状態に応じてシグナル伝達における定性的差と共に定量的差を提供すると共に、特異的タンパク質相互作用、したがって白血球における特異的チロシンキナーゼ媒介シグナル伝達経路を阻害または増強すると考えられている。
【0084】
PTK−CLASP−2相互作用に拮抗すること(例えば、CLASP−2のリン酸化)は、免疫機能を阻害するであろう。一つの態様において、ITAMを有するヒトCLASPsとその結合パートナーとの相互作用は、ITAM依存的リンパ球活性化を負に調節することが示されているシグナル調節タンパク質のαサブタイプ(SIRPα)によって拮抗されると考えられている(リーナード(Lienard, H.)、1999、J. Biol. Chem. 274:32493〜9)。同様に、免疫受容体チロシン骨格阻害モチーフ(ITAM)受容体の最近認識されたファミリーは、免疫コンピテント細胞のITAM誘導活性化を阻害すると考えられており(ジョージリー(Gergely)ら、1999、J. Immunol. Lett. 68:3〜15)、したがって、CLASP−パートナー相互作用を阻害する可能性がある。
【0085】
5.2.1.6. DOCK
CLASP−2ポリペプチドは、これまで科学文献に記載されていない新規「DOCK」モチーフを含む。CLASP DOCKモチーフには、領域A、B、C、D、およびGにおいて保存配列に取り囲まれた一連の5個のチロシンが含まれる(図5B参照)。同様に、アミノ酸9個(P+EXAI+XM)および(LXMXL+GXVXXXVNXG)(Xは如何なるアミノ酸でもよい)離れた高度に保存された2つの非チロシン含有領域(EおよびG)が存在する。
【0086】
ITAMドメインの直後のCLASP−2の細胞質領域は、いわゆる「DOCK」タンパク質のカルボキシ末端の3分の1と配列類似性を示す。DOCK遺伝子ファミリーは、アポトーシスに関与することが知られているC. エレガンス(C. elegans)のCEDタンパク質のヒト相同体である3つの分子を含む。主要なCRK結合タンパク質であるCED−5(DOCK180)は、膜に移動すると細胞の形態を変化させ(清掃細胞が取り囲んだ際に示す膜の運動を媒介する)、死につつある細胞を包み込む;その機能は、ヒトDOCK180によって部分的に救済することができる(ウ(Wu)ら、1998、Nature 392:501〜504)。ショウジョウバエにおける筋原細胞シティ(MBC)は、DOCKタンパク質ファミリーのもう一つのメンバーであり、筋原細胞融合に関与することが判明した(エリクソン(Erickson)ら、1997、J. Cell Biol. 138:589)。CLASP−2発現は、胎盤、筋肉、および心臓のような合胞体組織に認められるため、CLASP−2は、細胞融合の媒介または阻害に関与すると考えられている。
【0087】
DOCKファミリーは、細胞形状の制御に関与している。DOCK1は、紡錘細胞にトランスフェクトさせると、それらを平坦にして多角形にすることができる(タカイ(Takai)ら、1996、Genomics 35:403〜303)。DOCK1発現は、造血細胞を除いて広く存在する。DOCK2は、造血細胞に発現され、紡錘細胞にトランスフェクトすると、それらを丸くすることができる(ニシハラ(Nishihara, H.)、1999、Hokkaido Igaku Zasshi 74:157〜66)。DOCK2は、末梢血リンパ球、胸腺、脾臓、および肝臓に発現される。
【0088】
5.2.1.7. 多重らせん
CLASP−2sは、2つの多重らせんドメイン(ルーパス(Lupas)ら、1991、Science 252:1162〜64;ルーパス(Lupas, A.)、1996、Meth. Enzymology 266:513〜525)を有する。多重らせんドメインは、細胞骨格と直接相互作用することが知られており、CLASP−2タンパク質は細胞骨格と直接相互作用することを示している。このように、CLASP−2は細胞骨格タンパク質、例えば、スペクトリン、アンキリン、hsp70、タリン、エズリン、トロポミオシン、ミオシン、プレクチン、シンデカン、パラレミン、バンド3タンパク質、細胞骨格タンパク質4.1、チロシンフォスファターゼPTP36、および他の分子に結合すると考えられている。
【0089】
5.2.1.8. PDZ リガンド
CLASP−2タンパク質は、タンパク質のC末端においてPDZリガンドモチーフ(「PBM」または「PL」)を含む。この短い(アミノ酸3〜8個)モチーフは、モチーフのカルボキシ末端で終了するタンパク質(最も一般的にS/T−X−V−遊離のカルボキシ末端)と、1つまたはそれ以上の特異的PDZドメインを含む他のタンパク質との結合を媒介する(PDZリガンド構造の考察に関しては、ソンヤン(Songyang)ら、1997、Science 275:72、およびドイル(Doyle)ら、1996、Cell 85:1067を参照のこと)。
【0090】
PDZドメイン含有タンパク質は、神経シナプスでのイオンチャネルと受容体の構築、ならびに膜貫通受容体のC末端との結合によって上皮細胞における極性の確立および維持に関与している。PDZドメイン含有タンパク質は、免疫系の細胞においてタンパク質・タンパク質相互作用を媒介することができる(例えば、DLG1は、ヒトTリンパ球においてリンパ球カリウムチャネルKV1.3に結合する)(ハナダ(Hanada)ら、1997、J. Biol. Chem. 272:26899)。
【0091】
CLASP−2が3つの近縁タンパク質のPDZドメインと相互作用するという生化学的証拠を図9A〜Dに示す。図9Aは、CLASP−2のC末端アミノ酸20個がPSD−95、NeDLG、およびDLG1に結合するが、TIAM−1タンパク質のPDZドメインには結合しないことから、相互作用の特異性を示している。図9Bは、相互作用の親和性を示す。特に、最高の親和性相互作用は、CLASP−2とNeDLGのあいだに起こり、特異的結合親和性は少なくとも104 M−1である。マイクロモル範囲の親和性は、他の生物学的に重要なPDZリガンド相互作用においても認められている。図9CはCLASP−2の短い断片(C末端アミノ酸8個)またはKV1.3のC末端のいずれかを用いた、CLASP−2・PDZ相互作用の阻害能を示している。上記のように、KV1.3は、生存リンパ球においてDLG1に結合することが知られている。図9Dは、CLASP−2とKV1.3がPDZ結合を競合することを示している;すなわちKV1.3がCLASP−2結合を阻害するのみならず、CLASP−2も同様にKV1.3結合を阻害する。CLASP−2のC末端残基8個が、CLASP−2とKV1.3の両者と選択されたPDZドメインとの相互作用を阻害することができることは、CLASP−2のC末端アミノ酸8個に関連する化合物が、細胞に導入されると、リンパ様組織およびこれらのタンパク質を発現する他の組織(心臓、肺、および腎臓を含む)の機能に関係する多数のタンパク質・タンパク質相互作用における変化を媒介することを示唆している。
【0092】
CLASP−2のC末端アミノ酸8個を細胞に導入すると、細胞機能に影響を及ぼしうるという証拠は、これらのアミノ酸を細胞に、例えばHIV由来TAT輸送体ペプチド配列との融合体として導入した実験に由来する。TAT−CLASP−2融合ペプチドをジャーカットTリンパ球に加えて(TATペプチド単独を用いた対照と比較して)、カルシウム指示色素フルオ−4を用いて測定すると、細胞内カルシウム濃度に微妙な時間依存的変化が起こる。これらの結果は、TAT−CLASP−2融合体がT細胞イオン流入を変化させるという仮説と一致する。特に、結果は、CLASP−2のC末端配列が基礎細胞内カルシウム濃度をわずかに増加させ、抗CD3抗体による細胞の活性化時のカルシウムのこれに比例した増加をわずかに減少させうることを示している。そのような変化は、T細胞活性化関連CLASP−2タンパク質とKV1.3カリウムチャネルの局在を破壊する化合物に関して予測されるであろう。T細胞カルシウム流入に小さい変化が起こった結果、細胞の機能的活性に大きい変化が起こりうる(ウルフフィング(Wulfing)ら、1997、J. Exp. Med. 185:1815)。
【0093】
5.2.1.9. 免疫応答の調節
上記の通り、CLASP−2タンパク質は免疫シナプスの形成に影響を及ぼすことにより、さまざまな様式でさまざまな機序(すなわち、T細胞の活性化のための閾値の変化)を通じて免疫機能を調節する。免疫シナプスの成立および維持には(A)シグナル伝達、(B)細胞間相互作用、および(C)膜構成が関与しうる。
【0094】
(A)シグナル伝達
上記の考察の通り、ヒトCLASPタンパク質はSH3ドメインおよびチロシンリン酸化部位を含む。これらの領域は、リンパ球を含む種々の細胞においてシグナル伝達に関与することが示されている。このため、ヒトCLASPタンパク質は、免疫応答の調節につながるシグナル伝達事象の際にこれらの領域と相互作用すると考えられている。
【0095】
CLASPタンパク質は、Tecサブファミリーに属する非受容体型チロシンキナーゼと相互作用しうる。非受容体型チロシンキナーゼのTecサブファミリーはTec、Btk、Tsk/Itk/Emt ItkおよびBmxからなり、触媒ドメインに隣接したSH3およびSH2ドメイン、ならびにプレクストリン相同(PH)ドメイン、Tec相同(TH)ドメインおよびプロリンリッチ領域を含むアミノ末端領域の存在によって定義される(Mano, H.;1999、Cytokine Growth Factor Rev 10:267〜80)。T細胞に特異的なTsk/Itk/Emt、およびT細胞以外のほとんどの造血幹細胞で発現されるBtkは、造血幹細胞における抗原受容体シグナル伝達経路の重要な構成要素である。
【0096】
Btkは、マウス伴性免疫不全(xid)およびヒト伴性無γグロブリン血症(XLA)で欠陥のある遺伝子として同定されている(Nisitani, S.、2000、Proc Natl Acad Sci U.S.A. 97:2737〜42)。xidマウスではB細胞数が正常の半分に減少し、特定の免疫グロブリンアイソタイプの力価が著しく低下する。さらに、xid B細胞は多くの分裂誘発刺激に対して非感受性である。ヒトの方の疾患はさらに重篤であり、B細胞区画がほぼ完全に消失し、免疫グロブリン値が劇的に低下する。生化学的検討により、BtkがB細胞の活性化において多くの役割を果たすことが裏づけられている。Btkのキナーゼ活性およびチロシンリン酸化は、B細胞上のB細胞受容体またはマスト細胞上の高親和性IgE受容体FcRIとの架橋によって高まる。インターロイキン−5およびインスリン−6処理によってもBtkの活性化がもたらされることが示されている。
【0097】
ItkはBtkと同じく、抗原受容体との架橋によってチロシンリン酸化を受ける(Mano, H.、1999、Cytokine Growth Factor Rev、10:267〜80)。加えて、機能的Itkを欠失したマウス由来の末梢T細胞は、CD3に対する抗体+抗原提示細胞による刺激に対して不応性である。これらのItk欠損T細胞ではホルボールエステルおよびカルシウムイオノホアによる活性化は可能であり、このことはItkがシグナル伝達経路においてTCRの上流で作用することを示している。
【0098】
Lyn、Lck、Fyn、ZAP70、SyKおよびCSKを含む、類似したSrcファミリーのチロシンキナーゼとは異なり、TecファミリーのキナーゼにはSrcファミリーのキナーゼの膜局在のために極めて重要なアミノ末端ミリスチル化部位がなく、その膜局在のためには何らかのアダプタータンパク質が必要であることが示唆される(Mano, H.、1999、Cytokine Growth Factor Rev 10:267〜80)。TecファミリーのキナーゼはすべてSH3ドメインが結合しうるプロリンリッチ領域を含み、ヒトCLASPはすべてSH3ドメインを含むことから、ヒトCLASPはさまざまな造血細胞においてTecファミリーのメンバーに対するアダプターとして働く可能性があると考えられている。
【0099】
GTP結合タンパク質は免疫応答において重要な役割を果たす(Mach, B.、1999、Science 285:1367)。TCR/CD3によるT細胞活性化によって誘発される数多くの生化学的事象は、Gタンパク質の作用を変化させる薬剤によって妨げられる。これはコレラ毒素が細胞増殖、およびT細胞の抗CD3抗体処理によって媒介される細胞内Ca2+動員を阻害しうることに関係がある。Gタンパク質の競合阻害物質GDPSは、末梢Tリンパ球の刺激によって産生されるイノシトールリン酸の程度を抑制しうる。GTPSなどのGTPの非加水分解性類似体、または受容体との結合の必要性を回避することによってGタンパク質を活性化するALFなどの他の薬剤は、T細胞を活性化させることが可能である。
【0100】
GTP結合タンパク質のGαq/11サブファミリー(Stanners, J.、1995、J Biol Chem 270:30635〜42)およびRap1(Lafont, V.、1998、Biochem Pharmacol 55:319〜24)は、ヒトT細胞受容体/CD3を介したシグナル伝達経路に関与することが示されている。また、Rhoファミリーの低分子量GTPアーゼであるCdc42は、外部刺激に反応して起こるアクチン微小突起の形成に極めて重要な役割を果たすことが知られている(Miki, H.;1998、Nature、391:93〜6)。興味深いことに、Cdc42結合タンパク質WASPは、すべてのヒトCLASPに存在するSH3ドメインと相互作用しうるプロリンリッチドメインを有する。ヒトCLASPはこれらの GTP結合タンパク質と相互作用すると思われる。
【0101】
NCK、CBL(Bachmaier, K.、2000 Nature 403:211〜6)、SHC、LNK、SLP−76、HS1、SIT、VAV、GrB2およびBRDG1を含むいくつかのアダプタータンパク質、ならびに2種類のチロシンホスファターゼEZRIN、SHP−1およびSHP−2は、ITAMまたはSH3ドメインと相互作用することが示されている。これらのタンパク質はCLASP−2とも相互作用すると考えられる。いくつかのタンパク質はITAMまたはSH3ドメインと相互作用することが示されており、CLASP−2とも相互作用すると考えられる。これらには、NCK、CBL(Bachmaier, K.、2000、Nature 403:211〜6)、SHC、LAT、LNK、SLP−76(Krause Mら、2000、J Cell Biol 149:181〜94)、HS1、SIT、VAV、GrB2(Zhang W.およびSamelson, L.E.、2000、Semin Immunol 12:35〜41)およびBRDG1などのアダプタータンパク質、SYKおよびLCKなどのキナーゼ、ならびにSHP−1およびSHP−2などのチロシンホスファターゼが含まれる。これらの相互作用は、インビトロ結合アッセイ法、免疫共沈降アッセイ法、免疫共染色(Harlow, E.およびLane, D.、1999、抗体の使用:実験マニュアル(Using Antibodies:A laboratory Manual.)、Cold Spring Harbor Press)、またはCLASP−2タンパク質もしくは断片を「ベイト(bait)」として用いうる酵母ツーハイブリッドシステムなどの遺伝子アッセイ法(Zervosら、1993、Cell 72:223〜232;Maduraら、1993、J. Biol. Chem 268:12046〜12054)を含む、数多くの異なる生化学的または細胞生物学的な方法によって定義可能である。
【0102】
その他のアッセイ法には、インビトロ結合アッセイ法、免疫共沈降アッセイ法、免疫共染色アッセイ法、およびCLASP−2ドメインまたは断片を「ベイト(bait)」または「トラップ(trap)」タンパク質として用いうる酵母ツーハイブリッドシステムによるスクリーニングアッセイ法(Zervosら.(1993)、Cell 72:223〜232;Maduraら.(1993)J. Biol. Chem. 268:12046〜12054)が含まれる。
【0103】
その他の態様では、CLASPポリペプチドのリンパ球へのトランスフェクションが行われる。トランスフェクションの後には、さまざまな標準的アッセイ法を用いて、例えば、CLASPによるT細胞活性化の修飾を評価することができる。これらのアッセイ法には、カルシウム流入アッセイ法、NF−AT核移行アッセイ法(例えば、Cell、1998、93:851〜61)、NF−AT/ルシフェラーゼレポーターアッセイ法(例えば、MCB 1996 16:7151〜7160)、HS1、PLC−、ZAP−76およびVavなどの初期反応タンパク質のチロシンリン酸化(例えば、J. Biol. Chem. 1997、272:14562〜14570)が含まれる。
【0104】
(B)細胞間相互作用
上記の考察の通り、ヒトCLASPタンパク質はE−カドヘリンの相同体である。図1に示す通り、CLASP−2はカドヘリン切断ドメインおよびカドヘリン外部ドメインをいずれも含む。このため、CLASP−2タンパク質はこれらのドメインを介してカドヘリンと相互作用すると考えられる。カドヘリンはカルシウム依存的な細胞間接着にかかわる細胞表面接着分子の1つのファミリーである。ヒトカドヘリンであるE−、P−、N−およびVE−カドヘリンの組織分布は限局的であり、E−およびP−カドヘリンは上皮組織で発現され、N−カドヘリンは主として神経細胞で認められ、VE−カドヘリンは血管内皮上に認められる。これらの組織における強固な細胞間接着の維持には、隣接細胞の表面にあるカドヘリン同士のホモフィリックな結合が不可欠である。例えば、E−カドヘリンは成熟上皮細胞間の接着結合の形成に必要であるほか、ランゲルハンス細胞のケラチノサイトとの結合に関与し、VE−カドヘリンは内皮細胞同士の側方結合の維持のために必要である。成熟した哺乳類カドヘリンの細胞外領域は、約1110アミノ酸からなる5つの「CAD」モジュールから構成される。結晶学的および生化学的な研究から、カドヘリンが細胞表面で二量体を形成しうること、および相対する細胞表面にある二量体型カドヘリンとの相互作用が「ジッパー様」細胞結合の形成をもたらしうることが示されている。
【0105】
インテグリンは膜貫通型接着分子の第2のファミリーであり、細胞間相互作用および細胞と基質との相互作用の両方に関与する。少なくとも15種の連鎖が8種の連鎖と会合して多数のヘテロ二量体型インテグリンが形成され、それらは特定の連鎖が共有する用途に基づいて7つの主要なサブファミリーに分類可能である。3つのサブファミリー、すなわち1、2および7インテグリンのメンバーは白血球上に認められることが一般的である。1インテグリンの発現は広範囲にわたり(例えば、51、CD49e/CD29は、T細胞、顆粒球、血小板、線維芽細胞、内皮および上皮で認められる)、一方、2および7インテグリンの発現は限定的なパターンを有する。
【0106】
興味深いことに、ヒト上皮細胞表面のE−カドヘリンは粘膜リンパ球インテグリンE7のリガンドであることが判明しており、マウスでも同様の相互作用が示されている。E−カドヘリンまたはE7に対するモノクローン抗体はIELの上皮細胞との接着を阻止し、細胞のE7によるトランスフェクションによって、E−カドヘリンによるトランスフェクションを受けた細胞に対する接着能が付与される。
【0107】
L929細胞に対してCLASP−2およびネオマイシンをトランスフェクトさせることが可能である。抗CLASPペプチド特異的抗体を用いて、G418耐性クローンをCLASP発現に関してスクリーニングすることができる。CLASP発現クローンは、カドヘリン分子に関して記載されている「細胞凝集アッセイ法」を用いて、ホモティピックおよび/またはヘテロティピックなカルシウム依存的T細胞接着に関する試験に用いることができる(Murphy−Erdosh, C.ら、1995、J. Cell Biol. 129:1379〜1390)。
【0108】
結合ドメインに関与するアミノ酸を同定するためには、いくつかのアプローチを用いうる。上記のアッセイ法における阻止実験のためには、可溶性融合分子(例えば、EC12−IgG、ECC−IgG、ECM−IgGおよびGST−EC12)、ペプチドおよびペプチド特異的抗CLASP抗体が利用可能である。部位特異的変異誘発によって作製されたトランスフェクト体も用いることができる。
【0109】
(C)膜アンカリング/細胞骨格相互作用
興味深いことに、成熟Tリンパ球が活性化されると、チロシンリン酸化を受けたITAMはアクチン細胞骨格と相互作用する(Rozdzial, M. M.、1995、Immunity 3:623〜633)。ヒトCLASPは細胞骨格タンパク質と相互作用することが示されているITAMおよび多重らせんドメインの両方を含むため、CLASPは細胞骨格構造を再構築することによって細胞表面分子の発現調節に重要な役割を果たすと考えられている。
【0110】
Fアクチンミクロフィラメントによる細胞骨格構築は、細胞表面分子の発現調節に関与することが知られている。GTPアーゼ結合タンパク質の一つであるWASPは、外部刺激に反応して起こるアクチン微小突起の形成に極めて重要な役割を果たし、WASPの異所性発現によって、発現されたWASP自体と一部重複するFアクチンフィラメントのクラスター形成が誘導される。もう一つのWASPファミリータンパク質であるN−WASPも、糸状仮足の形成に重要な役割を果たすことが示されている。これらのタンパク質はいずれもアクチン重合を引き起こすが、それらが細胞内で発現される際には異なる特徴がみられる。すなわち、WASPは主として核周囲領域に局在してアクチンのクラスター化を引き起こすが、ほとんどのN−WASPは原形質膜に存在し、糸状仮足形成を誘導する(Miki, H.;1998、Nature 391:93〜6)。WASPおよびN−WASPはいずれも、ヒトCLASPのすべてに存在するSH3ドメインと相互作用しうると考えられるプロリンリッチドメインを含む。CLASP−2は、CLASP−2のWASPまたはWASP様タンパク質との結合を介してFアクチンと相互作用すると考えられる。
【0111】
CLASPタンパク質の細胞骨格タンパク質との相互作用を検出するために標準的なアッセイ法を用いうる。これらのアッセイ法には、共沈降アッセイ法、ファーウエスタンブロット分析(Ohba, T.、1998、Anal. Biochem. 262:185〜192)、表面プラズモン共鳴、CLASPをトランスフェクトしたリンパ球におけるファロイジンによるFアクチン染色(例えば、Small, J.ら、1999、Microsc. Res. Tech. 4:3〜17)、および焦点接着タンパク質(CLASPをトランスフェクトしたリンパ球におけるパキシリン、テンシン、ビンキュリン、テーリンおよびFAKなど;例えば、Ridyard, M.S.、1998、Biochem. Cell Biol. 76:45〜58を参照)の細胞内分布に関する免疫細胞学的分析が含まれる。
【0112】
5.2.2. CLASP−2 のエクソン構造およびゲノムドメイン
RNAの非翻訳領域に影響を及ぼす選択的スプライシング変種は、RNAの安定性を調節する手段となりうる。全体的にみて、選択的スプライシングは、免疫応答におけるCLASP−2のさまざまな機能を司る調節スイッチである可能性が高い。
【0113】
前記の箇所で指摘した通り、CLASP−2遺伝子の発現は、選択的なエクソン使用に特徴がある。イントロン/エクソン構造はゲノムDNAのコンピュータ解析によって予想しうるが、スプライス部位および選択的スプライシングはゲノムクローンとcDNAクローンとの比較のみによって解明可能である。選択的スプライシングおよびRNA編集は、互いに密接な関係にあるものの構造が異なる可能性があり、このため別個の機能を発揮する可能性のある種々のタンパク質が同じ遺伝子から生じる機構である。極めて少数の遺伝子から数千種もの異なるタンパク質を生み出すために選択的スプライシングがいかに用いられるかの一例は、ニューレキシン遺伝子ファミリーで示されている(ニューレキシンの総説については、Missler M.およびSuedhof, T.、1998、Trends in Genetics、14:20〜25を参照のこと)。CLASP−2のゲノムクローンとcDNAクローンとの比較分析により、CLASP−2が多数のエクソンから構成されていて、選択的スプライシングによって別個のCLASP−2転写物が生じることが明らかになった。CLASP−2のタンパク質コード部分は少なくとも14個のエクソンにわたっている(図6A)。
【0114】
エクソンの読み飛ばし(skipping)を引き起こすか、もしくは別の形で切断型タンパク質産物をもたらすスプライス部位の変異に起因する、または起因すると考えられている疾患は数多くある。これらの疾患の一部には、例えば、マルファン症候群(Liu Wら、1997、Nat. Genet. 16:328〜9)、ハンター病(Bonucelli Gら、2000、Hum. Mutat.(Online)2000 15(4):389、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Wibawa Tら、2000、Brain Dev. 22(2):107〜112)、骨髄単球性白血病(Wutz Dら、1999、Leuk. Lymphoma 35:491〜9.)およびイソ吉草酸血症(Vockley J.ら.、2000、Am. J. Hum. Genet. 66:356〜67)が含まれる。これは特に、多くのエクソンから構成される遺伝子(CLASP−2など)に関して成り立つ。CLASP−2のエクソン/イントロン境界周辺のゲノム配列は、スプライス部位の変異に起因する疾患の同定に向けた診断的アプローチのために有用である。当業者は、疾患に罹患した被験者からの細胞におけるCLASP−2の存在量を健康被験者からの細胞におけるCLASP−2のレベルと比較することにより、細胞集団(例えば、造血細胞、リンパ球)におけるCLASP−2アイソフォームの存在量または存在を疾患状態と相関づけることが可能である。これは任意の数のアッセイ法(例えば、PCR)を用いて行うことができる。
【0115】
選択的スプライシングおよびRNA編集は、互いに密接な関係にあるものの構造が異なる可能性があり、このため別個の機能を発揮する可能性のある種々のタンパク質が同じ遺伝子から生じる機構である。極めて少数の遺伝子から数千種もの異なるタンパク質を生み出すために選択的スプライシングがいかに用いられるかの一例は、ニューレキシン遺伝子ファミリーで示されている(ニューレキシンの総説については、Missler M.およびSuedhof, T.、1998、Trends in Genetics、14:20〜25を参照のこと)。
【0116】
CLASP−2イントロン/エクソンスプライス部位とCLASP−2タンパク質配列との整列化、およびCLASP遺伝子ファミリーにおいて保存的なエクソン/イントロン境界が見いだされることから(図6)、個々のCLASP−2エクソンは機能的に異なるタンパク質ドメインをコードすることが示唆される(図6および実施例4を参照)。ITAMならびにDOCKモチーフ1および2はスプライス部位に囲まれている(アミノ酸残基946および1063);DOCKモチーフ3およびCOILED−COILモチーフ1および2もスプライス部位に囲まれている(それぞれアミノ酸残基1102、1170および1246)。
【0117】
本研究において同定されたCLASP−2の選択的転写物の概要を図3に示す。簡潔に述べると、CLASP−2Aで欠失している1つの選択的エクソンはCLASP−2BおよびCLASP−2Dには存在する。このエクソンはITAMモチーフおよびDOCKモチーフ1をコードするDNA部分を含む。CLASP−2Dタンパク質産物は、CLASP−2AおよびCLASP−2BのC末端の38アミノ酸を含まない。このため、CLASP−2A/Bに特異的なC末端のみに存在するPDZ結合モチーフ(SSVV;アミノ酸残基1286から1289まで)は、CLASP−2D遺伝子産物では欠失している。このPDZ結合モチーフの有無は選択的RNAプロセシングに起因すると考えられる。
【0118】
5.2.3. CLASP スーパーファミリーのメンバー
図5に示す通り、CLASP−2は、類似したモチーフを有する免疫細胞関連タンパク質のスーパーファミリーのメンバーである。CLASP−1は、1999年10月1日に出願された米国特許出願第09/411,328号に記載されている。CLASP−1は、SH3結合ドメインモチーフを含む既知のCLASPの中でも独特である。CLASP−2A、−B、−Cおよび−Eポリペプチドには、CLASP−1に認められるアダプター結合部位またはSH3結合ドメインがない。CLASP−3、CLASP−4、CLASP−5およびCLASP−7は2000年2月14日に出願された同時継続出願中の米国特許出願第60/182,296号に記載されており、その全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる。
【0119】
5.3. CLASP−2 mRNA の発現
実施例2に述べる通り、組織および細胞系におけるCLASP−2 mRNAの発現をノーザン分析によってアッセイした。その結果を図4AおよびBに示す。CLASP−2の発現およびCLASPファミリーの他のメンバーの発現に関するノーザン分析の結果の概要を表2に示す。
【0120】
【表2】
1.ジャーカット=ヒトT細胞株;MV4−11=B骨髄単球;9D10=B細胞株;THP−1=単球;3A9=マウスT細胞;CH27=マウスB細胞株;HL60=ヒト前骨髄球;293=胚性腎上皮細胞(293)
2.表の説明(ノーザンブロットの結果に基づく):−=発現せず;−/+=低発現;+=中程度の発現;++中程度の高発現;+++高発現。
3. CLASP−2 EST(EST 815795)が骨髄cDNAライブラリーから同定された。
4.用いたプローブ(HC2.2)はCLASP−2A、−2B、−2Cおよび−2Dを区別しなかった。
このプローブはCLASP−2A cDNAのヌクレオチド3920〜4650位(731bp長)を含む。
5. 9D10からのRNAの場合、主要な転写物はジャーカット細胞および293細胞に認められた主要な転写物よりもかなり短かった。しかし、9D10にはそれよりも長い転写物も存在していた。プローブHC2.2と9D10の全RNAとのハイブリダイゼーションにより、少なくとも3種類の異なる転写物が明らかになった。図4B参照。
【0121】
表2および図4に示す通り、CLASP−2は胎盤で最も強く発現され、肺、腎臓および心臓がこれに続く。CLASP−3は腎臓および心臓で強く発現され、これよりも弱く胎盤および骨格筋で発現される。CLASP−4は末梢血リンパ球のみで発現される。CLASP−5は末梢血リンパ球で強く発現され、胎盤、腎臓、脾臓および胸腺に存在し、肺、小腸および肝臓では弱く発現される。これは脳、心臓、骨格筋および大腸では発現されない。CLASP−7は肺、心臓、肝臓および腎臓で強く発現されるが、PBL、脳および胸腺では発現されない。
【0122】
種々のCLASPタンパク質の組織発現パターンの違いは、異なるCLASPに免疫機能における異なる役割があり、このため、異なる機能を実現するように別々の標的に向けられる可能性を示している。例えば、CLASPタンパク質はT細胞受容体(TCR)による適切な機能またはシグナル伝達に必要であるため、種々のCLASPの組織特異的分布により、異なる組織における免疫応答を別個に調節することが可能となる。CLASP−2は心臓に存在するため、CLASP−2の機能または発現を阻止することは心臓における免疫応答を選択的に阻止するため(例えば、心移植拒絶またはMI後炎症などの後に、他の部位の免疫を損なわずに、心臓区画における免疫応答を選択的に停止させるため)に有用である。同様に、CLASP−3の阻害により、腎移植後の腎臓の拒絶を阻止することができる。さらに、阻害のレベルを調整することにより、各CLASPが代表する区画における免疫阻止と免疫応答との相対的な程度を調節することが可能である。
【0123】
5.4. CLASP−2 ポリヌクレオチドおよび使用方法
本発明は、種々のCLASP−2ポリヌクレオチドおよびそれらの使用のための方法を提供する。1つの面において、本発明のポリヌクレオチドは、CLASP−2タンパク質の少なくとも1つの断片(例えば、免疫原性断片)(例えば、配列番号:2、4、6または10の少なくとも1つの断片)またはその変異体を含むポリペプチドをコードする。もう1つの面において、CLASP−2ポリヌクレオチドを含む分子は、必ずしもCLASP−2タンパク質または断片をコードせずとも、CLASP−2発現を検出するためのプローブまたはプライマーとして、CLASP−2発現の阻害のため(例えば、アンチセンスまたはリボザイムを介した阻害)、遺伝子ノックアウトのためなどに有用である。
【0124】
5.4.1. CLASP−2 ポリヌクレオチド
本発明は、CLASP−2配列またはその相補物の少なくとも8ヌクレオチド(すなわち、ハイブリダイズ可能な部分)を有する、単離または精製された核酸も提供する。その他の態様において、本核酸は、CLASP−2配列または完全長CLASP−2コード配列の少なくとも約25個の(連続した)ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約150ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約250ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約550ヌクレオチド、約600ヌクレオチドもしくは約650ヌクレオチドまたはそれ以上からなる。もう1つの態様において、本核酸の長さは約35、約200または約500ヌクレオチドよりも短い。ポリヌクレオチドは一本鎖でも二本鎖でもよく、DNA、RNA、PNAまたはハイブリッド分子でありうる。
【0125】
特定の面においては、CLASP−2コード配列の少なくとも約10、25、50、100、150、200、250、500、550、600もしくは650ヌクレオチドまたはコード領域全体に対して相補的な配列を含む核酸が提供される。通常、単離されるポリヌクレオチドの長さは約100kbp未満、一般には約50kbp未満であり、しばしば約20kbp未満、約10kbp未満、約5kbp未満または約1000ヌクレオチド未満である。
【0126】
1つの特定の態様においては、CLASP−2核酸もしくはその相補物またはCLASP−2類縁体(derivative)をコードする核酸と、低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズしうる核酸が提供される。考慮対象となるCLASP−2の類縁体には、CLASP−2をコードする遺伝子のスプライシング変種、1つまたは複数のドメインの挿入または欠失がある点で本明細書で開示されるCLASP−2ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の1つと異なるCLASP−2遺伝子ファミリーの他のメンバーなどが非制限的に含まれる。
【0127】
1つの態様において、CLASP−2ポリヌクレオチドは、配列番号:1、3、5もしくは9と同一である、もしくは厳密に相補的であるか、または前記の配列と選択的にハイブリダイズする。さまざまな態様において、本ポリヌクレオチドは、CLASP−2 mRNAまたはゲノム配列の特定のタンパク質ドメインもしくは領域をコードするヌクレオチド配列または特定の遺伝子エクソンと同一である、もしくは厳密に相補的であるか、それと選択的にハイブリダイズする。このようなポリヌクレオチドは、CLASP−2の規定種が同定されるように選択しうるため、プローブとして特に有用である。
【0128】
本明細書で具体例として挙げるポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列に加えて、本発明は、他の種に由来するCLASP−2相同体、対立遺伝子変異体およびスプライシング変種、ならびに本明細書に開示する他の変異体も考慮の対象とする。CLASP−2遺伝子には転写物の選択的スプライシングの証拠が認められる。
【0129】
例えば、CLASP−2AおよびCLASP−2Cは互いに明らかなスプライシング変種として関連しており、CLASP−2CはCLASP−2Aには認められないエクソンを1つ含む。このエクソン配列は、
である(ペプチド配列:RDFERLAHLYDTLHRAYSKVTEVMHSGRRLLGTYFRVAFFGQGFをコードする)。当業者には明らかであると考えられる。上記の核酸配列に対応するポリヌクレオチドプローブもしくはプライマーを用いることにより、または上記のペプチドを特異的に認識する抗体、もしくは以下の表3に示すようなポリヌクレオチドプローブもしくはプライマーを用いることにより、異なるCLASPアイソフォームを区別することが可能である(例えば、差異を伴う発現を検出するために)。
【0130】
【表3】
【0131】
5.4.1.1. 実質的同一性
いくつかの態様において、本発明のCLASP−2ポリヌクレオチドは、配列番号:1、3、5もしくは9またはそれらの断片と実質的に同一である。
【0132】
2つの核酸配列が実質的に同一であるという1つの指標は、2つのポリヌクレオチドが、最適な整列化を行った際に特定領域にわたって特定の配列一致率、例えば、通常は少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%の同一性を有することである。
【0133】
2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう1つの指標は、以下に述べる通り、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生された抗体と免疫学的に交差反応性を有することである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的置換のみの点で異なる場合には、ポリペプチドは第2のポリペプチドと一般に実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう1つの指標は、2つの分子またはその相補物が以下に述べるストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0134】
2つの核酸配列(例えば、配列番号:1のCLASP−2配列の天然の対立遺伝子)が実質的に同一であるというさらにもう1つの指標は、同一のプライマーを用いて配列を増幅しうることである。例えば、CLASP−2ポリヌクレオチドは、表3に示すプライマー対を用いて、ヒトリンパ球由来のcDNAからPCRで増幅することができる。
【0135】
表3のプライマーは、CLASP−2スプライシング変種の増幅のためにも有用である。2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう1つの指標は、それらが以下に述べるストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズすること(すなわち、1つの配列が第2の配列の相補物とハイブリダイズすること)である。
【0136】
5.4.1.2. 選択的ハイブリダイゼーション
本発明は、例に挙げたCLASP−2配列と選択的にハイブリダイズする核酸にも関する(これらの配列の厳密な相補物とハイブリダイズすることを含む)。選択的ハイブリダイゼーションは、高ストリンジェンシー条件(「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とも呼ばれる)、中程度のストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件の下で起こりうる。
【0137】
5.4.1.2.1. 高ストリンジェンシー
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブがその標的となる部分配列と典型的には核酸の複合混合物としてハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしないと考えられる条件のことである。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、環境が異なれば異なると考えられる。長い配列ほど高温で特異的にハイブリダイズすると考えられる。核酸のハイブリダイズに関する詳細な手引きはティッセン(Tijssen)、生化学および分子生物学における技法―核酸プローブとのハイブリダイゼーション(Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Probe)、「ハイブリゼーションの原理よび核酸アッセイ法の戦略の概観(Overview of principles of Hybridization and the strategy of nucleic acid assays)」(1993)。
一般にストリンジェントな条件は、規定のイオン強度、pHでの特異的配列の融点(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に対して相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下で)である(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは平衡状態でプローブの50%が占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度がナトリウムイオン(または他の塩の)濃度で約1.0M未満、典型的には約0.01〜1.0Mであり、pH 7.0〜8.3であって、温度が短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合は少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを上回るもの)の場合は少なくとも約60℃であると考えられる。また、ホルムアミドなどの不安定化剤(destabilizing agent)を添加してストリンジェントな条件を実現することもできる。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションのためには、陽性シグナルはバックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドのハイブリダイゼーションの10倍である。高ストリンジェンシーまたはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例には以下のものが含まれる:50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDSにて42℃でインキュベート、または5×SSCおよび1%SDSにて65℃でインキュベートし、0.2×SSCおよび0.1%SDS、65℃中で1回洗浄する。1つの特定の態様においては、以下の高ストリンジェンシー条件下でCLASP−2核酸とハイブリダイズしうる核酸が提供される:DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションを、6×SSC、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、1mM EDTA、0.02%PVP、0.02%フィコール、0.02%BSAおよび500μg/ml変性サケ精子DNAから構成される緩衝液中にて65℃で8hから一晩かけて行う。100μg/ml変性サケ精子DNAおよび5〜20×106cpmの32P標識プローブを含むプレハイブリダイゼーション混合液中にて65℃で8〜16hかけてフィルターをハイブリダイズさせる。フィルターの洗浄は2×SSC、0.1%SDSを含む溶液中にて65℃で15〜30h行う。これに続いて、オートラジオグラフィーの15〜30分前に、0.2×SSCおよび0.1%、50℃中での洗浄を1回行う。
【0138】
5.4.1.2.2. 中程度のストリンジェンシー
もう1つの特定の態様においては、中程度のストリンジェンシー条件下でCLASP−2核酸とハイブリダイズしうる核酸が提供される。このような中程度のストリンジェンシー条件を用いる手順の例は以下の通りである:DNAを含むフィルターを、6×SSC、5×デンハルト液、0.5%SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中にて55℃で6h前処理する。ハイブリダイゼーションは同じ溶液中で行い、5〜20×106cpmの32P標識プローブを用いる。フィルターをハイブリダイゼーション混合液中にて55℃で12〜16hインキュベートした後、1×SSCおよび0.1%SDSを含む溶液中にて50℃で30分ずつ2回洗浄する。フィルターをブロット状態で乾燥させ、オートラジオグラフィーのために露出させる。用いうる、中程度のストリンジェンシーのその他の条件は当技術分野で周知である。フィルターの洗浄は、0.2×SSCおよび0.1%SDSを含む溶液中にて45℃で1hかけて行う。
【0139】
5.4.1.2.3. 低ストリンジェンシー
このような低ストリンジェンシー条件を用いる手順の非制限的な例は以下の通りである(ShiloおよびWeinberg、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:6789〜6792も参照されたい):DNAを含むフィルターを、35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、5mM EDTA、0.1%PVP、0.1%フィコール、1%BSAおよび500μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中にて4℃で6h前処理する。ハイブリダイゼーションは、0.02%PVP、0.02%フィコール、0.2%BSA、100g/mlサケ精子DNA、10%(wt/vol)硫酸デキストランに変更した上記の溶液中で行い、5〜20×106cpmの32P標識プローブを用いる。フィルターをハイブリダイゼーション混合液中にて4℃で18〜20hインキュベートした後、2×SSCおよび0.1%SDSを含む溶液中にて55℃で1.5h洗浄する。洗浄液を新たな溶液に交換し、50〜55℃でさらに30分間インキュベートする。フィルターをブロット状態で乾燥させ、オートラジオグラフィーのために露出させる。必要に応じて、フィルターに60〜65℃で3回目の洗浄を行い、フィルムに再露出させる。用いうる、低ストリンジェンシーのその他の条件は当技術分野で周知である(例えば、異種間ハイブリダイゼーションに用いられるものなど)。
【0140】
5.4.1.3. CLASP−2 の変異体および断片
本発明のCLASP−2変異体は、コード領域、非コード領域またはその両方に変化を含みうる。特に好ましいものは、サイレントな置換、付加または欠失を生じるものの、コードされるポリペプチドの特性または活性は変わらないような変化を含むポリヌクレオチド変異体である。遺伝暗号の縮重性に起因するサイレント置換によって生じるヌクレオチド変異体が好ましい。CLASP−2ポリヌクレオチド変異体は、例えば、特定の宿主に関してコドン発現を最適化する(ヒトmRNAにおけるコドンを大腸菌などの細菌宿主に好ましいものに変更する)ためといった、さまざまな理由で作製することができる。
【0141】
例となるCLASP−2ポリヌクレオチド断片は好ましくは、その長さが少なくとも約15ヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも約40ヌクレオチドである、または50、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650ヌクレオチドを上回る。断片の例には、配列番号:1のヌクレオチド番号約1〜50、51〜100、101〜150、151〜200、201〜250、251〜300、301〜350、351〜400、401〜450、451〜500、501〜550、551〜600から末端までの配列を少なくとも有する断片、または寄託されたクローン中のcDNAコード配列を含む断片が含まれる。この文脈における「約」には、具体的に列挙した範囲から、一方の末端または両方の末端で、数(5、4、3、2または1)ヌクレオチドだけ長いまたは短い範囲が含まれる。好ましくは、これらの断片は生物活性を有するポリペプチドをコードする。より好ましくは、これらのポリヌクレオチドは本明細書で考察するプローブまたはプライマーとして用いることができる。
【0142】
1つの態様において、CLASP−2変異体は、例に挙げた配列中に認められるものとは異なるエクソンの組み合わせが組み込まれている点で、配列番号:1、3、5、7または9と異なる。例えば、81g01(ゲンバンクアクセッション番号AF8S 864;Locus HUMYN81g01;526bp;EST配列はWashington University(St. Louis)により1998年8月29日に提出;図3Aおよび図3B参照)は、配列の特定の連鎖に沿ったCLASP−2の同一性に基づくhCLASP−2の変異体である。5’から3’方向にみると、これはCLASP−2Aと同一な315ヌクレオチドの連鎖から始まっている。その後にはCLASP−2Aからみてギャップがあり、これは別のCLASP−2アイソフォームであるhCLASP−2D(KIAA1058)中のギャップと同一である。そのギャップの代わりに、他のアイソフォームには認められない16アミノ酸の挿入物(48ヌクレオチド)が存在し、その後には再びCLASP−2Aと同一なほぼ150bpのヌクレオチド連鎖が続く。これは、異なるヌクレオチド連鎖の両側に特定の配列同一性があることからみて選択的スプライシングの特徴である。
【0143】
既知の蛋白工学および組換えDNA技術の方法を用いることにより、CLASP−2ポリペプチドの特徴が改善または変化するような変異体を作製することができる。例えば、生物機能の実質的な喪失を伴うことなく、CLASP−2タンパク質のN末端またはC末端から1つまたは複数のアミノ酸を除去することが可能である。
【0144】
さらに、ポリペプチドのN末端またはC末端から1つまたは複数のアミノ酸を除去することによって1つまたは複数の生物機能の改変または喪失がもたらされる場合にも、他の生物活性を依然として保つことは可能である。例えば、分泌型の残基の大半には満たない部分がN末端またはC末端から除去された場合には、分泌型を認識する抗体を誘導する、および/またはそれと結合する欠失変異体の能力は保持される可能性が高いと考えられる。タンパク質のNor C末端残基を欠く特定のポリペプチドがこのような免疫原性活性を保持しているか否かは、本明細書に記載の、およびそれ以外の当技術分野で知られたルーチンの方法によって容易に判断しうる。
【0145】
したがって、本発明はさらに、生物活性を示すCLASP−2ポリペプチド変異体を含む。このような変異体は、活性にほとんど影響を及ぼさないように当技術分野で知られた一般的規則に従って選択された欠失、挿入、逆位、反復および置換を含む。例えば、表現型の上でサイレントなアミノ酸置換の作製の仕方に関する手引きはボウイ(Bowie, J. U.)ら、Science 247:1306〜1310(1990)に提示されており、そこで著者らはアミノ酸配列の変化に対する耐性を検討するためには主に2通りの戦略があることを示している。
【0146】
第1の戦略では、進化の過程における自然淘汰によるアミノ酸置換の耐性を利用する。異なる種におけるアミノ酸配列を比較することにより、保存的なアミノ酸を同定することができる。これらの保存的アミノ酸はタンパク質の機能のために重要である可能性が高い。これに対して、置換が自然淘汰に耐えてきたアミノ酸の位置は、これらの位置がタンパク質の機能に決定的に重要ではないことを示す。このため、アミノ酸置換に耐えうる位置は、タンパク質の生物活性を維持しながら改変することができると考えられる。
【0147】
第2の戦略では、タンパク質の機能に決定的に重要な領域を同定するために、遺伝子工学を用いて、クローニングされた遺伝子の特定の30箇所にアミノ酸変化を導入する。例えば、部位特異的変異誘発法またはアラニンスキャニング変異誘発法(分子中のあらゆる残基への単一のアラニン変異の導入)を用いることができる(CunninghamおよびWells、1989、Science 244:1081〜1085)。続いて、その結果得られた変異分子を生物活性に関して試験することができる。
【0148】
さまざまな態様において、CLASP−2ポリヌクレオチド断片は、前記のCLASP−2構造ドメインもしくは機能性ドメインに関するコード領域、またはそれとハイブリダイズする領域を含む。図に示す通り、このような好ましい領域には以下のドメイン/モチーフが含まれる:ITAM、DOCK、COILED/COILEDおよびPBM。したがって、例えば、保存的ドメインの範囲に含まれる配列番号:2、4、6または10のポリペプチド断片は、特に本発明の考慮の対象である(図3参照)。さらに、これらのドメインをコードするポリヌクレオチド断片も考慮の対象である。このようなポリペプチド断片は、例えば、CLASP−2発現細胞におけるCLASP−2の機能の阻害物質としての用途がある。
【0149】
5.4.2. CLASP−2 ポリヌクレオチドの使用
本発明のCLASP−2ポリヌクレオチドは、さまざまな用途に有用である。本発明の1つの面において、本発明のポリペプチドをコードするCLASP−2ポリヌクレオチドは、例えば、抗CLASP抗体を産生させるため、または治療用ポリペプチドとして用いるために、CLASP−2ポリペプチドを発現させる目的で用いられる(例えば、本明細書に述べるように)。もう1つの面において、CLASP−2ポリヌクレオチドまたはその断片は、診断目的に用いることができる(例えば、CLASP−2の発現に関するプローブとして)。特に、CLASP−2をリンパ球で発現させることができるため、リンパ球マーカーとしてのCLASP−2の発現を検出するためにCLASP−2ポリヌクレオチドを用いることが可能である。診断目的には、疾患状態におけるCLASP−2遺伝子の発現またはCLASP−2遺伝子の異常発現を検出するためにCLASP−2ポリヌクレオチドを用いうる。もう1つの面において、CLASP−2ポリヌクレオチドまたは断片は治療目的に用いられる。例えば、CLASP−2の発現を阻害するように働くアンチセンスRNAおよびDNA分子ならびにリボザイムなどのオリゴヌクレオチド配列を用いてCLASP−2発現を阻害するための方法が本発明の範囲に含まれる。もう1つの面において、CLASP−2ポリヌクレオチドは、例えば、CLASP−2アゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングする目的で、トランスジェニックおよびノックアウト動物を作製するために用いることができる。もう1つの面において、CLASP−2ポリヌクレオチドは、CLASP−2アゴニストおよびアンタゴニストのスクリーニングのために用いることができる。
【0150】
5.4.2.1. 検出、診断および治療のための CLASP−2 ポリヌクレオチドの使用
本発明のCLASP−2ポリヌクレオチドは、細胞におけるCLASP−2発現の検出のため、およびCLASP−2の異常発現に起因する疾患または障害(例えば、免疫不全状態)の診断において有用である。CLASP−2 mRNAまたはタンパク質の異常発現とは、健康被験者から採取した対照リンパ球における発現と比べて、リンパ球(例えば、Tリンパ球またはBリンパ球)または他のCLASP−2発現細胞における発現が少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍高い、または低いことを意味する。CLASP−2ポリペプチドの発現は、本発明の抗CLASP−2抗体を用いるELISAによって容易に測定しうる。CLASP−2 mRNAの発現(CLASP−2の特定の種またはスプライシング変種の発現を含む)は、本発明のプローブおよびプライマーを用いる、定量的ノーザン分析もしくは定量的PCR、LCRまたは他の方法によって測定することができる。
【0151】
1つの態様において、本発明のアッセイ法は、CLASP−2遺伝子産物の検出のための増幅利用アッセイ法である。増幅利用アッセイ法においては、CLASP−2 mRNAまたはcDNAの全体または一部(以下では「標的」とも称する)を増幅した後、増幅産物を直接的または間接的に検出する。テンプレートとして作用する潜在的な遺伝子産物が存在しなければ、増幅産物は全く生成されないか(例えば、予想されるサイズのもの)、または増幅が非特異的であって一般に単一の増幅産物は生成されない。これに対して、潜在的な遺伝子または遺伝子産物が存在する場合には、標的配列が増幅され、潜在する遺伝子またはmRNAの存在および/または量の指標が得られる。標的増幅利用アッセイ法は当業者には周知である。
【0152】
本発明は、CLASP−2遺伝子および遺伝子産物を検出するための多岐にわたるプライマーおよびプローブを提供する。このようなプライマーおよびプローブは、標的核酸とハイブリダイズする程度に、CLASP−2遺伝子または遺伝子産物に対して十分に相補的である。プライマーは典型的には少なくとも6塩基長、通常は約10〜約100塩基長の範囲、典型的には約12〜約50塩基長の範囲、しばしば約14〜約25塩基長の範囲であり、しばしば15〜30(例えば、18〜22ヌクレオチド)のPCRプライマーが用いられる。しかし、当業者はプライマーの長さを調整することが可能である。当業者は、本開示を吟味することにより、ルーチンの方法を用いて、CLASP−2遺伝子もしくは遺伝子産物の全体もしくは任意の部分を増幅するためのプライマーを選択すること、または変異型遺伝子産物、CLASP−2対立遺伝子などを区別することが可能であると考えられる。単一オリゴマー(例えば、米国特許第5,545,522号)、オリゴマーの入れ子状セット、またはオリゴマーの縮重プールも増幅に用いることができる。
【0153】
プライマーまたはプローブの標的を差異を伴って用いられるエクソン(または変異体によって異なるエクソン−エクソン接合部)とすることにより、本開示の手引きに基づいて種およびスプライシング変種が区別されるようにプローブおよびプライマーを選択しうることは理解されると考えられる。
【0154】
本方法には、患者から細胞の試料を採取する段階、試料の細胞から核酸を単離する段階(例えば、ゲノム、mRNAまたはその両方)、CLASP−2遺伝子(存在すれば)のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こるような条件下で、核酸試料をCLASP−2遺伝子と特異的にハイブリダイズする1つまたは複数のプライマーと接触させる段階、ならびに増幅産物の有無を検出する段階、または増幅産物のサイズを検出し、その長さを対照試料と比較する段階が含まれうる。米国特許第4,683,195号および第4,683,202号、ランデグラン(Landegran)ら、1988、Science 241:1077〜1080;Nakazawaら、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:360〜364、アブラバヤ(Abravaya)ら、1995、Nucleic Acids Res. 23:675〜682)を参照。
【0155】
CLASP−2遺伝子産物は免疫系(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球およびマクロファージ)で発現されるため、発現は一般にこれらの細胞においてアッセイされると考えられる。リンパ球、マクロファージなどの単離には、当業者に周知の方法を用いうる(例えば、Coligan, J. E.ら(編)、1991、免疫学における最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)、John Wiley & Sons、NY;この参考文献はすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる)。1つの態様において、アッセイ法は生検または剖検に由来する組織に対して行われる。
【0156】
さまざまな態様において、CLASP−2遺伝子の発現は、検出プローブと細胞(例えば、リンパ球)から入手したmRNAまたはcDNAとのハイブリダイゼーションによって検出される。核酸ハイブリダイゼーション法を用いる特定のDNAまたはRNAの測定のためのさまざまな方法が当業者に知られている(Sambrookら、前記を参照)。ハイブリダイゼーション利用アッセイ法とは、プローブ核酸を標的核酸とハイブリダイズさせて、ハイブリダイゼーション複合体を形成させるアッセイ法のことを指す。通常、本発明の核酸ハイブリダイゼーションプローブは、CLASP−2遺伝子またはRNA配列の連続配列と完全または実質的に同一である。好ましくは、核酸プローブの長さは少なくとも約50塩基、しばしば少なくとも約20塩基、時に少なくとも約200塩基であり、少なくとも約300〜500ヌクレオチドまたはそれ以上である。当技術分野ではさまざまなハイブリダイゼーション法が知られており、それらは実際に多くの市販の診断用キットの基盤となっている。
【0157】
核酸ハイブリダイゼーションに用いるための核酸プローブ配列を選択する方法は、サムブルック(Sambrook)ら、前記に考察されている。いくつかの形式では、標的およびプローブの少なくとも1つを固定する。固定される核酸はDNA、RNAまたは別のオリゴ−またはポリ−ヌクレオチドであってよく、天然または非天然型のヌクレオチド、ヌクレオチド類似体または骨格を含みうる。このようなアッセイ法は、以下のものを含むいくつかの形式のいずれであってもよい:サザンブロット、ノーザンブロット、ドットブロットおよびスロットブロット、高密度ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドアレイ(例えば、GeneChips(登録商標)Affymetrix)、ディップスティック、ピン、チップ、またはビーズ。これらの技法はすべて当技術分野で周知であり、多くの市販の診断用キットの基盤となっている。ハイブリダイゼーション法の一般的な記載は、ハーメス(Hames)ら編、1985、核酸ハイブリダイゼーション、実践的アプローチ(Nucleic Acid Hybridization、Practical Approach)IRL Press;GallおよびPardue、1969、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、63:378〜383およびJohnら、1969、Nature、223:582〜587)になされている。
【0158】
当業者にはさまざまな核酸ハイブリダイゼーションの形式が知られている。例えば、1つの一般的な形式は、標的核酸を標識した相補的プローブとハイブリダイズさせる直接ハイブリダイゼーションである。一般に、ハイブリダイゼーションのためには標識核酸が用いられ、標識によって検出可能なシグナルが得られる。CLASP−2 mRNAの有無または量を評価するための1つの方法は、試料由来のRNAのノーザンブロット、および標識したCLASP−2特異的核酸プローブのハイブリダイゼーションである。試料におけるCLASP−2タンパク質をコードするDNAの有無または量を評価するための1つの有用な方法には、試料由来のDNAのサザンブロット、および標識したCLASP−2特異的核酸プローブのハイブリダイゼーションが含まれる。
【0159】
その他の一般的なハイブリダイゼーション形式には、サンドイッチアッセイ法および競合アッセイ法または置換アッセイ法が含まれる。サンドイッチアッセイ法は、核酸配列の検出または単離のための商業的に有用なハイブリダイゼーションアッセイ法である。このようなアッセイ法では、固体支持体に共有的に固定された「捕捉」核酸および溶液中にある標識した「シグナル」核酸を用いる。標的核酸は生物試料または臨床試料から提供されると考えられる。「捕捉」核酸および「シグナル」核酸プローブは標識核酸とハイブリダイズして「サンドイッチ」型ハイブリダイゼーション複合体を形成する。有効であるためには、シグナル核酸は捕捉核酸とハイブリダイズを行えない必要がある。
【0160】
1つの態様において、CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、免疫細胞の活性化、分化を活性化または阻害することにより、免疫系の不全症または障害の治療に有用である。免疫細胞は造血と呼ばれる過程によって生じ、多能性幹細胞から骨髄性細胞(血小板、赤血球、好中球およびマクロファージ)およびリンパ系細胞(BおよびTリンパ球)が生じる。これらの免疫不全症または障害の原因は、癌およびいくつかの自己免疫疾患などのように遺伝性、体細胞性でもよく、後天性(例えば、化学療法または毒素による)または感染性でもよい。
【0161】
もう1つの態様において、CLASP−2ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、造血細胞の欠乏症または障害の治療または検出のために有用である。CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、ある特定の(または多くの)種類の造血細胞の減少に伴うような障害を治療するための取り組みにおいて、多能性幹細胞を含む造血細胞の分化および増殖を促進させるために用いうると考えられる。免疫不全症候群の例には、血液蛋白障害(例えば、無ガンマグロブリン血症、異常ガンマグロブリン血症)、血管拡張性失調症、分類不能型免疫不全症、ディジョージ症候群、HIV感染症、HTLV−BLV感染症、白血球粘着不全症、リンパ球減少症、食細胞殺菌作用機能不全、重症複合免疫不全症(SCID)、ビスコット・オールドリッチ症、貧血、血小板減少症または血色素尿症が非制限的に含まれる。
【0162】
1つの態様において、CLASP−2ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、自己免疫疾患の治療または検出に有用である。本明細書で用いる「自己免疫疾患」という用語は、当技術分野における通常の意味を有し、免疫系が哺乳動物の体内の外来性の免疫原性物質および/または自家(「自己」)物質を区別することができず、その結果、自家(「自己」)組織および物質を異物であるかの如くにみなし、それらに対して免疫応答を引き起こすような、哺乳動物免疫系の自然発生性または誘発性の機能障害のことを指す。自己免疫疾患は、自己組織と反応する抗体の産生、および/または内因性自己抗原に対して自己反応性である免疫エフェクターT細胞の活性化を特徴とする。主として3つの免疫病理学的機構が自己免疫疾患を媒介するように作用する:1)自己抗体が機能性細胞受容体または他の細胞表面分子を標的とし、特殊化した細胞機能を刺激または阻害する。その際には細胞または組織の破壊を伴うことも伴わないこともある;2)自己抗原−自己抗体免疫複合体が細胞間液中または全身循環中に形成され、最終的に組織障害を媒介する;および3)リンパ球が、サイトカインの遊離または他の破壊性の炎症性細胞種を病変に誘引することによって組織病変を引き起こす。これらの炎症性細胞は続いて、炎症性疾患に関連した脂質メディエーターおよびサイトカインの産生をもたらす。
【0163】
自己免疫疾患の多くは、免疫細胞が自己を異物と不適切に認識することに起因する。この不適切な認識は、宿主組織の破壊につながる免疫応答を引き起こす。このため、免疫応答、特にT細胞の増殖または分化を阻害しうるCLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの投与は、自己免疫疾患の予防に有効な治療法となりうる。
【0164】
CLASP−2による治療または検出が可能な自己免疫疾患の例には、アジソン病、溶血性貧血、抗リン脂質抗体症候群、慢性関節リウマチ、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎、眼炎、水泡性類天疱瘡、天疱瘡、多腺性内分泌障害、紫斑病、ライター病、スティフマン症候群、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫性肺炎、ギラン・バレー症候群、インスリン依存性糖尿病および自己免疫性炎症性癌疾患が非制限的に含まれる。
【0165】
同様に、喘息(特にアレルギー性喘息)などのアレルギー性の反応および疾患、または他の呼吸器障害も、CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドによって治療しうる。さらに、抗原性分子に対するアナフィラキシーまたは過敏症を治療するためにCLASP−2を用いることも可能である。
【0166】
1つの態様において、CLASP−2ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、臓器拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)の治療および/または予防のために用いられる。臓器拒絶反応は、宿主免疫細胞による免疫応答を介した移植組織の破壊によって起こる。同様に、免疫応答はGVHDにも関与しているが、この場合には、移植された外来性の免疫細胞が宿主組織を破壊する。免疫応答、特にT細胞の増殖、分化を阻害するCLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの投与は、臓器拒絶反応またはGVHDの予防に有効な治療法となりうる。
【0167】
同様に、もう1つの態様において、CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、炎症を修飾するために用いられる。「炎症」という用語は、急性反応(すなわち、炎症過程が活動性である反応)および慢性反応(すなわち、緩徐な進行および新たな結合組織の形成を特徴とする反応)の両方を指す。急性および慢性炎症は、それにかかわる細胞の種類によって区別しうる。急性炎症にはしばしば多形核好中球がかかわり、一方、慢性炎症は通常、リンパ組織球性および/または肉芽種性反応を特徴とする。炎症には特異的防御系および非特異的防御系の両方の反応が含まれる。特異的防御系反応とは、抗原(自己抗原も含まれる可能性がある)に対する特異的な免疫系の反応である。非特異的防御系反応とは、免疫記憶を持てない白血球によって媒介される炎症反応である。このような細胞には顆粒球、マクロファージ、好中球および好酸球が含まれる。
【0168】
例えば、CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、炎症反応にかかわる細胞の増殖および分化を阻害しうる。これらの分子は、感染に伴う炎症(例えば、敗血症性ショック、敗血症または全身性炎症反応(SIRS))、虚血−再灌流障害、致死性内毒素症、関節炎、補体性超急性拒絶反応、腎炎、サイトカインもしくはケモカイン誘発性の肺損傷、炎症性腸疾患、クローン病、またはサイトカイン(例えば、TNFまたはIL−1)の過剰産生に起因するものを含む、慢性疾患および急性疾患のいずれの炎症性疾患の治療にも用いることができる。特定の種類の炎症の例には、びまん性炎症、局所性炎症、クループ性炎症、間質性炎症、閉塞性炎症、実質性炎症、反応性炎症、特異性炎症、中毒性炎症および外傷性炎症がある。
【0169】
もう1つの態様において、CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、感染因子の治療または検出のために用いられる。例えば、免疫応答を高めることにより、特にB細胞および/またはT細胞の増殖および分化を促進することにより、感染性疾患を治療することができる。免疫応答は、既存の免疫応答を高めること、または新たな免疫応答を惹起することによって高めることができる。CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、これらの症候群または疾患の任意のものを治療または検出するために用いうる。
【0170】
5.4.2.2. CLASP−2 ポリヌクレオチドのスクリーニングにおける使用
生物試料におけるのhCLASP−2ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の有無は、臨床方針の意思決定を補助するための医学的診断法などのスクリーニングアッセイ法に用いることができる。1つの態様において、hCLASP−2を用いる診断法には、原因不明の膣出血に関するスクリーニングアッセイ法が含まれる。以下に考察するいくつかの例では、膣出血が胎盤成分を含むか否かに関する知見により、出血の原因をある程度鑑別することができる(Hart FD編、1985、フレンチ鑑別診断インデックス(French’s Index of Differential Diagnosis)、第12版. John Wright & Sons、pp. 561〜63)。これらの場合には、血中での低発現と対比して胎盤ではhCLASP−2ヌクレオチド配列が高発現するため(図4A)、hCLASP−2ヌクレオチドまたはタンパク質の存在に基づいて胎盤の存在を検出することが可能と考えられる。このような検出は、定量的RT−PCR、ノーザン分析、ウエスタン分析、ELISA、および標識抗hCLASP−2抗体の使用による励起蛍光細胞分取法(FACS)によって行える(Sambrookら、1989、分子クローニング(Molecular Cloning)、第2版、Cold Spring Harbor Lab. Press;Harlowら、1988、抗体、実験マニュアル(Antibodies, a laboratory manual)、Cold Spring Harbor Lab. Press)。
【0171】
例えば、hCLASP−2は以下のスクリーニングアッセイ法に用いることができる。
【0172】
(1)ある女性が出産して分娩後出血を呈している。この場合には、胎盤組織の存在により、子宮内容の外科的除去術を必要とする「受胎産物残留」と呼ばれる状態であることが示される(DechemeyおよびPernol編、1996、最新産婦人科診療(Current Obstetric & Gynecologic Diagnosis & Treatment)、第8版、McGraw Hill)。
【0173】
(2)ある妊婦が原因不明の膣出血を呈している。この場合には、胎盤組織の存在により、胎児が出産に至る予後が不良であることを意味する「切迫流産」と呼ばれる状態であることが示される(DecherneyおよびPemol編、1996、最新産婦人科診療(Current Obstetric & Gynecologic Diagnosis & Treatment)、第8版、McGraw Hill)。
【0174】
(3)出産可能な年齢の女性が出血を呈し、妊娠検査は陽性であるが子宮内妊娠の所見は認められないことが明らかになった。この場合には、鑑別診断の中で最も重篤なものは医学的緊急事態である子宮外妊娠である。しかし、別の頻度の高い診断として堕胎完了または流産もある。膣出血における受胎産物(すなわち、胎盤)の存在は、堕胎完了の診断の可能性が子宮外妊娠よりも高いことを強く示す(DecherneyおよびPernol編、1996、最新産婦人科診療(Current Obstetric & Gynecologic Diagnosis & Treatment)、第8版、McGraw Hill)。
【0175】
もう1つの態様において、hCLASP−2を用いる診断法には、hCLASP−2を高レベルで発現する生命維持に必要な組織への損傷を判断するためのスクリーニングアッセイ法が含まれる。このような組織には、腎臓、心臓および肺が含まれる(図4A)。これらの組織への損傷は、hCLASP−2を含む細胞および細胞成分の周囲の体液(以下に明記する)への漏出をもたらす可能性がある。ウエスタン分析もしくはELISAによってこれらの周囲体液中に異常に高いレベルのhCLASP−2タンパク質が検出されれば、またはRT−PCRもしくはノーザン分析によってこれらの体液中に異常に高いレベルのhCLASP−2 RNAが検出されれば、組織損傷の診断に助けになると考えられる。
【0176】
腎損傷の場合には、hCLASP−2ヌクレオチドもしくはアミノ酸配列またはそれらの断片が尿中に出現することが予想される。異常に高いレベルのhCLASP−2が検出されることは、腎炎および尿細管壊死の両方を診断する助けとなり、腎以外の原因による蛋白尿との鑑別が可能となる。腎炎の早期診断は、ループス腎炎の早期診断および治療によって非可逆的な腎障害を予防することが可能な、全身性エリテマトーデスを示唆する臨床徴候および症状を有する患者には特に有意義である(Cameron J.S.、1999、J Nephrol 12 Suppl 2:S29〜41)。現時点では尿細管壊死を薬物療法によって改善することはできないが、尿細管壊死を腎前性腎不全から鑑別することは、尿量減少性の入院患者に対する治療計画を立てる上で極めて重要である(Bidani A.およびChurchill P.C.、1989、Dis Mon 35:57〜132)。
【0177】
心筋障害の場合には、hCLASP−2核酸もしくはアミノ酸配列またはそれらの断片が血中に出現することが予想される。これは、標準的なELISAまたは電気泳動法による、心筋梗塞および虚血後の血液中の他の心筋タンパク質(例えば、クレアチンキナーゼ、トロポニン)の高値に関する現在の標準的なモニタリング行為と類似している(Fauciら(編)、1998、ハリソン内科学(Harrison’s Principles of Internal Medicine)、第14版、McGraw Hill、pp. 1352〜1375)。hCLASP−2が心筋に存在し、骨格筋および血液には存在しないことから、hCLASP−2は心筋障害の診断およびモニタリングのための理想的なマーカーとなる。
【0178】
心筋障害とは異なり、肺障害は肺特異的タンパク質に関する血清のアッセイ法によってはルーチンには診断されていない。心筋梗塞と同様に、肺梗塞でも肺特異的なタンパク質および細胞が全身循環中に遊離される。肺塞栓(PE)または肺炎に起因する肺梗塞では、hCLASP−2を有する細胞またはタンパク質/ペプチドが全身循環中に遊離されると予想される。血清中のhCLASP−2タンパク質または血中のRNAが検出されれば、適切な臨床環境では肺梗塞の診断の助けになると考えられる。PEを診断するための現在の方法は、費用がかかるだけでなく、特異性および感度も乏しく、本疾患の誤診は入院患者の予防しうる死亡の主因となっている(Raskob G.E.およびHull R.D.、1999、Curr Opin Hematol. 6(5):280〜4)。
【0179】
もう1つの態様において、hCLASP−2を用いる診断法には、造血細胞系列の障害を同定するためのスクリーニングアッセイ法が含まれる。hCLASP−2はヒトT細胞、B細胞では発現されるが、骨髄細胞系列由来の細胞では発現されない。T細胞およびB細胞におけるhCLASP−2アイソフォームの違いにより、T細胞およびB細胞系列の癌をさらに鑑別することが可能となる(図4B)。造血細胞の種類を正確に同定することは、白血病およびリンパ腫の患者の化学療法および放射線療法を進める上で極めて重要である(Fauciら編、1998、ハリソン内科学(Harrison’s Principles of Internal Medicine)、第14版、McGraw Hill、pp. 695〜712)。hCLASP−2の発現の差は、FACS、免疫蛍光法、免疫ペルオキシダーゼ染色法、RT−PCR、インサイチューハイブリダイゼーションまたはRNAブロット分析によって検出可能である(Sambrook、FritschおよびManiatas、分子クローニング(Molecular Cloning)、第2版、Cold Spring Harbor Lab. Press、1989;Ward MS、Pathology 1999 Nov;31(4):382〜92)。
【0180】
もう1つの態様において、hCLASP−2を用いる診断法には、活性化された免疫系細胞を同定するためのスクリーニングアッセイ法が含まれる。hCLASP−2はPBMCでは一般に極めて低いレベルで発現されるが(これは上記の用途のいくつかには決定的に重要である)、近縁関係にあるマウスCLASP−1タンパク質の表面発現はリンパ球の活性化の過程で変化することが知られている。hCLASP−2タンパク質についても類似した発現の変化が予想される。細胞集団をhCLASP−2の多い集団とhCLASP−2の少ない集団に分離するために、特定の抗原に対して特異的なリンパ球のサブタイプ判定を、例えば、MHCに基づく多量体染色試薬(Altmanら、1996、Science 274:94〜6)を用いて行うことは、その抗原に対する免疫応答の性質を決定する助けになると考えられる。このような理解は、例えば、B型肝炎、C型肝炎およびHIVなどの慢性ウイルス感染症の経過を予測するため、ならびにこれらの感染症に罹患した患者に対する適切な治療方式を設計するために極めて重要である。
【0181】
また、hCLASP−2はウィルムス腫瘍に対する治療薬としても役立つ可能性がある。ウィルムス腫瘍は最も頻度の高い小児の原発性腎腫瘍である(Cotran、KumarおよびCollins、1999、ロビンス・疾患の病理学的基盤(Robbins Pathologic Basis of Disease)、第6版、W.B. Saunders、pp. 487〜89)。本明細書における考察の通り、hCLASP−2は胚性腎上皮細胞である293細胞で高発現される。このため、hCLASP−2核酸もしくはアミノ酸配列またはそれらの断片は、ウィルムス腫瘍に関する腫瘍マーカーとして役立つと考えられる。ウィルムス腫瘍のみで発現されるhCLASP−2変異体を標的とする抗体はウィルムス腫瘍に対する新規治療薬として役立つ可能性があり、抗hCLASP−2抗体と結合させうる他の標的治療薬(例えば、化学療法薬または放射標識)のための送達媒体として働く可能性もある。
【0182】
5.4.2.2.1. CLASP−2 アンチセンス、リボザイムおよび三重鎖ポリヌクレオチド、ならびに使用の方法
CLASP−2 mRNAの翻訳阻害に働く、アンチセンスRNAおよびDNA分子ならびにリボザイムを含むオリゴヌクレオチド配列は、本発明の範囲に含まれる。このような分子は、CLASP−2発現のダウンレギュレーションが望ましい場合に有用である。アンチセンスRNAおよびDNA分子は、標的とするmRNAと結合してタンパク質翻訳を妨げることにより、mRNAの翻訳を直接阻止するように作用する。本発明は、CLASP−2遺伝子産物のインビトロまたはインビボでの発現を低下させるために用いうる方法ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド試薬を提供する。本発明のアンチセンス試薬を標的細胞に投与することにより、CLASP活性の低下が引き起こされる。当業者には明らかと思われ、前記の箇所でも考察した通り(表3)、個々のCLASP−2スプライシング変種を阻害のための特異的な標的とすることができる。または、例えばCLASP−2種のいくつかまたはすべてに認められる配列を認識するアンチセンス分子を設計することにより、全般的な阻害を実現することもできる。
【0183】
A.アンチセンス
何らかの特定の機序に限定されることは意図しないが、アンチセンスオリゴヌクレオチドはセンスCLASP−2 mRNAと結合して、その翻訳を妨げると考えられている。または、アンチセンス分子は、CLASP−2 mRNAにヌクレアーゼ分解に対する感受性を付与し、転写を妨げ、RNA前駆体(「プレmRNA」)をプロセシング、局在もしくは他の点で妨げ、CLASP−2遺伝子からのmRNAの転写を抑制し、または他の何らかの機序によって作用することが可能である。しかし、アンチセンス分子がCLASP−2発現を低下させる具体的な機序が何であるかは特に重要ではない。
【0184】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、CLASP−2をコードするmRNAまたはCLASP−2遺伝子から転写されるmRNAからの配列と特異的にハイブリダイズする、少なくとも7〜10ヌクレオチド、一般には20個またはそれ以上のヌクレオチドからなるアンチセンス配列を含む。より一般的には、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは約10〜約50ヌクレオチド長または約14〜約35ヌクレオチド長である。
その他の態様において、アンチセンスポリヌクレオチドは、約100ヌクレオチド未満または約200ヌクレオチド未満のポリヌクレオチドである。一般に、本アンチセンスポリヌクレオチドは安定な二本鎖を形成する程度に十分に長く、送達様式に依存するが、必要に応じてインビボに投与しうる程度に十分に短い必要がある。標的配列との特異的ハイブリダイゼーションのために必要なポリヌクレオチドの最小限の長さは、例えば、G/C含量、ミスマッチ塩基(あれば)の位置、標的ポリヌクレオチド集団との比較による配列の一意性の程度、およびポリヌクレオチドの化学的性質(例えば、メチルホスホネート骨格、ペプチド核酸、ホスホロチオエート)などのいくつかの要因に依存する。一般に、特異的ハイブリダイゼーションが確実に起こるためには、アンチセンス配列は標的CLASP−2 mRNA配列と実質的に相補的である。ある一定の態様において、アンチセンス配列は標的配列に対して厳密に相補的である。しかし、アンチセンスポリヌクレオチドには、CLASP−2 RNAまたはその遺伝子に対応する関連した標的配列との特異的結合がポリヌクレオチドの機能特性として保持される限り、ヌクレオチド置換、付加、欠失、移行、転位もしくは修飾、または他の核酸配列もしくは非核酸部分も含まれうる。
【0185】
望ましい特性(例えば、高いヌクレアーゼ耐性、より強固な結合、安定性または望ましいTM)を得るために、本発明のCLASP−2ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを、標準的でない塩基(例えば、アデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジン以外のもの)または標準的でない骨格構造を用いて作製しうることは理解されると考えられる。オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ耐性を付与するための技法には、PCT国際公開公報第94/12633号に記載されたものが含まれる。ペプチド核酸(PNA)骨格を有するオリゴヌクレオチド(Nielsenら、1991、Science 254:1497)、または2’−O−メチルリボヌクレオチド、ホスホロチオエートヌクレオチド、メチルホスホネートヌクレオチド、ホスホトリエステルヌクレオチド、ホスホロチオエートヌクレオチド、ホスホルアミデートが組み込まれたものを含む、多岐にわたる有用な修飾オリゴヌクレオチドを作製することができる。さらに他の有用なオリゴヌクレオチドは、2’位に以下のいずれか1つを含むアルキルおよびハロゲン置換糖部分を含みうる:OH、SH、SCH3、F、OCN、OCH3OCH3、OCH3O(CH2)nCH3、O(CH2)nNH2またはO(CH2)nCH3、式中、nは1〜約10である;C1〜C10の低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリルもしくはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O−、S−もしくはN−アルキル;O−、S−もしくはN−アルケニル;SOCH3SO2CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;コレステリル基;葉酸基;レポーター基;インターカレーター;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基;またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善するための基、および類似の特性を有する他の置換基。オリゴヌクレオチドの取り込みを促進させる葉酸、コレステロールまたは脂質類似体などの他の基を、任意のヌクレオシドの2’位または3’末端もしくは5’末端ヌクレオシドのそれぞれ3’位もしくは5’位に直接またはリンカーを介して結合させることもできる。1つまたは複数のこのような結合物を用いうる。また、オリゴヌクレオチドはペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖模倣基(sugar mimetics)を有してもよい。その他の態様には、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されない、少なくとも1つの修飾型塩基もしくはイノシンなどの「普遍的塩基(universal base)」、またはクエオシンおよびウィブトシン(wybutosine)といった他の標準的でない塩基、ならびにアデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジンのアセチル−、メチル−、チオ−および同様の修飾形態を包含することが含まれうる。本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ウィブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル(pseudouracil)、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリンを非制限的に含む群から選択される、少なくとも1つの修飾塩基部分を含みうる。
【0186】
本発明はさらに、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、アルキルホスホジエステル、スルファメート、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’ −N−カルバメート、モルホリノカルバメート、キラル−メチルホスホネート、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間結合(intersugar linkage)を有するヌクレオチド、短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式糖間(「骨格」)結合、もしくはCH2−NH−O−CH2、CH2−N(CH3)−OCH2、CH2−O−N(CH3)−CH2、CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2およびO−N(CH3)−CH2−CH2骨格(ホスホジエステルがO−P−O−CH2の場合)またはそれらの混合物などの骨格類似体を有するオリゴヌクレオチドも提供する。モルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも有用である(米国特許第5,034,506号)。
【0187】
有用な参考文献には、オリゴヌクレオチドおよびその類似体、実践的アプローチ(Oligonucleotides and Analogues、Practical Approach)、エクスタイン(F. Eckstein)編、IRL Press、Oxford University Press(1991);アンチセンスの手法(Antisense Strategies)、Annals of the New York Academy of Sciences、Volume 600、バサーガ(Baserga)およびデンハルト(Denhardt)編(NYAS 1992);ミリガン(Milligan)ら、9 July 1993、J. Med. Chem. 36(14):1923〜1937;アンチセンスの研究および応用(Antisense Research and Applications)(1993、CRC Press)の全体および特にサンギ(Sanghvi)による「核酸における複素環式塩基修飾およびアンチセンスオリゴヌクレオチドにおけるその応用(Heterocyclic base modifications in nucleic acids and their applications in antisense oligonucleotides)」と題する第15章;ならびにアンチセンス治療薬(Antisense Therapeutics)、スディール・アグラワル(Sudhir Agrawal)編(Humana Press、Totowa、New Jersey、1996)が含まれる。
【0188】
1つの態様において、本アンチセンス配列は、CLASP−2 mRNAの相対的に接触可能な配列(例えば、二次構造が相対的に少ないもの)に対して相補的である。これは、予想されるRNA二次構造を例えばMFOLDプログラム(Genetics Computer Group、Madison WI)を用いて解析し、当技術分野で知られた通りにインビトロまたはインビボで試験を行うことによって決定しうる。有効なアンチセンス組成物を同定するためのもう1つの有用な方法では、オリゴヌクレオチドのコンビナトリアルアレイを用いる(例えば、Milnerら、1997、Nature Biotechnology 15:537を参照されたい)。CLASP−2機能のアンチセンス抑制に関する試験を行いうるオリゴヌクレオチドの例は、配列番号:1のうち以下の位置とハイブリダイズしうる(すなわち、実質的に相補的な)ものである :
(実施例8も参照のこと)
【0189】
いくつかの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与は、アンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを1μM、5μM、10μMまたは20μMの濃度で投与した後にノーザン分析による評価で、hCLASP−mRNAの発現を少なくとも約50%低下させると考えられる。
【0190】
また、本発明は、アンチセンス配列に加えて(すなわち、抗CLASP−2センス配列に加えて)別の配列を有するアンチセンスポリヌクレオチドも提供する。この場合には、アンチセンス配列はより長い配列のポリヌクレオチドの内部に含まれる。もう1つの態様において、ポリヌクレオチドの配列は、本質的にはアンチセンス配列からなる、またはアンチセンス配列そのものである。
【0191】
アンチセンス核酸(DNA、RNA、修飾物、類似体など)は、本明細書に開示する化学合成法および組換え法などの、核酸を作製するための任意の適した方法を用いて作製することができる。1つの態様においては、例えば、本発明のアンチセンスRNA分子を、デノボ化学合成またはクローニングによって調製しうる。例えば、CLASP−2 mRNAとハイブリダイズするアンチセンスRNAは、CLASP−2DNA配列(例えば、配列番号:1またはその断片)を、ベクター(例えば、プラスミド)中にプロモーターと機能的に結合するように逆方向に挿入(連結)することによって作製しうる。プロモーター、ならびに好ましくは転写終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルが適切に配置されれば、非コード鎖に対応する挿入配列のストランドが転写され、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドとして作用すると考えられる。「機能的に結合した」という用語は、発現調節配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指令するような、核酸発現調節配列(プロモーターまたはエンハンサーなど)と第2の核酸配列との間の機能的なつながりのことを指す。
【0192】
1つの態様では、CLASP−2ヌクレオチド配列の翻訳開始部位、例えば、−10から+10までの領域に由来するアンチセンスDNAオリゴデオキシリボヌクレオチドが用いられる。アンチセンスポリヌクレオチドに関する一般的な方法については、アンチセンスRNAおよびDNA(Antisense RNA and DNA)、1988、メルトン(D.A. Melton)編、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NYを参照のこと。また、ダグル(Dagle)ら、1991、Nucleic Acids Research、19:1805も参照されたい。アンチセンス療法の総説については、例えば、ウールマン(Uhlmann)ら、1990、Chem. Reviews、90:543〜584を参照されたい。
【0193】
B.リボザイム
リボザイムとは、RNAを特異的に切断しうる酵素性RNA分子のことである。リボザイムの作用機序には、リボザイム分子と相補的な標的RNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションとこれに続くヌクレオチド鎖切断が含まれる。CLASP−2RNA配列のヌクレオチド鎖切断を特異的および効率的に触媒する、ハンマーヘッド型モチーフを有する組換えリボザイム分子は本発明の範囲に含まれる。
【0194】
可能性のある任意のRNA標的の内部にある特異的なリボザイム切断部位は、配列GUA、GUUおよびGUCを含むリボザイム切断部位に関して標的分子をスキャンすることによってまず同定される。ひとたび同定されれば、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの範囲の短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列が不適切とされる二次構造などの予想される構造的な特徴に関して評価することができる。標的候補の適切さを、リボヌクレアーゼ保護アッセイ法を用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションへの利用可能性を検討することによって評価することもできる。
【0195】
C. 三重鎖
または、標的遺伝子の調節領域(すなわち、標的遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー)に対して相補的なデオキシリボヌクレオチド配列によるターゲティングを行い、体内の標的細胞における標的遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成させることによって、内因性標的遺伝子の発現を低下させることもできる(概論については、Helene、1991、Anticancer Drug Des.、6(6):569〜584;Heleneら、1992、Ann. N.Y. Acad. Sci.、660:27〜36;およびMaher、1992、BioAssay 14(12):807〜815を参照)。
【0196】
転写阻害のための三重らせん形成に用いる核酸分子は、一本鎖であってデオキシヌクレオチドから構成される必要がある。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、二本鎖の一方のストランドにプリンまたはピリミジンの安定な連鎖が存在することが一般に必要であるというフーグスティーン型塩基対規則によって三重らせん形成が促されるように設計しなければならない。ヌクレオチド配列はピリミジンを主体とすることができ、その場合には結果として得られる三重らせんの3つの会合鎖の間にTATおよびCGC+トリプレットが生じると考えられる。ピリミジンに富む分子は、二本鎖の単一ストランド中のプリンに富む領域に対して相補的な塩基をそのストランドに平行な方向で提供する。さらに、プリンに富む核酸分子、例えばG残基の連鎖を含むものを選択することもできる。これらの分子は、GC対に富むDNA二本鎖との間に、プリン残基の大半が標的二本鎖の単一ストランド上に位置し、三重鎖の3つのストランドの間でGGCトリプレットが生じるような三重らせんを形成すると考えられる。
【0197】
または、いわゆる「スイッチバック」核酸分子を作製することにより、三重らせん形成のためのターゲティングが可能な標的の候補を増やすこともできる。スイッチバック分子は、それらが二本鎖の最初の1つのストランド、続いて他方のストランドと塩基対を形成し、二本鎖の一方にプリンまたはピリミジンのかなり長い連鎖が存在する必要性がなくなるように、5’→3’、3’→5’の交代様式で合成される。
【0198】
D. 概論
本発明のアンチセンスRNAおよびDNA分子、リボザイムならびに三重らせん分子は、RNA分子の合成のための当技術分野で知られた任意の方法によって調製しうる。これらには、例えば固相ホスホルアミダイト化学合成などの、オリゴデオキシリボヌクレオチドの化学合成のための当技術分野で周知の技法が含まれる。または、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボでの転写によってRNA分子を作製することもできる。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適したRNAポリメラーゼプロモーターを含む、非常にさまざまなベクター中に組み入れることが可能である。または、用いるプロモーターに応じて、アンチセンスRNAを構成性または誘導性に合成するアンチセンスcDNA構築物を細胞系に安定的に導入することもできる。
【0199】
細胞内での安定性および半減期を向上させる手段として、DNA分子にさまざまな修飾を導入することができる。考えられる修飾には、分子の5’および/もしくは3’末端へのリボ−もしくはデオキシ−ヌクレオチドの隣接配列の付加、またはオリゴデオキシリボヌクレオチド骨格の内部にホスホジエステル結合ではなくホスホロチオエートもしくは2’ O−メチルを用いることが非制限的に含まれる。
【0200】
このような細胞または組織にポリヌクレオチドを導入するための方法には、裸のポリヌクレオチドのインビトロ導入、すなわち組織への注入によるもの、エクスビボでの細胞へのCLASP−2ポリヌクレオチドの導入、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなど)、ファージもしくはプラスミドなどのベクターの使用、または電気穿孔もしくはリン酸カルシウム沈降などの技法などの、ポリヌクレオチドのインビトロ導入のための方法が含まれる。
【0201】
5.4.2.2.2 遺伝子治療
細胞に遺伝子配列を導入することによって、細胞が正常なCLASP−2を発現しない状態または細胞が異常/不活性なCLASP−2を発現する状態を治療するために遺伝子治療を使用することができる。CLASP−2をコードするポリヌクレオチドが、機能欠損した内因性遺伝子と交換するまたは代わりに作用することが意図される場合もある。または、過剰発現によって特徴づけられる異常な状態を以下に記載する遺伝子治療技法を使用して治療することができる。
【0202】
具体的な態様において、CLASP−2タンパク質またはその機能的な誘導体をコードする配列を含む核酸を遺伝子治療によりCLASP−2機能を促進するために投与する。遺伝子治療は、被験者に核酸を投与することによって実施される治療をいう。本発明のこの態様において、核酸は、CLASP−2機能を促進することによって治療効果を仲介するコードタンパク質を産生する。
【0203】
当技術分野において利用可能な遺伝子治療の方法のいずれかを本発明により使用することができる。例示的な方法を以下に記載する。
【0204】
遺伝子治療の方法の一般的な総説は、ゴールドスピエル(Goldspiel)ら、1993, Clinical Pharmacy 12: 488−505;ウ(Wu)およびウ(Wu), 1991, Biotherapy 3: 87−95;トルストシェフ(Tolstoshev), 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32: 573−596;ムリガン(Mulligan), 1993, Science 260: 926−932;ならびにモーガン(Morgan)およびアンダーソン(Anderson), 1993, Ann. Rev. Biochem. 62: 191−217;カン(Can), 1993, TIBTECH 11(5): 155−215)を参照。使用することができる組換えDNA技術の分野において通常知られている方法は、アウスベル(Ausubel)ら、前記;およびクリエグラー(Kroegler), 1990、「遺伝子導入および発現:実験マニュアル(Gene Transfer and Expression, A LAboratory Mannual)」、Stockton Press, NYに記載されている。
【0205】
一局面において、治療用組成物は、好適な宿主内でCLASP−2タンパク質またはその断片もしくはそのキメラタンパク質をコードする発現ベクターの一部であるCLASP−2核酸を含む。特に、このような核酸は、CLASP−2コード領域に機能的に結合し、誘導性または構成的であり、必要に応じて組織特異的であるプロモーターを有する。別の特定の態様において、CLASP−2コード配列および任意の他の望ましい配列に、ゲノム内の望ましい部位における相同組換えを促進し、それによってCLASP−2核酸を染色体内発現させる領域が隣接する核酸分子が使用される(KollerおよびSmithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 86: 8932−8935; Zijlstraら, 1989, Nature 342: 435−438)。
【0206】
患者への核酸の送達は直接的であっても、間接的であってもよく、直接的である場合には、患者は核酸または核酸搬送ベクターに直接暴露され、間接的である場合には、最初に細胞をインビトロにおいて核酸で形質転換し、次いで患者に移植する。これら2つの方法は、それぞれ、インビボ遺伝子治療またはエクスビボ遺伝子治療として周知である。
【0207】
具体的な態様において、核酸が発現されて、コードタンパク質を産生する場合には、それを直接インビボにおいて投与する。これは、例えば、適当な核酸発現ベクターの一部として構成し、細胞内にあるように、例えば欠損型もしくは弱毒化型レトロウィルスベクターまたは他のウィルスベクター(米国特許第4,980,286号参照)を使用して感染させることにより、または未処理のDNAを直接注射することにより、または微粒子銃(microparticle bombardment)(例えば、遺伝子銃;Biolistic、デュポン)、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト用薬剤によるコーティング、リポソーム、微粒子もしくはマイクロカプセルへの封入を使用することにより、または核に流入することが知られているペプチドに結合した状態で投与することにより、受容体を介するエンドサイトーシスを受けるリガンドに結合した状態で投与すること(例えば、WuおよびWu, 1987, J. Biol. Chem 262: 4429−4432)(特異的に受容体を発現する細胞種を標的にするために使用することができる)等により投与することによって、当技術分野において周知の数多くの方法のいずれかによって実施することができる。別の態様において、リガンドが、エンドソームを破壊するための融合誘導(fusogenic)ウィルスペプチドを含み、核酸にリソソーム分解を受けさせない核酸−リガンド複合体を形成することができる。さらに別の態様において、特異的な受容体を標的化することによって、細胞特異的な取り込みおよび発現のために核酸をインビボにおいて標的化することができる(例えば、1992年4月16日出願の国際公開公報第92/06180号、1992年12月23日出願の国際公開公報第92/22635号、1992年11月26日出願の国際公開公報第92/20316号、1993年7月22日出願の国際公開公報第93/14188号、1993年10月14日出願の国際公開公報第93/20221号を参照)。または、核酸を細胞内に導入し、相同組換えによって発現するために宿主細胞DNA内に組み込むことができる(KollerおよびSmithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci., USA. 86: 8932−8935; Zijlstraら, 1989, Nature 342: 435−438)。
【0208】
具体的な態様において、CLASP−2核酸を含有するウィルスベクターが使用される。例えば、レトロウィルスベクターを使用することができる(Millerら, 1993, Meth. Enzymol. 217: 581−599)。これらのレトロウィルスベクターは、ウィルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNAへの導入に必要でないレトロウィルス配列を欠損するように改変されている。遺伝子治療に使用されるCLASP−2核酸を、患者への遺伝子の送達を容易にするベクターにクローニングする。レトロウィルスベクターについてのさらに詳細な記載は、化学療法により抵抗性である幹細胞を作製するために、造血幹細胞にmdr I遺伝子を送達するためのレトロウィルスベクターの用途を記載している、ブーセン(Boesen)ら、1994, Biotherapy 6: 291−302に見いだすことができる。遺伝子治療におけるレトロウィルスベクターの用途を例示している他の文献は、クロウズ(Clowes)ら、1994, J. Clin. Invest. 93: 644−651、キーム(Kiem)ら、1994, Blood 83: 1467−1473、サーモンズ(Salmons)およびグンズベルグ(Gunzberg)、1993, Human Gene Therapy 4: 129−141並びにグロスマン(Grossman)およびウィルソン(Wilson)、1993, Curr. Opin. in Genetics and Devel. 3: 110−114である。
【0209】
アデノウィルスは、遺伝子治療に使用することができる他のベクターである。
アデノウィルスは、呼吸上皮に遺伝子を送達するのに特に興味深い媒体である。
アデノウィルスは自然な状態で呼吸上皮に感染し、そこに軽度な疾患を生じる。
アデノウィルスに基づいた送達系の他の標的は肝臓、中枢神経系、内皮細胞および筋肉である。アデノウィルスは、非分裂細胞に感染することができるという利点がある。コザルスキー(Kozarsky)およびウィルソン(Wilson) 1993, Current Opinion in Genetics and Development 3: 499−503)はアデノウィルスに基づいた遺伝子治療の総説を提供している。ボウト(Bout)ら、1994, Human Gene Transfer 5: 3−10は、アカゲザルの呼吸器上皮に遺伝子を導入するためのアデノウィルスベクターの用途を実証した。遺伝子治療におけるアデノウィルスの用途の他の例は、ローゼンフェルド(Rosenfeld)ら、1991, Science 252: 431−434、ローゼンフェルド(Rosenfeld)ら、1992, Cell 68: 143−155、およびマストランゲリ(Mastrangeli)ら、1993, J. Clin. Invest. 91: 225−234に見いだすことができる。
アデノ関連ウィルス(AAV)も遺伝子治療における用途について提案されている(Walshら, 1993, Proc. Natl. Soc. Exp. Biol. Med. 204: 289−300)。
【0210】
遺伝子治療の別の方法は、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムを介するトランスフェクション、またはウィルス感染などの方法によって組織培養中の細胞に遺伝子を導入することを含む。通常、導入方法には細胞に選択可能なマーカーを導入することが含まれる。次いで、導入された遺伝子を取り込み、それを発現する細胞を単離する選択条件下に細胞をおく。次いで、その細胞を患者に送達する。
【0211】
この態様において、得られた組換え細胞をインビボにおいて投与する前に核酸を細胞に導入する。このような導入は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウィルスもしくはバクテリオファージによる感染、細胞融合、染色体を介する遺伝子移入、マイクロセルを介する遺伝子移入、スフェロプラスト融合等を含むが、それらに限定されることはない当技術分野において周知の任意の方法によって実施することができる。細胞に外来遺伝子を導入するための数多くの技法が当技術分野において周知であり(例えば、LoefflerおよびBehr, 1993, Meth. Enzymol. 217: 599−618; Cohenら, 1993, Meth. Enzymol. 217: 618−644; Cline, 1985, Pharmac. Ther. 29: 69−92)、本発明により使用することができるが、ただし、レシピエント細胞の必要な発育および生理的な機能は妨害されない。核酸が細胞によって発現可能であり、好ましくはその細胞の子孫に遺伝可能で発現可能であるように、技法は細胞に核酸を安定して導入するべきである。
【0212】
得られる組換え細胞は当技術分野において周知の種々の方法によって患者に送達することができる。好ましい態様において、上皮細胞は、例えば皮下に注射される。別の態様において、組換え皮膚細胞は患者に皮膚移植片として適用することができる。組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞または始原細胞)は、好ましくは、静脈内に投与される。使用される細胞の量は望ましい効果、患者の状態等に依存し、当業者が決定することができる。
【0213】
遺伝子治療の目的のために核酸を導入することができる細胞は任意の望ましい入手可能な細胞種を含み、上皮細胞、内皮細胞、ケラチン細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、幹細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核細胞、顆粒球などの血液細胞;例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝等から得られるような、種々の幹細胞または始原細胞、特に造血幹細胞または始原細胞を含むが、それらに限定されることはない。好ましい態様において、遺伝子治療に使用される細胞は患者にとって自己由来のものである。
【0214】
具体的な態様において、遺伝子治療の目的のために導入される核酸は、核酸の発現が転写の適当なインデューサーの有無を制御することによって制御可能であるように、コード領域に機能的に結合する誘導性プロモーターを含む。
【0215】
5.4.2.3. ノックアウト細胞
本発明の一局面において、内因性標的遺伝子の発現を、標的化された相同組換えを使用して、標的遺伝子またはそのプロモーターを不活性化または「ノックアウトする」ことによって低下することもできる(例えば、各々その全体の内容が参照として本明細書に組み入れられている、Smithiesら, 1985, Nature 317: 230−234; ThomasおよびCapecchi, 1987, Cell 51: 503−512; Thompsonら, 1989, Cell 5: 313−321)。例えば、内因性標的遺伝子(標的遺伝子のコード領域または調節領域)に相同なDNAが隣接する突然変異した非機能的標的遺伝子(または、全く関係のないDNA配列)を、インビボにおいて標的遺伝子を発現する細胞にトランスフェクトするために、選択可能なマーカーおよび/または負の選択可能なマーカーを用いて、または用いないで、使用することができる。標的化された相同組換えによるDNA構築物の挿入により標的遺伝子が不活性化される。このような方法は、ES(胚性幹)細胞の改変を使用して、不活性な標的遺伝子を有する動物の子孫を作製することができる農業分野において特に好適である(例えば、ThomasおよびCapecchi, 1987、ならびにThompson, 1989, 前記)。しかし、この方法は、適当なウィルスベクターを使用して組換えDNA構築物がインビボにおいて必要な部位に直接投与または標的化される場合には、ヒトに対して使用するために適合することができる。
【0216】
5.4.2.4 トランスジェニック動物およびノックアウト動物
CLASP−2遺伝子産物はまたトランスジェニック動物においても発現することができる。マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ミニブタ、ヤギ、ヒツジ、およびヒト以外の霊長類、例えば、ヒヒ、サルおよびチンパンジーを含むが、それらに限定されない任意の種の動物を使用してCLASP−2トランスジェニック動物を作製することができる。本明細書において使用する「トランスジェニック」という用語は、異なる種由来のCLASP−2遺伝子配列を発現する動物(例えば、ヒトCLASP−2遺伝子配列を発現するマウス)並びに内因性(すなわち、同一種)CLASP−2配列を過剰発現するように遺伝的に操作されている動物、または内因性CLASP−2遺伝子配列を発現しないように遺伝的に操作されている動物(すなわち、「ノックアウト」動物)またはそれらの子孫をいう。
【0217】
当技術分野において周知の任意の技法を使用して、動物にCLASP−2導入遺伝子を導入してトランスジェニック動物の子孫系列を作製することができる。このような技法は、前核マイクロインジェクション(HoppeおよびWagner, 1989, 米国特許出願第4,873,191号)、生殖細胞系列へのレトロウィルスを介する遺伝子導入(Van der Puttenら, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA., 82: 6148−6152)、胚性幹細胞への遺伝子標的化(Thompsonら, 1989, Cell 56: 313−321)、胚のエレクトロポレーション(Lo, 1983, Mol. Cell. Biol. 3: 1803−1814)、および精子を介する遺伝子導入(Lavitanoら, 1989, Cell 57: 717−723)を含むが、それらに限定されない(このような技法の総説は、Gordon, 1989, Transgenic Animals, Intl. Rev. Cytol. 115, 171−229)。
【0218】
例えば、静止期に誘導した培養中の胚、胎児、または成人細胞由来の核の除核卵母細胞への核導入のような、当技術分野において周知の任意の技法を使用して、CLASP−2導入遺伝子を含有するトランスジェニック動物クローンを作製することができる(Campbellら, 1996, Nature 380: 64−66; Wilmutら, Nature 385: 810−813)。
【0219】
本発明は、全ての細胞内にCLASP−2導入遺伝子を保有するトランスジェニック動物、並びに全てではないが、一部の細胞に導入遺伝子を保有する動物、すなわち、モザイク動物を提供する。導入遺伝子は単一の導入遺伝子として、または、例えばヘッドからヘッドへの縦列配列(head−to−head tandems)またはヘッドからテイルへの縦列配列(head−to−tail tandems)のようなコンカテマー状態で導入されうる。例えば、ラスコ(Lasko)ら、(1992, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 89: 6232−6236)の開示内容に従って、導入遺伝子を特定の細胞種に選択的に導入し、活性化することができる。このような細胞種特異的な活性化に必要な調節配列は対象となる特定の細胞種に依存し、当業者にあきらかである。CLASP−2導入遺伝子を内因性CLASP−2遺伝子の染色体部位に導入することが望ましい場合には、遺伝子標的化が好ましい。簡単に説明すると、このような技法が使用される場合には、染色体配列による相同組換えによって、内因性CLASP−2遺伝子のヌクレオチド配列に組み込み、その機能を妨害する目的のために、内因性CLASP−2遺伝子に相同ないくつかのヌクレオチド配列を含有するベクターが設計される。例えば、グ(Gu)ら、(1994, Science 265: 103−106)の開示内容に従って、導入遺伝子を特定の細胞種に選択的に導入して、その細胞種だけの内因性CLASP−2遺伝子を不活性化することもできる。細胞種特異的な不活性化に必要な調節配列は対象となる特定の細胞種に依存し、当業者にあきらかである。
【0220】
トランスジェニック動物が一旦作製されたら、組換えCLASP−2遺伝子の発現を標準的な技法を使用してアッセイすることができる。最初のスクリーニングは、導入遺伝子の導入が生じたかどうかをアッセイするために、動物の組織を分析するためのサザンブロット分析またはPCR技法によって実施することができる。トランスジェニック動物の組織中の導入遺伝子のmRNA発現のレベルも、動物から入手される組織試料ノーザンブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーション解析、およびRT−PCR(逆転写PCR)を含むが、それらに限定されない技法を使用して評価することができる。CLASP−2遺伝子を発現する組織の試料も、CLASP−2導入遺伝子産物に特異的な抗体を使用して免疫細胞化学的に評価することができる。
【0221】
5.4.2.5 CLASP−2 ポリヌクレオチドの他の用途
新たな染色体マーキング試薬を同定する必要性が絶え間なく存在している。配列番号:1、3、5または9からPCRプライマーを作製することによって、配列を染色体上にマッピングすることができる。これらのプライマーは、鎖長が50ヌクレオチド未満、一般に46ヌクレオチド未満、さらに一般に41ヌクレオチド未満、最も一般に36ヌクレオチド未満であってもよく、好ましくは鎖長が31ヌクレオチド未満、さらに好ましくは26ヌクレオチド未満、最も好ましくは21ヌクレオチド未満であってもよい。プローブは、鎖長が16ヌクレオチド未満、鎖長が13ヌクレオチド未満、鎖長が9ヌクレオチド未満、および鎖長が7ヌクレオチド未満であってもよい。プライマーが、ゲノムDNAの2つ以上の予測されたエクソンに及ばないようにプライマーを選択することができる。次いで、個々のヒト染色体を含有する体細胞ハイブリッドをPCRスクリーニングするためにこれらのプライマーを使用する(すなわち、染色体13)。配列番号:1、3、5または9に対応するヒトCLASP−2遺伝子を含有するハイブリッドだけが増幅断片を産生すると考えられる。
【0222】
同様に、体細胞ハイブリッドは、特定の染色体にポリヌクレオチドをPCRマッピングする迅速な方法を提供する。CLASP−2ポリヌクレオチドの正確な染色体位置づけも、伝播した中期染色体の蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)を使用して実施することができる。ベルマ(Verma)ら、「ヒト染色体:基礎技術マニュアル(Human Chromosomes: A Manual of Basic Techniques)」, Pergamon Press. NY, 1988参照。ポリヌクレオチドが一旦正確な染色体位置にマッピングされたら、ポリヌクレオチドの物理的な位置を連鎖分析に使用することができる。連鎖分析は、染色体位置と特定の疾患の発現との共同遺伝(coinheritance)を確立する。マククシック(McKusick, V.), 1998, 「ヒトにおけるメンデル遺伝:ヒト遺伝子および遺伝疾患のカタログ(Mendelian Inheritance in Man: A Catalog of Human Genes and Gentic Disorders), 12th Ed, Johns Hopkins University Press参照。
【0223】
CLASP−2ポリヌクレオチドは、制限断片長多型(RFLP)のDNAマーカーとして少量の生物試料から個人を同定するために使用することができる。個人のゲノムDNAを1種以上の制限酵素で消化し、個人を同定するための独自のバンドを生じるCLASP−2 DNAマーカーを用いたサザンブロットでプロービングする。
【0224】
CLASP−2ポリヌクレオチドはまた、法医学的な分析のための多型マーカーとしても使用することができる。一般的には、米国学術研究会議(National Research Council), 法医学的なDNAの評価(The Evaluation of Forensic DNA Evidence)(Eds. 1996, Pollardら, National Academy Press, Washington D.C.)参照。
個人における識別用または独自の法医学的マーカーセットを識別することができることは法医学的な分析に有用である。例えば、選択した多型部位を占有する多型形態のセットが容疑者および試料において同一であるかどうかを判定することによって、容疑者の血液試料が事件現場の血液または他の組織と一致するかどうかを判定することができる。多型マーカーセットが容疑者と試料とで一致しない場合には、(実験誤差でなければ)容疑者は試料の起源でなかったと結論づけることができる。マーカーセットが一致する場合には、容疑者のDNAは事件現場で見つけられたものと一致すると結論づけることができる。試験した遺伝子座における多型形態の頻度が決定されたら(例えば、好適な個人の集団を分析することによって)、容疑者と事件現場の試料の一致が偶然に生ずる確立を求める統計分析を実施することができる。
【0225】
このような識別を実施するために、PCR技術を使用して、例えば、事件現場で見つけられた毛髪または皮膚、または例えば血液、唾液もしくは精液のような体液のような組織などのごく少量の生物試料から採取されるDNA配列を増幅することができる。次いで、増幅された配列を標準品と比較し、それによって生物試料の起源を同定することができる。本発明のCLASP−2ポリヌクレオチド配列を使用して、例えば別の「識別マーカー」(すなわち、特定の個人に独特の別のDNA配列)を提供することによって、DNAに基づいた法医学的識別の信頼性を増加することができるヒトゲノムの特定の遺伝子座に標的化されるポリヌクレオチド試薬、例えばPCRプライマーを提供することができる。上記のように、制限酵素が作製した断片によって形成されるパターンの正確な別法として実際の塩基配列情報を識別に使用することができる。より多数の多型が非コード領域に生ずるので、配列番号:1、3、5または9の非コード領域を標的化する配列はこの用途に特に適当であり、この技法を使用して個人を識別することをより容易にする。ポリヌクレオチド試薬の例にはCLASP−2ヌクレオチド配列またはその部分、例えば、少なくとも20塩基、好ましくは少なくとも25塩基、さらに好ましくは少なくとも30塩基の鎖長を有する配列番号:1、3、5または9の非コード領域から誘導される断片が含まれる。
【0226】
CLASP−2ポリヌクレオチドはまた、父子鑑定試験の試薬としても使用することができる。父子鑑定試験の目的は、通常、男性が子供の父親であるかどうかを判定することである。ほとんどの場合、子供の母親はわかっており、従って子供の遺伝子型への母親の寄与は追跡することができる。父子鑑定試験は、母親に帰属しない子供の遺伝子型の一部が父親と推定される人物のものと一致するかどうかを調査する。父子鑑定試験は、父親と推定される人物と子供の多型セットを分析することによって実施することができる。当然のことながら、本発明を、1人の個人が別の個人に関連するかどうかを判定するこの手法の用途に拡大することができる。よりさらに広義には、本発明を使用して、例えば民族または人種間において1人の個人が別の個人とどれくらい関連があるかを判定することができる。
【0227】
5.5 CLASP−2 遺伝子コード配列によってコードされるポリペプチド
本発明によると、CLASP−2ポリペプチド、変異型ポリペプチド、ペプチド断片、CLASP−2融合タンパク質、またはその機能的等価物をコードするCLASP−2ポリヌクレオチドを使用して、適当な宿主細胞においてCLASP−2タンパク質を発現することができる。種々の態様において、発現されるCLASP−2ポリペプチドは配列番号:2、4、6もしくは10またはそれらの断片と同一または実質的にほぼ同じである。
【0228】
いくつかの態様において、本発明により使用することができる改変されたDNA配列は、同じまたは機能的に等価な遺伝子産物をコードする配列を生ずる、異なるヌクレオチド残基の欠損、追加または置換を含む。例えば、遺伝コードの固有の縮重により、同一または機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列をCLASP−2タンパク質の発現のために本発明を実施する際に使用することができる。遺伝コードの縮重のために、多大な数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンによって規定される全ての位置において、コードされるポリペプチドを変異させることなく、コドンを記載されている対応するコドンのいずれかに変異させることができる。このような核酸の変異は「サイレント変異(silent variations)」であり、保存的に改変される変異の1つの種である。当業者は、配列番号:1などの核酸配列の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUGおよび通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除いて)を改変して、機能的に同一の分子を生ずることができることを認識している。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は各記載されている配列において暗黙である。従って、例えば、遺伝コードの縮重により、配列番号:2またはその断片の配列を有するポリペプチドは、配列番号:1以外の数多くのポリヌクレオチドによってコードされうる。典型的には、縮重配列は、高度または中程度にストリンジェントな条件下において配列番号:1とハイブリダイゼーションするが、これは厳密には必要ではない(例えば、核酸のコピーが、遺伝コードによって許容される最大コドン縮重を使用して作製される場合。このような場合には、核酸は、典型的には、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下においてハイブリダイゼーションする。
)
【0229】
遺伝子産物自体が、サイレント変異を生じ、それによって機能的に等価なCLASP−2タンパク質を産生する、CLASP−2配列内にアミノ酸残基の欠損、追加または置換を含有することがある。このような保存的アミノ酸置換は、関与する残基の極性、荷電、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて実施することができる。例えば、負に荷電したアミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含み、正に荷電したアミノ酸はリジン、ヒスチジンおよびアルギニンを含み、ほぼ同じ親水性値を有する未荷電の極性ヘッド基を有するアミノ酸は以下を含む:グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン;および非極性のヘッド基を有するアミノ酸はアラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、トリプトファンを含む。クレイトン(Creighton), 1984, 「タンパク質(PROTEINS)」は、保存的置換であるアミノ酸を互いに以下のようにグループ分けした:(1)アラニン(A)、グリシン(G);(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);(4)アルギニン(R)、リジン(K);(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);(7)セリン(S)、スレオニン(T);および(8)システイン(C)、メチオニン(M)。
【0230】
遺伝子産物の処理および発現を改変する変異を含むが、それらに限定されない種々の目的のために、CLASP−2コード配列を変更するために、本発明のDNA配列を操作することができる。例えば、グリコシル化パターン、リン酸化等を変更するために、新たな制限酵素切断部位を挿入するため、例えば部位特異的突然変異のような、当技術分野において周知の技法を使用して突然変異を導入することができる。CLASP−2タンパク質のドメイン組織化に基づいて、CLASP−2の細胞外、膜貫通および細胞質ドメインをコードするヌクレオチド配列を改変または再配列することによって多大な数のCLASP−2突然変異ポリペプチドを構築することができる。
【0231】
種々の態様において、本発明は、CLASP−2アゴニストまたはCLASP−2アンタゴニストとして機能するCLASP−2ポリペプチドの相同物を提供する。好ましい態様において、CLASP−2アゴニストおよびアンタゴニストは、天然に存在する形態のCLASP−2ポリペプチドの生物活性のサブセットを、それぞれ、刺激または阻害する。
従って、特定の生物作用を、機能が限定された相同物で処理することによって誘発することができる。一態様において、天然に存在する形態のポリペプチドの生物活性のサブセットを有する相同物で被験者を治療することは、天然に存在する形態のCLASP−2ポリペプチドで治療することと比較して副作用が少ない。
【0232】
本発明は、全長のCLASP−2ポリペプチドおよび本発明の例示されているCLASP−2ポリペプチド配列と実質的に同一な、少なくとも約10、しばしば20、多くは50または100残基を有する断片のような断片を考慮している。タンパク質断片は「独立」していても、または断片が一部もしくは領域を形成するより大きいポリペプチド内にふくまれてもよく、最も好ましくは単一の連続領域として存在する。本発明のポリペプチド断片の代表的な例は、例えば、おおよそのアミノ酸の数1〜20、21〜40、41〜60、61〜80、81〜100、102〜120、121〜140、141〜160、161〜180、181〜200または201からコード領域の末端部までの断片を含む。さらに、ポリペプチド断片は鎖長が約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200アミノ酸であってもよい。これに関しては、「約」は、各末端または両末端において数(5、4、3、2または1)アミノ酸だけ大きいまたは小さい特に列挙されている範囲を含む。
【0233】
好ましいポリペプチド断片はCLASP−2タンパク質を含む。さらに好ましいポリペプチド断片は、アミノ末端もしくはカルボキシル末端または両方から欠損した一連の連続した残基を有するCLASP−2タンパク質を含む。例えば、1〜Xの範囲の任意の数のアミノ酸がCLASP−2ポリペプチドのアミノ末端から欠損することがある。さらに、上記のアミノ末端およびカルボキシル末端欠損の任意の組み合わせが好ましい。同様に、これらのCLASP−2ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド断片も好ましい。
【0234】
タンパク質のN末端から1つ以上のアミノ酸が欠損することにより、タンパク質の1つ以上の生物的機能の損失という改変を生じたとしても、他の生物活性が保持されていることがある。従って、短くなったCLASP−2突然変異タンパク質が、完全または成熟した形態のポリペプチドを認識する抗体を誘発および/または結合する能力は、完全または成熟ポリペプチドの大多数ほどではない数の残基がN末端から除去された場合でも一般に保持される。完全なポリペプチドのN末端残基を欠損する特定のポリペプチドがこのような免疫活性を保持するかどうかは、本明細書および別の文献に記載されている当技術分野において周知の通常の方法によって容易に判定することができる。N末端アミノ酸残基が数多く欠損したCLASP−2突然変異タンパク質が何らかの生物活性または免疫原性を保持することがあることがないわけではない。実際、4つ程度のCLASP−2アミノ酸残基を含むペプチドでもしばしば免疫応答を誘発することがある。
【0235】
CLASP−2ポリペプチドの相同物は、例えば、CLASP−2ポリペプチドの別個の点突然変異または切断のような突然変異によって作製することができる。本明細書において使用する「相同物」という用語は、CLASP−2ポリペプチドの活性のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用するCLASP−2ポリペプチドの変異型をいう。CLASP−2ポリペプチドのアゴニストは、CLASP−2ポリペプチドの生物活性の実質的に同一またはサブセットを保持することができる。CLASP−2ポリペプチドのアンタゴニストは、例えば、CLASP−2ポリペプチドを含むCLASP−2分子経路の下流または上流のメンバーに競合的に結合することによって、天然に存在する形態のCLASP−2の活性の1つ以上を阻害することができる。
【0236】
改変は、標的遺伝子の発現によって間接的または直接影響される任意のパラメーターを測定することによってアッセイすることができる。このようなパラメーターは、例えば、RNAまたはタンパク質レベルの変化、タンパク質活性の変化、産物レベルの変化、下流の遺伝子発現の変化、レポーター遺伝子転写の変化(ルシフェラーゼ、CAT、−ガラクトシダーゼ、−グルクロニダーゼ、GFP(例えば、Mistili&Spector, 1997, Nature Biotechnology 15: 961−964参照)、シグナル伝達の変化、リン酸化および脱リン酸化、受容体−リガンド相互作用、セカンドメッセンジャー濃度(例えば、cGMP、cAMP、IP3、およびCa2+等)、ならびに細胞増殖を含む。これらのアッセイ法は、インビトロ、インビボおよびエクスビボであってもよい。このような機能的な影響は、当技術分野において周知の任意の手段、例えばRNAまたはタンパク質レベルの測定、RNA安定性の測定、下流またはレポーター遺伝子発現の同定、例えば、化学発光、蛍光、発色反応により、抗体結合、誘導性マーカー、リガンド結合アッセイ法;cGMPおよびイノシトール三リン酸(IP3)などの細胞内セカンドメッセンジャーの変化;細胞内カルシウムレベルの変化;サイトカイン放出等によって測定することができる。
【0237】
5.5.1 CLASP−2 ポリペプチド発現系の合成または発現
生物的に活性なCLASP−2を発現するために、CLASP−2または機能的等価物をコードするヌクレオチド配列を適当な発現ベクターに挿入する。CLASP−2遺伝子産物および組換えCLASP−2発現ベクターをトランスフェクトまたは形質転換した宿主細胞または細胞系列を種々の目的のために使用することができる。これらは、CLASP−2タンパク質の活性を競合的に阻害して、その活性を中和する抗体(すなわち、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)の形成、CLASP−2機能を活性化する抗体および細胞表面上または溶液の状態での存在を検出する抗体の形成を含むが、それらに限定されない。リンパ球およびマクロファージなどの細胞および組織中におけるCLASP−2発現レベルを検出および定量する際並びに細胞混合物からCLASP−2陽性細胞を単離する際に抗CLASP−2抗体を使用することができる。
【0238】
当業者に周知の方法を使用して、CLASP−2コード配列および適当な転写/翻訳制御シグナルを含有する組換え発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技法、合成技法およびインビボ組み換え/遺伝子組み換えを含む(例えば、Sambrookら, 1989, 「分子クローニング実験マニュアル(Molecular Cloning A Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory, N. Y. および Ausbelら, 前記に記載されている技法を参照)。本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内での核酸の発現に好適な形態の本発明の核酸を含み、これは組換え発現ベクターが、発現される核酸に機能的に結合する、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される1つ以上の調節配列を含むことを意味する。発現ベクターのデザインは形質転換される宿主細胞の選択、望ましいポリペプチド発現レベル等などの要因に依存することがある。本発明の発現ベクターは、本明細書に記載されている核酸によってコードされる、融合ポリペプチドまたはペプチドを含む、ポリペプチドまたはペプチドを産生する宿主細胞に導入することができる(例えば、CLASP−2ポリペプチド、CLASP−2の突然変異型、融合ポリペプチド等)。
【0239】
種々の宿主−発現ベクター系を使用してCLASP−2コード配列を発現することができる。これらは、CLASP−2コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌などの微生物;CLASP−2コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母;CLASP−2コード配列を含有する組換えウィルス発現ベクター(例えば、バキュロウィルス)を感染させた昆虫細胞系;CLASP−2コード配列を含有する組換えウィルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウィルス、CaMV;タバコモザイクウィルス、TMV)を感染させるまたはCLASP−2コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系含むが、それらに限定されない。これらの系の発現要素は強度および特異性が異なる。
使用する宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導性プロモーターを含む、数多くの好適な転写および翻訳要素のいずれかを発現ベクターに使用することができる。例えば、細菌系にクローニングする場合には、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター;サイトメガロウィルスプロモーター)等などの誘導性プロモーターを使用することができ、昆虫細胞系にクローニングする場合には、バキュロウィルスポリヘドロンプロモーターなどのプロモーターを使用することができ、植物細胞系にクローニングする場合には、植物細胞のゲノムから誘導したプロモーター(例えば、ヒートショックプロモーター;RUBISCOの小サブユニットのプロモーター;クロロフィルα/β結合タンパク質のプロモーター)または植物ウィルスから誘導したプロモーター(例えば、CaMVの35S RNAプロモーター;TMVの外皮タンパク質)を使用することができ、哺乳類細胞系にクローニングする場合には、哺乳類細胞のゲノムから誘導したプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳類ウィルスから誘導したプロモーター(例えば、アデノウィルス後期プロモーター、ワクシニアウィルス7.5Kプロモーター)を使用することができ、CLASP−2DNAの多数のコピーを含有する細胞系列を作製する場合には、SV−40、BPV−およびEBV−に基づいたベクターを適当な選択可能なマーカーと共に使用することができる。
【0240】
細菌系では、有利なことに、発現されるCLASP−2産物に意図されている用途に応じて数多くの発現ベクターを選択することができる。例えば、抗体を形成するためまたはペプチドライブラリーをスクリーニングするために、大量のCLASP−2タンパク質を作製しなければならない場合には、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物を発現させるベクターが望ましいことがある。このようなベクターは、ハイブリッドタンパク質が作製されるように、CLASP−2コード配列がlaxZコード領域内のベクターにライゲーションされうる大腸菌(E. coli)発現ベクターpUR278(Rutherら, 1983, EMBO J. 2: 1791);pINベクター(Inouye&Inouye, 1985, Nucleic acid Res. 13: 3101−3109; Van Heeke&Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 264: 5503−5509)等を含むが、それらに限定されない。pGEXを使用して、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現することもできる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズに吸着させ、次に遊離のグルタチオンの存在下において溶出することによって、融解した細胞から容易に精製することができる。対象となるクローニングされたポリペプチドが任意にGST部分から放出されうるように、このような系で作製されるタンパク質は、ヘパリン、スロンビンまたは第XA因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計することができる。
【0241】
酵母では、構成的または誘導性プロモーターを含有する数多くのベクターを使用することができる(「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」, Vol 2, 1988(Suppl. 1999), Ausubelら編, Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience, Ch. 13; Grantら, 1987, 「酵母のための発現・分泌ベクター、酵素学における方法(Expression and Secretion Vectors for Yeast, in Methods in Enzymology), Wu & Grossman編, 1987, Acad. Press, N. Y., Vol. 153, pp. 516−544; Glover, 1986, 「DNAクローニング(DNA Cloning)」, Vol. II, IRL Press, Wash., D. C., Ch. 3;ならびにBitter, 1987, 酵母における異種遺伝子発現、酵素学における方法(Heterologous Gene Expression in Yeast, Methods in Enzymology)」, Brger & Kimmel編, Acad. Prees. N. Y., Vol. 152, pp. 673−684;ならびに「酵母サッカロミセスのための分子生物学(The Molecular Biology for the Yeast Saccharomyces)」, 1982, Strathenら編, Cold Spring Harbor Press, Vols. I and II.)
【0242】
植物発現ベクターを使用する場合には、CLASP−2コード配列の発現は数多くのプロモーターのいすれかによって駆動することができる。例えば、CaMVの35S RNAおよび19S RNAプロモーターなどのウィルスプロモーター(Brissonら, 1984, Nature 310: 511−514)またはTMVの外皮タンパク質(Takamatsuら, 1987, EMBO J. 6: 307−311)を使用することができる。または、RUBISCOの小サブユニットなどの植物プロモーター(Coruzziら, 1984, EMBO J. 3: 1671−1680; Broglieら, 1984, Science 224: 838−843);またはヒートショックプロモーター、例えば大豆hsp17.5−Eまたはhsp17.3−B(Gurleyら, 1986, Mol. Cell. Biol. 6: 559−565)を使用することができる。これらの構築物を、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウィルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等を使用して植物に導入することができる(Weissbach & Weissbach, 1988, 植物分子生物学の方法(Method for Plant Molecular Biology)」, Academic Press, NY, Section VIII, pp. 421−463;ならびにGrierson & Corey, 1988, 植物分子生物学(Plant Molecular Biology)」, 2d Ed., Blackie, London, Ch. 7−9)
【0243】
CLASP−2を発現するために使用してもよい別の発現系は昆虫系である。このような系では、オートグラファ・カリフォルニア(Autographa californica)核ポリヘドロンウィルス(AcNPV)を外来遺伝子を発現するベクターとして使用する。ウィルスはスポドプテラ・フルギペラダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。CLASP−2コード配列はウィルスの非必須領域(例えば、ポリヘドロン遺伝子)にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドロンプロモーター)の制御下におくことができる。CLASP−2コード配列の挿入が成功すると、ポリヘドロン遺伝子が不活性化され、非閉塞組換えウィルス(すなわち、ポリヘドロン遺伝子によってコードされるタンパク質外皮を欠損するウィルス)が作製される。次いで、これらの組換えウィルスを使用して、挿入した遺伝子が発現されるスポドプテラ・フルギペラダ細胞に感染させる。(例えば、Smithら, 1983, J. Viol. 46: 584; Smith, 米国特許第4,215,051号)。
【0244】
哺乳類宿主細胞では、数多くのウィルスに基づいた発現系を使用することができる。アデノウィルスを発現ベクターとして使用する場合には、CLASP−2コード配列をアデノウィルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三部分リーダー配列にライゲーションすることができる。次いで、このキメラ遺伝子をインビトロまたはインビボ組み換えによってアデノウィルスゲノムに挿入することができる。ウィルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)へ挿入することにより、感染された宿主内で生存し、CLASP−2を発現することができる組換えウィルスが作製される。(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 81: 3655−3659)。または、ワクシニア7.5Kプロモーターを使用してもよい。(例えば、Mackettら, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 79: 7415−7419; Mackettら, 1984, J. Virol. 49: 857−864; Panicaliら, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 79: 4927−4931)。テトラサイクリン抑制性ベクターなどの調節性発現ベクターを使用して、制御的にコード配列を発現することもできる。
【0245】
挿入されたCLASP−2コード配列を効率的に翻訳するために特定の開始シグナルが必要なこともある。これらのシグナルはATG開始コドンおよび隣接配列を含む。自身の開始コドンおよび隣接配列を含むCLASP−2遺伝子全体が適当な発現ベクターに挿入される場合には、追加の翻訳制御シグナルは必要でないことがある。
しかし、CLASP−2コード配列の部分のみが挿入される場合には、ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルを提供しなければならない。さらに、開始コドンは、挿入物全体を確実に翻訳するために、CLASP−2コード配列のリーディングフレーム内になければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の種々の起源であってもよい。発現効率は、適当な転写エンハンサー要素、転写ターミネーター等を加えることによって増強することができる。(Bittnerら, 1987, Methods in Enzymol. 153: 516−544)。
【0246】
また、特定の望ましい様式で挿入された配列の発現を調節したり、遺伝子産物を修飾および処理する宿主細胞を選択することができる。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)および処理(例えば、切断)はタンパク質の機能にとって重要である場合がある。CLASP−2細胞外ドメインにいくつかのコンセンサスN−グリコシル化部位が存在することは、CLASP−2機能に液説な修飾がなんらかの役割を果たしている可能性を裏付けている。異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳後処理および修飾のための特徴的で、特定の機序を有する。発現される外来タンパク質の適切な修飾および処理を確実にするために、適当な細胞系列または宿主系を選択することができる。このために、一次転写物の適切な処理、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化のための細胞工場を有する真核宿主細胞を使用することができる。このような哺乳類宿主細胞は、CHO、VERO、BHK、Hela、COS、MDCK、293、WI38等を含むが、それらに限定されない。
【0247】
CLASP−2をコードするヌクレオチド配列で形質転換した宿主細胞は、可溶性タンパク質を発現させ、細胞培養物から可溶性 タンパク質を回収するのに好適な条件下で培養することができる。当業者に理解されるように、CLASP−2をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターは、原核または真核細胞膜を介してCLASP−2を分泌させるシグナル配列を含有するように設計することができる。
可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列にCLASP−2をコードする配列を結合するために他の構成を使用してもよい。このような精製を容易にするドメインは、固定した金属での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュールなどの金属キレートペプチド、固定した免疫グロブリンでの精製を可能にするプロテインAドメインを含むが、それらに限定されない。
【0248】
組換えタンパク質を長期にわたって高収量で産生するためには、安定な発現が好ましい。例えば、CLASP−2タンパク質を安定に発現する細胞系列を操作することができる。ウィルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用しないで、宿主細胞を適当な発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)および選択可能なマーカーによって制御されるCLASP−2 DNAで形質転換することができる。外来DNAを導入後に、操作した細胞を強化培地で1〜2日間増殖させ、次いで選択培地に移すことができる。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは選択に抵抗性を示し、細胞の染色体にプラスミドを安定して組み込ませ、増殖してフォーカスを形成し、細胞系列内にクローニングされ、増殖されうる。この方法は、有利なことに、細胞表面にCLASP−2タンパク質を発現する細胞系列を操作するのに使用することができる。このように操作した細胞系列は、CLASP−2機能に影響を与える分子または薬剤をスクリーニングする際に特に有用である。
【0249】
それぞれ、tk−、hgprt−またはaprt−細胞において使用することができる、単純性疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら, 1977, Cell 11: 223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci.,U.S.A. 48: 2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら, 1980, Cell 22: 817)遺伝子を含むが、それらに限定されない数多くの選択系を使用することができる。また、メトトレキセートに抵抗性を示すdhfr(Wiglerら, 1980, Natl. Acad. Sci. U. S. A. 77: 3567; O’Hareら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 78: 1527);ミコフェノール酸に抵抗性を示すgpt(Mulligan & Berg, 1981), Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 78: 2072);アミノグリゴシドG−418に抵抗性を示すneo(Colberre−Garapinetら, 1981, J. Mol. Biol. 150:1);ヒグロマイシンに抵抗性を示すhygro(Santerreら, 1984, Gene 30: 147)について選択するための基礎として、抗代謝抵抗性を使用することができる。別の選択可能な遺伝子、すなわち、細胞にトリプトファンの代わりにインドールを使用させるtrpB、細胞にヒスチジンの代わりにヒスチノールを使用させるhisD(Hartman & Mulligan, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 85: 8047);オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する抵抗性を示すODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue L., 1987, 「分子生物学における最新コミュニケーション(Current Communications in Molecular Biology)」, Cold Spring Harbor Laboratory ed.)およびグルタミンシンテターゼ(Bebbingtonら, 1992, Biotech 10: 169)が記載されている。
【0250】
本発明の別の態様において、CLASP−2のコード配列を当技術分野において周知の化学的方法を使用して全体的または部分的に合成してもよい(例えば、Caruthersら, 1980, Nuc. Acids Res. Symp. Ser. 7: 215−233; CreaおよびHorn, 180, Nuc. Acids Res. 9(10): 2331; MatteucciおよびCaruthers, 1980, Tetrahedron Letter 21: 719;ならびにChowおよびKempe, 1981, Nuc. Acids Res. 9(12):2807−2817。)または、CLASP−2アミノ酸配列を全体的または部分的に合成する化学的方法を使用してタンパク質自体を製造してもよい。例えば、ペプチドは固相技法によって合成され、樹脂から切断され、分取用高速液体クロマトグラフィーによって精製することができる。(Creighton, 1983, タンパク質構造と分子原理(Proteins Structures And Molecular Principles)」, W. H. FreemanおよびCo.,N. Y. pp. 50−60参照)。合成ポリペプチドの組成はアミノ酸分析または配列決定によって確認することができる(例えば、「エドマン分解法(the Edman degradation prpcedure)」; Creighton, 1983, 「タンパク質、構造、および分子原理(Proteins, Structures and Molecular Principles)」, W. H. FreemanおよびCo., N. Y., pp34−49)。いくつかの態様において、CLASP−2ポリペプチドは天然型でないアミノ酸またはアミノ酸類似体(すなわち、天然型アミノ酸と同じ基本的な化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合するα炭素を有する、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムのような化合物)を含有する。
【0251】
5.5.2 CLASP−2 を発現する細胞の同定
コード配列を含有し、CLASP−2遺伝子産物またはその断片を発現する組換え宿主細胞は少なくとも4つの一般的な方法によって同定することができる;(a)DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の有無、(c)宿主細胞内のCLASP−2mRNA転写物の発現によって測定したときの転写レベルの評価、および(d)免疫アッセイ法またはその生物活性によって測定したときの遺伝子産物の欠損。遺伝子の発現を同定する前に、特に少量のCLASP−2しか産生しない細胞系列において、CLASP−2の発現レベルを増加する努力においてまず宿主細胞を突然変異を起こすことができる。
【0252】
最初の方法において、発現ベクターに挿入されたCLASP−2コード配列の存在を、CLASP−2コード配列に相同なヌクレオチド配列、それぞれ、それらの一部または誘導体を含むプローブを使用してDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションによって検出することができる。
【0253】
第2の方法において、ある種の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する抵抗性、メトトレキセートに対する抵抗性、形質転換表現型、バキュロウィルスにおける閉鎖小体の形成等)の有無に基づいて、組換え発現ベクター/宿主系を同定し、選択することができる。例えば、CLASP−2コード配列をベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入する場合には、マーカー遺伝子機能が存在しないことによってCLASP−2コード配列を含有する組換え体を同定することができる。または、CLASP−2コード配列の発現を制御するために使用する同じまたは異なるプロモーターの制御下においてCLASP−2配列と縦列にマーカー遺伝子を配置することができる。誘導または選択に応答したマーカーの発現はCLASP−2コード配列の発現を示す。
【0254】
第3の方法において、CLASP−2コード領域の転写活性をハイブリダイゼーションアッセイ法によって評価することができる。例えば、CLASP−2コード配列またはその特定の一部に相同なプローブを使用して、RNAを単離し、ノーザンブロットによって分析することができる。または、宿主細胞の総核酸を抽出し、このようなプローブへのハイブリダイゼーションについてアッセイすることができる。また、低レベルの遺伝子発現を検出するために逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応を使用することができる。
【0255】
第4の方法において、免疫学的に、例えば、ウェスタンブロット、放射免疫−沈降、酵素−結合免疫アッセイ法、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)等などの免疫アッセイ法によってCLASP−2タンパク質産物の発現を評価することができる。これは、抗CLASP−2抗体を使用して実施することができる。または、細胞内での検出を容易にするために、緑色の蛍光タンパク質との融合タンパク質としてCLASP−2タンパク質を発現することができる(米国特許第5,491,084号、同第5,804,387号、同第5,777,079号)。
【0256】
CLASPタンパク質またはmRNA、特にCLASP−2アイソフォームを発現する細胞または組織の同定は、所定の細胞または組織における正常および異常なCLASP発現を求めるのに有用となりうる。上記のように、数多くのCLASP−2アイソフォームが、例えばジャーカット細胞、末梢血および脳において同定されている。種々の細胞種および組織におけるmRNAまたはタンパク質発現を同定することにより、空間的または時間的に不適切に発現されるアイソフォームを同定することができる。
造血細胞におけるhCLASP−2Dアイソフォームの発現は、ジャーカットおよび末梢血アイソフォームに見られないSH3ドメインの存在により問題を生じることがある。
【0257】
免疫系の他の分子がhCLASP2Dの一部と相互作用することもある。しかし、hCLASP−2DアイソフォームにおいてPBMドメインが存在しないことが、ある種の細胞種または組織における機能に必要な場合がある。同様に、脳におけるCLASPアイソフォーム2A、2Bおよび2Cの発現は異なる理由のために問題を生ずることがある:これらのアイソフォームに存在するPBMは、神経シナプスの形成に関与する既知のPDZドメインタンパク質のいずれかに結合することによって、特定の機能を妨害することがある。同様に、SH3ドメインの欠損は、脳のCLASP−2機能に必要な分子のサブセットだけと相互作用することにより、不適当な応答を生じることがある。
【0258】
5.5.3. CLASP−2 を操作した宿主細胞の用途
本発明の一つの態様において、CLASP−2タンパク質、および/またはCLASP−2を発現する細胞系列は、抗体、ペプチド、小分子、天然化合物および合成化合物、またはCLASP−2タンパク質に結合してCLASP−2機能を促進または阻害する上記以外の細胞結合性分子または可溶性分子のスクリーニングに使用することができる。
例えば抗CLASP−2抗体は、CLASP−2機能を阻害または促進するために、または、その存在を検出するために使用することができる。一方、組換え型として可溶性CLASP−2タンパク質、またはCLASP−2タンパク質を発現する細胞系列でペプチドライブラリーをスクリーニングすることは、CLASP−2の生物学的活性を阻害または促進することで機能する治療的分子の同定に有用な場合がある。以降の小節に記載されたCLASP−2タンパク質ならびに遺伝子操作した細胞系列の用途は、様々な種において相同なCLASP−2遺伝子に対して等しく十分に利用できる。
【0259】
本発明の特定の態様においては、GSTなど他の分子に融合させたCLASPの細胞外ドメインまたは細胞内ドメインを発現するように細胞系列を遺伝子操作することができる。またCLASPの細胞外ドメインまたはその細胞内ドメインを免疫グロブリンの不変領域と融合して(HollenbaughおよびAruffo、1992、Current Protocols in Immunology、Unit 10.19;Aruffoら、1990、Cell 61:1303)、半減期を長くした可溶性分子を作製することができる。この可溶性タンパク質または融合タンパク質は、結合アッセイ法、アフィニティクロマトグラフィー、免疫沈降、ウエスタンブロットなどに使用することができる。合成化合物、天然産物、および生物学的に活性があると考えられる物質の他の供給源は、当技術分野で周知のアッセイ法でスクリーニング可能である。
【0260】
固相支持体に結合するアミノ酸の可能なあらゆる組み合わせからなるランダムペプチドライブラリーを使用して、CLASP−2の特異的なドメインに結合可能なペプチドを同定することができる(Lam, K.S.ら、1991、Nature 354:82〜84)。ペプチドライブラリーのスクリーニングは、CLASP−2の生物学的活性を促進または阻害する薬物を見極めることから治療上効果があると言える。
【0261】
CLASP−2タンパク質に結合可能な分子群は、組換え型の可溶性CLASP−2タンパク質でペプチドライブラリーをスクリーニングすることで同定できる。CLASP−2の発現および精製の方法は既に5.7節に記載されており、組換え型の完全長CLASP−2またはCLASP−2断片を、対象機能ドメインに応じて使用することができる。このようなドメインにはCLASP−2細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、CLASP−2細胞内ドメイン、ITAMを含むドメイン、チロシンリン酸化部位を含むドメイン、システインクラスターを含むドメイン、カドヘリンモチーフを含むドメイン、および多重らせんドメインなどがある。
【0262】
CLASP−2と相互作用して複合体を形成するペプチド/固相支持体を同定および分離するためには、CLASP−2分子を標識すること、すなわち「タグをつける」ことが必要である。CLASP−2タンパク質は、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)またはローダミンを含む蛍光標識などの他の試薬を始めとする酵素と結合させることができる。CLASP−2に対する任意の標識は、当技術分野で周知の方法で結合させることができる。またはCLASP−2発現ベクターを遺伝子作製して、市販の抗体に存在するエピトープを含むキメラCLASP−2タンパク質を発現させることができる。エピトープに特異的な抗体には、酵素、蛍光色素、または着色ビーズもしくは磁気ビーズを始めとする当技術分野で周知の方法を用いて検出可能な標識のタグをつけることができる。
【0263】
「タグのつけられた」CLASP−2コンジュゲートを、ランダムペプチドライブラリーと30分間〜1時間22℃でインキュベートすることにより、CLASP−2と、ライブラリー中のペプチド種との複合体が形成される。次にライブラリーを洗浄して非結合性タンパク質を除去する。アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼをあらかじめ結合させたCLASP−2の場合、すべてのライブラリーをアルカリホスファターゼまたはペルオキシダーゼの各基質、例えばそれぞれ5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイルリン酸(BCIP)または、3,3’,4,4”−ジアミノベンジジン(DAB)を含むペトリ皿に注ぐ。数分間のインキュベート後にペプチド/固相支持体−CLASP−2複合体の色が変わるので、マイクロマニピュレーターを接続した解剖顕微鏡下において容易な同定および物理的な分離が可能となる。蛍光物質のタグをつけたCLASP−2 分子を使用した場合は蛍光活性ソーティングで複合体を分離することができる。異種エピトープを発現するキメラCLASP−2タンパク質を使用した場合は、標識化したエピトープ特異的な抗体を用いてペプチド/CLASP−2複合体を検出することができる。分離後は、固相支持体に結合したペプチドをペプチド配列決定により同定することができる。
【0264】
可溶性CLASP−2分子の使用に加え、別の態様においては、完全な細胞を用いて細胞結合性CLASP−2に結合するペプチドを検出することができる。完全細胞の使用は細胞表面分子を使用する上で好ましい。CLASP−2を発現する細胞系列を作製する方法は5.8節に記載されている。この方法で使用される細胞は生細胞でも固定細胞のどちらでもよい。細胞をランダムペプチドライブラリーとインキュベートすることで、ライブラリー中の特定のペプチドと結合させて、標的細胞と関連する固相支持体/ペプチドとの間で「ロゼット」を形成させることができる。後にロゼットは、ディファレンシャル遠心法で分離できるほか、解剖顕微鏡下で物理的に除去することもできる。組み合わせライブラリーのスクリーニング法は当技術分野で周知である(Gallopら、1994、J. Med. Chem.、37:1233;Gordon、1994、J. Med. Chem.、37:1385)。
【0265】
膜結合性の受容体または、細胞膜の脂質ドメインを機能上必要とする受容体を対象とする全細胞アッセイ法に代わる方法として、CLASP−2分子を標識または「タグ」の結合が可能なリポソームに再構成することができる。
【0266】
5.5.4. CLASP−2 融合タンパク質
本発明の別の態様においては、CLASP−2または改変型のCLASP−2配列を、異種配列に連結して融合タンパク質をコードさせることができる。例えばCLASP−2に結合する分子群を対象としたペプチドライブラリーのスクリーニングでは、市販の抗体で認識される異種エピトープを発現するキメラCLASP−2タンパク質を作製することために有用でありうる。融合タンパク質はまた、CLASP−2配列と異種タンパク質配列の間に切断部位を含むように遺伝子操作することもできる。こうすることでCLASP−2は異種配列部分から切り離すことができる。一つの態様において本発明の融合タンパク質は、少なくとも約1〜816番目の残基を含むCLASP−2の細胞外ドメイン、またはその断片を含むことができる。別の態様においては、融合タンパク質はCLASP−2配列の少なくとも約843番目の残基から末端配列を含むCLASP−2細胞内ドメイン、またはその断片を含むことができる。
【0267】
5.6. CLASP−2 の対立遺伝子、異型、およびホモログ種のクローニング
本明細書に開示されたCLASP−2 cDNAをコードする任意の種に由来する完全長cDNA配列をクローニングする目的で、またはこの分子の異型をクローニングする目的で、本明細書に開示されている任意の部分的cDNAに対応する核酸断片から作成された標識化DNAプローブを使用して、リンパ系細胞または脳細胞に由来するcDNAライブラリーをスクリーニングすることができる。さらに詳述すると、cDNA配列の5’端または3’端に対応するオリゴヌクレオチドを使用することで、より長いヌクレオチド配列が得られる。手短に説明すると、このライブラリーをプレーティングして、150 mmのプレート1枚当たり最大30,000 pfuを得ることができる。
約40枚のプレートをスクリーニングすることができる。プラークの直径が0.25 mmになるまで、または、相互に接触し始める直前まで(3〜8時間)プレートを37℃でインキュベートする。ソフトトップアガロース上にナイロンメンブレンをかぶせて60秒後にフィルターを剥がし、0.4 N水酸化ナトリウムを含むDNA変性溶液上に浮かべる。次にフィルターを1 M トリス−HCl、pH 7.5を含む中和溶液に浸した後に風乾させる。このフィルターを、10% デキストラン硫酸、0.5 M NaCl、50 mM トリス−HCl、pH 7.5、0.1% ピロリン酸ナトリウム、1% カゼイン、1% SDS、および0.5 mg/mlの変性サケ精子DNAを含むカゼイン緩衝液などのハイブリダイゼーション用緩衝液中で6時間60℃でプレハイブリダイズする。次に、放射性標識プローブを95℃で2分間加熱して変性させた後に、フィルターを含むプレハイブリダイゼーション溶液に添加する。このフィルターを60℃で16時間ハイブリダイズさせる。次にフィルターを1×洗浄用混合液(10×洗浄用混合液は3 M NaCl、0.6 M トリス塩基、および0.02 M EDTAを含む)中で室温で5分間2回洗浄後に、1% SDSを含む1×洗浄用混合液中で60℃で30分間洗浄し、最後に0.1% SDSを含む0.3×洗浄用混合中液で60℃で30分間洗浄する。次にフィルターを風乾させて、X線フィルムを感光させオートラジオグラフィーを行う。現像後のフィルムをフィルターと照合して陽性クローンを選択する。単一の分離した陽性プラークが得られない場合は、複数のプラークを含むアガープラグを除去して、0.1 M NaCl、0.01 M 硫酸マグネシウム、0.035 M トリス−HC1、pH 7.5、0.01% ゼラチンを含むλ希釈緩衝液中に置く。次に、単一で十分分離できる陽性プラークを得るために、ファージを再びプレーティングして再びスクリーニングを行う。陽性プラークを分離できたら、既知cDNA配列を元に作製したプライマーを用いてcDNAクローンの配列を決定することができる。この段階は完全長cDNAが得られるまで反復することができる。
【0268】
完全長cDNAを得るために、異なる組織に由来する複数のcDNAライブラリーのスクリーニングが必要となる場合がある。完全な5’端コード領域をコードするcDNAクローンの同定が困難な場合―cDNAクローニングでしばしば遭遇する状況の場合―は、RACE(cDNA末端の迅速増幅(Rapid Amplification of cDNA Ends))法を用いることができる。RACEはPCR法に基づき、不完全なcDNAの5’端を増幅する方法で、その有効性が証明済みの手法である。特有のアンカー配列を含むヒト組織から合成された5’−RACE−Ready RNAは市販されている(Clontech)。cDNAの5’端を得るためには、提供されるアンカープライマーおよび3’プライマーを用いて5’−RACE−Ready cDNAのPCRを行う。次に、アンカーされたプライマーおよび入れ子状態の3’プライマーを用いて、製造業者の指示通りに第2のPCR反応を行う。完全長cDNA配列が得られたら、これをアミノ酸配列に翻訳して、翻訳の開始部位および終結部位にはさまれた連続読み枠、カドヘリン様ドメイン、ITAMドメイン、チロシンリン酸化部位、システインクラスター、膜貫通ドメイン、また本明細書に記載された、CLASP−2遺伝子群に対する全体的な構造類似性などの特定の目印を調べることができる。タンパク質のドメインに関する議論については、Ponassiら、1999、Mech. Dev. 80:207〜212;Isakov、1998、Receptor Channels 5:243〜253;Borrotoら、1997、Biopolymers 42:75〜88;Dimitratosら、1997、Mech. Dev. 63:127〜130;Appersonら、1996、J. Neurosci. 16:6839〜6852;Ozawaら、1990、Mech. Dev. 33:49〜56を参照されたい。またこれらの文献は参照として本明細書に組み入れられる。
【0269】
5.7. 内在性 CLASP−2 遺伝子群の調節発現
または、異種DNA調節エレメントを細胞系列のゲノムに挿入し、挿入された調節エレメントを内在性CLASP−2遺伝子に動作可能的に連結させることで、細胞集団内における内在性CLASP−2遺伝子の発現特性を改変することができる。例えば通常は「転写的にサイレントな」CLASP−2遺伝子、すなわち細胞集団内で通常発現しないか、または極めて低いレベルでのみ発現する内在性CLASP−2遺伝子は、細胞内で正常に発現する遺伝子産物の発現促進能力がある調節エレメントを挿入することで活性化されることがある。または、転写的にサイレントな内在性CLASP−2遺伝子は、多くの細胞種ではたらく宿主非選択性の調節配列を挿入することで活性化することができる。
【0270】
異種調節エレメントを細胞系列の集団に挿入して、当業者に周知である標的相同組換え法(targeted homologous recombination)などの方法を用いて、内在性CLASP−2遺伝子と動作可能的に連結させることができる(例えば、Chappelによる米国特許第5,272,071号;国際公開公報第91/06667号、1991年1月16日刊行、を参照)。
【0271】
5.8. 抗 CLASP−2 抗体
当技術分野で周知の様々な手順を用いて、天然および組換えで作製されるCLASP−2タンパク質のエピトープに対する抗体を作製することができる。これらの抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体のIgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE、相補性決定領域、Fab断片、F(ab’)2および、Fab発現ライブラリーにより作製される断片ならびに抗イディオタイプ抗体などがあるが、これらに限定されることはない。CLASP−2結合と競合する抗体は診断および治療上、特に好ましい。
【0272】
CLASP−2に結合するモノクローナル抗体を放射標識することで、注入後の体内における同抗体の位置および分布が追跡可能となる。放射性同位元素でタグをつけた抗体は、CLASP−2を発現する新規リンパ腫および転移を画像化するための非浸襲的な診断ツールとして利用可能である。
【0273】
免疫毒素また、体内の特異的な部位に対する細胞毒性薬の標的となるように設計することができる。例えば高い親和性を有するCLASP−2特異的モノクローナル抗体は、ジフテリア毒素またはリシンなどの細菌または植物の毒素と共有結合を介して複合体を形成させることができる。抗体/ハイブリッド分子の一般的な調製法には、抗体上の一級アミノ基を攻撃するSPDPなどのチオール架橋試薬を使用することができ、また、毒素を抗体に結合させるジスルフィド交換反応を使用することができる。ハイブリッド抗体は、CLASP−2を発現するリンパ球を特異的に除去するために使用することができる。
【0274】
抗体を作製するためには、様々な宿主動物を対象として組換え型または天然の精製CLASP−2タンパク質、融合タンパク質またはペプチドを注入して免疫化することができる。これらには、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスターなどに由来するものが含まれるがこれらに限定されることはない。様々なアジュバントを使用して、免疫反応を高めることができる。これは宿主に依存し、フロイント(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメット−ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などのヒトで有用と考えられるアジュバントなどが含まれるがこれらに限定されることはない。
【0275】
CLASP−2に対するモノクローナル抗体は、連続細胞系列培養により抗体分子を産生させる任意の手法で調製できる。このような手法には、当初ケラー(Kohler)およびミルシュタイン(Milstein)によって報告されたハイブリドーマ法(Nature、1975、256:495〜497)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosborら、1983、Immunology Today、4:72;Coteら、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、80:2026〜2030)、およびEBVハイブリドーマ法(Coleら、1985、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、Inc.、pp.77〜96)などがあるがこれらに限定されることはない。また、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子由来の遺伝子群と、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子群をスプライスすることで「キメラ抗体」作製用に開発された手法(Morrisonら、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、81:6851〜6855;Neubergerら、1984、Nature、312:604〜608;Takedaら、1985、Nature、314:452〜454)を用いることができる。または、単鎖抗体の作製に関して記載された方法(米国特許第4,946,778号)を一部変更して、CLASP−2に特異的な単鎖抗体を産生させることができる。いくつかの態様においては、ファージディスプレイ法を用いて、選択された抗体に特異的に結合する抗体およびへテロマーのFab断片が同定される(例えば、McCaffertyら、Nature 348:552〜554(1990);Marksら、Biotechnology 10:779〜783(1992)を参照)。
【0276】
ハイブリドーマは、再び折りたたまれた組換え型CLASP−2に特異的な抗体を分泌する培養液の検出を目的として、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)でスクリーニングすることができる。培養液はまた、哺乳類産生性CLASP−2に特異的な抗体を分泌する培養液の同定を目的としてELISAでスクリーニングすることもできる。抗体特異性は、同じ抗原を用いたウエスタンブロットで確認することができる。続いて行うELISA試験では、CLASP−2分子とモノクローナル抗体に結合する特定の部分を同定するために組換え型CLASP−2断片を使用することができる。組織切片染色、CLASP−2の免疫沈降、CLASP−2結合の阻害、または、細胞内シグナルを伝達させるCLASP−2の促進などについて望ましい機能特性を有するモノクローナル抗体を同定するために追加的な試験を行うことができる。モノクローナル抗体のアイソタイプはELISAで決定することで、精製または機能に関する追加情報が得られる場合がある。
【0277】
本発明の一部の抗CLASP−2モノクローナル抗体は、対標的親和性を低下させることなく潜在的な抗原性を低下させるために、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはキメラ抗体とすることができる。ヒト化抗体については当技術分野で少なからず報告されている。例えば、クィーン(Queen)ら、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:10029;米国特許第5,563,762号;第5,693,761号;第5,585,089号および第5,530,101号を参照されたい。ヒト化に用いるヒト抗体配列は、天然ヒト抗体配列とすることができるほか、複数のヒト抗体のコンセンサス配列とすることができる。ケトルボロー(Kettleborough)ら、1991、Protein Engineering 4:773;コールビンガー(Kolbinger)ら、1993、Protein Engineering 6:971を参照されたい。CLASP−2ペプチドに対するヒト化モノクローナル抗体は、ヒト免疫系因子群を有するトランスジェニック動物を用いることでも作製できる(例えば米国特許第5,569,825号;第5,545,806号;第5,693,762号;第5,693,761号;および第5,7124,350号を参照)。
【0278】
一部の態様においては、抗CLASP−2ポリペプチドモノクローナル抗血清またはポリクローナル抗血清を産生させ、特定のCLASP−2ポリペプチドに特異的に免疫反応して他の分子群(例えば他のCLASPポリペプチド)に対して低交差反応性を有するように選択され、この交差反応活性はいずれも免疫吸着で除去されてイムノアッセイ法に使用される。モノクローナル抗体の特異性に関するスクリーニングおよび特性解析の方法は当技術分野で周知であり、既に挙げたハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)の論文で広く説明されている。例えば、配列番号:1で示されるhCLASP−2Aに対するポリクローナル抗体、またはスプライシング変異体、またはそれらの免疫原性部分は、他のタンパク質ではなく標的タンパク質に特異的な免疫反応性をもつそれらのポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のみを有するように選択することができる。この選択は、分子群と交差反応する抗体を差し引くことで可能となる。様々なイムノアッセイ法のフォーマットを使用することで、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択してもよい。例えば固相ELISAイムノアッセイ法は、任意のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択することを目的としてルーチンに使用されている(特異的な免疫反応性の決定に使用できるイムノアッセイ法のフォーマットおよび条件に関する記述については例えばハーロウおよびレーンによる「抗体、実験マニュアル(Antibodies、A Laboratory Manual)」(1988)を参照)。特異的または選択的な反応は典型的には、少なくとも2倍のバックグラウンドのシグナルまたはノイズが生じ、また、より特異的には10〜100倍を超えるバックグラウンドが生じる。一方、一部のポリペプチドセットと交差反応する抗体を調製する場合もある。
【0279】
V特異的結合部位を含む抗体断片は既知の手法で作製することができる。例えば、このような断片には抗体分子をペプシンで消化して作製できるF(ab’)2断片、およびF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元させて作製できるFab断片などが含まれるが、これらに限定されることはない。一方、Fab発現ライブラリーを構築することで(Huseら、1989、Science、246:1275〜1281)、望ましい対CLASP−2特異性を有するモノクローナルのFab断片の迅速かつ容易な同定が可能となる。
【0280】
抗CLASP−2抗体を使用することでも、CLASP−2発現細胞を同定、単離、阻害または除去することができる。一つの態様において本発明は、免疫機能が正常な被験者のT細胞プロフィールに対する免疫不全状態の被験者の異常なT細胞プロフィールを同定する方法を含む。この方法には、(i)免疫不全状態の被験者から単離される末梢血単核球細胞(PBMC)の試料の一連のT細胞セットへのソーティング、(ii)各セットにおける細胞総数に対するCLASP−2+細胞の比(CLASP−2+:総数)の決定、および、免疫不全状態の被験者におけるCLASP−2+:総数比と、免疫機能が正常な被験者における類似のセットのCLASP−2+:総数比の比較による免疫不全状態の被験者における異常なT細胞プロフィールの同定がある。
【0281】
他の態様においては、抗CLASP−2抗体を蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、ELISA、蛍光または電子免疫顕微鏡、ウエスタンブロット、ゲルシフト解析などのアッセイ法におけるhCLASP−2タンパク質の検出に使用することができる。様々な細胞におけるCLASP−2発現、細胞内の局在、他のタンパク質との相互作用、およびCLASP−2アイソフォームの発現との区別は、本明細書に記載された手法を用いることで決定できる。
【0282】
5.9. スクリーニングアッセイ法
本発明では、CLASP−2の発現または活性を調節する(すなわち阻害または促進する)化合物または薬剤を同定する方法を提供する。CLASP−2の発現または活性の調節物質は、異常なCLASP−2の発現または活性を特徴とする(または関連する)障害の治療に有用である。CLASP−2のmRNAまたはタンパク質の異常な発現とは、複数のリンパ球(例えばTリンパ球またはBリンパ球)、または他のCLASP−2発現細胞における発現が、健常者から採取される対照リンパ球における発現と比較して、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍大きいことを意味する。
【0283】
CLASP−2発現アッセイ法には、CLASP−2発現細胞を化合物または薬剤に接触させる段階および、CLASP−2発現をアッセイする段階を含めることができる。CLASP−2のポリペプチドの発現は、本発明の抗CLASP−2抗体を用いたELISAで容易に測定される。CLASP−2 mRNAの発現(CLASP−2の特定種すなわちスプライシング変異体の発現を含む)は定量ノーザン解析または定量PCRで測定することができる。
【0284】
CLASP−2活性には例えば、PDZドメインを含む分子に対するCLASP−2ポリペプチドの結合および、CLASP−2ポリペプチドの情報伝達(例えばT細胞活性化に至るもの)への関与が含まれる。CLASP−2のポリペプチドと標的分子の相互作用を調節する化合物または薬剤、CLASP−2の核酸発現を調節する化合物または薬剤、またはCLASP−2のポリペプチド活性を調節する化合物または薬剤はすべて本発明の方法の対象として適している。
【0285】
被験化合物には例えば、1)ペプチド類(例えば、Igテール融合ペプチド、およびランダムペプチドライブラリーのペプチドを含む可溶性ペプチド類(例えばLam、K. S.ら、1991、Nature 354:82〜84;Houghten、R.ら、1991、Nature 354:84〜86を参照)、およびD型および/またはL型のアミノ酸からなる組み合わせ化学由来の分子ライブラリー;2)ホスホペプチド類(例えば、ランダムおよび部分的に分解された、指向性ホスホペプチドライブラリーのペプチド類。例えばソンヤン(Songyang, Z)ら、1993、Cell 72:767〜778を参照。;3)CLASP−2抗体(上述);4)有機小分子および無機小分子(例えば、組み合わせルライブラリーおよび天然物ライブラリーから得られる分子群);5)アンチセンスRNA分子およびDNA分子ならびにリボザイム(上述)。
【0286】
CLASP調節物質には、天然化合物および合成化合物、有機化合物および無機化合物、および、ポリマー類(例えばオリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチド)、小分子、抗体、糖類、脂肪酸、ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体、天然構造物の類似体(例えばレプリカペプチド(peptide mimetics)や核酸類似体など)などの多様な化合物、および他の多くの化合物が含まれる。
【0287】
本発明の一つの態様においては、CLASP−2ポリペプチドに結合する被験化合物をスクリーニングするアッセイ法を提供する。このアッセイ法は組換え型細胞に基づくアッセイ法でも無細胞アッセイ法でもよい。これらのアッセイ法には、CLASP−2ポリペプチドまたはその結合断片を発現する細胞、および化合物または薬剤を、化合物または薬剤がCLASP−2ポリペプチドに結合して複合体を形成可能な条件下における組み合わせる段階を含めることができる。次に複合体の形成を判定することができる。候補化合物または薬剤の、CLASP−2ポリペプチドまたはその断片に対する結合能力は、複合体中の候補化合物の存在により示される。CLASP−2のポリペプチドと候補化合物間の複合体の形成は、例えば標準的なイムノアッセイ法で定量できる。
【0288】
本発明の別の態様においては、CLASP−2ポリペプチドと分子(CLASP−2ポリペプチドが通常相互作用する標的分子)間の相互作用(そしてかなりの可能性で同様にCLASP−2活性)を調節する被験化合物を同定するスクリーニングアッセイ法を提供する。
【0289】
一つの態様においては、これらのCLASP−2標的分子群は、チロシンキナーゼ(例えば、lyn、lck、fyn、ZAP−70m SyK、およびCSK)とすることができる。別の態様においては、CLASP−2標的分子群は、チロシンホスファターゼ(例えば、EZRIN、SHP−1、SHP−2、およびPTP36)とすることができる。別の態様においては、CLASP−2標的分子群はアダプタータンパク質(例えば、NCK、CBL、SHC、LNK、SLP−76、HS1、SIT、VAV、GrB2、およびBRDG1)とすることができる。別の態様においては、CLASP−2標的分子群はアンキュリン、スペクトリン、タリン、エズリン、トロポミオシン、ミオシン、プレクチン、シンデカン、パラレムミン(paralemmin)、バンド3タンパク質、細胞骨格タンパク質4.1、およびPTP36)などの細胞骨格結合性タンパク質とすることができる。さらに別の態様においては、CLASP−2標的分子群はインテグリンファミリーに属する分子群とすることができる。
【0290】
このアッセイ法は通常、組換え細胞に基づくアッセイ法、または無細胞アッセイ法である。これらのアッセイ法には、CLASP−2ポリペプチドまたはその結合断片を発現する細胞、CLASP−2標的分子(例えばCLASP−2リガンド)および被験化合物を、候補化合物が存在するがCLASP−2ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分が標的分子に結合する条件下で混合する段階を含めることができる。CLASP−2ポリペプチドまたはその結合断片、CLASP−2標的分子、ならびに複合体形成検出用の被験化合物(CLASP−2ポリペプチドおよび標的分子を含む)間の複合体形成を検出することができる。複合体形成の検出には例えば、CLASP−2ポリペプチドが有するT細胞活性化などの誘導作用の測定による複合体の直接定量を含めることができる。候補化合物の存在下(候補化合物の非存在下で検出される化合物に対する)における、CLASP−2と標的分子間の相互作用の減弱化などの大きな変化(例えばCLASP−2と標的分子間の複合体形成における変化)は、CLASP−2ポリペプチドと標的分子間における相互作用の調節の指標となる。CLASP−2ポリペプチドと標的分子間の複合体形成の調節は、例えばイムノアッセイ法で定量することができる。無細胞薬剤スクリーニングアッセイ法を行うためには、CLASP−2またはその標的分子を固定化して、複合体を形成していない状態の一方または両方のポリペプチドと複合体の分離を促すこと、ならびにアッセイ法の自動化を図ることが望ましい。標的分子に対するCLASP−2の結合は、候補化合物の存在下および非存在下においては、反応体を収容するのに適した任意の容器内で行うことができる。このような容器には例えばマイクロタイタープレート、試験管、および微小遠心用チューブなどがある。
【0291】
ある態様においては、マトリックスに対するポリペプチドの結合を可能とするドメインを加える融合ポリペプチドを提供することができる。または上記複合体は、マトリックスから解離させ、SDS−PAGEで分離し、またビーズフラクションにみられるCLASP−2結合ポリペプチドのレベルを標準的な電気泳動法でゲルから定量することができる。
【0292】
マトリックス上にポリペプチドを固定化する他の手法も、本発明の薬剤スクリーニングアッセイ法に使用することができる。例えばCLASP−2またはその標的分子のいずれかを、ビオチンとストレプトアビジンの結合を用いて固定化することができる。ビオチン化CLASP−2分子は、当技術分野で周知の手法(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、ロックフォード、イリノイ州)を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシル−スクシニミド)から調製し、ストレプトアビジンでコーティングした96穴プレート(Pierce Chemical)の各ウェル内に固定化することができる。または、CLASP−2には反応するが、ポリペプチドとその標的分子間の結合には干渉しない抗体は、プレートのウェルに対して誘導体化することが可能で、抗体結合によりCLASP−2をウェル上に捕捉することができる。上述の通り、CLASP−2結合ポリペプチドおよび候補化合物の調製物は、プレート上のCLASP−2が存在するウェル内でインキュベートされることで、ウェルに捕捉された複合体の量が定量される。このような複合体を検出する方法には、CLASP−2標的分子に対して、またはCLASP−2ポリペプチドに対して反応して標的分子と競合する抗体を用いた複合体の免疫学的検出;ならびに、標的分子と結びつく酵素活性の検出に基づく酵素結合アッセイ法などがある。
【0293】
薬剤スクリーニングの一つの方法では、CLASP−2(例えば、配列番号:2の配列を有するタンパク質)を発現する組換えDNA分子で安定に形質転換された真核細胞または原核細胞を宿主として利用する。このような細胞は、生細胞または固定細胞のいずれであっても、標準的なリガンド/受容体結合アッセイ法に利用することができる(例えば、細胞応答を検出する高感度の方法について記述したParceら(1989)Science 246:243〜247;およびOwickiら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:4007〜4011を参照)。被験化合物は標識されることが多く、結合を対象として、または他の結合用リガンドの競合を対象としてアッセイすることができる。生細胞はCLASP−2を介した機能に及ぼす薬剤作用(例えば、T細胞の活性化、セカンドメッセンジャーレベルほかの作用)のスクリーニングに使用することもできると考えられる。
【0294】
本発明の別の態様においては、異常なCLASP−2核酸発現またはCLASP−2ポリペプチド活性を特徴とする(または関連する)障害の治療に使用可能な化合物を同定する方法(例えばスクリーニングアッセイ法)を提供する。この方法は通常、化合物または薬剤が有する、CLASP−2の核酸の発現またはCLASP−2ポリペプチドの活性の調節能力をアッセイすることで、異常なCLASP−2核酸発現またはCLASP−2ポリペプチド活性を特徴とする障害を治療する化合物を同定する段階を含む。
【0295】
化合物または薬剤が有する、CLASP−2核酸の発現またはCLASP−2ポリペプチド活性の調節能力をアッセイする方法は通常、細胞に基づくアッセイ法である。例えば、CLASP−2が関与する経路を介してシグナルを伝達するリガンドに感受性のある細胞は、候補化合物の存在下または非存在下でCLASP−2ポリペプチドを過剰発現するように誘導されうる。CLASP−2依存性の反応に変化を生じる候補化合物を同定することができる。ある態様においては、CLASP−2の核酸発現またはCLASP−2ポリペプチドの活性は細胞で調節されており、対象となる読み出された情報(T細胞の活性化など)に候補化合物が及ぼす作用が測定される。例えば、CLASP−2依存性の情報伝達経路に応じて上方または下方制御される遺伝子群の発現をアッセイすることができる。
【0296】
または、CLASP−2発現の調節物質は、細胞を候補化合物と接触させる方法で同定して、細胞中におけるCLASP−2のmRNAまたはポリペプチドの発現を決定することができる。候補化合物の存在下におけるCLASP−2のmRNAまたはポリペプチドの発現レベルは、候補化合物の非存在下におけるCLASP−2のmRNAまたはポリペプチドの発現レベルと比較する。次にこの比較に基づき、候補化合物をCLASP−2核酸発現の調節物質として同定することができる。例えば、CLASP−2のmRNAまたはポリペプチドの発現が、候補化合物の非存在下の場合と比較して存在下の方が高い場合、候補化合物はCLASP−2核酸発現の刺激因子と同定される。または、CLASP−2の核酸発現が、候補化合物の非存在下と比較して存在下の方が低い場合、候補化合物はCLASP−2核酸発現の阻害剤と同定される。細胞中におけるCLASP−2の核酸発現のレベルは、CLASP−2のmRNAまたはポリペプチドの検出に関して、本明細書に記載された方法で決定することができる。
【0297】
このような薬剤スクリーニングアッセイ法にしたがって同定されるCLASP−2ポリペプチドの活性およびCLASP−2核酸の発現の調節物質は、例えば免疫障害などの治療に利用することができる。このような治療法には、CLASP−2ポリペプチドの活性または核酸の発現の調節物質を投与する段階が含まれる(例えば5.10.1節で後述した製剤用組成物中に含まれる因子で、そのような治療法を必要とする被験者―例えば本明細書に記載された障害のある被験者―を対象とするもの)。
【0298】
5.10. CLASP−2 調節物質の治療における投与
CLASP−2タンパク質はリンパ球で発現し、上述したようにT細胞とB細胞の相互作用を調節することで、CLASP−2活性(例えばCLASP−2と調節タンパク質との結合)を、免疫障害の診断および治療ならびに免疫機能の調節(例えばT細胞の活性化)の標的とする役割を果たす。またCLASP−2は細胞内シグナルを伝達可能なドメインを含むので、細胞表面のCLASP−2は、リンパ球の活性化状態を高めるために、抗CLASP−2抗体または可溶性CLASP−2またはその断片によって誘導される。
【0299】
5.10.1. 投与剤形および投与経路
CLASP−2ポリペプチド、その断片、抗CLASP−2抗体、CLASP−2ポリヌクレオチド(例えばアンチセンスまたはリボザイム)、または小分子アゴニストまたはアンタゴニストは、製剤用組成物または治療的組成物の形状として被験者自ら投与することができる。本発明のタンパク質からなる製剤用組成物は、従来の方法―混合、溶解、顆粒化、糖衣化、すり潰し、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥の過程―により製造することができる。製剤用組成物は、タンパク質または活性ペプチドを薬剤として使用可能な調製物へと加工しやすくする一つまたは複数の生理学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤または補助剤を用いた従来の方法で製剤化することができる。製剤化の適切さは、選択する投与経路に左右される。
【0300】
現在、タンパク質を細胞および動物体に輸送する際に使用されているタンパク質由来の細胞透過ペプチドには3つの主な種類がある(Lindgren、M.ら、2000、Trends Pharmacol Sci. 21:99〜103)。一つの態様においては、CLASP−2タンパク質または、(CLASP−2の機能ドメインをコードする)断片は、ANTPなどのホメオタンパク質の転写因子に由来する輸送タンパク質と結合した融合タンパク質として細胞内に導入することができる。別の態様においては、CLASP−2タンパク質または、(CLASP−2の機能ドメインをコードする)断片は、HIVのTatタンパク質および単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)のVP22タンパク質などの他の転写因子と結合した融合タンパク質として細胞内に導入することができる。このファミリーに属するタンパク質は、多様な細胞系または動物で広く使用されている(Schwarze, S.ら、2000、Trends Phannacol Sci. 21:45〜48)。別の態様においては、CLASP−2タンパク質または(CLASP−2の機能ドメインをコードする)断片は、HIV−1のgp41などの複数のタンパク質に含まれるシグナル配列由来のペプチドと結合した融合タンパク質として細胞内に導入することができる。他の態様においては、複数の合成ペプチド、および/またはトランスポータン(transportan)およびAmphiphilocモデルペプチドなどの細胞透過性のキメラペプチド(Lindgren, M.ら、2000、Trends Pharmacol Sci. 21:99〜103)を利用することができる。別の態様においては、CLASP−2タンパク質または断片は抗DNA抗体を用いて導入することができる(例えば、Zack, D.J.ら、1996、J. Immunol. 157:2082〜8を参照)。
【0301】
本発明のタンパク質の局所投与では、当技術分野で周知である溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁剤などとして製剤化することができる。
【0302】
全身投与に用いる製剤には、注射で投与するように設計された製剤が含まれる。例として、皮下注入、静注入、筋肉注入、髄腔内注入、または腹腔内注入、ならびに経皮、経粘膜、経口、または肺を介した投与用に設計されたものが挙げられる。
【0303】
注射剤では、本発明のタンパク質は水溶液として、好ましくはハンクス液、リンガー液、および生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液に溶解して製剤化できる。溶液は、懸濁用、安定化用、および/または分散用の薬剤などの製剤用薬剤を含むことができる。またはタンパク質を、使用の前に適切な溶媒(例えば無菌性で発熱物質を含まない水)で構成するために粉末状にすることができる。
【0304】
経粘膜投与では、浸透する際の防御に適した浸透剤(penetrant)が製剤化の工程で使用される。このような浸透剤は一般に当技術分野で周知である。
【0305】
経口投与では、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体とタンパク質を混合することで、組成物として容易に製剤化することができる。このような担体を加えることで、タンパク質の剤形を、錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル、液状、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして投与対象患者の経口摂取に用いられる。例えば粉剤、カプセルおよび錠剤などの経口用固形製剤に適した賦形剤には、乳糖、ショ糖、マンニトールおよびソルビトールなどの糖などの充填剤;トウモロコシデンプン、コムギデンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ガム、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/または、ポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物;顆粒化剤;および、結合剤などが含まれる。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギニン酸もしくはアルギニン酸ナトリウムなどの塩などの崩壊剤を添加することができる。
【0306】
必要に応じて、固形の剤形は標準的な手法で糖衣状または腸溶性とすることができる。
【0307】
例えば懸濁液、エリキシルおよび溶液などの経口液体調製物の場合、適切な担体、賦形剤または希釈剤には、水、グリコール、油、アルコールなどが含まれる。この他に、香味料、保存剤、着色剤などを添加することができる。
【0308】
頬粘膜投与では、タンパク質は従来の方法で製剤化される錠剤、トローチ剤などの剤形をとりうる。
【0309】
吸入投与では、本発明で使用するタンパク質は、エアゾルスプレーの状態で、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭酸ガスほか適切なガス)とともに加圧容器またはネブライザーから容易に投与される。加圧型エアゾルの場合、投与単位は、計量する量を送り込むバルブを供与することで決定することができる。例えば、吸入器または注入器に使用されるゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジは、化合物および乳糖またはデンプンなどの適切な粉末基剤からなる粉末混合体を含むように製剤化することができる。。
【0310】
タンパク質はまた、坐剤または浣腸剤―例えばカカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む―などの腸または膣の組成に適したものとして製剤化することができる。
【0311】
既に述べた製剤化に加えて、本発明のタンパク質はデポ剤としても製剤化可能である。デポ剤のような長時間作用性の製剤は、移植(例えば経皮的または筋肉内移植)により、または筋肉注射で投与することができる。したがって例えば、該タンパク質は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳濁液として)、またはイオン交換樹脂とともに製剤化することができるほか、可溶性が低い誘導体(例えば可溶性が低い塩)として製剤化することができる。
【0312】
一方で、他の薬剤デリバリーシステムを利用することができる。リポソームおよび乳濁液は周知の輸送用溶媒であり、本発明のタンパク質またはペプチドの輸送に使用できる。ジメチルスルフォキシドなどの一部の有機溶媒も利用できるが、一般に毒性が高い。さらに本発明のタンパク質は、治療薬を含む固体ポリマーからなる半透性マトリックスなどの持続放出システムを用いて輸送可能である。
様々な持続放出材料の有効性が確認されており、当業者に周知である。持続放出カプセルは、その化学的性質に応じてタンパク質を数週間から最長100日にわたって放出する。治療薬の化学的性質および生物学的安定性を考慮して、タンパク質の安定化を図る追加的な方策をとることができる。
【0313】
該タンパク質およびペプチドは、電荷を帯びた側鎖または末端を含むことがあるので、上述の任意の剤形中に遊離の酸または塩基として、または薬剤として許容される塩として含めることができる。薬学的に許容される塩とは、遊離塩基の生物学的活性を実質的に保持する塩であって、無機酸との反応で調製される塩を指す。薬理的な塩は対応する遊離塩基状態と比較して、水性およびプロトン性溶媒中への可溶性が大きい傾向がある。
【0314】
5.10.2. 有効量
CLASP−2のポリペプチド、CLASP−2の断片および抗CLASP−2抗体は一般に、意図した目的を達成するための有効な量で使用される。免疫反応を阻害する用途については、本発明のタンパク質または製薬用組成物は、治療的有効量を投与または適用される。治療的有効量とは、投与対象患者の症状を改善もしくは予防するために、または、生存期間を延長するために有効な量を意味する。治療的有効量の決定は、特に本明細書で提供する詳細な開示に鑑み、当業者であれば問題なく実施することができる。
【0315】
全身投与では、治療的有効用量はインビトロアッセイ法を元に最初に推定することができる。例えば用量は、動物モデルにおいて細胞培養で検討されるIC50(すなわちCLASP−2結合相互作用の50%を阻害する被験化合物の濃度)を含む循環血中濃度範囲に達することで決定することができる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより厳密に決定する際に用いることができる。
【0316】
初回投与量もまた、当技術分野で周知の方法により、例えば動物モデルのインビボデータを元に推定することができる。当業者であれば動物データを元にヒトへの投与を容易に最適化することができると思われる。
【0317】
投与量および投与間隔は、治療効果を十分維持するタンパク質の血漿濃度を得るために個別に調整することができる。注射による通常の患者投与量は概算で0.1〜5 mg/kg/日の範囲にあり、好ましくは概算で0.5〜1 mg/kg/日である。1日に複数回投与することで治療上有効な血清濃度が得られる。
【0318】
局所投与または選択的取り込みの場合、本発明のタンパク質の有効局所濃度は血漿濃度と関連しない。当業者であれば、過度の実験を行うことなく治療上有効な局所投与量を最適化することができると思われる。
【0319】
CLASP−2の投与量が、投与対象者、対象者の体重、苦痛の強度、投与様式、および処方する医師の判断によって変わることは言うまでもない。
【0320】
治療は、症状が検出される間に、またさらには検出されない場合であっても間歇的に繰り返すことができる。治療は単独または他の薬剤と組み合わせて行うことができる。自己免疫疾患の場合、CLASP−2またはその断片と組み合わせて使用可能な薬剤には、ステロイド系および非ステロイド系の免疫抑制薬などがあるが、これらに限定されることはない。
【0321】
5.10.3. 毒性
好ましくは、本明細書に記載されたタンパク質の治療的有効用量は、大きな毒性を生じることなく治療上の有益性をもたらすと思われる。
【0322】
本明細書に記載されたタンパク質の毒性は、標準的な薬理学的方法により、細胞培養または実験動物を対象に決定することができる。このような方法には例えばLD50(集団の50%が致死となる用量)やLD100(集団の100%が致死となる用量)の決定がある。毒性作用と治療効果の間の用量比は治療係数と呼ばれる。細胞培養アッセイ法および動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用で毒性を生じない投与量範囲の決定に利用することができる。本発明に記載されたタンパク質の投与量は、毒性が極めて低いかまたは全くない用量に関する有効投与量を含む循環血中濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は用いる剤型ならびに投与経路に応じてこの範囲内で変動することがある。医師は、厳密な処方、投与経路および投与量を患者の状態を考慮した上で選択することができる(例えばFinglら、1975、「治療に関する薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」の第1章、第1頁を参照)。
【0323】
5.11. 結合アッセイ法
CLASP−2のポリペプチドは、CLASP−2に結合する分子群、またはCLASP−2が結合する分子群のスクリーニングに使用することができる。分子のCLASP−2への結合は、CLASP−2または結合分子の活性を、活性化する(アゴニスト)、上昇させる、阻害する(アンタゴニスト)または低下させる場合がある。このような分子には例えば、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)、または小分子などがある。好ましくは、これらの分子はCLASP−2の天然リガンドに近く、例えばリガンドの断片、または天然物、リガンド、構造または機能上の類似物などがある(Coliganら、「免疫学の現行のプロトコール(Current Protocols in Immunology)」1(2):第5章(1991)を参照)。同様に、この分子はCLASP−2が結合する天然の受容体、または少なくともCLASP−2に対する結合能力がある受容体の断片(例えば活性部位)に密接に関連することがある。いずれの場合においても、同分子は既知の方法で合理的に設計することができる。
【0324】
好ましくは、これらの分子のスクリーニングは、CLASP−2を分泌型タンパク質として、または細胞膜上に発現する適切な細胞の産生にかかわる。好ましい細胞には哺乳類、酵母、ショウジョウバエの細胞、または大腸菌などがある。次にCLASP−2を発現する細胞(またはポリペプチドを発現している細胞膜)は、好ましくは被験化合物が上記分子とおそらく接触することで、CLASP−2または上記分子のいずれかとの結合、活性の増大または阻害が観察される。
【0325】
このアッセイ法は、CLASP−2に対する候補化合物の結合を単純に試験することができる。この際、結合は標識で、または標識化競合物質との競合がかかわるアッセイ法で検出される。さらにこのアッセイ法は、候補化合物がCLASP−2に対する結合によって最終的にシグナルを発生するか否かを試験することができる。
【0326】
一方で、このアッセイ法は、無細胞調製物、固相支持体に結合させたポリペプチド、ケミカルライブラリー、または天然産物の混合物を用いて実施することができる。このアッセイ法はまた単に候補化合物をCLASP−2含有溶液と混合する段階、CLASP−2活性または結合を測定する段階、および、CLASP−2活性または結合を標準と比較する段階から構成される。好ましくは、ELISAアッセイ法で、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて、試料(例えば生物試料)でCLASP−2の濃度または活性を測定可能である。抗体は、直接または間接的にCLASP−2に結合させることで、または基質に対してCLASP−2と競合させることで、CLASP−2のレベルまたは活性を測定することができる。
【0327】
本発明の別の局面においては、CLASP−2のポリペプチドまたはその断片をツーハイブリッド法における「えさタンパク質」として使用することで(例えば米国特許第5,283,317号;Zervosら、1993、Cell 72:223〜232;Maduraら、1993、J. Biol. Chem. 268:12046〜12054;Bartelら、1993、Biotechniques 14:920〜924;Iwabuchiら、1993、Oncogene 8:1693〜1696;およびBrentによる国際公開公報第94/10300号)、CLASP−2と結合または相互作用する他のタンパク質(「CLASP−2結合タンパク質」または「CLASP−2−bp」)を同定し、CLASP−2のポリペプチド活性を調節することができる。このようなCLASP−2結合タンパク質はまた、CLASP−2のポリペプチド、例えば、CLASP−2経路の上流または下流にある因子群のシグナル伝播にかかわる可能性が高い。
【0328】
上述のアッセイ法はいずれも、診断または予後のマーカーとして利用できる。これらのアッセイ法を用いて発見される分子は、CLASP−2分子を活性化または阻害することで、疾患の治療に、または患者に特異的な結果をもたらすために使用することができる。さらに、これらのアッセイ法では、適切に操作された細胞または組織に由来するCLASP−2の産生を阻害または促進する薬剤を見出すことができる。
【0329】
したがって本発明は、以下の段階からなるCLASP−2ポリペプチド結合性化合物または薬剤を同定する方法を含む:(a)CLASP−2ポリペプチドに対して化合物が結合して複合体形成を可能とする条件下におけるCLASP−2のポリペプチドと化合物または薬剤との接触、および(b)結合が生じているか否かの決定。さらに本発明は、以下の段階からなるアゴニストまたはアンタゴニスト同定法を含む:(a)候補化合物とCLASP−2とのインキュベート、(b)生物学的活性のアッセイ法、および(b)CLASP−2の生物学的活性が変化しているか否かの判定。
【0330】
アッセイ法を自動化するための複数の方法が近年開発されており、数万種類の化合物を短時間でスクリーニングすることが可能となっている(例えば、Fodorら、1991、Science 251:767〜773および、複数の化合物による結合親和性の試験法について述べた化学的多様性ライブラリーに関する他の記述を参照)。
【0331】
5.12. CLASP−2 のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの他の用途
本明細書に記載されたポリヌクレオチド、ポリペプチド、ポリペプチド相同体、調節物質、および抗体は、以下の一つまたは複数の方法で使用することができる:a)薬剤スクリーニングアッセイ法、b)特に疾患の同定、対立遺伝子スクリーニングおよび遺伝薬理学的試験;およびc)薬理ゲノム科学。本発明のCLASP−2ポリペプチドは、本明細書に記載された一つまたは複数の活性を有するので、例えばCLASP−2結合パートナーへの結合させることで天然のCLASP−2ポリペプチドに対する結合を不可能にすることなどにより免疫細胞における免疫反応を調節する際に利用することができる。
【0332】
一つの態様においては、これらのCLASP−2結合パートナーはチロシンキナーゼ(例えば、lyn、lck、fyn、ZAP−70m SyK、およびCSK)とすることができる。別の態様においては、これらのCLASP−2結合パートナーはチロシンホスファターゼ(EZRIN、SHP−1、SHP−2、およびPTP36)とすることができる。別の態様においては、これらのCLASP−2標的分子群はアダプタータンパク質(例えば、NCK、CBL、SHC、LNK、SLP−76、HS1、SIT、VAV、GrB2、およびBRDG1)とすることができる。別の態様においては、これらのCLASP−2結合パートナーはアンキュリン、スペクトリン、タリン、エズリン、トロポミオシン、ミオシン、プレクチン、シンデカン、パラレムミン(paralemmin)、バンド3タンパク質、細胞骨格タンパク質4.1、およびPTP36)などの細胞骨格結合性タンパク質とすることができる。さらに別の態様においては、CLASP−2結合パートナーは、インテグリンファミリーに属する分子群とすることができる。
【0333】
単離された本発明の核酸分子は、CLASP−2ポリペプチドを(例えば、宿主細胞または遺伝子治療における適用において組換え型発現ベクターを介して)発現させ、(例えば生物試料中の)CLASP−2 mRNA、または天然のCLASP−2遺伝子変異もしくは組換えにより生じたCLASP−2遺伝子変異を検出するために、および、後述するようにCLASP−2活性を調節するために使用することができる。またCLASP−2のポリペプチドは、CLASP−2ポリペプチド活性を調節する薬剤または化合物のスクリーニングに、ならびにCLASP−2ポリペプチドの不十分な産生、または野生型CLASP−2と比較して低い活性の形のCLASP−2ポリペプチドの産生を特徴とする障害の治療に使用できる。さらに、本発明の抗CLASP−2抗体を使用して、CLASP−2ポリペプチド、特に生物試料中に存在するCLASP−2の断片を検出および単離し、CLASP−2ポリペプチドの活性を調節することができる。
【0334】
5.13. 診断アッセイ法
本発明はさらに、生物試料に含まれるCLASP−2またはその断片の存在を検出する方法を提供する。生物試料は通常リンパ球(例えば血液由来)を含む。この方法には、生物試料とCLASP−2ポリペプチドまたはmRNAを検出して生物試料中のCLASP−2の存在を検出する化合物または薬剤との接触が含まれる。
【0335】
CLASP−2 mRNA検出用の好ましい薬剤は、CLASP−2 mRNAとハイブリッドを形成する能力を有する直接または間接に標識化された核酸プローブである。核酸プローブは例えば、配列番号:1に示す完全長CLASP−2 cDNA、またはその一部分である少なくとも15、30、50、100、250、または500ヌクレオチド長で、厳密な条件下でCLASP−2 mRNAに対して特異的にハイブリッドを形成するのに十分なオリゴヌクレオチドとすることができる。
【0336】
CLASP−2ポリペプチド検出用の好ましい薬剤は、対CLASP−2ポリペプチド結合能力を有する直接または間接に標識化された抗体である。抗体はポリクローナルであってもよいし、より好ましくはモノクローナルとすることができる。完全な抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab)2)を使用することができる。プローブまたは抗体に関して「直接または間接に」という表現は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(すなわち物理的連結)させることでプローブまたは抗体を直接標識すること、ならびに直接標識される別の試薬との反応性を利用してプローブまたは抗体を間接標識することを意味する。間接標識の例には、蛍光標識した二次抗体による一次抗体の検出、およびビオチンによるDNAプローブの末端標識などがある。後者の場合、DNAプローブは蛍光標識されたストレプトアビジンで検出することができる。本発明の検出法は、生物試料に含まれるCLASP−2のmRNAまたはポリペプチドのインビトロならびにインビボにおける検出に使用することができる。例えばCLASP−2 mRNAのインビトロ検出法には、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチューハイブリダイゼーションなどがある。CLASP−2ポリペプチドのインビトロ検出法には、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降法、および免疫蛍光法などがある。一方、CLASP−2ポリペプチドは、標識された抗CLASP−2抗体を被験者に導入することでインビボで検出することができる。例えば、この抗体を放射性マーカーで標識することで、被験者の体内における存在および位置を標準的な画像法で検出することができる。特に有用な方法は、被験者で発現するCLASP−2の対立遺伝子異型を検出する方法、および試料に含まれるCLASP−2ポリペプチドの断片を検出する方法である。
【0337】
本発明はまた、生物試料に含まれるCLASP−2の存在を検出するためのキットを対象とする。例えばこのキットは、生物試料におけるCLASP−2のポリペプチドまたはmRNAの検出能力を有する直接または間接に標識された化合物または薬剤;試料に含まれるCLASP−2の量を決定する方法;および、試料中のCLASP−2量を標準と比較する方法からなる。化合物または薬剤は適切な容器に収めることができる。このキットにはさらに、キットを使用してCLASP−2のmRNAまたはポリペプチドを検出するための説明書を含めることができる。
【0338】
本発明の方法はまた、CLASP−2遺伝子中の天然の遺伝的変異を検出して、変異遺伝子を有する被験者に、本明細書に記載された容易、異常な(aberrantまたはabnormal)CLASP−2核酸発現またはCLASP−2ポリペプチド活性を特徴とする障害のリスクがあるか否かを決定するために使用されることがある。好ましい態様においては、この方法には、被験者由来の細胞の試料中にCLASP−2ポリペプチドをコードする遺伝子の完全性、またはCLASP−2遺伝子の異所性発現に影響する少なくとも一つの変化を特徴とする遺伝的変異の有無を検出することが含まれる。
【0339】
5.14 CLASP−2 の生物学的活性
本明細書の記載にあるように、CLASP−2はリンパ球その他の細胞で様々な細胞機能を媒介する。本明細書に記載されるように、様々なアッセイ法では、CLASP−2の活性(すなわち、生物学的活性、例えば、結合)を検出もしくは定量する、またはCLASP−2の活性もしくは発現を調整する作用因子(本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、および抗体を含む)の同定に有用である。このような作用因子は、異常なCLASP−2の発現または活性に関連した疾患および状態の治療に有用である。さらに、当業者であれば、本明細書に示す指針に従って、下記のような通常用いる測定法により、CLASP−2が媒介する他の活性を同定することができる。
【0340】
CLASP−2の機能(もしくは、機能の調整)の測定法の例としては、インビトロもしくはインビボでの細胞の活性(例えば、下記のサイトカイン産生、カルシウム流入、チロシンリン酸化、初期活性化マーカーの制御、細胞代謝、増殖等)の変化を検出することによるインビトロもしくはインビボでの細胞応答(例えば、リンパ球の活性化、抗体産生、炎症等の免疫応答)の調整に関する測定法があげられる。ある態様においては、細胞はリンパ球である。
【0341】
例えば、ある測定法では、組換え体CLASP−2タンパク質、ペプチド、もしくはCLASP−2の細胞外ドメインに対する抗体を、直接T細胞またはB細胞と混合することができる。次に、これらの細胞のサイトカイン産生を測定し、かつ免疫応答の調整の度合いを定量化する。または、抗原提示B細胞を、トランスフェクションしていないT細胞またはCLASP−2のアイソフォームをトランスフェクションしたT細胞と混合する。サイトカイン産生(または5.14.3節における、カルシウム流入またはその他の測定法)を適当な時間で測定し、免疫応答等に対するCLASP−2の効果を調べる。同様の測定法において、CLASP−2の構築物でトランスフェクションしたB細胞が、免疫応答を惹起するようなT細胞の刺激を行う能力があるか否かを調べる。これらいずれの場合においても、トランスフェクションする構築物は、例えば、CLASP−2配列の全長もしくは一部をコードする、または内在性CLASP−2遺伝子の翻訳を阻害するアンチセンスの構築物であってもよい。CLASP−2アイソフォームもしくは抗体の存在または非存在下で免疫応答促進すること、およびその結果得られた免疫応答に対する効果を5.14.3節のリストに示す方法により測定する際には、本明細書の記載するいずれの例をも用いることができる。
【0342】
5.14.1 インビトロで免疫応答を惹起する方法
様々な測定においては、ある作用因子の免疫細胞に対する効果をインビトロ測定で検出する。免疫応答の程度は、下記のような複数の標準的な測定法で測定または定量することができる。
【0343】
ある測定法では、ヒトの末梢血単核球(PBMC)、ヒトT細胞クローン(例えば、ジャーカット E6、ATCC TIB−152)、EBVでトランスフォームしたB細胞クローン(例えば、9D10、ATCC CRL−8752)、抗原特異的T細胞クローンまたは株を用いて、インビトロでの免疫応答を調べることができる。これらの細胞クローンもしくは細胞株の活性化、活性化の亢進、または活性化の阻害を利用して、潜在的なCLASP療法を評価することができる。造血系の細胞を刺激し免疫応答に特徴的な活性化を起こす一般的な方法としては、例えば、以下のものがあげられる。
【0344】
A)免疫応答の抗原特異的刺激。免疫前、または免疫を行っていないマウスの脾細胞を通常の方法で調製することができる。さらに、これまでに特徴付けが成されている抗原特異的T細胞クローンおよびハイブリドーマ(例えば、MBP特異的)、ならびに多くのB細胞リンパ腫細胞株(例えば、CH27)が、以下に記載の測定法に関して利用可能である。抗原特異的脾細胞またはB細胞を抗原の存在下で特異的T細胞と混合し、免疫応答を惹起させることができる。CLASP−2の存在下または非存在下でこれを行い、5.14.2節のいずれかの測定法で測定した時にCLASP−2が免疫応答を調整するか否かを調べることができる。
【0345】
B)T細胞の非特異的活性化。次のような方法を用いて、抗原の非存在下でT細胞を活性化することができる。:1)受容体を活性化する分子(例えば、TCR、CD3、またはCD2)に対する抗体を、共刺激分子に対する抗体(例えば、抗CD28)とともに添加することによるT細胞受容体(TCR)の架橋結合。:2)コンカナバリンA(conA)およびフィトヘムアグルチニン(PHA)等のレクチンを利用した非特異的な方法での細胞表面の受容体の活性化。:3)プロテインキナーゼCを活性化し(例えば、フォルボールエステル)、または細胞質Ca2+を増加させる(例えば、イオノマイシン)、薬理学的な作用因子を利用した細胞表面受容体を介する模倣活性化。
【0346】
C)B細胞の非特異的活性化:1)IgM、CD20、またはCD21等の細胞表面分子に対する抗体の使用。:2)リポ多糖(LPS)、フォルボールエステル、カルシウムイオノフォアおよびイオノマイシンを用いて、受容体の始動をバイパスすることも可能である。
【0347】
D)混合リンパ球反応(MLR)。ドナーのPBMCとレシピエントのPBMCを混合し、不適合な組織抗原を提示させることによりリンパ球を活性化する。これは、一卵性双生児を除いて如何なる場合にも起こる。
【0348】
E)特定の抗原を認識する特異的T細胞クローンまたは株の調製。通常の方法は、破傷風トキシンで最近追加免疫したドナーから破傷風トキシン特異的なT細胞を調製するものである。主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に適合した抗原提示細胞および破傷風トキシンの供給源を利用して、細胞株またはT細胞クローンの抗原特異性を維持する(Lanzavecchia, A.ら、1983, Eur. J. Immun. 13: 733−738)。
【0349】
CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの作用に関し予測される機構に従って適当な測定法を定義し、リンパ球活性化の潜在的な促進または阻害を調べるために利用する。例えば、CLASP細胞外ドメインを含む可溶性タンパク質は、T細胞と抗原提示細胞間の相互作用を阻害しうる。このような相互作用は、MLRにおいて、もしくは抗原特異的T細胞の活性化においては一定の役割を果たすが、非特異的T細胞またはB細胞の活性化においては機能しない。上記の測定法は、複数の可能な定量的検出法に対し利点を有する。
【0350】
5.14.2 インビボでの免疫応答を惹起する方法
多様な測定法においては、インビボ測定法を利用して免疫細胞に対する作用因子の効果を検出する。免疫応答の程度は、以下に記載の方法を含む複数の標準的な方法によって測定もしくは定量することができる。
【0351】
(A)移植拒絶の動物モデル:異所性心臓移植
ある態様においては、移植片対宿主拒絶の標準的な動物モデルは異所性心臓移植である(Fulmerら、1963, Am. J. Anat. 113: 273−281)。この方法は、耳の基底部の耳介動脈を覆う皮膚を切開して、両耳背部に外科的に作製したポケットに心臓組織を植え込むためにBALB/Cマウス(性別はいずれでもよく、1〜9ヶ月の月齢のもの)を利用することを含む。緩やかに湾曲したピンセットを切開部に差し入れ、皮膚と軟骨板の間を確実に切る。ドナーの組織を耳の遠位端部付近にあるポケットの基底部に慎重に入れる。ポケットの開口部をふさぐために耳介動脈を用いる。10〜14日以内に、移植片の拍動活性が観察されるはずである。移植片全体の外見、移植領域への液胞供給のパターンおよび拍動活性は、透過光を当てることによって容易に観察することができ、ならびに拍動活性は、移植後最初の3週間、透過光を利用して容易に観察することができる。数ヶ月に渡って追跡を行うことができる。
【0352】
(B)自己免疫疾患の動物モデル:コラーゲン誘導性関節炎(CIA)の誘導
コラーゲン誘導性関節炎(CIA)は進行と免疫を研究するための標準的なモデルである(Courtneyら、1980, Nature 283: 666及びWooleyら、1981, J. Exp. Med. 154: 688)。DBA/aマウスを利用して、インビトロで試験した潜在的な免疫療法におけるCLASP−2のインビボでの妥当性を測定することができる。インビボ実験を行い、CIAを予防する潜在的な治療法の可能性を調べる。本発明者らは、1群当たり3〜5匹のマウスを用いて、統計的に結果を評価する。
【0353】
II型コラーゲン(CII)の効力に関する力価が得られれば、治療法を試験しうる。ある態様においては、3匹のマウスを3種類の異なる濃度、1匹あたり50、200、および400μgのCIIで免役する(Naboznyら、1996, J. Exp. Med., 183: 27−37)。CIAを惹起するめに、上記のような適当な濃度のCIIで動物を免役する。抗原:CFAの比が1:1であるのものの半量を尾の基部に投与して、残りをさらに半分に分け両後足のフットパッドにそれぞれ投与することができる。CIIでの免疫後12週間で実験を終了するまでの期間、CIAの発症及び進行に関して毎日マウスを注意深くモニターする。移植する心臓片のサイズは約3x3mmでよい。関節炎の重症度は、次のような当業者に公知の通常の方法で評価することができる。
【0354】
5.14.3 定量測定
(A)チロシンリン酸化
HS1、PLC−γ、ZAP−76、およびVav等の初期応答タンパク質のチロシンリン酸化は、T細胞活性化に続いて起こる初期の生化学的事象である。チロシンリン酸化されたタンパク質は、リン酸化したチロシン残基に対する抗体を用いたウエスタンブロットで検出することができる。これら初期応答タンパク質のチロシンリン酸化を用いて、T細胞活性化の標準的な測定を行うことができる(J. Biol. Chem., 1997, 272(23): 14562−14570)。CLASP−2の存在下で免疫応答が起こった場合の、これらまたは関連するタンパク質のリン酸化パターンの変化はいずれも、CLASP−2によるこの応答に関する調整を示唆するものである。
【0355】
(B)細胞内カルシウム流入
細胞内Ca2+の濃度に関する動力学を、予めカルシウム感受性の色素で前処置してある細胞を刺激した後、経時的に測定する。カルシウム指示薬としての色素、Fluor−4(Molecular Probe)の結合によって、フローサイトメトリー、溶液蛍光分析法、および共焦点顕微鏡を利用したとき、この色素は蛍光強度の増加を示す。CLASP−2の存在下で免疫応答が起こった場合の、カルシウム流入の量とタイミングの変化はいずれも、CLASP−2によるこの応答に関する調整を示唆するものである。
【0356】
(C)初期活性化マーカーの制御
CD69、IL−2R、MHC クラスII、B7、およびTCR等の初期リンパ球活性化マーカーのレベルに関する発現/制御の増加と消失は、通常フローサイトメトリーを利用し蛍光標識した抗体で測定する。いずれの抗体も市販されている。CLASP−2の存在下で免疫応答が起こった場合の、リンパ球活性化マーカーの発現レベルにおける変化はいずれも、CLASP−2によるこの応答に関する調整を示唆するものである。
【0357】
(D)代謝活性/酸遊離の増加
既知の大部分のシグナル伝達経路における活性化は、酸の代謝を引き起こす。この再現性のある生物学的事象は、マイクロフィジオメーター(Molecular Devices)を利用し、酸遊離速度として測定され、潜在的な生物学的治療薬で細胞を処理したものを比較するときの、初期活性化マーカーとして利用することができる(McConnell, H. M.ら、1992, Science 257:1906−1912、およびMcConnell, H. M., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. 92:2750−2754)。CLASP−2で処理した試料の酸遊離をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。
【0358】
(E)細胞増殖/細胞生存率の測定
(1)[3H]チミジンの取り込み
インビトロでリンパ球を抗原もしくはマイトゲンに暴露すると、DNA合成と細胞増殖が誘起する。新規に合成されるDNAへの[3H]チミジンの取り込みによる有糸分裂活性の測定は、定量的なT細胞活性化の測定に最も頻繁に用いられるものの一つである。細胞集団もしくはT細胞の活性化に用いる刺激の形態に依存して、[3H]チミジン添加後、インビトロで有糸分裂活性を24〜72時間以内に測定することができる(Mishell, B. B. およびS. M. Shiigi, 1980, 「細胞免疫学において選択された方法(Selected Methods in Cellular Immunology)」, W. H. Freeman and Company およびDutton, R. W. およびPearce, J. D., 1962, Nature 194:93)。CLASP−2で処理した試料のCPMをコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合にはCLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。
【0359】
(2)MST[5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4,5−ジメチルチアゾリル)−3−(4−スルフォフェニル)テトラゾリウム、内部塩]は、増殖もしくは細胞毒性における生細胞数の決定を行う比色法である(Barltrop, J. A.ら、1991. Bioorg. & Med. Chem. Lett. 1:611)。リンパ球活性化後1〜5日で、MTSテトラゾリウム化合物、オーエン試薬を細胞により生物還元し、組織培養培地に可溶性の有色フォルマザン生成物に変える。マイクロプレートレーダーで490nmでの色強度から650nmでの色強度を減じた色強度を測定する。CLASP−2で処理した試料の色強度をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである(Mosmann, T., 1983, J. Immunol. Methods 65:55およびBarltrop, J. A.ら、(1991))。
【0360】
(3)チミジン類縁体であるブロモデオキシウリジン(BrdU)は、DNA合成中の細胞に容易に取り込まれる。BrdUでパルス標識した細胞を、酵素と結合した抗BrdU抗体で標識する(Gratzner, H. G., 1982, Science 218:474−475)。比色性の可溶性物質を用い、BrdUを取り込んだ増殖中の細胞を可視化する。硫酸で反応を止め、プレートリーダーを用い、450nmでプレートを測定する。CLASP−2で処理した試料の色強度をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。
【0361】
(F)アネキシンVによるアポトーシス
プログラム細胞死またはアポトーシスは、細胞死に至る異化作用のカスケードにおける初期事象である。細胞膜の統合性が失われると、蛍光標識したフォスファチジルセリンが結合する。染色した細胞を蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーで測定することができる(Vermes, I., 1995, J. Immunol. Methods. 180:39−52)。ある態様においては、CLASP−2で処理した試料においてアポプトーシスを起こした細胞数をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。インサイチューでアポプトーシスを評価するために、組織試料の細胞死を評価する測定法をインビボの試験で用いることもできる。
【0362】
(G)サイトカイン産生の定量
細胞を刺激後16〜48時間してから回収した細胞上清を、サイトカイン産生について、測定または直接的な試験を実施するまでの期間、−80℃で保存する。各試料について複数のサイトカインを測定することができる。IL−2、IL−3、IFNおよび他のサイトカインのELISA測定法による測定がマウス、ラットおよびヒトで利用可能である(Endogen, Inc. およびBioSource)。サイトカイン産生を、製造元が記載する標準的な2抗体サンドイッチELISA法のプロトコールで測定する。西洋ワサビペルオキシダーゼの存在を3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質で検出し、かつ反応は硫酸で停止させる。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定する。CLASP−2で処理した試料の色強度をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加もしくは減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。
【0363】
(H)NF−ATは免疫染色法で可視化できる
T細胞の活性化には、活性化T細胞の核内因子(NFAT)の核への移入が必要となる。NF−ATの移入は抗NF−AT抗体を用いた免疫染色法で可視化できる(Cell 1998,93:851−861)。それゆえ、NF−ATの核内移行はT細胞の活性化の測定に利用されてきたのである。同様に、NF−AT/ルシフェラーゼレポーターアッセイ法がT細胞の活性化の一般的な測定法として用いられてきた(MCB 1996, 12:7151−7160)。
【0364】
(I)II型コラーゲン(CII)特異的抗体によるELISA測定法(上記の関連するインビボ測定法を参照のこと)
CLASP−2 で免疫した動物の血清におけるC(II)の力価を測定および比較することができる。CII特異的抗体のアイソタイプである、TH1依存性のIgG2ならびにTH2依存性のIgG1およびIgEの双方は、ELISA測定法で測定する。マウスの血液は、CIIで免疫後、1〜2ヶ月後に眼窩から得る。試料を凝固させ遠心して、血清を得る。およびこれを、ELISA測定法で測定するまで−80℃で保存する。ELISAプレートをCIIおよび希釈した血清でコーティングする。HRP標識したヤギの、アイソタイプ特異的抗体。次にプレートをTMB基質と接触させ、マイクロプレートレーダーを用い450nmで測定する(Naboznyら、1996, J. Exp. Med. 183:27−37)。CLASP−2の存在下で免疫応答を惹起させた場合、比色試験によるコラーゲン特異的抗体のレベルにおけるいずれの変化もこの応答のCLASP−2による調整を示唆するものである。
【0365】
(J)ELISPOT測定法による抗体産生
アイソタイプ特異的抗体分泌性細胞の定量のための固相酵素結合イムノスポット(ELISPOT)測定法(Czerkinskyら、1983, J. Immunol. Methods. 65:109−121)。ヒトおよびマウスのB細胞の双方について、アイソタイプおよび抗原特異的抗体産生の試験を行うことができる。この技術は標準的なELISA測定法に基づくものであるが、単一細胞からの抗体分泌の検出によってより高感度になっている。CLASP−2の存在下で免疫応答を惹起させた場合、ELISPOT法のレベルにおけるいずれの変化もこの応答のCLASP−2による調整を示唆するものである。
【0366】
(K)IgE架橋結合に伴う細胞の脱顆粒
2種類の細胞株(MEG01およびHEL−17.92)をATCC(American Type Culture Collection, ATCC)から入手している。これらはいずれもヒトFC R1受容体を発現している。FC R1受容体はIgE複合体に対し高親和性を示す受容体であり、ビオチンと結合させるとアビジンと架橋結合し、リンパ球の脱顆粒およびヒスタミンの遊離を惹起する。試料をアシル化した後に、酵素免疫競合測定法(Immunotech)でヒスタミンを定量する。ヒスタミン遊離。CLASP−2で処理した試料のヒスタミン濃度をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。CLASP−2の存在下で免疫応答を惹起させた場合、脱顆粒の頻度またはヒスタミンのレベルにおけるいずれの変化もこの応答のCLASP−2による調整を示唆するものである。
【0367】
(L)フローサイトメトリーおよび免疫組織化学によるリンパ球の細胞の形質決定
病理学的障害後のリンパ球の組織分布を決定することによって、免疫応答に関与する特定の臓器、組織、およびリンパ球の同定を行うことができる。リンパ球移動の細胞形質決定は通常、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学で実施する。形質、活性化の動態、および細胞の制御に関する事象の同定に通常利用するクラスター決定(CD)分子には複数のものが存在する。CLASP−2の存在下で免疫応答を惹起させた場合、CD分子のレベルおよび分布におけるいずれの変化もこの応答のCLASP−2による調整を示唆するものである。
【0368】
(M)構造/機能測定:同型および/または異型性のカルシウム依存性細胞の接着
L929細胞をCLASP−2とネオマイシンでトランスフェクトすることができる。CLASP−2発現に関して抗CLASPペプチド特異抗体でG418耐性クローンをスクリーニングする。次に、これらCLASP発現クローンを用い、カドヘリン分子について記載されている「細胞会合測定法」(Murphy−Erdosh, C.ら、1995, J. Cell. Biol. 129: 1379−1390)を利用して、同型および/または異型性のカルシウム依存性細胞接着に関する試験を行う。CLASP−2の存在下で免疫応答を惹起させた場合、細胞会合のレベルにおけるいずれの変化もこの応答のCLASP−2による調整を示唆するものである。
【0369】
本明細書に記載され、さらに下記の実施例に記載される以下のcDNAクローンは、ブダペスト条約のもとで、2000年3月24日付けでATCC(American Type Cell Collection, ATCC)(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110−2209)に寄託されており、そのアクセッション番号は、
hCLASP−2A 3’クローン(AVC−PD1) ATCCアクセッション番号PTA−1563
hCLASP−2A 5’クローン(AVC−PD2) ATCCアクセッション番号PTA−1562
hCLASP−2B クローン(AVC−PD12) ATCCアクセッション番号
である。
【0370】
6. 実施例
実施例1
CLASP−2 のクローニング
CLASP−2は次のようにしてクローン化した:ヒトジェンバンク(GenBank)のヒト発現遺伝子配列断片(EST)データベースの相同性検索(BLAST)により、CLASP−1配列を用いて、発現遺伝子配列タグもしくは発現遺伝子配列断片(EST)クローン(ヒト前駆B細胞由来のイメージ(IMAGE)クローン815795)を同定した。イメージ(IMAGE)クローン815795の配列決定は全長について実施した。815795配列から調製したポリヌクレオチドプローブを[32P]−dCTPで標識し、これを用いてジャーカット細胞(Stratagene) およびラモスB細胞のcDNAライブラリー(James Boulter, UCLA)を含むヒトのcDNAライブラリーをスクリーニングした。用いたスクリーニング法は、マニアティスら(Maniatisら、1989, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)が記載している方法であった。複数のクローンを同定し、3,752塩基対のインサートを有するクローンC9の配列を決定した(ABI dye−sequencing system, PE Applied Biosystems, Perkin−Elmer Corporation, 761 Main Avenue, Norwalk, CT, U.S.A)。C9の配列からヌクレオチド1218〜1614に相当する5’プローブを調製し、cDNAライブラリーの再スクリーニングに用いた。複数のクローンを単離したが、インサートを欠失せずにファージ(Stratagene, CA)から切り出すことができなかった。この問題を克服するために、M13FプライマーとCLASP−2プライマー(C96AS; ヌクレオチド1441〜1460)を用いたアンカーPCRを実施した。pGEM−Tシステム(Promega)を用いてPCR断片をクローン化した。この配列はCLASP−2翻訳領域の5’末端を含み、さらに399bpの5’末端非翻訳領域を含むものであった。予備的なCLASP−2の塩基配列を図10に示す。CLASP−2のcDNAの配列は図1に示す。
【0371】
実施例2
CLASP−2 の組織および細胞株での発現
複数組織のノーザンブロット法をクローンテック(Clontech)から購入した。ハイブリダイゼーション法の方法は製造元の推奨する方法に従った。ヒトT細胞株(ジャーカット細胞)、ヒト骨髄性単核球細胞(MV4−11)、B細胞(9D10)、単球(THP−1)、マウスT細胞(3A9)、マウスB細胞(CH27)、ヒト前骨髄球(HL60)およびヒト腎上皮細胞(293細胞株)は、培養細胞株として維持した。複数細胞のノーザン分析のために、ギブコビーアールエル(GIBCO−BRL)のトリアゾールシステムを用いて細胞懸濁液からRNAを調製した。製造元の推奨する方法に従って、各工程を実施した。RNA溶液の260nm/280nmにおける吸光度をもとにRNAの濃度を決定した。20μgのRNAをエタノール沈殿し、フォルムアミド/フォルムアルデヒド緩衝液に懸濁し、とりうる二次構造を排除するために65℃で15分間インキュベートした。1.5%のフォルムアルデヒドを含む1.1%のアガロースゲルでRNA試料を一晩泳動(ゲルおよび泳動用の緩衝液は、いずれも20mMリン酸ナトリウム、pH7.5)した。ゲルの泳動後にRNAを可視化するため、泳動前に約0.5μgの臭化エチジウムをRNAローディング緩衝液とともに各試料に添加した。次に、260nmの波長の光でゲル中のRNAを可視化した。脱イオン水中に15分間ゲルを浸して、ゲル中の臭化エチジウムの濃度を減少させた後、20XSSC緩衝液中、キャピラリーブロット法でRNAをアマシャムハイボンドNプラスメンブレンに5時間転写した。ブロッティングに続いて、メンブレンを5XSSCで3時間洗い、RNAをUV 光(Stratagene Stratalinker)で膜に固定した。
【0372】
CLASP−2のアイソフォームA、B、CおよびDを認識するプローブ(プローブHC2.2)を用いた。プローブHC2.2はCLASP−2A翻訳領域のヌクレオチド3920〜4650(731bpの長さ)を含む。通常のラベリングキットを用いて、プローブHC2.2を調製し、パスツールピペット製のG50セファデックスカラムを用いてTEN(10mM Tris−HCl、pH8.0、1mM EDTA、および100mM NaCl)中で脱塩を行った。
【0373】
RNA(複数組織および複数細胞)の結合した膜に対する[32P]−dCTP標識DNAプローブによるハイブリダイゼーション法は、クロンテックエクスプレスハイブ(CLONTECH EXPRRESSHYB)溶液中で、68℃、1〜2時間行った。ブロットは2XSSC/0.1%SDS中で、2回10分間それぞれ50℃で洗い、次に0.2XSSC/0.1%SDS中で2回10分間それぞれ50℃で洗った後、2xSSC中で50℃で洗う。コダックバイオマックス(BIOMAX)MSフィルムへの露光は、増感紙を用いて−80℃で行った。通常の露光時間は、10〜36時間であった。
【0374】
実施例3
CLASP−2 のサザン分析
BAC DNAは、キアゲンDNA調製システムを用いて一晩培養した大腸菌から調製した。調製は、低コピー数DNA構築物に対する改変を含むが、すべて製造元の方法に従って行った。ゲノムDNAは、サムブロック、フリッチおよびマニアティス(Sambrook、Fitsch およびManiatis)(1989)が記載した方法で ヒーラー(HeLa)細胞(ATCC番号 CCL−17)から調製した。DNA濃度はDNA 溶液の260nmでの吸光度で決定した。 また、20マイクログラム(μg)に相当するのゲノムDNAまたは2μgのBAC DNAを用い、EcoRI またはHind III (ゲノムDNA)もしくはEcoRIおよび Pst I (BAC DNA)で制限酵素処理による切断をした。切断は150マイクロリットルの容量において37℃で4時間行った。切断したDNAをエタノールで沈殿させ、ペレットを20マイクロリットルの脱イオン水に再懸濁した後に、1.2% アガロースゲル中、35ボルトで一晩泳動を行った。泳動用緩衝液はTAEであり、かつゲルは1ml当たり0.1μgの臭化エチジウムを含み、DNAの可視化を行った。
【0375】
ゲルによる分離後に、DNAを260nmの波長の光で可視化させた。次に、ゲルを変性緩衝液(0.5M NaCl、0.4N NaOH)で20分間2回洗い、中和緩衝液(1.5 M NaCI、 0.5 M トリス pH 8.0)で2回洗った。20xSSC中でDNAをゲルからアマシャムハイボンドNメンブレンにキャピラリーブロット法で5時間転写した。ストラタジーン(Stratagene)のストラタリンカー(Stratalinker)を用いて、DNAをUV 光でメンブレンに固定した。
【0376】
CLASP−2を認識するプローブHC2.1を用いた。プローブHC2.1は、CLASP−2Aの325〜1126ヌクレオチド(802 bp の長さ)を含む。通常のラベリングキットを用いて、プローブHC2.1を調製し、パスツールピペット製のG50セファデックスカラムを用いてTEN(10mM トリスHCl、pH8.0、1mM EDTA、および100mM NaCl)中で脱塩を行った。DNAを固定化した膜に対する[32P]−dCTP標識したDNAによるハイブリダイゼーション法は、改変 チャーチ(CHURCH)ハイブリダイゼーション溶液 (7% SDS、0.5 M リン酸ナトリウム、1mM EDTA)中で一晩65℃で実施した。次に、−80℃でメンブレンをコダックバイオマックス(BIOMAX)MSフィルムに露光した。通常の露光時間は、ゲノムDNAサザン分析では12時間であり、BAC DNAサザン分析では3時間であった。
【0377】
ゲノムDNAのサザン分析によって、EcoRIで切断したDNAでは2つの断片(約4.5 kb以下、および 1.85 kb)が見いだされたが、BACの第4および第6DNAでは3つの断片が見いだされた。主要な2つのバンドは、ゲノムおよびBAC DNAの双方で同一のものであった(図 7)。
【0378】
実施例4
CLASP−2 のゲノム・クローニング
ヒト CLASP−2のゲノムクローンはゲノムシステム社のリリースI 高密度フィルター(カタログ番号 FBAC−4434)を用いて得た。2回のスクリーニングで終了した。第1回目のスクリーニングは、ヒト CLASP−2 cDNAのヌクレオチド3830〜4558に相当するプローブを用いて、ゲノムシステムによる標準的なプロトコールで実施した。このスクリーニングによって、2つのゲノムクローンを同定し、これらをAVC BAC4および AVC BAC7と命名した。ヒト CLASP−2 cDNA のヌクレオチド1208〜1604に対応するプローブを用いた第2回目のスクリーニングでは、クローン AVC BAC26を同定した。これらが確かに CLASP−2 ゲノムクローンであることを確証するために、全クローンの部分配列を調べ、エキソン配列を確認し、エキソンとイントロンの境界を同定した。BACのシークエンシングに用いたオリゴヌクレオチドは、ヒト CLASP−2 cDNA配列に基づくものであった。センスおよびアンチセンスのシークエンシング用オリゴヌクレオチドは、対応するゲノム領域をカバーするように高密度にほぼ200ヌクレオチド毎の間隔でヒト CLASP−2 cDNAの鎖長に沿って設計した。プライマーとBAC DNAを用いたシークエンシング反応は、ビッグダイターミネーションシークエンシングミックス(Big Dye termination sequencing mix)(ABI)を用いて標準的なPCRシークエンシング法で行った。シークエンス反応の結果は、シークエンチャーSequencher ソフトウェア (Genecodes)で解析した。この結果を図6に示す。
【0379】
実施例5
バクテリア細胞における組換え体 CLASP−2A ポリペプチドの発現
hCLASP−2 の一部をGST発現ベクターpGEX(ファルマシア)にクローニングした。これらは200アミノ酸からなる予測される細胞外ドメイン(ヌクレオチド866〜1459; GST−EC12; 55kD 融合物)および細胞内ドメインの一部(ヌクレオチド3230〜4065; GST−cyto; 57kD 融合物)の潜在的なカドヘリン・プロセシング部位を含む領域を含む。cDNAクローンまたはジャーカットもしくはヒトの末梢血の RNAに由来するcDNAのいずれかのこれらの配列に特異的なプライマーを用いて、これらの領域を増幅した。GST 発現ベクターへのクローニング・フレームに合わせて、増幅したDNA配列を制限酵素で消化した。DH5α中で融合タンパク質をIPTGで誘導し発現させ、グルタチオン・セファロース(ファルマシア)を用いファルマシアの説明書に従って精製した。SDS−PAGE ゲルをクーマシーブルーで染色し、図8に示すGST−CLASP−2−cyto構築物の誘導および非誘導発現を調べた。これら組換え体タンパク質をDH5αで発現させ、グルタチオン・セファロースを用いファルマシアの説明書に従って精製した。このような組換えタンパク質を用い、AVC 急速免疫プロトコールを利用して抗体(Josman laboratories)を作製した。
【0380】
完全長の CLASP では、hCLASP−2 配列(ヌクレオチド2にフレームの合った)の最初から、または第1もしくは第2のメチオニン(ヌクレオチド278またはヌクレオチド476;図1で下線付けしてある)のいずれかから停止コドン(ヌクレオチド4058)までを容易に発現させることができる。GST部分が26kDの分子量であるとして、予測される合計サイズはそれぞれ180 kD、168 kD、および164.5 kDである。または、6CLASP HISタグカルモジュリン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質等の他のバクテリア発現系を同様に用いることができる。
【0381】
実施例6
哺乳動物細胞における組換え体 CLASP−2A ポリペプチドの発現
実施例 6A 選択的融合
予測される細胞外ドメインの複数部分を、CD5γ−1 発現ベクター(ハーバード大学B. Seed氏より提供された)を利用し、hIgG融合物として構築した。融合タンパク質を分泌経路にのせられようにCD5リーダー配列とフレームを合わせ、またC末端 hIgG(Fc) タンパク質とフレームを合わせて、ポリペプチドをこのベクターにクローン化した。この融合物は、293(Hsieh, J−C.. 1999, Nature 398: 431−436)等の細胞株で分泌させることができる。このベクターへの挿入を目的として、ヌクレオチド866から始まるhCLASP−2 配列を含むセンスプライマーおよびヌクレオチド1459(EC12−IgG)、ヌクレオチド2389(ECC−IgG)およびヌクレオチド2857(ECM−IgG)のアンチセンスプライマーを用いて、細胞外ドメインの一部を増幅した。組換え体ベクターは、マキシプレップ(Maxiprep)(キアゲン)で精製し、293 EBNA−T細胞(ハーバード大学B. Seed氏より提供された)に、リン酸カルシウム法 (Sambrook および Maniatis)でトランスフェクションした。2〜7日後に、ヤギ F(ab’)2抗ヒト IgG(Fc)抗体(Jackson Immunolabs)およびHRPを結合したタンパク質A(Pierce)を用いた hIgG 融合物に対するELISA測定法で、分泌発現を 分析した。細胞内発現は、FITC標識したヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体(Caltag)を用いた免疫蛍光顕微鏡法でモニターした。
【0382】
実施例 6B 細胞内融合物
同様の方法を用いて、完全長の hCLASP−2 アイソフォームおよび欠失を含むC末端型のものをジャーカット等の他の細胞系で発現させるための融合物を構築した。組換え体 hCLASP−2 断片は、cDNA クローンの消化によって単離するか、または特異的領域(幾つかの特異的領域を与える)を挟むプライマーで増幅した。これらをpBJ1−neo (スタンフォード大学、Mark Davis)、Peakl2 (ハーバード大学、B. Seed)、および pDsRedl−Nl (クローンテック)等の発現ベクターにクローニングすることができる。pBJ1−neo および Peak12 では、組換えタンパク質のタグを付けない発現が可能であり、pDsRedl−Nl では、タグを付けないもしくはC末端赤色蛍光タンパク質のタグを付けた発現のいずれかが可能となる。これらを用いて、タンパク質を精製させる、または機能的な解析のための多様な形態の発現を行うことができる。
【0383】
実施例7
CLASP−2 発現のアンチセンスによる阻害
実施例 7A インビトロ CLASP−2 発現の阻害
本実施例では、インビトロの無細胞発現系を用いてCLASP−2発現の阻害を調べる。有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドを同定する目的で、CLASP−2 配列の一部を含む一連のアンチセンスフォスフォロチオエート・オリゴヌクレオチド(PS−ODNs)を、系統的にアッセイして、インビトロでCLASP−2 発現をブロックする能力があるか否かを調べることができる。
【0384】
CLASP−2発現のインビトロ阻害を行うために、センスCLASP−2 RNAのインビトロ転写および翻訳を行う標準的な方法に従って、CLASP−2 転写/発現プラスミドを利用することができる。転写・翻訳の共役反応を標準的な条件下で網状赤血球のライセートシステム(Promega TNTTM)を用いて行うことができる。それぞれの転写/翻訳の共役反応は、発現プラスミドから転写されたCLASP−2 RNA、および標準的な試験濃度の被検アンチセンスポリヌクレオチド、さらに各反応を規格化するための転写/翻訳の内在性コントロールとしてのルシフェラーゼ(例えば、上記のSambrookら;上記のAusubelらを参照のこと)を含むことができる。翻訳反応は、別の反応でインビトロ合成し、その後、翻訳反応に添加するセンスCLASP−2 RNAを用いて行うこともできる。翻訳産物の標識のために、この反応は[35S]−Metを含む。陰性 コントロールは、PS−ODNを添加せずに、またはセンス PS−ODNを添加せずに行う。
【0385】
標識した翻訳産物は、ゲル電気泳動で分離し、蛍光体イメージスクリーンにゲルを露光した後定量することができる。CLASP−2 特異的 PS−ODNの存在下で発現したCLASP−2 タンパク質の量を、同時発現させたルシフェラーゼのコントロールに対して規格化することができる。
【0386】
実施例 7B エクスビボでの CLASP−2 発現の阻害
A.試薬
細胞: ジャーカット、クローンE6−1 ATCC TIB−152; 9D10、ATCC CRL8752; その他の細胞は、ATCCもしくはNCIから得る。
【0387】
培地と溶液: RPMI 1640 培地、バイオホワイタッカー(BioWhitaker); DMEM/M199培地、バイオホワイタッカー(BioWhitaker); EMEM,バイオホワイタッカー(BioWhitaker);ウシ胎仔血清、サミット(Summit)(−20℃で冷凍保存、保存物は、4℃で解凍);トリプシン−EDTA、GIBCO (カタログ番号:25300−054)(−20℃で冷凍保存、保存物は、4℃で解凍; Isoton II (室温保存); DMSO (室温保存);オリゴヌクレオチド (表 1および 図3を参照、−20℃で溶液状態で保存); PBS(Ca2+/Mg2+ を含まない); TE;10 mMトリスHCl、pH 8.0; 1 mM EDTA。
【0388】
オリゴヌクレオチドのストックの調製:オリゴヌクレオチド(PS−ODNs) は、適当量のTEに溶解して、濃縮ストック溶液(1〜20 mM)とすることができる。
【0389】
B.アンチセンス CLASP−2 オリゴヌクレオチドによる細胞のエクスビボでの処理 増殖相の細胞の培養ストック(T75フラスコ中)を用いることができる。この測定にはジャーカット、および9D10 細胞を用いる。ジャーカット および 9D10を懸濁培養し、培地で希釈する。細胞密度は、コールターカウンターもしくは血球計算板を用いて測定する。
【0390】
6ウェル・シャーレに、ウェル当たり総数1.1 x 105の細胞を2 ml/ウェルで添加する。12ウェル、100mmもしくは150mmのシャーレの場合には、細胞の量を比例計算で増加もしくは減少させることができる。例えば、12ウェル・シャーレでは、2ml 培地に4.6 x 104 細胞を用いる。100mmシャーレでは、10mlの培地で6 x 105 細胞を用いる。150mmシャーレでは、35mlの培地で1.7 x 106 細胞を用いる。
【0391】
適当数の細胞(上記の工程2の記載を参照)を集め、遠心して様々な濃度のODN含む培地に再懸濁する。細胞を単一、2つ、もしくは3つのウェルで処理する。コントロールウェルはTEもしくは培地で希釈したセンス ODNで処理する。
【0392】
懸濁培養物を洗し、PS−ODN 培地で毎日再懸濁する。
【0393】
懸濁培養物を2〜4日増殖させる。細胞をPBSで洗し、密度をコールターカウンターもしくは血球計算板を用いて測定する。必要に応じて、ウェル当たり1.1 x 105 細胞で、ウェル当たり 2 ml 培地で細胞をプレートに蒔き、かつ上記のPS−ODN で培養する。
【0394】
CLASP−2 アンチセンス ODNの効果を決定する分析のために細胞試料を回収することもできる。試料を回収し、CLASP−2 mRNAの存在を調べるためにRNAをノーザン分析もしくはRT−PCRのいずれかで分析する。CLASP−2 のアンチセンス ODN の機能性は、ジャーカットおよび9D10 細胞の活性化能を測定することによって分析できる。抗CD3および抗CD28架橋抗体に接触させることによって、ジャーカット細胞を活性化し、また抗IgM 架橋抗体もしくはP.エルギノーザ(P. aeruginosa)のリポ多糖に接触させて、9D10細胞を活性化する。活性化の目安であるカルシウム流入はフローサイトメトリーで測定することができる。さらに、 ELISA 測定法を用いて、ジャーカット細胞からのインターロイキン−2の産生を測定することができ、IgM分泌は9D10から標準的な測定法を用いて測定することができる。
【0395】
下記の表4には、例示としてこの測定法のオリゴヌクレオチドを示す:
【0396】
【表4】
表4の説明:ヌクレオチドの番号付けはいずれも、ヒト CLASP−2A (HC2A)を基準として行った。 図2Aを参照。
【0397】
実施例8
実施例 8A PDZ リガンドペプチドの C 末端合成
標準的な方法でGST−PDZ 融合タンパク質を作製する。例としては、 GST−PDZ 融合タンパク質を次のように構築した。ヒト neDLG 遺伝子(Genbankアクセッション番号:U49089.1)の2つのPDZドメインをコードする572bp の断片を、標準的なプロトコールに従い (Sambrook, Fritsch, and Maniatis, 1989, Molecular Cloning − A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Press.)、ジャーカット由来のトータル RNA からクローニング用の制限酵素部位を挟むプライマーを利用して RT−PCRで増幅した。断片はセファグラス(Sephaglas)(ファルマシア)で精製し、適当な酵素で消化して、同一の酵素で切ったGST発現ベクターpGEX−3X(ファルマシア)にライゲーションした。組換え体構築物をシークエンシングで確認した。DH5αにおいてIPTG誘導によって融合タンパク質を発現させ、ファルマシアの説明書に従ってグルタチオン−セファロース(ファルマシア)で精製した。過剰のグルタチオンをPD10脱塩カラム(ファルマシア)で除去し、タンパク質を透析チューブ(カットオフ値が、14,000 MW のもの)に入れて体積がほぼ50%減少するまでポリエチレングリコール(3350; シグマ)上に置き、試料を濃縮した。次に、最終濃度35%となるようにグリセロールを添加し、試料を−20℃で保存した。これら組換えタンパク質を用いて、標準的なプロトコールで抗体(Josman laboratories)を作製し、また本明細書に記載の生化学的な試験を行った。
【0398】
目的のタンパク質のカルボキシル末端に相当する合成ペプチドを標準的な樹脂を用いた化学(例えば、FMOC)により合成し、記載があるものについてはアミノ末端をビオチンで標識し、ハロゲン化物を含む酸(例えば、トリフルオロ酢酸)を用いて樹脂から切り出した。次に合成ペプチドを逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、ペプチドの同定を質量分析法で行った。
【0399】
実施例 8B CLASP−2 ペプチドの PDZ ドメインを含むタンパク質への結合測定
ビオチン化カルボキシル末端ペプチドのGST−PDZ 融合タンパク質への結合を次のようにして測定する。
(1)タンパク質結合表面を単一もしくは複数のPDZ ドメインを含む GST 融合タンパク質でコートした。タンパク質結合表面は、ポリスチレンプレートの表面であり、ある場合には5μg/mlのヤギ抗GST ポリクローナル抗体でのコーティングにより前処理後、過剰のウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングしたものである。用いるGST融合タンパク質の濃度は、5〜10μg/mlであり、GST融合タンパク質とプレートとの反応は、PBSを用い4℃で1〜16時間実施する。ブロックがまだ成されていない場合には、プレートをBSA(PBS中で2% 、2時間、4℃)でブロックする。
(2)プレートをPBSで洗う。
(3)次に、ビオチン化ペプチド(通常0.2〜20μM)をプレートに添加し、PBS/2%BSA緩衝液でGST融合タンパク質と10分間4℃で反応させ、つぎに20分間25℃で反応させる。標識(ビオチン化)ペプチドと未標識(未ビオチン化)ペプチド間での競合を行う場合には、 標識ペプチドの添加直前に即座に未標識ペプチドを添加する。
(4)プレートをPBSで洗う。
(5) 0.5μg/ml のHRPを結合したストレプトアビジンをPBS/2%BSA緩衝液を含むプレートに添加し、4℃で20分間反応させる。
(6)プレートを界面活性剤(ツイーン20)を含む溶液で5回洗う。
(7)プレートにHRP基質溶液を添加し、室温で20分間置き、発色させる。
(8)1M硫酸を添加してHRPと基質の反応を止める。
(9)プレートの各ウェルの光学密度を450nmで測定する。
【0400】
PDZリガンド相互作用の見かけの親和性に関する測定が要求されるような場合には、単一の実験で用いる標識ペプチドを複数の濃度で用いて、上記の方法を実施する。次に、結合のプロット対添加したペプチド濃度を次式に当てはめる。
結合[ペプチド] = 飽和結合 x ([ペプチド] /([ペプチド] +Kd))
式中、「結合[ペプチド]」とは、与えられたペプチド濃度でのGST−PDZ 融合タンパク質への結合からコントロールとしてのGSTのみのものへの結合を引いたものであり、「Kd」とは結合反応の見かけの親和性であり、かつこのデータが上記式へ最適フィットするように「飽和結合」を計算する。結合反応中に反応が平衡に至らず、その場合、見かけの親和性は実際の親和性を低く見積もっている (すなわち、実際のKd< 観察されたKd)ために、「見かけの親和性」なる用語を用いるのである。
【0401】
本発明は、発明の一局面を例示する目的で示した態様、およびクローン、発明の範囲内で機能的に同等のDNAまたはアミノ酸配列の範囲に限定されるものではない。実際のところ、本明細書に記載されているもの以外にも本発明は多様に改変できることは、当業者であれば前記および添付の図面から理解できる。このような改変は、本請求の範囲に含まれるものである。また、ヌクレオチドについて示されている塩基対のサイズはいずれも大まかな値であり、説明の目的で用いるものであることも理解される。
【0402】
上記に引用の文献および特許書類はいずれも、各々が個別に示されるものとして同様の範囲でその全文が参照として本明細書に組み入れられものとする。
【0403】
CLASP−1 についての補遺
【0404】
カドヘリン様アシンメトリータンパク質−1、およびこれを用いる方法
本発明は免疫系において細胞と細胞との相互作用に関与する分子に関する。特に、本発明は古典的カドヘリンの特徴を含むが、リンパ球表面で頂端的分布パターンを示す細胞表面のタンパク質に関する。この分子の膜局在は、T細胞とB細胞の接触面と相関し、このタンパク質の細胞外ドメインに対する抗体はT細胞/B細胞の相互作用を破壊する。
【0405】
発明の背景
抗原に対する免疫応答の惹起は、特定の抗原に関連して協調的に働く複数の異なるタイプの免疫担当細胞によって起こる。免疫系に入り込んだ抗原はまず抗原提示細胞に出会う。抗原提示細胞は抗原を処理し、抗原性断片をヘルパーT細胞(TH)に提示する。次に、これが2種類の免疫応答を促進する。すなわち、細胞免疫応答と液性免疫応答である。免疫系における他のタイプのエフェクター細胞を「助ける」もしくは活性化するリンフォカイン産生によって、THが抗原刺激に応答する。THはB細胞を活性化し、B細胞は液性免疫応答の主要なエフェクター分子として機能する抗体を分泌する。抗体は、外来性抗原を中和し、抗体依存性の細胞障害を媒介する他のエフェクター細胞と協調する。 さらに、THは、別のT細胞のサブセットを刺激して、抗原を発現する標的細胞を直接死滅させる細胞障害性で抗原特異的なエフェクター細胞を発達させて、細胞性免疫応答を 制御する。
【0406】
THは、CD4と呼ばれる細胞表面の糖タンパク質マーカーの発現によって、細胞障害性Tリンパ球 (CTL)およびB細胞とは異なる。マウスでは、抗原提示細胞による活性化で、1型ヘルパーT細胞(TH1)が、インターロイキン−2(IL−2)およびγ−インターフェロン(γ−IFN)を産生し、2型ヘルパーT細胞(TH2)はIL−4およびIL−5を産生する。リンフォカイン産生のプロフィールに基づいてTH1は、活性化の亢進とCTL等の他のT細胞サブセットの増殖に関与すると考えられ、一方でTH2はB細胞の増殖および分化、抗体の合成、および抗体のクラススイッチを特異的に制御する。
【0407】
CTLはCD8表面マーカーを発現する。通常のTHと異なり、これらの細胞は特定のリンフォカイン産生も可能であるが、標的細胞との直接的接触により細胞溶解活性を示す。インビボでは、これらの細胞は抗体応答のみでは不十分であるような状況で、特に重要である。細胞性免疫応答がウイルス感染および癌に対する防御において中心的な役割を演じていることを示す実験的証拠が数多くある。
【0408】
免疫系では、免疫担当細胞は表面タンパク質を介した直接的接触、および表面受容体に結合する分泌性サイトカインによって互いに情報交換を行う。多くの場合、細胞表面の分子は、細胞膜に均一に分布する。しかし、特定の細胞表面タンパク質がリンパ球の活性化後にクラスター形成を示す。例えば、抗原提示細胞が提示する抗原性断片は、T細胞受容体(TCR)を集合させ、または他の共役受容体と複合体を形成させる。
【0409】
細胞極性は、細胞がその環境を迅速に評価し、かつ応答できるような細胞表面膜のドメインへの特殊化を反映する(Drubin and Nelson, 1996, Cell 84: 335−44)。免疫系では、移動性のTリンパ球は、機能的極性を示す(Negulescuら、1996. Immunity 4:421−30)。先端で抗原と出会った細胞は容易に活性化するが、後方で抗原と出会ったものは、非常に活性化しづらい。
【0410】
抗原活性化前では、TCR密度は細胞の先端ではより高くは見えないので、この固有極性に重要なものは他の分子であると考えられる。リンパ球において、抗原活性化の前では、複数の細胞質内分子が、極性分布を示す。例えば、細胞間カップリング後のシグナル伝達分子の方向性送達に重要性が示唆されているT細胞において、スペクトリン、アンキリン、および微小管重合中心(「MTOC」)は、構造的極の境界となっている(Geigerら、1982. J. Cell. Biol. 95:137−43; Gregorioら、1994. J. Cell Biol. 125:345−58; Kupferら、1986. J. Exp. Med. 163:489−98; Kupferら、1994. J. Exp. Mod. 179: 1507−15; Leeら、1988. Cell 55:807−16)。 しかし、本発明以前には、抗原活性化前にリンパ球で極性分布を有することが同定された細胞表面分子は存在しなかった。
【0411】
発明の概要
哺乳動物の新規の細胞表面分子が得られ、カドヘリン様アシンメトリータンパク質−1(Clasp−1)と命名した。特に、Clasp−1のコード配列からなるポリヌクレオチド、 Clasp−1コード配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、このようなポリヌクレオチドを含む発現ベクター、このようなポリヌクレオチドを含む遺伝子工学的宿主細胞、Clasp−1 ポリペプチド、 Clasp−1 融合タンパク質、治療薬組成物、Clasp−1 ドメインの変異体、 Clasp−1特異抗体、Clasp−1発現の検出法、およびClasp−1 機能の阻害による免疫応答阻害法。本発明は、自己免疫疾患および過敏症の治療、移植拒絶反応の予防、および免疫不全状態における免疫応答性の強化を含む広汎な用途を含むが、これらのみに限定されるものではない。
【0412】
本発明は、部分的には、出願者による特定のカドヘリンドメインと他のシグナル伝達に関与する既知のタンパク質ドメインを含む1型膜貫通性タンパク質である Clasp−1 の発見に基づくものである。Clasp−1はリンパ系組織および脳で発現しているが、成人の多くの主要な臓器では検出されない。特に、Clasp−1 は、マクロファージならびにTおよびB細胞の双方で発現している。リンパ球における細胞表面のClasp−1分布パターンは、頂端的であり、細胞先端の極に局在している。さらに重要なことは、T細胞/B細胞クラスターの境界面にClasp−1 が濃縮しており、この細胞外ドメインに対する抗体はT細胞/B細胞の相互作用を阻害することである。
【0413】
図面の簡単な説明
図1a: Clasp−1 アミノ酸配列 (配列番号:1)。 3.9 kb オープンリーディングフレーム (ORF) は、3つの読み枠いずれにおいても複数の停止コドンで挟まれ、翻訳停止コドンの620 bp 下流にポリアデニル化シグナル(AATAAA)が位置する。最初の縮重PCRプライマーに相当する配列を矢印で示した。前駆ペプチドは、アミノ酸残基1〜120であり、推定カドヘリン・プロセシング・シグナル RAQR で終止する(PigottおよびPower, 1993. The Adhesion Molecule Facts Book, Academic Press Limited)(三角形)。細胞外ドメインは、古典的カドヘリン(HofmanおよびStoffel. 1993, Biol. Chem. Hoppe−Seyler 374:166)に典型的な20アミノ酸残基からなる膜貫通ドメイン(斜線および二重下線)の前に4つの潜在的なN糖付加部位(六角形)およびシステインのクラスター(二重下線)を含む。細胞質ドメインはCRK−SH3結合ドメイン(Knudsenら、1994, J. Biol. Chem. 269: 32781−87)(斜線および二重下線, 残基 850−856)、4つのカドヘリン配列モチーフ(下線)、チロシン・リン酸化部位(丸)、および多重らせんドメイン(ボックス) (Lupasら、1991, Science 252: 1162−64)を含む。SH2/SH3結合部位の組み合わせによって相互作用とアダプタータンパク質を介した制御が可能となり、多重らせんドメインによって、細胞骨格との直接的な結合が可能となる。
【0414】
図1b: Clasp−1のドメイン構造の模式図。Clasp−1はアミノ酸残基番号120のカドヘリンのタンパク質切断プロセシング・シグナルで終止するシグナルペプチド含む。細胞外ドメイン(EC)は4つの糖付加部位(六角形)およびカドヘリンに特徴的なシステインのクラスター(「C’s」)を有する。膜貫通ドメイン(TM)の後にはCRK−SH3結合ドメイン(五角形)およびチロシン・リン酸化部位(星形) を含むカドヘリン様ドメイン(CAD)ならびに多重らせんドメイン (「C/C」)がある。
【0415】
図2:カドヘリン配列モチーフ。カドヘリン配列モチーフは、ほぼ同一数のアミノ酸で隔てられている(括弧内)4つの保存されたカドヘリンアミノ酸配列(A〜D)部分からなる。モチーフAはCRK−SH3結合ドメインでもあり、Eカドヘリン配列と類似している。
【0416】
図3a: Clasp−1 は主にリンパ系組織および脳で発現している。10μgのトータルRNAを用いてClasp−1 cDNA配列 で調べると、13kb のバンドが見いだされ、このことは5’ 非翻訳領域が非常に長い、もしくはポリシストロニックなメッセージであることを示唆している。開始メチオニンはコザックのコンセンサス配列で予測される。レーン:1) 胸腺、 2) 脾臓、 3) 小腸、 4) 皮膚、 5)筋肉、 6) リンパ節、 7) 肺、 8) 肝臓、 9) 腎臓、 10) 心臓、 11) 大腸、 12) 骨髄、 13) 脳。Clasp−1 は 胸腺、脾臓、リンパ節および脳で検出される。
【0417】
図3b: Clasp−1 はTおよびBリンパ球の双方で発現する。各レーン10μg のトータルRNAを用いた。 レーン: 1) S194(IgAプラスマ細胞腫)、2) NFS40(前B細胞)、3) J558L (IgAプラスマ細胞腫)、4) HSIC 5 (前B細胞)、5) HAFTLJ (前顆粒球マクロファージ細胞)、6) Bal 17 (成熟B細胞)、7) BAC 14 (前B細胞)、8)5CC7 (CD4 T細胞)。調べた多くの細胞株Clasp−1 が発現している。J558 には存在せず、S194では低レベルである。これらはいずれもプラスマ細胞腫である。
【0418】
図3c: Clasp−1 タンパク質は、TおよびB細胞のいずれにおいても分子量が約130kd である。2B4の細胞質/膜(レーン1)もしくは核(レーン2)およびCH27の細胞質/膜(レーン3)もしくは核(レーン4)のウエスタンブロットをClasp−1の細胞内ドメインに対するヤギ抗血清で調べた。Clasp−1の130kdバンドが、TおよびB細胞のいずれにおいても細胞質/膜分画に見られた。Clasp−1の推定細胞外ドメインに対する抗血清で同一の130kバンドが検出された。副次的な55Kdのバンドは、Clasp−1 の分解産物もしくは交叉反応性タンパク質を表している。
【0419】
図4a−4f: Clasp−1 はMOMA−1 境界領域に局在し、TおよびBリンパ球において焦点的分布をしている。マウスは灌流固定した。脾臓を取り出し、凍結包埋した。凍結切片(7ミクロン)を作製して、Clasp−1−cytoに対するウサギ抗血清を添加し、ローダミン標識した ヤギ抗ウサギ(赤色)で調べた。第2のFITCによる染色(緑色)は、CD3(図4a、 4d)、 B220(図4b、4e)、もしくは MOMA−1 (図4c、4f)に対して用いた。図4a−4c は、低倍の視野(16X 対物レンズ)および図4d−4f は高倍の視野(63X 対物レンズ)である。低倍の視野では、細動脈周囲のリンパ球鞘(PALS)の細胞が抗Clasp−1 抗血清で染色されることを示している。T細胞領域、B細胞領域、境界領域、および中心細動脈はそれぞれT−B、MおよびCで示した。T細胞領域では、散在する樹枝状形態を示す細胞を除いて点状の染色が見られた。B細胞領域では、主要な染色は樹枝状であり、境界領域では濃染した(図4e、矢印)。マクロファージのマーカーとの同時染色では、MOMA−1 メタロマクロファージ領域に局在が認められた。高倍の視野では、T(図4d)およびB(図4e) 細胞におけるClasp−1 は、原形質膜 (図 4d、矢印)に結合した「キャップ」状、もしくは細胞質(図4e、矢印)における「ボール」状の形態で構成されているのが認められた。さらに、T細胞では、 非対称的に存在する Clasp−1 がB細胞領域に侵入する(図4d、矢印)T細胞クラスターの周辺部で濃縮していた。MOMA−1 領域では、MOMA−1とは異なるがMOMA−1 マクロファージ(図4e および4f、矢印)に接触すると考えられるマクロファージ様細胞で、抗Clasp−1 抗血清による染色が見られた。
【0420】
図4g: Clasp−1はB220陽性脾臓B細胞の表面で先端キャップを形成する。脾細胞の懸濁液をポリ−L−リジンコートしたスライドガラス(過ヨウ素酸−リジン−パラホルムアルデヒドで固定した)上でサイトスピンし(McLeanおよびNakane. 1974. J. Histochem. Cytochem. 22:1077−83)、ヤギ抗Clasp−EC 12A (およびビオチンを結合したマウス抗ヤギモノクローナル抗体、さらにその次にPE標識ストレプトアビジンを含む)および抗B220−FITCで染色した。多くのB細胞がClasp−1 陰性であったが、Clasp−1 が存在する場合には、膜表面の先端ドメインを構成していた。
【0421】
図4h: Clasp−1はCD3陽性脾T細胞において先端キャップもしくはリングを形成する。脾細胞の懸濁液をポリ−L−リジンコートしたスライドガラス(過ヨウ素酸−リジン−パラホルムアルデヒドで固定した)上でサイトスピンし、CSK (Greenberg and Edelman, 1983 Cell 33:767−79)中で浸透性を高め、 ブロッキングを行い、ウサギ抗Clasp−cyto (およびローダミン結合した抗ウサギ Fab’2を含む)、および 抗CD3−FITCで染色した。Clasp−1 はキャップもしくはリングを構成していた。
【0422】
図4i: Clasp−1は、D10 T細胞表面において先端キャップを形成する。D10 T細胞は上記図3gに記載のように調製し、ヤギ抗Clasp−EC12A(およびビオチンを結合したマウス抗ヤギモノクローナル、さらにその次にPE標識ストレプトアビジンを含む)および抗CD3−FITCで染色した。Clasp−1は膜先端ドメインを形成した。
【0423】
図4j: Clasp−1 は細胞のMTOCと同一側に位置する。D10および 2B4 T細胞を、上記図4hの下に記載のように調製し、ウサギ 抗Clasp−cyto(およびローダミン結合した抗ウサギ Fab’2を含む)、ラット抗α−チューブリンモノクローナル抗体(YOL 1/34とFITC標識したマウス抗ラットFab’2)で染色し、DAPIでカウンター染色した。MTOC (緑色)は常に、Clasp−1 表面と核との間に位置していた。
【0424】
図5a:生産性および非生産性T−B細胞相互作用におけるClasp−1。3A9 および 5b HEL TCR トランスジェニック脾細胞をHEL ペプチドの存在下で10時間培養した。細胞をサイトスピンし、固定し、浸透性を高めた。これをClasp−1 (赤色)およびCD3(緑色)に関して染色した。対応する位相差顕微鏡(PC)像を各々のセットに沿って示した。 図 5a: 生産性T−B細胞の接着後にT細胞の芽球化転換が起こる(T細胞の位相差顕微鏡像ではクロマチンおよび核境界部の消失が見られることに注意する)。いずれの対においても細胞と細胞の境界にClasp−1 の蓄積がある。図5b: 非生産性T−B相互作用(T細胞は芽球化転換を起こさなかった)では、Clasp−1は細胞と細胞の境界に面してはいなかった。
【0425】
図6a: ヤギ抗Clasp−EC 12 はT−B細胞カップリングを阻害する。1−Eκに関連して蛾シトクロムC(MCC)に特異性を有する2B4 T細胞ハイブリドーマを、MCCペプチドを負荷させたCH27 B細胞と混合した。γ−結合(ファルマシア、NJ)で精製したヤギ抗Clasp−EC12、もしくは免疫前血清を、0、50、150、および300μg/mlの濃度で添加した。150μg/mlのヤギ抗Clasp−EC12 が最大に細胞の会合形成を阻害したが、免疫前血清では450μg/mlまで上げても最小の効果しか示さなかった。試料当たり100以上の細胞凝集物を計数した。
【0426】
図6b: ヤギ抗Clasp−EC12はT細胞活性化を阻害する。1−Eκに関連して蛾シトクロムC(MCC)に特異性を有する2B4 T細胞を、MMCペプチドを負荷したCH27 B細胞と混合した。γ−結合(ファルマシア、NJ)で精製したヤギ抗Clasp−EC12、もしくは免疫前血清を、0、125、500、および1000μg/mlの濃度で添加した。同時インキュベーションを行った48時間後に、IL−2 レベルを測定し、用量依存的に減少することが判明した。IL−2 刺激で測定した場合に、免疫前血清では、T細胞活性化を阻害しなかった。試料は3重検定で行った。
【0427】
配列表の簡単な説明
マウス CLASP−1 のアミノ酸配列を配列番号:1に示した。マウス CLASP−1 cDNAのヌクレオチド配列を配列番号:2に示した。翻訳の開始および停止位置ならびにコードされるポリペプチドも示した。ヒト CLASP−1のヌクレオチド配列を配列番号:3に示し、コードされるポリペプチドを配列番号:4に示す。
【0428】
発明の詳細な説明
哺乳動物の Clasp−1コード配列からなる核酸分子および該配列にコードされるポリペプチドが提供される。例示されるある特定の態様においては、マウスおよびヒト Clasp−1 cDNA 分子を単離し、ヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列の特徴付けを行った。Clasp−1 は異なる種由来のカドヘリンをコードする遺伝子と相同性配列を共有しているが、Clasp−1のヌクレオチドコード配列および推定アミノ酸配列の双方とも独特なものである。
【0429】
本発明にしたがって、Clasp−1 遺伝子産物のアミノ酸配列をコードするいかなるヌクレオチド配列も、Clasp−1 ポリペプチドの発現を司令する組換え体分子の作製に用いることができる。
【0430】
本発明はまた、Clasp−1 配列の少なくとも8ヌクレオチド(すなわちハイブリダイズできる部分)もしくはその相補体から成る単離された核酸、または精製された核酸を提供する。他の態様においては、該核酸は Clasp−1 配列の少なくとも25(連続的な)ヌクレオチド、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、150ヌクレオチドもしくは200ヌクレオチド、または完全長の Clasp−1コード 配列からなる。別の態様においては、核酸はその長さが35,200もしくは500ヌクレオチドより小さい。核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。本発明はまた、前述の配列に選択的にハイブリダイズする核酸または相補的な核酸に関する。特定の局面においては、Clasp−1コード配列の少なくとも10、25、50、100、もしくは200ヌクレオチドまたは全コード領域に相補的な配列からなる核酸を提供する。
【0431】
特定の態様においては、Clasp−1 核酸(例えば、配列番号:2、配列番号:3を有する)もしくはその相補体、またはClasp−1の派生体をコードする核酸にハイブリダイズする核酸を提供する。所望の結果に応じて、低、中程度もしくは高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイゼーションを実施する。新規の配列にハイブリダイズする場合には、提供された配列の5’領域をハイブリダイゼーションに利用する。例えば、核酸は、ストリンジェントな条件で配列番号:3のヌクレオチド1〜約3990から選択されるプローブにハイブリダイズするように決定してもよい。
【0432】
このような低ストリンジェンシー条件を用いる方法としては次のようなものがあるが、これらは例示であって、これらに限定されるものではない(ShiloおよびWeinberg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6789−6792等も参照のこと)。DNAを含むフィルターを、35% フォルムアミド、5XSSC、50 mMトリスHCl (pH 7.5)、5mM EDTA. 0.1%PVP、0.1% フィコール、1%BSAおよび500μg/ml 変性サケ精液DNAを含む溶液中において6時間40℃で前処理する。次のような調整を行った同溶液でハイブリダイゼーションを実施する。0.02% PVP、0.02% フィコール、0.2%BSA、100μg/ml サケ精液DNA、10% (wt/vol) デキストラン硫酸、および5〜20X106 cpmの[32P]標識したプローブを用いる。フィルターをハイブリダイゼーション混液中で、40℃で18〜20時間インキュベートし、次に、2XSSC、25 mMトリスHCl (pH 7.4)、5mM EDTAおよび 0.1%SDSを含む溶液中で、1.5時間55℃で洗う。洗浄溶液を新たなものと交換し、さらに1.5時間60℃でインキュベートする。フィルターをブロットで乾かし、オートラジオグラフィーで露光する。必要に応じて、 フィルターを65〜68℃で3回目の洗いを行い、フィルムに再び露光する。用いられる他の低ストリンジェンシー条件は、当技術分野で公知である(例えば、交叉種ハイブリダイゼーションに用いられる)。
【0433】
このような高ストリンジェンシー条件を用いる方法としては次のようなものがあるが、これらは例示であって、これらに限定されるものではない。DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションを、6X SSC、50 mMトリスHCl (pH 7.5)、1mM EDTA、 0.02% PVP、0.02% フィコール、0.02%BSA、および 500μg/ml 変性サケ精液DNAを含む緩衝液で、8時間〜一晩65℃で実施する。フィルターを100μg/ml 変性サケ精液DNA および5〜20 X 106 cpm の[32P]−標識したプローブを含むプレハイブリダイゼーション混合液で、65℃で48時間ハイブリダイズする。フィルターの洗浄は、2X SSC、0.01% PVP、0.01%フィコール、および 0.01%BSAを含む溶液中で、37℃で1時間実施する。この後オートラジオグラフィー前に、0.1X SSCを用い50℃で45分間洗浄を行う。用いられる他の高ストリンジェンシー条件は、当技術分野で公知である
【0434】
このような中程度のストリンジェンシー条件を用いる方法の例には次のようなものがある。DNAを含むフィルターを、6X SSC、5X デンハルト溶液、0.5% SDS および 100μg/ml 変性サケ精液DNA含む溶液で、6時間55℃で前処理する。同溶液と5〜20X 106 cpmの[32P]標識したプローブを用い、ハイブリダイゼーションを実施する。フィルターをハイブリダイゼーション混合溶液中で、55℃で18〜20時間インキュベートし、次に、1X SSCおよび 0.1%SDS含む溶液中で、60℃30分間で二回洗う。フィルターをブロットで乾かし、オートラジオグラフィーで露光する。用いられる他の中程度ストリンジェンシー条件は、当技術分野で公知である。 フィルターの洗浄は、2X SSC、0.1% SDSを含む溶液中で、37℃で1時間実施する。
【0435】
全 Clasp−1 cDNAをコードする種のいずれかから完全長 cDNA配列 をクローン化する、もしくは該分子の変種をクローン化するために、本明細書に開示する部分cDNAのいずれかに対応する核酸断片から標識したDNAプローブを作製し、これを用いてリンパ球系細胞もしくは脳細胞に由来するcDNAライブラリーをスクリーニングする。さらに具体的には、該cDNA配列の5’ もしくは3’末端のいずれかに相当するオリゴヌクレオチドを用いて、より長いヌクレオチド配列を得る。簡単に説明すると、各150mmプレートに最大30,000pfu得られるようにライブラリーを蒔く。約40プレートをスクリーニングする。該プレートを各プラークの直径が0.25mmになり互いにプラークが接触し始めるまで37℃でインキュベートする(3〜8時間)。ナイロンフィルターを軟寒天上層の上に置き、60秒後にフィルターをはがして0.4Nの水酸化ナトリウムからなるDNA変性溶液に浮かせる。次に、にフィルターを1M トリスHCl(pH 7.5)から成る中和溶液に浸した後、風乾する。フィルターを、10%デキストラン硫酸、0.5M NaCl, 50mMトリスHCl(pH 7.5)、0.1% リン酸ナトリウム、1% カゼイン、1%SDS、および0.5 mg/ml変性サケ精液DNAを含むカゼイン緩衝液等のハイブリダイゼーション緩衝液中で、60℃で6時間プレハイブリダイズする。次に、95℃で2分間熱して放射線標識したプローブを変性させた後、フィルターを含むプレハイブリダイゼーション溶液に添加する。フィルターを60℃で16時間ハイブリダイズする。次に、フィルターを1X 洗浄混合溶液(10X洗浄混合溶液は3M NaCl、0.6M トリス塩基および 0.02M EDTAを含む)で、各々5分間室温で2回洗い、次に1%SDSを含む1X 洗浄混合溶液で、60℃30分間洗い、最後に0.1%SDSを含む0.3X洗浄混液で、60℃で30分間洗う。次に、フィルターを乾燥し、X線フィルムに感光させてオートラジオグラフィーを行う。現像後に、フィルムをフィルターと重ね陽性プラークを単離する。単一に単離される陽性プラークが得られない場合には、プラークを含む寒天断片を取り出し、0.1M NaCl、0.01M 硫酸マグネシウム、0.035Mトリス HCl(pH 7.5)、0.01% ゼラチンを含むラムダ希釈緩衝液に入れる。次に、ファージを再びプレートに蒔き、明確に単一に単離される陽性プラークを得るためにスクリーニングを実施する。陽性プラークを単離し、既知のcDNA配列に基づくプライマーを利用してDNAクローンの配列を調べる。この工程を完全長 cDNAが得られるまで繰り返す。
【0436】
完全長 cDNAを得るために複数の異なる組織から複数のcDNAライブラリーをスクリーニングすることが必要である。cDNA クローニングではよく出くわす状況なのであるが、完全な5’末端を有するコード領域をコードするcDNA クローンの同定が困難な場合には、RACE (Rapid Amplification of cDNA Ends:cDNA端の迅速増幅 法)の技術を用いる。RACE は不完全なcDNAの5’末端を増幅するPCRを用いた確実な方法である。ユニークなアンカー配列を含み、ヒト組織から合成した5’−RACE−Ready RNA が市販されている(クロンテック)。cDNAの5’端を得るために、提供されるアンカープライマーおよび3’ プライマーを用いて5’−RACE−Ready cDNAについてPCRを行う。次に、アンカープライマーおよびネステッド3’ プライマーを用い、製造元の説明書に従って第2のPCR反応を行う。完全長 cDNA配列が得られれば、アミノ酸配列に翻訳した後、翻訳開始および終結部位で挟まれる連続的オープンリーディングフレーム、カドヘリン様ドメイン、SH3結合ドメイン、および最後に本明細書に開示するClasp−1 遺伝子に対する全体的な構造類似性等の特定の手がかりを調べることができる。
【0437】
Clasp−1 コード配列がコードするポリペプチド
本発明にしたがって、Clasp−1 ポリペプチド、変異体ポリペプチド、Clasp−1のペプチド断片、Clasp−1 融合タンパク質もしくはその機能的な同等物をコードする Clasp−1 ポリヌクレオチドを用いて、Clasp−1 タンパク質、Clasp−1 ペプチド断片、融合タンパク質もしくはその機能的な同等物を適当な宿主細胞で発現する組換え体DNA分子を作製することができる。このような Clasp−1 ポリヌクレオチド配列、ならびに少なくともこのようなClasp−1 ポリヌクレオチドの一部もしくはその相補体に選択的にハイブリダイズする他のポリヌクレオチドも、核酸ハイブリダイゼーション測定、サザンブロット解析およびノーザンブロット解析等に用いることができる。
【0438】
遺伝コードの内在的縮重により、実質的に同一のもしくは機能的に同等のアミノ酸配列をコードする他のDNA配列は、Clasp−1 タンパク質発現のための本発明の実施に用いることができる。このようなDNA配列 は、上記の低、中程度もしくは高いストリンジェンシー条件でマウス Clasp−1 配列もしくはその相補的配列にハイブリダイズできるものを含む。
【0439】
本発明に用いる、異なるDNA配列は、異なるヌクレオチド残基の欠失、付加、もしくは置換を含み、その結果、同一もしくは機能的に同等の遺伝子産物をコードする配列を与える。遺伝子産物それ自体が、Clasp−1 配列中のアミノ酸残基の欠失、付加、もしくは置換であって、その結果、サイレントな変化を与え、従って機能的に同等の Clasp−1 タンパク質を産生するものを含んでいてもよい。このような保存的なアミノ酸置換は、含まれる残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/もしくは両親媒性の性質における類似性に依拠している。例えば、陰性電荷を帯びたアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸、陽性電荷を帯びたアミノ酸としては、リジン、ヒスチジンおよびアルギニン、同等の親水性の値を示す非荷電で極性側鎖を有するアミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシンであり、および非極性側鎖を有するアミノ酸はアラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、トリプトファンを含む。
【0440】
多様な末端を含むようにClasp−1コード配列を変化させて、本発明のDNA配列を設計することができる。これには遺伝子産物のプロセシングおよび発現を修飾する変化が含まれるが、これらのみに限定されるものではない。例えば、当技術分野で既知の技術(例えば、部位特異的変異導入法を用い、新たな制限酵素部位を挿入する、もしくは糖付加、リン酸化等のパターンを変化させるなど)を使用して変位を導入することができる。Clasp−1 タンパク質のドメインの構成に基づき、Clasp−1 の細胞外、膜貫通および細胞質ドメインをコードするヌクレオチド配列を再構成して多数の Clasp−1 変異体ポリペプチドを構築することができる。
【0441】
本発明の別の態様においては、Clasp−1 もしくは改変 Clasp−1 配列を異種配列と連結して融合タンパク質をコードするようにする。例えば、Clasp−1に結合する分子を得るためにペプチドライブラリーをスクリーニングする目的では、市販の抗体が認識する異種エピトープを発現するキメラ Clasp−1 タンパク質を作製することが有用である可能性がある。Clasp−1 配列と異種タンパク質配列の間に開裂部位を含むように融合タンパク質を設計することもでき、異種部分からClasp−1を切り離すこともできる。
【0442】
または、挿入制御要素を内在性Clasp−1遺伝子に有効に連結できるような細胞株のゲノムに異種DNA制御要素を挿入して、細胞集団中における内在性Clasp−1遺伝子の発現の特徴を改変することもできる。例えば、通常「転写に関してサイレントな」内在性Clasp−1遺伝子、すなわち、細胞集団において通常発現していないもしくは非常に低いレベルでしか発現していない Clasp−1 遺伝子を、通常細胞で発現する遺伝子産物の発現を促進可能である制御要素を挿入することによって活性化する。または、異なった種類の細胞にわたって働く非特異的制御要素を挿入することによって、転写に関してサイレントな内在性Clasp−1遺伝子を活性化してもよい。
【0443】
当業者に既知の標的相同組換え等の技術を利用して、異種制御要素を、内在性Clasp−1遺伝子に有効に連結できるような細胞株集団に導入することができる(例えば、Chappelの米国特許第5,272,071号;1991年、5月16日に公開された国際公開公報第91/06667号を参照のこと)。
【0444】
本発明の別の態様においては、当技術分野で既知の化学的方法を用いて、Clasp−1をコードする配列の全体または一部を合成することができる(例えば、Caruthersら、1980, Nuc. Acids Res. Symp. Ser. 7:215−233; CreaおよびHorn. 180. Nuc. Acids Res. 9(10):2331; Matteucci and Caruthers. 1980. Tetrahedron Letter 21:719; ならびにChowおよびKempe. 1981. Nuc. Acids Res. 9(12):2807−2817を参照のこと)。 または、全体もしくは一部のClasp−1 アミノ酸配列を合成する化学的方法でタンパク質自体を作製することもできる。例えば、固相技術でペプチドを合成し、樹脂から切り出し、調製用の高速液体クロマトグラフィーで精製することができる(Creighton, 1983, Proteins Structures And Molecular Principles, W.H. Freeman and Co., N.Y. pp. 50−60を参照のこと)。合成ポリペプチドの組成はアミノ酸分析もしくはシークエンシングで確認する(例えば、エドマン分解法:Creighton, 1983, Proteins, Structures and Molecular Principles, W.H. Freeman and Co., N.Y., pp. 34−49を参照のこと)。
【0445】
発現系
生物学的に活性のある Clasp−1の発現させるために、Clasp−1もしくは機能的に同等なものをコードするヌクレオチド配列を適当な発現ベクター(すなわち、挿入コード配列の転写・翻訳に必要な要素を含むベクター)に挿入する。Clasp−1 遺伝子産物ならびに Clasp−1 発現ベクターでトランスフェクションした、もしくは組換え体で形質転換した宿主細胞または細胞株は多様な目的に用いることができる。これらには、Clasp−1 タンパク質活性を競争的に阻害するおよびこの活性を中和する抗体(すなわち、モノクローナルもしくはポリクローナル)の作製、Clasp−1 機能を活性化する抗体および細胞表面もしくは溶液中のClasp−1の存在を検出する抗体の作製があげられるが、これらのみに限定されるものではない。リンパ球およびマクロファージ等の細胞および組織中の Clasp−1レベルの発現を検出および定量する、ならびに細胞混合物からClasp−1陽性細胞を単離する際に、抗Clasp−1 抗体を用いることができる。
【0446】
当業者に既知の方法を用い、Clasp−1コード配列および適当な転写/翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法はインビトロDNA組換え技術、合成技術およびインビボ組換え/遺伝子組換えを含む(例えば、Sambrookら、1989. Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. and Ausubelら、 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Intel−science. N.Y.等に記載の技術を参照のこと)。
【0447】
多様な宿主発現ベクターシステムを用いて、Clasp−1 コード配列を発現させることができる。これらは、Clasp−1コード配列を含む組換え体バクテリオファージDNA、プラスミドDNAもしくはコスミドDNAの発現ベクターで形質転換したバクテリア、Clasp−1コード配列を含む組換え体酵母発現ベクターで形質転換した酵母等の微生物;Clasp−1コード配列を含む組換え体ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞系;組換え体ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV; タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させた、もしくはClasp−1コード配列を含む組換え体プラスミド発現ベクター(例えば、Ti プラスミド)で形質転換した植物細胞系;または動物細胞系を含むが、これらのみに限定されるものではない。これらの系における発現要素は、その強度と特異性が異なる。利用する宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導性プロモーターを含む複数の好適な転写および翻訳要素のいずれもが発現ベクターで用いられる。例えば、バクテリアの系におけるクローニングでは、ラムダバクテリオファージのpL、plac、ptrp、ptac (ptrp−lac ハイブリッドプロモーター;サイトメガロウイルスプロモーター)等の誘導性プロモーターが用いられる。昆虫細胞系におけるクローニングでは、バキュウロウイルス多角体プロモーター等のプロモーターが用いられる。植物細胞系におけるクローニングでは、植物細胞のゲノム由来(例えば、熱ショック・プロモーター; RUBISCOの小サブユニットのプロモーター;クロロフィルα/β 結合タンパク質のプロモーター)もしくは植物ウイルス由来(例えば、CaMVの35S RNA プロモーター; TMVのコートタンパク質プロモーター)のプロモーターが用いられる。哺乳動物細胞系におけるクローニングでは、哺乳動物細胞のゲノム由来(例えば、メタロチオネインのプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルス由来 (例えば、アデノウィルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス 7.5K プロモーター)のプロモーターが用いられる。Clasp−1 DNAを複数コピー含む細胞株を作製する場合には、SV40、BPV、および EBVに基づくベクターを適当な選択可能マーカーとともに用いる。
【0448】
バクテリア系で、Clasp−1産物を発現に利用する場合には、複数の好適な発現ベクターが選択できる。例えば、抗体を生産するため、もしくはペプチドライブラリーをスクリーニングするために、大量の Clasp−1 タンパク質を作製する場合には、容易に精製できる融合タンパク質産物を高レベルで発現するベクターが必要となる。このようなベクター としては、Clasp−1コード配列のフレームをlacZ をコードする領域と合わせてベクターにつなぎハイブリッドタンパク質を生産する大腸菌発現ベクターpUR278 (Rutherら、1983. EMBO J. 2:1791);pIN ベクター (Inouye & Inouye. 1985, Nucleic acids Res. 13:3101−3109; Van Heeke & Schuster, 1989. J. Biol. Chem. 264:5503−5509)等があげられるが、これらのみに限定されるものではない。グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来性ポリペプチドを発現させるために、pGEX ベクターも用いることができる。一般的に、このような融合タンパク質は可溶性で、グルタチオンアガロースビーズに吸着させた後、遊離のグルタチオンの存在下で溶出することによって、溶解した細胞から容易に精製できる。トロンビンもしくはファクターXaプロテアーゼの開裂部位を含み、クローン化した目的のポリペプチドがGST部分から遊離できるようにpGEX ベクターを設計する。
【0449】
酵母では、構成的もしくは誘導性プロモーターを含む複数のベクターが用いられる(Current Protocols in Molecular Biology. Vol. 2. 1988. Ed. Ausubelら、Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience. Ch. 13; Grantら、1987. Expression and Secretion Vectors for Yeast, in Methods in Enzymology, Eds. Wu & Grossman. 1987. Acad. Press. N.Y., Vol. 153. pp. 516−544; Glover. 1986, DNA Cloning, Vol. II, IRL Press. Wash., D.C., Ch. 3; and Bitter, 1987, Heterologous Gene Expression in Yeast. Methods in Enzymology, Eds. Berger & Kimmel. Acad. Press. N.Y. Vol.152 pp 673−684;およびThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces. 1982, Eds. Strathernら、Cold Spring Harbor Press, Vols. I and II.)。
【0450】
植物発現ベクターを用いる場合には、Clasp−1 コード配列の発現 は、複数のプロモーターのいずれによっても制御できる。例えば、CaMV の35S RNA および19S RNA プロモーター(Brissonら、1984. Nature 310:511−514)等のウイルスプロモーターもしくはTMVのコートタンパク質プロモーター(Takamatsuら、1987. EMBO J. 6:307−311)が用いられる。または、RUBISCOの小サブユニット (Coruzziら、 1984. EMBO J. 3:1671−1680; Broglieら、1984. Science 224:838−843)もしくは熱ショック・プロモーター(例えば、大豆 hsp17.5−E もしくは hsp17.3−B (Gureyら、1986. Mol. Cell. Biol. 6:559−565))等の植物プロモーターを用ることができる。Ti プラスミド、Ri プラスミド、植物ウイルスベクター、直接的DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等 (Weissbach & Weissbach. 1988. Methods for Plant Molecular Biology. Academic Press. NY. Section VIII. pp. 421−463;ならびにGrierson & Corey. 1988, Plant Molecular Biology. 2d Ed., Blackie. London. Ch. 7−9.)を用いて、これらの構築物を植物細胞に導入できる。
【0451】
Clasp−1 の発現に用いられる別の発現システムには昆虫の系がある。このような系では、オートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)多角体ウイルス(AcNPV)を外来性遺伝子発現ベクターとして用いる。ソドプテラ・フーギペディラ(Spodoptera frugiperda)細胞でウイルスを増殖させる。Clasp−1コード配列をウイルスの非必須領域(例えば、多角体遺伝子)にクローニングし、AcNPV プロモーター (例えば、多角体プロモーター)の 制御下に置く。Clasp−1コード配列の挿入が成功すれば、多角体遺伝子の不活性化と非閉塞組換え体ウイルス(すなわち、多角体遺伝子がコードするコートタンパク質を欠損したウイルス)の産生が起こる。次に、これらの組換え体ウイルスを用いて、挿入遺伝子を発現する ソドプテラ・フーギペディラ細胞に感染させる(例えば、Smithら、1983, J. Viol. 46:584; Smith, 米国特許第4,215,051号を参照のこと)。
【0452】
哺乳動物の宿主細胞では、複数のウイルスによる発現系を利用できる。アデノウィルスを発現ベクターとして用いる場合、Clasp−1コード 配列をアデノウィルスの転写/翻訳制御複合体(例えば、後期プロモーターおよび3つの要素からなるリーダー配列)につなぐことができる。次に、このキメラ遺伝子をアデノウィルスゲノムにインビトロもしくはインビボ組換えで挿入することができる。ウイルスゲノム非必須領域(例えば、領域 E1 もしくは E3)への挿入によって、感染宿主において生存可能で Clasp−1を発現できる組換え体ウイルスを生じる(例えば、Logan & Shenk, 1984. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655−3659を参照のこと)。または、ワクシニア 7.5K プロモーターを用いる(例えば、Mackettら、1982. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415−7419; Mackettら、1984. J. Virol. 49:857−864; Panicaliら、1982. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4927−4931を参照のこと)。テトラサイクリン抑制性ベクター等の制御可能な発現ベクターを制御下で用いることもできる。
【0453】
挿入Clasp−1コード配列の効率よい翻訳には、特異的開始シグナルも必要であることがある。これらのシグナルは、ATG開始コドンとその近傍の配列を含む。開始コドンとその近傍の配列を含むClasp−1 遺伝子の全長の場合には、適当な発現ベクターに挿入するが、付加的な翻訳調節シグナルは必要としない。しかし、Clasp−1コード配列の一部のみが挿入されている場合には、ATG開始コドンを含む外来性翻訳調節シグナルが必要となる。さらに、インサート全体の翻訳を行うためには、Clasp−1コード配列の読み枠と適合する開始コドンが必要となる。これらの外来性翻訳調節シグナルおよび開始コドンの由来は天然もしくは合成の双方を含む多様なものであり得る。適当な転写のエンハンサー要素、転写ターミネーター等を含むことによって、発現効率を高めることができる(Bittnerら、1987. Methods in Enzymol. 153:516−544を参照のこと)。
【0454】
さらに、所望の特異的方法で挿入配列の発現を調節する、もしくは遺伝子産物を修飾するもしくはプロセスする宿主細胞株を選択する。このような修飾(例えば、糖付加) およびタンパク質産物のプロセシンは、該タンパク質の機能にとって重要であることがある。Clasp−1 細胞外ドメインにおける複数のコンセンサスN糖付加部位の存在は、適切な修飾がClasp−1 機能にとって重要である可能性を支持する。異なる宿主細胞は、翻訳後プロセシングとタンパク質修飾について特徴的で特異的な機構を有する。適当な細胞株もしくは宿主系を選ぶことによって、発現した外来性タンパク質の修飾およびプロセシングが正しく起こる。この目的のために、1次転写産物の適当なプロセシング、糖付加、遺伝子産物のリン酸化等の細胞機構が働く真核宿主細胞を用いる。このような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、W138等があげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0455】
長期間かかる組換えタンパク質の大量産生には安定な発現が好ましい。例えば、Clasp−1を安定に発現する細胞株を作製することができる。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使わずに、適当な発現制御要素 (例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)および選択可能マーカーで制御されたClasp−1 DNAを用いて、宿主細胞を形質転換することができる。外来性DNAの導入後に、作製した細胞を栄養価の高い培地で1〜2日増殖させ、次に選択培地に交換することができる。組換え体プラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対し耐性を付与し、プラスミドが安定に細胞の染色体に組み込まれ、増殖してフォーカスを形成することを可能にする。次に、クローン化して細胞株を殖やすことが可能となる。この方法はClasp−1 タンパク質を細胞表面に発現する細胞株の作製に好適に用いられる。このように作製した細胞株は、Clasp−1 機能に影響を与える分子もしくは薬剤のスクリーニングに特に有用である。
【0456】
複数の選択システムを用いることができる。このようなものとしては、単純ヘルペスウイルスにチミジンキナーゼ(Wigler,ら、1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026)およびアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy,ら、1980, Cell 22:817)(これらは、それぞれ tk−、hgprt−もしくは aprt−細胞で用いることができる)遺伝子があげられるが、これらのみに限定されるものではない。また、dhfrに関する選択に抗代謝産物抵抗性を用いることもできる。dhfrはメトトレキサートに対する耐性を付与する(Wigler.ら、1980. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567; O’Hare,ら、1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527)。 gptはミコフェノール酸に対する耐性を付与する(Mulligan & Berg. 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072)。neoは アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与する(Colberre−Garapin,ら、1981, J. Mol. Biol. 150:1)。 またhygroは、ハイグロマイシンに対する耐性を付与する(Santerre.ら、1984. Gene 30:147)。そのほかの選択可能な遺伝子についても記載がある。すなわち、frpBは、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用できるようにする。hisDは、細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用できるようにする(Hartman & Mulligan. 1988. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047)。ODC (オルニチン脱炭酸酵素)は、オルニチン脱炭酸酵素阻害剤2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMO (McConlogue L, 1987, In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.)およびグルタミン合成酵素(Bebbingtonら、1992, Biotech 10:169)に対する耐性を付与する。
【0457】
Clasp−1 を発現する細胞の同定
コード配列を含み、生物学的に活性なClasp−1遺伝子産物またはその断片を発現する宿主細胞は、少なくとも4つの一般的なアプローチ、即ち(a)DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の有無、(c)宿主細胞におけるClasp−1のmRNA転写物の発現によって測定されるような転写レベルの評価、及び(d)免疫検定法またはその生物学的活性によって測定されるような遺伝子産物の検出によって同定できる。遺伝子発現を同定する前に、宿主細胞はまず、特にClasp−1の産生量が小さい細胞系でClasp−1の発現レベルを増加させるように突然変異誘発されうる。
【0458】
最初のアプローチでは、発現ベクターに挿入されたClasp−1配列が存在することが、Clasp−1コード配列に相同的なそれぞれのヌクレオチド配列、またはその一部もしくは誘導体を含むプローブを用いるDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションによって検出できる。
【0459】
2番目のアプローチでは、組換え発現ベクター/宿主系を、ある種の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ作用、抗体に対する耐性、メトトレキセートに対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスの封入体の形成など)の有無に基づいて同定し、選択できる。例えばClasp−1をコードする配列がベクターのマーカー遺伝子配列に挿入されていると、そのClasp−1コード配列を含む組換え体はそのマーカー遺伝子機能がないことによって同定できるであろう。または、マーカー遺伝子は、Clasp−1のコード配列の発現を調節するために用いられる同じプロモーターまたは別のプロモーターの調節下でClasp−1配列とともにタンデムに位置づけられていてもよい。誘導または選択に応答するマーカーの発現は、Clasp−1コード配列の発現を示している。
【0460】
3番目のアプローチでは、Clasp−1コード配列領域に対する転写活性をハイブリダイゼーションアッセイによって評価できる。例えばRNAをClasp−1コード配列またはその特定の部分に相同的なプローブを用いてノーザンブロットを行うことによって単離でき、かつ分析できる。また宿主細胞の全核酸は、このようなプローブへのハイブリダイゼーションについて抽出され、評価されうる。さらに逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を用いることによって、低レベルの遺伝子発現を検出できる。
【0461】
4番目のアプローチでは、Clasp−1タンパク質産物の発現を、免疫学的に、例えばウエスタンブロット法や、放射線免疫検定法、酵素結合型免疫検定法などの免疫検定法によって評価できる。これは抗Clasp−1抗体を用いることによって達成されうる。またClasp−1タンパク質は、緑色蛍光タンパク質を用いて融合タンパク質として発現されうり、細胞における検出を容易にする(米国特許第5,491,084号、米国特許第5,804,387号、米国特許第5,777,079号)。
【0462】
Clasp−1 で操作した宿主細胞の利用
本発明の一態様では、Clasp−1タンパク質及び/またはClasp−1を発現する細胞系を用いることによって、Clasp−1タンパク質に結合してClasp−1機能を刺激するか阻害することになる抗体、ペプチド、小分子、天然及び合成の化合物、または他の細胞結合性もしくは可溶性の分子をスクリーニングできる。例えば抗Clasp−1抗体は、Clasp−1機能を刺激したり抑制したりするため、またその存在を検出するために用いることができる。また組み換えて発現させた可溶性Clasp−1タンパク質またはClasp−1タンパク質を発現する細胞系を持つペプチドライブラリーのスクリーニングは、Clasp−1の生物活性を阻害したり刺激したりすることで機能する治療用分子を同定するために利用できる。下記の小さな段落に記載されているClasp−1タンパク質及び操作された細胞系は、さまざまな種で相同的なClasp−1と十分同等に用いることができる。
【0463】
本発明の特定の態様では、細胞系はGSTのような他の分子に融合したClasp−1の細胞外ドメインを発現するように操作された。さらにClasp−1またはその細胞外ドメインは、免疫グロブリンの定常領域に融合する(Hollenbaugh及びAruffo, 1992, 「免疫学における現在のプロトコール(Current Protocols in Immunology)」, Unit 10.19、Aruffoら、1990, Cell 61: 1303)ことで半減期が増加した可溶性分子を作成できるであろう。その可溶性タンパク質または融合タンパク質は、結合アッセイ、親和性クロマトグラフィー、免疫沈降法、ウエスタンブロット法などで用いられうる。合成化合物、天然の産物、及び潜在的な生物学的活性物質の他の供給源は、当技術分野で周知のアッセイ法でスクリーニングされうる。
【0464】
固相支持体に結合した全ての可能な組み合わせのアミノ酸からなるランダムペプチドライブラリーは、Clasp−1の特定のドメインに結合できるペプチドを同定するために用いることができる(Lam, K.S.ら、1991, Nature 354: 82−84)。Clasp−1の生物学的作用を刺激したり阻害したりする薬学的物質の発見において、ペプチドライブラリーのスクリーニングは治療的価値を持ちうる。
【0465】
Clasp−1タンパク質に結合できる分子の同定は、組換え可溶性Clasp−1タンパク質のペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって達成できるであろう。Clasp−1の発現方法及び精製方法を用いることによって、完全長の組換えCrasp−1、または対象となる機能的ドメインに依存するClasp−1の断片を発現できる。そのようなドメインには、Clasp−1細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、SH2ドメイン、SH3ドメイン、及び渦巻き状/コイルドメインが含まれる。特定の態様では、131アミノ酸残基−327アミノ酸残基に対応するClasp−1細胞概ドメインの部分は、それ自体か他のタンパク質と相互作用する結合部位を含むことがわかっている。
【0466】
Clasp−1と相互作用して複合体を形成するペプチド/固相支持体を同定して単離するために、Clasp−1分子を標識する、又は「タグ」付けする必要がある。Clasp−1タンパク質を、アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素に接合させてもよいし、またフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)またはロダミンを含む蛍光標識のような他の試薬に接合させてもよい。任意の所与の標識のClasp−1への接合は、当技術分野で周知の方法を用いて行うことが出来る。またClasp−1の発現ベクターを、市販の抗体が存在するエピトープを含むキメラのClasp−1タンパク質を発現するように操作してもよい。このエピトープ特異的抗体は、酵素、蛍光性色素、または着色性もしくは磁気性のビーズなどの当技術分野で周知の方法を用いて、検出可能な標識でタグ付けされうる。
【0467】
「タグ付けされた」Clasp−1複合体を、ランダムペプチドライブラリーとともに30分間から1時間、22℃でインキュベートすることにより、Clasp−1とライブラリーに含まれるペプチド種との間で複合体を形成させる。続いてそのライブラリーを洗浄して、結合しなかったタンパク質を除去する。Clasp−1がアルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼに接合されたら、そのライブラリー全体を、アルカリホスファターゼまたはペルオキシダーゼのいずれか、例えばそれぞれ5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP)または3,3’,4,4”−ジアミノベンジジン(DAB)のいずれかに対する基質を含むペトリ皿に注入する。数分間インキュベートするとペプチド/固相−Clasp−1複合体の色が変化し、ミクロマニュピュレータを備えた解剖型顕微鏡で物理的に容易に同定して単離できる。蛍光標識したClasp−1分子が用いられた場合は、複合体は蛍光活性化分離法によって単離すればよい。異型のエピトープを発現するキメラClasp−1タンパク質を用いたのであれば、ペプチド/Clasp−1複合体の検出は標識されたエピトープ特異的抗体を用いて達成できるであろう。一旦単離すると、固相支持体に結合したペプチドの同定は、ペプチド配列シークエンシング法によって決定できる。
【0468】
可溶性Clasp−1分子の使用に加えて、別の態様では、無傷の細胞を用いて細胞関連型Clasp−1に結合するペプチドを検出することが可能である。無傷の細胞の利用では、細胞表面の分子とともに利用することが好ましい。Clasp−1を発現する細胞系を発生させる方法は上記に記載されている。この方法で用いられる細胞は、生存細胞であってもよいし固定化細胞であってもよい。この細胞はランダムペプチドライブラリーとともにインキュベートされ、ライブラリー内のあるペプチドと結合して標的細胞と適切な固相支持体/ペプチドとの間で「ロゼット」を形成できる。その後ロゼットを示差(differential)遠心分離によって単離してもよいし、また解剖型顕微鏡下で物理的に除去してもよい。コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする方法は当技術分野では既知である(Gallopら、1994, J.Med.Chem., 37: 1233、Gordon, 1994, J.Med.Chem., 37: 1385)。
【0469】
膜結合受容体または、細胞膜の脂質ドメインが機能的であることが必要な受容体についての全細胞アッセイ法の別法として、Clasp−1分子は、標識、又は「タグ」が結合できるリポソームに再構築されうる。
【0470】
抗 Clasp−1 抗体
当技術分野で既知の種々の方法が、天然や組換えて産生されたClasp−1タンパク質のエピトープに対する抗体を産生するのに利用できる。このような抗体には、抗イディオタイプの抗体同様、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ、単鎖、ヒト化、相補性決定領域、Fab断片、F(ab’)2、及びFab発現ライブラリーによって産生された断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。完全にClasp−1と結合する抗体が診断用、及び治療用として特に好ましい。
【0471】
Clasp−1に結合するモノクローナル抗体は、注入後の体内におけるそれらの位置と分布を人が追跡できるように放射活性で標識されうる。放射性同位元素でタグ付けされた抗体は、Clasp−1を発現する新規リンパ腫瘍及び転移を画像化する非侵襲性の診断ツールとして用いることができる。
【0472】
また体内の特定の部位に対する細胞毒性物質を標的化する免疫毒性も設計されうる。例えば親和性の高いClasp−1特異的モノクローナル抗体は、ジフテリア毒素又はリシンなどの細菌性または植物性の毒素に共有的に複合化されうる。抗体/ハイブリッド分子の一般的調製法にはSPDPのようなチオール架橋試薬の利用が関与しうり、それは抗体にある第一のアミノ基を攻撃しジスルフィド交換により抗体に毒素を結合させる。ハイブリッド抗体を用いることによって、Clasp−1発現リンパ球を特異的に減少させることができる。
【0473】
抗体を産生するためには、さまざまな宿主の動物を組換えたClasp−1タンパク質か天然の精製されたClasp−1タンパク質、融合タンパク質またはペプチドを注入して免疫感作するとよく、限定されるわけでないが、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスターなどが含まれる。宿主の種類に応じてさまざまなアジュバントを用いることによって免疫学的応答を増加させることができ、限定するわけでないが、フロイント(完全あるいは不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リソレシチンのような界面活性物質、多イオン性の(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイル乳濁剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、並びにBCG(bacilli Calmette−Guerin)及びコリネバクテリウムパルバム(Corynebacterium parvum)のような潜在的に有用性なヒトアジュバントが含まれる。
【0474】
Clasp−1に対するモノクローナル抗体は、培養中の継続的細胞系によって抗体分子を産生させるために提供される方法を用いて調製できる。これらには、Kohler及びMilstein(Nature, 1975, 256: 495−497)によって最初に記載されたハイブリドーマ法、ヒトB−細胞ハイブリドーマ法(Kosborら、1983, Immunology Today, 4: 72、Coteら、1983, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 80: 2026−2030)及びEBV−ハイブリドーマ法(Coleら、1985, 「モノクローナル抗体と癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」, Alan R.Liss, Inc., pp.77−96)が挙げられるが、限定するわけではない。さらに、適当な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子とともに適当な抗原特異性のマウスの抗体分子由来の遺伝子をスプライシングすることによって「キメラ抗体」産生のために開発された方法(Morrisonら、1984, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 81: 6851−6855、Neubergerら、1984, Nature, 312: 604−608、Takedaら、1985, Nature, 314: 452−454)も用いることができる。また、単鎖抗体の産生について記載された方法(米国特許第4,946,778号)も、Clasp−1特異的単鎖抗体を産生させるために適用できる。
【0475】
ハイブリドーマは、再生した組換えClasp−1に特異的な抗体を分泌する培養物を検出するために、酵素結合免疫ソルベント検定法(ELISA)を用いてスクリーニングされうる。また培養物をELISAによってスクリーニングして、哺乳動物産生型Clasp−1に特異的な抗体を分泌する培養物を同定できる。抗体特異性の確認は、同じ抗原を用いたウエスタンブロット法によって行われうる。続くELISA試験では、組換えClasp−1断片を用いることでモノクローナル抗体が結合するClasp−1分子の特定の部分を同定できる。組織学的断片染色法、Clasp−1の免疫沈降法、Clasp−1結合性の阻害または細胞内のシグナルを伝達するClasp−1の刺激といった更なる試験を行って、所望の機能的特徴を持つモノクローナル抗体を同定できる。モノクローナル抗体のイソタイプの検出はELISAによって達成され、それによって精製または機能に関する別の情報がもたらされる。
【0476】
Clasp−1の特異的結合部位を含む抗体断片は、既知の方法によって生じさせることができる。例えばそのような断片には限定するわけではないが、抗体分子のペプシン消化によって作成されうるF(ab’)2断片やF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって作成されうるFab断片が含まれる。またFab発現ライブラリーを構築し(Huseら、1989, Science, 246: 1275−1281)、Clasp−1に対して所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速かつ容易に同定できる。抗Clasp−1抗体は、Clasp−1発現細胞を同定したり、単離したり、阻害したり、あるいは減少させたりするために利用できる。
【0477】
Clasp−1 ポリヌクレオチドの利用
Clasp−1ポリヌクレオチドまたはその断片は、診断及び/または治療の目的で利用できる。特定して言うと、Clasp−1はリンパ球で発現するため、Clasp−1ポリヌクレオチドを用いることによってリンパ球マーカーとしてのClasp−1の発現を検出できる。診断のために、疾患状態におけるClasp−1遺伝子の発現、又は異常なClasp−1遺伝子の発現を検出するために、Clasp−1ポリヌクレオチドが用いられうる。本発明の範囲には、Clasp−1の発現を阻害するように機能するアンチセンスRNA及びDNA分子ならびにリボザイムのようなオリゴヌクレオチド配列が含まれる。Clasp−1ポリヌクレオチドを用いることによって、Clasp−1の作動薬や拮抗薬をスクリーニングするためのトランスジェニック動物やノックアウト動物を構築できる。
【0478】
トランスジェニック及びノックアウト動物
Clasp−1遺伝子産物は、トランスジェニック動物においても発現できる。限定するわけではないがマウス、ラット、ウサギ、ギニアピッグ、ブタ、ミクロピッグ、ヤギ、ヒツジ、並びに非ヒトの霊長類である例えばヒヒ、サル、及びチンパンジーを含むどれかの種類の動物を、Clasp−1トランスジェニック動物を作成するために用いることができる。ここで用いた「トランスジェニック」という用語は、内在性(即ち同一種)のClasp−1配列を過剰発現させるために遺伝的に操作された動物や内在性のClasp−1遺伝子配列(即ち「ノックアウト」動物)をそれ以上発現しないように遺伝的に操作された動物はもちろん、異なる種(例えばヒトClasp−1遺伝子配列を発現するマウス)由来のClasp−1遺伝子配列を発現する動物、そしてそれらの子孫のことを指す。
【0479】
当技術分野で既知の方法を用いれば、トランスジェニック動物の創始系を作成するために動物にClasp−1導入遺伝子を組み入れることができる。このような方法には、限定するわけでないが、前核マイクロインジェクション法(Hoppe及びWagner, 1989, 米国特許第4,873,191号)、生殖系列へのレトロウイルス媒介性遺伝子移入(Van der Puttenら、1985, Proc.Natl.Acad.Sci., USA 82: 6148−6152)、胚の幹細胞における遺伝子標的化(Thompsonら、1989, Cell 56: 313−321)、胚のエレクトロポレーション法(Lo, 1983, Mol.Cell.Biol.3: 1803−1814)、及び精液媒介性遺伝子移入(Lavitranoら、1989, Cell 57: 717−723)(このような方法の概論については、Gordon, 1989, Trangenic Animals, Intl.Rev.Cytol.115, 171−229参照)が含まれる。
【0480】
当技術分野で既知の何らかの方法、例えば静止期に誘導して培養された胚の胎児または成熟細胞から得られる核の除核された卵母細胞への核移入(Campbellら、1996, Nature 380: 64−66、WilmutらのNature 385: 810−813)を用いれば、Clasp−1を含むトランスジェニック動物のクローンを作成できる。
【0481】
本発明は、その全ての細胞ではないがいくつかの細胞がClasp−1導入遺伝子を有する動物、即ちモザイク動物だけでなく、その全ての細胞がClasp−1導入遺伝子を有するトランスジェニック動物を提供する。この導入遺伝子は、一個の導入遺伝子として、即ち例えばヘッド−ヘッド縦列配列またはヘッド−テイル縦列配列といったコンカテマーで統合されているであろう。また導入遺伝子は、例えばLaskoら(Laskoら、1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89: 6232−6236)の教示にしたがって特定の細胞型に選択的に導入されて活性化される。このような細胞型特異的な活性化を行うのに必要な調節配列は対象となる特定の細胞型に依存しうり、またそれは当業者には明らかでありうる。Clasp−1導入遺伝子が内在性のClasp−1遺伝子の染色体部位に統合されることが望まれる場合、遺伝子標的法が好ましい。概略すると、そのような技術が用いられるためには、染色体配列と相同的に組み合わせて統合する目的で、また内在性のClasp−1遺伝子のヌクレオチド配列の機能を妨害する目的で、内在性のClasp−1遺伝子に相同性のいくつかのヌクレオチド配列を含むベクターが設計される。またこの導入遺伝子は、例えばGuら(1994, Science 265: 103−106)の教示により特定の細胞型に選択的に導入されてもよく、それによってその細胞型のみにある内在性のClasp−1遺伝子が不活性化される。このような細胞型特異性の不活性化を行うのに必要とされる調節配列は対象となる特定の細胞型に依存するであろうし、それは当業者には明らかでありうる。
【0482】
トランスジェニック動物が作製されたら、組換えClasp−1遺伝子の発現は、標準的な方法を用いてアッセイされうる。最初のスクリーニングは、導入遺伝子の統合がなされたかどうかを検定するための動物組織を分析するサザンブロット分析法またはPCR法によって行われうる。トランスジェニック動物の組織に含まれる導入遺伝子のmRNA発現レベルも、限定するわけではないが、動物から得られる組織試料のノーザンブロット分析法、インサイチューハイブリダイゼーション分析法、及びRT−PCR法(逆転写PCR法)といった方法を用いて評価できる。Clasp−1遺伝子発現組織の試料をまた、Clasp−1導入遺伝子産物に特異的な抗体を用いて免疫細胞化学的に評価することもできる。
【0483】
Clasp−1 ポリヌクレオチドの診断的利用
Clasp−1ポリヌクレオチドは、免疫不全状態のようなClasp−1の異常な発現から起こる疾患または異常を診断する際に多くの利用法があろう。例えばClasp−1のDNA配列は、生検または解剖検のハイブリダイゼーション検定で、例えばインサイチューハイブリダイゼーションアッセイとPCRを含むサザンまたはノーザン分析法で用いることによって、Clasp−1発現の異常を検出できる。これに関連して15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなるPCRプライマーを用いるとよい。PCRプライマーの好ましい長さは約18ヌクレオチド〜22ヌクレオチドである。しかしながらプライマーの長さは当業者によって調節されうる。Clasp−1プローブに関しては300ヌクレオチド〜500ヌクレオチドのポリヌクレオチドが好ましい。種々のハイブリダイゼーション法が当技術分野で周知であり、それらは実際、多くの市販の診断用キットの基礎となっている。
【0484】
Clasp−1 ポリヌクレオチドの治療的利用
Clasp−1ポリヌクレオチドをさまざまな異常状態を治療するのに利用できる。細胞に遺伝子配列を導入することによって遺伝子治療を行うと、細胞が正常のClasp−1を発現しなかったり、異常な/不活性のClasp−1を発現したりする状態を治療できる。いくつかの例ではClasp−1をコードするポリヌクレオチドは、機能不全の内在性遺伝子と入れ替わり、即ちそこで作用することが意図されている。また過剰発現に特徴付けられる異常な状態は、下記に記載されたような遺伝子治療法を用いて治療されうる。
【0485】
特定の態様では、Clasp−1タンパク質またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸が、遺伝子治療の様式でClasp−1機能を促進するために投与される。遺伝子治療とは、患者に核酸を投与することによって行われる治療法を指す。本発明のこの態様では核酸は、Clasp−1機能を促進することによって治療効果を仲介する、それが投与されたタンパク質を産生する。当技術分野で利用可能な任意の遺伝子治療法のどれかを、本発明によって用いることができる。例示的な方法が下記に記載されている。
【0486】
遺伝子治療法についての一般的な概論として、Goldspielら、1993, Clinical Pharmacy 12: 488−505、Wu及びWu, 1991, Biotherapy 3: 87−95、Tolstoshev, 1993, Ann.Rev.Pharmacol.Txicol.32: 573−596、Mulligan, 1993, Science 260: 926−932、ならびにMorgan及びAnderson, 1993, Ann.Rev.Biochem.62: 191−217、1993年5月、TIBTECH 11 (5): 155−215を参照できる。利用できる組換えDNA技術についての当技術分野で一般的に知られた方法は、Ausubelら(編), 1993、「分子生物学における現在のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley & Sons, NY、及びKriegler, 1990, 「遺伝子の伝達と発現、実験マニュアル(Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual)」, Stockton Press, NYに記載されている。
【0487】
好ましい局面における治療用組成物には、好適な宿主でClasp−1のタンパク質またはその断片もしくはキメラタンパク質をコードする発現ベクターの部分であるClasp−1核酸が含まれる。特に、このような核酸はClasp−1コード領域に機能的に結合するプロモーターを持っており、該プロモーターは誘導性または構成性であって、かつ任意に組織特異性である。別の特定の態様では、Clasp−1のコード配列と何らかの他の望ましい配列とがClasp−1 ゲノムの望ましい部位で相同性の組換えを促進する領域に隣接していて、そのためClasp−1核酸の染色体内での発現を起こさせる核酸分子が用いられる(Koller及びSmithies, 1989, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86: 8932−8935、Zijlstraら、1989, Nature 342: 435−438)。
【0488】
患者への核酸の送達は、患者が核酸または核酸運搬ベクターに直接的に曝露される場合には直接的、または、細胞がまずインビトロで核酸を用いて形質転換され、続いて患者に移植される場合には非直接的のいずれかでありうる。これらの二つのアプローチはそれぞれ、インビボ(in vivo)またはエキソビボ(ex vivo)の遺伝子治療として既知である。
【0489】
特定の態様において、核酸はインビボで直接的に投与され、コードされた生成物が産生するように発現する。これは以下のような当技術分野で既知の任意の数多くの方法によって達成されうる:例えば、適当な核酸発現ベクターの一部としてそれを構築し、それが細胞内性になるように、例えば欠陥性もしくは弱毒性のレトロウイルスまたは他のウイルスのベクター(米国特許第4,980,286号参照)を用いた感染などによりそれを投与することによって、あるいはそのままのDNAを直接注入することによって、あるいは微粒子照射(例えば、遺伝子銃、Biolistic, Dupont)を利用することによって、又は脂質や細胞表面受容体やトランスフェクト剤を用いて被覆したり、リポソーム、微粒子、もしくはミクロカプセルにカプセル化したりすることによって、あるいは核に入ることがわかっているペプチドに結合内のそれを投与することによって、即ち結合内のそれをリガンドに投与して受容体媒介性エンドサイトーシスさせることによって(例えば、Wu及びWu, 1987, J.Biol.Chem.262: 4429−4432参照)(それは受容体を特異的に発現する細胞型を標的化するために用いることができる)などで成し遂げることができる。別の態様では、リガンドがエンドソームを妨害するための融合誘導性ウイルスペプチドを含むように核酸リガンド複合体が形成されており、核酸がリソソーム性分解を回避できるようになっている。さらに別の態様では、特異的な受容体を標的化することによって、核酸は細胞特異的取り込みと発現についてインビボで標的化されうる(例えば、1992年4月16日付けの国際公開公報第92/06180号、1992年12月23日付けの国際公開公報第92/22635号、1992年11月26日付けの国際公開公報第92/20316号、1993年7月22日付けの国際公開公報93/14188号、1993年10月14日付けの国際公開公報第93/20221号参照)。また、相同的組換え法によって核酸を細胞内に導入し、発現させるために宿主細胞のDNAに組み込むこともできる(Koller及びSmithies, 1989, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86: 8932−8935、Zijlstraら、1989, Nature 342: 435−438)。
【0490】
特定の態様では、Clasp−1核酸を含むウイルスベクターが用いられる。例えばレトロウイルスベクターを用いることができる(Millerら、1993, Meth.Enzymol.217: 581−599参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージング及び宿主細胞のDNAへの統合に必須でないレトロウイルス配列を欠失するように修飾されている。患者への遺伝子の送達を容易にするように、遺伝子治療で用いるべきClasp−1核酸をベクターにクローニングする。レトロウイルスベクターについての更なる詳細はBoesenら、1994, Biotherapy 6: 291−302において見出すことができるが、そこには幹細胞を化学療法に対してより抵抗性にするためにmdr1遺伝子を造血性の幹細胞に供給するレトロウイルスベクターの利用法が記載されている。遺伝子治療でレトロウイルスベクターを利用することについて説明している他の参照文献は、Clowesら、1994, J.Clin.Invest.93: 644−651、Kiemら、1994, Blood 83: 1467−1473、Salmons及びGunzberg, 1993, Human Gene Therapy 4: 129−141、並びにGrossman及びWilson, 1993, Curr.Opin. in Genetics and Devel.3: 110−114である。
【0491】
アデノウイルスは、遺伝子治療で用いることのできる他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、呼吸器上皮に遺伝子を供給するための特に魅力あるビヒクルである。アデノウイルスは、それらが軽い疾患を引き起こす呼吸器上皮に自然に感染する。アデノウイルスに基づく送達システムの他の標的は肝臓、中枢神経系、内皮細胞、及び筋肉である。アデノウイルスは、非分割細胞を感染させることができるという利点を持つ。Kozarsky及びWilson(1993, Current Opinion in Genetics and Development 3: 499−503)は、アデノウイルスに基づく遺伝子治療についての概論を示した。Boutら(1994, Human Gene Therapy 5: 3−10)は、アカゲザルの呼吸器上皮に遺伝子を伝達するためのアデノウイルスベクターの利用法を証明した。遺伝子治療でアデノウイルスを利用する他の例は、Rosenfeldら、1991, Science 252: 431−434、Rosenfeldら、1992, Cell 68: 143−155、及びMastrangeliら、1993, J.Clin.Invest.91: 225−234に記載されている。また遺伝子治療におけるアデノ関連ウイルス(AAV)の使用もまた提案されている(Walshら、1993, Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204: 289−300)。
【0492】
遺伝子治療の別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクション、またはウイルス感染のような方法による組織培養物中の細胞への遺伝子の移入を伴う。通常、移入には細胞への選択可能なマーカーの移入も含まれる。続いてその細胞は、移入された遺伝子を発現している対象の細胞を単離するための選択下に置かれる。次にこれらの細胞は患者に送達される。
【0493】
この態様では、得られる組換え細胞をインビボで投与する前に核酸が細胞に導入される。このような導入を、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体媒介性遺伝子移入、微小細胞媒介性遺伝子移入、スフェロプラスト融合などを含む、当技術分野で既知の何らかの方法によって行うことができるがこれらに限られるわけではない。細胞に外来遺伝子を導入するための数多くの方法が当技術分野では既知であって(例えば、Loeffler及びBehr, 1993, Meth.Enzymol.217: 599−618、Cohenら、1993, Meth.Enzymol.217: 618−644、Cline, 1985, Pharmac.Ther.29: 69−92参照)、受容細胞の持つ必須の発達上の生理学的機能を妨害することなく本発明によって用いられうる。この方法は、核酸が細胞に安定に伝達されることをもたらすべきであって、その核酸がその細胞によって発現でき、そして好ましくはその細胞の子孫によっても受け継がれて発現可能であるようになっている。
【0494】
得られる組換え細胞は、当技術分野で既知のさまざまな方法によって患者に投与できる。好ましい態様では上皮細胞が例えば皮下に注入される。別の態様では組換え皮膚細胞が患者に皮膚移植片として適用できる。組換え血液細胞(例えば造血性の幹細胞または前駆細胞)は好ましくは静脈内に投与される。使用のために考えられる細胞の量は、望まれる効果、患者の状態などに依存しており、当業者によって決定できる。
【0495】
遺伝子治療の目的で核酸が導入される細胞には、何らかの望ましい、入手可能な細胞型が含まれ、限定するわけでないが、上皮細胞、内皮細胞、角質細胞、繊維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球などの血球;例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児の肝臓などから得られるような種々の幹細胞または前駆細胞、特に造血性の幹細胞または前駆細胞が含まれる。好ましい態様では遺伝子治療のために用いられる細胞は患者にとって自家移植片である。
【0496】
特定の態様では、遺伝子治療の目的で導入すべき核酸は、その核酸の発現が適当な転写誘発物質が存在するか存在しないかを調節することによって調節されうるように、そのコード領域に機能的に結合した誘導性のプロモーターを含んでいる。
【0497】
アンチセンスRNA及びDNA分子と、Clasp−1のmRNAの転写を阻害するように機能するリボザイムとを含むオリゴヌクレオチド配列は本発明の範囲内である。このような分子はClasp−1発現の下流調節が望ましい場合に有用である。アンチセンスRNA及びDNA分子は、標的とされるmRNAに結合してタンパク質の翻訳を阻止することによってmRNAの翻訳を直接的に遮断すべく機能する。アンチセンスDNAに関しては、翻訳開始部位、例えばClasp−1のヌクレオチド配列の−10と+10の間の領域から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
【0498】
このアンチセンスオリゴヌクレオチドは少なくとも一つの修飾された塩基部分を含んでいて、それは限定するわけでないが、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリンからなるグループより選択される。
【0499】
リボザイムは、RNAの特異的開裂を触媒する能力のある酵素的なRNA分子である。リボザイムの作用機構には、リボザイム分子が相補的な標的RNAに配列特異的にハイブリダイズし、その後でエンドヌクレオ分解的開裂が起こることが関与する。本発明の範囲には、Clasp−1のRNA配列のエンドヌクレオ分解的開裂を特異的に、かつ効率的に触媒する操作されたハンマーヘッド型モチーフのリボザイム分子が存在する。
【0500】
ある潜在的なRNA標的にある特異的なリボザイム開裂部位は、次の配列、即ちGUA、GUU及びGUCを含むリボザイム開裂部位に対する標的分子をスクリーニングすることによってまず同定される。同定したら、開裂部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15リボヌクレオチドと20リボヌクレオチドの間からなる短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列を不適切なものにする可能性のある二次構造のような予測された構造的特徴について評価できる。候補となる標的の適切性は、相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションする受け入れ能力を、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて試験することによって評価することもできる。
【0501】
また内在性の標的遺伝子の発現を、標的遺伝子またはそのプロモーターを、標的を定めた相同性組換え法(例えば、それぞれが全体が参考として本明細書に組み入れられている、Smithiesら、1985, Nature 317: 230−234、Thomas及びCapecchi, 1987, Cell 51: 503−512、Thompsonら、1989, Cell 5: 313−321を参照されたい)を用いて不活性化する、即ち「ノックアウトする」ことによっても減少させることができる。例えば突然変異体、即ち内在性標的遺伝子(標的遺伝子のコード領域または調節領域のいずれか)に相同的なDNAに隣接する非機能的な標的遺伝子(即ち完全に関連しないDNA配列)を、選択可能なマーカー及び/または陰性選択可能なマーカーを用いて、あるいは用いないで利用することによって、インビボで標的遺伝子を発現する細胞をトランスフェクトできる。標的を定めた相同的組換えによってDNA構築物を挿入すると、標的遺伝子が結果的に不活性化する。このようなアプローチは、ES(胚幹)細胞に対する改変を利用して不活性な標的遺伝子を持つ動物子孫を作製すること(例えば、Thomas並びにCapecchi, 1987及びThompson, 1989, 上記)の可能な農場において特に適している。しかしながらこのアプローチは、直接的に投与されるか、標的化された適当なウイルスベクターを用いてインビボで必要とされる部位に組換えDNA構築物が供給された、ヒトにおける使用の際にも適合しうる。
【0502】
また内在性の標的遺伝子の発現は、標的遺伝子の調節領域(即ち標的遺伝子のプロモーター及び/またはエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的として体内の標的細胞に含まれる標的遺伝子の転写を抑制する三重らせん構造を形成することによって減少させることができる。(一般的に、Helene, 1991, Anticancer Drug Des., 6(6):569−584、Heleneら、1992, Ann.N.T.Acad.Sci., 660: 27−36、及びMaher, 1992, Bioassays 14 (12): 807−815参照)。
【0503】
転写の阻害のための三重らせん形成において利用される核酸分子は、デオキシヌクレオチドからなる一本鎖である。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成はHoogsteen塩基対ルールによって三重らせんの形成を助長するように設計されるべきであって、それは二本鎖の一本に存在するプリンまたはピリミジンのいずれかからなる相当な大きさの伸長を一般に必要とする。ヌクレオチド配列はピリミジンをベースとしていてもよく、それは得られる三重らせんの三本の関連する鎖を横切って結果的にTAT及びCGCトリプレットを形成する。ピリミジンに富む分子は、その鎖に対して平行方向の二本鎖のうちの一本鎖にあるプリンに富む領域に塩基相補性をもたらす。さらに、例えばG残基の伸長を含む、プリンに富む核酸分子が選択されうる。プリン残基の大部分が標的化された二本鎖のうちの一本鎖に存在しているような、これらの分子はGC対がリッチのDNA二本鎖を持つ三重らせんを形成できる、結果的に三重らせんの三本の鎖を横切るGGCトリプレットを形成する。
【0504】
また、三重らせんの形成のために標的となりうる能力のある配列は、いわゆる「スイッチバック」核酸分子を作成することによって増加させることができる。スイッチバック分子は5’−3’、3’−5’が交互になっている様式に合成されることで、それらが二本鎖の一本目の鎖と塩基対を形成でき、そしてさらにもう一方の鎖と塩基対を形成できるため、二本鎖のうちの一本の鎖に存在するはずのプリンまたはピリミジンのいずれかに相当な大きさの伸長がかかる必然が減少する。
【0505】
本発明のアンチセンスRNAとDNA分子、リボザイム及び三重らせん分子は、RNA分子の合成のための当技術分野で既知の何らかの方法によって調製できる。これらには、例えば固相ホスホールアミダイト化学合成法のような当技術分野で周知のオリゴデオキシリボヌクレオチドの化学的合成法が含まれる。またRNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列をインビトロやインビボで転写することによって生じさせることができる。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターのような適当なRNAポリメラーゼープロモーターを持っている広く多様なベクターに導入できる。また、使用したプロモーターに応じてアンチセンスRNAを構成的に、または誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物を細胞系に安定に導入できる。
【0506】
細胞内の安定性と半減期を増加させる手段として、DNA分子にさまざまな修飾を導入できる。可能な修飾として、その分子の5’及び/または3’末端にリボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドの隣接配列を付加することや、オリゴデオキシリボヌクレオチド骨格にあるホスホジエステラーゼ結合ではなく、ホスホロチオネートまたは2’−O−メチルを利用することが含まれるがそれらに限定されるわけでない。
【0507】
このような細胞または組織にポリヌクレオチドを導入する方法には、例えば裸の(naked)ポリヌクレオチドの挿入、即ち組織への注入、エキソビボでの細胞内のClasp−1ポリヌクレオチドの導入、ウイルス(レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスなど)、ファージもしくはプラスミドなどのようなベクターの利用、またはエレクトロポレーションもしくはリン酸カルシウム沈降法のような技術によってポリヌクレオチドをインビトロで導入する方法が含まれる。
【0508】
Clasp−1 タンパク質の利用
目的の遺伝子をClasp−1ポリペプチドの全て又は一部を産生するために使用できる。対象の断片には、ポリペプチドの安定性及び/または活性に影響しうるグリコシル化部位、タンパク質相互作用部位などが含まれる。このようなドメインは、通常は採用された配列の少なくとも約20個のアミノ酸を含み、より通常は少なくとも約50個のアミノ酸を含み、そして100個またはそれ以上で完全なドメインまでのアミノ酸を含むであろう。結合性の接触は、タンパク質が三次構造をとることで近位になる非隣接性の配列から構成されてもよい。このような断片の配列は、上記に記載したようにコード配列を操作することで修飾できる。例えば生物作用に必要な最少の配列を決定するために、断片のカルボキシ末端またはアミノ末端における切断を行うことが出来る。
【0509】
特に関心対象のポリペプチドには、Clasp−1タンパク質の成熟部分、即ちシグナルペプチドの開裂後に残っている断片、またはプロペプチド配列が含まれる。この開裂部位の決定は、そのような開裂を行う能力のある発現系でポリペプチドを産生し、続いて成熟タンパク質の末端を決定することによって実験的に検出できる。またその開裂部位は、既知の開裂部位と比較してから推理して決定してもよい。例えばマウスのClasp−1ポリペプチドの開裂部位は120残基と121残基の間である。ヒト相同体においては、推定開裂部位(arg pro gln arg)は104残基と105残基の間である。
【0510】
タンパク質またはその断片の生物的活性についてのアッセイは、当技術分野で記載されているように決定されうる。リンパ球の活性化を調べるためのインビトロでの多くのアッセイが、当技術分野で公知であるか、又は実施例において提供されている。細胞接着や細胞−細胞接触の阻害はインビボまたはインビトロでのモデルによって検出される(概論として、Fukuda (1995) Bioorg Med Chem 3 (3): 207−215、Zanettaらの(1994) Histol Histopathol 9 (2): 385−412参照)。
【0511】
そのタンパク質またはその断片を大量に入手できる可能性を持つ発現宿主を用いて、従来の方法によってタンパク質を単離し精製することができる。溶解物を発現宿主から調製し、HPLC、圧排(exclusion)クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィー、または他の精製手段によって精製することができる。精製されたタンパク質は一般に少なくとも約80%の純度、好ましくは少なくとも約90%の純度であって、そして100%の純度を含むまで上昇させるとよい。純度は細胞の破壊物の残骸だけでなく他のタンパク質も含まないことを意味すると解釈される。
【0512】
Clasp−1タンパク質はリンパ球で発現し、T細胞−B細胞相互作用の境界面に特に局在している。したがって可溶性Clasp−1、即ち細胞外ドメインまたは抗Clasp−1抗体を含むClasp−1断片を用いてT細胞−B細胞相互作用を阻害することができ、そのため免疫応答が抑制される。T細胞−B細胞の接触におけるClasp−1の介入は、THによるB細胞の活性化の前に起こると考えられており、したがって、Clasp−1結合を阻害すると免疫応答の初期段階を妨害できる。Clasp−1機能を妨害することによって治療できる自己免疫疾患には、限定するわけでないが多発性硬化症、糖尿病、慢性関節リウマチ、天疱瘡、類天疱瘡、後天的表皮水疱症、狼瘡、Rh断片親和性などが含まれる。
【0513】
さらにClasp−1が細胞内シグナルを形質導入する能力のあるドメインを含むため、細胞表面のClasp−1は、リンパ球の活性化状態を高める目的で抗Clasp−1抗体または可溶性Clasp−1もしくはその断片によって刺激されうる。
【0514】
製剤及び投与ルート
Clasp−1ポリペプチド、その断片または抗Clasp−1抗体は、それ自体が、又は薬学的もしくは治療的な組成物の形態で被験者に投与されうる。本発明のタンパク質を含む薬学的組成物は、従来の混合段階、溶解段階、顆粒化段階、糖衣錠作製段階、すりつぶし段階、乳化段階、カプセル化段階、包括段階、または凍結乾燥段階からなる手段によって製造されうる。薬学的組成物は、一つ又は複数の生理学的に許容されうる担体、希釈剤、賦形剤、またはタンパク質もしくは活性なペプチドの薬学的に用いられうる調製物への加工段階を容易にする補助剤を用いた従来のやり方で製剤化されうる。適当な製剤は選択される投与ルートによって変わる。
【0515】
本発明のタンパク質を局所投与するために、当技術分野で周知の溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして製剤化することができる。
【0516】
全身性の製剤には、例えば経皮投与、経粘膜投与、経口投与または肺投与のために設計された製剤だけでなく、皮下注入、静脈内注入、筋肉内注入、胞膜内注入または腹腔内注入といった注入によって投与するために設計された製剤も含まれる。
【0517】
注入のために、本発明のタンパク質は、水性溶液、即ち好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理食塩緩衝液のような生理学的に許容される緩衝液に製剤化されうる。溶液は、懸濁剤、安定化剤及び/または分散剤のような製剤を含むこともある。またタンパク質は、使用する前は適当なビヒクル、例えば滅菌性の発熱物質を含まない水を用いて構成物を作れる粉末形態になっていてもよい。
【0518】
経粘膜投与のためには、透過すべき障壁に適切な浸透剤を製剤に入れて用いるとよい。このような浸透剤は当技術分野では一般的に知られている。
【0519】
経口投与を行うためには組成物は、そのタンパク質を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。このような担体は、治療すべき患者が経口摂取できるようにこのタンパク質を錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化されるのを可能にする。例えば粉末、カプセル及び錠剤のような経口用の固形状製剤に対しては、適当な賦形剤として、ラクトース、ショ糖、マンニトール及びソルビトールのような糖、またトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ポテトデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物、また顆粒化剤、また結着剤などのフィラー(filler)が含まれる。望ましいならば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩である例えばアルギン酸ナトリウムのような崩壊剤を添加してもよい。望ましいならば、固形剤形は標準的な手法を用いて糖被覆されていてもよいし、また腸溶性被覆されていてもよい。
【0520】
例えば、懸濁剤、エリキシル剤及び溶液剤のような経口用の液状製剤に対しては、適当な担体、賦形剤または希釈剤として水、グリコール、オイル、アルコールなどが含まれる。さらに風味剤、保存剤、着色剤などを添加してもよい。
【0521】
口内投与のためには、タンパク質は、従来のやり方で製剤化された錠剤、トローチ剤などの形態でありうる。
【0522】
吸入によって投与する際には本発明によって使用するためのタンパク質は、例えばジクロロジフロロメタン、トリクロロフロロメタン、ジクロロテトラフロロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスを適切な推進剤として利用している加圧パック、またはネブライザーから、エアロゾルスプレーの形態で簡単に供給される。加圧されたエアロゾルの場合には、投与ユニットは測定量を供給するためのバルブを用いることによって測定すればよい。吸入器または吹き入れ器で使用される例えばゼラチンのカプセルや容器は、化合物からなる粉末混合物とラクトースまたはデンプンのような適当な粉末ベースを含有させて製剤化されるとよい。
【0523】
このタンパク質をまた、例えばココアバターやタンパク質のグリセリドのような従来よりある坐剤の基剤を用いた坐剤や停留性の浣腸といった、直腸用または膣用の組成物に製剤化することもできる。
【0524】
前述した製剤とは別に、このタンパク質はまた、貯蔵式組成物として製剤化することもできる。このような長期にわたって作用する製剤は、埋め込むことによって(例えば皮下や筋肉内に)、または筋肉内に注入することによって投与できる。したがって例えばこのタンパク質は、適当なポリマー状もしくは疎水性の材料(例えば許容されるオイルに入れた乳濁剤として)、またはイオン交換樹脂とともに製剤化されていたり、あるいは例えば可溶性に乏しい塩のような可溶性の小さな誘導体として製剤化されることができる。
【0525】
また他の薬学的供給システムを用いることもできる。リポソーム及び乳濁剤は、本発明のタンパク質またはペプチドを供給するのに利用できる供給用ビヒクルについての周知の例である。しかし通常、毒性が大きいという代償を払って、ジメチルスルホキシドのようなある種の有機溶媒も利用されうる。さらにこのタンパク質は、例えば治療用薬物を含む固体状ポリマーからなる半透性のマトリックスのような徐放性システムを用いて供給することもできる。さまざまな徐放性材料が確立されており、それらは当業者に周知である。徐放性カプセルは、その化学的性質に応じて数週間から100日以上もの間、患者にそのタンパク質を放出させることが可能である。その治療用薬剤の化学的性質及び生物学的安定性によっては、タンパク質の安定化のために更なる戦略を講じるとよい。
【0526】
本発明のタンパク質及びペプチドは荷電された側鎖や末端を含んでいる可能性があるため、それらは遊離の酸または塩基として、または薬学的に許容される塩として任意の上述の製剤に含有されうる。薬学的に許容される塩は、遊離の塩基の生物学的活性を実質的保持しているそれらの塩や、無機酸と反応することによって調製される塩である。薬学的な塩は、対応する遊離の塩基の形態よりも、水性であってかつ他のプロトン性の溶媒に対して可溶性が大きくなる傾向がある。
【0527】
効果的な用量
Clasp−1ポリペプチド、Clasp−1断片及び抗Clasp−1抗体は一般に、意図した目的を達成するために有効量で用いられうる。免疫応答を阻害するために使用する場合には、本発明のタンパク質、またはその薬学的組成物は治療上有効な量で投与、又は適用される。治療上有効量とは、治療される患者の症状を効果的に緩和もしくは抑制したり、また患者の生存率を長くしたりできる量を意味する。治療上有効量を決定することは、特に本明細書において提供された詳細な開示の視点から、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0528】
全身性投与のための治療上有効量は、インビトロのアッセイからまず見積もられうる。例えば投与量は、細胞培養物において決定されたIC50(即ち、Clasp−1結合相互作用の50%を阻害する試験化合物の濃度)を含む循環濃度範囲が得られるように、動物モデルで製剤化されうる。このような情報は、ヒトで有効な投与量をより正確に決定するために利用できる。
【0529】
また最初の投与量は、当技術分野で周知の方法を用いてインビボのデータから、例えば動物モデルで見積もることも可能である。当業者であれば動物データに基づいてヒトに対する投与を容易に最適化できる。
【0530】
投与の量と間隔は、治療効果を維持するのに充分なタンパク質レベルに血漿がなるように個別に調節できる。注入によって投与する場合の通常の患者の投与量は、約0.1mg/kg/日から5mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日から1mg/kg/日の範囲である。治療上有効量の血清レベルは、毎日多数回の投与で行うことによって達成できるであろう。
【0531】
局所投与、即ち選択的に取り込ませる場合には、そのタンパク質の効果的な局所濃度は血漿濃度とは関連しないであろう。当業者は過度の実験を行わなくても治療上有効な局所投与を最適化できるであろう。投与されるClasp−1の量はもちろん、治療される患者によって、即ち患者の体重、苦痛の激しさ、投与方法、及び処方する医者の判断によって異なるであろう。
【0532】
治療は、症状が検出可能な間、あるいは症状が検出できない場合であっても間欠的に繰り返すとよい。この治療法は単独で適用したり、あるいは他の薬物と組み合わせて適用したりできる。自己免疫疾患の場合には、Clasp−1またはその断片と組み合わせて用いることのできる薬物には、限定するわけでないが、ステロイドや非ステロイド性の免疫抑制剤である。
【0533】
毒性
ここに記載されたタンパク質の治療上有効な投与量は、実質的に毒性を生じることなく治療的恩典を与えることが好ましい。ここに記載されたタンパク質の毒性は、細胞培養物または実験動物で標準的な薬学的方法を行うことによって、例えばLD50(その集団の50%が死に至る用量)またはLD100(その集団の100%が死に至る用量)を測定することによって決定できる。毒性と治療効果の間の用量比率が治療指数である。これらの細胞培養アッセイと動物実験から得られるデータは、ヒトで使用する場合に毒性のない投与範囲を計画する際に用いることができる。ここの記載されたタンパク質の投与量は、毒性がほとんどないか全くない有効な投与量を含む範囲の循環濃度にあると好ましい。この投与量は、用いた投与形態と用いた投与経路に応じてこの範囲内で変化させるとよい。正確な処方、投与ルート及び投与量は、患者の状態を見て個々の医者が選択できる。(例えば、Finglら、1975, In: The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, p.1参照)。
【0534】
スクリーニングアッセイ法
インビトロの研究では阻害性薬物についての大きな化合物ライブラリーをスクリーニングするために精製Clasp−1マクロ分子を用いることができ、即ち精製した標的分子を関連する薬物設計プログラムで用いることができるが、それは標的の構造、即ち通例の基質またはリガンドと関連するマクロ分子標的の構造をまず決定することが必要である。この情報はその後、合成してさらに試験する必要のある阻害性化合物を設計するために用いられる。試験結果は、主役の化合物が出現するまで相互作用させる方式で、分子モデルと薬物設計段階を精錬するために用いられる。
【0535】
薬物のスクリーニングは、インビトロのモデル、遺伝的に変化させた細胞、または精製したタンパク質を用いて行うことができる。標的の遺伝子配列またはその産物の作用を調節したり擬態したりできるように結合するリガンドまたは基質を同定できる。非常にさまざまなアッセイをこの目的で用いることができるであろうが、そのアッセイには、インビトロでの標識化タンパク質−タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合性の免疫アッセイなどが含まれる。またこの精製したタンパク質は、模擬的な分子間相互作用で用いることのできる三次元結晶構造を決定するためにも利用できる。
【0536】
ここで用いられる「薬剤」という用語は、RABの生理学的機能を変化させたり、擬態したりする能力を持つ何らかの分子、例えばタンパク質や製薬剤のことを指す。一般に複数のアッセイ混合物は、種々の濃度に対して異なる反応が得られるように、試薬濃度を変えて平行に展開させる。通常これらの濃度の一つは陰性対照として、即ち濃度がゼロか、検出レベル以下で用いられる。
【0537】
候補となる薬剤は数多くの化学物質のクラスを包含するが、通常は有機分子、好ましくは分子量が50ダルトン以上で約2,500ダルトン以下の小さな有機化合物であると好ましい。候補となる薬剤はタンパク質と構造的な相互作用をするのに必要な官能基、特に水素結合をするのに必要な官能基を含んでおり、通常それは、少なくとも一つのアミン基、カルボニル基、水酸基またはカルボキシル基を含んでいて、好ましは二つの化学的な官能基を含んでいる。候補となる薬物は、上記の官能基のうちの一つまたはそれ以上で置換された炭素環もしくはヘテロ環構造及び/または芳香族もしくは多環性芳香族構造からなることもよくある。また候補となる薬剤は、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造アナログまたは組み合わせを含む生物分子から見出されることもある。
【0538】
候補となる薬剤は、合成化合物または天然の化合物からなるライブラリーを含む非常に種類の多い供給源から得られる。例えば多くの手段を、不揃いのオリゴヌクレオチド及びオリゴペプチドを発現させるためといった、非常に種類の多い有機化合物と生物分子を無作為に指向させて合成するために利用できる。また、細菌、真菌、植物及び動物の抽出物の形態になっている天然の化合物からなるライブラリーが入手可能、即ち容易に作成できる。さらに天然または合成して作成したライブラリー及び化合物は、従来の化学的、物理的、及び生化学的方法によって容易に修飾でき、そしてコンビナトリアルライブラリーを作成するために利用できる。既知の薬学的薬剤を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような指向されていたり無作為であったりする化学的修飾にかけることによって、構造的アナログを作成してもよい。
【0539】
スクリーニングアッセイが結合性アッセイである場合には、一種またはそれ以上の分子を標識に結合すればよいのであるが、この際のその標識は、直接的または非直接的に検出可能なシグナルを提供できる。種々の標識には、放射性同位元素、蛍光剤、化学的発光剤、酵素、特異的結合分子、粒子、例えば磁気粒子などが含まれる。特異的な結合分子には、例えばビオチンとストレプトアビジン、ジゴキシンと抗ジゴキシンなどのようなペアが含まれる。特異的結合性物質に対しては、相補的な物質が通常、検出のために用いられる分子を用いて、既知の段階で標識されうる。
【0540】
さまざまな他の反応物がこのスクリーニングアッセイに含まれていてもよい。これらには、適切なタンパク質−タンパク質結合性を容易にするため、及び/または非特異的な相互作用やバックグラウンドの相互作用を小さくするために用いられる塩、中性のタンパク質、例えばアルブミン、洗浄剤などのような反応物が含まれる。プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などのこのアッセイの効力を高める反応物が用いられることもある。成分の混合は、必須の結合を起こさせる順番で添加される。インキュベートは適当な温度で、一般的には4℃と40℃の間で行われる。インキュベートの期間は最適な活性が得られるように選択されるが、迅速で処理量の大きなスクリーニングを容易に行うためにも最適化されうる。通常は0.1時間と1時間の間で十分であろう。
【0541】
望ましい生物学的作用を持つ化合物は許容される担体に入れられて真菌感染症の治療のためや感染症の抑制のためなどの目的で宿主に投与されうる。この阻害剤はいろいろな様式で投与できる。導入手段に応じてその化合物は、さまざまな様式に製剤化すればよい。その製剤に含まれる治療上活性な化合物の濃度は約0.01−100重量%の間で変えることができる。
【0542】
記載された本発明及び、続く実施例は例示のために提示されたのであって、限定を意図したものではない。
【0543】
実験
実施例 1
Clasp−1 の cDNA クローニング
変性したオリゴヌクレオチドプライマーは、配列TAPPYD及びFKKLADに対応するクラシックカドヘリンの高度に保存された細胞質ドメインを基本として設計した。5’センスプライマーは配列、GGAATTCCACNGCNCCNCCNTA(CT)GA(配列番号:5)を持っていて、3’アンチセンスプライマーは配列GCTCTAGATCNGCNA(AG)(CT)TT(CT)TT(AG)AA(配列番号:6)を持っていた。
【0544】
全RNAは、コムクジンスキー(Chomczynski)及びサッチ(Sacchi)(1987, Anal.Biochem.162: 156−59)の方法によってマウスの胸腺細胞から調製し、またそのRNAは、オリゴdTを用いてプライムし、スズキ(Suzuki)ら(1988, Cell Regul.2: 807−16)の方法によりMMTV逆転写酵素(BRL, NY)を用いて逆転写した。その後cDNAを、Mg(1.5mM〜3.0mM)、1μgのそれぞれのプライマー、2.5ユニットのAmpliTaq(Perkin Elmer, CA)を含むPromega PCR緩衝液(Promega, WI)中で行われるホットスタート(Ampli−wax, Perkin Elmer, CA)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で用いた。パーキンエルマーサーモサイクラー(Perkin Elmer, CA)を、94℃で30秒間変性を行い、37℃で2分間アニーリング反応を行い、そして65℃まで2分間かけて温度を下げ、3分間の伸張反応を維持し、これを35回繰り返すようにセットした。PCR産物を、3%のNuSieveアガロース(FMC, ME):1%のアガロース(BRL, NY)で分解した。予測されたサイズのバンドを切り取ってSephaglas(Pharmacia, NJ)を用いて精製し、同じプログラムを用いて20ラウンド再増幅した。
【0545】
最終生成物をゲルで精製し、EcoR1及びXba1(New England Biolabs, MA)を用いて消化し、対応する部位でpBluescript KS(Stratagene, La Jolla, CA)にクローニングしてからそのヌクレオチド配列を決定した。配列決定したPCRクローンの半分は同一であった。生まれたばかりのマウス胸腺ライブラリーのスクリーニングに代表的なクローンを用い、Clasp−1を設計する完全なcDNA配列を入手した。
【0546】
結果
カドヘリンと他の接着性分子ファミリーの共通配列に対応する変性オリゴヌクレオチドは、マウスの胸腺細胞から調製したcDNAのPCRで使用するために作成した。数種のクラシックカドヘリン分子とは別に、クローンの半分で報告され、かつクラシックカドヘリンのいくつかの特徴を示した配列を単離した(図1a〜図1b)。完全長のcDNAクローン(配列番号:2)は、カドヘリンタンパク質分解プロセシングシグナル(Pigott及びPower, 1993, The Adhesion Molecule Facts Book, Academic Press Limited)、グリコシル化部位、膜貫通ドメインに近いシステインのクラスター(Hofman及びStoffel, 1993, Biol.Chem.Hoppe−Seyler 374: 166)、及び数個のカドヘリン配列のモチーフを示す細胞質ドメインを含む、多くのカドヘリンの特徴を共有し、1,289個のアミノ酸のタイプI膜貫通タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを持っている(図2)。処理されたポリペプチドは、アミノ酸配列RAQRの後の121アミノ酸残基から始まる(図1a)。この遺伝子は、カドヘリン様の非対称タンパク質に対してClasp−1と命名した。
【0547】
典型的なカドヘリンは、細胞外ドメインによってホモ型カルシウム依存性の接着を仲介し、また細胞質ドメインによってカドヘリンを介する細胞骨格と連結する膜貫通性の糖タンパク質である(Kemler, 1993, Trends Genet.9: 317−21、Geiger及びAyalon, 1992, Annu.Rev.Cell Biol.8: 307−32、Takeichi, 1991, Science 251: 1451−55)。カドヘリンと共有されないClasp−1の特有の特徴としては、SH3結合性ドメイン(Knudsenら、1994, J.Biol.Chem.269: 32781−87)、数個の潜在的なチロシンリン酸化部位、及びコイルド/コイルドメイン(Lupasら、1991, Science 252: 1162−64)が挙げられる(図1a及び1b)。その構造的特徴に基づくとClasp−1は、シグナル変換経路と細胞骨格との間に直接的相互作用をもたらすであろう。Clasp−1の相同性検索(FASTA)(Pearson及びLipman, 1988, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85: 2444−48、Ladugaら、1996, J.Mol.Biol.259: 840−54)は、機能が判明していない二つのcDNA、即ちラットのRNTRG(GenBank X68101)及び複数のC.elegans遺伝子であるCELEF46fH5.4 (GenBank U41543)と類似していることを示した。RNTRGは約75%がClasp−1と同一である。したがってClasp−1は、シグナル変換経路で関与していることがわかっているドメインを含む細胞表面のカドヘリン様タンパク質である。
【0548】
実施例 2
Clasp−1 の発現パターンとそのコード産物の細胞局在性
Th1細胞(5CC7)、pro−GMB細胞(HAFTLJ)、pre−B細胞(NFS40, HSIC5, BAC14)、成熟B細胞(BAL17)、及び形質細胞腫(S194, J598L)を、培養した細胞系として維持した。RNAをノーザンブロット分析を行うためにこれらの細胞から抽出した。
ノーザンブロット分析: それぞれの細胞試料から得た10マイクログラム(μg)の全RNAを1%アガロースホルムアルデヒドゲルに載せ、BioBlotニトロセルロースペーパー(Costar, MA)に移してからStratalink(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて架橋した。プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを50%のホルムアルデヒド、25mMのリン酸ナトリウム(pH6.5)、1×デンハルト溶液、200μg/mlのニシン精子のDNA、及び5×SSC中で65℃で行った。Clasp−1のコード配列に対応するプローブは、製造元の指示書に従ってReady−To−Go Labeling Kit (Pharmacia, NJ)を用いて調製し、パスツールピペットG−50セファデックスカラムを用いてTEN(10mMのトリスHCl、pH8、1mMのEDTA、及び100mMのNaCl)中で脱塩した。そのブロットの最終的な洗浄は、0.1×SCC中、60℃で行った。オートラジオグラフィーは、強化スクリーンを用いて−80℃でKodak XOMATフィルム上にて行った。
【0549】
サイトスピン及び免疫蛍光:
細胞をポリ−L−リジン(Sigma #P2636, MA)スライドにサイトスピン(Cytospin 1, Shandon)し、過ヨウ素酸リジンパラホルムアルデヒド(McLean及びNakane, 1974, J.Histochem.Cytochem.22: 1077−83)で固定した。一次抗体を、10%の正常ロバ血清、TBS−C(50mM トリスHCl、pH7.4、150mMのNaCl、1mMのCaCl2)及び、0.4%のサポニン中、20μg/ml〜30μg/mlで添加し、一晩4℃でインキュベートした。洗浄した後で二次抗体(Jackson Immunoresearch, PA)を添加して37℃で30分間インキュベートした。細胞外を染色するために三段階のサンドウィッチアッセイ法を用いた。その第1段階は、10%の正常マウス血清、10%の正常ラット血清、TBS−Cにおいてヤギ抗血清を、加湿チャンバー中で4℃にて一晩、ガンマ−バインド精製を行い、第2段階は、室温で2時間、1/50に希釈してモノクローナル抗ヤギ抗体(Sigma, MO)をビオチンで標識し、そして最後の段階は室温で1時間、1/50にしてストレプトアビジン−PE(Molecular Probes, OR)を行った。FITC標識した抗B200または抗CD3抗体も最終段階で添加した。
【0550】
免疫組織化学:
生後4週間のマウスを麻酔して、0.1Mのカコディレートに入れた4%のパラホルムアルデヒド(pH7.4)を用いて灌流固定した。脾臓の細胞断片(5−7μm)をCSK(50mMのNaCl、300mMのスクロース、pH6.8の10mMのピペス(Pipes)、3mMのMgCl2、0.5%のトリトンX−100、及び1mMのPMSF)を用いて10分間透過し、そしてPBS+20%の正常ヤギ血清、0.2%のBSA、50mMのNH4Cl、25mMのグリシン、及び25mMのリジンを用いて室温で2時間かけてブロックした(Greenberg及びEdelman, 1983, Cell 33: 767−79)。断片を、TBS−C+25%の正常ヤギ血清に入れた100μlの一次抗体中、4℃で一晩インキュベートし、TBS−Cで3回洗浄した。100μlの二次抗体(Jackson Immunoreseach, PA)を室温で2時間添加した。染色した断片をニコンバイオホット(Nikon Biophot)またはゼイスアキソホト(Zeiss Axiophot)蛍光顕微鏡を用いて検査し、写真をコダックエライト(Kodak Elite)ASA 100を用いて撮った。
【0551】
結果
リンパ球組織(胸腺、脾臓、リンパ節及び骨髄)をRNAブロット分析によってClasp−1発現について試験すると、13kbのClasp−1転写物が検出された。また同じ転写物は脳でも観察されたが、肝臓、肺、筋肉、腎臓、及び皮膚では見られなかった(図3a)。リンパ細胞系を更に分析すると、Clasp−1転写物がT細胞及びB細胞系統のリンパ球に存在していることを示した(図3b)。しかしながらその転写物は、数種の形質細胞腫系(S194及びJ558L)では発現しないか、ほんの少ししか発現せず、そのことは遺伝子が最終的に分化したB細胞で生産されるらしいことを示唆している。
【0552】
抗Clasp−1抗血清を用いて凍結断片を免疫染色すると、タンパク質の発現が脾臓の縁部ゾーン(図4c、M)で、また動脈周囲のリンパ鞘(PALS)のT(図4a、T)及びB(図4b、B)細胞ゾーンで最も顕著であることを示した。抗Clasp−1抗体はまた、縁部ゾーンのHOMA−1サブ領域、即ちT細胞依存性体液応答の際に重要な部位にあるマクロファージも染色した(Claassenら、1986, Eur.J.Immunol.16: 492−97)が、HOMA−1マクロファージ自体は染色しなかった(van Vlietら、1985, J.Histochem.Cytochem.33: 40−44、Kraalら、1988, Immunol.Lett.17: 139−44)(図4c、4f)。PALSでは、T細胞のほとんどがClasp−1を発現したが、これに対してB細胞のほとんどは発現しなかった(図4d、4e)。Tリンパ球の染色パターンが頂点であって、そこでは細胞が群を形成して並んでいて、それらの頂点がB細胞ゾーンを指摘することは注目すべきである(図4d、矢印の先端)。
【0553】
脾臓から単離されたリンパ球も、インビボでのリンパ球と同じ頂点の分布を示した(図4g、4h)。抗原のないところで増殖したT細胞(D10)も、B細胞(CH27、図4j)と同様に同じ表面極性の分布(図4i)を示したが、このことは頂点グループが抗原誘導性の架橋を行った結果ではなく、Clasp−1自体の固有の性質であることを示している。その構造を細胞下の指標(即ち、微小管形成中心)にし向けるために、T細胞(D10及び2B4)をαチューブリン(緑色)とClasp−1(赤色)の両方について染色した。頂点のClasp−1構造は、微小管形成中心と同様に核(青色)と同じ側で常に観察された(図4k)。検査したほとんどの細胞型では、中心体がリーディングエッジとして核の同じ側に常に存在していて、このことはClasp−1の極がリーディングエッジと関連していることを示している。
【0554】
B細胞によって抗原が表示する場合に細胞複合体が形成される際のClasp−1の役割を調べるために、雌鳥の卵のリゾチーム(HEL 46ペプチド〜61ペプチド:I−Ak)にTCRについて遺伝子導入した3A9マウスから得られる脾臓のリンパ球を、HELペプチドの存在下で培養して複合体T−B細胞ペアを形成させた(Sagerstromら、1993, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90: 8987−91)。培養した細胞を4時間、10時間、及び36時間で取り出した。しっかりとしたT−B細胞ペアは4時間までに観察され、10時間では95%以上のしっかりとしたT−B細胞ペアがあるため、早期に急激に形質転換する(核膜の境界とヘテロクロマチンの喪失)ことが証明された。産生性の相互作用細胞ペアでは、Clasp−1は常に細胞−細胞境界面に存在していた(図5a)。
【0555】
実施例 3
抗 Clasp−1 抗体による T 細胞 −B 細胞結合性の阻害
融合タンパク質及び抗体:
Clasp−1のアミノ酸残基121−327のコード配列(配列番号:1及び2)はBamH1/Not 1部位でpGEX−4T−1(Pharmacia, NJ)にクローニングされ、それはGST−Clasp−EC12Aと言われた。GST−Clasp−cytoは、Clasp−1のアミノ酸残基969−1289をコードするDNAを含み、Notl/EcoRI部位でpGEX−4T−3(Pharmacia, NJ)にクローニングされた構築物であった。融合タンパク質は、グルタチオン−セファロースカラム(Pharmacia, NJ)を用いてファルマシア(Pharmacia)の使用説明書にしたがって発現させて精製し、そしてウサギとヤギの抗血清の生成のために免疫原として用いた。抗体のMOMA−1(Kraal及びJanse, 1986, Immunology 58: 665−669)とER−TR−9(van Vlietら、1985, J.Histochem.Cytochem.33: 40−44)を記載されたとおりに用いた。抗CD4−FITC、CD8−FITC、CD3−FITC、CD45R (B220)−FITC抗体はカルタグ(Caltag, CA)から購入した。YOL 1/34はセラテック(Sera−Tec、NC)より購入した。
【0556】
ウエスタンブロット分析:
細胞を50mMのヘペス(pH7.4)、150mMのNaCl、10%のグリセロール、1%のトリトンX−100、アプロチニン(1U/ml)、ロイペプシン(2μg/ml)、ペプスタチン(1μg/ml)、アンチペイン(2μg/ml)、PMSF(1mM)、及び6Lの100μl/mlセファロースに溶解することによって溶解物の安全性を保証した。細胞溶解物を10%のSDS−PAGE上で電気泳動し、PVDF膜(Millipore, MA)にブロットし(Harlow及びLane, 1988, 「抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory)、5%の無脂肪ミルクと2%のBSAを入れたTBS−C中で一晩ブロックした。プロテイン−A、即ちγ結合法(Pharmacia, NJ)で精製した抗Clasp抗体を、0.5%の無脂肪ミルク、0.2%のBSA、50mMのPO4(pH7.4)、0.3MのNaCl、0.1%のツイーン20中に10μg/mlで加え、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、ヤギ抗ウサギHRP標識抗体(Biomeda)を室温で1時間かけて1/5,000に希釈して添加し、ECL(Amersham, IL)を用いて可視化した。
【0557】
細胞複合化と阻害のアッセイ法:
2B4またはD10のT細胞とCH27のB細胞(10μMの蛾(moth)のチトクロームcペプチド88〜ペプチド103を用いて、またはコンアルブミンを用いて一晩負荷した)をRPMI+10%のFCSに3.4×105細胞/mlで再懸濁した。それぞれの細胞型の120μlを8ウェルのカバースリップスライドチャンバー(Nunc, NY)で混合し、γ結合法(Pharmacia, NY)で精製したヤギ抗Clasp−EC12Aまたは抗Clasp−cyto抗体を最終濃度が0、50、及び150μg/ml(450μg/mlまでの前免疫血清)になるように添加した。細胞を37℃で5時間〜7時間結合させてから、血球計算板で係数した。それぞれの試料について100−150カップルがカウントされ、細胞の全体数に対して標準化した(一般的な頻度は7%〜10%の間であった)。阻害のパーセントは、CH27のB細胞が蛾のチトクロームcペプチドで負荷されなかった試料における非特異性の結合頻度を差し引いた後、ポジティブな対照における結合頻度に対して算出した。
【0558】
結果
抗体はClasp−1融合タンパク質に対して産生させた。ウエスタンブロット分析をCH27(成熟B細胞系)と2B4(T細胞ハイブリドーマ)からの抽出物を用いて行うと、細胞外ドメイン(Clasp−EC12A)または細胞質ドメイン(Clasp−cyto)のいずれかを含むGST−融合タンパク質に対して生じた抗体は分子量が約130kDのバンドであると確認したが、それはClasp−1の推定分子量134kD(図3c)と一致した。
【0559】
T細胞及びB細胞の間で物理的結合が確立する場合のClasp−1の役割を探るために、T−B細胞の結合を抑制するClasp−1の細胞外ドメインに対して指向する抗体の能力を評価した(Stowersら、1995, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92: 5027−5031)。T細胞ハイブリドーマの2B4は、B細胞のCH27と混合した場合の蛾のチトクロームc:I−Ekに特異的であり、抗Clasp−EC12A IgG抗血清の存在下で蛾のチトクロームcペプチドで負荷した。図6aに示されているようにT−B細胞のペア形成は抗Clasp−EC12A抗血清によって用量依存的な様式で阻止されたが、これに対して前免疫血清は、抗体が高濃度であっても細胞の結合形成に最少の影響しか与えなかった。同様の知見は、別の抗原特異的システム(D10のT細胞系、コンアルブミン:I−Akに特異的)で得られた。そのうえ、T細胞の活性化についてのIL−2アッセイの結果は、結合形成結果を反映していた(図6b)。このようにそのClasp−1の頂点の表面ドメインは、抗原と出会う前のT細胞の機能的な極性をマークすることに関係するとともに、後にT細胞の会合が起こる、T細胞及びB細胞間の細胞−細胞相互作用を仲介することに関係している。
【0560】
本発明の一局面を説明することを意図している例示的な態様によって、本発明の範囲は制限されるべきではなく、機能的に等価なクローン、DNAまたはアミノ酸配列は本発明の範囲に入る。実際に本明細書において記載された改変とは別の本発明の種々の改変が、前述した説明と添付した図面から当業者に明らかになるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ると意図されている。ヌクレオチドに対して用いられた全ての塩基対の大きさはおおよそであり、それらは説明の目的で用いられている。
【0561】
ここで引用した全ての刊行物は、その全体が参照として組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CLASP−2A cDNAのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列。顕著なタンパク質モチーフをヌクレオチド配列の上に太字で示す。可能性がある開始メチオニンに下線を引いて示す。顕著な予想タンパク質モチーフは、ヌクレオチド854〜868位によってコードされるカドヘリン切断部位;ヌクレオチド1253〜1264位によってコードされるカドヘリンエクトドメイン(EC)、ヌクレオチド2861〜2917位によってコードされる膜貫通ドメイン、ヌクレオチド3579〜3682位によってコードされる多重らせんドメイン、ヌクレオチド3827〜3937位によってコードされる第二の多重らせんドメイン、およびヌクレオチド4046〜4057位によってコードされるPDZ結合モチーフ(PBM)である。
【図2】A.CLASP−2スプライシング変種の図。スプライシング変種をヒト(h)CLASP−2Aと比較する。hCLASP−2Aの図の上の数値は、hCLASP−2Aと比較して欠失および挿入を含むスプライシング変種が認められる部位を示す。略語:「KIAA」、KIAA1058配列(ゲンバンクアクセッション番号AB028981)。B.CLASP−2A cDNAのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列。顕著なタンパク質モチーフはヌクレオチド配列の上に太字で示す。挿入および欠失の正確な位置は、CLASP−2A配列の上にそれぞれ、矢印および「x」によって示す。図2Aにおいて示した挿入のヌクレオチド配列は、矢印の上に示す。挿入および欠失は以下の通りである(計算はヒトCLASP−2Aヌクレオチド配列を参考とする):CLASP−2Dではヌクレオチド1966〜2034位が欠失している。CLASP−2Bではヌクレオチド2219〜2224位が欠失している。CLASP−2Dでは、ヌクレオチド2927位でアミノ酸69個の挿入が認められる。この挿入のヌクレオチド配列は:
であり、アミノ酸
をコードする(一文字アミノ酸記号)。このアミノ酸配列は、推定のSH3結合ドメインをコードする。CLASP−2Eには、ヌクレオチド3011〜3079位のあいだにもう一つの欠失を認める。CLASPs 2B、2C、2D、および2Eは、ヌクレオチド3153位で
のヌクレオチド配列による挿入を含む。完全な配列はCLASP−2Dにおいて認められ、アミノ酸配列
をコードするが、下線の配列はCLASPs 2B、2C、2D、および2Eに認められ、アミノ酸
をコードする。このアミノ酸配列は、推定の免疫受容体チロシン骨格活性化モチーフ(ITAM)をコードする。ヒトCLASP−2Cでは、ヌクレオチド3586位とヌクレオチド3587位に2つのヌクレオチド欠失が存在する。ヌクレオチド3937位で配列:CTGGGATGのヌクレオチド8個の挿入はヒトCLASP−2Dに限って認められる。この挿入は、CLASP−2Dヌクレオチド配列に停止コドンを挿入する。
【図3】A.CLASP−2アイソフォームのヌクレオチド配列のアライメント。配列は、クラスタルWを用いて配置した。B.CLASP−2アイソフォームのアミノ酸配列のアライメント。配列は、クラスタルWを用いて配置した。一文字アミノ酸記号を用いる。
【図4】ノーザンハイブリダイゼーションによって決定したヒト細胞株およびヒト組織におけるCLASP−2の発現。CLASP−2特異的DNA断片は、プライマーHC2AS2およびHC2S1を用いて、CLASP−2 cDNAクローン(HC2−5’)からPCRによって産生した。断片は、放射活性32P dCTPを組み入れることによって標識した。A.ヒト組織における発現。標識したDNA断片をヒト多組織ノーザン(クロンテック社、MTN ブロット、#7780−1)上でプローブとして用いた。多組織ノーザンにおいて胎盤、心臓、腎臓、および肺では、約7.5 kbに移動する単一のバンドを明らかに検出する。肝臓、骨格筋および脳では、わずかな発現を検出する。B.造血細胞株における発現。多細胞株からのRNAによるノーザンを、同じhCLASP−2プローブとハイブリダイズさせた。類似のように移動するバンドがジャーカット(T細胞由来)、9D10(B細胞由来)、および293(ヒト腎臓由来)細胞株において検出される。9D10のレーンでは多数のより弱いバンドが存在し、これは、おそらくhCLASP−2のスプライシング変種を示している。弱い発現はまた、マウス細胞株CH27(B細胞リンパ腫)および3A9(T細胞ハイブリドーマ)においても検出される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄は、高ストリンジェンシーで行ったため、これは、ヒトCLASP−2プローブがマウスCLASP mRNAと交叉反応する可能性を示している。
【図5】A.ヒトおよびラットCLASPタンパク質のアミノ酸配列。配列は、クラスタルWを用いて配置した。一文字アミノ酸記号を用いた。タンパク質モチーフは表示した枠の中に認められる。「−」は最善の全体的なアライメントを得るために配置する空白を意味する。その他の略語:「HC2A」ヒトCLASP−2配列、「KIAA」KIAA1058配列(ゲンバンクアクセッション番号AB028981、「ラット」TRG遺伝子(ゲンバンクアクセッション番号X68101)、「HC4」ヒトCLASP−4配列、「HC1」ヒトCLASP−1配列、「HC3」ヒトCLASP−3配列、「HC5」ヒトCLASP−5配列。B.ヒトCLASPs内に認められ、基準DOCKモチーフと比較したDOCKモチーフのアライメント。全てのDOCKモチーフ内に認められるコンセンサスアミノ酸についても示す。
【図6】A.CLASP−2A cDNAのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列。顕著なタンパク質モチーフを示す(詳しくは図1の説明文を参照)。さらに、エキソンとイントロンの境界を矢印で示す。これらの境界は、CLASP−2に対応するゲノムDNAを含む細菌人工染色体(BACs)をシークエンシングすることによって定義された。BACsは、CLASP−2 cDNAに対応するエキソン配列に由来するプライマーを用いてシークエンシングした。各エキソン/イントロン境界は、cDNA配列の上に記す(適当な参考番号と共に「Ref」として)。参考配列は、イントロンの正確なヌクレオチドの位置を含む。配列反応において用いたプライマーの名称およびヌクレオチド数も同様に示す。全てのヌクレオチドの数はCLASP−2A cDNA配列を意味する。参考配列に示したように、シークエンシング反応からの必ずしも全ての配列がcDNAにマッチする配列を生じたわけではない。CLASP−2のエキソン配列にマッチしなかったこれらのヌクレオチド配列は、イントロン配列であると見なされた。B.クラスタルWによるヒトおよびラットCLASPアミノ酸配列のアライメント。顕著なタンパク質モチーフを示す(さらに詳しくは図1の説明文を参照のこと)。さらに、Aにおいて説明したエキソン/イントロン境界は、適当なもののあいだの垂直の線によって示す。参考数値を右端に示し、これらは図6Aおよび図6Bにおける参考配列に対応する。
【図7】CLASP−2のサザンハイブリダイゼーション分析。HeLa細胞からのゲノムDNAまたはBAC DNAクローンを、EcoRIもしくはHIndIII(ゲノムDNA)またはPstI(BAC DNA)によって消化し、電気泳動して、標準的な方法によってナイロンメンブレンに転写した。プローブとするために、プライマーHC2AS2およびHC2S1を用いて、CLASP−2特異的DNA断片をCLASP−2 cDNAクローン(HC2−5’)からPCRによって作製した。断片は、放射活性32P dCTPを組み入れることによって標識した。プローブHC2.1は、長さが800 bpであり、Eco RI消化ゲノムDNA上の2つの断片を認識する(〜4.5 kbおよび1.85 kb)。BACs 4および6の消化したDNAとハイブリダイズさせると、3つの断片がこのプローブによって明らかになり、2つの大きい断片は、ゲノムDNA上で検出された断片と大きさが同一である。
【図8】ヒトCLASP−1(hCLASP−1)CLASP−1およびCLASP−2グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質の発現。hCLASP−2A細胞内ドメインの一部をコードするヌクレオチド(ヌクレオチド3230〜4065位)を、pGEXベクター(ファルマシア社)にサブクローニングした。組換えプラスミドを大腸菌(株DH5α)に形質転換して、形質転換株を標準的な条件で増殖させた。対数増殖期の細胞を(I)IPTG(0.1 mM最終濃度)によって誘導するか、または(U)誘導しなかった。数時間増殖させた後、細胞を回収して、標準的な方法によって可溶性タンパク質溶解物を作製した。タンパク質溶解物の一部をSDS−PAGE上で分子量標準物質と共に電気泳動した。ゲルをクーマシーブルーで染色すると、融合タンパク質が、hCLASP−1およびhCLASP−2に関してそれぞれ、推定される分子量59kDaおよび57kDaで移動することが示される。
【図9】A.CLASP−2のC末端アミノ酸20個のPDZドメインに対する結合。CLASP−2のC末端アミノ酸20個に対応する20 μMビオチン結合合成ペプチドを、表示のプレートに結合したGST融合タンパク質と反応させた(なし=プレート上にGST融合タンパク質のコーティングなし)。誤差のバーは2回測定の標準偏差を示す。B.CLASP 2−PDZ相互作用の親和性。ビオチン結合CLASP−2ペプチドをプレートに結合させたGST単独、GST−DLG1、GST−NeDLG、およびGST−PSD95融合タンパク質と反応させた。GST単独に対する結合(<0.1 OD単位)を融合タンパク質に対する結合から差し引いて、残りのシグナルを、30 μM CLASP−2ペプチドを各PDZドメイン含有タンパク質(0.4〜1.0 OD単位)のそれぞれに加えた際に認められたシグナルによって除して、プロットした。プロットしたデータを飽和結合曲線に適合させて、NeDLG−CLASP−2相互作用に関して見かけの親和性7.5 μM、DLG1−CLASP−2相互作用に関して21 μM、およびPSD95−CLASP−2相互作用に関して45 μMを得た。データはデータポイント2点の平均値であり、データポイント2点間の標準誤差は<10%である。C.CLASP−2−PDZ結合の阻害。CLASP−2のC末端アミノ酸20個に対応する5μMビオチン結合合成ペプチドを、100 μM競合ペプチドの存在下または非存在下で、表示の、プレートに結合したPDZドメイン含有GST融合タンパク質と反応させた。CLASP−2阻害剤は、CLASP−2のC末端アミノ酸8個からなる合成ペプチドを意味する。KV1.3阻害剤は、リンパ球カリウムチャネルであるKV1.3のC末端アミノ酸19個からなる合成ペプチドを意味する。KV1.3阻害剤のアミノ酸配列は、TTNNNPNSAVNIKKIFTDVである。D.KV1.3−PDZ結合の阻害。KV1.3のC末端アミノ酸19個に対応する5μMビオチン結合合成ペプチドを、100 μM CLASP−2阻害剤の存在下または非存在下でGST融合タンパク質を含む表示のプレート結合PDZドメインと反応させた(図9Cの説明文を参照のこと)。
【図10】CLASP−2 cDNAsの予備的ヌクレオチド配列。
0.関連出願の相互参照
本出願は、その開示が参照として本明細書に組み入れられる、2000年2月14日に出願された米国仮特許出願第60/182,296号、2000年1月14日に出願された第60/176,195号、1999年12月13日に出願された第60/170,453号、1999年10月29日に出願された第60/162,498号、1999年10月21日に出願された第60/160,860号、1999年5月14日に出願された第60/134,118号、1999年5月14日に出願された第60/134,117号、1999年5月14日に出願された第60/134,114号、および1999年4月14日に出願された第60/129,171号の恩典を主張するものである。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、免疫系の細胞において発現された分子に関する。特に、本発明は、特定の古典的なカドヘリン特徴を含む膜貫通タンパク質に関する。
【0003】
2.発明の背景
抗原に対する免疫応答の産生は、特定の抗原に対して協調して作用する多くの明確な免疫細胞タイプによって行われる。ヘルパーT細胞(TH)は、2つのタイプの抗原特異的免疫応答、すなわち、細胞性免疫応答と液性免疫応答を協調させるために中心的な役割を果たしている。T細胞による抗原認識は、T細胞と抗原提示細胞(APC)とのあいだに、「免疫学的シナプス」と呼ばれる(ダスティン(Dustin)ら、1998、Cell 94:667〜677)特殊な結合の形成を必要とする。免疫シナプスは、まだわかっていないメカニズムによって接触領域からの特異的タンパク質の集合および排除を組織化し、これは、MHC分子(抗原)に結合したペプチドのT細胞抗原受容体(TCR)認識によって開始されると考えられている(モンク(Monk)ら、1998、Nature 395:82)。しかし、抗原に対するTCRの親和性が低いことと共にリガンドの数が限られていることから、TCR:抗原相互作用のみでは、免疫シナプスの形成を促進するために十分ではない可能性がある(マツイ(Matsui)ら、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:12861〜12866)。
【0004】
CD4、ICAM−1、LFA−1、CD28、CD2のような共刺激分子は、細胞・細胞接触を安定化させると提唱されている(ダスティン(Dustin)ら、1999、Science 283:649)。しかし、これらの分子は、活性化後シナプスに集合するため、T細胞抗原認識の初期相の際の高い特異性と結合活性を説明することができない。最近の研究は、T細胞表面の先端部分が、専門化してシナプス形成の初期相を媒介することを証明した(ネグレスク(Negulescu)ら、1996、Immunity 4:421〜430)。そのような専門化は、TCRの関与を増強するための細胞表面接着タンパク質(エクトドメイン)と、構造/機能的極性を維持するためにシグナルを伝達して細胞骨格を結合するための細胞質部分(エンドドメイン)とを含む予め形成された構造でなければならない。
【0005】
予め形成されたシナプスのエクトドメインまたは「免疫の出入口」は、最近発見されて、CLASP−1によって一部形成される(1999年10月1日に出願された米国特許出願第09/411,328号;PCT/US第99/22996号)。カドヘリンモチーフの他に、CLASP−1はまた、CRK−SH3結合ドメイン、チロシンリン酸化部位、および多重らせん(coiled coil)ドメインを含み、細胞骨格との直接相互作用およびCRKのようなアダプター分子による調節を示唆する。CLASP−1転写物は、リンパ様臓器および神経組織に存在し、タンパク質は、T:B細胞相互作用において重要であることがわかっている領域である、脾臓の辺縁領域のMOMA−1亜領域におけるTおよびBリンパ球およびマクロファージによって発現される。個々のTおよびB細胞のCLASP−1染色は、活性化前構造極性を示し、B細胞では「球状」または「キャップ」構造として構築され、およびT細胞では「環状」、「球状」、または「キャップ」構造として構築される。これらの構造の位置は、微小管形成中心(「MTOC」)に隣接する。CLASP−1抗体染色によって、CLASP−1が、分化が完全に約束されるT−B細胞結合物の境界面に存在することが示されている。CLASP−1の細胞外ドメインに対する抗体も同様に、T−B細胞結合体形成およびT細胞活性化を遮断する。
【0006】
3.発明の概要
本発明は、カドヘリン様非対称タンパク質(複数)(「CLASP(s)」)と呼ばれる新しい多遺伝子ファミリーメンバーである細胞表面分子に関する。特に、これは、CLASP−2のコード配列を含むポリヌクレオチド、CLASP−2コード配列の相補体と選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチドを含む発現ベクター、そのようなポリヌクレオチド、CLASP−2ポリペプチド、CLASP−2融合タンパク質、治療的組成物、CLASP−2ドメイン変異体、CLASP−2ポリペプチドに対する抗体を含む遺伝子操作宿主細胞、CLASP−2の発現を検出する方法、およびCLASP−2機能を妨害することによって免疫応答を阻害する方法に関する。本発明には、自己免疫疾患および過敏症の治療、移植拒絶反応の予防、および免疫不全状態における免疫応答性の増強を含むが、これらに限定しない、幅広い用途が含まれる。
【0007】
一つの局面において、本発明は、以下である、単離されたCLASP−2ポリヌクレオチドを提供する:(a)配列番号:1、3、5または9の配列を有するポリヌクレオチド;(b)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズして、配列番号:2、4、6もしくは10の配列を有するポリペプチド、または配列番号:2、4、6、もしくは10の配列を有するポリペプチドの対立遺伝子変種もしくは相同体をコードするポリヌクレオチド;(c)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズして、配列番号:2、4、6、もしくは10のポリペプチドの少なくとも25個の連続する残基を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(d)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズして、配列番号:1、3、5もしくは9と同一または正確に相補的な少なくとも12個の連続する塩基を有するポリヌクレオチド。関連する局面において、本発明は、ポリヌクレオチドがPSD95、DLG1、またはneDLG 2のPDZドメインに結合するポリペプチドをコードする、CLASP−2ポリヌクレオチドを提供する。もう一つの関連する局面において、本発明は、ポリヌクレオチドが、PSD95、DLG1、またはneDLGとの結合に関して少なくとも104 M−1の結合親和性を有するポリペプチドをコードする、CLASP−2ポリヌクレオチドを提供する。
【0008】
一つの局面において、本発明は、配列番号:2、4、6もしくは10の完全長の配列を有するポリペプチドをコードするCLASP−2ポリヌクレオチド、またはATCC寄託番号PTA−1562およびPTA−1563のcDNAコード配列を提供する。
【0009】
もう一つの局面において、本発明はさらに、配列間の最高程度のマッチが得られるように配列が配置されるFASTAを用いて計算した場合に、配列番号:1、3、5もしくは9と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離されたCLASP−2ポリヌクレオチドを提供する。
【0010】
本発明はさらに、配列番号:2、4、6もしくは10と少なくとも90%の配列同一性を有し、および配列番号:2、4、6、もしくは10と免疫学的に交叉反応性であるか、または本来のCLASP−2と生物機能を共有するヌクレオチド配列を含む単離ポリペプチドを提供する。
【0011】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターのようなベクターを提供する。他の態様において、本発明は、本発明のベクターを含む宿主細胞または宿主細胞の子孫を提供する。特定の態様において、宿主細胞は真核細胞である。他の態様において、発現ベクターは、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が宿主細胞においてポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列と機能的に結合している、CLASP−2ポリヌクレオチドを含む。特定の態様において、本発明は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が宿主細胞、または細胞の子孫においてポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列と機能的に結合している、CLASP−2ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。
【0012】
もう一つの局面において、本発明は、アンチセンスポリヌクレオチドであるCLASP−2ポリヌクレオチドをさらに提供する。好ましい態様において、アンチセンスポリヌクレオチドは、長さが約200塩基未満である。他の態様において、本発明は、オリゴヌクレオチドがCLASP−2の発現を阻害する、配列番号:1、3、5または9を含むメッセンジャーRNAと相補的であって、CLASP−2をコードするアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0013】
もう一つの局面において、本発明は、配列番号:2、4、6または10に示すようにCLASP−2タンパク質をコードする単離DNAを提供する。特定の態様において、CLASP−2ポリヌクレオチドはRNAである。
【0014】
本発明は、以下の段階を含むポリペプチドを産生する方法を提供する:(a)ポリペプチドが発現される条件下でCLASP−2ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養する段階;および(b)培養宿主細胞またはその培養培地からポリペプチドを回収する段階。
【0015】
本発明はさらに、CLASP−2ポリヌクレオチドによってコードされる単離CLASP−2ポリペプチドを提供する。幾つかの態様において、CLASP−2ポリペプチドは、配列番号:2、4、6、もしくは10のアミノ酸配列またはその断片を有する。いくつかの態様において、単離CLASP−2ポリペプチドは、細胞膜に会合している。他の態様において、単離CLASP−2ポリペプチドは可溶性である。他の態様において、可溶性CLASP−2ポリペプチドは、異種ポリペプチドと融合される。
【0016】
本発明はさらに、配列番号:2、4、6、または10に示される配列を有する単離CLASP−2タンパク質を提供する。いくつかの態様において、本発明は、配列番号:1に示す配列を含むCLASP−2タンパク質および配列番号:2と少なくとも95%同一であって、細胞骨格タンパク質を特異的に結合するその変種を提供する。特定の態様において、細胞骨格タンパク質はスペクトリンである。
【0017】
本発明はさらに、配列番号:2、4、6、もしくは10に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する単離された抗体またはその結合断片を提供する。いくつかの態様において、抗体はモノクローナル抗体である。他の態様において、本発明は、抗体を分泌することができるハイブリドーマを提供する。
【0018】
本発明はさらに、以下の段階を含むCLASP−2ポリペプチドに結合する化合物または物質を同定する方法を提供する:i) CLASP−2ポリペプチドに対する化合物の結合を可能にして複合体を形成させる条件下で、CLASP−2ポリペプチドを化合物または物質に接触させる段階、およびii) 複合体の有無を検出する段階。
【0019】
本発明はさらに、以下の段階を含む、試料中においてCLASP−2ポリペプチドを検出する方法を提供する:(a)試料をCLASP−2抗体または結合断片に接触させる段階、および(b)抗体とCLASP−2ポリペプチドとのあいだに複合体が形成されたか否かを決定する段階。
【0020】
本発明はさらに、以下の段階を含む、試料中においてCLASP−2ポリペプチドを検出する方法を提供する:(a)CLASP−2ポリヌクレオチド、または少なくとも12ヌクレオチドの配列を含み、CLASP−2ポリヌクレオチドの連続する配列と相補的であるポリヌクレオチドに試料を接触させる段階;および(b)ハイブリダイゼーション複合体が形成された否かを決定する段階。
【0021】
本発明はさらに、以下の段階を含む、試料中においてCLASP−2ヌクレオチドを検出する方法を提供する:(a)少なくとも12ヌクレオチドの配列を含み、CLASP−2ポリヌクレオチドの連続する配列と相補的であるポリヌクレオチドを増幅プロセスにおいて用いる段階;および(b)特異的増幅産物が形成された否かを決定する段階。
【0022】
本発明はさらに、CLASP−2ポリヌクレオチド、CLASP−2ポリペプチド、またはCLASP−2抗体および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物をさらに提供する。
【0023】
一つの局面において、本発明は、以下の段階を含む、細胞において免疫応答を阻害する方法を提供する:(a)細胞におけるCLASP−2遺伝子の発現を妨害する段階;(b)CLASP−2タンパク質のCLASP−2と細胞外タンパク質との細胞・細胞相互作用の媒介能を妨害する(例えば、異型および/または同型相互作用を妨害する)段階;(c)CLASP−2タンパク質のもう一つのタンパク質との結合能を妨害する段階。いくつかのそのような方法において、細胞はT細胞またはB細胞である。幾つかのそのような方法は、配列番号:2、4、6もしくは10のアミノ酸配列またはその断片を含むポリペプチドの有効量を細胞に接触させる段階を含む。
【0024】
もう一つの局面において、本発明は、配列番号:2、4、6または10の配列を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体の治療的有効量を、被験者に投与する段階を含む、被験者において免疫応答を阻害する方法を提供する。
【0025】
もう一つの局面において、本発明は、CLASP−2薬学的組成物の治療的有効量をそれを必要とする被験者に投与する段階を含む、CLASP−2媒介疾患を予防または治療する方法を提供する。幾つかのそのような方法において、CLASP−2媒介疾患は自己免疫疾患である。
【0026】
本発明はさらに、CLASP−2薬学的組成物の治療的有効量を被験者に投与する段階からなる、TH1細胞の活性の増加によって引き起こされるまたは悪化する、被験者における自己免疫疾患を治療する方法を提供する。
【0027】
5.発明の詳細な説明
5.0 定義
明記している場合を除き、「患者」または「被験者」という用語は、互換的に用いられ、ウサギ、ラットおよびマウスのような実験動物ならびに他の動物と共に、ヒト患者およびヒト以外の霊長類のような哺乳類を意味する。
【0028】
本明細書において用いられる「生体試料」という用語は、hCLASP−2またはhCLASP−2タンパク質をコードする核酸を含む生体組織、体液、または細胞の試料である。そのような試料には、ヒトから単離された組織が含まれるがこれらに限定しない。生体試料はまた、組織学目的のために採取した凍結切片のような組織切片が含まれる。生体試料は典型的に、真核生物から得られ、好ましくは、真菌、植物、昆虫、原虫、鳥類、魚類、爬虫類のような真核生物、好ましくは、ラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモット、またはウサギのような哺乳類、および最も好ましくは、チンパンジーまたはヒトのような霊長類から得る。
【0029】
「治療する」という用語には、疾患の症状の発現、合併症、もしくは生化学指標を予防もしくは遅らせる、症状を軽減する、または疾患、病態、もしくは障害(例えば、自己免疫疾患)のさらなる進行を停止もしくは阻害するために、本発明の化合物もしくは物質を投与することが含まれる。治療は予防的であってもよく(疾患の発症を予防もしくは遅らせるため、またはその臨床もしくは臨床下症状の発現を予防するため)、または疾患の発症後の症状の治療的抑制もしくは緩和であってもよい。
【0030】
本明細書において用いられる「リンパ球」という用語は、当技術分野における通常の意味を有し、血液、リンパ、およびリンパ様組織に認められる単核球、非貪食白血球の如何なるものも、すなわちBおよびTリンパ球を意味する。
【0031】
「単離」または「精製」という用語は、その本来の状態において認められる場合にそれが通常伴う成分を実質的に含まない材料を意味する(例えば、組み換え的に産生される、またはそれが天然に会合する他の細胞成分を除いて精製される)。純度および均一性は典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学技術を用いて決定される。「精製した」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生じることを意味する。特にこの用語は、核酸またはタンパク質が少なくとも85%純粋であり、より好ましくは少なくとも95%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0032】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に用いられ、合成、天然に存在する、および天然に存在しない、参考核酸と類似の結合特性を有し、そして参考ヌクレオチドと類似のように代謝される、既知のヌクレオチド類似体または改変骨格残基もしくは結合を含むDNA、RNA、および核酸ポリマーを意味する。そのような類似体の例には、ホスホロチオネート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNAs)が含まれるが、これらに限定しない。
【0033】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを意味するために本明細書において互換的に用いられる。アミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、または対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学模倣体を含んでもよい。
【0034】
本明細書において用いられるように、「核酸プローブ」という用語は、相補的配列の標的核酸に特異的に結合することができる(例えば、相補的塩基対形成によって)核酸として定義される。本明細書において用いられるように、プローブは、天然の塩基(すなわち、A、G、C、またはT)または改変塩基(7−デアザグアノシン、イノシン等)を含んでもよい。さらに、プローブにおける塩基は、ハイブリダイゼーションを妨害しない限り(例えば、プローブはペプチド核酸であってもよい)、ホスホジエステル結合以外の結合によって結合してもよい。プローブは、同位体、発色団、発光団、色原体によって直接標識することができ、またはそれに対してストレプトアビジン複合体が後に結合するビオチンを用いる場合のように間接的に標識してもよい。
【0035】
例えば、細胞、または核酸、タンパク質、もしくはベクターに関して用いられる「組換え型」という用語は、細胞、核酸、タンパク質、もしくはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入によって、または本来の核酸もしくはタンパク質の変化によって改変されていることを意味し、または細胞の場合には、そのように改変された細胞の子孫も意味する。このように、例えば、組換え細胞は、細胞の本来の型(非組換え型)には認められない遺伝子を発現する、またはそうでなければ異常発現される、過小発現される、または全く発現されない本来の遺伝子を発現する。
【0036】
核酸の一部に関連して用いる場合の「異種」という用語は、核酸が、互いに天然において同じ関係で認められない2つまたはそれ以上の小配列を含むことを意味する。例えば、核酸は典型的に組み換えによって産生され、新しい機能的核酸を作製するために配置された無関係な遺伝子から2つまたはそれ以上の配列、例えば1つの起源からプロモーターおよびもう一つの起源からコード領域を有する。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が、天然では互いに同じ関係で認められない2つまたはそれ以上の小配列を含むことを示す(例えば、融合タンパク質)。
【0037】
「配列同一性」という用語は、アミノ酸またはヌクレオチド配列のあいだの類似性の測定を意味し、下記に示す方法のように、当技術分野で既知の方法を用いて測定することができる。
【0038】
2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の意味において、「同一」、またはパーセント「同一性」という用語は、以下の配列比較アルゴリズムの一つを用いて、または手動での配置および肉眼での検分によって測定して、比較ウィンドウまたは指定された領域に対して最大の対応が得られるように比較および配置した場合に、同じである2つもしくはそれ以上の配列もしくは小配列、または特定の領域(例えば、配列番号:1を参照のこと)に対して同じである(すなわち60%同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%同一性)アミノ酸残基またはヌクレオチドの特定の割合を有する2つもしくはそれ以上の配列もしくは小配列を意味する。
【0039】
2つの核酸またはポリペプチドに関して「実質的に同一」という句は、以下の配列比較アルゴリズムの一つを用いて、または肉眼での検分によって測定して、最大の対応が得られるように比較および配置した場合に、少なくとも60%、しばしば少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、または少なくとも95%のヌクレオチドもしくはアミノ酸残基同一性を有する2つもしくはそれ以上の配列もしくは小配列を意味する。好ましくは、実質的な同一性は、長さが少なくとも約50塩基または残基の領域に対して、より好ましくは少なくとも約100塩基または残基の領域に対して存在し、および最も好ましくは配列は少なくとも約150塩基または残基に対して実質的に同一である。最も好ましい態様において、配列は、コード領域の長さ全体に対して実質的に同一である。
【0040】
配列の比較に関して、典型的に、1つの配列が参考配列としての役割を果たし、これに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験および参考配列をコンピューターに入力して、必要であれば小配列の整合性を指定して、そして配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルト(省略時解釈)プログラムパラメータを用いることができ、または別のパラメータを指定することができる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参考配列と比較して試験配列に関するパーセント配列同一性を計算する。核酸およびタンパク質のCLASP−2核酸およびタンパク質との配列比較の場合には、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムおよび下記のデフォルトパラメータを用いる。
【0041】
本明細書において用いられる「比較ウィンドウ」という用語は、その中で2つの配列を最適に配置した後に、配列が同じ数の連続する位置の参考配列と比較される、20〜600、通常約50〜約200、より通常約100〜約150個からなる群より選択される連続する位置の数のいずれか1つのセグメントを意味することを含む。比較のために配列を配置する方法は当技術分野で周知である。比較するための配列の最適な配置は、例えば、スミス&ウォーターマン(Smith & Waterman、1981、Adv. Appl. Math. 2:482)の局所相同性アルゴリズム、ニードルマン&ビュンシュ(Needleman & Wunsch、1970、J. Mol. Biol. 48:443)の相同性配置アルゴリズム、ペアソン&リップマン(Peason & Lipman、1988、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444)の類似性検索方法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実施(FASTDB(インテリジェネティクス社)、BLAST(国立生物医学情報センター)、ウィスコンシンジェネティクスソフトウェアパッケージ(ジェネティクスコンピューターグループ、575 サイエンスドライブ、マディソン、ウィスコンシン州)におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または手動での配置および肉眼での検分(例えば、アウスユベール(Ausubel)ら、1987(1999増刊)「分子生物学の現行プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、グリーンパブリッシングアソシエーツ&ウィレーインターサイエンス、ニューヨーク)によって行うことができる。
【0042】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適しているアルゴリズムの好ましい例は、FASTAアルゴリズムであり、これはペアソン&リップマン(Pearson, W.R. &Lipman, D.J.、1988、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444)に記載されている。同様にペアソン(W.R. Pearson、1996、Methods in Enzymol. 266:227〜258)も参照のこと。パーセント同一性を計算するためにDNA配列のFASTA配置において用いられる好ましいパラメータを最適化する、BL50マトリクス15;−5、k−タプル=2;結合ペナルティ=40;最適化=28;ギャップペナルティ−12、ギャップ長ペナルティ=−2、および幅=16。
【0043】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適しているアルゴリズムのもう一つの好ましい例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これはアルツシュルら(Altschul、1977、Nuc. Acids. Res. 25:3389〜3402)およびアルツシュルら(Altschul、1990、J. Mol. Biol. 215:403〜410)にそれぞれ記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0は、本明細書に記載のパラメータを用いて本発明の核酸およびタンパク質のパーセント配列同一性を決定するために用いられる。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、国立生物医学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公式に入手できる。このアルゴリズムは、調べる配列において長さWの短いワードを同定することによって、高いスコア配列対(HSPs)をまず同定することを含み、これはデータベース配列において同じ長さのワードと配置すると、マッチするか、または幾つかの陽性値閾値スコアを満たす。Tは隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(アルツシュルら(Altschul)ら、上記)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むより長いHSPsを発見する検索を開始するためのシードとして作用する。ワードヒットは、累積配置スコアを増加することができる限り、それぞれの配列に沿って両方向に拡大する。累積スコアは、ヌクレオチド配列に関してパラメータM(マッチ残基の対に関する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基のペナルティスコア;常に<0)を用いて計算する。アミノ酸配列に関しては、採点マトリクスを用いて累積スコアを計算する。各方向でのワードヒットの拡大は、累積配置スコアがその最大達成値から量X低下した場合;1つもしくはそれ以上の陰性スコア残基配置の蓄積により、累積スコアがゼロもしくはゼロ以下になった場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合、に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、配置の感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列に関して)は、デフォルトとしてワード長(W)11、予想(E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列に関して、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、および予測(E)10を用い、そしてBLOSUM62採点マトリクス(ヘニコフ&ヘニコフ(Henikoff & Henikoff)、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915)は、配置(B)50、予測(E)10、M=5、N=4、および双方の鎖の比較を用いる。
【0044】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(例えば、カーリン&アルツシュル(Karlin & Altschul)、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873〜5787を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供された類似性の一つの測定は、最小総和確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、試験核酸を参考核酸と比較した場合の最小総和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満であれば、核酸は、参考配列と類似であると見なされる。
【0045】
有用なアルゴリズムのもう一つの例は、PILEUPである。PILEUPは、関係とパーセント配列同一性を示すために、進行性の対の配置を用いて関連配列の群から多数の配列配置を作製する。これは同様に、配置を作製するために用いられる集合関係を示す樹状図またはデンドグラム(dendogram)をプロットする。PILEUPは、フェン&ドリトル(Feng & Doolittle、1987、J. Mol. Evol. 35:351〜360)の進行性配置方法を単純にしたものを用いる。用いる方法は、ヒギンス&シャープ(Higgins & Sharp、1989、CABIOS 5:151〜153)に記載の方法と類似である。プログラムは、300配列までを配置することができ、各最大長は5,000ヌクレオチドまたはアミノ酸である。多数の配置技法は、2つの最も類似の配列を対にして配置することによって開始し、2つの配置された配列の集団を形成する。次に、この集団を次に近縁の配列または配置した配列の集合体と配置する。2つの集合体の配列は、2つの個々の配列を対にした配置を単純に拡大することによって配置する。最終的な配置は、一連の進行性の対にした配置によって得られる。プログラムは、配列比較領域に関して、特定の配列、そのアミノ酸またはヌクレオチド整合性を指定することによって、およびプログラムパラメータを指定することによって、実行する。PILEUPを用いて、参考配列を他の試験配列と比較して、以下のパラメータを用いてパーセント配列同一性関係を決定する:デフォルトギャップ荷重(3.00)、デフォルトギャップ長荷重(0.10)、および荷重末端ギャップ。PILEUPは、GCG配列分析ソフトウェアパッケージ、例えばバージョン7.0(デベリュー(Devereaux)ら、1984、Nuc. Acids. Res. 12:387〜395)から得ることができる。
【0046】
多数のDNAおよびアミノ酸配列配置に適しているもう一つの好ましいアルゴリズムの例は、CLUSTALWプログラムである(トンプソン(Thompson, J.D.)ら、1994、Nucl. Acids. Res. 22:4673〜4680)。CLUSTALWは、配列の群間の多数の対の比較を実行し、それらを相同性に基づく多数の配置に組み立てる。ギャップ開口およびギャップ伸長ペナルティはそれぞれ、10および0.05であった。アミノ酸を配置する場合、BLOSUMアルゴリズムをタンパク質荷重マトリクスとして用いることができる(ヘニコフ&ヘニコフ(Henikoff & Henikoff)、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915)。
【0047】
「標識」は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、または化学的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般的に用いられる)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテン、およびそれに対する抗血清またはモノクローナル抗体が利用できるタンパク質が含まれる(例えば、配列番号:1のポリペプチドは、例えばペプチドに放射標識を組み入れることによって検出可能となりうる、またはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために用いることができる)。
【0048】
本発明において用いられる「ソーティング」という用語は、例えば、蛍光活性化セルソーターを用いて行うことができる細胞の物理的ソーティングと共に、細胞表面マーカーの発現に基づく細胞分析、例えばソーティングを行わないFACS分析の両者を意味する。
【0049】
「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」という句は、ある分子が、その配列が複合混合物(例えば、総細胞またはライブラリDNAまたはRNA)中に存在する場合に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特定のヌクレオチド配列に限って結合、二本鎖形成、またはハイブリダイズすることを意味する。
【0050】
抗体に対して「特異的(または選択的に)結合する」という句は、タンパク質および他の生体物質の異種集団におけるタンパク質の存在を決定する結合反応を意味する。このように、指定されたイムノアッセイ条件下では、特定の抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍で特定のタンパク質に対して結合し、試料中に存在する他のタンパク質に対して有意な量で実質的に結合しない。
【0051】
ペプチドに関して「特異的に結合する」または「特異的に結合する」という句は、標的分子に対して排他的または主に、中間的または高い結合親和性を有するペプチドを意味する。「特異的に結合する」という句は、タンパク質および他の生体物質の異種集団の存在下で標的タンパク質の存在を決定する結合反応を意味する。このように、指定されたアッセイ条件下では、特定の結合部分が特定の標的タンパク質に選択的に結合して、試験試料中に存在する他の成分に対して有意な量で結合しない。そのような条件での標的タンパク質に対する特異的結合は、特定の標的抗原に対するその特異性のために選択される結合部分を必要とする可能性がある。多様なアッセイフォーマットを用いて、特定のタンパク質と特異的に反応するリガンドを選択してもよい。例えば、固相ELISAイムノアッセイ法、免疫沈降、バイアコア、およびウェスタンブロットを用いて、PDZドメイン含有タンパク質と特異的に反応するペプチドを同定する。典型的に、特異的または選択反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的にはバックグラウンドの10倍以上である。一価ペプチドとPDZ含有タンパク質との特異的結合は、結合親和性が少なくとも104 M−1であること、好ましくは105または106 M−1であることを意味する。
【0052】
「同型相互作用」という句は、同じタンパク質のもう一つの分子に対する所定のタンパク質の結合を意味する(例えば、hCLASP−2に対するhCLASP−2の結合)。「異型相互作用」という句は、異なるタンパク質または他の分子に対する所定のタンパク質の結合を意味する(例えば、PDZドメイン含有タンパク質に対するhCLASP−2の結合、またはDNAに対する転写因子の結合)。
【0053】
「免疫細胞応答」という句は、免疫細胞の移動、標的細胞の殺細胞、貪食、抗体産生、免疫応答の他の可溶性イフェクター等が起こる、免疫細胞に生化学変化を生じる、外界または内部刺激(例えば、抗原、サイトカイン、ケモカイン、および他の細胞)に対する免疫系細胞の反応を意味する。
【0054】
「Bリンパ球反応」および「Bリンパ球活性」という用語は、Bリンパ球によって行われる免疫応答の成分を意味するために互換的に用いられる(すなわち、Bリンパ球の増殖および成熟、細胞表面免疫グロブリンに対する抗原の結合、抗原のインターアナライゼーション、およびMHC分子によるTリンパ球への抗原提示、および抗体の合成と分泌)。
【0055】
「Tリンパ球反応」および「Tリンパ球活性」という用語は、Tリンパ球に依存的な免疫応答の成分を意味するために互換的に用いられる(すなわち、Tリンパ球の増殖および/またはヘルパーT細胞、細胞障害性キラーT細胞、または抑制性Tリンパ球への分化、抗体産生を引き起こすまたは予防するBリンパ球へのヘルパーTリンパ球によるシグナルの提供、細胞障害性Tリンパ球による特異的標的細胞の殺細胞、および他の免疫細胞の機能を調節するサイトカインのような可溶性因子の放出)。
【0056】
「免疫応答」という用語は、それによって、侵入する病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、癌様細胞、または自己免疫もしくは病理的炎症の場合には、正常なヒト細胞もしくは組織の選択的障害、破壊、またはヒト体内からの消失が起こる、リンパ球、抗原提示細胞、貪食細胞、顆粒球、および上記の細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子の協調作用を意味する。
【0057】
免疫応答の成分は、当業者に周知である様々な方法によってインビトロで検出してもよい。例えば、(1)細胞障害性Tリンパ球を放射活性標識標的細胞と共にインキュベートして、これらの放射活性の放出によってこれらの標的細胞の溶解を検出する、(2)ヘルパーTリンパ球は、抗原および抗原提示細胞と共にインキュベートして、サイトカインの合成および分泌を標準的な方法によって測定する(ウィンドハーゲン(Windhagen, A.)ら、1995、Immunity 2(4):373〜80)、(3)抗原提示細胞は全タンパク質抗原と共にインキュベートして、MHC上の抗原提示をTリンパ球活性化アッセイ法または生物物理的方法のいずれかによって検出することができる(ハーディング(Harding)ら、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:4230〜4)、(4)肥満細胞をFc−ε受容体と交叉反応する試薬と共にインキュベートして、ヒスタミン放出を酵素イムノアッセイ法によって測定することができる(シラガニアン(Siraganian)ら、1983、TIPS 4:432〜437)。
【0058】
同様に、モデル生物(例えば、マウス)またはヒト患者のいずれかにおける免疫応答の産物は、当業者に周知の様々な方法によっても検出することができる。例えば、(1)ワクチン接種に反応した抗体産生は、臨床検査において現在用いられる標準的な方法、例えばELISAによって容易に検出することができる;(2)擦過部位上の遊走細胞を捕獲するために、皮膚の表面を剥離して、滅菌容器に入れることによって検出することができる(ピータース(Peters)ら、1988、Blood 72:1310〜5);(3)マイトゲンに対する反応またはリンパ球混合反応における末梢血単核球の増殖を3H−チミジンを用いて測定することができる;(4)PBMCsにおける顆粒球、マクロファージ、および他の貪食細胞の貪食能は、PBMCsを標識した粒子と共にウェルに加えることによって測定することができる(ピータース(Peters)ら、1988);および(5)CD4およびCD8のようなCD分子に対する抗体によってPBMCsを標識して、これらのマーカーを発現するPBMCsの分画を測定することができる。
【0059】
本明細書において用いられるように、「シグナル伝達経路」、または「シグナル伝達事象」という句は、少なくとも一つの生化学反応、しかしより一般的には、細胞と刺激化合物または物質との相互作用の結果である、一連の生化学反応を意味する。このように、刺激化合物と細胞との相互作用は、「シグナル」を生じ、これがシグナル伝達経路によって伝達されて、最終的に細胞反応、例えば、上記のような免疫応答が起こる。
【0060】
シグナル伝達経路は、細胞のある部分からのシグナルを細胞の他の部分に伝達するために何らかの役割を果たす多様なシグナル伝達分子の生化学的関係を意味する。本発明のシグナル伝達分子には、例えば、CLASP−2の細胞外および細胞内ドメインが含まれる。本明細書において用いられるように、「細胞表面受容体」という句は、シグナルを受領することができ、細胞の細胞質膜を通過してシグナルを伝達することができる分子および分子の複合体を含む。本発明の「細胞表面受容体」の例は、T細胞受容体(TCR)である。本明細書において用いられるように、「細胞内シグナル伝達分子」という句には、細胞の細胞質を通っての細胞の細胞質膜から、および場合によっては細胞の核へのシグナルの伝達を含む分子または分子の複合体が含まれる。本発明において、CLASP−2は、「細胞内シグナル伝達分子」と呼ぶことができるが、「シグナル伝達分子」と呼ぶことも可能である。
【0061】
細胞におけるシグナル伝達経路は、細胞の内部または外部の刺激物質と細胞の相互作用によって開始することができる。外部(すなわち、細胞外)刺激物質(例えば、抗原提示細胞上のMHC抗原複合体)が、細胞表面受容体(例えば、T細胞受容体)と相互作用すれば、シグナル伝達経路は、シグナルを、細胞膜を通過させて、細胞の細胞質の中を通過させて、場合によっては核へ伝達することができる。内部(例えば細胞内)刺激物質が細胞内シグナル伝達分子と相互作用すれば、シグナル伝達経路によって、シグナルが細胞の細胞質の中を通過し、そして場合によっては細胞の核への伝達が起こりうる。
【0062】
シグナル伝達は、例えば、分子のリン酸化;非共有結合アロステリック相互作用;分子の複合体形成;分子のコンフォメーション変化;カルシウム放出;イノシトールリン酸産生;タンパク質分解的切断;環状ヌクレオチド産生、およびジアシルグリセリド産生によって起こりうる。典型的に、シグナル伝達は、シグナル伝達分子をリン酸化することによって起こる。本発明に従って、CLASP−2シグナル伝達経路は、一般的にCLASP−2タンパク質が、関与する受容体、PKC基質、Gタンパク質、およびその他の分子を含む経路を調節する経路を意味する。
【0063】
5.1 緒言
本発明は、細胞骨格と免疫の出入口のシグナル伝達装置を構築するために適当な特性を示すエンドドメインを含む、CLASPファミリーの新しいメンバーである新規膜貫通タンパク質CLASP−2に関する。
【0064】
CLASP−2は、免疫系の細胞、例えば、T細胞およびB細胞と共に免疫以外の細胞において機能する。CLASP−2タンパク質は、多様な細胞プロセス、特に免疫機能に関係するプロセス、T細胞およびB細胞相互作用の調節、T細胞活性化、およびシグナル伝達、細胞骨格相互作用、および膜構築を含む「免疫シナプス」の構築、確立および維持において機能する(ダスティン(Dustin)ら、1999、Science 283:680〜682;ポール(Paul)ら、1994、Cell 76:241〜251;ダスティン(Dustin)ら、1996、J. Immunol. 157:2014;ダスティン(Dustin)ら、1998、Cell 94:667)。
【0065】
特定のメカニズムに拘束される、またはいずれにせよ制限されるつもりはないが、CLASP−2タンパク質は、抗原提示の際に細胞・細胞接触の結合部位または出入り口を作製する「免疫の出入口」と呼ばれるリンパ球オルガネラの成分であると考えられている。CLASP−2の細胞質ドメインは、T細胞の先端で小片を構築すると考えられている。カルボキシ末端コード配列は、PDZドメインタンパク質および細胞骨格タンパク質(例えば、スペクトリンまたはアンキリン)との相互作用を媒介して、CLASP−2を微小管ネットワークに接続して上記の微小管構築中心(「MOTC」)の真上で分極構造で受容体を保持する。このように、T細胞がAPCとして作用するB細胞と連動すると、CLASP−2分子がもう一つの分子と連動して二つの細胞を結合させて、免疫シナプスを構築する。
【0066】
CLASP−2タンパク質の発現の調節、CLASP−2タンパク質相互作用の他のタンパク質による妨害または増強は、多くの有益な生理作用、例えば抗原に反応したシグナル伝達の変化、抗原に対するTおよびB細胞応答の変化、およびT細胞活性化の調節を有する。一つの局面において、CLASP−2細胞外ドメインを標的として(例えば、抗CLASP−2抗体、可溶性CLASP−2断片等を用いて)T細胞活性化を調節する(およびこのように、免疫応答を調節する)。CLASP−2機能を破壊することによって治療することができる障害には、多発性硬化症、若年性糖尿病、リウマチ性関節炎、天疱瘡、類天疱瘡、後天性表皮水疱症、狼瘡、子宮内膜症、毒血症、または妊娠性高血圧症、そう痒性丘疹状蕁麻疹、および妊娠性溶血斑(PUPPP)、妊娠性疱疹、疱疹状膿か疹、妊娠痒み、胎盤関連障害、およびRh不適合が含まれるが、これらに限定しない。
【0067】
もう一つの局面において、本発明は、CLASP−2発現およびCLASP−2発現細胞を検出する方法および試薬を提供する。異常な発現パターンまたは発現レベルは、免疫および他の障害を診断する。例えば、血液中または他の臓器におけるリンパ球の過剰産生または枯渇を特徴とする疾患は、生体試料(例えば、末梢血)中のCLASP−2ポリペプチドまたはmRNAのレベル、例えばCLASP−2発現細胞の数またはパーセントをモニターすることによって検出してもよい。T細胞の過剰産生を特徴とする疾患には、例えば、白血病(ALLおよびCLLの両者)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、菌状息肉腫およびセザリー症候群)、EBV、CMV、トキソプラズマ症、梅毒、腸チフス、ブルセラ症、結核、インフルエンザ、肝炎、血清病、および甲状腺薬中毒症が含まれる。T細胞の枯渇に関連した疾患には、例えば、HIVおよび骨髄異形成が含まれる。B細胞の過剰産生に関連した疾患には、例えば白血病(ALLとCLLの両者)、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、骨髄腫、EBV、CMV、トキソプラズマ症、梅毒、腸チフス、ブルセラ症、結核、インフルエンザ、肝炎、血清病および甲状腺薬中毒症が含まれる。B細胞枯渇に関連した疾患には、例えば、骨髄異形成が含まれる。
【0068】
5.2 CLASP−2 cDNA およびポリペプチドの構造
CLASP−2タンパク質は、もう一つのエキソンを使用することによって生じた(すなわち、スプライシング変種の産生)多数の型を特徴とするI型膜貫通糖タンパク質である。天然に存在する一つの型において、CLASP−2は、図1に示す構造を有する。しかし、下記に詳細に考察するように、CLASP−2遺伝子は、mRNAのもう一つのスプライシングによって多様な遺伝子産物をコードする。図2は、ヒトCLASP−2ポリペプチドのヌクレオチド配列および概念的翻訳を示す。
特に言及していなければ、「ヒトCLASP−2(hCLASP−2)」という句は、本明細書において、hCLASP−2A、hCLASP−2B、hCLASP−2C、およびhCLASP−2Eを意味する。「hCLASP−2D」cDNAはまた、KIAA1058としても知られ、これはキクノら(Kikuno、DNA Res. 6、197〜205)によって未知機能のタンパク質をコードする脳からのcDNAとして記述された。
【0069】
CLASP−2ポリペプチドは典型的に、約120残基のリーダー配列を含み、その後にカドヘリンタンパク質分解切断シグナルRXXR、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。本発明は、配列番号:1の配列を有するポリヌクレオチドまたはその断片を提供し、および配列番号:2の配列を有するポリペプチドまたはその断片を提供する。さらに、本発明は、hCLASP−2ゲノム配列を含むポリヌクレオチド、他の種からのCLASP−2相同体、hCLASP−2の天然に存在する対立遺伝子、および本明細書に記載のhCLASP−2変種を含むポリヌクレオチド、ならびにCLASP−2ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体およびその他の試薬を用いる方法を提供する。
【0070】
5.2.1 CLASP−2 ポリペプチドドメイン
図1に示すように、天然に存在する1つのCLASP−2 cDNAは、幾つかの構造的および機能的ドメインと明確な配列モチーフを特徴とするポリペプチドをコードする。実践者に手引きを提供するために、構造的特徴を下に記述する。しかし、本発明は、これらのドメインまたはモチーフの全てまたは如何なる特定のものも含むポリペプチドに限定されないと理解すべきである。例えば、本発明のCLASP−2融合タンパク質は、CLASP−2の細胞外ドメインのみを含む。同様に、配列番号:2のCLASP−2Aポリペプチドは、CLASP−2BおよびCLASP−2Cポリペプチドに認められるITAMモチーフ(下記に考察)を有しない。
【0071】
CLASP−2ポリペプチド(およびmRNAの対応する領域)の構造的(および機能的)に異なるドメインは、部分的に、CLASP−2遺伝子産物の活性または発現に影響を及ぼすために(例えば、免疫応答を調節するために)それらが個々にターゲティングされる、または改変される(例えば、欠失または変異)ことから、重要であると認識される。例えば、CLASP−2タンパク質の細胞外ドメインは、CLASP−2発現細胞(例えば、T細胞)と、CLASP−2が結合するタンパク質(すなわちCLASP−2リガンド)を示す第二の細胞(例えば、B細胞)との相互作用を遮断するためにターゲティングすることができる(例えば、抗CLASPモノクローナル抗体を用いて)。同様に、細胞内ドメイン(例えば、ITAM、またはDOCK、下記参照)は、細胞外リガンド結合を妨害することなく、シグナル伝達を妨害するようにターゲティングすることができる。
【0072】
一般的に、CLASP−2発現またはCLASP−2ポリペプチド機能を阻害すれば、例えば、免疫シナプスの形成に影響を及ぼすことによってT細胞活性化の閾値を変化させることを含む、免疫機能の調節が起こるであろう。免疫機能の調節は、当技術分野で既知で、本明細書に記載の多くのアッセイ法によってスクリーニングおよび定量することができる(第5.14章も参照のこと)。
【0073】
5.2.1.1. シグナルペプチド
図1に示すヒトCLASP−2配列は、翻訳開始部位の可能性がある部位2個をコードする。第一の予想されるメチオニンは、ヌクレオチド278位(ATG)に現れる。第二のメチオニンは、ヌクレオチド476位に現れる。いずれも、翻訳を開始するために許容されるコンセンサス配列を有する(A/GxxATGG;コザック(Kozak, M.)、1996、Mamm. Genome 7(8):563〜74)。第二のメチオニンで始まるポリペプチドはまた、シグナル配列予想プログラムであるシグナルPによってタンパク質を分泌経路に配置することができるシグナルペプチドをコードすると予想される(ニールセン(Nielsen, H.)ら、1997、Protein Eng. 10(1):1〜6)。第一のメチオニンで始まるポリペプチドは、シグナル配列を含まないと予想される;しかし。シグナル予測のコンセンサスは、既知のシグナル配列に関して80〜90%正確であるに過ぎない。翻訳開始部位の第三の可能性は、図1に記載したcDNAが不完全であり、もう一つのメチオニンがインフレームで、図1に示す配列の上流にコードされるという点である。
【0074】
5.2.1.2. 細胞外ドメイン
CLASP−2細胞外ドメインは、1つのカドヘリンEC様モチーフを特徴とする(ピゴット&パワー(Pigott, R. & Power, C.)、1993、「接着分子ファクトブック(factbook)」、アカデミック出版、6頁;ジャクソン&ラッセル(Jackson, R.M. & Russell, R. B.)、2000、J. Mol. Biol. 296:325〜34)。幾つかの非常に保存されたシステインと共に様々なグリコシル化シグナルが、細胞外ドメインに認められる。その細胞外ドメインを通じて、CLASP−2は、同型および/または異型的にリガンドと相互作用して、TCR、MHCクラスI、MHCクラスII、CD3複合体ならびにCD4、CD3、ICAM−1、LFA−1およびその他のアクセサリ分子のような分子と結合して免疫シナプスを確立する可能性がある。多くのカドヘリンは、細胞質膜に局在する前に除去されるアミノ酸約50〜150個のプロドメインを含む。この切断は、RKQRのコンセンサス配列でフリン(ポスタウスら(Posthaus, H.)、1998、FEBS Lett. 438:306〜10)によって行われると想定される。フリンは、特定のカドヘリンの成熟に少なくとも部分的に関与しているプロテアーゼである。CLASP−2は、ヌクレオチド945〜957位に配列RNQR配列を有する。相同性によって、この領域は、hCLASP−2Aの予想タンパク質開始部位の中のアミノ酸約120個である。この領域は、プロドメインである可能性があり、CLASP−2の機能、またはCLASP−2機能の局面のためには、切断する必要がある可能性がある。
【0075】
細胞外ドメインに対して作製された抗体を、CLASP−2を発現する細胞に加えることができる。これらの抗体は、CLASP−2と可能性があるリガンドとの相互作用を阻害するか、またはこれらの相互作用を安定化させることができる。例えば、本明細書に記載および記述した当技術分野で既知の如何なるイムノアッセイ法も用いて、このアプローチによって生じる免疫機能の調節を評価してもよい。
【0076】
同様に、CLASP−2の細胞外ドメインの一部は、可溶性タンパク質として発現することができる。この可溶性タンパク質は、CLASP−2を発現する細胞に加えることができる。これらのタンパク質は、可能性があるリガンドと相互作用して、内因性CLASP−2とのその結合を競合的に阻害する可能性がある。これは、本明細書に記載のイムノアッセイ法によってCLASP−2機能を調節しうる。組換えタンパク質は、CLASP−2相互作用を正または負に妨害しうる。
【0077】
5.2.1.3. 膜貫通ドメイン
CLASP−2予想アミノ酸配列は、膜貫通ヘリックスを予測するPHDhtm分析ソフトウェアを用いて分析した(ロスト(Rost, B)ら、1996、Prot. Science 7:1704〜1718)。PPHDhtm分析ソフトウェアを用いて、膜貫通ドメインは、アミノ末端近傍に位置する他の3つの可能性がある膜貫通ドメインと共に、ヌクレオチド2861〜2917位(図1を参照)に存在することが決定された。
【0078】
5.2.1.4. 細胞内ドメイン
CLASP−2細胞内ドメインは、幾つかのタイプのタンパク質ドメインに対応するモチーフを含む。特異的CLASP−2(すなわち、特異的ファミリーメンバーまたはスプライシング変種)に応じて、ドメインの全てまたはごく一部が存在しうる。アミノ末端からカルボキシ末端方向に記載すると、ドメインは:(1)ITAM(チャン(Chan)ら、1994、Annal. Review of Immunology 12:555〜592)、(2)新たに発見されたDOCK/CLASP−2モチーフ、(3)多重らせんモチーフ、および(4)C末端PDZ結合モチーフ(PBM)(PDZリガンドまたは「PL」とも呼ばれる)を含む。
【0079】
5.2.1.5. ITAM
免疫受容体チロシン骨格活性化モチーフ(ITAMモチーフ;ARAM、または抗原認識活性化モチーフとしても知られる)は、TおよびB細胞の抗原受容体、ならびに他の白血球上のFc受容体の中に含まれるモチーフであり、これらの細胞における適切な活性化およびシグナル伝達にとって必要である。それらは、コンセンサス配列YXXL/I−X7/8−YXXL/Iを特徴とし(グルクザ(Grucza)ら、1999、Biochemistry 38:5024〜5033)、通常、アミノ酸6〜8個離れている(ワトソン(Watson)ら、1998、Immunol. Today 19:260〜264;イサコフ(Isakov)、J. Leukoc. Biol. 61:6〜16)。ITAMは、白血球のシグナル伝達に関与するLynのようなsrcファミリーのチロシンキナーゼによるチロシンリン酸化能によって、細胞内調節モチーフとして用いられる。リン酸化されると、ITAMはSH2含有タンパク質の高親和性結合部位として作用する。ZAP−70、Syk、Lyn、Shc、PI3キナーゼ、およびGrb2を含むシグナル伝達成分は、SH2ドメインを含み、ITAMsに結合することが示されている(クレメンツ(Clements)ら、1999、Annu. Rev. Immunol. 17:89〜108)。これによって、ITAM含有モチーフは白血球における細胞内シグナル調節の中心的役割を有する。白血球のシグナル伝達におけるITAMモチーフは、他のシグナル伝達成分が結合して、伝達を媒介するために適切に配置された場合の一次的な足場として作用することによってシグナル伝達(例えば、チロシンキナーゼシグナル伝達)を促進しうる。ITAMモチーフはしばしば、タンパク質において複数現れるが、1セットのYXXL/Iのみでも、弱いがPTK経路のシグナルを伝達できることが知られている。
【0080】
CLASP−2タンパク質は典型的に、アミノ酸3または13個離れてITAM YXXL/Iモチーフ(Xは如何なるアミノ酸でもよい)を有する。様々な態様において、本発明のCLASP−2ポリペプチドは、表1に示すモチーフの1つまたはそれ以上を特徴とする。
【0081】
【表1】
【0082】
CLASPsタンパク質に多数のITAMモチーフが存在することは、それらが多数のシグナル伝達成分(例えば、ZAP−70/Syk、Shc、PI3キナーゼおよびGrb2)に関係する可能性があることを示している。一般的に、CLASPタンパク質におけるITAMモチーフは、保存的アミノ酸置換(すなわち、イソロイシンまたはロイシンの代わりにバリン)を有する幾つかのモチーフを有する基準ITAMモチーフと同一にマッチする。他のITAMsに関して先に記述したように、CLASPsを有するITAMはZAP−70、Syk、Shc、PI3キナーゼおよびGrb2を含むSH2含有タンパク質に結合することができる。CLASPsは、細胞外ドメインを有するため、CLASPsタンパク質は、その細胞外ドメインの関係を通じてシグナル伝達カスケードを独立して開始することができる。そうでなければ、CLASPsは、抗原受容体シグナル伝達複合体(例えば、CD3/TCR、BCR、FcRとの複合体)と協調して、チロシンキナーゼシグナル伝達を促進する可能性がある。
【0083】
ITAMsは、SH2ドメインに関して異なる結合特異性および親和性を証明した(クレメンツ(Clements)ら、1999、Ann. Rev. Immunol. 17:89〜108)。例えば、Shc、PI3キナーゼ、およびGrb2は二およびモノリン酸化ITAMsに対して異なる親和性で結合する。このように、CLASPsにおけるITAMsは、そのリン酸化状態に応じてシグナル伝達における定性的差と共に定量的差を提供すると共に、特異的タンパク質相互作用、したがって白血球における特異的チロシンキナーゼ媒介シグナル伝達経路を阻害または増強すると考えられている。
【0084】
PTK−CLASP−2相互作用に拮抗すること(例えば、CLASP−2のリン酸化)は、免疫機能を阻害するであろう。一つの態様において、ITAMを有するヒトCLASPsとその結合パートナーとの相互作用は、ITAM依存的リンパ球活性化を負に調節することが示されているシグナル調節タンパク質のαサブタイプ(SIRPα)によって拮抗されると考えられている(リーナード(Lienard, H.)、1999、J. Biol. Chem. 274:32493〜9)。同様に、免疫受容体チロシン骨格阻害モチーフ(ITAM)受容体の最近認識されたファミリーは、免疫コンピテント細胞のITAM誘導活性化を阻害すると考えられており(ジョージリー(Gergely)ら、1999、J. Immunol. Lett. 68:3〜15)、したがって、CLASP−パートナー相互作用を阻害する可能性がある。
【0085】
5.2.1.6. DOCK
CLASP−2ポリペプチドは、これまで科学文献に記載されていない新規「DOCK」モチーフを含む。CLASP DOCKモチーフには、領域A、B、C、D、およびGにおいて保存配列に取り囲まれた一連の5個のチロシンが含まれる(図5B参照)。同様に、アミノ酸9個(P+EXAI+XM)および(LXMXL+GXVXXXVNXG)(Xは如何なるアミノ酸でもよい)離れた高度に保存された2つの非チロシン含有領域(EおよびG)が存在する。
【0086】
ITAMドメインの直後のCLASP−2の細胞質領域は、いわゆる「DOCK」タンパク質のカルボキシ末端の3分の1と配列類似性を示す。DOCK遺伝子ファミリーは、アポトーシスに関与することが知られているC. エレガンス(C. elegans)のCEDタンパク質のヒト相同体である3つの分子を含む。主要なCRK結合タンパク質であるCED−5(DOCK180)は、膜に移動すると細胞の形態を変化させ(清掃細胞が取り囲んだ際に示す膜の運動を媒介する)、死につつある細胞を包み込む;その機能は、ヒトDOCK180によって部分的に救済することができる(ウ(Wu)ら、1998、Nature 392:501〜504)。ショウジョウバエにおける筋原細胞シティ(MBC)は、DOCKタンパク質ファミリーのもう一つのメンバーであり、筋原細胞融合に関与することが判明した(エリクソン(Erickson)ら、1997、J. Cell Biol. 138:589)。CLASP−2発現は、胎盤、筋肉、および心臓のような合胞体組織に認められるため、CLASP−2は、細胞融合の媒介または阻害に関与すると考えられている。
【0087】
DOCKファミリーは、細胞形状の制御に関与している。DOCK1は、紡錘細胞にトランスフェクトさせると、それらを平坦にして多角形にすることができる(タカイ(Takai)ら、1996、Genomics 35:403〜303)。DOCK1発現は、造血細胞を除いて広く存在する。DOCK2は、造血細胞に発現され、紡錘細胞にトランスフェクトすると、それらを丸くすることができる(ニシハラ(Nishihara, H.)、1999、Hokkaido Igaku Zasshi 74:157〜66)。DOCK2は、末梢血リンパ球、胸腺、脾臓、および肝臓に発現される。
【0088】
5.2.1.7. 多重らせん
CLASP−2sは、2つの多重らせんドメイン(ルーパス(Lupas)ら、1991、Science 252:1162〜64;ルーパス(Lupas, A.)、1996、Meth. Enzymology 266:513〜525)を有する。多重らせんドメインは、細胞骨格と直接相互作用することが知られており、CLASP−2タンパク質は細胞骨格と直接相互作用することを示している。このように、CLASP−2は細胞骨格タンパク質、例えば、スペクトリン、アンキリン、hsp70、タリン、エズリン、トロポミオシン、ミオシン、プレクチン、シンデカン、パラレミン、バンド3タンパク質、細胞骨格タンパク質4.1、チロシンフォスファターゼPTP36、および他の分子に結合すると考えられている。
【0089】
5.2.1.8. PDZ リガンド
CLASP−2タンパク質は、タンパク質のC末端においてPDZリガンドモチーフ(「PBM」または「PL」)を含む。この短い(アミノ酸3〜8個)モチーフは、モチーフのカルボキシ末端で終了するタンパク質(最も一般的にS/T−X−V−遊離のカルボキシ末端)と、1つまたはそれ以上の特異的PDZドメインを含む他のタンパク質との結合を媒介する(PDZリガンド構造の考察に関しては、ソンヤン(Songyang)ら、1997、Science 275:72、およびドイル(Doyle)ら、1996、Cell 85:1067を参照のこと)。
【0090】
PDZドメイン含有タンパク質は、神経シナプスでのイオンチャネルと受容体の構築、ならびに膜貫通受容体のC末端との結合によって上皮細胞における極性の確立および維持に関与している。PDZドメイン含有タンパク質は、免疫系の細胞においてタンパク質・タンパク質相互作用を媒介することができる(例えば、DLG1は、ヒトTリンパ球においてリンパ球カリウムチャネルKV1.3に結合する)(ハナダ(Hanada)ら、1997、J. Biol. Chem. 272:26899)。
【0091】
CLASP−2が3つの近縁タンパク質のPDZドメインと相互作用するという生化学的証拠を図9A〜Dに示す。図9Aは、CLASP−2のC末端アミノ酸20個がPSD−95、NeDLG、およびDLG1に結合するが、TIAM−1タンパク質のPDZドメインには結合しないことから、相互作用の特異性を示している。図9Bは、相互作用の親和性を示す。特に、最高の親和性相互作用は、CLASP−2とNeDLGのあいだに起こり、特異的結合親和性は少なくとも104 M−1である。マイクロモル範囲の親和性は、他の生物学的に重要なPDZリガンド相互作用においても認められている。図9CはCLASP−2の短い断片(C末端アミノ酸8個)またはKV1.3のC末端のいずれかを用いた、CLASP−2・PDZ相互作用の阻害能を示している。上記のように、KV1.3は、生存リンパ球においてDLG1に結合することが知られている。図9Dは、CLASP−2とKV1.3がPDZ結合を競合することを示している;すなわちKV1.3がCLASP−2結合を阻害するのみならず、CLASP−2も同様にKV1.3結合を阻害する。CLASP−2のC末端残基8個が、CLASP−2とKV1.3の両者と選択されたPDZドメインとの相互作用を阻害することができることは、CLASP−2のC末端アミノ酸8個に関連する化合物が、細胞に導入されると、リンパ様組織およびこれらのタンパク質を発現する他の組織(心臓、肺、および腎臓を含む)の機能に関係する多数のタンパク質・タンパク質相互作用における変化を媒介することを示唆している。
【0092】
CLASP−2のC末端アミノ酸8個を細胞に導入すると、細胞機能に影響を及ぼしうるという証拠は、これらのアミノ酸を細胞に、例えばHIV由来TAT輸送体ペプチド配列との融合体として導入した実験に由来する。TAT−CLASP−2融合ペプチドをジャーカットTリンパ球に加えて(TATペプチド単独を用いた対照と比較して)、カルシウム指示色素フルオ−4を用いて測定すると、細胞内カルシウム濃度に微妙な時間依存的変化が起こる。これらの結果は、TAT−CLASP−2融合体がT細胞イオン流入を変化させるという仮説と一致する。特に、結果は、CLASP−2のC末端配列が基礎細胞内カルシウム濃度をわずかに増加させ、抗CD3抗体による細胞の活性化時のカルシウムのこれに比例した増加をわずかに減少させうることを示している。そのような変化は、T細胞活性化関連CLASP−2タンパク質とKV1.3カリウムチャネルの局在を破壊する化合物に関して予測されるであろう。T細胞カルシウム流入に小さい変化が起こった結果、細胞の機能的活性に大きい変化が起こりうる(ウルフフィング(Wulfing)ら、1997、J. Exp. Med. 185:1815)。
【0093】
5.2.1.9. 免疫応答の調節
上記の通り、CLASP−2タンパク質は免疫シナプスの形成に影響を及ぼすことにより、さまざまな様式でさまざまな機序(すなわち、T細胞の活性化のための閾値の変化)を通じて免疫機能を調節する。免疫シナプスの成立および維持には(A)シグナル伝達、(B)細胞間相互作用、および(C)膜構成が関与しうる。
【0094】
(A)シグナル伝達
上記の考察の通り、ヒトCLASPタンパク質はSH3ドメインおよびチロシンリン酸化部位を含む。これらの領域は、リンパ球を含む種々の細胞においてシグナル伝達に関与することが示されている。このため、ヒトCLASPタンパク質は、免疫応答の調節につながるシグナル伝達事象の際にこれらの領域と相互作用すると考えられている。
【0095】
CLASPタンパク質は、Tecサブファミリーに属する非受容体型チロシンキナーゼと相互作用しうる。非受容体型チロシンキナーゼのTecサブファミリーはTec、Btk、Tsk/Itk/Emt ItkおよびBmxからなり、触媒ドメインに隣接したSH3およびSH2ドメイン、ならびにプレクストリン相同(PH)ドメイン、Tec相同(TH)ドメインおよびプロリンリッチ領域を含むアミノ末端領域の存在によって定義される(Mano, H.;1999、Cytokine Growth Factor Rev 10:267〜80)。T細胞に特異的なTsk/Itk/Emt、およびT細胞以外のほとんどの造血幹細胞で発現されるBtkは、造血幹細胞における抗原受容体シグナル伝達経路の重要な構成要素である。
【0096】
Btkは、マウス伴性免疫不全(xid)およびヒト伴性無γグロブリン血症(XLA)で欠陥のある遺伝子として同定されている(Nisitani, S.、2000、Proc Natl Acad Sci U.S.A. 97:2737〜42)。xidマウスではB細胞数が正常の半分に減少し、特定の免疫グロブリンアイソタイプの力価が著しく低下する。さらに、xid B細胞は多くの分裂誘発刺激に対して非感受性である。ヒトの方の疾患はさらに重篤であり、B細胞区画がほぼ完全に消失し、免疫グロブリン値が劇的に低下する。生化学的検討により、BtkがB細胞の活性化において多くの役割を果たすことが裏づけられている。Btkのキナーゼ活性およびチロシンリン酸化は、B細胞上のB細胞受容体またはマスト細胞上の高親和性IgE受容体FcRIとの架橋によって高まる。インターロイキン−5およびインスリン−6処理によってもBtkの活性化がもたらされることが示されている。
【0097】
ItkはBtkと同じく、抗原受容体との架橋によってチロシンリン酸化を受ける(Mano, H.、1999、Cytokine Growth Factor Rev、10:267〜80)。加えて、機能的Itkを欠失したマウス由来の末梢T細胞は、CD3に対する抗体+抗原提示細胞による刺激に対して不応性である。これらのItk欠損T細胞ではホルボールエステルおよびカルシウムイオノホアによる活性化は可能であり、このことはItkがシグナル伝達経路においてTCRの上流で作用することを示している。
【0098】
Lyn、Lck、Fyn、ZAP70、SyKおよびCSKを含む、類似したSrcファミリーのチロシンキナーゼとは異なり、TecファミリーのキナーゼにはSrcファミリーのキナーゼの膜局在のために極めて重要なアミノ末端ミリスチル化部位がなく、その膜局在のためには何らかのアダプタータンパク質が必要であることが示唆される(Mano, H.、1999、Cytokine Growth Factor Rev 10:267〜80)。TecファミリーのキナーゼはすべてSH3ドメインが結合しうるプロリンリッチ領域を含み、ヒトCLASPはすべてSH3ドメインを含むことから、ヒトCLASPはさまざまな造血細胞においてTecファミリーのメンバーに対するアダプターとして働く可能性があると考えられている。
【0099】
GTP結合タンパク質は免疫応答において重要な役割を果たす(Mach, B.、1999、Science 285:1367)。TCR/CD3によるT細胞活性化によって誘発される数多くの生化学的事象は、Gタンパク質の作用を変化させる薬剤によって妨げられる。これはコレラ毒素が細胞増殖、およびT細胞の抗CD3抗体処理によって媒介される細胞内Ca2+動員を阻害しうることに関係がある。Gタンパク質の競合阻害物質GDPSは、末梢Tリンパ球の刺激によって産生されるイノシトールリン酸の程度を抑制しうる。GTPSなどのGTPの非加水分解性類似体、または受容体との結合の必要性を回避することによってGタンパク質を活性化するALFなどの他の薬剤は、T細胞を活性化させることが可能である。
【0100】
GTP結合タンパク質のGαq/11サブファミリー(Stanners, J.、1995、J Biol Chem 270:30635〜42)およびRap1(Lafont, V.、1998、Biochem Pharmacol 55:319〜24)は、ヒトT細胞受容体/CD3を介したシグナル伝達経路に関与することが示されている。また、Rhoファミリーの低分子量GTPアーゼであるCdc42は、外部刺激に反応して起こるアクチン微小突起の形成に極めて重要な役割を果たすことが知られている(Miki, H.;1998、Nature、391:93〜6)。興味深いことに、Cdc42結合タンパク質WASPは、すべてのヒトCLASPに存在するSH3ドメインと相互作用しうるプロリンリッチドメインを有する。ヒトCLASPはこれらの GTP結合タンパク質と相互作用すると思われる。
【0101】
NCK、CBL(Bachmaier, K.、2000 Nature 403:211〜6)、SHC、LNK、SLP−76、HS1、SIT、VAV、GrB2およびBRDG1を含むいくつかのアダプタータンパク質、ならびに2種類のチロシンホスファターゼEZRIN、SHP−1およびSHP−2は、ITAMまたはSH3ドメインと相互作用することが示されている。これらのタンパク質はCLASP−2とも相互作用すると考えられる。いくつかのタンパク質はITAMまたはSH3ドメインと相互作用することが示されており、CLASP−2とも相互作用すると考えられる。これらには、NCK、CBL(Bachmaier, K.、2000、Nature 403:211〜6)、SHC、LAT、LNK、SLP−76(Krause Mら、2000、J Cell Biol 149:181〜94)、HS1、SIT、VAV、GrB2(Zhang W.およびSamelson, L.E.、2000、Semin Immunol 12:35〜41)およびBRDG1などのアダプタータンパク質、SYKおよびLCKなどのキナーゼ、ならびにSHP−1およびSHP−2などのチロシンホスファターゼが含まれる。これらの相互作用は、インビトロ結合アッセイ法、免疫共沈降アッセイ法、免疫共染色(Harlow, E.およびLane, D.、1999、抗体の使用:実験マニュアル(Using Antibodies:A laboratory Manual.)、Cold Spring Harbor Press)、またはCLASP−2タンパク質もしくは断片を「ベイト(bait)」として用いうる酵母ツーハイブリッドシステムなどの遺伝子アッセイ法(Zervosら、1993、Cell 72:223〜232;Maduraら、1993、J. Biol. Chem 268:12046〜12054)を含む、数多くの異なる生化学的または細胞生物学的な方法によって定義可能である。
【0102】
その他のアッセイ法には、インビトロ結合アッセイ法、免疫共沈降アッセイ法、免疫共染色アッセイ法、およびCLASP−2ドメインまたは断片を「ベイト(bait)」または「トラップ(trap)」タンパク質として用いうる酵母ツーハイブリッドシステムによるスクリーニングアッセイ法(Zervosら.(1993)、Cell 72:223〜232;Maduraら.(1993)J. Biol. Chem. 268:12046〜12054)が含まれる。
【0103】
その他の態様では、CLASPポリペプチドのリンパ球へのトランスフェクションが行われる。トランスフェクションの後には、さまざまな標準的アッセイ法を用いて、例えば、CLASPによるT細胞活性化の修飾を評価することができる。これらのアッセイ法には、カルシウム流入アッセイ法、NF−AT核移行アッセイ法(例えば、Cell、1998、93:851〜61)、NF−AT/ルシフェラーゼレポーターアッセイ法(例えば、MCB 1996 16:7151〜7160)、HS1、PLC−、ZAP−76およびVavなどの初期反応タンパク質のチロシンリン酸化(例えば、J. Biol. Chem. 1997、272:14562〜14570)が含まれる。
【0104】
(B)細胞間相互作用
上記の考察の通り、ヒトCLASPタンパク質はE−カドヘリンの相同体である。図1に示す通り、CLASP−2はカドヘリン切断ドメインおよびカドヘリン外部ドメインをいずれも含む。このため、CLASP−2タンパク質はこれらのドメインを介してカドヘリンと相互作用すると考えられる。カドヘリンはカルシウム依存的な細胞間接着にかかわる細胞表面接着分子の1つのファミリーである。ヒトカドヘリンであるE−、P−、N−およびVE−カドヘリンの組織分布は限局的であり、E−およびP−カドヘリンは上皮組織で発現され、N−カドヘリンは主として神経細胞で認められ、VE−カドヘリンは血管内皮上に認められる。これらの組織における強固な細胞間接着の維持には、隣接細胞の表面にあるカドヘリン同士のホモフィリックな結合が不可欠である。例えば、E−カドヘリンは成熟上皮細胞間の接着結合の形成に必要であるほか、ランゲルハンス細胞のケラチノサイトとの結合に関与し、VE−カドヘリンは内皮細胞同士の側方結合の維持のために必要である。成熟した哺乳類カドヘリンの細胞外領域は、約1110アミノ酸からなる5つの「CAD」モジュールから構成される。結晶学的および生化学的な研究から、カドヘリンが細胞表面で二量体を形成しうること、および相対する細胞表面にある二量体型カドヘリンとの相互作用が「ジッパー様」細胞結合の形成をもたらしうることが示されている。
【0105】
インテグリンは膜貫通型接着分子の第2のファミリーであり、細胞間相互作用および細胞と基質との相互作用の両方に関与する。少なくとも15種の連鎖が8種の連鎖と会合して多数のヘテロ二量体型インテグリンが形成され、それらは特定の連鎖が共有する用途に基づいて7つの主要なサブファミリーに分類可能である。3つのサブファミリー、すなわち1、2および7インテグリンのメンバーは白血球上に認められることが一般的である。1インテグリンの発現は広範囲にわたり(例えば、51、CD49e/CD29は、T細胞、顆粒球、血小板、線維芽細胞、内皮および上皮で認められる)、一方、2および7インテグリンの発現は限定的なパターンを有する。
【0106】
興味深いことに、ヒト上皮細胞表面のE−カドヘリンは粘膜リンパ球インテグリンE7のリガンドであることが判明しており、マウスでも同様の相互作用が示されている。E−カドヘリンまたはE7に対するモノクローン抗体はIELの上皮細胞との接着を阻止し、細胞のE7によるトランスフェクションによって、E−カドヘリンによるトランスフェクションを受けた細胞に対する接着能が付与される。
【0107】
L929細胞に対してCLASP−2およびネオマイシンをトランスフェクトさせることが可能である。抗CLASPペプチド特異的抗体を用いて、G418耐性クローンをCLASP発現に関してスクリーニングすることができる。CLASP発現クローンは、カドヘリン分子に関して記載されている「細胞凝集アッセイ法」を用いて、ホモティピックおよび/またはヘテロティピックなカルシウム依存的T細胞接着に関する試験に用いることができる(Murphy−Erdosh, C.ら、1995、J. Cell Biol. 129:1379〜1390)。
【0108】
結合ドメインに関与するアミノ酸を同定するためには、いくつかのアプローチを用いうる。上記のアッセイ法における阻止実験のためには、可溶性融合分子(例えば、EC12−IgG、ECC−IgG、ECM−IgGおよびGST−EC12)、ペプチドおよびペプチド特異的抗CLASP抗体が利用可能である。部位特異的変異誘発によって作製されたトランスフェクト体も用いることができる。
【0109】
(C)膜アンカリング/細胞骨格相互作用
興味深いことに、成熟Tリンパ球が活性化されると、チロシンリン酸化を受けたITAMはアクチン細胞骨格と相互作用する(Rozdzial, M. M.、1995、Immunity 3:623〜633)。ヒトCLASPは細胞骨格タンパク質と相互作用することが示されているITAMおよび多重らせんドメインの両方を含むため、CLASPは細胞骨格構造を再構築することによって細胞表面分子の発現調節に重要な役割を果たすと考えられている。
【0110】
Fアクチンミクロフィラメントによる細胞骨格構築は、細胞表面分子の発現調節に関与することが知られている。GTPアーゼ結合タンパク質の一つであるWASPは、外部刺激に反応して起こるアクチン微小突起の形成に極めて重要な役割を果たし、WASPの異所性発現によって、発現されたWASP自体と一部重複するFアクチンフィラメントのクラスター形成が誘導される。もう一つのWASPファミリータンパク質であるN−WASPも、糸状仮足の形成に重要な役割を果たすことが示されている。これらのタンパク質はいずれもアクチン重合を引き起こすが、それらが細胞内で発現される際には異なる特徴がみられる。すなわち、WASPは主として核周囲領域に局在してアクチンのクラスター化を引き起こすが、ほとんどのN−WASPは原形質膜に存在し、糸状仮足形成を誘導する(Miki, H.;1998、Nature 391:93〜6)。WASPおよびN−WASPはいずれも、ヒトCLASPのすべてに存在するSH3ドメインと相互作用しうると考えられるプロリンリッチドメインを含む。CLASP−2は、CLASP−2のWASPまたはWASP様タンパク質との結合を介してFアクチンと相互作用すると考えられる。
【0111】
CLASPタンパク質の細胞骨格タンパク質との相互作用を検出するために標準的なアッセイ法を用いうる。これらのアッセイ法には、共沈降アッセイ法、ファーウエスタンブロット分析(Ohba, T.、1998、Anal. Biochem. 262:185〜192)、表面プラズモン共鳴、CLASPをトランスフェクトしたリンパ球におけるファロイジンによるFアクチン染色(例えば、Small, J.ら、1999、Microsc. Res. Tech. 4:3〜17)、および焦点接着タンパク質(CLASPをトランスフェクトしたリンパ球におけるパキシリン、テンシン、ビンキュリン、テーリンおよびFAKなど;例えば、Ridyard, M.S.、1998、Biochem. Cell Biol. 76:45〜58を参照)の細胞内分布に関する免疫細胞学的分析が含まれる。
【0112】
5.2.2. CLASP−2 のエクソン構造およびゲノムドメイン
RNAの非翻訳領域に影響を及ぼす選択的スプライシング変種は、RNAの安定性を調節する手段となりうる。全体的にみて、選択的スプライシングは、免疫応答におけるCLASP−2のさまざまな機能を司る調節スイッチである可能性が高い。
【0113】
前記の箇所で指摘した通り、CLASP−2遺伝子の発現は、選択的なエクソン使用に特徴がある。イントロン/エクソン構造はゲノムDNAのコンピュータ解析によって予想しうるが、スプライス部位および選択的スプライシングはゲノムクローンとcDNAクローンとの比較のみによって解明可能である。選択的スプライシングおよびRNA編集は、互いに密接な関係にあるものの構造が異なる可能性があり、このため別個の機能を発揮する可能性のある種々のタンパク質が同じ遺伝子から生じる機構である。極めて少数の遺伝子から数千種もの異なるタンパク質を生み出すために選択的スプライシングがいかに用いられるかの一例は、ニューレキシン遺伝子ファミリーで示されている(ニューレキシンの総説については、Missler M.およびSuedhof, T.、1998、Trends in Genetics、14:20〜25を参照のこと)。CLASP−2のゲノムクローンとcDNAクローンとの比較分析により、CLASP−2が多数のエクソンから構成されていて、選択的スプライシングによって別個のCLASP−2転写物が生じることが明らかになった。CLASP−2のタンパク質コード部分は少なくとも14個のエクソンにわたっている(図6A)。
【0114】
エクソンの読み飛ばし(skipping)を引き起こすか、もしくは別の形で切断型タンパク質産物をもたらすスプライス部位の変異に起因する、または起因すると考えられている疾患は数多くある。これらの疾患の一部には、例えば、マルファン症候群(Liu Wら、1997、Nat. Genet. 16:328〜9)、ハンター病(Bonucelli Gら、2000、Hum. Mutat.(Online)2000 15(4):389、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Wibawa Tら、2000、Brain Dev. 22(2):107〜112)、骨髄単球性白血病(Wutz Dら、1999、Leuk. Lymphoma 35:491〜9.)およびイソ吉草酸血症(Vockley J.ら.、2000、Am. J. Hum. Genet. 66:356〜67)が含まれる。これは特に、多くのエクソンから構成される遺伝子(CLASP−2など)に関して成り立つ。CLASP−2のエクソン/イントロン境界周辺のゲノム配列は、スプライス部位の変異に起因する疾患の同定に向けた診断的アプローチのために有用である。当業者は、疾患に罹患した被験者からの細胞におけるCLASP−2の存在量を健康被験者からの細胞におけるCLASP−2のレベルと比較することにより、細胞集団(例えば、造血細胞、リンパ球)におけるCLASP−2アイソフォームの存在量または存在を疾患状態と相関づけることが可能である。これは任意の数のアッセイ法(例えば、PCR)を用いて行うことができる。
【0115】
選択的スプライシングおよびRNA編集は、互いに密接な関係にあるものの構造が異なる可能性があり、このため別個の機能を発揮する可能性のある種々のタンパク質が同じ遺伝子から生じる機構である。極めて少数の遺伝子から数千種もの異なるタンパク質を生み出すために選択的スプライシングがいかに用いられるかの一例は、ニューレキシン遺伝子ファミリーで示されている(ニューレキシンの総説については、Missler M.およびSuedhof, T.、1998、Trends in Genetics、14:20〜25を参照のこと)。
【0116】
CLASP−2イントロン/エクソンスプライス部位とCLASP−2タンパク質配列との整列化、およびCLASP遺伝子ファミリーにおいて保存的なエクソン/イントロン境界が見いだされることから(図6)、個々のCLASP−2エクソンは機能的に異なるタンパク質ドメインをコードすることが示唆される(図6および実施例4を参照)。ITAMならびにDOCKモチーフ1および2はスプライス部位に囲まれている(アミノ酸残基946および1063);DOCKモチーフ3およびCOILED−COILモチーフ1および2もスプライス部位に囲まれている(それぞれアミノ酸残基1102、1170および1246)。
【0117】
本研究において同定されたCLASP−2の選択的転写物の概要を図3に示す。簡潔に述べると、CLASP−2Aで欠失している1つの選択的エクソンはCLASP−2BおよびCLASP−2Dには存在する。このエクソンはITAMモチーフおよびDOCKモチーフ1をコードするDNA部分を含む。CLASP−2Dタンパク質産物は、CLASP−2AおよびCLASP−2BのC末端の38アミノ酸を含まない。このため、CLASP−2A/Bに特異的なC末端のみに存在するPDZ結合モチーフ(SSVV;アミノ酸残基1286から1289まで)は、CLASP−2D遺伝子産物では欠失している。このPDZ結合モチーフの有無は選択的RNAプロセシングに起因すると考えられる。
【0118】
5.2.3. CLASP スーパーファミリーのメンバー
図5に示す通り、CLASP−2は、類似したモチーフを有する免疫細胞関連タンパク質のスーパーファミリーのメンバーである。CLASP−1は、1999年10月1日に出願された米国特許出願第09/411,328号に記載されている。CLASP−1は、SH3結合ドメインモチーフを含む既知のCLASPの中でも独特である。CLASP−2A、−B、−Cおよび−Eポリペプチドには、CLASP−1に認められるアダプター結合部位またはSH3結合ドメインがない。CLASP−3、CLASP−4、CLASP−5およびCLASP−7は2000年2月14日に出願された同時継続出願中の米国特許出願第60/182,296号に記載されており、その全体がすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる。
【0119】
5.3. CLASP−2 mRNA の発現
実施例2に述べる通り、組織および細胞系におけるCLASP−2 mRNAの発現をノーザン分析によってアッセイした。その結果を図4AおよびBに示す。CLASP−2の発現およびCLASPファミリーの他のメンバーの発現に関するノーザン分析の結果の概要を表2に示す。
【0120】
【表2】
1.ジャーカット=ヒトT細胞株;MV4−11=B骨髄単球;9D10=B細胞株;THP−1=単球;3A9=マウスT細胞;CH27=マウスB細胞株;HL60=ヒト前骨髄球;293=胚性腎上皮細胞(293)
2.表の説明(ノーザンブロットの結果に基づく):−=発現せず;−/+=低発現;+=中程度の発現;++中程度の高発現;+++高発現。
3. CLASP−2 EST(EST 815795)が骨髄cDNAライブラリーから同定された。
4.用いたプローブ(HC2.2)はCLASP−2A、−2B、−2Cおよび−2Dを区別しなかった。
このプローブはCLASP−2A cDNAのヌクレオチド3920〜4650位(731bp長)を含む。
5. 9D10からのRNAの場合、主要な転写物はジャーカット細胞および293細胞に認められた主要な転写物よりもかなり短かった。しかし、9D10にはそれよりも長い転写物も存在していた。プローブHC2.2と9D10の全RNAとのハイブリダイゼーションにより、少なくとも3種類の異なる転写物が明らかになった。図4B参照。
【0121】
表2および図4に示す通り、CLASP−2は胎盤で最も強く発現され、肺、腎臓および心臓がこれに続く。CLASP−3は腎臓および心臓で強く発現され、これよりも弱く胎盤および骨格筋で発現される。CLASP−4は末梢血リンパ球のみで発現される。CLASP−5は末梢血リンパ球で強く発現され、胎盤、腎臓、脾臓および胸腺に存在し、肺、小腸および肝臓では弱く発現される。これは脳、心臓、骨格筋および大腸では発現されない。CLASP−7は肺、心臓、肝臓および腎臓で強く発現されるが、PBL、脳および胸腺では発現されない。
【0122】
種々のCLASPタンパク質の組織発現パターンの違いは、異なるCLASPに免疫機能における異なる役割があり、このため、異なる機能を実現するように別々の標的に向けられる可能性を示している。例えば、CLASPタンパク質はT細胞受容体(TCR)による適切な機能またはシグナル伝達に必要であるため、種々のCLASPの組織特異的分布により、異なる組織における免疫応答を別個に調節することが可能となる。CLASP−2は心臓に存在するため、CLASP−2の機能または発現を阻止することは心臓における免疫応答を選択的に阻止するため(例えば、心移植拒絶またはMI後炎症などの後に、他の部位の免疫を損なわずに、心臓区画における免疫応答を選択的に停止させるため)に有用である。同様に、CLASP−3の阻害により、腎移植後の腎臓の拒絶を阻止することができる。さらに、阻害のレベルを調整することにより、各CLASPが代表する区画における免疫阻止と免疫応答との相対的な程度を調節することが可能である。
【0123】
5.4. CLASP−2 ポリヌクレオチドおよび使用方法
本発明は、種々のCLASP−2ポリヌクレオチドおよびそれらの使用のための方法を提供する。1つの面において、本発明のポリヌクレオチドは、CLASP−2タンパク質の少なくとも1つの断片(例えば、免疫原性断片)(例えば、配列番号:2、4、6または10の少なくとも1つの断片)またはその変異体を含むポリペプチドをコードする。もう1つの面において、CLASP−2ポリヌクレオチドを含む分子は、必ずしもCLASP−2タンパク質または断片をコードせずとも、CLASP−2発現を検出するためのプローブまたはプライマーとして、CLASP−2発現の阻害のため(例えば、アンチセンスまたはリボザイムを介した阻害)、遺伝子ノックアウトのためなどに有用である。
【0124】
5.4.1. CLASP−2 ポリヌクレオチド
本発明は、CLASP−2配列またはその相補物の少なくとも8ヌクレオチド(すなわち、ハイブリダイズ可能な部分)を有する、単離または精製された核酸も提供する。その他の態様において、本核酸は、CLASP−2配列または完全長CLASP−2コード配列の少なくとも約25個の(連続した)ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約100ヌクレオチド、約150ヌクレオチド、約200ヌクレオチド、約250ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約550ヌクレオチド、約600ヌクレオチドもしくは約650ヌクレオチドまたはそれ以上からなる。もう1つの態様において、本核酸の長さは約35、約200または約500ヌクレオチドよりも短い。ポリヌクレオチドは一本鎖でも二本鎖でもよく、DNA、RNA、PNAまたはハイブリッド分子でありうる。
【0125】
特定の面においては、CLASP−2コード配列の少なくとも約10、25、50、100、150、200、250、500、550、600もしくは650ヌクレオチドまたはコード領域全体に対して相補的な配列を含む核酸が提供される。通常、単離されるポリヌクレオチドの長さは約100kbp未満、一般には約50kbp未満であり、しばしば約20kbp未満、約10kbp未満、約5kbp未満または約1000ヌクレオチド未満である。
【0126】
1つの特定の態様においては、CLASP−2核酸もしくはその相補物またはCLASP−2類縁体(derivative)をコードする核酸と、低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズしうる核酸が提供される。考慮対象となるCLASP−2の類縁体には、CLASP−2をコードする遺伝子のスプライシング変種、1つまたは複数のドメインの挿入または欠失がある点で本明細書で開示されるCLASP−2ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の1つと異なるCLASP−2遺伝子ファミリーの他のメンバーなどが非制限的に含まれる。
【0127】
1つの態様において、CLASP−2ポリヌクレオチドは、配列番号:1、3、5もしくは9と同一である、もしくは厳密に相補的であるか、または前記の配列と選択的にハイブリダイズする。さまざまな態様において、本ポリヌクレオチドは、CLASP−2 mRNAまたはゲノム配列の特定のタンパク質ドメインもしくは領域をコードするヌクレオチド配列または特定の遺伝子エクソンと同一である、もしくは厳密に相補的であるか、それと選択的にハイブリダイズする。このようなポリヌクレオチドは、CLASP−2の規定種が同定されるように選択しうるため、プローブとして特に有用である。
【0128】
本明細書で具体例として挙げるポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列に加えて、本発明は、他の種に由来するCLASP−2相同体、対立遺伝子変異体およびスプライシング変種、ならびに本明細書に開示する他の変異体も考慮の対象とする。CLASP−2遺伝子には転写物の選択的スプライシングの証拠が認められる。
【0129】
例えば、CLASP−2AおよびCLASP−2Cは互いに明らかなスプライシング変種として関連しており、CLASP−2CはCLASP−2Aには認められないエクソンを1つ含む。このエクソン配列は、
である(ペプチド配列:RDFERLAHLYDTLHRAYSKVTEVMHSGRRLLGTYFRVAFFGQGFをコードする)。当業者には明らかであると考えられる。上記の核酸配列に対応するポリヌクレオチドプローブもしくはプライマーを用いることにより、または上記のペプチドを特異的に認識する抗体、もしくは以下の表3に示すようなポリヌクレオチドプローブもしくはプライマーを用いることにより、異なるCLASPアイソフォームを区別することが可能である(例えば、差異を伴う発現を検出するために)。
【0130】
【表3】
【0131】
5.4.1.1. 実質的同一性
いくつかの態様において、本発明のCLASP−2ポリヌクレオチドは、配列番号:1、3、5もしくは9またはそれらの断片と実質的に同一である。
【0132】
2つの核酸配列が実質的に同一であるという1つの指標は、2つのポリヌクレオチドが、最適な整列化を行った際に特定領域にわたって特定の配列一致率、例えば、通常は少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%の同一性を有することである。
【0133】
2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう1つの指標は、以下に述べる通り、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生された抗体と免疫学的に交差反応性を有することである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的置換のみの点で異なる場合には、ポリペプチドは第2のポリペプチドと一般に実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう1つの指標は、2つの分子またはその相補物が以下に述べるストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0134】
2つの核酸配列(例えば、配列番号:1のCLASP−2配列の天然の対立遺伝子)が実質的に同一であるというさらにもう1つの指標は、同一のプライマーを用いて配列を増幅しうることである。例えば、CLASP−2ポリヌクレオチドは、表3に示すプライマー対を用いて、ヒトリンパ球由来のcDNAからPCRで増幅することができる。
【0135】
表3のプライマーは、CLASP−2スプライシング変種の増幅のためにも有用である。2つの核酸配列が実質的に同一であるというもう1つの指標は、それらが以下に述べるストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズすること(すなわち、1つの配列が第2の配列の相補物とハイブリダイズすること)である。
【0136】
5.4.1.2. 選択的ハイブリダイゼーション
本発明は、例に挙げたCLASP−2配列と選択的にハイブリダイズする核酸にも関する(これらの配列の厳密な相補物とハイブリダイズすることを含む)。選択的ハイブリダイゼーションは、高ストリンジェンシー条件(「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とも呼ばれる)、中程度のストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件の下で起こりうる。
【0137】
5.4.1.2.1. 高ストリンジェンシー
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、プローブがその標的となる部分配列と典型的には核酸の複合混合物としてハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしないと考えられる条件のことである。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、環境が異なれば異なると考えられる。長い配列ほど高温で特異的にハイブリダイズすると考えられる。核酸のハイブリダイズに関する詳細な手引きはティッセン(Tijssen)、生化学および分子生物学における技法―核酸プローブとのハイブリダイゼーション(Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Probe)、「ハイブリゼーションの原理よび核酸アッセイ法の戦略の概観(Overview of principles of Hybridization and the strategy of nucleic acid assays)」(1993)。
一般にストリンジェントな条件は、規定のイオン強度、pHでの特異的配列の融点(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に対して相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下で)である(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは平衡状態でプローブの50%が占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度がナトリウムイオン(または他の塩の)濃度で約1.0M未満、典型的には約0.01〜1.0Mであり、pH 7.0〜8.3であって、温度が短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合は少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを上回るもの)の場合は少なくとも約60℃であると考えられる。また、ホルムアミドなどの不安定化剤(destabilizing agent)を添加してストリンジェントな条件を実現することもできる。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションのためには、陽性シグナルはバックグラウンドの少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドのハイブリダイゼーションの10倍である。高ストリンジェンシーまたはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例には以下のものが含まれる:50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDSにて42℃でインキュベート、または5×SSCおよび1%SDSにて65℃でインキュベートし、0.2×SSCおよび0.1%SDS、65℃中で1回洗浄する。1つの特定の態様においては、以下の高ストリンジェンシー条件下でCLASP−2核酸とハイブリダイズしうる核酸が提供される:DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションを、6×SSC、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、1mM EDTA、0.02%PVP、0.02%フィコール、0.02%BSAおよび500μg/ml変性サケ精子DNAから構成される緩衝液中にて65℃で8hから一晩かけて行う。100μg/ml変性サケ精子DNAおよび5〜20×106cpmの32P標識プローブを含むプレハイブリダイゼーション混合液中にて65℃で8〜16hかけてフィルターをハイブリダイズさせる。フィルターの洗浄は2×SSC、0.1%SDSを含む溶液中にて65℃で15〜30h行う。これに続いて、オートラジオグラフィーの15〜30分前に、0.2×SSCおよび0.1%、50℃中での洗浄を1回行う。
【0138】
5.4.1.2.2. 中程度のストリンジェンシー
もう1つの特定の態様においては、中程度のストリンジェンシー条件下でCLASP−2核酸とハイブリダイズしうる核酸が提供される。このような中程度のストリンジェンシー条件を用いる手順の例は以下の通りである:DNAを含むフィルターを、6×SSC、5×デンハルト液、0.5%SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中にて55℃で6h前処理する。ハイブリダイゼーションは同じ溶液中で行い、5〜20×106cpmの32P標識プローブを用いる。フィルターをハイブリダイゼーション混合液中にて55℃で12〜16hインキュベートした後、1×SSCおよび0.1%SDSを含む溶液中にて50℃で30分ずつ2回洗浄する。フィルターをブロット状態で乾燥させ、オートラジオグラフィーのために露出させる。用いうる、中程度のストリンジェンシーのその他の条件は当技術分野で周知である。フィルターの洗浄は、0.2×SSCおよび0.1%SDSを含む溶液中にて45℃で1hかけて行う。
【0139】
5.4.1.2.3. 低ストリンジェンシー
このような低ストリンジェンシー条件を用いる手順の非制限的な例は以下の通りである(ShiloおよびWeinberg、1981、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:6789〜6792も参照されたい):DNAを含むフィルターを、35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、5mM EDTA、0.1%PVP、0.1%フィコール、1%BSAおよび500μg/ml変性サケ精子DNAを含む溶液中にて4℃で6h前処理する。ハイブリダイゼーションは、0.02%PVP、0.02%フィコール、0.2%BSA、100g/mlサケ精子DNA、10%(wt/vol)硫酸デキストランに変更した上記の溶液中で行い、5〜20×106cpmの32P標識プローブを用いる。フィルターをハイブリダイゼーション混合液中にて4℃で18〜20hインキュベートした後、2×SSCおよび0.1%SDSを含む溶液中にて55℃で1.5h洗浄する。洗浄液を新たな溶液に交換し、50〜55℃でさらに30分間インキュベートする。フィルターをブロット状態で乾燥させ、オートラジオグラフィーのために露出させる。必要に応じて、フィルターに60〜65℃で3回目の洗浄を行い、フィルムに再露出させる。用いうる、低ストリンジェンシーのその他の条件は当技術分野で周知である(例えば、異種間ハイブリダイゼーションに用いられるものなど)。
【0140】
5.4.1.3. CLASP−2 の変異体および断片
本発明のCLASP−2変異体は、コード領域、非コード領域またはその両方に変化を含みうる。特に好ましいものは、サイレントな置換、付加または欠失を生じるものの、コードされるポリペプチドの特性または活性は変わらないような変化を含むポリヌクレオチド変異体である。遺伝暗号の縮重性に起因するサイレント置換によって生じるヌクレオチド変異体が好ましい。CLASP−2ポリヌクレオチド変異体は、例えば、特定の宿主に関してコドン発現を最適化する(ヒトmRNAにおけるコドンを大腸菌などの細菌宿主に好ましいものに変更する)ためといった、さまざまな理由で作製することができる。
【0141】
例となるCLASP−2ポリヌクレオチド断片は好ましくは、その長さが少なくとも約15ヌクレオチドであり、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも約40ヌクレオチドである、または50、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650ヌクレオチドを上回る。断片の例には、配列番号:1のヌクレオチド番号約1〜50、51〜100、101〜150、151〜200、201〜250、251〜300、301〜350、351〜400、401〜450、451〜500、501〜550、551〜600から末端までの配列を少なくとも有する断片、または寄託されたクローン中のcDNAコード配列を含む断片が含まれる。この文脈における「約」には、具体的に列挙した範囲から、一方の末端または両方の末端で、数(5、4、3、2または1)ヌクレオチドだけ長いまたは短い範囲が含まれる。好ましくは、これらの断片は生物活性を有するポリペプチドをコードする。より好ましくは、これらのポリヌクレオチドは本明細書で考察するプローブまたはプライマーとして用いることができる。
【0142】
1つの態様において、CLASP−2変異体は、例に挙げた配列中に認められるものとは異なるエクソンの組み合わせが組み込まれている点で、配列番号:1、3、5、7または9と異なる。例えば、81g01(ゲンバンクアクセッション番号AF8S 864;Locus HUMYN81g01;526bp;EST配列はWashington University(St. Louis)により1998年8月29日に提出;図3Aおよび図3B参照)は、配列の特定の連鎖に沿ったCLASP−2の同一性に基づくhCLASP−2の変異体である。5’から3’方向にみると、これはCLASP−2Aと同一な315ヌクレオチドの連鎖から始まっている。その後にはCLASP−2Aからみてギャップがあり、これは別のCLASP−2アイソフォームであるhCLASP−2D(KIAA1058)中のギャップと同一である。そのギャップの代わりに、他のアイソフォームには認められない16アミノ酸の挿入物(48ヌクレオチド)が存在し、その後には再びCLASP−2Aと同一なほぼ150bpのヌクレオチド連鎖が続く。これは、異なるヌクレオチド連鎖の両側に特定の配列同一性があることからみて選択的スプライシングの特徴である。
【0143】
既知の蛋白工学および組換えDNA技術の方法を用いることにより、CLASP−2ポリペプチドの特徴が改善または変化するような変異体を作製することができる。例えば、生物機能の実質的な喪失を伴うことなく、CLASP−2タンパク質のN末端またはC末端から1つまたは複数のアミノ酸を除去することが可能である。
【0144】
さらに、ポリペプチドのN末端またはC末端から1つまたは複数のアミノ酸を除去することによって1つまたは複数の生物機能の改変または喪失がもたらされる場合にも、他の生物活性を依然として保つことは可能である。例えば、分泌型の残基の大半には満たない部分がN末端またはC末端から除去された場合には、分泌型を認識する抗体を誘導する、および/またはそれと結合する欠失変異体の能力は保持される可能性が高いと考えられる。タンパク質のNor C末端残基を欠く特定のポリペプチドがこのような免疫原性活性を保持しているか否かは、本明細書に記載の、およびそれ以外の当技術分野で知られたルーチンの方法によって容易に判断しうる。
【0145】
したがって、本発明はさらに、生物活性を示すCLASP−2ポリペプチド変異体を含む。このような変異体は、活性にほとんど影響を及ぼさないように当技術分野で知られた一般的規則に従って選択された欠失、挿入、逆位、反復および置換を含む。例えば、表現型の上でサイレントなアミノ酸置換の作製の仕方に関する手引きはボウイ(Bowie, J. U.)ら、Science 247:1306〜1310(1990)に提示されており、そこで著者らはアミノ酸配列の変化に対する耐性を検討するためには主に2通りの戦略があることを示している。
【0146】
第1の戦略では、進化の過程における自然淘汰によるアミノ酸置換の耐性を利用する。異なる種におけるアミノ酸配列を比較することにより、保存的なアミノ酸を同定することができる。これらの保存的アミノ酸はタンパク質の機能のために重要である可能性が高い。これに対して、置換が自然淘汰に耐えてきたアミノ酸の位置は、これらの位置がタンパク質の機能に決定的に重要ではないことを示す。このため、アミノ酸置換に耐えうる位置は、タンパク質の生物活性を維持しながら改変することができると考えられる。
【0147】
第2の戦略では、タンパク質の機能に決定的に重要な領域を同定するために、遺伝子工学を用いて、クローニングされた遺伝子の特定の30箇所にアミノ酸変化を導入する。例えば、部位特異的変異誘発法またはアラニンスキャニング変異誘発法(分子中のあらゆる残基への単一のアラニン変異の導入)を用いることができる(CunninghamおよびWells、1989、Science 244:1081〜1085)。続いて、その結果得られた変異分子を生物活性に関して試験することができる。
【0148】
さまざまな態様において、CLASP−2ポリヌクレオチド断片は、前記のCLASP−2構造ドメインもしくは機能性ドメインに関するコード領域、またはそれとハイブリダイズする領域を含む。図に示す通り、このような好ましい領域には以下のドメイン/モチーフが含まれる:ITAM、DOCK、COILED/COILEDおよびPBM。したがって、例えば、保存的ドメインの範囲に含まれる配列番号:2、4、6または10のポリペプチド断片は、特に本発明の考慮の対象である(図3参照)。さらに、これらのドメインをコードするポリヌクレオチド断片も考慮の対象である。このようなポリペプチド断片は、例えば、CLASP−2発現細胞におけるCLASP−2の機能の阻害物質としての用途がある。
【0149】
5.4.2. CLASP−2 ポリヌクレオチドの使用
本発明のCLASP−2ポリヌクレオチドは、さまざまな用途に有用である。本発明の1つの面において、本発明のポリペプチドをコードするCLASP−2ポリヌクレオチドは、例えば、抗CLASP抗体を産生させるため、または治療用ポリペプチドとして用いるために、CLASP−2ポリペプチドを発現させる目的で用いられる(例えば、本明細書に述べるように)。もう1つの面において、CLASP−2ポリヌクレオチドまたはその断片は、診断目的に用いることができる(例えば、CLASP−2の発現に関するプローブとして)。特に、CLASP−2をリンパ球で発現させることができるため、リンパ球マーカーとしてのCLASP−2の発現を検出するためにCLASP−2ポリヌクレオチドを用いることが可能である。診断目的には、疾患状態におけるCLASP−2遺伝子の発現またはCLASP−2遺伝子の異常発現を検出するためにCLASP−2ポリヌクレオチドを用いうる。もう1つの面において、CLASP−2ポリヌクレオチドまたは断片は治療目的に用いられる。例えば、CLASP−2の発現を阻害するように働くアンチセンスRNAおよびDNA分子ならびにリボザイムなどのオリゴヌクレオチド配列を用いてCLASP−2発現を阻害するための方法が本発明の範囲に含まれる。もう1つの面において、CLASP−2ポリヌクレオチドは、例えば、CLASP−2アゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングする目的で、トランスジェニックおよびノックアウト動物を作製するために用いることができる。もう1つの面において、CLASP−2ポリヌクレオチドは、CLASP−2アゴニストおよびアンタゴニストのスクリーニングのために用いることができる。
【0150】
5.4.2.1. 検出、診断および治療のための CLASP−2 ポリヌクレオチドの使用
本発明のCLASP−2ポリヌクレオチドは、細胞におけるCLASP−2発現の検出のため、およびCLASP−2の異常発現に起因する疾患または障害(例えば、免疫不全状態)の診断において有用である。CLASP−2 mRNAまたはタンパク質の異常発現とは、健康被験者から採取した対照リンパ球における発現と比べて、リンパ球(例えば、Tリンパ球またはBリンパ球)または他のCLASP−2発現細胞における発現が少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍高い、または低いことを意味する。CLASP−2ポリペプチドの発現は、本発明の抗CLASP−2抗体を用いるELISAによって容易に測定しうる。CLASP−2 mRNAの発現(CLASP−2の特定の種またはスプライシング変種の発現を含む)は、本発明のプローブおよびプライマーを用いる、定量的ノーザン分析もしくは定量的PCR、LCRまたは他の方法によって測定することができる。
【0151】
1つの態様において、本発明のアッセイ法は、CLASP−2遺伝子産物の検出のための増幅利用アッセイ法である。増幅利用アッセイ法においては、CLASP−2 mRNAまたはcDNAの全体または一部(以下では「標的」とも称する)を増幅した後、増幅産物を直接的または間接的に検出する。テンプレートとして作用する潜在的な遺伝子産物が存在しなければ、増幅産物は全く生成されないか(例えば、予想されるサイズのもの)、または増幅が非特異的であって一般に単一の増幅産物は生成されない。これに対して、潜在的な遺伝子または遺伝子産物が存在する場合には、標的配列が増幅され、潜在する遺伝子またはmRNAの存在および/または量の指標が得られる。標的増幅利用アッセイ法は当業者には周知である。
【0152】
本発明は、CLASP−2遺伝子および遺伝子産物を検出するための多岐にわたるプライマーおよびプローブを提供する。このようなプライマーおよびプローブは、標的核酸とハイブリダイズする程度に、CLASP−2遺伝子または遺伝子産物に対して十分に相補的である。プライマーは典型的には少なくとも6塩基長、通常は約10〜約100塩基長の範囲、典型的には約12〜約50塩基長の範囲、しばしば約14〜約25塩基長の範囲であり、しばしば15〜30(例えば、18〜22ヌクレオチド)のPCRプライマーが用いられる。しかし、当業者はプライマーの長さを調整することが可能である。当業者は、本開示を吟味することにより、ルーチンの方法を用いて、CLASP−2遺伝子もしくは遺伝子産物の全体もしくは任意の部分を増幅するためのプライマーを選択すること、または変異型遺伝子産物、CLASP−2対立遺伝子などを区別することが可能であると考えられる。単一オリゴマー(例えば、米国特許第5,545,522号)、オリゴマーの入れ子状セット、またはオリゴマーの縮重プールも増幅に用いることができる。
【0153】
プライマーまたはプローブの標的を差異を伴って用いられるエクソン(または変異体によって異なるエクソン−エクソン接合部)とすることにより、本開示の手引きに基づいて種およびスプライシング変種が区別されるようにプローブおよびプライマーを選択しうることは理解されると考えられる。
【0154】
本方法には、患者から細胞の試料を採取する段階、試料の細胞から核酸を単離する段階(例えば、ゲノム、mRNAまたはその両方)、CLASP−2遺伝子(存在すれば)のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こるような条件下で、核酸試料をCLASP−2遺伝子と特異的にハイブリダイズする1つまたは複数のプライマーと接触させる段階、ならびに増幅産物の有無を検出する段階、または増幅産物のサイズを検出し、その長さを対照試料と比較する段階が含まれうる。米国特許第4,683,195号および第4,683,202号、ランデグラン(Landegran)ら、1988、Science 241:1077〜1080;Nakazawaら、1994、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:360〜364、アブラバヤ(Abravaya)ら、1995、Nucleic Acids Res. 23:675〜682)を参照。
【0155】
CLASP−2遺伝子産物は免疫系(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球およびマクロファージ)で発現されるため、発現は一般にこれらの細胞においてアッセイされると考えられる。リンパ球、マクロファージなどの単離には、当業者に周知の方法を用いうる(例えば、Coligan, J. E.ら(編)、1991、免疫学における最新プロトコール(Current Protocols in Immunology)、John Wiley & Sons、NY;この参考文献はすべての目的に関して参照として本明細書に組み入れられる)。1つの態様において、アッセイ法は生検または剖検に由来する組織に対して行われる。
【0156】
さまざまな態様において、CLASP−2遺伝子の発現は、検出プローブと細胞(例えば、リンパ球)から入手したmRNAまたはcDNAとのハイブリダイゼーションによって検出される。核酸ハイブリダイゼーション法を用いる特定のDNAまたはRNAの測定のためのさまざまな方法が当業者に知られている(Sambrookら、前記を参照)。ハイブリダイゼーション利用アッセイ法とは、プローブ核酸を標的核酸とハイブリダイズさせて、ハイブリダイゼーション複合体を形成させるアッセイ法のことを指す。通常、本発明の核酸ハイブリダイゼーションプローブは、CLASP−2遺伝子またはRNA配列の連続配列と完全または実質的に同一である。好ましくは、核酸プローブの長さは少なくとも約50塩基、しばしば少なくとも約20塩基、時に少なくとも約200塩基であり、少なくとも約300〜500ヌクレオチドまたはそれ以上である。当技術分野ではさまざまなハイブリダイゼーション法が知られており、それらは実際に多くの市販の診断用キットの基盤となっている。
【0157】
核酸ハイブリダイゼーションに用いるための核酸プローブ配列を選択する方法は、サムブルック(Sambrook)ら、前記に考察されている。いくつかの形式では、標的およびプローブの少なくとも1つを固定する。固定される核酸はDNA、RNAまたは別のオリゴ−またはポリ−ヌクレオチドであってよく、天然または非天然型のヌクレオチド、ヌクレオチド類似体または骨格を含みうる。このようなアッセイ法は、以下のものを含むいくつかの形式のいずれであってもよい:サザンブロット、ノーザンブロット、ドットブロットおよびスロットブロット、高密度ポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドアレイ(例えば、GeneChips(登録商標)Affymetrix)、ディップスティック、ピン、チップ、またはビーズ。これらの技法はすべて当技術分野で周知であり、多くの市販の診断用キットの基盤となっている。ハイブリダイゼーション法の一般的な記載は、ハーメス(Hames)ら編、1985、核酸ハイブリダイゼーション、実践的アプローチ(Nucleic Acid Hybridization、Practical Approach)IRL Press;GallおよびPardue、1969、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、63:378〜383およびJohnら、1969、Nature、223:582〜587)になされている。
【0158】
当業者にはさまざまな核酸ハイブリダイゼーションの形式が知られている。例えば、1つの一般的な形式は、標的核酸を標識した相補的プローブとハイブリダイズさせる直接ハイブリダイゼーションである。一般に、ハイブリダイゼーションのためには標識核酸が用いられ、標識によって検出可能なシグナルが得られる。CLASP−2 mRNAの有無または量を評価するための1つの方法は、試料由来のRNAのノーザンブロット、および標識したCLASP−2特異的核酸プローブのハイブリダイゼーションである。試料におけるCLASP−2タンパク質をコードするDNAの有無または量を評価するための1つの有用な方法には、試料由来のDNAのサザンブロット、および標識したCLASP−2特異的核酸プローブのハイブリダイゼーションが含まれる。
【0159】
その他の一般的なハイブリダイゼーション形式には、サンドイッチアッセイ法および競合アッセイ法または置換アッセイ法が含まれる。サンドイッチアッセイ法は、核酸配列の検出または単離のための商業的に有用なハイブリダイゼーションアッセイ法である。このようなアッセイ法では、固体支持体に共有的に固定された「捕捉」核酸および溶液中にある標識した「シグナル」核酸を用いる。標的核酸は生物試料または臨床試料から提供されると考えられる。「捕捉」核酸および「シグナル」核酸プローブは標識核酸とハイブリダイズして「サンドイッチ」型ハイブリダイゼーション複合体を形成する。有効であるためには、シグナル核酸は捕捉核酸とハイブリダイズを行えない必要がある。
【0160】
1つの態様において、CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、免疫細胞の活性化、分化を活性化または阻害することにより、免疫系の不全症または障害の治療に有用である。免疫細胞は造血と呼ばれる過程によって生じ、多能性幹細胞から骨髄性細胞(血小板、赤血球、好中球およびマクロファージ)およびリンパ系細胞(BおよびTリンパ球)が生じる。これらの免疫不全症または障害の原因は、癌およびいくつかの自己免疫疾患などのように遺伝性、体細胞性でもよく、後天性(例えば、化学療法または毒素による)または感染性でもよい。
【0161】
もう1つの態様において、CLASP−2ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、造血細胞の欠乏症または障害の治療または検出のために有用である。CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、ある特定の(または多くの)種類の造血細胞の減少に伴うような障害を治療するための取り組みにおいて、多能性幹細胞を含む造血細胞の分化および増殖を促進させるために用いうると考えられる。免疫不全症候群の例には、血液蛋白障害(例えば、無ガンマグロブリン血症、異常ガンマグロブリン血症)、血管拡張性失調症、分類不能型免疫不全症、ディジョージ症候群、HIV感染症、HTLV−BLV感染症、白血球粘着不全症、リンパ球減少症、食細胞殺菌作用機能不全、重症複合免疫不全症(SCID)、ビスコット・オールドリッチ症、貧血、血小板減少症または血色素尿症が非制限的に含まれる。
【0162】
1つの態様において、CLASP−2ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、自己免疫疾患の治療または検出に有用である。本明細書で用いる「自己免疫疾患」という用語は、当技術分野における通常の意味を有し、免疫系が哺乳動物の体内の外来性の免疫原性物質および/または自家(「自己」)物質を区別することができず、その結果、自家(「自己」)組織および物質を異物であるかの如くにみなし、それらに対して免疫応答を引き起こすような、哺乳動物免疫系の自然発生性または誘発性の機能障害のことを指す。自己免疫疾患は、自己組織と反応する抗体の産生、および/または内因性自己抗原に対して自己反応性である免疫エフェクターT細胞の活性化を特徴とする。主として3つの免疫病理学的機構が自己免疫疾患を媒介するように作用する:1)自己抗体が機能性細胞受容体または他の細胞表面分子を標的とし、特殊化した細胞機能を刺激または阻害する。その際には細胞または組織の破壊を伴うことも伴わないこともある;2)自己抗原−自己抗体免疫複合体が細胞間液中または全身循環中に形成され、最終的に組織障害を媒介する;および3)リンパ球が、サイトカインの遊離または他の破壊性の炎症性細胞種を病変に誘引することによって組織病変を引き起こす。これらの炎症性細胞は続いて、炎症性疾患に関連した脂質メディエーターおよびサイトカインの産生をもたらす。
【0163】
自己免疫疾患の多くは、免疫細胞が自己を異物と不適切に認識することに起因する。この不適切な認識は、宿主組織の破壊につながる免疫応答を引き起こす。このため、免疫応答、特にT細胞の増殖または分化を阻害しうるCLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの投与は、自己免疫疾患の予防に有効な治療法となりうる。
【0164】
CLASP−2による治療または検出が可能な自己免疫疾患の例には、アジソン病、溶血性貧血、抗リン脂質抗体症候群、慢性関節リウマチ、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎、眼炎、水泡性類天疱瘡、天疱瘡、多腺性内分泌障害、紫斑病、ライター病、スティフマン症候群、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫性肺炎、ギラン・バレー症候群、インスリン依存性糖尿病および自己免疫性炎症性癌疾患が非制限的に含まれる。
【0165】
同様に、喘息(特にアレルギー性喘息)などのアレルギー性の反応および疾患、または他の呼吸器障害も、CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドによって治療しうる。さらに、抗原性分子に対するアナフィラキシーまたは過敏症を治療するためにCLASP−2を用いることも可能である。
【0166】
1つの態様において、CLASP−2ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、臓器拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)の治療および/または予防のために用いられる。臓器拒絶反応は、宿主免疫細胞による免疫応答を介した移植組織の破壊によって起こる。同様に、免疫応答はGVHDにも関与しているが、この場合には、移植された外来性の免疫細胞が宿主組織を破壊する。免疫応答、特にT細胞の増殖、分化を阻害するCLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの投与は、臓器拒絶反応またはGVHDの予防に有効な治療法となりうる。
【0167】
同様に、もう1つの態様において、CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、炎症を修飾するために用いられる。「炎症」という用語は、急性反応(すなわち、炎症過程が活動性である反応)および慢性反応(すなわち、緩徐な進行および新たな結合組織の形成を特徴とする反応)の両方を指す。急性および慢性炎症は、それにかかわる細胞の種類によって区別しうる。急性炎症にはしばしば多形核好中球がかかわり、一方、慢性炎症は通常、リンパ組織球性および/または肉芽種性反応を特徴とする。炎症には特異的防御系および非特異的防御系の両方の反応が含まれる。特異的防御系反応とは、抗原(自己抗原も含まれる可能性がある)に対する特異的な免疫系の反応である。非特異的防御系反応とは、免疫記憶を持てない白血球によって媒介される炎症反応である。このような細胞には顆粒球、マクロファージ、好中球および好酸球が含まれる。
【0168】
例えば、CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、炎症反応にかかわる細胞の増殖および分化を阻害しうる。これらの分子は、感染に伴う炎症(例えば、敗血症性ショック、敗血症または全身性炎症反応(SIRS))、虚血−再灌流障害、致死性内毒素症、関節炎、補体性超急性拒絶反応、腎炎、サイトカインもしくはケモカイン誘発性の肺損傷、炎症性腸疾患、クローン病、またはサイトカイン(例えば、TNFまたはIL−1)の過剰産生に起因するものを含む、慢性疾患および急性疾患のいずれの炎症性疾患の治療にも用いることができる。特定の種類の炎症の例には、びまん性炎症、局所性炎症、クループ性炎症、間質性炎症、閉塞性炎症、実質性炎症、反応性炎症、特異性炎症、中毒性炎症および外傷性炎症がある。
【0169】
もう1つの態様において、CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、感染因子の治療または検出のために用いられる。例えば、免疫応答を高めることにより、特にB細胞および/またはT細胞の増殖および分化を促進することにより、感染性疾患を治療することができる。免疫応答は、既存の免疫応答を高めること、または新たな免疫応答を惹起することによって高めることができる。CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、これらの症候群または疾患の任意のものを治療または検出するために用いうる。
【0170】
5.4.2.2. CLASP−2 ポリヌクレオチドのスクリーニングにおける使用
生物試料におけるのhCLASP−2ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の有無は、臨床方針の意思決定を補助するための医学的診断法などのスクリーニングアッセイ法に用いることができる。1つの態様において、hCLASP−2を用いる診断法には、原因不明の膣出血に関するスクリーニングアッセイ法が含まれる。以下に考察するいくつかの例では、膣出血が胎盤成分を含むか否かに関する知見により、出血の原因をある程度鑑別することができる(Hart FD編、1985、フレンチ鑑別診断インデックス(French’s Index of Differential Diagnosis)、第12版. John Wright & Sons、pp. 561〜63)。これらの場合には、血中での低発現と対比して胎盤ではhCLASP−2ヌクレオチド配列が高発現するため(図4A)、hCLASP−2ヌクレオチドまたはタンパク質の存在に基づいて胎盤の存在を検出することが可能と考えられる。このような検出は、定量的RT−PCR、ノーザン分析、ウエスタン分析、ELISA、および標識抗hCLASP−2抗体の使用による励起蛍光細胞分取法(FACS)によって行える(Sambrookら、1989、分子クローニング(Molecular Cloning)、第2版、Cold Spring Harbor Lab. Press;Harlowら、1988、抗体、実験マニュアル(Antibodies, a laboratory manual)、Cold Spring Harbor Lab. Press)。
【0171】
例えば、hCLASP−2は以下のスクリーニングアッセイ法に用いることができる。
【0172】
(1)ある女性が出産して分娩後出血を呈している。この場合には、胎盤組織の存在により、子宮内容の外科的除去術を必要とする「受胎産物残留」と呼ばれる状態であることが示される(DechemeyおよびPernol編、1996、最新産婦人科診療(Current Obstetric & Gynecologic Diagnosis & Treatment)、第8版、McGraw Hill)。
【0173】
(2)ある妊婦が原因不明の膣出血を呈している。この場合には、胎盤組織の存在により、胎児が出産に至る予後が不良であることを意味する「切迫流産」と呼ばれる状態であることが示される(DecherneyおよびPemol編、1996、最新産婦人科診療(Current Obstetric & Gynecologic Diagnosis & Treatment)、第8版、McGraw Hill)。
【0174】
(3)出産可能な年齢の女性が出血を呈し、妊娠検査は陽性であるが子宮内妊娠の所見は認められないことが明らかになった。この場合には、鑑別診断の中で最も重篤なものは医学的緊急事態である子宮外妊娠である。しかし、別の頻度の高い診断として堕胎完了または流産もある。膣出血における受胎産物(すなわち、胎盤)の存在は、堕胎完了の診断の可能性が子宮外妊娠よりも高いことを強く示す(DecherneyおよびPernol編、1996、最新産婦人科診療(Current Obstetric & Gynecologic Diagnosis & Treatment)、第8版、McGraw Hill)。
【0175】
もう1つの態様において、hCLASP−2を用いる診断法には、hCLASP−2を高レベルで発現する生命維持に必要な組織への損傷を判断するためのスクリーニングアッセイ法が含まれる。このような組織には、腎臓、心臓および肺が含まれる(図4A)。これらの組織への損傷は、hCLASP−2を含む細胞および細胞成分の周囲の体液(以下に明記する)への漏出をもたらす可能性がある。ウエスタン分析もしくはELISAによってこれらの周囲体液中に異常に高いレベルのhCLASP−2タンパク質が検出されれば、またはRT−PCRもしくはノーザン分析によってこれらの体液中に異常に高いレベルのhCLASP−2 RNAが検出されれば、組織損傷の診断に助けになると考えられる。
【0176】
腎損傷の場合には、hCLASP−2ヌクレオチドもしくはアミノ酸配列またはそれらの断片が尿中に出現することが予想される。異常に高いレベルのhCLASP−2が検出されることは、腎炎および尿細管壊死の両方を診断する助けとなり、腎以外の原因による蛋白尿との鑑別が可能となる。腎炎の早期診断は、ループス腎炎の早期診断および治療によって非可逆的な腎障害を予防することが可能な、全身性エリテマトーデスを示唆する臨床徴候および症状を有する患者には特に有意義である(Cameron J.S.、1999、J Nephrol 12 Suppl 2:S29〜41)。現時点では尿細管壊死を薬物療法によって改善することはできないが、尿細管壊死を腎前性腎不全から鑑別することは、尿量減少性の入院患者に対する治療計画を立てる上で極めて重要である(Bidani A.およびChurchill P.C.、1989、Dis Mon 35:57〜132)。
【0177】
心筋障害の場合には、hCLASP−2核酸もしくはアミノ酸配列またはそれらの断片が血中に出現することが予想される。これは、標準的なELISAまたは電気泳動法による、心筋梗塞および虚血後の血液中の他の心筋タンパク質(例えば、クレアチンキナーゼ、トロポニン)の高値に関する現在の標準的なモニタリング行為と類似している(Fauciら(編)、1998、ハリソン内科学(Harrison’s Principles of Internal Medicine)、第14版、McGraw Hill、pp. 1352〜1375)。hCLASP−2が心筋に存在し、骨格筋および血液には存在しないことから、hCLASP−2は心筋障害の診断およびモニタリングのための理想的なマーカーとなる。
【0178】
心筋障害とは異なり、肺障害は肺特異的タンパク質に関する血清のアッセイ法によってはルーチンには診断されていない。心筋梗塞と同様に、肺梗塞でも肺特異的なタンパク質および細胞が全身循環中に遊離される。肺塞栓(PE)または肺炎に起因する肺梗塞では、hCLASP−2を有する細胞またはタンパク質/ペプチドが全身循環中に遊離されると予想される。血清中のhCLASP−2タンパク質または血中のRNAが検出されれば、適切な臨床環境では肺梗塞の診断の助けになると考えられる。PEを診断するための現在の方法は、費用がかかるだけでなく、特異性および感度も乏しく、本疾患の誤診は入院患者の予防しうる死亡の主因となっている(Raskob G.E.およびHull R.D.、1999、Curr Opin Hematol. 6(5):280〜4)。
【0179】
もう1つの態様において、hCLASP−2を用いる診断法には、造血細胞系列の障害を同定するためのスクリーニングアッセイ法が含まれる。hCLASP−2はヒトT細胞、B細胞では発現されるが、骨髄細胞系列由来の細胞では発現されない。T細胞およびB細胞におけるhCLASP−2アイソフォームの違いにより、T細胞およびB細胞系列の癌をさらに鑑別することが可能となる(図4B)。造血細胞の種類を正確に同定することは、白血病およびリンパ腫の患者の化学療法および放射線療法を進める上で極めて重要である(Fauciら編、1998、ハリソン内科学(Harrison’s Principles of Internal Medicine)、第14版、McGraw Hill、pp. 695〜712)。hCLASP−2の発現の差は、FACS、免疫蛍光法、免疫ペルオキシダーゼ染色法、RT−PCR、インサイチューハイブリダイゼーションまたはRNAブロット分析によって検出可能である(Sambrook、FritschおよびManiatas、分子クローニング(Molecular Cloning)、第2版、Cold Spring Harbor Lab. Press、1989;Ward MS、Pathology 1999 Nov;31(4):382〜92)。
【0180】
もう1つの態様において、hCLASP−2を用いる診断法には、活性化された免疫系細胞を同定するためのスクリーニングアッセイ法が含まれる。hCLASP−2はPBMCでは一般に極めて低いレベルで発現されるが(これは上記の用途のいくつかには決定的に重要である)、近縁関係にあるマウスCLASP−1タンパク質の表面発現はリンパ球の活性化の過程で変化することが知られている。hCLASP−2タンパク質についても類似した発現の変化が予想される。細胞集団をhCLASP−2の多い集団とhCLASP−2の少ない集団に分離するために、特定の抗原に対して特異的なリンパ球のサブタイプ判定を、例えば、MHCに基づく多量体染色試薬(Altmanら、1996、Science 274:94〜6)を用いて行うことは、その抗原に対する免疫応答の性質を決定する助けになると考えられる。このような理解は、例えば、B型肝炎、C型肝炎およびHIVなどの慢性ウイルス感染症の経過を予測するため、ならびにこれらの感染症に罹患した患者に対する適切な治療方式を設計するために極めて重要である。
【0181】
また、hCLASP−2はウィルムス腫瘍に対する治療薬としても役立つ可能性がある。ウィルムス腫瘍は最も頻度の高い小児の原発性腎腫瘍である(Cotran、KumarおよびCollins、1999、ロビンス・疾患の病理学的基盤(Robbins Pathologic Basis of Disease)、第6版、W.B. Saunders、pp. 487〜89)。本明細書における考察の通り、hCLASP−2は胚性腎上皮細胞である293細胞で高発現される。このため、hCLASP−2核酸もしくはアミノ酸配列またはそれらの断片は、ウィルムス腫瘍に関する腫瘍マーカーとして役立つと考えられる。ウィルムス腫瘍のみで発現されるhCLASP−2変異体を標的とする抗体はウィルムス腫瘍に対する新規治療薬として役立つ可能性があり、抗hCLASP−2抗体と結合させうる他の標的治療薬(例えば、化学療法薬または放射標識)のための送達媒体として働く可能性もある。
【0182】
5.4.2.2.1. CLASP−2 アンチセンス、リボザイムおよび三重鎖ポリヌクレオチド、ならびに使用の方法
CLASP−2 mRNAの翻訳阻害に働く、アンチセンスRNAおよびDNA分子ならびにリボザイムを含むオリゴヌクレオチド配列は、本発明の範囲に含まれる。このような分子は、CLASP−2発現のダウンレギュレーションが望ましい場合に有用である。アンチセンスRNAおよびDNA分子は、標的とするmRNAと結合してタンパク質翻訳を妨げることにより、mRNAの翻訳を直接阻止するように作用する。本発明は、CLASP−2遺伝子産物のインビトロまたはインビボでの発現を低下させるために用いうる方法ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド試薬を提供する。本発明のアンチセンス試薬を標的細胞に投与することにより、CLASP活性の低下が引き起こされる。当業者には明らかと思われ、前記の箇所でも考察した通り(表3)、個々のCLASP−2スプライシング変種を阻害のための特異的な標的とすることができる。または、例えばCLASP−2種のいくつかまたはすべてに認められる配列を認識するアンチセンス分子を設計することにより、全般的な阻害を実現することもできる。
【0183】
A.アンチセンス
何らかの特定の機序に限定されることは意図しないが、アンチセンスオリゴヌクレオチドはセンスCLASP−2 mRNAと結合して、その翻訳を妨げると考えられている。または、アンチセンス分子は、CLASP−2 mRNAにヌクレアーゼ分解に対する感受性を付与し、転写を妨げ、RNA前駆体(「プレmRNA」)をプロセシング、局在もしくは他の点で妨げ、CLASP−2遺伝子からのmRNAの転写を抑制し、または他の何らかの機序によって作用することが可能である。しかし、アンチセンス分子がCLASP−2発現を低下させる具体的な機序が何であるかは特に重要ではない。
【0184】
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、CLASP−2をコードするmRNAまたはCLASP−2遺伝子から転写されるmRNAからの配列と特異的にハイブリダイズする、少なくとも7〜10ヌクレオチド、一般には20個またはそれ以上のヌクレオチドからなるアンチセンス配列を含む。より一般的には、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは約10〜約50ヌクレオチド長または約14〜約35ヌクレオチド長である。
その他の態様において、アンチセンスポリヌクレオチドは、約100ヌクレオチド未満または約200ヌクレオチド未満のポリヌクレオチドである。一般に、本アンチセンスポリヌクレオチドは安定な二本鎖を形成する程度に十分に長く、送達様式に依存するが、必要に応じてインビボに投与しうる程度に十分に短い必要がある。標的配列との特異的ハイブリダイゼーションのために必要なポリヌクレオチドの最小限の長さは、例えば、G/C含量、ミスマッチ塩基(あれば)の位置、標的ポリヌクレオチド集団との比較による配列の一意性の程度、およびポリヌクレオチドの化学的性質(例えば、メチルホスホネート骨格、ペプチド核酸、ホスホロチオエート)などのいくつかの要因に依存する。一般に、特異的ハイブリダイゼーションが確実に起こるためには、アンチセンス配列は標的CLASP−2 mRNA配列と実質的に相補的である。ある一定の態様において、アンチセンス配列は標的配列に対して厳密に相補的である。しかし、アンチセンスポリヌクレオチドには、CLASP−2 RNAまたはその遺伝子に対応する関連した標的配列との特異的結合がポリヌクレオチドの機能特性として保持される限り、ヌクレオチド置換、付加、欠失、移行、転位もしくは修飾、または他の核酸配列もしくは非核酸部分も含まれうる。
【0185】
望ましい特性(例えば、高いヌクレアーゼ耐性、より強固な結合、安定性または望ましいTM)を得るために、本発明のCLASP−2ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを、標準的でない塩基(例えば、アデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジン以外のもの)または標準的でない骨格構造を用いて作製しうることは理解されると考えられる。オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ耐性を付与するための技法には、PCT国際公開公報第94/12633号に記載されたものが含まれる。ペプチド核酸(PNA)骨格を有するオリゴヌクレオチド(Nielsenら、1991、Science 254:1497)、または2’−O−メチルリボヌクレオチド、ホスホロチオエートヌクレオチド、メチルホスホネートヌクレオチド、ホスホトリエステルヌクレオチド、ホスホロチオエートヌクレオチド、ホスホルアミデートが組み込まれたものを含む、多岐にわたる有用な修飾オリゴヌクレオチドを作製することができる。さらに他の有用なオリゴヌクレオチドは、2’位に以下のいずれか1つを含むアルキルおよびハロゲン置換糖部分を含みうる:OH、SH、SCH3、F、OCN、OCH3OCH3、OCH3O(CH2)nCH3、O(CH2)nNH2またはO(CH2)nCH3、式中、nは1〜約10である;C1〜C10の低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリルもしくはアラルキル;Cl;Br;CN;CF3;OCF3;O−、S−もしくはN−アルキル;O−、S−もしくはN−アルケニル;SOCH3SO2CH3;ONO2;NO2;N3;NH2;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換シリル;RNA切断基;コレステリル基;葉酸基;レポーター基;インターカレーター;オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基;またはオリゴヌクレオチドの薬力学特性を改善するための基、および類似の特性を有する他の置換基。オリゴヌクレオチドの取り込みを促進させる葉酸、コレステロールまたは脂質類似体などの他の基を、任意のヌクレオシドの2’位または3’末端もしくは5’末端ヌクレオシドのそれぞれ3’位もしくは5’位に直接またはリンカーを介して結合させることもできる。1つまたは複数のこのような結合物を用いうる。また、オリゴヌクレオチドはペントフラノシル基の代わりにシクロブチルなどの糖模倣基(sugar mimetics)を有してもよい。その他の態様には、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されない、少なくとも1つの修飾型塩基もしくはイノシンなどの「普遍的塩基(universal base)」、またはクエオシンおよびウィブトシン(wybutosine)といった他の標準的でない塩基、ならびにアデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジンのアセチル−、メチル−、チオ−および同様の修飾形態を包含することが含まれうる。本アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ウィブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル(pseudouracil)、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6−ジアミノプリンを非制限的に含む群から選択される、少なくとも1つの修飾塩基部分を含みうる。
【0186】
本発明はさらに、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、アルキルホスホジエステル、スルファメート、3’−チオアセタール、メチレン(メチルイミノ)、3’ −N−カルバメート、モルホリノカルバメート、キラル−メチルホスホネート、短鎖アルキルもしくはシクロアルキル糖間結合(intersugar linkage)を有するヌクレオチド、短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式糖間(「骨格」)結合、もしくはCH2−NH−O−CH2、CH2−N(CH3)−OCH2、CH2−O−N(CH3)−CH2、CH2−N(CH3)−N(CH3)−CH2およびO−N(CH3)−CH2−CH2骨格(ホスホジエステルがO−P−O−CH2の場合)またはそれらの混合物などの骨格類似体を有するオリゴヌクレオチドも提供する。モルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも有用である(米国特許第5,034,506号)。
【0187】
有用な参考文献には、オリゴヌクレオチドおよびその類似体、実践的アプローチ(Oligonucleotides and Analogues、Practical Approach)、エクスタイン(F. Eckstein)編、IRL Press、Oxford University Press(1991);アンチセンスの手法(Antisense Strategies)、Annals of the New York Academy of Sciences、Volume 600、バサーガ(Baserga)およびデンハルト(Denhardt)編(NYAS 1992);ミリガン(Milligan)ら、9 July 1993、J. Med. Chem. 36(14):1923〜1937;アンチセンスの研究および応用(Antisense Research and Applications)(1993、CRC Press)の全体および特にサンギ(Sanghvi)による「核酸における複素環式塩基修飾およびアンチセンスオリゴヌクレオチドにおけるその応用(Heterocyclic base modifications in nucleic acids and their applications in antisense oligonucleotides)」と題する第15章;ならびにアンチセンス治療薬(Antisense Therapeutics)、スディール・アグラワル(Sudhir Agrawal)編(Humana Press、Totowa、New Jersey、1996)が含まれる。
【0188】
1つの態様において、本アンチセンス配列は、CLASP−2 mRNAの相対的に接触可能な配列(例えば、二次構造が相対的に少ないもの)に対して相補的である。これは、予想されるRNA二次構造を例えばMFOLDプログラム(Genetics Computer Group、Madison WI)を用いて解析し、当技術分野で知られた通りにインビトロまたはインビボで試験を行うことによって決定しうる。有効なアンチセンス組成物を同定するためのもう1つの有用な方法では、オリゴヌクレオチドのコンビナトリアルアレイを用いる(例えば、Milnerら、1997、Nature Biotechnology 15:537を参照されたい)。CLASP−2機能のアンチセンス抑制に関する試験を行いうるオリゴヌクレオチドの例は、配列番号:1のうち以下の位置とハイブリダイズしうる(すなわち、実質的に相補的な)ものである :
(実施例8も参照のこと)
【0189】
いくつかの態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与は、アンチセンスホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを1μM、5μM、10μMまたは20μMの濃度で投与した後にノーザン分析による評価で、hCLASP−mRNAの発現を少なくとも約50%低下させると考えられる。
【0190】
また、本発明は、アンチセンス配列に加えて(すなわち、抗CLASP−2センス配列に加えて)別の配列を有するアンチセンスポリヌクレオチドも提供する。この場合には、アンチセンス配列はより長い配列のポリヌクレオチドの内部に含まれる。もう1つの態様において、ポリヌクレオチドの配列は、本質的にはアンチセンス配列からなる、またはアンチセンス配列そのものである。
【0191】
アンチセンス核酸(DNA、RNA、修飾物、類似体など)は、本明細書に開示する化学合成法および組換え法などの、核酸を作製するための任意の適した方法を用いて作製することができる。1つの態様においては、例えば、本発明のアンチセンスRNA分子を、デノボ化学合成またはクローニングによって調製しうる。例えば、CLASP−2 mRNAとハイブリダイズするアンチセンスRNAは、CLASP−2DNA配列(例えば、配列番号:1またはその断片)を、ベクター(例えば、プラスミド)中にプロモーターと機能的に結合するように逆方向に挿入(連結)することによって作製しうる。プロモーター、ならびに好ましくは転写終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルが適切に配置されれば、非コード鎖に対応する挿入配列のストランドが転写され、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドとして作用すると考えられる。「機能的に結合した」という用語は、発現調節配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指令するような、核酸発現調節配列(プロモーターまたはエンハンサーなど)と第2の核酸配列との間の機能的なつながりのことを指す。
【0192】
1つの態様では、CLASP−2ヌクレオチド配列の翻訳開始部位、例えば、−10から+10までの領域に由来するアンチセンスDNAオリゴデオキシリボヌクレオチドが用いられる。アンチセンスポリヌクレオチドに関する一般的な方法については、アンチセンスRNAおよびDNA(Antisense RNA and DNA)、1988、メルトン(D.A. Melton)編、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NYを参照のこと。また、ダグル(Dagle)ら、1991、Nucleic Acids Research、19:1805も参照されたい。アンチセンス療法の総説については、例えば、ウールマン(Uhlmann)ら、1990、Chem. Reviews、90:543〜584を参照されたい。
【0193】
B.リボザイム
リボザイムとは、RNAを特異的に切断しうる酵素性RNA分子のことである。リボザイムの作用機序には、リボザイム分子と相補的な標的RNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションとこれに続くヌクレオチド鎖切断が含まれる。CLASP−2RNA配列のヌクレオチド鎖切断を特異的および効率的に触媒する、ハンマーヘッド型モチーフを有する組換えリボザイム分子は本発明の範囲に含まれる。
【0194】
可能性のある任意のRNA標的の内部にある特異的なリボザイム切断部位は、配列GUA、GUUおよびGUCを含むリボザイム切断部位に関して標的分子をスキャンすることによってまず同定される。ひとたび同定されれば、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの範囲の短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列が不適切とされる二次構造などの予想される構造的な特徴に関して評価することができる。標的候補の適切さを、リボヌクレアーゼ保護アッセイ法を用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションへの利用可能性を検討することによって評価することもできる。
【0195】
C. 三重鎖
または、標的遺伝子の調節領域(すなわち、標的遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー)に対して相補的なデオキシリボヌクレオチド配列によるターゲティングを行い、体内の標的細胞における標的遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成させることによって、内因性標的遺伝子の発現を低下させることもできる(概論については、Helene、1991、Anticancer Drug Des.、6(6):569〜584;Heleneら、1992、Ann. N.Y. Acad. Sci.、660:27〜36;およびMaher、1992、BioAssay 14(12):807〜815を参照)。
【0196】
転写阻害のための三重らせん形成に用いる核酸分子は、一本鎖であってデオキシヌクレオチドから構成される必要がある。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、二本鎖の一方のストランドにプリンまたはピリミジンの安定な連鎖が存在することが一般に必要であるというフーグスティーン型塩基対規則によって三重らせん形成が促されるように設計しなければならない。ヌクレオチド配列はピリミジンを主体とすることができ、その場合には結果として得られる三重らせんの3つの会合鎖の間にTATおよびCGC+トリプレットが生じると考えられる。ピリミジンに富む分子は、二本鎖の単一ストランド中のプリンに富む領域に対して相補的な塩基をそのストランドに平行な方向で提供する。さらに、プリンに富む核酸分子、例えばG残基の連鎖を含むものを選択することもできる。これらの分子は、GC対に富むDNA二本鎖との間に、プリン残基の大半が標的二本鎖の単一ストランド上に位置し、三重鎖の3つのストランドの間でGGCトリプレットが生じるような三重らせんを形成すると考えられる。
【0197】
または、いわゆる「スイッチバック」核酸分子を作製することにより、三重らせん形成のためのターゲティングが可能な標的の候補を増やすこともできる。スイッチバック分子は、それらが二本鎖の最初の1つのストランド、続いて他方のストランドと塩基対を形成し、二本鎖の一方にプリンまたはピリミジンのかなり長い連鎖が存在する必要性がなくなるように、5’→3’、3’→5’の交代様式で合成される。
【0198】
D. 概論
本発明のアンチセンスRNAおよびDNA分子、リボザイムならびに三重らせん分子は、RNA分子の合成のための当技術分野で知られた任意の方法によって調製しうる。これらには、例えば固相ホスホルアミダイト化学合成などの、オリゴデオキシリボヌクレオチドの化学合成のための当技術分野で周知の技法が含まれる。または、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボでの転写によってRNA分子を作製することもできる。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適したRNAポリメラーゼプロモーターを含む、非常にさまざまなベクター中に組み入れることが可能である。または、用いるプロモーターに応じて、アンチセンスRNAを構成性または誘導性に合成するアンチセンスcDNA構築物を細胞系に安定的に導入することもできる。
【0199】
細胞内での安定性および半減期を向上させる手段として、DNA分子にさまざまな修飾を導入することができる。考えられる修飾には、分子の5’および/もしくは3’末端へのリボ−もしくはデオキシ−ヌクレオチドの隣接配列の付加、またはオリゴデオキシリボヌクレオチド骨格の内部にホスホジエステル結合ではなくホスホロチオエートもしくは2’ O−メチルを用いることが非制限的に含まれる。
【0200】
このような細胞または組織にポリヌクレオチドを導入するための方法には、裸のポリヌクレオチドのインビトロ導入、すなわち組織への注入によるもの、エクスビボでの細胞へのCLASP−2ポリヌクレオチドの導入、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなど)、ファージもしくはプラスミドなどのベクターの使用、または電気穿孔もしくはリン酸カルシウム沈降などの技法などの、ポリヌクレオチドのインビトロ導入のための方法が含まれる。
【0201】
5.4.2.2.2 遺伝子治療
細胞に遺伝子配列を導入することによって、細胞が正常なCLASP−2を発現しない状態または細胞が異常/不活性なCLASP−2を発現する状態を治療するために遺伝子治療を使用することができる。CLASP−2をコードするポリヌクレオチドが、機能欠損した内因性遺伝子と交換するまたは代わりに作用することが意図される場合もある。または、過剰発現によって特徴づけられる異常な状態を以下に記載する遺伝子治療技法を使用して治療することができる。
【0202】
具体的な態様において、CLASP−2タンパク質またはその機能的な誘導体をコードする配列を含む核酸を遺伝子治療によりCLASP−2機能を促進するために投与する。遺伝子治療は、被験者に核酸を投与することによって実施される治療をいう。本発明のこの態様において、核酸は、CLASP−2機能を促進することによって治療効果を仲介するコードタンパク質を産生する。
【0203】
当技術分野において利用可能な遺伝子治療の方法のいずれかを本発明により使用することができる。例示的な方法を以下に記載する。
【0204】
遺伝子治療の方法の一般的な総説は、ゴールドスピエル(Goldspiel)ら、1993, Clinical Pharmacy 12: 488−505;ウ(Wu)およびウ(Wu), 1991, Biotherapy 3: 87−95;トルストシェフ(Tolstoshev), 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32: 573−596;ムリガン(Mulligan), 1993, Science 260: 926−932;ならびにモーガン(Morgan)およびアンダーソン(Anderson), 1993, Ann. Rev. Biochem. 62: 191−217;カン(Can), 1993, TIBTECH 11(5): 155−215)を参照。使用することができる組換えDNA技術の分野において通常知られている方法は、アウスベル(Ausubel)ら、前記;およびクリエグラー(Kroegler), 1990、「遺伝子導入および発現:実験マニュアル(Gene Transfer and Expression, A LAboratory Mannual)」、Stockton Press, NYに記載されている。
【0205】
一局面において、治療用組成物は、好適な宿主内でCLASP−2タンパク質またはその断片もしくはそのキメラタンパク質をコードする発現ベクターの一部であるCLASP−2核酸を含む。特に、このような核酸は、CLASP−2コード領域に機能的に結合し、誘導性または構成的であり、必要に応じて組織特異的であるプロモーターを有する。別の特定の態様において、CLASP−2コード配列および任意の他の望ましい配列に、ゲノム内の望ましい部位における相同組換えを促進し、それによってCLASP−2核酸を染色体内発現させる領域が隣接する核酸分子が使用される(KollerおよびSmithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 86: 8932−8935; Zijlstraら, 1989, Nature 342: 435−438)。
【0206】
患者への核酸の送達は直接的であっても、間接的であってもよく、直接的である場合には、患者は核酸または核酸搬送ベクターに直接暴露され、間接的である場合には、最初に細胞をインビトロにおいて核酸で形質転換し、次いで患者に移植する。これら2つの方法は、それぞれ、インビボ遺伝子治療またはエクスビボ遺伝子治療として周知である。
【0207】
具体的な態様において、核酸が発現されて、コードタンパク質を産生する場合には、それを直接インビボにおいて投与する。これは、例えば、適当な核酸発現ベクターの一部として構成し、細胞内にあるように、例えば欠損型もしくは弱毒化型レトロウィルスベクターまたは他のウィルスベクター(米国特許第4,980,286号参照)を使用して感染させることにより、または未処理のDNAを直接注射することにより、または微粒子銃(microparticle bombardment)(例えば、遺伝子銃;Biolistic、デュポン)、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくはトランスフェクト用薬剤によるコーティング、リポソーム、微粒子もしくはマイクロカプセルへの封入を使用することにより、または核に流入することが知られているペプチドに結合した状態で投与することにより、受容体を介するエンドサイトーシスを受けるリガンドに結合した状態で投与すること(例えば、WuおよびWu, 1987, J. Biol. Chem 262: 4429−4432)(特異的に受容体を発現する細胞種を標的にするために使用することができる)等により投与することによって、当技術分野において周知の数多くの方法のいずれかによって実施することができる。別の態様において、リガンドが、エンドソームを破壊するための融合誘導(fusogenic)ウィルスペプチドを含み、核酸にリソソーム分解を受けさせない核酸−リガンド複合体を形成することができる。さらに別の態様において、特異的な受容体を標的化することによって、細胞特異的な取り込みおよび発現のために核酸をインビボにおいて標的化することができる(例えば、1992年4月16日出願の国際公開公報第92/06180号、1992年12月23日出願の国際公開公報第92/22635号、1992年11月26日出願の国際公開公報第92/20316号、1993年7月22日出願の国際公開公報第93/14188号、1993年10月14日出願の国際公開公報第93/20221号を参照)。または、核酸を細胞内に導入し、相同組換えによって発現するために宿主細胞DNA内に組み込むことができる(KollerおよびSmithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci., USA. 86: 8932−8935; Zijlstraら, 1989, Nature 342: 435−438)。
【0208】
具体的な態様において、CLASP−2核酸を含有するウィルスベクターが使用される。例えば、レトロウィルスベクターを使用することができる(Millerら, 1993, Meth. Enzymol. 217: 581−599)。これらのレトロウィルスベクターは、ウィルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNAへの導入に必要でないレトロウィルス配列を欠損するように改変されている。遺伝子治療に使用されるCLASP−2核酸を、患者への遺伝子の送達を容易にするベクターにクローニングする。レトロウィルスベクターについてのさらに詳細な記載は、化学療法により抵抗性である幹細胞を作製するために、造血幹細胞にmdr I遺伝子を送達するためのレトロウィルスベクターの用途を記載している、ブーセン(Boesen)ら、1994, Biotherapy 6: 291−302に見いだすことができる。遺伝子治療におけるレトロウィルスベクターの用途を例示している他の文献は、クロウズ(Clowes)ら、1994, J. Clin. Invest. 93: 644−651、キーム(Kiem)ら、1994, Blood 83: 1467−1473、サーモンズ(Salmons)およびグンズベルグ(Gunzberg)、1993, Human Gene Therapy 4: 129−141並びにグロスマン(Grossman)およびウィルソン(Wilson)、1993, Curr. Opin. in Genetics and Devel. 3: 110−114である。
【0209】
アデノウィルスは、遺伝子治療に使用することができる他のベクターである。
アデノウィルスは、呼吸上皮に遺伝子を送達するのに特に興味深い媒体である。
アデノウィルスは自然な状態で呼吸上皮に感染し、そこに軽度な疾患を生じる。
アデノウィルスに基づいた送達系の他の標的は肝臓、中枢神経系、内皮細胞および筋肉である。アデノウィルスは、非分裂細胞に感染することができるという利点がある。コザルスキー(Kozarsky)およびウィルソン(Wilson) 1993, Current Opinion in Genetics and Development 3: 499−503)はアデノウィルスに基づいた遺伝子治療の総説を提供している。ボウト(Bout)ら、1994, Human Gene Transfer 5: 3−10は、アカゲザルの呼吸器上皮に遺伝子を導入するためのアデノウィルスベクターの用途を実証した。遺伝子治療におけるアデノウィルスの用途の他の例は、ローゼンフェルド(Rosenfeld)ら、1991, Science 252: 431−434、ローゼンフェルド(Rosenfeld)ら、1992, Cell 68: 143−155、およびマストランゲリ(Mastrangeli)ら、1993, J. Clin. Invest. 91: 225−234に見いだすことができる。
アデノ関連ウィルス(AAV)も遺伝子治療における用途について提案されている(Walshら, 1993, Proc. Natl. Soc. Exp. Biol. Med. 204: 289−300)。
【0210】
遺伝子治療の別の方法は、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムを介するトランスフェクション、またはウィルス感染などの方法によって組織培養中の細胞に遺伝子を導入することを含む。通常、導入方法には細胞に選択可能なマーカーを導入することが含まれる。次いで、導入された遺伝子を取り込み、それを発現する細胞を単離する選択条件下に細胞をおく。次いで、その細胞を患者に送達する。
【0211】
この態様において、得られた組換え細胞をインビボにおいて投与する前に核酸を細胞に導入する。このような導入は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウィルスもしくはバクテリオファージによる感染、細胞融合、染色体を介する遺伝子移入、マイクロセルを介する遺伝子移入、スフェロプラスト融合等を含むが、それらに限定されることはない当技術分野において周知の任意の方法によって実施することができる。細胞に外来遺伝子を導入するための数多くの技法が当技術分野において周知であり(例えば、LoefflerおよびBehr, 1993, Meth. Enzymol. 217: 599−618; Cohenら, 1993, Meth. Enzymol. 217: 618−644; Cline, 1985, Pharmac. Ther. 29: 69−92)、本発明により使用することができるが、ただし、レシピエント細胞の必要な発育および生理的な機能は妨害されない。核酸が細胞によって発現可能であり、好ましくはその細胞の子孫に遺伝可能で発現可能であるように、技法は細胞に核酸を安定して導入するべきである。
【0212】
得られる組換え細胞は当技術分野において周知の種々の方法によって患者に送達することができる。好ましい態様において、上皮細胞は、例えば皮下に注射される。別の態様において、組換え皮膚細胞は患者に皮膚移植片として適用することができる。組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞または始原細胞)は、好ましくは、静脈内に投与される。使用される細胞の量は望ましい効果、患者の状態等に依存し、当業者が決定することができる。
【0213】
遺伝子治療の目的のために核酸を導入することができる細胞は任意の望ましい入手可能な細胞種を含み、上皮細胞、内皮細胞、ケラチン細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、幹細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核細胞、顆粒球などの血液細胞;例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝等から得られるような、種々の幹細胞または始原細胞、特に造血幹細胞または始原細胞を含むが、それらに限定されることはない。好ましい態様において、遺伝子治療に使用される細胞は患者にとって自己由来のものである。
【0214】
具体的な態様において、遺伝子治療の目的のために導入される核酸は、核酸の発現が転写の適当なインデューサーの有無を制御することによって制御可能であるように、コード領域に機能的に結合する誘導性プロモーターを含む。
【0215】
5.4.2.3. ノックアウト細胞
本発明の一局面において、内因性標的遺伝子の発現を、標的化された相同組換えを使用して、標的遺伝子またはそのプロモーターを不活性化または「ノックアウトする」ことによって低下することもできる(例えば、各々その全体の内容が参照として本明細書に組み入れられている、Smithiesら, 1985, Nature 317: 230−234; ThomasおよびCapecchi, 1987, Cell 51: 503−512; Thompsonら, 1989, Cell 5: 313−321)。例えば、内因性標的遺伝子(標的遺伝子のコード領域または調節領域)に相同なDNAが隣接する突然変異した非機能的標的遺伝子(または、全く関係のないDNA配列)を、インビボにおいて標的遺伝子を発現する細胞にトランスフェクトするために、選択可能なマーカーおよび/または負の選択可能なマーカーを用いて、または用いないで、使用することができる。標的化された相同組換えによるDNA構築物の挿入により標的遺伝子が不活性化される。このような方法は、ES(胚性幹)細胞の改変を使用して、不活性な標的遺伝子を有する動物の子孫を作製することができる農業分野において特に好適である(例えば、ThomasおよびCapecchi, 1987、ならびにThompson, 1989, 前記)。しかし、この方法は、適当なウィルスベクターを使用して組換えDNA構築物がインビボにおいて必要な部位に直接投与または標的化される場合には、ヒトに対して使用するために適合することができる。
【0216】
5.4.2.4 トランスジェニック動物およびノックアウト動物
CLASP−2遺伝子産物はまたトランスジェニック動物においても発現することができる。マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ミニブタ、ヤギ、ヒツジ、およびヒト以外の霊長類、例えば、ヒヒ、サルおよびチンパンジーを含むが、それらに限定されない任意の種の動物を使用してCLASP−2トランスジェニック動物を作製することができる。本明細書において使用する「トランスジェニック」という用語は、異なる種由来のCLASP−2遺伝子配列を発現する動物(例えば、ヒトCLASP−2遺伝子配列を発現するマウス)並びに内因性(すなわち、同一種)CLASP−2配列を過剰発現するように遺伝的に操作されている動物、または内因性CLASP−2遺伝子配列を発現しないように遺伝的に操作されている動物(すなわち、「ノックアウト」動物)またはそれらの子孫をいう。
【0217】
当技術分野において周知の任意の技法を使用して、動物にCLASP−2導入遺伝子を導入してトランスジェニック動物の子孫系列を作製することができる。このような技法は、前核マイクロインジェクション(HoppeおよびWagner, 1989, 米国特許出願第4,873,191号)、生殖細胞系列へのレトロウィルスを介する遺伝子導入(Van der Puttenら, 1985, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA., 82: 6148−6152)、胚性幹細胞への遺伝子標的化(Thompsonら, 1989, Cell 56: 313−321)、胚のエレクトロポレーション(Lo, 1983, Mol. Cell. Biol. 3: 1803−1814)、および精子を介する遺伝子導入(Lavitanoら, 1989, Cell 57: 717−723)を含むが、それらに限定されない(このような技法の総説は、Gordon, 1989, Transgenic Animals, Intl. Rev. Cytol. 115, 171−229)。
【0218】
例えば、静止期に誘導した培養中の胚、胎児、または成人細胞由来の核の除核卵母細胞への核導入のような、当技術分野において周知の任意の技法を使用して、CLASP−2導入遺伝子を含有するトランスジェニック動物クローンを作製することができる(Campbellら, 1996, Nature 380: 64−66; Wilmutら, Nature 385: 810−813)。
【0219】
本発明は、全ての細胞内にCLASP−2導入遺伝子を保有するトランスジェニック動物、並びに全てではないが、一部の細胞に導入遺伝子を保有する動物、すなわち、モザイク動物を提供する。導入遺伝子は単一の導入遺伝子として、または、例えばヘッドからヘッドへの縦列配列(head−to−head tandems)またはヘッドからテイルへの縦列配列(head−to−tail tandems)のようなコンカテマー状態で導入されうる。例えば、ラスコ(Lasko)ら、(1992, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 89: 6232−6236)の開示内容に従って、導入遺伝子を特定の細胞種に選択的に導入し、活性化することができる。このような細胞種特異的な活性化に必要な調節配列は対象となる特定の細胞種に依存し、当業者にあきらかである。CLASP−2導入遺伝子を内因性CLASP−2遺伝子の染色体部位に導入することが望ましい場合には、遺伝子標的化が好ましい。簡単に説明すると、このような技法が使用される場合には、染色体配列による相同組換えによって、内因性CLASP−2遺伝子のヌクレオチド配列に組み込み、その機能を妨害する目的のために、内因性CLASP−2遺伝子に相同ないくつかのヌクレオチド配列を含有するベクターが設計される。例えば、グ(Gu)ら、(1994, Science 265: 103−106)の開示内容に従って、導入遺伝子を特定の細胞種に選択的に導入して、その細胞種だけの内因性CLASP−2遺伝子を不活性化することもできる。細胞種特異的な不活性化に必要な調節配列は対象となる特定の細胞種に依存し、当業者にあきらかである。
【0220】
トランスジェニック動物が一旦作製されたら、組換えCLASP−2遺伝子の発現を標準的な技法を使用してアッセイすることができる。最初のスクリーニングは、導入遺伝子の導入が生じたかどうかをアッセイするために、動物の組織を分析するためのサザンブロット分析またはPCR技法によって実施することができる。トランスジェニック動物の組織中の導入遺伝子のmRNA発現のレベルも、動物から入手される組織試料ノーザンブロット分析、インサイチューハイブリダイゼーション解析、およびRT−PCR(逆転写PCR)を含むが、それらに限定されない技法を使用して評価することができる。CLASP−2遺伝子を発現する組織の試料も、CLASP−2導入遺伝子産物に特異的な抗体を使用して免疫細胞化学的に評価することができる。
【0221】
5.4.2.5 CLASP−2 ポリヌクレオチドの他の用途
新たな染色体マーキング試薬を同定する必要性が絶え間なく存在している。配列番号:1、3、5または9からPCRプライマーを作製することによって、配列を染色体上にマッピングすることができる。これらのプライマーは、鎖長が50ヌクレオチド未満、一般に46ヌクレオチド未満、さらに一般に41ヌクレオチド未満、最も一般に36ヌクレオチド未満であってもよく、好ましくは鎖長が31ヌクレオチド未満、さらに好ましくは26ヌクレオチド未満、最も好ましくは21ヌクレオチド未満であってもよい。プローブは、鎖長が16ヌクレオチド未満、鎖長が13ヌクレオチド未満、鎖長が9ヌクレオチド未満、および鎖長が7ヌクレオチド未満であってもよい。プライマーが、ゲノムDNAの2つ以上の予測されたエクソンに及ばないようにプライマーを選択することができる。次いで、個々のヒト染色体を含有する体細胞ハイブリッドをPCRスクリーニングするためにこれらのプライマーを使用する(すなわち、染色体13)。配列番号:1、3、5または9に対応するヒトCLASP−2遺伝子を含有するハイブリッドだけが増幅断片を産生すると考えられる。
【0222】
同様に、体細胞ハイブリッドは、特定の染色体にポリヌクレオチドをPCRマッピングする迅速な方法を提供する。CLASP−2ポリヌクレオチドの正確な染色体位置づけも、伝播した中期染色体の蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)を使用して実施することができる。ベルマ(Verma)ら、「ヒト染色体:基礎技術マニュアル(Human Chromosomes: A Manual of Basic Techniques)」, Pergamon Press. NY, 1988参照。ポリヌクレオチドが一旦正確な染色体位置にマッピングされたら、ポリヌクレオチドの物理的な位置を連鎖分析に使用することができる。連鎖分析は、染色体位置と特定の疾患の発現との共同遺伝(coinheritance)を確立する。マククシック(McKusick, V.), 1998, 「ヒトにおけるメンデル遺伝:ヒト遺伝子および遺伝疾患のカタログ(Mendelian Inheritance in Man: A Catalog of Human Genes and Gentic Disorders), 12th Ed, Johns Hopkins University Press参照。
【0223】
CLASP−2ポリヌクレオチドは、制限断片長多型(RFLP)のDNAマーカーとして少量の生物試料から個人を同定するために使用することができる。個人のゲノムDNAを1種以上の制限酵素で消化し、個人を同定するための独自のバンドを生じるCLASP−2 DNAマーカーを用いたサザンブロットでプロービングする。
【0224】
CLASP−2ポリヌクレオチドはまた、法医学的な分析のための多型マーカーとしても使用することができる。一般的には、米国学術研究会議(National Research Council), 法医学的なDNAの評価(The Evaluation of Forensic DNA Evidence)(Eds. 1996, Pollardら, National Academy Press, Washington D.C.)参照。
個人における識別用または独自の法医学的マーカーセットを識別することができることは法医学的な分析に有用である。例えば、選択した多型部位を占有する多型形態のセットが容疑者および試料において同一であるかどうかを判定することによって、容疑者の血液試料が事件現場の血液または他の組織と一致するかどうかを判定することができる。多型マーカーセットが容疑者と試料とで一致しない場合には、(実験誤差でなければ)容疑者は試料の起源でなかったと結論づけることができる。マーカーセットが一致する場合には、容疑者のDNAは事件現場で見つけられたものと一致すると結論づけることができる。試験した遺伝子座における多型形態の頻度が決定されたら(例えば、好適な個人の集団を分析することによって)、容疑者と事件現場の試料の一致が偶然に生ずる確立を求める統計分析を実施することができる。
【0225】
このような識別を実施するために、PCR技術を使用して、例えば、事件現場で見つけられた毛髪または皮膚、または例えば血液、唾液もしくは精液のような体液のような組織などのごく少量の生物試料から採取されるDNA配列を増幅することができる。次いで、増幅された配列を標準品と比較し、それによって生物試料の起源を同定することができる。本発明のCLASP−2ポリヌクレオチド配列を使用して、例えば別の「識別マーカー」(すなわち、特定の個人に独特の別のDNA配列)を提供することによって、DNAに基づいた法医学的識別の信頼性を増加することができるヒトゲノムの特定の遺伝子座に標的化されるポリヌクレオチド試薬、例えばPCRプライマーを提供することができる。上記のように、制限酵素が作製した断片によって形成されるパターンの正確な別法として実際の塩基配列情報を識別に使用することができる。より多数の多型が非コード領域に生ずるので、配列番号:1、3、5または9の非コード領域を標的化する配列はこの用途に特に適当であり、この技法を使用して個人を識別することをより容易にする。ポリヌクレオチド試薬の例にはCLASP−2ヌクレオチド配列またはその部分、例えば、少なくとも20塩基、好ましくは少なくとも25塩基、さらに好ましくは少なくとも30塩基の鎖長を有する配列番号:1、3、5または9の非コード領域から誘導される断片が含まれる。
【0226】
CLASP−2ポリヌクレオチドはまた、父子鑑定試験の試薬としても使用することができる。父子鑑定試験の目的は、通常、男性が子供の父親であるかどうかを判定することである。ほとんどの場合、子供の母親はわかっており、従って子供の遺伝子型への母親の寄与は追跡することができる。父子鑑定試験は、母親に帰属しない子供の遺伝子型の一部が父親と推定される人物のものと一致するかどうかを調査する。父子鑑定試験は、父親と推定される人物と子供の多型セットを分析することによって実施することができる。当然のことながら、本発明を、1人の個人が別の個人に関連するかどうかを判定するこの手法の用途に拡大することができる。よりさらに広義には、本発明を使用して、例えば民族または人種間において1人の個人が別の個人とどれくらい関連があるかを判定することができる。
【0227】
5.5 CLASP−2 遺伝子コード配列によってコードされるポリペプチド
本発明によると、CLASP−2ポリペプチド、変異型ポリペプチド、ペプチド断片、CLASP−2融合タンパク質、またはその機能的等価物をコードするCLASP−2ポリヌクレオチドを使用して、適当な宿主細胞においてCLASP−2タンパク質を発現することができる。種々の態様において、発現されるCLASP−2ポリペプチドは配列番号:2、4、6もしくは10またはそれらの断片と同一または実質的にほぼ同じである。
【0228】
いくつかの態様において、本発明により使用することができる改変されたDNA配列は、同じまたは機能的に等価な遺伝子産物をコードする配列を生ずる、異なるヌクレオチド残基の欠損、追加または置換を含む。例えば、遺伝コードの固有の縮重により、同一または機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列をCLASP−2タンパク質の発現のために本発明を実施する際に使用することができる。遺伝コードの縮重のために、多大な数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全てアミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンによって規定される全ての位置において、コードされるポリペプチドを変異させることなく、コドンを記載されている対応するコドンのいずれかに変異させることができる。このような核酸の変異は「サイレント変異(silent variations)」であり、保存的に改変される変異の1つの種である。当業者は、配列番号:1などの核酸配列の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUGおよび通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除いて)を改変して、機能的に同一の分子を生ずることができることを認識している。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は各記載されている配列において暗黙である。従って、例えば、遺伝コードの縮重により、配列番号:2またはその断片の配列を有するポリペプチドは、配列番号:1以外の数多くのポリヌクレオチドによってコードされうる。典型的には、縮重配列は、高度または中程度にストリンジェントな条件下において配列番号:1とハイブリダイゼーションするが、これは厳密には必要ではない(例えば、核酸のコピーが、遺伝コードによって許容される最大コドン縮重を使用して作製される場合。このような場合には、核酸は、典型的には、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下においてハイブリダイゼーションする。
)
【0229】
遺伝子産物自体が、サイレント変異を生じ、それによって機能的に等価なCLASP−2タンパク質を産生する、CLASP−2配列内にアミノ酸残基の欠損、追加または置換を含有することがある。このような保存的アミノ酸置換は、関与する残基の極性、荷電、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて実施することができる。例えば、負に荷電したアミノ酸はアスパラギン酸およびグルタミン酸を含み、正に荷電したアミノ酸はリジン、ヒスチジンおよびアルギニンを含み、ほぼ同じ親水性値を有する未荷電の極性ヘッド基を有するアミノ酸は以下を含む:グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン;および非極性のヘッド基を有するアミノ酸はアラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、トリプトファンを含む。クレイトン(Creighton), 1984, 「タンパク質(PROTEINS)」は、保存的置換であるアミノ酸を互いに以下のようにグループ分けした:(1)アラニン(A)、グリシン(G);(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);(4)アルギニン(R)、リジン(K);(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);(7)セリン(S)、スレオニン(T);および(8)システイン(C)、メチオニン(M)。
【0230】
遺伝子産物の処理および発現を改変する変異を含むが、それらに限定されない種々の目的のために、CLASP−2コード配列を変更するために、本発明のDNA配列を操作することができる。例えば、グリコシル化パターン、リン酸化等を変更するために、新たな制限酵素切断部位を挿入するため、例えば部位特異的突然変異のような、当技術分野において周知の技法を使用して突然変異を導入することができる。CLASP−2タンパク質のドメイン組織化に基づいて、CLASP−2の細胞外、膜貫通および細胞質ドメインをコードするヌクレオチド配列を改変または再配列することによって多大な数のCLASP−2突然変異ポリペプチドを構築することができる。
【0231】
種々の態様において、本発明は、CLASP−2アゴニストまたはCLASP−2アンタゴニストとして機能するCLASP−2ポリペプチドの相同物を提供する。好ましい態様において、CLASP−2アゴニストおよびアンタゴニストは、天然に存在する形態のCLASP−2ポリペプチドの生物活性のサブセットを、それぞれ、刺激または阻害する。
従って、特定の生物作用を、機能が限定された相同物で処理することによって誘発することができる。一態様において、天然に存在する形態のポリペプチドの生物活性のサブセットを有する相同物で被験者を治療することは、天然に存在する形態のCLASP−2ポリペプチドで治療することと比較して副作用が少ない。
【0232】
本発明は、全長のCLASP−2ポリペプチドおよび本発明の例示されているCLASP−2ポリペプチド配列と実質的に同一な、少なくとも約10、しばしば20、多くは50または100残基を有する断片のような断片を考慮している。タンパク質断片は「独立」していても、または断片が一部もしくは領域を形成するより大きいポリペプチド内にふくまれてもよく、最も好ましくは単一の連続領域として存在する。本発明のポリペプチド断片の代表的な例は、例えば、おおよそのアミノ酸の数1〜20、21〜40、41〜60、61〜80、81〜100、102〜120、121〜140、141〜160、161〜180、181〜200または201からコード領域の末端部までの断片を含む。さらに、ポリペプチド断片は鎖長が約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200アミノ酸であってもよい。これに関しては、「約」は、各末端または両末端において数(5、4、3、2または1)アミノ酸だけ大きいまたは小さい特に列挙されている範囲を含む。
【0233】
好ましいポリペプチド断片はCLASP−2タンパク質を含む。さらに好ましいポリペプチド断片は、アミノ末端もしくはカルボキシル末端または両方から欠損した一連の連続した残基を有するCLASP−2タンパク質を含む。例えば、1〜Xの範囲の任意の数のアミノ酸がCLASP−2ポリペプチドのアミノ末端から欠損することがある。さらに、上記のアミノ末端およびカルボキシル末端欠損の任意の組み合わせが好ましい。同様に、これらのCLASP−2ポリペプチド断片をコードするポリヌクレオチド断片も好ましい。
【0234】
タンパク質のN末端から1つ以上のアミノ酸が欠損することにより、タンパク質の1つ以上の生物的機能の損失という改変を生じたとしても、他の生物活性が保持されていることがある。従って、短くなったCLASP−2突然変異タンパク質が、完全または成熟した形態のポリペプチドを認識する抗体を誘発および/または結合する能力は、完全または成熟ポリペプチドの大多数ほどではない数の残基がN末端から除去された場合でも一般に保持される。完全なポリペプチドのN末端残基を欠損する特定のポリペプチドがこのような免疫活性を保持するかどうかは、本明細書および別の文献に記載されている当技術分野において周知の通常の方法によって容易に判定することができる。N末端アミノ酸残基が数多く欠損したCLASP−2突然変異タンパク質が何らかの生物活性または免疫原性を保持することがあることがないわけではない。実際、4つ程度のCLASP−2アミノ酸残基を含むペプチドでもしばしば免疫応答を誘発することがある。
【0235】
CLASP−2ポリペプチドの相同物は、例えば、CLASP−2ポリペプチドの別個の点突然変異または切断のような突然変異によって作製することができる。本明細書において使用する「相同物」という用語は、CLASP−2ポリペプチドの活性のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用するCLASP−2ポリペプチドの変異型をいう。CLASP−2ポリペプチドのアゴニストは、CLASP−2ポリペプチドの生物活性の実質的に同一またはサブセットを保持することができる。CLASP−2ポリペプチドのアンタゴニストは、例えば、CLASP−2ポリペプチドを含むCLASP−2分子経路の下流または上流のメンバーに競合的に結合することによって、天然に存在する形態のCLASP−2の活性の1つ以上を阻害することができる。
【0236】
改変は、標的遺伝子の発現によって間接的または直接影響される任意のパラメーターを測定することによってアッセイすることができる。このようなパラメーターは、例えば、RNAまたはタンパク質レベルの変化、タンパク質活性の変化、産物レベルの変化、下流の遺伝子発現の変化、レポーター遺伝子転写の変化(ルシフェラーゼ、CAT、−ガラクトシダーゼ、−グルクロニダーゼ、GFP(例えば、Mistili&Spector, 1997, Nature Biotechnology 15: 961−964参照)、シグナル伝達の変化、リン酸化および脱リン酸化、受容体−リガンド相互作用、セカンドメッセンジャー濃度(例えば、cGMP、cAMP、IP3、およびCa2+等)、ならびに細胞増殖を含む。これらのアッセイ法は、インビトロ、インビボおよびエクスビボであってもよい。このような機能的な影響は、当技術分野において周知の任意の手段、例えばRNAまたはタンパク質レベルの測定、RNA安定性の測定、下流またはレポーター遺伝子発現の同定、例えば、化学発光、蛍光、発色反応により、抗体結合、誘導性マーカー、リガンド結合アッセイ法;cGMPおよびイノシトール三リン酸(IP3)などの細胞内セカンドメッセンジャーの変化;細胞内カルシウムレベルの変化;サイトカイン放出等によって測定することができる。
【0237】
5.5.1 CLASP−2 ポリペプチド発現系の合成または発現
生物的に活性なCLASP−2を発現するために、CLASP−2または機能的等価物をコードするヌクレオチド配列を適当な発現ベクターに挿入する。CLASP−2遺伝子産物および組換えCLASP−2発現ベクターをトランスフェクトまたは形質転換した宿主細胞または細胞系列を種々の目的のために使用することができる。これらは、CLASP−2タンパク質の活性を競合的に阻害して、その活性を中和する抗体(すなわち、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)の形成、CLASP−2機能を活性化する抗体および細胞表面上または溶液の状態での存在を検出する抗体の形成を含むが、それらに限定されない。リンパ球およびマクロファージなどの細胞および組織中におけるCLASP−2発現レベルを検出および定量する際並びに細胞混合物からCLASP−2陽性細胞を単離する際に抗CLASP−2抗体を使用することができる。
【0238】
当業者に周知の方法を使用して、CLASP−2コード配列および適当な転写/翻訳制御シグナルを含有する組換え発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技法、合成技法およびインビボ組み換え/遺伝子組み換えを含む(例えば、Sambrookら, 1989, 「分子クローニング実験マニュアル(Molecular Cloning A Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory, N. Y. および Ausbelら, 前記に記載されている技法を参照)。本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内での核酸の発現に好適な形態の本発明の核酸を含み、これは組換え発現ベクターが、発現される核酸に機能的に結合する、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される1つ以上の調節配列を含むことを意味する。発現ベクターのデザインは形質転換される宿主細胞の選択、望ましいポリペプチド発現レベル等などの要因に依存することがある。本発明の発現ベクターは、本明細書に記載されている核酸によってコードされる、融合ポリペプチドまたはペプチドを含む、ポリペプチドまたはペプチドを産生する宿主細胞に導入することができる(例えば、CLASP−2ポリペプチド、CLASP−2の突然変異型、融合ポリペプチド等)。
【0239】
種々の宿主−発現ベクター系を使用してCLASP−2コード配列を発現することができる。これらは、CLASP−2コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌などの微生物;CLASP−2コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母;CLASP−2コード配列を含有する組換えウィルス発現ベクター(例えば、バキュロウィルス)を感染させた昆虫細胞系;CLASP−2コード配列を含有する組換えウィルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウィルス、CaMV;タバコモザイクウィルス、TMV)を感染させるまたはCLASP−2コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系含むが、それらに限定されない。これらの系の発現要素は強度および特異性が異なる。
使用する宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導性プロモーターを含む、数多くの好適な転写および翻訳要素のいずれかを発現ベクターに使用することができる。例えば、細菌系にクローニングする場合には、バクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター;サイトメガロウィルスプロモーター)等などの誘導性プロモーターを使用することができ、昆虫細胞系にクローニングする場合には、バキュロウィルスポリヘドロンプロモーターなどのプロモーターを使用することができ、植物細胞系にクローニングする場合には、植物細胞のゲノムから誘導したプロモーター(例えば、ヒートショックプロモーター;RUBISCOの小サブユニットのプロモーター;クロロフィルα/β結合タンパク質のプロモーター)または植物ウィルスから誘導したプロモーター(例えば、CaMVの35S RNAプロモーター;TMVの外皮タンパク質)を使用することができ、哺乳類細胞系にクローニングする場合には、哺乳類細胞のゲノムから誘導したプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳類ウィルスから誘導したプロモーター(例えば、アデノウィルス後期プロモーター、ワクシニアウィルス7.5Kプロモーター)を使用することができ、CLASP−2DNAの多数のコピーを含有する細胞系列を作製する場合には、SV−40、BPV−およびEBV−に基づいたベクターを適当な選択可能なマーカーと共に使用することができる。
【0240】
細菌系では、有利なことに、発現されるCLASP−2産物に意図されている用途に応じて数多くの発現ベクターを選択することができる。例えば、抗体を形成するためまたはペプチドライブラリーをスクリーニングするために、大量のCLASP−2タンパク質を作製しなければならない場合には、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物を発現させるベクターが望ましいことがある。このようなベクターは、ハイブリッドタンパク質が作製されるように、CLASP−2コード配列がlaxZコード領域内のベクターにライゲーションされうる大腸菌(E. coli)発現ベクターpUR278(Rutherら, 1983, EMBO J. 2: 1791);pINベクター(Inouye&Inouye, 1985, Nucleic acid Res. 13: 3101−3109; Van Heeke&Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 264: 5503−5509)等を含むが、それらに限定されない。pGEXを使用して、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現することもできる。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズに吸着させ、次に遊離のグルタチオンの存在下において溶出することによって、融解した細胞から容易に精製することができる。対象となるクローニングされたポリペプチドが任意にGST部分から放出されうるように、このような系で作製されるタンパク質は、ヘパリン、スロンビンまたは第XA因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計することができる。
【0241】
酵母では、構成的または誘導性プロモーターを含有する数多くのベクターを使用することができる(「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」, Vol 2, 1988(Suppl. 1999), Ausubelら編, Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience, Ch. 13; Grantら, 1987, 「酵母のための発現・分泌ベクター、酵素学における方法(Expression and Secretion Vectors for Yeast, in Methods in Enzymology), Wu & Grossman編, 1987, Acad. Press, N. Y., Vol. 153, pp. 516−544; Glover, 1986, 「DNAクローニング(DNA Cloning)」, Vol. II, IRL Press, Wash., D. C., Ch. 3;ならびにBitter, 1987, 酵母における異種遺伝子発現、酵素学における方法(Heterologous Gene Expression in Yeast, Methods in Enzymology)」, Brger & Kimmel編, Acad. Prees. N. Y., Vol. 152, pp. 673−684;ならびに「酵母サッカロミセスのための分子生物学(The Molecular Biology for the Yeast Saccharomyces)」, 1982, Strathenら編, Cold Spring Harbor Press, Vols. I and II.)
【0242】
植物発現ベクターを使用する場合には、CLASP−2コード配列の発現は数多くのプロモーターのいすれかによって駆動することができる。例えば、CaMVの35S RNAおよび19S RNAプロモーターなどのウィルスプロモーター(Brissonら, 1984, Nature 310: 511−514)またはTMVの外皮タンパク質(Takamatsuら, 1987, EMBO J. 6: 307−311)を使用することができる。または、RUBISCOの小サブユニットなどの植物プロモーター(Coruzziら, 1984, EMBO J. 3: 1671−1680; Broglieら, 1984, Science 224: 838−843);またはヒートショックプロモーター、例えば大豆hsp17.5−Eまたはhsp17.3−B(Gurleyら, 1986, Mol. Cell. Biol. 6: 559−565)を使用することができる。これらの構築物を、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウィルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等を使用して植物に導入することができる(Weissbach & Weissbach, 1988, 植物分子生物学の方法(Method for Plant Molecular Biology)」, Academic Press, NY, Section VIII, pp. 421−463;ならびにGrierson & Corey, 1988, 植物分子生物学(Plant Molecular Biology)」, 2d Ed., Blackie, London, Ch. 7−9)
【0243】
CLASP−2を発現するために使用してもよい別の発現系は昆虫系である。このような系では、オートグラファ・カリフォルニア(Autographa californica)核ポリヘドロンウィルス(AcNPV)を外来遺伝子を発現するベクターとして使用する。ウィルスはスポドプテラ・フルギペラダ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。CLASP−2コード配列はウィルスの非必須領域(例えば、ポリヘドロン遺伝子)にクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドロンプロモーター)の制御下におくことができる。CLASP−2コード配列の挿入が成功すると、ポリヘドロン遺伝子が不活性化され、非閉塞組換えウィルス(すなわち、ポリヘドロン遺伝子によってコードされるタンパク質外皮を欠損するウィルス)が作製される。次いで、これらの組換えウィルスを使用して、挿入した遺伝子が発現されるスポドプテラ・フルギペラダ細胞に感染させる。(例えば、Smithら, 1983, J. Viol. 46: 584; Smith, 米国特許第4,215,051号)。
【0244】
哺乳類宿主細胞では、数多くのウィルスに基づいた発現系を使用することができる。アデノウィルスを発現ベクターとして使用する場合には、CLASP−2コード配列をアデノウィルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三部分リーダー配列にライゲーションすることができる。次いで、このキメラ遺伝子をインビトロまたはインビボ組み換えによってアデノウィルスゲノムに挿入することができる。ウィルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)へ挿入することにより、感染された宿主内で生存し、CLASP−2を発現することができる組換えウィルスが作製される。(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 81: 3655−3659)。または、ワクシニア7.5Kプロモーターを使用してもよい。(例えば、Mackettら, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 79: 7415−7419; Mackettら, 1984, J. Virol. 49: 857−864; Panicaliら, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 79: 4927−4931)。テトラサイクリン抑制性ベクターなどの調節性発現ベクターを使用して、制御的にコード配列を発現することもできる。
【0245】
挿入されたCLASP−2コード配列を効率的に翻訳するために特定の開始シグナルが必要なこともある。これらのシグナルはATG開始コドンおよび隣接配列を含む。自身の開始コドンおよび隣接配列を含むCLASP−2遺伝子全体が適当な発現ベクターに挿入される場合には、追加の翻訳制御シグナルは必要でないことがある。
しかし、CLASP−2コード配列の部分のみが挿入される場合には、ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルを提供しなければならない。さらに、開始コドンは、挿入物全体を確実に翻訳するために、CLASP−2コード配列のリーディングフレーム内になければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成の種々の起源であってもよい。発現効率は、適当な転写エンハンサー要素、転写ターミネーター等を加えることによって増強することができる。(Bittnerら, 1987, Methods in Enzymol. 153: 516−544)。
【0246】
また、特定の望ましい様式で挿入された配列の発現を調節したり、遺伝子産物を修飾および処理する宿主細胞を選択することができる。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)および処理(例えば、切断)はタンパク質の機能にとって重要である場合がある。CLASP−2細胞外ドメインにいくつかのコンセンサスN−グリコシル化部位が存在することは、CLASP−2機能に液説な修飾がなんらかの役割を果たしている可能性を裏付けている。異なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳後処理および修飾のための特徴的で、特定の機序を有する。発現される外来タンパク質の適切な修飾および処理を確実にするために、適当な細胞系列または宿主系を選択することができる。このために、一次転写物の適切な処理、遺伝子産物のグリコシル化、およびリン酸化のための細胞工場を有する真核宿主細胞を使用することができる。このような哺乳類宿主細胞は、CHO、VERO、BHK、Hela、COS、MDCK、293、WI38等を含むが、それらに限定されない。
【0247】
CLASP−2をコードするヌクレオチド配列で形質転換した宿主細胞は、可溶性タンパク質を発現させ、細胞培養物から可溶性 タンパク質を回収するのに好適な条件下で培養することができる。当業者に理解されるように、CLASP−2をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターは、原核または真核細胞膜を介してCLASP−2を分泌させるシグナル配列を含有するように設計することができる。
可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列にCLASP−2をコードする配列を結合するために他の構成を使用してもよい。このような精製を容易にするドメインは、固定した金属での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュールなどの金属キレートペプチド、固定した免疫グロブリンでの精製を可能にするプロテインAドメインを含むが、それらに限定されない。
【0248】
組換えタンパク質を長期にわたって高収量で産生するためには、安定な発現が好ましい。例えば、CLASP−2タンパク質を安定に発現する細胞系列を操作することができる。ウィルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用しないで、宿主細胞を適当な発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)および選択可能なマーカーによって制御されるCLASP−2 DNAで形質転換することができる。外来DNAを導入後に、操作した細胞を強化培地で1〜2日間増殖させ、次いで選択培地に移すことができる。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは選択に抵抗性を示し、細胞の染色体にプラスミドを安定して組み込ませ、増殖してフォーカスを形成し、細胞系列内にクローニングされ、増殖されうる。この方法は、有利なことに、細胞表面にCLASP−2タンパク質を発現する細胞系列を操作するのに使用することができる。このように操作した細胞系列は、CLASP−2機能に影響を与える分子または薬剤をスクリーニングする際に特に有用である。
【0249】
それぞれ、tk−、hgprt−またはaprt−細胞において使用することができる、単純性疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら, 1977, Cell 11: 223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci.,U.S.A. 48: 2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら, 1980, Cell 22: 817)遺伝子を含むが、それらに限定されない数多くの選択系を使用することができる。また、メトトレキセートに抵抗性を示すdhfr(Wiglerら, 1980, Natl. Acad. Sci. U. S. A. 77: 3567; O’Hareら, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 78: 1527);ミコフェノール酸に抵抗性を示すgpt(Mulligan & Berg, 1981), Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 78: 2072);アミノグリゴシドG−418に抵抗性を示すneo(Colberre−Garapinetら, 1981, J. Mol. Biol. 150:1);ヒグロマイシンに抵抗性を示すhygro(Santerreら, 1984, Gene 30: 147)について選択するための基礎として、抗代謝抵抗性を使用することができる。別の選択可能な遺伝子、すなわち、細胞にトリプトファンの代わりにインドールを使用させるtrpB、細胞にヒスチジンの代わりにヒスチノールを使用させるhisD(Hartman & Mulligan, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci.,USA. 85: 8047);オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する抵抗性を示すODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue L., 1987, 「分子生物学における最新コミュニケーション(Current Communications in Molecular Biology)」, Cold Spring Harbor Laboratory ed.)およびグルタミンシンテターゼ(Bebbingtonら, 1992, Biotech 10: 169)が記載されている。
【0250】
本発明の別の態様において、CLASP−2のコード配列を当技術分野において周知の化学的方法を使用して全体的または部分的に合成してもよい(例えば、Caruthersら, 1980, Nuc. Acids Res. Symp. Ser. 7: 215−233; CreaおよびHorn, 180, Nuc. Acids Res. 9(10): 2331; MatteucciおよびCaruthers, 1980, Tetrahedron Letter 21: 719;ならびにChowおよびKempe, 1981, Nuc. Acids Res. 9(12):2807−2817。)または、CLASP−2アミノ酸配列を全体的または部分的に合成する化学的方法を使用してタンパク質自体を製造してもよい。例えば、ペプチドは固相技法によって合成され、樹脂から切断され、分取用高速液体クロマトグラフィーによって精製することができる。(Creighton, 1983, タンパク質構造と分子原理(Proteins Structures And Molecular Principles)」, W. H. FreemanおよびCo.,N. Y. pp. 50−60参照)。合成ポリペプチドの組成はアミノ酸分析または配列決定によって確認することができる(例えば、「エドマン分解法(the Edman degradation prpcedure)」; Creighton, 1983, 「タンパク質、構造、および分子原理(Proteins, Structures and Molecular Principles)」, W. H. FreemanおよびCo., N. Y., pp34−49)。いくつかの態様において、CLASP−2ポリペプチドは天然型でないアミノ酸またはアミノ酸類似体(すなわち、天然型アミノ酸と同じ基本的な化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合するα炭素を有する、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムのような化合物)を含有する。
【0251】
5.5.2 CLASP−2 を発現する細胞の同定
コード配列を含有し、CLASP−2遺伝子産物またはその断片を発現する組換え宿主細胞は少なくとも4つの一般的な方法によって同定することができる;(a)DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の有無、(c)宿主細胞内のCLASP−2mRNA転写物の発現によって測定したときの転写レベルの評価、および(d)免疫アッセイ法またはその生物活性によって測定したときの遺伝子産物の欠損。遺伝子の発現を同定する前に、特に少量のCLASP−2しか産生しない細胞系列において、CLASP−2の発現レベルを増加する努力においてまず宿主細胞を突然変異を起こすことができる。
【0252】
最初の方法において、発現ベクターに挿入されたCLASP−2コード配列の存在を、CLASP−2コード配列に相同なヌクレオチド配列、それぞれ、それらの一部または誘導体を含むプローブを使用してDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションによって検出することができる。
【0253】
第2の方法において、ある種の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する抵抗性、メトトレキセートに対する抵抗性、形質転換表現型、バキュロウィルスにおける閉鎖小体の形成等)の有無に基づいて、組換え発現ベクター/宿主系を同定し、選択することができる。例えば、CLASP−2コード配列をベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入する場合には、マーカー遺伝子機能が存在しないことによってCLASP−2コード配列を含有する組換え体を同定することができる。または、CLASP−2コード配列の発現を制御するために使用する同じまたは異なるプロモーターの制御下においてCLASP−2配列と縦列にマーカー遺伝子を配置することができる。誘導または選択に応答したマーカーの発現はCLASP−2コード配列の発現を示す。
【0254】
第3の方法において、CLASP−2コード領域の転写活性をハイブリダイゼーションアッセイ法によって評価することができる。例えば、CLASP−2コード配列またはその特定の一部に相同なプローブを使用して、RNAを単離し、ノーザンブロットによって分析することができる。または、宿主細胞の総核酸を抽出し、このようなプローブへのハイブリダイゼーションについてアッセイすることができる。また、低レベルの遺伝子発現を検出するために逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応を使用することができる。
【0255】
第4の方法において、免疫学的に、例えば、ウェスタンブロット、放射免疫−沈降、酵素−結合免疫アッセイ法、蛍光活性化細胞選別(「FACS」)等などの免疫アッセイ法によってCLASP−2タンパク質産物の発現を評価することができる。これは、抗CLASP−2抗体を使用して実施することができる。または、細胞内での検出を容易にするために、緑色の蛍光タンパク質との融合タンパク質としてCLASP−2タンパク質を発現することができる(米国特許第5,491,084号、同第5,804,387号、同第5,777,079号)。
【0256】
CLASPタンパク質またはmRNA、特にCLASP−2アイソフォームを発現する細胞または組織の同定は、所定の細胞または組織における正常および異常なCLASP発現を求めるのに有用となりうる。上記のように、数多くのCLASP−2アイソフォームが、例えばジャーカット細胞、末梢血および脳において同定されている。種々の細胞種および組織におけるmRNAまたはタンパク質発現を同定することにより、空間的または時間的に不適切に発現されるアイソフォームを同定することができる。
造血細胞におけるhCLASP−2Dアイソフォームの発現は、ジャーカットおよび末梢血アイソフォームに見られないSH3ドメインの存在により問題を生じることがある。
【0257】
免疫系の他の分子がhCLASP2Dの一部と相互作用することもある。しかし、hCLASP−2DアイソフォームにおいてPBMドメインが存在しないことが、ある種の細胞種または組織における機能に必要な場合がある。同様に、脳におけるCLASPアイソフォーム2A、2Bおよび2Cの発現は異なる理由のために問題を生ずることがある:これらのアイソフォームに存在するPBMは、神経シナプスの形成に関与する既知のPDZドメインタンパク質のいずれかに結合することによって、特定の機能を妨害することがある。同様に、SH3ドメインの欠損は、脳のCLASP−2機能に必要な分子のサブセットだけと相互作用することにより、不適当な応答を生じることがある。
【0258】
5.5.3. CLASP−2 を操作した宿主細胞の用途
本発明の一つの態様において、CLASP−2タンパク質、および/またはCLASP−2を発現する細胞系列は、抗体、ペプチド、小分子、天然化合物および合成化合物、またはCLASP−2タンパク質に結合してCLASP−2機能を促進または阻害する上記以外の細胞結合性分子または可溶性分子のスクリーニングに使用することができる。
例えば抗CLASP−2抗体は、CLASP−2機能を阻害または促進するために、または、その存在を検出するために使用することができる。一方、組換え型として可溶性CLASP−2タンパク質、またはCLASP−2タンパク質を発現する細胞系列でペプチドライブラリーをスクリーニングすることは、CLASP−2の生物学的活性を阻害または促進することで機能する治療的分子の同定に有用な場合がある。以降の小節に記載されたCLASP−2タンパク質ならびに遺伝子操作した細胞系列の用途は、様々な種において相同なCLASP−2遺伝子に対して等しく十分に利用できる。
【0259】
本発明の特定の態様においては、GSTなど他の分子に融合させたCLASPの細胞外ドメインまたは細胞内ドメインを発現するように細胞系列を遺伝子操作することができる。またCLASPの細胞外ドメインまたはその細胞内ドメインを免疫グロブリンの不変領域と融合して(HollenbaughおよびAruffo、1992、Current Protocols in Immunology、Unit 10.19;Aruffoら、1990、Cell 61:1303)、半減期を長くした可溶性分子を作製することができる。この可溶性タンパク質または融合タンパク質は、結合アッセイ法、アフィニティクロマトグラフィー、免疫沈降、ウエスタンブロットなどに使用することができる。合成化合物、天然産物、および生物学的に活性があると考えられる物質の他の供給源は、当技術分野で周知のアッセイ法でスクリーニング可能である。
【0260】
固相支持体に結合するアミノ酸の可能なあらゆる組み合わせからなるランダムペプチドライブラリーを使用して、CLASP−2の特異的なドメインに結合可能なペプチドを同定することができる(Lam, K.S.ら、1991、Nature 354:82〜84)。ペプチドライブラリーのスクリーニングは、CLASP−2の生物学的活性を促進または阻害する薬物を見極めることから治療上効果があると言える。
【0261】
CLASP−2タンパク質に結合可能な分子群は、組換え型の可溶性CLASP−2タンパク質でペプチドライブラリーをスクリーニングすることで同定できる。CLASP−2の発現および精製の方法は既に5.7節に記載されており、組換え型の完全長CLASP−2またはCLASP−2断片を、対象機能ドメインに応じて使用することができる。このようなドメインにはCLASP−2細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、CLASP−2細胞内ドメイン、ITAMを含むドメイン、チロシンリン酸化部位を含むドメイン、システインクラスターを含むドメイン、カドヘリンモチーフを含むドメイン、および多重らせんドメインなどがある。
【0262】
CLASP−2と相互作用して複合体を形成するペプチド/固相支持体を同定および分離するためには、CLASP−2分子を標識すること、すなわち「タグをつける」ことが必要である。CLASP−2タンパク質は、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)またはローダミンを含む蛍光標識などの他の試薬を始めとする酵素と結合させることができる。CLASP−2に対する任意の標識は、当技術分野で周知の方法で結合させることができる。またはCLASP−2発現ベクターを遺伝子作製して、市販の抗体に存在するエピトープを含むキメラCLASP−2タンパク質を発現させることができる。エピトープに特異的な抗体には、酵素、蛍光色素、または着色ビーズもしくは磁気ビーズを始めとする当技術分野で周知の方法を用いて検出可能な標識のタグをつけることができる。
【0263】
「タグのつけられた」CLASP−2コンジュゲートを、ランダムペプチドライブラリーと30分間〜1時間22℃でインキュベートすることにより、CLASP−2と、ライブラリー中のペプチド種との複合体が形成される。次にライブラリーを洗浄して非結合性タンパク質を除去する。アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼをあらかじめ結合させたCLASP−2の場合、すべてのライブラリーをアルカリホスファターゼまたはペルオキシダーゼの各基質、例えばそれぞれ5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイルリン酸(BCIP)または、3,3’,4,4”−ジアミノベンジジン(DAB)を含むペトリ皿に注ぐ。数分間のインキュベート後にペプチド/固相支持体−CLASP−2複合体の色が変わるので、マイクロマニピュレーターを接続した解剖顕微鏡下において容易な同定および物理的な分離が可能となる。蛍光物質のタグをつけたCLASP−2 分子を使用した場合は蛍光活性ソーティングで複合体を分離することができる。異種エピトープを発現するキメラCLASP−2タンパク質を使用した場合は、標識化したエピトープ特異的な抗体を用いてペプチド/CLASP−2複合体を検出することができる。分離後は、固相支持体に結合したペプチドをペプチド配列決定により同定することができる。
【0264】
可溶性CLASP−2分子の使用に加え、別の態様においては、完全な細胞を用いて細胞結合性CLASP−2に結合するペプチドを検出することができる。完全細胞の使用は細胞表面分子を使用する上で好ましい。CLASP−2を発現する細胞系列を作製する方法は5.8節に記載されている。この方法で使用される細胞は生細胞でも固定細胞のどちらでもよい。細胞をランダムペプチドライブラリーとインキュベートすることで、ライブラリー中の特定のペプチドと結合させて、標的細胞と関連する固相支持体/ペプチドとの間で「ロゼット」を形成させることができる。後にロゼットは、ディファレンシャル遠心法で分離できるほか、解剖顕微鏡下で物理的に除去することもできる。組み合わせライブラリーのスクリーニング法は当技術分野で周知である(Gallopら、1994、J. Med. Chem.、37:1233;Gordon、1994、J. Med. Chem.、37:1385)。
【0265】
膜結合性の受容体または、細胞膜の脂質ドメインを機能上必要とする受容体を対象とする全細胞アッセイ法に代わる方法として、CLASP−2分子を標識または「タグ」の結合が可能なリポソームに再構成することができる。
【0266】
5.5.4. CLASP−2 融合タンパク質
本発明の別の態様においては、CLASP−2または改変型のCLASP−2配列を、異種配列に連結して融合タンパク質をコードさせることができる。例えばCLASP−2に結合する分子群を対象としたペプチドライブラリーのスクリーニングでは、市販の抗体で認識される異種エピトープを発現するキメラCLASP−2タンパク質を作製することために有用でありうる。融合タンパク質はまた、CLASP−2配列と異種タンパク質配列の間に切断部位を含むように遺伝子操作することもできる。こうすることでCLASP−2は異種配列部分から切り離すことができる。一つの態様において本発明の融合タンパク質は、少なくとも約1〜816番目の残基を含むCLASP−2の細胞外ドメイン、またはその断片を含むことができる。別の態様においては、融合タンパク質はCLASP−2配列の少なくとも約843番目の残基から末端配列を含むCLASP−2細胞内ドメイン、またはその断片を含むことができる。
【0267】
5.6. CLASP−2 の対立遺伝子、異型、およびホモログ種のクローニング
本明細書に開示されたCLASP−2 cDNAをコードする任意の種に由来する完全長cDNA配列をクローニングする目的で、またはこの分子の異型をクローニングする目的で、本明細書に開示されている任意の部分的cDNAに対応する核酸断片から作成された標識化DNAプローブを使用して、リンパ系細胞または脳細胞に由来するcDNAライブラリーをスクリーニングすることができる。さらに詳述すると、cDNA配列の5’端または3’端に対応するオリゴヌクレオチドを使用することで、より長いヌクレオチド配列が得られる。手短に説明すると、このライブラリーをプレーティングして、150 mmのプレート1枚当たり最大30,000 pfuを得ることができる。
約40枚のプレートをスクリーニングすることができる。プラークの直径が0.25 mmになるまで、または、相互に接触し始める直前まで(3〜8時間)プレートを37℃でインキュベートする。ソフトトップアガロース上にナイロンメンブレンをかぶせて60秒後にフィルターを剥がし、0.4 N水酸化ナトリウムを含むDNA変性溶液上に浮かべる。次にフィルターを1 M トリス−HCl、pH 7.5を含む中和溶液に浸した後に風乾させる。このフィルターを、10% デキストラン硫酸、0.5 M NaCl、50 mM トリス−HCl、pH 7.5、0.1% ピロリン酸ナトリウム、1% カゼイン、1% SDS、および0.5 mg/mlの変性サケ精子DNAを含むカゼイン緩衝液などのハイブリダイゼーション用緩衝液中で6時間60℃でプレハイブリダイズする。次に、放射性標識プローブを95℃で2分間加熱して変性させた後に、フィルターを含むプレハイブリダイゼーション溶液に添加する。このフィルターを60℃で16時間ハイブリダイズさせる。次にフィルターを1×洗浄用混合液(10×洗浄用混合液は3 M NaCl、0.6 M トリス塩基、および0.02 M EDTAを含む)中で室温で5分間2回洗浄後に、1% SDSを含む1×洗浄用混合液中で60℃で30分間洗浄し、最後に0.1% SDSを含む0.3×洗浄用混合中液で60℃で30分間洗浄する。次にフィルターを風乾させて、X線フィルムを感光させオートラジオグラフィーを行う。現像後のフィルムをフィルターと照合して陽性クローンを選択する。単一の分離した陽性プラークが得られない場合は、複数のプラークを含むアガープラグを除去して、0.1 M NaCl、0.01 M 硫酸マグネシウム、0.035 M トリス−HC1、pH 7.5、0.01% ゼラチンを含むλ希釈緩衝液中に置く。次に、単一で十分分離できる陽性プラークを得るために、ファージを再びプレーティングして再びスクリーニングを行う。陽性プラークを分離できたら、既知cDNA配列を元に作製したプライマーを用いてcDNAクローンの配列を決定することができる。この段階は完全長cDNAが得られるまで反復することができる。
【0268】
完全長cDNAを得るために、異なる組織に由来する複数のcDNAライブラリーのスクリーニングが必要となる場合がある。完全な5’端コード領域をコードするcDNAクローンの同定が困難な場合―cDNAクローニングでしばしば遭遇する状況の場合―は、RACE(cDNA末端の迅速増幅(Rapid Amplification of cDNA Ends))法を用いることができる。RACEはPCR法に基づき、不完全なcDNAの5’端を増幅する方法で、その有効性が証明済みの手法である。特有のアンカー配列を含むヒト組織から合成された5’−RACE−Ready RNAは市販されている(Clontech)。cDNAの5’端を得るためには、提供されるアンカープライマーおよび3’プライマーを用いて5’−RACE−Ready cDNAのPCRを行う。次に、アンカーされたプライマーおよび入れ子状態の3’プライマーを用いて、製造業者の指示通りに第2のPCR反応を行う。完全長cDNA配列が得られたら、これをアミノ酸配列に翻訳して、翻訳の開始部位および終結部位にはさまれた連続読み枠、カドヘリン様ドメイン、ITAMドメイン、チロシンリン酸化部位、システインクラスター、膜貫通ドメイン、また本明細書に記載された、CLASP−2遺伝子群に対する全体的な構造類似性などの特定の目印を調べることができる。タンパク質のドメインに関する議論については、Ponassiら、1999、Mech. Dev. 80:207〜212;Isakov、1998、Receptor Channels 5:243〜253;Borrotoら、1997、Biopolymers 42:75〜88;Dimitratosら、1997、Mech. Dev. 63:127〜130;Appersonら、1996、J. Neurosci. 16:6839〜6852;Ozawaら、1990、Mech. Dev. 33:49〜56を参照されたい。またこれらの文献は参照として本明細書に組み入れられる。
【0269】
5.7. 内在性 CLASP−2 遺伝子群の調節発現
または、異種DNA調節エレメントを細胞系列のゲノムに挿入し、挿入された調節エレメントを内在性CLASP−2遺伝子に動作可能的に連結させることで、細胞集団内における内在性CLASP−2遺伝子の発現特性を改変することができる。例えば通常は「転写的にサイレントな」CLASP−2遺伝子、すなわち細胞集団内で通常発現しないか、または極めて低いレベルでのみ発現する内在性CLASP−2遺伝子は、細胞内で正常に発現する遺伝子産物の発現促進能力がある調節エレメントを挿入することで活性化されることがある。または、転写的にサイレントな内在性CLASP−2遺伝子は、多くの細胞種ではたらく宿主非選択性の調節配列を挿入することで活性化することができる。
【0270】
異種調節エレメントを細胞系列の集団に挿入して、当業者に周知である標的相同組換え法(targeted homologous recombination)などの方法を用いて、内在性CLASP−2遺伝子と動作可能的に連結させることができる(例えば、Chappelによる米国特許第5,272,071号;国際公開公報第91/06667号、1991年1月16日刊行、を参照)。
【0271】
5.8. 抗 CLASP−2 抗体
当技術分野で周知の様々な手順を用いて、天然および組換えで作製されるCLASP−2タンパク質のエピトープに対する抗体を作製することができる。これらの抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体のIgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE、相補性決定領域、Fab断片、F(ab’)2および、Fab発現ライブラリーにより作製される断片ならびに抗イディオタイプ抗体などがあるが、これらに限定されることはない。CLASP−2結合と競合する抗体は診断および治療上、特に好ましい。
【0272】
CLASP−2に結合するモノクローナル抗体を放射標識することで、注入後の体内における同抗体の位置および分布が追跡可能となる。放射性同位元素でタグをつけた抗体は、CLASP−2を発現する新規リンパ腫および転移を画像化するための非浸襲的な診断ツールとして利用可能である。
【0273】
免疫毒素また、体内の特異的な部位に対する細胞毒性薬の標的となるように設計することができる。例えば高い親和性を有するCLASP−2特異的モノクローナル抗体は、ジフテリア毒素またはリシンなどの細菌または植物の毒素と共有結合を介して複合体を形成させることができる。抗体/ハイブリッド分子の一般的な調製法には、抗体上の一級アミノ基を攻撃するSPDPなどのチオール架橋試薬を使用することができ、また、毒素を抗体に結合させるジスルフィド交換反応を使用することができる。ハイブリッド抗体は、CLASP−2を発現するリンパ球を特異的に除去するために使用することができる。
【0274】
抗体を作製するためには、様々な宿主動物を対象として組換え型または天然の精製CLASP−2タンパク質、融合タンパク質またはペプチドを注入して免疫化することができる。これらには、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスターなどに由来するものが含まれるがこれらに限定されることはない。様々なアジュバントを使用して、免疫反応を高めることができる。これは宿主に依存し、フロイント(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、リゾレシチンなどの表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメット−ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)などのヒトで有用と考えられるアジュバントなどが含まれるがこれらに限定されることはない。
【0275】
CLASP−2に対するモノクローナル抗体は、連続細胞系列培養により抗体分子を産生させる任意の手法で調製できる。このような手法には、当初ケラー(Kohler)およびミルシュタイン(Milstein)によって報告されたハイブリドーマ法(Nature、1975、256:495〜497)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosborら、1983、Immunology Today、4:72;Coteら、1983、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、80:2026〜2030)、およびEBVハイブリドーマ法(Coleら、1985、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、Inc.、pp.77〜96)などがあるがこれらに限定されることはない。また、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子由来の遺伝子群と、適切な生物学的活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子群をスプライスすることで「キメラ抗体」作製用に開発された手法(Morrisonら、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、81:6851〜6855;Neubergerら、1984、Nature、312:604〜608;Takedaら、1985、Nature、314:452〜454)を用いることができる。または、単鎖抗体の作製に関して記載された方法(米国特許第4,946,778号)を一部変更して、CLASP−2に特異的な単鎖抗体を産生させることができる。いくつかの態様においては、ファージディスプレイ法を用いて、選択された抗体に特異的に結合する抗体およびへテロマーのFab断片が同定される(例えば、McCaffertyら、Nature 348:552〜554(1990);Marksら、Biotechnology 10:779〜783(1992)を参照)。
【0276】
ハイブリドーマは、再び折りたたまれた組換え型CLASP−2に特異的な抗体を分泌する培養液の検出を目的として、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)でスクリーニングすることができる。培養液はまた、哺乳類産生性CLASP−2に特異的な抗体を分泌する培養液の同定を目的としてELISAでスクリーニングすることもできる。抗体特異性は、同じ抗原を用いたウエスタンブロットで確認することができる。続いて行うELISA試験では、CLASP−2分子とモノクローナル抗体に結合する特定の部分を同定するために組換え型CLASP−2断片を使用することができる。組織切片染色、CLASP−2の免疫沈降、CLASP−2結合の阻害、または、細胞内シグナルを伝達させるCLASP−2の促進などについて望ましい機能特性を有するモノクローナル抗体を同定するために追加的な試験を行うことができる。モノクローナル抗体のアイソタイプはELISAで決定することで、精製または機能に関する追加情報が得られる場合がある。
【0277】
本発明の一部の抗CLASP−2モノクローナル抗体は、対標的親和性を低下させることなく潜在的な抗原性を低下させるために、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはキメラ抗体とすることができる。ヒト化抗体については当技術分野で少なからず報告されている。例えば、クィーン(Queen)ら、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:10029;米国特許第5,563,762号;第5,693,761号;第5,585,089号および第5,530,101号を参照されたい。ヒト化に用いるヒト抗体配列は、天然ヒト抗体配列とすることができるほか、複数のヒト抗体のコンセンサス配列とすることができる。ケトルボロー(Kettleborough)ら、1991、Protein Engineering 4:773;コールビンガー(Kolbinger)ら、1993、Protein Engineering 6:971を参照されたい。CLASP−2ペプチドに対するヒト化モノクローナル抗体は、ヒト免疫系因子群を有するトランスジェニック動物を用いることでも作製できる(例えば米国特許第5,569,825号;第5,545,806号;第5,693,762号;第5,693,761号;および第5,7124,350号を参照)。
【0278】
一部の態様においては、抗CLASP−2ポリペプチドモノクローナル抗血清またはポリクローナル抗血清を産生させ、特定のCLASP−2ポリペプチドに特異的に免疫反応して他の分子群(例えば他のCLASPポリペプチド)に対して低交差反応性を有するように選択され、この交差反応活性はいずれも免疫吸着で除去されてイムノアッセイ法に使用される。モノクローナル抗体の特異性に関するスクリーニングおよび特性解析の方法は当技術分野で周知であり、既に挙げたハーロウ(Harlow)およびレーン(Lane)の論文で広く説明されている。例えば、配列番号:1で示されるhCLASP−2Aに対するポリクローナル抗体、またはスプライシング変異体、またはそれらの免疫原性部分は、他のタンパク質ではなく標的タンパク質に特異的な免疫反応性をもつそれらのポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のみを有するように選択することができる。この選択は、分子群と交差反応する抗体を差し引くことで可能となる。様々なイムノアッセイ法のフォーマットを使用することで、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択してもよい。例えば固相ELISAイムノアッセイ法は、任意のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択することを目的としてルーチンに使用されている(特異的な免疫反応性の決定に使用できるイムノアッセイ法のフォーマットおよび条件に関する記述については例えばハーロウおよびレーンによる「抗体、実験マニュアル(Antibodies、A Laboratory Manual)」(1988)を参照)。特異的または選択的な反応は典型的には、少なくとも2倍のバックグラウンドのシグナルまたはノイズが生じ、また、より特異的には10〜100倍を超えるバックグラウンドが生じる。一方、一部のポリペプチドセットと交差反応する抗体を調製する場合もある。
【0279】
V特異的結合部位を含む抗体断片は既知の手法で作製することができる。例えば、このような断片には抗体分子をペプシンで消化して作製できるF(ab’)2断片、およびF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元させて作製できるFab断片などが含まれるが、これらに限定されることはない。一方、Fab発現ライブラリーを構築することで(Huseら、1989、Science、246:1275〜1281)、望ましい対CLASP−2特異性を有するモノクローナルのFab断片の迅速かつ容易な同定が可能となる。
【0280】
抗CLASP−2抗体を使用することでも、CLASP−2発現細胞を同定、単離、阻害または除去することができる。一つの態様において本発明は、免疫機能が正常な被験者のT細胞プロフィールに対する免疫不全状態の被験者の異常なT細胞プロフィールを同定する方法を含む。この方法には、(i)免疫不全状態の被験者から単離される末梢血単核球細胞(PBMC)の試料の一連のT細胞セットへのソーティング、(ii)各セットにおける細胞総数に対するCLASP−2+細胞の比(CLASP−2+:総数)の決定、および、免疫不全状態の被験者におけるCLASP−2+:総数比と、免疫機能が正常な被験者における類似のセットのCLASP−2+:総数比の比較による免疫不全状態の被験者における異常なT細胞プロフィールの同定がある。
【0281】
他の態様においては、抗CLASP−2抗体を蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、ELISA、蛍光または電子免疫顕微鏡、ウエスタンブロット、ゲルシフト解析などのアッセイ法におけるhCLASP−2タンパク質の検出に使用することができる。様々な細胞におけるCLASP−2発現、細胞内の局在、他のタンパク質との相互作用、およびCLASP−2アイソフォームの発現との区別は、本明細書に記載された手法を用いることで決定できる。
【0282】
5.9. スクリーニングアッセイ法
本発明では、CLASP−2の発現または活性を調節する(すなわち阻害または促進する)化合物または薬剤を同定する方法を提供する。CLASP−2の発現または活性の調節物質は、異常なCLASP−2の発現または活性を特徴とする(または関連する)障害の治療に有用である。CLASP−2のmRNAまたはタンパク質の異常な発現とは、複数のリンパ球(例えばTリンパ球またはBリンパ球)、または他のCLASP−2発現細胞における発現が、健常者から採取される対照リンパ球における発現と比較して、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍大きいことを意味する。
【0283】
CLASP−2発現アッセイ法には、CLASP−2発現細胞を化合物または薬剤に接触させる段階および、CLASP−2発現をアッセイする段階を含めることができる。CLASP−2のポリペプチドの発現は、本発明の抗CLASP−2抗体を用いたELISAで容易に測定される。CLASP−2 mRNAの発現(CLASP−2の特定種すなわちスプライシング変異体の発現を含む)は定量ノーザン解析または定量PCRで測定することができる。
【0284】
CLASP−2活性には例えば、PDZドメインを含む分子に対するCLASP−2ポリペプチドの結合および、CLASP−2ポリペプチドの情報伝達(例えばT細胞活性化に至るもの)への関与が含まれる。CLASP−2のポリペプチドと標的分子の相互作用を調節する化合物または薬剤、CLASP−2の核酸発現を調節する化合物または薬剤、またはCLASP−2のポリペプチド活性を調節する化合物または薬剤はすべて本発明の方法の対象として適している。
【0285】
被験化合物には例えば、1)ペプチド類(例えば、Igテール融合ペプチド、およびランダムペプチドライブラリーのペプチドを含む可溶性ペプチド類(例えばLam、K. S.ら、1991、Nature 354:82〜84;Houghten、R.ら、1991、Nature 354:84〜86を参照)、およびD型および/またはL型のアミノ酸からなる組み合わせ化学由来の分子ライブラリー;2)ホスホペプチド類(例えば、ランダムおよび部分的に分解された、指向性ホスホペプチドライブラリーのペプチド類。例えばソンヤン(Songyang, Z)ら、1993、Cell 72:767〜778を参照。;3)CLASP−2抗体(上述);4)有機小分子および無機小分子(例えば、組み合わせルライブラリーおよび天然物ライブラリーから得られる分子群);5)アンチセンスRNA分子およびDNA分子ならびにリボザイム(上述)。
【0286】
CLASP調節物質には、天然化合物および合成化合物、有機化合物および無機化合物、および、ポリマー類(例えばオリゴペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチド)、小分子、抗体、糖類、脂肪酸、ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体、天然構造物の類似体(例えばレプリカペプチド(peptide mimetics)や核酸類似体など)などの多様な化合物、および他の多くの化合物が含まれる。
【0287】
本発明の一つの態様においては、CLASP−2ポリペプチドに結合する被験化合物をスクリーニングするアッセイ法を提供する。このアッセイ法は組換え型細胞に基づくアッセイ法でも無細胞アッセイ法でもよい。これらのアッセイ法には、CLASP−2ポリペプチドまたはその結合断片を発現する細胞、および化合物または薬剤を、化合物または薬剤がCLASP−2ポリペプチドに結合して複合体を形成可能な条件下における組み合わせる段階を含めることができる。次に複合体の形成を判定することができる。候補化合物または薬剤の、CLASP−2ポリペプチドまたはその断片に対する結合能力は、複合体中の候補化合物の存在により示される。CLASP−2のポリペプチドと候補化合物間の複合体の形成は、例えば標準的なイムノアッセイ法で定量できる。
【0288】
本発明の別の態様においては、CLASP−2ポリペプチドと分子(CLASP−2ポリペプチドが通常相互作用する標的分子)間の相互作用(そしてかなりの可能性で同様にCLASP−2活性)を調節する被験化合物を同定するスクリーニングアッセイ法を提供する。
【0289】
一つの態様においては、これらのCLASP−2標的分子群は、チロシンキナーゼ(例えば、lyn、lck、fyn、ZAP−70m SyK、およびCSK)とすることができる。別の態様においては、CLASP−2標的分子群は、チロシンホスファターゼ(例えば、EZRIN、SHP−1、SHP−2、およびPTP36)とすることができる。別の態様においては、CLASP−2標的分子群はアダプタータンパク質(例えば、NCK、CBL、SHC、LNK、SLP−76、HS1、SIT、VAV、GrB2、およびBRDG1)とすることができる。別の態様においては、CLASP−2標的分子群はアンキュリン、スペクトリン、タリン、エズリン、トロポミオシン、ミオシン、プレクチン、シンデカン、パラレムミン(paralemmin)、バンド3タンパク質、細胞骨格タンパク質4.1、およびPTP36)などの細胞骨格結合性タンパク質とすることができる。さらに別の態様においては、CLASP−2標的分子群はインテグリンファミリーに属する分子群とすることができる。
【0290】
このアッセイ法は通常、組換え細胞に基づくアッセイ法、または無細胞アッセイ法である。これらのアッセイ法には、CLASP−2ポリペプチドまたはその結合断片を発現する細胞、CLASP−2標的分子(例えばCLASP−2リガンド)および被験化合物を、候補化合物が存在するがCLASP−2ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分が標的分子に結合する条件下で混合する段階を含めることができる。CLASP−2ポリペプチドまたはその結合断片、CLASP−2標的分子、ならびに複合体形成検出用の被験化合物(CLASP−2ポリペプチドおよび標的分子を含む)間の複合体形成を検出することができる。複合体形成の検出には例えば、CLASP−2ポリペプチドが有するT細胞活性化などの誘導作用の測定による複合体の直接定量を含めることができる。候補化合物の存在下(候補化合物の非存在下で検出される化合物に対する)における、CLASP−2と標的分子間の相互作用の減弱化などの大きな変化(例えばCLASP−2と標的分子間の複合体形成における変化)は、CLASP−2ポリペプチドと標的分子間における相互作用の調節の指標となる。CLASP−2ポリペプチドと標的分子間の複合体形成の調節は、例えばイムノアッセイ法で定量することができる。無細胞薬剤スクリーニングアッセイ法を行うためには、CLASP−2またはその標的分子を固定化して、複合体を形成していない状態の一方または両方のポリペプチドと複合体の分離を促すこと、ならびにアッセイ法の自動化を図ることが望ましい。標的分子に対するCLASP−2の結合は、候補化合物の存在下および非存在下においては、反応体を収容するのに適した任意の容器内で行うことができる。このような容器には例えばマイクロタイタープレート、試験管、および微小遠心用チューブなどがある。
【0291】
ある態様においては、マトリックスに対するポリペプチドの結合を可能とするドメインを加える融合ポリペプチドを提供することができる。または上記複合体は、マトリックスから解離させ、SDS−PAGEで分離し、またビーズフラクションにみられるCLASP−2結合ポリペプチドのレベルを標準的な電気泳動法でゲルから定量することができる。
【0292】
マトリックス上にポリペプチドを固定化する他の手法も、本発明の薬剤スクリーニングアッセイ法に使用することができる。例えばCLASP−2またはその標的分子のいずれかを、ビオチンとストレプトアビジンの結合を用いて固定化することができる。ビオチン化CLASP−2分子は、当技術分野で周知の手法(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、ロックフォード、イリノイ州)を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシル−スクシニミド)から調製し、ストレプトアビジンでコーティングした96穴プレート(Pierce Chemical)の各ウェル内に固定化することができる。または、CLASP−2には反応するが、ポリペプチドとその標的分子間の結合には干渉しない抗体は、プレートのウェルに対して誘導体化することが可能で、抗体結合によりCLASP−2をウェル上に捕捉することができる。上述の通り、CLASP−2結合ポリペプチドおよび候補化合物の調製物は、プレート上のCLASP−2が存在するウェル内でインキュベートされることで、ウェルに捕捉された複合体の量が定量される。このような複合体を検出する方法には、CLASP−2標的分子に対して、またはCLASP−2ポリペプチドに対して反応して標的分子と競合する抗体を用いた複合体の免疫学的検出;ならびに、標的分子と結びつく酵素活性の検出に基づく酵素結合アッセイ法などがある。
【0293】
薬剤スクリーニングの一つの方法では、CLASP−2(例えば、配列番号:2の配列を有するタンパク質)を発現する組換えDNA分子で安定に形質転換された真核細胞または原核細胞を宿主として利用する。このような細胞は、生細胞または固定細胞のいずれであっても、標準的なリガンド/受容体結合アッセイ法に利用することができる(例えば、細胞応答を検出する高感度の方法について記述したParceら(1989)Science 246:243〜247;およびOwickiら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:4007〜4011を参照)。被験化合物は標識されることが多く、結合を対象として、または他の結合用リガンドの競合を対象としてアッセイすることができる。生細胞はCLASP−2を介した機能に及ぼす薬剤作用(例えば、T細胞の活性化、セカンドメッセンジャーレベルほかの作用)のスクリーニングに使用することもできると考えられる。
【0294】
本発明の別の態様においては、異常なCLASP−2核酸発現またはCLASP−2ポリペプチド活性を特徴とする(または関連する)障害の治療に使用可能な化合物を同定する方法(例えばスクリーニングアッセイ法)を提供する。この方法は通常、化合物または薬剤が有する、CLASP−2の核酸の発現またはCLASP−2ポリペプチドの活性の調節能力をアッセイすることで、異常なCLASP−2核酸発現またはCLASP−2ポリペプチド活性を特徴とする障害を治療する化合物を同定する段階を含む。
【0295】
化合物または薬剤が有する、CLASP−2核酸の発現またはCLASP−2ポリペプチド活性の調節能力をアッセイする方法は通常、細胞に基づくアッセイ法である。例えば、CLASP−2が関与する経路を介してシグナルを伝達するリガンドに感受性のある細胞は、候補化合物の存在下または非存在下でCLASP−2ポリペプチドを過剰発現するように誘導されうる。CLASP−2依存性の反応に変化を生じる候補化合物を同定することができる。ある態様においては、CLASP−2の核酸発現またはCLASP−2ポリペプチドの活性は細胞で調節されており、対象となる読み出された情報(T細胞の活性化など)に候補化合物が及ぼす作用が測定される。例えば、CLASP−2依存性の情報伝達経路に応じて上方または下方制御される遺伝子群の発現をアッセイすることができる。
【0296】
または、CLASP−2発現の調節物質は、細胞を候補化合物と接触させる方法で同定して、細胞中におけるCLASP−2のmRNAまたはポリペプチドの発現を決定することができる。候補化合物の存在下におけるCLASP−2のmRNAまたはポリペプチドの発現レベルは、候補化合物の非存在下におけるCLASP−2のmRNAまたはポリペプチドの発現レベルと比較する。次にこの比較に基づき、候補化合物をCLASP−2核酸発現の調節物質として同定することができる。例えば、CLASP−2のmRNAまたはポリペプチドの発現が、候補化合物の非存在下の場合と比較して存在下の方が高い場合、候補化合物はCLASP−2核酸発現の刺激因子と同定される。または、CLASP−2の核酸発現が、候補化合物の非存在下と比較して存在下の方が低い場合、候補化合物はCLASP−2核酸発現の阻害剤と同定される。細胞中におけるCLASP−2の核酸発現のレベルは、CLASP−2のmRNAまたはポリペプチドの検出に関して、本明細書に記載された方法で決定することができる。
【0297】
このような薬剤スクリーニングアッセイ法にしたがって同定されるCLASP−2ポリペプチドの活性およびCLASP−2核酸の発現の調節物質は、例えば免疫障害などの治療に利用することができる。このような治療法には、CLASP−2ポリペプチドの活性または核酸の発現の調節物質を投与する段階が含まれる(例えば5.10.1節で後述した製剤用組成物中に含まれる因子で、そのような治療法を必要とする被験者―例えば本明細書に記載された障害のある被験者―を対象とするもの)。
【0298】
5.10. CLASP−2 調節物質の治療における投与
CLASP−2タンパク質はリンパ球で発現し、上述したようにT細胞とB細胞の相互作用を調節することで、CLASP−2活性(例えばCLASP−2と調節タンパク質との結合)を、免疫障害の診断および治療ならびに免疫機能の調節(例えばT細胞の活性化)の標的とする役割を果たす。またCLASP−2は細胞内シグナルを伝達可能なドメインを含むので、細胞表面のCLASP−2は、リンパ球の活性化状態を高めるために、抗CLASP−2抗体または可溶性CLASP−2またはその断片によって誘導される。
【0299】
5.10.1. 投与剤形および投与経路
CLASP−2ポリペプチド、その断片、抗CLASP−2抗体、CLASP−2ポリヌクレオチド(例えばアンチセンスまたはリボザイム)、または小分子アゴニストまたはアンタゴニストは、製剤用組成物または治療的組成物の形状として被験者自ら投与することができる。本発明のタンパク質からなる製剤用組成物は、従来の方法―混合、溶解、顆粒化、糖衣化、すり潰し、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥の過程―により製造することができる。製剤用組成物は、タンパク質または活性ペプチドを薬剤として使用可能な調製物へと加工しやすくする一つまたは複数の生理学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤または補助剤を用いた従来の方法で製剤化することができる。製剤化の適切さは、選択する投与経路に左右される。
【0300】
現在、タンパク質を細胞および動物体に輸送する際に使用されているタンパク質由来の細胞透過ペプチドには3つの主な種類がある(Lindgren、M.ら、2000、Trends Pharmacol Sci. 21:99〜103)。一つの態様においては、CLASP−2タンパク質または、(CLASP−2の機能ドメインをコードする)断片は、ANTPなどのホメオタンパク質の転写因子に由来する輸送タンパク質と結合した融合タンパク質として細胞内に導入することができる。別の態様においては、CLASP−2タンパク質または、(CLASP−2の機能ドメインをコードする)断片は、HIVのTatタンパク質および単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)のVP22タンパク質などの他の転写因子と結合した融合タンパク質として細胞内に導入することができる。このファミリーに属するタンパク質は、多様な細胞系または動物で広く使用されている(Schwarze, S.ら、2000、Trends Phannacol Sci. 21:45〜48)。別の態様においては、CLASP−2タンパク質または(CLASP−2の機能ドメインをコードする)断片は、HIV−1のgp41などの複数のタンパク質に含まれるシグナル配列由来のペプチドと結合した融合タンパク質として細胞内に導入することができる。他の態様においては、複数の合成ペプチド、および/またはトランスポータン(transportan)およびAmphiphilocモデルペプチドなどの細胞透過性のキメラペプチド(Lindgren, M.ら、2000、Trends Pharmacol Sci. 21:99〜103)を利用することができる。別の態様においては、CLASP−2タンパク質または断片は抗DNA抗体を用いて導入することができる(例えば、Zack, D.J.ら、1996、J. Immunol. 157:2082〜8を参照)。
【0301】
本発明のタンパク質の局所投与では、当技術分野で周知である溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁剤などとして製剤化することができる。
【0302】
全身投与に用いる製剤には、注射で投与するように設計された製剤が含まれる。例として、皮下注入、静注入、筋肉注入、髄腔内注入、または腹腔内注入、ならびに経皮、経粘膜、経口、または肺を介した投与用に設計されたものが挙げられる。
【0303】
注射剤では、本発明のタンパク質は水溶液として、好ましくはハンクス液、リンガー液、および生理食塩水緩衝液などの生理学的に適合性のある緩衝液に溶解して製剤化できる。溶液は、懸濁用、安定化用、および/または分散用の薬剤などの製剤用薬剤を含むことができる。またはタンパク質を、使用の前に適切な溶媒(例えば無菌性で発熱物質を含まない水)で構成するために粉末状にすることができる。
【0304】
経粘膜投与では、浸透する際の防御に適した浸透剤(penetrant)が製剤化の工程で使用される。このような浸透剤は一般に当技術分野で周知である。
【0305】
経口投与では、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体とタンパク質を混合することで、組成物として容易に製剤化することができる。このような担体を加えることで、タンパク質の剤形を、錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル、液状、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして投与対象患者の経口摂取に用いられる。例えば粉剤、カプセルおよび錠剤などの経口用固形製剤に適した賦形剤には、乳糖、ショ糖、マンニトールおよびソルビトールなどの糖などの充填剤;トウモロコシデンプン、コムギデンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ガム、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/または、ポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物;顆粒化剤;および、結合剤などが含まれる。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギニン酸もしくはアルギニン酸ナトリウムなどの塩などの崩壊剤を添加することができる。
【0306】
必要に応じて、固形の剤形は標準的な手法で糖衣状または腸溶性とすることができる。
【0307】
例えば懸濁液、エリキシルおよび溶液などの経口液体調製物の場合、適切な担体、賦形剤または希釈剤には、水、グリコール、油、アルコールなどが含まれる。この他に、香味料、保存剤、着色剤などを添加することができる。
【0308】
頬粘膜投与では、タンパク質は従来の方法で製剤化される錠剤、トローチ剤などの剤形をとりうる。
【0309】
吸入投与では、本発明で使用するタンパク質は、エアゾルスプレーの状態で、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、炭酸ガスほか適切なガス)とともに加圧容器またはネブライザーから容易に投与される。加圧型エアゾルの場合、投与単位は、計量する量を送り込むバルブを供与することで決定することができる。例えば、吸入器または注入器に使用されるゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジは、化合物および乳糖またはデンプンなどの適切な粉末基剤からなる粉末混合体を含むように製剤化することができる。。
【0310】
タンパク質はまた、坐剤または浣腸剤―例えばカカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む―などの腸または膣の組成に適したものとして製剤化することができる。
【0311】
既に述べた製剤化に加えて、本発明のタンパク質はデポ剤としても製剤化可能である。デポ剤のような長時間作用性の製剤は、移植(例えば経皮的または筋肉内移植)により、または筋肉注射で投与することができる。したがって例えば、該タンパク質は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳濁液として)、またはイオン交換樹脂とともに製剤化することができるほか、可溶性が低い誘導体(例えば可溶性が低い塩)として製剤化することができる。
【0312】
一方で、他の薬剤デリバリーシステムを利用することができる。リポソームおよび乳濁液は周知の輸送用溶媒であり、本発明のタンパク質またはペプチドの輸送に使用できる。ジメチルスルフォキシドなどの一部の有機溶媒も利用できるが、一般に毒性が高い。さらに本発明のタンパク質は、治療薬を含む固体ポリマーからなる半透性マトリックスなどの持続放出システムを用いて輸送可能である。
様々な持続放出材料の有効性が確認されており、当業者に周知である。持続放出カプセルは、その化学的性質に応じてタンパク質を数週間から最長100日にわたって放出する。治療薬の化学的性質および生物学的安定性を考慮して、タンパク質の安定化を図る追加的な方策をとることができる。
【0313】
該タンパク質およびペプチドは、電荷を帯びた側鎖または末端を含むことがあるので、上述の任意の剤形中に遊離の酸または塩基として、または薬剤として許容される塩として含めることができる。薬学的に許容される塩とは、遊離塩基の生物学的活性を実質的に保持する塩であって、無機酸との反応で調製される塩を指す。薬理的な塩は対応する遊離塩基状態と比較して、水性およびプロトン性溶媒中への可溶性が大きい傾向がある。
【0314】
5.10.2. 有効量
CLASP−2のポリペプチド、CLASP−2の断片および抗CLASP−2抗体は一般に、意図した目的を達成するための有効な量で使用される。免疫反応を阻害する用途については、本発明のタンパク質または製薬用組成物は、治療的有効量を投与または適用される。治療的有効量とは、投与対象患者の症状を改善もしくは予防するために、または、生存期間を延長するために有効な量を意味する。治療的有効量の決定は、特に本明細書で提供する詳細な開示に鑑み、当業者であれば問題なく実施することができる。
【0315】
全身投与では、治療的有効用量はインビトロアッセイ法を元に最初に推定することができる。例えば用量は、動物モデルにおいて細胞培養で検討されるIC50(すなわちCLASP−2結合相互作用の50%を阻害する被験化合物の濃度)を含む循環血中濃度範囲に達することで決定することができる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより厳密に決定する際に用いることができる。
【0316】
初回投与量もまた、当技術分野で周知の方法により、例えば動物モデルのインビボデータを元に推定することができる。当業者であれば動物データを元にヒトへの投与を容易に最適化することができると思われる。
【0317】
投与量および投与間隔は、治療効果を十分維持するタンパク質の血漿濃度を得るために個別に調整することができる。注射による通常の患者投与量は概算で0.1〜5 mg/kg/日の範囲にあり、好ましくは概算で0.5〜1 mg/kg/日である。1日に複数回投与することで治療上有効な血清濃度が得られる。
【0318】
局所投与または選択的取り込みの場合、本発明のタンパク質の有効局所濃度は血漿濃度と関連しない。当業者であれば、過度の実験を行うことなく治療上有効な局所投与量を最適化することができると思われる。
【0319】
CLASP−2の投与量が、投与対象者、対象者の体重、苦痛の強度、投与様式、および処方する医師の判断によって変わることは言うまでもない。
【0320】
治療は、症状が検出される間に、またさらには検出されない場合であっても間歇的に繰り返すことができる。治療は単独または他の薬剤と組み合わせて行うことができる。自己免疫疾患の場合、CLASP−2またはその断片と組み合わせて使用可能な薬剤には、ステロイド系および非ステロイド系の免疫抑制薬などがあるが、これらに限定されることはない。
【0321】
5.10.3. 毒性
好ましくは、本明細書に記載されたタンパク質の治療的有効用量は、大きな毒性を生じることなく治療上の有益性をもたらすと思われる。
【0322】
本明細書に記載されたタンパク質の毒性は、標準的な薬理学的方法により、細胞培養または実験動物を対象に決定することができる。このような方法には例えばLD50(集団の50%が致死となる用量)やLD100(集団の100%が致死となる用量)の決定がある。毒性作用と治療効果の間の用量比は治療係数と呼ばれる。細胞培養アッセイ法および動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用で毒性を生じない投与量範囲の決定に利用することができる。本発明に記載されたタンパク質の投与量は、毒性が極めて低いかまたは全くない用量に関する有効投与量を含む循環血中濃度の範囲内にあることが好ましい。投与量は用いる剤型ならびに投与経路に応じてこの範囲内で変動することがある。医師は、厳密な処方、投与経路および投与量を患者の状態を考慮した上で選択することができる(例えばFinglら、1975、「治療に関する薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」の第1章、第1頁を参照)。
【0323】
5.11. 結合アッセイ法
CLASP−2のポリペプチドは、CLASP−2に結合する分子群、またはCLASP−2が結合する分子群のスクリーニングに使用することができる。分子のCLASP−2への結合は、CLASP−2または結合分子の活性を、活性化する(アゴニスト)、上昇させる、阻害する(アンタゴニスト)または低下させる場合がある。このような分子には例えば、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば受容体)、または小分子などがある。好ましくは、これらの分子はCLASP−2の天然リガンドに近く、例えばリガンドの断片、または天然物、リガンド、構造または機能上の類似物などがある(Coliganら、「免疫学の現行のプロトコール(Current Protocols in Immunology)」1(2):第5章(1991)を参照)。同様に、この分子はCLASP−2が結合する天然の受容体、または少なくともCLASP−2に対する結合能力がある受容体の断片(例えば活性部位)に密接に関連することがある。いずれの場合においても、同分子は既知の方法で合理的に設計することができる。
【0324】
好ましくは、これらの分子のスクリーニングは、CLASP−2を分泌型タンパク質として、または細胞膜上に発現する適切な細胞の産生にかかわる。好ましい細胞には哺乳類、酵母、ショウジョウバエの細胞、または大腸菌などがある。次にCLASP−2を発現する細胞(またはポリペプチドを発現している細胞膜)は、好ましくは被験化合物が上記分子とおそらく接触することで、CLASP−2または上記分子のいずれかとの結合、活性の増大または阻害が観察される。
【0325】
このアッセイ法は、CLASP−2に対する候補化合物の結合を単純に試験することができる。この際、結合は標識で、または標識化競合物質との競合がかかわるアッセイ法で検出される。さらにこのアッセイ法は、候補化合物がCLASP−2に対する結合によって最終的にシグナルを発生するか否かを試験することができる。
【0326】
一方で、このアッセイ法は、無細胞調製物、固相支持体に結合させたポリペプチド、ケミカルライブラリー、または天然産物の混合物を用いて実施することができる。このアッセイ法はまた単に候補化合物をCLASP−2含有溶液と混合する段階、CLASP−2活性または結合を測定する段階、および、CLASP−2活性または結合を標準と比較する段階から構成される。好ましくは、ELISAアッセイ法で、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて、試料(例えば生物試料)でCLASP−2の濃度または活性を測定可能である。抗体は、直接または間接的にCLASP−2に結合させることで、または基質に対してCLASP−2と競合させることで、CLASP−2のレベルまたは活性を測定することができる。
【0327】
本発明の別の局面においては、CLASP−2のポリペプチドまたはその断片をツーハイブリッド法における「えさタンパク質」として使用することで(例えば米国特許第5,283,317号;Zervosら、1993、Cell 72:223〜232;Maduraら、1993、J. Biol. Chem. 268:12046〜12054;Bartelら、1993、Biotechniques 14:920〜924;Iwabuchiら、1993、Oncogene 8:1693〜1696;およびBrentによる国際公開公報第94/10300号)、CLASP−2と結合または相互作用する他のタンパク質(「CLASP−2結合タンパク質」または「CLASP−2−bp」)を同定し、CLASP−2のポリペプチド活性を調節することができる。このようなCLASP−2結合タンパク質はまた、CLASP−2のポリペプチド、例えば、CLASP−2経路の上流または下流にある因子群のシグナル伝播にかかわる可能性が高い。
【0328】
上述のアッセイ法はいずれも、診断または予後のマーカーとして利用できる。これらのアッセイ法を用いて発見される分子は、CLASP−2分子を活性化または阻害することで、疾患の治療に、または患者に特異的な結果をもたらすために使用することができる。さらに、これらのアッセイ法では、適切に操作された細胞または組織に由来するCLASP−2の産生を阻害または促進する薬剤を見出すことができる。
【0329】
したがって本発明は、以下の段階からなるCLASP−2ポリペプチド結合性化合物または薬剤を同定する方法を含む:(a)CLASP−2ポリペプチドに対して化合物が結合して複合体形成を可能とする条件下におけるCLASP−2のポリペプチドと化合物または薬剤との接触、および(b)結合が生じているか否かの決定。さらに本発明は、以下の段階からなるアゴニストまたはアンタゴニスト同定法を含む:(a)候補化合物とCLASP−2とのインキュベート、(b)生物学的活性のアッセイ法、および(b)CLASP−2の生物学的活性が変化しているか否かの判定。
【0330】
アッセイ法を自動化するための複数の方法が近年開発されており、数万種類の化合物を短時間でスクリーニングすることが可能となっている(例えば、Fodorら、1991、Science 251:767〜773および、複数の化合物による結合親和性の試験法について述べた化学的多様性ライブラリーに関する他の記述を参照)。
【0331】
5.12. CLASP−2 のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの他の用途
本明細書に記載されたポリヌクレオチド、ポリペプチド、ポリペプチド相同体、調節物質、および抗体は、以下の一つまたは複数の方法で使用することができる:a)薬剤スクリーニングアッセイ法、b)特に疾患の同定、対立遺伝子スクリーニングおよび遺伝薬理学的試験;およびc)薬理ゲノム科学。本発明のCLASP−2ポリペプチドは、本明細書に記載された一つまたは複数の活性を有するので、例えばCLASP−2結合パートナーへの結合させることで天然のCLASP−2ポリペプチドに対する結合を不可能にすることなどにより免疫細胞における免疫反応を調節する際に利用することができる。
【0332】
一つの態様においては、これらのCLASP−2結合パートナーはチロシンキナーゼ(例えば、lyn、lck、fyn、ZAP−70m SyK、およびCSK)とすることができる。別の態様においては、これらのCLASP−2結合パートナーはチロシンホスファターゼ(EZRIN、SHP−1、SHP−2、およびPTP36)とすることができる。別の態様においては、これらのCLASP−2標的分子群はアダプタータンパク質(例えば、NCK、CBL、SHC、LNK、SLP−76、HS1、SIT、VAV、GrB2、およびBRDG1)とすることができる。別の態様においては、これらのCLASP−2結合パートナーはアンキュリン、スペクトリン、タリン、エズリン、トロポミオシン、ミオシン、プレクチン、シンデカン、パラレムミン(paralemmin)、バンド3タンパク質、細胞骨格タンパク質4.1、およびPTP36)などの細胞骨格結合性タンパク質とすることができる。さらに別の態様においては、CLASP−2結合パートナーは、インテグリンファミリーに属する分子群とすることができる。
【0333】
単離された本発明の核酸分子は、CLASP−2ポリペプチドを(例えば、宿主細胞または遺伝子治療における適用において組換え型発現ベクターを介して)発現させ、(例えば生物試料中の)CLASP−2 mRNA、または天然のCLASP−2遺伝子変異もしくは組換えにより生じたCLASP−2遺伝子変異を検出するために、および、後述するようにCLASP−2活性を調節するために使用することができる。またCLASP−2のポリペプチドは、CLASP−2ポリペプチド活性を調節する薬剤または化合物のスクリーニングに、ならびにCLASP−2ポリペプチドの不十分な産生、または野生型CLASP−2と比較して低い活性の形のCLASP−2ポリペプチドの産生を特徴とする障害の治療に使用できる。さらに、本発明の抗CLASP−2抗体を使用して、CLASP−2ポリペプチド、特に生物試料中に存在するCLASP−2の断片を検出および単離し、CLASP−2ポリペプチドの活性を調節することができる。
【0334】
5.13. 診断アッセイ法
本発明はさらに、生物試料に含まれるCLASP−2またはその断片の存在を検出する方法を提供する。生物試料は通常リンパ球(例えば血液由来)を含む。この方法には、生物試料とCLASP−2ポリペプチドまたはmRNAを検出して生物試料中のCLASP−2の存在を検出する化合物または薬剤との接触が含まれる。
【0335】
CLASP−2 mRNA検出用の好ましい薬剤は、CLASP−2 mRNAとハイブリッドを形成する能力を有する直接または間接に標識化された核酸プローブである。核酸プローブは例えば、配列番号:1に示す完全長CLASP−2 cDNA、またはその一部分である少なくとも15、30、50、100、250、または500ヌクレオチド長で、厳密な条件下でCLASP−2 mRNAに対して特異的にハイブリッドを形成するのに十分なオリゴヌクレオチドとすることができる。
【0336】
CLASP−2ポリペプチド検出用の好ましい薬剤は、対CLASP−2ポリペプチド結合能力を有する直接または間接に標識化された抗体である。抗体はポリクローナルであってもよいし、より好ましくはモノクローナルとすることができる。完全な抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab)2)を使用することができる。プローブまたは抗体に関して「直接または間接に」という表現は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(すなわち物理的連結)させることでプローブまたは抗体を直接標識すること、ならびに直接標識される別の試薬との反応性を利用してプローブまたは抗体を間接標識することを意味する。間接標識の例には、蛍光標識した二次抗体による一次抗体の検出、およびビオチンによるDNAプローブの末端標識などがある。後者の場合、DNAプローブは蛍光標識されたストレプトアビジンで検出することができる。本発明の検出法は、生物試料に含まれるCLASP−2のmRNAまたはポリペプチドのインビトロならびにインビボにおける検出に使用することができる。例えばCLASP−2 mRNAのインビトロ検出法には、ノーザンハイブリダイゼーションおよびインサイチューハイブリダイゼーションなどがある。CLASP−2ポリペプチドのインビトロ検出法には、酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降法、および免疫蛍光法などがある。一方、CLASP−2ポリペプチドは、標識された抗CLASP−2抗体を被験者に導入することでインビボで検出することができる。例えば、この抗体を放射性マーカーで標識することで、被験者の体内における存在および位置を標準的な画像法で検出することができる。特に有用な方法は、被験者で発現するCLASP−2の対立遺伝子異型を検出する方法、および試料に含まれるCLASP−2ポリペプチドの断片を検出する方法である。
【0337】
本発明はまた、生物試料に含まれるCLASP−2の存在を検出するためのキットを対象とする。例えばこのキットは、生物試料におけるCLASP−2のポリペプチドまたはmRNAの検出能力を有する直接または間接に標識された化合物または薬剤;試料に含まれるCLASP−2の量を決定する方法;および、試料中のCLASP−2量を標準と比較する方法からなる。化合物または薬剤は適切な容器に収めることができる。このキットにはさらに、キットを使用してCLASP−2のmRNAまたはポリペプチドを検出するための説明書を含めることができる。
【0338】
本発明の方法はまた、CLASP−2遺伝子中の天然の遺伝的変異を検出して、変異遺伝子を有する被験者に、本明細書に記載された容易、異常な(aberrantまたはabnormal)CLASP−2核酸発現またはCLASP−2ポリペプチド活性を特徴とする障害のリスクがあるか否かを決定するために使用されることがある。好ましい態様においては、この方法には、被験者由来の細胞の試料中にCLASP−2ポリペプチドをコードする遺伝子の完全性、またはCLASP−2遺伝子の異所性発現に影響する少なくとも一つの変化を特徴とする遺伝的変異の有無を検出することが含まれる。
【0339】
5.14 CLASP−2 の生物学的活性
本明細書の記載にあるように、CLASP−2はリンパ球その他の細胞で様々な細胞機能を媒介する。本明細書に記載されるように、様々なアッセイ法では、CLASP−2の活性(すなわち、生物学的活性、例えば、結合)を検出もしくは定量する、またはCLASP−2の活性もしくは発現を調整する作用因子(本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチド、および抗体を含む)の同定に有用である。このような作用因子は、異常なCLASP−2の発現または活性に関連した疾患および状態の治療に有用である。さらに、当業者であれば、本明細書に示す指針に従って、下記のような通常用いる測定法により、CLASP−2が媒介する他の活性を同定することができる。
【0340】
CLASP−2の機能(もしくは、機能の調整)の測定法の例としては、インビトロもしくはインビボでの細胞の活性(例えば、下記のサイトカイン産生、カルシウム流入、チロシンリン酸化、初期活性化マーカーの制御、細胞代謝、増殖等)の変化を検出することによるインビトロもしくはインビボでの細胞応答(例えば、リンパ球の活性化、抗体産生、炎症等の免疫応答)の調整に関する測定法があげられる。ある態様においては、細胞はリンパ球である。
【0341】
例えば、ある測定法では、組換え体CLASP−2タンパク質、ペプチド、もしくはCLASP−2の細胞外ドメインに対する抗体を、直接T細胞またはB細胞と混合することができる。次に、これらの細胞のサイトカイン産生を測定し、かつ免疫応答の調整の度合いを定量化する。または、抗原提示B細胞を、トランスフェクションしていないT細胞またはCLASP−2のアイソフォームをトランスフェクションしたT細胞と混合する。サイトカイン産生(または5.14.3節における、カルシウム流入またはその他の測定法)を適当な時間で測定し、免疫応答等に対するCLASP−2の効果を調べる。同様の測定法において、CLASP−2の構築物でトランスフェクションしたB細胞が、免疫応答を惹起するようなT細胞の刺激を行う能力があるか否かを調べる。これらいずれの場合においても、トランスフェクションする構築物は、例えば、CLASP−2配列の全長もしくは一部をコードする、または内在性CLASP−2遺伝子の翻訳を阻害するアンチセンスの構築物であってもよい。CLASP−2アイソフォームもしくは抗体の存在または非存在下で免疫応答促進すること、およびその結果得られた免疫応答に対する効果を5.14.3節のリストに示す方法により測定する際には、本明細書の記載するいずれの例をも用いることができる。
【0342】
5.14.1 インビトロで免疫応答を惹起する方法
様々な測定においては、ある作用因子の免疫細胞に対する効果をインビトロ測定で検出する。免疫応答の程度は、下記のような複数の標準的な測定法で測定または定量することができる。
【0343】
ある測定法では、ヒトの末梢血単核球(PBMC)、ヒトT細胞クローン(例えば、ジャーカット E6、ATCC TIB−152)、EBVでトランスフォームしたB細胞クローン(例えば、9D10、ATCC CRL−8752)、抗原特異的T細胞クローンまたは株を用いて、インビトロでの免疫応答を調べることができる。これらの細胞クローンもしくは細胞株の活性化、活性化の亢進、または活性化の阻害を利用して、潜在的なCLASP療法を評価することができる。造血系の細胞を刺激し免疫応答に特徴的な活性化を起こす一般的な方法としては、例えば、以下のものがあげられる。
【0344】
A)免疫応答の抗原特異的刺激。免疫前、または免疫を行っていないマウスの脾細胞を通常の方法で調製することができる。さらに、これまでに特徴付けが成されている抗原特異的T細胞クローンおよびハイブリドーマ(例えば、MBP特異的)、ならびに多くのB細胞リンパ腫細胞株(例えば、CH27)が、以下に記載の測定法に関して利用可能である。抗原特異的脾細胞またはB細胞を抗原の存在下で特異的T細胞と混合し、免疫応答を惹起させることができる。CLASP−2の存在下または非存在下でこれを行い、5.14.2節のいずれかの測定法で測定した時にCLASP−2が免疫応答を調整するか否かを調べることができる。
【0345】
B)T細胞の非特異的活性化。次のような方法を用いて、抗原の非存在下でT細胞を活性化することができる。:1)受容体を活性化する分子(例えば、TCR、CD3、またはCD2)に対する抗体を、共刺激分子に対する抗体(例えば、抗CD28)とともに添加することによるT細胞受容体(TCR)の架橋結合。:2)コンカナバリンA(conA)およびフィトヘムアグルチニン(PHA)等のレクチンを利用した非特異的な方法での細胞表面の受容体の活性化。:3)プロテインキナーゼCを活性化し(例えば、フォルボールエステル)、または細胞質Ca2+を増加させる(例えば、イオノマイシン)、薬理学的な作用因子を利用した細胞表面受容体を介する模倣活性化。
【0346】
C)B細胞の非特異的活性化:1)IgM、CD20、またはCD21等の細胞表面分子に対する抗体の使用。:2)リポ多糖(LPS)、フォルボールエステル、カルシウムイオノフォアおよびイオノマイシンを用いて、受容体の始動をバイパスすることも可能である。
【0347】
D)混合リンパ球反応(MLR)。ドナーのPBMCとレシピエントのPBMCを混合し、不適合な組織抗原を提示させることによりリンパ球を活性化する。これは、一卵性双生児を除いて如何なる場合にも起こる。
【0348】
E)特定の抗原を認識する特異的T細胞クローンまたは株の調製。通常の方法は、破傷風トキシンで最近追加免疫したドナーから破傷風トキシン特異的なT細胞を調製するものである。主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に適合した抗原提示細胞および破傷風トキシンの供給源を利用して、細胞株またはT細胞クローンの抗原特異性を維持する(Lanzavecchia, A.ら、1983, Eur. J. Immun. 13: 733−738)。
【0349】
CLASP−2ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの作用に関し予測される機構に従って適当な測定法を定義し、リンパ球活性化の潜在的な促進または阻害を調べるために利用する。例えば、CLASP細胞外ドメインを含む可溶性タンパク質は、T細胞と抗原提示細胞間の相互作用を阻害しうる。このような相互作用は、MLRにおいて、もしくは抗原特異的T細胞の活性化においては一定の役割を果たすが、非特異的T細胞またはB細胞の活性化においては機能しない。上記の測定法は、複数の可能な定量的検出法に対し利点を有する。
【0350】
5.14.2 インビボでの免疫応答を惹起する方法
多様な測定法においては、インビボ測定法を利用して免疫細胞に対する作用因子の効果を検出する。免疫応答の程度は、以下に記載の方法を含む複数の標準的な方法によって測定もしくは定量することができる。
【0351】
(A)移植拒絶の動物モデル:異所性心臓移植
ある態様においては、移植片対宿主拒絶の標準的な動物モデルは異所性心臓移植である(Fulmerら、1963, Am. J. Anat. 113: 273−281)。この方法は、耳の基底部の耳介動脈を覆う皮膚を切開して、両耳背部に外科的に作製したポケットに心臓組織を植え込むためにBALB/Cマウス(性別はいずれでもよく、1〜9ヶ月の月齢のもの)を利用することを含む。緩やかに湾曲したピンセットを切開部に差し入れ、皮膚と軟骨板の間を確実に切る。ドナーの組織を耳の遠位端部付近にあるポケットの基底部に慎重に入れる。ポケットの開口部をふさぐために耳介動脈を用いる。10〜14日以内に、移植片の拍動活性が観察されるはずである。移植片全体の外見、移植領域への液胞供給のパターンおよび拍動活性は、透過光を当てることによって容易に観察することができ、ならびに拍動活性は、移植後最初の3週間、透過光を利用して容易に観察することができる。数ヶ月に渡って追跡を行うことができる。
【0352】
(B)自己免疫疾患の動物モデル:コラーゲン誘導性関節炎(CIA)の誘導
コラーゲン誘導性関節炎(CIA)は進行と免疫を研究するための標準的なモデルである(Courtneyら、1980, Nature 283: 666及びWooleyら、1981, J. Exp. Med. 154: 688)。DBA/aマウスを利用して、インビトロで試験した潜在的な免疫療法におけるCLASP−2のインビボでの妥当性を測定することができる。インビボ実験を行い、CIAを予防する潜在的な治療法の可能性を調べる。本発明者らは、1群当たり3〜5匹のマウスを用いて、統計的に結果を評価する。
【0353】
II型コラーゲン(CII)の効力に関する力価が得られれば、治療法を試験しうる。ある態様においては、3匹のマウスを3種類の異なる濃度、1匹あたり50、200、および400μgのCIIで免役する(Naboznyら、1996, J. Exp. Med., 183: 27−37)。CIAを惹起するめに、上記のような適当な濃度のCIIで動物を免役する。抗原:CFAの比が1:1であるのものの半量を尾の基部に投与して、残りをさらに半分に分け両後足のフットパッドにそれぞれ投与することができる。CIIでの免疫後12週間で実験を終了するまでの期間、CIAの発症及び進行に関して毎日マウスを注意深くモニターする。移植する心臓片のサイズは約3x3mmでよい。関節炎の重症度は、次のような当業者に公知の通常の方法で評価することができる。
【0354】
5.14.3 定量測定
(A)チロシンリン酸化
HS1、PLC−γ、ZAP−76、およびVav等の初期応答タンパク質のチロシンリン酸化は、T細胞活性化に続いて起こる初期の生化学的事象である。チロシンリン酸化されたタンパク質は、リン酸化したチロシン残基に対する抗体を用いたウエスタンブロットで検出することができる。これら初期応答タンパク質のチロシンリン酸化を用いて、T細胞活性化の標準的な測定を行うことができる(J. Biol. Chem., 1997, 272(23): 14562−14570)。CLASP−2の存在下で免疫応答が起こった場合の、これらまたは関連するタンパク質のリン酸化パターンの変化はいずれも、CLASP−2によるこの応答に関する調整を示唆するものである。
【0355】
(B)細胞内カルシウム流入
細胞内Ca2+の濃度に関する動力学を、予めカルシウム感受性の色素で前処置してある細胞を刺激した後、経時的に測定する。カルシウム指示薬としての色素、Fluor−4(Molecular Probe)の結合によって、フローサイトメトリー、溶液蛍光分析法、および共焦点顕微鏡を利用したとき、この色素は蛍光強度の増加を示す。CLASP−2の存在下で免疫応答が起こった場合の、カルシウム流入の量とタイミングの変化はいずれも、CLASP−2によるこの応答に関する調整を示唆するものである。
【0356】
(C)初期活性化マーカーの制御
CD69、IL−2R、MHC クラスII、B7、およびTCR等の初期リンパ球活性化マーカーのレベルに関する発現/制御の増加と消失は、通常フローサイトメトリーを利用し蛍光標識した抗体で測定する。いずれの抗体も市販されている。CLASP−2の存在下で免疫応答が起こった場合の、リンパ球活性化マーカーの発現レベルにおける変化はいずれも、CLASP−2によるこの応答に関する調整を示唆するものである。
【0357】
(D)代謝活性/酸遊離の増加
既知の大部分のシグナル伝達経路における活性化は、酸の代謝を引き起こす。この再現性のある生物学的事象は、マイクロフィジオメーター(Molecular Devices)を利用し、酸遊離速度として測定され、潜在的な生物学的治療薬で細胞を処理したものを比較するときの、初期活性化マーカーとして利用することができる(McConnell, H. M.ら、1992, Science 257:1906−1912、およびMcConnell, H. M., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. 92:2750−2754)。CLASP−2で処理した試料の酸遊離をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。
【0358】
(E)細胞増殖/細胞生存率の測定
(1)[3H]チミジンの取り込み
インビトロでリンパ球を抗原もしくはマイトゲンに暴露すると、DNA合成と細胞増殖が誘起する。新規に合成されるDNAへの[3H]チミジンの取り込みによる有糸分裂活性の測定は、定量的なT細胞活性化の測定に最も頻繁に用いられるものの一つである。細胞集団もしくはT細胞の活性化に用いる刺激の形態に依存して、[3H]チミジン添加後、インビトロで有糸分裂活性を24〜72時間以内に測定することができる(Mishell, B. B. およびS. M. Shiigi, 1980, 「細胞免疫学において選択された方法(Selected Methods in Cellular Immunology)」, W. H. Freeman and Company およびDutton, R. W. およびPearce, J. D., 1962, Nature 194:93)。CLASP−2で処理した試料のCPMをコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合にはCLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。
【0359】
(2)MST[5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4,5−ジメチルチアゾリル)−3−(4−スルフォフェニル)テトラゾリウム、内部塩]は、増殖もしくは細胞毒性における生細胞数の決定を行う比色法である(Barltrop, J. A.ら、1991. Bioorg. & Med. Chem. Lett. 1:611)。リンパ球活性化後1〜5日で、MTSテトラゾリウム化合物、オーエン試薬を細胞により生物還元し、組織培養培地に可溶性の有色フォルマザン生成物に変える。マイクロプレートレーダーで490nmでの色強度から650nmでの色強度を減じた色強度を測定する。CLASP−2で処理した試料の色強度をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである(Mosmann, T., 1983, J. Immunol. Methods 65:55およびBarltrop, J. A.ら、(1991))。
【0360】
(3)チミジン類縁体であるブロモデオキシウリジン(BrdU)は、DNA合成中の細胞に容易に取り込まれる。BrdUでパルス標識した細胞を、酵素と結合した抗BrdU抗体で標識する(Gratzner, H. G., 1982, Science 218:474−475)。比色性の可溶性物質を用い、BrdUを取り込んだ増殖中の細胞を可視化する。硫酸で反応を止め、プレートリーダーを用い、450nmでプレートを測定する。CLASP−2で処理した試料の色強度をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。
【0361】
(F)アネキシンVによるアポトーシス
プログラム細胞死またはアポトーシスは、細胞死に至る異化作用のカスケードにおける初期事象である。細胞膜の統合性が失われると、蛍光標識したフォスファチジルセリンが結合する。染色した細胞を蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーで測定することができる(Vermes, I., 1995, J. Immunol. Methods. 180:39−52)。ある態様においては、CLASP−2で処理した試料においてアポプトーシスを起こした細胞数をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。インサイチューでアポプトーシスを評価するために、組織試料の細胞死を評価する測定法をインビボの試験で用いることもできる。
【0362】
(G)サイトカイン産生の定量
細胞を刺激後16〜48時間してから回収した細胞上清を、サイトカイン産生について、測定または直接的な試験を実施するまでの期間、−80℃で保存する。各試料について複数のサイトカインを測定することができる。IL−2、IL−3、IFNおよび他のサイトカインのELISA測定法による測定がマウス、ラットおよびヒトで利用可能である(Endogen, Inc. およびBioSource)。サイトカイン産生を、製造元が記載する標準的な2抗体サンドイッチELISA法のプロトコールで測定する。西洋ワサビペルオキシダーゼの存在を3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質で検出し、かつ反応は硫酸で停止させる。450nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定する。CLASP−2で処理した試料の色強度をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加もしくは減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。
【0363】
(H)NF−ATは免疫染色法で可視化できる
T細胞の活性化には、活性化T細胞の核内因子(NFAT)の核への移入が必要となる。NF−ATの移入は抗NF−AT抗体を用いた免疫染色法で可視化できる(Cell 1998,93:851−861)。それゆえ、NF−ATの核内移行はT細胞の活性化の測定に利用されてきたのである。同様に、NF−AT/ルシフェラーゼレポーターアッセイ法がT細胞の活性化の一般的な測定法として用いられてきた(MCB 1996, 12:7151−7160)。
【0364】
(I)II型コラーゲン(CII)特異的抗体によるELISA測定法(上記の関連するインビボ測定法を参照のこと)
CLASP−2 で免疫した動物の血清におけるC(II)の力価を測定および比較することができる。CII特異的抗体のアイソタイプである、TH1依存性のIgG2ならびにTH2依存性のIgG1およびIgEの双方は、ELISA測定法で測定する。マウスの血液は、CIIで免疫後、1〜2ヶ月後に眼窩から得る。試料を凝固させ遠心して、血清を得る。およびこれを、ELISA測定法で測定するまで−80℃で保存する。ELISAプレートをCIIおよび希釈した血清でコーティングする。HRP標識したヤギの、アイソタイプ特異的抗体。次にプレートをTMB基質と接触させ、マイクロプレートレーダーを用い450nmで測定する(Naboznyら、1996, J. Exp. Med. 183:27−37)。CLASP−2の存在下で免疫応答を惹起させた場合、比色試験によるコラーゲン特異的抗体のレベルにおけるいずれの変化もこの応答のCLASP−2による調整を示唆するものである。
【0365】
(J)ELISPOT測定法による抗体産生
アイソタイプ特異的抗体分泌性細胞の定量のための固相酵素結合イムノスポット(ELISPOT)測定法(Czerkinskyら、1983, J. Immunol. Methods. 65:109−121)。ヒトおよびマウスのB細胞の双方について、アイソタイプおよび抗原特異的抗体産生の試験を行うことができる。この技術は標準的なELISA測定法に基づくものであるが、単一細胞からの抗体分泌の検出によってより高感度になっている。CLASP−2の存在下で免疫応答を惹起させた場合、ELISPOT法のレベルにおけるいずれの変化もこの応答のCLASP−2による調整を示唆するものである。
【0366】
(K)IgE架橋結合に伴う細胞の脱顆粒
2種類の細胞株(MEG01およびHEL−17.92)をATCC(American Type Culture Collection, ATCC)から入手している。これらはいずれもヒトFC R1受容体を発現している。FC R1受容体はIgE複合体に対し高親和性を示す受容体であり、ビオチンと結合させるとアビジンと架橋結合し、リンパ球の脱顆粒およびヒスタミンの遊離を惹起する。試料をアシル化した後に、酵素免疫競合測定法(Immunotech)でヒスタミンを定量する。ヒスタミン遊離。CLASP−2で処理した試料のヒスタミン濃度をコントロール試料(未処理)と比較し、統計学的に有意な増加または減少が得られた場合には、CLASP−2の生物学的な機能に対する効果を示唆するものである。CLASP−2の存在下で免疫応答を惹起させた場合、脱顆粒の頻度またはヒスタミンのレベルにおけるいずれの変化もこの応答のCLASP−2による調整を示唆するものである。
【0367】
(L)フローサイトメトリーおよび免疫組織化学によるリンパ球の細胞の形質決定
病理学的障害後のリンパ球の組織分布を決定することによって、免疫応答に関与する特定の臓器、組織、およびリンパ球の同定を行うことができる。リンパ球移動の細胞形質決定は通常、フローサイトメトリーおよび免疫組織化学で実施する。形質、活性化の動態、および細胞の制御に関する事象の同定に通常利用するクラスター決定(CD)分子には複数のものが存在する。CLASP−2の存在下で免疫応答を惹起させた場合、CD分子のレベルおよび分布におけるいずれの変化もこの応答のCLASP−2による調整を示唆するものである。
【0368】
(M)構造/機能測定:同型および/または異型性のカルシウム依存性細胞の接着
L929細胞をCLASP−2とネオマイシンでトランスフェクトすることができる。CLASP−2発現に関して抗CLASPペプチド特異抗体でG418耐性クローンをスクリーニングする。次に、これらCLASP発現クローンを用い、カドヘリン分子について記載されている「細胞会合測定法」(Murphy−Erdosh, C.ら、1995, J. Cell. Biol. 129: 1379−1390)を利用して、同型および/または異型性のカルシウム依存性細胞接着に関する試験を行う。CLASP−2の存在下で免疫応答を惹起させた場合、細胞会合のレベルにおけるいずれの変化もこの応答のCLASP−2による調整を示唆するものである。
【0369】
本明細書に記載され、さらに下記の実施例に記載される以下のcDNAクローンは、ブダペスト条約のもとで、2000年3月24日付けでATCC(American Type Cell Collection, ATCC)(10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110−2209)に寄託されており、そのアクセッション番号は、
hCLASP−2A 3’クローン(AVC−PD1) ATCCアクセッション番号PTA−1563
hCLASP−2A 5’クローン(AVC−PD2) ATCCアクセッション番号PTA−1562
hCLASP−2B クローン(AVC−PD12) ATCCアクセッション番号
である。
【0370】
6. 実施例
実施例1
CLASP−2 のクローニング
CLASP−2は次のようにしてクローン化した:ヒトジェンバンク(GenBank)のヒト発現遺伝子配列断片(EST)データベースの相同性検索(BLAST)により、CLASP−1配列を用いて、発現遺伝子配列タグもしくは発現遺伝子配列断片(EST)クローン(ヒト前駆B細胞由来のイメージ(IMAGE)クローン815795)を同定した。イメージ(IMAGE)クローン815795の配列決定は全長について実施した。815795配列から調製したポリヌクレオチドプローブを[32P]−dCTPで標識し、これを用いてジャーカット細胞(Stratagene) およびラモスB細胞のcDNAライブラリー(James Boulter, UCLA)を含むヒトのcDNAライブラリーをスクリーニングした。用いたスクリーニング法は、マニアティスら(Maniatisら、1989, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)が記載している方法であった。複数のクローンを同定し、3,752塩基対のインサートを有するクローンC9の配列を決定した(ABI dye−sequencing system, PE Applied Biosystems, Perkin−Elmer Corporation, 761 Main Avenue, Norwalk, CT, U.S.A)。C9の配列からヌクレオチド1218〜1614に相当する5’プローブを調製し、cDNAライブラリーの再スクリーニングに用いた。複数のクローンを単離したが、インサートを欠失せずにファージ(Stratagene, CA)から切り出すことができなかった。この問題を克服するために、M13FプライマーとCLASP−2プライマー(C96AS; ヌクレオチド1441〜1460)を用いたアンカーPCRを実施した。pGEM−Tシステム(Promega)を用いてPCR断片をクローン化した。この配列はCLASP−2翻訳領域の5’末端を含み、さらに399bpの5’末端非翻訳領域を含むものであった。予備的なCLASP−2の塩基配列を図10に示す。CLASP−2のcDNAの配列は図1に示す。
【0371】
実施例2
CLASP−2 の組織および細胞株での発現
複数組織のノーザンブロット法をクローンテック(Clontech)から購入した。ハイブリダイゼーション法の方法は製造元の推奨する方法に従った。ヒトT細胞株(ジャーカット細胞)、ヒト骨髄性単核球細胞(MV4−11)、B細胞(9D10)、単球(THP−1)、マウスT細胞(3A9)、マウスB細胞(CH27)、ヒト前骨髄球(HL60)およびヒト腎上皮細胞(293細胞株)は、培養細胞株として維持した。複数細胞のノーザン分析のために、ギブコビーアールエル(GIBCO−BRL)のトリアゾールシステムを用いて細胞懸濁液からRNAを調製した。製造元の推奨する方法に従って、各工程を実施した。RNA溶液の260nm/280nmにおける吸光度をもとにRNAの濃度を決定した。20μgのRNAをエタノール沈殿し、フォルムアミド/フォルムアルデヒド緩衝液に懸濁し、とりうる二次構造を排除するために65℃で15分間インキュベートした。1.5%のフォルムアルデヒドを含む1.1%のアガロースゲルでRNA試料を一晩泳動(ゲルおよび泳動用の緩衝液は、いずれも20mMリン酸ナトリウム、pH7.5)した。ゲルの泳動後にRNAを可視化するため、泳動前に約0.5μgの臭化エチジウムをRNAローディング緩衝液とともに各試料に添加した。次に、260nmの波長の光でゲル中のRNAを可視化した。脱イオン水中に15分間ゲルを浸して、ゲル中の臭化エチジウムの濃度を減少させた後、20XSSC緩衝液中、キャピラリーブロット法でRNAをアマシャムハイボンドNプラスメンブレンに5時間転写した。ブロッティングに続いて、メンブレンを5XSSCで3時間洗い、RNAをUV 光(Stratagene Stratalinker)で膜に固定した。
【0372】
CLASP−2のアイソフォームA、B、CおよびDを認識するプローブ(プローブHC2.2)を用いた。プローブHC2.2はCLASP−2A翻訳領域のヌクレオチド3920〜4650(731bpの長さ)を含む。通常のラベリングキットを用いて、プローブHC2.2を調製し、パスツールピペット製のG50セファデックスカラムを用いてTEN(10mM Tris−HCl、pH8.0、1mM EDTA、および100mM NaCl)中で脱塩を行った。
【0373】
RNA(複数組織および複数細胞)の結合した膜に対する[32P]−dCTP標識DNAプローブによるハイブリダイゼーション法は、クロンテックエクスプレスハイブ(CLONTECH EXPRRESSHYB)溶液中で、68℃、1〜2時間行った。ブロットは2XSSC/0.1%SDS中で、2回10分間それぞれ50℃で洗い、次に0.2XSSC/0.1%SDS中で2回10分間それぞれ50℃で洗った後、2xSSC中で50℃で洗う。コダックバイオマックス(BIOMAX)MSフィルムへの露光は、増感紙を用いて−80℃で行った。通常の露光時間は、10〜36時間であった。
【0374】
実施例3
CLASP−2 のサザン分析
BAC DNAは、キアゲンDNA調製システムを用いて一晩培養した大腸菌から調製した。調製は、低コピー数DNA構築物に対する改変を含むが、すべて製造元の方法に従って行った。ゲノムDNAは、サムブロック、フリッチおよびマニアティス(Sambrook、Fitsch およびManiatis)(1989)が記載した方法で ヒーラー(HeLa)細胞(ATCC番号 CCL−17)から調製した。DNA濃度はDNA 溶液の260nmでの吸光度で決定した。 また、20マイクログラム(μg)に相当するのゲノムDNAまたは2μgのBAC DNAを用い、EcoRI またはHind III (ゲノムDNA)もしくはEcoRIおよび Pst I (BAC DNA)で制限酵素処理による切断をした。切断は150マイクロリットルの容量において37℃で4時間行った。切断したDNAをエタノールで沈殿させ、ペレットを20マイクロリットルの脱イオン水に再懸濁した後に、1.2% アガロースゲル中、35ボルトで一晩泳動を行った。泳動用緩衝液はTAEであり、かつゲルは1ml当たり0.1μgの臭化エチジウムを含み、DNAの可視化を行った。
【0375】
ゲルによる分離後に、DNAを260nmの波長の光で可視化させた。次に、ゲルを変性緩衝液(0.5M NaCl、0.4N NaOH)で20分間2回洗い、中和緩衝液(1.5 M NaCI、 0.5 M トリス pH 8.0)で2回洗った。20xSSC中でDNAをゲルからアマシャムハイボンドNメンブレンにキャピラリーブロット法で5時間転写した。ストラタジーン(Stratagene)のストラタリンカー(Stratalinker)を用いて、DNAをUV 光でメンブレンに固定した。
【0376】
CLASP−2を認識するプローブHC2.1を用いた。プローブHC2.1は、CLASP−2Aの325〜1126ヌクレオチド(802 bp の長さ)を含む。通常のラベリングキットを用いて、プローブHC2.1を調製し、パスツールピペット製のG50セファデックスカラムを用いてTEN(10mM トリスHCl、pH8.0、1mM EDTA、および100mM NaCl)中で脱塩を行った。DNAを固定化した膜に対する[32P]−dCTP標識したDNAによるハイブリダイゼーション法は、改変 チャーチ(CHURCH)ハイブリダイゼーション溶液 (7% SDS、0.5 M リン酸ナトリウム、1mM EDTA)中で一晩65℃で実施した。次に、−80℃でメンブレンをコダックバイオマックス(BIOMAX)MSフィルムに露光した。通常の露光時間は、ゲノムDNAサザン分析では12時間であり、BAC DNAサザン分析では3時間であった。
【0377】
ゲノムDNAのサザン分析によって、EcoRIで切断したDNAでは2つの断片(約4.5 kb以下、および 1.85 kb)が見いだされたが、BACの第4および第6DNAでは3つの断片が見いだされた。主要な2つのバンドは、ゲノムおよびBAC DNAの双方で同一のものであった(図 7)。
【0378】
実施例4
CLASP−2 のゲノム・クローニング
ヒト CLASP−2のゲノムクローンはゲノムシステム社のリリースI 高密度フィルター(カタログ番号 FBAC−4434)を用いて得た。2回のスクリーニングで終了した。第1回目のスクリーニングは、ヒト CLASP−2 cDNAのヌクレオチド3830〜4558に相当するプローブを用いて、ゲノムシステムによる標準的なプロトコールで実施した。このスクリーニングによって、2つのゲノムクローンを同定し、これらをAVC BAC4および AVC BAC7と命名した。ヒト CLASP−2 cDNA のヌクレオチド1208〜1604に対応するプローブを用いた第2回目のスクリーニングでは、クローン AVC BAC26を同定した。これらが確かに CLASP−2 ゲノムクローンであることを確証するために、全クローンの部分配列を調べ、エキソン配列を確認し、エキソンとイントロンの境界を同定した。BACのシークエンシングに用いたオリゴヌクレオチドは、ヒト CLASP−2 cDNA配列に基づくものであった。センスおよびアンチセンスのシークエンシング用オリゴヌクレオチドは、対応するゲノム領域をカバーするように高密度にほぼ200ヌクレオチド毎の間隔でヒト CLASP−2 cDNAの鎖長に沿って設計した。プライマーとBAC DNAを用いたシークエンシング反応は、ビッグダイターミネーションシークエンシングミックス(Big Dye termination sequencing mix)(ABI)を用いて標準的なPCRシークエンシング法で行った。シークエンス反応の結果は、シークエンチャーSequencher ソフトウェア (Genecodes)で解析した。この結果を図6に示す。
【0379】
実施例5
バクテリア細胞における組換え体 CLASP−2A ポリペプチドの発現
hCLASP−2 の一部をGST発現ベクターpGEX(ファルマシア)にクローニングした。これらは200アミノ酸からなる予測される細胞外ドメイン(ヌクレオチド866〜1459; GST−EC12; 55kD 融合物)および細胞内ドメインの一部(ヌクレオチド3230〜4065; GST−cyto; 57kD 融合物)の潜在的なカドヘリン・プロセシング部位を含む領域を含む。cDNAクローンまたはジャーカットもしくはヒトの末梢血の RNAに由来するcDNAのいずれかのこれらの配列に特異的なプライマーを用いて、これらの領域を増幅した。GST 発現ベクターへのクローニング・フレームに合わせて、増幅したDNA配列を制限酵素で消化した。DH5α中で融合タンパク質をIPTGで誘導し発現させ、グルタチオン・セファロース(ファルマシア)を用いファルマシアの説明書に従って精製した。SDS−PAGE ゲルをクーマシーブルーで染色し、図8に示すGST−CLASP−2−cyto構築物の誘導および非誘導発現を調べた。これら組換え体タンパク質をDH5αで発現させ、グルタチオン・セファロースを用いファルマシアの説明書に従って精製した。このような組換えタンパク質を用い、AVC 急速免疫プロトコールを利用して抗体(Josman laboratories)を作製した。
【0380】
完全長の CLASP では、hCLASP−2 配列(ヌクレオチド2にフレームの合った)の最初から、または第1もしくは第2のメチオニン(ヌクレオチド278またはヌクレオチド476;図1で下線付けしてある)のいずれかから停止コドン(ヌクレオチド4058)までを容易に発現させることができる。GST部分が26kDの分子量であるとして、予測される合計サイズはそれぞれ180 kD、168 kD、および164.5 kDである。または、6CLASP HISタグカルモジュリン結合タンパク質、マルトース結合タンパク質等の他のバクテリア発現系を同様に用いることができる。
【0381】
実施例6
哺乳動物細胞における組換え体 CLASP−2A ポリペプチドの発現
実施例 6A 選択的融合
予測される細胞外ドメインの複数部分を、CD5γ−1 発現ベクター(ハーバード大学B. Seed氏より提供された)を利用し、hIgG融合物として構築した。融合タンパク質を分泌経路にのせられようにCD5リーダー配列とフレームを合わせ、またC末端 hIgG(Fc) タンパク質とフレームを合わせて、ポリペプチドをこのベクターにクローン化した。この融合物は、293(Hsieh, J−C.. 1999, Nature 398: 431−436)等の細胞株で分泌させることができる。このベクターへの挿入を目的として、ヌクレオチド866から始まるhCLASP−2 配列を含むセンスプライマーおよびヌクレオチド1459(EC12−IgG)、ヌクレオチド2389(ECC−IgG)およびヌクレオチド2857(ECM−IgG)のアンチセンスプライマーを用いて、細胞外ドメインの一部を増幅した。組換え体ベクターは、マキシプレップ(Maxiprep)(キアゲン)で精製し、293 EBNA−T細胞(ハーバード大学B. Seed氏より提供された)に、リン酸カルシウム法 (Sambrook および Maniatis)でトランスフェクションした。2〜7日後に、ヤギ F(ab’)2抗ヒト IgG(Fc)抗体(Jackson Immunolabs)およびHRPを結合したタンパク質A(Pierce)を用いた hIgG 融合物に対するELISA測定法で、分泌発現を 分析した。細胞内発現は、FITC標識したヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体(Caltag)を用いた免疫蛍光顕微鏡法でモニターした。
【0382】
実施例 6B 細胞内融合物
同様の方法を用いて、完全長の hCLASP−2 アイソフォームおよび欠失を含むC末端型のものをジャーカット等の他の細胞系で発現させるための融合物を構築した。組換え体 hCLASP−2 断片は、cDNA クローンの消化によって単離するか、または特異的領域(幾つかの特異的領域を与える)を挟むプライマーで増幅した。これらをpBJ1−neo (スタンフォード大学、Mark Davis)、Peakl2 (ハーバード大学、B. Seed)、および pDsRedl−Nl (クローンテック)等の発現ベクターにクローニングすることができる。pBJ1−neo および Peak12 では、組換えタンパク質のタグを付けない発現が可能であり、pDsRedl−Nl では、タグを付けないもしくはC末端赤色蛍光タンパク質のタグを付けた発現のいずれかが可能となる。これらを用いて、タンパク質を精製させる、または機能的な解析のための多様な形態の発現を行うことができる。
【0383】
実施例7
CLASP−2 発現のアンチセンスによる阻害
実施例 7A インビトロ CLASP−2 発現の阻害
本実施例では、インビトロの無細胞発現系を用いてCLASP−2発現の阻害を調べる。有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドを同定する目的で、CLASP−2 配列の一部を含む一連のアンチセンスフォスフォロチオエート・オリゴヌクレオチド(PS−ODNs)を、系統的にアッセイして、インビトロでCLASP−2 発現をブロックする能力があるか否かを調べることができる。
【0384】
CLASP−2発現のインビトロ阻害を行うために、センスCLASP−2 RNAのインビトロ転写および翻訳を行う標準的な方法に従って、CLASP−2 転写/発現プラスミドを利用することができる。転写・翻訳の共役反応を標準的な条件下で網状赤血球のライセートシステム(Promega TNTTM)を用いて行うことができる。それぞれの転写/翻訳の共役反応は、発現プラスミドから転写されたCLASP−2 RNA、および標準的な試験濃度の被検アンチセンスポリヌクレオチド、さらに各反応を規格化するための転写/翻訳の内在性コントロールとしてのルシフェラーゼ(例えば、上記のSambrookら;上記のAusubelらを参照のこと)を含むことができる。翻訳反応は、別の反応でインビトロ合成し、その後、翻訳反応に添加するセンスCLASP−2 RNAを用いて行うこともできる。翻訳産物の標識のために、この反応は[35S]−Metを含む。陰性 コントロールは、PS−ODNを添加せずに、またはセンス PS−ODNを添加せずに行う。
【0385】
標識した翻訳産物は、ゲル電気泳動で分離し、蛍光体イメージスクリーンにゲルを露光した後定量することができる。CLASP−2 特異的 PS−ODNの存在下で発現したCLASP−2 タンパク質の量を、同時発現させたルシフェラーゼのコントロールに対して規格化することができる。
【0386】
実施例 7B エクスビボでの CLASP−2 発現の阻害
A.試薬
細胞: ジャーカット、クローンE6−1 ATCC TIB−152; 9D10、ATCC CRL8752; その他の細胞は、ATCCもしくはNCIから得る。
【0387】
培地と溶液: RPMI 1640 培地、バイオホワイタッカー(BioWhitaker); DMEM/M199培地、バイオホワイタッカー(BioWhitaker); EMEM,バイオホワイタッカー(BioWhitaker);ウシ胎仔血清、サミット(Summit)(−20℃で冷凍保存、保存物は、4℃で解凍);トリプシン−EDTA、GIBCO (カタログ番号:25300−054)(−20℃で冷凍保存、保存物は、4℃で解凍; Isoton II (室温保存); DMSO (室温保存);オリゴヌクレオチド (表 1および 図3を参照、−20℃で溶液状態で保存); PBS(Ca2+/Mg2+ を含まない); TE;10 mMトリスHCl、pH 8.0; 1 mM EDTA。
【0388】
オリゴヌクレオチドのストックの調製:オリゴヌクレオチド(PS−ODNs) は、適当量のTEに溶解して、濃縮ストック溶液(1〜20 mM)とすることができる。
【0389】
B.アンチセンス CLASP−2 オリゴヌクレオチドによる細胞のエクスビボでの処理 増殖相の細胞の培養ストック(T75フラスコ中)を用いることができる。この測定にはジャーカット、および9D10 細胞を用いる。ジャーカット および 9D10を懸濁培養し、培地で希釈する。細胞密度は、コールターカウンターもしくは血球計算板を用いて測定する。
【0390】
6ウェル・シャーレに、ウェル当たり総数1.1 x 105の細胞を2 ml/ウェルで添加する。12ウェル、100mmもしくは150mmのシャーレの場合には、細胞の量を比例計算で増加もしくは減少させることができる。例えば、12ウェル・シャーレでは、2ml 培地に4.6 x 104 細胞を用いる。100mmシャーレでは、10mlの培地で6 x 105 細胞を用いる。150mmシャーレでは、35mlの培地で1.7 x 106 細胞を用いる。
【0391】
適当数の細胞(上記の工程2の記載を参照)を集め、遠心して様々な濃度のODN含む培地に再懸濁する。細胞を単一、2つ、もしくは3つのウェルで処理する。コントロールウェルはTEもしくは培地で希釈したセンス ODNで処理する。
【0392】
懸濁培養物を洗し、PS−ODN 培地で毎日再懸濁する。
【0393】
懸濁培養物を2〜4日増殖させる。細胞をPBSで洗し、密度をコールターカウンターもしくは血球計算板を用いて測定する。必要に応じて、ウェル当たり1.1 x 105 細胞で、ウェル当たり 2 ml 培地で細胞をプレートに蒔き、かつ上記のPS−ODN で培養する。
【0394】
CLASP−2 アンチセンス ODNの効果を決定する分析のために細胞試料を回収することもできる。試料を回収し、CLASP−2 mRNAの存在を調べるためにRNAをノーザン分析もしくはRT−PCRのいずれかで分析する。CLASP−2 のアンチセンス ODN の機能性は、ジャーカットおよび9D10 細胞の活性化能を測定することによって分析できる。抗CD3および抗CD28架橋抗体に接触させることによって、ジャーカット細胞を活性化し、また抗IgM 架橋抗体もしくはP.エルギノーザ(P. aeruginosa)のリポ多糖に接触させて、9D10細胞を活性化する。活性化の目安であるカルシウム流入はフローサイトメトリーで測定することができる。さらに、 ELISA 測定法を用いて、ジャーカット細胞からのインターロイキン−2の産生を測定することができ、IgM分泌は9D10から標準的な測定法を用いて測定することができる。
【0395】
下記の表4には、例示としてこの測定法のオリゴヌクレオチドを示す:
【0396】
【表4】
表4の説明:ヌクレオチドの番号付けはいずれも、ヒト CLASP−2A (HC2A)を基準として行った。 図2Aを参照。
【0397】
実施例8
実施例 8A PDZ リガンドペプチドの C 末端合成
標準的な方法でGST−PDZ 融合タンパク質を作製する。例としては、 GST−PDZ 融合タンパク質を次のように構築した。ヒト neDLG 遺伝子(Genbankアクセッション番号:U49089.1)の2つのPDZドメインをコードする572bp の断片を、標準的なプロトコールに従い (Sambrook, Fritsch, and Maniatis, 1989, Molecular Cloning − A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Press.)、ジャーカット由来のトータル RNA からクローニング用の制限酵素部位を挟むプライマーを利用して RT−PCRで増幅した。断片はセファグラス(Sephaglas)(ファルマシア)で精製し、適当な酵素で消化して、同一の酵素で切ったGST発現ベクターpGEX−3X(ファルマシア)にライゲーションした。組換え体構築物をシークエンシングで確認した。DH5αにおいてIPTG誘導によって融合タンパク質を発現させ、ファルマシアの説明書に従ってグルタチオン−セファロース(ファルマシア)で精製した。過剰のグルタチオンをPD10脱塩カラム(ファルマシア)で除去し、タンパク質を透析チューブ(カットオフ値が、14,000 MW のもの)に入れて体積がほぼ50%減少するまでポリエチレングリコール(3350; シグマ)上に置き、試料を濃縮した。次に、最終濃度35%となるようにグリセロールを添加し、試料を−20℃で保存した。これら組換えタンパク質を用いて、標準的なプロトコールで抗体(Josman laboratories)を作製し、また本明細書に記載の生化学的な試験を行った。
【0398】
目的のタンパク質のカルボキシル末端に相当する合成ペプチドを標準的な樹脂を用いた化学(例えば、FMOC)により合成し、記載があるものについてはアミノ末端をビオチンで標識し、ハロゲン化物を含む酸(例えば、トリフルオロ酢酸)を用いて樹脂から切り出した。次に合成ペプチドを逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製し、ペプチドの同定を質量分析法で行った。
【0399】
実施例 8B CLASP−2 ペプチドの PDZ ドメインを含むタンパク質への結合測定
ビオチン化カルボキシル末端ペプチドのGST−PDZ 融合タンパク質への結合を次のようにして測定する。
(1)タンパク質結合表面を単一もしくは複数のPDZ ドメインを含む GST 融合タンパク質でコートした。タンパク質結合表面は、ポリスチレンプレートの表面であり、ある場合には5μg/mlのヤギ抗GST ポリクローナル抗体でのコーティングにより前処理後、過剰のウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングしたものである。用いるGST融合タンパク質の濃度は、5〜10μg/mlであり、GST融合タンパク質とプレートとの反応は、PBSを用い4℃で1〜16時間実施する。ブロックがまだ成されていない場合には、プレートをBSA(PBS中で2% 、2時間、4℃)でブロックする。
(2)プレートをPBSで洗う。
(3)次に、ビオチン化ペプチド(通常0.2〜20μM)をプレートに添加し、PBS/2%BSA緩衝液でGST融合タンパク質と10分間4℃で反応させ、つぎに20分間25℃で反応させる。標識(ビオチン化)ペプチドと未標識(未ビオチン化)ペプチド間での競合を行う場合には、 標識ペプチドの添加直前に即座に未標識ペプチドを添加する。
(4)プレートをPBSで洗う。
(5) 0.5μg/ml のHRPを結合したストレプトアビジンをPBS/2%BSA緩衝液を含むプレートに添加し、4℃で20分間反応させる。
(6)プレートを界面活性剤(ツイーン20)を含む溶液で5回洗う。
(7)プレートにHRP基質溶液を添加し、室温で20分間置き、発色させる。
(8)1M硫酸を添加してHRPと基質の反応を止める。
(9)プレートの各ウェルの光学密度を450nmで測定する。
【0400】
PDZリガンド相互作用の見かけの親和性に関する測定が要求されるような場合には、単一の実験で用いる標識ペプチドを複数の濃度で用いて、上記の方法を実施する。次に、結合のプロット対添加したペプチド濃度を次式に当てはめる。
結合[ペプチド] = 飽和結合 x ([ペプチド] /([ペプチド] +Kd))
式中、「結合[ペプチド]」とは、与えられたペプチド濃度でのGST−PDZ 融合タンパク質への結合からコントロールとしてのGSTのみのものへの結合を引いたものであり、「Kd」とは結合反応の見かけの親和性であり、かつこのデータが上記式へ最適フィットするように「飽和結合」を計算する。結合反応中に反応が平衡に至らず、その場合、見かけの親和性は実際の親和性を低く見積もっている (すなわち、実際のKd< 観察されたKd)ために、「見かけの親和性」なる用語を用いるのである。
【0401】
本発明は、発明の一局面を例示する目的で示した態様、およびクローン、発明の範囲内で機能的に同等のDNAまたはアミノ酸配列の範囲に限定されるものではない。実際のところ、本明細書に記載されているもの以外にも本発明は多様に改変できることは、当業者であれば前記および添付の図面から理解できる。このような改変は、本請求の範囲に含まれるものである。また、ヌクレオチドについて示されている塩基対のサイズはいずれも大まかな値であり、説明の目的で用いるものであることも理解される。
【0402】
上記に引用の文献および特許書類はいずれも、各々が個別に示されるものとして同様の範囲でその全文が参照として本明細書に組み入れられものとする。
【0403】
CLASP−1 についての補遺
【0404】
カドヘリン様アシンメトリータンパク質−1、およびこれを用いる方法
本発明は免疫系において細胞と細胞との相互作用に関与する分子に関する。特に、本発明は古典的カドヘリンの特徴を含むが、リンパ球表面で頂端的分布パターンを示す細胞表面のタンパク質に関する。この分子の膜局在は、T細胞とB細胞の接触面と相関し、このタンパク質の細胞外ドメインに対する抗体はT細胞/B細胞の相互作用を破壊する。
【0405】
発明の背景
抗原に対する免疫応答の惹起は、特定の抗原に関連して協調的に働く複数の異なるタイプの免疫担当細胞によって起こる。免疫系に入り込んだ抗原はまず抗原提示細胞に出会う。抗原提示細胞は抗原を処理し、抗原性断片をヘルパーT細胞(TH)に提示する。次に、これが2種類の免疫応答を促進する。すなわち、細胞免疫応答と液性免疫応答である。免疫系における他のタイプのエフェクター細胞を「助ける」もしくは活性化するリンフォカイン産生によって、THが抗原刺激に応答する。THはB細胞を活性化し、B細胞は液性免疫応答の主要なエフェクター分子として機能する抗体を分泌する。抗体は、外来性抗原を中和し、抗体依存性の細胞障害を媒介する他のエフェクター細胞と協調する。 さらに、THは、別のT細胞のサブセットを刺激して、抗原を発現する標的細胞を直接死滅させる細胞障害性で抗原特異的なエフェクター細胞を発達させて、細胞性免疫応答を 制御する。
【0406】
THは、CD4と呼ばれる細胞表面の糖タンパク質マーカーの発現によって、細胞障害性Tリンパ球 (CTL)およびB細胞とは異なる。マウスでは、抗原提示細胞による活性化で、1型ヘルパーT細胞(TH1)が、インターロイキン−2(IL−2)およびγ−インターフェロン(γ−IFN)を産生し、2型ヘルパーT細胞(TH2)はIL−4およびIL−5を産生する。リンフォカイン産生のプロフィールに基づいてTH1は、活性化の亢進とCTL等の他のT細胞サブセットの増殖に関与すると考えられ、一方でTH2はB細胞の増殖および分化、抗体の合成、および抗体のクラススイッチを特異的に制御する。
【0407】
CTLはCD8表面マーカーを発現する。通常のTHと異なり、これらの細胞は特定のリンフォカイン産生も可能であるが、標的細胞との直接的接触により細胞溶解活性を示す。インビボでは、これらの細胞は抗体応答のみでは不十分であるような状況で、特に重要である。細胞性免疫応答がウイルス感染および癌に対する防御において中心的な役割を演じていることを示す実験的証拠が数多くある。
【0408】
免疫系では、免疫担当細胞は表面タンパク質を介した直接的接触、および表面受容体に結合する分泌性サイトカインによって互いに情報交換を行う。多くの場合、細胞表面の分子は、細胞膜に均一に分布する。しかし、特定の細胞表面タンパク質がリンパ球の活性化後にクラスター形成を示す。例えば、抗原提示細胞が提示する抗原性断片は、T細胞受容体(TCR)を集合させ、または他の共役受容体と複合体を形成させる。
【0409】
細胞極性は、細胞がその環境を迅速に評価し、かつ応答できるような細胞表面膜のドメインへの特殊化を反映する(Drubin and Nelson, 1996, Cell 84: 335−44)。免疫系では、移動性のTリンパ球は、機能的極性を示す(Negulescuら、1996. Immunity 4:421−30)。先端で抗原と出会った細胞は容易に活性化するが、後方で抗原と出会ったものは、非常に活性化しづらい。
【0410】
抗原活性化前では、TCR密度は細胞の先端ではより高くは見えないので、この固有極性に重要なものは他の分子であると考えられる。リンパ球において、抗原活性化の前では、複数の細胞質内分子が、極性分布を示す。例えば、細胞間カップリング後のシグナル伝達分子の方向性送達に重要性が示唆されているT細胞において、スペクトリン、アンキリン、および微小管重合中心(「MTOC」)は、構造的極の境界となっている(Geigerら、1982. J. Cell. Biol. 95:137−43; Gregorioら、1994. J. Cell Biol. 125:345−58; Kupferら、1986. J. Exp. Med. 163:489−98; Kupferら、1994. J. Exp. Mod. 179: 1507−15; Leeら、1988. Cell 55:807−16)。 しかし、本発明以前には、抗原活性化前にリンパ球で極性分布を有することが同定された細胞表面分子は存在しなかった。
【0411】
発明の概要
哺乳動物の新規の細胞表面分子が得られ、カドヘリン様アシンメトリータンパク質−1(Clasp−1)と命名した。特に、Clasp−1のコード配列からなるポリヌクレオチド、 Clasp−1コード配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチド、このようなポリヌクレオチドを含む発現ベクター、このようなポリヌクレオチドを含む遺伝子工学的宿主細胞、Clasp−1 ポリペプチド、 Clasp−1 融合タンパク質、治療薬組成物、Clasp−1 ドメインの変異体、 Clasp−1特異抗体、Clasp−1発現の検出法、およびClasp−1 機能の阻害による免疫応答阻害法。本発明は、自己免疫疾患および過敏症の治療、移植拒絶反応の予防、および免疫不全状態における免疫応答性の強化を含む広汎な用途を含むが、これらのみに限定されるものではない。
【0412】
本発明は、部分的には、出願者による特定のカドヘリンドメインと他のシグナル伝達に関与する既知のタンパク質ドメインを含む1型膜貫通性タンパク質である Clasp−1 の発見に基づくものである。Clasp−1はリンパ系組織および脳で発現しているが、成人の多くの主要な臓器では検出されない。特に、Clasp−1 は、マクロファージならびにTおよびB細胞の双方で発現している。リンパ球における細胞表面のClasp−1分布パターンは、頂端的であり、細胞先端の極に局在している。さらに重要なことは、T細胞/B細胞クラスターの境界面にClasp−1 が濃縮しており、この細胞外ドメインに対する抗体はT細胞/B細胞の相互作用を阻害することである。
【0413】
図面の簡単な説明
図1a: Clasp−1 アミノ酸配列 (配列番号:1)。 3.9 kb オープンリーディングフレーム (ORF) は、3つの読み枠いずれにおいても複数の停止コドンで挟まれ、翻訳停止コドンの620 bp 下流にポリアデニル化シグナル(AATAAA)が位置する。最初の縮重PCRプライマーに相当する配列を矢印で示した。前駆ペプチドは、アミノ酸残基1〜120であり、推定カドヘリン・プロセシング・シグナル RAQR で終止する(PigottおよびPower, 1993. The Adhesion Molecule Facts Book, Academic Press Limited)(三角形)。細胞外ドメインは、古典的カドヘリン(HofmanおよびStoffel. 1993, Biol. Chem. Hoppe−Seyler 374:166)に典型的な20アミノ酸残基からなる膜貫通ドメイン(斜線および二重下線)の前に4つの潜在的なN糖付加部位(六角形)およびシステインのクラスター(二重下線)を含む。細胞質ドメインはCRK−SH3結合ドメイン(Knudsenら、1994, J. Biol. Chem. 269: 32781−87)(斜線および二重下線, 残基 850−856)、4つのカドヘリン配列モチーフ(下線)、チロシン・リン酸化部位(丸)、および多重らせんドメイン(ボックス) (Lupasら、1991, Science 252: 1162−64)を含む。SH2/SH3結合部位の組み合わせによって相互作用とアダプタータンパク質を介した制御が可能となり、多重らせんドメインによって、細胞骨格との直接的な結合が可能となる。
【0414】
図1b: Clasp−1のドメイン構造の模式図。Clasp−1はアミノ酸残基番号120のカドヘリンのタンパク質切断プロセシング・シグナルで終止するシグナルペプチド含む。細胞外ドメイン(EC)は4つの糖付加部位(六角形)およびカドヘリンに特徴的なシステインのクラスター(「C’s」)を有する。膜貫通ドメイン(TM)の後にはCRK−SH3結合ドメイン(五角形)およびチロシン・リン酸化部位(星形) を含むカドヘリン様ドメイン(CAD)ならびに多重らせんドメイン (「C/C」)がある。
【0415】
図2:カドヘリン配列モチーフ。カドヘリン配列モチーフは、ほぼ同一数のアミノ酸で隔てられている(括弧内)4つの保存されたカドヘリンアミノ酸配列(A〜D)部分からなる。モチーフAはCRK−SH3結合ドメインでもあり、Eカドヘリン配列と類似している。
【0416】
図3a: Clasp−1 は主にリンパ系組織および脳で発現している。10μgのトータルRNAを用いてClasp−1 cDNA配列 で調べると、13kb のバンドが見いだされ、このことは5’ 非翻訳領域が非常に長い、もしくはポリシストロニックなメッセージであることを示唆している。開始メチオニンはコザックのコンセンサス配列で予測される。レーン:1) 胸腺、 2) 脾臓、 3) 小腸、 4) 皮膚、 5)筋肉、 6) リンパ節、 7) 肺、 8) 肝臓、 9) 腎臓、 10) 心臓、 11) 大腸、 12) 骨髄、 13) 脳。Clasp−1 は 胸腺、脾臓、リンパ節および脳で検出される。
【0417】
図3b: Clasp−1 はTおよびBリンパ球の双方で発現する。各レーン10μg のトータルRNAを用いた。 レーン: 1) S194(IgAプラスマ細胞腫)、2) NFS40(前B細胞)、3) J558L (IgAプラスマ細胞腫)、4) HSIC 5 (前B細胞)、5) HAFTLJ (前顆粒球マクロファージ細胞)、6) Bal 17 (成熟B細胞)、7) BAC 14 (前B細胞)、8)5CC7 (CD4 T細胞)。調べた多くの細胞株Clasp−1 が発現している。J558 には存在せず、S194では低レベルである。これらはいずれもプラスマ細胞腫である。
【0418】
図3c: Clasp−1 タンパク質は、TおよびB細胞のいずれにおいても分子量が約130kd である。2B4の細胞質/膜(レーン1)もしくは核(レーン2)およびCH27の細胞質/膜(レーン3)もしくは核(レーン4)のウエスタンブロットをClasp−1の細胞内ドメインに対するヤギ抗血清で調べた。Clasp−1の130kdバンドが、TおよびB細胞のいずれにおいても細胞質/膜分画に見られた。Clasp−1の推定細胞外ドメインに対する抗血清で同一の130kバンドが検出された。副次的な55Kdのバンドは、Clasp−1 の分解産物もしくは交叉反応性タンパク質を表している。
【0419】
図4a−4f: Clasp−1 はMOMA−1 境界領域に局在し、TおよびBリンパ球において焦点的分布をしている。マウスは灌流固定した。脾臓を取り出し、凍結包埋した。凍結切片(7ミクロン)を作製して、Clasp−1−cytoに対するウサギ抗血清を添加し、ローダミン標識した ヤギ抗ウサギ(赤色)で調べた。第2のFITCによる染色(緑色)は、CD3(図4a、 4d)、 B220(図4b、4e)、もしくは MOMA−1 (図4c、4f)に対して用いた。図4a−4c は、低倍の視野(16X 対物レンズ)および図4d−4f は高倍の視野(63X 対物レンズ)である。低倍の視野では、細動脈周囲のリンパ球鞘(PALS)の細胞が抗Clasp−1 抗血清で染色されることを示している。T細胞領域、B細胞領域、境界領域、および中心細動脈はそれぞれT−B、MおよびCで示した。T細胞領域では、散在する樹枝状形態を示す細胞を除いて点状の染色が見られた。B細胞領域では、主要な染色は樹枝状であり、境界領域では濃染した(図4e、矢印)。マクロファージのマーカーとの同時染色では、MOMA−1 メタロマクロファージ領域に局在が認められた。高倍の視野では、T(図4d)およびB(図4e) 細胞におけるClasp−1 は、原形質膜 (図 4d、矢印)に結合した「キャップ」状、もしくは細胞質(図4e、矢印)における「ボール」状の形態で構成されているのが認められた。さらに、T細胞では、 非対称的に存在する Clasp−1 がB細胞領域に侵入する(図4d、矢印)T細胞クラスターの周辺部で濃縮していた。MOMA−1 領域では、MOMA−1とは異なるがMOMA−1 マクロファージ(図4e および4f、矢印)に接触すると考えられるマクロファージ様細胞で、抗Clasp−1 抗血清による染色が見られた。
【0420】
図4g: Clasp−1はB220陽性脾臓B細胞の表面で先端キャップを形成する。脾細胞の懸濁液をポリ−L−リジンコートしたスライドガラス(過ヨウ素酸−リジン−パラホルムアルデヒドで固定した)上でサイトスピンし(McLeanおよびNakane. 1974. J. Histochem. Cytochem. 22:1077−83)、ヤギ抗Clasp−EC 12A (およびビオチンを結合したマウス抗ヤギモノクローナル抗体、さらにその次にPE標識ストレプトアビジンを含む)および抗B220−FITCで染色した。多くのB細胞がClasp−1 陰性であったが、Clasp−1 が存在する場合には、膜表面の先端ドメインを構成していた。
【0421】
図4h: Clasp−1はCD3陽性脾T細胞において先端キャップもしくはリングを形成する。脾細胞の懸濁液をポリ−L−リジンコートしたスライドガラス(過ヨウ素酸−リジン−パラホルムアルデヒドで固定した)上でサイトスピンし、CSK (Greenberg and Edelman, 1983 Cell 33:767−79)中で浸透性を高め、 ブロッキングを行い、ウサギ抗Clasp−cyto (およびローダミン結合した抗ウサギ Fab’2を含む)、および 抗CD3−FITCで染色した。Clasp−1 はキャップもしくはリングを構成していた。
【0422】
図4i: Clasp−1は、D10 T細胞表面において先端キャップを形成する。D10 T細胞は上記図3gに記載のように調製し、ヤギ抗Clasp−EC12A(およびビオチンを結合したマウス抗ヤギモノクローナル、さらにその次にPE標識ストレプトアビジンを含む)および抗CD3−FITCで染色した。Clasp−1は膜先端ドメインを形成した。
【0423】
図4j: Clasp−1 は細胞のMTOCと同一側に位置する。D10および 2B4 T細胞を、上記図4hの下に記載のように調製し、ウサギ 抗Clasp−cyto(およびローダミン結合した抗ウサギ Fab’2を含む)、ラット抗α−チューブリンモノクローナル抗体(YOL 1/34とFITC標識したマウス抗ラットFab’2)で染色し、DAPIでカウンター染色した。MTOC (緑色)は常に、Clasp−1 表面と核との間に位置していた。
【0424】
図5a:生産性および非生産性T−B細胞相互作用におけるClasp−1。3A9 および 5b HEL TCR トランスジェニック脾細胞をHEL ペプチドの存在下で10時間培養した。細胞をサイトスピンし、固定し、浸透性を高めた。これをClasp−1 (赤色)およびCD3(緑色)に関して染色した。対応する位相差顕微鏡(PC)像を各々のセットに沿って示した。 図 5a: 生産性T−B細胞の接着後にT細胞の芽球化転換が起こる(T細胞の位相差顕微鏡像ではクロマチンおよび核境界部の消失が見られることに注意する)。いずれの対においても細胞と細胞の境界にClasp−1 の蓄積がある。図5b: 非生産性T−B相互作用(T細胞は芽球化転換を起こさなかった)では、Clasp−1は細胞と細胞の境界に面してはいなかった。
【0425】
図6a: ヤギ抗Clasp−EC 12 はT−B細胞カップリングを阻害する。1−Eκに関連して蛾シトクロムC(MCC)に特異性を有する2B4 T細胞ハイブリドーマを、MCCペプチドを負荷させたCH27 B細胞と混合した。γ−結合(ファルマシア、NJ)で精製したヤギ抗Clasp−EC12、もしくは免疫前血清を、0、50、150、および300μg/mlの濃度で添加した。150μg/mlのヤギ抗Clasp−EC12 が最大に細胞の会合形成を阻害したが、免疫前血清では450μg/mlまで上げても最小の効果しか示さなかった。試料当たり100以上の細胞凝集物を計数した。
【0426】
図6b: ヤギ抗Clasp−EC12はT細胞活性化を阻害する。1−Eκに関連して蛾シトクロムC(MCC)に特異性を有する2B4 T細胞を、MMCペプチドを負荷したCH27 B細胞と混合した。γ−結合(ファルマシア、NJ)で精製したヤギ抗Clasp−EC12、もしくは免疫前血清を、0、125、500、および1000μg/mlの濃度で添加した。同時インキュベーションを行った48時間後に、IL−2 レベルを測定し、用量依存的に減少することが判明した。IL−2 刺激で測定した場合に、免疫前血清では、T細胞活性化を阻害しなかった。試料は3重検定で行った。
【0427】
配列表の簡単な説明
マウス CLASP−1 のアミノ酸配列を配列番号:1に示した。マウス CLASP−1 cDNAのヌクレオチド配列を配列番号:2に示した。翻訳の開始および停止位置ならびにコードされるポリペプチドも示した。ヒト CLASP−1のヌクレオチド配列を配列番号:3に示し、コードされるポリペプチドを配列番号:4に示す。
【0428】
発明の詳細な説明
哺乳動物の Clasp−1コード配列からなる核酸分子および該配列にコードされるポリペプチドが提供される。例示されるある特定の態様においては、マウスおよびヒト Clasp−1 cDNA 分子を単離し、ヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列の特徴付けを行った。Clasp−1 は異なる種由来のカドヘリンをコードする遺伝子と相同性配列を共有しているが、Clasp−1のヌクレオチドコード配列および推定アミノ酸配列の双方とも独特なものである。
【0429】
本発明にしたがって、Clasp−1 遺伝子産物のアミノ酸配列をコードするいかなるヌクレオチド配列も、Clasp−1 ポリペプチドの発現を司令する組換え体分子の作製に用いることができる。
【0430】
本発明はまた、Clasp−1 配列の少なくとも8ヌクレオチド(すなわちハイブリダイズできる部分)もしくはその相補体から成る単離された核酸、または精製された核酸を提供する。他の態様においては、該核酸は Clasp−1 配列の少なくとも25(連続的な)ヌクレオチド、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、150ヌクレオチドもしくは200ヌクレオチド、または完全長の Clasp−1コード 配列からなる。別の態様においては、核酸はその長さが35,200もしくは500ヌクレオチドより小さい。核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。本発明はまた、前述の配列に選択的にハイブリダイズする核酸または相補的な核酸に関する。特定の局面においては、Clasp−1コード配列の少なくとも10、25、50、100、もしくは200ヌクレオチドまたは全コード領域に相補的な配列からなる核酸を提供する。
【0431】
特定の態様においては、Clasp−1 核酸(例えば、配列番号:2、配列番号:3を有する)もしくはその相補体、またはClasp−1の派生体をコードする核酸にハイブリダイズする核酸を提供する。所望の結果に応じて、低、中程度もしくは高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイゼーションを実施する。新規の配列にハイブリダイズする場合には、提供された配列の5’領域をハイブリダイゼーションに利用する。例えば、核酸は、ストリンジェントな条件で配列番号:3のヌクレオチド1〜約3990から選択されるプローブにハイブリダイズするように決定してもよい。
【0432】
このような低ストリンジェンシー条件を用いる方法としては次のようなものがあるが、これらは例示であって、これらに限定されるものではない(ShiloおよびWeinberg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6789−6792等も参照のこと)。DNAを含むフィルターを、35% フォルムアミド、5XSSC、50 mMトリスHCl (pH 7.5)、5mM EDTA. 0.1%PVP、0.1% フィコール、1%BSAおよび500μg/ml 変性サケ精液DNAを含む溶液中において6時間40℃で前処理する。次のような調整を行った同溶液でハイブリダイゼーションを実施する。0.02% PVP、0.02% フィコール、0.2%BSA、100μg/ml サケ精液DNA、10% (wt/vol) デキストラン硫酸、および5〜20X106 cpmの[32P]標識したプローブを用いる。フィルターをハイブリダイゼーション混液中で、40℃で18〜20時間インキュベートし、次に、2XSSC、25 mMトリスHCl (pH 7.4)、5mM EDTAおよび 0.1%SDSを含む溶液中で、1.5時間55℃で洗う。洗浄溶液を新たなものと交換し、さらに1.5時間60℃でインキュベートする。フィルターをブロットで乾かし、オートラジオグラフィーで露光する。必要に応じて、 フィルターを65〜68℃で3回目の洗いを行い、フィルムに再び露光する。用いられる他の低ストリンジェンシー条件は、当技術分野で公知である(例えば、交叉種ハイブリダイゼーションに用いられる)。
【0433】
このような高ストリンジェンシー条件を用いる方法としては次のようなものがあるが、これらは例示であって、これらに限定されるものではない。DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションを、6X SSC、50 mMトリスHCl (pH 7.5)、1mM EDTA、 0.02% PVP、0.02% フィコール、0.02%BSA、および 500μg/ml 変性サケ精液DNAを含む緩衝液で、8時間〜一晩65℃で実施する。フィルターを100μg/ml 変性サケ精液DNA および5〜20 X 106 cpm の[32P]−標識したプローブを含むプレハイブリダイゼーション混合液で、65℃で48時間ハイブリダイズする。フィルターの洗浄は、2X SSC、0.01% PVP、0.01%フィコール、および 0.01%BSAを含む溶液中で、37℃で1時間実施する。この後オートラジオグラフィー前に、0.1X SSCを用い50℃で45分間洗浄を行う。用いられる他の高ストリンジェンシー条件は、当技術分野で公知である
【0434】
このような中程度のストリンジェンシー条件を用いる方法の例には次のようなものがある。DNAを含むフィルターを、6X SSC、5X デンハルト溶液、0.5% SDS および 100μg/ml 変性サケ精液DNA含む溶液で、6時間55℃で前処理する。同溶液と5〜20X 106 cpmの[32P]標識したプローブを用い、ハイブリダイゼーションを実施する。フィルターをハイブリダイゼーション混合溶液中で、55℃で18〜20時間インキュベートし、次に、1X SSCおよび 0.1%SDS含む溶液中で、60℃30分間で二回洗う。フィルターをブロットで乾かし、オートラジオグラフィーで露光する。用いられる他の中程度ストリンジェンシー条件は、当技術分野で公知である。 フィルターの洗浄は、2X SSC、0.1% SDSを含む溶液中で、37℃で1時間実施する。
【0435】
全 Clasp−1 cDNAをコードする種のいずれかから完全長 cDNA配列 をクローン化する、もしくは該分子の変種をクローン化するために、本明細書に開示する部分cDNAのいずれかに対応する核酸断片から標識したDNAプローブを作製し、これを用いてリンパ球系細胞もしくは脳細胞に由来するcDNAライブラリーをスクリーニングする。さらに具体的には、該cDNA配列の5’ もしくは3’末端のいずれかに相当するオリゴヌクレオチドを用いて、より長いヌクレオチド配列を得る。簡単に説明すると、各150mmプレートに最大30,000pfu得られるようにライブラリーを蒔く。約40プレートをスクリーニングする。該プレートを各プラークの直径が0.25mmになり互いにプラークが接触し始めるまで37℃でインキュベートする(3〜8時間)。ナイロンフィルターを軟寒天上層の上に置き、60秒後にフィルターをはがして0.4Nの水酸化ナトリウムからなるDNA変性溶液に浮かせる。次に、にフィルターを1M トリスHCl(pH 7.5)から成る中和溶液に浸した後、風乾する。フィルターを、10%デキストラン硫酸、0.5M NaCl, 50mMトリスHCl(pH 7.5)、0.1% リン酸ナトリウム、1% カゼイン、1%SDS、および0.5 mg/ml変性サケ精液DNAを含むカゼイン緩衝液等のハイブリダイゼーション緩衝液中で、60℃で6時間プレハイブリダイズする。次に、95℃で2分間熱して放射線標識したプローブを変性させた後、フィルターを含むプレハイブリダイゼーション溶液に添加する。フィルターを60℃で16時間ハイブリダイズする。次に、フィルターを1X 洗浄混合溶液(10X洗浄混合溶液は3M NaCl、0.6M トリス塩基および 0.02M EDTAを含む)で、各々5分間室温で2回洗い、次に1%SDSを含む1X 洗浄混合溶液で、60℃30分間洗い、最後に0.1%SDSを含む0.3X洗浄混液で、60℃で30分間洗う。次に、フィルターを乾燥し、X線フィルムに感光させてオートラジオグラフィーを行う。現像後に、フィルムをフィルターと重ね陽性プラークを単離する。単一に単離される陽性プラークが得られない場合には、プラークを含む寒天断片を取り出し、0.1M NaCl、0.01M 硫酸マグネシウム、0.035Mトリス HCl(pH 7.5)、0.01% ゼラチンを含むラムダ希釈緩衝液に入れる。次に、ファージを再びプレートに蒔き、明確に単一に単離される陽性プラークを得るためにスクリーニングを実施する。陽性プラークを単離し、既知のcDNA配列に基づくプライマーを利用してDNAクローンの配列を調べる。この工程を完全長 cDNAが得られるまで繰り返す。
【0436】
完全長 cDNAを得るために複数の異なる組織から複数のcDNAライブラリーをスクリーニングすることが必要である。cDNA クローニングではよく出くわす状況なのであるが、完全な5’末端を有するコード領域をコードするcDNA クローンの同定が困難な場合には、RACE (Rapid Amplification of cDNA Ends:cDNA端の迅速増幅 法)の技術を用いる。RACE は不完全なcDNAの5’末端を増幅するPCRを用いた確実な方法である。ユニークなアンカー配列を含み、ヒト組織から合成した5’−RACE−Ready RNA が市販されている(クロンテック)。cDNAの5’端を得るために、提供されるアンカープライマーおよび3’ プライマーを用いて5’−RACE−Ready cDNAについてPCRを行う。次に、アンカープライマーおよびネステッド3’ プライマーを用い、製造元の説明書に従って第2のPCR反応を行う。完全長 cDNA配列が得られれば、アミノ酸配列に翻訳した後、翻訳開始および終結部位で挟まれる連続的オープンリーディングフレーム、カドヘリン様ドメイン、SH3結合ドメイン、および最後に本明細書に開示するClasp−1 遺伝子に対する全体的な構造類似性等の特定の手がかりを調べることができる。
【0437】
Clasp−1 コード配列がコードするポリペプチド
本発明にしたがって、Clasp−1 ポリペプチド、変異体ポリペプチド、Clasp−1のペプチド断片、Clasp−1 融合タンパク質もしくはその機能的な同等物をコードする Clasp−1 ポリヌクレオチドを用いて、Clasp−1 タンパク質、Clasp−1 ペプチド断片、融合タンパク質もしくはその機能的な同等物を適当な宿主細胞で発現する組換え体DNA分子を作製することができる。このような Clasp−1 ポリヌクレオチド配列、ならびに少なくともこのようなClasp−1 ポリヌクレオチドの一部もしくはその相補体に選択的にハイブリダイズする他のポリヌクレオチドも、核酸ハイブリダイゼーション測定、サザンブロット解析およびノーザンブロット解析等に用いることができる。
【0438】
遺伝コードの内在的縮重により、実質的に同一のもしくは機能的に同等のアミノ酸配列をコードする他のDNA配列は、Clasp−1 タンパク質発現のための本発明の実施に用いることができる。このようなDNA配列 は、上記の低、中程度もしくは高いストリンジェンシー条件でマウス Clasp−1 配列もしくはその相補的配列にハイブリダイズできるものを含む。
【0439】
本発明に用いる、異なるDNA配列は、異なるヌクレオチド残基の欠失、付加、もしくは置換を含み、その結果、同一もしくは機能的に同等の遺伝子産物をコードする配列を与える。遺伝子産物それ自体が、Clasp−1 配列中のアミノ酸残基の欠失、付加、もしくは置換であって、その結果、サイレントな変化を与え、従って機能的に同等の Clasp−1 タンパク質を産生するものを含んでいてもよい。このような保存的なアミノ酸置換は、含まれる残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/もしくは両親媒性の性質における類似性に依拠している。例えば、陰性電荷を帯びたアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸、陽性電荷を帯びたアミノ酸としては、リジン、ヒスチジンおよびアルギニン、同等の親水性の値を示す非荷電で極性側鎖を有するアミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシンであり、および非極性側鎖を有するアミノ酸はアラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、トリプトファンを含む。
【0440】
多様な末端を含むようにClasp−1コード配列を変化させて、本発明のDNA配列を設計することができる。これには遺伝子産物のプロセシングおよび発現を修飾する変化が含まれるが、これらのみに限定されるものではない。例えば、当技術分野で既知の技術(例えば、部位特異的変異導入法を用い、新たな制限酵素部位を挿入する、もしくは糖付加、リン酸化等のパターンを変化させるなど)を使用して変位を導入することができる。Clasp−1 タンパク質のドメインの構成に基づき、Clasp−1 の細胞外、膜貫通および細胞質ドメインをコードするヌクレオチド配列を再構成して多数の Clasp−1 変異体ポリペプチドを構築することができる。
【0441】
本発明の別の態様においては、Clasp−1 もしくは改変 Clasp−1 配列を異種配列と連結して融合タンパク質をコードするようにする。例えば、Clasp−1に結合する分子を得るためにペプチドライブラリーをスクリーニングする目的では、市販の抗体が認識する異種エピトープを発現するキメラ Clasp−1 タンパク質を作製することが有用である可能性がある。Clasp−1 配列と異種タンパク質配列の間に開裂部位を含むように融合タンパク質を設計することもでき、異種部分からClasp−1を切り離すこともできる。
【0442】
または、挿入制御要素を内在性Clasp−1遺伝子に有効に連結できるような細胞株のゲノムに異種DNA制御要素を挿入して、細胞集団中における内在性Clasp−1遺伝子の発現の特徴を改変することもできる。例えば、通常「転写に関してサイレントな」内在性Clasp−1遺伝子、すなわち、細胞集団において通常発現していないもしくは非常に低いレベルでしか発現していない Clasp−1 遺伝子を、通常細胞で発現する遺伝子産物の発現を促進可能である制御要素を挿入することによって活性化する。または、異なった種類の細胞にわたって働く非特異的制御要素を挿入することによって、転写に関してサイレントな内在性Clasp−1遺伝子を活性化してもよい。
【0443】
当業者に既知の標的相同組換え等の技術を利用して、異種制御要素を、内在性Clasp−1遺伝子に有効に連結できるような細胞株集団に導入することができる(例えば、Chappelの米国特許第5,272,071号;1991年、5月16日に公開された国際公開公報第91/06667号を参照のこと)。
【0444】
本発明の別の態様においては、当技術分野で既知の化学的方法を用いて、Clasp−1をコードする配列の全体または一部を合成することができる(例えば、Caruthersら、1980, Nuc. Acids Res. Symp. Ser. 7:215−233; CreaおよびHorn. 180. Nuc. Acids Res. 9(10):2331; Matteucci and Caruthers. 1980. Tetrahedron Letter 21:719; ならびにChowおよびKempe. 1981. Nuc. Acids Res. 9(12):2807−2817を参照のこと)。 または、全体もしくは一部のClasp−1 アミノ酸配列を合成する化学的方法でタンパク質自体を作製することもできる。例えば、固相技術でペプチドを合成し、樹脂から切り出し、調製用の高速液体クロマトグラフィーで精製することができる(Creighton, 1983, Proteins Structures And Molecular Principles, W.H. Freeman and Co., N.Y. pp. 50−60を参照のこと)。合成ポリペプチドの組成はアミノ酸分析もしくはシークエンシングで確認する(例えば、エドマン分解法:Creighton, 1983, Proteins, Structures and Molecular Principles, W.H. Freeman and Co., N.Y., pp. 34−49を参照のこと)。
【0445】
発現系
生物学的に活性のある Clasp−1の発現させるために、Clasp−1もしくは機能的に同等なものをコードするヌクレオチド配列を適当な発現ベクター(すなわち、挿入コード配列の転写・翻訳に必要な要素を含むベクター)に挿入する。Clasp−1 遺伝子産物ならびに Clasp−1 発現ベクターでトランスフェクションした、もしくは組換え体で形質転換した宿主細胞または細胞株は多様な目的に用いることができる。これらには、Clasp−1 タンパク質活性を競争的に阻害するおよびこの活性を中和する抗体(すなわち、モノクローナルもしくはポリクローナル)の作製、Clasp−1 機能を活性化する抗体および細胞表面もしくは溶液中のClasp−1の存在を検出する抗体の作製があげられるが、これらのみに限定されるものではない。リンパ球およびマクロファージ等の細胞および組織中の Clasp−1レベルの発現を検出および定量する、ならびに細胞混合物からClasp−1陽性細胞を単離する際に、抗Clasp−1 抗体を用いることができる。
【0446】
当業者に既知の方法を用い、Clasp−1コード配列および適当な転写/翻訳調節シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法はインビトロDNA組換え技術、合成技術およびインビボ組換え/遺伝子組換えを含む(例えば、Sambrookら、1989. Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. and Ausubelら、 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Intel−science. N.Y.等に記載の技術を参照のこと)。
【0447】
多様な宿主発現ベクターシステムを用いて、Clasp−1 コード配列を発現させることができる。これらは、Clasp−1コード配列を含む組換え体バクテリオファージDNA、プラスミドDNAもしくはコスミドDNAの発現ベクターで形質転換したバクテリア、Clasp−1コード配列を含む組換え体酵母発現ベクターで形質転換した酵母等の微生物;Clasp−1コード配列を含む組換え体ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞系;組換え体ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV; タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させた、もしくはClasp−1コード配列を含む組換え体プラスミド発現ベクター(例えば、Ti プラスミド)で形質転換した植物細胞系;または動物細胞系を含むが、これらのみに限定されるものではない。これらの系における発現要素は、その強度と特異性が異なる。利用する宿主/ベクター系に応じて、構成的および誘導性プロモーターを含む複数の好適な転写および翻訳要素のいずれもが発現ベクターで用いられる。例えば、バクテリアの系におけるクローニングでは、ラムダバクテリオファージのpL、plac、ptrp、ptac (ptrp−lac ハイブリッドプロモーター;サイトメガロウイルスプロモーター)等の誘導性プロモーターが用いられる。昆虫細胞系におけるクローニングでは、バキュウロウイルス多角体プロモーター等のプロモーターが用いられる。植物細胞系におけるクローニングでは、植物細胞のゲノム由来(例えば、熱ショック・プロモーター; RUBISCOの小サブユニットのプロモーター;クロロフィルα/β 結合タンパク質のプロモーター)もしくは植物ウイルス由来(例えば、CaMVの35S RNA プロモーター; TMVのコートタンパク質プロモーター)のプロモーターが用いられる。哺乳動物細胞系におけるクローニングでは、哺乳動物細胞のゲノム由来(例えば、メタロチオネインのプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルス由来 (例えば、アデノウィルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス 7.5K プロモーター)のプロモーターが用いられる。Clasp−1 DNAを複数コピー含む細胞株を作製する場合には、SV40、BPV、および EBVに基づくベクターを適当な選択可能マーカーとともに用いる。
【0448】
バクテリア系で、Clasp−1産物を発現に利用する場合には、複数の好適な発現ベクターが選択できる。例えば、抗体を生産するため、もしくはペプチドライブラリーをスクリーニングするために、大量の Clasp−1 タンパク質を作製する場合には、容易に精製できる融合タンパク質産物を高レベルで発現するベクターが必要となる。このようなベクター としては、Clasp−1コード配列のフレームをlacZ をコードする領域と合わせてベクターにつなぎハイブリッドタンパク質を生産する大腸菌発現ベクターpUR278 (Rutherら、1983. EMBO J. 2:1791);pIN ベクター (Inouye & Inouye. 1985, Nucleic acids Res. 13:3101−3109; Van Heeke & Schuster, 1989. J. Biol. Chem. 264:5503−5509)等があげられるが、これらのみに限定されるものではない。グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として外来性ポリペプチドを発現させるために、pGEX ベクターも用いることができる。一般的に、このような融合タンパク質は可溶性で、グルタチオンアガロースビーズに吸着させた後、遊離のグルタチオンの存在下で溶出することによって、溶解した細胞から容易に精製できる。トロンビンもしくはファクターXaプロテアーゼの開裂部位を含み、クローン化した目的のポリペプチドがGST部分から遊離できるようにpGEX ベクターを設計する。
【0449】
酵母では、構成的もしくは誘導性プロモーターを含む複数のベクターが用いられる(Current Protocols in Molecular Biology. Vol. 2. 1988. Ed. Ausubelら、Greene Publish. Assoc. & Wiley Interscience. Ch. 13; Grantら、1987. Expression and Secretion Vectors for Yeast, in Methods in Enzymology, Eds. Wu & Grossman. 1987. Acad. Press. N.Y., Vol. 153. pp. 516−544; Glover. 1986, DNA Cloning, Vol. II, IRL Press. Wash., D.C., Ch. 3; and Bitter, 1987, Heterologous Gene Expression in Yeast. Methods in Enzymology, Eds. Berger & Kimmel. Acad. Press. N.Y. Vol.152 pp 673−684;およびThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces. 1982, Eds. Strathernら、Cold Spring Harbor Press, Vols. I and II.)。
【0450】
植物発現ベクターを用いる場合には、Clasp−1 コード配列の発現 は、複数のプロモーターのいずれによっても制御できる。例えば、CaMV の35S RNA および19S RNA プロモーター(Brissonら、1984. Nature 310:511−514)等のウイルスプロモーターもしくはTMVのコートタンパク質プロモーター(Takamatsuら、1987. EMBO J. 6:307−311)が用いられる。または、RUBISCOの小サブユニット (Coruzziら、 1984. EMBO J. 3:1671−1680; Broglieら、1984. Science 224:838−843)もしくは熱ショック・プロモーター(例えば、大豆 hsp17.5−E もしくは hsp17.3−B (Gureyら、1986. Mol. Cell. Biol. 6:559−565))等の植物プロモーターを用ることができる。Ti プラスミド、Ri プラスミド、植物ウイルスベクター、直接的DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等 (Weissbach & Weissbach. 1988. Methods for Plant Molecular Biology. Academic Press. NY. Section VIII. pp. 421−463;ならびにGrierson & Corey. 1988, Plant Molecular Biology. 2d Ed., Blackie. London. Ch. 7−9.)を用いて、これらの構築物を植物細胞に導入できる。
【0451】
Clasp−1 の発現に用いられる別の発現システムには昆虫の系がある。このような系では、オートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)多角体ウイルス(AcNPV)を外来性遺伝子発現ベクターとして用いる。ソドプテラ・フーギペディラ(Spodoptera frugiperda)細胞でウイルスを増殖させる。Clasp−1コード配列をウイルスの非必須領域(例えば、多角体遺伝子)にクローニングし、AcNPV プロモーター (例えば、多角体プロモーター)の 制御下に置く。Clasp−1コード配列の挿入が成功すれば、多角体遺伝子の不活性化と非閉塞組換え体ウイルス(すなわち、多角体遺伝子がコードするコートタンパク質を欠損したウイルス)の産生が起こる。次に、これらの組換え体ウイルスを用いて、挿入遺伝子を発現する ソドプテラ・フーギペディラ細胞に感染させる(例えば、Smithら、1983, J. Viol. 46:584; Smith, 米国特許第4,215,051号を参照のこと)。
【0452】
哺乳動物の宿主細胞では、複数のウイルスによる発現系を利用できる。アデノウィルスを発現ベクターとして用いる場合、Clasp−1コード 配列をアデノウィルスの転写/翻訳制御複合体(例えば、後期プロモーターおよび3つの要素からなるリーダー配列)につなぐことができる。次に、このキメラ遺伝子をアデノウィルスゲノムにインビトロもしくはインビボ組換えで挿入することができる。ウイルスゲノム非必須領域(例えば、領域 E1 もしくは E3)への挿入によって、感染宿主において生存可能で Clasp−1を発現できる組換え体ウイルスを生じる(例えば、Logan & Shenk, 1984. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655−3659を参照のこと)。または、ワクシニア 7.5K プロモーターを用いる(例えば、Mackettら、1982. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415−7419; Mackettら、1984. J. Virol. 49:857−864; Panicaliら、1982. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4927−4931を参照のこと)。テトラサイクリン抑制性ベクター等の制御可能な発現ベクターを制御下で用いることもできる。
【0453】
挿入Clasp−1コード配列の効率よい翻訳には、特異的開始シグナルも必要であることがある。これらのシグナルは、ATG開始コドンとその近傍の配列を含む。開始コドンとその近傍の配列を含むClasp−1 遺伝子の全長の場合には、適当な発現ベクターに挿入するが、付加的な翻訳調節シグナルは必要としない。しかし、Clasp−1コード配列の一部のみが挿入されている場合には、ATG開始コドンを含む外来性翻訳調節シグナルが必要となる。さらに、インサート全体の翻訳を行うためには、Clasp−1コード配列の読み枠と適合する開始コドンが必要となる。これらの外来性翻訳調節シグナルおよび開始コドンの由来は天然もしくは合成の双方を含む多様なものであり得る。適当な転写のエンハンサー要素、転写ターミネーター等を含むことによって、発現効率を高めることができる(Bittnerら、1987. Methods in Enzymol. 153:516−544を参照のこと)。
【0454】
さらに、所望の特異的方法で挿入配列の発現を調節する、もしくは遺伝子産物を修飾するもしくはプロセスする宿主細胞株を選択する。このような修飾(例えば、糖付加) およびタンパク質産物のプロセシンは、該タンパク質の機能にとって重要であることがある。Clasp−1 細胞外ドメインにおける複数のコンセンサスN糖付加部位の存在は、適切な修飾がClasp−1 機能にとって重要である可能性を支持する。異なる宿主細胞は、翻訳後プロセシングとタンパク質修飾について特徴的で特異的な機構を有する。適当な細胞株もしくは宿主系を選ぶことによって、発現した外来性タンパク質の修飾およびプロセシングが正しく起こる。この目的のために、1次転写産物の適当なプロセシング、糖付加、遺伝子産物のリン酸化等の細胞機構が働く真核宿主細胞を用いる。このような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、W138等があげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0455】
長期間かかる組換えタンパク質の大量産生には安定な発現が好ましい。例えば、Clasp−1を安定に発現する細胞株を作製することができる。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使わずに、適当な発現制御要素 (例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)および選択可能マーカーで制御されたClasp−1 DNAを用いて、宿主細胞を形質転換することができる。外来性DNAの導入後に、作製した細胞を栄養価の高い培地で1〜2日増殖させ、次に選択培地に交換することができる。組換え体プラスミド中の選択可能マーカーは、選択に対し耐性を付与し、プラスミドが安定に細胞の染色体に組み込まれ、増殖してフォーカスを形成することを可能にする。次に、クローン化して細胞株を殖やすことが可能となる。この方法はClasp−1 タンパク質を細胞表面に発現する細胞株の作製に好適に用いられる。このように作製した細胞株は、Clasp−1 機能に影響を与える分子もしくは薬剤のスクリーニングに特に有用である。
【0456】
複数の選択システムを用いることができる。このようなものとしては、単純ヘルペスウイルスにチミジンキナーゼ(Wigler,ら、1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026)およびアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy,ら、1980, Cell 22:817)(これらは、それぞれ tk−、hgprt−もしくは aprt−細胞で用いることができる)遺伝子があげられるが、これらのみに限定されるものではない。また、dhfrに関する選択に抗代謝産物抵抗性を用いることもできる。dhfrはメトトレキサートに対する耐性を付与する(Wigler.ら、1980. Natl. Acad. Sci. USA 77:3567; O’Hare,ら、1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527)。 gptはミコフェノール酸に対する耐性を付与する(Mulligan & Berg. 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072)。neoは アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与する(Colberre−Garapin,ら、1981, J. Mol. Biol. 150:1)。 またhygroは、ハイグロマイシンに対する耐性を付与する(Santerre.ら、1984. Gene 30:147)。そのほかの選択可能な遺伝子についても記載がある。すなわち、frpBは、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用できるようにする。hisDは、細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用できるようにする(Hartman & Mulligan. 1988. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047)。ODC (オルニチン脱炭酸酵素)は、オルニチン脱炭酸酵素阻害剤2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMO (McConlogue L, 1987, In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.)およびグルタミン合成酵素(Bebbingtonら、1992, Biotech 10:169)に対する耐性を付与する。
【0457】
Clasp−1 を発現する細胞の同定
コード配列を含み、生物学的に活性なClasp−1遺伝子産物またはその断片を発現する宿主細胞は、少なくとも4つの一般的なアプローチ、即ち(a)DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の有無、(c)宿主細胞におけるClasp−1のmRNA転写物の発現によって測定されるような転写レベルの評価、及び(d)免疫検定法またはその生物学的活性によって測定されるような遺伝子産物の検出によって同定できる。遺伝子発現を同定する前に、宿主細胞はまず、特にClasp−1の産生量が小さい細胞系でClasp−1の発現レベルを増加させるように突然変異誘発されうる。
【0458】
最初のアプローチでは、発現ベクターに挿入されたClasp−1配列が存在することが、Clasp−1コード配列に相同的なそれぞれのヌクレオチド配列、またはその一部もしくは誘導体を含むプローブを用いるDNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションによって検出できる。
【0459】
2番目のアプローチでは、組換え発現ベクター/宿主系を、ある種の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ作用、抗体に対する耐性、メトトレキセートに対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスの封入体の形成など)の有無に基づいて同定し、選択できる。例えばClasp−1をコードする配列がベクターのマーカー遺伝子配列に挿入されていると、そのClasp−1コード配列を含む組換え体はそのマーカー遺伝子機能がないことによって同定できるであろう。または、マーカー遺伝子は、Clasp−1のコード配列の発現を調節するために用いられる同じプロモーターまたは別のプロモーターの調節下でClasp−1配列とともにタンデムに位置づけられていてもよい。誘導または選択に応答するマーカーの発現は、Clasp−1コード配列の発現を示している。
【0460】
3番目のアプローチでは、Clasp−1コード配列領域に対する転写活性をハイブリダイゼーションアッセイによって評価できる。例えばRNAをClasp−1コード配列またはその特定の部分に相同的なプローブを用いてノーザンブロットを行うことによって単離でき、かつ分析できる。また宿主細胞の全核酸は、このようなプローブへのハイブリダイゼーションについて抽出され、評価されうる。さらに逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を用いることによって、低レベルの遺伝子発現を検出できる。
【0461】
4番目のアプローチでは、Clasp−1タンパク質産物の発現を、免疫学的に、例えばウエスタンブロット法や、放射線免疫検定法、酵素結合型免疫検定法などの免疫検定法によって評価できる。これは抗Clasp−1抗体を用いることによって達成されうる。またClasp−1タンパク質は、緑色蛍光タンパク質を用いて融合タンパク質として発現されうり、細胞における検出を容易にする(米国特許第5,491,084号、米国特許第5,804,387号、米国特許第5,777,079号)。
【0462】
Clasp−1 で操作した宿主細胞の利用
本発明の一態様では、Clasp−1タンパク質及び/またはClasp−1を発現する細胞系を用いることによって、Clasp−1タンパク質に結合してClasp−1機能を刺激するか阻害することになる抗体、ペプチド、小分子、天然及び合成の化合物、または他の細胞結合性もしくは可溶性の分子をスクリーニングできる。例えば抗Clasp−1抗体は、Clasp−1機能を刺激したり抑制したりするため、またその存在を検出するために用いることができる。また組み換えて発現させた可溶性Clasp−1タンパク質またはClasp−1タンパク質を発現する細胞系を持つペプチドライブラリーのスクリーニングは、Clasp−1の生物活性を阻害したり刺激したりすることで機能する治療用分子を同定するために利用できる。下記の小さな段落に記載されているClasp−1タンパク質及び操作された細胞系は、さまざまな種で相同的なClasp−1と十分同等に用いることができる。
【0463】
本発明の特定の態様では、細胞系はGSTのような他の分子に融合したClasp−1の細胞外ドメインを発現するように操作された。さらにClasp−1またはその細胞外ドメインは、免疫グロブリンの定常領域に融合する(Hollenbaugh及びAruffo, 1992, 「免疫学における現在のプロトコール(Current Protocols in Immunology)」, Unit 10.19、Aruffoら、1990, Cell 61: 1303)ことで半減期が増加した可溶性分子を作成できるであろう。その可溶性タンパク質または融合タンパク質は、結合アッセイ、親和性クロマトグラフィー、免疫沈降法、ウエスタンブロット法などで用いられうる。合成化合物、天然の産物、及び潜在的な生物学的活性物質の他の供給源は、当技術分野で周知のアッセイ法でスクリーニングされうる。
【0464】
固相支持体に結合した全ての可能な組み合わせのアミノ酸からなるランダムペプチドライブラリーは、Clasp−1の特定のドメインに結合できるペプチドを同定するために用いることができる(Lam, K.S.ら、1991, Nature 354: 82−84)。Clasp−1の生物学的作用を刺激したり阻害したりする薬学的物質の発見において、ペプチドライブラリーのスクリーニングは治療的価値を持ちうる。
【0465】
Clasp−1タンパク質に結合できる分子の同定は、組換え可溶性Clasp−1タンパク質のペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって達成できるであろう。Clasp−1の発現方法及び精製方法を用いることによって、完全長の組換えCrasp−1、または対象となる機能的ドメインに依存するClasp−1の断片を発現できる。そのようなドメインには、Clasp−1細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質ドメイン、SH2ドメイン、SH3ドメイン、及び渦巻き状/コイルドメインが含まれる。特定の態様では、131アミノ酸残基−327アミノ酸残基に対応するClasp−1細胞概ドメインの部分は、それ自体か他のタンパク質と相互作用する結合部位を含むことがわかっている。
【0466】
Clasp−1と相互作用して複合体を形成するペプチド/固相支持体を同定して単離するために、Clasp−1分子を標識する、又は「タグ」付けする必要がある。Clasp−1タンパク質を、アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素に接合させてもよいし、またフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)またはロダミンを含む蛍光標識のような他の試薬に接合させてもよい。任意の所与の標識のClasp−1への接合は、当技術分野で周知の方法を用いて行うことが出来る。またClasp−1の発現ベクターを、市販の抗体が存在するエピトープを含むキメラのClasp−1タンパク質を発現するように操作してもよい。このエピトープ特異的抗体は、酵素、蛍光性色素、または着色性もしくは磁気性のビーズなどの当技術分野で周知の方法を用いて、検出可能な標識でタグ付けされうる。
【0467】
「タグ付けされた」Clasp−1複合体を、ランダムペプチドライブラリーとともに30分間から1時間、22℃でインキュベートすることにより、Clasp−1とライブラリーに含まれるペプチド種との間で複合体を形成させる。続いてそのライブラリーを洗浄して、結合しなかったタンパク質を除去する。Clasp−1がアルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼに接合されたら、そのライブラリー全体を、アルカリホスファターゼまたはペルオキシダーゼのいずれか、例えばそれぞれ5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート(BCIP)または3,3’,4,4”−ジアミノベンジジン(DAB)のいずれかに対する基質を含むペトリ皿に注入する。数分間インキュベートするとペプチド/固相−Clasp−1複合体の色が変化し、ミクロマニュピュレータを備えた解剖型顕微鏡で物理的に容易に同定して単離できる。蛍光標識したClasp−1分子が用いられた場合は、複合体は蛍光活性化分離法によって単離すればよい。異型のエピトープを発現するキメラClasp−1タンパク質を用いたのであれば、ペプチド/Clasp−1複合体の検出は標識されたエピトープ特異的抗体を用いて達成できるであろう。一旦単離すると、固相支持体に結合したペプチドの同定は、ペプチド配列シークエンシング法によって決定できる。
【0468】
可溶性Clasp−1分子の使用に加えて、別の態様では、無傷の細胞を用いて細胞関連型Clasp−1に結合するペプチドを検出することが可能である。無傷の細胞の利用では、細胞表面の分子とともに利用することが好ましい。Clasp−1を発現する細胞系を発生させる方法は上記に記載されている。この方法で用いられる細胞は、生存細胞であってもよいし固定化細胞であってもよい。この細胞はランダムペプチドライブラリーとともにインキュベートされ、ライブラリー内のあるペプチドと結合して標的細胞と適切な固相支持体/ペプチドとの間で「ロゼット」を形成できる。その後ロゼットを示差(differential)遠心分離によって単離してもよいし、また解剖型顕微鏡下で物理的に除去してもよい。コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする方法は当技術分野では既知である(Gallopら、1994, J.Med.Chem., 37: 1233、Gordon, 1994, J.Med.Chem., 37: 1385)。
【0469】
膜結合受容体または、細胞膜の脂質ドメインが機能的であることが必要な受容体についての全細胞アッセイ法の別法として、Clasp−1分子は、標識、又は「タグ」が結合できるリポソームに再構築されうる。
【0470】
抗 Clasp−1 抗体
当技術分野で既知の種々の方法が、天然や組換えて産生されたClasp−1タンパク質のエピトープに対する抗体を産生するのに利用できる。このような抗体には、抗イディオタイプの抗体同様、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ、単鎖、ヒト化、相補性決定領域、Fab断片、F(ab’)2、及びFab発現ライブラリーによって産生された断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。完全にClasp−1と結合する抗体が診断用、及び治療用として特に好ましい。
【0471】
Clasp−1に結合するモノクローナル抗体は、注入後の体内におけるそれらの位置と分布を人が追跡できるように放射活性で標識されうる。放射性同位元素でタグ付けされた抗体は、Clasp−1を発現する新規リンパ腫瘍及び転移を画像化する非侵襲性の診断ツールとして用いることができる。
【0472】
また体内の特定の部位に対する細胞毒性物質を標的化する免疫毒性も設計されうる。例えば親和性の高いClasp−1特異的モノクローナル抗体は、ジフテリア毒素又はリシンなどの細菌性または植物性の毒素に共有的に複合化されうる。抗体/ハイブリッド分子の一般的調製法にはSPDPのようなチオール架橋試薬の利用が関与しうり、それは抗体にある第一のアミノ基を攻撃しジスルフィド交換により抗体に毒素を結合させる。ハイブリッド抗体を用いることによって、Clasp−1発現リンパ球を特異的に減少させることができる。
【0473】
抗体を産生するためには、さまざまな宿主の動物を組換えたClasp−1タンパク質か天然の精製されたClasp−1タンパク質、融合タンパク質またはペプチドを注入して免疫感作するとよく、限定されるわけでないが、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスターなどが含まれる。宿主の種類に応じてさまざまなアジュバントを用いることによって免疫学的応答を増加させることができ、限定するわけでないが、フロイント(完全あるいは不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リソレシチンのような界面活性物質、多イオン性の(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイル乳濁剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、並びにBCG(bacilli Calmette−Guerin)及びコリネバクテリウムパルバム(Corynebacterium parvum)のような潜在的に有用性なヒトアジュバントが含まれる。
【0474】
Clasp−1に対するモノクローナル抗体は、培養中の継続的細胞系によって抗体分子を産生させるために提供される方法を用いて調製できる。これらには、Kohler及びMilstein(Nature, 1975, 256: 495−497)によって最初に記載されたハイブリドーマ法、ヒトB−細胞ハイブリドーマ法(Kosborら、1983, Immunology Today, 4: 72、Coteら、1983, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 80: 2026−2030)及びEBV−ハイブリドーマ法(Coleら、1985, 「モノクローナル抗体と癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」, Alan R.Liss, Inc., pp.77−96)が挙げられるが、限定するわけではない。さらに、適当な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子とともに適当な抗原特異性のマウスの抗体分子由来の遺伝子をスプライシングすることによって「キメラ抗体」産生のために開発された方法(Morrisonら、1984, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 81: 6851−6855、Neubergerら、1984, Nature, 312: 604−608、Takedaら、1985, Nature, 314: 452−454)も用いることができる。また、単鎖抗体の産生について記載された方法(米国特許第4,946,778号)も、Clasp−1特異的単鎖抗体を産生させるために適用できる。
【0475】
ハイブリドーマは、再生した組換えClasp−1に特異的な抗体を分泌する培養物を検出するために、酵素結合免疫ソルベント検定法(ELISA)を用いてスクリーニングされうる。また培養物をELISAによってスクリーニングして、哺乳動物産生型Clasp−1に特異的な抗体を分泌する培養物を同定できる。抗体特異性の確認は、同じ抗原を用いたウエスタンブロット法によって行われうる。続くELISA試験では、組換えClasp−1断片を用いることでモノクローナル抗体が結合するClasp−1分子の特定の部分を同定できる。組織学的断片染色法、Clasp−1の免疫沈降法、Clasp−1結合性の阻害または細胞内のシグナルを伝達するClasp−1の刺激といった更なる試験を行って、所望の機能的特徴を持つモノクローナル抗体を同定できる。モノクローナル抗体のイソタイプの検出はELISAによって達成され、それによって精製または機能に関する別の情報がもたらされる。
【0476】
Clasp−1の特異的結合部位を含む抗体断片は、既知の方法によって生じさせることができる。例えばそのような断片には限定するわけではないが、抗体分子のペプシン消化によって作成されうるF(ab’)2断片やF(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することによって作成されうるFab断片が含まれる。またFab発現ライブラリーを構築し(Huseら、1989, Science, 246: 1275−1281)、Clasp−1に対して所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速かつ容易に同定できる。抗Clasp−1抗体は、Clasp−1発現細胞を同定したり、単離したり、阻害したり、あるいは減少させたりするために利用できる。
【0477】
Clasp−1 ポリヌクレオチドの利用
Clasp−1ポリヌクレオチドまたはその断片は、診断及び/または治療の目的で利用できる。特定して言うと、Clasp−1はリンパ球で発現するため、Clasp−1ポリヌクレオチドを用いることによってリンパ球マーカーとしてのClasp−1の発現を検出できる。診断のために、疾患状態におけるClasp−1遺伝子の発現、又は異常なClasp−1遺伝子の発現を検出するために、Clasp−1ポリヌクレオチドが用いられうる。本発明の範囲には、Clasp−1の発現を阻害するように機能するアンチセンスRNA及びDNA分子ならびにリボザイムのようなオリゴヌクレオチド配列が含まれる。Clasp−1ポリヌクレオチドを用いることによって、Clasp−1の作動薬や拮抗薬をスクリーニングするためのトランスジェニック動物やノックアウト動物を構築できる。
【0478】
トランスジェニック及びノックアウト動物
Clasp−1遺伝子産物は、トランスジェニック動物においても発現できる。限定するわけではないがマウス、ラット、ウサギ、ギニアピッグ、ブタ、ミクロピッグ、ヤギ、ヒツジ、並びに非ヒトの霊長類である例えばヒヒ、サル、及びチンパンジーを含むどれかの種類の動物を、Clasp−1トランスジェニック動物を作成するために用いることができる。ここで用いた「トランスジェニック」という用語は、内在性(即ち同一種)のClasp−1配列を過剰発現させるために遺伝的に操作された動物や内在性のClasp−1遺伝子配列(即ち「ノックアウト」動物)をそれ以上発現しないように遺伝的に操作された動物はもちろん、異なる種(例えばヒトClasp−1遺伝子配列を発現するマウス)由来のClasp−1遺伝子配列を発現する動物、そしてそれらの子孫のことを指す。
【0479】
当技術分野で既知の方法を用いれば、トランスジェニック動物の創始系を作成するために動物にClasp−1導入遺伝子を組み入れることができる。このような方法には、限定するわけでないが、前核マイクロインジェクション法(Hoppe及びWagner, 1989, 米国特許第4,873,191号)、生殖系列へのレトロウイルス媒介性遺伝子移入(Van der Puttenら、1985, Proc.Natl.Acad.Sci., USA 82: 6148−6152)、胚の幹細胞における遺伝子標的化(Thompsonら、1989, Cell 56: 313−321)、胚のエレクトロポレーション法(Lo, 1983, Mol.Cell.Biol.3: 1803−1814)、及び精液媒介性遺伝子移入(Lavitranoら、1989, Cell 57: 717−723)(このような方法の概論については、Gordon, 1989, Trangenic Animals, Intl.Rev.Cytol.115, 171−229参照)が含まれる。
【0480】
当技術分野で既知の何らかの方法、例えば静止期に誘導して培養された胚の胎児または成熟細胞から得られる核の除核された卵母細胞への核移入(Campbellら、1996, Nature 380: 64−66、WilmutらのNature 385: 810−813)を用いれば、Clasp−1を含むトランスジェニック動物のクローンを作成できる。
【0481】
本発明は、その全ての細胞ではないがいくつかの細胞がClasp−1導入遺伝子を有する動物、即ちモザイク動物だけでなく、その全ての細胞がClasp−1導入遺伝子を有するトランスジェニック動物を提供する。この導入遺伝子は、一個の導入遺伝子として、即ち例えばヘッド−ヘッド縦列配列またはヘッド−テイル縦列配列といったコンカテマーで統合されているであろう。また導入遺伝子は、例えばLaskoら(Laskoら、1992, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89: 6232−6236)の教示にしたがって特定の細胞型に選択的に導入されて活性化される。このような細胞型特異的な活性化を行うのに必要な調節配列は対象となる特定の細胞型に依存しうり、またそれは当業者には明らかでありうる。Clasp−1導入遺伝子が内在性のClasp−1遺伝子の染色体部位に統合されることが望まれる場合、遺伝子標的法が好ましい。概略すると、そのような技術が用いられるためには、染色体配列と相同的に組み合わせて統合する目的で、また内在性のClasp−1遺伝子のヌクレオチド配列の機能を妨害する目的で、内在性のClasp−1遺伝子に相同性のいくつかのヌクレオチド配列を含むベクターが設計される。またこの導入遺伝子は、例えばGuら(1994, Science 265: 103−106)の教示により特定の細胞型に選択的に導入されてもよく、それによってその細胞型のみにある内在性のClasp−1遺伝子が不活性化される。このような細胞型特異性の不活性化を行うのに必要とされる調節配列は対象となる特定の細胞型に依存するであろうし、それは当業者には明らかでありうる。
【0482】
トランスジェニック動物が作製されたら、組換えClasp−1遺伝子の発現は、標準的な方法を用いてアッセイされうる。最初のスクリーニングは、導入遺伝子の統合がなされたかどうかを検定するための動物組織を分析するサザンブロット分析法またはPCR法によって行われうる。トランスジェニック動物の組織に含まれる導入遺伝子のmRNA発現レベルも、限定するわけではないが、動物から得られる組織試料のノーザンブロット分析法、インサイチューハイブリダイゼーション分析法、及びRT−PCR法(逆転写PCR法)といった方法を用いて評価できる。Clasp−1遺伝子発現組織の試料をまた、Clasp−1導入遺伝子産物に特異的な抗体を用いて免疫細胞化学的に評価することもできる。
【0483】
Clasp−1 ポリヌクレオチドの診断的利用
Clasp−1ポリヌクレオチドは、免疫不全状態のようなClasp−1の異常な発現から起こる疾患または異常を診断する際に多くの利用法があろう。例えばClasp−1のDNA配列は、生検または解剖検のハイブリダイゼーション検定で、例えばインサイチューハイブリダイゼーションアッセイとPCRを含むサザンまたはノーザン分析法で用いることによって、Clasp−1発現の異常を検出できる。これに関連して15ヌクレオチド〜30ヌクレオチドからなるPCRプライマーを用いるとよい。PCRプライマーの好ましい長さは約18ヌクレオチド〜22ヌクレオチドである。しかしながらプライマーの長さは当業者によって調節されうる。Clasp−1プローブに関しては300ヌクレオチド〜500ヌクレオチドのポリヌクレオチドが好ましい。種々のハイブリダイゼーション法が当技術分野で周知であり、それらは実際、多くの市販の診断用キットの基礎となっている。
【0484】
Clasp−1 ポリヌクレオチドの治療的利用
Clasp−1ポリヌクレオチドをさまざまな異常状態を治療するのに利用できる。細胞に遺伝子配列を導入することによって遺伝子治療を行うと、細胞が正常のClasp−1を発現しなかったり、異常な/不活性のClasp−1を発現したりする状態を治療できる。いくつかの例ではClasp−1をコードするポリヌクレオチドは、機能不全の内在性遺伝子と入れ替わり、即ちそこで作用することが意図されている。また過剰発現に特徴付けられる異常な状態は、下記に記載されたような遺伝子治療法を用いて治療されうる。
【0485】
特定の態様では、Clasp−1タンパク質またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸が、遺伝子治療の様式でClasp−1機能を促進するために投与される。遺伝子治療とは、患者に核酸を投与することによって行われる治療法を指す。本発明のこの態様では核酸は、Clasp−1機能を促進することによって治療効果を仲介する、それが投与されたタンパク質を産生する。当技術分野で利用可能な任意の遺伝子治療法のどれかを、本発明によって用いることができる。例示的な方法が下記に記載されている。
【0486】
遺伝子治療法についての一般的な概論として、Goldspielら、1993, Clinical Pharmacy 12: 488−505、Wu及びWu, 1991, Biotherapy 3: 87−95、Tolstoshev, 1993, Ann.Rev.Pharmacol.Txicol.32: 573−596、Mulligan, 1993, Science 260: 926−932、ならびにMorgan及びAnderson, 1993, Ann.Rev.Biochem.62: 191−217、1993年5月、TIBTECH 11 (5): 155−215を参照できる。利用できる組換えDNA技術についての当技術分野で一般的に知られた方法は、Ausubelら(編), 1993、「分子生物学における現在のプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、John Wiley & Sons, NY、及びKriegler, 1990, 「遺伝子の伝達と発現、実験マニュアル(Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual)」, Stockton Press, NYに記載されている。
【0487】
好ましい局面における治療用組成物には、好適な宿主でClasp−1のタンパク質またはその断片もしくはキメラタンパク質をコードする発現ベクターの部分であるClasp−1核酸が含まれる。特に、このような核酸はClasp−1コード領域に機能的に結合するプロモーターを持っており、該プロモーターは誘導性または構成性であって、かつ任意に組織特異性である。別の特定の態様では、Clasp−1のコード配列と何らかの他の望ましい配列とがClasp−1 ゲノムの望ましい部位で相同性の組換えを促進する領域に隣接していて、そのためClasp−1核酸の染色体内での発現を起こさせる核酸分子が用いられる(Koller及びSmithies, 1989, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86: 8932−8935、Zijlstraら、1989, Nature 342: 435−438)。
【0488】
患者への核酸の送達は、患者が核酸または核酸運搬ベクターに直接的に曝露される場合には直接的、または、細胞がまずインビトロで核酸を用いて形質転換され、続いて患者に移植される場合には非直接的のいずれかでありうる。これらの二つのアプローチはそれぞれ、インビボ(in vivo)またはエキソビボ(ex vivo)の遺伝子治療として既知である。
【0489】
特定の態様において、核酸はインビボで直接的に投与され、コードされた生成物が産生するように発現する。これは以下のような当技術分野で既知の任意の数多くの方法によって達成されうる:例えば、適当な核酸発現ベクターの一部としてそれを構築し、それが細胞内性になるように、例えば欠陥性もしくは弱毒性のレトロウイルスまたは他のウイルスのベクター(米国特許第4,980,286号参照)を用いた感染などによりそれを投与することによって、あるいはそのままのDNAを直接注入することによって、あるいは微粒子照射(例えば、遺伝子銃、Biolistic, Dupont)を利用することによって、又は脂質や細胞表面受容体やトランスフェクト剤を用いて被覆したり、リポソーム、微粒子、もしくはミクロカプセルにカプセル化したりすることによって、あるいは核に入ることがわかっているペプチドに結合内のそれを投与することによって、即ち結合内のそれをリガンドに投与して受容体媒介性エンドサイトーシスさせることによって(例えば、Wu及びWu, 1987, J.Biol.Chem.262: 4429−4432参照)(それは受容体を特異的に発現する細胞型を標的化するために用いることができる)などで成し遂げることができる。別の態様では、リガンドがエンドソームを妨害するための融合誘導性ウイルスペプチドを含むように核酸リガンド複合体が形成されており、核酸がリソソーム性分解を回避できるようになっている。さらに別の態様では、特異的な受容体を標的化することによって、核酸は細胞特異的取り込みと発現についてインビボで標的化されうる(例えば、1992年4月16日付けの国際公開公報第92/06180号、1992年12月23日付けの国際公開公報第92/22635号、1992年11月26日付けの国際公開公報第92/20316号、1993年7月22日付けの国際公開公報93/14188号、1993年10月14日付けの国際公開公報第93/20221号参照)。また、相同的組換え法によって核酸を細胞内に導入し、発現させるために宿主細胞のDNAに組み込むこともできる(Koller及びSmithies, 1989, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86: 8932−8935、Zijlstraら、1989, Nature 342: 435−438)。
【0490】
特定の態様では、Clasp−1核酸を含むウイルスベクターが用いられる。例えばレトロウイルスベクターを用いることができる(Millerら、1993, Meth.Enzymol.217: 581−599参照)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージング及び宿主細胞のDNAへの統合に必須でないレトロウイルス配列を欠失するように修飾されている。患者への遺伝子の送達を容易にするように、遺伝子治療で用いるべきClasp−1核酸をベクターにクローニングする。レトロウイルスベクターについての更なる詳細はBoesenら、1994, Biotherapy 6: 291−302において見出すことができるが、そこには幹細胞を化学療法に対してより抵抗性にするためにmdr1遺伝子を造血性の幹細胞に供給するレトロウイルスベクターの利用法が記載されている。遺伝子治療でレトロウイルスベクターを利用することについて説明している他の参照文献は、Clowesら、1994, J.Clin.Invest.93: 644−651、Kiemら、1994, Blood 83: 1467−1473、Salmons及びGunzberg, 1993, Human Gene Therapy 4: 129−141、並びにGrossman及びWilson, 1993, Curr.Opin. in Genetics and Devel.3: 110−114である。
【0491】
アデノウイルスは、遺伝子治療で用いることのできる他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、呼吸器上皮に遺伝子を供給するための特に魅力あるビヒクルである。アデノウイルスは、それらが軽い疾患を引き起こす呼吸器上皮に自然に感染する。アデノウイルスに基づく送達システムの他の標的は肝臓、中枢神経系、内皮細胞、及び筋肉である。アデノウイルスは、非分割細胞を感染させることができるという利点を持つ。Kozarsky及びWilson(1993, Current Opinion in Genetics and Development 3: 499−503)は、アデノウイルスに基づく遺伝子治療についての概論を示した。Boutら(1994, Human Gene Therapy 5: 3−10)は、アカゲザルの呼吸器上皮に遺伝子を伝達するためのアデノウイルスベクターの利用法を証明した。遺伝子治療でアデノウイルスを利用する他の例は、Rosenfeldら、1991, Science 252: 431−434、Rosenfeldら、1992, Cell 68: 143−155、及びMastrangeliら、1993, J.Clin.Invest.91: 225−234に記載されている。また遺伝子治療におけるアデノ関連ウイルス(AAV)の使用もまた提案されている(Walshら、1993, Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204: 289−300)。
【0492】
遺伝子治療の別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介性トランスフェクション、またはウイルス感染のような方法による組織培養物中の細胞への遺伝子の移入を伴う。通常、移入には細胞への選択可能なマーカーの移入も含まれる。続いてその細胞は、移入された遺伝子を発現している対象の細胞を単離するための選択下に置かれる。次にこれらの細胞は患者に送達される。
【0493】
この態様では、得られる組換え細胞をインビボで投与する前に核酸が細胞に導入される。このような導入を、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体媒介性遺伝子移入、微小細胞媒介性遺伝子移入、スフェロプラスト融合などを含む、当技術分野で既知の何らかの方法によって行うことができるがこれらに限られるわけではない。細胞に外来遺伝子を導入するための数多くの方法が当技術分野では既知であって(例えば、Loeffler及びBehr, 1993, Meth.Enzymol.217: 599−618、Cohenら、1993, Meth.Enzymol.217: 618−644、Cline, 1985, Pharmac.Ther.29: 69−92参照)、受容細胞の持つ必須の発達上の生理学的機能を妨害することなく本発明によって用いられうる。この方法は、核酸が細胞に安定に伝達されることをもたらすべきであって、その核酸がその細胞によって発現でき、そして好ましくはその細胞の子孫によっても受け継がれて発現可能であるようになっている。
【0494】
得られる組換え細胞は、当技術分野で既知のさまざまな方法によって患者に投与できる。好ましい態様では上皮細胞が例えば皮下に注入される。別の態様では組換え皮膚細胞が患者に皮膚移植片として適用できる。組換え血液細胞(例えば造血性の幹細胞または前駆細胞)は好ましくは静脈内に投与される。使用のために考えられる細胞の量は、望まれる効果、患者の状態などに依存しており、当業者によって決定できる。
【0495】
遺伝子治療の目的で核酸が導入される細胞には、何らかの望ましい、入手可能な細胞型が含まれ、限定するわけでないが、上皮細胞、内皮細胞、角質細胞、繊維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球などの血球;例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児の肝臓などから得られるような種々の幹細胞または前駆細胞、特に造血性の幹細胞または前駆細胞が含まれる。好ましい態様では遺伝子治療のために用いられる細胞は患者にとって自家移植片である。
【0496】
特定の態様では、遺伝子治療の目的で導入すべき核酸は、その核酸の発現が適当な転写誘発物質が存在するか存在しないかを調節することによって調節されうるように、そのコード領域に機能的に結合した誘導性のプロモーターを含んでいる。
【0497】
アンチセンスRNA及びDNA分子と、Clasp−1のmRNAの転写を阻害するように機能するリボザイムとを含むオリゴヌクレオチド配列は本発明の範囲内である。このような分子はClasp−1発現の下流調節が望ましい場合に有用である。アンチセンスRNA及びDNA分子は、標的とされるmRNAに結合してタンパク質の翻訳を阻止することによってmRNAの翻訳を直接的に遮断すべく機能する。アンチセンスDNAに関しては、翻訳開始部位、例えばClasp−1のヌクレオチド配列の−10と+10の間の領域から誘導されるオリゴデオキシリボヌクレオチドが好ましい。
【0498】
このアンチセンスオリゴヌクレオチドは少なくとも一つの修飾された塩基部分を含んでいて、それは限定するわけでないが、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルクエオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6−ジアミノプリンからなるグループより選択される。
【0499】
リボザイムは、RNAの特異的開裂を触媒する能力のある酵素的なRNA分子である。リボザイムの作用機構には、リボザイム分子が相補的な標的RNAに配列特異的にハイブリダイズし、その後でエンドヌクレオ分解的開裂が起こることが関与する。本発明の範囲には、Clasp−1のRNA配列のエンドヌクレオ分解的開裂を特異的に、かつ効率的に触媒する操作されたハンマーヘッド型モチーフのリボザイム分子が存在する。
【0500】
ある潜在的なRNA標的にある特異的なリボザイム開裂部位は、次の配列、即ちGUA、GUU及びGUCを含むリボザイム開裂部位に対する標的分子をスクリーニングすることによってまず同定される。同定したら、開裂部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15リボヌクレオチドと20リボヌクレオチドの間からなる短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列を不適切なものにする可能性のある二次構造のような予測された構造的特徴について評価できる。候補となる標的の適切性は、相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションする受け入れ能力を、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて試験することによって評価することもできる。
【0501】
また内在性の標的遺伝子の発現を、標的遺伝子またはそのプロモーターを、標的を定めた相同性組換え法(例えば、それぞれが全体が参考として本明細書に組み入れられている、Smithiesら、1985, Nature 317: 230−234、Thomas及びCapecchi, 1987, Cell 51: 503−512、Thompsonら、1989, Cell 5: 313−321を参照されたい)を用いて不活性化する、即ち「ノックアウトする」ことによっても減少させることができる。例えば突然変異体、即ち内在性標的遺伝子(標的遺伝子のコード領域または調節領域のいずれか)に相同的なDNAに隣接する非機能的な標的遺伝子(即ち完全に関連しないDNA配列)を、選択可能なマーカー及び/または陰性選択可能なマーカーを用いて、あるいは用いないで利用することによって、インビボで標的遺伝子を発現する細胞をトランスフェクトできる。標的を定めた相同的組換えによってDNA構築物を挿入すると、標的遺伝子が結果的に不活性化する。このようなアプローチは、ES(胚幹)細胞に対する改変を利用して不活性な標的遺伝子を持つ動物子孫を作製すること(例えば、Thomas並びにCapecchi, 1987及びThompson, 1989, 上記)の可能な農場において特に適している。しかしながらこのアプローチは、直接的に投与されるか、標的化された適当なウイルスベクターを用いてインビボで必要とされる部位に組換えDNA構築物が供給された、ヒトにおける使用の際にも適合しうる。
【0502】
また内在性の標的遺伝子の発現は、標的遺伝子の調節領域(即ち標的遺伝子のプロモーター及び/またはエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的として体内の標的細胞に含まれる標的遺伝子の転写を抑制する三重らせん構造を形成することによって減少させることができる。(一般的に、Helene, 1991, Anticancer Drug Des., 6(6):569−584、Heleneら、1992, Ann.N.T.Acad.Sci., 660: 27−36、及びMaher, 1992, Bioassays 14 (12): 807−815参照)。
【0503】
転写の阻害のための三重らせん形成において利用される核酸分子は、デオキシヌクレオチドからなる一本鎖である。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成はHoogsteen塩基対ルールによって三重らせんの形成を助長するように設計されるべきであって、それは二本鎖の一本に存在するプリンまたはピリミジンのいずれかからなる相当な大きさの伸長を一般に必要とする。ヌクレオチド配列はピリミジンをベースとしていてもよく、それは得られる三重らせんの三本の関連する鎖を横切って結果的にTAT及びCGCトリプレットを形成する。ピリミジンに富む分子は、その鎖に対して平行方向の二本鎖のうちの一本鎖にあるプリンに富む領域に塩基相補性をもたらす。さらに、例えばG残基の伸長を含む、プリンに富む核酸分子が選択されうる。プリン残基の大部分が標的化された二本鎖のうちの一本鎖に存在しているような、これらの分子はGC対がリッチのDNA二本鎖を持つ三重らせんを形成できる、結果的に三重らせんの三本の鎖を横切るGGCトリプレットを形成する。
【0504】
また、三重らせんの形成のために標的となりうる能力のある配列は、いわゆる「スイッチバック」核酸分子を作成することによって増加させることができる。スイッチバック分子は5’−3’、3’−5’が交互になっている様式に合成されることで、それらが二本鎖の一本目の鎖と塩基対を形成でき、そしてさらにもう一方の鎖と塩基対を形成できるため、二本鎖のうちの一本の鎖に存在するはずのプリンまたはピリミジンのいずれかに相当な大きさの伸長がかかる必然が減少する。
【0505】
本発明のアンチセンスRNAとDNA分子、リボザイム及び三重らせん分子は、RNA分子の合成のための当技術分野で既知の何らかの方法によって調製できる。これらには、例えば固相ホスホールアミダイト化学合成法のような当技術分野で周知のオリゴデオキシリボヌクレオチドの化学的合成法が含まれる。またRNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列をインビトロやインビボで転写することによって生じさせることができる。このようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターのような適当なRNAポリメラーゼープロモーターを持っている広く多様なベクターに導入できる。また、使用したプロモーターに応じてアンチセンスRNAを構成的に、または誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物を細胞系に安定に導入できる。
【0506】
細胞内の安定性と半減期を増加させる手段として、DNA分子にさまざまな修飾を導入できる。可能な修飾として、その分子の5’及び/または3’末端にリボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドの隣接配列を付加することや、オリゴデオキシリボヌクレオチド骨格にあるホスホジエステラーゼ結合ではなく、ホスホロチオネートまたは2’−O−メチルを利用することが含まれるがそれらに限定されるわけでない。
【0507】
このような細胞または組織にポリヌクレオチドを導入する方法には、例えば裸の(naked)ポリヌクレオチドの挿入、即ち組織への注入、エキソビボでの細胞内のClasp−1ポリヌクレオチドの導入、ウイルス(レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスなど)、ファージもしくはプラスミドなどのようなベクターの利用、またはエレクトロポレーションもしくはリン酸カルシウム沈降法のような技術によってポリヌクレオチドをインビトロで導入する方法が含まれる。
【0508】
Clasp−1 タンパク質の利用
目的の遺伝子をClasp−1ポリペプチドの全て又は一部を産生するために使用できる。対象の断片には、ポリペプチドの安定性及び/または活性に影響しうるグリコシル化部位、タンパク質相互作用部位などが含まれる。このようなドメインは、通常は採用された配列の少なくとも約20個のアミノ酸を含み、より通常は少なくとも約50個のアミノ酸を含み、そして100個またはそれ以上で完全なドメインまでのアミノ酸を含むであろう。結合性の接触は、タンパク質が三次構造をとることで近位になる非隣接性の配列から構成されてもよい。このような断片の配列は、上記に記載したようにコード配列を操作することで修飾できる。例えば生物作用に必要な最少の配列を決定するために、断片のカルボキシ末端またはアミノ末端における切断を行うことが出来る。
【0509】
特に関心対象のポリペプチドには、Clasp−1タンパク質の成熟部分、即ちシグナルペプチドの開裂後に残っている断片、またはプロペプチド配列が含まれる。この開裂部位の決定は、そのような開裂を行う能力のある発現系でポリペプチドを産生し、続いて成熟タンパク質の末端を決定することによって実験的に検出できる。またその開裂部位は、既知の開裂部位と比較してから推理して決定してもよい。例えばマウスのClasp−1ポリペプチドの開裂部位は120残基と121残基の間である。ヒト相同体においては、推定開裂部位(arg pro gln arg)は104残基と105残基の間である。
【0510】
タンパク質またはその断片の生物的活性についてのアッセイは、当技術分野で記載されているように決定されうる。リンパ球の活性化を調べるためのインビトロでの多くのアッセイが、当技術分野で公知であるか、又は実施例において提供されている。細胞接着や細胞−細胞接触の阻害はインビボまたはインビトロでのモデルによって検出される(概論として、Fukuda (1995) Bioorg Med Chem 3 (3): 207−215、Zanettaらの(1994) Histol Histopathol 9 (2): 385−412参照)。
【0511】
そのタンパク質またはその断片を大量に入手できる可能性を持つ発現宿主を用いて、従来の方法によってタンパク質を単離し精製することができる。溶解物を発現宿主から調製し、HPLC、圧排(exclusion)クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、親和性クロマトグラフィー、または他の精製手段によって精製することができる。精製されたタンパク質は一般に少なくとも約80%の純度、好ましくは少なくとも約90%の純度であって、そして100%の純度を含むまで上昇させるとよい。純度は細胞の破壊物の残骸だけでなく他のタンパク質も含まないことを意味すると解釈される。
【0512】
Clasp−1タンパク質はリンパ球で発現し、T細胞−B細胞相互作用の境界面に特に局在している。したがって可溶性Clasp−1、即ち細胞外ドメインまたは抗Clasp−1抗体を含むClasp−1断片を用いてT細胞−B細胞相互作用を阻害することができ、そのため免疫応答が抑制される。T細胞−B細胞の接触におけるClasp−1の介入は、THによるB細胞の活性化の前に起こると考えられており、したがって、Clasp−1結合を阻害すると免疫応答の初期段階を妨害できる。Clasp−1機能を妨害することによって治療できる自己免疫疾患には、限定するわけでないが多発性硬化症、糖尿病、慢性関節リウマチ、天疱瘡、類天疱瘡、後天的表皮水疱症、狼瘡、Rh断片親和性などが含まれる。
【0513】
さらにClasp−1が細胞内シグナルを形質導入する能力のあるドメインを含むため、細胞表面のClasp−1は、リンパ球の活性化状態を高める目的で抗Clasp−1抗体または可溶性Clasp−1もしくはその断片によって刺激されうる。
【0514】
製剤及び投与ルート
Clasp−1ポリペプチド、その断片または抗Clasp−1抗体は、それ自体が、又は薬学的もしくは治療的な組成物の形態で被験者に投与されうる。本発明のタンパク質を含む薬学的組成物は、従来の混合段階、溶解段階、顆粒化段階、糖衣錠作製段階、すりつぶし段階、乳化段階、カプセル化段階、包括段階、または凍結乾燥段階からなる手段によって製造されうる。薬学的組成物は、一つ又は複数の生理学的に許容されうる担体、希釈剤、賦形剤、またはタンパク質もしくは活性なペプチドの薬学的に用いられうる調製物への加工段階を容易にする補助剤を用いた従来のやり方で製剤化されうる。適当な製剤は選択される投与ルートによって変わる。
【0515】
本発明のタンパク質を局所投与するために、当技術分野で周知の溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして製剤化することができる。
【0516】
全身性の製剤には、例えば経皮投与、経粘膜投与、経口投与または肺投与のために設計された製剤だけでなく、皮下注入、静脈内注入、筋肉内注入、胞膜内注入または腹腔内注入といった注入によって投与するために設計された製剤も含まれる。
【0517】
注入のために、本発明のタンパク質は、水性溶液、即ち好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理食塩緩衝液のような生理学的に許容される緩衝液に製剤化されうる。溶液は、懸濁剤、安定化剤及び/または分散剤のような製剤を含むこともある。またタンパク質は、使用する前は適当なビヒクル、例えば滅菌性の発熱物質を含まない水を用いて構成物を作れる粉末形態になっていてもよい。
【0518】
経粘膜投与のためには、透過すべき障壁に適切な浸透剤を製剤に入れて用いるとよい。このような浸透剤は当技術分野では一般的に知られている。
【0519】
経口投与を行うためには組成物は、そのタンパク質を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。このような担体は、治療すべき患者が経口摂取できるようにこのタンパク質を錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化されるのを可能にする。例えば粉末、カプセル及び錠剤のような経口用の固形状製剤に対しては、適当な賦形剤として、ラクトース、ショ糖、マンニトール及びソルビトールのような糖、またトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ポテトデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)のようなセルロース調製物、また顆粒化剤、また結着剤などのフィラー(filler)が含まれる。望ましいならば、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩である例えばアルギン酸ナトリウムのような崩壊剤を添加してもよい。望ましいならば、固形剤形は標準的な手法を用いて糖被覆されていてもよいし、また腸溶性被覆されていてもよい。
【0520】
例えば、懸濁剤、エリキシル剤及び溶液剤のような経口用の液状製剤に対しては、適当な担体、賦形剤または希釈剤として水、グリコール、オイル、アルコールなどが含まれる。さらに風味剤、保存剤、着色剤などを添加してもよい。
【0521】
口内投与のためには、タンパク質は、従来のやり方で製剤化された錠剤、トローチ剤などの形態でありうる。
【0522】
吸入によって投与する際には本発明によって使用するためのタンパク質は、例えばジクロロジフロロメタン、トリクロロフロロメタン、ジクロロテトラフロロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスを適切な推進剤として利用している加圧パック、またはネブライザーから、エアロゾルスプレーの形態で簡単に供給される。加圧されたエアロゾルの場合には、投与ユニットは測定量を供給するためのバルブを用いることによって測定すればよい。吸入器または吹き入れ器で使用される例えばゼラチンのカプセルや容器は、化合物からなる粉末混合物とラクトースまたはデンプンのような適当な粉末ベースを含有させて製剤化されるとよい。
【0523】
このタンパク質をまた、例えばココアバターやタンパク質のグリセリドのような従来よりある坐剤の基剤を用いた坐剤や停留性の浣腸といった、直腸用または膣用の組成物に製剤化することもできる。
【0524】
前述した製剤とは別に、このタンパク質はまた、貯蔵式組成物として製剤化することもできる。このような長期にわたって作用する製剤は、埋め込むことによって(例えば皮下や筋肉内に)、または筋肉内に注入することによって投与できる。したがって例えばこのタンパク質は、適当なポリマー状もしくは疎水性の材料(例えば許容されるオイルに入れた乳濁剤として)、またはイオン交換樹脂とともに製剤化されていたり、あるいは例えば可溶性に乏しい塩のような可溶性の小さな誘導体として製剤化されることができる。
【0525】
また他の薬学的供給システムを用いることもできる。リポソーム及び乳濁剤は、本発明のタンパク質またはペプチドを供給するのに利用できる供給用ビヒクルについての周知の例である。しかし通常、毒性が大きいという代償を払って、ジメチルスルホキシドのようなある種の有機溶媒も利用されうる。さらにこのタンパク質は、例えば治療用薬物を含む固体状ポリマーからなる半透性のマトリックスのような徐放性システムを用いて供給することもできる。さまざまな徐放性材料が確立されており、それらは当業者に周知である。徐放性カプセルは、その化学的性質に応じて数週間から100日以上もの間、患者にそのタンパク質を放出させることが可能である。その治療用薬剤の化学的性質及び生物学的安定性によっては、タンパク質の安定化のために更なる戦略を講じるとよい。
【0526】
本発明のタンパク質及びペプチドは荷電された側鎖や末端を含んでいる可能性があるため、それらは遊離の酸または塩基として、または薬学的に許容される塩として任意の上述の製剤に含有されうる。薬学的に許容される塩は、遊離の塩基の生物学的活性を実質的保持しているそれらの塩や、無機酸と反応することによって調製される塩である。薬学的な塩は、対応する遊離の塩基の形態よりも、水性であってかつ他のプロトン性の溶媒に対して可溶性が大きくなる傾向がある。
【0527】
効果的な用量
Clasp−1ポリペプチド、Clasp−1断片及び抗Clasp−1抗体は一般に、意図した目的を達成するために有効量で用いられうる。免疫応答を阻害するために使用する場合には、本発明のタンパク質、またはその薬学的組成物は治療上有効な量で投与、又は適用される。治療上有効量とは、治療される患者の症状を効果的に緩和もしくは抑制したり、また患者の生存率を長くしたりできる量を意味する。治療上有効量を決定することは、特に本明細書において提供された詳細な開示の視点から、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0528】
全身性投与のための治療上有効量は、インビトロのアッセイからまず見積もられうる。例えば投与量は、細胞培養物において決定されたIC50(即ち、Clasp−1結合相互作用の50%を阻害する試験化合物の濃度)を含む循環濃度範囲が得られるように、動物モデルで製剤化されうる。このような情報は、ヒトで有効な投与量をより正確に決定するために利用できる。
【0529】
また最初の投与量は、当技術分野で周知の方法を用いてインビボのデータから、例えば動物モデルで見積もることも可能である。当業者であれば動物データに基づいてヒトに対する投与を容易に最適化できる。
【0530】
投与の量と間隔は、治療効果を維持するのに充分なタンパク質レベルに血漿がなるように個別に調節できる。注入によって投与する場合の通常の患者の投与量は、約0.1mg/kg/日から5mg/kg/日、好ましくは約0.5mg/kg/日から1mg/kg/日の範囲である。治療上有効量の血清レベルは、毎日多数回の投与で行うことによって達成できるであろう。
【0531】
局所投与、即ち選択的に取り込ませる場合には、そのタンパク質の効果的な局所濃度は血漿濃度とは関連しないであろう。当業者は過度の実験を行わなくても治療上有効な局所投与を最適化できるであろう。投与されるClasp−1の量はもちろん、治療される患者によって、即ち患者の体重、苦痛の激しさ、投与方法、及び処方する医者の判断によって異なるであろう。
【0532】
治療は、症状が検出可能な間、あるいは症状が検出できない場合であっても間欠的に繰り返すとよい。この治療法は単独で適用したり、あるいは他の薬物と組み合わせて適用したりできる。自己免疫疾患の場合には、Clasp−1またはその断片と組み合わせて用いることのできる薬物には、限定するわけでないが、ステロイドや非ステロイド性の免疫抑制剤である。
【0533】
毒性
ここに記載されたタンパク質の治療上有効な投与量は、実質的に毒性を生じることなく治療的恩典を与えることが好ましい。ここに記載されたタンパク質の毒性は、細胞培養物または実験動物で標準的な薬学的方法を行うことによって、例えばLD50(その集団の50%が死に至る用量)またはLD100(その集団の100%が死に至る用量)を測定することによって決定できる。毒性と治療効果の間の用量比率が治療指数である。これらの細胞培養アッセイと動物実験から得られるデータは、ヒトで使用する場合に毒性のない投与範囲を計画する際に用いることができる。ここの記載されたタンパク質の投与量は、毒性がほとんどないか全くない有効な投与量を含む範囲の循環濃度にあると好ましい。この投与量は、用いた投与形態と用いた投与経路に応じてこの範囲内で変化させるとよい。正確な処方、投与ルート及び投与量は、患者の状態を見て個々の医者が選択できる。(例えば、Finglら、1975, In: The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, p.1参照)。
【0534】
スクリーニングアッセイ法
インビトロの研究では阻害性薬物についての大きな化合物ライブラリーをスクリーニングするために精製Clasp−1マクロ分子を用いることができ、即ち精製した標的分子を関連する薬物設計プログラムで用いることができるが、それは標的の構造、即ち通例の基質またはリガンドと関連するマクロ分子標的の構造をまず決定することが必要である。この情報はその後、合成してさらに試験する必要のある阻害性化合物を設計するために用いられる。試験結果は、主役の化合物が出現するまで相互作用させる方式で、分子モデルと薬物設計段階を精錬するために用いられる。
【0535】
薬物のスクリーニングは、インビトロのモデル、遺伝的に変化させた細胞、または精製したタンパク質を用いて行うことができる。標的の遺伝子配列またはその産物の作用を調節したり擬態したりできるように結合するリガンドまたは基質を同定できる。非常にさまざまなアッセイをこの目的で用いることができるであろうが、そのアッセイには、インビトロでの標識化タンパク質−タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合性の免疫アッセイなどが含まれる。またこの精製したタンパク質は、模擬的な分子間相互作用で用いることのできる三次元結晶構造を決定するためにも利用できる。
【0536】
ここで用いられる「薬剤」という用語は、RABの生理学的機能を変化させたり、擬態したりする能力を持つ何らかの分子、例えばタンパク質や製薬剤のことを指す。一般に複数のアッセイ混合物は、種々の濃度に対して異なる反応が得られるように、試薬濃度を変えて平行に展開させる。通常これらの濃度の一つは陰性対照として、即ち濃度がゼロか、検出レベル以下で用いられる。
【0537】
候補となる薬剤は数多くの化学物質のクラスを包含するが、通常は有機分子、好ましくは分子量が50ダルトン以上で約2,500ダルトン以下の小さな有機化合物であると好ましい。候補となる薬剤はタンパク質と構造的な相互作用をするのに必要な官能基、特に水素結合をするのに必要な官能基を含んでおり、通常それは、少なくとも一つのアミン基、カルボニル基、水酸基またはカルボキシル基を含んでいて、好ましは二つの化学的な官能基を含んでいる。候補となる薬物は、上記の官能基のうちの一つまたはそれ以上で置換された炭素環もしくはヘテロ環構造及び/または芳香族もしくは多環性芳香族構造からなることもよくある。また候補となる薬剤は、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造アナログまたは組み合わせを含む生物分子から見出されることもある。
【0538】
候補となる薬剤は、合成化合物または天然の化合物からなるライブラリーを含む非常に種類の多い供給源から得られる。例えば多くの手段を、不揃いのオリゴヌクレオチド及びオリゴペプチドを発現させるためといった、非常に種類の多い有機化合物と生物分子を無作為に指向させて合成するために利用できる。また、細菌、真菌、植物及び動物の抽出物の形態になっている天然の化合物からなるライブラリーが入手可能、即ち容易に作成できる。さらに天然または合成して作成したライブラリー及び化合物は、従来の化学的、物理的、及び生化学的方法によって容易に修飾でき、そしてコンビナトリアルライブラリーを作成するために利用できる。既知の薬学的薬剤を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような指向されていたり無作為であったりする化学的修飾にかけることによって、構造的アナログを作成してもよい。
【0539】
スクリーニングアッセイが結合性アッセイである場合には、一種またはそれ以上の分子を標識に結合すればよいのであるが、この際のその標識は、直接的または非直接的に検出可能なシグナルを提供できる。種々の標識には、放射性同位元素、蛍光剤、化学的発光剤、酵素、特異的結合分子、粒子、例えば磁気粒子などが含まれる。特異的な結合分子には、例えばビオチンとストレプトアビジン、ジゴキシンと抗ジゴキシンなどのようなペアが含まれる。特異的結合性物質に対しては、相補的な物質が通常、検出のために用いられる分子を用いて、既知の段階で標識されうる。
【0540】
さまざまな他の反応物がこのスクリーニングアッセイに含まれていてもよい。これらには、適切なタンパク質−タンパク質結合性を容易にするため、及び/または非特異的な相互作用やバックグラウンドの相互作用を小さくするために用いられる塩、中性のタンパク質、例えばアルブミン、洗浄剤などのような反応物が含まれる。プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などのこのアッセイの効力を高める反応物が用いられることもある。成分の混合は、必須の結合を起こさせる順番で添加される。インキュベートは適当な温度で、一般的には4℃と40℃の間で行われる。インキュベートの期間は最適な活性が得られるように選択されるが、迅速で処理量の大きなスクリーニングを容易に行うためにも最適化されうる。通常は0.1時間と1時間の間で十分であろう。
【0541】
望ましい生物学的作用を持つ化合物は許容される担体に入れられて真菌感染症の治療のためや感染症の抑制のためなどの目的で宿主に投与されうる。この阻害剤はいろいろな様式で投与できる。導入手段に応じてその化合物は、さまざまな様式に製剤化すればよい。その製剤に含まれる治療上活性な化合物の濃度は約0.01−100重量%の間で変えることができる。
【0542】
記載された本発明及び、続く実施例は例示のために提示されたのであって、限定を意図したものではない。
【0543】
実験
実施例 1
Clasp−1 の cDNA クローニング
変性したオリゴヌクレオチドプライマーは、配列TAPPYD及びFKKLADに対応するクラシックカドヘリンの高度に保存された細胞質ドメインを基本として設計した。5’センスプライマーは配列、GGAATTCCACNGCNCCNCCNTA(CT)GA(配列番号:5)を持っていて、3’アンチセンスプライマーは配列GCTCTAGATCNGCNA(AG)(CT)TT(CT)TT(AG)AA(配列番号:6)を持っていた。
【0544】
全RNAは、コムクジンスキー(Chomczynski)及びサッチ(Sacchi)(1987, Anal.Biochem.162: 156−59)の方法によってマウスの胸腺細胞から調製し、またそのRNAは、オリゴdTを用いてプライムし、スズキ(Suzuki)ら(1988, Cell Regul.2: 807−16)の方法によりMMTV逆転写酵素(BRL, NY)を用いて逆転写した。その後cDNAを、Mg(1.5mM〜3.0mM)、1μgのそれぞれのプライマー、2.5ユニットのAmpliTaq(Perkin Elmer, CA)を含むPromega PCR緩衝液(Promega, WI)中で行われるホットスタート(Ampli−wax, Perkin Elmer, CA)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で用いた。パーキンエルマーサーモサイクラー(Perkin Elmer, CA)を、94℃で30秒間変性を行い、37℃で2分間アニーリング反応を行い、そして65℃まで2分間かけて温度を下げ、3分間の伸張反応を維持し、これを35回繰り返すようにセットした。PCR産物を、3%のNuSieveアガロース(FMC, ME):1%のアガロース(BRL, NY)で分解した。予測されたサイズのバンドを切り取ってSephaglas(Pharmacia, NJ)を用いて精製し、同じプログラムを用いて20ラウンド再増幅した。
【0545】
最終生成物をゲルで精製し、EcoR1及びXba1(New England Biolabs, MA)を用いて消化し、対応する部位でpBluescript KS(Stratagene, La Jolla, CA)にクローニングしてからそのヌクレオチド配列を決定した。配列決定したPCRクローンの半分は同一であった。生まれたばかりのマウス胸腺ライブラリーのスクリーニングに代表的なクローンを用い、Clasp−1を設計する完全なcDNA配列を入手した。
【0546】
結果
カドヘリンと他の接着性分子ファミリーの共通配列に対応する変性オリゴヌクレオチドは、マウスの胸腺細胞から調製したcDNAのPCRで使用するために作成した。数種のクラシックカドヘリン分子とは別に、クローンの半分で報告され、かつクラシックカドヘリンのいくつかの特徴を示した配列を単離した(図1a〜図1b)。完全長のcDNAクローン(配列番号:2)は、カドヘリンタンパク質分解プロセシングシグナル(Pigott及びPower, 1993, The Adhesion Molecule Facts Book, Academic Press Limited)、グリコシル化部位、膜貫通ドメインに近いシステインのクラスター(Hofman及びStoffel, 1993, Biol.Chem.Hoppe−Seyler 374: 166)、及び数個のカドヘリン配列のモチーフを示す細胞質ドメインを含む、多くのカドヘリンの特徴を共有し、1,289個のアミノ酸のタイプI膜貫通タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを持っている(図2)。処理されたポリペプチドは、アミノ酸配列RAQRの後の121アミノ酸残基から始まる(図1a)。この遺伝子は、カドヘリン様の非対称タンパク質に対してClasp−1と命名した。
【0547】
典型的なカドヘリンは、細胞外ドメインによってホモ型カルシウム依存性の接着を仲介し、また細胞質ドメインによってカドヘリンを介する細胞骨格と連結する膜貫通性の糖タンパク質である(Kemler, 1993, Trends Genet.9: 317−21、Geiger及びAyalon, 1992, Annu.Rev.Cell Biol.8: 307−32、Takeichi, 1991, Science 251: 1451−55)。カドヘリンと共有されないClasp−1の特有の特徴としては、SH3結合性ドメイン(Knudsenら、1994, J.Biol.Chem.269: 32781−87)、数個の潜在的なチロシンリン酸化部位、及びコイルド/コイルドメイン(Lupasら、1991, Science 252: 1162−64)が挙げられる(図1a及び1b)。その構造的特徴に基づくとClasp−1は、シグナル変換経路と細胞骨格との間に直接的相互作用をもたらすであろう。Clasp−1の相同性検索(FASTA)(Pearson及びLipman, 1988, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85: 2444−48、Ladugaら、1996, J.Mol.Biol.259: 840−54)は、機能が判明していない二つのcDNA、即ちラットのRNTRG(GenBank X68101)及び複数のC.elegans遺伝子であるCELEF46fH5.4 (GenBank U41543)と類似していることを示した。RNTRGは約75%がClasp−1と同一である。したがってClasp−1は、シグナル変換経路で関与していることがわかっているドメインを含む細胞表面のカドヘリン様タンパク質である。
【0548】
実施例 2
Clasp−1 の発現パターンとそのコード産物の細胞局在性
Th1細胞(5CC7)、pro−GMB細胞(HAFTLJ)、pre−B細胞(NFS40, HSIC5, BAC14)、成熟B細胞(BAL17)、及び形質細胞腫(S194, J598L)を、培養した細胞系として維持した。RNAをノーザンブロット分析を行うためにこれらの細胞から抽出した。
ノーザンブロット分析: それぞれの細胞試料から得た10マイクログラム(μg)の全RNAを1%アガロースホルムアルデヒドゲルに載せ、BioBlotニトロセルロースペーパー(Costar, MA)に移してからStratalink(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて架橋した。プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを50%のホルムアルデヒド、25mMのリン酸ナトリウム(pH6.5)、1×デンハルト溶液、200μg/mlのニシン精子のDNA、及び5×SSC中で65℃で行った。Clasp−1のコード配列に対応するプローブは、製造元の指示書に従ってReady−To−Go Labeling Kit (Pharmacia, NJ)を用いて調製し、パスツールピペットG−50セファデックスカラムを用いてTEN(10mMのトリスHCl、pH8、1mMのEDTA、及び100mMのNaCl)中で脱塩した。そのブロットの最終的な洗浄は、0.1×SCC中、60℃で行った。オートラジオグラフィーは、強化スクリーンを用いて−80℃でKodak XOMATフィルム上にて行った。
【0549】
サイトスピン及び免疫蛍光:
細胞をポリ−L−リジン(Sigma #P2636, MA)スライドにサイトスピン(Cytospin 1, Shandon)し、過ヨウ素酸リジンパラホルムアルデヒド(McLean及びNakane, 1974, J.Histochem.Cytochem.22: 1077−83)で固定した。一次抗体を、10%の正常ロバ血清、TBS−C(50mM トリスHCl、pH7.4、150mMのNaCl、1mMのCaCl2)及び、0.4%のサポニン中、20μg/ml〜30μg/mlで添加し、一晩4℃でインキュベートした。洗浄した後で二次抗体(Jackson Immunoresearch, PA)を添加して37℃で30分間インキュベートした。細胞外を染色するために三段階のサンドウィッチアッセイ法を用いた。その第1段階は、10%の正常マウス血清、10%の正常ラット血清、TBS−Cにおいてヤギ抗血清を、加湿チャンバー中で4℃にて一晩、ガンマ−バインド精製を行い、第2段階は、室温で2時間、1/50に希釈してモノクローナル抗ヤギ抗体(Sigma, MO)をビオチンで標識し、そして最後の段階は室温で1時間、1/50にしてストレプトアビジン−PE(Molecular Probes, OR)を行った。FITC標識した抗B200または抗CD3抗体も最終段階で添加した。
【0550】
免疫組織化学:
生後4週間のマウスを麻酔して、0.1Mのカコディレートに入れた4%のパラホルムアルデヒド(pH7.4)を用いて灌流固定した。脾臓の細胞断片(5−7μm)をCSK(50mMのNaCl、300mMのスクロース、pH6.8の10mMのピペス(Pipes)、3mMのMgCl2、0.5%のトリトンX−100、及び1mMのPMSF)を用いて10分間透過し、そしてPBS+20%の正常ヤギ血清、0.2%のBSA、50mMのNH4Cl、25mMのグリシン、及び25mMのリジンを用いて室温で2時間かけてブロックした(Greenberg及びEdelman, 1983, Cell 33: 767−79)。断片を、TBS−C+25%の正常ヤギ血清に入れた100μlの一次抗体中、4℃で一晩インキュベートし、TBS−Cで3回洗浄した。100μlの二次抗体(Jackson Immunoreseach, PA)を室温で2時間添加した。染色した断片をニコンバイオホット(Nikon Biophot)またはゼイスアキソホト(Zeiss Axiophot)蛍光顕微鏡を用いて検査し、写真をコダックエライト(Kodak Elite)ASA 100を用いて撮った。
【0551】
結果
リンパ球組織(胸腺、脾臓、リンパ節及び骨髄)をRNAブロット分析によってClasp−1発現について試験すると、13kbのClasp−1転写物が検出された。また同じ転写物は脳でも観察されたが、肝臓、肺、筋肉、腎臓、及び皮膚では見られなかった(図3a)。リンパ細胞系を更に分析すると、Clasp−1転写物がT細胞及びB細胞系統のリンパ球に存在していることを示した(図3b)。しかしながらその転写物は、数種の形質細胞腫系(S194及びJ558L)では発現しないか、ほんの少ししか発現せず、そのことは遺伝子が最終的に分化したB細胞で生産されるらしいことを示唆している。
【0552】
抗Clasp−1抗血清を用いて凍結断片を免疫染色すると、タンパク質の発現が脾臓の縁部ゾーン(図4c、M)で、また動脈周囲のリンパ鞘(PALS)のT(図4a、T)及びB(図4b、B)細胞ゾーンで最も顕著であることを示した。抗Clasp−1抗体はまた、縁部ゾーンのHOMA−1サブ領域、即ちT細胞依存性体液応答の際に重要な部位にあるマクロファージも染色した(Claassenら、1986, Eur.J.Immunol.16: 492−97)が、HOMA−1マクロファージ自体は染色しなかった(van Vlietら、1985, J.Histochem.Cytochem.33: 40−44、Kraalら、1988, Immunol.Lett.17: 139−44)(図4c、4f)。PALSでは、T細胞のほとんどがClasp−1を発現したが、これに対してB細胞のほとんどは発現しなかった(図4d、4e)。Tリンパ球の染色パターンが頂点であって、そこでは細胞が群を形成して並んでいて、それらの頂点がB細胞ゾーンを指摘することは注目すべきである(図4d、矢印の先端)。
【0553】
脾臓から単離されたリンパ球も、インビボでのリンパ球と同じ頂点の分布を示した(図4g、4h)。抗原のないところで増殖したT細胞(D10)も、B細胞(CH27、図4j)と同様に同じ表面極性の分布(図4i)を示したが、このことは頂点グループが抗原誘導性の架橋を行った結果ではなく、Clasp−1自体の固有の性質であることを示している。その構造を細胞下の指標(即ち、微小管形成中心)にし向けるために、T細胞(D10及び2B4)をαチューブリン(緑色)とClasp−1(赤色)の両方について染色した。頂点のClasp−1構造は、微小管形成中心と同様に核(青色)と同じ側で常に観察された(図4k)。検査したほとんどの細胞型では、中心体がリーディングエッジとして核の同じ側に常に存在していて、このことはClasp−1の極がリーディングエッジと関連していることを示している。
【0554】
B細胞によって抗原が表示する場合に細胞複合体が形成される際のClasp−1の役割を調べるために、雌鳥の卵のリゾチーム(HEL 46ペプチド〜61ペプチド:I−Ak)にTCRについて遺伝子導入した3A9マウスから得られる脾臓のリンパ球を、HELペプチドの存在下で培養して複合体T−B細胞ペアを形成させた(Sagerstromら、1993, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90: 8987−91)。培養した細胞を4時間、10時間、及び36時間で取り出した。しっかりとしたT−B細胞ペアは4時間までに観察され、10時間では95%以上のしっかりとしたT−B細胞ペアがあるため、早期に急激に形質転換する(核膜の境界とヘテロクロマチンの喪失)ことが証明された。産生性の相互作用細胞ペアでは、Clasp−1は常に細胞−細胞境界面に存在していた(図5a)。
【0555】
実施例 3
抗 Clasp−1 抗体による T 細胞 −B 細胞結合性の阻害
融合タンパク質及び抗体:
Clasp−1のアミノ酸残基121−327のコード配列(配列番号:1及び2)はBamH1/Not 1部位でpGEX−4T−1(Pharmacia, NJ)にクローニングされ、それはGST−Clasp−EC12Aと言われた。GST−Clasp−cytoは、Clasp−1のアミノ酸残基969−1289をコードするDNAを含み、Notl/EcoRI部位でpGEX−4T−3(Pharmacia, NJ)にクローニングされた構築物であった。融合タンパク質は、グルタチオン−セファロースカラム(Pharmacia, NJ)を用いてファルマシア(Pharmacia)の使用説明書にしたがって発現させて精製し、そしてウサギとヤギの抗血清の生成のために免疫原として用いた。抗体のMOMA−1(Kraal及びJanse, 1986, Immunology 58: 665−669)とER−TR−9(van Vlietら、1985, J.Histochem.Cytochem.33: 40−44)を記載されたとおりに用いた。抗CD4−FITC、CD8−FITC、CD3−FITC、CD45R (B220)−FITC抗体はカルタグ(Caltag, CA)から購入した。YOL 1/34はセラテック(Sera−Tec、NC)より購入した。
【0556】
ウエスタンブロット分析:
細胞を50mMのヘペス(pH7.4)、150mMのNaCl、10%のグリセロール、1%のトリトンX−100、アプロチニン(1U/ml)、ロイペプシン(2μg/ml)、ペプスタチン(1μg/ml)、アンチペイン(2μg/ml)、PMSF(1mM)、及び6Lの100μl/mlセファロースに溶解することによって溶解物の安全性を保証した。細胞溶解物を10%のSDS−PAGE上で電気泳動し、PVDF膜(Millipore, MA)にブロットし(Harlow及びLane, 1988, 「抗体:実験マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory)、5%の無脂肪ミルクと2%のBSAを入れたTBS−C中で一晩ブロックした。プロテイン−A、即ちγ結合法(Pharmacia, NJ)で精製した抗Clasp抗体を、0.5%の無脂肪ミルク、0.2%のBSA、50mMのPO4(pH7.4)、0.3MのNaCl、0.1%のツイーン20中に10μg/mlで加え、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、ヤギ抗ウサギHRP標識抗体(Biomeda)を室温で1時間かけて1/5,000に希釈して添加し、ECL(Amersham, IL)を用いて可視化した。
【0557】
細胞複合化と阻害のアッセイ法:
2B4またはD10のT細胞とCH27のB細胞(10μMの蛾(moth)のチトクロームcペプチド88〜ペプチド103を用いて、またはコンアルブミンを用いて一晩負荷した)をRPMI+10%のFCSに3.4×105細胞/mlで再懸濁した。それぞれの細胞型の120μlを8ウェルのカバースリップスライドチャンバー(Nunc, NY)で混合し、γ結合法(Pharmacia, NY)で精製したヤギ抗Clasp−EC12Aまたは抗Clasp−cyto抗体を最終濃度が0、50、及び150μg/ml(450μg/mlまでの前免疫血清)になるように添加した。細胞を37℃で5時間〜7時間結合させてから、血球計算板で係数した。それぞれの試料について100−150カップルがカウントされ、細胞の全体数に対して標準化した(一般的な頻度は7%〜10%の間であった)。阻害のパーセントは、CH27のB細胞が蛾のチトクロームcペプチドで負荷されなかった試料における非特異性の結合頻度を差し引いた後、ポジティブな対照における結合頻度に対して算出した。
【0558】
結果
抗体はClasp−1融合タンパク質に対して産生させた。ウエスタンブロット分析をCH27(成熟B細胞系)と2B4(T細胞ハイブリドーマ)からの抽出物を用いて行うと、細胞外ドメイン(Clasp−EC12A)または細胞質ドメイン(Clasp−cyto)のいずれかを含むGST−融合タンパク質に対して生じた抗体は分子量が約130kDのバンドであると確認したが、それはClasp−1の推定分子量134kD(図3c)と一致した。
【0559】
T細胞及びB細胞の間で物理的結合が確立する場合のClasp−1の役割を探るために、T−B細胞の結合を抑制するClasp−1の細胞外ドメインに対して指向する抗体の能力を評価した(Stowersら、1995, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92: 5027−5031)。T細胞ハイブリドーマの2B4は、B細胞のCH27と混合した場合の蛾のチトクロームc:I−Ekに特異的であり、抗Clasp−EC12A IgG抗血清の存在下で蛾のチトクロームcペプチドで負荷した。図6aに示されているようにT−B細胞のペア形成は抗Clasp−EC12A抗血清によって用量依存的な様式で阻止されたが、これに対して前免疫血清は、抗体が高濃度であっても細胞の結合形成に最少の影響しか与えなかった。同様の知見は、別の抗原特異的システム(D10のT細胞系、コンアルブミン:I−Akに特異的)で得られた。そのうえ、T細胞の活性化についてのIL−2アッセイの結果は、結合形成結果を反映していた(図6b)。このようにそのClasp−1の頂点の表面ドメインは、抗原と出会う前のT細胞の機能的な極性をマークすることに関係するとともに、後にT細胞の会合が起こる、T細胞及びB細胞間の細胞−細胞相互作用を仲介することに関係している。
【0560】
本発明の一局面を説明することを意図している例示的な態様によって、本発明の範囲は制限されるべきではなく、機能的に等価なクローン、DNAまたはアミノ酸配列は本発明の範囲に入る。実際に本明細書において記載された改変とは別の本発明の種々の改変が、前述した説明と添付した図面から当業者に明らかになるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ると意図されている。ヌクレオチドに対して用いられた全ての塩基対の大きさはおおよそであり、それらは説明の目的で用いられている。
【0561】
ここで引用した全ての刊行物は、その全体が参照として組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CLASP−2A cDNAのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列。顕著なタンパク質モチーフをヌクレオチド配列の上に太字で示す。可能性がある開始メチオニンに下線を引いて示す。顕著な予想タンパク質モチーフは、ヌクレオチド854〜868位によってコードされるカドヘリン切断部位;ヌクレオチド1253〜1264位によってコードされるカドヘリンエクトドメイン(EC)、ヌクレオチド2861〜2917位によってコードされる膜貫通ドメイン、ヌクレオチド3579〜3682位によってコードされる多重らせんドメイン、ヌクレオチド3827〜3937位によってコードされる第二の多重らせんドメイン、およびヌクレオチド4046〜4057位によってコードされるPDZ結合モチーフ(PBM)である。
【図2】A.CLASP−2スプライシング変種の図。スプライシング変種をヒト(h)CLASP−2Aと比較する。hCLASP−2Aの図の上の数値は、hCLASP−2Aと比較して欠失および挿入を含むスプライシング変種が認められる部位を示す。略語:「KIAA」、KIAA1058配列(ゲンバンクアクセッション番号AB028981)。B.CLASP−2A cDNAのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列。顕著なタンパク質モチーフはヌクレオチド配列の上に太字で示す。挿入および欠失の正確な位置は、CLASP−2A配列の上にそれぞれ、矢印および「x」によって示す。図2Aにおいて示した挿入のヌクレオチド配列は、矢印の上に示す。挿入および欠失は以下の通りである(計算はヒトCLASP−2Aヌクレオチド配列を参考とする):CLASP−2Dではヌクレオチド1966〜2034位が欠失している。CLASP−2Bではヌクレオチド2219〜2224位が欠失している。CLASP−2Dでは、ヌクレオチド2927位でアミノ酸69個の挿入が認められる。この挿入のヌクレオチド配列は:
であり、アミノ酸
をコードする(一文字アミノ酸記号)。このアミノ酸配列は、推定のSH3結合ドメインをコードする。CLASP−2Eには、ヌクレオチド3011〜3079位のあいだにもう一つの欠失を認める。CLASPs 2B、2C、2D、および2Eは、ヌクレオチド3153位で
のヌクレオチド配列による挿入を含む。完全な配列はCLASP−2Dにおいて認められ、アミノ酸配列
をコードするが、下線の配列はCLASPs 2B、2C、2D、および2Eに認められ、アミノ酸
をコードする。このアミノ酸配列は、推定の免疫受容体チロシン骨格活性化モチーフ(ITAM)をコードする。ヒトCLASP−2Cでは、ヌクレオチド3586位とヌクレオチド3587位に2つのヌクレオチド欠失が存在する。ヌクレオチド3937位で配列:CTGGGATGのヌクレオチド8個の挿入はヒトCLASP−2Dに限って認められる。この挿入は、CLASP−2Dヌクレオチド配列に停止コドンを挿入する。
【図3】A.CLASP−2アイソフォームのヌクレオチド配列のアライメント。配列は、クラスタルWを用いて配置した。B.CLASP−2アイソフォームのアミノ酸配列のアライメント。配列は、クラスタルWを用いて配置した。一文字アミノ酸記号を用いる。
【図4】ノーザンハイブリダイゼーションによって決定したヒト細胞株およびヒト組織におけるCLASP−2の発現。CLASP−2特異的DNA断片は、プライマーHC2AS2およびHC2S1を用いて、CLASP−2 cDNAクローン(HC2−5’)からPCRによって産生した。断片は、放射活性32P dCTPを組み入れることによって標識した。A.ヒト組織における発現。標識したDNA断片をヒト多組織ノーザン(クロンテック社、MTN ブロット、#7780−1)上でプローブとして用いた。多組織ノーザンにおいて胎盤、心臓、腎臓、および肺では、約7.5 kbに移動する単一のバンドを明らかに検出する。肝臓、骨格筋および脳では、わずかな発現を検出する。B.造血細胞株における発現。多細胞株からのRNAによるノーザンを、同じhCLASP−2プローブとハイブリダイズさせた。類似のように移動するバンドがジャーカット(T細胞由来)、9D10(B細胞由来)、および293(ヒト腎臓由来)細胞株において検出される。9D10のレーンでは多数のより弱いバンドが存在し、これは、おそらくhCLASP−2のスプライシング変種を示している。弱い発現はまた、マウス細胞株CH27(B細胞リンパ腫)および3A9(T細胞ハイブリドーマ)においても検出される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄は、高ストリンジェンシーで行ったため、これは、ヒトCLASP−2プローブがマウスCLASP mRNAと交叉反応する可能性を示している。
【図5】A.ヒトおよびラットCLASPタンパク質のアミノ酸配列。配列は、クラスタルWを用いて配置した。一文字アミノ酸記号を用いた。タンパク質モチーフは表示した枠の中に認められる。「−」は最善の全体的なアライメントを得るために配置する空白を意味する。その他の略語:「HC2A」ヒトCLASP−2配列、「KIAA」KIAA1058配列(ゲンバンクアクセッション番号AB028981、「ラット」TRG遺伝子(ゲンバンクアクセッション番号X68101)、「HC4」ヒトCLASP−4配列、「HC1」ヒトCLASP−1配列、「HC3」ヒトCLASP−3配列、「HC5」ヒトCLASP−5配列。B.ヒトCLASPs内に認められ、基準DOCKモチーフと比較したDOCKモチーフのアライメント。全てのDOCKモチーフ内に認められるコンセンサスアミノ酸についても示す。
【図6】A.CLASP−2A cDNAのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列。顕著なタンパク質モチーフを示す(詳しくは図1の説明文を参照)。さらに、エキソンとイントロンの境界を矢印で示す。これらの境界は、CLASP−2に対応するゲノムDNAを含む細菌人工染色体(BACs)をシークエンシングすることによって定義された。BACsは、CLASP−2 cDNAに対応するエキソン配列に由来するプライマーを用いてシークエンシングした。各エキソン/イントロン境界は、cDNA配列の上に記す(適当な参考番号と共に「Ref」として)。参考配列は、イントロンの正確なヌクレオチドの位置を含む。配列反応において用いたプライマーの名称およびヌクレオチド数も同様に示す。全てのヌクレオチドの数はCLASP−2A cDNA配列を意味する。参考配列に示したように、シークエンシング反応からの必ずしも全ての配列がcDNAにマッチする配列を生じたわけではない。CLASP−2のエキソン配列にマッチしなかったこれらのヌクレオチド配列は、イントロン配列であると見なされた。B.クラスタルWによるヒトおよびラットCLASPアミノ酸配列のアライメント。顕著なタンパク質モチーフを示す(さらに詳しくは図1の説明文を参照のこと)。さらに、Aにおいて説明したエキソン/イントロン境界は、適当なもののあいだの垂直の線によって示す。参考数値を右端に示し、これらは図6Aおよび図6Bにおける参考配列に対応する。
【図7】CLASP−2のサザンハイブリダイゼーション分析。HeLa細胞からのゲノムDNAまたはBAC DNAクローンを、EcoRIもしくはHIndIII(ゲノムDNA)またはPstI(BAC DNA)によって消化し、電気泳動して、標準的な方法によってナイロンメンブレンに転写した。プローブとするために、プライマーHC2AS2およびHC2S1を用いて、CLASP−2特異的DNA断片をCLASP−2 cDNAクローン(HC2−5’)からPCRによって作製した。断片は、放射活性32P dCTPを組み入れることによって標識した。プローブHC2.1は、長さが800 bpであり、Eco RI消化ゲノムDNA上の2つの断片を認識する(〜4.5 kbおよび1.85 kb)。BACs 4および6の消化したDNAとハイブリダイズさせると、3つの断片がこのプローブによって明らかになり、2つの大きい断片は、ゲノムDNA上で検出された断片と大きさが同一である。
【図8】ヒトCLASP−1(hCLASP−1)CLASP−1およびCLASP−2グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質の発現。hCLASP−2A細胞内ドメインの一部をコードするヌクレオチド(ヌクレオチド3230〜4065位)を、pGEXベクター(ファルマシア社)にサブクローニングした。組換えプラスミドを大腸菌(株DH5α)に形質転換して、形質転換株を標準的な条件で増殖させた。対数増殖期の細胞を(I)IPTG(0.1 mM最終濃度)によって誘導するか、または(U)誘導しなかった。数時間増殖させた後、細胞を回収して、標準的な方法によって可溶性タンパク質溶解物を作製した。タンパク質溶解物の一部をSDS−PAGE上で分子量標準物質と共に電気泳動した。ゲルをクーマシーブルーで染色すると、融合タンパク質が、hCLASP−1およびhCLASP−2に関してそれぞれ、推定される分子量59kDaおよび57kDaで移動することが示される。
【図9】A.CLASP−2のC末端アミノ酸20個のPDZドメインに対する結合。CLASP−2のC末端アミノ酸20個に対応する20 μMビオチン結合合成ペプチドを、表示のプレートに結合したGST融合タンパク質と反応させた(なし=プレート上にGST融合タンパク質のコーティングなし)。誤差のバーは2回測定の標準偏差を示す。B.CLASP 2−PDZ相互作用の親和性。ビオチン結合CLASP−2ペプチドをプレートに結合させたGST単独、GST−DLG1、GST−NeDLG、およびGST−PSD95融合タンパク質と反応させた。GST単独に対する結合(<0.1 OD単位)を融合タンパク質に対する結合から差し引いて、残りのシグナルを、30 μM CLASP−2ペプチドを各PDZドメイン含有タンパク質(0.4〜1.0 OD単位)のそれぞれに加えた際に認められたシグナルによって除して、プロットした。プロットしたデータを飽和結合曲線に適合させて、NeDLG−CLASP−2相互作用に関して見かけの親和性7.5 μM、DLG1−CLASP−2相互作用に関して21 μM、およびPSD95−CLASP−2相互作用に関して45 μMを得た。データはデータポイント2点の平均値であり、データポイント2点間の標準誤差は<10%である。C.CLASP−2−PDZ結合の阻害。CLASP−2のC末端アミノ酸20個に対応する5μMビオチン結合合成ペプチドを、100 μM競合ペプチドの存在下または非存在下で、表示の、プレートに結合したPDZドメイン含有GST融合タンパク質と反応させた。CLASP−2阻害剤は、CLASP−2のC末端アミノ酸8個からなる合成ペプチドを意味する。KV1.3阻害剤は、リンパ球カリウムチャネルであるKV1.3のC末端アミノ酸19個からなる合成ペプチドを意味する。KV1.3阻害剤のアミノ酸配列は、TTNNNPNSAVNIKKIFTDVである。D.KV1.3−PDZ結合の阻害。KV1.3のC末端アミノ酸19個に対応する5μMビオチン結合合成ペプチドを、100 μM CLASP−2阻害剤の存在下または非存在下でGST融合タンパク質を含む表示のプレート結合PDZドメインと反応させた(図9Cの説明文を参照のこと)。
【図10】CLASP−2 cDNAsの予備的ヌクレオチド配列。
Claims (39)
- ポリヌクレオチドが以下の(a)〜(d)である、単離CLASP−2ポリヌクレオチド:
(a) 配列番号:1、3、5もしくは9の配列を有するポリヌクレオチド;
(b) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズし、配列番号:2、4、6、もしくは10の配列を有するポリペプチド、または配列番号:2、4、6、もしくは10の配列を有するポリペプチドの対立遺伝子変種もしくは相同体をコードするポリヌクレオチド;
(c) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズし、配列番号:2、4、6、もしくは10のポリペプチドの25個の連続する塩基を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(d) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で(a)とハイブリダイズし、配列番号:1、3、5、もしくは9と同一である、または正確に相補的である少なくとも12個の連続する塩基を有するポリヌクレオチド。 - ポリペプチドがPSD95、DLG1、またはneDLGのPDZドメインに特異的に結合する、請求項1記載のポリヌクレオチド。
- ポリペプチドがPSD95、DLG1、またはneDLGとの結合に関して少なくとも104 M−1の結合親和性を有する、請求項2記載のポリヌクレオチド。
- 配列番号:2、4、6、または10の完全長の配列を有するポリペプチドをコードする請求項1記載のポリヌクレオチド。
- ATCC寄託番号PTA−1562およびPTA−1563のcDNAコード配列を含む、請求項1記載の単離ポリヌクレオチド。
- 配列番号:1、3、5または9と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離CLASP−2ポリヌクレオチド。
- 配列番号:2、4、6もしくは10と少なくとも90%の配列同一性を有し、および配列番号:2、4、6もしくは10と免疫学的に交叉反応するか、または本来のCLASP−2と生物機能を共有するヌクレオチド配列を含む単離ポリペプチド。
- 請求項1記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
- ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、宿主細胞においてポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列に機能的に結合している、請求項1記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
- 請求項1記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞、またはその細胞の子孫。
- ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、宿主細胞または細胞の子孫においてポリヌクレオチドの発現を制御する調節配列に機能的に結合している、請求項1記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
- 真核細胞である、請求項10記載の宿主細胞。
- 長さが約200塩基未満のアンチセンスポリヌクレオチドである、請求項1記載のポリヌクレオチド。
- オリゴヌクレオチドがCLASP−2の発現を阻害する、配列番号:1、3、5または9を含み、CLASP−2をコードするメッセンジャーRNAと相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
- 配列番号:2、4、6または10に示されるようなCLASP−2タンパク質をコードする単離DNA。
- RNAである、請求項1記載のポリヌクレオチド。
- 以下の段階を含む、ポリペプチドを産生する方法:
(a) ポリペプチドが発現されるような条件下で請求項10記載の宿主細胞を培養する段階;および
(b) 培養した宿主細胞またはその培養培地からポリペプチドを回収する段階。 - 請求項1記載の(a)または(b)のポリヌクレオチドによってコードされる単離ポリペプチド。
- 配列番号:2、4、6もしくは10のアミノ酸配列またはその断片を有する、請求項18記載のポリペプチド。
- ポリペプチドが細胞膜に会合している、請求項18記載の単離ポリペプチド。
- ポリペプチドが可溶性である、請求項18記載の単離ポリペプチド。
- ポリペプチドが異種ポリペプチドと融合される、請求項19記載のポリペプチド。
- 配列番号:2、4、6または10に示されるような配列を有する単離CLASP−2タンパク質。
- 配列番号:1に示されるような配列を含むタンパク質、および配列番号:2と少なくとも95%同一であって、スペクトリンに特異的に結合するその変種。
- 配列番号:2、4、6もしくは10に示されるようなアミノ酸配列を有するポリペプチドに特異的に結合する単離抗体またはその結合断片。
- モノクローナル抗体である、請求項25記載の抗体。
- 請求項26記載の抗体を分泌することができるハイブリドーマ。
- 以下の段階を含む、CLASP−2ポリペプチドに結合する化合物または物質を同定する方法:
i) 化合物とCLASP−2ポリペプチドとの結合を可能にして複合体を形成させる条件下で、請求項19記載のCLASP−2ポリペプチドを化合物または物質と接触させる段階;および
ii) 複合体の有無を検出する段階。 - 以下の段階を含む、試料中のCLASP−2ポリペプチドを検出する方法:
(a)試料を請求項26記載の抗体または結合断片と接触させる段階、および(b)抗体とCLASP−2ポリペプチドとのあいだに複合体が形成されたか否かを決定する段階。 - 以下の段階を含む、試料中のCLASP−2ポリペプチドを検出する方法:
(a)試料を、請求項1記載のポリヌクレオチド、または少なくとも12ヌクレオチドの配列を含み、請求項1記載の第(a)項に記載のポリヌクレオチドの連続する配列と相補的なポリヌクレオチド、と接触させる段階、および(b)ハイブリダイゼーション複合体が形成されたか否かを決定する段階。 - 以下の段階を含む、試料中のCLASP−2ヌクレオチドを検出する方法:
(a) 少なくとも12ヌクレオチドの配列を含み、請求項1記載の第(a)項に記載のポリヌクレオチドの連続する配列と相補的であるポリヌクレオチドを、増幅プロセスにおいて用いる段階;および
(b) 特異的増幅産物が形成されたか否かを決定する段階。 - 請求項1記載のポリヌクレオチド、請求項18記載のポリペプチド、または請求項25記載の抗体および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
- 以下の段階を含む、被験者における免疫応答を阻害する方法:
(a) CLASP−2遺伝子の発現を妨害する段階;
(b) CLASP−2タンパク質ともう一つの細胞との結合能を妨害する段階;
(c) CLASP−2タンパク質ともう一つのタンパク質との結合能を妨害する段階。 - 細胞がT細胞またはB細胞である、請求項33記載の方法。
- 配列番号:2、4、6もしくは10のアミノ酸配列またはその断片を含むポリペプチドの有効量を細胞に接触させる段階を含む、請求項33記載の方法。
- 配列番号:2、4、6または10の配列を有するポリペプチドに特異的に結合する抗体の治療的有効量を被験者に投与する段階を含む、被験者における免疫応答を阻害する方法。
- 請求項32記載の薬学的組成物の治療的有効量をそれを必要とする被験者に投与する段階を含む、CLASP−2媒介疾患を予防または治療する方法。
- CLASP−2媒介疾患が自己免疫疾患である、請求項37記載の方法。
- 請求項32記載の薬学的組成物の治療的有効量を被験者に投与する段階を含む、TH1細胞の活性の増加によって引き起こされる、または悪化する被験者における自己免疫疾患を治療する方法。
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