JP2004535175A - ポリケチド生合成用遺伝子及びタンパク質 - Google Patents
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Abstract
Streptomyces platensis subsp. rosaceus由来のポリケチドであるドリゴシン、及びStreptomyces amphibiosporus由来のポリケチドであるラクトイミドマイシンの生合成遺伝子座を形成する遺伝子及びタンパク質を含む、微生物によるポリケチドの生合成に関与する遺伝子及びタンパク質。かかる遺伝子及びタンパク質により、ドリゴシン及びラクトイミドマイシンの生合成に関与する酵素の化学工学的処理を介した、ドリゴシン、ラクトイミドマイシン及び関連する化学構造物の直接的な操作が可能になる。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリケチド、特に、ドリゴシン(dorrigocin)ポリケチド、ミグラスタチン(migrastatin)ポリケチド及びラクトイミドマイシン(lactimidomycin)ポリケチドの合成を誘導するタンパク質をコードする核酸分子に関する。本発明は、ドリゴシン、ミグラスタチン及びラクトイミドマイシン構造物に基づいて抗菌作用を示す化合物を作製するための、DNAの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ドリゴシン、ミグラスタチン及びラクトイミドマイシンは、ポリケチド類である。ポリケチドは、真菌及び細菌、特に放線菌をはじめとする多種類の生物の体内で生じる。ドリゴシンA及びドリゴシンBと命名された2種類のドリゴシンの構造については、Hochlowski et al.がJ. Antibiotics 47: 870 (1994)及び米国特許第5,484,799号に記載されている。ドリゴシンには抗真菌性及び抗腫瘍性作用があることが報告されている(Karwowski et al., J. Antibiotics 47: 862 (1994); 米国特許第5,589,485号)。ドリゴシンの生物学的性質については、Kadam and McAlpineがJ. Antibiotics 47: 875 (1994)でも議論されている。Nakae et al.は、J. of Antibiotics 53: 1228 (2000)でミグラスタチンの構造について記載している。ミグラスタチンが腫瘍細胞の遊走を阻害するとの報告がある(Nakae et al., J. of Antibiotics 53: 1130 (2000)。Woo et al.は、J. Antibiotics, Vol 55, pp. 141-146 (2002)において、イソミグラスチン(isomigrastin)と称する関連化合物について記載している。ポリケチドは、一連の縮合及びそれに続く修飾により2炭素単位で形成された種類の化合物である。ポリケチドは、ポリケチドシンターゼ(PKS)という酵素により天然で合成される。従来の化学的手法ではポリケチドの生成が困難であること、及び野生型細胞内では一般にポリケチドの生成量が少ないことから、ポリケチド化合物を生成するための改良された手段又は代替的な手段を見出だすことには、かなりの関心が寄せられてきた。
【0003】
ポリケチドシンターゼ(PKS)という酵素は、多数の大型タンパク質の複合体である。PKSは、アシルチオエステルの基本構成単位間での反復的で脱炭酸的なクライゼン縮合を通じたポリケチドの生合成において、触媒として作用する。PKSは一般的に、合成するポリケチドの種類によって、及びかかるポリケチドを合成する形態によって、I型、すなわち「モジュラー型」PKSと、II型、すなわち「反復型」PKSに分類される。I型PKSは、大量の12員環、14員環、及び16員環マクロライド抗生物質の生成に関与している。
【0004】
I型すなわちモジュラー型PKSは、ポリケチド合成経路における炭素鎖伸長及び修飾の各サイクルに対する、別々の酵素活性部位一セットにより形成される。各活性部位をドメインと呼び、活性部位一セットをモジュールと呼ぶ。典型的なモジュラー型PKS複合酵素系は、数個の大型ポリペプチドで構成されており、該ポリペプチドをアミノからカルボキシ末端にかけて分離して、ローディングモジュール、多数のエクステンダーモジュール、及びチオエステラーゼドメインを内包する場合が多いリリーシングモジュールとすることが可能である。
【0005】
一般に、ローディングモジュールは、ポリケチドの合成に使用する最初の基本単位を構築すること、及びそれを最初のエクステンダーモジュールへ移動させることに関与している。ローディングモジュールは、ある特定のアシルCoA(通常はアセチル又はプロピオニルだが、ときにブチリル又はその他のアシルCoA)を認識し、それをチオールエステルとして、ローディングモジュールのACPまで移動させる。
【0006】
各エクステンダーモジュール上のATは、ある特定のエクステンダーCoAを認識し、それをそのエクステンダーモジュールのACPまで移動させ、チオエステルを形成する。各エクステンダーモジュールは、前のモジュールから化合物を受け取り、基本構成単位を結合し、その基本構成単位を前のモジュールからの化合物に結合し、1つ以上の付加的な機能を任意に発揮し、結果として生じた化合物を次のモジュールへ移動させる。
【0007】
これまでに報告されたあらゆるモジュラー型PKSの各エクステンダーモジュールは、KS、AT、ACP、及び成長中のポリケチド鎖のベータ炭素を修飾する、0、1、2又は3つのドメインを含んでいる。典型的な(非ローディング)最小I型PKSエクステンダーには、KSドメイン、ATドメイン及びACPドメインが含まれていてもよい。かかるドメインは2炭素エクステンダーユニットを活性化させるのに充分であり、前記ユニットを発達中のポリケチドモジュールに結合させる。同様に、次のエクステンダーモジュールは、合成が完了するまで、次の基本構成単位を結合させること、及び発達中の化合物を次のエクステンダーモジュールへ移動させることに関与している。
【0008】
いったんPKSがアシルACPでプライムされると、ローディングモジュールのアシル基が移動して最初のエクステンダーモジュールのKSでチオールエステルを形成する(トランスエステル化)。この段階において、エクステンダーモジュール1はアシルKS及びマロニル(又は置換マロニル)ACPを保有している。その後、かかるローディングモジュール由来のアシル基は、マロニル基のアルファ炭素に共有結合して炭素−炭素結合を形成し、同時に脱炭酸され、ローディング基本構成単位よりも長い、骨格となる2つの炭素を有する新規のアシルACPを生成する(伸長又は拡張)。
【0009】
各エクステンダーモジュールで炭素2つ分だけ発達したポリケチド鎖は、続いて、共有結合したチオールエステルとして、流れ作業のようなプロセスにおいて、エクステンダーモジュールからエクステンダーモジュールへと通過していく。このプロセスのみによって生成した炭素鎖は、炭素原子1つおきにケトンを保有していると思われ、ポリケトンを生成する。ポリケチドという名前の由来は、ここからきている。しかし、通常は、2つの炭素ユニットそれぞれのベータケト基を、成長中のポリケチド鎖への添加直後で次のモジュールへの移動前に、付加的な酵素活性によって修飾する。炭素−炭素結合の形成に必要な典型的KS、AT及びACPドメインの他に、モジュールは、ベータ−カルボニル部分を修飾する他のドメインを含んでいてもよい。例えば、モジュールは、ケト基をアルコールに還元するケトレダクターゼ(KR)ドメインも含んでいてもよい。モジュールは、KRドメインに加えて、アルコールを脱水して二重結合にするデヒドラターゼ(DH)ドメインも含んでいてもよい。モジュールは、KRドメイン、DHドメインに加えて、二重結合産物を飽和一重結合に変換するエノイルレダクターゼ(ER)ドメインも含んでいてもよい。エクステンダーモジュールは、例えばメチラーゼ活性又はジメチラーゼ活性などの他の酵素活性も含んでいる場合がある。
【0010】
最後のエクステンダーモジュールを通過すると、ポリケチドは、PKSからポリケチドを切り離し、一般的にはポリケチドを環状化するリリーシングドメインに到達する。適合化(tailoring)酵素によって、かかるポリケチドをさらに修飾することもできる。これらの酵素は、ポリケチドコア分子に対して、炭水化物基若しくはメチル基の添加、又は酸化若しくは還元など他の修飾を行う。
【0011】
I型PKSポリケチドにおいて、触媒作用を有するドメインの順序は、これまで報告されたあらゆるI型PKSで保存されている。したがって、すべてのベータ−ケト処理ドメインが1つのモジュール内に存在する場合、そのモジュール内のN末端からC末端までのドメインの順序は、常に、KS、AT、DH、ER、KR、ACPとなる。あるモジュールでは、いくつか又は全部のベータ−ケト処理ドメインが失われている場合があるが、モジュール内に存在するドメインの順序は、報告されたすべての事例で依然として同一である。
【0012】
こうした酵素の工学的処理は、ドメインの修飾、添加、若しくは欠失によって、又はドメインを他のI型PKSから取得してきたドメインと置換することによって、行われる。他の供給源から取得してきたモジュールで、モジュール全体を欠失させたり、置換したり添加したりすることによっても、行われる。遺伝子組換えPKS複合体は、もちろん、実施した遺伝子改変から予測される産物の合成に対して触媒作用を及ぼす能力がある。触媒作用を有するドメインと、個々のポリペプチドのN末端及びC末端との間には、リンカー領域がある。これらリンカー領域の配列は、触媒作用を有するドメインと比較して、保存性が低い。PKS複合体を構成するドメイン間及び個々のポリペプチド間で会合が正しく行われるためには、リンカー領域が重要であるのかもしれない。したがって、ドメインとモジュールが正しい配向で位置し、活性を示しているような足場を構築するものとして、リンカーとドメインをひとまとめにして見ることもできる。このような構成及び位置取りが保有されていると、異なる又は同一の基質特異性を有するPKSドメインの、各種利用可能な方法によるPKS酵素間での置換(通常はDNAレベル)が可能になる。例えば、AT置換の境界を選択する場合、受け取り側のPKSのリンカーを保有するように、又は、それらを供与側のPKSATドメインのリンカーで置換するように、置換を行うことができる。または、好ましくは、両方の構造物を作って、KSドメインとATドメインとの間の正しいリンカー領域が、少なくとも1つの工学処理済酵素に確実に含まれているようにすることができる。このように、新規PKSの設計にはかなりの柔軟性があり、その結果、既知のポリケチドのより効率的な生成や、新規ポリケチドの作製が可能になる。
【0013】
治療上有効なポリケチドはこれまで数多く同定されているが、薬物動態学的プロフィール及び代謝に優れ、副作用の少ない新規ポリケチドを得る必要性は依然として残っている。それに加えて、まったく新しい生物活性を有する新規ポリケチドを得る必要性もある。モジュラー型のI型PKSが生成する複雑なポリケチドには、駆虫剤、殺虫剤、免疫抑制剤、抗真菌剤、抗菌剤としての有用性が知られている化合物を含まれているため、特に価値がある。その構造の複雑さのため、全体的な化学合成又は既知のポリケチドの化学修飾によって、かかる新規ポリケチドを容易に入手するのは不可能である。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、ポリケチドの生成に関与する遺伝子及びタンパク質を有利に提供するものである。かかる遺伝子及びタンパク質の実施形態は、添付した配列表に具体的に示されている。配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、22及び24は、ポリケチドであるドリゴシンの生合成に関与する核酸を提供する。配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及び23は、ポリケチドであるドリゴシンの生合成に関与するタンパク質のアミノ酸配列を提供する。配列番号25、27、29、31、33、35、37、39、41及び32は、ポリケチドであるラクトイミドマイシンの生合成に関与する遺伝子の核酸配列を提供する。配列番号26、28、30、32、34、36、38、41及び42は、ポリケチドであるラクトイミドマイシンの生合成に関与するタンパク質のアミノ酸配列を提供する。本発明の遺伝子及びタンパク質は、ドリゴシン化合物及びラクトイミドマイシン化合物に基づく新規ポリケチド関連化合物の生成機構を提供する。
【0015】
本発明は、各種ポリケチドの生成に使用可能なポリケチドシンターゼ(PKS)遺伝子(配列番号11、13、15、33、35及び37)及びタンパク質(配列番号10、12、14、32、34及び36)を開示している。ポリケチドには、現在のところ、発酵のみによって生成するものもあれば、発酵及び化学修飾によって生成するものもある。そして発酵によっても化学修飾によっても生成することのない新規ポリケチドもある。本発明により、ドリゴシン及びラクトイミドマイシンの生合成に関与する酵素の化学工学的処理や、構造物の複雑さのために現在の化学的手法では不可能な修飾を介しての、ドリゴシン、ラクトイミドマイシン、及び関連する化学構造物の直接操作が可能になる。
【0016】
通常は不活性だがきっかけがあれば化学修飾が可能になる位置に「化学的なきっかけ」を導入するために、本発明を使用することもできる。本発明の方法及び試薬により、新規ポリケチドを開発するいくつかの一般的な方法の利便性が上昇する。例えば、分子モデルを使用して最適な構造物を予測することができる。本発明の方法によると、ドリゴシン遺伝子クラスター又はラクトイミドマイシン遺伝子クラスターの遺伝子操作により、さまざまなポリケチド構造物を生成することができる。本発明を使用して、類似体の集中ライブラリーをポリケチドのリード候補物質の周囲に構築し、最適な性質となるように化合物を微調整することもできる。本発明の遺伝子組換え方法は、以前は化学修飾に対して不活性だった分子位置の修飾にも対応可能である。既知のPKS遺伝子クラスターを操作して、そのPKSが生成するポリケチドを自然に生成する場合よりも高レベルで生成させること、又は、操作しなければポリケチドを生成しない宿主内で生成させることが、既知の技法によって可能になる。構造的には関連しているが、既知のPKS遺伝子クラスターが生成するポリケチドとは区別される分子を生成することが、既知の技法によって可能になる。例えば、PCT公開公報WO93/3663、95/08548、96/40968、97/02358、98/49315、米国特許第4,874,748号、第5,063,155号、第5,098,837号、第5,149,639号、第5,672,491号、第5,712,146号、第5,830,750号及び第5,843,718号を参照のこと。
【0017】
このように、本発明の第一の態様は、配列番号1、22及び25;配列番号1、22及び25に相補的な配列;配列番号1、22及び25の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200又は500個のヌクレオチドを連続状態で含む断片;及び配列番号1、22及び25に相補的な配列の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200又は500個のヌクレオチドを連続状態で含む断片からなる群より選択される配列を含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸を提供する。この態様の好ましい実施形態には、上記配列と中程度のストリンジェンシー又は高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる、単離、精製又は濃縮を行った核酸;上記配列の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200又は500個の塩基を連続状態で含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸;及びデフォルトパラメータを用いたBLASTNバージョン2.0での分析により、上記配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%又は99%の相同性を有することが確認された、単離、精製又は濃縮を行った核酸が含まれる。
【0018】
本発明のこの態様におけるさらに好ましい実施形態には、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39、41、43、及びそれらに相補的な配列からなる群より選択される配列を含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸;配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39、41、43、及びそれらに相補的な配列からなる群より選択される配列の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200又は500個の塩基を連続状態で含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸;上記核酸と中程度のストリンジェンシー又は高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる、単離、精製又は濃縮を行った核酸;及びデフォルトパラメータを用いたBLASTNバージョン2.0での分析により、請求項6に記載の核酸に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%又は99%の相同性を有することが確認された、単離、精製又は濃縮を行った核酸が含まれる。本発明のこの態様におけるより好ましい実施形態には、配列番号10、12、14、32、34及び36のPKSのドメインをコードする単離した核酸;配列番号10、12、14、32、34及び36のPKSの1つ以上のモジュールの一部又は全部をコードする単離した核酸が含まれる。これらの核酸を単独で、又は他のPKSドメイン若しくはモジュールをコードする核酸と組み合わせて、組換え型ベクターの構築における中間物質として容易に用いることができる。別の態様においては、本発明は、モジュール中の少なくとも1つのドメインが非ドリゴシンPKS及び非ラクトイミドマイシンPKSに由来し、少なくとも1つのドメインがドリゴシンPKS又はラクトイミドマイシンPKSに由来するモジュールを少なくとも1つ含むPKSの全部又は一部をコードする単離した核酸を提供する。
【0019】
第二の実施形態においては、本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42からなる群より選択される配列を含む、単離又は精製を行ったポリペプチド;配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200又は500個のアミノ酸を連続状態で含む、単離又は精製を行ったポリペプチド;及びデフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2での分析により、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%又は99%の相同性を有することが確認された、単離又は精製を行ったポリペプチドを提供する。さらなる態様においては、本発明は、上記ポリペプチド配列を1、2、3、又は5個以上含むポリペプチドを提供する。
【0020】
本発明は、上記核酸を含む組換え型DNA発現ベクターも提供する。本発明のこうした遺伝子及び方法によって、当業者は、ポリケチド生成能力を有する組換え型宿主細胞を作製することができるようになる。したがって、本発明は、上記核酸を少なくとも1つコードする組換え型DNAベクターで異種性宿主細胞を形質転換し、かかる宿主細胞を、PKSが生成されるような条件下で培養し、そのPKSが触媒となってポリケチドの合成にいたる、ポリケチドの調製方法を提供する。1つの態様においては、かかる方法はStreptomycesを宿主細胞として用いて実施される。別の態様においては、生成したポリケチドはドリゴシン又はラクトイミドマイシンである。別の態様においては、生成したポリケチドは、構造的にドリゴシン又はラクトイミドマイシンに関連するポリケチドである。本発明のこの態様における1つの実施形態は、ドリゴシン生合成遺伝子産物が発現するような条件下で宿主細胞を培養することを特徴とするドリゴシン生合成遺伝子産物の発現方法である。本発明のこの態様における第二の実施形態は、ラクトイミドマイシン生合成遺伝子産物が発現するような条件下で宿主細胞を培養することを特徴とするラクトイミドマイシン生合成遺伝子産物の発現方法である。
【0021】
本発明は、推定ポリケチド生成微生物の検出及び/又は単離用の本発明のプローブを含む試薬;ハイブリダイゼーションが検出されるように、本発明のプローブを用いて、推定ポリケチド生成微生物を検出及び/又は単離する方法をも含む。クローニング、分析、及びPKS酵素をコードする遺伝子のDNA組換え技術による操作を、既知の技法によって行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
ドリゴシン分子とミグラスタチン分子を区別する論文執筆者もいる。本明細書では一貫して、ドリゴシンという言葉には、ミグラスタチン及びイソミグラスタチンと称される分子が含まれるものとしている。同様に、ドリゴシンの生合成遺伝子座という言葉には、ミグラスタチン及びイソミグラスタチンと称される分子の合成を誘導する生合成遺伝子座が含まれるものとする。
【0023】
本明細書及び図面を通して、Streptomyces platensis subsp. rosaceusNRRL18993由来のドリゴシンの生合成遺伝子座をDORRと称する場合があり、Streptomyces amphibiosporusATCC53964由来のラクトイミドマイシンの生合成遺伝子座をLACTと称する場合がある。DORR及びLACTのORFには、既知のタンパク質との相同性に基づいて推定的な機能が割り当てられ、ファミリーにグループ分けされている。構造と機能を相関させるため、タンパク質ファミリーは、本明細書及び図面を通して、表1に示すとおりの4文字表記で命名されている。
【0024】
【表1】
【0025】
ドリゴシン生合成遺伝子産物という語は、ドリゴシン、ミグラスタチン又はイソミグラスタチンの生合成に関与するあらゆる酵素を指す。これらの遺伝子は、Streptomyces platensis subsp. rosaceus由来のドリゴシン生合成遺伝子座に局在している。この遺伝子座を図1及び図4に示す。詳しくは、ドリゴシン生合成経路はStreptomyces platensis subsp. rosaceusに関連している。しかし、この語には、Streptomyces属のどの微生物から単離されたドリゴシン生合成酵素(及びかかる酵素をコードする遺伝子)も含まれること、また、これらの遺伝子の新しいホモログが、本件の特許請求の範囲に含まれる関連する放線菌類の微生物中に存在する場合があることは、承知されてしかるべきである。具体的な実施形態において、かかる遺伝子は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及び23に列挙されている。
【0026】
ラクトイミドマイシン生合成遺伝子産物という語は、ラクトイミドマイシンの生合成に関与するあらゆる酵素を指す。これらの遺伝子は、Streptomyces amphibiosporus由来のラクトイミドマイシン生合成遺伝子座に局在している。この遺伝子座を図4に示す。詳しくは、ラクトイミドマイシン生合成経路はStreptomyces amphibiosporusに関連している。しかし、この語には、Streptomyces属のどの微生物から単離されたラクトイミドマイシン生合成酵素(及びかかる酵素をコードする遺伝子)も含まれること、また、これらの遺伝子の新しいホモログが、本件の特許請求の範囲に含まれる関連する放線菌類の微生物中に存在する場合があることは、承知されてしかるべきである。具体的な実施形態において、かかる遺伝子は配列番号26、28、30、32、34、36、38、40及び42に列挙されている。
【0027】
「単離された」という語は、物質がその本来の環境、例えばそれが天然物として生じるのであればその自然環境から除去されたことを意味する。例えば、生体内に存在する自然に生じたポリヌクレオチド又はポリペプチドは、単離されてはいないが、その同じポリヌクレオチド又はポリペプチドが、自然界のシステムで共存している物質のすべて又は一部から分離された場合は、単離されたことになる。そうしたポリヌクレオチドをベクターの一部とすることができ、及び/又は、そうしたポリヌクレオチド又はポリペプチドを組成物の一部とすることができる。その場合もやはり単離されたことになる。なぜなら、そうしたポリヌクレオチド又はポリペプチドにとって、該ベクターや組成物は自然環境の一部ではないからである。
【0028】
「精製された」という語は、100%の純度を必要とするわけではなく、どちらかといえば、相対的な定義を意図するものである。従来、ライブラリーから得た個々の核酸は、電気泳動上で均質となるまで精製されている。これらのクローンから得た配列を、コスミドライブラリーなどの大型挿入物ライブラリー又は全生物DNAから直接得ることは不可能であった。本発明の精製された核酸は、生物のゲノムDNAの残存物から少なくとも104〜106倍に精製されたものである。しかし、「精製された」という語は、ゲノムDNAの残存物又はライブラリー若しくは他の環境に存在する他の配列から、少なくとも101倍、好ましくは102倍又は103倍、さらに好ましくは104倍又は105倍に精製された核酸も含むものである。
【0029】
「組換え体」という語は、核酸が、自然環境では隣接しない「骨格」核酸に隣接していることを意味する。「濃縮」核酸とは、核酸骨格分子群中に数にして5%以上の核酸挿入物が存在することを示す。「骨格」分子には、発現ベクター、自己複製核酸、ウィルス、組込み(integrating)核酸などの核酸、及び目的の核酸の維持又は操作に使用する他のベクター又は核酸などがある。該濃縮核酸は、組換え骨格分子群中に存在する核酸挿入物数の15%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがもっとも好ましい。
【0030】
「組換え」ポリペプチド又はタンパク質とは、組換えDNA技術により作製された、すなわち、目的のポリペプチド又はタンパク質をコードする外部DNAコンストラクトにより形質転換された細胞から作製されたポリペプチド又はタンパク質を示す。「合成」ポリペプチド又はタンパク質とは、化学合成により調製されたポリペプチド又はタンパク質のことである。
【0031】
「遺伝子」という語は、ポリペプチド鎖の作製に関与するDNAの部分であり、コード領域前後の領域(リーダー及びトレーラー)、及び該当する場合には、個々のコード部分(エキソン)の間にある領域(イントロン)も含むものである。
【0032】
ある特定のポリペプチド若しくはタンパク質を「コードする配列」、又はDNA若しくはヌクレオチド「コード配列」とは、適切な制御配列の管理下に置かれた際にポリペプチド又はタンパク質に転写及び翻訳されるDNA配列のことである。
【0033】
オリゴヌクレオチドとは、遺伝子、mRNA、cDNA又はその他目的の核酸をコードするゲノムDNA分子、cDNA分子、又はmRNA分子とハイブリダイズする核酸であって、一般的には10個以上、好ましくは15個、さらに好ましくは20個以上で、好ましくは100個以下のヌクレオチドを有する核酸のことである。
【0034】
プロモーター配列は、RNAポリメラーゼが認識するコード配列に、「操作可能な状態で連結されて」いる。このRNAポリメラーゼは、該プロモーターで転写を開始し、該コード配列をmRNAに転写する。
【0035】
「プラスミド」は、小文字のpを前につけて、すなわち、その後ろに大文字の文字及び/又は数字を続けて、設計される。ここでは、最初のプラスミドは、市販品で公的な使用に制限は課せられていないもの、又は、入手可能なプラスミドから公開された手順にしたがって構築することが可能なものである。さらに、ここに記載したプラスミドと同等のものは、当該分野では周知であり、当業者であれば容易にわかるものである。
【0036】
DNAの「分解」とは、DNAのある特定の配列だけに作用する制限酵素によるDNAの酵素的開裂を指す。ここで使用した各種制限酵素は市販品であり、その反応条件、補因子その他の要件は、当業者には周知のものとして使用された。
【0037】
分析を目的とする場合、約20μlの緩衝液中で、1μgのプラスミド又はDNA断片を約2単位の酵素とともに用いるのが一般的である。プラスミド構築のためにDNA断片を単離するのが目的の場合は、より多量に、5〜50μgのDNAを20〜250単位の酵素で分解するのが一般的である。特定の酵素に対する適切な緩衝液及び基質の量は、製造者によって具体的に示されている。インキュベーションの時間については、37℃で1時間というのが普通だが、供給業者の指示によって変わる場合もある。分解後は、目的の断片を単離するためにゲル電気泳動が行われる場合がある。
【0038】
本発明者らは、ポリケチドであるドリゴシン及びラクトイミドマイシンの生合成に関与する遺伝子及びタンパク質を見出すに至った。ドリゴシンの生合成に関与するタンパク質をコードする核酸配列を、添付の配列表中に配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21及び24として提供する。ドリゴシンの生合成に関与するポリペプチドを、添付の配列表中に配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及び23として提供する。ラクトイミドマイシンの生合成に関与するタンパク質をコードする核酸配列を、添付の配列表中に配列番号27、29、31、33、35、37、41及び43として提供する。ラクトイミドマイシンの生合成に関与するポリペプチドを、添付の配列表中に配列番号26、28、30、32、34、36、38、40及び42として提供する。
【0039】
本発明の1つの態様は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の配列、それらに相補的な配列のいずれかを、又は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の配列若しくはそれらに相補的な配列のいずれかの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400又は500個の塩基を連続状態で含む断片を含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸である。該単離、精製又は濃縮を行った核酸は、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAなどのDNAを含んでいてもよい。該DNAは二本鎖でも一本鎖でもよく、一本鎖の場合はコード鎖又は非コード(アンチセンス)鎖でもよい。あるいは、該単離、精製又は濃縮を行った核酸は、RNAを含んでいてもよい。
【0040】
以下に詳述するとおり、配列番号のいずれかの単離、精製又は濃縮を行った核酸を用いて、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかを、又は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片を調製してもよい。
【0041】
したがって、本発明の別の態様は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかを、又は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片をコードする、単離、精製又は濃縮を行った核酸である。これらの核酸のコード配列は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸、若しくはその断片のいずれかのコード配列と相同であってもよく、又は、遺伝子情報の冗長性若しくは縮重の結果として、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかを、又は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片をコードする別のコード配列であってもよい。かかる遺伝子情報は当業者には周知であり、例えばStryer, Biochemistry, 3rd edition, W. H. Freeman & Co., New Yorkなどから得ることができる。
【0042】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかをコードする、単離、精製又は濃縮を行った核酸としては、(1)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のいずれかのコード配列のみ;(2)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のコード配列、及びリーダー配列などの付加的なコード配列又はプロタンパク質;及び(3)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のコード配列、及びイントロンなどの非コード配列、又はコード配列の非コード配列5’及び/又は3’が挙げられるが、これらに限定されるものではない。したがって、ここで使用されているように、「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という語は、付加的なコード配列及び/又は非コード配列をも含むポリヌクレオチドに加えて、該ポリペプチド用コード配列だけを含むポリヌクレオチドをも意味するものである。
【0043】
本発明は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41に基づくポリヌクレオチドではあるが、「サイレントな」ポリヌクレオチド変化、たとえば、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列が変わらないような変化を示すポリヌクレオチドに関する。本発明はまた、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのアミノ酸の置換、付加、欠失、融合及び切断が生じるヌクレオチド変化を示すポリヌクレオチドに関する。かかるヌクレオチド変化の導入には、特定部位の突然変異誘発、ランダムな化学的突然変異誘発、エキソヌクレアーゼIIIの欠失などの技術、その他の組換えDNA技術を用いてもよい。
【0044】
配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41、それらに相補的な配列、又は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の配列若しくはそれらに相補的な配列のいずれかの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400又は500個の塩基を連続状態で含む断片の、単離、精製又は濃縮を行った核酸をプローブとして用いて、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドをそれぞれコードするDNAの同定及び単離を行ってもよい。そうした手順においては、試料の微生物、又は、ポリケチドを産生する能力をもつ微生物を含有する試料からゲノムDNAライブラリーを構築する。その後、該ゲノムDNAライブラリーと、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、若しくはその断片をコードするコード配列若しくは該コード配列の断片を含むプローブとを、該プローブがそれらの相補配列と特異的にハイブリダイズできるような条件下で接触させる。好ましい実施形態においては、該プローブは、長さにして約10〜約30個のヌクレオチドを有し、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドである。次いで、該プローブとハイブリダイズするゲノムDNAクローンを検出し、単離する。目的のDNAクローンを調製し同定する手順は、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley 503 Sons, Inc. 1997; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989に開示されている。別の実施形態においては、該プローブは、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41由来のPCR増幅核酸又は制限断片である。
【0045】
配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41、それらに相補的な配列、又は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の配列若しくはそれらに相補的な配列のいずれかの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400又は500個の塩基を連続状態で含む断片の、単離、精製又は濃縮を行った核酸をプローブとして用いて、関連する核酸の同定及び単離を行ってもよい。いくつかの実施形態においては、かかる関連する核酸は、潜在的ポリケチド産生株に由来するゲノムDNA(又はcDNA)であってもよい。好ましい実施形態においては、配列番号11、13、15、33、35及び37、それらに相補的な配列、又は配列番号11、13、15、33、35及び37、若しくはそれらに相補的な配列のいずれかの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400又は500個の塩基を連続状態で含む断片の、単離、精製又は濃縮を行った核酸をプローブとして用いて、関連する核酸の同定及び単離を行ってもよい。そうした手順においては、潜在的ポリケチド産生株由来の核酸を含有する核酸試料とプローブとを、該プローブが関連する配列と特異的にハイブリダイズできるような条件下で接触させる。かかる核酸試料は、潜在的ポリケチド産生株由来のゲノムDNA(又はcDNA)ライブラリーであってもよい。次いで、上記のいずれかの方法を用いて、該プローブと核酸とのハイブリダイゼーションを検出する。
【0046】
ハイブリダイゼーションは、低ストリンジェンシー条件下、中程度のストリンジェンシー条件下、又は高ストリンジェンシー条件下で行ってもよい。核酸ハイブリダイゼーションの一例を挙げる。0.9MのNaCl、50mMのNaH2PO4、pH7.0、5.0mMのNa2EDTA、0.5%のSDS、10×Denhardt's、及び0.5mg/mlのポリリボアデニル酸からなる溶液中で、不動化変性核酸を含むポリマー膜を、まず45℃で30分間プレハイブリダイズする。その後、約2×107cpm(比放射能4〜9×108cpm/ug)の32P末端標識オリゴヌクレオチドプローブを溶液に添加する。12〜16時間のインキュベーションを行った後、0.5%のSDSを含む1×SET(150mMのNaCl、20mMのTris塩酸、pH7.8、1mMのNa2EDTA)中で、かかる膜を室温で30分間洗浄し、新しい1×SET中で、オリゴヌクレオチドプローブ用にTm−10Cで30分間洗浄する。ここでTmとは融解温度のことである。その後、ハイブリダイゼーションシグナルを検出するため、かかる膜をオートラジオグラフ用フィルムに曝露させる。
【0047】
検出可能なプローブとハイブリダイズする、ゲノムDNA又はcDNAなどの核酸の同定に使用するハイブリダイゼーションストリンジェンシーの条件を変えると、該プローブに対して異なる相同性を有する核酸の同定及び単離が可能になる。該プローブの融解温度よりも低い温度で、いろいろと温度を変えてハイブリダイゼーションを行うことによって、ストリンジェンシーを変えてもよい。該プローブの融解温度は、下記の式を利用して計算してもよい。
【0048】
長さにして14〜70個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドプローブの場合、摂氏での融解温度(Tm)は、下記の式を利用して計算してもよい。
Tm=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(フラクションG+C)−(600/N)、式中、Nはオリゴヌクレオチドの長さ。
【0049】
ホルムアミドを含む溶液中でハイブリダイゼーションを行う場合、以下の方程式を用いて融解温度を計算してもよい。Tm=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(フラクションG+C)−(0.63%のホルムアミド)−(600/N)、式中、Nはプローブの長さ。
【0050】
6×SSC、5×Denhardt's試薬、0.5%のSDS、0.1mg/mlの変性分画サケ精子DNA、又は6×SSC、5×Denhardt's試薬、0.5%のSDS、0.1mg/mlの変性分画サケ精子DNA、50%のホルムアミド中で、プレハイブリダイゼーションをおこなってもよい。SSC及びDenhardt's溶液の組成については、上記Sambrook et al.中に列挙されている。上に列挙したハイブリダイゼーション溶液に検出可能なプローブを添加することにより、ハイブリダイゼーションを行う。該プローブが二本鎖DNAを含む場合には、温度を上げながらインキュベーションを行い、次いで急激に冷却することによりかかるDNAを変性させ、その後でハイブリダイゼーション溶液に添加する。また、二次構造の形成若しくはオリゴマー化を皆無にするため又は減らすために、一本鎖プローブを同様に変性させることが望ましい場合もある。フィルターを充分な時間ハイブリダイゼーション溶液と接触させて、相補配列又は相同配列を内包するcDNA又はゲノムDNAと該プローブがハイブリダイズできるようにする。長さにして200以上のヌクレオチドからなるプローブについては、Tmよりも15〜25℃低い温度でハイブリダイゼーションを行ってもよい。オリゴヌクレオチドプローブなど、それよりも短いプローブについては、Tmよりも5〜10℃低い温度でハイブリダイゼーションを行ってもよい。短いプローブのハイブリダイゼーションは、6×SSC中で行うのが好ましい。長いプローブのハイブリダイゼーションは、50%のホルムアミドを含む溶液中で行うのが好ましい。これまで述べたハイブリダイゼーションはすべて、高ストリンジェンシー条件下で行われるハイブリダイゼーションの例と考えられている。
【0051】
ハイブリダイゼーションに続いて、2×SSC、0.1%のSDS中で少なくとも15分間、目的のストリンジェンシーに応じて室温又はそれよりも高い温度で、フィルターを洗浄する。その後フィルターを0.1×SSC、0.5%のSDSで、30分〜1時間、(再び)室温で洗浄する。プローブとハイブリダイズした核酸を、オートラジオグラフィー又は他の従来の方法で同定する。
【0052】
プローブ配列との相同性が低下している核酸を同定する際には、上記手順を修正してもよい。例えば、検出可能なプローブとの相同性が低下している核酸を得るためには、低ストリンジェンシー条件を用いてもよい。例えば、Na+の濃度が約1Mのハイブリダイゼーション緩衝液において、ハイブリダイゼーション温度を、68℃から42℃まで、5℃ずつ下げていってもよい。ハイブリダイゼーション後、フィルターを2×SSC、0.5%のSDSで、ハイブリダイゼーション温度で洗浄してもよい。これらの条件は、50℃を越える温度では「中程度のストリンジェンシー」条件で、50℃以下の温度では「低ストリンジェンシー」条件であると考えられている。「中程度のストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例として、上記ハイブリダイゼーションを55℃で行った場合が挙げられる。「低ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例として、上記ハイブリダイゼーションを45℃で行った場合が挙げられる。
【0053】
あるいは、ホルムアミドを含む、例えば6×SSCなどの緩衝液中で、42℃でハイブリダイゼーションを行ってもよい。この場合、プローブとの相同性が低下しているクローンを同定するために、ハイブリダイゼーション緩衝液中のホルムアミドの濃度を、50%から0%へ、5%ずつ下げてもよい。ハイブリダイゼーション後、フィルターを6×SSC、0.5%のSDSで、50℃で洗浄してもよい。これらの条件は、ホルムアミドが25%を越える場合には「中程度のストリンジェンシー」条件で、25%以下の場合には「低ストリンジェンシー」条件であると考えられている。「中程度のストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例として、上記ハイブリダイゼーションを30%のホルムアミドで行った場合が挙げられる。「低ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例として、上記ハイブリダイゼーションを10%のホルムアミドで行った場合が挙げられる。
【0054】
プローブとハイブリダイズした核酸を、オートラジオグラフィー又は他の従来の方法で同定する。
【0055】
例えば、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の配列、上記配列の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400若しくは500個の塩基を連続状態で含む断片、及びそれらの相補配列からなる群から選択した核酸配列に対して、少なくとも97%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも70%の相同性を示す配列を有する核酸を単離するのに、上記方法を用いてもよい。デフォルトパラメータを用いたBLASTNのバージョン2.0で相同性を測定してもよい。例えば、相同的なポリヌクレオチドは、ここに記載したコード配列のいずれかに対して自然に発生したアレル変異体であるコード配列を有していてもよい。そうしたアレル変異体には、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41、又はその相補配列の核酸と比較して、1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、付加が生じていてもよい。
【0056】
また、デフォルトパラメータを用いたBLASTPのバージョン2.2.2アルゴリズムで測定した際に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかの配列を有するポリペプチド、又は、上記配列の、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片を有するポリペプチドに対して、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、又は少なくとも70%の相同性を示すポリペプチドをコードする核酸を単離するのに、上記方法を用いてもよい。
【0057】
本発明の別の態様は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかの配列を、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片を含む、単離又は精製を行ったポリペプチドである。上述のとおり、ポリペプチドをコードする核酸をベクターに挿入し、その際に、該コードされたポリペプチドを適切な宿主細胞内で発現させることができる配列に、コード配列が操作可能な状態で連結されるようにすることにより、該ポリペプチドを得てもよい。例えば、かかる発現ベクターは、プロモーター、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、及び転写ターミネーターを含んでいてもよい。かかるベクターは、発現レベルを調節する適切な配列、複製起点、及び選択マーカーも含んでいてもよい。
【0058】
細菌内でポリペプチド又はその断片を発現させる適切なプロモーターには、大腸菌lac又はtrpプロモーター、lacIプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、gptプロモーター、ラムダPRプロモーター、ラムダPLプロモーター、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)などの解糖酵素をコードするオペロン由来のプロモーター、及び酸ホスファターゼプロモーターなどがある。真菌プロモーターとしては、α因子プロモーターが挙げられる。真核生物のプロモーターとしては、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、熱ショックプロモーター、初期及び後期SV40プロモーター、レトロウィルス由来のLTR、及びマウスメタロチオネイン−Iプロモーターが挙げられる。原核細胞又は真核細胞内で遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーター及びそれらのウィルスを用いてもよい。
【0059】
哺乳類の発現ベクターは、複製起点、必要とするすべてのリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与体部位及び受容体部位、転写終結配列、及び5’フランキング非転写配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、SV40スプライス部位及びポリアデニル化部位由来のDNA配列を用いて、必要な非転写遺伝要素を提供している場合がある。
【0060】
真核細胞内でポリペプチド又はその断片を発現させるベクターは、発現レベルを高めるエンハンサーも含んでいてもよい。エンハンサーはDNAのシス作用性因子で、通常は約10〜約300bpの長さをもち、プロモーターに作用してその転写を増大させる。例として、複製起点の後部側、bp100〜270にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後部側にあるポリオーマエンハンサー、及びアデノウィルスエンハンサーが挙げられる。
【0061】
また、かかる発現ベクターは、ベクターを含む宿主細胞を選択できるように、選択マーカー遺伝子を1つ以上含んでいることが好ましい。使用してもよい選択マーカーの例としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする遺伝子、又は真核細胞培養物にネオマイシン耐性を与える遺伝子、大腸菌においてテトラサイクリン又はアンピシリン耐性を与える遺伝子、及びS. cerevisiaeTRP1遺伝子が挙げられる。いくつかの実施形態においては、翻訳したポリペプチド又はその断片の分泌を誘発できるリーダー配列を用いて、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチドを、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片をコードする核酸が、適切な相に集められる。状況に応じて、かかる核酸は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片のいずれかと、安定性の増大、精製や検出の簡単さといった望ましい性質を授けるN末端同定ペプチドなどの非相同ペプチド又はポリペプチドとを融合させた融合ポリペプチドをコードすることができる。
【0062】
各種の手順により、適切なDNA配列をベクターに挿入してもよい。一般に、DNA配列がベクター中の目的の場所に連結されるのは、挿入物及びベクターが適切な制限エンドヌクレアーゼで分解された後である。あるいは、PCRによって、適切な制限酵素部位のDNA配列中への工学的処理を行うこともできる。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley 503 Sons, Inc. 1997及びSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989には、各種クローニング技術が開示されている。かかる手順及びその他の手順は、当業者であればその知識の範囲に入っていると思われる。
【0063】
ベクターの形態は、例えばプラスミドでも、ウィルス粒子でも、又はファージでもよい。その他のベクターとしては、染色体DNA配列、非染色体DNA配列及び合成DNA配列、ウィルス、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウィルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ワクシニア、アデノウィルス、鶏痘ウィルス、及び仮性狂犬病ウィルスなどのウィルスDNAが挙げられる。宿主である原核生物及び真核生物に用いる各種クローニングベクター及び発現ベクターは、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Edition. Cold Spring Harbor, N. Y., (1989) に記載されている。
【0064】
使用してもよい特定の細菌ベクターとしては、周知のクローニングベクターであるpBR322(ATCC37017)、pKK223-3(スウェーデン国、ウプサラ、Pharmacia Fine Chemicals社製)、GEM1(米国、ウィスコンシン州、マジソン、Promega Biotec社製)、pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen社製)、pD10、psiX174 pBlurscript II KS、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Staratagene社製)、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia社製)、pKK232-8及びpCM7の遺伝因子を含む市販品のプラスミドが挙げられる。特定の真核ベクターとしては、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene社製)、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVL(Pharmacia社製)が挙げられる。しかし、宿主細胞内で複製可能であり、かつ安定しているものであれば、その他のどのようなベクターを用いてもよい。
【0065】
宿主細胞については、原核細胞又は真核細胞など当業者が精通しているものであれば、どのような宿主細胞を用いてもよい。適切な宿主の代表的な例として記載してよいものとしては、大腸菌、Streptomyces、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、及びPseudomonas属、Streptomyces属、Staphylococcus属に含まれる多様な種などの細菌細胞、酵母などの真菌細胞、ドロソフィラS2又はスポドプテラSf9などの昆虫細胞、CHO、COS又はBowesメラノーマなどの動物細胞、及びアデノウィルスが挙げられる。当業者であれば、適切な宿主を選択できる。
【0066】
かかるベクターの宿主細胞への導入に際しては、エレクトロポレーションによる形質転換、トランスフェクション、トランスダクション、ウィルス感染、遺伝子銃、又はTiを介した遺伝子導入をはじめとするさまざまな技法のどれを用いてもよい。それが適切な場合であれば、工学的処理を行った宿主細胞を、プロモーターの活性化、形質転換体の選択、又は本発明の遺伝子の増幅に適するように、従来の栄養培地を改変した培地で培養することができる。次に述べる適切な宿主株の形質転換及び宿主株の適切な細胞密度への増殖には、適切な手段(例えば、温度変化又は化学的誘導)で選択プロモーターを誘導してもよく、目的のポリペプチド又はその断片が生成されるように、細胞の培養期間を延長してもよい。
【0067】
細胞を遠心分離によって回収し、物理的又は化学的方法によって破壊し、結果として生じた粗抽出物をさらなる精製のために保有しておくのが一般的である。タンパク質の発現に使用する微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的な破壊、又は細胞溶解剤など従来のどの方法で破壊してもよい。これらの方法は、当業者に周知である。発現したポリペプチド又はその断片を、組換え細胞培養物から回収し精製することができる。その際に用いる方法には、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーなどがある。必要に応じて、ポリペプチドの形状を完成させる際にタンパク質の再折りたたみ工程を使用することができる。望ましい場合は、最終的な精製工程で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用することができる。組換えタンパク質を発現させるため、さまざまな哺乳類細胞培養システムも使用可能である。哺乳類の発現系としては、サル腎臓線維芽細胞のCOS−7株(Cell, 23: 175 (1981)にGluzmanによる記載あり)、及びC127、3T3、CHO、HeLa及びBHK細胞株など、適合性ベクター由来のタンパク質を発現させられるその他の細胞株が例示できる。
【0068】
宿主細胞内の構造物を従来の手法で用いて、組換え型配列にコードされる遺伝子産物を生成することができる。組換え体の生成手順で使用した宿主に応じて、ベクターを含む宿主細胞が生成したポリペプチドは、グリコシル化されていてもよく、グリコシル化されていなくてもよい。本発明のポリペプチドは最初のメチオニンアミノ酸残基を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0069】
あるいは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片を、従来のペプチド合成機での合成により生成することができる。他の実施形態においては、ポリヌクレオチドの断片又は部分を使用して、対応する完全長ポリペプチドをペプチド合成によって生成してもよい。したがって、完全長ポリペプチドを生成するための中間物質として、かかる断片を使用してもよい。
【0070】
ポリペプチド又はその断片をコードする核酸に操作可能な状態で連結されたプロモーターを含むDNAコンストラクトから転写されたmRNAを用いて、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片を生成する際には、無細胞翻訳系も使用することができる。いくつかの実施形態においては、インビトロでの転写反応を行う前に、かかるDNAコンストラクトを線状化してもよい。次いで、転写されたmRNAを、ウサギの網状赤血球抽出物などの適切な無細胞翻訳抽出物でインキュベーションして、目的のポリペプチド又はその断片を生成する。本発明はまた、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片の変異体に関する。「変異体」という語には、これらのポリペプチドの誘導体又は類似体が含まれる。特に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド由来のアミノ酸配列に生じる1つ以上の置換、付加、欠失、融合及び切断が変異体間の相違点となる場合がある。これらはあらゆる組み合わせで生じている場合がある。
【0071】
かかる変異体は、自然に生じる場合もあれば、インビトロで作製される場合もある。特に、特定部位の突然変異誘発、ランダムな化学的突然変異誘発、エキソヌクレアーゼIIIの欠失などの遺伝子組換え技術、及び標準的なクローニング技術を用いてかかる変異体を作製してもよい。あるいは、化学合成又は化学修飾により、かかる変異体、断片、類似体、又は誘導体を作製してもよい。他の変異体作製方法も、当業者にはよく知られている。そうした方法のなかには、天然の隔離集団から得た核酸配列を修飾して、自らの産業上又は実験上の応用価値を高めるような性質をもつポリペプチドをコードする核酸を作製する方法が含まれる。そうした手順においては、天然の隔離集団から得た配列との間でヌクレオチドの相違点を1つ以上有している大量の変異体配列を作製し、その性質決定を行う。これらのヌクレオチドの相違点により、天然の隔離集団由来の核酸がコードするポリペプチドでアミノ酸の変化が生じることが好ましい。例えば、変異性PCRを用いて変異体を作製してもよい。変異性PCRでは、PCR産物の全長に沿って高い割合で点変異が得られるように、DNAポリメラーゼの信頼度が低い条件でDNA増幅を行う。変異性PCRについては、Leung, D. W., et al., Technique, 1: 11-15 (1989)及びCaldwell, R. C. & Joyce G. F., PCR Method Applic., 2: 28-33 (1992)に記載されている。また、特定部位の突然変異誘発を使って、目的とするクローン化DNAセグメント内に部位特異的な突然変異を発生させ、変異体を作製してもよい。オリゴヌクレオチドの突然変異誘発については、Reidhaar-Orson, J. F. & Sauer, R. T., et al., Science, 241: 53-57 (1988) に記載されている。配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドの変異体は、(i)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドの、1つ以上のアミノ酸残基が、保存又は非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)で置換され、かかる置換されたアミノ酸残基が遺伝子コードにコードされている場合もあれば、コードされていない場合もある変異体であってもよい。
【0072】
同類置換とは、ポリペプチド中の所定のアミノ酸を、同様の特徴をもつ別のアミノ酸で置換することである。同類置換として一般的に見うけられるのは、次のような置換である:Ala、Val、Leu及びIleなどの脂肪族アミノ酸を別の脂肪族アミノ酸で置換する;SerをThrで置換する、またはその逆;Asp又はGluなどの酸性残基を別の酸性残基で置換する;Asn又はGlnなどのアミド基を有する残基を、アミド基を有する別の残基で置換する;Lys又はArgなどの塩基性残基を、別の塩基性残基で置換する;及びPhe又はTyrなどの芳香族残基を、別の芳香族残基で置換する。
【0073】
他の変異体としては、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドの、1つ以上のアミノ酸残基に置換基が含まれるものがある。
【0074】
その他の変異体としては、かかるポリペプチドが、ポリペプチドの半減期を延長する化合物(例えば、ポリエチレングリコール)などの他の化合物と会合しているものがある。
【0075】
さらに他の変異体としては、追加されたアミノ酸がポリペプチドと融合しているもの、例えば、リーダー配列、分泌配列、プロタンパク質配列又はポリペプチドの精製、濃縮若しくは安定化を促進する配列がある。いくつかの実施例においては、かかる断片、誘導体及び類似体は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドと同様の生物学的機能又は活性を保有している。他の実施形態においては、かかる断片、誘導体又は類似体には、かかる断片、誘導体又は類似体から酵素によって全体的又は部分的に切り離すことができるポリペプチドの精製、濃縮、検出、安定化又は分泌を促進する融合異種配列が含まれる。
【0076】
本発明の別の態様は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は95%以上の相同性を有するポリペプチド又はその断片である。相同性の測定には、デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2でなどのプログラムを用いてもよい。このプログラムは、比較対象のポリペプチド又は断片を整列させ、比較対象物間のアミノ酸の相同性又は類似性の程度を測定する。当然のことながら、アミノ酸「相同性」には上述した同類置換も含まれる。
【0077】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に対して相同性を有するポリペプチド又は断片を、それらをコードする核酸を上記の技法で単離することによって得てもよい。
【0078】
あるいは、生化学的濃縮手順又は精製手順により、相同的なポリペプチド又は断片を得てもよい。相同的と思われるポリペプチド又は断片の配列を、タンパク質分解、ゲル電気泳動、及び/又はマイクロシーケンシングによって測定してもよい。デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2などのプログラムを用いて、相同的と思われるポリペプチド又は断片の配列を、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片と比較することができる。
【0079】
本発明の、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片、誘導体又は類似体を、さまざまな応用に用いてもよい。例えば、ポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体を、生化学反応の生体触媒として用いてもよい。特に、ポリケチド又はその下部構造の合成若しくは修飾を誘発するために、AYTTファミリー、すなわち、配列番号4及び26のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体;ACPIファミリー、すなわち、配列番号6及び28のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体;AOTFファミリー、すなわち、配列番号8及び30のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体;PKUNファミリー、すなわち、配列番号10、12、14、32、34及び36のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体;AYOAファミリー、すなわち、配列番号16及び38のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体を、どのようにでも組み合わせて、インビトロ又はインビボで用いてもよい。宿主により内生的に生成され、成長培地に補充された化合物、又は、精製若しくは濃縮を行ったOXRYポリペプチドの無細胞調製物に添加された化合物を修飾する酸化還元反応に触媒作用を及ぼすため、OXRYファミリー、すなわち、配列番号18のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体をインビトロ又はインビボで用いてもよい。宿主により内生的に生成され、成長培地に補充された化合物、又は、精製若しくは濃縮を行ったMTFAポリペプチドの無細胞調製物に添加された化合物を修飾するメチル化反応に触媒作用を及ぼすため、MTFAファミリー、すなわち、配列番号20のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体をインビトロ又はインビボで用いてもよい。宿主により内生的に生成され、成長培地に補充された化合物、又は、精製若しくは濃縮を行ったOXRCポリペプチドの無細胞調製物に添加された化合物を修飾する酸化反応に触媒作用を及ぼすため、OXRCファミリー、すなわち、配列番号23及び40のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体をインビトロ又はインビボで用いてもよい。アシル運搬体タンパク質若しくはドメイン、チオール化タンパク質若しくはドメイン、又はペプチジル運搬体タンパク質若しくはドメインのホスホパンテテイニル化反応に触媒作用を及ぼすため、PPTFファミリー、すなわち、配列番号42のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体をインビトロ又はインビボで用いてもよい。
【0080】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片、誘導体又は類似体を用いて、ポリペプチド、断片、誘導体又は類似体に特異的に結合する抗体を作製してもよい。配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及び23から作製される抗体を用いて、生体試料中にStreptomyces platensis subsp. rosaceus又は関連微生物が含まれているかどうかを測定してもよい。配列番号26、28、30、32、34、36、38、40及び42から作製される抗体を用いて、生体試料中にStreptomyces amphibiosporus又は関連微生物が含まれているかどうかを測定してもよい。そうした手順においては、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれか、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に特異的に結合できる抗体と、生体試料とを接触させる。その後、かかる生体試料の抗体結合能力を測定する。例えば、蛍光剤、酵素標識又は放射性同位元素などの検出可能な標識を用いて抗体に標識を施すことによって、結合を測定してもよい。あるいは、検出可能な標識を施された二次抗体を用いて、抗体の試料への結合を測定してもよい。試料中のStreptomyces platensis subsp. rosaceus若しくはStreptomyces amphibiosporus又は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42に関連するポリペプチドの有無を検出するために使用してもよいさまざまな測定方法のプロトコルは、当業者によく知られている。特定の測定方法としては、ELISA法、サンドイッチ法、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロットがある。あるいは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42から作製した抗体を用いて、生体試料中に、ポリケチド類、又は自然状態で部分的にポリケチドの特徴を有する他の類の天然物の生合成に関与する場合もある、関連ポリケチドが含まれているかを測定してもよい。配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に対して作製されたポリクローナル抗体は、かかるポリペプチドを動物に直接注入すること、又はかかるポリペプチドを動物に、好ましくは非ヒト動物に投与することにより、得ることが可能である。そのようにして得た抗体は、その後、ポリペプチド自体に結合する。このように、ポリペプチドの断片のみをコードする配列でさえ、未加工のポリペプチド全体に結合すると思われる抗体の作製に使用できる。その後かかる抗体を使用して、該ポリペプチドを発現する細胞から該ポリペプチドを単離することができる。
【0081】
モノクローナル抗体の調製に使用する技術としては、連続細胞系培養物から作製される抗体を提供できるものであれば、どのようなものでも使用できる。例としては、ハイブリドーマ法(Kholer and Milstein, 1975, Nature, 256: 495-497)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al., 1983, Immunology Today 4: 72)、及びEBVハイブリドーマ法(Cole, et al., 1985, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)が挙げられる。
【0082】
一本鎖抗体の製造法(米国特許第4,946,778号)に記載の方法を適用して、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に対する一本鎖抗体を作製することができる。あるいは、トランスジェニックマウスを使用して、これらのポリペプチド又はその断片に対するヒト化抗体を発現させてもよい。
【0083】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に対して作製された抗体を、生物又はその無細胞抽出物を含む試料から類似したポリペプチドをスクリーニングする際に使用してもよい。そうした方法においては、試料のポリペプチドを抗体と接触させ、かかる抗体に特異的に結合するポリペプチドを検出する。抗体結合の検出には、上記のいずれの方法を用いてもよい。そうしたスクリーニング法の1つが、“Methods for measuring Cellulase Activities”、Methods in Enzymology, Vol 160, pp. 87-116に記載されている。
【0084】
ここで使用する「配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コード」という語には、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のヌクレオチド配列、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の断片、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41に相同的なヌクレオチド配列、又は配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の断片に相同的なヌクレオチド配列、及び前記全配列の相補配列が含まれる。かかる断片としては、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の部分であって、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400若しくは500個のヌクレオチドを連続状態で含むものが挙げられる。該断片は新規断片であることが好ましい。配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の相同配列及び断片とは、これらの配列に対して、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、75%又は70%の相同性を有する配列のことである。相同性の測定は、デフォルトパラメータを用いたBLASTN及びTBLASTXをはじめとする、ここに記載したコンピュータプログラム及びパラメータのいずれを用いて行ってもよい。相同配列には、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コード中のチミンがウリジンに置換されているRNA配列も含まれる。相同配列は、ここに記載したどの手順を用いて得てもよく、また、シーケンシングエラー訂正の結果として生じる場合もある。当然のことながら、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コードは、G、A、T及びCがデオキシリボ核酸(DNA)配列のグアニン、アデニン、チミン及びシトシン塩基をそれぞれ表し、G、A、U及びCがリボ核酸(RNA)配列のグアニン、アデニン、ウラシル及びシトシン塩基をそれぞれ表す、従来の1文字表記形式(Stryer, Biochemistry, 3rd edition, W. H. Freeman & Co., New Yorkの裏表紙の見返し部分を参照のこと)、又は、配列中のヌクレオチドの同一性を記録する他のどの形式でも表すことができる。
【0085】
「配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドコード」という語には、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のcDNAにコードされる配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド配列、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドに相同的なポリペプチド配列、又は前記配列の断片が含まれる。相同的なポリペプチド配列とは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド配列のいずれかに対して、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%又は70%の相同性を有するポリペプチド配列のことである。ポリペプチド配列の相同性の測定は、デフォルトパラメータ又はユーザー指定パラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2をはじめとする、ここに記載したコンピュータプログラム及びパラメータのいずれを用いて行ってもよい。相同配列は、ここに記載したどの手順を用いて得てもよく、また、シーケンシングエラー訂正の結果として生じる場合もある。ポリペプチド断片は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドの、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含んでいる。該断片は新規断片であることが好ましい。当然のことながら、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のポリペプチドコードは、従来の1文字表記形式又は3文字表記形式(Stryer, Biochemistry, 3rd edition, W. H. Freeman & Co., New Yorkの裏表紙の見返し部分を参照のこと)、又は、配列中のポリペプチドの同一性に関する他のどの形式でも表すことができる。
【0086】
当業者であれば容易にわかることだが、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コード、及び配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドコードは、コンピュータによる読み取り及びアクセスが可能ないかなる媒体においても、保存、記録、及び操作が可能である。ここで使用する「記録した」及び「保存した」という語は、コンピュータ媒体に情報を保存する処理のことである。熟練者であれば、コンピュータ読み取り可能な媒体に情報を記録する、現時点で周知の方法を容易に適用して、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の1つ以上の核酸コード、及び配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42の1つ以上のポリペプチドコードを含む製品を作製することができる。
【0087】
本発明の別の実施形態は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コード、及び配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドコードからなる群より選択される配列を保存したコンピュータ読み取り可能な媒体である。本発明の別の態様は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の1つ以上の核酸コード、好ましくは、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の、少なくとも2、5、10、15又は20個の核酸コードを保存したコンピュータ読み取り可能な媒体である。本発明の別の態様は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42の1つ以上のポリペプチドコード、好ましくは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42の、少なくとも2、5、10、15又は20個のポリペプチドコードを保存したコンピュータ読み取り可能な媒体である。
【0088】
本発明の別の実施形態は、処理装置と、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コード、及び配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドコードからなる群より選択される参照配列が保存されているデータ保存装置とを含むコンピュータシステムである。
【0089】
コンピュータ読み取り可能な媒体としては、磁気的に読み取りが可能な媒体、光学的に読み取りが可能な媒体、電子的に読み取りが可能な媒体、及び磁気/光学的媒体が挙げられる。例えば、該コンピュータ読み取り可能な媒体が、ハードディスク、フレキシブルディスク、磁気テープ、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、又はリードオンリーメモリ(ROM)、及び当業者に周知の他の種類の媒体であってもよい。
【0090】
これより本発明を下記の実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明がそれら実施例に制限されるものではないことは、承知されてしかるべきである。
【実施例1】
【0091】
ドリゴシン生合成遺伝子クラスターの同定及びシーケンシング
農業研究サービスカルチャーコレクション(61604、イリノイ州、ピオリア、ユニヴァーシティーストリート、1815Nに所在のNational Center for Agricultural Utilization Research)より、微生物Streptomyces platensis subsp. rosaceus AB1981F−75(NRRL18993)株を入手し、微生物学の標準的技法(上記Kieser et al.)を用いて培養した。この生物をオートミール寒天培地上にて数日間28℃で増殖させた。高分子量のゲノムDNAを単離するため、増殖させたばかりの、ほぼ密集状態になっている3つの100mmペトリ皿の細胞集団を使用した。かかる細胞集団をプラスチック製のスパチュラでそっとすくい取って回収した。STE緩衝液(75mMのNaCl、20mMのTris−HCl、pH8.0、25mMのEDTA)で繰返し洗浄し、残った寒天培地を除去した。確立したプロトコル(上記Kieser et al.)により、高分子量のDNAを単離し、FIGE MAPPERTM power supply(BIORAD社製)の事前設定プログラムNo.6を用いたフィールドインバージョンゲル電気泳動(FIGE)により、その完全性を実証した。この高分子量ゲノムDNAは、大型断片のクラスター同定ライブラリー(CIL)、すなわち、大型挿入物のライブラリーだけではなく、小型断片のゲノムサンプリングライブラリー(GSL)、すなわち、小型挿入物のライブラリーの調製にも役に立つ。これらのライブラリーはともに、ランダムに作製されたS. platensisのゲノムDNA断片を含んでおり、そのため、この生物の全ゲノムを代表するものとなっている。
【0092】
S. platensisのGSLライブラリー構築のため、ゲノムDNAを超音波でランダムに切断した。サイズ範囲が1.5〜3kbのDNA断片をアガロースゲル上で分画し、分子生物学の標準的な技法(上記Sambrook et al.)を用いて単離した。T4 DNAポリメラーゼ(Roche社製)を供給業者の記載のとおりに用いて、得られたDNA断片の末端を修復した。この酵素は、その後のクローン化処理により適切なベクターにすることが可能な、平滑末端を有するDNA断片を作製する。クローン化DNA断片の転写を妨げるpBluescriptSK+ベクター(Stratagene社製)の誘導体に、修復したDNA断片をサブクローンする。このベクターを選択したのは、T3、T7、SK及びKS(Stratagene社製)などのユニバーサルシーケンシングプライマーに対応する配列に囲まれた便利なポリリンカー領域を含んでいるためである。平滑末端DNA断片の挿入が可能になることから、ポリリンカー領域で見られる固有のEcoRV制限部位を使用した。挿入物の結合、宿主である大腸菌DH10B(Invitrogen社製)を形質転換させるための結合産物の使用、及び組換え型クローンの選択は、文献(上記Sambrook et al.)記載のとおりに行った。S. platensisのゲノムDNA断片を含むプラスミドDNAをアルカリ溶解法(上記Sambrook et al.)で抽出して、サイズが1.5〜3kbの挿入物をアガロースゲル電気泳動で確認した。この手順を用いて、研究対象の微生物の全ゲノムをカバーする小型ランダムゲノムDNA断片のライブラリーを構築している。作製可能な個々のクローン数は無限だが、少数だけをさらに分析してかかる微生物のゲノムの試料を採取している。
【0093】
SuperCos-1コスミドベクター(StratageneTM社製)を用いて、S. platensisの高分子量ゲノムDNAからCILライブラリーを構築した。製造者の指示にしたがい、コスミドアームを調製した。製造者から供給された緩衝液中で、DNA100μgあたり約1単位のSau3AI制限酵素(New England Biolabs社製)を使用して、高分子量DNAを37℃で部分的に分解した。この酵素は、当初のDNA未分解時のサイズのものから、ゲノム中の酵素DNA制限部位の頻度及びDNA分解の程度によって長さが異なる短い断片まで、DNAのランダムな断片を作製する。さまざまな時点で、分解物の部分標本を新しい微量遠心チューブに移し、最終濃度で10mMのEDTA及び0.1%のSDSを添加して、かかる酵素を失活させた。目的とするサイズ範囲(30〜50kb)の重要なDNA断片を含むことがFIGE分析によって判明した部分標本をプールし、フェノール/クロロホルム(1:1 vol:vol)で抽出し、エタノール沈殿によりペレット化した。製造者の説明書にしたがってアルカリホスファターゼ(Roche社製)を用いて、Sau3AI DNA断片の5’末端を37℃で30分間脱リン酸化した。かかるホスファターゼを70℃で10分間熱失活させ、フェノール/クロロホルム(1:1 vol:vol)でDNAを抽出し、エタノール沈殿によりペレット化し、滅菌水に再懸濁した。脱リン酸化したSau3AI DNA断片を、モルにして約4倍を越えるSuperCos-1コスミドアームを含む反応において、室温で一晩SuperCos-1コスミドアームに結合させた。GigapackR III XL パッケージング抽出物(StratageneTM社製)を製造者の説明書にしたがって使用し、結合産物のパッケージングを行った。CILライブラリーは、大腸菌DH10B(Invitrogen社製)中の864個の単離したコスミドクローンで構成されていた。これらのクローンを選び、LB培養液(水1リットルあたり:10.0gのNaCl、10.0gのトリプトン、5.0gの酵母エキス)を入れた9枚の96ウェルマイクロタイタープレートに移し、一晩増殖させた後、最終濃度で25%のグリセロールを含むように調節した。これらのマイクロタイタープレートを−80℃で保管し、CILライブラリー用グリセロールの備蓄品とした。二つ組のマイクロタイタープレートをナイロン膜上に下記のように並べた。マイクロタイター上で増殖した培養物を、ペレット化及び少量のLB培養液での再懸濁によって濃縮した。1グリッドあたり96ピンの3×3グリッドをナイロン膜に置いた。完全なCILライブラリーであるこれらの膜を、その後LB寒天上で層状とし、37℃で一晩インキュベーションし、コロニーが育つようにした。DNAを変性させるため、事前に0.5NのNaOH/1.5MのNaClに10分間浸しておいた濾紙上で、かかる膜を層状とし、その後、事前に0.5MのTris(pH8)/1.5MのNaClに10分間浸しておいた濾紙上に移して中和した。細胞の残骸をプラスチック製のスパチュラでそっとすくい取り、GS GENE LINKERTM UV Chamber(BIORAD社製)を使用したUV照射により、DNAを膜上に交差結合させた。放射線菌ゲノムの平均サイズが8Mbであること、及びCILライブラリー中のゲノム挿入物の平均サイズが35kbであることを考えると、このライブラリーは、かかる微生物の全ゲノムのおよそ4倍をカバーしていることになる。
【0094】
クローン処理したゲノムDNA挿入物の配列決定により、GSLライブラリーを分析した。フォワード(F)プライマーと称されるユニバーサルプライマーのKS又はT7を使用して標識DNAの重合を開始した。TF、BDTv2.0シーケンシングキットを供給業者(Applied Biosystems社)の指示のとおりに用いて、プライミング部位から少なくとも700bpを規定どおりに伸長させることができる。3700 ABI capillary electrophoresis DNA sequencer(Applied Biosystems社製)を用いて、小型ゲノムDNA断片(ゲノム配列タグ、GST)の配列分析を行った。読み込むDNA配列の長さは平均で〜700bpだった。各種タンパク質配列データベースとの配列相同性を比較して、得られたGSTをさらに分析した。得られたGSTのDNA配列をアミノ酸配列に翻訳し、文献(上記Altschul et al.)記載のアルゴリズムを用いて、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の非冗長タンパク質データベース及び占有的なエコピア天然産物生合成遺伝子データベースであるDecipherTMと比較した。データベースに存在する機能が明らかな既知のタンパク質との配列類似性により、翻訳されたGSTにコードされる部分タンパク質の機能を予測することが可能となる。
【0095】
合計で1536個のS. platensisのGSTを作製し、Blastアルゴリズムを用いた配列比較によって分析した(上記Altschul et al.)。配列のアラインメントが少なくともe−5というE値を示すと、その配列は有意な相同性を有していると見なされ、さらに評価を加えるために保存された。目的の遺伝子との類似性を示すGSTをこの時点で選択して、目的の遺伝子を含むCILライブラリーからより大型のゲノムDNAセグメントを同定する際に用いることができる。ドリゴシン及びミグラスタチンはポリケチドであるため、I型PKS遺伝子の部分であることが明らかな数個のS. platensisのGSTを追求した。これらのI型PKSのGSTを用いて、本発明者らは実際にS. platensis内のI型PKS遺伝子座を同定した。しかし、PKSドメインの順序及びこのI型PKSのモジュール数は、ドリゴシン及びミグラスタチンの構造と矛盾するものであった(データは図示せず)。I型PKS遺伝子の部分であることが明らかなGSTの他にも、本発明者らはI型PKS遺伝子に何らかの関わりがあるGSTを同定している。後者をCILライブラリーのスクリーニング用プローブとして用いて、結果として生じたコスミドクローンの配列決定を行ったところ、ドリゴシン生合成遺伝子座であることが判明した例外的なPKS遺伝子クラスターを同定した。
【0096】
製造者により供給されたキナーゼ反応緩衝液中に5ピコモルのオリゴヌクレオチドと6.6ピコモルの[γ−P32]ATPを含む15μlの反応液において、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs社製)を使用し、ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドプローブをP32で放射能標識した。最終濃度が5mMになるようにEDTAを添加することにより、1時間後に37℃でキナーゼ反応を終了させた。積分器の機能を内蔵したモデル3ガイガーカウンター(テキサス州、スイートウォーター、Ludlum Measurements Inc.社製)を用いて、放射能標識したオリゴヌクレオチドプローブの特異的作用を評価した。85℃で10分間のインキュベーションに続いて氷中での急速冷却を行うことにより、放射能標識したオリゴヌクレオチドプローブを使用の直前に熱変性させた。
【0097】
ハイブリダイゼーションオーブンを低速振盪で使用し、プレハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、20mMのNaH2PO4、5×Denhardt's、0.4%のSDS、超音波処理及び変性処理済の0.1mg/mlのシャケ精子DNA)において、42℃で少なくとも2時間のインキュベーションを行うことにより、S. platensisCILライブラリー膜を前処理した。その後、1×106cpm/mlの放射能標識オリゴヌクレオチドプローブを含むハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、20mMのNaH2PO4、0.4%のSDS、超音波処理及び変性処理済の0.1mg/mlのシャケ精子DNA)にかかる膜を入れ、ハイブリダイゼーションオーブンを低速振盪で使用し、42℃で一晩のインキュベーションを行った。翌日、ハイブリダイゼーションオーブンを低速振盪で使用して、洗浄緩衝液(6×SSC、0.1%のSDS)でかかる膜を46℃、48℃及び50℃で、45分間ずつ洗浄した。その後、S. platensisCIL膜をX線フィルムに曝露し、陽性のコスミドクローンの視覚化及び同定を行った。陽性のクローンを同定し、アルカリ溶解法(上記Sambrook et al.)を使用して30mlの培養物からコスミドDNAを抽出し、ショットガンシーケンシング法(Fleischmann et al., Science, 269: 496-512)により、かかる挿入物の完全な配列決定を行った。
【0098】
Phred-PhrapTMアルゴリズム(米国、シアトル、ワシントン大学)を用いて、配列決定時に読み込んだ情報を組み立てて、コスミド挿入物の全DNA配列を再作製した。元のコスミドの末端に由来するプローブを用いてCILライブラリーのハイブリダイゼーションを繰り返すと、元のコスミド配列の両端にある配列情報を無限に拡張することができ、最終的には、目的の遺伝子クラスターを完全な形で得ることができる。ドリゴシンの構造は、それが10個のモジュールを含むモジュラー型I型ポリケチドシンターゼ(PKS)によって合成されたことを示唆している。I型PKSに間接的に関連するGSTに由来しているオリゴヌクレオチドプローブによって検出された3個のオーバーラップコスミドクローンの完全な配列決定を行い、ドリゴシン生合成遺伝子座を含む約54KbのDNAを得た(図1)。
【実施例2】
【0099】
ドリゴシンの生合成に関与する遺伝子及びタンパク質
ドリゴシン遺伝子座は11個のタンパク質をコードし、塩基対52,101の後ろから始まる1つの間隙以外は隣接しているDNAの約53,800の塩基対に及んでいる。ドリゴシン遺伝子座の各サイドで、DNA配列のうち15キロ塩基以上を分析した。これらの領域は一次代謝遺伝子を含むものである。ドリゴシン生合成遺伝子座のタンパク質(DORR ORF)を示す11個のオープンリーディングフレームの順序及び相対的位置を、図1に示す。図1の上部にある線は、キロ塩基対を単位とするスケールである。黒い線は配列決定において小さな隙間(<100bp)によって分断された2個のDNAcontigを示す。矢印はドリゴシン生合成遺伝子座の11個のオープンリーディングフレームを表す。
【0100】
このように、ドリゴシン生合成を制御する遺伝子の完全な遺伝子座を、2個のDNA隣接配列(配列番号1及び22)により形成した。ドリゴシン生合成遺伝子座内で見られるように、DNAcontig1(配列番号1)の52101塩基対が、DNAcontig2(配列番号22)の5’末端に隣接するように、隣接ヌクレオチド配列を調節した。配列番号1の隣接ヌクレオチド配列には、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20に列挙されている10個のオープンリーディングフレーム(ORF)が含まれている。DORR ORF1(配列番号2)は、contig1(配列番号1)の残基3720〜67(アンチセンス鎖)から引き出された配列番号3の核酸配列から推定した1217個のアミノ酸である。DORR ORF2(配列番号4)は、contig1(配列番号1)の残基4092〜5681(センス鎖)から引き出された配列番号5の核酸配列から推定した529個のアミノ酸である。DORR ORF3(配列番号6)は、contig1(配列番号1)の残基5767〜6018(センス鎖)から引き出された配列番号7の核酸配列から推定した83個のアミノ酸である。DORR ORF4(配列番号8)は、contig1(配列番号1)の残基6023〜7993(センス鎖)から引き出された配列番号9の核酸配列から推定した656個のアミノ酸である。DORR ORF5(配列番号10)は、contig1(配列番号1)の残基8009〜17587(センス鎖)から引き出された配列番号11の核酸配列から推定した3192個のアミノ酸である。DORR ORF6(配列番号12)は、contig1(配列番号1)の残基17634〜41714(センス鎖)から引き出された配列番号13の核酸配列から推定した8026個のアミノ酸である。DORR ORF7(配列番号14)は、contig1(配列番号1)の残基41772〜47633(センス鎖)から引き出された配列番号15の核酸配列から推定した1953個のアミノ酸である。DORR ORF8(配列番号16)は、contig1(配列番号1)の残基47635〜49890(センス鎖)から引き出された配列番号17の核酸配列から推定した751個のアミノ酸である。DORR ORF9(配列番号18)は、contig1(配列番号1)の残基49922〜50938(センス鎖)から引き出された配列番号19の核酸配列から推定した338個のアミノ酸である。DORR ORF10(配列番号20)は、contig1(配列番号1)の残基51234〜52079(センス鎖)から引き出された配列番号21の核酸配列から推定した281個のアミノ酸である。配列番号22の隣接ヌクレオチド配列(1700塩基対)には、DORR ORF11(配列番号23)が含まれている。DORR ORF11(配列番号23)は、予想されるポリペプチドのC末端を表す328個のアミノ酸であって、contig2(配列番号22)の残基163〜1149(センス鎖)から引き出された配列番号24の核酸配列から推定したものである。
【0101】
2つの寄託株、すなわち、ドリゴシンの部分的生合成遺伝子座のコスミドクローンをそれぞれ含む大腸菌DH10B(088CF)株及び大腸菌DH10B(088CX)株は、カナダ国、R3E 3R2、マニトバ州、ウィニペグ、アーリントンストリート 1015のカナダ国保険省微生物局、カナダ国際寄託局に、2001年2月27日に寄託され、寄託のアクセッション番号は、それぞれIDAC270201−3及び270201−4であった。寄託した大腸菌株をここでは「寄託株」と称する。
【0102】
かかる寄託株は、ドリゴシンの完全な遺伝子座を含んでいる。本書類中の配列に関する記載との間で齟齬が生じた場合は、寄託株に含まれるポリヌクレオチド配列及びそれらにコードされるあらゆるポリペプチドのアミノ酸配列が優先される(controlling)。
【0103】
かかる寄託株の寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて行われた。特許証が発行されると、寄託株は最終的なものとして、無制限又は無条件で公開される。寄託株は当業者の便宜のためだけに提供されるものであり、米国特許法第112条で要求されている実施可能要件を満たすために寄託が必要というわけではない。寄託株及びそれに由来する化合物の作製、使用又は販売には許諾が必要となる場合があり、かかる許諾が寄託により与えられることはない。
【0104】
ドリゴシン生合成遺伝子座における遺伝子の機能を同定するため、デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2アルゴリズムにより、DORR ORF1〜11(配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及び23)を、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の非冗長タンパク質データベース、及び微生物遺伝子、経路及び天然産物のデータベースであるDecipherTM(カナダ国、ケベック州、サンローラン、Ecopia BioSciences Inc.社への登録により利用可能)中の配列と比較した。
【0105】
このBlast分析によりGenBankで最もヒット数が多かったアクセッション番号を、対応するE値とともに表2に示す。E値は、観察されたアラインメントスコアと少なくとも同じアラインメントスコアをもつチャンスアラインメントの予測数に関連している。E値が0.00ということは、完全なホモログであることを示す。E値の計算は、Altschul et al. J. Mol. Biol., October 5; 215 (3) 403-10に記載のとおりに行い、その教示内容をここに参照として組み込んでおく。かかるE値は、相同だと考えるのが当然とされるほど充分な類似性を、2つの配列が示しているかどうかを確認する際に役に立つ。
【0106】
【表2】
【実施例3】
【0107】
ラクトイミドマイシン生合成遺伝子クラスターの同定及び配列決定
ミグラスタチンとラクトイミドマイシンの構造的類似性(図3)を考慮すると、それらの生合成遺伝子座の類似性は同等であると予想される。本発明者らは、所有のドリゴシン生合成遺伝子座を用いて、Streptomyces amphibiosporusATCC53964からのラクトイミドマイシン生合成遺伝子座の同定及び配列決定に着手した。実施例1で記載したゲノム試料採取方法をS. amphibiosporus由来のゲノムDNAに適用した。フォワードプライマーを使用して、全部で480個のGSLクローンの配列を決定し、Blastアルゴリズム(上記Altschul et al.)を用いた配列比較により分析を行い、ドリゴシン生合成遺伝子に関連する挿入物を含むクローンを同定した。かかるGSTクローンをいくつか同定し、それを使用して、S. amphibiosporusCILライブラリーからコスミドクローンを単離した。例えば、1つのオリゴヌクレオチドプローブが由来しているGSTクローン(挿入物のサイズは約2.5kb)は、明らかに、ドリゴシンORF7のホモログをコードしていたS. amphibiosporusゲノム由来の遺伝子の一部であった。このGSTを順方向に読みこんだものは、ドリゴシンシンターゼのモジュール10のDHのC末端部分の前にあるドリゴシンシンターゼのモジュール10のKRドメインのN末端部分に相当する、アミノ酸1112〜1354に対して少なくとも58%の相同性及び68%の類似性を有するポリペプチドをコードしている。このGSTを逆方向に読みこんだものは、ドリゴシンシンターゼのモジュール10の相互作用ドメインのN末端部分の前にあるドリゴシンシンターゼのモジュール10のKSドメインのC末端部分に相当する、アミノ酸545〜768に対して少なくとも54%の相同性及び64%の類似性を有するポリペプチドをコードしている。したがって、このGSTクローンの2.5kbの挿入物は、オープンリーディングフレームがクローニングベクターのT3プライマーと同じ向きになるような配向となっていた。オーバーラップコスミドクローンの配列決定により、ラクトイミドマイシン生合成遺伝子座を含むDNAを50Kb以上得た(図4)。
【実施例4】
【0108】
ラクトイミドマイシンの生合成に関与する遺伝子及びタンパク質
ラクトイミドマイシン遺伝子座は9個のタンパク質をコードし、1つの隣接DNA配列(配列番号25)に開示されているDNAの約50500の塩基対に及んでいる。ラクトイミドマイシン生合成遺伝子座のタンパク質(LACT ORF)を示す9個のオープンリーディングフレームの順序及び相対的位置を、図4に示す。図4の上部にある線は、キロ塩基対を単位とするスケールである。矢印はラクトイミドマイシン生合成遺伝子座の9個のオープンリーディングフレームを表す。
【0109】
したがって、LACT ORF1(配列番号26)は、配列番号25の残基1〜1698(センス鎖)から引き出された配列番号27の核酸配列から推定した565個のアミノ酸である。LACT ORF2(配列番号28)は、配列番号25の残基1908〜2162(センス鎖)から引き出された配列番号29の核酸配列から推定した84個のアミノ酸である。LACT ORF3(配列番号30)は、配列番号25の残基2166〜4136(センス鎖)から引き出された配列番号31の核酸配列から推定した656個のアミノ酸である。LACT ORF4(配列番号32)は、配列番号25の残基4152〜14462(センス鎖)から引き出された配列番号33の核酸配列から推定した3436個のアミノ酸である。LACT ORF5(配列番号34)は、配列番号25の残基14549〜39631(センス鎖)から引き出された配列番号35の核酸配列から推定した8360個のアミノ酸である。LACT ORF6(配列番号36)は、配列番号25の残基39628〜45924(センス鎖)から引き出された配列番号37の核酸配列から推定した2098個のアミノ酸である。LACT ORF7(配列番号38)は、配列番号25の残基45926〜48232(センス鎖)から引き出された配列番号39の核酸配列から推定した768個のアミノ酸である。LACT ORF8(配列番号40)は、配列番号25の残基48441〜49697(センス鎖)から引き出された配列番号41の核酸配列から推定した418個のアミノ酸である。LACT ORF9(配列番号42)は、配列番号25の残基50543〜49800(アンチセンス鎖)から引き出された配列番号43の核酸配列から推定した247個のアミノ酸である。ラクトイミドマイシン生合成遺伝子座における遺伝子の機能を同定するため、デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2アルゴリズムにより、LACT ORF1〜9(配列番号26、28、30、32、34、36、38、40及び42)を、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の非冗長タンパク質データベース、及び微生物遺伝子、経路及び天然産物のデータベースであるDecipherTM(カナダ国、ケベック州、サンローラン、Ecopia BioSciences Inc.社への登録により利用可能)中の配列と比較した。このBlast分析によりGenBankで最もヒット数が多かったアクセッション番号を、対応するE値とともに表3に示す。
【0110】
【表3】
【実施例5】
【0111】
ドリゴシン及びラクトイミドマイシンの生合成に関与する例外的な二成分PKS系
ドリゴシン遺伝子座は、KS、KR、ACP、及び例外的な配置の例外的なDHドメインを含有する3個のPKSをコードしている。この遺伝子座におけるかかる3個のPKSは、ドリゴシンの長さをもつポリケチド鎖の生成には充分である、合計10個のケトシンターゼ(KS)ドメインをコードしている。かかる3個のPKSにはI型PKSに典型的ないくつかの特徴を共有している。すなわち、シンターゼに多数の融合ドメインが含まれているのである。しかし、ドリゴシンPKSは、PKSに物理的に結合しているATドメインを含まないという点で、I型PKSと異なっている。その代わりに、別の成分によって、AT機能がトランスで提供されている。したがって、ドリゴシンPKS系は新規の二成分PKS系を示すものである。特定の作用機構又は生合成図式に限定されることなく、本発明のタンパク質は、ドリゴシンの生成について説明することができる。図2は、段階的に作用してポリケチド骨格を合成する10個のモジュールの性質を示している。図2においては、DORRアシル運搬体タンパク質ACPI(配列番号6)とDORRアミドトランスフェラーゼAOTF(配列番号8)とが、DORR遺伝子座の最初のPKS(配列番号10)に並進的に結合されている。ACPI(配列番号6)は、アミノ置換アシル基を移動させるタンパク質に対して、もっとも有意な類似性を示している。ACPI(配列番号6)及びAOTF(配列番号8)は協調してポリケチド鎖を伸長させるための出発単位を作製する。
【0112】
KSドメインの下流にATドメインを含む典型的なI型PKSモジュールとは違って、ドリゴシン遺伝子座中の各PKSモジュール(配列番号10、12及び14)のKSドメインの後ろには、ATドメインがない。しかし、例外的なドリゴシンPKSは、保存された小型のドメインをKSドメインの下流に含んでいる。この保存されたドメインは、マロニル−CoA:ACPマロニルトランスフェラーゼ作用のドッキング部位として作用すると仮定されている。マロニル−CoA:ACPマロニルトランスフェラーゼ作用は、AYTT DORR ORF2(配列番号4)、AYOA DORR ORF8(配列番号16)、又は一次代謝脂肪酸マロニル−CoA:ACPマロニルトランスフェラーゼによって提供される場合がある。
【0113】
モジュール1は、結合したマロニルエクステンダーユニットを有しており、出発単位を伸長させる1回のラウンドで触媒として機能する。その後に、ケトレダクターゼが続き、脱水が行われる。モジュール2は、独立したAT−チオエステラーゼ融合タンパク質AYTT(配列番号4)により、アシル化される。このタンパク質は、チオエステラーゼと融合したマロニル−CoA:ACPマロニルトランスフェラーゼで構成されている。モジュール2は、モジュール1と2とをつなぐアシル鎖間のイミド結合の形成において触媒作用を及ぼす。イミド結合の形成には、伸長サイクルにおける例外的な「後ろ向き」の段階で、AYTTタンパク質(配列番号4)に関連するチオエステラーゼ作用により容易となる操作が必要である。モジュール1のKSドメインを再び使用し、今回は、環状グルタルイミド基を構築するクライゼン縮合反応の触媒とする。
【0114】
次の伸長段階のため、発生期のポリケチド鎖は、モジュール1のACPからモジュール3のKSに移っていく。モジュール3〜6によって、マロニルエクステンダーユニットが使われる。モジュール5及び6で、ベータケト還元が生じる。モジュール5及び6のMTドメインにより、メチル側鎖が付加される。
【0115】
モジュール7は、ヒドロキシマロニルエクステンダーを使用している。かかるヒドロキシマロニルエクステンダーユニットは、独立したAT−オキシドレダクターゼ融合タンパク質AYOA(配列番号16)によって構築され、モジュール7に移される。ヒドロキシル側鎖は、MTFA O−メチルトランスフェラーゼ(配列番号20)によってメチル化される。
【0116】
モジュール8〜10は、マロニルエクステンダーユニットを使用している。モジュール8及び10で、ケト還元及び脱水が生じる。モジュール9は、DHドメインを含むがKRドメインをまったく含まないことで知られている。
【0117】
従来のI型ポリケチドの生合成を設計する際の一般的な規則は、図2に示すように、ドリゴシンA、ドリゴシンB、及びミグラスタチン分子に至る中間産物のポリケチド骨格構造の生合成に適用することができる。かかる中間産物は、ベータ−カルボニル還元状態でC−14にメチル側鎖が存在しない点でドリゴシンBとは異なっている。ドリゴシンPKS(配列番号10、12、14)は、C−5、C−9及びC−17を好適な酸化状態とするのに必要な量だけ、一次脂肪酸シンターゼからケトレダクターゼ、デヒドラターゼ及びエノイルレダクターゼを補充する。エノイルレダクターゼとの相互作用を必要とする2つのモジュールは、分離したPKSペプチドにまたがる2つのモジュールに対応している。C−14を組み込んだモジュール中ではMTドメインは認められなかった。これは、C−14におけるメチル化が、一次メチルトランスフェラーゼ又は隣接したモジュールのMTドメインによる触媒作用を受けていることを示唆している。
【0118】
OXRC及びOXRYタンパク質(配列番号23及び18)にコードされるオキシドレダクターゼは、ドリゴシンAとドリゴシンBとの間の相互変換の触媒となるために、必要な作用を発揮している。
【0119】
ラクトイミドマイシン生合成遺伝子座は9個のORF(配列番号26、28、30、32、34、36、38、40及び42)で構成され、そのうちの8個は、ドリゴシン生合成遺伝子座の対応するORFに対する相同性が高い。LACT ORF1(配列番号26)はDORR ORF2(配列番号4)と相同であり、これらはともに、AYTTと命名された、アシルトランスフェラーゼとチオエステラーゼの融合物である。LACT ORF2(配列番号28)はDORR ORF3(配列番号6)と相同であり、これらはともに、ACPIと命名された、アシル運搬体タンパク質である。LACT ORF3(配列番号30)はDORR ORF4(配列番号8)と相同であり、これらはともに、AOTFと命名された、細菌性アスパラギンシンテターゼに類似性を示すアミドトランスフェラーゼである。LACT ORF4、5及び6(配列番号32、34及び36)はDORR ORF5、6及び7(配列番号10、12及び14)とそれぞれ相同であり、これらはすべて、PKUNと命名された、ATドメインをもたない例外的なモジュラー型PKSである。LACT ORF7(配列番号38)はDORR ORF8(配列番号16)と相同であり、これらはともに、AYOAと命名された、アシルトランスフェラーゼとオキシドレダクターゼの融合物である。最後に、LACT ORF8(配列番号40)はDORR ORF11(配列番号23)と相同であり、これらはともに、OXRCと命名された、シトクロムP450モノオキシゲナーゼである。LACT ORF9(配列番号42)は、PPTFと命名された、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼであり、ドリゴシン遺伝子座にはこれに対応するものが存在しない。このホスホパンテテイニルトランスフェラーゼは、ホスホパンテテイニルの補因子の(prosthetic)アームと、ラクトイミドマイシンシンターゼ複合体のアシル運搬体タンパク質との共有結合に関与している。これに対し、ドリゴシンのアシル運搬体タンパク質は、ドリゴシン生合成遺伝子座の外側の遺伝子にコードされるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼによって、ホスホパンテテイニル化される場合がある。
【0120】
ドリゴシン生合成遺伝子座には、ラクトイミドマイシン遺伝子座中に対応物をもたない3個のORFが含まれている。DORR ORF1(配列番号2)は、REBPと命名された制御因子であり、DORR ORF9(配列番号18)は、OXRYと命名されたオキシドレダクターゼであり、DORR ORF10(配列番号20)は、MTFAと命名されたO−メチルトランスフェラーゼである。このDORR ORF9(配列番号18)は、二重結合の異性化に関与するドリゴシンAとドリゴシンBとの相互変換に関わっているため、ラクトイミドマイシン遺伝子座にOXRYが存在しないことは意義深い。ラクトイミドマイシンの生合成の場合に、類似した異性化が起こるとは知られていない。これはおそらく、OXRYホモログが存在しないことによると思われる。ドリゴシンやミグラスタチンとは違ってラクトイミドマイシンはO−メチル基をまったく含んでいないため、ラクトイミドマイシン遺伝子座にMTFAが存在しないことは意義深い。
【0121】
特定の作用機構又は生合成図式に限定されることなく、ラクトイミドマイシンの生合成(図5)について、LACTタンパク質は、ドリゴシン及びミグラスタチンの生合成経路(図2)と同様に説明することができる。ラクトイミドマイシンPKS系とドリゴシンPKS系との相違点は、それぞれのPKS系のモジュール7及び8に存在する(図4、10)。ドリゴシンPKS系のモジュール7は、トランス作用性ATドメインとともに、メトキシマロニルエクステンダーユニット(又は、その後O−メチル化するヒドロキシマロニルエクステンダーユニット)の組み込みに関与するKSドメイン、相互作用ドメイン、ACPドメインを含んでいる。反対に、ラクトイミドマイシンPKS系のモジュール7に含まれるのは、KSドメインと相互作用ドメインのみであり、ACPドメインは存在しない。そのため、このモジュールはポリケチド鎖を伸長させることができないと予測されている。ラクトイミドマイシンは、C−8上のヒドロキシメチル置換を含んでおらず、このことは、この予測と一致している。ドリゴシンPKS系のモジュール8は、KSドメイン、相互作用ドメイン、DHドメイン、KRドメイン、及び2つのタンデムACPドメインを含んでいる。しかし、1つ目のACPドメインは、通常はホスホパンテテイン結合部位として機能する保存されたセリン残基がプロリン残基に置換されているため(図10)、不活性である(図4中、「X」で示す)と予測されている。反対に、ラクトイミドマイシンPKS系のモジュール8では、ACPドメインは両方とも活性部位セリン残基を含んでいる。したがって、これら両方のACPにはマロニル−CoAが搭載されており、モジュール7由来のKS又はモジュール8由来のKSがポリケチド鎖を伸長させる2回のラウンドで触媒として機能すること、又は、その代わりに、モジュール7及び8に由来するKSドメインがそれぞれポリケチド鎖を伸長させる1回のラウンドで触媒として機能することを、本発明者らは提示している。
【0122】
図6〜13は、ドリゴシン生合成遺伝子座及びラクトイミドマイシン生合成遺伝子座に共通する各種ORFを比較する、アミノ酸アラインメントである。適用可能な場合には、Kakavas et al. (1997) J. Bacteriol. Vol 179 pp. 7515-7522に記載の、各種ポリケチドシンターゼドメインの重要な活性部位残基及びモチーフを図6〜13に示している。
【0123】
ドメインの同定及びその境界の割り当ては、I型PKSに関する文献に基づいている。本発明に記載した二成分PKS系がI型PKS系とはかなり異なることを考えると、境界がやや不正確である可能性、又は、かかる二成分PKS系に固有の新規ドメインが不注意により見過ごされた可能性がある。表3及び4は、ドリゴシン、ミグラスタチン、及びイソミグラスタチンの生合成(表4)及びラクトイミドマイシンの生合成(表5)に関与するポリケチドシンターゼ成分の各種ドメインの、おおよそのアミノ酸の座標を列挙したものである。DORR遺伝子座が発現した結果、線状ポリケチド(ドリゴシン)と環状ポリケチド(ミグラスタチン及びイソミグラスタチン)の両方が生成された。したがって、LACT遺伝子座が発現すると、環状ポリケチドのラクトイミドマイシンに加えて線状ポリケチド産物も生成されると予想するのが妥当といえる。線状のラクトイミドマイシンは、生成レベルが非常に低いこと、又は不安定であることから、今日まで記載されたことがない。
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
本発明は、ここに記載した具体的な実施形態により、その範囲を限定されるものではない。特に、ここに記載したもの、及びそれ以外の本発明の各種修正は、当業者がここまでの記載及び付随する図面を見れば、容易にわかるものである。そうした修正も、後述のクレームの範囲に含まれるものとする。
【0127】
さらに、すべてのサイズ、及びすべての分子量又は質量の値は、おおよそのものであり、記載のために提供されたものであることも、承知されてしかるべきである。
【0128】
ここに列挙したいくつかのオープンリーディングフレームは、標準開始コドンのATG、すなわち、DORR ORF2、6、7(配列番号4、12及び14)並びにLACT ORF1、3、5及び9(配列番号26、30、34及び42)よりもむしろ、非標準開始コドン(例えば、GTG−バリン)で始まっている。ORFの最初のコドンの特異性を示すため、すべてのORFを、アミノ末端部位のMアミノ酸又はVアミノ酸とともに列挙している。しかし、すべての事例において、生合成されたタンパク質がメチオニン残基、より具体的にはホルムメチオニン残基をアミノ末端部位に含むであろうことが予測される。このことは、細菌中のタンパク質の生合成は、コードする遺伝子が非標準開始コドンを指定している場合でも、メチオニン(ホルムメチオニン)で始まる(例えば、Stryer, Biochemistry, 3rd edition, 1998, W. H. Freeman & Co., New York, pp. 752-754)という広く受け入れられている原則と一致している。
【0129】
本出願に引用した特許、特許公報、手順及び刊行物は、あらゆる目的に使用できるように完全な形でここに組み込んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、S. platensisのドリゴシン生合成遺伝子クラスターの図であり、例外的なPKS成分の推定ドメイン構造を強調したものである。
【図2】図2は、ドリゴシン及びミグラスタチンの生合成経路の一案を示す図である。
【図3】図3は、ドリゴシン、ミグラスタチン及びイソミグラスタチンの構造を示す図である。
【図4】図4は、S. amphibiosporusのラクトイミドマイシン生合成遺伝子クラスターとS. platensisのドリゴシン生合成遺伝子クラスターを比較した図である。例外的なPKS成分の推定ドメイン構造を強調している。
【図5】図5は、ラクトイミドマイシンの生合成経路の一案を示す図である。
【図6】図6は、ともに、AYTTと命名された、チオエステラーゼとアシルトランスフェラーゼの融合物である、DORR ORF2(配列番号4)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF1(配列番号26)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図7】図7は、ともに、ACPIと命名されたアシル運搬体タンパク質である、DORR ORF3(配列番号6)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF2(配列番号28)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図8】図8は、ともに、AOTFと命名された、細菌性アスパラギンシンテターゼに類似したアミドトランスフェラーゼである、DORR ORF4(配列番号8)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF3(配列番号30)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図9】図9Aから図9Dは、ともに、PKUNと命名された、ATドメインをもたない例外的なモジュラー型PKSである、DORR ORF5(配列番号10)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF4(配列番号32)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図10】図10Aから図10Jは、ともに、PKUNと命名された、ATドメインをもたない例外的なモジュラー型PKSである、DORR ORF6(配列番号12)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF5(配列番号34)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図11】図11Aから図11Cは、ともに、PKUNと命名された、ATドメインをもたない例外的なモジュラー型PKSである、DORR ORF7(配列番号14)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF6(配列番号12)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図12】図12は、ともに、AYOAと命名された、アシルトランスフェラーゼとオキシドレダクターゼとの融合物である、DORR ORF8(配列番号16)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF7(配列番号38)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図13】図13は、ともに、OXRCと命名されたシトクロムP450モノオキシゲナーゼである、DORR ORF11(配列番号23)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF8(配列番号40)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【0001】
本発明は、ポリケチド、特に、ドリゴシン(dorrigocin)ポリケチド、ミグラスタチン(migrastatin)ポリケチド及びラクトイミドマイシン(lactimidomycin)ポリケチドの合成を誘導するタンパク質をコードする核酸分子に関する。本発明は、ドリゴシン、ミグラスタチン及びラクトイミドマイシン構造物に基づいて抗菌作用を示す化合物を作製するための、DNAの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ドリゴシン、ミグラスタチン及びラクトイミドマイシンは、ポリケチド類である。ポリケチドは、真菌及び細菌、特に放線菌をはじめとする多種類の生物の体内で生じる。ドリゴシンA及びドリゴシンBと命名された2種類のドリゴシンの構造については、Hochlowski et al.がJ. Antibiotics 47: 870 (1994)及び米国特許第5,484,799号に記載されている。ドリゴシンには抗真菌性及び抗腫瘍性作用があることが報告されている(Karwowski et al., J. Antibiotics 47: 862 (1994); 米国特許第5,589,485号)。ドリゴシンの生物学的性質については、Kadam and McAlpineがJ. Antibiotics 47: 875 (1994)でも議論されている。Nakae et al.は、J. of Antibiotics 53: 1228 (2000)でミグラスタチンの構造について記載している。ミグラスタチンが腫瘍細胞の遊走を阻害するとの報告がある(Nakae et al., J. of Antibiotics 53: 1130 (2000)。Woo et al.は、J. Antibiotics, Vol 55, pp. 141-146 (2002)において、イソミグラスチン(isomigrastin)と称する関連化合物について記載している。ポリケチドは、一連の縮合及びそれに続く修飾により2炭素単位で形成された種類の化合物である。ポリケチドは、ポリケチドシンターゼ(PKS)という酵素により天然で合成される。従来の化学的手法ではポリケチドの生成が困難であること、及び野生型細胞内では一般にポリケチドの生成量が少ないことから、ポリケチド化合物を生成するための改良された手段又は代替的な手段を見出だすことには、かなりの関心が寄せられてきた。
【0003】
ポリケチドシンターゼ(PKS)という酵素は、多数の大型タンパク質の複合体である。PKSは、アシルチオエステルの基本構成単位間での反復的で脱炭酸的なクライゼン縮合を通じたポリケチドの生合成において、触媒として作用する。PKSは一般的に、合成するポリケチドの種類によって、及びかかるポリケチドを合成する形態によって、I型、すなわち「モジュラー型」PKSと、II型、すなわち「反復型」PKSに分類される。I型PKSは、大量の12員環、14員環、及び16員環マクロライド抗生物質の生成に関与している。
【0004】
I型すなわちモジュラー型PKSは、ポリケチド合成経路における炭素鎖伸長及び修飾の各サイクルに対する、別々の酵素活性部位一セットにより形成される。各活性部位をドメインと呼び、活性部位一セットをモジュールと呼ぶ。典型的なモジュラー型PKS複合酵素系は、数個の大型ポリペプチドで構成されており、該ポリペプチドをアミノからカルボキシ末端にかけて分離して、ローディングモジュール、多数のエクステンダーモジュール、及びチオエステラーゼドメインを内包する場合が多いリリーシングモジュールとすることが可能である。
【0005】
一般に、ローディングモジュールは、ポリケチドの合成に使用する最初の基本単位を構築すること、及びそれを最初のエクステンダーモジュールへ移動させることに関与している。ローディングモジュールは、ある特定のアシルCoA(通常はアセチル又はプロピオニルだが、ときにブチリル又はその他のアシルCoA)を認識し、それをチオールエステルとして、ローディングモジュールのACPまで移動させる。
【0006】
各エクステンダーモジュール上のATは、ある特定のエクステンダーCoAを認識し、それをそのエクステンダーモジュールのACPまで移動させ、チオエステルを形成する。各エクステンダーモジュールは、前のモジュールから化合物を受け取り、基本構成単位を結合し、その基本構成単位を前のモジュールからの化合物に結合し、1つ以上の付加的な機能を任意に発揮し、結果として生じた化合物を次のモジュールへ移動させる。
【0007】
これまでに報告されたあらゆるモジュラー型PKSの各エクステンダーモジュールは、KS、AT、ACP、及び成長中のポリケチド鎖のベータ炭素を修飾する、0、1、2又は3つのドメインを含んでいる。典型的な(非ローディング)最小I型PKSエクステンダーには、KSドメイン、ATドメイン及びACPドメインが含まれていてもよい。かかるドメインは2炭素エクステンダーユニットを活性化させるのに充分であり、前記ユニットを発達中のポリケチドモジュールに結合させる。同様に、次のエクステンダーモジュールは、合成が完了するまで、次の基本構成単位を結合させること、及び発達中の化合物を次のエクステンダーモジュールへ移動させることに関与している。
【0008】
いったんPKSがアシルACPでプライムされると、ローディングモジュールのアシル基が移動して最初のエクステンダーモジュールのKSでチオールエステルを形成する(トランスエステル化)。この段階において、エクステンダーモジュール1はアシルKS及びマロニル(又は置換マロニル)ACPを保有している。その後、かかるローディングモジュール由来のアシル基は、マロニル基のアルファ炭素に共有結合して炭素−炭素結合を形成し、同時に脱炭酸され、ローディング基本構成単位よりも長い、骨格となる2つの炭素を有する新規のアシルACPを生成する(伸長又は拡張)。
【0009】
各エクステンダーモジュールで炭素2つ分だけ発達したポリケチド鎖は、続いて、共有結合したチオールエステルとして、流れ作業のようなプロセスにおいて、エクステンダーモジュールからエクステンダーモジュールへと通過していく。このプロセスのみによって生成した炭素鎖は、炭素原子1つおきにケトンを保有していると思われ、ポリケトンを生成する。ポリケチドという名前の由来は、ここからきている。しかし、通常は、2つの炭素ユニットそれぞれのベータケト基を、成長中のポリケチド鎖への添加直後で次のモジュールへの移動前に、付加的な酵素活性によって修飾する。炭素−炭素結合の形成に必要な典型的KS、AT及びACPドメインの他に、モジュールは、ベータ−カルボニル部分を修飾する他のドメインを含んでいてもよい。例えば、モジュールは、ケト基をアルコールに還元するケトレダクターゼ(KR)ドメインも含んでいてもよい。モジュールは、KRドメインに加えて、アルコールを脱水して二重結合にするデヒドラターゼ(DH)ドメインも含んでいてもよい。モジュールは、KRドメイン、DHドメインに加えて、二重結合産物を飽和一重結合に変換するエノイルレダクターゼ(ER)ドメインも含んでいてもよい。エクステンダーモジュールは、例えばメチラーゼ活性又はジメチラーゼ活性などの他の酵素活性も含んでいる場合がある。
【0010】
最後のエクステンダーモジュールを通過すると、ポリケチドは、PKSからポリケチドを切り離し、一般的にはポリケチドを環状化するリリーシングドメインに到達する。適合化(tailoring)酵素によって、かかるポリケチドをさらに修飾することもできる。これらの酵素は、ポリケチドコア分子に対して、炭水化物基若しくはメチル基の添加、又は酸化若しくは還元など他の修飾を行う。
【0011】
I型PKSポリケチドにおいて、触媒作用を有するドメインの順序は、これまで報告されたあらゆるI型PKSで保存されている。したがって、すべてのベータ−ケト処理ドメインが1つのモジュール内に存在する場合、そのモジュール内のN末端からC末端までのドメインの順序は、常に、KS、AT、DH、ER、KR、ACPとなる。あるモジュールでは、いくつか又は全部のベータ−ケト処理ドメインが失われている場合があるが、モジュール内に存在するドメインの順序は、報告されたすべての事例で依然として同一である。
【0012】
こうした酵素の工学的処理は、ドメインの修飾、添加、若しくは欠失によって、又はドメインを他のI型PKSから取得してきたドメインと置換することによって、行われる。他の供給源から取得してきたモジュールで、モジュール全体を欠失させたり、置換したり添加したりすることによっても、行われる。遺伝子組換えPKS複合体は、もちろん、実施した遺伝子改変から予測される産物の合成に対して触媒作用を及ぼす能力がある。触媒作用を有するドメインと、個々のポリペプチドのN末端及びC末端との間には、リンカー領域がある。これらリンカー領域の配列は、触媒作用を有するドメインと比較して、保存性が低い。PKS複合体を構成するドメイン間及び個々のポリペプチド間で会合が正しく行われるためには、リンカー領域が重要であるのかもしれない。したがって、ドメインとモジュールが正しい配向で位置し、活性を示しているような足場を構築するものとして、リンカーとドメインをひとまとめにして見ることもできる。このような構成及び位置取りが保有されていると、異なる又は同一の基質特異性を有するPKSドメインの、各種利用可能な方法によるPKS酵素間での置換(通常はDNAレベル)が可能になる。例えば、AT置換の境界を選択する場合、受け取り側のPKSのリンカーを保有するように、又は、それらを供与側のPKSATドメインのリンカーで置換するように、置換を行うことができる。または、好ましくは、両方の構造物を作って、KSドメインとATドメインとの間の正しいリンカー領域が、少なくとも1つの工学処理済酵素に確実に含まれているようにすることができる。このように、新規PKSの設計にはかなりの柔軟性があり、その結果、既知のポリケチドのより効率的な生成や、新規ポリケチドの作製が可能になる。
【0013】
治療上有効なポリケチドはこれまで数多く同定されているが、薬物動態学的プロフィール及び代謝に優れ、副作用の少ない新規ポリケチドを得る必要性は依然として残っている。それに加えて、まったく新しい生物活性を有する新規ポリケチドを得る必要性もある。モジュラー型のI型PKSが生成する複雑なポリケチドには、駆虫剤、殺虫剤、免疫抑制剤、抗真菌剤、抗菌剤としての有用性が知られている化合物を含まれているため、特に価値がある。その構造の複雑さのため、全体的な化学合成又は既知のポリケチドの化学修飾によって、かかる新規ポリケチドを容易に入手するのは不可能である。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、ポリケチドの生成に関与する遺伝子及びタンパク質を有利に提供するものである。かかる遺伝子及びタンパク質の実施形態は、添付した配列表に具体的に示されている。配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、22及び24は、ポリケチドであるドリゴシンの生合成に関与する核酸を提供する。配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及び23は、ポリケチドであるドリゴシンの生合成に関与するタンパク質のアミノ酸配列を提供する。配列番号25、27、29、31、33、35、37、39、41及び32は、ポリケチドであるラクトイミドマイシンの生合成に関与する遺伝子の核酸配列を提供する。配列番号26、28、30、32、34、36、38、41及び42は、ポリケチドであるラクトイミドマイシンの生合成に関与するタンパク質のアミノ酸配列を提供する。本発明の遺伝子及びタンパク質は、ドリゴシン化合物及びラクトイミドマイシン化合物に基づく新規ポリケチド関連化合物の生成機構を提供する。
【0015】
本発明は、各種ポリケチドの生成に使用可能なポリケチドシンターゼ(PKS)遺伝子(配列番号11、13、15、33、35及び37)及びタンパク質(配列番号10、12、14、32、34及び36)を開示している。ポリケチドには、現在のところ、発酵のみによって生成するものもあれば、発酵及び化学修飾によって生成するものもある。そして発酵によっても化学修飾によっても生成することのない新規ポリケチドもある。本発明により、ドリゴシン及びラクトイミドマイシンの生合成に関与する酵素の化学工学的処理や、構造物の複雑さのために現在の化学的手法では不可能な修飾を介しての、ドリゴシン、ラクトイミドマイシン、及び関連する化学構造物の直接操作が可能になる。
【0016】
通常は不活性だがきっかけがあれば化学修飾が可能になる位置に「化学的なきっかけ」を導入するために、本発明を使用することもできる。本発明の方法及び試薬により、新規ポリケチドを開発するいくつかの一般的な方法の利便性が上昇する。例えば、分子モデルを使用して最適な構造物を予測することができる。本発明の方法によると、ドリゴシン遺伝子クラスター又はラクトイミドマイシン遺伝子クラスターの遺伝子操作により、さまざまなポリケチド構造物を生成することができる。本発明を使用して、類似体の集中ライブラリーをポリケチドのリード候補物質の周囲に構築し、最適な性質となるように化合物を微調整することもできる。本発明の遺伝子組換え方法は、以前は化学修飾に対して不活性だった分子位置の修飾にも対応可能である。既知のPKS遺伝子クラスターを操作して、そのPKSが生成するポリケチドを自然に生成する場合よりも高レベルで生成させること、又は、操作しなければポリケチドを生成しない宿主内で生成させることが、既知の技法によって可能になる。構造的には関連しているが、既知のPKS遺伝子クラスターが生成するポリケチドとは区別される分子を生成することが、既知の技法によって可能になる。例えば、PCT公開公報WO93/3663、95/08548、96/40968、97/02358、98/49315、米国特許第4,874,748号、第5,063,155号、第5,098,837号、第5,149,639号、第5,672,491号、第5,712,146号、第5,830,750号及び第5,843,718号を参照のこと。
【0017】
このように、本発明の第一の態様は、配列番号1、22及び25;配列番号1、22及び25に相補的な配列;配列番号1、22及び25の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200又は500個のヌクレオチドを連続状態で含む断片;及び配列番号1、22及び25に相補的な配列の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200又は500個のヌクレオチドを連続状態で含む断片からなる群より選択される配列を含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸を提供する。この態様の好ましい実施形態には、上記配列と中程度のストリンジェンシー又は高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる、単離、精製又は濃縮を行った核酸;上記配列の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200又は500個の塩基を連続状態で含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸;及びデフォルトパラメータを用いたBLASTNバージョン2.0での分析により、上記配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%又は99%の相同性を有することが確認された、単離、精製又は濃縮を行った核酸が含まれる。
【0018】
本発明のこの態様におけるさらに好ましい実施形態には、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39、41、43、及びそれらに相補的な配列からなる群より選択される配列を含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸;配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39、41、43、及びそれらに相補的な配列からなる群より選択される配列の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200又は500個の塩基を連続状態で含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸;上記核酸と中程度のストリンジェンシー又は高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる、単離、精製又は濃縮を行った核酸;及びデフォルトパラメータを用いたBLASTNバージョン2.0での分析により、請求項6に記載の核酸に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%又は99%の相同性を有することが確認された、単離、精製又は濃縮を行った核酸が含まれる。本発明のこの態様におけるより好ましい実施形態には、配列番号10、12、14、32、34及び36のPKSのドメインをコードする単離した核酸;配列番号10、12、14、32、34及び36のPKSの1つ以上のモジュールの一部又は全部をコードする単離した核酸が含まれる。これらの核酸を単独で、又は他のPKSドメイン若しくはモジュールをコードする核酸と組み合わせて、組換え型ベクターの構築における中間物質として容易に用いることができる。別の態様においては、本発明は、モジュール中の少なくとも1つのドメインが非ドリゴシンPKS及び非ラクトイミドマイシンPKSに由来し、少なくとも1つのドメインがドリゴシンPKS又はラクトイミドマイシンPKSに由来するモジュールを少なくとも1つ含むPKSの全部又は一部をコードする単離した核酸を提供する。
【0019】
第二の実施形態においては、本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42からなる群より選択される配列を含む、単離又は精製を行ったポリペプチド;配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200又は500個のアミノ酸を連続状態で含む、単離又は精製を行ったポリペプチド;及びデフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2での分析により、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%又は99%の相同性を有することが確認された、単離又は精製を行ったポリペプチドを提供する。さらなる態様においては、本発明は、上記ポリペプチド配列を1、2、3、又は5個以上含むポリペプチドを提供する。
【0020】
本発明は、上記核酸を含む組換え型DNA発現ベクターも提供する。本発明のこうした遺伝子及び方法によって、当業者は、ポリケチド生成能力を有する組換え型宿主細胞を作製することができるようになる。したがって、本発明は、上記核酸を少なくとも1つコードする組換え型DNAベクターで異種性宿主細胞を形質転換し、かかる宿主細胞を、PKSが生成されるような条件下で培養し、そのPKSが触媒となってポリケチドの合成にいたる、ポリケチドの調製方法を提供する。1つの態様においては、かかる方法はStreptomycesを宿主細胞として用いて実施される。別の態様においては、生成したポリケチドはドリゴシン又はラクトイミドマイシンである。別の態様においては、生成したポリケチドは、構造的にドリゴシン又はラクトイミドマイシンに関連するポリケチドである。本発明のこの態様における1つの実施形態は、ドリゴシン生合成遺伝子産物が発現するような条件下で宿主細胞を培養することを特徴とするドリゴシン生合成遺伝子産物の発現方法である。本発明のこの態様における第二の実施形態は、ラクトイミドマイシン生合成遺伝子産物が発現するような条件下で宿主細胞を培養することを特徴とするラクトイミドマイシン生合成遺伝子産物の発現方法である。
【0021】
本発明は、推定ポリケチド生成微生物の検出及び/又は単離用の本発明のプローブを含む試薬;ハイブリダイゼーションが検出されるように、本発明のプローブを用いて、推定ポリケチド生成微生物を検出及び/又は単離する方法をも含む。クローニング、分析、及びPKS酵素をコードする遺伝子のDNA組換え技術による操作を、既知の技法によって行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
ドリゴシン分子とミグラスタチン分子を区別する論文執筆者もいる。本明細書では一貫して、ドリゴシンという言葉には、ミグラスタチン及びイソミグラスタチンと称される分子が含まれるものとしている。同様に、ドリゴシンの生合成遺伝子座という言葉には、ミグラスタチン及びイソミグラスタチンと称される分子の合成を誘導する生合成遺伝子座が含まれるものとする。
【0023】
本明細書及び図面を通して、Streptomyces platensis subsp. rosaceusNRRL18993由来のドリゴシンの生合成遺伝子座をDORRと称する場合があり、Streptomyces amphibiosporusATCC53964由来のラクトイミドマイシンの生合成遺伝子座をLACTと称する場合がある。DORR及びLACTのORFには、既知のタンパク質との相同性に基づいて推定的な機能が割り当てられ、ファミリーにグループ分けされている。構造と機能を相関させるため、タンパク質ファミリーは、本明細書及び図面を通して、表1に示すとおりの4文字表記で命名されている。
【0024】
【表1】
【0025】
ドリゴシン生合成遺伝子産物という語は、ドリゴシン、ミグラスタチン又はイソミグラスタチンの生合成に関与するあらゆる酵素を指す。これらの遺伝子は、Streptomyces platensis subsp. rosaceus由来のドリゴシン生合成遺伝子座に局在している。この遺伝子座を図1及び図4に示す。詳しくは、ドリゴシン生合成経路はStreptomyces platensis subsp. rosaceusに関連している。しかし、この語には、Streptomyces属のどの微生物から単離されたドリゴシン生合成酵素(及びかかる酵素をコードする遺伝子)も含まれること、また、これらの遺伝子の新しいホモログが、本件の特許請求の範囲に含まれる関連する放線菌類の微生物中に存在する場合があることは、承知されてしかるべきである。具体的な実施形態において、かかる遺伝子は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及び23に列挙されている。
【0026】
ラクトイミドマイシン生合成遺伝子産物という語は、ラクトイミドマイシンの生合成に関与するあらゆる酵素を指す。これらの遺伝子は、Streptomyces amphibiosporus由来のラクトイミドマイシン生合成遺伝子座に局在している。この遺伝子座を図4に示す。詳しくは、ラクトイミドマイシン生合成経路はStreptomyces amphibiosporusに関連している。しかし、この語には、Streptomyces属のどの微生物から単離されたラクトイミドマイシン生合成酵素(及びかかる酵素をコードする遺伝子)も含まれること、また、これらの遺伝子の新しいホモログが、本件の特許請求の範囲に含まれる関連する放線菌類の微生物中に存在する場合があることは、承知されてしかるべきである。具体的な実施形態において、かかる遺伝子は配列番号26、28、30、32、34、36、38、40及び42に列挙されている。
【0027】
「単離された」という語は、物質がその本来の環境、例えばそれが天然物として生じるのであればその自然環境から除去されたことを意味する。例えば、生体内に存在する自然に生じたポリヌクレオチド又はポリペプチドは、単離されてはいないが、その同じポリヌクレオチド又はポリペプチドが、自然界のシステムで共存している物質のすべて又は一部から分離された場合は、単離されたことになる。そうしたポリヌクレオチドをベクターの一部とすることができ、及び/又は、そうしたポリヌクレオチド又はポリペプチドを組成物の一部とすることができる。その場合もやはり単離されたことになる。なぜなら、そうしたポリヌクレオチド又はポリペプチドにとって、該ベクターや組成物は自然環境の一部ではないからである。
【0028】
「精製された」という語は、100%の純度を必要とするわけではなく、どちらかといえば、相対的な定義を意図するものである。従来、ライブラリーから得た個々の核酸は、電気泳動上で均質となるまで精製されている。これらのクローンから得た配列を、コスミドライブラリーなどの大型挿入物ライブラリー又は全生物DNAから直接得ることは不可能であった。本発明の精製された核酸は、生物のゲノムDNAの残存物から少なくとも104〜106倍に精製されたものである。しかし、「精製された」という語は、ゲノムDNAの残存物又はライブラリー若しくは他の環境に存在する他の配列から、少なくとも101倍、好ましくは102倍又は103倍、さらに好ましくは104倍又は105倍に精製された核酸も含むものである。
【0029】
「組換え体」という語は、核酸が、自然環境では隣接しない「骨格」核酸に隣接していることを意味する。「濃縮」核酸とは、核酸骨格分子群中に数にして5%以上の核酸挿入物が存在することを示す。「骨格」分子には、発現ベクター、自己複製核酸、ウィルス、組込み(integrating)核酸などの核酸、及び目的の核酸の維持又は操作に使用する他のベクター又は核酸などがある。該濃縮核酸は、組換え骨格分子群中に存在する核酸挿入物数の15%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがもっとも好ましい。
【0030】
「組換え」ポリペプチド又はタンパク質とは、組換えDNA技術により作製された、すなわち、目的のポリペプチド又はタンパク質をコードする外部DNAコンストラクトにより形質転換された細胞から作製されたポリペプチド又はタンパク質を示す。「合成」ポリペプチド又はタンパク質とは、化学合成により調製されたポリペプチド又はタンパク質のことである。
【0031】
「遺伝子」という語は、ポリペプチド鎖の作製に関与するDNAの部分であり、コード領域前後の領域(リーダー及びトレーラー)、及び該当する場合には、個々のコード部分(エキソン)の間にある領域(イントロン)も含むものである。
【0032】
ある特定のポリペプチド若しくはタンパク質を「コードする配列」、又はDNA若しくはヌクレオチド「コード配列」とは、適切な制御配列の管理下に置かれた際にポリペプチド又はタンパク質に転写及び翻訳されるDNA配列のことである。
【0033】
オリゴヌクレオチドとは、遺伝子、mRNA、cDNA又はその他目的の核酸をコードするゲノムDNA分子、cDNA分子、又はmRNA分子とハイブリダイズする核酸であって、一般的には10個以上、好ましくは15個、さらに好ましくは20個以上で、好ましくは100個以下のヌクレオチドを有する核酸のことである。
【0034】
プロモーター配列は、RNAポリメラーゼが認識するコード配列に、「操作可能な状態で連結されて」いる。このRNAポリメラーゼは、該プロモーターで転写を開始し、該コード配列をmRNAに転写する。
【0035】
「プラスミド」は、小文字のpを前につけて、すなわち、その後ろに大文字の文字及び/又は数字を続けて、設計される。ここでは、最初のプラスミドは、市販品で公的な使用に制限は課せられていないもの、又は、入手可能なプラスミドから公開された手順にしたがって構築することが可能なものである。さらに、ここに記載したプラスミドと同等のものは、当該分野では周知であり、当業者であれば容易にわかるものである。
【0036】
DNAの「分解」とは、DNAのある特定の配列だけに作用する制限酵素によるDNAの酵素的開裂を指す。ここで使用した各種制限酵素は市販品であり、その反応条件、補因子その他の要件は、当業者には周知のものとして使用された。
【0037】
分析を目的とする場合、約20μlの緩衝液中で、1μgのプラスミド又はDNA断片を約2単位の酵素とともに用いるのが一般的である。プラスミド構築のためにDNA断片を単離するのが目的の場合は、より多量に、5〜50μgのDNAを20〜250単位の酵素で分解するのが一般的である。特定の酵素に対する適切な緩衝液及び基質の量は、製造者によって具体的に示されている。インキュベーションの時間については、37℃で1時間というのが普通だが、供給業者の指示によって変わる場合もある。分解後は、目的の断片を単離するためにゲル電気泳動が行われる場合がある。
【0038】
本発明者らは、ポリケチドであるドリゴシン及びラクトイミドマイシンの生合成に関与する遺伝子及びタンパク質を見出すに至った。ドリゴシンの生合成に関与するタンパク質をコードする核酸配列を、添付の配列表中に配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21及び24として提供する。ドリゴシンの生合成に関与するポリペプチドを、添付の配列表中に配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及び23として提供する。ラクトイミドマイシンの生合成に関与するタンパク質をコードする核酸配列を、添付の配列表中に配列番号27、29、31、33、35、37、41及び43として提供する。ラクトイミドマイシンの生合成に関与するポリペプチドを、添付の配列表中に配列番号26、28、30、32、34、36、38、40及び42として提供する。
【0039】
本発明の1つの態様は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の配列、それらに相補的な配列のいずれかを、又は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の配列若しくはそれらに相補的な配列のいずれかの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400又は500個の塩基を連続状態で含む断片を含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸である。該単離、精製又は濃縮を行った核酸は、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAなどのDNAを含んでいてもよい。該DNAは二本鎖でも一本鎖でもよく、一本鎖の場合はコード鎖又は非コード(アンチセンス)鎖でもよい。あるいは、該単離、精製又は濃縮を行った核酸は、RNAを含んでいてもよい。
【0040】
以下に詳述するとおり、配列番号のいずれかの単離、精製又は濃縮を行った核酸を用いて、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかを、又は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片を調製してもよい。
【0041】
したがって、本発明の別の態様は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかを、又は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片をコードする、単離、精製又は濃縮を行った核酸である。これらの核酸のコード配列は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸、若しくはその断片のいずれかのコード配列と相同であってもよく、又は、遺伝子情報の冗長性若しくは縮重の結果として、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかを、又は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片をコードする別のコード配列であってもよい。かかる遺伝子情報は当業者には周知であり、例えばStryer, Biochemistry, 3rd edition, W. H. Freeman & Co., New Yorkなどから得ることができる。
【0042】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかをコードする、単離、精製又は濃縮を行った核酸としては、(1)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のいずれかのコード配列のみ;(2)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のコード配列、及びリーダー配列などの付加的なコード配列又はプロタンパク質;及び(3)配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のコード配列、及びイントロンなどの非コード配列、又はコード配列の非コード配列5’及び/又は3’が挙げられるが、これらに限定されるものではない。したがって、ここで使用されているように、「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」という語は、付加的なコード配列及び/又は非コード配列をも含むポリヌクレオチドに加えて、該ポリペプチド用コード配列だけを含むポリヌクレオチドをも意味するものである。
【0043】
本発明は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41に基づくポリヌクレオチドではあるが、「サイレントな」ポリヌクレオチド変化、たとえば、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列が変わらないような変化を示すポリヌクレオチドに関する。本発明はまた、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのアミノ酸の置換、付加、欠失、融合及び切断が生じるヌクレオチド変化を示すポリヌクレオチドに関する。かかるヌクレオチド変化の導入には、特定部位の突然変異誘発、ランダムな化学的突然変異誘発、エキソヌクレアーゼIIIの欠失などの技術、その他の組換えDNA技術を用いてもよい。
【0044】
配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41、それらに相補的な配列、又は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の配列若しくはそれらに相補的な配列のいずれかの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400又は500個の塩基を連続状態で含む断片の、単離、精製又は濃縮を行った核酸をプローブとして用いて、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドをそれぞれコードするDNAの同定及び単離を行ってもよい。そうした手順においては、試料の微生物、又は、ポリケチドを産生する能力をもつ微生物を含有する試料からゲノムDNAライブラリーを構築する。その後、該ゲノムDNAライブラリーと、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、若しくはその断片をコードするコード配列若しくは該コード配列の断片を含むプローブとを、該プローブがそれらの相補配列と特異的にハイブリダイズできるような条件下で接触させる。好ましい実施形態においては、該プローブは、長さにして約10〜約30個のヌクレオチドを有し、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドである。次いで、該プローブとハイブリダイズするゲノムDNAクローンを検出し、単離する。目的のDNAクローンを調製し同定する手順は、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley 503 Sons, Inc. 1997; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989に開示されている。別の実施形態においては、該プローブは、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41由来のPCR増幅核酸又は制限断片である。
【0045】
配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41、それらに相補的な配列、又は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の配列若しくはそれらに相補的な配列のいずれかの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400又は500個の塩基を連続状態で含む断片の、単離、精製又は濃縮を行った核酸をプローブとして用いて、関連する核酸の同定及び単離を行ってもよい。いくつかの実施形態においては、かかる関連する核酸は、潜在的ポリケチド産生株に由来するゲノムDNA(又はcDNA)であってもよい。好ましい実施形態においては、配列番号11、13、15、33、35及び37、それらに相補的な配列、又は配列番号11、13、15、33、35及び37、若しくはそれらに相補的な配列のいずれかの少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400又は500個の塩基を連続状態で含む断片の、単離、精製又は濃縮を行った核酸をプローブとして用いて、関連する核酸の同定及び単離を行ってもよい。そうした手順においては、潜在的ポリケチド産生株由来の核酸を含有する核酸試料とプローブとを、該プローブが関連する配列と特異的にハイブリダイズできるような条件下で接触させる。かかる核酸試料は、潜在的ポリケチド産生株由来のゲノムDNA(又はcDNA)ライブラリーであってもよい。次いで、上記のいずれかの方法を用いて、該プローブと核酸とのハイブリダイゼーションを検出する。
【0046】
ハイブリダイゼーションは、低ストリンジェンシー条件下、中程度のストリンジェンシー条件下、又は高ストリンジェンシー条件下で行ってもよい。核酸ハイブリダイゼーションの一例を挙げる。0.9MのNaCl、50mMのNaH2PO4、pH7.0、5.0mMのNa2EDTA、0.5%のSDS、10×Denhardt's、及び0.5mg/mlのポリリボアデニル酸からなる溶液中で、不動化変性核酸を含むポリマー膜を、まず45℃で30分間プレハイブリダイズする。その後、約2×107cpm(比放射能4〜9×108cpm/ug)の32P末端標識オリゴヌクレオチドプローブを溶液に添加する。12〜16時間のインキュベーションを行った後、0.5%のSDSを含む1×SET(150mMのNaCl、20mMのTris塩酸、pH7.8、1mMのNa2EDTA)中で、かかる膜を室温で30分間洗浄し、新しい1×SET中で、オリゴヌクレオチドプローブ用にTm−10Cで30分間洗浄する。ここでTmとは融解温度のことである。その後、ハイブリダイゼーションシグナルを検出するため、かかる膜をオートラジオグラフ用フィルムに曝露させる。
【0047】
検出可能なプローブとハイブリダイズする、ゲノムDNA又はcDNAなどの核酸の同定に使用するハイブリダイゼーションストリンジェンシーの条件を変えると、該プローブに対して異なる相同性を有する核酸の同定及び単離が可能になる。該プローブの融解温度よりも低い温度で、いろいろと温度を変えてハイブリダイゼーションを行うことによって、ストリンジェンシーを変えてもよい。該プローブの融解温度は、下記の式を利用して計算してもよい。
【0048】
長さにして14〜70個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドプローブの場合、摂氏での融解温度(Tm)は、下記の式を利用して計算してもよい。
Tm=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(フラクションG+C)−(600/N)、式中、Nはオリゴヌクレオチドの長さ。
【0049】
ホルムアミドを含む溶液中でハイブリダイゼーションを行う場合、以下の方程式を用いて融解温度を計算してもよい。Tm=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(フラクションG+C)−(0.63%のホルムアミド)−(600/N)、式中、Nはプローブの長さ。
【0050】
6×SSC、5×Denhardt's試薬、0.5%のSDS、0.1mg/mlの変性分画サケ精子DNA、又は6×SSC、5×Denhardt's試薬、0.5%のSDS、0.1mg/mlの変性分画サケ精子DNA、50%のホルムアミド中で、プレハイブリダイゼーションをおこなってもよい。SSC及びDenhardt's溶液の組成については、上記Sambrook et al.中に列挙されている。上に列挙したハイブリダイゼーション溶液に検出可能なプローブを添加することにより、ハイブリダイゼーションを行う。該プローブが二本鎖DNAを含む場合には、温度を上げながらインキュベーションを行い、次いで急激に冷却することによりかかるDNAを変性させ、その後でハイブリダイゼーション溶液に添加する。また、二次構造の形成若しくはオリゴマー化を皆無にするため又は減らすために、一本鎖プローブを同様に変性させることが望ましい場合もある。フィルターを充分な時間ハイブリダイゼーション溶液と接触させて、相補配列又は相同配列を内包するcDNA又はゲノムDNAと該プローブがハイブリダイズできるようにする。長さにして200以上のヌクレオチドからなるプローブについては、Tmよりも15〜25℃低い温度でハイブリダイゼーションを行ってもよい。オリゴヌクレオチドプローブなど、それよりも短いプローブについては、Tmよりも5〜10℃低い温度でハイブリダイゼーションを行ってもよい。短いプローブのハイブリダイゼーションは、6×SSC中で行うのが好ましい。長いプローブのハイブリダイゼーションは、50%のホルムアミドを含む溶液中で行うのが好ましい。これまで述べたハイブリダイゼーションはすべて、高ストリンジェンシー条件下で行われるハイブリダイゼーションの例と考えられている。
【0051】
ハイブリダイゼーションに続いて、2×SSC、0.1%のSDS中で少なくとも15分間、目的のストリンジェンシーに応じて室温又はそれよりも高い温度で、フィルターを洗浄する。その後フィルターを0.1×SSC、0.5%のSDSで、30分〜1時間、(再び)室温で洗浄する。プローブとハイブリダイズした核酸を、オートラジオグラフィー又は他の従来の方法で同定する。
【0052】
プローブ配列との相同性が低下している核酸を同定する際には、上記手順を修正してもよい。例えば、検出可能なプローブとの相同性が低下している核酸を得るためには、低ストリンジェンシー条件を用いてもよい。例えば、Na+の濃度が約1Mのハイブリダイゼーション緩衝液において、ハイブリダイゼーション温度を、68℃から42℃まで、5℃ずつ下げていってもよい。ハイブリダイゼーション後、フィルターを2×SSC、0.5%のSDSで、ハイブリダイゼーション温度で洗浄してもよい。これらの条件は、50℃を越える温度では「中程度のストリンジェンシー」条件で、50℃以下の温度では「低ストリンジェンシー」条件であると考えられている。「中程度のストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例として、上記ハイブリダイゼーションを55℃で行った場合が挙げられる。「低ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例として、上記ハイブリダイゼーションを45℃で行った場合が挙げられる。
【0053】
あるいは、ホルムアミドを含む、例えば6×SSCなどの緩衝液中で、42℃でハイブリダイゼーションを行ってもよい。この場合、プローブとの相同性が低下しているクローンを同定するために、ハイブリダイゼーション緩衝液中のホルムアミドの濃度を、50%から0%へ、5%ずつ下げてもよい。ハイブリダイゼーション後、フィルターを6×SSC、0.5%のSDSで、50℃で洗浄してもよい。これらの条件は、ホルムアミドが25%を越える場合には「中程度のストリンジェンシー」条件で、25%以下の場合には「低ストリンジェンシー」条件であると考えられている。「中程度のストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例として、上記ハイブリダイゼーションを30%のホルムアミドで行った場合が挙げられる。「低ストリンジェンシー」ハイブリダイゼーション条件の具体例として、上記ハイブリダイゼーションを10%のホルムアミドで行った場合が挙げられる。
【0054】
プローブとハイブリダイズした核酸を、オートラジオグラフィー又は他の従来の方法で同定する。
【0055】
例えば、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の配列、上記配列の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400若しくは500個の塩基を連続状態で含む断片、及びそれらの相補配列からなる群から選択した核酸配列に対して、少なくとも97%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも70%の相同性を示す配列を有する核酸を単離するのに、上記方法を用いてもよい。デフォルトパラメータを用いたBLASTNのバージョン2.0で相同性を測定してもよい。例えば、相同的なポリヌクレオチドは、ここに記載したコード配列のいずれかに対して自然に発生したアレル変異体であるコード配列を有していてもよい。そうしたアレル変異体には、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41、又はその相補配列の核酸と比較して、1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、付加が生じていてもよい。
【0056】
また、デフォルトパラメータを用いたBLASTPのバージョン2.2.2アルゴリズムで測定した際に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかの配列を有するポリペプチド、又は、上記配列の、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片を有するポリペプチドに対して、少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、又は少なくとも70%の相同性を示すポリペプチドをコードする核酸を単離するのに、上記方法を用いてもよい。
【0057】
本発明の別の態様は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかの配列を、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片を含む、単離又は精製を行ったポリペプチドである。上述のとおり、ポリペプチドをコードする核酸をベクターに挿入し、その際に、該コードされたポリペプチドを適切な宿主細胞内で発現させることができる配列に、コード配列が操作可能な状態で連結されるようにすることにより、該ポリペプチドを得てもよい。例えば、かかる発現ベクターは、プロモーター、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、及び転写ターミネーターを含んでいてもよい。かかるベクターは、発現レベルを調節する適切な配列、複製起点、及び選択マーカーも含んでいてもよい。
【0058】
細菌内でポリペプチド又はその断片を発現させる適切なプロモーターには、大腸菌lac又はtrpプロモーター、lacIプロモーター、lacZプロモーター、T3プロモーター、T7プロモーター、gptプロモーター、ラムダPRプロモーター、ラムダPLプロモーター、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)などの解糖酵素をコードするオペロン由来のプロモーター、及び酸ホスファターゼプロモーターなどがある。真菌プロモーターとしては、α因子プロモーターが挙げられる。真核生物のプロモーターとしては、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、熱ショックプロモーター、初期及び後期SV40プロモーター、レトロウィルス由来のLTR、及びマウスメタロチオネイン−Iプロモーターが挙げられる。原核細胞又は真核細胞内で遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーター及びそれらのウィルスを用いてもよい。
【0059】
哺乳類の発現ベクターは、複製起点、必要とするすべてのリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与体部位及び受容体部位、転写終結配列、及び5’フランキング非転写配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、SV40スプライス部位及びポリアデニル化部位由来のDNA配列を用いて、必要な非転写遺伝要素を提供している場合がある。
【0060】
真核細胞内でポリペプチド又はその断片を発現させるベクターは、発現レベルを高めるエンハンサーも含んでいてもよい。エンハンサーはDNAのシス作用性因子で、通常は約10〜約300bpの長さをもち、プロモーターに作用してその転写を増大させる。例として、複製起点の後部側、bp100〜270にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後部側にあるポリオーマエンハンサー、及びアデノウィルスエンハンサーが挙げられる。
【0061】
また、かかる発現ベクターは、ベクターを含む宿主細胞を選択できるように、選択マーカー遺伝子を1つ以上含んでいることが好ましい。使用してもよい選択マーカーの例としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする遺伝子、又は真核細胞培養物にネオマイシン耐性を与える遺伝子、大腸菌においてテトラサイクリン又はアンピシリン耐性を与える遺伝子、及びS. cerevisiaeTRP1遺伝子が挙げられる。いくつかの実施形態においては、翻訳したポリペプチド又はその断片の分泌を誘発できるリーダー配列を用いて、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチドを、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片をコードする核酸が、適切な相に集められる。状況に応じて、かかる核酸は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片のいずれかと、安定性の増大、精製や検出の簡単さといった望ましい性質を授けるN末端同定ペプチドなどの非相同ペプチド又はポリペプチドとを融合させた融合ポリペプチドをコードすることができる。
【0062】
各種の手順により、適切なDNA配列をベクターに挿入してもよい。一般に、DNA配列がベクター中の目的の場所に連結されるのは、挿入物及びベクターが適切な制限エンドヌクレアーゼで分解された後である。あるいは、PCRによって、適切な制限酵素部位のDNA配列中への工学的処理を行うこともできる。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley 503 Sons, Inc. 1997及びSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2d Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989には、各種クローニング技術が開示されている。かかる手順及びその他の手順は、当業者であればその知識の範囲に入っていると思われる。
【0063】
ベクターの形態は、例えばプラスミドでも、ウィルス粒子でも、又はファージでもよい。その他のベクターとしては、染色体DNA配列、非染色体DNA配列及び合成DNA配列、ウィルス、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウィルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ワクシニア、アデノウィルス、鶏痘ウィルス、及び仮性狂犬病ウィルスなどのウィルスDNAが挙げられる。宿主である原核生物及び真核生物に用いる各種クローニングベクター及び発現ベクターは、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual Second Edition. Cold Spring Harbor, N. Y., (1989) に記載されている。
【0064】
使用してもよい特定の細菌ベクターとしては、周知のクローニングベクターであるpBR322(ATCC37017)、pKK223-3(スウェーデン国、ウプサラ、Pharmacia Fine Chemicals社製)、GEM1(米国、ウィスコンシン州、マジソン、Promega Biotec社製)、pQE70、pQE60、pQE-9(Qiagen社製)、pD10、psiX174 pBlurscript II KS、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Staratagene社製)、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmacia社製)、pKK232-8及びpCM7の遺伝因子を含む市販品のプラスミドが挙げられる。特定の真核ベクターとしては、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene社製)、pSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVL(Pharmacia社製)が挙げられる。しかし、宿主細胞内で複製可能であり、かつ安定しているものであれば、その他のどのようなベクターを用いてもよい。
【0065】
宿主細胞については、原核細胞又は真核細胞など当業者が精通しているものであれば、どのような宿主細胞を用いてもよい。適切な宿主の代表的な例として記載してよいものとしては、大腸菌、Streptomyces、Bacillus subtilis、Salmonella typhimurium、及びPseudomonas属、Streptomyces属、Staphylococcus属に含まれる多様な種などの細菌細胞、酵母などの真菌細胞、ドロソフィラS2又はスポドプテラSf9などの昆虫細胞、CHO、COS又はBowesメラノーマなどの動物細胞、及びアデノウィルスが挙げられる。当業者であれば、適切な宿主を選択できる。
【0066】
かかるベクターの宿主細胞への導入に際しては、エレクトロポレーションによる形質転換、トランスフェクション、トランスダクション、ウィルス感染、遺伝子銃、又はTiを介した遺伝子導入をはじめとするさまざまな技法のどれを用いてもよい。それが適切な場合であれば、工学的処理を行った宿主細胞を、プロモーターの活性化、形質転換体の選択、又は本発明の遺伝子の増幅に適するように、従来の栄養培地を改変した培地で培養することができる。次に述べる適切な宿主株の形質転換及び宿主株の適切な細胞密度への増殖には、適切な手段(例えば、温度変化又は化学的誘導)で選択プロモーターを誘導してもよく、目的のポリペプチド又はその断片が生成されるように、細胞の培養期間を延長してもよい。
【0067】
細胞を遠心分離によって回収し、物理的又は化学的方法によって破壊し、結果として生じた粗抽出物をさらなる精製のために保有しておくのが一般的である。タンパク質の発現に使用する微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的な破壊、又は細胞溶解剤など従来のどの方法で破壊してもよい。これらの方法は、当業者に周知である。発現したポリペプチド又はその断片を、組換え細胞培養物から回収し精製することができる。その際に用いる方法には、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィーなどがある。必要に応じて、ポリペプチドの形状を完成させる際にタンパク質の再折りたたみ工程を使用することができる。望ましい場合は、最終的な精製工程で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用することができる。組換えタンパク質を発現させるため、さまざまな哺乳類細胞培養システムも使用可能である。哺乳類の発現系としては、サル腎臓線維芽細胞のCOS−7株(Cell, 23: 175 (1981)にGluzmanによる記載あり)、及びC127、3T3、CHO、HeLa及びBHK細胞株など、適合性ベクター由来のタンパク質を発現させられるその他の細胞株が例示できる。
【0068】
宿主細胞内の構造物を従来の手法で用いて、組換え型配列にコードされる遺伝子産物を生成することができる。組換え体の生成手順で使用した宿主に応じて、ベクターを含む宿主細胞が生成したポリペプチドは、グリコシル化されていてもよく、グリコシル化されていなくてもよい。本発明のポリペプチドは最初のメチオニンアミノ酸残基を含んでいても含んでいなくてもよい。
【0069】
あるいは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片を、従来のペプチド合成機での合成により生成することができる。他の実施形態においては、ポリヌクレオチドの断片又は部分を使用して、対応する完全長ポリペプチドをペプチド合成によって生成してもよい。したがって、完全長ポリペプチドを生成するための中間物質として、かかる断片を使用してもよい。
【0070】
ポリペプチド又はその断片をコードする核酸に操作可能な状態で連結されたプロモーターを含むDNAコンストラクトから転写されたmRNAを用いて、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片を生成する際には、無細胞翻訳系も使用することができる。いくつかの実施形態においては、インビトロでの転写反応を行う前に、かかるDNAコンストラクトを線状化してもよい。次いで、転写されたmRNAを、ウサギの網状赤血球抽出物などの適切な無細胞翻訳抽出物でインキュベーションして、目的のポリペプチド又はその断片を生成する。本発明はまた、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片の変異体に関する。「変異体」という語には、これらのポリペプチドの誘導体又は類似体が含まれる。特に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド由来のアミノ酸配列に生じる1つ以上の置換、付加、欠失、融合及び切断が変異体間の相違点となる場合がある。これらはあらゆる組み合わせで生じている場合がある。
【0071】
かかる変異体は、自然に生じる場合もあれば、インビトロで作製される場合もある。特に、特定部位の突然変異誘発、ランダムな化学的突然変異誘発、エキソヌクレアーゼIIIの欠失などの遺伝子組換え技術、及び標準的なクローニング技術を用いてかかる変異体を作製してもよい。あるいは、化学合成又は化学修飾により、かかる変異体、断片、類似体、又は誘導体を作製してもよい。他の変異体作製方法も、当業者にはよく知られている。そうした方法のなかには、天然の隔離集団から得た核酸配列を修飾して、自らの産業上又は実験上の応用価値を高めるような性質をもつポリペプチドをコードする核酸を作製する方法が含まれる。そうした手順においては、天然の隔離集団から得た配列との間でヌクレオチドの相違点を1つ以上有している大量の変異体配列を作製し、その性質決定を行う。これらのヌクレオチドの相違点により、天然の隔離集団由来の核酸がコードするポリペプチドでアミノ酸の変化が生じることが好ましい。例えば、変異性PCRを用いて変異体を作製してもよい。変異性PCRでは、PCR産物の全長に沿って高い割合で点変異が得られるように、DNAポリメラーゼの信頼度が低い条件でDNA増幅を行う。変異性PCRについては、Leung, D. W., et al., Technique, 1: 11-15 (1989)及びCaldwell, R. C. & Joyce G. F., PCR Method Applic., 2: 28-33 (1992)に記載されている。また、特定部位の突然変異誘発を使って、目的とするクローン化DNAセグメント内に部位特異的な突然変異を発生させ、変異体を作製してもよい。オリゴヌクレオチドの突然変異誘発については、Reidhaar-Orson, J. F. & Sauer, R. T., et al., Science, 241: 53-57 (1988) に記載されている。配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドの変異体は、(i)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドの、1つ以上のアミノ酸残基が、保存又は非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)で置換され、かかる置換されたアミノ酸残基が遺伝子コードにコードされている場合もあれば、コードされていない場合もある変異体であってもよい。
【0072】
同類置換とは、ポリペプチド中の所定のアミノ酸を、同様の特徴をもつ別のアミノ酸で置換することである。同類置換として一般的に見うけられるのは、次のような置換である:Ala、Val、Leu及びIleなどの脂肪族アミノ酸を別の脂肪族アミノ酸で置換する;SerをThrで置換する、またはその逆;Asp又はGluなどの酸性残基を別の酸性残基で置換する;Asn又はGlnなどのアミド基を有する残基を、アミド基を有する別の残基で置換する;Lys又はArgなどの塩基性残基を、別の塩基性残基で置換する;及びPhe又はTyrなどの芳香族残基を、別の芳香族残基で置換する。
【0073】
他の変異体としては、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドの、1つ以上のアミノ酸残基に置換基が含まれるものがある。
【0074】
その他の変異体としては、かかるポリペプチドが、ポリペプチドの半減期を延長する化合物(例えば、ポリエチレングリコール)などの他の化合物と会合しているものがある。
【0075】
さらに他の変異体としては、追加されたアミノ酸がポリペプチドと融合しているもの、例えば、リーダー配列、分泌配列、プロタンパク質配列又はポリペプチドの精製、濃縮若しくは安定化を促進する配列がある。いくつかの実施例においては、かかる断片、誘導体及び類似体は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドと同様の生物学的機能又は活性を保有している。他の実施形態においては、かかる断片、誘導体又は類似体には、かかる断片、誘導体又は類似体から酵素によって全体的又は部分的に切り離すことができるポリペプチドの精製、濃縮、検出、安定化又は分泌を促進する融合異種配列が含まれる。
【0076】
本発明の別の態様は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は95%以上の相同性を有するポリペプチド又はその断片である。相同性の測定には、デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2でなどのプログラムを用いてもよい。このプログラムは、比較対象のポリペプチド又は断片を整列させ、比較対象物間のアミノ酸の相同性又は類似性の程度を測定する。当然のことながら、アミノ酸「相同性」には上述した同類置換も含まれる。
【0077】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に対して相同性を有するポリペプチド又は断片を、それらをコードする核酸を上記の技法で単離することによって得てもよい。
【0078】
あるいは、生化学的濃縮手順又は精製手順により、相同的なポリペプチド又は断片を得てもよい。相同的と思われるポリペプチド又は断片の配列を、タンパク質分解、ゲル電気泳動、及び/又はマイクロシーケンシングによって測定してもよい。デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2などのプログラムを用いて、相同的と思われるポリペプチド又は断片の配列を、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のいずれかのポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片と比較することができる。
【0079】
本発明の、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片、誘導体又は類似体を、さまざまな応用に用いてもよい。例えば、ポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体を、生化学反応の生体触媒として用いてもよい。特に、ポリケチド又はその下部構造の合成若しくは修飾を誘発するために、AYTTファミリー、すなわち、配列番号4及び26のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体;ACPIファミリー、すなわち、配列番号6及び28のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体;AOTFファミリー、すなわち、配列番号8及び30のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体;PKUNファミリー、すなわち、配列番号10、12、14、32、34及び36のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体;AYOAファミリー、すなわち、配列番号16及び38のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体を、どのようにでも組み合わせて、インビトロ又はインビボで用いてもよい。宿主により内生的に生成され、成長培地に補充された化合物、又は、精製若しくは濃縮を行ったOXRYポリペプチドの無細胞調製物に添加された化合物を修飾する酸化還元反応に触媒作用を及ぼすため、OXRYファミリー、すなわち、配列番号18のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体をインビトロ又はインビボで用いてもよい。宿主により内生的に生成され、成長培地に補充された化合物、又は、精製若しくは濃縮を行ったMTFAポリペプチドの無細胞調製物に添加された化合物を修飾するメチル化反応に触媒作用を及ぼすため、MTFAファミリー、すなわち、配列番号20のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体をインビトロ又はインビボで用いてもよい。宿主により内生的に生成され、成長培地に補充された化合物、又は、精製若しくは濃縮を行ったOXRCポリペプチドの無細胞調製物に添加された化合物を修飾する酸化反応に触媒作用を及ぼすため、OXRCファミリー、すなわち、配列番号23及び40のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体をインビトロ又はインビボで用いてもよい。アシル運搬体タンパク質若しくはドメイン、チオール化タンパク質若しくはドメイン、又はペプチジル運搬体タンパク質若しくはドメインのホスホパンテテイニル化反応に触媒作用を及ぼすため、PPTFファミリー、すなわち、配列番号42のポリペプチド、又はその断片、誘導体若しくは類似体をインビトロ又はインビボで用いてもよい。
【0080】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片、誘導体又は類似体を用いて、ポリペプチド、断片、誘導体又は類似体に特異的に結合する抗体を作製してもよい。配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及び23から作製される抗体を用いて、生体試料中にStreptomyces platensis subsp. rosaceus又は関連微生物が含まれているかどうかを測定してもよい。配列番号26、28、30、32、34、36、38、40及び42から作製される抗体を用いて、生体試料中にStreptomyces amphibiosporus又は関連微生物が含まれているかどうかを測定してもよい。そうした手順においては、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれか、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に特異的に結合できる抗体と、生体試料とを接触させる。その後、かかる生体試料の抗体結合能力を測定する。例えば、蛍光剤、酵素標識又は放射性同位元素などの検出可能な標識を用いて抗体に標識を施すことによって、結合を測定してもよい。あるいは、検出可能な標識を施された二次抗体を用いて、抗体の試料への結合を測定してもよい。試料中のStreptomyces platensis subsp. rosaceus若しくはStreptomyces amphibiosporus又は配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42に関連するポリペプチドの有無を検出するために使用してもよいさまざまな測定方法のプロトコルは、当業者によく知られている。特定の測定方法としては、ELISA法、サンドイッチ法、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロットがある。あるいは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42から作製した抗体を用いて、生体試料中に、ポリケチド類、又は自然状態で部分的にポリケチドの特徴を有する他の類の天然物の生合成に関与する場合もある、関連ポリケチドが含まれているかを測定してもよい。配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に対して作製されたポリクローナル抗体は、かかるポリペプチドを動物に直接注入すること、又はかかるポリペプチドを動物に、好ましくは非ヒト動物に投与することにより、得ることが可能である。そのようにして得た抗体は、その後、ポリペプチド自体に結合する。このように、ポリペプチドの断片のみをコードする配列でさえ、未加工のポリペプチド全体に結合すると思われる抗体の作製に使用できる。その後かかる抗体を使用して、該ポリペプチドを発現する細胞から該ポリペプチドを単離することができる。
【0081】
モノクローナル抗体の調製に使用する技術としては、連続細胞系培養物から作製される抗体を提供できるものであれば、どのようなものでも使用できる。例としては、ハイブリドーマ法(Kholer and Milstein, 1975, Nature, 256: 495-497)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor et al., 1983, Immunology Today 4: 72)、及びEBVハイブリドーマ法(Cole, et al., 1985, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)が挙げられる。
【0082】
一本鎖抗体の製造法(米国特許第4,946,778号)に記載の方法を適用して、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に対する一本鎖抗体を作製することができる。あるいは、トランスジェニックマウスを使用して、これらのポリペプチド又はその断片に対するヒト化抗体を発現させてもよい。
【0083】
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド、又は、上記配列の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含む断片に対して作製された抗体を、生物又はその無細胞抽出物を含む試料から類似したポリペプチドをスクリーニングする際に使用してもよい。そうした方法においては、試料のポリペプチドを抗体と接触させ、かかる抗体に特異的に結合するポリペプチドを検出する。抗体結合の検出には、上記のいずれの方法を用いてもよい。そうしたスクリーニング法の1つが、“Methods for measuring Cellulase Activities”、Methods in Enzymology, Vol 160, pp. 87-116に記載されている。
【0084】
ここで使用する「配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コード」という語には、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のヌクレオチド配列、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の断片、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41に相同的なヌクレオチド配列、又は配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の断片に相同的なヌクレオチド配列、及び前記全配列の相補配列が含まれる。かかる断片としては、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の部分であって、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、150、200、300、400若しくは500個のヌクレオチドを連続状態で含むものが挙げられる。該断片は新規断片であることが好ましい。配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の相同配列及び断片とは、これらの配列に対して、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、75%又は70%の相同性を有する配列のことである。相同性の測定は、デフォルトパラメータを用いたBLASTN及びTBLASTXをはじめとする、ここに記載したコンピュータプログラム及びパラメータのいずれを用いて行ってもよい。相同配列には、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コード中のチミンがウリジンに置換されているRNA配列も含まれる。相同配列は、ここに記載したどの手順を用いて得てもよく、また、シーケンシングエラー訂正の結果として生じる場合もある。当然のことながら、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コードは、G、A、T及びCがデオキシリボ核酸(DNA)配列のグアニン、アデニン、チミン及びシトシン塩基をそれぞれ表し、G、A、U及びCがリボ核酸(RNA)配列のグアニン、アデニン、ウラシル及びシトシン塩基をそれぞれ表す、従来の1文字表記形式(Stryer, Biochemistry, 3rd edition, W. H. Freeman & Co., New Yorkの裏表紙の見返し部分を参照のこと)、又は、配列中のヌクレオチドの同一性を記録する他のどの形式でも表すことができる。
【0085】
「配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドコード」という語には、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のcDNAにコードされる配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド配列、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドに相同的なポリペプチド配列、又は前記配列の断片が含まれる。相同的なポリペプチド配列とは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチド配列のいずれかに対して、少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、80%、75%又は70%の相同性を有するポリペプチド配列のことである。ポリペプチド配列の相同性の測定は、デフォルトパラメータ又はユーザー指定パラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2をはじめとする、ここに記載したコンピュータプログラム及びパラメータのいずれを用いて行ってもよい。相同配列は、ここに記載したどの手順を用いて得てもよく、また、シーケンシングエラー訂正の結果として生じる場合もある。ポリペプチド断片は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドの、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100若しくは150個のアミノ酸を連続状態で含んでいる。該断片は新規断片であることが好ましい。当然のことながら、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41のポリペプチドコードは、従来の1文字表記形式又は3文字表記形式(Stryer, Biochemistry, 3rd edition, W. H. Freeman & Co., New Yorkの裏表紙の見返し部分を参照のこと)、又は、配列中のポリペプチドの同一性に関する他のどの形式でも表すことができる。
【0086】
当業者であれば容易にわかることだが、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コード、及び配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドコードは、コンピュータによる読み取り及びアクセスが可能ないかなる媒体においても、保存、記録、及び操作が可能である。ここで使用する「記録した」及び「保存した」という語は、コンピュータ媒体に情報を保存する処理のことである。熟練者であれば、コンピュータ読み取り可能な媒体に情報を記録する、現時点で周知の方法を容易に適用して、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の1つ以上の核酸コード、及び配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42の1つ以上のポリペプチドコードを含む製品を作製することができる。
【0087】
本発明の別の実施形態は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コード、及び配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドコードからなる群より選択される配列を保存したコンピュータ読み取り可能な媒体である。本発明の別の態様は、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の1つ以上の核酸コード、好ましくは、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の、少なくとも2、5、10、15又は20個の核酸コードを保存したコンピュータ読み取り可能な媒体である。本発明の別の態様は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42の1つ以上のポリペプチドコード、好ましくは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42の、少なくとも2、5、10、15又は20個のポリペプチドコードを保存したコンピュータ読み取り可能な媒体である。
【0088】
本発明の別の実施形態は、処理装置と、配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39及び41の核酸コード、及び配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドコードからなる群より選択される参照配列が保存されているデータ保存装置とを含むコンピュータシステムである。
【0089】
コンピュータ読み取り可能な媒体としては、磁気的に読み取りが可能な媒体、光学的に読み取りが可能な媒体、電子的に読み取りが可能な媒体、及び磁気/光学的媒体が挙げられる。例えば、該コンピュータ読み取り可能な媒体が、ハードディスク、フレキシブルディスク、磁気テープ、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、又はリードオンリーメモリ(ROM)、及び当業者に周知の他の種類の媒体であってもよい。
【0090】
これより本発明を下記の実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明がそれら実施例に制限されるものではないことは、承知されてしかるべきである。
【実施例1】
【0091】
ドリゴシン生合成遺伝子クラスターの同定及びシーケンシング
農業研究サービスカルチャーコレクション(61604、イリノイ州、ピオリア、ユニヴァーシティーストリート、1815Nに所在のNational Center for Agricultural Utilization Research)より、微生物Streptomyces platensis subsp. rosaceus AB1981F−75(NRRL18993)株を入手し、微生物学の標準的技法(上記Kieser et al.)を用いて培養した。この生物をオートミール寒天培地上にて数日間28℃で増殖させた。高分子量のゲノムDNAを単離するため、増殖させたばかりの、ほぼ密集状態になっている3つの100mmペトリ皿の細胞集団を使用した。かかる細胞集団をプラスチック製のスパチュラでそっとすくい取って回収した。STE緩衝液(75mMのNaCl、20mMのTris−HCl、pH8.0、25mMのEDTA)で繰返し洗浄し、残った寒天培地を除去した。確立したプロトコル(上記Kieser et al.)により、高分子量のDNAを単離し、FIGE MAPPERTM power supply(BIORAD社製)の事前設定プログラムNo.6を用いたフィールドインバージョンゲル電気泳動(FIGE)により、その完全性を実証した。この高分子量ゲノムDNAは、大型断片のクラスター同定ライブラリー(CIL)、すなわち、大型挿入物のライブラリーだけではなく、小型断片のゲノムサンプリングライブラリー(GSL)、すなわち、小型挿入物のライブラリーの調製にも役に立つ。これらのライブラリーはともに、ランダムに作製されたS. platensisのゲノムDNA断片を含んでおり、そのため、この生物の全ゲノムを代表するものとなっている。
【0092】
S. platensisのGSLライブラリー構築のため、ゲノムDNAを超音波でランダムに切断した。サイズ範囲が1.5〜3kbのDNA断片をアガロースゲル上で分画し、分子生物学の標準的な技法(上記Sambrook et al.)を用いて単離した。T4 DNAポリメラーゼ(Roche社製)を供給業者の記載のとおりに用いて、得られたDNA断片の末端を修復した。この酵素は、その後のクローン化処理により適切なベクターにすることが可能な、平滑末端を有するDNA断片を作製する。クローン化DNA断片の転写を妨げるpBluescriptSK+ベクター(Stratagene社製)の誘導体に、修復したDNA断片をサブクローンする。このベクターを選択したのは、T3、T7、SK及びKS(Stratagene社製)などのユニバーサルシーケンシングプライマーに対応する配列に囲まれた便利なポリリンカー領域を含んでいるためである。平滑末端DNA断片の挿入が可能になることから、ポリリンカー領域で見られる固有のEcoRV制限部位を使用した。挿入物の結合、宿主である大腸菌DH10B(Invitrogen社製)を形質転換させるための結合産物の使用、及び組換え型クローンの選択は、文献(上記Sambrook et al.)記載のとおりに行った。S. platensisのゲノムDNA断片を含むプラスミドDNAをアルカリ溶解法(上記Sambrook et al.)で抽出して、サイズが1.5〜3kbの挿入物をアガロースゲル電気泳動で確認した。この手順を用いて、研究対象の微生物の全ゲノムをカバーする小型ランダムゲノムDNA断片のライブラリーを構築している。作製可能な個々のクローン数は無限だが、少数だけをさらに分析してかかる微生物のゲノムの試料を採取している。
【0093】
SuperCos-1コスミドベクター(StratageneTM社製)を用いて、S. platensisの高分子量ゲノムDNAからCILライブラリーを構築した。製造者の指示にしたがい、コスミドアームを調製した。製造者から供給された緩衝液中で、DNA100μgあたり約1単位のSau3AI制限酵素(New England Biolabs社製)を使用して、高分子量DNAを37℃で部分的に分解した。この酵素は、当初のDNA未分解時のサイズのものから、ゲノム中の酵素DNA制限部位の頻度及びDNA分解の程度によって長さが異なる短い断片まで、DNAのランダムな断片を作製する。さまざまな時点で、分解物の部分標本を新しい微量遠心チューブに移し、最終濃度で10mMのEDTA及び0.1%のSDSを添加して、かかる酵素を失活させた。目的とするサイズ範囲(30〜50kb)の重要なDNA断片を含むことがFIGE分析によって判明した部分標本をプールし、フェノール/クロロホルム(1:1 vol:vol)で抽出し、エタノール沈殿によりペレット化した。製造者の説明書にしたがってアルカリホスファターゼ(Roche社製)を用いて、Sau3AI DNA断片の5’末端を37℃で30分間脱リン酸化した。かかるホスファターゼを70℃で10分間熱失活させ、フェノール/クロロホルム(1:1 vol:vol)でDNAを抽出し、エタノール沈殿によりペレット化し、滅菌水に再懸濁した。脱リン酸化したSau3AI DNA断片を、モルにして約4倍を越えるSuperCos-1コスミドアームを含む反応において、室温で一晩SuperCos-1コスミドアームに結合させた。GigapackR III XL パッケージング抽出物(StratageneTM社製)を製造者の説明書にしたがって使用し、結合産物のパッケージングを行った。CILライブラリーは、大腸菌DH10B(Invitrogen社製)中の864個の単離したコスミドクローンで構成されていた。これらのクローンを選び、LB培養液(水1リットルあたり:10.0gのNaCl、10.0gのトリプトン、5.0gの酵母エキス)を入れた9枚の96ウェルマイクロタイタープレートに移し、一晩増殖させた後、最終濃度で25%のグリセロールを含むように調節した。これらのマイクロタイタープレートを−80℃で保管し、CILライブラリー用グリセロールの備蓄品とした。二つ組のマイクロタイタープレートをナイロン膜上に下記のように並べた。マイクロタイター上で増殖した培養物を、ペレット化及び少量のLB培養液での再懸濁によって濃縮した。1グリッドあたり96ピンの3×3グリッドをナイロン膜に置いた。完全なCILライブラリーであるこれらの膜を、その後LB寒天上で層状とし、37℃で一晩インキュベーションし、コロニーが育つようにした。DNAを変性させるため、事前に0.5NのNaOH/1.5MのNaClに10分間浸しておいた濾紙上で、かかる膜を層状とし、その後、事前に0.5MのTris(pH8)/1.5MのNaClに10分間浸しておいた濾紙上に移して中和した。細胞の残骸をプラスチック製のスパチュラでそっとすくい取り、GS GENE LINKERTM UV Chamber(BIORAD社製)を使用したUV照射により、DNAを膜上に交差結合させた。放射線菌ゲノムの平均サイズが8Mbであること、及びCILライブラリー中のゲノム挿入物の平均サイズが35kbであることを考えると、このライブラリーは、かかる微生物の全ゲノムのおよそ4倍をカバーしていることになる。
【0094】
クローン処理したゲノムDNA挿入物の配列決定により、GSLライブラリーを分析した。フォワード(F)プライマーと称されるユニバーサルプライマーのKS又はT7を使用して標識DNAの重合を開始した。TF、BDTv2.0シーケンシングキットを供給業者(Applied Biosystems社)の指示のとおりに用いて、プライミング部位から少なくとも700bpを規定どおりに伸長させることができる。3700 ABI capillary electrophoresis DNA sequencer(Applied Biosystems社製)を用いて、小型ゲノムDNA断片(ゲノム配列タグ、GST)の配列分析を行った。読み込むDNA配列の長さは平均で〜700bpだった。各種タンパク質配列データベースとの配列相同性を比較して、得られたGSTをさらに分析した。得られたGSTのDNA配列をアミノ酸配列に翻訳し、文献(上記Altschul et al.)記載のアルゴリズムを用いて、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の非冗長タンパク質データベース及び占有的なエコピア天然産物生合成遺伝子データベースであるDecipherTMと比較した。データベースに存在する機能が明らかな既知のタンパク質との配列類似性により、翻訳されたGSTにコードされる部分タンパク質の機能を予測することが可能となる。
【0095】
合計で1536個のS. platensisのGSTを作製し、Blastアルゴリズムを用いた配列比較によって分析した(上記Altschul et al.)。配列のアラインメントが少なくともe−5というE値を示すと、その配列は有意な相同性を有していると見なされ、さらに評価を加えるために保存された。目的の遺伝子との類似性を示すGSTをこの時点で選択して、目的の遺伝子を含むCILライブラリーからより大型のゲノムDNAセグメントを同定する際に用いることができる。ドリゴシン及びミグラスタチンはポリケチドであるため、I型PKS遺伝子の部分であることが明らかな数個のS. platensisのGSTを追求した。これらのI型PKSのGSTを用いて、本発明者らは実際にS. platensis内のI型PKS遺伝子座を同定した。しかし、PKSドメインの順序及びこのI型PKSのモジュール数は、ドリゴシン及びミグラスタチンの構造と矛盾するものであった(データは図示せず)。I型PKS遺伝子の部分であることが明らかなGSTの他にも、本発明者らはI型PKS遺伝子に何らかの関わりがあるGSTを同定している。後者をCILライブラリーのスクリーニング用プローブとして用いて、結果として生じたコスミドクローンの配列決定を行ったところ、ドリゴシン生合成遺伝子座であることが判明した例外的なPKS遺伝子クラスターを同定した。
【0096】
製造者により供給されたキナーゼ反応緩衝液中に5ピコモルのオリゴヌクレオチドと6.6ピコモルの[γ−P32]ATPを含む15μlの反応液において、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs社製)を使用し、ハイブリダイゼーションオリゴヌクレオチドプローブをP32で放射能標識した。最終濃度が5mMになるようにEDTAを添加することにより、1時間後に37℃でキナーゼ反応を終了させた。積分器の機能を内蔵したモデル3ガイガーカウンター(テキサス州、スイートウォーター、Ludlum Measurements Inc.社製)を用いて、放射能標識したオリゴヌクレオチドプローブの特異的作用を評価した。85℃で10分間のインキュベーションに続いて氷中での急速冷却を行うことにより、放射能標識したオリゴヌクレオチドプローブを使用の直前に熱変性させた。
【0097】
ハイブリダイゼーションオーブンを低速振盪で使用し、プレハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、20mMのNaH2PO4、5×Denhardt's、0.4%のSDS、超音波処理及び変性処理済の0.1mg/mlのシャケ精子DNA)において、42℃で少なくとも2時間のインキュベーションを行うことにより、S. platensisCILライブラリー膜を前処理した。その後、1×106cpm/mlの放射能標識オリゴヌクレオチドプローブを含むハイブリダイゼーション溶液(6×SSC、20mMのNaH2PO4、0.4%のSDS、超音波処理及び変性処理済の0.1mg/mlのシャケ精子DNA)にかかる膜を入れ、ハイブリダイゼーションオーブンを低速振盪で使用し、42℃で一晩のインキュベーションを行った。翌日、ハイブリダイゼーションオーブンを低速振盪で使用して、洗浄緩衝液(6×SSC、0.1%のSDS)でかかる膜を46℃、48℃及び50℃で、45分間ずつ洗浄した。その後、S. platensisCIL膜をX線フィルムに曝露し、陽性のコスミドクローンの視覚化及び同定を行った。陽性のクローンを同定し、アルカリ溶解法(上記Sambrook et al.)を使用して30mlの培養物からコスミドDNAを抽出し、ショットガンシーケンシング法(Fleischmann et al., Science, 269: 496-512)により、かかる挿入物の完全な配列決定を行った。
【0098】
Phred-PhrapTMアルゴリズム(米国、シアトル、ワシントン大学)を用いて、配列決定時に読み込んだ情報を組み立てて、コスミド挿入物の全DNA配列を再作製した。元のコスミドの末端に由来するプローブを用いてCILライブラリーのハイブリダイゼーションを繰り返すと、元のコスミド配列の両端にある配列情報を無限に拡張することができ、最終的には、目的の遺伝子クラスターを完全な形で得ることができる。ドリゴシンの構造は、それが10個のモジュールを含むモジュラー型I型ポリケチドシンターゼ(PKS)によって合成されたことを示唆している。I型PKSに間接的に関連するGSTに由来しているオリゴヌクレオチドプローブによって検出された3個のオーバーラップコスミドクローンの完全な配列決定を行い、ドリゴシン生合成遺伝子座を含む約54KbのDNAを得た(図1)。
【実施例2】
【0099】
ドリゴシンの生合成に関与する遺伝子及びタンパク質
ドリゴシン遺伝子座は11個のタンパク質をコードし、塩基対52,101の後ろから始まる1つの間隙以外は隣接しているDNAの約53,800の塩基対に及んでいる。ドリゴシン遺伝子座の各サイドで、DNA配列のうち15キロ塩基以上を分析した。これらの領域は一次代謝遺伝子を含むものである。ドリゴシン生合成遺伝子座のタンパク質(DORR ORF)を示す11個のオープンリーディングフレームの順序及び相対的位置を、図1に示す。図1の上部にある線は、キロ塩基対を単位とするスケールである。黒い線は配列決定において小さな隙間(<100bp)によって分断された2個のDNAcontigを示す。矢印はドリゴシン生合成遺伝子座の11個のオープンリーディングフレームを表す。
【0100】
このように、ドリゴシン生合成を制御する遺伝子の完全な遺伝子座を、2個のDNA隣接配列(配列番号1及び22)により形成した。ドリゴシン生合成遺伝子座内で見られるように、DNAcontig1(配列番号1)の52101塩基対が、DNAcontig2(配列番号22)の5’末端に隣接するように、隣接ヌクレオチド配列を調節した。配列番号1の隣接ヌクレオチド配列には、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20に列挙されている10個のオープンリーディングフレーム(ORF)が含まれている。DORR ORF1(配列番号2)は、contig1(配列番号1)の残基3720〜67(アンチセンス鎖)から引き出された配列番号3の核酸配列から推定した1217個のアミノ酸である。DORR ORF2(配列番号4)は、contig1(配列番号1)の残基4092〜5681(センス鎖)から引き出された配列番号5の核酸配列から推定した529個のアミノ酸である。DORR ORF3(配列番号6)は、contig1(配列番号1)の残基5767〜6018(センス鎖)から引き出された配列番号7の核酸配列から推定した83個のアミノ酸である。DORR ORF4(配列番号8)は、contig1(配列番号1)の残基6023〜7993(センス鎖)から引き出された配列番号9の核酸配列から推定した656個のアミノ酸である。DORR ORF5(配列番号10)は、contig1(配列番号1)の残基8009〜17587(センス鎖)から引き出された配列番号11の核酸配列から推定した3192個のアミノ酸である。DORR ORF6(配列番号12)は、contig1(配列番号1)の残基17634〜41714(センス鎖)から引き出された配列番号13の核酸配列から推定した8026個のアミノ酸である。DORR ORF7(配列番号14)は、contig1(配列番号1)の残基41772〜47633(センス鎖)から引き出された配列番号15の核酸配列から推定した1953個のアミノ酸である。DORR ORF8(配列番号16)は、contig1(配列番号1)の残基47635〜49890(センス鎖)から引き出された配列番号17の核酸配列から推定した751個のアミノ酸である。DORR ORF9(配列番号18)は、contig1(配列番号1)の残基49922〜50938(センス鎖)から引き出された配列番号19の核酸配列から推定した338個のアミノ酸である。DORR ORF10(配列番号20)は、contig1(配列番号1)の残基51234〜52079(センス鎖)から引き出された配列番号21の核酸配列から推定した281個のアミノ酸である。配列番号22の隣接ヌクレオチド配列(1700塩基対)には、DORR ORF11(配列番号23)が含まれている。DORR ORF11(配列番号23)は、予想されるポリペプチドのC末端を表す328個のアミノ酸であって、contig2(配列番号22)の残基163〜1149(センス鎖)から引き出された配列番号24の核酸配列から推定したものである。
【0101】
2つの寄託株、すなわち、ドリゴシンの部分的生合成遺伝子座のコスミドクローンをそれぞれ含む大腸菌DH10B(088CF)株及び大腸菌DH10B(088CX)株は、カナダ国、R3E 3R2、マニトバ州、ウィニペグ、アーリントンストリート 1015のカナダ国保険省微生物局、カナダ国際寄託局に、2001年2月27日に寄託され、寄託のアクセッション番号は、それぞれIDAC270201−3及び270201−4であった。寄託した大腸菌株をここでは「寄託株」と称する。
【0102】
かかる寄託株は、ドリゴシンの完全な遺伝子座を含んでいる。本書類中の配列に関する記載との間で齟齬が生じた場合は、寄託株に含まれるポリヌクレオチド配列及びそれらにコードされるあらゆるポリペプチドのアミノ酸配列が優先される(controlling)。
【0103】
かかる寄託株の寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に基づいて行われた。特許証が発行されると、寄託株は最終的なものとして、無制限又は無条件で公開される。寄託株は当業者の便宜のためだけに提供されるものであり、米国特許法第112条で要求されている実施可能要件を満たすために寄託が必要というわけではない。寄託株及びそれに由来する化合物の作製、使用又は販売には許諾が必要となる場合があり、かかる許諾が寄託により与えられることはない。
【0104】
ドリゴシン生合成遺伝子座における遺伝子の機能を同定するため、デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2アルゴリズムにより、DORR ORF1〜11(配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及び23)を、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の非冗長タンパク質データベース、及び微生物遺伝子、経路及び天然産物のデータベースであるDecipherTM(カナダ国、ケベック州、サンローラン、Ecopia BioSciences Inc.社への登録により利用可能)中の配列と比較した。
【0105】
このBlast分析によりGenBankで最もヒット数が多かったアクセッション番号を、対応するE値とともに表2に示す。E値は、観察されたアラインメントスコアと少なくとも同じアラインメントスコアをもつチャンスアラインメントの予測数に関連している。E値が0.00ということは、完全なホモログであることを示す。E値の計算は、Altschul et al. J. Mol. Biol., October 5; 215 (3) 403-10に記載のとおりに行い、その教示内容をここに参照として組み込んでおく。かかるE値は、相同だと考えるのが当然とされるほど充分な類似性を、2つの配列が示しているかどうかを確認する際に役に立つ。
【0106】
【表2】
【実施例3】
【0107】
ラクトイミドマイシン生合成遺伝子クラスターの同定及び配列決定
ミグラスタチンとラクトイミドマイシンの構造的類似性(図3)を考慮すると、それらの生合成遺伝子座の類似性は同等であると予想される。本発明者らは、所有のドリゴシン生合成遺伝子座を用いて、Streptomyces amphibiosporusATCC53964からのラクトイミドマイシン生合成遺伝子座の同定及び配列決定に着手した。実施例1で記載したゲノム試料採取方法をS. amphibiosporus由来のゲノムDNAに適用した。フォワードプライマーを使用して、全部で480個のGSLクローンの配列を決定し、Blastアルゴリズム(上記Altschul et al.)を用いた配列比較により分析を行い、ドリゴシン生合成遺伝子に関連する挿入物を含むクローンを同定した。かかるGSTクローンをいくつか同定し、それを使用して、S. amphibiosporusCILライブラリーからコスミドクローンを単離した。例えば、1つのオリゴヌクレオチドプローブが由来しているGSTクローン(挿入物のサイズは約2.5kb)は、明らかに、ドリゴシンORF7のホモログをコードしていたS. amphibiosporusゲノム由来の遺伝子の一部であった。このGSTを順方向に読みこんだものは、ドリゴシンシンターゼのモジュール10のDHのC末端部分の前にあるドリゴシンシンターゼのモジュール10のKRドメインのN末端部分に相当する、アミノ酸1112〜1354に対して少なくとも58%の相同性及び68%の類似性を有するポリペプチドをコードしている。このGSTを逆方向に読みこんだものは、ドリゴシンシンターゼのモジュール10の相互作用ドメインのN末端部分の前にあるドリゴシンシンターゼのモジュール10のKSドメインのC末端部分に相当する、アミノ酸545〜768に対して少なくとも54%の相同性及び64%の類似性を有するポリペプチドをコードしている。したがって、このGSTクローンの2.5kbの挿入物は、オープンリーディングフレームがクローニングベクターのT3プライマーと同じ向きになるような配向となっていた。オーバーラップコスミドクローンの配列決定により、ラクトイミドマイシン生合成遺伝子座を含むDNAを50Kb以上得た(図4)。
【実施例4】
【0108】
ラクトイミドマイシンの生合成に関与する遺伝子及びタンパク質
ラクトイミドマイシン遺伝子座は9個のタンパク質をコードし、1つの隣接DNA配列(配列番号25)に開示されているDNAの約50500の塩基対に及んでいる。ラクトイミドマイシン生合成遺伝子座のタンパク質(LACT ORF)を示す9個のオープンリーディングフレームの順序及び相対的位置を、図4に示す。図4の上部にある線は、キロ塩基対を単位とするスケールである。矢印はラクトイミドマイシン生合成遺伝子座の9個のオープンリーディングフレームを表す。
【0109】
したがって、LACT ORF1(配列番号26)は、配列番号25の残基1〜1698(センス鎖)から引き出された配列番号27の核酸配列から推定した565個のアミノ酸である。LACT ORF2(配列番号28)は、配列番号25の残基1908〜2162(センス鎖)から引き出された配列番号29の核酸配列から推定した84個のアミノ酸である。LACT ORF3(配列番号30)は、配列番号25の残基2166〜4136(センス鎖)から引き出された配列番号31の核酸配列から推定した656個のアミノ酸である。LACT ORF4(配列番号32)は、配列番号25の残基4152〜14462(センス鎖)から引き出された配列番号33の核酸配列から推定した3436個のアミノ酸である。LACT ORF5(配列番号34)は、配列番号25の残基14549〜39631(センス鎖)から引き出された配列番号35の核酸配列から推定した8360個のアミノ酸である。LACT ORF6(配列番号36)は、配列番号25の残基39628〜45924(センス鎖)から引き出された配列番号37の核酸配列から推定した2098個のアミノ酸である。LACT ORF7(配列番号38)は、配列番号25の残基45926〜48232(センス鎖)から引き出された配列番号39の核酸配列から推定した768個のアミノ酸である。LACT ORF8(配列番号40)は、配列番号25の残基48441〜49697(センス鎖)から引き出された配列番号41の核酸配列から推定した418個のアミノ酸である。LACT ORF9(配列番号42)は、配列番号25の残基50543〜49800(アンチセンス鎖)から引き出された配列番号43の核酸配列から推定した247個のアミノ酸である。ラクトイミドマイシン生合成遺伝子座における遺伝子の機能を同定するため、デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2アルゴリズムにより、LACT ORF1〜9(配列番号26、28、30、32、34、36、38、40及び42)を、National Center for Biotechnology Information(NCBI)の非冗長タンパク質データベース、及び微生物遺伝子、経路及び天然産物のデータベースであるDecipherTM(カナダ国、ケベック州、サンローラン、Ecopia BioSciences Inc.社への登録により利用可能)中の配列と比較した。このBlast分析によりGenBankで最もヒット数が多かったアクセッション番号を、対応するE値とともに表3に示す。
【0110】
【表3】
【実施例5】
【0111】
ドリゴシン及びラクトイミドマイシンの生合成に関与する例外的な二成分PKS系
ドリゴシン遺伝子座は、KS、KR、ACP、及び例外的な配置の例外的なDHドメインを含有する3個のPKSをコードしている。この遺伝子座におけるかかる3個のPKSは、ドリゴシンの長さをもつポリケチド鎖の生成には充分である、合計10個のケトシンターゼ(KS)ドメインをコードしている。かかる3個のPKSにはI型PKSに典型的ないくつかの特徴を共有している。すなわち、シンターゼに多数の融合ドメインが含まれているのである。しかし、ドリゴシンPKSは、PKSに物理的に結合しているATドメインを含まないという点で、I型PKSと異なっている。その代わりに、別の成分によって、AT機能がトランスで提供されている。したがって、ドリゴシンPKS系は新規の二成分PKS系を示すものである。特定の作用機構又は生合成図式に限定されることなく、本発明のタンパク質は、ドリゴシンの生成について説明することができる。図2は、段階的に作用してポリケチド骨格を合成する10個のモジュールの性質を示している。図2においては、DORRアシル運搬体タンパク質ACPI(配列番号6)とDORRアミドトランスフェラーゼAOTF(配列番号8)とが、DORR遺伝子座の最初のPKS(配列番号10)に並進的に結合されている。ACPI(配列番号6)は、アミノ置換アシル基を移動させるタンパク質に対して、もっとも有意な類似性を示している。ACPI(配列番号6)及びAOTF(配列番号8)は協調してポリケチド鎖を伸長させるための出発単位を作製する。
【0112】
KSドメインの下流にATドメインを含む典型的なI型PKSモジュールとは違って、ドリゴシン遺伝子座中の各PKSモジュール(配列番号10、12及び14)のKSドメインの後ろには、ATドメインがない。しかし、例外的なドリゴシンPKSは、保存された小型のドメインをKSドメインの下流に含んでいる。この保存されたドメインは、マロニル−CoA:ACPマロニルトランスフェラーゼ作用のドッキング部位として作用すると仮定されている。マロニル−CoA:ACPマロニルトランスフェラーゼ作用は、AYTT DORR ORF2(配列番号4)、AYOA DORR ORF8(配列番号16)、又は一次代謝脂肪酸マロニル−CoA:ACPマロニルトランスフェラーゼによって提供される場合がある。
【0113】
モジュール1は、結合したマロニルエクステンダーユニットを有しており、出発単位を伸長させる1回のラウンドで触媒として機能する。その後に、ケトレダクターゼが続き、脱水が行われる。モジュール2は、独立したAT−チオエステラーゼ融合タンパク質AYTT(配列番号4)により、アシル化される。このタンパク質は、チオエステラーゼと融合したマロニル−CoA:ACPマロニルトランスフェラーゼで構成されている。モジュール2は、モジュール1と2とをつなぐアシル鎖間のイミド結合の形成において触媒作用を及ぼす。イミド結合の形成には、伸長サイクルにおける例外的な「後ろ向き」の段階で、AYTTタンパク質(配列番号4)に関連するチオエステラーゼ作用により容易となる操作が必要である。モジュール1のKSドメインを再び使用し、今回は、環状グルタルイミド基を構築するクライゼン縮合反応の触媒とする。
【0114】
次の伸長段階のため、発生期のポリケチド鎖は、モジュール1のACPからモジュール3のKSに移っていく。モジュール3〜6によって、マロニルエクステンダーユニットが使われる。モジュール5及び6で、ベータケト還元が生じる。モジュール5及び6のMTドメインにより、メチル側鎖が付加される。
【0115】
モジュール7は、ヒドロキシマロニルエクステンダーを使用している。かかるヒドロキシマロニルエクステンダーユニットは、独立したAT−オキシドレダクターゼ融合タンパク質AYOA(配列番号16)によって構築され、モジュール7に移される。ヒドロキシル側鎖は、MTFA O−メチルトランスフェラーゼ(配列番号20)によってメチル化される。
【0116】
モジュール8〜10は、マロニルエクステンダーユニットを使用している。モジュール8及び10で、ケト還元及び脱水が生じる。モジュール9は、DHドメインを含むがKRドメインをまったく含まないことで知られている。
【0117】
従来のI型ポリケチドの生合成を設計する際の一般的な規則は、図2に示すように、ドリゴシンA、ドリゴシンB、及びミグラスタチン分子に至る中間産物のポリケチド骨格構造の生合成に適用することができる。かかる中間産物は、ベータ−カルボニル還元状態でC−14にメチル側鎖が存在しない点でドリゴシンBとは異なっている。ドリゴシンPKS(配列番号10、12、14)は、C−5、C−9及びC−17を好適な酸化状態とするのに必要な量だけ、一次脂肪酸シンターゼからケトレダクターゼ、デヒドラターゼ及びエノイルレダクターゼを補充する。エノイルレダクターゼとの相互作用を必要とする2つのモジュールは、分離したPKSペプチドにまたがる2つのモジュールに対応している。C−14を組み込んだモジュール中ではMTドメインは認められなかった。これは、C−14におけるメチル化が、一次メチルトランスフェラーゼ又は隣接したモジュールのMTドメインによる触媒作用を受けていることを示唆している。
【0118】
OXRC及びOXRYタンパク質(配列番号23及び18)にコードされるオキシドレダクターゼは、ドリゴシンAとドリゴシンBとの間の相互変換の触媒となるために、必要な作用を発揮している。
【0119】
ラクトイミドマイシン生合成遺伝子座は9個のORF(配列番号26、28、30、32、34、36、38、40及び42)で構成され、そのうちの8個は、ドリゴシン生合成遺伝子座の対応するORFに対する相同性が高い。LACT ORF1(配列番号26)はDORR ORF2(配列番号4)と相同であり、これらはともに、AYTTと命名された、アシルトランスフェラーゼとチオエステラーゼの融合物である。LACT ORF2(配列番号28)はDORR ORF3(配列番号6)と相同であり、これらはともに、ACPIと命名された、アシル運搬体タンパク質である。LACT ORF3(配列番号30)はDORR ORF4(配列番号8)と相同であり、これらはともに、AOTFと命名された、細菌性アスパラギンシンテターゼに類似性を示すアミドトランスフェラーゼである。LACT ORF4、5及び6(配列番号32、34及び36)はDORR ORF5、6及び7(配列番号10、12及び14)とそれぞれ相同であり、これらはすべて、PKUNと命名された、ATドメインをもたない例外的なモジュラー型PKSである。LACT ORF7(配列番号38)はDORR ORF8(配列番号16)と相同であり、これらはともに、AYOAと命名された、アシルトランスフェラーゼとオキシドレダクターゼの融合物である。最後に、LACT ORF8(配列番号40)はDORR ORF11(配列番号23)と相同であり、これらはともに、OXRCと命名された、シトクロムP450モノオキシゲナーゼである。LACT ORF9(配列番号42)は、PPTFと命名された、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼであり、ドリゴシン遺伝子座にはこれに対応するものが存在しない。このホスホパンテテイニルトランスフェラーゼは、ホスホパンテテイニルの補因子の(prosthetic)アームと、ラクトイミドマイシンシンターゼ複合体のアシル運搬体タンパク質との共有結合に関与している。これに対し、ドリゴシンのアシル運搬体タンパク質は、ドリゴシン生合成遺伝子座の外側の遺伝子にコードされるホスホパンテテイニルトランスフェラーゼによって、ホスホパンテテイニル化される場合がある。
【0120】
ドリゴシン生合成遺伝子座には、ラクトイミドマイシン遺伝子座中に対応物をもたない3個のORFが含まれている。DORR ORF1(配列番号2)は、REBPと命名された制御因子であり、DORR ORF9(配列番号18)は、OXRYと命名されたオキシドレダクターゼであり、DORR ORF10(配列番号20)は、MTFAと命名されたO−メチルトランスフェラーゼである。このDORR ORF9(配列番号18)は、二重結合の異性化に関与するドリゴシンAとドリゴシンBとの相互変換に関わっているため、ラクトイミドマイシン遺伝子座にOXRYが存在しないことは意義深い。ラクトイミドマイシンの生合成の場合に、類似した異性化が起こるとは知られていない。これはおそらく、OXRYホモログが存在しないことによると思われる。ドリゴシンやミグラスタチンとは違ってラクトイミドマイシンはO−メチル基をまったく含んでいないため、ラクトイミドマイシン遺伝子座にMTFAが存在しないことは意義深い。
【0121】
特定の作用機構又は生合成図式に限定されることなく、ラクトイミドマイシンの生合成(図5)について、LACTタンパク質は、ドリゴシン及びミグラスタチンの生合成経路(図2)と同様に説明することができる。ラクトイミドマイシンPKS系とドリゴシンPKS系との相違点は、それぞれのPKS系のモジュール7及び8に存在する(図4、10)。ドリゴシンPKS系のモジュール7は、トランス作用性ATドメインとともに、メトキシマロニルエクステンダーユニット(又は、その後O−メチル化するヒドロキシマロニルエクステンダーユニット)の組み込みに関与するKSドメイン、相互作用ドメイン、ACPドメインを含んでいる。反対に、ラクトイミドマイシンPKS系のモジュール7に含まれるのは、KSドメインと相互作用ドメインのみであり、ACPドメインは存在しない。そのため、このモジュールはポリケチド鎖を伸長させることができないと予測されている。ラクトイミドマイシンは、C−8上のヒドロキシメチル置換を含んでおらず、このことは、この予測と一致している。ドリゴシンPKS系のモジュール8は、KSドメイン、相互作用ドメイン、DHドメイン、KRドメイン、及び2つのタンデムACPドメインを含んでいる。しかし、1つ目のACPドメインは、通常はホスホパンテテイン結合部位として機能する保存されたセリン残基がプロリン残基に置換されているため(図10)、不活性である(図4中、「X」で示す)と予測されている。反対に、ラクトイミドマイシンPKS系のモジュール8では、ACPドメインは両方とも活性部位セリン残基を含んでいる。したがって、これら両方のACPにはマロニル−CoAが搭載されており、モジュール7由来のKS又はモジュール8由来のKSがポリケチド鎖を伸長させる2回のラウンドで触媒として機能すること、又は、その代わりに、モジュール7及び8に由来するKSドメインがそれぞれポリケチド鎖を伸長させる1回のラウンドで触媒として機能することを、本発明者らは提示している。
【0122】
図6〜13は、ドリゴシン生合成遺伝子座及びラクトイミドマイシン生合成遺伝子座に共通する各種ORFを比較する、アミノ酸アラインメントである。適用可能な場合には、Kakavas et al. (1997) J. Bacteriol. Vol 179 pp. 7515-7522に記載の、各種ポリケチドシンターゼドメインの重要な活性部位残基及びモチーフを図6〜13に示している。
【0123】
ドメインの同定及びその境界の割り当ては、I型PKSに関する文献に基づいている。本発明に記載した二成分PKS系がI型PKS系とはかなり異なることを考えると、境界がやや不正確である可能性、又は、かかる二成分PKS系に固有の新規ドメインが不注意により見過ごされた可能性がある。表3及び4は、ドリゴシン、ミグラスタチン、及びイソミグラスタチンの生合成(表4)及びラクトイミドマイシンの生合成(表5)に関与するポリケチドシンターゼ成分の各種ドメインの、おおよそのアミノ酸の座標を列挙したものである。DORR遺伝子座が発現した結果、線状ポリケチド(ドリゴシン)と環状ポリケチド(ミグラスタチン及びイソミグラスタチン)の両方が生成された。したがって、LACT遺伝子座が発現すると、環状ポリケチドのラクトイミドマイシンに加えて線状ポリケチド産物も生成されると予想するのが妥当といえる。線状のラクトイミドマイシンは、生成レベルが非常に低いこと、又は不安定であることから、今日まで記載されたことがない。
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
本発明は、ここに記載した具体的な実施形態により、その範囲を限定されるものではない。特に、ここに記載したもの、及びそれ以外の本発明の各種修正は、当業者がここまでの記載及び付随する図面を見れば、容易にわかるものである。そうした修正も、後述のクレームの範囲に含まれるものとする。
【0127】
さらに、すべてのサイズ、及びすべての分子量又は質量の値は、おおよそのものであり、記載のために提供されたものであることも、承知されてしかるべきである。
【0128】
ここに列挙したいくつかのオープンリーディングフレームは、標準開始コドンのATG、すなわち、DORR ORF2、6、7(配列番号4、12及び14)並びにLACT ORF1、3、5及び9(配列番号26、30、34及び42)よりもむしろ、非標準開始コドン(例えば、GTG−バリン)で始まっている。ORFの最初のコドンの特異性を示すため、すべてのORFを、アミノ末端部位のMアミノ酸又はVアミノ酸とともに列挙している。しかし、すべての事例において、生合成されたタンパク質がメチオニン残基、より具体的にはホルムメチオニン残基をアミノ末端部位に含むであろうことが予測される。このことは、細菌中のタンパク質の生合成は、コードする遺伝子が非標準開始コドンを指定している場合でも、メチオニン(ホルムメチオニン)で始まる(例えば、Stryer, Biochemistry, 3rd edition, 1998, W. H. Freeman & Co., New York, pp. 752-754)という広く受け入れられている原則と一致している。
【0129】
本出願に引用した特許、特許公報、手順及び刊行物は、あらゆる目的に使用できるように完全な形でここに組み込んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、S. platensisのドリゴシン生合成遺伝子クラスターの図であり、例外的なPKS成分の推定ドメイン構造を強調したものである。
【図2】図2は、ドリゴシン及びミグラスタチンの生合成経路の一案を示す図である。
【図3】図3は、ドリゴシン、ミグラスタチン及びイソミグラスタチンの構造を示す図である。
【図4】図4は、S. amphibiosporusのラクトイミドマイシン生合成遺伝子クラスターとS. platensisのドリゴシン生合成遺伝子クラスターを比較した図である。例外的なPKS成分の推定ドメイン構造を強調している。
【図5】図5は、ラクトイミドマイシンの生合成経路の一案を示す図である。
【図6】図6は、ともに、AYTTと命名された、チオエステラーゼとアシルトランスフェラーゼの融合物である、DORR ORF2(配列番号4)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF1(配列番号26)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図7】図7は、ともに、ACPIと命名されたアシル運搬体タンパク質である、DORR ORF3(配列番号6)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF2(配列番号28)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図8】図8は、ともに、AOTFと命名された、細菌性アスパラギンシンテターゼに類似したアミドトランスフェラーゼである、DORR ORF4(配列番号8)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF3(配列番号30)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図9】図9Aから図9Dは、ともに、PKUNと命名された、ATドメインをもたない例外的なモジュラー型PKSである、DORR ORF5(配列番号10)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF4(配列番号32)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図10】図10Aから図10Jは、ともに、PKUNと命名された、ATドメインをもたない例外的なモジュラー型PKSである、DORR ORF6(配列番号12)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF5(配列番号34)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図11】図11Aから図11Cは、ともに、PKUNと命名された、ATドメインをもたない例外的なモジュラー型PKSである、DORR ORF7(配列番号14)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF6(配列番号12)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図12】図12は、ともに、AYOAと命名された、アシルトランスフェラーゼとオキシドレダクターゼとの融合物である、DORR ORF8(配列番号16)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF7(配列番号38)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
【図13】図13は、ともに、OXRCと命名されたシトクロムP450モノオキシゲナーゼである、DORR ORF11(配列番号23)とそのラクトイミドマイシンのホモログであるLACT ORF8(配列番号40)とを比較したアミノ酸アラインメントを示す図である。
Claims (37)
- 配列番号1、22及び25;配列番号1、22及び25に相補的な配列;配列番号1、22及び25の少なくとも50個のヌクレオチドを連続状態で含む断片;並びに配列番号1、22及び25に相補的な配列の少なくとも50個のヌクレオチドを連続状態で含む断片からなる群より選択される配列を含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- 請求項1に記載の核酸と高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- 請求項1に記載の核酸と中程度のストリンジェンシー条件下でハイブリダイズできる、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- デフォルトパラメータを用いたBLASTNバージョン2.0での分析により、請求項1に記載の核酸に対して少なくとも70%の相同性を有することが確認された、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- デフォルトパラメータを用いたBLASTNバージョン2.0での分析により、請求項1に記載の核酸に対して少なくとも99%の相同性を有することが確認された、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- 配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39、41、43、及びそれらに相補的な配列からなる群より選択される配列を含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- デフォルトパラメータを用いたBLASTNバージョン2.0での分析により、請求項6に記載の核酸に対して少なくとも90%の相同性を有することが確認された、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- デフォルトパラメータを用いたBLASTNバージョン2.0での分析により、請求項6に記載の核酸とハイブリダイズできることが確認された、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- 配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、及びそれらに相補的な配列に対して少なくとも70%の相同性を有する、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- デフォルトパラメータを用いたBLASTNバージョン2.0での分析により、請求項6に記載の核酸に対して少なくとも99%の相同性を有することが確認された、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- 配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、24、27、29、31、33、35、37、39、41、43、及びそれらに相補的な配列からなる群より選択される配列の少なくとも50個の塩基を連続状態で含む、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- デフォルトパラメータを用いたBLASTNバージョン2.0での分析により、請求項11に記載の核酸に対して少なくとも70%の相同性を有することが確認された、単離、精製又は濃縮を行った核酸。
- 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42からなる群より選択される配列を含む、単離又は精製を行ったポリペプチド。
- 請求項13に記載のポリペプチドの少なくとも20個のアミノ酸を連続状態で含む、単離又は精製を行ったポリペプチド。
- デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2での分析により、請求項13に記載のポリペプチドに対して少なくとも70%の相同性を有することが確認された、単離、又は精製を行ったポリペプチド。
- デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2での分析により、請求項13に記載のポリペプチドに対して少なくとも99%の相同性を有することが確認された、単離、又は精製を行ったポリペプチド。
- デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2での分析により、請求項14に記載のポリペプチドに対して少なくとも75%の相同性を有することが確認された、単離、又は精製を行ったポリペプチド。
- デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2での分析により、請求項14に記載のポリペプチドに対して少なくとも99%の相同性を有することが確認された、単離、又は精製を行ったポリペプチド。
- 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42からなる群より選択される配列を有するポリペプチドと特異的に結合することが可能な、単離又は精製を行った抗体。
- 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドのいずれかの、少なくとも25個のアミノ酸を連続状態で含むポリペプチドと特異的に結合することが可能な、単離又は精製を行った抗体。
- 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42からなる群より選択される配列を有するポリペプチドの製造方法であって、該ポリペプチドをコードし、かつ、操作可能な状態でプロモーターに連結されている核酸を宿主細胞に導入することを特徴とする該ポリペプチドの製造方法。
- 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42からなる群より選択される配列の、少なくとも25個のアミノ酸を連続状態で有するポリペプチドの製造方法であって、該ポリペプチドをコードし、かつ、操作可能な状態でプロモーターに連結されている核酸を宿主細胞に導入することを特徴とする該ポリペプチドの製造方法。
- 配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、22、24、25、27、29、31、33、35、37、39、41及び43の核酸コード、及び配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドコードからなる群より選択される配列が保存されていることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な媒体。
- プロセッサ及びデータ保存装置を含むコンピュータシステムであって、該データ保存装置には配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、22、24、25、27、29、31、33、35、37、39、41及び43の核酸コード、及び配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、26、28、30、32、34、36、38、40及び42のポリペプチドコードからなる群より選択される配列が保存されていることを特徴とするコンピュータシステム。
- ドリゴシン化合物又はドリゴシン類似体の合成を誘導するのに充分なポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むことを特徴とする単離した遺伝子クラスター。
- 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、23、及びそれらに相補的な配列からなる群より選択されるオープンリーディングフレームを含むことを特徴とする請求項25に記載の単離した遺伝子クラスター。
- ドリゴシン化合物又はドリゴシン類似体の合成を誘導するのに充分なポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む単離した遺伝子クラスターであって、該遺伝子クラスターが、請求項26に記載の配列の少なくとも10個の塩基を連続状態で有するオープンリーディングフレームを含むことを特徴とする単離した遺伝子クラスター。
- ドリゴシン化合物又はドリゴシン類似体の合成を誘導するのに充分なポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む単離した遺伝子クラスターであって、該遺伝子クラスターが、デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2により、請求項26に記載の配列に対して少なくとも70%の相同性を有することが確認されたオープンリーディングフレームを含むことを特徴とする単離した遺伝子クラスター。
- 遺伝子クラスターが、細菌内に存在することを特徴とする請求項28に記載の単離した遺伝子クラスター。
- ドリゴシン生合成遺伝子産物の発現が可能な条件下で請求項29に記載の細菌を培養することを特徴とするドリゴシン生合成遺伝子産物の発現方法。
- 遺伝子クラスターが、アクセッション番号IDAC270201−1又はIDAC270201−2の大腸菌株DH10B内に存在することを特徴とする請求項25に記載の単離した遺伝子クラスター。
- ラクトイミドマイシン又はラクトイミドマイシン類似体の合成を誘導するのに充分なポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むことを特徴とする単離した遺伝子クラスター。
- 配列番号26、28、30、32、34、36、38、40、42、及びそれらに相補的な配列からなる群より選択されるオープンリーディングフレームを含むことを特徴とする請求項32に記載の単離した遺伝子クラスター。
- ラクトイミドマイシン化合物又はラクトイミドマイシン類似体の合成を誘導するのに充分なポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む単離した遺伝子クラスターであって、該遺伝子クラスターが、請求項32に記載の配列の少なくとも10個の塩基を連続状態で有するオープンリーディングフレームを含むことを特徴とする単離した遺伝子クラスター。
- ラクトイミドマイシン化合物又はラクトイミドマイシン類似体の合成を誘導するのに充分なポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む単離した遺伝子クラスターであって、該遺伝子クラスターが、デフォルトパラメータを用いたBLASTPバージョン2.2.2により、請求項32に記載の配列に対して少なくとも70%の相同性を有することが確認されたオープンリーディングフレームを含むことを特徴とする単離した遺伝子クラスター。
- 遺伝子クラスターが、細菌内に存在することを特徴とする請求項34に記載の単離した遺伝子クラスター。
- ラクトイミドマイシン生合成遺伝子産物の発現が可能な条件下で請求項36に記載の細菌を培養することを特徴とするラクトイミドマイシン生合成遺伝子産物の発現方法。
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