JP2004532009A - 微生物を同定及び分類するための磁気共鳴分光法 - Google Patents

微生物を同定及び分類するための磁気共鳴分光法 Download PDF

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Abstract

【課題】
【解決手段】磁気共鳴分光法を用いて、多変量解析により、統計的識別子が細菌や真菌等の微生物を同定する。前記細菌には、Staphylococcus、Enterococcus、及びStreptococcus中の種が含まれ得る。前記真菌には、CandidaやCryptococcusの種を含む病原性酵母が含まれ得る。

Description

【背景技術】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2001年2月21日に出願された米国仮出願第60/270,367号の優先権を主張する。
【0002】
<発明の背景>
本発明は、磁気共鳴分光法を用いて、多変量解析により、細菌や真菌等の微生物を同定及び分類することに関する。
【0003】
本出願を通じて、様々な文献が括弧内に参照されている。本発明が属する分野の技術水準をより完全に記載するために、これらの文献の開示内容全体を参考文献として本出願に援用する。これら参考文献の詳細な書誌的情報は、本出願の末尾(図面の簡単な説明の前)に列記されている。
【0004】
分類学による微生物の分類には、微生物細胞に由来する複数の代謝物/化合物の検出又は遺伝物質(DNA)の分析に基づいて、類似の特性を有する微生物をグループ分けする方法がある。いわゆる先祖リボソームDNA遺伝子の配列から得られる「遺伝子系統図」を用いれば、全ての生物間又は生物内において、種のレベルで識別することができ、各株のレベルまで識別することが可能な場合もある。培養条件が注意深く標準化されていれば、微生物の代謝物のプロフィールから、数的アルゴリズムと「系統図」を構築することも可能である。医学の分野では、微生物の病原体が同定されると、医師は適切な療法を予測して開始すること及び予後に関する情報を患者に提供することができる。
【0005】
感染組織の部位には、微生物細胞と、宿主の免疫細胞と、通常は、感染が生じた臓器又は組織の細胞とが混在している。病理学的な診断は、以前から時間と労力を要し、組織病理学的検査及び形態による微生物の同定と培養が必要であり、その他の方法が必要なこともある。
【0006】
医学及び企業の研究所の何れにおいても、微生物の同定法は、歴史的に、形態的な特徴及び幅広い生化学反応を含む複数の表現型特性を基礎としている。これらの検査は、その実施に時間がかかり、及び/又は比較的高価であることが多く、不正確なこともある。近年、微生物の性質決定及び同定を短時間で実施できる単一の方法を開発すべく、代替法が研究されている。これらの方法には、フーリエ変換赤外分光法(FTIRS)(11)(14)、熱分解質量分析法(PyMS)(12)、エレクトロスプレーイオン化質量分析法(EIMS)(7)、UV共鳴ラマン分光法(UVRRS)(15)、及びタンパク質電気泳動(16)が含まれる。これらの技術に関する報告は、ある種の微生物群を迅速且つ確実に同定できる可能性があることを示唆しているが、多くは少量のデータ群で検査したものである。FTIRS以外は、細胞の分解産物を分析する破壊的な技術である。何れも、生きた生物からそのままの状態で生化学的情報を直接得られないという限界を有している。
【0007】
これに対して、生きた細胞の磁気共鳴分光(MRS)は、幅広い代謝物についての情報を与えることができる。MRSを生物学に用いる場合には、生物系内での細胞の生化学的諸問題を研究するために、本技術の非侵襲的な性質を活用することが極めて一般的である(6)。しかしながら、MRSの全ての応用例が、MRスペクトルに寄与している代謝物の同定を必要とし、又は包含するものではない。組織と体液両者のMRSに対して、予め規定したクラス(病状等)に付随する包括的なスペクトル特性を検出するというパターン認識技術を適用することに成功している。H MRスペクトルのデータの多変量解析を基礎とした正確且つ信頼性のある識別子が開発されており、甲状腺(21)、卵巣(23)、前立腺(9)、乳房(13)、及び脳腫瘍(20)の客観的診断としての有効性が検証されている。ある種の病状においては、形態的な徴候が光学顕微鏡によって観察できるようになる前に、MRSで悪性腫瘍を検出することも可能である(17)。
【0008】
C. neoformansによって引き起こされるクリプトコッカス症は、免疫不全状態の宿主や健康な宿主の命を脅かすこともある真菌症である。C. neoformansは、真菌による髄膜炎の最も一般的な原因であり(1)、肺と脳の両方に、限局的な病変(クリプトコッカス肉芽腫)が生じ得る(2、3)。診断時の宿主の免疫状態に応じて、クリプトコッカス症を呈するオーストラリア人患者の最大14%に、脳のクリプトコッカス肉芽腫が報告されている(4)。脳の病変は、身体の他の部位から得られた組織若しくは液体、又は脳脊髄液(CSF)中にC. neoformansが同定された後に診断されるのが通常である。
【0009】
感染性病変部の病理は、コンピュータ断層撮影法(5)又は磁気共鳴画像法(MRI)(6)等の方式によっては確実に区別することができないので、病変が脳に限局している場合(3)や診断用物質が他に存在しない場合には、診断のために脳の生検が必要とされる。
【0010】
プロトン磁気共鳴分光法(H MRS)は、腫瘍、卒中、及び細菌感染症に応用されている(7−14)。脳のインビボMRSが開発され、動物モデルにおける初期のエキソビボ及びインビボでの研究に基づいて(15)、ヒトの腫瘍の診断に関して総合的な試験が行われている(7、9、13)。MRSは、極めて高い有病正診率と無病正診率で、ヒト生検中の腫瘍病変を同定した(16−20)。
【0011】
微生物及び/又は宿主の免疫反応中に動員された細胞に由来するMRで検出可能な化合物は、診断及び予後マーカーとなり得る可能性がある。C. neoformansの細胞外炭水化物やその他の産物が、クリプトコッカス髄膜炎を有する患者から得たCSF中に同定されている(21)。C. neoformansの細胞は、クリプトコッカス肉芽腫中のバイオマスにおいて高い割合を占める外部莢膜多糖体によって、他の侵入性真菌病原体の細胞とは区別される。精製された莢膜の物質が、H及び13C MRSによって調べられている(22)。さらに近年の研究によって、インビトロで培養されたC. neoformansの細胞外産物がMRSを用いて同定されている(23)。
【0012】
病原性細菌及び真菌は、細胞の形態や生化学を基礎として同定分類されるのが通常である。明確な同定のためには幾つかの生理的検査が必要なので、伝統的な方法は一般に時間がかかる。酵母属カンジダの幾つかの種における場合のように、表現及び化学型の差が極めて僅かしか存在しない場合には、このようなテストは困難であるか、確定的ではあり得ない。遺伝子型に基づく方法は、これより正確だが、労力を必要とし、高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
好ましくは種(species)の集団又は種のレベルまで、様々な微生物の同定を可能とするための統計的識別子(statistical classifier)を提供することが本発明の目的である。本明細書において使用する「微生物(microorganism)」という用語は、細菌、真菌、寄生生物、ウイルス、原虫、及び藻類を含む全ての微細な生物(microscopic organism)(すなわち、全ての単細胞又は多細胞生物体)を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては、細菌細胞懸濁物等の微生物の一次元H MRスペクトルによって、水素を含有する化合物の概要が与えられる。その結果、H MRスペクトルは、細胞の構造(細胞壁のような不動性成分を含む)より、細胞の生理機能(代謝物のプール)を反映することになる。多くの異なる細菌群が実質的に同一の代謝経路を発現し、利用している可能性はあるが、異種の群を類似の環境中で発育させると、酵素の発現及び活性のレベルが異なるために、特定の代謝物のレベルが明瞭に異なることがある。従って、代謝物のプールのサイズの顕著な差異を、異なる細菌群のH MRスペクトル間の差として検出できることがある。このことは、選んだ細菌のH MRスペクトルの比較を行った従前の研究において示唆されていたが(5)、調べた分離株の数が少なく、この研究では定性的な同定法が記載されていたので、種群の定量的な比較又は自動化は不可能であった。
【0015】
本発明では、異なる微生物の分離株(異なる種の細菌等)の培養物に対して線形判別分析(LDA)を用いることにより、それらのH MRスペクトルに基づいて、細菌種を高い信頼性で自動同定することが可能となった。
【0016】
本発明によれば、プロトン磁気共鳴分光法(H MRS)を多変量統計解析と組み合わせることによって、微生物、細菌を同定するための新しいフィンガープリント技術が提供される。これによって、細菌種Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Enterococcus faecalis、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus agalactiae、及びStreptococcus milleri群に属する一般的な臨床分離株のための客観的な同定法が得られる。H MRSを用いて、異なる104の分離株の培養物を計312個調べた。スペクトルを客観的に分類するために、ブートストラップ法とLDAを用いて、最適化された識別子を開発した。分離株の同定は、二組の培養物から得られたスペクトルの分類に基づいて行い、従来の同定法と94%の一致が得られた。誤って同定されたのは、分離株の1%未満であった。残りの5%の分離株は不確定と同定した。少数のEnterococcus casseliflavusとE. gallinarum分離株を調べたが、E. faecalisと区別することが可能であり、従来の同定法と96%の一致を見た。
【0017】
本発明によれば、微生物を同定し、識別する代謝物をMRSによって同定することができる。LDAと組み合わせると、MRSによって、異なる属(genera)に属する病原性細菌の種を同定することが可能である(65)。本発明によれば、MRSをLDAと組み合わせることによって、Bourneらが示したよりも(63)分類学的に近縁な病原性微生物の同定が可能となる。例えば、病原性酵母種であるCryptococcus neoformansの2つの亜種(var. gattiiとvar. neoformans)と5つの病原性カンジダ種を本発明によって同定することができる。
【0018】
本発明によれば、種が不明な微生物を公知の種に分類するための統計的識別子を得る方法であって、(a)種が公知で異なる複数の微生物の夫々から複数の磁気共鳴スペクトルを取得することと、(b)得られた前記磁気共鳴スペクトルの中に最大の識別力を有する部分領域を複数決定することと、(c)夫々の種から得た前記スペクトルの第一の部分を選択すること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から線形判別分析識別子を得ること、及び夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から得られた前記識別子を用いて夫々の種から得た前記スペクトルの残りを検証して、種が不明な微生物の種を決定するために使用できる最適化された線形判別分析係数と識別子スペクトルとを種が公知の前記各微生物について取得することにより、前記スペクトルを交差検証することとを備えた方法が提供される。
【0019】
本発明の別の側面によれば、種が不明な微生物の種を決定する方法であって、種が不明な微生物の磁気共鳴スペクトルを得ることと、得られたスペクトルを種の識別子と比較することとを備え、(a)種が公知で異なる複数の微生物の夫々から複数の磁気共鳴スペクトルを得ることと、(b)得られた前記磁気共鳴スペクトルの中に最大の識別力を有する部分領域を複数決定することと、(c)夫々の種から得た前記スペクトルの第一の部分を選択すること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から線形判別分析識別子を得ること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から得られた前記識別子を用いて夫々の種から得た前記スペクトルの残りを検証して、最適化された線形判別分析係数と識別子スペクトルを種が公知の前記微生物の夫々について取得すること、及び前記種が不明な微生物のスペクトルに最も合致するスペクトルを有する微生物を前記種が不明な微生物の種として選択することにより、前記スペクトルを交差検証することとによって前記識別子が得られる方法が提供される。
【0020】
本発明によれば、種が不明の微生物を公知の種に分類するための統計的識別子を得る方法であって、(a)種が公知で異なる複数の微生物の夫々から複数の磁気共鳴スペクトルを取得することと、(b)得られた磁気共鳴スペクトルの中に最大の識別力を有する部分領域を複数決定することと、(c)夫々の種から得た前記スペクトルの第一の部分を選択することと、夫々の種から得られた前記スペクトルの前記第一の部分から線形判別分析識別子を創出することと、及び夫々の種から得られた前記スペクトルの前記第一の部分から得た前記識別子を用いて夫々の種から得られた前記スペクトルの残りを検証して、種が非公知である微生物の種を決定するために使用できる最適化された線形判別分析係数と識別子スペクトルとを各微生物について取得することとにより、前記スペクトルを交差検証することとを備えた方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明によれば、種が不明な微生物を公知の種に分類するための統計的識別子を得る方法であって、(a)種が公知で異なる複数の微生物の夫々から複数の磁気共鳴スペクトルを取得することと、(b)得られた前記磁気共鳴スペクトルの中に最大の識別力を有する部分領域を複数決定することと、(c)夫々の種から得た前記スペクトルの第一の部分を選択すること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から線形判別分析識別子を得ること、及び夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から得られた前記識別子を用いて夫々の種から得た前記スペクトルの残りを検証して、種が不明な微生物の種を決定するために使用できる最適化された線形判別分析係数と識別子スペクトルとを種が公知の前記微生物の夫々について取得することにより、前記スペクトルを交差検証することとを備えた方法が提供される。
【0022】
好ましくは、前記方法は、工程(c)を複数回繰り返す工程をさらに備え、それぞれの回ごとに、前記種からスペクトルの異なる部分を前記スペクトルの前記第一の部分として選択して最適化された線形判別分析係数の異なる組を前記種について取得し、前記線形判別分析係数の加重平均を求めて最終識別子スペクトルを取得する。スペクトルを交差検証(cross−validate)する工程は、好ましくは、スペクトルのおよそ半分を無作為に選択することによってスペクトルを交差検証することを含む。工程(c)を複数回繰り返す前記工程では、好ましくは、約1000回工程(c)を繰り返す。
【0023】
前記方法は、複数の識別子スペクトルを独立に取得する工程と、独立の前記識別子の結果を総合して完全一致の診断(consensus diagnosis)を得る工程とを含むことが好ましい。
【0024】
前記微生物には、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Enterococcus faecalis、Enterococcus casseliflavus、Enterococcus gallinarum、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogeries、及びStreptococcus agalachaeの種を含む細菌が含まれ得る。前記微生物には、Candida albicans、Candida parapsilosis、Candida tropicalis、Candida krusei、及びCandida glabrata、及びCryptococcusの亜種neoformansとgattli等の病原性酵母を含む真菌が含まれ得る。前記微生物には、培養された細菌感染、及び/又は細菌感染を有する哺乳動物から得た試料が含まれ得る。
【0025】
異なる各種の複数の前記磁気共鳴スペクトルは、好ましくは少なくとも10であり、少なくとも30であり得る。
【0026】
本発明の別の側面によれば、種が不明な微生物の種を決定する方法であって、種が不明な微生物の磁気共鳴スペクトルを得ることと、得られたスペクトルを種の識別子と比較することとを備え、(a)種が公知で異なる複数の微生物の夫々から複数の磁気共鳴スペクトルを得ることと、(b)得られた前記磁気共鳴スペクトルの中に最大の識別力を有する部分領域を複数決定することと、(c)夫々の種から得た前記スペクトルの第一の部分を選択すること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から線形判別分析識別子を得ること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から得られた前記識別子を用いて夫々の種から得た前記スペクトルの残りを検証して、最適化された線形判別分析係数と識別子スペクトルを種が公知の前記微生物の夫々について取得すること、及び前記種が不明な微生物のスペクトルに最も合致するスペクトルを有する微生物を前記種が不明な微生物の種として選択することにより、前記スペクトルを交差検証することとによって前記識別子が得られる方法が提供される。
【0027】
好ましくは、該方法は、工程(c)を複数回繰り返す工程をさらに備え、それぞれの回ごとに、前記種からスペクトルの異なる部分を前記スペクトルの前記第一の部分として選択して最適化された線形判別分析係数の異なる組を前記種について取得し、前記線形判別分析係数の加重平均を求めて最終識別子スペクトルを取得する。スペクトルを交差検証する工程は、好ましくは、スペクトルのおよそ半分を無作為に選択することによってスペクトルを交差検証することを含む。工程(c)を複数回繰り返す前記工程では、約1000回工程(c)を繰り返す。前記方法は、複数の識別子スペクトルを独立に取得する工程と、独立した前記識別子の結果を総合して完全一致の診断を得る工程とを含むことが好ましい。
【0028】
前記微生物には、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Enterococcus faecalis、Enterococcus casseliflavus、Enterococcus gallinarum、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogeries、及びStreptococcus agalachaeの種を含む細菌が含まれ得る。
【0029】
前記微生物には、Candida albicans、Candida parapsilosis、Candida tropicalis、Candida krusei、及びCandida glabrata、及びCryptococcusの亜種neoformansとgattli等の病原性酵母を含む真菌が含まれ得る。前記微生物には、培養された細菌感染、及び/又は細菌感染を有する哺乳動物から得た試料が含まれ得る。
【0030】
異なる夫々の種の複数の前記磁気共鳴スペクトルは、好ましくは少なくとも10であり、少なくとも30であり得る。
【0031】
本発明の別の側面によれば、種が不明の微生物を公知の種に分類するための統計的識別装置であって、(a)種が公知で異なる複数の微生物の夫々から複数の磁気共鳴スペクトルを取得するための分光計と、(b)得られた磁気共鳴スペクトルの中に最大の識別力を有する部分領域を複数決定するための位置決定装置と、(c)夫々の種から得た前記スペクトルの第一の部分を選択すること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から線形判別分析識別子を得ること、及び夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から得られた前記識別子を用いて夫々の種から得た前記スペクトルの残りを検証して、種が非公知である微生物の種を決定するために使用できる最適化された線形判別分析係数と識別子スペクトルとを前記種が公知の微生物の夫々について取得することにより、前記スペクトルを交差検証するための交差検証装置とを備えた統計的識別装置が提供される。
【0032】
好ましくは、前記交差検証装置は、工程(c)を複数回繰り返し、それぞれの回ごとに、前記種からスペクトルの異なる部分を前記スペクトルの前記第一の部分として選択して前記種に対する最適化された線形判別分析係数の異なる組を取得し、前記線形判別分析係数の加重平均を求めて最終識別子スペクトルを取得する。前記交差検証装置は、好ましくは、スペクトルのおよそ半分を無作為に選択することによってスペクトルを交差検証する。前記識別装置は、好ましくは、約1000回工程(c)を繰り返す。前記識別装置は、好ましくは、複数の識別子スペクトルを独立に取得し、独立した前記識別子の結果を合わせて完全一致の診断を得る。
【0033】
前記微生物には、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Enterococcus faecalis、Enterococcus casseliflavus、Enterococcus gallinarum、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogeries、及びStreptococcus agalachae等の細菌が含まれ得る。
【0034】
前記微生物には、Candida albicans、Candida parapsilosis、Candida tropicalis、Candida krusei、及びCandida glabrata、及びCryptococcusの亜種neoformansとgattli等の病原性酵母を含む真菌が含まれ得る。前記微生物には、培養された細菌感染、及び/又は細菌感染を有する哺乳動物から得た試料が含まれ得る。
【0035】
異なる種夫々の複数の前記磁気共鳴スペクトルは、好ましくは少なくとも10であり、少なくとも30であり得る。
【0036】
様々な種類の微生物、特に様々な細菌と真菌の同定について多数の実施例が記載されている。しかしながら、本発明は、実施例中の細菌及び真菌種に限定されるものではなく、本明細書に開示されている方法を通じて同定することが可能なあらゆる微生物に対して使用することができる。
【実施例】
【0037】
実施例1細菌の検出
1.細菌の保存と培養
分離株は、感染症及び微生物センター(CIDM)、シドニーの臨床病理医学研究所、及び米国菌培養収集所の収集品から取得するか、CIDM研究サービスの臨床検査研究室から得た新しい臨床分離株であった。保存する分離株は、ニュートリエントブロス中の10%グリセロール中に、−70℃で懸濁した。滅菌したウマの血液を、高圧滅菌したBlood Agar Base(Oxoid(UK)又はAmyl Media(Australia))に加えることによって、ウマ血添加寒天(HBA)を調製した。保存してあった分離株を5%のウマ血添加寒天上に継代培養し、5%のCO下、37℃で18−24時間インキュベートした。新しい分離株と保存後にHBA上に継代培養した分離株を二組のHBAプレート上に画線し、37℃で18−24時間インキュベートした後、分光測定の前に室温(20−30℃)で3−9時間保存した。
【0038】
短時間法の変動を調べるために、二組の培養物を全分離株について調査した。長期培養及び方法の変動を調べるために、本発明者らは、8ヶ月にわたって、多数の分離株を最大7回再培養した。分析には、3つのEnterococcus gallinarum分離株、3つのE.casseliflavus分離株(E.faecalisと近縁であるE.casseliflavusと近縁である(10))のスペクトルを含めた(表1)。各種群から調査した別個の分離株の数、及び分離株を再培養して再調査した回数は、表1から決定することができる。
【0039】
2.従来法による細菌の同定
Staphylococcus aureusは、凝固酵素の陽性(ウサギ又はヒトの血漿を使用)とDNase検査に基づいて同定した。Staphylococcus epidermidisは、API ID32 staph test(BioMerieux、France)を用いて同定した。SterptococcusとEnterococcus種は、従来法、すなわちオプトヒン感受性(Streptococcus pneumoniae)、耐塩性と胆汁−エスクリン陽性(Enterococcus spp.)、ラテックス凝集反応(Streptococcus agalactiae)、API ID32 strep test(BioMerieux)によって同定した。全ての検査は、メーカーの指示書に従って実施した。総じて、分離株は、微生物研究所に到着した際に、保存に先立って一度だけ同定を行った。保存を経た幾つかの分離株には、従来の検査法によって再度同定を行った。
【0040】
3. H MR分光法
プラスチックの接種用ループを用いて、細菌のコロニー(2−200mgの湿重量)をHBAプレートから穏やかに採取し、DO中に調合したリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2、室温)(PSB/DO)0.3mLの中に、ボルテックスにより懸濁した。多くの培養物では、80%超の細胞をプレートから掻き取った。増殖が著しい場合には、通常第一の四分円から10%に満たない細胞を採取した。前記懸濁物を、磁化率を揃えた5mmのMR試料管(Shigemi、USA)に直ちに移した。H MRSの測定は、H/13C 5mmのプローブヘッドを用いたBruker Avanceの360MHz MR分光計により、37℃で行った。1Dスペクトルは、以下の収集パラメータ:周波数360.13MHz、パルス角90°(6−7ms)、反復時間1秒、8kデータポイント、256又は521のトランジェント、スペクトル幅3600Hz、総収集時間10又は20分を用いて収集した。フィールドをDOにロックした。軽水消去は、選択的励起場勾配法(DPFGSE、(3))によって実施した。PSB/DO中に懸濁した細胞のスペクトルは、37℃で少なくとも2時間安定であった。
【0041】
4.シグナルの帰属
1D MR共鳴を特定の化合物に帰属させるために、種当たり少なくとも2つの分離株に対して、二次元同種核及び異種核相関スペクトルを収集した。{H、H}グラジエントCOSY実験は、マグニチュードモードで行った。収集パラメータは、tの掃引幅3600Hz、t時間領域2K、それぞれ256刻みで32又は48の収集、反復時間1秒であった。t次元にはsine−bell窓関数を当てはめ、t次元にはGaussian−Lorentzian窓関数を当てはめた。データマトリックスをt次元に1Kまで拡張するためにゼロフィリングを使用した。増分256の2Kのデータポイントと32の収集を用いて、混合時間40ms及び150msのTOCSYスペクトルを収集した(1)。{H、13C}一量子シフト相関スペクトルは、勾配HSQCパルスシーケンスを用いて、H検出モードで取得した(24)。H MRスペクトルの幅は3600Hzであり、13C MRスペクトルの幅は15000Hzであった。収集中の13C MRデカップリングは、GARP−1によって行った(18)。400のFIDを得るために展開時間(t)を増加させた(それぞれ、40−64の収集、2Kのデータポイントからなる)。反復時間は1秒であった。sine−bell関数をt次元に当てはめ、Gaussian−Lorentzian関数をt次元に当てはめた。フーリエ変換に先立ち、t次元に1Kへのゼロフィリングを使用した。{H、13C}勾配異種核遠隔多量子相関スペクトル(HMBC)は、13C MRスペクトル幅が20kHzであることを除き、HSQC実験のパラメータと同じパラメータを用いて、プロトンデカップリングなしで収集した(24)。一量子及び遠隔相関実験は、通常、それぞれ140HzのC,H及び7HzのC,Hに対して最適化した。1D H MRスペクトルは、代謝による変化が存在しないことを確かめるために、2D実験の前後に収集した。
【0042】
5.データ処理
スペクトルは、BrukerのXWINNMR分光計ソフトウェアを用いて処理した。自由誘導減衰データの組を16Kまで拡張するために、ゼロフィリングを行った。フーリエ変換の前に指数窓関数を適用して、1Hzの広幅化を得た。スペクトルの中心を4.64ppm(37℃、PBS/DO中での、テトラメチルシランに対する水の共鳴の名目位置)に設定することによって、化学シフトの較正を行った。直線的で平坦なベースラインを得るために、スペクトルの位相は手動で補正した。
【0043】
代表的なスペクトル中に存在する主要なピークに基づいて、連続する一定の統合領域16個を主観的に選択した(図1)。各積算値を標準化して、4.0から0.75ppmにわたる16の積算値の総強度とした。
【0044】
6.線形判別分析
LDAを行うために、積算値の表をMicrosoft ExcelからSTATISTICA(StaSoft Pacific P/L、Australia)に取り込んだ。選択した16個の統合領域のうち、初めの15領域各々が(結果参照)LDAにおける一つの独立変数を構成した(標準法、7群、許容値0.01(集団の大きさに比例する予め規定した分類確率))。標準化されたデータの組での判別分析については領域が一つ余分なので、16番目の領域は除外した。分類関数と分類確率は、STATISTICAを用いて算出した。
【0045】
7.スペクトルの分類と分離株の同定
本明細書では、以下の定義を使用する。分類(classification)という用語は、細菌培養から得た各スペクトルを種群に割り振ることを意味する。同定(identification)とは、(分離株の二組培養物に由来する二つの独立したスペクトルの分類に基づいて)分離株を種群に割り振ることを意味する。正しい分類とは、75%を超えるパーセント分類確率で、従来の分類と同じ種群にスペクトルを割り振ることを意味する。誤った識別とは、75%を超えるパーセント分類確率で、従来の分類とは異なる種群にスペクトルを割り振ることを意味する。不確定な識別とは、75%以下のパーセント分類確率で、スペクトルを任意の種群に割り振ることを意味する。正しい同定とは、平均で75%を超えるパーセント分類確率で、従来の同定のとおりに二組の培養物の両スペクトルを割り振ることを意味する。誤った同定とは、平均75%を超えるパーセント分類確率で、二組の培養物の両スペクトルを同じ種群に割り振るが、従来の同定とは割り振りが異なることを意味する。不確定な同定とは、75%未満の平均分類確率で、二組の培養物のスペクトルを異なる集団又は同じ集団に割り振ることを意味する。
【0046】
SomorjaiらのRobust BootStrap(RBS)法に基づいて(19)、(2)、最適化された識別子を7つの種群全てについて求めた。312の全スペクトルから開始して、スペクトルの半分を各種群から無作為に選択し、前記7群の識別子を学習させるために、この学習群(training set)を用いた(LDA)。次いで、得られた識別子を用いて残りのスペクトル(検査群(test set))を検証した。このプロセスを(復元しながら)B回繰り返し、最適化されたLDA係数を毎回保存した。これらB組のLDA係数の加重平均により、最終識別子を得る(B=1000)。m番目の組に対する加重は、W=K 1/2、m=1,・・・,Bである(ここで、0<C<1は、鮮明度(crispness)(検査試料が、75%のパーセント確率で、あるクラスに割り振られる割合として定義される)であり、0<K<1は、偶発性を補正した(chance−corrected)コーエンの一致係数である(4)、K=1は検査群の分類が完全であることを意味する。)。加重に用いたWのB値は、ブートストラップ学習群のために得たものではなく、これより楽観度が低い検査群に対して得たものである。次いで、最適化された識別子を用いて全312スペクトルを分類した。識別子の結果は、パーセント識別確率として表されている。
【0047】
Enterococcus spp.を別個に分類するために、3つのEnterococcus spp.の62スペクトルのRBSに基づいて、最適化された識別子を求めた(B=200、LDAパラメータは上記のとおり)。STATISTICA、Microsoft EXCEL、及びMicrosoft VISUAL BASIC for APPLICATIONS(VBA)を用いてRBS分類ソフトウェアを記述し、Pentiumを搭載したパソコンで実行した。
【0048】
8.結果
H MRスペクトル 7つの種群それぞれの代表的なスペクトルと分析に選んだ16の統合領域が図1に示されている。入手可能な場合にはATCCの基準株のスペクトルが示されており、それ以外の場合には、(積算強度に基づいて)全てのスペクトルの集団重心に近い分離株のスペクトルが示されている。各統合領域について同定された、最も寄与が顕著で統計解析に用いた代謝物が表3に列記されている。
【0049】
各種群から調べた30−60のスペクトル中に見出されたスペクトルパターンの範囲を示すことはできないが、図2は、各種群に対して測定された規格化した積算強度の範囲(平均±SD)を示している。
【0050】
9.スペクトルの分類と分離株の同定
最適化された識別子に基づいて、312のスペクトルを分類し、7つの種群に由来する104の分離株を同定した結果が表1に示されている。分類及び同定能についての結果のまとめが、表2に示されている。誤って分類されたスペクトルは2%に満たず、誤って同定された分離株は1%に満たなかった。不確定な識別のスペクトルが13個存在した。同定が不確定であった9個の分離株のうち5個の分離株は、以後又は以前の別の日に行った培養で正しく同定された(残りの4つの分離株は培養保存中に保持されず、再度試験することができなかった)。
【0051】
3つのEnterococcus casseliflavus分離株と3つのE.gallinarum分離株のスペクトル14個を、E.faecalisから別に分類しようとする試みの結果が表4に示されている。調べた分離株は少数であったにもかかわらず、Enterococcus casseliflavusとE.gallinarumをE.faecalisから確実に区別して同定することも可能であることを、これらの結果は示唆している。
【0052】
10.スペクトルの再現性
二組の同時培養物から得られたスペクトル、及び1−8ヶ月の期間にわたって保存状態から何度も回収した分離株のスペクトルを独立に解析することによって、この分類法が強固なものであり、培養条件の僅かな変化、生物体の数、又は分離株の保存状態といった要因のために、短期又は長期の操作による変動の影響を受けないことが確認された(表1参照)。
【0053】
11.考察
a.H MRS及び多変量解析の独立変数の選択
図1に示されているように、幾つかの種の典型的なスペクトルには差があることが容易に目で観察される。しかしながら、S.pyogenesとS.pneumoniaeのような種のスペクトルの差は、目で観察しても明らかではなく、このような似通った群を確実に区別するには、データの多変量解析を行うしかないであろう。このような解析の最初の段階では、何千ものデータポイントから、及び有意な集団間の差を全て明らかにする処理可能な独立変数の組から構成されるスペクトルからの抽出を行う。最適な識別力を有するスペクトル領域を選択するための洗練された方法が報告されているが(21)、全てのスペクトルについて、単に、図1に記されているスペクトル中に存在するピークに基づいて目で選んだ16の連続する領域に分割するという方法を選択した。この手法の利点は、各統合領域中のシグナルに寄与している代謝物を同定することができれば、得られる独立変数に特定の生化学的意義を割り当てることができる(すなわち、独立変数をある代謝物又は代謝物群と関連付けることができる)ということである。表3は、図1のスペクトルに寄与している主な代謝物を幾つか同定しているが、ここで用いた細菌同定法は、MRシグナルに寄与している代謝物の同定又は定量に依存するものではない。しかしながら、分類の基礎となる測定された細胞の特性は、通常の同定の際に検出される特性とは大いに異なっており、他の完全生物体のフィンガープリント技術によって測定される特性とも異なっていることに留意することが重要である。
【0054】
b.分類及び同定の方針
LDAに基づく分類では、検査群のデータ(学習群とは独立していることが好ましい)を分類するために、学習群のデータに対するLDAによって得られる一群の関数を使用することが必要である(交差検証)。学習群の機能は、MRスペクトルから得られたn個の独立変数の形で、予め規定された集団の各々によって占められるn次元のデータ空間(data space)の領域を記述することである。学習群中の前記規定された集団がデータ空間中で十分に分離されていれば、予め規定した集団に学習群の全ての構成要素を割り当てる識別関数がLDAによって与えられるであろう。ある集団に伴うデータ空間の領域は、ある種群に属する構成要素間の表現型の変動に伴って増大し、集団の特定の構成要素のスペクトルを分類することによって、又は培養を反復することに伴って起こる操作上の(環境的、生化学的、及び方法論的)変動に伴っても増大する。このため、ある集団から無作為に選択した少数の構成要素のみを含む学習群は、当該種群の全構成要素によって占められるデータ空間(表現型の範囲)を正確に代表している可能性は少ない。各分離株要素の測定値が学習群に一つしか含まれていなければ、学習群は操作上の変動も表していないであろう。従って、ある集団の一部から得た学習群に基づく識別関数を使用して学習群の構成要素ではない集団要素を分類すると、幾つかの誤った分類が生じるものと予想される。
【0055】
識別子を頑健で信頼性のあるものとするためには、学習群中の種群当たりのスペクトルの数は、独立変数の数の5−10倍超に設定することが望ましい(19)。このような大規模なデータ群は稀であるものと思われ、とりわけ、得られた識別子を学習群とは独立した検査群に対して検証しなければならないのであれば、通常は収集が困難である。利用可能なデータを全て用いて、交差検証した識別子を生成させることによって、Robust BootStrap法はこの問題を軽減する(19)。
【0056】
本明細書で使用したように、ある臨床分離株の培養物を二組、時には三組調製し、検査するのが容易であれば、複数の独立した分析に基づいて、完全に一致した同定が分離株について得られるという利点がある。この分離株の同定法のかかる特徴は、せいぜい、装置を二つにするしかない、他の完全微生物フィンガープリント実験(5,8)では得られなかった。二つの組が異なる種として誤って分類されるケースが僅かに存在することもあるであろう。従って、ある分離株の単一の継代培養に対する解析に基づく同定には、独立した二組の培養の分類に基づいた同定と同じ信頼レベルを与えることができない。分離株の単一培養に対する解析に基づいて同定確率を与える従来法を使用する場合には、同定確率が75%未満の分離株を再検査するのが通例である。分析は、単一の検査が75%超の同定確率になるまで繰り返される。この方法の場合、検査終結の時点において、分離株に対する全検査の平均同定確率が75%を下回る可能性がある。常に二組の培養物を検査し、正しい同定が75%を超える平均確率に基づくことを要求する方法では、より厳格で信頼性のある制約が同定に対して課される。二組の検査が常法とされている実際の(臨床の研究室)環境においては、選定された集団の二組の間に不一致があれば操作上の問題を示しているものと考えるべきであり、このような分離株は再検査するか、補助的な技術で調べるべきである。
【0057】
種群内での表現型の変動は、各種群から少なくとも11の分離株を検査することによって対処することができた。用いた分類法が概ね成功したことは、操作又は表現型に起因する種内の変動の典型的範囲より大きな有意且つ一貫したスペクトルの差が、種群間に存在することを示している。
【0058】
c.分類と同定の結果
極めて少数のスペクトルの誤分類は、本方法の何れかの特定の工程に起因するものではないと思われる。短期及び長期の操作上の変動(バッチが異なる培地の使用、分離株の保存等)によって起こり得る再現性の問題は、全ての分離株について二組の培養から得たスペクトルを別個に分析すること、及び最初の培養と分光測定から最大8ヶ月後の時点で、25個の分離株のスペクトルを再度培養し分類することによって除外された。唯一の誤同定の例(S.pyogenes Lab.No.221−2985)は、混入の結果であると思われる。同一の分離株に対する以前及びその後の検査は、正しい同定結果を与えた。本明細書で用いた方法には、同定の頑健性を示す特徴が幾つか存在する。
【0059】
第一に、試料の増殖条件は厳密にコントロールされていない。例えば、増殖培地の正確な組成はバッチごとに変動してもよい(異なる二つのメーカーの基礎培地と複数のバッチのウマ血を使用した)。接種のサイズはプレートごとに異なってもよい。コロニーと寒天を通じた酸素及び他の栄養素の拡散の遅さと密集のために、寒天上での細菌の増殖は本質的に不均一である。全ての分離株について三組の培養物を用いて行った初期の実験によって、単一バッチの培地上で増殖させた細胞から得られるスペクトルには変動がないことが実証された。HBAプレートの上で一晩得られた増殖の量に種の間で大きな変動があったために(一般に、S.milleriの増殖は極めて乏しかった)、再懸濁した細胞の湿重量は2−200mgにわたった。MRシグナルは試料濃度に正比例するので、細菌の増殖が不良な場合に十分なSN比を得るためには、トランジェントの数を拡張するだけでよい。スペクトル処理の位相補正と積算工程には、オペレータによる主観的な入力が必要であった。本方法のかかる欠陥によって、データにはさらに相違が導入される可能性がある。これらは、マグニチュードスペクトルと自動積算の使用によって克服できるかもしれない(23)。他の完全生物体フィンガーブリンティング技術は、増殖培地の厳密な調節と対照培養物を用いて繰り返し標準化することが必要であると報告されている(12)、(11)。
【0060】
S.milleri群の分離株を、MRSに基づいて、S.miller群の3つの種(S.anginosus、S.constellatus、S.intermedius)のうちの1つに割り当てる試みで、十分な数のS.milleri群の分離株を検査した。しかしながら、検査した7つの種群の多様性に比較して、この群は生理的に均一であることを結果は示している。同様に、調査したE.casseliflavusとE.gallinarumの分離株は、生理的には、検査を行ったStreptococcusとStaphylococcusの種よりも、E.faecalisに近い。
【0061】
d.培地の選択
臨床診断又は研究機関において使用するのに最も適切な培地を選択するに当たっては、増殖基質が一般的であることと試料の調製が容易であることが最も重要である。HBAは、診断微生物学の研究室で一般に用いられている培地であり、洗浄せずに、細菌細胞をHBAプレートから直接容易に採取できるので、この目的を最もよく充足するものとしてこの培地を選択した。本明細書で得られたスペクトルとトリプチケース・ソイ・ヒツジ血寒天上で増殖させたS.aureus及びE.faecalisについて公表されているスペクトルとの間には、大きな差が存在した(5)。後者の研究では、報告によれば、スペクトルパターンの解釈は、増殖培地の選択によって影響を受けなかったが、スペクトルパターンを目で検査し、ピーク強度でなくピーク位置で区別したからであると思われる。異なる培地中又は培地上での増殖は(HBA対脳・心臓浸出物ブロス)、代謝物のプールサイズの変化故に、ピーク位置(細胞内pH等の要因によって僅かに影響を受け得る)よりも相対ピーク強度に対してずっと著しい影響を与えた。
【0062】
e.臨床応用
限られたグラム陽性細菌群に基づくものではあるが、完全細胞のH MR分光法は、確立された種の自動同定法と同等の正確性と精度を有することを示唆している。これらの方法には、VITEK等の一般的な実験室系が含まれる(22)。本方法は破壊を伴わないので、引き続いて混入又は方法論的な過誤をチェックする事後分析のために、生きた状態の生物体を保持することが可能となる。
【0063】
本明細書で用いたパターン認識法よりもさらに洗練された方法を用いれば((19)参照)、容易に解釈される生化学的情報が犠牲になる可能性があるが、判別がさらに改善され、種群内部で区別して分類することが可能となるかもしれない。性質決定ではなく専ら同定に用いる場合、これは、許容され得る妥協点であろう。試料の調製が極めて容易である、生化学的に有益な結果が得られる、同定が迅速で自動化されている、再現性が高いという本方法の性質は、臨床及び産業に応用する上で魅力的である。実際に、比較的増殖が遅い細菌種や従来の方法では同定が困難である細菌種については、これは非常に価値が大きいと思われる。
【0064】
記載した方法は、簡易、迅速、確実、且つ有益な情報を与える。同定結果が独立に培養し解析される二つの組の解析に基づいているので、本方法は信頼性が高い。微生物の培養を容易に調製することができ、20分以内に分析できるので、本方法は簡易迅速である。単離された微生物がある集団に属する確率を定量的に推定するので、本方法は有益な情報を与える。
【0065】
本方法は、適切且つ安全な処理を行うために感染性因子を素早く同定しなければならない病院の研究室において使用することができるであろう。産業分野では、本方法は、工程の確実性と効率性を向上させるであろう。
【0066】
実施例2:ラット及び細胞培養においてクリプトコッカス肉芽腫を神経膠腫から区別するためのMRSの使用
1.序論
培養及び実験用ラット中で、C.neoformansと神経膠腫細胞株の臨床分離株を性質決定するために、MRSを使用した。インビトロで培養した真菌(Cryptococcus neoformansの分離株を16個、Candida albicansを3個、Aspergillus fumigatusを3個、Saccharomyces cerevisiaeを3個)とC6神経膠腫細胞株から1D及び2D H MRスペクトルを収集した。脳の生検は、健康なラットと実験的に感染症又は神経膠腫を発症させた動物から得た(健康な脳を19個、クリプトコッカス肉芽腫を19個、神経膠腫を20個)。同種核及び異種核2D相関スペクトル(COSY、TOCSY、H、13C−HSQC、及びHMBC)を用いて、細胞懸濁液と組織試料に対して、シグナルの明確な帰属を行った。C.neoformansと脳のクリプトコッカス肉芽腫から得たMRスペクトルは、サイトゾルの二糖α、α−トレハロース由来の共鳴が優位であるが、他の真菌、健康な脳、又は神経膠腫から得たスペクトルでは優位でないことを結果は示していた。このスペクトルパターンは、脂質及びコリン/クレアチン比の増加が顕著な神経膠腫のスペクトル、並びに健康な脳から得られるスペクトルとは極めて異なっていた。本結果から、MRで検出可能な他の代謝物に比してα、α−トレハロースの濃度が著しく高いことは、C.neoformansに特徴的であると結論付けられた。脳のクリプトコッカス肉芽腫は一般的ではないが、ヒトのクリプトコッカス症の重篤な症状である。脳のクリプトコッカス肉芽腫の非侵襲的診断にこれらの結果を応用すれば、不要な手術や生検の危険と出費が軽減され、患者の管理が捗るであろう。
【0067】
2.物質と方法
a.真菌及びC6神経膠腫細胞株のインビトロ培養
クリプトコッカスの分離株16個をインビトロで培養し、MRSで調べた。これらの分離株には、C.neoformans血清型Aの臨床分離株(肺、血液、CSF、及び脳から得られる臨床分離株)が8個、血清型Bの分離株(臨床(脳とCSF)、動物、及び環境分離株)が7個、C.neoformansの有性世代の臨床分離株Filobasidiella neoformans var. basilliformis(ATCC32609)が1個含まれていた。インビトロで培養し、MRSで調べたその他の真菌には、酵母Candida albicans(臨床分離株)とSaccharomyces cerevisiae(環境分離株及び基準培養)と真菌Aspergillus fumigatus(臨床分離株)がそれぞれ3つ含まれていた。酵母は、API 20C AUXシステム(BioMerieux、March L’Etoile、France)を用いて生化学的に同定した。クリプトコッカスは、生物型(45)と血清型(Crypto Check agglutination test、Iatron Labs)を決定した。真菌は、サブローのデキストロース寒天(SDA、Difco Labs、Detroit、MI、USA)上で24−48時間培養した後、30℃の脳・心臓浸出物ブロス中(A.fumigatus)、又は0.345%のw/v MOPS(Sigma Chemical Co.,St.Louis、MO、USA)でpH7.0に緩衝した27、30、及び/又は37℃の1%グルコース含有酵母窒素ブロス(Difco)中の何れかで培養し、C6(ラット神経膠腫細胞株)は記載どおりに成育させ(51)、3−30回以内の継代で使用した。使用直前に、対数期の真菌細胞、又はC6神経膠腫細胞を洗浄し、動物モデルの場合、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Difco)中に再懸濁するか、MRSの場合、99.5%が重水(DO)からなるPBS中に再懸濁した。
【0068】
C.neoformansの分離株の一つ(Mc Bride菌株)を増殖させるための培養条件には、MR検出可能な代謝物のプロフィールに対するストレスの影響を検査するために変更を加えた。10mMのグルコースを含有する緩衝酵母窒素ブロス(Difco Labs、Detroit、MI、USA)中で、この分離株を培養した。以下のパラメータを変更した。インキュベーション温度(27、35、及び42℃)、pH(5及び7)、グルコース濃度(1、10、50mM)、グルコースをマンノース(10mM)又はスクロース(10mM)に置換、無グルコース培地中で長期インキュベーション(0−100時間)。
【0069】
b.動物実験
C.neoformans血清型Bの単離株3個(WM276、WM430、Mc Bride)とC6神経膠腫細胞株を動物実験に用いた。ケタミン(11.6mg/kg、Apex Laboratories、Sydney)とキシラジン(1.2mg/kg、Apex Laboratories、Sydney)を腹腔内注射する前に、100%酸素中の4%ハロタンを吸入させることにより、オスのWistar−furthラットとメスのFischer 344ラット(150−250g、Animal Research Council、Perth、WA)に麻酔を施し、大気を自発的に呼吸させた。脳に病変を誘導する場合、定位固定枠(David Kopf Instruments、Tajunga、CA、USA)中に動物の頭部を固定し、末端が平坦な26ゲージの真っ直ぐな針から、3−6μl/分の流速で、C.neoformans血清型B又はc6神経膠腫細胞の懸濁物5μLを注入した。術後6−12日(クリプトコッカス肉芽腫、n=18ラット)又は12−30日(神経膠腫、n=26ラット)に採取すると、5μLの容量中に懸濁した5×10cfuのクリプトコッカス及び同じく5μL容量中の1×10個のC6細胞によって、少なくとも直径3mmの病変が誘導されることが予備実験によって確認された(データは示さず)。マイクロインジェクションのための最適な座標は、硬膜から2.0mm下、側位3.0mm、耳線をゼロとして2.4mm前後位であった。これらの座標を用いて、MR実験のために、ラットにC.neoformans血清型B分離株Mc Brideを注入した(クリプトコッカス肉芽腫、n=20、神経膠腫、n=19、対照、n=19)。対照組織は、生理食塩水を注入したラットから得た。適当な時期に、ラットを屠殺して、脳を取り出し、病変部位において横に切断した。脳組織をホルマリン中に固定し、パラフィン中に包埋した。光学顕微鏡で観察するために、7μmの切片を採取し、ヘマトキシリンとエオシン(cosin)又は過ヨウ素酸シッフ試薬(PAS)で染色した。クリプトコッカス肉芽腫又は神経膠腫を有する各動物及び対照動物から取得した脳組織試料(直径は最大4mm)をPBS/DO中に懸濁し、液体窒素中に瞬間凍結し、MRS分析を行うために最長4ヶ月70℃で保存した。
【0070】
動物実験は、シドニー大学動物倫理委員会の倫理的承認を受け、オーストラリア国立健康医学研究審議会のガイドラインに沿って行った。
【0071】
7.MR実験
H MRスペクトルは、5mmの{H、13C}逆検出二周波プローブヘッドを備えたBruker Avanceの360MHz分光計により収集した。温度は、37℃に維持した。残存する水のシグナルは、選択的にゲーティングした放射(46)又はパルスフィールドグラジエントを用いた選択的励起(47)によって消去した。化学シフトは、それぞれ、外部標準3−(トリメチルシリル)プロパンスルホン酸ナトリウム(TSP)を0.00ppmとして基準にするか、又は内部の水(4.65ppm)を基準とした。1D H MRスペクトルは、スペクトル幅3600Hz、時間領域8k、128又は256の収集、緩和遅延1秒で収集した。フーリエ変換の前に、細胞培養と組織試料に対して、それぞれ1又は3Hzの広幅化を与えた。細胞種の比較のために、完全に緩和されたH MRスペクトルから得た共鳴比を用いた。細胞がMR管内に沈殿するのを避けるために、稠密な細胞の懸濁物及び試料は、20Hzで回転させた。完全な緩和を達成するために、5秒の緩和遅延を与えた。
【0072】
シグナルの帰属を確定的に行うために、二次元MRスペクトルを収集した。{H、H}COSY実験は、マグニチュードモードで行った(48)。収集パラメータは、tの掃引幅3600Hz、t時間領域2K、256刻みでそれぞれ32又は48の収集、緩和遅延1秒であった。sine−bell窓関数をt次元に当てはめ、Gaussian−Lorentzian窓関数をt次元に当てはめた。データマトリックスをt次元に1Kまで拡張するために、ゼロフィリングを使用した。クロスピークの量は、記載に従って測定した(49)。
【0073】
混合時間40msと120msのTOCSYスペクトルは、帰属を確認するために、2Kのデータポイントを256刻みで、増分当たり48スキャンにより収集した(1)。
【0074】
シグナルの帰属を確認するために、幾つかの試料に対しては、HSQCパルスシーケンスを用いて(50)、H検出モードで、{H、13C}一量子シフト相関スペクトルを取得した。H MRスペクトル幅は3600Hzであり、13C NMRスペクトル幅は15000Hzであった。収集中の13C MRデカップリングは、GARP−1によって行った(8)。256のFIDを得るために展開時間(t)を増加させた(それぞれ、80の収集、2Kのデータポイントからなる)。緩和遅延は1秒であった。sine−bell関数をt次元に当てはめ、Gaussian−Lorentzian関数をt次元に当てはめた。フーリエ変換に先立ち、t次元に1Kへのゼロフィリングを使用した。
【0075】
H MRスペクトルと2D{H、H}COSYは、全ての真菌分離株、C6神経膠腫細胞株、ラット脳試料(クリプトコッカス肉芽腫が20、神経膠腫が19、対照が19)から収集した。4つの各真菌種のうち少なくとも一つの分離株又は試料、C6神経膠腫細胞、及び異なる脳生検試料については、TOCSYとHSQCによりシグナルの帰属を確認した。
【0076】
8.結果
a.細胞培養研究
インビトロで培養した真菌及びC6神経膠腫細胞株から得た典型的な一次元(1D)及び二次元(2D)MRスペクトルが、図3で比較されている。2Dスペクトルから得られた主なクロスピークが、表5にまとめてある。公表されているデータ(32、40、44、51、52)との比較によって、又はCOSY、TOCSY、及びHSQCスペクトルの一次分析によって、共鳴の帰属を行った。表5に列記され、図3に示されている共鳴は、各真菌の全分離株とC6神経膠腫細胞株から得たスペクトル中に存在していた。共鳴強度は、分離株の間で異なっており、表6に示されている。
【0077】
b.インビトロで培養したC.neoforman
C.neoformansの一次元及び2D COSY MRスペクトルは、脂質とa,a,−トレハロースのシグナルに由来する共鳴が優位であった。脂質のスペクトルパターンは、0.90ppm、1.30ppm、1.60ppm、2.00ppm、2.30ppm、及び5.38ppmの化学シフトを特徴とした(51)。3.46ppm、3.66ppm、3.77−3.85ppm、及び5.19ppmの共鳴は、細胞懸濁物に対するHSQC分光計を用いて、a,a−トレハロースに帰属された。各帰属は、h1−C1(5.19−93.50ppm)、H2−C2(3.66−71.50ppm)、H3−C3(3.86−73.0ppm)、H4−C4(3.46−70.00ppm)、H5−C5(3.83−72.50ppm)、及びH6−C6(3.78と3.88/61.00ppm)であった。幾つかの菌株では、アミノ酸残基[リジン(lys)、アラニン(ala)、トレオニン(thr)、及びグルタミン酸/グルタミン(glu/gln)]とエタノールに由来する強度が劣るクロスピークが見られた(表5と6にまとめられている)。MRで検出される主な細胞外代謝物は、アセテート(1.92ppm)とエタノール(1.16及び3.63ppm)であった。
【0078】
c.クリプトコッカス細胞に対するストレスの影響
トレハロースは、真菌を悪条件(熱、乾燥、浸透圧及び酸化的ストレスなど)から保護すると報告されていたので(54−57)、MRで検出されるトレハロースが培養条件によって変動する可能性を考慮した。物質と方法に明記されているように、温度、pH、グルコース濃度、グルコースの他の糖への置換、及びインキュベーション時間の影響を調べた。標準条件に対するそれぞれの共鳴比の変化は4にすぎなかった(データは示さず)。培養条件にかかわらず、脂質とトレハロースのシグナルは、1D及びCOSYスペクトルにおいて常に顕著であった。
【0079】
d.インビトロで培養した他の真菌のMRS
臨床的に重要な他の二つの病原性真菌Candida albicansとAspergillus fumigatus、及び酵母Saccharomyces cerevisiaeのMRSを調査し、C.neoformansとは異なることを明らかにした。C.albicans(図3b)とS.cerevisiae(図3d)の1D及び2D COSYスペクトルでは脂質が優位であったが、A.fumigatusから得られたスペクトル(図3c)は、アミノ酸残基と炭水化物由来の共鳴を特徴としていた。これらの真菌から得られる炭水化物の共鳴は、C.neoformansから得られるものに比べて、ずっと強度が弱く、特定の単糖残基に帰属させることはできなかった。高温(37−43℃)に曝すと、S.cerevisiaeの3つの菌株のうち2つのCOSYスペクトルのみに、MRで検出可能な極めて少量のa,a−トレハロース(C.neoformansに比べて、約20倍少ない)が同定され、C.albicansでは全く同定されなかった。エタノールは、二つの酵母種で同定された。C.albicansとA.fumigatusの培養上清から得たスペクトルには、アセテートが見られた(データは示さず)。
【0080】
e.C6神経膠腫細胞株
インビトロで培養した懸濁C6神経膠腫細胞のスペクトル(図3e、表3と4に要約)は、アミノ酸由来の共鳴が目立っていた。C6細胞の2Dスペクトルは、炭水化物のクロスピークを示さなかった。腫瘍細胞株について報告されていたように(51)、コリン(chol)、ホスホコリン(PC)、及びグリセロール−ホスホコリン(GPC)から生じる強いクロスピークと、比較的大量のタウリン(tau)、及びアミノ酸残基ロイシン(leu)、及びglu/glnが存在していた。それぞれ、コリン及びクレアチン含有化合物に相当する3.25−3.05ppmの共鳴比は、真菌から得たスペクトルにおける共鳴比よりずっと高かった(表6)。
【0081】
f.動物実験
ヒトの感染症で見られるように、また、ラットモデル中で増殖させた腫瘍の病態について確認されているように、ラット脳の生検試料の組織変化は、クリプトコッカス肉芽腫のバイオマスが主としてクリプトコッカスから成ることを示していた(データは示さず)。対照ラット、脳にクリプトコッカス肉芽腫を有するラット、及び神経膠腫を有するラットから得られた代表的な1D H MRと2D COSYスペクトルが図4に示されている。共鳴比は、表6にまとめてある。
【0082】
対照脳組織から得られたスペクトルでは、2.00ppmにN−アセチルアスパラギン酸(NAA)が顕著であった。これより強度が低い特徴的なピークには、2.0−2.2ppm(グルタミン/グルタミン酸)、3.0ppm(クレアチン、ホスホクレアチン、(γ−アミノ)酪酸(GABA)、及びlys残基)、3.2ppm[コリンのN(CH基、PC、及びGPC等]、3.6−3.9ppm(アミノ酸残基のHa及びmyo−イノシトール)の複合ピークが含まれた。アミノ酸GABA、chol、Pc、及びGPCのシグナルは、COSYスペクトル中にも存在していた。切除と凍結の間に起こる嫌気的代謝から生じる様々な強度の乳酸のシグナルが1.3ppmに見出された。
【0083】
クリプトコッカス肉芽腫からは、上述したクリプトコッカスのトレハロースと脂質の典型的なパターンを有する1D及びCOSY MRスペクトルが得られた。5.19ppmのトレハロース共鳴に対する5.38ppmの脂質共鳴の強度は、広い範囲にわたって変動していた(表6)。さらに、正常な脳組織に比べて、3.2:3.0ppmの共鳴比が上昇していた。NAAシグナルは劇的に減少しており、検出不能な試料も存在した。全てではないが、幾つかのスペクトルでは、正常な脳組織には観察されない他の共鳴が、アセテート(1Dスペクトル)とエタノール(2D COSY)から生じていた。また、対照と神経膠腫のスペクトル中で強度がずっと強い別のクロスピークもGPCから生じていた。COSYスペクトル中のmyo−イノシトールとGABAのクロスピーク強度は、対照脳組織中の強度と比べると、アミノ酸クロスピークに比して低下していた。
【0084】
腫瘍の生検から得られたスペクトルでは、脂質のシグナルと3.20:3.00ppmの共鳴比の増加が顕著であり、数多くの文献報告と合致する(32、58、59)。脂質シグナル強度の相対的な増加と3.2:3.0ppm比の上昇は、多くの試料において、クリプトコッカス肉芽腫で見られた増加よりずっと大きかった(表6)。脂質に対する共鳴比は様々であった。多くの腫瘍試料ではNAAは検出不能であり、神経活動の不存在を示していた。他のアミノ酸残基のクロスピーク(例えば、lys、leu等)に比して増加していた脂質以外のクロスピークは、タウリン(3.28−3.50ppm)、コリン(3.50−4.07ppm)、PC(3.61−4.19ppm)、及びホスホエタノールアミン(3.22−3.98ppm)のクロスピークのみであった。
【0085】
9.考察
C.neoformansは、非還元二糖であるトレハロースが豊富であるために、MRSによって、他の酵母、糸状菌A.fumigatus、及びC6神経膠腫細胞と明確に区別された。組織学的に診断を確認したラット皮質由来の罹患組織から得られるスペクトルのみならず、インビトロで培養した細胞から得られるスペクトル中にも、これらの差は記録されていた。このように、クリプトコッカス肉芽腫を生検試料中の健康な脳及び脳腫瘍組織と区別するための手段が、MRSによって与えられた。
【0086】
感染組織中のC.neoformansは、真菌細胞の何倍もの容積を占めるのが通例である莢膜に囲まれている。この莢膜は、緩く織り込まれた繊維状構造のグルクロキシロマンナン(GXM)から主に構成されている(42、43)。インビトロで培養した試料又は組織生検から得た、細胞に随伴するGXMは、MRによって検出されなかったので、天然の莢膜多糖は、MRSを用いて検出するには、移動性が十分でないことを示している。
【0087】
これに対して、サイトゾル化合物であるトレハロースは、極めて大量に同定され、存在していた。トレハロースは、酵母やその他の真菌(60)中に存在しており、従って、本来的には、c.neoformansに特有の特徴ではない。トレハロースは、熱(57)、浸透圧ストレス(61)、脱水(56)、乾燥その他の条件(総説としては、(54)と(55)を参照)によって誘導される重要な保護剤である。しかしながら、25℃で培養したC.neoformans中のトレハロースレベルは、熱ストレス(37℃)条件下にあるS.cerevisiae中のレベルを少なくとも20倍上回っていた。培養条件を変えても、C.neoformans中のトレハロースシグナルの強度は低下しなかった。
【0088】
C.neoformansのスペクトル中に存在するMR検出可能な他の化合物に比してトレハロースが大量に存在することにより、トレハロースは、C.neoformansを他の真菌と区別するために使用できるマーカーの一つとなる。クリプトコッカスのトレハロースレベルがこれ程高いのは、環境的ストレス、特に温度、脱水、及び飢餓に対する進化的な応答であると考えられる。生理的温度での生存と増殖への順応、認知されているC.neoformansの毒性決定因子(62)には、高いトレハロース細胞内濃度が常に伴っている。
【0089】
H MRSによって、細菌性の脳膿瘍を有する患者から採取した膿のサンプル中に細菌性代謝物は同定されているが、α、α−トレハロースは同定されていない(5、34、35、39)。エタノール(酵母でのグルコース発酵の産物)は、クリプトコッカス髄膜炎患者のCSF中に存在すると報告されている(63)。本研究において及びBubbら(44)によって見出された主要細胞外代謝物(アセテート、エタノール)は、他の病原性微生物によっても産生される(5)ので、クリプトコッカス肉芽腫のインビボ又はエキソビボでの確定的診断としては適していない。しかしながら、多くのクリプトコッカス肉芽腫中に存在するが、健常組織又は新生物組織には存在しない特有のアセテートシグナルは、感染の有用な診断指標となり得る。アセテートは細菌によって産生され、本研究において、MRSによりC.neoformansとクリプトコッカス肉芽腫中に同定された他、細菌性膿瘍中にも同定されている(34、35、39)。
【0090】
上述の結果は、健康な脳と実験的に発生させたラットのクリプトコッカス肉芽腫及び神経膠腫とをMRSが明確に区別できることを示唆している。クリプトコッカス肉芽腫から記録されたMR検出可能な高レベルのα,α−トレハロースは、脳のクリプトコッカス肉芽腫の病理診断に対する道筋に礎を与えるものである。本方法をヒトの脳クリプトコッカス肉芽腫のインビボ診断に応用すれば、旧来の画像診断法によって脳クリプトコッカス肉芽腫が腫瘍と見誤られることはなくなるであろう。早期の正確な診断により、診断が遅れたときに生じる高い罹患率及び死亡率が低下するであろう。脳の感染性病変の非侵襲的診断法としてインビボMRSを使用すれば、不要な手術や生検の危険と出費が軽減され、患者の管理についての決定が捗るであろう。
【0091】
実施例3:
病原性真菌の同定
1.微生物
病原性酵母Candida albicans、C.parapsilosis、C.tropicalis、C.krusei、及びC.glabrataの培養物205個を、サブローのデキストロース寒天上にて、30℃で48時間培養した。それぞれ、69及び70の病原性酵母Cryptococcus neoformans var. neoformansとvar. gattiiの分離株は、サブローのデキストロース寒天上にて37℃で48時間培養した。酵母は、API 20C AUXシステム(BioMerieux、Marcy l’Etoile、France)を用いて生化学的に同定した。クリプトコッカスは、生物型(45)と血清型(Crypto Check agglutination test、Iatron Labs)を決定した。さらに、それぞれの種の遺伝子型を比較するために、PCRフィンガープリンティングを使用した。MR実験の直前に、プレートからコロニーを掻き取り、PBS/D2O中に再懸濁した。
【0092】
2.MR分光法
MRスペクトルは、5mmの{H、13C}逆検出プローブ用いたBruker Avanceの360MHzNMR分光計により収集した。COSY、TOCSY(t=40、150ms)、1H、13C HSQC(1J=130Hzに最適化)、及び1H、13C HMBC(nJ=7Hzに最適化)を用いて、シグナルの帰属を行った。
【0093】
3.統計的分類戦略(SCS)(9): 5つのカンジダ種を、それぞれ、2又は3つの種由来の培養物を含有する2つの群にさらに分割した。これらの群間で区別し、その後、各群中の種の間で区別するために、対分類(pair−wise classification)を行った。対分類は、C.neoformansの2つの亜種に対して行った。マグニチュードMRスペクトルを総積算に対して標準化し、スペクトルの序列化された(rank−ordered)一次導関数を用いて、最大の識別力を有する3つの部分領域を同定するために、遺伝的アルゴリズムに基礎を置くOptimal Region Selector(66)によって解析した。これらの3つの領域を用いて、線形判別分析に基づいた識別子を得た。識別子の頑強性は、ブートストラップに基づく(67)交差検証(1000反復)(9)によって検定した。クラス確率が0.75を超えれば、クラスの帰属を鮮明(crisp)と称した。
【0094】
4.結果
全酵母のMRスペクトル(カンジダ種とクリプトコッカス亜種)は、脂質、炭水化物(トレハロース、グルコース)、ポリオール(グリセロール、マニトール、グルシトールその他)、エタノール、及びアミノ酸残基のシグナルが優位であった。
【0095】
a.カンジダ種:カンジダ種の1D MRスペクトルを目で分析して、二つの群:(A)C.kruseiとC.glabrata;(B)C.albicans、C.parapsilosis、及びC.tropicalisに分けることができた。これらの差は、主に、A群では炭水化物とエタノール含量が高いことによるものであった。これらの群は、アクチン遺伝子の部分配列64に基づく系統発生樹と一致している。群AとB間、及び各群中の種間の対分類は、最大99%の精度であった。
【0096】
b.クリプトコッカスの亜種: C.neoformansの亜種から得た1D及び2DMRスペクトルは何れも、目では区別できなかった。対統計的分類戦略を用いると、1D MRスペクトルに対するSCS(Statistical Classification Strategy)は、98.6%の正確さで、亜種neoformansとgattiiを区別した。
【0097】
5.考察
SCSによって解析されたMRSのデータを、現在使用されている生化学的な同定検査及び分子生物学的方法(PCRフィンガープリンティング)と比較した。異なる真菌の種及び亜種は、統計的分類戦略をMRスペクトルに適用することによって同定することができた。このように、これらの系では、分類学的に種より下のレベルで、真菌を高精度に同定することが可能であった。SCSアルゴリズムはMRデータを迅速に解析できるので(10分以内にデータを収集し、処理する)、このアルゴリズムは、微生物研究室での日常的検査の魅力的な選択肢となるであろう。このように、本発明によれば、MRデータをSCSで解析することによって、他の従来法よりも素早く、高い精度で、真菌の種及び亜種の両者を同定することができる。
【0098】
図5は、コンピュータが装備された分光計10(Bruker Avance 360 360MHz MR分光計であり得る)を示している。統計的分類戦略(SCS)コンピュータ12は、SCS及び本明細書に記載されているその他のプログラムを格納している。臨床データベースには、コンピュータ12が識別子16を生成させるために使用される、データ収集から得られる情報や公知微生物の識別情報などが含まれている。
【0099】
記載の実施例はインビトロでの分析に関するものであるが、本発明は、インビボでの分析にも使用することが可能であり、その場合には、分光計の磁石をより強力なものにしてもよい。
【0100】
本発明の実施態様を少なくとも一つ示し、説明してきたが、当業者であれば、変更や改変に想到するであろう。本発明は、好ましい実施態様に限定されるものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ決定される。
【参考文献】
【0101】
Figure 2004532009
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【表1】
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【表2】
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【表3】
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【表4】
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【表5】
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【表6】
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【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1A】図1Aは、E.faecalis、S.milleri、S.pneumoniae、及びS.pyogenes分離株の代表的なH MRスペクトルを示している。各統合領域中のスペクトルに寄与している主要な代謝物の同定に関しては表3を参照。
【図1B】図1Bは、S.epidermidis、S.aureus、及びS.agalactiae分離株の代表的なH MRスペクトルを示している。S.aureusとS.epidermidisのスペクトル中の強いベタインのピークとS.agalactiaeのGPCのピークは、これより強度が弱いピークの詳細を示すために端を切断した。ベタインとGPCのピークの相対強度は図2に示されている。各統合領域中のスペクトルに寄与している主要な代謝物の同定に関しては表3を参照。
【図2A】図2Aは、種の各集団に対する積算強度の測定値の範囲を示している、バーは平均±SDを示す。
【図2B】図2Bは、種の各集団に対する積算強度の測定値の範囲を示している、バーは平均±SDを示す。
【図3】図3は、インビトロ細胞培養から得た1D H MRスペクトル:A)Crytococcus neoformans、B)Candida albicans、C)Aspergillus fumigatus、D)Saccharomyces cerevisiae、及びE)C6細胞株。共鳴の同定:AA、アミノ酸、ac、アセテート、CH、非特異的な炭水化物の共鳴;lip、脂質;NCH、クレアチン、GABA、lys残基からの寄与;N(CH、コリン含有化合物(chol、PC、GPC)、ベタイン、及びtauからの寄与;tre、a,a−トレハロース。C.neoformansから得られたスペクトル中に、他のスペクトル中には識別できないトレハロースの顕著な共鳴が見られることに注意。
【図4】図4は、ラットの脳組織試料から得た1D及び2D COSY MRスペクトルを示している。(a)対照脳組織、(b)C.neoformansに感染した組織、及び(c)神経膠腫を有する組織。共鳴の同定:A−G、トリグリセリドの共鳴(32)、AA、アミノ酸残基;ac、アセテート;ala、アラニン;chol、コリン;EA、エタノールアミン;eth エタノール;GABA、y−アミノ酪酸;glu/gln、グルタミン酸/グルタミン;GPC、グリセロール−ホスホコリン;h−tau、ヒポ−タウリン;ile イソロイシン;lac、ラクテート;leu、ロイシン;lip、脂質;lys、リジン;mI、myo−イノシトール;NAA、N−アセチルアスパラギン酸;NCH、クレアチン、ホスホクレアチン、GABA、リジンからの寄与;N(CH、コリン含有化合物(choline、PC、gPC)、ベタイン、及びtauからの寄与;PC、ホスホコリン;PE、ホスホエタノールアミン;tau、タウリン;thr、トレオニン;tre、−トレハロース;val、バリン。列記されているアミノ酸はアミノ酸残基を表しており、必ずしもそれぞれの遊離アミノ酸を表しているのではない。
【図5】本発明のシステムのブロック図。

Claims (54)

  1. 種が不明な微生物を公知の種に分類するための統計的識別子を得る方法であって、
    (a)種が公知で異なる複数の微生物の夫々から複数の磁気共鳴スペクトルを取得することと、
    (b)得られた前記磁気共鳴スペクトルの中に最大の識別力を有する部分領域を複数決定することと、
    (c)夫々の種から得た前記スペクトルの第一の部分を選択すること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から線形判別分析識別子を得ること、及び夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から得られた前記識別子を用いて夫々の種から得た前記スペクトルの残りを検証して、種が不明な微生物の種を決定するために使用できる最適化された線形判別分析係数と識別子スペクトルとを種が公知の前記微生物の夫々について取得することにより、前記スペクトルを交差検証することと、
    を備えた方法。
  2. 請求項1の方法であって、工程(c)を複数回繰り返す工程をさらに備え、それぞれの回ごとに、前記種からスペクトルの異なる部分を前記スペクトルの前記第一の部分として選択して、最適化された線形判別分析係数の異なる組を前記種について取得し、前記線形判別分析係数の加重平均を求めて最終識別子スペクトルを取得する方法。
  3. 請求項1の方法であって、スペクトルを交差検証する工程が、スペクトルのおよそ半分を無作為に選択することによってスペクトルを交差検証することを備えた方法。
  4. 請求項2の方法であって、工程(c)を複数回繰り返す前記工程が、約1000回工程(c)を繰り返すことを備えた方法。
  5. 請求項1の方法であって、複数の識別子スペクトルを独立に取得する工程と、独立の前記識別子の結果を総合して完全一致の診断を得る工程とをさらに備えた方法。
  6. 前記微生物が細菌を含む請求項1の方法。
  7. 前記細菌が、Staphylococcus aureus、及びStaphylococcus epidermidisの種を含む請求項6の方法。
  8. 前記細菌が、Enterococcus faecalis、Enterococcus casseliflavus、及びEnterococcus gallinarumの種を含む請求項6の方法。
  9. 前記細菌が、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogeries、及びStreptococcus agalachaeの種を含む請求項6の方法。
  10. 前記微生物が真菌を含む請求項1の方法。
  11. 前記真菌が病原性酵母を含む請求項10の方法。
  12. 前記病原性酵母が、Candida albicans、Candida parapsilosis、Candida tropicalis、Candida krusei、及びCandida glabrataを含む請求項11の方法。
  13. 前記病原性酵母が、Cryptococcus亜種を含む請求項11の方法。
  14. 前記Cryptococcus亜種が、neoformansとgattliを含む請求項13の方法。
  15. 異なる夫々の種の前記複数の磁気共鳴スペクトルが、少なくとも10である請求項1の方法。
  16. 異なる夫々の種の前記複数の磁気共鳴スペクトルが、少なくとも30である請求項1の方法。
  17. 前記微生物が、培養された細菌感染を含む請求項1の方法。
  18. 前記微生物が、細菌感染を有する哺乳動物から得た試料を含む請求項1の方法。
  19. 種が不明な微生物の種を決定する方法であって、
    種が不明な微生物の磁気共鳴スペクトルを得ることと、得られたスペクトルを種の識別子と比較することとを備え、
    (a)種が公知で異なる複数の微生物の夫々から複数の磁気共鳴スペクトルを得ることと、
    (b)得られた前記磁気共鳴スペクトルの中に最大の識別力を有する部分領域を複数決定することと、
    (c)夫々の種から得た前記スペクトルの第一の部分を選択すること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から線形判別分析識別子を得ること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から得られた前記識別子を用いて夫々の種から得た前記スペクトルの残りを検証して、最適化された線形判別分析係数と識別子スペクトルを種が公知の前記微生物の夫々について取得すること、及び前記種が不明な微生物のスペクトルに最も合致するスペクトルを有する微生物を前記種が不明な微生物の種として選択することにより、前記スペクトルを交差検証することと、によって前記識別子が得られる方法。
  20. 請求項19の方法であって、前記識別子を得る工程が工程(c)を複数回繰り返す工程をさらに備え、それぞれの回ごとに、前記種からスペクトルの異なる部分を前記スペクトルの前記第一の部分として選択して、最適化された線形判別分析係数の異なる組を前記種について取得し、前記線形判別分析係数の加重平均を求めて最終識別子スペクトルを取得する方法。
  21. 請求項19の方法であって、スペクトルを交差検証する工程が、スペクトルのおよそ半分を無作為に選択することによってスペクトルを交差検証することを備えた方法。
  22. 請求項20の方法であって、工程(c)を複数回繰り返す前記工程が、約1000回工程(c)を繰り返すことを備えた方法。
  23. 請求項19の方法であって、複数の識別子スペクトルを独立に取得する工程と、独立の前記識別子の結果を総合して完全一致の診断を得る工程とをさらに備えた方法。
  24. 前記微生物が細菌を含む請求項19の方法。
  25. 前記細菌が、Staphylococcus aureus、及びStaphylococcus epidermidisの種を含む請求項24の方法。
  26. 前記細菌が、Enterococcus faecalis、Enterococcus casseliflavus、及びEnterococcus gallinarumの種を含む請求項24の方法。
  27. 前記細菌が、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogeries、及びStreptococcus agalachaeの種を含む請求項6の方法。
  28. 前記微生物が真菌を含む請求項1の方法。
  29. 前記真菌が病原性酵母を含む請求項28の方法。
  30. 前記病原性酵母が、Candida albicans、Candida parapsilosis、Candida tropicalis、Candida krusei、及びCandida glabrataを含む請求項29の方法。
  31. 前記病原性酵母が、Cryptococcus亜種を含む請求項29の方法。
  32. 前記Cryptococcus亜種が、neoformansとgattliを含む請求項31の方法。
  33. 異なる夫々の種の前記複数の磁気共鳴スペクトルが、少なくとも10である請求項19の方法。
  34. 異なる夫々の種の前記複数の磁気共鳴スペクトルが、少なくとも30である請求項19の方法。
  35. 前記微生物が、培養された細菌感染を含む請求項19の方法。
  36. 前記微生物が、細菌感染を有する哺乳動物から得た試料を含む請求項19の方法。
  37. 種が不明の微生物を公知の種に分類するための統計的識別装置であって、
    (a)種が公知で異なる複数の微生物の夫々から複数の磁気共鳴スペクトルを取得するための分光計と、
    (b)得られた磁気共鳴スペクトルの中に最大の識別力を有する部分領域を複数決定するための位置決定装置と、
    (c)夫々の種から得た前記スペクトルの第一の部分を選択すること、夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から線形判別分析識別子を得ること、及び夫々の種から得た前記スペクトルの前記第一の部分から得られた前記識別子を用いて夫々の種から得た前記スペクトルの残りを検証して、種が非公知である微生物の種を決定するために使用できる最適化された線形判別分析係数と識別子スペクトルとを前記種が公知の微生物の夫々について取得することにより、前記スペクトルを交差検証するための交差検証装置と、
    を備えた統計的識別装置。
  38. 請求項37の識別装置であって、前記交差検証装置が工程(c)を複数回繰り返し、それぞれの回ごとに、前記種からスペクトルの異なる部分を前記スペクトルの前記第一の部分として選択して、最適化された線形判別分析係数の異なる組を前記種について取得し、前記線形判別分析係数の加重平均を求めて最終識別子スペクトルを取得する識別装置。
  39. 請求項37の識別装置であって、前記交差検証装置が、スペクトルのおよそ半分を無作為に選択することによってスペクトルを交差検証する識別装置。
  40. 前記識別装置が、工程(c)を約1000繰り返す請求項38の識別装置。
  41. 前記識別装置が、複数の識別子スペクトルを独立に取得し、独立の前記識別子の結果を総合して完全一致の診断を得る請求項37の識別装置。
  42. 前記微生物が細菌を含む請求項37の識別装置。
  43. 前記細菌が、Staphylococcus aureus、及びStaphylococcus epidermidisの種を含む請求項42の識別装置。
  44. 前記細菌が、Enterococcus faecalis、Enterococcus casseliflavus、及びEnterococcus gallinarumの種を含む請求項42の識別装置。
  45. 前記細菌が、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogeries、及びStreptococcus agalachaeの種を含む請求項42の識別装置。
  46. 前記微生物が真菌を含む請求項37の識別装置。
  47. 前記真菌が病原性酵母を含む請求項46の識別装置。
  48. 前記病原性酵母が、Candida albicans、Candida parapsilosis、Candida tropicalis、Candida krusei、及びCandida glabrataを含む請求項47の識別装置。
  49. 前記病原性酵母が、Cryptococcus亜種を含む請求項47の識別装置。
  50. 前記Cryptococcus亜種が、neoformansとgattliを含む請求項49の識別装置。
  51. 異なる夫々の種の前記複数の磁気共鳴スペクトルが、少なくとも10である請求項37の識別装置。
  52. 異なる夫々の種の前記複数の磁気共鳴スペクトルが、少なくとも30である請求項37の識別装置。
  53. 前記微生物が、培養された細菌感染を含む請求項1の識別装置。
  54. 前記微生物が、細菌感染を有する哺乳動物から得た試料を含む請求項1の方法。
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