JP2004530422A - 急速なアポトーシスを誘導するjfy1蛋白質 - Google Patents
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Abstract
p53発現のすぐ後に発現する遺伝子の包括的プロファイリングにより、本発明者らは、JFY1と名付けた遺伝子を同定した。JFY1によりコードされる蛋白質はミトコンドリアに限って存在し、BH3ドメインを介してBcl-2およびBcl-XLに結合することが判明した。JFY1の外因性発現の結果として、極端に急速かつ著しいアポトーシスとなり、これはp53の外因性発現により生ずる場合よりも非常に速く起こった。その独特な発現パターン、p53依存性、および生化学的特性に基づくと、JFY1はp53関連アポトーシスの直接的なメディエーターである可能性が高い。
Description
【背景技術】
【0001】
本発明は米国政府からの基金を利用することにより達成された。米国政府は本発明に関してNIHグラント CA 43460およびGM 07184の規定に従い、一定の権利を有する。
【0002】
本出願は2000年12月19日に出願された米国特許出願第60/256,328号の恩典を主張する。
【0003】
発明の背景
p53の増殖制御機能の不活性化は、大部分のヒト癌の発生に対して重要であると思われる(Hollsteinら, 1999;HussainおよびHarris, 1999)。p53蛋白質は細胞周期の進行を阻害すること、およびアポトーシスを促進することにより、腫瘍増殖を制御している(Lane, 1999;Levine, 1997;Oren, 1999;PrivesおよびHall, 1999)。p53による細胞周期進行の阻害は、直接的にサイクリン依存性キナーゼ活性を制御する遺伝子を転写的に活性化するその能力のため、主要な部分を占めていることが示されてきた((El-Deiry, 1998)に概説されている)。例えば、p53は、いくつかのサイクリン-cdk複合体に結合し、阻害するp21CIP1/WAF1(Harperら, 1993;Xiongら, 1993)、およびサイクリンB/cdc2複合体を細胞質中へ移行させる14-3-3σ(Chanら, 1999)を誘導する。どちらの場合に関しても、誘導はこれらの遺伝子のプロモーター中にある同種の認識要素へのp53の結合により生ずる(El-Deiryら, 1993;Hermeking, 1997)。
【0004】
p53がアポトーシスを誘導する際に介される機構に関しては、これも標的遺伝子の転写活性化が介していると考えられてはいるものの、ほとんど知られていない((Chaoら, 2000) に概説されている)。ショウジョウバエp53相同体の機能的研究から明らかなように、p53のアポトーシス機能は高度に保存されている(Brodskyら, 2000;Jinら, 2000;Ollmannら, 2000)。さらに、p53の細胞周期阻害効果はp53の腫瘍抑制効果を完全に説明するには不十分であるということから、アポトーシス誘導はp53の腫瘍抑制の鍵となる要素であることを示唆している(GottliebおよびOren, 1998;Symondsら, 1994)。p53により調節され、アポトーシスを媒介する遺伝子を同定するために、数多くの研究が行われてきた(El- Deiryら、1998)。p53により開始されるアポトーシスはミトコンドリア経路を介して進行すると思われるので、これらの候補のうち、ミトコンドリア蛋白質をコードするものが特に興味深い。特に、p53により刺激されるアポトーシスには、ミトコンドリア膜の電位変化、活性酸素種の蓄積、カスパーゼ9活性の刺激、およびその後のカスパーゼカスケードの活性化が含まれる(Liら、1999;Polyakら, 1997;Schulerら, 2000;Soengasら、1999)。
【0005】
p53により調節され、コードする蛋白質の少なくとも一部はミトコンドリアに存在する、3つの遺伝子が同定されている。最初に同定されたのは、このクラスのプロトタイプとして機能しているプロアポトーシスのBcl-2ファミリーメンバーのBAXであった(Reed, 1999)。さらに最近では、Noxaおよびp53AIP1が発見され、p53により発現が制御されているプロアポトーシス・ミトコンドリア蛋白質をコードしていることが示唆された(Odaら, 2000a, Oda, 2000b)。結腸直腸癌(CRC)におけるこれらの遺伝子の役割を探索するため、本発明者らは、それらの発現様式を詳細に調査した。以下のように、これらの3つの遺伝子は、CRC細胞においてp53により誘導される劇的なアポトーシスを説明するのに、十分に速い時期または十分に強いレベルで発現しているようには思われなかった。癌細胞のアポトーシス誘導に含まれる遺伝子の同定に対する当技術分野における必要性は、依然として存在する。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明の目的は、癌細胞に急速なアポトーシスを誘導するのに最適な、単離および精製された蛋白質を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、癌細胞に急速なアポトーシスを誘導するのに最適な蛋白質をコードする、単離および精製されたポリヌクレオチドを提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、p53に対する結合部位を含む、単離および精製された核酸を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、癌細胞にアポトーシスを誘導する方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、アポトーシスを誘導可能なものについて、薬物をスクリーニングする方法を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、癌細胞を診断するための方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、癌患者の予後の決定を補助する方法を提供することである。
【0013】
本発明のこれらおよび他の目的は、下記の態様のうちの一つまたは複数により提供される。本発明の一つの態様として、配列番号:1または2に記載の配列を有する、単離および精製されたJFY1蛋白質が提供される。
【0014】
本発明の別の態様として、単離および精製されたJFY1ポリヌクレオチドが提供される。それは配列番号:3または4に記載の配列を有するコード配列を含む。
【0015】
本発明のさらに別の態様として、単離および精製されたJFY1 BS1またはBS2核酸が提供される。それは配列番号:5、6、または27に記載の配列を有する。
【0016】
本発明の別の側面によれば、癌細胞にアポトーシスを誘導する方法が提供される。JFY1コード配列を含む核酸を癌細胞に供給する。その結果、癌細胞中でJFY1が発現し、アポトーシスを誘導する。
【0017】
本発明の別の側面によれば、アポトーシスを誘導可能なものについて、薬物をスクリーニングする方法が提供される。試験化合物を、変異型p53を含有し、且つ野生型p53を含有しない細胞と接触させる。前記細胞中のJFY1発現を検出する。JFY1の発現を増加させる試験化合物は、癌治療のための候補薬物である。
【0018】
本発明のさらに別の側面によれば、アポトーシスの誘導可能なものについて、薬物をスクリーニングする方法が提供される。試験化合物を、変異型p53およびJFY1-BS2-レポーター遺伝子構築物を含有する細胞と接触させる。前記細胞は、野生型p53を含有していない。レポーター遺伝子の発現を検出する。レポーター遺伝子の発現を増加させる試験化合物は、癌治療のための候補薬物である。
【0019】
本発明の別の態様として、癌細胞を診断するための方法が提供される。新生物の疑いのある生物試料中のJFY1発現産物をアッセイする。生物試料中の発現産物の量を、新生物ではない対照試料中の発現産物の量と比較する。生物試料中の発現産物の量が、対照試料中の量よりも有意に少ない場合、生物試料を新生物と同定する。
【0020】
本発明のさらに別の態様として、癌患者の予後の決定を補助する方法が提供される。腫瘍試料中のJFY1発現産物をアッセイする。腫瘍試料中の発現産物の量を、新生物ではない対照試料中の発現産物の量と比較する。腫瘍試料中の発現産物の量が、対照試料中の量よりも有意に少ない場合、生物試料を予後不良の指標(negative prognostic indicator)を有するものとして同定する。
【0021】
従って、本発明は、癌細胞においてp53誘導性のアポトーシスを媒介するのに重要な新規の遺伝子および蛋白質に関する技術を提供する。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明者らの発見は、ミトコンドリア蛋白質をコードする遺伝子がp53により強力に調節され、CRC細胞においてp53の関連するアポトーシスを媒介することである。p53による前記遺伝子の急速な誘導という観点から、遺伝子はJFY1と命名された。cDNAのヌクレオチド配列を配列番号:3または4に示す。コードされるアミノ酸配列を配列番号:1または2に示す。
【0023】
本発明により提供されるポリヌクレオチドには、配列番号:1または2に記載の、同じアミノ酸配列をコードする任意のポリヌクレオチドを含み、配列番号:3または4と非常に密接に相関するポリヌクレオチドが含まれる。同様にして、天然に存在するJFY1突然変異体および生物種相同体だけでなく、示されるようなJFY1の多型性変異体であるポリヌクレオチドが含まれる。ポリヌクレオチド変異体は、典型的には1、2、もしくは3塩基対置換、欠失、または挿入を含む。多型性蛋白質変異体は、典型的には1アミノ酸置換であって、典型的には保存的置換を含む。2つのポリヌクレオチド配列間の配列同一性の割合(%)は、FASTAアルゴリズムを使用したALIGNのようなコンピュータープログラムを使用して、-12のギャップオープンペナルティーおよび-2のギャップ伸張ペナルティーを備えたアファイン変換のギャップ検索を使い、決定することができる。本発明に従えば、少なくとも90%の同一性に達する場合、ポリヌクレオチドは相同体と考えられる。好ましくは、それらは少なくとも91%、93%、95%、97%、またはさらには99%同一である。推定上のJFY1ポリペプチド変異体または突然変異体または相同体間の同一性の割合(%)は、Blast2アラインメントプログラムを使用して決定することができる。デフォルト・セッティングは、推定上の配列を配列番号:1または2のアミノ酸配列と比較する際に、使用することができる。好ましくは、それらは少なくとも90%、91%、93%、95%、97%、またはさらには99%同一にまで達する。ポリヌクレオチドは好ましくは、JFY1をコードする配列のうちの少なくとも730ヌクレオチド長または全JFY1転写産物もしくはゲノム配列のうちの少なくとも1640ヌクレオチド長を含む。
【0024】
ヒト組織で発生する可能性があり、アポトーシス誘導活性を有するJFY1配列の天然に存在するいかなる変異体も、本発明の範囲内である。従って、JFY1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対する本明細書中の言及には、天然に存在するこれらの配列の変異体に対する言及が含まれる。4アミノ酸が異なり、生物学的機能を保持している天然には存在しない変異体も同様にここに含まれる。好ましくは、変化は保存的アミノ酸の変化であり、即ち、同様に荷電したまたは荷電していないアミノ酸の変更である。
【0025】
上記のように、JFY1の天然のアミノ酸配列からの僅かなアミノ酸変化は、用語JFY1により包含されていることを意図する;特に、保存的アミノ酸置換を意図する。保存的置換は側鎖間において相関性のあるアミノ酸ファミリー内で起こるものである。遺伝学的にコードされるアミノ酸は、一般的に4つのファミリーに分割される:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4) 極性非電荷=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、芳香性アミノ酸として一緒に分類されることがある。例えば、ロイシンからイソロイシンもしくはバリン、アスパラギン酸からグルタミン酸、トレオニンからセリンへの単一置換、またはあるアミノ酸から構造的に相関性のあるアミノ酸への類似置換は、特に、置換がJFY1またはその誘導体とBcl-2ファミリー・メンバーとの相互作用に関与する結合部位でアミノ酸を含んでいない場合、結果として生じる分子の結合特性に大きな影響を及ぼさないことを予期するのは合理的である。アミノ酸変化が結果的に機能的なペプチドを生ずるかどうかは、JFY1ポリペプチド誘導体のBcl-2結合特性をアッセイすることにより容易に決定することができる。結合アッセイ法は以下に詳細に説明されている。Bcl-2およびBcl-XLが好ましいが、ファミリーのいかなるメンバーもアッセイに使用することができる。
【0026】
本発明によるポリヌクレオチド配列は、染色体19qにおいて、ポリヌクレオチド配列がもともと隣接する他の配列を除いて単離することができる。従って、ポリヌクレオチド配列は全てのまたは一部の他のヒト19q配列を除いて単離することができる。特に好ましい態様として、ポリヌクレオチド配列は他の全ての19q配列を除いて単離される。ポリヌクレオチド配列はJFY1のコード配列を複製する、および/または発現するためのベクターを含むことができる。ベクターは、例えば誘導因子または抑制因子により、JFY1配列の発現の制御を可能にする調節配列を含んでもよい。一般的に、ベクターはインビトロ組換え技術により作製される。当技術分野において知られているように、ベクターは適切な宿主細胞中で複製し、維持することができる。宿主細胞の純粋培養物が好ましい。当技術分野において知られている適切な調節配列およびいかなるそのような配列も制限なく使用することができる。ポリヌクレオチドは別のコード配列、例えば、容易にアッセイ可能なエピトープ(抗原決定基)または酵素活性をコードするものに連結することができる。そのようなポリヌクレオチドは、JFY1および融合相手の両方の特性を有する融合蛋白質を産生すると思われる。融合蛋白質は、JFY1の全部または一部、および第二の蛋白質の全部または一部を含有することができる。
【0027】
本発明によるポリヌクレオチドは同様にして、プライマーまたはプローブとして使用可能である。そのようなポリヌクレオチドは、少なくとも15、18、10、または25ヌクレオチド長でありうる。それらは二本鎖または一本鎖であってもよい。使用にあたって、それらは一本鎖化され、または変性されていることが好ましい。プローブおよびプライマーは、例えば、放射性標識、蛍光部分、制限エンドヌクレアーゼ部位、特定のハイブリダイゼーション配列等を使用して標識することができる。これらは、オリゴヌクレオチド作製に関して当技術分野において知られる任意の技術に従って合成することができる。プライマー対は一般的にタンデムに使用され、一緒にしておくことも可能である。一つの特別な態様として、プライマーおよび/またはプローブは、下記のようにJFY1の発現をモニターするのに使用される。本発明のプライマー対は、配列番号:1の1〜235位のヌクレオチド、またはその相補鎖に対して実質的に相補である少なくとも1つのプライマーを使用する。実質的な相補性とは、増幅の間、プライマーがハイブリダイズし、鋳型に基づく伸張を開始することができることを意味する。
【0028】
配列番号:1または2のうちの少なくとも9個、10個、12個、14個、16個、または18個の連続したアミノ酸を含むポリペプチドは、特に抗体を作製するために使用することが可能である。マウス、ウサギ、またはヤギのような接種動物において、JFY1に特異的に結合する抗体を誘導するために、そのようなポリペプチドは単独で、または免疫原のような他の蛋白質と結合もしくは融合させて使用することができる。従って、JFY1特異的な結合抗体のポリクローナルな調製物またはモノクローナルな調製物も同様にして提供される。そのような抗体の作製およびスクリーニング方法は、当技術分野において公知であり、当業者によって、過度の実験に頼ることなく利用することが可能である。
【0029】
出願人らはヒトゲノムにおいて、コード配列の上流に発見されたJFY1に対する内因性の制御配列を同定した。制御配列はJFY1発現を上方調節するp53の結合を可能にする。一方は他方に比べてより活性であるように思われるが、2つの結合配列の位置が突き止められた。レポーターまたはJFY1を含む他の遺伝子配列を協調的に発現させるため、これらの一方または両方を使用することができる。結合配列はp53による制御をもたらすために、内因性のコード配列または他の配列とともに使用することができる。適切なレポーター遺伝子は当技術分野において知られており、緑色蛍光蛋白質、βガラクトシダーゼ、およびアルカリフォスファターゼを含むがこれに限定されることなく、いかなるものでも使用することができる。結合配列は、単独でまたはタンデムに並べて使用することが可能である。複数コピーにより、達成される誘導レベルは増大する。特定の態様として、ポリヌクレオチドは結合配列の少なくとも2コピーまたは少なくとも4コピーを含んでもよい。結合配列を含む単離および精製されたポリヌクレオチドは、染色体19q上に位置する他の遺伝子配列を除いて精製される。
【0030】
細胞をアポトーシス経路に入れるJFY1の誘導能により、JFY1またはJFY1をコードするポリヌクレオチドは、癌または望ましくない細胞増殖を特徴とする他の疾患を治療するために使用することができる。腫瘍に対して、ポリヌクレオチドを腫瘍または腫瘍を含む体腔に直接投与することができる。ポリヌクレオチドをウイルスまたはウイルスベクターの形態で投与することができる。ポリヌクレオチドをリポソームまたは他の遺伝子輸送粒子もしくは製剤の形態で投与することができる。いくつかの状況において、ポリヌクレオチドをパーティクル・ボンバードメント(particle bombardment)により輸送することができる。当業者は腫瘍または他の疾患の特定種に対して適切な運搬方法および媒体を認識し、適合させることができると思われる。
【0031】
JFY1が有する刺激性の生物学的活性のため、これを薬物スクリーニング法の基礎として使用することができる。従って、化合物または組成物を、変異型p53を有し、野生型p53を有さない細胞と接触させることにより、それらを試験することができる。JFY1発現は直接的にまたはBS1(配列番号:5)および/またはBS2(配列番号:6または27)配列の制御下のレポーター遺伝子を使用して、モニターすることができる。JFY1発現(または代理のレポーター発現)を増加させることが可能な化合物または組成物は、癌または細胞増殖を含む他の疾患を治療するための候補として同定される。発現のモニターは、特定の蛋白質を免疫学的に、もしくは活性により測定することを含む、当技術分野において知られる任意の手段を用いて、または特定のmRNA種を測定することによって可能である。発現を測定するための技術は当技術分野においてよく知られており、いずれも都合良く使用することができる。類似のスクリーニング技術は、JFY1発現が直接的にまたは代理のもの(surrogate)によりモニターされる無細胞系に対して設定することができる。
【0032】
癌疾患の重症度の検出および予測のために、p53を診断上および予測上、使用することが可能であるように、JFY1も同様にして使用可能である。従って、生物試料をJFY1発現産物の量に関してアッセイすることができる。対照試料中よりも生物試料中の量の有意な低下により、新生物試料を識別する。対照試料は生物試料のものと同一個体から得ることができ、または健常個体から得ることができる。対照試料は試験試料と同一種類の組織から得ることが好ましいと考えられる。真正の腫瘍試料をJFY1発現に対して試験する場合には、予後を決定することができる。癌細胞でp53の発現が低下しているのと同様に、JFY1発現産物の量がより低下しているか、または無いことは、予後不良の指標となる。
【0033】
CRC細胞株であるDLD1はドキシサイクリン調節プロモーターの制御下、外因性p53の発現後、〜18時間までにアポトーシスに至る。さらに、9時間後、ドキシサイクリン添加によりアポトーシスは減少しないことから、これらの細胞はp53曝露から僅か9時間後にはアポトーシスにコミットしている(Yuら, 1999)。これらの観察を、この系における多数のp53調節遺伝子の分析と組合せて考えることにより、本発明者らは、CRC細胞においてアポトーシスを媒介する可能性のある候補に対する下記の指針を提案するに至った。第一に、DLD1細胞におけるそれらの誘導は強力および急速(実質的には9時間までの発現)でなくてはならない。第二に、それらはDLD1細胞のみだけでなく、他のCRC細胞株においてp53により誘導されなくてはならない。第三に、それらは高濃度の外因性p53によってのみではなく、化学療法剤に曝露後、上昇した内因性p53によって誘導されなくてはならない。第四に、曝露後のそれらの誘導は、完全なp53遺伝子に依存していなくてはならない。第五に、候補遺伝子は、それらがミトコンドリア経路を介して直接的にアポトーシスを促進可能であることを示唆する生化学的および生理学的特性を示さなくてはならない。
【0034】
誘導的にp53を発現するDLD1細胞は、遺伝子発現連続分析(Serial Analysis of Gene expression:SAGE)技術を使用して調べられた(Velculescuら, 1995;Yuら, 1999)。本発明者らは、上述の基準を満たしていた、JFY1と表される、1つの遺伝子のみを同定した。JFY1遺伝子はEST(発現配列タグ(ExpressedSequenceTags))と一致したものの、既知遺伝子とは一致しなかったSAGEタグにより発見された。SAGEデータは、p53を9時間発現させた後に、DLD1細胞においてJFY1が10倍より多く誘導されていることを示唆していた。ノザンブロッティングは、p21CIP1/WAF1と同様にして、JFY1がドキシサイクリン除去後、早くも3時間で誘導されていることを示していた(図1A)。JFY1発現は、以前決定されたアポトーシスに対する9時間の「コミットメント・ポイント(commitment point)」(Yuら、1999)よりもかなり早く、6時間までに最大となっていた。試験した4つの各細胞株において、野生型(wt)p53をコードするアデノウイルスで感染後、JFY1は有意に誘導されたが、変異型R175Hp53をコードする類似アデノウイルスの発現後にはJFY1は誘導されなかった(図1B)。さらに、DNA損傷剤であるアドリアマイシンによるのと同様にして、CRCに対する治療の柱である5-FU(5-フルオロウラシル)で処理後、HCT116およびSW48細胞において、JFY1 mRNAの発現が誘導されていることが判明した(図1C)。HCT116およびSW48細胞は野生型p53遺伝子を含み、図1Cの結果から、p53の内因性レベルがJFY1を誘導するのに十分であったことが示されている。5-FU処理に続いて起こるアポトーシスは完全なp53に全体として依存している(Bunzら, 1999)。標的化相同組換えにより、p53遺伝子が破壊されたHCT116細胞(Bunzら, 1998)を使用して、本発明者らは、5-FUによるJFY1の転写誘導も同様にして完全にp53に依存していることを発見した(図1C)。
【0035】
上述の転写パターンを、ミトコンドリア蛋白質をコードする3つの他のp53誘発遺伝子(BAX、Noxa、およびp53AIP1)のパターンと比較した。ノザンブロッティングにより確認されたように(図1A)、SAGEによりBAXおよびNoxa転写産物の誘導はごく僅かなこと、または有意差がないことが明らかとなった。p53AIP1転写産物は、これらの実験においてSAGEまたはノザンブロッティングのどちらによっても検出することができず、この遺伝子がp53誘導後、非常に遅い時期のみに活性化されることを示す以前の結果(Odaら, 2000b)と一致していた。さらに、JFY1のみが、アデノウイルスを感染後、試験した4つのCRC細胞株の全てにおいて誘導され、JFY1のみが、HCT116およびSW48細胞の両方で5-FUにより有意に誘導された(図1B、図1C)。概して、JFY1の転写パターンはp21CIP1/WAF1のパターンと厳密に一致していたが、他の3遺伝子のパターンは全く異なっていた。
【0036】
これらの結果は、結腸直腸癌細胞においてp53が媒介する細胞死が、一部はJFY1遺伝子の転写活性化を介して調節されていることを示唆している。図3の結果は、この活性化がJFY1プロモーター内のBS2配列へのp53の結合の直接的な結果である可能性があることを示している。JFY1誘導の時間経過(図1A)ならびに急速かつ著しい程度のアポトーシスを引き起こすJFY1の能力(図5、図6)により、このモデルが支持される。このことは、Bcl-2ファミリー・メンバー(特にBH3ドメインのみを含むもの)が、線虫(C. elegans)からヒトに及ぶ生物において、アポトーシスの過程を制御していることを示す大多数の文献(Green, 2000;Korsmeyer, 1999;AdamsおよびCory, 1998;Reed, 1997;Vander HeidenおよびThompson, 1999)によっても同様に支持される。最後に、このことは、p53が媒介するアポトーシスが、ミコンドリアによる細胞死経路を介して進行することを示す以前の研究(Liら, 1999;Polyakら, 1997;Schulerら, 2000;Soengasら, 1999)により支持される。
【0037】
Bcl-2ファミリー・メンバーの孔形成能が立証されてきた(Minnら, 1997;Schendelら, 1998)。BH3ドメインを通じてBcl-2ファミリーと唯一関連付けられるJFY1は、他のBcl-2ファミリー・メンバーまたは他のミトコンドリア蛋白質と複合体を形成した場合、孔形成に影響を及ぼす可能性がある。JFY1の高レベルの発現はアポトーシスに十分であるが、この遺伝子の発現がアポトーシスに必要であるかどうかは不明である。さらに、非常に低レベルではあるが、分析した全ての正常ヒト組織においてJFY1が発現していた。図2に示される配列データにより容易となる、ヒト体細胞およびマウスES細胞におけるJFY1の標的化された欠失により、今後、これらの疑問に対する回答が得られると思われる。最後に、JFY1の発現により非常に急速かつ著しいアポトーシスに至ったという事実は、JFY1が癌遺伝子治療においてp53の代用物となると考えられることを示唆している。
【0038】
実施例
実施例1
JFY1 転写産物および遺伝子の特徴付け
JFY1に対する明確な完全長cDNA(図2A)を得るために、データベース検索、ESTクローンの再配列決定、RT-PCR解析、および5'RACEを組み合わせて利用した。極端にGCに富む5'非翻訳領域により、これらの試みは複雑なものとなった。最終的にアセンブルされたcDNAはサイズが1.9kbであり、ノザンブロットで観察された主要な転写誘導産物のサイズと一致していた(図1A)。結果として得られた配列をゲノムDNAの配列と比較することにより、JFY1転写産物は4つのエクソン中に含まれ、第2エクソンに推定上の開始コドンを有することが明らかとなった(図3A)。JFY1は以下に論ずるように、BH3ドメインを除き、その他の既知の蛋白質に対して有意な相同性のない193アミノ酸の蛋白質をコードすると予測された。RT-PCT解析により、JFY1は8つの異なるヒト組織の各々において、低レベルではあるが同程度のレベルで発現していることが明らかとなり、ラディエーションハイブリッドマッピング法により、JFY1遺伝子は染色体19qに位置していることが明らかとなった(データは示していない)。
【0039】
JFY1のマウス相同体はマウスのESTおよびゲノムデータベースの検索により同定された。推測されるマウス遺伝子はヒト相同体の4つのコードエクソンに相当する4つのエクソンを含み、対応するコードエクソンは2種において同一の長さであった。ヒトおよびマウス遺伝子はアミノ酸およびヌクレオチドレベルで、それぞれ91%および90%同一であった(図2A)。
【0040】
第2エクソンの欠けたJFY1の別のスプライスフォーム(AS)がヒトRNAを鋳型としたRT-PCR実験で認められ、図1Aで観察された短いmRNA種に相当する可能性が高かった。PCR産物の配列決定により、ASはオープンリーディングフレームを変化させることで、もはやBH3ドメインが含まれなくなることが明らかとなり、従って本発明者らはこのフォームについて更に検討することはしなかった。
【0041】
本発明者らはJFY1遺伝子上流の共通のp53結合部位を探索し、二つの該当部位、BS1およびBS2をそれぞれ転写開始部位の230塩基対および144塩基対上流の位置に同定した(図3A)。JFY1遺伝子のこの領域がp53応答を媒介することが可能があるかを決定するために、本発明者らはその5'末端が推定される転写開始部位の427塩基対上流となっている493塩基対の断片をクローン化し、最少プロモーターを含むルシフェラーゼレポーターの前部に断片を配置させた。この領域を包含させることにより、H1299細胞にp53発現ベクターとともにトランスフェクトした場合、60倍の活性を示した(図3B)。この構築物から5'末端300塩基対を欠失(BS1およびBS2を含む領域)させることにより、p53応答のほとんどが喪失するに至った(図3B)。
【0042】
二つの結合部位のどちらが主にp53応答を担っているのかを決定するために、本発明者らは各結合部位の4つのコピーを野生型または変異型として、ルシフェラーゼレポーターおよび最少プロモーターの上流に挿入した構築物について調べた(図3C)。変異型において、p53結合に極めて重要であると予測される2残基は非同系のヌクレオチドで置換した。BS2ではH1299細胞中で外因性p53により400倍を超えるまでに活性化され、一方、BS1では7倍しか活性化されなかったことから、これらの実験により、BS2が主要なp53応答要素である可能性が高いことが明らかとなった(図3D)。BS2レポーターを変異型のp53 R175H発現ベクターとコトランスフェクションしても、レポーターの活性化という結果は認められなかった(図3D)。さらに、BS2配列の変異により野生型p53の応答性は完全に排除された(図3D)。最後に、本発明者らはBS2レポーターを外因性p53発現ベクターなしに、内因性の野生型p53を含有するHCT116細胞にトランスフェクトした。BS1または変異型BS2レポーターではなく、BS2レポーターのトランスフェクションにより、これらの実験において結果としてルシフェラーゼ活性が高レベルとなったことから、p53の内因性レベルは直接的なJFY1の活性化に十分であることを示唆している(図3D)。BS2はマウスJFY1遺伝子においても同様に保存されていた。
【0043】
実施例2
JFY1 は Bcl-2 および Bcl-X L と相互作用する BH3 ドメイン含有ミトコンドリア蛋白質をコードする
二つの観察結果により、本発明者らはJFY1がミトコンドリア蛋白質をコードするという仮説を検証するに至った。第一に、JFY1蛋白質はBH3ドメインを含んでいると予測されたことである(図2B)。BH3ドメインは蛋白質のBcl-2ファミリーに存在する4つのBcl-2相同性ドメイン(Bcl-2homologydomain)の一つである(Chittendenら, 1995)。このファミリーのプロアポトーシスメンバーのいくつかはBH1、2または4ドメインではなくBH3ドメインを含み、少なくとも一部はミトコンドリアに存在している(Korsmeyer, 1999;Reed, 1997)に概説されている)。BH3ドメインはそれらプロアポトーシス活性および他のBcl-2ファミリー・メンバーとのヘテロ二量体形成能に必須である(Wangら, 1998;Wangら, 1996;Zhaら, 1997)。第二に、一部のJFY1 cDNA配列に相当するGenBankエントリー(アクセッション U82987)には、「ヒトBcl-2結合要素3」という興味深い注釈があった。この注釈の根拠は明記されておらず、このエントリーに含まれるアミノ酸配列は、本発明者らがJFY1遺伝子によりコードされると予測していた主要な蛋白質とはフレームが一致していなかった。
【0044】
ヒトJFY1の細胞内局在を決定するために、本発明者らはアミノ末端にヘマグルチニン(HA) タグを有する完全長のJFY1蛋白質をコードする発現ベクターを構築した(図4A)。このベクターは、細胞内局在の研究が容易となる平面的な形態を有している911細胞で発現させた。抗HA抗体を用いた間接蛍光抗体法により、トランスフェクトされた全細胞において核周囲に点状の染色が認められた(図4B)。この局在を、ミトコンドリア膜を標識する色素(MitoTracker Red)の局在と比較したところ、その局在は完全に一致していた(図4A)。興味深いことに、別のJFY1発現ベクターから産出される蛋白質JFY1-ΔBH3(BH3ドメインが欠失している以外は同一)も同様にして、ミトコンドリア中に限って認められたので、BH3ドメインは前記局在には必要とされていなかった(図4B)。ミトコンドリア局在にBH3の依存性がなかったことにより、JFY1はBH3ドメインが必要とされるNoxa(Odaら, 2000a)とは異なるものの、他のBH3含有蛋白質に関するデータとは一致している。
【0045】
本発明者らは次にJFY1がBcl-2と相互作用するかどうか調べた。上述のJFY1発現ベクターを用い、本発明者らは911細胞でBcl-2とともにJFY1を発現させた。免疫沈降実験により、同条件下ではBcl-2の主要画分(〜50%)はJFY1に結合していることが示された(図4C)。BH3ドメインの欠失により結合は完全に喪失したことから、JFY1のBH3ドメインは相互作用に必須であった(図4C)。JFY1の別のスプライスフォーム(AS)をコードする一つの類似ベクターを、同実験におけるさらなる対照とした(図4C)。
【0046】
以前の実験により、Bcl-2は多くのCRCでは発現しておらず、一方、Bcl-XLは遍在的に発現していることが示唆されていた(Zhangら, 2000)。JFY1がBcl-XLにも結合するかどうか決定するために、911細胞をJFY1発現ベクターおよびBcl-XL発現ベクターで コトランスフェクトし、同様の免疫沈降実験を行った。図4Cに示されるように、Bcl-XLは完全なJFY1に結合し、さらにJFY1のBH3ドメインは結合に必須であった。
【0047】
実施例3
JFY1 の発現により完全かつ急速な細胞死が起こる
細胞増殖へのJFY1発現の効果を決定するために、本発明者らはハイグロマイシンB耐性遺伝子に加えJFY1遺伝子を含有する発現ベクターを構築し(図4A)、このベクターを4つの異なる癌細胞株にトランスフェクトした。選択の後、空のベクターまたはBH3ドメインを欠いたJFY1をコードする類似のベクターと比較して、JFY1発現ベクターでトランスフェクトした後に起こるコロニー形成においては、劇的な減少が認められた(図5)。このコロニー抑制は細胞のp53遺伝子型(HCT116細胞では野生型、SW480およびDLD1では変異型、H1299にはなし)にかかわらず観察された。その数をカウントすることで、JFY1発現がコロニー形成を、1000倍を超える程度にまで減少させたことが示された。
【0048】
比較のため、本発明者らはDLD1細胞においてp53発現に続いて起こるカスパーゼ活性化およびアポトーシスの時間経過について解析した。p53およびJFY1の発現はドキシサイクリン除去により直ぐに誘導された(図6C、図6Dおよびデータは示していない)が、p53発現に続いて現れるカスパーゼ9の活性化およびβ-カテニン分解は数時間長くかかった(図6Cおよび図6Dで時間の尺度が異なっていることに注意)。さらに、クロマチン凝集や核の断片化のようなアポトーシスの形態学的な特徴は、JFY1を発現している細胞に比べp53を発現している細胞では〜9時間後まで遅くに現れた(図6E)。
【0049】
実施例4
実験手順
細胞培養
ヒト大腸癌細胞株DLD-1、HCT116、SW48、SW480、およびヒト肺癌細胞株H1299はATCCから入手した。標的とするp53が欠失したHCT116細胞については、以前に説明されている(Bunzら, 1998)。全株とも10%ウシ胎児血清(HyClone)、ペニシリン100ユニット/mlおよびストレプトマイシン100μg/mlを添加したマッコイ(McCoy)5A培地(Life Technologies)中、37℃にて維持した。網膜上皮細胞株911はライデン大学(University of Leiden)のA.J.Van der Ebから贈与され、説明されている通りに維持した(Fallauxら, 1996)。化学療法剤は0.2μg/ml(アドリアマイシン)および50μg/ml(5-FU)の濃度で使用し、細胞は24時間処理した。トランスフェクションはFugene(商標)6 (Boehringer Mannheim)を用い、製品の使用説明書に従って実施した。
【0050】
構築物
JFY1発現プラスミド:HAでタグをした完全長JFY1発現ベクターpHAHA-JFY1は、RT-PCR産物をpCEP4ベクター(Invitrogen)にクローニングすることにより構築した。BH3ドメインが欠失したJFY1、またはJFY1の別のスプライスフォームを含有するベクターの変種は、同様にして構築した。プライマーの配列およびベクター構築の詳細は、要請があれば著者から入手可能である。すべての場合において、複数のクローン個々の挿入物を完全に配列決定し、突然変異のないものをその後の実験に使用した。Bcl-2発現ベクターは以前に説明されており(Pietenpolら, 1994)、V5でタグをしたBcl-XL発現ベクターはInvitrogen社から購入した。
【0051】
レポーター構築物およびレポーターアッセイ法
プロモーターを含有する断片はHCT116細胞のヒトゲノムDNAから増幅し、最少プロモーターを含むpBVLucルシフェラーゼレポーター用ベクターにクローン化した(Heら, 1998)。推定されるp53結合部位を調べるため、野生型または変異型の結合部位を2コピー含む下記のオリゴ対を使用した:
BS1に対しては
BS1変異型に対しては
BS2に対しては
BS2変異型に対しては
アニールさせたオリゴヌクレオチド対を鎖状体化し、pBVLucのNhe I部位にクローン化した。911細胞へのトランスフェクションはルシフェラーゼレポータープラスミド 0.2μg、pCMVβ 0.2μgおよび野生型p53または変異型p53R175HのいずれかをコードするpCEP4 0.8μgを用い、12ウェルプレートで行った。トランスフェクションの効率に対する対照として、β-ガラクトシダーゼレポーターpCMVβ(Promega)を加えた。ルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼ活性は、Promega社およびICN Pharmaceuticals社のそれぞれからの試薬を用いてトランスフェクションした後、24〜48時間で評価した。全てのレポーター実験は3重測定とし、少なくとも三回独立して繰り返し行った。HCT116細胞を用いたトランスフェクションは、p53発現ベクターなしに、ルシフェラーゼレポーター 0.4μg、およびβ-ガラクトシダーゼレポーター 0.4μgを各ウェルに使用したことを除き、同様に実施した。
【0052】
誘導性細胞株
DLD1細胞において誘導性細胞株を作製する方法は、以前に説明されている(Yuら, 1999)。簡単に言えば、pBi-JFY1-GFPを作製するため、HAでタグをした完全長JFY1 cDNAをpBi-MCS-GFPにクローン化した。直鎖状にしたpBi-JFY1-GFPおよびpTK-hyg(Clontech)を、モル比5:1でDLD1-TET細胞にコトランスフェクトした。DLD1-TET細胞は、構成的に発現したtet活性化因子を含有するDLD1派生細胞である(GossenおよびBujard, 1992;Yuら, 1999)。単一コロニーは3〜4週間、G418 400μg/ml、ハイグロマイシンB(Calbiochem) 250μg/ml、およびドキシサイクリン 20ng/mlの存在下にて限界希釈法により得られた。GFP蛍光のバックグラウンドが低く、GFP誘導が均質なクローンを選別し、ウエスタンブロット解析によりJFY1の発現について解析した。
【0053】
免疫沈降およびウエスタン解析
免疫沈降は下記の変更をともなうが、基本的には説明の通り(Chanら、1999)に行った。911細胞は、二つの発現構築物のそれぞれ5μg(計10μg)でトランスフェクションする18時間前にT75フラスコに播種し、トランスフェクション後、20時間で収集した。細胞懸濁液を総量1mlで15秒間、超音波破砕し、プロテインA:プロテインGビーズ(4:1、Boehringer Mannheim)30μlを加え4℃にて1時間、インキュベートした。遠心(「全細胞溶解液」)後、回収した上清は引き続きウサギ抗HA抗体(sc-805、Santa Cruz)を加え、免疫沈降に使用した。全細胞溶解液および免疫沈降物のウエスタンブロットは、以前に説明されている通り実施した(Chanら, 1999)。これらの実験で使用した他の抗体には、マウス抗ヘマグルチニンモノクローナル抗体(12CA、Boehringer Mannheim)、ウサギ抗カスパーゼ9抗体(sc-7890、Santa Cruz)、マウス抗Bcl-2モノクローナル抗体(OP60、Oncogene Sciences)、マウス抗V5モノクローナル抗体(R960-25、Invitrogen)、マウス抗β-カテニンモノクローナル抗体(C19220、Transduction labs)、およびマウス抗p53モノクローナル抗体(DO1、D.laneからの贈与)が含まれる。
【0054】
免疫蛍光法および共焦点顕微鏡法
911細胞をグラスチャンバースライド(Nalge Nunc, Lab-Tek177372)に播種し、JFY1発現構築物でトランスフェクトした。20時間後、MitoTracker Red(0.5μM, Molecular Probes) を培地に添加し、さらに20分間、37℃で細胞をインキュベートした。細胞はPBS中4%パラホルムアルデヒドで固定し、冷アセトンで浸透化し、100%ヤギ血清を用い室温で1時間、ブロッキングした。PBST(0.05% Tween-20を添加したPBS)で3回洗浄後、PBST中50%ヤギ血清にて200倍希釈とした抗HA抗体(12CA, Boehringer Mannheim)を用い、スライドを4℃で一晩、インキュベートした。PBSTにて各5分間の洗浄を4回行った後、PBSTにて250倍希釈としたAlexa488標識抗マウス抗体(A-11001, Molecular Probes)を用い、スライドを室温で30分間インキュベートした。PBSTでさらに4回洗浄した後、スライドを標本とし、共焦点顕微鏡にて解析した。
【0055】
細胞増殖およびアポトーシスアッセイ法
トランスフェクションの18〜24時間前に、約1×106個の細胞を各T25フラスコにプレーティングした。構成性のJFY1発現構築物でトランスフェクション後、24時間でトリプシン処理により細胞を回収し、連続希釈した細胞をハイグロマイシン選択(HCT116では0.1mg/ml、DLD1では0.25mg/ml、ならびにSW480およびH1299では0.4mg/ml)の環境下としたT25フラスコにプレーティングした。14〜17日後、付着した細胞をクリスタルバイオレットで染色した。誘導性JFY1構築物を含有するDLD1細胞株については、細胞をドキシサイクリン中で増殖させ、T25フラスコ中で連続希釈した。細胞を播種してから24時間で、培地をドキシサイクリン入りの又はドキシサイクリンなしの新鮮な増殖培地に交換し、細胞を10日間増殖させ、その後、クリスタルバイオレットで染色した。アポトーシス細胞の割合を決定するため、全細胞(付着および浮遊)を回収し、説明の通りヘキスト33258で染色した(Waldmanら, 1996)。クロマチンの凝集および核の断片化といった特徴を有する細胞をアポトーシスとして記録した。
【0056】
ノザンブロット解析
総RNAはRNAgents(Promega)を用いて調製し、総RNA 10μgを1.5%ホルムアルデヒドアガロースゲル中で電気泳動することにより分離した。ノザンブロッティング用のプローブは、鋳型として細胞cDNAまたはESTを用いPCRにより作製し、ランダムプライミングにより標識した(FeinbergおよびVogelstein, 1984)。全プローブを調製するのに使用したプライマーの配列は、要請があれば著者から入手できる。説明の通り(Zhangら、1997)、ノザンブロット解析を実施し、ハイブリダイズはQuickHyb(Stratagene)中で行った。
【0057】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A−1C】CRC細胞におけるp53によるJFY1の誘導。 図1A:表示の時点における、p53誘導性DLD1細胞から調製されたRNA試料のノザンブロット解析を示す。JFY1遺伝子はドキシサイクリン除去後、p21と同様に、早くも3時間後に誘導されているが、BAXおよびNoxa遺伝子は強く誘導されてはいない。p53AIP1転写産物は、この条件では検出できなかった。GAPDHプローブをロード量の対照として使用した。 図1B:17時間、野生型p53(W)および変異型p53R75H(M)を発現するアデノウイルスを感染させた、表示の結腸直腸癌細胞株由来のRNAをノザンブロットにより解析した。 図1C:24時間、アドリアマイシン(Adr)または5-フルオロウラシル(5-FU)で処理した、表示の結腸直腸癌細胞株由来のRNAをノザンブロットにより解析した。未処理の細胞(「Un」)由来のRNAを対照として使用した。
【図2A−2B】JFY1蛋白質はBH3ドメインを含有する。 図2A:ヒト(配列番号:1)およびマウス(配列番号:2)JFY1の予測されるアミノ酸のアライメントから、90%の同一性が示される。同一残基は青に着色されており、非保存残基は赤に着色されている。128〜165位のアミノ酸は、Chou-Fasman法によりα-ヘリックスを形成すると予測された。BH3(141〜149位のアミノ酸)ドメインに相当する、α-ヘリックスの含まれる3段目中間は、ヒトおよびマウスJFY1の両者間で完全に同一である。 図2B:他のBcl-2ファミリー・メンバーとJFY1とのBH3ドメインのアライメントである。(配列番号:7〜17)非保存残基は赤に着色されているのに対し、保存残基(表示の11メンバーのうち3つより多くに含まれる)は青に着色されている。
【図3A−3D】p53はJFY1プロモーターを活性化する。 図3A:推定上の転写開始部位の300塩基対以内にある2つの潜在的p53結合部位(BS1およびBS2;配列番号;5および6)を示す。予測されるオープンリーディングフレーム(ORF)は、表示のATGで始まる。断片1および断片2はレポーター構築物に使用した。以前に同定されたp53の共通の結合部位(CBS;配列番号:18)(El-Deiryら, 1992)は、R=プリン、Y=ピリミジン、およびW=AまたはTとしてBS1配列の上に示してある。 図3B:表示された断片をpBVLucにクローン化し、野生型(wt)または変異型(R175H)p53発現構築物(Bakerら, 1990)とともに、H1299細胞へトランスフェクトした。変異型p53の存在下におけるルシフェラーゼ活性と比較した、野生型p53の存在下におけるルシフェラーゼ活性の割合を縦座標にプロットしている。全ての実験は、標準化を目的としてトランスフェクション混合物に含まれるβ-ガラクトシダーゼレポーターを利用した3重測定を実施し、平均および標準偏差をバーおよびブラケットによりそれぞれ示した。 図3C:潜在的p53結合部位の4コピーまたは部位の変異種を含むルシフェラーゼレポーターを、実験手順に記載されているように構築した。「Min Prom」はベクター(pBVLuc)に存在する最少プロモーターを示している。 図3D:図3Cに示されるレポーターについて調べるため、図3Bの通り、トランスフェクションを実施した。
【図4A−4C】JFY1はBcl-2およびBcl-XLと相互作用するミトコンドリア蛋白質をコードする。 図4A:発現構築物図。構成性の発現に対しては、PTKおよびPCMVはそれぞれ、ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ・プロモーターおよびCMVプロモーターを指し示している。Hyg = ハイグロマイシンBに対する抵抗性を与える、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子。誘導性の発現に対しては、TRE = テトラサイクリン応答性要素、tTA = Tet活性化因子、PminCMV= 最少CMVプロモーター。この系はドキシサイクリン(Dox)の除去により活性化される。 図4B:HAタグのJFY1構築物を911細胞にトランスフェクトし、間接免疫蛍光(緑)により視覚化した。ミトコンドリアを視覚化するために、MitoTracker Red色素を使用した。JFY1-ΔBH3は15アミノ酸の欠失した、タグ付きのJFY1蛋白質をコードしており、従ってBH3ドメインがない。 図4C:相違する発現構築物対を911細胞にトランスフェクトし、全細胞溶解液に対しウサギ抗HA抗体で免疫沈降後、記載の抗体によるウエスタンブロットにより解析を行った。「全細胞溶解液」と表示されたレーンは、免疫沈降物の入ったレーン中の細胞溶解液量の〜25%までを含有する。
【図5】JFY1はヒト腫瘍細胞の増殖を強力に抑制する。表示の癌細胞株をJFY1、JFY1-ΔBH3、または空ベクターをコードする構築物でトランスフェクトした。トランスフェクション後、24時間で細胞を回収し、T25フラスコ中で同細胞数を連続希釈し、ハイグロマイシンBの選択環境下にて17日間、増殖させた。最も高密度のフラスコのみを記載した。JFY1-ΔBH3によるトランスフェクションと、空ベクターによるトランスフェクション間で、コロニー形成に関して目に見える相違はなかったが、JFY1発現ベクターによるトランスフェクション後に得られたコロニーの数は、1000倍を超えるまでに減少していた。
【図6A−6E】JFY1はDLD1細胞において急速にアポトーシスを誘導する。 図6A:GFPおよびJFY1に対する個別のカセットを含む発現ベクター(図4A参照)をDLD1細胞の誘導性クローンを樹立するために使用した。非誘導状態(オフ)または培地からの12時間のドキシサイクリン除去により誘導状態(オン)として維持した細胞に対する代表的な結果を示した。GFPおよびJFY1(JFY1)、またはGFPのみ(ベクター)の双方を誘導的に発現するクローンに対して、位相差顕微鏡(位相差)または蛍光顕微鏡(GFP)によって視覚化された最初の縦2例は、同一視野を示している。3列目(DAPI)は顕微鏡検査後すぐに集められ、ヘキスト33528で染色した同一培養細胞の核を示している。色素で染色したアポトーシス細胞は、特徴的なクロマチン凝集や核の断片化を有する。ほとんど全てのJFY1誘導細胞は12時間までにアポトーシスとなった。 図6B:表示のクローンを、ドキシサイクリンあり(オフ)またはドキシサイクリンなし(オン)で10日間増殖させた後、クリスタルバイオレットで染色した。実験開始時点において2百万または2千個の細胞を含む2つの個別のフラスコを、JFY1誘導による著しい効果を説明するために示した。 図6C:誘導的にJFY1を発現するDLD1細胞を、ドキシサイクリン除去後、表示の時間に集めた。全細胞溶解液を、カスパーゼ9の活性化およびβ-カテニンの切断を評価するためにウエスタンブロットに使用した。切断産物は矢印で示されている。 図6D:DLD1細胞がJFY1の代わりにp53を誘導的に発現していることを除き、図6Cに同じ。時間尺度が異なることに注意。 図6E:JFY1またはp53のいずれかを発現誘導させたDLD1細胞を、表示の時点において、核酸の凝集および断片化により示されるアポトーシスに対して評価した。各判定に対して、少なくとも300個の細胞を計数し、同一の結果を伴う実験を2回繰り返して行った。
【0001】
本発明は米国政府からの基金を利用することにより達成された。米国政府は本発明に関してNIHグラント CA 43460およびGM 07184の規定に従い、一定の権利を有する。
【0002】
本出願は2000年12月19日に出願された米国特許出願第60/256,328号の恩典を主張する。
【0003】
発明の背景
p53の増殖制御機能の不活性化は、大部分のヒト癌の発生に対して重要であると思われる(Hollsteinら, 1999;HussainおよびHarris, 1999)。p53蛋白質は細胞周期の進行を阻害すること、およびアポトーシスを促進することにより、腫瘍増殖を制御している(Lane, 1999;Levine, 1997;Oren, 1999;PrivesおよびHall, 1999)。p53による細胞周期進行の阻害は、直接的にサイクリン依存性キナーゼ活性を制御する遺伝子を転写的に活性化するその能力のため、主要な部分を占めていることが示されてきた((El-Deiry, 1998)に概説されている)。例えば、p53は、いくつかのサイクリン-cdk複合体に結合し、阻害するp21CIP1/WAF1(Harperら, 1993;Xiongら, 1993)、およびサイクリンB/cdc2複合体を細胞質中へ移行させる14-3-3σ(Chanら, 1999)を誘導する。どちらの場合に関しても、誘導はこれらの遺伝子のプロモーター中にある同種の認識要素へのp53の結合により生ずる(El-Deiryら, 1993;Hermeking, 1997)。
【0004】
p53がアポトーシスを誘導する際に介される機構に関しては、これも標的遺伝子の転写活性化が介していると考えられてはいるものの、ほとんど知られていない((Chaoら, 2000) に概説されている)。ショウジョウバエp53相同体の機能的研究から明らかなように、p53のアポトーシス機能は高度に保存されている(Brodskyら, 2000;Jinら, 2000;Ollmannら, 2000)。さらに、p53の細胞周期阻害効果はp53の腫瘍抑制効果を完全に説明するには不十分であるということから、アポトーシス誘導はp53の腫瘍抑制の鍵となる要素であることを示唆している(GottliebおよびOren, 1998;Symondsら, 1994)。p53により調節され、アポトーシスを媒介する遺伝子を同定するために、数多くの研究が行われてきた(El- Deiryら、1998)。p53により開始されるアポトーシスはミトコンドリア経路を介して進行すると思われるので、これらの候補のうち、ミトコンドリア蛋白質をコードするものが特に興味深い。特に、p53により刺激されるアポトーシスには、ミトコンドリア膜の電位変化、活性酸素種の蓄積、カスパーゼ9活性の刺激、およびその後のカスパーゼカスケードの活性化が含まれる(Liら、1999;Polyakら, 1997;Schulerら, 2000;Soengasら、1999)。
【0005】
p53により調節され、コードする蛋白質の少なくとも一部はミトコンドリアに存在する、3つの遺伝子が同定されている。最初に同定されたのは、このクラスのプロトタイプとして機能しているプロアポトーシスのBcl-2ファミリーメンバーのBAXであった(Reed, 1999)。さらに最近では、Noxaおよびp53AIP1が発見され、p53により発現が制御されているプロアポトーシス・ミトコンドリア蛋白質をコードしていることが示唆された(Odaら, 2000a, Oda, 2000b)。結腸直腸癌(CRC)におけるこれらの遺伝子の役割を探索するため、本発明者らは、それらの発現様式を詳細に調査した。以下のように、これらの3つの遺伝子は、CRC細胞においてp53により誘導される劇的なアポトーシスを説明するのに、十分に速い時期または十分に強いレベルで発現しているようには思われなかった。癌細胞のアポトーシス誘導に含まれる遺伝子の同定に対する当技術分野における必要性は、依然として存在する。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明の目的は、癌細胞に急速なアポトーシスを誘導するのに最適な、単離および精製された蛋白質を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、癌細胞に急速なアポトーシスを誘導するのに最適な蛋白質をコードする、単離および精製されたポリヌクレオチドを提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、p53に対する結合部位を含む、単離および精製された核酸を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、癌細胞にアポトーシスを誘導する方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、アポトーシスを誘導可能なものについて、薬物をスクリーニングする方法を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、癌細胞を診断するための方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、癌患者の予後の決定を補助する方法を提供することである。
【0013】
本発明のこれらおよび他の目的は、下記の態様のうちの一つまたは複数により提供される。本発明の一つの態様として、配列番号:1または2に記載の配列を有する、単離および精製されたJFY1蛋白質が提供される。
【0014】
本発明の別の態様として、単離および精製されたJFY1ポリヌクレオチドが提供される。それは配列番号:3または4に記載の配列を有するコード配列を含む。
【0015】
本発明のさらに別の態様として、単離および精製されたJFY1 BS1またはBS2核酸が提供される。それは配列番号:5、6、または27に記載の配列を有する。
【0016】
本発明の別の側面によれば、癌細胞にアポトーシスを誘導する方法が提供される。JFY1コード配列を含む核酸を癌細胞に供給する。その結果、癌細胞中でJFY1が発現し、アポトーシスを誘導する。
【0017】
本発明の別の側面によれば、アポトーシスを誘導可能なものについて、薬物をスクリーニングする方法が提供される。試験化合物を、変異型p53を含有し、且つ野生型p53を含有しない細胞と接触させる。前記細胞中のJFY1発現を検出する。JFY1の発現を増加させる試験化合物は、癌治療のための候補薬物である。
【0018】
本発明のさらに別の側面によれば、アポトーシスの誘導可能なものについて、薬物をスクリーニングする方法が提供される。試験化合物を、変異型p53およびJFY1-BS2-レポーター遺伝子構築物を含有する細胞と接触させる。前記細胞は、野生型p53を含有していない。レポーター遺伝子の発現を検出する。レポーター遺伝子の発現を増加させる試験化合物は、癌治療のための候補薬物である。
【0019】
本発明の別の態様として、癌細胞を診断するための方法が提供される。新生物の疑いのある生物試料中のJFY1発現産物をアッセイする。生物試料中の発現産物の量を、新生物ではない対照試料中の発現産物の量と比較する。生物試料中の発現産物の量が、対照試料中の量よりも有意に少ない場合、生物試料を新生物と同定する。
【0020】
本発明のさらに別の態様として、癌患者の予後の決定を補助する方法が提供される。腫瘍試料中のJFY1発現産物をアッセイする。腫瘍試料中の発現産物の量を、新生物ではない対照試料中の発現産物の量と比較する。腫瘍試料中の発現産物の量が、対照試料中の量よりも有意に少ない場合、生物試料を予後不良の指標(negative prognostic indicator)を有するものとして同定する。
【0021】
従って、本発明は、癌細胞においてp53誘導性のアポトーシスを媒介するのに重要な新規の遺伝子および蛋白質に関する技術を提供する。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明者らの発見は、ミトコンドリア蛋白質をコードする遺伝子がp53により強力に調節され、CRC細胞においてp53の関連するアポトーシスを媒介することである。p53による前記遺伝子の急速な誘導という観点から、遺伝子はJFY1と命名された。cDNAのヌクレオチド配列を配列番号:3または4に示す。コードされるアミノ酸配列を配列番号:1または2に示す。
【0023】
本発明により提供されるポリヌクレオチドには、配列番号:1または2に記載の、同じアミノ酸配列をコードする任意のポリヌクレオチドを含み、配列番号:3または4と非常に密接に相関するポリヌクレオチドが含まれる。同様にして、天然に存在するJFY1突然変異体および生物種相同体だけでなく、示されるようなJFY1の多型性変異体であるポリヌクレオチドが含まれる。ポリヌクレオチド変異体は、典型的には1、2、もしくは3塩基対置換、欠失、または挿入を含む。多型性蛋白質変異体は、典型的には1アミノ酸置換であって、典型的には保存的置換を含む。2つのポリヌクレオチド配列間の配列同一性の割合(%)は、FASTAアルゴリズムを使用したALIGNのようなコンピュータープログラムを使用して、-12のギャップオープンペナルティーおよび-2のギャップ伸張ペナルティーを備えたアファイン変換のギャップ検索を使い、決定することができる。本発明に従えば、少なくとも90%の同一性に達する場合、ポリヌクレオチドは相同体と考えられる。好ましくは、それらは少なくとも91%、93%、95%、97%、またはさらには99%同一である。推定上のJFY1ポリペプチド変異体または突然変異体または相同体間の同一性の割合(%)は、Blast2アラインメントプログラムを使用して決定することができる。デフォルト・セッティングは、推定上の配列を配列番号:1または2のアミノ酸配列と比較する際に、使用することができる。好ましくは、それらは少なくとも90%、91%、93%、95%、97%、またはさらには99%同一にまで達する。ポリヌクレオチドは好ましくは、JFY1をコードする配列のうちの少なくとも730ヌクレオチド長または全JFY1転写産物もしくはゲノム配列のうちの少なくとも1640ヌクレオチド長を含む。
【0024】
ヒト組織で発生する可能性があり、アポトーシス誘導活性を有するJFY1配列の天然に存在するいかなる変異体も、本発明の範囲内である。従って、JFY1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対する本明細書中の言及には、天然に存在するこれらの配列の変異体に対する言及が含まれる。4アミノ酸が異なり、生物学的機能を保持している天然には存在しない変異体も同様にここに含まれる。好ましくは、変化は保存的アミノ酸の変化であり、即ち、同様に荷電したまたは荷電していないアミノ酸の変更である。
【0025】
上記のように、JFY1の天然のアミノ酸配列からの僅かなアミノ酸変化は、用語JFY1により包含されていることを意図する;特に、保存的アミノ酸置換を意図する。保存的置換は側鎖間において相関性のあるアミノ酸ファミリー内で起こるものである。遺伝学的にコードされるアミノ酸は、一般的に4つのファミリーに分割される:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4) 極性非電荷=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、芳香性アミノ酸として一緒に分類されることがある。例えば、ロイシンからイソロイシンもしくはバリン、アスパラギン酸からグルタミン酸、トレオニンからセリンへの単一置換、またはあるアミノ酸から構造的に相関性のあるアミノ酸への類似置換は、特に、置換がJFY1またはその誘導体とBcl-2ファミリー・メンバーとの相互作用に関与する結合部位でアミノ酸を含んでいない場合、結果として生じる分子の結合特性に大きな影響を及ぼさないことを予期するのは合理的である。アミノ酸変化が結果的に機能的なペプチドを生ずるかどうかは、JFY1ポリペプチド誘導体のBcl-2結合特性をアッセイすることにより容易に決定することができる。結合アッセイ法は以下に詳細に説明されている。Bcl-2およびBcl-XLが好ましいが、ファミリーのいかなるメンバーもアッセイに使用することができる。
【0026】
本発明によるポリヌクレオチド配列は、染色体19qにおいて、ポリヌクレオチド配列がもともと隣接する他の配列を除いて単離することができる。従って、ポリヌクレオチド配列は全てのまたは一部の他のヒト19q配列を除いて単離することができる。特に好ましい態様として、ポリヌクレオチド配列は他の全ての19q配列を除いて単離される。ポリヌクレオチド配列はJFY1のコード配列を複製する、および/または発現するためのベクターを含むことができる。ベクターは、例えば誘導因子または抑制因子により、JFY1配列の発現の制御を可能にする調節配列を含んでもよい。一般的に、ベクターはインビトロ組換え技術により作製される。当技術分野において知られているように、ベクターは適切な宿主細胞中で複製し、維持することができる。宿主細胞の純粋培養物が好ましい。当技術分野において知られている適切な調節配列およびいかなるそのような配列も制限なく使用することができる。ポリヌクレオチドは別のコード配列、例えば、容易にアッセイ可能なエピトープ(抗原決定基)または酵素活性をコードするものに連結することができる。そのようなポリヌクレオチドは、JFY1および融合相手の両方の特性を有する融合蛋白質を産生すると思われる。融合蛋白質は、JFY1の全部または一部、および第二の蛋白質の全部または一部を含有することができる。
【0027】
本発明によるポリヌクレオチドは同様にして、プライマーまたはプローブとして使用可能である。そのようなポリヌクレオチドは、少なくとも15、18、10、または25ヌクレオチド長でありうる。それらは二本鎖または一本鎖であってもよい。使用にあたって、それらは一本鎖化され、または変性されていることが好ましい。プローブおよびプライマーは、例えば、放射性標識、蛍光部分、制限エンドヌクレアーゼ部位、特定のハイブリダイゼーション配列等を使用して標識することができる。これらは、オリゴヌクレオチド作製に関して当技術分野において知られる任意の技術に従って合成することができる。プライマー対は一般的にタンデムに使用され、一緒にしておくことも可能である。一つの特別な態様として、プライマーおよび/またはプローブは、下記のようにJFY1の発現をモニターするのに使用される。本発明のプライマー対は、配列番号:1の1〜235位のヌクレオチド、またはその相補鎖に対して実質的に相補である少なくとも1つのプライマーを使用する。実質的な相補性とは、増幅の間、プライマーがハイブリダイズし、鋳型に基づく伸張を開始することができることを意味する。
【0028】
配列番号:1または2のうちの少なくとも9個、10個、12個、14個、16個、または18個の連続したアミノ酸を含むポリペプチドは、特に抗体を作製するために使用することが可能である。マウス、ウサギ、またはヤギのような接種動物において、JFY1に特異的に結合する抗体を誘導するために、そのようなポリペプチドは単独で、または免疫原のような他の蛋白質と結合もしくは融合させて使用することができる。従って、JFY1特異的な結合抗体のポリクローナルな調製物またはモノクローナルな調製物も同様にして提供される。そのような抗体の作製およびスクリーニング方法は、当技術分野において公知であり、当業者によって、過度の実験に頼ることなく利用することが可能である。
【0029】
出願人らはヒトゲノムにおいて、コード配列の上流に発見されたJFY1に対する内因性の制御配列を同定した。制御配列はJFY1発現を上方調節するp53の結合を可能にする。一方は他方に比べてより活性であるように思われるが、2つの結合配列の位置が突き止められた。レポーターまたはJFY1を含む他の遺伝子配列を協調的に発現させるため、これらの一方または両方を使用することができる。結合配列はp53による制御をもたらすために、内因性のコード配列または他の配列とともに使用することができる。適切なレポーター遺伝子は当技術分野において知られており、緑色蛍光蛋白質、βガラクトシダーゼ、およびアルカリフォスファターゼを含むがこれに限定されることなく、いかなるものでも使用することができる。結合配列は、単独でまたはタンデムに並べて使用することが可能である。複数コピーにより、達成される誘導レベルは増大する。特定の態様として、ポリヌクレオチドは結合配列の少なくとも2コピーまたは少なくとも4コピーを含んでもよい。結合配列を含む単離および精製されたポリヌクレオチドは、染色体19q上に位置する他の遺伝子配列を除いて精製される。
【0030】
細胞をアポトーシス経路に入れるJFY1の誘導能により、JFY1またはJFY1をコードするポリヌクレオチドは、癌または望ましくない細胞増殖を特徴とする他の疾患を治療するために使用することができる。腫瘍に対して、ポリヌクレオチドを腫瘍または腫瘍を含む体腔に直接投与することができる。ポリヌクレオチドをウイルスまたはウイルスベクターの形態で投与することができる。ポリヌクレオチドをリポソームまたは他の遺伝子輸送粒子もしくは製剤の形態で投与することができる。いくつかの状況において、ポリヌクレオチドをパーティクル・ボンバードメント(particle bombardment)により輸送することができる。当業者は腫瘍または他の疾患の特定種に対して適切な運搬方法および媒体を認識し、適合させることができると思われる。
【0031】
JFY1が有する刺激性の生物学的活性のため、これを薬物スクリーニング法の基礎として使用することができる。従って、化合物または組成物を、変異型p53を有し、野生型p53を有さない細胞と接触させることにより、それらを試験することができる。JFY1発現は直接的にまたはBS1(配列番号:5)および/またはBS2(配列番号:6または27)配列の制御下のレポーター遺伝子を使用して、モニターすることができる。JFY1発現(または代理のレポーター発現)を増加させることが可能な化合物または組成物は、癌または細胞増殖を含む他の疾患を治療するための候補として同定される。発現のモニターは、特定の蛋白質を免疫学的に、もしくは活性により測定することを含む、当技術分野において知られる任意の手段を用いて、または特定のmRNA種を測定することによって可能である。発現を測定するための技術は当技術分野においてよく知られており、いずれも都合良く使用することができる。類似のスクリーニング技術は、JFY1発現が直接的にまたは代理のもの(surrogate)によりモニターされる無細胞系に対して設定することができる。
【0032】
癌疾患の重症度の検出および予測のために、p53を診断上および予測上、使用することが可能であるように、JFY1も同様にして使用可能である。従って、生物試料をJFY1発現産物の量に関してアッセイすることができる。対照試料中よりも生物試料中の量の有意な低下により、新生物試料を識別する。対照試料は生物試料のものと同一個体から得ることができ、または健常個体から得ることができる。対照試料は試験試料と同一種類の組織から得ることが好ましいと考えられる。真正の腫瘍試料をJFY1発現に対して試験する場合には、予後を決定することができる。癌細胞でp53の発現が低下しているのと同様に、JFY1発現産物の量がより低下しているか、または無いことは、予後不良の指標となる。
【0033】
CRC細胞株であるDLD1はドキシサイクリン調節プロモーターの制御下、外因性p53の発現後、〜18時間までにアポトーシスに至る。さらに、9時間後、ドキシサイクリン添加によりアポトーシスは減少しないことから、これらの細胞はp53曝露から僅か9時間後にはアポトーシスにコミットしている(Yuら, 1999)。これらの観察を、この系における多数のp53調節遺伝子の分析と組合せて考えることにより、本発明者らは、CRC細胞においてアポトーシスを媒介する可能性のある候補に対する下記の指針を提案するに至った。第一に、DLD1細胞におけるそれらの誘導は強力および急速(実質的には9時間までの発現)でなくてはならない。第二に、それらはDLD1細胞のみだけでなく、他のCRC細胞株においてp53により誘導されなくてはならない。第三に、それらは高濃度の外因性p53によってのみではなく、化学療法剤に曝露後、上昇した内因性p53によって誘導されなくてはならない。第四に、曝露後のそれらの誘導は、完全なp53遺伝子に依存していなくてはならない。第五に、候補遺伝子は、それらがミトコンドリア経路を介して直接的にアポトーシスを促進可能であることを示唆する生化学的および生理学的特性を示さなくてはならない。
【0034】
誘導的にp53を発現するDLD1細胞は、遺伝子発現連続分析(Serial Analysis of Gene expression:SAGE)技術を使用して調べられた(Velculescuら, 1995;Yuら, 1999)。本発明者らは、上述の基準を満たしていた、JFY1と表される、1つの遺伝子のみを同定した。JFY1遺伝子はEST(発現配列タグ(ExpressedSequenceTags))と一致したものの、既知遺伝子とは一致しなかったSAGEタグにより発見された。SAGEデータは、p53を9時間発現させた後に、DLD1細胞においてJFY1が10倍より多く誘導されていることを示唆していた。ノザンブロッティングは、p21CIP1/WAF1と同様にして、JFY1がドキシサイクリン除去後、早くも3時間で誘導されていることを示していた(図1A)。JFY1発現は、以前決定されたアポトーシスに対する9時間の「コミットメント・ポイント(commitment point)」(Yuら、1999)よりもかなり早く、6時間までに最大となっていた。試験した4つの各細胞株において、野生型(wt)p53をコードするアデノウイルスで感染後、JFY1は有意に誘導されたが、変異型R175Hp53をコードする類似アデノウイルスの発現後にはJFY1は誘導されなかった(図1B)。さらに、DNA損傷剤であるアドリアマイシンによるのと同様にして、CRCに対する治療の柱である5-FU(5-フルオロウラシル)で処理後、HCT116およびSW48細胞において、JFY1 mRNAの発現が誘導されていることが判明した(図1C)。HCT116およびSW48細胞は野生型p53遺伝子を含み、図1Cの結果から、p53の内因性レベルがJFY1を誘導するのに十分であったことが示されている。5-FU処理に続いて起こるアポトーシスは完全なp53に全体として依存している(Bunzら, 1999)。標的化相同組換えにより、p53遺伝子が破壊されたHCT116細胞(Bunzら, 1998)を使用して、本発明者らは、5-FUによるJFY1の転写誘導も同様にして完全にp53に依存していることを発見した(図1C)。
【0035】
上述の転写パターンを、ミトコンドリア蛋白質をコードする3つの他のp53誘発遺伝子(BAX、Noxa、およびp53AIP1)のパターンと比較した。ノザンブロッティングにより確認されたように(図1A)、SAGEによりBAXおよびNoxa転写産物の誘導はごく僅かなこと、または有意差がないことが明らかとなった。p53AIP1転写産物は、これらの実験においてSAGEまたはノザンブロッティングのどちらによっても検出することができず、この遺伝子がp53誘導後、非常に遅い時期のみに活性化されることを示す以前の結果(Odaら, 2000b)と一致していた。さらに、JFY1のみが、アデノウイルスを感染後、試験した4つのCRC細胞株の全てにおいて誘導され、JFY1のみが、HCT116およびSW48細胞の両方で5-FUにより有意に誘導された(図1B、図1C)。概して、JFY1の転写パターンはp21CIP1/WAF1のパターンと厳密に一致していたが、他の3遺伝子のパターンは全く異なっていた。
【0036】
これらの結果は、結腸直腸癌細胞においてp53が媒介する細胞死が、一部はJFY1遺伝子の転写活性化を介して調節されていることを示唆している。図3の結果は、この活性化がJFY1プロモーター内のBS2配列へのp53の結合の直接的な結果である可能性があることを示している。JFY1誘導の時間経過(図1A)ならびに急速かつ著しい程度のアポトーシスを引き起こすJFY1の能力(図5、図6)により、このモデルが支持される。このことは、Bcl-2ファミリー・メンバー(特にBH3ドメインのみを含むもの)が、線虫(C. elegans)からヒトに及ぶ生物において、アポトーシスの過程を制御していることを示す大多数の文献(Green, 2000;Korsmeyer, 1999;AdamsおよびCory, 1998;Reed, 1997;Vander HeidenおよびThompson, 1999)によっても同様に支持される。最後に、このことは、p53が媒介するアポトーシスが、ミコンドリアによる細胞死経路を介して進行することを示す以前の研究(Liら, 1999;Polyakら, 1997;Schulerら, 2000;Soengasら, 1999)により支持される。
【0037】
Bcl-2ファミリー・メンバーの孔形成能が立証されてきた(Minnら, 1997;Schendelら, 1998)。BH3ドメインを通じてBcl-2ファミリーと唯一関連付けられるJFY1は、他のBcl-2ファミリー・メンバーまたは他のミトコンドリア蛋白質と複合体を形成した場合、孔形成に影響を及ぼす可能性がある。JFY1の高レベルの発現はアポトーシスに十分であるが、この遺伝子の発現がアポトーシスに必要であるかどうかは不明である。さらに、非常に低レベルではあるが、分析した全ての正常ヒト組織においてJFY1が発現していた。図2に示される配列データにより容易となる、ヒト体細胞およびマウスES細胞におけるJFY1の標的化された欠失により、今後、これらの疑問に対する回答が得られると思われる。最後に、JFY1の発現により非常に急速かつ著しいアポトーシスに至ったという事実は、JFY1が癌遺伝子治療においてp53の代用物となると考えられることを示唆している。
【0038】
実施例
実施例1
JFY1 転写産物および遺伝子の特徴付け
JFY1に対する明確な完全長cDNA(図2A)を得るために、データベース検索、ESTクローンの再配列決定、RT-PCR解析、および5'RACEを組み合わせて利用した。極端にGCに富む5'非翻訳領域により、これらの試みは複雑なものとなった。最終的にアセンブルされたcDNAはサイズが1.9kbであり、ノザンブロットで観察された主要な転写誘導産物のサイズと一致していた(図1A)。結果として得られた配列をゲノムDNAの配列と比較することにより、JFY1転写産物は4つのエクソン中に含まれ、第2エクソンに推定上の開始コドンを有することが明らかとなった(図3A)。JFY1は以下に論ずるように、BH3ドメインを除き、その他の既知の蛋白質に対して有意な相同性のない193アミノ酸の蛋白質をコードすると予測された。RT-PCT解析により、JFY1は8つの異なるヒト組織の各々において、低レベルではあるが同程度のレベルで発現していることが明らかとなり、ラディエーションハイブリッドマッピング法により、JFY1遺伝子は染色体19qに位置していることが明らかとなった(データは示していない)。
【0039】
JFY1のマウス相同体はマウスのESTおよびゲノムデータベースの検索により同定された。推測されるマウス遺伝子はヒト相同体の4つのコードエクソンに相当する4つのエクソンを含み、対応するコードエクソンは2種において同一の長さであった。ヒトおよびマウス遺伝子はアミノ酸およびヌクレオチドレベルで、それぞれ91%および90%同一であった(図2A)。
【0040】
第2エクソンの欠けたJFY1の別のスプライスフォーム(AS)がヒトRNAを鋳型としたRT-PCR実験で認められ、図1Aで観察された短いmRNA種に相当する可能性が高かった。PCR産物の配列決定により、ASはオープンリーディングフレームを変化させることで、もはやBH3ドメインが含まれなくなることが明らかとなり、従って本発明者らはこのフォームについて更に検討することはしなかった。
【0041】
本発明者らはJFY1遺伝子上流の共通のp53結合部位を探索し、二つの該当部位、BS1およびBS2をそれぞれ転写開始部位の230塩基対および144塩基対上流の位置に同定した(図3A)。JFY1遺伝子のこの領域がp53応答を媒介することが可能があるかを決定するために、本発明者らはその5'末端が推定される転写開始部位の427塩基対上流となっている493塩基対の断片をクローン化し、最少プロモーターを含むルシフェラーゼレポーターの前部に断片を配置させた。この領域を包含させることにより、H1299細胞にp53発現ベクターとともにトランスフェクトした場合、60倍の活性を示した(図3B)。この構築物から5'末端300塩基対を欠失(BS1およびBS2を含む領域)させることにより、p53応答のほとんどが喪失するに至った(図3B)。
【0042】
二つの結合部位のどちらが主にp53応答を担っているのかを決定するために、本発明者らは各結合部位の4つのコピーを野生型または変異型として、ルシフェラーゼレポーターおよび最少プロモーターの上流に挿入した構築物について調べた(図3C)。変異型において、p53結合に極めて重要であると予測される2残基は非同系のヌクレオチドで置換した。BS2ではH1299細胞中で外因性p53により400倍を超えるまでに活性化され、一方、BS1では7倍しか活性化されなかったことから、これらの実験により、BS2が主要なp53応答要素である可能性が高いことが明らかとなった(図3D)。BS2レポーターを変異型のp53 R175H発現ベクターとコトランスフェクションしても、レポーターの活性化という結果は認められなかった(図3D)。さらに、BS2配列の変異により野生型p53の応答性は完全に排除された(図3D)。最後に、本発明者らはBS2レポーターを外因性p53発現ベクターなしに、内因性の野生型p53を含有するHCT116細胞にトランスフェクトした。BS1または変異型BS2レポーターではなく、BS2レポーターのトランスフェクションにより、これらの実験において結果としてルシフェラーゼ活性が高レベルとなったことから、p53の内因性レベルは直接的なJFY1の活性化に十分であることを示唆している(図3D)。BS2はマウスJFY1遺伝子においても同様に保存されていた。
【0043】
実施例2
JFY1 は Bcl-2 および Bcl-X L と相互作用する BH3 ドメイン含有ミトコンドリア蛋白質をコードする
二つの観察結果により、本発明者らはJFY1がミトコンドリア蛋白質をコードするという仮説を検証するに至った。第一に、JFY1蛋白質はBH3ドメインを含んでいると予測されたことである(図2B)。BH3ドメインは蛋白質のBcl-2ファミリーに存在する4つのBcl-2相同性ドメイン(Bcl-2homologydomain)の一つである(Chittendenら, 1995)。このファミリーのプロアポトーシスメンバーのいくつかはBH1、2または4ドメインではなくBH3ドメインを含み、少なくとも一部はミトコンドリアに存在している(Korsmeyer, 1999;Reed, 1997)に概説されている)。BH3ドメインはそれらプロアポトーシス活性および他のBcl-2ファミリー・メンバーとのヘテロ二量体形成能に必須である(Wangら, 1998;Wangら, 1996;Zhaら, 1997)。第二に、一部のJFY1 cDNA配列に相当するGenBankエントリー(アクセッション U82987)には、「ヒトBcl-2結合要素3」という興味深い注釈があった。この注釈の根拠は明記されておらず、このエントリーに含まれるアミノ酸配列は、本発明者らがJFY1遺伝子によりコードされると予測していた主要な蛋白質とはフレームが一致していなかった。
【0044】
ヒトJFY1の細胞内局在を決定するために、本発明者らはアミノ末端にヘマグルチニン(HA) タグを有する完全長のJFY1蛋白質をコードする発現ベクターを構築した(図4A)。このベクターは、細胞内局在の研究が容易となる平面的な形態を有している911細胞で発現させた。抗HA抗体を用いた間接蛍光抗体法により、トランスフェクトされた全細胞において核周囲に点状の染色が認められた(図4B)。この局在を、ミトコンドリア膜を標識する色素(MitoTracker Red)の局在と比較したところ、その局在は完全に一致していた(図4A)。興味深いことに、別のJFY1発現ベクターから産出される蛋白質JFY1-ΔBH3(BH3ドメインが欠失している以外は同一)も同様にして、ミトコンドリア中に限って認められたので、BH3ドメインは前記局在には必要とされていなかった(図4B)。ミトコンドリア局在にBH3の依存性がなかったことにより、JFY1はBH3ドメインが必要とされるNoxa(Odaら, 2000a)とは異なるものの、他のBH3含有蛋白質に関するデータとは一致している。
【0045】
本発明者らは次にJFY1がBcl-2と相互作用するかどうか調べた。上述のJFY1発現ベクターを用い、本発明者らは911細胞でBcl-2とともにJFY1を発現させた。免疫沈降実験により、同条件下ではBcl-2の主要画分(〜50%)はJFY1に結合していることが示された(図4C)。BH3ドメインの欠失により結合は完全に喪失したことから、JFY1のBH3ドメインは相互作用に必須であった(図4C)。JFY1の別のスプライスフォーム(AS)をコードする一つの類似ベクターを、同実験におけるさらなる対照とした(図4C)。
【0046】
以前の実験により、Bcl-2は多くのCRCでは発現しておらず、一方、Bcl-XLは遍在的に発現していることが示唆されていた(Zhangら, 2000)。JFY1がBcl-XLにも結合するかどうか決定するために、911細胞をJFY1発現ベクターおよびBcl-XL発現ベクターで コトランスフェクトし、同様の免疫沈降実験を行った。図4Cに示されるように、Bcl-XLは完全なJFY1に結合し、さらにJFY1のBH3ドメインは結合に必須であった。
【0047】
実施例3
JFY1 の発現により完全かつ急速な細胞死が起こる
細胞増殖へのJFY1発現の効果を決定するために、本発明者らはハイグロマイシンB耐性遺伝子に加えJFY1遺伝子を含有する発現ベクターを構築し(図4A)、このベクターを4つの異なる癌細胞株にトランスフェクトした。選択の後、空のベクターまたはBH3ドメインを欠いたJFY1をコードする類似のベクターと比較して、JFY1発現ベクターでトランスフェクトした後に起こるコロニー形成においては、劇的な減少が認められた(図5)。このコロニー抑制は細胞のp53遺伝子型(HCT116細胞では野生型、SW480およびDLD1では変異型、H1299にはなし)にかかわらず観察された。その数をカウントすることで、JFY1発現がコロニー形成を、1000倍を超える程度にまで減少させたことが示された。
【0048】
比較のため、本発明者らはDLD1細胞においてp53発現に続いて起こるカスパーゼ活性化およびアポトーシスの時間経過について解析した。p53およびJFY1の発現はドキシサイクリン除去により直ぐに誘導された(図6C、図6Dおよびデータは示していない)が、p53発現に続いて現れるカスパーゼ9の活性化およびβ-カテニン分解は数時間長くかかった(図6Cおよび図6Dで時間の尺度が異なっていることに注意)。さらに、クロマチン凝集や核の断片化のようなアポトーシスの形態学的な特徴は、JFY1を発現している細胞に比べp53を発現している細胞では〜9時間後まで遅くに現れた(図6E)。
【0049】
実施例4
実験手順
細胞培養
ヒト大腸癌細胞株DLD-1、HCT116、SW48、SW480、およびヒト肺癌細胞株H1299はATCCから入手した。標的とするp53が欠失したHCT116細胞については、以前に説明されている(Bunzら, 1998)。全株とも10%ウシ胎児血清(HyClone)、ペニシリン100ユニット/mlおよびストレプトマイシン100μg/mlを添加したマッコイ(McCoy)5A培地(Life Technologies)中、37℃にて維持した。網膜上皮細胞株911はライデン大学(University of Leiden)のA.J.Van der Ebから贈与され、説明されている通りに維持した(Fallauxら, 1996)。化学療法剤は0.2μg/ml(アドリアマイシン)および50μg/ml(5-FU)の濃度で使用し、細胞は24時間処理した。トランスフェクションはFugene(商標)6 (Boehringer Mannheim)を用い、製品の使用説明書に従って実施した。
【0050】
構築物
JFY1発現プラスミド:HAでタグをした完全長JFY1発現ベクターpHAHA-JFY1は、RT-PCR産物をpCEP4ベクター(Invitrogen)にクローニングすることにより構築した。BH3ドメインが欠失したJFY1、またはJFY1の別のスプライスフォームを含有するベクターの変種は、同様にして構築した。プライマーの配列およびベクター構築の詳細は、要請があれば著者から入手可能である。すべての場合において、複数のクローン個々の挿入物を完全に配列決定し、突然変異のないものをその後の実験に使用した。Bcl-2発現ベクターは以前に説明されており(Pietenpolら, 1994)、V5でタグをしたBcl-XL発現ベクターはInvitrogen社から購入した。
【0051】
レポーター構築物およびレポーターアッセイ法
プロモーターを含有する断片はHCT116細胞のヒトゲノムDNAから増幅し、最少プロモーターを含むpBVLucルシフェラーゼレポーター用ベクターにクローン化した(Heら, 1998)。推定されるp53結合部位を調べるため、野生型または変異型の結合部位を2コピー含む下記のオリゴ対を使用した:
BS1に対しては
BS1変異型に対しては
BS2に対しては
BS2変異型に対しては
アニールさせたオリゴヌクレオチド対を鎖状体化し、pBVLucのNhe I部位にクローン化した。911細胞へのトランスフェクションはルシフェラーゼレポータープラスミド 0.2μg、pCMVβ 0.2μgおよび野生型p53または変異型p53R175HのいずれかをコードするpCEP4 0.8μgを用い、12ウェルプレートで行った。トランスフェクションの効率に対する対照として、β-ガラクトシダーゼレポーターpCMVβ(Promega)を加えた。ルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼ活性は、Promega社およびICN Pharmaceuticals社のそれぞれからの試薬を用いてトランスフェクションした後、24〜48時間で評価した。全てのレポーター実験は3重測定とし、少なくとも三回独立して繰り返し行った。HCT116細胞を用いたトランスフェクションは、p53発現ベクターなしに、ルシフェラーゼレポーター 0.4μg、およびβ-ガラクトシダーゼレポーター 0.4μgを各ウェルに使用したことを除き、同様に実施した。
【0052】
誘導性細胞株
DLD1細胞において誘導性細胞株を作製する方法は、以前に説明されている(Yuら, 1999)。簡単に言えば、pBi-JFY1-GFPを作製するため、HAでタグをした完全長JFY1 cDNAをpBi-MCS-GFPにクローン化した。直鎖状にしたpBi-JFY1-GFPおよびpTK-hyg(Clontech)を、モル比5:1でDLD1-TET細胞にコトランスフェクトした。DLD1-TET細胞は、構成的に発現したtet活性化因子を含有するDLD1派生細胞である(GossenおよびBujard, 1992;Yuら, 1999)。単一コロニーは3〜4週間、G418 400μg/ml、ハイグロマイシンB(Calbiochem) 250μg/ml、およびドキシサイクリン 20ng/mlの存在下にて限界希釈法により得られた。GFP蛍光のバックグラウンドが低く、GFP誘導が均質なクローンを選別し、ウエスタンブロット解析によりJFY1の発現について解析した。
【0053】
免疫沈降およびウエスタン解析
免疫沈降は下記の変更をともなうが、基本的には説明の通り(Chanら、1999)に行った。911細胞は、二つの発現構築物のそれぞれ5μg(計10μg)でトランスフェクションする18時間前にT75フラスコに播種し、トランスフェクション後、20時間で収集した。細胞懸濁液を総量1mlで15秒間、超音波破砕し、プロテインA:プロテインGビーズ(4:1、Boehringer Mannheim)30μlを加え4℃にて1時間、インキュベートした。遠心(「全細胞溶解液」)後、回収した上清は引き続きウサギ抗HA抗体(sc-805、Santa Cruz)を加え、免疫沈降に使用した。全細胞溶解液および免疫沈降物のウエスタンブロットは、以前に説明されている通り実施した(Chanら, 1999)。これらの実験で使用した他の抗体には、マウス抗ヘマグルチニンモノクローナル抗体(12CA、Boehringer Mannheim)、ウサギ抗カスパーゼ9抗体(sc-7890、Santa Cruz)、マウス抗Bcl-2モノクローナル抗体(OP60、Oncogene Sciences)、マウス抗V5モノクローナル抗体(R960-25、Invitrogen)、マウス抗β-カテニンモノクローナル抗体(C19220、Transduction labs)、およびマウス抗p53モノクローナル抗体(DO1、D.laneからの贈与)が含まれる。
【0054】
免疫蛍光法および共焦点顕微鏡法
911細胞をグラスチャンバースライド(Nalge Nunc, Lab-Tek177372)に播種し、JFY1発現構築物でトランスフェクトした。20時間後、MitoTracker Red(0.5μM, Molecular Probes) を培地に添加し、さらに20分間、37℃で細胞をインキュベートした。細胞はPBS中4%パラホルムアルデヒドで固定し、冷アセトンで浸透化し、100%ヤギ血清を用い室温で1時間、ブロッキングした。PBST(0.05% Tween-20を添加したPBS)で3回洗浄後、PBST中50%ヤギ血清にて200倍希釈とした抗HA抗体(12CA, Boehringer Mannheim)を用い、スライドを4℃で一晩、インキュベートした。PBSTにて各5分間の洗浄を4回行った後、PBSTにて250倍希釈としたAlexa488標識抗マウス抗体(A-11001, Molecular Probes)を用い、スライドを室温で30分間インキュベートした。PBSTでさらに4回洗浄した後、スライドを標本とし、共焦点顕微鏡にて解析した。
【0055】
細胞増殖およびアポトーシスアッセイ法
トランスフェクションの18〜24時間前に、約1×106個の細胞を各T25フラスコにプレーティングした。構成性のJFY1発現構築物でトランスフェクション後、24時間でトリプシン処理により細胞を回収し、連続希釈した細胞をハイグロマイシン選択(HCT116では0.1mg/ml、DLD1では0.25mg/ml、ならびにSW480およびH1299では0.4mg/ml)の環境下としたT25フラスコにプレーティングした。14〜17日後、付着した細胞をクリスタルバイオレットで染色した。誘導性JFY1構築物を含有するDLD1細胞株については、細胞をドキシサイクリン中で増殖させ、T25フラスコ中で連続希釈した。細胞を播種してから24時間で、培地をドキシサイクリン入りの又はドキシサイクリンなしの新鮮な増殖培地に交換し、細胞を10日間増殖させ、その後、クリスタルバイオレットで染色した。アポトーシス細胞の割合を決定するため、全細胞(付着および浮遊)を回収し、説明の通りヘキスト33258で染色した(Waldmanら, 1996)。クロマチンの凝集および核の断片化といった特徴を有する細胞をアポトーシスとして記録した。
【0056】
ノザンブロット解析
総RNAはRNAgents(Promega)を用いて調製し、総RNA 10μgを1.5%ホルムアルデヒドアガロースゲル中で電気泳動することにより分離した。ノザンブロッティング用のプローブは、鋳型として細胞cDNAまたはESTを用いPCRにより作製し、ランダムプライミングにより標識した(FeinbergおよびVogelstein, 1984)。全プローブを調製するのに使用したプライマーの配列は、要請があれば著者から入手できる。説明の通り(Zhangら、1997)、ノザンブロット解析を実施し、ハイブリダイズはQuickHyb(Stratagene)中で行った。
【0057】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A−1C】CRC細胞におけるp53によるJFY1の誘導。 図1A:表示の時点における、p53誘導性DLD1細胞から調製されたRNA試料のノザンブロット解析を示す。JFY1遺伝子はドキシサイクリン除去後、p21と同様に、早くも3時間後に誘導されているが、BAXおよびNoxa遺伝子は強く誘導されてはいない。p53AIP1転写産物は、この条件では検出できなかった。GAPDHプローブをロード量の対照として使用した。 図1B:17時間、野生型p53(W)および変異型p53R75H(M)を発現するアデノウイルスを感染させた、表示の結腸直腸癌細胞株由来のRNAをノザンブロットにより解析した。 図1C:24時間、アドリアマイシン(Adr)または5-フルオロウラシル(5-FU)で処理した、表示の結腸直腸癌細胞株由来のRNAをノザンブロットにより解析した。未処理の細胞(「Un」)由来のRNAを対照として使用した。
【図2A−2B】JFY1蛋白質はBH3ドメインを含有する。 図2A:ヒト(配列番号:1)およびマウス(配列番号:2)JFY1の予測されるアミノ酸のアライメントから、90%の同一性が示される。同一残基は青に着色されており、非保存残基は赤に着色されている。128〜165位のアミノ酸は、Chou-Fasman法によりα-ヘリックスを形成すると予測された。BH3(141〜149位のアミノ酸)ドメインに相当する、α-ヘリックスの含まれる3段目中間は、ヒトおよびマウスJFY1の両者間で完全に同一である。 図2B:他のBcl-2ファミリー・メンバーとJFY1とのBH3ドメインのアライメントである。(配列番号:7〜17)非保存残基は赤に着色されているのに対し、保存残基(表示の11メンバーのうち3つより多くに含まれる)は青に着色されている。
【図3A−3D】p53はJFY1プロモーターを活性化する。 図3A:推定上の転写開始部位の300塩基対以内にある2つの潜在的p53結合部位(BS1およびBS2;配列番号;5および6)を示す。予測されるオープンリーディングフレーム(ORF)は、表示のATGで始まる。断片1および断片2はレポーター構築物に使用した。以前に同定されたp53の共通の結合部位(CBS;配列番号:18)(El-Deiryら, 1992)は、R=プリン、Y=ピリミジン、およびW=AまたはTとしてBS1配列の上に示してある。 図3B:表示された断片をpBVLucにクローン化し、野生型(wt)または変異型(R175H)p53発現構築物(Bakerら, 1990)とともに、H1299細胞へトランスフェクトした。変異型p53の存在下におけるルシフェラーゼ活性と比較した、野生型p53の存在下におけるルシフェラーゼ活性の割合を縦座標にプロットしている。全ての実験は、標準化を目的としてトランスフェクション混合物に含まれるβ-ガラクトシダーゼレポーターを利用した3重測定を実施し、平均および標準偏差をバーおよびブラケットによりそれぞれ示した。 図3C:潜在的p53結合部位の4コピーまたは部位の変異種を含むルシフェラーゼレポーターを、実験手順に記載されているように構築した。「Min Prom」はベクター(pBVLuc)に存在する最少プロモーターを示している。 図3D:図3Cに示されるレポーターについて調べるため、図3Bの通り、トランスフェクションを実施した。
【図4A−4C】JFY1はBcl-2およびBcl-XLと相互作用するミトコンドリア蛋白質をコードする。 図4A:発現構築物図。構成性の発現に対しては、PTKおよびPCMVはそれぞれ、ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ・プロモーターおよびCMVプロモーターを指し示している。Hyg = ハイグロマイシンBに対する抵抗性を与える、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子。誘導性の発現に対しては、TRE = テトラサイクリン応答性要素、tTA = Tet活性化因子、PminCMV= 最少CMVプロモーター。この系はドキシサイクリン(Dox)の除去により活性化される。 図4B:HAタグのJFY1構築物を911細胞にトランスフェクトし、間接免疫蛍光(緑)により視覚化した。ミトコンドリアを視覚化するために、MitoTracker Red色素を使用した。JFY1-ΔBH3は15アミノ酸の欠失した、タグ付きのJFY1蛋白質をコードしており、従ってBH3ドメインがない。 図4C:相違する発現構築物対を911細胞にトランスフェクトし、全細胞溶解液に対しウサギ抗HA抗体で免疫沈降後、記載の抗体によるウエスタンブロットにより解析を行った。「全細胞溶解液」と表示されたレーンは、免疫沈降物の入ったレーン中の細胞溶解液量の〜25%までを含有する。
【図5】JFY1はヒト腫瘍細胞の増殖を強力に抑制する。表示の癌細胞株をJFY1、JFY1-ΔBH3、または空ベクターをコードする構築物でトランスフェクトした。トランスフェクション後、24時間で細胞を回収し、T25フラスコ中で同細胞数を連続希釈し、ハイグロマイシンBの選択環境下にて17日間、増殖させた。最も高密度のフラスコのみを記載した。JFY1-ΔBH3によるトランスフェクションと、空ベクターによるトランスフェクション間で、コロニー形成に関して目に見える相違はなかったが、JFY1発現ベクターによるトランスフェクション後に得られたコロニーの数は、1000倍を超えるまでに減少していた。
【図6A−6E】JFY1はDLD1細胞において急速にアポトーシスを誘導する。 図6A:GFPおよびJFY1に対する個別のカセットを含む発現ベクター(図4A参照)をDLD1細胞の誘導性クローンを樹立するために使用した。非誘導状態(オフ)または培地からの12時間のドキシサイクリン除去により誘導状態(オン)として維持した細胞に対する代表的な結果を示した。GFPおよびJFY1(JFY1)、またはGFPのみ(ベクター)の双方を誘導的に発現するクローンに対して、位相差顕微鏡(位相差)または蛍光顕微鏡(GFP)によって視覚化された最初の縦2例は、同一視野を示している。3列目(DAPI)は顕微鏡検査後すぐに集められ、ヘキスト33528で染色した同一培養細胞の核を示している。色素で染色したアポトーシス細胞は、特徴的なクロマチン凝集や核の断片化を有する。ほとんど全てのJFY1誘導細胞は12時間までにアポトーシスとなった。 図6B:表示のクローンを、ドキシサイクリンあり(オフ)またはドキシサイクリンなし(オン)で10日間増殖させた後、クリスタルバイオレットで染色した。実験開始時点において2百万または2千個の細胞を含む2つの個別のフラスコを、JFY1誘導による著しい効果を説明するために示した。 図6C:誘導的にJFY1を発現するDLD1細胞を、ドキシサイクリン除去後、表示の時間に集めた。全細胞溶解液を、カスパーゼ9の活性化およびβ-カテニンの切断を評価するためにウエスタンブロットに使用した。切断産物は矢印で示されている。 図6D:DLD1細胞がJFY1の代わりにp53を誘導的に発現していることを除き、図6Cに同じ。時間尺度が異なることに注意。 図6E:JFY1またはp53のいずれかを発現誘導させたDLD1細胞を、表示の時点において、核酸の凝集および断片化により示されるアポトーシスに対して評価した。各判定に対して、少なくとも300個の細胞を計数し、同一の結果を伴う実験を2回繰り返して行った。
Claims (35)
- 配列番号:1または2に記載の配列を有する、単離および精製されたJFY1蛋白質。
- 配列番号:3または4に記載の配列を有する、単離および精製されたJFY1コード配列。
- 請求項2記載のコード配列を含むベクター。
- JFY1コード配列が外因性の誘導因子または抑制因子により転写的に調節されている、請求項3記載のベクター。
- 配列番号:5、6、または27に記載の配列を有する、単離および精製されたJFY1 BS1またはBS2核酸。
- p53がレポーター遺伝子の転写を調節するようなレポーター遺伝子に機能的に連結されている、請求項5記載の単離および精製された核酸。
- JFY1コード配列を含む核酸を癌細胞に供給することによって、該癌細胞中でJFY1が発現し、アポトーシスを誘導する段階を含む、癌細胞にアポトーシスを誘導する方法。
- アポトーシスを誘導可能なものについて薬物をスクリーニングする方法であって、
試験化合物を、変異型p53を含有し且つ野生型p53を含有しない細胞と接触させる段階;
JFY1の発現を検出する段階を含み、
JFY1の発現を増加させる試験化合物が癌治療のための候補薬物である方法。 - アポトーシスを誘導可能なものについて薬物をスクリーニングする方法であって、
試験化合物を、変異型p53およびJFY1-BS2-レポーター遺伝子構築物を含有し、野生型p53を含有しない細胞と接触させる段階;および
レポーター遺伝子の発現を検出する段階を含み、
レポーター遺伝子の発現を増加させる試験化合物が癌治療のための候補薬物である方法。 - 供給の段階が腫瘍内である、請求項7記載の方法。
- JFY1コード配列がウイルスベクター中に存在する、請求項7記載の方法。
- JFY1コード配列がリポソームで供給される、請求項7記載の方法。
- BS2の少なくとも2コピーを有する、請求項5記載の単離および精製されたJFY1 BS2核酸。
- BS2の少なくとも4コピーを有する、請求項5記載の単離および精製されたJFY1 BS2核酸。
- 配列番号:1または2の配列に対して、少なくとも90%が同一である、単離および精製されたJFY1蛋白質。
- 配列番号:3または4の配列に対して、少なくとも90%が同一である、単離および精製されたJFY1コード配列。
- 以下の段階を含む、癌細胞を診断するための方法:
新生物形成の疑いのある生物試料中のJFY1発現産物をアッセイする段階;
生物試料中の発現産物の量を、新生物ではない対照試料中の発現産物の量と比較する段階;
生物試料中の発現産物の量が対照試料中の量よりも有意に少ない場合、生物試料を新生物と同定する段階。 - 対照試料および生物試料が単一の個体から得られる、請求項17記載の方法。
- 対照試料および生物試料が同一の組織種から得られる、請求項18記載の方法。
- 以下の段階を含む、癌患者の予後の決定を補助する方法:
腫瘍試料中のJFY1発現産物をアッセイする段階;
腫瘍試料中の発現産物の量を、新生物ではない対照試料中の発現産物の量と比較する段階;
腫瘍試料中の発現産物の量が対照試料中の量よりも有意に少ない場合、生物試料を予後不良の指標を有するものとして同定する段階。 - 対照試料および腫瘍試料が単一の個体から得られる、請求項20記載の方法。
- 対照試料および腫瘍試料が同一の組織種から得られる、請求項21記載の方法。
- 対照試料および生物試料が同一の組織種から得られる、請求項20記載の方法。
- 配列番号:1または2に記載のJFY1蛋白質の少なくとも9個の連続したアミノ酸を含む、単離および精製されたポリペプチド。
- 連続したアミノ酸の少なくとも15個を含む、請求項24記載のポリペプチド。
- 非JFY1蛋白質の少なくとも1つのエピトープと共有結合した、配列番号:1または2に記載のJFY1蛋白質の少なくとも9個の連続したアミノ酸を含む、融合蛋白質。
- 完全な非JFY1蛋白質を含む、請求項26記載の融合蛋白質。
- 完全なJFY1蛋白質を含む、請求項26記載の融合蛋白質。
- 請求項3記載のベクターを含む宿主細胞。
- 純粋培養である請求項29記載の宿主細胞。
- 配列番号:3もしくは4の少なくとも1640個の連続したヌクレオチド、またはその相補ヌクレオチドを含む、単離および精製されたポリヌクレオチド。
- 検出可能な部分で標識される、請求項31記載のポリヌクレオチド。
- 配列番号:1の1〜235位のヌクレオチドから選択される、少なくとも18個の連続したヌクレオチドを含む、単離および精製されたポリヌクレオチド。
- 配列番号:1の1〜235位のヌクレオチドを含む、請求項33記載のポリヌクレオチド。
- JFY1コード配列を増幅するためのプライマーとして使用可能な2つのオリゴヌクレオチドの対であって、2つの各々のオリゴヌクレオチドがJFY1の別個の鎖とハイブリダイズし、およびオリゴヌクレオチドの対の少なくとも1つが配列番号:1の1〜235位のヌクレオチドまたはその相補ヌクレオチドとハイブリダイズする、2つのオリゴヌクレオチドの対。
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