JP2004534243A - 磁性粒子の処理方法及び磁石を用いた生物学的分析装置 - Google Patents

磁性粒子の処理方法及び磁石を用いた生物学的分析装置 Download PDF

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Abstract

本発明は容器中の溶液に存在する磁性粒子を処理する方法に関する。この磁性粒子は生物学的被験物質(抗体、抗原、核酸等)と会合していてもしていなくてもよい。本処理は、特定の磁石の作用によって新規な特徴を示す磁性粒子の再分散、洗浄及び運動を含む。本発明は磁石の各種配置にも関し、これらの配置の少なくとも一つによって上述の方法が実施できる。本発明方法は次のものを含む。即ち、前記粒子を少なくとも強度が低い磁化に付し、前記磁性粒子を磁石のNS軸に沿って配向する糸状体とすること、前記磁性粒子への磁気効果を維持しつつ磁化源及び/又は容器を動かすこと、及び前記磁性粒子への磁気的効果を抑制するために前記磁化源及び/又は容器を動かすか、あるいは磁化源の動きを止めることを含む。好ましくは、本発明は生物学の分野で使用できる。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は容器中の溶液に存在する磁性粒子を処理する方法に関する。この磁性粒子は生物学的被験物質(抗体、抗原、核酸等)と会合していてもしていなくてもよい。本発明に係る処理は、特定の磁石の作用下で新規な特性を示す磁性粒子の再懸濁、洗浄及び運動を含む。本発明は磁石の各種配置形態にも関し、その少なくとも一配置形態によって上述の方法が実施できる。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る方法は生物学的診断の分野において有用であり、例えば、生物学的試料(尿、血液、脳脊髄液、沈渣、喀痰)から抽出された生物学的分子(タンパク質、核酸等)を分析することにより病気を検出することができる。この方面の研究においては、特に、病人が特定の生物学的分子を有していることを明らかにするために、生物学的分子を、ある種のタンパク質や核酸の活性試験に適合する条件において抽出し且つ濃縮できるようにすることが望まれる。そのためのある方法においては、生物学的分子を磁性粒子と会合させる。この分子は認識分子と呼ばれる。特定の態様においては、認識分子を用い、これら認識分子に特定の標的分子を会合させたりハイブリダイズさせたりすることができる。更に、認識分子と標的分子との会合やハイブリダイズを検出分子を介して精確に検出することもできる。
【0003】
固体支持体である磁性粒子は、各種の磁場をかけるとこれに会合する生物学的分子を捕捉するので、この生物学的分子を溶液中で濃縮したり、溶液から抽出したりすることができる。このように生物学的分子に会合した磁性粒子を濃縮したり除去したりする方法は国際出願公開WO−A−99/59694号公報に記載されている。この方法によれば、磁性粒子を捕捉するのに充分強力な磁石を、内部に溶液中の粒子が循環する管体に沿って配置して、磁性粒子が存在しない溶液、即ち、磁性粒子と会合した生物学的分子が存在しない溶液を得る。
【0004】
生物学的分子と会合した磁性粒子を捕捉するためのこの技法は、洗浄、液吸引、次いで新しい洗浄液への再懸濁という一連の段階を実施することによる生物学的分子の洗浄段階にも適用することができる。例えば、イムノアッセイを実施可能な自動分析機器において、自動分析機器のタンク内の溶液中の磁性粒子は横方向へ印加された磁場によって捕捉され、最終的にタンク壁面でクラスターとなる。液体を吸引すると、磁性粒子は残留する。この吸引段階に続き、再懸濁段階を行う。再懸濁段階では、磁性粒子に逆磁場を作用させ、洗浄液を一挙に注入する。この一連の吸引・再懸濁段階により粒子の洗浄が可能となる。
【0005】
別の洗浄技法が国際出願公開WO−A−01/05510号公報に記載されている。これによれば、磁性粒子はタンク又は管体内の溶液中に存在し、直列に並べた磁石を該タンク又は管体の一方の側に、次いで他の側に作用させることによって磁性粒子を該タンク又は管体の一方の側から他の側へと移動させて洗浄を行う。磁石により管体の底部で磁性粒子を捕捉すれば、磁性粒子の濃度が低下した液体を上述と同様の方法で吸引することができる。国際出願公開WO−A−01/05510号公報はこのような洗浄技法を提案しているが、本発明は次に記す更なる技術的特徴、即ち、
容器内の溶液中の磁性粒子を少なくとも強度の低い磁化に付し、且つ
その磁性粒子が磁化源のNS軸に沿った方向に糸状体を呈するようにさせるという技術的特徴においてこれとは異なるものである。
【0006】
上述の文献にはこれら二つの特徴の記載はなく、磁化の強度を特定していることも全くなく、磁性粒子をペレット形態で保持するというものである。また、フェルミジエ・エム(Fermigier M)らの文献に記載の洗浄技法は、交番磁場下において生成する線状凝集物についての更なる情報を提供するものである。
【0007】
仮に磁性粒子が糸状体を呈しているとみることができるとしても、磁場が交番磁場であることに鑑み、糸状体は少なくとも低強度の磁化によって形成されるものではない。一方、本発明における磁場は一定であり、これにより糸状体は磁化源のNS軸に沿って配向することができる。
【0008】
磁性粒子の生物学的粒子への会合により、一つのコンパートメントから他のコンパートメントへの生物学的分子の移動も可能となり、例えば濃縮も可能になる。これはフランス特許出願FR00/15417号(2000年11月17日)に記載されている。従って、バイオチップにおいては、このバイオチップの所定のコンパートメント中の粒子を濃縮させる段階において、面状且つ一定の磁場を用いることによって、一地点から他点へと粒子を移動させることができる。
【0009】
しかし、高強度磁場は迅速且つ効果的な捕捉を可能にするものの、粒子のクラスターを形成してしまう。更なる攪拌段階を実施しなければ、このクラスターの再懸濁は困難であることが多い。クラスターが形成されると、洗浄液が粒子全体に行き渡らないため、磁性粒子の洗浄効率の低下をも招く。結局、一定且つ高強度の磁場をかけると、粒子の移動に伴う摩擦力が大きくなり、一地点から他点へと全粒子を移動させることができなくなる。これは、その後に実施されることになる試験の結果に対して重大な影響(偽陰性、偽陽性、感度や選択性の低下)を与え、また、経済的理由や生物学的材料の入手可能性の理由から磁性粒子に会合した生物学的分子全てを回収したい場合には致命的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は従来技術の問題点の全てを解決しようとするものであり、そのために液体中の磁性粒子の特定の配列様式を提供し、これによって磁性粒子の再懸濁、洗浄及び/又は運動を促進するものである。本発明は、液体中に存在する磁性粒子が特定強度の磁場(通常は低強度)に呼応して糸状配列をとることに基づいており、この糸状体は磁場を誘起する磁石のSN軸に沿って配列する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は容器中の溶液に存在する磁性粒子を処理する方法であって、該磁性粒子は生物学的被験物質(抗体、抗原、核酸等)と会合していてもしていなくてもよく、
前記磁性粒子が磁化源のNS軸に沿って配向する糸状体を呈するように、少なくとも低強度の磁化を作出すること、
磁性粒子の磁化を維持しつつ磁化源及び/又は容器を動かすこと、及び
前記磁化源及び/又は容器を動かすことにより、及び/又は磁化源の動きを止めることにより磁性粒子の磁化を抑制することを含む方法に関する。
【0012】
他の実施態様によれば、低強度磁化は基本的に二値関数、即ちT及びDの関数である。ここで、
Tは、例えばミリテスラ(mT)で表される磁化源の磁気誘導の大きさであり、
Dは、例えばミリメートル(mm)で表される容器の底から磁化源までの間隔を表す。
【0013】
さらに他の実施態様によれば、低強度磁化は、積TxDとして測定され、その値は、磁性粒子として実質的粒径が1μ未満のESTAPOR(登録商標、番号M1 70/60、メルクユーロラボ(Merk eurolab)、フランス、ピチヴィエ)を用いた場合、5mT・mm〜20,000mT・mm、好ましくは30mT・mm〜750mT・mmである。磁性粒子として上述のESTAPOR(登録商標)を用いた場合、磁化源の磁気誘導の大きさTは、5〜400mT、好ましくは10〜50mTであり、容器から磁化源までの間隔は1〜50mm、好ましくは3〜15mmである。
【0014】
容器の底から磁化源までの間隔が0、即ち前記磁化源と前記容器の底が互いに接触する場合には、磁性粒子が上述のESTAPOR(登録商標)のとき、磁化源の磁気誘導の大きさTは5mT未満である。
【0015】
本方法にて磁性粒子に対する磁気的効果を維持しつつ該粒子を洗浄する場合、磁化源及び/又は容器を動かすには、磁化源のNS軸と容器の軸とのなす角度を−90°〜+90°の間で変化させる。このようにすると、粒子をより効果的に洗浄することができる。即ち、−90°から+90°へと回転する低強度磁場によって一方の側への傾斜から他方の側への傾斜へと運動する糸状体の動きを誘導する。このようにすると、従来技術に比べ、磁性粒子と洗浄液との接触をより増大させ、粒子を再懸濁させることなく洗浄効率を向上させることができる。
【0016】
本方法にて磁性粒子を再懸濁する場合、容器内の磁性粒子を回収するための液を注入する間、磁化源による磁化を磁性粒子に維持し続け、注入終了後に止める。この方式によって、磁性粒子をより簡単に再懸濁させることができる。液の体積が多くなると、磁場が弱くなりすぎて粒子の糸状形態を維持できなくなり、粒子は自然に再懸濁する。従来技術に比べ、本発明によれば、更なる攪拌段階や逆磁場を必要とせずにすべての粒子を再懸濁させるために液を補充するだけで充分である。
【0017】
磁性粒子を再懸濁させる本発明の方法の好ましい態様においては、磁化源のNS軸に沿って配向した糸状体状の磁性粒子は、回収用の液の注入方向と平行に配向させる。
【0018】
本方法にて磁性粒子を運動させるに際し、磁性粒子への磁化を維持しつつ磁化源及び/又は容器を動かすには、磁化源のNS軸と容器の軸とのなす角度を360°回転させる。磁場の360°回転を続けて行い、水平軸方向に沿ってゆっくり動かすと、磁性粒子の糸状体が傾いてやがて完全に横になり、続いて反対側から起き上がり、また傾いては、倒れ、起き上がり、と続き、磁場の横方向の移動と反対方向へ前進して行く。従来技術に比べ、粒子の移動に伴う摩擦力は弱く、従って、一地点から他点へ向かう粒子の数を増加させることができる。
【0019】
後者の場合、複数回360°回転を行って、磁性粒子を適切に運動させる。
【0020】
本発明は、例えばイムノアッセイ用の生物学的分析装置にも関する。この装置は、所定数の位置を通る少なくとも一つのパスに亘って反応容器を案内し且つ移動させる手段を含む。本装置は各パスそれぞれに対する磁石配置を有し、この磁石配置は、
上流における、磁性粒子を容器の壁面上に凝集させるような複数の高強度磁化源と、
下流における、磁性粒子が磁化源のNS軸に沿って配向する糸状体を呈するようにする前述の低強度磁化源とからなる。
【0021】
他の態様によれば、各々の高強度磁化源の磁気誘導の大きさは、低強度磁化源の20〜100倍大きく、好ましくは30〜60倍大きく、各々の高強度磁化源と容器との間隔は、低強度磁化源との間隔の5〜20倍小さく、好ましくは10〜15倍小さい。
【0022】
更に他の態様によれば、各々の高強度磁化源は低強度磁化源に対し容器に関して垂直に位置する。
【0023】
更に他の態様によれば、各々の高強度磁化源は、容器の開口と底を通過する軸に対して横方向に位置し、低強度磁化源は前記容器の開口に対向する前記容器の底の下方に位置する。
【0024】
更に他の態様によれば、所定数の位置を通るパスに亘って、高強度磁化源の位置が低強度磁化源に近づく程、前記高強度磁化源の位置が容器の底に近づく。
【0025】
他の態様によれば、高強度磁化源は、
容器の同一の側に位置して一列に並ぶ磁石又は
容器の両側に位置して二列に並ぶ磁石からなり、
同一の列にある前記磁石はそれぞれのNS極を同一方向に揃えて横並びに位置する。
【0026】
後者の別態様によれば、高強度磁化源は、磁性粒子の「離れ」を促進する少なくとも一個の逆極磁石(逆磁場)を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
添付の図面は本発明を説明するための例示目的のものであって、本発明を限定するものではない。本発明はこれら図面によっていっそう容易に理解されよう。
【0028】
図1に示す態様は長年よく用いられてきた従来技術を示しており、生物学的自動分析機器に用いられるタンク中の磁性粒子5を捕捉するためのものである。磁石6は強力で、磁気強度Tは例えば450〜500mTであり、容器1の側面から磁石6までの間隔は数ミリメートルである。この条件下においては、磁性粒子5は互いに合体して堆積物を生成する点に注目される。このような堆積物の形態では磁性粒子5の再懸濁は容易ではなく、液体の注入は特定の角度から充分強力に行う必要があることは明らかである。しかし、自動分析機器の内部を汚してしまう液のはね返しを避けるため、また、生物学的分析結果を歪めてしまうような、タンク内に存在する生物学的成分の変性を避けるには注入の強度をよく制御しなければならない。更に、磁性粒子5の一部は溶液中で合体したまま残ってしまうため、全粒子の再懸濁は達成できない。
【0029】
本発明は、磁性粒子5の捕捉のみならず、洗浄、再懸濁及び運動も可能にする解決方法を提案する。図2において、磁気強度Tは例えば10〜20mTと低強度であり、容器1の底3から磁石7までの間隔は13ミリメートルである。この条件下においては、磁性粒子5が互いに合体せず、糸状体となり、同一糸状体中の磁性粒子5は実質的に長手軸方向に沿って互いに積み重なることがわかる。この糸状体の形態では磁性粒子5の再懸濁は更により簡単であることは明らかである。更に、例えばピペット(図2にはノズル10のみを示す)によって液体を注入すると粒子の再懸濁が容易となる。この技法は、液体注入の方向に沿う軸を容器1の底3に直接向け、且つ糸状体の前記長手軸を実質的に注入の軸と平行にするならば、更に改善される。
【0030】
以下、実施例によって本発明を説明するが、これは例示目的のものであって本発明を限定するものではない。これにより本発明をより容易に理解できるであろう。
【0031】
実施例1−磁性粒子の再懸濁を可能にする本発明に係る磁石の構造特性の選択
【0032】
磁性粒子は、自動分析機器(Magia(登録商標))のタンク1の溶液中に存在する。再懸濁は次の段階を含む。
【0033】
1−吸引段階:磁性粒子5は、実質的粒径が1μ未満のESTAPOR(登録商標、番号M1 70/60、メルクユーロラボ(Merk eurolab)、フランス、ピチヴィエ)であり、従来の磁石6によって横方向に450〜500mTの強度の磁場をかけてこの磁性粒子を捕捉すると、タンクの壁面上でクラスターとなる。この状況は、例えば、容器1の底3については別として図1に示す通りである。容器1内の液体4を吸引すると、磁性粒子5は残留する。吸引後に残る液体の体積は、50〜80μl程度である。
【0034】
2−再懸濁段階:再懸濁を行うには、横方向に逆磁場をかけ、容器1へ450μl〜1ml程度の液体4を一挙に添加する。この再懸濁段階は、容器1の側壁に小さなクラスター粒子が残るため、部分的にしか達成できない。
【0035】
3−先の諸段階の繰り返し:段階2及び3を、イムノアッセイ装置によって分散、吸引、濃縮の各段階を行うのに必要な回数繰り返す。
【0036】
4−最終再懸濁段階:この段階は、分析段階の前に全ての磁性粒子5を再懸濁することを含む。実施にあたっては、強度120mTの第一の磁場を容器1の下方に3mmの間隔をおいて配置する。液体4を吸引すると、磁性粒子5は段階1の記載とほぼ同様に残留する。第一の磁場は、磁性粒子を容器1の底へ移したり再懸濁させるためには幾分有利に働くとはいえ、必ずしも必要ではない。残留体積50〜80μlの液体4中に残留する前記磁性粒子5に、強度の異なる第二の磁場をかけ、タンクとその下方の磁場との距離を変化させる。得られた結果を下の表に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
上の場合、弱い磁場の作用によって磁性粒子5は自然に糸状体となる。糸状体の粒子5は、容器1の開口2から450〜500μlの液体を添加することにより容易に再懸濁する。磁性粒子の「溶液中」や「合体した糸状物」で表した性質の評価は任意スケールによる結果であるが、試験対象の生物学的被験物質や媒体全てに共通するものである。このスケールは本実験だけでなく以下全ての実験に対して有効である。評価は次のように定義する。
【0039】
「溶液中」とは、液体サンプル4に特に粒子集合がなく、磁性粒子はサンプル4全体に亘って均一に分布して見えることをいう。
【0040】
「糸状体」とは、液体サンプル4にある種の粒子集合があり、磁石7に対向する容器1の壁面の一部において磁性粒子が構造化される。このような糸状体は例えば図2に明瞭に示されている。顕微鏡で拡大してみると、糸状体間に入射光の通過が見られることをいう。
【0041】
「合体」とは、液体サンプル4に特定の粒子集合があり、磁石7に対向する容器1の壁面の一部において磁性粒子が集合する。顕微鏡拡大下で、合体物を通過する入射光は見られないことをいう。
【0042】
実施例2−磁性粒子の洗浄
【0043】
磁性粒子5は、自動分析機器(Magia(登録商標))のタンク1の溶液中に存在する。実施例1のように磁性粒子5を低強度磁場に付し、この磁場を適切な値(D=13mm及びT=10mT)として実施例1と同じ磁性粒子5の糸状体を得る。
【0044】
図3に明瞭に示されるように、洗浄段階は、磁石7を移動させて前記糸状体を傾けることを基本的に含む。容器1も移動可能であり、両者(磁石7と容器1)を同時に移動することも可能である。この種の移動の回数を増すことにより、洗浄効率を実質的に向上させることができる。
【0045】
磁性粒子が糸状体をなす場合、洗浄効率は、実施例1に記載の第二の磁場によって−90°〜+90°の間の回転振動を誘導することによって特に向上する。−30°(A)〜+30°(B)の間の回転時の糸状体5の磁性粒子の形態を図3に示す。
【0046】
実施例1で既に述べたように、この粒子糸状体は450〜500μlの液体を添加することにより、容易に再懸濁させることができる。
【0047】
実施例3−磁性粒子の運動
【0048】
実施例1及び2と同様に磁性粒子5を低強度磁場に付し、この磁場を適切な値(D=13mm及びT=10mT)として実施例1及び2と同じ磁性粒子5の糸状体を得る。
【0049】
「運動」とは何を意味するかを図4〜図8により詳細に示す。これらの図は45°づつ回転させた計180°の回転の様子のみを示すが、360°の回転を数回行うことによって、この運動の強さをかなり増強しうることは明白である。好ましい実施態様においては、磁石8を「バンド」状にする。これは、複数の単位磁石9からなる複合磁石であり、個々の単位磁石9は隣接する単位磁石と異なるNS分極を有し、図に示す態様において分極の変化は45°である。
【0050】
なお、磁石8を、例えば実質的に図4から図8におけるF1方向の長手軸に沿って移動させると、磁性粒子5は反対方向の図8のF2へ同時に移動する。このように、図4と図8における同一の糸状体の異なる位置がはっきりと読みとれる。
【0051】
実施例4−磁石の配置
【0052】
本発明に係る、従来の磁石6と磁石7の各種配置については、これらを例えばイムノアッセイ用の生物学的分析装置において使用でき、この装置は、所定数の位置を通る少なくとも一つのパスに亘って反応容器1のガイド・移動手段を含む。この種の装置は欧州特許出願公開EP−A−0837331号公報及び国際出願公開WO−A−00/16075号公報に明示されている。
【0053】
このような装置は各パスに対しそれぞれ磁石配置を含み、磁石6と磁石7又は9との配置は次のように構成される。即ち、
上流における、磁性粒子5を容器の壁面上に凝集させる複数の高強度磁化源6と、
下流における、磁性粒子5が磁化源のNS軸に沿って配向する糸状体を呈するようにする先の実施例記載の低強度磁化源7又は9とからなる。
【0054】
高強度磁化源6の各々と低強度磁化源7又は9との間に存在する関係は次の通りである。即ち、
磁気誘導の大きさTが低強度磁化源の20〜100倍大きく、好ましくは30〜60倍大きい、及び
各々の高強度磁化源と容器1との間隔Dが、低強度磁化源の間隔の5〜20倍小さく、好ましくは10〜15倍小さい。
【0055】
上に言及した両特許出願によれば、各々の高強度磁化源6は、容器1の開口2と底3を通過する軸に対して横方向に位置する。更に、各々の高強度磁化源6は低強度磁化源7又は9に対し容器1に関して垂直に位置する。好ましくは、低強度磁化源7又は9は前記容器1の底3の下方に位置する。
【0056】
上述の好ましい配置によれば、所定数の位置を通るパスに亘って、高強度磁化源6の位置が低強度磁化源7又は9に近づく程、前記高強度磁化源6の位置が容器1の底3に近づく。
【0057】
磁石6の配置としては、少なくとも二種の異なる配置が可能である。第一の配置では、高強度磁化源6は、容器1の同一の側に位置する一列に並ぶ磁石からなり、磁石6はそれぞれのNS極が揃うように横並びに位置する。第二の配置では、高強度磁化源6は、容器1の両側に位置する二列に並ぶ磁石からなり、これら磁石同士が互いに反発しあうよう、同一の列にある磁石はそれぞれのNS極が揃うように並んで位置する。
【0058】
磁性粒子5の「離れ」を容易にするためには、高強度磁化源6は、少なくとも一個の逆極磁石(逆磁場)を含む。通常、この逆極磁石は最も下流の位置、即ち低強度磁石7に最も近い位置に配置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】高強度磁石の作用によって凝集した磁性粒子を含む、従来技術に係る容器を示す図
【図2】磁性粒子が低強度磁石のNS軸に沿って糸状体をなす図1と同一の容器を示す図
【図3】低強度磁石のNS軸に沿って糸状体をなす磁性粒子が、磁性粒子を含む容器の中心垂直軸に関して実質的に30°回転させられた図2と同一の容器を示す図。この配置によって前記磁性粒子の洗浄が容易となる。
【図4】本発明の磁性粒子の運動方法の理解を助けるために一本の磁性粒子糸状体を示した平底容器の断面図。磁性粒子に作用する複合磁石の単位磁石の傾きはない。
【図5】磁性粒子に作用する複合磁石の単位磁石が図4に対して45°傾いた図4と同様の断面図
【図6】磁性粒子に作用する複合磁石の単位磁石が図4に対して90°傾いた図4と同様の断面図
【図7】磁性粒子に作用する複合磁石の単位磁石が図4に対して135°傾いた図4と同様の断面図
【図8】磁性粒子に作用する複合磁石の単位磁石が図4に対して180°傾いた図4と同様の断面図
【符号の説明】
【0060】
1 容器
2 容器1の開口
3 容器1の底
4 容器1に含まれる液体
5 液体4に含まれる磁性粒子
6 従来技術に係る磁石
7 本発明に係る単位磁石又は磁化源
8 本発明に係る複合磁石又は磁化源
9 磁性粒子5に作用する複合磁石8の単位磁石
10 ピペットノズル
D 容器1の底から磁化源7までの間隔
F1 長軸に沿った磁石8の移動
F2 F1に沿った磁石8の移動に依存する粒子5の運動
T 磁化源7の磁気誘導

Claims (17)

  1. 容器(1)中の溶液(4)に存在する磁性粒子(5)を処理する方法であって、磁性粒子(5)は生物学的被験物質(抗体、抗原、核酸等)と会合していてもしていなくてもよく、該方法は、
    前記磁性粒子(5)が磁化源(7又は9)のNS軸に沿って配向する糸状体を呈するような少なくとも低強度の磁化を作出すること、
    磁性粒子(5)の磁化を維持しつつ磁化源(7又は9)及び/又は容器(1)を動かすこと、及び
    前記磁化源(7又は9)及び/又は容器(1)を動かすことにより、及び/又は磁化源(7又は9)の動きを止めることにより磁性粒子(5)の磁化を抑制することを含む
    ことを特徴とする磁性粒子の処理方法。
  2. 前記低強度磁化が基本的に二値関数、即ちT及びDの関数であり、ここで
    Tは、例えばミリテスラ(mT)で表される磁化源(7又は9)の磁気誘導の大きさであり、
    Dは、例えばミリメートル(mm)で表される容器(1)の底(3)から磁化源(7又は9)までの間隔を表すことを特徴とする、請求項1に記載の磁性粒子の処理方法。
  3. 前記低強度磁化が、積TxDとして与えられ、その値は、磁性粒子(5)として実質的粒径が1μ未満のESTAPOR(登録商標、番号M1 70/60、メルクユーロラボ(Merk eurolab)、フランス、ピチヴィエ)を用いた場合、5mT・mm〜20,000mT・mm、好ましくは30mT・mm〜750mT・mmであることを特徴とする、請求項2に記載の磁性粒子の処理方法。
  4. 磁性粒子(5)として実質的粒径が1μ未満のESTAPOR(登録商標、番号M1 70/60、メルクユーロラボ(Merk eurolab)、フランス、ピチヴィエ)を用いた場合、前記磁化源(7又は9)の磁気誘導の大きさTが5〜400mT、好ましくは10〜50mTであり、容器(1)から磁化源(7又は9)までの間隔が1〜50mm、好ましくは3〜15mmであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の磁性粒子の処理方法。
  5. 前記容器(1)の底(3)から磁化源(7又は9)までの間隔が0、即ち前記磁化源(7又は9)と前記の底(3)が互いに接触する場合、磁性粒子(5)として実質的粒径が1μ未満のESTAPOR(登録商標、番号M1 70/60、メルクユーロラボ(Merk eurolab)、フランス、ピチヴィエ)を用いたとき、磁化源(7又は9)の磁気誘導の大きさTが5mT未満であることを特徴とする、請求項1に記載の磁性粒子の処理方法。
  6. 前記磁性粒子(5)を洗浄でき、前記磁化源(7又は9)のNS軸と前記容器(1)の軸とのなす角度を−90°〜+90°の間で変化させることにより、磁性粒子(5)への磁気的効果を維持しつつ磁化源(7又は9)及び/又は容器(1)を動かすことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の磁性粒子の処理方法。
  7. 前記磁性粒子(5)を再懸濁でき、容器(1)内の磁性粒子(5)を回収するための液を注入する間、磁化源(7又は9)による磁化を磁性粒子(5)に維持し続け、注入終了後に止めることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の磁性粒子の処理方法。
  8. 前記磁化源(7又は9)のNS軸に沿って配向した糸状体状の磁性粒子(5)を回収用の液の注入方向と平行に配向させることを特徴とする、請求項7に記載の磁性粒子の処理方法。
  9. 前記磁性粒子(5)を運動させることができ、前記磁化源(7又は9)のNS軸と容器(1)の軸とのなす角度を360°回転させることにより、磁性粒子(5)のに磁化を維持しつつ磁化源(7又は9)及び/又は容器(1)を動かすことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の磁性粒子の処理方法。
  10. 360°回転を複数回行うことにより、磁性粒子(5)を適切に運動させることを特徴とする、請求項9に記載の磁性粒子の処理方法。
  11. 例えばイムノアッセイ用の生物学的分析装置であって、該装置は、所定数の位置を通る少なくとも一つのパスに亘って反応容器(1)を案内し且つ移動させる手段を含み、前記装置は各パスそれぞれに対する磁石配置を有し、この磁石(6及び7又は9)の配置は、
    上流における、磁性粒子(5)を容器の壁面上に凝集させる複数の高強度磁化源(6)と、
    下流における、磁性粒子(5)が磁化源のNS軸に沿って配向する糸状体を呈するようにする請求項1〜10のいずれか1項に記載の低強度磁化源(7又は9)とからなる
    ことを特徴とする生物学的分析装置。
  12. 各々の前記高強度磁化源(6)の磁気誘導の大きさが低強度磁化源(7又は9)の20〜100倍大きく、好ましくは30〜60倍大きく、且つ各々の高強度磁化源(6)と容器との間隔が、低強度磁化源(7又は9)との間隔の5〜20倍小さく、好ましくは10〜15倍小さいことを特徴とする、請求項11に記載の生物学的分析装置。
  13. 各々の前記高強度磁化源(6)が低強度磁化源(7又は9)に対し容器(1)に関して垂直に位置することを特徴とする、請求項11又は12に記載の生物学的分析装置。
  14. 各々の前記高強度磁化源(6)が、容器(1)の開口(2)と底(3)を通過する軸に対して横方向に位置し、且つ低強度磁化源(7又は9)は前記容器(1)の底(3)の下方に位置することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載の生物学的分析装置。
  15. 所定数の位置を通る前記パスに沿って、高強度磁化源(6)の位置が低強度磁化源(7又は9)に近づく程、前記高強度磁化源(6)の位置が容器(1)の底(3)に近づくことを特徴とする、請求項11〜14のいずれか1項に記載の生物学的分析装置。
  16. 請求項11〜15のいずれか1項に記載の生物学的分析装置において、前記高強度磁化源(6)が、
    容器(1)の同一の側に位置して一列に並ぶ磁石又は
    容器(1)の両側に位置して二列に並ぶ磁石からなり、
    同一の列にある磁石はそれぞれのNS極を同一方向に揃えて横並びに位置することを特徴とする生物学的分析装置。
  17. 前記高強度磁化源(6)は、磁性粒子(5)の「離れ」を促進する少なくとも一個の逆極磁石(逆磁場)を含むことを特徴とする、請求項16に記載の生物学的分析装置。
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