JP2004530647A - 高眼圧治療用眼薬組成物 - Google Patents

高眼圧治療用眼薬組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2004530647A
JP2004530647A JP2002561014A JP2002561014A JP2004530647A JP 2004530647 A JP2004530647 A JP 2004530647A JP 2002561014 A JP2002561014 A JP 2002561014A JP 2002561014 A JP2002561014 A JP 2002561014A JP 2004530647 A JP2004530647 A JP 2004530647A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alkyl
compound
alkoxy
aryl
scor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2002561014A
Other languages
English (en)
Inventor
ガルシア,マリア・エル
カクゾロウスキー,グレゴリー・ジエイ
ガオ,イン−ドウオ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Merck and Co Inc
Original Assignee
Merck and Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Merck and Co Inc filed Critical Merck and Co Inc
Publication of JP2004530647A publication Critical patent/JP2004530647A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C327/00Thiocarboxylic acids
    • C07C327/20Esters of monothiocarboxylic acids
    • C07C327/32Esters of monothiocarboxylic acids having sulfur atoms of esterified thiocarboxyl groups bound to carbon atoms of hydrocarbon radicals substituted by carboxyl groups
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/24Antidepressants
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/28Drugs for disorders of the nervous system for treating neurodegenerative disorders of the central nervous system, e.g. nootropic agents, cognition enhancers, drugs for treating Alzheimer's disease or other forms of dementia
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P27/00Drugs for disorders of the senses
    • A61P27/02Ophthalmic agents
    • A61P27/06Antiglaucoma agents or miotics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P3/00Drugs for disorders of the metabolism
    • A61P3/08Drugs for disorders of the metabolism for glucose homeostasis
    • A61P3/10Drugs for disorders of the metabolism for glucose homeostasis for hyperglycaemia, e.g. antidiabetics
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P9/00Drugs for disorders of the cardiovascular system
    • A61P9/06Antiarrhythmics

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Diabetes (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Ophthalmology & Optometry (AREA)
  • Psychiatry (AREA)
  • Emergency Medicine (AREA)
  • Heart & Thoracic Surgery (AREA)
  • Cardiology (AREA)
  • Hospice & Palliative Care (AREA)
  • Obesity (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Pain & Pain Management (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Abstract

本発明は、患者の眼球において高眼内圧を生じる緑内障および他の状態の治療での強力なカリウムチャンネル遮断薬またはそれの製剤の使用に関する。本発明はまた、哺乳動物、特にはヒトの眼球に対して神経保護効果を提供する上でのそのような化合物の使用に関するものでもある。

Description

【技術分野】
【0001】
緑内障は、眼内圧が高くなり過ぎて、正常な眼球機能を行うことができなくなる眼球の変性疾患である。結果的に、視神経頭に損傷が生じて、視力が不可逆的に失われる場合がある。治療を行わないと、緑内障のために最終的に失明する場合がある。現在では、高眼圧、すなわち視神経頭損傷や特徴的な緑内障性視野欠損を伴わない眼内圧が高い状態は、緑内障発症における最も早期を代表しているに過ぎないと多くの眼科医が考えている。
【背景技術】
【0002】
緑内障治療にこれまで使用されてきた薬剤の多くが、あまり満足できるものではないことが明らかになっている。初期の緑内障治療方法はピロカルピンを用いるものであり、望ましくない局所効果が生じ、そのためにこの薬剤は、貴重な薬剤ではあるが、第一候補薬としては不十分なものとなっていた。さらに最近では、多くのβ−アドレナリン拮抗薬が、眼内圧降下においては有効であることを臨床医が認めている。これら薬剤の多くがこの目的には有効であるが、その治療が有効でなかったり、効果が不十分である患者も存在する。これら薬剤の多くが、膜安定化活性などの他の特性も持ち、それは用量上昇に伴って顕著になり、その薬剤は慢性的な眼球への使用には許容できないものとなり、しかも心血管効果を生じる可能性もある。
【0003】
ピロカルピンおよびβ−アドレナリン拮抗薬は眼内圧を低下させるが、それら薬剤のいずれも酵素である炭酸脱水素酵素を阻害することでその作用を発現しないことから、炭酸脱水素酵素経路によって生じる房水形成への寄与低減を利用するものではない。
【0004】
炭酸脱水素酵素阻害薬と称される薬剤は、炭酸脱水素酵素を阻害することで房水生成を低減させる。現在、そのような炭酸脱水素酵素阻害薬を用いて全身経路および局所経路によって眼内圧の治療が行われているが、それらの薬剤を用いる現行の療法、特には全身経路を用いる療法にも望ましくない効果がないわけではない。炭酸脱水素酵素阻害薬は基礎的な生理プロセスを変える上で高い効果を有することから、全身投与経路の回避は、代謝性アシドーシス、嘔吐、しびれ、刺痛、全身倦怠などの炭酸脱水素酵素の阻害によって生じる副作用を、完全に排除できなくとも軽減する上で有効である。局所的に有効な炭酸脱水素酵素阻害薬は、米国特許第4386098号;同4416890号;同4426388号;同4668697号;同4863922号;同4797413号;同5378703号;同5240923号;および同5153192号に開示されている。
【0005】
プロスタグランジン類およびプロスタグランジン誘導体は、眼内圧を低下させることが知られている。ビト(Bito)への米国特許第4883819号には、眼内圧低下におけるPGA類、PGB類およびPGC類の使用および合成について記載されている。ゴーら(Goh et al.)への米国特許第4824857号には、C−10が窒素に置き換わっている誘導体を含む、眼内圧低下でのPGD2およびそれの誘導体の使用および合成が記載されている。ウエノら(Ueno et al.)への米国特許第5001153号には、眼内圧低下への13,14−ジヒドロ−15−ケトプロスタグランジン類およびプロスタグランジン誘導体の使用および合成について記載されている。米国特許第4599353号には、眼内圧低下におけるプロスタグランジン類およびプロスタグランジン阻害薬などのエイコサノイド類およびエイコサノイド誘導体の使用について記載されている。
【0006】
プロスタグランジンおよびプロスタグランジン誘導体は、ブドウ膜強膜流出増加によって眼内圧を低下させる。これは、F型およびA型の両方のプロスタグランジン類に当てはまることから、恐らくB、C、D、EおよびJ型のプロスタグランジン類およびそれらの誘導体についても当てはまると考えられる。プロスタグランジン誘導体を用いる眼内圧低下での問題は、それらの化合物が多くの場合、眼内圧の初期上昇を誘発し、眼球着色の色を変える場合があり、眼球周囲の一部組織の増殖を引き起こす点である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
明らかなように、緑内障および高眼内圧の治療には現行の治療法がいくつかあるが、それらの薬剤の効力および副作用プロファイルは理想的なものではない。現在、カリウムチャンネル遮断薬が眼球における眼内圧を低下させることが認められていることから、それは高眼圧およびそれに関連する変性性眼球状態の治療に対してさらなる方途を提供するものである。カリウムチャンネルの遮断は、体液分泌を低減させ、状況によっては平滑筋収縮を増加させることができ、IOPを低下させ、眼球における神経保護効果を有することが期待されるものと考えられる(米国特許第5573758号および同5925342号;Moore, et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci 38, 1997;WO 89/10757、WO 94/28900およびWO 96/33719参照)。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、強力なカリウムチャンネル遮断薬、それの使用または緑内障および患者の眼球における高眼内圧に関係する他の状態の治療におけるその薬剤の製剤に関する。本発明はまた、そのような化合物の使用による哺乳動物、特にはヒトの眼球に対する神経保護効果の提供に関するものでもある。より詳細には本発明は、下記式Iを有するエタンカルボチオS酸エステル化合物あるいはそれの製薬上許容される塩、エナンチオマー、ジアステレオマーまたは混合物を用いる緑内障および/または高眼圧(高眼内圧)の治療に関する。
【0009】
【化1】
式中、
RおよびRは独立に、C1−6アルキル、(CHアリール、(CHヘテロアリール、(CH複素環アルキルを表し;前記アルキル、アリールまたはヘテロアリールは1〜3個のR基で置換されていても良く;
Yは、−(CHSCORを表し;
Xは、CHまたはO(mが非存在である場合)を表し;
は、水素、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、CF、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−6アルキルアミノまたはハロゲンを表し;
は、C1−6アルコキシまたはC1−6アルキルを表し;
は、H、ハロ、OH、NO、NH、CN、アルコキシ、−COO−、アルコキシカルボニル、ハロアルキル、アルコキシカルボニルアルキルまたはアルキルスルホニルを表し;
mは、1〜3を表し;および/または
nは0〜3を表す。
【0010】
本発明の上記および他の態様は、本発明を全体として検討することで明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、式Iのカリウムチャンネル遮断薬および製薬上許容される担体を含む組成物の投与、好ましくは局所投与または眼内(intra-camaral)投与による高眼内圧の低下または緑内障の治療方法に関する。
【0012】
本発明の1実施形態は、RがisC1−6アルキルまたは(CHアリールであり;他の全ての可変因子が最初に記載の通りである場合に実現される。
【0013】
本発明の別の実施形態は、RがC1−6アルキルまたは(CHアリールであり;他の全ての可変因子が最初に記載の通りである場合に実現される。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態は、XがCHであり;他の全ての可変因子が最初に記載の通りである場合に実現される。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態は、Yが−(CHSCORであり、n=0であり;他の全ての可変因子が最初に記載の通りである場合に実現される。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、Yが−(CHSCORであり、n=1〜3であり;他の全ての可変因子が最初に記載の通りである場合に実現される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態は、Rが(CHアリールであり;RがC1−6アルキルであり;Yが(CHSCORであり;XがCHであり;m=1である場合に実現される。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態は、Rが(CHアリールであり;RがC1−6アルキルであり;Yが(CHSCORであり;XがCHであり;m=2である場合に実現される。
【0019】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、RがC1−6アルキルであり;Rが(CHアリールであり;Yが(CHSCORであり;XがCHであり;m=2である場合に実現される。
【0020】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、Rが(CHアリールであり;Rが(CHアリールであり;Yが(CHSCORであり;XがCHであり;m=2である場合に実現される。
【0021】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、RがHであり;他の可変因子が全て最初に記載の通りである場合に実現される。
【0022】
本発明の好ましい化合物は、以下の通りである。
【0023】
【化2】
【0024】
本明細書においては、別段の断りがない限り、以下に定義の用語を用いて本発明を詳細に説明する。
【0025】
「アルキル」という用語は、別段の定義がない限り、1〜10個の炭素原子を有する1価アルカン(炭化水素)由来の基を指す。それは、直鎖、分岐または環状であることができる。好ましいアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどがある。アルキル基がアルキル基で置換されているという場合、それは「分岐アルキル基」と互換的に使用される。
【0026】
シクロアルキルは、炭素原子間に交互および共鳴する二重結合を持たない、3〜15個の炭素原子を有するアルキル類である。それは、縮合した1〜4個の環を有することができる。
【0027】
アルコキシはC〜Cアルキル−O−を指し、そのアルキル基は本明細書に記載のように置換されていても良い。
【0028】
ハロゲン(ハロ)は、塩素、フッ素、ヨウ素または臭素を指す。
【0029】
アリールは、フェニル、置換フェニルなどの芳香環、ならびにナフチル、フェナントレニルなどの縮合した環を指す。従ってアリール基は、少なくとも6個の原子を有する少なくとも1個の環を有し、そのような環は5個まで存在し、そこで22個以下の原子が含まれ、隣接する炭素原子間または好適なヘテロ原子間で交互(共鳴)二重結合がある。好ましいアリール基は、フェニル、ナフチルおよびフェナントレニルである。アリール基も同様に、上記で定義のように置換されていても良い。好ましい置換アリールには、フェニルおよびナフチルなどがある。
【0030】
「複素環アルキル」という用語は、環中の炭素原子のうちの1個がO、SまたはNから選択されるヘテロ原子によって置き換わっており、3個以下の別の炭素原子がヘテロ原子によって置き換わっていても良いシクロアルキル基(非芳香族)を指す。
【0031】
「ヘテロ原子」という用語は、独立に選択されるO、SまたはNを意味する。
【0032】
「ヘテロアリール」という用語は、5個または6個の環原子を有する単環式芳香族炭化水素基、あるいは8〜10個の原子を有する二環式芳香族基であって、少なくとも1個のヘテロ原子、すなわちO、SもしくはNを有し、炭素原子または窒素原子が結合箇所であり、1個もしくは2個の別の炭素原子がOもしくはSから選択されるヘテロ原子によって置き換わっていても良く、1〜3個の別の炭素原子が窒素ヘテロ原子によって置き換わっていても良いものを指し、そのヘテロアリール基は本明細書に記載のように置換されていても良い。その種のものの例には、ピロール、ピリジン、オキサゾール、チアゾールおよびオキサジンがある。最初の窒素および酸素もしくは硫黄とともに別の窒素原子が存在して、例えばチアジアゾールを与えるものであっても良い。
【0033】
本発明はまた、処置を必要とする患者に対して、チモロールなどのβ−アドレナリン遮断剤、ピロカルピンなどの副交感神経興奮様薬、ドルゾールアミド(dorzolamide)、アセタゾールアミド、メタゾールアミド(metazolamide)もしくはブリンゾールアミド(brinzolamide)などの炭酸脱水素酵素阻害薬、ラタノプロスト(latanoprost)、レクラ(recula)、S1033などのプロスタグランジン、またはプロスタミド(prostamide)(AGN192024)などのPGF2αプロスタグランジン類由来の血圧降下性脂質との併用で式Iの化合物のいずれかを投与することで、高眼圧または緑内障を治療する方法に関するものでもある。血圧降下性脂質(基本的なプロスタグランジン構造のα−鎖連結上のカルボン酸基が電気化学的に中性の置換基で置き換わっている)の例は、そのカルボン酸基がOCH(PGF2a1−OCH)などのC1−6アルコキシ基または水酸基(PGF2a1−OH)で置き換わったものである。
【0034】
好ましいカリウムチャンネル遮断薬は、カルシウム活性化カリウムチャンネル遮断薬である。より好ましいカリウムチャンネル遮断薬は、高伝導性のカルシウム活性化カリウム(maxi−K)チャンネル遮断薬である。maxi−Kチャンネルは、ニューロン、内分泌平滑筋および上皮組織に広くあり、膜電位および細胞内Ca2+依存性であるイオンチャンネル類である。
【0035】
眼内圧(IOP)は、房水の力学によって制御される。房水は、非色素毛様体上皮のレベルで産生され、主として強角膜線維柱帯からの流出によって除去される。房水流入は、イオン輸送プロセスによって制御される。非色素毛様体上皮細胞でのmaxi−Kチャンネルが、2つの機序によって間接的に塩化物分泌を制御すると考えられる。これらのチャンネルは、細胞からの塩化物流出の駆動力を提供する過分極膜電位(内部が負)を維持し、さらにそのチャンネルは塩化物イオンの移動のための対イオン(K)も提供する。水がKClとともに受動的に移動して、房水の産生を可能とする。この組織におけるmaxi−Kチャンネルの阻害が、流入を低下させると考えられる。maxi−Kチャンネルが、ある種の平滑筋組織の収縮性を制御することも明らかになっており、場合によっては、チャンネル遮断薬が休止筋肉を収縮させたり、あるいは自発活動性組織の筋原性活動を増加させることができる。毛様体筋の収縮は、ピロカルピンで起こるように、強角膜線維柱帯を開放し、房水流出を刺激するものと考えられる。従ってmaxi−Kチャンネルは、いくつかの形で房水力学に大きく影響するものと考えられる。このチャンネルの遮断は、流入もしくは流出プロセスに影響することで、あるいは流入/流出プロセスの両方への影響の組み合わせによってIOPを低下させるものと考えられる。
【0036】
本発明は、maxi−Kチャンネルが、遮断されると、正味溶質およびHOの流出を阻害することで房水産生を阻害し、従ってIOPを低下させるという知見に基づいたものである。この知見は、maxi−Kチャンネル遮断薬が黄斑浮腫および黄斑変性などの他の眼科的機能障害の治療において有用であることを示唆している。IOPの低下が網膜および視神経への血流を促進することが知られている。従って本発明の化合物は、黄斑浮腫および/または黄斑変性の治療において有用である。
【0037】
黄斑浮腫は、眼球の後極における非常に重要な中心視覚領域内にある網膜内での腫脹である。網膜内での液の蓄積は、神経要素を互いに分離し、その局所血液供給から分離することで、その領域での視覚機能の休止を生じる傾向がある。
【0038】
緑内障は、視神経の進行性萎縮を特徴とし、高眼内圧(IOP)を伴う場合が非常に多い。しかしながら、神経保護効果を与える薬剤を用いることで、必ずしもIOPに影響を与えることなく、緑内障を治療することが可能である(Arch. Ophthalmol. Vol. 112, Jan 1994, pp. 3744; Investigative Ophthamol. & Visual Science, 32,5, April 1991, pp. 1593-99参照)。IOPを低下させるmaxi−Kチャンネル遮断薬が神経保護効果を提供する上で有用であると考えられている。それらの薬剤は、IOPを低下させることで網膜および視神経頭血液速度を高め、網膜および視神経の酸素を増加させる上で有効であるとも考えられており、それらが組み合わされると視神経の健康に有効である。その結果、本発明はさらに、網膜および視神経頭血液速度を高める方法、網膜および視神経酸素分圧を高める方法、神経保護効果を与える方法、またはそれらの組み合わせに関する。
【0039】
上記のように、カリウムチャンネル拮抗薬は、ヒトなどの哺乳動物での多くの生理的障害において有用である。カリウムチャンネルなどのイオンチャンネルは、全ての哺乳動物細胞において認められ、各種の生理プロセスおよび正常な細胞ホメオスタシスの調節に関与している。カリウムイオンは休止膜電位を制御し、カリウムイオンの流出は細胞脱分極後に細胞膜の再分極を生じさせる。カリウムチャンネル拮抗薬は再分極を防止し、細胞を脱分極・興奮状態に留めることができる。
【0040】
多くの異なるカリウムチャンネルサブタイプがある。生理的には、最も重要なカリウムチャンネルサブタイプの一つは、ニューロンおよび内分泌組織、平滑筋および上皮組織に存在するMaxi−Kチャンネルである。細胞内カルシウム濃度(Ca2+i)および膜電位が、これらのチャンネルを開閉する。例えば、Maxi−Kチャンネルが開放されて、細胞内Ca2+濃度上昇または膜脱分極(電位変化)によって、カリウムイオンを流出させることができる。神経伝達物質放出には、細胞内カルシウム濃度の上昇が必要である。従ってmaxi−Kチャンネル活性の調節が、膜電位を制御することで神経末端からの神経伝達物質放出に影響し、それが次に、電圧依存性カルシウムチャンネルを介して細胞外Ca2+流入に影響する。従って本発明の化合物は、神経伝達物質放出が障害されている神経障害の治療において有用である。
【0041】
多くの市販薬がカリウムチャンネル拮抗薬として機能する。これらのうちで最も重要なものには、グリブリド、グリピジドおよびトルブタミドという化合物などがある。これらのカリウムチャンネル拮抗薬は、抗糖尿病薬として有用である。本発明の化合物は、糖尿病治療用のこれら化合物の1以上と併用することができる。
【0042】
カリウムチャンネル拮抗薬は、クラス3抗不整脈剤としても有用であり、ヒトにおける急性梗塞の治療に使用される。多くの天然毒物が、カリウムチャンネルを遮断することが知られており、それにはアパミン、イベリオトキシン(Iberiotoxin)、カリブドトキシン、ノキシウストキシン(Noxiustoxin)、カリオトキシン(Kaliotoxin)、デンドロトキシン、肥満細胞脱果粒(MCD)ペプチドおよびβ−ブンガロトキシン(β−BTX)などがある。本発明の化合物は、不整脈を治療するこれらの化合物の1以上と併用することができる。
【0043】
抑鬱は、神経伝達物質放出の低下に関係するものである。現在の抑鬱治療には、神経伝達物質取り込みの遮断薬、ならびに神経伝達物質の寿命を延長する作用を有する神経伝達物質分解に関与する酵素の阻害薬などがある。
【0044】
アルツハイマー病も、神経伝達物質放出低減を特徴とする。アルツハイマー病は、認識および機能の重大な障害を生じる脳の神経変性疾患である。この疾患は、記憶および学習機能の進行性の退行を生じる。アルツハイマー病は、コリン作働性ニューロン、ならびにセロトニン作働系、ノルアドレナリン作働系および他の中枢神経伝達物質系に影響を与える複雑な疾患である。アルツハイマー病の発現は、記憶喪失を超えて拡大し、人格変化、神経筋変化、発作および場合により精神病的特徴などがある。
【0045】
アルツハイマー病は、米国において最も一般的な種類の痴呆である。85歳を超える高齢者の47%までがアルツハイマー病であることを示唆する推計もある。人口の平均年齢は上昇しつつあることから、アルツハイマー病の頻度は上昇しつづけており、緊急の対応が必要である。アルツハイマー病は、それの予防や治療に使用できる十分な方法が現在ではないことから、困難な医学的問題である。
【0046】
アルツハイマー病治療に関して、3種類の薬剤が検討されている。第1の種類は、アセチルコリン神経伝達物質機能を高める化合物からなる。現在、抗コリンエステラーゼ薬などのコリン作働性強化剤が、アルツハイマー病治療に用いられている。特に、アセチルコリンエステラーゼの阻害薬であるフィソスチグミン(エゼリン)がその治療に用いられている。フィソスチグミンの投与は、それの効果の半減期が短く、経口生物学的利用能が低く、特に消化系に対する重度の用量制限的な副作用によってかなり限定されるという欠点を有する。タクリン(テトラヒドロアミノクリジン)が、用いられている別のコリンエステラーゼ阻害薬である。しかしながらその化合物は肝臓毒性を生じる場合がある。
【0047】
アルツハイマー病治療のために検討されている第2の種類の薬剤は、ニューロン代謝に影響するがそれ以外ではほとんど影響しない向知性薬である。これらの薬剤は、ニューロン代謝活性を高めることで神経細胞機能を改善する。ピラセタムは、アセチルコリン前駆体との併用で有用となり得るもので、ニューロンにおける少量の機能性アセチルコリン放出を保持しているアルツハイマー病患者において有効となり得る向知性薬である。オキシラセタムは、アルツハイマー病治療のために検討されている別の薬剤である。
【0048】
第3の種類の薬剤は、脳血管系に影響する薬剤である。メシル酸エルゴロイドの混合物が、痴呆の治療に用いられる。メシル酸エルゴロイドは、血管抵抗を低下させることで、脳血流を高めるものである。主として脳血管系に影響を与える選択的カルシウムチャンネル遮断薬であるニモジピンなどのカルシウムチャンネル遮断薬も用いられる。
【0049】
その他の薬剤は、アルツハイマー病で認められる他の欠陥を改善することを目的としたものである。脳のドーパミンおよびノルエピネフリンを増加させるモノアミン系オキシダーゼB阻害薬であるセレギリンが、一部のアルツハイマー病患者において軽度の改善を生じたと報告されている。アルミニウムキレート化剤が、アルツハイマー病がアルミニウムの毒性によるものであると考えている人々の関心を引いている。神経緩解剤および不安緩解剤などの行動に影響を与える薬剤が用いられている。神経緩解剤の副作用は、傾眠および抗コリン作働性効果から錐体外路副作用に至るものである。これら薬剤の他の副作用には、発作、抗利尿ホルモンの不適切な分泌、黄疸、体重増および混乱状態亢進などがある。軽度の精神安定剤である不安緩解剤は、神経緩解剤より効果は低いが、副作用もそれより軽度である。しかしながら、これらの行動に影響する薬剤の使用については、現在も議論の余地がある。本発明は、カリウムチャンネル拮抗薬として有用な新規な化合物に関する。抑鬱、記憶障害およびアルツハイマー病などのある種の疾患は、神経伝達物質放出における障害の結果であると考えられている。従って本発明のカリウムチャンネル拮抗薬は、アセチルコリン、セロトニンおよびドーパミンなどの神経伝達物質の非特異的放出を刺激するはずである細胞興奮薬として使用可能である。神経伝達物質放出促進は、抑鬱およびアルツハイマー病に関連する症状を緩和するはずである。
【0050】
本発明の範囲に含まれる化合物は、カリウムチャンネル拮抗薬活性を示すことから、カリウムチャンネル機能障害に関連する障害において有用である。アルツハイマー病、記憶喪失または抑鬱などの多くの認識障害に対して、セロトニン、ドーパミンまたはアセチルコリンなどの神経伝達物質の放出促進が有効である可能性がある。maxi−Kチャンネルの遮断は細胞脱分極を維持することから、これらの重要な神経伝達物質の分泌を促進する。
【0051】
本発明の化合物は、アルツハイマー病の治療において、フィソスチグミン(エゼリン)およびタクリン(テトラヒドロアミノクリジン)などの抗コリンエステラーゼ薬、ピラセタム、オキシラセタム、メシル酸エルゴロイド類などの向知性薬、ニモジピンなどの選択的カルシウムチャンネル遮断薬、またはセレギリンなどのモノアミン系オキシダーゼB阻害薬と併用することができる。本発明の化合物は、不整脈の治療において、アパミン、イベリオトキシン、カリブドトキシン、ノキシウストキシン、カリオトキシン、デンドロトキシン、肥満細胞脱果粒(MCD)ペプチド、β−ブンガロトキシン(β−BTX)またはそれらの組み合わせと併用することもできる。本発明の化合物はまた、グリブリド、グリピジド、トルブタミドまたはこれらの組み合わせと併用して、糖尿病を治療することもできる。
【0052】
本明細書における例は、特許請求される発明を説明するものであって、それを限定するものではない。特許請求される各化合物はカリウムチャンネル拮抗薬であることから、細胞を脱分極状態に維持して神経伝達物質放出を最大とすることが望ましい前述の神経障害において有用である。本発明で製造される化合物を、好適かつ公知の製薬上許容される賦形剤と容易に組み合わせて、ヒトなどの哺乳動物に投与して効果的なカリウムチャンネル遮断を行うことができる組成物が製造される。
【0053】
本発明で使用されるmaxi−Kチャンネル遮断薬は、治療上有効量で、静脈投与、皮下投与、局所投与、経皮投与、非経口投与その他の当業者には公知の方法で投与することができる。眼科医薬組成物は好ましくは、液剤、懸濁液、軟膏、クリームの形態でまたは固体挿入物として眼球に局所投与するように製造する。この化合物の眼科製剤は、0.01〜5%、特には0.5〜2%の医薬を含むことができる。例えば約10%などのそれより高い用量またはそれより低い用量を、その用量が眼内圧を低下させ、緑内障を治療し、血流速度を上昇させ、あるいは酸素分圧を上昇させる上で有効である場合には用いることができる。単回投与の場合、0.001〜5.0mg、好ましくは0.005〜2.0mg、特には0.005〜1.0mgの前記化合物を、ヒトの眼球に投与することができる。
【0054】
前記化合物を含む医薬製剤は簡便には、無毒性の医薬有機担体と、あるいは無毒性の医薬無機担体と混合することができる。製薬上許容される担体の代表的なものには、例えば水、水と低級アルカノール類もしくはアラルカノール類などの水混和性溶媒との混合物、植物油、落花生油、ポリアルキレングリコール類、石油系ゼリー、エチルセルロース、オレイン酸エチル、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ミリスチン酸イソプロピルおよび他の従来使用されている許容される担体がある。医薬製剤は、乳化剤、保存剤、湿展剤、増ちょう剤などの無毒性の補助物質を含有することもでき、それには例えばポリエチレングリコール200、300、400および600、カーボワックス1000、1500、4000、6000および10000、4級アンモニウム化合物、低温滅菌性を有し使用時に無害であることが知られているフェニル水銀塩、チメロサール、メチルおよびプロピルパラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノールなどの抗菌成分、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム類、グルコン酸緩衝剤などの緩衝剤成分、ならびにモノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、オレイン酸化合物、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、モノチオグリセリン、チオソルビトール、四酢酸エチレンジアミンなどの他の従来の成分などがある。さらに、従来のリン酸緩衝液媒体系、等張性ホウ酸媒体、等張性塩化ナトリウム媒体、等張性ホウ酸ナトリウム媒体などの本発明用の担体媒体として、好適な眼科媒体を用いることができる。前記医薬製剤は、微粒子製剤の形態とすることもできる。前記医薬製剤は、固体挿入物の形態とすることもできる。例えば、医薬用担体として固体の水溶性ポリマーを用いることができる。挿入物を形成するのに用いられるポリマーは、水溶性の無毒性ポリマーであることができ、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、(ヒドロキシ低級アルキルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリアクリル酸塩、エチルアクリル酸化合物、ポリアセチルアミド類などのアクリル酸化合物;ゼラチン、アルギン酸化合物、ペクチン類、トラガカントガム、カラヤガム、ツノマタ、寒天、アカシアなどの天然物;酢酸デンプン、ヒドロキシメチルデンプンエーテル類、ヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン誘導体、ならびにポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキサイド、中性カルボポール(carbopol)およびキサンタンガム、ゲランガムなどの他の合成誘導体、そしてそのポリマーの混合物などがある。
【0055】
本発明の製剤を投与するのに好適な被験者には、霊長類、ヒトおよび他の動物、特にはヒトならびにネコおよびイヌなどの家畜などがある。
【0056】
医薬製剤は、例えばチメロサール、塩化ベンザルコニウム、メチルおよびプロピルパラベン、臭化ベンジルドデシニウム、ベンジルアルコールもしくはフェニルエタノールなどの使用時に有害性のない抗菌成分;塩化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムまたはグルコン酸緩衝剤などの緩衝剤成分;ならびにモノラウリル酸ナトリウム、トリエタノールアミン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、四酢酸エチレンジアミンなどの他の従来の成分などの無毒性補助物質を含むことができる。
【0057】
眼科液剤または懸濁液は、眼球において許容されるIOPレベルを維持する上で必要な回数で投与することができる。哺乳動物眼球への投与を1日約1回または2回とすることが想到される。
【0058】
局所眼球投与の場合、本発明の新規製剤は液剤、ゲル、軟膏、懸濁液または固体挿入物の剤型を取ることができ、単位製剤が治療上有効量の活性成分または併用療法の場合にはそれの数倍分を含むように製剤することができる。
【0059】
本発明の化合物の製造方法は、WO 9512603、WO 9635712、EP 322633、JO 3002−117およびUS 3246025に記載されている。
【0060】
詳細に本発明の化合物は、米国特許第5629343号およびWO 9616027(これらは参照によって本明細書に組み込まれる)に従って、それに若干の変更を加えて製造することができる。例として挙げた以下の実施例は、本発明を説明するためのものである。
【実施例1】
【0061】
2−[2−(フェニル)エチル]マロン酸ジエチル
記載の手順に従って(J. Med. Chem., 1984, 27, 967-978)、2リットルの三頸丸底フラスコに、均圧滴下漏斗および水冷冷却管を取り付けた。大きいテフロンコーティング磁気撹拌子を入れ、フラスコを窒素下に火炎で乾燥させた。水酸化ナトリウム(鉱油中60%品、42g、1.06mol)をフラスコに加え、固体をヘキサン40mLで3回洗浄することで鉱油を除去した。脱水テトラヒドロフラン(THF)(カリウム/ベンゾフェノンで蒸留)1リットルを、窒素下にフラスコに加えた。鉱油気泡管をゴム隔壁によってフラスコに取り付け、温度を<18℃に維持しながらマロン酸ジエチルを1時間滴下した。水素発生が止んだら、1−ブロモエチルベンゼン107.5g(1.06mol)を冷却下に(<30℃)30分間かけて滴下した。溶液を終夜緩やかに還流させた。混合物を冷却して室温とし、HCl 150mmolを含む氷水200mLに投入し、5分間撹拌した。有機層を分液し、水層をエーテル100mLで3回抽出した。有機層を合わせ、飽和重炭酸ナトリウム100mLで2回、ブライン100mLで1回洗浄した。溶液を無水MgSOで脱水した。エーテルを減圧下に除去し、生成物を減圧蒸留した(沸点=146〜148℃;1.5mmHg)。生成物203gを回収した(収率=72%)。
【0062】
2−[2−(フェニル)エチル]マロン酸モノエチル
報告の手順(J. Med. Chem, 1982, 24, 109-113)に従って、テフロンコーティング撹拌子を入れた2リットル丸底フラスコ中、2−[2−(フェニル)エチル−マロン酸ジエチル(200g、0.756mol)を純粋エタノール600mLに溶かした。溶液を氷浴で冷却して5℃とした。次に高撹拌溶液に、溶液温度を15℃以下に維持しながら、水酸化カリウム(85%)49.9gの純粋エタノール(600mL)溶液を2時間かけて滴下した。溶液を窒素下に25℃で終夜撹拌した。エタノールを減圧下に除去し、シロップ状残留物を氷水800mLに溶かした。溶液をエーテル200mLで2回洗浄し、水層を濃HClで酸性とし(pH<3)、エーテル300mLで3回抽出した。合わせたエーテル層をブラインで洗浄し、無水MgSOで脱水した。溶液を濾過し、エーテルを減圧下に除去して透明油状物を得た。生成物162gを回収した(収率90%)。
【0063】
2−メチレン−4−フェニル酪酸エチルエステル
テフロンコーティング撹拌子を入れた40mL丸底フラスコに、2−[2−(フェニル)エチル]マロン酸モノエチル(47.2g、200mol)を加えた。ピペリジン(3mL)およびパラホルムアルデヒド(8.4g、280mmol)をフラスコに加え、ガス発生が止むまでフラスコを55〜60℃で加熱した。TLCによって、原料が残っていないことが示された。減圧下に溶媒を除去することで、溶液の後処理を行った。水(50mL)および十分量の12N HClをフラスコに加えて、混合物を酸性とした(pH>3)。混合物をエーテルで抽出し(50mLで3回)、ブラインで逆抽出した。溶液をMgSOで脱水し、濾過した。反応混合物はNMRおよびTLCで高純度であることが明らかになり、それ以上精製せずに用いた。取得物36.3gを回収した(収率89%)。
【0064】
2−メチレン−4−フェニル酪酸
4−フェニル−2−メチレン酪酸エチルエステル(10g、49mmol)を純粋エタノール100mLに溶かし、水酸化カリウム(3.32g、85%、50mmol)を溶液に加え、溶液を室温で終夜撹拌した。18時間後、全てのエステルが加水分解された。溶媒を減圧下に除去し、シロップを水に溶かした。十分な濃HClを加えて溶液を酸性とし(pH>3)、生成物をエーテルで抽出した(50mLで3回)。溶液をMgSOで脱水し、濾過し、溶媒を減圧下に除去した。生成物8.6gを回収した(収率97%)。
【0065】
2−[アセチルチオメチル]−4−フェニル酪酸
テフロン磁気撹拌子および冷却管を取り付けた250mL丸底フラスコに、トルエン150mL、ピペリジン0.5mLおよび4−フェニル−2−メチレン酪酸8.6g(49mmol)を入れた。次に、チオール酢酸4.1g(54mmol)を溶液に加え、混合物を窒素下に8時間加熱還流した。反応混合物のH−NMR分析で、少量の原料が残っていることが示された。追加のチオール酢酸1gを加え、混合物をさらに4時間還流撹拌した。H−NMRによって、全ての原料が反応したことが認められた。溶液を冷却して5℃とし、エーテル100mLを混合物に加えた。過剰のチオール酢酸を抽出によって除去し(2%炭酸ナトリウム50mLで3回)。次に、1N HCl 50mLを有機層に加え、溶液を激しく振盪した。有機層を分液し、MgSOで脱水した。溶液を濾過し、溶媒を減圧下に除去した。生成物10.0gを回収した(収率81%)。
【0066】
N−(2−アセチルチオメチル−4−フェニルブタノイル)−(L)−ロイシンt−ブチルエステル
4−フェニル−2−[アセチルチオ−メチル]酪酸(3.57g、14.2mmol)のTHF(66mL)溶液に0℃で、(S)−ロイシンt−ブチルエステル(2.91g、15.6mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBTHO、2.86g、21.2mmol)およびN−メチルモルホリン(4.29g、42.4mmol)を加えた。混合物を0℃で15分間撹拌し、1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl、28.3mmol)5.42gを加え、混合物を終夜撹拌した。塩化メチレン100mLを加えることで溶液を後処理し、混合物を5%絨毯酸ナトリウム50mLで3回抽出し、ブライン50mLで2回洗浄した。有機層をMgSOで脱水し、濾過し、溶媒を減圧下に除去した。残留物を、塩化メチレン/酢酸エチル(95/5)を溶離液とするシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。生成物をジアステレオマー(R,S)分画および(S,S)分画として分離した。各分画の絶対立体化学は決定しなかった。R値が高い方の取得物=1.78g;R値が低い方の取得物=1.90g。
【0067】
N−(2−アセチルチオメチル−4−フェニルブタノイル)−(L)−ロイシンN−フェニルアミド
N−(2−アセチルチオメチル−4−フェニルブタノイル)−(L)−ロイシン(TLCでR値が高い方の分画由来)(182mg、0.5mmol)のTHF(2mL)溶液に0℃で、アニリン(93mg、1.0mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBT・HO)(101mg、0.75mol)およびN−メチルモルホリン(202mg、2.0mmol)を加えた。混合物を0℃で15分間撹拌し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩192mg(EDC・HCl、1.0mmol)を加え、混合物を終夜撹拌した。塩化メチレン7mLを加えることで溶液を後処理し、混合物を5%重炭酸ナトリウム3mLで3回、ブライン2mLで2回抽出した。有機層をMgSOで脱水し、濾過し、溶媒を減圧下に除去した。残留物を、塩化メチレン/酢酸エチル(90/10)を溶離液とするシリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製して、生成物110mgを得た(収率=50%)。
【0068】
機能アッセイ
A.maxi−Kチャンネル−TsA−201細胞
オーロラ・バイオサイエンス(Aurora Biosciences)の技術を用いて、maxi−Kチャンネルの阻害薬の確認を行うことができ、それはTsA−201細胞におけるそのチャンネルのαおよびβ1の両方のサブユニットの一時的トランスフェクション後にmaxi−Kチャンネルが細胞休止電位を決定する能力に基づいたものである。阻害薬非存在下では細胞は、maxi−Kチャンネルの活動の結果であるE(−80mV)に近い、内側が負である過分極膜電位を示す。maxi−Kチャンネルの遮断は、細胞脱分極を引き起こす。膜電位における変化は、供与体であるクマリン(CCDMPE)および受容体であるオキサノール(oxanol)(DiSBAC(3))という2つの成分を用いる電圧感受性蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)色素対を用いて測定することができる。オキサノールは、親油性アニオンであり、膜電位に応じて膜の横断方向に分布する。通常の条件下では、細胞内部が外部に関して負である場合には、オキサノールは膜の外側小葉部に蓄積し、クマリンの励起がFRETを発生させる。膜脱分極を生じる条件によって、オキサノールが細胞内部に再分布し、その結果としてFRETが低下する。そうして、膜の脱分極後に、比の変化(供与体/受容体)が大きくなる。
【0069】
TsA−201細胞におけるmaxi−Kチャンネルの一時的トランスフェクションは、トランスフェクション試薬としてFUGENE6(商標名)を用いて既報の方法に従って行うことができる(Hanner et al. (1998) J. Biol. Chem. 273, 16289-16296)。トランスフェクションから24時間後、細胞をCa2+−Mg2+を含まないダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)に回収し、遠心し、96ウェルのポリ−d−リジンコーティングプレートに細胞60000個/ウェルの密度で入れ、終夜インキュベートする。細胞をD−PBSで1回洗浄し、4μM CCDMPE−0.02%プルロニック(pluronic)127のD−PBS溶液100μLを加える。細胞を暗所で室温にて30分間インキュベートする。その後、細胞をD−PBSで2回洗浄し、6μM DiSBAC(3)の(mM):140 NaCl、0.1 KCl、2 CaCl、1 MgCl、20 Hepes−NaOH、pH7.4、10グルコース中溶液100μLを加える。被験化合物をその溶液に希釈し、同時に加える。細胞を暗所にて室温で30分間インキュベートする。
【0070】
プレートを電圧/イオンプローブ読取(VIPR)装置に入れ、CCDMPEおよびDiSBAC(3)の両方の蛍光発光を10秒間記録する。その時点で高カリウム溶液(mM):140 KCl、2 CaCl、1 MgCl、20 Hepes−KOH、pH7.4、10グルコース100μLを加え、両方の色素の蛍光発光をさらに10秒間記録する。高カリウム溶液添加前のCCDMPE/DiSBAC(3)の比は1である。阻害薬非存在下では、高カリウム溶液添加後の比は1.65〜2.2で変動する。既知の標準または被験化合物によってmaxi−Kチャンネルが完全に阻害されると、その比は1のままである。従って、蛍光比の濃度依存的変化をモニタリングすることで、maxi−Kチャンネル阻害薬の活性についての力価測定を行うことが可能である。
【0071】
本発明の化合物は、約10nM〜約5μM、より好ましくは約100nM〜約1μMの範囲のIC50値で、前記蛍光比の濃度依存的阻害を引き起こすことが認められた。
【0072】
B.maxi−Kチャンネルアッセイ−HEK−293細胞
適切な条件下でmaxi−Kチャンネルは、そのチャンネルによって安定にトランスフェクションされたHEK−293細胞の休止電位を決定する。概して高カリウム溶液の添加によって、細胞は脱分極を起こし、その活性は電圧/イオンプローブ読取(VIPR)装置を用いて蛍光色素でモニタリングすることができる。maxi−Kチャンネル阻害薬とともに細胞を前インキュベーションすることで、細胞の脱分極が生じる。この条件下で高カリウム溶液を添加しても、細胞はすでに過脱分極していることから、蛍光色素の発光特性に変化は生じない。HEK−293細胞は内因性カリウム伝導性を有することから、その伝導性を排除して、maxi−KチャンネルがEでの休止電位を支配的に決定するようにする必要がある。その排除は、被験化合物の添加に先だって、HEK−293細胞をカリウムチャンネル遮断薬とともにインキュベートすることで行われる。その薬理的操作の結果、過分極休止電位を示す蛍光信号が選択的maxi−Kチャンネル遮断薬によってなくなった非常に大きいスクリーニングウィンドウが得られる。
【0073】
好ましいカリウムチャンネル遮断薬は、maxi−Kチャンネル活性に影響することなく、HEK−293細胞の内因性カリウム伝導性を選択的に排除するものである。未トランスフェクションのHEK−293細胞が市販されている。そのHEK−293細胞を、本明細書に記載の方法に従ってトランスフェクションすることができる。
【0074】
maxi−Kチャンネル阻害薬の確認は、HEK−293細胞におけるチャンネルのαおよびβ1の両方のサブユニットのトランスフェクション後、ならびにHEK−293細胞の内因性カリウム伝導性を選択的に排除するカリウムチャンネル遮断薬とともにインキュベートした後に、発現maxi−Kチャンネルが細胞休止電位を決定する能力に基づいたものである。maxi−Kチャンネル阻害薬非存在下では、トランスフェクションHEK−293細胞は、maxi−Kチャンネルの活動の結果であるE(−80mV)に近い、内側が負である過分極膜電位を示す。maxi−Kチャンネル遮断薬とのインキュベーションによるmaxi−Kチャンネルの遮断は、細胞脱分極を引き起こす。膜電位における変化は、供与体であるクマリン(CCDMPE)および受容体であるオキサノール(DiSBAC(3))という2つの成分を用いる電圧感受性蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)色素対を用いて測定することができる。
【0075】
オキサノールは、親油性アニオンであり、膜電位に応じて膜の横断方向に分布する。通常の条件下では、細胞内部が外部に関して負である場合には、オキサノールは膜の外側小葉部に蓄積し、クマリンの励起がFRETを発生させる。膜脱分極を生じる条件によって、オキサノールが細胞内部に再分布し、その結果としてFRETが低下する。そうして、膜の脱分極後に、比の変化(供与体/受容体)が大きくなり、それは被験化合物が能動的にmaxi−Kチャンネルを遮断するか否かを決定する。
【0076】
HEK−293細胞は、寄託番号ATCCCRL−1573下でアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection, 12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland, 20852)から入手した。その細胞系への一般からのアクセスに関係する制限は、最終的に特許発行時に除かれるものである。
【0077】
HEK−293細胞におけるmaxi−Kチャンネルのαおよびβ1サブユニットのトランスフェクションは、以下のように行った。HEK−293細胞を100mmの組織培地処理シャーレに、細胞3×10個/シャーレの密度で入れ、計5個のシャーレを準備した。細胞の増殖は、10%ウシ胎仔血清、1×L−グルタミンおよび1×ペニシリン/ストレプトマイシンを補給したダルベッコの調整イーグル培地(DMEM)からなる培地中、37℃、10%COで行った。maxi−Khα(pCIneo)およびmaxi−Khβ1(pIRESpuro)DNAでのトランスフェクションのため、FuGENE6(商標名)150μLを血清を含まない/フェノールレッドを含まないDMEM 10mLに滴下し、室温で5分間インキュベートした。次にFuGENE6(商標名)溶液を、各プラスミドDNA25μgを含むDNA溶液に滴下し、室温で30分間インキュベートした。そのインキュベーション期間後、FuGENE6(商標名)/DNA溶液2mLを細胞の各プレートに滴下し、細胞を前記と同じ条件下で2日間増殖させた。2日目終了後、細胞を600μg/mLのG418および0.75μg/mLのプロマイシンの両方を補給したDMEMからなる選択培地下に置いた。分離コロニーが形成されるまで細胞を増殖させた。5個のコロニーを回収し、6ウェルの組織培地処理シャーレに移し入れた。計75個のコロニーを回収した。集密単層が得られるまで細胞を増殖させた。次に、のチャンネルへの結合をモニタリングするアッセイを用いて、maxi−Kチャンネルαおよびβ1サブユニットの有無に関して、細胞を調べた。次に、VIPR装置を用いる蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)ABS技術を使用して、トランスフェクションHEK−293細胞の膜電位をmaxi−Kチャンネルが制御する能力をモニタリングする機能アッセイで、125I−イベリオトキシン−D19Y/Y36F結合活性を発現する細胞を評価した。最も大きいシグナル/ノイズ比を与えるコロニーについて、限定希釈を行った。それに関して、細胞を約5個/mLで再懸濁させ、200μLを96ウェル組織培地処理プレートの個々のウェルに入れて、ウェル当たり1個の細胞を加えた。計2個の96ウェルプレートを得た。集密単層が形成された時点で、細胞を6ウェル組織培地処理プレートに移し入れた。計62のウェルを移した。集密単層が得られた時点で、FRET機能アッセイを用いて細胞を調べた。最も良好なシグナル/ノイズ比を与えるトランスフェクション細胞を確認し、後の機能アッセイで用いた。
【0078】
1.トランスフェクションHEK−293細胞への125I−イベリオトキシン−D19Y/Y36Fの結合を測定するため、ポリ−D−リジン処理96ウェルに細胞40000個/ウェルの密度で細胞を入れた。細胞を選択培地下で終夜増殖させた。次に、培地を除去し、約70pMの125I−イベリオトキシン−D19Y/Y36Fを選択培地中に含有する溶液200μLを1ウェル当たりに加える。非特異的結合を求めるため、同じ培地に100nMの未標識イベリオトキシンも含有させた。細胞をこの溶液とともに、37℃、10%COで4時間インキュベートする。インキュベーション後、放射活性培地を除去し、細胞をD−PBSで1回洗浄する。次に、マイクロシンチ(Microscint)−20 200μLを各ウェルに加え、細胞に関連する放射能をパッカード(Packard)のトップカウント(Topcount)装置で測定する。
【0079】
トランスフェクション細胞(細胞2E+06個/mL)を、細胞約100000個/ウェルの密度で、96ウェルのポリ−D−リジンプレートに入れ、約16〜約24時間インキュベートする。培地を細胞から吸引によって除去し、細胞をダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)100μLで1回洗浄する。ウェル当たり約9μMクマリン(CCDMPE)−0.02%プルロニック−127のD−PBS溶液100μLを加え、ウェルを暗所で約30分間インキュベートする。細胞をダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水100μLで2回洗浄し、約4.5μMのオキサノール(DiSBAC(3))の(mM)140 NaCl、0.1 KCl、2 CaCl、1 MgCl、20 Hepes−NaOH、pH7.4、10 グルコース溶液100μLを加える。化合物AまたはB(下記参照)などのHEK−293細胞の内因性カリウム伝導性阻害薬3μMを加える。maxi−Kチャンネル遮断薬を加え(約3μM〜約10μM)、細胞を室温で暗所にて約30分間インキュベートする。
【0080】
プレートを電圧/イオンプローブ読取(VIPR)装置に入れ、CCDMPEおよびDiSBAC(3)の両方の蛍光発光を10秒間記録する。その時点で高カリウム溶液(mM):140 KCl、2 CaCl、1 MgCl、20 Hepes−KOH、pH7.4、10グルコース100μLを加え、両方の色素の蛍光発光をさらに10秒間記録する。高カリウム溶液添加前のCCDMPE/DiSBAC(3)の比は1である。maxi−Kチャンネル阻害薬非存在下では、高カリウム溶液添加後の比は1.65〜2.2で変動する。化合物1〜4などの既知の標準または被験化合物によってmaxi−Kチャンネルが完全に阻害されると、その比は1のままである。従って、蛍光比の濃度依存的変化をモニタリングすることで、maxi−Kチャンネル阻害薬の活性についての力価測定を行うことが可能である。
【0081】
化合物AおよびBは以下の通りである。
【0082】
【化3】
【0083】
C.高伝導性カルシウム活性化カリウムチャンネルに対する化合物の効果の電気生理学的アッセイ
ヒト非色素毛様体上皮細胞
高伝導性カルシウム活性化カリウム(maxi−K)チャンネルのヒト非色素毛様体上皮細胞における活性を、電気生理学的方法を用いて求めた。maxi−Kチャンネルを通る電流を、ピペット溶液がチャンネルの細胞外側に当たっており、浴溶液が細胞内側に当たっているパッチクランプ法の裏返し配置で記録した。切除パッチは、1〜約50個のmaxi−Kチャンネルを有していた。それらの大きい単一チャンネル伝導率(250〜300pS)と、膜電位および細胞内カルシウム濃度に対するチャンネル開閉の感受性によって、maxi−Kチャンネルを確認した。標準的な電気生理学的方法を用いて、膜電流を記録した。ガラス製ピペット(Garner 7052)をKopf引上げ装置(750型)を用いて2段階で引き上げ、生理食塩水充填時に電極抵抗は1〜3MΩであった。EPC9(HEKA Instruments)またはアキソパッチ(Axopatch 1D; Axon Instruments)増幅装置を用いて膜電流を記録し、ITC−16インターフェース(Instrutech Corp)を用いてデジタル変換を行った。ピペットに、(mM);150 KCl、10 Hepes、1 MgCl、0.01 CaCl、3.65 KOH、pH7.20を入れた。場合によってカルシウムを除去し、1mM EGTAを加え、20mM KClに代えて20mM KFを用いてカルシウムを排除することでチャンネル開閉のカルシウム感受性を調べた以外、浴(細胞内)溶液は同一とした。浴潅流によって、チャンネルの細胞内側に薬剤を施した。
【0084】
ヒト非色素毛様体上皮細胞は、既報の方法に従って組織培地で増殖させ(Martin-Vasallo, P., Ghosh, S., and Coca-Prados, M., 1989, J. Cell. Physiol.141, 243-252)、カバーグラスに乗せてから使用に供した。高抵抗シール(>1GΩ)をピペットと細胞表面の間に形成し、裏返しのパッチを切除した。パッチにおけるmaxi−Kチャンネルをその開閉特性によって確認した。チャンネル開放の確率は、膜脱分極および細胞内カルシウム増加に応じて高くなった。薬理分析に使用されたパッチでは、細胞内カルシウムを除去することで、電圧依存性電流がなくなった。maxi−K電流を測定した。チャンネル開放を生じた脱分極電圧段階または傾斜後に、電流を測定した。
【0085】
本発明の化合物を、適切な濃度で(0.001〜10μM)、チャンネルの細胞内側に施した。その化合物によってチャンネル開放の確率が低下し、その効果は実験チャンバからの化合物の洗い流しで逆転した。本発明の化合物についてのこの条件下でのmaxi−Kチャンネル遮断におけるIC50値は、約0.5nM〜約300nMの範囲であった。

Claims (33)

  1. 下記のものからなる群から選択される化合物。
  2. 高眼圧または緑内障の治療を必要とする患者に対して、治療上有効量の下記構造式Iの化合物または該化合物の製薬上許容される塩、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくは混合物を投与する段階を有する高眼圧または緑内障の治療方法。
    [式中、
    RおよびRは独立に、C1−6アルキル、(CHアリール、(CHヘテロアリール、(CH複素環アルキルを表し;前記アルキル、アリールまたはヘテロアリールは1〜3個のR基で置換されていても良く;
    Yは、−(CHSCORを表し;
    Xは、CHまたはO(mが非存在である場合)を表し;
    は、水素、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、CF、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−6アルキルアミノまたはハロゲンを表し;
    は、C1−6アルコキシまたはC1−6アルキルを表し;
    は、H、ハロ、OH、NO、NH、CN、アルコキシ、−COO−、アルコキシカルボニル、ハロアルキル、アルコキシカルボニルアルキルまたはアルキルスルホニルを表し;
    mは、1〜3を表し;
    nは0〜3を表す。]
  3. 前記式Iの化合物を局所製剤として投与する請求項2に記載の方法。
  4. RがisC1−6アルキルまたは(CHアリールであり;他の全ての可変因子が最初に記載の通りである請求項2に記載の方法。
  5. がC1−6アルキルまたは(CHアリールであり;他の全ての可変因子が最初に記載の通りである請求項2に記載の方法。
  6. XがCHであり;他の全ての可変因子が最初に記載の通りである請求項2に記載の方法。
  7. Yが−(CHSCORであり、n=0であり;他の全ての可変因子が最初に記載の通りである請求項2に記載の方法。
  8. Yが−(CHSCORであり、n=1〜3であり;他の全ての可変因子が最初に記載の通りである請求項2に記載の方法。
  9. Rが(CHアリールであり;RがC1−6アルキルであり;Yが(CHSCORであり;XがCHであり;m=1である請求項2に記載の方法。
  10. Rが(CHアリールであり;RがC1−6アルキルであり;Yが(CHSCORであり;XがCHであり;m=2である請求項2に記載の方法。
  11. RがC1−6アルキルであり;Rが(CHアリールであり;Yが(CHSCORであり;XがCHであり;m=2である請求項2に記載の方法。
  12. Rが(CHアリールであり;Rが(CHアリールであり;Yが(CHSCORであり;XがCHであり;m=2である請求項2に記載の方法。
  13. 前記局所製剤が液剤または懸濁液である請求項3に記載の方法。
  14. β−アドレナリン遮断剤、副交感神経興奮様薬、炭酸脱水素酵素阻害薬、およびプロスタグランジンまたはプロスタグランジン誘導体からなる群に属する有効成分を前記製剤に加えても良い請求項3に記載の方法。
  15. 前記β−アドレナリン遮断剤がチモロールであり;前記副交感神経興奮様薬がピロカルピンであり;前記炭酸脱水素酵素阻害薬がドルゾールアミド、アセタゾールアミド、メタゾールアミドもしくはブリンゾールアミドであり;前記プロスタグランジンがラタノプロストもしくはレクラであり;前記プロスタグランジン誘導体がPGF2αプロスタグランジン類由来の血圧降下性脂質である請求項14に記載の方法。
  16. 黄斑浮腫または黄斑変性の治療方法において、そのような治療を必要とする患者に対して、製薬上有効量の下記構造式Iの化合物または該化合物の製薬上許容される塩、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくは混合物を投与する段階を有することを特徴とする方法。
    [式中、
    RおよびRは独立に、C1−6アルキル、(CHアリール、(CHヘテロアリール、(CH複素環アルキルを表し;前記アルキル、アリールまたはヘテロアリールは1〜3個のR基で置換されていても良く;
    Yは、−(CHSCORを表し;
    Xは、CHまたはO(mが非存在である場合)を表し;
    は、水素、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、CF、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−6アルキルアミノまたはハロゲンを表し;
    は、C1−6アルコキシまたはC1−6アルキルを表し;
    は、H、ハロ、OH、NO、NH、CN、アルコキシ、−COO−、アルコキシカルボニル、ハロアルキル、アルコキシカルボニルアルキルまたはアルキルスルホニルを表し;
    mは、1〜3を表し;および/または
    nは0〜3を表す。]
  17. 前記式Iの化合物を局所製剤として投与する請求項16に記載の方法。
  18. 前記化合物が下記のものである請求項16に記載の方法。
  19. 網膜および視神経頭の血流速度の上昇または網膜および視神経の酸素分圧上昇方法において、そのような処置を必要とする患者に対して、下記構造式Iのカリウムチャンネル遮断薬または該化合物の製薬上許容される塩、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくは混合物を含む有効な高眼圧製剤を投与する段階を有することを特徴とする方法。
    [式中、
    RおよびRは独立に、C1−6アルキル、(CHアリール、(CHヘテロアリール、(CH複素環アルキルを表し;前記アルキル、アリールまたはヘテロアリールは1〜3個のR基で置換されていても良く;
    Yは、−(CHSCORを表し;
    Xは、CHまたはO(mが非存在である場合)を表し;
    は、水素、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、CF、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−6アルキルアミノまたはハロゲンを表し;
    は、C1−6アルコキシまたはC1−6アルキルを表し;
    は、H、ハロ、OH、NO、NH、CN、アルコキシ、−COO−、アルコキシカルボニル、ハロアルキル、アルコキシカルボニルアルキルまたはアルキルスルホニルを表し;
    mは、1〜3を表し;および/または
    nは0〜3を表す。]
  20. 前記式Iの化合物を局所製剤として投与する請求項19に記載の方法。
  21. 前記化合物が下記のものである請求項19に記載の方法。
  22. 神経保護効果を提供する方法において、そのような処置を必要とする患者に対して、治療上有効量の下記構造式Iの化合物または該化合物の製薬上許容される塩、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくは混合物を投与する段階を有することを特徴とする方法。
    [式中、
    RおよびRは独立に、C1−6アルキル、(CHアリール、(CHヘテロアリール、(CH複素環アルキルを表し;前記アルキル、アリールまたはヘテロアリールは1〜3個のR基で置換されていても良く;
    Yは、−(CHSCORを表し;
    Xは、CHまたはO(mが非存在である場合)を表し;
    は、水素、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、CF、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−6アルキルアミノまたはハロゲンを表し;
    は、C1−6アルコキシまたはC1−6アルキルを表し;
    は、H、ハロ、OH、NO、NH、CN、アルコキシ、−COO−、アルコキシカルボニル、ハロアルキル、アルコキシカルボニルアルキルまたはアルキルスルホニルを表し;
    mは、1〜3を表し;および/または
    nは0〜3を表す。]
  23. 前記式Iの化合物を局所製剤として投与する請求項22に記載の方法。
  24. 前記化合物が下記のものである請求項22に記載の方法。
  25. 前記局所製剤がキサンタンガムまたはゲランガムを含有していても良い請求項2に記載の方法。
  26. 高眼圧または緑内障の処置を必要とする患者に対して、治療上有効量の下記構造式Iの化合物または該化合物の製薬上許容される塩、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくは混合物を投与する段階を有する高眼圧または緑内障の治療方法。
    [式中、
    RおよびRは独立に、C1−6アルキル、(CHアリール、(CHヘテロアリール、(CH複素環アルキルを表し;前記アルキル、アリールまたはヘテロアリールは1〜3個のR基で置換されていても良く;
    Yは、−(CHSCORを表し;
    Xは、CHまたはO(mが非存在である場合)を表し;
    は、水素、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、CF、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−6アルキルアミノまたはハロゲンを表し;
    は、C1−6アルコキシまたはC1−6アルキルを表し;
    は、H、ハロ、OH、NO、NH、CN、アルコキシ、−COO−、アルコキシカルボニル、ハロアルキル、アルコキシカルボニルアルキルまたはアルキルスルホニルを表し;
    mは、1〜3を表し;および/または
    nは0〜3を表す。]
  27. 前記化合物が下記のものである請求項26に記載の方法。
  28. 細胞がカリウムチャンネルを含む哺乳動物細胞における再分極または防止する処置を必要とするヒドなどの哺乳動物に対して、薬理上有効量の下記構造式Iのカリウムチャンネル遮断薬または該化合物の製薬上許容される塩、エナンチオマー、ジアステレオマーもしくは混合物を投与する段階を有する、細胞がカリウムチャンネルを含む哺乳動物細胞における再分極または過分極を防止する方法。
    [式中、
    RおよびRは独立に、C1−6アルキル、(CHアリール、(CHヘテロアリール、(CH複素環アルキルを表し;前記アルキル、アリールまたはヘテロアリールは1〜3個のR基で置換されていても良く;
    Yは、−(CHSCORを表し;
    Xは、CHまたはO(mが非存在である場合)を表し;
    は、水素、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、CF、ニトロ、アミノ、シアノ、C1−6アルキルアミノまたはハロゲンを表し;
    は、C1−6アルコキシまたはC1−6アルキルを表し;
    は、H、ハロ、OH、NO、NH、CN、アルコキシ、−COO−、アルコキシカルボニル、ハロアルキル、アルコキシカルボニルアルキルまたはアルキルスルホニルを表し;
    mは、1〜3を表し;および/または(?)
    nは0〜3を表す。]
  29. 製薬上有効量の請求項28に記載の化合物を投与する段階を有する、アルツハイマー病の治療を必要とする患者におけるアルツハイマー病の治療方法。
  30. 製薬上有効量の請求項28に記載の化合物を投与する段階を有する、抑鬱の治療を必要とする患者における抑鬱の治療方法。
  31. 製薬上有効量の請求項28に記載の化合物を投与する段階を有する、認識障害の治療を必要とする患者における認識障害の治療方法。
  32. 製薬上有効量の請求項28に記載の化合物を投与する段階を有する、不整脈障害の治療を必要とする患者における不整脈障害の治療方法。
  33. 製薬上有効量の請求項28に記載の化合物を投与する段階を有する、糖尿病の治療を必要とする患者における糖尿病の治療方法。
JP2002561014A 2001-01-30 2002-01-24 高眼圧治療用眼薬組成物 Withdrawn JP2004530647A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US26495401P 2001-01-30 2001-01-30
PCT/US2002/003049 WO2002060863A1 (en) 2001-01-30 2002-01-25 Ophthalmic compositions for treating ocular hypertension

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004530647A true JP2004530647A (ja) 2004-10-07

Family

ID=23008345

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002561014A Withdrawn JP2004530647A (ja) 2001-01-30 2002-01-24 高眼圧治療用眼薬組成物

Country Status (5)

Country Link
US (1) US6864383B2 (ja)
EP (1) EP1358153A1 (ja)
JP (1) JP2004530647A (ja)
CA (1) CA2434495A1 (ja)
WO (1) WO2002060863A1 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1513589B1 (en) 2002-06-06 2010-11-10 Merck Frosst Canada Ltd. 1,5-disubstituted pyrrolid-2-one derivatives for use as ep4 receptor agonists in the treatment of eye diseases such as glaucoma
US7053085B2 (en) 2003-03-26 2006-05-30 Merck & Co. Inc. EP4 receptor agonist, compositions and methods thereof
ES2325995T3 (es) 2003-12-02 2009-09-28 Schwarz Pharma Ag Nueva utilizacion de compuestos peptidicos para tratamiento del dolor neuropatico central.
EP1604655A1 (en) 2004-06-09 2005-12-14 Schwarz Pharma Ag Novel use of peptide compounds for treating pain in trigeminal neuralgia
JP5443981B2 (ja) 2006-06-15 2014-03-19 ウーツェーベー ファルマ ゲーエムベーハー 相乗的抗痙攣効果を有する医薬組成物

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2480747A1 (fr) * 1980-04-17 1981-10-23 Roques Bernard Derives d'acides amines et leur application therapeutique
CA2217859A1 (en) * 1995-05-10 1996-11-14 David Alan Owen Peptidyl compounds which inhibit metalloproteinase and tnf liberation and their therapeutic use
DE69906849T2 (de) * 1998-02-16 2004-01-22 Ajinomoto Co., Inc. Verfahren zur Herstellung von optisch aktiven Phenylpropionsäure-Derivat

Also Published As

Publication number Publication date
EP1358153A1 (en) 2003-11-05
CA2434495A1 (en) 2002-08-08
US6864383B2 (en) 2005-03-08
WO2002060863A1 (en) 2002-08-08
US20040054213A1 (en) 2004-03-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5061293B2 (ja) 高眼圧治療用眼科組成物
JP2008515982A (ja) 高眼圧症を治療するための眼科組成物
US6914070B2 (en) Ophthalmic compositions for treating ocular hypertension
JP2005532361A (ja) 高眼圧症の治療用の眼科用組成物
JP2005532363A (ja) 高眼圧を治療するための眼用組成物
US20090281154A1 (en) Ophthalmic Compositions for Treating Ocular Hypertension
JP2004530647A (ja) 高眼圧治療用眼薬組成物
US20050239787A1 (en) Novel maxi-k channel blockers, methods of use and process for making the same
JP2008515973A (ja) 高眼圧症を治療するための眼科組成物
JP4546961B2 (ja) 高眼圧の治療のための眼科用組成物
AU2002251856A1 (en) Ophthalmic compositions for treating ocular hypertension
JP2004520379A (ja) 高眼圧治療用眼薬組成物
JP2007504236A (ja) 高眼圧症を治療するための眼用組成物
US7414067B2 (en) Ophthalmic compositions for treating ocular hypertension
US20040058976A1 (en) Ophthalmic compositions for treating ocular hypertension
AU2002235454A1 (en) Ophthalmic compositions for treating ocular hypertension

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20050405