JP2004531209A - 新規ヒト7tmタンパクおよびそれをコードするポリヌクレオチド - Google Patents
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Abstract
新規なヒトGタンパク共役型受容体のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を記載する。
Description
【0001】
本出願は、米国仮出願60/244,285(2000年10月30日出願)の優先権を主張し、その全体を本明細書に参照として援用する。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、膜結合タンパク質および受容体をコードする新規なヒトポリヌクレオチドの知見、同定および解明に関する。本発明は、本明細書に記載するポリヌクレオチド、宿主細胞発現系、コードされるタンパク質、融合タンパク質、ポリペプチドおよびペプチド、コードされるタンパク質またはペプチドに対する抗体、ならびに遺伝子工学的に処理された、開示遺伝子を欠如または過剰発現する動物、もしくはそれらのタンパク質のアンタゴニストおよびアゴニスト、ならびに開示遺伝子によりコードされるタンパク質の発現または活性を調節する他の化合物であって、診断、薬物スクリーニング、臨床試験モニタリング、生理的または行動障害の処置、および/または化粧品用途あるいは自然食品用途に使用できる化合物を包含する。
【0003】
2.発明の背景
膜受容体タンパク質は、細胞がそれらの周囲を感知し、細胞がその恒常性および機能を維持する細胞機序のための統合された成分としての役割を有する。したがって膜受容体タンパク質は、細胞の生理、化学的コミュニケーションおよび遺伝子発現を制御するトランスダクション経路(transduction pathway)に関与することがしばしばある。特に関連のある一群の膜受容体は、一般に非保存親水性ループにより連結した保存7回膜貫通ドメインの存在を特色とするものである。このような”7TM受容体”には、Gタンパク質と共役する受容体(GPCR)として知られる受容体のスーパーファミリーが含まれる。GPCRは一般にGタンパク質またはPPGタンパクを伴うトランスダクション経路に関与する。したがってGPCRファミリーには療法薬の薬剤ターゲットとして既知である多数の受容体が含まれる。
【0004】
3.発明の概要
本発明は、新規GPCRおよび対応する新規GPCR(NGPCR)アミノ酸配列の知見、同定および解明に関する。本明細書に初めて記載するGPCRは、細胞膜にまたがる膜貫通タンパク質であり、リガンド結合後の信号伝達に関与する。本明細書に記載するNGPCRは、7TM受容体ファミリーにみられる構造モチーフをもつ。記載するNGPCRの発現は、さまざまなヒト細胞において検出される。記載する新規ヒトGPCR配列は、1,210、733、1,138および662のアミノ酸長のタンパク質をコードする(それぞれ、配列番号2、4、6および8参照)。記載するNGPCRは、7TMタンパクに特徴的な(約20−30アミノ酸の)複数の膜貫通領域、並びにいくつかの推定細胞質ドメインを有している。
【0005】
更に考慮されるのは、慣用的な方法により作られるノックアウトES細胞である(参照、例えばここに参照として援用する1998年2月20日に出願されたPCT出願番号PCT/US98/03243)。記載する配列のマウス相同体において、ノックアウトES細胞系が調製される。従って、本発明の更なる側面は、記載したNGPCRをコードする配列中に遺伝子操作による変異を有するノックアウト細胞および動物を含む。
【0006】
本発明は下記のものを包含する:配列表に示したヌクレオチド、配列表に示した一つまたはそれ以上のヌクレオチドを挿入するように操作された発現ベクター、それらのヌクレオチドを発現する宿主、およびそれらのヌクレオチドの発現生成物、ならびに:(a)本明細書に記載するGPCRの哺乳動物相同体(具体的に記載したヒトNGPCR、およびヒトNGPCR遺伝子生成物が含まれる)をコードするヌクレオチド;(b)NGPCRの機能性ドメインに相当する1以上の部分をコードするヌクレオチド、およびそれらのヌクレオチド配列により特定されるポリペプチド生成物[新規領域である細胞外ドメイン(1以上)(ECD)、本明細書に初めて記載した1以上の膜貫通ドメイン(1以上)(TM)、および細胞質ドメイン(1以上)(CD)が含まれるが、これらに限定されない];(c)前記NGPCRの少なくとも1つのドメインの全部または一部が欠失または変化した遺伝子工学的に形成した変異体または天然変異体をコードする単離ヌクレオチド、およびそれらのヌクレオチド配列により特定されるポリペプチド生成物(TMの全部または一部が欠失した可溶性受容体(記載した7TMの場合、すべての下流のTMが欠失するようなものでは、最初のTMより上流の領域のみ含むようにタンパク質を操作することにより可溶性産物を得ることができる)、および一つまたはそれ以上のCDの全部または一部が欠失した非機能性受容体が含まれるが、これらに限定されない);(d)他のペプチドまたはポリペプチドに融合した融合タンパク質またはそのドメインの1つ(たとえば細胞外ドメイン)をコードする、NGPCR由来のコード領域のすべてもしくは一部を含むヌクレオチド;(e)配列表に新規に開示した一つまたはそれ以上の配列を含む、前記ポリヌクレオチドの治療または診断用派生物、たとえばオリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、二重鎖RNA、または遺伝子治療用構築体。
【0007】
本発明は下記のものをも包含する:前記NGPCRのアゴニストおよびアンタゴニスト(天然NGPCRと競合する、小型分子、大型分子、変異NGPCRタンパク、またはその一部が含まれる)、抗体、ならびに前記NGPCRの発現を阻害するために、または前記NGPCR遺伝子の発現を高めるために(たとえば、前記配列を強力なプロモーター系の制御下におく発現構築体)使用できるヌクレオチド配列(たとえばアンチセンス分子およびリボザイム分子、ならびに遺伝子または調節配列の置換構築体)、ならびにNGPCRトランスジーンを発現するトランスジェニック動物、または機能性NGPCRを発現しない”ノックアウト体”。ノックアウトマウスはいくつかの方法で調製することができ、その内のひとつには、記載したNGPCRの少なくとも一つのマウス相同体中に遺伝子トラップ変異を含むマウス胚幹細胞(「ES細胞」)株の使用が含まれる。配列番号1〜9に記載のユニークなNGPCR配列が“ノックアウト”であるときは、それらはその特別な遺伝子の形質発現を同定する方法並びにそれまで未知の遺伝子の機能を調べる方法を提供する。更に、配列番号1〜9記載のユニークなNGPCR配列が“ノックアウト”されている動物は、免疫系により“自己”とみなされ、そしてそれゆえ顕著な抗体反応を誘発しなかった相同およびオルソロガスなタンパク質に対する抗体を誘発するユニークな提供源となる。最後には、前記NGPCRのマウス相同体において、遺伝子トラップノックアウトES細胞が生じる。
【0008】
さらに配列番号1〜9に記載のユニークなNGPCR配列は、タンパクコード配列の同定およびユニークな遺伝子を一つまたはそれ以上の特定の染色体へマッピングするのに有用である(前記NGPCRをコードする遺伝子は明らかにX連鎖上にある。GENBANKアクセッション番号AL161778参照)。そのような配列は、ゲノム配列のみからバイオインフォマチックスに基づいて推定されるものとは対照的に、実際的、生物学的に関連したエキソンスプライシングジャンクション(exon splice junctions)を同定する。本発明の配列は、制限酵素断片長多型(RFLP)解析の追加的DNAマーカーとして、および法生物学において有用である。
【0009】
さらに本発明は、NGPCR遺伝子の発現および/またはNGPCR遺伝子産物活性を調節する化合物、すなわちそのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する化合物の同定のための、前記NGPCRヌクレオチド配列および/またはNGPCR遺伝子産物の使用方法に関する。そのような化合物は、生物学的障害または平衡異常の多様な症状の処置のための療法薬として使用できる。
【0010】
4.配列表および図面の説明
配列表に、記載したNGPCR ORFの配列、およびそれによりコードされるアミノ酸配列を示す。配列番号9は、NGPCR ORFとフランキング領域を示す。
【0011】
5.発明の詳細な記述
本明細書に初めて記載するヒトNGPCRは、ヒト精巣、小腸、および子宮細胞において発現する新規な受容体タンパクである。記載するNGPCR配列は、ヒト精巣、小腸、および子宮由来のmRNAから調製されたcDNAに関連したヒトゲノム配列を用いて得られた(edge Biosystems、Gaitheraburg、MD、およびClontech、Palo Alto、CA)。NGPCRは7TMファミリーの受容体の膜貫通タンパク質である。他のGPCRと同様に、リガンドが受容体に結合したときに信号伝達が開始される。天然リガンドの結合を妨害し、またはリガンドを中和もしくは除去し、またはNGPCRへのリガンドの結合を妨害すると、NGPCR仲介による信号伝達が影響を受ける。7TM、特にGPCRタンパクは生物学的に重要であるので、集中的な科学的および商業的探索の対象となってきた(たとえばUSP5,942,416および5,891,720参照;両方をNGPCRを伴う適用、使用、および分析のために全体として本明細書に援用する)。7TMタンパクに加えて、前記NGPCRは、とりわけ精巣上体6(HE6)、セクレチン、およびラトロトキシン受容体ファミリーのGPCRと顕著な相同性を共有する。
【0012】
本発明は、疾病の診断および処置において、記載するNGPCRヌクレオチド、NGPCRタンパク、およびペプチド、並びにNGPCRに対する抗体、好ましくは人化モノクローナル抗体、または結合断片、ドメインもしくはそれらの融合タンパク(たとえばNGPCRのアゴニストまたはアンタゴニストとしても作用することができる)、受容体活性もしくは発現を阻害するアンタゴニスト、またはNGPCR受容体活性を高めもしくはNGPCR発現を増大させるアゴニストとしての使用を包含する。
【0013】
特に、以下の各サブセクションに記載する本発明は、下記のものを包含する:NGPCRの機能性ドメイン(たとえばECD、TMまたはCD)に対応するNGPCRポリペプチドまたはペプチド;変異、トランケートまたは欠失NGPCR(たとえば1以上の機能性ドメインまたはその一部を失ったNGPCR、たとえば△ECD、△TMおよび/または△CD)、NGPCR融合タンパク質(たとえば、NGPCRまたはNGPCR機能性ドメインが、関連のないタンパク質またはペプチド、たとえば免疫グロブリン定常部、すなわちIgFcに融合したもの)、それらの生成物をコードするヌクレオチド配列、ならびにそれらのNGPCR生成物を産生できる宿主細胞発現系。
【0014】
本発明は下記のものをも包含する:抗体および抗イディオタイプ抗体(Fabフラグメントを含む)、NGPCRのアンタゴニストおよびアゴニスト、並びにNGPCR配列の発現を阻害する化合物もしくはヌクレオチド構築体(転写因子阻害薬、アンチセンス分子およびリボザイム分子、または遺伝子もしくは調節配列置換構築体)、またはNGPCRの発現を促進する化合物もしくはヌクレオチド構築体(たとえばNGPCRコード配列が機能可能な状態でプロモーター、プロモーター/エンハンサーなどの発現制御要素と結合した発現構築体)。本発明は、ヒトNGPCR(またはその変異体)を発現するか、あるいは動物の内因性NGPCR遺伝子の発現を阻害または”ノックアウト”するように遺伝子工学的に処理した宿主細胞および動物にも関する。
【0015】
NGPCRタンパク質またはペプチド、NGPCR融合タンパク質、NGPCRヌクレオチド配列、抗体、アンタゴニストおよびアゴニストは、疾病の診断のために変異NGPCRまたは不適正発現したNGPCRを検出するのに有用となりうる。NGPCRタンパク質またはペプチド、NGPCR融合タンパク質、NGPCRヌクレオチド配列、宿主細胞発現系、抗体、アンタゴニスト、アゴニスト、ならびに遺伝子工学的に処理した細胞および動物は、体内における正常なNGPCR機能の撹乱の症候性発現または表現型発現を処置するのに有効な候補を同定する薬物スクリーニング(またはコンビナトリアルライブラリーのハイスループットスクリーニング)にも使用できる。遺伝子工学的に処理した宿主細胞および/または動物の使用は、それらの系によりNGPCRのECDに結合する化合物を同定できるだけでなく、活性NGPCRによる信号伝達に影響を与える化合物をも同定できるという点で、有利である。
【0016】
最後に、NGPCR生成物(特に可溶性誘導体、たとえばNGPCR ECDに対応するペプチドまたは1以上のTMドメインを欠如するトランケート型ポリペプチド)、ならびに融合タンパク質生成物(特にNGPCR−Ig融合タンパク質、すなわちIgFcへのNGPCRまたはNGPCRドメイン、たとえばECD、△TMの融合体)、抗体および抗イディオタイプ抗体(Fabフラグメントが含まれる)、アンタゴニストまたはアゴニスト(信号伝達を調節する化合物が含まれめる;これらはNGPCR仲介による信号伝達経路における下流ターゲットに作用する可能性がある)を用いて、そのような疾病を処置することができる。たとえば、有効量の可溶性NGPCR ECD、△TM、またはNGPCR ECDを模倣したECD−IgFc融合タンパク質もしくは抗イディオタイプ抗体(またはそのFab)の投与により、内因性NGPCRリガンドが”掃討”または中和され、結合および受容体活性化が阻止され、または低下するであろう。そのようなNGPCR生成物をコードするヌクレオチド構築体を用いて、そのような生成物をインビボで発現するように宿主細胞を遺伝子工学的に処理することができる;遺伝子工学的に処理したこれらの細胞は体内で”バイオリアクター”として作用し、NGPCR、NGPCRペプチド、可溶性ECDもしくは△TMまたはNGPCR融合タンパク質を身体に連続的に供給し、これらがNGPCRリガンドを”掃討”または中和する。機能性NGPCR、変異NGPCR、ならびにアンチセンス分子およびリボザイム分子をコードするヌクレオチド構築体は、NGPCR発現を調節する”遺伝子療法”方式にも使用できる。したがって本発明は、生物学的障害を処置するための医薬配合物および方法をも包含する。
【0017】
本発明の多様な態様について、以下の各サブセクションにさらに詳細に記載する。
【0018】
5.1 NGPCRポリヌクレオチド
前記ヒトNGPCRのcDNA配列および推定アミノ酸配列を配列表に示す。前記NGPCRは、上述のように様々なヒト組織において発現され、明らかにヒトX染色体上にコードされている。
【0019】
NGPCRの配列解析過程で、いくつかの多型が同定され、それにはたとえば配列番号1のヌクレオチド位として3601位でのT/C多型(それは配列番号2の相当するアミノ酸1201位で、同じアミノ酸トレオニンとなる)、および配列番号3のヌクレオチド位として2173位でのT/C多型(それは配列番号4の相当するアミノ酸725位で、同じアミノ酸トレオニンとなる)が含まれる。
【0020】
本発明のNGPCRには下記のものが含まれる:配列表に示したヒトDNA配列(およびそれを含むベクター);さらに、配列表に示したDNA配列の相補配列に高ストリンジェントな条件下で[たとえば0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中、65℃でフィルター結合DNAにハイブリダイゼーション、そして0.1×SSC/0.1% SDS中、68℃で洗浄(Ausubel,F.M. et al.編,1989,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.I,Green Publishing Associates社,およびJohn Wily & Sons社,ニューヨーク,p.2.10.3)]ハイブリダイズする連続した機能性NGPCRオープンリーディングフレーム(ORF)をもち、機能的に均等な遺伝子生成物をコードする、いかなるヌクレオチド配列も考慮される。さらに、配列表に示したアミノ酸をコードおよび発現するDNA配列の相補配列に中等度ストリンジェントな条件下で[たとえば0.2×SSC/0.1% SDS中、42℃で洗浄(Ausubel,et al.,1989,前掲]ハイブリダイズし、なおかつ機能的に均等なNGPCR遺伝子生成物をコードする、いかなるヌクレオチド配列も考慮される。NGPCRの機能均等物には、他の種に存在する天然NGPCR、および天然の、または(部位特異的変異、遺伝子シャフリング、定方向進化(directed evolution)(たとえばUSP5,837,458および5,723,323(両特許をここに参照として援用する)に記載されている)によって)遺伝子工学的に作成した変異NGPCRが含まれる。本発明には、開示したNGPCRポリヌクレオチド配列の縮重核酸変異体も含まれる。
【0021】
更に考慮されるのは、NGPCR ORFsをコードするポリヌクレオチド、もしくは配列表のポリヌクレオチド配列の相当領域と約99%、95%、90%もしくは約85%の相同性もしくは同一な(例えば、本明細書に記載したGCG配列解析パッケージをデフォルトパラメーターを使用して、BLAST配列比較解析により測定する)ポリヌクレオチドによってコードされるそれらの機能均等物である。
【0022】
本発明には、前記NGPCRヌクレオチド配列にハイブリダイズする、したがってその相補配列にハイブリダイズする核酸分子、好ましくはDNA分子も含まれる。そのようなハイブリダイゼーション条件は、本明細書記載のように高ストリンジェントであってもよく、またはストリンジェント度がより低くてもよい。核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(”DNAオリゴ体”)である場合、それらの分子は本発明の配列表に初めて開示したヌクレオチド配列の連続領域を含む、約16〜約100塩基、約20〜約80塩基、または約34〜約45塩基の長さのもの、またはそこに示すサイズの任意の変更または組合わせであり、それらをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と組み合わせて用いて、ライブラリーのスクリーニング、クローンの単離、ならびにクローニング鋳型および配列決定用鋳型の調製などを行うことができる。
【0023】
あるいは、そのようなNGPCRオリゴヌクレオチドは、ライブラリーのスクリーニングのため、または遺伝子発現パターン評価のためのハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる(特に、マイクロアレイあるいは高処理能力“チップ”フォーマットを使用して)。さらに、一連の記載したNGPCRオリゴヌクレオチド配列あるいはその相補体は、記載したNGPCR配列のすべてあるいは一部を代表するものとして使用することができる。配列番号1−9の配列の1つまたはそれ以上の少なくとも一部に開示されている新規オリゴヌクレオチドあるいはポリヌクレオチド配列を、固相支持体マトリックス/基板(樹脂、ビーズ、膜、プラスチック、ポリマー、金属あるいは金属化した基板、結晶性あるいは多結晶性の基板など)に結合させてハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。特に注目すべきは、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、あるいは相当するオリゴペプチドおよびポリペプチドの、空間的にアクセス可能な(addressable)アレイ(即ち、遺伝子チップ、マイクロタイタープレートなど)である。ここで該空間的にアクセス可能なアレイに存在するバイオポリマーの少なくとも一つは、配列番号1−9の配列の少なくとも一つに開示されている新規オリゴヌクレオチドあるいはポリヌクレオチド配列、あるいはそれらによってコードされるアミノ酸配列からなる。バイオポリマーを固体支持マトリックスに接着する方法、あるいは固体支持マトリックス上でバイオポリマーを合成する方法、およびそれらにより結合試験を実施する方法は、特に米国特許第5,700,637、5,556,752、5,744,305、4,631,211、5,445,934、5,252,743、4,713,326、5,424,186、および4,689,405に記載されており、それらの全体をここに参照として援用する。
【0024】
配列番号1−9に開示されている新規配列を含むアクセス可能なアレイは、遺伝子の時および組織特異的発現を同定および特徴づけするのに使用することができる。それらの空間的にアクセス可能な(addressable)アレイは、要求される特異性を満たすために十分な長さのオリゴヌクレオチド配列を含むが、依然その生産技術による制限がある。それらのプローブの長さは、約8から約2000ヌクレオチドの間の範囲である。好ましくは、該プローブは、配列番号1−9に開示されている新規配列中の60ヌクレオチドからなり、より好ましくは25ヌクレオチドからなる。
【0025】
例えば、一連の記載した配列あるいはそれらの相補配列を、記載したNGPCRの全てあるいは一部を表す(represent)ためにチップ形式で使用することができる。オリゴヌクレオチド、典型的には約16から約40ヌクレオチド長の間のオリゴヌクレオチド(あるいはこの範囲内のいずれかの整数長)は、互いに部分的に重なり合うことができ、および/またはNGPCR配列は、重なり合わないオリゴヌクレオチドを使用して表すことができる。従って、記載したポリヌクレオチド配列は、典型的には配列表に記載したそれぞれの新規配列中の少なくとも約18ヌクレオチド長の少なくとも約2もしくは3つの別個のオリゴヌクレオチド配列を含む。そのようなオリゴヌクレオチド配列は配列表の配列内に存在するいずれのヌクレオチドから開始することができ、そして記載した配列に向かった方向であるセンス方向(5’から3’方向)あるいはアンチセンス方向(3’から5’方向)のいずれにも進めることができる。
【0026】
マイクロアレイ解析により、幅広い遺伝子活性のパターンが明らかとなり、遺伝子機能の新たな知見を提供し、また転写過程および生物メカニズムに関する新しくかつ予期しない見識に導くことが可能になる。配列番号1−9に開示されている新規配列を含むアクセス可能なアレイの使用は、ある特定の経路に関与する転写の変化に関する詳細な情報を提供し、新しい表現型であると証明する新しい成分または遺伝子機能の同定に導き得る。
【0027】
配列番号1−9に開示されている新規配列からなるプローブも、薬剤開発の新しい分子ターゲットの同定、選別、および確認に使用することができる。それらのユニークな配列の使用は、薬剤ターゲットの直接的な確認、および薬剤の意図したターゲットとは異なる経路により調節される遺伝子発現の薬剤依存的変化の認識を可能にする。それゆえ、それらのユニークな配列は、薬剤作用および毒性の両方を明らかにする、およびモニターするのに有用である。
【0028】
有用性の例として、配列番号1−9に開示されている新規配列は、ある特定の病的状態の患者から得た遺伝子材料の蓄積物を検査するために、マイクロアレイまたは他のアッセイフォーマットに使用することができる。それらの調査は、配列番号1−9に開示されている新規配列を使用してインシリコにて、以前に収集された遺伝子データベースと開示した配列を当業者に知られたコンピューターソフトウェアを使用して行うことができる。
【0029】
このように、配列番号1−9に開示されている新規配列は、特定の疾患に関係した変異を同定するために使用することができ、および診断または予後の分析に使用することができる。
【0030】
記載した配列はヌクレオチド配列を使用して特定的に記載されているが、配列のそれぞれは広範囲な付加的な構造属性のいずれかを使用して特徴的に記載することができることは理解できるであろう。例えば、ある既定の配列は、配列番号1−9にはじめて開示された一つもしくはそれ以上の特定のオリゴヌクレオチド配列の存在の連結として、該配列の既定の領域内に存在するヌクレオチドの正味の組成物として記載することができる。あるいは、制限エンドヌクレアーゼ切断部位の相対的位置を特定する制限地図、または様々なパリンドロームあるいは他の特定のオリゴヌクレオチド配列は、ある特定の配列を構造的に記載するのに使用することができる。そのような制限地図は、典型的に広く利用されているコンピュータープログラム(例えば、The University of Wisconsin GCG sequence analysis package, SEQUENCHER 3.0, Gene Codes Corp., Ann Arbor, MI, 等)により作ることができ、選択的に配列中に存在する一つあるいはそれ以上の別個のヌクレオチド配列の連結として使用することができ、開示配列中に存在する一つあるいはそれ以上の付加的な配列、あるいは一つもしくはそれ以上の切断部位との相対的な配列位置によって記載することができる。
【0031】
オリゴヌクレオチドプローブに関して、高ストリンジェントな条件とは、たとえば6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中、37℃(14塩基オリゴ体について)、48℃(17塩基オリゴ体について)、55℃(20塩基オリゴ体について)、および60℃(23塩基オリゴ体について)での洗浄を表す。
【0032】
記載するオリゴヌクレオチドは、たとえばNGPCR遺伝子調節(および/またはNGPCR遺伝子核酸配列の増幅反応におけるアンチセンスプライマーとして)に有用なNGPCRアンチセンス分子をコードし、またはそれらの分子として作用することができる。NGPCR遺伝子調節に関しては、それらの方法を用いて生物学的機能を調節することができる。さらに、そのような配列を、同様にNGPCR遺伝子調節に有用なリボザイムおよび/または三重らせん配列の一部として使用できる。
【0033】
さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、下記を含めた群(これらに限定されない)から選択される少なくとも1個の修飾塩基部分を含むことができる:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリン。
【0034】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロースおよびヘキソースを含めた(これらに限定されない)群から選択される少なくとも1個の修飾糖部分を含むこともできる。
【0035】
さらに他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステルおよびホルムアセタール、またはその類似体よりなる群から選択される少なくとも1個の修飾リン酸主鎖を含む。
【0036】
さらに他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはα−アノマーオリゴヌクレオチドである。α−アノマーオリゴヌクレオチドは、通常のβ−単位と異なり、鎖が互いに平行に走行する特異的な二本鎖ハイブリッドを相補的RNAと形成する(Gautier et al.,1987,Nucl.Acids Res.,15:6625−6641)。このオリゴヌクレオチドは2’−O−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al.,1987,Nucl.Acids Res.,15:6131−6148)、またはキメラRNA−DNA類似体(Inoue et al.,1987,FEBS Lett.215:327−330)である。あるいは、2本鎖RNAは、標的NGPCRの発現を抑制し、および機能を失わせるのに使用することができる。
【0037】
本発明のオリゴヌクレオチドは、当技術分野で既知の標準法により、たとえば自動DNA合成装置(たとえばBiosearch,Applied Biosystemsなどから市販されているもの)を用いて合成できる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは合成でき(Steinら、1988,Nucl.Acids Res.,16:3209)、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは制御ポアガラスポリマー支持体を用いて製造できる(Sarin et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85:7448−7451)など。
【0038】
低ストリンジェントな条件は当業者に周知であり、ライブラリーおよび標識配列が由来する個々の生物に応じて異なるが、推定可能であろう。そのような条件に関する手引きについては、たとえば下記を参照されたい:Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク(およびその定期的改訂版);およびAusubel et al.,1989,上述(およびその定期的改訂版)。
【0039】
あるいは、適切なストリンジェント条件を採用し、またはPCRにより、適切に標識したNGPCRヌクレオチドプローブを用いてヒトゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。ヒトゲノムクローンの同定および解明は、多型性(制限的ではないが、ヌクレオチドリピート、マイクロサテライト対立遺伝子、シングルヌクレオチド多型、あるいはコードシングルヌクレオチド多型を含む)の確認、特定の遺伝子座/対立遺伝子のゲノム構造の決定、および診断試験の設計に有用である。たとえばヒト遺伝子のイントロン/エキソン境界に隣接する領域に由来する配列を用いて、エキソン、イントロン、スプライス部位(たとえばスプライスアクセプターおよび/またはドナー部位)内などの変異を検出するための増幅アッセイに用いるプライマーを設計し、これらを診断および薬理遺伝学に使用できる。
【0040】
たとえば、本発明の配列は、制限酵素断片長多型(restriction fragment length polymorphisms(RFLP))解析において特定のものを同定するために使用することができる。この技術では、個々のゲノムDNAが一つもしくはそれ以上の制限酵素で切断され、そしてサザンプロットで精査され、同定のためのユニークなバンドが得られる(米国特許番号5,272,057に一般的に記載されており、ここに参照として援用する)。さらに、本発明の配列は、ポリヌクレオチド試薬、たとえばヒトゲノムの特定位置にターゲットされたPCRプライマーで、たとえば他の“同定マーカー”(すなわち、特定の個人に対してユニークな他のDNA配列)を提供することによってDNAに基づいた法的同定の信頼性を高めることができるPCRプライマー、を提供するために使用することができる。実際の塩基配列情報は、制限酵素によって生じた断片により形成された正確なパターンとして、同定のために使用することができる。
【0041】
さらに、本明細書に記載するNGPCR生成物内のアミノ酸配列に基づいて設計した2つの縮重オリゴヌクレオチドプライマープールを用いてPCRを行うことにより、目的生物の核酸からNGPCR遺伝子相同配列を単離できる。反応の鋳型は、NGPCR遺伝子対立遺伝子を発現することが分かっているかまたは推測される、たとえばヒトまたは非ヒト細胞系または組織から調製したmRNAの逆転写により得られる全RNA、mRNAおよび/またはcDNAであってよい。
【0042】
増幅配列が目的NGPCR遺伝子の配列であることを確認するために、PCR生成物をサブクローニングして配列決定することができる。次いでそのPCRフラグメントを用いて多様な方法で全長cDNAクローンを単離できる。たとえば増幅フラグメントを標識し、cDNAライブラリー、たとえばバクテリオファージcDNAライブラリーのスクリーニングに使用できる。あるいは、標識フラグメントを用いて、ゲノムライブラリーのスクリーニングによりゲノムクローンを単離することができる。
【0043】
PCR法を利用して、全長NGPCRcDNA配列を単離することもできる。たとえば標準法により、適切な細胞源または組織源(すなわち、NGPCR遺伝子を発現することが分かっているかまたは推測されるもの)からRNAを単離できる。最も5’末端の増幅フラグメントに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを第1鎖合成のプライミングに用いて、RNAについて逆転写(RT)反応を行うことができる。次いで得られたRNA/DNAハイブリッドを標準的なターミナルトランスフェラーゼ反応により”テイル形成”し、このハイブリッドをRNase Hで消化し、次いで相補プライマーにより第2鎖合成をプライミングすることができる。こうして、増幅フラグメントの上流のcDNA配列を容易に単離できる。使用できるクローニング方式の概説については、Sambrook et al.,1989(前掲)を参照されたい。
【0044】
変異NGPCR遺伝子のcDNAは、たとえばPCRを用いて単離できる。この場合、第1cDNA鎖は、変異NGPCR対立遺伝子を保有すると推定される個体において変異NGPCR対立遺伝子を発現することが分かっているかまたは推測される組織から単離したmRNAに、オリゴ−dTオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせ、この新たな鎖を逆転写酵素で延長することにより合成できる。次いで正常遺伝子の5’末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いて、第2鎖を合成する。次いでこれら2プライマーを用いて、生成物をPCRにより増幅させ、所望により適切なベクター中へクローニングし、当業者に周知の方法でDNA配列分析を行う。変異NGPCR対立遺伝子のDNA配列を正常なNGPCR対立遺伝子のものと比較することにより、変異NGPCR遺伝子生成物の機能の喪失または変化に関与する変異(1以上)を確認できる。
【0045】
あるいは、変異NGPCR対立遺伝子を保有することが推測されるかもしくは分かっている個体から得たDNAを用いてゲノムライブラリーを構築することができ、または変異NGPCR対立遺伝子を発現することが分かっているかもしくは推測される組織からのRNAを用いてcDNAライブラリーを構築することができる。次いで、正常なNGPCR遺伝子、またはそのいずれか適切なフラグメントを標識してプローブとして用い、そのようなライブラリー中の対応する変異NGPCR対立遺伝子を同定することができる。次いで、当業者に周知の方法で変異NGPCR遺伝子配列を含むクローンを精製し、配列分析することができる。
【0046】
さらに、たとえば変異NGPCR対立遺伝子を保有することが推測されるかまたは分かっている個体の、そのような変異対立遺伝子を発現することが分かっているかまたは推測される組織より単離したRNAから合成したcDNAを利用して、発現ライブラリーを構築できる。この方法で、後記セクション5.3に記載するように、推定変異組織が形成した遺伝子生成物を発現させ、正常NGPCR生成物に対して産生された抗体と組み合わせた標準抗体スクリーニング法を用いてスクリーニングすることができる(スクリーニング法については、たとえばHarlow and Lane編,1988,”Antibodies:A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Press,コールド・スプリング・ハーバー参照、本明細書にその全体を援用する)。
【0047】
さらに、標識NGPCR融合タンパク質、たとえばアルカリ性ホスファターゼ−NGPCRまたはNGPCR−アルカリ性ホスファターゼ融合タンパク質を用いてスクリーニングを行うことができる。NGPCR変異により機能の変化した遺伝子生成物が発現する場合(たとえばミスセンス変異またはフレームシフト変異の結果)、NGPCRに対するポリクローナル抗体セットがこの変異NGPCR遺伝子生成物と交差反応する可能性がある。それらとそのような標識抗体との反応により検出されるライブラリークローンを当業者に周知の方法で精製し、配列分析することができる。
【0048】
本発明は、変異NGPCR、NGPCRのペプチドフラグメント、トランケートしたNGPCR、およびNGPCR融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をも包含する。これらには、後に記載する変異NGPCRをコードするヌクレオチド配列;NGPCRの1以上のECD、TMおよび/またはCDドメイン、あるいはこれらのドメインの一部に対応するポリペプチドまたはペプチド;1または2つのドメインが欠失したトランケートNGPCR、たとえばTM領域またはTMとCDの両領域を欠如する可溶性NGPCR、あるいはCD領域の全部または一部を欠如するトランケートした非機能性NGPCRが含まれるが、これらに限定されない。融合タンパク質をコードするヌクレオチドには、全長NGPCR配列、トランケートしたNGPCR、またはNGPCRのペプチドフラグメントが下記のような関連のないタンパク質もしくはペプチドに融合したものをコードするヌクレオチドを含めることができるが、これらに限定されない:NGPCR ECDを細胞に結合させる膜貫通配列;得られる融合タンパク質(たとえばNGPCR−Ig)の血流中での安定性および半減期を高めるIgFcドメイン;またはマーカーとして使用できる酵素、蛍光タンパク質もしくは発光タンパク質。
【0049】
本発明は下記のものをも包含する:(a)前記NGPCRコード配列および/またはその相補配列(すなわちアンチセンス)のいずれかを含むDNAベクター;(b)コード配列の発現を指令する少なくとも第一調節要素に機能可能な状態で結合した前記NGPCRコード配列のいずれかを含むDNA発現ベクター(たとえば、USP5,869,336に記載されたバキュロウイルスベクター、該特許を参照としてここに援用する);(c)宿主細胞におけるコード配列の発現を指令する少なくとも第一調節要素に機能可能な状態で結合した前記NGPCRコード配列のいずれかを含む、遺伝子工学的に処理した宿主細胞;ならびに(d)外因導入調節要素のコントロール下(すなわち遺伝子活性化)での内因性NGPCR配列を発現する遺伝子操作宿主細胞。本明細書中で用いる調節要素には、誘導性および非誘導性のプロモーター、エンハンサー、オペレーター、ならびに発現を誘発および調節することが当業者に知られている他の要素が含まれるが、これらに限定されない。それらの調節要素には、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:サイトメガロウイルスhCMV極初期遺伝子、SV40あるいはアデノウイルスの調節可能なウイルス初期または後期プロモーター(特にレトロウイルスLTRプロモーター)、lac系、trp系、tet系、TAC系、TRC系、ファージラムダの主オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、ならびに酵母α−接合因子のプロモーター。
【0050】
前記NGPCRヌクレオチド配列の更なる利用は、例えばポリヌクレオチドシャッフリングあるいは関連した方法論を使用した、前記新規配列により少なくとも部分的にコードされるタンパク質の分子変異/進化におけるそれらの使用である。それらの試みは、米国特許5,830,721、5,723,323および5,837,458に記載されており、それらの全体をここに参照として援用する。
【0051】
記載した配列の更に考慮される使用には、米国特許出願番号60/110,906、60/106,300、60/094,879、および60/121,851に記載されている方法および応用を使用した、細胞アッセイおよび遺伝子操作動物における使用のための、構成的に“ON”である変異体の作成が含まれる。それらの特許出願の全体を参照として本明細書に援用する。
【0052】
NGPCR遺伝子生成物をトランスジェニック動物において発現させることもできる。蟯虫、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ミニブタ、鳥類、ヤギおよび非ヒト霊長類、たとえばヒヒ、サルおよびチンパンジーなどを含めた(これらに限定されない)任意の種の動物を用いて、NGPCRトランスジェニック動物を作成することができる。
【0053】
NGPCRトランスジーンを動物に導入してトランスジェニック動物の創始系を作成するための、当技術分野で既知の任意の方法を使用できる。そのような方法には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:前核マイクロインジェクション(HoppeおよびWagner,1989,USP4,873,191);レトロウイルス仲介による生殖系細胞への遺伝子伝達(Van der Putten et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:6148−6152);胚性幹細胞における遺伝子ターゲティング(Thompson et al.,1989,Cell,56:313−321);胚のエレクトロポレーション(Lo,1983,Mol.Cell.Biol.,3:1803−1814);および精子仲介遺伝子伝達(Lavitrano et al.,1989,Cell,57:717−723)など。そのような方法の概説については、Gordon,1989,Transgenic Animals,Intl.Rev.Cytol.,115:171−229参照;この全体を参考として本明細書に援用する。
【0054】
本発明は、それらのすべての細胞にNGPCRトランスジーンを保有するトランスジェニック動物、およびそれらのすべての細胞ではなく一部の細胞にこのトランスジーンを保有する動物、すなわちモザイク動物または体細胞トランスジェニック動物を提供する。トランスジーンは単一トランスジーンとして、またはコンカテマー中に、たとえば頭−頭縦列または頭−尾縦列で組み込まれてもよい。トランスジーンは、たとえばLasko et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:6232−6236の教示に従って、特定の細胞タイプに選択的に導入され、活性化されてもよい。そのような細胞タイプ特異的活性化に必要な調節配列は、目的とするその細胞タイプに依存し、当業者に自明であろう。
【0055】
NGPCRトランスジーンを染色体の内因性NGPCR遺伝子部位に組み込みたい場合、遺伝子ターゲティングが好ましい。要約すると、そのような方法を用いたい場合、内因性NGPCR遺伝子のヌクレオチド配列に染色体配列との相同組換えにより組み込ませ、その機能を撹乱するために(すなわちノックアウト動物)、内因性NGPCR遺伝子に相同な若干のヌクレオチド配列を含むベクターを設計する。
【0056】
トランスジーンを特定の細胞タイプに選択的に導入し、これによりその細胞タイプにおいてのみ内因性NGPCR遺伝子を不活性化することもできる:たとえばGu et al.,1994,Science,265:103−106の教示による。そのような細胞タイプ特異的不活性化に必要な調節配列は、目的とするその細胞タイプに依存し、当業者に自明であろう。
【0057】
トランスジェニック動物が作成されると、標準法により組換えNGPCR遺伝子の発現を評価することができる。サザンブロット分析またはPCR法により初期スクリーニングを行って動物組織を分析し、トランスジーンの組込みが行われたかどうかをアッセイすることができる。トランスジェニック動物の組織におけるトランスジーンのmRNA発現レベルも、その動物から得た組織試料のノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション分析、およびRT−PCRを含めた方法(これらに限定されない)を用いて評価することができる。NGPCR遺伝子発現組織の試料を、そのNGPCRトランスジーン生成物に特異的な抗体を用いて免疫細胞化学的に評価することもできる。
【0058】
5.2 NGPCRタンパク質及びポリペプチド
NGPCRタンパク、ポリペプチド、およびペプチドフラグメント、変異、トランケートもしくは欠失形のNGPCR、および/またはNGPCR融合タンパク質を、多様な用途のために調製することができる。これらの使用には、タンパク治療、抗体産生、診断アッセイにおける試薬として、NGPCRに関連した他の細胞遺伝子生成物の同定、精神的、生物学的または医学的な障害(すなわち、腎臓疾患、消化疾患、不妊、血圧異常、体重障害など)および疾病の療法処置に有用な医薬として使用できる化合物のスクリーニングのためのアッセイにおける試薬としての用途が含まれるが、これらに限定されない。前記NGPCRは、制限的ではないが、ラトロトキシン受容体およびラトロフィリンを含む化合物と構造上の類似性を有する。類似性に関する情報と発現データに基づき、前記NGPCRは、疾患の治療または治療剤の効果を治療的に増強するための(薬剤、オリゴ、抗体などによる)ターゲットとされる。
【0059】
配列表に、前記NGPCRヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を開示する。前記NGPCRは、翻訳開始部位に一致するDNA配列コンテクストにイニシエーターメチオニンをもち、これに膜結合あるいは分泌タンパクに典型的な疎水性のシグナル配列が続く。本明細書に示す配列データは、NGPCRの選択的スプライシングによるものが存在することを示している。
【0060】
本発明のNGPCRアミノ酸配列には、配列表に示したアミノ酸配列、ならびにその類似体および誘導体が含まれる。さらに、他の種に由来する対応するNGPCR相同配列も本発明に包含される。事実、前記NGPCRヌクレオチドがコードするいかなるNGPCRタンパク質も本発明の範囲に含まれ、配列表に示したアミノ酸配列の全部またはいずれかの新規部分をコードする新規ポリヌクレオチド配列も同様に本発明に含まれる。遺伝子コードの縮重性は周知であり、したがって配列表に示した各アミノ酸はそのアミノ酸をコードしうる周知の核酸”トリプレット”コドン(または多くの場合コドン類)の一般的代表例である。したがって、本明細書で意図するように、配列表に示したアミノ酸配列は、遺伝子コード(たとえば”Molecular Cell Biology”,1986,Darnellら編,p.109,表4−1参照,Scientific American Books,ニューヨーク州ニューヨーク;本明細書に参考として援用)を合わせて考慮すると、そのようなアミノ酸配列をコードしうる核酸配列の種々の変形および組合わせすべてのうちの一般的代表例である。
【0061】
本発明は、多数の基準のいずれかにより判定して、記載したヌクレオチド配列がコードするNGPCRに機能的に均等なタンパク質をも包含する。これらの基準には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:NGPCRのリガンドを結合する能力;適切な細胞タイプにNGPCR均等物が存在する場合に、均等もしくは相補的な信号伝達経路、細胞代謝の変化(たとえばイオンフラックス、チロシンリン酸化など)、または表現型における変化(たとえば生化学的、生物物理学的または顕示表現型の軽減、阻止または遅延)。そのような機能的に均等なNGPCRタンパク質には、記載したNGPCRヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列内のアミノ酸残基の付加体または置換体であって、ただしサイレント変化を生じ、したがって機能的に均等な遺伝子生成物を産生するものが含まれるが、これらに限定されない。アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水度、親水度および/または両親媒性の類似性に基づいて行うことができる。たとえば非極性(疎水性)アミノ酸残基にはアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれ;極性中性アミノ酸にはグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが含まれ;正に荷電した(塩基性)アミノ酸にはアルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれ;負に荷電した(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。
【0062】
NGPCR DNAにランダム変異を行わせ(当業者に周知のランダム変異誘発法を用いて)、得られた変異NGPCRの活性を調べることができるが、NGPCRコード配列の部位特異的変異を工学的に形成して(当業者に周知の部位特異的変異誘発法を用いて)、機能の向上した(たとえばターゲットリガンドに対する結合アフィニティーがより高い、および/または信号伝達能がより高い)、または機能の低下した(ターゲットリガンドに対する結合アフィニティーがより弱い、および/または信号伝達能がより低い)、変異NGPCRを形成することができる。そのような分析の出発点のひとつは、例えば異種間で保存されているアミノ酸配列モチーフを同定するために、開示したヒト配列と他の哺乳動物由来の対応する遺伝子/タンパク質配列とをアラインさせることによる。種々の位置で非保存変化を工学的に行って、機能、信号伝達能、または両方を変更することができる。あるいは、機能の変更が望まれる場合、保存領域(すなわち同一アミノ酸)の欠失または非保存変更、たとえば種々の保存された膜貫通ドメインの欠失または非保存変更(置換または挿入)を工学的に行うことができる。
【0063】
選択した宿主細胞における発現、スケールアップなどに、より適したNGPCRを形成するために、NGPCRコード配列に他の変異を行うことができる。たとえばジスルフィド橋を排除するためにシステイン残基を欠失させるか、または他のアミノ酸と置換することができ、そしてたとえばN−結合部位を過剰グリコシル化することが知られている酵母宿主からより容易に採集および精製される均質な生成物を発現させるために、N−結合グリコシル化部位を変更または排除することができる。この目的で、ECD中にあるいずれか1以上のグリコシル化認識配列(N−X−SまたはN−X−T)の第1もしくは第3アミノ酸の一方または両方の位置における多様なアミノ酸置換、および/またはECD中のいずれか1以上のそのような認識配列の第2位置におけるアミノ酸欠失は、この修飾されたトリペプチド配列におけるNGPCRのグリコシル化を阻止するであろう(たとえばMiyajima et al.,1986,EMBO J.,5:1193−1197)。
【0064】
NGPCRの1以上のドメインに対応するペプチド(たとえばECD、TM、CDなど)、トランケートまたは欠失NGPCR(たとえばECD、TM、CDを欠失したNGPCR)、および融合タンパク質(全長NGPCR、NGPCRペプチドまたはトランケートNGPCRが、関連のないタンパク質に融合したもの)も本発明の範囲に含まれ、本明細書に開示するNGPCR遺伝子ヌクレオチドおよびNGPCRアミノ酸配列に基づいて設計することができる。そのような融合タンパク質には、NGPCRタンパク質もしくはペプチドを安定化してインビボでの半減期を延長するIgFc融合体;または融合タンパク質を細胞膜に固定してECDを細胞表面に提示するいずれかのアミノ酸配列に対する融合体;またはマーカー機能を与える酵素、蛍光タンパク質もしくは発光タンパク質への融合体が含まれるが、それらに限定されない。
【0065】
NGPCRポリペプチドおよびペプチドを化学的に合成できる(たとえばCreighton,1983,Proteins:Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman & Co.,ニューヨーク,参照)が、NGPCR由来の大型ポリペプチド、全長NGPCRは、NGPCR遺伝子配列および/またはコード配列を含む核酸の発現に関して当技術分野で周知の方法を用いる組換えDNA法で有利に製造することができる。そのような方法を用いて、一つあるいはそれ以上の記載したNGPCRヌクレオチド配列ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築できる。これらの方法には、たとえばインビトロ組換えDNA法、合成法およびインビボ遺伝子組換え法が含まれる。たとえばSambrook et al.,1989(前掲)およびAusubel et al.,1989(前掲)に記載の方法を参照。あるいは、NGPCRヌクレオチド配列がコードする転写体の全部または一部に対応するRNAを、たとえば合成装置で化学的に合成することができる。たとえば”Oligonucleotide Synthesis”,1984,Gait,M.J.編,IRL Press,オックスフォード,に記載の方法を参照;その全体を参考として本明細書に援用する。
【0066】
多様な宿主発現ベクター系を利用して、本発明のNGPCRヌクレオチド配列を発現させることができる。NGPCRペプチドまたはポリペプチドが可溶性誘導体(たとえばECDに対応するNGPCRペプチド;TMおよび/またはCDを欠失したトランケートまたは欠失NGPCR)であれば、ペプチドまたはポリペプチドを培養物から、すなわちNGPCRペプチドまたはポリペプチドが宿主細胞により分泌されない場合は宿主細胞から、NGPCRペプチドまたはポリペプチドが分泌される場合は培地から、採集することができる。しかしそのような発現系には、NGPCRまたはその機能均等物をin situで、すなわち細胞膜に固定した状態で発現する、工学的に処理した宿主細胞も包含される。そのような発現系からのNGPCRの精製または富化は、適切な界面活性剤および脂質ミセル、ならびに当業者に周知の方法を用いて行うことができる。しかし、NGPCRの構造特性および機能特性を維持するだけでなく、たとえば薬物スクリーニングアッセイにおいて生物学的活性を評価することが重要である場合、そのような工学的に処理した宿主細胞自体を使用できる。
【0067】
本発明の目的に使用できる発現系には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:NGPCRヌクレオチド配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAもしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した微生物、たとえば細菌(たとえば大腸菌(E.coli)、枯草菌(B.subtilis));NGPCRヌクレオチド配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母(たとえばサッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia));NGPCRヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクター(たとえばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;NGPCRヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクター(たとえばカリフラワーモザイクウイルス,CaMV;タバコモザイクウイルス,TMV)を感染させた、もしくは組換えプラスミド発現ベクター(たとえばTiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;またはNGPCRヌクレオチド配列および哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(たとえばメタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(たとえばアデノウイルス後期プロモーターあるいはワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築体を宿した哺乳動物細胞系(たとえばCOS、CHO、BHK、239、3T3)。
【0068】
細菌系では、発現するNGPCR生成物について意図する用途に応じて、多数の発現ベクターを有利に選択できる。たとえばNGPCRタンパク質の医薬組成物を調製において、あるいはNGPCRタンパク質に対する抗体を産生させるために、そのようなタンパク質を大量に製造したい場合、容易に精製される融合タンパク質生成物の高レベル発現を指令するベクターが望ましいことがある。そのようなベクターには下記のものが含まれるが、それらに限定されない:大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al.,1983,EMBO J.,2:1791)、この場合、NGPCRコード配列を個々に、融合タンパク質が産生されるようにlacZコード領域と読み枠を一致させて、ベクターにライゲートさせることができる;pINベクター(Inouye & Inouye,1985,Nucleic Acids Res.,13:3101−3109;Van Heeke & Schuster,1989,J.Biol.Chem.,264:5503−5509)など。pGEXベクターを用いて、NGPCRタンパク、ポリペプチドあるいはペプチドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させることもできる。一般にそのような融合タンパク質は可溶性であり、溶解細胞からグルタチオン−アガロースビーズへの吸着、次いで遊離グルタチオンの存在下での溶離によって、容易に精製できる。PGEXベクターがトロンビンまたはXa因子プロテアーゼ開裂部位を含むように設計し、これにより、NGPCRタンパク、ポリペプチドあるいはペプチドをGST部分から放出させることができる。
【0069】
典型的昆虫系では、Autographa californica核ポリヒドローシスウイルス(nuclear polyhedrosis virus)(AcNPV)をNGPCRヌクレオチド配列発現のためのベクターとして用いる。このウイルスをSpodoptera frugiperda細胞内で増殖させる。NGPCR遺伝子コード配列を個々にウイルスの非必須領域(たとえばポリヘドリン遺伝子)内へクローン化し、AcNPVプロモーター(たとえばポリヘドリンプロモーター)の制御下におく。NGPCR遺伝子コード配列の挿入に成功すると、ポリヘドリン遺伝子が不活性化され、ノンオクルーデッド(non−occluded)組換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子がコードするタンパク質性コートをもたないウイルス)が産生されるであろう。次いでこれらの組換えウイルスをSpodoptera frugiperda細胞の感染に用い、ここで挿入遺伝子を発現させる(たとえばSmith et al.,1983,J.Virol.46:584;Smith,USP4,215,051参照)。
【0070】
哺乳動物宿主細胞の場合、多数のウイルス性発現系を利用できる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、目的とするNGPCR遺伝子ヌクレオチド配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、たとえば後期プロモーターおよび三部分(tripartite)リーダー配列にライゲートさせることができる。次いでこのキメラ配列をインビトロまたはインビボ組換えによりアデノウイルスゲノムに挿入する。ウイルスゲノムの非必須領域(たとえば領域E1またはE3)に挿入すると、感染宿主においてNGPCR遺伝子生成物を発現しうる生存可能な組換えウイルスが得られる(たとえばLogan & Shenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:3655−3659参照)。挿入したNGPCRヌクレオチド配列の効率的翻訳には、特異的開始シグナルが必要な可能性もある。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。それ自身の開始コドンおよび隣接配列を含む全NGPCR遺伝子またはcDNAを適切な発現ベクターに挿入する場合、追加の翻訳制御シグナルは必要ないかもしれない。しかしNGPCRコード配列の一部のみを挿入する場合、外因性翻訳制御シグナル(おそらく、ATG開始コドンを含む)を供給することができる。さらに、挿入配列全体を確実に翻訳するためには、開始コドンが目的NGPCRコード配列の読み枠と一致しなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成のいずれでも、多様な由来のものであってよい。適切な転写エンハンサー要素、転写ターミネーターなどを取り込ませることにより、発現効率を高めることができる(Bitter et al.,1987,Methods in Enzymol.,153:516−544)。
【0071】
さらに、挿入配列の発現を調節し、または発現生成物を目的とする特定の様式で修飾およびプロセシングする、宿主細胞系統を選ぶことができる。タンパク質生成物のそのような修飾(たとえばグリコシル化)およびプロセシング(たとえば開裂)は、タンパク質の機能にとって重要である。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子あるいは発現生成物の翻訳後プロセシングおよび修飾に特徴的かつ特異的な機序をもつ。発現した外来タンパク質の適正な修飾およびプロセシングを確実にするために、適切な細胞系または宿主系を選ぶことができる。このために、一次転写体の適正なプロセシング、遺伝子生成物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構をもつ真核宿主細胞を使用できる。そのような哺乳動物宿主細胞にはCHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3およびWI38細胞系が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
組換えタンパク質の長期高収率産生のためには、安定な発現が好ましい。たとえば前記NGPCR配列を安定に発現する細胞系を工学的に作成することができる。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを用いるのではなく、適切な発現制御要素(たとえばプロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)により制御されるDNA、および選択性マーカーで宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後、工学的に処理した細胞を富化培地で1〜2日間増殖させ、次いで選択培地に切り替える。組換えプラスミド内の選択性マーカーが選択に対する耐性を与え、細胞はそのプラスミドを細胞の染色体に安定に組み込むことができ、増殖してフォーカスを形成する。次いでこれをクローン化し、細胞系に拡張することができる。この方法は、目的NGPCR生成物を発現する細胞系を工学的に作成するのに有利に使用できる。このような工学的に作成した細胞系は、NGPCR遺伝子生成物の内因活性に影響を与える化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用である。
【0073】
多数の選択系を使用でき、これには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler,et al.,1977,Cell,11:223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalski & Szybalski,1962,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,48:2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy,et al.,1980,Cell,22:817)遺伝子を、それぞれtk−、hgprt−またはaprt−細胞に使用できる。代謝拮抗物質耐性を下記の遺伝子の選択の基礎として用いることもできる:dhfr、これはメトトレキセートに対する耐性を与える(Wigler,et al.,1980,Natl.Acad.Sci.USA,77:3567;O’Hare,et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:1527);gpt、これはミコフェノール酸に対する耐性を与える(Mulligan & Berg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:2072);neo、これはアミノグリコシドG−418に対する耐性を与える(Colberre−Garapin,et al.,1981,J.Mol.Biol.,150:1);およびhygro、これはハイグロマイシンに対する耐性を与える(Santerre,et al.,1984,Gene,30:147)。
【0074】
あるいは、発現する融合タンパク質に特異的な抗体を利用することにより、いかなる融合タンパク質も容易に精製できる。たとえばそのような1つの系は、ヒト細胞系において発現した非変性融合タンパク質を容易に精製できる(Janknecht,et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8972−8976)。この系では、目的遺伝子をそのオープンリーディングフレームが翻訳可能な状態で6ヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに融合するように、ワクシニア組換えプラスミド内へサブクローニングする。組換えワクシニアウイルスを感染させた細胞からの抽出物をNi2+・ニトリロ酢酸−アガロースカラムに装填し、ヒスチジンタグ付きタンパク質をイミダゾール含有緩衝液で選択的に溶離する。
【0075】
本発明には、NGPCRをターゲット臓器へ向かわせ、および/または膜を透過して細胞質ゾル内への輸送を促進する融合タンパク質が含まれる。抗体分子またはそのFabフラグメントへのNGPCRの結合は、特定のエピトープを保有する細胞をターゲティングするのに利用できる。適切なシグナル配列をNGPCRに結合させると、NGPCRを細胞内の目的位置へ輸送することもできる。あるいは、NGPCRまたはそれらの核酸配列のターゲティングは、リポソームまたは脂質複合体をベースとする送達系を用いて達成することもできる。そのような技術は、Liposomes:A Practical Approach,New RRC編、オックスフォード大学出版社、ニューヨーク、およびUSP4,594,595、5,459,127、5,948,767および6,110,490に記載されており、それらの各開示内容全体を本明細書に援用する。更に本発明には、新規なタンパク質構築体であって、NGPCRが細胞膜および/または核を透過し、その機能を発揮するターゲット部位あるいは目的臓器へのNGPCRの輸送を容易にするように作成したものも包含される。この目標は、NGPCRのターゲティング特異性を与えるサイトカインあるいは他のリガンドとのカップリングによって、および/または細胞膜透過容易にするためにタンパク形質導入ドメイン(そのような形質導入配列の例として米国特許出願60/111,701および60/056,713を参照。これらを参照として本明細書に援用する。)とNGPCRをカップリングすることにより達成され、および/または選択的に一つ又はそれ以上の核局在化シグナルを含むように作成することができる。
【0076】
5.3 NGPCRタンパク質に対する抗体
1以上のNGPCRのエピトープ、またはNGPCRの保存変異体のエピトープ、またはNGPCRのペプチドフラグメントを特異的に認識する抗体も、本発明に包含される。そのような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab発現ライブラリーにより産生されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗−Id)抗体、および前記のいずれかのエピトープ結合性フラグメントが含まれるが、それらに限定されない。
【0077】
本発明の抗体は、たとえば生物試料中のNGPCRの検出に使用でき、したがって患者を一つ又はそれ以上のNGPCRの異常な量について調べる診断法または予後判定法の一部として使用できる。そのような抗体を、たとえば化合物スクリーニング法(下記参照)と組み合わせて、NGPCR発現または遺伝子生成物の発現および/または活性に対する被験化合物の作用を評価するのにも利用できる。さらに、そのような抗体を遺伝子療法と組み合わせて用い、たとえば正常な、および/または工学的に処理したNGPCR発現細胞を患者に導入する前に評価することができる。そのような抗体をさらに、異常NGPCR活性の阻害のために使用できる。したがって、そのような抗体を様々な治療処方、たとえば腎臓疾患、消化疾患、不妊、血圧異常、および/または体重障害の治療処方の一部として利用できる。
【0078】
抗体産生のためには、NGPCR、一つ又はそれ以上のNGPCRペプチド(たとえばこの受容体の機能性ドメイン、ECD、TMまたはCDに対応するもの)、トランケートNGPCRポリペプチド(1以上のドメイン、たとえばTMまたはCDが欠失したNGPCR)、NGPCRの機能均等物、またはNGPCRの変異配列を注射することにより、種々の宿主動物を免疫化することができる。数例を挙げると、そのような宿主動物にはウサギ、マウスおよびラットが含まれるが、これらに限定されない。宿主の種に応じて、免疫応答を高めるために種々のアジュバントを使用でき、これにはフロイントアジュバント(完全および不完全)、鉱物塩、たとえば水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム、、キトサン、界面活性物質、たとえばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルション、ならびに潜在的に有用なヒトアジュバント、たとえばBCG(Bacille Calmette−Guerin)およびCorynebacterium parvumが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、キーホールリンペット(keyhole limpet)ヘモシアニン、破傷風毒素、ジフテリア毒素、卵アルブミン、コレラ毒素、またはそのフラグメントなどの分子との組合わせおよび/または結合により免疫応答を高めることができる。ポリクローナル抗体は免疫化動物の血清から得られる不均一な抗体分子集団である。
【0079】
特定の抗原に対する均一な抗体集団であるモノクローナル抗体は、連続した培養細胞系により抗体分子を産生するいかなる方法によっても得ることができる。これらには下記の方法が含まれるが、これらに限定されない:ハイブリドーマ法(KohlerおよびMilstein、1975,Nature,256:495−497;およびUSP4,376,110)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosbor et al.,1983,Immunology Today,4:72;Cole et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:2026−2030)、およびEBV−ハイブリドーマ法(Cole et al.,1985,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss社,pp.77−96)。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそのいずれかのサブクラスを含めた、いかなる免疫グロブリンクラスであってもよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマをインビトロまたはインビボで培養することができる。インビボで高力価のmAbを産生できるので、これは現在好ましい産生方法である。
【0080】
さらに、”キメラ抗体”(Morrison et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.,81:6851−6855;Neuberger et al.,1984,Nature,312:604−608;Takeda et al.,1985,Nature,314:452−454)の産生のために開発された、適切な抗原特異性をもつマウス抗体分子からの遺伝子を適切な生物学的活性をもつヒト抗体分子からの遺伝子とスプライシングすることによる方法を使用できる。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子、たとえばネズミmAb由来の可変部とヒト免疫グロブリン定常部をもつものである。その技術は、米国特許第6,075,181および5,877,397に記載されており、それらの全体を本明細書に参照として援用する。同様に好ましいのは、米国特許6,150,584に記載されている完全人化モノクローナル抗体の使用であり、相当する開示の全体を参照として本明細書に援用する。
【0081】
あるいは、一本鎖抗体の産生のために記載された方法(USP4,946,778;Bird,1988,Science,242:423−426;Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5879−5883;およびWard et al.,1989,Nature,341:544−546)を、NGPCRペプチド、ポリペプチドおよび/またはタンパクに対する一本鎖抗体の産生に適合させることができる。一本鎖抗体は、Fv部のH鎖およびL鎖フラグメントをアミノ酸橋により結合させ、一本鎖ポリペプチドにすることにより形成される。
【0082】
特異的エピトープを認識する抗体フラグメントは、既知の方法で形成できる。たとえばそのようなフラグメントには、抗体分子のペプシン消化により調製できるF(ab’)2フラグメント、およびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド橋を還元することにより調製できるFabフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築して(Huse et al.,1989,Science,246:1275−1281)、目的とする特異性をもつモノクローナルFabフラグメントを迅速かつ容易に同定することができる。
【0083】
次いでNGPCRに対する抗体を、当業者に周知の方法を用いて、与えられたNGPCRを”模倣”した抗イディオタイプ抗体を産生させるために使用することができる(たとえばGreenspan & and Bona,1993,FASEB J.7:437−444;およびNissinoff,1991,J.Immunol.,147:2429−2438参照)。たとえば、NGPCR ECDに結合してNGPCRのリガンドが結合するのを競合阻害する抗体を用いて、NGPCR ECDを”模倣”する、したがってリガンドに結合して中和する抗イディオタイプ抗体を産生させることができる。そのような中和性の抗イディオタイプ抗体またはそのような抗イディオタイプ抗体のFabフラグメントは、NGPCRシグナリング経路を伴う療法に使用できる。
【0084】
さらに与えられた哺乳動物NGPCRの高い関連性により、前記(特定のNGPCRを有しておらず、該NGPCRに対して寛容でない)ノックアウトマウスはユニークな有用性を有し、該ノックアウトマウスは前記哺乳動物NGPCRに対する抗体生成に有益に適用することができる(すなわち、NGPCRはNGPCRノックアウト動物において免疫原となる)。
【0085】
5.4 NGPCRに関連する異常性の診断
NGPCR機能関連障害の診断および予後評価、ならびにそのような障害の素因をもつ対象の確認のために、多様な方法を採用できる。
【0086】
そのような方法は、たとえばセクション5.1に記載したNGPCRヌクレオチド配列、および/またはセクション5.3に記載したNGPCR抗体などの試薬を利用できる。具体的には、そのような試薬を、たとえば下記のために使用できる:(1)NGPCR遺伝子変異の存在の検出、または特定の(すなわち、通常の)表現型に関するNGPCR mRNAの発現過剰もしくは発現不足の検出;(2)特定の(すなわち、通常の)表現型に関するNGPCR遺伝子生成物の過剰もしくは不足の検出;および(3)NGPCRが仲介する信号伝達経路における撹乱または異常の検出。
【0087】
本明細書に記載する方法は、たとえば本明細書に記載する少なくとも1つの特異的NGPCRヌクレオチド配列および/またはNGPCR抗体試薬を含むプレパッケージ診断用キットを用いて行うことができ、これをたとえば臨床下で、腎臓疾患、消化疾患、不妊、血圧異常、および/または体重異常障害などの医療的障害または異常を示している患者の診断に簡便に使用できる。
【0088】
NGPCR変異を検出するために、ゲノム核酸の出発源として任意の成核細胞を使用できる。NGPCR遺伝子発現またはNGPCR遺伝子生成物を検出するためには、NGPCR遺伝子が発現する任意の細胞タイプまたは組織を使用できる。
【0089】
核酸ベースの検出法およびペプチド検出法を詳細に以下に記載する。
【0090】
5.4.1NGPCR遺伝子および転写体の検出
NGPCR遺伝子またはヌクレオチド配列内の変異は、多数の方法で検出できる。任意の成核細胞に由来する核酸をそのようなアッセイ法の出発点として使用でき、当業者に周知の標準核酸調製法に従って単離できる。
【0091】
点変異、挿入、欠失および染色体再配列を含めたNGPCR遺伝子構造に関する異常を検出するために、生物試料のハイブリダイゼーションアッセイまたは増幅アッセイにDNAを使用できる。そのようなアッセイ法には、サザン分析、一本鎖コンホメーション多型分析(SSCP)、制限酵素断片長多型(RFLP、USP5,272,057に一般的に記載されている。該特許を本明細書に参照として援用する。)、一塩基多型(coding Single Nucleotide Polymorphism)およびPCR分析が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
NGPCR遺伝子特異性変異を検出するためのそのような診断法はたとえば、患者試料または他の適切な細胞源に由来する試料から得た、組換えDNA分子、クローン化遺伝子、またはその縮重変異体を含めた核酸を、セクション5.1に記載した組換えDNA分子、クローン化遺伝子、またはその縮重変異体を含めた1以上の標識核酸試薬と、これらの試薬がNGPCR遺伝子または配列内のそれらの相補配列に特異的にアニールするのに好ましい条件下で、たとえば接触およびインキュベートすることを伴う。好ましくは、これらの核酸試薬の長さは少なくとも15〜30ヌクレオチドである。インキュベーション後、核酸:NGPCR分子ハイブリッドから、アニールしていない核酸をすべて除去する。次いでハイブリダイズした核酸の存在(そのような分子が存在する場合)を検出する。このような検出方式を用いて、目的とする細胞タイプまたは組織に由来する核酸を、たとえば膜またはプラスチック表面(マイクロタイタープレートまたはポリスチレンビーズの表面など)などの固体支持体に固定化することができる。そのような場合、インキュベーション後、セクション5.1に記載したタイプのアニールしていない標識核酸試薬は容易に除去される。残りのアニールした標識NGPCR核酸試薬の検出は、当業者に周知の標準法によって容易に行われる。NGPCR変異の有無を判定するために、核酸試薬がアニールしたNGPCR配列を、正常なNGPCR配列から予想されるアニーリングパターンと比較することができる。
【0093】
患者試料または他の適切な細胞源中のNGPCR遺伝子特異的核酸分子を検出するための別の診断法は、それらをたとえばPCRにより増幅させ(実験様式はUSP4,683,195、4,683,202および4,800,159に述べられている。それらの全体を本明細書に援用する。)、次いで増幅分子を当業者に周知の方法で検出することを伴う。NGPCR遺伝子変異の有無を判定するために、得られた増幅配列を、増幅核酸が正常なNGPCR遺伝子コピーのみを含有していた場合に予想されるものと比較することができる。
【0094】
さらに、周知の遺伝子型判定法を実施して、NGPCR遺伝子変異をもつ個体を確認できる。そのような方法には、たとえば制限酵素断片長多型(RFLP)の採用が含まれる。これは、用いる特異的制限酵素に対する認識部位の1つにおける配列の相違を伴うものである。
【0095】
さらに、NGPCR遺伝子変異の確認に利用できる改良されたDNA多型分析法の記載があり、これは制限酵素部位間にある、個数の変動する短鎖縦列反復DNA配列の存在を利用する。たとえばWeber(USP5,075,217、その全体を参考として本明細書に援用する)は、(dC−dA)n(dG−dT)n短鎖縦列反復配列ブロック中の断片長多型に基づくDNAマーカーを記載している。(dC−dA)n(dG−dT)nブロックの平均距離は30,000〜60,000bpであると推定される。このように近接したマーカーは高頻度の同時遺伝(co−inheritance)を示し、遺伝子変異、たとえばNGPCR遺伝子内の変異の確認、ならびにNGPCR変異に関連する疾病および障害の診断にきわめて有用である。
【0096】
Caskeyら(USP5,364,759、その全体を参考として本明細書に援用する)も、短い3および4ヌクレオチド反復配列を検出するためのDNAプロファイリングアッセイを記載している。この方法は、目的とするDNA、たとえばNGPCR遺伝子を抽出し、抽出したDNAを増幅させ、反復配列を標識してその個体のDNAの遺伝子型地図を作成することを含む。
【0097】
NGPCR遺伝子発現レベルも、NGPCR転写の検出および測定によりアッセイできる。たとえばNGPCR遺伝子を発現することが分かっているかまたは推測される細胞タイプまたは組織からRNAを単離し、本明細書記載のようなハイブリダイゼーション法またはPCR法により検査することができる。単離細胞は細胞培養物または患者に由来するものであってよい。培養物から採取した細胞の分析は、細胞ベースの遺伝子療法の一部として用いる細胞を評価するのに、または化合物がNGPCR遺伝子の発現に与える影響を調べるために、必要な工程であろう。そのような分析により、NGPCR遺伝子の発現パターンの量的および質的観点(NGPCR遺伝子発現の活性化または不活性化を含む)を共に明らかにすることができる。
【0098】
そのようなNGPCR検出方式の1態様においては、目的とするRNAからcDNAを合成する(たとえばRNA分子からcDNAへの逆転写による)。次いでcDNA内の配列を核酸増幅反応、たとえばPCR増幅反応などの鋳型として用いる。この方法の逆転写工程および核酸増幅工程に合成開始試薬として用いる核酸試薬(たとえばプライマー)は、セクション5.1に記載したNGPCR核酸試薬から選ばれる。このような核酸試薬の好ましい長さは、少なくとも約9〜30ヌクレオチドである。増幅生成物の検出のために、放射性または非放射性標識ヌクレオチドを用いて核酸増幅を行うことができる。あるいは、標準的な臭化エチジウム染色法、または他のいずれかの適切な核酸染色法、または配列決定法により、生成物を視覚化できるのに十分な増幅生成物を調製することができる。
【0099】
さらに、そのようなNGPCR遺伝子発現アッセイを”in situ”で、すなわち生検または切除により得た患者組織の組織切片(固定および/または凍結したもの)について直接に行うことができ、したがって核酸精製は必要ない。上に記載したような核酸試薬を、そのようなin situ法のプローブおよび/またはプライマーとして使用できる(たとえばNuovo,G.J.,1992,”PCR In situ Hybridization:Protocols and Applications”,Raven Press,ニューヨーク,参照)。
【0100】
あるいは、十分な量の適切な細胞を得ることができれば、標準ノーザン分析を行って、NGPCRのmRNA発現レベルを測定できる。
【0101】
さらに、NGPCRオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列は、固体支持マトリックス/基板(たとえば樹脂、ビーズ、膜、プラスチック、ポリマー、金属または金属基板、遺伝子チップ、および結晶おるいは多結晶基板など)に結合させ、ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。
【0102】
5.4.2 NGPCR生成物の検出
上記で考察した、野生型もしくは変異NGPCR生成物に対して、またはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントに対して形成された抗体も、本明細書に記載するように診断および予後判定に使用できる。そのような診断法は、NGPCR遺伝子発現レベルの異常、あるいはNGPCRの構造の異常、および/または時間的、組織、細胞もしくは細胞下でのNGPCRの存在位置の異常を検出するのに使用でき、たとえば生検組織についてインビボまたはインビトロで実施できる。
【0103】
たとえばNGPCR ECDのエピトープに対する抗体をインビボで用いて、体内でのNGPCR発現のパターンおよびレベルを検出できる。体内で発現したNGPCRへの結合をX線、CAT−走査またはMRIなどの方法で視覚化するために、そのような抗体を、たとえば放射線不透過性化合物その他の適切な化合物で標識し、被験者に注射することができる。抗原結合領域の最小部分を含む標識抗体フラグメント、たとえばFabまたは一本鎖抗体が、この目的で、血液−脳関門の通過を促進し、脳で発現したNGPCRの標識を可能にするために好ましい。
【0104】
さらに、その存在を検出できるNGPCR融合タンパク質またはNGPCR結合タンパク質を投与してもよい。たとえば放射線不透過性化合物その他の適切な化合物で標識したNGPCR融合タンパク質またはNGPCR結合タンパク質を投与し、標識抗体について前記に述べたようにインビボで視覚化することができる。さらに、そのようなNGPCR融合タンパク質(たとえばアルカリホスファターゼ−NGPCRまたはNGPCR−アルカリホスファターゼ融合タンパク質)をインビトロ診断法に利用できる。
【0105】
あるいは、前記の免疫アッセイまたは融合タンパク質検出アッセイをインビトロで生検試料および切除試料に利用して、NGPCR発現パターンを評価することができる。そのようなアッセイ法はNGPCR ECDを規定する抗体の使用に限定されず、NGPCRの任意のドメイン、たとえばECD、TMおよび/またはCDのエピトープに対する抗体の使用も含めることができる。これらの標識抗体それぞれ、または全部を用いることにより、NGPCRの翻訳および細胞表面への細胞内輸送に関する有用な情報が得られ、プロセシングの欠陥を確認することができる。
【0106】
分析する組織または細胞タイプには、一般にNGPCR遺伝子を発現することが分かっているかまたは推定されるものが含まれる。本発明に用いるタンパク質単離法は、すでに文献に記載されたもの、たとえば(Harlow and Lane,1988,上述)であってもよい。単離細胞は細胞培養物または患者に由来するものであってよい。培養物から採取した細胞の分析は、細胞ベースの遺伝子療法の一部として使用できる細胞を評価するのに、あるいは化合物がNGPCR遺伝子の発現に与える作用を調べるために、必要な工程であろう。
【0107】
たとえば、セクション5.3に記載した本発明に有用な抗体または抗体フラグメントを用いて、NGPCR生成物またはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントの存在を定量的および定性的に検出することができる。これはたとえば、光学顕微鏡、フローサイトメトリーまたは蛍光測定検出と連結した、蛍光標識抗体を用いる免疫蛍光法(このセクションの後記参照)により行うことができる。このような方法は、そのようなNGPCR遺伝子生成物が少なくとも一時的に細胞表面に発現する場合、特に好ましい。
【0108】
本発明に有用な抗体(またはそのフラグメント)またはNGPCR融合もしくは結合タンパク質はさらに、組織学的に、免疫蛍光、免疫電子顕微鏡または非免疫アッセイ法において、NGPCR遺伝子生成物またはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントのin situ検出に、あるいはNGPCR結合のアッセイに(標識NGPCR−リガンド融合タンパク質の場合)使用できる。
【0109】
in situ検出は、患者から組織検体を摘出し、それに本発明の標識抗体または融合タンパク質を付与することにより行うことができる。抗体(またはフラグメント)または融合タンパク質は、生物試料に標識抗体(またはフラグメント)を積層することにより付与するのが好ましい。このような方法を用いることにより、NGPCR生成物または保存変異体もしくはペプチドフラグメントの存在、あるいはNGPCRの結合だけでなく、被験組織におけるNGPCRの分布をも測定することができる。本発明を用いて多様な組織学的方法(たとえば染色法)をこのようなin situ検出の達成のために改変しうることは、当業者に自明であろう。
【0110】
NGPCR遺伝子生成物またはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントの免疫アッセイ法および非免疫アッセイ法は、一般に試料、たとえば生物学的流体、組織抽出物、採取したばかりの細胞、または細胞溶解物(細胞培養においてインキュベートしたもの)を、NGPCR遺伝子生成物またはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントを同定しうる検出可能な標識抗体の存在下でインキュベートし、結合した抗体を当技術分野で周知の多数の方法のいずれかで検出することを含む。
【0111】
細胞、細胞粒子または可溶性タンパク質を固定化しうる固相支持体またはキャリヤー、たとえばニトロセルロースまたは他の固体支持体に、生物試料を接触させて固定化してもよい。次いで支持体を適切な緩衝液で洗浄した後、検出可能な状態に標識したNGPCR抗体またはNGPCRリガンド融合タンパク質で処理する。次いで固相支持体を緩衝液で再度洗浄して、結合していない抗体または融合タンパク質を除去する。次いで固体支持体に残存する結合した標識の量を、常法により検出することができる。
【0112】
”固相支持体またはキャリヤー”とは、抗原または抗体に結合しうるいかなる支持体をも表すものとする。周知の支持体またはキャリヤーには、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩(gabbro)および磁鉄鉱が含まれるがそれらに限定されない。本発明の目的には、キャリヤーの性質はある程度可溶性であるか、あるいは不溶性であってよい。支持体材料は、結合分子が抗原または抗体に結合しうる限り、実質的に任意の可能な構造形状をもつことができる。たとえば支持体の形状は、ビーズのような球状、または試験管の内面もしくは棒の外面のような円筒形であってもよい。あるいは、表面がシート、試験片などのように平坦であってもよい。好ましい支持体には、ポリスチレンビーズが含まれる。当業者には抗体または抗原を結合させるのに適した他の多数のキャリヤーが知られており、またはルーティン実験によりこれらを確認することができる。
【0113】
あるロットのNGPCR抗体またはNGPCRリガンド融合タンパク質の結合活性は、周知の方法で測定できる。当業者は、ルーティン実験を用いて各測定に有効かつ最適なアッセイ条件を判定できるであろう。
【0114】
抗体に関して、NGPCR抗体を検出可能な状態に標識できる方法の1つは、これを酵素に結合させ、酵素免疫アッセイ(EIA)に用いるものである(Voller,1978,Diagnostic Horizons,2:1−7,Microbiological Associates Quarterly Publication,メリーランド州ウォーカースビル;Voller et al.,1978,J.Clin.Pathol.,31:507−520;Butler,1981,Meth.Enzymol.,73:482−523;Maggio,E.(編),1980,Enzyme Immunoassay,CRC Press,フロリダ州Boca Raton,FL;およびIshikawa et al.(編),1981,Enzyme Immunoassay,化学書院,東京)。抗体に結合した酵素を、分光測光法、蛍光測定法または視覚的手段で検出できる部分を生じるように、適切な基質、好ましくは色素原基質と反応させる。抗体を検出可能な状態に標識するために使用できる酵素には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:マレイン酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼ。検出は、酵素に対する色素原基質を用いる比色法により行うことができる。検出は、基質の酵素反応の程度を同様に調製した標準品と対比する視覚的比較により行うこともできる。
【0115】
検出は、他の多様な免疫アッセイ法のいずれかを用いて行うこともできる。たとえば抗体または抗体フラグメントを放射性標識することにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)を用いてNGPCRを検出できる(たとえばWeintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques,The Endocrine Society,1986年3月,参照,これを参考として本明細書に援用する)。放射性同位体は、ガンマ計数器、シンチレーション計数器の使用またはオートラジオグラフィーなどの手段で検出できる。
【0116】
抗体を蛍光化合物で標識することもできる。蛍光標識抗体を適正な波長の光で照射すると、蛍光によりその存在を検出できる。最も一般的に用いられる蛍光標識用化合物には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびフルオレサミンがある。
【0117】
抗体を、蛍光発光金属、たとえば152Euまたはランタニド系列の他の金属で、検出可能な状態に標識することもできる。これらの金属を、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート化基で抗体に結合させることができる。
【0118】
抗体を、化学発光化合物に結合させることにより、検出可能な状態に標識することもできる。次いで化学反応中に生じる発光の存在を検出することにより、化学発光−タグ付き抗体の存在を判定する。特に有用な化学発光標識用化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマチック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0119】
同様に生物発光化合物を用いて本発明の抗体(またはそれらのフラグメント)を標識することができる。生物発光は生物系にみられるタイプの化学発光であり、この場合は触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高める。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することにより判定できる。標識のために重要な生物発光化合物はルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリン(グリーン蛍光タンパクおよびそれらの変異体:USP5,491,084、5,625,048、5,777,079、5,795,737、5,804,387、5,874,304、5,968,750、5,976,796、6,020,192、6,027,881、6,054,321、6,096,865、6,146,826、6,172,188および6,265,548に記載されており、それらを参照として本明細書に援用する。)である。
【0120】
5.5 NGPCRの発現または活性を調節する化合物のスクリーニングアッセイ
以下のアッセイ法は、NGPCR(NGPCRのECDまたはCDが含まれるが、これらに限定されない)と相互作用する(たとえば結合する)化合物、NGPCR(NGPCRのECDまたはCDが含まれが、これらに限定されない)と相互作用するタンパク質、NGPCR仲介による信号伝達に関与する膜貫通または細胞内タンパク質とNGPCRの相互作用を妨害する化合物、およびNGPCR遺伝子の活性を調節する(すなわちNGPCR遺伝子発現レベルを調節する)か、またはNGPCRのレベルを調節する化合物の同定のために設計されたものである。さらに、NGPCR遺伝子調節配列(たとえばプロモーター配列)に結合してNGPCR遺伝子発現を調節する化合物を同定するアッセイ法も使用できる(たとえばPlatt,1994,J.Biol.Chem.,269:28558−28562参照;その全体を本明細書に援用する)。
【0121】
本発明によりスクリーニングできる化合物には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ペプチド、抗体およびそのフラグメント、ならびに他の有機化合物(たとえばペプチド模倣体)であって、NGPCRのECDに結合して天然リガンドが開始させる活性を模倣するもの(すなわちアゴニスト)または天然リガンドが開始させる活性を阻害するもの(すなわちアンタゴニスト);NGPCRのECD(またはその一部)を模倣し、天然リガンドに結合して”中和”する、ペプチド、抗体およびそのフラグメント、ならびに他の有機化合物。
【0122】
そのような化合物には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ペプチド、たとえば可溶性ペプチド、これには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ランダムペプチドライブラリー(たとえばLam,et al.,1991,Nature,354:82−84;Houghten et al.,1991,Nature,354:84−86参照);以下のものからなるコンビナトリアルケミストリー由来の分子ライブラリー:D−および/またはL−立体配置のアミノ酸、ホスホペプチド(ランダムまたは部分変性同義(degenerate)、指向性(directed)ホスホペプチドライブラリーが含まれるが、これらに限定されない;たとえばSongyang et al.,1993,Cell,72:767−778参照)、抗体(ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラまたは一本鎖抗体、ならびにFab、F(abN)2およびFab発現ライブラリーのフラグメント、ならびにそのエピトープ結合性フラグメントが含まれるが、これらに限定されない)、および小型の有機または無機分子。
【0123】
本発明によりスクリーニングできる他の化合物には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:血液−脳関門を通過して適切な細胞(たとえば小脳、視床下部など)に侵入し、NGPCR遺伝子もしくはNGPCR信号伝達経路に関与する他のいずれかの遺伝子の発現に影響を与える(たとえば遺伝子発現に関与する調節領域または転写因子との相互作用により)ことができる小型の有機分子;またはNGPCRの活性に影響を与える(たとえばCDの酵素活性を阻害または増強することにより)か、もしくはNGPCR信号伝達経路に関与する他のいずれかの細胞内因子の活性に影響を与える化合物。
【0124】
コンピューターによるモデリングおよび探索法により、NGPCRの発現または活性を調節しうる化合物の同定、または既に同定されている化合物の改良を行うことができる。そのような化合物または組成物が同定されると、活性部位または領域が同定される。そのような活性部位は一般にリガンド結合部位である可能性がある。活性部位は当技術分野で既知の方法により、たとえばペプチドのアミノ酸配列から、核酸のヌクレオチド配列から、または関連化合物もしくは組成物とそのリガンドとの複合体の研究から同定できる。後者の場合、化学的方法またはX線結晶学的方法を用いてその因子上の複合体形成リガンドがある位置を見いだすことにより、活性部位を見いだすことができる。
【0125】
次いで活性部位の三次元幾何学的構造を決定する。これは完全分子構造を決定できる既知の方法で行うことができ、これにはX線結晶学的方法が含まれる。他方、固相または液相NMRを用いて、特定の分子内距離を決定できる。構造決定のための他の任意の実験法を用いて、部分的または完全な幾何学的構造を求めることができる。幾何学的構造は複合体形成した天然または合成リガンドを用いて判定することもでき、これは判定した活性部位構造の精度を高める。
【0126】
判定した構造の精度が不完全または不十分である場合、その構造を完成させ、またはその精度を高めるために、コンピューターベースの数値モデリング法を採用できる。認識されている任意のモデリング法を採用でき、これには特定の生体ポリマー(タンパク質または核酸など)に特異的なパラメター化モデル、分子運動のコンピューター処理に基づく分子動態モデル、サーマルアンサンブルに基づく統計学的機構モデル、または混合モデルが含まれる。大部分のタイプのモデルについて構成原子間および基間の力を表す標準分子力場が必要であり、これは物理化学において既知の力場から選択できる。実験で得た不完全なまたは精度の低い構造は、そのようなモデリング法によるコンピューター処理で得た、より完全かつ正確な構造に対する拘束となる可能性がある。
【0127】
活性部位の構造を実験、モデリングまたはそれらの組合わせにより決定した後、化合物を含むデータベースをそれらの分子構造についての情報と合わせて検索することにより、候補となる調節化合物を同定できる。このような検索により、決定した活性部位構造と調和し、かつ活性部位を規定する基と相互作用する構造をもつ化合物を求める。このような検索は手動で行うこともできるが、好ましくはコンピューター支援による。そのような検索で見いだした化合物は潜在NMR調節化合物である。
【0128】
あるいはこれらの方法を用いて、既知の調節化合物またはリガンドから改良された調節化合物を同定できる。新規組成に適用した前記の実験的方法およびコンピューターモデリング法を用いて既知化合物の組成を修飾し、修飾の構造効果を判定できる。次いで変更した構造を化合物の活性部位構造と比較して、調和または相互作用が改良されたかどうかを判定する。この方法でたとえば側鎖基の変更による系統的な組成変化を迅速に評価して、改良された特異性または活性をもつ修飾された調節化合物を得ることができる。
【0129】
さらに、NGPCRならびに関連のトランスダクション因子および転写因子の活性部位の同定に基づく、調節化合物の同定に有用な他の実験的方法およびコンピューターモデリング法は、当業者に自明であろう。
【0130】
分子モデリングシステムの例は、CHARMMおよびQUANTAプログラム(Polygen Corporation、マサチュセッツ州ウォルサム)である。CHARMMはエネルギー最小化および分子動態の機能をもち、一方、QUANTAは分子構造の構築、グラフモデリングおよび分析を行う。QUANTAは、分子相互の行動の相互構築、修飾、視覚化および分析を行うことができる。
【0131】
多数の報文に特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピューターモデリングについて概説されている:たとえばRotivinen,et al.,1988,Acta Pharmaceutical Fennica,97:159−166;Ripka,New Scientist,54−57(1988年6月16日);McKinaly and Rossmann,1989,Annu.Rev.Pharmacol.Toxiciol.,29:111−122;Perry and Davies,OSAR:Quantitative Structure−Activity Ralationships in Drug Design,pp.189−193(Alan R.Liss社,1989);Lewis and Dean,1999,Proc.R.Soc.Lond.,236:125−140および141−162;ならびに核酸成分に対するモデル受容体に関してはAskew,et al.,1989,J.Am.Chem.Soc.,111:1082−1090。化学物質をスクリーニングしてグラフ表示する他のコンピュータープログラムを、BioDesign社(カリフォルニア州パサデナ)、Allelix社(カナダ国オンタリオ州ミシソーガ)およびHypercube社(オンタリオ州ケンブリッジ)などの会社から入手できる。これらは主に特定のタンパク質に特異的な薬物に適用するために設計されているが、領域が同定されればNGPCRあるいはNGPCRのDNAまたはRNAの領域に特異的な薬物の設計にも適用できる。
【0132】
結合を変化させる化合物の設計および生成に関して前記に述べたが、既知化合物のライブラリーをスクリーニングすることもできる。これには、天然または合成の化学物質、およびタンパク質などの生物活性物質をスクリーニングして、阻害薬または活性化薬を求めることが含まれる。
【0133】
NGPCRに結合する化合物を同定し、生細胞内でそのような結合に伴って変化する活性を評価するために、細胞ベースの系も使用できる。そのようなアッセイに特に有用な道具の1つは緑色蛍光タンパク質であり、これはたとえば特にUSP5,625,048に記載されており、これを本明細書に援用する。そのような細胞アッセイに使用できる細胞には白血球、または白血球由来の細胞系、リンパ球、幹細胞(胚性幹細胞を含む)などが含まれるが、これらに限定されない。さらに、目的の機能性NGPCRを発現して被験リガンドまたは天然リガンドによる活性化に応答するように(化学的変化もしくは表現型の変化により測定)または他の宿主細胞遺伝子の誘導に応答するように遺伝子工学的に処理した発現宿主細胞(たとえばB95細胞、COS細胞、CHO細胞、OMK細胞、線維芽細胞、Sf9細胞)を、アッセイの最終点として使用できる。
【0134】
5.5.1 NGPCRに結合する化合物のインビトロスクリーニングアッセイ
NGPCR(NGPCRのECDまたはCDを含むが、これらに限定されない)と相互作用する(たとえば結合する)ことができる化合物を同定するためにインビトロ系を設計できる。同定した化合物は、たとえば野生型および/または変異NGPCR遺伝子生成物の調節に有用であり;あるいはNGPCRの生物学的機能を誘導するのに有用であり;正常なNGPCR相互作用を撹乱する化合物の同定に利用でき;あるいはそれ自体がそのような相互作用を撹乱する。
【0135】
NGPCRに結合する化合物の同定に用いるアッセイ法の原理は、NGPCRと被験化合物の反応混合物を調製し、これら2成分が相互作用するのに十分な条件下でそれに十分な時間、結合させるものであり、こうして形成された複合体を分離し、および/または反応混合物中で検出できる。用いるNGPCR種は、スクリーニングアッセイの目標に応じて異なる。たとえば天然リガンドのアゴニストを目的とする場合、全長NGPCR、または可溶性トランケートNGPCR、たとえばTMおよび/またはCDを分子から欠失させたもの、ECDに対応するペプチド、または1以上のNGPCR ECDが、アッセイ系に利点をもたらすタンパク質もしくはポリペプチド(たとえば標識、生成複合体の単離など)に融合したものを含む融合タンパク質を使用できる。細胞質ドメインと相互作用する化合物を目的とする場合、NGPCR CDに対応するペプチド、またはNGPCR CDを含む融合タンパク質を使用できる。
【0136】
スクリーニングアッセイは多様な方法で実施できる。たとえばそのようなアッセイを実施するための1方法は、NGPCRタンパク質、ポリペプチド、ペプチドもしくは融合タンパク質、または被験物質を固相に固定し、反応終了時に固相に固定されているNGPCR/被験化合物複合体を検出する。そのような方法の1態様においては、NGPCR反応体を固相表面に固定し、固定しない被験化合物を直接または間接的に標識する。分子を固定化するのに利用可能な技術のいくつかの例は、Cass ed.“Immobilized Biomolecules In Analysis: A Practical Approach” Oxford University Press,NY中で議論されている。
【0137】
実施に際しては、固相としてマイクロタイタープレートを用いるのが好都合である。固定される成分を共有結合または非共有結合のいずれにより固定化してもよい。非共有結合は、固相表面をタンパク質でコーティングし、乾燥させるだけで達成できる。あるいはタンパク質を固体表面に固定するために、固定化すべきタンパク質に特異的な固定化抗体、好ましくはモノクローナル抗体を使用できる。この表面は予め調製して保存しておくことができる。
【0138】
アッセイを実施するためには、固定した成分を含有するコーティング面に、固定化されていない成分を添加する。反応終了後、形成された複合体が固体表面に固定化された状態を維持する条件下で、未反応成分を除去(たとえば洗浄による)する。固体表面に固定された複合体の検出は多数の方法で実施できる。先に固定化しない成分を予め標識した場合、表面に固定化された標識が検出されると複合体が形成されたことを示す。先に固定化しない成分を予め標識していなければ、表面に固定された複合体を検出するために間接標識を使用できる。たとえば先に固定化されない成分に特異的な標識抗体を使用する(この抗体を標識抗−Ig抗体で直接または間接的に標識できる)。
【0139】
あるいは反応を液相で実施し、反応生成物を未反応成分から分離し、複合体を検出することができる。検出には、たとえばNGPCRタンパク質、ペプチドもしくは融合タンパク質または被験化合物に特異的な、溶液中に形成された複合体を結合させるための固定化抗体、および固定化された複合体を検出するための、可能性のある複合体の他方の成分に特異的な抗体を用いる。
【0140】
あるいは細胞ベースのアッセイを用いて、NGPCRと相互作用する化合物を同定することができる。このためには、NGPCRを発現する細胞系、またはNGPCRを発現するように遺伝子工学的に処理された(たとえばNGPCR DNAの形質転換またはトランスダクションによる)細胞系(たとえばCOS細胞、CHO細胞、線維芽細胞など)を使用できる。被験化合物と、たとえば宿主細胞が発現したNGPCRのECDとの相互作用を、天然リガンドとの比較または競合により測定できる。
【0141】
5.5.2 NGPCRと相互作用する細胞内タンパク質のアッセイ
NGPCRと相互作用する膜貫通タンパク質または細胞内タンパク質の同定のためには、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するのに適した任意の方法を使用できる。使用できる従来法には、細胞溶解物または細胞溶解物およびNGPCRから得たタンパク質を免疫共沈法、架橋法、および勾配またはクロマトグラフィーカラムにより同時精製して、NGPCRと相互作用する、細胞溶解物中のタンパク質を同定する方法がある。これらのアッセイに用いるNGPCR成分は、全長NGPCR、膜固定領域を欠如する可溶性誘導体(たとえばトランケートNGPCR:TMを欠失した結果、ECDがCDに融合したものを含むトランケート分子が生成)、NGPCRのCDに対応するペプチドまたはCDを含有する融合タンパク質であってよい。細胞内タンパク質が単離されると、これを同定し、次いでそれが相互作用するタンパク質を同定するための標準法と組見合わせて使用できる。たとえば、NGPCRと相互作用する細胞内タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部を、当業者に周知の方法、たとえばエドマン分解法により確認できる(たとえばCreighton,1983,”Proteins:Structure and Molecular Principles”,pp.34−49参照,W.H.Freeman & Co.,ニューヨーク)。得られたアミノ酸配列は、そのような細胞内タンパク質をコードするヌクレオチド配列のスクリーニングに使用できるオリゴヌクレオチド混合物を作製するための指針として採用できる。スクリーニングは、たとえば標準ハイブリダイゼーション法またはPCR法により実施できる。オリゴヌクレオチド混合物の作製法およびスクリーニング法は周知である(たとえばAusubel,前掲;およびInnis,et al.編,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,1990,Academic Press社,ニューヨーク,参照)。
【0142】
さらに、NGPCRと相互作用する膜貫通タンパク質または細胞内タンパク質をコードする遺伝子を同時同定する方法を採用できる。これらの方法には、たとえばλgt11ライブラリーの抗体検査のための周知の方法と同様にして、標識NGPCRタンパク質、あるいはNGPCRポリペプチド、ペプチド、または融合タンパク質、たとえばマーカー(たとえば酵素、蛍光タンパク質、発光タンパク質、または色素)もしくはIg−Fcドメインに融合したNGPCRポリペプチドもしくはNGPCRドメインを用いて、発現ライブラリーを検査する方法が含まれる。
【0143】
インビボでタンパク質相互作用を検出する1方法である2ハイブリッドシステム(two−hybrid system)について詳述するが、これは説明のためのものにすぎず、限定ではない。このシステムの1形式は、酵母細胞を利用し(Chien,et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9578−9582)、他のものは哺乳動物細胞を使用する(Luo et al.,1997、Biotechniques、22:350−352)。酵母細胞と哺乳動物細胞の2ハイブリッドシステムはClontech(カリフォルニア州パロ・アルト)から市販されており、さらにUSP5,283,173;5,468,614および5,667,973に記載されており、それらの全体を本明細書に援用する。
【0144】
要約すると、そのようなシステムを用いてハイブリッドタンパク質をコードする2種類のプラスミドを構築する:一方のプラスミドは、転写活性化タンパク質のDNA結合性ドメインをコードするヌクレオチドが、NGPCRタンパク、ポリペプチド、ペプチドもしくは融合タンパク質をコードするNGPCRヌクレオチド配列に融合したものからなり;他方のプラスミドは、NGPCRとの相互作用を試験される未知タンパク質をコードするcDNAに融合した転写活性化タンパク質の活性化ドメインをコードするヌクレオチドが、このプラスミドにcDNAライブラリーの一部として再結合したものからなる。このDNA結合性ドメイン融合プラスミドおよびcDNAライブラリーを、その調節領域に転写活性化タンパク質の結合部位を含むレポーター遺伝子(たとえばHBS、lacZ、CATまたは必須アミノ酸をコードする遺伝子)を含む酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)あるいは哺乳動物細胞(たとえばSaos−2、CHO、CV1、JurkatまたはHeLa)株に形質転換する。いずれか一方のハイブリッドタンパク質だけでレポーター遺伝子の転写を活性化することはできない:DNA結合性ドメインハイブリッドが活性化できない理由は、それが活性化機能をもたないためであり、活性化ドメインハイブリッドが活性化できない理由は、それが活性化タンパク質結合部位に局在できないためである。これら2つのハイブリッドタンパク質の相互作用により機能性活性化タンパク質が再構成され、レポーター遺伝子が発現する。これをレポーター遺伝子生成物のアッセイにより検出する。
【0145】
この2ハイブリッドシステムまたは関連方法を用いて活性化ドメインライブラリーをスクリーニングし、”おとり(bait)”遺伝子生成物と相互作用するタンパク質を求めることができる。限定ではないが、たとえばNGPCRをおとり遺伝子生成物として使用できる。活性化ドメインをコードするDNAに、全ゲノまたはcDNA配列を融合させる。このライブラリー、およびDNA結合性ドメインに融合したおとりNGPCR遺伝子生成物のハイブリッドをコードするプラスミドを、レポーター株に同時形質転換し、得られた形質転換体をスクリーニングして、レポーター遺伝子を発現しているものを求める。限定ではないが、たとえばおとりNGPCR遺伝子配列、たとえばNGPCRのオープンリーディングフレーム(またはNGPCRの1ドメイン)をベクター中へ、GAL4タンパク質のDNA結合性ドメインをコードするDNAに翻訳時融合するようにクローニングすることができる。これらのコロニーを精製し、レポーター遺伝子発現に関与するライブラリープラスミドを単離する。次いでDNA配列決定法を用いて、ライブラリープラスミドがコードするタンパク質を同定できる。
【0146】
おとりNGPCR遺伝子生成物と相互作用するタンパク質をそれから検出する細胞系のcDNAライブラリーは、当技術分野でルーティンに実施されている方法で調製できる。ある特定のシステムによれば、たとえばcDNAフラグメントをベクター中へ、GAL4の転写活性化ドメインに翻訳時融合するように挿入することができる。このライブラリーを、おとりNGPCR遺伝子−GAL4融合プラスミドと共に酵母株中へ同時形質転換することができ、それはa)添加ヒスチジン無しには生育できず、b)GAL4活性化配列含有プロモーターにより誘発されるHIS3遺伝子を含む。cDNAによりコードされ、GAL4転写活性化ドメインに融合し、おとりMARK3遺伝子生成物と相互作用するタンパク質が活性GAL4タンパク質を再構成し、これによりHIS3遺伝子の発現を誘発する。HIS3を発現したコロニーは、ヒスチジンを欠如する半固体寒天培地を入れたペトリ皿上で増殖することにより検出できる。次いでこれらの株から当技術分野でルーティンに実施されている方法でcDNAを精製し、おとりNGPCR遺伝子と相互作用するタンパク質の製造および単離に使用できる。
【0147】
5.5.3 NGPCR/細胞内高分子またはNGPCR/膜貫通高分子の相互作用を妨害する化合物のアッセイ
この考察のために、NGPCRと相互作用する高分子を”結合パートナー”と呼ぶ。これらの結合パートナーは、NGPCR信号伝達経路に関与すると思われる。したがってNGPCRとそのような結合パートナーの相互作用を妨害または撹乱する化合物を同定することが望ましい。これらの化合物は、NGPCR活性を調節してNGPCR活性に関連する障害を抑制するのに有用であろう。例えば、それらの発現パターンを考慮すると、記載したNGPCRは、高あるいは低血圧(および関連した症状)、腎臓疾患、体重コントロール障害、代謝異常、および癌の治療的処置に有効な化合物を同定する方法に特に有効であると考えられる。
【0148】
NGPCRとその結合パートナーまたはパートナー類との相互作用を妨害する化合物の同定に用いるアッセイ系の基本原理は、セクション5.5.1およびセクション5.5.2に記載のようにNGPCRタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質、および結合パートナーを含有する反応混合物を調製し、両者が相互作用して結合するのに十分な条件下でそれに十分な時間反応させて、複合体を形成させるものである。化合物の阻害活性を試験するために、被験化合物が存在する反応混合物と存在しないものを調製する。被験化合物は最初から反応混合物に含有させてもよく、NGPCR部分およびその結合パートナーの添加後に添加してもよい。対照反応混合物は、被験化合物なしで、またはプラシーボと共にインキュベートされる。次いでNGPCR部分と結合パートナーの複合体の形成を検出する。対照反応において複合体が形成され、被験化合物を含有する反応混合物においては形成されない場合、その化合物はNGPCRと相互作用性結合パートナーの相互作用を妨害することを示す。さらに、被験化合物および正常NGPCRタンパク質を含有する反応混合物における複合体形成を、被験化合物および変異NGPCRを含有する反応混合物における複合体形成と比較することもできる。この比較は、変異NGPCRまたは変異させたNGPCRとの相互作用を特異的に撹乱しかつ正常NGPCRとの相互作用を撹乱しない化合物を同定したい場合に重要である。
【0149】
前記NGPCRと結合パートナーの相互作用を妨害する化合物のアッセイは、不均質方式または均質方式で実施できる。不均質アッセイは、NGPCR部分または結合パートナーを固体に固定し、反応終了時に固相に固定された複合体を検出することを伴う。均質アッセイにおいては、反応全体を液相で実施する。いずれの方法でも、被験化合物について異なる情報を得るために反応体の添加順序を変更できる。たとえば、競合により相互作用を妨害する被験化合物は、被験化合物の存在下で反応を実施することにより同定できる:すなわちNGPCR部分および相互作用性結合パートナーの前またはそれらと同時に、被験物質を反応混合物に添加する。あるいは既に形成された複合体を撹乱する被験化合物、たとえばより高い結合定数をもち複合体から成分の1つを排除する化合物は、複合体が形成された後の反応混合物に被験化合物を添加することにより試験できる。各種の方式について以下に簡単に記載する。
【0150】
不均質アッセイ系においては、NGPCR部分または相互作用性結合パートナーのいずれかを固体表面に固定し、固定しない種を直接または間接的に標識する。実施に際しては、マイクロタイタープレートを用いるのが好都合である。固定する種を共有結合または非共有結合のいずれによって固定化してもよい。非共有結合は、固相表面をNGPCR遺伝子生成物または結合パートナーでコーティングし、乾燥させるだけで達成できる。あるいはその種を固体表面に固定するために、固定化すべき種に特異的な固定化抗体を使用できる。この表面は予め調製して保存しておくことができる。
【0151】
アッセイを実施するためには、コーティング面に、被験化合物の存在下または不存在下で、固定化された種のパートナーを接触させる。反応終了後、未反応成分を除去(たとえば洗浄による)すると、形成された複合体が固体表面に固定化されたまま残る。固体表面に固定された複合体の検出は多数の方法で実施できる。固定化されない種を予め標識した場合、表面に固定化された標識が検出されると複合体が形成されたことを示す。固定化されない成分を予め標識していなければ、表面に固定された複合体を検出するために間接標識を使用できる。たとえば最初に固定化されない種に特異的な標識抗体を使用する(この抗体を標識抗−Ig抗体で直接または間接的に標識できる)。反応成分の添加順序に応じて、複合体形成を阻害する被験化合物または既に形成された複合体を撹乱する被験化合物を検出できる。
【0152】
あるいは反応を液相で、被験化合物の存在下または不存在下に実施し、反応生成物を未反応成分から分離し、複合体を検出することができる。検出には、たとえば結合成分の一方に特異的な、溶液中に形成された複合体を固定するための固定化抗体、および固定化された複合体を検出するための、可能性のある複合体の他方のパートナーに特異的な標識抗体を用いる。この場合も、液相への反応成分の添加順序に応じて、複合体形成を阻害する化合物または既に形成された複合体を撹乱する化合物を検出できる。
【0153】
本発明の他の態様においては、均質アッセイを用いる。この方法では、NGPCR部分と相互作用性結合パートナーの予め形成した複合体を調製する。その際、NGPCRまたはその結合パートナーのいずれか一方を標識するが、標識が発する信号は複合体形成により消失する(たとえばUSP4,109,496参照;この方法を免疫アッセイに用いている)。既に形成された複合体から一方の種を排除する競合性の被験物質を添加すると、バックグラウンドより高い信号が発生する。こうして、NGPCR/相互作用性結合パートナーの相互作用を撹乱する物質を同定できる。
【0154】
具体的態様においては、NGPCR融合タンパクを固定化のために調製できる。たとえばNGPCRまたはペプチドフラグメント(たとえばCDに対応するフラグメント)をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子に、pGEX−5X−1などの融合ベクターにより、得られる融合タンパク質においてその結合活性が維持されるように融合させる。相互作用性結合パートナーを精製し、前記セクション5.3に記載したルーティンに実施される方法でモノクローナル抗体を産生させる。この抗体を、たとえば当技術分野でルーティンに実施されている方法により放射性同位体125Iで標識する。不均質アッセイにおいては、たとえばGST−NGPCR融合タンパク質をグルタチオン−アガロースビーズに固定する。次いで、相互作用性結合パートナーを被験化合物の存在下または不存在下に、相互作用および結合が起きる条件下で添加する。反応期間の終了時に結合していない物質を洗い去り、標識モノクローナル抗体をこの系に添加し、複合体形成した成分に結合させる。グルタチオン−アガロースビーズに結合したままの放射能の量を測定することにより、NGPCR遺伝子生成物と相互作用性結合パートナーの相互作用を検出できる。被験化合物により相互作用が効果的に阻害されると、測定放射能が低下するであろう。
【0155】
あるいは、GST−NGPCRタンパク質と相互作用性結合パートナーを液体中、固体グルタチオン−アガロースビーズの不存在下で混合することができる。被験化合物は、これらの種を相互作用させる途中または相互作用の後のいずれに添加してもよい。次いでこの混合物をグルタチオン−アガロースビーズに添加し、結合していない物質を洗い去る。この場合も、標識抗体を添加し、ビーズに結合した放射能を測定することにより、NGPCR/結合パートナー相互作用の阻害度を検出できる。
【0156】
本発明の他の態様においては、NGPCRの結合性ドメインおよび/または相互作用もしくは結合パートナーに対応するペプチドフラグメントを、一方または両方の全長タンパク質の代わりに用いて、これらと同じ方法を採用できる(結合パートナーがタンパク質である場合)。当技術分野でルーティンに実施されている多数の方法のいずれかを用いて、結合性部位を同定および単離できる。これらの方法には、一方のタンパク質をコードする遺伝子の変異誘発、および同時免疫沈降アッセイにおける結合撹乱のスクリーニングが含まれるが、これらに限定されない。次いで、複合体中の第2種をコードする配列における代償変異を選択する。各タンパク質をコードする遺伝子の配列分析により、相互作用性結合に関与するタンパク質領域に対応する変異が明かになる。あるいは一方のタンパク質を前記方法で固体表面に固定し、それの標識された結合パートナーと相互作用させて結合させる。この結合パートナーは、タンパク質分解酵素、たとえばトリプシンで予め処理されている。洗浄後、結合ドメインを含む比較的短い標識ペプチドが固体材料と結合したまま残り、これを単離してアミノ酸配列決定法により同定できる。同様に、細胞内結合パートナーをコードする遺伝子が得られれば、そのタンパク質のペプチドフラグメントを発現するように短い遺伝子セグメントを遺伝子工学的に処理し、次いでこれらの結合活性を試験し、精製または合成することができる。
【0157】
限定ではないが、たとえば前記に従ってGST−NGPCR融合タンパク質を形成し、これをグルタチオン−アガロースビーズに結合させることにより、NGPCR遺伝子生成物を固体材料に固定することができる。相互作用性結合パートナーを放射能同位体、たとえば35Sで標識し、タンパク質分解酵素、たとえばトリプシンで開裂させる。次いで開裂生成物を固定GST−NGPCR融合タンパク質に添加し、結合させる。結合していないペプチドを洗い去った後、標識されている結合物質(細胞内結合パートナー結合ドメインである)を周知の方法で溶離、精製し、アミノ酸配列を分析する。こうして同定したペプチドを合成により製造し、または組換えDNA法を用いて適切な促進性タンパク質に融合させることができる。
【0158】
5.6医薬組成物
本明細書に記載したアッセイ法などにより同定された化合物は、たとえばNGPCR遺伝子生成物の生物学的機能を高めるのに有用である。そのような化合物を、多様な生理的障害または精神障害の処置のために療法有効量で患者に投与できる。療法有効量とは、発症の遅延、生物学的症状または顕性症状の軽減、阻止、抑制または変化を生じるのに十分な化合物量を表す。
【0159】
5.6.1 有効量
そのような化合物の毒性および療法有効性は、細胞培養または実験動物において医薬標準法、たとえばLD50(集団の50%に対して致死的な量)およびED50(集団の50%において療法上有効な量)により判定できる。毒性と療法有効性の用量比が治療指数であり、比率LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す化合物の方が好ましい。有害な副作用を示す化合物もある態様では使用できるが、罹患していない細胞に与える損傷の可能性を最小限に抑えることにより副作用を少なくするために、それらの化合物が罹患組織をターゲティングする送達システムを設計するように配慮すべきである。
【0160】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータを、ヒトに使用するための用量範囲の設定に利用できる。それらの化合物の用量は、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度範囲内にあることが好ましい。用量は、この範囲内で、用いる剤形および採用する投与経路に応じて変更できる。本発明方法に用いるいずれの化合物についても、まず細胞培養アッセイにより療法有効量を推定できる。動物モデルにおいて、細胞培養において測定したIC50(すなわち最大の症状阻害の半分を達成する被験化合物濃度)含む循環血漿濃度を達成するように設定する。そのような情報を利用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定できる。血漿濃度は、たとえば高速液体クロマトグラフィーにより測定できる。
【0161】
疾病の治療を熟考する場合、試験動物に対するキログラム重量あたりでの活性製剤の最大許容量(すなわちMTD)を決定する動物試験により、適切な用量を決定することもできる。一般に、試験される少なくとも1つの動物類は哺乳動物である。当業者は通常、ヒトを含む他の種に対する有用な用量および毒性回避のための用量を推定する。効能に関するヒトでの試験の前において、正常被検体でのフェーズI臨床試験は、安全な用量決定の助けとなる。
【0162】
さらに、活性薬剤は、例えば、該活性薬剤の安定性を高めるか、あるいはその薬剤的特性(例えば、生体内での半減期を長くする、毒性を低下させるなど)を高める、様々なすでに確立している化合物あるいは構造物と複合させることができる。
【0163】
治療剤は、当業者に既知の方法のいずれかにより投与されるが、それには制限的でない例として、吸入、皮下投与(sub−q)、静脈投与(I.V.)、腹腔投与(I.P.)、筋肉投与(I.M.)、鞘内投与、または局所投与(経皮、軟膏(ointment)、クリーム、軟膏(salve)、点眼薬など)を含む。
【0164】
5.6.2 医薬組成物および使用
本発明に従って使用する医薬組成物は、常法により1以上の医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を用いて配合できる。たとえば本発明化合物およびそれらの生理学的に許容できる塩類および溶媒和物を、吸入もしくは吹入れ(口または鼻から)、または経口、口腔、非経口、頭蓋内、局所、くも膜下または直腸投与により投与できる。
【0165】
経口投与のためには、医薬組成物は常法により、たとえば下記の医薬的に許容できる賦形剤を用いて、たとえば錠剤またはカプセル剤の形をとることができる:結合剤(たとえばプレゲル化したトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(たとえば乳糖、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(たとえばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(たとえばバレイショデンプンまたはグリコール酸デンプンナトリウム);または湿潤剤(たとえばラウリル硫酸ナトリウム)。錠剤を当技術分野で周知の方法によりコーティングできる。経口投与用の液体製剤はたとえば液剤、シロップ剤または懸濁液剤の形をとるか、あるいは使用前に水または他の適切なビヒクルで調製するための乾燥製剤として供給することができる。そのような液体製剤は常法により、たとえば下記の医薬的に許容できる添加剤を用いて調製できる:沈殿防止剤(たとえばソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂肪);乳化剤(たとえばレシチンまたはアラビアゴム);非水性ビヒクル(たとえばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画した植物油);および保存剤(たとえばp−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル、またはソルビン酸)。製剤は緩衝塩類、着香剤、着色剤および甘味剤を適宜含有してもよい。
【0166】
経口投与用製剤は、有効化合物の制御放出に適するように配合することもできる。
【0167】
口腔投与のためには、組成物は常法により配合した錠剤またはカプセル剤の形をとることができる。
【0168】
吸入による投与のためには、本発明により使用する化合物をエアゾルスプレー製剤の形で加圧パックまたは噴霧器から、適切な噴射剤、たとえばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスを用いて送達するのが好都合である。加圧エアゾル剤の場合、計量された量を送達する弁を設けることにより投与単位を決定できる。化合物および適切な粉末基剤(たとえば乳糖またはデンプン)の粉末ミックスを収容した、吸入器または吹入れ器に使用するための、たとえばゼラチン製のカプセルまたはカートリッジを調製できる。
【0169】
本発明化合物を注射、たとえばボーラス注射、または連続注入による非経口投与用に配合できる。注射用配合物は単位投与剤形で、たとえばアンプルまたは多数回分の容器に入れ、保存剤を添加して供給することができる。組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液剤、液剤または乳剤の形をとることができ、配合用剤、たとえば沈殿防止剤、安定剤および/または分散剤を含有してもよい。あるいは有効成分は適切なビヒクル、たとえば発熱物質を含有しない無菌水で使用前に調製するための粉末状であってもよい。
【0170】
本発明化合物を直腸用組成物、たとえば坐剤または貯留浣腸剤、たとえば一般的な坐剤基坐剤(たとえばカカオ脂または他のグリセリド)を含有するものとしても配合できる。
【0171】
上記配合物のほか、本発明化合物はデポー製剤としても配合できる。そのような長時間作用型配合物は埋込み(たとえば皮下または筋肉内)または筋肉注射により投与できる。たとえば本発明化合物を適切なポリマーまたは疎水性材料と共に(たとえば許容できる油中の乳剤として)、もしくはイオン交換樹脂と共に、または貧溶性誘導体、たとえば貧溶性塩として配合することができる。
【0172】
本発明組成物は、有効成分を含有する1以上の単位剤形を入れたパックまたはディスペンサー器具として提供することもできる。パックはたとえば金属箔またはプラスチック箔を含むブリスターパックなどを含む。パックまたはディスペンサー器具には投与指示書を添付することができる。
【0173】
本発明の範囲は本明細書に記載した具体的態様により限定されない。これらの態様は本発明の個々の態様を説明するために示したにすぎず、機能的に均等な方法および成分は本発明の範囲に含まれる。実際に、本明細書に例示および記載したもののほか本発明の種々の変更が、以上の記載から当業者に明らかになるであろう。そのような変更も本発明の範囲に含まれる。本明細書に引用したすべての参考文献、特許および特許出願の全体を参考として援用する。
本出願は、米国仮出願60/244,285(2000年10月30日出願)の優先権を主張し、その全体を本明細書に参照として援用する。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、膜結合タンパク質および受容体をコードする新規なヒトポリヌクレオチドの知見、同定および解明に関する。本発明は、本明細書に記載するポリヌクレオチド、宿主細胞発現系、コードされるタンパク質、融合タンパク質、ポリペプチドおよびペプチド、コードされるタンパク質またはペプチドに対する抗体、ならびに遺伝子工学的に処理された、開示遺伝子を欠如または過剰発現する動物、もしくはそれらのタンパク質のアンタゴニストおよびアゴニスト、ならびに開示遺伝子によりコードされるタンパク質の発現または活性を調節する他の化合物であって、診断、薬物スクリーニング、臨床試験モニタリング、生理的または行動障害の処置、および/または化粧品用途あるいは自然食品用途に使用できる化合物を包含する。
【0003】
2.発明の背景
膜受容体タンパク質は、細胞がそれらの周囲を感知し、細胞がその恒常性および機能を維持する細胞機序のための統合された成分としての役割を有する。したがって膜受容体タンパク質は、細胞の生理、化学的コミュニケーションおよび遺伝子発現を制御するトランスダクション経路(transduction pathway)に関与することがしばしばある。特に関連のある一群の膜受容体は、一般に非保存親水性ループにより連結した保存7回膜貫通ドメインの存在を特色とするものである。このような”7TM受容体”には、Gタンパク質と共役する受容体(GPCR)として知られる受容体のスーパーファミリーが含まれる。GPCRは一般にGタンパク質またはPPGタンパクを伴うトランスダクション経路に関与する。したがってGPCRファミリーには療法薬の薬剤ターゲットとして既知である多数の受容体が含まれる。
【0004】
3.発明の概要
本発明は、新規GPCRおよび対応する新規GPCR(NGPCR)アミノ酸配列の知見、同定および解明に関する。本明細書に初めて記載するGPCRは、細胞膜にまたがる膜貫通タンパク質であり、リガンド結合後の信号伝達に関与する。本明細書に記載するNGPCRは、7TM受容体ファミリーにみられる構造モチーフをもつ。記載するNGPCRの発現は、さまざまなヒト細胞において検出される。記載する新規ヒトGPCR配列は、1,210、733、1,138および662のアミノ酸長のタンパク質をコードする(それぞれ、配列番号2、4、6および8参照)。記載するNGPCRは、7TMタンパクに特徴的な(約20−30アミノ酸の)複数の膜貫通領域、並びにいくつかの推定細胞質ドメインを有している。
【0005】
更に考慮されるのは、慣用的な方法により作られるノックアウトES細胞である(参照、例えばここに参照として援用する1998年2月20日に出願されたPCT出願番号PCT/US98/03243)。記載する配列のマウス相同体において、ノックアウトES細胞系が調製される。従って、本発明の更なる側面は、記載したNGPCRをコードする配列中に遺伝子操作による変異を有するノックアウト細胞および動物を含む。
【0006】
本発明は下記のものを包含する:配列表に示したヌクレオチド、配列表に示した一つまたはそれ以上のヌクレオチドを挿入するように操作された発現ベクター、それらのヌクレオチドを発現する宿主、およびそれらのヌクレオチドの発現生成物、ならびに:(a)本明細書に記載するGPCRの哺乳動物相同体(具体的に記載したヒトNGPCR、およびヒトNGPCR遺伝子生成物が含まれる)をコードするヌクレオチド;(b)NGPCRの機能性ドメインに相当する1以上の部分をコードするヌクレオチド、およびそれらのヌクレオチド配列により特定されるポリペプチド生成物[新規領域である細胞外ドメイン(1以上)(ECD)、本明細書に初めて記載した1以上の膜貫通ドメイン(1以上)(TM)、および細胞質ドメイン(1以上)(CD)が含まれるが、これらに限定されない];(c)前記NGPCRの少なくとも1つのドメインの全部または一部が欠失または変化した遺伝子工学的に形成した変異体または天然変異体をコードする単離ヌクレオチド、およびそれらのヌクレオチド配列により特定されるポリペプチド生成物(TMの全部または一部が欠失した可溶性受容体(記載した7TMの場合、すべての下流のTMが欠失するようなものでは、最初のTMより上流の領域のみ含むようにタンパク質を操作することにより可溶性産物を得ることができる)、および一つまたはそれ以上のCDの全部または一部が欠失した非機能性受容体が含まれるが、これらに限定されない);(d)他のペプチドまたはポリペプチドに融合した融合タンパク質またはそのドメインの1つ(たとえば細胞外ドメイン)をコードする、NGPCR由来のコード領域のすべてもしくは一部を含むヌクレオチド;(e)配列表に新規に開示した一つまたはそれ以上の配列を含む、前記ポリヌクレオチドの治療または診断用派生物、たとえばオリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、二重鎖RNA、または遺伝子治療用構築体。
【0007】
本発明は下記のものをも包含する:前記NGPCRのアゴニストおよびアンタゴニスト(天然NGPCRと競合する、小型分子、大型分子、変異NGPCRタンパク、またはその一部が含まれる)、抗体、ならびに前記NGPCRの発現を阻害するために、または前記NGPCR遺伝子の発現を高めるために(たとえば、前記配列を強力なプロモーター系の制御下におく発現構築体)使用できるヌクレオチド配列(たとえばアンチセンス分子およびリボザイム分子、ならびに遺伝子または調節配列の置換構築体)、ならびにNGPCRトランスジーンを発現するトランスジェニック動物、または機能性NGPCRを発現しない”ノックアウト体”。ノックアウトマウスはいくつかの方法で調製することができ、その内のひとつには、記載したNGPCRの少なくとも一つのマウス相同体中に遺伝子トラップ変異を含むマウス胚幹細胞(「ES細胞」)株の使用が含まれる。配列番号1〜9に記載のユニークなNGPCR配列が“ノックアウト”であるときは、それらはその特別な遺伝子の形質発現を同定する方法並びにそれまで未知の遺伝子の機能を調べる方法を提供する。更に、配列番号1〜9記載のユニークなNGPCR配列が“ノックアウト”されている動物は、免疫系により“自己”とみなされ、そしてそれゆえ顕著な抗体反応を誘発しなかった相同およびオルソロガスなタンパク質に対する抗体を誘発するユニークな提供源となる。最後には、前記NGPCRのマウス相同体において、遺伝子トラップノックアウトES細胞が生じる。
【0008】
さらに配列番号1〜9に記載のユニークなNGPCR配列は、タンパクコード配列の同定およびユニークな遺伝子を一つまたはそれ以上の特定の染色体へマッピングするのに有用である(前記NGPCRをコードする遺伝子は明らかにX連鎖上にある。GENBANKアクセッション番号AL161778参照)。そのような配列は、ゲノム配列のみからバイオインフォマチックスに基づいて推定されるものとは対照的に、実際的、生物学的に関連したエキソンスプライシングジャンクション(exon splice junctions)を同定する。本発明の配列は、制限酵素断片長多型(RFLP)解析の追加的DNAマーカーとして、および法生物学において有用である。
【0009】
さらに本発明は、NGPCR遺伝子の発現および/またはNGPCR遺伝子産物活性を調節する化合物、すなわちそのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する化合物の同定のための、前記NGPCRヌクレオチド配列および/またはNGPCR遺伝子産物の使用方法に関する。そのような化合物は、生物学的障害または平衡異常の多様な症状の処置のための療法薬として使用できる。
【0010】
4.配列表および図面の説明
配列表に、記載したNGPCR ORFの配列、およびそれによりコードされるアミノ酸配列を示す。配列番号9は、NGPCR ORFとフランキング領域を示す。
【0011】
5.発明の詳細な記述
本明細書に初めて記載するヒトNGPCRは、ヒト精巣、小腸、および子宮細胞において発現する新規な受容体タンパクである。記載するNGPCR配列は、ヒト精巣、小腸、および子宮由来のmRNAから調製されたcDNAに関連したヒトゲノム配列を用いて得られた(edge Biosystems、Gaitheraburg、MD、およびClontech、Palo Alto、CA)。NGPCRは7TMファミリーの受容体の膜貫通タンパク質である。他のGPCRと同様に、リガンドが受容体に結合したときに信号伝達が開始される。天然リガンドの結合を妨害し、またはリガンドを中和もしくは除去し、またはNGPCRへのリガンドの結合を妨害すると、NGPCR仲介による信号伝達が影響を受ける。7TM、特にGPCRタンパクは生物学的に重要であるので、集中的な科学的および商業的探索の対象となってきた(たとえばUSP5,942,416および5,891,720参照;両方をNGPCRを伴う適用、使用、および分析のために全体として本明細書に援用する)。7TMタンパクに加えて、前記NGPCRは、とりわけ精巣上体6(HE6)、セクレチン、およびラトロトキシン受容体ファミリーのGPCRと顕著な相同性を共有する。
【0012】
本発明は、疾病の診断および処置において、記載するNGPCRヌクレオチド、NGPCRタンパク、およびペプチド、並びにNGPCRに対する抗体、好ましくは人化モノクローナル抗体、または結合断片、ドメインもしくはそれらの融合タンパク(たとえばNGPCRのアゴニストまたはアンタゴニストとしても作用することができる)、受容体活性もしくは発現を阻害するアンタゴニスト、またはNGPCR受容体活性を高めもしくはNGPCR発現を増大させるアゴニストとしての使用を包含する。
【0013】
特に、以下の各サブセクションに記載する本発明は、下記のものを包含する:NGPCRの機能性ドメイン(たとえばECD、TMまたはCD)に対応するNGPCRポリペプチドまたはペプチド;変異、トランケートまたは欠失NGPCR(たとえば1以上の機能性ドメインまたはその一部を失ったNGPCR、たとえば△ECD、△TMおよび/または△CD)、NGPCR融合タンパク質(たとえば、NGPCRまたはNGPCR機能性ドメインが、関連のないタンパク質またはペプチド、たとえば免疫グロブリン定常部、すなわちIgFcに融合したもの)、それらの生成物をコードするヌクレオチド配列、ならびにそれらのNGPCR生成物を産生できる宿主細胞発現系。
【0014】
本発明は下記のものをも包含する:抗体および抗イディオタイプ抗体(Fabフラグメントを含む)、NGPCRのアンタゴニストおよびアゴニスト、並びにNGPCR配列の発現を阻害する化合物もしくはヌクレオチド構築体(転写因子阻害薬、アンチセンス分子およびリボザイム分子、または遺伝子もしくは調節配列置換構築体)、またはNGPCRの発現を促進する化合物もしくはヌクレオチド構築体(たとえばNGPCRコード配列が機能可能な状態でプロモーター、プロモーター/エンハンサーなどの発現制御要素と結合した発現構築体)。本発明は、ヒトNGPCR(またはその変異体)を発現するか、あるいは動物の内因性NGPCR遺伝子の発現を阻害または”ノックアウト”するように遺伝子工学的に処理した宿主細胞および動物にも関する。
【0015】
NGPCRタンパク質またはペプチド、NGPCR融合タンパク質、NGPCRヌクレオチド配列、抗体、アンタゴニストおよびアゴニストは、疾病の診断のために変異NGPCRまたは不適正発現したNGPCRを検出するのに有用となりうる。NGPCRタンパク質またはペプチド、NGPCR融合タンパク質、NGPCRヌクレオチド配列、宿主細胞発現系、抗体、アンタゴニスト、アゴニスト、ならびに遺伝子工学的に処理した細胞および動物は、体内における正常なNGPCR機能の撹乱の症候性発現または表現型発現を処置するのに有効な候補を同定する薬物スクリーニング(またはコンビナトリアルライブラリーのハイスループットスクリーニング)にも使用できる。遺伝子工学的に処理した宿主細胞および/または動物の使用は、それらの系によりNGPCRのECDに結合する化合物を同定できるだけでなく、活性NGPCRによる信号伝達に影響を与える化合物をも同定できるという点で、有利である。
【0016】
最後に、NGPCR生成物(特に可溶性誘導体、たとえばNGPCR ECDに対応するペプチドまたは1以上のTMドメインを欠如するトランケート型ポリペプチド)、ならびに融合タンパク質生成物(特にNGPCR−Ig融合タンパク質、すなわちIgFcへのNGPCRまたはNGPCRドメイン、たとえばECD、△TMの融合体)、抗体および抗イディオタイプ抗体(Fabフラグメントが含まれる)、アンタゴニストまたはアゴニスト(信号伝達を調節する化合物が含まれめる;これらはNGPCR仲介による信号伝達経路における下流ターゲットに作用する可能性がある)を用いて、そのような疾病を処置することができる。たとえば、有効量の可溶性NGPCR ECD、△TM、またはNGPCR ECDを模倣したECD−IgFc融合タンパク質もしくは抗イディオタイプ抗体(またはそのFab)の投与により、内因性NGPCRリガンドが”掃討”または中和され、結合および受容体活性化が阻止され、または低下するであろう。そのようなNGPCR生成物をコードするヌクレオチド構築体を用いて、そのような生成物をインビボで発現するように宿主細胞を遺伝子工学的に処理することができる;遺伝子工学的に処理したこれらの細胞は体内で”バイオリアクター”として作用し、NGPCR、NGPCRペプチド、可溶性ECDもしくは△TMまたはNGPCR融合タンパク質を身体に連続的に供給し、これらがNGPCRリガンドを”掃討”または中和する。機能性NGPCR、変異NGPCR、ならびにアンチセンス分子およびリボザイム分子をコードするヌクレオチド構築体は、NGPCR発現を調節する”遺伝子療法”方式にも使用できる。したがって本発明は、生物学的障害を処置するための医薬配合物および方法をも包含する。
【0017】
本発明の多様な態様について、以下の各サブセクションにさらに詳細に記載する。
【0018】
5.1 NGPCRポリヌクレオチド
前記ヒトNGPCRのcDNA配列および推定アミノ酸配列を配列表に示す。前記NGPCRは、上述のように様々なヒト組織において発現され、明らかにヒトX染色体上にコードされている。
【0019】
NGPCRの配列解析過程で、いくつかの多型が同定され、それにはたとえば配列番号1のヌクレオチド位として3601位でのT/C多型(それは配列番号2の相当するアミノ酸1201位で、同じアミノ酸トレオニンとなる)、および配列番号3のヌクレオチド位として2173位でのT/C多型(それは配列番号4の相当するアミノ酸725位で、同じアミノ酸トレオニンとなる)が含まれる。
【0020】
本発明のNGPCRには下記のものが含まれる:配列表に示したヒトDNA配列(およびそれを含むベクター);さらに、配列表に示したDNA配列の相補配列に高ストリンジェントな条件下で[たとえば0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中、65℃でフィルター結合DNAにハイブリダイゼーション、そして0.1×SSC/0.1% SDS中、68℃で洗浄(Ausubel,F.M. et al.編,1989,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.I,Green Publishing Associates社,およびJohn Wily & Sons社,ニューヨーク,p.2.10.3)]ハイブリダイズする連続した機能性NGPCRオープンリーディングフレーム(ORF)をもち、機能的に均等な遺伝子生成物をコードする、いかなるヌクレオチド配列も考慮される。さらに、配列表に示したアミノ酸をコードおよび発現するDNA配列の相補配列に中等度ストリンジェントな条件下で[たとえば0.2×SSC/0.1% SDS中、42℃で洗浄(Ausubel,et al.,1989,前掲]ハイブリダイズし、なおかつ機能的に均等なNGPCR遺伝子生成物をコードする、いかなるヌクレオチド配列も考慮される。NGPCRの機能均等物には、他の種に存在する天然NGPCR、および天然の、または(部位特異的変異、遺伝子シャフリング、定方向進化(directed evolution)(たとえばUSP5,837,458および5,723,323(両特許をここに参照として援用する)に記載されている)によって)遺伝子工学的に作成した変異NGPCRが含まれる。本発明には、開示したNGPCRポリヌクレオチド配列の縮重核酸変異体も含まれる。
【0021】
更に考慮されるのは、NGPCR ORFsをコードするポリヌクレオチド、もしくは配列表のポリヌクレオチド配列の相当領域と約99%、95%、90%もしくは約85%の相同性もしくは同一な(例えば、本明細書に記載したGCG配列解析パッケージをデフォルトパラメーターを使用して、BLAST配列比較解析により測定する)ポリヌクレオチドによってコードされるそれらの機能均等物である。
【0022】
本発明には、前記NGPCRヌクレオチド配列にハイブリダイズする、したがってその相補配列にハイブリダイズする核酸分子、好ましくはDNA分子も含まれる。そのようなハイブリダイゼーション条件は、本明細書記載のように高ストリンジェントであってもよく、またはストリンジェント度がより低くてもよい。核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(”DNAオリゴ体”)である場合、それらの分子は本発明の配列表に初めて開示したヌクレオチド配列の連続領域を含む、約16〜約100塩基、約20〜約80塩基、または約34〜約45塩基の長さのもの、またはそこに示すサイズの任意の変更または組合わせであり、それらをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と組み合わせて用いて、ライブラリーのスクリーニング、クローンの単離、ならびにクローニング鋳型および配列決定用鋳型の調製などを行うことができる。
【0023】
あるいは、そのようなNGPCRオリゴヌクレオチドは、ライブラリーのスクリーニングのため、または遺伝子発現パターン評価のためのハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる(特に、マイクロアレイあるいは高処理能力“チップ”フォーマットを使用して)。さらに、一連の記載したNGPCRオリゴヌクレオチド配列あるいはその相補体は、記載したNGPCR配列のすべてあるいは一部を代表するものとして使用することができる。配列番号1−9の配列の1つまたはそれ以上の少なくとも一部に開示されている新規オリゴヌクレオチドあるいはポリヌクレオチド配列を、固相支持体マトリックス/基板(樹脂、ビーズ、膜、プラスチック、ポリマー、金属あるいは金属化した基板、結晶性あるいは多結晶性の基板など)に結合させてハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。特に注目すべきは、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、あるいは相当するオリゴペプチドおよびポリペプチドの、空間的にアクセス可能な(addressable)アレイ(即ち、遺伝子チップ、マイクロタイタープレートなど)である。ここで該空間的にアクセス可能なアレイに存在するバイオポリマーの少なくとも一つは、配列番号1−9の配列の少なくとも一つに開示されている新規オリゴヌクレオチドあるいはポリヌクレオチド配列、あるいはそれらによってコードされるアミノ酸配列からなる。バイオポリマーを固体支持マトリックスに接着する方法、あるいは固体支持マトリックス上でバイオポリマーを合成する方法、およびそれらにより結合試験を実施する方法は、特に米国特許第5,700,637、5,556,752、5,744,305、4,631,211、5,445,934、5,252,743、4,713,326、5,424,186、および4,689,405に記載されており、それらの全体をここに参照として援用する。
【0024】
配列番号1−9に開示されている新規配列を含むアクセス可能なアレイは、遺伝子の時および組織特異的発現を同定および特徴づけするのに使用することができる。それらの空間的にアクセス可能な(addressable)アレイは、要求される特異性を満たすために十分な長さのオリゴヌクレオチド配列を含むが、依然その生産技術による制限がある。それらのプローブの長さは、約8から約2000ヌクレオチドの間の範囲である。好ましくは、該プローブは、配列番号1−9に開示されている新規配列中の60ヌクレオチドからなり、より好ましくは25ヌクレオチドからなる。
【0025】
例えば、一連の記載した配列あるいはそれらの相補配列を、記載したNGPCRの全てあるいは一部を表す(represent)ためにチップ形式で使用することができる。オリゴヌクレオチド、典型的には約16から約40ヌクレオチド長の間のオリゴヌクレオチド(あるいはこの範囲内のいずれかの整数長)は、互いに部分的に重なり合うことができ、および/またはNGPCR配列は、重なり合わないオリゴヌクレオチドを使用して表すことができる。従って、記載したポリヌクレオチド配列は、典型的には配列表に記載したそれぞれの新規配列中の少なくとも約18ヌクレオチド長の少なくとも約2もしくは3つの別個のオリゴヌクレオチド配列を含む。そのようなオリゴヌクレオチド配列は配列表の配列内に存在するいずれのヌクレオチドから開始することができ、そして記載した配列に向かった方向であるセンス方向(5’から3’方向)あるいはアンチセンス方向(3’から5’方向)のいずれにも進めることができる。
【0026】
マイクロアレイ解析により、幅広い遺伝子活性のパターンが明らかとなり、遺伝子機能の新たな知見を提供し、また転写過程および生物メカニズムに関する新しくかつ予期しない見識に導くことが可能になる。配列番号1−9に開示されている新規配列を含むアクセス可能なアレイの使用は、ある特定の経路に関与する転写の変化に関する詳細な情報を提供し、新しい表現型であると証明する新しい成分または遺伝子機能の同定に導き得る。
【0027】
配列番号1−9に開示されている新規配列からなるプローブも、薬剤開発の新しい分子ターゲットの同定、選別、および確認に使用することができる。それらのユニークな配列の使用は、薬剤ターゲットの直接的な確認、および薬剤の意図したターゲットとは異なる経路により調節される遺伝子発現の薬剤依存的変化の認識を可能にする。それゆえ、それらのユニークな配列は、薬剤作用および毒性の両方を明らかにする、およびモニターするのに有用である。
【0028】
有用性の例として、配列番号1−9に開示されている新規配列は、ある特定の病的状態の患者から得た遺伝子材料の蓄積物を検査するために、マイクロアレイまたは他のアッセイフォーマットに使用することができる。それらの調査は、配列番号1−9に開示されている新規配列を使用してインシリコにて、以前に収集された遺伝子データベースと開示した配列を当業者に知られたコンピューターソフトウェアを使用して行うことができる。
【0029】
このように、配列番号1−9に開示されている新規配列は、特定の疾患に関係した変異を同定するために使用することができ、および診断または予後の分析に使用することができる。
【0030】
記載した配列はヌクレオチド配列を使用して特定的に記載されているが、配列のそれぞれは広範囲な付加的な構造属性のいずれかを使用して特徴的に記載することができることは理解できるであろう。例えば、ある既定の配列は、配列番号1−9にはじめて開示された一つもしくはそれ以上の特定のオリゴヌクレオチド配列の存在の連結として、該配列の既定の領域内に存在するヌクレオチドの正味の組成物として記載することができる。あるいは、制限エンドヌクレアーゼ切断部位の相対的位置を特定する制限地図、または様々なパリンドロームあるいは他の特定のオリゴヌクレオチド配列は、ある特定の配列を構造的に記載するのに使用することができる。そのような制限地図は、典型的に広く利用されているコンピュータープログラム(例えば、The University of Wisconsin GCG sequence analysis package, SEQUENCHER 3.0, Gene Codes Corp., Ann Arbor, MI, 等)により作ることができ、選択的に配列中に存在する一つあるいはそれ以上の別個のヌクレオチド配列の連結として使用することができ、開示配列中に存在する一つあるいはそれ以上の付加的な配列、あるいは一つもしくはそれ以上の切断部位との相対的な配列位置によって記載することができる。
【0031】
オリゴヌクレオチドプローブに関して、高ストリンジェントな条件とは、たとえば6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中、37℃(14塩基オリゴ体について)、48℃(17塩基オリゴ体について)、55℃(20塩基オリゴ体について)、および60℃(23塩基オリゴ体について)での洗浄を表す。
【0032】
記載するオリゴヌクレオチドは、たとえばNGPCR遺伝子調節(および/またはNGPCR遺伝子核酸配列の増幅反応におけるアンチセンスプライマーとして)に有用なNGPCRアンチセンス分子をコードし、またはそれらの分子として作用することができる。NGPCR遺伝子調節に関しては、それらの方法を用いて生物学的機能を調節することができる。さらに、そのような配列を、同様にNGPCR遺伝子調節に有用なリボザイムおよび/または三重らせん配列の一部として使用できる。
【0033】
さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、下記を含めた群(これらに限定されない)から選択される少なくとも1個の修飾塩基部分を含むことができる:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリン。
【0034】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アラビノース、2−フルオロアラビノース、キシルロースおよびヘキソースを含めた(これらに限定されない)群から選択される少なくとも1個の修飾糖部分を含むこともできる。
【0035】
さらに他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステルおよびホルムアセタール、またはその類似体よりなる群から選択される少なくとも1個の修飾リン酸主鎖を含む。
【0036】
さらに他の態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドはα−アノマーオリゴヌクレオチドである。α−アノマーオリゴヌクレオチドは、通常のβ−単位と異なり、鎖が互いに平行に走行する特異的な二本鎖ハイブリッドを相補的RNAと形成する(Gautier et al.,1987,Nucl.Acids Res.,15:6625−6641)。このオリゴヌクレオチドは2’−O−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al.,1987,Nucl.Acids Res.,15:6131−6148)、またはキメラRNA−DNA類似体(Inoue et al.,1987,FEBS Lett.215:327−330)である。あるいは、2本鎖RNAは、標的NGPCRの発現を抑制し、および機能を失わせるのに使用することができる。
【0037】
本発明のオリゴヌクレオチドは、当技術分野で既知の標準法により、たとえば自動DNA合成装置(たとえばBiosearch,Applied Biosystemsなどから市販されているもの)を用いて合成できる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは合成でき(Steinら、1988,Nucl.Acids Res.,16:3209)、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは制御ポアガラスポリマー支持体を用いて製造できる(Sarin et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85:7448−7451)など。
【0038】
低ストリンジェントな条件は当業者に周知であり、ライブラリーおよび標識配列が由来する個々の生物に応じて異なるが、推定可能であろう。そのような条件に関する手引きについては、たとえば下記を参照されたい:Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク(およびその定期的改訂版);およびAusubel et al.,1989,上述(およびその定期的改訂版)。
【0039】
あるいは、適切なストリンジェント条件を採用し、またはPCRにより、適切に標識したNGPCRヌクレオチドプローブを用いてヒトゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。ヒトゲノムクローンの同定および解明は、多型性(制限的ではないが、ヌクレオチドリピート、マイクロサテライト対立遺伝子、シングルヌクレオチド多型、あるいはコードシングルヌクレオチド多型を含む)の確認、特定の遺伝子座/対立遺伝子のゲノム構造の決定、および診断試験の設計に有用である。たとえばヒト遺伝子のイントロン/エキソン境界に隣接する領域に由来する配列を用いて、エキソン、イントロン、スプライス部位(たとえばスプライスアクセプターおよび/またはドナー部位)内などの変異を検出するための増幅アッセイに用いるプライマーを設計し、これらを診断および薬理遺伝学に使用できる。
【0040】
たとえば、本発明の配列は、制限酵素断片長多型(restriction fragment length polymorphisms(RFLP))解析において特定のものを同定するために使用することができる。この技術では、個々のゲノムDNAが一つもしくはそれ以上の制限酵素で切断され、そしてサザンプロットで精査され、同定のためのユニークなバンドが得られる(米国特許番号5,272,057に一般的に記載されており、ここに参照として援用する)。さらに、本発明の配列は、ポリヌクレオチド試薬、たとえばヒトゲノムの特定位置にターゲットされたPCRプライマーで、たとえば他の“同定マーカー”(すなわち、特定の個人に対してユニークな他のDNA配列)を提供することによってDNAに基づいた法的同定の信頼性を高めることができるPCRプライマー、を提供するために使用することができる。実際の塩基配列情報は、制限酵素によって生じた断片により形成された正確なパターンとして、同定のために使用することができる。
【0041】
さらに、本明細書に記載するNGPCR生成物内のアミノ酸配列に基づいて設計した2つの縮重オリゴヌクレオチドプライマープールを用いてPCRを行うことにより、目的生物の核酸からNGPCR遺伝子相同配列を単離できる。反応の鋳型は、NGPCR遺伝子対立遺伝子を発現することが分かっているかまたは推測される、たとえばヒトまたは非ヒト細胞系または組織から調製したmRNAの逆転写により得られる全RNA、mRNAおよび/またはcDNAであってよい。
【0042】
増幅配列が目的NGPCR遺伝子の配列であることを確認するために、PCR生成物をサブクローニングして配列決定することができる。次いでそのPCRフラグメントを用いて多様な方法で全長cDNAクローンを単離できる。たとえば増幅フラグメントを標識し、cDNAライブラリー、たとえばバクテリオファージcDNAライブラリーのスクリーニングに使用できる。あるいは、標識フラグメントを用いて、ゲノムライブラリーのスクリーニングによりゲノムクローンを単離することができる。
【0043】
PCR法を利用して、全長NGPCRcDNA配列を単離することもできる。たとえば標準法により、適切な細胞源または組織源(すなわち、NGPCR遺伝子を発現することが分かっているかまたは推測されるもの)からRNAを単離できる。最も5’末端の増幅フラグメントに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを第1鎖合成のプライミングに用いて、RNAについて逆転写(RT)反応を行うことができる。次いで得られたRNA/DNAハイブリッドを標準的なターミナルトランスフェラーゼ反応により”テイル形成”し、このハイブリッドをRNase Hで消化し、次いで相補プライマーにより第2鎖合成をプライミングすることができる。こうして、増幅フラグメントの上流のcDNA配列を容易に単離できる。使用できるクローニング方式の概説については、Sambrook et al.,1989(前掲)を参照されたい。
【0044】
変異NGPCR遺伝子のcDNAは、たとえばPCRを用いて単離できる。この場合、第1cDNA鎖は、変異NGPCR対立遺伝子を保有すると推定される個体において変異NGPCR対立遺伝子を発現することが分かっているかまたは推測される組織から単離したmRNAに、オリゴ−dTオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせ、この新たな鎖を逆転写酵素で延長することにより合成できる。次いで正常遺伝子の5’末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いて、第2鎖を合成する。次いでこれら2プライマーを用いて、生成物をPCRにより増幅させ、所望により適切なベクター中へクローニングし、当業者に周知の方法でDNA配列分析を行う。変異NGPCR対立遺伝子のDNA配列を正常なNGPCR対立遺伝子のものと比較することにより、変異NGPCR遺伝子生成物の機能の喪失または変化に関与する変異(1以上)を確認できる。
【0045】
あるいは、変異NGPCR対立遺伝子を保有することが推測されるかもしくは分かっている個体から得たDNAを用いてゲノムライブラリーを構築することができ、または変異NGPCR対立遺伝子を発現することが分かっているかもしくは推測される組織からのRNAを用いてcDNAライブラリーを構築することができる。次いで、正常なNGPCR遺伝子、またはそのいずれか適切なフラグメントを標識してプローブとして用い、そのようなライブラリー中の対応する変異NGPCR対立遺伝子を同定することができる。次いで、当業者に周知の方法で変異NGPCR遺伝子配列を含むクローンを精製し、配列分析することができる。
【0046】
さらに、たとえば変異NGPCR対立遺伝子を保有することが推測されるかまたは分かっている個体の、そのような変異対立遺伝子を発現することが分かっているかまたは推測される組織より単離したRNAから合成したcDNAを利用して、発現ライブラリーを構築できる。この方法で、後記セクション5.3に記載するように、推定変異組織が形成した遺伝子生成物を発現させ、正常NGPCR生成物に対して産生された抗体と組み合わせた標準抗体スクリーニング法を用いてスクリーニングすることができる(スクリーニング法については、たとえばHarlow and Lane編,1988,”Antibodies:A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Press,コールド・スプリング・ハーバー参照、本明細書にその全体を援用する)。
【0047】
さらに、標識NGPCR融合タンパク質、たとえばアルカリ性ホスファターゼ−NGPCRまたはNGPCR−アルカリ性ホスファターゼ融合タンパク質を用いてスクリーニングを行うことができる。NGPCR変異により機能の変化した遺伝子生成物が発現する場合(たとえばミスセンス変異またはフレームシフト変異の結果)、NGPCRに対するポリクローナル抗体セットがこの変異NGPCR遺伝子生成物と交差反応する可能性がある。それらとそのような標識抗体との反応により検出されるライブラリークローンを当業者に周知の方法で精製し、配列分析することができる。
【0048】
本発明は、変異NGPCR、NGPCRのペプチドフラグメント、トランケートしたNGPCR、およびNGPCR融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をも包含する。これらには、後に記載する変異NGPCRをコードするヌクレオチド配列;NGPCRの1以上のECD、TMおよび/またはCDドメイン、あるいはこれらのドメインの一部に対応するポリペプチドまたはペプチド;1または2つのドメインが欠失したトランケートNGPCR、たとえばTM領域またはTMとCDの両領域を欠如する可溶性NGPCR、あるいはCD領域の全部または一部を欠如するトランケートした非機能性NGPCRが含まれるが、これらに限定されない。融合タンパク質をコードするヌクレオチドには、全長NGPCR配列、トランケートしたNGPCR、またはNGPCRのペプチドフラグメントが下記のような関連のないタンパク質もしくはペプチドに融合したものをコードするヌクレオチドを含めることができるが、これらに限定されない:NGPCR ECDを細胞に結合させる膜貫通配列;得られる融合タンパク質(たとえばNGPCR−Ig)の血流中での安定性および半減期を高めるIgFcドメイン;またはマーカーとして使用できる酵素、蛍光タンパク質もしくは発光タンパク質。
【0049】
本発明は下記のものをも包含する:(a)前記NGPCRコード配列および/またはその相補配列(すなわちアンチセンス)のいずれかを含むDNAベクター;(b)コード配列の発現を指令する少なくとも第一調節要素に機能可能な状態で結合した前記NGPCRコード配列のいずれかを含むDNA発現ベクター(たとえば、USP5,869,336に記載されたバキュロウイルスベクター、該特許を参照としてここに援用する);(c)宿主細胞におけるコード配列の発現を指令する少なくとも第一調節要素に機能可能な状態で結合した前記NGPCRコード配列のいずれかを含む、遺伝子工学的に処理した宿主細胞;ならびに(d)外因導入調節要素のコントロール下(すなわち遺伝子活性化)での内因性NGPCR配列を発現する遺伝子操作宿主細胞。本明細書中で用いる調節要素には、誘導性および非誘導性のプロモーター、エンハンサー、オペレーター、ならびに発現を誘発および調節することが当業者に知られている他の要素が含まれるが、これらに限定されない。それらの調節要素には、下記のものが含まれるが、これらに限定されない:サイトメガロウイルスhCMV極初期遺伝子、SV40あるいはアデノウイルスの調節可能なウイルス初期または後期プロモーター(特にレトロウイルスLTRプロモーター)、lac系、trp系、tet系、TAC系、TRC系、ファージラムダの主オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、ならびに酵母α−接合因子のプロモーター。
【0050】
前記NGPCRヌクレオチド配列の更なる利用は、例えばポリヌクレオチドシャッフリングあるいは関連した方法論を使用した、前記新規配列により少なくとも部分的にコードされるタンパク質の分子変異/進化におけるそれらの使用である。それらの試みは、米国特許5,830,721、5,723,323および5,837,458に記載されており、それらの全体をここに参照として援用する。
【0051】
記載した配列の更に考慮される使用には、米国特許出願番号60/110,906、60/106,300、60/094,879、および60/121,851に記載されている方法および応用を使用した、細胞アッセイおよび遺伝子操作動物における使用のための、構成的に“ON”である変異体の作成が含まれる。それらの特許出願の全体を参照として本明細書に援用する。
【0052】
NGPCR遺伝子生成物をトランスジェニック動物において発現させることもできる。蟯虫、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ブタ、ミニブタ、鳥類、ヤギおよび非ヒト霊長類、たとえばヒヒ、サルおよびチンパンジーなどを含めた(これらに限定されない)任意の種の動物を用いて、NGPCRトランスジェニック動物を作成することができる。
【0053】
NGPCRトランスジーンを動物に導入してトランスジェニック動物の創始系を作成するための、当技術分野で既知の任意の方法を使用できる。そのような方法には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:前核マイクロインジェクション(HoppeおよびWagner,1989,USP4,873,191);レトロウイルス仲介による生殖系細胞への遺伝子伝達(Van der Putten et al.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:6148−6152);胚性幹細胞における遺伝子ターゲティング(Thompson et al.,1989,Cell,56:313−321);胚のエレクトロポレーション(Lo,1983,Mol.Cell.Biol.,3:1803−1814);および精子仲介遺伝子伝達(Lavitrano et al.,1989,Cell,57:717−723)など。そのような方法の概説については、Gordon,1989,Transgenic Animals,Intl.Rev.Cytol.,115:171−229参照;この全体を参考として本明細書に援用する。
【0054】
本発明は、それらのすべての細胞にNGPCRトランスジーンを保有するトランスジェニック動物、およびそれらのすべての細胞ではなく一部の細胞にこのトランスジーンを保有する動物、すなわちモザイク動物または体細胞トランスジェニック動物を提供する。トランスジーンは単一トランスジーンとして、またはコンカテマー中に、たとえば頭−頭縦列または頭−尾縦列で組み込まれてもよい。トランスジーンは、たとえばLasko et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:6232−6236の教示に従って、特定の細胞タイプに選択的に導入され、活性化されてもよい。そのような細胞タイプ特異的活性化に必要な調節配列は、目的とするその細胞タイプに依存し、当業者に自明であろう。
【0055】
NGPCRトランスジーンを染色体の内因性NGPCR遺伝子部位に組み込みたい場合、遺伝子ターゲティングが好ましい。要約すると、そのような方法を用いたい場合、内因性NGPCR遺伝子のヌクレオチド配列に染色体配列との相同組換えにより組み込ませ、その機能を撹乱するために(すなわちノックアウト動物)、内因性NGPCR遺伝子に相同な若干のヌクレオチド配列を含むベクターを設計する。
【0056】
トランスジーンを特定の細胞タイプに選択的に導入し、これによりその細胞タイプにおいてのみ内因性NGPCR遺伝子を不活性化することもできる:たとえばGu et al.,1994,Science,265:103−106の教示による。そのような細胞タイプ特異的不活性化に必要な調節配列は、目的とするその細胞タイプに依存し、当業者に自明であろう。
【0057】
トランスジェニック動物が作成されると、標準法により組換えNGPCR遺伝子の発現を評価することができる。サザンブロット分析またはPCR法により初期スクリーニングを行って動物組織を分析し、トランスジーンの組込みが行われたかどうかをアッセイすることができる。トランスジェニック動物の組織におけるトランスジーンのmRNA発現レベルも、その動物から得た組織試料のノーザンブロット分析、in situハイブリダイゼーション分析、およびRT−PCRを含めた方法(これらに限定されない)を用いて評価することができる。NGPCR遺伝子発現組織の試料を、そのNGPCRトランスジーン生成物に特異的な抗体を用いて免疫細胞化学的に評価することもできる。
【0058】
5.2 NGPCRタンパク質及びポリペプチド
NGPCRタンパク、ポリペプチド、およびペプチドフラグメント、変異、トランケートもしくは欠失形のNGPCR、および/またはNGPCR融合タンパク質を、多様な用途のために調製することができる。これらの使用には、タンパク治療、抗体産生、診断アッセイにおける試薬として、NGPCRに関連した他の細胞遺伝子生成物の同定、精神的、生物学的または医学的な障害(すなわち、腎臓疾患、消化疾患、不妊、血圧異常、体重障害など)および疾病の療法処置に有用な医薬として使用できる化合物のスクリーニングのためのアッセイにおける試薬としての用途が含まれるが、これらに限定されない。前記NGPCRは、制限的ではないが、ラトロトキシン受容体およびラトロフィリンを含む化合物と構造上の類似性を有する。類似性に関する情報と発現データに基づき、前記NGPCRは、疾患の治療または治療剤の効果を治療的に増強するための(薬剤、オリゴ、抗体などによる)ターゲットとされる。
【0059】
配列表に、前記NGPCRヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を開示する。前記NGPCRは、翻訳開始部位に一致するDNA配列コンテクストにイニシエーターメチオニンをもち、これに膜結合あるいは分泌タンパクに典型的な疎水性のシグナル配列が続く。本明細書に示す配列データは、NGPCRの選択的スプライシングによるものが存在することを示している。
【0060】
本発明のNGPCRアミノ酸配列には、配列表に示したアミノ酸配列、ならびにその類似体および誘導体が含まれる。さらに、他の種に由来する対応するNGPCR相同配列も本発明に包含される。事実、前記NGPCRヌクレオチドがコードするいかなるNGPCRタンパク質も本発明の範囲に含まれ、配列表に示したアミノ酸配列の全部またはいずれかの新規部分をコードする新規ポリヌクレオチド配列も同様に本発明に含まれる。遺伝子コードの縮重性は周知であり、したがって配列表に示した各アミノ酸はそのアミノ酸をコードしうる周知の核酸”トリプレット”コドン(または多くの場合コドン類)の一般的代表例である。したがって、本明細書で意図するように、配列表に示したアミノ酸配列は、遺伝子コード(たとえば”Molecular Cell Biology”,1986,Darnellら編,p.109,表4−1参照,Scientific American Books,ニューヨーク州ニューヨーク;本明細書に参考として援用)を合わせて考慮すると、そのようなアミノ酸配列をコードしうる核酸配列の種々の変形および組合わせすべてのうちの一般的代表例である。
【0061】
本発明は、多数の基準のいずれかにより判定して、記載したヌクレオチド配列がコードするNGPCRに機能的に均等なタンパク質をも包含する。これらの基準には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:NGPCRのリガンドを結合する能力;適切な細胞タイプにNGPCR均等物が存在する場合に、均等もしくは相補的な信号伝達経路、細胞代謝の変化(たとえばイオンフラックス、チロシンリン酸化など)、または表現型における変化(たとえば生化学的、生物物理学的または顕示表現型の軽減、阻止または遅延)。そのような機能的に均等なNGPCRタンパク質には、記載したNGPCRヌクレオチド配列がコードするアミノ酸配列内のアミノ酸残基の付加体または置換体であって、ただしサイレント変化を生じ、したがって機能的に均等な遺伝子生成物を産生するものが含まれるが、これらに限定されない。アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水度、親水度および/または両親媒性の類似性に基づいて行うことができる。たとえば非極性(疎水性)アミノ酸残基にはアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれ;極性中性アミノ酸にはグリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが含まれ;正に荷電した(塩基性)アミノ酸にはアルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれ;負に荷電した(酸性)アミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。
【0062】
NGPCR DNAにランダム変異を行わせ(当業者に周知のランダム変異誘発法を用いて)、得られた変異NGPCRの活性を調べることができるが、NGPCRコード配列の部位特異的変異を工学的に形成して(当業者に周知の部位特異的変異誘発法を用いて)、機能の向上した(たとえばターゲットリガンドに対する結合アフィニティーがより高い、および/または信号伝達能がより高い)、または機能の低下した(ターゲットリガンドに対する結合アフィニティーがより弱い、および/または信号伝達能がより低い)、変異NGPCRを形成することができる。そのような分析の出発点のひとつは、例えば異種間で保存されているアミノ酸配列モチーフを同定するために、開示したヒト配列と他の哺乳動物由来の対応する遺伝子/タンパク質配列とをアラインさせることによる。種々の位置で非保存変化を工学的に行って、機能、信号伝達能、または両方を変更することができる。あるいは、機能の変更が望まれる場合、保存領域(すなわち同一アミノ酸)の欠失または非保存変更、たとえば種々の保存された膜貫通ドメインの欠失または非保存変更(置換または挿入)を工学的に行うことができる。
【0063】
選択した宿主細胞における発現、スケールアップなどに、より適したNGPCRを形成するために、NGPCRコード配列に他の変異を行うことができる。たとえばジスルフィド橋を排除するためにシステイン残基を欠失させるか、または他のアミノ酸と置換することができ、そしてたとえばN−結合部位を過剰グリコシル化することが知られている酵母宿主からより容易に採集および精製される均質な生成物を発現させるために、N−結合グリコシル化部位を変更または排除することができる。この目的で、ECD中にあるいずれか1以上のグリコシル化認識配列(N−X−SまたはN−X−T)の第1もしくは第3アミノ酸の一方または両方の位置における多様なアミノ酸置換、および/またはECD中のいずれか1以上のそのような認識配列の第2位置におけるアミノ酸欠失は、この修飾されたトリペプチド配列におけるNGPCRのグリコシル化を阻止するであろう(たとえばMiyajima et al.,1986,EMBO J.,5:1193−1197)。
【0064】
NGPCRの1以上のドメインに対応するペプチド(たとえばECD、TM、CDなど)、トランケートまたは欠失NGPCR(たとえばECD、TM、CDを欠失したNGPCR)、および融合タンパク質(全長NGPCR、NGPCRペプチドまたはトランケートNGPCRが、関連のないタンパク質に融合したもの)も本発明の範囲に含まれ、本明細書に開示するNGPCR遺伝子ヌクレオチドおよびNGPCRアミノ酸配列に基づいて設計することができる。そのような融合タンパク質には、NGPCRタンパク質もしくはペプチドを安定化してインビボでの半減期を延長するIgFc融合体;または融合タンパク質を細胞膜に固定してECDを細胞表面に提示するいずれかのアミノ酸配列に対する融合体;またはマーカー機能を与える酵素、蛍光タンパク質もしくは発光タンパク質への融合体が含まれるが、それらに限定されない。
【0065】
NGPCRポリペプチドおよびペプチドを化学的に合成できる(たとえばCreighton,1983,Proteins:Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman & Co.,ニューヨーク,参照)が、NGPCR由来の大型ポリペプチド、全長NGPCRは、NGPCR遺伝子配列および/またはコード配列を含む核酸の発現に関して当技術分野で周知の方法を用いる組換えDNA法で有利に製造することができる。そのような方法を用いて、一つあるいはそれ以上の記載したNGPCRヌクレオチド配列ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築できる。これらの方法には、たとえばインビトロ組換えDNA法、合成法およびインビボ遺伝子組換え法が含まれる。たとえばSambrook et al.,1989(前掲)およびAusubel et al.,1989(前掲)に記載の方法を参照。あるいは、NGPCRヌクレオチド配列がコードする転写体の全部または一部に対応するRNAを、たとえば合成装置で化学的に合成することができる。たとえば”Oligonucleotide Synthesis”,1984,Gait,M.J.編,IRL Press,オックスフォード,に記載の方法を参照;その全体を参考として本明細書に援用する。
【0066】
多様な宿主発現ベクター系を利用して、本発明のNGPCRヌクレオチド配列を発現させることができる。NGPCRペプチドまたはポリペプチドが可溶性誘導体(たとえばECDに対応するNGPCRペプチド;TMおよび/またはCDを欠失したトランケートまたは欠失NGPCR)であれば、ペプチドまたはポリペプチドを培養物から、すなわちNGPCRペプチドまたはポリペプチドが宿主細胞により分泌されない場合は宿主細胞から、NGPCRペプチドまたはポリペプチドが分泌される場合は培地から、採集することができる。しかしそのような発現系には、NGPCRまたはその機能均等物をin situで、すなわち細胞膜に固定した状態で発現する、工学的に処理した宿主細胞も包含される。そのような発現系からのNGPCRの精製または富化は、適切な界面活性剤および脂質ミセル、ならびに当業者に周知の方法を用いて行うことができる。しかし、NGPCRの構造特性および機能特性を維持するだけでなく、たとえば薬物スクリーニングアッセイにおいて生物学的活性を評価することが重要である場合、そのような工学的に処理した宿主細胞自体を使用できる。
【0067】
本発明の目的に使用できる発現系には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:NGPCRヌクレオチド配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAもしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した微生物、たとえば細菌(たとえば大腸菌(E.coli)、枯草菌(B.subtilis));NGPCRヌクレオチド配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母(たとえばサッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia));NGPCRヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクター(たとえばバキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;NGPCRヌクレオチド配列を含む組換えウイルス発現ベクター(たとえばカリフラワーモザイクウイルス,CaMV;タバコモザイクウイルス,TMV)を感染させた、もしくは組換えプラスミド発現ベクター(たとえばTiプラスミド)で形質転換した植物細胞系;またはNGPCRヌクレオチド配列および哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(たとえばメタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(たとえばアデノウイルス後期プロモーターあるいはワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築体を宿した哺乳動物細胞系(たとえばCOS、CHO、BHK、239、3T3)。
【0068】
細菌系では、発現するNGPCR生成物について意図する用途に応じて、多数の発現ベクターを有利に選択できる。たとえばNGPCRタンパク質の医薬組成物を調製において、あるいはNGPCRタンパク質に対する抗体を産生させるために、そのようなタンパク質を大量に製造したい場合、容易に精製される融合タンパク質生成物の高レベル発現を指令するベクターが望ましいことがある。そのようなベクターには下記のものが含まれるが、それらに限定されない:大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al.,1983,EMBO J.,2:1791)、この場合、NGPCRコード配列を個々に、融合タンパク質が産生されるようにlacZコード領域と読み枠を一致させて、ベクターにライゲートさせることができる;pINベクター(Inouye & Inouye,1985,Nucleic Acids Res.,13:3101−3109;Van Heeke & Schuster,1989,J.Biol.Chem.,264:5503−5509)など。pGEXベクターを用いて、NGPCRタンパク、ポリペプチドあるいはペプチドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させることもできる。一般にそのような融合タンパク質は可溶性であり、溶解細胞からグルタチオン−アガロースビーズへの吸着、次いで遊離グルタチオンの存在下での溶離によって、容易に精製できる。PGEXベクターがトロンビンまたはXa因子プロテアーゼ開裂部位を含むように設計し、これにより、NGPCRタンパク、ポリペプチドあるいはペプチドをGST部分から放出させることができる。
【0069】
典型的昆虫系では、Autographa californica核ポリヒドローシスウイルス(nuclear polyhedrosis virus)(AcNPV)をNGPCRヌクレオチド配列発現のためのベクターとして用いる。このウイルスをSpodoptera frugiperda細胞内で増殖させる。NGPCR遺伝子コード配列を個々にウイルスの非必須領域(たとえばポリヘドリン遺伝子)内へクローン化し、AcNPVプロモーター(たとえばポリヘドリンプロモーター)の制御下におく。NGPCR遺伝子コード配列の挿入に成功すると、ポリヘドリン遺伝子が不活性化され、ノンオクルーデッド(non−occluded)組換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子がコードするタンパク質性コートをもたないウイルス)が産生されるであろう。次いでこれらの組換えウイルスをSpodoptera frugiperda細胞の感染に用い、ここで挿入遺伝子を発現させる(たとえばSmith et al.,1983,J.Virol.46:584;Smith,USP4,215,051参照)。
【0070】
哺乳動物宿主細胞の場合、多数のウイルス性発現系を利用できる。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、目的とするNGPCR遺伝子ヌクレオチド配列をアデノウイルス転写/翻訳制御複合体、たとえば後期プロモーターおよび三部分(tripartite)リーダー配列にライゲートさせることができる。次いでこのキメラ配列をインビトロまたはインビボ組換えによりアデノウイルスゲノムに挿入する。ウイルスゲノムの非必須領域(たとえば領域E1またはE3)に挿入すると、感染宿主においてNGPCR遺伝子生成物を発現しうる生存可能な組換えウイルスが得られる(たとえばLogan & Shenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:3655−3659参照)。挿入したNGPCRヌクレオチド配列の効率的翻訳には、特異的開始シグナルが必要な可能性もある。これらのシグナルには、ATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。それ自身の開始コドンおよび隣接配列を含む全NGPCR遺伝子またはcDNAを適切な発現ベクターに挿入する場合、追加の翻訳制御シグナルは必要ないかもしれない。しかしNGPCRコード配列の一部のみを挿入する場合、外因性翻訳制御シグナル(おそらく、ATG開始コドンを含む)を供給することができる。さらに、挿入配列全体を確実に翻訳するためには、開始コドンが目的NGPCRコード配列の読み枠と一致しなければならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成のいずれでも、多様な由来のものであってよい。適切な転写エンハンサー要素、転写ターミネーターなどを取り込ませることにより、発現効率を高めることができる(Bitter et al.,1987,Methods in Enzymol.,153:516−544)。
【0071】
さらに、挿入配列の発現を調節し、または発現生成物を目的とする特定の様式で修飾およびプロセシングする、宿主細胞系統を選ぶことができる。タンパク質生成物のそのような修飾(たとえばグリコシル化)およびプロセシング(たとえば開裂)は、タンパク質の機能にとって重要である。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子あるいは発現生成物の翻訳後プロセシングおよび修飾に特徴的かつ特異的な機序をもつ。発現した外来タンパク質の適正な修飾およびプロセシングを確実にするために、適切な細胞系または宿主系を選ぶことができる。このために、一次転写体の適正なプロセシング、遺伝子生成物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構をもつ真核宿主細胞を使用できる。そのような哺乳動物宿主細胞にはCHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3およびWI38細胞系が含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
組換えタンパク質の長期高収率産生のためには、安定な発現が好ましい。たとえば前記NGPCR配列を安定に発現する細胞系を工学的に作成することができる。ウイルス複製起点を含む発現ベクターを用いるのではなく、適切な発現制御要素(たとえばプロモーター、エンハンサー配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)により制御されるDNA、および選択性マーカーで宿主細胞を形質転換することができる。外来DNAの導入後、工学的に処理した細胞を富化培地で1〜2日間増殖させ、次いで選択培地に切り替える。組換えプラスミド内の選択性マーカーが選択に対する耐性を与え、細胞はそのプラスミドを細胞の染色体に安定に組み込むことができ、増殖してフォーカスを形成する。次いでこれをクローン化し、細胞系に拡張することができる。この方法は、目的NGPCR生成物を発現する細胞系を工学的に作成するのに有利に使用できる。このような工学的に作成した細胞系は、NGPCR遺伝子生成物の内因活性に影響を与える化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用である。
【0073】
多数の選択系を使用でき、これには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler,et al.,1977,Cell,11:223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalski & Szybalski,1962,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,48:2026)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy,et al.,1980,Cell,22:817)遺伝子を、それぞれtk−、hgprt−またはaprt−細胞に使用できる。代謝拮抗物質耐性を下記の遺伝子の選択の基礎として用いることもできる:dhfr、これはメトトレキセートに対する耐性を与える(Wigler,et al.,1980,Natl.Acad.Sci.USA,77:3567;O’Hare,et al.,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:1527);gpt、これはミコフェノール酸に対する耐性を与える(Mulligan & Berg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,78:2072);neo、これはアミノグリコシドG−418に対する耐性を与える(Colberre−Garapin,et al.,1981,J.Mol.Biol.,150:1);およびhygro、これはハイグロマイシンに対する耐性を与える(Santerre,et al.,1984,Gene,30:147)。
【0074】
あるいは、発現する融合タンパク質に特異的な抗体を利用することにより、いかなる融合タンパク質も容易に精製できる。たとえばそのような1つの系は、ヒト細胞系において発現した非変性融合タンパク質を容易に精製できる(Janknecht,et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8972−8976)。この系では、目的遺伝子をそのオープンリーディングフレームが翻訳可能な状態で6ヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに融合するように、ワクシニア組換えプラスミド内へサブクローニングする。組換えワクシニアウイルスを感染させた細胞からの抽出物をNi2+・ニトリロ酢酸−アガロースカラムに装填し、ヒスチジンタグ付きタンパク質をイミダゾール含有緩衝液で選択的に溶離する。
【0075】
本発明には、NGPCRをターゲット臓器へ向かわせ、および/または膜を透過して細胞質ゾル内への輸送を促進する融合タンパク質が含まれる。抗体分子またはそのFabフラグメントへのNGPCRの結合は、特定のエピトープを保有する細胞をターゲティングするのに利用できる。適切なシグナル配列をNGPCRに結合させると、NGPCRを細胞内の目的位置へ輸送することもできる。あるいは、NGPCRまたはそれらの核酸配列のターゲティングは、リポソームまたは脂質複合体をベースとする送達系を用いて達成することもできる。そのような技術は、Liposomes:A Practical Approach,New RRC編、オックスフォード大学出版社、ニューヨーク、およびUSP4,594,595、5,459,127、5,948,767および6,110,490に記載されており、それらの各開示内容全体を本明細書に援用する。更に本発明には、新規なタンパク質構築体であって、NGPCRが細胞膜および/または核を透過し、その機能を発揮するターゲット部位あるいは目的臓器へのNGPCRの輸送を容易にするように作成したものも包含される。この目標は、NGPCRのターゲティング特異性を与えるサイトカインあるいは他のリガンドとのカップリングによって、および/または細胞膜透過容易にするためにタンパク形質導入ドメイン(そのような形質導入配列の例として米国特許出願60/111,701および60/056,713を参照。これらを参照として本明細書に援用する。)とNGPCRをカップリングすることにより達成され、および/または選択的に一つ又はそれ以上の核局在化シグナルを含むように作成することができる。
【0076】
5.3 NGPCRタンパク質に対する抗体
1以上のNGPCRのエピトープ、またはNGPCRの保存変異体のエピトープ、またはNGPCRのペプチドフラグメントを特異的に認識する抗体も、本発明に包含される。そのような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化またはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab発現ライブラリーにより産生されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗−Id)抗体、および前記のいずれかのエピトープ結合性フラグメントが含まれるが、それらに限定されない。
【0077】
本発明の抗体は、たとえば生物試料中のNGPCRの検出に使用でき、したがって患者を一つ又はそれ以上のNGPCRの異常な量について調べる診断法または予後判定法の一部として使用できる。そのような抗体を、たとえば化合物スクリーニング法(下記参照)と組み合わせて、NGPCR発現または遺伝子生成物の発現および/または活性に対する被験化合物の作用を評価するのにも利用できる。さらに、そのような抗体を遺伝子療法と組み合わせて用い、たとえば正常な、および/または工学的に処理したNGPCR発現細胞を患者に導入する前に評価することができる。そのような抗体をさらに、異常NGPCR活性の阻害のために使用できる。したがって、そのような抗体を様々な治療処方、たとえば腎臓疾患、消化疾患、不妊、血圧異常、および/または体重障害の治療処方の一部として利用できる。
【0078】
抗体産生のためには、NGPCR、一つ又はそれ以上のNGPCRペプチド(たとえばこの受容体の機能性ドメイン、ECD、TMまたはCDに対応するもの)、トランケートNGPCRポリペプチド(1以上のドメイン、たとえばTMまたはCDが欠失したNGPCR)、NGPCRの機能均等物、またはNGPCRの変異配列を注射することにより、種々の宿主動物を免疫化することができる。数例を挙げると、そのような宿主動物にはウサギ、マウスおよびラットが含まれるが、これらに限定されない。宿主の種に応じて、免疫応答を高めるために種々のアジュバントを使用でき、これにはフロイントアジュバント(完全および不完全)、鉱物塩、たとえば水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム、、キトサン、界面活性物質、たとえばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルション、ならびに潜在的に有用なヒトアジュバント、たとえばBCG(Bacille Calmette−Guerin)およびCorynebacterium parvumが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、キーホールリンペット(keyhole limpet)ヘモシアニン、破傷風毒素、ジフテリア毒素、卵アルブミン、コレラ毒素、またはそのフラグメントなどの分子との組合わせおよび/または結合により免疫応答を高めることができる。ポリクローナル抗体は免疫化動物の血清から得られる不均一な抗体分子集団である。
【0079】
特定の抗原に対する均一な抗体集団であるモノクローナル抗体は、連続した培養細胞系により抗体分子を産生するいかなる方法によっても得ることができる。これらには下記の方法が含まれるが、これらに限定されない:ハイブリドーマ法(KohlerおよびMilstein、1975,Nature,256:495−497;およびUSP4,376,110)、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kosbor et al.,1983,Immunology Today,4:72;Cole et al.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80:2026−2030)、およびEBV−ハイブリドーマ法(Cole et al.,1985,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss社,pp.77−96)。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそのいずれかのサブクラスを含めた、いかなる免疫グロブリンクラスであってもよい。本発明のmAbを産生するハイブリドーマをインビトロまたはインビボで培養することができる。インビボで高力価のmAbを産生できるので、これは現在好ましい産生方法である。
【0080】
さらに、”キメラ抗体”(Morrison et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.,81:6851−6855;Neuberger et al.,1984,Nature,312:604−608;Takeda et al.,1985,Nature,314:452−454)の産生のために開発された、適切な抗原特異性をもつマウス抗体分子からの遺伝子を適切な生物学的活性をもつヒト抗体分子からの遺伝子とスプライシングすることによる方法を使用できる。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子、たとえばネズミmAb由来の可変部とヒト免疫グロブリン定常部をもつものである。その技術は、米国特許第6,075,181および5,877,397に記載されており、それらの全体を本明細書に参照として援用する。同様に好ましいのは、米国特許6,150,584に記載されている完全人化モノクローナル抗体の使用であり、相当する開示の全体を参照として本明細書に援用する。
【0081】
あるいは、一本鎖抗体の産生のために記載された方法(USP4,946,778;Bird,1988,Science,242:423−426;Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:5879−5883;およびWard et al.,1989,Nature,341:544−546)を、NGPCRペプチド、ポリペプチドおよび/またはタンパクに対する一本鎖抗体の産生に適合させることができる。一本鎖抗体は、Fv部のH鎖およびL鎖フラグメントをアミノ酸橋により結合させ、一本鎖ポリペプチドにすることにより形成される。
【0082】
特異的エピトープを認識する抗体フラグメントは、既知の方法で形成できる。たとえばそのようなフラグメントには、抗体分子のペプシン消化により調製できるF(ab’)2フラグメント、およびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド橋を還元することにより調製できるFabフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築して(Huse et al.,1989,Science,246:1275−1281)、目的とする特異性をもつモノクローナルFabフラグメントを迅速かつ容易に同定することができる。
【0083】
次いでNGPCRに対する抗体を、当業者に周知の方法を用いて、与えられたNGPCRを”模倣”した抗イディオタイプ抗体を産生させるために使用することができる(たとえばGreenspan & and Bona,1993,FASEB J.7:437−444;およびNissinoff,1991,J.Immunol.,147:2429−2438参照)。たとえば、NGPCR ECDに結合してNGPCRのリガンドが結合するのを競合阻害する抗体を用いて、NGPCR ECDを”模倣”する、したがってリガンドに結合して中和する抗イディオタイプ抗体を産生させることができる。そのような中和性の抗イディオタイプ抗体またはそのような抗イディオタイプ抗体のFabフラグメントは、NGPCRシグナリング経路を伴う療法に使用できる。
【0084】
さらに与えられた哺乳動物NGPCRの高い関連性により、前記(特定のNGPCRを有しておらず、該NGPCRに対して寛容でない)ノックアウトマウスはユニークな有用性を有し、該ノックアウトマウスは前記哺乳動物NGPCRに対する抗体生成に有益に適用することができる(すなわち、NGPCRはNGPCRノックアウト動物において免疫原となる)。
【0085】
5.4 NGPCRに関連する異常性の診断
NGPCR機能関連障害の診断および予後評価、ならびにそのような障害の素因をもつ対象の確認のために、多様な方法を採用できる。
【0086】
そのような方法は、たとえばセクション5.1に記載したNGPCRヌクレオチド配列、および/またはセクション5.3に記載したNGPCR抗体などの試薬を利用できる。具体的には、そのような試薬を、たとえば下記のために使用できる:(1)NGPCR遺伝子変異の存在の検出、または特定の(すなわち、通常の)表現型に関するNGPCR mRNAの発現過剰もしくは発現不足の検出;(2)特定の(すなわち、通常の)表現型に関するNGPCR遺伝子生成物の過剰もしくは不足の検出;および(3)NGPCRが仲介する信号伝達経路における撹乱または異常の検出。
【0087】
本明細書に記載する方法は、たとえば本明細書に記載する少なくとも1つの特異的NGPCRヌクレオチド配列および/またはNGPCR抗体試薬を含むプレパッケージ診断用キットを用いて行うことができ、これをたとえば臨床下で、腎臓疾患、消化疾患、不妊、血圧異常、および/または体重異常障害などの医療的障害または異常を示している患者の診断に簡便に使用できる。
【0088】
NGPCR変異を検出するために、ゲノム核酸の出発源として任意の成核細胞を使用できる。NGPCR遺伝子発現またはNGPCR遺伝子生成物を検出するためには、NGPCR遺伝子が発現する任意の細胞タイプまたは組織を使用できる。
【0089】
核酸ベースの検出法およびペプチド検出法を詳細に以下に記載する。
【0090】
5.4.1NGPCR遺伝子および転写体の検出
NGPCR遺伝子またはヌクレオチド配列内の変異は、多数の方法で検出できる。任意の成核細胞に由来する核酸をそのようなアッセイ法の出発点として使用でき、当業者に周知の標準核酸調製法に従って単離できる。
【0091】
点変異、挿入、欠失および染色体再配列を含めたNGPCR遺伝子構造に関する異常を検出するために、生物試料のハイブリダイゼーションアッセイまたは増幅アッセイにDNAを使用できる。そのようなアッセイ法には、サザン分析、一本鎖コンホメーション多型分析(SSCP)、制限酵素断片長多型(RFLP、USP5,272,057に一般的に記載されている。該特許を本明細書に参照として援用する。)、一塩基多型(coding Single Nucleotide Polymorphism)およびPCR分析が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
NGPCR遺伝子特異性変異を検出するためのそのような診断法はたとえば、患者試料または他の適切な細胞源に由来する試料から得た、組換えDNA分子、クローン化遺伝子、またはその縮重変異体を含めた核酸を、セクション5.1に記載した組換えDNA分子、クローン化遺伝子、またはその縮重変異体を含めた1以上の標識核酸試薬と、これらの試薬がNGPCR遺伝子または配列内のそれらの相補配列に特異的にアニールするのに好ましい条件下で、たとえば接触およびインキュベートすることを伴う。好ましくは、これらの核酸試薬の長さは少なくとも15〜30ヌクレオチドである。インキュベーション後、核酸:NGPCR分子ハイブリッドから、アニールしていない核酸をすべて除去する。次いでハイブリダイズした核酸の存在(そのような分子が存在する場合)を検出する。このような検出方式を用いて、目的とする細胞タイプまたは組織に由来する核酸を、たとえば膜またはプラスチック表面(マイクロタイタープレートまたはポリスチレンビーズの表面など)などの固体支持体に固定化することができる。そのような場合、インキュベーション後、セクション5.1に記載したタイプのアニールしていない標識核酸試薬は容易に除去される。残りのアニールした標識NGPCR核酸試薬の検出は、当業者に周知の標準法によって容易に行われる。NGPCR変異の有無を判定するために、核酸試薬がアニールしたNGPCR配列を、正常なNGPCR配列から予想されるアニーリングパターンと比較することができる。
【0093】
患者試料または他の適切な細胞源中のNGPCR遺伝子特異的核酸分子を検出するための別の診断法は、それらをたとえばPCRにより増幅させ(実験様式はUSP4,683,195、4,683,202および4,800,159に述べられている。それらの全体を本明細書に援用する。)、次いで増幅分子を当業者に周知の方法で検出することを伴う。NGPCR遺伝子変異の有無を判定するために、得られた増幅配列を、増幅核酸が正常なNGPCR遺伝子コピーのみを含有していた場合に予想されるものと比較することができる。
【0094】
さらに、周知の遺伝子型判定法を実施して、NGPCR遺伝子変異をもつ個体を確認できる。そのような方法には、たとえば制限酵素断片長多型(RFLP)の採用が含まれる。これは、用いる特異的制限酵素に対する認識部位の1つにおける配列の相違を伴うものである。
【0095】
さらに、NGPCR遺伝子変異の確認に利用できる改良されたDNA多型分析法の記載があり、これは制限酵素部位間にある、個数の変動する短鎖縦列反復DNA配列の存在を利用する。たとえばWeber(USP5,075,217、その全体を参考として本明細書に援用する)は、(dC−dA)n(dG−dT)n短鎖縦列反復配列ブロック中の断片長多型に基づくDNAマーカーを記載している。(dC−dA)n(dG−dT)nブロックの平均距離は30,000〜60,000bpであると推定される。このように近接したマーカーは高頻度の同時遺伝(co−inheritance)を示し、遺伝子変異、たとえばNGPCR遺伝子内の変異の確認、ならびにNGPCR変異に関連する疾病および障害の診断にきわめて有用である。
【0096】
Caskeyら(USP5,364,759、その全体を参考として本明細書に援用する)も、短い3および4ヌクレオチド反復配列を検出するためのDNAプロファイリングアッセイを記載している。この方法は、目的とするDNA、たとえばNGPCR遺伝子を抽出し、抽出したDNAを増幅させ、反復配列を標識してその個体のDNAの遺伝子型地図を作成することを含む。
【0097】
NGPCR遺伝子発現レベルも、NGPCR転写の検出および測定によりアッセイできる。たとえばNGPCR遺伝子を発現することが分かっているかまたは推測される細胞タイプまたは組織からRNAを単離し、本明細書記載のようなハイブリダイゼーション法またはPCR法により検査することができる。単離細胞は細胞培養物または患者に由来するものであってよい。培養物から採取した細胞の分析は、細胞ベースの遺伝子療法の一部として用いる細胞を評価するのに、または化合物がNGPCR遺伝子の発現に与える影響を調べるために、必要な工程であろう。そのような分析により、NGPCR遺伝子の発現パターンの量的および質的観点(NGPCR遺伝子発現の活性化または不活性化を含む)を共に明らかにすることができる。
【0098】
そのようなNGPCR検出方式の1態様においては、目的とするRNAからcDNAを合成する(たとえばRNA分子からcDNAへの逆転写による)。次いでcDNA内の配列を核酸増幅反応、たとえばPCR増幅反応などの鋳型として用いる。この方法の逆転写工程および核酸増幅工程に合成開始試薬として用いる核酸試薬(たとえばプライマー)は、セクション5.1に記載したNGPCR核酸試薬から選ばれる。このような核酸試薬の好ましい長さは、少なくとも約9〜30ヌクレオチドである。増幅生成物の検出のために、放射性または非放射性標識ヌクレオチドを用いて核酸増幅を行うことができる。あるいは、標準的な臭化エチジウム染色法、または他のいずれかの適切な核酸染色法、または配列決定法により、生成物を視覚化できるのに十分な増幅生成物を調製することができる。
【0099】
さらに、そのようなNGPCR遺伝子発現アッセイを”in situ”で、すなわち生検または切除により得た患者組織の組織切片(固定および/または凍結したもの)について直接に行うことができ、したがって核酸精製は必要ない。上に記載したような核酸試薬を、そのようなin situ法のプローブおよび/またはプライマーとして使用できる(たとえばNuovo,G.J.,1992,”PCR In situ Hybridization:Protocols and Applications”,Raven Press,ニューヨーク,参照)。
【0100】
あるいは、十分な量の適切な細胞を得ることができれば、標準ノーザン分析を行って、NGPCRのmRNA発現レベルを測定できる。
【0101】
さらに、NGPCRオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列は、固体支持マトリックス/基板(たとえば樹脂、ビーズ、膜、プラスチック、ポリマー、金属または金属基板、遺伝子チップ、および結晶おるいは多結晶基板など)に結合させ、ハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。
【0102】
5.4.2 NGPCR生成物の検出
上記で考察した、野生型もしくは変異NGPCR生成物に対して、またはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントに対して形成された抗体も、本明細書に記載するように診断および予後判定に使用できる。そのような診断法は、NGPCR遺伝子発現レベルの異常、あるいはNGPCRの構造の異常、および/または時間的、組織、細胞もしくは細胞下でのNGPCRの存在位置の異常を検出するのに使用でき、たとえば生検組織についてインビボまたはインビトロで実施できる。
【0103】
たとえばNGPCR ECDのエピトープに対する抗体をインビボで用いて、体内でのNGPCR発現のパターンおよびレベルを検出できる。体内で発現したNGPCRへの結合をX線、CAT−走査またはMRIなどの方法で視覚化するために、そのような抗体を、たとえば放射線不透過性化合物その他の適切な化合物で標識し、被験者に注射することができる。抗原結合領域の最小部分を含む標識抗体フラグメント、たとえばFabまたは一本鎖抗体が、この目的で、血液−脳関門の通過を促進し、脳で発現したNGPCRの標識を可能にするために好ましい。
【0104】
さらに、その存在を検出できるNGPCR融合タンパク質またはNGPCR結合タンパク質を投与してもよい。たとえば放射線不透過性化合物その他の適切な化合物で標識したNGPCR融合タンパク質またはNGPCR結合タンパク質を投与し、標識抗体について前記に述べたようにインビボで視覚化することができる。さらに、そのようなNGPCR融合タンパク質(たとえばアルカリホスファターゼ−NGPCRまたはNGPCR−アルカリホスファターゼ融合タンパク質)をインビトロ診断法に利用できる。
【0105】
あるいは、前記の免疫アッセイまたは融合タンパク質検出アッセイをインビトロで生検試料および切除試料に利用して、NGPCR発現パターンを評価することができる。そのようなアッセイ法はNGPCR ECDを規定する抗体の使用に限定されず、NGPCRの任意のドメイン、たとえばECD、TMおよび/またはCDのエピトープに対する抗体の使用も含めることができる。これらの標識抗体それぞれ、または全部を用いることにより、NGPCRの翻訳および細胞表面への細胞内輸送に関する有用な情報が得られ、プロセシングの欠陥を確認することができる。
【0106】
分析する組織または細胞タイプには、一般にNGPCR遺伝子を発現することが分かっているかまたは推定されるものが含まれる。本発明に用いるタンパク質単離法は、すでに文献に記載されたもの、たとえば(Harlow and Lane,1988,上述)であってもよい。単離細胞は細胞培養物または患者に由来するものであってよい。培養物から採取した細胞の分析は、細胞ベースの遺伝子療法の一部として使用できる細胞を評価するのに、あるいは化合物がNGPCR遺伝子の発現に与える作用を調べるために、必要な工程であろう。
【0107】
たとえば、セクション5.3に記載した本発明に有用な抗体または抗体フラグメントを用いて、NGPCR生成物またはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントの存在を定量的および定性的に検出することができる。これはたとえば、光学顕微鏡、フローサイトメトリーまたは蛍光測定検出と連結した、蛍光標識抗体を用いる免疫蛍光法(このセクションの後記参照)により行うことができる。このような方法は、そのようなNGPCR遺伝子生成物が少なくとも一時的に細胞表面に発現する場合、特に好ましい。
【0108】
本発明に有用な抗体(またはそのフラグメント)またはNGPCR融合もしくは結合タンパク質はさらに、組織学的に、免疫蛍光、免疫電子顕微鏡または非免疫アッセイ法において、NGPCR遺伝子生成物またはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントのin situ検出に、あるいはNGPCR結合のアッセイに(標識NGPCR−リガンド融合タンパク質の場合)使用できる。
【0109】
in situ検出は、患者から組織検体を摘出し、それに本発明の標識抗体または融合タンパク質を付与することにより行うことができる。抗体(またはフラグメント)または融合タンパク質は、生物試料に標識抗体(またはフラグメント)を積層することにより付与するのが好ましい。このような方法を用いることにより、NGPCR生成物または保存変異体もしくはペプチドフラグメントの存在、あるいはNGPCRの結合だけでなく、被験組織におけるNGPCRの分布をも測定することができる。本発明を用いて多様な組織学的方法(たとえば染色法)をこのようなin situ検出の達成のために改変しうることは、当業者に自明であろう。
【0110】
NGPCR遺伝子生成物またはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントの免疫アッセイ法および非免疫アッセイ法は、一般に試料、たとえば生物学的流体、組織抽出物、採取したばかりの細胞、または細胞溶解物(細胞培養においてインキュベートしたもの)を、NGPCR遺伝子生成物またはその保存変異体もしくはペプチドフラグメントを同定しうる検出可能な標識抗体の存在下でインキュベートし、結合した抗体を当技術分野で周知の多数の方法のいずれかで検出することを含む。
【0111】
細胞、細胞粒子または可溶性タンパク質を固定化しうる固相支持体またはキャリヤー、たとえばニトロセルロースまたは他の固体支持体に、生物試料を接触させて固定化してもよい。次いで支持体を適切な緩衝液で洗浄した後、検出可能な状態に標識したNGPCR抗体またはNGPCRリガンド融合タンパク質で処理する。次いで固相支持体を緩衝液で再度洗浄して、結合していない抗体または融合タンパク質を除去する。次いで固体支持体に残存する結合した標識の量を、常法により検出することができる。
【0112】
”固相支持体またはキャリヤー”とは、抗原または抗体に結合しうるいかなる支持体をも表すものとする。周知の支持体またはキャリヤーには、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩(gabbro)および磁鉄鉱が含まれるがそれらに限定されない。本発明の目的には、キャリヤーの性質はある程度可溶性であるか、あるいは不溶性であってよい。支持体材料は、結合分子が抗原または抗体に結合しうる限り、実質的に任意の可能な構造形状をもつことができる。たとえば支持体の形状は、ビーズのような球状、または試験管の内面もしくは棒の外面のような円筒形であってもよい。あるいは、表面がシート、試験片などのように平坦であってもよい。好ましい支持体には、ポリスチレンビーズが含まれる。当業者には抗体または抗原を結合させるのに適した他の多数のキャリヤーが知られており、またはルーティン実験によりこれらを確認することができる。
【0113】
あるロットのNGPCR抗体またはNGPCRリガンド融合タンパク質の結合活性は、周知の方法で測定できる。当業者は、ルーティン実験を用いて各測定に有効かつ最適なアッセイ条件を判定できるであろう。
【0114】
抗体に関して、NGPCR抗体を検出可能な状態に標識できる方法の1つは、これを酵素に結合させ、酵素免疫アッセイ(EIA)に用いるものである(Voller,1978,Diagnostic Horizons,2:1−7,Microbiological Associates Quarterly Publication,メリーランド州ウォーカースビル;Voller et al.,1978,J.Clin.Pathol.,31:507−520;Butler,1981,Meth.Enzymol.,73:482−523;Maggio,E.(編),1980,Enzyme Immunoassay,CRC Press,フロリダ州Boca Raton,FL;およびIshikawa et al.(編),1981,Enzyme Immunoassay,化学書院,東京)。抗体に結合した酵素を、分光測光法、蛍光測定法または視覚的手段で検出できる部分を生じるように、適切な基質、好ましくは色素原基質と反応させる。抗体を検出可能な状態に標識するために使用できる酵素には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:マレイン酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼ。検出は、酵素に対する色素原基質を用いる比色法により行うことができる。検出は、基質の酵素反応の程度を同様に調製した標準品と対比する視覚的比較により行うこともできる。
【0115】
検出は、他の多様な免疫アッセイ法のいずれかを用いて行うこともできる。たとえば抗体または抗体フラグメントを放射性標識することにより、ラジオイムノアッセイ(RIA)を用いてNGPCRを検出できる(たとえばWeintraub,B.,Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques,The Endocrine Society,1986年3月,参照,これを参考として本明細書に援用する)。放射性同位体は、ガンマ計数器、シンチレーション計数器の使用またはオートラジオグラフィーなどの手段で検出できる。
【0116】
抗体を蛍光化合物で標識することもできる。蛍光標識抗体を適正な波長の光で照射すると、蛍光によりその存在を検出できる。最も一般的に用いられる蛍光標識用化合物には、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびフルオレサミンがある。
【0117】
抗体を、蛍光発光金属、たとえば152Euまたはランタニド系列の他の金属で、検出可能な状態に標識することもできる。これらの金属を、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート化基で抗体に結合させることができる。
【0118】
抗体を、化学発光化合物に結合させることにより、検出可能な状態に標識することもできる。次いで化学反応中に生じる発光の存在を検出することにより、化学発光−タグ付き抗体の存在を判定する。特に有用な化学発光標識用化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマチック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0119】
同様に生物発光化合物を用いて本発明の抗体(またはそれらのフラグメント)を標識することができる。生物発光は生物系にみられるタイプの化学発光であり、この場合は触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高める。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することにより判定できる。標識のために重要な生物発光化合物はルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリン(グリーン蛍光タンパクおよびそれらの変異体:USP5,491,084、5,625,048、5,777,079、5,795,737、5,804,387、5,874,304、5,968,750、5,976,796、6,020,192、6,027,881、6,054,321、6,096,865、6,146,826、6,172,188および6,265,548に記載されており、それらを参照として本明細書に援用する。)である。
【0120】
5.5 NGPCRの発現または活性を調節する化合物のスクリーニングアッセイ
以下のアッセイ法は、NGPCR(NGPCRのECDまたはCDが含まれるが、これらに限定されない)と相互作用する(たとえば結合する)化合物、NGPCR(NGPCRのECDまたはCDが含まれが、これらに限定されない)と相互作用するタンパク質、NGPCR仲介による信号伝達に関与する膜貫通または細胞内タンパク質とNGPCRの相互作用を妨害する化合物、およびNGPCR遺伝子の活性を調節する(すなわちNGPCR遺伝子発現レベルを調節する)か、またはNGPCRのレベルを調節する化合物の同定のために設計されたものである。さらに、NGPCR遺伝子調節配列(たとえばプロモーター配列)に結合してNGPCR遺伝子発現を調節する化合物を同定するアッセイ法も使用できる(たとえばPlatt,1994,J.Biol.Chem.,269:28558−28562参照;その全体を本明細書に援用する)。
【0121】
本発明によりスクリーニングできる化合物には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ペプチド、抗体およびそのフラグメント、ならびに他の有機化合物(たとえばペプチド模倣体)であって、NGPCRのECDに結合して天然リガンドが開始させる活性を模倣するもの(すなわちアゴニスト)または天然リガンドが開始させる活性を阻害するもの(すなわちアンタゴニスト);NGPCRのECD(またはその一部)を模倣し、天然リガンドに結合して”中和”する、ペプチド、抗体およびそのフラグメント、ならびに他の有機化合物。
【0122】
そのような化合物には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ペプチド、たとえば可溶性ペプチド、これには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:ランダムペプチドライブラリー(たとえばLam,et al.,1991,Nature,354:82−84;Houghten et al.,1991,Nature,354:84−86参照);以下のものからなるコンビナトリアルケミストリー由来の分子ライブラリー:D−および/またはL−立体配置のアミノ酸、ホスホペプチド(ランダムまたは部分変性同義(degenerate)、指向性(directed)ホスホペプチドライブラリーが含まれるが、これらに限定されない;たとえばSongyang et al.,1993,Cell,72:767−778参照)、抗体(ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラまたは一本鎖抗体、ならびにFab、F(abN)2およびFab発現ライブラリーのフラグメント、ならびにそのエピトープ結合性フラグメントが含まれるが、これらに限定されない)、および小型の有機または無機分子。
【0123】
本発明によりスクリーニングできる他の化合物には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:血液−脳関門を通過して適切な細胞(たとえば小脳、視床下部など)に侵入し、NGPCR遺伝子もしくはNGPCR信号伝達経路に関与する他のいずれかの遺伝子の発現に影響を与える(たとえば遺伝子発現に関与する調節領域または転写因子との相互作用により)ことができる小型の有機分子;またはNGPCRの活性に影響を与える(たとえばCDの酵素活性を阻害または増強することにより)か、もしくはNGPCR信号伝達経路に関与する他のいずれかの細胞内因子の活性に影響を与える化合物。
【0124】
コンピューターによるモデリングおよび探索法により、NGPCRの発現または活性を調節しうる化合物の同定、または既に同定されている化合物の改良を行うことができる。そのような化合物または組成物が同定されると、活性部位または領域が同定される。そのような活性部位は一般にリガンド結合部位である可能性がある。活性部位は当技術分野で既知の方法により、たとえばペプチドのアミノ酸配列から、核酸のヌクレオチド配列から、または関連化合物もしくは組成物とそのリガンドとの複合体の研究から同定できる。後者の場合、化学的方法またはX線結晶学的方法を用いてその因子上の複合体形成リガンドがある位置を見いだすことにより、活性部位を見いだすことができる。
【0125】
次いで活性部位の三次元幾何学的構造を決定する。これは完全分子構造を決定できる既知の方法で行うことができ、これにはX線結晶学的方法が含まれる。他方、固相または液相NMRを用いて、特定の分子内距離を決定できる。構造決定のための他の任意の実験法を用いて、部分的または完全な幾何学的構造を求めることができる。幾何学的構造は複合体形成した天然または合成リガンドを用いて判定することもでき、これは判定した活性部位構造の精度を高める。
【0126】
判定した構造の精度が不完全または不十分である場合、その構造を完成させ、またはその精度を高めるために、コンピューターベースの数値モデリング法を採用できる。認識されている任意のモデリング法を採用でき、これには特定の生体ポリマー(タンパク質または核酸など)に特異的なパラメター化モデル、分子運動のコンピューター処理に基づく分子動態モデル、サーマルアンサンブルに基づく統計学的機構モデル、または混合モデルが含まれる。大部分のタイプのモデルについて構成原子間および基間の力を表す標準分子力場が必要であり、これは物理化学において既知の力場から選択できる。実験で得た不完全なまたは精度の低い構造は、そのようなモデリング法によるコンピューター処理で得た、より完全かつ正確な構造に対する拘束となる可能性がある。
【0127】
活性部位の構造を実験、モデリングまたはそれらの組合わせにより決定した後、化合物を含むデータベースをそれらの分子構造についての情報と合わせて検索することにより、候補となる調節化合物を同定できる。このような検索により、決定した活性部位構造と調和し、かつ活性部位を規定する基と相互作用する構造をもつ化合物を求める。このような検索は手動で行うこともできるが、好ましくはコンピューター支援による。そのような検索で見いだした化合物は潜在NMR調節化合物である。
【0128】
あるいはこれらの方法を用いて、既知の調節化合物またはリガンドから改良された調節化合物を同定できる。新規組成に適用した前記の実験的方法およびコンピューターモデリング法を用いて既知化合物の組成を修飾し、修飾の構造効果を判定できる。次いで変更した構造を化合物の活性部位構造と比較して、調和または相互作用が改良されたかどうかを判定する。この方法でたとえば側鎖基の変更による系統的な組成変化を迅速に評価して、改良された特異性または活性をもつ修飾された調節化合物を得ることができる。
【0129】
さらに、NGPCRならびに関連のトランスダクション因子および転写因子の活性部位の同定に基づく、調節化合物の同定に有用な他の実験的方法およびコンピューターモデリング法は、当業者に自明であろう。
【0130】
分子モデリングシステムの例は、CHARMMおよびQUANTAプログラム(Polygen Corporation、マサチュセッツ州ウォルサム)である。CHARMMはエネルギー最小化および分子動態の機能をもち、一方、QUANTAは分子構造の構築、グラフモデリングおよび分析を行う。QUANTAは、分子相互の行動の相互構築、修飾、視覚化および分析を行うことができる。
【0131】
多数の報文に特定のタンパク質と相互作用する薬物のコンピューターモデリングについて概説されている:たとえばRotivinen,et al.,1988,Acta Pharmaceutical Fennica,97:159−166;Ripka,New Scientist,54−57(1988年6月16日);McKinaly and Rossmann,1989,Annu.Rev.Pharmacol.Toxiciol.,29:111−122;Perry and Davies,OSAR:Quantitative Structure−Activity Ralationships in Drug Design,pp.189−193(Alan R.Liss社,1989);Lewis and Dean,1999,Proc.R.Soc.Lond.,236:125−140および141−162;ならびに核酸成分に対するモデル受容体に関してはAskew,et al.,1989,J.Am.Chem.Soc.,111:1082−1090。化学物質をスクリーニングしてグラフ表示する他のコンピュータープログラムを、BioDesign社(カリフォルニア州パサデナ)、Allelix社(カナダ国オンタリオ州ミシソーガ)およびHypercube社(オンタリオ州ケンブリッジ)などの会社から入手できる。これらは主に特定のタンパク質に特異的な薬物に適用するために設計されているが、領域が同定されればNGPCRあるいはNGPCRのDNAまたはRNAの領域に特異的な薬物の設計にも適用できる。
【0132】
結合を変化させる化合物の設計および生成に関して前記に述べたが、既知化合物のライブラリーをスクリーニングすることもできる。これには、天然または合成の化学物質、およびタンパク質などの生物活性物質をスクリーニングして、阻害薬または活性化薬を求めることが含まれる。
【0133】
NGPCRに結合する化合物を同定し、生細胞内でそのような結合に伴って変化する活性を評価するために、細胞ベースの系も使用できる。そのようなアッセイに特に有用な道具の1つは緑色蛍光タンパク質であり、これはたとえば特にUSP5,625,048に記載されており、これを本明細書に援用する。そのような細胞アッセイに使用できる細胞には白血球、または白血球由来の細胞系、リンパ球、幹細胞(胚性幹細胞を含む)などが含まれるが、これらに限定されない。さらに、目的の機能性NGPCRを発現して被験リガンドまたは天然リガンドによる活性化に応答するように(化学的変化もしくは表現型の変化により測定)または他の宿主細胞遺伝子の誘導に応答するように遺伝子工学的に処理した発現宿主細胞(たとえばB95細胞、COS細胞、CHO細胞、OMK細胞、線維芽細胞、Sf9細胞)を、アッセイの最終点として使用できる。
【0134】
5.5.1 NGPCRに結合する化合物のインビトロスクリーニングアッセイ
NGPCR(NGPCRのECDまたはCDを含むが、これらに限定されない)と相互作用する(たとえば結合する)ことができる化合物を同定するためにインビトロ系を設計できる。同定した化合物は、たとえば野生型および/または変異NGPCR遺伝子生成物の調節に有用であり;あるいはNGPCRの生物学的機能を誘導するのに有用であり;正常なNGPCR相互作用を撹乱する化合物の同定に利用でき;あるいはそれ自体がそのような相互作用を撹乱する。
【0135】
NGPCRに結合する化合物の同定に用いるアッセイ法の原理は、NGPCRと被験化合物の反応混合物を調製し、これら2成分が相互作用するのに十分な条件下でそれに十分な時間、結合させるものであり、こうして形成された複合体を分離し、および/または反応混合物中で検出できる。用いるNGPCR種は、スクリーニングアッセイの目標に応じて異なる。たとえば天然リガンドのアゴニストを目的とする場合、全長NGPCR、または可溶性トランケートNGPCR、たとえばTMおよび/またはCDを分子から欠失させたもの、ECDに対応するペプチド、または1以上のNGPCR ECDが、アッセイ系に利点をもたらすタンパク質もしくはポリペプチド(たとえば標識、生成複合体の単離など)に融合したものを含む融合タンパク質を使用できる。細胞質ドメインと相互作用する化合物を目的とする場合、NGPCR CDに対応するペプチド、またはNGPCR CDを含む融合タンパク質を使用できる。
【0136】
スクリーニングアッセイは多様な方法で実施できる。たとえばそのようなアッセイを実施するための1方法は、NGPCRタンパク質、ポリペプチド、ペプチドもしくは融合タンパク質、または被験物質を固相に固定し、反応終了時に固相に固定されているNGPCR/被験化合物複合体を検出する。そのような方法の1態様においては、NGPCR反応体を固相表面に固定し、固定しない被験化合物を直接または間接的に標識する。分子を固定化するのに利用可能な技術のいくつかの例は、Cass ed.“Immobilized Biomolecules In Analysis: A Practical Approach” Oxford University Press,NY中で議論されている。
【0137】
実施に際しては、固相としてマイクロタイタープレートを用いるのが好都合である。固定される成分を共有結合または非共有結合のいずれにより固定化してもよい。非共有結合は、固相表面をタンパク質でコーティングし、乾燥させるだけで達成できる。あるいはタンパク質を固体表面に固定するために、固定化すべきタンパク質に特異的な固定化抗体、好ましくはモノクローナル抗体を使用できる。この表面は予め調製して保存しておくことができる。
【0138】
アッセイを実施するためには、固定した成分を含有するコーティング面に、固定化されていない成分を添加する。反応終了後、形成された複合体が固体表面に固定化された状態を維持する条件下で、未反応成分を除去(たとえば洗浄による)する。固体表面に固定された複合体の検出は多数の方法で実施できる。先に固定化しない成分を予め標識した場合、表面に固定化された標識が検出されると複合体が形成されたことを示す。先に固定化しない成分を予め標識していなければ、表面に固定された複合体を検出するために間接標識を使用できる。たとえば先に固定化されない成分に特異的な標識抗体を使用する(この抗体を標識抗−Ig抗体で直接または間接的に標識できる)。
【0139】
あるいは反応を液相で実施し、反応生成物を未反応成分から分離し、複合体を検出することができる。検出には、たとえばNGPCRタンパク質、ペプチドもしくは融合タンパク質または被験化合物に特異的な、溶液中に形成された複合体を結合させるための固定化抗体、および固定化された複合体を検出するための、可能性のある複合体の他方の成分に特異的な抗体を用いる。
【0140】
あるいは細胞ベースのアッセイを用いて、NGPCRと相互作用する化合物を同定することができる。このためには、NGPCRを発現する細胞系、またはNGPCRを発現するように遺伝子工学的に処理された(たとえばNGPCR DNAの形質転換またはトランスダクションによる)細胞系(たとえばCOS細胞、CHO細胞、線維芽細胞など)を使用できる。被験化合物と、たとえば宿主細胞が発現したNGPCRのECDとの相互作用を、天然リガンドとの比較または競合により測定できる。
【0141】
5.5.2 NGPCRと相互作用する細胞内タンパク質のアッセイ
NGPCRと相互作用する膜貫通タンパク質または細胞内タンパク質の同定のためには、タンパク質−タンパク質相互作用を検出するのに適した任意の方法を使用できる。使用できる従来法には、細胞溶解物または細胞溶解物およびNGPCRから得たタンパク質を免疫共沈法、架橋法、および勾配またはクロマトグラフィーカラムにより同時精製して、NGPCRと相互作用する、細胞溶解物中のタンパク質を同定する方法がある。これらのアッセイに用いるNGPCR成分は、全長NGPCR、膜固定領域を欠如する可溶性誘導体(たとえばトランケートNGPCR:TMを欠失した結果、ECDがCDに融合したものを含むトランケート分子が生成)、NGPCRのCDに対応するペプチドまたはCDを含有する融合タンパク質であってよい。細胞内タンパク質が単離されると、これを同定し、次いでそれが相互作用するタンパク質を同定するための標準法と組見合わせて使用できる。たとえば、NGPCRと相互作用する細胞内タンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部を、当業者に周知の方法、たとえばエドマン分解法により確認できる(たとえばCreighton,1983,”Proteins:Structure and Molecular Principles”,pp.34−49参照,W.H.Freeman & Co.,ニューヨーク)。得られたアミノ酸配列は、そのような細胞内タンパク質をコードするヌクレオチド配列のスクリーニングに使用できるオリゴヌクレオチド混合物を作製するための指針として採用できる。スクリーニングは、たとえば標準ハイブリダイゼーション法またはPCR法により実施できる。オリゴヌクレオチド混合物の作製法およびスクリーニング法は周知である(たとえばAusubel,前掲;およびInnis,et al.編,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,1990,Academic Press社,ニューヨーク,参照)。
【0142】
さらに、NGPCRと相互作用する膜貫通タンパク質または細胞内タンパク質をコードする遺伝子を同時同定する方法を採用できる。これらの方法には、たとえばλgt11ライブラリーの抗体検査のための周知の方法と同様にして、標識NGPCRタンパク質、あるいはNGPCRポリペプチド、ペプチド、または融合タンパク質、たとえばマーカー(たとえば酵素、蛍光タンパク質、発光タンパク質、または色素)もしくはIg−Fcドメインに融合したNGPCRポリペプチドもしくはNGPCRドメインを用いて、発現ライブラリーを検査する方法が含まれる。
【0143】
インビボでタンパク質相互作用を検出する1方法である2ハイブリッドシステム(two−hybrid system)について詳述するが、これは説明のためのものにすぎず、限定ではない。このシステムの1形式は、酵母細胞を利用し(Chien,et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:9578−9582)、他のものは哺乳動物細胞を使用する(Luo et al.,1997、Biotechniques、22:350−352)。酵母細胞と哺乳動物細胞の2ハイブリッドシステムはClontech(カリフォルニア州パロ・アルト)から市販されており、さらにUSP5,283,173;5,468,614および5,667,973に記載されており、それらの全体を本明細書に援用する。
【0144】
要約すると、そのようなシステムを用いてハイブリッドタンパク質をコードする2種類のプラスミドを構築する:一方のプラスミドは、転写活性化タンパク質のDNA結合性ドメインをコードするヌクレオチドが、NGPCRタンパク、ポリペプチド、ペプチドもしくは融合タンパク質をコードするNGPCRヌクレオチド配列に融合したものからなり;他方のプラスミドは、NGPCRとの相互作用を試験される未知タンパク質をコードするcDNAに融合した転写活性化タンパク質の活性化ドメインをコードするヌクレオチドが、このプラスミドにcDNAライブラリーの一部として再結合したものからなる。このDNA結合性ドメイン融合プラスミドおよびcDNAライブラリーを、その調節領域に転写活性化タンパク質の結合部位を含むレポーター遺伝子(たとえばHBS、lacZ、CATまたは必須アミノ酸をコードする遺伝子)を含む酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)あるいは哺乳動物細胞(たとえばSaos−2、CHO、CV1、JurkatまたはHeLa)株に形質転換する。いずれか一方のハイブリッドタンパク質だけでレポーター遺伝子の転写を活性化することはできない:DNA結合性ドメインハイブリッドが活性化できない理由は、それが活性化機能をもたないためであり、活性化ドメインハイブリッドが活性化できない理由は、それが活性化タンパク質結合部位に局在できないためである。これら2つのハイブリッドタンパク質の相互作用により機能性活性化タンパク質が再構成され、レポーター遺伝子が発現する。これをレポーター遺伝子生成物のアッセイにより検出する。
【0145】
この2ハイブリッドシステムまたは関連方法を用いて活性化ドメインライブラリーをスクリーニングし、”おとり(bait)”遺伝子生成物と相互作用するタンパク質を求めることができる。限定ではないが、たとえばNGPCRをおとり遺伝子生成物として使用できる。活性化ドメインをコードするDNAに、全ゲノまたはcDNA配列を融合させる。このライブラリー、およびDNA結合性ドメインに融合したおとりNGPCR遺伝子生成物のハイブリッドをコードするプラスミドを、レポーター株に同時形質転換し、得られた形質転換体をスクリーニングして、レポーター遺伝子を発現しているものを求める。限定ではないが、たとえばおとりNGPCR遺伝子配列、たとえばNGPCRのオープンリーディングフレーム(またはNGPCRの1ドメイン)をベクター中へ、GAL4タンパク質のDNA結合性ドメインをコードするDNAに翻訳時融合するようにクローニングすることができる。これらのコロニーを精製し、レポーター遺伝子発現に関与するライブラリープラスミドを単離する。次いでDNA配列決定法を用いて、ライブラリープラスミドがコードするタンパク質を同定できる。
【0146】
おとりNGPCR遺伝子生成物と相互作用するタンパク質をそれから検出する細胞系のcDNAライブラリーは、当技術分野でルーティンに実施されている方法で調製できる。ある特定のシステムによれば、たとえばcDNAフラグメントをベクター中へ、GAL4の転写活性化ドメインに翻訳時融合するように挿入することができる。このライブラリーを、おとりNGPCR遺伝子−GAL4融合プラスミドと共に酵母株中へ同時形質転換することができ、それはa)添加ヒスチジン無しには生育できず、b)GAL4活性化配列含有プロモーターにより誘発されるHIS3遺伝子を含む。cDNAによりコードされ、GAL4転写活性化ドメインに融合し、おとりMARK3遺伝子生成物と相互作用するタンパク質が活性GAL4タンパク質を再構成し、これによりHIS3遺伝子の発現を誘発する。HIS3を発現したコロニーは、ヒスチジンを欠如する半固体寒天培地を入れたペトリ皿上で増殖することにより検出できる。次いでこれらの株から当技術分野でルーティンに実施されている方法でcDNAを精製し、おとりNGPCR遺伝子と相互作用するタンパク質の製造および単離に使用できる。
【0147】
5.5.3 NGPCR/細胞内高分子またはNGPCR/膜貫通高分子の相互作用を妨害する化合物のアッセイ
この考察のために、NGPCRと相互作用する高分子を”結合パートナー”と呼ぶ。これらの結合パートナーは、NGPCR信号伝達経路に関与すると思われる。したがってNGPCRとそのような結合パートナーの相互作用を妨害または撹乱する化合物を同定することが望ましい。これらの化合物は、NGPCR活性を調節してNGPCR活性に関連する障害を抑制するのに有用であろう。例えば、それらの発現パターンを考慮すると、記載したNGPCRは、高あるいは低血圧(および関連した症状)、腎臓疾患、体重コントロール障害、代謝異常、および癌の治療的処置に有効な化合物を同定する方法に特に有効であると考えられる。
【0148】
NGPCRとその結合パートナーまたはパートナー類との相互作用を妨害する化合物の同定に用いるアッセイ系の基本原理は、セクション5.5.1およびセクション5.5.2に記載のようにNGPCRタンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたは融合タンパク質、および結合パートナーを含有する反応混合物を調製し、両者が相互作用して結合するのに十分な条件下でそれに十分な時間反応させて、複合体を形成させるものである。化合物の阻害活性を試験するために、被験化合物が存在する反応混合物と存在しないものを調製する。被験化合物は最初から反応混合物に含有させてもよく、NGPCR部分およびその結合パートナーの添加後に添加してもよい。対照反応混合物は、被験化合物なしで、またはプラシーボと共にインキュベートされる。次いでNGPCR部分と結合パートナーの複合体の形成を検出する。対照反応において複合体が形成され、被験化合物を含有する反応混合物においては形成されない場合、その化合物はNGPCRと相互作用性結合パートナーの相互作用を妨害することを示す。さらに、被験化合物および正常NGPCRタンパク質を含有する反応混合物における複合体形成を、被験化合物および変異NGPCRを含有する反応混合物における複合体形成と比較することもできる。この比較は、変異NGPCRまたは変異させたNGPCRとの相互作用を特異的に撹乱しかつ正常NGPCRとの相互作用を撹乱しない化合物を同定したい場合に重要である。
【0149】
前記NGPCRと結合パートナーの相互作用を妨害する化合物のアッセイは、不均質方式または均質方式で実施できる。不均質アッセイは、NGPCR部分または結合パートナーを固体に固定し、反応終了時に固相に固定された複合体を検出することを伴う。均質アッセイにおいては、反応全体を液相で実施する。いずれの方法でも、被験化合物について異なる情報を得るために反応体の添加順序を変更できる。たとえば、競合により相互作用を妨害する被験化合物は、被験化合物の存在下で反応を実施することにより同定できる:すなわちNGPCR部分および相互作用性結合パートナーの前またはそれらと同時に、被験物質を反応混合物に添加する。あるいは既に形成された複合体を撹乱する被験化合物、たとえばより高い結合定数をもち複合体から成分の1つを排除する化合物は、複合体が形成された後の反応混合物に被験化合物を添加することにより試験できる。各種の方式について以下に簡単に記載する。
【0150】
不均質アッセイ系においては、NGPCR部分または相互作用性結合パートナーのいずれかを固体表面に固定し、固定しない種を直接または間接的に標識する。実施に際しては、マイクロタイタープレートを用いるのが好都合である。固定する種を共有結合または非共有結合のいずれによって固定化してもよい。非共有結合は、固相表面をNGPCR遺伝子生成物または結合パートナーでコーティングし、乾燥させるだけで達成できる。あるいはその種を固体表面に固定するために、固定化すべき種に特異的な固定化抗体を使用できる。この表面は予め調製して保存しておくことができる。
【0151】
アッセイを実施するためには、コーティング面に、被験化合物の存在下または不存在下で、固定化された種のパートナーを接触させる。反応終了後、未反応成分を除去(たとえば洗浄による)すると、形成された複合体が固体表面に固定化されたまま残る。固体表面に固定された複合体の検出は多数の方法で実施できる。固定化されない種を予め標識した場合、表面に固定化された標識が検出されると複合体が形成されたことを示す。固定化されない成分を予め標識していなければ、表面に固定された複合体を検出するために間接標識を使用できる。たとえば最初に固定化されない種に特異的な標識抗体を使用する(この抗体を標識抗−Ig抗体で直接または間接的に標識できる)。反応成分の添加順序に応じて、複合体形成を阻害する被験化合物または既に形成された複合体を撹乱する被験化合物を検出できる。
【0152】
あるいは反応を液相で、被験化合物の存在下または不存在下に実施し、反応生成物を未反応成分から分離し、複合体を検出することができる。検出には、たとえば結合成分の一方に特異的な、溶液中に形成された複合体を固定するための固定化抗体、および固定化された複合体を検出するための、可能性のある複合体の他方のパートナーに特異的な標識抗体を用いる。この場合も、液相への反応成分の添加順序に応じて、複合体形成を阻害する化合物または既に形成された複合体を撹乱する化合物を検出できる。
【0153】
本発明の他の態様においては、均質アッセイを用いる。この方法では、NGPCR部分と相互作用性結合パートナーの予め形成した複合体を調製する。その際、NGPCRまたはその結合パートナーのいずれか一方を標識するが、標識が発する信号は複合体形成により消失する(たとえばUSP4,109,496参照;この方法を免疫アッセイに用いている)。既に形成された複合体から一方の種を排除する競合性の被験物質を添加すると、バックグラウンドより高い信号が発生する。こうして、NGPCR/相互作用性結合パートナーの相互作用を撹乱する物質を同定できる。
【0154】
具体的態様においては、NGPCR融合タンパクを固定化のために調製できる。たとえばNGPCRまたはペプチドフラグメント(たとえばCDに対応するフラグメント)をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子に、pGEX−5X−1などの融合ベクターにより、得られる融合タンパク質においてその結合活性が維持されるように融合させる。相互作用性結合パートナーを精製し、前記セクション5.3に記載したルーティンに実施される方法でモノクローナル抗体を産生させる。この抗体を、たとえば当技術分野でルーティンに実施されている方法により放射性同位体125Iで標識する。不均質アッセイにおいては、たとえばGST−NGPCR融合タンパク質をグルタチオン−アガロースビーズに固定する。次いで、相互作用性結合パートナーを被験化合物の存在下または不存在下に、相互作用および結合が起きる条件下で添加する。反応期間の終了時に結合していない物質を洗い去り、標識モノクローナル抗体をこの系に添加し、複合体形成した成分に結合させる。グルタチオン−アガロースビーズに結合したままの放射能の量を測定することにより、NGPCR遺伝子生成物と相互作用性結合パートナーの相互作用を検出できる。被験化合物により相互作用が効果的に阻害されると、測定放射能が低下するであろう。
【0155】
あるいは、GST−NGPCRタンパク質と相互作用性結合パートナーを液体中、固体グルタチオン−アガロースビーズの不存在下で混合することができる。被験化合物は、これらの種を相互作用させる途中または相互作用の後のいずれに添加してもよい。次いでこの混合物をグルタチオン−アガロースビーズに添加し、結合していない物質を洗い去る。この場合も、標識抗体を添加し、ビーズに結合した放射能を測定することにより、NGPCR/結合パートナー相互作用の阻害度を検出できる。
【0156】
本発明の他の態様においては、NGPCRの結合性ドメインおよび/または相互作用もしくは結合パートナーに対応するペプチドフラグメントを、一方または両方の全長タンパク質の代わりに用いて、これらと同じ方法を採用できる(結合パートナーがタンパク質である場合)。当技術分野でルーティンに実施されている多数の方法のいずれかを用いて、結合性部位を同定および単離できる。これらの方法には、一方のタンパク質をコードする遺伝子の変異誘発、および同時免疫沈降アッセイにおける結合撹乱のスクリーニングが含まれるが、これらに限定されない。次いで、複合体中の第2種をコードする配列における代償変異を選択する。各タンパク質をコードする遺伝子の配列分析により、相互作用性結合に関与するタンパク質領域に対応する変異が明かになる。あるいは一方のタンパク質を前記方法で固体表面に固定し、それの標識された結合パートナーと相互作用させて結合させる。この結合パートナーは、タンパク質分解酵素、たとえばトリプシンで予め処理されている。洗浄後、結合ドメインを含む比較的短い標識ペプチドが固体材料と結合したまま残り、これを単離してアミノ酸配列決定法により同定できる。同様に、細胞内結合パートナーをコードする遺伝子が得られれば、そのタンパク質のペプチドフラグメントを発現するように短い遺伝子セグメントを遺伝子工学的に処理し、次いでこれらの結合活性を試験し、精製または合成することができる。
【0157】
限定ではないが、たとえば前記に従ってGST−NGPCR融合タンパク質を形成し、これをグルタチオン−アガロースビーズに結合させることにより、NGPCR遺伝子生成物を固体材料に固定することができる。相互作用性結合パートナーを放射能同位体、たとえば35Sで標識し、タンパク質分解酵素、たとえばトリプシンで開裂させる。次いで開裂生成物を固定GST−NGPCR融合タンパク質に添加し、結合させる。結合していないペプチドを洗い去った後、標識されている結合物質(細胞内結合パートナー結合ドメインである)を周知の方法で溶離、精製し、アミノ酸配列を分析する。こうして同定したペプチドを合成により製造し、または組換えDNA法を用いて適切な促進性タンパク質に融合させることができる。
【0158】
5.6医薬組成物
本明細書に記載したアッセイ法などにより同定された化合物は、たとえばNGPCR遺伝子生成物の生物学的機能を高めるのに有用である。そのような化合物を、多様な生理的障害または精神障害の処置のために療法有効量で患者に投与できる。療法有効量とは、発症の遅延、生物学的症状または顕性症状の軽減、阻止、抑制または変化を生じるのに十分な化合物量を表す。
【0159】
5.6.1 有効量
そのような化合物の毒性および療法有効性は、細胞培養または実験動物において医薬標準法、たとえばLD50(集団の50%に対して致死的な量)およびED50(集団の50%において療法上有効な量)により判定できる。毒性と療法有効性の用量比が治療指数であり、比率LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を示す化合物の方が好ましい。有害な副作用を示す化合物もある態様では使用できるが、罹患していない細胞に与える損傷の可能性を最小限に抑えることにより副作用を少なくするために、それらの化合物が罹患組織をターゲティングする送達システムを設計するように配慮すべきである。
【0160】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータを、ヒトに使用するための用量範囲の設定に利用できる。それらの化合物の用量は、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度範囲内にあることが好ましい。用量は、この範囲内で、用いる剤形および採用する投与経路に応じて変更できる。本発明方法に用いるいずれの化合物についても、まず細胞培養アッセイにより療法有効量を推定できる。動物モデルにおいて、細胞培養において測定したIC50(すなわち最大の症状阻害の半分を達成する被験化合物濃度)含む循環血漿濃度を達成するように設定する。そのような情報を利用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定できる。血漿濃度は、たとえば高速液体クロマトグラフィーにより測定できる。
【0161】
疾病の治療を熟考する場合、試験動物に対するキログラム重量あたりでの活性製剤の最大許容量(すなわちMTD)を決定する動物試験により、適切な用量を決定することもできる。一般に、試験される少なくとも1つの動物類は哺乳動物である。当業者は通常、ヒトを含む他の種に対する有用な用量および毒性回避のための用量を推定する。効能に関するヒトでの試験の前において、正常被検体でのフェーズI臨床試験は、安全な用量決定の助けとなる。
【0162】
さらに、活性薬剤は、例えば、該活性薬剤の安定性を高めるか、あるいはその薬剤的特性(例えば、生体内での半減期を長くする、毒性を低下させるなど)を高める、様々なすでに確立している化合物あるいは構造物と複合させることができる。
【0163】
治療剤は、当業者に既知の方法のいずれかにより投与されるが、それには制限的でない例として、吸入、皮下投与(sub−q)、静脈投与(I.V.)、腹腔投与(I.P.)、筋肉投与(I.M.)、鞘内投与、または局所投与(経皮、軟膏(ointment)、クリーム、軟膏(salve)、点眼薬など)を含む。
【0164】
5.6.2 医薬組成物および使用
本発明に従って使用する医薬組成物は、常法により1以上の医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤を用いて配合できる。たとえば本発明化合物およびそれらの生理学的に許容できる塩類および溶媒和物を、吸入もしくは吹入れ(口または鼻から)、または経口、口腔、非経口、頭蓋内、局所、くも膜下または直腸投与により投与できる。
【0165】
経口投与のためには、医薬組成物は常法により、たとえば下記の医薬的に許容できる賦形剤を用いて、たとえば錠剤またはカプセル剤の形をとることができる:結合剤(たとえばプレゲル化したトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(たとえば乳糖、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(たとえばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(たとえばバレイショデンプンまたはグリコール酸デンプンナトリウム);または湿潤剤(たとえばラウリル硫酸ナトリウム)。錠剤を当技術分野で周知の方法によりコーティングできる。経口投与用の液体製剤はたとえば液剤、シロップ剤または懸濁液剤の形をとるか、あるいは使用前に水または他の適切なビヒクルで調製するための乾燥製剤として供給することができる。そのような液体製剤は常法により、たとえば下記の医薬的に許容できる添加剤を用いて調製できる:沈殿防止剤(たとえばソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂肪);乳化剤(たとえばレシチンまたはアラビアゴム);非水性ビヒクル(たとえばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分画した植物油);および保存剤(たとえばp−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロピル、またはソルビン酸)。製剤は緩衝塩類、着香剤、着色剤および甘味剤を適宜含有してもよい。
【0166】
経口投与用製剤は、有効化合物の制御放出に適するように配合することもできる。
【0167】
口腔投与のためには、組成物は常法により配合した錠剤またはカプセル剤の形をとることができる。
【0168】
吸入による投与のためには、本発明により使用する化合物をエアゾルスプレー製剤の形で加圧パックまたは噴霧器から、適切な噴射剤、たとえばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスを用いて送達するのが好都合である。加圧エアゾル剤の場合、計量された量を送達する弁を設けることにより投与単位を決定できる。化合物および適切な粉末基剤(たとえば乳糖またはデンプン)の粉末ミックスを収容した、吸入器または吹入れ器に使用するための、たとえばゼラチン製のカプセルまたはカートリッジを調製できる。
【0169】
本発明化合物を注射、たとえばボーラス注射、または連続注入による非経口投与用に配合できる。注射用配合物は単位投与剤形で、たとえばアンプルまたは多数回分の容器に入れ、保存剤を添加して供給することができる。組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液剤、液剤または乳剤の形をとることができ、配合用剤、たとえば沈殿防止剤、安定剤および/または分散剤を含有してもよい。あるいは有効成分は適切なビヒクル、たとえば発熱物質を含有しない無菌水で使用前に調製するための粉末状であってもよい。
【0170】
本発明化合物を直腸用組成物、たとえば坐剤または貯留浣腸剤、たとえば一般的な坐剤基坐剤(たとえばカカオ脂または他のグリセリド)を含有するものとしても配合できる。
【0171】
上記配合物のほか、本発明化合物はデポー製剤としても配合できる。そのような長時間作用型配合物は埋込み(たとえば皮下または筋肉内)または筋肉注射により投与できる。たとえば本発明化合物を適切なポリマーまたは疎水性材料と共に(たとえば許容できる油中の乳剤として)、もしくはイオン交換樹脂と共に、または貧溶性誘導体、たとえば貧溶性塩として配合することができる。
【0172】
本発明組成物は、有効成分を含有する1以上の単位剤形を入れたパックまたはディスペンサー器具として提供することもできる。パックはたとえば金属箔またはプラスチック箔を含むブリスターパックなどを含む。パックまたはディスペンサー器具には投与指示書を添付することができる。
【0173】
本発明の範囲は本明細書に記載した具体的態様により限定されない。これらの態様は本発明の個々の態様を説明するために示したにすぎず、機能的に均等な方法および成分は本発明の範囲に含まれる。実際に、本明細書に例示および記載したもののほか本発明の種々の変更が、以上の記載から当業者に明らかになるであろう。そのような変更も本発明の範囲に含まれる。本明細書に引用したすべての参考文献、特許および特許出願の全体を参考として援用する。
Claims (5)
- 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号7からなる群から得られるヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
- (a)配列番号:2に示すアミノ酸配列をコードし;かつ
(b)ストリンジェントな条件下で配列番号:1のヌクレオチド配列またはその相補配列にハイブリダイズする
ヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。 - 前記分子がcDNAである、請求項1記載の単離核酸分子。
- 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6および配列番号:8からなる群から得られるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
- 配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5および配列番号:7からなる群から得られるヌクレオチド配列を含む、単離発現ベクター。
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