JP2004526766A - エリスロキシルムパルビレイ由来のトロパンアルカロイド多剤耐性阻害剤およびその使用 - Google Patents
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Abstract
P-糖蛋白の活性をモジュレートする化合物および方法が開示されている。 この方法は、エリスロキシルム パルビレイ由来の化合物を利用しており、また、その化合物は、多剤耐性を克服し、しかも、化学療法剤および抗生物質のような治療薬の活性を増強するための治療上の使用も可能である。
Description
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2001年4月12日に出願された米国仮特許出願第 60/283,394 号の利益を請求するものである。
【0002】
政府関与に関する陳述
本願発明は、メリーランド州ベセスダに所在の米国立衛生研究所(NIH)から付与された研究承認番号第 CA52956 号によって、その一部が支援されている。
【0003】
発 明 の 分 野
本発明は、エリスロキシルム パルビレイ(Erythroxylum pervillei)由来のトロパンアルカロイド多剤耐性阻害剤、および治療処置におけるアルカロイドの使用方法に関する。
【0004】
具体的には、本発明は、パルビレインA〜FおよびパルビレインA N-オキシド、とりわけ、パルビレインA、BおよびC、そして、癌のような疾患を治療するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0005】
発 明 の 背 景
癌の化学療法に関わる重大な問題は、治療の過程において多剤耐性(MDR)腫瘍細胞が発生することである。 哺乳類細胞においてMDR表現型を獲得する重要な機序は、Pgpと称される膜糖蛋白の増強された発現である(参照文献1)。 分子量170kDaのPgpは、MDR1遺伝子によりコードされている。
【0006】
Pgpは、標的癌細胞から種々の疎水性抗腫瘍薬を急速に押し出し、これにより、薬剤が細胞毒性作用を発揮することを妨害するエネルギー依存性の多剤膜輸送物質として機能する。 多剤耐性突然変異細胞系を用いた初期の生理学的および薬理学的研究は、流出の増大または流入の低下による細胞内の薬剤蓄積の低下耐性に関するものであった(1)。流出ポンプは、ATP依存性の輸送系であるため(2)、ATP依存性の薬剤輸送の良好な阻害剤である薬剤は、耐性細胞からの疎水性薬剤の流出を阻害し、細胞内蓄積を増大させるはずである。 従って、種々の薬剤がMDRを克服ないしは少なくとも部分的に回避すると報告されている(3)。
【0007】
第一世代のモジュレーターは、当初は他の治療適応症のために開発された(4)。 この範疇に含まれるものは、カルシウムチャンネルブロッカー、例えば、ベラパミル(5)、免疫阻害剤シクロスポリンA(6)、抗高血圧剤レセルピンおよびヨヒンビンの類縁体(7)、神経弛緩剤トリフルロペラジン(4)および抗エストロゲン剤、例えば、タモキシフェン(1)である。 第二世代のモジュレーターは、第1世代の化合物の薬理学的活性を欠いており、通常は、より高いPgp親和性を有するものとして開発された。 これらの薬剤にはベラパミルのR異性体(8)、シクロスポリンDの非免疫阻害性類縁体、SDZ PSC-833(6)、および他のもの、例えば、MS-209(9)、S-9788(10)、GF120918(11)およびLY335979(4)が包含される。
【0008】
これらの薬理学的物質の多くについて、in vitroのモデルでは完全に薬剤耐性を克服することがわかっているものの、in vivoの系におけるこのような現象を示す報告の数は限られている(12〜15)。 化学物質感受性付与剤のin vivoの活性が欠如すると、主として、重篤な副作用を起こすことなく活性用量を維持することについて問題が生じる(16)。 すなわち、臨床第一相および第一/二相試験は、多くの場合、それらのプロトタイプのMDR阻害剤に対する限定的な寛容性によって、患者において潜在的に活性な濃度の達成が妨げられ、良好に実施しえなかった(11、17)。
【0009】
例えば、ベラパミルによるMDRの退行を完全ならしめるためには、大部分の細胞培養モデルにおいて約10μMの濃度を必要とするが、1μMより高い血漿中濃度は房室ブロックを誘発する(5、18)。 免疫阻害作用および腎毒性は、シクロスポリンAの臨床有用性を制限し(6)、小脳性運動失調および高ビリルビン血症のような毒性が、SDZ PSC-833によってもたらされる(19、20)。 またさらに、シクロスポリンA、ベラパミルおよびSDZ PSC-833はドキソルビシン、エトポシドおよび他の腫瘍溶解薬の薬物動態に対して深刻な作用を有する(4)。
【0010】
最近になって報告されている通り(21)、MDRモジュレーターであるバルスポダイが、AML、多発性骨髄腫および卵巣癌の治療に関わる第三相無作為治験において検討中である。 さらにまた、オントゲンコーポレーションはMDR退行剤であるOC144-093を用いて実施した第一相試験の終了を発表し(22)、経口投与を検討する第二相試験を実施している。
【0011】
天然産物の薬剤の発見プログラムの一部には、多剤耐性を退行させる植物抽出液の能力をモニタリングすることが含まれている。 標準的な細胞生存性の試験により、薬剤感受性ヒト類表皮癌の親KB-3細胞およびPgp関連多剤耐性KB-V1細胞を用いて、細胞生育を50%阻害するのに必要な植物抽出液または化合物の用量(IC50)を側定している。 植物抽出液または化合物が多剤耐性を退行させる潜在能力を調べるために、KB-V1細胞を、ビンブラスチンの存在下(1μg/ml)または非存在下で、種々の濃度の植物抽出液または化合物で処理する。 この濃度のビンブラスチンは、KB-3細胞に対して致命的なものであるが、KB-V1細胞の生育には影響しない。 したがって、KB-3細胞は非特異的細胞毒性と選択的MDR拮抗とを区別するための対照として機能する。
【0012】
試験には、96ウェルマイクロプレート法を用い、そして、3000種を超える植物抽出液を試験している。 活性本体のバイオアッセイに基づく単離モデルを用いて、4種の穏やかなMDR阻害剤、すなわち、コロナリジン、コノジュラミン、ボアカミンおよび(−)-ロエメリンが同定されている(23、24)。
【0013】
従って、本発明は、エリスロキシルム パルビレイから単離され、従来の阻害剤に関わる問題点を克服する多剤耐性阻害剤に関するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発 明 の 概 要
本発明は、トロパンアルカロイド多剤耐性阻害剤および治療用途におけるその使用に関する。 具体的には、本発明は、エリスロキシルム パルビレイに由来するトロパンアルカロイド多剤耐性阻害剤、および、その阻害剤の治療上の使用に関する。 本発明はまた、エリスロキシルム パルビレイ抽出液から単離および精製されたものではなく、本明細書に開示したようにして合成された阻害剤に関する。
【0015】
したがって、本発明の一態様は、エリスロキシルム パルビレイ由来の多剤耐性阻害剤、および多剤耐性阻害剤の有効量を細胞または組織に接触させることで、細胞または組織中のP-糖蛋白(Pgp)の流出能をモジュレートする方法における阻害剤の使用をも提供する。
【0016】
本発明の他の態様によれば、Pgpの流出能力をモジュレートするエリスロキシルム パルビレイ由来の多剤耐性阻害剤を細胞または組織に接触させることで、細胞または組織における治療薬の活性を強化する方法も提供する。
【0017】
特に、細胞内における化学療法薬または抗生物質のような治療薬を保持するために、他の化合物については正常な流出能を有したまま、Pgpの流出能を選択的に阻害することができる。
【0018】
本発明のさらに別の態様によれば、(a)疾患または症状の治療において有用な治療薬、および(b)エリスロキシルム パルビレイ由来であって、治療薬に関してPgpの流出能を選択的に阻害することのできる化合物、を含む疾患または症状を治療するための改善された組成物を提供することにある。 例えば、疾患または症状の各々は癌または感染症であり、また、治療薬は化学療法薬または抗生物質である。
【0019】
本明細書においては、「感染症」とは細菌、ウィルス、寄生虫または他の微生物による感染症、そして、それより生じる疾患および症状と定義される。
【0020】
本発明の他の態様によれば、(a)パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、パルビレインA N-オキシドおよびそれらの混合物からなるグループから選択される化合物、および(b)薬学的に許容しうる担体、を含む薬学的組成物が提供される。
【0021】
本発明の他の態様によれば、(a)梱包された抗癌化合物、および(b)パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、パルビレインA N-オキシドおよびそれらの混合物からなるグループから選択される化合物と該抗癌剤の患者への投与方法を記載した添付書類、を含む製品が提供される。 この製品は、梱包されたパルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、またはパルビレインA N-オキシドを任意に含めることができる。
【0022】
本発明の上記態様およびその他の態様は、後出の限定を意図しない好ましい実施態様の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
P-糖蛋白媒介薬剤流出は、癌の化学療法に対する低い応答に関連する多剤耐性(MDR)表現型をもたらす場合がある。 本発明の重要な特徴によれば、MDRを克服する極めて強力な新規のトロパンアルカロイド芳香族エステルが、エリスロキシルム パルビレイ バイロン(コカノキ科)の根茎のクロロホルム可溶性抽出液から得られた(25)。 エリスロキシルム パルビレイ バイリ(コカノキ科)は、マダガスカルで採取した。 この植物は、地元では「Tsivano」の名称で知られており、いくつかの民族伝承的な用途、すなわち、魚毒として、そして、腹痛および腫瘍の治療のために用いられている。
【0024】
植物コカノキ属(コカノキ科)の特定の種は、無月経、出血、腎臓病、インフルエンザ、副鼻腔炎、胃の不調を治療するため、および疲労、空腹感に対処するため、そして刺激剤として、伝統的医療において使用される(52〜54)。 一部のコカノキ種の抽出液は、生物学的活性、例えば、抗炎症作用、沈痛作用および抗微生物作用を示している(54、55)。トロパンアルカロイドは、エリスロキシルムに存在することがわかっており、その一部は、現在、医薬に用いられている(56〜58)。 しかしながら、潜在的な抗癌剤としてのその活性は調べられていない。
【0025】
エリスロキシルム パルビレイから単離した化合物をパルビレインと決定し、生物活性に基づく分類の結果、エリスロキシルム パルビレイのクロロホルム抽出により得られたトロパンアルカロイドとされている。 粗製の植物材料を原料として、パルビレインAは0.042%w/wの収率で得、パルビレインBおよびCもまた良好な収率で得た(それそれ0.035%および0.045%w/w)。
【0026】
パルビレインが、培養された多剤耐性KB-V1およびCEM/VLB100細胞のビンブラスチン感受性を回復させることを見出し、例えば、パルビレインAの場合のIC50値はそれぞれ0.36および0.02μMであった。 同様に、コルヒチンに対するKB-8-5細胞の化学物質感受性はパルビレインAの場合にIC50が0.61μMまで回復した。 パルビレインBおよびCが、培養した多剤耐性KB-VI細胞のビンブラスチン感受性を回復させることを見出し、各化合物についてIC50値は0.17μMであった。
【0027】
この応答の機序を、多くのモデル系を用いて評価した。 最初に、多剤耐性KB-V1およびCEM/VLB100細胞を45μMまでのパルビレインAと共に72時間かけてインキュベートしたところ、MDR1 mRNAの逆転写PCRに基づく分析によって示されたMDR1の転写、それにウエスタンブロットにより示されるPgpの濃度の何れにも、有意に影響しなかった。 単離した多剤耐性KB-V1細胞膜小胞で観察した[3H]ビンブラスチンのATP依存性結合は用量依存的にパルビレインAにより阻害され、速度論的分析によれば、Ki値7.3μMでビンブラスチン結合に関して競合的阻害を示した。 この作用と符合して、40μMのパルビレインAの存在下では、[3H]ビンブラスチンの細胞内蓄積は、0.18pmol[3H]ビンブラスチン/50×104細胞から約5pmol[3H]ビンブラスチン/50×104細胞に増大した。
【0028】
本明細書に記載の通り、パルビレインA、BおよびC、または他のパルビレインがMDR表現型を退行させる機序の一部は解明されている。 しかしながら、in vitroモデルで信頼できると考えられる癌の治療法は、固形腫瘍に対しては、有効性が低い場合が多い。治療効果の予備的指針となる一つの方法が、最近、Hollingshead et al.,によって報告されている(26)。 細胞培養に現在用いられているヒト腫瘍細胞株の大部分は中空糸内で成育し(27)、異種の固形腫瘍モデルを形成することができる。 従ってヒト腫瘍細胞を含有する半透過性の中空糸を宿主マウスの腹腔内または皮下内の区画に移植し、マウスを目的の被験物質で治療する。 宿主への毒性応答を媒介する能力に対する細胞生育を阻害する能力を測定することにより、費用効果的および時間効果的な方法で治療効果を予備的に推定することができる(28)。 このモデルは、従来の化学療法薬と組み合わせたMDR退行剤の評価のために用い、そして、パルビレインA、BおよびCに関する結果を得た。
【0029】
従って、上記応答の潜在的関連性を探索するために、KB-V1またはKB-8-5細胞を中空糸に充填し、NCr nu/nuマウスに移植した。 細胞の生育はビンブラスチンまたはパルビレインA、BまたはCを単一の薬剤として投与した場合には有意に阻害されなかったが、組み合わせて使用した場合はパルビレインAで75%まで、そしてパルビレインBおよびCで77.5%までの阻害が観察された。 ベラパミルの等モル用量は、有効性がより低かった。これらのデータは、パルビレインA、BおよびCは、P-糖蛋白の効果的な阻害剤であることを示す。
【0030】
本発明の重要な特徴によれば、マダガスカルの植物であるエリスロキシルム パルビレイ バイリ(コカノキ科)のクロロホルム可溶性抽出液を、抗新生物剤ビンブラスチン(VLB)の存在下で評価したところ、多剤耐性ヒト癌細胞株(KB-V1)に対して顕著な選択的阻害活性を示した。 精製をモニタリングするために、この細胞株を用いてクロマトグラフィー分画し、9種のトロパン芳香族エステルアルカロイドを単離し、その構造を決定した。
【0031】
これらの化合物の7種は新規物質であり、「パルビレインA〜F」および「パルビレインA N-オキシド」と命名した。 これら7種の新規化合物の単離および構造決定のために用いた方法は後述する。 同様にして得られた2種の既知化合物の1つであるトロパン-3α、6β、7β-トリオール3-フェニルアセテートの単結晶X線回折についても記載する。 パルビレインA〜F、パルビレインA N-オキシドおよびベラパミルの構造を、以下に示す。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
パルビレインを、好ましい多剤耐性(MDR)表現型の阻害剤として、ベラパミル、シクロスポリンAおよびGR120918{N-{4-[2-(1,2,3,4-テトラヒドロ-6,7-ジメトキシ-2-イソキノリニル)-エチル]-フェニル}-9、10-ジヒドロ-5-メトキシ-9-オキソ-4-アクリドンカルボキサミドを含む数種類の標準的なMDR阻害剤と比較した。 パルビレインA〜Cは特に強力であり、MDR阻害剤の新しい化学型であった。 これらの新しい天然産物は、薬効の改善、毒性の低減および/または望ましくない付随的な薬理学的作用の低減のような他のMDR阻害剤をも凌ぐ利点を示す。
【0040】
パルビレインを予備的な、そしてより焦点を絞った生物学的試験の両方に付した。
例えば、表3〜5にはそれぞれ、以下の生物学的実験、すなわち、ヒト腫瘍細胞パネルにおける上記化合物のin vitro細胞毒性、卵巣癌細胞株における多剤耐性の阻害、および米国立癌研究所において入手可能ないくつかの細胞系におけるin vitroの多剤耐性のモジュレーションをまとめている。 これらの実験結果として、いくつかのパルビレインは、ビンブラスチンの存在下で多剤耐性細胞系(KB、口腔類表皮細胞)に対して実質的な選択性を示し(表8)、パルビレインBおよびCは、アクリドンカルボキサミド多剤耐性(MDR)モジュレーターGR120918に匹敵する力価で、多剤耐性ヒト卵巣腺癌(SKVLB)細胞系において薬剤耐性を退行させ(表4)、そして、パルビレインB〜DおよびFは、標準物質(DINIB)の細胞毒性の増大において、ベラパミルおよびシクロスポリンAに匹敵する力価を示した(表5)。
【0041】
パルビレインAについてさらに別の生物学的評価を行なったところ、パルビレインAの多剤耐性の退行に対する作用は、KB-V1およびKB-V-8細胞(表6)およびCEM/VLB100細胞において、ベラパミルの作用とは対照的であった(表7)。 NCI中空繊維モデルを用いて行なったin vivo試験において、KB-V1およびKB-8-5細胞を中空繊維に充填し、NCr nu/nuマウスに移植した(表10および図5)。 単一の薬剤としてビンブラスチンまたはパルビレインAを投与した場合、細胞生育は有意には阻害されなかったが、組み合わせて使用した場合には75%までの阻害が観察された。 これらのデータは、パルビレインAが、P-糖蛋白の効果的な阻害剤であることも裏付けている。 パルビレインAの生物学的活性は極めて高かった。今回始めて、中空繊維モデルを複合投与方法と共に用いることにより多剤耐性(MDR)表現型の退行が明らかにされた。 同様の陽性所見が、パルビレインBおよびCに関する中空繊維試験においても得られた。
【0042】
本発明において、E. pervilleiのクロロホルム可溶性抽出液は、ビンブラスチン(VLB)の存在下で多剤耐性(MDR)KB-V1細胞系の生育を有意に阻害するが、VLB非存在下でのKB-V1細胞や正常なKB細胞に対する細胞毒性は非常に低い値であった。 口腔表皮癌(KB-V1)細胞を用て多剤耐性を退行させる能力を追跡することによって、9種のトロパンアルカロイド芳香族エステル(化合物1〜9)を、エリスロキシルム パルビレイ(コカノキ科)の根茎から単離した。 7種(すなわち、化合物3〜9)の新規の構造を含む全ての単離物を、ヒト癌細胞系のパネルに対して評価した。 アルカロイド3および5〜9は、ビンブラスチンの存在下で評価したKB-V1細胞において最大の活性を示し、これらの化合物がP-糖蛋白の強力なモジュレーターであることを示していた。 これを裏付ける結果が、ヒト卵巣腺癌(SKVLB)細胞およびNCI腫瘍パネルの数種の細胞系を用いて、アドリアマイシンの存在下で評価した相乗作用試験においても得られた。 化合物の構造は、分光分析法を用いて決定した。 単結晶X線分析を、モノエステル、トロパン-3α、6β、7β-トリオール3-フェニルアセテート(化合物1)に対して実施した。
【0043】
とりわけ、活性に基づいた分画によって、7種の新規化合物、パルビレインA、パルビレインA N-オキシドおよびパルビレインB-F(化合物3〜9)を含む9種のトロパンアルカロイド芳香族エステル(化合物1〜9)が単離された(チャート1)。 これらの化合物を単離し、同定し、構造決定し、そして、それらの細胞毒性活性および多剤耐性モジュレーターとしてのその作用を測定した。
【0044】
チャート1
エリスロキシルム パルビレイより単離したトロパンアルカロイド
【0045】
【化9】
E. pervilleiの風乾した粉末根茎をメタノールで抽出し、溶媒を除去した後、残存物を水性メタノール(9:1)に懸濁し、ヘキサンで洗浄した。 次に、水性メタノール可溶性画分を、クロロホルムで分配した。 クロロホルム可溶性抽出液は、VLB存在下で評価したビンブラスチン耐性KB(口腔表皮癌腫)細胞系KB-V1に対して有意な阻害活性を示した(KB-V1+、ED505.4μg/ml)。 次に、残存物を、一連の細胞毒性に基づく酸化アルミニウムカラムクロマトグラフィー精製工程に付し、このアッセイによって分画をモニタリングして、9種のアルカロイド(すなわち、化合物1〜9)を得た。
【0046】
化合物1および2を、公開されているデータと比較して、既知のアルカロイドであるトロパン-3α, 6β, 7β-トリオール3-フェニルアセテート(59)および1αH,5αH-トロパン-3α-イル3, 4, 5-トリメトキシベンゾエート(60)と同定した。 化合物3〜9は異なるアシル置換基を有する新しいトロパンアルカロイドであり、その構造を、1H-、13C-、一次元選択的INEPTおよび2D NMR分光分析法で、細部にわたって確認した。
【0047】
単結晶X線分析を、メタノールから白色針状結晶とした化合物1に対して実施し、これによりNメチル基の立体化学を明らかにした。 最終R値は6%であり、良好なフィット1.22となった。 この化合物のNメチル基は立体的であった。
【0048】
化合物3を、高分解能電子衝撃質量スペクトル分析(HREIMS)により測定したところ、C30H37NO11の分子式を有していた。 そのIRスペクトルの吸収帯は3500(OH)、1711(エステル)、1642(α、β不飽和C=O)、1585(芳香環C=C)、1220および1128cm-1(C−O)であった。 化合物3の1H-NMRスペクトルでは、C-3、C-6およびC-7位で3置換されたトロパンアルカロイド骨格の特徴的な共鳴が観察され、シグナルはそれぞれ、δ5.37(1H, br t、ca.J=4.5 Hz, H-3b)、δ5.66(1H, dd, J=6.9, 2.9 Hz, H-6a)およびδ4.77(1H, d, J=6.9 Hz, H-7a)(表1)であった(59)。 低磁場の化学シフトおよびH-3シグナルの多重度は、C-3が立体配置中にアシル部分を有することを示していた(59-61)。
H-6αおよびH-7αの化学シフトの上記したカップリング定数は、C-6およびC-7位におけるexoの置換基の存在に該当し、H-6およびH-7の低磁場シフトは明らかに、それぞれC-6およびC-7におけるアシル部分およびヒドロキシル部分の置換を示していた(61)。 δ2.62(3H)における一重線はN-CH3基に帰属し、H-1およびH-5はδ3.27(2H)の幅の広い1重線として現れ、H-2およびH-4の共鳴が、δ2.37(2H, m, H-2axおよびH-4ax)およびδ1.74(2H, br d, J=12.6 Hz, H-2eqおよびH-4eq)に観察された(表1)。
化合物3の脂肪族炭素の13C-NMRの特徴もまた、C-3、C-6、C-7での3置換トロパン核と合致しており、シグナルは、δ67.5(C-3),δ77.7(C-6)およびδ75.3(C-7)であった。
δ26.4およびδ26.3の共鳴は、それぞれC-2およびC-4に帰属しており、次いで、C-1およびC-5のシグナルは、65.8および62.7ppmに現れ、最後に、N-CH3のシグナルはδ34.6(61、62)において共鳴していた(表2)。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
化合物3のアシル部分を、3,4,5-トリメトキシシンナモイル(Tmc)および3,4,5-トリメトキシベンゾイル(Tmb)単位と同定し、二つのシグナルδ6.45(1H, d, J=15.8 Hz)および7.64(1H, d, J=15.8 Hz)は、シンナモイル残基のトランスオレフィンプロトンに帰属しており、2つの一重線δ6.76(2H)および7.35(2H)は、それぞれシンナモイルおよびベンゾイル部分のオルト芳香族プロトンによるものである(61)。 18H(6x-OCH3, δ3.89-4.00)のシグナルは、各単位において対称に分布させられた三個のメトキシル置換基の存在を裏付けていた(61、63)。 これら置換基の同定のさらなる裏付けを、EIMSフラグメントm/z 375(M+-TmbA, 6%)およびm/z 349(M+-TmcA 10%)から得た(53、61、63)。 TmcおよびTmb単位のNMRデータ(表1および2)は文献記載のものと合致していた(61、63、64)。
TmcおよびTmb部分の核との連結位置を、いくつかの選択的INEPT NMR実験によって測定した(65)。 すなわち、H-6(δ5.66;3JCH=6 Hz)の放射は、166.5ppmにおけるカルボニル炭素シグナルを増強し、これは同様にδ7.64/6.45におけるビニルプロトン(H-β/α)の選択的放射により増強され、Tmc残基がC-6に結合していることを示していた。 同様に、Tmb部分は、H-3(δ5.37)の放射によりC-3に位置し、Tmb芳香族プロトン(δ7.35)は、δ164.8においてカルボニル炭素シグナルの対応する増強を示している。 Nメチル基を化合物1と同様な立体性とした。 すなわち、化合物3は、新規のトロパンアルカロイド3α-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7β-ヒドロキシトロパンであると決定され、パルビレインAと命名した。
【0051】
化合物4のNMRスペクトルデータは、パルビレインA(化合物3)のものと似ており、H-3βのプロトンシグナルはδ5.36(1H, br t, J=4.5 Hz)、H-6aはδ5.97(1H, d, J=6.9 Hz)、H-7aはδ4.81(1H, d, J=6.9 Hz)であり、そしてその対応する炭素はδ62.3(C-3)、74.9(C-6)および74.7(C-7)(表1および2)であり、トロパン核にヒドロキシルおよびジアシル置換基の存在を示唆している。 アシル部分は、TmcおよびTmb(表1および2)と同定され、化合物3に関して記載した通りに実施した一連の選択的INEPT実験によれば、それぞれC-3およびC-6に位置していた。 C30H37NO11の擬似実験式に相当するCIMS(正荷電型)におけるm/z 588(56%)の顕著なイオンを化合物4について観察し、同じ分子式を、化合物3についても決定した。 化合物4が、パルビレインA(化合物3)の異性体とした場合には、H-1(1H, br s, δ4.32)、H-2eq(1H, br d, δ2.38)、H-4eq(1H, br d,δ2.31)およびH-5(1H, br s,δ3.85)について観察された強い脱遮蔽、それに、N-CH3シグナル(δ3.31 s)についての低磁場シフトは十分には説明できない。 この作用はまた、APT、1D-および2D-HETCOR実験により帰属させられた13C-NMRスペクトルでの対応する炭素についても観察された(表2)。 FABMS(正荷電型)におけるm/z 604([M+1]+、7%)のプロトン化された分子イオンの存在は、化合物3の分子量から16amu異なっており、EIMSに付した場合の生成物の分解は、化合物4がパルビレインAのN-オキシドである可能性があることを示唆している。 Wenkert et al(66)は、スコポラミンN-オキシドとスコポラミン遊離塩基の13C-NMRデータを比較し、隣接する炭素の化学シフトの有意な変化を観察しており、これによる差[Δδc(スコポラミンN-オキシドとスコポラミン)]は+11.4(C-1, C-5)、−4.7(C-3)、−2.5(C-6, C-7)および+9.0(N-CH3)となった。
【0052】
化合物4およびパルビレインA(化合物3)で観察されたのと同様な化学シフトの変化は、Δδc+11.1(C-1)、+15.4(C-5)、−5.2(C-3)、−2.8(C-6)、−0.6(C-7)および+14.6(N-CH3)となり、これらは明らかにアルカロイド化合物4におけるN-オキシド置換を示していた。 Δδc値の大部分が文献記載の値と合致しており(66)、観察した僅かの差は、化合物3および化合物4におけるトロパン核の非対称置換に基づいて説明できる。 さらに、化合物4の1H-NMRスペクトル分析により、δ3.31にN-CH3シグナルが示された。 Huber et al(67)は、X線結晶解析およびNMR試験を適用することにより、スコポラミンN-オキシドのN-メチル基の立体配置と1H-NMRでの化学的シフトとを明確に相関づけた。 立体的なメチルはδ3.39で共鳴しており、立体異性のエクイトリアルのメチルはδ3.60にあった。 これらの観察結果に基づいて、化合物4のN-メチル基は立体的であり、化合物1に関して実施したX線結晶学的試験と合致している。 すなわち、化合物4を3a-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6b-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7b-ヒドロキシトロパンN-オキシド(パルビレインA N-オキシド)であると同定した。
【0053】
化合物5もまた、パルビレインA(化合物3)のものと同様の分光高度データを示した。 分子式は、HREIMSによればC30H37NO10であり、これは化合物3よりも16amu低い値であり、化合物5の分子におけるヒドロキシル基の欠如を示唆している。 1H-NMRスペクトルは、C-3およびC-6位におけるジ置換トロパン核に特徴的なシグナルを示しており、シグナルは、H-3bがδ5.34(1H, br dd J=5.4, 4.5 Hz)、H-6aがδ5.77(1H, dd, J=7.5, 2.7 Hz)、そして、CH2-7がδ2.20-2.25(2H, m)であった(表9)。 アシル部分をTmcおよびTmbと推定し、その結合位置を化合物3の場合と同様に決定した。 従って、化合物5を、3a-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6b-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-トロパンであると同定し、パルビレインBと命名した。
【0054】
化合物6は、HREIMSで測定したところC32H39NO10の分子式が導かれ、化合物5と同様の置換パターンを示し、共鳴は、H-3bがδ5.21(1H, br t, J=5.0 Hz)、H-6aがδ5.73(1H, dd, J=7.6, 2.7 Hz)、そして、CH2-7がδ2.22-2.26(2H, m)であった。 しかしながら、Tmb部分のシグナルは、化合物6の1H-NMRおよび13C-NMRスペクトルでは顕著ではなく、Tmc部分のシグナルは重複していた(表1および2)。 したがって、化合物6(パルビレインC)の構造を、3a,6b-ジ-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパンであると解明した。
【0055】
化合物7については、C32H39NO11(HREIMS)の分子式が導かれ、化合物3の1H-NMRスペクトルにおけるトロパン核と同様のシグナルを示し、シグナルは、H-3b(δ5.24;1H, br t, J=4.5 Hz)、H-6a(δ5.72;1H, d, J=6.3 Hz)、そして、H-7a(δ4.77;1H, d, J=6.3 Hz)であった。 化合物7のアシル基を示す1H-NMRスペクトルの部分は、化合物6の同等のデータにほぼ匹敵するものであり、共鳴は、δ7.74/7.62(各々1H, d, J=15.9 Hz, Hb)、6.47/6.36(各々1H, d, J=15.9 Hz, Ha)、および6.92/6.75(各々2H, s, H-2', H-6')であった。 13C-NMRスペクトルもまた、化合物7における2個のTmc部分の存在を裏付けていた(表2)。 したがって、上記証拠に基づいて、化合物7の構造を、3a,6b-ジ-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7b-ヒドロキシトロパン(パルビレインD)であると確認した。
【0056】
化合物8および9のNMRスペクトルデータは、上記した類縁体のスペクトルと比較した場合、各化合物に1個のTmc置換基およびもう1個の他のアシル置換基が存在することを指し示す値を示していた。 トロパン核は、化合物5のものと合致するNMR共鳴を示し、C-3およびC-6位での2置換を示唆していた。 H-3(brt、J=5.2 Hz)およびH-6(dd、J=7.5, 3.0 Hz)のカップリング定数は、化合物8および9におけるこれらのプロトンについて、それぞれbおよびaの立体配置を示していた(表1)。 HREIMSで測定した分子式C28H33NO8の化合物8は、1H-NMRスペクトル共鳴がδ3.56(2H, s)、7.19(1H, d J=2.2 Hz)、6.80-6.84(2H、m)および7.22(1H、d J=7.8 Hz)であり、炭素のシグナルはδ170.1、42.7、134.7、116.8、156.9、114.9、130.0および121.0であり、3-ヒドロキシフェニルアセチル部分の存在を示していた(59)。 選択的INEPT実験を用いて、C-6のTmb単位およびC-3の3-ヒドロキシフェニルアセチル基の置換パターンを確認した。 化合物9の分子式をHREIMSによりC28H33NO7と決定し、化合物8よりも16amu低い値であり、化合物9にはヒドロキシル基が存在しないことを示唆していた。 NMRデータの分析によれば第2のアシル基は、フェニルアセチル単位であった(59)。 選択的INEPT実験によれば、このアルカロイドではC-6のTmb単位およびC-3のフェニルアセチル基の存在が判明した。
上記した証拠に基づいて、化合物8および9の構造を、3α-(3-ヒドロキシフェニルアセトキシ)-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン(パルビレインE)および3α-フェニルアセトキシ-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン(パルビレインF)とそれぞれ解明した。
【0057】
パルビレインA〜F(化合物3、5〜9)およびパルビレインA N-オキシド(化合物4)に関わる種々の不斉炭素における立体化学を、NMRカップリング定数の観察結果に基づいて決定し、分子モデリング実験(PCMODELバージョン4.0)を用いて確認した。 この点に関し、種々の立体異性体の組み合わせをMMX磁力場を用いて最小限化し、そこで予測されたカップリング定数を実際に得られた実験的J値と比較し、本明細書中に示す立体異性体との最良の組み合わせを見つけた。 全ての構造に関して、架橋先端のメチンから出発して、2つの可能なエナンチオマーの一方を任意に示すべく、時計回りに番号付けした。 N-メチル基は、X線結晶解析により化合物1において確立された構造に従って、パルビレインA〜F(化合物3、5〜9)を、その立体配置で示す。
【0058】
アルカロイド1〜9をまず、確立されたプロトコルに従ってヒト癌細胞系のパネルに対して試験した(68)。 パルビレインAおよびF(化合物3および9)は、共にビンブラスチンの存在下で強力な活性および多剤耐性KB-V1細胞系に対する選択性を示し(ED50はそれぞれ0.3および0.2μg/ml)、パルビレインE(化合物8)は選択性は示したが力価は約1桁低下していた(ED50、1.9μg/ml)。 パルビレインB〜D(化合物5〜7)はVLBの存在下に試験したKB-V1細胞では高い力価を示したが、選択性はより低かった。 パルビレインA N-オキシド(化合物4)ならびに既知化合物1および2が、VLBの存在下では、KB-V1を含めたすべての細胞系において不活性(ED50≧20μg/ml)であったことが示された(表3)。
【0059】
本化合物グループ内の活性に関する構造的条件に関わるいくつかの観察結果を、表3に示すアルカロイド1〜9の細胞毒性パネルデータからみてとれる。 とりわけ、化合物1〜3および5〜9を考慮する場合、C-6 Tmcエステル置換基がVLの存在下のKB-V1細胞に対する有意な活性の顕在化において必須であると考えられる。 パルビレインB(化合物5)およびC(化合物6)の場合のように、C-7にヒドロキシル基が存在しない場合、VLBの存在下のKB-V1細胞に対してパルビレインA(化合物3)およびD(化合物7)により示される細胞毒性力価とほぼ同じであるが、パネルの他の細胞系を考慮すると選択性は低下していた。 3-ヒドロキシフェニルアセチル部分でC-3がエステル化されているパルビレインE(化合物8)は、C-3にTmcエステルを有するパルビレインD(化合物7)よりも低い力価および低い選択性を示した。 C-3のC-3 Tmcエステル(パルビレインC)を、フェニルアセチル基(パルビレインF)に変化させると、力価は低下したが選択性は増大した。 パルビレインA N-オキシド(化合物4)は、腫瘍パネルに示された何れの細胞系に対しても有意な活性を示さなかった。 しかしながら、一部のN-オキシドは生体還元性薬剤であることが知られており(69、70)、化合物4はプロドラッグとして作用することができ、代謝されることにより活性なパルビレインA(化合物3)を放出する。
【0060】
表4において、パルビレインA〜C(化合物3、5、6)およびパルビレインA N-オキシドの細胞毒性活性について、卵巣腺癌(SKOV3)および多剤耐性卵巣腺癌(SKVLB)の細胞系において、MDR阻害剤であるアクリドンカルボキサミド誘導体GF120918(20)との比較を、以前に記載された通りに行った(72)。 後者の細胞系にアドリアマイシン1μMを添加した場合、パルビレインBおよびC(それぞれIC50が0.12および0.08μM)はGR120918(IC50が0.02mM)に匹敵する強力な応答を媒介した。 表3および4のデータによれば、評価したトロパンアルカロイドエステルは、KB-V1およびSKVLB細胞に対して添加薬剤非存在下において、正常な対応例よりも低毒性であったため、化合物はMDRトランスポーターの代替となり得ることができ、MDR阻害に関して競合的機序を示す可能性がある。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
アルカロイド5〜7および9を、P-糖蛋白の潜在的モジュレーターとしてのその薬効についてさらに評価した。 この試験では、これらの被験化合物がMDR表現型の薬剤{4,9-ジヒドロ-3-イソブチル-2-メチル-1-(p-ニトロフェナシル)-4,9-ジオキソ-1H-ナフト[2-3-d]イミダゾリウムブロミド(DINIB)}の細胞毒性を増強させる能力を、陰性対称としてのMDR表現型ではない薬剤(5-フルオロウラシル)と比較しながら評価した(73、74)。 試験したアルカロイドのデータの評価によれば、パルビレインBおよびCは優れたMDRモジュレーターであった。 それらの95%信頼水準における相乗作用値は、2種類の標準的なMDR阻害剤であるベラパミルおよびシクロスポリンAの力価に匹敵する作用を示した(表5)。 評価したパルビレインについて選択した用量範囲は、完全な用量応答曲線を生じるのに適切なものであった(ただし、50ng/mLにおいて限定された毒性を誘発した7を除く)。 DINIB毒性の最大上昇を、細胞において50%生育阻害をもたらすのに必要な濃度より少なくとも4倍〜10倍低い値のパルビレインの非毒性濃度において測定した。
【0063】
【表5】
つまり、9種の芳香族トロパンアルカロイドエステルを、エリスロキシルム パルビレイ(コカノキ科)の根茎より単離した。 これらのアルカロイドの内の7種は新規化合物、すなわち、パルビレインA、パルビレインA N-オキシドおよびパルビレインB〜Fである。 これらの新しいトロパン誘導体の全てがC-6位にトランス-3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ単位を有することがわかっており、C-3のヒドロキシル基は様々にエステル化されており、C-6はアルカロイド3〜9において、場合によってはヒドロキシル化されている。 既知化合物であるトロパン-3α,6β,7β-トリオール3-フェニルアセテート(化合物1)および1αH,5αH-トロパン-3α-イル3,4,5-トリメトキシベンゾエート(化合物2)も取得されており、化合物1のN-メチル基の立体配置をX線結晶解析によって立体性であると確認した。
【0064】
これらの化合物の幾つかはビンブラスチンの存在下、MDR耐性ヒト口腔表皮(KB)細胞系に対して実質的な選択性を示し、パルビレインA、B、C、DおよびFはすべてこの細胞系に対して同様の細胞毒性の力価を示した。 アドリアマイシンの存在下では、MDR耐性ヒト卵巣腺癌(SKVLB)細胞系において、パルビレインBおよびCは、アクリドンカルボキサミドMDRモジュレーターGR120918に匹敵する力価で薬剤耐性を退行させた(70)。 その他のin vitroの生物学的試験プロトコルにおいて、化合物5〜7および6は、DINIBの細胞毒性の増大において、ベラパミルおよびシクロスポリンに匹敵する力価を示すことが解かった(73、74)。 これらのトロパンアルカロイドにより促進される作用様式は、その一部が解明されており、相乗作用的な活性がKB-V1およびKB-8-5細胞を用いたin vivoの中空繊維モデルにおいて認められている(75)。
【実施例】
【0065】
略 語
AML、急性骨髄性白血病;
BSA、ウシ血清アルブミン;
cDNA、相補デオキシリボ核酸;
DEPC、ジエチルピロカーボネート;
DMEM、ダルベッコの改変イーグル培地;
MeOH、メタノール;
NH4OH、水酸化アンモニウム;
CHCl3、クロロホルム;
Et2NH、ジエチルアミン;
DMSO、ジメチルスルホキシド;
EDTA、エチレンジアミン4酢酸;
dNTP、デオキシヌクレオチドトリホスフェート;
IC50、50%阻害濃度;
MDR、多剤耐性;
MTD、最大寛容用量;
MTT、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド;
PA、パルビレインA[3a-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6b-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7b-ヒドロキシトロパン];
PB、パルビレインB[3a-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6b-(E)-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン];
PC、パルビレインC[3a,6b-ジ(E)-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン];
PBS、リン酸緩衝食塩水;
Pgp、P-糖蛋白;
PVP、ポリビニルピロリドン;
SDS、ドデシル硫酸ナトリウム;
VP、ベラパミル。
【0066】
一般的手順
融点は、フィッシャージョーンズ融点測定機で測定し、未補正のまま用いた。 旋光度はPerkin Elmer 241偏光計で測定した。 UVスペクトルは、Nicolet MX-1分光光度計で記録し、IRスペクトルは、Beckman DU-7機で測定した。 NMRスペクトルは、TMSを内部標準としたCDCl3中で測定した。 1H-NMRおよび13C-NMRスペクトル、選択的INEPT、HETCORおよびNOE実験は、Nicolet NMC-360またはVarian XL-300機の何れかを用いて記録した。 EIMS、HREIMSおよびHRFABMSのデータは、Finnigan MAT-112S質量スペクトル分析器で測定した。 オープンカラムクロマトグラフィーは、シリカゲルG(70〜230メッシュ;E. Merck, Darmstadt, Germany)または酸化アルミニウム(アルミナ、天然物、ブロックマン活性I、60〜325メッシュ;Fisher Chemicals, Pittsburgh, PA)上で行ない、溶媒としてそれぞれCHC13-アセトン-28%NH4OHまたはヘキサン-アセトン-28%NH4OHの勾配混合物をそれぞれ使用した。 TLCプレート(シリカゲル60 F254ガラスプレート、層の厚さ0.25mm;E. Merck)を、Dragendorffのスプレー試薬を用いて、紫外線光線下で可視化した。
【0067】
植物試料
E. pervilleiの根茎は、1992年10月にマダガスカルの南方半乾燥気候地域において採取したものを用いた。 証拠標本(A00362)は、イリノイ州シカゴの自然歴史野外博物館のジョン G. シール植物標本室に寄託してある。
【0068】
抽出および単離
E. pervilleiの風乾した粉末根茎(12kg)をMeOHで2回抽出し、得られた残存物(129g)を、次に、MeOH-H2O(9:1、800mL)に懸濁し、ヘキサンで洗浄した(3×500mL)。
水層を真空下で濃縮し、次に、5%MeOH(600mL)とCHCl3(3×400mL)との間に分配した。
CHCl3可溶性抽出液(28g)はビンブラスチン耐性KB細胞系(1μg/mLビンブラスチン存在下で評価したKB-V1;KB-V1+、ED505.4μg/mL)に対して有意な活性を示したが、水層はこの細胞系に対して不活性であった。 活性抽出液(28g)をシリカゲルに吸着させ、溶媒系としてCHCl3-アセトン-28%NH4OH(20:10:0.1→5:20:1)の勾配混合物を用いながら、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、5個の主要アルカロイド含有画分混合物(画分1〜5)を得た。 画分1(0.8g)はヘキサン-アセトン-MeOH-Et2NH(9:1:0.1:0.1)を溶離剤として中性酸化アルミニウム(Al2O3)カラム上を通過させて精製し、5(420mg)および9(450mg)を得た。 画分2および3を合わせ(4.5g)、ヘキサン-アセトン-MeOH-Et2NH勾配混合物(6:1:0.1:0.1→3:1:0.1:0.1)を用いたAl2O3カラムクロマトグラフィーに供し、化合物1(4mg)、2(450mg)、6(520mg)および8(480mg)を得た。 画分4(1.9g)はヘキサン-アセトン-MeOH-Et2NH(3:1:0.1:0.1)を溶離剤として用いてAl2O3カラム上を通過させ、化合物3(500mg)、7(510mg)、そしてさらに化合物1(42mg)を得た。 画分5(62mg)は、アセトン-H2O-28%NH4OH(4:0.75:2滴)混合物を溶媒系とする分取TLCで後処理して、化合物4(14mg、Rf 0.47)を得た。
【0069】
トロパン-3α,6β,7β-トリオール3-フェニルアセテート(化合物1)。 白色結晶(MeOH);融点120〜122℃;1H、13C-NMRおよびEIMSデータは文献記載値と合致(59)。
【0070】
1αH,5αH-トロパン-3α-イル3,4,5-トリメトキシベンゾエート(化合物2)。 白色不定形固体;融点238〜240℃;1H-NMRおよびEIMSデータは文献記載値と合致(60)。
【0071】
パルビレインA[3α-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7β-ヒドロキシトロパン](化合物3)。 白色不定形固体、46〜48℃で軟化。 [α]D-0.6°(c 0.18, CHCl3);UV lmax(MeOH)302.5nm(log e 4.39);IR nmax(フィルム)3500、2944、1711、1642、1585、1505、1472、1416、1345、1265、1220、1128、1057、1004cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 587(4)[M+]、375(6)[M+-TmbA]、349(10)[M+-TmcA]、273(19)、231(29)、137(100)[M+-TmcA-TmbA];HREIMS m/z 実測値587.2360、C30H37NO11の計算値587.2367。
【0072】
パルビレインA N-オキシド[3α-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7β-ヒドロキシトロパン N-オキシド](化合物4)。 白色不定形固体、114℃で軟化。融点118〜121℃;[a]D+1.46°(c 0.28、CHCl3);UV lmax(MeOH)303.0nm(log e 4.24);IR nmax2944、1717、1688、1588、1500、1468、1420、1338、1278、1220、1130、1004、759cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;CIMS m/z 604(6)[M+H+]、588(56)[M+H+-O]、281(43)[M+H+-C(6)HTmc-C(7)HOH]、239(32)[TmcA+H+]、213(100)[TmbA+H+];HRFABMS m/z 実測値604.2407(M++1)、C30H37NO12+Hの計算値604.2394。
【0073】
パルビレインB[3a-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6b-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン](化合物5)。 白色不定形固体、融点40〜42℃;[α]D-22.5°(c 0.25、CHCl3);UV lmax(MeOH)302.5 nm(log e 4.31);IR nmax2944、1711、1641、1585、1505、1472、1416、1345、1220、1127、1004cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 571(50)[M+]、360(100)[M+-TmbA]、307(3)[M+-C(6)HTmc-C(7)H2]、238(18)[TmcA+]、221(41)[TmcO+]、212(22)[TmbA+];HREIMS m/z 実測値571.2421、C30H37NO10の計算値571.2417。
【0074】
パルビレインC[3α,6β-ジ-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン](化合物6)。 白色不定形固体、融点53〜57℃;[α]D+29.0°(c 0.10、CHCl3);UV lmax(MeOH)305.0 nm(log e 4.51);IR nmax2944、1711、1641、1585、1504、1472、1454、1345、1270、1167、1127、915、745cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 597(3)[M+]、360(100)[M+-TmbA]、333(4)[M+-C(6)HTmc-C(7)H2]、238(18)[TmcA+]、221(41)[TmcO+]、212(22)[TmbA+];HREIMS m/z 実測値597.2552、C32H39NO10の計算値597.2574。
【0075】
パルビレインD[3α,6β-ジ-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7β-ヒドロキシトロパン](化合物7)。 白色不定形固体、融点59〜61℃;[α]D+9.0°(c 0.10、CHCl3);UV lmax(MeOH)、305.0nm(log e 4.50);IR nmax2944、1710、1641、1585、1504、915、745cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 613(6)[M+]、375(16)[M+-TmcA]、333(2)[M+-C(6)HTmc-C(7)HOH]、238(29)[TmcA+]、221(52)[TmcO+]、190(6)、154(14)、137(100)[M+-2TmcA];HREIMS m/z 実測値613.2526、C32H39NO11の計算値613.2523。
【0076】
パルビレインE[3α-(3-ヒドロキシフェニルアセトキシ)-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-トロパン](化合物8)白色不定形固体、融点53〜57℃;[α]D+29.0°(c 0.10、CHCl3);UV lmax(MeOH)305.0 nm(log e 4.51);IR nmax2944、1711、1641、1585、1504、1472、1454、1345、1270、1167、1127、915、745cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 511(77)[M+]、360(100)[M+-3-OHPhCH2CO2]、238(17)、[M+-TmcO]、247(39)[M+-C(6)HTmc-C(7)H2]、238(17)[TmcA+]、221(39)[TmcO+]、138(45)、122(63)[M+-TmcA-3-OHPhCH2CO2];HREIMS m/z 実測値511.2210、C28H33NO8の計算値511.2206。
【0077】
パルビレインF[3α-フェニルアセトキシ-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-トロパン](化合物9)。 白色不定形固体、融点59〜61℃;[α]D+9.0°(c 0.10、CHCl3);UV lmax(MeOH)305.0 nm(log e 4.50);IR nmax2944、1710、1641、1585、1504、915、745cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 495(73)[M+]、360(100)[M+-PhCH2CO2]、238(29)、[TmcA+]、231(49)[M+-C(6)HTmcC(7)H2]、221(65)、[TmcO+]、136(8)[PhCH2CO2H+]、122(70)[M+-TmcA-PhCH2CO2];HREIMS m/z実測値495.2260、C28H33NO7の計算値495.2257。
【0078】
トロパン-3α,6β,7β-トリオール3-フェニルアセテート(化合物1)のX線結晶解析。
結晶データ:C16H21NO4、Mr=291.34、モノクリニック、スペースグループP21、a=6.5574(13)、b=26.577(5)、c=8.448(2)Å、b=102.08(3)°、V=1439.7(5)Å3(12の自動中心設定反射に関する回折計角度に対して最小自乗法により精密化)、λ=1.54178Å、Z=4、Dc=1.344Mg/m-3、F(000)=624、μ(Cu-Kα)=0.789mm-1。結晶の大きさ:0.5×0.2×0.2 mm。
データの収集および処理。 三次元の室温(293°K)でのX線データをRigaku AFC6S回折計により、単色化Cu-Ka X照射、2Θ/ωモード、スキャン範囲(ω)3.33〜57.47°プラスKa分離、可変走査速度(4.88〜14.65分-1)で収集した。 合計で2158反射が測定され(3<2Θ<115°、min.hkl 0 0 -9、max.hkl 7 29 9);1968の独立した反射が得られた[R(σ)0.0240、フリーデル対向面合流]。 吸収の補正は行なわなかった。 99反射ごとにモニタリングした1つの対照反射は、X線への結晶の13.6時間の曝露の間に良好な崩壊を示さなかった。
【0079】
構造分析および補正
直接法で、すべての非水素原子の位置が得られた。 異方性熱パラメーターによるフルマトリックスの最小自乗法による補正を、すべての非水素原子に対して適用した。
水素原子は、ライディングモードで補正した。 補正は、R=0.0631、Rw=0.1643に収束した。
補正の最終サイクルにおける最大および平均のシフト/誤差は、それぞれ0.0415および0.0376であった。 最終電子密度差合成は、>0.194または<-0.198eÅでピークを示さなかった。 すべてのコンピューター処理は、IRIS VB5,03プログラムシステムのSHELXTLを用いて行った(76、77)。
【0080】
生 物 学 的 評 価 手 順
細胞毒性検定試験
確立されたプロトコル(68)に従って、VLBの存在下と非存在下とで、KB-V1を含むヒト癌細胞系のパネルに対する化合物1〜9の細胞毒性活性を評価した。 表4に示す卵巣癌細胞系にも同様の操作法を用いた(72)。
【0081】
In vitro 多剤耐性試験
確立されたプロトコル(73、74)に従って、P-糖蛋白の潜在的モジュレーターとしての化合物5〜7および9の薬効を評価した。
【0082】
試薬および細胞培養
[3H]ビンブラスチン(4.8Ci/mmol)を、Moravek Biochemicals社(Brea, CA)より購入した。 その他の全ての試薬は、Sigma Chemical社より購入した。 細胞培養用の培地および添加物は、Life Technologies社(Grand Island, NY)より入手した。 ヒト口腔表皮細胞癌KB-3は、アメリカン タイプ カルチュア コレクション(ATCC、Rockville, MD)から購入し、KB-V1およびKB-8-5細胞は、I.B.Roninson博士(シカゴのイリノイ大学、分子遺伝学部から入手した。 KB-3細胞は、10%熱不活性化ウシ血清およびPSF(100単位/mlペニシリンG、100mg/ml硫酸ストレプトマイシン、250ng/mlアンホテリシンB)を添加したDMEM培地中に維持した。 KB-V1細胞を、さらにビンブラスチン(1mg/ml)を添加した同じ培地中で生育させた。 同様にして、KB-8-5細胞も、コルヒチン(10ng/ml)を添加した同じ培地中で培養した。 ヒト白血病リンパ芽球CEM細胞およびその多剤耐性の対応種CEM/VLB100細胞を、前記した通りに培養した(29)。 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中空繊維(分子量カットオフ500,000Da、内径1.0mm)は、Spectrum Medical Industries社(Luguan Hills, CA)より購入した。
【0083】
細胞毒性
KB-3、KB-V1およびKB-8-5細胞を用いた被験物質の細胞毒性の測定は、前記した通りに実施した(24)。 すなわち、まず、種々の濃度の被験化合物(10%DMSO10mlに溶解)を96ウェルプレートに移し、細胞懸濁液(5×104個/ml)190mlづつを各ウェルに添加した。
次に、プレートを37℃で72時間インキュベート(空気中5%CO2雰囲気下100%湿度)し、冷20%水性トリクロロ酢酸100μlを各ウェルの生育培地に添加して、細胞を固定した。
培養物を、30分間、4℃でインキュベートし、洗浄し、風乾し、スルホローダミンB溶液で染色し、1%酢酸で洗浄した。 最後に、10mMトリス顕色剤200mlを各ウェルに添加し、光学密度をELISAプレートリーダーを用いて515nmで測定した。 各事例において、数個のウェルに等数の細胞を添加し、30分間、37℃でインキュベートし、前記の通りに処理することにより、ゼロ日対照実験を行なった。 ゼロ日対照実験で得られた光学密度の数値を差し引き、対照(溶媒処理)培養物に対して相対的な細胞生存率を計算した。 CEMおよびCEM/VLB100細胞を用いた場合の化合物の細胞毒性を、Beck等に記載されているようにして求めた(30)。 細胞を5〜6×105個/mlの密度で、24ウェルプレート内で生育させた。
48時間後、細胞を破砕物と区別するために、チャンネライザーを用いながら細胞数をコールターカウターで計数した。 IC50を未処理の対照グループと比較して、処理グループ細胞の48時間生育を50%阻害するために必要な薬剤濃度として定義した。
【0084】
KB-V1 小胞を用いた[ 3 H ] ビンブラスチンの蓄積
文献記載の方法に多少の変更を加えた方法に従って、KB-V1細胞から細胞膜小胞を調製した(31、32)。 培地を対数生育期(約80%の集密度)のKB-V1細胞から採取し、細胞を氷冷PBS、次いで、2mM EDTAを含有している氷冷PBSで洗浄した。 次に、アプロチニン(1mg/ml)を添加し、そして、10分間室温でインキュベートした後、血清学的実験用ピペットを用いて穏やかに吸引することによって細胞を回収し、遠心分離(100×g、5分間)により回収した。 細胞を、0.25Mのスクロース緩衝液(0.01M Tris-HCl、pH7.5、0.25Mスクロース、0.2mM CaCl2、1mM EDTA含有)中に懸濁し、30秒間、2500rpmでポリトロンで均質化した。 この操作の後、細胞の5%未満が、未損傷のまま残存した。 次に、均質化物を4倍量の0.025Mスクロース溶液(0.01M Tris-HCl、pH7.5、0.25Mスクロース含有)で希釈し、遠心分離(1000×g、10分間)した。 上清を35%スクロース製緩衝材(35%w/vスクロース、1mM EDTA、0.01M Tris-HCl、pH7.5)上に積層し、30分間16,000×gで遠心分離した。 界面(約5ml)を回収し、4倍量の0.25Mスクロース、0.01M Tris-HCl、pH7.5で希釈し、1時間100,000×gで遠心分離した。 得られた小胞破砕物を、1mMフェニルメチルスルホニルフロリドを含有するPBSで、25ゲージの針を用いて懸濁し、それを−80℃で保存した。 タンパク質含有量は、標準物質としてBSAを用いながらビシンコニン酸タンパク質試験キットを用いて測定した(33)。
【0085】
膜小胞を用いたビンブラスチンの蓄積試験は、前記したようにして、96ウェルプレートを用いて行った(23、24)。 原形質膜小胞(40μgタンパク質)を0.125Mスクロース、5mM MgCl2、0.5mM ATPおよび0.16μM[3H]ビンブラスチン(4.8Ci/mmol)を含有する0.01M Tris-HCl緩衝液、pH7.5中でインキュベートした。 次に、DMSO 5μM中に溶解した種々の濃度の被験物質を添加し(最終容量、100μl)、20分間周囲温度でインキュベートを行なった。 速度論的試験のために、種々の濃度の[3H]ビンブラスチンを用いた。 96ウェルハーベスター(Harvester 96、Tomtec)を用いて、各ウェルの内容物を、ガラスフィルター(プリントA型フィルターマット、Wallac)に吸入することで、反応を終了した。
【0086】
放射活性は、液体シンチレーション計数により測定した(1450 Microbeta, Wallac)。
【0087】
非特異的結合は、同様のインキュベーションを、未標識のビンブラスチンの1000倍過剰量を含有する反応混合物を用いて実施して測定した。 非特異的結合を、すべての全結合データより控除することによって、特異的結合を求めた。
【0088】
無傷細胞を用いた [ 3 H ] ビンブラスチンの蓄積
細胞単層中の[3H]ビンブラスチンの蓄積の測定は、Fojo et alの方法(34)に多少の変更を加えた方法によって行った。 試験は、24ウェルプレートを用いて実施した。 細胞単層を調製するために、インキュベーション培地(10%ウシ血清添加DMEM)の1ml当たり細胞2.5×105個を含有する細胞懸濁液2mlを、各ウェルに添加した。 対照ウェルには、試験培地2mlを含有させた。 [3H]ビンブラスチン(16nM、4.8Ci/mmol)および種々の濃度の被験試料(DMSO 10μl中に溶解)を添加した後、プレートを、5%二酸化炭素インキュベーター内で、1時間、37℃で、インキュベーションした。 単層を冷PBSで3回洗浄し、反転させて乾燥し、細胞をトリプシン処理した。 次に、細胞懸濁液をシンチレーション溶液(CytoScint(登録商標)、ICN)3mlの入ったバイアルに移し、激しく混合し、計数した。 細胞を含有しないインキュベーションに関わる計数値を差し引くことにより、細胞を含有するインキュベーションに関わる[3H]ビンブラスチンの量を補正した。
【0089】
MDR1 mRNA発現のRT - PCR分析
100×104個のKB-3、KB-V1、CEMまたはCEM/VLB100細胞を含有する培養フラスコ(60×15mm)を、5%二酸化炭素インキュベーター内で、72時間、37℃で、種々の濃度のパルビレインA(0〜34μM)またはベラパミル(0〜44μM)で処理した。 培養したKB-3、KB-V1、CEMおよびCEM/VLB100細胞からTRIzol試薬(Life Technologies 社)を用いて全RNAを単離し(33)、紫外線光度により定量した。 RNAの逆転写は5×First Strain Synthesis Buffer、2.5mM MgCl2、0.5mM各dNTP、10μM DTT、RNAse阻害剤2単位、SuperScript II逆転写酵素200単位、0.5μgオリゴ(dT)12-18、2μg全RNA(CEMおよびCEM/VLB100細胞については3μg)、およびDEPC処理水を含有する最終容量21μl中、SUPERScript(登録商標) Preamplificaiton System(Life Technologies 社)を用いて行なった。 50分間、42℃で、インキュベーションした後、15分間、70℃に加熱することで、室温での反応を終了した。 新たに合成されたcDNA(2μl)に1.4mM MgCl2、(CEMおよびCEM/VLB100細胞については1.2mM)、Taqポリメラーゼ2.5単位、MDR1遺伝子(35)を使用して、AnaGen Technology 社(Palo Alto, CA)に特別注文して合成されたプライマー(5'-ATATCAGCAGCCCACATCAT-3';5'-GAAGCACTGGGATGTCCGGT-3')(35)を含有するPCR混合物を添加した。 内部標準として、GAPDHのプライマー(5'-CGGGAAGCTTGTGATCAATGG-3';5'-GGCAGTGATGGCATGGACTG-3')(36)0.125μmol(CEMおよびCEM/VLB100細胞については0.1μmol)を添加した(最終容量50μl)。 PCRは、3分間、94℃に加熱し、その後即座に23回(CEMおよびCEM/VLB100細胞については35回)の熱サイクルに付し、各サイクルは、94℃、1分間の変性工程、58℃、1分間のアニーリング工程、72℃、1分間の鎖伸長工程とし、Perkin-Elmer 2400のサーモサイクラーを用いて行なった。 最終サイクルの後、72℃、7分の鎖伸長工程を行なった。 PCR産物の一部を、2%アガロースゲル(Bio-Rad)上の電気泳動に付し、PCR断片を臭化エチジウム染色により可視化した。
【0090】
MDR1発現のウエスタンブロット分析
MDR1遺伝子の発現を調べるために、5%二酸化炭素インキュベーター内で、72時間、37℃で、パルビレインA(0〜45μM)またはベラパミル(0〜44μM)で処理したKB-3、KB-V1、CEMおよびCEM/VLB100細胞を用いて、ウエスタンブロットを行なった。 細胞(出発細胞量は7.5×105個)を、SDS溶解緩衝液[0.4%SDS(w/v)、5%グリセロール(v/v)、0.006%ブロモフェノールブルー、2%β-メルカプトエタノールを含有する20mM Tris-HCl]を用いて回収し、溶解物を10分間煮沸し、−20℃で保存した。 溶解物の一部を用いてタンパク質分析(標準物質としてBSAを用いたビシンコニン酸タンパク質試験キット)を行ない、等量のタンパク質をプレキャスト7.5%トリスグリシンアクリルアミドゲル(Novex, San Diego, CA)を用いたSDS-PAGEにより電気泳動した。 ポリジビニリデンジフルオライド膜に移した後、非特異的結合部位を5%脱脂粉乳でブロッキングした。 ブロットは、ウサギポリクローナル抗体mdr(Ab-1)(Oncogene Research Products 社)を用いて行ない、ストレプトアビジンセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(Amersham Life Science 社)により分析し、ECLウエスタンブロット検出システム(Amersham Life Science社)により可視化した。
【0091】
In vivo 中空繊維試験
In vivo中空繊維試験は、文献記載の操作法に多少の変更を加えた方法を用いて実施した(28)。 KB-3、KB-V1またはKB-8-5細胞の集密的な単層を採取し、遠心分離により回収し、7.5×105個/mlの細胞密度で馴化培地中に再懸濁した。 細胞を充填した繊維を5%二酸化炭素雰囲気下で、37℃で、一晩、6ウェルプレート中でインキュベートした。 5〜6週齢の雌性無胸腺NCr nu/nuマウスを、Frederick Cancer Research Facilityから入手した。 各マウスに対して6個の繊維を用い、2種類の生理学的容器内で培養した。
【0092】
腹腔内移植物については、皮膚および背部の腹壁の筋肉を通る小型の切開部を作成し、頭尾方向に腹腔内に繊維試料を挿入し、切開部を皮膚ステープルで閉じた。 皮下移植物については、頸部の根元で小型の皮膚切開部を形成し、11ゲージの腫瘍移植物トロカールを挿入した。 中空繊維試料を含んでいるトロカールを皮下組織を経由して頭部に挿入し、トロカールを抜き取る際に繊維を残した。 切開部は、皮膚ステープルで閉じた。
【0093】
予備実験として、種々の細胞密度を有する繊維を用いて細胞生育を評価した。 その結果、7.5×105個/mlの細胞密度が、KB-3、KB-V1およびKB-8-5細胞の薬剤試験に適していることがわかった。 処置プロトコルについては、ビンブラスチンおよびベラパミルをPBSに溶解し;パルビレインA、BおよびCは、PVP(37)と共に同時沈殿させることにより溶解度を上昇させ、次に、PBSに溶解した。 マウスは、無作為に6グループ(各グループ3匹)、すなわち、PBS溶媒対照グループ;ビンブラスチン処置グループ;ベラパミル処置グループ;パルビレインA、BまたはCで処置したグループ;ベラパミル+ビンブラスチングループ;およびパルビレインA、BまたはC+ビンブラスチングループに割り振った。 被験化合物は、移植の3〜6日後から、腹腔内注射により1日1回投与した。 体重は、毎日計測した。
【0094】
第7日目に、マウスを屠殺して繊維を取り除いた。 予め加温して、37℃で、30分間平衡化させておいた新しい培地2mlが各ウェルに添加された6ウェルプレートに、繊維を入れた。 中空繊維内に含まれる無傷の生存細胞の量を決定するために、MTT色素転換試験を用いた。 まず、1mg MTT/mlを含有する予備加温した培地1mlを、各ディッシュに添加した。 37℃で、4時間インキュベートした後、培地を吸引し、4℃で一晩インキュベートすることによって、2.5%硫酸プロタミン溶液を含有する規定の食塩水で試料を2回洗浄した。 試料の光学密度を測定するために、繊維を24ウェルプレートに移し、半分に切断し、一晩乾燥させた。 回転プラットホーム上で、室温で、4時間、DMSO(250μl/ウェル)で、各試料からホルマザンを抽出した。 抽出したMTTホルマザンの一部(150μlづつ)を、96ウェルプレートの個々のウェルに移し、540nmの波長で光学密度を測定した。
処置方法の効果は、体重の変化に対して相対的な細胞の実質生育率により決定した。
【0095】
結 果
生育阻害能力
多剤耐性を退行させる被験化合物の能力をモニタリングするための初期の方法として、in vitroの細胞生存試験を用いた。 表6にまとめたように、パルビレインAおよびベラパミルの何れも、培養物中のKB-3細胞に対して明確な生育阻害能力を示さなかった。
この細胞系は、ビンブラスチン(IC50=0.04μM)およびコルヒチン(IC50=0.05μM)に対して高度に感受性である。 ビンブラスチンの非存在下において、何れの被験物質もKB-V1細胞の生育を阻害しなかった(パルビレインAとベラパミルについて、それぞれIC50値>34と44μM)。 しかしながら、パルビレインAまたはベラパミルの存在下で培地にビンブラスチンを添加した場合、化学物質感受性は回復した(それぞれ、IC50=0.36および0.79μM)。 パルビレインAについては、これらのデータはIC50比としてKB-3/KB-V1(+ビンブラスチン)およびKB-V1(−ビンブラスチン)/KB-V1(+ビンブラスチン)で、それぞれ66.6および>95であり、これはベラパミルで得られた数値(それぞれ47および>55)に十分匹敵するものであり、非特異的細胞毒性の欠如を示すものである。 KB-8-5細胞(表6)では、パルビレインAは、コルヒチン非存在下でベラパミル(IC50>44μM)より高い生育阻害活性(IC50=14μM)を示したが、KB-3/KB-8-5(+コルヒチン)およびKB-8-5(コルヒチン)/KB-8-5(+コルヒチン)のIC50比はなお良好であった(パルビレインAでは、それぞれ40.3および23.3、ベラパミルではそれぞれ13.1および>15.4)。
【0096】
【表6】
薬剤耐性CEM/VLB100細胞を用いて行なった試験の関連のグループを、表7に示す。 ビンブラスチンまたはダウノルビシンの非存在下では、パルビレインAおよびベラパミルの何れもが、CEM/VLB100細胞の生育を阻害しなかった。 パルビレインAの存在下、ビンブラスチンとダウノルビシンのIC50値は、それぞれ0.02および0.065μMまで低下し、ベラパミル存在下で得られる数値は、それぞれ0.025および0.5μMであった。 これらの作用は、モジュレーター/(モジュレーター+ビンブラスチン)およびビンブラスチン/(モジュレーター+ビンブラスチン)の高いIC50値の比、およびダウノルビシンで得られた相当する比を考慮すれば、特異的であった(表7)。
【0097】
【表7】
表8にまとめた通り、パルビレインBおよびベラパミルの何れもが、培養物中のKB-3細胞では生育阻害能力を明確に示さなかった(それぞれ>35μMおよび37μM)が、パルビレインCは非特異的な毒性を示した(IC50=3.7μM)。 パルビレインA(IC50=24μM)と比較して、パルビレインBはより毒性が低かったが、パルビレインCはKB-3細胞ではより高毒性であった。 ビンブラスチンの非存在下では、何れの被験物質もKV-V1細胞の生育を有意には阻害しなかった(パルビレインB、パルビレインCまたはベラパミルのIC50値はそれぞれ15、15または44μM)。 しかしながら、パルビレインB、パルビレインCまたはベラパミルが存在する培地にビンブラスチンを添加した場合には、化学物質感受性が回復した(それぞれ、IC50=0.17、0.17または0.79μM)。 パルビレインBまたはCは、ビンブラスチンの非存在下でベラパミル(IC50=44μM)よりも高い生育阻害活性(IC50=15μM)を示したが、KB-V1(−ビンブラスチン)/KB-V1(+ビンブラスチン)のIC50比はなお良好であり(パルビレインBまたはCでは88、ベラパミルでは56)、非特異的な細胞毒性が比較的欠如していることを示していた。 ビンブラスチンの非存在下でIC50値>34μM、ビンブラスチンの存在下で0.36μM、そして、KB-V1(−ビンブラスチン)/KB-V1(+ビンブラスチン)のIC50比>95であることから、パルビレインAはパルビレインBおよびCよりいくぶん優れているが、三つの化合物すべの有効性の水準は同様である。
【0098】
【表8】
次に、in vivoの評価を、パルビレインBおよびCを用いて行った。 予備生育試験において、ビンブラスチンの250mg/kgの用量はKB-3細胞の生育を阻害したが(図6A)、その際、KB-V1細胞の生育には有意には影響しなかった(生育阻害は7.4%未満)(図6B)。
これらの細胞種の何れもが、パルビレインB(77.6mg/kg)、パルビレインC(81.2mg/kg)またはベラパミル(61.4mg/kg)に対して、0.136mmol/kgの用量では感受性を示さなかった(生育阻害8.5%未満)(図6B)。 しかしながら、ビンブラスチンをパルビレインBまたはC、あるいはベラパミルと共に同時投与した場合、有意な生育阻害作用(P<0.0001)が、腹腔内に移植されたKB-V1(図1B)では観察された。 表9にまとめたように、パルビレインB、パルビレインCまたはビンブラスチンを単一薬剤として投与した場合、それぞれ2.0、8.5または0%の生育阻害が観察されたが、組み合わせて投与した場合には阻害作用は66.9、77.7または60.3%となった。 各事例について、薬剤を単独で投与した場合に観察される阻害の総和として計算した%阻害と比較して、薬剤を同時投与した場合に増強効果が観察された。 すなわち、観察された阻害は、計算値より高値であったため、すべての薬剤は有効であり、パルビレインBおよびパルビレインCは、ベラパミルよりも強力な作用を示した。 パルビレインAを用いた試験において、単一薬剤として投与した場合、1%の生育阻害が観察されたが、ビンブラスチンと共に投与した場合、68.6%の阻害作用が観察された(19)。 すなわち、パルビレインAと比較して、パルビレインBおよびパルビレインCは、同様の水準の退行活性を示した。 皮下移植した細胞では、有意な応答は観察されなかった。 すべての事例において、確立された基準(28)に基づいた場合に、マウス体重の有意な減少は観察されなかった(図6CおよびD)。
【0099】
【表9】
KB - V1小胞を用いた [ 3 H ] ビンブラスチンの蓄積
多剤耐性KB-V1細胞から単離した小胞を用いたATP依存性ビンブラスチン蓄積の阻害は、0〜100μMの濃度範囲でパルビレインAまたはベラパミルにより媒介された(図1)。 蓄積は、対照培養における約5.93pmolの[3H]ビンブラスチン/mgタンパク質から、パルビレインAまたはベラパミル存在下での0.09pmolの[3H]ビンブラスチン/mgタンパク質にまで低下した。 この低下は、明らかに用量依存的であり、パルビレインAおよびベラパミルの場合、それぞれ3.84および3.59μMの濃度で50%の阻害が得られた(図1)。 同様の方法を用いて、両逆数プロットの構築によりデータを得たところ、競合的阻害が観察された(図2)。 Ki値は、パルビレインAおよびベラパミルについて、それぞれ約7.3および8.8μMであった。
【0100】
図1は、ベラパミルまたはパルビレインAにより誘発されたKB-V1細胞膜小胞を用いた[3H]ビンブラスチンの蓄積の用量依存的阻害を示している。 培養したKB-V1細胞から調製した膜小胞(タンパク質に基づく40μg)を0.16μMの[3H]ビンブラスチンおよびそこに記載された濃度のベラパミル(・)またはパルビレインA(○)を含む緩衝液中でインキュベーションした。 インキュベーションは、20分間、周囲温度で行ない、細胞ハーベスターを用いて終了した。 1000倍過剰の未標識ビンブラスチンを添加することにより、非特異的結合を求めた。 放射活性は、液体シンチレーション計数により測定し、非特異的結合を、すべての総結合データから控除することにより特異的結合を求めた。
【0101】
図2は、KB-V1細胞膜小胞を用いたビンブラスチンの蓄積阻害、すなわち、パルビレインAまたはベラパミルにより媒介される阻害の速度論的分析を示す。 膜小胞を、培養したKB-V1細胞から調製し、0(・)、5(○)、10(□)および30μM(▽)のパルビレインAまたは5(■)、10(▼)および30μM(◆)のベラパミルと共に、0.015、0.02、0.04、0.08および0.16μMの[3H]ビンブラスチンを含有する緩衝液中でインキュベーションした。 インキュベーションは、20分間、周囲温度で行ない、細胞ハーベスターを用いて終了した。 1000倍過剰の未標識ビンブラスチンを含むインキュベーションを行うことにより、非特異的結合を求めた。 放射活性は、液体シンチレーション計数により測定し、非特異的結合すべての総結合データから控除することによって特異的結合を求めた。
【0102】
無傷細胞を用いた [ 3 H ] ビンブラスチンの蓄積
Pgp-MDR細胞は、その薬剤感受性対応種よりも抗癌剤の蓄積も少なく、保持量も少ない。
[3H]ビンブラスチンでKB-3細胞を処理することにより、ビンブラスチン7.1±0.17pmol/50×104細胞の蓄積を生じたのに対し、同じ実験条件下でKB-V1細胞を処理したところ、蓄積はビンブラスチン0.18±0.008pmol/50×104細胞であった。 KB-V1細胞を、0〜40μMの範囲のベラパミルまたはパルビレインAで処理したところ(図3)、[3H]ビンブラスチンの蓄積は[3H]ビンブラスチン0.18pmol/50×104細胞のベースライン値から[3H]ビンブラスチン約5pmol/50×104細胞まで増加した。 蓄積の増大は用量依存的であり、パルビレインAは、ベラパミルよりも効果的であると考えられた。
【0103】
図3は、添加されたベラパミルまたはパルビレインA(0〜40μM)の関数としてのKB-V1細胞における[3H]ビンブラスチンの蓄積の増大を示している。 DMEM培地中5.0×105個のKB-V1細胞を含む懸濁液(2ml)を、24ウェルプレートに入れ、5%二酸化炭素インキュベーター内で、一晩、インキュベーションした。 次に、[3H]ビンブラスチン(16nM)およびそこに記載した濃度のベラパミル(・)またはパルビレインA(○)を、各ウェルに添加した。 1時間インキュベーションした後、単層を洗浄し、トリプシン処理した。 細胞を計数し、懸濁液をシンチレーションバイアルに移し、計数した。 細胞を含有しないブランクプレートで観察された[3H]ビンブラスチンの量を、総結合から控除した。
【0104】
MDR1 mRNA発現のRT - PCR分析
RT-PCR試験により、MDR1 mRNA遺伝子が、親細胞系のKB-3およびCEMと比較して、多剤耐性細胞系KB-V1およびCEM/VLB100において過剰発現されることを確認した。 しかしながら、34μmまでの範囲の種々の濃度のパルビレインAで、72時間、KB-V1およびCEM/VLB100細胞を処理したところ、この濃度のMDR1 mRNAでは有意な作用は示さなかった(データ示さず)。
【0105】
MDR1発現のウエスタンブロット分析
KB-3、KB-V1、CEMおよびCEM/VLB100細胞でのMDR1発現を、ウエスタンブロット分析を用いて評価した。 予測したとおり、MDR1は親細胞系KB-3およびCEMと比較して多剤耐性細胞系KB-V1およびCEM/VLB100において過剰発現されていたが、45μMまでの範囲の種々の濃度のパルビレインAで、72時間、KB-V1およびCEM/VLB100細胞を処理したところ、発現濃度には変化はなかった(図4)。
【0106】
図4は、MDR1発現のウエスタンブロット分析を含む。 図4Aにおいては、KB-3(第1レーン)およびKB-V1細胞(第2〜11レーン)を、DMSO(第1および2レーン)または1、5、10、15、20、25、30、35および40μM(第3〜11レーン)のパルビレインAで72時間処理した。 図4Bにおいては、CEM(第1レーン)およびCEM/VLB100細胞(第2〜13レーン)を、DMSO(第1および2レーン)、または、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35および45μM(第3〜13レーン)のパルビレインAで72時間処理した。
【0107】
In vivo 中空繊維試験におけるパルビレインAの評価
予備生育試験において、無胸腺マウスに移植した中空繊維を用いて、KB-3、KB-V1またはKB-8-5細胞について適当な濃度が、7.5×105細胞/mlであることを確認した。 他の予備試験において、ビンブラスチンの250μg/kgの用量は、KB-V1細胞の生育に有意な影響を与えることなく(1%未満の生育阻害)(図5B)KB-3細胞の生育を阻害した(図5A)。
コルヒチン耐性のほかに、KB-8-5細胞はビンブラスチンと交差耐性を有することが知られているが、KB-V1細胞の場合より程度が低い(38, 39)。 In vivoの中空繊維モデルにおいて、ビンブラスチン100μg/kgでの処理によりKB-3細胞の生育は阻害されたが(図5A)、KB-8-5細胞の生育に有意な影響は観察されなかった(1.2%未満の生育阻害)(図5C)。 これらの細胞種の何れも、パルビレインA(79.2mg/kg)またはベラパミル(61.4mg/kg)に対して、0.136mmol/kgの用量では感受性を示さなかった(生育阻害は5.2%未満)(図5Bおよび5C)。 しかしながら、ビンブラスチンを、パルビレインAまたはベラパミルと共に同時投与した場合、有意な生育阻害作用(P<0.0001)が、腹腔内に移植したKB-V1(図5B)またはKB-8-5細胞(図5C)で観察された。
【0108】
図5は、NCr nu/nuマウスの腹腔内に移植したKB-3(パネルAおよびD)、KB-V1(パネルBおよびE)およびKB-8-5(パネルCおよびF)細胞で行なったin vivoの中空繊維試験をまとめたものである。 KB-3、KB-V1およびKB-8-5細胞の集密的な単層を回収し、遠心分離によりペレット化し、7.5×105個/mlの細胞密度で馴化培地中に再懸濁した。 細胞を充填した繊維を、5%二酸化炭素雰囲気下で、37℃で、一晩、6ウェルプレート中でインキュベーションし、次いで、頭尾方向にNCr nu/nuマウスの腹腔内に挿入した。 切開部を、皮膚ステープルで閉じた。 動物を、PBS(対照)、ビンブラスチン(VLB)(250μg/kg:パネルA、D、B、E;100μg/kg:パネルC、F)、ベラパミル(VP)(0.136mmol/kg)、パルビレインA(PA)(0.136mmol/kg)、ビンブラスチンとベラパミルの組み合わせ(VLB/VP)またはビンブラスチンとパルビレインAの組み合わせ(VLB/PA)(複合用法における個々の薬剤の用量は前述したとおりである)で処置した。 薬剤は、移植の3〜6日後から腹腔内注射により1日1回投与した。 第7日目に、マウスを屠殺し、繊維を取り出した。
薬剤の有効性を、TT試験により測定した細胞の実質生育率に基づいて評価した(パネルA、BおよびC)。 試験の第1日目および第7日目に体重を測定し、差を表示した(パネルD、EおよびF)。 阻害率(%)の計算値はスチューデントt検定による阻害率(%)の実測値と有意(P<0.0001)に異なっていた(n=6)。
【0109】
図6は、NCr nu/nuマウスの腹腔内に移植したKB-3(パネルAおよびC)およびKB-V1(パネルBおよびD)細胞で行なったin vivoの中空繊維試験成績をまとめたものである。
KB-3およびKB-V1細胞の集密的な単層を回収し、遠心分離によりペレット化し、5×106個/mlの細胞密度で馴化培地中に再懸濁した。 細胞を充填した繊維を5%二酸化炭素雰囲気下で、37℃で、一晩、6ウェルプレート中でインキュベーションし、次に、頭尾方向にNCr nu/nuマウスの腹腔内に挿入した。 切開部を、皮膚ステープルで閉じた。 動物を、PBS(対照)、ビンブラスチン(VLB)(250μg/kg)、ベラパミル(VP)(0.136mmol/kg)、パルビレインB(PB)(0.136mmol/kg)、パルビレインC(PC)(0.136mmol/kg)、ビンブラスチンとベラパミルの組み合わせ(VLB/VP)、ビンブラスチンとパルビレインBの組み合わせ(VLB/PB)またはビンブラスチンとパルビレインCの組み合わせ(VLB/PC)(複合用法における個々の薬剤の用量は前述したとおりである)で処置した。 薬剤は、移植の3〜6日後から、腹腔内注射により1日1回投与した。 第7日目に、マウスを屠殺し、繊維を取り出した。 薬剤の有効性は、MTT試験により測定した細胞の実質生育率に基づいて評価した(パネルAおよびB)。 試験の第1日目および第7日目に体重を測定し、差を表示した(パネルCおよびD)。 阻害率(%)の計算値は、スチューデントt検定による阻害率(%)の実測値と有意(PP<0.0001)に異なっていた(n=6)。
【0110】
皮下に移植した細胞で観察された応答の強度は、より低かった。 表5に記載のように、パルビレインAまたはビンブラスチンを単一薬剤として投与した場合には、それぞれ3.3%または1.2%の生育阻害作用が観察されたが、組み合わせて投与した場合には、阻害作用は74.7%となった。 各事例について、薬剤を単独で投与した場合に観察される阻害の総和として計算した%阻害と比較して、薬剤を同時投与した場合に増強効果が観察された。 すなわち、観察された阻害は計算値より高値であったため、両方の薬剤が有効であり、パルビレインAは、ベラパミルよりも強力な作用を示した。 すべての事例において、確立された基準(28)に基いたマウス体重には、有意な減少は観察されなかった(図5D、5Eおよび5F)。
【0111】
細胞培養は、MDR表現型を変化させることのできる物質を発見して決定する上で貴重な手段であることが判明した。 親のKB-3細胞と比較して、KB-V1細胞は、ビンブラスチンの生育阻害作用に対して200倍を超える耐性を示し(6)、MDRを退行させることのできる種々の薬剤の発見のためのモデルとして、これが用いられた(23、24)。 その結果、興味深い天然産物であるMDR退行薬剤が発見されている(25)。 例えば、パルビレインAは、公知のプロトタイプの退行剤であるベラパミルと構造的に似ているため、2種類の化合物を用いて比較試験を行った。 各事例において、パルビレインAにより媒介される応答は、ベラパミルにより媒介される応答と同等以上であることがわかった。 KB-V1細胞のほかに、パルビレインAは、KB-8-5細胞(表6)および CEM/VLB100細胞(表7)のMDR表現型も効果的に退行させた。
【0112】
以前の試験では、Pgpの過剰発現がMDRの発生の主要な原因であり、転写レベルまたはタンパク質レベルの何れかでPgpの発現を低下させることがMDRを対抗させるための一つの機序となることが示されていた(40、41)。 パルビレインAがMDR細胞のビンブラスチン感受性を増強させる機序を解明するために、培養物中のKB-V1およびCEM/VLB100細胞を用いて、MDR1 mRNAまたはタンパク質の発現を変化させるパルビレインAの能力を調べた。 種々の濃度のパルビレインAで、72時間、処理したところ、タンパク質(図5)またはmRNAの発現は有意には変化せず(データ示さず)、同様の陰性所見が、ベラパミルを用いて並行して行なった試験においても得られた(濃度範囲44μMまで)。 ベラパミルの場合、これらの結果は、24時間インキュベーションした後のKB-V1細胞において、MDR1 mRNAレベルに対する作用が限定的であったことを明らかにしたHu et al(42)の結果と合致している。
しかしながら、CEM/VLB100細胞の場合、ベラパミルで以前に観察されたPgpの発現の阻害は観察されなかった(40)。 このことは恐らくは、実験条件の相違によるものと考えられ、その理由は、Pgp発現に対するモジュレーターの作用が、細胞系およびモジュレーターに依存していることが知られていることにある(42)。 何れの場合にも、培養されたKB-V1およびCEM/VLB100細胞でのPgpの転写およびタンパク質の発現が、パルビレインAによる影響を受けないことは明らかである。
【0113】
一方で、パルビレインAは、明らかにPgpの機能的特徴を変化させた。 KB-V1細胞を0〜40μMの濃度範囲のベラパミルまたはパルビレインAで処理した場合(図4)、[3H]ビンブラスチンの蓄積は、約27倍増大した([3H]ビンブラスチン0.18pmol/50×104細胞のベースライン値から5pmol/50×104細胞まで増加)。 この蓄積の水準は、感受性細胞に近いものであり(ビンブラスチン7.1±0.17pmol/50×104細胞)、耐性細胞のビンブラスチン感受性の回復は、ビンブラスチンの細胞内蓄積の増大に起因することを示している。
【0114】
MDR細胞から得られた血漿膜は、薬剤感受性細胞由来の対応株よりも大量の抗癌剤に結合し(43)、そして、MDR細胞から単離された血漿膜小胞に結合した[3H]ビンブラスチン(23、24、32、43、44)は、Pgp媒介薬剤輸送/流出の機序を調べるためのモデルとして使用できる。 0.16μMの[3H]ビンブラスチンの存在下で0〜100μMの濃度範囲のパルビレインAまたはベラパミルを用いて多剤耐性KB-V1細胞から単離した膜小胞を処理したところ(図2)、[3H]ビンブラスチンの蓄積が約65倍に減少した(対照インキュベーションにおける[3H]ビンブラスチン5.93pmol/mgタンパク質から、パルビレインAまたはベラパミル存在下の[3H]ビンブラスチン約0.09pmol/mgタンパク質に減少)。 すなわち、ベラパミルの場合と同様、パルビレインAは、Pgpの流出機序を阻害することで、細胞内の薬剤蓄積が増大した。 相互作用の様式を特徴づけるために、[3H]ビンブラスチンの蓄積に対するベラパミルまたはパルビレインAの作用が測定されているKB-V1細胞に由来する膜小胞を用いて速度論的試験を行った。 両方の被験物質で、競合的阻害が観察され、通常はビンブラスチンにより占有されている結合部位との相互作用が示唆された。 同様の方法で、Cornwell et al(44)は、ビンブラスチン結合試験およびビンブラスチン光親和性標識試験の結果に基づいて、KB-V1細胞由来の膜小胞中の同じ部位にベラパミルとビンブラスチンが結合することを示唆した。 しかしながら、Pascaud et al(45)は、PgpのATPase活性の分析を通じて、Pgpが細胞毒性薬剤(例えば、ビンブラスチン)および退行剤(例えば、ベラパミル)に対して、同一ではないものの、相互に作用するような結合部位を有することを示唆している。 パルビレインAの作用には、独特の共通の結合部位が関与するか、または、相互に排他的であるが異なる2種類の結合部位が関与するかどうかは、現時点では明らかではない。
【0115】
有効性を説明すると思われる退行剤の構造的または物理化学的特徴を定義するための試験が行なわれている(8、46〜50)。 平面状芳香環および窒素原子が、すべてのモジュレーターが有する共通の特徴であることが示唆されている(48)。 CH2-CH2-N-CH2-CH2配列が大部分の活性化合物に観察されており、メトキシフェニル部分が退行活性を増強することがわかっている。 芳香環と塩基性窒素原子の相対的位置は、Pgp関連MDRのモジュレーターにとって重要であり(8)、リガンド−受容体の関係が示唆されている。 ベラパミルとパルビレインAは、第三級窒素、2個の芳香環、およびメトキシフェニル基を有するという点で、他のMDR退行剤が共有する特徴を有している。 ベラパミルは、Pgpと相互作用を示し、そしてMDRをモジュレートする能力にとって重要であると考えられるビンブラスチンと共通する3つのドメイン、すなわち、2個の芳香環および1個の塩基性窒素原子を有している。 これらの構造的特徴のほかに、脂質溶解性およびモル屈折力がMDRの退行において主要な役割を果たしていると考えられる(48)。 パルビレインAは、in vitroの試験において活性を示したため、中空繊維モデルを用いてさらにin vivoでの能力について調べた。 これは、癌の化学療法剤と組み合わせたMDR退行剤を評価するために、中空繊維モデルを用いた最初の報告である。 ビンブラスチンとの組み合わせにおいて、マウスの腹腔内および皮下で生育している多剤耐性腫瘍細胞の生育に作用するベラパミルまたはパルビレインAの能力を評価するために、中空繊維試験を用いた。 薬理学的に妥当である用量において、表10のデータは、腹腔内に移植されたKB-V1およびKB-8-5細胞において、ベラパミルとパルビレインAの双方が、ビンブラスチン感受性を退行させることができることを示し(P<0.0001)、これは、in vitroのデータと合致している(表6)。 しかしながら、皮下における応答は、より不明確であり(表10)、パルビレインAのみが、KB-8-5細胞で有意な退行作用(P=0.008)を示した。 ベラパミルと比較して、パルビレインAは、齧歯類の体内でより効果的に分布する可能性がある。
【0116】
あるいは、KB-8-5細胞では、パルビレインAがビンブラスチンへの耐性を退行させることに関して、ベラパミルより効果的であると考えられる。 全体として、皮下で観察された比較的弱い応答は、非効果的な薬剤の供給または血管の発生の欠如に起因すると考えられ、その理由は、中空繊維試験プロトコルでは血管形成ができないことによる(51)。 しかしながら、これらの結果は、複合薬剤試験のための中空繊維モデルの有用性を示しており、また、パルビレインAに関しては、従来のin vivoの動物モデルによる結果よりも、進歩した結果が期待できることを裏づけたものと考えられる。
【0117】
【表10】
ベラパミルおよびパルビレインBまたはC、それに、パルビレインAは三級窒素、2個の芳香環およびメトキシフェニル基、ClogP値およびMDRを退行させる能力に弱い相関を有するモル屈折力を有する点において、他のMDR退行剤にも認められる特徴を有している。
【0118】
パルビレインBおよびCもまた、in vitroの試験において期待できる活性を示したため、中空繊維モデルを用いて、さらにin vivoでの能力を調べた。 本明細書に記載したように、ビンブラスチンとの組み合わせにおいて、マウスの腹腔内および皮下内で生育している多剤耐性腫瘍細胞の生育に作用するベラパミルまたはパルビレインBもしくはCの能力を評価するために、中空繊維試験を行った。 表9のデータは、薬理学的に妥当な用量において、ベラパミルとパルビレインBまたはCの双方が、腹腔内に移植したKB-V1細胞でのビンブラスチン感受性を退行せしめたことを示し(P<0.0001)、この結果はin vitroのデータと合致している(表8)。 皮下では、微弱な応答が観察されるに過ぎず(表9)、これは恐らくは、非効率的な薬剤の供給、または、血管の発生の欠如に起因すると考えられ、その理由は、ここで用いた中空繊維試験プロトコルが血管形成ができないことによる(51)。
【0119】
現在の研究で提示されている第一の問題点は、パルビレインA、BおよびCのin vivoでの活性である。 すでに解明されている通り、これらの薬剤の各々が多剤耐性を退行させる能力は、同等であった。 したがって、各アルカロイドが、C-6位にトランス-3,4-トリメトキシシンナモイル単位を有することから、この化合物が、この種の化合物のクラス内では活性に関連する重要な構造的要素であると考えられ、また、C-3およびC-7における置換基の役割はより小さいものと考えられる。 全体として、パルビレインA、BおよびCは、ベラパミルと同等以上の活性を有するPgpの有効な阻害剤である。
【0120】
後述する通り、本発明の多剤耐性阻害剤の哺乳類への投与にはいくつかの潜在的利点があり、例えば、化学療法薬または抗生物質を用いた治療法を改善することができる。
【0121】
多剤耐性阻害剤は、そのまま化合物として治療目的に投与できるが、阻害剤を医薬組成物または製剤として投与するのが好ましい。 したがって、本発明は、例えば、多剤耐性阻害剤または製薬上許容しうるその塩またはプロドラッグを製薬上許容しうる一種以上の担体、そして、場合によっては、他の治療用および/または予防用の成分をさらに含有した医薬製剤を提供する。 担体は、製剤の他の成分と適合し、また、投与対象に有害ではないという意味において「許容可能」なものである。
【0122】
治療上必要な多剤耐性阻害剤の量は、治療すべき症状、モジュレーションが望まれる期間、ならびに患者の年齢および症状により異なり、最終的には担当医師により決定される。 しかしながら、一般的には、成人のヒトの治療に用いられる用量は、典型的には、一日当たり0.001mg/kg〜200mg/kgの範囲である。
好ましい用量は、一日当たり約1μg/kgから約100μg/kgまでである。 この所望の用量は、単回用量として、あるいは、例えば、1日当たり2、3、4回以上の小分けにして、適切な投与間隔を置いて、多回用量で好都合に投与できる。
Pgp活性のモジュレーションは、一時的な場合があるため、多回用量が所望され、あるいは必要となる場合がよくある。
【0123】
「治療上有効」用量とは、所望の作用を達成する化合物の量を指す。 そのような化合物の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対して致命的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を測定するための細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定できる。 毒性および治療効果との間での用量比は、治療指数であり、これはLD50とED50との間の比として表される。 高い治療指数を示す化合物が好ましい。 このようなデータから得られるデータは、ヒトにおいて使用される投与量の範囲を設定するために使用することができる。 このような化合物の投与量は、好ましくは毒性がほとんどまたは皆無のED50を含む循環濃度の範囲内にある。 投与量は、使用される剤型および使用される投与経路によって上記範囲内で変動する。
【0124】
本発明の製剤は、標準的な方法、例えば、経口、非経口、舌下、経皮、経直腸、経粘膜、局所、吸入または口腔内投与により投与できる。 非経口投与の例として、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、硬膜下腔内および関節内投与があるが、これらに限定されない。
【0125】
獣医用としては、多剤耐性阻害剤またはその非毒性の塩もしくはプロドラッグを、通常の獣医学的手順に従って、適当な許容可能な製剤として投与する。
獣医師は、特定の動物に対して最も適切な投与方法および投与経路を容易に決定できる。
【0126】
多剤耐性阻害剤を含有する医薬組成物は、従来の方法で処方された錠剤またはトローチ剤の形態にすることができる。 例えば、経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、従来の賦形剤、例えば、バインダー(例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、澱粉またはポリビニルピロリドンの粘漿剤)、充填剤(例えば、乳糖、砂糖、微結晶セルロース、コーンスターチ、リン酸カルシウムまたはソルビトール)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ)、錠剤崩壊剤(例えば、馬鈴薯澱粉またはナトリウム澱粉グリコレート)または水和剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を含有することができる。 錠剤は、当該分野で公知の方法によってコーティングすることができる。
【0127】
あるいは、多剤耐性阻害剤は、経口投与用の液体製剤、例えば、水性または油性の懸濁液、溶液、乳液、シロップまたはエリキシルに配合することができる。 さらにまた、これらの化合物を含有する処方は、使用前に水または他の適当な溶媒で調製するための乾燥品として提供することもできる。 このような液体製剤は、従来の添加剤、例えば、懸濁剤、例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/砂糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、および水添可食脂肪;乳化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアカシア;非水性溶媒(可食油脂を含む)、例えば、アーモンド油、分画カカオ脂、油性エステル類、プロピレングリコールおよびエチルアルコール;および、保存料、例えば、メチルまたはプロピルp-ヒドロキシベンゾエートおよびソルビン酸を含有してよい。
【0128】
このような製剤はまた、例えば、従来の坐剤基剤、例えば、カカオ脂または他のグリセリドを含む坐剤に処方することもできる。 吸入のための組成物は、一般的には、乾燥粉末として投与できる溶液、懸濁液または乳液の形態で、または、ジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロトリフルオロメタンのような従来の高圧ガスを用いたエアロゾルの形態で提供することもできる。 典型的な経皮処方は、水性または非水性のベヒクル、例えば、クリーム、軟膏、ローションおよびペーストを含み、または、医療用ギプス、パッチまたは膜の形態である。
【0129】
さらにまた、本発明の組成物は、注射または連続注入による非経口投与用に製剤することができる。 注射または連続注入が、投与の好ましい方法であると考えられる。 注射のための製剤は、油性または水性の溶媒中の懸濁液、溶液または乳液の形態であることができ、製剤補助剤、例えば、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤を含有することができる。 あるいは、有効成分は使用前に適当な溶媒(例えば、発熱物質非含有滅菌水)で再調製するための粉末形態とすることができる。
【0130】
本発明の組成物はまた、デポー製剤に処方できる。 このような長時間作用性の製剤は、(例えば、皮下または筋肉内に)移植することにより、または、筋肉内注射により投与することができる。 したがって、本発明の化合物は、適当な重合体または疎水性の材料とともに(例えば、許容できる油中の乳液として)、イオン交換樹脂とともに、または難溶性の誘導体として(例えば、難溶性の塩として)処方することができる。
【0131】
多剤耐性阻害剤はまた、癌およびその他の症状および疾患状態の治療に有用な他の治療薬と組み合わせて使用することができる。 すなわち、本発明の他の実施態様によれば、治療用の多剤耐性阻害剤と、治療上有効な第二の薬剤との組み合わせを提供する。
【0132】
多剤耐性阻害剤は、Pgp活性のモジュレーションが有用である症状の治療において有効な第二の薬剤と共に同時投与するための医薬の調製時に使用することができる。 さらに、多剤耐性阻害剤は、このような症状に対して有効な第二の化合物を用いた補助的治療のための医薬の調製時に使用することができる。多剤耐性阻害剤と組み合わせて使用するための公知の第二の治療薬の適切な用量は、当業者であれば、容易に決定できるものである。
【0133】
例えば、治療用の多剤耐性阻害剤は、化学療法のような癌治療法と組み合わせて使用することができる。 特に、多剤耐性阻害剤として、化学療法剤、例えば、シスプラチン、ドキソルビシン、ビンカアルカロイド、タキソール、シクロホスファミド、イフォスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メクロレタミン、マイトマイシン、デカルバジン、カルボプラチン、チオテパ、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、エスペラマイシンA1、プリカマイシン、カルムスチン、ロムスチン、タウロムスチン、ストレプトゾシン、メルファラン、ダクチオマイシン、トポテカン、アドリアマイシン、カムプトテシン、インターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン2、イリノテカン、デセタキセル、およびプロカルバジン、そして、その治療上有効な類縁体、プロドラッグおよび誘導体等と組み合わせたものが使用できる。 多剤耐性阻害剤はまた、病原体、ウィルス、寄生虫または他の微生物学的ベクターにより誘発される症状の治療のために使用される薬剤、例えば、抗感染症薬、例えば、抗生物質と組み合わせて使用できる。
【0134】
本発明の多剤耐性阻害剤と共に使用できる別の化学療法剤としては、アルキル化剤、抗代謝剤、ホルモンおよびその拮抗剤、放射性同位体、抗生物質ならびに天然産物およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。 例えば、本発明の多剤耐性阻害剤は、抗生物質、例えば、ドキソルビシンおよび他のアントラサイクリン類縁体、ナイトロジェンマスタード、例えば、シクロホスファミド、ピリミジン類縁体、例えば、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ヒドロキシ尿素、タキソールおよびその天然および合成の誘導体等と共に投与することができる。 他の例として、阻害剤は、ロイプロリドまたはゴセレリン(LH-RHの合成ペプチド類縁体)と組み合わせて投与することもできる。 本発明の方法において有用な化学療法剤の例を、以下の表に示す。
【0135】
【表11】
多剤耐性阻害剤はまた、抗感染症剤と組み合わせて使用することができる。抗感染症剤は、細菌、ウィルス、寄生虫または他の微生物学的または微視的ベクターにより誘発される疾患または症状に罹患した個体を治療するために使用される薬剤である。
【0136】
使用可能な抗生物質として、スルホナミド類、例えば、スルファセタミドナトリウム、スルファサイクリン、スルファジアジン、スルファベンズアミド、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルフェメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニラミド、スルファピリジン、スルファサラジンおよびスルフィソキサゾール;ペニシリン、例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、アモキサシリン、アンピシリン、バカンピシリン、シクラシリン、カルベニシリン、インダニルカルベニシリン、メロシリン、ピペラシリンおよびトリカルシリン;セファロスポリン、例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファクロル、セファマンドール、セフメタゾール、セフォニシド、セフォラニド、セフォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフロキシン、ロラセフ、セフィキシム、セフォペラゾン、セファタキシム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、またはモキサラクタム;アミノグリコシド、例えば、硫酸アミカシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸ネオマイシン、硫酸ネフィルミカン、硫酸ストレプトマイシンおよびトブラマイシン;マクロライド、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、スピラマイシンおよびトロレアンドマイシン;ポリペプチド、例えば、バシトラシン、硫酸カプレオマイシン、コリスチメテートナトリウム、硫酸コリスチン、硫酸ポリミキシンB、およびバノマイシン;テトラサイクリン、例えば、塩酸クロロテトラサイクリン、塩酸デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびテトラサイクリン;フルオロキノロン、例えば、塩酸シプロフロキサシン、エノキサシン、塩酸ロメフロキサシン、ノルフロキサシンおよびオフロキサシン;ならびに種々の抗生物質、例えば、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、シクロセリン、フシデートナトリウム、リタンピン、塩酸スペクチノマイシン、シノキサシン、クロファジミン、ダプソン、塩酸エタンブタール、イソニアジド、ニトロフラントイン、ピラジナミド、リファブチンおよびトリメトプリムが包含されるが、これらに限定されない。 その他のクラスの抗細菌剤として、抗マラリア剤および抗カビ剤などがある。 抗ウィルス剤、例えば、アシクロビル、シタラビン、ジダノシン、ホスカルネット、ゲンシクロビル、イドクスリジン、インターフェロン、メチサゾン、リファンピン、スラミン、ビダラビン、ザルシタビンおよびジドブジンも、使用することができる。 当業者に周知のその他の抗感染剤、ならびに抗感染剤の塩、誘導体およびプロドラッグも、使用することができる。
【0137】
上記した組み合わせは、単一の医薬品製剤の形態での使用について例示しているに過ぎず、したがって、上記した組み合わせを製薬上許容しうる希釈剤または担体と共に含有する医薬組成物は、本発明の別の実施態様を構成するものである。
【0138】
したがって、上記した組み合わせの個々の成分は、同一または異種の医薬品製剤から順次または同時に投与することができる。 多剤輸送モジュレーターの場合のように、第2の治療薬を何れかの適当な経路、例えば、経口、口腔内、吸入、舌下、直腸、膣内、経尿道、鼻孔内、局所、経表皮(すなわち、経皮)または非経口(静脈内、筋肉内、皮下および冠動脈内)投与により投与することができる。
【0139】
ある実施態様においては、多剤耐性阻害剤および第2の治療薬を、同一または異種の医薬組成物を、同じ経路で投与する。 しかしながら、他の実施態様においては、治療用の多剤耐性阻害剤および第2の治療薬の一方が、同じ投与経路を用いることが不可能であるか、または、好ましくない場合がある。 当業者は、単一の医薬組成物または異種の医薬組成物の組み合わせの何れについても、各治療薬の最良の投与方式を熟知している。
【0140】
本明細書に記載した本発明の多くの修正または変更が、本発明の趣旨と範囲を逸脱せずに行われようことは自明であるので、したがって、添付の請求の範囲に記載の限定のみが、本発明に付加されるべきである。
【0141】
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【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】pmol単位の[3H]ビンブラスチン/タンパク質(mg)に対するベラパミルおよびペパルビレインAの濃度のプロットを含む図である。
【図2】ビンブラスチンの蓄積阻害剤の速度論的分析を示す、1/pmol ビンブラスチン/分/タンパク質(mg)に対する 1/ビンブラスチン(μM-1)のプロットを含む図である。
【図3】増大したビンブラスチンの蓄積を示すpmol単位の[3H]ビンブラスチン/500,000個のKB-VI細胞に対するベラパミルおよびペパルビレインAの濃度のプロットを含む図である。
【図4】KB-3、KB-VI、CEMおよびCEM/VLB100細胞のMDR1発現のウエスタンブロットを含む図である。
【図5】相対的な細胞生育率(%)および体重変化を示すin vivo繊維試験の結果を示す棒グラフである。
【図6】相対的な細胞生育率(%)および体重変化を示すin vivo繊維試験の結果を示す棒グラフである。
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2001年4月12日に出願された米国仮特許出願第 60/283,394 号の利益を請求するものである。
【0002】
政府関与に関する陳述
本願発明は、メリーランド州ベセスダに所在の米国立衛生研究所(NIH)から付与された研究承認番号第 CA52956 号によって、その一部が支援されている。
【0003】
発 明 の 分 野
本発明は、エリスロキシルム パルビレイ(Erythroxylum pervillei)由来のトロパンアルカロイド多剤耐性阻害剤、および治療処置におけるアルカロイドの使用方法に関する。
【0004】
具体的には、本発明は、パルビレインA〜FおよびパルビレインA N-オキシド、とりわけ、パルビレインA、BおよびC、そして、癌のような疾患を治療するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0005】
発 明 の 背 景
癌の化学療法に関わる重大な問題は、治療の過程において多剤耐性(MDR)腫瘍細胞が発生することである。 哺乳類細胞においてMDR表現型を獲得する重要な機序は、Pgpと称される膜糖蛋白の増強された発現である(参照文献1)。 分子量170kDaのPgpは、MDR1遺伝子によりコードされている。
【0006】
Pgpは、標的癌細胞から種々の疎水性抗腫瘍薬を急速に押し出し、これにより、薬剤が細胞毒性作用を発揮することを妨害するエネルギー依存性の多剤膜輸送物質として機能する。 多剤耐性突然変異細胞系を用いた初期の生理学的および薬理学的研究は、流出の増大または流入の低下による細胞内の薬剤蓄積の低下耐性に関するものであった(1)。流出ポンプは、ATP依存性の輸送系であるため(2)、ATP依存性の薬剤輸送の良好な阻害剤である薬剤は、耐性細胞からの疎水性薬剤の流出を阻害し、細胞内蓄積を増大させるはずである。 従って、種々の薬剤がMDRを克服ないしは少なくとも部分的に回避すると報告されている(3)。
【0007】
第一世代のモジュレーターは、当初は他の治療適応症のために開発された(4)。 この範疇に含まれるものは、カルシウムチャンネルブロッカー、例えば、ベラパミル(5)、免疫阻害剤シクロスポリンA(6)、抗高血圧剤レセルピンおよびヨヒンビンの類縁体(7)、神経弛緩剤トリフルロペラジン(4)および抗エストロゲン剤、例えば、タモキシフェン(1)である。 第二世代のモジュレーターは、第1世代の化合物の薬理学的活性を欠いており、通常は、より高いPgp親和性を有するものとして開発された。 これらの薬剤にはベラパミルのR異性体(8)、シクロスポリンDの非免疫阻害性類縁体、SDZ PSC-833(6)、および他のもの、例えば、MS-209(9)、S-9788(10)、GF120918(11)およびLY335979(4)が包含される。
【0008】
これらの薬理学的物質の多くについて、in vitroのモデルでは完全に薬剤耐性を克服することがわかっているものの、in vivoの系におけるこのような現象を示す報告の数は限られている(12〜15)。 化学物質感受性付与剤のin vivoの活性が欠如すると、主として、重篤な副作用を起こすことなく活性用量を維持することについて問題が生じる(16)。 すなわち、臨床第一相および第一/二相試験は、多くの場合、それらのプロトタイプのMDR阻害剤に対する限定的な寛容性によって、患者において潜在的に活性な濃度の達成が妨げられ、良好に実施しえなかった(11、17)。
【0009】
例えば、ベラパミルによるMDRの退行を完全ならしめるためには、大部分の細胞培養モデルにおいて約10μMの濃度を必要とするが、1μMより高い血漿中濃度は房室ブロックを誘発する(5、18)。 免疫阻害作用および腎毒性は、シクロスポリンAの臨床有用性を制限し(6)、小脳性運動失調および高ビリルビン血症のような毒性が、SDZ PSC-833によってもたらされる(19、20)。 またさらに、シクロスポリンA、ベラパミルおよびSDZ PSC-833はドキソルビシン、エトポシドおよび他の腫瘍溶解薬の薬物動態に対して深刻な作用を有する(4)。
【0010】
最近になって報告されている通り(21)、MDRモジュレーターであるバルスポダイが、AML、多発性骨髄腫および卵巣癌の治療に関わる第三相無作為治験において検討中である。 さらにまた、オントゲンコーポレーションはMDR退行剤であるOC144-093を用いて実施した第一相試験の終了を発表し(22)、経口投与を検討する第二相試験を実施している。
【0011】
天然産物の薬剤の発見プログラムの一部には、多剤耐性を退行させる植物抽出液の能力をモニタリングすることが含まれている。 標準的な細胞生存性の試験により、薬剤感受性ヒト類表皮癌の親KB-3細胞およびPgp関連多剤耐性KB-V1細胞を用いて、細胞生育を50%阻害するのに必要な植物抽出液または化合物の用量(IC50)を側定している。 植物抽出液または化合物が多剤耐性を退行させる潜在能力を調べるために、KB-V1細胞を、ビンブラスチンの存在下(1μg/ml)または非存在下で、種々の濃度の植物抽出液または化合物で処理する。 この濃度のビンブラスチンは、KB-3細胞に対して致命的なものであるが、KB-V1細胞の生育には影響しない。 したがって、KB-3細胞は非特異的細胞毒性と選択的MDR拮抗とを区別するための対照として機能する。
【0012】
試験には、96ウェルマイクロプレート法を用い、そして、3000種を超える植物抽出液を試験している。 活性本体のバイオアッセイに基づく単離モデルを用いて、4種の穏やかなMDR阻害剤、すなわち、コロナリジン、コノジュラミン、ボアカミンおよび(−)-ロエメリンが同定されている(23、24)。
【0013】
従って、本発明は、エリスロキシルム パルビレイから単離され、従来の阻害剤に関わる問題点を克服する多剤耐性阻害剤に関するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発 明 の 概 要
本発明は、トロパンアルカロイド多剤耐性阻害剤および治療用途におけるその使用に関する。 具体的には、本発明は、エリスロキシルム パルビレイに由来するトロパンアルカロイド多剤耐性阻害剤、および、その阻害剤の治療上の使用に関する。 本発明はまた、エリスロキシルム パルビレイ抽出液から単離および精製されたものではなく、本明細書に開示したようにして合成された阻害剤に関する。
【0015】
したがって、本発明の一態様は、エリスロキシルム パルビレイ由来の多剤耐性阻害剤、および多剤耐性阻害剤の有効量を細胞または組織に接触させることで、細胞または組織中のP-糖蛋白(Pgp)の流出能をモジュレートする方法における阻害剤の使用をも提供する。
【0016】
本発明の他の態様によれば、Pgpの流出能力をモジュレートするエリスロキシルム パルビレイ由来の多剤耐性阻害剤を細胞または組織に接触させることで、細胞または組織における治療薬の活性を強化する方法も提供する。
【0017】
特に、細胞内における化学療法薬または抗生物質のような治療薬を保持するために、他の化合物については正常な流出能を有したまま、Pgpの流出能を選択的に阻害することができる。
【0018】
本発明のさらに別の態様によれば、(a)疾患または症状の治療において有用な治療薬、および(b)エリスロキシルム パルビレイ由来であって、治療薬に関してPgpの流出能を選択的に阻害することのできる化合物、を含む疾患または症状を治療するための改善された組成物を提供することにある。 例えば、疾患または症状の各々は癌または感染症であり、また、治療薬は化学療法薬または抗生物質である。
【0019】
本明細書においては、「感染症」とは細菌、ウィルス、寄生虫または他の微生物による感染症、そして、それより生じる疾患および症状と定義される。
【0020】
本発明の他の態様によれば、(a)パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、パルビレインA N-オキシドおよびそれらの混合物からなるグループから選択される化合物、および(b)薬学的に許容しうる担体、を含む薬学的組成物が提供される。
【0021】
本発明の他の態様によれば、(a)梱包された抗癌化合物、および(b)パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、パルビレインA N-オキシドおよびそれらの混合物からなるグループから選択される化合物と該抗癌剤の患者への投与方法を記載した添付書類、を含む製品が提供される。 この製品は、梱包されたパルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、またはパルビレインA N-オキシドを任意に含めることができる。
【0022】
本発明の上記態様およびその他の態様は、後出の限定を意図しない好ましい実施態様の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
P-糖蛋白媒介薬剤流出は、癌の化学療法に対する低い応答に関連する多剤耐性(MDR)表現型をもたらす場合がある。 本発明の重要な特徴によれば、MDRを克服する極めて強力な新規のトロパンアルカロイド芳香族エステルが、エリスロキシルム パルビレイ バイロン(コカノキ科)の根茎のクロロホルム可溶性抽出液から得られた(25)。 エリスロキシルム パルビレイ バイリ(コカノキ科)は、マダガスカルで採取した。 この植物は、地元では「Tsivano」の名称で知られており、いくつかの民族伝承的な用途、すなわち、魚毒として、そして、腹痛および腫瘍の治療のために用いられている。
【0024】
植物コカノキ属(コカノキ科)の特定の種は、無月経、出血、腎臓病、インフルエンザ、副鼻腔炎、胃の不調を治療するため、および疲労、空腹感に対処するため、そして刺激剤として、伝統的医療において使用される(52〜54)。 一部のコカノキ種の抽出液は、生物学的活性、例えば、抗炎症作用、沈痛作用および抗微生物作用を示している(54、55)。トロパンアルカロイドは、エリスロキシルムに存在することがわかっており、その一部は、現在、医薬に用いられている(56〜58)。 しかしながら、潜在的な抗癌剤としてのその活性は調べられていない。
【0025】
エリスロキシルム パルビレイから単離した化合物をパルビレインと決定し、生物活性に基づく分類の結果、エリスロキシルム パルビレイのクロロホルム抽出により得られたトロパンアルカロイドとされている。 粗製の植物材料を原料として、パルビレインAは0.042%w/wの収率で得、パルビレインBおよびCもまた良好な収率で得た(それそれ0.035%および0.045%w/w)。
【0026】
パルビレインが、培養された多剤耐性KB-V1およびCEM/VLB100細胞のビンブラスチン感受性を回復させることを見出し、例えば、パルビレインAの場合のIC50値はそれぞれ0.36および0.02μMであった。 同様に、コルヒチンに対するKB-8-5細胞の化学物質感受性はパルビレインAの場合にIC50が0.61μMまで回復した。 パルビレインBおよびCが、培養した多剤耐性KB-VI細胞のビンブラスチン感受性を回復させることを見出し、各化合物についてIC50値は0.17μMであった。
【0027】
この応答の機序を、多くのモデル系を用いて評価した。 最初に、多剤耐性KB-V1およびCEM/VLB100細胞を45μMまでのパルビレインAと共に72時間かけてインキュベートしたところ、MDR1 mRNAの逆転写PCRに基づく分析によって示されたMDR1の転写、それにウエスタンブロットにより示されるPgpの濃度の何れにも、有意に影響しなかった。 単離した多剤耐性KB-V1細胞膜小胞で観察した[3H]ビンブラスチンのATP依存性結合は用量依存的にパルビレインAにより阻害され、速度論的分析によれば、Ki値7.3μMでビンブラスチン結合に関して競合的阻害を示した。 この作用と符合して、40μMのパルビレインAの存在下では、[3H]ビンブラスチンの細胞内蓄積は、0.18pmol[3H]ビンブラスチン/50×104細胞から約5pmol[3H]ビンブラスチン/50×104細胞に増大した。
【0028】
本明細書に記載の通り、パルビレインA、BおよびC、または他のパルビレインがMDR表現型を退行させる機序の一部は解明されている。 しかしながら、in vitroモデルで信頼できると考えられる癌の治療法は、固形腫瘍に対しては、有効性が低い場合が多い。治療効果の予備的指針となる一つの方法が、最近、Hollingshead et al.,によって報告されている(26)。 細胞培養に現在用いられているヒト腫瘍細胞株の大部分は中空糸内で成育し(27)、異種の固形腫瘍モデルを形成することができる。 従ってヒト腫瘍細胞を含有する半透過性の中空糸を宿主マウスの腹腔内または皮下内の区画に移植し、マウスを目的の被験物質で治療する。 宿主への毒性応答を媒介する能力に対する細胞生育を阻害する能力を測定することにより、費用効果的および時間効果的な方法で治療効果を予備的に推定することができる(28)。 このモデルは、従来の化学療法薬と組み合わせたMDR退行剤の評価のために用い、そして、パルビレインA、BおよびCに関する結果を得た。
【0029】
従って、上記応答の潜在的関連性を探索するために、KB-V1またはKB-8-5細胞を中空糸に充填し、NCr nu/nuマウスに移植した。 細胞の生育はビンブラスチンまたはパルビレインA、BまたはCを単一の薬剤として投与した場合には有意に阻害されなかったが、組み合わせて使用した場合はパルビレインAで75%まで、そしてパルビレインBおよびCで77.5%までの阻害が観察された。 ベラパミルの等モル用量は、有効性がより低かった。これらのデータは、パルビレインA、BおよびCは、P-糖蛋白の効果的な阻害剤であることを示す。
【0030】
本発明の重要な特徴によれば、マダガスカルの植物であるエリスロキシルム パルビレイ バイリ(コカノキ科)のクロロホルム可溶性抽出液を、抗新生物剤ビンブラスチン(VLB)の存在下で評価したところ、多剤耐性ヒト癌細胞株(KB-V1)に対して顕著な選択的阻害活性を示した。 精製をモニタリングするために、この細胞株を用いてクロマトグラフィー分画し、9種のトロパン芳香族エステルアルカロイドを単離し、その構造を決定した。
【0031】
これらの化合物の7種は新規物質であり、「パルビレインA〜F」および「パルビレインA N-オキシド」と命名した。 これら7種の新規化合物の単離および構造決定のために用いた方法は後述する。 同様にして得られた2種の既知化合物の1つであるトロパン-3α、6β、7β-トリオール3-フェニルアセテートの単結晶X線回折についても記載する。 パルビレインA〜F、パルビレインA N-オキシドおよびベラパミルの構造を、以下に示す。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
パルビレインを、好ましい多剤耐性(MDR)表現型の阻害剤として、ベラパミル、シクロスポリンAおよびGR120918{N-{4-[2-(1,2,3,4-テトラヒドロ-6,7-ジメトキシ-2-イソキノリニル)-エチル]-フェニル}-9、10-ジヒドロ-5-メトキシ-9-オキソ-4-アクリドンカルボキサミドを含む数種類の標準的なMDR阻害剤と比較した。 パルビレインA〜Cは特に強力であり、MDR阻害剤の新しい化学型であった。 これらの新しい天然産物は、薬効の改善、毒性の低減および/または望ましくない付随的な薬理学的作用の低減のような他のMDR阻害剤をも凌ぐ利点を示す。
【0040】
パルビレインを予備的な、そしてより焦点を絞った生物学的試験の両方に付した。
例えば、表3〜5にはそれぞれ、以下の生物学的実験、すなわち、ヒト腫瘍細胞パネルにおける上記化合物のin vitro細胞毒性、卵巣癌細胞株における多剤耐性の阻害、および米国立癌研究所において入手可能ないくつかの細胞系におけるin vitroの多剤耐性のモジュレーションをまとめている。 これらの実験結果として、いくつかのパルビレインは、ビンブラスチンの存在下で多剤耐性細胞系(KB、口腔類表皮細胞)に対して実質的な選択性を示し(表8)、パルビレインBおよびCは、アクリドンカルボキサミド多剤耐性(MDR)モジュレーターGR120918に匹敵する力価で、多剤耐性ヒト卵巣腺癌(SKVLB)細胞系において薬剤耐性を退行させ(表4)、そして、パルビレインB〜DおよびFは、標準物質(DINIB)の細胞毒性の増大において、ベラパミルおよびシクロスポリンAに匹敵する力価を示した(表5)。
【0041】
パルビレインAについてさらに別の生物学的評価を行なったところ、パルビレインAの多剤耐性の退行に対する作用は、KB-V1およびKB-V-8細胞(表6)およびCEM/VLB100細胞において、ベラパミルの作用とは対照的であった(表7)。 NCI中空繊維モデルを用いて行なったin vivo試験において、KB-V1およびKB-8-5細胞を中空繊維に充填し、NCr nu/nuマウスに移植した(表10および図5)。 単一の薬剤としてビンブラスチンまたはパルビレインAを投与した場合、細胞生育は有意には阻害されなかったが、組み合わせて使用した場合には75%までの阻害が観察された。 これらのデータは、パルビレインAが、P-糖蛋白の効果的な阻害剤であることも裏付けている。 パルビレインAの生物学的活性は極めて高かった。今回始めて、中空繊維モデルを複合投与方法と共に用いることにより多剤耐性(MDR)表現型の退行が明らかにされた。 同様の陽性所見が、パルビレインBおよびCに関する中空繊維試験においても得られた。
【0042】
本発明において、E. pervilleiのクロロホルム可溶性抽出液は、ビンブラスチン(VLB)の存在下で多剤耐性(MDR)KB-V1細胞系の生育を有意に阻害するが、VLB非存在下でのKB-V1細胞や正常なKB細胞に対する細胞毒性は非常に低い値であった。 口腔表皮癌(KB-V1)細胞を用て多剤耐性を退行させる能力を追跡することによって、9種のトロパンアルカロイド芳香族エステル(化合物1〜9)を、エリスロキシルム パルビレイ(コカノキ科)の根茎から単離した。 7種(すなわち、化合物3〜9)の新規の構造を含む全ての単離物を、ヒト癌細胞系のパネルに対して評価した。 アルカロイド3および5〜9は、ビンブラスチンの存在下で評価したKB-V1細胞において最大の活性を示し、これらの化合物がP-糖蛋白の強力なモジュレーターであることを示していた。 これを裏付ける結果が、ヒト卵巣腺癌(SKVLB)細胞およびNCI腫瘍パネルの数種の細胞系を用いて、アドリアマイシンの存在下で評価した相乗作用試験においても得られた。 化合物の構造は、分光分析法を用いて決定した。 単結晶X線分析を、モノエステル、トロパン-3α、6β、7β-トリオール3-フェニルアセテート(化合物1)に対して実施した。
【0043】
とりわけ、活性に基づいた分画によって、7種の新規化合物、パルビレインA、パルビレインA N-オキシドおよびパルビレインB-F(化合物3〜9)を含む9種のトロパンアルカロイド芳香族エステル(化合物1〜9)が単離された(チャート1)。 これらの化合物を単離し、同定し、構造決定し、そして、それらの細胞毒性活性および多剤耐性モジュレーターとしてのその作用を測定した。
【0044】
チャート1
エリスロキシルム パルビレイより単離したトロパンアルカロイド
【0045】
【化9】
E. pervilleiの風乾した粉末根茎をメタノールで抽出し、溶媒を除去した後、残存物を水性メタノール(9:1)に懸濁し、ヘキサンで洗浄した。 次に、水性メタノール可溶性画分を、クロロホルムで分配した。 クロロホルム可溶性抽出液は、VLB存在下で評価したビンブラスチン耐性KB(口腔表皮癌腫)細胞系KB-V1に対して有意な阻害活性を示した(KB-V1+、ED505.4μg/ml)。 次に、残存物を、一連の細胞毒性に基づく酸化アルミニウムカラムクロマトグラフィー精製工程に付し、このアッセイによって分画をモニタリングして、9種のアルカロイド(すなわち、化合物1〜9)を得た。
【0046】
化合物1および2を、公開されているデータと比較して、既知のアルカロイドであるトロパン-3α, 6β, 7β-トリオール3-フェニルアセテート(59)および1αH,5αH-トロパン-3α-イル3, 4, 5-トリメトキシベンゾエート(60)と同定した。 化合物3〜9は異なるアシル置換基を有する新しいトロパンアルカロイドであり、その構造を、1H-、13C-、一次元選択的INEPTおよび2D NMR分光分析法で、細部にわたって確認した。
【0047】
単結晶X線分析を、メタノールから白色針状結晶とした化合物1に対して実施し、これによりNメチル基の立体化学を明らかにした。 最終R値は6%であり、良好なフィット1.22となった。 この化合物のNメチル基は立体的であった。
【0048】
化合物3を、高分解能電子衝撃質量スペクトル分析(HREIMS)により測定したところ、C30H37NO11の分子式を有していた。 そのIRスペクトルの吸収帯は3500(OH)、1711(エステル)、1642(α、β不飽和C=O)、1585(芳香環C=C)、1220および1128cm-1(C−O)であった。 化合物3の1H-NMRスペクトルでは、C-3、C-6およびC-7位で3置換されたトロパンアルカロイド骨格の特徴的な共鳴が観察され、シグナルはそれぞれ、δ5.37(1H, br t、ca.J=4.5 Hz, H-3b)、δ5.66(1H, dd, J=6.9, 2.9 Hz, H-6a)およびδ4.77(1H, d, J=6.9 Hz, H-7a)(表1)であった(59)。 低磁場の化学シフトおよびH-3シグナルの多重度は、C-3が立体配置中にアシル部分を有することを示していた(59-61)。
H-6αおよびH-7αの化学シフトの上記したカップリング定数は、C-6およびC-7位におけるexoの置換基の存在に該当し、H-6およびH-7の低磁場シフトは明らかに、それぞれC-6およびC-7におけるアシル部分およびヒドロキシル部分の置換を示していた(61)。 δ2.62(3H)における一重線はN-CH3基に帰属し、H-1およびH-5はδ3.27(2H)の幅の広い1重線として現れ、H-2およびH-4の共鳴が、δ2.37(2H, m, H-2axおよびH-4ax)およびδ1.74(2H, br d, J=12.6 Hz, H-2eqおよびH-4eq)に観察された(表1)。
化合物3の脂肪族炭素の13C-NMRの特徴もまた、C-3、C-6、C-7での3置換トロパン核と合致しており、シグナルは、δ67.5(C-3),δ77.7(C-6)およびδ75.3(C-7)であった。
δ26.4およびδ26.3の共鳴は、それぞれC-2およびC-4に帰属しており、次いで、C-1およびC-5のシグナルは、65.8および62.7ppmに現れ、最後に、N-CH3のシグナルはδ34.6(61、62)において共鳴していた(表2)。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
化合物3のアシル部分を、3,4,5-トリメトキシシンナモイル(Tmc)および3,4,5-トリメトキシベンゾイル(Tmb)単位と同定し、二つのシグナルδ6.45(1H, d, J=15.8 Hz)および7.64(1H, d, J=15.8 Hz)は、シンナモイル残基のトランスオレフィンプロトンに帰属しており、2つの一重線δ6.76(2H)および7.35(2H)は、それぞれシンナモイルおよびベンゾイル部分のオルト芳香族プロトンによるものである(61)。 18H(6x-OCH3, δ3.89-4.00)のシグナルは、各単位において対称に分布させられた三個のメトキシル置換基の存在を裏付けていた(61、63)。 これら置換基の同定のさらなる裏付けを、EIMSフラグメントm/z 375(M+-TmbA, 6%)およびm/z 349(M+-TmcA 10%)から得た(53、61、63)。 TmcおよびTmb単位のNMRデータ(表1および2)は文献記載のものと合致していた(61、63、64)。
TmcおよびTmb部分の核との連結位置を、いくつかの選択的INEPT NMR実験によって測定した(65)。 すなわち、H-6(δ5.66;3JCH=6 Hz)の放射は、166.5ppmにおけるカルボニル炭素シグナルを増強し、これは同様にδ7.64/6.45におけるビニルプロトン(H-β/α)の選択的放射により増強され、Tmc残基がC-6に結合していることを示していた。 同様に、Tmb部分は、H-3(δ5.37)の放射によりC-3に位置し、Tmb芳香族プロトン(δ7.35)は、δ164.8においてカルボニル炭素シグナルの対応する増強を示している。 Nメチル基を化合物1と同様な立体性とした。 すなわち、化合物3は、新規のトロパンアルカロイド3α-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7β-ヒドロキシトロパンであると決定され、パルビレインAと命名した。
【0051】
化合物4のNMRスペクトルデータは、パルビレインA(化合物3)のものと似ており、H-3βのプロトンシグナルはδ5.36(1H, br t, J=4.5 Hz)、H-6aはδ5.97(1H, d, J=6.9 Hz)、H-7aはδ4.81(1H, d, J=6.9 Hz)であり、そしてその対応する炭素はδ62.3(C-3)、74.9(C-6)および74.7(C-7)(表1および2)であり、トロパン核にヒドロキシルおよびジアシル置換基の存在を示唆している。 アシル部分は、TmcおよびTmb(表1および2)と同定され、化合物3に関して記載した通りに実施した一連の選択的INEPT実験によれば、それぞれC-3およびC-6に位置していた。 C30H37NO11の擬似実験式に相当するCIMS(正荷電型)におけるm/z 588(56%)の顕著なイオンを化合物4について観察し、同じ分子式を、化合物3についても決定した。 化合物4が、パルビレインA(化合物3)の異性体とした場合には、H-1(1H, br s, δ4.32)、H-2eq(1H, br d, δ2.38)、H-4eq(1H, br d,δ2.31)およびH-5(1H, br s,δ3.85)について観察された強い脱遮蔽、それに、N-CH3シグナル(δ3.31 s)についての低磁場シフトは十分には説明できない。 この作用はまた、APT、1D-および2D-HETCOR実験により帰属させられた13C-NMRスペクトルでの対応する炭素についても観察された(表2)。 FABMS(正荷電型)におけるm/z 604([M+1]+、7%)のプロトン化された分子イオンの存在は、化合物3の分子量から16amu異なっており、EIMSに付した場合の生成物の分解は、化合物4がパルビレインAのN-オキシドである可能性があることを示唆している。 Wenkert et al(66)は、スコポラミンN-オキシドとスコポラミン遊離塩基の13C-NMRデータを比較し、隣接する炭素の化学シフトの有意な変化を観察しており、これによる差[Δδc(スコポラミンN-オキシドとスコポラミン)]は+11.4(C-1, C-5)、−4.7(C-3)、−2.5(C-6, C-7)および+9.0(N-CH3)となった。
【0052】
化合物4およびパルビレインA(化合物3)で観察されたのと同様な化学シフトの変化は、Δδc+11.1(C-1)、+15.4(C-5)、−5.2(C-3)、−2.8(C-6)、−0.6(C-7)および+14.6(N-CH3)となり、これらは明らかにアルカロイド化合物4におけるN-オキシド置換を示していた。 Δδc値の大部分が文献記載の値と合致しており(66)、観察した僅かの差は、化合物3および化合物4におけるトロパン核の非対称置換に基づいて説明できる。 さらに、化合物4の1H-NMRスペクトル分析により、δ3.31にN-CH3シグナルが示された。 Huber et al(67)は、X線結晶解析およびNMR試験を適用することにより、スコポラミンN-オキシドのN-メチル基の立体配置と1H-NMRでの化学的シフトとを明確に相関づけた。 立体的なメチルはδ3.39で共鳴しており、立体異性のエクイトリアルのメチルはδ3.60にあった。 これらの観察結果に基づいて、化合物4のN-メチル基は立体的であり、化合物1に関して実施したX線結晶学的試験と合致している。 すなわち、化合物4を3a-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6b-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7b-ヒドロキシトロパンN-オキシド(パルビレインA N-オキシド)であると同定した。
【0053】
化合物5もまた、パルビレインA(化合物3)のものと同様の分光高度データを示した。 分子式は、HREIMSによればC30H37NO10であり、これは化合物3よりも16amu低い値であり、化合物5の分子におけるヒドロキシル基の欠如を示唆している。 1H-NMRスペクトルは、C-3およびC-6位におけるジ置換トロパン核に特徴的なシグナルを示しており、シグナルは、H-3bがδ5.34(1H, br dd J=5.4, 4.5 Hz)、H-6aがδ5.77(1H, dd, J=7.5, 2.7 Hz)、そして、CH2-7がδ2.20-2.25(2H, m)であった(表9)。 アシル部分をTmcおよびTmbと推定し、その結合位置を化合物3の場合と同様に決定した。 従って、化合物5を、3a-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6b-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-トロパンであると同定し、パルビレインBと命名した。
【0054】
化合物6は、HREIMSで測定したところC32H39NO10の分子式が導かれ、化合物5と同様の置換パターンを示し、共鳴は、H-3bがδ5.21(1H, br t, J=5.0 Hz)、H-6aがδ5.73(1H, dd, J=7.6, 2.7 Hz)、そして、CH2-7がδ2.22-2.26(2H, m)であった。 しかしながら、Tmb部分のシグナルは、化合物6の1H-NMRおよび13C-NMRスペクトルでは顕著ではなく、Tmc部分のシグナルは重複していた(表1および2)。 したがって、化合物6(パルビレインC)の構造を、3a,6b-ジ-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパンであると解明した。
【0055】
化合物7については、C32H39NO11(HREIMS)の分子式が導かれ、化合物3の1H-NMRスペクトルにおけるトロパン核と同様のシグナルを示し、シグナルは、H-3b(δ5.24;1H, br t, J=4.5 Hz)、H-6a(δ5.72;1H, d, J=6.3 Hz)、そして、H-7a(δ4.77;1H, d, J=6.3 Hz)であった。 化合物7のアシル基を示す1H-NMRスペクトルの部分は、化合物6の同等のデータにほぼ匹敵するものであり、共鳴は、δ7.74/7.62(各々1H, d, J=15.9 Hz, Hb)、6.47/6.36(各々1H, d, J=15.9 Hz, Ha)、および6.92/6.75(各々2H, s, H-2', H-6')であった。 13C-NMRスペクトルもまた、化合物7における2個のTmc部分の存在を裏付けていた(表2)。 したがって、上記証拠に基づいて、化合物7の構造を、3a,6b-ジ-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7b-ヒドロキシトロパン(パルビレインD)であると確認した。
【0056】
化合物8および9のNMRスペクトルデータは、上記した類縁体のスペクトルと比較した場合、各化合物に1個のTmc置換基およびもう1個の他のアシル置換基が存在することを指し示す値を示していた。 トロパン核は、化合物5のものと合致するNMR共鳴を示し、C-3およびC-6位での2置換を示唆していた。 H-3(brt、J=5.2 Hz)およびH-6(dd、J=7.5, 3.0 Hz)のカップリング定数は、化合物8および9におけるこれらのプロトンについて、それぞれbおよびaの立体配置を示していた(表1)。 HREIMSで測定した分子式C28H33NO8の化合物8は、1H-NMRスペクトル共鳴がδ3.56(2H, s)、7.19(1H, d J=2.2 Hz)、6.80-6.84(2H、m)および7.22(1H、d J=7.8 Hz)であり、炭素のシグナルはδ170.1、42.7、134.7、116.8、156.9、114.9、130.0および121.0であり、3-ヒドロキシフェニルアセチル部分の存在を示していた(59)。 選択的INEPT実験を用いて、C-6のTmb単位およびC-3の3-ヒドロキシフェニルアセチル基の置換パターンを確認した。 化合物9の分子式をHREIMSによりC28H33NO7と決定し、化合物8よりも16amu低い値であり、化合物9にはヒドロキシル基が存在しないことを示唆していた。 NMRデータの分析によれば第2のアシル基は、フェニルアセチル単位であった(59)。 選択的INEPT実験によれば、このアルカロイドではC-6のTmb単位およびC-3のフェニルアセチル基の存在が判明した。
上記した証拠に基づいて、化合物8および9の構造を、3α-(3-ヒドロキシフェニルアセトキシ)-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン(パルビレインE)および3α-フェニルアセトキシ-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン(パルビレインF)とそれぞれ解明した。
【0057】
パルビレインA〜F(化合物3、5〜9)およびパルビレインA N-オキシド(化合物4)に関わる種々の不斉炭素における立体化学を、NMRカップリング定数の観察結果に基づいて決定し、分子モデリング実験(PCMODELバージョン4.0)を用いて確認した。 この点に関し、種々の立体異性体の組み合わせをMMX磁力場を用いて最小限化し、そこで予測されたカップリング定数を実際に得られた実験的J値と比較し、本明細書中に示す立体異性体との最良の組み合わせを見つけた。 全ての構造に関して、架橋先端のメチンから出発して、2つの可能なエナンチオマーの一方を任意に示すべく、時計回りに番号付けした。 N-メチル基は、X線結晶解析により化合物1において確立された構造に従って、パルビレインA〜F(化合物3、5〜9)を、その立体配置で示す。
【0058】
アルカロイド1〜9をまず、確立されたプロトコルに従ってヒト癌細胞系のパネルに対して試験した(68)。 パルビレインAおよびF(化合物3および9)は、共にビンブラスチンの存在下で強力な活性および多剤耐性KB-V1細胞系に対する選択性を示し(ED50はそれぞれ0.3および0.2μg/ml)、パルビレインE(化合物8)は選択性は示したが力価は約1桁低下していた(ED50、1.9μg/ml)。 パルビレインB〜D(化合物5〜7)はVLBの存在下に試験したKB-V1細胞では高い力価を示したが、選択性はより低かった。 パルビレインA N-オキシド(化合物4)ならびに既知化合物1および2が、VLBの存在下では、KB-V1を含めたすべての細胞系において不活性(ED50≧20μg/ml)であったことが示された(表3)。
【0059】
本化合物グループ内の活性に関する構造的条件に関わるいくつかの観察結果を、表3に示すアルカロイド1〜9の細胞毒性パネルデータからみてとれる。 とりわけ、化合物1〜3および5〜9を考慮する場合、C-6 Tmcエステル置換基がVLの存在下のKB-V1細胞に対する有意な活性の顕在化において必須であると考えられる。 パルビレインB(化合物5)およびC(化合物6)の場合のように、C-7にヒドロキシル基が存在しない場合、VLBの存在下のKB-V1細胞に対してパルビレインA(化合物3)およびD(化合物7)により示される細胞毒性力価とほぼ同じであるが、パネルの他の細胞系を考慮すると選択性は低下していた。 3-ヒドロキシフェニルアセチル部分でC-3がエステル化されているパルビレインE(化合物8)は、C-3にTmcエステルを有するパルビレインD(化合物7)よりも低い力価および低い選択性を示した。 C-3のC-3 Tmcエステル(パルビレインC)を、フェニルアセチル基(パルビレインF)に変化させると、力価は低下したが選択性は増大した。 パルビレインA N-オキシド(化合物4)は、腫瘍パネルに示された何れの細胞系に対しても有意な活性を示さなかった。 しかしながら、一部のN-オキシドは生体還元性薬剤であることが知られており(69、70)、化合物4はプロドラッグとして作用することができ、代謝されることにより活性なパルビレインA(化合物3)を放出する。
【0060】
表4において、パルビレインA〜C(化合物3、5、6)およびパルビレインA N-オキシドの細胞毒性活性について、卵巣腺癌(SKOV3)および多剤耐性卵巣腺癌(SKVLB)の細胞系において、MDR阻害剤であるアクリドンカルボキサミド誘導体GF120918(20)との比較を、以前に記載された通りに行った(72)。 後者の細胞系にアドリアマイシン1μMを添加した場合、パルビレインBおよびC(それぞれIC50が0.12および0.08μM)はGR120918(IC50が0.02mM)に匹敵する強力な応答を媒介した。 表3および4のデータによれば、評価したトロパンアルカロイドエステルは、KB-V1およびSKVLB細胞に対して添加薬剤非存在下において、正常な対応例よりも低毒性であったため、化合物はMDRトランスポーターの代替となり得ることができ、MDR阻害に関して競合的機序を示す可能性がある。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
アルカロイド5〜7および9を、P-糖蛋白の潜在的モジュレーターとしてのその薬効についてさらに評価した。 この試験では、これらの被験化合物がMDR表現型の薬剤{4,9-ジヒドロ-3-イソブチル-2-メチル-1-(p-ニトロフェナシル)-4,9-ジオキソ-1H-ナフト[2-3-d]イミダゾリウムブロミド(DINIB)}の細胞毒性を増強させる能力を、陰性対称としてのMDR表現型ではない薬剤(5-フルオロウラシル)と比較しながら評価した(73、74)。 試験したアルカロイドのデータの評価によれば、パルビレインBおよびCは優れたMDRモジュレーターであった。 それらの95%信頼水準における相乗作用値は、2種類の標準的なMDR阻害剤であるベラパミルおよびシクロスポリンAの力価に匹敵する作用を示した(表5)。 評価したパルビレインについて選択した用量範囲は、完全な用量応答曲線を生じるのに適切なものであった(ただし、50ng/mLにおいて限定された毒性を誘発した7を除く)。 DINIB毒性の最大上昇を、細胞において50%生育阻害をもたらすのに必要な濃度より少なくとも4倍〜10倍低い値のパルビレインの非毒性濃度において測定した。
【0063】
【表5】
つまり、9種の芳香族トロパンアルカロイドエステルを、エリスロキシルム パルビレイ(コカノキ科)の根茎より単離した。 これらのアルカロイドの内の7種は新規化合物、すなわち、パルビレインA、パルビレインA N-オキシドおよびパルビレインB〜Fである。 これらの新しいトロパン誘導体の全てがC-6位にトランス-3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ単位を有することがわかっており、C-3のヒドロキシル基は様々にエステル化されており、C-6はアルカロイド3〜9において、場合によってはヒドロキシル化されている。 既知化合物であるトロパン-3α,6β,7β-トリオール3-フェニルアセテート(化合物1)および1αH,5αH-トロパン-3α-イル3,4,5-トリメトキシベンゾエート(化合物2)も取得されており、化合物1のN-メチル基の立体配置をX線結晶解析によって立体性であると確認した。
【0064】
これらの化合物の幾つかはビンブラスチンの存在下、MDR耐性ヒト口腔表皮(KB)細胞系に対して実質的な選択性を示し、パルビレインA、B、C、DおよびFはすべてこの細胞系に対して同様の細胞毒性の力価を示した。 アドリアマイシンの存在下では、MDR耐性ヒト卵巣腺癌(SKVLB)細胞系において、パルビレインBおよびCは、アクリドンカルボキサミドMDRモジュレーターGR120918に匹敵する力価で薬剤耐性を退行させた(70)。 その他のin vitroの生物学的試験プロトコルにおいて、化合物5〜7および6は、DINIBの細胞毒性の増大において、ベラパミルおよびシクロスポリンに匹敵する力価を示すことが解かった(73、74)。 これらのトロパンアルカロイドにより促進される作用様式は、その一部が解明されており、相乗作用的な活性がKB-V1およびKB-8-5細胞を用いたin vivoの中空繊維モデルにおいて認められている(75)。
【実施例】
【0065】
略 語
AML、急性骨髄性白血病;
BSA、ウシ血清アルブミン;
cDNA、相補デオキシリボ核酸;
DEPC、ジエチルピロカーボネート;
DMEM、ダルベッコの改変イーグル培地;
MeOH、メタノール;
NH4OH、水酸化アンモニウム;
CHCl3、クロロホルム;
Et2NH、ジエチルアミン;
DMSO、ジメチルスルホキシド;
EDTA、エチレンジアミン4酢酸;
dNTP、デオキシヌクレオチドトリホスフェート;
IC50、50%阻害濃度;
MDR、多剤耐性;
MTD、最大寛容用量;
MTT、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド;
PA、パルビレインA[3a-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6b-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7b-ヒドロキシトロパン];
PB、パルビレインB[3a-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6b-(E)-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン];
PC、パルビレインC[3a,6b-ジ(E)-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン];
PBS、リン酸緩衝食塩水;
Pgp、P-糖蛋白;
PVP、ポリビニルピロリドン;
SDS、ドデシル硫酸ナトリウム;
VP、ベラパミル。
【0066】
一般的手順
融点は、フィッシャージョーンズ融点測定機で測定し、未補正のまま用いた。 旋光度はPerkin Elmer 241偏光計で測定した。 UVスペクトルは、Nicolet MX-1分光光度計で記録し、IRスペクトルは、Beckman DU-7機で測定した。 NMRスペクトルは、TMSを内部標準としたCDCl3中で測定した。 1H-NMRおよび13C-NMRスペクトル、選択的INEPT、HETCORおよびNOE実験は、Nicolet NMC-360またはVarian XL-300機の何れかを用いて記録した。 EIMS、HREIMSおよびHRFABMSのデータは、Finnigan MAT-112S質量スペクトル分析器で測定した。 オープンカラムクロマトグラフィーは、シリカゲルG(70〜230メッシュ;E. Merck, Darmstadt, Germany)または酸化アルミニウム(アルミナ、天然物、ブロックマン活性I、60〜325メッシュ;Fisher Chemicals, Pittsburgh, PA)上で行ない、溶媒としてそれぞれCHC13-アセトン-28%NH4OHまたはヘキサン-アセトン-28%NH4OHの勾配混合物をそれぞれ使用した。 TLCプレート(シリカゲル60 F254ガラスプレート、層の厚さ0.25mm;E. Merck)を、Dragendorffのスプレー試薬を用いて、紫外線光線下で可視化した。
【0067】
植物試料
E. pervilleiの根茎は、1992年10月にマダガスカルの南方半乾燥気候地域において採取したものを用いた。 証拠標本(A00362)は、イリノイ州シカゴの自然歴史野外博物館のジョン G. シール植物標本室に寄託してある。
【0068】
抽出および単離
E. pervilleiの風乾した粉末根茎(12kg)をMeOHで2回抽出し、得られた残存物(129g)を、次に、MeOH-H2O(9:1、800mL)に懸濁し、ヘキサンで洗浄した(3×500mL)。
水層を真空下で濃縮し、次に、5%MeOH(600mL)とCHCl3(3×400mL)との間に分配した。
CHCl3可溶性抽出液(28g)はビンブラスチン耐性KB細胞系(1μg/mLビンブラスチン存在下で評価したKB-V1;KB-V1+、ED505.4μg/mL)に対して有意な活性を示したが、水層はこの細胞系に対して不活性であった。 活性抽出液(28g)をシリカゲルに吸着させ、溶媒系としてCHCl3-アセトン-28%NH4OH(20:10:0.1→5:20:1)の勾配混合物を用いながら、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、5個の主要アルカロイド含有画分混合物(画分1〜5)を得た。 画分1(0.8g)はヘキサン-アセトン-MeOH-Et2NH(9:1:0.1:0.1)を溶離剤として中性酸化アルミニウム(Al2O3)カラム上を通過させて精製し、5(420mg)および9(450mg)を得た。 画分2および3を合わせ(4.5g)、ヘキサン-アセトン-MeOH-Et2NH勾配混合物(6:1:0.1:0.1→3:1:0.1:0.1)を用いたAl2O3カラムクロマトグラフィーに供し、化合物1(4mg)、2(450mg)、6(520mg)および8(480mg)を得た。 画分4(1.9g)はヘキサン-アセトン-MeOH-Et2NH(3:1:0.1:0.1)を溶離剤として用いてAl2O3カラム上を通過させ、化合物3(500mg)、7(510mg)、そしてさらに化合物1(42mg)を得た。 画分5(62mg)は、アセトン-H2O-28%NH4OH(4:0.75:2滴)混合物を溶媒系とする分取TLCで後処理して、化合物4(14mg、Rf 0.47)を得た。
【0069】
トロパン-3α,6β,7β-トリオール3-フェニルアセテート(化合物1)。 白色結晶(MeOH);融点120〜122℃;1H、13C-NMRおよびEIMSデータは文献記載値と合致(59)。
【0070】
1αH,5αH-トロパン-3α-イル3,4,5-トリメトキシベンゾエート(化合物2)。 白色不定形固体;融点238〜240℃;1H-NMRおよびEIMSデータは文献記載値と合致(60)。
【0071】
パルビレインA[3α-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7β-ヒドロキシトロパン](化合物3)。 白色不定形固体、46〜48℃で軟化。 [α]D-0.6°(c 0.18, CHCl3);UV lmax(MeOH)302.5nm(log e 4.39);IR nmax(フィルム)3500、2944、1711、1642、1585、1505、1472、1416、1345、1265、1220、1128、1057、1004cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 587(4)[M+]、375(6)[M+-TmbA]、349(10)[M+-TmcA]、273(19)、231(29)、137(100)[M+-TmcA-TmbA];HREIMS m/z 実測値587.2360、C30H37NO11の計算値587.2367。
【0072】
パルビレインA N-オキシド[3α-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7β-ヒドロキシトロパン N-オキシド](化合物4)。 白色不定形固体、114℃で軟化。融点118〜121℃;[a]D+1.46°(c 0.28、CHCl3);UV lmax(MeOH)303.0nm(log e 4.24);IR nmax2944、1717、1688、1588、1500、1468、1420、1338、1278、1220、1130、1004、759cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;CIMS m/z 604(6)[M+H+]、588(56)[M+H+-O]、281(43)[M+H+-C(6)HTmc-C(7)HOH]、239(32)[TmcA+H+]、213(100)[TmbA+H+];HRFABMS m/z 実測値604.2407(M++1)、C30H37NO12+Hの計算値604.2394。
【0073】
パルビレインB[3a-(3,4,5-トリメトキシベンゾイルオキシ)-6b-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン](化合物5)。 白色不定形固体、融点40〜42℃;[α]D-22.5°(c 0.25、CHCl3);UV lmax(MeOH)302.5 nm(log e 4.31);IR nmax2944、1711、1641、1585、1505、1472、1416、1345、1220、1127、1004cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 571(50)[M+]、360(100)[M+-TmbA]、307(3)[M+-C(6)HTmc-C(7)H2]、238(18)[TmcA+]、221(41)[TmcO+]、212(22)[TmbA+];HREIMS m/z 実測値571.2421、C30H37NO10の計算値571.2417。
【0074】
パルビレインC[3α,6β-ジ-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)トロパン](化合物6)。 白色不定形固体、融点53〜57℃;[α]D+29.0°(c 0.10、CHCl3);UV lmax(MeOH)305.0 nm(log e 4.51);IR nmax2944、1711、1641、1585、1504、1472、1454、1345、1270、1167、1127、915、745cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 597(3)[M+]、360(100)[M+-TmbA]、333(4)[M+-C(6)HTmc-C(7)H2]、238(18)[TmcA+]、221(41)[TmcO+]、212(22)[TmbA+];HREIMS m/z 実測値597.2552、C32H39NO10の計算値597.2574。
【0075】
パルビレインD[3α,6β-ジ-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-7β-ヒドロキシトロパン](化合物7)。 白色不定形固体、融点59〜61℃;[α]D+9.0°(c 0.10、CHCl3);UV lmax(MeOH)、305.0nm(log e 4.50);IR nmax2944、1710、1641、1585、1504、915、745cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 613(6)[M+]、375(16)[M+-TmcA]、333(2)[M+-C(6)HTmc-C(7)HOH]、238(29)[TmcA+]、221(52)[TmcO+]、190(6)、154(14)、137(100)[M+-2TmcA];HREIMS m/z 実測値613.2526、C32H39NO11の計算値613.2523。
【0076】
パルビレインE[3α-(3-ヒドロキシフェニルアセトキシ)-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-トロパン](化合物8)白色不定形固体、融点53〜57℃;[α]D+29.0°(c 0.10、CHCl3);UV lmax(MeOH)305.0 nm(log e 4.51);IR nmax2944、1711、1641、1585、1504、1472、1454、1345、1270、1167、1127、915、745cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 511(77)[M+]、360(100)[M+-3-OHPhCH2CO2]、238(17)、[M+-TmcO]、247(39)[M+-C(6)HTmc-C(7)H2]、238(17)[TmcA+]、221(39)[TmcO+]、138(45)、122(63)[M+-TmcA-3-OHPhCH2CO2];HREIMS m/z 実測値511.2210、C28H33NO8の計算値511.2206。
【0077】
パルビレインF[3α-フェニルアセトキシ-6β-(3,4,5-トリメトキシシンナモイルオキシ)-トロパン](化合物9)。 白色不定形固体、融点59〜61℃;[α]D+9.0°(c 0.10、CHCl3);UV lmax(MeOH)305.0 nm(log e 4.50);IR nmax2944、1710、1641、1585、1504、915、745cm-1;1H-NMRおよび13C-NMRデータは表1および2を参照;EIMS m/z 495(73)[M+]、360(100)[M+-PhCH2CO2]、238(29)、[TmcA+]、231(49)[M+-C(6)HTmcC(7)H2]、221(65)、[TmcO+]、136(8)[PhCH2CO2H+]、122(70)[M+-TmcA-PhCH2CO2];HREIMS m/z実測値495.2260、C28H33NO7の計算値495.2257。
【0078】
トロパン-3α,6β,7β-トリオール3-フェニルアセテート(化合物1)のX線結晶解析。
結晶データ:C16H21NO4、Mr=291.34、モノクリニック、スペースグループP21、a=6.5574(13)、b=26.577(5)、c=8.448(2)Å、b=102.08(3)°、V=1439.7(5)Å3(12の自動中心設定反射に関する回折計角度に対して最小自乗法により精密化)、λ=1.54178Å、Z=4、Dc=1.344Mg/m-3、F(000)=624、μ(Cu-Kα)=0.789mm-1。結晶の大きさ:0.5×0.2×0.2 mm。
データの収集および処理。 三次元の室温(293°K)でのX線データをRigaku AFC6S回折計により、単色化Cu-Ka X照射、2Θ/ωモード、スキャン範囲(ω)3.33〜57.47°プラスKa分離、可変走査速度(4.88〜14.65分-1)で収集した。 合計で2158反射が測定され(3<2Θ<115°、min.hkl 0 0 -9、max.hkl 7 29 9);1968の独立した反射が得られた[R(σ)0.0240、フリーデル対向面合流]。 吸収の補正は行なわなかった。 99反射ごとにモニタリングした1つの対照反射は、X線への結晶の13.6時間の曝露の間に良好な崩壊を示さなかった。
【0079】
構造分析および補正
直接法で、すべての非水素原子の位置が得られた。 異方性熱パラメーターによるフルマトリックスの最小自乗法による補正を、すべての非水素原子に対して適用した。
水素原子は、ライディングモードで補正した。 補正は、R=0.0631、Rw=0.1643に収束した。
補正の最終サイクルにおける最大および平均のシフト/誤差は、それぞれ0.0415および0.0376であった。 最終電子密度差合成は、>0.194または<-0.198eÅでピークを示さなかった。 すべてのコンピューター処理は、IRIS VB5,03プログラムシステムのSHELXTLを用いて行った(76、77)。
【0080】
生 物 学 的 評 価 手 順
細胞毒性検定試験
確立されたプロトコル(68)に従って、VLBの存在下と非存在下とで、KB-V1を含むヒト癌細胞系のパネルに対する化合物1〜9の細胞毒性活性を評価した。 表4に示す卵巣癌細胞系にも同様の操作法を用いた(72)。
【0081】
In vitro 多剤耐性試験
確立されたプロトコル(73、74)に従って、P-糖蛋白の潜在的モジュレーターとしての化合物5〜7および9の薬効を評価した。
【0082】
試薬および細胞培養
[3H]ビンブラスチン(4.8Ci/mmol)を、Moravek Biochemicals社(Brea, CA)より購入した。 その他の全ての試薬は、Sigma Chemical社より購入した。 細胞培養用の培地および添加物は、Life Technologies社(Grand Island, NY)より入手した。 ヒト口腔表皮細胞癌KB-3は、アメリカン タイプ カルチュア コレクション(ATCC、Rockville, MD)から購入し、KB-V1およびKB-8-5細胞は、I.B.Roninson博士(シカゴのイリノイ大学、分子遺伝学部から入手した。 KB-3細胞は、10%熱不活性化ウシ血清およびPSF(100単位/mlペニシリンG、100mg/ml硫酸ストレプトマイシン、250ng/mlアンホテリシンB)を添加したDMEM培地中に維持した。 KB-V1細胞を、さらにビンブラスチン(1mg/ml)を添加した同じ培地中で生育させた。 同様にして、KB-8-5細胞も、コルヒチン(10ng/ml)を添加した同じ培地中で培養した。 ヒト白血病リンパ芽球CEM細胞およびその多剤耐性の対応種CEM/VLB100細胞を、前記した通りに培養した(29)。 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中空繊維(分子量カットオフ500,000Da、内径1.0mm)は、Spectrum Medical Industries社(Luguan Hills, CA)より購入した。
【0083】
細胞毒性
KB-3、KB-V1およびKB-8-5細胞を用いた被験物質の細胞毒性の測定は、前記した通りに実施した(24)。 すなわち、まず、種々の濃度の被験化合物(10%DMSO10mlに溶解)を96ウェルプレートに移し、細胞懸濁液(5×104個/ml)190mlづつを各ウェルに添加した。
次に、プレートを37℃で72時間インキュベート(空気中5%CO2雰囲気下100%湿度)し、冷20%水性トリクロロ酢酸100μlを各ウェルの生育培地に添加して、細胞を固定した。
培養物を、30分間、4℃でインキュベートし、洗浄し、風乾し、スルホローダミンB溶液で染色し、1%酢酸で洗浄した。 最後に、10mMトリス顕色剤200mlを各ウェルに添加し、光学密度をELISAプレートリーダーを用いて515nmで測定した。 各事例において、数個のウェルに等数の細胞を添加し、30分間、37℃でインキュベートし、前記の通りに処理することにより、ゼロ日対照実験を行なった。 ゼロ日対照実験で得られた光学密度の数値を差し引き、対照(溶媒処理)培養物に対して相対的な細胞生存率を計算した。 CEMおよびCEM/VLB100細胞を用いた場合の化合物の細胞毒性を、Beck等に記載されているようにして求めた(30)。 細胞を5〜6×105個/mlの密度で、24ウェルプレート内で生育させた。
48時間後、細胞を破砕物と区別するために、チャンネライザーを用いながら細胞数をコールターカウターで計数した。 IC50を未処理の対照グループと比較して、処理グループ細胞の48時間生育を50%阻害するために必要な薬剤濃度として定義した。
【0084】
KB-V1 小胞を用いた[ 3 H ] ビンブラスチンの蓄積
文献記載の方法に多少の変更を加えた方法に従って、KB-V1細胞から細胞膜小胞を調製した(31、32)。 培地を対数生育期(約80%の集密度)のKB-V1細胞から採取し、細胞を氷冷PBS、次いで、2mM EDTAを含有している氷冷PBSで洗浄した。 次に、アプロチニン(1mg/ml)を添加し、そして、10分間室温でインキュベートした後、血清学的実験用ピペットを用いて穏やかに吸引することによって細胞を回収し、遠心分離(100×g、5分間)により回収した。 細胞を、0.25Mのスクロース緩衝液(0.01M Tris-HCl、pH7.5、0.25Mスクロース、0.2mM CaCl2、1mM EDTA含有)中に懸濁し、30秒間、2500rpmでポリトロンで均質化した。 この操作の後、細胞の5%未満が、未損傷のまま残存した。 次に、均質化物を4倍量の0.025Mスクロース溶液(0.01M Tris-HCl、pH7.5、0.25Mスクロース含有)で希釈し、遠心分離(1000×g、10分間)した。 上清を35%スクロース製緩衝材(35%w/vスクロース、1mM EDTA、0.01M Tris-HCl、pH7.5)上に積層し、30分間16,000×gで遠心分離した。 界面(約5ml)を回収し、4倍量の0.25Mスクロース、0.01M Tris-HCl、pH7.5で希釈し、1時間100,000×gで遠心分離した。 得られた小胞破砕物を、1mMフェニルメチルスルホニルフロリドを含有するPBSで、25ゲージの針を用いて懸濁し、それを−80℃で保存した。 タンパク質含有量は、標準物質としてBSAを用いながらビシンコニン酸タンパク質試験キットを用いて測定した(33)。
【0085】
膜小胞を用いたビンブラスチンの蓄積試験は、前記したようにして、96ウェルプレートを用いて行った(23、24)。 原形質膜小胞(40μgタンパク質)を0.125Mスクロース、5mM MgCl2、0.5mM ATPおよび0.16μM[3H]ビンブラスチン(4.8Ci/mmol)を含有する0.01M Tris-HCl緩衝液、pH7.5中でインキュベートした。 次に、DMSO 5μM中に溶解した種々の濃度の被験物質を添加し(最終容量、100μl)、20分間周囲温度でインキュベートを行なった。 速度論的試験のために、種々の濃度の[3H]ビンブラスチンを用いた。 96ウェルハーベスター(Harvester 96、Tomtec)を用いて、各ウェルの内容物を、ガラスフィルター(プリントA型フィルターマット、Wallac)に吸入することで、反応を終了した。
【0086】
放射活性は、液体シンチレーション計数により測定した(1450 Microbeta, Wallac)。
【0087】
非特異的結合は、同様のインキュベーションを、未標識のビンブラスチンの1000倍過剰量を含有する反応混合物を用いて実施して測定した。 非特異的結合を、すべての全結合データより控除することによって、特異的結合を求めた。
【0088】
無傷細胞を用いた [ 3 H ] ビンブラスチンの蓄積
細胞単層中の[3H]ビンブラスチンの蓄積の測定は、Fojo et alの方法(34)に多少の変更を加えた方法によって行った。 試験は、24ウェルプレートを用いて実施した。 細胞単層を調製するために、インキュベーション培地(10%ウシ血清添加DMEM)の1ml当たり細胞2.5×105個を含有する細胞懸濁液2mlを、各ウェルに添加した。 対照ウェルには、試験培地2mlを含有させた。 [3H]ビンブラスチン(16nM、4.8Ci/mmol)および種々の濃度の被験試料(DMSO 10μl中に溶解)を添加した後、プレートを、5%二酸化炭素インキュベーター内で、1時間、37℃で、インキュベーションした。 単層を冷PBSで3回洗浄し、反転させて乾燥し、細胞をトリプシン処理した。 次に、細胞懸濁液をシンチレーション溶液(CytoScint(登録商標)、ICN)3mlの入ったバイアルに移し、激しく混合し、計数した。 細胞を含有しないインキュベーションに関わる計数値を差し引くことにより、細胞を含有するインキュベーションに関わる[3H]ビンブラスチンの量を補正した。
【0089】
MDR1 mRNA発現のRT - PCR分析
100×104個のKB-3、KB-V1、CEMまたはCEM/VLB100細胞を含有する培養フラスコ(60×15mm)を、5%二酸化炭素インキュベーター内で、72時間、37℃で、種々の濃度のパルビレインA(0〜34μM)またはベラパミル(0〜44μM)で処理した。 培養したKB-3、KB-V1、CEMおよびCEM/VLB100細胞からTRIzol試薬(Life Technologies 社)を用いて全RNAを単離し(33)、紫外線光度により定量した。 RNAの逆転写は5×First Strain Synthesis Buffer、2.5mM MgCl2、0.5mM各dNTP、10μM DTT、RNAse阻害剤2単位、SuperScript II逆転写酵素200単位、0.5μgオリゴ(dT)12-18、2μg全RNA(CEMおよびCEM/VLB100細胞については3μg)、およびDEPC処理水を含有する最終容量21μl中、SUPERScript(登録商標) Preamplificaiton System(Life Technologies 社)を用いて行なった。 50分間、42℃で、インキュベーションした後、15分間、70℃に加熱することで、室温での反応を終了した。 新たに合成されたcDNA(2μl)に1.4mM MgCl2、(CEMおよびCEM/VLB100細胞については1.2mM)、Taqポリメラーゼ2.5単位、MDR1遺伝子(35)を使用して、AnaGen Technology 社(Palo Alto, CA)に特別注文して合成されたプライマー(5'-ATATCAGCAGCCCACATCAT-3';5'-GAAGCACTGGGATGTCCGGT-3')(35)を含有するPCR混合物を添加した。 内部標準として、GAPDHのプライマー(5'-CGGGAAGCTTGTGATCAATGG-3';5'-GGCAGTGATGGCATGGACTG-3')(36)0.125μmol(CEMおよびCEM/VLB100細胞については0.1μmol)を添加した(最終容量50μl)。 PCRは、3分間、94℃に加熱し、その後即座に23回(CEMおよびCEM/VLB100細胞については35回)の熱サイクルに付し、各サイクルは、94℃、1分間の変性工程、58℃、1分間のアニーリング工程、72℃、1分間の鎖伸長工程とし、Perkin-Elmer 2400のサーモサイクラーを用いて行なった。 最終サイクルの後、72℃、7分の鎖伸長工程を行なった。 PCR産物の一部を、2%アガロースゲル(Bio-Rad)上の電気泳動に付し、PCR断片を臭化エチジウム染色により可視化した。
【0090】
MDR1発現のウエスタンブロット分析
MDR1遺伝子の発現を調べるために、5%二酸化炭素インキュベーター内で、72時間、37℃で、パルビレインA(0〜45μM)またはベラパミル(0〜44μM)で処理したKB-3、KB-V1、CEMおよびCEM/VLB100細胞を用いて、ウエスタンブロットを行なった。 細胞(出発細胞量は7.5×105個)を、SDS溶解緩衝液[0.4%SDS(w/v)、5%グリセロール(v/v)、0.006%ブロモフェノールブルー、2%β-メルカプトエタノールを含有する20mM Tris-HCl]を用いて回収し、溶解物を10分間煮沸し、−20℃で保存した。 溶解物の一部を用いてタンパク質分析(標準物質としてBSAを用いたビシンコニン酸タンパク質試験キット)を行ない、等量のタンパク質をプレキャスト7.5%トリスグリシンアクリルアミドゲル(Novex, San Diego, CA)を用いたSDS-PAGEにより電気泳動した。 ポリジビニリデンジフルオライド膜に移した後、非特異的結合部位を5%脱脂粉乳でブロッキングした。 ブロットは、ウサギポリクローナル抗体mdr(Ab-1)(Oncogene Research Products 社)を用いて行ない、ストレプトアビジンセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(Amersham Life Science 社)により分析し、ECLウエスタンブロット検出システム(Amersham Life Science社)により可視化した。
【0091】
In vivo 中空繊維試験
In vivo中空繊維試験は、文献記載の操作法に多少の変更を加えた方法を用いて実施した(28)。 KB-3、KB-V1またはKB-8-5細胞の集密的な単層を採取し、遠心分離により回収し、7.5×105個/mlの細胞密度で馴化培地中に再懸濁した。 細胞を充填した繊維を5%二酸化炭素雰囲気下で、37℃で、一晩、6ウェルプレート中でインキュベートした。 5〜6週齢の雌性無胸腺NCr nu/nuマウスを、Frederick Cancer Research Facilityから入手した。 各マウスに対して6個の繊維を用い、2種類の生理学的容器内で培養した。
【0092】
腹腔内移植物については、皮膚および背部の腹壁の筋肉を通る小型の切開部を作成し、頭尾方向に腹腔内に繊維試料を挿入し、切開部を皮膚ステープルで閉じた。 皮下移植物については、頸部の根元で小型の皮膚切開部を形成し、11ゲージの腫瘍移植物トロカールを挿入した。 中空繊維試料を含んでいるトロカールを皮下組織を経由して頭部に挿入し、トロカールを抜き取る際に繊維を残した。 切開部は、皮膚ステープルで閉じた。
【0093】
予備実験として、種々の細胞密度を有する繊維を用いて細胞生育を評価した。 その結果、7.5×105個/mlの細胞密度が、KB-3、KB-V1およびKB-8-5細胞の薬剤試験に適していることがわかった。 処置プロトコルについては、ビンブラスチンおよびベラパミルをPBSに溶解し;パルビレインA、BおよびCは、PVP(37)と共に同時沈殿させることにより溶解度を上昇させ、次に、PBSに溶解した。 マウスは、無作為に6グループ(各グループ3匹)、すなわち、PBS溶媒対照グループ;ビンブラスチン処置グループ;ベラパミル処置グループ;パルビレインA、BまたはCで処置したグループ;ベラパミル+ビンブラスチングループ;およびパルビレインA、BまたはC+ビンブラスチングループに割り振った。 被験化合物は、移植の3〜6日後から、腹腔内注射により1日1回投与した。 体重は、毎日計測した。
【0094】
第7日目に、マウスを屠殺して繊維を取り除いた。 予め加温して、37℃で、30分間平衡化させておいた新しい培地2mlが各ウェルに添加された6ウェルプレートに、繊維を入れた。 中空繊維内に含まれる無傷の生存細胞の量を決定するために、MTT色素転換試験を用いた。 まず、1mg MTT/mlを含有する予備加温した培地1mlを、各ディッシュに添加した。 37℃で、4時間インキュベートした後、培地を吸引し、4℃で一晩インキュベートすることによって、2.5%硫酸プロタミン溶液を含有する規定の食塩水で試料を2回洗浄した。 試料の光学密度を測定するために、繊維を24ウェルプレートに移し、半分に切断し、一晩乾燥させた。 回転プラットホーム上で、室温で、4時間、DMSO(250μl/ウェル)で、各試料からホルマザンを抽出した。 抽出したMTTホルマザンの一部(150μlづつ)を、96ウェルプレートの個々のウェルに移し、540nmの波長で光学密度を測定した。
処置方法の効果は、体重の変化に対して相対的な細胞の実質生育率により決定した。
【0095】
結 果
生育阻害能力
多剤耐性を退行させる被験化合物の能力をモニタリングするための初期の方法として、in vitroの細胞生存試験を用いた。 表6にまとめたように、パルビレインAおよびベラパミルの何れも、培養物中のKB-3細胞に対して明確な生育阻害能力を示さなかった。
この細胞系は、ビンブラスチン(IC50=0.04μM)およびコルヒチン(IC50=0.05μM)に対して高度に感受性である。 ビンブラスチンの非存在下において、何れの被験物質もKB-V1細胞の生育を阻害しなかった(パルビレインAとベラパミルについて、それぞれIC50値>34と44μM)。 しかしながら、パルビレインAまたはベラパミルの存在下で培地にビンブラスチンを添加した場合、化学物質感受性は回復した(それぞれ、IC50=0.36および0.79μM)。 パルビレインAについては、これらのデータはIC50比としてKB-3/KB-V1(+ビンブラスチン)およびKB-V1(−ビンブラスチン)/KB-V1(+ビンブラスチン)で、それぞれ66.6および>95であり、これはベラパミルで得られた数値(それぞれ47および>55)に十分匹敵するものであり、非特異的細胞毒性の欠如を示すものである。 KB-8-5細胞(表6)では、パルビレインAは、コルヒチン非存在下でベラパミル(IC50>44μM)より高い生育阻害活性(IC50=14μM)を示したが、KB-3/KB-8-5(+コルヒチン)およびKB-8-5(コルヒチン)/KB-8-5(+コルヒチン)のIC50比はなお良好であった(パルビレインAでは、それぞれ40.3および23.3、ベラパミルではそれぞれ13.1および>15.4)。
【0096】
【表6】
薬剤耐性CEM/VLB100細胞を用いて行なった試験の関連のグループを、表7に示す。 ビンブラスチンまたはダウノルビシンの非存在下では、パルビレインAおよびベラパミルの何れもが、CEM/VLB100細胞の生育を阻害しなかった。 パルビレインAの存在下、ビンブラスチンとダウノルビシンのIC50値は、それぞれ0.02および0.065μMまで低下し、ベラパミル存在下で得られる数値は、それぞれ0.025および0.5μMであった。 これらの作用は、モジュレーター/(モジュレーター+ビンブラスチン)およびビンブラスチン/(モジュレーター+ビンブラスチン)の高いIC50値の比、およびダウノルビシンで得られた相当する比を考慮すれば、特異的であった(表7)。
【0097】
【表7】
表8にまとめた通り、パルビレインBおよびベラパミルの何れもが、培養物中のKB-3細胞では生育阻害能力を明確に示さなかった(それぞれ>35μMおよび37μM)が、パルビレインCは非特異的な毒性を示した(IC50=3.7μM)。 パルビレインA(IC50=24μM)と比較して、パルビレインBはより毒性が低かったが、パルビレインCはKB-3細胞ではより高毒性であった。 ビンブラスチンの非存在下では、何れの被験物質もKV-V1細胞の生育を有意には阻害しなかった(パルビレインB、パルビレインCまたはベラパミルのIC50値はそれぞれ15、15または44μM)。 しかしながら、パルビレインB、パルビレインCまたはベラパミルが存在する培地にビンブラスチンを添加した場合には、化学物質感受性が回復した(それぞれ、IC50=0.17、0.17または0.79μM)。 パルビレインBまたはCは、ビンブラスチンの非存在下でベラパミル(IC50=44μM)よりも高い生育阻害活性(IC50=15μM)を示したが、KB-V1(−ビンブラスチン)/KB-V1(+ビンブラスチン)のIC50比はなお良好であり(パルビレインBまたはCでは88、ベラパミルでは56)、非特異的な細胞毒性が比較的欠如していることを示していた。 ビンブラスチンの非存在下でIC50値>34μM、ビンブラスチンの存在下で0.36μM、そして、KB-V1(−ビンブラスチン)/KB-V1(+ビンブラスチン)のIC50比>95であることから、パルビレインAはパルビレインBおよびCよりいくぶん優れているが、三つの化合物すべの有効性の水準は同様である。
【0098】
【表8】
次に、in vivoの評価を、パルビレインBおよびCを用いて行った。 予備生育試験において、ビンブラスチンの250mg/kgの用量はKB-3細胞の生育を阻害したが(図6A)、その際、KB-V1細胞の生育には有意には影響しなかった(生育阻害は7.4%未満)(図6B)。
これらの細胞種の何れもが、パルビレインB(77.6mg/kg)、パルビレインC(81.2mg/kg)またはベラパミル(61.4mg/kg)に対して、0.136mmol/kgの用量では感受性を示さなかった(生育阻害8.5%未満)(図6B)。 しかしながら、ビンブラスチンをパルビレインBまたはC、あるいはベラパミルと共に同時投与した場合、有意な生育阻害作用(P<0.0001)が、腹腔内に移植されたKB-V1(図1B)では観察された。 表9にまとめたように、パルビレインB、パルビレインCまたはビンブラスチンを単一薬剤として投与した場合、それぞれ2.0、8.5または0%の生育阻害が観察されたが、組み合わせて投与した場合には阻害作用は66.9、77.7または60.3%となった。 各事例について、薬剤を単独で投与した場合に観察される阻害の総和として計算した%阻害と比較して、薬剤を同時投与した場合に増強効果が観察された。 すなわち、観察された阻害は、計算値より高値であったため、すべての薬剤は有効であり、パルビレインBおよびパルビレインCは、ベラパミルよりも強力な作用を示した。 パルビレインAを用いた試験において、単一薬剤として投与した場合、1%の生育阻害が観察されたが、ビンブラスチンと共に投与した場合、68.6%の阻害作用が観察された(19)。 すなわち、パルビレインAと比較して、パルビレインBおよびパルビレインCは、同様の水準の退行活性を示した。 皮下移植した細胞では、有意な応答は観察されなかった。 すべての事例において、確立された基準(28)に基づいた場合に、マウス体重の有意な減少は観察されなかった(図6CおよびD)。
【0099】
【表9】
KB - V1小胞を用いた [ 3 H ] ビンブラスチンの蓄積
多剤耐性KB-V1細胞から単離した小胞を用いたATP依存性ビンブラスチン蓄積の阻害は、0〜100μMの濃度範囲でパルビレインAまたはベラパミルにより媒介された(図1)。 蓄積は、対照培養における約5.93pmolの[3H]ビンブラスチン/mgタンパク質から、パルビレインAまたはベラパミル存在下での0.09pmolの[3H]ビンブラスチン/mgタンパク質にまで低下した。 この低下は、明らかに用量依存的であり、パルビレインAおよびベラパミルの場合、それぞれ3.84および3.59μMの濃度で50%の阻害が得られた(図1)。 同様の方法を用いて、両逆数プロットの構築によりデータを得たところ、競合的阻害が観察された(図2)。 Ki値は、パルビレインAおよびベラパミルについて、それぞれ約7.3および8.8μMであった。
【0100】
図1は、ベラパミルまたはパルビレインAにより誘発されたKB-V1細胞膜小胞を用いた[3H]ビンブラスチンの蓄積の用量依存的阻害を示している。 培養したKB-V1細胞から調製した膜小胞(タンパク質に基づく40μg)を0.16μMの[3H]ビンブラスチンおよびそこに記載された濃度のベラパミル(・)またはパルビレインA(○)を含む緩衝液中でインキュベーションした。 インキュベーションは、20分間、周囲温度で行ない、細胞ハーベスターを用いて終了した。 1000倍過剰の未標識ビンブラスチンを添加することにより、非特異的結合を求めた。 放射活性は、液体シンチレーション計数により測定し、非特異的結合を、すべての総結合データから控除することにより特異的結合を求めた。
【0101】
図2は、KB-V1細胞膜小胞を用いたビンブラスチンの蓄積阻害、すなわち、パルビレインAまたはベラパミルにより媒介される阻害の速度論的分析を示す。 膜小胞を、培養したKB-V1細胞から調製し、0(・)、5(○)、10(□)および30μM(▽)のパルビレインAまたは5(■)、10(▼)および30μM(◆)のベラパミルと共に、0.015、0.02、0.04、0.08および0.16μMの[3H]ビンブラスチンを含有する緩衝液中でインキュベーションした。 インキュベーションは、20分間、周囲温度で行ない、細胞ハーベスターを用いて終了した。 1000倍過剰の未標識ビンブラスチンを含むインキュベーションを行うことにより、非特異的結合を求めた。 放射活性は、液体シンチレーション計数により測定し、非特異的結合すべての総結合データから控除することによって特異的結合を求めた。
【0102】
無傷細胞を用いた [ 3 H ] ビンブラスチンの蓄積
Pgp-MDR細胞は、その薬剤感受性対応種よりも抗癌剤の蓄積も少なく、保持量も少ない。
[3H]ビンブラスチンでKB-3細胞を処理することにより、ビンブラスチン7.1±0.17pmol/50×104細胞の蓄積を生じたのに対し、同じ実験条件下でKB-V1細胞を処理したところ、蓄積はビンブラスチン0.18±0.008pmol/50×104細胞であった。 KB-V1細胞を、0〜40μMの範囲のベラパミルまたはパルビレインAで処理したところ(図3)、[3H]ビンブラスチンの蓄積は[3H]ビンブラスチン0.18pmol/50×104細胞のベースライン値から[3H]ビンブラスチン約5pmol/50×104細胞まで増加した。 蓄積の増大は用量依存的であり、パルビレインAは、ベラパミルよりも効果的であると考えられた。
【0103】
図3は、添加されたベラパミルまたはパルビレインA(0〜40μM)の関数としてのKB-V1細胞における[3H]ビンブラスチンの蓄積の増大を示している。 DMEM培地中5.0×105個のKB-V1細胞を含む懸濁液(2ml)を、24ウェルプレートに入れ、5%二酸化炭素インキュベーター内で、一晩、インキュベーションした。 次に、[3H]ビンブラスチン(16nM)およびそこに記載した濃度のベラパミル(・)またはパルビレインA(○)を、各ウェルに添加した。 1時間インキュベーションした後、単層を洗浄し、トリプシン処理した。 細胞を計数し、懸濁液をシンチレーションバイアルに移し、計数した。 細胞を含有しないブランクプレートで観察された[3H]ビンブラスチンの量を、総結合から控除した。
【0104】
MDR1 mRNA発現のRT - PCR分析
RT-PCR試験により、MDR1 mRNA遺伝子が、親細胞系のKB-3およびCEMと比較して、多剤耐性細胞系KB-V1およびCEM/VLB100において過剰発現されることを確認した。 しかしながら、34μmまでの範囲の種々の濃度のパルビレインAで、72時間、KB-V1およびCEM/VLB100細胞を処理したところ、この濃度のMDR1 mRNAでは有意な作用は示さなかった(データ示さず)。
【0105】
MDR1発現のウエスタンブロット分析
KB-3、KB-V1、CEMおよびCEM/VLB100細胞でのMDR1発現を、ウエスタンブロット分析を用いて評価した。 予測したとおり、MDR1は親細胞系KB-3およびCEMと比較して多剤耐性細胞系KB-V1およびCEM/VLB100において過剰発現されていたが、45μMまでの範囲の種々の濃度のパルビレインAで、72時間、KB-V1およびCEM/VLB100細胞を処理したところ、発現濃度には変化はなかった(図4)。
【0106】
図4は、MDR1発現のウエスタンブロット分析を含む。 図4Aにおいては、KB-3(第1レーン)およびKB-V1細胞(第2〜11レーン)を、DMSO(第1および2レーン)または1、5、10、15、20、25、30、35および40μM(第3〜11レーン)のパルビレインAで72時間処理した。 図4Bにおいては、CEM(第1レーン)およびCEM/VLB100細胞(第2〜13レーン)を、DMSO(第1および2レーン)、または、0.5、1、2、5、10、15、20、25、30、35および45μM(第3〜13レーン)のパルビレインAで72時間処理した。
【0107】
In vivo 中空繊維試験におけるパルビレインAの評価
予備生育試験において、無胸腺マウスに移植した中空繊維を用いて、KB-3、KB-V1またはKB-8-5細胞について適当な濃度が、7.5×105細胞/mlであることを確認した。 他の予備試験において、ビンブラスチンの250μg/kgの用量は、KB-V1細胞の生育に有意な影響を与えることなく(1%未満の生育阻害)(図5B)KB-3細胞の生育を阻害した(図5A)。
コルヒチン耐性のほかに、KB-8-5細胞はビンブラスチンと交差耐性を有することが知られているが、KB-V1細胞の場合より程度が低い(38, 39)。 In vivoの中空繊維モデルにおいて、ビンブラスチン100μg/kgでの処理によりKB-3細胞の生育は阻害されたが(図5A)、KB-8-5細胞の生育に有意な影響は観察されなかった(1.2%未満の生育阻害)(図5C)。 これらの細胞種の何れも、パルビレインA(79.2mg/kg)またはベラパミル(61.4mg/kg)に対して、0.136mmol/kgの用量では感受性を示さなかった(生育阻害は5.2%未満)(図5Bおよび5C)。 しかしながら、ビンブラスチンを、パルビレインAまたはベラパミルと共に同時投与した場合、有意な生育阻害作用(P<0.0001)が、腹腔内に移植したKB-V1(図5B)またはKB-8-5細胞(図5C)で観察された。
【0108】
図5は、NCr nu/nuマウスの腹腔内に移植したKB-3(パネルAおよびD)、KB-V1(パネルBおよびE)およびKB-8-5(パネルCおよびF)細胞で行なったin vivoの中空繊維試験をまとめたものである。 KB-3、KB-V1およびKB-8-5細胞の集密的な単層を回収し、遠心分離によりペレット化し、7.5×105個/mlの細胞密度で馴化培地中に再懸濁した。 細胞を充填した繊維を、5%二酸化炭素雰囲気下で、37℃で、一晩、6ウェルプレート中でインキュベーションし、次いで、頭尾方向にNCr nu/nuマウスの腹腔内に挿入した。 切開部を、皮膚ステープルで閉じた。 動物を、PBS(対照)、ビンブラスチン(VLB)(250μg/kg:パネルA、D、B、E;100μg/kg:パネルC、F)、ベラパミル(VP)(0.136mmol/kg)、パルビレインA(PA)(0.136mmol/kg)、ビンブラスチンとベラパミルの組み合わせ(VLB/VP)またはビンブラスチンとパルビレインAの組み合わせ(VLB/PA)(複合用法における個々の薬剤の用量は前述したとおりである)で処置した。 薬剤は、移植の3〜6日後から腹腔内注射により1日1回投与した。 第7日目に、マウスを屠殺し、繊維を取り出した。
薬剤の有効性を、TT試験により測定した細胞の実質生育率に基づいて評価した(パネルA、BおよびC)。 試験の第1日目および第7日目に体重を測定し、差を表示した(パネルD、EおよびF)。 阻害率(%)の計算値はスチューデントt検定による阻害率(%)の実測値と有意(P<0.0001)に異なっていた(n=6)。
【0109】
図6は、NCr nu/nuマウスの腹腔内に移植したKB-3(パネルAおよびC)およびKB-V1(パネルBおよびD)細胞で行なったin vivoの中空繊維試験成績をまとめたものである。
KB-3およびKB-V1細胞の集密的な単層を回収し、遠心分離によりペレット化し、5×106個/mlの細胞密度で馴化培地中に再懸濁した。 細胞を充填した繊維を5%二酸化炭素雰囲気下で、37℃で、一晩、6ウェルプレート中でインキュベーションし、次に、頭尾方向にNCr nu/nuマウスの腹腔内に挿入した。 切開部を、皮膚ステープルで閉じた。 動物を、PBS(対照)、ビンブラスチン(VLB)(250μg/kg)、ベラパミル(VP)(0.136mmol/kg)、パルビレインB(PB)(0.136mmol/kg)、パルビレインC(PC)(0.136mmol/kg)、ビンブラスチンとベラパミルの組み合わせ(VLB/VP)、ビンブラスチンとパルビレインBの組み合わせ(VLB/PB)またはビンブラスチンとパルビレインCの組み合わせ(VLB/PC)(複合用法における個々の薬剤の用量は前述したとおりである)で処置した。 薬剤は、移植の3〜6日後から、腹腔内注射により1日1回投与した。 第7日目に、マウスを屠殺し、繊維を取り出した。 薬剤の有効性は、MTT試験により測定した細胞の実質生育率に基づいて評価した(パネルAおよびB)。 試験の第1日目および第7日目に体重を測定し、差を表示した(パネルCおよびD)。 阻害率(%)の計算値は、スチューデントt検定による阻害率(%)の実測値と有意(PP<0.0001)に異なっていた(n=6)。
【0110】
皮下に移植した細胞で観察された応答の強度は、より低かった。 表5に記載のように、パルビレインAまたはビンブラスチンを単一薬剤として投与した場合には、それぞれ3.3%または1.2%の生育阻害作用が観察されたが、組み合わせて投与した場合には、阻害作用は74.7%となった。 各事例について、薬剤を単独で投与した場合に観察される阻害の総和として計算した%阻害と比較して、薬剤を同時投与した場合に増強効果が観察された。 すなわち、観察された阻害は計算値より高値であったため、両方の薬剤が有効であり、パルビレインAは、ベラパミルよりも強力な作用を示した。 すべての事例において、確立された基準(28)に基いたマウス体重には、有意な減少は観察されなかった(図5D、5Eおよび5F)。
【0111】
細胞培養は、MDR表現型を変化させることのできる物質を発見して決定する上で貴重な手段であることが判明した。 親のKB-3細胞と比較して、KB-V1細胞は、ビンブラスチンの生育阻害作用に対して200倍を超える耐性を示し(6)、MDRを退行させることのできる種々の薬剤の発見のためのモデルとして、これが用いられた(23、24)。 その結果、興味深い天然産物であるMDR退行薬剤が発見されている(25)。 例えば、パルビレインAは、公知のプロトタイプの退行剤であるベラパミルと構造的に似ているため、2種類の化合物を用いて比較試験を行った。 各事例において、パルビレインAにより媒介される応答は、ベラパミルにより媒介される応答と同等以上であることがわかった。 KB-V1細胞のほかに、パルビレインAは、KB-8-5細胞(表6)および CEM/VLB100細胞(表7)のMDR表現型も効果的に退行させた。
【0112】
以前の試験では、Pgpの過剰発現がMDRの発生の主要な原因であり、転写レベルまたはタンパク質レベルの何れかでPgpの発現を低下させることがMDRを対抗させるための一つの機序となることが示されていた(40、41)。 パルビレインAがMDR細胞のビンブラスチン感受性を増強させる機序を解明するために、培養物中のKB-V1およびCEM/VLB100細胞を用いて、MDR1 mRNAまたはタンパク質の発現を変化させるパルビレインAの能力を調べた。 種々の濃度のパルビレインAで、72時間、処理したところ、タンパク質(図5)またはmRNAの発現は有意には変化せず(データ示さず)、同様の陰性所見が、ベラパミルを用いて並行して行なった試験においても得られた(濃度範囲44μMまで)。 ベラパミルの場合、これらの結果は、24時間インキュベーションした後のKB-V1細胞において、MDR1 mRNAレベルに対する作用が限定的であったことを明らかにしたHu et al(42)の結果と合致している。
しかしながら、CEM/VLB100細胞の場合、ベラパミルで以前に観察されたPgpの発現の阻害は観察されなかった(40)。 このことは恐らくは、実験条件の相違によるものと考えられ、その理由は、Pgp発現に対するモジュレーターの作用が、細胞系およびモジュレーターに依存していることが知られていることにある(42)。 何れの場合にも、培養されたKB-V1およびCEM/VLB100細胞でのPgpの転写およびタンパク質の発現が、パルビレインAによる影響を受けないことは明らかである。
【0113】
一方で、パルビレインAは、明らかにPgpの機能的特徴を変化させた。 KB-V1細胞を0〜40μMの濃度範囲のベラパミルまたはパルビレインAで処理した場合(図4)、[3H]ビンブラスチンの蓄積は、約27倍増大した([3H]ビンブラスチン0.18pmol/50×104細胞のベースライン値から5pmol/50×104細胞まで増加)。 この蓄積の水準は、感受性細胞に近いものであり(ビンブラスチン7.1±0.17pmol/50×104細胞)、耐性細胞のビンブラスチン感受性の回復は、ビンブラスチンの細胞内蓄積の増大に起因することを示している。
【0114】
MDR細胞から得られた血漿膜は、薬剤感受性細胞由来の対応株よりも大量の抗癌剤に結合し(43)、そして、MDR細胞から単離された血漿膜小胞に結合した[3H]ビンブラスチン(23、24、32、43、44)は、Pgp媒介薬剤輸送/流出の機序を調べるためのモデルとして使用できる。 0.16μMの[3H]ビンブラスチンの存在下で0〜100μMの濃度範囲のパルビレインAまたはベラパミルを用いて多剤耐性KB-V1細胞から単離した膜小胞を処理したところ(図2)、[3H]ビンブラスチンの蓄積が約65倍に減少した(対照インキュベーションにおける[3H]ビンブラスチン5.93pmol/mgタンパク質から、パルビレインAまたはベラパミル存在下の[3H]ビンブラスチン約0.09pmol/mgタンパク質に減少)。 すなわち、ベラパミルの場合と同様、パルビレインAは、Pgpの流出機序を阻害することで、細胞内の薬剤蓄積が増大した。 相互作用の様式を特徴づけるために、[3H]ビンブラスチンの蓄積に対するベラパミルまたはパルビレインAの作用が測定されているKB-V1細胞に由来する膜小胞を用いて速度論的試験を行った。 両方の被験物質で、競合的阻害が観察され、通常はビンブラスチンにより占有されている結合部位との相互作用が示唆された。 同様の方法で、Cornwell et al(44)は、ビンブラスチン結合試験およびビンブラスチン光親和性標識試験の結果に基づいて、KB-V1細胞由来の膜小胞中の同じ部位にベラパミルとビンブラスチンが結合することを示唆した。 しかしながら、Pascaud et al(45)は、PgpのATPase活性の分析を通じて、Pgpが細胞毒性薬剤(例えば、ビンブラスチン)および退行剤(例えば、ベラパミル)に対して、同一ではないものの、相互に作用するような結合部位を有することを示唆している。 パルビレインAの作用には、独特の共通の結合部位が関与するか、または、相互に排他的であるが異なる2種類の結合部位が関与するかどうかは、現時点では明らかではない。
【0115】
有効性を説明すると思われる退行剤の構造的または物理化学的特徴を定義するための試験が行なわれている(8、46〜50)。 平面状芳香環および窒素原子が、すべてのモジュレーターが有する共通の特徴であることが示唆されている(48)。 CH2-CH2-N-CH2-CH2配列が大部分の活性化合物に観察されており、メトキシフェニル部分が退行活性を増強することがわかっている。 芳香環と塩基性窒素原子の相対的位置は、Pgp関連MDRのモジュレーターにとって重要であり(8)、リガンド−受容体の関係が示唆されている。 ベラパミルとパルビレインAは、第三級窒素、2個の芳香環、およびメトキシフェニル基を有するという点で、他のMDR退行剤が共有する特徴を有している。 ベラパミルは、Pgpと相互作用を示し、そしてMDRをモジュレートする能力にとって重要であると考えられるビンブラスチンと共通する3つのドメイン、すなわち、2個の芳香環および1個の塩基性窒素原子を有している。 これらの構造的特徴のほかに、脂質溶解性およびモル屈折力がMDRの退行において主要な役割を果たしていると考えられる(48)。 パルビレインAは、in vitroの試験において活性を示したため、中空繊維モデルを用いてさらにin vivoでの能力について調べた。 これは、癌の化学療法剤と組み合わせたMDR退行剤を評価するために、中空繊維モデルを用いた最初の報告である。 ビンブラスチンとの組み合わせにおいて、マウスの腹腔内および皮下で生育している多剤耐性腫瘍細胞の生育に作用するベラパミルまたはパルビレインAの能力を評価するために、中空繊維試験を用いた。 薬理学的に妥当である用量において、表10のデータは、腹腔内に移植されたKB-V1およびKB-8-5細胞において、ベラパミルとパルビレインAの双方が、ビンブラスチン感受性を退行させることができることを示し(P<0.0001)、これは、in vitroのデータと合致している(表6)。 しかしながら、皮下における応答は、より不明確であり(表10)、パルビレインAのみが、KB-8-5細胞で有意な退行作用(P=0.008)を示した。 ベラパミルと比較して、パルビレインAは、齧歯類の体内でより効果的に分布する可能性がある。
【0116】
あるいは、KB-8-5細胞では、パルビレインAがビンブラスチンへの耐性を退行させることに関して、ベラパミルより効果的であると考えられる。 全体として、皮下で観察された比較的弱い応答は、非効果的な薬剤の供給または血管の発生の欠如に起因すると考えられ、その理由は、中空繊維試験プロトコルでは血管形成ができないことによる(51)。 しかしながら、これらの結果は、複合薬剤試験のための中空繊維モデルの有用性を示しており、また、パルビレインAに関しては、従来のin vivoの動物モデルによる結果よりも、進歩した結果が期待できることを裏づけたものと考えられる。
【0117】
【表10】
ベラパミルおよびパルビレインBまたはC、それに、パルビレインAは三級窒素、2個の芳香環およびメトキシフェニル基、ClogP値およびMDRを退行させる能力に弱い相関を有するモル屈折力を有する点において、他のMDR退行剤にも認められる特徴を有している。
【0118】
パルビレインBおよびCもまた、in vitroの試験において期待できる活性を示したため、中空繊維モデルを用いて、さらにin vivoでの能力を調べた。 本明細書に記載したように、ビンブラスチンとの組み合わせにおいて、マウスの腹腔内および皮下内で生育している多剤耐性腫瘍細胞の生育に作用するベラパミルまたはパルビレインBもしくはCの能力を評価するために、中空繊維試験を行った。 表9のデータは、薬理学的に妥当な用量において、ベラパミルとパルビレインBまたはCの双方が、腹腔内に移植したKB-V1細胞でのビンブラスチン感受性を退行せしめたことを示し(P<0.0001)、この結果はin vitroのデータと合致している(表8)。 皮下では、微弱な応答が観察されるに過ぎず(表9)、これは恐らくは、非効率的な薬剤の供給、または、血管の発生の欠如に起因すると考えられ、その理由は、ここで用いた中空繊維試験プロトコルが血管形成ができないことによる(51)。
【0119】
現在の研究で提示されている第一の問題点は、パルビレインA、BおよびCのin vivoでの活性である。 すでに解明されている通り、これらの薬剤の各々が多剤耐性を退行させる能力は、同等であった。 したがって、各アルカロイドが、C-6位にトランス-3,4-トリメトキシシンナモイル単位を有することから、この化合物が、この種の化合物のクラス内では活性に関連する重要な構造的要素であると考えられ、また、C-3およびC-7における置換基の役割はより小さいものと考えられる。 全体として、パルビレインA、BおよびCは、ベラパミルと同等以上の活性を有するPgpの有効な阻害剤である。
【0120】
後述する通り、本発明の多剤耐性阻害剤の哺乳類への投与にはいくつかの潜在的利点があり、例えば、化学療法薬または抗生物質を用いた治療法を改善することができる。
【0121】
多剤耐性阻害剤は、そのまま化合物として治療目的に投与できるが、阻害剤を医薬組成物または製剤として投与するのが好ましい。 したがって、本発明は、例えば、多剤耐性阻害剤または製薬上許容しうるその塩またはプロドラッグを製薬上許容しうる一種以上の担体、そして、場合によっては、他の治療用および/または予防用の成分をさらに含有した医薬製剤を提供する。 担体は、製剤の他の成分と適合し、また、投与対象に有害ではないという意味において「許容可能」なものである。
【0122】
治療上必要な多剤耐性阻害剤の量は、治療すべき症状、モジュレーションが望まれる期間、ならびに患者の年齢および症状により異なり、最終的には担当医師により決定される。 しかしながら、一般的には、成人のヒトの治療に用いられる用量は、典型的には、一日当たり0.001mg/kg〜200mg/kgの範囲である。
好ましい用量は、一日当たり約1μg/kgから約100μg/kgまでである。 この所望の用量は、単回用量として、あるいは、例えば、1日当たり2、3、4回以上の小分けにして、適切な投与間隔を置いて、多回用量で好都合に投与できる。
Pgp活性のモジュレーションは、一時的な場合があるため、多回用量が所望され、あるいは必要となる場合がよくある。
【0123】
「治療上有効」用量とは、所望の作用を達成する化合物の量を指す。 そのような化合物の毒性および治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対して致命的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を測定するための細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定できる。 毒性および治療効果との間での用量比は、治療指数であり、これはLD50とED50との間の比として表される。 高い治療指数を示す化合物が好ましい。 このようなデータから得られるデータは、ヒトにおいて使用される投与量の範囲を設定するために使用することができる。 このような化合物の投与量は、好ましくは毒性がほとんどまたは皆無のED50を含む循環濃度の範囲内にある。 投与量は、使用される剤型および使用される投与経路によって上記範囲内で変動する。
【0124】
本発明の製剤は、標準的な方法、例えば、経口、非経口、舌下、経皮、経直腸、経粘膜、局所、吸入または口腔内投与により投与できる。 非経口投与の例として、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、硬膜下腔内および関節内投与があるが、これらに限定されない。
【0125】
獣医用としては、多剤耐性阻害剤またはその非毒性の塩もしくはプロドラッグを、通常の獣医学的手順に従って、適当な許容可能な製剤として投与する。
獣医師は、特定の動物に対して最も適切な投与方法および投与経路を容易に決定できる。
【0126】
多剤耐性阻害剤を含有する医薬組成物は、従来の方法で処方された錠剤またはトローチ剤の形態にすることができる。 例えば、経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、従来の賦形剤、例えば、バインダー(例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、澱粉またはポリビニルピロリドンの粘漿剤)、充填剤(例えば、乳糖、砂糖、微結晶セルロース、コーンスターチ、リン酸カルシウムまたはソルビトール)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ)、錠剤崩壊剤(例えば、馬鈴薯澱粉またはナトリウム澱粉グリコレート)または水和剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を含有することができる。 錠剤は、当該分野で公知の方法によってコーティングすることができる。
【0127】
あるいは、多剤耐性阻害剤は、経口投与用の液体製剤、例えば、水性または油性の懸濁液、溶液、乳液、シロップまたはエリキシルに配合することができる。 さらにまた、これらの化合物を含有する処方は、使用前に水または他の適当な溶媒で調製するための乾燥品として提供することもできる。 このような液体製剤は、従来の添加剤、例えば、懸濁剤、例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/砂糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、および水添可食脂肪;乳化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエートまたはアカシア;非水性溶媒(可食油脂を含む)、例えば、アーモンド油、分画カカオ脂、油性エステル類、プロピレングリコールおよびエチルアルコール;および、保存料、例えば、メチルまたはプロピルp-ヒドロキシベンゾエートおよびソルビン酸を含有してよい。
【0128】
このような製剤はまた、例えば、従来の坐剤基剤、例えば、カカオ脂または他のグリセリドを含む坐剤に処方することもできる。 吸入のための組成物は、一般的には、乾燥粉末として投与できる溶液、懸濁液または乳液の形態で、または、ジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロトリフルオロメタンのような従来の高圧ガスを用いたエアロゾルの形態で提供することもできる。 典型的な経皮処方は、水性または非水性のベヒクル、例えば、クリーム、軟膏、ローションおよびペーストを含み、または、医療用ギプス、パッチまたは膜の形態である。
【0129】
さらにまた、本発明の組成物は、注射または連続注入による非経口投与用に製剤することができる。 注射または連続注入が、投与の好ましい方法であると考えられる。 注射のための製剤は、油性または水性の溶媒中の懸濁液、溶液または乳液の形態であることができ、製剤補助剤、例えば、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤を含有することができる。 あるいは、有効成分は使用前に適当な溶媒(例えば、発熱物質非含有滅菌水)で再調製するための粉末形態とすることができる。
【0130】
本発明の組成物はまた、デポー製剤に処方できる。 このような長時間作用性の製剤は、(例えば、皮下または筋肉内に)移植することにより、または、筋肉内注射により投与することができる。 したがって、本発明の化合物は、適当な重合体または疎水性の材料とともに(例えば、許容できる油中の乳液として)、イオン交換樹脂とともに、または難溶性の誘導体として(例えば、難溶性の塩として)処方することができる。
【0131】
多剤耐性阻害剤はまた、癌およびその他の症状および疾患状態の治療に有用な他の治療薬と組み合わせて使用することができる。 すなわち、本発明の他の実施態様によれば、治療用の多剤耐性阻害剤と、治療上有効な第二の薬剤との組み合わせを提供する。
【0132】
多剤耐性阻害剤は、Pgp活性のモジュレーションが有用である症状の治療において有効な第二の薬剤と共に同時投与するための医薬の調製時に使用することができる。 さらに、多剤耐性阻害剤は、このような症状に対して有効な第二の化合物を用いた補助的治療のための医薬の調製時に使用することができる。多剤耐性阻害剤と組み合わせて使用するための公知の第二の治療薬の適切な用量は、当業者であれば、容易に決定できるものである。
【0133】
例えば、治療用の多剤耐性阻害剤は、化学療法のような癌治療法と組み合わせて使用することができる。 特に、多剤耐性阻害剤として、化学療法剤、例えば、シスプラチン、ドキソルビシン、ビンカアルカロイド、タキソール、シクロホスファミド、イフォスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メクロレタミン、マイトマイシン、デカルバジン、カルボプラチン、チオテパ、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、エスペラマイシンA1、プリカマイシン、カルムスチン、ロムスチン、タウロムスチン、ストレプトゾシン、メルファラン、ダクチオマイシン、トポテカン、アドリアマイシン、カムプトテシン、インターフェロン(α、β、γ)、インターロイキン2、イリノテカン、デセタキセル、およびプロカルバジン、そして、その治療上有効な類縁体、プロドラッグおよび誘導体等と組み合わせたものが使用できる。 多剤耐性阻害剤はまた、病原体、ウィルス、寄生虫または他の微生物学的ベクターにより誘発される症状の治療のために使用される薬剤、例えば、抗感染症薬、例えば、抗生物質と組み合わせて使用できる。
【0134】
本発明の多剤耐性阻害剤と共に使用できる別の化学療法剤としては、アルキル化剤、抗代謝剤、ホルモンおよびその拮抗剤、放射性同位体、抗生物質ならびに天然産物およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。 例えば、本発明の多剤耐性阻害剤は、抗生物質、例えば、ドキソルビシンおよび他のアントラサイクリン類縁体、ナイトロジェンマスタード、例えば、シクロホスファミド、ピリミジン類縁体、例えば、5-フルオロウラシル、シスプラチン、ヒドロキシ尿素、タキソールおよびその天然および合成の誘導体等と共に投与することができる。 他の例として、阻害剤は、ロイプロリドまたはゴセレリン(LH-RHの合成ペプチド類縁体)と組み合わせて投与することもできる。 本発明の方法において有用な化学療法剤の例を、以下の表に示す。
【0135】
【表11】
多剤耐性阻害剤はまた、抗感染症剤と組み合わせて使用することができる。抗感染症剤は、細菌、ウィルス、寄生虫または他の微生物学的または微視的ベクターにより誘発される疾患または症状に罹患した個体を治療するために使用される薬剤である。
【0136】
使用可能な抗生物質として、スルホナミド類、例えば、スルファセタミドナトリウム、スルファサイクリン、スルファジアジン、スルファベンズアミド、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルフェメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニラミド、スルファピリジン、スルファサラジンおよびスルフィソキサゾール;ペニシリン、例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、アモキサシリン、アンピシリン、バカンピシリン、シクラシリン、カルベニシリン、インダニルカルベニシリン、メロシリン、ピペラシリンおよびトリカルシリン;セファロスポリン、例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セファクロル、セファマンドール、セフメタゾール、セフォニシド、セフォラニド、セフォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフロキシン、ロラセフ、セフィキシム、セフォペラゾン、セファタキシム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、またはモキサラクタム;アミノグリコシド、例えば、硫酸アミカシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸ネオマイシン、硫酸ネフィルミカン、硫酸ストレプトマイシンおよびトブラマイシン;マクロライド、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、スピラマイシンおよびトロレアンドマイシン;ポリペプチド、例えば、バシトラシン、硫酸カプレオマイシン、コリスチメテートナトリウム、硫酸コリスチン、硫酸ポリミキシンB、およびバノマイシン;テトラサイクリン、例えば、塩酸クロロテトラサイクリン、塩酸デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびテトラサイクリン;フルオロキノロン、例えば、塩酸シプロフロキサシン、エノキサシン、塩酸ロメフロキサシン、ノルフロキサシンおよびオフロキサシン;ならびに種々の抗生物質、例えば、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、シクロセリン、フシデートナトリウム、リタンピン、塩酸スペクチノマイシン、シノキサシン、クロファジミン、ダプソン、塩酸エタンブタール、イソニアジド、ニトロフラントイン、ピラジナミド、リファブチンおよびトリメトプリムが包含されるが、これらに限定されない。 その他のクラスの抗細菌剤として、抗マラリア剤および抗カビ剤などがある。 抗ウィルス剤、例えば、アシクロビル、シタラビン、ジダノシン、ホスカルネット、ゲンシクロビル、イドクスリジン、インターフェロン、メチサゾン、リファンピン、スラミン、ビダラビン、ザルシタビンおよびジドブジンも、使用することができる。 当業者に周知のその他の抗感染剤、ならびに抗感染剤の塩、誘導体およびプロドラッグも、使用することができる。
【0137】
上記した組み合わせは、単一の医薬品製剤の形態での使用について例示しているに過ぎず、したがって、上記した組み合わせを製薬上許容しうる希釈剤または担体と共に含有する医薬組成物は、本発明の別の実施態様を構成するものである。
【0138】
したがって、上記した組み合わせの個々の成分は、同一または異種の医薬品製剤から順次または同時に投与することができる。 多剤輸送モジュレーターの場合のように、第2の治療薬を何れかの適当な経路、例えば、経口、口腔内、吸入、舌下、直腸、膣内、経尿道、鼻孔内、局所、経表皮(すなわち、経皮)または非経口(静脈内、筋肉内、皮下および冠動脈内)投与により投与することができる。
【0139】
ある実施態様においては、多剤耐性阻害剤および第2の治療薬を、同一または異種の医薬組成物を、同じ経路で投与する。 しかしながら、他の実施態様においては、治療用の多剤耐性阻害剤および第2の治療薬の一方が、同じ投与経路を用いることが不可能であるか、または、好ましくない場合がある。 当業者は、単一の医薬組成物または異種の医薬組成物の組み合わせの何れについても、各治療薬の最良の投与方式を熟知している。
【0140】
本明細書に記載した本発明の多くの修正または変更が、本発明の趣旨と範囲を逸脱せずに行われようことは自明であるので、したがって、添付の請求の範囲に記載の限定のみが、本発明に付加されるべきである。
【0141】
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Siemens Analytical X-ray Instrument, Inc., Madison, WI。
(77) トロパン-3α、6β、7β-トリオール3-フェニルアセテート(1)の結晶学的データは、Cambridge Crystallographic Data Centerに寄託されている。 このデータのコピーは、12 Union Road, Cambridge CB2 1EZ, UKに所在のCCDC(Fax:+44-(0)1223-336033 または e-mail:deposit @ ccdc.cam.ac.uk)の長官宛に申請すれば、無料で入手することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】pmol単位の[3H]ビンブラスチン/タンパク質(mg)に対するベラパミルおよびペパルビレインAの濃度のプロットを含む図である。
【図2】ビンブラスチンの蓄積阻害剤の速度論的分析を示す、1/pmol ビンブラスチン/分/タンパク質(mg)に対する 1/ビンブラスチン(μM-1)のプロットを含む図である。
【図3】増大したビンブラスチンの蓄積を示すpmol単位の[3H]ビンブラスチン/500,000個のKB-VI細胞に対するベラパミルおよびペパルビレインAの濃度のプロットを含む図である。
【図4】KB-3、KB-VI、CEMおよびCEM/VLB100細胞のMDR1発現のウエスタンブロットを含む図である。
【図5】相対的な細胞生育率(%)および体重変化を示すin vivo繊維試験の結果を示す棒グラフである。
【図6】相対的な細胞生育率(%)および体重変化を示すin vivo繊維試験の結果を示す棒グラフである。
Claims (22)
- パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインFおよびパルビレインA N-オキシドからなるグループから選択される化合物。
- パルビレインA、パルビレインBおよびパルビレインCからなるグループから選択される請求項1に記載の化合物。
- パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、パルビレインA N-オキシドおよびそれらの混合物からなるグループから選択される化合物の有効量に、細胞または組織を接触させる、ことを含む細胞または組織における化学療法薬の活性を強化する方法。
- 前記化合物が、パルビレインA、パルビレインB、パルビレインCおよびそれらの混合物からなるグループから選択される請求項3に記載の方法。
- パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、パルビレインA N-オキシドおよびそれらの混合物からなるグループから選択される化合物の有効量に、細胞または組織を接触させる、ことを含む細胞または組織のP-糖蛋白の流出能力を調節する方法。
- 前記化合物が、パルビレインA、パルビレインB、パルビレインCおよびそれらの混合物からなるグループから選択される請求項5に記載の方法。
- 前記流出能力が、細胞または組織における治療薬の保持に関して阻害される請求項5に記載の方法。
- 前記治療薬が、化学療法薬を含む請求項7に記載の方法。
- 前記治療薬が、抗生物質を含む請求項7に記載の方法。
- パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、パルビレインA N-オキシドおよびそれらの混合物からなるグループから選択される化合物と化学療法薬とを含む治療増強複合物の治療有効量を、癌の治療を要する個体に投与する、ことを含む癌治療方法。
- 前記化合物が、パルビレインA、パルビレインB、パルビレインCおよびそれらの混合物からなるグループから選択される請求項10に記載の方法。
- 前記化学療法薬と前記化合物を同時に投与する請求項10に記載の方法。
- 前記化学療法薬と前記化合物を順次に投与する請求項10に記載の方法。
- P-糖蛋白の流出が化学療法薬に関して阻害され、他の化合物については正常な流出が維持される請求項10に記載の方法。
- 薬学的組成物、すなわち;
(a) 疾患を治療することのできる治療薬;および、
(b) パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、パルビレインA N-オキシドおよびそれらの混合物からなるグループから選択される化合物、を含む疾患を治療するための薬学的組成物。 - 前記疾患が癌であり、かつ前記治療薬が化学治療薬である請求項15に記載の組成物。
- 前記疾患が感染症であり、かつ前記治療薬が抗感染症剤である請求項15に記載の組成物。
- 前記化合物が、パルビレインA、パルビレインB、パルビレインCおよびそれらの混合物からなるグループから選択される請求項15に記載の組成物。
- 組成物、すなわち;
(a) パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、パルビレインA N-オキシドおよびそれらの混合物からなるグループから選択される活性化合物;および、
(b) 薬学的に許容可能な担体、を含む組成物。 - 製品、すなわち;
(a) 梱包された抗癌化合物;および、
(b) パルビレインA、パルビレインB、パルビレインC、パルビレインD、パルビレインE、パルビレインF、パルビレインA N-オキシドおよびそれらの混合物からなるグループから選択される化合物と該抗癌剤の患者への投与方法を記載した添付書類、を含む製品。 - 前記化合物が、パルビレインA、パルビレインB、パルビレインCおよびそれらの混合物からなるグループから選択される請求項20に記載の製品。
- 製品、すなわち;
(a) 請求項19に記載の薬学的組成物;および、
(b) 活性化合物の投与含む治療法を記載した添付書類、を含む製品。
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