JP2004523240A - マトリックス安定化酵素結晶および使用方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、マトリックス安定化酵素結晶の形成による酵素の安定化に関する。マトリックス安定化酵素結晶は、低濃度の多官能価の架橋試薬を用いて1つまたは複数の反応性部分を有するポリマーを酵素結晶と架橋することを通して形成される。本発明は、フェニルアラニンアンモニアリアーゼのマトリックス安定化酵素結晶および高フェニルアラニン血症を治療するために使用する方法を含む。
Description
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2001年8月27日出願の仮出願第60/315,129号および2001年2月16日出願の仮出願第60/269,316号の優先権の恩典を主張するものであり、その両方が参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
タンパク質または酵素の構造をその生物学的活性を保存すると同時に安定化させるためにいくつかの方法が開発されてきた。一つの方法は、二官能価の化学的試薬で酵素結晶と内部架橋しているポリリシドまたは他の類似したポリマーを含む。そのような反応の生成物は、一般に、架橋化酵素結晶(cross-linked enzyme crystal)または「CLEC」と呼ばれる(Margolin, A. L. Trends Biotechnol. 14, 223-230, 1986)。ある特定の酵素の活性は、グルタルアルデヒドのような架橋剤の非常に低レベルの存在下において実質的に低下する。CLEC法は、グルタルアルデヒドのような二官能価の架橋試薬に感受性がない酵素について最も好結果であり、それにより、高濃度、2%〜23% (W/V)での使用が可能になる。米国特許第5,618,719号には、5% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-膵臓エラスターゼの調製;11.8% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-ブタ肝臓エステラーゼ、12.5% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-ゲオトリクム・カンジウム(Geotrichum candium)由来リパーゼ;23% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-鶏卵リソチーム、7.5% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-アスパラギナーゼ;2%グルタルアルデヒドを使用するCLEC-ナタマメウレアーゼ(Jack Bean urease)、7.5% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)由来のリパーゼを記載している。CLEC法はまた、12.5% グルタルアルデヒドを使用してCLEC-サーモリシンを調製するために用いられた(St. ClairおよびNavia, J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 7314-7316)。さらに、多くの、しかしすべてではない酵素製剤は、CLEC法にかけられた場合、それらがそれらの最初の触媒活性の30%〜100%を保持し、かつ温度上昇、有機溶媒、および/またはプロテアーゼに曝された場合、活性を保持する点において安定的である。
【0003】
CLEC法において、リシンのε-アミノ基のようなアミノ酸残基の反応性側鎖基は、二官能価の架橋試薬を用いて同じ分子内または近くの分子からのいずれかの他の反応性側鎖基に連結され、それにより酵素の二次および四次構造を安定化させてそれの活性を保持する。内部の化学的架橋は、酵素結晶をそのプロテアーゼ感受性部位を修飾することによるか、またはそのような部位をプロテアーゼ分解に近づきにくくさせることにより、プロテアーゼ分解から保護することができる。架橋された酵素結晶は、それらの基質が小さく、タンパク質分子間の溝を依然として通過することができる、ならびに個々の酵素分子が基質結合および活性化が依然として起こりうるような十分な柔軟性を保持しているとの条件で、生物学的活性を保持することができる。しかしながら、化学的に架橋されている活性のある側鎖基が酵素の活性化部位にまたは近くにある場合には、その架橋された酵素は、それの酵素活性のかなりまたはすべてを損失する可能性がある。
【0004】
消化管におけるプロテアーゼ分解に対して耐性になるような酵素の安定化は、そのように安定化された酵素が経口的に投与されうるような、腸における望まれないおよび/または毒性の分子の処理に重要な適用性をもつことになる。例えば、高フェニルアラニン血症は、120 μmol/Lを超すフェニルアラニンの血漿レベルとして定義されうるのだが、肝臓の酵素フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、または(まれな場合では)それの補因子テトラヒドロプテリアもしくはその補因子再生酵素ジヒドロプテリンリダクターゼにおける欠損に起因する遺伝性疾患である。その疾患は、その患者が標準の食餌を取っている場合には、1200 μmol/Lを超す血漿フェニルアラニンのレベルをもつ(10倍〜20倍の血清フェニルアラニンのレベル上昇としても測定される)フェニルケトン尿症(PKU)、および血漿フェニルアラニンのより低いレベルをもつ非-PKU高フェニルアラニン血症のような、異なる形態で存在する。その疾患の各形態において、フェニルアラニンの高血漿レベルは、必須アミノ酸栄養素フェニルアラニンのチロシンへの転化をうまく触媒することのその身体の欠陥に起因している。
【0005】
幼年期において、600 μmol/Lを超すフェニルアラニンの血漿レベルにおける持続的増加は、結果として、精神遅滞を生じる。その作用は、フェニルアラニン自体(それのいずれの代謝産物でもなく)に起因するものと思われるが、その機構はまだ完全にはわかっていない。フェニルアラニンの血漿レベルの増加における負の影響は、低フェニルアラニン食が生後間もなく導入され、かつ青年期へと、おそらく一生の間、十分継続される場合には、大部分は予防されうる。残念なことに、その食餌療法は、数個の栄養素の欠乏に関連する可能性があり、そのいくつかは脳の発育に有害である可能性があり、多くの低フェニルアラニン製品は満足な官能的性質を十分には持っていないため、その食餌療法の遵守が危ぶまれる。さらに、妊娠した高フェニルアラニン血症の患者は、過多な子宮内のフェニルアラニンの影響すなわち、その胎児の先天的な奇形、小頭症および精神遅滞を避けるために、厳格な低フェニルアラニン食に戻ることが要求される。NIHにより最近発行されているように、食餌療法の目標は、妊娠中には2 mg/dL〜6 mg/dL、新生児から12才までは2 mg/dL〜6 mg/dL、および12才後では2 mg/dL〜15 mg/dLのレベルを得るべきである。厳格な低フェニルアラニン養生法は、患者およびその家族にとって面倒であり、幼児期以降強制するのは非常に困難である。従って、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ欠損を埋め合わせるための酵素治療は、高フェニルアラニン血症の治療において大きな進歩を提供すると考えられる。
【0006】
高フェニルアラニン血症の治療のためにフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(「PAL」)を使用することは、以前に示唆されており、例えば、Hoskinsら、Lancet, 2月23日, 392-394, 1980を参照されたい。フェニルアラニンヒドロキシラーゼとは違って、フェニルアラニン分解酵素PALは、活性化のために補因子を必要としない。PALはフェニルアラニンをトランス-桂皮酸へ転化し、それはコエンザイムAを経由して、安息香酸に転化され、グリシンと反応し、その後、主として尿を通して、馬尿酸塩として排出される。PALは、例えば、酵母ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)(ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)としても知られている)から得ることができ、また、そのような遺伝子の組換え発現により得ることができる(Sarkissianら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 96:2339-2344, 1999)。
【0007】
胃腸管におけるPALのタンパク質分解性分解は、例えば、GilbertおよびJack, Biochem, J. 199, 715-723, 1981により認識されており、この問題を克服するための様々な試みが報告されてきた。そのような提案は、ヘモグロビンと混合されて硝酸セルロース膜に包まれた微小球に封じ込められたPALから構成された「人工細胞」におけるその酵素のマイクロカプセル化(BourgetおよびChang, Biochim. Biophys. Acta 883, 432-438, 1986)、その酵素を含むロドスポリジウム・トルロイデスの透過処理された細胞(H. J. GilbertおよびM. Tully, Biochem. Biophys. Res. Comm. 131(2), 1985, pp. 557-563)、および透過処理されたロドトルラ細胞において架橋されたPAL(Eigtvedら、米国特許第5,753,487号)を含む。
【0008】
安定的で、活性があり、かつプロテアーゼ耐性のCLEC-PAL製剤を作製するための本出願人による多数の試みは、少なくとも一部分においてCLEC法において生じる内部の化学的架橋のために不成功であった。活性があり、安定化されたPALの製剤が調製されることができたならば、おそらく、それは、高フェニルアラニン血症の患者の消化管においてフェニルアラニンを分解し、それにより、フェニルアラニンレベルを低下させるかまたは低フェニルアラニンレベルを維持し、この遺伝的疾患に罹患する患者において見出される高フェニルアラニンレベルに起因する重篤な副作用を防ぐために、経口的に投与されることができると思われる。このように、PALおよびCLEC法の内部の化学的架橋により不活化される他の酵素のように、安定化され、活性のある酵素を調製する代替的な方法に対する要望が存在しており、本出願人らはそのような方法を同定した。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
第一の態様において、本発明は、酵素結晶の周囲に外部の架橋されたマトリックスを形成するために低濃度の多官能価の架橋試薬を用いてポリリシドまたは他の類似したポリマーを酵素結晶と架橋する段階を含む、マトリックス安定化酵素結晶を形成するための方法である。
【0010】
一つの好ましい態様において、多官能価の架橋試薬は、ジアルデヒド架橋試薬である。適するジアルデヒド架橋試薬は、直鎖状および分枝鎖状の両方のジアルデヒドを含む。適する直鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、グルタルアルデヒド(1,5-ペンタンジアール)、マロンアルデヒド(1,3-プロパンジアール)、スクシンアルデヒド(1,4-ブタンジアール)、アジプアルデヒド(1,6-ヘキサンジアール)、ピメルアルデヒド(pimelaldehyde)(1,7-ヘプタンジアール)、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の直鎖状ジアルデヒドを含む。適する分枝鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、直鎖状または分枝鎖状のC1-C5、-OR1からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有するジアルデヒドを含み、R1がC1-C5、酸素、窒素、硫黄、アミノ、ハロゲン、およびフェニルであり、例えば、3,3-ジメチルグルタルアルデヒド、3,3-ジフェニルグルタルアルデヒド、3,3-(4-メトキシフェニル)グルタルアルデヒド、3-エチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4,4'-トリメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4,4'-ジメチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-メチル-2'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-4'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3,4'-ジプロピル-1,5-ペンタンジアール、2-ブチル-2'-エチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-2,4'-ジエチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、4-メチルペンタンジアール、アスパルトアルデヒド、3-(ホルミルメチル)ヘキサンジアール、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の分枝鎖状ジアルデヒドである。
【0011】
もう一つの好ましい態様において、多官能価の架橋試薬における低濃度とは、2%未満、より好ましくは0.5%またはそれ未満、最も好ましくは0.2%またはそれ未満のパーセント濃度である。
【0012】
もう一つの好ましい態様において、結晶層に付着するために有効な1つまたは複数の反応性部分を有するポリマーは、これらに限定されないが、ポリアミノ酸、ポリカルボハイドレート、ポリスチレン、ポリ酸、ポリオール、ポリビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエーテル、および化学分野の業者により理解されるものと思われる他のポリマーを含む。好ましくは、ポリマーは、ポリアミノ酸、より好ましくは、陽イオン性ポリアミノ酸である。適するポリアミノ酸は、これらに限定されないが、ポリリシン、ポリアミド、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リシンとアラニンのコポリマー、リシンとフェニルアラニンのコポリマー、およびそれらの混合物を含む。最も好ましい態様において、ポリマーはポリリシンである。
【0013】
第二の態様において、本発明は、ポリリシドの存在下において低濃度の多官能価の架橋剤で架橋された結晶性PALを含んでいるPALのマトリックス安定化酵素結晶を含む。
【0014】
一つの好ましい態様において、多官能価の架橋試薬は、ジアルデヒド架橋試薬である。適するジアルデヒド架橋試薬は、直鎖状および分枝鎖状の両方のジアルデヒドを含む。適する直鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、グルタルアルデヒド(1,5-ペンタンジアール)、マロンアルデヒド(1,3-プロパンジアール)、スクシンアルデヒド(1,4-ブタンジアール)、アジプアルデヒド(1,6-ヘキサンジアール)、ピメルアルデヒド(1,7-ヘプタンジアール)、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の直鎖状ジアルデヒドを含む。適する分枝鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、直鎖状または分枝鎖状のC1-C5、-OR1からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有するジアルデヒドを含み、R1がC1-C5、酸素、窒素、硫黄、アミノ、ハロゲン、およびフェニルであり、例えば、3,3-ジメチルグルタルアルデヒド、3,3-ジフェニルグルタルアルデヒド、3,3-(4-メトキシフェニル)グルタルアルデヒド、3-エチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4,4'-トリメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4,4'-ジメチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-メチル-2'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-4'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3,4'-ジプロピル-1,5-ペンタンジアール、2-ブチル-2'-エチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-2,4'-ジエチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、4-メチルペンタンジアール、アスパルトアルデヒド、3-(ホルミルメチル)ヘキサンジアール、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の分枝鎖状ジアルデヒドである。
【0015】
もう一つの好ましい態様において、多官能価の架橋試薬における低濃度とは、2%未満、より好ましくは0.5%またはそれ未満、最も好ましくは0.2%またはそれ未満のパーセント濃度である。
【0016】
もう一つの好ましい態様において、結晶層に付着するために有効な1つまたは複数の反応性部分を有するポリマーは、これらに限定されないが、ポリアミノ酸、ポリカルボハイドレート、ポリスチレン、ポリ酸、ポリオール、ポリビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエーテル、および化学分野の業者により理解されるものと思われる他のポリマーを含む。好ましくは、ポリマーは、ポリアミノ酸、およびより好ましくは、陽イオン性ポリアミノ酸である。適するポリアミノ酸は、これらに限定されないが、ポリリシン、ポリアミド、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リシンとアラニンのコポリマー、リシンとフェニルアラニンのコポリマー、およびそれらの混合物を含む。最も好ましい態様において、ポリマーはポリリシンである。
【0017】
第三の態様において、本発明は、PALのマトリックス安定化酵素結晶の治療的有効量を投与することを含む高フェニルアラニン血症を治療する方法である。好ましい態様において、投与は経口である。
【0018】
発明の詳細な説明
本出願人らは、酵素がCLEC法のように、広範には架橋されていない、活性があり、安定し、且つプロテアーゼ耐性である酵素結晶を調製する方法を発見した。本出願人らの発明の安定化された酵素結晶は、本明細書では、「マトリックス安定化酵素結晶」と名付けられ、ヒトおよび他の哺乳動物を含む動物の腸における望まれないおよび/または毒性の分子の処理のために有用である。
【0019】
本発明の方法において、酵素結晶は、非常に低濃度の多官能価の架橋試薬の存在下において架橋される。具体的には、CLEC法において使用されるグルタルアルデヒドの2%〜23% (W/V)とは対照的に、多官能価の架橋試薬(グルタルアルデヒドのような)の2%未満、好ましくは0.5%またはそれ未満、最も好ましくは0.2%またはそれ未満 (W/V)が使用される。そのような引き下げられた量の多官能価の架橋試薬では、典型的には、CLEC法において効果がないと思われる。しかしながら、CLEC法に要求されるより高いグルタルアルデヒド濃度は、PALのようなある特定の酵素の活性を不活化させるのに十分である。
【0020】
一つの好ましい態様において、多官能価の架橋試薬は、ジアルデヒド架橋試薬である。適するジアルデヒド架橋試薬は、直鎖状および分枝鎖状の両方のジアルデヒドを含む。適する直鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、グルタルアルデヒド(1,5-ペンタンジアール)、マロンアルデヒド(1,3-プロパンジアール)、スクシンアルデヒド(1,4-ブタンジアール)、アジプアルデヒド(1,6-ヘキサンジアール)、ピメルアルデヒド(1,7-ヘプタンジアール)、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の直鎖状ジアルデヒドを含む。適する分枝鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、直鎖状または分枝鎖状のC1-C5、-OR1からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有するジアルデヒドを含み、R1がC1-C5、酸素、窒素、硫黄、アミノ、ハロゲン、およびフェニルであり、例えば、3,3-ジメチルグルタルアルデヒド、3,3-ジフェニルグルタルアルデヒド、3,3-(4-メトキシフェニル)グルタルアルデヒド、3-エチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4,4'-トリメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4,4'-ジメチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-メチル-2'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-4'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3,4'-ジプロピル-1,5-ペンタンジアール、2-ブチル-2'-エチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-2,4'-ジエチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、4-メチルペンタンジアール、アスパルトアルデヒド、3-(ホルミルメチル)ヘキサンジアール、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の分枝鎖状ジアルデヒドである。
【0021】
低濃度の多官能価の架橋試薬に加えて、1つまたは複数の反応性部分を有する1つまたは複数のポリマーが、結晶表面上に網状構造を形成するために架橋試薬との結合において用いられる。適するポリマーは、約100〜約1,000,000の間、好ましくは約200〜約750,000の間、最も好ましくは約500〜約150,000の間の平均分子量をもつ陽イオン性、陰イオン性、および/または疎水性ポリマーを含む。反応性部分は、例えば、ハロアルキル、エポキシド、ヒドラジド、ヒドラジン、チオレート、ヒドロキシルなど、好ましくは、活性のあるエステル、アミン、カルボン酸、スルフヒドリル、カルボニル、およびカルボハイドレートのような求電子性および/または求核性基を含みうる。ポリマーの長さに沿った反応性部分は、結晶の表面に付着し、架橋試薬で架橋される場合、網状構造を形成する。例えば、陽イオン性反応性部分は、電荷-電荷の相互作用により結晶の表面に付着されるようになりうる。有用なポリマーは、単一の反復モノマー単位を有するホモポリマー、2つの異なるモノマー単位を有するコポリマー、または2つより多い異なるモノマー単位を有するポリマーを含む。好ましくは、ホモポリマーまたはコポリマーが使用される。
【0022】
結晶層に付着するために有効な1つまたは複数の反応性部分を有する適するポリマーは、好ましくはポリアミノ酸を含むが、ポリリシン、ポリアミド、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリカルボハイドレート、ポリスチレン、ポリ酸、ポリオール、ポリビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエーテルなどのホモポリマーを含む。その挙げられたポリマーは、陽イオン性反応性部分を有するが、他の陰イオン性および/または疎水性のポリアミノ酸も有用である。ポリアミノ酸はまた、コポリマーでもありうる。コポリアミノ酸が使用される場合、完全長ポリマーが結晶表面上に網状構造を形成するために有効な反応性部分を含むとの条件で、少なくとも2個のアミノ酸残基がポリマーに存在する。コポリアミノ酸における一方のアミノ酸ともう一方のアミノ酸の比率は、一方のアミノ酸の、他方のアミノ酸単位あたり約0.1から約100まででありうる。好ましくは、比率は1:1である。コポリアミノ酸を形成するために適するアミノ酸は、以下のアミノ酸の任意の組み合わせを含む:リシン、アラニン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、グルタミン、プロリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、アスパラギン、バリン、メチオニン、チロシン、アスパラギン酸、および/またはグルタミン酸。好ましくは、ポリマーは、ホモポリマーのポリリシン、1:1比でのリシンとアラニンのコポリマー、または1:1比でのリシンとフェニルアラニンのコポリマーのようなポリアミノ酸である。もう一つの好ましい態様において、ポリアミノ酸は陽イオン性である。ホモポリマーのポリリシンが最も好ましいポリマーである。
【0023】
結晶層に付着するために有効な1つまたは複数の反応性部分を有する他の適するポリマーは、例として、例えばポリアミロース、ポリフラノシド、ポリピラノシド、カルボキシメチルアミロース、およびデキストランのようなポリカルボハイドレートならびにポリサッカライド;例えばクロロメチル化ポリスチレンおよびブロモメチル化ポリスチレンのようなポリスチレン;例えば、ポリアクリルアミドヒドラジドのようなポリアクリルアミド;例えばポリアクリル酸のようなポリ酸;例えばポリビニルアルコールのようなポリオール;例えばポリ塩化ビニルおよびポリ臭化ビニルのようなポリビニル;ポリエステル;ポリウレタン;ポリオレフィン;およびポリエーテルを含む。
【0024】
ポリマーの1つまたは複数の反応性部分の機能は、その反応性部分が、酵素結晶の内部のアミノ酸残基と反応することなしに、酵素結晶の表面において架橋試薬と相互作用することを提供する。ポリマーの反応性側基は、多官能価のカップリング試薬により架橋されうる。例として、ポリリシンの場合、そのポリリシドポリマーを互いにおよび/または結晶表面上のリシン残基のアミン基と架橋させることにより、結晶表面上の網状構造が形成される。多官能価の架橋試薬の低濃度での使用のために、容易に接近できるそれらのアミン基、特にポリリシンにより供給されるものまたは酵素結晶の表面上にあるものが優先的に反応し、一方、酵素結晶の内部のアミノ酸残基(例えばリシン)のアミノ基は、架橋試薬と反応するほんのわずかな機会をもつかまたは全くもたず、酵素反応に関係するそれらの能力は維持される。さらに、反応性側基を有する添加されるポリマーの分子の大きさおよび/または電荷が、多官能価の架橋試薬の酵素結晶の溝の中へ入り且つ通過する侵入を防ぐことができ、従って、酵素の内部のリシン残基は、互いにまたは結晶中の酵素間で有意には架橋されない。
【0025】
酵素結晶の表面上にポリリシドの架橋により形成されたマトリックスは、その酵素結晶の物理学的構造を維持し、力学的安定性および熱安定性、ならびにプロテアーゼに対する保護を提供する。マトリックス安定化酵素結晶はまた、下記でさらに論議されているが、それらの酵素活性の保持により示されるように、小型の基質分子に対する透過性は残っている。マトリックス安定化酵素結晶を形成するための本発明の方法は、内部の架橋というよりむしろ、表面の修飾を含んでいるため、グルタルアルデヒド感受性のものを含むすべての酵素において使用されうる。本発明における使用に適した酵素は、CLEC法が適用可能であるそれらの酵素、および特に、結晶性酵素を含む。例えば、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、L-メチオニン-γ-リアーゼ、リパーゼ、カルボキシペプチダーゼ-Aは、本発明における使用に適しているが、これらに限定されることはない。
【0026】
本出願人らは、本発明の方法を適用して、安定し、活性があり、且つプロテアーゼ耐性であるPALを調製するのに成功した。動物モデルを用いて、本出願人らは、PALのマトリックス安定化酵素結晶(「MSEC-PAL」)が活性があり、安定しており、かつプロテアーゼ耐性であることを実証した。このように、MSEC-PALは、フェニルアラニンの血漿濃度を低下させるための高フェニルアラニン血症患者の経口的治療に有用でありうる。
【0027】
マトリックス安定化酵素結晶を調製する方法は、例証的例としてPALを使用し、以下に記載される。
【0028】
1. PAL 微結晶調製
酵素結晶としての安定化のためにPALを調製する第一段階において、PAL結晶を作製するための方法が開発された。結晶化に使用されるPALは、公知の技術に従って、精製または組換えにより産生されうる。
【0029】
簡単には、PEG8000(50% w/v;0.22 mmミリポア(Millipore)フィルターを通して濾過された)の水溶液は、10% (w/v)の最終PEG8000濃度になるまで、25 mM Na2HPO4/NaH2PO4、pH6.5中の20 mg/mL PALの溶液へ、非常に穏やかな旋回でゆっくり添加される。飽和したLi2SO4溶液(50 mMリン酸ナトリウム、pH 6.5中)を、約15 mMの最終濃度まで、ゆっくり添加する。Li2SO4の添加の間に形成されうる純粋な沈澱物は、遠心分離または濾過により取り出される。PALの結晶化は、約30 mMの最終濃度までのLi2SO4の連続的添加により誘導される。その結果生じた溶液は、その後、4℃で保存される。4℃での一晩のインキュベーションの間、大量の10ミクロン〜70ミクロンの大きさの棒形の微結晶が形成し、容器の底に沈澱する。
【0030】
PALの結晶化は、PAL-10% PEG8000-Li2SO4溶液へ少量の前に形成されたPAL微結晶を添加することにより加速されうる。種として前に調製されたPAL微結晶を使用すると、新しいPAL微結晶を4℃での30分のインキュベーション後に形成することができる。
【0031】
2. CLEC-PAL の形成
CLEC法において、様々な組成物の溶液であり且つpHが5〜7の値である溶液における酵素結晶は、2% (w/v)〜24% (w/v)の最終濃度での二官能価の架橋剤グルタルアルデヒドにより架橋される。予備的研究として、本出願人らは、代替的な酵素安定化方法の開発において対照として用いられるために、安定し、活性があるPALの調製物を調製するためのCLEC法の能力を評価した。典型的な実験において、上記のように生成された棒形PAL微結晶が用いられた。pH 7.0での20 mM リン酸ナトリウム、15% PEG6000、18 mM LiSO4中のPAL微結晶は、25℃で40分間、0.05%から2.5% (w/v)までの範囲の濃度でのグルタルアルデヒドとインキュベートされた。架橋反応を、その反応溶液をその架橋された結晶の短時間の遠心分離後に、100 mM トリス pH 8.5と交換することにより停止した。いくらかの活性を保持していたそれらのCLEC-PAL微結晶のタンパク質分解酵素に対する耐性を評価するために(< 0.2%のグルタルアルデヒド濃度で)、CLEC-PAL微結晶を、希釈されたマウスの小腸管の液体の添加後、37℃で30分間、インキュベートした。
【0032】
結果 ( 表 1)
表1に示されるように、0.23%を超すグルタルアルデヒド濃度を用いてCLEC法に従って作製されたCLEC-PAL微結晶において、すべての活性が失われた。
【0033】
CLEC法に従って作製されたCLEC-PAL微結晶の活性は、0.2%未満のグルタルアルデヒド濃度では、ほとんど完全に失われた。これらのグルタルアルデヒド濃度でのCLEC-PAL微結晶は、プロテアーゼに曝された場合、分解された。
【0034】
0.1%未満のグルタルアルデヒド濃度は、結果として、安定せず、pH 8.5での100 mM トリスに溶解されるCLEC-PAL微結晶を生じた。
【0035】
(表1)PAL活性におけるグルタルアルデヒドの影響
【0036】
グルタルアルデヒド以外の架橋試薬の使用を含む様々な反応条件下において、CLEC-PAL微結晶を作製するためのあらゆる試みは不成功であった。十分なPAL活性を保持し、かつタンパク質分解性分解に対して安定していることの両方が同時にあるCLEC-PAL微結晶を結果として生じるような反応条件は見出されえなかった。これらの結果より、PALにおける1つまたは複数の重要なリシン残基または他の反応性アミノ酸残基が触媒部位またはその近くに位置している可能性があり、グルタルアルデヒドとその残基との反応の結果として、その酵素の不活化が生じることが示唆された。本出願人らは、PEGおよびリン酸緩衝液から得られるPAL微結晶がグルタルアルデヒドを使用して架橋され、安定的かつ機能的なPAL微結晶製剤を形成することはできないと結論を出し、このように、CLEC法はPALについて成功しなかった。
【0037】
PAL以外の酵素もまた多官能価の架橋試薬に感受性があるリシン残基を含むことが知られており、従って、CLEC法を用いる安定化に適さない。一つの例としては、1% (W/V)グルタルアルデヒドでの架橋後、300倍低い活性である酵素カルボキシペプチダーゼ-Aである(QuiochoおよびRichards, Biochemistry, 5巻 4062-4076, 1966)。従って、すべての酵素結晶に対して使用されうる代替的な酵素安定化方法が必要とされている。
【0038】
3. マトリックス安定化酵素結晶の形成
上記のように形成された棒形PAL微結晶は、低濃度のグルタルアルデヒドを用いてポリリシンの存在下において架橋された。具体的には、MSEC-PALは以下のように調製された:上清は沈澱した結晶から除去され、20% (w/v) PEG8000、20 mM Li2SO4および10 mMリン酸ナトリウムを含む新鮮な緩衝液と交換された。添加される緩衝液の容量は、120 IU/ml〜130 IU/mlの間のPAL活性を得るように調整された。100 mLの結晶溶液を室温(RT)とし、その後、3.5 mLのポリ-L-リシン5000(50 mg/ml)が添加され、十分に混合された。インキュベーションは、10分ごとに混合しながら、RTで30分間であった。次に、2.48 mLのグルタルアルデヒド(dH2O(蒸留水)中0.3% v/v)が添加され、さらに90分間、RTでインキュベートされた。最後に、最終容量が200 mLであるように0.5 Mトリス、pH 8.5が添加された。MSEC調製物のPAL活性は、30分〜60分後に測定された。
【0039】
MSEC-PALの調製後、そのような結晶のPAL酵素活性は、可溶化されたPAL酵素の最初の値の20 %を超していることが測定された。そのMSEC-PALがタンパク質分解性分解に耐性があるかどうかを決定するために、2つの型の実験が行われた(図1)。第一に、MSEC-PALを、プロナーゼの10 mg/mLと、2時間、37℃で、インキュベートした。PAL酵素の活性は、プロナーゼへの曝露により影響をうけなかった。第二に、MSEC-PALを、マウスの腸管の液体において(12.5% v/v)、一晩、37℃でインキュベートした。MSEC-PALの活性は、腸管の液体への曝露によっても影響をうけなかった。対照的に、プロナーゼまたは腸管の液体とのインキュベーション後、架橋されていないPAL結晶において検出可能な活性はなかった。これらの実験より、PALのMSEC調製物は酵素活性を保持していること、およびこの活性をプロテアーゼによる分解から保護されていることが実証されている。
【0040】
本出願人らはまた、この方法を他のグルタルアルデヒド感受性酵素、メチオニン-γ-リアーゼに用いたが、同様の結果であった。マトリックス安定化酵素結晶方法は、酵素結晶の表面修飾を含むため、この方法はまた、CLEC法を用いる安定化には適さない任意の酵素の安定化に適用できると考えられる。
【0041】
4. 酵素的に活性のある MSEC-PAL のラットの胃腸管への送達
生後約2ヶ月、体重約175グラム〜200グラムの20匹のスプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットがこの研究に使用された。動物は、実験前には定型的な食餌で維持された。
【0042】
食物は、実験の24時間前に除去され、動物は格子の床をもつケージに置かれた。砂糖水(5%)がエネルギー源として導入された。すべての動物を4つの群に分けた。群1の4匹のラットは、1.5 mlの0.5 Mトリス-HCl緩衝液を胃管へ与え(gavage)、一方、群2のラットは、0.5 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5中に50 IUの非製剤化PALを含む1.5 mlの溶液を胃管へ与えた。群3は、1.5 mlのMSEC-PAL(0.5 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5中の50 IU)を胃管へ与えた8匹のラットを有した。これらの3群の16匹すべてのラットは、胃管への供給から45分後に屠殺された。群4の4匹のラットは、1.5 mlのMSEC-PAL(0.5 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5中の50 IU)を胃管へ与え、胃管への供給から90分後に屠殺された。
【0043】
屠殺後、胃および小腸をすぐに取り出した。小腸の内容物は20 mlの0.1 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5で洗い流され、胃の内容物は10 mlの0.1 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5で洗い流された。腸または胃の内容物を含む試験管は氷上で保存された。
【0044】
PAL活性は分光光度的に測定された。50 μlの試料は、30℃に予熱された950 μlのアッセイ緩衝液(0.1 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5中に22.5 mM L-フェニルアラニン)と混合された。290 nmでの吸光度における増加を30℃でモニターした。酵素活性の1ユニットは、トランス-桂皮酸の1 μmolの形成を触媒する酵素量として定義される。アッセイは試料の収集後すぐに行われた。
【0045】
1.5 mlのトリス-HCl緩衝液を胃管へ与えた群1の4匹のラットにおいて、胃または小腸でPAL活性は検出されなかった(表2)。同様に、0.5 Mトリス-HCl緩衝液中における非製剤化PALの54 IUを胃管へ与えた群2の4匹のラットにおいて検出可能なPAL活性はなかった。
【0046】
しかしながら、MSEC-PALの胃管への供給後45分または90分のラットの胃および腸の両方からPAL活性を回収することができ(表2、図2)、MSEC製剤が小腸におけるプロテアーゼ分解に対してPAL酵素を保護したことを実証している。胃および腸の内容物がMSEC製剤化PALの経口投与後45分に収集された場合、胃および小腸の両方からの平均の回収されたPAL活性は、8匹の動物において17.8 IU(7.1 IU〜23.7 IU)であり、胃管へ供給された活性の34.3%(13.1%〜48.1%)であった。その回収された活性の約53%がまだ胃に存在しており、一方、その活性の47%が小腸の内容物において見出された(図2)。
【0047】
胃および腸の内容物がMSEC-PALの経口投与後90分に収集された場合、胃および小腸の両方からの平均の回収された活性は、4匹の動物において8.1 IU(3.7 IU〜9.3 IU)であり、胃管へ供給された活性の16.2%(7.4%〜22.0%)であった。回収された活性の9%近くが胃に存在しており、一方、その活性の91%を超える分が小腸の内容物において見出された(図2)。
【0048】
(表2)経口的に投与されたMSEC-PALのフェニルアラニン分解活性
値は、示されている動物の数についての平均±SD(標準偏差)である。最初の3群の動物は、示された処理の経口的供給後45分で屠殺され、群4の4匹の動物は、経口的供給後90分で屠殺された。
【0049】
5. MSEC-PAL の経口投与後の血漿フェニルアラニンにおける減少
ENUマウス(Pahenu2/enu2)のハイブリッド系をこれらの実験において使用した(Sarkissianら、(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. 96:2339-2344)。このマウスの系統は、肝臓のフェニルアラニンヒドロキシラーゼを欠損しており、標準的食餌を与えた場合、正常なマウスと比較して血漿フェニルアラニンレベルにおいて10倍〜20倍の増加を示す。これらのマウスにおける血漿フェニルアラニンレベルは、それらをフェニルアラニンを含まない食餌に置くことにより、正常値へ低下されうる。
【0050】
体重約25 gの8匹のENUマウスは、標準の食餌で維持された。すべてのマウスは、その後、フェニルアラニンを含まない食餌に置かれ(ハーランテクラッド(Harlan Teklad)食餌2826)、実験開始前の5日間、30 mg/LのL-フェニルアラニンを含む水が与えられた。
【0051】
パート A :実験の当日、動物に、時間0(t = 0時間)に150 μg/g(L-フェニルアラニン/g体重)の皮下注射を与えた。4匹の動物は、t = 1時間、2時間、3時間および4時間に、0.4 mlの0.5 Mトリス-HCl緩衝液(pH 8.5)中の5.5 IUのMSEC-PALを胃管に与えた。対照は、トリス緩衝液の同量を胃管へ与えた4匹のマウスから構成された。血液試料を、皮下フェニルアラニン注射前5分(t = 0時間)およびその後1時間間隔(t = 1時間〜7時間)に、尾の静脈から得た。
【0052】
パート B :すべての動物は、2日間、標準の食餌に戻され、その後、5日間、フェニルアラニンを含まない食餌を与えられた。この実験の第二部は、パートAにおいてMSEC-PALで処理されたマウスがパートBにおいて緩衝液のみを与えられ、かつパートAにおいて緩衝液を与えられたマウスがパートBにおいてMSEC-PALを与えられるような、処理されたマウスと対照群が交換される、クロスオーバーの研究であった。パートBにおけるマウスは、上記のパートAにおいて記載されるのとは別に処理された。
【0053】
血漿フェニルアラニンレベルは、ヘパリン化された血液試料の遠心分離後、測定された。フェニルアラニン濃度を、ベックマンシステムゴールド(Beckman System Gold)、DABSアミノ酸サンプリングキットを用いて、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。結果は、8匹のマウスが経口のMSEC-PALを受け取り、かつ8匹の対照マウスが緩衝液のみを受け取ったように、パートAおよびパートBからのデータをプールすることにより分析された。データは、処理群間の差異を同定するために、t検定と連結された分散分析法を用いて分析された。
【0054】
図3に示されるように、皮下へのフェニルアラニンの注入は、すべてのマウスにおいて血漿フェニルアラニンの急増加を引き起こした。血漿濃度は、μMで表され、n = 8での平均±S.E.M.のように示される。胃管への供給期間(t = 1時間〜4時間)の間、対照と処理された群との間に差異はなかった。しかしながら、最後の胃管への供給後1時間(t = 5時間)、MSEC-PAL処理されたマウスにおける血漿フェニルアラニンレベルが、緩衝液処理された対照と比較して減少した。血漿フェニルアラニンにおけるこの減少は、t = 6時間および7時間で有意であり、6時間でP < 0.001および7時間でP = 0.006であった。
【0055】
これらの結果は、フェニルアラニンリアーゼの経口製剤(MSEC-PAL)が血漿におけるフェニルアラニンの濃度を有意に低下させることができることを実証している。MSEC-PALの観察された効果はまた、この製剤が胃腸管において酵素をタンパク質分解性分解から保護することを示している。
【0056】
本明細書に挙げられているすべての刊行物は、個々の刊行物が明確にかつ個別に示され、参照として組み入れられているのと同程度に、参照として本明細書に組み入れられる。
【0057】
本発明はさらなる改変が可能であり、本出願は、本発明が属する技術分野内の公知のまたは通例の実施内で生じるような本開示からの逸脱を含む、本発明のいずれの変化、使用、または適用も網羅するものとし、かつ添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるものとすることは、理解されるものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】プロナーゼまたはマウスの腸管の液体に接触した場合のMSEC-PALについてのPAL活性の安定性および保持率を示す。
【図2】MSEC-PALの経口投与後の回収されたフェニルアラニン分解活性の分布を示す。
【図3】MSEC-PALの経口投与後の血漿フェニルアラニンにおける減少を示す。x軸は、フェニルアラニンの皮下注射後に経過した時間数における、時間を示す。y軸は、血液試料から測定された血漿中のフェニルアラニン濃度を示す。
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2001年8月27日出願の仮出願第60/315,129号および2001年2月16日出願の仮出願第60/269,316号の優先権の恩典を主張するものであり、その両方が参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
タンパク質または酵素の構造をその生物学的活性を保存すると同時に安定化させるためにいくつかの方法が開発されてきた。一つの方法は、二官能価の化学的試薬で酵素結晶と内部架橋しているポリリシドまたは他の類似したポリマーを含む。そのような反応の生成物は、一般に、架橋化酵素結晶(cross-linked enzyme crystal)または「CLEC」と呼ばれる(Margolin, A. L. Trends Biotechnol. 14, 223-230, 1986)。ある特定の酵素の活性は、グルタルアルデヒドのような架橋剤の非常に低レベルの存在下において実質的に低下する。CLEC法は、グルタルアルデヒドのような二官能価の架橋試薬に感受性がない酵素について最も好結果であり、それにより、高濃度、2%〜23% (W/V)での使用が可能になる。米国特許第5,618,719号には、5% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-膵臓エラスターゼの調製;11.8% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-ブタ肝臓エステラーゼ、12.5% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-ゲオトリクム・カンジウム(Geotrichum candium)由来リパーゼ;23% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-鶏卵リソチーム、7.5% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-アスパラギナーゼ;2%グルタルアルデヒドを使用するCLEC-ナタマメウレアーゼ(Jack Bean urease)、7.5% グルタルアルデヒドを使用するCLEC-カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)由来のリパーゼを記載している。CLEC法はまた、12.5% グルタルアルデヒドを使用してCLEC-サーモリシンを調製するために用いられた(St. ClairおよびNavia, J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 7314-7316)。さらに、多くの、しかしすべてではない酵素製剤は、CLEC法にかけられた場合、それらがそれらの最初の触媒活性の30%〜100%を保持し、かつ温度上昇、有機溶媒、および/またはプロテアーゼに曝された場合、活性を保持する点において安定的である。
【0003】
CLEC法において、リシンのε-アミノ基のようなアミノ酸残基の反応性側鎖基は、二官能価の架橋試薬を用いて同じ分子内または近くの分子からのいずれかの他の反応性側鎖基に連結され、それにより酵素の二次および四次構造を安定化させてそれの活性を保持する。内部の化学的架橋は、酵素結晶をそのプロテアーゼ感受性部位を修飾することによるか、またはそのような部位をプロテアーゼ分解に近づきにくくさせることにより、プロテアーゼ分解から保護することができる。架橋された酵素結晶は、それらの基質が小さく、タンパク質分子間の溝を依然として通過することができる、ならびに個々の酵素分子が基質結合および活性化が依然として起こりうるような十分な柔軟性を保持しているとの条件で、生物学的活性を保持することができる。しかしながら、化学的に架橋されている活性のある側鎖基が酵素の活性化部位にまたは近くにある場合には、その架橋された酵素は、それの酵素活性のかなりまたはすべてを損失する可能性がある。
【0004】
消化管におけるプロテアーゼ分解に対して耐性になるような酵素の安定化は、そのように安定化された酵素が経口的に投与されうるような、腸における望まれないおよび/または毒性の分子の処理に重要な適用性をもつことになる。例えば、高フェニルアラニン血症は、120 μmol/Lを超すフェニルアラニンの血漿レベルとして定義されうるのだが、肝臓の酵素フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、または(まれな場合では)それの補因子テトラヒドロプテリアもしくはその補因子再生酵素ジヒドロプテリンリダクターゼにおける欠損に起因する遺伝性疾患である。その疾患は、その患者が標準の食餌を取っている場合には、1200 μmol/Lを超す血漿フェニルアラニンのレベルをもつ(10倍〜20倍の血清フェニルアラニンのレベル上昇としても測定される)フェニルケトン尿症(PKU)、および血漿フェニルアラニンのより低いレベルをもつ非-PKU高フェニルアラニン血症のような、異なる形態で存在する。その疾患の各形態において、フェニルアラニンの高血漿レベルは、必須アミノ酸栄養素フェニルアラニンのチロシンへの転化をうまく触媒することのその身体の欠陥に起因している。
【0005】
幼年期において、600 μmol/Lを超すフェニルアラニンの血漿レベルにおける持続的増加は、結果として、精神遅滞を生じる。その作用は、フェニルアラニン自体(それのいずれの代謝産物でもなく)に起因するものと思われるが、その機構はまだ完全にはわかっていない。フェニルアラニンの血漿レベルの増加における負の影響は、低フェニルアラニン食が生後間もなく導入され、かつ青年期へと、おそらく一生の間、十分継続される場合には、大部分は予防されうる。残念なことに、その食餌療法は、数個の栄養素の欠乏に関連する可能性があり、そのいくつかは脳の発育に有害である可能性があり、多くの低フェニルアラニン製品は満足な官能的性質を十分には持っていないため、その食餌療法の遵守が危ぶまれる。さらに、妊娠した高フェニルアラニン血症の患者は、過多な子宮内のフェニルアラニンの影響すなわち、その胎児の先天的な奇形、小頭症および精神遅滞を避けるために、厳格な低フェニルアラニン食に戻ることが要求される。NIHにより最近発行されているように、食餌療法の目標は、妊娠中には2 mg/dL〜6 mg/dL、新生児から12才までは2 mg/dL〜6 mg/dL、および12才後では2 mg/dL〜15 mg/dLのレベルを得るべきである。厳格な低フェニルアラニン養生法は、患者およびその家族にとって面倒であり、幼児期以降強制するのは非常に困難である。従って、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ欠損を埋め合わせるための酵素治療は、高フェニルアラニン血症の治療において大きな進歩を提供すると考えられる。
【0006】
高フェニルアラニン血症の治療のためにフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(「PAL」)を使用することは、以前に示唆されており、例えば、Hoskinsら、Lancet, 2月23日, 392-394, 1980を参照されたい。フェニルアラニンヒドロキシラーゼとは違って、フェニルアラニン分解酵素PALは、活性化のために補因子を必要としない。PALはフェニルアラニンをトランス-桂皮酸へ転化し、それはコエンザイムAを経由して、安息香酸に転化され、グリシンと反応し、その後、主として尿を通して、馬尿酸塩として排出される。PALは、例えば、酵母ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)(ロドスポリジウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)としても知られている)から得ることができ、また、そのような遺伝子の組換え発現により得ることができる(Sarkissianら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 96:2339-2344, 1999)。
【0007】
胃腸管におけるPALのタンパク質分解性分解は、例えば、GilbertおよびJack, Biochem, J. 199, 715-723, 1981により認識されており、この問題を克服するための様々な試みが報告されてきた。そのような提案は、ヘモグロビンと混合されて硝酸セルロース膜に包まれた微小球に封じ込められたPALから構成された「人工細胞」におけるその酵素のマイクロカプセル化(BourgetおよびChang, Biochim. Biophys. Acta 883, 432-438, 1986)、その酵素を含むロドスポリジウム・トルロイデスの透過処理された細胞(H. J. GilbertおよびM. Tully, Biochem. Biophys. Res. Comm. 131(2), 1985, pp. 557-563)、および透過処理されたロドトルラ細胞において架橋されたPAL(Eigtvedら、米国特許第5,753,487号)を含む。
【0008】
安定的で、活性があり、かつプロテアーゼ耐性のCLEC-PAL製剤を作製するための本出願人による多数の試みは、少なくとも一部分においてCLEC法において生じる内部の化学的架橋のために不成功であった。活性があり、安定化されたPALの製剤が調製されることができたならば、おそらく、それは、高フェニルアラニン血症の患者の消化管においてフェニルアラニンを分解し、それにより、フェニルアラニンレベルを低下させるかまたは低フェニルアラニンレベルを維持し、この遺伝的疾患に罹患する患者において見出される高フェニルアラニンレベルに起因する重篤な副作用を防ぐために、経口的に投与されることができると思われる。このように、PALおよびCLEC法の内部の化学的架橋により不活化される他の酵素のように、安定化され、活性のある酵素を調製する代替的な方法に対する要望が存在しており、本出願人らはそのような方法を同定した。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
第一の態様において、本発明は、酵素結晶の周囲に外部の架橋されたマトリックスを形成するために低濃度の多官能価の架橋試薬を用いてポリリシドまたは他の類似したポリマーを酵素結晶と架橋する段階を含む、マトリックス安定化酵素結晶を形成するための方法である。
【0010】
一つの好ましい態様において、多官能価の架橋試薬は、ジアルデヒド架橋試薬である。適するジアルデヒド架橋試薬は、直鎖状および分枝鎖状の両方のジアルデヒドを含む。適する直鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、グルタルアルデヒド(1,5-ペンタンジアール)、マロンアルデヒド(1,3-プロパンジアール)、スクシンアルデヒド(1,4-ブタンジアール)、アジプアルデヒド(1,6-ヘキサンジアール)、ピメルアルデヒド(pimelaldehyde)(1,7-ヘプタンジアール)、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の直鎖状ジアルデヒドを含む。適する分枝鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、直鎖状または分枝鎖状のC1-C5、-OR1からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有するジアルデヒドを含み、R1がC1-C5、酸素、窒素、硫黄、アミノ、ハロゲン、およびフェニルであり、例えば、3,3-ジメチルグルタルアルデヒド、3,3-ジフェニルグルタルアルデヒド、3,3-(4-メトキシフェニル)グルタルアルデヒド、3-エチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4,4'-トリメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4,4'-ジメチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-メチル-2'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-4'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3,4'-ジプロピル-1,5-ペンタンジアール、2-ブチル-2'-エチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-2,4'-ジエチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、4-メチルペンタンジアール、アスパルトアルデヒド、3-(ホルミルメチル)ヘキサンジアール、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の分枝鎖状ジアルデヒドである。
【0011】
もう一つの好ましい態様において、多官能価の架橋試薬における低濃度とは、2%未満、より好ましくは0.5%またはそれ未満、最も好ましくは0.2%またはそれ未満のパーセント濃度である。
【0012】
もう一つの好ましい態様において、結晶層に付着するために有効な1つまたは複数の反応性部分を有するポリマーは、これらに限定されないが、ポリアミノ酸、ポリカルボハイドレート、ポリスチレン、ポリ酸、ポリオール、ポリビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエーテル、および化学分野の業者により理解されるものと思われる他のポリマーを含む。好ましくは、ポリマーは、ポリアミノ酸、より好ましくは、陽イオン性ポリアミノ酸である。適するポリアミノ酸は、これらに限定されないが、ポリリシン、ポリアミド、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リシンとアラニンのコポリマー、リシンとフェニルアラニンのコポリマー、およびそれらの混合物を含む。最も好ましい態様において、ポリマーはポリリシンである。
【0013】
第二の態様において、本発明は、ポリリシドの存在下において低濃度の多官能価の架橋剤で架橋された結晶性PALを含んでいるPALのマトリックス安定化酵素結晶を含む。
【0014】
一つの好ましい態様において、多官能価の架橋試薬は、ジアルデヒド架橋試薬である。適するジアルデヒド架橋試薬は、直鎖状および分枝鎖状の両方のジアルデヒドを含む。適する直鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、グルタルアルデヒド(1,5-ペンタンジアール)、マロンアルデヒド(1,3-プロパンジアール)、スクシンアルデヒド(1,4-ブタンジアール)、アジプアルデヒド(1,6-ヘキサンジアール)、ピメルアルデヒド(1,7-ヘプタンジアール)、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の直鎖状ジアルデヒドを含む。適する分枝鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、直鎖状または分枝鎖状のC1-C5、-OR1からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有するジアルデヒドを含み、R1がC1-C5、酸素、窒素、硫黄、アミノ、ハロゲン、およびフェニルであり、例えば、3,3-ジメチルグルタルアルデヒド、3,3-ジフェニルグルタルアルデヒド、3,3-(4-メトキシフェニル)グルタルアルデヒド、3-エチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4,4'-トリメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4,4'-ジメチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-メチル-2'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-4'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3,4'-ジプロピル-1,5-ペンタンジアール、2-ブチル-2'-エチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-2,4'-ジエチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、4-メチルペンタンジアール、アスパルトアルデヒド、3-(ホルミルメチル)ヘキサンジアール、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の分枝鎖状ジアルデヒドである。
【0015】
もう一つの好ましい態様において、多官能価の架橋試薬における低濃度とは、2%未満、より好ましくは0.5%またはそれ未満、最も好ましくは0.2%またはそれ未満のパーセント濃度である。
【0016】
もう一つの好ましい態様において、結晶層に付着するために有効な1つまたは複数の反応性部分を有するポリマーは、これらに限定されないが、ポリアミノ酸、ポリカルボハイドレート、ポリスチレン、ポリ酸、ポリオール、ポリビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエーテル、および化学分野の業者により理解されるものと思われる他のポリマーを含む。好ましくは、ポリマーは、ポリアミノ酸、およびより好ましくは、陽イオン性ポリアミノ酸である。適するポリアミノ酸は、これらに限定されないが、ポリリシン、ポリアミド、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リシンとアラニンのコポリマー、リシンとフェニルアラニンのコポリマー、およびそれらの混合物を含む。最も好ましい態様において、ポリマーはポリリシンである。
【0017】
第三の態様において、本発明は、PALのマトリックス安定化酵素結晶の治療的有効量を投与することを含む高フェニルアラニン血症を治療する方法である。好ましい態様において、投与は経口である。
【0018】
発明の詳細な説明
本出願人らは、酵素がCLEC法のように、広範には架橋されていない、活性があり、安定し、且つプロテアーゼ耐性である酵素結晶を調製する方法を発見した。本出願人らの発明の安定化された酵素結晶は、本明細書では、「マトリックス安定化酵素結晶」と名付けられ、ヒトおよび他の哺乳動物を含む動物の腸における望まれないおよび/または毒性の分子の処理のために有用である。
【0019】
本発明の方法において、酵素結晶は、非常に低濃度の多官能価の架橋試薬の存在下において架橋される。具体的には、CLEC法において使用されるグルタルアルデヒドの2%〜23% (W/V)とは対照的に、多官能価の架橋試薬(グルタルアルデヒドのような)の2%未満、好ましくは0.5%またはそれ未満、最も好ましくは0.2%またはそれ未満 (W/V)が使用される。そのような引き下げられた量の多官能価の架橋試薬では、典型的には、CLEC法において効果がないと思われる。しかしながら、CLEC法に要求されるより高いグルタルアルデヒド濃度は、PALのようなある特定の酵素の活性を不活化させるのに十分である。
【0020】
一つの好ましい態様において、多官能価の架橋試薬は、ジアルデヒド架橋試薬である。適するジアルデヒド架橋試薬は、直鎖状および分枝鎖状の両方のジアルデヒドを含む。適する直鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、グルタルアルデヒド(1,5-ペンタンジアール)、マロンアルデヒド(1,3-プロパンジアール)、スクシンアルデヒド(1,4-ブタンジアール)、アジプアルデヒド(1,6-ヘキサンジアール)、ピメルアルデヒド(1,7-ヘプタンジアール)、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の直鎖状ジアルデヒドを含む。適する分枝鎖状ジアルデヒドは、これらに限定されないが、直鎖状または分枝鎖状のC1-C5、-OR1からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有するジアルデヒドを含み、R1がC1-C5、酸素、窒素、硫黄、アミノ、ハロゲン、およびフェニルであり、例えば、3,3-ジメチルグルタルアルデヒド、3,3-ジフェニルグルタルアルデヒド、3,3-(4-メトキシフェニル)グルタルアルデヒド、3-エチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4,4'-トリメチル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4,4'-ジメチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-メチル-2'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、3-エチル-2,4-ジメチル-4'-プロピル-1,5-ペンタンジアール、2-エチル-4-メチル-3,4'-ジプロピル-1,5-ペンタンジアール、2-ブチル-2'-エチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-3,4-ジエチル-2-メチル-1,5-ペンタンジアール、4-ブチル-2,4'-ジエチル-3-プロピル-1,5-ペンタンジアール、4-メチルペンタンジアール、アスパルトアルデヒド、3-(ホルミルメチル)ヘキサンジアール、および化学分野の業者により理解されるものと思われる多数の他の分枝鎖状ジアルデヒドである。
【0021】
低濃度の多官能価の架橋試薬に加えて、1つまたは複数の反応性部分を有する1つまたは複数のポリマーが、結晶表面上に網状構造を形成するために架橋試薬との結合において用いられる。適するポリマーは、約100〜約1,000,000の間、好ましくは約200〜約750,000の間、最も好ましくは約500〜約150,000の間の平均分子量をもつ陽イオン性、陰イオン性、および/または疎水性ポリマーを含む。反応性部分は、例えば、ハロアルキル、エポキシド、ヒドラジド、ヒドラジン、チオレート、ヒドロキシルなど、好ましくは、活性のあるエステル、アミン、カルボン酸、スルフヒドリル、カルボニル、およびカルボハイドレートのような求電子性および/または求核性基を含みうる。ポリマーの長さに沿った反応性部分は、結晶の表面に付着し、架橋試薬で架橋される場合、網状構造を形成する。例えば、陽イオン性反応性部分は、電荷-電荷の相互作用により結晶の表面に付着されるようになりうる。有用なポリマーは、単一の反復モノマー単位を有するホモポリマー、2つの異なるモノマー単位を有するコポリマー、または2つより多い異なるモノマー単位を有するポリマーを含む。好ましくは、ホモポリマーまたはコポリマーが使用される。
【0022】
結晶層に付着するために有効な1つまたは複数の反応性部分を有する適するポリマーは、好ましくはポリアミノ酸を含むが、ポリリシン、ポリアミド、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリカルボハイドレート、ポリスチレン、ポリ酸、ポリオール、ポリビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエーテルなどのホモポリマーを含む。その挙げられたポリマーは、陽イオン性反応性部分を有するが、他の陰イオン性および/または疎水性のポリアミノ酸も有用である。ポリアミノ酸はまた、コポリマーでもありうる。コポリアミノ酸が使用される場合、完全長ポリマーが結晶表面上に網状構造を形成するために有効な反応性部分を含むとの条件で、少なくとも2個のアミノ酸残基がポリマーに存在する。コポリアミノ酸における一方のアミノ酸ともう一方のアミノ酸の比率は、一方のアミノ酸の、他方のアミノ酸単位あたり約0.1から約100まででありうる。好ましくは、比率は1:1である。コポリアミノ酸を形成するために適するアミノ酸は、以下のアミノ酸の任意の組み合わせを含む:リシン、アラニン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファン、システイン、ヒスチジン、アルギニン、グリシン、グルタミン、プロリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、アスパラギン、バリン、メチオニン、チロシン、アスパラギン酸、および/またはグルタミン酸。好ましくは、ポリマーは、ホモポリマーのポリリシン、1:1比でのリシンとアラニンのコポリマー、または1:1比でのリシンとフェニルアラニンのコポリマーのようなポリアミノ酸である。もう一つの好ましい態様において、ポリアミノ酸は陽イオン性である。ホモポリマーのポリリシンが最も好ましいポリマーである。
【0023】
結晶層に付着するために有効な1つまたは複数の反応性部分を有する他の適するポリマーは、例として、例えばポリアミロース、ポリフラノシド、ポリピラノシド、カルボキシメチルアミロース、およびデキストランのようなポリカルボハイドレートならびにポリサッカライド;例えばクロロメチル化ポリスチレンおよびブロモメチル化ポリスチレンのようなポリスチレン;例えば、ポリアクリルアミドヒドラジドのようなポリアクリルアミド;例えばポリアクリル酸のようなポリ酸;例えばポリビニルアルコールのようなポリオール;例えばポリ塩化ビニルおよびポリ臭化ビニルのようなポリビニル;ポリエステル;ポリウレタン;ポリオレフィン;およびポリエーテルを含む。
【0024】
ポリマーの1つまたは複数の反応性部分の機能は、その反応性部分が、酵素結晶の内部のアミノ酸残基と反応することなしに、酵素結晶の表面において架橋試薬と相互作用することを提供する。ポリマーの反応性側基は、多官能価のカップリング試薬により架橋されうる。例として、ポリリシンの場合、そのポリリシドポリマーを互いにおよび/または結晶表面上のリシン残基のアミン基と架橋させることにより、結晶表面上の網状構造が形成される。多官能価の架橋試薬の低濃度での使用のために、容易に接近できるそれらのアミン基、特にポリリシンにより供給されるものまたは酵素結晶の表面上にあるものが優先的に反応し、一方、酵素結晶の内部のアミノ酸残基(例えばリシン)のアミノ基は、架橋試薬と反応するほんのわずかな機会をもつかまたは全くもたず、酵素反応に関係するそれらの能力は維持される。さらに、反応性側基を有する添加されるポリマーの分子の大きさおよび/または電荷が、多官能価の架橋試薬の酵素結晶の溝の中へ入り且つ通過する侵入を防ぐことができ、従って、酵素の内部のリシン残基は、互いにまたは結晶中の酵素間で有意には架橋されない。
【0025】
酵素結晶の表面上にポリリシドの架橋により形成されたマトリックスは、その酵素結晶の物理学的構造を維持し、力学的安定性および熱安定性、ならびにプロテアーゼに対する保護を提供する。マトリックス安定化酵素結晶はまた、下記でさらに論議されているが、それらの酵素活性の保持により示されるように、小型の基質分子に対する透過性は残っている。マトリックス安定化酵素結晶を形成するための本発明の方法は、内部の架橋というよりむしろ、表面の修飾を含んでいるため、グルタルアルデヒド感受性のものを含むすべての酵素において使用されうる。本発明における使用に適した酵素は、CLEC法が適用可能であるそれらの酵素、および特に、結晶性酵素を含む。例えば、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、L-メチオニン-γ-リアーゼ、リパーゼ、カルボキシペプチダーゼ-Aは、本発明における使用に適しているが、これらに限定されることはない。
【0026】
本出願人らは、本発明の方法を適用して、安定し、活性があり、且つプロテアーゼ耐性であるPALを調製するのに成功した。動物モデルを用いて、本出願人らは、PALのマトリックス安定化酵素結晶(「MSEC-PAL」)が活性があり、安定しており、かつプロテアーゼ耐性であることを実証した。このように、MSEC-PALは、フェニルアラニンの血漿濃度を低下させるための高フェニルアラニン血症患者の経口的治療に有用でありうる。
【0027】
マトリックス安定化酵素結晶を調製する方法は、例証的例としてPALを使用し、以下に記載される。
【0028】
1. PAL 微結晶調製
酵素結晶としての安定化のためにPALを調製する第一段階において、PAL結晶を作製するための方法が開発された。結晶化に使用されるPALは、公知の技術に従って、精製または組換えにより産生されうる。
【0029】
簡単には、PEG8000(50% w/v;0.22 mmミリポア(Millipore)フィルターを通して濾過された)の水溶液は、10% (w/v)の最終PEG8000濃度になるまで、25 mM Na2HPO4/NaH2PO4、pH6.5中の20 mg/mL PALの溶液へ、非常に穏やかな旋回でゆっくり添加される。飽和したLi2SO4溶液(50 mMリン酸ナトリウム、pH 6.5中)を、約15 mMの最終濃度まで、ゆっくり添加する。Li2SO4の添加の間に形成されうる純粋な沈澱物は、遠心分離または濾過により取り出される。PALの結晶化は、約30 mMの最終濃度までのLi2SO4の連続的添加により誘導される。その結果生じた溶液は、その後、4℃で保存される。4℃での一晩のインキュベーションの間、大量の10ミクロン〜70ミクロンの大きさの棒形の微結晶が形成し、容器の底に沈澱する。
【0030】
PALの結晶化は、PAL-10% PEG8000-Li2SO4溶液へ少量の前に形成されたPAL微結晶を添加することにより加速されうる。種として前に調製されたPAL微結晶を使用すると、新しいPAL微結晶を4℃での30分のインキュベーション後に形成することができる。
【0031】
2. CLEC-PAL の形成
CLEC法において、様々な組成物の溶液であり且つpHが5〜7の値である溶液における酵素結晶は、2% (w/v)〜24% (w/v)の最終濃度での二官能価の架橋剤グルタルアルデヒドにより架橋される。予備的研究として、本出願人らは、代替的な酵素安定化方法の開発において対照として用いられるために、安定し、活性があるPALの調製物を調製するためのCLEC法の能力を評価した。典型的な実験において、上記のように生成された棒形PAL微結晶が用いられた。pH 7.0での20 mM リン酸ナトリウム、15% PEG6000、18 mM LiSO4中のPAL微結晶は、25℃で40分間、0.05%から2.5% (w/v)までの範囲の濃度でのグルタルアルデヒドとインキュベートされた。架橋反応を、その反応溶液をその架橋された結晶の短時間の遠心分離後に、100 mM トリス pH 8.5と交換することにより停止した。いくらかの活性を保持していたそれらのCLEC-PAL微結晶のタンパク質分解酵素に対する耐性を評価するために(< 0.2%のグルタルアルデヒド濃度で)、CLEC-PAL微結晶を、希釈されたマウスの小腸管の液体の添加後、37℃で30分間、インキュベートした。
【0032】
結果 ( 表 1)
表1に示されるように、0.23%を超すグルタルアルデヒド濃度を用いてCLEC法に従って作製されたCLEC-PAL微結晶において、すべての活性が失われた。
【0033】
CLEC法に従って作製されたCLEC-PAL微結晶の活性は、0.2%未満のグルタルアルデヒド濃度では、ほとんど完全に失われた。これらのグルタルアルデヒド濃度でのCLEC-PAL微結晶は、プロテアーゼに曝された場合、分解された。
【0034】
0.1%未満のグルタルアルデヒド濃度は、結果として、安定せず、pH 8.5での100 mM トリスに溶解されるCLEC-PAL微結晶を生じた。
【0035】
(表1)PAL活性におけるグルタルアルデヒドの影響
【0036】
グルタルアルデヒド以外の架橋試薬の使用を含む様々な反応条件下において、CLEC-PAL微結晶を作製するためのあらゆる試みは不成功であった。十分なPAL活性を保持し、かつタンパク質分解性分解に対して安定していることの両方が同時にあるCLEC-PAL微結晶を結果として生じるような反応条件は見出されえなかった。これらの結果より、PALにおける1つまたは複数の重要なリシン残基または他の反応性アミノ酸残基が触媒部位またはその近くに位置している可能性があり、グルタルアルデヒドとその残基との反応の結果として、その酵素の不活化が生じることが示唆された。本出願人らは、PEGおよびリン酸緩衝液から得られるPAL微結晶がグルタルアルデヒドを使用して架橋され、安定的かつ機能的なPAL微結晶製剤を形成することはできないと結論を出し、このように、CLEC法はPALについて成功しなかった。
【0037】
PAL以外の酵素もまた多官能価の架橋試薬に感受性があるリシン残基を含むことが知られており、従って、CLEC法を用いる安定化に適さない。一つの例としては、1% (W/V)グルタルアルデヒドでの架橋後、300倍低い活性である酵素カルボキシペプチダーゼ-Aである(QuiochoおよびRichards, Biochemistry, 5巻 4062-4076, 1966)。従って、すべての酵素結晶に対して使用されうる代替的な酵素安定化方法が必要とされている。
【0038】
3. マトリックス安定化酵素結晶の形成
上記のように形成された棒形PAL微結晶は、低濃度のグルタルアルデヒドを用いてポリリシンの存在下において架橋された。具体的には、MSEC-PALは以下のように調製された:上清は沈澱した結晶から除去され、20% (w/v) PEG8000、20 mM Li2SO4および10 mMリン酸ナトリウムを含む新鮮な緩衝液と交換された。添加される緩衝液の容量は、120 IU/ml〜130 IU/mlの間のPAL活性を得るように調整された。100 mLの結晶溶液を室温(RT)とし、その後、3.5 mLのポリ-L-リシン5000(50 mg/ml)が添加され、十分に混合された。インキュベーションは、10分ごとに混合しながら、RTで30分間であった。次に、2.48 mLのグルタルアルデヒド(dH2O(蒸留水)中0.3% v/v)が添加され、さらに90分間、RTでインキュベートされた。最後に、最終容量が200 mLであるように0.5 Mトリス、pH 8.5が添加された。MSEC調製物のPAL活性は、30分〜60分後に測定された。
【0039】
MSEC-PALの調製後、そのような結晶のPAL酵素活性は、可溶化されたPAL酵素の最初の値の20 %を超していることが測定された。そのMSEC-PALがタンパク質分解性分解に耐性があるかどうかを決定するために、2つの型の実験が行われた(図1)。第一に、MSEC-PALを、プロナーゼの10 mg/mLと、2時間、37℃で、インキュベートした。PAL酵素の活性は、プロナーゼへの曝露により影響をうけなかった。第二に、MSEC-PALを、マウスの腸管の液体において(12.5% v/v)、一晩、37℃でインキュベートした。MSEC-PALの活性は、腸管の液体への曝露によっても影響をうけなかった。対照的に、プロナーゼまたは腸管の液体とのインキュベーション後、架橋されていないPAL結晶において検出可能な活性はなかった。これらの実験より、PALのMSEC調製物は酵素活性を保持していること、およびこの活性をプロテアーゼによる分解から保護されていることが実証されている。
【0040】
本出願人らはまた、この方法を他のグルタルアルデヒド感受性酵素、メチオニン-γ-リアーゼに用いたが、同様の結果であった。マトリックス安定化酵素結晶方法は、酵素結晶の表面修飾を含むため、この方法はまた、CLEC法を用いる安定化には適さない任意の酵素の安定化に適用できると考えられる。
【0041】
4. 酵素的に活性のある MSEC-PAL のラットの胃腸管への送達
生後約2ヶ月、体重約175グラム〜200グラムの20匹のスプラーグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラットがこの研究に使用された。動物は、実験前には定型的な食餌で維持された。
【0042】
食物は、実験の24時間前に除去され、動物は格子の床をもつケージに置かれた。砂糖水(5%)がエネルギー源として導入された。すべての動物を4つの群に分けた。群1の4匹のラットは、1.5 mlの0.5 Mトリス-HCl緩衝液を胃管へ与え(gavage)、一方、群2のラットは、0.5 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5中に50 IUの非製剤化PALを含む1.5 mlの溶液を胃管へ与えた。群3は、1.5 mlのMSEC-PAL(0.5 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5中の50 IU)を胃管へ与えた8匹のラットを有した。これらの3群の16匹すべてのラットは、胃管への供給から45分後に屠殺された。群4の4匹のラットは、1.5 mlのMSEC-PAL(0.5 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5中の50 IU)を胃管へ与え、胃管への供給から90分後に屠殺された。
【0043】
屠殺後、胃および小腸をすぐに取り出した。小腸の内容物は20 mlの0.1 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5で洗い流され、胃の内容物は10 mlの0.1 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5で洗い流された。腸または胃の内容物を含む試験管は氷上で保存された。
【0044】
PAL活性は分光光度的に測定された。50 μlの試料は、30℃に予熱された950 μlのアッセイ緩衝液(0.1 Mトリス-HCl緩衝液、pH 8.5中に22.5 mM L-フェニルアラニン)と混合された。290 nmでの吸光度における増加を30℃でモニターした。酵素活性の1ユニットは、トランス-桂皮酸の1 μmolの形成を触媒する酵素量として定義される。アッセイは試料の収集後すぐに行われた。
【0045】
1.5 mlのトリス-HCl緩衝液を胃管へ与えた群1の4匹のラットにおいて、胃または小腸でPAL活性は検出されなかった(表2)。同様に、0.5 Mトリス-HCl緩衝液中における非製剤化PALの54 IUを胃管へ与えた群2の4匹のラットにおいて検出可能なPAL活性はなかった。
【0046】
しかしながら、MSEC-PALの胃管への供給後45分または90分のラットの胃および腸の両方からPAL活性を回収することができ(表2、図2)、MSEC製剤が小腸におけるプロテアーゼ分解に対してPAL酵素を保護したことを実証している。胃および腸の内容物がMSEC製剤化PALの経口投与後45分に収集された場合、胃および小腸の両方からの平均の回収されたPAL活性は、8匹の動物において17.8 IU(7.1 IU〜23.7 IU)であり、胃管へ供給された活性の34.3%(13.1%〜48.1%)であった。その回収された活性の約53%がまだ胃に存在しており、一方、その活性の47%が小腸の内容物において見出された(図2)。
【0047】
胃および腸の内容物がMSEC-PALの経口投与後90分に収集された場合、胃および小腸の両方からの平均の回収された活性は、4匹の動物において8.1 IU(3.7 IU〜9.3 IU)であり、胃管へ供給された活性の16.2%(7.4%〜22.0%)であった。回収された活性の9%近くが胃に存在しており、一方、その活性の91%を超える分が小腸の内容物において見出された(図2)。
【0048】
(表2)経口的に投与されたMSEC-PALのフェニルアラニン分解活性
値は、示されている動物の数についての平均±SD(標準偏差)である。最初の3群の動物は、示された処理の経口的供給後45分で屠殺され、群4の4匹の動物は、経口的供給後90分で屠殺された。
【0049】
5. MSEC-PAL の経口投与後の血漿フェニルアラニンにおける減少
ENUマウス(Pahenu2/enu2)のハイブリッド系をこれらの実験において使用した(Sarkissianら、(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. 96:2339-2344)。このマウスの系統は、肝臓のフェニルアラニンヒドロキシラーゼを欠損しており、標準的食餌を与えた場合、正常なマウスと比較して血漿フェニルアラニンレベルにおいて10倍〜20倍の増加を示す。これらのマウスにおける血漿フェニルアラニンレベルは、それらをフェニルアラニンを含まない食餌に置くことにより、正常値へ低下されうる。
【0050】
体重約25 gの8匹のENUマウスは、標準の食餌で維持された。すべてのマウスは、その後、フェニルアラニンを含まない食餌に置かれ(ハーランテクラッド(Harlan Teklad)食餌2826)、実験開始前の5日間、30 mg/LのL-フェニルアラニンを含む水が与えられた。
【0051】
パート A :実験の当日、動物に、時間0(t = 0時間)に150 μg/g(L-フェニルアラニン/g体重)の皮下注射を与えた。4匹の動物は、t = 1時間、2時間、3時間および4時間に、0.4 mlの0.5 Mトリス-HCl緩衝液(pH 8.5)中の5.5 IUのMSEC-PALを胃管に与えた。対照は、トリス緩衝液の同量を胃管へ与えた4匹のマウスから構成された。血液試料を、皮下フェニルアラニン注射前5分(t = 0時間)およびその後1時間間隔(t = 1時間〜7時間)に、尾の静脈から得た。
【0052】
パート B :すべての動物は、2日間、標準の食餌に戻され、その後、5日間、フェニルアラニンを含まない食餌を与えられた。この実験の第二部は、パートAにおいてMSEC-PALで処理されたマウスがパートBにおいて緩衝液のみを与えられ、かつパートAにおいて緩衝液を与えられたマウスがパートBにおいてMSEC-PALを与えられるような、処理されたマウスと対照群が交換される、クロスオーバーの研究であった。パートBにおけるマウスは、上記のパートAにおいて記載されるのとは別に処理された。
【0053】
血漿フェニルアラニンレベルは、ヘパリン化された血液試料の遠心分離後、測定された。フェニルアラニン濃度を、ベックマンシステムゴールド(Beckman System Gold)、DABSアミノ酸サンプリングキットを用いて、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。結果は、8匹のマウスが経口のMSEC-PALを受け取り、かつ8匹の対照マウスが緩衝液のみを受け取ったように、パートAおよびパートBからのデータをプールすることにより分析された。データは、処理群間の差異を同定するために、t検定と連結された分散分析法を用いて分析された。
【0054】
図3に示されるように、皮下へのフェニルアラニンの注入は、すべてのマウスにおいて血漿フェニルアラニンの急増加を引き起こした。血漿濃度は、μMで表され、n = 8での平均±S.E.M.のように示される。胃管への供給期間(t = 1時間〜4時間)の間、対照と処理された群との間に差異はなかった。しかしながら、最後の胃管への供給後1時間(t = 5時間)、MSEC-PAL処理されたマウスにおける血漿フェニルアラニンレベルが、緩衝液処理された対照と比較して減少した。血漿フェニルアラニンにおけるこの減少は、t = 6時間および7時間で有意であり、6時間でP < 0.001および7時間でP = 0.006であった。
【0055】
これらの結果は、フェニルアラニンリアーゼの経口製剤(MSEC-PAL)が血漿におけるフェニルアラニンの濃度を有意に低下させることができることを実証している。MSEC-PALの観察された効果はまた、この製剤が胃腸管において酵素をタンパク質分解性分解から保護することを示している。
【0056】
本明細書に挙げられているすべての刊行物は、個々の刊行物が明確にかつ個別に示され、参照として組み入れられているのと同程度に、参照として本明細書に組み入れられる。
【0057】
本発明はさらなる改変が可能であり、本出願は、本発明が属する技術分野内の公知のまたは通例の実施内で生じるような本開示からの逸脱を含む、本発明のいずれの変化、使用、または適用も網羅するものとし、かつ添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるものとすることは、理解されるものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】プロナーゼまたはマウスの腸管の液体に接触した場合のMSEC-PALについてのPAL活性の安定性および保持率を示す。
【図2】MSEC-PALの経口投与後の回収されたフェニルアラニン分解活性の分布を示す。
【図3】MSEC-PALの経口投与後の血漿フェニルアラニンにおける減少を示す。x軸は、フェニルアラニンの皮下注射後に経過した時間数における、時間を示す。y軸は、血液試料から測定された血漿中のフェニルアラニン濃度を示す。
Claims (26)
- タンパク質分解酵素による分解に耐性があるマトリックス安定化酵素結晶を形成するために十分な量の多官能価の架橋試薬を用いて、結晶性酵素を該結晶性酵素の結晶層に付着させるために有効な1つまたは複数の反応性部分を有する少なくとも1つのポリマーと架橋する段階を含む、マトリックス安定化酵素結晶を形成する方法。
- 酵素が、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、L-メチオニン-γ-リアーゼ、リパーゼ、およびカルボキシペプチダーゼ-Aからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
- 酵素がフェニルアラニンアンモニアリアーゼである、請求項1記載の方法。
- 多官能価の架橋試薬がジアルデヒド架橋試薬である、請求項1記載の方法。
- ジアルデヒド架橋試薬が直鎖状または分枝鎖状のジアルデヒドである、請求項4記載の方法。
- ジアルデヒド架橋試薬が、置換されたまたは置換されていないグルタルアルデヒド(1,5-ペンタンジアール)、マロンアルデヒド(1,3-プロパンジアール)、スクシンアルデヒド(1,4-ブタンジアール)、アジプアルデヒド(1,6-ヘキサンジアール)、ピメルアルデヒド(1,7-ヘプタンジアール)からなる群より選択される、請求項4記載の方法。
- ジアルデヒド架橋試薬がグルタルアルデヒドである、請求項4記載の方法。
- 多官能価の架橋試薬が2% (w/v)未満のパーセント濃度において使用される、請求項1記載の方法。
- 多官能価の架橋試薬が0.5%またはそれ未満(w/v)のパーセント濃度において使用される、請求項8記載の方法。
- 多官能価の架橋試薬が0.2%またはそれ未満(w/v)のパーセント濃度において使用される、請求項9記載の方法。
- 結晶層に付着するために有効な1つまたは複数の反応性部分を有するポリマーが、ポリアミノ酸、ポリカルボハイドレート、ポリスチレン、ポリ酸、ポリオール、ポリビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、またはポリエーテルである、請求項1記載の方法。
- 結晶層に付着するために有効な1つまたは複数の反応性部分を有するポリマーがポリアミノ酸である、請求項11記載の方法。
- ポリアミノ酸が、ポリリシン、ポリアミド、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リシンとアラニンのコポリマー、またはリシンとフェニルアラニンのコポリマーである、請求項12記載の方法。
- ポリアミノ酸がポリリシンである、請求項13記載の方法。
- 酵素がフェニルアラニンアンモニアリアーゼである、請求項14記載の方法。
- 多官能価の架橋試薬が0.5%またはそれ未満(w/v)のパーセント濃度において使用される、請求項14記載の方法。
- 多官能価の架橋試薬が0.2%またはそれ未満(w/v)のパーセント濃度において使用される、請求項16記載の方法。
- 請求項1記載の方法に従って調製されるマトリックス安定化酵素結晶。
- 請求項14記載の方法に従って調製されるマトリックス安定化酵素結晶。
- 請求項15記載の方法に従って調製されるマトリックス安定化酵素結晶。
- ポリリシンの存在下において二官能価の架橋剤で架橋された結晶性PALを含むフェニルアラニンアンモニアリアーゼのマトリックス安定化酵素結晶。
- 二官能価の架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項21記載のマトリックス安定化酵素結晶。
- フェニルアラニンアンモニアリアーゼのマトリックス安定化酵素結晶の治療的有効量を投与することを含む、高フェニルアラニン血症を治療する方法。
- フェニルアラニンアンモニアリアーゼのマトリックス安定化酵素結晶を、0.5% w/v未満の二官能価の架橋剤の存在下においてポリリシンをフェニルアラニンアンモニアリアーゼと架橋することにより安定化する、請求項23記載の方法。
- 二官能価の架橋剤がグルタルアルデヒドである、請求項24記載の方法。
- フェニルアラニンアンモニアリアーゼのマトリックス安定化酵素結晶の投与が経口投与により行われる、請求項23記載の方法。
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