JP2004524291A - シアノアクリレート組成物の殺菌方法 - Google Patents
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Abstract
重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法であって、重合性シアノアクリレートエステル組成物に、組成物をゲル化させることなくシアノアクリレートエステル組成物を殺菌する条件のもとで、十分な線量の可視光を照射することを含む方法、及び、(a)可視光照射に対して透明なパッケージ要素を選択すること;(b)前記(a)で選択されたパッケージ要素にシアノアクリレートエステル組成物を入れること;および(c)組成物をゲル化させることなく、前記(b)で生成したパッケージ要素に十分な線量の可視光を照射して、パッケージ要素およびその中のシアノアクリレートエステル組成物を殺菌することを含む、パッケージ要素内に、重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法が開示されている。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレポリマーが、殺菌の後、重合性(ゲル化していない)の形態を維持する条件のもとで、シアノアクリレート・プレポリマー組成物を殺菌する方法を対象とする。本発明の方法は、1つには、可視光照射殺菌法を用いる。
【0002】
参考文献
以下の特許出願および特許が、本出願において、上付き数字として引用および/または参照されている。
【参考文献】
【0003】
上記特許出願および特許は、あたかもそれぞれの個々の特許出願あるいは特許が具体的に個々にその全体として参照により組み込まれると指示されるのと同じ程度に、それら全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
【従来の技術】
シアノアクリレートエステルを含む組成物が、ヒトの様々な医療用途に適する接着性をもつものとして開示されている。このような用途には、例えば手術後の切開部皮膚層を塞ぐ縫合糸あるいはステープルの代替あるいは補助としての使用;止血鉗子としの使用;皮膚表面の縫合できない小さな創傷の被覆における使用;皮膚表面とテープ、人口器官、ギプス包帯などの人口的手段との間の摩擦で生じる表皮炎症を抑制するための使用;および切開手術用無菌布のin situの形成における使用;が含まれる。1 〜 6 、 11
【0005】
それぞれの場合に、哺乳類の皮膚に局所的に適用されたとき、シアノアクリレートは素早く、従来1分以内に重合して、強く皮膚に固着した、一体となった接着性のポリマー・フィルムを生成する。
【0006】
このような用途に対して示唆されるシアノアクリレートエステルは次の構造を含み、
【化3】
Rはアルキルあるいは他の適当な置換基である。このようなシアノアクリレートエステルは、例えば米国特許第3,527,224号、3,591,676号、3,667,472号、3,995,641号、4,035,334号、および4,650,826号1 、 2 、 7 〜 10に開示されている。
【0007】
シアノアクリレートエステル組成物の数々の医療用途を考慮すると、これら組成物の殺菌された形態は特に望ましいであろう。事実、パッケージ化された製品に殺菌技術を適用し、殺菌して、殺菌された組成物を直ちに出荷できれば、特に望ましいであろう。パッケージ化製品の殺菌により、パッケージ化ステップ中の汚染微生物の再混入が防げるであろう。
【0008】
しかし、従来の殺菌法は、シアノアクリレートエステル組成物に適用された場合、不適切であるか、あるいは望ましくない結果になることが多い。例えば、使用するために選択された殺菌法がシアノアクリレートエステルの重合を引き起こさないことが必須であり、したがって、Dimiter20はこれらの組成物に対して少なくとも160℃の、加熱殺菌温度を用いることを報告しているが、高温加熱または蒸気法は禁忌されることが多い。同様に、殺菌がパッケージ化シアノアクリレートエステル組成物で実施されるとき、選択された殺菌法はパッケージ材料を透過し、シアノアクリレートエステル組成物を含むパッケージの全内容物を殺菌できなければならない。
【0009】
実際に、Stehlik12は、蒸気殺菌、加熱殺菌、ガス処理、無菌濾過および室温でのイオン化放射線などの従来の殺菌プロセスは、これらのプロセスではシアノアクリレートエステルが重合し、接着剤として使用するのに適さない固体組成物になるために適用できないということを記載している。Stehlikは続けて、始めに非常に低温で(実施例では、−196℃および−80℃が開示されている)組成物を凍結させることにより組成物を固化し、次に凍結固化した組成物にイオン化γ線を照射することにより、シアノアクリレート組成物の殺菌を好ましく達成することができるということを開示する。この参考文献では、例えばCo60γ線の1.5mRadの照射量が、細菌の芽胞を殺すとして開示された。
【0010】
しかし、シアノアクリレートエステル組成物を固化するために低温を利用することは、工業的規模での製造では実用的でないということは明らかである。
【0011】
McDonnell他13もまた、ほとんどの殺菌方法は、シアノアクリレート組成物、特にパッケージ化シアノアクリレート組成物へのそれらの適用性において、不適切であるか、あるいは厳しい制限を受けるということを記載する。事実、この参考文献は、電子ビーム(E−ビーム)照射による殺菌は、E−ビーム加速器が比較的浸透力が小さいので受け入れることができず、パッケージの外側表面の殺菌に有効であるだけであろうということを開示する。そこで、McDonnell他は、室温の組成物への非常に大きな線量のγ線照射(少なくとも2.5mRad)を用いる殺菌法を記載する。
【0012】
McDonnell他の開示にもかかわらず、いくつかの参考文献が、E−ビーム法を用いて成功した、シアノアクリレートの殺菌を開示する。例えば、Greff他21およびHickey他22を参照。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、E−ビーム殺菌法は、非常に高価で、Greff他21により記載されるように、その浸透力が限られている特殊な装置を必要とする。さらに、この装置の設置および運転は、ほとんどの製造会社にとって、実際的でもないし、費用効率が高くもない。E−ビームにより殺菌される意匠製品(device)は従来専用の施設に出荷され、相当な費用の発生と生産の遅延を引き起こす。したがって、シアノアクリレートの殺菌のための、より実現しやすく費用効率の高い方法は利益をもたらすであろう。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明はシアノアクリレートエステル組成物を殺菌する方法を対象とする。特に、本発明は、注意深く制御された条件のもとで、室温条件で可視光照射を用いて、シアノアクリレートエステル組成物を殺菌することができるという、新規で予想外の結果を対象とする。
【0015】
特定の態様において、十分に強力な可視光源を用いることにより、重合性のシアノアクリレートエステル組成物の殺菌が、これらの組成物に、認められるような重合を起こすことなく、可能であるということが見出された。
【0016】
したがって、その方法の一態様において、本発明は、重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法を対象とし、この方法には、組成物をゲル化させることなくシアノアクリレートエステル組成物が殺菌される条件のもとで、重合性シアノアクリレートエステル組成物に十分な線量の可視光を照射することが含まれる。
【0017】
好ましい実施形態において、前記重合性シアノアクリレートエステルは、シアノアクリレートエステルの重合性モノマーあるいは反応性オリゴマーである。このようなモノマーおよび反応性オリゴマーは、本明細書では単に「プレポリマー」と呼ばれ、またモノマーの形では、好ましくは、式Iにより表され、
【化4】
Rは、
炭素原子が1から10個のアルキル、
炭素原子が2から10個のアルケニル、
炭素原子が5から8個のシクロアルキル基、
フェニル、
2−エトキシエチル、
3−メトキシブチル、
および以下の式の置換基、
【化5】
からなる群から選択され、それぞれのR’は、
水素およびメチル、
からなる群から独立に選択され、また
R”は、
炭素原子が1から6個のアルキル、
炭素原子が2から6個のアルケニル、
炭素原子が2から6個のアルキニル、
炭素原子が3から8個のシクロアルキル基、
ベンジル、メチルベンジルおよびフェニルエチルからなる群から選択されるアラルキル、
フェニル、ならびに
ヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ニトロ、炭素原子が1から4個のアルキルおよび炭素原子が1から4個のアルコキシからなる群から選択される1から3個の置換基で置換されたフェニル、
からなる群から選択される。
【0018】
より好ましくは、式Iのシアノアクリレートエステルにおいて、Rは炭素原子が2から10個のアルキルであり、さらにより好ましくは、炭素原子が4から8個のアルキルである。なお一層好ましくは、Rはブチル、ペンチルあるいはオクチルであり、また最も好ましくは、Rはn−ブチルである。
【0019】
別の好ましい実施形態において、シアノアクリレートエステル組成物は、シアノアクリレートエステルの重合を防ぐのに有効な量の、生体適合性酸性重合禁止剤および生体適合性ラジカル重合禁止剤の混合物、ならびに有効量の生体適合性可塑剤を含むように配合される。
【0020】
重合禁止剤の好ましい混合物は、二酸化イオウ、氷酢酸および他のよく知られた酸性重合禁止剤などの生体適合性酸性重合禁止剤、ならびにヒドロキノンおよびヒンダードフェノール(例えば、4−メトキシフェノール)を含む生体適合性ラジカル重合禁止剤である。酸性重合禁止剤は、好ましくはSO2であり、組成物の全重量に対して、好ましくは約50から1000ppm、より好ましくは約50から500ppm、また一層好ましくは約200から500ppmで用いられる。ラジカル禁止剤は、好ましくはヒドロキノンであり、好ましくは約50から250ppmの濃度で、より好ましくは約150ppmで用いられる。特に好ましい実施形態において、重合禁止剤は、毒性であるかまたは哺乳類の皮膚を刺激するような、あるいはシアノアクリレートエステル組成物を早まって重合させてしまうかまたは重合を妨げるような分解性生成物を、可視光の照射により生成しないように選択される。
【0021】
好ましい生体適合性可塑剤は、ジオクチルフタレートおよび/またはアセチルトリ−n−ブチルシトレートであり、得られる重合シアノアクリレート・フィルムの柔軟性を増すのに十分な量で用いられる。この場合も、特に好ましい実施形態においては、生体適合性可塑剤は、毒性であるかまたは哺乳類の皮膚を刺激するような、あるいはシアノアクリレートエステル組成物を早まって重合させてしまうかまたは重合を妨げるような分解性生成物を、可視光の照射により生成しないように選択される。
【0022】
別の好ましい実施形態において、シアノアクリレートエステル組成物は、適合性抗菌剤を、また一層好ましくはヨウ素分子と生体適合性ポリマーとの抗菌性複合体をさらに含む。このような複合体には、可視光殺菌の前にシアノアクリレート組成物と混合してもよく、あるいはシアノアクリレート成分が可視光により殺菌されている、パッケージ化されたシアノアクリレート組成物における独立した成分(例えば、2成分系)として含めてもよい市販のポビドン・ヨードが含まれる。
【0023】
本発明の方法は、殺菌されるシアノアクリレート組成物がパッケージ要素内にある場合に特に有益である。この態様において、本発明は、パッケージ要素内に、重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法を対象とし、この方法には以下のことが含まれる:
(a)可視光照射に対して透明なパッケージ要素を選択すること;
(b)前記(a)で選択されたパッケージ要素にシアノアクリレートエステル組成物を入れること;および
(c)組成物をゲル化させることなく、前記(b)で生成したパッケージ要素に十分な線量の可視光を照射して、パッケージ要素およびその中のシアノアクリレートエステル組成物を殺菌すること。
【0024】
さらに別のその方法の態様において、本発明は、パッケージ要素内に、重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法を対象とし、この方法には以下のことが含まれる:
(a)充填後にヒート・シールするために形作られた首部分を有するアンプルの形の、可視光照射に対して透明であるパッケージ要素を選択すること;
(b)アンプル上の汚染微生物数のレベルを低下させるために、前記アンプルを十分な量の消毒作用体(sanitizing agent)に曝すこと;
(c)重合性シアノアクリレートエステル組成物を選択すること;
(d)前記シアノアクリレートエステル組成物を、最大細孔径が約1ミクロンより小さいバイオフィルタを通して濾過すること;
(e)前記(b)で調製されたアンプルに、濾過されたシアノアクリレートエステル組成物を入れること;
(f)(e)で調製されたアンプルを、前記アンプルの首部分をヒート・シールすることによりシールすること;
(g)前記(f)で生成したアンプルを合わせて、アンプル・セットとすること;
(h)前記アンプル・セットを含むパッケージ要素を形成するように、(g)で生成したアンプル・セットを、第2のシール手段でシールすること;および
(i)組成物を固化あるいはゲル化させることなく、前記(h)で形成されたパッケージ要素に十分な線量の可視光を照射して、パッケージ要素とその中のシアノアクリレートエステル組成物を殺菌すること。
【0025】
好ましい消毒作用体には、例えば熱、プラズマおよびエチレンオキシド・ガスが含まれる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明は、1つには、殺菌後プレポリマーが重合性でゲル化していない形態のままである、可視光を用いるシアノアクリレート・プレポリマー組成物の殺菌方法を対象とする。本発明をさらに詳細に説明する前に、始めに次の用語を定義する。
【0027】
定義
本明細書では、次の用語は以下の意味をもつ。
【0028】
用語「シアノアクリレートエステル組成物」あるいは「シアノアクリレート組成物」は、モノマーの形では、好ましくは前記の式Iにより表される化合物である、重合性シアノアクリレートエステル・モノマーおよび/またはオリゴマーを含む重合性配合物を表す。
【0029】
より好ましくは、式Iにおいて、Rは炭素原子が2から10個のアルキル基であり、例としては、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ノニル、およびデシルが含まれる。より好ましくは、Rはブチル、ペンチルあるいはオクチルであり、また最も好ましくは、Rはn−ブチルである。また、これらの化合物の混合物を用いてもよい。
【0030】
重合性シアノアクリレートエステルは当技術分野において知られており、例えば米国特許第3,527,224号、3,591,676号、3,667,472号、3,995,641号、4,035,334号、および4,650,826号1 、 2 、 7 〜 10に記載されており、それぞれの開示を全体として参照により本明細書に組み込む。
【0031】
本発明で使用するのに特に好ましいシアノアクリレートエステルは、n−ブチル−2−シアノアクリレートである。
【0032】
本明細書に記載される重合性シアノアクリレートエステル組成物は、水蒸気あるいは組織タンパク質の存在で素早く重合し、これらのプレポリマーは組織毒性あるいは細胞毒性を引き起こすことなくヒトの皮膚組織に結合する。
【0033】
このような重合性シアノアクリレートエステルは、本明細書では、プレポリマーと呼ばれることがあり、このようなエステルを含む組成物は、本明細書では、プレポリマー組成物と呼ばれることがある。
【0034】
用語「生体適合性ポリマー」は、ヨウ素複合体(付加物)のように、ヒトの皮膚を含む哺乳類の皮膚への、シアノアクリレートエステル組成物のin vivo適用に適合性があるポリマーを表す。代表的なポリマーには、ポリビニルピロリドン、任意選択で架橋されているポリビニルピロリドンを含むコポリマーなどが含まれる。適切なコポリマーには、ポリビニルピロリドンとビニルアセテートあるいは他のビニル化合物との、任意選択でポリイソシアネートにより架橋されているコポリマーが含まれる。これらのポリマーの分子量は重要ではなく、約10,000から約1,000,000、好ましくは30,000から300,000の範囲の数平均分子量をもつ。
【0035】
用語「ヨウ素分子と生体適合性ポリマーの複合体」は、ヨウ素(I2)の生体適合性ポリマーへの付加により形成される抗菌性複合体を表す。このような複合体は当技術分野においてよく知られており、生じる複合体は従来、有効なヨウ素とヨウ素アニオンのいずれも含む。これらの複合体は、哺乳類の皮膚との接触の際、明らかに抗菌性ヨウ素源となることにより、抗菌性となる。どのような場合でも、このような複合体は、本明細書では出発物質としてのみ用いられ、それら自体では本発明の一部分を構成しない。
【0036】
これらの複合体は、本明細書では単に用語「ヨウ素/ポリマー複合体」により表されることがある。細菌あるいは真菌由来の天然物質であり、その作用機序が、結果的に細菌が死ぬことになる細菌過程の阻害である抗生物質から、このヨウ素/ポリマー複合体は区別される。対照的に、本発明で用いられる複合体は、明らかにヨウ素を微生物に放出することによる、真菌、ウイルスおよび細菌を含む何らかの微生物を殺すことにおいて無差別であり、したがって、適切に抗菌剤と呼ばれている。驚くべきことに、ヨウ素/ポリマー複合体はシアノアクリレート組成物に適合性があるということが見出された。事実、単体(固体)ヨウ素は、単体ヨウ素の添加によりシアノアクリレート組成物が哺乳類の皮膚上で非重合性となるために、この組成物に適合性がない。したがって、ヨウ素と生体適合性ポリマーの複合化は、シアノアクリレート組成物との適合性にとって明らかに欠くことができない。
【0037】
本発明の組成物に使用される好ましいヨウ素/ポリマー複合体の1つは、例えば、Merck & Co.(Rahway, N.J., USA)により1983年に出版された「the Tenth Edition of the Merck Index」に記載されるポリビニルピロリドン・ヨウ素複合体である。この複合体は、「ポビドン−ヨード」の名称で、BASF(Mt.Olive, New Jersey, USA)から市販されている。
【0038】
他の適切な抗菌剤には、ヨウ素分子と、ポロキサマーあるいはビニルピロリドンとビニルアセテートのコポリマー、ポリイソシアネートで架橋された、ビニルピロリドンとビニルアセテートのコポリマー、ビニルピロリドンとビニル官能体のコポリマー、ピロリドン・ポリマーなどとの複合体が含まれる。
【0039】
用語「生体適合性可塑剤」は、シアノアクリレート組成物に溶解するかまたは分散し、皮膚表面に得られるポリマー・フィルム皮膜の柔軟性を増し、また用いられた量で、中程度乃至ひどい皮膚刺激がないことから評価して皮膚に適合性がある何らかの材料を表す。適切な可塑剤は当技術分野においてよく知られており、米国特許第2,784,127号17および4,444,933号18に開示されるものを含み、これら2つの開示は全体として参照により本明細書に組み込まれる。具体的な可塑剤には、単に例としてであるが、アセチルトリ−n−ブチルシトレート(好ましくは約20重量%以下)、アセチルトリヘキシルシトレート(好ましくは約20重量%以下)、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、n−ブチリルトリ−n−ヘキシルシトレート、ジエチレングリコールジベンゾアート(好ましくは約20重量%以下)などが含まれる。用いられる個々の生体適合性可塑剤は重要ではなく、好ましい可塑剤には、ジオクチルフタレートおよびアセチルトリ−n−ブチルシトレートが含まれる。
【0040】
用語「重合禁止剤」は、シアノアクリレートの、従来の酸性重合禁止剤とラジカル禁止剤の混合物を表し、二酸化イオウ、氷酢酸、C2〜C6有機酸などの第1の禁止剤ならびにヒドロキノンおよびヒンダードフェノールなどの第2の禁止剤を含む混合物のような材料を含む。重合禁止剤は従来、哺乳類の皮膚上に適用されるまで重合を禁止するのに有効な量で用いられる。
【0041】
酸性重合禁止剤は、皮膚への局所適用でのその適合性のために、好ましくは二酸化イオウであり、それは、組成物の全重量に対して、好ましくは約50から1000ppm、より好ましくは約50から500ppm、より一層好ましくは100から300ppmで用いられる。他の好ましい酸性重合禁止剤には、氷酢酸および他の有機酸(例えば、C2からC6の有機酸)が含まれる。好ましいラジカル禁止剤にはヒドロキノンが含まれ、これは好ましくは約50から500ppmで用いられる。他のラジカル禁止剤には、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールなどのようなヒンダードフェノールが含まれる。
【0042】
用語「抗菌剤」は微生物(すなわち、細菌、真菌、ウイルスおよび微生物の芽胞)を殺すことによりそれらの発育と病原作用を防止する作用剤を表す。
【0043】
用語「消毒作用体」は、パッケージ要素に適合性がある何らかの作用体を表し、これらの要素と接触したとき、その上の汚染微生物を減らすことによりパッケージを消毒する。好ましくは、汚染微生物は、個々のパッケージ要素上で、約10コロニー形成単位(CFU)より少なく、またより好ましくは約3CFUより少ないレベルまで減らされる。好ましい消毒作用体には、例えば、熱、プラズマおよびエチレンオキシドが含まれる。他の適切な消毒作用体は当技術分野においてよく知られている。
【0044】
用語「可視光」は、約200から780nm、好ましくは390から780nmの波長をもつ光を表す。
【0045】
用語「可視光照射に対して透明な」は、パッケージ要素を、その中に入った重合性シアノアクリレート組成物を殺菌するのに十分な可視光が透過できるパッケージ要素を表す。パッケージ要素では、パッケージ要素の表面に入射する照射可視光の、好ましくは、少なくとも約50%、より好ましくは、少なくとも70%、またより一層好ましくは、少なくとも80%が要素を透過できるであろう。
【0046】
方法
本発明の方法は重合性シアノアクリレート組成物の可視光殺菌を含む。好ましい実施形態において、シアノアクリレート組成物は、まず、好ましくは気密性で耐湿性の、可視光に透明な適切な容器にパッケージ化される。このような容器には、例えば、ガラス、ポリプロピレンもしくはポリエチレンなどのポリアルキレン系ポリマーなどが含まれる。適切なパッケージ要素の1つがAskill等15により記載されている。別の適切なパッケージ要素には、ポリオレフィン、フッ素化ポリオレフィンおよび類似の材料からなるアンプルが含まれる。このような材料は水蒸気透過が少なく、シアノアクリレートエステルに対して不活性である。
【0047】
好ましい実施形態において、パッケージ要素には、約0.3から10mLのシアノアクリレート組成物の収容力および少なくとも約1ミリメートルの壁厚がある高密度ポリエチレン・アンプルが含まれる。別の好ましい実施形態において、シリカ層でライニングされたポリオレフィンが、その改善されたバリア性能と予想されるより長い貯蔵寿命のゆえに、パッケージ材料として用いられる。
【0048】
次に、シアノアクリレート組成物と非反応性である蠕動もしくは容量型ポンプを用いて、パッケージ要素に、重合性シアノアクリレートエステル組成物が望ましいレベルまで充填される。パッケージ要素への充填には、よく知られているいくつかの充填方法の何れかを用い、特定の充填方法は本発明にとっては重要でなく、特許請求された本発明の一部分を構成しない。いったん充填されると、パッケージ要素は、やはり従来の手段により、好ましくはシールされる。必要であれば、シール手段には補助的なシール手段を含めることができる。例えば、ねじ蓋がかぶせられたアンプルの口の上に、取り除くことができる透明なポリマー被覆フィルムを付けることにより、ねじ蓋シール手段を備えるアンプルをさらにシールすることができる。この場合もやはり、シール手段は本発明の如何なる部分も構成していないので、従来のシール手段の何れかを用いることができる。
【0049】
好ましい一実施形態において、前記のアンプルは、充填前には一端が開いており、シアノアクリレート組成物を充填した後、その開口末端が押しつけられ、ヒート・シールされて閉じられる。
【0050】
特に好ましい実施形態において、アンプルは、ポリフォイル・パッケージまたはバッグなどの第2のパッケージ要素に入れられ、次にヒート・シールされて、アンプルの単位パッケージ要素を形成する。耐湿性のある、別の第2のパッケージ要素では製袋充填シール(form fill seal)パッケージ装置を用いてもよい。次に、単位パッケージ要素は、好ましくは、箱に入れられて要素のグループあるいはセットとなり、次にその箱が可視光殺菌される。
【0051】
パッケージ要素は、個々の要素であれ、あるいはより大きなパッケージ要素に一体化された複数の要素であれ、可視光殺菌を受ける。可視光発生器は、殺菌を実施するのに十分な出力と波長幅の従来の発生器の何れかである。しかし、好ましい発生器は、PurePulse Technologies,Inc.(4241 Ponderosa Ave, San Diego, CA 92123, USA)から商品名PureBright(登録商標)インライン殺菌システムとして市販されている。
【0052】
このPureBright(登録商標)インライン殺菌システムでは、地表日光の約90000倍の大きさの強度で透明液体を殺菌するために可視光が用いられる。本発明の方法は、驚くべきことに、そこで用いられる照射にUV線が存在するにもかかわらず、シアノアクリレート組成物に、認められるような重合を起こさないであろうと想定されている。
【0053】
パッケージ要素へのUV光の貫通量に懸念があれば、パッケージ要素に従来のUV吸収剤を組み込み、かつ/または安定剤をより高濃度に含むようにシアノアクリレート組成物を配合することができる。
【0054】
用いられる可視光照射線量は、パッケージ要素ならびにその内容物を殺菌するのに十分なものである。好ましい実施形態において、可視光線量は、好ましくは、約0.01から50ジュール/cm2、より好ましくは約0.05から約5ジュール/cm2であり、具体的な線量は、可視光照射を受ける材料の密集度、ならびにそこにあると見積もられる汚染微生物の量に対して選択される。このような因子は十分に当分野の技術の範囲内である。殺菌プロセスの完了で、殺菌された製品は最終ユーザに向けて出荷される準備ができる。
【0055】
可視光殺菌は、好ましくは、約15℃から約30℃の温度のような雰囲気大気条件で実施され、製品に可視光を照射する時間は、用いられる放射のフルエンスおよび必要とされる線量に依存し、これは十分に当分野の技術の範囲内である。好ましくは、製品への可視光の照射は60秒より短い。例えば、Clarkの米国特許第5,925,885号を参照。これは全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
特に好ましい実施形態において、シアノアクリレート組成物の殺菌は、可視光照射殺菌の前に、パッケージ要素および/またはシアノアクリレート組成物の微生物汚染を減らすためのステップを踏むことにより容易になる。例えば、パッケージ要素を、充填前にその上の汚染生物を減らすために、適合性のある殺菌あるいは消毒条件と接触させることができる。これらの殺菌あるいは消毒条件は、シアノアクリレート組成物を入れる前に利用されるので、パッケージには適合性があるが、シアノアクリレートエステルには、それと異なって適合性がない恐れのある、例えば、蒸気殺菌、加熱殺菌、ガス処理などを含む殺菌あるいは消毒条件を利用することができる。
【0057】
同様に、シアノアクリレート組成物は、好ましくはあるが任意選択で、パッケージ要素に入れられる前に、微小細孔フィルタ(細孔径<1ミクロン)で濾過される。例えば0.22ミクロンのフィルタを通して濾過することにより、シアノアクリレート組成物中の微生物汚染は効果的に減少する。
【0058】
可視光で照射する前にこのようなステップを踏むことにより、組成物を殺菌するのに必要な線量は効果的に減少する。
【0059】
特定の実施形態において、ヒート・シールにより閉じられるように作製されたポリエチレン・アンプルなどの1次パッケージ要素は、汚染微生物をほぼゼロに減少させる従来の条件のもとで、アンプルとエチレンオキシドを接触させることにより消毒される。
【0060】
次に、重合性シアノアクリレート組成物は、テフロン(登録商標)・フィルタのような、シアノアクリレートエステルに不活性な材料を備える0.22ミクロン・フィルタなどの微小細孔フィルタを通して濾過される。濾過された材料は、消毒されアンプルに入れられ、次にそれはヒート・シールされる。好ましくは、濾過、注入およびシールは、クラス100,000以上に清浄なクリーン・ルームで実施される。本明細書に記載される方法において用いられるシアノアクリレート組成物は、好ましくは、完全に配合されており、より好ましくはシアノアクリレートエステル・プレポリマーおよび重合禁止剤を、またある実施形態では可塑剤および/またはポビドン・ヨードなどの抗菌剤を含む。
【0061】
別法として、パッケージ要素は、使用時に組み合わせることができ、単一の組成物となる2成分系が提供されるように、その独立した成分として抗菌剤を含んでいてもよい。例えば、2000年7月18日に発行されたLee他の米国特許第6,090,397号を参照。この特許は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
次に、透明プラスチックなどの2次パッケージ要素に、透明アンプルの形態の1次パッケージ要素を入れてもよい。
【0063】
次に、最終ステップにおいて、パッケージ化された製品は、可視光を照射されることにより殺菌される。
【0064】
本発明の方法は、可視光殺菌がシアノアクリレートエステル組成物の固化あるいはゲル化を生じない範囲内において、特に有用である。さらに言えば、殺菌された組成物は液体であり、その重合性を保持している。必要であれば、重合禁止剤を用いることにより、重合性シアノアクリレートエステル組成物の固化および/またはゲル化をさらに遅らせることができる。
【0065】
組成物
本発明の方法において用いられるシアノアクリレート組成物は、適当な成分を均一になるまで混合する、従来の技法により調製される。
【0066】
これらの組成物の比粘度は、1つには、組成物の所期の用途に依存する。例えば、大きな表面積(例えば、腹部表面)に適用しようとする場合には、比較的低粘度が好ましいことが多い。この好ましさは、これらの形態は粘度が低く、したがって大きな表面積により容易に薄いフィルムとして塗れるであろうという事実から生じる。反対に、皮膚の特定の個所(例えば、ひじ表面、ひざ表面など)に適用しようとする場合には、チキソトロピー性材料を含むものを含めて、意図しない位置への組成物の「流出」を避けるために、高粘度組成物が好ましい。
【0067】
したがって、これらの組成物の粘度は、20℃で約2から50,000センチポイズである。好ましくは、粘度がより低い組成物の粘度は、20℃で約2から1,500センチポイズである。より好ましくは、これらの組成物で用いられるシアノアクリレートエステルは、ほとんど全部がモノマーの形で、この組成物の粘度は、20℃で約2から約100センチポイズである。
【0068】
増粘剤が、組成物の粘度を増すために任意選択で用いられ、この増粘剤は、組成物の粘度を増す何らかの材料である。適切な増粘剤には、例として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)あるいは組成物に溶解するかまたは分散する予め生成させた他のポリマーが含まれ、PMMAと共に用いるフュームド・シリカのような懸濁剤が好ましい。フュームド・シリカは、局所適用のための、20℃で約1500から50,000センチポイズの粘度をもつゲルを製造するのに特に有用である。本明細書に記載される組成物に適する増粘剤にはまた、米国特許第3,654,239号3および4,038,345号16−いずれも全体として参照により本明細書に組み込まれる−に開示されるアルキルシアノアクリレートの部分ポリマーも含まれる。
【0069】
増粘剤は、それらが組成物に溶解するかあるいは分散可能であり、また中程度乃至ひどい皮膚刺激がないことから評価して皮膚に適合性がある場合、生体適合性があると考えられている。
【0070】
別法として、シアノアクリレートエステルが部分重合して、より高い粘度の反応性オリゴマーとなるように殺菌条件を選択することもできる。
【0071】
シアノアクリレート組成物は、好ましくは、生体適合性可塑剤を含み、このような可塑剤は、組成物の全重量に対して、好ましくは約10から30重量パーセント、より好ましくは約18から25重量パーセント含まれる。
【0072】
さらに、本明細書に記載されるシアノアクリレート組成物は、好ましくは、貯蔵の間に組成物が早まって重合することを防ぐのに有効な量で、重合禁止剤の混合物を含む。好ましい重合禁止剤混合物はすでに記載されている。
【0073】
重合性シアノアクリレートエステル組成物はさらに、任意選択で、着色剤、香料、ゴム変性剤、変性剤などの1種または複数の添加剤を含んでいてもよい。実際には、これらの任意選択の添加剤のそれぞれは、シアノアクリレート組成物および得られるポリマーに相溶性がありまた適合性がなければならない。適合性添加剤は、本明細書に記載される方法でシアノアクリレートを使用することを妨げないものである。
【0074】
従来、着色剤は、皮膚の上に形成されたポリマー層が、別個の識別できる色を含むように添加される。香料は配合物に快い匂いをもたせるように添加される。ゴム変性剤は得られるポリマー層の柔軟性をさらに増すように添加される。組成物に用いられる、これらの任意選択の添加剤のそれぞれの量は、望ましい効果を発揮するのに必要な量である。
【0075】
本発明の実施において有用な、好ましいシアノアクリレート組成物はまた、Greff他14によっても開示されており、これは全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
特に好ましい実施形態において、シアノアクリレート組成物は、有効に抗菌作用を発揮する量の、適合性のある抗菌剤をさらに含む。このような組成物は、好ましくは、組成物の全重量に対して、溶液か懸濁液のいずれかとして、約1から約30、より好ましくは3から20重量パーセントの適合性抗菌剤を含む。適合性抗菌剤は、シアノアクリレート組成物に溶解するかあるいは懸濁させることができ、シアノアクリレート組成物を早まって重合させることなく、哺乳類の皮膚に適用された場合にはシアノアクリレート組成物の重合を妨げず、患者の皮膚との生体適合性を含めて、想定される使用法に適合性があるものである。
【0077】
特に好ましい実施形態において、適合性抗菌剤には、ヨウ素分子と生体適合性ポリマーとの複合体が含まれる。このような複合体は当技術分野においてよく知られており、生ずる複合体は従来、有効なヨウ素およびヨウ素アニオンのいずれをも含む。これらの複合体は、哺乳類の皮膚との接触で、抗菌性ヨウ素源となる。いずれにしても、このような複合体は本明細書では出発物質としてのみ用いられ、それら自体では本発明の一部分を構成しない。適切な生体適合性ポリマーには、単に例としてであるが、ヨウ素と複合化したとき、BASF(Mt.Olive, New Jersey, USA)から市販されるポビドン−ヨードという一般名でもまた参照されるポリビニルピロリドン・ポリマーが含まれる。ポビドン−ヨードがシアノアクリレート組成物に用いられる場合、その組成物は、組成物の全重量に対して、好ましくは約1から約30重量パーセント、より好ましくは約3から20重量パーセントのポビドン−ヨードを含む。
【0078】
例えばポビドン−ヨードを含むシアノアクリレート組成物は、Greff他19の米国特許第5,684,042号に記載されており、この特許は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
他の適切な抗菌剤には、ヨウ素分子とポロキサマーあるいはビニルピロリドンとビニルアセテートのコポリマー、ポリイソシアネートで架橋された、ビニルピロリドンとビニルアセテートのコポリマー、ビニルピロリドンとビニル官能体とのコポリマー、ピロリドンのポリマーなどとの複合体が含まれる。
【0080】
組成物に適合性のある抗菌剤を用いると、その作用剤が哺乳類の皮膚上に形成されたポリマー・フィルムから放出されるので、このフィルムの下で微生物が成長することを防ぐことができる。さらに、フィルムは、形成された後、哺乳類の皮膚上に1〜4日間保たれるので、抗菌剤の放出により長期の抗感染性という利益がさらに得られる。
【0081】
有用性
本発明の方法は、皮膚に微生物を持ち込む危険を少なくして、またそれに応じて感染の危険を少なくして、哺乳類の皮膚への局所適用に用いることができる殺菌されたシアノアクリレート組成物を提供するのに有用である。これは、局所適用が、すでに傷ついたか(例えば、小さな局所的な皮膚の創傷あるいは外科切開部位を塞ぐこと)、あるいは傷つくであろう(例えば、手術を開始の切開により切り開かれる切開手術用無菌布を形成する用途)皮膚の部位上へのものであるときに、特に重要である。
【0082】
以下の実施例は本発明のある特定の実施形態を示すが、如何なる意味においても特許請求の範囲を限定しようとするものではない。
【0083】
【実施例】
以下の実施例は、どのように本発明を実施することができるかを例示する。これらの実施例において、全ての温度は(特に指示しない限り)摂氏度であり、すべてのパーセントは(やはり特に指示しない限り)重量パーセントである。さらに、以下の略語は次の意味をもつ。ある略語が定義されていなければ、それは一般的に受け入れられている意味をもつ。
g =グラム
mL =ミリリットル
ppm=百万分率
【0084】
実施例1
2成分の皮膚用調合剤を、500ppmのヒドロキノン安定剤を含む、0.7mLのn−ブチルシアノアクリレートを、ボロシリケート・ガラスのアンプルに入れ、次にガスの炎でそれをシールすることによりつくる。40個のシールされたアンプルを、製造ラインの一部分であるPurePulse(商標)殺菌装置内に置き、殺菌する。次に、アンプルを、米国仮特許出願第60/218979号(これは全体として本明細書に組み込まれる)に記載されるような、一方の端からポビドン・ヨード溶液を出し、次に他方の端から出されるn−ブチルシアノアクリレートのシール性被覆でそれを覆うことができる2チャンバの意匠製品に組み立てる。次に、完成した組立て品を手術室で使用するための処理キットに組み入れ、全キットをエチレンオキシド・ガスを用いて殺菌する。
【0085】
実施例2
n−ブチルシアノアクリレートを含む重合性シアノアクリレート組成物LiquiSeal(商標)を、内側表面がシリカ層で被覆された射出成形による高密度ポリエチレン・アンプルに、0.5gのモノマー配合物を充填することにより調製する。配合物は、n−ブチルシアノアクリレートとジエチルヘキシルフタレートの80:20混合物中、1000ppmのヒドロキノンおよび1000ppmの4−メトキシフェノールからなる。アンプルをヒート・シールして、内側がシリカで被覆された薄いポリプロピレン・フィルム・スリーブに、塗布ブラシと共に入れ、直ちにパッケージ化した。次に、これらの組立て品のうち10個をPurePulse(商標)殺菌装置に入れ、この製品を殺菌する。
【0086】
以上の説明から、当分野の技術者は、組成物および方法における様々な改変および変更を思いつくであろう。添付の特許請求の範囲内にあるこれらの全ての改変はそれに含まれると見なされる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレポリマーが、殺菌の後、重合性(ゲル化していない)の形態を維持する条件のもとで、シアノアクリレート・プレポリマー組成物を殺菌する方法を対象とする。本発明の方法は、1つには、可視光照射殺菌法を用いる。
【0002】
参考文献
以下の特許出願および特許が、本出願において、上付き数字として引用および/または参照されている。
【参考文献】
【0003】
上記特許出願および特許は、あたかもそれぞれの個々の特許出願あるいは特許が具体的に個々にその全体として参照により組み込まれると指示されるのと同じ程度に、それら全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
【従来の技術】
シアノアクリレートエステルを含む組成物が、ヒトの様々な医療用途に適する接着性をもつものとして開示されている。このような用途には、例えば手術後の切開部皮膚層を塞ぐ縫合糸あるいはステープルの代替あるいは補助としての使用;止血鉗子としの使用;皮膚表面の縫合できない小さな創傷の被覆における使用;皮膚表面とテープ、人口器官、ギプス包帯などの人口的手段との間の摩擦で生じる表皮炎症を抑制するための使用;および切開手術用無菌布のin situの形成における使用;が含まれる。1 〜 6 、 11
【0005】
それぞれの場合に、哺乳類の皮膚に局所的に適用されたとき、シアノアクリレートは素早く、従来1分以内に重合して、強く皮膚に固着した、一体となった接着性のポリマー・フィルムを生成する。
【0006】
このような用途に対して示唆されるシアノアクリレートエステルは次の構造を含み、
【化3】
Rはアルキルあるいは他の適当な置換基である。このようなシアノアクリレートエステルは、例えば米国特許第3,527,224号、3,591,676号、3,667,472号、3,995,641号、4,035,334号、および4,650,826号1 、 2 、 7 〜 10に開示されている。
【0007】
シアノアクリレートエステル組成物の数々の医療用途を考慮すると、これら組成物の殺菌された形態は特に望ましいであろう。事実、パッケージ化された製品に殺菌技術を適用し、殺菌して、殺菌された組成物を直ちに出荷できれば、特に望ましいであろう。パッケージ化製品の殺菌により、パッケージ化ステップ中の汚染微生物の再混入が防げるであろう。
【0008】
しかし、従来の殺菌法は、シアノアクリレートエステル組成物に適用された場合、不適切であるか、あるいは望ましくない結果になることが多い。例えば、使用するために選択された殺菌法がシアノアクリレートエステルの重合を引き起こさないことが必須であり、したがって、Dimiter20はこれらの組成物に対して少なくとも160℃の、加熱殺菌温度を用いることを報告しているが、高温加熱または蒸気法は禁忌されることが多い。同様に、殺菌がパッケージ化シアノアクリレートエステル組成物で実施されるとき、選択された殺菌法はパッケージ材料を透過し、シアノアクリレートエステル組成物を含むパッケージの全内容物を殺菌できなければならない。
【0009】
実際に、Stehlik12は、蒸気殺菌、加熱殺菌、ガス処理、無菌濾過および室温でのイオン化放射線などの従来の殺菌プロセスは、これらのプロセスではシアノアクリレートエステルが重合し、接着剤として使用するのに適さない固体組成物になるために適用できないということを記載している。Stehlikは続けて、始めに非常に低温で(実施例では、−196℃および−80℃が開示されている)組成物を凍結させることにより組成物を固化し、次に凍結固化した組成物にイオン化γ線を照射することにより、シアノアクリレート組成物の殺菌を好ましく達成することができるということを開示する。この参考文献では、例えばCo60γ線の1.5mRadの照射量が、細菌の芽胞を殺すとして開示された。
【0010】
しかし、シアノアクリレートエステル組成物を固化するために低温を利用することは、工業的規模での製造では実用的でないということは明らかである。
【0011】
McDonnell他13もまた、ほとんどの殺菌方法は、シアノアクリレート組成物、特にパッケージ化シアノアクリレート組成物へのそれらの適用性において、不適切であるか、あるいは厳しい制限を受けるということを記載する。事実、この参考文献は、電子ビーム(E−ビーム)照射による殺菌は、E−ビーム加速器が比較的浸透力が小さいので受け入れることができず、パッケージの外側表面の殺菌に有効であるだけであろうということを開示する。そこで、McDonnell他は、室温の組成物への非常に大きな線量のγ線照射(少なくとも2.5mRad)を用いる殺菌法を記載する。
【0012】
McDonnell他の開示にもかかわらず、いくつかの参考文献が、E−ビーム法を用いて成功した、シアノアクリレートの殺菌を開示する。例えば、Greff他21およびHickey他22を参照。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、E−ビーム殺菌法は、非常に高価で、Greff他21により記載されるように、その浸透力が限られている特殊な装置を必要とする。さらに、この装置の設置および運転は、ほとんどの製造会社にとって、実際的でもないし、費用効率が高くもない。E−ビームにより殺菌される意匠製品(device)は従来専用の施設に出荷され、相当な費用の発生と生産の遅延を引き起こす。したがって、シアノアクリレートの殺菌のための、より実現しやすく費用効率の高い方法は利益をもたらすであろう。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明はシアノアクリレートエステル組成物を殺菌する方法を対象とする。特に、本発明は、注意深く制御された条件のもとで、室温条件で可視光照射を用いて、シアノアクリレートエステル組成物を殺菌することができるという、新規で予想外の結果を対象とする。
【0015】
特定の態様において、十分に強力な可視光源を用いることにより、重合性のシアノアクリレートエステル組成物の殺菌が、これらの組成物に、認められるような重合を起こすことなく、可能であるということが見出された。
【0016】
したがって、その方法の一態様において、本発明は、重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法を対象とし、この方法には、組成物をゲル化させることなくシアノアクリレートエステル組成物が殺菌される条件のもとで、重合性シアノアクリレートエステル組成物に十分な線量の可視光を照射することが含まれる。
【0017】
好ましい実施形態において、前記重合性シアノアクリレートエステルは、シアノアクリレートエステルの重合性モノマーあるいは反応性オリゴマーである。このようなモノマーおよび反応性オリゴマーは、本明細書では単に「プレポリマー」と呼ばれ、またモノマーの形では、好ましくは、式Iにより表され、
【化4】
Rは、
炭素原子が1から10個のアルキル、
炭素原子が2から10個のアルケニル、
炭素原子が5から8個のシクロアルキル基、
フェニル、
2−エトキシエチル、
3−メトキシブチル、
および以下の式の置換基、
【化5】
からなる群から選択され、それぞれのR’は、
水素およびメチル、
からなる群から独立に選択され、また
R”は、
炭素原子が1から6個のアルキル、
炭素原子が2から6個のアルケニル、
炭素原子が2から6個のアルキニル、
炭素原子が3から8個のシクロアルキル基、
ベンジル、メチルベンジルおよびフェニルエチルからなる群から選択されるアラルキル、
フェニル、ならびに
ヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ニトロ、炭素原子が1から4個のアルキルおよび炭素原子が1から4個のアルコキシからなる群から選択される1から3個の置換基で置換されたフェニル、
からなる群から選択される。
【0018】
より好ましくは、式Iのシアノアクリレートエステルにおいて、Rは炭素原子が2から10個のアルキルであり、さらにより好ましくは、炭素原子が4から8個のアルキルである。なお一層好ましくは、Rはブチル、ペンチルあるいはオクチルであり、また最も好ましくは、Rはn−ブチルである。
【0019】
別の好ましい実施形態において、シアノアクリレートエステル組成物は、シアノアクリレートエステルの重合を防ぐのに有効な量の、生体適合性酸性重合禁止剤および生体適合性ラジカル重合禁止剤の混合物、ならびに有効量の生体適合性可塑剤を含むように配合される。
【0020】
重合禁止剤の好ましい混合物は、二酸化イオウ、氷酢酸および他のよく知られた酸性重合禁止剤などの生体適合性酸性重合禁止剤、ならびにヒドロキノンおよびヒンダードフェノール(例えば、4−メトキシフェノール)を含む生体適合性ラジカル重合禁止剤である。酸性重合禁止剤は、好ましくはSO2であり、組成物の全重量に対して、好ましくは約50から1000ppm、より好ましくは約50から500ppm、また一層好ましくは約200から500ppmで用いられる。ラジカル禁止剤は、好ましくはヒドロキノンであり、好ましくは約50から250ppmの濃度で、より好ましくは約150ppmで用いられる。特に好ましい実施形態において、重合禁止剤は、毒性であるかまたは哺乳類の皮膚を刺激するような、あるいはシアノアクリレートエステル組成物を早まって重合させてしまうかまたは重合を妨げるような分解性生成物を、可視光の照射により生成しないように選択される。
【0021】
好ましい生体適合性可塑剤は、ジオクチルフタレートおよび/またはアセチルトリ−n−ブチルシトレートであり、得られる重合シアノアクリレート・フィルムの柔軟性を増すのに十分な量で用いられる。この場合も、特に好ましい実施形態においては、生体適合性可塑剤は、毒性であるかまたは哺乳類の皮膚を刺激するような、あるいはシアノアクリレートエステル組成物を早まって重合させてしまうかまたは重合を妨げるような分解性生成物を、可視光の照射により生成しないように選択される。
【0022】
別の好ましい実施形態において、シアノアクリレートエステル組成物は、適合性抗菌剤を、また一層好ましくはヨウ素分子と生体適合性ポリマーとの抗菌性複合体をさらに含む。このような複合体には、可視光殺菌の前にシアノアクリレート組成物と混合してもよく、あるいはシアノアクリレート成分が可視光により殺菌されている、パッケージ化されたシアノアクリレート組成物における独立した成分(例えば、2成分系)として含めてもよい市販のポビドン・ヨードが含まれる。
【0023】
本発明の方法は、殺菌されるシアノアクリレート組成物がパッケージ要素内にある場合に特に有益である。この態様において、本発明は、パッケージ要素内に、重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法を対象とし、この方法には以下のことが含まれる:
(a)可視光照射に対して透明なパッケージ要素を選択すること;
(b)前記(a)で選択されたパッケージ要素にシアノアクリレートエステル組成物を入れること;および
(c)組成物をゲル化させることなく、前記(b)で生成したパッケージ要素に十分な線量の可視光を照射して、パッケージ要素およびその中のシアノアクリレートエステル組成物を殺菌すること。
【0024】
さらに別のその方法の態様において、本発明は、パッケージ要素内に、重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法を対象とし、この方法には以下のことが含まれる:
(a)充填後にヒート・シールするために形作られた首部分を有するアンプルの形の、可視光照射に対して透明であるパッケージ要素を選択すること;
(b)アンプル上の汚染微生物数のレベルを低下させるために、前記アンプルを十分な量の消毒作用体(sanitizing agent)に曝すこと;
(c)重合性シアノアクリレートエステル組成物を選択すること;
(d)前記シアノアクリレートエステル組成物を、最大細孔径が約1ミクロンより小さいバイオフィルタを通して濾過すること;
(e)前記(b)で調製されたアンプルに、濾過されたシアノアクリレートエステル組成物を入れること;
(f)(e)で調製されたアンプルを、前記アンプルの首部分をヒート・シールすることによりシールすること;
(g)前記(f)で生成したアンプルを合わせて、アンプル・セットとすること;
(h)前記アンプル・セットを含むパッケージ要素を形成するように、(g)で生成したアンプル・セットを、第2のシール手段でシールすること;および
(i)組成物を固化あるいはゲル化させることなく、前記(h)で形成されたパッケージ要素に十分な線量の可視光を照射して、パッケージ要素とその中のシアノアクリレートエステル組成物を殺菌すること。
【0025】
好ましい消毒作用体には、例えば熱、プラズマおよびエチレンオキシド・ガスが含まれる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明は、1つには、殺菌後プレポリマーが重合性でゲル化していない形態のままである、可視光を用いるシアノアクリレート・プレポリマー組成物の殺菌方法を対象とする。本発明をさらに詳細に説明する前に、始めに次の用語を定義する。
【0027】
定義
本明細書では、次の用語は以下の意味をもつ。
【0028】
用語「シアノアクリレートエステル組成物」あるいは「シアノアクリレート組成物」は、モノマーの形では、好ましくは前記の式Iにより表される化合物である、重合性シアノアクリレートエステル・モノマーおよび/またはオリゴマーを含む重合性配合物を表す。
【0029】
より好ましくは、式Iにおいて、Rは炭素原子が2から10個のアルキル基であり、例としては、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ノニル、およびデシルが含まれる。より好ましくは、Rはブチル、ペンチルあるいはオクチルであり、また最も好ましくは、Rはn−ブチルである。また、これらの化合物の混合物を用いてもよい。
【0030】
重合性シアノアクリレートエステルは当技術分野において知られており、例えば米国特許第3,527,224号、3,591,676号、3,667,472号、3,995,641号、4,035,334号、および4,650,826号1 、 2 、 7 〜 10に記載されており、それぞれの開示を全体として参照により本明細書に組み込む。
【0031】
本発明で使用するのに特に好ましいシアノアクリレートエステルは、n−ブチル−2−シアノアクリレートである。
【0032】
本明細書に記載される重合性シアノアクリレートエステル組成物は、水蒸気あるいは組織タンパク質の存在で素早く重合し、これらのプレポリマーは組織毒性あるいは細胞毒性を引き起こすことなくヒトの皮膚組織に結合する。
【0033】
このような重合性シアノアクリレートエステルは、本明細書では、プレポリマーと呼ばれることがあり、このようなエステルを含む組成物は、本明細書では、プレポリマー組成物と呼ばれることがある。
【0034】
用語「生体適合性ポリマー」は、ヨウ素複合体(付加物)のように、ヒトの皮膚を含む哺乳類の皮膚への、シアノアクリレートエステル組成物のin vivo適用に適合性があるポリマーを表す。代表的なポリマーには、ポリビニルピロリドン、任意選択で架橋されているポリビニルピロリドンを含むコポリマーなどが含まれる。適切なコポリマーには、ポリビニルピロリドンとビニルアセテートあるいは他のビニル化合物との、任意選択でポリイソシアネートにより架橋されているコポリマーが含まれる。これらのポリマーの分子量は重要ではなく、約10,000から約1,000,000、好ましくは30,000から300,000の範囲の数平均分子量をもつ。
【0035】
用語「ヨウ素分子と生体適合性ポリマーの複合体」は、ヨウ素(I2)の生体適合性ポリマーへの付加により形成される抗菌性複合体を表す。このような複合体は当技術分野においてよく知られており、生じる複合体は従来、有効なヨウ素とヨウ素アニオンのいずれも含む。これらの複合体は、哺乳類の皮膚との接触の際、明らかに抗菌性ヨウ素源となることにより、抗菌性となる。どのような場合でも、このような複合体は、本明細書では出発物質としてのみ用いられ、それら自体では本発明の一部分を構成しない。
【0036】
これらの複合体は、本明細書では単に用語「ヨウ素/ポリマー複合体」により表されることがある。細菌あるいは真菌由来の天然物質であり、その作用機序が、結果的に細菌が死ぬことになる細菌過程の阻害である抗生物質から、このヨウ素/ポリマー複合体は区別される。対照的に、本発明で用いられる複合体は、明らかにヨウ素を微生物に放出することによる、真菌、ウイルスおよび細菌を含む何らかの微生物を殺すことにおいて無差別であり、したがって、適切に抗菌剤と呼ばれている。驚くべきことに、ヨウ素/ポリマー複合体はシアノアクリレート組成物に適合性があるということが見出された。事実、単体(固体)ヨウ素は、単体ヨウ素の添加によりシアノアクリレート組成物が哺乳類の皮膚上で非重合性となるために、この組成物に適合性がない。したがって、ヨウ素と生体適合性ポリマーの複合化は、シアノアクリレート組成物との適合性にとって明らかに欠くことができない。
【0037】
本発明の組成物に使用される好ましいヨウ素/ポリマー複合体の1つは、例えば、Merck & Co.(Rahway, N.J., USA)により1983年に出版された「the Tenth Edition of the Merck Index」に記載されるポリビニルピロリドン・ヨウ素複合体である。この複合体は、「ポビドン−ヨード」の名称で、BASF(Mt.Olive, New Jersey, USA)から市販されている。
【0038】
他の適切な抗菌剤には、ヨウ素分子と、ポロキサマーあるいはビニルピロリドンとビニルアセテートのコポリマー、ポリイソシアネートで架橋された、ビニルピロリドンとビニルアセテートのコポリマー、ビニルピロリドンとビニル官能体のコポリマー、ピロリドン・ポリマーなどとの複合体が含まれる。
【0039】
用語「生体適合性可塑剤」は、シアノアクリレート組成物に溶解するかまたは分散し、皮膚表面に得られるポリマー・フィルム皮膜の柔軟性を増し、また用いられた量で、中程度乃至ひどい皮膚刺激がないことから評価して皮膚に適合性がある何らかの材料を表す。適切な可塑剤は当技術分野においてよく知られており、米国特許第2,784,127号17および4,444,933号18に開示されるものを含み、これら2つの開示は全体として参照により本明細書に組み込まれる。具体的な可塑剤には、単に例としてであるが、アセチルトリ−n−ブチルシトレート(好ましくは約20重量%以下)、アセチルトリヘキシルシトレート(好ましくは約20重量%以下)、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、n−ブチリルトリ−n−ヘキシルシトレート、ジエチレングリコールジベンゾアート(好ましくは約20重量%以下)などが含まれる。用いられる個々の生体適合性可塑剤は重要ではなく、好ましい可塑剤には、ジオクチルフタレートおよびアセチルトリ−n−ブチルシトレートが含まれる。
【0040】
用語「重合禁止剤」は、シアノアクリレートの、従来の酸性重合禁止剤とラジカル禁止剤の混合物を表し、二酸化イオウ、氷酢酸、C2〜C6有機酸などの第1の禁止剤ならびにヒドロキノンおよびヒンダードフェノールなどの第2の禁止剤を含む混合物のような材料を含む。重合禁止剤は従来、哺乳類の皮膚上に適用されるまで重合を禁止するのに有効な量で用いられる。
【0041】
酸性重合禁止剤は、皮膚への局所適用でのその適合性のために、好ましくは二酸化イオウであり、それは、組成物の全重量に対して、好ましくは約50から1000ppm、より好ましくは約50から500ppm、より一層好ましくは100から300ppmで用いられる。他の好ましい酸性重合禁止剤には、氷酢酸および他の有機酸(例えば、C2からC6の有機酸)が含まれる。好ましいラジカル禁止剤にはヒドロキノンが含まれ、これは好ましくは約50から500ppmで用いられる。他のラジカル禁止剤には、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールなどのようなヒンダードフェノールが含まれる。
【0042】
用語「抗菌剤」は微生物(すなわち、細菌、真菌、ウイルスおよび微生物の芽胞)を殺すことによりそれらの発育と病原作用を防止する作用剤を表す。
【0043】
用語「消毒作用体」は、パッケージ要素に適合性がある何らかの作用体を表し、これらの要素と接触したとき、その上の汚染微生物を減らすことによりパッケージを消毒する。好ましくは、汚染微生物は、個々のパッケージ要素上で、約10コロニー形成単位(CFU)より少なく、またより好ましくは約3CFUより少ないレベルまで減らされる。好ましい消毒作用体には、例えば、熱、プラズマおよびエチレンオキシドが含まれる。他の適切な消毒作用体は当技術分野においてよく知られている。
【0044】
用語「可視光」は、約200から780nm、好ましくは390から780nmの波長をもつ光を表す。
【0045】
用語「可視光照射に対して透明な」は、パッケージ要素を、その中に入った重合性シアノアクリレート組成物を殺菌するのに十分な可視光が透過できるパッケージ要素を表す。パッケージ要素では、パッケージ要素の表面に入射する照射可視光の、好ましくは、少なくとも約50%、より好ましくは、少なくとも70%、またより一層好ましくは、少なくとも80%が要素を透過できるであろう。
【0046】
方法
本発明の方法は重合性シアノアクリレート組成物の可視光殺菌を含む。好ましい実施形態において、シアノアクリレート組成物は、まず、好ましくは気密性で耐湿性の、可視光に透明な適切な容器にパッケージ化される。このような容器には、例えば、ガラス、ポリプロピレンもしくはポリエチレンなどのポリアルキレン系ポリマーなどが含まれる。適切なパッケージ要素の1つがAskill等15により記載されている。別の適切なパッケージ要素には、ポリオレフィン、フッ素化ポリオレフィンおよび類似の材料からなるアンプルが含まれる。このような材料は水蒸気透過が少なく、シアノアクリレートエステルに対して不活性である。
【0047】
好ましい実施形態において、パッケージ要素には、約0.3から10mLのシアノアクリレート組成物の収容力および少なくとも約1ミリメートルの壁厚がある高密度ポリエチレン・アンプルが含まれる。別の好ましい実施形態において、シリカ層でライニングされたポリオレフィンが、その改善されたバリア性能と予想されるより長い貯蔵寿命のゆえに、パッケージ材料として用いられる。
【0048】
次に、シアノアクリレート組成物と非反応性である蠕動もしくは容量型ポンプを用いて、パッケージ要素に、重合性シアノアクリレートエステル組成物が望ましいレベルまで充填される。パッケージ要素への充填には、よく知られているいくつかの充填方法の何れかを用い、特定の充填方法は本発明にとっては重要でなく、特許請求された本発明の一部分を構成しない。いったん充填されると、パッケージ要素は、やはり従来の手段により、好ましくはシールされる。必要であれば、シール手段には補助的なシール手段を含めることができる。例えば、ねじ蓋がかぶせられたアンプルの口の上に、取り除くことができる透明なポリマー被覆フィルムを付けることにより、ねじ蓋シール手段を備えるアンプルをさらにシールすることができる。この場合もやはり、シール手段は本発明の如何なる部分も構成していないので、従来のシール手段の何れかを用いることができる。
【0049】
好ましい一実施形態において、前記のアンプルは、充填前には一端が開いており、シアノアクリレート組成物を充填した後、その開口末端が押しつけられ、ヒート・シールされて閉じられる。
【0050】
特に好ましい実施形態において、アンプルは、ポリフォイル・パッケージまたはバッグなどの第2のパッケージ要素に入れられ、次にヒート・シールされて、アンプルの単位パッケージ要素を形成する。耐湿性のある、別の第2のパッケージ要素では製袋充填シール(form fill seal)パッケージ装置を用いてもよい。次に、単位パッケージ要素は、好ましくは、箱に入れられて要素のグループあるいはセットとなり、次にその箱が可視光殺菌される。
【0051】
パッケージ要素は、個々の要素であれ、あるいはより大きなパッケージ要素に一体化された複数の要素であれ、可視光殺菌を受ける。可視光発生器は、殺菌を実施するのに十分な出力と波長幅の従来の発生器の何れかである。しかし、好ましい発生器は、PurePulse Technologies,Inc.(4241 Ponderosa Ave, San Diego, CA 92123, USA)から商品名PureBright(登録商標)インライン殺菌システムとして市販されている。
【0052】
このPureBright(登録商標)インライン殺菌システムでは、地表日光の約90000倍の大きさの強度で透明液体を殺菌するために可視光が用いられる。本発明の方法は、驚くべきことに、そこで用いられる照射にUV線が存在するにもかかわらず、シアノアクリレート組成物に、認められるような重合を起こさないであろうと想定されている。
【0053】
パッケージ要素へのUV光の貫通量に懸念があれば、パッケージ要素に従来のUV吸収剤を組み込み、かつ/または安定剤をより高濃度に含むようにシアノアクリレート組成物を配合することができる。
【0054】
用いられる可視光照射線量は、パッケージ要素ならびにその内容物を殺菌するのに十分なものである。好ましい実施形態において、可視光線量は、好ましくは、約0.01から50ジュール/cm2、より好ましくは約0.05から約5ジュール/cm2であり、具体的な線量は、可視光照射を受ける材料の密集度、ならびにそこにあると見積もられる汚染微生物の量に対して選択される。このような因子は十分に当分野の技術の範囲内である。殺菌プロセスの完了で、殺菌された製品は最終ユーザに向けて出荷される準備ができる。
【0055】
可視光殺菌は、好ましくは、約15℃から約30℃の温度のような雰囲気大気条件で実施され、製品に可視光を照射する時間は、用いられる放射のフルエンスおよび必要とされる線量に依存し、これは十分に当分野の技術の範囲内である。好ましくは、製品への可視光の照射は60秒より短い。例えば、Clarkの米国特許第5,925,885号を参照。これは全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
特に好ましい実施形態において、シアノアクリレート組成物の殺菌は、可視光照射殺菌の前に、パッケージ要素および/またはシアノアクリレート組成物の微生物汚染を減らすためのステップを踏むことにより容易になる。例えば、パッケージ要素を、充填前にその上の汚染生物を減らすために、適合性のある殺菌あるいは消毒条件と接触させることができる。これらの殺菌あるいは消毒条件は、シアノアクリレート組成物を入れる前に利用されるので、パッケージには適合性があるが、シアノアクリレートエステルには、それと異なって適合性がない恐れのある、例えば、蒸気殺菌、加熱殺菌、ガス処理などを含む殺菌あるいは消毒条件を利用することができる。
【0057】
同様に、シアノアクリレート組成物は、好ましくはあるが任意選択で、パッケージ要素に入れられる前に、微小細孔フィルタ(細孔径<1ミクロン)で濾過される。例えば0.22ミクロンのフィルタを通して濾過することにより、シアノアクリレート組成物中の微生物汚染は効果的に減少する。
【0058】
可視光で照射する前にこのようなステップを踏むことにより、組成物を殺菌するのに必要な線量は効果的に減少する。
【0059】
特定の実施形態において、ヒート・シールにより閉じられるように作製されたポリエチレン・アンプルなどの1次パッケージ要素は、汚染微生物をほぼゼロに減少させる従来の条件のもとで、アンプルとエチレンオキシドを接触させることにより消毒される。
【0060】
次に、重合性シアノアクリレート組成物は、テフロン(登録商標)・フィルタのような、シアノアクリレートエステルに不活性な材料を備える0.22ミクロン・フィルタなどの微小細孔フィルタを通して濾過される。濾過された材料は、消毒されアンプルに入れられ、次にそれはヒート・シールされる。好ましくは、濾過、注入およびシールは、クラス100,000以上に清浄なクリーン・ルームで実施される。本明細書に記載される方法において用いられるシアノアクリレート組成物は、好ましくは、完全に配合されており、より好ましくはシアノアクリレートエステル・プレポリマーおよび重合禁止剤を、またある実施形態では可塑剤および/またはポビドン・ヨードなどの抗菌剤を含む。
【0061】
別法として、パッケージ要素は、使用時に組み合わせることができ、単一の組成物となる2成分系が提供されるように、その独立した成分として抗菌剤を含んでいてもよい。例えば、2000年7月18日に発行されたLee他の米国特許第6,090,397号を参照。この特許は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
次に、透明プラスチックなどの2次パッケージ要素に、透明アンプルの形態の1次パッケージ要素を入れてもよい。
【0063】
次に、最終ステップにおいて、パッケージ化された製品は、可視光を照射されることにより殺菌される。
【0064】
本発明の方法は、可視光殺菌がシアノアクリレートエステル組成物の固化あるいはゲル化を生じない範囲内において、特に有用である。さらに言えば、殺菌された組成物は液体であり、その重合性を保持している。必要であれば、重合禁止剤を用いることにより、重合性シアノアクリレートエステル組成物の固化および/またはゲル化をさらに遅らせることができる。
【0065】
組成物
本発明の方法において用いられるシアノアクリレート組成物は、適当な成分を均一になるまで混合する、従来の技法により調製される。
【0066】
これらの組成物の比粘度は、1つには、組成物の所期の用途に依存する。例えば、大きな表面積(例えば、腹部表面)に適用しようとする場合には、比較的低粘度が好ましいことが多い。この好ましさは、これらの形態は粘度が低く、したがって大きな表面積により容易に薄いフィルムとして塗れるであろうという事実から生じる。反対に、皮膚の特定の個所(例えば、ひじ表面、ひざ表面など)に適用しようとする場合には、チキソトロピー性材料を含むものを含めて、意図しない位置への組成物の「流出」を避けるために、高粘度組成物が好ましい。
【0067】
したがって、これらの組成物の粘度は、20℃で約2から50,000センチポイズである。好ましくは、粘度がより低い組成物の粘度は、20℃で約2から1,500センチポイズである。より好ましくは、これらの組成物で用いられるシアノアクリレートエステルは、ほとんど全部がモノマーの形で、この組成物の粘度は、20℃で約2から約100センチポイズである。
【0068】
増粘剤が、組成物の粘度を増すために任意選択で用いられ、この増粘剤は、組成物の粘度を増す何らかの材料である。適切な増粘剤には、例として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)あるいは組成物に溶解するかまたは分散する予め生成させた他のポリマーが含まれ、PMMAと共に用いるフュームド・シリカのような懸濁剤が好ましい。フュームド・シリカは、局所適用のための、20℃で約1500から50,000センチポイズの粘度をもつゲルを製造するのに特に有用である。本明細書に記載される組成物に適する増粘剤にはまた、米国特許第3,654,239号3および4,038,345号16−いずれも全体として参照により本明細書に組み込まれる−に開示されるアルキルシアノアクリレートの部分ポリマーも含まれる。
【0069】
増粘剤は、それらが組成物に溶解するかあるいは分散可能であり、また中程度乃至ひどい皮膚刺激がないことから評価して皮膚に適合性がある場合、生体適合性があると考えられている。
【0070】
別法として、シアノアクリレートエステルが部分重合して、より高い粘度の反応性オリゴマーとなるように殺菌条件を選択することもできる。
【0071】
シアノアクリレート組成物は、好ましくは、生体適合性可塑剤を含み、このような可塑剤は、組成物の全重量に対して、好ましくは約10から30重量パーセント、より好ましくは約18から25重量パーセント含まれる。
【0072】
さらに、本明細書に記載されるシアノアクリレート組成物は、好ましくは、貯蔵の間に組成物が早まって重合することを防ぐのに有効な量で、重合禁止剤の混合物を含む。好ましい重合禁止剤混合物はすでに記載されている。
【0073】
重合性シアノアクリレートエステル組成物はさらに、任意選択で、着色剤、香料、ゴム変性剤、変性剤などの1種または複数の添加剤を含んでいてもよい。実際には、これらの任意選択の添加剤のそれぞれは、シアノアクリレート組成物および得られるポリマーに相溶性がありまた適合性がなければならない。適合性添加剤は、本明細書に記載される方法でシアノアクリレートを使用することを妨げないものである。
【0074】
従来、着色剤は、皮膚の上に形成されたポリマー層が、別個の識別できる色を含むように添加される。香料は配合物に快い匂いをもたせるように添加される。ゴム変性剤は得られるポリマー層の柔軟性をさらに増すように添加される。組成物に用いられる、これらの任意選択の添加剤のそれぞれの量は、望ましい効果を発揮するのに必要な量である。
【0075】
本発明の実施において有用な、好ましいシアノアクリレート組成物はまた、Greff他14によっても開示されており、これは全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
特に好ましい実施形態において、シアノアクリレート組成物は、有効に抗菌作用を発揮する量の、適合性のある抗菌剤をさらに含む。このような組成物は、好ましくは、組成物の全重量に対して、溶液か懸濁液のいずれかとして、約1から約30、より好ましくは3から20重量パーセントの適合性抗菌剤を含む。適合性抗菌剤は、シアノアクリレート組成物に溶解するかあるいは懸濁させることができ、シアノアクリレート組成物を早まって重合させることなく、哺乳類の皮膚に適用された場合にはシアノアクリレート組成物の重合を妨げず、患者の皮膚との生体適合性を含めて、想定される使用法に適合性があるものである。
【0077】
特に好ましい実施形態において、適合性抗菌剤には、ヨウ素分子と生体適合性ポリマーとの複合体が含まれる。このような複合体は当技術分野においてよく知られており、生ずる複合体は従来、有効なヨウ素およびヨウ素アニオンのいずれをも含む。これらの複合体は、哺乳類の皮膚との接触で、抗菌性ヨウ素源となる。いずれにしても、このような複合体は本明細書では出発物質としてのみ用いられ、それら自体では本発明の一部分を構成しない。適切な生体適合性ポリマーには、単に例としてであるが、ヨウ素と複合化したとき、BASF(Mt.Olive, New Jersey, USA)から市販されるポビドン−ヨードという一般名でもまた参照されるポリビニルピロリドン・ポリマーが含まれる。ポビドン−ヨードがシアノアクリレート組成物に用いられる場合、その組成物は、組成物の全重量に対して、好ましくは約1から約30重量パーセント、より好ましくは約3から20重量パーセントのポビドン−ヨードを含む。
【0078】
例えばポビドン−ヨードを含むシアノアクリレート組成物は、Greff他19の米国特許第5,684,042号に記載されており、この特許は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
他の適切な抗菌剤には、ヨウ素分子とポロキサマーあるいはビニルピロリドンとビニルアセテートのコポリマー、ポリイソシアネートで架橋された、ビニルピロリドンとビニルアセテートのコポリマー、ビニルピロリドンとビニル官能体とのコポリマー、ピロリドンのポリマーなどとの複合体が含まれる。
【0080】
組成物に適合性のある抗菌剤を用いると、その作用剤が哺乳類の皮膚上に形成されたポリマー・フィルムから放出されるので、このフィルムの下で微生物が成長することを防ぐことができる。さらに、フィルムは、形成された後、哺乳類の皮膚上に1〜4日間保たれるので、抗菌剤の放出により長期の抗感染性という利益がさらに得られる。
【0081】
有用性
本発明の方法は、皮膚に微生物を持ち込む危険を少なくして、またそれに応じて感染の危険を少なくして、哺乳類の皮膚への局所適用に用いることができる殺菌されたシアノアクリレート組成物を提供するのに有用である。これは、局所適用が、すでに傷ついたか(例えば、小さな局所的な皮膚の創傷あるいは外科切開部位を塞ぐこと)、あるいは傷つくであろう(例えば、手術を開始の切開により切り開かれる切開手術用無菌布を形成する用途)皮膚の部位上へのものであるときに、特に重要である。
【0082】
以下の実施例は本発明のある特定の実施形態を示すが、如何なる意味においても特許請求の範囲を限定しようとするものではない。
【0083】
【実施例】
以下の実施例は、どのように本発明を実施することができるかを例示する。これらの実施例において、全ての温度は(特に指示しない限り)摂氏度であり、すべてのパーセントは(やはり特に指示しない限り)重量パーセントである。さらに、以下の略語は次の意味をもつ。ある略語が定義されていなければ、それは一般的に受け入れられている意味をもつ。
g =グラム
mL =ミリリットル
ppm=百万分率
【0084】
実施例1
2成分の皮膚用調合剤を、500ppmのヒドロキノン安定剤を含む、0.7mLのn−ブチルシアノアクリレートを、ボロシリケート・ガラスのアンプルに入れ、次にガスの炎でそれをシールすることによりつくる。40個のシールされたアンプルを、製造ラインの一部分であるPurePulse(商標)殺菌装置内に置き、殺菌する。次に、アンプルを、米国仮特許出願第60/218979号(これは全体として本明細書に組み込まれる)に記載されるような、一方の端からポビドン・ヨード溶液を出し、次に他方の端から出されるn−ブチルシアノアクリレートのシール性被覆でそれを覆うことができる2チャンバの意匠製品に組み立てる。次に、完成した組立て品を手術室で使用するための処理キットに組み入れ、全キットをエチレンオキシド・ガスを用いて殺菌する。
【0085】
実施例2
n−ブチルシアノアクリレートを含む重合性シアノアクリレート組成物LiquiSeal(商標)を、内側表面がシリカ層で被覆された射出成形による高密度ポリエチレン・アンプルに、0.5gのモノマー配合物を充填することにより調製する。配合物は、n−ブチルシアノアクリレートとジエチルヘキシルフタレートの80:20混合物中、1000ppmのヒドロキノンおよび1000ppmの4−メトキシフェノールからなる。アンプルをヒート・シールして、内側がシリカで被覆された薄いポリプロピレン・フィルム・スリーブに、塗布ブラシと共に入れ、直ちにパッケージ化した。次に、これらの組立て品のうち10個をPurePulse(商標)殺菌装置に入れ、この製品を殺菌する。
【0086】
以上の説明から、当分野の技術者は、組成物および方法における様々な改変および変更を思いつくであろう。添付の特許請求の範囲内にあるこれらの全ての改変はそれに含まれると見なされる。
Claims (14)
- 重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法であって、重合性シアノアクリレートエステル組成物に、組成物をゲル化させることなくシアノアクリレートエステル組成物を殺菌する条件のもとで、十分な線量の可視光を照射することを含む方法。
- 重合性シアノアクリレートエステルが、モノマーの形では式I:
炭素原子が2から10個のアルケニル、
炭素原子が5から8個のシクロアルキル基、
フェニル、
2−エトキシエチル、
3−メトキシブチル、
および以下の式の置換基、
水素およびメチル、
からなる群から独立に選択され、またR”が、
炭素原子が1から6個のアルキル、
炭素原子が2から6個のアルケニル、
炭素原子が2から6個のアルキニル、
炭素原子が3から8個のシクロアルキル、
ベンジル、メチルベンジルおよびフェニルエチルからなる群から選択されるアラルキル、
フェニル、ならびに
ヒドロキシ、クロロ、ブロモ、ニトロ、炭素原子が1から4個のアルキルおよび炭素原子が1から4個のアルコキシからなる群から選択される、1から3個の置換基で置換されたフェニル
からなる群から選択される)
からなる群から選択される]
により表される、シアノアクリレートエステルの重合性モノマーあるいはオリゴマーである請求項1に記載の方法。 - Rが4から10個の炭素原子からなるアルキルである請求項2に記載の方法。
- Rが4から8個の炭素原子からなるアルキルである請求項3に記載の方法。
- Rがブチル、ペンチルあるいはオクチルからなる群から選択される請求項4に記載の方法。
- Rがn−ブチルである請求項5に記載の方法。
- 前記シアノアクリレート組成物が、ヨウ素分子と生体適合性ポリマーとの複合体をさらに含む請求項1に記載の方法。
- 前記シアノアクリレート組成物が生体適合性可塑剤をさらに含む請求項1に記載の方法。
- 前記生体適合性可塑剤が、ジオクチルフタレートおよびアセチルトリ−n−ブチルシトレートからなる群から選択される請求項8に記載の方法。
- 前記シアノアクリレート組成物が重合禁止剤をさらに含む請求項1に記載の方法。
- 前記重合禁止剤がSO2である請求項10に記載の方法。
- パッケージ要素内に、重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法であって、
(a)可視光照射に対して透明なパッケージ要素を選択すること;
(b)前記(a)で選択されたパッケージ要素にシアノアクリレートエステル組成物を入れること;および
(c)組成物をゲル化させることなく、前記(b)で生成したパッケージ要素に十分な線量の可視光を照射して、パッケージ要素およびその中のシアノアクリレートエステル組成物を殺菌すること;
を含む方法。 - パッケージ要素内に、重合性で無菌のシアノアクリレートエステル組成物を調製する方法であって、
(a)充填後にヒート・シールするために形作られた首部分を有するアンプルの形の、可視光照射に対して透明であるパッケージ要素を選択すること;
(b)アンプル上の汚染微生物のレベルを低下させるために、前記アンプルを十分な量の消毒作用剤に曝すこと;
(c)重合性シアノアクリレートエステル組成物を選択すること;
(d)前記シアノアクリレートエステル組成物を、最大細孔径が約1ミクロンより小さいバイオフィルタを通して濾過すること;
(e)前記(b)で調製されたアンプルに、濾過されたシアノアクリレートエステル組成物を入れること;
(f)(e)で調製されたアンプルを、前記アンプルの首部分をヒート・シールすることによりシールすること;
(g)前記(f)で生成したアンプルを合わせて、アンプル・セットとすること;
(h)前記アンプル・セットを含むパッケージ要素を形成するように、(g)で生成したアンプル・セットを、第2のシール手段でシールすること;および
(i)組成物を固化あるいはゲル化させることなく、前記(h)で形成されたパッケージ要素に十分な線量の可視光を照射して、パッケージ要素とその中のシアノアクリレートエステル組成物を殺菌すること;
を含む方法。 - 重合性シアノアクリレートエステルが、モノマーの形ではn−ブチルシアノアクリレートであるシアノアクリレートエステルの重合性モノマーあるいはオリゴマーである請求項13に記載の方法。
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