JP2004527724A - Pyk2(raftk)及び炎症 - Google Patents

Pyk2(raftk)及び炎症 Download PDF

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Abstract

本発明は主に免疫学及び医学の分野に関するものであり、より具体的には細胞内シグナル伝達の分野に関するものである。本発明は、主にPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を特徴とする炎症関連の疾患又は障害の診断法、治療法、およびその治療薬の同定法に特に関係するものである。

Description

【0001】
関連出願
本発明は、レブ(Lev)とシュレシンガー(Schlessinger)により1994年12月15日に出願された「PYK2関連産物と方法」と題する米国特許出願第08/357,642号(Lyon & Lyon Docket No. 209/070);レブ(Lev)とシュレシンガー(Schlessinger)により1995年6月2日に出願された「PYK2 関連産物と方法」と題する米国特許出願第 08/460,626号 (Lyon & Lyon Docket No. 211/121); 及びレブ(Lev)とシュレシンガー(Schlessinger)により1997年12月9日に出願された「PYK2 関連産物と方法」と題する米国特許出願第08/987,689号 (Lyon & Lyon Docket No. 230/110)に関連し、これらは全て、任意の図面、図又は表を含む全体が参照として本明細書に組み入れられている。
【0002】
発明の分野
本発明は主に免疫学及び医学の分野に関するものであり、より具体的には細胞内シグナル伝達の分野に関するものである。
【0003】
発明の背景
本発明の背景に関する以下の説明のいずれも、本発明の理解を導くために提供されるものであって、本発明の先行技術と見なされたり先行技術について記載するためのものではない。細胞内シグナル伝達は、多様な細胞内のプロセスを制御する外部刺激を細胞の内部に伝達する基本的なメカニズムである。シグナル伝達の鍵となる生化学的メカニズムの一つに、タンパク質のチロシン残基の可逆的リン酸化がある。タンパク質のリン酸化状態は、チロシンホスファターゼ (TP)と、受容体チロシンキナーゼ及び非受容体チロシンキナーゼを含むチロシンキナーゼ(TK)によるそれぞれ相反した作用で修飾される。
【0004】
RTKは、少なくとも3つのドメインからなる。すなわち、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通性ドメイン、及びチロシン残基のリン酸化を行う細胞質触媒ドメインである。細胞内の細胞質非受容体型タンパク質チロシンキナーゼは、疎水性の膜貫通性ドメインも細胞外ドメインも含まず、その代わりに触媒キナーゼドメインと非触媒ドメインを有する。このような非触媒ドメインに、SH2ドメイン、SH3ドメイン等が含まれる。非触媒ドメインは、シグナル伝達の際にタンパク質−タンパク質相互作用を制御する重要なドメインと考えられている。
【0005】
PYK2はRAFTKとも呼ばれ、リガンドがブラジキニンやアセチルコリン等のGタンパク質共役型受容体に結合することによって活性化される非受容体型チロシンキナーゼである。PYK2は、予想される分子量が111kDであり、5つのドメインを含む:(1)比較的長いN末端ドメイン;(2)キナーゼの触媒ドメイン;(3)プロリンリッチドメイン;(4)別のプロリンリッチドメイン;及び(5)C末端ドメインである。
【0006】
PYK2は、神経組織、造血細胞を含む種々の組織及び何種類かの腫瘍細胞株で発現している。PYK2は、神経伝達物質のシグナル伝達への応答におけるカリウムチャネルの活性を調節すると考えられる。PYK2はまた、チロシンリン酸化を通じてイオンチャネル機能の調節も行っていると考えられる。
【0007】
PYK2の活性化は、細胞外カルシウムの流入又は内部貯蔵カルシウムの放出を惹起するシグナルによって起こる。多様な外部刺激に応答して、チロシン残基においてPYK2がリン酸化される。PYK2は、Gタンパク質共役型受容体、カルシウムの流入、及び、(細胞表面からのシグナルを伝播して核内の転写事象を調節する経路である)MAPキナーゼシグナル伝達経路との間を結びつけるものである。
【0008】
国際公開公報 98/07870 (Avrahamら)において、以下のように記載されている。
【0009】
「... B細胞、T細胞、及び単球におけるRAFTK活性を調整するRAFTK治療薬を、免疫に関係した障害の治療に利用することが可能であり、細胞性免疫応答及び液性免疫応答の双方に関係する。
正常な造血細胞の増殖及び分化は増殖因子に依存し、該増殖因子に対する依存性が消失すると、自律増殖が起こる。RAFTKは増殖因子の媒介する複数のシグナル伝達経路に関与し、RAFTKの発現に異常があると癌の発症につながる。そこで本発明では、異常な細胞増殖を制御できるように、RAFTKの発現および/又は活性を調整する方法を検討する。好ましい態様においては、造血細胞における癌治療を目的として、RAFTKの調整を行う。別の態様においては、RAFTKを調整することで腫瘍化(例えば、白血病細胞)を抑制し細胞分化を惹起させる...。
...ある態様においては、本発明のRAFTKタンパク質を利用して、造血細胞の分化又は成熟を調整することができる。本RAFTKポリペプチドは、多潜能性幹細胞の分化及び成熟、ならびに分化した細胞の増殖の双方に影響を与えることができるのである。」
【0010】
発明の概要
本発明は、主にPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を特徴とする炎症に関連する疾患又は障害の治療又は予防に有用な化合物の同定法に関するものである。さらに、本発明はPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を特徴とする炎症関連の疾患又は障害の診断法及び治療法に関するものである。
【0011】
本発明は、インビボマウスモデル及び細胞モデルにおいて、PYK2と炎症反応との間の関係を初めて明らかにするものである。インビボにおけるPYK2の役割を示すため、PYK2遺伝子を欠損したノックアウトマウスを分子遺伝学的技法により作製した。2種類のインビボモデル、インフルエンザウイルスモデル及び皮下カラギーナン空気嚢(subcutaneous carageenen air pouch)モデルを用いて、ノックアウトマウスにおける炎症反応を、PYK2遺伝子の欠損のない対応するマウスと比較した。 両モデルを用いた実験を、本発明の「詳細な説明」に詳細に記載する。
【0012】
これらの実験によって得られたデータは、サイトカインの放出におけるPYK2の役割を明らかにし、炎症におけるPYK2機能の重要性を支持する。 これらの実験は、PYK2の機能を阻害する処理が過度の炎症反応を減少させるのに有用と考えられ、PYK2の機能を促進する処理が不適切な免疫反応を増強するのに有用と考えられることを示している。
【0013】
第一の局面において、本発明は疾患又は障害の治療又は予防に有用な1つ又は複数の潜在的な化合物を同定する方法を特徴とするものであり、該疾患又は障害とは炎症反応を特徴とするものであり、該炎症反応とはシグナル伝達経路における異常を特徴とするものであり、また該シグナル伝達経路はPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を含むものである。本発明の方法は、有用な該化合物の指標として該相互作用の調整が可能な1つ又は複数の潜在的な該化合物をアッセイする段階を含む。
【0014】
「同定する」とは、ある性質の有無を調べることを意味する。この方法は、シグナル伝達のレベル、及びPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用のレベル等を含む種々の性質の測定又は検出を含みうる。
【0015】
「化合物」という用語は、好ましくは非ペプチド性有機分子を意味し、最も好ましくは非ペプチド性合成有機分子を意味する。「非ペプチド性分子」という用語は、アミノ酸のポリマーでない化合物を意味する。非ペプチド性分子は、例えばペプチド様作用薬など、生理学的条件下で加水分解される化学成分を含まないことが好ましい。 また、非ペプチド性分子はペプトイド又は修飾された核酸分子でもよい。化合物の例は、本明細書中の詳細な説明に記載されている。好ましくは、このような分子は分子量が 3,000以下である。
【0016】
「炎症反応」とは、傷害性薬剤と傷害を受けた組織の両方を破壊、希釈、又は剥離させる(取り除く)のに役立つような、組織の傷害又は破壊によって惹起される防御反応を意味する。組織学的には、透過性と血流の亢進を伴う細動脈、毛細血管、及び細静脈の拡張、血漿タンパク質を含む体液の滲出、及び炎症部位への白血球の移動を含む複雑な過程からなる。病的炎症反応は、急性型又は遷延型で軽度のものが継続的に起こることがあり、また通常恒久的な組織傷害を起こす。マクロファージ及びT細胞の動員とサイトカイン産生等の機能は、炎症の病因と直接関係する。様々な型の疾患と障害が炎症反応に関係しており、その全てが本発明の特定の態様に含まれる。
【0017】
「生物」とは、単細胞生物でも、 多細胞生物でもよい。該用語には、哺乳動物が含まれ、最も好ましくは、ヒトが含まれる。マウスの治療又は診断が可能である場合には、ヒト等のその他の生物でも可能であることが多いと予想されるため、好ましい生物としてはマウスが挙げられる。
【0018】
「疾患又は障害」とは、生物(例えばヒト)における医学界で異常と認識されるような状態を指す。この疾患又は障害は、細胞における1つ又は複数のシグナル伝達経路の異常を特徴とし、シグナル伝達経路の構成要素にはPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーが含まれる。
【0019】
「異常」とは、かかる疾患又は障害に罹患していない生物において見られるレベルと統計学的に異なるレベルを意味し、過剰な量、強度、もしくは持続期間のシグナル、または不十分な量、強度、持続期間のシグナルのいずれかに特徴づけられる。シグナル伝達異常は、細胞機能、細胞増殖能、細胞の分化状態の異常と考えられる。伝達経路におけるこのような異常は、伝達経路におけるPYK2と天然結合パートナーとの相互作用部位に、ある種の作用を施すことによって軽減され得る。異常な相互作用のレベルは、正常レベルよりも高いか低いかのどちらかであり、器官の正常な働き又は機能を損ないうる。従って、このような相互作用によって形成された複合体は、シグナル伝達経路の一部をなしているため、PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用に影響を与え得る化合物を試験することによって、シグナル伝達経路の異常を特徴とする疾患又は状態の治療又は処置に有用な薬剤をスクリーニングすることもまた可能である。しかしながら、いくつかの態様においては、PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用のレベルが正常であっても、この疾患又は状態は、シグナル伝達経路の異常に特徴づけられうる。さらにいくつかの態様においては、天然結合パートナーがPYK2において機能できないこと、又はPYK2が天然結合パートナーにおいて機能できないこと、またはその両方によってこのような異常が起こることがある。また、幾つかの好ましい態様においては、異常は必ずしも従来のシグナル伝達経路の意味する範疇に収まらないことがあり、例えば、直接シグナル伝達に関係しないPYK2の活性を含んでいてもよい。
【0020】
「シグナル伝達経路」という用語は、細胞膜を通して細胞外シグナルを伝播させて、細胞内シグナルにする分子を意味する。その後このシグナルは細胞応答を刺激する。シグナル伝達段階に関与するポリペプチド分子は、これらに限定されるものではないが、通常、受容体型及び非受容体型のタンパク質チロシンキナーゼ、受容体型及び非受容体型のタンパク質ホスファターゼ、SRC相同2ドメイン及びSRC相同3ドメイン、PDZドメインを含むタンパク質、ホスホチロシン結合タンパク質(SRC相同2(SH2)ドメイン及びホスホチロシン結合(PTB及びPH)ドメインを含むタンパク質)、ホスホチロシン及び非リン酸化ペプチドに結合するPTB(ホスホチロシン結合)ドメイン、ホスホイノシチドに結合するPH(プレクストリン相同)ドメイン、プロリンリッチ結合タンパク質 (SH3ドメインを含むタンパク質)、ヌクレオチド交換因子、ならびに転写因子である。
【0021】
「相互作用」とは、共有、非共有結合を問わず、ポリペプチド間の任意の物理的結合を意味する。この結合には例えば、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、錯体化等の様々な化学的機構が関与しうる。非共有結合の例としては、静電結合、水素結合、ファンデルワールス結合等が挙げられる。さらに、ポリペプチド間相互作用は、直接的でも間接的でもよい。従って、2つの所与のポリペプチド間の結合は、2つの関心対象のタンパク質(例えば、PYK2ポリペプチドと天然結合パートナー)の結合を仲介する薬剤又は複数のこのような薬剤を用いることによって達成されうる。間接的な相互作用に関する別の例としては、制御用の薬剤を用いてPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーを独立に産生、刺激、又は両分子を阻害することが挙げられる。相互作用のレベルを測定する際に、相互作用の種類に応じて、種々の方法が用いられる。例えば、共有結合の強度は、特定数の結合を切るのに要するエネルギー(すなわち、 kcal/mol)として測定されることが多い。非共有結合性の相互作用は、上記のように表すことが多いが、相互作用する分子間の距離として表すこともある。間接的相互作用は、様々な方法で表すことができ、これには、関与する仲介薬剤の数、もしくはPYK2ポリペプチドに関して行ったコントロールと天然結合パートナーについて行ったコントロールとの比較等が含まれる。
【0022】
「PYK2ポリペプチド」とは、レブ(Lev)らによる米国特許第5,837,815号、及びレブ(Lev)らによる国際公開公報 96/18738に記載されたPYK2ポリペプチドを意味するものであり、どちらも表、図、図表を含む全てが参照として本明細書に組み入れられる。PYK2ポリペプチドの単離と特徴付けは、両文献中に詳しく記載されている。ポリペプチドの機能的活性が保持される限り、PYK2ポリペプチドは、完全長の核酸配列又は完全長核酸配列の任意の部分配列でコードされることができる。好ましい機能的活性としては、これらに限定されるものではないが、リン酸化能、RAKおよび/又はその他のカリウムチャネルに対する制御能があげられる。本発明の方法において用いられるPYK2ポリペプチドを得る目的で、当技術分野において既知の多様な方法が利用できる。
【0023】
「天然結合パートナー」という用語は、細胞中でキナーゼに結合する、ポリペプチド、脂質、低分子又は核酸を意味する。キナーゼと天然結合パートナーとの間の相互作用における変化は、相互作用が形成される確率の増加もしくは減少、又はキナーゼ/天然結合パートナー複合体の濃度の増加もしくは減少として表れる。結合とは、例えば、リン酸化又は脱リン酸化のような相互作用を含むと理解される。
【0024】
「調整する」という用語は、PYK2と天然結合パートナーとの相互作用を変化させる化合物の能力を意味している。ある化合物のKm値は、好ましくは100μM から1μMの間であり、さらに好ましくは、1 μM から100nMまでの範囲であり、最も好ましくは、100 nM から1 nMまでの範囲である。調整剤は、好ましくはPYK2と天然結合パートナーとの相互作用を促進または破壊するものである。または、調整剤はリン酸化を含む細胞内のキナーゼ活性を増加または低下させてもよい。キナーゼ活性は、好ましくは天然結合パートナーのチロシン残基、セリン残基またはトレオニン残基のリン酸化である。天然結合パートナーとの相互作用における変化とは、該キナーゼと天然結合パートナーとの間の複合体形成の確率を増減させることをも含むものである。調整剤は、好ましくはキナーゼと天然結合パートナーとの間のこのような複合体形成の確率を増加させ、最も好ましくはキナーゼと天然結合パートナーとの間のこのような複合体形成の確率を減少させる。ある好ましい態様においては、 相互作用は天然結合パートナーのPYK2に対する作用を含む。
【0025】
「複合体」という用語とは、互いに結合した少なくとも2つの分子の集合体を意味する。シグナル伝達複合体は、互いに結合した少なくとも2つのタンパク質分子を含むことが多い。例えば、タンパク質チロシンキナーゼ受容体, GRB2、SOS、RAF、及び RAS は、マイトジェンリガンドに対する応答におけるシグナル伝達複合体を形成する。
【0026】
「破壊する」とは、PYK2ポリペプチドの発現の阻害、天然結合パートナーの発現の阻害、天然に合成されるタンパク質の相互作用の特異的な阻害、もしくはこれらのタンパク質の相互作用への干渉のいずれかにより、PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を弱めることを意味する。。
【0027】
「促進する」とは、PYK2ポリペプチドの発現の増加、天然結合パートナーの発現の増加、対応する制御TP(または、他のリン酸化されたシグナル伝達組成物に作用するその他のホスファターゼ)の脱リン酸化活性の減少、PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーの相互作用の促進、もしくは相互作用の持続時間の延長などのいずれかの方法でPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を増加させることを意味する。
【0028】
「活性化する」という用語は、キナーゼの細胞内活性を増加させることを意味する。「阻害する」という用語は、キナーゼの細胞内活性を減少させることを意味する。キナーゼ活性は、好ましくは天然結合パートナーにおけるチロシン残基、トレオニン残基、またはセリン残基のリン酸化である。天然結合パートナーとの相互作用における変化にはまた、キナーゼと天然結合パートナーとの間の複合体形成の確率を増減させることも含んでよい。調整剤は、好ましくは該キナーゼと天然結合パートナーとの間の複合体形成の確率を増加させ、最も好ましくは該キナーゼと天然結合パートナーとの間の複合体形成の確率を減少させる。
【0029】
PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用が関与する炎症反応関連の疾患又は障害の治療又は予防に潜在的に有用な化合物をスクリーニングする方法の好ましい態様においては、炎症反応関連疾患又は障害が、炎症性大腸疾患及び結合織疾患からなる群より選択される。好ましくは、炎症性大腸疾患は、潰瘍性大腸炎とクローン病からなる群より選択され、また結合織疾患は、リウマチ関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、混合結合組織病、及びシェーグレン症候群からなる群より選択される。
【0030】
マクロファージの機能と、マクロファージもしくは炎症反応に関係したその他の細胞によるサイトカイン産生は、疾患の病理的進行及び生理学的進行に直接寄与する。Pyk2−/− マウス由来の細胞、及び不活性なPYK2キナーゼを発現しているマクロファージ細胞株におけるサイトカイン産生の減少から、これらの疾患の進行過程にPYK2が重要であることが分かる。従って、炎症細胞におけるPYK2の機能を阻害することによって、これらの疾患に関係した病的状態を緩和できるはずである。
【0031】
本明細書における「炎症性大腸疾患」という用語は、大腸の炎症性疾患を意味し、それらのうちクローン病や潰瘍性大腸炎を含む多くのものは、その病因が未知である。
【0032】
本明細書における「クローン病」という用語は、病因が未知の慢性の肉芽腫炎症性疾患を意味し、口から肛門までの任意の消化管が関与しうるが、通常は、回腸の末端、及び/又は結腸の腸管壁に瘢痕・肥厚が認められるものである。これはしばしば、腸閉塞、フィステル、及び膿瘍等を形成し、治療後にも高頻度で再発が認められる。
【0033】
「潰瘍性大腸炎」という用語は、結腸の主に粘膜及び粘膜下組織における原因不明の慢性、再発性潰瘍を意味する。ほとんどの場合、直腸も含まれる。その臨床症状は、痙攣性の異常な疼痛、直腸出血、塊に乏しく流動性の糞便に出血、膿汁、粘液等を伴う。合併症としては、痔核、膿瘍、瘻孔、結腸の穿孔、偽ポリープ、及び癌等が挙げられる。
【0034】
本明細書における「結合織疾患」という用語は、皮膚、関節及びその他の結合織に富んだ構造における炎症、ならびに自己抗体の産生及び細胞性免疫の異常を含む免疫制御パターンの変化等、ある共通した特徴を有する異種的疾患を意味する。それぞれは異なった臨床状態として定義されうるものであるが、患者毎に症状はかなり変化し、患者間及び個々の疾患の間で臨床的特徴が重複しうる。
【0035】
本明細書における「リウマチ関節炎」という用語は、主に関節、通常は多関節に関する慢性の全身性疾患を意味し、滑膜及び関節構造の炎症性変化、筋萎縮、骨の粗化等により特徴づけられる。通常、持続性の滑膜炎症が末梢部の関節に左右対称に起こる。軟骨破壊、骨浸食、関節変形等が主な特徴である。炎症細胞の浸潤が共通して見られる。リウマチ関節炎の種類としては、若年性、慢性絨毛性、輪状披裂型、変形性、変性性、断節性、及び増殖性のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本明細書における「全身性エリテマトーデス」という用語は、病原性の抗体及び免疫複合体の沈着により組織及び細胞が傷害を受けるような疾患を意味する。B細胞の機能亢進、核抗原決定基に特異性を有する自己抗体の産生、及びT細胞の機能異常が起こる。これには、ほとんど全ての器官系が含まれ、悪化と寛解を繰り返す。共通する特徴は、頬部「蝶形」発疹である。
【0037】
本明細書における「進行性全身性硬化症」という用語は、皮膚と種々の内臓系(主に消化管、肺、心臓、及び腎臓)における炎症性、血管性、かつ線維性の病変を特徴とする多系統障害を意味する。主な病変は、内皮細胞の傷害であり、これは最終的に血管内膜の増殖、線維症、及び血管の閉塞を起こす。臨床症状としては、レイノー現象、強皮症(皮膚の線維症)、高血圧、及び腎不全が挙げられるが、必ずしもこれらのみに限定されるものではない。
【0038】
本明細書における「混合結合組織病」という用語は、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、及びリウマチ関節炎の特徴と類似した臨床特徴を複合して併せ持つことを特徴とする症候群を意味する。血中に異常に力価の高い核リボヌクレオタンパク質に対する循環抗体が認められる。臨床症状には、他の症状と共存するレイノー現象、多発性関節炎、及び肺線維症が挙げられる。
【0039】
本明細書における「シェーグレン症候群」という用語は、粘膜と結膜の乾燥(乾燥症候群)に至る進行性のエクソクリン腺破壊を特徴とする免疫学的障害を意味する。羅患組織には、リンパ球の浸潤と免疫複合体の沈着が見られる。
【0040】
化合物の同定を行う方法に関する好ましい態様としては、1つ又は複数の化合物が、インビトロにおいてPYK2と天然結合パートナーとの相互作用を調整(阻害又は促進)するものである。インビトロにおけるこのような方法の例としては、天然に又は組換え体としてGタンパク質共役型受容体、PYK2、及びRAKを発現している増殖細胞(即ち培養容器中で)が挙げられる。好ましくは被検化合物を0.1μM から100μMの範囲の濃度で添加して、好ましくは5分間から2時間この混合物を反応させる。好ましくは、リガンドをGタンパク質共役型受容体に添加して5分〜30分間反応させ、その細胞を溶解させる。特異的モノクローナル抗体に対する結合を利用した免疫沈降法又はELISAでRAKを単離する。被検化合物に暴露していない細胞と比較したリン酸化の程度を、抗ホスホチロシン抗体(好ましくはポリクローナル抗体)を用いて測定する。また、化合物の同定を行う別法においては、1つ又は複数の化合物は、インビボにおいてPYK2と天然結合パートナーとの相互作用を調整(阻害又は促進)する。
【0041】
化合物の同定を行う別法においては、相互作用は、PYK2のリン酸化, PYK2の天然結合パートナーにおけるリン酸化, PYK2の脱リン酸化, PYK2の天然結合パートナーの脱リン酸化、及びPYK2と天然結合パートナー間の複合体形成からなる群より選択される。
【0042】
かかるスクリーニング法で試験を行うことのできる化合物の例としては、チロフォスチン類、キナゾリン類、 キノキソリン類、キノリン類、及びインドリノン類が挙げられる。これらの化合物の代表例とその調製方法に関して記載のある文献について、発明の詳細な説明に記載する。
【0043】
本発明の第2の局面は、疾患又は障害はPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を含むシグナル伝達経路における異常に関連する炎症反応に特徴づけられるような、疾患又は障害の診断法を特徴とする。本診断法は、該疾患又は障害を示すものとして該相互作用のレベルを検出する段階を含む。
【0044】
「診断」とは、通常その疾患又は状態に関係した症状の同定を行う方法を意味する。従って、他の症状等、確認のための付加的な証拠を用いることによって、初診でなされた診断は、正しいものとして確定診となる。種々の疾患や状態の現在の分類というものは不変ではなく、その疾患又は状態を惹起するメカニズムについて新たに得られた知見によって変化するものである。従って、PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の異常なレベルの相互作用の検出など重要な症状の検出は、新規に命名された疾患又は状態の定義と診断の基礎をなすものである。例えば、通常の癌は、特定の症状の有無に従って分類される。しかし、これらの症状のサブセットはRAS21シグナル伝達経路等の特定のシグナル伝達経路における異常に関係するとともに、これらの疾患が、観察された特定の症状とは無関係に、将来、RAS21のシグナル伝達経路関連疾患という名前で再分類されることもあり得る。
【0045】
PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの相互作用に関係した炎症反応関連の疾患又は障害の診断を目的としたスクリーニング法の好ましい態様においては、炎症反応関連の疾患又は障害が、炎症性大腸疾患及び結合織疾患からなる群より選択される。好ましくは、炎症性大腸疾患は、潰瘍性大腸炎及びクローン病からなる群より選択され、結合織疾患は、リウマチ関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、混合結合組織病、及びシェーグレン症候群からなる群より選択される。
【0046】
本発明の第3の局面は、疾患又は障害の治療法又は予防法を特徴としており、該疾患又は障害はPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの相互作用を含むシグナル伝達経路における異常に関する炎症反応を特徴とするものであり、本治療法又は予防法は該治療を必要とする患者に1つ又は複数の化合物、好ましくは薬学的に許容される組成物に含まれる化合物を投与する段階を含み、1つ又は複数の化合物は該相互作用を調整する。
【0047】
PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用に関係した炎症反応関連の疾患又は障害の治療法、又は予防法の好ましい態様においては、該炎症反応関連の疾患又は障害が、炎症性大腸疾患及び結合織疾患からなる群より選択される。好ましくは、炎症性大腸疾患は、潰瘍性大腸炎とクローン病からなる群より選択され、結合織疾患は、リウマチ関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、混合結合組織病、及びシェーグレン症候群からなる群より選択される。
【0048】
PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用が関係する炎症反応関連の疾患又は障害の治療法、又は予防法の他の好ましい態様においては、1つ又は複数の化合物が、インビトロおよび/又はインビボでの該相互作用を調整(阻害又は促進)する。ある好ましい態様においては、該相互作用は、PYK2のリン酸化、PYK2に対する天然結合パートナーのリン酸化、PYK2の脱リン酸化、PYK2に対する天然結合パートナーの脱リン酸化、及びPYK2と天然結合パートナー間での複合体形成からなる群より選択される。
【0049】
PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用が関係する炎症反応関連の疾患又は障害の治療法、又は予防法に関する更に別の好ましい態様においては、1つ又は複数の化合物が、チロフォスチン類、キナゾリン類、キノキソリン類、キノリン類、及びインドリノン類からなる群より選択される。
【0050】
好ましい態様においては、薬剤は治療的に有効であり、好ましくはEC50又はIC50が100μM又はそれ以下であり、より好ましくは50μM又はそれ以下であり、また、最も好ましくは10μM又はそれ以下である。このようにEC50又はIC50の値が低い場合には、インビボ又はインビトロで治療または診断に用いる分子の濃度が低くてよいという利点がある。低い値のEC50又はIC50を有する分子を発見することによって、同等の効力及び効果を有する分子を設計及び合成することが可能となる。このような分子についての治療上有効な量は、EC50又はIC50の値、患者の年齢、体重、及び患者の疾患の種類により変化するが、通常、約1nmolから1μmol である。
【0051】
「予防する」という用語は、生物が異常な状態になる、又はその状態が悪化する確率を減少させることを意味する。従って、この場合、患者とは、異常な状態になるリスクがあると考えられる者を含む。当業者は、異常な状態になるリスクがあると考えられる者を同定できると考えられる。
【0052】
「治療する」という用語は、治療効果を有しており、生物における異常な状態を少なくとも部分的に和らげる又は取り除くことを意味する。この場合、患者は、異常な状態であると既に同定されている。
【0053】
「治療効果」という用語は、異常な状態を惹起する又は異常な状態に寄与する要因の阻害または活性化を意味する。治療効果によって、異常な状態の1つ又は複数の症状がある程度緩和される。異常な状態の治療に関して、治療効果とは以下の事柄を意味する:(a)細胞浸潤の増減;(b)細胞移動度の増加又は阻害(すなわち、移動の速度を遅くする又は止める);(c)異常な状態に関係した1つ又は複数の症状をある程度和らげる;及び(d)罹患に関係した細胞群の機能を亢進させる又は阻害する。異常な状態に対して効能を発揮する化合物は、本明細書に記載されるような方法で同定できる。
【0054】
「異常な状態」という用語は、その生物の正常機能の範囲からはずれた生物の細胞または組織における機能 を意味する。異常な状態は、細胞増殖、細胞分化、細胞機能、又は細胞の生存に関係し得る。
【0055】
異常な細胞浸潤の状態としては、リウマチ関節炎および慢性炎症性大腸疾患が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0056】
「異常」という用語は、シグナル伝達の過程におけるキナーゼの機能に関連し、生物において過剰もしくは低レベルで発現しているキナーゼ、変異により野生型タンパク質キナーゼの活性と比較してその触媒活性がより高いもしくはより低い状況にあるキナーゼ、変異により天然結合パートナーと相互作用することができないキナーゼ、他のタンパク質キナーゼまたはタンパク質ホスファターゼによって修飾され得ないキナーゼ、又は天然結合パートナーと相互作用できないキナーゼを意味する。
【0057】
「投与する」という用語は、生物の細胞または組織に化合物を導入する方法に関する。生物内又は生物外に生物の細胞または組織が存在する場合には、異常な状態を予防又は治療することができる。生物外に存在する細胞は、細胞培養容器中で維持及び増殖させることができる。生物体内に細胞がある場合、当該技術分野には、化合物を投与するための技術が数多く存在し、経口、非経口 (例えば、静脈内、筋肉内、皮下、及び関節内)及びエアロゾルによる投与が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。デポー製剤又は徐放性製剤として化合物を投与することもできる。生物体外に細胞がある場合、当該技術分野には化合物を投与するための技術が複数存在し、細胞へのマイクロインジェクション法、単純な拡散を用いる方法、及び担体を用いた技術等が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0058】
本明細書における「薬学的に許容される」または「薬学的」等の用語は、治療用の化合物が治療効果を発揮することを妨げたり、許容限度を超えた有害副作用を起こすことのない医薬組成物中の溶液又は成分を意味する。薬学的に許容される薬剤の例としては、米国薬局方米国医薬品集、米国薬局方協会(Rockville, MD 1990)及びFDAのDivision of Drug Information Resources発行の「FDA Inactive Ingredient Guide 1990, 1996」等の文献に記載がある(これらはいずれも、任意の図を含めた全部が本明細書において参照として組み入れられている)。許容されない副作用は疾患毎に異なる。通常、疾患の重篤度が増せば増すほど、毒性効果に対する耐性度が増す。異なる疾患における許容され得ない副作用に関しては、当技術分野で公知である。
【0059】
「生理学的に許容される」という用語は、生物に有意な刺激を与えない、及び好ましくは化合物の有する生物学的活性及び性質を妨げることのない担体または希釈剤を意味する。【0060】
「担体」という用語は、細胞または組織への化合物の取り込みを促進する化学的化合物を意味する。例えば、ジメチルスルフォキシド(DMSO)は、多様な有機化合物の生物の細胞または組織への取り込みを促進するので、通常用いられる担体である。
【0061】
「希釈剤」という用語は、目的化合物を溶解し、生物学的に活性な化合物を安定化する水(もしくは、その他の溶媒)で希釈した化学的化合物を意味する。当該技術分野では、緩衝性溶液に溶解した様々な塩が希釈剤として用いられる。ヒトの血の塩濃度条件を模倣したリン酸緩衝生理食塩水が、通常用いられる緩衝溶液である。緩衝液の塩は、低濃度で溶液のpHを制御できるため、希釈剤が化合物の生物学的活性を変化させることはほとんどない。
【0062】
本明細書における「溶媒」という用語は、本発明の化合物の溶解を促進する化学的化合物を意味する。溶媒の例としては、エタノールおよびベンジルアルコール等の薬学的に許容されるアルコール; ポリエチレングリコール等のポリオキシヒドロカルビル化合物; CREMOPHOR(登録商標)EL等の薬学的に許容される界面活性剤;GELUCIRE(登録商標)および LABRASOL(登録商標)等の多糖化脂質;およびミグリオール(miglyol)812等の薬学的に許容される油脂が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0063】
本明細書において「薬学的に許容されるアルコール」という用語は、ほぼ室温(約20 ℃)で液体状態であるアルコールを意味する。例としては、プロピレングリコール、エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール(TRANSCUTOL(登録商標)、Gattefosse、Westwood、NJ 07675)、ベンジルアルコール、およびグリセロールが挙げられる。
【0064】
本明細書において「ポリオキシヒドロカルビル化合物」という用語は、グルコース、ショ糖、マルトトリオース等の水溶性炭水化物;グルコン酸、マンニトール、及びオリゴ多糖等の水溶性炭水化物誘導体;ポリビニルピロリドン, ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー;特に、ポリエチレングリコールを含むポリオキシアルキレン等、又は水溶性混合オキシアルキレンポリマーのポリエーテル;及び高分子量エチレングリコールを意味する。ポリオキシヒドロカルビル化合物は、好ましくは2原子以上の炭素、酸素、及び水素原子を含むが、ポリエチレンイミンを含む分子も含まれる。
【0065】
特に好ましい種類の可溶化剤ポリオキシヒドロカルビル基は、PEGモノメチルエーテル等のポリエチレングリコール(PEG)及びPEG誘導体からなる。その他の好ましいPEG誘導体には、PEGシリコン由来のエーテル類が含まれる。これらポリマーの多くは市販されており、多様な分子量のものがある。その他は、アミノPEG部分をハロアルキルシリル又はシラン部分と結合させる等の方法で、市販の物質から容易に調製されうる。
【0066】
好ましいPEGとしては、その分子量が、約200 g/mol から約20,000 g/mol 以上、より好ましくは 200 g/mol から 5,000g/mol、 さらに好ましくは 250 g/mol から 1,000 g/mol、最も好ましくは 250 g/mol から 500 g/molの範囲のものである。分子量の選択は、選択した特定の化合物、その分子量及び疎水性の程度、用いる製剤の用途によって異なる。
【0067】
本明細書における「薬学的に許容される界面活性剤」という用語は、必要に応じて本発明の化合物を水溶液に可溶化させる化合物を意味する。非経口投与製剤の場合、界面活性剤は非イオン性界面活性剤であることが好ましい。薬学的に許容される界面活性剤の例としては、ポリソルベート80、その他のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリルモノオレイン酸、ポリビニルアルコール、PLURONIC(登録商標)(ポリエーテル)及びTETRONIC(登録商標)(BASF) 等のエチレンオキシドコポリマー、ポリオール基、及びソルビタンエステルが挙げられる。好ましくは CREMOPHOR(登録商標)EL等のエトキシ化ヒマシ油が、化合物の製剤化の際に用いられる。
【0068】
本明細書において「エトキシ化ヒマシ油」という用語は、少なくとも1分子の酸素を含む化学基で修飾されたヒマシ油を意味する。特にこの用語は、少なくとも1つのエトキシ基を含むヒマシ油を意味している。
【0069】
さらに、本明細書における「薬学的に許容される界面活性剤」という用語は、経口で投与される製剤を意味し、このような経口で投与される製剤としては、薬学的に許容される非イオン性界面活性剤(例えば、POLOXAMER(登録商標)68 (BASF Co.)等のポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、またはポリオキシエチレン(20) ソルビタンモノオレイン酸 (TWEEN(登録商標)80)、ポリオキシエチレン(20) ソルビタンステアリン酸 (TWEEN(登録商標)60)、 ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノパルミチン酸 (TWEEN(登録商標)40)、ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノラウリン酸 (TWEEN(登録商標)20)等のモノ脂肪酸エステル);ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えば、ポリオキシエチレングリコールトリリシノール酸またはポリオキシ35ヒマシ油(CREMOPHOR(登録商標)EL, BASF Co.)、ポリオキシエチレングリコールオキシステアリン酸 (CREMOPHOR(登録商標)RH 40(ポリエチレングリコール40水素化ヒマシ油) またはCREMOPHOR(登録商標)RH 60 (ポリエチレングリコール 60 水素化ヒマシ油)(BASF Co.)等; 又は薬学的に許容される陰イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0070】
本明細書において「多糖化脂質」という用語は、200g/molから 2,000g/mol のPEGを用いた植物油脂の部分的アルコール分解、または200g/mol から 2,000 g/molのPEGおよびグリセロール用いた脂肪酸エステル化によって生成したモノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリド、及びポリエチレングリコールモノエステル及びジエステルの混合物を意味する。これらの好ましい例としては、GELUCIRE(登録商標)35/10、GELUCIRE(登録商標)44/14、GELUCIRE(登録商標)46/07、GELUCIRE(登録商標)50/13, GELUCIRE(登録商標)53/10、及び LABRASOL(登録商標)が挙げられる。
【0071】
本明細書において「薬学的に許容される油脂」という用語は、ミネラルオイルもしくは植物油脂(紅花油, ピーナッツオイル, 及びオリーブオイル等を含む)等の油脂、分画したココナッツオイルプロピレングリコールモノラウリン酸、カプリル酸及びカプリン酸との混合トリグリセリド等を意味する。本発明の好ましい態様においては、ミネラルオイル、植物油脂、分画したココナッツオイル、カプリル酸及びカプリン酸との混合トリグリセリドが用いられる。本発明の特に好ましい態様においては、Miglyol(登録商標)812 (Huls America(USA)から入手可能)が用いられる。
【0072】
好ましい態様においては、本明細書に記載された方法は、治療の必要な患者を同定する段階を含む。当業者は、該患者の識別に用いられる種々の技術に関する知識を有すると考えられる。
【0073】
本発明の第4の局面は、上記もしくは本明細書中に記載された本発明の方法のいずれかで同定される1つ又は複数の化合物を含む組成物を特徴とする。好ましくは、この組成物は、疾患又は障害の治療または予防に有用なものであり、ここで該疾患又は障害は、PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用が関係するシグナル伝達経路における異常を含む炎症反応を特徴とする。
【0074】
好ましい態様においては、炎症反応関連の疾患又は障害は、炎症性大腸疾患及び結合織疾患からなる群より選択される。好ましくは、炎症性大腸疾患は、潰瘍性大腸炎とクローン病からなる群より選択され、結合織疾患は、リウマチ関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、混合結合組織病、及びシェーグレン症候群からなる群より選択される。
【0075】
本発明の第5の局面は、疾患又は障害の治療又は予防に潜在的に有用な化合物の作製方法を特徴とし、該疾患又は障害はシグナル伝達経路における異常を含む炎症反応を特徴とし、シグナル伝達経路はPYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を含む。本生産方法は、有用な該化合物の指標として該相互作用の調整が可能な1つ又は複数の潜在的な該化合物をアッセイする段階、及び同定した化合物を合成する段階を含む。同定した化合物の合成法に関する文献を、発明の実施の形態に記載した。
【0076】
好ましい態様においては、炎症反応関連の疾患又は障害は、炎症性大腸疾患及び結合織疾患からなる群より選択される。好ましくは、炎症性大腸疾患は、潰瘍性大腸炎とクローン病からなる群より選択され、結合織疾患は、リウマチ関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、混合結合組織病、及びシェーグレン症候群からなる群より選択される。
【0077】
本発明の第6の局面は、上記もしくは本明細書に記載された本発明の方法のいずれかによって同定された1つ又は複数の化合物からなる組成物を含むキットを特徴とする。好ましくは、この組成物は、疾患又は障害の治療または予防に有用なものであり、ここで該疾患又は障害は、PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を含むシグナル伝達経路における異常を含む炎症反応を特徴とするものである。該キットは、好ましくはさらに、ラベル上もしくは本明細書の発明の詳細な説明に記載されているその他の好ましい手段を用いた使用法の説明を含むものである。
【0078】
他の好ましい態様においては、キットはさらに、希釈剤、担体、および溶媒のうちの1つもしくは複数を含む、容器を含む。このような容器としては、小型のガラス容器、プラスチック 容器、またはプラスチックもしくは紙の短冊が挙げられる。このような容器によって、ある容器から別の容器へ内容物を効率よく移すことができ、内容物に不純物が混ざることなく、内容物を一方のコンパートメントから別のコンパートメントへと定量的に添加することができる。キットは、さらに組成物の投与手段を含む。本発明の組成物が当技術分野で公知である既存のキット形態に容易に組み込まれ得るものであることは、当業者によって容易に認められうる。
【0079】
好ましい態様においては、キットに含まれる組成物は、炎症性大腸疾患及び結合織疾患からなる群から選ばれる炎症反応関連の疾患又は障害の治療または予防に有用なものである。好ましくは、炎症性大腸疾患は、潰瘍性大腸炎とクローン病からなる群から選ばれ、結合織疾患は、リウマチ関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、混合結合組織病、及びシェーグレン症候群からなる群から選ばれる。
【0080】
本発明のその他の特徴と利点については、以下に記載する好ましい態様に関する説明及び特許請求の範囲から明らかである。
【0081】
発明の詳細な説明
本発明は、インビボマウスモデル及び細胞モデルにおいて、PYK2と炎症反応との間の関係を初めて明らかにしている。インビボでのPYK2の役割を明らかにするために、Pyk2遺伝子を欠損したノックアウトマウスを分子遺伝学的手法で作製した。2種類のインビボモデルを用いてノックアウトマウスの炎症反応を、対応するPyk2遺伝子の欠失を含まないマウスの反応と比較した。すなわちそのモデルとは、インフルエンザウイルスモデルと皮下カラギーナン空気嚢モデルである。
【0082】
インフルエンザモデルでは、インフルエンザウイルスに感染すると、激しい肺の炎症反応を起こし最終的には死にいたる。Pyk2ノックアウトマウスでは、Pyk2遺伝子を発現している対照マウスと比較して、生存時間が有意に長い(48時間)ことが明らかになった。ノックアウトマウスと対照マウスの肺の組織学的試験によって、Pyk2ノックアウトマウスの肺では、PMN(多核白血球)、マクロファージ、及びT細胞等の炎症性細胞の浸潤は有意に低いことが明らかになった。Pyk2 −/− マウスのマクロファージ及び脾細胞では、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−10、TNF−α、GMCSF、IFN−γ、及びMPL1−α等のサイトカイン及びケモカインの産生量が減少していることが、インビトロ実験から明らかになった。TNF−α及びMPL1−α(その他のもの)のようなサイトカイン及びケモカインの産生減少によって、炎症反応に関与するマクロファージ、T細胞、及びその他の造血細胞、非造血細胞の動員の低下と活性化の減少がおこる。更に、ノックアウトマウス由来のマクロファージでは、インビトロでの運動性が減少していた。インフルエンザに感染したPyk2 −/−マウスでは、サイトカイン応答の低下と移動能の欠損が、インビトロでの生存率増加と肺細胞浸潤の減少に対する相関を示した。
【0083】
皮下カラギーナン空気嚢モデルでは、マウスの後部側腹部に皮下空気嚢を外科的に誘導した。次に炎症反応を引き起こす物質である免疫原カラギーナンで、この空気嚢を満たした。10時間後に、嚢に浸潤した細胞数及び細胞の種類を調べた。 組織学的試験で、Pyk2 −/− マウスのカラギーナンで満たした嚢に浸潤した細胞の数を対照と比較した。さらに、炎症部位におけるクロファージ数に有意な減少が認められた。
【0084】
キナーゼ不活性PYK2タンパク質を、正常なマクロファージ細胞株に導入して、野生型PYK2を発現している成熟マクロファージの細胞におけるPYK2の役割を調べた。キナーゼ不活性PYK2の発現は、「ドミナントネガティブ」な阻害剤として働き、マクロファージにおける内因性野生型PYK2タンパク質の機能を阻害する。キナーゼ不活性PYK2タンパク質の発現は、LPSに応答して、生理学的に炎症反応の誘導を行う働きのある物質としてのTNF−αの分泌を減少させた。
【0085】
これらのデータは、サイトカインの放出に対するPYK2の役割を明らかにし、炎症に関するPYK2の機能の重要性を支持するものである。PYK2の機能を阻害する処理が、過度の炎反応を緩和し、PYK2の機能を促進する処理が、不適切な免疫反応を増強することが、これらの実験から明らかになった。
【0086】
I. PYK2 とシグナル伝達
PYK2が、ブラジキニン、アセチルコリン、及びCXCR4またはCCR5のようなGタンパク質共役型受容体に対するリガンドと結合することによって活性化される非受容体型チロシンキナーゼである。PYK2の予想される分子量は111kDであり、以下の5つのドメインを含む:(1)比較的長いN末端ドメイン、(2)キナーゼの触媒ドメイン、(3)プロリンリッチドメイン、(4)別のプロリンリッチドメイン、及び(5)C末端ドメインである。
【0087】
PYK2のC末端ドメインは、他の非受容体型チロシンキナーゼ、即ち同様にGタンパク質によって活性化される接着斑キナーゼ(FAK)のC末端ドメインに対して62%の類似性を有している。PYK2とFAK間の全体の類似性は52%である。しかし、PYK2の発現はFAKの発現とは対応していない。主に接着斑領域に局在するFakと異なり、PYK2は細胞質全体に局在する。PYK2は、神経組織、造血細胞、複数の腫瘍細胞株、及び免疫関連細胞等の多様な細胞において発現している。PYK2は神経系及びラット成獣の脳で発現が高い。
【0088】
PYK2の酵素活性は、チロシンリン酸化によって正に制御されており、ブラジキニン、TPA、カルシウムイオノフォア、カルバコール、TPA + フォルスコリンなどの結合、及び膜の脱分極等に応答する。活性化されたPYK2は、遅延整流性Kチャネルをリン酸化し、これによりこのKチャネルの活性を阻害することが知られている。このKチャネルは、RAK(別称、Kvi.2、RBK2、RCK5 、及びNGKI)と称され、その発現レベルは脳と心房で高い。同一の系で、FAKはRAKをリン酸化しない。PYK2の活性化は、イオンチャネル機能、及び細胞内カルシウムの濃度を上昇させる刺激により誘起されるキナーゼの活性化に関する迅速で高度に局所的な制御メカニズムに関係している。
【0089】
カルシウムの流入又は内部貯蔵カルシウムの放出を起こさせる多様な細胞外シグナルに応答して、PYK2が活性化され、またそのチロシン残基がリン酸化される。カルシウム流入によって、PYK2の活性化、Shcのチロシンのリン酸化、Grb2/Sosの動員、及び細胞核へシグナルを伝達するMAPキナーゼによるシグナル伝達経路の活性化が起こる。PYK2を過剰発現させても、MAPキナーゼか活性化される。従って、PYK2は、Gタンパク質共役型受容体、カルシウムの流入及びMAPキナーゼのシグナル伝達経路との間の関係を提供している可能性がある。この伝達経路は、細胞表面からのシグナルを伝達し、核内における転写事象を制御するものである。
【0090】
これらの結果から、イオンチャネル、カルシウムの流入、及びGタンパク質共役型受容体によるMAPキナーゼシグナル伝達経路の活性化におけるPYK2の役割が明らかになり、これらの刺激によって誘起されるシグナル伝達のメカニズムが示される。さらに、膜の脱分極及びカルバコール処理に応答するShcのチロシンリン酸化は、細胞外カルシウムの有無に依存し、このことは、カルシウム流入がこれらの刺激によって起こるShcのリン酸化の制御に関係することを示すものである。
【0091】
同様に、PYK2は、細胞内カルシウム濃度を感知し、これらの応答を媒介するイオンチャネルの作用を調整することができる。それゆえPYK2は、PYK2活性化に必要なチャネルと全く同一のチャネルを自律的に制御する役割を担っている可能性がある。
【0092】
PYK2の発現パターンとこのキナーゼを活性化する外部刺激は、MAPキナーゼのシグナル伝達経路の制御に関する役割とともに、多様な制御過程におけるPYK2の潜在的な役割を示唆するものである。
【0093】
PYK2の活性は、細胞内カルシウムレベルによって制御されるため、PYK2活性化の時期的、空間的パターンは、細胞内カルシウム濃度の時期的、空間的パターンと一致するものである。多様なカルシウム結合タンパク質が、強力な緩衝効果をもたらすことから、細胞内部のカルシウム濃度は、局在性の高いものである。更に、興奮性の細胞においては、カルシウムレベルは、カルシウムオシレーション及びカルシウムウエーブを生じる細胞内カルシウム濃度の一過性の大きな増加を引き起こす膜電位依存性カルシウムチャネルによって制御される。PYK2は、イオンチャネル機能、及びMAPキナーゼのシグナル伝達経路の活性化に関する迅速で高度に局所的な制御メカニズムに関係している。
【0094】
II. PYK2 を調整する化合物の同定
本発明は主に、PYK2と天然結合パートナーの相互作用を調整する化合物の検出法に関するものである。このような調整は、PYK2と天然結合パートナーとの間の相互作用を減弱させるかまたは増強させるもののいずれかでありうる。同定された化合物は、シグナル伝達系、特にPYK2と天然結合パートナーの相互作用が関与する免疫関連の障害の予防、又は治療に有用である。該化合物は、複雑な混合物中に存在するものであり、このような混合物は、例えば、血清、体液、又は細胞抽出物である。化合物の同定後、当技術分野で公知の技術を用いて単離する。
【0095】
本発明はまた、PYK2と天然結合パートナーの相互作用を調整する1種類又は複数種の化合物を用いた哺乳動物における免疫関連疾患の治療法又は予防法を含むものであり、PYK2と天然結合パートナーの相互作用を調整するのに十分な量の該化合物を哺乳動物に投与する段階を含む。
【0096】
疾患の新しい治療法を見出すために、生化学者、化学者等は、タンパク質キナーゼの機能を阻害する分子を設計、合成、及び試験してきた。ある種の低分子量の有機分子は、タンパク質キナーゼの機能を調整するクラスの化合物として分類される。タンパク質キナーゼの機能を阻害することが報告されている分子の例としては、ビス単環式、二環式、又は複素環式アリール化合物(1992年11月26日付けのMaguire 等による国際公開公報第92/20642号)、ビニレンアザインドール誘導体(1994年7月7日付けのBallinari等による国際公開公報第94/14808号)、1−シクロプロピル−4−ピリジル−キノロン類(米国特許第5,330,992号)、スチリル化合物 (米国特許第5,217,999号)、スチリル置換ピリジル化合物(米国特許第5,302,606号)、ある種のキナゾリン誘導体(欧州特許出願第 0 566 266 Al号)、 セレノインドール類及びセレニド類(1994年2月 17日付けのDenny 等による国際公開公報第94/03427号)、三環式ポリ水酸化合物(1992年12月10日付けのDowによる国際公開公報第92/21660号)、 及びベンジルホスホン酸化合物(1991年10月17日付けのDow等による国際公開公報第91/15495号)等が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。これらはいずれも、図表を含み本発明において参照として本明細書に組み入れられる。
【0097】
細胞膜透過可能で難酸加水分解性の化合物は、患者への経口投与後の生物学的利用率が高まるので、潜在的に治療薬としての利点を有するものである。しかしながら、これらタンパク質キナーゼ阻害剤の多くのものは、タンパク質キナーゼの機能に対して弱い阻害作用しか示さない。さらに、多くのものが、様々なタンパク質キナーゼを阻害する。それゆえ疾患の治療薬として用いた場合に、複数の副作用を引き起こすと考えられる。
【0098】
しかし、ある種のインドリノン化合物は、酸耐性で膜透過性の有機分子からなるクラスを形成する。国際公開公報第96/22976号(1996年8月1日付けのBallinari による文献;本文献は図表を含め、参照として本明細書に組み入れられる)には、オキシインドール環と融合したテトラリン、ナフタレン、キノリン、及びインドール等の置換基を有する水溶性インドリノン化合物についての記載がある。これらの二環式置換基は、さらに水酸基化したアルキル、リン酸、及びエーテル基等の極性基で置換される。1998年3月26日付けのTang等による国際公開公報第98/07695号(Lyon & Lyon Docket No. 221/187 PCT), 1996年12月19日付けのTang 等による国際公開公報第96/40116号(Lyon & Lyon Docket No. 223/298)、及び1996年8月1日付けの Ballinari 等による国際特許公報第96/22976号(これらの文献は図表を含め、その全文が参照として本明細書に組み入れられる)には、その他の二環式基、及びオキシインドール環と融合した単環式基を有するインドリノン化合物からなるインドリノン化学ライブラリーに関する記載がある。これらの文献には、インドリノンの合成法、インドリノン化合物の細胞における生物学的活性の試験法、及びインドリノン誘導体阻害のパターンについても示されている。
【0099】
キナーゼ活性の調整が可能なその他の物質の例としては、チロフォスチン類、キナゾリン類、キノキソリン類、及びキノリン類が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。上記のキナゾリン類、チロフォスチン類、キノリン類、及びキノキソリン類 には、文献に記載のある既知の化合物 が含まれる。例えば、キナゾリン類に関する代表的な文献としては、Barker等のEPO特許出願第0 520 722 Al号;Jones等の米国特許第4,447,608号; Kabbe等の米国特許第4,757,072号;KaulとVougioukasの米国特許第5,316,553号;KreighbaumとComerの米国特許第4,343,940号; Pegg と WardleworthのEPO 0 562 734 Al;Barker等の (1991) Proc. or Am. Assoc. for Cancer Research 32, 327;Bertino, J.R. の(1979) Cancer Research 3, 293−304;Bertino, J.R. の(1979) Cancer Research 9(2 part 1)293−304;Curtin等の (1986) Br. J. Cancer 53, 361−368; Fernandes 等の(1983) Cancer Research 43, 1117−1123;Ferris等の J. Orgr. Chem. 44(2), 173−178; Fry 等の (1994) Science 265, 1093−1095; Jackman 等の (1981) Cancer Research 51, 5579−5586;Jones等の J. Med. Chem. 29(6), 1114−1118;と Skiboの (1987) Biochemistry 26 (23), 7355−7362;Lemus等の(1989) J. Org. Chem. 54, 3511−3518; Ley と Sengの(1975) Synthesis 1975, 415−522; Maxwell等の(1991) Magnetic Resonance in Medicine 17, 189−196;Mini等の (1985) Cancer Research 45, 325−330; PhiilipsとCastleの (1980) J. Heterocyclic Chem. 17(19), 1489−1596; Reece等の (1977) Cancer Research 47(11), 2996−2999;Sculier等の(1986) Cancer Immunol. 及び Immunother. 23, A65;Sikora 等の (1984) Cancer Letters 23, 289−295;Sikora 等の (1988) Analytical Biochem. 172, 344−355が挙げられる。これらの文献はいずれも、図面を含みその全文が参照として本明細書に組み入れられる。
【0100】
キノキサリンに関しては、Kaui と Vougioukasの米国特許第5,316,553号に記載がある。本文献は、図面を含みその全文が参照として本明細書に組み入れられる。
【0101】
キノリン類に関しては、Dolle 等の (1994) J. Med. Chem. 37, 2627−2629;MaGuireの (1994) J. Ned. Chem. 37, 2129−2131;Burke 等の (1993) J. Med. Chem, 36, 425−432;及びBurke 等の (1992) BioOrganic Mod. Chem. Letters 2, 1771−1774に記載がある。これらの文献はいずれも、図面を含みその全文が参照として本明細書に組み入れられる。
【0102】
チロフォスチン類に関しては、Alien 等の (1993) Clin. Exp. Immunol. 91, 141−156; Anafi 等の(1993) Blood 82, 12, 3524−3529;Baker 等の (1992) J. Cell Sci. 102, 543−555;Bilder等の (1991) Amer. Physiol. Soc. 6363−6143, C721−C730; Brunton 等の (1992) Proceedings of Amer. Assoc. Cancer Rsch. 33, 558;Bryckaert 等の (1992) Experimental Cell Research 199, 255−261;Dong 等の (1993) J. Leukocyte Biology 53, 53−60; Dong 等の (1993) J. Immunol. 151(5), 2717−2724;Gazit 等の (1989) J. Med. Chem. 32, 2344−2352;Gazit 等の (1993) J. Med. CheJn. 36, 3556−3564;Kaur 等の (1994) Anti−Cancer Drugs 5, 213−222;King 等の (1991) Biochem. J. 275, 413−418;Kuo等の (1993) Cancer Letters 74, 197−202;Levitzki, A.の(1992) The FASEB J. 6, 3275−3282; Lyall等の(1989) J. Biol. Chem. 264, 14503−14509; Peterson 等の (1993) The Prostate 22, 335−345;Pillemer 等の(1992) Int. J. Cancer 50, 80−85; Posner 等の (1993) Molecular Pharmacology 45, 673−683;Rendu 等の (1992) Biol. Pharmacology 44(5), 881−888; Sauro と Thomasの (1993) Life Sciences 53, 371−376; Sauro と Thomasの (1993) J. Pharm. and Experimental Therapeutics 267(3), 119−1125;Wolbring 等の (1994) J. Biol. Chem. 269(36), 22470−22472;及びYoneda 等 の(1991) Cancer Research 51, 4430−4435に記載がある。これらの文献はいずれも、図面を含みその全文が参照として本明細書に組み入れられる。
【0103】
調整剤として用いることのできるその他の化合物としては、1996年8月23日に出願された米国特許出願第08/702,232号に記載のオキシインドリノン類、及び1998年8月11日に公布された「疾患治療のための3−ヘテロアリール−2−インドリノン化合物」と題する米国特許第5,792,783号(Lyon & Lyon Docket No. 223/301)に記載のインドリノン類が挙げられる。両文献はいずれも、図表を含みその全文が参照として本明細書に組み入れられる。
【0104】
III. 医薬製剤と投与経路
本明細書に記載の化合物は、ヒトである患者にそのままで投与可能であり、また併用療法に用いられるように他の有効成分、または好ましい担体もしくは賦形剤と混合して医薬組成物の形態で投与することも可能である。本発明の化合物に関する製剤化と投与には、「レミントンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」(Mack Publishing Co., Easton, PA, latest edition)に説明されるような方法を用いることができる。 好ましい経路としては、経口、経皮及び 非経口での投与が挙げられる。
【0105】
) 投与経路
好ましい投与経路としては、例えば、デポー製剤、経口、直腸、経粘膜的、又は腸管等への投与; 筋肉内、皮下、静脈内、骨髄内注射、髄腔内、直接的な脳室内注射、腹腔内、鼻腔内、又は眼内への注射等の非経口投与 が挙げられる。
【0106】
本化合物の投与に関する別法としては、全身性投与以外に局所性投与、例えば、固形腫瘍への化合物の直接的投与による方法がある。これには、デポー製剤又は徐放性製剤が用いられることが多い。
【0107】
さらに、標的薬剤送達系による薬剤投与、例えば、腫瘍特異的抗体でコートしたリポゾーム等を用いてもよい。リポゾームは、腫瘍に到達し取り込まれる。
【0108】
b) 組成物 製剤化
本発明の薬学的組成物は、既知の方法、例えば、通常用いられる混合、溶解、造粒、糖衣錠化、細紛化、懸濁、カプセル化、封入化、又は凍結乾燥等の方法で生産することができる。
【0109】
本発明に従って用いられる薬学的組成物は、1種類又は複数種類の生理学的に許容される担体を用いた通常の方法で製剤化してもよい。このような担体としては、活性を示す化合物から薬学的に使用可能な製剤を調製する際に好適に用いられる賦形剤および補助剤(auxiliaries)が挙げられる。投与経路に応じて適正な製剤化の方法を選択する。
【0110】
注射に用いる場合、本発明の薬剤は、水溶液で配合してもよく、好ましくはハンクス溶液、リンゲル液、又は生理食塩緩衝液等の生理学的適合性を有する緩衝液が用いられる。経粘膜的投与に用いる場合、透過する関門に見合った浸透剤を製剤に用いる。このような浸透剤は、通常当技術分野において公知である。
【0111】
経口投与に用いる場合、当技術分野で公知の薬学的に許容される担体と活性のある化合物とを混合することによって容易に化合物を製剤化できる。このような担体を用いることによって、治療を受ける患者が経口摂取できる錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤等の形態で本発明の化合物を製剤化できる。経口用の医薬製剤は以下のようにして得ることができる。固体状の賦形剤を添加し、必要に応じて得られた混合物を粉砕する。好ましい補助剤を添加した後、この顆粒状の混合物を必要に応じて加工し、錠剤、又は糖衣錠のコアを得ることができる。 好ましい賦形剤としては、特に、乳糖、ショ糖、マンニトール、または、ソルビトール等の糖類、または、例えば、トウモロコシデンプン, 小麦デンプン、米デンプン, ポテトデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルローズ、ヒドロキシプロピルメチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)等のセルローズ剤からなる賦形剤が挙げられる。必要に応じて、架橋性ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩等の崩壊剤を添加してもよい。
【0112】
糖衣錠のコアは、好ましい剤皮を用いて加工する。この場合、濃縮した糖溶液を用いてもよく、この溶液は、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液等を含んでいてもよく、好ましい有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる。識別のため、または混合した活性化合物のそれぞれ異なる用量を区別するために染料、又は色素を錠剤または糖衣錠の剤皮に添加してもよい。
【0113】
経口的に用いる医薬製剤としては、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル、ゼラチン製の封入軟カプセル、及びグリセロールまたはソルビトール等の可塑剤が挙げられる。プッシュフィットカプセルは、乳糖等の賦形剤、デンプン等の結合剤、及び/又はタルクまたはステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、及び必要に応じて安定化剤等の混合剤と混合した有効成分含むことができる。軟カプセルでは、活性化合物を脂肪油、流動パラフィン、又は流動ポリエチレングリコール等の適当な液剤に溶解又は懸濁させる。さらに、安定化剤を 添加してもよい。経口投与用の製剤はいずれもこの投与法に好ましい用量で用いられる。
【0114】
口腔投与においては、組成物は通常の方法で製剤化された錠剤または口中剤の剤形をとる。
【0115】
吸入投与では、本発明に従って用いられる化合物は、適当な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の好ましい気体を用いて、加圧パックまたは噴霧器によるエアロゾルスプレーの形態で容易に投与することができる。加圧エアロゾルの場合には、用量ユニットは、使用量を噴霧するためのバルブによって決まる。吸入器、又は注入器に用いられる、例えば、ゼラチンのカプセルとカートリッジには、化合物と乳糖またはデンプン等の好ましい粉末基剤からなる混合粉剤を配合する。
【0116】
化合物は、例えばボーラス注射または持続点滴等の注射による非経口投与用に製剤化してもよい。注射用の製剤は、例えば、保存剤を添加したアンプル又はマルチドース容器に入ったユニット用量の形態で提供される。組成物は、油性又は水溶性ビヒクル中の懸濁剤、溶液または乳剤の形態で提供されてもよいし、懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤等の配合剤を含んでいてもよい。
【0117】
非経口投与に用いる医薬製剤には、水溶性の形態で提供される活性化合物が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁剤は、適当な油性の注射用懸濁剤として調製されてもよい。好ましい親油性溶媒またはビヒクルとしては、胡麻油等の脂肪油、又はオレイン酸エチルまたはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、またはリポゾーム等が挙げられる。水溶性の注射用懸濁剤は、懸濁剤の粘性を増加させるカルボキシメチルセルローズナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン等の物質を含んでいてもよい。また、必要に応じて、懸濁剤は適当な安定化剤、又は化合物の溶解性を増し、高度に濃縮した溶液の調製を可能とする薬剤を含んでいてもよい。
【0118】
もしくは、有効成分は、使用時に適当なビヒクル、例えば発熱性物質の混入のしていない滅菌水等と混合して用いる場合、使用前には粉剤の形態であってもよい。
【0119】
また、化合物は坐剤、または停留浣腸等の直腸用の組成物(例えば、通常用いられるカカオバター、またはその他のグリセリド類等の坐剤用基剤を含んだもの)として製剤化することもできる。
【0120】
上記の剤形に加え、化合物はデポー製剤の剤形であってもよい。このような長時間効能を発揮する剤形では、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内)、又は筋肉内注射で投与が行われる。従って、例えば、化合物は、好ましい高分子量物質または疎水性物質(例えば、許容される油脂に懸濁して)、又はイオン交換樹脂を用いて製剤化されるか、または溶解性の低い誘導体として、例えば、溶解性の低い塩として製剤化される。
【0121】
本発明の疎水性化合物に用いる薬学的担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性の有機ポリマー、及び水相等を含む共溶媒システムである。共溶媒システムは、VDP 共溶媒システムであってもよい。VDPは、3% W/V ベンジルアルコール、8%W/V非極性界面活性剤ポリソルベート80、及び65%W/Vポリエチレングリコール300を無水エタノールに溶解した溶液である。VDP共溶媒システム(VDP:D5W)は5%ブドウ糖を含む水溶液でVDPを1:1希釈したものである。この共溶媒システムには、疎水性化合物がよく溶解し、溶媒自体は全身性投与でも毒性が低い。当然のことながら、用いる共溶媒システムの比率は、溶解性と毒性に関する特徴を保持したまま変化させることが可能である。さらに、共溶媒の構成成分を変えることもできる。例えば、ポリソルベート80の代わりに他の低毒性の非極性界面活性剤を用いてもよい。ポリエチレングリコールの分画サイズが異なったものであってもよい。ポリエチレングリコールの代わりに他の生物適合性の高いポリマーを用いることも可能である。このようなポリマーの例としては、ポリビニルピロリドンが挙げられる。また、ブドウ糖の代替物として他の糖類または多糖類を用いてもよい。
【0122】
もしくは、疎水性の医薬化合物には別の送達システム用いてもよい。リポゾーム、及び乳剤は、疎水性薬剤用の送達ビヒクルまたは担体の例としてよく知られたものである。通常、毒性は強くなるが、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を用いることもできる。さらに、治療薬を含む疎水性固体ポリマーの半透過性マトリックス等の徐放性システムを用いて、化合物を送達することもできる。多様な徐放性物質があり、それらは当業者に公知である。化合物の化学的性質にも依存するが、徐放性カプセルは、数週間から100日程度の期間持続的に化合物を放出する。治療薬の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、さらにタンパク質を安定化させる対策を講じることもできる。
【0123】
薬学的組成物は、適切な固体状またはゲル状の担体又は賦形剤を含んでいてもよい。このような担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、デンプン、セルローズ誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコール等のポリマーが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0124】
PTKを調整する本発明の化合物は、多くのものが、薬学的に適合性の高い対イオンとの塩として提供される。薬学的に適合性の高い塩は、様々な酸を用いて形成させることができる。このような酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。塩は水性又はその他の対応する遊離塩基であるプロトン溶媒により溶けやすい傾向がある。
【0125】
) 効果的用量
本発明の用途に適した薬学的組成物には、目的を達成するために効果的な用量の有効成分を含む組成物が含まれる。さらに具体的には、治療上効果的な量とは、疾患症状の予防、軽減、改善、又は治療の対象の延命に効果的な化合物量を意味する。療上効果的な量は、特に、本明細書において詳細に開示された内容に基づいて、当業者であれば容易に決定しうるものである。
【0126】
本発明の方法において用いられるいずれの化合物についても、治療上効果的な用量を調べるには、まず細胞培養によるアッセイを行う。例えば、細胞培養で決定したIC50(すなわち、PTK活性阻害の最大値の50%を達成する被検化合物の濃度)が血中濃度の範囲に含まれるように動物モデルにおいて用量を決定する。このように決定した値は、ヒトに用いる場合の用量を正確に決定するために利用することができる。
【0127】
本明細書に記載の化合物の毒性と治療上の効力は、細胞培養または実験動物を用いて、通常の薬学的方法で決定することができる。 例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%に治療上効果的な用量)を決定する。毒性と治療上の効力に関する用量比は治療指数であり、LD50:ED50の比で表現する。高い治療指数を示す化合物が好ましいものである。このような細胞培養によるアッセイ、および動物試験で得たデータを用いてヒトに用いる場合の用量範囲を決定することができる。このような化合物の用量は、殆どもしくは全く毒性を示さないED50を含む血中濃度の範囲内であることが好ましい。用いた剤型、および用いた投与経路に応じて、用量はこの範囲内で変わり得る。 正確な処方、投与経路、および用量 は、患者の状態を基に個々の医師によって選択され得る。(例えば、Fingl等の (1975) 「治療薬の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics)」第1章1頁参照)。
【0128】
用量及び投与間隔は、個々の対照に合わせ、活性を有する化合物の血漿中のレベルに関して十分なキナーゼ調整効果または最低限の有効濃度(MEC)が維持されるようにする。MECは化合物毎に異なるが、インビトロのデータ(例えば、本発明に記載のアッセイ法においてキナーゼを50〜90%阻害することのできる濃度)を基に算定する。このようなMECの達成に要する用量は、個体の持つ特質と投与経路に依存する。しかしながら、HPLCによるアッセイまたはバイオアッセイを用いて血漿濃度を決定することができる。
【0129】
投与間隔は、MECの値を基にして決めることもできる。投与から投与までの時間間隔で、その10〜90%の時間、好ましくは30〜90%の時間、最も好ましくは50%〜90%の時間、MECより高い血漿レベルが維持できるような処方で化合物を投与する必要がある。
【0130】
局所的投与、選択的取り込みの場合においては、その薬剤の有効局所濃度血は血漿濃度と相関しない。
【0131】
当然、投与する組成物の量は、治療対象、治療対象の体重、重症度、投与法、及び処方を行う医師の判断等に依存する。
【0132】
d) 包装
必要に応じて、組成物は、1ユニット以上の用量形態で有効成分を含むパック又は分注器として提供することも可能である。パックは、例えば、ブリスター・パック等の金属、プラスチックホイルからなるものでもよい。パック又は分注器には、投与に関する指示書を添付することができる。パック又は分注器には、収納容器中に医薬品の製造、使用、販売に関する規制を行う政府当局による規定の書式の注意書きを添付することもできる。その注意書きは、ヒト又はその他の動物へ投与する化合物の形態について当局が承認した内容を反映した注意書きである。このような注意書きは、例えば、処方を必要とする薬剤、または同梱の承認済み製品に関して米食品医薬品局、又はその他の政府当該監督機関が承認済みのラベル表示である。適合性の薬学的担体を配合した本発明の化合物を含む組成物を調製し、適当な容器に入れ、適応症の治療に関する表示をする。適応症に関する適切な表示としては、例えば、炎症、その他の免疫関連疾患の治療が挙げられる。
【0133】
IV. 本発明の方法で治療又は診断する標的疾患
本発明の方法で治療又は診断する標的疾患は、主に異常な炎症反応を有する疾患である。病的炎症反応は、急性炎症反応の持続、又は持続性の軽度の炎症反応であり、通常恒久的な組織傷害を起こす。マクロファージ及びT細胞の動員とサイトカイン産生等の機能は、直接炎症の病的発生に関係する。急性および慢性ものを含み、炎症反応に関係した疾患と障害には様々なものがある。本発明の特定の態様においては、これらのいずれもが含まれるものとする。
【0134】
目的とする特定の疾患は以下のようなものを含むが、これらのみに限定されるものではない。
【0135】
すなわち、このような疾患とは潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む炎症性大腸疾患である。潰瘍性大腸炎の大部分は軽度であり、症候が、直腸S状部のみに限定される。しかしながら、臨床症状は血性下痢、粘液、発熱、異常な疼痛、テネスムス、及び体重減少等を含む。合併症としては、中毒性巨大結腸症、結腸穿孔、及び癌を含む。 発癌のリスクレベルは、大腸炎の程度と罹患期間に関係し、発癌の前に異形成を伴う。難治性疾患(薬剤治療に対して)、中毒性巨大結腸症、癌、及び重度の異形成の場合には、結腸切除が必要となる。
【0136】
クローン病は、通常さらに重篤であり、壁内炎症、大腸壁肥厚、線状潰瘍、肉芽腫、裂溝、及び瘻孔等が、消化管のいずれの部分でも起きるのである。 臨床症状としては、発熱、異常な疼痛 下痢、疲労感、体重減少、急性回腸炎、肛門直腸裂溝、瘻孔、及び膿瘍等が挙げられる。合併症としては、腸閉塞、腸管の瘻孔、及び腸管の悪性腫瘍等が挙げられる。治療は、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、及びメトロニダゾール等の医薬品の投与とともに非経口的栄養補給を含む。重度の閉塞、膿瘍、慢性の症候性瘻孔、および難治性である場合には、外科的治療を必要とする。
【0137】
結合織疾患は、結合組織の炎症と免疫制御パターンの変化を含む。
【0138】
リウマチ関節炎は、重篤な健康障害である。ヒトにおける関節症状の悪化は、重度の疼痛の原因となり、関節の運動性を損ない変形させ、生活の質全体に渡って低下する。リウマチ関節炎では、滑膜が異常増殖を起こし (血管新生によって)、軟骨に浸潤しこれを破壊する。リウマチ関節炎に対する通常の治療法には、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)を使用する。リウマチ関節炎を効果的に治療するには、症状の抑制又は改善に加え、疾患の進行を止めることが必要となる。
【0139】
全身性エリテマトーデスの臨床症状としては、疲労感、発熱、倦怠感、体重減少、皮膚発疹(頬部「蝶形」発疹)、光過敏症、関節炎、筋炎、口内潰瘍、脈管炎、脱毛症、貧血、好中球減少症、血小板減少症、リンパ節腫脹、脾腫、器質的脳症候群、痙攣、精神病、胸膜炎、心膜炎、心筋炎、肺炎、腎炎、静脈・動脈血栓、腸間膜脈管炎、および乾燥症候群が挙げられる。現在のところ、本疾患を治す方法はなく、治療は、炎症を抑えるために実施される。治療薬としては、サリチル酸塩と NSAIDが挙げられる。効果的な新規の薬剤の開発が熱望される。
【0140】
進行性全身性硬化症の臨床症状としては、レイノー現象、強皮症、毛細管拡張症、石灰沈着症、食道の運動性減弱、関節痛および/又は関節炎、腸管の機能不全、肺線維症、高血圧、及び腎不全が挙げられる。腎不全は、主たる死因である。決定的な治療法はない。
【0141】
混合結合組織病の臨床症状としては、レイノー現象、多関節炎、強指症、食道の機能不全、肺線維症、及び炎症性筋障害が挙げられる。一般的に、治療は炎症を抑えるために実施する。
【0142】
シェーグレン症候群の臨床症状としては、口内乾燥および乾性角結膜炎、腎炎、脈管炎、多発性ニューロパシー、間質性肺炎、偽性リンパ腫、自己免疫性甲状腺疾患、および婦人におけるSSA抗体を伴う先天性心コンダクタンス欠損が挙げられる。治療はとしては、乾燥症状の緩和と自己免疫現象に関係した治療が挙げられる。
【0143】
本発明の方法による治療又は診断の主な標的疾患は、異常な炎症反応を有する疾患であるが、マクロファージまたはマクロファージ様の細胞(即ち、破骨細胞)の機能が変化することを含むその他の疾患もまた含むものである。古典的な炎症反応関連疾患とは見なされない疾患の例としては、変形性関節症、骨粗鬆症、大理石骨病、および粥状硬化症が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0144】
V. その他の態様
障害の診断法、細胞における変化のモニター法、化合物の同定法、PTKと相互作用する化合物の単離法、PTKと相互作用する化合物の組成物、および複合体の誘導体等が、PYK2に関して国際公開公報第96/18738号及び米国特許第5,837,815号に詳細に開示されている。これらの文献は、図表を含みその全文が参照として本明細書において組み入れられる。かかる説明内容は本発明に利用可能であり、容易にこれを用いることができることは、当業者であれば理解しうることである。また、複合体に対して加えるいかなる改変も、その複合体中のいずれかの分子を改変することに等しいことも、当業者であれば理解しうることである。従って、本発明は、複合体中の核酸分子、ポリペプチド、抗体、又は化合物に対して成されるいかなる改変をもすべて含むものである。
【0145】
さらに、国際公開公報第96/18738号に開示されているのは、本発明に関連する組換えDNA技術、核酸ベクター、該ベクターの核酸配列要素、該ベクターを保持し得る細胞の種類、該ベクターを細胞または組織に導入する方法、抗体の作成法と精製法、該抗体を産生するハイブリドーマの作成法、シグナル伝達分子複合体の検出法、天然結合パートナーとの相互作用の検出法、複合体に対する抗体、PTKタンパク質複合体の破壊、複合体の精製と作製、PTKをコードする核酸ベクターを含むトランスジェニック動物、アンチセンス及びリボザイム法、および遺伝子治療技術である。かかる説明内容は本発明において利用可能であり、容易にこれを用いることができることは、当業者であれば容易に理解しうることである。
【0146】
本発明に関係したその他の方法は、本発明に開示する実施例に記載される。
【0147】
実施例
以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではなく、炎症に関するシグナル伝達においてPYK2が果たす役割を明らかにするために利用する方法を様々な観点から眺め、その特徴について理解を促すための代表的な例にすぎない。
【0148】
材料と方法
化学物質
ブラジキニン、百日咳毒素、コレラトキシン、フォルスコリン、フォルボール12−ミリステイト 13−アセテート(PMA)、カルシウムイオノフォアA23187、カルバコール, ムスカリン、アトロピン、メカミラミン、およびヨウ化1,1−ジメチル−4−フェニルピペラジニウム (DMPP)はシグマから購入した。
【0149】
細胞と細胞培養
ラット褐色細胞腫の細胞PC12は、10% 馬血清、5% ウシ胎児血清、100 μg/mL ストレプトマイシン、及びmL当たり100ユニットの ペニシリンを含むダルベッコの改変イーグル培地で培養した。NIH3T3、293、 GP+E−86及びPA317細胞は、10%ウシ胎児血清、100 μg/mL ストレプトマイシン、およびmL当たり100ユニットのペニシリンを含むダルベッコの改変イーグル培地で培養した。
【0150】
抗体
PYK2抗体は、PYK2の配列の残基362−647を含むGST融合タンパク質またはPYK2のN末端の15アミノ酸に対応する合成ペプチドのいずれかでウサギを免疫化して作製した(HTI)。抗血清は免疫沈降及び免疫ブロット分析でチェックした。特異性の確認は、関連タンパク質Fakに対する反応性、または抗原ペプチドまたはコントロールペプチドを用いた競合法のいずれかを用いて行った。抗体は、PYK2に特異的であることが確認した。FAKには交差反応を示さなかった。
【0151】
トランスフェクションと感染
PC12細胞で安定に発現するものを得るために、PYK2をレトロウイルスベクターpLXSN(Miller と Rosman, Biotechniques 7:980, 1989)にサブクローニングした。この構築物をリポフェクタミン試薬 (GIBCO BRL)を用いてGP+E−86細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、ウイルスを含む上清を回収した。ポリブレン(8μg/mL, Aldrich)の存在下で、細胞の混入のない精製レトロウイルスを含む上清を、PC12細胞に添加して4時間放置した(MCB 12 491, 1992)。24時間後、感染したPC12細胞を350μL/mg のG418を含む増殖培地に分けた。2〜3週間後、G418に耐性なコロニーを単離し、ウエスタンブロット分析で発現レベルを調べた。
【0152】
リポフェクタミン試薬 (GIBCO BRL)を用いて、pLSVにサブクローニングしたPYK2をpSV2neoとともに、NIH3T3細胞株に同時トランスフェクションし、PYK2を過剰発現する安定な細胞を確立した。トランスフェクション後、細胞を10% ウシ胎児血清と1 mg/mL G418を含むダルベッコの改変イーグル培地で増殖させた。293細胞への一過性トランスフェクションは、当該技術分野で標準のリン酸カルシウム法を用いて行った。
【0153】
構築物
GST−PYK2
PYK2の残基362−647に対応するλ900塩基対のDNA断片 を以下の オリゴヌクレオチドプライマー用いてPCRで増幅した。
プライマーは5’−CGGGATCCTCATCATCCATCCTAGGAAAGA−3’ (センス)及び 5’−CGGGAATTCGTCGTAGTCCCAGCAGCGGGT−3’ (アンチセンス)である。
【0154】
PCR産物をBamHIとEcoRIで消化し、pGEX3X(Pharmacia)にサブクローニングした。Smith 等 (Gene 67:31, 1988)が記載する方法と同等の方法を用いて、GST−PYK2融合タンパク質の発現を1mM IPTGで誘導した。融合タンパク質は、SDS−PAGEによる分離後、エレクトロエリューションで単離した。
【0155】
PYK2
PYK2cDNA配列全長を以下の哺乳動物発現ベクターにサブクローニングした。即ち、そのベクターとは、 pLSV(SV40の初期プロモーター下流)、pLXSN−レトロウイルスベクター(Mo−MuLVのlong terminal repeat下流)、pRK5(CMVプロモーター下流)である。
【0156】
PYK2−HA
インフルエンザウイルス血球凝集素のペプチド(YPYDVPDYAS) をPYK2のC末端と融合を、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより行った。 プライマーは5’−CACAATGTCTTCAAACGCCAC−3’ 及び5’−GGCTCTAGATCACGATGCGTAGTCAGGGACATCGTATGGGRACTCTGCAGGTGGGTGGGCCAG−3’である。
増幅した断片を、RSrIIとXbaIで消化し、PYK2の対応する断片で置換した。最終的な構築物のヌクレオチド配列は、DNAシークエンシングで確認した。
【0157】
キナーゼのネガティブ変異体 ドミナントネガティブ
キナーゼのネガティブ変異を構築するために、「Transformer Site−Directed Mutagenesis Kit」 (Clontech)を用いた部位特異的変異誘発法でLys(457)をAlaに置換した。NruIの新規制限酵素認識部位を創出するためにオリゴヌクレオチド配列を設計した。変異体のヌクレオチド配列は、DNAシークエンシングで確認した。変異誘発に使用したオリゴヌクレオチド配列は、 5’−CAATGTAGCTGTCGCGACCTGCAAGAA−AGAC−3’(NruI 部位 −、 Lys−AACはAla−GCGに置換した)である。
【0158】
免疫沈降と免疫ブロット分析
細胞を以下の成分を含む溶解緩衝液で溶解した。即ちその成分とは、50mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES、pH7.5)、150mM NaCl、10%グリセロール、1% Triton X−100、1.5mM MgCl2、1mMエチレングリコールビス(p−アミノエチルエーテル)−N, N, N’N’−四酢酸(EGTA)、mL 当たり10 μg のロイペプチン、mL 当たり10 μg のアプロチニン、1mM フッ化フェニルメチルスルフォニル(PMSF)、 200 μM オルトバナジン酸ナトリウムおよび 100 mM フッ化ナトリウムである。免疫沈降は、特異抗体を結合したプロテインA−セファロース (Pharmacia)を用いて行った。免疫沈降物を、HNTG溶液(20 mM HEPES緩衝液 (pH 7.5)、150 mM NaCl、10% グリセロール、0.1% Triton X−100, 100 mM フッ化ナトリウム、200 μM オルトバナジン酸ナトリウム)、又はH溶液(50 mM Tris−HCl (pH8)、 5500 mM NaCl、0.1% SDS, 0.2% Triton X−100、100 mM NaF、200 μM オルトバナジン酸ナトリウム)とその次にL溶液(10 mM Tris−HCl (pH 8)、0.1%Triton X−100、100mM NaF、200 μM オルトバナジン酸ナトリウム)で洗浄した。
【0159】
洗浄後の免疫沈降物は、ゲル試料緩衝液に溶かし、100℃で5分間熱した。次に、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド (SDS−PAGE)を用いたゲル電気泳動で解析した。幾つかの実験では、ゲル中のタンパク質を、電気泳動でニトロセルローズに転写した。ブロットを、5%低脂肪ミルクと1%オブアルブミンを含むTBS(10っMTris(pH7.4), 150mM NaCl)でブロッキングした。次に、抗血清または精製モノクローナル抗体を同溶液に添加して、22℃で1時間反応した。検出を行うために、TBS/0.05% Tween−20 でフィルターを3回洗い(各5分間)、室温で45分間、西洋わさびペルオキシダーゼ標識プロテインAと反応した。この酵素を上記と同様にして洗浄・除去し、フィルターを化学発光試薬(ECL, Amersham)と1分間反応させ、オートラジオグラフィーフィルムに1−15分間感光させた。
【0160】
インビトロでのキナーゼアッセイ法
免疫沈降物を以下の溶液に溶かしこのアッセイを行った。この溶液とは、10 mM MnCl2、および 5 μCi の [γ 32−P] ATPを含む50μL HNTG(20 mM Hepes(pH 7.5)、150 mM NaCl、20% グリセロール、0.1% Triton X−100) であり、反応は22℃で20分間行った。 試料をH、M、およびLの各洗浄溶液で洗浄し、試料緩衝液中で5分間沸騰させ、SDS−PAGEで分離した。
【0161】
実施例 PYK2 のノックアウト実験
遺伝子標的破壊法でマウスのpyk2遺伝子の破壊実験を行った。マウスPyk2遺伝子座の制限酵素地図の一部、ターゲディングベクターとして用いた領域、及び所望の変異対立遺伝子を図1aに示した。黒いボックスはエクソンを示している。ES細胞由来のゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーション分析と尾部の生検分析には、ここのプローブを使用した。実線は、PYK2キナーゼドメインを意味している。 矢印は、野生型及び変異対立遺伝子の期待されるApaI断片を意味する。ApaIで消化したマウス尾部のDNAサザンブロットハイブリダイゼーション分析から、Pyk2ノックアウトの創出が成功したことが判る(図1b)。野生型、Pyk2 +/−, および Pyk2 −/− マウス由来の胸腺(T)、脳(B)、及び脾臓(S)のライゼートの免疫ブロット分析(抗PYK2 抗体を用いた)の結果も、ノックアウトマウスにおいてPYK2ポリペプチド(図1c)が存在しないことを示している。
【0162】
実施例 サイトカイン産生に関する分析
野生型+/+及びPyk2 −/−のチオグリコール酸で誘導した腹腔マクロファージをLPSで刺激した後、サイトカイン産生をRT−PCR(逆転写反応ポリメラーゼ連鎖反応)で分析した。チオグリコール酸で誘導した腹腔マクロファージをLPS(10μg/mL)の存在、非存在下で3、6、12、24、又は48時間インキュベートした。それぞれの時間で、全RNAを細胞から単離し、全RNA中のmRNA量をアクチンmRNAのRT−PCRで規格化した後、全RNAを各種サイトカインの特異的プローブを用いたRT−PCRで調べた。
【0163】
この実験は、Pyk2 −/− マウス由来のマクロファージにおけるサイトカイン産生の発現に24〜48時間の長い遅延が認められることを示している(図2)。
【0164】
また、野生型+/+及びPyk2 −/−抗マウス由来の、抗マウスCD3抗体で刺激した脾細胞におけるサイトカイン産生を、RT−PCRで解析した。抗CD3(1 μg/mL)の存在下もしくは非存在下で脾細胞を12、24、48、又は72時間インキュベートした。それぞれの時間で、全RNAを細胞から単離し、全RNA中のmRNA量をアクチンmRNAのRT−PCRで規格化した後、全RNAを各種サイトカインの特異的プローブを用いたRT−PCRで調べた。
【0165】
この実験は、Pyk2 −/− マウス由来の脾細胞におけるサイトカイン産生の発現におおよそ24時間の遅延が認められることを示している(図3)。
【0166】
従って、 これらの実験はPyk2 −/− マウスのマクロファージ及び脾細胞では、IL−1α、IL−1β、IL−6、IL−10、TNF−α、GMCSF、IFN−γ、及びMPL1−α等のサイトカイン及びケモカインの産生量が減少していることを示している。(特に)TNF−α及びMPL1−α 等のサイトカイン及びケモカインの産生減少によって、炎症反応に関与するマクロファージ、T細胞及びその他の造血細胞、非造血細胞の動員の低下と活性化の減少がおこる。更に、ノックアウトマウス由来のマクロファージでは、インビトロでの運動性が減少していた。
【0167】
実施例 炎症のカラギーナンモデル
皮下カラギーナン空気嚢モデルでは、マウスの後部側腹部に皮下空気嚢を外科的に誘導した。次に炎症反応を引き起こす物質である免疫原カラギーナンで、この空気嚢を満たし、10時間後に、嚢に浸潤した細胞数及び細胞の種類を調べた。
【0168】
野生型 +/+ 及びPyk2 −/−での空気嚢に由来する組織にカラギーナンを注入し10時間処理した。試料をホルマリンで固定しパラフィンに包埋した。切片はヘマトキシリン・エオシンで染色した(図4a)。カラギーナンの注入10時間後に、野生型+/+及びPyk2 −/−の空気嚢に浸潤した細胞の数とフラクションを調べた。
【0169】
これらの結果は、空気嚢に浸潤した細胞の数が減少し(図4b)、浸潤した他の細胞と比較して浸潤したマクロファージの数が減少している(図4c)ことを示している。
【0170】
実施例 炎症のインフルエンザモデル
インフルエンザモデルでは、インフルエンザウイルスに感染すると、激しい肺の炎症反応を起こし最後には死にいたる。
【0171】
インフルエンザウイルスにより惹起するマウス肺の炎症を、インフルエンザウイルスに感染して4日後の野生型 +/+ およびPyk2 −/− マウスについて肺切片を調べた。肺をホルマリンで固定しパラフィンに包埋した。 切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した(図5a)。図5bは、異なる用量のインフルエンザウイルスにおけるマウスの生存率の経時的変化を示したものである。
【0172】
ノックアウトマウスと対照マウスの肺の組織学的試験によって、Pyk2ノックアウトマウスの肺では、PMN(多核白血球)、マクロファージ、特にT細胞等の炎症性細胞の浸潤は有意に低いことが明らかになった。従って、平均的にはPyk2ノックアウトマウスは、肺における細胞浸潤が低下しており、インフルエンザウイルス感染後、野生型マウスと比較して約48時間長く生存していた。
【0173】
インフルエンザに感染したPyk2 −/−マウスでは、サイトカイン応答の低下と移動能の欠損が、インビトロでの生存率増加と肺細胞浸潤の減少に対する相関を示した。
【0174】
実施例 PYK2 ドミナントネガティブ変異体マウスにおけるサイトカイン産生に関する解析
野生型PYK2を発現している成熟マクロファージの細胞におけるPYK2の役割を調べるために、キナーゼ作用が不活性であるPYK2タンパク質を正常なマクロファージ細胞株に導入した。キナーゼ作用が不活性であるPYK2タンパク質の発現は、「ドミナントネガティブ」な阻害剤として働き、マクロファージにおける内在性野生型PYK2タンパク質の機能を阻害する。
【0175】
「ドミナントネガティブ変異タンパク質」は、正常のPYK2シグナル伝達経路を妨害する変異タンパク質を意味する。ドミナントネガティブ変異タンパク質は、目的のドメイン(例えば、PYK2ポリペプチド又は NBP)を含んではいるが、適正なシグナル伝達を阻害する(例えば、同タンパク質第2ドメインの結合を阻害する)変異を有している。ドミナントネガティブタンパク質の一例は、Millauer 等によるNature (1994年2月10日)の文献に記載がある。キナーゼ作用が不活性であるPYK2タンパク質の発現は、LPSに応答して、生理学的に炎症反応を誘導をする働きのある物質としてのTNF−αの分泌を減少させた。
【0176】
LPS刺激に応答するPYK2のチロシンリン酸化を、P388D1細胞を用いて測定した。細胞を0.5%血清中で一昼夜、飢餓状態にし、様々な時間間隔でLPSを用いて刺激した(図6a)。刺激後、細胞を洗浄・溶解を行い、抗PYK2抗体で免疫沈降を行った。免疫沈降物(IP)をウエスタンブロット法で解析した。チロシンのリン酸化されたバンドを抗ホスホセリン抗体4G10で検出した。最もリン酸化の程度が高かったのは30分後であった。ハービマイシンAもしくはゲネステインのいずれかで4時間前処理した細胞を30分間LPSで刺激し、上記と同様に解析した (図6b)。チロシンリン酸化は、チロシンリン酸化の非特異的な阻害剤で前処理することによって低下した。
【0177】
マクロファージ機能におけるドミナントネガティブなPYK2タンパク質の効果を調べるために、マウスのマクロファージ細胞株(P388D1)は、ドキシサイクリン(DOX)で誘導可能なプラスミドを用いてトランスフェクトした。最初のトランスフェクションでは、制御用のプラスミドを導入し、安定な薬剤耐性クローンを樹立した。ドキシサイクリン応答性のルシフェラーゼレポータープラスミドを用いた一過的なトランスフェクションによって、これらの細胞をスクリーニングした。異なるクローンによって、様々なルシフェラーゼ応答が得られる。クローンを2つ選択し(ドキシサイクリン応答を基にして)、HAタグのついた野生型PYK2、または不活性の変異PYK2(こちらも、HAタグのついたもの)のいずれかを含む応答プラスミドでトランスフェクトした。薬剤で選択した後、安定なクローンについて、適当なタンパク質の発現を示すもののスクリーニングを、ウエスタンブロットを用いて実施した(図 7)。
【0178】
ドキシサイクリンで誘導可能なクローンのLPS (1 μg/mL) 又はPMA(1 μg/mL)のいずれかによる刺激に応答するTNF分泌を図8に示す。ドキシサイクリン存在下での誘導を48時間行った後、LPSまたはPMAで一昼夜(18時間)刺激した。野生型PYK2を発現している細胞と比較した場合、キナーゼ作用が不活性である変異PYK2を発現している細胞は、LPSまたはPMAに対する応答が鈍かった。TNF−αの分泌はELISAで測定した。LPSおよびPMAは、いずれもTNF−α分泌を誘導した。TNF−α分泌は、チロシンリン酸化の非特異的阻害剤であるハービマイシンAとゲネステインによって阻害を受けた。
【0179】
当業者は本発明が、本来のものだけでなく、目的を達成するためや上述した結果や効果を得るためにうまく適合させられることを容易に評価できる。本明細書に記載された分子複合体及び方法、段階、治療、分子、特殊な化合物は、好ましい態様についての現在のところの代表的なものであり、それは例示であって本発明の範囲に限定を加える意図はない。それらに加えられる変化や他の使用方法は当業者の頭に浮ぶが、それらは本発明の精神に包含され、請求の範囲によって定義される。
【0180】
さまざまな置換や変形を、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく本明細書に開示された発明になし得ることは、当業者には容易に明らかになると思われる。
【0181】
本明細書に記述した全ての特許及び刊行物は、本発明が関係する当業者のレベルの指標である。
【0182】
本明細書に例示的に記載された本発明は、本明細書には特別に開示されていない何らかの一つまたは複数の要素や一つまたは複数の制限が存在しない態様において実施することができる。したがって例えば、本明細書におけるそれぞれの例で、「含む」「本質的になる」及び「からなる」という用語は、他の二つの用語のいずれかに置き換えることができる。使用した用語及び表現は説明用の用語として用いたのであって制限的なものではなく、このような用語及び表現を使用する場合に、示されて記載されている特徴の等価物やその部分を排除する意図はなく、さまざまな変形が特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に入りうることは認識される。
【0183】
特に、本明細書に記載されたいくつかの製剤はその製剤に添加した賦形剤によって確認されるが、本発明はこれらの賦形剤を組み合わせることによって形成した最終的な製剤も含まれることを意味する。具体的には、本発明には、添加した賦形剤の一種からすべてが配合段階で反応を行い、最終的な製剤にはもはや存在していないか、あるいは変形した形態で存在しているような製剤が含まれる。
【0184】
さらに、本発明の特徴または局面がマーカッシュグループに基づいて記載されている場合、本発明もまた、それによってマーカッシュグループの任意の個々の要素または複数要素のサブグループに基づいて記載されることを当業者は認識すると思われる。例えば、Xが臭素、塩素およびヨウ素から成る群より選択されると記載されている場合、Xが臭素であるクレーム、ならびにXが臭素および塩素であるクレームが完全に記載されている。
【0185】
他の態様は特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
これらの図面は単に例として示されるのであって、本発明の開示に必須なものと見なされるべきものではない。
【図1】図1a、1b、および1cは、マウスのPYK2遺伝子における標的遺伝子破壊の方法について示している。マウスのPYK2遺伝子座位の部分的制限酵素地図、ターゲディングベクターとして用いた領域、及び所望の変異対立遺伝子を図1aに示す。黒のボックスは、エクソンである。ES細胞由来ゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーション分析及び尾部の生検分析には、ここのプローブを使用した。Pyk2遺伝子座の下に示した実線は、PYK2キナーゼドメインを意味している。矢印は、野生型及び変異対立遺伝子の期待されるApaI断片を意味する。図1bは、ApaIで消化したマウスの尾部DNAのサザンブロットハイブリダイゼーションによる分析示したものである。図1cは、抗PYK2抗体を用いた野生型、 Pyk2 +/−、およびPyk22 −/− マウスの胸腺(T)、脳(B)、および脾臓(S)由来のライゼートの免疫ブロット分析を示している。
【図2】野生型+/+及びPyk2 −/−のチオグリコール酸で誘導した腹腔マクロファージをLPSで刺激した後、サイトカイン産生をRT−PCR (逆転写反応ポリメラーゼ連鎖反応)で分析したものを示す。チオグリコール酸で誘導した腹腔マクロファージをLPS(10μg/mL)の存在、非存在下で3、6、12、24、又は48時間インキュベートした。それぞれの時間で、全RNAを細胞から単離し、全RNA中のmRNA量をアクチンmRNAのRT−PCRで規格化した後、全RNAを各種サイトカインの特異的プローブを用いたRT−PCRで調べた。
【図3】野生型+/+及びPYK2 −/−マウスの脾細胞を抗CD3抗体で刺激した後のサイトカイン産生をRT−PCRで分析したものを示す。脾細胞を抗CD3(1μg/mL)の存在、非存在下で12、24、48、又は72時間インキュベートした。それぞれの時間で、全RNAを細胞から単離し、全RNA中のmRNA量をアクチンmRNAのRT−PCRで規格化した後、全RNAを各種サイトカインの特異的プローブを用いたRT−PCRで調べた。
【図4】図4a、4b、および4cは、カラギーナンで惹起したマウスの空気嚢における細胞浸潤を示している。 図4aは、野生型 +/+ 及びPyk2 −/−の空気嚢組織にカラギーナンを注入し10時間処理したものを示している。試料をホルマリンで固定しパラフィンに包埋した。切片はヘマトキシリン・エオシンで染色した。図4bは、カラギーナンの注入10時間後、多数の細胞が野生型 +/+及びPyk2 −/−の空気嚢に浸潤していることを示している。 図4c は、カラギーナンの注入10時間後に、細胞の特定のフラクションが野生型+/+及びPyk2−/−の空気嚢に浸潤していることを示している。
【図5】図5aと5bは、インフルエンザウイルスで誘起した炎症を示している。図 5aは、インフルエンザウイルスに感染した野生型 +/+及びPyk2 −/− マウスの肺からウイルス感染4日後に作製した組織切片である。肺はホルマリンで固定しパラフィン包埋を行った。切片はヘマトキシリン・エオシンで染色した。図5bは、異なる用量のインフルエンザウイルスにおけるマウスの生存率の経時的変化を示したものである。
【図6】図6a と6bは、マクロファージ細胞株におけるLPS(リポ多糖)及びチロシンキナーゼ阻害剤に応答したPYK2のチロシンリン酸化を示している。細胞を0.5%血清中で一昼夜、飢餓状態にし、様々な時間間隔でLPSを用いて刺激した(図6a)、またハービマイシンAもしくはゲネステインのいずれかで4時間かけて前処理した後、30分間LPSを用いて刺激した(図6b)。刺激後、細胞を洗浄・溶解を行い、抗PYK2抗体で免疫沈降を行った。免疫沈降物 (IP)をウエスタンブロット法で解析した。
【図7】図7a、7b、7c、及び7d は、誘導可能な野生型PYK2キナーゼ及びドミナントネガティブ変異キナーゼのP388D1細胞における双方の発現を示している。マウスのマクロファージ細胞株(P388D1)は、ドキシサイクリン(DOX)で誘導可能なプラスミドを用いて逐次トランスフェクトした。最初のトランスフェクションでは、制御用のプラスミドを導入し、安定な薬剤耐性クローンを樹立した。次に、クローンを2つ選択し、HA(血球凝集素)タグのついた野生型PYK2キナーゼ、または不活性のドミナントネガティブ変異PYK2キナーゼ(こちらも、HAタグのついたもの)のいずれかを含むドキシサイクリン応答性のプラスミドでトランスフェクトした。薬剤で選択した後、野生型(図7b と7d)又はドミナントネガティブ変異(図7a と 7c)を含む安定なクローンについてドキシサイクリンの存在下(図7a と7b)、非存在下(図7c と7d)で適当なタンパク質の発現を示すものに関するスクリーニングを、ウエスタンブロットを用いて実施した。
【図8】図8a、8b、8c、及び8dでは、マクロファージの機能又はPYK2活性に関する活性化因子に応答した野生型P388D1細胞と変異キナーゼを発現するP388D1細胞による TNF−αの分泌を比較している。 図8a と8b は、DOXの存在下、非存在下でのキナーゼ変異細胞(ドミナントネガティブ; 図8a)及び野生型細胞(図8b)による TNF−αの分泌に対するLPSの効果を示している。図8c と8d は、DOX の存在下、非存在下でのキナーゼ変異細胞(図8c)及び野生型細胞(図8d)によるTNF−αの分泌に対するPMAの効果を示している。ドキシサイクリン存在下でP388D1 細胞の誘導を48時間行った後、LPS(1 μg/mL) 、又はPMA (1 μg/mL)で18時間刺激した。TNF−αの分泌はELISAで測定した。

Claims (25)

  1. PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を含むシグナル伝達経路における異常が関与する炎症反応により特徴づけられる疾患又は障害の治療又は予防のために潜在的に有用な化合物を同定する方法であって、潜在的に有用な該化合物を同定するための手段として、該相互作用を調整できる1つ又は複数の化合物をアッセイする段階を含む方法。
  2. 炎症反応により特徴づけられる疾患又は障害が、炎症性腸疾患及び結合織疾患からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  3. 1つ又は複数の化合物がインビトロでの相互作用を調整する、請求項1記載の方法。
  4. 1つ又は複数の化合物がインビボでの相互作用を調整する、請求項1記載の方法。
  5. 1つ又は複数の化合物が、チロフォスチン類(tyrphostins)、キナゾリン類、キノキソリン類(quinoxolines)、キノリン類、及びインドリノン類からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  6. 1つ又は複数の化合物が1つ又は複数のインドリノン類である、請求項5記載の方法。
  7. 相互作用がPYK2のリン酸化、PYK2の天然結合パートナーのリン酸化、PYK2の脱リン酸化、PYK2の天然結合パートナーの脱リン酸化、及びPYK2と天然結合パートナー間での複合体形成からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  8. PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を含むシグナル伝達経路における異常が関与する炎症反応により特徴づけられる疾患又は障害を診断する方法であって、該疾患又は障害の指標としての該相互作用における変化を検出する段階を含む方法。
  9. 炎症反応により特徴づけられる疾患又は障害が炎症性腸疾患及び結合織疾患からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
  10. 炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎及びクローン病からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
  11. 結合織疾患が、リウマチ関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、混合結合組織病、及びシェーグレン症候群からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
  12. 相互作用が、PYK2のリン酸化、PYK2の天然結合パートナーのリン酸化、PYK2の脱リン酸化、PYK2の天然結合パートナーの脱リン酸化、及びPYK2と天然結合パートナー間での複合体形成からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
  13. 変化が相互作用における増強、又は減弱である、請求項8記載の方法。
  14. PYK2ポリペプチドと天然結合パートナーとの間の相互作用を含むシグナル伝達経路における異常が関与する炎症反応により特徴づけられた疾患又は障害の治療又は予防のため記載の方法であって、このような治療を必要とする患者に、該相互作用を調整する1つ又は複数の化合物を投与する段階を含む方法。
  15. 炎症反応により特徴づけられる疾患又は障害が、炎症性腸疾患及び結合織疾患からなる群より選択される、請求項14記載の方法。
  16. 炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎及びクローン病からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
  17. 結合織疾患が、リウマチ関節炎、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、混合結合組織病、及びシェーグレン症候群からなる群より選択される、請求項15記載の方法。
  18. 患者が哺乳動物である、請求項14記載の方法。
  19. 哺乳動物がヒトである、請求項18記載の方法。
  20. 1つ又は複数の化合物がインビトロでの相互作用を調整する、請求項14記載の方法。
  21. 1つ又は複数の化合物がインビボでの相互作用を調整する、請求項14記載の方法。
  22. 1つ又は複数の化合物が、チロフォスチン類、キナゾリン類、キノキソリン類、キノリン類、及びインドリノン類からなる群より選択される、請求項14記載の方法。
  23. 1つ又は複数の化合物が1つ又は複数のインドリノン類である、請求項22記載の方法。
  24. 1つ又は複数の化合物が薬学的に許容される組成である、請求項14記載の方法。
  25. 相互作用が、PYK2のリン酸化、PYK2の天然結合パートナーのリン酸化、PYK2の脱リン酸化、PYK2の天然結合パートナーの脱リン酸化、及びPYK2と天然結合パートナー間での複合体形成からなる群より選択される、請求項14記載の方法。
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