JP2004527879A - 導体棒の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】この方法は、次の措置を有する。
A:この部分導体を作る。
B:この部分導体上に、それぞれ以下の二つの部分措置により、少なくとも一つの絶縁層を形成する。
B1:この部分導体の絶縁しようとする領域をプラスチック粉で被覆する。
B2:この粉末層を焼結させて、このプラスチックを溶解させるとともに、このプラスチックを少なくとも部分的に硬化させて一つの絶縁層を形成し、その際この焼結を、少なくとも一つの外側の絶縁層が完全には硬化しないように実施する。
C:これらの絶縁物を形成した複数の部分導体を、一つの導体棒に組み立てる。
D:これらの部分導体の絶縁層を焼結させると同時に、この組み立てた導体棒内で部分導体を互いに押圧させ、その際この完全には硬化していない絶縁層のプラスチックを、少なくとも部分的に再び溶解させ、この部分導体間から搾り出す、ならびにその際この部分導体間に残っているプラスチックを、基本的に完全に硬化させる。
Description
【0001】
この発明は、互いに電気的に絶縁された複数の部分導体から成る、電気を伝導する導体棒の製造方法に関する。そのような導体棒は、例として、回転する電気装置、例えば発電機、または変圧器における固定子の導体として用いることができる。所定の形で互いに捻られた位置にある部分導体を持つ導体棒は、「転位棒(Roebelstaebe) 」とも呼ばれる。円い横断面または六角形の横断面を持つ多数の鋼線から構成された鋼鉄のケーブルと異なり、そのような導体棒の部分導体は、通常は四角形の横断面を有する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回転する電気装置において、電気損失を低減するために、そこで用いられている固定子の導体の部分導体は、互いに絶縁されている。従って、導体棒は、絶縁物を被覆された部分導体から組み立てられる。この部分導体上への絶縁物の被覆は、例えば2段階の被覆方法により実施され、その方法では、第一段階において、部分導体の表面上にプラスチック粉を被覆し、粉末層を形成する。第二段階においては、この粉末層を焼結させるが、その際プラスチックは、溶解するとともに、プラスチックの種類に応じて、交差結合したり、硬化したりもする。この場合に形成される絶縁層は、絶縁機能を果たすことが可能であるためには、密閉されていると同時に、基本的に均質なフィルムを構成しなければならない。
【0003】
粉末層の焼結の際に、電気絶縁され、密閉されていると同時に、基本的に均質な絶縁層を形成するためには、部分導体上に粉末層を形成する際の被覆の厚さは、所定の最低の厚さを持たなければならない。これを満たす被覆の厚さの下限は、経験的に約50μmである。しかし、一方において、導体棒の全体の断面積が同じで、電流を通す断面積を拡大でき、そのことによってそのような導体棒を備えた装置の性能を向上させることができるので、絶縁層は、薄い方が有利である。他方において、この部分導体の絶縁物の厚さを低減する方法を利用して、導体棒を備えた装置の性能を損なうことなく、その導体棒の全体の断面積を低減することもできる。絶縁物の厚さを低減した部分導体の他の利点は、そのことによって部分導体間の熱伝導が改善されることであると言える。そのことは、異なった損失のために、導体棒の部分導体が異なった形で熱せられる場合に重要である。部分導体間の熱伝導が改善されることによって、この異なった温度を少なくとも部分的に再度同じ温度に戻すことができるようになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、特に薄い絶縁層の形成を可能とする、複数の部分導体から構成される導体棒の製造方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、この発明にもとづき、請求項1の特徴を持つ方法によって解決される。
【0006】
この発明は、焼結処理を二段階で構成するという共通の考えを基礎としており、その際第一段階においては、個々の部分導体の絶縁物の少なくとも一部を完全には硬化させず、そして第二段階においては、これらの部分導体を組み立てた導体棒内で互いに押圧させ、そのことによって、絶縁物を構成するプラスチックの一部が押し退けられて、部分導体間から噴出し、絶縁物として残ったプラスチックだけを硬化させるものである。この方法によって、絶縁物の厚さを非常に薄くすることができる。例えば、1回目の焼結段階時において、部分導体の焼結時に完全に硬化した絶縁物の構成要素は、2回目の焼結段階時の組み立てた導体棒の焼結時において、隣接する部分導体間に十分な絶縁層を残し、絶縁物の絶縁機能を保証するという作用がある。
【0007】
有利な実施構成においては、部分導体上に複数の絶縁層を形成し、その際少なくとも最も内側にある絶縁層を基本的に完全に硬化させる。そのことによって、少なくともこの完全に硬化した絶縁層が、押圧時に部分導体間の絶縁物として残り、絶縁作用を保証するものである。
【0008】
特に有利な別の形態においては、少なくとも一つの基本的に完全に硬化させる絶縁層は、粉末層から作り出し、その被覆の厚さは、約50μmよりも薄い。この実施構成は、この発明にもとづく方法において、有効な絶縁物を形成するためには、部分導体を作る時にすでに個々の部分導体の少なくとも一つの基本的に完全に硬化した絶縁層は、密閉され、均質な膜を構成している必要はないという知見を利用したものである。それは、この硬化した絶縁層に隙間または空孔が存在する場合、後に形成される絶縁層がこれらの隙間または空孔を詰め、その際この詰められたものは、2回目の焼結段階で絶縁物を押圧する時においても部分導体の間に残っているからである。したがって、絶縁層に対して所望の密閉された、均質な膜は、遅くとも導体棒が組み立てられた状態で形成できればよいのである。
【0009】
他の実施構成においては、部分導体の焼結時に完全には硬化させない、部分導体の少なくとも一つの絶縁層は、粗い充填材を混合させたプラスチック粉で構成される粉末層から作り出され、その充填材の平均的な粒径は、粉末層の被覆の厚さよりも小さいものである。絶縁物の押圧時に、この粗い充填材は、スペーサーとして機能し、2回目の焼結段階において、プラスチックが完全に押し出されるのを回避し、そのことによって、少なくとも、部分導体間において十分有効な絶縁物を構成するのに足りるプラスチックを部分導体間に残すことを保証するものである。この特別な実施構成は、1回目の焼結段階時において、部分導体の絶縁層のどれをも完全には硬化させない場合においても機能し、その結果特に薄い絶縁層を実現することができる。
【0010】
2回目の焼結段階における絶縁物を硬化させる時に、組み立てた導体棒の部分導体が互いに接合するように、絶縁物を形成するためのプラスチックを選ぶとともに、2回目の焼結段階における焼結を行う場合に、この発明にもとづく方法は、特に目的に適った形で作用する。それによって、組み立てた導体棒を硬化させるとともに、安定化させるための追加の措置を省くことができる。
【0011】
この発明にもとづく方法の他の重要な特徴と利点は、従属請求項および以下におけるこの発明の有利な実施例の説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明にもとづく方法により導体棒を製造するためには、先ずはこの導体棒に組み立てるための部分導体を作らなければならない。この部分導体を作るためには、製造しようとしている部分導体の横断面を有し、導電性の材料、例えば銅から成る、絶縁物を被覆されていない継ぎ目の無い電線が用いられる。そして、この継ぎ目の無い電線から、この継ぎ目の無い電線を部分導体の長さに切断することにより、変形されていない部分導体を作る。製造しようとしている導体棒の種類に応じて、切断後に、この部分導体の所望の三次元形状を得るために、この部分導体を曲げて変形させる、特にかぎ形に曲げる。
【0013】
そこで、このようにして作った部分導体上に、少なくとも一つの絶縁層を形成する。その場合、そのような絶縁層の形成は、2段階の被覆方法により実施する。第一の部分措置においては、個々の部分導体の絶縁物を被覆しようとする範囲を、プラスチック粉で被覆する。被覆する粉末としては、特にエポキシ樹脂とケイ素樹脂のような熱硬化性またはエラストマーのプラスチックが適している。絶縁物の機械的な特性を改善するためには、例えば熱膨張率を低減したり、あるいは高温・高負荷時におけるプラスチックの流動化を低減するためには、これらのプラスチックに無機物の充填材を、例えば10%〜80%の濃度で混合することができる。
【0014】
この部分導体の被覆は、例えば、被覆対象の部分導体より小さいこともある静電式流動床室または静電式噴霧室内で行われる。そのような被覆室は、対向する両端に開口部を有し、そこを通って、被覆対象の部分導体が、個別にあるいは複数同時にその室を通り抜ける。プラスチック粉の被覆量、ならびにそれによる粉末層の被覆の厚さは、例えば部分導体がその室を通り抜ける際の供給量によって制御可能である。プラスチック粉が部分導体の表面上に付着したままになるように、被覆処理に際しては、プラスチック粉に静電気を帯電させる。
【0015】
それに続いて、被覆した粉末層を焼結させる第二の部分措置を実施する。この焼結時に、プラスチックが加熱され、それによって溶解するとともに、少なくとも部分的に硬化し、その際絶縁層が形成される。部分導体上に、ただ一つの単独の絶縁層を形成する場合には、この絶縁層が完全には硬化しないように、この焼結を制御する。部分導体上に複数の絶縁層を形成する場合には、その場合における少なくとも一つの外側の絶縁層が完全には硬化しないように、この焼結を制御する。
【0016】
この第二の部分措置は、有利には別の焼結室で実施されるともに、同様に連続運転する処理として実施することもでき、その際例えば光学的または電気的あるいは誘導的な加熱を行うことができる。焼結時に、プラスチック粉は、溶解する、あるいは融着する。そして、さらに熱硬化性材の場合には、プラスチックが熱で交差結合する。この融着および/または交差結合によって、所望の絶縁層が形成される。熱硬化性材の場合、硬化の度合いは、交差結合の度合いと相関する。したがって、熱硬化性材の場合、焼結処理は、少なくとも一つの絶縁層に対しては、この熱硬化性の絶縁層が全くまたは部分的にしか交差結合しないように制御される。この交差結合の度合い、または硬化の度合いは、例えば温度および熱処理の時間によって制御することができる。そのようにして作られた、完全には硬化していない、または交差結合していない絶縁層は、依然として熱に対して反応する。
【0017】
この方法で、部分導体に一つまたは複数の絶縁層を形成した後で、これらの部分導体を一つの導体棒に組み立てる。そして、このようにして組み立てた導体棒を、その完成後に持つべき所望の形状に曲げることができる。それから、適当な機器を用いて、部分導体を組み立てた導体棒内で互いに押圧させる。同時に、新たに焼結処理を実施し、それによって、完全には硬化していない、または交差結合していない絶縁層のプラスチックを少なくとも部分的に再び溶解させる。部分導体に圧力をかけることにより、この溶解したプラスチックは圧搾され、その際部分導体間の絶縁物の厚さが減少する。そのようにして圧搾されたプラスチックは、例えば導体棒の対応する空洞または棒の表面上に集まる。
【0018】
有利には、この「ホットプレス」と呼ばれる処理によって、互いに接する部分導体の絶縁層が結合し、そのことによって組み立てた導体棒の部分導体が互いに接合することとなる。プラスチックの硬化後に、導体棒は、所望の形状に固定される。
【0019】
特別な実施例においては、絶縁物の形成のために、例えば約40μmの平均粒径を持つエポキシ樹脂粉を用いる。このエポキシ樹脂粉は、例えばTiO2を40%充填されており、その際この充填材は、例えば約0.2μmのd50値を持つ。有利には、四つの絶縁層を被覆し、その結果焼結後には絶縁物に対して約100μmの厚さが得られる。その場合、最初に被覆する絶縁層の焼結処理は、その絶縁層がほぼ完全に硬化するように制御し、それは、例えば約180°Cで約3〜5分の焼結時間に相当する。後の三つの粉末層は、ちょうど最低粘度を僅かに超える程度まで焼結させる。これは、約10〜20秒の焼結時間に相当する。これによって、後の三つの絶縁層が全くまたは僅かにしか硬化せず、その結果プラスチックは、基本的にいわゆる「B状態」のままとなる。従って、絶縁物全体の約4分の3がB状態で存在することとなる。組み立てた導体棒のホットプレスにより、B状態にあるプラスチックは、流動的となり、結合部から搾り出される。この実施例では、導体棒のホットプレスにより、絶縁物の厚さを、その際に出来る絶縁物の均質性および絶縁機能に関する品質を損なうことなく、約30μmにまで減少することができる。
【0020】
したがって、均質な層を実現するためには、粉末層の被覆する厚さを約50μmにしなければならない従来の方法に比べて、この発明にもとづく方法によって、絶縁層の厚さをほぼ半減することができる。
【0021】
その他の特別な実施構成においては、絶縁物の形成のために、約40μmの平均粒径を持つエポキシ樹脂粉を用いる。このエポキシ樹脂粉は、例えばTiO2を30%充填されており、その際この充填材の平均粒径は、またもや約0.2μmとすることができる。この特別な実施構成において、このプラスチック粉にさらに粗い充填材を混ぜる。この粗い充填材は、例えば質量比でプラスチック粉の約10%を構成することができる。この粗い充填材は、有利には電気絶縁材料、例えばセラミックまたは石英から構成される。ここでは、例えば約15μmの平均粒径を持つ石英ガラス粒が有利である。このプラスチック粉もまた、例えば四つの層に分けて被覆し、その結果焼結させる絶縁物全体の厚さは、またもや約100μmとなる。この場合もまた、個々の絶縁層のそれぞれを熱で焼結させ、その際各層における焼結処理、特に熱処理の時間を、全くまたは最低限しか硬化しないように制御し、ちょうど最低粘度を僅かに超えた程度になるようにする。各層の焼結時間は、約180°Cでほんの10〜20秒である。この方法によって、絶縁層全体が、基本的に硬化していないB状態のままとなる。
【0022】
組み立てた導体棒の後のホットプレス処理において、この粗い充填材は、スペーサーとして機能するとともに、液状化したプラスチックが完全に搾り出されないように作用する。そのほかに、この粗い充填材は、隣接する部分導体がホットプレスの際に互いに電気的に接触しないようにも機能する。
【0023】
この実施構成においては、ホットプレスによって、隣接する部分導体間の絶縁物の最終的な厚さを約20μmとすることができ、その際この場合においてもまた、実現される絶縁物の均質性に関する低下を甘受する必要はない。そのようにして形成された絶縁層は、それぞれ二つの部分導体(これらの間に絶縁層が形成される)に属するものとして配分され、個々の部分導体は、それぞれ約10μmの厚さの(仮想的な)絶縁層を持つものと見なされる。これによって、従来どおりに製造された層と比べて、厚さを5分の1にまで改善することができる。
Claims (8)
- 互いに電気的に絶縁された複数の部分導体から成る、電気を伝導する導体棒の製造方法であって、次の措置を有する方法。
A:この部分導体を作る。
B:この部分導体上に、それぞれ以下の二つの部分措置により、少なくとも一つの絶縁層を形成する。
B1:この部分導体の絶縁しようとする領域をプラスチック粉で被覆する。
B2:この粉末層を焼結させて、このプラスチックを溶解させるとともに、このプラスチックを少なくとも部分的に硬化させて一つの絶縁層を形成し、その際この焼結を、少なくとも一つの外側の絶縁層が完全には硬化しないように実施する。
C:これらの絶縁物を形成した複数の部分導体を、一つの導体棒に組み立てる。
D:これらの部分導体の絶縁層を焼結させると同時に、この組み立てた導体棒内で部分導体を互いに押圧させ、その際この完全には硬化していない絶縁層のプラスチックを、少なくとも部分的に再び溶解させ、この部分導体間から搾り出す、ならびにその際この部分導体間に残っているプラスチックを、基本的に完全に硬化させる。 - 前記の措置Bにおいて、複数の絶縁層を形成し、その際少なくとも最も内側にある絶縁層を、基本的に完全に硬化させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 前記の少なくとも一つの基本的に完全に硬化させる絶縁層を、被覆の厚さが約50μmより少ない粉末層から作り出すことを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 前記の最も内側の絶縁層だけを、基本的に完全に硬化させること、ならびにその他のすべての絶縁層を完全には硬化させないことを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
- 前記の措置Bにおいて完全には硬化させない少なくとも一つの絶縁層を、プラスチック粉で構成された粉末層から作り出し、このプラスチック粉は、この粉末層の被覆の厚さよりも小さい平均粒径を持つ粗い充填物を混合されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
- 前記の措置Bにおいて、すべての絶縁層を完全には硬化させないことを特徴とする請求項5に記載の方法。
- 前記の粗い充填材が、電気絶縁材料から構成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
- 前記の組み立てた導体棒の部分導体が互いに接合するように、絶縁物を形成するためのプラスチックを選択するとともに、前記の措置Bにもとづく焼結を実施することを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。
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