JP2004522406A - シュードモナス・シリンゲHrp病原性島のDNA分子およびポリペプチドならびにそれらの使用 - Google Patents
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Abstract
本発明のひとつの局面は、(i)シュードモナス(Pseudomonas)CELおよびEELのゲノム領域のタンパク質もしくはポリペプチドをコードする単離された核酸分子;(ii)ストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする核酸分子;または(iii)(i)および(ii)の核酸分子に相補的なヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。本発明のDNA分子を含む発現ベクター、宿主細胞、およびトランスジェニック植物も開示される。別の局面は、単離されたタンパク質またはポリペプチドおよびこれらを含有する組成物に関する。本発明の核酸分子およびタンパク質を、植物に疾病耐性を付与するため、植物を非病原細菌によるコロニー形成に対して高感受性にするため、真核細胞死を引き起こすため、および癌性症状を治療するために使用することができる。
Description
【0001】
本出願は、2000年4月3日に出願された米国特許仮出願第60/194,160号、2000年8月11日に出願された米国特許仮出願第60/224,604号、および2000年11月17日に出願された米国特許仮出願第60/249,548号の恩典を主張しており、これらは全体が本明細書に参照として組入れられている。
【0002】
本研究は、国立科学基金(National Science Foundation)の基金番号第MCB−9631530号および米国農業省(USDA)の国立研究機関競合助成金プログラム(National Research Initiative Competitive Grants Program)の基金番号第98−35303−4488号の支援を受けている。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【0003】
発明の分野
本発明は、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)の保存性エフェクター遺伝子座および交換可能なエフェクター遺伝子座のオープンリーディングフレームに相当する単離されたDNA分子、それらによりコードされた単離されたタンパク質、およびそれらの様々な用途に関する。
【0004】
発明の背景
植物の病原菌であるシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)は、その多様性および植物との宿主特異的相互作用が注目される(HiranoおよびUpper、1990)。特定の菌株は、様々な植物種中のその宿主範囲に基づいて少なくとも40種の病原型のひとつに割当てられており、次に宿主の栽培品種中の示差的相互作用に基づいた品種に更に割当てられている。宿主植物において、細菌は典型的には、葉の細胞間隙内で高集団レベルまで増殖して、次に壊死的病変を形成する。非宿主植物または品種特異的耐性を伴う宿主植物においては、細菌は、病原体と接触し、植物細胞の過敏感反応(HR)、迅速な防御に関連したプログラムされた死を誘起する(AlfanoおよびCollmer、1997)。植物においてこれらの反応のいずれかを生じる能力は、III型タンパク質分泌経路をコードするhrp(HRおよびpathogenicity)遺伝子およびhrc(HRおよびconserved)遺伝子により、ならびにこの経路により植物細胞に注入されたエフェクタータンパク質をコードするavr(avirulencece)遺伝子およびhop(Hrp−dependent outer protein)遺伝子により指示されると考えられる(AlfanoおよびCollmer、1997)。これらのエフェクターは更に、可能性のある宿主におけるHRの引き金となるR遺伝子(以後avrと称す)サーベイランス系への寄生体を裏切ることがあり、このような遺伝子のための遺伝子(gene−for−gene)(avr−R)の相互作用に基づいた耐性に関する植物育種は、品種および示差的栽培品種の複雑な組合せを生じることがある(Keen、1990)。hrp/hrc遺伝子は、壊死を惹起するグラム陰性植物病原菌中で普遍的であると考えられ、これらは、P.シリンゲ(syringae)pv.シリンゲ(syringae)(Psy)61、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)Ea321、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)pv.ベシカトリア(vesicatoria)(Xcv)85−10、およびラルストニア・ソラナセアラム(Ralstonia solanacearum)GMI1000において配列決定されている(AlfanoおよびCollmer、1997)。これら4種の細菌のhrp/hrc遺伝子クラスターは、それらの明確な遺伝子配置および調節成分に基づいて、2群に分けられる:I群(PseudomonasおよびErwinia)ならびにII群(XanthomonasおよびRalstonia)。これらの群の分布と細菌の系統発生の間の矛盾は、hrp/hrc遺伝子クラスターが水平獲得されており、その結果病原性島(pathogenic island)(Pai)を表していることのいくつかの証拠を提供している(AlfanoおよびCollmer、1997)。
【0005】
Paiは、(i)多くの毒性(virulence)遺伝子を含み、(ii)病原性菌株内に選択的に存在し、(iii)宿主細菌DNAと比べ異なるG+C含量を有し、(iv)大きい染色体領域を占領し、(v)直接反復配列に隣接することが多く、(vi)tRNA遺伝子および/または潜在可動性遺伝因子を境界として、(vii)不安定であるような、遺伝子クラスターとして定義されている(Hackerら、1997)。一部のPaiは、同じ種において異なるゲノム位置へ挿入されている(Wielerら、1997)。残りは、複数の水平獲得(horizontal acquisition)を示すモザイク構造を表す(Henselら、1999)。III型分泌系をコードする遺伝子は、動物病原体サルモネラ(Salmonella)種および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のPai内ならびにエルシニア(Yersinia)種およびシゲラ(Shigella)種の巨大プラスミド上に存在する。これらの生物における経路により分泌されたエフェクターをコードする遺伝子は、通常経路遺伝子に連結されている(Hueck、1998)が、特筆すべき例外はsopEであり、これはネズミチフス菌(S. typhimurium)のある単離体中のSPI1への明らかな連結を伴わない溶原性(temperate)ファージにより運搬される(Miroldら、1999)。3種のavr/hop遺伝子は、P.シリンゲ(syringae)においてhrp/hrcクラスターへ連結され;avrEおよびいくつかの他のHrp調節性転写ユニットは、P.シリンゲ(syringae)pv.トマト(tomato)(Pto)DC3000のhrpクラスターのhrpR境界に連結され(LorangおよびKeen、1995);avrPphEは、シュードモナス・ファセオリコラ(Pseudomonas phaseolicola)(Pph)1302AのhrpY(hrpK)に隣接し(Mansfieldら、1994);ならびに、hopPsyA(hrmA)は、Psy 61のhrpKに隣接する(HeuおよびHutcheson、1993)ことが既に示されている。他のシュードモナス(Pseudomonas)avr遺伝子は、ゲノム内またはプラスミド上のどこかに位置し(LeachおよびWhite、1996)、これはPph 1449BのPaiとして説明されたavr遺伝子のプラスミドを有するグループを含む(Jacksonら、1999)。
【0006】
Avr、Hop、Hrp、およびHrcタンパク質は、植物および動物の両方における有望な治療的処置を表しているので、病原細菌においてPaiによりコードされたその他のタンパク質を同定して、これらのタンパク質の用途を確定することは望ましいと考えられる。
【0007】
本発明は、当技術分野におけるこれらの欠点を克服するものである。
【0008】
発明の概要
本発明のひとつの局面は、(i)シュードモナス(Pseudomonas)の保存性エフェクター遺伝子座(Conserved Effector Loci;「CEL」)および交換可能なエフェクター遺伝子座(Exchangeable Effector Loci;「EEL」)のゲノム領域のタンパク質またはポリペプチドをコードする単離された核酸分子、(ii)ストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする核酸分子、または(iii)前記(i)および(ii)の核酸分子に相補的なヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。本発明のDNA分子を含む発現ベクター、宿主細胞、およびトランスジェニック植物も示される。このような宿主細胞およびトランスジェニック植物を作出する方法も示される。
【0009】
本発明の更なる局面は、本発明の核酸分子によりコードされた単離されたタンパク質またはポリペプチドに関する。このようなタンパク質を含有する組成物も示される。
【0010】
更に別の本発明の局面は、植物に疾病耐性を付与する方法に関する。ある手法に従い、本方法は、植物細胞の本発明の異種DNA分子による形質転換、および形質転換された植物細胞からのトランスジェニック植物の再分化により実行され、ここでトランスジェニック植物は、疾病耐性を付与するのに有効な条件下で、異種DNA分子を発現している。別の手法に従い、本方法は、処理された植物に疾病耐性を付与するのに有効な条件下での、本発明のタンパク質またはポリペプチドによる植物の処置により実行される。
【0011】
より更なる本発明の局面は、非病原細菌によるコロニー形成に対して高感受性である植物を作出する方法に関する。ひとつの手法に従い、本方法は、植物細胞の本発明の異種DNA分子による形質転換、および形質転換された植物細胞からのトランスジェニック植物の再分化により実行され、トランスジェニック植物は、トランスジェニック植物を非病原細菌によるコロニー形成に高感受性を持つようにするのに有効な条件下で、異種DNA分子を発現している。別の手法において、この方法は、処理された植物を非病原細菌によるコロニー形成に対して感受性にするのに有効な条件下での、本発明のタンパク質またはポリペプチドによる植物の処理により実行される。
【0012】
別の本発明の局面は、真核細胞に、細胞毒性シュードモナスタンパク質を導入することによる、真核細胞死を引き起こす方法に関し、導入は、細胞死を引き起こすのに有効な条件下で行われる。
【0013】
更なる本発明の局面は、癌細胞死を引き起こすのに有効な条件下で、細胞毒性シュードモナスタンパク質を、患者の癌細胞に導入し、これにより癌性症状を治療することによる、癌性症状の治療法に関する。
【0014】
本発明の利点は、3種の要因からもたらされる。第一に、植物病原体エフェクタータンパク質は、極めて低レベルで真核生物の代謝における絶妙な変化を誘起するように進化して、これらの活性の少なくとも一部は、植物に加え哺乳類および他の生物に関連する可能性があるということの実質的かつ増大しつつある証拠が存在することである。例えば、Psy B728a EEL由来のORF5は、哺乳類のMAPKK防御シグナル伝達を阻害するような動物病原体相同体YopJと同じ活性部位を有すると考えられる植物病原体タンパク質であるキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)pv.ベシカトリア(vesicatoria)AvrBsTに類似している(Orthら、2000)。第二に、P.シリンゲ(syringae)CELおよびEEL領域は、エフェクタータンパク質遺伝子において豊富であり、このことは、これらの領域を、エフェクター遺伝子の生物学的予測(bioprospecting)のための実り多い標的としている。第三に、遺伝子およびタンパク質を植物および動物の細胞に送達する技術の迅速な開発が、タンパク質に基づく療法の効能を改善していることである。
【0015】
発明の詳細な説明
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のCELを含むDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:1)を有する。
いくつかの未定義のヌクレオチドが配列番号:1に存在するが、これらは遺伝子間領域に存在すると考えられる。シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のCELは、多くのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。このCELによりコードされた2種の産物はHrpWおよびAvrEであり、両方とも公知である。追加の10種の産物は、図3に示したように、各々、ORF1−10により産生される。これらの多くのORFヌクレオチド配列およびそれらのコードされたタンパク質またはポリペプチド産物を以下に示す。
【0016】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF3のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:2)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF3によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:3)を有する。
【0017】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF4のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:4)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF4によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:5)を有する。
【0018】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF5のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:6)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF5によりコードされたタンパク質またはポリペプチドであり、現在HopPtoAとして公知のものは、下記のアミノ酸配列(配列番号:7)を有する。
【0019】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF6のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:8)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF6によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:9)を有する。
【0020】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF7のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:10)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF7によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:11)を有する。
【0021】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF8のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:12)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF8によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:13)を有する。
【0022】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF9のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:14)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF9によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:15)を有する。
【0023】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF10のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:16)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF10によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:17)を有する。
【0024】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のEELを含むDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:18)を有する。
いくつかの未定義のヌクレオチドが、配列番号:18に存在するが、これらは遺伝子間領域に存在すると考えられる。シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のEELは、多くのORFを含む。このEELによりコードされた産物のひとつは、P.スタッツェリ(stutzeri)由来のTnpA’相同体である。追加の4種の産物は、各々、ORF1−4により産生される。これらの多くのORFヌクレオチド配列およびそれらのコードされたタンパク質またはポリペプチド産物を以下に示す。
【0025】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL由来のORF1のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:19)を有する。
Pto DC3000 EEL ORF1によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:20)を有する。
【0026】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL由来のORF2のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:21)を有する。
Pto DC3000 EEL ORF2によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:22)を有する。
【0027】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL由来のORF3のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:23)を有する。
Pto DC3000 EEL ORF3によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:24)を有する。
P. シリンゲ(syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL由来のORF3は、変異された場合に、毒性を有意に低下することが現在示されている。より興味深いことに、過剰発現は、病変サイズを強力に増大する。従ってこのエフェクターは、生物学的に活性があり、症状形成において重要な役割があると考えられる。
【0028】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL由来のORF4のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:25)を有する。
Pto DC3000 EEL ORF4によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:26)を有する。
【0029】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728aのEELは、多くのORFを含む。これらのオープンリーディングフレームの中の2種は、他のシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)変種のEEL中の相同体と同等でない可動性遺伝因子であると考えられる。追加の4種の産物は、各々、ORF1−2およびORF5−6から産生される。これらの多くのORFヌクレオチド配列、およびそれらのコードされたタンパク質またはポリペプチド産物を、以下に提供する。
【0030】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728a EEL由来のORF1のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:27)を有する。
Psy B728a EEL ORF1によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:28)を有する。
表1(実施例2参照)に示したように、このタンパク質またはポリペプチドをコードするDNA分子は、AvrPphCをコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.ファセオリコラ(phaseolicola)由来のヌクレオチド配列との有意な相同性を有している。
【0031】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728a EEL由来のORF2のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:29)を有する。
Psy B728a EEL ORF2によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:30)を有する。
表1(実施例2参照)に示したように、このタンパク質またはポリペプチドをコードするDNA分子は、AvrPphEをコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.ファセオリコラ(phaseolicola)由来のヌクレオチド配列との有意な相同性を有している。
【0032】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728a EEL由来のORF5のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:31)を有する。
Psy B728a EEL ORF5によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:32)を有する。
【0033】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728a EEL由来のORF6のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:33)を有する。
Psy B728a EEL ORF6によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:34)を有する。
【0034】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)61のEELは、多くのORFを含む。このオープンリーディングフレームのひとつは、外膜タンパク質HopPsyAをコードする。HopPsyAをコードするDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:35)を有する。
HopPsyAは、下記のアミノ酸配列(配列番号:36)を有する。
【0035】
shcAと称される残りのオープンリーディングフレームは、下記のヌクレオチド配列(配列番号:37)を有するDNA分子である。
コードされたタンパク質またはポリペプチドShcAは、下記のアミノ酸配列(配列番号:38)を有する。
【0036】
本発明は更に、前記DNA分子およびタンパク質またはポリペプチドに加え、その他のシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)病原型から単離されている様々な本発明のDNA分子の相同体に関する。例えば、多くのAvrPphE、AvrPphF、およびHopPsyA相同体が、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)病原型から同定されている。
【0037】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.アングラタ(angulata)由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:39)を有する。
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.アングラタ(angulata)のAvrPphE相同体のアミノ酸配列(配列番号:40)は、以下のものである。
このタンパク質またはポリペプチドは、GC含量約57%、推定等電点約9.5、および推定分子量約41kDaである。
【0038】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.グリシネア(glycinea)由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:41)を有する。
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.グリシネア(glycinea)のAvrPphE相同体のアミノ酸配列(配列番号:42)は、以下のものである。
このタンパク質またはポリペプチドは、GC含量約57%、推定等電点約9.1、および推定分子量約41kDaである。
【0039】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.タバシ(tabaci)由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:43)を有する。
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.タバシ(tabaci)のAvrPphE相同体のアミノ酸配列(配列番号:44)は、以下のものである。
このタンパク質またはポリペプチドは、GC含量約57%、推定等電点約9.3、および推定分子量約41kDaである。
【0040】
別のAvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.タバシ(tabaci)由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:45)を有する。
コードされたAvrPphE相同体は、下記の配列番号:46のアミノ酸配列を有する。
【0041】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.グリシネア(glycinea)品種4由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:47)を有する。
コードされたAvrPphE相同体は、下記の配列番号:48のアミノ酸配列を有する。
【0042】
AvrPphEをコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.ファセオリコラ(phaseolicola)B130株由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:49)を有する。
コードされたAvrPphE相同体は、下記の配列番号:50のアミノ酸配列を有する。
【0043】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.アングラタ(angulata)Pa9株由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:51)を有する。
コードされたAvrPphE相同体は、下記の配列番号:52のアミノ酸配列を有する。
【0044】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.デルフィニー(delphinii)PDDCC529株由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:53)を有する。
コードされたAvrPphE相同体は、下記の配列番号:54のアミノ酸配列を有する。
【0045】
P.シリンゲ(syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL ORF2の相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.デルフィニー(delphinii)PDDCC529株由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:55)を有する。
コードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記の配列番号:56のアミノ酸配列を有する。
【0046】
AvrPphF相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.デルフィニー(delphinii)PDDCC529株ORF1由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:57)を有する。
コードされたAvrPhpF相同体は、下記の配列番号:58のアミノ酸配列を有する。
【0047】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.デルフィニー(delphinii)PDDCC529株ORF1由来のDNA分子は、AvrPphF相同体をコードして、下記のヌクレオチド配列(配列番号:59)を有する。
コードされたAvrPphF相同体は、下記の配列番号:60のアミノ酸配列を有する。
【0048】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)226株由来のDNA分子は、HopPsyAの相同体をコードして、下記のヌクレオチド配列(配列番号:61)を有する。
コードされたHopPsyA相同体は、下記の配列番号:62のアミノ酸配列を有する。
【0049】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.アトロファシエンス(atrofaciens)B143株由来のDNA分子は、HopPsyAの相同体をコードして、下記のヌクレオチド配列(配列番号:63)を有する。
コードされたHopPsyA相同体は、下記の配列番号:64のアミノ酸配列を有する。
【0050】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000株由来のDNA分子は、本明細書においてはHopPtoA2と同定されたHopPtoAの相同体をコードして、下記のヌクレオチド配列(配列番号:65)を有する。
hopPtoA2はCEL内に存在しないが、これはここに前述のようにCEL ORF5に相当しているhopPtoA相同体として含まれる。このコードされたHopPtoA2タンパク質またはポリペプチドは、下記の配列番号:66のアミノ酸配列を有する。
【0051】
先に同定したタンパク質またはポリペプチドの断片に加え、その他の細菌、特にグラム陰性病原菌のEELおよびCEL由来の完全長タンパク質の断片も、同じく、本発明において使用することができる。
【0052】
適当な断片は、いくつかの手段により作出されうる。公知のタンパク質をコードする遺伝子のサブクローンは、サムブルック(Sambrook)らの論文(1989)およびアウスーベル(Ausubel)らの論文(1994)に記されたような、遺伝子断片をサブクローニングするための従来の分子遺伝学的操作を用いて作出されうる。その後このサブクローンを、細菌細胞において、インビトロまたはインビボにおいて発現し、例えば病原体毒性に必要な産物として、活性について試験されうるような比較的小さいタンパク質またはポリペプチドを得る。
【0053】
別の手法において、タンパク質の一次構造に関する知識に基づいて、タンパク質をコードする遺伝子の断片を、タンパク質の特定の部分を示すように選択された特定のプライマーセットと共に、PCR技法を用いて合成できる(Erlichら、1991)。次にこれらを、先に説明されたように細菌細胞由来の切断されたタンパク質またはポリペプチドの発現に適当なベクターへクローニングすることができる。
【0054】
代わりの方法として、タンパク質断片を、キモトリプシンもしくはブドウ球菌(Staphylococcus)プロテイナーゼA、またはトリプシンのようなタンパク質分解酵素による完全長タンパク質の消化により作出することができる。様々なタンパク質分解性酵素は、特定のタンパク質のアミノ酸配列に基づいて、異なるタンパク質を異なる位置で切断すると考えられる。タンパク質分解により生じる断片の一部は、活性毒性タンパク質またはポリペプチドでありうる。
【0055】
化学合成も、適当な断片の作出に使用することができる。このような合成は、生成されるポリペプチドに関する公知のアミノ酸配列を使用し実行される。あるいは、完全長タンパク質を高温および高圧に曝すことにより、断片が作製されると考えられる。次にこれらの断片は、通常の方法(例えば、クロマトグラフィー、SDS−PAGE)により分離されうる。
【0056】
変種を、同じく(または代わりに)、例えば、そのポリペプチドの特性、二次構造およびヒドロパシー的性質には最小の影響を有するようなアミノ酸の欠失または付加により修飾することができる。例えばポリペプチドは、タンパク質の転移を翻訳時または翻訳後に指示するようなタンパク質のN末端で、シグナル(またはリーダー)配列に結合することができる。更にポリペプチドは、ポリペプチドの合成、精製、または同定を容易にするために、リンカーまたは他の配列に結合することができる。
【0057】
本発明において使用されるタンパク質またはポリペプチドは、常法により、好ましくは精製された形状で生成される(好ましくは純度が少なくとも約80%、より好ましくは90%)。典型的には、本発明のタンパク質またはポリペプチドは、組換え宿主細胞の増殖培地へと分泌される(以下で考察する)。あるいは、本発明のタンパク質またはポリペプチドは生成されるが、増殖培地へは分泌されない。このような場合、タンパク質を単離するために、組換えプラスミドを保有する宿主細胞(例えば、E. coli)を繁殖し、超音波、熱または化学処理により溶菌して、このホモジネートを遠心分離し、細菌デブリを除去する。次に上清を、連続硫酸アンモニウム沈降に供する。本発明のタンパク質またはポリペプチドを含む画分は、適宜サイズ化されたデキストランまたはポリアクリルアミドカラムにおけるゲル濾過に供され、このタンパク質が分離される。必要ならば、このタンパク質画分を、更にHPLCにより精製することができる。
【0058】
その他のEELおよびCELのタンパク質またはポリペプチドをコードするDNA分子を、細菌の病原性島の部分をクローニングするためのPCRに基づく方法を用いて同定することができる。基本的に、PCRに基づく戦略は、hrpKおよびtRNAleu遺伝子由来の保存配列(または他の保存性境界配列)の病原性島のEEL介在領域のクローニングのためのプライマーとしての使用に関連している。図2B−Cに示されたように、hrpKおよびtRNAleu遺伝子は、多様なシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)変種の間で高度に保存されている。EELのサイズに応じて、追加のプライマーが、当初得られたcDNA配列から調製され、クローンの回収および、段階的方式でのEELの運用(walk through)を可能にする。完全長コード配列がPCR段階から得られないならば、適当な制限酵素を使用し、完全長コード配列を調製するために、コンティグ(contig)を集成することができる。同様のPCRに基づく方法を、CEL内のオープンリーディングフレームをコードするクローンを得るために用いることができる。図3に示したように、多様なシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)病原型のCELは、多くの保存性ドメインを含む。更にhrp/hrcドメインの公知の配列であるhrpW、AvrE、またはgstAを使用し、プライマーを調製することができる。
【0059】
前述のPCRに基づく方法を用いて、多くのDNA配列が、プライマーの供給源として利用された。このようなDNA分子のひとつは、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のtRNAleu遺伝子から単離されており、これは下記のヌクレオチド配列(配列番号:67)を有する。
適当なプライマーを供給するために使用することができるような追加のDNA分子は、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728aのtRNAleu遺伝子に由来し、これは下記のヌクレオチド配列(配列番号:68)を有する。
別のDNA分子は、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のqueA遺伝子から単離され、これは下記のヌクレオチド配列(配列番号:69)を有する。
DNA分子は、QueAをコードし、これは下記のアミノ酸配列(配列番号:70)を有する。
【0060】
その他のEELおよびCELのタンパク質またはポリペプチドをコードするDNA分子を、このようなDNA分子がストリンジェントな条件下で、先に同定されたDNA分子にハイブリダイズするかどうかを決定することによっても同定することができる。適当なストリンジェンシー条件の例は、ハイブリダイゼーションが温度約37℃で、0.9Mクエン酸ナトリウム(「SSC」)緩衝液を含むハイブリダイゼーション媒質を用いて行われ、その後0.2×SSC緩衝液を用いて37℃で洗浄されるような条件である。より高いストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション条件または洗浄条件のいずれかの温度を上昇することによるか、もしくはハイブリダイゼーションまたは洗浄の媒質のナトリウム濃度を増加することにより容易に達成することができる。非特異的結合も、例えば、タンパク質含有溶液による膜のブロック、ハイブリダイゼーション緩衝液への異種のRNA、DNA、およびSDSの添加、ならびにRNaseによる処理などのような、多くの公知の技術のいずれかひとつを用いて制御することができる。洗浄条件は、典型的には、ストリンジェンシーで、またはそれ以下で、行われる。高ストリンジェンシー条件の例は、1M NaCl、50mM Tris−HCl(pH7.4)、10mM EDTA、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.2%フィコール、0.2%ポリビニルピロリドン、0.2%ウシ血清アルブミン、および50μg/ml大腸菌(E. coli)DNAを含有するハイブリダイゼーション媒質における、温度約42℃〜約65℃、最大約20時間までのハイブリダイゼーションの実行段階、ならびにそれに続く0.2×SSC緩衝液中で約42℃〜約65℃で実行された洗浄段階を含む。
【0061】
先に同定されたDNA分子と比較して保存された置換基を含み、従って先に同定されたものと同じタンパク質またはポリペプチドをコードするような核酸分子も本発明に包含されている。更に相補配列も、本発明に包含されている。
【0062】
本発明の核酸はDNAまたはRNAのいずれかであり、これは先に同定した本発明のDNA分子を用いて、容易に調製することができる。
【0063】
エフェクタータンパク質またはポリペプチドの送達は、処置される宿主および使用される材料に応じて、(1)安定したもしくはプラスミドにコードされた導入遺伝子として用いられる;(2)アグロバクテリウム(Agrobacterium)もしくはウイルスベクターにより一過的に発現される;(3)機能性異種III型分泌系を発現する無力化した(disarmed)病原体もしくは組換え非病原細菌のIII型分泌系により送達される;または、(4)局所適用、その後のTATタンパク質形質導入ドメインが媒介した自然発生的細胞取り込みにより送達されるなどの、いくつかの方法で達成することができる。これらは各々、以下に考察している。
【0064】
タンパク質またはポリペプチドをコードするDNA分子を、通常の組換えDNA技術を用いて細胞に組込むことができる。一般にこれは、DNA分子の、そのDNA分子が異種であるような、すなわち通常存在しないような、発現系への挿入に関連している。異種DNA分子は、発現系またはベクターへ、適当なセンス方向でかつ正確な読みとり枠で挿入される。このベクターは、挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含む。
【0065】
コーエン(Cohen)およびボイヤー(Boyer)の米国特許第4,237,224号は、制限酵素切断およびDNAリガーゼによるライゲーションを用いる、組換えプラスミドの形の発現系の作製を開示している。その後これらの組換えプラスミドは、形質転換により導入され、組織培養において増殖した原核生物および真核細胞を含む単細胞培地において複製される。
【0066】
組換え遺伝子は更に、ワクシニアウイルスのようなウイルスにも導入される。組換えウイルスは、プラスミドのウイルスに感染した細胞へのトランスフェクションによっても作製されうる。
【0067】
適当なベクターは、下記のウイルスベクター、例えばλベクター系gt11、gtWES.tB、Charon4、およびプラスミドベクター、例えばpBR322、pBR325、pACYC177、pACYC1O84、pUC8、pUC9、pUC18、pUC19、pLG339、pR290、pKC37、pKC101、SV40、pBluescriptII SK+/−またはKS+/−(「Stratagene社クローニング系(Stratagene Cloning Systems)」カタログ(1993)参照、Stratagene社、LaJolla、CA、これは本明細書に参照として組入れられている。)、pQE、pIH821、pGEX、pETシリーズ(Studierら、1990)を含むが、これらに限定されない。組換え分子を、細胞へ、形質転換により、特に形質導入、接合、動態化(mobilization)または電気穿孔により導入することができる。DNA配列は、サムブルック(Sambrook)らの論文(1989)に記されているような、当技術分野における標準のクローニング手法により、ベクターへクローニングされる。
【0068】
様々な宿主−ベクター系を用いて、タンパク質コード配列(または複数)を発現することができる。第一に、このベクター系は、使用した宿主細胞と共存性がなければならない。宿主−ベクター系は以下を含むが、これらに限定されない:バクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAにより形質転換された細菌;微生物、例えば酵母ベクターを含む酵母;ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)で感染された哺乳類細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;および、細菌で感染された植物細胞。これらのベクターの発現エレメントは、それらの強度および特異性が変動する。利用された宿主−ベクター系に応じて、多くの適当な転写および翻訳エレメントの中のひとつを使用することができる。
【0069】
様々な遺伝的シグナルおよびプロセシング(processing)事象が、遺伝子発現の多くのレベルを制御する(例えば、DNA転写およびメッセンジャーRNA(mRNA)翻訳)。
【0070】
DNAの転写は、RNAポリメラーゼの結合を指示しそれによりmRNA合成を促進するようなDNA配列であるプロモーターの存在に左右される。真核生物プロモーターのDNA配列は、原核生物プロモーターのものとは異なる。真核生物プロモーターおよび付随する遺伝的シグナルは、原核生物系においては認識されないか、もしくは機能せず、更に原核生物プロモーターは、真核細胞において認識されずかつ機能しない。
【0071】
同様に、原核生物におけるmRNAの翻訳は、真核生物のシグナルとは異なる適当な原核生物シグナルの存在に左右される。原核生物におけるmRNAの効率的翻訳は、mRNA上にシャイン・ダルガーノ(Shine−Dalgarno;「SD」)配列と称されるリボソーム結合部位を必要とする。この配列は、タンパク質のアミノ末端メチオニンをコードする、通常AUGである開始コドンの前に位置したmRNAの短いヌクレオチド配列である。このSD配列は、16S rRNA(リボソームRNA)の3’末端と相補的であり、rRNAと二本鎖形成することにより、mRNAのリボソームへの結合を促進し、リボソームの正確な位置決定を可能にすると考えられる。遺伝子発現の最小化の検証については、ロバーツ(Roberts)およびローアー(Lauer)の論文(1979)を参照のこと。
【0072】
プロモーターの「強度」(すなわち、それらの転写促進能)は、変動する。クローニングした遺伝子の発現を目的として、高レベルの転写を得、これにより遺伝子を発現するためには、強力なプロモーターを使用することが望ましい。利用した宿主細胞系に応じて、多くの適当なプロモーターのいずれかひとつを使用することができる。例えば、大腸菌(E. coli)、そのバクテリオファージ、またはプラスミドにおいてクローニングする場合、T7ファージプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、コリファージλおよび、lacUV5、ompF、bla、lpp等を含むが、これらに限定されないその他のPRおよびPLプロモーターなどのようなプロモーターを使用し、隣接するDNAセグメントの高レベル転写を指示することができる。加えて、ハイブリッドtrp−lacUV5(tac)プロモーターまたは他の大腸菌(E. coli)プロモーターは、組換えDNAにより作製されうり、もしくは他の合成DNA技術を用いて、挿入された遺伝子の転写を提供されうる。
【0073】
特に誘導されない限りは、プロモーターの作用を阻害するような細菌宿主細胞株および発現ベクターを選択することができる。ある操作において、特異的インデューサーの追加は、挿入されたDNAの効率的転写に必要である。例えば、lacオペロンは、ラクトースまたはIPTG(イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド)の添加により誘導される。様々な他のオペロン、例えばtrp、proなどは、異なる制御下にある。
【0074】
更に特定の開始シグナルが、原核細胞における効率的な遺伝子の転写および翻訳に必要である。これらの転写および翻訳開始シグナルは、各々、遺伝子特異的mRNAおよび合成されたタンパク質の量により測定される「強度」を変動しうる。プロモーターを含むDNA発現ベクターは、様々な「強力」な転写および/または翻訳開始シグナルのいずれかの組合せも含みうる。例えば、大腸菌(E. coli)における効率的翻訳は、リボソーム結合部位を提供するために、開始コドン(「ATG」)の5’側に約7塩基〜9塩基のSD配列を必要とする。従って、宿主細胞リボソームにより利用することができるいずれかのSD−ATG組合せを使用できる。このような組合せは、コリファージλのcro遺伝子またはN遺伝子、または大腸菌(E. coli)トリプトファンE遺伝子、D遺伝子、C遺伝子、B遺伝子またはA遺伝子からのSD−ATG組合せを含むが、これらに限定されない。加えて、組換えDNAまたは合成ヌクレオチドの組込みに関連した他の技術により作製されたSD−ATG組合せのいずれかを使用することができる。
【0075】
単離されたポリペプチドまたはタンパク質をコードするDNA分子が発現系へクローニングされたならば、これを宿主細胞へ組込むことは容易である。このような組込みは、ベクター/宿主細胞系に応じて、前述の形質転換の様々な形により行うことができる。適当な宿主細胞は、細菌、ウイルス、酵母、哺乳類細胞、昆虫、植物などを含むが、これらに限定されない。
【0076】
組換え宿主細胞にとって、コードされたタンパク質またはポリペプチドを分泌することは望ましいので、宿主細胞も、機能性III型分泌系を有することが好ましい。III型分泌系は宿主細胞に対して異種でありうる(Hamら、1998)か、もしくは宿主細胞は天然にIII型分泌系を有しうる。天然にIII型分泌系を含む宿主細胞は、多くの病原性グラム陰性菌、例えばエルウィニア(Erwinia)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、キサントモナス(Xanthomonas)種などを含む。他のIII型分泌系が公知であり、更に他のものが継続して同定されている。エフェクタータンパク質またはポリペプチドの送達のために利用されうる病原細菌は、公知の技術、すなわち前述のような技術により無力化されることが好ましい。あるいは、宿主細胞または増殖培地からのエフェクタータンパク質またはポリペプチドの単離を、前述のように実行することができる。
【0077】
本発明の別の局面は、本発明のタンパク質またはポリペプチドを発現しているトランスジェニック植物ならびにそれらの作出法に関する。
【0078】
DNA分子を単離された植物細胞または組織もしくは植物全体において発現するためには、植物の発現可能なプロモーターが必要である。いずれかの植物の発現可能なプロモーターを、その起源、すなわち、ウイルス、細菌、植物などとは無関係に利用することができる。限定的ではない2種の適当なプロモーターは、ノパリンシンターゼプロモーター(Fraleyら、1983)およびカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(O’Dellら、1985)を含む。これらのプロモーターは両方とも、それらの調節制御下で、コード配列の構成性発現を生じる。
【0079】
構成性発現は、一般にDNA分子の発現に適しているが、一過性または組織調節した発現も望ましく、その場合望ましい発現を達成するためにいずれかの調節性プロモーターを選択できることは当業者には明らかである。典型的には、一過性または組織調節性プロモーターは、発生のある段階でのみまたは特定の組織においてのみ発現されるDNA分子と共同で使用されると考えられる。
【0080】
一部の植物においては、病原体浸漬またはストレスに対して反応するようなプロモーターの使用も望ましいと考えられる。例えば、特定の植物病原体による感染に反応してタンパク質またはポリペプチドの発現を制限することが望ましいと考えられる。病原体誘導可能なプロモーターの一例は、ジャガイモ由来のgst1プロモーターであり、これは本明細書に参照として組入れられているストリットマイヤー(Strittmayer)らの米国特許第5,750,874号および第5,723,760号に開示されている。
【0081】
単離された植物細胞または組織もしくは植物全体におけるDNA分子の発現も同じく、適当な転写終結およびmRNAのポリアデニル化を必要としている。植物細胞または組織における使用に適した3’調節領域のいずれかを、第一および第二のDNA分子に機能的に連結することができる。多くの3’調節領域が植物において機能することは公知である。3’調節領域の例は、ノパリンシンターゼ3’調節領域(Fraleyら、1983)およびカリフラワーモザイクウイルス3’調節領域(Odellら、1985)を含むが、これらに限定されない。
【0082】
プロモーターおよび3’調節領域は、サムブルック(Sambrook)らの論文(1989)に記されたような周知の分子クローニング技術を用いて、容易にDNA分子へライゲーションすることができる。
【0083】
植物細胞を本発明のDNA分子により形質転換するひとつの手法は、宿主細胞の微粒子銃(particle bombardment)(微粒子銃形質転換(biolistic transformation)としても公知)である。これはいくつかの方法のひとつで達成することができる。最初に、細胞における、不活性粒子または生物学的活性粒子の噴射が関与する。この技術は、サンフォード(Sanford)らの米国特許第4,945,050号、第5,036,006号、および第5,100,792号に開示されている。一般にこの手法は、細胞の外側表面を貫通してその内部に取り込まれるのに有効な条件下での、細胞における、不活性粒子または生物学的活性粒子の噴射が関与している。不活性粒子が使用される場合、粒子を異種DNAを含むベクターで被覆することにより、ベクターを細胞へ導入できる。あるいは、標的細胞がベクターにより取り囲まれ、その結果ベクターが、粒子の伴流(wake)により細胞へと運搬される。生物学的活性粒子(例えば、ベクターおよび異種DNAを含む乾燥した細菌細胞)も、植物細胞へ噴射することができる。現在公知のものおよび今後開発されるものを含むその他の粒子衝撃法の変法も使用することができる。
【0084】
DNA分子を植物細胞へ導入する別法は、DNA分子を含む、ミニ細胞、細胞、リソソームまたはその他の融合可能な脂質表面を持つ本体のいずれかである他の実体と、プロトプラストの融合である(Fraleyら、1982)。
【0085】
DNA分子を更に、電気穿孔により植物細胞へ導入することもできる(Frommら、1985)。この技術において、植物プロトプラストは、DNA分子を含むプラスミドの存在下で電気穿孔される。電界強度が高い電気インパルスは、生体膜を可逆的に透過し、プラスミドを導入する。電気穿孔された植物のプロトプラストは、細胞壁を再構築し、分裂して再分化する。
【0086】
DNA分子の植物細胞への導入の別法は、植物細胞の、DNA分子により予め形質転換されたアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾジーンズ(Agrobacterium rhizogenes)による感染である。当技術分野において公知の適当な条件下で、形質転換された植物細胞は生育され、苗条または根を形成して、更に植物体へと成長する。一般にこの手法は、植物組織の細菌懸濁液による接種、および組織の抗生物質を含まない再分化培地における25℃〜28℃での48時間〜72時間のインキュベーションに関連している。
【0087】
アグロバクテリウム(Agrobacterium)は、グラム陰性菌であるファミリーリゾビアセエ(Rhizobiaceae)属の代表である。その種は、クラウンゴール(A. tumefaciens)および毛根病(A. rhizogenes)に寄与している。クラウンゴール腫瘍および毛根の植物細胞は、これらの細菌によってのみ異化代謝されるオパインとして公知のアミノ酸誘導体の産生を誘導する。オパインの発現に寄与している細菌遺伝子は、キメラ発現カセットのための制御エレメントの都合の良い供給源である。加えて、オパインの存在をアッセイすることにより、形質転換された組織を同定することができる。
【0088】
本発明のDNA分子のような異種遺伝子配列は、適当な植物細胞へ、A.ツメファシエンス(tumefaciens)のTiプラスミドまたはA.リゾジーンズ(rhizogenes)のRiプラスミドにより導入することができる。このTiまたはRiプラスミドは、植物細胞へ、アグロバクテリウム(Agrobacterium)による感染時に伝播され、植物ゲノムへ安定して組込まれる(Schell、1987)。
【0089】
形質転換に適した植物組織は、葉組織、根組織、分裂組織、接合体および体細胞胚、および葯を含む。
【0090】
形質転換後、その形質転換された植物細胞を、選択して再分化することができる。
【0091】
好ましくは、形質転換された細胞は最初に、例えば、宿主細胞へ本発明のDNA分子と同時に導入される選択マーカーを用いて、同定される。適当な選択マーカーは、例えばカナマイシン耐性のような、抗生物質耐性をコードするマーカーを含むが、これらに限定されない(Fraleyら、1983)。多くの抗生物質耐性マーカーが当技術分野において公知であり、その他のものが継続的に同定されつつある。いずれか公知の抗生物質耐性マーカーを、本発明に従い、形質転換および形質転換された宿主細胞の選択に使用することができる。細胞または組織は、抗生物質を含有する選択培地において生育され、これにより一般に抗生物質耐性マーカーを発現している形質転換体のみが、生育し続ける。
【0092】
組換え植物細胞または組織が得られたならば、それから完全に生育した植物を再分化することが可能になる。従って本発明の別の局面は、プロモーターが、卵菌類(oomycete)による植物の感染に反応して、第一のDNA分子の転写を誘導するような、本発明のDNA分子を含むトランスジェニック植物に関する。好ましくは、このDNA分子は、本発明のトランスジェニック植物のゲノムに安定して挿入される。
【0093】
培養されたプロトプラストからの植物再分化は、エバンス(Evans)らの論文(1983)ならびにバシル(Vasil)らの論文(1984および1986)に記されている。
【0094】
実践的に全ての植物が培養された細胞または組織から再分化され得ることは公知であり、これはコメ、コムギ、オオムギ、ライムギ、綿花、ヒマワリ、ピーナッツ、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、マメ、エンドウ、チコリ、レタス、エンダイブ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリ、カブ、ラディッシュ、ホウレンソウ、タマネギ、ニンニク、ナスビ、ペッパー、セロリ、ニンジン、スカッシュ、カボチャ、ズッキーニ、キュウリ、リンゴ、ナシ、メロン、イチゴ、ブドウ、ラズベリー、パイナップル、ダイズ、タバコ、トマト、サトウモロコシ、およびサトウキビの主な種の全てを含むが、これらに限定されない。
【0095】
再分化の手段は、植物の種毎に変動するが、一般に形質転換されたプロトプラストの懸濁液または形質転換された外植片を含むペトリ皿が最初に提供される。カルス組織が形成され、苗条がカルスから誘導され、その後発根され得る。あるいは、胚形成が、カルス組織において誘導される。これらの胚は、天然の胚のように発芽し、植物体を形成する。この培養培地は、一般に様々なアミノ酸およびホルモン、例えばオーキシンおよびサイトカインなどを含有すると考えられる。更に培地にグルタミン酸およびプロリンを添加することも、特にトウモロコシおよびアルファルファのような種にとっては、有利である。効率的再分化は、培地、遺伝子型、および培養履歴によって左右されると考えられる。これら3種の変量が管理されるならば、その結果通常再分化は再現性がありかつ反復可能である。
【0096】
DNA分子が安定してトランスジェニック植物に組込まれた後、有性交雑によるかまたは栽培品種の調製により、これを別の植物体に移すことができる。有性交雑に関して、多くの標準の育種技術のいずれかを、交雑される種に応じて使用することができる。栽培品種は、当業者に公知の通常の農学的手法に従い繁殖することができる。
【0097】
圧倒的多数の細菌病原体により惹起された疾病は、限定された病変を生じる。すなわち、全てが病原体にとって好都合に作用した(例えば、エフェクターのひとつのR遺伝子の検出のために過敏感反応の引き金とならない)場合であっても、この寄生性の過程は依然2、3日後に防御の引き金となり、これは次に伝播(spreading)による感染を停止する。従って、寄生を進行させるのと正に同じエフェクターが、最終的に防御の引き金とならなければならない。その結果、これらのエフェクターの未熟な発現は、より早期(すなわち、感染前)に植物防御の「スイッチを入れる」と考えられ、植物を、エフェクタータンパク質が得られた特定の細菌または多くの病原体のいずれかに対して耐性にする。この手法の利点は、これが天然の産物に関連して、植物が病原体エフェクタータンパク質に対して高感受性であると考えられることである。
【0098】
ひとつの態様に従い、本発明の異種DNA分子を含むトランスジェニック植物が提供される。好ましくは、この異種DNA分子は、植物病原体EELに由来する。この異種DNA分子がトランスジェニック植物において発現される場合、植物の防御が活性化され、このトランスジェニック植物へ疾病耐性を付与する。このトランスジェニック植物は更に、異種DNA分子のタンパク質またはポリペプチド産物により活性化されるようなR遺伝子を含むこともできる。このR遺伝子は、植物中に天然に生じるか、または異種性にその中に挿入することができる。多くのR遺伝子が、様々な植物種において同定されており、これは下記を含むが、これらに限定されない:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のRPS2、RPM1、およびRPP5;トマト由来のCf2、Cf9、I2、Pto、およびPtf;タバコ由来のN;亜麻由来のL6およびM;コメ由来のXa2l;および、サトウダイコン由来のHs1pro−1。本発明のトランスジェニック植物における植物防御の刺激は、疾病耐性を付与することに加えて、生育および昆虫に対する耐性の同時増強を生じうると考えられている。
【0099】
別の態様に従い、トランスジェニックまたは非トランスジェニックの植物は、本発明のタンパク質またはポリペプチドにより処理される。処理は、タンパク質またはポリペプチドを植物に適用する様々な形を含むことが意図されている。エフェクターポリペプチドまたはタンパク質が植物に適用されるような本発明の態様は、以下を含むような多くの方法で実行することができる:1)単離されたタンパク質(またはこれを含有する組成物)の適用、または2)疾病を引き起さずかつ本発明のエフェクタータンパク質をコードする遺伝子で形質転換された細菌の適用。後者の態様において、エフェクタータンパク質は、このエフェクタータンパク質をコードするDNA分子を含有する細菌を散布することにより、植物に適用され得る。このような細菌は、タンパク質が植物細胞に接触することができるようにタンパク質を分泌または輸送することが可能であることが好ましい。これらの態様において、タンパク質は、インプランタ(in planta)で細菌により産生される。
【0100】
このような局所的使用は、典型的には、形質導入ドメインを含むエフェクター融合タンパク質を用いて実施され、これはエフェクタータンパク質の細胞への形質導入ドメインが媒介した自然発生的取り込みを可能にする。基本的には、これは、標準のrDNA技術による11アミノ酸のペプチド
の、エフェクタータンパク質のN末端への融合により実行され、得られるタグ付きタンパク質は、未知の過程により細胞へ取り込まれる。このペプチドは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)TATタンパク質のタンパク質形質導入ドメイン(PTD)である(Schwarzeら、2000)。その他のPTDも公知であり、この目的に使用されると考えられる(Prochiantz、2000)。
【0101】
エフェクタータンパク質が植物に局所適用される場合、これは、例えば水、水溶液、スラリー、または乾燥粉末の形状で担体を含有する組成物として適用される。この態様において、組成物は、約5nMを上回る本発明のタンパク質を含有する。
【0102】
本組成物は、必須ではないが、肥料、殺虫剤、殺真菌剤、殺線虫剤、およびそれらの混合物を含む追加の添加剤を含有することができる。適当な肥料は、(NH4)2NO3を含む。適当な殺虫剤の例はマラチオン(Malathion)である。有用な殺真菌剤はキャプタン(Captan)である。
【0103】
その他の適当な添加剤は、緩衝剤、湿潤剤、コーティング剤、および場合によっては研磨剤を含む。これらの材料を用いて、本発明の過程を促進することができる。
【0104】
本発明の別の局面において、植物病原体CEL産物の機能を破壊することが可能である転写産物もしくはタンパク質またはポリペプチドをコードする異種DNA分子を含むトランスジェニック植物が提供される。CEL遺伝子は、特に発病において重要であるので、CEL遺伝子はグラム陰性病原菌の中で、特に種の系統にそって高度に保存されていることから、植物におけるそれらの産物の機能の破壊は、広範な耐性を生じうる。CEL産物の機能を破壊することができるタンパク質またはポリペプチドの例は、通常の技術によりCEL産物に対して生じたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。この抗体は、単離されると、配列決定され、これをコードする核酸が合成される。このような核酸、例えばDNAは、植物の形質転換に使用することができる。
【0105】
高感受性であるように、かつしたがって、バイオテクノロジー的目的のために非病原細菌の増殖を支持するように、トランスジェニック植物を更に遺伝子操作することもできる。多くの植物の病原細菌が、植物葉内部の環境を変更し、その結果非病原細菌が増殖できることは公知である。この能力は、病原体エフェクタータンパク質により引き起された植物における変化に基づくと考えられる。従って、適当なエフェクター遺伝子を発現しているトランスジェニック植物を、これらの目的に使用することができる。
【0106】
ある態様において、本発明の異種DNA分子を含むトランスジェニック植物は、トランスジェニック植物が適合性非病原細菌(すなわち、様々なClavibacter ssp.のような非病原性内部寄生菌)の増殖の支援を可能にする、1種以上のエフェクタータンパク質を発現する。適合性非病原細菌は天然に生じることができ、または組換体であることができる。好ましくは、非病原細菌は組換体であり、1種以上の有用な産物を発現している。従って、トランスジェニック植物は、望ましい産物を生産するための植物工場(green factory)となる。望ましい産物とは、植物の栄養の品質を増強することができる産物または単離された形が望ましい産物を含むが、これらに限定されない。単離された形が望ましい場合は、この産物は、植物組織から単離されうる。望ましい産物を発現する非病原細菌と発現しないものとの間の競合を防止するために、組換え非病原細菌の必要物(needs)を目的に合わせることが可能であり、その結果これらのみが、本発明の特定のエフェクタータンパク質またはポリペプチドを発現している植物組織において生存することが可能である。
【0107】
本発明のエフェクタータンパク質またはポリペプチドは、寄生生物に有利であるように代謝経路をシフトすることにより、および細胞死経路を活性化または抑制することにより、植物の生理を変更すると考えられる。従ってこれらは更に、効率的に栄養素含量を変更して老化を遅延または引き起こすのに有用な道具も提供する。これらの可能な作用の全てについて農業的用途がある。
【0108】
更なる本発明の局面は、CELおよびEELの診断的用途に関する。このCEL遺伝子は、グラム陰性菌、特に病原性グラム陰性菌(P. syringaeなど)に普遍的であるのに対して、EEL配列は、菌株特異的であり、特に脅威であるような菌株の存在、起源および移動(および検疫通過による伝播の制限)を追跡するために使用することができる「毒性遺伝子フィンガープリント」を提供する。CELおよびEELは、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)の様々な病原型において同定されているが、ほとんど全てのグラム陰性病原体は、CEL遺伝子およびEEL遺伝子の相同性に基づいて同定、識別および分類されうると予想される。
【0109】
ある態様において、より高い配列同一性がより密接な関係を示す、2種の細菌の間の関係を決定する方法は、これら2種の細菌のCELの核酸並置またはアミノ酸並置の比較、およびその後のこれら2種の細菌の関係の決定により実行される。CELは、2種の個別の細菌種の関係の決定に特に有用である。
【0110】
別の態様において、より高い配列同一性がより密接な関係を示す、2種の細菌の間の関係を決定する方法は、これら2種の細菌のEELの核酸並置またはアミノ酸並置の比較、およびその後のこれら2種の細菌の関係の決定により実行される。EELは、単独の細菌種のふたつの病原型の関係の決定に特に有用である。
【0111】
細菌種および/または病原型の関係を決定する方法が与えられたならば、これらの方法を、植物育種プログラムと共に利用することができる。特定の生育領域において蔓延している病原体の「毒性遺伝子フィンガープリント」を検出することにより、前述のようなトランスジェニック栽培品種の開発、または蔓延する病原体に対して耐性であるような現存する植物栽培品種の同定が可能になる。
【0112】
前述の用途に加え、本発明の別の局面は、動物、好ましくはヒト、イヌ、マウス、ラットを含むが、これらに限定されない哺乳類のための、遺伝子およびタンパク質に基づく療法に関する。P.シリンゲ(syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728a EEL ORF5タンパク質(配列番号:32)は、AvrRxv/YopJタンパク質ファミリーの一員である。YopJは、エルシニア(Yersinia)III型分泌系によりヒト細胞へ注入され、そこでこれはある種のタンパク質リン酸化酵素の機能を破壊し、サイトカイン放出を阻害してプログラムされた細胞死を促進する。多くの病原体エフェクタータンパク質(すなわち、P.syringaeエフェクタータンパク質)の標的は、真核生物に普遍的であり、その結果様々な可能性のある有用な機能を有すると考えられる。実際に、P.シリンゲ(syringae)Hrp病原性島における2種のタンパク質は、酵母において発現された場合には毒性がある。これらは、P.シリンゲ(syringae)pv.シリンゲ(syringae)EEL由来のHopPsyAおよびP.シリンゲ(syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のHopPtoAである。これは、普遍的真核生物標的の概念を裏付けている。
【0113】
従って本発明の更なる局面は、真核細胞への細胞毒性シュードモナスタンパク質の導入により実施されるような真核細胞死を引き起こす方法に関する。細胞毒性シュードモナスタンパク質は、好ましくはHopPsyA(例えば、配列番号:36(Psy61)、62(Psy226)、または64(PsyB143))、HopPtoA(配列番号:7)、またはHopPtoA2(配列番号:66)である。処理されうる真核細胞は、インビトロまたはインビボのいずれかであってよい。真核細胞をインビボにおいて処理する場合、多くの様々なタンパク質またはDNAの送達系を使用し、エフェクタータンパク質を標的真核細胞へ導入することができる。
【0114】
理論に縛られるわけではないが、少なくともHopPsyAエフェクタータンパク質はそれらの細胞毒性作用をMad2相互作用を介して発揮し、紡錘体形成の細胞チェックポイントを破壊する(下記参照)と考えられている。
【0115】
このタンパク質またはDNAの送達系は、適当な賦形剤または安定剤を含み得る、薬学的に許容できる担体中の送達系を含む薬学的組成物の形で提供されうる。剤形は、例えば散剤、液剤、懸濁剤、または乳剤のような固形または液体の形であることができる。典型的にはこの組成物は、約0.01%〜99%、好ましくは約20%〜75%の活性化合物(または複数)を、担体、賦形剤、安定剤などと共に含有すると考えられる。
【0116】
本発明の組成物は、好ましくは、薬学的担体を含む生理的に許容できる希釈剤中のこれらの物質の溶液または懸濁液により注射可能なまたは局所塗布される投薬形態で投与される。このような担体は、滅菌した液体、例えば水および油を含み、界面活性剤ならびにアジュバント、賦形剤または安定剤を含む他の薬学的かつ生理的に許容できる担体を添加してもしなくても良い。油の例は、石油、動物性油、植物性油、または合成油を起源とするもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、または鉱油である。一般に、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連した糖溶液、ならびにグリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、液体担体として、特に注射可能な液体として好ましい。
【0117】
あるいは、エフェクタータンパク質を同じく、加圧したエアゾール容器内に、常用のアジュバントを含む、例えばプロパン、ブタン、またはイソブタンなどの炭化水素噴射剤のような適当な噴射剤と共に封入した溶液または懸濁液により送達することができる。本発明の物質は更に、ネブライザー(nebulizer)またはアトマイザー(atomizer)のような非加圧式で投与することもできる。
【0118】
実施される治療に応じて、本発明の化合物を、経口的、局所的、経皮的、非経口的、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、点鼻注入、腔内または膀胱内への注入、眼内、動脈内、病巣内、もしくは鼻、喉または気管支などの粘膜への塗布により投与することができる。
【0119】
本発明の範囲内の組成物は、意図された目的を達成するのに有効な量の本発明の化合物が含まれるような、全ての組成物を含んでいる。個々の必要性は異なるので、各成分の有効量の最適範囲の決定は、当業者の範囲内である。
【0120】
エフェクタータンパク質を細胞へ送達するひとつの手法は、リポソームの使用に関する。基本的に、これは、送達されるべきエフェクタータンパク質を含むリポソームを提供し、次に標的細胞をリポソームと、エフェクタータンパク質を細胞へ送達するのに条件下で接触することに関連する。
【0121】
リポソームは、水相を封入している1個以上の同心円に並んだ脂質二重層で構成された小胞である。これらは、通常は漏出性ではないが、穴または孔が膜に生じた場合、膜が溶解または崩壊した場合、または膜の温度が相転移温度まで上昇した場合には、漏出性となる。リポソームによる薬物送達の現行法は、リポソーム担体が最終的に透過可能となりかつ標的部位において封入した薬物を放出することを必要としている。これは、例えばリポソーム二重層が、生体内の様々な物質の作用により、時間をかけて崩壊するような受動的様式で達成され得る。あらゆるリポソーム組成物は、循環系においてまたは生体内の他の部位において特徴のある半減期を有し、その結果リポソーム組成物の半減期を制御することにより、二重層が崩壊する速度は若干調節され得ると考えられる。
【0122】
受動薬物放出に対して、能動的薬物放出は、リポソーム小胞における透過性の変化を誘導する物質の使用に関連する。リポソーム膜は、リポソーム膜近傍の環境が酸性になった時に不安定化されるように構築することができる(例えば、本明細書に参照として組入れられている、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84:7851(1987);Biochemistry、28:908(1989)を参照のこと)。例えばリポソームが標的細胞により形質膜陥入された(endocytosed)場合、これらは、リポソームを不安定化して薬物放出を生じると考えられる酸性エンドソームへと経路が定められている。
【0123】
あるいは、リポソーム膜を化学的に修飾することができ、その結果酵素が膜上にコーティングとして配置され、これがリポソームをゆっくり不安定化する。薬物放出の制御は最初に膜に配置された酵素濃度によって左右されるので、薬物放出を「要求に応じて」薬物送達を達成するように変調または変更する真の効果的方法は存在しない。リポソーム小胞が標的細胞に接触するや否や、これが呑食され、かつpHの低下が薬物放出をもたらすという点で、pH感受性リポソームにも同じ問題が存在する。
【0124】
このリポソーム送達系を更に、能動的標的化を介して(例えば、リポソーム小胞の表面への抗体またはホルモンの組込みにより)、標的器官、組織、または細胞に蓄積させることもできる。これは、公知の方法に従い行うことができる。
【0125】
様々な種類のリポソームを、バンガム(Bangham)ら(1965);スー(Hsu)らの米国特許第5,653,996号;リー(Lee)らの米国特許第5,643,599号;ホーランド(Holland)らの米国特許第5,885,613号;ジャウ(Dzau)らの米国特許第5,631,237号;および、ローリー(Loughrey)らの米国特許第5,059,421号に従い調製することができる。
【0126】
エフェクタータンパク質を送達する別の手法は、複合されたエフェクタータンパク質の酵素分解を避けるために安定化されるようなポリマーへの所望のエフェクタータンパク質の複合に関する。この種の複合されたタンパク質またはポリペプチドは、エキューリブ(Ekwuribe)の米国特許第5,681,811号に開示されている。
【0127】
タンパク質またはポリペプチドを送達する更に別の手法は、ハートライン(Heartlein)らの米国特許第5,817,789号に開示されているキメラタンパク質の調製に関する。キメラタンパク質は、リガンドドメインおよび、例えば、本発明のエフェクタータンパク質を含む。このリガンドドメインは、標的細胞上に位置した受容体に特異的である。従ってキメラタンパク質が経静脈的に送達されるかさもなければ血液またはリンパ液に導入された場合、キメラタンパク質は標的化された細胞に吸着して、標的化された細胞はキメラタンパク質を取り込み、これは、エフェクタータンパク質が細胞チェックポイント制御メカニズムを不安定化させるのを可能にし、細胞毒性作用をもたらす。
【0128】
標的細胞における本発明のエフェクタータンパク質の異種発現を達成することが望ましい場合、所望のエフェクタータンパク質をコードするDNA分子が細胞へ送達され得る。基本的には、これは、エフェクタータンパク質をコードする核酸分子を提供すること、および次に細胞内でエフェクタータンパク質を発現するのに有効な条件下で核酸分子を細胞へ導入することを含む。好ましくは、これは、核酸分子の、細胞へ導入される前の、発現ベクターへの挿入により達成される。
【0129】
エフェクタータンパク質の異種発現に関して哺乳類細胞が形質転換される場合、アデノウイルスベクターを使用することができる。アデノウイルス遺伝子送達ビヒクルは、バークナー(Berkner)(1988)およびローゼンフィールド(Rosenfeld)ら(1991)の論文に示されたように、迅速に調製されかつ利用されうる。アデノ随伴ウイルス遺伝子送達ビヒクルは、遺伝子を細胞へ送達するために構築されかつ使用されうる。インビトロにおけるアデノ随伴ウイルス遺伝子送達ビヒクルは、チャテルジー(Chatterjee)ら、1992;ワルシュ(Walsh)ら、1992;ワルシュ(Walsh)ら、1994;フロッテ(Flotte)ら、1993a;ポナチャガン(Ponnazhagan)ら、1994;ミラー(Miller)ら、1994;エイナーハンド(Einerhand)ら、1995;ルオ(Luo)ら、1995;および、ゾー(Zhou)ら、1996に記されている。これらのビヒクルのインビボ使用は、フロッテ(Flotte)ら、1993bおよびカプリット(Kaplitt)ら、1994に記されている。別の種類のアデノウイルスベクターは、ウィッカム(Wickham)らの米国特許第6,057,155号;ボート(Bout)らの米国特許第6,033,908号;ウィルソン(Wilson)らの米国特許第6,001,557号;チェンバレン(Chamberlain)らの米国特許第5,994,132号;コチャネック(Kochanek)らの米国特許第5,981,225号;スプーナー(Spooner)らの米国特許第5,885,808号;および、キュリール(Curiel)の米国特許第5,871,727号に開示されている。
【0130】
感染型形質転換系を形成するように修飾されているレトロウイルスベクターも、所望のエフェクタータンパク質をコードする核酸を標的細胞へ送達するために使用することができる。このような種類のレトロウイルスベクターのひとつは、クリーグラー(Kriegler)らの米国特許第5,849,586号に開示されている。
【0131】
使用した感染型形質転換系とは無関係に、特定の細胞型へと核酸を送達するために標的化されなければならない。例えば、核酸の腫瘍細胞への送達に関して、腫瘍細胞感染の可能性を増大するように、高力価の感染型形質転換系を、腫瘍部位内に直接注入することができる。その後感染した細胞は、所望のエフェクタータンパク質、例えばHopPtoA、HopPsyA、またはHopPtoA2を発現し、細胞機能を破壊して、細胞毒性作用を生じる。
【0132】
特に好ましいのは、癌性症状を治療するための本発明のエフェクタータンパク質の使用である(すなわち、感染される真核細胞は癌細胞である)。これは、癌細胞分裂を阻害するのに有効な条件下で、細胞毒性シュードモナスタンパク質を患者の癌細胞へ導入し、これにより癌性症状を治療することにより行うことができる。
【0133】
導入により、エフェクタータンパク質が、患者へ、好ましくは癌細胞へ標的送達するような組成物の形状で投与されることが意図されている。あるいは、DNAに基づく療法を用いる場合、癌細胞が標的化されかつそこでエフェクタータンパク質が発現されるように、標的DNA送達系を患者へ投与することにより導入が実行されることが意図されている。
【0134】
実施例
下記の実施例は、例証を意図しているが、決して本発明の範囲を限定することは意図していない。
【0135】
材料および方法
細菌株、培養条件、プラスミド、およびDNA操作技術:
P.シリンゲ(syringae)の多様性の異なるレベルを表している3種の実験的に取扱いやすい菌株:Psy 61、Psy B728a、およびPto DC3000について調べた。(i)Psy 61は、そのコスミドpHIR11にクローニングされたそのhrp遺伝子クラスターが蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)および大腸菌(Escherichia coil)のような非病原細菌に必要な全ての遺伝子を含み、タバコにおいてHRを誘起してHrp系により豊富に分泌される未知の機能を伴うタンパク質であるHrpZハルピンを培養物中に分泌する、マメの弱い病原体である(Alfanoら、1996)。pHIR11 hrpクラスターは、完全に配列決定されており(図1)(AlfanoおよびCollmer、1997)、クラスターの左端の超可変領域のhopPsyA遺伝子は、Avr表現型を有し、Hrp経路を移動して、タバコ細胞において発現された場合に細胞死を誘起するようなタンパク質をコードすることが示されている(AlfanoおよびCollmer、1997;Alfanoら、1997;van Dijkら、1999)。(ii)Psy B728aは、61株と同じ病原型であるが、これは、高度に毒性でありかつ圃場において着生菌の適応度および病原性(マメの茶斑)におけるHrp系の役割を研究するためのモデルである(Hiranoら、1999)。(iii)Pto DC3000は、病原型シリンゲ(syringae)株から高度に分岐されているようなアラビドプシス(Arabidopsis)およびトマト(tomato)の良く研究された病原体(細菌の小斑点(speck)を生じる)である。rRNAオペロンRFLPパターンの分析は、PtoおよびPsyは関連が弱くかつ別個の種と考えられることを示している(ManceauおよびHorvais、1997)。従って、本発明者らは、同じ病原型の2種の菌株を高度に分岐した病原型の菌株と比較することができた。
【0136】
Psy 61(Prestonら、1995)、Psy B728a(Hiranoら、1999)、およびPto DC3000(Prestonら、1995)の供給源を有するように、大腸菌(E. coli)およびP.シリンゲ(syringae)株を培養する条件が説明されている(van Dijkら、1999)。大腸菌(E. coli)DH5αにおけるクローニングおよびDNA操作は、常法(Ausubelら、1994)に従い、pBluescriptII(Stratagene社、LaJolla、CA)、pRK415(Keenら、1988)、およびコスミドpCPP47(BauerおよびCollmer、1997)を用いて行った。Pto DC3000およびPsy B728aのゲノムDNAのコスミドライブラリーは、既に構築されている(Charkowskiら、1998)。オリゴヌクレオチド合成およびDNA配列決定は、コーネルバイオテクノロジーセンター(Cornell Biotechnology Center)において行った。Pta DC3000 hrp/hrcクラスターのヌクレオチド配列は、Psy 61のhrpK遺伝子とのハイブリダイゼーションに基づいてゲノムコスミドライブラリーから選択したコスミドであるpCPP2473のサブクローンを用いて決定した。Psy B728a hrp/hrcクラスターのヌクレオチド配列は、pCPP2346およびpCPP3O17のサブクローンを用いて決定した。これらのコスミドは、61のhrpCオペロンとのハイブリダイゼーションに基づいてゲノムライブラリーから選択した。Psy 61 EEL領域の左側は、下記のプライマーを用いたPCRにより、pBSKSII+XhoIおよびEcoRI部位にクローニングした:
queAにおいて開始されかつXhoI部位を含む配列番号:71
;hopPsyAにおいて開始されかつEcoRI部位を含む配列番号:72
。Pfuポリメラーゼを、全てのPCR実験に使用した。DNA配列データは、DNAStar Program社(Madison、WI)により管理および分析し、データベースは、BLASTX、BLASTP、およびBLASTNプログラムにより検索した(Altschulら、1997)。
【0137】
変異体構築および分析:
Pto DC3000 Hrp Paiにおける巨大な欠失を、既報のように、pRK415内のΩSpRカセットのいずれかの側の制限部位への境界断片のサブクローニング、組換えプラスミドのDC3000への電気穿孔、ならびにその後のマーカー交換変異体の選択および検索により構築した(Alfanoら、1996)。下記の左側および右側(図2および図3)の欠失境界断片を使用した(残留遺伝子断片と共に記す):CUCPB5110左側tgt−queA−tRNA−Leu−ORF4’(ORF4の27bp)および右側ORF1’−hrpK(ORF1の396bp);ならびに、CUCPB5115左側hrpS’−avrE’(avrEの2569bp)および右側ORF6(ORF6開始コドンの上流156bp)。後者の断片は、下記のプライマーを用いてPCR増幅した:
ORF5−0RF6遺伝子間領域において開始されかつXbaI部位を含む配列番号:73
;ORF6において開始されかつHindIII部位を含む配列番号:74
。変異体構築は、既報(Charkowskiら、1998)の条件を用いたサザンハイブリダイゼーションにより確認した。変異体のAvrPtoを分泌する能力は、抗AvrPto抗体および既報(van Dijkら、1999)のような細胞画分のイムノブロット分析により決定した。変異体CUCPB5115は、コスミドpCPP47のORF2からORF10までを持つpCPP3O16で補完され、既報(Charkowskiら、1998)のように、ヘルパー株大腸菌(E. coli)DH5α(pRK600)を用いた三親交配(triparental mating)により、大腸菌(E. coli)DH5αから導入された。
【0138】
T7発現分析:
Pto DC3000 EELのタンパク質産物を、既報(Huangら、1995)のように、ベクターpET21および大腸菌(E. coli)BL21(DE3)を用いた、T7ポリメラーゼ依存型発現により分析した。下記のプライマーセットを、pBSKSII+内のtgtからhrcVまでを含むBamHI断片を持つ、pCPP3O91由来の各ORFのPCRのために使用した:
ORF1、各々、配列番号:75および76
;ORF2、各々、配列番号:77および78
;ORF3、各々、配列番号:79および80
;ORF4、各々、配列番号:81および82
;tnpA、各々、配列番号:83および84
。
【0139】
植物バイオアッセイ法:
タバコ(Nicotiana tabacum L. cv. Xanthi)およびトマト(Lycopersicon esculentum Mill. cvs. MoneymakerおよびRio Grande)を、温室条件下で生育し、その後HRおよび毒性アッセイ法のために、25℃、白昼光および補助的ハロゲンランプを照射して維持した。細菌を、適当な抗生物質を補充したKing培地B寒天上で一晩増殖させ、5mM MES(pH5.6)中で懸濁し、その後HRアッセイ法のためには108cfu/mlで、および病原性アッセイ法のためには104cfu/mlで、針のないシリンジを用いて被験植物の葉へ浸潤させた(Charkowskiら、1998)。全てのアッセイ法を、異なる植物由来の葉について少なくとも4回反復した。トマト葉における細菌増殖は、浸漬した領域からコルクボーラーでディスク(disk)を切り出す段階、およびKontes Pellet Pestle(Fisher Scientific社、Pittsburgh、PA)により組織を5mM MES(pH5.6)0.5ml中で細分する段階、およびその後ホモジネートを、50μg/mlリファンピシンおよび2μg/mlシクロヘキシミドが入ったKing培地B寒天上に希釈播種して細菌集団を決定する段階によりアッセイした。3個の葉試料からの平均およびSDを、各時点で決定した。DC3000およびCUCPB5110のインプランタにおける相対増殖を、4回の個別の実験により同様にアッセイして、DC3000、CUCPB5115、およびCUCPB5115(pCPP3016)の相対増殖を、3回の個別の実験においてアッセイした。DC3000により達成された最終集団レベルは実験間で変動したが、野生型に対する変異体の集団レベルは、下記に説明した代表的実験においてと同じであった。
【0140】
実施例 1−Psy 61 、 Psy B728a 、および Pto DC3000 の hrp/hrc 遺伝子クラスターの比較
Psy B728aおよびPto DC3000由来のhrp/hrcクラスターが、先に特徴付けられたPsy 61のhrp/hrcクラスターと同様に組織化されているかどうかを決定するために、hrp/hrc挿入物を持つ2種のコスミドを部分的に特徴決定した。pCPP2346は、B728aのhrp/hrcクラスター全体を持ち、pCPP2473は、DC3000のhrp/hrcクラスターの左半分を持つ。DC3000 hrp/hrcクラスターの右半分は、既に特徴付けられている(Prestonら、1995)。これらのコスミドに由来したいくつかのサブクローンの末端の配列決定は、B728aおよびDC3000 hrp/hrcクラスターのフィンガープリントを提供し、これは両方が61株のように配列されていることを示した(図1)。しかし、B728aは、hrcUおよびhrpVの間に、バクテリオファージλ遺伝子Ea59(23%のアミノ酸同一性;E=2e−7)およびEa31(30%のアミノ酸同一性;E=6e−8)との相同体を含む3.6kb挿入物を含み(Hendrixら、1983)、B728a hrcU ORFは、36個の追加のコドンを含む。マメに対して高度に毒性であるようないくつかのPsy株においてこのサイズの可能性のある挿入は、先にRFLP分析により示された(Legardら、1993)。B728a hrp/hrc領域および隣接配列(左側4kbおよび右側13kb)を含むコスミドpCPP2346は、蛍光菌(P. fluorescens)に、B728a HrpZハルピンを培養物中に分泌させ、タバコ葉においてHRを誘起させるのを可能にするが、しかし集密な壊死は、蛍光菌(P. fluorescens)(pHIR11)の場合よりもより緩徐に生じた(データは示さず)。更に内部参照を用いて、Psy 61およびB728a hrp/hrc遺伝子クラスターの同系性(relatedness)を試験するために、B728a hrpA遺伝子を配列決定した。PsyおよびPtoにおいて配列決定されたhrp/hrc遺伝子のhrpAは、Hrp線毛(pilus)の主要サブユニットをコードする(Roineら、1997)が、これは最も保存性が少ない(28%のアミノ酸同一性)(Prestonら、1995)。しかし、61株およびB728a株のhrpA遺伝子は、100%同一であり、このことはこれらの菌株の密接な関係およびそれらのHrp系を更に裏付けている。
【0141】
実施例 2−hrpK および tRNA Leu 間の Hrp Pai における交換可能なエフェクター遺伝子座( EEL )の同定
Pry 61、Psy B728a、およびPto DC3000のHrp Paiの左側の配列分析から、これらの菌株におけるhrpK配列の高い割合の同一性は、hrpK停止コドン後の3ヌクレオチドで突然終結して、その後異なる介在DNA 2.5kb(Psy 61)、7.3kb(Psy B728a)、または5.9kb(Pto DC3000)の後に、tRNALeu、queA、およびtgt配列近傍で回復されることが示された(図2)。この領域のPsy 61株およびB728a株の間の差異は、特に驚異的である。P.シリンゲ(syringae)Hrp Paiのこの領域は、高頻度でこの遺伝子座で交換されると考えられる完全に異なるエフェクタータンパク質遺伝子を含むので(下記表1)、EELと称された。これに関して、(i)B728a EEL中のORF2は、Pph 1302Aにおいて、hrpK(hrpY)のすぐ下流の異なる位置にある、avrPphEの相同体である(Mansfieldら、1994)、(ii)hopPsyA(hrmA)は、いくつかのPsy株においてのみ存在する(HeuおよびHutcheson、1993;Alfanoら、1997)、および(iii)B728a EEL中のORF5は、キサントモナス(Xanthomonas)AvrBsTに類似して、AvrRxvファミリーに特徴的な複数のモチーフを有するタンパク質を予測する(Ciesiolkaら、1999)ことは、注目に値する。ゲノム平均と異なるG+C含量は、水平伝播(horizontally transfer)された遺伝子の顕著な特徴であり、これら3種のEELにおけるORFのG+C含量は、P.シリンゲ(syringae)に関する平均である59%〜61%よりもかなり少ない(Palleroniら、1984)(下記表1)。これらはまた、hrpK(60%)およびqueA(63%〜64%)よりも少ない。Pto DC3000 EELにおけるORFからは、公知のエフェクタータンパク質に類似した産物は予想されないが、T7ポリメラーゼ依存型発現により、ORF1、ORF3、およびORF4について予想されたサイズ範囲内の産物が明らかになった。更にORF1タンパク質は、P.シリンゲ(syringae)Avrタンパク質を分泌するエルウィニア・クリサンセミ(Erwinia chrysanthemi)Hrp系を発現する、大腸菌(E. coli)(pCPP2156)によりhrp依存様式で分泌される(Hamら、1998)。これらのEELにおけるいくつかのORFは、HrpL活性化されたプロモーターを示すHrpボックスの前に位置し(図1)(XiaoおよびHutcheson、1994)、介在Rho独立ターミネーター配列またはプロモーターの欠損は、DC3000のORF1ならびにB728aのORF1およびORF2が、各々のhrpK遺伝子の上流のHrpL活性化されたプロモーターから発現されることを示唆している。
【0142】
これら3種の菌株のEELは、更に挿入配列、トランスポゼース(tranposase)、ファージインテグラーゼ遺伝子、およびプラスミドに相同な配列も含む(下記図2および表1)。Psy B728a ORF5およびORF6のオペロンは、いくつかのavr遺伝子を保持するPphプラスミド内のものに類似した配列(Jacksonら、1999)、およびこの領域内のISエレメントを介してプラスミド組込みを示唆しているプラスミドに典型的に認められる挿入エレメントに相同な配列(SzaboおよびMills、1984)に左側で境を接している。Psy B728a ORF3およびORF4は、病原性大腸菌(E. coli)株によるLEE Paiの水平獲得に関与した配列に対する類似性を示している(Pernaら、1998)。これらのPsy B728a ORFは、Hrpボックスの前になく、エフェクタータンパク質をコードしている可能性はない。
【0143】
a病原型の(pathover)略号は、普遍的avr命名法に関するビビアン(Vivian)およびマンスフィールド(Mansfield)の論文の推奨(1993)に対応する。
【0144】
EELの左側境界は、多くのtRNALeu遺伝子ならびに大腸菌(E. coli)queAおよびtgtキュエオシン(queuosine)生合成遺伝子に類似した配列を含む(予想された産物において約70%のアミノ酸同一性)。EEL配列は、P.シリンゲ(syringae)tRNA配列の3’末端で終結し、これはPaiに典型的である(Hou、1999)。実際に同一のtgt−queA−tRNALeu配列が、蛍光シュードモナス属菌(fluorescent pseudomonad)群でもある緑膿菌(P. aeruginosa)PAO1のゲノムに認められている(www.pseudomonas.com)。しかしPAO1は植物病原体ではなく、この緑膿菌(P. aeruginosa)のtRNALeuは、いずれのIII型分泌系遺伝子にもHrp Paiの他の遺伝子にも連結していない(図2)。従って、これは先祖のシュードモナス(Pseudomonas)ゲノムにおけるHrp Paiの挿入点であることは明らかである。
【0145】
実施例 3−Psy B728a および Pto DC3000 における Hrp Pai の右側に位置した保存性エフェクター遺伝子座( CEL )の同定
DC3000におけるhrpRの右側領域に関する以前の研究は、2個の転写ユニットで構成されたavrE遺伝子座の存在(LorangおよびKeen、1995)、hrpRを越える最初の4種の転写ユニットの5’配列(LorangおよびKeen、1995)、ならびに第二のハルピンをコードするhrpW遺伝子としての第四の転写ユニットの同一性(Charkowskiら、1998)を示した。Pto DC3000におけるhrpRの右側の最初の14個のORFのDNA配列は、この研究において完了して、Psy B728aにおける対応する領域が、部分的に配列決定された(図3)。EEL同様、この領域は、推定エフェクター遺伝子、例えばavrEを含む(LorangおよびKeen、1995)。EELとは異なり、この領域のORFは、hrp/hrc遺伝子の値に近似した平均G+C含量58.0%を有し、この領域は公知の可動性遺伝因子に類似した配列を含まず、これはPsyとPtoの間で保存されていると考えられる(図3)。B728aおよびDC3000において配列決定されたこの領域の比較は、最初の7個のORFが同じに配列され、平均で78%のDNA配列同一性を有することを示す。従ってこの領域には、CELの名称が与えられた。
【0146】
CELの正確な境界は決定されておらず、Hrp PaiのEEL境界において反復される配列は見つかっていない。上流Hrpボックスの存在に基づいて、ORF7およびORF8はCELの一部である可能性がある(図3)。しかし、次のORFの産物が細菌GstAタンパク質ファミリーと相同性を示しており(例えば、204アミノ酸にわたるE. coli GstAとの28%同一性;E=1e−8)(Blattnerら、1997)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ活性は非病原性である蛍光シュードモナス属菌において共通である(Zablotowiczら、1995)ので、ORF1Oを越える領域はCEL内ではないと考えられる。この領域におけるgalP相同体(不完全配列に基づいて、E. coli GalPに対して256アミノ酸にわたる38%の同一性;E=2e−42)(Blattnerら、1997)の存在は、これがCELを越えていることを更に示している。
【0147】
B728aおよびDC3000におけるこの領域のいくつかの他の特徴は注目に値する。(i)低い配列同一性(44%)により識別されるが、hrpRSオペロンの発現に影響を及ぼすステムループ構造を形成できるような3個の逆方向反復配列を含む、1kbの遺伝子間領域を、両株共、hrpRとORF1の間に有する。(ii)ORF1は、E. coilムレイン溶解性トランスグリコシラーゼMltDとほとんど類似している(324個のアミノ酸について38%の同一性;E=4e−56)。(iii)ORF2は、候補シャペロン、E.アミノボーラ(amylovora)DspFと130アミノ酸について42%の同一性を有する(E=9e−24)(Bogdanoveら、1998a;Gaudriaultら、1997)。(iv)ORF5タンパク質は、大腸菌(E. coli)(pCPP2156)によりhrp依存様式で分泌されるが、ΩSprカセットの変異は、タバコでのHR誘起またはトマトの病原性のいずれに対してもほとんど作用しない(Charkowski、未発表)。(v)最後に、この領域の6個のオペロンは、Hrpボックスに先行し(LorangおよびKeen、1995)(図3)、これは公知のP.シリンゲ(syringae)のavr遺伝子の特徴である(Alfanoら、1996)。従って、CELは複数の候補エフェクターを保持する。
【0148】
実施例 4− 病原性における EEL および CEL の役割の研究
DC3000において、hrpKとtRNALeu(EEL)の間の全てのORFがΩSprカセットと交換されるような変異を構築した(図2)。このPto変異体CUCPB5110を、タバコにおいてHRを誘起する能力およびトマトにおいて疾病を引き起こす能力について試験した。この変異体は、HRを誘起する能力および疾病症状を生じる能力を維持していたが、トマトにおいて親株と同じくらい高い集団レベルに到達することはできなかった(図4A)。
【0149】
DC3000において、avrEからORF5(CEL)がΩSprカセットと交換されたような変異を構築した。これは、部分的に特徴付けられかつエフェクターをコードしうるCEL ORFの全てを欠損していた。このPto変異体CUCPB5115は依然としてタバコにおいてHRを誘起したが、組織崩壊は約5時間遅延していた(図4C)。濃度104cfu/mlで浸漬した場合に、この変異体はトマトにおいて全く疾病性状を引き起さず、インプランタでの増殖が大きく低下した(図4B)。しかしこの変異体は、PtoS(感受性)およびPtoR(耐性)リオグランデ(Rio Grande)トマト株に関連した試験において、野生型とは識別不能であるトマトPto R遺伝子に依存したHRを誘起した。ORF2からORP10を保持するプラスミドpCPP3016は、CUCPB5115の疾病症状を引き起こす能力を完全に回復して、トマト葉において増幅する変異体の能力を一部回復した(図4Bおよび4E)。Pto DC3000におけるhrp/hrcクラスターの欠失は、HRおよび病原性の表現型を廃した(Collmerら、2000)。Pto変異体CUCPB5110およびCUCPB5115における大きな欠失がHrp分泌機能を破壊しないことを確認するために、本発明者らは、これらの変異体、DC3000 hrp/hrc欠失変異体および野生型DC3000の、シグナルペプチドを欠損しているβ−ラクタマーゼで構成した細胞質マーカーを保持しながら、培養物中にAvrPtoを産生して分泌する能力を比較した。培養物中に分泌されかつインプランタで宿主細胞へ注入された良く研究されたエフェクタータンパク質であるため、AvrPtoは、この試験の理想的対象を提供する(AlfanoおよびCollmer、1997;van Dijkら、1999)。hrp/hrc欠失クラスター変異体のみが、AvrPto産生および分泌を損なっていた(図5)。
【0150】
前述の研究に基づいて、P.シリンゲ(syringae)hrp/hrc遺伝子は、EEL、hrp/hrc遺伝子クラスター、およびCELの3種の個別の遺伝子座を有するHrp Paiの一部である。EELは、交換可能なエフェクター遺伝子を有して、宿主植物の寄生適合度(parasitic fitness)に対して量的寄与のみを生じている。このhrp/hrc遺伝子座は、Hrp分泌系をコードして、エフェクタータンパク質送達、寄生および病原性に必要である。CELは、Hrp分泌機能に認識できる寄与をもたらさないが、寄生適合度には強力に寄与してトマトにおけるPto病原性には必要である。P.シリンゲ(syringae)のHrp Paiは、動物病原体が持つPaiのいくつかの特性を有し(Hackerら、1997)、これは、tRNA遺伝子座に連結した巨大な(約50kb)染色体領域における多くの毒性関連遺伝子(いくつかは比較的低いG+C含量を有する)の存在および密接に関連した種における対応する遺伝子座の不在を含む。加えて、Hrp PaiのEEL部分は、不安定であり、可動性遺伝因子に関連した多くの配列を含む。
【0151】
EELは、公知のPaiの新たな特徴であり、これは様々な植物宿主とP.シリンゲ(syringae)株の寄生適合度への細かい調節(fine−tuning)に関連していると考えられる。P.シリンゲ(syringae)株の密接な関係株および疎遠な関係株を比較することにより、本発明者らが、この遺伝子座の高い不安定性およびその境界配列の対照的に高い保存性を確立することができた。本発明者らは、PsyおよびPto EELにおいてファージ、挿入配列、およびプラスミドに関連した断片を認め、最近、その他の3種のP.シリンゲ(syringae)株の対応する領域内において挿入配列が報告された(InoueおよびTakikawa、1999)ため、単独のメカニズムでは高い不安定性を説明することができない。Hrp PaiにおけるtRNALeuとhrpK配列の間のEEL局在のメカニズムまたは意義も不明である。Pto DC3000は、そのゲノムの他の場所に位置する(Ronaldら、1992)少なくとも1個の他のエフェクター遺伝子avrPtoを保持し、多くのP.シリンゲ(syringae)avr遺伝子はプラスミド上に位置し(LeachおよびWhite、1996)、EEL ORFは、広範なエフェクター遺伝子(例えば、avrRxvファミリー)と希と考えられるエフェクター遺伝子(例えば、hopPsyA)の混合を表している。EEL ORFのG+C含量は、残りのHrp PaiおよびP.シリンゲ(syringae)ゲノムのそれよりも顕著に低い。Hrp Paiの非EEL部分におけるある種の遺伝子、例えばhrpAは、高度に分岐しているが、これらは高いG+C含量を有して、これらが個別に残りのHrp Paiから水平伝播した証拠はない。EELの(および、他のP.シリンゲ(syringae)avr遺伝子の)ORFの比較的低いG+C含量は、これらの遺伝子が、単にP.シリンゲ(syringae)よりも、病原細菌のより広いプールから水平獲得されたことを示唆している(Kimら、1998)。実際、遺伝子のavrRxvファミリーは、広範な植物および動物病原体において発見されている(Ciesiolkaら、1999)。Pto DC3000 EEL欠失、またはPsy 61におけるhopPsyA(hrmA)の変異(Huangら、1991)の寄生適合度に対する弱い作用は、個々のavr遺伝子の変異の典型であり、エフェクタータンパク質系における冗長性(redundancy)に起因する(LeachおよびWhite、1996)。
【0152】
hrpKおよびCEL ORF1の機能は不明であるが、考察に値する。これらの2種のORFは、hrpおよびhrc両遺伝子を含むオペロンのhrpLおよびhrpR非限定クラスター(delimited cluster)のすぐ外側にあり、これによりHrp Paiの3種の領域が空間的に区別される(図1〜図3)。hrpK変異体は、変動可能なHrp表現型を有し(Mansfieldら、1994;Bozsoら、1999)、Psy B728a hrpK変異体は依然HrpZを分泌しており(Alfano、未発表)、このことはHrpKは、エフェクタータンパク質であり得ることを示唆している。しかしながら、Psy 61およびPto DC3000のHrpKタンパク質は79%の同一性を有し、従って多くのHrp分泌系成分よりもより多く保存されている。hrpKは、Psy B728aおよびPto DC3000において他のエフェクター遺伝子を含むオペロン内にあると考えられることも注目に値する。対照的に、CEL ORF1は、細菌のペプチドグリカン層を通る系の侵入(penetration)を促進することにより、Hrp分泌機能に(弱くまたは過剰に)寄与していると考えられる。このORF1産物は、大腸菌(E. coli)MltDと極めて相同であり、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)遺伝子であるipgFの産物とリゾチーム様ドメインを共有しており(Mushegianら、1996)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)遺伝子は同じくIII型分泌系およびエフェクタータンパク質をコードする遺伝子座の間に位置している(Allaouiら、1993)。PtoおよびS. flexneriにおけるこれらの遺伝子の変異は明らかな表現型を有さず(LorangおよびKeen、1995;Allaouiら、1993)、これはペプチドグリカン加水分解酵素をコードする遺伝子の典型である(DijkstraおよびKeck、1996)。
【0153】
対応するオペロンが個別に破壊されているDC3000変異体においては病原性が保持されているため、CELにおいてavrE−ORF5が欠失したPto変異体CUCPB5115における病原性の喪失は驚きである(LorangおよびKeen、1995;Charkowskiら、1998)。この領域の可能性のある機能およびその構成遺伝子の保存の評価において、avrEは、試験したダイズ栽培品種全てにおいてP.シリンゲ(syringae)pv.グリシネア(glycinea)に無毒性(avirulence)を付与する点および病原性に必要であるE.アミノボーラ(amylovora)の相同体(dspE)を有する点で、Ptoにおいて認められた他のavr遺伝子とは異なることに注意しなければならない(LorangおよびKeen、1995;Bogdanoveら、1998b)。CELは病原性に必要であるが、変異体は依然AvrPtoを分泌しているため、III型エフェクタータンパク質分泌には必須ではない。変異体が、依然として非宿主タバコおよびPtoR耐性トマト株においてHRを誘起して、この領域を欠いているpHIR11はいくつかのAvrタンパク質の移入が可能であると考えられるため、同じく、エフェクタータンパク質の植物細胞へのIII型移入において必須の役割を果たしていないように見える(Gopalanら、1996;Pirhonenら、1996)。分岐している病原型PsyおよびPtoにおけるこの領域の保存、ならびに疾病におけるその重要性は、CEL産物が病原性の共通の必須の様相に重複して関連しうることを示唆している。
【0154】
hrp/hrc遺伝子、CELにおける遺伝子、およびP.シリンゲ(syringae)全ゲノムDNAの類似したG+C含量およびコドン使用は、Hrp PaiがP.シリンゲ(syringae)の進化の初期に獲得されたことを示唆している。しかしEEL領域は、その多くの病原型、品種、および菌株へのP.シリンゲ(syringae)の照射において早期に同様に発生されたが、先に考察した見かけの不安定性は、この遺伝子座における進行中の迅速な進化を示唆している。実際、多くのP.シリンゲ(syringae)avr遺伝子が、それらの遺伝子座とは関わりなく、可動性遺伝子的エレメントと関連している(Kimら、1998)。従って、P.シリンゲ(syringae)におけるHrp媒介性病原性は、分岐する病原型の中で普遍的である遺伝子のセットによって、および例え同じ病原型であっても株間で変動する別のセットによって、集合的に左右されると考えられる。後者は、宿主R遺伝子サーベイランス系を回避しつつ、寄生を促進するための反対の選択圧に対して反応して獲得され、喪失されると考えられる。
【0155】
実施例 5−HopPsyA エフェクターのための III 型シャペロンとしての ShcA の役割
暫定的にshcAと称されるhopPsyA上流のORFは、予想された分子量のタンパク質産物をコードする。P.s.シリンゲ(syringae)61におけるhopPsyA遺伝子の上流のORF(当初ORF1と称される)は、各々、緑膿菌(P. aeruginosa)およびペスト菌(Yersinia pestis)のIII型エフェクター遺伝子に隣接する遺伝子である、exsCおよびORF7と配列同一性を共有している(FrankおよびIglewski、1991;Perryら、1998)。これらのORFはいずれも実験的にシャペロンをコードすることは示されていないが、これらがIII型シャペロンが有することが多い特性を共有することが注目される(Cornellisら、1998)。これらの特性のひとつは、シャペロン遺伝子それ自身の位置である(図1および図6)。シャペロン遺伝子は、シャペロンが相互作用しているエフェクタータンパク質をコードする遺伝子に隣接することが多い。更に、shAも、III型シャペロンの他の共通の特徴を共有している:そのタンパク質産物は比較的小さく(約14kDa)、これは酸性pIを有して、両親媒性α−ヘリックスであると推定されたC末端領域を有する。shcA機能の評価を始めるために、最初にshcAはタンパク質産物をコードするかどうかを決定した。shcAをFLAGエピトープをコードする配列にインフレームで融合した構築体を、PCRを用いて調製した。この構築体pLV26は、推定リボソーム結合部位(RBS)を含むshcAの上流のヌクレオチド配列を含んでいる。DH5αF’IQ(pLV26)培養物を、濃厚培地において増殖して、IPTGにより適当な密度に誘導した。全細胞ライゼートを、SDS−PAGE上で分離して、抗FLAG抗体を用いたイムノブロットにより分析した。pLV26によりコードされたShcA−FLAGを、ベクターRBS由来のShcA−FLAGを生じる構築体と比較することにより、shcAの上流の固有のRBSは、翻訳についてコンピテントである(図7)と結論した。従ってshcA ORFは、タンパク質産物をコードする正統(legitimate)遺伝子である。
【0156】
shcAの細菌−植物相互作用に対する作用を試験するために、shcA変異を、コスミドpHIR11上に保持された最小限のhrp/hrcクラスターにおいて構築した。pHIR11に交換したshcA変異マーカーを有することには、際だった利点がある。主なもののひとつは、pHIR11依存型HRはHopPsyAの植物細胞への送達を必要とするので(Alfanoら、1996;Alfanoら、1997)、HRアッセイ法を、HopPsyAが植物細胞へ移入されているかどうかを決定するためのスクリーニングとして使用できることである。染色体shcA変異体により、他のHopタンパク質は植物細胞の内部へと送達されると考えられる。これらのタンパク質の一部は、R遺伝子に基づく植物サーベイランス系により認識され、HopPsyA送達における何らかの欠損のHRマスキングを開始すると考えられる。shcA中に非極性nptIIカートリッジを含むような、pHIR11誘導体であるpLV10を保持する大腸菌(E. coli)MC4100は、タバコにおいてHRを誘起することができなかった(図8)。このことは、shcAが、HopPsyAの植物細胞への移入に必要であることを示唆している。HopPsyAが培養物へ分泌されたかどうかを決定するために、非病原性蛍光菌(P. fluorescens)55の培養物を増殖した。この細菌は、pHIR11、pCPP2089(III型分泌を欠損しているpHIR11誘導体)、またはpLV1Oのいずれかを保持していた。代表的結果を図8に見ることができる。shcAは、HopPsyAエフェクタータンパク質の培養物中のIII型分泌に必要であったが、pHIR11によりコードされたHrp系により分泌される別のタンパク質であるHrpZ分泌には不要であった。これらの結果は、III型分泌の欠損は、HopPsyAに特異的であり、HopPsyAのシャペロンをコードするshcAと一致することを示唆している。これらの結果から、hopPsyA遺伝子の上流のORFは、shcA(specific hop chaperone for HopPsyA)と命名され、この命名システムは、研究者が原型エルシニア(Yersinia)III型系におけるシャペロンのために使用した命名システムと一致している。
【0157】
実施例 6− 植物において発現された hopPsyA の細胞毒性作用
インプランタにおけるhopPsyA DNAの一過性発現は、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)において細胞死を誘導するが、N.ベンサミアナ(benthamiana)、マメ、またはアラビドプシスにおいては誘導しない。タバコの懸濁細胞中で生成された場合と同様に、HopPsyAがタバコ葉に細胞死を誘導するかどうかを決定するために、hopPsyA遺伝子をアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のT−DNA上に送達する形質転換系を使用した(Rossiら、1993;van den Ackervekenら、1996)。この送達系は、植物葉全体の一過性の形質転換のための微粒子銃よりも、より良くはたらく。これらの実験のために、ベクターpTA7002をロックフェラー(Rockefeller)大学のナム−ハイ・チュア(Nam−Hai Chua)氏とその同僚のご厚意により入手し、使用した。このベクターの独自の特性は、グルココルチコイド受容体の調節メカニズムを用いた誘導可能な発現系を含むことである(Picardら、1988;AoyamaおよびChua、1997;McNellisら、1998)。pTA7002は、GAL4のDNA結合ドメイン、ヘルペスウイルスタンパク質VP16のトランス活性化ドメイン、およびラットのグルココルチコイド受容体の受容体ドメインからなるキメラ転写因子をコードする。更にこのベクターには、複数のクローニング部位の上流のGAL4上流活性化配列(UAS)を含むプロモーターも含まれる。従ってGAL4−UASを含むプロモーターの下流にクローニングされた遺伝子は、グルココルチコイドにより誘導されるが、これについては合成グルココルチコイドであるデキサメタゾン(DEX)が市販されている。hopPsyAを、GAL4−UASの下流にPCRクローニングした。いくつかの異なる被験植物の植物葉を、pTA7002::hopPsyAを保持するアグロバクテリウム(Argrobacterium)に浸漬して、48時間後、これらの植物にDEXを噴霧した。N.タバカム(tabacum)のみが、hopPsyAのDEX誘導性一過性発現に反応し、HRを誘起した(図13A)。対照的に、N.ベンサミアナ(benthamiana)は、DEX誘導後に明らかな反応を生じなかった(図13B)。更に、マメ科植物(Phaseolus vulgaris L.「Eagle」)(データは示さず)およびシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)生態型Co1−1(図13)におけるhopPsyAの一過性発現は、HRを生じなかった。これらの結果は、マメ科cv.イーグル(Eagle)、アラビドプシスCo1−1、およびN.ベンサミアナ(benthamiana)は、HopPsyAを認識することができる抵抗タンパク質を欠いていることを示唆している。HopPsyAは通常マメの病原体であるP.s.シリンゲ(syringae)61において産生されるので、マメにおいて一過的に発現されたHopPsyAへの明らかな防御反応の欠如が予想された。しかしHopPsyAの一過性発現がどのようにしてアラビドプシスに作用するかについては若干不明点がある。しかし、アラビドプシス病原体であるP.s.トマト(tomato)DC3000は、プローブとしてhopPsyAを用いたDNAゲルブロットに基づいてhopPsyA相同体を有すると考えられるので、HopPsyAは、アラビドプシスのRタンパク質によっては認識されない(すなわち、HRは産生されない)ということが予想された(Alfanoら、1997)。従って、これらの植物(マメ、アラビドプシス、およびN.benthamiana)は、植物病原性におけるHopPsyAの細菌の意図した役割の探索に理想的な植物である。
【0158】
P.s.pv.シリンゲ(syringae)61は、Hrp(III型)タンパク質分泌系により、培養物中にHopPsyAを分泌する。P.シリンゲ(syringae)Avrタンパク質AvrBおよびAvrPtoは、大腸菌(E. coli)において発現されたコスミドpCPP2156上に保持された機能性E.クリランセミ(chrysanthemi)hrpクラスターによりコードされたIII型分泌系により分泌されることがわかっているので(Hamら、1998)、P.s.シリンゲ(syringae)61に保持された固有のHrp系による直接の培養物中のHopPsyA分泌の検出を試験した。hrp脱抑制しているフルクトース最小培地において22℃で増殖させたP.s.シリンゲ(syringae)61培養物を、遠心分離により細胞結合した画分と上清画分に分離した。上清画分中に存在するタンパク質を、TCA沈降により濃縮して、細胞結合試料および上清試料を、SDS−PAGEにより分解して、抗HopPsyA抗体を用いたイムノブロットにより分析した。野生型P.s.シリンゲ(syringae)61由来の上清画分からのHopPsyAシグナルを検出した(図14)。重要なことに、HopPsyAは、Hrp分泌を欠損しているP.s.シリンゲ(syringae)61−2089から得た上清画分には検出されず、これは、上清中のHopPsyAシグナルは特異的にIII型タンパク質分泌に起因することを示唆している(図14)。第二の対照として、両菌株は、N末端シグナルペプチドを欠損している成熟型β−ラクタマーゼをコードして、細胞溶解マーカーを提供しているpCPP2318を含んだ。β−ラクタマーゼは、これらの試料の細胞結合画分においてのみ検出され、このことは明確に、細胞溶解が顕著なレベルで生じないことを示している(図14)。HopPsyAはIII型分泌系により培養物中に分泌されるという事実、およびHopPsyAの無毒性活性は、それが植物細胞において発現された場合にのみ生じるという事実は、HopPsyAはIII型経路により植物細胞へ送達されることを強力に裏付けている。
【0159】
HopPsyAは、マメにおけるP.s.シリンゲ(syringae)61の生育に、例え少量であっても検出可能な経路で寄与している。マメ組織におけるP.s.シリンゲ(syringae)61の増幅に対するHopPsyA変異の作用が報告されている(Huangら、1991)。これらのデータは、HopPsyAは、P.s.シリンゲ(syringae)61をマメにおいて増幅する能力にはほとんど寄与しないことを本質的に示している。P.s.シリンゲ(syringae)61 hopPsyA変異体は、マメの葉においては、野生株と同様には増殖しなかった(図15)。これらの結果は以前に報告されたデータと全く対立するので、このことは予想外であった。この矛盾に関するひとつの理論的説明は、先の報告は主に、そのインプランタでの生育におけるhrp変異体が示している主要表現型に焦点を当てており、HopPsyAがIII型で分泌されたタンパク質であるという発見以前のものであるということである。従って初期の実験では、HopPsyAがマメ組織におけるP.s.シリンゲ(syringae)61の増殖に対して有すると思われる、より何回な作用を見落とした可能性がある(Huangら、1991)。本明細書において示されたデータは、HopPsyAがP.s.シリンゲ(syringae)の病原性に寄与することを裏付け、P.シリンゲ(syringae)由来のHopの大部分は病原性にわずかに寄与するという仮説に一致している。様々なavr遺伝子およびhop遺伝子に欠損がある変異体についての強力な病原性表現型の欠如は、avr/hop遺伝子の重複性の可能性または植物の共進化を通じてのいずれかひとつのHopタンパク質への依存性の低下に起因しうる。実際、植物細胞へ送達される植物病原体のIII型で送達されたタンパク質は、それ自身が毒性タンパク質であることはないが、むしろ発病の進行に重要である植物の反応を抑制することができる(Jakobekら、1993)。これらの反応は、防御反応または植物内のそのままの状態(例えば、細胞周期)を維持するというような、より一般的な過程でありうる。
【0160】
実施例 7−HopPsyA の分子相互作用
HopPsyAは、酵母ツーハイブリッド系においてアラビドプシスMad2タンパク質と相互作用する。HopPsyAの病原性標的を決定するために、酵母ツーハイブリッド系を、アラビドプシスから作製したcDNAライブラリーと共に使用した(FieldsおよびSong、1989;FinleyおよびBrent、1994)。この酵母ツーハイブリッド系において、関心のあるタンパク質(「餌(bait)」)とLexA DNA結合ドメインの間の融合を、酵母試験菌株に形質転換した。転写活性化ドメインへの融合を形成するベクターにおいて、cDNA発現ライブラリーを構築した。このライブラリーを、ひとまとめに試験菌株へと形質転換して、「餌」のパートナーをコードするクローンを、転写活性化ドメインをDNA結合ドメインに隣接させ、その結果LEU2選択マーカー遺伝子の転写を開始するそれらの能力によって選択した。LEU2マーカーを活性化する候補の第二ラウンドのスクリーニングは、同じくlacZレポーター遺伝子を活性化するそれらの能力に頼った。餌構築体は、完全長HopPsyA−LexA融合体、LexAに融合したHopPsyAのカルボキシ末端の半分、およびLexAに融合したHopPsyAのアミノ末端の半分に相当した酵母ベクターpEG2O2において、hopPsyAにより最初に作製して、これらの構築体を各々pLV23、pLV24、およびpLV25と称した。しかし、pLV23は酵母にとって致死性であり、またpLV25は、それ自身において(すなわち、活性化ドメイン存在せず)比較的多量のlacZレポーター遺伝子を活性化した。従って、pLV23およびpLV25は両方とも、酵母ツーハイブリッド系によるタンパク質相互作用物(interactor)のスクリーニングには使用されなかった。lexAに融合したhopPsyAの3’部位を含むpLV24は、lacZレポーター遺伝子を自己活性化せず、またpJK101を用いたlacZ抑制アッセイ法に基づいて、pLV24により作出された「HopPsyA−LexA融合体」が核に局在すると考えられるため、pLV24は酵母ツーハイブリッド系における餌として使用するのに適当な構築体であることが証明された。加えて、このベクターを有する酵母培養物において抗HopPsyA抗体によるイムノブロットを行うことにより、pLV24がHopPsyAに相当する適当なサイズのタンパク質を産出することが確認された。
【0161】
酵母ツーハイブリッドベクターpJG4−5中のpLV24およびアラビドプシスcDNAライブラリーを用いて一次スクリーニングを行った。3種の個別のスクリーニングから、HopPsyAとの数百種の推定相互作用物が同定され、各々は異なる程度まで2種のレポーター系を活性化した。これらの推定陽性酵母株を再スクリーニングし、判定基準をガラクトース存在下でlacZレポーターおよびLEU2遺伝子の両方を強力に誘導した相互作用物に限定した場合、HopPsyAのC末端半分と相互作用するタンパク質をコードしたpJG4−5誘導体を含むと考えられる約50種の酵母株が同定された。プローブとして選択されたpJG4−5誘導体からPCR増幅された挿入物を用いたDNAゲルブロットは、これらの推定陽性の各々をグループ化することを可能にした。強力なHopPsyA相互作用物をコードするpJG4−5誘導体のおよそ50%は、同じグループに属した。この挿入物を含むpJG4−5誘導体であるpLV116を配列決定した。pLV116内に含まれたこの挿入物の推定アミノ酸配列は、酵母、ヒト、カエル、およびトウモロコシにおいて発見されたMad2相同体(mitotic arrest deficient)と高いアミノ酸同一性を共有していた。更に他のMad2タンパク質とのアミノ酸比較に基づいて、pLV116は、完全長mad2 mRNAに相当するcDNA挿入物を含んでいる。下記表2は、現在データベースにある全てのMad2相同体とのアミノ酸同一性の割合(%)を示している。
【0162】
*比較は、Genbankに存在する配列を用いて、DNAStar社(Madison、WI)においてMEGALIGNプログラムを用いて行った。略号およびアクセッション番号は以下の通りである:
アラビドプシス:シロイヌナズナ(A. thaliana)Co1−0(本試験);トウモロコシ:トウモロコシ(Zea mays)(AAD30555);ヒト:ヒト(Homo sapiens)(NP_002349);マウス:マウス(Mus musculus)(AAD09238);カエル:アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(AAB41527);分裂酵母:シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(AAB68597);出芽酵母:サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(P40958)。
【0163】
予想外のことだが、アラビドプシスMad2タンパク質の配列は、このデータベースにおいて説明された唯一の植物Mad2相同体であるトウモロコシのMad2により近似していた。トウモロコシMad2は、アラビドプシスMad2と約82%の同一性を有する。図16A−Bは、ロイシン欠乏プレートおよびX−Ga1を含むプレート上の、pLV24およびpJG4−5、pEG2O2およびpLV116、またはpLV24およびpLV116のいずれかを含む酵母株を示し、これはHopPsyAおよびMad2の両方が存在する場合にのみ、β−ガラクトシダーゼおよびLEU2活性が誘導されることを示唆している。mad2を生じるcDNAライブラリーは多くの様々な酵母ツーハイブリッドスクリーニングに使用され、mad2クローンはそれまでは単離されていないことに注意することは重要である。従って図16A−Bに示された結果は、cDNAライブラリーの性質上作出された人工物(artifact)を説明していないと考えられる。更に様々なMad2相同体が、特定のタンパク質と相互作用することが公知であり、これらの相同体のひとつが、餌として紡錘体チェックポイントのタンパク質を用いた酵母ツーハイブリッドスクリーニングにより単離された(Kimら、1998)。これは二つの理由により再保証されている。第一に他のMad2相同体は、非特異的に「付着性」タンパク質であるようには見えない。第二に、これらは、タンパク質−タンパク質相互作用により細胞過程を変調すると考えられる。
【0164】
Mad2は、真核生物の細胞周期の重要な段階である、有糸分裂時の分裂中期から後期への移行を制御するレギュレーターであるため、前述の結果は非常に有望なものである。真核生物の細胞周期は、細胞周期の他の相が開始され得る前のより早い事象の完了に左右される。例えば有糸分裂が生じる前に、DNA複製は完了する。細胞周期におけるこれらの依存の一部は、変異により軽減することができ、細胞周期が正常に進行していることを確認するチェックポイントを表している(HartwellおよびWeinert、1989)。ホイト(Hoyt)らならびにリー(Li)およびミュレー(Murray)の個別の画期的研究において、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)において適所に、染色体分離に必要な紡錘体集合が完了したかどうかをモニターするチェックポイントが存在することを発見した(Hoytら、1991;LiおよびMurray、1991)。このいわゆる紡錘体チェックポイントは、微小管重合を妨害する薬物を含有する培地に播種された野生型酵母細胞の有糸分裂は停止したが、ある種の変異体は分裂後期へと進行したことが観察された時に発見された。これらの最初の報告により、紡錘体チェックポイントに関連した6種の異なる必須でない遺伝子が同定された:ベンズイミダゾールにより阻害されない出芽(budding uninhibited by benzimidazole)についてbub1−3、および有糸分裂停止欠損について(mitotic arrest deficient)mad1−3と命名した。これらの遺伝子の変異は、紡錘体集合の異常を無視して、とにかく有糸分裂を試みる。この年以降数年間に、紡錘体チェックポイントが他の真核生物において保存されたことが示され、紡錘体チェックポイントで生じていることのより良い像を生じるという多くの利点が生じた(Glotzer、1996;RudnerおよびMurray、1996)。
【0165】
分裂中期から後期への移行(更には他の細胞周期の移行)に必要とされるのは、ユビキチンタンパク質分解経路である。分裂後期への侵入を阻害するタンパク質(例えば、S. cerevisiaeのPds1)は、後期促進複合体(APC)によりユビキチン経路による分解のためにタグを付けられる(Kingら、1996)。これらのタンパク質が26Sプロテオソームにより分裂された時のみ、細胞は、後期へと移行する。APCはどのようにして分解のための後期阻害因子をタグ付けする時を知るかは十分解明されてはいないが、これにはいくつかの重要な利点がある(Elledge、1996;Elledge、1998;Hardwick、1998)。Mad2タンパク質およびBub1タンパク質リン酸化酵素は、これらの領域が微小管に付着しない場合には動原体に結合することが示されている(Chenら、1996;LiおよびBenezra、1996;TaylorおよびMcKeon、1997;Yuら、1999)。従ってこれらのタンパク質は、全ての染色体は分離の準備ができた紡錘糸に結合していないというシグナルを若干中継すると考えられる。Mad1は、紡錘体チェックポイントが活性化された時に過剰リン酸化を生じるようなリンタンパク質をコードしており、Mad1の過剰リン酸化は、機能的Bub1、Bub3、およびMad2タンパク質に依存している(HardwickおよびMurray、1995)。このチェックポイントにおいて必要な別のタンパク質はMps1であり、これは、BubおよびMadタンパク質全てに依存した方法で過剰発現された場合に、紡錘体チェックポイントを活性化するタンパク質リン酸化酵素であり、このことはMps1は紡錘体チェックポイントにおいて非常に早期に作用することを示している(Hardwickら、1996)。
【0166】
研究された様々なMad2相同体のデータに基づいて、Mad2は紡錘体チェックポイントにおいて中心的役割を有すると考えられる。Mad2のアフリカツメガエル(Xenopus)卵抽出物への添加は、APCのユビキチンリガーゼ活性の阻害による、サイクリンB分解の阻害および有糸分裂停止を生じる(Liら、1997)。分裂酵母由来のMad2の過剰発現は、紡錘体チェックポイントの活性化により、有糸分裂停止を生じる(Heら、1997)。抗Mad2抗体の哺乳類細胞培養物への導入が、微小管作用物(microtubule drug)の非存在下で分裂後期への早期移行を生じるがゆえに、これはMad2が正常な細胞周期に関連していることを示している。いくつかの報告が、様々なMad2相同体がAPCと直接相互作用することを示唆している(Liら、1997;Fangら、1998;Kallioら、1998)。サッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)におけるCdc20と称される別のタンパク質は、APCに結合し、特定の細胞周期期間のAPC活性化に必要であり、Mad2がこれに結合する(Hwangら、1998;Kimら、1998;Lorcaら、1998;WassmannおよびBenezra、1998)。これらの興味深い知見の全てから新たに出現する像は、Mad2がCdc20へ結合することにより、APCの阻害因子として作用しうることを示す。Mad2が存在しない場合、Cdc20はAPCに結合し、これがAPCを活性化し、分裂後期への移行の阻害因子を分解する。図12は、Mad2の関与に焦点を当てかつサッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)由来の紡錘体チェックポイントタンパク質と称するものを用いた紡錘体チェックポイントのまとめを示している。
【0167】
植物の紡錘体チェックポイント:細菌病原体の可能性のある標的
動物由来の多くの細胞周期のタンパク質は、植物の場合と相同である(Mironovら、1999)。実際、紡錘体チェックポイントの存在することの早期の手掛かりのひとつは、最初に植物において成された。注目される知見は、それらの紡錘体への付着において遅れをとった染色体は、分裂後期への移行において遅延を生じるということである(BajerおよびMole−Bajer、1956)。更にmad2が、最近トウモロコシから単離され、有糸分裂下にある植物細胞におけるMad2タンパク質の局在は、他の系におけるMad2の局在と一致している(Yuら、1999)。公表された会議の報告に基づいて、アラビドプシス由来のAPC成分をコードする遺伝子が、最近クローニングされた(Inzeら、1999)。従って植物において機能的紡錘体チェックポイントが保存されていると思われる。先に示したデータは、酵母ツーハイブリッド系において、P.シリンゲ(syringae)HopPsyAタンパク質が、アラビドプシスMad2タンパク質と相互作用することを示している。
【0168】
細菌性植物病原体の病原性の戦略は、植物の細胞周期を変更することが可能である。最近デュアン(Duan)らは、X.シトリ(citri)由来のavr遺伝子のavrBs3ファミリーの一員であるpthAが柑橘類で発現され、細胞肥大(enlargement)および細胞分裂を惹起し、これが植物細胞周期に関連していることを報告した(Duanら、1999)。HopPsyAがMad2を標的とするならば、病原性に対する少なくとも2種の可能性のある利点が想定される。成熟葉の植物細胞は静止期であるので、これらの細胞へのHopPsyA送達のひとつの利点は、これがそれとMad2との相互作用を通じて細胞分裂を引き起し得ることである。これは、抗Mad2抗体は、哺乳類細胞において分裂後期の早期開始を引き起こすという知見と一致している(Gorbskyら、1998)。病原体に近いより多くの植物細胞が、アポプラスト(apoplast)において利用可能な栄養素を増加し得る。第二の潜在的利点は、HopPsyAが若い葉において活発に分裂している植物細胞へ送達される場合に生じる。HopPsyAのこれらの葉の植物細胞への送達は、それとMad2との相互作用を通じて、紡錘体チェックポイントを狂わせることがある。これらの細胞は、それらの染色体分離をより多く誤る傾向があり、一部の細胞において、これは死を生じ、細胞内容物は究極的にはアポプラストへ漏出し、病原体へ栄養素を提供する。
【0169】
実施例 8− 酵母において発現された HopPtoA および HopPsyA の細胞毒性作用
hopPtoA(配列番号:6)およびhopPsyA(配列番号:35)を両方とも最初にpFLAG−GTC(Kodak社)へクローニングし、FLAGエピトープとのインフレーム融合体を作出したが、これは抗FLAGモノクローナル抗体によるタンパク質産生のモニタリングを可能にした。次にFLAGタグ付き遺伝子を、酵母シャトルベクターp415GAL1においてGAL1プロモーターの制御下でクローニングした(Mumbergら、1994)。これらのサッカロマイセス・セレビシエ(Saceharomyces cerevisiae)の調節可能なプロモーターは、転写活性および異種発現の比較を可能にした。この組換えプラスミドをウラシル栄養要求酵母FY833/4株へ形質転換し、プラスミド上のURA3遺伝子の存在に基づいて、SC−Ura(ウラシル欠乏合成完全培地)上での増殖を選択した。次に形質転換体を、2%ガラクトース(これはHopPsyAおよびHopPtoAの発現を誘導する)または2%グルコースのいずれかを含有するSC−Ura培地プレート上に画線した。2%ガラクトースを補充したプレート上では増殖が見られなかった。この作用は反復試験において観察され、空ベクター対照において、p415GAL1に同様にクローニングした4種の別のエフェクターにおいて、またはガラクトースの代わりにラフィノースを使用した場合には観察されなかった。FLAGタグ付きの無毒Avrタンパク質を用いて、予想されたように、これらの遺伝子が、ガラクトース含有プレート上において示差的に発現されることを確認した。重要なことに、HopPsyAによる毒性作用は、コード遺伝子が、p415GAL1よりも実質的に低レベルで外来遺伝子を発現しているp416GALSへ再クローニングされた場合に認められた。
【0170】
参考文献
本明細書で引用されたかまたはさもなければ以下に列記した参考文献の各々は、明白に、その全体が本明細書に参照として組入れられている。
【0171】
本発明は例証を目的として詳述されているが、このような詳細は単に例証のためであり、添付の「特許請求の範囲」に定義された本発明の精神および範囲から逸脱しない限りは、当業者により変更を行うことができることが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【図1】Psy 61、Psy B728a、およびPto DC3000のHrp Pai内のhrp/hrc遺伝子の保存された配置を説明する略図である。B728aおよびDC3000において配列決定された領域を、61株配列の下側に線で示している。公知の調節遺伝子には影を付けている。矢印は転写の方向を示し、小さい四角はHrpボックスの存在を意味する。三角は、B728a hrp/hrc領域内のファージ遺伝子を含む3.6kb挿入物を意味する。
【図2】Pto DC3000、Psy B728a、およびPsy 61のEEL、緑膿菌(P. aeruginosa)(Pa)のtgt−queA−tRNALeu遺伝子座、ならびにEEL境界配列を示している。図2Aは、それらのhrpK配列と整列化した3種のP.シリンゲ(syringae)株のEELの略図、およびPa PA01中のtgt−queA−tRNALeu遺伝子座との比較である。矢印は転写の方向を示し、小さい四角はHrpボックスの存在を意味する。影付き領域は保存されており、斜線領域は可動性遺伝因子を意味して、白い四角は互いに完全に似ていない遺伝子を意味する。図2Bは、tRNALeuとの境界における、DC3000(DC)(配列番号:85)、B728a(B7)(配列番号:86)、および61(配列番号:87)のEELの配列のアラインメントであり、保存性ヌクレオチドを上部の四角に示した。図2Cは、hrpKとの境界の、DC3000(DC)(配列番号:88)、B728a(B7)(配列番号:89)、および61(配列番号:90)のEELの配列のアラインメントであり、保存性ヌクレオチドを上部の四角に示した。
【図3】P.シリンゲ(syringae)のHrp Pai CELの略図である。Pto DC3000 CELを、下側に並置された配列決定されたPsy B728aの対応する断片と共に示した。コード領域における配列決定された断片のヌクレオチド同一性は、72%〜83%の範囲内であった。矢印は転写方向を示し、小さい四角はHrpボックスの存在を意味する。
【図4】EEL(CUCPB5110)およびCEL(CUCPB5115)欠失を保持するPto変異体の植物相互作用の表現型を示す。図14Aは、DC3000およびCUCPB5110のトマトの生育を示すグラフである(平均およびSD)。図14Bは、DC3000、CUCPB5115、およびCUCPB5115(pCPP3016)のトマトの生育を示すグラフである(平均およびSD)。図14Cは、107cfu/mlのDC3000およびCUCPB5115を用いた浸潤の24時間後のタバコ葉組織中のHR崩壊を示す画像である。図14Dは、104cfu/mlのCUCPB5115の接種の4日後のトマト葉における疾病症状の不在を示す画像である。図14Eは、104cfu/mlのCUCPB5115(pCPP3O16)の接種の4日後のトマト葉における野生型に典型的疾病症状を示す画像である。
【図5】Hrp Paiの3種の主要領域に影響する欠失を含むPto DC3000誘導体によるAvrPto分泌を示すイムノブロット分析の画像である。細菌を、Hrp誘導最小培地(pH5.5)において22℃でOD600が0.35となるまで増殖させ、次に細胞結合(C)画分および上清(S)画分へと遠心分離により分離した。次に上清画分を負荷前に細胞結合画分に対して3倍濃縮した以外は、説明されたように、タンパク質を、SDS−PAGEにより分解し、ブロットして、AvrPtoおよびβ−ラクタマーゼに対する抗体で免疫染色した(ManceauおよびHarvais、1997)。Pto DC3000、CUCPB5115(CEL欠失)、CUCPB5114(hrp/hrc欠失)、およびCUCPB5110(EEL欠失)は全て、pCPP2318を保持し、これは細胞質マーカーとしてシグナルペプチドを伴わずにβ−ラクタマーゼを発現している。
【図6】図1と比べ拡大した、Psy61のHrp PaiのEELにおけるshcAおよびhopPsyAオペロンの組織を示している。図6Aにおいて、shcAおよびhopPsyAは、白い四角として示されている。Hrp Paiの境界は、灰色の四角として示されたtRNALeuおよびqueA遺伝子である。5’側切断されたhrpK遺伝子は、ハッチ付きの四角で示されている。矢印は転写の予想される方向を示して、黒い四角は、shcAの上流の推定HrpL依存型プロモーターの存在を意味する。図6Bは、Psy 61へshcA ORFマーカー交換した欠失変異の構造を概略的に示している。黒いバーは、追加された制限酵素部位にそって増幅された領域を示して、各々は図6Aに示した対応するDNA領域と整列化されている。斜線付きの四角は、機能的非極性shcA Psy 61変異体の作出において使用された転写および翻訳のターミネーターが欠如したnptIIカセットを示している。EcoRI、E;EcoRV、V;XbaI、X;およびXhoI、Xh。
【図7】shcAがタンパク質産物をコードすることを示すイムノブロット画像である。pLV9は、shcA ORFがクローニングされてFLAGエピトープに融合され、翻訳がベクターリボソーム結合部位(RBS)により指示されるような、pFLAG−CTCの誘導体である。pLV26は、shcAコード領域およびその本来のRBS部位を含む増幅産物を含む。pFLAG−CTC(対照)、pLV9、またはpLV26のいずれかを保持する大腸菌(E. coli)DH5α培養物をOD600が0.8になるまで増殖させ、次に100μlアリコートを採取し、遠心分離し、SDS−PAGE緩衝液中に再懸濁し、その後SDS−PAGEおよび抗FLAG抗体およびアルカリホスファターゼに結合した二次抗体によるイムノブロット分析に供した。
【図8】Psy 61 shcA変異体UNLV102がHopPsyAおよびshcAを分泌せず、トランスに提供されたshcAがこの欠損を補完することを示すイムノブロット画像である。Psy 61培養物を、hrp脱抑制培地において22℃で増殖させ、細胞結合(C)画分および上清(S)画分に分離した。細胞結合画分を、最初の培養物体積に対して13.4倍に濃縮して、上清画分を100倍に濃縮した。実験手法の項に記したように、これらの試料を、SDS−PAGEおよびイムノブロット分析に供して、HopPsyAおよびβ−ラクタマーゼ(Bla)を、抗HopPsyA抗体または抗β−ラクタマーゼ抗体のいずれかで検出し、その後アルカリホスファターゼに結合した二次抗体により検出した。イムノブロットの画像を、BioRad Gel Doc 2000 UV蛍光ゲルドキュメンテーションシステムを付属のQuantity 1ソフトウェアと共に用いて捕捉した。
【図9】shcAはHopPsyAのIII型分泌に必要とされるが、HrpZを分泌しないことを示すイムノブロット画像である。蛍光菌(P.fluorescens)55培養物を、hrp脱抑制培地において増殖させて、細胞結合(C)画分および上清(S)画分へ分離した。細胞結合画分を、最初の培養物体積に対して13.4倍に濃縮して、上清画分を100倍に濃縮した。実験手法の項に記したように、これらの試料を、SDS−PAGEおよびイムノブロット分析に供して、HopPsyAおよびHrpZを、抗HopPsyA抗体または抗HrpZ抗体のいずれかで検出し、その後アルカリホスファターゼに結合した二次抗体により検出した。イムノブロットの画像は、BioRad Gel Doc 2000 UV蛍光ゲルドキュメンテーションシステムを付属のQuantity 1ソフトウェアと共に用いて捕捉した。
【図10】機能的非極性shcA変異を含むpHIR11誘導体を保持する蛍光菌(P. fluorescens)55は、HopPsyAを植物細胞へ移入する能力が損なわれていることを示す、一連のタバコ葉の4枚の画像である。蛍光菌(P. fluorescens)55培養物を、キング(King)Bにおいて一晩増殖させ、5mM MES(pH5.6)中でOD600が1.0となるよう懸濁して、タバコ葉パネルに浸漬させた。pHIR11誘導性HRは、植物細胞内部のHopPsyAの移入に起因しているので、低下したHRは、HopPsyAが典型的HRを誘導するのに十分な位良好には送達されないことを示している。葉パネルを、24時間後に入射光線により写真撮影した。
【図11】ShcAはHopPsyAへ結合することを示すイムノブロット画像である。pLN1(HopPsyA)またはpLN2(ShcA−FLAG、HopPsyA)を保持するPsy 61 shcA変異体UNLV102の超音波処理した培養物(超音波処理)から得た可溶性タンパク質試料を、抗FLAG M2親和性ゲル(ゲル)と混合した。このゲルを、TBS緩衝液で洗浄し(洗浄)、SDS−PAGE緩衝液と混合し、超音波処理試料および洗浄試料と共に、SDS−PAGEおよびイムノブロット分析に供した。実験手法に記したように、HopPsyAおよびShcA−FLAGを、抗HopPsyA抗体または抗FLAG抗体で検出し、その後のアルカリホスファターゼに結合した二次抗体により検出した。
【図12】サッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)における紡錘体チェックポイントを説明する概略図である。紡錘体チェックポイントは、微小管に異常がある場合に、動原体から放出されたシグナルにより活性化される。このシグナルは、様々な方法で反応するような紡錘体チェックポイント成分により若干受け取られる。Mad2は、Cdc2Oに、そのユビキチンリガーゼ活性を阻害するAPCで結合すると考えられる。Mad2が存在しない(および紡錘体に損傷を及ぼしうる)場合、APCは活性があり、これはユビキチンタンパク質分解経路による分解のためのPds1および他の分裂後期阻害因子をマークし、分裂後期を保証する。
【図13】トランスジェニック性に発現されたHopPsyAの、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)cv.キサンチ(Xanthi)、ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)、およびシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に対する作用を示している。図13Aは、pTA7002::hopPsyAを有するまたは有さない、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)GV3101に浸漬されたN.タバカム(tabacum)cv.キサンチ(Xanthi)およびN.ベンサミアナ(benthamiana)の葉を示している。図13Bは、A.ツメファシエンス(tumefaciens)+/− pTA7002::hopPsyAで浸漬されたシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Co1−1を示している。図13A−Bに示した全ての植物について、アグロバクテリウム(Agrobacterium)浸漬の48時間後に、植物にグルココルチコイドであるデキサメタゾン(DEX)を噴霧した。画像は、DEX処理後24時間で撮影した。A.t.=アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens);pA=pTA7002::hopPsyA。
【図14】Psy 61(pCPP2318)またはhrp変異体、Psy 61−2089(pCPP2318)の培養物中のHopPsyAおよびβ−ラクタマーゼの分布を示すSDS−PAGEの画像である。細菌培養物をhrp脱抑制培地において22℃で増殖させて、細胞結合(C)画分および上清(S)画分へ分離した。細胞結合画分を、最初の培養物体積に対して13.4倍に濃縮して、上清画分は100倍に濃縮した。これらの試料を、SDS−PAGEおよびイムノブロット分析に供して、HopPsyAおよびβ−ラクタマーゼを、抗HopPsyA抗体または抗β−ラクタマーゼ抗体のいずれかで検出し、その後アルカリホスファターゼに結合した二次抗体により検出した。Pss野生型=シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)61(pCPP2318);Pss hrcC=シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)61−2089(pCPP2318)。
【図15】マメの葉における、野生型シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)およびhopPsyA変異体の増加する能力を示すグラフである。値は、2回の独立した接種における植物粉砕葉からの平均プレート数を示している。野生型(●)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)61;hopPsyA変異体(○)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)61−2070。
【図16】酵母ツーハイブリッドアッセイ法におけるHopPsyAおよびMad2の相互作用を示している。図16Aは、グルコース(Glc)またはガラクトース(Gal)のいずれかによるβ−ガラクトシダーゼ活性についてチェックするための、pLV24(pEG2O2::’hopPsyA)およびpJG4−5(魚(fish)ベクター)、pLV24およびpLV116(pJG4−5::mad2)、またはpEG202(餌ベクター)およびpLV116のいずれかを含む酵母EGY48株の、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(Xgal)を含有する培地における培養物を示す。β−ガラクトシダーゼ活性は、HopPsyAおよびMad2の両方の存在下においてのみ示された。図16Bは、同じ酵母株のGlcまたはGalのいずれかの糖を有する最小培地ロイシン欠乏プレートにおける培養物を示している。1=EGY48(pLV24、pJG4−5);2=EGY48(pLV24、pLV116);3=EGY48(pEG2O2、pLV116)。
本出願は、2000年4月3日に出願された米国特許仮出願第60/194,160号、2000年8月11日に出願された米国特許仮出願第60/224,604号、および2000年11月17日に出願された米国特許仮出願第60/249,548号の恩典を主張しており、これらは全体が本明細書に参照として組入れられている。
【0002】
本研究は、国立科学基金(National Science Foundation)の基金番号第MCB−9631530号および米国農業省(USDA)の国立研究機関競合助成金プログラム(National Research Initiative Competitive Grants Program)の基金番号第98−35303−4488号の支援を受けている。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【0003】
発明の分野
本発明は、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)の保存性エフェクター遺伝子座および交換可能なエフェクター遺伝子座のオープンリーディングフレームに相当する単離されたDNA分子、それらによりコードされた単離されたタンパク質、およびそれらの様々な用途に関する。
【0004】
発明の背景
植物の病原菌であるシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)は、その多様性および植物との宿主特異的相互作用が注目される(HiranoおよびUpper、1990)。特定の菌株は、様々な植物種中のその宿主範囲に基づいて少なくとも40種の病原型のひとつに割当てられており、次に宿主の栽培品種中の示差的相互作用に基づいた品種に更に割当てられている。宿主植物において、細菌は典型的には、葉の細胞間隙内で高集団レベルまで増殖して、次に壊死的病変を形成する。非宿主植物または品種特異的耐性を伴う宿主植物においては、細菌は、病原体と接触し、植物細胞の過敏感反応(HR)、迅速な防御に関連したプログラムされた死を誘起する(AlfanoおよびCollmer、1997)。植物においてこれらの反応のいずれかを生じる能力は、III型タンパク質分泌経路をコードするhrp(HRおよびpathogenicity)遺伝子およびhrc(HRおよびconserved)遺伝子により、ならびにこの経路により植物細胞に注入されたエフェクタータンパク質をコードするavr(avirulencece)遺伝子およびhop(Hrp−dependent outer protein)遺伝子により指示されると考えられる(AlfanoおよびCollmer、1997)。これらのエフェクターは更に、可能性のある宿主におけるHRの引き金となるR遺伝子(以後avrと称す)サーベイランス系への寄生体を裏切ることがあり、このような遺伝子のための遺伝子(gene−for−gene)(avr−R)の相互作用に基づいた耐性に関する植物育種は、品種および示差的栽培品種の複雑な組合せを生じることがある(Keen、1990)。hrp/hrc遺伝子は、壊死を惹起するグラム陰性植物病原菌中で普遍的であると考えられ、これらは、P.シリンゲ(syringae)pv.シリンゲ(syringae)(Psy)61、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)Ea321、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)pv.ベシカトリア(vesicatoria)(Xcv)85−10、およびラルストニア・ソラナセアラム(Ralstonia solanacearum)GMI1000において配列決定されている(AlfanoおよびCollmer、1997)。これら4種の細菌のhrp/hrc遺伝子クラスターは、それらの明確な遺伝子配置および調節成分に基づいて、2群に分けられる:I群(PseudomonasおよびErwinia)ならびにII群(XanthomonasおよびRalstonia)。これらの群の分布と細菌の系統発生の間の矛盾は、hrp/hrc遺伝子クラスターが水平獲得されており、その結果病原性島(pathogenic island)(Pai)を表していることのいくつかの証拠を提供している(AlfanoおよびCollmer、1997)。
【0005】
Paiは、(i)多くの毒性(virulence)遺伝子を含み、(ii)病原性菌株内に選択的に存在し、(iii)宿主細菌DNAと比べ異なるG+C含量を有し、(iv)大きい染色体領域を占領し、(v)直接反復配列に隣接することが多く、(vi)tRNA遺伝子および/または潜在可動性遺伝因子を境界として、(vii)不安定であるような、遺伝子クラスターとして定義されている(Hackerら、1997)。一部のPaiは、同じ種において異なるゲノム位置へ挿入されている(Wielerら、1997)。残りは、複数の水平獲得(horizontal acquisition)を示すモザイク構造を表す(Henselら、1999)。III型分泌系をコードする遺伝子は、動物病原体サルモネラ(Salmonella)種および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のPai内ならびにエルシニア(Yersinia)種およびシゲラ(Shigella)種の巨大プラスミド上に存在する。これらの生物における経路により分泌されたエフェクターをコードする遺伝子は、通常経路遺伝子に連結されている(Hueck、1998)が、特筆すべき例外はsopEであり、これはネズミチフス菌(S. typhimurium)のある単離体中のSPI1への明らかな連結を伴わない溶原性(temperate)ファージにより運搬される(Miroldら、1999)。3種のavr/hop遺伝子は、P.シリンゲ(syringae)においてhrp/hrcクラスターへ連結され;avrEおよびいくつかの他のHrp調節性転写ユニットは、P.シリンゲ(syringae)pv.トマト(tomato)(Pto)DC3000のhrpクラスターのhrpR境界に連結され(LorangおよびKeen、1995);avrPphEは、シュードモナス・ファセオリコラ(Pseudomonas phaseolicola)(Pph)1302AのhrpY(hrpK)に隣接し(Mansfieldら、1994);ならびに、hopPsyA(hrmA)は、Psy 61のhrpKに隣接する(HeuおよびHutcheson、1993)ことが既に示されている。他のシュードモナス(Pseudomonas)avr遺伝子は、ゲノム内またはプラスミド上のどこかに位置し(LeachおよびWhite、1996)、これはPph 1449BのPaiとして説明されたavr遺伝子のプラスミドを有するグループを含む(Jacksonら、1999)。
【0006】
Avr、Hop、Hrp、およびHrcタンパク質は、植物および動物の両方における有望な治療的処置を表しているので、病原細菌においてPaiによりコードされたその他のタンパク質を同定して、これらのタンパク質の用途を確定することは望ましいと考えられる。
【0007】
本発明は、当技術分野におけるこれらの欠点を克服するものである。
【0008】
発明の概要
本発明のひとつの局面は、(i)シュードモナス(Pseudomonas)の保存性エフェクター遺伝子座(Conserved Effector Loci;「CEL」)および交換可能なエフェクター遺伝子座(Exchangeable Effector Loci;「EEL」)のゲノム領域のタンパク質またはポリペプチドをコードする単離された核酸分子、(ii)ストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイズする核酸分子、または(iii)前記(i)および(ii)の核酸分子に相補的なヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。本発明のDNA分子を含む発現ベクター、宿主細胞、およびトランスジェニック植物も示される。このような宿主細胞およびトランスジェニック植物を作出する方法も示される。
【0009】
本発明の更なる局面は、本発明の核酸分子によりコードされた単離されたタンパク質またはポリペプチドに関する。このようなタンパク質を含有する組成物も示される。
【0010】
更に別の本発明の局面は、植物に疾病耐性を付与する方法に関する。ある手法に従い、本方法は、植物細胞の本発明の異種DNA分子による形質転換、および形質転換された植物細胞からのトランスジェニック植物の再分化により実行され、ここでトランスジェニック植物は、疾病耐性を付与するのに有効な条件下で、異種DNA分子を発現している。別の手法に従い、本方法は、処理された植物に疾病耐性を付与するのに有効な条件下での、本発明のタンパク質またはポリペプチドによる植物の処置により実行される。
【0011】
より更なる本発明の局面は、非病原細菌によるコロニー形成に対して高感受性である植物を作出する方法に関する。ひとつの手法に従い、本方法は、植物細胞の本発明の異種DNA分子による形質転換、および形質転換された植物細胞からのトランスジェニック植物の再分化により実行され、トランスジェニック植物は、トランスジェニック植物を非病原細菌によるコロニー形成に高感受性を持つようにするのに有効な条件下で、異種DNA分子を発現している。別の手法において、この方法は、処理された植物を非病原細菌によるコロニー形成に対して感受性にするのに有効な条件下での、本発明のタンパク質またはポリペプチドによる植物の処理により実行される。
【0012】
別の本発明の局面は、真核細胞に、細胞毒性シュードモナスタンパク質を導入することによる、真核細胞死を引き起こす方法に関し、導入は、細胞死を引き起こすのに有効な条件下で行われる。
【0013】
更なる本発明の局面は、癌細胞死を引き起こすのに有効な条件下で、細胞毒性シュードモナスタンパク質を、患者の癌細胞に導入し、これにより癌性症状を治療することによる、癌性症状の治療法に関する。
【0014】
本発明の利点は、3種の要因からもたらされる。第一に、植物病原体エフェクタータンパク質は、極めて低レベルで真核生物の代謝における絶妙な変化を誘起するように進化して、これらの活性の少なくとも一部は、植物に加え哺乳類および他の生物に関連する可能性があるということの実質的かつ増大しつつある証拠が存在することである。例えば、Psy B728a EEL由来のORF5は、哺乳類のMAPKK防御シグナル伝達を阻害するような動物病原体相同体YopJと同じ活性部位を有すると考えられる植物病原体タンパク質であるキサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)pv.ベシカトリア(vesicatoria)AvrBsTに類似している(Orthら、2000)。第二に、P.シリンゲ(syringae)CELおよびEEL領域は、エフェクタータンパク質遺伝子において豊富であり、このことは、これらの領域を、エフェクター遺伝子の生物学的予測(bioprospecting)のための実り多い標的としている。第三に、遺伝子およびタンパク質を植物および動物の細胞に送達する技術の迅速な開発が、タンパク質に基づく療法の効能を改善していることである。
【0015】
発明の詳細な説明
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のCELを含むDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:1)を有する。
いくつかの未定義のヌクレオチドが配列番号:1に存在するが、これらは遺伝子間領域に存在すると考えられる。シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のCELは、多くのオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。このCELによりコードされた2種の産物はHrpWおよびAvrEであり、両方とも公知である。追加の10種の産物は、図3に示したように、各々、ORF1−10により産生される。これらの多くのORFヌクレオチド配列およびそれらのコードされたタンパク質またはポリペプチド産物を以下に示す。
【0016】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF3のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:2)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF3によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:3)を有する。
【0017】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF4のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:4)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF4によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:5)を有する。
【0018】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF5のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:6)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF5によりコードされたタンパク質またはポリペプチドであり、現在HopPtoAとして公知のものは、下記のアミノ酸配列(配列番号:7)を有する。
【0019】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF6のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:8)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF6によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:9)を有する。
【0020】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF7のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:10)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF7によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:11)を有する。
【0021】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF8のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:12)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF8によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:13)を有する。
【0022】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF9のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:14)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF9によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:15)を有する。
【0023】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のORF10のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:16)を有する。
Pto DC3000 CEL ORF10によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:17)を有する。
【0024】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のEELを含むDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:18)を有する。
いくつかの未定義のヌクレオチドが、配列番号:18に存在するが、これらは遺伝子間領域に存在すると考えられる。シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のEELは、多くのORFを含む。このEELによりコードされた産物のひとつは、P.スタッツェリ(stutzeri)由来のTnpA’相同体である。追加の4種の産物は、各々、ORF1−4により産生される。これらの多くのORFヌクレオチド配列およびそれらのコードされたタンパク質またはポリペプチド産物を以下に示す。
【0025】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL由来のORF1のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:19)を有する。
Pto DC3000 EEL ORF1によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:20)を有する。
【0026】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL由来のORF2のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:21)を有する。
Pto DC3000 EEL ORF2によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:22)を有する。
【0027】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL由来のORF3のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:23)を有する。
Pto DC3000 EEL ORF3によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:24)を有する。
P. シリンゲ(syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL由来のORF3は、変異された場合に、毒性を有意に低下することが現在示されている。より興味深いことに、過剰発現は、病変サイズを強力に増大する。従ってこのエフェクターは、生物学的に活性があり、症状形成において重要な役割があると考えられる。
【0028】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL由来のORF4のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:25)を有する。
Pto DC3000 EEL ORF4によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:26)を有する。
【0029】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728aのEELは、多くのORFを含む。これらのオープンリーディングフレームの中の2種は、他のシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)変種のEEL中の相同体と同等でない可動性遺伝因子であると考えられる。追加の4種の産物は、各々、ORF1−2およびORF5−6から産生される。これらの多くのORFヌクレオチド配列、およびそれらのコードされたタンパク質またはポリペプチド産物を、以下に提供する。
【0030】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728a EEL由来のORF1のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:27)を有する。
Psy B728a EEL ORF1によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:28)を有する。
表1(実施例2参照)に示したように、このタンパク質またはポリペプチドをコードするDNA分子は、AvrPphCをコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.ファセオリコラ(phaseolicola)由来のヌクレオチド配列との有意な相同性を有している。
【0031】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728a EEL由来のORF2のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:29)を有する。
Psy B728a EEL ORF2によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:30)を有する。
表1(実施例2参照)に示したように、このタンパク質またはポリペプチドをコードするDNA分子は、AvrPphEをコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.ファセオリコラ(phaseolicola)由来のヌクレオチド配列との有意な相同性を有している。
【0032】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728a EEL由来のORF5のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:31)を有する。
Psy B728a EEL ORF5によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:32)を有する。
【0033】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728a EEL由来のORF6のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:33)を有する。
Psy B728a EEL ORF6によりコードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記のアミノ酸配列(配列番号:34)を有する。
【0034】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)61のEELは、多くのORFを含む。このオープンリーディングフレームのひとつは、外膜タンパク質HopPsyAをコードする。HopPsyAをコードするDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:35)を有する。
HopPsyAは、下記のアミノ酸配列(配列番号:36)を有する。
【0035】
shcAと称される残りのオープンリーディングフレームは、下記のヌクレオチド配列(配列番号:37)を有するDNA分子である。
コードされたタンパク質またはポリペプチドShcAは、下記のアミノ酸配列(配列番号:38)を有する。
【0036】
本発明は更に、前記DNA分子およびタンパク質またはポリペプチドに加え、その他のシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)病原型から単離されている様々な本発明のDNA分子の相同体に関する。例えば、多くのAvrPphE、AvrPphF、およびHopPsyA相同体が、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)病原型から同定されている。
【0037】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.アングラタ(angulata)由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:39)を有する。
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.アングラタ(angulata)のAvrPphE相同体のアミノ酸配列(配列番号:40)は、以下のものである。
このタンパク質またはポリペプチドは、GC含量約57%、推定等電点約9.5、および推定分子量約41kDaである。
【0038】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.グリシネア(glycinea)由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:41)を有する。
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.グリシネア(glycinea)のAvrPphE相同体のアミノ酸配列(配列番号:42)は、以下のものである。
このタンパク質またはポリペプチドは、GC含量約57%、推定等電点約9.1、および推定分子量約41kDaである。
【0039】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.タバシ(tabaci)由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:43)を有する。
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.タバシ(tabaci)のAvrPphE相同体のアミノ酸配列(配列番号:44)は、以下のものである。
このタンパク質またはポリペプチドは、GC含量約57%、推定等電点約9.3、および推定分子量約41kDaである。
【0040】
別のAvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.タバシ(tabaci)由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:45)を有する。
コードされたAvrPphE相同体は、下記の配列番号:46のアミノ酸配列を有する。
【0041】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.グリシネア(glycinea)品種4由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:47)を有する。
コードされたAvrPphE相同体は、下記の配列番号:48のアミノ酸配列を有する。
【0042】
AvrPphEをコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.ファセオリコラ(phaseolicola)B130株由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:49)を有する。
コードされたAvrPphE相同体は、下記の配列番号:50のアミノ酸配列を有する。
【0043】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.アングラタ(angulata)Pa9株由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:51)を有する。
コードされたAvrPphE相同体は、下記の配列番号:52のアミノ酸配列を有する。
【0044】
AvrPphE相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.デルフィニー(delphinii)PDDCC529株由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:53)を有する。
コードされたAvrPphE相同体は、下記の配列番号:54のアミノ酸配列を有する。
【0045】
P.シリンゲ(syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 EEL ORF2の相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.デルフィニー(delphinii)PDDCC529株由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:55)を有する。
コードされたタンパク質またはポリペプチドは、下記の配列番号:56のアミノ酸配列を有する。
【0046】
AvrPphF相同体をコードするシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.デルフィニー(delphinii)PDDCC529株ORF1由来のDNA分子は、下記のヌクレオチド配列(配列番号:57)を有する。
コードされたAvrPhpF相同体は、下記の配列番号:58のアミノ酸配列を有する。
【0047】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.デルフィニー(delphinii)PDDCC529株ORF1由来のDNA分子は、AvrPphF相同体をコードして、下記のヌクレオチド配列(配列番号:59)を有する。
コードされたAvrPphF相同体は、下記の配列番号:60のアミノ酸配列を有する。
【0048】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)226株由来のDNA分子は、HopPsyAの相同体をコードして、下記のヌクレオチド配列(配列番号:61)を有する。
コードされたHopPsyA相同体は、下記の配列番号:62のアミノ酸配列を有する。
【0049】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.アトロファシエンス(atrofaciens)B143株由来のDNA分子は、HopPsyAの相同体をコードして、下記のヌクレオチド配列(配列番号:63)を有する。
コードされたHopPsyA相同体は、下記の配列番号:64のアミノ酸配列を有する。
【0050】
シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000株由来のDNA分子は、本明細書においてはHopPtoA2と同定されたHopPtoAの相同体をコードして、下記のヌクレオチド配列(配列番号:65)を有する。
hopPtoA2はCEL内に存在しないが、これはここに前述のようにCEL ORF5に相当しているhopPtoA相同体として含まれる。このコードされたHopPtoA2タンパク質またはポリペプチドは、下記の配列番号:66のアミノ酸配列を有する。
【0051】
先に同定したタンパク質またはポリペプチドの断片に加え、その他の細菌、特にグラム陰性病原菌のEELおよびCEL由来の完全長タンパク質の断片も、同じく、本発明において使用することができる。
【0052】
適当な断片は、いくつかの手段により作出されうる。公知のタンパク質をコードする遺伝子のサブクローンは、サムブルック(Sambrook)らの論文(1989)およびアウスーベル(Ausubel)らの論文(1994)に記されたような、遺伝子断片をサブクローニングするための従来の分子遺伝学的操作を用いて作出されうる。その後このサブクローンを、細菌細胞において、インビトロまたはインビボにおいて発現し、例えば病原体毒性に必要な産物として、活性について試験されうるような比較的小さいタンパク質またはポリペプチドを得る。
【0053】
別の手法において、タンパク質の一次構造に関する知識に基づいて、タンパク質をコードする遺伝子の断片を、タンパク質の特定の部分を示すように選択された特定のプライマーセットと共に、PCR技法を用いて合成できる(Erlichら、1991)。次にこれらを、先に説明されたように細菌細胞由来の切断されたタンパク質またはポリペプチドの発現に適当なベクターへクローニングすることができる。
【0054】
代わりの方法として、タンパク質断片を、キモトリプシンもしくはブドウ球菌(Staphylococcus)プロテイナーゼA、またはトリプシンのようなタンパク質分解酵素による完全長タンパク質の消化により作出することができる。様々なタンパク質分解性酵素は、特定のタンパク質のアミノ酸配列に基づいて、異なるタンパク質を異なる位置で切断すると考えられる。タンパク質分解により生じる断片の一部は、活性毒性タンパク質またはポリペプチドでありうる。
【0055】
化学合成も、適当な断片の作出に使用することができる。このような合成は、生成されるポリペプチドに関する公知のアミノ酸配列を使用し実行される。あるいは、完全長タンパク質を高温および高圧に曝すことにより、断片が作製されると考えられる。次にこれらの断片は、通常の方法(例えば、クロマトグラフィー、SDS−PAGE)により分離されうる。
【0056】
変種を、同じく(または代わりに)、例えば、そのポリペプチドの特性、二次構造およびヒドロパシー的性質には最小の影響を有するようなアミノ酸の欠失または付加により修飾することができる。例えばポリペプチドは、タンパク質の転移を翻訳時または翻訳後に指示するようなタンパク質のN末端で、シグナル(またはリーダー)配列に結合することができる。更にポリペプチドは、ポリペプチドの合成、精製、または同定を容易にするために、リンカーまたは他の配列に結合することができる。
【0057】
本発明において使用されるタンパク質またはポリペプチドは、常法により、好ましくは精製された形状で生成される(好ましくは純度が少なくとも約80%、より好ましくは90%)。典型的には、本発明のタンパク質またはポリペプチドは、組換え宿主細胞の増殖培地へと分泌される(以下で考察する)。あるいは、本発明のタンパク質またはポリペプチドは生成されるが、増殖培地へは分泌されない。このような場合、タンパク質を単離するために、組換えプラスミドを保有する宿主細胞(例えば、E. coli)を繁殖し、超音波、熱または化学処理により溶菌して、このホモジネートを遠心分離し、細菌デブリを除去する。次に上清を、連続硫酸アンモニウム沈降に供する。本発明のタンパク質またはポリペプチドを含む画分は、適宜サイズ化されたデキストランまたはポリアクリルアミドカラムにおけるゲル濾過に供され、このタンパク質が分離される。必要ならば、このタンパク質画分を、更にHPLCにより精製することができる。
【0058】
その他のEELおよびCELのタンパク質またはポリペプチドをコードするDNA分子を、細菌の病原性島の部分をクローニングするためのPCRに基づく方法を用いて同定することができる。基本的に、PCRに基づく戦略は、hrpKおよびtRNAleu遺伝子由来の保存配列(または他の保存性境界配列)の病原性島のEEL介在領域のクローニングのためのプライマーとしての使用に関連している。図2B−Cに示されたように、hrpKおよびtRNAleu遺伝子は、多様なシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)変種の間で高度に保存されている。EELのサイズに応じて、追加のプライマーが、当初得られたcDNA配列から調製され、クローンの回収および、段階的方式でのEELの運用(walk through)を可能にする。完全長コード配列がPCR段階から得られないならば、適当な制限酵素を使用し、完全長コード配列を調製するために、コンティグ(contig)を集成することができる。同様のPCRに基づく方法を、CEL内のオープンリーディングフレームをコードするクローンを得るために用いることができる。図3に示したように、多様なシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)病原型のCELは、多くの保存性ドメインを含む。更にhrp/hrcドメインの公知の配列であるhrpW、AvrE、またはgstAを使用し、プライマーを調製することができる。
【0059】
前述のPCRに基づく方法を用いて、多くのDNA配列が、プライマーの供給源として利用された。このようなDNA分子のひとつは、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のtRNAleu遺伝子から単離されており、これは下記のヌクレオチド配列(配列番号:67)を有する。
適当なプライマーを供給するために使用することができるような追加のDNA分子は、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728aのtRNAleu遺伝子に由来し、これは下記のヌクレオチド配列(配列番号:68)を有する。
別のDNA分子は、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.トマト(tomato)DC3000のqueA遺伝子から単離され、これは下記のヌクレオチド配列(配列番号:69)を有する。
DNA分子は、QueAをコードし、これは下記のアミノ酸配列(配列番号:70)を有する。
【0060】
その他のEELおよびCELのタンパク質またはポリペプチドをコードするDNA分子を、このようなDNA分子がストリンジェントな条件下で、先に同定されたDNA分子にハイブリダイズするかどうかを決定することによっても同定することができる。適当なストリンジェンシー条件の例は、ハイブリダイゼーションが温度約37℃で、0.9Mクエン酸ナトリウム(「SSC」)緩衝液を含むハイブリダイゼーション媒質を用いて行われ、その後0.2×SSC緩衝液を用いて37℃で洗浄されるような条件である。より高いストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション条件または洗浄条件のいずれかの温度を上昇することによるか、もしくはハイブリダイゼーションまたは洗浄の媒質のナトリウム濃度を増加することにより容易に達成することができる。非特異的結合も、例えば、タンパク質含有溶液による膜のブロック、ハイブリダイゼーション緩衝液への異種のRNA、DNA、およびSDSの添加、ならびにRNaseによる処理などのような、多くの公知の技術のいずれかひとつを用いて制御することができる。洗浄条件は、典型的には、ストリンジェンシーで、またはそれ以下で、行われる。高ストリンジェンシー条件の例は、1M NaCl、50mM Tris−HCl(pH7.4)、10mM EDTA、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.2%フィコール、0.2%ポリビニルピロリドン、0.2%ウシ血清アルブミン、および50μg/ml大腸菌(E. coli)DNAを含有するハイブリダイゼーション媒質における、温度約42℃〜約65℃、最大約20時間までのハイブリダイゼーションの実行段階、ならびにそれに続く0.2×SSC緩衝液中で約42℃〜約65℃で実行された洗浄段階を含む。
【0061】
先に同定されたDNA分子と比較して保存された置換基を含み、従って先に同定されたものと同じタンパク質またはポリペプチドをコードするような核酸分子も本発明に包含されている。更に相補配列も、本発明に包含されている。
【0062】
本発明の核酸はDNAまたはRNAのいずれかであり、これは先に同定した本発明のDNA分子を用いて、容易に調製することができる。
【0063】
エフェクタータンパク質またはポリペプチドの送達は、処置される宿主および使用される材料に応じて、(1)安定したもしくはプラスミドにコードされた導入遺伝子として用いられる;(2)アグロバクテリウム(Agrobacterium)もしくはウイルスベクターにより一過的に発現される;(3)機能性異種III型分泌系を発現する無力化した(disarmed)病原体もしくは組換え非病原細菌のIII型分泌系により送達される;または、(4)局所適用、その後のTATタンパク質形質導入ドメインが媒介した自然発生的細胞取り込みにより送達されるなどの、いくつかの方法で達成することができる。これらは各々、以下に考察している。
【0064】
タンパク質またはポリペプチドをコードするDNA分子を、通常の組換えDNA技術を用いて細胞に組込むことができる。一般にこれは、DNA分子の、そのDNA分子が異種であるような、すなわち通常存在しないような、発現系への挿入に関連している。異種DNA分子は、発現系またはベクターへ、適当なセンス方向でかつ正確な読みとり枠で挿入される。このベクターは、挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含む。
【0065】
コーエン(Cohen)およびボイヤー(Boyer)の米国特許第4,237,224号は、制限酵素切断およびDNAリガーゼによるライゲーションを用いる、組換えプラスミドの形の発現系の作製を開示している。その後これらの組換えプラスミドは、形質転換により導入され、組織培養において増殖した原核生物および真核細胞を含む単細胞培地において複製される。
【0066】
組換え遺伝子は更に、ワクシニアウイルスのようなウイルスにも導入される。組換えウイルスは、プラスミドのウイルスに感染した細胞へのトランスフェクションによっても作製されうる。
【0067】
適当なベクターは、下記のウイルスベクター、例えばλベクター系gt11、gtWES.tB、Charon4、およびプラスミドベクター、例えばpBR322、pBR325、pACYC177、pACYC1O84、pUC8、pUC9、pUC18、pUC19、pLG339、pR290、pKC37、pKC101、SV40、pBluescriptII SK+/−またはKS+/−(「Stratagene社クローニング系(Stratagene Cloning Systems)」カタログ(1993)参照、Stratagene社、LaJolla、CA、これは本明細書に参照として組入れられている。)、pQE、pIH821、pGEX、pETシリーズ(Studierら、1990)を含むが、これらに限定されない。組換え分子を、細胞へ、形質転換により、特に形質導入、接合、動態化(mobilization)または電気穿孔により導入することができる。DNA配列は、サムブルック(Sambrook)らの論文(1989)に記されているような、当技術分野における標準のクローニング手法により、ベクターへクローニングされる。
【0068】
様々な宿主−ベクター系を用いて、タンパク質コード配列(または複数)を発現することができる。第一に、このベクター系は、使用した宿主細胞と共存性がなければならない。宿主−ベクター系は以下を含むが、これらに限定されない:バクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAにより形質転換された細菌;微生物、例えば酵母ベクターを含む酵母;ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)で感染された哺乳類細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;および、細菌で感染された植物細胞。これらのベクターの発現エレメントは、それらの強度および特異性が変動する。利用された宿主−ベクター系に応じて、多くの適当な転写および翻訳エレメントの中のひとつを使用することができる。
【0069】
様々な遺伝的シグナルおよびプロセシング(processing)事象が、遺伝子発現の多くのレベルを制御する(例えば、DNA転写およびメッセンジャーRNA(mRNA)翻訳)。
【0070】
DNAの転写は、RNAポリメラーゼの結合を指示しそれによりmRNA合成を促進するようなDNA配列であるプロモーターの存在に左右される。真核生物プロモーターのDNA配列は、原核生物プロモーターのものとは異なる。真核生物プロモーターおよび付随する遺伝的シグナルは、原核生物系においては認識されないか、もしくは機能せず、更に原核生物プロモーターは、真核細胞において認識されずかつ機能しない。
【0071】
同様に、原核生物におけるmRNAの翻訳は、真核生物のシグナルとは異なる適当な原核生物シグナルの存在に左右される。原核生物におけるmRNAの効率的翻訳は、mRNA上にシャイン・ダルガーノ(Shine−Dalgarno;「SD」)配列と称されるリボソーム結合部位を必要とする。この配列は、タンパク質のアミノ末端メチオニンをコードする、通常AUGである開始コドンの前に位置したmRNAの短いヌクレオチド配列である。このSD配列は、16S rRNA(リボソームRNA)の3’末端と相補的であり、rRNAと二本鎖形成することにより、mRNAのリボソームへの結合を促進し、リボソームの正確な位置決定を可能にすると考えられる。遺伝子発現の最小化の検証については、ロバーツ(Roberts)およびローアー(Lauer)の論文(1979)を参照のこと。
【0072】
プロモーターの「強度」(すなわち、それらの転写促進能)は、変動する。クローニングした遺伝子の発現を目的として、高レベルの転写を得、これにより遺伝子を発現するためには、強力なプロモーターを使用することが望ましい。利用した宿主細胞系に応じて、多くの適当なプロモーターのいずれかひとつを使用することができる。例えば、大腸菌(E. coli)、そのバクテリオファージ、またはプラスミドにおいてクローニングする場合、T7ファージプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、コリファージλおよび、lacUV5、ompF、bla、lpp等を含むが、これらに限定されないその他のPRおよびPLプロモーターなどのようなプロモーターを使用し、隣接するDNAセグメントの高レベル転写を指示することができる。加えて、ハイブリッドtrp−lacUV5(tac)プロモーターまたは他の大腸菌(E. coli)プロモーターは、組換えDNAにより作製されうり、もしくは他の合成DNA技術を用いて、挿入された遺伝子の転写を提供されうる。
【0073】
特に誘導されない限りは、プロモーターの作用を阻害するような細菌宿主細胞株および発現ベクターを選択することができる。ある操作において、特異的インデューサーの追加は、挿入されたDNAの効率的転写に必要である。例えば、lacオペロンは、ラクトースまたはIPTG(イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド)の添加により誘導される。様々な他のオペロン、例えばtrp、proなどは、異なる制御下にある。
【0074】
更に特定の開始シグナルが、原核細胞における効率的な遺伝子の転写および翻訳に必要である。これらの転写および翻訳開始シグナルは、各々、遺伝子特異的mRNAおよび合成されたタンパク質の量により測定される「強度」を変動しうる。プロモーターを含むDNA発現ベクターは、様々な「強力」な転写および/または翻訳開始シグナルのいずれかの組合せも含みうる。例えば、大腸菌(E. coli)における効率的翻訳は、リボソーム結合部位を提供するために、開始コドン(「ATG」)の5’側に約7塩基〜9塩基のSD配列を必要とする。従って、宿主細胞リボソームにより利用することができるいずれかのSD−ATG組合せを使用できる。このような組合せは、コリファージλのcro遺伝子またはN遺伝子、または大腸菌(E. coli)トリプトファンE遺伝子、D遺伝子、C遺伝子、B遺伝子またはA遺伝子からのSD−ATG組合せを含むが、これらに限定されない。加えて、組換えDNAまたは合成ヌクレオチドの組込みに関連した他の技術により作製されたSD−ATG組合せのいずれかを使用することができる。
【0075】
単離されたポリペプチドまたはタンパク質をコードするDNA分子が発現系へクローニングされたならば、これを宿主細胞へ組込むことは容易である。このような組込みは、ベクター/宿主細胞系に応じて、前述の形質転換の様々な形により行うことができる。適当な宿主細胞は、細菌、ウイルス、酵母、哺乳類細胞、昆虫、植物などを含むが、これらに限定されない。
【0076】
組換え宿主細胞にとって、コードされたタンパク質またはポリペプチドを分泌することは望ましいので、宿主細胞も、機能性III型分泌系を有することが好ましい。III型分泌系は宿主細胞に対して異種でありうる(Hamら、1998)か、もしくは宿主細胞は天然にIII型分泌系を有しうる。天然にIII型分泌系を含む宿主細胞は、多くの病原性グラム陰性菌、例えばエルウィニア(Erwinia)種、シュードモナス(Pseudomonas)種、キサントモナス(Xanthomonas)種などを含む。他のIII型分泌系が公知であり、更に他のものが継続して同定されている。エフェクタータンパク質またはポリペプチドの送達のために利用されうる病原細菌は、公知の技術、すなわち前述のような技術により無力化されることが好ましい。あるいは、宿主細胞または増殖培地からのエフェクタータンパク質またはポリペプチドの単離を、前述のように実行することができる。
【0077】
本発明の別の局面は、本発明のタンパク質またはポリペプチドを発現しているトランスジェニック植物ならびにそれらの作出法に関する。
【0078】
DNA分子を単離された植物細胞または組織もしくは植物全体において発現するためには、植物の発現可能なプロモーターが必要である。いずれかの植物の発現可能なプロモーターを、その起源、すなわち、ウイルス、細菌、植物などとは無関係に利用することができる。限定的ではない2種の適当なプロモーターは、ノパリンシンターゼプロモーター(Fraleyら、1983)およびカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(O’Dellら、1985)を含む。これらのプロモーターは両方とも、それらの調節制御下で、コード配列の構成性発現を生じる。
【0079】
構成性発現は、一般にDNA分子の発現に適しているが、一過性または組織調節した発現も望ましく、その場合望ましい発現を達成するためにいずれかの調節性プロモーターを選択できることは当業者には明らかである。典型的には、一過性または組織調節性プロモーターは、発生のある段階でのみまたは特定の組織においてのみ発現されるDNA分子と共同で使用されると考えられる。
【0080】
一部の植物においては、病原体浸漬またはストレスに対して反応するようなプロモーターの使用も望ましいと考えられる。例えば、特定の植物病原体による感染に反応してタンパク質またはポリペプチドの発現を制限することが望ましいと考えられる。病原体誘導可能なプロモーターの一例は、ジャガイモ由来のgst1プロモーターであり、これは本明細書に参照として組入れられているストリットマイヤー(Strittmayer)らの米国特許第5,750,874号および第5,723,760号に開示されている。
【0081】
単離された植物細胞または組織もしくは植物全体におけるDNA分子の発現も同じく、適当な転写終結およびmRNAのポリアデニル化を必要としている。植物細胞または組織における使用に適した3’調節領域のいずれかを、第一および第二のDNA分子に機能的に連結することができる。多くの3’調節領域が植物において機能することは公知である。3’調節領域の例は、ノパリンシンターゼ3’調節領域(Fraleyら、1983)およびカリフラワーモザイクウイルス3’調節領域(Odellら、1985)を含むが、これらに限定されない。
【0082】
プロモーターおよび3’調節領域は、サムブルック(Sambrook)らの論文(1989)に記されたような周知の分子クローニング技術を用いて、容易にDNA分子へライゲーションすることができる。
【0083】
植物細胞を本発明のDNA分子により形質転換するひとつの手法は、宿主細胞の微粒子銃(particle bombardment)(微粒子銃形質転換(biolistic transformation)としても公知)である。これはいくつかの方法のひとつで達成することができる。最初に、細胞における、不活性粒子または生物学的活性粒子の噴射が関与する。この技術は、サンフォード(Sanford)らの米国特許第4,945,050号、第5,036,006号、および第5,100,792号に開示されている。一般にこの手法は、細胞の外側表面を貫通してその内部に取り込まれるのに有効な条件下での、細胞における、不活性粒子または生物学的活性粒子の噴射が関与している。不活性粒子が使用される場合、粒子を異種DNAを含むベクターで被覆することにより、ベクターを細胞へ導入できる。あるいは、標的細胞がベクターにより取り囲まれ、その結果ベクターが、粒子の伴流(wake)により細胞へと運搬される。生物学的活性粒子(例えば、ベクターおよび異種DNAを含む乾燥した細菌細胞)も、植物細胞へ噴射することができる。現在公知のものおよび今後開発されるものを含むその他の粒子衝撃法の変法も使用することができる。
【0084】
DNA分子を植物細胞へ導入する別法は、DNA分子を含む、ミニ細胞、細胞、リソソームまたはその他の融合可能な脂質表面を持つ本体のいずれかである他の実体と、プロトプラストの融合である(Fraleyら、1982)。
【0085】
DNA分子を更に、電気穿孔により植物細胞へ導入することもできる(Frommら、1985)。この技術において、植物プロトプラストは、DNA分子を含むプラスミドの存在下で電気穿孔される。電界強度が高い電気インパルスは、生体膜を可逆的に透過し、プラスミドを導入する。電気穿孔された植物のプロトプラストは、細胞壁を再構築し、分裂して再分化する。
【0086】
DNA分子の植物細胞への導入の別法は、植物細胞の、DNA分子により予め形質転換されたアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾジーンズ(Agrobacterium rhizogenes)による感染である。当技術分野において公知の適当な条件下で、形質転換された植物細胞は生育され、苗条または根を形成して、更に植物体へと成長する。一般にこの手法は、植物組織の細菌懸濁液による接種、および組織の抗生物質を含まない再分化培地における25℃〜28℃での48時間〜72時間のインキュベーションに関連している。
【0087】
アグロバクテリウム(Agrobacterium)は、グラム陰性菌であるファミリーリゾビアセエ(Rhizobiaceae)属の代表である。その種は、クラウンゴール(A. tumefaciens)および毛根病(A. rhizogenes)に寄与している。クラウンゴール腫瘍および毛根の植物細胞は、これらの細菌によってのみ異化代謝されるオパインとして公知のアミノ酸誘導体の産生を誘導する。オパインの発現に寄与している細菌遺伝子は、キメラ発現カセットのための制御エレメントの都合の良い供給源である。加えて、オパインの存在をアッセイすることにより、形質転換された組織を同定することができる。
【0088】
本発明のDNA分子のような異種遺伝子配列は、適当な植物細胞へ、A.ツメファシエンス(tumefaciens)のTiプラスミドまたはA.リゾジーンズ(rhizogenes)のRiプラスミドにより導入することができる。このTiまたはRiプラスミドは、植物細胞へ、アグロバクテリウム(Agrobacterium)による感染時に伝播され、植物ゲノムへ安定して組込まれる(Schell、1987)。
【0089】
形質転換に適した植物組織は、葉組織、根組織、分裂組織、接合体および体細胞胚、および葯を含む。
【0090】
形質転換後、その形質転換された植物細胞を、選択して再分化することができる。
【0091】
好ましくは、形質転換された細胞は最初に、例えば、宿主細胞へ本発明のDNA分子と同時に導入される選択マーカーを用いて、同定される。適当な選択マーカーは、例えばカナマイシン耐性のような、抗生物質耐性をコードするマーカーを含むが、これらに限定されない(Fraleyら、1983)。多くの抗生物質耐性マーカーが当技術分野において公知であり、その他のものが継続的に同定されつつある。いずれか公知の抗生物質耐性マーカーを、本発明に従い、形質転換および形質転換された宿主細胞の選択に使用することができる。細胞または組織は、抗生物質を含有する選択培地において生育され、これにより一般に抗生物質耐性マーカーを発現している形質転換体のみが、生育し続ける。
【0092】
組換え植物細胞または組織が得られたならば、それから完全に生育した植物を再分化することが可能になる。従って本発明の別の局面は、プロモーターが、卵菌類(oomycete)による植物の感染に反応して、第一のDNA分子の転写を誘導するような、本発明のDNA分子を含むトランスジェニック植物に関する。好ましくは、このDNA分子は、本発明のトランスジェニック植物のゲノムに安定して挿入される。
【0093】
培養されたプロトプラストからの植物再分化は、エバンス(Evans)らの論文(1983)ならびにバシル(Vasil)らの論文(1984および1986)に記されている。
【0094】
実践的に全ての植物が培養された細胞または組織から再分化され得ることは公知であり、これはコメ、コムギ、オオムギ、ライムギ、綿花、ヒマワリ、ピーナッツ、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、マメ、エンドウ、チコリ、レタス、エンダイブ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリ、カブ、ラディッシュ、ホウレンソウ、タマネギ、ニンニク、ナスビ、ペッパー、セロリ、ニンジン、スカッシュ、カボチャ、ズッキーニ、キュウリ、リンゴ、ナシ、メロン、イチゴ、ブドウ、ラズベリー、パイナップル、ダイズ、タバコ、トマト、サトウモロコシ、およびサトウキビの主な種の全てを含むが、これらに限定されない。
【0095】
再分化の手段は、植物の種毎に変動するが、一般に形質転換されたプロトプラストの懸濁液または形質転換された外植片を含むペトリ皿が最初に提供される。カルス組織が形成され、苗条がカルスから誘導され、その後発根され得る。あるいは、胚形成が、カルス組織において誘導される。これらの胚は、天然の胚のように発芽し、植物体を形成する。この培養培地は、一般に様々なアミノ酸およびホルモン、例えばオーキシンおよびサイトカインなどを含有すると考えられる。更に培地にグルタミン酸およびプロリンを添加することも、特にトウモロコシおよびアルファルファのような種にとっては、有利である。効率的再分化は、培地、遺伝子型、および培養履歴によって左右されると考えられる。これら3種の変量が管理されるならば、その結果通常再分化は再現性がありかつ反復可能である。
【0096】
DNA分子が安定してトランスジェニック植物に組込まれた後、有性交雑によるかまたは栽培品種の調製により、これを別の植物体に移すことができる。有性交雑に関して、多くの標準の育種技術のいずれかを、交雑される種に応じて使用することができる。栽培品種は、当業者に公知の通常の農学的手法に従い繁殖することができる。
【0097】
圧倒的多数の細菌病原体により惹起された疾病は、限定された病変を生じる。すなわち、全てが病原体にとって好都合に作用した(例えば、エフェクターのひとつのR遺伝子の検出のために過敏感反応の引き金とならない)場合であっても、この寄生性の過程は依然2、3日後に防御の引き金となり、これは次に伝播(spreading)による感染を停止する。従って、寄生を進行させるのと正に同じエフェクターが、最終的に防御の引き金とならなければならない。その結果、これらのエフェクターの未熟な発現は、より早期(すなわち、感染前)に植物防御の「スイッチを入れる」と考えられ、植物を、エフェクタータンパク質が得られた特定の細菌または多くの病原体のいずれかに対して耐性にする。この手法の利点は、これが天然の産物に関連して、植物が病原体エフェクタータンパク質に対して高感受性であると考えられることである。
【0098】
ひとつの態様に従い、本発明の異種DNA分子を含むトランスジェニック植物が提供される。好ましくは、この異種DNA分子は、植物病原体EELに由来する。この異種DNA分子がトランスジェニック植物において発現される場合、植物の防御が活性化され、このトランスジェニック植物へ疾病耐性を付与する。このトランスジェニック植物は更に、異種DNA分子のタンパク質またはポリペプチド産物により活性化されるようなR遺伝子を含むこともできる。このR遺伝子は、植物中に天然に生じるか、または異種性にその中に挿入することができる。多くのR遺伝子が、様々な植物種において同定されており、これは下記を含むが、これらに限定されない:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のRPS2、RPM1、およびRPP5;トマト由来のCf2、Cf9、I2、Pto、およびPtf;タバコ由来のN;亜麻由来のL6およびM;コメ由来のXa2l;および、サトウダイコン由来のHs1pro−1。本発明のトランスジェニック植物における植物防御の刺激は、疾病耐性を付与することに加えて、生育および昆虫に対する耐性の同時増強を生じうると考えられている。
【0099】
別の態様に従い、トランスジェニックまたは非トランスジェニックの植物は、本発明のタンパク質またはポリペプチドにより処理される。処理は、タンパク質またはポリペプチドを植物に適用する様々な形を含むことが意図されている。エフェクターポリペプチドまたはタンパク質が植物に適用されるような本発明の態様は、以下を含むような多くの方法で実行することができる:1)単離されたタンパク質(またはこれを含有する組成物)の適用、または2)疾病を引き起さずかつ本発明のエフェクタータンパク質をコードする遺伝子で形質転換された細菌の適用。後者の態様において、エフェクタータンパク質は、このエフェクタータンパク質をコードするDNA分子を含有する細菌を散布することにより、植物に適用され得る。このような細菌は、タンパク質が植物細胞に接触することができるようにタンパク質を分泌または輸送することが可能であることが好ましい。これらの態様において、タンパク質は、インプランタ(in planta)で細菌により産生される。
【0100】
このような局所的使用は、典型的には、形質導入ドメインを含むエフェクター融合タンパク質を用いて実施され、これはエフェクタータンパク質の細胞への形質導入ドメインが媒介した自然発生的取り込みを可能にする。基本的には、これは、標準のrDNA技術による11アミノ酸のペプチド
の、エフェクタータンパク質のN末端への融合により実行され、得られるタグ付きタンパク質は、未知の過程により細胞へ取り込まれる。このペプチドは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)TATタンパク質のタンパク質形質導入ドメイン(PTD)である(Schwarzeら、2000)。その他のPTDも公知であり、この目的に使用されると考えられる(Prochiantz、2000)。
【0101】
エフェクタータンパク質が植物に局所適用される場合、これは、例えば水、水溶液、スラリー、または乾燥粉末の形状で担体を含有する組成物として適用される。この態様において、組成物は、約5nMを上回る本発明のタンパク質を含有する。
【0102】
本組成物は、必須ではないが、肥料、殺虫剤、殺真菌剤、殺線虫剤、およびそれらの混合物を含む追加の添加剤を含有することができる。適当な肥料は、(NH4)2NO3を含む。適当な殺虫剤の例はマラチオン(Malathion)である。有用な殺真菌剤はキャプタン(Captan)である。
【0103】
その他の適当な添加剤は、緩衝剤、湿潤剤、コーティング剤、および場合によっては研磨剤を含む。これらの材料を用いて、本発明の過程を促進することができる。
【0104】
本発明の別の局面において、植物病原体CEL産物の機能を破壊することが可能である転写産物もしくはタンパク質またはポリペプチドをコードする異種DNA分子を含むトランスジェニック植物が提供される。CEL遺伝子は、特に発病において重要であるので、CEL遺伝子はグラム陰性病原菌の中で、特に種の系統にそって高度に保存されていることから、植物におけるそれらの産物の機能の破壊は、広範な耐性を生じうる。CEL産物の機能を破壊することができるタンパク質またはポリペプチドの例は、通常の技術によりCEL産物に対して生じたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。この抗体は、単離されると、配列決定され、これをコードする核酸が合成される。このような核酸、例えばDNAは、植物の形質転換に使用することができる。
【0105】
高感受性であるように、かつしたがって、バイオテクノロジー的目的のために非病原細菌の増殖を支持するように、トランスジェニック植物を更に遺伝子操作することもできる。多くの植物の病原細菌が、植物葉内部の環境を変更し、その結果非病原細菌が増殖できることは公知である。この能力は、病原体エフェクタータンパク質により引き起された植物における変化に基づくと考えられる。従って、適当なエフェクター遺伝子を発現しているトランスジェニック植物を、これらの目的に使用することができる。
【0106】
ある態様において、本発明の異種DNA分子を含むトランスジェニック植物は、トランスジェニック植物が適合性非病原細菌(すなわち、様々なClavibacter ssp.のような非病原性内部寄生菌)の増殖の支援を可能にする、1種以上のエフェクタータンパク質を発現する。適合性非病原細菌は天然に生じることができ、または組換体であることができる。好ましくは、非病原細菌は組換体であり、1種以上の有用な産物を発現している。従って、トランスジェニック植物は、望ましい産物を生産するための植物工場(green factory)となる。望ましい産物とは、植物の栄養の品質を増強することができる産物または単離された形が望ましい産物を含むが、これらに限定されない。単離された形が望ましい場合は、この産物は、植物組織から単離されうる。望ましい産物を発現する非病原細菌と発現しないものとの間の競合を防止するために、組換え非病原細菌の必要物(needs)を目的に合わせることが可能であり、その結果これらのみが、本発明の特定のエフェクタータンパク質またはポリペプチドを発現している植物組織において生存することが可能である。
【0107】
本発明のエフェクタータンパク質またはポリペプチドは、寄生生物に有利であるように代謝経路をシフトすることにより、および細胞死経路を活性化または抑制することにより、植物の生理を変更すると考えられる。従ってこれらは更に、効率的に栄養素含量を変更して老化を遅延または引き起こすのに有用な道具も提供する。これらの可能な作用の全てについて農業的用途がある。
【0108】
更なる本発明の局面は、CELおよびEELの診断的用途に関する。このCEL遺伝子は、グラム陰性菌、特に病原性グラム陰性菌(P. syringaeなど)に普遍的であるのに対して、EEL配列は、菌株特異的であり、特に脅威であるような菌株の存在、起源および移動(および検疫通過による伝播の制限)を追跡するために使用することができる「毒性遺伝子フィンガープリント」を提供する。CELおよびEELは、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)の様々な病原型において同定されているが、ほとんど全てのグラム陰性病原体は、CEL遺伝子およびEEL遺伝子の相同性に基づいて同定、識別および分類されうると予想される。
【0109】
ある態様において、より高い配列同一性がより密接な関係を示す、2種の細菌の間の関係を決定する方法は、これら2種の細菌のCELの核酸並置またはアミノ酸並置の比較、およびその後のこれら2種の細菌の関係の決定により実行される。CELは、2種の個別の細菌種の関係の決定に特に有用である。
【0110】
別の態様において、より高い配列同一性がより密接な関係を示す、2種の細菌の間の関係を決定する方法は、これら2種の細菌のEELの核酸並置またはアミノ酸並置の比較、およびその後のこれら2種の細菌の関係の決定により実行される。EELは、単独の細菌種のふたつの病原型の関係の決定に特に有用である。
【0111】
細菌種および/または病原型の関係を決定する方法が与えられたならば、これらの方法を、植物育種プログラムと共に利用することができる。特定の生育領域において蔓延している病原体の「毒性遺伝子フィンガープリント」を検出することにより、前述のようなトランスジェニック栽培品種の開発、または蔓延する病原体に対して耐性であるような現存する植物栽培品種の同定が可能になる。
【0112】
前述の用途に加え、本発明の別の局面は、動物、好ましくはヒト、イヌ、マウス、ラットを含むが、これらに限定されない哺乳類のための、遺伝子およびタンパク質に基づく療法に関する。P.シリンゲ(syringae)pv.シリンゲ(syringae)B728a EEL ORF5タンパク質(配列番号:32)は、AvrRxv/YopJタンパク質ファミリーの一員である。YopJは、エルシニア(Yersinia)III型分泌系によりヒト細胞へ注入され、そこでこれはある種のタンパク質リン酸化酵素の機能を破壊し、サイトカイン放出を阻害してプログラムされた細胞死を促進する。多くの病原体エフェクタータンパク質(すなわち、P.syringaeエフェクタータンパク質)の標的は、真核生物に普遍的であり、その結果様々な可能性のある有用な機能を有すると考えられる。実際に、P.シリンゲ(syringae)Hrp病原性島における2種のタンパク質は、酵母において発現された場合には毒性がある。これらは、P.シリンゲ(syringae)pv.シリンゲ(syringae)EEL由来のHopPsyAおよびP.シリンゲ(syringae)pv.トマト(tomato)DC3000 CEL由来のHopPtoAである。これは、普遍的真核生物標的の概念を裏付けている。
【0113】
従って本発明の更なる局面は、真核細胞への細胞毒性シュードモナスタンパク質の導入により実施されるような真核細胞死を引き起こす方法に関する。細胞毒性シュードモナスタンパク質は、好ましくはHopPsyA(例えば、配列番号:36(Psy61)、62(Psy226)、または64(PsyB143))、HopPtoA(配列番号:7)、またはHopPtoA2(配列番号:66)である。処理されうる真核細胞は、インビトロまたはインビボのいずれかであってよい。真核細胞をインビボにおいて処理する場合、多くの様々なタンパク質またはDNAの送達系を使用し、エフェクタータンパク質を標的真核細胞へ導入することができる。
【0114】
理論に縛られるわけではないが、少なくともHopPsyAエフェクタータンパク質はそれらの細胞毒性作用をMad2相互作用を介して発揮し、紡錘体形成の細胞チェックポイントを破壊する(下記参照)と考えられている。
【0115】
このタンパク質またはDNAの送達系は、適当な賦形剤または安定剤を含み得る、薬学的に許容できる担体中の送達系を含む薬学的組成物の形で提供されうる。剤形は、例えば散剤、液剤、懸濁剤、または乳剤のような固形または液体の形であることができる。典型的にはこの組成物は、約0.01%〜99%、好ましくは約20%〜75%の活性化合物(または複数)を、担体、賦形剤、安定剤などと共に含有すると考えられる。
【0116】
本発明の組成物は、好ましくは、薬学的担体を含む生理的に許容できる希釈剤中のこれらの物質の溶液または懸濁液により注射可能なまたは局所塗布される投薬形態で投与される。このような担体は、滅菌した液体、例えば水および油を含み、界面活性剤ならびにアジュバント、賦形剤または安定剤を含む他の薬学的かつ生理的に許容できる担体を添加してもしなくても良い。油の例は、石油、動物性油、植物性油、または合成油を起源とするもの、例えばピーナッツ油、ダイズ油、または鉱油である。一般に、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連した糖溶液、ならびにグリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、液体担体として、特に注射可能な液体として好ましい。
【0117】
あるいは、エフェクタータンパク質を同じく、加圧したエアゾール容器内に、常用のアジュバントを含む、例えばプロパン、ブタン、またはイソブタンなどの炭化水素噴射剤のような適当な噴射剤と共に封入した溶液または懸濁液により送達することができる。本発明の物質は更に、ネブライザー(nebulizer)またはアトマイザー(atomizer)のような非加圧式で投与することもできる。
【0118】
実施される治療に応じて、本発明の化合物を、経口的、局所的、経皮的、非経口的、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、点鼻注入、腔内または膀胱内への注入、眼内、動脈内、病巣内、もしくは鼻、喉または気管支などの粘膜への塗布により投与することができる。
【0119】
本発明の範囲内の組成物は、意図された目的を達成するのに有効な量の本発明の化合物が含まれるような、全ての組成物を含んでいる。個々の必要性は異なるので、各成分の有効量の最適範囲の決定は、当業者の範囲内である。
【0120】
エフェクタータンパク質を細胞へ送達するひとつの手法は、リポソームの使用に関する。基本的に、これは、送達されるべきエフェクタータンパク質を含むリポソームを提供し、次に標的細胞をリポソームと、エフェクタータンパク質を細胞へ送達するのに条件下で接触することに関連する。
【0121】
リポソームは、水相を封入している1個以上の同心円に並んだ脂質二重層で構成された小胞である。これらは、通常は漏出性ではないが、穴または孔が膜に生じた場合、膜が溶解または崩壊した場合、または膜の温度が相転移温度まで上昇した場合には、漏出性となる。リポソームによる薬物送達の現行法は、リポソーム担体が最終的に透過可能となりかつ標的部位において封入した薬物を放出することを必要としている。これは、例えばリポソーム二重層が、生体内の様々な物質の作用により、時間をかけて崩壊するような受動的様式で達成され得る。あらゆるリポソーム組成物は、循環系においてまたは生体内の他の部位において特徴のある半減期を有し、その結果リポソーム組成物の半減期を制御することにより、二重層が崩壊する速度は若干調節され得ると考えられる。
【0122】
受動薬物放出に対して、能動的薬物放出は、リポソーム小胞における透過性の変化を誘導する物質の使用に関連する。リポソーム膜は、リポソーム膜近傍の環境が酸性になった時に不安定化されるように構築することができる(例えば、本明細書に参照として組入れられている、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、84:7851(1987);Biochemistry、28:908(1989)を参照のこと)。例えばリポソームが標的細胞により形質膜陥入された(endocytosed)場合、これらは、リポソームを不安定化して薬物放出を生じると考えられる酸性エンドソームへと経路が定められている。
【0123】
あるいは、リポソーム膜を化学的に修飾することができ、その結果酵素が膜上にコーティングとして配置され、これがリポソームをゆっくり不安定化する。薬物放出の制御は最初に膜に配置された酵素濃度によって左右されるので、薬物放出を「要求に応じて」薬物送達を達成するように変調または変更する真の効果的方法は存在しない。リポソーム小胞が標的細胞に接触するや否や、これが呑食され、かつpHの低下が薬物放出をもたらすという点で、pH感受性リポソームにも同じ問題が存在する。
【0124】
このリポソーム送達系を更に、能動的標的化を介して(例えば、リポソーム小胞の表面への抗体またはホルモンの組込みにより)、標的器官、組織、または細胞に蓄積させることもできる。これは、公知の方法に従い行うことができる。
【0125】
様々な種類のリポソームを、バンガム(Bangham)ら(1965);スー(Hsu)らの米国特許第5,653,996号;リー(Lee)らの米国特許第5,643,599号;ホーランド(Holland)らの米国特許第5,885,613号;ジャウ(Dzau)らの米国特許第5,631,237号;および、ローリー(Loughrey)らの米国特許第5,059,421号に従い調製することができる。
【0126】
エフェクタータンパク質を送達する別の手法は、複合されたエフェクタータンパク質の酵素分解を避けるために安定化されるようなポリマーへの所望のエフェクタータンパク質の複合に関する。この種の複合されたタンパク質またはポリペプチドは、エキューリブ(Ekwuribe)の米国特許第5,681,811号に開示されている。
【0127】
タンパク質またはポリペプチドを送達する更に別の手法は、ハートライン(Heartlein)らの米国特許第5,817,789号に開示されているキメラタンパク質の調製に関する。キメラタンパク質は、リガンドドメインおよび、例えば、本発明のエフェクタータンパク質を含む。このリガンドドメインは、標的細胞上に位置した受容体に特異的である。従ってキメラタンパク質が経静脈的に送達されるかさもなければ血液またはリンパ液に導入された場合、キメラタンパク質は標的化された細胞に吸着して、標的化された細胞はキメラタンパク質を取り込み、これは、エフェクタータンパク質が細胞チェックポイント制御メカニズムを不安定化させるのを可能にし、細胞毒性作用をもたらす。
【0128】
標的細胞における本発明のエフェクタータンパク質の異種発現を達成することが望ましい場合、所望のエフェクタータンパク質をコードするDNA分子が細胞へ送達され得る。基本的には、これは、エフェクタータンパク質をコードする核酸分子を提供すること、および次に細胞内でエフェクタータンパク質を発現するのに有効な条件下で核酸分子を細胞へ導入することを含む。好ましくは、これは、核酸分子の、細胞へ導入される前の、発現ベクターへの挿入により達成される。
【0129】
エフェクタータンパク質の異種発現に関して哺乳類細胞が形質転換される場合、アデノウイルスベクターを使用することができる。アデノウイルス遺伝子送達ビヒクルは、バークナー(Berkner)(1988)およびローゼンフィールド(Rosenfeld)ら(1991)の論文に示されたように、迅速に調製されかつ利用されうる。アデノ随伴ウイルス遺伝子送達ビヒクルは、遺伝子を細胞へ送達するために構築されかつ使用されうる。インビトロにおけるアデノ随伴ウイルス遺伝子送達ビヒクルは、チャテルジー(Chatterjee)ら、1992;ワルシュ(Walsh)ら、1992;ワルシュ(Walsh)ら、1994;フロッテ(Flotte)ら、1993a;ポナチャガン(Ponnazhagan)ら、1994;ミラー(Miller)ら、1994;エイナーハンド(Einerhand)ら、1995;ルオ(Luo)ら、1995;および、ゾー(Zhou)ら、1996に記されている。これらのビヒクルのインビボ使用は、フロッテ(Flotte)ら、1993bおよびカプリット(Kaplitt)ら、1994に記されている。別の種類のアデノウイルスベクターは、ウィッカム(Wickham)らの米国特許第6,057,155号;ボート(Bout)らの米国特許第6,033,908号;ウィルソン(Wilson)らの米国特許第6,001,557号;チェンバレン(Chamberlain)らの米国特許第5,994,132号;コチャネック(Kochanek)らの米国特許第5,981,225号;スプーナー(Spooner)らの米国特許第5,885,808号;および、キュリール(Curiel)の米国特許第5,871,727号に開示されている。
【0130】
感染型形質転換系を形成するように修飾されているレトロウイルスベクターも、所望のエフェクタータンパク質をコードする核酸を標的細胞へ送達するために使用することができる。このような種類のレトロウイルスベクターのひとつは、クリーグラー(Kriegler)らの米国特許第5,849,586号に開示されている。
【0131】
使用した感染型形質転換系とは無関係に、特定の細胞型へと核酸を送達するために標的化されなければならない。例えば、核酸の腫瘍細胞への送達に関して、腫瘍細胞感染の可能性を増大するように、高力価の感染型形質転換系を、腫瘍部位内に直接注入することができる。その後感染した細胞は、所望のエフェクタータンパク質、例えばHopPtoA、HopPsyA、またはHopPtoA2を発現し、細胞機能を破壊して、細胞毒性作用を生じる。
【0132】
特に好ましいのは、癌性症状を治療するための本発明のエフェクタータンパク質の使用である(すなわち、感染される真核細胞は癌細胞である)。これは、癌細胞分裂を阻害するのに有効な条件下で、細胞毒性シュードモナスタンパク質を患者の癌細胞へ導入し、これにより癌性症状を治療することにより行うことができる。
【0133】
導入により、エフェクタータンパク質が、患者へ、好ましくは癌細胞へ標的送達するような組成物の形状で投与されることが意図されている。あるいは、DNAに基づく療法を用いる場合、癌細胞が標的化されかつそこでエフェクタータンパク質が発現されるように、標的DNA送達系を患者へ投与することにより導入が実行されることが意図されている。
【0134】
実施例
下記の実施例は、例証を意図しているが、決して本発明の範囲を限定することは意図していない。
【0135】
材料および方法
細菌株、培養条件、プラスミド、およびDNA操作技術:
P.シリンゲ(syringae)の多様性の異なるレベルを表している3種の実験的に取扱いやすい菌株:Psy 61、Psy B728a、およびPto DC3000について調べた。(i)Psy 61は、そのコスミドpHIR11にクローニングされたそのhrp遺伝子クラスターが蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)および大腸菌(Escherichia coil)のような非病原細菌に必要な全ての遺伝子を含み、タバコにおいてHRを誘起してHrp系により豊富に分泌される未知の機能を伴うタンパク質であるHrpZハルピンを培養物中に分泌する、マメの弱い病原体である(Alfanoら、1996)。pHIR11 hrpクラスターは、完全に配列決定されており(図1)(AlfanoおよびCollmer、1997)、クラスターの左端の超可変領域のhopPsyA遺伝子は、Avr表現型を有し、Hrp経路を移動して、タバコ細胞において発現された場合に細胞死を誘起するようなタンパク質をコードすることが示されている(AlfanoおよびCollmer、1997;Alfanoら、1997;van Dijkら、1999)。(ii)Psy B728aは、61株と同じ病原型であるが、これは、高度に毒性でありかつ圃場において着生菌の適応度および病原性(マメの茶斑)におけるHrp系の役割を研究するためのモデルである(Hiranoら、1999)。(iii)Pto DC3000は、病原型シリンゲ(syringae)株から高度に分岐されているようなアラビドプシス(Arabidopsis)およびトマト(tomato)の良く研究された病原体(細菌の小斑点(speck)を生じる)である。rRNAオペロンRFLPパターンの分析は、PtoおよびPsyは関連が弱くかつ別個の種と考えられることを示している(ManceauおよびHorvais、1997)。従って、本発明者らは、同じ病原型の2種の菌株を高度に分岐した病原型の菌株と比較することができた。
【0136】
Psy 61(Prestonら、1995)、Psy B728a(Hiranoら、1999)、およびPto DC3000(Prestonら、1995)の供給源を有するように、大腸菌(E. coli)およびP.シリンゲ(syringae)株を培養する条件が説明されている(van Dijkら、1999)。大腸菌(E. coli)DH5αにおけるクローニングおよびDNA操作は、常法(Ausubelら、1994)に従い、pBluescriptII(Stratagene社、LaJolla、CA)、pRK415(Keenら、1988)、およびコスミドpCPP47(BauerおよびCollmer、1997)を用いて行った。Pto DC3000およびPsy B728aのゲノムDNAのコスミドライブラリーは、既に構築されている(Charkowskiら、1998)。オリゴヌクレオチド合成およびDNA配列決定は、コーネルバイオテクノロジーセンター(Cornell Biotechnology Center)において行った。Pta DC3000 hrp/hrcクラスターのヌクレオチド配列は、Psy 61のhrpK遺伝子とのハイブリダイゼーションに基づいてゲノムコスミドライブラリーから選択したコスミドであるpCPP2473のサブクローンを用いて決定した。Psy B728a hrp/hrcクラスターのヌクレオチド配列は、pCPP2346およびpCPP3O17のサブクローンを用いて決定した。これらのコスミドは、61のhrpCオペロンとのハイブリダイゼーションに基づいてゲノムライブラリーから選択した。Psy 61 EEL領域の左側は、下記のプライマーを用いたPCRにより、pBSKSII+XhoIおよびEcoRI部位にクローニングした:
queAにおいて開始されかつXhoI部位を含む配列番号:71
;hopPsyAにおいて開始されかつEcoRI部位を含む配列番号:72
。Pfuポリメラーゼを、全てのPCR実験に使用した。DNA配列データは、DNAStar Program社(Madison、WI)により管理および分析し、データベースは、BLASTX、BLASTP、およびBLASTNプログラムにより検索した(Altschulら、1997)。
【0137】
変異体構築および分析:
Pto DC3000 Hrp Paiにおける巨大な欠失を、既報のように、pRK415内のΩSpRカセットのいずれかの側の制限部位への境界断片のサブクローニング、組換えプラスミドのDC3000への電気穿孔、ならびにその後のマーカー交換変異体の選択および検索により構築した(Alfanoら、1996)。下記の左側および右側(図2および図3)の欠失境界断片を使用した(残留遺伝子断片と共に記す):CUCPB5110左側tgt−queA−tRNA−Leu−ORF4’(ORF4の27bp)および右側ORF1’−hrpK(ORF1の396bp);ならびに、CUCPB5115左側hrpS’−avrE’(avrEの2569bp)および右側ORF6(ORF6開始コドンの上流156bp)。後者の断片は、下記のプライマーを用いてPCR増幅した:
ORF5−0RF6遺伝子間領域において開始されかつXbaI部位を含む配列番号:73
;ORF6において開始されかつHindIII部位を含む配列番号:74
。変異体構築は、既報(Charkowskiら、1998)の条件を用いたサザンハイブリダイゼーションにより確認した。変異体のAvrPtoを分泌する能力は、抗AvrPto抗体および既報(van Dijkら、1999)のような細胞画分のイムノブロット分析により決定した。変異体CUCPB5115は、コスミドpCPP47のORF2からORF10までを持つpCPP3O16で補完され、既報(Charkowskiら、1998)のように、ヘルパー株大腸菌(E. coli)DH5α(pRK600)を用いた三親交配(triparental mating)により、大腸菌(E. coli)DH5αから導入された。
【0138】
T7発現分析:
Pto DC3000 EELのタンパク質産物を、既報(Huangら、1995)のように、ベクターpET21および大腸菌(E. coli)BL21(DE3)を用いた、T7ポリメラーゼ依存型発現により分析した。下記のプライマーセットを、pBSKSII+内のtgtからhrcVまでを含むBamHI断片を持つ、pCPP3O91由来の各ORFのPCRのために使用した:
ORF1、各々、配列番号:75および76
;ORF2、各々、配列番号:77および78
;ORF3、各々、配列番号:79および80
;ORF4、各々、配列番号:81および82
;tnpA、各々、配列番号:83および84
。
【0139】
植物バイオアッセイ法:
タバコ(Nicotiana tabacum L. cv. Xanthi)およびトマト(Lycopersicon esculentum Mill. cvs. MoneymakerおよびRio Grande)を、温室条件下で生育し、その後HRおよび毒性アッセイ法のために、25℃、白昼光および補助的ハロゲンランプを照射して維持した。細菌を、適当な抗生物質を補充したKing培地B寒天上で一晩増殖させ、5mM MES(pH5.6)中で懸濁し、その後HRアッセイ法のためには108cfu/mlで、および病原性アッセイ法のためには104cfu/mlで、針のないシリンジを用いて被験植物の葉へ浸潤させた(Charkowskiら、1998)。全てのアッセイ法を、異なる植物由来の葉について少なくとも4回反復した。トマト葉における細菌増殖は、浸漬した領域からコルクボーラーでディスク(disk)を切り出す段階、およびKontes Pellet Pestle(Fisher Scientific社、Pittsburgh、PA)により組織を5mM MES(pH5.6)0.5ml中で細分する段階、およびその後ホモジネートを、50μg/mlリファンピシンおよび2μg/mlシクロヘキシミドが入ったKing培地B寒天上に希釈播種して細菌集団を決定する段階によりアッセイした。3個の葉試料からの平均およびSDを、各時点で決定した。DC3000およびCUCPB5110のインプランタにおける相対増殖を、4回の個別の実験により同様にアッセイして、DC3000、CUCPB5115、およびCUCPB5115(pCPP3016)の相対増殖を、3回の個別の実験においてアッセイした。DC3000により達成された最終集団レベルは実験間で変動したが、野生型に対する変異体の集団レベルは、下記に説明した代表的実験においてと同じであった。
【0140】
実施例 1−Psy 61 、 Psy B728a 、および Pto DC3000 の hrp/hrc 遺伝子クラスターの比較
Psy B728aおよびPto DC3000由来のhrp/hrcクラスターが、先に特徴付けられたPsy 61のhrp/hrcクラスターと同様に組織化されているかどうかを決定するために、hrp/hrc挿入物を持つ2種のコスミドを部分的に特徴決定した。pCPP2346は、B728aのhrp/hrcクラスター全体を持ち、pCPP2473は、DC3000のhrp/hrcクラスターの左半分を持つ。DC3000 hrp/hrcクラスターの右半分は、既に特徴付けられている(Prestonら、1995)。これらのコスミドに由来したいくつかのサブクローンの末端の配列決定は、B728aおよびDC3000 hrp/hrcクラスターのフィンガープリントを提供し、これは両方が61株のように配列されていることを示した(図1)。しかし、B728aは、hrcUおよびhrpVの間に、バクテリオファージλ遺伝子Ea59(23%のアミノ酸同一性;E=2e−7)およびEa31(30%のアミノ酸同一性;E=6e−8)との相同体を含む3.6kb挿入物を含み(Hendrixら、1983)、B728a hrcU ORFは、36個の追加のコドンを含む。マメに対して高度に毒性であるようないくつかのPsy株においてこのサイズの可能性のある挿入は、先にRFLP分析により示された(Legardら、1993)。B728a hrp/hrc領域および隣接配列(左側4kbおよび右側13kb)を含むコスミドpCPP2346は、蛍光菌(P. fluorescens)に、B728a HrpZハルピンを培養物中に分泌させ、タバコ葉においてHRを誘起させるのを可能にするが、しかし集密な壊死は、蛍光菌(P. fluorescens)(pHIR11)の場合よりもより緩徐に生じた(データは示さず)。更に内部参照を用いて、Psy 61およびB728a hrp/hrc遺伝子クラスターの同系性(relatedness)を試験するために、B728a hrpA遺伝子を配列決定した。PsyおよびPtoにおいて配列決定されたhrp/hrc遺伝子のhrpAは、Hrp線毛(pilus)の主要サブユニットをコードする(Roineら、1997)が、これは最も保存性が少ない(28%のアミノ酸同一性)(Prestonら、1995)。しかし、61株およびB728a株のhrpA遺伝子は、100%同一であり、このことはこれらの菌株の密接な関係およびそれらのHrp系を更に裏付けている。
【0141】
実施例 2−hrpK および tRNA Leu 間の Hrp Pai における交換可能なエフェクター遺伝子座( EEL )の同定
Pry 61、Psy B728a、およびPto DC3000のHrp Paiの左側の配列分析から、これらの菌株におけるhrpK配列の高い割合の同一性は、hrpK停止コドン後の3ヌクレオチドで突然終結して、その後異なる介在DNA 2.5kb(Psy 61)、7.3kb(Psy B728a)、または5.9kb(Pto DC3000)の後に、tRNALeu、queA、およびtgt配列近傍で回復されることが示された(図2)。この領域のPsy 61株およびB728a株の間の差異は、特に驚異的である。P.シリンゲ(syringae)Hrp Paiのこの領域は、高頻度でこの遺伝子座で交換されると考えられる完全に異なるエフェクタータンパク質遺伝子を含むので(下記表1)、EELと称された。これに関して、(i)B728a EEL中のORF2は、Pph 1302Aにおいて、hrpK(hrpY)のすぐ下流の異なる位置にある、avrPphEの相同体である(Mansfieldら、1994)、(ii)hopPsyA(hrmA)は、いくつかのPsy株においてのみ存在する(HeuおよびHutcheson、1993;Alfanoら、1997)、および(iii)B728a EEL中のORF5は、キサントモナス(Xanthomonas)AvrBsTに類似して、AvrRxvファミリーに特徴的な複数のモチーフを有するタンパク質を予測する(Ciesiolkaら、1999)ことは、注目に値する。ゲノム平均と異なるG+C含量は、水平伝播(horizontally transfer)された遺伝子の顕著な特徴であり、これら3種のEELにおけるORFのG+C含量は、P.シリンゲ(syringae)に関する平均である59%〜61%よりもかなり少ない(Palleroniら、1984)(下記表1)。これらはまた、hrpK(60%)およびqueA(63%〜64%)よりも少ない。Pto DC3000 EELにおけるORFからは、公知のエフェクタータンパク質に類似した産物は予想されないが、T7ポリメラーゼ依存型発現により、ORF1、ORF3、およびORF4について予想されたサイズ範囲内の産物が明らかになった。更にORF1タンパク質は、P.シリンゲ(syringae)Avrタンパク質を分泌するエルウィニア・クリサンセミ(Erwinia chrysanthemi)Hrp系を発現する、大腸菌(E. coli)(pCPP2156)によりhrp依存様式で分泌される(Hamら、1998)。これらのEELにおけるいくつかのORFは、HrpL活性化されたプロモーターを示すHrpボックスの前に位置し(図1)(XiaoおよびHutcheson、1994)、介在Rho独立ターミネーター配列またはプロモーターの欠損は、DC3000のORF1ならびにB728aのORF1およびORF2が、各々のhrpK遺伝子の上流のHrpL活性化されたプロモーターから発現されることを示唆している。
【0142】
これら3種の菌株のEELは、更に挿入配列、トランスポゼース(tranposase)、ファージインテグラーゼ遺伝子、およびプラスミドに相同な配列も含む(下記図2および表1)。Psy B728a ORF5およびORF6のオペロンは、いくつかのavr遺伝子を保持するPphプラスミド内のものに類似した配列(Jacksonら、1999)、およびこの領域内のISエレメントを介してプラスミド組込みを示唆しているプラスミドに典型的に認められる挿入エレメントに相同な配列(SzaboおよびMills、1984)に左側で境を接している。Psy B728a ORF3およびORF4は、病原性大腸菌(E. coli)株によるLEE Paiの水平獲得に関与した配列に対する類似性を示している(Pernaら、1998)。これらのPsy B728a ORFは、Hrpボックスの前になく、エフェクタータンパク質をコードしている可能性はない。
【0143】
a病原型の(pathover)略号は、普遍的avr命名法に関するビビアン(Vivian)およびマンスフィールド(Mansfield)の論文の推奨(1993)に対応する。
【0144】
EELの左側境界は、多くのtRNALeu遺伝子ならびに大腸菌(E. coli)queAおよびtgtキュエオシン(queuosine)生合成遺伝子に類似した配列を含む(予想された産物において約70%のアミノ酸同一性)。EEL配列は、P.シリンゲ(syringae)tRNA配列の3’末端で終結し、これはPaiに典型的である(Hou、1999)。実際に同一のtgt−queA−tRNALeu配列が、蛍光シュードモナス属菌(fluorescent pseudomonad)群でもある緑膿菌(P. aeruginosa)PAO1のゲノムに認められている(www.pseudomonas.com)。しかしPAO1は植物病原体ではなく、この緑膿菌(P. aeruginosa)のtRNALeuは、いずれのIII型分泌系遺伝子にもHrp Paiの他の遺伝子にも連結していない(図2)。従って、これは先祖のシュードモナス(Pseudomonas)ゲノムにおけるHrp Paiの挿入点であることは明らかである。
【0145】
実施例 3−Psy B728a および Pto DC3000 における Hrp Pai の右側に位置した保存性エフェクター遺伝子座( CEL )の同定
DC3000におけるhrpRの右側領域に関する以前の研究は、2個の転写ユニットで構成されたavrE遺伝子座の存在(LorangおよびKeen、1995)、hrpRを越える最初の4種の転写ユニットの5’配列(LorangおよびKeen、1995)、ならびに第二のハルピンをコードするhrpW遺伝子としての第四の転写ユニットの同一性(Charkowskiら、1998)を示した。Pto DC3000におけるhrpRの右側の最初の14個のORFのDNA配列は、この研究において完了して、Psy B728aにおける対応する領域が、部分的に配列決定された(図3)。EEL同様、この領域は、推定エフェクター遺伝子、例えばavrEを含む(LorangおよびKeen、1995)。EELとは異なり、この領域のORFは、hrp/hrc遺伝子の値に近似した平均G+C含量58.0%を有し、この領域は公知の可動性遺伝因子に類似した配列を含まず、これはPsyとPtoの間で保存されていると考えられる(図3)。B728aおよびDC3000において配列決定されたこの領域の比較は、最初の7個のORFが同じに配列され、平均で78%のDNA配列同一性を有することを示す。従ってこの領域には、CELの名称が与えられた。
【0146】
CELの正確な境界は決定されておらず、Hrp PaiのEEL境界において反復される配列は見つかっていない。上流Hrpボックスの存在に基づいて、ORF7およびORF8はCELの一部である可能性がある(図3)。しかし、次のORFの産物が細菌GstAタンパク質ファミリーと相同性を示しており(例えば、204アミノ酸にわたるE. coli GstAとの28%同一性;E=1e−8)(Blattnerら、1997)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ活性は非病原性である蛍光シュードモナス属菌において共通である(Zablotowiczら、1995)ので、ORF1Oを越える領域はCEL内ではないと考えられる。この領域におけるgalP相同体(不完全配列に基づいて、E. coli GalPに対して256アミノ酸にわたる38%の同一性;E=2e−42)(Blattnerら、1997)の存在は、これがCELを越えていることを更に示している。
【0147】
B728aおよびDC3000におけるこの領域のいくつかの他の特徴は注目に値する。(i)低い配列同一性(44%)により識別されるが、hrpRSオペロンの発現に影響を及ぼすステムループ構造を形成できるような3個の逆方向反復配列を含む、1kbの遺伝子間領域を、両株共、hrpRとORF1の間に有する。(ii)ORF1は、E. coilムレイン溶解性トランスグリコシラーゼMltDとほとんど類似している(324個のアミノ酸について38%の同一性;E=4e−56)。(iii)ORF2は、候補シャペロン、E.アミノボーラ(amylovora)DspFと130アミノ酸について42%の同一性を有する(E=9e−24)(Bogdanoveら、1998a;Gaudriaultら、1997)。(iv)ORF5タンパク質は、大腸菌(E. coli)(pCPP2156)によりhrp依存様式で分泌されるが、ΩSprカセットの変異は、タバコでのHR誘起またはトマトの病原性のいずれに対してもほとんど作用しない(Charkowski、未発表)。(v)最後に、この領域の6個のオペロンは、Hrpボックスに先行し(LorangおよびKeen、1995)(図3)、これは公知のP.シリンゲ(syringae)のavr遺伝子の特徴である(Alfanoら、1996)。従って、CELは複数の候補エフェクターを保持する。
【0148】
実施例 4− 病原性における EEL および CEL の役割の研究
DC3000において、hrpKとtRNALeu(EEL)の間の全てのORFがΩSprカセットと交換されるような変異を構築した(図2)。このPto変異体CUCPB5110を、タバコにおいてHRを誘起する能力およびトマトにおいて疾病を引き起こす能力について試験した。この変異体は、HRを誘起する能力および疾病症状を生じる能力を維持していたが、トマトにおいて親株と同じくらい高い集団レベルに到達することはできなかった(図4A)。
【0149】
DC3000において、avrEからORF5(CEL)がΩSprカセットと交換されたような変異を構築した。これは、部分的に特徴付けられかつエフェクターをコードしうるCEL ORFの全てを欠損していた。このPto変異体CUCPB5115は依然としてタバコにおいてHRを誘起したが、組織崩壊は約5時間遅延していた(図4C)。濃度104cfu/mlで浸漬した場合に、この変異体はトマトにおいて全く疾病性状を引き起さず、インプランタでの増殖が大きく低下した(図4B)。しかしこの変異体は、PtoS(感受性)およびPtoR(耐性)リオグランデ(Rio Grande)トマト株に関連した試験において、野生型とは識別不能であるトマトPto R遺伝子に依存したHRを誘起した。ORF2からORP10を保持するプラスミドpCPP3016は、CUCPB5115の疾病症状を引き起こす能力を完全に回復して、トマト葉において増幅する変異体の能力を一部回復した(図4Bおよび4E)。Pto DC3000におけるhrp/hrcクラスターの欠失は、HRおよび病原性の表現型を廃した(Collmerら、2000)。Pto変異体CUCPB5110およびCUCPB5115における大きな欠失がHrp分泌機能を破壊しないことを確認するために、本発明者らは、これらの変異体、DC3000 hrp/hrc欠失変異体および野生型DC3000の、シグナルペプチドを欠損しているβ−ラクタマーゼで構成した細胞質マーカーを保持しながら、培養物中にAvrPtoを産生して分泌する能力を比較した。培養物中に分泌されかつインプランタで宿主細胞へ注入された良く研究されたエフェクタータンパク質であるため、AvrPtoは、この試験の理想的対象を提供する(AlfanoおよびCollmer、1997;van Dijkら、1999)。hrp/hrc欠失クラスター変異体のみが、AvrPto産生および分泌を損なっていた(図5)。
【0150】
前述の研究に基づいて、P.シリンゲ(syringae)hrp/hrc遺伝子は、EEL、hrp/hrc遺伝子クラスター、およびCELの3種の個別の遺伝子座を有するHrp Paiの一部である。EELは、交換可能なエフェクター遺伝子を有して、宿主植物の寄生適合度(parasitic fitness)に対して量的寄与のみを生じている。このhrp/hrc遺伝子座は、Hrp分泌系をコードして、エフェクタータンパク質送達、寄生および病原性に必要である。CELは、Hrp分泌機能に認識できる寄与をもたらさないが、寄生適合度には強力に寄与してトマトにおけるPto病原性には必要である。P.シリンゲ(syringae)のHrp Paiは、動物病原体が持つPaiのいくつかの特性を有し(Hackerら、1997)、これは、tRNA遺伝子座に連結した巨大な(約50kb)染色体領域における多くの毒性関連遺伝子(いくつかは比較的低いG+C含量を有する)の存在および密接に関連した種における対応する遺伝子座の不在を含む。加えて、Hrp PaiのEEL部分は、不安定であり、可動性遺伝因子に関連した多くの配列を含む。
【0151】
EELは、公知のPaiの新たな特徴であり、これは様々な植物宿主とP.シリンゲ(syringae)株の寄生適合度への細かい調節(fine−tuning)に関連していると考えられる。P.シリンゲ(syringae)株の密接な関係株および疎遠な関係株を比較することにより、本発明者らが、この遺伝子座の高い不安定性およびその境界配列の対照的に高い保存性を確立することができた。本発明者らは、PsyおよびPto EELにおいてファージ、挿入配列、およびプラスミドに関連した断片を認め、最近、その他の3種のP.シリンゲ(syringae)株の対応する領域内において挿入配列が報告された(InoueおよびTakikawa、1999)ため、単独のメカニズムでは高い不安定性を説明することができない。Hrp PaiにおけるtRNALeuとhrpK配列の間のEEL局在のメカニズムまたは意義も不明である。Pto DC3000は、そのゲノムの他の場所に位置する(Ronaldら、1992)少なくとも1個の他のエフェクター遺伝子avrPtoを保持し、多くのP.シリンゲ(syringae)avr遺伝子はプラスミド上に位置し(LeachおよびWhite、1996)、EEL ORFは、広範なエフェクター遺伝子(例えば、avrRxvファミリー)と希と考えられるエフェクター遺伝子(例えば、hopPsyA)の混合を表している。EEL ORFのG+C含量は、残りのHrp PaiおよびP.シリンゲ(syringae)ゲノムのそれよりも顕著に低い。Hrp Paiの非EEL部分におけるある種の遺伝子、例えばhrpAは、高度に分岐しているが、これらは高いG+C含量を有して、これらが個別に残りのHrp Paiから水平伝播した証拠はない。EELの(および、他のP.シリンゲ(syringae)avr遺伝子の)ORFの比較的低いG+C含量は、これらの遺伝子が、単にP.シリンゲ(syringae)よりも、病原細菌のより広いプールから水平獲得されたことを示唆している(Kimら、1998)。実際、遺伝子のavrRxvファミリーは、広範な植物および動物病原体において発見されている(Ciesiolkaら、1999)。Pto DC3000 EEL欠失、またはPsy 61におけるhopPsyA(hrmA)の変異(Huangら、1991)の寄生適合度に対する弱い作用は、個々のavr遺伝子の変異の典型であり、エフェクタータンパク質系における冗長性(redundancy)に起因する(LeachおよびWhite、1996)。
【0152】
hrpKおよびCEL ORF1の機能は不明であるが、考察に値する。これらの2種のORFは、hrpおよびhrc両遺伝子を含むオペロンのhrpLおよびhrpR非限定クラスター(delimited cluster)のすぐ外側にあり、これによりHrp Paiの3種の領域が空間的に区別される(図1〜図3)。hrpK変異体は、変動可能なHrp表現型を有し(Mansfieldら、1994;Bozsoら、1999)、Psy B728a hrpK変異体は依然HrpZを分泌しており(Alfano、未発表)、このことはHrpKは、エフェクタータンパク質であり得ることを示唆している。しかしながら、Psy 61およびPto DC3000のHrpKタンパク質は79%の同一性を有し、従って多くのHrp分泌系成分よりもより多く保存されている。hrpKは、Psy B728aおよびPto DC3000において他のエフェクター遺伝子を含むオペロン内にあると考えられることも注目に値する。対照的に、CEL ORF1は、細菌のペプチドグリカン層を通る系の侵入(penetration)を促進することにより、Hrp分泌機能に(弱くまたは過剰に)寄与していると考えられる。このORF1産物は、大腸菌(E. coli)MltDと極めて相同であり、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)遺伝子であるipgFの産物とリゾチーム様ドメインを共有しており(Mushegianら、1996)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)遺伝子は同じくIII型分泌系およびエフェクタータンパク質をコードする遺伝子座の間に位置している(Allaouiら、1993)。PtoおよびS. flexneriにおけるこれらの遺伝子の変異は明らかな表現型を有さず(LorangおよびKeen、1995;Allaouiら、1993)、これはペプチドグリカン加水分解酵素をコードする遺伝子の典型である(DijkstraおよびKeck、1996)。
【0153】
対応するオペロンが個別に破壊されているDC3000変異体においては病原性が保持されているため、CELにおいてavrE−ORF5が欠失したPto変異体CUCPB5115における病原性の喪失は驚きである(LorangおよびKeen、1995;Charkowskiら、1998)。この領域の可能性のある機能およびその構成遺伝子の保存の評価において、avrEは、試験したダイズ栽培品種全てにおいてP.シリンゲ(syringae)pv.グリシネア(glycinea)に無毒性(avirulence)を付与する点および病原性に必要であるE.アミノボーラ(amylovora)の相同体(dspE)を有する点で、Ptoにおいて認められた他のavr遺伝子とは異なることに注意しなければならない(LorangおよびKeen、1995;Bogdanoveら、1998b)。CELは病原性に必要であるが、変異体は依然AvrPtoを分泌しているため、III型エフェクタータンパク質分泌には必須ではない。変異体が、依然として非宿主タバコおよびPtoR耐性トマト株においてHRを誘起して、この領域を欠いているpHIR11はいくつかのAvrタンパク質の移入が可能であると考えられるため、同じく、エフェクタータンパク質の植物細胞へのIII型移入において必須の役割を果たしていないように見える(Gopalanら、1996;Pirhonenら、1996)。分岐している病原型PsyおよびPtoにおけるこの領域の保存、ならびに疾病におけるその重要性は、CEL産物が病原性の共通の必須の様相に重複して関連しうることを示唆している。
【0154】
hrp/hrc遺伝子、CELにおける遺伝子、およびP.シリンゲ(syringae)全ゲノムDNAの類似したG+C含量およびコドン使用は、Hrp PaiがP.シリンゲ(syringae)の進化の初期に獲得されたことを示唆している。しかしEEL領域は、その多くの病原型、品種、および菌株へのP.シリンゲ(syringae)の照射において早期に同様に発生されたが、先に考察した見かけの不安定性は、この遺伝子座における進行中の迅速な進化を示唆している。実際、多くのP.シリンゲ(syringae)avr遺伝子が、それらの遺伝子座とは関わりなく、可動性遺伝子的エレメントと関連している(Kimら、1998)。従って、P.シリンゲ(syringae)におけるHrp媒介性病原性は、分岐する病原型の中で普遍的である遺伝子のセットによって、および例え同じ病原型であっても株間で変動する別のセットによって、集合的に左右されると考えられる。後者は、宿主R遺伝子サーベイランス系を回避しつつ、寄生を促進するための反対の選択圧に対して反応して獲得され、喪失されると考えられる。
【0155】
実施例 5−HopPsyA エフェクターのための III 型シャペロンとしての ShcA の役割
暫定的にshcAと称されるhopPsyA上流のORFは、予想された分子量のタンパク質産物をコードする。P.s.シリンゲ(syringae)61におけるhopPsyA遺伝子の上流のORF(当初ORF1と称される)は、各々、緑膿菌(P. aeruginosa)およびペスト菌(Yersinia pestis)のIII型エフェクター遺伝子に隣接する遺伝子である、exsCおよびORF7と配列同一性を共有している(FrankおよびIglewski、1991;Perryら、1998)。これらのORFはいずれも実験的にシャペロンをコードすることは示されていないが、これらがIII型シャペロンが有することが多い特性を共有することが注目される(Cornellisら、1998)。これらの特性のひとつは、シャペロン遺伝子それ自身の位置である(図1および図6)。シャペロン遺伝子は、シャペロンが相互作用しているエフェクタータンパク質をコードする遺伝子に隣接することが多い。更に、shAも、III型シャペロンの他の共通の特徴を共有している:そのタンパク質産物は比較的小さく(約14kDa)、これは酸性pIを有して、両親媒性α−ヘリックスであると推定されたC末端領域を有する。shcA機能の評価を始めるために、最初にshcAはタンパク質産物をコードするかどうかを決定した。shcAをFLAGエピトープをコードする配列にインフレームで融合した構築体を、PCRを用いて調製した。この構築体pLV26は、推定リボソーム結合部位(RBS)を含むshcAの上流のヌクレオチド配列を含んでいる。DH5αF’IQ(pLV26)培養物を、濃厚培地において増殖して、IPTGにより適当な密度に誘導した。全細胞ライゼートを、SDS−PAGE上で分離して、抗FLAG抗体を用いたイムノブロットにより分析した。pLV26によりコードされたShcA−FLAGを、ベクターRBS由来のShcA−FLAGを生じる構築体と比較することにより、shcAの上流の固有のRBSは、翻訳についてコンピテントである(図7)と結論した。従ってshcA ORFは、タンパク質産物をコードする正統(legitimate)遺伝子である。
【0156】
shcAの細菌−植物相互作用に対する作用を試験するために、shcA変異を、コスミドpHIR11上に保持された最小限のhrp/hrcクラスターにおいて構築した。pHIR11に交換したshcA変異マーカーを有することには、際だった利点がある。主なもののひとつは、pHIR11依存型HRはHopPsyAの植物細胞への送達を必要とするので(Alfanoら、1996;Alfanoら、1997)、HRアッセイ法を、HopPsyAが植物細胞へ移入されているかどうかを決定するためのスクリーニングとして使用できることである。染色体shcA変異体により、他のHopタンパク質は植物細胞の内部へと送達されると考えられる。これらのタンパク質の一部は、R遺伝子に基づく植物サーベイランス系により認識され、HopPsyA送達における何らかの欠損のHRマスキングを開始すると考えられる。shcA中に非極性nptIIカートリッジを含むような、pHIR11誘導体であるpLV10を保持する大腸菌(E. coli)MC4100は、タバコにおいてHRを誘起することができなかった(図8)。このことは、shcAが、HopPsyAの植物細胞への移入に必要であることを示唆している。HopPsyAが培養物へ分泌されたかどうかを決定するために、非病原性蛍光菌(P. fluorescens)55の培養物を増殖した。この細菌は、pHIR11、pCPP2089(III型分泌を欠損しているpHIR11誘導体)、またはpLV1Oのいずれかを保持していた。代表的結果を図8に見ることができる。shcAは、HopPsyAエフェクタータンパク質の培養物中のIII型分泌に必要であったが、pHIR11によりコードされたHrp系により分泌される別のタンパク質であるHrpZ分泌には不要であった。これらの結果は、III型分泌の欠損は、HopPsyAに特異的であり、HopPsyAのシャペロンをコードするshcAと一致することを示唆している。これらの結果から、hopPsyA遺伝子の上流のORFは、shcA(specific hop chaperone for HopPsyA)と命名され、この命名システムは、研究者が原型エルシニア(Yersinia)III型系におけるシャペロンのために使用した命名システムと一致している。
【0157】
実施例 6− 植物において発現された hopPsyA の細胞毒性作用
インプランタにおけるhopPsyA DNAの一過性発現は、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)において細胞死を誘導するが、N.ベンサミアナ(benthamiana)、マメ、またはアラビドプシスにおいては誘導しない。タバコの懸濁細胞中で生成された場合と同様に、HopPsyAがタバコ葉に細胞死を誘導するかどうかを決定するために、hopPsyA遺伝子をアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のT−DNA上に送達する形質転換系を使用した(Rossiら、1993;van den Ackervekenら、1996)。この送達系は、植物葉全体の一過性の形質転換のための微粒子銃よりも、より良くはたらく。これらの実験のために、ベクターpTA7002をロックフェラー(Rockefeller)大学のナム−ハイ・チュア(Nam−Hai Chua)氏とその同僚のご厚意により入手し、使用した。このベクターの独自の特性は、グルココルチコイド受容体の調節メカニズムを用いた誘導可能な発現系を含むことである(Picardら、1988;AoyamaおよびChua、1997;McNellisら、1998)。pTA7002は、GAL4のDNA結合ドメイン、ヘルペスウイルスタンパク質VP16のトランス活性化ドメイン、およびラットのグルココルチコイド受容体の受容体ドメインからなるキメラ転写因子をコードする。更にこのベクターには、複数のクローニング部位の上流のGAL4上流活性化配列(UAS)を含むプロモーターも含まれる。従ってGAL4−UASを含むプロモーターの下流にクローニングされた遺伝子は、グルココルチコイドにより誘導されるが、これについては合成グルココルチコイドであるデキサメタゾン(DEX)が市販されている。hopPsyAを、GAL4−UASの下流にPCRクローニングした。いくつかの異なる被験植物の植物葉を、pTA7002::hopPsyAを保持するアグロバクテリウム(Argrobacterium)に浸漬して、48時間後、これらの植物にDEXを噴霧した。N.タバカム(tabacum)のみが、hopPsyAのDEX誘導性一過性発現に反応し、HRを誘起した(図13A)。対照的に、N.ベンサミアナ(benthamiana)は、DEX誘導後に明らかな反応を生じなかった(図13B)。更に、マメ科植物(Phaseolus vulgaris L.「Eagle」)(データは示さず)およびシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)生態型Co1−1(図13)におけるhopPsyAの一過性発現は、HRを生じなかった。これらの結果は、マメ科cv.イーグル(Eagle)、アラビドプシスCo1−1、およびN.ベンサミアナ(benthamiana)は、HopPsyAを認識することができる抵抗タンパク質を欠いていることを示唆している。HopPsyAは通常マメの病原体であるP.s.シリンゲ(syringae)61において産生されるので、マメにおいて一過的に発現されたHopPsyAへの明らかな防御反応の欠如が予想された。しかしHopPsyAの一過性発現がどのようにしてアラビドプシスに作用するかについては若干不明点がある。しかし、アラビドプシス病原体であるP.s.トマト(tomato)DC3000は、プローブとしてhopPsyAを用いたDNAゲルブロットに基づいてhopPsyA相同体を有すると考えられるので、HopPsyAは、アラビドプシスのRタンパク質によっては認識されない(すなわち、HRは産生されない)ということが予想された(Alfanoら、1997)。従って、これらの植物(マメ、アラビドプシス、およびN.benthamiana)は、植物病原性におけるHopPsyAの細菌の意図した役割の探索に理想的な植物である。
【0158】
P.s.pv.シリンゲ(syringae)61は、Hrp(III型)タンパク質分泌系により、培養物中にHopPsyAを分泌する。P.シリンゲ(syringae)Avrタンパク質AvrBおよびAvrPtoは、大腸菌(E. coli)において発現されたコスミドpCPP2156上に保持された機能性E.クリランセミ(chrysanthemi)hrpクラスターによりコードされたIII型分泌系により分泌されることがわかっているので(Hamら、1998)、P.s.シリンゲ(syringae)61に保持された固有のHrp系による直接の培養物中のHopPsyA分泌の検出を試験した。hrp脱抑制しているフルクトース最小培地において22℃で増殖させたP.s.シリンゲ(syringae)61培養物を、遠心分離により細胞結合した画分と上清画分に分離した。上清画分中に存在するタンパク質を、TCA沈降により濃縮して、細胞結合試料および上清試料を、SDS−PAGEにより分解して、抗HopPsyA抗体を用いたイムノブロットにより分析した。野生型P.s.シリンゲ(syringae)61由来の上清画分からのHopPsyAシグナルを検出した(図14)。重要なことに、HopPsyAは、Hrp分泌を欠損しているP.s.シリンゲ(syringae)61−2089から得た上清画分には検出されず、これは、上清中のHopPsyAシグナルは特異的にIII型タンパク質分泌に起因することを示唆している(図14)。第二の対照として、両菌株は、N末端シグナルペプチドを欠損している成熟型β−ラクタマーゼをコードして、細胞溶解マーカーを提供しているpCPP2318を含んだ。β−ラクタマーゼは、これらの試料の細胞結合画分においてのみ検出され、このことは明確に、細胞溶解が顕著なレベルで生じないことを示している(図14)。HopPsyAはIII型分泌系により培養物中に分泌されるという事実、およびHopPsyAの無毒性活性は、それが植物細胞において発現された場合にのみ生じるという事実は、HopPsyAはIII型経路により植物細胞へ送達されることを強力に裏付けている。
【0159】
HopPsyAは、マメにおけるP.s.シリンゲ(syringae)61の生育に、例え少量であっても検出可能な経路で寄与している。マメ組織におけるP.s.シリンゲ(syringae)61の増幅に対するHopPsyA変異の作用が報告されている(Huangら、1991)。これらのデータは、HopPsyAは、P.s.シリンゲ(syringae)61をマメにおいて増幅する能力にはほとんど寄与しないことを本質的に示している。P.s.シリンゲ(syringae)61 hopPsyA変異体は、マメの葉においては、野生株と同様には増殖しなかった(図15)。これらの結果は以前に報告されたデータと全く対立するので、このことは予想外であった。この矛盾に関するひとつの理論的説明は、先の報告は主に、そのインプランタでの生育におけるhrp変異体が示している主要表現型に焦点を当てており、HopPsyAがIII型で分泌されたタンパク質であるという発見以前のものであるということである。従って初期の実験では、HopPsyAがマメ組織におけるP.s.シリンゲ(syringae)61の増殖に対して有すると思われる、より何回な作用を見落とした可能性がある(Huangら、1991)。本明細書において示されたデータは、HopPsyAがP.s.シリンゲ(syringae)の病原性に寄与することを裏付け、P.シリンゲ(syringae)由来のHopの大部分は病原性にわずかに寄与するという仮説に一致している。様々なavr遺伝子およびhop遺伝子に欠損がある変異体についての強力な病原性表現型の欠如は、avr/hop遺伝子の重複性の可能性または植物の共進化を通じてのいずれかひとつのHopタンパク質への依存性の低下に起因しうる。実際、植物細胞へ送達される植物病原体のIII型で送達されたタンパク質は、それ自身が毒性タンパク質であることはないが、むしろ発病の進行に重要である植物の反応を抑制することができる(Jakobekら、1993)。これらの反応は、防御反応または植物内のそのままの状態(例えば、細胞周期)を維持するというような、より一般的な過程でありうる。
【0160】
実施例 7−HopPsyA の分子相互作用
HopPsyAは、酵母ツーハイブリッド系においてアラビドプシスMad2タンパク質と相互作用する。HopPsyAの病原性標的を決定するために、酵母ツーハイブリッド系を、アラビドプシスから作製したcDNAライブラリーと共に使用した(FieldsおよびSong、1989;FinleyおよびBrent、1994)。この酵母ツーハイブリッド系において、関心のあるタンパク質(「餌(bait)」)とLexA DNA結合ドメインの間の融合を、酵母試験菌株に形質転換した。転写活性化ドメインへの融合を形成するベクターにおいて、cDNA発現ライブラリーを構築した。このライブラリーを、ひとまとめに試験菌株へと形質転換して、「餌」のパートナーをコードするクローンを、転写活性化ドメインをDNA結合ドメインに隣接させ、その結果LEU2選択マーカー遺伝子の転写を開始するそれらの能力によって選択した。LEU2マーカーを活性化する候補の第二ラウンドのスクリーニングは、同じくlacZレポーター遺伝子を活性化するそれらの能力に頼った。餌構築体は、完全長HopPsyA−LexA融合体、LexAに融合したHopPsyAのカルボキシ末端の半分、およびLexAに融合したHopPsyAのアミノ末端の半分に相当した酵母ベクターpEG2O2において、hopPsyAにより最初に作製して、これらの構築体を各々pLV23、pLV24、およびpLV25と称した。しかし、pLV23は酵母にとって致死性であり、またpLV25は、それ自身において(すなわち、活性化ドメイン存在せず)比較的多量のlacZレポーター遺伝子を活性化した。従って、pLV23およびpLV25は両方とも、酵母ツーハイブリッド系によるタンパク質相互作用物(interactor)のスクリーニングには使用されなかった。lexAに融合したhopPsyAの3’部位を含むpLV24は、lacZレポーター遺伝子を自己活性化せず、またpJK101を用いたlacZ抑制アッセイ法に基づいて、pLV24により作出された「HopPsyA−LexA融合体」が核に局在すると考えられるため、pLV24は酵母ツーハイブリッド系における餌として使用するのに適当な構築体であることが証明された。加えて、このベクターを有する酵母培養物において抗HopPsyA抗体によるイムノブロットを行うことにより、pLV24がHopPsyAに相当する適当なサイズのタンパク質を産出することが確認された。
【0161】
酵母ツーハイブリッドベクターpJG4−5中のpLV24およびアラビドプシスcDNAライブラリーを用いて一次スクリーニングを行った。3種の個別のスクリーニングから、HopPsyAとの数百種の推定相互作用物が同定され、各々は異なる程度まで2種のレポーター系を活性化した。これらの推定陽性酵母株を再スクリーニングし、判定基準をガラクトース存在下でlacZレポーターおよびLEU2遺伝子の両方を強力に誘導した相互作用物に限定した場合、HopPsyAのC末端半分と相互作用するタンパク質をコードしたpJG4−5誘導体を含むと考えられる約50種の酵母株が同定された。プローブとして選択されたpJG4−5誘導体からPCR増幅された挿入物を用いたDNAゲルブロットは、これらの推定陽性の各々をグループ化することを可能にした。強力なHopPsyA相互作用物をコードするpJG4−5誘導体のおよそ50%は、同じグループに属した。この挿入物を含むpJG4−5誘導体であるpLV116を配列決定した。pLV116内に含まれたこの挿入物の推定アミノ酸配列は、酵母、ヒト、カエル、およびトウモロコシにおいて発見されたMad2相同体(mitotic arrest deficient)と高いアミノ酸同一性を共有していた。更に他のMad2タンパク質とのアミノ酸比較に基づいて、pLV116は、完全長mad2 mRNAに相当するcDNA挿入物を含んでいる。下記表2は、現在データベースにある全てのMad2相同体とのアミノ酸同一性の割合(%)を示している。
【0162】
*比較は、Genbankに存在する配列を用いて、DNAStar社(Madison、WI)においてMEGALIGNプログラムを用いて行った。略号およびアクセッション番号は以下の通りである:
アラビドプシス:シロイヌナズナ(A. thaliana)Co1−0(本試験);トウモロコシ:トウモロコシ(Zea mays)(AAD30555);ヒト:ヒト(Homo sapiens)(NP_002349);マウス:マウス(Mus musculus)(AAD09238);カエル:アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(AAB41527);分裂酵母:シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(AAB68597);出芽酵母:サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(P40958)。
【0163】
予想外のことだが、アラビドプシスMad2タンパク質の配列は、このデータベースにおいて説明された唯一の植物Mad2相同体であるトウモロコシのMad2により近似していた。トウモロコシMad2は、アラビドプシスMad2と約82%の同一性を有する。図16A−Bは、ロイシン欠乏プレートおよびX−Ga1を含むプレート上の、pLV24およびpJG4−5、pEG2O2およびpLV116、またはpLV24およびpLV116のいずれかを含む酵母株を示し、これはHopPsyAおよびMad2の両方が存在する場合にのみ、β−ガラクトシダーゼおよびLEU2活性が誘導されることを示唆している。mad2を生じるcDNAライブラリーは多くの様々な酵母ツーハイブリッドスクリーニングに使用され、mad2クローンはそれまでは単離されていないことに注意することは重要である。従って図16A−Bに示された結果は、cDNAライブラリーの性質上作出された人工物(artifact)を説明していないと考えられる。更に様々なMad2相同体が、特定のタンパク質と相互作用することが公知であり、これらの相同体のひとつが、餌として紡錘体チェックポイントのタンパク質を用いた酵母ツーハイブリッドスクリーニングにより単離された(Kimら、1998)。これは二つの理由により再保証されている。第一に他のMad2相同体は、非特異的に「付着性」タンパク質であるようには見えない。第二に、これらは、タンパク質−タンパク質相互作用により細胞過程を変調すると考えられる。
【0164】
Mad2は、真核生物の細胞周期の重要な段階である、有糸分裂時の分裂中期から後期への移行を制御するレギュレーターであるため、前述の結果は非常に有望なものである。真核生物の細胞周期は、細胞周期の他の相が開始され得る前のより早い事象の完了に左右される。例えば有糸分裂が生じる前に、DNA複製は完了する。細胞周期におけるこれらの依存の一部は、変異により軽減することができ、細胞周期が正常に進行していることを確認するチェックポイントを表している(HartwellおよびWeinert、1989)。ホイト(Hoyt)らならびにリー(Li)およびミュレー(Murray)の個別の画期的研究において、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)において適所に、染色体分離に必要な紡錘体集合が完了したかどうかをモニターするチェックポイントが存在することを発見した(Hoytら、1991;LiおよびMurray、1991)。このいわゆる紡錘体チェックポイントは、微小管重合を妨害する薬物を含有する培地に播種された野生型酵母細胞の有糸分裂は停止したが、ある種の変異体は分裂後期へと進行したことが観察された時に発見された。これらの最初の報告により、紡錘体チェックポイントに関連した6種の異なる必須でない遺伝子が同定された:ベンズイミダゾールにより阻害されない出芽(budding uninhibited by benzimidazole)についてbub1−3、および有糸分裂停止欠損について(mitotic arrest deficient)mad1−3と命名した。これらの遺伝子の変異は、紡錘体集合の異常を無視して、とにかく有糸分裂を試みる。この年以降数年間に、紡錘体チェックポイントが他の真核生物において保存されたことが示され、紡錘体チェックポイントで生じていることのより良い像を生じるという多くの利点が生じた(Glotzer、1996;RudnerおよびMurray、1996)。
【0165】
分裂中期から後期への移行(更には他の細胞周期の移行)に必要とされるのは、ユビキチンタンパク質分解経路である。分裂後期への侵入を阻害するタンパク質(例えば、S. cerevisiaeのPds1)は、後期促進複合体(APC)によりユビキチン経路による分解のためにタグを付けられる(Kingら、1996)。これらのタンパク質が26Sプロテオソームにより分裂された時のみ、細胞は、後期へと移行する。APCはどのようにして分解のための後期阻害因子をタグ付けする時を知るかは十分解明されてはいないが、これにはいくつかの重要な利点がある(Elledge、1996;Elledge、1998;Hardwick、1998)。Mad2タンパク質およびBub1タンパク質リン酸化酵素は、これらの領域が微小管に付着しない場合には動原体に結合することが示されている(Chenら、1996;LiおよびBenezra、1996;TaylorおよびMcKeon、1997;Yuら、1999)。従ってこれらのタンパク質は、全ての染色体は分離の準備ができた紡錘糸に結合していないというシグナルを若干中継すると考えられる。Mad1は、紡錘体チェックポイントが活性化された時に過剰リン酸化を生じるようなリンタンパク質をコードしており、Mad1の過剰リン酸化は、機能的Bub1、Bub3、およびMad2タンパク質に依存している(HardwickおよびMurray、1995)。このチェックポイントにおいて必要な別のタンパク質はMps1であり、これは、BubおよびMadタンパク質全てに依存した方法で過剰発現された場合に、紡錘体チェックポイントを活性化するタンパク質リン酸化酵素であり、このことはMps1は紡錘体チェックポイントにおいて非常に早期に作用することを示している(Hardwickら、1996)。
【0166】
研究された様々なMad2相同体のデータに基づいて、Mad2は紡錘体チェックポイントにおいて中心的役割を有すると考えられる。Mad2のアフリカツメガエル(Xenopus)卵抽出物への添加は、APCのユビキチンリガーゼ活性の阻害による、サイクリンB分解の阻害および有糸分裂停止を生じる(Liら、1997)。分裂酵母由来のMad2の過剰発現は、紡錘体チェックポイントの活性化により、有糸分裂停止を生じる(Heら、1997)。抗Mad2抗体の哺乳類細胞培養物への導入が、微小管作用物(microtubule drug)の非存在下で分裂後期への早期移行を生じるがゆえに、これはMad2が正常な細胞周期に関連していることを示している。いくつかの報告が、様々なMad2相同体がAPCと直接相互作用することを示唆している(Liら、1997;Fangら、1998;Kallioら、1998)。サッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)におけるCdc20と称される別のタンパク質は、APCに結合し、特定の細胞周期期間のAPC活性化に必要であり、Mad2がこれに結合する(Hwangら、1998;Kimら、1998;Lorcaら、1998;WassmannおよびBenezra、1998)。これらの興味深い知見の全てから新たに出現する像は、Mad2がCdc20へ結合することにより、APCの阻害因子として作用しうることを示す。Mad2が存在しない場合、Cdc20はAPCに結合し、これがAPCを活性化し、分裂後期への移行の阻害因子を分解する。図12は、Mad2の関与に焦点を当てかつサッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)由来の紡錘体チェックポイントタンパク質と称するものを用いた紡錘体チェックポイントのまとめを示している。
【0167】
植物の紡錘体チェックポイント:細菌病原体の可能性のある標的
動物由来の多くの細胞周期のタンパク質は、植物の場合と相同である(Mironovら、1999)。実際、紡錘体チェックポイントの存在することの早期の手掛かりのひとつは、最初に植物において成された。注目される知見は、それらの紡錘体への付着において遅れをとった染色体は、分裂後期への移行において遅延を生じるということである(BajerおよびMole−Bajer、1956)。更にmad2が、最近トウモロコシから単離され、有糸分裂下にある植物細胞におけるMad2タンパク質の局在は、他の系におけるMad2の局在と一致している(Yuら、1999)。公表された会議の報告に基づいて、アラビドプシス由来のAPC成分をコードする遺伝子が、最近クローニングされた(Inzeら、1999)。従って植物において機能的紡錘体チェックポイントが保存されていると思われる。先に示したデータは、酵母ツーハイブリッド系において、P.シリンゲ(syringae)HopPsyAタンパク質が、アラビドプシスMad2タンパク質と相互作用することを示している。
【0168】
細菌性植物病原体の病原性の戦略は、植物の細胞周期を変更することが可能である。最近デュアン(Duan)らは、X.シトリ(citri)由来のavr遺伝子のavrBs3ファミリーの一員であるpthAが柑橘類で発現され、細胞肥大(enlargement)および細胞分裂を惹起し、これが植物細胞周期に関連していることを報告した(Duanら、1999)。HopPsyAがMad2を標的とするならば、病原性に対する少なくとも2種の可能性のある利点が想定される。成熟葉の植物細胞は静止期であるので、これらの細胞へのHopPsyA送達のひとつの利点は、これがそれとMad2との相互作用を通じて細胞分裂を引き起し得ることである。これは、抗Mad2抗体は、哺乳類細胞において分裂後期の早期開始を引き起こすという知見と一致している(Gorbskyら、1998)。病原体に近いより多くの植物細胞が、アポプラスト(apoplast)において利用可能な栄養素を増加し得る。第二の潜在的利点は、HopPsyAが若い葉において活発に分裂している植物細胞へ送達される場合に生じる。HopPsyAのこれらの葉の植物細胞への送達は、それとMad2との相互作用を通じて、紡錘体チェックポイントを狂わせることがある。これらの細胞は、それらの染色体分離をより多く誤る傾向があり、一部の細胞において、これは死を生じ、細胞内容物は究極的にはアポプラストへ漏出し、病原体へ栄養素を提供する。
【0169】
実施例 8− 酵母において発現された HopPtoA および HopPsyA の細胞毒性作用
hopPtoA(配列番号:6)およびhopPsyA(配列番号:35)を両方とも最初にpFLAG−GTC(Kodak社)へクローニングし、FLAGエピトープとのインフレーム融合体を作出したが、これは抗FLAGモノクローナル抗体によるタンパク質産生のモニタリングを可能にした。次にFLAGタグ付き遺伝子を、酵母シャトルベクターp415GAL1においてGAL1プロモーターの制御下でクローニングした(Mumbergら、1994)。これらのサッカロマイセス・セレビシエ(Saceharomyces cerevisiae)の調節可能なプロモーターは、転写活性および異種発現の比較を可能にした。この組換えプラスミドをウラシル栄養要求酵母FY833/4株へ形質転換し、プラスミド上のURA3遺伝子の存在に基づいて、SC−Ura(ウラシル欠乏合成完全培地)上での増殖を選択した。次に形質転換体を、2%ガラクトース(これはHopPsyAおよびHopPtoAの発現を誘導する)または2%グルコースのいずれかを含有するSC−Ura培地プレート上に画線した。2%ガラクトースを補充したプレート上では増殖が見られなかった。この作用は反復試験において観察され、空ベクター対照において、p415GAL1に同様にクローニングした4種の別のエフェクターにおいて、またはガラクトースの代わりにラフィノースを使用した場合には観察されなかった。FLAGタグ付きの無毒Avrタンパク質を用いて、予想されたように、これらの遺伝子が、ガラクトース含有プレート上において示差的に発現されることを確認した。重要なことに、HopPsyAによる毒性作用は、コード遺伝子が、p415GAL1よりも実質的に低レベルで外来遺伝子を発現しているp416GALSへ再クローニングされた場合に認められた。
【0170】
参考文献
本明細書で引用されたかまたはさもなければ以下に列記した参考文献の各々は、明白に、その全体が本明細書に参照として組入れられている。
【0171】
本発明は例証を目的として詳述されているが、このような詳細は単に例証のためであり、添付の「特許請求の範囲」に定義された本発明の精神および範囲から逸脱しない限りは、当業者により変更を行うことができることが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【図1】Psy 61、Psy B728a、およびPto DC3000のHrp Pai内のhrp/hrc遺伝子の保存された配置を説明する略図である。B728aおよびDC3000において配列決定された領域を、61株配列の下側に線で示している。公知の調節遺伝子には影を付けている。矢印は転写の方向を示し、小さい四角はHrpボックスの存在を意味する。三角は、B728a hrp/hrc領域内のファージ遺伝子を含む3.6kb挿入物を意味する。
【図2】Pto DC3000、Psy B728a、およびPsy 61のEEL、緑膿菌(P. aeruginosa)(Pa)のtgt−queA−tRNALeu遺伝子座、ならびにEEL境界配列を示している。図2Aは、それらのhrpK配列と整列化した3種のP.シリンゲ(syringae)株のEELの略図、およびPa PA01中のtgt−queA−tRNALeu遺伝子座との比較である。矢印は転写の方向を示し、小さい四角はHrpボックスの存在を意味する。影付き領域は保存されており、斜線領域は可動性遺伝因子を意味して、白い四角は互いに完全に似ていない遺伝子を意味する。図2Bは、tRNALeuとの境界における、DC3000(DC)(配列番号:85)、B728a(B7)(配列番号:86)、および61(配列番号:87)のEELの配列のアラインメントであり、保存性ヌクレオチドを上部の四角に示した。図2Cは、hrpKとの境界の、DC3000(DC)(配列番号:88)、B728a(B7)(配列番号:89)、および61(配列番号:90)のEELの配列のアラインメントであり、保存性ヌクレオチドを上部の四角に示した。
【図3】P.シリンゲ(syringae)のHrp Pai CELの略図である。Pto DC3000 CELを、下側に並置された配列決定されたPsy B728aの対応する断片と共に示した。コード領域における配列決定された断片のヌクレオチド同一性は、72%〜83%の範囲内であった。矢印は転写方向を示し、小さい四角はHrpボックスの存在を意味する。
【図4】EEL(CUCPB5110)およびCEL(CUCPB5115)欠失を保持するPto変異体の植物相互作用の表現型を示す。図14Aは、DC3000およびCUCPB5110のトマトの生育を示すグラフである(平均およびSD)。図14Bは、DC3000、CUCPB5115、およびCUCPB5115(pCPP3016)のトマトの生育を示すグラフである(平均およびSD)。図14Cは、107cfu/mlのDC3000およびCUCPB5115を用いた浸潤の24時間後のタバコ葉組織中のHR崩壊を示す画像である。図14Dは、104cfu/mlのCUCPB5115の接種の4日後のトマト葉における疾病症状の不在を示す画像である。図14Eは、104cfu/mlのCUCPB5115(pCPP3O16)の接種の4日後のトマト葉における野生型に典型的疾病症状を示す画像である。
【図5】Hrp Paiの3種の主要領域に影響する欠失を含むPto DC3000誘導体によるAvrPto分泌を示すイムノブロット分析の画像である。細菌を、Hrp誘導最小培地(pH5.5)において22℃でOD600が0.35となるまで増殖させ、次に細胞結合(C)画分および上清(S)画分へと遠心分離により分離した。次に上清画分を負荷前に細胞結合画分に対して3倍濃縮した以外は、説明されたように、タンパク質を、SDS−PAGEにより分解し、ブロットして、AvrPtoおよびβ−ラクタマーゼに対する抗体で免疫染色した(ManceauおよびHarvais、1997)。Pto DC3000、CUCPB5115(CEL欠失)、CUCPB5114(hrp/hrc欠失)、およびCUCPB5110(EEL欠失)は全て、pCPP2318を保持し、これは細胞質マーカーとしてシグナルペプチドを伴わずにβ−ラクタマーゼを発現している。
【図6】図1と比べ拡大した、Psy61のHrp PaiのEELにおけるshcAおよびhopPsyAオペロンの組織を示している。図6Aにおいて、shcAおよびhopPsyAは、白い四角として示されている。Hrp Paiの境界は、灰色の四角として示されたtRNALeuおよびqueA遺伝子である。5’側切断されたhrpK遺伝子は、ハッチ付きの四角で示されている。矢印は転写の予想される方向を示して、黒い四角は、shcAの上流の推定HrpL依存型プロモーターの存在を意味する。図6Bは、Psy 61へshcA ORFマーカー交換した欠失変異の構造を概略的に示している。黒いバーは、追加された制限酵素部位にそって増幅された領域を示して、各々は図6Aに示した対応するDNA領域と整列化されている。斜線付きの四角は、機能的非極性shcA Psy 61変異体の作出において使用された転写および翻訳のターミネーターが欠如したnptIIカセットを示している。EcoRI、E;EcoRV、V;XbaI、X;およびXhoI、Xh。
【図7】shcAがタンパク質産物をコードすることを示すイムノブロット画像である。pLV9は、shcA ORFがクローニングされてFLAGエピトープに融合され、翻訳がベクターリボソーム結合部位(RBS)により指示されるような、pFLAG−CTCの誘導体である。pLV26は、shcAコード領域およびその本来のRBS部位を含む増幅産物を含む。pFLAG−CTC(対照)、pLV9、またはpLV26のいずれかを保持する大腸菌(E. coli)DH5α培養物をOD600が0.8になるまで増殖させ、次に100μlアリコートを採取し、遠心分離し、SDS−PAGE緩衝液中に再懸濁し、その後SDS−PAGEおよび抗FLAG抗体およびアルカリホスファターゼに結合した二次抗体によるイムノブロット分析に供した。
【図8】Psy 61 shcA変異体UNLV102がHopPsyAおよびshcAを分泌せず、トランスに提供されたshcAがこの欠損を補完することを示すイムノブロット画像である。Psy 61培養物を、hrp脱抑制培地において22℃で増殖させ、細胞結合(C)画分および上清(S)画分に分離した。細胞結合画分を、最初の培養物体積に対して13.4倍に濃縮して、上清画分を100倍に濃縮した。実験手法の項に記したように、これらの試料を、SDS−PAGEおよびイムノブロット分析に供して、HopPsyAおよびβ−ラクタマーゼ(Bla)を、抗HopPsyA抗体または抗β−ラクタマーゼ抗体のいずれかで検出し、その後アルカリホスファターゼに結合した二次抗体により検出した。イムノブロットの画像を、BioRad Gel Doc 2000 UV蛍光ゲルドキュメンテーションシステムを付属のQuantity 1ソフトウェアと共に用いて捕捉した。
【図9】shcAはHopPsyAのIII型分泌に必要とされるが、HrpZを分泌しないことを示すイムノブロット画像である。蛍光菌(P.fluorescens)55培養物を、hrp脱抑制培地において増殖させて、細胞結合(C)画分および上清(S)画分へ分離した。細胞結合画分を、最初の培養物体積に対して13.4倍に濃縮して、上清画分を100倍に濃縮した。実験手法の項に記したように、これらの試料を、SDS−PAGEおよびイムノブロット分析に供して、HopPsyAおよびHrpZを、抗HopPsyA抗体または抗HrpZ抗体のいずれかで検出し、その後アルカリホスファターゼに結合した二次抗体により検出した。イムノブロットの画像は、BioRad Gel Doc 2000 UV蛍光ゲルドキュメンテーションシステムを付属のQuantity 1ソフトウェアと共に用いて捕捉した。
【図10】機能的非極性shcA変異を含むpHIR11誘導体を保持する蛍光菌(P. fluorescens)55は、HopPsyAを植物細胞へ移入する能力が損なわれていることを示す、一連のタバコ葉の4枚の画像である。蛍光菌(P. fluorescens)55培養物を、キング(King)Bにおいて一晩増殖させ、5mM MES(pH5.6)中でOD600が1.0となるよう懸濁して、タバコ葉パネルに浸漬させた。pHIR11誘導性HRは、植物細胞内部のHopPsyAの移入に起因しているので、低下したHRは、HopPsyAが典型的HRを誘導するのに十分な位良好には送達されないことを示している。葉パネルを、24時間後に入射光線により写真撮影した。
【図11】ShcAはHopPsyAへ結合することを示すイムノブロット画像である。pLN1(HopPsyA)またはpLN2(ShcA−FLAG、HopPsyA)を保持するPsy 61 shcA変異体UNLV102の超音波処理した培養物(超音波処理)から得た可溶性タンパク質試料を、抗FLAG M2親和性ゲル(ゲル)と混合した。このゲルを、TBS緩衝液で洗浄し(洗浄)、SDS−PAGE緩衝液と混合し、超音波処理試料および洗浄試料と共に、SDS−PAGEおよびイムノブロット分析に供した。実験手法に記したように、HopPsyAおよびShcA−FLAGを、抗HopPsyA抗体または抗FLAG抗体で検出し、その後のアルカリホスファターゼに結合した二次抗体により検出した。
【図12】サッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)における紡錘体チェックポイントを説明する概略図である。紡錘体チェックポイントは、微小管に異常がある場合に、動原体から放出されたシグナルにより活性化される。このシグナルは、様々な方法で反応するような紡錘体チェックポイント成分により若干受け取られる。Mad2は、Cdc2Oに、そのユビキチンリガーゼ活性を阻害するAPCで結合すると考えられる。Mad2が存在しない(および紡錘体に損傷を及ぼしうる)場合、APCは活性があり、これはユビキチンタンパク質分解経路による分解のためのPds1および他の分裂後期阻害因子をマークし、分裂後期を保証する。
【図13】トランスジェニック性に発現されたHopPsyAの、ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)cv.キサンチ(Xanthi)、ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)、およびシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に対する作用を示している。図13Aは、pTA7002::hopPsyAを有するまたは有さない、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)GV3101に浸漬されたN.タバカム(tabacum)cv.キサンチ(Xanthi)およびN.ベンサミアナ(benthamiana)の葉を示している。図13Bは、A.ツメファシエンス(tumefaciens)+/− pTA7002::hopPsyAで浸漬されたシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Co1−1を示している。図13A−Bに示した全ての植物について、アグロバクテリウム(Agrobacterium)浸漬の48時間後に、植物にグルココルチコイドであるデキサメタゾン(DEX)を噴霧した。画像は、DEX処理後24時間で撮影した。A.t.=アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens);pA=pTA7002::hopPsyA。
【図14】Psy 61(pCPP2318)またはhrp変異体、Psy 61−2089(pCPP2318)の培養物中のHopPsyAおよびβ−ラクタマーゼの分布を示すSDS−PAGEの画像である。細菌培養物をhrp脱抑制培地において22℃で増殖させて、細胞結合(C)画分および上清(S)画分へ分離した。細胞結合画分を、最初の培養物体積に対して13.4倍に濃縮して、上清画分は100倍に濃縮した。これらの試料を、SDS−PAGEおよびイムノブロット分析に供して、HopPsyAおよびβ−ラクタマーゼを、抗HopPsyA抗体または抗β−ラクタマーゼ抗体のいずれかで検出し、その後アルカリホスファターゼに結合した二次抗体により検出した。Pss野生型=シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)61(pCPP2318);Pss hrcC=シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)61−2089(pCPP2318)。
【図15】マメの葉における、野生型シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)およびhopPsyA変異体の増加する能力を示すグラフである。値は、2回の独立した接種における植物粉砕葉からの平均プレート数を示している。野生型(●)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)61;hopPsyA変異体(○)、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)pv.シリンゲ(syringae)61−2070。
【図16】酵母ツーハイブリッドアッセイ法におけるHopPsyAおよびMad2の相互作用を示している。図16Aは、グルコース(Glc)またはガラクトース(Gal)のいずれかによるβ−ガラクトシダーゼ活性についてチェックするための、pLV24(pEG2O2::’hopPsyA)およびpJG4−5(魚(fish)ベクター)、pLV24およびpLV116(pJG4−5::mad2)、またはpEG202(餌ベクター)およびpLV116のいずれかを含む酵母EGY48株の、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(Xgal)を含有する培地における培養物を示す。β−ガラクトシダーゼ活性は、HopPsyAおよびMad2の両方の存在下においてのみ示された。図16Bは、同じ酵母株のGlcまたはGalのいずれかの糖を有する最小培地ロイシン欠乏プレートにおける培養物を示している。1=EGY48(pLV24、pJG4−5);2=EGY48(pLV24、pLV116);3=EGY48(pEG2O2、pLV116)。
Claims (37)
- (i)配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:34、配列番号:36、配列番号:38、配列番号:40、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:46、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:56、配列番号:58、配列番号:60、配列番号:62、配列番号:64、もしくは配列番号:66のアミノ酸配列を含むタンパク質もしくはポリペプチドをコードする;
(ii)配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:33、配列番号:35、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:47、配列番号:49、配列番号:51、配列番号:53、配列番号:55、配列番号:57、配列番号:59、配列番号:61、配列番号:63もしくは配列番号:65に相補的な核酸配列を含むDNA分子に、0.9M SSCを含有する37℃のハイブリダイゼーション媒質(medium)を含むストリンジェントな条件下でハイブリダイズする;または
(iii)(i)および(ii)の核酸分子と相補的であるヌクレオチド配列を含む
ヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。 - 配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:34、配列番号:36、配列番号:38、配列番号:40、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:46、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:56、配列番号:58、配列番号:60、配列番号:62、配列番号:64、または配列番号:66のアミノ酸配列を含むタンパク質またはポリペプチドをコードする、請求項1記載の核酸分子。
- 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:33、配列番号:35、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:47、配列番号:49、配列番号:51、配列番号:53、配列番号:55、配列番号:57、配列番号:59、配列番号:61、配列番号:63、または配列番号:65のヌクレオチド配列を含む、請求項2記載の核酸分子。
- 配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:12、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25、配列番号:27、配列番号:29、配列番号:31、配列番号:33、配列番号:35、配列番号:37、配列番号:39、配列番号:41、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:47、配列番号:49、配列番号:51、配列番号:53、配列番号:55、配列番号:57、配列番号:59、配列番号:61、配列番号:63または配列番号:65に相補的な核酸配列を含むDNA分子に、0.9M SSCを含有する温度37℃のハイブリダイゼーション媒質を含むストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、請求項1記載の核酸分子。
- 核酸が、(i)および(ii)の核酸分子に相補的であるヌクレオチド配列を含む、請求項1記載の核酸分子。
- 核酸がDNAである、請求項1記載の核酸分子。
- 請求項1記載の核酸分子によりコードされる、単離されたタンパク質またはポリペプチド。
- 配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32、配列番号:34、配列番号:36、配列番号:38、配列番号:40、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:46、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:56、配列番号:58、配列番号:60、配列番号:62、配列番号:64、または配列番号:66のアミノ酸配列を含む、請求項7記載の単離されたタンパク質またはポリペプチド。
- 担体および、請求項7記載のタンパク質またはポリペプチドを含有する組成物。
- 請求項6記載の異種DNA分子が挿入されているベクターを含む、発現系。
- 異種DNA分子が、センス方向で、かつ正しい読みとり枠で挿入されている、請求項10記載の発現系。
- 請求項6記載の異種DNA分子を含む、宿主細胞。
- 細菌細胞または植物細胞である、請求項12記載の宿主細胞。
- 細菌細胞が、アグロバクテリウム(Agrobacterium)である、請求項13記載の宿主細胞。
- 請求項6記載の異種DNA分子を含む、トランスジェニック植物。
- 異種DNA分子によりコードされたタンパク質またはポリペプチドを認識するR遺伝子を含む、請求項15記載のトランスジェニック植物。
- 適合性非病原(compatible nonpathogenic)細菌の増殖を支援する、請求項15記載のトランスジェニック植物。
- 請求項6記載のDNA分子を提供する段階;および、
DNA分子の転写を生じるのに有効な条件下で、DNA分子により植物細胞を形質転換する段階
を含む、トランスジェニック植物細胞を作製する方法。 - DNA分子の転写を生じるのに有効な条件下で、請求項6記載のDNA分子により植物細胞を形質転換する段階;および、
形質転換された植物細胞からトランスジェニック植物を再分化させる段階
を含む、トランスジェニック植物を作製する方法。 - 疾病耐性を付与するのに有効な条件下で、トランスジェニック植物が異種DNA分子を発現する、植物に疾病耐性を付与する方法であり、以下の段階を含む方法:
植物細胞を、請求項6記載の異種DNA分子により形質転換する段階;および
形質転換された植物細胞からトランスジェニック植物を再分化させる段階。 - トランスジェニック植物が、異種DNA分子によりコードされたタンパク質またはポリペプチドにより活性化されるR遺伝子を含む、請求項20記載の方法。
- 処理された植物に疾病耐性を付与するのに有効な条件下で、請求項7記載のタンパク質またはポリペプチドで植物を処理する段階を含む、植物に疾病耐性を付与する方法。
- 処理する段階が、単離された形状のタンパク質またはポリペプチドの適用により実行される、請求項22記載の方法。
- 処理する段階が、タンパク質またはポリペプチドを分泌する非病原細菌の適用により実行される、請求項22記載の方法。
- 非病原細菌によるコロニー形成に対してトランスジェニック植物を高感受性にするのに有効な条件下で、トランスジェニック植物が異種DNA分子を発現する、非病原細菌によるコロニー形成に対して高感受性の植物を作製する方法であり、以下の段階を含む方法:
植物細胞を請求項6記載の異種DNA分子により形質転換する段階;および
形質転換された植物細胞からトランスジェニック植物を再分化させる段階。 - 非病原細菌によるコロニー形成に対して処理された植物を感受性にするのに有効な条件下で、請求項7記載のタンパク質またはポリペプチドにより植物を処理する段階を含む、非病原細菌によるコロニー形成に対して高感受性の植物を作製する方法。
- 処理する段階が、単離された形状のタンパク質またはポリペプチドの適用により実行される、請求項26記載の方法。
- 処理する段階が、タンパク質またはポリペプチドを分泌する非病原細菌の適用により実行される、請求項26記載の方法。
- 真核細胞に細胞毒性シュードモナス(Pseudomonas)タンパク質を導入する段階を含み、該導入段階が細胞死を引き起こすのに有効な条件下で行われる、真核細胞死を引き起こす方法。
- 細胞毒性シュードモナスタンパク質が、HopPsyA、HopPtoA、またはHopPtoA2である、請求項29記載の方法。
- 真核細胞がインビトロである、請求項29記載の方法。
- 真核細胞がインビボである、請求項29記載の方法。
- 真核細胞が癌細胞である、請求項29記載の方法。
- 癌細胞死を引き起こすのに有効な条件下で、細胞毒性シュードモナスタンパク質を患者の癌細胞へ導入し、これにより癌性症状を治療する段階を含む、癌性症状の治療法。
- 細胞毒性シュードモナスタンパク質が、HopPsyA、HopPtoA、またはHopPtoA2である、請求項34記載の方法。
- 導入段階が、細胞毒性シュードモナスタンパク質の患者への投与段階を含む、請求項34記載の方法。
- 導入段階が、細胞毒性シュードモナスタンパク質をコードするDNA分子を含む標的化されたDNA送達系の患者への投与段階を含み、標的化されたDNA送達系が、DNA分子を癌細胞へと送達し、細胞毒性シュードモナスタンパク質が癌細胞内で発現される、請求項35記載の方法。
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